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魔女とお伽話の続きを紡ぎましょう

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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 あれは、お伽話。 そう、お伽話なんだよ。

 悪い魔女がパンを焼く竃で、女の子を焼いて食べようとしました。
 魔女の好物は、柔らかい子どもの肉なのです。
 実はアルダワ魔法学園の地下迷宮には、その魔女の竃があるって、誰かが云いました。

 それって、ホントかな?

●魔女の竃(かまど)
 た、たっ、らったったー♪
 皮ブーツのつま先が石床を蹴れば、隊列の先頭から赤、黒、緑、黄、青と、それぞれ色のローブと帽子を身につけた小さな子ども達の身体も軽やかに揺れる。探検、冒険、好奇心。
「みーんなっ。ここが、かの有名な『魔女の竃』の入口でございまーす」
「違います。学園の地下迷宮、です。先生方に沢山習ったでしょ」
 我ら生徒達が足を踏み入れてはいけないって事も。

 周囲の壁に組まれた蒸気機械と、ほんのりと魔力が淡い光となって漂う天井。自分達が最初に立ち止まった場所は、迷宮の一角に過ぎない。
 造りは、いたって単純。今は教室大に開けた間。続く5つの通路。
 どの通路を進むかの相談も含め、ちょっぴり喧嘩にもなっていた。
「お前、夢ないなー。全然ないよ」
「りありずむ。かむひあ、です」
 赤い子、黒い子、跳ね回る度に2人の影が大きく揺れ、他の三人は、おやつモシャモシャ。
「そもそも、魔女の竃を覗きに行こうって云ったの誰だよ。お前じゃん」
「緑、です」「黄だよ」「青だよ」「赤だよ」「黒だよ」
「「だれ、な、ん、だぁぁーっっっ、YOっ!!」」
 互いに指差し、互いに叫んだ。
 昨日、先生がお伽話を聞かせてくれたんだ。悪い魔女に捕まった女の子の勇敢でカッコイイお話だったけれど、お話の舞台が近くにあるって、すごくない?
 そしたら誰かが、地下迷宮に魔女の竃が本当にあるって云ったんだよ。
 自分達も悪い魔女と戦うっ。やっつける。って事になった。

 さて通路は、どれもくねくね、長くて、長くて、……長い。
 まるで干からびた魔女の手指のように細長く伸び、入った者を捕らえてしまいそうなくらい。魔女の指って名前をつけた。
「どっからでも行っちゃえ! 早いもの勝ちーっ!」
 またまた誰かの掛け声に呼応して、5人は動いた。魔女の親指、人差し指……次々と。
 ぴょんぴょん、子ども達が散って行く足音が木霊した。

 ところで女の子は大変賢かったので、焼かれなかったけれど、──君はどうかな?

●グリモアベース
「よっす。どうも初めまして! 来てくれて有難うございマっス!」
 ベース内の隅々に、黒いカラスを頭に乗せた元気な少年の声が響き渡った。『声を抑え給え』と云わんばかりに、少年を嘴で突いて窘めるカラスの方が気品溢れ、威風堂々とした存在感がある。
 ダレ?
「俺は昔、麦畑の番人をしていたカカシのヤドリガミの破魔・案山子(かかし)。こっちは、俺の親友で、『男爵』って云うん……イタッ。あ、教育者デス。センセー、デス!」
 痛いじゃん! 言葉ムズいじゃん! 俺の好きに喋らせてっ! と涙声が漏れ、もともと奔放な短髪が鳥の巣の如く、無残に乱された少年が訥々と話を進める。

「アルダワ魔法学園の地下迷宮の話は知ってる?」
 地下迷宮とは、この世界全ての災魔を封じた危険な迷宮なのだが、学園が幾ら出入禁止令を出しても好奇心に駆られ、無断で侵入してしまう生徒達が後を絶たない。
 今回の子ども達も、その一部。
「彼らの云う『魔女の竃』探しは、ひとつのごっこ遊びなのかな。迷宮の中間に、確かに竃に似た一画がある。そこに魔女が居るか、辿り着いたらゴール……の筈なんだけど……」
 その場所は大変危ないんだ。友達といっしょに冒険する事が楽しくて、先生に後で怒られるスリルも、ちょっぴり辛めのスパイス程度に思ってしまう無邪気な冒険者のタマゴ達を待ち構えているモノは、災魔の群れだ。
 誰か、子ども達より先に迷路を突破して、災魔に立ち向かって欲しい。
「突破方法は幾らでもあると思う。もし道中、子ども達と鉢合わせたとしても、皆は賢い大人の知恵ってヤツで、パパッと対応出来るんじゃないかな。相手は元気っ、素直っ、単純だぜっ」
 あー……。
 まさに、こいつと同類っぽい子ばかりなんだなと、安堵感でいっぱいになった。
 ちょっとくらい雑に捏ねて、泣かせたって……。
「いやいや、そこは優しくして?! 俺なら、お菓子が欲しいですっ……イテッ!」
 また涙声に変わったけれど、気にしない。

 既に子ども達は魔女の指に入ってしまった。
 『楽しい』は、決して恐怖と引き換えに得るモノじゃあないんだよ。
「死とは、『私』が、ほどけてゆくもの。『私』を形成する全てがほどけるもの。って有名な書物に書いてあった、かな。俺には難しい伝え話だけど……」
 それは、ほどける前に、恐怖でチョンっと摘み落としていいモノじゃないって事は判る。
 このまま無力な彼らを竃まで進ませてしまえば、迷宮に潜む災魔達に摘み落とされる。
 回避する為には、今すぐ猟兵の力が必要なのだと。
 そして更に。
「子ども達を恐怖から遠ざける事が出来たら、魔女の竃に跋扈する災魔の群れと、更なる真のデッカい脅威を倒して欲しい。嫌な予感、二段構えなんだ」
 この2つを放置すれば、今度は災魔が迷宮を踏破し、地上に災いをもたらしに来るだろう。
「沢山の事を頼んで、ごめん。でも皆なら絶対大丈夫だって、俺信じてる」

 時間は有限。少年とカラスは猟兵達を次々と送る。
 頼むよ。絶対に。気をつけてね。
 猟兵達の視線は、思わず威風堂々と『貴殿らのご武運を』と片翼を広げる男爵に集まり、強く頷いて去って行った。

 程無くして。
「……」
 解散した猟兵達を見送った後、頭を男爵に踏まれたままの少年は幾つかの箱を積み上げ、それによじ登った。
 今度、皆の前で話をする時は、もっと目線を高く、超目立つ所に居よう。
「だって俺の姿、皆にっ! 全然っ! 見て貰えてなかったじゃん!」
 そう。ちっちゃいからね! ……多分。


イコロ
 お初にお目にかかります。
 皆様は、魔女の指の分岐前に、『転校生』という立場で転移されました。
 事象は挑む皆様の行動で移りゆくもの。
 物語を紡ぐは、皆様の自由な意思でしょうか。

●補足
 (※男爵に、まだ頭を踏まれている少年のメモ含む)

 【第1章】 戦闘なし。光源不要。
 子ども達に追いつけ追い越せ、もしくは無人ルートを探索して先回り、または直接、交渉作戦などなど。『5人の誰よりも先に魔女の竃へ辿り着く』迄の簡単なお仕事で、達成出来たら成功です。

 ・5つの通路。何処に散って行ったっけ。わっかんねー!
 ・誰も居ない通路もあるかも。
 ・どうやって見分けようかな。

 【第2章】 戦闘あり。
 詳細は1章の結末後に。

 ・沢山は……コワい。

 【第3章】 戦闘あり。
 詳細は2章の結末後に。

 ・金ぴかぴか?
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第1章 冒険 『無謀な挑戦を引き留めてあげて!』

POW   :    自分達の強さを見せつけたり力ずくで止める

SPD   :    先回りして行動の邪魔をして諦めさせる

WIZ   :    引き返すように言葉で説得する

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アリア・ティアラリード
「お姉ちゃんが絶対に守ってみせますっ!」

子供たちを追いかけるべく全力疾走。可愛い少年少女たちを助けたい、護りたい。
そんな庇護心に燃えているアリアおねーちゃんに無人ルートを先回りとか小知恵は働かず、
目前の人差し指へ飛び込み最短距離を《ダッシュ》です!

子供達に出会ったら、まず優しく説得。
同時に【フォース・ブレイド】でふんじばって押さえつけて、説得。
そのまま接近して《怪力》でぎゅーっと抱きしめて説得。
説得終了したら、仲良く《手をつないで》引き返すように約束確認さよならバイバイ
「あとはお姉ちゃんに任せてくださいねっ!!」

POW:【フォース・ブレード(サイコキネシス)】《ダッシュ》《怪力》《手をつなぐ》


雛月・朔
【行動】普通に走って子供たちを探す。
【説得】子供たちを見つけたら『ここは魔女の窯じゃないよー、本当は悪い子の身体に乗り移るお化けが出るんだよ。早く帰らないと捕まっちゃうよー。』と嘘を言って帰らせる。


セリエルフィナ・メルフォワーゼ
【SPD】判定で行くよ!

【スカイステッパー】で、とにかく空中疾走! で、何か怖い歌を【歌唱】しながら、子供達のところまで追い付くよ。

「お父さん、お父さん。見えないの? こちらを見ている魔王の娘が」

UDCアースで聞いた「魔王」って歌だけど、子供達を怖がらせるには丁度いいと思うな。洞窟の中だから、音も響くし。
で、【オーラ防御】でどす黒い感じのオーラを出しながら、子供達の前に空中から現れる。「わたしはお前達を攫いに来た魔王の娘だぞ」って言いながら。
これで子供達が怖がって引き返してくれればいいんだけど……

怖がってくれないようなら、【ブラスター】でビビらせて帰ってもらおう。こういうやり方は嫌いだけどね。


イヴ・イルシオン
魔女の指……細い道が怪しいのです。小指といえば細い、細いといえば子どもしか通れない。分別にぴったりなのです。一番右か一番左ですかね?
そして私は『体』は子供であるからして余裕で通れるのです

「……というテキトーな仮説を立ててみましたが、考えてる暇はねぇですね」

細い道を選び【ダッシュ】で駆ける

説得方法ですが
『この先には最近発生した毒ガスが蔓延していて災魔が入って行ったのも確認しているです。ちなみに私は人間ではなく人形なので毒ガスは効かないのですよ』
と言いながら義手と義足を見せて人形っぽいところを主張しますかね

なんかヤベーのとか邪魔なのとか現れやがったら【消滅の魔眼】でも使って排除しとくです


霧中・真理
コミュ力1、追跡2、情報収集2、救助活動3、ロープワーク1

ふむ、ひとまずは遭遇しないことには始まりませんね。追いつき追い越せ、楽しくはありませんが追いかけっこになりそうです。まぁ、あとは首根っこひっつかんでもお帰り願いましょう。言葉で言って聞いてくれるならそれでいいですが、まぁ勇気と無謀の区別もつかない年ごろでは分からせるほかありませんよね。一応は何かあった時のための救助の準備くらいはしておきましょう。用意は無駄になってもいいのですし


スターキャンディ・ベリーベリーベル
冒険心は買うけどもニャ
ちびっ子が危ニャい場所に来たら叱るのは
大人のつとめニャ

ニャーは言葉で説得してみようかニャ
たとえちびっ子でも話せばわかるハズニャ
準備として体をすっぽり隠すローブを用意するニャ
ニャーの可愛らしい姿が見えたら説得力も半減ニャ

道は真ん中行くニャ
建築の基本はシンメトリーニャ

ローブで影に潜みニャがら先回りして迎えるニャ
「ようこそ魔女の竃へ
おぼっちゃんおじょうちゃん
ご馳走がわざわざ歩いてやって来てくれるなんてありがたい
グツグツ煮込んでシチューにするか
じっくり焼いて丸焼きか
さぁお好みはあるかい?」
と声低く言ってリザレクト・オブリビオンで召喚だけして驚かして
道を戻るように仕向けるニャ


東雲・ゆい
【SPD】
地下迷宮の五本道から子供を探せって、まぁたメンドーな注文ね~
でも任せて、こんなこともあろうかと対策は考えてある(キリッ)

まず~足音で子供の場所がわかりそうならその道を行こうかなぁ
わかんなかったら適当に選んだ道を行くよ
そんで~子供がいたら★迷彩で隠れて先回りして~
★アートでこわ~いおばけの絵でも描いて脅かせば引き返すかな~?
「わしはこわいおばけなのじゃ、触れた相手の魂を抜き取るのじゃ~」
とか?

あっ、そうだ(唐突)
わたしも子供だし~正体がばれたら驚いてくれないよねぇ
ってわけで地元のハロウィン祭りで使った【かぼちゃおばけ衣装】を持っていくよ~!

さぁて……たっぷり脅かしてやるからねぇ……?


栗花落・澪
分かれ道で耳を澄ませ物音を拾い
地面に子供達の足跡や髪の毛などの痕跡が
少しでも残る道を選び飛行して進む

生徒を見つけたら声かけ
「ねぇ。君達なんでこんな所にいるの?迷子?」
知らないふりで少し物語の情報を貰おうかな

じゃあ君達は魔女を倒しに行くのかな
僕ね、天使の力で未来が見えるんだけど…
この先には行かない方がいいよ

ここには今
とーっても怖い怪物が住んでるんだ
君達が聞いた物語とは違うんだよ

嘘を隠して優しく微笑み
僕の仕事は命を守り、悪い者を浄化する事

少しだけ体を光らせて
勇気があるなら他の子達を連れ戻してあげて
仲間を第一に考えられる
それが真のヒーローだよ

笑顔を向けてから先へ進むよ
どうか届いていますように…


ベール・ヌイ
動物会話で動物たちにお願いして無人ルートを探し出し、白狼疾風で白狼に乗って先回りまりします
説得に関しては誘惑をを使用して話を聞いてもらえる状態にし、「此処から先は・・・危ないよぉ・・・食べられちゃうよぉ・・・」と言って脅します
「でも・・・ここまでこれた勇気に・・・これあげるよぉ・・・」ときび団子をあげます
それでも帰らないなら白狼に吠えてもらい、食べるふりをしてもらいます


レイ・レン
何故こうもバカな事をする生徒が後を絶たないのか。好奇心は猫をも殺すと言う言葉を知らないのか?

【POW使用】

生徒達の足跡や痕跡を探し【第六感】で進んだ道を【追跡】する


追い付く事が出来れば、先の道を背に立ちはだかる
此処から先は貴様らの力では実力不足だ。どうしても通りたいのであれば、小生を倒してみせろ。まぁ、不可能だがな。
と、挑発しておこう。
此方に向かってくれば【見切り】【第六感】【残像】【武器受け】を使って回避に徹しよう。
狙いは疲労で動けなくなることだ。
1人もこの場から逃さない様に気を配りながら、逃げるのか?といった挑発を加えてよう。

取り逃した場合はUCを使って全員に1人1人付けて【追跡】させよう


木霊・ウタ
心情
元気なガキんちょは嫌いじゃないぜ
そん位でなきゃ将来、災魔と戦えないもんな

そしてだからこそ
ここで命を散らさせはしない
子供達を守るぜ(ぐっ

手段
事前に入り込んだ生徒たちの写真を見せてもらうぜ

件のエリアまで来たら生徒の一人を選んで
影の追跡者に追わせる

仲間がいるだろうから
5つの通路で被らないようにするけど
選ばなきゃいけないんなら赤の生徒を追わせるぜ

追跡者が向かった通路へ全速力だ

ふぅ追い付いたか
おいおい此処はまだ早い
もうちょい強くなってからがいいぜ
己を知り…って言葉聞いてるだろ?
約束だ
俺達の魔女の竃での土産話を一番にしてやるからな

ギターを奏でながら吟遊詩人ように語りかけるぜ
;コミュ力&パフォーマンス


銀座・みよし
小さな子らによる冒険譚は心が躍るもの
しかしそれは「賢く勇敢で」という但し書き通りに、
まず賢くあらねばならぬのでございます

そんなわけでこの賢い可愛いメイドさんのわたくしが自らの【SPD】にかけて!
彼らより先に行くのでございます!
…なにせ、主人より先に部屋に入って諸々の準備を整えるがメイドにございますれば

さて(情報収集)に(地形の利用)…加えて(聞き耳)を立てながら
行動すれば彼らより先んじられましょう
もし迷宮内に小動物などおりましたら(動物と話す)ことで彼らの邪魔もお願いできるでしょうか
小さな子は、愛らしい小動物とかお好きでしょうし
動物達への報酬はこのビスケットでいかがでしょ


アリーチェ・カンタービレ
お伽話は大好き
ヒトの愛だとか狂気だとか、いっぱい詰まってるものね
でも、魔女は子どもの肉が食べたかっただけでしょう?
どうして、悪い魔女なのかな
その魔女に会ってみれば、わかるかな

【WIZ】
ワタシが魔女だよ
まだ竈じゃないって?
魔女だって散歩くらいするよ

魔女である証拠……そうだね
こうやって、急に消えたり現れたり、できるよ
(電子の精霊だから、姿を透明にしてるだけなんだけど)

……ふふ、びっくりしたかな
美味しそうな子がいてちょうど良かった
どこから味見しようかな
太腿のお肉と目玉はとっておきの好物だから、最後に残しておきたいの

子どもが逃げ出す背中に手を振る
もっとヒトの狂気を知るお年頃になったら、また会おうね


深手村・うさぎ
【SPD】で参加させてもらうよ。選んだ指は向かった人が一番少ない指(特に無ければ薬指!)急いで向かって子供たちに追いつくんだ。
通った先で子供を見つけたらとりあえず説得するよ。
「ここは危ないから、おうちにかえろう。お母さんたちも心配しているよ?」
説得は念のため。それでも聞いてくれなかったら、申し訳ないけど技能【催眠術】で行動を邪魔して眠ってもらっちゃおうかな。
「ねんねんころりよ~」
後で迎えに行くから、それまで安全な場所で寝ててね。



●分岐点
 ──嗚呼、実に細い指だ。痩せた骨が砕けて曲がって伸びてしまったよ。
 ──だが、お前を捕らえるには丁度いい。
 ──なぁに。鶏を絞めるより簡単だろう?

 グリモアベースにて双眸に映していたアルダワ魔法学園の地下迷宮の映像が、360度視界が開けた現実へと移り変わった瞬間。蒸気機械と魔法で創造された迷宮の間に幾人の猟兵達が、互いの肩が触れぬ程度の間隔を空けて、次々と降り立ってゆく。
 複雑構造な機械から噴出する蒸気が舞い上がった埃を光の粒のように躍らせ、確かな時の刻みを彼らに現実として示している。そして眼前にあるのは、5つの通路。子ども達が『魔女の指』となぞらえたならば、それらは見渡す限り、どれも歪な穴の入口から始まる道であり、1番左端が大きい『親指』、1番右端が小さい『小指』となるだろう。

 さあ、始まりだ。
 
 後から転移されて来る者、または上下左右、そのほぼ閉塞的な空間を首を巡らせ視線を走らせる者も居る中、誰よりも最速で石床に身を沈める栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の姿があった。少女に似た繊細な指先は羽毛で撫でるかのように、クッキーやビスケットの小さな欠片や薄く積もっていた埃を踏んだ靴痕、僅かに見つかる毛髪など、小さな痕跡を見つけては、そっと触れた。
 暫し現場調査を丁寧に行う猟兵達が、分岐点に留まる中で、はきはきとした声が聞こえた。
「この五本道から子ども探せって、まぁたメンドーな注文ね~」
 澪が天仰ぐと、おっきなバックを抱えた東雲・ゆい(それ以外の何か with グリモア・f06429)がイイ顔を立っていた。キリッと頼もしく可愛い。
 そして傍で歩みを止め、思案に暮れる木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)も居た。
「あー……、俺は生徒達の写真を見せて貰って追跡する算段も考えたんだけどな」
 子ども達は散った後。猟兵の転移現場は、ピンポイントで分岐点前だった。あのカラスとチビには予知を映像化する特別な技術など持ち合わせていなかっただろうと、ウタは気づく。
「ふ、ふ、ふ。任せて。こんなこともあろうかと対策は考えてあるっ」
 ゆいが、ビシっと指を立てる。
「どんな?」
「まず~足音で子どもの場所が判りそうなら、その道を行こっ」
 判んなかったら、適当に選んだ道を行くよ。
「手掛りは、他にもありそうだよ」
 澪は2人に石床にある痕跡を指し示すと、そこには点々と通路へ続く菓子屑の目印があった。
「わっかりやすっ」
 おやつを食べていたのは、緑、青、黄の3人だったかな。続く道は、薬指と小指の2本だ。
「という事で」
 澪は立ち上がり、膝に付いた埃を軽くはたきながら明瞭に云った。
 僕の行き先は決まったよ。

 やがて通路を目指す猟兵達の行き先は、それぞれの考えの下、次々と決まり、彼らは小さな子ども達を救うべく、進んで行った。

●魔女の小指
 ──迷子の友達を探しに森へ出かけた女の子は、魔女にだまされて閉じ込められてしまいました。
 ──何処に?
 ──魔女の竃です。
 ──おっきいんです、とっても。怖い所です、とっても。

「お伽話は大好き。ヒトの愛だとか狂気だとか、いっぱい詰まってるものね」
 アリーチェ・カンタービレ(サイケデリックシンドローム・f03951)が、すっと翅のように両腕を開くと、両脇の壁にはまだ届かない。通路幅は5本の中では一番細かったが、十分広く、そして長い。何となく先に進んだ道だけれども、子どもは、まだまだこの先のようだった。一人で歩くと、独り言が増えてしまう。
 一人で歩くと。
「魔女はこどもの肉が食べたかっただけでしょう?」
 一人で歩くと。
「どうして、悪い魔女なのかな」
 ……その魔女に会ってみれば、判るかな。

 それから、イヴ・イルシオン(狂気の殺戮人形・f01033)がアリーチェの通った道を駆けて来た。
 魔女の指……細い道が怪しいのです。小指といえば細い、細いといえば子どもしか通れない。分別にぴったりなのです。一番右か一番左ですかね?
 そして私は『体』は子どもであるからして余裕で通れるのです。
「……というテキトーな仮説を立ててみましたが、考えてる暇はねぇですね」
 カカッと義足で床、次に壁面を微かに抉りながら、小さき身体を螺旋の如く捻り、ともすれば通路を吹き抜けるつむじ風のように駆け抜けた。
「え」
 イヴの気配を感じたのか、先を歩いていたアリーチェが振り向き、目が合った。
「子ども、居たですか?」
「まだ見ていない」

 てくてくてく。
 石床を軽く跳ねて進む進むその子は、まだ先。多分すぐにアリーチェとイヴに追いつかれるだろう。青の帽子を正しく真っ直ぐ被り、ローブの襟元もきっちり絞め、一人ぼっちだろうと、臆病風に吹かれる様子は、まるでない。
 さすが元気な冒険者のタマゴ。恐れる事をまだ知らない。まだ、ね。
 てくてく歩いている所に、ひゅっと正しく被った帽子を乱す風が吹き抜けた。かと思うと、自分と背丈が変わらない女の子が視線の先に立っていた。
「あら、奇遇だね。貴方も散歩?」
 と、思うと、今度は後ろから声。
「そこの坊や。と、魔女さんも。この先の散歩は、止めておいた方がいいですよ。最近発生した毒ガスが蔓延していて災魔が入って行ったのも確認しているです」
「え? 魔女? 毒ガス?」
 青い子は、くるくる前後を見比べた。どちらが前で後ろか、簡単に判らなくなったくらいだ。けれど何かを決めたようにアリーチェに向き直った。なかなか口達者で、ぺらぺらぺー。
「魔女って、こんなトコに居る訳ないじゃないですか」
 騙されません!って顔だ。
「そう、ふーん。魔女である証拠……そうだね。こうやって、急に消えたり現れたり、できるよ」
 少女の姿が天井から降り注ぐ光に溶けたかと思えば、瞬きの間に姿を現す。そこに居るのに居ない。居ないけれど居る。魔法だ!と青い子は思った。
「……ふふ、びっくりしたかな。美味しそうな子が居て、ちょうど良かった。竃へ帰るより先に、今食べようかな。太腿のお肉は大好物だから、最後に残しておきたいかな」
 小さな身体を狙うように、指差した所で、「きゃ!」って、存外可愛い声を出して、ずざざーと青い子は壁に張り付いた。
「って、事で、毒ガスも本当の話です。私は人間ではなく人形なので、毒ガスは効かないのですが、坊やだけは苦しみまくるです」
「きゃ!」
 重ねて云うイヴの義手義足を外して見せる脅かしも十分効果あったりして、飛び上がった。
「「さあ、今逃げるなら、見逃しますよ」」
 きゃ───っ!
 か細い悲鳴をあげながら来た道を、ててててーっと逃げていく青い子の背中に2人は手を振った。
「もっとヒトの狂気を知るお年頃になったら、また会おうね」
 と、アリーチェは云い残して。

 通路は、まるで謎の迷路だ。蒸気機械と魔法が、常に見た事が無い迷路を創造し続けている。5本全て、長さは変わらないと思ったら大間違いだった。あらゆる方向へ果てなく、アリの巣より複雑に入り組み、ぎりぎり隣の通路に隣接している箇所もあれば、下へくぐって回避、はたまた上方向に傾き跨いで伸びている。
 魔女と人形から慌てて逃げたものの、青い子はハッと我に帰った。帽子をきゅきゅっと正しく被り直して立ち止まる。冒険の途中で挫けたら、後でリーダーや皆に何て云おう。
 もう一度、冷静になって。だって僕は、クラスで2番目に頭いいんだから!
 と、くるっと踵を返した所で、天使の声を聞いた気がした。
「ねぇ。君なんでこんな所にいるの? 迷子?」
 きゃー。澪に声を掛けられて、青い子はツイっと帽子を押し上げ、ぺらぺらぺー。
「迷子ではありません。僕はただいま魔女の竃を目指す冒険に出ている所なのです」
「魔女の竃って? それってどんなお話なのかな?」
 むむ。僕の前に怪しい女の人が次々と……。
「ちょっとキレイな女の人だからって、今度も僕が簡単に云う事を聞くと思ったら大間違いですよ」
 ……え?
「もう、そんな美少女天使の笑顔で惑わされる僕ではありません」
 ……ん?
「とても可愛いです! 女神様ーッ!」
 わぁっ! と眩しさに顔を赤らめ、両手で顔を覆う青の子の前で、極上の微笑みを崩さない澪の表情は、果たして女性に間違われ、子ども相手にキレるのは大人げないなーと我慢している顔なのか、既にデスマスクなのか、子どもには何にも判らない。子どもだから。

「じゃあ君達は魔女を倒しに行くのかな」
「行きますよ。友達との約束だから」
 意志が固い。友情って大事なんだ。彼にとっては、とても。
「魔女の竃には、誰が最初に行こうって云ったのかな」
 青い子は首を捻った。誰だったろう。
「僕ね、天使の力で未来が見えるんだけど……あっちにはもう戻らない方がいいよ。ここには今、とーっても怖い怪物が住んでるんだ。君達が聞いた物語とは違うんだよ」
 すいっと、遠くを指差した。魔女の竃のある方。
 羽根を広げた澪の身体がほんのり光ると、それはとても神々しくて、青い子の頭をぐわんぐわん鳴らし始めた。
「僕の仕事は命を守り、悪い者を浄化する事。君は勇気があるなら他の子達を連れ戻してあげて」
 仲間を第一に考えられる、それが真のヒーローだよ。
 何処か夢を見せられているようで、ぽっかぽか優しい気持ち。
 最後に見た澪の笑顔が印象的だった。後ろを振り向き、振り向き、そして青い子は元の分岐点へ向かって、てててーと駆け出して行ったのだ。
「あの子に、どうか届いていますように……」

●魔女の中指
 ──悪い魔女は、友達がいっぱいいる子どもは嫌いです。
 ──1人は弱い。たくさんは強い。

 他の猟兵の皆様より受け取った情報、通路の地形、そして蒸気音に混じりながらも届く声。
「あらゆる全てを元に行動すれば、彼らより先んじられましょう」
「……ん」
 唯一、子どもが居ない中指の通路を銀座・みよし(おやしきのみならいメイド・f00360)と白狼の背に乗るベール・ヌイ(桃から産めれぬ狐姫・f07989)は駆けていた。みよしは、ある時には機敏に、さっと立ち止まり、迷宮に偶然潜む鼠に語りかけ、『ダレモコナカッタヨ』『ダレモ』『ダレモ』の声を道標に真っ直ぐ真っ直ぐ進んで行った。
「……なにせ、主人より先に部屋に入って諸々の準備を整えるがメイドにございますれば」
 無駄なく、スピーディに物事を運ぶ事こそメイド(見習い)の鑑でございますれば。ひらーっとバレリーナのように飛び上がり駆ける姿は可憐で有能な『出来る人』の素質を持っている。

 さて恐らくは、みよしとベールが、今この迷宮に居る誰よりも、魔女の竃へ辿り着こう。他の猟兵達は無事に子ども達を竃へ近づける事なく、送り帰しているだろうか。それはまだ判らない。
 もしも万が一、何人かの子ども達が竃へ来るような事があるならば、彼女らは先に偵察に行く必要があるかもしれない。
「……事象は……ベール達、皆の行動で変わる……って云う」
「そうでございますね。きっと良き方へ進んでございましょう。何も心配する事はございません」
 緊張感が一瞬走りかけた所で、さささーっと、みよしの脚が止まって、鼠を捕まえた。
『チュウ!』
 耳がぴこぴこしている。可愛い。

●魔女の薬指
 すっすめ、すっすめ♪ ドンドンすっすめ♪
 3人と別れちゃったけど、行き先は同じだから心配ない。一番到着は赤いリーダーかな。それとも頭のいい黒かな、青かな。
「なーなーなー」
「ねーねーねー」
 掛け合いも弾む頃、一方で猟兵達は、こんな感じだった。
「冒険心は買うけどもニャ。ちびっ子が危ニャい場所に来たら叱るのは大人のつとめニャ」
「スターキャンディさん? こっちこっち」
「ニャニャ! マドモアゼル、ニャーに何か御用ですかニャ?」
 真ん中の中指の道へ入りかけたスターキャンディ・ベリーベリーベル(ケットシーの人・f00223)を深手村・うさぎ(イヴの骨・f04879)が手招きをして呼び止めた。
「ただいまニャーは、建築学の美のシンメトリーを目指すところニャ」
 5の奇数中央軸に左右展開するは、親指人差し指と薬指小指の2本ずつ。シンプルに中央の道へ進む事こそ美しい。
「いいから、いいから。中指の通路に子どもは居ないって、さっきみよしさん達が教えてくれたんだ」
「ニャ!」
 中指は、唯一子どもと会えない無人の通路だった。慎重かつ迅速に、散った子ども達の追跡調査と情報収集を行った数人の猟兵達は、恐らく惜しみなく他の同士達へ情報を渡しただろう。そして個々それぞれの判断で、直接子ども達に会う為に進んでいる者も居る。
 スターキャンディは数度頷き、影に潜むローブについた埃を念入りに払い、再度身だしなみを整えた。ケットシーであるニャーの可愛らしい姿が見えたら、脅かしの説得も半減ニャ。変装は完璧ニャ!
「それでは、ニャーは先回りして迎えるニャ。たとえちびっ子でも話せばわかるハズニャ」
「それはいいね。私も説得するつもりだ」
 2人で示し合わせた、その時、
『お父さん~、お父さん~♪』
 通路に大きく反響する呪言の歌が、遠くの天井より降り注ぎ始めた。
「この声、近づいて来るっ?」
『こ~ちら~を見ている~ま~お~、ま~お~♪』
 ま~お~♪ 響く声は、どんどんどんどんボリュームが拡張していき、2人の頭上を簡単に越えた今、広がる羽根は空間を滑るように割って疾走する。声の主は、どす黒いオーラを出しているセリエルフィナ・メルフォワーゼ(オラトリオのスカイダンサー・f08589)。彼女の歌は、先を歩いていた2人の子ども達の心臓をも震わせた。
「UDCアースで聞いた、怖がる子どもの為の、怖がる子どもによる、怖い子守歌。ま~♪」
 しめたニャ!
 たたたんっ。とローブのお化けが、子ども2人の前に踊り出ると、「ようこそ魔女の竃へ。おぼっちゃんたち」と足止めをした。ぎょっと仰け反る緑と黄。フツーに歩いていたら、後ろから迫る怖い歌。前に回りこんで来たのは……ちっちゃいけど、怖いローブのお化け。脱げた帽子をくしゃっと握り締めて、カタカタ震え出した。
「ご馳走がわざわざ歩いてやって来てくれるなんてありがたい。グツグツ煮込んでシチューにするか。じっくり焼いて丸焼きか。 さぁお好みはあるかい?」
 くるーんとローブのお化けは回り、落とした声で死霊騎士と死霊蛇竜とハロウィンかぼちゃおばけを召喚した。ん? 何故かぼちゃおばけが混ざるの。
「あわわ」
 それでも十分怖い。呆然と見つめる子ども達の前で、かぼちゃおばけが、りら、ぱっぱっぱー♪ はいっ。ほいっ。キレッキレの決めポーズを見せた後、一瞬で風のように去って行ってしまった。
 ……ええ?
 そして今度はそこへ。
 待ってー待ってー。
「君達ー。この先は魔女の竃じゃないよー。本当は悪い子の身体に乗り移るお化けが出るんだよ。早く帰らないと捕まっちゃうよー」
 和装の裾を粛々と割りながら、マラソン速度で駆けつけた雛月・朔(たんすのおばけ・f01179)が追いついて来た。一息ついた所で、肩から長い髪がするりと流れる。
「君達、本当に早く帰らないと」
 そう2人の子どもに向けて、ゆっくりと語り掛けた所で、
  
 ぎゃあああああああああああああああああっ!!!!!

 耳をつんざく悲鳴が2人分、通路全体に轟いた。わわわっと逃げようと走り掛けた2人は、正面で、ごっつんこ。あたふた引き返して身体を反転した所で、今度も2人お揃いで壁面に顔ごと、どっかんこ。
「え。今、私が話し掛けただけで、そこまで?」
 逆に朔が眼を丸くして動揺した。何が怖かったって、ローブのお化け×効果音(まーおー)×ハロウィンおばけ?? で、恐怖の極限ぎりぎりだった緊張の糸を、ふっと横から入った朔が、ちょんっと切ってしまったもので、ボロボロに崩れた様子。
 私、悪い事した?
 そんな事ないと思うニャ。
 たぶん。
「「ぎゃわわーんぎゃわわーん」」
「あ、違う。そっちじゃないって!」
 あんまりにもパニックになった2人は、止めるうさぎの前と通路を、ぐるぐるぐる円を描いて走り回り出して、どたばたと再び最初に踏み出した方向転換が魔女の竃行きになってしまった。
「は、話せば判るニャ!」
「ここは危ないから、おうちにかえろう。お母さん達も心配しているよ?」
 ぎゃわ、ぎゃわっ。
 子どもは予測不能なスイッチが、ポチッと入るからっ。ポチッと。
 申し訳ないけど、いっそ眠ってもらっちゃおうかなと思った、うさぎの奥の手が発動した。
「ねんねんころりよ~」
「……」
 子守唄を聞いた子達は、ふぎゃふぎゃ泣き疲れたのか、ぽてっと折り重なるように床に倒れた。
 寝たっ。
「ここで眠らせて……」
「どうするのニャ?」 
 セリエルフィナと朔とスターキャンディが、じー。
「猟兵の私らが災魔達を倒すまで、大人しくして貰っちゃおうかなって。……あは。もしかして途中で目が覚めたら、不味いかな?」
 戦いの最中に、竃に迷い込んで来たら、危ないし。
 こくり。セリエルフィナとスターキャンディは被ったローブのまま、魔王だぞ~のポーズをして見せた。

 ●魔女の親指
 ま~お~、ま~お~、ま~お~♪
 恐ろしい呪言が、じりじり迫る闇の如く、空間中を這い回っている。
 聞こえる範囲に居る者は、「おい。あれは誰の歌なんだ……」と、ちょっと内心、頭を抱えちゃった人もいるかもしれない。これは視覚ホラーとは違う、因習どろどろ心理破壊の心臓潰しの夜中のトイレ往復で絶望の淵に落とされる、じゃぱにずむホラーに似ているよね。
「わしはこわいおばけなのじゃ、触れた相手の魂を抜き取るのじゃ~」
 それに加えて、ハロウィンかぼちゃお化けが追いかけて来るものだから、たまったもんじゃない。
「うわっ。ばかばか。こっち来んな」
 赤い子が涙目で、自分を追って来た(セリエルフィナの効果音付き)ゆいの姿にびっくりして、ばたばた後ずさりから反転、走りかけたら速攻、べしょっとスッ転んだ。
「おいおい怪我ないか。そんなん調子じゃ、此処はまだお前には早いぜ」
 よっと、軽く首根っこ掴んで立たせてやると、赤い子はウタと「おばけなのじゃ~」と吼えるゆいをまじまじと見つめ、実はお化けでも何でもない事を理解した途端、ぶーたれた。
「誰」
「『転校生』。判るだろ?」
「あー……。すっげぇ強いって噂の。初めて会った。兄ちゃん達、強いの?」
「お前より強いってのは確かだぜっ」
 かぼちゃ頭を、すぽっと脱いだゆいも「だぜっ」と答え、それじゃ次、たっぷり脅かしてやるからね~と、すたすた去って行った。
 ほわーっ。眼をまん丸にして、「すげぇ」って顔をした。
 アルダワ魔法学園に訪れる猟兵達は、学園内の人間に『転校生』として認識されている。地下迷宮の禁忌も含め、学園の生徒なら知っていて当たり前の常識だ。そして現在進行形で、この先に何があるか、しっかりとこの子に伝えなければならない。
「んー、でも地下迷宮ってさっ。センセー達が『ここは危ないのです』のダメダメばっかで、詳しく教えてくれないんだもん。どんな怪物が居るとか、迷路の仕掛けとかっ、自分で見てみたいじゃん!」
 授業と話だけじゃ判らない事は、この世の中いっぱいあるよ。
「元気なガキんちょは嫌いじゃないぜ。そん位でなきゃ将来、災魔と戦えないもんな」
 むー……、でもあいつなら歴史の授業を真面目に受けてっから、ちょっとは知ってたのかも。と、擦った膝小僧を自分ですりすりと撫でながら呟いた。
「あいつ?」
「皆とお揃いの黒ローブのあいつ。うちのクラス長でバカ真面目女子」
「へー?」
 魔女の竃に行きたいって云ったの、あいつだった筈なんだけどな。だから一緒に連れて行ってやろうって思ったのに。ぶつぶつぶつ。
「?」
「なん、でも、ない、よっ! 独り言!」
 一言ずつ、噛み締めるように『この話には踏み込ませないぞ(自分で勝手に喋ったんだけど)』バリアを張った。顔も赤いぞ。
 しかし今、黒い子は、ここには居ない。ちょっぴり喧嘩別れをしたせいか、赤い子は気まずい顔に変わった。やれやれとウタは取り出したギターのボディを軽く叩いた。
「さっきも云ったけど、お前らに此処は、まだ早い。もうちょい強くなってからがいいぜ。己を知り……って言葉聞いてるだろ?」
 己を知り己に克て、だろうか。まだ無力で無知な自分自身を知り、とにかく頑張れって事だ。弦を軽く爪弾き、奏でる音と重なるウタの声は、中世の吟遊詩人のように聞く者の心に染み渡ってゆく。
「だからな。約束だ。今はまだ無茶はしない」
 こくっと頷いた。
「そしたら、後で俺達の魔女の竃での土産話を一番にしてやるからな」
「ホント?!」
 赤い子が眼を輝かせ、尊敬の気持ちをバシバシぶつけ始めた。
 
●魔女の人差し指
「可愛い子、見ーつけましたわっ♪」
 可愛い少年少女達を助けたい、護りたい。その庇護心を燃やし続けるアリア・テァラリード(エトワールシュバリエ・f04271)は、てててっと走っていた黒い子を見つけた。
「……ダメ、です。こっちダメ」
 追いかけっこをして、どちらが早いかは自明の理。そうでなくともアリアには、この距離差なら楽に捕まえられる手札を持ち合わせている。それを使わせる事なく、黒い子は走りを止め、首を横に振って、こっちに来ないで欲しいと訴えた。
 本当に小さな子。そして唯一の女の子。
 アリアと同じ通路を探り当てて来たレイ・レン(ヒトリ《物語》・f02110)は大人の歩幅で以って、女の子を追い越し、行き先を塞いだ。
「何故こうもバカな事をする生徒が後を絶たないのか。好奇心は猫をも殺すと言う言葉を知らないのか?」
 ごっこ遊びでは済まない危険がこの先にある。それを止めに、猟兵達はやって来たのだ。
「そうですよ。今、魔女の竃は危険なんです。どうしてそんなに行きたいのかしら」
「此処から先は、貴様らの力では実力不足だ。どうしても通りたいのであれば、小生を倒してみせろ」
 自分より何倍も背丈がある大人から、じっと見下ろされる威圧感は、一般の子どもなら尚更、すくみ上がるだろう。しかし、レイはその先があると内心、予測していた。
「まぁ、不可能だがな」
 5人の中で実は、彼女が一番実力がある。だからこそのクラス長で優等生なのだ。しかし、当然ながら猟兵のレイの相手になりえない。
「やっ!」
 高い囀りに聞こえる掛け声と共に突き出される短剣に対して、レイは一切手出しをしなかったが、ぴょんぴょん跳ねる俊敏なステップをゆったりと紙一重で身を引いた。この歴然たる差。ものの五分も持ちそうにないと、肩をすくめるアリアが視界の端に映るが、この子は5人の中で聡い。
「やっ。やっ」
 それでなくとも、表情が全く読めない大人の自分と対峙して、逆らおうと思う子どもは稀有だろう。
「(この子どもは……)」
 冒険を邪魔されて、力不足だから帰れと云われて、ただ不貞腐れて駄々を捏ねている子どもなのではないのだと、レイは眼をひそめて察した。何処か思いつめた大きな瞳をレイに向けている。
「これから起こる危険は、小生よりも更に強いぞ」
 殺傷力も微塵もない小さな探検を軽く受け逸らした途端、黒い子は反動で床の上に転々と尻餅をつき、転がった。ほら、不足。何に置いてもだ。
「諦めて、このまま帰るがいい」

 ──この迷宮に皆を連れて来る切っ掛けを作ったのは、だぁれ?
 誰も気にしなかったけれど、本当の切っ掛けを作った子は、1人だけ居る。黒いトンガリ帽子の縁を小さな手で強く握り締めて目深に下げたまま唇をきゅっと結んで、震え出した。レイに叱咤されて身が縮こまってしまったのは、ここに友達を誘導して来た危険について、教科書や授業で習う事とは全く違うリアリティを初めて肌で感じて知ってしまったからだ。
 ぷるぷると子リスのように震えて、冷たい石床の上に座り込んでしまった。
 立ち上がれない。一歩も動けない。
 もっともっと強く厳しく「自分で帰れ」と命令されたとしても、動けない。震える子にアリアが、すっと手を差し伸べた。
「まったくっ。可愛い女の子の心をバッキバッキンに折ってどうするんですの?」
「……」
 表情が読めないレイに、まあ、そんなつもりはなかったのは察しますけれどもと、唇を尖らせて、黒い子の前に両膝を着き、トンガリ帽からこぼれる髪を優しく撫でた。
 何も心配ない。全部上手く行く。
「お姉ちゃんは、皆を護る為に、この迷宮の災魔と戦って来ますからね」
 他の友達も、お姉ちゃんと同じ猟兵が今、助けています。
「不安ですか? 怖いですか?」
 こくこくと頷いた。
「そんな可愛い子には勇気を与えるおまじない、お姉ちゃんが抱きしめてあげますっ」
 少し頬を染め照れては戸惑った後、おずおずと両手を広げて、小さく呟いた。
「お願い、なのです。かむひあ、です」
「あーん♪ お姉ちゃんが絶対に守ってみせますっ!」
 ぐわっしィィッ! 勢いで飛び込んだアリアの強烈なハグが炸裂した。ばいんばいんと揺れる98cmバストに挟まれてしまった小さな身体は、マシュマロのように脆く柔らか過ぎて、
 ……こきゅ。
「ンNoOOOOooooォオOOOOoooオォOOOOOーッ!!」
「落ち着け。大丈夫だ」
 ちょっぴり変な音と共に昏倒してしまった女の子を抱きかかえたレイは溜息をついた。

●魔女の竃
 運がいいと云えば運がいい。
 何がどうなってこうなった。分岐点へ子どもを送り返すつもりが、帰ったのは青い子だけ。
 5本の通路を抜け、再び開けた間『魔女の竃』に辿り着き、ここに集うは猟兵のみ……の筈だった。
 ちょーん。
 ちょーちょーん。
 フンッ。
「あれ、何人か帰せなかった?」
 カタカタカタ。
「…………思った以上に、ウルトラ体当たりな待遇が展開して……ひとりで帰れない子が……」
「え。それ誰の科白?」
 うっ! と、自らの顔を覆うアリアとうさぎが。
 昏倒している黒い子と、すぴぴぴぷーと平和そうに眠っている緑の子と黄の子。その前に陣取り、胡坐をかく赤い子。
「パーティの危機を聞いたら、リーダーの俺が来ない訳には行かないじゃん!」
 一人でも子どもが残ったら、自動的に赤がくっついて来るのかよ。いや、そんな予定はなかったのだけれども。
「いや、帰す、帰すぜ。話は判ってんだぜ、こいつ」
 ウタが、ぐりぐりぐりとトンガリ帽子を捏ねて、首根っこを摘んで、ぷらーんとぶら下げると、ぽたっと血が石床に垂れ落ちた。
「あ、俺、血が出た」
 擦り剥いていた膝から、じわじわ血が滲み出て来たのだろう。
 も……どうしよう。

「私が救命措置をやりましょう」
「「君が救世主かッ!」」
 猟兵の中で救助担当に名乗り出てくれたのは霧中・真理(レーヴァテイン・f06420)だった。
 きゅーっと、ちょっぴり昏倒している小さな黒の子の手足、身体の状態を診た後、ボトル水から浸した濡れた布を額に乗せ、赤い子の擦り剥いた膝には消毒と、次々と手早く処置して行った。
「私の救助の用意は無駄になっても良かったですし、でも、もしも何かあった時にはと思ったんです」
 元気な子どもに怪我はつきものでしょう。簡単に転ぶのが子どもでしょう。
 8人兄弟の次男として育った彼は、弟妹達の怪我病気を何度看て来た事だろう。
「やり過ぎたかしら」
 わわわ悲鳴上げるアリアに、真理は、ふっと柔らかく笑った。
「大丈夫ですよ。この子の今の寝顔、幸せそうです」
 マシュマロな頬は、ほんのりピンクに染まり、小さな口は笑みを浮かべているようにさえ見える。
「きっと貴方が全て何もかも包み込んでくれて、彼女の心配事が晴れたのでしょうかね」
 
 さて、見渡すは『魔女の竃』。今は何も気配を……感じない筈だ。
 ざざざんっ。
 その時、皆の目前で滑走する足底が、石床の上に砂煙を撒き散らしながら孤を描いた後、停止した。
 何でそこに?!
「可愛いメイドさん(見習い)のわたくし、銀座みよし、自らのスピードにかけて、賢く勇敢であられます皆様の前に急ぎ参ったのでございます!」 
 誰よりも先に魔女の竃へ辿り着いていた出来るメイドだ。周囲の状況を手早く伝える。
「帰り道は、一緒に戻るといい。小生達が付いてやりたいが、そうも行かない」
 その間、レイが赤い子に告げる。猟兵達が通って来た通路は、僅かな小動物は居たが、トラップも災魔の気配ひとつしなかった安全な道だ。子ども達だけで帰しても大丈夫だと、強く云える。
 子ども達は直接、災魔を目にした訳ではないが、皆がそれぞれの方法で危険を教え、レイが好奇心を律し、澪が願い、まだまだ冒険者のタマゴ達には、この地下迷宮探索は早過ぎると丁寧に教えた。最後にみよしが、復活した子ども達に訥々と伝える。
「小さな子らによる冒険譚は、心が躍るもの」
 判る。
「しかしそれは『賢く勇敢で』という但し書き通りに、まず賢くあらねばならぬのでございます」
 その通り。
 こくりと頷いた。
 悪い魔女に勝った女の子は、賢く勇敢だったから竃から出られた。
 それは、とてもとても強い力や恵まれた才能を持っていたからではなく、「弱い自分」を知っていたから。だから頑張れた。己を知り己に克つ。
 
「じゃ、此処から先は……危ないよぉ……食べられちゃうから、皆で帰ってねぇ……」
 帰るよねぇ……?
 ベールの身体の下で大きく開いた口から牙を見せる白狼の姿を見て、鼻血止めの鼻栓をした緑の子と黄の子は、高速頷きを、こくこくこくこく。それを見たベールと白狼の眼差しは、ほんのり優しく変化した。
 歩み寄る白狼の背から身を乗り出し、腕を伸ばしたベールは、
「でも……ここまでこれた勇気に……これあげるよぉ……」
 小さなきび団子を子ども達の手に乗せていった。
「きび団子!」
「あ、このお菓子知ってた?」
 うんうん。知ってる! 有難う!
「良かった……」
 わぁっと、まんまるいお団子を両手を高く掲げて大喜びする子ども達を見て、ベールはふっかふかの尾を揺らめかせ、白狼の首を撫でた。
「そんじゃ、兄ちゃん達、さよなら、また!」
 別れと共に、猟兵達がこの場へ向き直った。

 ふと、通路へ振り返ったウタの視線の先には、赤い男の子が佇み、名残惜しそうにウタを見ていた。目が合った途端、二カッと笑って、天へ幼い両腕を振り上げる。
 ああ、そうだな。猟兵達の背の向こうには、起こるべく恐怖から無事に遠ざけた子ども達が居る。そしてギターの音に乗せて発した言ノ葉は『約束を結ぶ』という実と成り、確かに小さな者達へ贈られた。
 受け取った小さな者達は待っている。
 誰でもない。
 君を、君達をだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『書物の魔物』

POW   :    魔書の記述
予め【状況に適したページを開き魔力を蓄える】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    ページカッター
レベル分の1秒で【刃に変えた自分のページ】を発射できる。
WIZ   :    ビブリオマジック
レベル×5本の【毒】属性の【インク魔法弾】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

木霊・ウタ
心情
いよいよ魔女の竃か
あいつらとの約束もある
負けられないぜ
さあ災魔をぶっ倒そうぜ

手段
ワイルドウィンドで歌い奏でながら戦い
皆を鼓舞するぜ
;コミュ力&パフォーマンス&楽器演奏&歌唱&手をつなぐ&勇気

未来へ進もうぜ!

炎を纏わせた焔摩天でまとめてぶっ飛ばすぜ
;鎧砕き&薙ぎ払い&属性攻撃&破魔

紙だけによく燃えそうだよな

ブレイズも行くぜ
さあダンスを踊ってもらおうか
お相手は地獄の焔摩だけどな(にやり

この世界の未来は
あいつらの(子供たちを思い浮かべて)
皆のものだ
災魔に渡しゃしねぇぜ!

頁やインクは武器受けで防御
炎による延焼で余計な被害が出ないよう注意


栗花落・澪
さてと
待ってくれてる子供達のためにも
本腰入れていきましょうかね

猟兵の中にPOW特化の人がいれば
前線は任せて遠距離から【援護射撃】
不在の場合は【空中戦】を生かし
極力敵の近くを素早く飛行し囮の役目をしながら隙を見て【全力魔法、範囲攻撃】

綺麗な花には棘がある、なんてね
……僕の事じゃないよ!?

敵の攻撃時に予備動作がある場合は【見切り】
得た情報は随時仲間達に共有するよ

攻撃する隙を得られるまでは
【催眠術】効果のある【優しい、歌唱】で
敵の動きを鈍らせる
または一時的な仲間割れでも誘発出来ないか挑戦
…耳ってあるのかな、この敵……

出血を伴う怪我人が出た場合
サンクトゥ・オラティオニスで癒す

アドリブ、絡み歓迎です


東雲・ゆい
見て見て! これかなり本だよ!
動く本が見られるなんてさっすがアルダワねー
アルダワが、そこにあるだわ
ほっとんど観光がてらに来ちゃったけどお仕事もしましょーかねー

じゃけん★グラフィティスプラッシュでべったべたにしましょねー
もうね、そこら中カラフルにするの
ほうら見栄えが良くなったろう?
本なんて濡らせば終わりだからね! ブックだけに、ぶっくぶく

あっ、そうだ(唐突)
とくに意味はないけど★グッドナイス・ブレイヴァーで配信しようねー
わたしの最高にイケてるバトルを見せるのさァ
でもうちの視聴者って、わたしがピンチになるほうが嬉しいみたい……傷つくわー



●魔女の竃
 ──美味しい『パン』を焼くんだ。決して竃の火を消すんじゃないよ。
 ──じっくり何日も温めておくんだ。
 ──さあ、お前。温度を測っておいで。さあ、さあ!

 赤い子は一部の猟兵にからかわれ耳を真っ赤にしながら、黒い子を背負い、緑と黄の子と一緒に帰った。後で緑の子がコッソリ耳打ちくれた話に笑う人も居るかもしれないけれど。
「リーダーはね。黒が笑った時が一番嬉しいんだって」
 うん、判りやすい!

 改めて見る魔女の竃は、錆色のパイプとバルブ、そして煉瓦石と粘土が怪奇融合した材質に一面覆われた巨大石窯だった。あちらこちら破れたパイプの穴から噴出する蒸気が空間の四方を覆い、猟兵達をざわつかせる。
「いよいよ魔女の竃か。あいつらとの約束もある。負けられないぜ」
 ぱしっとワイルドウィンドのネックを反対の手に持ち替えた木霊・ウタの視線は、共にこの場に立つ栗花落・澪と東雲・ゆいの猟兵達に向いた。
「竃に着いたら、そっこーバトルだと思ってたのだわー」
 後方に動画撮影ドローンを張り付かせたゆいが背伸びをしながら、愛用のペイントブキで周辺のパイプを叩いて辺りを伺い、コン、カンと軽妙な音に混じる蒸気音に一瞬顔が引き締まっては解けていた。ちょっと笑顔サービスを後ろに向ける事も忘れない。澪とウタが顔を合わせる。
「「動画配信?」」
「わたしの最高にイケてるバトルを見せるのさァ」
 ツインテールを摘みあげて、ポーズ。
「でもうちの視聴者って、わたしがピンチになるほうが嬉しいみたい……傷つくわー」
 肩落としつつ、コンコン。
「まあバトルの話については、僕もそう思ったんだけど」
 ゆいと話しながらも澪は周囲の観察に隙が無い。予感は十分にする。
 ここは危険だと、カラスのおまけの子は云っていたのだから、それは起こるべく事象であり、ゆいが、コツッと叩いたのも起こるべくして起こっただけの事。
「うわぉー。見て見て! これかなりの本だよ!」
「来た」
 振り向いた澪の髪を瞬時に弄り、蒸気が強く噴き出しパイプに覆われた壁が隆起した途端、爆ぜ、瓦解した隙間が更に拡大しつつ無数の書物がロケット噴射の如く大量に飛び出した。
「動く本が見られるなんてさっすがアルダワねー。アルダワが、そこに『あるだわ』」
「「……」」
 きゃは★
 たくさんはコワい。
 一冊一冊の書物は、最早意志を持つ生き物の如く。
 天井に激突するかと思われた時、頁が開いた無数の紙のはためきは、巨大な羽ばたきと化し、意志を持つ猛禽類かと見紛う旋回と疾風に転換して、場に居る猟兵達に襲い掛ろうとする。
 これが本来、子ども達に襲い掛かる筈だった『危険』。
 しかし3人に焦りは、全くない。余裕すらもある。
「ほっとんど観光がてらに来ちゃったけど、お仕事もしましょーかねー」
 ゆいが云うと、自分の髪を払う澪が頷く。
「そうだね。本腰入れていきましょうかね」
 待ってくれてる子ども達のためにも。

「さあ災魔をぶっ倒そうぜっ」

 旋回は鋭い螺旋を描き、焔摩天の梵字から炎纏うウタの巨大剣に一点激突した。接した点から噴き上がる獄炎は猛禽の嘴を次々と灰と化し、その舞い落ちる灰すら、ゆいが極彩色にペイントブギで撫でながら染め、澪が猛禽の制空権を奪い、鈴蘭の花びらを降らせる。
「もっと、べったべったにしましょねー。本なんて濡らせば終わりだからね!」
 紙紙、床床、仲間を避けたあらゆる物に、容赦なく塗料を撒き散らすゆいは、実に「ほうら見栄えが良くなったろう?」とドローンにウィンクを飛ばしている。その合間を滑るように澪は空中で猛禽より速く飛行し、無数に襲い来る毒々しい魔法弾を避け、鈴蘭を降らせ続ける。可憐な花弁が雪のように零れては、澪の身体を纏うベールのように白く靡き、猛禽の書物を次々と攻撃した。
「綺麗な花には棘がある、なんてね。……僕の事じゃないよ」
 かわいいはコワい。
 何処かの猟兵の一部が呟いたものの、多分ゆいと一緒に動画に映っていたなら、視聴者の応援の方は「か・わ・い・い、か・わ・い・い」と応援が2倍に膨れ上がったに違いない。
「そんじゃ、さあダンスを踊って貰おうか。お相手は地獄の焔摩だけどな」
 にやりと笑うウタの手にはワイルドウィンド。ゆいのそこら中カラフルにした空間と澪の純潔の花で、無力にも瓦解し始めた巨大な猛禽なる書物の群れは炎の花を咲かせ、見る間に極彩色の空を飛ぶ数羽の白鳩達のように弱小し始めた。
 澪の数羽の鳩に送る歌。
 眠れ。乱れ狂え、と優しく揺籃の響きを注ぐと、駆けるウタの脚が速く速く、カラフルな水溜りに軌跡を残し、我が身から噴出す紅蓮の炎を残る鳩へ。
ある日、無邪気に冒険に出かけた子ども達。
「この世界の未来は、あいつらの、皆のものだ。災魔に渡しゃしねぇぜ!」
ウタがネックに片指を素早く滑らせ掴んだ所で、最後に弾く弦は炎を躍らせ、最後の一冊の鳩を灰色に塗り替えた。

 未来へ進もうぜ!

「倒した、かな」
 澪が周囲に見渡した後の静けさ。しかし、まだそこにある脅威。
 続くもの。
 次なる気配を感じる。
「ボス?」
 ゆいを柔らかく手で制し、周辺の警戒と観察力が鋭い澪が答える。
「まだ居るみたい」
 別の壁面が蟲の羽音の如く、耳障りな音を立てながら破壊され、再び無数の書物が猟兵達の眼前に現れた。

 再戦。
 次なる勇敢なる猟兵達へ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧中・真理
属性攻撃、範囲攻撃、なぎ払い

書物ということで、此処はひとつ焚書と行きましょうか。いえ、本来は書物というものは人類の資産と申しますかとてもとても貴重で代えがたいものではあるのですが…まぁこれなら遠慮はいらないでしょう

援護射撃、クイックドロウ、2回攻撃、かばう、スナイパー、武器落とし

火が危険そうならば銃撃で牽制射撃を行いつつ皆さんの補助に回りましょう。すべきことは多い筈です。しかし、青春でしたねぇ、良いものです。


救助活動、医術
多少は残りがありますから、落ち着いたところで手当てでもできればいいですね。


雛月・朔
桐箪笥のヤドリガミです、戦闘は当然肉体が参加。
WIZをメインに戦闘
保持技能:掃除1、なぎ払い1、フェイント1
使用ユーベルコード:「棚から牡丹餅」


【心情】前回はあまり活躍できなかったので今回は汚名返上がてらに頑張ります!
といってもオブリビオンとの戦闘は猟兵となって初めてなので集団行動を乱さないように行動し、
孤立しないように心がけます。


【行動】
攻撃する際は薙刀がメインになりますが、ユーベルコードでの回復役に回ろうかと。
攻撃手が少なければ前衛にでます。
ヤドリガミなので肉体に致死ダメージを負っても本体が大丈夫なら…。


アリア・ティアラリード
「そうは… させませんっ!!」

目前の魔書の気配。得体の知れない魔物の動き。
アリアの《第六感》が敵の不穏な気配をおぼろげに感知して、彼女を駆けさせる。
魔力を蓄積させる隙を与えぬよう《残像》を残すほどの《ダッシュ》で切り込みながら
《2回攻撃》からの【飛櫻剣】を繰り出して!!

「みんなを傷つけるなんて……させないっ!『パラレル・フォースブレード』!!」

強力な一撃を仲間に放つべく魔力を蓄え始めた魔書に、閃速の二重攻撃を繰り出します
ほぼ二発が重なった状態で打ち出される、二回のフォース斬撃。
敵の魔力蓄積を妨げることに成功すれば、仲間の猟兵はよりアグレッシブに立ち回れるでしょうか…


アリーチェ・カンタービレ
接近戦はまだ得意じゃないし
ワタシはなるべく後衛で戦うことにするね
今回は魔女とお伽話の依頼だし、童話シリーズで攻めてみよっか

初手は【高速詠唱】で【呪詛】を
その後は【歌唱】による攻撃に専念するよ
魔術の記述は、邪魔できそうだったら邪魔しちゃう

『寂しい魔女が死に 雪は灰色に濁った
 零れた僕の血も 紅を忘れていた』
本を燃やすのは、灰色の炎

敵がビブリオマジックを発動したら、
【シンフォニック・キュア】でみんなを回復させるね

『毒林檎にガラスの靴 王子様はまだ来ない
 もういっぱい もういっぱい プリンセスは百年ふて寝』
……と、さっきとは打って変わってコミカルな歌
もちろん、ただのハッピーエンドじゃ済ませないけど


深手村・うさぎ
引き続き【SPD】で参加するよ!
子供たちを眠らせちゃったのはちょっと反省っ!でも戦いの方は頑張って良いところ見せるんだから。
どちらかというとサポートに回る。なんたって敵は沢山のページを蓄えた本だからね!
ユーベルコード【咎力封じ】で相手の攻撃を封じるよ。
「みんなの邪魔はさせないよ!」
みんなに攻撃しやすい隙を作ってあげるんだ。
攻撃が飛んで来たらなるべく後ろに下がって回避。敵を倒して次に行かないと魔女にはたどり着けないから余力は残さなくちゃ!
「いいところ、みせれたかな」
想像したのは、途中であった子供たちのこと。早く倒して次に進もう!


銀座・みよし
子供たちは良い子でございましたね…
ならば次なる目標は良い子に、ちゃんとした魔女の竈の報告を行うことにございましょう
ですがその前に、散らかった本のお片付けと参りましょう

本が猛禽類のように襲い掛かるというならば…
本物の猛禽類をお見せするより他ありませんね
隼の瞳は太陽と月で出来ている――巨大隼のホルスさんを呼びます

彼は隼さんですので【空中戦】は得意にございます
わたくしの方は…【気合い】を入れて【騎乗】しないと振り落とされてしまいそうになりますが、
【援護射撃】はお任せくださいませ
何なら【2回攻撃】もやり遂げて見せましょうとも

しかし動く本ならば自分で本棚に収まってくれないかしら

※アドリブや絡みOKです



●魔女の竃の瓦礫
 ───センセー。女の子は、悪い魔女に食べられちゃうんですか。
 ───子ども達は、女の子の絶体絶命に息をのみました。
 ──先生は、にっこりと微笑みました。
 ───その答えは?

 アリア・ティアラリードの耳朶を激しく嬲るソレは蟲の羽音に似ている。
 もうひとつ破壊された壁面跡から全貌を現した無数の魔書の群れは、先の猛禽類より微細な動きで、紐解かれる度に無数の共振音で空間を満たし、猟兵達を次々と襲い始め散らした。反射的にアリアと共に襲撃を避けた銀座・みよしは足を止め、爪先立ちで自分より遥か頭上を見回した。
「動く本ならば、自分で本棚に収まってくれないかしら」
 彼女の視界には、剥がれた壁面の奥、書架の役割をしていたと思われる蜂窩形態した無数の穴から、今も飛び出して来る巨大蜂の大群と見紛う無数の書物が飛ぶ光景が映っている。
 魔書と呼ばれる災魔の主構造は紙だと、霧中・真理は観察し、頭の中で情報を整理する。
「書物には、此処はひとつ焚書と行きましょうか。いえ、本来は書物というものは人類の資産と申しますか、とてもとても貴重で代えがたいものではあるのですが……」
 まぁこれなら遠慮はいらないでしょう。
 個体全てが意志を持つに等しく、それぞれの猟兵を狙い乱舞しようが、瞬く間に統率の群棲に取り込まれ圧を発し、空中に飛んでいる。
 みよしも、それらの姿を見たからには、「本物の猛禽類をお見せするより他ありませんね」出さぬ訳にはいかないだろう。
「ちょっと空までおつかいに参りましょう」
 ホルス・ハルウェル・ハロエリス──召喚。
 太陽と月で出来ている瞳を有した神話級の巨大隼の背に、軽やかに飛び乗ったみよしは、魔書を撹乱するべく飛翔する。但し、今この場に飛散している魔書は猛禽ではなく、巨大蜂の動きであり、隼とどちらが強く速いかは自明の理だが、旋回する隼に群れが肉薄し、襲おうとする。咄嗟に高まる少女の防御力。激突した。
魔書の群れが隼の羽根を削ぎ落としていく。
 たくさんはコワい。
「数が多過ぎですわ。まるで蜂の軍隊みたいに」
 先ほどの動線が判り易かったパワーとスピード押しの猛禽の塊とは異なる、スピード技巧主体の動きだ。
 五感から更なる第六感を研ぎ澄ませていたアリアは、ちっと舌打ちに似た呟きを桜色の唇から漏らすと同時に石床を蹴り、無数に共振する群れに飛櫻剣の閃速の衝撃を二重に繰り出した。
「みんなを傷つけるなんて……させないっ!『パラレル・フォースブレード』!!」
 更に地を駆ける。
 己に飛ぶ無数の刃をジグザグに走り抜けつつ上体を捻りかわし、魔書の魔力上昇を阻害すべく遠隔の捕縛で個体ずつでも引きずり落とし叩き付ける。

「大丈夫ですかっ」
 明らかに失速し、高度を下げて来た隼の尊い羽毛に覆われた身体を切り裂く幾つものページカッターを薙刀で払い落とした雛月・朔が、手を翳し『時には思いがけない幸運も得るだろう』呪い(まじない)の言ノ葉を呟くと、何処からともなく現れた牡丹餅がみよしに命中した。
 ぽこっ。
「痛っ! ……あ、痛くないです?!」
 途端に、眼をまん丸にして驚くみよしの傷を高速治療し始めた。
 薙刀の一閃が群がる魔書を払うと、魔書が一群となり空中を飛来して行く。
「子ども達の対応をしていた時には、あまり活躍出来なかったので、今度は汚名返上がてらに頑張ります」
 朔はそう云いながら、少し手にしていた薙刀に凭れかかり、そっと脱力感を打ち消すかのように一息つく。
「私も!」
 手助けに飛び込んで来た深手村・うさぎが、『咎力封じ』を尚も仲間を狙う魔書へ放ち、それらで拘束した魔書のユーベルコードを封じながら云う。
「さっきは子ども達を眠らせちゃったのは、ちょっと反省! でも戦いの方は頑張って良いところ見せるんだから!」
「ワタシは、接近戦はまだ得意じゃないし、なるべく後衛で戦うことにするね」
 弾む声のうさぎと対照に、静かにアリーチェ・カンタービレは話しながら、すすっと距離をとった。
「遠っ!」

 ふくふくまぁるい顔をした黄色い子。
 ちょっと背が高めの緑の子。
 2人の子ども達を思い出す。
 もっとこうしておけば良かったと後悔するのは、いつでも誰でも思うこと。

「ふふ。子ども達は良い子でございましたね……」
真理も頷く。
「しかし、青春でしたねぇ、良いものです」
ならば次なる目標は良い子に、ちゃんと魔女の竃の報告を行う事にございましょう。
この竃なる場所に巣食う、悪い災魔達(魔女)を倒した武勇伝を。
ぴらっと、可愛いフリルエプロンを揺らすメイド(見習い)みよしの言葉に、うさぎと朔とアリーチェは頷きあった。
「ですが、その前に散らかった本のお片づけと参りましょう」
両手を打ち合わせ、にこりと笑うみよしの声は、何処か明るかった。
その言葉に背を押されるかのように、
「さぁ、みんなの邪魔はさせないよ!」
 露払いとして、アリア、真理達が攻撃しやすい隙を作くりあげていくうさぎは、己に飛ぶ攻撃を、横、後方と回避しては、魔書を拘束し、敵の戦闘力を上昇させず、朔は人の姿では、たおやかな線の細い青少年に思えるが、前身は桐箪笥のヤドリガミ。大概の屋敷に鎮座して来たであろうその前身を思えば、後衛陣の前に立ち、薙刀を振り割く姿は、皆が納得する。最小の足捌きで自身の移動が少ない分、背側で薙刀の長柄を一転二転と回し繰ったかと思うと、流れる構えで長柄と切っ先を上下転じ、下段から刃を振り上げ、魔書の表紙を、次の背を、紙を次々と斬り割いた。
 横並ぶ霧中・真理は、スーツの内側から抜き出した自動拳銃《ポップコーン》を手にし、前方に突き出すと同時に、炎を飛来する群れの一冊一冊へ連射し、後方に留まり仲間の回復に従事するアリーチェへの侵攻を食い止めようとする。
だが攻撃する端から群れから零れた一部は上昇して、再び急下降する。
バラバラに開いた書物達が、捌きれなかった量だけ、「く……」真理達の遥か頭上で折り重なり、降り落ちる。次々と急速に積みあがる魔書の山に埋もれた真理とアリーチェを、朔が刺突や石突を使用した打突で魔書を崩して救出すると、牡丹餅を投げる。
 2人の傷の痛みが和らぐと同時に、朔はその代償の疲労を負う。
 また燃える魔書は綻びながら紙の切れ端を床へ撒き散らす一方、毒を含むインクの魔法弾を放ち始めた。それは猟兵達の身体を穿つ。
 アリーチェの瞳が強い意志を湛え、開く。
「今回は魔女とお伽話の依頼だし、童話シリーズで攻めてみよっか」
 拘束詠唱で紡ぎ歌う物語は、こう。

『寂しい魔女が死に 雪は灰色に濁った
 零れた僕の血も 紅を忘れていた』

 呪詛攻撃より治療の『シンフォニック・キュア』の歌声として使われ、アリーチェの歌声を耳にした真理達を治療して行った。解毒されていく毒素と痛みの和らぎに追随するかのように、次はガラリとコミカルに転じて歌う。

 次は、こう。

『毒林檎にガラスの靴 王子様はまだ来ない
 もういっぱい もういっぱい プリンセスは百年ふて寝』

 ぶほっ!
 誰か、ちょっと吹いた。
 でも、癒されたとも。

 互いを支援する連携が、どんどん魔書の数を減らして行った。
 残るは僅か。
 真理の炎に焼かれていく紙片が火の粉を散らし、辺りに舞い出す。肌と髪にそれらが触れようとも、アリアは一切厭わず進む。徐々に研ぎました第六感が、降り落ちていく炎の燐粉を包む空気の流れすら捉えて来る。
 残る魔書が飛来して来る軌道で、アリアは吸気し足を止める。
 行く。
「これで終わりです! 『パラレル・フォースブレード』!!」
 今の彼女には背を押し出してくれる真理の炎、みよしとうさぎの援護射撃と、朔とアリーチェの回復がある。一歩から、魔書が魔力を蓄積する隙を与えぬよう残像を残す程のダッシュで切り込みながら、2回攻撃からの飛櫻剣を繰り出して、見えない【衝撃波と共にフォースの刃】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。

 そして最後に強力な閃速の二重斬撃を繰り出し、魔書を全て滅した。


 崩れた壁面の瓦礫と、閑散した空間。『魔女の竃』は崩壊していた。
 しかし暫し、残されたものは『静寂』だった。
「終わった……ね」
「結構掛かりましたね」
 残務に周辺をチェックする猟兵達。
「なんたって敵は沢山のページを蓄えた本だったからね!」
 互いに話す間、1ページ1ページに記された文字は、何だったのだろうとアリーチェとは口元に指先を添え、少し思案する。そこにはどれだけのお伽話が詰まっていたのか。それは判らない。

 真理が片手でスーツのネクタイを解き、息をついたかと思うと、自身の傷は元より、互いの疲労と怪我の具合も診て行く。幸い殆どは、手厚い支援と補助と回復で互いを助け合ったお陰で、大きな怪我どころか致命傷を受けた者は誰もいなかった。これなら用意した治療道具も、まだまだもつだろう。
 ぺっと鼻の頭に絆創膏を貼られたうさぎは、「いいところ、みせれたかな」と、少し優しく呟いた。
頭に浮かぶのは、出会った子ども達の事。
「さぁ、それでは次に進みましょうか!」
 みよしの明るい声が皆を鼓舞した所で、揚々と立ち上がりかけた瞬間、それは突然だった。

 咆哮。

 地を這う声は、人の背筋をおぞましく恐怖、不快という名の蟲が這い上がるかのような錯覚を覚えた。
 轟く咆哮は威圧を、この地下迷宮全てに解放しているのか。

「あれが魔女……?」
「そういう事にしておきましょうか」
 朔の問いに、アリアが挑戦的な艶めいた目線を異形の方へ送り、僅かに口角を上げた。
 厚い鱗皮膚を黄金に輝かせた錬金術ドラゴンが、猟兵達の目前に現れた。
 石床の上に多少の瓦礫は残るものの、天井も壁も崩落している今、阻まれる物は何もない。これはカラスのオマケの子が話していた『更なる真のデッカい脅威』の方であり、これが最後の戦いであると、この場に居る全員が理解した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『錬金術ドラゴン』

POW   :    無敵の黄金
全身を【黄金に輝く石像】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    ドラゴンブレス
【炎・氷・雷・毒などのブレス】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    アルケミックスラッシュ
【爪による斬撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に錬金術の魔法陣を刻み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アリア・ティアラリード
「凄いです、キラキラピカピカで眩しいです…応接間に飾ったら素敵でしょうか?」

目前のオブリビオンを見て、思わず呟くアリア
でもアレは「魔女」と言っちゃった手前、倒すのが猟兵の、お姉ちゃんの義務です!
これ見よがしに金ピカ、とても電気が伝わりやすそう…

ならば打つ手は一つ
スゥ…と一回深呼吸すると、両掌を突き出し
目を「カッ!」と【気合】十分に開き(お姉ちゃん曰くこれが最重要ポイントらしい)
悪の魔王のような容貌…言ってしまえば変顔のまま
開いた指先から迸るのは桃色の強烈極まる電撃、『フォース・スパーキング』!
埃っぽい空気を灼きながら、幾条もの電光が動きを封じようと
凄まじい【衝撃波】と炸裂音を放って絡みつきます


霧中・真理
範囲攻撃、属性攻撃
ふむ、竜ですか。私が交わした約束というわけではありませんが…冒険の土産話には最適ですね。励むと致しましょう。
石像、確かに大層、頑丈ですけれど…冷やし熱しを繰り返せば通常なら脆くなるはず…試す価値はありますね
UC:二律背反の火

クイックドロウ、援護射撃、スナイパー、ロープワーク、クライミング、騎乗、かばう
あとは援護に努めるくらいでしょうか、上手く行けば折角緩めたネクタイですから使えそうですが…。まぁ無理をする必要もないでしょうが。火力を望めそうにないならそういう方の盾になるのも必要な判断でしょう


栗花落・澪
うーん、ドラゴンかぁ
僕が青の子に伝えた事も
あながち間違いじゃなかったかな

苦笑しつつ空へと羽ばたき
ま、ドラゴンだろうと魔女だろうと
子供達の脅威には違いないけどね
極力後衛で
時には囮役として攻撃と退避を繰り返しながら
【空中戦、全力魔法、ユーベルコード】でまずは翼を狙う
行動手段から奪うのは常套手段だよね
勿論それは僕にも言える事だから翼への攻撃には要警戒

技の挙動には常に【見切り】をつけて
兆候が見られ次第全体に共通

こちらに攻撃の矛先が向いた場合は
【ユーベルコード:エンジェルスマイル】の誘惑、催眠で
混乱、足止めを狙う
…万一逆に追われたら仕方ないので引き付け役になります
ドラゴンと恋する趣味は無いので悪しからず



●魔女の象徴
 ──力より強いもの。
 ──勇気。
 ──貴方の一歩は、誰よりも強い一歩です。

 元は『魔女の竃』と呼んだ空間が崩落した瞬間、世界は一変したかに思えた。蜂窩に似た書架が剥がれ落ちた向こう側に果て無く広がるのは昏い空(カラ)。パイプと石の瓦礫、己達が通った5本の通路穴だけが現実を思わせ、それ以外の此方彼方が全て夢幻だと、猟兵達を錯覚させてしまいそうだった。
 それ故に、栗花落・澪の羽ばたく翼は、何者にも阻まれる事なく、何処までも自由に飛行が許される気がする。地から巨大な脅威を見上げる猟兵達の中で、俯瞰が許される限られた存在の内の一人だ。
 その彼の眼下に現れた脅威は、黄金に輝く鱗に覆われた巨大ドラゴン1体。
 魔書のざわめきが終結した静寂の空気を、憤怒の息で穢し始めている。

「うーん、ドラゴンかぁ」
 僕が青い子に伝えた事も、あながち間違いじゃなかったかなと、見下ろしながら澪は苦笑いを浮かべた。
 お伽話に出て来る魔女の姿ではない。
 実は魔女の正体はドラゴンでした、とか? それでもいいけど。
 災魔の無限なる形態は、これ一つに留まるものではなく、今はただ、彼らが出遭ったこの脅威は、数多ある災魔達の一角に過ぎないのだ。
「凄いです、キラキラピカピカで眩しいです」
 無邪気に眼前のドラゴンを見てはしゃぐアリア・ティアラリードは、「ふむ、あれが竜ですか」と静観していた霧中・真理へ振り向く。
「応接間に飾ったら素敵でしょうか?」
 この巨体を? 鱗を? 爪を? 頭を? 双角を? 皮翼を?
 再びアリアが見上げるドラゴンは、ファーストコンタクトの印象より、ますます黄金色に輝き、その身を石より岩より堅く変え、足元に佇む猟兵達を見下ろしていた。
 憤怒の感情は、猟兵達の肌を灼きそうなくらい伝わるが、万分の一もの理性が宿る竜の眼が猟兵ひとりひとりを観察する間には、こちらに十二分に戦術を立てる僅かな時間をくれる。
 振り仰ぐ真理と、天に居る澪の視線が一瞬交わった。
 短く頷く。
「ま、ドラゴンだろうと魔女だろうと、子ども達の脅威には違いないけどね」
 空気の中を軽やかに滑る澪が、ドラゴンの瞳に映る己の姿を視界に入れながら、端から端へと飛んだ。ドラゴンの瞳は、今はまだ瞬きもせず、一人の天使の姿を追い続けている。
 天上の愛天使を、一途に追う瞳。
 またひとつのお伽話が生まれそうだが、「ドラゴンと恋する趣味は無いので悪しからず」片眼を閉じ、愛らしい笑みを浮かべる澪の飛行速度が上昇して行った。

 ドラゴンと魔女と子ども達と。
 そのお伽話に。
 子ども達へ、今ここにあるひとつの冒険を伝えよう。

「私が交わした約束というわけではありませんが……冒険の土産話には最適ですね」
 地上に居る真理の足がドラゴンの背面へ走った。巨体の何処でもいい、僅かな鱗、突起部分、素早くロープを掛け、足がかりを探し、天井に吸い上げられるように、背部から首、頭部、息もつかず、感情も揺さぶらず、登り切った。
 動かぬ、ほぼ不死身の石像。
「確かに大層、頑丈ですけれど……冷やし熱しを繰り返せば通常なら脆くなるはず……試す価値はありますね」
 角に括ったロープを身体に巻きつけ、今度はそのまま滑り急降下する数秒の間。
「地獄故、こういう使い方もあるということです」
 自身のブレイズキャリバーが持つ地獄を更なる熱に変えた二種の炎を装填した銃は、真理の手の中から炎弾を噴き、ドラゴンの頭、首、肩……急降下のスピードに伴い広範囲の部位へ命中していく。
 燃える炎。
 凍てつく炎。
 炎弾の二律背反の火がドラゴンの身を焦がし、凍らせ、その不死身を繰り返し穿ち続ける間に、澪の皮翼を揺らす花嵐も相乗効果となり、ドラゴンの外層の鱗にダメージを与え始めた。
 遂に不動のドラゴンが動き出す。憤怒の感情に、『厭わしい』が追加された。憤怒に飲まれ、更に感情が膨れ上がった勢いで、凍てつくブレスを自身中心に放った。それはアリアを襲い、彼女を庇った真理にブレスの衝撃分のダメージを与えた。回復が使える仲間は後方に居る。
「まだこの程度なら……」
 と、真理は自身のネクタイを解き、包帯代わりに腕に巻きつけた。今、咄嗟に使える救助道具は、この包帯代わりになるネクタイだが、後で仲間が傷を負う有事に備え、有効的に使えるストック数を、真理は冷静に考えた。

 ブレスは属性を変えながら、飛ぶ澪へも放たれる。ドラゴンの機動力を奪う為に皮翼を集中的に狙った澪だが、それはそのまま澪にも云えた。翼を落とされたら、澪の飛行能力が無きに等しくなる。警戒して避けようにも、ドラゴンの範囲攻撃は猟兵のソレより広い。その為に澪を護る真理の援護射撃が功を奏し、ドラゴンの標的すら撹乱している。
「香り高く舞い飛べ」
 澪は指先をドラゴンの皮翼の付け根へ向け、何度も花嵐で襲わせる。
 小さな傷、次につけた傷、その次も、また次も、『傷』の負債へとなっていくのだ。

「金ピカ、とても電気が伝わりやすそう……」
 衰えきれぬ金の輝きを放つドラゴンを見て、接敵していたアリアは呟く。未だこのドラゴンは自身の身の回りを飛ぶ澪に注意が惹き付けられ、動きは鈍い方だ。
 ならば打つ手は一つ
「アレを『魔女』と云っちゃった手前、倒すのが猟兵の、お姉ちゃんの義務です!」
 スゥ……と、一回深呼吸すると、両掌を突き出し、目を「カッ!」と、気合十分に開き(お姉ちゃん曰くこれが最重要ポイントらしい)悪の魔王のような容貌……云ってしまえば変顔のまま。
 開いた指先から迸るのは桃色の強烈極まる電撃。
『フォース・スパーキング』!
 黄金の鱗を持つドラゴンが天から幾条もの雷光で織り込まれた光の檻に封じられた。
 雷光が奔る。

 ギャァアアアア!

 爆ぜる衝撃と周囲に居る猟兵の鼓膜を震わせる炸裂音が、動けぬ巨体の鱗と、空気に纏わりつく塵すらも灼き、次々と、黒く焦がした。
 
 巨大な咆哮が戦う猟兵達の身を刻むように震わせた。
 その果ての見えない天上へ轟く咆哮は、次なる猟兵の未来を摘む予感を彷彿とさせる。

 いや、違う。
 逆だ。
 後に続く猟兵達の身に刻まれた震えは、これは己の断末魔を本能で察したドラゴンの絶望を感じているからなのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
こいつが魔女、ねぇ
何しろオブリビオンならぶっ倒すまでだ
未来を喰らわせやしねぇぜ

手段
ワイルドウィンドを奏で歌って皆を鼓舞しつつ
聖なる調べで敵の力を減弱
;コミュ&パフォーマンス&楽器演奏&歌唱&手をつなぐ&勇気&優しさ&破魔

サウンドOPも行くぜ
皆を、未来を守るという想いを込めて歌いあげるぜ
貴様に命を
未来を喰らわせて堪るか!

敵UCが終わった瞬間に仕掛け
炎を纏わせた焔摩天でぶっ飛ばす
;鎧砕き&薙ぎ払い&属性攻撃&破魔

敵防御を確実に砕いで
破邪の焔が蝕んでいくって寸法だ

さあダンスを踊ってもらうか
お相手は地獄の焔摩だ(にやり

爪やブレスは焔摩天で受けつつ炙る
:武器受け&属性攻撃&破魔


銀座・みよし
・POW
魔女…えっ、あのドラゴンは女性の方でございましたの…?
あぁ、いえそうではなく!

ともかく
わたくしは先と同じくホルスさんに乗って行動を
相手が動かぬ像と化し、あちらが防御しているならば
わたくしは他の猟兵の皆様のフォローをいたしましょう
他の方々が動きやすいように場を整えるのもメイドの仕事にございますれば

【第六感】を働かせつつドラゴンが防御を取りやめた時や、
隙が見えた瞬間を他の皆様にお知らせするといたしましょう
わたくしの声が聞こえずとも
このホイッスルを吹くなら察知しやすいかと思います

…ところでホルスさん
あなた、実は猛禽類じゃなくてスズメやインコの仲間ってさっき本で見たのだけど
それ本当なんです…?


雛月・朔
【心情】
魔女っぽい敵が出るかと思ったら、パワフルなのが出てきましたね。少し相手の巨体に圧倒されています。
ですが猟兵として負けるわけにはいきません。勝って全員無事に帰還します!

【行動】
前衛で薙刀での攻撃がメイン。敵の視界に収まらないよう動き続け死角に移動し攻撃。

UCは回復系の【棚から牡丹餅】。味方の治療をします。
ドラゴンが【無敵の黄金】を使って動けない時もこれで味方の治療。
【ドラゴンブレス】を使われて怪我人が複数出たらこちらも複数回復に努めますが私の消耗が激しいので複数回復は1回限りにしておきます。

【戦闘開始前】
「怪我人が出たら声に出して教えてください、治療します」

補足:ヤドリガミの肉体で参加


アリーチェ・カンタービレ
魔女は竜になってしまったの?
それとも、あれが真の姿?
……わかんないや
わかんないけど、魔女の石は宝物になりそう
宝石じゃなくて金属なのは、ちょっと残念

敵が石像になっている間は攻撃を仕掛けない

初手は(石像でなければ)【高速詠唱】による【呪詛】を
その後リザレクト・オブリビオンを使用して回避に専念
攻撃を受けたらネクロオーブで死霊を召喚して戦わせるよ
召喚後は【歌唱】で攻撃と支援を繰り返すね

悪い魔女は死んでしまった
子どもの肉が足りなかったから、力を出し切れなかったのです
……ふふ

お伽話は、これでおしまい
また新しい物語を、楽しみにしているね



●魔女とドラゴン
 ──黒い子が憧れた勇気ある女の子は、
 ──友達を助ける為に戦うのですって。
 ──友達は大切ですよね?

「魔女っぽい敵が出るかと思ったら、パワフルなのが出てきましたね」
 猟兵達の肌を震わせ刻む絶望の咆哮の主を、雛月・朔は手を翳して見上げた。
 空間に君臨する巨大な存在が、己以外の全てを厭う感情。巨体であるだけ、圧倒される。
「こいつが魔女、ねぇ」
 ワイルドウィンドを奏でる木霊・ウタは歌を一時止め、アリーチェ・カンタービレと共に、ドラゴンを見据える。
「魔女は竜になってしまったの? それとも、あれが真の姿? ……わかんないや」
 わかんないけど、魔女の石は宝物になりそう。宝石じゃなくて金属なのは、ちょっと残念。
 これが、子ども達が『魔女の竃』に居ると夢見ていた『魔女』の現実。
 お伽話の魔女より脅威であろう紛うことなきドラゴンの姿。
「何にしろオブリビオンなら、ぶっ倒すまでだ」
 未来を喰らわせやしねぇぜ。
「猟兵として負けるわけにはいきません。勝って全員無事に帰還します!」
 ウタと朔の意志は真っ直ぐに。
 先程のアリアの放電で燻り続ける塵が未だ空気に漂う中を、ホルスさんの背に乗った銀座・みよしが、
「魔女……えっ、あのドラゴンは女性の方でございましたの……? あぁ、いえ、そうではなく! 」
 あ、あぁ、そうではなく!
 と、ホルスさんからの大丈夫かと云わんばかりの圧力に首を振り振り、飛行していた。
 空を切る度に塵は拡散され、地でドラゴンの爪を避けて移動したウタ、アリーチェの肩へと微かに降り落ちる。
「怪我人が出たら声に出して教えてください、治療します」
 2人の前に立つ朔は、先の真理達へ牡丹餅を投げつつ、周囲を見回して確認をした。憤怒の感情を上乗せしたドラゴンの動作は、最初の不動から、徐々に動き回る範囲が広がっていく様子が判る。
「問題ないよ」
 アリーチェは「今はまだ」と朔に呟いた後、呪詛を高速で唱え、ドラゴンへ放ち、上空でホイッスルを厳かに嘴に挟んだ みよしは「わたくしは他の皆様のフォローを致しましょう」と、頷いた。
「他の方々が動きやすいように場を整えるのもメイドの仕事にございますれば」
 みよしは俯瞰が可能な飛行者の内のもう1人……隼と共有する彼女の視界が皆の瞳の代わりになり、ドラゴンの挙動をひとつひとつ見逃す事なく、ホイッスルが猟兵達への警鐘の合図となるのだ。
 
 雷で焦がされた鱗と削がれた皮翼のダメージ分、己を囲む猟兵達へ簡単に身を反転して対峙する事も、移動も鈍くなっている。地上の猟兵のみならず、澪と空中を交差し飛来するみよし達へも、全方向へドラゴンの氷ブレスが放たれた。凍てつく氷結は結晶となり、身を凍らせそうになるが、みよしは状態異常を回避し、結晶を砕いた。
 ウタが走る。
 ドラゴンに側面に肉薄し、巨大剣の焔摩天を後方へ引き、身体を捩りながら遠心力で振り抜くと、朔の薙刀と共に、連続でドラゴンの鱗を斬撃と砕撃、瞬きの間に繰り返す毎に、刃筋で鮮やかな焔印が刻まれていく。鱗が胡桃の殻の如く、亀裂が走った痕を、朔はドラゴンの死角に潜り込みながら、「まだまだ負けるわけにはいきませんっ」と、袈裟斬り、横一文字、縦横無尽に広げていき、ウタの焔が迸らせた。
「さあダンスを踊って貰おうか。お相手は地獄の焔摩だ」
 身を翻し、ウタの足先がドラゴンの半身回り、ステップを踏むように巡り、焔摩天を繰り出す。
「はぁ、すごいでございますねぇ」
 巨体の首、頭部、ドラゴンの視線を集めながら飛んでいたみよしは感心したように、眼下に見える仲間達の果敢な攻撃に誇らしげに溜息をついた。
 バサッ。
 見惚れていたもので、巨鳥の隼のホルスさんの背から弾んで、上半身転げ落ちそうになったみよしは、首にしがみ付きながら「……ところでホルスさん、あなた」と話しかける。
「あなた、実は猛禽類じゃなくてスズメやインコの仲間って、さっき本で見たのだけど、それ本当なんです……?」
?!
 衝撃的な事を突然云い出した。
 ホルスさんは眼を回したけれども。

 ウォオオオオオオオオオ。

 真偽はホルスさんとみよしの間で。続きは、家に戻ってからにしよう。
 ドラゴンの咆哮で顔を引き締めたばかりの みよしは、地上で死霊2体を使役して攻防を行っているアリーチェに、ドラゴンの皮翼の猛る風圧で、うっかりまた転げて落ちそうになってしまった所を見られてしまった。

 ドラゴンの動きが、猟兵達の同時猛追攻撃を受け続け、止まった。
くすんでいた鱗が再び際立つ黄金色に染め、再び石へと変化を始めたのだ。
 堅牢無比な防御を完成する前の隙を見逃さなかった。

「アリーチェ様! ドラゴンにトドメを討ってくださいまし!」
 ピリピリピー!
 ホルスさんの翼が羽ばたき、朔達の方へ曲線を描いて滑空して来ると同時に、ホイッスルを吹いた みよしが、アリーチェに向かって叫んだ。
 ドラゴンが巨体と首を捩り、抵抗している。傷痕が如実にダメージの深さを晒し、後一押しに思えた。回避と回復支援に回る者が多過ぎるのは致し方ない。防衛も必要な事であり、結束と連携にも繋がる。
 しかし今、攻撃主体に転じる者が欲しい。
 今なのだ。
 今、今、今、ただ一つ、君が欲しい。
 みよしの声に最速で呼応したウタが、アリーチェと朔に身体を向け、
「サウンド・オブ・パワーも行くぜ。皆を、未来を守るという想いを込めて歌いあげるぜ」
「私もアリーチェさんの支援に回りますよ」
 ドラゴンの憤怒の感情で満ちる空気が重さを増した。
 ずしっと押し潰して来るプレッシャーに、「う……」と、誰ともなく声が漏れた。
 ウタの指が形を変えフレットを移動し、思い描くコードをなぞると飛び出す音は圧倒的にテンポを速め、風を織り上げるように変化していく。
「貴様に!」
 圧を跳ね除ける強い信念が、音を弾けさせる。
「命を! 未来を! 喰らわせて堪るか!」
 新たな歌声が音と共振し、空間に爆ぜた。
 四人の耳朶を奮わす歌が、猟兵達の身体を強め、反してドラゴンの身体を弱らせていく。
 身体の内側から漲る力に、アリーチェが両手で持つネクロオーブから禍々しい死霊を召喚する。これはアリーチェに御せるオブリビオン。

 オーブに唱えよ。
 ギャオオオオオ。
 瞬時に防御を解き、爪の反撃を目論んだドラゴンの動きを封じ、アリーチェの死霊が、織り成す歌と共に形を曲げ、歪め、歪んだ先には、巨体の四肢も、腹部も、首、双角、全てを縛り、断末魔もろとも飲み込んだ。
 地へ崩れ落ちる巨体の震動は、一陣の風のように猟兵達の回りの埃を巻き上げ、終わった。
「あいつらの未来を守れたな」
 子ども達に降りかかる予定だった脅威がウタ達の力で葬られた。

「悪い魔女は死んでしまった」
 子どもの肉が足りなかったから、力を出し切れなかったのです。
 ……ふふ。

「お伽話は、これでおしまい」
 アリーチェは瞼を閉じ、ドラゴンの骸に終焉を静かに告げる。

 また新しい物語を、楽しみにしているね。


●それから。
 ──少し、子ども達のおはなしをします。
 ──余分なおはなしですけれども。

 放課後、5人の子ども達は、しょんぼりしながら学園食堂の広い床を掃除していました。
 学園で上から数えた方が早いくらい怖いアリシア先生から罰を云い渡されていたからです。

・反省文50枚。
・魔法詠唱20ページ分。
・魔法文字の書き取り100回。
・食堂の床磨き1カ月。

「うえぇ……」
 赤い子が立てたモップにしがみ付き、死にそうな顔をしました。生徒がいなくなった食堂なんて、余計に大きく広く見えてしまいますものね。床磨きなんて、小さな5人には、結構重労働のようです。
「ノー、えすけーぷ、です」
 勿論やりますとも。頑張りますっ。
「だー、誰がちょっとでも宿題減らして貰う代わりに、掃除するって云い出したんだよ!」
「赤、です」「赤だよ」「赤だよ」「赤だよ」
 皆が冷たい眼をして、一斉に赤い子を指差していました。うぐぐ……。

 ふと外の廊下から、凛とした先生の声と共に、たくさんの足音が聞こえて来ました。
扉コンコン。
「貴方達、地下迷宮で助けて下さった『転校生』の皆さんがお話に来てくれましたよ」

「来たっ」「来てくれたっ」
 子ども達は『魔女の竃』の先を知りません。
 皆、放り出したモップの柄やバケツに足を捕らわれかけつつも、ぴょんぴょん駆け出して、扉の前に集まりました。どんなお話が聞けるかな。いつもは真面目な顔をしている黒い子すら、そわそわしている様子が判りました。

「……ん」
「約束守ってくれました。聞きたい、です」
 耳を赤くした赤い子が手を差し伸べると、黒い子は、黒の帽子をそっと、めくり上げ、ほんわりと笑っていたのでした。
「扉が開くよ!」
「おかえりなさい!」

──さあ、魔女と新たな冒険者達のお伽話の続きを紡ぎましょう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月07日


挿絵イラスト