黄色いゼラニウムの咲く場所へ
#ヒーローズアース
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●逢着
それまで響いていた機械音が、耳鳴りを残して沈黙する。
「……完成、だ……」
出来上がったばかりの”それ”を前に、”彼”は呟いた。
「これがあれば……あれが解決できる、はず……」
――おめでとう。と誰かが言った。
「まずは報告して出掛ける準備をしよう」
――”それ”は私のコレクションに相応しいから。
「早く効果を試したいから」
●予知
「皆様、ようこそおいでくださいました」
真白のローブに身を包んだ涅・槃(空に踊る人工の舞姫・f14595)が皆を出迎える。
「早速ですが此度の事件について説明致しますわね」
ヒーローズアースのよくある町とその町を守るヒーロー。そのヒーローのために協力を惜しまない一般人。そしてその協力者を狙うヴィラン。ごく普通の日常。
「ですが、オブリビオンが配下を連れてやってくることでその均衡は崩れますの」
協力者の一人である発明家が作り出した物に、オブリビオンが目を付けたらしい。
「周辺のヴィランたちを何らかの手段で取り込み、ヒーローの許へと急ぐ”彼”を襲うつもりですわ」
ヒーローズアースの地図と、発明家の研究所からヒーローの拠点までの道筋が表示される。その間にいくつかの×がつけられた。
「こちらは”ヴィランによる”襲撃予想となります。必要以上にダメージを与えずに捕縛して下さいませ」
注意事項はヴィランの生け捕り。捕縛した後はどうなるか知らないが、とりあえず放置しておけばいいらしい。
「ヴィラン襲撃作戦が失敗した後はオブリビオンが現れる次第ですの」
ヒーローの拠点前に新たな×が現れる。あとはいつものように取り巻きを倒してボスをぶん殴ればいいだろう。後方にゆらりとヒーローズアースの空が現れる。夕刻迫る陽の傾き始めた色彩。
「では、よろしくお願い致しますわ」
人々の行き交う道路の向こう、少し変った形の建物が見える。さあ行こう。”彼”が出掛けてしまう前に。
宮松 標
初めまして、心はいつでも新規登録(三ヶ月目)、宮松 標です。少々難儀しましたがおヒップシナリオをお届け致します。
さて、今回はコメディになりそうな予感ですね?
第一章:一名様一ヶ所、襲撃予想地点でヴィランの足止め&捕縛をお願い致します。
第二章:集団オブリビオン戦でいよいよ猟兵の本格的出番です。
第三章:パワーアップしたヒーローと共に、黒幕を倒して下さい。
第一章で登場するヴィランは一応こちらで生成しますが、モチーフやキーワードを入れておくと参考にするかもしれません。
ヴィランたちは基本的に説得(猟兵圧力)で大丈夫です。
最後に、各章ごとの序文に詳細な状況を提示する場合もございますので、読んでからのプレイング送信を推奨します。
よろしくお願い致します。
第1章 冒険
『重要アイテムを守れ!』
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POW : 肉体や気合でどうにかする
SPD : 速さや技量でどうにかする
WIZ : 魔力や賢さでどうにかする
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「よし、もう行かなきゃ」
ヒーローへ訪問の連絡を入れ、出掛ける準備を整えた”少年”が立ち上がる。スレンダーな肢体を包むラフな服装。ショート丈のスプリングコートをひっかける。斜めがけのボトルホルダー。ワンショルダーバッグ。それから、大事そうに抱えたスポーツバッグ。少しくたびれたスニーカーに足を突っ込んで。
ガチャリ
――さあ”狩り”の時間だ。ヴィランたちよ、私のもとへ持っておいで。
花狩・アシエト
嫌な予感しかしない……あいつの予感が…!
ごほん、まあいいや。気にせず行こうか
重要アイテムってなんだろうな…?
とりあえず守るわ
ヴィランか、こう…女の子で清楚で凛としてる感じのヴィランだとやる気が出るかな!
女の子を殴ったり蹴ったりするのは気がひけるけど、ヴィランなら仕方ない
顔は避けてボディを狙うぜ
「二回攻撃」で容赦なく!
「第六感」で素早く避ける!
「第六感」で重要アイテムが狙われそうになったらそっちに守りにいくぜ
殴り倒したら捕縛して転がしておこう
ん〜
重要アイテム…気になるから調べてみようかな
守るものが何かわからねーとやる気がでないしな!
(嫌な予感しかしない……)
胸中に渦巻くモノを閉じ込め、研究所へ向かう黒いローブを纏う男性。風にふわりと揺れる灰色の髪は激情を思わせるように逆立つ。鋭い眼光に潜む光は――。
研究所の扉が開き、キャップを目深に被った”少年”が姿を見せる。
「よう!」
「ひぁっ!?」
花狩・アシエト(アジ・ダハーカ・f16490)が声をかけると、”少年”はまるで女の子のような裏返った悲鳴をあげた。
「オブリビオンがヴィランにキミを襲わせて、発明品を奪うつもりなんだって」
「……オブリビオンが?」
しばらく口をパクパクさせていた”少年”が咳払いの後に怪訝な顔で繰り返す。
「ああ、そいつらからキミとその発明品を守るために来たんだ」
そう説明する間、アシエトの視線は腕の中のバッグに注がれていた。
「なあ、もしかしてその中に入ってるのか?ちょーっとだけ見せてもらえない?」
今回の最重要アイテムである発明品が気になるようだが”少年”は余計きつくバッグを抱え込んでしまう。
「その隙を狙われると困るのでダメです」
キツく拒否されてアシエトはガックリと項垂れた。気を取り直して”少年”は歩き出す。アシエトが慌てて後を追う。すぐそこの角が最初の襲撃予想地点だから。
「隙が出来ないのならば、力づくで頂きましょう」
早速ヴィランのお出ましだ。大正ロマンを彷彿とさせる袴姿。手には薙刀のような武器。フルフェイスメット状の仮面で頭部を全て隠している。
「おっと、ここは俺が相手だ」
素早くアシエトが二人の間に割り込んだ。
「そこを退きなさい!」
アシエトに向かって繰り出された薙刀を素早く躱すと、刃ではないところを掴んで動きを封じた。
「女の子を殴ったり蹴ったりするのは気がひけるけど、ヴィランなら仕方ないな!」
さっきまでの落胆が嘘のように猟兵としてヒーローとしての使命に満ち溢れている。
「ほら、キミは先に行っていいぜ」
「わかった、気を付けてね!」
”少年”は気遣わしげにアシエトを見上げ、二人の横をすり抜けて走り出す。それを忌々しげに見送るヴィラン。
「余所見とは余裕だな」
懐に踏み込んでボディに拳を叩き込む。ドドッと素早い二連打。華奢な身体は簡単に吹き飛んだ。その隙を見逃さず、ヴィランをロープで縛り上げる。
「これでよし、と」
通行の邪魔にならない場所へ移動させ、”少年”の走って行った先へと視線を投げた。雑踏の向こうに消えた背中はもう見えない。逡巡の後、アシエトは歩き出す。胸中の不安を思い出しながら、”少年”の向かったヒーローの拠点へ。
成功
🔵🔵🔴
新山・陽
「大切なものが手元にないのは、不安なものです」
私はユーベルコード「スティール」を使い、ヴィランに奪われかけた何かをさっと盗み返す。
「はい、どうぞ。あなたのものです」
”少年”に先を行くようやんわりと促し、別れた。
重要アイテムが何かは知らないが、持ち主が笑顔で何よりだ。
「さて、と」
ヴィランを遮るように立ち、薄く口角を上げ、笑いに耐えているような表情でヴィランを迎える。易々と獲物をとりあげられた事を嘲ったような表情は、無言ながらよくできた挑発だった。
ヴィランの苛立ちがこちらに向いて、気が逸れたならいい「時間稼ぎ」になる。
「まだ何か?」
私は、指先に息を吹きかけ、ヴィランに問いかけた。
雑踏の中を走る”少年”が曲がり角に差し掛かる。その向こうから大柄な男が飛び出した。否、わざとタックルを仕掛けてきたのだ。予期せぬ衝撃に、片手でキャップを押さえながらなんとか”少年”は踏み留まる。バランスを崩しガードが緩んだ隙を突いて、抱えていたスポーツバッグを相手がむしり取った。
「あっ!?」
「っははは!この中に噂のアイテムが入ってるってか!」
スポーツバッグを高々と掲げ”少年”を嘲笑する男。目元を覆うマスクを着けたヴィラン。何事かと道行く人々が足を止める。
「か、返して!」
ニヤニヤと”少年”を見下ろし、悪趣味極まりないヴィランの視界の端で、黒い色彩が揺らめいた。
「大切なものが手元にないのは、不安なものです」
ヴィランの背後で聞こえた声は、新山・陽(悪と波瀾のお気に入り・f17541)だ。整った容姿に、オーディエンスの視線が吸い寄せられる。
「はい、どうぞ。あなたのものです」
そう”少年”にスポーツバッグを差し出し、ジェスチャーで先へ急ぐ事を促した。いつの間にヴィランからバッグを取り返したのか、誰もわからなかった。その手際、鮮やかにして静謐。
「あ……ありがとうございますっ!」
頬を紅潮させた”少年”は笑顔でバッグを受け取り、ぺこりと一礼して駆け出す。重要アイテムが何かは知らないが、持ち主が笑顔で何よりだと新山は見送った。それと同時に見物人の隙間を縫って走る影。
「さて、と」
背後でバッグを奪い返された事実に愕然と硬直していたヴィランへ向き直る。顔こそ見上げているが、ヴィランの失態を嘲る笑いを堪え僅かに口角を上げた。無言ながら完璧な挑発。マスクを着けた顔がみるみる憤怒の形相へと変貌した。少し広めの額に浮き出た血管が怒りの度合いを物語る。
「……こンのぉ……小娘の分際でっ!」
筋肉を誇示するように振り上げた腕を新山目掛けて真っ直ぐに突き下ろしてくるが、するりと脇をすり抜けて躱した。拳を地面にめり込ませているヴィランの後姿は隙だらけである。その後頭部から垂れる細長い布を引っ張ってみた。
「ああーっ!?」
ヴィランの悲鳴と共にマスクがすぽんと外れる。両手で顔を覆い崩れ落ちるヴィラン。そこここでくすくすと笑いのさざ波が走った。
「か……返してください……それ……」
別の意味で耳まで赤く染ったヴィランが、小さな声で懇願してくる。
「……大人しく……投降しますからぁ……」
徐々に涙声になるヴィランに新山は少し考えた。
そして残されたのは、遠巻きに見守る一般市民たちと大人しく座りこんでいるヴィラン。新山は律儀にマスクを着けてあげる形で返していた。顔を覆った両手と電柱を巻き込んで。
大成功
🔵🔵🔵
龍ヶ崎・紅音
アドリブ歓迎
【SPD】
ヴィランが現れたら、上からヴィランと"少年"との間に現れて、焔竜形態のホムラと共にヴィランの攻撃を【気合い】で避けながら、素手で無力化するよ
まぁわたしの【怪力】なら、素早く懐に飛び込んで【力溜め】の【捨て身の一撃】(パンチ)でヴィランを倒せちゃうけど、殺さないように手加減しないとね
無力化したヴィランは縛って通報して後の人に任せるよ
ところで、それどんなヒーローに届けるのかな?少し、気になる…。
※ヴィラン設定
数人の戦闘員を従えた二足歩行恐竜っぽい見た目(リザードマンとも言える)の怪人、怪人の語尾が「~ザウルス」
巨大な斧や尻尾を使って、豪快に振り回すことを得意としている
「げへへっ!アイツ、捕まってやがるザウルス!お陰でオレサマにもツキが回ってきたザウルス!」
人混みに紛れて”少年”を追跡する影。ヴィラン。フードとマントで身体を包んでいるが、隠しきれていない身体的特徴。マントの裾から覗く爬虫類の尻尾を揺らして追いかけている”少年”まで、あと少し。
「そのお宝、オレサマが頂くザウルス!」
「させないよっ!」
頭上から二人の間に舞い降りる艶やかな銀。寄り添う小竜。ヴィランと同じ爬虫類の尻尾。龍ヶ崎・紅音(天真爛漫竜娘・f08944)である。
「そこをどけザウルス!」
「お断りよ!」
二人の声に、後ろで”少年”が振り向いたがすぐに駆けていった。
「くそっ!お前達、出て来いザウルス!」
ヴィランの声の直後、紅音を取り囲むように一般戦闘員が五人現れる。ヴィランは勝ち誇ったようにニヤリと笑った。
「行くよ!ホムラ!」
「ゴォゥ!!」
紅音に呼応して小竜が巨大化する。およそ3m。人通りが少ないとはいえ、一般道では少々手狭に見える。ついでに一般戦闘員が一人巻き込まれたのか、そこら辺に転がっているが戦闘不能なだけのようだ。
「んぎゃぁぁぁぁ!巨大化とかずるいザウルスぅぅぅぅ!!」
叫んだ勢いでフードが取れ、ようやく全身が露になるヴィラン。その姿は二足歩行のトカゲのよう。種族的にはドラゴニアンか。
「えぇい!やるだけやってやるザウルス!」
自分を鼓舞してどこからか巨大な斧を取り出した。一般戦闘員たちに指示を飛ばす。
「お前達はそっちのドラゴンの足止めをしておけザウルス!」
一般戦闘員からしたらあまりにも理不尽な指示。ホムラも身体がぶつかっただけで気絶してしまう者に戸惑っているようだ。結局両者は戦闘しているフリで時間を潰すことにする。
「オレサマの斧の錆にしてくれるザウルス!」
巨大な斧を軽々と振り回し、一気に距離を詰めた。一文字に薙ぎ払われる斧を、タイミングを見切り気合で避ける。そこから尻尾での足払い。これも気合で飛び退ってクリア。
「私はこっちよ?」
回転に合わせて背後へと回りこみ、斧を持つ手を掴んで動きを封じる。ヴィランがどれだけ引っ張ろうと振り回そうと、びくともしない。やがてヴィランは戦意喪失して降参する。
「強者には従うのがオレサマの信条でザウルス……」
そう言って大人しくお縄についたヴィランよりも、届け先のヒーローの方が気になる紅音。通報を受けて急行したヴィラン回収ヒーローに後を任せて拠点へと向かうことにした。
成功
🔵🔵🔴
ニノマエ・アラタ
俺はただの通行人として通りを歩く。
少年には声をかけず、自然な流れで先を急がせる。
…そして俺は。
彼を襲撃しようとしているヴィランの足止めを。
一般人にも見えるが、目標を追う視線、動き、殺気、そして表情。
微妙な差異を見逃さない。
俺と似たタイプのヴィラン、かな?
…っと、そっちへは行けないぜ。
相手の動揺を誘い、僅かな動きの乱れに乗じてUC発動。
友人のように「よ、久しぶり」と肩に腕を回し捕縛。
「誰に何を頼まれたんだ?
少年襲撃が成功したらどこへ行くつもりだった?」
小声で尋ねながらも、肩をがっしり掴んで離さない。
「報酬額が低いぜ、あんまケチな仕事して自分を安く売るな」
と、一言。気を緩ませて情報を得ようとする。
ビルの隙間から西日が照りつけ、昼の何倍もの影が辺りを覆う。住宅街に響く子どもの声。学生の試験を憂う嘆き。犬の連絡網。庭先を彩る様々な花の芳香。
暗褐色の外套を纏うニノマエ・アラタ(三白眼・f17341)はその風景に違和感なく溶け込んでいた。襲撃予想地点へ差し掛かる。この先の時計店の角から”少年”が曲がってくるはずだ。辺りに不審者はいないか、素早く視線を走らせる。先ほどから留まっているのは、時計店のショーケースを覗き込んでいる人物くらい。果たしてヴィランはどこから襲撃してくるのか。
だいぶスピードが落ちた”少年”のカーブを描いた針路は、アラタの正面へと一直線に向かってきた。このままではぶつかると予想した”少年”に、半身を捻り道を譲る。手で先を示せば”少年”はペコリと頭を軽く下げて走り抜けた。
アラタは視界の端で”少年”の後に続こうと動く影を捉える。時計店の前にいた人物は一見何の変哲もない男性。しかし、僅かとはいえ漂う殺気、目標を見据える視線、引き締めた表情、足音を消す足の運び。どれを取っても尾行する者として失格である。
一般人相手ならともかく、ヒーローや猟兵ならば判別が可能なレベル。尾行を開始するタイミングすら、自分の正体をバラすような絶妙さ。もちろんアラタは見逃さない。一歩踏み出して相手の行く手を阻み、視線を絡ませた。余裕のあるアラタと違い、目を軽く見開いて動きを止める。
「よ、久しぶり」
ヴィランへ親しげな笑顔を向けると同時に外套の下で指を鳴らし、アラタは高速移動で近付いた。そのまま肩を組むように腕を回せば捕縛は完了だ。がっちりと掴んだ肩は若干震えている。ヴィランは眉根を寄せて睨み付けてくるが平然としているアラタ。
「……放せ」
「誰に何を頼まれたんだ?」
声を潜める。寸秒、二人の間に緊張が走った。ヴィランはハッキリと視線に敵意を篭める。
「依頼内容を洩らすバカがどこにいる」
「では質問を変えよう。報酬は幾らだ?」
そのくらいならと思ったのか、案外簡単に教えてくれた。ふっと笑ってみせる。
「報酬額が低いぜ、あんまケチな仕事して自分を安く売るな」
「なんだと?」
仕事を貶められたような不快感で顔を歪めた。どんな形であれ、ヴィランの心を動かした手ごたえを掴む。アラタはヴィランの倍近い、ヒーロー側から提示されている協力費の額を教え、寝返るように唆した。ぐらぐらと心揺れるヴィランの様子に、終局まであと一歩を悟る。
結局ヴィラン回収ヒーローの迎えが到着するまで、襲撃情報どころか身の上まで聞かされることとなった。
大成功
🔵🔵🔵
セシリア・サヴェージ
ヒーローと一般人の間で協力関係が結ばれているとは素晴らしいことですね。さぞ人々に愛されるヒーローなのでしょうね。少し、羨ましい気もしますが。
少年と接触して襲撃地点まで警護します。
道中何度も襲われて大変だったでしょう。発明品には指一本触れさせませんので、どうかご安心ください。
次の予想地点が襲撃の最後のチャンスとすればヴィランたちもなりふり構わず集団で襲ってくる可能性がありますね。
しかし、我が暗黒の力があれば恐れるに足りません。UC【闇の魔力】の【念動力】で全員締め上げて差し上げましょう。
少年を【優しく】見送ったあとにヴィランたちには【恐怖を与え】ながらオブリビオンについて尋問するとしましょうか。
鈴木・志乃
どの世界でもやることはかーわんないんだよなあ……
さ、早く行きな。急ぎすぎて転んだりしないでね、少年
……追手って貴方?【第六感】
(※ヴィランお任せします)
悪いけどそれなら容赦はしない
ヒーロー『ブラック』、宵闇を歩く者
さ、楽しもうか?
【第六感、見切り】で攻撃を回避
相手の攻撃を予測し鎖で【武器受け】
UCでヴィランを格好良く縛り上げる【パフォーマンス】
ちゃんと手加減はするよ
またどうしてこんなことしちゃったかなあ
並々ならぬ想いがあったんだろうけど
……よかったら話、聞かせてもらってもいい?
(失くした想いを【失せ物探しと優しさ】で、話聞きながら探そうか)
息を切らせた”少年”はバッグを抱えたまま足を止めた。一度止めた足は時間の経過とともに重さを増していく。いや、重量自体は増えていない。精神的な重さ。何かを警戒して辺りを見回す。目的地が近くとも、気を抜く訳にはいかない。既に何度も襲撃に遭遇した事とこの先に待ち受ける難関が疲労を弥増した。
「あの娘はまだか! ”あの方”がお見えになるぞ!」
「誰も戻ってこなくて情報が全くないんだ!」
「猟兵が絡んでるらしいぞ」
「くそっ! せっかくのチャンスだというのに!」
人通りの少ない路地と大通りが交差する角。ヴィランの集団が騒然としている。衆目を集めてはいるが、今のところ悪さをしている訳ではない。人々は遠巻きにするだけで関わらないよう、足早に通り過ぎていく。
路地へ入りたい”少年”はどうしたものかと離れたところから彼らの動きを見つめていた。それもまた人目を引くが、すぐに興味を失いそれぞれの日常へと帰る。”少年”の目的地は交差点から3軒目。強行突破するには少し遠い。
その”少年”に近付く黒スーツに黒の中折れ帽の男、いや女性だ。パフォーマー姿の鈴木・志乃(ライトニング・f12101)が声をかける。
「お待たせ。警護の依頼を受けてきたよ」
ニコリと微笑めば、ほっと息を吐いた”少年”の身体から緊張が抜けた。
「あ……ありがとうございます」
「ヴィランたちが散ったようです。今なら危険も少ないでしょう」
交差点を見張っていた金属鎧を纏う銀髪のセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)が振り返る。しかし、志乃の視線は別の場所から動かない。空気にピリッと緊張が走った。
「後ろは引き受けた」
「わかりました。ご武運を」
不安そうにバッグを一層抱え込む”少年”の背を志乃が軽く押す。
「さ、早く行きな。急ぎすぎて転んだりしないでね」
後ろを気にする”少年”をセシリアが先導する。道中、緊張を和らげるために言葉を重ねた。
「道中何度も襲われて大変だったでしょう」
発明品には指一本触れさせません、と請け負えば、見上げる”少年”の眼差しが信頼と尊敬を帯びる。めまぐるしく一転二転する状況で驚きと困惑にずっと見開かれたままだった。
「いたぞ!」
交差点に一歩踏み込んだ時、ヴィランの声が通りに響く。素早く【闇の魔力】を発動させ、そのヴィランを黙らせた。だが他のヴィランたちが集まってくるのは抑えられない。進行方向の邪魔者だけをまとめて見えない暗黒の波動で吹き飛ばす。
「走れば充分間に合います」
二人はヴィランの登場に一時停止した人の波を駆け抜けた。夕方の空は刻一刻と夜へ塗り替えられていく。一見雑居ビルと見紛うヒーローのアジトへの入り口を彩る黄色いゼラニウムが風に揺れていた。
「ここです。警護をありがとうございました」
灯りが落ちる扉の前で”少年”が一礼して別れを告げる。上階の窓が開き、初老の男性が顔を出した。
「ルーチェ! 無事だったか!」
”少年”の身を案じたセリフに本人が無言で手を振り返す。
「後はお任せください」
セシリアも優しく微笑んで、扉を開けるその背を見送った。少しの羨望を込めて。
感慨に耽る間もなくヴィランたちがセシリアを取り囲む。ざわりと銀の髪が風に逆巻いた。【闇の魔力】を放ち、集まったヴィランたちを締め上げていく。じわり、じわりと圧力を加えていくことで逃げられないよう少しずつ恐怖を与え、尋問を開始した。オブリビオンについて。
恐怖に煽られ口々に知っている情報を上げていく。総合すると『とにかく尻を執拗に撫で回す』『尻に関するアイテムを集めている』『最近見つけた美丈夫を囲い込んでいる』といったところだ。あと『尻を貶めたヤツがステッキで打ち据えられて死にかけたらしい』とか。
あまり有用な情報ではないように見えるが、きちんと精査すれば重要な情報が紛れていると判るだろう。あとはそれを活かせるかどうか。
二人がその場を離れた後。上手く隠れたつもりのヴィランに近付く志乃。いかにも三下でござい、といった風情の黒尽くめのヴィランスーツの人影。
「……追手って貴方?」
ビクリと身体を震わせて天を仰ぐ。言外の絶望。腹を括ったようにファイティングポーズで名乗りを上げる
「新米ヴィラン『ブーイオ・フォルツァ』、ルーチェ博士の発明品を頂きに参上!」
「ヒーロー『ブラック』、宵闇を歩く者。さ、楽しもうか?」
それを受けて志乃もヒーロー名で名乗った。戦闘の気配を察知した通行人が距離を取る。何人かが見守るように立ち止まった。
先に仕掛けたのはヴィラン。得物は扱いの難しいとされるトンファー。その動きは確かに武道を嗜む者。戦い慣れたヒーローや猟兵の相手には取るに足らない。志乃は相手の動きを全て見切り、鎖でいなす。
ヴィランが大きく体勢を崩したところに【ジャッジメント・チェイン】を発動して捕縛した。周囲の建造物を利用し、ヴィランを空中へ磔にする。光の鎖が辺りを茫と照らした。
「またどうしてこんなことしちゃったかなあ」
身動きの出来ないヴィランに語りかける。ヴィランは答えない。頤を上げ僅かに震えている。まるで泣いているように。
「……よかったら話、聞かせてもらってもいい?」
縛り上げたままだが地上へと下ろす。既に戦意は圧倒的な力の差を前に霧散しているのを感じ取ったから。ぽつりぽつりと零した言葉を丁寧に拾い集めて繋げていく。どうやら大切な人を人質にされているようだ。オブリビオンの目に留まってしまったが故の悲劇。
もしその大切な人をオブリビオンから取り返せれば、彼はヴィランを辞めてヒーローとなれるだろう。志乃は話を聞きながらそう思った。
それぞれの思惑を伴い猟兵たちが集合しつつある頃。交差点に奇妙で奇抜な乗り物が現れる。ペールオレンジの桃のような飾りがついた、コンテナトラックの風貌。
割と誰もが理解した。それが、オブリビオンの乗った移動型アジトだと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『オブリビオンソルジャー』
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POW : バトル・アクション
【準備しておいた集団での連携攻撃作戦】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD : デンジャラス・スローイング
【仲間達に全力で投げてもらう】事で【特攻モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : サポート・リクエスト
戦闘力のない【情報伝達用撮影ドローン】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【後方部隊から届く援助物資】によって武器や防具がパワーアップする。
イラスト:森乃ゴリラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「ヴィランの諸君! 進捗はいかがかね?」
静々と解放を始めたハッチが持ち上がりきるのを待たずに声が響いた。ヴィランたちが『あの方』と呼んだオブリビオンの声。猟兵たちの活躍で手下だったヴィランは捕縛されている。
フルオープンになったハッチの奥に黒幕の姿を見つけることが出来るだろう。不機嫌な顔の金髪碧眼、三つ揃いをキッチリと着こなした紳士。しかし左手は拘束された何者かの尻に伸ばされている。彼の許へ誰も集結しないと悟ると、次の指令を簡潔な一言で下した。
「殺れ」
瞬間、三人組がどこからともなく次々と現れる。その三人組たちもオブリビオンのようだ。このままでは一般人に被害がでてしまう。急ぎ撃破せよ、猟兵!
鈴木・志乃
殺れ、じゃねーよ
お前のせいでヴィランになったやつがいるんだぞ
許さんからな、絶対
UC発動
ドローンも救援物資も敵も
纏めて燃やすしかないな
荒いやり方だけど……
ごめんなあ、オブリビオン
望んで甦ったんじゃないだろうに
【歌唱】の【衝撃波】で理性的な判断もかき乱す【誘惑】
まだまだ祭りはこれからだ
【第六感】で攻撃のタイミングを【見切り】なんとかして【ダッシュ、スライディング】併用して回避しよう
こちらも光の鎖で【武器受け、カウンター】できないかやってみる
【オーラ防御】常時発動
【早業、投擲、念動力】で周囲の壊しても良い器物や砂利を巻き上げて
敵への目眩まし、及び【なぎ払い】要因として活用
「殺れ、じゃねーよ」
鈴木・志乃(ライトニング・f12101)はオブリビオンの言葉に怒りを覚え、一瞬で全身に力が満ちる。同時に青い感情が胸へ去来する。
志乃の前に立ち塞がる、一様に同じ服装を纏う三人一組の下位オブリビオン。ボスの都合で骸の海から呼び出され、役割を終えるまで与えられる仮初めの命。ボスが必要とすれば何度でも生まれ出でる。終わらぬ輪廻。
敵方のドローンが展開される。感傷的な心をそのままに、志乃は歌の波紋を広げる。理性を抑圧し本能を刺激する魅惑的な歌声を。その衝撃波を真正面から受けた一組目。体勢を崩しバラバラのタイミングで襲いかかってくる。
伸ばされた腕を紙一重でバックステップで躱してショート・ダッシュ。身体を大きく沈めてキックを回避、スライディングで股下を潜り抜ける。
その先で待ち受ける回し蹴りを、前膊部に巻いた光の鎖で受け止め、上へと撥ね上げた。後方で蹲っていた仲間を巻き込んで気を失ったようだ。移動拠点の方から別働隊のドローンが放たれた。二組目が近付いてくる。
「荒いやり方だけど……ごめんなあ」
志乃が僅かに俯き帽子で視界を遮ると、小さな光球が出現した。光はドローンへ、オブリビオンへ突き刺さる。直後、炸裂して光の花が咲き乱れた。ちろちろと花弁が小さく揺れ、まるで融けるように全てが燃えて尽きる。後には何も残らない。痕跡を残すことも許されぬ、悲しき存在。
コンテナの奥へ視線を向けると、更に三人組を喚び出していた。もしかしたら、たった今消滅して骸の海へと還ったヤツらかもしれない。人質を取ってヴィランへ突き落した事といい、他の命をなんだと思ってやがる――!
「許さんからな、絶対」
新しい三人組が両側から接近する。志乃を中心に風が巻き起こった。足元の僅かな砂利を舞い上げ、左手のオブリビオンを横殴りになぎ払う。右手側には誘惑を乗せた歌声を叩きつけた。身体をくの字に折って崩落ちる。
ボスの召喚速度を上回る速さで数を減らせば活路が開く。そう信じて。宵闇に沈む街を背に、オブリビオンへ手向ける大輪の光華が開いては骸の海へ還る。その腕に数多の徒花を抱いて。
大成功
🔵🔵🔵
花狩・アシエト
うへぇ
やっぱりあいつだった
思い出すぜ、遥か昔、尻を触られた時の悪寒を…!
まあとにかく目の前に立ちはだかるなら倒すだけだ!
ちょっと離れて素早く「先制攻撃」
「紅椿」に炎の「属性攻撃」を重ねて、「全力魔法」だ!
敵の攻撃は「右の」武器で「武器受け」でガードする
「第六感」も合わせて使っていく
近づいてきたら「鎧砕き」でガード崩し、一体ずつ攻撃だ
「二回攻撃」で戦う
やっぱり近接攻撃が一番だよなぁ!
お前らも尻触るのか?違ったらごめんな…ていうかむしろ触られるほうか(かわいそうな目)
あの世で成仏してくれ!
よぉし、次はセクハラクソ野郎だ!
響いた声に聞き覚えがあった。それは遥か昔の記憶。カチリと繋がった瞬間、花狩・アシエト(アジ・ダハーカ・f16490)は思い出してしまった。
「うへぇ」
ぞわぞわと粟立つ肌をさすり、喉と首の狭間で何かが詰まるのを感じる。逃げ出したいのは身体か心か。心臓がばくばくと早鐘を打ち、奥歯を噛み締めなければガチガチと音を立てそうだ。
脊梁を冷たい悪寒が落ちて大殿筋がきゅっと縮こまる。足は上下に小さく刻み、移動の催促を始めた。引き絞られた胃がようやく痛みを訴える。当時の悪寒がストレスとなって全身を駆け巡り、表皮をピリピリと刺激した。
だんだんと落ち着いてくるが最後まで違和感を主張し続けている部位がある。今現在進行形でボスの左手が撫で回し続けている場所。
僅か十数秒の間の出来事だが、アシエトの精神力を削るには充分だった。どれだけ時間が経とうとも、尻を触られたあの嫌悪感は、今なお癒される事なく根ざしている。
頭を左右に振って深呼吸。軽く頬を叩き気合を入れ直す。
「まあとにかく目の前に立ちはだかるなら倒すだけだ!」
右手に刀を、左手にルーンの刻まれた剣を。抜き放ったタイミングを狙ったかのように三人組が接近してくる。敵方の撮影ドローンが周囲を囲もうとするように展開を始めた。
一歩大きく後ろへ跳躍して間合いを取り、ドローンを薙ぎ払う。援助物資の到着が遅れるのは、今後の戦いを考えて充分有効だろう。初手で潰した意義は大きい。
「落ちろ落ちろ。くびよ落ちろ」
唇を割る言葉にルーンが応えて光った。光は炎となって剣を包み、端から炎を纏った花弁が散る。紅蓮の花弁は意思を持って三人組へと襲いかかり燃やし尽くす。
僅かな空気の振動を肌で感じ、身体を捻りつつ刀を持ち上げ左手を添える。別の三人組のうちの一体が打ち込んできた拳を間一髪防ぐことに成功した。身体の回転を殺さず蹴りを叩き込む。ガードが崩れた瞬間を見逃さず、素早く刀を二ヶ所の急所へそれぞれ突き刺した。残りの二体も瞬断する。
「お前らも尻触るのか?」
後方へ回り込こんできた個体に問いかけた。ビクリと身体を震わせて気を失ったように崩れ落ちる。
「違ったらごめんな……」
周囲をよく見れば同じように蹲る者たち、仰向けに転がる者たちなど死屍累々の惨状が広がっていた。
「ていうかむしろ触られるほうか」
心情を察するに余りある光景に、沈痛な視線を送る。しかし相手はオブリビオンだ。どんな事情があろうとも、その存在を許容するなど出来ない。【紅椿】が広範囲に散って全てを骸の海へと還す。
「あの世で成仏してくれ!」
小さな炎がちらちらと弔うように、かすかな上昇気流に踊る。くるりとボスへ向き直り、宣誓した。
「よぉし、次はセクハラクソ野郎だ!」
大成功
🔵🔵🔵
新山・陽
WIZ おや、こんなところに、投げ甲斐のありそうなレンガが……。実に白々しく私は言って、悪意ある助力と思しきそのレンガを【先制攻撃】とばかりに【投擲】します。
【戦闘知識】で閃けば、投擲目標は補給線の出現地点。
オブリビオン達が直接襲い掛かってきた時は、【武器受け】【咄嗟の一撃】で対応しましょう。
相手が一般人に手を出す気満々のオブリビオンなら、こちらから何か言ってしかるべきでしょうか。
「私のような通りすがりなどに言われたくはないでしょうが、義憤というものがあります。一般人に手をあげるのは言語道断です」
こういう声が届かないことは承知しているのですが、私はこちら側に生きているのです。
この日は本当に偶然だった、と言っていいのか。新山・陽(悪と波瀾のお気に入り・f17541)は首を捻る。この街はいつも騒がしい。今日も頓知気な乗り物が路面を荒らしながら走っていく。
はた迷惑な、と思っているとオブリビオンが登場する。周囲にはまだギャラリーが輪を形成したままだ。何か命令が下されたようで、三人組のオブリビオンがわらわらと湧いてきて一般人に襲いかかろうと威嚇のポーズを取る。
ようやく慌てふためいて逃げ出し始めた人々の波に逆らい、陽は何かを掴む自分の手の中を見下ろした。それは”悪意ある助力”の誘い。ぐっと握りオブリビオンへと視線を向け、白々しくも驚いた風に口を開く。
「おや、こんなところに、投げ甲斐のありそうなレンガが……」
同時にオブリビオンを狙って投げつけた。三人組の真ん中の額に過たずクリティカルヒットして崩れ落ちる。咄嗟に抱きとめようとした両側のオブリビオンが気付かぬうちに、空へ上がったレンガが自由落下していく。
あ、と思った時には振り仰いだ右側の顔面を経由して左側の顎へと吹き飛んでいった。さながらルーブ・ゴールドバーグ・マシンの一端を垣間見たように。
周囲を飛ぶドローンが少々鬱陶しい。ただ飛び回っているだけではなく、どこかへと戻っていく素振りのドローンを見つけ、視線だけで後を追う。行き先は移動拠点だ。そこから何かをぶら下げて出て行くドローンも見える。
あれが補給線と看破した陽は攻撃を仕掛けるべく足を踏み出した。それの断絶は攻める側として定石だから。
レンガをいくつか投げ、援助物資を運ぶドローンを撃ち落した。新たにドローンが現れた辺りへ更に数個投げ入れる。その後ドローンが出てくる様子がないので、とりあえず補給線断絶は出来ただろう。
次はどこから手を付けるかと悩む暇もなく響いた女性の悲鳴に振り向けば、荒れた路面に足を取られて転んだと思しき妙齢女性と、近付く三人組の姿。すぐさまそちらに足を向けた。
「私のような通りすがりなどに」
両手にレンガを掴んだまま、ジャリと音を立てて近付いていく。
「言われたくはないでしょうが」
三人組がこちらの存在に気付いて身構えた。
「義憤というものがあります!」
やや距離のある状態でビシッとレンガをオブリビオンに突き付ける。
「一般人に手をあげるのは……」
他の三人組がこちらに顔を向け傍観し始めた。
「言語道断です!」
振りかぶって目的の三人組へとレンガを叩き込む。一投、二投。そして三人とも昏倒させて、陽は女性へくるりと笑顔を向ける。
「ご無事ですか、レディ?」
「はい……」
少し呆けたような顔の女性の手を取り、怪我がない事を確認した。
「お足元に気を付けて」
そう言って送り出すと、手にしたレンガを思い切り後ろへ振り突き出す。遅れて振り返ればその瞬間レンガが砕ける。オブリビオンの拳を受け止めた衝撃で。もう片手のレンガで横殴りにすれば、オブリビオンは吹き飛んでいく。
次から次へと三人組が立ちはだかり、まるで無限に涌き出ているような錯覚に陥る。通りすがりで片付けるには、少し荷が勝っているだろう。それでも陽はレンガを手にオブリビオンへ立ち向かっていく。
大成功
🔵🔵🔵
ニノマエ・アラタ
……三人一組、か。
初手は遮蔽物に身を隠して拳銃で足元を撃つ。
自由に移動させず、こちらへ注意を向けさせるために。
向こうから近づいて来てくれるなんて、ありがたいね。
抜刀できる距離まで間が詰まったら、
UCでまとめて攻撃しつつ、斬り結ぶのは特攻をしかけて来るヤツとだ。
後方支援もイラッとくるが、まずは攻撃手段をつぶして相手の手数を少なくしたい考えだ。
一般人を攻撃する余裕なんて与えないぜ?
相手が桜の嵐を抜けてきたら、吹き飛ばしの一閃で応酬。
体勢を崩したところへ、渾身の一撃を浴びせる。
遠距離と残敵対策はUCで削っておく…だな。
前衛を掃討して後衛を引きずり出す。
連携を崩して早めに始末できればいいんだが。
(……三人一組、か)
取り乱した人々が我先にと大して広くもない道を逃げ惑う。ニノマエ・アラタ(三白眼・f17341)は物陰に潜伏しながら隙を見つけては前進した。一般人の波が切れる頃、その後ろからドローンを展開した三人組が追いかけてくる。
アラタは遮蔽物に身を隠し足元を狙って一発、威嚇として発砲した。飛び道具に面食らって三人組はコミカルに慌ててみせる。何かを搭載したドローンが飛来した。支援物資のようだ。武器を手に入れた三人組がこちらへ向かってくる。剣と盾、槍、ボウガン。即座に拳銃を桜の花びらへ変化させて接近を待った。
目測で間合いに踏み込んだ瞬間【散桜】を迫るオブリビオンへ放つ。一瞬タイミングをずらして刀を抜き遮蔽物から飛び出した。周囲で敵方の撮影用ドローンが弾ける。遥か向こうの移動拠点から、間髪入れずに援助ドローンが飛び立った。
盾のお陰で傷の浅い前衛の強行突破を見て瞬時に斬りかかる。眼前に盾が割り込んだ。刀と交差する刹那、風が巻き起こる。敵の身体が微かに浮き上がり移動のベクトルが逆方向を向く。吹き飛ばされそうになりながらも踏み留まった。
次の瞬間、渾身の一撃を叩き込まれたオブリビオンは、墜落していくドローン群を背に大きく傾いで骸の海へとゆっくり沈んでいく。
その隙を突くようにもう一体が槍を構えて薙ぐ動き。飛び退りながら手元に桜の花弁を集め拳銃へ姿を戻す。空振りと見せかけて突きへの転換に淀みはない。構えた拳銃が狙うのは一般人にボウガンを向けている後ろのヤツ。
「一般人を攻撃する余裕なんて与えないぜ?」
槍が脇をかすめる。別口の三人組が近付いてくるのが見えた。のんびり相手などしていられない。素早く目の前の敵を斬り伏せ、すぐさま走る。射程距離に入るや否や、三人組を桜吹雪で包んだ。
鉄パイプを持った一体が突破してくる。振り被る前の得物を風纏う刃で斬断し、驚愕している間にばっさりと袈裟懸けに斬り捨てた。桜の嵐の中の二体は既に息も絶え絶えで。トドメを刺して振り返ると増援が到着するところだった。
晩照射す黄昏の空を夜の帳が覆い隠す。辺りを見回せば、少数だがオブリビオンは残っている。その向こうにはボスがいる。戦いはまだ、終わりそうにない。
大成功
🔵🔵🔵
龍ヶ崎・紅音
アドリブ・絡み歓迎
【POW】
「……あのセクハラオブリビオンはひとまず置いといて、まずはこの戦闘員を倒さないとね」
まずは、連携攻撃の起点になりそうな戦闘員を【槍投げ】で【串刺し】にして、残った戦闘員をこっちも小竜形態に戻った「ホムラ」と連携しながら、【武器受け】で防ぎながら、焔【属性攻撃】の【なぎ払い】で相手の連携を崩すよ
そしたら、一気に『煉獄猛焔波動』で焼き尽くすよ
ヒーローの姿を一目見るのを、龍ヶ崎・紅音(天真爛漫竜娘・f08944)は楽しみにしていた。あと少し、というところでこの現場に遭遇してしまう。それをなんとも言えない顔で眺めている。
「……あのセクハラオブリビオンはひとまず置いといて」
ふう、とため息ひとつ。傍らのホムラへ視線を移し、いつもの笑みを浮かべる。それだけで紅音は気持ちを切り替えた。更に戦闘態勢へとシフト。手に降り立った小竜を『炎槍形態』へと変身させて、目の前に現れた三人組を見据えた。
「まずはこの戦闘員を倒さないとね」
三人組がなにやらポーズを取る。攻撃の前触れだろうか。中央の一体の動きが如何にも指示を出してます、と見えた。そういえば連携攻撃をするんだったか。紅音はその一体目掛けて一挙動で炎槍を投擲する。
次の瞬間には敵を貫き、路上の立て看板ごと建物の壁に縫い留めた。残りの二体がゆっくりと振り返りその状況を理解するよりも早く、炎が敵の身体に広がり骸の海へ還ってゆく。
炎槍は小竜に戻り、白銀の身体を翻して主の傍を目指す。漆黒の炎を纏う大剣を手に紅音が走る。二体は中途半端なポーズのまま小竜を見上げていた。ホムラが襲い掛かる、と見せかけて後ろから大剣で薙ぎ払って易々と屠る。
次の三人組がポーズをキメ終わったらしく、超高速連続攻撃が始まった。それを大剣で積極的に受けて拳ごと殴り飛ばす。ホムラは別の敵を顔面への飛び蹴りで沈黙させた。
「みんなまとめて燃えちゃえ!」
連携が途切れた時を逃がさず焔の翼を大きく広げ、地獄の火炎を放つ。辺りに転がるオブリビオンをもまとめて焼き尽くす。赤い繊手に触れて溶けるように消えていく先は地獄か骸の海か。弔いの灯は煌々と宵の口の空を染める。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ヒップ・ジェントルマン』
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POW : お前のヒップを査定!
【アヤシイ手つき 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : お仕置きだ!
【ステッキ 】による素早い一撃を放つ。また、【服を脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : ジェントル、パワーアップ!
【 ジェントルマン】に変形し、自身の【理性】を代償に、自身の【ヒップ力】を強化する。
イラスト:童夢
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「花狩・アシエト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「……猟兵どもめッ!」
手下たちが猟兵に掃討されていく様子に苛立ちを隠さないボス。猟兵たちの活躍で三人組のオブリビオン集団は壊滅した。ボスが追加で召喚しない限り。それを許す訳にもいかない。沈みゆく太陽に合わせてネオンが次々と点灯していき、辺りを煌びやかに照らし出す。
拘束されている何者かの尻を突き飛ばし、忌々しそうに立ち上がる。そして無造作に足を上げ――その背を踏みつけた。言葉にならない絶叫が発される。ほんの一瞬。声が伝えたのは痛みだけではない。恐怖、怨嗟、悲嘆、諦念。どす黒く渦巻く感情。耳の奥底にこびりつくような。
足の下の抗議を歯牙にもかけず、ゆっくりと進み出る。ぐるりと見渡し、舌舐めずりするように下卑た笑みを浮かべた。そして一点で目を留め、クッと喉を鳴らして笑みを深める。まるで獲物を見つけた猛禽類。
「未だヒーローが出て来ないとは……素敵なヒップを見つけたと思ったのにとんだ臆病者だったな」
大仰な身振りで嘲笑する。
「久し振りに良い玩具を見つけた事だ。遊び飽きたら迎えに行ってあげよう。それまで震えて待っているがいい! クッハハハハハ!」
交差点の外にまで響き渡る高笑い。
「そこまでだッ!」
オブリビオンを見下ろす高い位置から制止の声。だが姿は見えない。オブリビオンが空を仰いだそのタイミングで投光器が照らした先。
「筋肉は無限の可能性を持つ! ヒーロー『インフィニート・ムスコロ』ここに推参ッ!」
そう名乗るヒーローは、ネオン看板の上にいた。拳を握り鬨の声を上げる。
「さあ猟兵諸君! 共に戦おうではないか!」
ニノマエ・アラタ
……尻(何が何の話?)
だが、ヤツの手つきから眼をそらすわけにもいかない。
……。
踏みつぶされたヤツの救出もしねーとな。
距離をとって射撃でヒーローを援護。
敵の攻撃に合わせて腕部を撃ち、狙いを外させる。
……最悪、軌跡をそらして尻に直接当たんねェようにできたらと。
ま、俺の気持ちってやつだ。
間に合わねェなと思ったらUC発動で対応。
自分が狙われたら、距離を詰められないよう間合いを取ることに集中。
尻触りはノーサンキューなんで、逃げの一手だ。
こっちを追っかける敵の背を、ヒーローなり他の奴に
狙ってもらってもいいかもしんねェな。
一応、狙いは何なのかとか、ヒーローとの因縁だとか。
口上があれば聞いてやってもいいぜ。
龍ヶ崎・紅音
アドリブ・絡み歓迎
【POW】
「へぇー、あの人が例の発明品の使用者なんだね。ということは、発明品は"筋肉を活かした籠手"とかそういうものなのかな?」
セクハラオブリビオンの"アヤシイ手つき"に気を付けながら、焔【属性攻撃】を中心に【なぎ払い】や【槍投げ】などで牽制するよ
…まさかと思うけど"素敵なお尻"なら老若男女問わず触る気なの?
(あのヒーローに対して"素敵なヒップ"とか言ってた上に、一人いやなこと思い出しているようだし)
もし、そうならこの人は人類悪のド変態だね!!
そんな変態は『煉獄黒焔斬』で細切れにして燃やしちゃうんだから!!
ホムラや仲間にも触らせないように【かばう】ことができるようにしなきゃね
新山・陽
ヒップをごちゃごちゃ言ってる輩に、筋肉が名乗りをあげた今。
私の中に突如生まれた巻き込まれたくない気が、戦う気を圧倒しはじめている。由々しき事態だ。
「破廉恥漢め。被害者達の憤激によって沈め」
私は【気合い】を入れ、やる気をとり戻すと【忍び足】で敵の死角に移動した。その後【凍えた液鋼】を展開し【援護射撃】となるようぶつけます。
白兵戦の邪魔かもしれない。だが、筋肉の無限な可能性があればええと……ほら。
通行人を言い張る身として、ここはなるべく目をあわさぬよう応援だ。
「あ、これですか? 痴漢撲滅キャンペーン出張拡大版じゃないですかね」
群がりつつある野次馬達を【コミュ力】で巻き込まないよう誘導しながら。
花狩・アシエト
そこまでだ!(便乗)
お前の悪行、この身で確かに受け取った!
ふざけんなこのやろうぜってぇゆるさねぇ
俺の尻の純潔を返せ!
……近づきたくない……
近づかないとなんもできねぇちくしょう!
「先制攻撃」で素早く近く
「左の」武器で叩きつける
「界刀閃牙」で素早く攻撃
そしたら逃げる!全力!
ヒットアンドウェイだ!
逃げて攻撃して、逃げて攻撃
完璧だろ(ドヤ顔)
疲れたら、二刀でヒップマンを近づけないように戦う
今こそ「第六感」だ!(キュピーン)
避けられたら、いいな(トオイメ)
ええい、いくらでも揉め!
…お前やっぱり変態だぜ
冥土の土産に尻触るか?
……なんて言うと思ったか!
あーこれで尻の平和は保たれた
…ところで、発明品て?
鈴木・志乃
ねえ
ヒップ力ってなに
……変態じゃねーか!!
お前のせいで駆けずり回った私や
ヴィランになった奴らの気持ちが
お前にわかるかああああああああああああああああ
問答無用のUC
縛り上げる【早業念動力】
その手を! 足を!
ふんじばらないとお前は何度でも
そういうことするだろ!?
戯れ言は【第六感】で【見切り】
【歌唱】の要領のシャウトで遮る【衝撃波】
黙ってろこの変態
それでもなんか言うなら鎖で【武器受け】からの【カウンター】食らわすぞ
あ、ヒーローの出番は食いたくないけど
内心はこれぐらい暴れてるので
どっかでぶちギレちゃうかもしれません☆
「そうだ、そこまでだ!」
ムスコロに同調するのは花狩・アシエト(アジ・ダハーカ・f16490)だ。猟兵の中で唯一の被害者。
「お前の悪行、この身で確かに受け取った! 俺の尻の純潔を返せ!」
「ほう、つまりまた愛でられたいということか?」
オブリビオンが獰猛な笑顔でアシエトを捉える。手は当時の思い出を噛み締めるようにゆっくりと動いている。それに対して耳朶まで真っ赤に染めて抗議する。
「ふざけんなこのやろうぜってぇゆるさねぇ!」
憤るアシエトの傍らでニノマエ・アラタ(三白眼・f17341)もオブリビオンへ視線を向けている。だが確かに視界の端に捉えているが、本当に見ている先は足元やや後方。オブリビオンが踏み潰した犠牲者に注がれていて、会話は上滑りしてどこかへ消えた。
一見人間のように見える。大きなガスマスクのようなものと数々の拘束具ではっきりせず。今の状態では救出は不可能。もしかすると動かせないかもしれない。アラタは歯噛みした。オブリビオンをあの場から離さなければ。しかしどうやって?必死に策を練った。
「へぇー、あの人が例の発明品の使用者なんだね」
龍ヶ崎・紅音(天真爛漫竜娘・f08944)はヒーローを振り仰いでいた。
「発明品は"筋肉を活かした籠手"とかそういうものなのかな?」
拳から肩までを覆う特徴的なメカニックアームを見て呟く。オブリビオンにちらりと視線を送って、すぐにムスコロへ戻す。
「あのヒーローに対して"素敵なヒップ"とか言ってたし……えっ、あの人も?まさか老若男女問わず触る気なの?」
口からつるつると零れる疑問は尽きないようだ。
「ヒップ対筋肉、ですか……」
呆然とやりとりを眺める新山・陽(悪と波瀾のお気に入り・f17541)の顔色は芳しくなく、ガンガンテンションが下がっていく。無意識に足を半歩引いた。
その半歩が胸中に渦巻く思いを急激に増幅し言語化する。『巻き込まれたくない』と。その思いがじわりじわりと胸を溢れ身体中を支配し始めた。もしここから逃げ出すことが可能なら、迷わず選んだかもしれない。
それでもオブリビオンという倒さなくてはならない存在を前にして、それはどうしても選べず、なけなしの克己心をかき集めて成り行きを見守った。
四者四様の猟兵も巻き込んでぎゃあぎゃあと絶叫が響く中、鈴木・志乃(ライトニング・f12101)は途中の単語に首を傾げた。そしてそれを素直に口にする。
「ねえ……ヒップ力(ぢから)ってなに?」
「「ヒップ力(ぢから)とは、ヒップの素敵力と戦闘力を総合して指す言葉だ!」」
ムスコロとオブリビオンの声が一字一句ぴたりと重なった。特大の疑問符が志乃の思考をせき止める。
「素敵力とは形・弾力・艶・滑らかさからなり!」
「戦闘力とは硬さ・重量・収縮性・敏捷性からなる!」
そんなことも知らないのか、と言わんばかりに二人掛りで解説される。頭が理解するのを拒絶している。その様子をオブリビオンがふむ、と何か察知したようだ。華麗にターンを決め良い笑顔で尻を強調してくる。そして。
「ならばこのヒップ・ジェントルマンが見せてやろう! ヒップの戦闘力というものを!」
もにもにもにもに……。尻の左右が別々に、生き物のように蠢き始めた!
「ぎゃああああ!」
思わず叫んだのは志乃だけではない。猟兵全員だ。
「変態じゃねーか!!」
「人類悪のド変態だね!!」
「破廉恥漢め! 被害者達の憤激によって沈め!」
紅音と陽が志乃の叫びに同意して怒号を飛ばす。アラタはジェントルマンとの距離が倍になっていて、アシエトは自分のお尻を押さえてぷるぷると震えている。
「猟兵とやらは失礼な連中ばかりだな」
鼻息一つで叫びを吹き飛ばし、呆れ顔をするジェントルマン。困惑した様子でヒーローも背を向ける。まさか……?
「この程度で怯えられては少々やりづらいが……」
もにもにもにもに……。ジェントルマンと同じように大臀筋を動かすムスコロ。声にならない叫びが上がる。
「ちなみに今のは4割のパワーだ!」
「くっさすがだ、ヒーローよ!」
いよいよ声を失う猟兵たち。我々はどこの世界に迷い込んでしまったのだろうか……。こうしている間にも、ジェントルマンとムスコロの間でヒップ戦闘力でのバトルが繰り広げられている。もにもにもにもにもにもに……。
そんな中、志乃が最初に動きを見せる。
「お前のせいで駆けずり回った私やヴィランになった奴らの気持ちがお前にわかるかああああああああ!!!」
交差点を越えて響き渡るほど腹の底から咆哮した。同時に【女神の拘束】を発動。地面から生えた光輝く鎖がジェントルマンの手を、足を拘束する。破魔と浄化の力をもった鎖がオブリビオンをじわじわと灼いていく。
他の猟兵たちがその声と輝きに我を取り戻し、それぞれ行動を開始した。
「近づきたくない……けど、近づかないとなんもできねぇちくしょう!」
ルーン剣『左の』を構えて接近を試みる。光の鎖から解き放たれたジェントルマンを牽制するように、冷気を纏う鋼球が飛来した。『忍び足』で死角に移動していた陽の【凍えた液鋼】がアシエトを援護する。
アシエトの剣とジェントルマンのステッキがかち合い火花を散らした。受け止められたと理解した瞬間、その場を全力で離脱する。Hit and away。
「逃がすか!」
ジェントルマンが僅かな間を置いてアシエトに迫りゆく。左手がわきわきと蠢き、アシエトの尻を狙う。その腕をアラタの銃弾が撃ち抜いた。
「狙わせねェよ!」
「く……!」
失速して狙いを変えてステッキを握り直した直後。先ほど打ち合った場所でステッキが折れ落ちる。アシエトの【界刀閃牙】の効果だ。ジェントルマンの顔が驚愕に青ざめた。
「……なん……」
「変態は細切れにして燃やしちゃうんだから!!」
隙有りとばかりに紅音が愛剣を振り被り、禍々しい漆黒の炎を放つ。【煉獄黒焔斬】による炎はまるで竜のように襲いかかった。
「一太刀で気が済むと思うなよ!」
漆黒の炎に続いてアシエトがもう一度攻撃を仕掛ける。炎の斬撃を凌ぎきった所を切りつけ、今度はその左腕を斬り落とした。
「ぐぁああああ!」
燃え上がるジェントルマンの向こうで、アラタが犠牲者を救助している。
「あ、これですか?痴漢撲滅キャンペーン出張拡大版じゃないですかね」
野次馬に紛れてさりげなく近付かないよう誘導してるのは陽だ。通行人を自称する以上、あまり戦場に長く留まるのは得策ではない。
「待たせたな!」
存在感が消えていたヒーローの声がこだました。よく見ればコスチュームチェンジしてきたようだ。
「今こそ愛するルーチェの新作をお披露目する時!」
「お兄ちゃんそれやめてって言ってるでしょ!」
声の主は”少年”そっくりの、少し髪を伸ばした少女だった。
「……だが」
「そんなんだから私が狙われるんでしょ!」
兄であるヒーローの言葉を遮って続ける。
「今回は猟兵さんたちがいてくれたから良かったけど、少し考えなさいよ!」
がっくりと肩を落としたお兄ちゃんの背中はちょっとかわいそうかもしれない。
「気を取り直して! 新作スーツ『エネルジーア』のお披露目だ!」
再度ポーズを取り、解説を挟んでくる。
「なんやかんやでヒップ力を増強してくれるスーツだ! つまり!」
皆が見守る中、ビルの上からムスコロが飛び降りた。尻を強調しながら。
「この必殺技『アトラツィオーネ』の威力も上がる!」
そのままジェントルマンの上へと着地する。尻から。物理的ダメージと精神的回復力のバランスなのか、倒れ伏したジェントルマンはギリギリ生きていた。
「むっ、これでも倒せないとは……オブリビオンとは本当に厄介だな」
そう言いながらムスコロはかなり距離を取る。代わりに剣を構えてアシエトが近付く。
「……お前やっぱり変態だぜ……冥土の土産に尻触るか?」
尻の言葉を聞いてがばりと希望に満ちた顔を上げた。
「……なんて言うと思ったか!」
無慈悲に剣が振り下ろされ、悲鳴も許されずその命を終える。
戦闘後はヒーローのアジトにお邪魔して夕食をご馳走になった猟兵たち。和気藹々としたアットホームな空気の中で、色々と聞く事が出来た。
兄であるヒーローがあの調子で『妹LOVE』を叫ぶので、普段は男装していること。今回の新作スーツはヒップ力に耐えうる新素材を使っていること。生地自体は別で作られたものでヒーロー自身が選んで購入し、仕立てを頼んだせいでオブリビオンの目に留まってしまったこと。それ以外は特に因縁などわからないということ。
それから後日の情報。犠牲者は一命を取り留めたこと。人質を取られてヴィランにならざるをえなかった人の大切な人と同一人物だったこと。亡くなった妻との一人息子だそうだ。
こうして猟兵たちは一人の命と何人かの人生を救う事が出来た。ヒーローとヴィランの戦いは終わることなく、オブリビオンが暗躍し続ける事だろう。
それでも今助けられた人々の笑顔を胸に、猟兵たちはグリモアベースへと戻ってゆく。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年06月22日
宿敵
『ヒップ・ジェントルマン』
を撃破!
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