●疾風迅雷の如く
北を望めばそびえ立つ険しい山岳と、麓に広がる樹林。
そこから流れ出る川は、水はけが良く乾いたその土地にとっては、貴重な水源でもある。
今日もまた、点在する数少ない草を求めて渡り歩く道行の途中で有ろう草食獣の群れが、身を寄せ合うようにしながら清流に顔を近づけ、乾いた喉を潤している。そして岩場の物陰には、野犬にも似た肉食獣たちが、群れから離れるような間抜けがいやしないかと、息を潜ませ舌なめずり。
この場所では……否、この世界では、文字通り『自然』な光景の一シーン。その筈であった。
ふと、水面に影が落ちる。なんだなんだと草食獣が水飲みをやめるのと、それは同時であった。
――バヂィッ!!
耳障りな轟音と共に、川の中心に巨大な水柱が上がる。その音に驚いた肉食獣が我先にと岩場から飛び出して散り散りとなり、草食獣たちは騒がしく唸り声を上げる。
――バヂィッ!!
もう一度。
不幸にも一頭が落ちてきた『それ』の直撃を受け、絶命する。
――それは、雷と見まごうほどの強烈な電撃であった。
大パニックとなる草食獣の群れ。ぶつかりあい、つんのめりながらもその場を離れていく中、取り残された死骸の上に、空気を裂く音と共に舞い降りる巨影。
強靭な翼膜。湾刀の如き爪。紅の鱗は日光を照り返して煌めき、縦に割れた瞳孔は、逃げて行く哀れな草食獣達を睨みつけて。
『彼』はそれ以上の獲物を諦めたようで、空気を震わすかのような咆哮をあげると、足元の亡骸を引っ掴んで天へと戻っていく。
飛んで行った北の空は、先の雷鳴がまったく不釣り合いなほどに蒼く、澄み渡っていた。
●ひと狩りいっとく?
「ご足労頂き感謝します。それではさっそくブリーフィングを始めたいと思います!」
グリモアベースの一角の人だかり。その中心で少女の声がする。
「今回、作戦説明と皆さんのナビゲーションを担当します、シャルロット・クリスティア(人間のマジックナイト・f00330)です。どうぞお気軽にシャルとでも呼んでいただければ」
そう言って少女――シャルが、ぺこりと一礼する。初任務だからか、少々緊張気味な様子が見て取れるが、そこはそれ。
「今回皆さんに行っていただきたいのはアックス&ウィザーズ。とある山岳に、ワイバーンの出現が確認されまして」
オブリビオン『ワイバーン』。
アックス&ウィザーズの世界では知らぬ者はいないであろう強大な存在、ドラゴン。その亜種である飛竜の事である。
高速で空を飛び、強靭な身体から放たれる攻撃はどれも危険で、「並の冒険者は出会って即座に逃げを選ばなければ命の保証はない」と言われるほどだ。
「幸い交易路や人里からは離れた地点ですので今のところ人的被害はないのですが、人里まで降りてくる可能性は十分に有り得ますし……その現場から流れ出る川は、下流の都市にとっては貴重な水源。上流で好き勝手されたら、将来的に何が起こるかわかりません」
どうか討伐のほど、よろしくお願いします。
そう言ってシャルは一礼すると、一度言葉を切って。
地図を広げ、置いてあった資料を手に取ると咳払いをひとつ。
「それで、今回の流れなのですが……。現場から川沿いに南に言ったところに小さな都市がありますので、まずはそこに私が皆さんを転送します。そこから出発して、現場にて目標を捜索、討伐していただくという流れになるのですが……」
何か問題でも?と言う猟兵の問いに、シャルは若干歯切れ悪くも続け。
「なにぶん、転送場所から距離がある上に捜索範囲も広大ですので……長丁場が予想されるんです。なので、皆さんにはまず、現場にて仮の拠点を作っていただきたいのです」
現時点では手がかりも少なく、会敵にはどうしても時間がかかる。故に万全の状態で戦闘に入るためにも、現地で休める場所は必須、というわけだ。
「ワイバーンや他のモンスターに襲われないような場所を探したり、雨風を凌ぐようなキャンプや保存食を用意したり……設営が完了したら、見張り役も必要ですかね。環境を整えたら、改めて対象を捜索……と言う形になります」
連絡用の発煙弾は用意しておきますので、捜索に必要なら利用してくださいね。
そう言って指さしたシャルの先には『白 発見用』『赤 緊急用』などと書かれた、打ち上げ式の発煙弾が積んである。いくつあるかはわからないが、足りないなんてことは無いだろう。
「で、肝心の現場についての説明なのですが……」
そう言って広げた地図に視線を移して。
まず、都市から川をさかのぼっていくと、広い荒野に出る。
この辺りは土地の水はけがよく、また気流の関係で風も強いため、背の高い木はほとんどなく、まばらに低木や草が生えている程度だと言う。その代わりに川の水や風の浸食によって岩が削れ、凸凹とした起伏や横穴の類も多い。
ワイバーンは北の山に居を構えているようだが、餌を求めてここまで降りてくることが多いようだ。
その荒野からさらに川をのぼっていくと、山のふもとの樹林が広がっている。
湿度は高いが、今の季節ならそこまで不快なものでもないとのこと。木々が多く狭苦しく感じられるかもしれないが、起伏自体は緩やかだ。
「どちらのエリアも、小型モンスターの生息も確認されています。オブリビオンと比べると戦闘力は格段に落ちるとはいえ、そちらも警戒しておいてくださいね」
なお、そこからさらに北の山岳地帯は足元が不安定で飛行能力の高いワイバーンを相手取るにはリスクが高すぎるため、今回は作戦エリア外とする、とのこと。
「危険な相手とは思いますが、皆さんなら無事に討伐を果たせると信じています。ご武運を!」
びしっと敬礼するシャルの視線を受けながら、猟兵達は準備にかかるのであった。
ふねこ
皆様はじめまして、新人マスターのふねこと申します。
いよいよ始まりましたね第六猟兵!
不慣れな身ではありますが、この世界をうまく盛り上げていく手伝いが少しでもできたらな、と思います。
さて、OPの通り今回は電気属性なワイバーン狩りをやっていただきます。
第一章はキャンプ候補地探し&設営やキャンプでの様子、
第二章はキャンプを出発してのワイバーン捜索、
第三章でボス戦、な形になるかと。
成功目指してもありますが、ぜひ自キャラらしい動きを見せてもらえたらと思います。
あとこれはふねこ個人に限ったことではありますが。
基本的に、オープニングやリプレイ更新等が出てから2日ほどは執筆は行わず、それ以後にプレイング選別&執筆……と言う流れを現状考えております。
(執筆速度やプレイヤーさんの予定での有利不利を少しでも減らしたいな、と。もちろん早めにきたりそれ以降のプレイングを見ないというわけではありません)
なのでもし参加したい、と言う方はどうぞ焦らずにじっくりプレイングを練ったりプレイヤー同士で相談してみたりしてくださいな。
ではでは、長くなりましたがご参加お待ちしております!
第1章 冒険
『荒野のキャンプ』
|
POW : 寝ずの番で警戒する
SPD : キャンプ技術や美味な料理で環境を整える
WIZ : キャンプ場所を探す、敵を誘う細工をする
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リィン・エンペリウス
猟兵としての初めてのお仕事がボクの好きな狩りだなんて少し楽しみだね。
まずはキャンプ地を決めないとね。初めての場所だし、安全な場所がわかる現地の動物達に獣奏器の楽器演奏で動物を集め、案内してもらおうかな。
出来れば動物達にはキャンプ中に食べる食べ物も一緒に集めてもらえるといいんだけどね。彼らならお腹を壊すような食べ物を避けて集めてくれそうだよね。美味しい物の集めてもらえるよう指示を出してみるよ。
歩・備忘録
キャンプ場所を探しつつ、周囲の小型モンスターの(可能であればワイバーンも含めて)生態を調査する。モンスターの生態は主に、弱点となる攻撃方法、行動の特徴(攻撃するタイミングを掴むため)、好みの餌(誘き寄せたり罠を仕掛けるため)、行動範囲や行動する時間帯(キャンプ場所の警戒に役立てるため)、飼育方法(趣味)を調査する。他に面白そうなことがあれば記録する。
集めた情報は他のメンバーと共有する。その際、メンバーの身の上話や戦い方、思い入れなども聞き出す(趣味、最重要)
秋稲・霖
俺はキャンプできそうなとこ探してみるぜ!
全然落ち着けそうなとこないのが厄介だよなあ
けど、横穴とかだったら、休める場所にもなるのかも?
一生懸命探すから、いい場所見つかるといいな
あと他の猟兵の皆の料理がめっちゃ楽しみ…!
ほら、腹が減っては何とやらっていうっしょ?
●兎肉って美味しいらしいね
乾いた風が荒野を抜けて行く。
枯れ草がカサカサ音を立てながら、猟兵達の足元を転がっていく。
そのまま何処かへと行ってしまう枯れ草を見送りながら、ため息をつく狐が一匹。
「全然落ち着けそうなとこないのが厄介だよなあ」
そう言うと狐――霖は周囲を一つ見渡して。
「……けど、横穴とかだったら、休める場所にもなるのかも?」
「だったら、案内してもらおうか?」
言葉を継いだのは隣を歩くもう一匹の狐。
霖と比べて随分小柄な妖狐の少女、リィンである。
案内してもらう、って……と霖が言いかけるが早いか、リィンは手にしていた獣奏器を鳴らし始め……気付いたときには、周囲にはわらわらとウサギに似た小動物たちが群がってきていた。
「なるほど、アナウサギの一種のようなものかな。どうやら近くの小さな穴にでも暮らしているんだろうね」
その様子を一歩引いていた位置で眺めていた、白髪の青年が呟く。
歩・備忘録――歩く備忘録と名乗るその青年は、書物のヤドリガミらしい知識量を垣間見せる。
「けど、ウサギが入るような穴にキャンプなんて張れるんすか?」
「小さい穴の近くに大きい穴が無いとは限らないんじゃないかな」
「そんなもんっすか……」
実際、足元の地面は固く、ウサギ程度の足で簡単に掘れるようには思えない。
となると、雨風の影響で穿たれる穴のできやすい場所の一つや二つはある……の、かもしれない。
「じゃあ、みんな案内お願いねぇ」
改めて。リィンが一声あげれば、ウサギ達はちょろちょろと駆け出していき、猟兵達はその後を追うのであった。
良い天気だ。
軽装ならともかく、キャンプ用具を背負った背中に汗がにじみ出る程度には気温もあるだろう。
先ほどから凸凹した起伏の多い道ばかり歩かされていることもあって、地味に体力を持っていかれている。
この状態でワイバーンと鉢合わせたら……と思うと少々ゾッとするが、幸か不幸か今のところそんな気配はない。
「あわよくば生態を調べておきたかったのだけれど」
備忘録が少々残念そうに呟く。
とは言え、獣たちもわざわざ危険な飛竜のテリトリーに飛び込むほど畏れ知らずではない、ということなのだろう。それが小さなウサギであれば猶更だ。
むしろ、この辺りはのちの調査範囲からは優先的に外しても良い、と言い換えることもできるか。
「やはり、飛竜程の巨体となるとここまで狭いところはあまり来たくはないんだろうな……ん?」
「どうしたんすか?」
何かに気付いたらしい忘備録が足を止め、霖がつられて彼の方向を見る。
その視線の先の岩には、何かがひっかいたかのような跡と、すっかり乾き切ってこそいるものの、血痕と思しき赤がある。
……当然と言うべきか、ウサギ達は近寄ろうとはしない。
「近くに何かいるって事っすかね」
「でも、気配は全然感じないよ?」
「『今』はいないんだろう」
リィンの問いに応じる備忘録。
ワイバーン以外の、『狩り』を行うモンスターは確かに存在する。
だが、今はその姿は見られない。ここまでウサギが数多く出歩いているのに、だ。
猟兵達を見て警戒しているのか、そもそも活動時間外か別の獲物でも探しに行っているのか……気配すら感じられないことを見るに、おそらく後者か。
そんなアタリを付け、再び歩みを進める猟兵達。
またしばらく岩場を進んでいけば、風の浸食だろうか、大きく抉れた横穴が視界に飛び込んできた。
ウサギ達は周囲にできている小さな穴にぴょいぴょいと飛び込んでいく。
その横穴は大きかった。
奥行こそそこまででもないが、それでもテントの一つ二つくらいは充分に収まるだろう。
その上で雨風もある程度以上に凌げ、警戒も入り口だけでいい。キャンプにはかなり理想的な場所と言えるのではないだろうか。
一息ついて、荷物を下ろしていく。
そんな中、リィンがいまだに足元に引っ付いていた数羽のウサギに気付くと。
「あ、そうだ。キャンプ中に食べる食料って近くに何かないかな?美味しいのを集めてきてほしいんだ」
「お、良いねぇ。今夜の料理がめっちゃ楽しみ……!」
ほら、腹が減ってはなんとやら……って言うでしょ?
霖の口からじゅるり、なんて音が聞こえたような気がした。
そんな様子が分かったのかどうかは知らないが、数羽のウサギ達がリィンの足元から離れ、散って行く。
「……手ごろな穴を用意したら飼えないだろうか、あのウサギ」
その後、キャンプ設営の間、リィンと備忘録の間で兎の話からジビエ、果ては狩りの仕方の話にまで飛んで大いに盛り上がっていたのは、また別の話。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ティオレンシア・シーディア
キャンプを開設するってことは長丁場になるわけだし、ご飯は大事よねぇ。乾パンのチャンプルーとか、ビーフジャーキーでスープとか、色々工夫してみようかしらぁ。保存食をそのまま齧るだけじゃあ味気ないし、暖かいものを食べれば余裕も出てくるものねぇ。
リゥ・ズゥ
リゥ・ズゥは、料理、できない。探しもの、得意では、ない。
だが、リゥ・ズゥは、強い。リゥ・ズゥは、眠らない。
リゥ・ズゥの、手は長く、遠くも、見える。
リゥ・ズゥは、夜に隠れる。
発煙弾、リゥ・ズゥは、初めてだが、覚えよう。
(意訳:私はSPDとWIZの行動はとても不得意ですが、戦闘や体力には自信があります。
バウンドボディで10m先まで伸びる身体で、高く伸ばし見渡す事も、気になるものに顔や手を伸ばして直に探る事もできます。
闇に紛れる黒い身体で、敵の目より先に見つけやすい筈です
緊急時はちゃんと発煙弾で仲間にも知らせます。ただ使ったことがないので、シャルロットさんに事前に教えて貰います。)
リダン・ムグルエギ
土地選びや警戒作業は他の人に全部任せるわ
え?だって、アタシはデザイナーなの
餅は餅屋に、餅以外は他の皆に任せるのが当然じゃない
まぁ、本職は服だけど
今回はキャンプのデザインと行きましょ
美よりも機能性を追求、がコンセプトね
少なくとも木があるならそれを骨にして、足りない分は切って補って
レプリカクラフトで天蓋と周囲と区切るための壁代わりの布にロープを作り組み合わせてキャンプを作りましょ
容量が余れば寝床と竈も作りたいわね
周囲の警戒しやすいように布や天蓋はアクリルみたいな透明素材の方がいいかしら
あ、そうそう。設営中は他の人にも積極的に会話していきたいわね
単純作業だけだと、暇だし面倒だもの
アドリブは大歓迎よ
赤星・緋色
衣食住整えるのは長期戦の基本だよね
それなら私は3代欲求の内食欲
ここを担当しておこうかな
よーし、川があるんなら魚を捕りに行くしかないよね!
干したり加工したりで存食にもなるし。
というわけで、私は食糧調達に行くよ
あと調理と加工も頑張る!
とりあえず投網を持って川にお出かけかな
着いたらスカイステッパーを使用して、魚のいそうなところに多段ジャンプからの網投げ
こうすれば普通に届かないところまで投網を飛ばせるし、濡れずに戻ってこれるよね
すぐ食べるのはそのまま焼くけど、後続の人のためにも内蔵抜いて干物や加工食品にして保存しておこ!
川魚はそこらへんしっかりやらないとだしね
東郷・三笠
POW判定の寝ずの番で警戒する
我に任せておけば問題ないぞ!
ワイバーンは空を飛んでるから空を重点的に索敵
もちろん地上も索敵するぞ
小型モンスターも十分な脅威だからな
技能の空中戦1、零距離射撃1で接近戦も対応するぞ
戦闘になったらとりあえず『赤 緊急用』を発射し周りに知らせる
見張りで眠りこけそうになったら、バトル・インテリジェンスで体を動かしてもらおう
これで偶発的戦闘におけるパフォーマンスは落ちないはず
見張りで見つけたモンスターは悪戯に刺激はしないが向かってくるなら
「雑魚は散れ!」
アームドフォートとブラスターガンで一斉射撃
美味そうな匂いがするなぁ……いかんいかん、見張りに集中しなければ
●一泊
そんなわけで、横穴の内部にキャンプを設営することに決まった猟兵一行。
「それじゃ、今回はキャンプのデザインと行きましょ」
餅は餅屋。デザインはデザイナー。
土地選びを仲間に一任していた分、ここからは自分の本領発揮と、リダンがずい、と前に出、広さ・形状・地面の凹凸・亀裂の有無等、手際よく測っていく。
頭の中ではテントの形状や配置もろもろ、リアルタイムで組み上がっているのかもしれない。
「まずは木材で骨組みを作って……足りない分、見つかった?」
「リゥ・ズゥは、強い。リゥ・ズゥは、いっぱい運んだ」
「一緒に魚も調達してきたよ!」
リダンの問いに答えるのは、緋色という名前に相応しい赤い髪を持った少年と……悪魔じみた真っ黒いナニカ。ブラックタールのリゥ・ズゥである。間違ってもモンスターではない。
初見のインパクトこそとんでもない外見ではあるが、ブラックタール自体は猟兵稼業やっていればそこそこ見かけるのもあって、慣れてしまえばそこまで気になるほどでもないんだろう。
リダンも緋色もごくごく自然に木材を受け渡し、骨組みを組み上げていく。
円錐状に長い木材を配置し、持ち込んだペグを地面に刺しこんで固定。
テントの出入り口を洞窟に背を向けるようにするのは、洞窟出入り口からの風がテントに入り込むのを防ぐため。
ロープと布を組み合わせて区画分けも行い、就寝スペースや炊事スペース等、それに合わせて機材を設置。
一部には透明素材も用いて、緊急時の視界も確保。
リダンの的確な指示に合わせ、力仕事はリゥが腕力に物を言わせ、狭い場所の作業は緋色が入り込んで処理していく。
リダンが用いるレプリカクラフトもあって、設営作業は驚くほど順調に進んでいった。
外から入り込んでくる風こそあるが、即席ということを思えばかなり快適に過ごせることだろう。
流石に寝床に関しては持ち込んだ寝袋を頼ることになりそうだが、簡易的なかまどまでできている。
「今回に関しては美よりも機能性。こんなものかしらね」
「暖かいものを食べれば余裕も出てくるものねぇ」
私も腕を振るっちゃおうかしらぁ、と。一仕事終えたリダンの後ろから降ってくる甘く間延びしたロリボイス。
振り返ればそこにいたのは、微笑みを称えた糸目の美女。『今の声ホントにあなただったんですか?』とか言いたくなるが、声の主は彼女で間違いない。
「それじゃあ、料理の方はお願いしちゃうわね。ティオレンシア」
「まーかせて。保存食をそのまま食べるだけも味気ないし」
ロリ声美女――ティオレンシアがリダンと互いの掌を軽く打ち合わせてバトンタッチ。
バーのマスターも兼業しているティオレンティアにとってみれば、設備上そこまでこったものは無理でもひと手間加えるくらいならお手の物。
乾パンやジャーキーと言った保存食料を、必要分だけ取り分けて水や調味料も取り出せば。
動物達が採ってきた木の実(問題なく食べられるやつだった)と炒め合わせてチャンプルーにしたり、また別のは煮込んでスープにしてみたり。
またその横に視線を移してみれば、緋色が獲ってきた魚に塩をまぶして串を通し、焼き魚にしている。
「あとで残りの魚も、内蔵抜いて干物や加工食品にして保存しとかないと」
後続の人の為にも。
特に川魚は住処の性質上、内臓に寄生虫が入っていることもあるし、独特の泥臭さもある。下処理大事。
結果として。
本日の晩餐は焼き魚にスープ、炒め物に主食の乾パン。
十分……というよりも、そこらの家庭の晩飯と比べても大きくは劣らないのではないだろうか。
舌鼓を打つ猟兵諸氏。決して遊びに来たわけではないのだが、少しばかりテンション上がってしまうのも仕方のないところだろう。
これで英気は養える。後は明日の本格的な調査に備えるだけだ。
一方そのころ。
「美味しそうな匂いがするなぁ……」
洞窟入り口の岩に腰掛け、焚火に当たる眼帯の女性。
東郷三笠22歳。自ら寝ずの番を買って出たものの、奥から漂ってくる匂いに若干集中力が途切れ気味。
「……いかんいかん、見張りに集中しなければ」
気を取りなおすように頭を振る三笠。
そうだ、気を抜いてはいられない。『我に任せておけば問題ないぞ!』などと見栄を切った手前、ミスは許されないのである。
空を飛ぶワイバーンは当然として、小型モンスターも決して無視して良い相手ではない。
空に陸に、警戒すべき場所はいくらでもあるのだ。
「大丈夫か」
「うわぁっ!?」
と、そんな三笠の左斜め後ろから唐突に書けられる声、と視界の端に映る真っ黒な塊。
ブラックタールのリゥ・ズゥである。間違ってもモンスターではない(二回目)。
でも正直なところ、暗い夜間に真っ黒なブラックタールでしかもバウンドモードを発動して形状崩れたものが死角から唐突に声をかけてきたらそりゃビビる。
「なんだ、リゥか……驚かさないでくれ」
「すまない。リゥ・ズゥは、魚とスープ、持ってきた。食べるか?」
「あぁ……ありがとう」
ほっと胸をなでおろす三笠に伸びる、リゥの手。その先には緋色が作った焼き魚とティオレンシアお手製のスープ。
改めて二人で腰掛け直し、魚を齧りスープを啜る。
「リゥ・ズゥは、料理、できない。探しもの、得意では、ない。だが、リゥ・ズゥは、強い。リゥ・ズゥは、眠らない。リゥ・ズゥの、手は長く、遠くも、見える。リゥ・ズゥは、夜に隠れる」
つまるところ、『他は苦手だけど見張りは得意だからやるぞ』と。
三笠の問いにこくこく頷くリゥ。
「それなら、一緒にやるとしようか」
「うん」
元々、眠くなったらバトルインテリジェンスで自身を無理矢理動かそうとしていた三笠のところに加勢してくれた、隠密性の高く、広い死角も確保しやすいリゥ。
警戒すべきところ、対応すべき事が単純に半分になったという以上に、互いが互いを補えるという状況的な安心感。
見張り側も、問題なく一夜を過ごせそうである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『荒野の探索』
|
POW : 荒野を虱潰しに強行軍で探索する
SPD : 標的の痕跡を探して追跡する
WIZ : 地形や気候、目撃情報から居場所を推理する
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
翌日。
結果として、大きなトラブルも襲撃を受けることもなく一夜を過ごした猟兵一同。
キャンプ場所の良さや見張りがいたことの安心感もあって、体力、気力共に十分。
ここからは、本格的に荒野を探索し、飛竜を索敵することになる。
飛竜ほどの強大な存在。常にこの荒野に滞在しているわけではないにしろ、来訪時に何の痕跡も残していかないということはまずありえない。
さぁ、どこをどう探していこうか……。
リィン・エンペリウス
ボクは飛竜の痕跡を探しにいこうかな。
発煙弾もしっかり持たせてもらうよ。
今日も動物達を一緒に連れて行こう。獣奏器で集まってもらわないとね。
鼻が利く肉食動物、警戒心の強い草食動物、空を飛び視界の広い鳥、色々な動物に飛竜について知らないか聞いてみるよ。
道中も動物と行動を共にして、痕跡を探しつつ偵察もお願いしようかな。あ、無理はしないようにね。
痕跡から飛竜に近づいたなと感じたら慎重に進むよ。
飛竜を見つけたら野生の感を活用して、飛竜に発煙弾が見つからないところまで下がり発見用の白煙弾を打ち上げよう。
もしもの時は即座に赤煙弾を上げられるように準備もしておこう。ライオンライドでみんなが来るまで時間を稼ぐよ。
ティオレンシア・シーディア
ワイバーンも広い荒野で闇雲に獲物を探す、なんて無駄なことはしないだろうし、動物の集まるだろう水辺周辺を優先して探索したほうがいいかしらぁ。
上から見通せない樹林のほうは、すこし優先度下がるかしらねぇ。
雷撃を使うようだし、地面に焼け焦げた跡なんか残ってないかしらぁ?
地図に痕跡をマーキングしていけばある程度行動範囲なんかも絞れるかもしれないわねぇ。
ポケッティ・パフカニアン
やっほー、面白いことしてるって聞いて来てみたよ!
もしかして苦労するトコ飛ばしちゃった感じ?美味しいトコで来た感じ?ふふーん、さすがあたし、ナイスラック!
探索と言えばコレでしょ。時渡る幻影!どこかのあたし、ちょっと手伝って!
これで2倍探索、2倍速、見落としなんて心配ご無用!
もちろん、痕跡探しするんだけどー。
わかりやすいのは足跡?それから電撃とか使うならー、焦げた地面とか植物とか?
羽根は無さそうだし…獲物の食べ残しとか?
電気とか強い光で、驚く動物かいるか試すとか?一回逃げたやつなら反応するかも?
あとは痕跡の分布取って、どっちの方角に繋がってるか…
ふふん、まぁ見といてよ、さらっと見つけてやるかんね!
赤星・緋色
よっし、続いてワーバーンの痕跡探しがんばろっ
予知では川沿い飛んでいたし、雷落としてたし、ここら辺の痕跡は残ってるよね。たぶん。
迷彩柄の装備で発見されにくいようにしつつ
川沿いを上流の方に移動しながら痕跡探しをするよ
小型モンスターや他の野生動物たちを刺激しないように、ちょっと大回りしつつ避けながら探したり
それとスカイステッパーを使ってで対岸に渡ったり、障害物を避けたりしながら探索する感じ
モンスターは攻撃してきたらやり返すしかないけど
痕跡を見つけたら連絡用の発煙弾でみんなに連絡。連携して探せたらいいよね
山岳地帯の戦闘は駄目っぽいし痕跡が見つかればあとはおびき寄せとかだね
●わいわいがやがや痕跡探し
「やっほー、面白いことしてるって聞いて来てみたよ!」
キャンプを発った一行に、唐突に振ってくる元気の良い声。
どこから?と辺りを見渡してみると……南から川沿いに歩いてくる人影が見える。
種族も装備も千差万別。後続部隊の登場だ。
「もしかして苦労するトコ飛ばしちゃった感じ?美味しいトコで来た感じ?ふふーん、さすがあたし、ナイスラック!」
そうぺちゃくちゃしゃべり続けるのもその中の一人。ふよふよ浮いてる20センチ強の小さなフェアリー。
ポケッティ・パフカニアンである。
軽く情報交換を終わらせたのち、一部はキャンプへ向かい、またポケッティをはじめとした何人かはそのまま調査に合流。
改めて出発だ。
「よっし、改めてワーバーンの痕跡探しがんばろっ」
「ワイバーン」
「ワイバーンの痕跡探しがんばろっ」
おー!と元気よく拳を振り上げる緋色にツッコミを入れつつ、一行は南……昨日、木材や魚を取った樹林側とは逆方向へ。
まずは川へ、そこから川沿いを南から北へ、上流へ向けて上っていくというルートだ。
「ワイバーンも広い荒野で闇雲に獲物を探す、なんて無駄なことはしないだろうし、動物の集まるだろう水辺周辺を優先して探索したほうがいいかしらぁ」
上から見通せない樹林のほうは、すこし優先度下がるかしらねぇ、と呟くティオレンシア。
彼女に限らず、参加している猟兵達の多くはほぼ同じ結論に至っていた。
即ち。『水飲み場で休んでいる獣を狙って狩りをしているのではないか』ということである。
彼女の言葉に頷き、川沿いを北上する一行。
歩みはゆっくりと。周囲の確認はしっかりと。
ただ、真剣な調査故互いの言葉も殆どないかと言うとそういうわけでもなく……。
「わかりやすいのは足跡?それから電撃とか使うならー、焦げた地面とか植物とか?羽根は無さそうだし…獲物の食べ残しとか?」
「電気とか強い光で、驚く動物かいるか試すとか?一回逃げたやつなら反応するかも?」
「だーめ!この子たちが逃げちゃうでしょ!」
思いつくままを口から垂れ流すポケッティと、いいこと閃いた!と言わんばかりに提案するポケッティ。
それを窘めるリィンと、嫌な予感を察知したのか警戒心をあらわにする、リィンの周囲に群がる大型の草食獣たち。
そう。めっちゃ賑やかなのである。なんかポケッティ二人になってるし。
『これで2倍探索、2倍速、見落としなんて心配ご無用!』の言葉に嘘はないんだろうが、賑やかさも追加でドン。
というか、そんなことすれば『一回逃げたやつ』に限らず、大抵の野生動物は驚くのではなかろーか。
これでも、最初は肉食獣も呼び寄せようとしていたところ草食獣が頑なに嫌がったので、まだマシであったりするのだが。
「予知では川沿い飛んでいたし、雷落としてたし、ここら辺の痕跡は残ってると思うんだけどなぁ……」
そんな集団からやや離れた前方。発見されにくい迷彩柄の装備に身を包み、スカイステッパーをも用いて先行していた緋色が唸る。
狩場であるのなら、雷の焼け焦げや爪痕、血痕など、相応の痕跡が存在するはずであるが。
今のところ、それらしい痕跡は発見されていない。もう少し上流なのだろうか?
……と。
「……うん?どうしたの、みんな?」
最後尾を歩いていたリィンが声をあげる。
なんだと振り返ってみれば、リィンが呼び寄せて一緒についてきていた草食獣が、歩みを止めていた。
まるでここから先に行きたくないような、恐れているような様子を見せ、頑なに先に進もうとしない。
「……うん。いいよ、大丈夫。無理はしないようにね」
リィンの言葉に納得したのか、そのままそそくさとUターンしていく草食獣達。契約はここでおしまい。
「この先に、何かがある……ってことかな」
川と言っても、その様子には様々なものがある。
傾斜がきつく、流れが速く、その分地面を削り起伏を作っていく川。
その反面、傾斜が緩く流れが遅ければ、平坦で穏やかで、幅の広い川にもなりうる。
目の前に広がっている上流は、後者のそれだ。
そして、ゆったりとした口調の中に真剣さを滲ませるティオレンシアの言葉を裏付けるように、その先の地面に点々と残されているのは……。
「「地面が……焦げてる」」
ポケッティ×2の声が重なる。
この辺りで何かが燃えたり、跡が残ったりするような事象など、そう多くはない。
目に映る分は焦げ跡はそう多くないが、0が1になった、ということは大きな意味を持つ。
「近づいてきた、かしらねぇ」
ささっと地図に印をつけるティオレンシアの口調は相変わらず緩やかであったが、その内には真剣みが漂い始めていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
白斑・物九郎
【ワイルドハント】で行動
●SPD
痕跡探しと生態の類推、そんでもって追跡
狩りの基本っスね
野生の勘ONで行きますでよ
・水場へ電撃
・水飲みに来てた獣をビビらせててんやわんやになったトコから、モタ付いてるヤツをピンポイント狙い
コレがワイバーンの狩猟方法だと思うんスよ
ってなワケで川沿いを歩いて「雷が落ちた痕跡」を探しまさ
焦げた石コロが跳ねてないかとか
感電死してるみたいな魚が川に浮いてたりしないかとか
そんな魚の死骸とかがもしもあったら、腐食具合なんかも見て「ワイバーンが狩りをした場所・時系列」と見做してメモ
得た情報を周辺地図に落とし込んでく形でワイバーンの行動範囲を追跡
程度絞り込めたら先読みに掛かりまさ
エル・クーゴー
【ワイルドハント】で行動
『索敵を開始します』
●WIZ
白斑に追従し、学習力も用い地形・気候を実地で目視観測
推理情報を白斑の得た情報に随時統合
『一定の情報を集積しました』
『更新します』
ワイバーンの狩猟に於ける初撃は長射程の雷撃と類推
雷撃の照準が乱れる要因たるやもしれぬ「背の高い木」の生えている辺りは、ひとまず推理から除外
ただ「背の高い木」はワイバーンを墜としに掛かる際、雷のカウンターとして役立つやも?
植生の分布を記録はしておく
●探索中、小型モンスターと戦闘状況になりそうな際はUC+一斉発射で即対処
●ワイバーンとの不意の遭遇に備え
・各用途別発煙弾は常時発射待機
・会敵時は猟兵の増援を見込み時間稼ぎ使用
リダン・ムグルエギ
そうね…こういうのはどう?
「ワイバーンを釣ってみた」よ
探索関係は仲間にまた丸投げよ
ワイバーンの主食っぽい大型獣の目途はつくでしょ
それを模した偽物の像を、上空から見えるような場所に置いておくの
疑似餌釣り、というわけ
数日かけて捜索した場合その動物をアタシ達が狩れた可能性もあるわね
それなら、その毛皮を使ってアタシが像に着せる服を作るわ
生きてるように見える、って暗示(催眠術)を模様として織り込みながらね(防具改造)
…まぁ、他の肉食獣がかかる可能性もあるけれど…
そこは仲間が「ワイバーンの縄張り」を予想してからする事で成功率をあげるわ
あ、作戦中は動画を撮るわよ
楽しそうだもの
アドリブや他の人との対話大歓迎
ユア・アラマート
とりあえず、この辺りを飛竜が狩場にしているなら痕跡はそれなりに多く残ってると思うし。そこを当たってみるとしようか
SPD判定で、荒野に残されている飛竜の痕跡を丁寧に観察して探す
小型のモンスターや動物がメインなら、地面に残る爪痕や体液といった痕跡は比較的目立ちそうだし。何より、狩場なら狩りの痕跡は確実に残ってるだろう
動物の骨が散乱しているだとか、もっと言えば比較的新しい死体が見つかれば。それらの痕跡を追いかけて飛竜の居場所を突き止められるんじゃないかと思う
道中、小型モンスター等に襲われた際はフォックスファイアで威嚇。怯まなければそのまま攻撃して対処。
早く見つけられるように、尽力するとしよう
皐月・灯
さて、それじゃ飛竜探索といくか。
ワイバーンはこの辺りに狩りに来てるんだろ?
なら、獲物がよく集まる場所には現れやすいだろう。
オレはこのあたりの獣達の水飲み場をいくつか探して、調べてみるぜ。
で、張る。
どの水飲み場で張り込むのか?
そいつは、水飲み場に残されてる足跡の大きさで決めるぜ。
ちっせーヤツよりデカい獲物を狙う方が、
一度で腹が膨れる分、効率がいいんじゃねーかな。
だから、デカい足跡がある……デカいヤツが利用する水飲み場。
オレは、そこを張る。
●破壊の痕
「この辺りを飛竜が狩場にしているなら痕跡はそれなりに多く残ってると思うし。そこを当たってみるとしようか」
歩を進めてみれば、想像通り。地面の黒ずみが目立ってきているように感じる。
提言したユアに限らず、ここが奴の狩場……少なくともそのうち一つ……であろうことは、その場の猟兵の多くが感じ取っていた。
「1、水場へ電撃。2、水飲みに来てた獣をビビらせててんやわんやになったトコから、モタ付いてるヤツをピンポイント狙い」
コレがワイバーンの狩猟方法だと思うんスよ。
ひとつ、ふたつと指を立て、黒髪から生えた猫耳をヒクつかせながら、物九郎が言う。
「というわけで、『焦げた石コロが跳ねてないか』だとか『感電死してるみたいな魚が川に浮いてたりしないか』だとかがポイントですわな。エールゥー?」
「現時点までの観測ログの照合を開始します」
物九郎の呼びかけに、追従していた銀髪のミレナリィドールが返事をする。
「照合完了。『焦げた石コロ』第一発見時刻、3分前。目視範囲では上流に向かうほど個数上昇の模様。『感電死してるみたいな魚』該当件数ゼロ。既に流された後と推測されます」
「そーですかよ」
淡々と。きわめて淡々と答えるドール……エルの様子を不思議がるでもなく、物九郎は周囲の見渡しに戻る。これが彼女の平常運転なんだろう。
そう自身を納得させることにして、傍らに立つ少年が口を開く。
「狩りは随分前に済んじまった……ってことか」
少年……灯はそう言って頭を掻く。
この辺りを草食獣が水飲み場として利用して『いた』事はまず間違いないだろう。
狩りを行っていた確たる証拠である、雷撃の痕跡はもちろん。
地面を見渡してみれば、大型の足跡……飛竜の爪痕とは違う、先まで一緒に来ていた草食獣(当然別の群れなんだろうが)のそれも少なからず散見される。
そして、運悪く標的となってしまった、哀れな個体のものであろう血痕も。
ただし、それだけだ。
「動物の骨が散乱しているだとか、もっと言えば比較的新しい死体が見つかれば楽だったんだけど」
ユアが言うような、そういった痕跡は一つもない。
あくまでここは『狩り場』であって『食事場』ではないんだろう。
自身の体格より大柄な獲物であればともかく、飛竜ほどになれば、足で掴んでねぐらの山までひとっ飛び……なんてことも難しいことではない。
「デカい足跡がある……デカいヤツが利用する水飲み場。オレは、そこを張る……そのつもりだったんだけどなぁ」
やれやれと肩を落とす灯。
小さい獲物より大きい獲物の方が、一度に食える肉の量は多い。
肉の量が多ければ、一度に腹を満たせる。だから効率がいい。
だからデカいヤツが利用する水飲み場を張る。その帰結はごくごく自然なものだ。決して何も間違ってはいない。
あえて何が悪かったかと言えば、狩りがすでに終わったあとであること。
草食獣たちも、同胞の血の臭いが残る場所に来たがる道理はないだろう。先の群れがここに近づこうとしなかったのも頷ける。
別の場所を探すか……灯がそう考えた矢先、物九郎がハタと何かに思いついたような顔をした。
「あー?ちょい待ち。……エル、その血痕できてからどんなもんの時間経ってるか。わかりますかよ?」
それを思いついたのは、言ってみればただの虫の知らせ。野生の感、という奴だ。
いったい何を?と怪訝そうな顔をする灯をよそに、エルはその血痕の観察を始める。
「現在の気温及び湿度観測。3日前までの天候記録をサルベージ。成分観測。しばらくお待ちください……」
「……」
「……」
「……」
……。
「……情報収集を完了しました。血痕は大型草食獣由来であるとほぼ断定。付着後20時間から25時間程度経過していると予想されます」
「信頼できるのか、それ?」
「信頼性、およそ60~70%です」
「……また、随分と中途半端な数字だね……」
専用の鑑識道具も無い中で、状況証拠だけの推測ではこんなものなんだろう。
ともあれ。
「ひとまずエルの推測があってるとしまして……20時間から25時間……ほぼ丸一日。ニャるほど、これは良い傾向ですでよ」
つまりはもうすぐ狩りの時間、ってことでさ。
物九郎の顔が、獰猛な笑みを浮かべた。
完全に時間通りの生活を送っているわけではないにしても、だいたいの一日の生活リズムというものがある筈だ……と。
「だけど、どうするんだよ?飯の時間と言っても、餌が無きゃ……」
「じゃあ、こういうのはどう?」
灯の問いに答えたのは、今の今までずーっと傍観を決め込んでいた女。
そう。キャンプ設営時もこんなノリだった、リダン・ムグルエギその人である。
「なんスか、リダンのねーさん」
「ずばり『ワイバーンを釣ってみた』よ」
物九郎にドヤ顔で返すリダンのねーさん。
「ワイバーンの主食っぽい大型獣はさっきも見たでしょ。それを模した偽物の像を、上空から見えるような場所に置いておくの。疑似餌釣り、というわけ」
前にも言ったが餅は餅屋、デザインはデザイナー。
任せるところは任せ、やれるところで力を発揮。これが彼女のスタイルなんだろう。
本物の素材があれば一番良かったのだが、流石に今までにそこまでする余裕はなかったので仕方ない。
それでも、レプリカクラフトに加えて身に着けた防具改造と暗示の技術まで織り込めば……遠目に見れば、容易に判別がつかないレベルのものを作るくらいの事は可能だ。
それを水際においておけば、『群れからはぐれた一頭が途方に暮れてとりあえず水飲んでる』くらいには見えるだろう。
「……なるほど」
素直に褒めるとなんだか負けを認めた気になるのかは知らないが、灯はそれだけ言ってその場から離れ。
その様子に笑みを浮かべながらスマホを持ったリダンが続き、他の面々もそれに倣う。
「……え、なんでスマホなんか持ってるの」
「動画撮影」
「……」
ああそう。
やれやれとため息をついたユアがふと視線を横にずらすと。
「……ん?あの木……」
木。
いくら乾燥しているとはいえ、川沿いだ。他の場所と比べたら、2~3メートルくらいまで育つ木も、ごくわずかではあるが見受けられる。それはいい。
そのうちの一部がへし折れているのも、まぁ老いて枯れたりまだ若い木が強風に耐えられずに折れる等の事もありうるだろう。それもいい。
だが、視界に映ったその折れた木は、どうも様子が違う。
何か大質量をブチ当てられたかのような折れ方だ。風のせいとは考えにくい。
「大質量って言うと……アレ?」
「可能性は無くはないと思うけど……アレが全力タックルするような状況ってある?」
水際に佇んでいるアレ(のハリボテ)を眺めながら、灯とユアが言う。一方で断面を覗き込んでいた物九郎もあることに気付く。
「……んニャ?これ、断面腐ってますな」
「腐ってる?」
確かに、触れば力を入れずとも繊維がボロリと。しかし、この土地に腐るほどの水分があるかと言うと疑問符が残るし、そもそも根本は無事で腐っているのは断面だけだ。
となれば、断面から何かの浸食を受けた、ということだが……。
「(……毒?)」
そう、猟兵達が一つの答えに辿り着いたとき。
轟音と共に、閃光が走った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
東郷・三笠
POW判定の荒野を虱潰しに強行軍で探索する
体力には自信があるからな!
周囲を俯瞰的にしっかりと見渡し見逃しがないようにする
ワイバーンはデカいから遮蔽物のない空や荒野で見逃すなんて事はあるまい
疲労が溜まってきたらバトル・インテリジェンスで無理矢理動かす
目さえ開いていれば索敵は問題ないだろうし
万が一逃げるときも体力が尽きてへたり込むなんて事はあるまい
操ってるのはドローンだしな
ワイバーンを発見したら『白 発見用』
不測の事態に陥ったら『赤 緊急用』を発射して皆に知らせ
自分は見逃さないよう注意し即座に戦闘に移れるよう準備しておく
もちろん、荒野にいるかも知れないモンスターには注意しておくぞ
リゥ・ズゥ
リゥ・ズゥは、敵を、探す。リゥ・ズゥは、頭は良くない。だが、リゥ・ズゥの身体、高くから、遠くまで、よく見える。リゥ・ズゥは、早く動ける。リゥ・ズゥは、捜し物も、出来る。リゥ・ズゥの身体、とても便利、だ。リゥ・ズゥは、仲間の役に、立てる筈、だ。
(私はPOWで荒野を行き敵を探します。知的な行動は苦手ですが、体力勝負は得意分野です。
バウンドボディを用いれば身体を最大15m先まで伸ばし、高所から俯瞰することや、伸縮を利用し素早く移動する事も出来ます。また、野生の勘により本能的に敵の位置を感じ取ることや、仲間の任意の形状に変化することで様々な活用も可能となります。きっと探索に役立つ筈です。)
●そのころ
「ふむ…これか」
川沿いを歩く他の猟兵達とは別に、昨日通ったでこぼこ道を往く女性が一人。
東郷三笠である。
そしてその横には全高十五メートルの真っ黒なナニカ。
バウンドボディを利用して一帯を俯瞰しているリゥ・ズゥである。
くしくも昨夜見張りを担当したコンビであった。
体力には自信があると、他のメンバーが調査しない場所の潰しを自ら希望したこと、一部の猟兵が昨日見かけた狩りの痕跡を気にしていたことを踏まえ、ここまでやってきたわけだ。
血痕と爪の痕。
改めてまじまじ見てみると、爪痕はそう大きくも深くも無い。飛竜の爪であれば、ほぼ確実にもっと派手に削れていることだろう。
また、周囲に焼け焦げたような痕跡も見当たらず、加えてもう一つ。岩の隙間に、小さな骨が引っ掛かっている。
「リゥ・ズゥ。そっちは何か見えるか?」
「リゥ・ズゥは、敵を、探す。……野犬が、ウサギを追いまわしてるの、見える」
「そうか」
……予知によれば、ワイバーンは、獲物を狩ったあとその場で食さずに山まで持ち帰っていたという。
その場で食事した痕跡。これこそが、ワイバーンとは別の存在による仕業と断定するのに一番の証拠、と言えるかもしれない。
ちょうどリゥ・ズゥが見ているような光景が、ここで繰り広げられたのだろう。
「無駄足……いや、明確に外れだと分かった分を収穫だと思おう」
外れかもしれない、と外れ、には大きな差がある。選択肢が減る、ということは重要なことだ。
「ワイバーンはデカいから、遮蔽物のない空や荒野で見逃すなんて事はあるまいが……」
「待て。上」
「上?」
そう、天を仰いだ時だった。
太陽を遮って、上空を飛んでいく影がひとつ、ある。
鳥か?いや、違う。鳥にしては尾も長いし、翼の形状も妙だ。鳥以外で単独で飛んでいる存在など、今思い当たるものと言えば一つしかない。
「……ワイバーンか!?」
「リゥ・ズゥは、早く動ける。急ごう、ミカサ」
「あぁ!」
二人は駆けだした。
その方向は、くしくもほかの猟兵が疑似餌を設置した場所を向いていた。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『ワイバーン』
|
POW : ワイバーンダイブ
【急降下からの爪の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【毒を帯びた尾による突き刺し】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 飛竜の知恵
【自分の眼下にいる】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : ワイバーンブラスト
【急降下】から【咆哮と共に衝撃波】を放ち、【爆風】により対象の動きを一時的に封じる。
👑17
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ここからが本当のクエスト開始
水柱が上がる。
きらきらと、飛沫が陽光を照り返す。
轟音がもう一発。
雷鳴が轟き、水際においてあった疑似餌を粉々に吹き飛ばす。
予知で知らされたのと、一寸違わぬ狩りの仕方。
……破片を踏み散らしながら、飛竜が降り立つ。
知性があるかもわからぬ魔物と言えど、様子がおかしいことには流石に気付く。
これは餌じゃない。
ならばこれは何だ。なんでこんなものがこんなところにある。
他に何がある。
他に何がいる。
縦に割れた瞳孔が、油断なく周囲を見渡す。
……ほどなくして、俯瞰する巨体が猟兵達の姿を認めた。
しかし、猟兵達の動きは早かった。
勇躍、正面に躍り出る者。
彼らを囮に、また別の物陰に身を飛び込ませる者。
後続への連絡にキャンプへと向かう者。
行動は様々だ。だが、逃走と言う選択肢はない。
天を裂く咆哮に紛れ、上空で破裂音と共に、白い煙が次々と上がっていく。
戦いの幕は上がった。
さぁ、猟兵達よ。狩りの時間だ。
ティオレンシア・シーディア
●飛竜の知恵があるし、単発の遠距離攻撃じゃあ躱されておしまい、になりそうねぇ。
攻撃はどれも急降下が起点になってるみたいだし、ここはちょっと危険だけどカウンター狙おうかしらぁ。
援護射撃を兼ねた牽制で注意を惹いて、攻撃の瞬間にカウンターで封殺(シールド)を叩き込むわぁ。
クイックドロウなら予測もしにくいだろうし、ファニングの2連射(2回攻撃)も乗せればそれなりに効く…と、いいわねぇ。
(アドリブ掛け合い絡み大歓迎)
ポケッティ・パフカニアン
ついに出たわね、巨人(※人間)よりもデカいデカブツ!
ふふん、デカけりゃ強いってワケじゃないって事、思い知らせてやろうじゃないの!
狙うは十八番、時刻む怪盗!
その為には近づく必要があるんだけどー…羽があるとかズルいんじゃない?
まず近づく時は、正面から近づく!
なんでって、こちとらミニマムよ?衝撃波出されちゃ近づけないからね、ほんとに。
だからこそ正面から。回避か爪か、どっちかを狙わせるの。
爪の有効射程に入ったら、今度は正面から逃げる!
あの図体よ?あたしに周りをちょろちょろされて、爪で狙えるワケないでしょ?小豆摘みみたいなもんじゃない?
あとは吹っ飛ばされるより先に触れば、あたしの勝ちよ!あたし的にはね!
白鳥・深菜
……大物の気配がして来てみれば、いやはや結構な獲物のようで。
恐らく相手の本領は空中戦。戦いの最中でも、隙あらば飛び立とうとするのでしょうか。
ならば私は敢えて真正面から、素早く空中戦に挑みましょう。
ユーベルコードを使い空を駆け、相手の機動力を落とす為に翼を執拗に狙って攻撃を繰り出していきましょう。
相手の爪を、牙を。武器を折る為の一手となる事が私の役割と存じました。
「貴方も空にある覇者であるなら、下ばかり見ない事ですよ。高いところにあっても、いつ上を取ってくる輩が襲ってくるか分かったものじゃないですからね!」
赤星・緋色
へいへーい、やっと出てきたねYバーン
バーンって燃えるって意味だけどYって何だろうね!
ここに来るまで大変だったし、みんながんばって狩猟していこ!
雷っぽいなんやかんやを攻撃に使うみたいだね
用意周到な私は電撃に耐性がある防具を着てきたよ。えらい!
実際に試したことないから防げるのか分からないけど
保険的な感じだよね
いくよ、ガジェットショータイム!
はい、今回ご紹介する商品は魔道蒸気で駆動するスピアガン!
魔道蒸気で撃ちだした槍でぷすぷす刺していくよ
相手は回避重視っぽいビルドだし、こっちも技能のフェイントを使って攪乱しながらの命中を狙うよ
相手は空中から攻撃してくるし、技能の見切りを使って上手く回避したいかな
●空の王を撃墜せよ
飛び出してくる猟兵達を認めた飛竜は一鳴きすると、巨大な翼を広げ、再び大地を蹴る。
その目はしっかりと猟兵達を見据えている。逃げではない、無視でもない。
それは、攻撃態勢への飛翔だ。
「やっぱり、本領は空中戦、って事かしら……」
ティオレンシアが呟く。
飛竜にどの程度の知能があるかは知らないが、少なくとも生きる上での知恵はある。
奴は知っているのだ。自分の取るべき戦い方を。どうやって獲物を狩ればいいのかを。
空の相手には近距離攻撃は届かない。遠距離攻撃で狙うにしても、闇雲に攻撃するだけでは避けられる。
「ちょっと危険だけど……」
それでもティオレンシアは飛竜に発砲する。
所詮は拳銃。いくら狙撃の心得があろうと、空中を飛び回る相手にそうそう当たるものではない。
だが、当たらなくてもよいのだ。こちらに気付かせればいい。相手は私だと思わせればいい。だから、自ら前に出て、撃つ。
かくしてその試みは成功した。飛竜はティオレンシアを最初のターゲットに定めたらしい。
放たれる弾丸の間隙を縫い、急降下。掠めていく弾丸。彼我の距離は見る見るうちに狭まっていき……。
今にもその爪がティオレンシアを抉ろうかというまさにその時、彼女の銃が再度、火を吹く。
ダダンッ!!と、立て続けの二射。比較的脆いであろう腹部に、銃創を刻む。
確かな有効打。だが、当然ながらまだ致命傷には遠い。勢いを殺せない。
ティオレンシアとてそれは百も承知、交錯の瞬間に横に跳ぶも、爪そのものは躱せてもその『圧』はもろに受けることとなった。
風圧で姿勢が崩れ、体勢を立て直せない。
飛竜は着地ざまに地面を抉りながら、ティオレンシアに向き直ってその大口を開け……。
「……ッ!」
閃光が走る。轟音が響く。眩んだ目を思わず閉じる。
だが、衝撃は来ない。
何が起きた、と彼女が目を開けてみれば……。
「へいへーい、甘いよYバーン!バーンって燃えるって意味だけどYって何だろうね!」
それともYじゃなくて一人称のワイか!お前燃えてんのか雷属性の癖に!
そんな、『お前何も考えずにしゃべってるだろ』と突っ込みたくなるようなマシンガントークを放つ緋色の後ろ姿だった。
「やー、私えらい!ちゃんと電撃耐性つきの防具着てきてよかったね!ホントは保険のつもりだったんだけど!」
実際、ダメージはゼロではない。
だが、防御姿勢に入ったときにその耐性の有無が明暗を分けた。まだ十二分に動ける。
手にするは蒸気駆動式の大型槍。ティオレンシアにウィンク一つ投げてみせて、緋色は機械槍をぶんと一振りし、飛竜に立ち向かっていく。
……が。
「あー!?こら逃げるなー!?」
突き入れ、穂先をいざ射出と思ったその矢先、飛竜が飛んだ。
いくら穂先に射出機構を積んであると言っても、警戒している相手に考え無しに命中弾を出すのは難しい。
「今の攻撃で、慎重になっちゃったかしらねぇ」
「むー…じゃあなかなか降りてこないかなぁ、アレ」
頭上で旋回を始めた飛竜を見上げながら、二人が顔を見合わせていると。
「ならば、空中戦に挑みましょう」
「ふふん、デカけりゃ強いってワケじゃないって事、思い知らせてやろうじゃないの!」
飛び立つ人影が大小ひとつずつ。
白梟の翼を持つキマイラと、光の翼を煌めかせるフェアリー。
深菜とポケッティの二人だ。
迎撃のブレスをバレルロールで躱し、飛竜を猛追する二人。
「貴方も空にある覇者であるなら、下ばかり見ない事ですよ。高いところにあっても、いつ上を取ってくる輩が襲ってくるか分かったものじゃないですからね!」
空中における高い機動性。危険と見るやすぐに退避する狡猾さ。
ならば、相手の爪を、牙を。武器を折る為の一手となる事。即ち、機動性を殺す事が自分の役割だと判じた深菜。
狙うは翼。レイピアを片手に、飛翔する。
伸びる首、牙の一撃を掻い潜り、翼骨、翼膜目掛けて刃先を突き入れに行く。
されど、飛竜とて馬鹿ではない。そう時間のたたないうちに深菜の狙いが翼であることにやつも気づいたようだ。
深菜が回り込もうとするたびに身をよじり、牙や尾、足爪で振り払い、またその羽ばたき自体を持って振り払おうと空中を踊る。
傷は多少なりともつけた。だが決定打にはまだ遠い。
「とゆーかちょっとー!飛竜が激しく動くせいで近づけないんですけどー!!」
埒が明かず一度距離を取った深菜に、ポケッティがわめく。
そりゃそうだ。通常の人間でさえその羽ばたきの風圧は脅威なのに、フェアリーの身では攻撃でなくともそれだけで吹き飛ばされかねない。
ぐるぐる回られたらもう接近は不可能だ。
「良い手があるの。その為には近づく必要があるんだけどー……ちょっと手伝ってもらえる?」
「近づくだけでいいんですか?」
深菜の問いに頷いてみせるポケッティ。こそこそと耳打ちを少々したのち。
「……わかりました。では行きますよ!」
「おっけ!」
再突入。今度は翼を狙いに回り込むなどしない。真正面からだ。この方向からならば、両翼の風圧を受けることは無い。
二人の接近に対し、飛竜は大きく身を反らせて足爪の一撃を振りに行くが。
「そんな図体であたしを狙えるわけないでしょ!小豆摘みみたいなもんじゃない!」
ポケッティは指の隙間を器用に抜けて。ポケッティをそこまで送り届けるために攻撃を誘発させに行った深菜はそもそも近づく必要はない。離脱するだけだ。
そして……。
「これであたしの勝ちよ!あたし的にはね!」
ポケッティの小さな手が、飛竜の腹に触れた。
その瞬間。飛竜が止まった。
攻撃が。
嘶きが。
羽ばたきが。
竜のすべてが止まった。
『時刻む怪盗』。相手の『時間』を少しだけ盗むという、ポケッティの十八番。
盗む時間は多少だけとは言え、空中で動きを止めることの重大さは言うまでもない。
ぐらり。置物のようになった飛竜が傾ぎ、地面へと落ちていく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
エル・クーゴー
【ワイルドハント】で行動
●真の姿
アームドフォートフル展開
パない数の銃口・砲口を孔雀の羽の如く展開
我こそは嵐の王・ワイルドハント
従える嵐は即ち質量弾の乱射也
『遠距離戦闘担当、躯体番号L-95』
『ワイルドハントを開始します』
●SPD
布陣箇所は白斑に追従
白斑に先攻し敵へ仕掛ける
UC+「一斉発射」で敵へ遠距離からひたすら火線を伸ばす
そこに「時間稼ぎ」併用
相手の空中機動傾向を「学習力」込でリアルタイムで絞込み、他飛び道具使いが命中を期し易いよう敵を追い込む心算
積極的に命中を期すよりむしろウザがらせる狙いの射撃戦
敵が己をウザがって接近して来たなら御の字
遠距離戦担当の己はここで脇に退避
以降は白斑に対処を依存
リゥ・ズゥ
リゥ・ズゥは強い。リゥ・ズゥは竜にも、負けない。
お前が見下ろす先に、リゥ・ズゥは、居ない。
リゥ・ズゥは、お前の後ろに。
お前のイノチに届く場所に、居る、ぞ。
リゥ・ズゥは、お前を捕まえる。
お前を襲うもの、リゥ・ズゥだけではない。
さあ、堕ちろ。
(SPDで勝負を挑みます。敵が予測するより早く、不定形の身体を活かし視界の外から伸縮する身体で背に取り付きます。
背後を取られる等思いもよらない竜は驚き大きな隙を晒すでしょう。
そこへ真の姿で強化された「捨て身の一撃2」「衝撃波2」「2回攻撃」を併せ畳み掛ければ空の王者もきっと墜ちる筈。
地上に落ちれば、仲間達と更に畳み掛け確実に竜を仕留めることが出来るでしょう。)
リダン・ムグルエギ
戦闘中も物陰から録画継続
射撃戦からの地対空格闘戦→空中戦のスペクタクル!
やっぱり、こういうのは生で観戦が一番楽しいわ
…あれ?
この子…下への攻撃手段しか、なくない?
…!(ロクでも無い事を思いついたときの顔で
そうよね
キマイラフューチャーの格言にもあるわ
「ハメが出来るボスはハメなきゃ失礼
「制空権あるボスに画面内の高さで戦うのは甘え
って
みんなー!
ジャンプしてみなーい?
初志貫徹のレプリカクラフトで
逃げ回りながらトランポリンを大量設置
ワイバーン相手に制空権をもぎ取る手伝いをするわ
「これは…次にトランポリンブームが到来するわねっ
どんな時でもスマホは手放さず自分は戦わない
最後まで
遊びに来ている、というスタンス
東郷・三笠
でかいな
まぁ、これだけデカければ多少狙いが甘くともなんとかなろう
さて、諸君
飛竜狩りといこう!
なるべく地面に引きつけ跳躍してワイバーンの頭上を取り
殺気を叩きつけながらクイックドロウを使って熱線銃の乱射を浴びせる
可能なら高所から跳躍したり
跳躍の際、仲間に協力してもらう
常に味方の援護を受けられるよう立ち回る
技能の空中戦1や一斉発射1、零距離射撃1を用いて柔軟に闘う
相手を注意深く観察し攻撃の予兆がわかったら皆に知らせる
蜂の巣にしてくれるわ!
アドリブで他の人と絡めるの歓迎
●追い込み
今にもその巨体が地面にぶつかるかというその時、飛竜の時は動き出す。
気付いたときには落ちていて、地面すれすれだった時の心境とはいかがなものなのだろうか。
少なくともジタバタと慌てた様子で姿勢を立て直す姿は、見るもの次第では愛嬌も感じたかもしれない。
……だが、奴は倒すべき敵であり、今は狩猟中。
猟兵達の脳裏をよぎるのは和みの感情などではなく、また飛ばれるやもという危惧のみだ。
低空にいるうちに攻撃を加えようと猟兵達が駆けだすよりも早く。いつの間にか『それ』は『そこ』にいた。
「リゥ・ズゥは強い。リゥ・ズゥは竜にも、負けない」
だが、お前が見下ろす先に、リゥ・ズゥは、居ない。
リゥ・ズゥは、お前の後ろに。
「お前のイノチに届く場所に、居る、ぞ」
その背中に立つ漆黒の姿は、まるでそのものの運命を示す死神の如く。
あるいはこの戦いを見届ける戦神の如く。
「さあ、堕ちろ」
その斧のような腕が降り降ろされた先は、翼。先の空中戦で傷つき、しかし飛行能力はいまだ失われていなかったそこへ。
鱗が砕ける音、翼膜を引き裂く音が誰の耳にもはっきり聞こえた。
耳をつんざくような飛竜の悲鳴が響き渡り、音を立ててその巨体が墜落する。
リゥ・ズゥもさすがにこの状況で竜の背に立っていることはできず、投げ出され……。
……ぽよん、と。バウンドボディを発動していたわけでもないのに、その身体が跳ねた。
「なんだ、これ」
「トランポリンよ、知らない?」
「いや、知ってるが」
キョトンとするリゥ・ズゥにドヤ顔でサムズアップしたのは、他でもないリダンのねーさん。
周囲を見やれば、いつの間に設置したのか転々とトランポリンが地面にばら撒かれている。
「空中戦やってる間に、レプリカクラフトでちょいちょいっと」
「何でもありだなレプリカクラフト……」
何の悪気も無しにそんなことを言うリダンに、傍らに駆け寄ってきた三笠がため息をつく。
リゥ・ズゥが追いついてきたのだから当然のように彼女も参戦していた。
「キマイラフューチャーの格言にもあるわ。『ハメが出来るボスはハメなきゃ失礼』『制空権あるボスに画面内の高さで戦うのは甘え』って」
「聞いたことも無いぞそんなの……」
三笠がスペースノイドだからなのか本当にリダンのでっち上げなのかは知らないが。
ともあれ、飛竜から高い飛行能力が失われた今、その言うことにも一理はある。
「せっかくだ、利用させてもらおう」
「はいはい、頑張ってねー♪」
次にトランポリンブームが到来するわねっ。
自分の仕事はこれで終わりかとでもいうようにスマホ片手に動画撮影を再開するリダン。本当に彼女最後までこのスタンス貫きやがった。
そんな彼女を背に、三笠が走る。
「流石にでかい分タフだな……だが、これだけデカければ多少狙いが甘くともなんとかなろう……!」
さぁ、飛竜狩りと行こう。
ニヤリと強気な笑みを浮かべ、トランポリン目掛け、跳ぶ。
予想通り、飛竜の首は自分より高所を見るのにはあまり向いていない。
猟兵の身体能力に三笠の空中戦技術が加わり、背中に飛び乗って至近距離からブラスターの射撃を叩き込んでいく。
飛竜が呻き身を捩らせれば、背中から身を躍らせて飛び退きざまにさらに連続射撃。
「流石に背中の甲殻は硬いか……!」
着地し、ブラスターのエネルギーパックを交換しながら三笠が唸る。
だが、硬いとはいえあの反応を見る限りダメージはある。ならば。
「倒れるまで撃つだけだ。さぁ、蜂の巣にしてくれるわ……!」
「了解しました。全兵装オープン、目標ロック。射線上からの退避を勧告します」
その声は、全く別の方向からだった。
三笠がそこに視線を向ければ、そこにはありとあらゆる射撃兵装をまるで孔雀の羽根のように広げたエル・クーゴーの姿がある。
「……よし!」
誰が見てもその意図は明らかだった。故に三笠の行動は早い。
エルとは直角になるような方向で、飛竜から全速力で距離を取る。その際に後ろ手にブラスターで牽制射撃を撃ち込みながら。
「退避完了確認。遠距離戦闘担当、躯体番号L-95……」
ワイルドハントを開始します。
三笠に注意が向いていた飛竜の横っ面に、砲弾が、機関銃が、ミサイルが、次々と叩き込まれる。
我こそは嵐の王・ワイルドハント。
従える嵐は即ち質量弾の乱射也。
その大嵐はいかに飛竜と言えど、ただの通り雨と看過できるものではない。
撃つ。撃つ。撃つ。
撃って。撃って。撃ちまくる。
身を捩らせ、苦悶の声をあげる飛竜はそれでも、まだ倒れない。
目障りな、鬱陶しい嵐の主を討たんと、その双眸にエルを捉え。地面を蹴る。
弾丸の嵐の中を真っ向から突き進む。
それでもエルはその場で弾を打ち続け、飛竜はその中を走る。
……カカカカカカッ。
「……!」
そんな中で、嵐が唐突に止んだ。ミサイルポッドにはただの穴のみが残り、砲口は乾いた音を立て、機関銃はただ空転を続けるだけ。
弾切れ。
エルの身体に、飛竜の大顎が迫る。
流れ弾を警戒していたせいで、誰もカバーに入りようがない。
絶体絶命。誰の目にも明らかだったことだろう。
「本機の役割は果たしました。後は任せます」
それは、無事で済むまいという覚悟故の一言であったか。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
白斑・物九郎
【ワイルドハント】で行動
●真の姿
褐色肌が肌色に
黒8:白2比率のマダラの頭髪が白黒マダラに反転
「狩りの時間ですわな
近接戦闘担当、白斑物九郎
ワイルドハントの始まりっスよ」
●POW
比較的背の高い木が近場にあればその付近に布陣
エルに後続
俺めが狙い澄ますのは、エルがさんざん飛び道具で突っ掛けた後の相手からの接近時
ダイブの機先がこっちに向いたと見次第、腹ァ決めますでよ
「捨て身の一撃」の所存で、爪の一撃へむしろ突貫
ワイバーンの首根ッこへ「グラップル」で取っ付いてやりまさ
その首ガッツリ極めに掛かりながら、締めるのに使う腕の内側をUCでライオンの頭部に変化
このままライオンの咬合力で竜の首食い千切ってやりまさァ!
リィン・エンペリウス
やっと会えたね、飛竜。
なかなか勇ましい姿でお友達になりたい気持ちもあるけど・・・ボクは君を狩りに来たんだ。お互い遠慮なしでいこうか。
ボクはライオンライドでライオンくんを呼び出そうか。
●猟兵の牙は飛竜を穿つ
……否。それは、『彼』が控えている故の言葉だった。
「おけおけ。……良い位置においでなすったァ!」
エルの傍らに生えていた、数少ない樹木。
それが飛竜の身体に薙ぎ倒されると同時、そこから飛び出す影があった。
白黒ブチ模様の頭髪から生える猫耳の甚平姿。
……ワイルドハント近接戦闘担当、白斑物九郎。
勇躍した彼は飛竜の首根っこに飛びかかり、乗る。
唐突な首への異物に飛竜はバランスを崩し、つんのめり、地面に倒れ伏す。
立ち上がろうとする飛竜。だが、それすらも叶わない。
何故か?
「こうなってもまだ頑張って、勇ましい姿でお友達になりたい気持ちもあるけど……」
ボクは君を狩りに来たんだ。遠慮なしでいこうか。
足元に喰らい付く、黄金のライオン。そしてそれに騎乗するのはリィン・エンペリウス。
立ち上がらせるものか、そのまま倒れていろと、渾身の力で飛竜に食らいつき、縫い付ける。
「みんな!今だよ!!」
リィンの叫びを聞き逃す猟兵は、誰一人としていない。
槍が。
剣が。
銃弾が。
光線が。
魔法が。
一つ終わったらまた一つ。絶え間なく。それぞれが渾身の一撃を以て、飛竜の身体へと叩きつけられる。
如何に強固な飛竜の甲殻を以てしても、それらをいつまでも耐え凌げる道理はない。
鱗が砕け、肉が裂け、鮮血が舞う。
足元を食らいつかれ、のたうち回ることすらも叶わない。
そして、首では。
「どうですかよ……これが俺めの……んニャ、俺めらの『ガチ』でさァ……!」
ギリギリと、物九郎が飛竜の首を締め上げる。常人であれば飛竜の首を〆るなんて真似は常識的に考えて不可能だ。
だが、猟兵は違う。その身に宿した、埒外の真の力を以て。
その両腕は既に、獅子の大顎と同義である。
「そっ首ィ!食い千切ってやりまさァ!!」
ギリ、ギリと。キマイラの力で変異した両腕の『牙』が食い込んでいく。
そしてついに。その牙が、頸動脈を、穿つ。
もはや悲鳴を上げることも無い。
体中から血を噴出させて、空の王が。飛竜が、ゆっくりと身体を崩していく。
………ドゥ。
やがて、地響きと共にその動きが止まり、静寂がその場を支配する。
そう、静寂だ。何も動くものはない。
動かない。倒した。
その実感がさざ波のように広がって、やがて一つの大きな歓声となるのに、そう時間はかからなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵