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つまりテレビウムがヒロインだ

#キマイラフューチャー #テレビウム・ロック! #テレビウム #システム・フラワーズ

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●追われるテレビウムの叫び
 ここはキマイラフューチャーの、どこにでもある鮮やかな蛍光色に輝く商店街。そこでは非日常の気配がすぐ近くまで迫っていることにも気づかず、バーチャルキャラクターやキマイラたちが今日も陽気に暮らしていた。
「――どっ、退いてっ……退いてくれぇええっ!!」
 突如として大音量の絶叫とハウリングが広場に響き渡った。何事かと振り向くヒトたちの前に飛び出してきたのは小さなテレビウムだった。
「うわっ! なんだよ、うるさいな」
「か、かいじっ……怪人だ! 怪人が出たんだっ!」
「はあっ? 怪人だって?!」
 テレビウムの言葉に商店街は一気に色めき立った。血相を変えて逃げ出す者もいればワクワクとした様子でカメラを起動させる者や配信を始める者もおり、商店街は先ほどまでとは違う喧噪に包まれた。
 間もなくドドドドドという騒音が聞こえ出し、地面も僅かに上下に揺れ始めた。その場に残った者たちがテレビウムがやってきた狭い横道の先を見ると、サンドバッグ姿の怪人たちが道にすし詰めになり、ドスドス跳ねとびながら少しずつ商店街に近づいてきていた。
「うわっもう来た! 皆も早く逃げ……」
「待つドーッ! そこのテレビウム!」
 怪人の声に、アワアワと周囲に訴えかけていたテレビウムの動きが止まった。
「……お、おい。お前呼ばれてるぞ」
「て、てててテレビウムなんて僕の他にも沢山いるだろ!」
 近くにいたバーチャルキャラクターが小声で囁くと、震え声で現実逃避を試みるテレビウム。
「逃げるなドーッ! 鍵の画面のテレビウムーッ!!」
「……やっぱお前じゃん」
「うぐぅっ……ち、違う、僕じゃない! こんなの僕の顔じゃないんだー!」
 怪人の名指しに逃げ場を失ったテレビウムは顔(画面)を覆って蹲った。
「だれか……誰か助けてくれっ! ……猟兵さぁああーんっ!」
「猟兵なんか呼ぶんじゃないドォオーッ!!」
「ひぃいっりょおへいざぁあああーーんんん」
 怪人の大群を前に、当事者のテレビウムも周囲のキマイラたちもなすすべなく……。

●追われないテレビウムの頼み
「じゃ、もう他のグリモア猟兵から似たような依頼を聞いたやつもいるかもしれねえけど、一応説明しておくぞ。今、キマイラフューチャー各地で複数のテレビウムに【鍵のような映像】が現れるって事件が起きてる。画面は本人の意思に関係なく切り替わり、テレビウムってこと以外に鍵の映像が現れるやつらに共通点はない。俺も最初はウイルスか何かかと思ってたんだが、それにしてはどうも様子が……」
 遠千坊・仲道(砂嵐・f15852)は、自身のテレビ画面に常と変わらぬ砂嵐を映し出しながら淡々と依頼内容を説明していたが、ふと集まった猟兵たちを見上げて腕を組んだ。
「なんだ? 何でそんなじろじろ見て……って、あー、そうか。言っとくけど、テレビウムがみんなして被害に遭うわけじゃないらしいぜ。変わるやつもいれば、俺みたいに変わらないやつもいる。よく分からねえが、無作為に選ばれてるのかもな」
 やすりをかけたような声で言いながら砂嵐を指し示してみせると、仲道は気を取り直して続きを語りだす。
「テレビ画面に見えても、俺たちにとっては顔だ。勝手に顔を変えられるのは気分のいいもんじゃねえ。だけど、ただのウイルスなら対処はできる。キマフュにはソレ専門の医者もいるからな。……でも、こいつは違う。もっと大きな“何か”だ。そして、それには確実に怪人――オブリビオンが関わっている」
 仲道から与えられた情報に、場の雰囲気が密かに騒めく。
「……あー。まあその、分からないことは多いけどよ、やることはいつもと同じだぜ。襲われている住民を助けて、元凶のオブリビオンを倒す。奴らが何か企んでるなら、それを阻止する。それだけだ。だから、あんたらなら楽勝だよ。……じゃ、あとは頼んだぜ!」
 深刻な表情を浮かべる猟兵たちを見上げ、不器用ながらも励ます仲道。最後に親指をひとつ立てて言うと、テレビ画面の砂嵐が一層激しく走った。猟兵が見守る目前で、画面から発せられる光とホワイトノイズが徐々に強くなる。
 やがて、光とホワイトノイズは付近の猟兵たちを包んで消えた。


葛湯
 初めまして。またお会いしましたね。葛湯(くずゆ)と申します。
 今回は期間限定シナリオです。短めにサクサク進めたいです。
 なのに、オープニング……何でこんなに長くなるんですかね……。
 本編はサクサクで頑張ります。お手柔らかにお願いします。

●シナリオ構成(ざっくり)
 第一章 集団戦『戦闘員・ナグルド』…襲われているテレビウムを守りながらナグルドを殴り散らしましょう。
 第二章 集団戦『ゲソフレイム』…引き続きテレビウムを守りながらゲソを焼きましょう。
 第三章 ボス戦『猪狩・アントニオ』…最後にテレビウムを守りながら男の娘を倒しましょう。

●お願い
 第二章と第三章は空のリプレイを挟んでからのリプレイ募集となります。
 同行者がいる場合は冒頭に分かりやすく記してくださると助かります。
 テレビウムの方は自分の画面にも鍵が表示されているかどうか教えてください。
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第1章 集団戦 『戦闘員・ナグルド』

POW   :    強靭で無敵だド!
全身を【頑丈なサンドバッグ 】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    バチバチするド!
【触れると爆発する砂 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    飛び道具卑怯だド!
【ボクシンググローブ 】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。

イラスト:井渡

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

宮落・ライア
助けを呼ぶこえがぁぁぁぁぁ…聞こえたっ!
故に来た!
いざや助けん!!

にしてもまた変な物に襲われてるねー。
狭い道を来てくれたのは助かるけど…
さーてと頑張りますかー!
ああ、防御するならご自由にー。
消えるまで殴るから。
【力溜め・気合い・怪力・グラウンドクラッシャー】
を直当て。【二回攻撃】でまた。
相手がへばるまで延々繰り返す。


キャロライン・ブラック
突如現れる鍵の映像と、それを映したテレビウムの方を狙うオブリビオン
とても興味深い事象ですけれど、考えるのはあと、ですわね

突然顔が変わり、さらには襲われるだなんて、お可哀そう
でも、どうかご安心なさって?
大丈夫、貴方はわたくし達がお守りいたしますわ

ひとまず、周囲の住民が安全圏に退避されるまでは地道に参りましょう
ワンドの先端に塗料を留め、一体ずつ叩いて参りますわ

とはいえ、今回優先すべきはテレビウムの方の安全
頑丈になった敵は深追いせず、放置いたします

それと、テレビウムの方も落ち着かせなければなりません
パニックでお逃げになられても守るのが難しくなりますもの
出来る限りお側で戦い、励ましの言葉をかけませんと




「おおお下ろしてっ! 下ろしてくれっ」
「暴れるなド! 落ちたら怪我するド!」
「うぅっ微妙に優しくするなよぉ! ……わぁああんっ猟兵さあああん!!」
「うるさっ、やめるドやめるド! ほんとに猟兵がきたらどうするド!」
 怪人『戦闘員・ナグルド』に捕まったテレビウムは必死に抵抗するも、四つ手のボクシンググローブで抱えあげられ悲鳴を上げるしかない。周囲のキマイラたちはナグルドの壁に阻まれ、ただおろおろと成り行きを見守っていた。
 ドッドッドッという地鳴りと掛け声を発しながらナグルドが狭い横道に戻っていく。もはや憐れなテレビウムは助からないのか、とキマイラフューチャーの誰もが暗澹たる気持ちになりかけたときだった。
「助けを呼ぶこえがぁぁぁぁぁ……」
 何もないはずの上空から何者かの声が降ってきた。希望と歓喜で空を見上げるキマフュ住民と対照的に、ナグルドたちの表情が強張った。
「聞こえたぁあっ!! 故に来た! いざや助けん!!」
「ズドドドドォーッ?!」
 空から降ってきた影は、落下の勢いそのままに先頭のナグルドたちを防御すら許さぬ大剣の重い一撃で真上から圧し切り、消滅させた。サンドバッグから立った砂煙が晴れたとき、路地の前に立ち塞がり大群のナグルドと相対していたのは猟兵の宮落・ライア(英雄こそが守り手!(志望)・f05053)だった。
「りょ、猟兵さぁんっ!」
「やった、猟兵さんだっ! 猟兵さんが来てくれたぞ!」
 囚われのテレビウムと周囲のキマイラたちが一斉に歓声を上げてライアを迎える。ライアは声援を一身に受け笑いながら片手をひらひらと振ってやると、手を振った先にいたキマイラたちはスターを前にしたファンのように(実際、キマフュ住民にとって猟兵は大スターなのだが)嬉々とした悲鳴を上げた。
「ほらほら危ないよー巻き込まれたくなきゃ散った散ったぁ!」
 ライアの言葉にキマイラたちは「はーい!」と聞き分けよく返事をして、安心と喜びの表情を浮かべて立ち去っていく。その様子を見たライアは自身と対峙するナグルドたちに改めて向き直り、大きな笑みを浮かべた。
「さーてと頑張りますかー! ああ、防御するならご自由にー。消えるまで殴るから」
「ヒィッややややばいド! あいつは絶対やばいド! あいつを近づけるなドォッ」
「あっはっはっは! 何これ、ちっとも痛くないね!」
「ドドドォーッ!?」
 自身に降りかかる砂の爆発を物ともせず、ライアは真正面からナグルドの群れに突っ込んでいく。一振りするごとに爆発を受けたようにナグルドが張り裂け、吹き飛び、空の星になる。
「そぉーれっ! もういっちょーぉっ!」
「だから猟兵なんて嫌いなんだドォ―ッ!」

 キャロライン・ブラック(色彩のコレクター・f01443)はライアの猛攻により次々と空に打ち上げられていくナグルドたちを横目に、捕まったテレビウムの行方を探していた。
「住民の方の避難は終わったようですし、あとは早くテレビウムの方を助けてさしあげなければなりませんわね」
 キャロラインは思案しながらもレインボーワンドの宝石からマンダリンガーネットを模した橙色の塗料を放ち、彼女特有の色彩魔法で付近のナグルドを少しずつではあるが着実に消滅させていた。ライアの派手な戦いぶりに意識を持っていかれているナグルドたちは、近くにいるキャロラインの姿に気づかぬまま、次の瞬間には砂に変わっていく。
「どちらにいらっしゃるのかしら……」
 テレビウムの体は小さく、大勢のナグルドに囲まれるとあっという間に見失ってしまう。キャロラインはナグルドの群れに目を凝らした。
「ライア様が退路を塞いでくださっているのですから、まだこの場にいらっしゃるはずですのに……あれは」
 キャロラインは他のナグルドたちがライアに目を向けている中、こそこそと騒ぎから遠ざかっていくナグルドがいた。ぬいぐるみのようなものを抱えて何事か話しかけているようだった。
「シィーッ! 静かにするド! 気づかれたらどうするド」
「僕は気づかれたいんだよ! 放せよぉっ」
「そうはいかないド――」
「見つけましたわ」
「……ド?」
 パァンッ、と良い破裂音がしてサンドバッグが弾け飛ぶ。砂の代わりにマンダリンガーネットの橙がキラキラと宙に舞った。
「ひぃっ!?」
 自分を抱えていたナグルドが突然消えたテレビウムは、受け身も取れずに落下する。テレビウムは浮遊感に息を呑み、衝撃に備えた。
「……あ、あれ?」
 しかし待てど暮らせど身体に痛みはなく。そろりと顔を上げると、間近にあったのは麗しき令嬢の微笑だった。
「ごめんなさい、随分とお待たせしてしまいましたわね。でも、どうかご安心なさって? 大丈夫、これからは貴方はわたくし達がお守りいたしますわ」
 俗に言うお姫様抱っこをしながら、キャロラインは王子様のようにテレビウムに囁いた。演出効果のように色彩魔法の名残がキャロラインの周りで光っている。
「……姫王子様……!」
「はい?」
 思わず両手を組んでキャロラインをぽやーっと見つめながら呟いたテレビウムに、当の本人はただ不思議そうに首を傾げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アーサー・ツヴァイク
※アドリブ歓迎

子供を泣かせる奴はどんな奴でも許さねえ…覚悟しやがれ!

大型バイクのライドランに【騎乗】して戦場に乱入。まずはサンドバッグ軍団を【怪力】や【投擲】を使って投げ飛ばし、一ヶ所に纏める。
丁度一纏まりになったらライドランを槍形態に変えて【槍投げ】を使った【エクスプローシブ・ドラゴンライド】を発射。
爆発する砂と連鎖してすごい爆発になりそうだな!
それと光の鎖による効果で、残った奴等は縛ってやるぜ!

残った分は【グラップル】でがっちり鷲掴みした状態で【ブーステッド・ソニックアーム】を発動するだ。
怪人生の最期はマッハ4の飛行体験だ、たっっっぷりと味わいな!




「何やってるド! テレビウムを奪われたドーッ!」
「ナグルドがちゃんと見てないからだド!」
「ナグルドは悪くないドー! ナグルドが馬鹿なんだド!」
「なんだドー!?」
 テレビウムを奪還されたことに気づいたナグルドは、お互いに責任を押し付け合ってドードーと幼稚な口喧嘩を繰り広げていた。
 そこへ、どこか遠くから鳴り響いてくる重低音。その場にいた猟兵たちは何かを察してテレビウムとともにナグルドから距離を取った。しかし、当のナグルドたちは音に気づいた様子もなく、口喧嘩から発展してポカスカポカスカ(実際にはドスンドスン)と殴り合いを始めていた。
「ナグルドの方が強いドーッ!」
「いやナグルドの方がつよ……待つド」
「気をそらそうとしてるド? その手には乗らないド!」
「違うド! よく聞くド、何か音が……ッドドォオーッ!!」
「ンドォオオオ――ッ!?」
 時すでに遅し。初めに異変に気づいたナグルドは別のナグルドの前で後ろから猛スピードで近づいてきた何かに吹き飛ばされ、驚愕する間もなくもう一体のナグルドもまた空に吹っ飛んだ。
「……よしっ! 上手くいったな」
 放物線を描いて落ちていくナグルドの行方を眺めながらそう呟いたのは、アーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)。たった今、ドラゴンを模した大型バイク、ライドランに跨ってナグルド二体を片手で投げ飛ばした張本人である。
 飛ばしたナグルドが密集した箇所に綺麗に落下したのを見届けると、アーサーはライドランを撫でるように手を滑らせた。ライドランは主の意思を汲み取り槍の形に姿を変え、アーサーの手の中に収まった。
 お馴染みの感触を確かめるように、アーサーはライドランをしっかりと握り、口角を上げる。
「【Select…DRIVE ACTION!】行くぜ、ライドラン! 俺たちの一撃……受けてみやがれ!!」
 アーサーが槍投げの要領でライドランを投擲すると、ライドランは眩い光を放ちながら常識外の速さで天高く上昇していく。
「あれー朝なのに星が見えるド」
「綺麗だドー……ん? 何か落ちてきてないかド?」
「あ、ほんとだド……って見てる場合じゃないドーッ!」
「ワーッ! 早く退くドーッ!!」
「ドァァアア――ッ!!」
 弧の頂点に達したライドランは、まるで流星のようにナグルドたちの上へと落下。ライドランの纏う光は触れる直前で少しのナグルドも逃すまいとするかのように何本もの鎖に形を変えると、全てのナグルドを結びつけて爆発した。さらに、ナグルドの破れたサンドバッグから漏れた砂の爆発とも連鎖し、大爆発を引き起こした。
 ついでに周辺の建物まで若干焦げついたが、ライドランはナグルドのほとんどを消滅させることに成功した。
「ひっ、酷い目に遭ったド……! こうなったらヤケクソだド!」
「無理矢理にでも連れていってやるドーッ!」
「……いいぜ、かかってこい!」
 砂煙が晴れ、命からがら抜け出してきた残党たちを前にアーサーは素手で対峙する。数の有利を武器に襲いくるナグルドを、アーサーは油断なくちぎっては投げ、ちぎっては投げていく。そして殴りかかってくるボクシンググローブを軽い身のこなしで避けると、アーサーはナグルドの懐に飛び込み、組みついた。
「はっ、離せドーッ!」
「怪人生の最期はマッハ4の飛行体験だ、たっっっぷりと味わいな!」
 嫌な予感に焦ったナグルドがアーサーを引きはがそうともがくも、サンドバッグに絡みついた腕はビクともしない。
「【Select…COUNT ACTION! 3…2…1…!】骸の海の向こう側まで……【Good luck!】ぶっ飛べええええ!!」
「――ッ!?」
 咆哮とともに射出された右腕は叫ぶ隙も与えぬほどの速さで組みついたナグルドの中心を貫いた。しかし、それだけでは終わらない。堅いナグルドの守りを崩してなお、アーサーの右腕は速度を少しも落とすことなく、後ろに連なるナグルドもまとめて、宣言通り、ぶっ飛ばしていったのだ。

 こうして、この商店街に怪人の姿は一つもなくなり、テレビウムの危機も去った……かに思われた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ゲソフレイム』

POW   :    汚物は消毒でゲソーッ!
【松明に油を吹き付け発射した火炎放射】が命中した対象を燃やす。放たれた【油の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    俺色に染めてやるでゲソーッ!
レベル分の1秒で【ベタベタするイカスミ】を発射できる。
WIZ   :    見るがいい、これが俺の変身ゲソーッ!
対象の攻撃を軽減する【激情体】に変身しつつ、【右腕に装備された火炎放射器】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:ケーダ

👑7
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「ありがとう、猟兵さん! 本当に助かったよ!」
 見事に戦闘員・ナグルドを倒した猟兵たちにテレビウムは安心した声で感謝を述べた。嬉しそうなテレビウムの様子に、猟兵たちの間にもほのぼのとした空気が流れ始めたとき、異変が起きた。
 ポポンッ
「うわっ?!」
 突然、それまで変化のなかったテレビ画面に浮かぶ鍵の映像が動き出したのだ。鍵が移動を始め、それに伴って画面いっぱいに線と図形が現れる。
「えっ、えぇーっ? ……何だこれぇ!」
 映像はまたしても当人であるテレビウムの意思に関係なく映し出されているようで、テレビウムの少年は悲鳴をあげている。慌てて映像を消そうともがくテレビウムを猟兵のひとりが押しとどめると、渋々といった具合で手を下ろした。
 やがて変化が終わると、動いていた鍵は図形の中のある位置に収まった。
「これ、キマイラフューチャーの地図だ」
 せめて自分の顔が見たいと猟兵のひとりが用意した鏡を覗きこんでいたテレビウムが呟く。
「鍵……ここに行けってことか?」
 くるり、くるりと、鍵はテレビウムの言葉に反応するように回った。

「そうはさせないでゲソ!」
「っあつぅ!?」 
 テレビウムの真横すれすれを炎が撫でた。一早く察知した猟兵に引き寄せられていなかったら焦げていたに違いない。
「戦闘員・ナグルドのやり方は生温すぎなんだゲソ!」
「邪魔するヤツは消し炭にしちまうに限るゲソ!」
「ゲソフレイム様に跪くが良いゲソーッ!」
「ゲーソゲソゲソゲソ!」
 いつの間にか、燃え盛る松明を掲げた巨大な赤イカたちが、猟兵やテレビウムのいる広場を囲うように群れをなして迫ってきていた。似た雰囲気でも、ナグルドと違ってゲソフレイムにあるのはテレビウムを亡き者にせんという純然たる殺意のみだ。
「鍵の解除なんてさせないゲソ!」
 いくら猟兵とはいえ、包囲された中でテレビウムを守りながら戦うのは厳しい。しかし、鍵の謎も解けていないうちにテレビウムと別れるわけにもいかない。
 目的を同時にこなす方法は一つ……一点突破で包囲を切り抜け、そのまま鍵の示す場所へ向かうことだ。
「――分かった、行こう! 僕もこんな顔とは早くおさらばしたいからさ」
 猟兵の案を聞いたテレビウムもまた頷き、猟兵たちと共にゲソフレイムと果敢に向き合った。


 【MSからのご連絡】
 プレイングは包囲を切り抜けたあとを想定してください。
 追ってくるゲソフレイムを倒しながら、鍵の示す場所へ向かいましょう。
宮落・ライア
くっそこんな場面じゃなければ根絶やしにしてるのに…。
………いややる。
ヒーローの前で守る対象を傷つけたんだ。
絶対に殺る。

とりあえずテレビウム運送は他の誰かに任せる。

自分は【侵食加速】【破壊衝動】を使用し、逃走に着いて行きながら
時々前触れもなく反転、高速移動で敵の目前に戻り
【怪力・気合い・衝撃波・グラウンドクラッシャー】を叩き込んで
またすぐ元の位置に戻る。

何度目かでタイミングを合わせられても【激痛耐性】で無視して【捨て身の一撃】で叩き込む。


ぜ・っ・た・い・に・ゆ・る・さ・な・い
【殺気】


キャロライン・ブラック
ひとまず、無事に切り抜けられたようで何よりですわ
とはいえ敵もさるもの、そう安々と行かせては貰えませんか
それにしても、鍵の解除とは何のことなのかしら……?

いえ、考えるのは後にいたしましょう
今は鍵の示す場所へと向かうことが優先

よしければ、わたくしはテレビウムの方を抱いて
回避を重視しながら鍵の示す場所へと参りますわ

先ほどの包囲を抜けた時もお見せしましたが、
わたくしは高速移動と味方の強化ができるUCが使えますの

ですから、迎撃は基本的には他の方にお任せして
あまり加わらない方針で参ろうかと
もちろん、隙を見つけたならば別ですけれど、ね?

さて、少々負担の大きい技ですけれど……
笑顔で、余裕を持ってまいりましょう


アーサー・ツヴァイク
※引き続きアドリブ共闘大歓迎

俺に炎で挑むか…上等だぜ!

先ずはライドランに【騎乗】して移動しながら戦闘しやすい広めの場所に敵を誘導するぜ。テレビウム…君? ちゃん? まあどっちでもいいけど、この子も乗せておけば追っかけてくるだろ。

いい感じの場所を見つけられれば本番だ。テレビウム君ちゃんは安全な場所に降ろしてから【フルスピード・スカイドライブ】を発動、超スピードでイカをぶっ飛ばすぜ!
炎が来ようが関係ねえ、【火炎耐性】【オーラ防御】【激痛耐性】を使って根性で耐えながら、火だるまタックルをお見舞いだぜ!!

ある程度イカ焼きを作ったらテレビウム君ちゃんを回収して地図が示す場所を目指そう。




「くっそ、こんな場面じゃなければ根絶やしにしてるのに……」
 重厚な大剣を軽々と肩に担いでキマイラフューチャーの街を疾走しながら、宮落・ライアは歯噛みした。殿を走るライアの視線の先には、猟兵に囲まれながら小さな手足を必死に動かして走るテレビウムの姿がある。時おり右腕を気にする素振りを見せているのは、先ほどの奇襲で受けた火傷のせいだろう。
「………いや、やる。ヒーローの前で守る対象を傷つけたんだ。絶対に殺る」
 ライアが咄嗟に引き寄せていなければ、火傷では済まなかっただろう。しかしそれでも完全ではない。ライアは敵を、そして何よりも自分自身を許さなかった。渦巻く強迫観念的な正義心は、ライアの内でどろどろと、澱んだ殺意に変わる。
 低い声で呟くと、ライアは突如としてスピードを落とさずに反転し、ゲソフレイムに斬りかかった。
「ぜ・っ・た・い・に・ゆ・る・さ・な・い」
「ヒッ――ギャァアッ!」
 ライアの目は常よりも暗い赤に染まり、取り囲む黒々とした風のような気配は実害をもって敵を切り裂く。対峙する者に死を勧告する死神の如き姿はゲソフレイムの殺意を容易く圧倒し、身も凍るような恐怖を与えた。
「おっ、汚物は消毒でゲソーッ!」
 次々と切り刻まれ消されていく仲間の姿に慄きながらもゲソフレイムは油を松明に吹きつけ正面に現れたライアを炎で攻撃する。
「ゲーソゲソゲソッ! ザマアないでゲ――」
 ところが、攻撃を真面に食らったはずのライアは、炎の熱も痛みも感じないかのように無表情で跳躍すると、勝利を確信し高笑いしていたゲソフレイムの頭上から垂直に刃を振り下ろした。
 着地すると同時に大剣を横へ薙ぎ、そばにいたゲソフレイムの足を切り落とす。これでまた一体。立ち上がり刃を後ろに突き立て、背後に迫っていた敵の胴体を貫く。さらに一体。――炎が剥き出しの肌を焼く。だが止まらない。一体も残らず根絶やしにするまでは。止まれない。止まってはならない。視界にちらつく赤を振り切り、武器を構えた。ライアの身に纏う黒い風が、殺気が、狂気が膨らむ。
「――待て、ライア!」
 再び跳躍しようとしたライアの腕を、何かが摑んだ。破壊衝動のままに敵を屠り続け、精神が自身の狂気に侵食されつつあった中でもライアはその声を認識し、息を呑んだ。
 瞬時に正気を取り戻し、さっと血の気の引く思いでライアは摑まれた腕の先にある手を見るが、自身の纏う風で切り裂かれたはずのそれからは血の一滴も出ていない。その事実に僅かに安堵しながらも、重い罪悪感に顔を歪ませてライアは離れていく手の持ち主の名を呼んだ。
「アーサーさん! ごめん……っ!」
「俺も思わず手を摑んで悪かった! それにライアがすぐに収めてくれたからな、俺はこの通り何の問題もないぜ!」
 だから気にするな、とアーサー・ツヴァイクは笑い、右手をバラバラに動かしてライアに見せる。しかしだからといって、それなら良かったと思えるはずもなく。なおも表情を暗くするライアに、そんなことより、とアーサーは眉間に皺を寄せてライアの顔や腕を見る。
「ライアは俺よりも自分のことを心配してくれ」
 一方的な殺戮を繰り返していたはずのライアの全身は細かい切り傷で覆われ、血にまみれていた。ライアが発動していたユーベルコードのうちの一つ、黒い風のような殺意を身に纏い、高速移動と実害をもたらす殺気を放つことを可能にするそれは、その代償に風を纏う自身をも切り刻み、寿命すら削る能力だったのだ。
 しかしライアは、アーサーの言葉の意味が分からないと言うようにきょとんと目を丸くした。
「えっ、ボク? これくらい、別になんてことないよ。いつものことだし」
「俺たちが良くないんだ。ほら、テレビウム……君? ちゃん? も心配してるぜ」
 アーサーに言われてテレビウムの方を見ると、黒いロングスカートの猟兵の隣で足を止めて気づかわしげに後ろを振り返り、ライアの様子を窺っているのが分かった。
 その姿にライアは困ったように後ろ首を掻くと、無事を示すように大剣を振ってみせた。アーサーもその隣で親指を立てる。テレビウムが手を振り返したのを見て、アーサーが笑う。
「なっ? 市民の不安を解消するのも、立派なヒーローの務めだぜ!」
「うーん……そうだね。心配させるのは、良くないか」
 ライアは深く呼吸することで侵食する狂気を心の奥の奥に仕舞いこんだ。そしてアーサーに向き直ったとき、ライアの顔には普段のような明るい笑顔が戻っていた。
「……よしっ、もう大丈夫! ありがとう!」
「おう! ……っと、そうだ! テレビウム君ちゃんのマップに、目的地からは少し遠回りになるが、戦闘しやすそうな場所を見つけたんだ。そこへ敵を誘導して一気に叩こうと思うんだが、良いか?」
「分かった! それじゃ、ボクは後ろであいつらが近づきすぎないように見張っておくよ」
「あぁ、頼んだぜ!」
 先頭に駆け戻っていくアーサーのあとから列の最後尾についてライアは走り出す。その体にはもう黒い風は纏ってはいない。しかし。
「……ごほっ」
 ライアの内に鳴りやまぬ祈り、期待、決意。ライアの身体能力を向上させたもう一つのユーベルコードは、宿した力の代償に、その身に毒を巡らせ続けていた。

「おーい、テレビウム君ちゃん!」
「あのお姉さんは大丈夫だった? ……って何だよ、その呼び方!?」
「ライアは……大丈夫だ! はははっ悪い、性別が分からないならどっちも呼んでおけば間違いないと思ったんだ」
「そうか、なら良かった。あと、僕は男だよ! まあ、別にいいけどさ」
 ライアについて何かを誤魔化すようなアーサーの口調に、テレビウムも深入りを避け、それ以上は尋ねなかった。
「そんじゃあテレビウム君、ちょっと俺に付き合ってくれるか?」
「はぁ? 付き合うも何も、今一緒に広場に向かってるところだろ?」
 首を傾げるテレビウムに、アーサーはニッと笑って、不意に担いでいた槍――ライドランを前方に投げた。
「スピードアップだ!」
 そして困惑するテレビウムをひょいっと軽く掬い上げると、アーサーは助走をつけて跳躍した。
「うっ、わぁああぁあーっ!!?」
 アーサーはテレビウムを抱えて空中を滑走しながら槍から大型バイクへ形態変化したライドランに跨った。
 どれだけ懸命に走っても、普通のテレビウムでは猟兵や迫ってくるオブリビオンの速さとは比べ物にならないほどの速度しか出ない。まして先を急ぐのならば、アーサーの選択は最善の策だろう。
「だからって……急にやるなよ!」
「はははっ! 悪い悪い。でも、気持ちいいだろ?」
「それは、まあ……そうだけど」
 テレビウムはライドランを運転するアーサーの後ろに乗せられ、その背にしがみつきながら流れる景色を眺めた。……これで、大地を割る轟音やら横を飛んでくる火などがなければ、もっと気持ちが良かっただろう。
「心配するな、もうすぐだ」
 テレビウムの不安が伝わったのか、アーサーは明るく励ます。テレビウムがそれに頷いて前を向いたとき、視界が開けてきた。
「到ッ着! 目的地まで奴らを連れていくわけにはいかないからな、ここで蹴散らす!」
 見晴らしの良い開けた空き地には運よく誰もいなかった。これならば巻き込みを心配することなく、存分に力を発揮して戦えるだろう。ライドランを一度止めると、アーサーは自分たちのすぐ後に到着した猟兵にテレビウムを託した。
「あとは頼んだぜ!」
「お任せくださいませ。テレビウム様は、わたくしがお守りいたしますわ」
 猟兵――キャロライン・ブラックは、ここまで走ってきたというのに落ち着いた様子でテレビウムを受け止め、片腕に抱いた。
 キャロラインはレインボーワンドから形成された羽織を纏い、戦力を増強することで、ライドランのスピードにも追随できるほどの俊敏さと力を得ていた。ただし、毎秒寿命を削る、という代償つきだが。しかし、そのようなことはおくびにも出さずにキャロラインは微笑んで、すぐさま飛び出していこうとするアーサーを押し留めた。首を傾げるアーサーにキャロラインは藍色に輝くレインボーワンドをそっと振る。杖の宝石から藍色の光の帯のような染料が溢れ出ると、アーサーとライドランを包んで溶けた。
「さあ、行ってらっしゃいませ。アーサー様に、ご武運を」
「……ありがとう!」
 藍が溶けた瞬間、じわりと自身とライドランの戦闘力が上がったのを感じとったアーサーは一寸驚いて、それから大きく笑った。
 アーサーと別れ、キャロラインとテレビウムが激戦地になりそうな場所から離れようとしたとき、ドォオンッと再び大きな地響きが聞こえ、二人は自分たちの来た方向を見やった。と同時に、他の猟兵から遅れてライアが到着した。
「とうちゃーくっ! そんじゃ、一気にぶっ潰――」
「お待ちくださいませ、ライア様」
「――っととぉ! えっと、何? キャロラインさん」
 空き地に到着してすぐにそのまま反転して攻撃をしかけようとしたライアを、キャロラインは呼び止めた。つんのめりながらも立ち止まったライアを空き地の入り口から離れたところへ呼ぶと、渋々といった具合で近寄ってくる。
「けん制したけど大した足止めにならないし、ボクも直ぐ行かないと……」
「お呼びとめして、申し訳ございません。すぐに終わりますわ」
 近くで見た傷だらけのレイアの姿に、テレビウムは小さく息を呑んだ。しかしキャロラインは何も言わずに目を閉じると、レインボーワンドを一振りした。アーサーのときと同じように藍色がレイアを包んで溶ける。
「わっ……へーすごいね、これ! ありがとう!」
「行ってらっしゃいませ、ライア様。……どうか、お気をつけて」
 無邪気に笑い駆け戻っていくライアを送り出し、キャロラインは祈るように囁いた。

 キャロラインに見送られたアーサーは、ライアのグラウンドクラッシャーにより抉られた地面を乗り越えようとウネウネ足を動かすゲソフレイムたちを眼前に見据え、ライドランのハンドルを握りしめた。アーサーから漲る闘志に応えようと、ライドランもまた唸り声を上げて蒸気を立ち昇らせ、己が主の全身を覆っていく。
「【Select…FLYING ACTION!!】行くぜ、ライドラン! 大空でも宇宙でも、どこまでも飛んで行くぜえええ!!」
 ゲソフレイムの一体がこちら側にこようと穴に足をかけた瞬間、アーサーとライドランは発進から急加速して超常的スピードで一直線に穴へと突っ込んだ。
「グェッソォーッ!?」
 ライドランは最初のゲソフレイムを踏み潰して穴に突入。更に速度を上げて中にいたゲソフレイムを触る度に弾き飛ばしながら蹂躙すると、穴を抜けるときの傾斜を利用して数体を空へと打ち上げた。地面を失ったゲソフレイムは悲鳴を上げる間もなく、飛翔する大型バイクに空中で轢き潰された。
「こうなったら目潰しだゲソ!」
「ヤツの視界を奪っちまえばこっちのモンだゲソー! ゲーソゲソゲソ!」
「今だゲソ!!」
 ゲソフレイムも一方的にやられてばかりではない。舞い戻ってきた悪夢のバイクドライバーに対抗せんと、一体のゲソフレイムの号令でアーサーに向けて一斉にイカスミが放たれた。四方八方からのイカスミ攻撃にアーサーは回避できず、全身を黒に染めてしまう。
「いくら速くっても、狙いが定まらなきゃあ速いだけの鼠花火ゲソ!」
「袋の鼠ゲソ! 火責めしてから袋叩きにしてやるゲソー!」
「良い喩えゲソー! 焼き鼠にしてやるゲソ!」
「ゲーソゲソゲソゲソ!」
 目標を失って穴の縁を高速で回転し続けるアーサーをゲソフレイムは嘲笑い、火炎を放った。たちまちアーサーは火達磨と化す。だがしかし、蒸気と燃え盛る炎の向こうから聞こえてくるのは、苦悶の声でも、絶叫でもない。腹の底から響くような笑い声。挫けることなき、誇り高い英雄の声。
「おいおい、勝利を確信するのはまだ早いだろ?」
「……ゲソ?」
 自らの作戦に酔い、驕り高ぶっていたゲソフレイムたちは気づかなかった。猛スピードで回転し続けるライドランは徐々にその範囲を狭めていたことを。そして自分たちに、もはや逃げ場などないことを。
「残念だったな。――袋の鼠は、お前らの方だぜ!」
「ゲソソソソォッ」
 身に迫る危機に気づいたときには、アーサーの高速回転とゲソフレイムのもたらした炎で作られた火の輪で、穴の中にいたゲソフレイムたちはこんがりと焼き尽くされ、その身を削り取られていた。イカの焼ける香ばしい匂いが、一瞬だけ空気中に漂い、流れていった。

 離れた場所で時々飛んでくるイカフレイムを避けつつ、戦闘の様子を窺っていたキャロラインは、ふとテレビウムが先ほどから一言も発していないのに気がついた。
「どうかなさいましたか? どこか、お体の具合でも……」
「そうじゃない、僕は平気だよ。ただ……なんだか、情けなくて」
 守られてばかりの自分が悔しくて仕方ない、とテレビウムは呟いた。キャロラインはその言葉に目を瞬かせると、俯くテレビウムに優しく微笑んだ。
「あら、そんなことありませんわ。突然顔を変えられて、訳も分からずオブリビオンに襲われて……それでもあなた様は、わたくしたちのために力を貸してくださったではありませんの。それは本当に、きっととても勇気のいることだったと思いますわ。もっとご自分を誇ってくださいませ」
「猟兵さん……」
 自分に表情があったら、きっと涙を浮かべて情けない顔をいただろう。テレビウムは、今だけは表情の代わりに鍵の浮かんだ自身のテレビ画面に感謝しつつ、頷いた。
「こっちはあらかた片付いたよー!」
「次が来る前に、先を急ごうぜ!」
 傷つき汚れながらも元気に手を振り戻ってくる猟兵たちをキャロラインと共に迎えながら、テレビウムは心の中で決意を新たにするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『猪狩・アントニオ』

POW   :    オトメン投げキッス
【男女問わず投げキッス】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    メイド秘奥義「メイド感情ミサイル」
【男に対する欲情もしくは女に対する憎悪】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【自身を模したエネルギー体】で攻撃する。
WIZ   :    メイド秘奥義「猪突猛信(恋する乙メンの暴走)」
【男に対する欲情もしくは女に対する憎悪】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。

イラスト:桐ノ瀬

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は狗飼・マリアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 テレビウムとともにテレビ画面に示された場所へ向かった一行を迎えたのは、何の変哲もない静かな住宅街だった。
「うーん、ここらは僕も来たことないな。何かあるようには見えないけど……」
 見覚えはないかと尋ねられたテレビウムは困惑したように首を傾げ、手がかりを求めてきょろきょろと辺りを見渡した。しかし、周辺にあるのは空き家ばかりのようで、色鮮やかなキマイラフューチャーの街並みには不釣り合いなほどの静寂に包まれている。
「うわっ今度は何だよ?!」
 テレビウムが悲鳴を上げた。猟兵の後に続いて住宅街に足を踏み入れたテレビウムのテレビ画面が、眩いばかりの光を放ち始めたのだ。
「――あれれ? なんでこんなところに君たちがいるのかなぁ」
 顔を覆うテレビウムを見守っていた猟兵たちは、空から降ってきた声に顔を上げた。ビルの屋上から飛び出した影は空中でくるりと一回転すると、スカートを押さえながら綺麗に着地した。可憐なメイド服に身を包み、にこりと羅刹は微笑んだ。風に揺れる長いマフラーの端には、見た目の可愛さとは裏腹に雄々しい“猪”の一字。
「こんにちは、ハンサムな猟兵さん。……あと女。オレの名前はアン。アンちゃんって呼んでねー! 別の呼び方したら返事してあげないんだからねっ」
 メイド服の羅刹――アンは、守られているテレビウムと女性猟兵を無視し、男性の猟兵だけを視界に入れて中性的な声で一方的に話し続ける。
「ここで君たちと楽しく遊んであげても良いんだけど……そこのテレビウム君、オレにちょうだい?」
 右手をテレビウムに差し伸べて、アンは優しく誘う。しかし猟兵もテレビウムも応じる気がないのを見て取ると、大仰に溜息をついて背後に左手を回した。
「ダメなの? ふーん……それじゃあ、仕方ないよね」
 分からずやなんだから、と拗ねたようにアンが取り出したのは細身の槍だ。言うことを聞かないなら実力行使、ということだろう。
「ちょっと光ってるけど、僕は大丈夫! だから、皆は気にせず戦ってくれよ。……それに、何となく分かるんだ。この光が収まったら、鍵の謎も解けるって」
「……それが一番、困るんだよねぇ」
 突然、アンは暗く温度のない声で呟くと、それまで無視していたテレビウムを殺意の籠った目で見据えて槍の穂先をピタリと合わせた。
「っぼくは……僕は逃げないっ!」
 以前の彼であれば、怪人に睨まれれば一目散に逃げだしていただろう。しかし、今は違う。猟兵たちの姿を見てきたテレビウムの心には、強い意志が宿っていた。
「僕は猟兵さんたちと一緒に、鍵を開けるんだ!」
 声を震わせながらも、テレビウムは恐怖の対象である怪人に叫んだ。その声に応えるように、猟兵たちもまた各々の武器を手に怪人と向き合う。
 鍵を守りぬき謎を解く、最後の戦いが始まった。


 【MSからのご連絡】
 光が収まるまで猪狩・アントニオの手からテレビウムを守りながら戦いましょう!
宮落・ライア
んーふふ。
キミがそんなにも言ってくれるなら応えないとね。(テレビウムを横目で見て)
英雄が、君の勇気に報いよう。

前提として必ずテレビウムは【かばう】
ムリも無茶も無謀もして見せよう。
今のボクはとても気分がいいんだ。

ダメージは【激痛耐性・気合い・覚悟】で耐える。

槍の攻撃には【見切り・武器受け】で受け止める。
出来るならばそのまま【カウンター・剣刃一閃】で槍を破壊する。

投げキッスは…………当たったらどうしよう。
気分的にも悪くはなるけど動けなくなるのが面倒。
トドメを刺そうとして来るなら僥倖なんだけど。
【力溜め・怪力】【捨て身の一撃・グラップル】で反撃できるし。


アーサー・ツヴァイク
※アドリブ共闘大歓迎

テレビウム君の決意を汲んで挑むつもりだが…これ標的は完全に俺っぽいねこれ
いや確かにアーサー君は独り身だけども男の娘っつーかオブリビオンは勘弁だぜ!

しかし男の俺の方が囮には向くのは間違いない。【挑発】で相手の気を引き付け、【残像】や【見切り】で敵の投げキッスを回避…投げキッス!? 槍は!?
ま、まあ頑張って回避だ。
回避できない時はバスターホーンで【盾受け】だ。スマン、バスターホーン! ちょっと動けなくなるみたいだが、直ぐに治すからな!

隙を見つけられればこっちも反撃と行こう。フルパワーを込めた【プロミネンス・インパクト】で狼藉を働くオブリビオンを鉄拳制裁だぜ!


キャロライン・ブラック
よくぞおっしゃってくださいました
そのお気持ち、わたくしも嬉しく存じます
ですから……全力をもって、お答えいたしますわ

相手はおそらく、テレビウムさまを狙ってくるのでしょう
ならば、わたくしのUCで四肢や武器を固めて攻撃を封じますわ

いざとなったら、煽るような言動でわたくしへ攻撃を誘導いたしましょう
先ほどは回避ばかりでしたから、一番体力は余っておりますもの

それに、氷河の青は固めるタイミングを自在に決めることが出来ますの
ですから、事前にわたくし自身に塗り、攻撃される瞬間に固めますわ
一時的に動きは止まりますが、多少はダメージの軽減にはなるかと

ええ、恐れることなどございません
わたくし達は一人ではないのですから




「んーふふ」
 猟兵とオブリビオンが対峙し、張り詰めた空気の中に、ふと緊迫感のない含み笑いが落ちた。何事かと顔を上げるテレビウムを、隣に立つ宮落・ライアは横目でちらと見て、口の端を上げた。
「キミがそんなにも言ってくれるなら応えないとね。――英雄が、君の勇気に報いよう」
「ええ。よくぞおっしゃってくださいました、テレビウム様。そのお気持ち、わたくしも嬉しく存じます。ですから……全力をもって、お応えいたしますわ」
「もちろん、俺もな!」
 ライアの後に続いて、キャロライン・ブラック、アーサー・ツヴァイクもまた力強く宣言し、テレビウムを庇うように前に進み出る。
「……猟兵さん」
 そんな猟兵たちの頼もしい姿を見て、テレビウムは自身の足の震えがいつの間にか止まっていたことに気がついた。
「あ、ありが……」
「えぇーっなんか良いなぁー! 羨ましいなぁー!」
「ひぇっ!?」
 意識の外に置いていた声に言葉を遮られ、テレビウムは体を跳ねさせて猟兵たちの向こう側を覗く。
「女のことはどうだっていいけど、格好いい男性に守られるなんてさ……ふふっ! ロ・マ・ン、だよねぇ!」
 アンは槍を抱きしめて身悶えするように体をくねらせながら語り、前に立つアーサーを熱を帯びた目でうっとりと見つめた。
「おぉ、標的は完全に俺っぽいねこれ……いや確かにアーサー君は独り身だけども男の娘っつーかオブリビオンは勘弁だぜ!」
 アンの熱視線を正面から受けたアーサーは表情筋を引き攣らせ、小声で早口に言いながら身構える。そこへ、アンが猪突猛進の勢いで飛び込んできた。
「そうだ! お兄さん、オレの眷属になってよ! ……ねっ、お願い?」
 一瞬でアーサーの懐に迫ったアンは、可愛らしく小首を傾げて微笑んでウィンク。そして片手を上品に口元にもっていくと、リップ音を響かせながら投げキッスをアーサーに放った。
 投げキッスは桃色のハートになってアーサーへと放たれた。常人の反応速度では、とても避けられない距離だ。しかし、アンが笑みを浮かべられたのはほんの束の間だけだった。笑みはたちまち拗ねた顔に変わり、眉尻を吊り上げて目の前のモノを指さした。
「ちょっと、なにこれ?!」
「スマン、バスターホーン! ちょっと動けなくなるみたいだが、直ぐに治すからな!」
 二人の間に突如として現れたのは、聳え立つ壁――否、大盾・バスターホーン。盾にもハンマーにもなる、アーサーの数ある武器のうちの一つだ。アンが投げキッスを放つ直前、アーサーは優れた反射神経でバスターホーンを出現させて回避していたのだ。
 投げキッスが不発に終わったのを知ったアンは、バスターホーンの全面に飛び出る一角獣の角を不機嫌そうに叩いてアーサーを睨んだ。
「酷くない? 普通、そういうことするかなぁ?」
「まあ、普通じゃないからな」
「そういう問題じゃ――っ!」
 平然と答えるアーサーにさらに言い募ろうと口を開いたアンだったが、突然口を閉じると後ろに飛び退いた。瞬間、先ほどまでアンがいた場所を青の風が撫で、地面が凍った。
「あら、外れてしまいましたか?」
「……なーに、君? 邪魔なんだけど」
 残念とも思っていないような口調で独り言のように言いながら、キャロラインはアンの冷えた視線を正面から受け止めて首を傾げた。平時は七色の宝石が輝いているレインボーワンドには、今は虹色の代わりに氷河の如き青の宝石が嵌っている。
「これは名乗りもせずに、失礼いたしました。わたくしはキャロライン・ブラックと申します。短い間ですが、どうぞお見知り置きを」
「は? 君の名前なんて聞いてないよ。何なの、馬鹿なの?」
 明らかな嘲りを受けてもなお、キャロラインはにこにことお淑やかな微笑を崩さず、どこ吹く風といった様子で佇んでいる。アンは苛々と目を細め、キャロラインを睨んだ。
「チッ……これだから、女って嫌い」
 地を這うような低い声でアンは憎悪を籠めて呟いた。そして徐に槍を持っていない方の腕を伸ばした。どろどろとしたオーラがアンの伸ばした腕から流れ落ちたかと思えば、それは見る間にアン自身とそっくりに形を成した。アンの女に対する憎悪から生まれたエネルギー体だ。それはゆっくりと顔を上げ、澱んだ目でキャロラインを標的に定めた。
「あの女を消して」
 アンが指を放して接続を絶つと同時、エネルギー体は信じられない速さで一直線にほとんど生身のキャロラインへと飛びかかった。
「っく、ぅ……!」
「――嘘っ?!」
 しかし、槍はキャロラインの身体を貫くことなく弾かれる。キャロラインは先ほどアンに攻撃をしかけたときに使ったものと同じ色彩魔法を、こうなることを見越して事前に自分自身にもかけていたのだ。氷河の青は、それが当たった対象を任意のタイミングで凍らせることができる。今回はそれを逆手に取り、キャロラインは自身を氷の鎧で覆うことでアンの攻撃から身を守ったのである。しかし。
「ふーん、ちょっとはやるみたいだね。……でもそれも、いつまで保つかな?」
 この作戦には一つ、大きな欠点があった。それは攻撃を防御することはできても、自身もそこから全く動けなくなること。そして、これには時間制限があるということだ。つまり、纏う氷がなくなれば最後、キャロラインの身を守る術はない。
「……ふふっ」
「……なんで笑ってんの? 怖すぎて、気でも触れた?」
 エネルギー体の繰り出す槍がキャロラインの顔や身体に間髪を入れずに降り注ぎ、逃げ場もない絶体絶命の状況。しかしキャロラインは、危機感など微塵も感じてはいなかった。
「いいえ。恐れることなどございません。わたくし達は一人ではないのですから」
 確信めいたその言葉にアンは目を見開き、瞬時に己の失態を悟った。エネルギー体とキャロラインから顔をそらし、咄嗟に防御姿勢をとろうと試みたが、遅い。この男相手には、遅すぎた。青褪めた顔で見つめた先に高速で迫りくる燃え滾る拳。
「ちょっ!? まっ――」
「【Select…BURN ACTION!】この手に宿る太陽の力……受けてみやがれえええええ!!!!」
「っぐ、ぅぁああああーーっ!!」
 放たれたアーサーの拳は、アンの腹部を正確に捉えて貫いた。防御する間もなくアーサーのプロミネンス・インパクトを受けたアンは、衝突事故を起こしたように空中を飛び、地面に転がった。そして、同時にエネルギー体の方も消失し、僅かな間を置いてキャロラインの魔法も解けた。息を少し荒げながらも、キャロラインは安堵に胸を撫でおろし、気を抜けば折れそうになる足に力を入れてアーサーに近づく。よく見れば、アーサーの腕からはまだ蒸気が立っていた。
「ありがとうございます、アーサー様」
「俺の方こそ、ありがとう! キャロラインが隙を作ってくれたから上手くいった」
 お互いの健闘を称えて、二人は蒸気を発していない拳を軽く突き合せた。そうして、勝負は決したかに思えた。
「……クソッ、クソクソクソッ! クソ野郎どもがッ! もういい、こうなったらテレビウムだけでも殺す!」
 怒気を孕んだ荒れ果てた声が響いた瞬間。その感情の昂りに比例するようにアンの姿が大きく膨らんだ。身も世もなく、血と土に塗れた悪鬼のような姿で、アンは標的を無防備なテレビウムに移した。
「死ねェッ!」
「ヒィッ!?」
 もはや己の死期を悟ったアンは残った全ての力を使って巨大化すると、なりふり構わずテレビウムに向かって突進した。掲げられた槍は大岩のようになってテレビウムに降りかかる。無駄と知りながら、思わず顔を腕で覆った。それでもテレビウムは、逃げようとは思わなかった。
「(だって僕は、逃げないって決めたんだからな!)」
「――ならば、ムリも無茶も無謀もして見せよう。今のボクはとても気分がいいんだ」
 それは、瞬く間の出来事だった。
 テレビウムの横を人影が横切ったかと思えば、高く飛び上がった影は槍を握っていた巨大なアンの腕を、まるでペラペラの紙のように断ち切ってしまったのだ。
「……へ?」
 ぽかんと惚けるテレビウムの前で、今度こそアンは倒された。骸の海に、還ったのだろう。またいずれ蘇ることもあるかもしれないが、今はそんなことよりも。
「宣言通り、君は最後まで逃げなかったね」
 オブリビオンを仕留めたライアは、勝利の余韻に浸ることなく踵を返して戻ってくると、テレビウムの頭を上機嫌にポンポンと撫でた。思わぬ誉め言葉にテレビウムがまた惚けていると、アンが完全に消えたのを確認して、アーサーとキャロラインも二人のところへと寄ってくる。
「よくやったな、テレビウム君!」
「もう大丈夫です。よく頑張りましたわ」
「……うっ、うぅぅーっ猟兵ざぁあん!」
 蘇ってきた恐怖と、憧れの存在に誉められた喜びと、圧倒的な安心感。その全てがごちゃ混ぜになって、テレビウムは初めて、声を上げて泣いた。
 すると、テレビ画面から発せられていた光が一際強く辺りを照らし出し、ふっと消えた。
「えっ? まさかっ!? ……あっ、も、ももも戻ってる! 戻ってるよ! 僕の顔だーっ!」
「へぇー、君って本当はそんな顔だったんだね」
「なんというか……なかなか個性的だな!」
「わたくしはとても素敵だと思いますわ」
 歓喜するテレビウムの本来の顔(テレビ画面)を見て、猟兵たちは口々に感想を述べる。しかしテレビウムはそれどころではないようで、喜びのままに猟兵たち一人ひとりをハグして回った。
「ありがとう! 本当に、ありがとう!」
 猟兵たちはテレビウムの熱烈な感謝に一瞬きょとんとして顔を見合わせると、相好を崩した。誰からともなく笑い声が溢れ出して、全てが解決したかのような錯覚をしてしまうほどの幸せが満ちていた。
 しかし、時はそんな束の間の安らぎすらも許さない。
 
『システム・フラワーズより緊急救援要請』
 突然、空き家ばかりのはずの住宅街に、機械で合成されたような男とも女ともつかない声が響き渡った。
 反射的にテレビウムを取り囲んで臨戦態勢をとった猟兵たちも意に介さず、声は続く。
『全自動物資供給機構『システム・フラワーズ』に、侵入者あり』
『テレビウム・ロックの解除数が多ければ多いほど、開放されるメンテナンスルートは増加する。至急の救援を請う』
 奇妙なことに、誰に向けたものか分からぬ機械音声は周囲の建造物の全てから鳴り響いていた。キマイラフューチャーであっても異様なその光景に、猟兵たちは悟る。

 ――事件はまだ、始まったばかりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月27日


挿絵イラスト