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テレビウム・ロック! ~チャンネルはそのままで~

#キマイラフューチャー #テレビウム・ロック! #テレビウム #システム・フラワーズ

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 朝日に照らされたガラス片が、キラキラと輝きながら重力に導かれて眼下へと落ちていく。
 握り締めたスマホに映る時刻は【7:27】。
 およそ1分前、彼の世界は急変した。

 その日、テレビウムのウォッチャー・ブラウン、通称ウォッチはアパートの自室の寝床からもそもそと起きだした後、顔を洗おうと洗面台へ向かった。途中、充電していたスマホを手にすることも忘れない。
 遠慮なく欠伸をしながら徒歩数歩圏内にある洗面台へと到着した彼は、一応スマホの時計を確認した。
 今日は一限から大学の講義がある。面倒だが、遅刻してあの偏屈な教授に目を付けられるのはもっと面倒だ。
 【7:26】。寝起きの目に眩しいスマホのロック画面にはそう映っている。
 そして、洗面台にあるやけに大きい鏡に写り込んだ寝惚けたウォッチの顔には、いつの間にか「鍵のような映像」が浮かび上がっていたのだった。
「……んん?」
 まだ寝ぼけているのか。そう思った彼が顔を洗おうとしたその時、
「──ッッッモォォォォニィィィィィン!!」
 洗面台横の壁が喧しい大声と共にぶち抜かれる。直後、大きく空いた壁の穴からアルパカ面の大男が堂々と乗り込んできたのだ。
「突撃隣の朝ごはん! 朝ごはんは大事だぞう、もりもり食べるんだ。サプリメントとかナイナイ!」
 アルパカ男がそのつぶらな瞳でウォッチを見た。
「ボォォォイ……朝ごはんは?」
「……昨日買ったアンパンと、牛乳?」
「…………ペッ!」
 アルパカ男が床に唾を吐いた。
「ボォォォイ、それはイケナイ。もっとしっかり食べねば。しかし、ここまで言っておいて私はボォォォイにステキな朝ごはんを食べさせてあげることは出来ないなぜならヴァ!」
 ザザッ! と壊された壁の向こうからアルパカ男がさらに2人走り込んできてポージングをキメた。
「私達の狙いがボォォォイだから、さ!」

 逃げ道はベランダしか無かった。ベランダへ繋がるガラス戸が、投げた椅子で砕け散る。
 アルパカ男達の手を奇跡的に掻い潜りつつ、ウォッチはベランダを飛び出してその身を宙へと投げ出した。
 朝日に照らされたガラス片が、キラキラと輝きながら重力に導かれて眼下へと落ちていく。
 握り締めたスマホに映る時刻は【7:27】。

 ──猟兵曰く、ここはキマイラフューチャー。
 楽しく不思議でクールな世界。
 にしてもこれは、少々刺激的過ぎやしないかい?


「……というのが、私が予知した事件の内容だ」
 スカル・ソロモン(目覚める本能・f04239)は集まった猟兵達の中心にいる。
 いいだろうか、と前置きをしてスカルは概要を掻い摘んで話し始めた。
 一つ、キマイラフューチャーのテレビウム達の顔に、突如「鍵のような映像」が浮かび上がった。
 一つ、「鍵のような映像」は全てのテレビウム達に浮かび上がったわけではない。また、浮かび上がったテレビウム達にも特に共通点は無い。
 一つ、その「鍵のような映像」が浮かび上がったテレビウム達を、どこからか出現した怪人達が襲い始めている。
「そして件のウォッチ君も、もう間もなく怪人達に襲われようとしている」
 猟兵達が現場に到着した時にはすでにウォッチはベランダから飛び出した後だ。
 まずは落ちてくる彼を無事に確保するのと、彼を追ってくる怪人を撃退しなければならない。
「しかし、うん。思い切りが良いのも考え物だね。まさか地上10階のベランダから飛び降りるとは」
 一瞬の静寂の後、猟兵達は急ぎ現場へと飛んだのだった。


力水
 急に告知が来たので。
 こんにちは、力水です。

 怪人達は鍵のような映像が映ったテレビウム達をどうするつもりなのか!
 謎は多いですが、ひとまずは朝っぱらから騒動に巻き込まれたウォッチ君を無事にキャッチしつつ、怪人達から守ってあげて下さい。

 ではでは、皆様の素敵なプレイングお待ちしております。
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第1章 集団戦 『量産怪人アルパカマッスルブラザーズ』

POW   :    ポージング
自身の【逞しい肉体の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    ポージング
自身の【躍動する肉体の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
WIZ   :    ポージング
自身の【洗練された肉体の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。

イラスト:ヤマトイヌル

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シリン・カービン
転送後、即【スピリット・バインド】を
落下点の上空に発射。
「粘りの精霊よ、彼を受け止めて!」
投網を広げて周辺の建物に粘着させ、彼を受け止めます。
粘るのでトランポリンの様に飛んでいく心配も有りません。
能力を解除して彼を助け出したら手を引いて走り出します。

「…獣?」
この世界に来るのも初めてなら、
アルパカマッスルブラザーズを見るのも初めてです。
「狩って、いいんですよね?」
誰にともなく呟いて迎撃開始。
不利な行動を取ってくれるなら好都合です。
【スピリット・バインド】を次々発射、
身体能力の増大なんてさせません。
捕らえた端から急所を狙い撃ちます。
猟師ですので。

さ、新手が現れる前に行きますよ。

アドリブ・連携可。



「お───あ──わぉああああああああああ!?」
「粘りの精霊よ、彼を受け止めて!」
 転送を終えたばかりのシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)の言葉とほぼ同時に、彼女の愛銃から精霊を宿した投網弾が放たれる。弾は勢いよく飛ぶと地上10階から落ちてくる件のテレビウム──ウォッチの真下で花火のように大きくその網を広げた。
 さらに、広がった網は周囲の建物にぶつかると、その粘着力で自身をそこへ固定する。
「──あああ……あ?」
 ウォッチの身体が勢いよく網に落ちる。網に包まれるように一際大きく沈んだその体は無論、そのまま地面にぶつかるようなことは無い。シリンはそこまで計算して網を展開する高さを決定したのだ。
 加えて網の粘着力はウォッチをしっかりと捕らえ、反動で彼の身体が外に投げ出されることは無かった。
「え、え? 今度はなんだ!?」
「今解放します、そのまま大人しくして」
 網の上でもがき始めたウォッチに声をかけると、すぐさまシリンは網を解除した。
 痕跡を残さずに消え失せた網から取り残されたウォッチが再び自由落下を始めるが、待機していたシリンがその小柄な体を受け止め、地面に下ろす。
「怪我は、ありませんね」
 手早く彼の状態を確認するシリンにウォッチはされるがままだ。
「ええと、うん、大丈夫だ。本当にありがとう。どうなる事かと──」
「それは何より。でもまだ安心はできません──狩って、いいんですよね?」
「──?」
 ウォッチの疑問の声はシリンに届かない。彼の声は、すぐ近くから響いた銃声と落下音にかき消されたからだ。
 落下音の主は、ウォッチを追って落ちてきたアルパカ男だ。そして銃声の主はシリン。彼女は敵の接近にいち早く気付き、ウォッチを確保した投網弾でそのアルパカ男を拘束したのだ。
「ふっ、随分手荒な歓迎だねレディィィ……。落下式セルフ逆エビ固めで落ちてきたばかりの私を、さらに網で拘束するとは!」
「わけがわかりません」
 シリンが横倒しになったアルパカ男の眉間を容赦なく撃ち抜いた。
 しかし、敵は彼一人ではない。ウォッチを追ってアパートの10階から、さらには付近の建物の影から次々とアルパカ男達が現れ始めたのだ。
 すぐさま、シリンは向かってくるアルパカ男達へ投網弾を撃ち込んでいく。そしてそのたびに完成する『謎のポージングを取ろうとしたアルパカ男の像(生もの)』の急所へと弾丸を叩き込んだ。
 だが気づけば数え切れないほどのアルパカ男達が視界に映っている。毛の色くらいしか違いが無いために、もはや数え直す気すら起きない。
「毛だけではないぞレディィィ……。パンツの色も違ボッ」
 また一体のアルパカ男を片付けると、シリンはウォッチの手を取り走り出した。
「留まっていては危険です。これ以上新手が増える前に行きますよ」
「わ、わかった! ……ところで君、猟兵、だよね? すごいや、まさかこんな所で会えるなんて! さっきのカッコよかったよー、くぅーっ、スマホで録画しとくんだった!」
 状況が分かっていないのか、元来の性分なのか。
 目を輝かせてこちらを見るウォッチの姿に、シリンは少し戸惑うのだった。
「それはその……ありがとう、ございます」

成功 🔵​🔵​🔴​

ソラスティベル・グラスラン
何やらとっても急展開ですね!
こんなハイスピードはわたしの愛する数多の冒険譚にもありませんでしたっ
しかしだからと言って引いては『勇者』の名折れ、今行きますウォッチさん!!

空を飛んでウォッチさんをキャッチします!
既に誰かが向かうならば【かばう】でウォッチさんを守護
来るであろう追撃を【盾受け・オーラ防御・見切り】で防御を固め、
【怪力】で力尽くで跳ね返し、【範囲攻撃】の大斧で薙ぎ払います!

なんと逞しい肉体……気合の果てに鍛え上げた姿、見事です!
ですが残念です、無辜の民を襲うその姿に【勇気】は無いのですから!
此処に誓うは不退転の意思、勇者とは誰より前に立つ者!
これがわたしの、【勇者理論】!!(防御重視)



 猟兵達は次々と迫り来るアルパカ男達を撃退しつつ、敵に追いつかれ囲まれぬよう、ウォッチを連れてキマイラフューチャーの街をひた走る。
 いつの間にか、周囲には取り壊し中のビル群が立ち並んでいた。どうやら再開発地域へと差し掛かったらしい。ビルの外壁に作られた足場を、猟兵達とアルパカ男達は戦いの舞台へと変えていく。
 足場を蹴り、一人のアルパカ男がウォッチ目掛けて飛び掛かった。
「カモン、ボォォォイ……!」
 その手は幸運にもウォッチには届かなかったが、勢いよく後ずさったウォッチの体はバランスを崩し、足場の上から再び宙へと投げ出される。
 だが、そこへ飛翔する姿があった。
「今行きますウォッチさん!!」
 それはソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)だ。
 彼女は長大な斧を片手でしっかりと持ったまま、もう片方の手で宙へと投げ出されたウォッチを抱きかかえる。そのまま、ソラスティベルは一対の翼で力強く空を駆けていく。
「何やらとっても急展開ですね!」
 先の事など考えず、無謀にも飛び掛かってきたアルパカ男をソラスティベルは腕に付けたバックラーで弾き返す。
「っ、ホントだよ、未だに何が何やら……」
 すぐ近くで起きた衝撃に身を縮こまらせながら、ウォッチが呻くように応じる。
「ええ、こんなハイスピードはわたしの愛する数多の冒険譚にもありませんでしたっ」
 突如、上空から次々と降ってきたアルパカ男達を、ソラスティベルは体を左右に転がすようにしてかわし、進んでいく。しかしあまりにもその数は多い。
 ついには、ソラスティベルの背に一人のアルパカ男が取りついた。当然、彼女のスピードも遅くなる。するとその機に乗じるとばかりに、周囲から幾多のアルパカ男達が彼女目掛けて飛び掛かった。
 ものの数秒で、そこには巨大な筋肉の塊が出来上がる。そして飛行能力を持たないその塊は、当たり前のように落下を始めた。
 だが、
「しかしだからと言って引いては『勇者』の名折れ──!!」
 塊の中から声が聞こえる。諦めを知らぬ、勇ましい声だ。塊が徐々に膨れ上がり、綻びが生まれる。
 次の瞬間、塊が爆ぜた。四方八方にアルパカ男達が弾き飛ばされていく。
 アルパカ男達が失せた後にはソラスティベルと、彼女に抱えられたウォッチの無事な姿があった。敵を薙ぎ払った大斧を、ソラスティベルは片手で構え直す。
 一つ息をつき、先へ進もうと彼女は前を見た。
 ──そこには、壁があった。
 否、それは彼女達を捕らえんとする網だったかもしれない。
 ……アルパカ男の上にアルパカ男が立ち、それが縦に幾重にも連なっている。さらにはそれが左右にも展開していた。
 まさに筋肉の壁。ウォール・マッスルである。
「なんと逞しい肉体……気合の果てに鍛え上げた姿、見事です!」
 ソラスティベルはその光景に素直な感嘆の声を上げる。だが手にした大斧を、彼女はその筋肉へと突きつけた。
「ですが残念です、無辜の民を襲うその姿に【勇気】は無いのですから!」
 ソラスティベルが大きく翼を広げる。反り返るほどに広げたそれは、力を溜めている証左に他ならない。
 直後、翼で背後にある空気の壁を打ち付けるようにして、ソラスティベルは自身の身体を前へと弾き飛ばした。
「此処に誓うは不退転の意思、勇者とは誰より前に立つ者!」
 大斧の刃を前へ突き出したまま、彼女は筋肉へ一直線に飛ぶ。その姿はまるで、一体の巨大な竜のようにも見えた。
 迫る竜に、アルパカ男達も筋肉をさらに高めていく。
「これがわたしの、【勇者理論】──!!」
 防御という強固な鱗を得た竜──ソラスティベルが、筋肉に正面から激突した。
 だが思い出せ。
 竜が、壁如きで止められるものか。あるいは網如きで捕らえられるものか。
 答えはわかりきっている。
 大斧の顎が自身を阻む壁を喰い破り、大穴を開けた。瓦解していく壁を背に、竜はその先へと突き進んで行ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

旗村・グローリー
戦おう。

成程、すべて理解した。
アルパカ一体では当然、ジャイアントパンダには敵わない。
そしてアルパカの数を増やしたところで……ふむ。
檻の前にできた行列の数では、これまたパンダの足元にも及ばないだろう。
そこでそのマッスルポーズというわけか。
多少の芸を見せれば、キングオブアニマルであるパンダに対抗できる、と。
そう考えたワケだな。実に浅はかではあるが……見込みはある。
上を目指す気概こそ、全てのアニマルに必要な資質だからだ。

ZOOの開園時間は9時。まだ十分に余裕がある。
相手をしてやろうじゃあないか。
おれの斧を防ぐほどの肉体であるのならば、加えてやってもいい……
うちの園のメンバーにな。


鯨間・亜子
【アドリブ等歓迎】

テレビウムの子は何とか受け止められたみたいだね。
私は落ちてくる残りのアルパカをせん滅するよ。

降魔化身法で自身を強化。
ビルの壁を登って、空中で落ちてくるアルパカを迎撃するよ。
「ホントはそれこそ、粘着網でもあればヒーローっぽいんだけど……」
それは次の課題かな。

窓枠とかをうまく利用しながら、格闘で仕留めていくよ。
……あんまり効率は良くないかもだけど、少しでも多く倒せるよう頑張る。
「落ちてくるだけの筋肉のかたまりなんて、それこそ朝飯前だ!」

もし、取っ組み合いになりそうなら無理せず、
距離を取って手裏剣で対応するよ。
「ごめんね、マッチョはあまり好みじゃないんだ。暑苦しいし」


ニコラ・クローディア
おおむね状況は把握したわ
既にテレビウムを保護している子がいるなら、さっさとあのアルパカを叩くべきね
「ここから先は通行止めよ、脳みそまで筋肉のアルパカさん」
威嚇射撃としてまずはバリスティカのクイックドロウでアルパカの足元を撃ち、スナイプできるティヴェロンのセミオートモードで脳天を狙いましょう
龍闘術で強化してるから威力はかなり高いわよ?
「知ってる? どれだけ鍛えても目や口、喉といった部分の筋肉には限界があるって」
そのほかにも筋肉の継ぎ目となる肋骨下部や胸骨、関節部も定番ね
「さぁ、踊りなさい」
生憎とこちらの銃器は魔力で弾丸を生成できる
弾切れのないバレットダンスに興じてもらいましょう

アドリブ・連携歓迎



 アルパカ男達の追跡から逃れるためにウォッチは走り続ける。今度は、建物と建物の間に網目のように広がる路地を駆け巡っていた。
 そばに猟兵達の姿は無い。しかし上空から、あるいは一つ隣の通りから、彼らが戦う音は聞こえてくる。
 焦りと少しの安堵を得ながら足を止めずに行く彼は、やがて路地の先に広がる空間に辿り着いた。
 そこはバスケットコートよりも少し広い程度の、建物の裏手に囲まれた場所だった。花壇やベンチがいくつかあるところを見るに、ここは都会の中にある憩いの広場と言ったところだろうか。
 だがウォッチにとっては、そこは心休まる場所ではなかった。
「行き止まり……!?」
 そう、道はここで途絶えている。袋小路とも言える場所だ。つまり逃げ場がない。
 慌てて辺りを見回すウォッチの目に、次々と彼を追ってくるアルパカ男達の姿が映った。それは広場の入口へと続く道から、あるいは建物の上から。
 ならばと駆け寄ろうとした建物の勝手口が力強く開き、やはりそこからもアルパカ男が顔を出す。
「観念するんだね、ボォォォイ……!」
 見たことも無い不気味な笑顔を浮かべるアルパカ男。思わずウォッチは後ずさる。
 だが、勝手口から出てこようとしたアルパカ男の体が突然、“く”の字に折れ曲がった。そのまま、弾かれるように広場の中央へと吹き飛ばされる。
 唖然とするウォッチの前で、アルパカ男に続いて勝手口から姿を表した者がいた。
 全身をモノトーンで統一した男、旗村・グローリー(ザ・ジャイアントパンダ・f04986)である。
 その顔はパンダだった。
「……ふむ」
 感触を確かめるように、グローリーは両手に斧を持ったまま、慣らすように手首を動かす。先程アルパカ男を吹き飛ばしたのはこの男と、彼の持つこの斧であることは間違いない。
 さらに今度は、別の建物の勝手口が衝撃音と共に爆ぜた。転がり出て来たアルパカ男を足蹴にして広場へと姿を現したのはニコラ・クローディア(世界を渡る龍賢者・f00091)。
「──っ。よかった、無事なようね」
 真っ先にウォッチの安否を確認すると、ニコラはすぐさま広場の入口へと駆け、広場の外からこちらへと向かって来るアルパカ男達の前に立ち塞がる。
「ここはニコラに任せて」
 迫るアルパカ男達を睨んだまま、彼女は言った。
「おれは広場に陣取ろう。建物の上から来る者もいるが何、ジャイアントパンダには──」
「……良かったら、上からの敵は私が」
 地面の少し上方から声がした。見れば広場にある街灯の上に人影がある。
 忍者装束に身を包んだ、鯨間・亜子(元ひきこもりゲーマー・f17119)の姿がそこにはあった。街灯の上で上手く立とうとバランスを取るのに苦心しているようにも見えるが、きっと気のせいだろう。
「確かにここは逃げ場はないけれど、それは敵にとっても同じこと。ここで殲滅してしまいましょう」
「はい、やっつけましょう! ……あ、ニンニン」
 亜子は思い出したように胸の前で印を結ぶと、妖の者どもをその身に宿す。彼らの囁く呪詛が彼女の行動を阻害するが、超強化された体で強引にそれを抑え込むと、ビルの壁へと飛んだ。
 亜子は壁に取りつくや否や、彼女の真上に飛び降りてきたアルパカ男を勢いよく蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたアルパカ男は、同じように飛び降りてきていた同胞達を巻き込みながら落下し、固い地面に強かに叩きつけられた。
 その様子を見届けることなく、亜子は足先で壁を僅かに蹴り砕きながら走る。道中にいた敵は漏らさず地面に叩き落すか、壁に叩きつけるかすることも忘れない。
「ホントはそれこそ、粘着網でもあればヒーローっぽいんだけど……」
 大きな網を飛ばし、悪党達を文字通り一網打尽にする光景を想像する。次の課題にと、その想像を頭の隅に残しつつ、亜子は一際強く壁を蹴った。
 自分がいる壁から向かい側の壁へ、弾丸のように彼女は飛ぶ。眼前には、あまり直視したくは無い程のアルパカ男達が広場へ向かって飛び降りている。
 だが見方を変えれば、隠れる場所も無く、無防備に飛び降りるその姿はただの的だ。
「落ちてくるだけの筋肉のかたまりなんて、それこそ朝飯前だ!」
 亜子は取り出した手裏剣をその的に向かって放つ、放つ、放つ。
 十数では足りぬ。数十でもまだだ。故に亜子は“千”を放った。平時では不可能であろうそれも、超強化された今の彼女であれば届かぬ話ではない。
 雨あられ、否、絨毯爆撃のように建物の壁に手裏剣が突き刺さり、アルパカ男達は肉塊となって壁へ縫い留められた。
 着地の為に手裏剣を当てなかった壁の僅かな場所に亜子が着地する。辺りは燦々たる様相である。
「ごめんね、マッチョはあまり好みじゃないんだ。暑苦しいし」
 亜子は手を合わせて弔いをすると、残りのアルパカ男達を駆逐すべく動き出したのだった。

 広場の上空で亜子が行ったのが“面”の攻撃であるなら、こちらは“点”と呼べるのかもしれない。広場の入口に陣取ったニコラは、広場の外から迫るアルパカ男達を二丁の銃で穿っていた。
 入口の周辺には、撃ち抜かれ息絶えた敵の屍が土嚢のように積み上がっている。仲間の変わり果てたその様子を見ても、アルパカ男達は進撃を止めようとはしない。
 それは勇猛か、あるいは無謀か。
「ここから先は通行止めよ、脳みそまで筋肉のアルパカさん」
 狂ったように走り来る敵達、その各々の足元にニコラが銃弾を撃ち込み、威嚇する。
 当てはしない。だが、どんなに勇猛であろうと無謀であろうと、間近に起きた危険には反応してしまうものだ。
 その例に違わず、足元に銃弾を受けたアルパカ男達は少なからずその侵攻にブレーキをかけた。そしてその際、どうしても上半身を起こしてしまうのだ。
 故にそこを狙う。
 威嚇射撃に体を起こしたアルパカ男がそのままひっくり返り、仰向けになって倒れる。その脳天には弾痕が深く刻まれていた。
 次々と、滑り転ぶように敵達はその体を地面に仰向けに投げうっていく。
 さらに言えば、ニコラの銃が放つ弾丸は彼女のユーベルコードで威力を強化されたものだ。生物の脳天など、易々と貫通する。
 脳天を穿たれ倒れた敵の背後に居た者達がよろめく。貫通した弾丸が、彼らにも命中したのだ。そして、それを見逃すニコラではない。
「知ってる? どれだけ鍛えても目や口、喉といった部分の筋肉には限界があるって」
 口にした通りの場所にニコラは弾丸を叩き込む。結果がどうなるかなど、知れたことだ。
 肋骨下部、胸骨、関節部。指し示し、教授するように、そこにも弾丸を放つ。
「筋肉の継ぎ目──ここも定番ね」
 数体が、糸が切れたように倒れ込む。だがそれを踏み越えて、新たなアルパカ男達が迫り来る。
 しかし結果は同じだ。ニコラが魔力で生成する無尽蔵とも言える弾丸が彼らを地に伏せさせるまで、そう時間はかからなかった。
「さぁ、踊りなさい」
 この舞踏会(バレットダンス)の閉幕は、まだ先になりそうだ。
 
 背後から羽交い絞めにされたグローリーに、正面から別のアルパカ男が殴りかかる。だがその拳が届く前に、グローリーは相手の頭を蹴り上げた。
 さらに背後に居るアルパカ男を背負うように持ち上げると、頭を蹴られ体勢を崩したアルパカ男に勢いよく投げつける。
 左右から飛び掛かってきた者達には、手にした斧の刃を丁寧に当ててやる。勝手に来て勝手に倒れてくれるのは好都合だ。
 広場では、グローリーを中心にしてアルパカ男達が渦を巻いている。どこを見てもアルパカばかりだ。こんな状況になっても、建物の勝手口からはさらにアルパカ男が補充されていくのだから始末が悪い。
 グローリーは適当な一人を切り倒すとその体を踏み台にして宙へ飛んだ。
「アルパカの数を増やしたところで……檻の前にできた行列の数では、パンダの足元にも及ばない」
 アルパカ男達の頭を川の飛び石のように踏みつけて進む。適当な、空いた空間を見つけると飛び込むようにそこへと着地した。
 再びグローリーに殺到するアルパカ男達に、グローリーは斧を両手に持ったまま独楽のように回り始めた。そうして回転刃となった彼は、近づいた敵達を例外なく切り飛ばしていく。
 しかし、その動きが突然鈍くなった。なんとか動こうとはするが、とうとう完全に動きがとまってしまう。
 要は、単純に敵の数が多すぎるのだ。ミキサーに具材を多く入れ過ぎれば刃が止まりモーターが焼け付くように、グローリーもまた押し寄せる数多の敵にその刃の回転を止められてしまったのだ。
 止まってしまえば数で勝るアルパカ男達の出番である。グローリーを押さえつけると、その上へ上へとアルパカ男達は積み重なっていく。
「んッフフフ、筋肉のミルフィーユ……その最深部にいる気分はどうかな?」
 グローリーの耳元でアルパカ男が囁く。
「相手を……そろそろ“相手”をしてやろうじゃあないか」
「……何?」
 グローリーの思いがけない返答に思わずアルパカ男は聞き返す。
「おれの斧を防ぐほどの肉体であるのならば、加えてやってもいい……。うちの園(ZOO)のメンバーにな」
「一体何を言って――」
「試験は一発勝負だ」
 そういうと、グローリーは押さえつけられていた体を一気に起こした。当然、そうするには人外の膂力が必要だ。故に、生命体の埒外にある猟兵たる彼には出来た。
 グローリーの上に積み重なっていたアルパカ男達が吹き飛ぶ。その中心で、グローリーは両手に持った斧を高く天に掲げていた。
 そして、吹き飛んだ敵達が地面に落ちたその時、彼は一気にその斧を振り下ろした。

 ──どんな言葉が相応しいだろうか。
 街の、一つの区画を一瞬で壊滅させるその一撃を形容するのには。
 アルパカ男達が上から降りてきていた建物も、その全てが倒壊した。
 あれだけいたアルパカ男達も瓦礫の下に埋まってしまったのだろう、辺りは静寂が支配している。
「……過去から出直してくるんだな」
 瓦礫の上に一人、グローリーが立つ。見上げた空は、まだ朝の清々しさを幾分か残したままだ。
 ふと、転がってくるものがある。それは、蓋のついたゴミ箱だ。
 ごろごろと転がってきたそれは、瓦礫にぶつかって止まると蓋が外れた。中から転がり出てきたのはすっかり疲弊したウォッチの姿だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『雀牌戦闘員』

POW   :    国士無双
予め【異なる顔の戦闘員が14人揃う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    三元牌
【3人同時攻撃】による素早い一撃を放つ。また、【鳴く】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    立直
【相手の行動を読み、作戦通りの攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【狙いすました一発】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。

イラスト:ケーダ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「なんだかすごい事になってるけど……、とにかく助けてくれてありがとう」
 瓦礫の山の上でウォッチは猟兵達に礼を言った。今の所、敵の気配はない。ウォッチもようやく安心したようだった。
「それにしてもこれ、いつまでこうなの? 拭いたら取れたりしない?」
 そういうものじゃないような……、と顔を見合わせる猟兵達をよそに、ウォッチが自分の顔(画面)を手で拭う。
 すると、ウォッチの顔に映っていた『鍵のような映像』が横方向に滑らかにスライドし、別の映像が映し出されたのだ。
 思わず猟兵達がウォッチに殺到する。
「え、え、何? 何かあったの? 僕自分の顔見えないんだけど!」
 騒ぐウォッチをとりあえず大人しくさせると、改めて猟兵達はその映像を確認する。
 ウォッチの顔に映し出されたのは、地図らしき映像だ。しかもそれは猟兵達が今いる地域を記したモノのようだ。
 良く見れば地図のとある場所にピンのようなものが立っている。目印のようだが、ここに何かがあるのかもしれない。次はこのピンの場所に向かうことになるだろう。
 すると猟兵の一人が指でウォッチの顔に触れると、指二本を動かして地図を拡大しようとした。どうやら小さくて見にくかったらしい。
「イタタタ!? 顔を引き延ばさないで!?」
 いや流石にそれはできないでしょ、という意見が猟兵達の中では大多数だったが、さも当然のように地図が拡大されたのを見て彼らは色めきだった。
 じゃあ逆は、という話になり、ウォッチの顔が指二本で摘ままれるようにされると今度は地図が縮小された。
 何故か拍手が起こった。
「遊んでるよね! 遊んでるよね!?」
 ウォッチの抗議が空しく宙に霧散した。

「お楽しみの所大変申し訳ありませんが!」
「どうも敵です!」
「筋肉パカ、いや、バカのアルパカ男とは違って我々は頭脳派! とっても賢いのです」
 不意に、麻雀牌の頭を愉快に動かしながら雀牌戦闘員が現れた。しかも彼らは何故かマイクロバスに乗っている……話している三人以外の気配がバスの中からするが、今はそっとしておこう。
 どうしたものかと猟兵達が周囲を見回せば、持ち主不明の様々な乗り物がいくつか散見された。
 それらをこっそり借りて、ウォッチを狙う雀牌戦闘員から逃げつつ迎撃、そしてウォッチの地図に示された場所へ向かうとしよう。
鯨間・亜子
今は逃げることを最優先に考えよう。
本当は忍者っぽくシュタタっと走って移動したいんだけど、
さっきの戦闘のせいか、まだ少し体が重たいし。

乗せてくれるなら、ほかの仲間の乗り物に相乗りさせてもらおうかな。
無理なら、後述の忍者衆を一人追加して車を運転させるよ。
今回は戦闘では役に立てそうにないから、
余裕があれば、ウォッチくんを使って目的地までのナビをしようかな。

足止めはバトルキャラクターズで忍者衆を召喚。
相手に合わせて、14人で対抗するよ。
忍者衆は担当や鎖鎌みたいな、忍者っぽい近接武器で武装。
もし、国士無双が完成しそうだったら……
私が誰か一人を、手裏剣で暗殺して妨害しようかな。
「……残念、少牌だね」


旗村・グローリー
目的地を目指そう。

丁度良いところにシティサイクルが。
少しの間拝借し、移動手段とさせてもらおうか。
乗り手次第では最速と化す車両……それが自転車だ。

テレビウムの男はママチャリの前かごに入れても入れなくてもいい。
後はパワーをこめて漕ぐだけだ。
この両の脚こそが最強の原動機であり、止まることのない内燃機関だ。

雀牌戦闘員などついて来れる筈もないが、万が一にも接近を許した場合は、
斧で切断してゆこう。
パンダ流麻雀では、既に索子以外の全ての牌は不要という結論が出ている。
思考するまでもなく切って切って切りまくるのみだ。

自転車を漕ぐスピードは一切ゆるめずに双斧を振るおうじゃあないか。



 雀牌戦闘員達を乗せたマイクロバスが猟兵達に勢いを増しつつ、迫り来る。ブレーキなど踏むつもりがないであろうそれは、追い付くというよりもぶつける算段のようだ。
「今は逃げないと。ええとウォッチくんは……っ、く……」
 鯨間・亜子(元ひきこもりゲーマー・f17119)の足が止まる。どうやら先の戦闘のダメージが体に残っているようだ。
 すると、後方から突然鈴の音が聞こえた。振り向けばそこにはシティサイクル、いわゆるママチャリの前カゴに綺麗に収まったウォッチの姿と、そのママチャリを運転してこちらに来る旗村・グローリー(ザ・ジャイアントパンダ・f04986)の姿がある。
 グローリーの運転するママチャリが、亜子の側に丁寧なブレーキで止まった。
「乗るか?」
「え、でも自転車の二人乗りはダメって」
「緊急事態だ」
「うーん……」
「あの、僕もう乗ってるから三人乗りになると思うんだけど」
 そんなこんなで前にウォッチ、後ろに亜子、運転者グローリーの三人乗り自転車が完成した。これは猟兵が付いているから可能な運転であり、一般人は決して真似をしてはいけない。
 ちなみにママチャリの荷台には子供用の椅子が付いていたが、流石に恥ずかしいので亜子が外した。
「ではゆこう」
 グローリーが力強くペダルを踏みこむ。それに応えるようにママチャリも加速して、車道の隣にある自転車用道路を駆けていく。
 ママチャリの荷台に立ち、亜子はこちらへ向かってくるマイクロバスを見据える。マイクロバスの屋根にはすでに十四人の戦闘員が勢揃いしていた。
 ならばと亜子も十四人の忍者衆を召喚する。額に【2】と書かれた者が五人、額に【1】と書かれた者が九人という構成だ。
 マイクロバスの速度は早い。グローリーが運転するママチャリに追い付き、ついには横に並ぼうとする勢いだ。
 さらにバスは左右に蛇行し、ママチャリにその車体をぶつけようとしてくる。
『セイヤーッ!!』
 そうはさせまいと十四人の忍者達がマイクロバスへと殺到する。【1】の忍者達がママチャリに近づけさせないようにバスへ体当たりを行い、【2】の忍者達が短刀を手にバス上の戦闘員に斬りかかった。
 対する戦闘員達は素早く自分達の中から三人を選出すると、バス上へ飛び上がってきた忍者にその三人で蹴りの同時攻撃を叩き込んだ。
「「「トゥアアアーッ!」」」
『ノワァァァーッ!』
 吹き飛ぶ【2】の忍者。だがすぐさま次の【2】の忍者が戦闘員達に迫る。
 戦闘員達は忍者に蹴りの同時攻撃を素早く叩き込む。
「「「トゥアアアーッ!」」」
『ノワァァァーッ!』
 吹き飛ぶ【2】の忍者。だがすぐさま次の【2】の忍者が戦闘員達に迫る。
 戦闘員達は忍者に蹴りの同時攻撃を──しかしその時、【1】の忍者達の体当たりがバスを一際大きくのけ反らせた!
「お、おおおっ!?」
 蹴りを叩き込もうとした戦闘員達の体勢が崩れる。その隙を逃さず、残りの【2】の忍者達がバスの上へ殺到し、短刀で次々と戦闘員達の首を斬り裂いていく。
「ふ、不覚ッ……!」
 血を流しながらバスの上から転げ落ちていく五人の戦闘員達。残った九人はなんとか忍者達を撃退すると、バスに向かって叫んだ。
「追加五人です、お早く頼みますよ!」
 するとバスの窓が一斉に開き、中で待機していた戦闘員達が顔を出した。そして窓から器用にバスの上へと上がろうとする。
 どうやら欠員補充をするようだ。
「させると思うか?」
 不意に、バスの上に上がろうとした戦闘員の一人が横に大きく吹き飛んだ。グローリーの斧が振るわれ、戦闘員を切り飛ばしたのだ。
「パンダ流麻雀では、既に索子以外の全ての牌は不要という結論が出ている」
 無防備に窓から顔を出した萬子戦闘員の頭を、グローリーは斧でかち割る。
 恐る恐る窓から顔を出した索子戦闘員はスルーした。
「……いいんですか?」
「いいんだ」
 亜子の問いにグローリーは深く頷く。
 一か八かで窓から飛び出した筒子戦闘員は斧で容赦なく下へと叩き落した。
「ぐっ……! 一旦下がりますよ! ですがただでは!」
 次々と戦闘員が撃退されたことで、態勢を立て直そうとバスがスピードを緩め、後方へ下がっていく。だが直後に車体を一際大きく揺らしたバスが三人が乗るママチャリへと迫った。
 せめて一矢報いようとしたのか、強引な体当たりだ。
「……! つかまれ!」
 鈍い衝撃がママチャリに響き、大きく体勢が崩れた。
 だがグローリーはあえてママチャリを漕ぎ続けることで、バランスを取り戻していく。そしてそのまま、ゆっくりと倒れた車体を起こしていった。
「なんとか、なりましたね」
「うむ……うん?」
 亜子の安堵の声にグローリーもようやく一息をつく。
 だがふと見た前カゴに、ウォッチの姿は無かった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

亜儀流野・珠
…ウォッチよ、妙な奴ばかりに狙われて大変だな?

乗り物か。戦い辛くなりそうだし、勝手に乗ってくの気が引けるしな。馬を呼びそれに乗ろう!
馬で皆の後ろを走りながら木槌「砕」で戦闘員、もしくは奴らの車を【怪力】でぶん殴って撃退だ!

相手は数が多そうだしな…こちらも増やすか!
奥義「千珠魂」…俺たち、召喚だ!
「俺たち」を敵に向け放つ!敵に取り付け!もしくは車内に乗り込め!
で、皆で「砕」でぼこぼこと叩いてしまえ!
奴らを殴っても車を破壊してもいい!数の暴力って奴だ!
ついでに奴らの顔の絵に落書きでもしてしまえ!
絵には意味があるようだがこれで同じ絵は揃うまい!

作戦中はウォッチや馬が攻撃を受けないよう守りつつ戦うぞ!


ソラスティベル・グラスラン
むむ、敵はとっても賢いようですよ皆さん!これは強敵ですッ!!
多数を相手にしていてはキリがありません、まずは地図の目的地へ!

四角い顔に(自分と比べ)知性を溢れさせる彼らを相手に、とりあえずは飛んで逃げます!
ウォッチさんを抱え地図の目的地へ
ふふふ、賢いと言えど空は飛べぬでしょう!
しかし目的地までついてこられてしまうと少々厄介…
此処は一度、蹴散らします!

【怪力】を漲らせ、【範囲攻撃】でその破壊を拡大
最後に特大の【勇気】を籠めて!これぞ竜族のちゃぶ台返し!!
ふふふ、牌も揃わず役もできず、地形ごと破壊し追跡を困難にさせますっ
不正行為?なんのことでしょう!


シリン・カービン
先行する猟兵を追って駆けます。
建物の屋根を飛びコースをショートカット。
ママチャリとバスに追いつきます。

「!」
放り出されるウォッチを認めたらキャッチに走り、
他の仲間が確保しに向かっていたら援護射撃を行います。
「無事ですか?」
と聞くのも酷でしょうが、今は構わず駆けます。

乗り物を使う人がいれば便乗させてもらいましょう。
自分で運転せず、動く物に乗るなら馬と同じ。

どうやら何かのルールに則った攻撃のようですが、
良くわからないのでとりあえず撃ちます。
あ、鳥。(1索狙い撃ち。猟師なので)

一息ついたらウォッチの無事と地図を確認。
「大変ですけど、あともう少しですよ」
励まして先を急ぎます。

アドリブ・連携可。



「なぁぁぁぁ──んがぐぐ」
 空高く宙を舞うのは何度目だろうか。
 ママチャリの前カゴから投げ出されたウォッチを受け止めたのはシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)だ。
「っと、無事ですか?」
 足を止めず、建物の屋根から屋根へと飛びつつシリンはウォッチに問う。
 この状況で聞くのも酷だと彼女も思ってはいたが、彼の状態を確認するためでもある。
「あ……君か、いやあなんとかね」
 シリンに最初に会った時よりは落ち着いている……というより、やはり疲弊している様に見える。出来ればゆっくり休ませてあげたいが、まだそうさせては貰えないらしい。
 一度はスピードを落とした戦闘員達の乗るマイクロバスが再び追い上げてきているのだ。
 ──なにか乗り物に乗っている方がいれば、便乗させて貰いたいところですが。
 後発ながらここまで追いついたシリンのスピードもかなりのものだが、これを維持し続けるのはなかなかに骨が折れる。
 であればと辺りを見回すシリンの耳に届く声があった。
「ぉおーい! こっちだ、こっち!」
 見ればそこには舗装された道路を駆ける馬と、そこに乗る少女──亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)の姿があった。
「乗ってくかー? 俺は構わないぞ!」
「ではお言葉に甘えて!」
 ウォッチを抱えたまま建物の屋根から飛び降りると、シリンは珠を乗せた馬と並走、そのままその背に跨った。
 お互いに簡単に自己紹介と情報交換を済ませたところで、彼女達の背後から激しいエンジン音が聞こえてきた。戦闘員達のマイクロバスだ。
「おぉー、もう来たか! ……ウォッチよ、妙な奴ばかりに狙われて大変だな?」
「いやあ、なんでだろうねえ」
 ははは、と乾いた笑い声をあげるウォッチに同情しつつ、シリンは彼の顔に映った地図を見る。ピンが立っている地点まではもうそろそろといったところのようだ。
「相手は数が多いのだったな? ではこちらも増やすか!」
 そう珠が言うと、彼女の周囲に手のひらサイズにデフォルメした珠が現れた。
 デフォルメした珠──ミニ珠はみるみるうちに数を増やすと、マイクロバスへと一斉に取りついた。その数175体である。
 そこからは数の暴力だった。バスの上にも中にもミニ珠が乗り込み、手にした木槌(ミニ珠サイズではあるがそれでも大きい)で戦闘員達をタコ殴りにしていく。
 戦闘員達も相手の行動を読み、対策を立てようとはするが、何しろ数が多い。
 ミニ珠から逃れようと車内の戦闘員が窓から顔を出した。その顔には一索が刻まれているが、少し違うようにも見える。何か描き足されているような感じだ。
「あ、鳥」
 だが直後、条件反射のようにシリンが猟銃でその顔を撃ち抜いた。
 撃ち抜かれた鳥、もとい一索戦闘員はそのままミニ珠達の手でズルズルと車内へ引きずり込まれていった。
 ぴしゃりと窓が閉まる。
「今なんかすごい早さで撃ったな、シリン?」
「ああいえ鳥だったので猟師の性で、つい。ですが先ほどの鳥、何か描き足されていたような……」
 気付いたか、と珠が悪戯っ子のような笑みを浮かべる。
「何、奴らの顔に落書きをしてやったのだ。顔の絵に何か意味があったようだが、これで同じ絵は揃うまい!」
 なるほど、とシリンはバスの方を見る。
 ミニ珠に大乱闘を強いられたマイクロバスは走行すらままならないようで、スピードは落ち、左右にふらふらと揺れて走行している。
 これではこちらに追いつくことは難しいだろう。シリンは抱えていたウォッチに声をかける。
「大変ですけど、あともう少しですよ」
 その言葉にウォッチがようやく安堵の様子を見せた。
 そこへ上空から声がかかる。それはソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)の声だ。
「お疲れ様です! 敵はもう無力化出来たようなものですが……あと一押し!」
 竜の翼で空を駆けつつ、三人へ声が届く所まで降りてきた彼女が顔の前で指を立てる。
「というと?」
 珠の疑問に、彼女に負けず劣らず、ソラスティベルは悪戯っ子のような笑みを浮かべたのだった。

 数分後、ウォッチは空にいた。ソラスティベルに顔を向けた姿勢で、しっかりと彼女に掴まれている。
「ふふふ、どれだけ敵が賢いと言えど空は飛べぬでしょう!」
 得意げにソラスティベルが言う。
 ウォッチの顔に映った地図に立つピンの位置はもうすぐそばだ。だからこそ彼女は、戦闘員達に目的地までついてこられることを懸念していた。
「目的地に何があるかはわかりませんが、ついてこられると少々厄介ですからね!」
 ソラスティベルが地上に視線を落とせば、敵のマイクロバスが見える。
 だがその速度は遅い。恐らく、ウォッチを見失っているためだろう。それに、周囲の猟兵達にもこの地域から離れるよう警告は出しているため、猟兵を目印にしての追跡も出来ていないはずだ。
 そして猟兵達に警告を出したのは、ソラスティベルの策が原因である。
 彼女はウォッチを自分にしがみつかせると、力強く拳を握る。
「ちょっと下まで行くので、舌を噛まないでくださいね!」
「え、下、舌? どういうぅぅぅぅ!?」
 ウォッチに言葉をかけた直後、ソラスティベルは急降下した。重力に引き付けられるのに加えて、翼でもさらに加速する。
「気合充分っ、根性見せます! これぞ竜族の一発芸! そーれ!」
 気合と根性、そして特大の勇気を籠めた竜の拳が地面に穿たれる。その力は巨大な爪跡のような形を伴って一気に地を駆け、地割れとなって戦闘員達の乗るバスへと襲い掛かった。
 破壊された地形が大きな顎のようにバスを飲みこんでいく。戦闘員達の悲鳴が聞こえた気がしたが、もはや確かめるすべはない。
「これぞ竜族のちゃぶ台返し!! 不正行為? なんのことでしょう!」
 堂々と胸を張るソラスティベルにしがみついていたウォッチがようやく顔を上げる。
「……家、壊れてないといいなあ……」
 ソラスティベルはそう呟くウォッチを掴んだまま、目的地へと急ぐのだった。

 一方、バスが飲みこまれた地割れ付近。
 微かに、音が聞こえた。それは地割れの中から聞こえてくるもので、何かが這い上がってくる音だ。
 少しずつ、少しずつその音は大きくなり。
 ──地割れの縁を、何者かの手が力強く掴んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ダークプルティア『ダーク・シュトレン』』

POW   :    集まれ甘き闇の菓子!ダーク・シュトレンレッカー!
戦闘中に食べた【人々の欲望から作り出した菓子】の量と質に応じて【自身のダークティアパワーを増大させ】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    甘き闇に溺れちゃえ!シュトレン・ダークフルス!
【闇に染まった大量のクリーム状特大ビーム】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    甘き闇をあげる!ダーク・グーテンアペティート!
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分の菓子を食べさせる事で怪人や戦闘員】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。

イラスト:すねいる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はシズホ・トヒソズマです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 瓦礫を乗り越え、猟兵達は目的地へと到着した。ウォッチの顔に映る地図に立ったピンの位置を見てもここが目的地で間違いない、のだが。
 猟兵達が辺りを見回す。そこは採石場だった。
 周囲は地面が剥き出しで、高く積まれた土砂の山が点在している。
 何か怪しい建物があるわけでもなく、不思議なアイテムが落ちているわけでもない。
 見間違えたか、と猟兵達がウォッチの地図をもう一度確認しようとしたその時。
「え、え、なんだこれー!?」
 ウォッチの体が突然光を放ち始めたかと思うと、ウォッチの顔の左上に【15:00】の表示が現れ、次の瞬間には【14:59】に切り替わった。
 カウントダウンだ。
 そしてカウントダウンが始まると同時に、ウォッチは気を失ったようにその場に倒れ込んだ。
 なんだなんだと周囲が騒然とする。さらにそこへ来客があった。
「よくも……、よくもやってくれたのだわ……」
 現れたのは全身黒タイツにピンク髪の女の子。いや、彼女はオブリビオンだ。
 その両手には動く気配のないアルパカ男と雀牌戦闘員を一人ずつ掴み、引きずっている。
「バスの中で乱闘は起きるし、なんか地割れに飲みこまれて命からがら崖を登る羽目になるし、散々なのだわ……」
 あっ……、と猟兵達は察する。この子、あのバスに乗ってたのか……。
 引きずっていた男達を少女は地面へ投げ捨てる。
「手下はこんなになってしまうし……ぐぬぬなのだわ、絶許なのだわ!」
 だんだん少女のテンションが上がってきた。恐らくだが、彼女が猟兵達が今まで戦ってきた者達の親玉なのだろう。
 であれば、ここで倒してしまう方が後腐れが無い。ウォッチを連れて逃げたところで、また追いかけっこになるのは目に見えている。
 また、ウォッチの顔に映るカウントダウンから察するに、あと15分は彼が起きることは無いはずだ。

「耳の穴かっぽじってよーく聞くのだわ猟兵達! 我が名はダーク・シュトレン! 恐れずしてかかってくるのだわ!」
 威勢のいい名乗りと共に、彼女は猟兵達へと襲い掛かる!
フィロメーラ・アステール
「おおー、丁度いいタイミングで到着した!」
しかも舞台も丁度いい感じ!
よくヒーローが決戦に使う場所だな!

じゃあヒーローものやろうぜ!
【はじまりを刻む地の新星】を発動!

採石場に転がってたり埋まってたりする石を【全力魔法】で魔力生命体に変換!
姿を変形させて戦闘員みたいな格好にする!
戦闘員は【ダンス】の如き軽やかな、やられ【パフォーマンス】で敵の無双状態を演出し、優勢だと誤解させる!
やられたら石に戻るから、敵の技の対象にされる心配はない!

さて、石、まだいっぱいあるよな?
【気合い】を入れて、おかわり戦闘員を追加だー!

がんばって敵! 負けないで敵!
と【鼓舞】することで、無駄に戦闘員と遊ばせて疲弊させるぞ!



「おおー、丁度いいタイミングで到着した!」
 きらきらと輝く光の粒をたなびかせながらフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)がダーク・シュトレンの周囲を飛び回る。
 勢い勇んで突撃しようとしていたダーク・シュトレンは思わずたたらを踏んだ。
「な、なんなのだわ!? 良く見ると可愛らしいけど……って違う、邪魔しないで!」
 そう言うと彼女は、先程連れてきた動く気配のないアルパカ男と雀牌戦闘員の口へ大量のビスケットを詰め込み始めた。
「あたし知ってる! それ口の中ぱっさぱさになるやつだ!」
「ふふふ、それだけじゃないのだわ。さあ再び立ち上がるのだわ我が戦闘員! ダーク・グーテンアペティート!」
 今まで動く気配の無かった戦闘員二人の体が突然ゆらりと立ち上がり、フィロメーラへと走り出す。
 口にはビスケットを頬張ったままだ。
「いいぜ、そう来るならこっちもこうだ! 目覚めろー! 愉快な仲間たち!」
 フィロメーラが地面へ星屑のような魔力を注ぐ。すると地面に転がっている、あるいは土の中に埋まっている石が集まり、人の形を取っていく。
 僅かな時間でフィロメーラの前には三体の戦闘員(石)が完成していた。
 何気にきちんと戦闘服も着ている。
「じゃあヒーローものやろうぜ!」
 びしっ、と彼女が敵を指さし合図を送ると三人の戦闘員(石)はダーク・シュトレン達へ向かって走り出した。
「なるほど、戦闘員対決という事ね……って数負けてるじゃない! 仕方ない、私も行くのだわ!」
 こうしてダーク・シュトレン&復活戦闘員VS戦闘員(石)の戦いが始まった。
 アルパカ男がその筋骨隆々な腕で拳を振るい、戦闘員(石)の胸を打つ。すると戦闘員(石)はくるくると踊るように回りながら勢いよく吹っ飛び、そのまま採石場の砂山に激突する。
 続いて雀牌戦闘員が戦闘員(石)の動きを読み、華麗な動きで背面に回り込むと、裏拳で戦闘員(石)の頭部を殴打した。すると戦闘員(石)はその場でガラガラと崩れ落ち、あとには石の山が残るだけだ。
「ほほほー、やるじゃない我が戦闘員! この調子であのちっちゃいのもやっつけるのだわ!」
「ぐぬぬーなんてこったー敵つよいなー!」
 フィロメーラが悔しそうな声を上げる。
 だがこれは彼女の策だ。あたかも戦闘員(石)が劣勢のように操っているだけに過ぎない。しかも戦闘員(石)のやられ方まで徹底して操作しているため、敵は自分達が優勢だと信じて疑っていない。
 むしろ気持ちよくさえなっている。
「はぁ~、良いのだわ~、こういうのがしたかったのだわ! 猟兵何するものぞ、なのだわ!!」
 すっかり一人で盛り上がっているダーク・シュトレンは小躍りまでし始めた。
「仕方ない、おかわり戦闘員追加だー!」
 フィロメーラがさらに石から戦闘員を作り出し、敵へと差し向ける。
「じゃーんじゃん持ってくるのだわー! この最☆強☆軍☆団(三人)の前では敵無しなのだわーっ!」

 ~数分後~

「ひぃ、ひぃ……げっほ、ぅえっほ……結構、倒したと思うけど──」
 そこにはほぼ傷を負っていないものの、すっかり疲弊したダーク・シュトレンの姿があった。
「ほらほら、どうしたー? まだまだいけるって! がんばって敵! 負けないで敵!」
 そんなダーク・シュトレンの周囲を、フィロメーラが鼓舞するように飛び回る。
「いやだって、もうへとへとなんだけど……そもそもどうして貴女、私を応援して……」
 あれ? と顔を上げたままダーク・シュトレンが停止した。
 フィロメーラはその隙に彼女から静かに離れていく。

「──だまされたのだわー!!!」
 ようやくダーク・シュトレンは気付いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

亜儀流野・珠
あれの中に居たのか!ははは、大変だったな!
…バス埋めとけばよかったな!

まあ弱ってるのはチャンスだな!さくっと片付けるか!
木槌「砕」に「纏い火」で狐火を纏わせる!
敵の懐に飛び込み【怪力】でもって振り回す!【先制攻撃】って奴だ!
奴の菓子も何やら怪しいから出来る限り叩き潰してしまおう。
今の砕で潰せばこんがり焼けて煎餅みたいなるだろうか…いやきっとならんな!
菓子、旨そうに見えるが怪しいから摘み食いはやめておこう!

そして相手の疲労・隙等を狙い砕の全力振り下ろしを叩き込もう!
受けられねばそれまで、受けても炎がお前を焦がす!
俺の前に立つならもっと火に強そうな装備で来るべきだったな!



「あのバスの中に居たのか! ははは、大変だったな!」
 カラカラと笑う亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)にダーク・シュトレンは歯噛みする。
「ぐぎぎ、無邪気に笑って……! あの崖を登るの本当に大変だったのだわ!」
「そうかー……バス埋めとけばよかったな!」
「なにあっさり怖いこと言ってるの!?」
 身震いしつつ戦闘員を再び差し向けようとするダーク・シュトレンだったが、その時にはすでに珠は行動を起こしていた。
「さくっと片付けるか!」
「なっ……!?」
 ダーク・シュトレンが視線を落とせば、すぐそばに自分を狙う珠の赤い瞳があった。
 言葉でダーク・シュトレンを翻弄しつつも、珠は彼女の懐に飛び込めるよう用意を整えていたのだ。
「俺の炎で燃え尽きろ!」
 狐火を宿した巨大な木槌──『砕』の柄を短く持つ。威力は最大とはならないが、素早く振るうには適した持ち方だ。
 そしてそのまま、珠はダーク・シュトレンの胴を打った。
「ぅぐ!?」
 体を焦がす炎と、身体を貫く衝撃で前のめりに崩れそうになったダーク・シュトレンを戦闘員達が支え、素早く後方に逃がす。
 次いで、目くらましのためにダーク・シュトレンが苦し紛れに撒いたお菓子が珠へと降り注いだ。
「む、旨そう……だが、摘み食いは危なそうだな!」
 疑わしきは潰すのが一番だ。
 珠は降り注ぐお菓子を、モグラたたきの要領で素早く叩き潰していく。
 もしかすると煎餅のように意外とうまく焼けたりするかもと思いもしたが、狐火はお菓子を容赦なくダークマターへと変貌させていた。
「火力調整難しいなあ!」
 一通りお菓子を潰し終えると、珠はダーク・シュトレン達を追った。戦闘員に背中をさすられているダーク・シュトレンが見える。
「っ、来たのだわ! 迎撃するのだわ!」
 はっ、と振り返った戦闘員達が珠の前に立ちふさがった。
 ならばと球が砕を振りかぶる。今度は柄を長く持つ。振り下ろしに時間と力は必要だが、
「受けられねばそれまで、受けても炎がお前達を焦がす!」
 柄がしなるほど、砕を力強く振り下ろす。ダーク・シュトレンを守ろうと、戦闘員が振り下ろされた砕の頭を両腕で受け止めた。
 周囲に衝突の余波が迸る。
「──ッ!」
 珠が歯を食いしばり、柄を握る手と腕に力をさらに籠めた。
 戦闘員の足が地面に大きくめり込み、さらには膝をつく。
「あ、──」
 ダーク・シュトレンが声をあげようとしたその瞬間。
 砕が地面にぶつかる轟音と共に、戦闘員達が押し潰される。さらには炎混じりの衝撃波が周辺一帯を薙ぎ払った。
 押し潰されこそしなかったものの、ダーク・シュトレンは衝撃波によって大きく吹き飛ばされる。
「俺の前に立つならもっと火に強そうな装備で来るべきだったな!」
 額の汗をぬぐい、砕を肩へと担ぎなおすと珠は自慢げな笑みを浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リステル・クローズエデン
バイク『プロト・コメット』に騎乗し乱入する。

「ここでもですか。ふむ、ならば。」
視力+見切り+第六感で行動を見切り
スナイパー+クイックドロウ+武器落とし+目潰しで手裏剣や苦無を投擲。
同時に、罠使い+物を隠す+範囲攻撃で植物の種も飛ばしておく。

怪人や戦闘員が出現。あるいは、敵の攻撃が守るべきものに迫る瞬間。
【我流忍術・絡み蔓】高速詠唱+全力魔法+範囲攻撃で発動。
行動を阻害します。
「こちらは任せてください。」
復活怪人や戦闘員にマヒ毒付きの苦無を投擲。

または、援護射撃+武器落とし+目潰しでマヒ毒付き苦無を投擲し
Dプルティアと戦闘している方々を援護します。

戦闘後は、バイクに騎乗し、すぐにここから去ります


シリン・カービン
…これは躾が必要ですね。
名乗りを上げる少女の前に立ち、
有無を言わせぬ迫力で睨みつけます。
「食べ物を、粗末にしてはいけません」

戦闘は動いては狙撃を繰り返し、
彼女の攻撃は見切りで対応。
生半可では私の目から逃れられませんよ。
彼女が食べようとするお菓子も狙い撃ちします。

無差別攻撃を使おうとしたら、
【スプライト・ハイド】の瞬間的オンオフで
無数の残像を生み出します。
私自身は透明化したまま彼女の背後を取り、
精霊猟刀の一撃を。
「食事とは他者の命を自分に取り込むこと。
食べ物を粗末に扱うことは許しません」
猟師としての矜持です。はい。

ウォッチは無事でしょうか…
15分後、何が起きるのか見守ります。

アドリブ・連携可。



 吹き飛ばされたダーク・シュトレンの上を、灰色の装甲を纏った一台のバイクが飛んだ。
 採石場の砂山をジャンプ台にして飛び上がったそれは、軽やかに着地すると砂埃を上げて停車する。
「ぐっ……新手なのだわ……!」
 なんとか体を起こし、ダーク・シュトレンは立ち上がる。
 一方、バイクのライダー、リステル・クローズエデン(なんか青いの・f06520)はヘルメットを被ったまま独り言ちた。
「ここでもですか。ふむ、ならば」
 タイヤで砂を巻き上げつつ、彼女はバイクを再発進させる。向かうはダーク・シュトレンの元だ。
 それを迎え撃つダーク・シュトレンは、取り出したいくつものクッキー手裏剣をリステルへと投擲した。
「これでも喰らうのだわー!」
 勢いよく飛ばされたそれは正確な軌道でリステルへと迫る。だが彼女はそれらの軌道を全て読み切ると、バイクを巧みに操りクッキーを躱していく。
「ぐっ……!」
 再びクッキー手裏剣を手にし、投擲を図ろうとするダーク・シュトレンだったが、リステルもやられてばかりではない。
 バイクに騎乗したまま、お返しとばかりに手裏剣や苦無を投げつけたのだ。素早く、そして正確に放たれたそれはダーク・シュトレンが持つクッキー手裏剣を叩き落し、さらには顔面をも狙っていた。
「あ、危ないのだわ!?」
 戦っているのだから危ないも何も無いのだが、顔へと飛んできた手裏剣をダーク・シュトレンは突き刺さるのにも構わず腕で覆うように防いだ。
 次に彼女が顔を上げた時には、辺りにバイクとリステルの姿は消えていた。代わりに、彼女の前に立ちはだかる者がいる。
「食べ物を、粗末にしてはいけません」
 それはシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)だ。彼女はダーク・シュトレンを有無を言わさぬ迫力で睨み付けている。
 どうやらダーク・シュトレンのクッキー手裏剣やお菓子を使っての攻撃が、食べ物を粗末にしてはいけないという彼女の猟師としての矜恃に反するようだ。
「はい? ふん、私が作ったものをどう扱おうと私の勝手なのだわ?」
 シリンの視線に多少の動揺を覚えつつも、余裕があるようにふるまいつつダーク・シュトレンは答えた。
「……」
 シリンの表情がさらに険しくなり、眉間の皺が一層深くなる。怒りの四つ角さえ見えるようだ。
「ぴぃいいいいいい!? めっちゃ怒ってるのだわ!?」
 とうとうシリンの視線に耐え切れなくなったダーク・シュトレンはその場から逃げ出すように走り出すと、先程押し潰された戦闘員達の口へ再びビスケットを叩き込む。
 ぎこちなく、ぼろぼろの戦闘員達が三度動き出した。
「またそうやって食べ物を粗雑に扱って……ッ!」
 言葉では聞かぬと理解したシリンが猟銃を放つ。ダーク・シュトレンは戦闘員達を盾にしてそれを防ぐと、その両手にクリーム状のエネルギーを作り出した。
「これでも喰らうのだわ! 甘き闇に溺れちゃえ! シュトレン・ダーク──」
「今です、五行木術。伸びて捕らえよ、緑の手」
 突如、ダーク・シュトレンと戦闘員達の足元から無数の蔓が生えた。みるみるうちに成長したそれは彼女達に絡みつくとその動きを封じ込める。
「何これ……っ」
 ダーク・シュトレンがもがくが、そうすぐに脱出できるものではない。
 さらに、その術を成した人物が姿を現した。バイクに跨ったままヘルメットを外し、青い髪を風になびかせたのはリステルだ。
「それは先程仕掛けておきました」
「貴女、さっきのバイクの! 姿が見えないと思ったら……っ」
「姿を隠す術は身に付けていますから、この程度は可能です」
 そう言うとリステルは手に苦無を構え、シリンへと声をかける。
「戦闘員はこちらに任せてください。あなたは──」
 だがその時にはもう、シリンの姿は消えていた。
 であれば、彼女の向かう先は間違いなく──。
「なるほど。行動が早いのは良い事です」
 リステルは未だ拘束されたままの戦闘員達へ苦無を投擲する。頭部へと吸い込まれるように突き刺さったそれは、二人を完全に沈黙させた。
 そして彼女はヘルメットを被り直すとバイクのエンジンに火を入れる。
「ちょっと貴女──」
「僕の仕事はこれで終わりです。さようなら」
 ダーク・シュトレンの呼びかけに答えることなく、リステルはバイクに乗って去っていく。
 その様子に不安を感じたダーク・シュトレンが次に感じたのは、胸に迸った熱さだった。
 見れば自分の胸から刃が生えている。すなわちそれは、背後からの一刺しだ。
「食事とは他者の命を自分に取り込むこと」
 ダーク・シュトレンの背後に、シリンの姿が現れる。彼女はユーベルコードで自身を透明化し、敵の背後へと回っていたのだ。
 ユーベルコードの使用による疲労の色を顔に表しつつも、シリンは猟刀を握る手を緩めることは無い。
「何度でも言いましょう。食べ物を粗末に扱うことは許しません」
 だがその言葉に、ダーク・シュトレンが理解を示すことはもう出来ない。シリンはゆっくりと猟刀を引き抜くと、その場を立ち去ったのだった。

 カウントダウンが【00:00】を示す。
 猟兵達が固唾を飲んで見守る中、まずはウォッチの体から光が抜けるように消え、彼も意識を取り戻した。
 それと同時に、顔に映っていた地図も消えて彼の目と口が改めて表示される。
「戻った? 戻った! よかったぁ~……」
 その場に思わず座り込んだウォッチに猟兵達が労いの言葉をかけていると、突然、周囲から声が聞こえてきた。

「システム・フラワーズより緊急救援要請」
「全自動物資供給機構『システム・フラワーズ』に、侵入者あり」
「テレビウム・ロックの解除数が多ければ多いほど、開放されるメンテナンスルートは増加する。至急の救援を請う」

 声が収まった後、もう何も起こる気配はない。
 だが、猟兵達が知らぬところで何かが起きているのかもしれない。
 彼らは次なる異変の予感に、気持ちを新たにするのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年04月30日


挿絵イラスト