守れ! 僕らのおじいちゃん
●事件は現場で起きてしまうんだ
平穏な昼下がりに異変は起きた。
「そろそろ飯の時間かのう……ピッカー!」
テレビウムのおじいちゃん、トシゾウさんのお顔(テレビ画面)が突然ピッカー! と光り出した。一体何が起きたのか!? と、周囲のキマフュ民たちがビックリしていると。
「ゲソゲソ! ゲッソー!」
なんと! 赤き情熱カラーに全身を染めたゲソフレイムがおじいちゃんの前に現れたではないか。
「か、怪人だー!?」
驚くトシゾウさん。
あわあわと逃げ出す背中に怪人が迫る……!?
●依頼
「テレビウムのおじいちゃんがピンチでございます!」
グリモアベースの窓際でルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)が初手から土下座している。
麗らかな日の光が窓から差し込み、今日は絶好の遠足日和だ。だが、ルベルはあわあわと依頼をするのだった。
「キマイラフューチャーのテレビウムのおじいちゃん『トシゾウ』さんのお顔(テレビ画面)に、突然『鍵のような映像』が浮かび上がったのだそうです」
トシゾウさんの顔に鍵の映像が浮かびあがったらしい。
「そんなトシゾウさんを、怪人達が襲い、追いかけまわしているのでございます」
トシゾウさんが怪人に襲われている。
「僕は、現地に行けません。どうか、トシゾウさんを助けてくださいませんか」
ルベルはそう言い、土下座しているのであった。
「なお、怪人はいっぱいいるようです。皆様の実力であれば問題なく撃退できるかとは思いますが、戦闘続きになりますので息切れしないよう、お怪我なさいませんよう。お気をつけて頑張ってくださいませ」
そう言うとルベルは顔をあげ、お弁当を持たせてくれるのであった。
remo
おはようございます。remoです。
初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。
今回は【期間限定】のシナリオとなりまして、キマイラフューチャーでの冒険です。
オープニングの通りのノリでゆるゆる、楽しく冒険できたらいいなと思います。
1章は、集団戦。
2章は、集団戦。
3章は、ボス戦。
キャラクター様の個性を発揮する機会になれば、幸いでございます。
第1章 集団戦
『ゲソフレイム』
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POW : 汚物は消毒でゲソーッ!
【松明に油を吹き付け発射した火炎放射】が命中した対象を燃やす。放たれた【油の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 俺色に染めてやるでゲソーッ!
レベル分の1秒で【ベタベタするイカスミ】を発射できる。
WIZ : 見るがいい、これが俺の変身ゲソーッ!
対象の攻撃を軽減する【激情体】に変身しつつ、【右腕に装備された火炎放射器】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:ケーダ
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●キマイラフューチャー、僕らの長い1日
太陽が燦燦と輝いている。
トシゾウさんは情熱的な走りを見せていた。御年、77歳のトシゾウさんは、「トシゾウさんじゃよー」と動画を投稿すれば再生数もそれなりに稼いでしまう元気で明るいおじいちゃんだ。
そのトシゾウさんの背後に真っ赤なゲソゲソした群れがいた。ゲソゲソな軍団は理由はわからないが他のキマフュ民には目もくれず、トシゾウさんだけを情熱的に追い回しているのだ!
「あわわわわっ! お昼ご飯を食べようと思ったのになんなのじゃー!?」
おじいちゃんが走る都市は、子供の頃から過ごした思い出たっぷりのマイタウン。この電柱で幼馴染と待ち合わせをして、この公園で恋するハートを胸にコンコンした。妻と結婚式をあげたのはあのビルの中。
生まれた子供たちを連れてダンス教室に親子で通い、アート好きな子供の才能を伸ばしたくてこの通り道を通って先生のもとへ行ったのだ。勝手知ったるマイタウン。時には細い道を、時には複雑な道を選びおじいちゃんは追手を撒こうと激走。だが、
「ゲッソー! じじいがそっちに逃げたゲソー!」
「じじいを逃がすなゲソー! 囲うゲソー!」
怪人たちは連携して囲い込むように追ってくる。
トシゾウさんはやがて路地裏に追い詰められた。脳裏には先に逝った最愛の妻と子供たちの思い出が走馬灯のように蘇る。松明を持った真っ赤なイカの怪人がゲッソゲッソと押し寄せ、トシゾウさんに迫る――、
鮫島・冴香
え、えぇと…そんな土下座することなんてないわ。
あ、お弁当までいただけるの、手厚いわね。
…依頼、遂行してくるわね。
■行動
「おじいさんには指一本触れさせないわ」
颯爽と、熱線銃を構え敵前へ
(…すでに焼きイカ…!?)
「もっと香ばしく焼いてあげるわ…!」
UC【クイックドロウ】で容赦なく攻撃を。
イカスミを撃たれたら【オーラ防御】で身を守りつつ、
熱線銃の攻撃でイカスミを相殺するように撃つ。
また、トシゾウさんが被害を受けぬように身を挺する。
仲間がいれば【援護射撃】を。
(…晩御飯はイカ焼きにしましょう…)
そんなことを思いながらイカ殲滅に専念を。
そして気になるお弁当の中身。
※アドリブ&絡み&ネタ大歓迎です♥️
宮落・ライア
あっち行ってもこっち行っても事件だなー。あっはっは。
にしても元気だねおじいちゃん。
ま、あんまりムリはよくないさ。
体は労わらないと。
その為にさっさと静かにしないとね!
一本道は大変だよねー。後ろのは戦力外になるから。
敵と一緒に前に居るのをげそ焼きにするのも手だとは思うけどね!
おじいちゃんは無論【庇う】!
場所が場所だからこっちも近づいてくるのを【剣刃一閃】するぐらいしか出来ないんだよね。
適当に死体を【グラップル】して盾にした後、燃えるそれを投げ付けるのも手か?
不知火・鉄馬
【豹兎】で参加
澪がテレビじじ……こほん
トシゾウさんを庇いに行ってる間に
敵に★迅雷による雷の【属性攻撃、薙ぎ払い】を仕掛け感電により牽制
イカなら上手く捌けば調理に使えそうだしな
食費のためにやられてくれや
【串刺し】と薙ぎ払いを使い分け
敵の炎は★紫龍〜焔〜の子龍形態、シオンに
囮や炎ブレスでの軽減で矛先を分散させ
俺自身に向いた攻撃は間をすり抜けながら
足の切り落とし+感電で無力化していく
辺りが水浸しになったらシオンを槍に戻し
俺とは相性最悪だったな
あぁ、そういや食費の話したが…
やっぱお前ら不味そうだから要らねぇ
感電で動きを封じたうえで敵の一体を狙い槍を投擲
雷により、濡れた場所全体に被害を広げた【範囲攻撃】
栗花落・澪
【豹兎】で参加
その人に手出しはさせないよ!
【オーラ防御】で妨害するように間に入り
水の生き物なのに炎を操るなんて珍しいね
でもこっちだって助っ人呼んで来たんだから
前衛は鉄馬君に任せ
僕はおじいちゃんの傍から離れず援護
水の【属性攻撃、全力魔法】で松明を優先的に狙い
技を封じていく寸法
更に【UC】を発動し
卵に入った3分の1くらいの個体で僕とおじいちゃんの護りを固め
残りの個体全てに同じような水の技を使わせる事で松明を消す
および敵周辺のみ水浸しにする
イカにとっては水は歓迎なのかもしれないけど
僕の狙いはそこじゃない
後は任せたよ、鉄馬君!
鉄馬君のUCが発動する瞬間
トシゾウさんの頭を抱え押さえることで万が一も回避
レパル・リオン
トシゾウちゃんとイカ怪人の間に割って入るわ!
もう大丈夫よ、おじいちゃん!あたし達猟兵がいるわ!(ウィンク)
まずは、このイカ軍団を片付けないとね!氷属性のガチキマイラを喰らえー!(護衛対象に近いイカの、眉間や目玉を狙い噛みちぎっていく)
まったく、怪人共は一体何が目的でこんなひどいことをしてるの?あたしもちょっとは考えてみようかな……
………怪人の間で流行ってるゲーム…とか?
シエナ・リーレイ
アドリブ可
うふふふふ!本当にお友達候補が一杯いるよ!とシエナは歓喜します。
キマイラヒューチャーで沢山のお友達候補が現れているという情報を得たシエナは早速『お友達』を得る為に現場へ急行します
駆けつけてみれば既に心身ともに疲れ切った沢山のお友達候補の姿と戦っており、シエナも慌ててスカートの中からティラノサウルス怪人さんを呼び出すと疲れ切ったお友達候補をユーベルで『お友達』にしてゆきます
あの人を守ればいいの?とシエナは確認します。
暫くしてシエナは『お友達』の多くがテレビウムのお爺さんを求めている事に気が付きます
流石にお爺さんを『お友達』にする事は出来ないシエナは代わりにお爺さんを守る事にしました
石籠・むぎ
おじいちゃんが大変ときいたの!
むぎ、ガンバルね!
あ、キマイラフューチャーははじめましてなのよ
よろしくおねがいするのね(ペコリ/礼儀作法
おじいちゃんをイジメちゃメッなのよ~!
と道のスキマをキツネ変身でかけて、おじいちゃんとゲソさんの間に入るの
入りこめたらヒトガタのもどって、扇子をかまえるのよ
コウゲキはショウゲキハを主にとおくからえいえいっと
ダメージのあるコにUCでカイフクでおうえん
テキからのコウゲキは、バディペットのハヤザブロウにカイヒを指示してもらうの
それでも当てられたら、耳もシッポもしょんぼり
はぅ、イタイ……でも、おじいちゃんのためにも負けられないの!
※アドリブ、絡みOK
トリテレイア・ゼロナイン
ご老人を大勢で追いかけまわすなど、言語道断!
騎士としてイカ怪人に天誅を下します
ああいう油による炎は水では消火できないのが厄介なんですよね
UCの電磁バリアでトシゾウ様や周りの建物に被害が及ばない様に戦闘する場所を囲っておきましょう
そして火元である怪人が持つ松明を格納銃器での●スナイパー射撃で撃ってへし折ります
火炎放射できなくてうろたえるイカ怪人を捕まえ、UCの電磁バリアで構成した檻に投げ入れ、先程折った松明の炎と奪った油を投げ入れてバリアで密封
こんがりとしたゲソ焼きにしてしまいましょう
イカに騎士道云々しても無意味ですし
そういえばお弁当を持たされましたが、お弁当タイムはいつになるんでしょうか?
●手のひらを、太陽に
グリモアベース。
猟兵たちが一斉に武器を手に立ち上がる。
彼らは皆、世界を越えて戦う者たちであった。
「え、えぇと…そんな土下座することなんてないわ。あ、お弁当までいただけるの、手厚いわね」
鮫島・冴香(Sexy Sniper・f13873)がお弁当を手に転移されていく。
「……依頼、遂行してくるわね」
ぽつりと呟いた声は世界を越えてキマイラフューチャーの空気を震わせた。そう、ここはもうキマイラフューチャー。
「みぎゃあああっ!?」
おじいちゃんがそんな悲鳴をあげているのだ!
「うふふふふ!本当にお友達候補が一杯いるよ! とシエナは歓喜します」
シエナ・リーレイ(年代物の呪殺人形・f04107)が特徴的な喋り方をしながら敵に視線を向けている。
「それじゃあ、作戦開始!」
宮落・ライア(英雄こそが守り手!(志望)・f05053)が片手を天に伸ばして元気に宣言した。
「キマイラフューチャーははじめましてなのよ。よろしくおねがいするのね」
石籠・むぎ(白銀稲荷・f02944)は礼儀正しくお辞儀をした。
●猟兵たち、登場する
レッドなゲソフレイムたちが激情のままに火炎をゲソーッと発射!
「みぎゃあああっ!?」
おじいちゃんが悲鳴をあげた、その時。
「とうちゃーく! 同志の宿敵烏賊が暴れているのはここかー!?」
ライアが元気っこスタイルで飛び出した。
「その人に手出しはさせないよ!」
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が間に入り、オーラを巡らせて前方に盾を形成する。
「もう大丈夫よ、おじいちゃん! あたし達猟兵がいるわ!」
レパル・リオン(イェーガー・レパル参上!・f15574)がパチッと可愛らしくウインク☆
「おじいちゃんをイジメちゃメッなのよ~!」
道のスキマからトテトテと走ってくるのはふわふわもふもふの狐姿のむぎ。
「おじいさんには指一本触れさせないわ」
颯爽と熱線銃を構え冴香は敵前へ……、
「ゲ、ゲソッ!? 猟兵じゃないかゲソッ!!」
ゲソフレイムたちは現れた猟兵達に驚き慄いている!
(……すでに焼きイカ……!?)
「もっと香ばしく焼いてあげるわ……!」
冴香、熱線銃を容赦なく速射!
「ゲソーッ!?」
ゲソたちが悲鳴をあげて灼かれていく。
「イカなら上手く捌けば調理に使えそうだしな。食費のためにやられてくれや」
不知火・鉄馬(戒めの正義・f12794)が雷を帯びた長剣で敵を薙ぎ払い、ビリビリと敵の群れを感電させていく。
「ご老人を大勢で追いかけまわすなど、言語道断!」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が声を張り上げた。そして電磁バリアを巡らせて戦場を整える。
「猟兵! 猟兵じゃ!」
おじいちゃんも目を丸くして自分を庇ってくれた猟兵達に視線を向けている。
ここキマイラフューチャーでは猟兵達は「怪人をやっつけるめちゃくちゃカッコいいヒーロー」として大人気なのだ。
怪人の前に立ち塞がる猟兵達。戦う力を持たないおじいちゃんにとって、その姿はどんなに頼もしく映ったことだろう。
「一本道は大変だよねー。後ろのは戦力外になるから」
ライアが味方に配慮しながら大剣を揮う。近づいてくる群れの一体一体を剣刃一閃で丁寧に捌いていき。
「新鮮!」
新鮮な敵の切り身を掴み。
「ぬるっとする!」
敵が放った炎に対しての盾にすれば。
じゅうじゅう。
「お、美味しそうな匂いが」
なんとイカ焼きができあがってしまった!
「投げにくくなっちゃったな」
敵に投げようと思っていたライアは、躊躇った末に隅にイカ焼きを積んでおくことにした。
そんなライアと並んで援護射撃をしていた冴香はイカ焼きの山が出来ていくのをちらりと見て、ふと考える。
(……晩御飯はイカ焼きにしましょう……)
果たして晩御飯はここで積まれたイカ焼きになるか、それとも普通のイカを焼くのか。謎はきっと3章で明かされるに違いない。
一方、そんな2人の後ろでシエナがスカートの中から怪人によく似たお友達を呼び出している。
「えっ」
「怪人が増え……」
戸惑う猟兵たち。シエナはニコニコしながら説明する。過去の存在ではなく、それを元にした人形であり、友達なのだ、と。
シエナはキラキラ輝く瞳を『お友達候補』に向けた。そして、味方が倒した後、動かなくなったイカ焼きにユーベルコードを発動させる。
「あなたもわたしのお友達になって! とシエナは特性のおまじないをお友達候補にかけます」
シエナは、自分の行動を解説するようにしながらイカ焼きいおまじないをかけ――こんがりイカ焼きの人形が出来てしまった。
「イカ焼きのお友達ができた! とシエナはびっくりしています」
イカ焼きのお友達はつめていると食欲が刺激されるおまけ付きである。
「友達ができるって、嬉しいよね。わかるよ」
ライアがうんうんと頷いた。
「かく言う私も勇気を出して手紙を出してみたら友達ができました」
トリテレイアも通信販売のレビューのようなセリフを言って頷いている。
「あの人を守ればいいの? とシエナは確認します」
シエナが特徴的な喋り方で確認すると、猟兵たちがウンウンと頷く。猟兵だけではない。お友達にしたばかりのイカ焼きまで頷いた。
「イ、イカ焼きが」
「晩御飯、ちょっと微妙かしら……」
仲間たちが微妙な反応をしている。
シエナはおじいちゃんを『お友達』にすることはできない代わりに普通に護衛することにした。
「皆さんと一緒に護衛をします! とシエナは誓います」
誓う瞳はシエナの純真な正確を表し、キラキラと輝いていた。
「みんなで護衛すれば怖くないわね!」
桜色のもふもふを風に靡かせ、レパルが颯爽とイカ軍団のもとへ走る。つるぷに竜尻尾も元気に揺れ、
「氷属性のガチキマイラを喰らえー!」
なんとレパル、イカの眉間や目玉を噛みちぎっていく!
「ゲソオォォォ!?」
悶絶するイカたち!
「新鮮……!」
食レポのノリで仲間たちへ感想を告げながら、レパルは野性的な動きで空気を蹴ってイカの群れへと飛び込んでいく。
ぶん、と尾を振りイカの胴を薙ぎ払い、四方から押し寄せるイカたちへとひらひらスカートを翻しながら元気にパンチ&キック!
「レパルちゃんパンチ! レパルちゃんキック! レパルちゃん大ジャンプ! からの!」
高く跳躍したレパル。空中でくるりと回転し勢いを味方に。
「レパルちゃんダイシャリンアターック!」
これは新技だ! ピンク色の回転花と化したレパル、元気にイカを吹っ飛ばし。すたりと着地し胸を張る! なおレパルは貧乳だが胸もふもふで隠れているので気付かれにくい。この点はレパルちゃんマニア向けのテストには頻出問題なので覚えておくとよいかもしれない。
●ゲソは新鮮だ
「おのれ猟兵! 汚物は消毒でゲソーッ!?」
ゲソフレイムがぷんぷんしながら松明に吹き付けた。澪がやわらかな羽をふわりと羽ばたかせて魔法で水を生成している。
「水の生き物なのに炎を操るなんて珍しいね。でもこっちだって助っ人呼んで来たんだから」
水がどんどん増えていく。
全力の魔力を注ぎ込んだ水を澪は松明へとぶつけていった。
「アアッ、せっかく火をつけたのに! なんてことをするゲソッ!?」
ブーイングする敵を無視して澪はユーベルコードを発動する。卵入りのミニ澪と卵入りじゃないミニ澪が召喚されてずらりと並んだ。
卵入りの無邪気なミニ澪は味方を護るべくキリリと並ぶ。
卵入りじゃないミニ澪はオリジナルの澪と同様の水の魔法を使い松明をどんどん消していき、敵の周辺を水浸しにしていった。
「ゲソッ!? 水なんて増やしてどうするゲソ!」
「ゲソ達は泳ぐのは得意ゲソー!」
敵がケラケラケラと楽しそうに笑っている。
(イカにとっては水は歓迎なのかもしれないけど、僕の狙いはそこじゃない)
澪には頼もしい味方がいるのだ。
「後は任せたよ、鉄馬君!」
琥珀の瞳が信頼の色濃く浮かべて振り向けば、鉄馬がしっかりと頷いた。
「よし、じゃあお前ら……」
「そーれ! ファイヤーゲソーッ! フレイムゲソーッ!」
鉄馬が武器を向けると、敵はびょんびょん跳ねながら火炎放射した。余りに情熱的に炎を燃やし過ぎて自分が炙られて香ばしい匂いを放っている敵もいた。じゅうじゅうと炙られてとても美味しそうな匂いがする!
「イ、イカ焼きの匂いがする……お前ら、自分で自分を!?」
鉄馬はドン引きしていると金眼の紫龍、シオンがブレスで対抗して主人と仲間を護った。
「おっと、サンキュ」
鉄馬は頼もしい相棒に労いの笑みを向け、敵の足を斬り落とし、胴を串刺しにして感電させていく。
斬り落とした足が地面でびちびち跳ねていた。しかも、少し炙られて香ばしい薫り。
「うーん。匂いは、まあ……でも、こいつらだしなあ」
鉄馬は悩ましく眉根を寄せ、先ほどまで子龍に変じていた濃紫の巨大槍を敵の一体目掛けて投擲した。
「纏めて感電しちまえ!」
「おじいちゃんっ」
澪がふわりとテレビウムのおじいちゃんを抱っこした。鉄馬の一撃に巻き込まれないようにと念のため庇っているのだ。
ユーベルコードにより龍が奔るが如き巨大な落雷が招かれる。水に濡れていた場所全体に招雷の衝撃が走り、敵の群れが一網打尽にされた。
「ゲソーッ!!」
断末魔をあげるゲソフレイムたち。
「俺とは相性最悪だったな」
「やったね鉄馬君!」
澪が嬉しそうに笑顔を向けている。鉄馬は頷きを返し、
(巻き込まなくて済んだか)
そっと内心で安心するのだった。
そして。
「あぁ、そういや食費の話したが……やっぱお前ら不味そうだから要らねぇ」
地面でビチビチしているゲソからそっと目を逸らした。匂いは美味しそうだぞ。
●ゲソはおかわりがある
ところで、水浸しの戦場へとゲソのおかわりがやってくる。
「おかわりあるのかよ……」
「鉄馬君、大人の事情ってやつだよ」
「ああ、そうだな……」
「ゲソーッ! 俺色に染めてやるでゲソーッ!」
ゲソ軍団も負けてはいないのだ。敵、数だけはいっぱいいるから! そんなわけで、ゲソ軍団はベッタベタのイカスミを発射して猟兵たちをベタベタにしてやろうと画策して元気にイカスミを発射した。
「むぎ、ガンバルね!」
ふわふわの白狐がゆらり、人の型に変わり。
「な、なんと。女の子が」
おじいちゃんもびっくり、先ほどまでふわもこ狐だったむぎが巫女服姿の愛らしい女の子姿に変わったのだった。
もちろん、ふわふわの尻尾とお耳も健在だ。
むぎは白絹の髪を風に揺らして銀尾扇をちょこんと構えた。
「えい、えいっ」
愛らしい掛け声と共に扇を揺らせば衝撃波が奔り、イカスミを打ち消してイカを吹き飛ばしていく。
「なんじゃろう、見ていると爽快じゃのう。魔法の扇なのかの? すごいのう」
おじいちゃんはまるで孫のお遊戯会を見ているようなノリで手を叩いて喜んだ。
「ゲ、ゲソーッ!!」
「あんなちっちゃい子に遅れを取るなゲソーッ!?」
敵はプライドを刺激されたらしい。激情体に返信し、火炎放射器をぶっ放す。
シロハヤブサのハヤザブロウが優雅に羽を広げ、お兄さん気取りでむぎに回避を指示する。
「ありがと、ハヤザブロウ……、」
むぎはハヤザブロウの指示に従って愛らしくステップを踏み、まるでダンスを踊っているかのように火炎を避けていく。
「あっ」
しかし、ふと避けた後ろにおじいちゃんがいることに気付いてむぎは慌てて後ろを向く。
「はっはっは! 問題ないぞ!」
ライアが陽気に笑いながら火炎を剣で打ち消し、
「大丈夫!」
澪が水の魔法で火炎を消し、
「ええ、護ってみせるわ」
冴香がオーラの盾で護っている。
「よ、よかったぁ」
むぎはホッと胸をなでおろした。
「助けてくれてありがとうのう……」
おじいちゃんが感動した様子で礼を言っている。
「わし、危うく先だった妻と再会しちまうとこだったわい」
「奥様と、ですか」
冴香がそっと呟く。声はおじいちゃんに届いたらしい。おじいちゃんはニコニコと言う。
「おうよ。いやさ、亡くなったのは何年も前じゃがな」
テレビウムの指には指環がはめられている。それは、何十年とはめたままの結婚指輪だ。おじいちゃんはそれをとても大切そうに撫でている。その仕草は、無意識なものだろう。
トリテレイアはそんなおじいちゃんを背に敵の松明を淡々と射撃でへし折っていた。針の穴を通すような精密射撃が機械的に高速で繰り出され、
「ゲ、ゲソーッ? 松明が!」
狼狽えるゲソたち。
「危ない玩具は取り上げるに限ります」
ウォーマシンは冷淡に告げるとゲソをひょいと掴みあげ、電磁バリアで構成した新たな檻に投げ入れていく。
「ゲソッ?」
「一杯」
投げると同時に次が掴まれ、
「ゲソゲソッ?」
「二杯」
また投げられ、
「ゲソゲソゲソッ?」
「三杯です」
と、この調子でどんどんと投げられて檻の中はゲソゲソがツメツメになった。
「わあ、いっぱい」
むぎが目を丸くしている。
「ふふふ、これをこうするのですよ」
トリテレイアは料理番組の解説をするが如く丁寧に解説を入れながら松明の炎と油を投げ入れ、
「次にバリアで密封します」
ああ、こんがりとゲソゲソツメツメが焼かれていく……。
「イカに騎士道云々しても無意味ですし」
御伽噺の騎士もこんな時はイカを焼いただろうか。答えは闇の中――。
「この烏賊たち、旅団の仲間の宿敵なんだよね。退治してくるよって言ったんだけど」
「イカ焼きをお土産にして差し上げたらどうですか?」
「そうだね」
イカ焼きは、良い色に焼けた。
●お弁当を食べよう
「そういえばお弁当を持たされましたが、お弁当タイムはいつになるんでしょうか?」
すっかりイカ焼きまみれになった路地裏でトリテレイアがお弁当を掲げてみせた。
そういえば、と猟兵たちはお弁当を見る。
「そりゃあ……今でしょ」
そんなわけで、お弁当タイムになったのだった。
「おじいちゃん。卵焼きあげるの」
むぎがおじいちゃんにお弁当の卵焼きをプレゼントしている。おじいちゃんは嬉しそうに卵焼きを味わった。
「まったく、怪人共は一体何が目的でひどいことをしたのかしら? あたしもちょっとは考えてみようかな……」
レパルがスマートフォンを見ながら生クリームとイチゴのたっぷり入ったサンドイッチを頬張った。
スマートフォンを見ると、この現場以外でも似たような画像を映したテレビウムがいるという情報や、怪人たちが鍵を映したテレビウムを襲っているという情報が電子の海を飛び交っている。
「………怪人の間で流行ってるゲーム……とか?」
レパルがそう呟くと、澪が葡萄をつまみながら首をかしげた。
「キマイラフューチャーだし、ゲームっていうのもありそうだよね」
むぎは不思議そうな顔をしてあちこちに見える高いビルやご機嫌なモニュメント、都市に投影された立体映像を眺めていた。
「キマイラフューチャーは、ゲームして遊ぶ依頼が多いときいたことがあるのよ」
「お友達も一緒に! とシエナは紹介します」
シエナはお友達をスカートから呼び、お弁当風景を賑やかにしていた。
「ゲームって言ってもなあ。怪人がゲームを流行らせたりする時はだいたいろくでもないっつか」
鉄馬が肩を竦める。怪人たちは手段が遠回りなときもあるが、世界を滅ぼすために活動しているのだ。
自身のレザーグローブを見れば、掌部分に魔法陣が描いてある。描いてくれたのは、澪だ。ちらりと視線をやれば澪は美味しそうに葡萄を食べている。
「やる」
鉄馬は自分の弁当箱から葡萄を分けた。
「奴らは悪だ。だから、のほほんとした敵でも油断しちゃだめなんだよな」
(ゆるキャラのような怪人も、間抜けヅラした怪人も、オブリビオンなんだ)
鉄馬は改めて怪人たちが世界の敵であることを意識した。
「うむうむ。不真面目そうな敵でも敵は世界を滅ぼそうとしているのだよね」
ライアはおにぎりを齧っていた。そして、幾つかの真実に気付いてしまった。
「この味はコンビニおにぎり……こっちはレトルト……これはまさか弁当屋の具を入れ替えている!?」
「お湯を入れると味噌汁ができるのはお手軽ですね」
トリテレイアは味噌汁を飲みながらほっと一息ついていた。
「少し普段の仕事とは毛色が違うけれど、呼ばれたからには任務を全うするわ。どんな仕事でも、オブリビオンが罪のない人の命を脅かしていることに変わりはないもの」
冴香はコンビニおにぎりを食べながらクールに呟き、おにぎりの具が明太子であることに気付くのだった。
猟兵たちの頭上には太陽が耀き、足元には影が落ちている。
この惑星は、人類が滅亡した後なのだという。人類が遺したポップなサイバーパンク都市に、キマイラたちは楽しく暮らしている。
夜も目映い光が満ちている。スマホを開き、テレビをつければモニターから光が発せられ。
人工の光によって影は自然に伸びる。
自然の影を怖れて光をより求め。しかし影は消えることはない。光で隠そうとすればするほど、影は大きく潜み、その影から逃れようと文明は中毒のように光を殖やすのだ。
冴香はそっとおじいちゃんを見た。おじいちゃんは、亡き妻との契りの証を指に耀かせてニコニコと今を生きている……。
と、突然おじいちゃんの顔(テレビ画面)に映っていた鍵がぺかーっと都市の一角を示した。
「な、なんじゃあ」
「あの方角に、何かあるのかな?」
「あっちにいってみますか?」
驚く仲間たち。
そして、そんな仲間たちのもとへ新たな怪人軍団がやってくるのであった。
――第二章へ続く。
大成功
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第2章 集団戦
『戦闘員・ナグルド』
|
POW : 強靭で無敵だド!
全身を【頑丈なサンドバッグ 】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : バチバチするド!
【触れると爆発する砂 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : 飛び道具卑怯だド!
【ボクシンググローブ 】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
イラスト:井渡
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●GO! GO! キマイラフューチャー!
突然都市の一角を示したおじいちゃんの顔(テレビ画面)に移った鍵! 猟兵たちは鍵の示す方角へと移動することにしたのであった。
「待のだド!」
しかし、そんな猟兵たちの行く手に新たな怪人軍団が立ち塞がる。立ち塞がったのは――壊れたサンドバッグをモチーフに造られた怪人・ナグルドたちだ!
ナグルドたちは頑丈なところを見せてやろうと気合を入れ、道を封鎖している。
「じゃ、邪魔だよ……」
猟兵たちは、ナグルドの妨害軍団に対応しながらおじいちゃんを目的地まで護衛しなければならない……!
シエナ・リーレイ
アドリブ可
近頃のサンドバッグは喋るの?とシエナは首を傾げます。
沢山のイカさんを『お友達』に出来て大喜びなシエナ
そんな彼女の前に沢山のサンドバックが現れます
会話は出来る様ですが生物かは限りなく怪しいので今回はお爺さんを守る事を優先する事にしました
この子達は『お友達』であってわたしじゃないよ?
イカさん達はサンドバッグと戦いたくない様なのでシエナはスカートから沢山の動物の『お友達』の助けを借ります
『お友達』の破壊や自害以外は律儀に守るシエナに代わり動物の『お友達』は[怪力]や[フェイント]と数の暴力でサンドバッグを抑えます
※戦闘後、念の為にサンドバッグに【友達作りのおまじない】を掛けてみるようです
宮落・ライア
ええ……。
うーんそんな足速そうには見えないし、地形にも弱そうかなー。
うむ決めた!
ボクはおじいちゃん抱えて逃げよう!
安全優先!
出来るだけ高所を選んで【ダッシュ・ジャンプ】で移動!
高層ビル群では壁面とか蹴って時々【空蹴】の回数回復。
とにかく怪人には極力近づかない。
攻撃は仲間に任せるぞ。
全力でおじいちゃんは守るから。【庇う】
不意打ちか偶然で宣告があたっても【気合いと覚悟と激痛耐性】で無視!
不知火・鉄馬
【豹兎】
サンドバッグはボクシングだとかの格闘技用だな
いずれにしたって本来殴る側じゃねぇ
殴られる側だ
俺は澪と共に敵の元に残り
今回は俺が相性悪そうだしな
雷は控えておくか…
自分および澪、じじい…でいいかもう
に向けられた攻撃は★牙龍の盾で防ぎ
★紫龍〜焔〜を紫龍、シエンとして行動させ
炎ブレスによる【属性攻撃】と爪での切り裂き攻撃に連携する形で
取り出した迅雷による【薙ぎ払いと串刺し】の使い分けで攻撃
とりあえずその道開けてもらわなきゃならねぇんでな
さっさと退いてもらうぜ
【UC】を発動し、巨大な黒龍のような形状のオーラで攻撃した後
繋いだ敵を背負い投げの要領で思いっきりぶん投げてやるぜ
今のうちに先進めジジィ!
栗花落・澪
【豹兎】
なんかどっかで見た形
あれ何に使うやつだっけな…
【空中戦】で敵よりも頭上位置を確保
囮になりつつ【オーラ防御】や一旦退避を繰り返しながら【高速詠唱】
★Staff of Mariaで水の【属性攻撃、全力魔法】で
砂を固めて無効化出来ないか試みて他の味方の援護
何事も挑戦あるのみでしょ
更にUC発動
敵一人の手をそっと取り【手をつなぎ】
すぽーつまんしっぷが大事な格闘技に深い関りを持った貴方達が
無抵抗なただの子供である僕の事、攻撃しないよね…?
ただの暴力なんて卑怯なことしないよね…?(うるうる【範囲攻撃】)
と、涙目上目遣いでの【誘惑催眠】でためらわせて
他の味方が攻撃する隙を作れないかやってみます
トリテレイア・ゼロナイン
トシゾウ様をロシナンテⅡに乗せ、彼を落とさないよう慎重に移動する自動●操縦モードで後ろに下がらせます
トシゾウ様、特等席で戦闘が終わるまで見物していてくださいね
トシゾウ様が拒否すれば取りやめますが
トシゾウ様に被害がいかないよう●かばいつつ、格納銃器による●スナイパー射撃でサンドバッグの継ぎ目に穴を空けてやります
射的の的に丁度良いですからね
堪らず怪人が硬化したら、急速接近し●怪力とUCを使って振り回し、他の怪人に鈍器代わりに叩きつけたり、攻撃を防ぐ盾として活用します
振り回しているうちに目を回して硬化を解除したら攻撃のチャンスです
しかし、まるで宝探しの様相を呈してきましたね…次は何が出てくるのやら
鮫島・冴香
イカの次はサンドバッグ…
世界によってこんなに敵の種類も違うのね、勉強になるわ。
何が起こるのかわからないけれど、私に今出来ることは
目の前のトシゾウさんを、トシゾウさんの過ごした時間と思い出を守ること…!(きりり)(口元に米粒)
■戦闘
熱線銃を手にナグルド軍団に銃撃を。
トシゾウさんの護衛を第一に
近付かせないよう牽制
「邪魔よ、どきなさい」
仲間の攻撃を【援護射撃】
敵UCには
「じゃあ、ちょっとどいてもらおうかしら」
UC『サイコキネシス』で敵を横倒しにしたり、
目に入るものをぶつけたりし倒し
蹴り転がし前に進む
(最近ジム行ってないわね…)
キックボクシングも楽しそう、と思いながら
※アドリブ、絡み、ネタ大歓迎♥️
石籠・むぎ
ふむふむ、このセカイの人はカオが光って道をおしえてくれるのね…べんりなの
それはさておき、またテキなのね
コンドはむぎも前に出たほうがいいの…?
それじゃあ…(篠笛を取り出して吹き、ライオンライド発動。呼び出したライオン(メス・9歳)に乗る
しーちゃん(ライオンの名前)やっちゃうのよ、とシジを出してトツゲキ
主にしーちゃんにパンチとか本気かみつきとかしてもらうの
むぎのコウゲキは…届くの?
しーちゃんに全部まかせておいた方が、セナカからおちなくていいかもなの
ハヤザブロウには上空からテキを見てもらって、テキがこうげきしてきそうだと感じたら合図をもらうのよ
※アドリブ、絡みOK
●それは、花火のように
「ふむふむ、このセカイの人はカオが光って道をおしえてくれるのね……べんりなの」
石籠・むぎ(白銀稲荷・f02944)がふわりと首をかしげて呟いた。稚い声に思わずおじいちゃんもほっこりしている。
「いやいや、いつもこうではないんじゃ。今日はたまたまなんじゃよ」
その顔(テレビ画面)の鍵は相変わらず都市の一角を指示している。
「猟兵がいるド!」
「やっつけるド!」
真っ黒サンドバッグのナグルドが赤いボクシンググローブを勢いよく振り回している。意外と速い。
「なんかどっかで見た形? あれ何に使うやつだっけな……」
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が記憶を探るように考え込んだ。
「サンドバッグはボクシングだとかの格闘技用だな。いずれにしたって本来殴る側じゃねぇ、殴られる側だ」
不知火・鉄馬(戒めの正義・f12794)が眉根を寄せる。
「イカの次はサンドバッグ……世界によってこんなに敵の種類も違うのね、勉強になるわ」
鮫島・冴香(Sexy Sniper・f13873)がお弁当を片付けて立ち上がる。
「何が起こるのかわからないけれど、私に今出来ることは目の前のトシゾウさんを、トシゾウさんの過ごした時間と思い出を守ること……!」
と、冴香はクールに決めたが、口元には米粒がついているのだった。
「ごはん粒ついてるド」
「あのねーちゃん口にごはん粒つけてるド」
ナグルドたちがぼそぼそと言っている。
「……邪魔よ、どきなさい」
さりげなく口元を拭い、冴香はキリリとクールに視線を向けて熱線銃をナグルド軍団に向けて牽制する。
「怒ったド」
「怒ったド……」
ナグルド軍団がぼそぼそとやりとりしていた。そして、気を取り直したようで。砂やボクシンググローブを次々と投げてくる。
「こっちには数があるんだド! 数で押し切るんだド!」
「猟兵やっつけるんだド!」
(米粒のせいで舐められてしまったわ)
冴香、一生の不覚――、
「ふん! そんな攻撃がきくかよ」
味方へと投げられたボクシンググローブと砂を鉄馬が盾で防げば狼と龍のエンブレムが牙龍の名のもとに鉄壁の護盾となり陽光にきらりと輝いた。
「今回は俺が相性悪そうだな」
ぼそりと呟くと澪が羽を羽ばたかせた。
「協力プレイだもん、大丈夫」
風の魔力により足元の靴にも翼が生え、柔らか生地のロングパーカーが風に舞う。
「またテキなのね。相性、はわからないけど、コンドはむぎも前に出たほうがいいの……?」
飾り紐が風に揺れた。むぎが篠笛を吹けば聴くものの心に春風が通り過ぎたかのような愛らしい音が響き渡る。
笛に喚ばれて姿を現したのは、艶やかでふわふわの毛並みの綺麗な雌ライオンだ。ご年齢は9歳。ライオンは悠々と敵の群れに流し目を送り尾を優雅に揺らした。
「しーちゃん、のせてほしいのよ」
むぎが背中に手を置いてぴょんぴょんしていると、ライオンのしーちゃんは優しい眼を向けてふわりと地に伏せた。
「ありがとうなの」
むぎがヨイショと背にまたがれば、しーちゃんは優しく鳴いて起き上がる。むぎの手に触れるしーちゃんの毛はあたたかく、つやつやでやわらかい。そっとひと撫でしてむぎは前方へと視線を向ける。
ナグルド軍団は頭上へと飛翔した澪目掛けてボクシンググローブとバチバチした砂を投げている。
「しーちゃん、やっちゃうのよ!」
むぎが指示を出せばしーちゃんは勇猛に敵の群れへと突進した。鋭い牙と爪が敵を切り裂いていき、
「シエン!」
鉄馬が合わせて紫龍に命じれば龍も高らかに咆哮し、炎のブレスを吐いて澪に迫る敵の投擲物を悉く灼き尽くした。
「ライオンと龍が襲ってくるド!」
「グローブが燃えたド!」
「もうボクシングできないド……」
グローブを燃やされたナグルドが悄然とする。
「いや、だからさ? お前ら、殴られる側だろ?」
鉄馬が律義につっこみを入れ、シエンがつっこみを入れるノリで爪でナグルドたちをスパーンスパーンと切り裂いていく。
「ナ、ナグルド1号がやられたド!」
「落ち着け! 奴はナグルド四天王の中でも最弱……」
「2号がやられたド! あの爪は危険だド……!!」
「ナグルド3号も! 10号もやられたド! どんどんやられるド!」
ナグルドたちがざわざわしていた。
「むぎもコウゲキするのー?」
むぎはふわふわの尾を揺らしながらしーちゃんの背で首をかしげ、ごそごそと攻撃の準備をしようとしてずり落ちそうになり、ふわりと空から降りたハヤザブロウが身体を支えてくれる。
「ありがと、ハヤザブロウ」
ハヤザブロウは颯爽と空へと舞い戻っていく。そして、仲間たちに敵の攻撃気配の合図をしてくれるのだった。
(むぎ、しーちゃんに全部まかせておいた方が、セナカからおちなくていいかもなの)
むぎはそう思い、しーちゃんに大人しくしがみついていることにした。ふわふわの毛はお日様と春草の薫りがして、あたたかい。
「俺もハリセン持ってくるか」
思わず鉄馬が呟いた、その時――、
「コンコンしたら出て来たんじゃが使うかのう」
おじいちゃんがハリセンを差し出した!
「ジジィ……俺にこれを使えと言うのか……あ、ありがとよ……?」
鉄馬はハリセンを手に入れた!
「俺のつっこみスキルを魅せてやらあ!」
声と共に駆ける鉄馬の視線の先でシエンが爪つっこみを見せている! 爪のつっこみに息ぴったりにハリセンが走り――、
「なんでやねん! だ!」
あわせて迅雷を突き出して(こっちが本命だ!)串刺しにし、周囲の敵諸共に薙ぎ払えば。
「迂闊にボケるとやられるド!」
「プロのつっこみ屋がいるド!」
ナグルドたちがどよめいた。おじいちゃんは大喜びで手を叩いている。
「仕上げだ!」
鉄馬が漆黒の瞳を煌めかせれば巨大な黒龍のオーラが敵の群れへと襲い掛かる!
「あ、あれはなんだー?」
あまりに派手な戦いぶりに周囲のビルにいたキマフュ民が顔を出して観戦を始めている。
「動画撮ろう、動画。猟兵が戦ってるぞ!」
「猟兵、頑張れー! 怪人をやっつけろー!」
歓声を背に鉄馬はドラゴニアン・チェインで敵の群れを縛り上げて背負い投げのスタイルで先刻のイカ焼き山目掛けてぶん投げた。
「やったー!」
「怪人がのされたぞ!」
現地民も大喜びである。
一方の澪は聖杖Staff of Mariaの護り石を淡く耀かせて高速で詠唱を続けている。主に砂を狙い放たれる澪の水魔法は自身や味方に向けられる砂を次々と固めて無効化させているのだ。
「猟兵、がんばれ!」
ふと直ぐ近くで声があがり、視線をやればビルの窓から澪を食い入るように見ているキマイラがいる。
「応援ありがとう」
にこりと笑って手を振れば、キマイラは感動した様子で頬を赤く染めるのだった。
(そうだ、敵にも……)
ふと思いついた澪はするりと降下して一体のナグルドの手をそっと握る。
「な、なんだド!?」
ナグルドは硬派なサンドバッグである。サンドバッグであった頃から、彼に触れてきたのは厳ついボクサーたち、そしておやっさんたちであり……。
「すぽーつまんしっぷが大事な格闘技に深い関りを持った貴方達が無抵抗なただの子供である僕の事、攻撃しないよね……?
ただの暴力なんて卑怯なことしないよね……?」
おおっと!! ここで澪、うるうると目に涙を湛えて上目遣いの誘惑催眠! あざと可愛い判定クリティカル!
「ナッ」
「ナナッ」
「ナナナッ」
「ああ¨~~!!」
コロっと誘惑されるナグルド軍団(と一般キマフュ民)! 効果は抜群だ!
「今のうちに先進めジジィ!」
鉄馬が促し、味方が動く。
「ええ……。うーんそんな足速そうには見えないし、地形にも弱そうかなー。うむ決めた!」
「うおおあああ??」
宮落・ライア(ノゾム者・f05053)がおじいちゃんを米俵のように抱えてすたこらせっせと逃げ出した。
「安全ゆうせーん!」
全力で地を蹴れば、色鮮やかな都市景色が勢いよく流れていく。
「こちらに!」
声がする。
「おっ?」
見れば、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が白き機械馬のロシナンテⅡに騎乗して手を差し伸べている。
「じゃ、遠慮なく!」
おじいちゃんを抱えたライアが軽やかに飛び乗れば巨大な機械馬はビルの壁面を蹴り上げて高速で駆け上り最後に元気よく空を蹴ればあっという間にビルの上だ。
むぎのハヤザブロウが護衛するように近くを飛んでいる。
「はっはっはー! よいぞよいぞ! 走れロシナンテⅡ!」
ライアが楽しそうに笑っている。おじいちゃんはぽつりと呟いた。
「ビルの壁面を駆け上るのは人生で初めてじゃ。一生体験することがないと思ってたことが起きるのじゃから、長く生きているもんじゃなあ」
「トシゾウ様、特等席ですよ」
おじいちゃんは嬉しそうに笑い声をたてる。
「猟兵は、いっつもこんな景色を視ているのかの? 刺激的じゃのう」
「いつもそうだよ! いろんなところで戦ってるよ!」
ライアが声を返す。
空が近く思えて、雲に触れそうな気がしておじいちゃんは思わず空へと手を伸ばした。手を伸ばしても、雲に指先が届くことは、なかった。指先の遥か上をハヤザブロウが悠々と飛んでいく。風に乗りふわりと羽を休ませ、少しして気まぐれに羽ばたかせ。泳ぐように飛んでいる。
「トシゾウ様、あまり動かれると危険ですよ」
ビルの頂上に登り切ったロシナンテⅡが隣のビルへと跳躍する。びゅんと風を斬る音と勢いを全身で感じる。景色が高速で後ろへと流れた。
「おじいちゃん、高いところ平気?」
ライアがにっこりと笑いかければ、おじいちゃんはコクコクと頷いた。顔(テレビ画面)の鍵は相変わらず一定の方角を示している。地上の仲間たちが見上げている。ライアは元気に手を振った。
「進行方向、そのまままっすぐー!」
ロシナンテⅡはビルとビルの間を跳躍した。
「人生とは、不思議なもんじゃの。わしは、妻を亡くして独り暮らしになっての。手持無沙汰での。動画を撮って気楽に人生の残り時間を消火していたんじゃ。いつ死んでも別に良いと思っていたのじゃが」
おじいちゃんが流れる景色に穏やかに言葉を紡ぐ。
「怪人が出てきた時は、おっかなくて逃げておっての、逃げてる間に死にたくないと思ったもんじゃ。わしは、まだ死にたくないのじゃな。はっはっは」
トリテレイアはロシナンテⅡの背から地上の味方を援護すべく射撃をしていた。高所からの狙撃は精度高くサンドバッグの継ぎ目に穴を空けていく。
「狙われているド!」
「上にスナイパーがいるド!?」
ナグルドたちが地上で動揺している。
「もっと頑丈になるんだド!」
「強靭で無敵だド!!」
ナグルドたちは声をかけあい全身を頑丈に変化させていく。
「もう攻撃は通らないド!」
「無敵だド!」
頑丈に硬化したナグルドたちは無敵状態となった自身を誇るように胸を張り。その代わり移動が完全にできなくなっている。
「じゃあ、ちょっとどいてもらおうかしら」
冴香は冷えやかな視線を向け、サイキックエナジーで敵を横倒しにしていく。端の一体をパタリと倒せば隣の一体が勢いに押されてまた倒れ、倒れた先にはまた別の一体がいて……パタパタパタパタ。雪崩のように倒れていくその光景、さながらドミノ。
「ああっ、ストッパーを入れておけばよかったド!」
「ぎゃああああ、こっちを巻き込まないでほしいド!」
敵が悲鳴をあげている。
「頑丈なだけじゃ、だめみたいね」
冴香は倒れたナグルドをころころ蹴り転がしながら冷然と呟いた。そして、ふと思った。
(最近ジム行ってないわね……)
「キックボクシングも楽しそうね」
言いながら蹴る脚は先ほどよりも強くナグルドに当たっている。
「じょ、女王様だド!?」
「誰が女王様よ」
ガンガン蹴ると何故かナグルドは嬉しそうに転がっていく――、
「生き物は、そう創られています」
上空、ビル上ではそんな声が発せられていた。まるで生き物が蹴られると悦ぶようにも読めてしまう流れだが、そんな意味ではおそらくあるまい。
話す声は知識をそのまま語るようであり、どこか冷たくも感じられる。
「どんな生き物も、死ぬ寸前まで生きようとするものです……ロシナンテⅡ、自動操縦モードに移行せよ」
トリテレイアはロシナンテⅡを自動操縦モードに移行させ、ライアにおじいちゃんを託すと地上に飛び降りた。
(けれど、『人間』はごくまれに自らを犠牲に他者を守り、生かそうとする。それもまた『人間』らしき行動……)
地に着く一瞬、重力を全身で感じる。
このヘンテコな惑星にも重力はある。
地面があり、天があり、人は滅びても生きる民がいる。
――民には感情があり、
「戦いとは命のやりとり、」
ズシンと重量を感じさせる音を響かせて動揺するナグルドたちの中央に降り、トリテレイアは手近の硬化したナグルドを掴んで恐るべき膂力で振り回し始めた。
――『人間』とは、なんだろう?
テレビウム、キマイラ。外見からして人とは違う生き物たちは、けれど人とひどく似通ったこころを持っていて、人と同じように生き、他者と言葉を交わし、何かを感じて泣き、笑い、
「ナッ、ナグルド35号が!」
「全員番号がついているんですか……」
周囲のナグルドがトリテレイアの振り回すナグルド35号によって殴り倒される。手には衝撃を感じる。モノを殴った感覚。感覚を感じるということは、生きていることなのだと人は言う。
――生きている。
「ちなみに、私は09です」
トリテレイアは、静かに告げた。彼は09の数字を持っている。
「私は何番にしようかしら」
「はい?」
見れば、冴香がナグルドを蹴り転がしている。
「……猟兵でサッカーチームを作る話じゃなかったかしら」
「そんな話でしたっけ」
いつかサッカーをする日も来るかもしれない。そんな予感と共に猟兵たちはナグルドを蹴ったり転がしたりして遊んでみた。
「ごろごろ転がって、楽しそう! とシエナは覗き込みます」
そんな中、シエナ・リーレイ(年代物の呪殺人形・f04107)は人形遊びをしていた。
「ええい、ルールを宣告するんだド!」
まだ攻撃する余力のあったナグルドがボクシンググローブをシエナに投げ、厳つい顔でルールを宣告する。
「攻撃禁止だド!」
「近頃のサンドバッグは喋るの? とシエナは首を傾げます」
ルールを言い渡されたシエナはというと、赤い眼をぱちぱちと瞬かせていた。傍らには先ほどお友達にしたこんがりイカ焼き人形たちがいる。
シエナはイカ焼き人形と会話をしている。
「戦いたくないの? とシエナは尋ねます」
シエナが不思議そうな顔をしている。イカ焼きたちは戦いたくないらしい……。破壊や自害以外は律儀に守るシエナは代わりにスカートからたくさんの動物の『お友達』を呼び出した。
ふわふわのウリ坊やバンビちゃんが混ざったようなキメラの人形、縫いぐるみたちがサンドバッグへと押し寄せていく。
「なっ、なんだド!?」
戸惑いながら押し倒されてもみくちゃにされるナグルド。
「攻撃禁止だド……!?」
「この子たちは『お友達』であってわたしじゃないよ? とシエナは教えてあげます」
シエナがそよ風のように微笑む。その視線の先でナグルドがズタボロにされていく……。
やがて、全てのナグルドが動かぬサンドバッグとボクシンググローブへと姿を変えた。
「お友達になれるかしら? とシエナはダメ元でおまじないをかけてみます」
敵の残骸の山へとシエナがそっとおまじないをかける。すると、掌サイズのボクシンググローブが地面にころりと転がったのだった。
「ボクシンググローブ? とシエナは首をかしげます……」
サンドバッグの人形ではなく、グローブができてしまった。シエナは少し戸惑った。その視線の先で小さな赤いグローブは友達になりたそうな気配を漂わせてちんまりとしている。
「シエナは、見た目で差別したりしないよ。大丈夫! とシエナは微笑みます」
シエナは優しくそう言うと、そっとボクシンググローブを撫でた。
「一緒に、おうちに帰ろう。とシエナはお友達に言います」
やわらかな風がどこかから吹いて、シエナの白い髪を儚く揺らした。苺のように甘やかな赤い瞳が静かに伏せられ、どこか神聖な誓いのようにその言葉は小さな友達へと捧げられた。
――その光景を観てキマイラフューチャーの民はなんとなく胸があたたかくなったのだという。
「合流! じゃ、みんなで行こうじゃないか、いざ目的地へ!」
おじいちゃんを連れたライアが地上へ降りてきて、猟兵たちはのんびりと目的地へ歩いていく。
ロシナンテⅡとしーちゃんが並んで歩き、頭上をハヤザブロウが飛んでいる。猟兵たちはおじいちゃんの鍵が示す方角目指してのんびりと地上を進んでいった。猟兵を応援するキマフュ民たちが道の脇で手を振っている。サインをねだりにくる者もいた。
「なまえを書いたらよろこんでくれるの、ふしぎなの」
むぎはほんわかと微笑んだ。
いつの間にか日が沈もうとしている。
夕暮れの空にどこかのイベント会場で打ち上げている煌びやかな花火が華やかに花開いた。
「夜を待たずに贅沢に打ち上げるあたりがキマイラフューチャーらしいですね」
トリテレイアの緑色のセンサーが空を観る。
この惑星では、コンコンすればなんでも出て来るのだ。
「人生とは、あんなもんじゃな。あっという間に打ちあがってパッとひらいて一瞬で終わりを迎える……」
おじいちゃんがしみじみと呟いた。その手には、夕日に赤く染まる指輪がある。
冴香が空を見上げる。
(人生って、不思議ね)
春の薫りを孕んだ風が優しく頬を撫で、繊細な髪がさらりと後ろへと流れる。その髪を綺麗だと言ってくれたのは、夫だった。長い髪が好きだと言っていた。それで、髪を伸ばしたのだったか。
嘗て、ふたりは上司と部下だった。アプローチしたのは自分の方からだ。想いが叶って、結ばれ、子を授かり。だが、
「花火、綺麗ね」
もう少し空が昏ければ、もっと美しく観えるだろう。だが、これくらいの薄い花火も悪くない――控えめで。
「……綺麗だわ」
冴香は呟いた。その手には、指輪があるのだ。
「人生って、不思議ね」
冴香は声に出して呟いた。
「こんな風に猟兵として。見知らぬ世界で偶然居合わせた仲間と、おじいちゃんと、お弁当を食べて、戦って、次はどこに向かっているのだかわからない。こんな未来、予想もしなかったわ」
ゆっくりと静かに紡いだ言葉は空に吸い込まれていくようで、吸い込まれた先の空では薄っすらとした花火がまた散った。
「世の中は、あたたかいものも楽しいこともいっぱいなのね」
むぎが楽しそうに声をあげた。
(怖いことも、醜いものもいっぱいあるけどね)
幼少の折に囚われ、奴隷として扱われた経験のある澪はそっと胸の内でそんな想いを抱き、しかし花のようにあえかに微笑んだ。
「うん。綺麗だね」
日の当たらない場所は驚くほど冷たく、恐ろしいこともある世界。だが、あたたかなものも綺麗なものも、一歩外に出れば、出会えるのだ。
澪はそれを知っていた。
極寒を知る者は人の温もりのあたたかさを知るゆえに驚くほど人に優しくすることができる。澪の優しさはそういったところから自然と生まれるのであった。
「あともうちょっと。頑張ってみんなで、おじいちゃんを守ろう」
あたたかな声をあげれば、
「おー! 守るぞ! 守るぞ!」
ライアが元気に返事をした。
●光
やがて、彼らは目的地にたどり着いた。
「……ここ?」
辿り着いた場所は何の変哲もない場所だった。そして。
「っ!? おじいちゃんがっ!」
到着したおじいちゃんが突然光り出した。
「こ、これはどうしたことかのーっ!?」
おじいちゃんもびっくりしている。
そんなピカピカおじいちゃんを狙い、新たな怪人が現れた。現れたのは一体だが、なにやらボスっぽいオーラを全身から発している人型だ。
「あっ、あの怪人は」
トリテレイアが情報を共有してくれる。
「あの怪人は、妹萌えを広め、妹にしか興味を持てない若者を増加させることで結婚率と出生率を低下させ、キマイラ絶滅を企む怪人です!!」
「ちなみにあの怪人には弱点があって、女の子に兄扱いされると感動して動きが止まるのだそうです」
「なるほど、つまり全員であいつをお兄ちゃんと呼びながら戦えと」
と、そんなわけでおじいちゃん防衛戦が始まるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『妹が大好きな怪人・マイホゥ』
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POW : 妹の願いを叶えぬ兄などいない!お兄ちゃん頑張るぞ
【妄想の元気系妹の激励 】【妄想の清楚系妹の声援】【妄想のツンデレ系妹の罵倒(?)】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 妹の何が良いかだと?これを見れば良さがわかるぞ
レベル×5本の【妹 】属性の【動画を再生するモニター付ドローン】を放つ。
WIZ : どんな妹が好みだい?言わなくてもわかっているさ
【頭部のタブレットPC 】から【対象が考える理想の妹の幻影】を放ち、【実体化した幻の妹とのふれあい】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:因果
👑7
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「フィン・スターニス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●お兄ちゃんからおじいちゃんを守らなければならないんだ!
目的地にたどり着いた猟兵たち。
すると、なんとおじいちゃんがピッカーと光り出したではないか。
「だいたい10分くらい光っていて身動きが取れない予定じゃあ!」
おじいちゃんは10分くらいピカピカしていて身動きが取れないらしい。
「ジジイー! 追いついたぞー!」
そして、怪人(ボス)がやってきた。
怪人は全身から妹萌えオーラを発している変態だった。
「あの怪人は、妹萌えを広め、妹にしか興味を持てない若者を増加させることで結婚率と出生率を低下させ、キマイラ絶滅を企む怪人です!!」
「ちなみにあの怪人には弱点があって、女の子に兄扱いされると感動して動きが止まるのだそうです」
「なるほど、つまり全員であいつをお兄ちゃんと呼びながら戦えと」
と、そんなわけでおじいちゃん防衛戦が始まるのである。
レパル・リオン
アンタ…『覚悟して来てる怪人』よね…
人を「攻撃」しようとするって事は
逆に「攻撃」されるかもしれないという危険を常に
『覚悟して来ている怪人』ってわけよね…
お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん
ONITYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAN
お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん
お兄ちゃあああああん
こんな感じで叫びながら漫画なら7ページ分くらいひたすら拳を怪人に叩き込んで、シメにゴミ箱にぶち込むわ
不知火・鉄馬
【豹兎】
妹なぁ…まぁ確かに
妹が居たらと思う事も昔は無くはなかったが…
世話の必要な子供はある意味足りてるしな(澪をチラ見)
同い年とは思えねぇんだよな…(見た目が)
シエンに極力背後を取らせるように挟み撃ちを狙いながら
シエンは爪で、俺は雷の【属性攻撃】を纏わせた★迅雷で
敵の顔…顔か?
モニターを攻撃、故障狙い
おいオニーチャン動くなよ度胸無ェな
感動するほど飢えてた妹にやられんなら本望だろうが
潔く受け入れろや
見た目も声も男の俺じゃ対象外(というかむしろヤンキー)だろうし
澪の行動で足止めが出来れば【UC】で追撃するぜ
俺さ、どちらかと言えば爺ちゃん婆ちゃんっ子だったんだよな
守り抜いた余生大事に生きろよな
栗花落・澪
【豹兎】
あのさ
しょーじきなコメント言っていい?
あんたバカ?
出生率の話ならせめて弟にしなさいよ
妹は立派な女性ですよ
氷の【全力魔法、高速詠唱】を敵の足元へ
凍結による鈍化や転倒狙い
え、いやだって、もえ?の対象は女の子なのに僕が言う必要ある?
……ほんとに言わなきゃダメ?
うぅ……お…お兄ちゃん(ハァト+照れ+UCの無意識【誘惑催眠】)
ちょっとぉなんで感動するの僕が女みたいってこと!?
もーお兄ちゃんのばかばかっ、ほんと空気読めないんだから!
そんなんだから誰にも相手にされないんだよ!
(両手でぽかぽか+悪口の語彙力皆無)
皆も今のは忘れてー!
※家族に詳しくないから理想の妹をイメージできないです
ごめんね怪人さん
鮫島・冴香
しんみりとした暖かな時間を過ごせていたと思ったら…
なんなのあの怪人は…!(眉間に皺)
それにトシゾウさん、動けないだなんて…
護りながら戦わせていただくわね(熱線銃を構え、背中で護り)
■戦闘
熱線銃で援護射撃
敵UCには
「……で?」としか思えない
色んな葛藤の後
(くっ、出来る事なら呼びたくなかったけど、私も隙を作る手伝いを…!)
恥じらいと共に
「お、お兄ちゃん!」
隙が出来たら追撃し
「調子に乗るんじゃないわよ、お兄ちゃん」
ハイヒールキックを容赦なく
「誰かを好きになるのに、属性なんて関係ないわ」
そう言いつつ、無意識に年上男性好き冴香
戦闘後は
(スーパーでイカ買わないと…)
伏線★回収
※アドリブ&絡みネタ大歓迎♡
宮落・ライア
え、真面目にいやなんだけど。
何であんなのをお兄ちゃんなんて呼ばないといけないの。
えー…、仕方ないな…。
お兄ちゃん…死んで?
とりあえずなんかイラッと来るから殺意ましましで行くから。
【ダッシュ】で距離を離されないよう肉薄。
【殺気・剣刃一閃】でタブレットを執拗に狙う(頭部含む)
敵の攻撃は【見切り】
トリテレイア・ゼロナイン
(背後も知らない)情報では知っていましたが実際に見てみると……確かにまごうこと無き変態ですね
トシゾウ様に近づけさせるわけにはいきません、妹以外には優しくなそうですし
せめて公共の場所で妹系アドベンチャーゲーム(所謂ギャル・エロゲー)をタブレットで音声垂れ流しプレイは止めて頂きたい…
(背後も知らなかった)さっさと弱点を突きます
さて怪人様、妹に詳しい貴方なら「生き別れたけど敵味方に別れて再会する覆面系妹」をご存知のはず
私がそれです(真っ赤な嘘)
背が高いのはパワードスーツを着ているから。声は正体バレ対策の変声機です
今、兜を脱ぎますからもっと近づいて見てください、「お兄様」
近づいたらUCで液晶を割ります
シエナ・リーレイ
アドリブ可
すごく光ってるの!とシエナは驚きます。
お爺さんを狙う最後の刺客は妹に強い拘りを持つ怪人でした
彼と仲良くなる為にシエナは妹について聞いてみる事にします
過去の所有者の仕事風景や最初の『お友達』が言い聞かせてくれた童話から得た知識が殆どであったシエナにとって、怪人が齎した妹という家族の概念はとても新鮮で心惹かれるものでした
わたしの『お兄さま』になって欲しいな。とシエナはお願いします。
もし、怪人がシエナの願いを受け容れた場合『お友達』と共に彼を助けます
次に[医術]で[優しく]治療して
仕上げに[毒使い]の技能で作った魔法のお薬を飲ませた後にシエナの『お友達』改め『お兄さま』にする事を試みます
石籠・むぎ
10分もうごけないの大変なのね
オザブトンしいて楽なタイセイになってもらえるのなの?
さて、カイジン…えっと、おにいってナマエなの?
おにいちゃん!おじいちゃんにわるいコトしたらメッなのよ!
どうしてもイジワルするってのなら、なぐっちゃうからね(しーちゃんが
サクセンは、ハヤザブロウにおじいちゃんを見ててもらって、その間にむぎとしーちゃんはなぐったりにげたり…ひっとあんどあうぇいなの
はなれてるトキはむぎがコウゲキ、近くにいるトキはしーちゃんがでコウゲキなのよ
コンドこそおちないようガンバル(グッ
コウゲキされたらおにいちゃんひどい…とナミダメ
そんでおこったよー!と全力しーちゃん体当たり
※アドリブ、絡みOK
●「お兄ちゃん」と言われたら死ぬとかつらたんです
「10分もうごけないの大変なのね。オザブトンしいて楽なタイセイになってもらえるのなの?」
石籠・むぎ(白銀稲荷・f02944)がおじいちゃんに座布団を差し入れしている。ピカピカ光りながらおじいちゃんは座布団にちょこんと座った。
と、いうわけでトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が世界情報を教えてくれる。何を隠そう集まったメンバーの中で世界知識技能を唯一取得しているのが彼であった。
「背後が知らない事も世界情報のデータベースを検索するとわかってしまうのです。今私の技能が無双しているわけですよ」
「ハイゴってなに?」
純粋無垢な質問にトリテレイアは静かにセンサー光を逸らして誤魔化すのだった。
「情報では知っていましたが実際に見てみると……確かにまごうこと無き変態ですね。トシゾウ様に近づけさせるわけにはいきません、妹以外には優しくなそうですし」
「ハイゴってなあに?」
「せめて公共の場所で妹系アドベンチャーゲーム(所謂ギャル・エロゲー)をタブレットで音声垂れ流しプレイは止めて頂きたい……」
味方からの質問を聞き流しながらトリテレイアは戦術を練る。
「さっさと弱点を突いて倒してしまいましょう、奴は――妹に弱いのです!」
「すごく光ってるの! とシエナは驚きます」
一方シエナ・リーレイ(年代物の呪殺人形・f04107)は光るおじいちゃんに吃驚していた。そして、怪人へと視線を移した。怪人は、妹萌えらしい。
「妹って、なに? とシエナは尋ねます」
ヤドリガミであるシエナは妹の概念を知らない。そのため、純粋な知的好奇心から質問をしたのだが、「女の子に好きな話題を振られた!」とマイホゥはそれだけで舞い上がり、大喜びで語り出すのであった。
「妹とは、同じ親から生まれた年下の女の子のことだ!」
シエナが神妙に話を聞いてくれるのでマイホゥは顔(モニター)をキラキラさせながら熱弁する。
「兄というポジションは家族という群れの中で妹よりも上位ポジションに位置する。そのため男のプライドを刺激し、所属する群れの中で他人ではなく家族である妹は護るべき対象として無条件に保護欲をかきたてるのだ。ここで大切なのは家族であるという点であり……」
「い、妹萌え……」
戸惑いの声をあげる仲間たち。
「え、真面目にいやなんだけど。何であんなのをお兄ちゃんなんて呼ばないといけないの」
宮落・ライア(ノゾム者・f05053)が不満の声をあげている。その視線の先でシエナがウンウンと素直に頷いて怪人の語りを聞いているのだ。
「大丈夫? 洗脳されてない?」
思わず心配してしまうが、シエナは仲間たちに向かって笑顔を向けた。
「家族の概念は、とても新鮮。心惹かれるものを感じる。とシエナは報告します」
「洗脳されそうになってない!?」
「わたしの『お兄さま』になって欲しいな。とシエナはお願いします」
「シ、シエナたそ!」
シエナがそう言えば、マイホゥが感動した様子で動きを止めるのであった。
ところで、そんなマイホゥを尻目にむぎはじーっとトリテレイアを見上げていた。
「む、むぎ様?」
「カイジンはわからないことを聞いたら教えてくれるのに……」
「!!」
なんと「背後ってなに?」をスルーした事が尾を引いていた。こんな事で猟兵仲間の連携が崩れてしまうのはいけない、とトリテレイアは慌ててしゃがみこみ、こっそりとむぎに背後という謎概念について解説したのであった。
「カイジン……えっと、おにいってナマエなの? おにいちゃん! おじいちゃんにわるいコトしたらメッなのよ!」
ご機嫌を直したむぎは、とてとてと前に出てマイホゥを見上げた。マイホゥは突然倒れた。
「あれ? おにいちゃん?」
「ぐふっ……」
効果は抜群だ!
悶えるマイホゥへとシエナがすすっと魔法の薬を差し出した。
「お兄さま、このお薬を飲んで欲しいな。とシエナが薬を飲ませます」
「介護プレイ……これはこれで」
マイホゥは大喜びで薬を飲んだ。
「不思議な味だな。これはなんだ? 妹よ」
「毒だよ? とシエナが教えます」
「ぐふっ……」
マイホゥは死んだ。
「あ、死にましたよ」
と言った瞬間マイホゥはバネのようにびょんっと跳ね起きた。
「復活!」
「ええ? 復活したよ……」
仲間たちの視線がトリテレイアに集まる。
データベースを検索しても情報はない。が、トリテレイアは自信満々に言い切った。
「たぶん何回か倒したら倒しきることができるのではないでしょうか」
「不死身ではないだろうしね」
ライアが頷く。
「いっぱい倒さないといけないんだね。とシエナはびっくりしています」
シエナは魔法の薬をたくさん取り出してマイホゥに差し出した。
「お兄さま、飲んで。とシエナは差し出します」
「いや、さすがに毒だとわかってるからなあ。さっき死んじゃったし」
マイホゥは若干警戒している。
「ハヤザブロウ、おじいちゃんを守っててほしいのよ」
むぎが上空に声をかけるとハヤザブロウが颯爽と降りておじいちゃんの傍に留まった。
「コンドこそおちないようガンバルっ」
むぎが小さな拳をぐっと握りしーちゃんに乗ると、マイホゥはスマートフォンを取り出していそいそと写真を撮った。
「写真はメッなの」
ぷくー、と頬を膨らませるむぎ。マイホゥは蕩けそうな笑顔で頷いた。
「じゃあ、一応お兄ちゃん怪人だし攻撃するからな」
マイホゥ、遠慮がちにドローンを放ち攻撃しようとする。と、むぎが涙目になった。
「おにいちゃんひどい……」
「!!!」
衝撃を受けるマイホゥは胸を押さえて固まった。
「ご、ごめんよ。お兄ちゃんが悪かった……」
「……おこったよー!」
むぎがむすーんとした顔をすると、しーちゃんが怒りをあらわに猛突進しガジガジとマイホゥの脚を齧った。
「イテテテテ」
悲鳴をあげつつも何故か嬉しそうな怪人であった。なお、齧られた傷からは黒いもやもやしたオーラが漏れ出ている。
「い、いちおう作戦としては有効……」
仲間たちはマイホゥの反応を見て作戦を決行する意思をあらたにするのであった。
「しんみりとした暖かな時間を過ごせていたと思ったら……なんなのあの怪人は……!」
鮫島・冴香(Sexy Sniper・f13873)も眉間に皺を寄せていた。
「それにトシゾウさん、動けないだなんて……」
守れるかしら? と冴香は一瞬自問する。
「……絶対護るわ」
シリアスな風が一瞬吹き抜けた。
熱線銃を構え、全身でおじいちゃんを守るようにしながら冴香が敵を睨む。おじいちゃんはピカピカしている。敵は変態だ。
「……シリアスになりきれないわ」
問題はそれだった。
「大丈夫だ、何も問題ないぞ!」
妹が大好きな怪人・マイホゥはハァハァしながら猟兵たちへと歩み寄る。
「妹の何が良いかわからないだと? これを見れば良さがわかるぞ」
デュフフ、コポォと笑い声を零し、マイホゥがモニター付きドローンを大量に放つ。ドローンは宙に静止して猟兵たちをぐるりと囲み、一斉に妹を映した。
『おにいちゃん、あたし頑張る!』
モニターに映る妹は薄桃色のふわふわヘアーで苺のように赤い瞳のキマイラ少女……レパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)にそっくりだった。
仲間たちが一斉にレパルを見る。
「アンタ……『覚悟して来てる怪人』よね……人を「攻撃」しようとするって事は逆に「攻撃」されるかもしれないという危険を常に『覚悟して来ている怪人』ってわけよね……」
レパルがゆっくりとマイホゥに言葉を向ける。
「だ、だいじょうぶ? 相手は変態よ」
仲間が心配して声をかけてくれるが、レパルは固く拳を握りマイホゥに駆け寄り、拳を叩きこんだ。
「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん
ONITYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAN!!」
「レ、レパルちゃゲフォッ!!?」
1お兄ちゃんにつき3撃くらいの勢いで猛ラッシュを叩きこめばおにいちゃ……マイホゥも感動しつつ大ダメージを喰らっていく。
「今名前を呼んでたよ」
ライアがぞっとした様子で呟き、
「なんで名前を知られているのかしら」
冴香が遠い目をした。
と、話す間も視線の先で猛攻が続いている。
「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃあああああん!!」
「レ、レ、レパッ」
マイホゥお兄ちゃんは殴られつつ嬉しそうだ!
「本当に変態力の高い怪人ですね」
トリテレイアがしみじみと呟く。
「へんたいりょくが高いカイジンさん……」
しーちゃんを優しく撫でながらむぎが言葉を繰り返す。
「よくわからないけど、とってもつよいカイジンさんなのね」
「……そうね」
冴香が微妙な顔をした。
幼いむぎはまだこの怪人の変態性を理解できないらしい。強い敵を倒せるかしら、ううん、倒してみせるの、としーちゃんとハヤザブロウに囲まれてほわほわしているむぎは、どこまでも純真だった。
「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!!」
その間もレパルのお兄ちゃんラッシュは続いている。
マイホゥお兄ちゃんも妹に応えたくて名前を呼ぼうとしているのだが、呼ぼうとするたびにレパルパンチが叩き込まれるのでなかなか名前を呼ばせてもらえない。しかしその表情は実に恍惚としていた。
「すごいのね」
むぎがその攻めっぷりを見て無邪気に拍手をしている。
「でも、どうしてうれしそうなの?」
「知らなくていいことが、世の中には沢山あるのよ……」
冴香は遠い眼をした。
「教育上よくないよ。さっさと倒さなきゃ」
「そうですね」
ライアとトリテレイアがそんな話をしている。
「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!!」
こんな猛ラッシュが漫画で7ページ分続き、やがて幸せそうな顔をしたマイホゥお兄ちゃんはレパルによりゴミ箱にぶち込まれたのであった。
「御馳走様でした……お兄ちゃん嬉しいよ……ぐふぅ」
ゴミ箱の底からそんな声がする。そう、マイホゥはこの時一度死んだのだった。
変態・マイホゥは妹萌えゲージが最高レベルまでいくと死ぬ。可愛い女の子にお兄ちゃんと呼ばれただけで彼の妹萌えゲージは容易に振り切ってしまい、興奮しすぎて死んでしまうのだ。そのため、マイホゥは毎日のように死んでいる。だが、ひょっこりと生き返る。マイホゥはそんな究極の変態だった。
度を過ぎた妹萌えも困ったものだ。お兄ちゃんと呼ばれただけで死ぬなんて、つらたんです――、
「でもお兄ちゃんは死なない! だって妹のことを愛しているから!」
ゴミ箱のゴミをぶちまけながらマイホゥが華麗に復活した。
「どうするこの変態……」
「変態……」
仲間たちは途方に暮れた。
そんな猟兵たちへとマイホゥは熱く語りかけるのであった。
「見てくれ、こんな妹も良いと思う!」
ドローンには銃を手にした女刑事な妹が映っている。
仲間たちが一斉に冴香を見る。うん、よく似ている。
『お兄ちゃん。私たち、もう……戻れないわ』
映像の中、冴香似の妹がドシリアスな空気を創っていく。
『お兄ちゃんを逮捕しないといけない……でも、』
「妹よ! お前になら逮捕されてもいいぞ!」
マイホゥが盛り上がっている。
「……で?」
冴香が凍り付くような視線を向けていた。
「妹なぁ……まぁ確かに妹が居たらと思う事も昔は無くはなかったが……世話の必要な子供はある意味足りてるしな」
不知火・鉄馬(戒めの正義・f12794)が傍らの栗花落・澪(泡沫の花・f03165)をチラ見する。背が低く華奢な澪は、鉄馬と町を並んで歩けば兄と妹のように誤解する者もいるかもしれない。
(同い年とは思えねぇんだよな……)
長身の鉄馬と華奢な澪は、実は同い年であった。念のため触れておくと同性でもある。だが、並んで歩くと兄と妹のように見えてしまうのだった。
少女のように可憐な澪は、甘やかな瞳をキラリと煌かせてマイホゥに言葉を放っている。
「あのさ、しょーじきなコメント言っていい? あんたバカ? 出生率の話ならせめて弟にしなさいよ。妹は立派な女性ですよ」
妹なら子供も作れてしまうではないか。というとても冷静なつっこみであった。
「なるほど、確かに」
感心するトリテレイア。
「妹とは子供がつくれる。シエナは覚えました」
「そうなの?」
シエナとむぎが知識を増やしている。
「ああ、教育によくないわ……」
「早く倒さないと……」
戦場は混沌としていた。
危機感を覚える猟兵たちの一方でマイホゥは輝いていた。
「ツ、ツンツンされた……!」
ゴミ箱から出てきたマイホゥはゴミに塗れながらハートを押さえて仰け反った。マイホゥにデレは必要なかった。ツンだけで悦べる男、それがマイホゥだ。体はボロボロだが心は踊りださんばかりに浮かれ上がり、浮かれすぎてたまに死ぬ――それがマイホゥだった。
「おっ、効いてるぞ」
鉄馬が目を瞬かせる。このマイホゥ、事前情報では女の子にしか反応しないはずだったが。
「れ、澪たそー」
マイホゥがへろへろと澪に向かって手を伸ばし近寄ろうとする。
「なんで名前知ってんのー!」
澪がぞっとした様子で氷の全力魔法をマイホゥに放ち、足を凍らせた。足が凍ってぴたりと動きを止め、けれどマイホゥは嬉しそうだ!
「シエン、やってやれ」
鉄馬が雷を纏った長剣・迅雷を揮いながら言えば紫龍のシエンが意気揚々とマイホゥの背を切り裂いた。
「ウゴッ」
前へとつんのめるマイホゥの顔(モニター)を鉄馬が正面から叩き割り、感電させる。
「ウゴゴッ、ああ~! 妹を映していたモニターがあー!!」
「なんっか緊張感のない敵だな」
鉄馬が剣の柄で敵の腹をつけば敵は抵抗することもなくパッタリと仰向けに地に倒れた。
「また死んだ。今度こそ討伐完了か?」
思わず呟く鉄馬。しかし、倒れたマイホゥは猛烈に妄想を巡らせていた。
『お兄ちゃん! あたしがついてるわ!』
レパルによく似た元気系妹の激励。
『おにいちゃん、がんばってなの』
むぎによく似た幼い妹の声援。
『お兄ちゃんバカ? もう知らない!』
澪によく似たツンデレ系の罵倒。
『お兄ちゃん……逮捕よ』
冴香によく似たクールな妹が逮捕してくれる。
『お兄さま、お薬を……、とシエナがお薬をあげます』
シエナによく似た妹はお薬を差し出してくれて。
『お兄ちゃん! 守るよ!』
ライアによく似た妹まで現れた。
これら全てをマイホゥが壊れたモニターに映し出し。
「妹の願いを叶えぬ兄などいない! お兄ちゃん……頑張るぞ!」
マイホゥが凄まじい勢いでパワーアップして立ち上がる。
「うわあ……」
「うええ」
仲間たちがドン引きしていた。
「澪、何か言ってやれよ」
鉄馬が敵からそっと視線を逸らして澪へバトンタッチする。
「え、いやだって、もえ? の対象は女の子なのに僕が言う必要ある?」
澪が不満そうにしているが、鉄馬は深く頷いた。
「……ほんとに言わなきゃダメ?」
ちらりと視線を向ければ、仲間たちもウンウンと頷いている。ここまで苦楽を共にした仲間たちだ。黒歴史を創る時もみんな一緒……そんな声が聞こえてくるようだった。仲間の為だ、仕方ない。
「ぅ……お……お兄ちゃん」
恥じらいを乗せ、可憐な美少女(見た目)が上目遣いでお兄ちゃんと呼んでくれた。マイホゥはその瞬間死んだ。突然の死であった。
無意識に乗せられた誘惑催眠がまたよく効いたのであった。いっそ暴力的なまでの愛らしさ、妹萌えが即死するほどの破壊力であった。
「し、死んだ」
鉄馬が余りの効果に吃驚してマイホゥをつついている。
「すげえ。効果でかそうだと思ったが想像以上に効いた」
『お、お兄ちゃん! そんな!』
『おにいちゃん、いたいいたいなの?』
『お兄ちゃん! 勝手に死んでいいなんて言ってないよ……! ばか……!』
『嫌……! お兄ちゃん……!』
『お兄さま、死んだなら一緒におうちに帰る? とシエナは誘います』
『お兄ちゃん! うちの墓地くる!?』
マイホゥが召喚したドローンの映像が葬式の映像を流していた。なぜか猟兵たちにそっくりな仮装妹が兄の死を悲しんでいる。一部悲しんでいなかった気もするが、気にしてはいけないのだろう。
「あ、でも映像が流れてるってことはまだ生きてるんだな……」
気付いてしまった鉄馬は嫌そうな顔をして槍でマイホゥを突っついた。
「お、お、おにいちゃんな、大丈夫だ。何度でも、生き返るからな」
「あ、生き返った」
マイホゥはしぶとかった。むくりと起き上がり、ぷるぷる震えながら澪を熱く見つめている。
「お兄ちゃんを、お兄ちゃんと呼んでくれてありがとう。お兄ちゃんな、感動した……ぞ……」
その瞳は蕩け切っていた。
「ちょっとぉなんで感動するの僕が女みたいってこと!? もーお兄ちゃんのばかばかっ、ほんと空気読めないんだから! そんなんだから誰にも相手にされないんだよ!」
澪は真っ赤になりながら両手でお兄ちゃんをぽかぽかする。それは傍から見ると愛らしい妹が兄にじゃれているようにも見えてしまう。
「澪、そ、そのくらいでいいぞ」
「ああ……し、あ、わ、せ。ガクリ」
マイホゥは再び死んだ。
「また生き返るんだろうな」
鉄馬が慣れてしまっていた。
「あと何回俺たちは殺せばいい? 教えてくれ」
空を仰いで問いかけても、答えてくれる者はいないのだった。
地上では混沌が続いている。
「皆も今のは忘れてー!」
家族というものに馴染みのない澪は、理想の妹というのがよくわからないなりの妹演技(?)であったのだ、と顔を真っ赤にして恥じらった。だがマイホゥが求めていた妹像は元々生々しいリアルな妹ではなくまさにそんな妹像であったので相性が良すぎた結果マイホゥはしばらく死んでいた。
「あ、なかなか生き返りませんね」
「骸の海に還るんじゃない?」
「還っていいぞ……」
仲間たちはマイホゥをおそるおそる見下ろし、
「いや、まだだ!」
マイホゥは唐突に復活した。
「お兄ちゃん頑張るぞ!」
お兄ちゃんは脳内に住んでいる仮想妹たちの妄想に支えられて今、立ち上がる――。
「これは、みんなで攻める必要がありそうですね」
怪人の生命力の強さに危機感を覚えるトリテレイアが提案した。
「蘇れないくらい妹攻めしましょう」
「えー……、仕方ないな……」
いつも笑顔のライアが心底嫌そうな顔で大剣を手にする。
「やりたくないなー」
いつも元気なライアが心底気乗りしない様子で眉を寄せる。ぶんぶんと大剣を振れば、自分そっくりの妹が映っているドローンが目に見えた。
「とりあえずこれは片付けちゃおうね!」
ばっさりと斬り捨てればドローンは物言わぬ鉄塊となった。
(くっ、出来る事なら呼びたくなかったけど、私も手伝いを……!)
「これは仕事、これは仕事……みんなの為……」
冴香も恥じらいながら前に出る。
「お、お兄ちゃん!」
冴香の呼び声にマイホゥは感激した様子で両手を揃えて前に出す。
「冴香! お兄ちゃんはいつでもいいぞ!」
「何がよ!」
お兄ちゃんはどうやら逮捕してほしいらしい。
「女って大変だな……」
鉄馬がうんざりした様子で首を振る。その手には、紫龍シエンが変じた濃紫の巨大槍がある。
「あー、もうー!」
澪が再びぽかぽかとマイホゥを叩き、マイホゥは嬉しそうにニヤニヤした。
「喜ばないでよー! もうやだー!」
澪が鉄馬の後ろへと隠れて感情を持て余して白羽をばさばささせている。
「ああ、もう下がってていいぞ」
鉄馬が槍を突けばマイホゥは意外な運動神経を見せてひらりと避けた。
「おいオニーチャン動くなよ度胸無ェな」
マイホゥはさすがに鉄馬のオニーチャン呼びに萌えることはなかった。代わりにほんの少し腰が引けたようだった。
「ヤ、ヤンキーに絡まれてしまった。だが負けないぞ」
そんなやりとりにライアが殺意に満ち溢れた目を向ける。
「お兄ちゃん」
「! どうしたライア!」
マイホゥが涎を垂らさんばかりにだらしなく頬を緩めて機敏に反応する。
「だから、何故名前を把握しているの?」
鉄馬の背に隠れて澪がぷるぷるしていた。
「すごいのねー?」
むぎは無邪気に感心していた。
「あ、あの怪人、ちょっと怖い……でも、負けないわ!」
レパルがぞわりと毛を逆立てて呟いた。
『お兄ちゃんの為に頑張るわ!』
レパルそっくりの仮想妹がそんなことを言っている。
「バカにしないでよっ! あたし、あんな奴の為には頑張らないわ!」
レパルはつるぷにの尻尾で勢いよくドローンを薙ぎ倒した。
「レパルちゃんテイルスイング・ファイナルアターック!」
鮮やかな尾撃によりドローンは動きを止めたのだった。
「さて……」
ライアはマイホゥへとハイライトが完全に消えた蔑みの眼を向けた。
「……死んで?」
「妹がヤンデレ化したッ!?」
マイホゥはときめいている!
「ああー! すっごいイラッとする!」
ライアは全身から殺気を迸らせながら渾身の剣刃一閃で残りの仮想妹が映っているモニターを次々と砕いていった。
「これも! これも! 全部壊す!」
「ぎゃああああ!! お兄ちゃんの妹コレクションが!!」
「感動するほど飢えてた妹にやられんなら本望だろうが? 潔く受け入れろや」
鉄馬が槍を突き立てる。ざくりと刺さった槍傷からは血の代わりに妄執のような黒い煙が立ち上った。
「カイジンっておもしろいのね」
むぎがそんなことを言っていた。
「変な影響受けないといいけど……」
思わず他の仲間たちがそんな心配をしてしまう純真ぶりであった。
「さっさと終わらせちゃおう!」
「そうね、終わらせましょう」
ライアがモニターを壊していけば、冴香もハイヒールで容赦なくマイホゥの急所を蹴り上げる。
「グッフウゥ」
悶絶するマイホゥを地面へと転がし、ぐりぐりと踏みにじりながら冴香が冷えた声を降らせる。
「誰かを好きになるのに、属性なんて関係ないわ」
「そ、それは嘘だ」
「なんですって」
マイホゥは妹に踏みにじられて嬉しそうにしながら。
「お兄ちゃん知ってるぞ。お前が年上好みだって――はうあ!」
ぐりぐりと踏む脚に力が入る。どこを踏んでいるかは想像にお任せである。
(そんなこと――)
と思いつつ、実は無意識ながらも年上男性好きな冴香であった。
「さて、怪人様」
踏みにじられて喜んでいるマイホゥのもとへ身の丈3メートルに達しそうなほどの長身、全身鎧のウォーマシン・トリテレイアが声をかける。
「……」
マイホゥはスルーした。このマイホゥ、妹以外には頑なに反応しない筋金入りの変態である。
「さっき澪様に反応した癖に……」
トリテレイアが思わず冷静なツッコミを入れる。マイホゥは不思議そうな顔をした。この男、未だに澪の性別を間違えている。
「怪人様、妹に詳しい貴方なら「生き別れたけど敵味方に別れて再会する覆面系妹」をご存知のはず」
気を取り直したトリテレイアが妹の話題を振るとピクリとマイホゥの体が反応した。そして、むくりと起き上がる。
「同好の士か……よいだろう。妹トークに応じよう」
マイホゥは厳かに腕を組む。
「生き別れて敵味方、とても萌えるシチュエーションだ。最初は互いにわからないままで敵対していたのがふとしたきっかけで相手が妹だと発覚する衝撃の展開、」
語り始めるマイホゥへとトリテレイアがずずいと寄る。
「私がそれです」
明かされる衝撃の事実――、
「な、なんだって!」
仰天するマイホゥ。
「だが、お前はどう見ても――」
「背が高いのはパワードスーツを着ているから。声は正体バレ対策の変声機です。今、兜を脱ぎますからもっと近づいて見てください、『お兄様』」
衝撃の事実に仲間たちもびっくりしている。
「そ、そうだったの?」
「なんと女性だったとは」
「それはだめだよ! ステータスの性別欄に男ってあるから」
「とりあえず通報しました」
「ネットで拡散しよう」
(味方の方々が信じてしまって……このままでは今後の猟兵活動に支障が出かねないですね。しかし、敵を騙すには味方からと言いますし)
機械のブレインは判断を下した。GO! 美少女! と。
「今まで黙っていましたが、私は実は美少女なのです」
トリテレイアは厳かに告白した。
「通報ってどこからするんだっけ」
「お問い合わせってところ」
仲間たちがスマートフォンを覗き込んでいる。
(なぜ通報されているのでしょうか)
「『美少女って言っててなんとなく気に入らないので、なんかいい感じに対応してください』」
「その通報内容で対応されたらびっくりですよ……」
「トリテレイアさんが美少女アイドル猟兵として大々的にデビューするので拡散お願いします、と」
「拡散しないでください!?」
「この後はライバルを蹴落とそうとして逆に悪事がばらされて婚約破棄されたりする運命が待ち構えていて」
「待ってください、私は謙虚堅実をモットーに猟兵生活を営んでおりますから!!」
そんな仲間たちに気を取られているとマイホゥが情熱的に抱きついてくる。
「妹よ!!」
兄妹、感動の再会――、
「はい、嘘ですよ。妹なわけないじゃないですか」
格納銃器を起動させ、トリテレイアは淡々とマイホゥを蜂の巣にした。
「な――」
「最期に、教えて差し上げましょう」
マイホゥが「限界なのでもう死にます」といった気配を目に浮かべていた。これはもう生き返らないだろう。トリテレイアは勝利を確信して最後に真実を捧げた。
「澪様は、男性なのですよ」
「なんだっ、て……」
それは、今まで立っていた大地が天だと言われたかのような嘗てない衝撃であった――マイホゥは、絶望した。
「そん、な……」
液晶が粉々に割れてマイホゥはガクリと地に崩れ落ちた。しばらく見守っても生き返る気配は全くない。
「終わりましたね」
ようやく絶命したらしき気配を見せる怪人を冷淡に一瞥し、機械騎士が仲間に向かって「というわけで今のは嘘なんです、通報も拡散もやめてください」と言おうとした時、異変が起きた。
「あっ、おじいちゃんが」
おじいちゃんの放っていた光が収まり、顔に移っていた鍵の映像がすうっと消えた。そして、まるで周囲の建造物から発せられているかのような機械的な音声が響く。
『システム・フラワーズより緊急救援要請』
それは、周囲に聳え立つビルが喋っているかのように。
『全自動物資供給機構『システム・フラワーズ』に、侵入者あり』
それは、風に乗り。
『テレビウム・ロックの解除数が多ければ多いほど、開放されるメンテナンスルートは増加する。至急の救援を請う』
それは、一度だけの音声だった。
決められた文言、吹きこまれたメッセージを単に再生しただけのような音声は、しかし言葉の意味を考えると只ならぬ事件が起きている予感を覚えさせ。けれど呆気なく沈黙する。
「……」
沈黙してしまった。
空はすっかり夜の到来を知らせていた。けれど都市の灯りが自然の夜を明るく照らしあげてまだ明るい。
キマイラフューチャーは、そんな惑星都市であった。
「い、今のはいったい」
顔を見合わせる猟兵たち。
シエナはこの隙にひっそりと絶命した怪人のもとへしゃがみこんでいた。怪人は絶命していた。粉々になったモニターへとシエナは魔法のお薬をかけた。それは甘やかな毒であり、本来は敵の命を奪う目的であった。だがこの時は、薬を振りかけること自体が神聖な儀式のようであり。
「シエナさん、なにを……あ」
仲間がぱちりと目を瞬かせる。
なんとマイホゥの体が溶けるように消えていき……後にはマイホゥの原型を留めていない抱き枕大のお人形が遺った。お人形は、マイホゥとは異なり頭に『兄』という文字を浮かべた顔(モニター)を持ち、服にも『理想の兄』という文字が書いてある。
「り、理想のお兄ちゃん人形が誕生した……」
それは、明らかにマイホゥとは別の存在だと誰の眼にもわかる理想のお兄ちゃん人形であった。
「『お兄さま』、今日は一緒に眠りましょう。とシエナは微笑みます」
シエナは『お兄さま』をぎゅっと抱きしめて優しく微笑んだ。
「助かった……のかのう? 本当に、なんとお礼を言ったらよいか。ありがとうのう……」
猟兵たちに向かっておじいちゃんは鍵の消えた顔(モニター)に映った目をしばしばさせながら頭を下げ、礼を言うのであった。
「それにしても、今の音声は……? ロックとやらは、解除されたのかのう? わしは、何かの役に立ったのじゃろうか?」
その謎に対する答えは、誰も持っていない。だが、
「俺さ、どちらかと言えば爺ちゃん婆ちゃんっ子だったんだよな」
鉄馬が独り言のように呟いた。
「……守り抜いた余生大事に生きろよな」
声はぶっきらぼうでいて、優しさが滲んでいる。
それを皮切りに仲間たちは口々におじいちゃんに声をかけた。
「おじいちゃん、無事でよかった」
「おじいちゃん、これからも元気でね」
「怪人の余った部位はやっぱりゴミ箱に捨てた方がいいと思う」
レパルは後片付けを頑張っていた。猟兵たちとおじいちゃんは一緒に後片付けをしながら1日の出来事を振り返り、和やかに語り合う。
そして、別れの時がやってくる。
彼らが守り抜いたひとりのおじいちゃんが日常へと帰っていく。そのおじいちゃんの平穏な日常がずっと続いてほしいと猟兵たちは思うのだった。
「そのために」
そのために、彼らは戦うのだ。
「スーパーでイカを買っていかないと……」
なお、冴香は結局スーパーでイカを買って帰ることにしたようだった。
今夜はイカ焼きだ。
大成功
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