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テレビウム・ロック! ~水辺の追いかけっこ

#キマイラフューチャー #テレビウム・ロック! #テレビウム #システム・フラワーズ

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 今日も今日とて日課の散歩。
 水辺エリアをレトロな頭を持つテレビウムが、のらりくらりと歩いて回る。
「いやはや、今日も良い天気じゃのう」
 水の色は青々。それを映す空の色も突き抜けるような快晴。
 こんな日には良いことがありそうだ、とレトロなテレビウム――アローレと名を持つ彼はご機嫌だ。
「ん、んん?」
 だが、それも長くは続かない。
 違和感を感じ、水面に映した顔に見えたのは、砂嵐交じりの鍵の映像。
「な、なんじゃこりゃ!?」
 驚き、顔上げ、後ろに2、3歩後退り。それが良かった。
 先程までアローレの顔があった場所目掛けて水中から飛び出してきたのは、真っ赤な烏賊の怪人。
「発見、発見、鍵発見! 奪うでゲソ!」
「なんなんじゃいったいー!?」
 訳も分からないまま、しかし、そのままでは不味いと判じたのは年の功か。
 あまり早くもない脚で逃げるを試みる者、それを追う者。水辺での、あまりロマンチックでもない追いかけっこが始まる。

「キマイラフューチャーでの状況、皆さんご存知ですかぁ?」
 集った猟兵達を前にしての開口一番、ハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)は兎耳のヘアバンドを揺らしながら質問を投げかける。
 その質問に理解の色を示すもの、初めて聞いたと言わんばかりの者と反応は様々。
 それを見回し、うんうんと頷き、知らぬ色を示した人達のためにとハーバニーは続ける。
「なにやらですねぇ、キマイラフューチャーの世界でぇ、テレビウムさんのお顔に突然鍵が浮かぶらしいんですよぉ」
 ――問題は問題かもですがぁ、それだけならここまでの大事じゃないんですけれどねぇ。
 無意識か、意識的にか、胸元に揺れる銀の鍵を手で触れつつ語りは続く。
「ただぁ、その鍵が浮かんだテレビウムさんにはぁ、何故か怪人がこぞって押し寄せてるんですよねぇ」
 特定のテレビウムに対して襲い掛かり続ける怪人。オブリビオンが関わっているのは勿論あるが、それだけでなく、確かにこれは何か事件性を感じるものだ。
「そこでぇ、その中の一件になるかと思いますがぁ、皆さんに依頼のご案内ですぅ」
 そして語られる予知の内容。
 水辺でのんびり過ごしていたレトロなテレビウム――アローレというらしいが、それが件の事件の如くに怪人へ襲われるらしい。
 その人を守り、助けてあげて欲しい。というのが今回の依頼内容だ。
「怪人は次から次へと押し寄せてくるかと思いますぅ」
 波のように襲い掛かる怪人達を倒し続けるのは骨の折れる作業だろう。
 だが、これは猟兵達にしか出来ないことなのだ。
「どうか彼を守り、助けてあげてくださいね。それでは、ここまでの案内はハーバニー・キーテセラ。皆さんの良き旅路を祈って」
 ――いってらっしゃいませ。
 懐中時計から投影されたグリモアへ銀の鍵が差し込まれ、捻り、カチリと開錠音。
 そして、猟兵達の世界は切り替わる。


ゆうそう
 オープニングを読んで頂き、ありがとうございます。
 ゆうそうと申します。

 テレビウムの顔に映った鍵の謎。それを巡る怪人との怒涛の三連戦。
 どうか、皆様の力で道を切り拓いて頂けたらと思います。
 皆様のプレイング、活躍を心よりお待ちしています。
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第1章 集団戦 『ゲソフレイム』

POW   :    汚物は消毒でゲソーッ!
【松明に油を吹き付け発射した火炎放射】が命中した対象を燃やす。放たれた【油の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    俺色に染めてやるでゲソーッ!
レベル分の1秒で【ベタベタするイカスミ】を発射できる。
WIZ   :    見るがいい、これが俺の変身ゲソーッ!
対象の攻撃を軽減する【激情体】に変身しつつ、【右腕に装備された火炎放射器】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:ケーダ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月居・蒼汰
イカが火持ってるとか危ないと思うんですけど
焼きイカになってません?
まあ、怪人なら何でもありか

アローレさん、大丈夫っすか?
わ、ほんとに顔が鍵だ
とりあえず俺…と他にも猟犬…ヒーローが来てるはずなんで
ここは俺らに任せて下さい
すぐ終わらせるんで

水辺ならベンチとか街灯とか色々あるかな
そういうのをクライシスゾーンで竜巻に変えて
イカを纏めて吹っ飛ばします
あとはかっこよく?ヒーローっぽく?
こう、戦う姿を見せてあげられたら…とか
可能なら、こっちの体力がやばくなったら
ラビット・カタルシスで手をウサギの頭に変えて
自己回復しながら攻撃を続けます

それにしてもいきなりこんなことになるなんて…
何か嫌な予感しかしないな…


杜鬼・カイト
何が起こってるのかはよくわからないんだけど、とにかくアローレくんを護ってあげればいいんだよね
怪人なんてちゃちゃっと蹴散らしちゃおう!

薙刀を構えて、アローレくんと怪人の追いかけっこの間に割って入る
「水辺の追いかけっこなら、もっとトキメクの見せて欲しいんだけどっ!」
敵がアローレくんに近づこうとしてきたら、敵を【なぎ払い】妨害
え、トキメク追いかけっこが何かって?
若い男女のキャッキャウフフとか、そういうのだよそういうの、たぶん。

さてと、最初の敵は……何これ焼きイカ?
炎に気をつけながら【見切り】で回避
【殺気】を放って【相手に恐怖を与え】ながら攻撃
「あはは、裂きイカにしてあげる」



 水辺打ち付ける波は陽光に照らされ、キラキラと飛沫をあげる。
 その波打ち際を駆ける姿は2人。
「待つでゲソ~!」
「なんで追いかけてくるんじゃ~!」
 だが、追いつ追われつのその姿――アローレとイカな怪人の姿はロマンティックには程遠い。
 ドラマティックでロマンティックな甘さなどない、生死の掛かったほろ苦い現実がそこにはあった。
「水辺の追いかけっこなら、もっとトキメクの見せて欲しいんだけどっ!」
 現実が追い付き、アローレの身に危険が及びそうになったその時、杜鬼・カイト(アイビー・f12063)が薙刀片手に割って入る。
 閃く刃は大きく広く。
 大振りな一撃が故に、それは意外なほどに素早く身を翻したイカ怪人の身を捕らえるには至らない。
 しかし、それでよいのだ。元より、それは斬るよりも薙ぐを優先したそれは牽制の意味が強いもの。相手が距離を取ったのなら、ひとまずの目標は達したと言える。
「りょ、猟兵でゲソ!? なんでここに!」
「決まってるよ。何が起こってるのかはよく分からないけど、悪さをする怪人がいるなら蹴散らすのが僕達の役目だからね!」
 薙刀構えて大見得切って、水辺の涼し気な風がカイトの黒髪を、セーラー服の裾を揺らす。
 まさしく、絵になるヒーロー登場の瞬間であった。
 そして、ヒーローは1人に非ず。
 カイトが間に入ったことでようやく脚の止められたアローレ。肩で息し、呼吸を整える彼の傍へと伸びる影。
「アローレさん、大丈夫っすか?」
「だ……大丈夫……じゃ。たぶ、ん」
 老骨に鞭打ち走った距離はやはり大変だったのだろう。なんとか顔をあげたアローレは、気遣う優しき声へと画面を向ける。
「わ、ほんとに鍵だ」
「おぉ……猟兵が、来てくれたというのか」
 そこに見えた姿は月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)からは画面浮かぶ鍵の映像。
 アローレからは夜空浮かぶ優しき月の光。それを思わせる双眸。
「とりあえず俺と――」
「――オレはカイト。よろしく、アローレくん」
「――彼と、他にも猟犬……ヒーローが来てるはずなんで、ここは俺らに任せて下さい」
 息整いつつあるアローレ。その顔の位置まで同じく顔を下げ、蒼汰は安心させるように告げるのだ。
 戦うことは怖いけれど、でも、それ以上に手を伸ばさずに後悔する方が怖い。だからこそ、蒼汰は震える手を隠し、それでも。と脅威へと立ち向かう。
 その背中は、彼もまた違うこと無きヒーローなのだと、誰をにも理解させるものであった。

「猟兵は1人現れれば、他にも居ると聞くでゲソ! 至急応援をー!」
「人を虫か何かみたいに言わないで欲しいんだけど!」
 蒼汰がアローレを安心させる傍ら、カイトは薙刀での牽制を続けていた。
 だが、怪人の聞き捨てならない言葉に、その刃の鋭さはより一層の輝きを見せることに。
 元より、水辺のおいかけっこ。というロマンティック要素をぶち壊しにされ、少しばかりの不満も抱えていたのだ。これを機にと、刃に殺気がより一層と乗るのは致し方がないこと。
 ――愛すべき兄さまとのが叶った時、脳裏に浮かんだらどうしてくれるんだよ!
 それを想起し、兄への愛に生きるカイトの眼差しが変わる。
「あは、あははは! 裂きイカにしてあげる!」
 実際の性別はさておき、外見だけで言うのなら、まるで見目麗しき美少女の姿を持つカイト。
 美人の無表情は怖いとも言うが、美人の表情はどんなものであっても、良くも悪くも感情を揺り動かすものであろう。
 故に、そんな人物が殺意に染まった瞳で刃を振り回す。それは敵対するイカ怪人にとっては、まさに恐怖以外の何物でもなかった。
「な、なんなんだゲソ!?」
 先程、アローレを追いかけていた姿とは立場が逆転。
 今度は追いかけられる立場となったイカ怪人は思わずと言った態で逃げ、それをカイトが追いかける。
 その光景は、やはり、ロマンティックとは程遠いのであった。
「あーもう! これでも喰らうゲソ!」
 追跡、追撃の応酬。刃と触手が打ち合い、弾き合い、どちらがその身を捉えるか。
 手数はイカ怪人が、刃の鋭さはカイトが勝る。それ故、攻防は一進一退。
 それに痺れを切らしたイカ怪人は、打ち合った衝撃を利用し、ひらりと宙舞い、口元をカイトへと向ける。
 そして、放たれしはイカスミの弾幕。
 それは雨と降り注ぎ、カイトの身を呑み込まんと押し寄せる。
「火を噴くのかと思ったら、イカスミだなんて案外イカらしいところもあるんですね」
 ――まあ、怪人なら何でもありか。
 胸中に宿す想いはそれとして、オブリビオン放つ弾丸がただのそれである筈もなし。
 故に、蒼汰はそれを防ぐべしと超常の竜巻を繰る。
 始まりは微風。蒼汰の傍のベンチが泡のように、風へと溶け消える。
 微風は疾風となり、電灯が、柵が、レンガが、次々と同じく風へと消えていく。
 気付けば、そこにあるのはいつの間にかの超常の竜巻。汰の周囲にある無機物を変換されて生み出されたもの。
 渦巻いて巻き起こり、触れた端から更に更にと巻き込み、より大きくなるそれ。
「げ、ゲソー!?」
 竜巻が雨に負けよう筈もない。
 弾丸すらも巻き込み、散らし、竜巻はイカ怪人をも呑み込み、吹き飛ばす!
「兎だからって、甘くみるもんじゃないよ」
 敵見据える視線は毅然。
 例え、それが強がりであったのだとしても、今の蒼汰は間違いなくアローレにとってのヒーロー。
 それ故に、彼は弱気に挫ける姿など見せてはならないと己に活を込めるのだ。
 超常の竜巻がキマイラフューチャーの空に溶け消えて、宙へと吹き飛ばされたイカ怪人が降ってくる。
「追撃、お願いしても?」
「大丈夫。フォロー、ありがとっ!」
「いいえ、どういたしまして」
 その落下地点には、幾分かの冷静さを取り戻したカイト。
 構える薙刀の刃に籠るは先程の情念か。
 目に見える程の呪詛が纏われている様子が蒼汰には見て取れた。
 そして、奔る刃は落ちるに合わせて振るわれた、それ。
 刃は音もなく幾本かの触手を断ち切り、落とすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

上野・修介
アドリブ、連携OK
・POW
「こんな訳の分らん自体に巻き込まれるなんて、ホント災難だな」
呼吸を整え、無駄な力を抜き、敵を見据える。

先ずは観【視力+情報取集】る。
敵の総数と配置、味方の戦力、周囲の遮蔽物を把握。
目付は広く、戦場全体を見るように。

囲まれぬよう遮蔽物を利用【地形の利用】し【フェイント】をかけつつ常に動き回る。
相手の懐に【ダッシュ】で肉薄し一体ずつ確実に始末する。
囲まれそうになれば迷わず退き【逃げ足】仕切り直す。

得物は素手格闘【グラップル】
【覚悟】を決めて推して参る。
UCは基本防御強化。攻撃時のみ攻撃力を強化。
炎攻撃に対しては軌道を【見切り】廻し受け【戦闘知識+グラップル】で弾き散らす。


フィーナ・ステラガーデン
というわけで!今日のご飯は海鮮物に大決定ね!
イカって焼いても良し、干しても良し、塩漬けにしても良しよね!
どう料理してくれようかしら!

鍵?鍵って何かを開けるためのものよね!
中身は気になるけど、そもそも何に使うかさっぱりわかんないわね!
だいたい鍵の絵(映像)だし!でーたというやつかしら?
そんなことよりも私はイカの味のほうが今は気になるわ!

って何よあんたすでに燃えてるじゃない!
食べられる気満々ってわけね!
UCの魔力で出来た杭を細めに作って、イカ串にしてやるわ!
戦闘での使用技能は「火炎耐性、ダッシュ、恐怖を与える」あたりかしら!

(アレンジ、アドリブ、連携大歓迎!)



 断たれ、落ちた己の触手。
 イカ怪人はそれを凝視し、ただプルプルと柔らかく震えるのみ。
 怒りか、ストレスか、イカ怪人の色は元々の紅からより鮮やかな紅へ。
 それはまるで煮込まれた煮付けのような色合いで、弾力溢れるその姿と相まって、思わず誰かのハラペコが刺激された。
 ――今日のご飯は海鮮物に大決定ね!
 そのハラペコたる金色、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)は心中で己の正義――と書いて、御飯読む――を決める。
 だが、今は戦闘中だ。キリリと引き締まったその横顔は可憐さをこそ思わせはしても、間違っても胸中を零すことは、今のところなかった。
「どう料理してくれようかしら!」
 いや、少しばかり零れていたかもしれない。
 だが、幸か不幸か、その言葉は相手への対処方法と思われ、誰も疑問の目を差し向ける様子はなかった。
「あんな訳の分からん自体に巻き込まれるなんて、ホント災難だな」
 その傍ら、猟兵達の活躍をハラハラしつつも応援するアローレへ向けるは上野・修介(元フリーター、今は猟兵・f13887)。
 その左頬に走る一筋の傷が、修介の雰囲気により一層の凄みを持たせている。
 呼吸は一定にして、自然。昂ぶりに早まるでもなく、身体休める程の遅さもない。
 視線を切り、一度閉じた瞳が再びに開かれ、そこにあったのは正しく静謐。波すら立たぬ水面の如き静けさ。
 その全てを見透かすような瞳が、イカ怪人の異常……行動を捉えるのだ。
「ゲソ~、腕が、腕を」
 色が赤になり、白になり、赤黒くなり。
 それはまるで目まぐるしく変わるイカ怪人の心中を表すかのよう。
 そして、その色がピタリと暗赤色で止まる。
「猟兵、許さないでゲソ!!」
 その怒りは臨界点を越え、今、その激情はイカ怪人に更なる力を与える!
 それは己の身を犠牲にして越える限界にして、真の姿。
 右の触腕に灯す炎をより高らかと燃え盛らせ、吹き上げるその姿。
「来るぞ」
「やっぱり塩漬けか、日干しも……って、なんだか熱いわね! って、もう燃えてるじゃない!?」
 静と動の相反する2人であるが、力増した敵を前にしても己のペースを崩さぬ点は共通していた。
 そして、イカ怪人の空気焦がす炎が猟兵達へと迫る。

 粘つくような炎が軌跡に分け身を残しながら、猟兵達へと伸びる。
 だが、修介にとってはその動きは遅く見える。
 それは極限までに集中された視るという行為によるもの。
 炎の断片、火の粉の1つまでもを見極めるその眼。ならば、空気の流れを読み取るもまた叶うもの。
「――力は溜めず」
 余分な力は必要ない。脱力があるからこそ、瞬間的な加速の、力の発揮へと至るのだから。
「――息は止めず」
 呼気は規則正しく。乱れた呼吸はリズムを崩し、己の内を崩すもの。それでは為すべきを為せないから。
「――意地は貫く」
 技だけでも、体だけでも、十全たるは発揮できない。技と体を纏め上げる心が揃ってこその。そのための折れぬ意地は己の中に。
 修介の握りしめた拳が、迫る炎に突き刺さる。
 見抜いた空気の流れ。台風で言うところの目に当たる場所。
 炎の熱が拳に伝わり、修介の手が焼ける――その直前、修介の手は炎をかき混ぜた。
 その円の動きは炎の目を押し広げ、熱を拡散させ、炎自体を吹き散らす。
 僅かでも身体に硬さがあれば、僅かでもリズムが乱れれば、僅かでも揺らげば、それはなしえなかったであろう業。
「そ、そんな、ありえないでゲソー!?」
 その炎は粘つく性質と合わさり、本来ならば纏わり憑くように延焼する筈のもの。
 だが、敢え無く吹き散らされたそれに身体全体の色を白に変えて驚愕を示すイカ怪人。
 壁の如くと押し寄せていた炎がなくなった今、その姿は克明。
「射線は十分だろう?」
「炎を素手で掻き消すだなんて、アンタも相当クレバーね!」
「褒め言葉と受け取っておこうか」
「でも、炎の扱いで私の右に出る人はいないのよ!」
 信念であるのなら、フィーナも負けてはいられない。
 何故なら――
「それは私の専売特許だもの!」
 凍える夜を幾度も乗り越えたそれの扱いで、生死問う戦いの狭間を共にするそれの扱いで、遅れを取る訳にはいかないのだから。
 杖の一振りに呼び起こされるは黒の杭。それは常の杭よりも細く細く、まるで銃弾の如く。
 そして、ついと指し示す杖の先。数多の魔法陣が連なり、重なり銃身の如く。
 杭が――銃弾の連なりの一端が、魔法陣の中央に装填。
「Bang!」
 茶目っ気たっぷり。ウィンク一つ。しかし、それはイカ怪人にとっての悪夢の始まり。
 力ある言葉の代わりとして放たれた声に従い、杭は動き出す。
 始動、加速、加速、加速、加速――射出。
 それが1つではない、数多と撃ち出されるのは、撃たれる側からすれば悪夢以外になんと言うべきか。
「げ……そ……」
 穿ち、穿ち、穿たれて、更には身に突き立った黒の杭が、イカ怪人に宿る炎の属性を奪っていくではないか。
 その身に炎たる紅はもうない。全て、フィーナに喰らいつくされた。
「私の前に炎を纏って現れるなんて、最初から食べられる気満々だったってわけね!」
 その声に応える者は、最早ここには居なかった。

「そう言えば、鍵って何だったのかしらね」
「さてな。だが、オブリビオン共が狙ってくるんだ。何かしらあるんだろう」
 イカ怪人の魔手は途絶え、己の身を守るべくと駆けつけてくれた猟兵達へアローレは感謝を途絶えさせない。
 その様子を見守る2人であるが、その視線の先にある画面に映るは未だに鍵のみ。
 何か変化があるのか。と見守る中、不意に修介は水面の彼方を見る。
「――そう言えば、奴は救援を頼んでいたのだったな」
「え?」
 修介以外の誰かが気付くより前、それは猟兵達の前へと姿現したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『マグロ怪人ツーナー』

POW   :    止められない止まれない
【食べられるという恐怖心から無限のスタミナ】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD   :    そんなことより助けて欲しい
レベル分の1秒で【腕を振り払うことで自らに噛み付いてる猫】を発射できる。
WIZ   :    水を得たお魚
【水鉄砲】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を水浸しにし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:くずもちルー

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
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 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 それは水面蹴立てて迫る大群。
 あれはなんだ。魚だ。マグロの大群だ!?
 ふんどし一丁、裸に締めて。筋骨隆々たるその身を躍動させ、それは猟兵達の前へ。
 いや、猟兵達を前にしても、常に取り囲むようにして動き回り続け、忙しないことこの上ない。
「イカ野郎は倒されちまったようだ」
「救援を送っておきながら、本人が居ないってのはどういう了見だ」
「いや、鍵の位置を教えていったのだ。そう責めるな」
 喧々囂々。誰も彼も好き勝手に喋り倒す。
 だが、その誰もがの瞳が一斉に猟兵達の方へと向くのだ。
「奴が居ようが居まいが関係ない。猟兵達を倒し、そこにあるものを奪えばいいのだからな!」
 イカ怪人との一戦からの息つく間もなき連戦。だが、ここで退く訳にはいかない。
 四方八方からと迫るマグロの大群を前にして、猟兵達はそれを迎え撃たんとするのである。
フィーナ・ステラガーデン
もぐもぐ。
あら?次は青魚かしら?やっぱり海は食べ物が違うわね!
メインディッシュというやつね!焼き魚がいいかしら?
煮てもいいかもしれないわね!
って思ってた青魚と全然違うわ!?
何なのそのむやみやたらに逞しい身体は!
その姿のまま走り回るなああ!

おーけー吹き飛ばすわ!
こっちに向かってきている間に高速詠唱をして
UCを発動よ!前方に火炎流を作って一気に焼きつつ巻き上げるわ!
これってマグロの水揚げになるのかしら?

ところでお頭焼きとか聞いたことあるけど
こいつら頭は食べれるのかしら?つんつん

(アレンジアドリブ連携大歓迎!)


上野・修介
アドリブ、連携OK
・POW
「イカの次はマグロと来たか」
しかし何が相手であろうがやることは変わらない。

――調息――脱力――敵を砕く


守る対象がおり、おそらく本命は別にいる以上あまり時間を懸けるのは避けたい。
ならば速攻。
こちらの呼吸は十分整っている。
相手が陣形、体勢、呼吸を整える前に仕掛け、崩す。

得物は素手格闘【グラップル】
目付は広く、戦場全体を見るように。
UCで攻撃力を強化。
【覚悟】を決め、腹を据えて【勇気+激痛耐性】推して参る。。


相手の懐に【ダッシュ】で肉薄し一体ずつ確実に始末する。
囲まれそうになれば迷わず退き【逃げ足】仕切り直す。
防御回避は最小限。攻撃の軌道を【見切り】防ぐよりも受け流す。



 四方八方から迫るマグロの群れ。
 これが海の上で、漁船の上で、猟兵達が漁師であったのなら、収穫の時と喜びと共に奮起することであったあろう。
 だが、彼らは猟兵であって漁師ではなく、迫り来る者達はマグロであってマグロではなかった。
 つまり、誰も喜びはせず、違う意味での奮起がそこにはあったのである。
「イカの次はマグロと来たか」
 最初にそれの接近に気付いていたからか、そこに驚愕や嘆息というものはない。
 それとも、上野・修介(元フリーター、今は猟兵・f13887)にとっては、何が初見であっても心乱すには至らない不動の精神があったためか。
 それが何にしてもどうにしても、結局のところ、彼にとってはするべきことは何も変わらない。
 だからこそ、修介はぶれず、揺るがず、そこにある。
 その一方で、呼吸に感情にと大いに動かす者もいる。
「思ってた青魚と全然違うわ!?」
 フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)が想像していたのは、正しくマグロ。
 焼き魚? 煮物? 果ては、刺身も良いかもしれない。イカに続いて刺激される空腹感。
 だけれど、目の前に現れたのは――
「何なの、そのむやみやたらに逞しい身体は! その姿のまま走り回るなああ!」
 筋骨隆々たるマグロ怪人なのだ。
 猟兵達の周りを取り囲むように走り回り、迫り来るそれに落胆を、怒りを覚えずにいられようか。
 だが、その感情の発露が、思うままに感じ動くが、フィーナにとっての当たり前。
「気は済んだか?」
「おーけーおーけー、大丈夫よ。吹き飛ばしてやるわ!」
 水鏡の如き静謐と燃える炎の如き躍動がそこに。
「ふはははっ、魚の餌になるがいい!」
 そして、マグロは迫りくる。

 先に動いたのは修介。
 その身に宿す第六感。それが先程から囁いて鳴り止まぬのだ。これは、まだ先駆けにすぎないと。
 数多の戦場を越え、修羅場を越え、磨き上げられた戦士としての勘。知識。それに信を置かずして、何に信を置こうというものか。
 故に、この場を長引かせるは悪手。
 呼吸は――整っている。
 力は――程よく抜けている。
 ならば。
「――敵を砕く」
 絶対の意志を込めて踏み込んだ脚は、確実にその身体を敵の懐へ。
 豪快な、それでいて隙の無い、実践を経て練磨された拳の一撃がマグロ怪人の腹部に突き刺さる。
 拳の衝撃に浮き上がった怪人の身体。その腕をひっつかみ、1本背負いへと繋げるは流れるように。
 それは交差から一瞬の出来事であった。
 地に立つは修介。地に倒れ伏すはマグロ怪人が1体。
 地に伏した怪人は悶絶すらも出来ず、痛みを逃す暇もなく、その意識を闇の底へと沈めている。
「――コォ」
 その早業が故、生まれた数瞬の空白。それを逃さず、呼吸を1回。それだけで、再びに力が全身へと巡り行く。
「や、野郎! タタキにしてやれ!」
「1人なら、複数で掛かれば!」
 瞬間的な出来事に、動揺はマグロ怪人全体へ。
 その呼吸はどれもが浅く早く、乱れに乱れている様子が見て取れた。
「どうした。隙が透けて見えるぞ」
 そんな者達に、修介が捉えられるだろうか。答えは――当然の如く、否。
 炎の流れすらもを見極める眼が、動揺あるマグロ怪人全体の動きを見抜けぬ筈もなし。
 手を使い、脚を使い、時に敵の身体自体を遮蔽物に。そうして見切り、躱し、逸らし、立ち位置を変え、その身に1つとして有効打を与えない。変わって、増えるのは地に転がる怪人の数ばかり。
 だが、やはり数は力でもあるのだ。
 修介の拳に喰われて堪るかと言わんばかりの怒涛の攻めは、修介から呼吸の隙を奪っていく。
 人である限り、息をせずに行動できる時間は限られるもの。
 仕切り直し。
 その単語が修介の脳裏に浮かんだ瞬間――炎が奔った。
「煮ても焼いても食えそうにないし、なら焼き焦がしてあげるわ!」
 修介とマグロ怪人。2つを分断するように放たれたそれは狙い通りに。その隙を逃さず、修介は呼吸を1つ、2つ。
「……すまないな」
「ふふん。たっぷり感謝してくれていいわよ」
 礼の言葉に鼻高々。
 だが、その表情はすぐに曇ることとなる。
「たかが炎程度で、我らを止められると思うなよ!」
 響いた言葉はマグロの誰かか。それに次いで放たれたそれは水の奔流。
 地に未だ残る炎を打ち消し、それは周囲の水の気配を濃密なものへと変えていく。
 それに伴い、マグロ達の筋肉はまるでワックスを塗ったかのように艶を増し、水中と変わらぬ速度で泳ぐかのように動きの良さは増していく。
「なにあれ! 青物っぽいからって、テカテカしてんじゃないわよ!?
 浮かぶ鳥肌。あれを生かしていてはならないと、長時間見ていてはならないと、フィーナの中の何かが叫ぶ。ついでに、フィーナも叫ぶ。
 その感情に呼応したかのように、残る炎がより一層と燃え上がり、火の玉となり、それらを焼き尽くさんと――
「ふははははっ。炎で水に勝てるとでも思ったか!」
 ――するが、濃密な水の気配に火勢を弱められ、そこを再びマグロの放つ水鉄砲に迎撃され、消化される。それに勢いを得たのだろう。マグロ怪人は一気呵成と、猟兵達へその身を加速させるのだ。
「呼吸はもう十分だ。アンタはフォローに……ほう」
 それを迎撃せんと、修介が再びに前へと出る。その寸前。
「……やってくれるじゃない」
 まるで地を揺るがすような声。俯いているため、その表情の大半は帽子で隠され、窺い知る事は出来ない。
 火は水に消されるもの。ああ、そうだ。その通りだ。
 だけれど――
「――それがどうしたってのよ!」
 水が火を消すは道理。だが、火とてその熱で水を消せるのだ。ならば、その域に至れば良い。
 吼えると共に勢いよくあげた顔の動きへ金糸が揺れる。紅の瞳に炎が揺れる。
 杖の宝石が煌き、魔法陣の輝きは紅く、朱く。
 荒れ狂う炎の化身がそこにはあった。
「捻じ切れなさいよ!!」
 力強く放たれた言葉はその言葉の勢いを表すかのように、炎を世界へと具現化させる。
 それは炎の竜巻となり、水の気配を瞬く間と渇きに変え、マグロをなす術もなく呑み込んでいくのだ。
 残ったのは焦げ跡と名残りの火の粉。
 そして――
「……お頭焼きとか聞いたことあるけど、こいつらは食べれるのかしら」
「やめておけ」
 吼え、感情を解き放ち、落ち着きを取り戻したフィーナとそれを止める修介だけがあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月居・蒼汰
なんか迫ってくるマグロの大群を見てちょっと遠い目になりながらも
…え、帰って下さい(水辺指差し)。あ、新手か…
真顔で拒否した所で我に返る
…俺、キマイラだけど出身はヒーローズアースだから…
キマイラフューチャーって実は初めてだったんだけど
…怪人って、なんかすごいんだな…いや、褒めてないし…

取り敢えず引き続きアローレさんを気に掛けつつ
アローレさんに攻撃が向くようなら盾になります
さっきのがイカ野郎ならこっちは魚野郎でいいんですよね?
今度は願い星の憧憬を【範囲攻撃】で
なるべく一度で複数を巻き込んで倒したいけど
難しそうなら他の猟兵さんと協力して
残り体力の少なそうな奴から倒していきます

さて、次は何が来るやら…


杜鬼・カイト
うわっ!?なんだあれマグロ!?しかもたくさんいる
さっきの焼きイカが呼んだのってもしかしなくてもこいつらか
うぅ……むさ苦しいなぁ
ジトーっとにらみつつも、表情をすぐに笑顔に戻して一言
「ま、でも、こいつらもオレ達がサクーっと倒しちゃえば問題ないんだもんね」
それじゃ、さっさと壊しちゃおうか

薙刀を構えて【力溜め】
敵に囲まれたら、薙刀を力いっぱい振り回して【なぎ払い】その【衝撃波】で敵を攻撃する
多数の敵がどこから攻撃してくるのかわからないし、
背後の敵には【聞き耳】と【第六感】を頼りにし、危険を察知したら薙刀で牽制しつつの回避



 水辺から次から次へと現れるマグロ怪人の群れ。
 筋骨隆々たる姿がひしめき合うそこには、炎の熱とはまた違う熱気がそこにはあった。
「さっきの焼きイカが呼んだのって、もしかしなくてもこいつらか」
 その熱気、むさ苦しさに眉根を顰め、若干どころでなく引いているのは、杜鬼・カイト(アイビー・f12063)。
 その姿はそのむさ苦しい集団を見た後であれば、まさしく清涼剤。砂漠に吹く一陣の涼風。
「キマイラフューチャーって、実は初めてだったんだけど……怪人って、なんかすごいんだな」
 アローレを背に隠しながら、月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)も思わず遠い目。
 蒼汰はキマイラではあるが、その出身世界はヒーローズアース。そのため、キマイラフューチャー世界の独特な怪人との遭遇は初めてであったのだ。
「見よ、奴らは我々の姿に恐れ戦いている!」
「我々にその鍵を渡せば、見逃してやってもいいぞ!」
 2人の様子に戦意を消失したかとマグロは嗤い、その様子を蒼汰の陰からアローレが心配げに見守っている。
 なんとも心外であった。
「いや、恐れ戦いてないし……アローレさんも、心配しなくて大丈夫ですよ」
 思わず、帰って下さい。という言葉を投げかけそうにもなるが、それよりもとアローレの不安を解消するに務める蒼汰。
 マグロの大群など眼中にはない。あるのは、守るべき者の姿のみ。
「う、うむ。だが、相手の数は多い。いざという時は儂を捨てて……」
「いえ、伸ばした手を放すことは、ありません」
 アローレの心遣いが少しだけ嬉しく、だからこそ、守らねばと、蒼汰はマグロの姿に萎えた心に喝入れ、新たとするのだ。
「そうそう。心配なんてしなくて大丈夫。こいつらもオレ達がサクーっと倒しちゃえば問題ないんだもんね」
 眉顰めた表情から一転、カイトの顔にはニコリ笑顔が花咲いて。
 それはアローレの心配を吹き飛ばすものでもあり、その言葉の内容を向けられる者にとっては不吉なる言葉。
 構え、握る薙刀の刃は陽光反射し、笑顔の下に潜む刃を思わせるかのよう。
 マグロ達もその笑顔の奥にあるナニカを感じ取ったのだろう。思わずと、ヤジを、その動きを揃って止める。
「――それじゃ、さっさと壊しちゃおうか」
 笑顔とは裏腹なる物騒な言葉。まさしく、綺麗な薔薇にはと言ったところであった。

 薙刀構え、力を溜めて、疾駆の速度は矢の如く。
 黒の矢がマグロの群れに突き立ち、その前面にあった者達から纏めて吹き飛ばしていく。
「あれ、もしかして見掛け倒しなのかな?」
 コロリコロリと鈴転がす笑みと共に零れる言葉は刃。
 流麗と流れる薙刀の刃に乗って、マグロ怪人の身も心もと斬り裂き、断ち割り。
「イカ野郎を倒したんだ、油断すんじゃねえぞ!」
「その言葉自体が、既に油断してる証拠だよね」
 舞うように、踊るように、動くほどに刃は鋭さを増していく。
 カイトが、刃が踊れば、その軌跡の後には魅了されたように倒れ伏す影数多。
「後ろ、来てます」
「うん、分かってる。でも、もう対処の必要ないよね?」
 届く蒼汰の警告あるが、カイトの耳は、勘は、既にその脅威が排除されるを知っている。
 コン。と軽く地面を叩いた杖の石突。
 それに呼応するのは大気か、満ちる水か。
 世界に遍く大いなる意志へと自らを繋ぎ、蒼汰はそれを繰り、迫る敵意を穿ち抜く。
「勿論。俺だって、やれるんだ」
 それは誰への言葉だったのか。己へのか。はたまた、刃という分かりやすい武力が見えない故に、くみし易しと押し寄せようとしていたマグロ怪人にか。
「さっきのがイカ野郎なら、こっちは魚野郎でいいんですよね?」
 威圧するような武はそこにはない。
 だが、後ろに通さぬと静かな決意秘めた眼差しは、無辜の民守る確かな盾としてそこにあるを示していた。
 水も漏らさぬ2人の鉄壁。マグロ怪人の波が当たっては砕けていく。
「なんなんだ、奴らは!」
「こうなったら鍵ごと巻き込んで、あとから回収すれば!」
 結ばぬ成果の実りに業を煮やし、ざわめくマグロ怪人の群れ。
 その言葉はこれから起きる大事を予見させるには十分なもの。
「何か、来るね」
「ええ、何が来るやら……」

 ――そして、それは現れた。

 集結したマグロ怪人が同時に放つ水鉄砲。それは1つ、2つ……と合わさり、最早鉄砲などとは言えぬもの。
 大量の水が迫りくる様は、まさしく全てを攫う大波か。
「わ、わわわ。お主ら、逃げるのじゃ!」
 テレビウムの小さき身体のために、その水の奔流はより大きくと感じるのだろう。アローレは2人に己を置いて逃げろ。と、叫ぶ。
 だが、最初からその選択肢が出来るのならば、ここに猟兵は、ヒーローは現れてなどいない。
「安心して、アローレさん」
 危機を前にしても落ち着いた蒼汰の声に、アローレは落ち着きを取り戻す。
 ただ、落ち着いただけのものであったなら、それはアローレを落ち着かせることなどなかっただろう。
 だが、そこには確かな戦う意思が籠っていたから、退かぬ意思が籠っていたから。だから、何の確証もなく、しかし、確信をもって、アローレは大丈夫なのだと理解する。
「――俺だって、一応、やる時はやるから」
 蒼汰の指し示す先は向かい来る大波。
 その意思は、願いは一筋の流星となって、彼方より来る。
 星が落ちた。
 その輝きは熱量となって波を焼き、降り注いだ衝撃は波を飛沫と砕いていく。
 波の、海の割れる光景が、目の前に。
 その先にあるのは驚愕示すマグロの大群。
「纏まってくれてるなんて、気が利くね!」
 薙刀構えるカイトの舞は、今が山場とその鋭さは最高潮。
 弾ける波の飛沫が舞台に添える花となり、その中央で舞うカイトの姿は神々しさすらをも覚えるものに。
 神なる者が舞い遊び、遅れて世界が合いの手を入れる。
 それは風。その舞を身近で見んとするかのように、カイトを取り巻き渦巻く風。
「これで、終わり!」
 ぐるり大きくひと捻り。そして、風乗せ振るわれる薙刀。
 風がカイトの意思を乗せ、かたまり集うマグロの群れへ。
 風が吹き抜けた時、そこにはもう何も残ってはいなかった。

 息つく間もなき2連戦。その終わりを待っていたかのように、アローレの画面には一つの画が映し出されるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『怪人『オンナマズ』』

POW   :    ジャイアントナマズ
自身の身長の2倍の【巨大ナマズ怪人 】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    ナマズ人召喚
レベル×1体の、【後頭部 】に1と刻印された戦闘用【ナマズ人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    矢ナマズ発射!
レベル×5本の【雷 】属性の【刺さるデンキナマズ】を放つ。

イラスト:烏鷺山

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鳥渡・璃瑠です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 アローレの画面に映し出されていたのは、水辺エリアの一角。
 かつてあった自然を模造して作られた、沼地の傍。
 恐らくであるが、それが鍵の示す場所なのだろう。
「すまぬ。儂には何がなんだか分からんが、ここに行かねばならぬと脳裏に響くのじゃ」
 助けてもらっておきながら。と、アローレは申し訳なさそうに、しかし、そこへ行かねば。と言の葉を継ぐ。
 ひとまずの危機は去ったようだが、猟兵達が還れる様子は未だない。
 ならば、そこへと辿り着くことも必要なことなのだろう。
 だからこそ、猟兵達はアローレと共にその映像示す場所へと歩み出す。
 ありがとう。ありがとう。と繰り返す、アローレの感謝を受けながら。

 ――それを水中から見つめる瞳があった。

 そして、辿り着いた沼地。
「ここが、そうなのじゃな」
 何が起こるのだろうと猟兵達が周囲を警戒し始めた、その時、アローレの身体は輝きを発し始める。
 すわ、何か異変が。と身構える猟兵達であったが、それ以上の変化はすぐには見られない。
 だが。
「ホホッ! ここが鍵の示す場所であったのネ!」
 その光を待っていたかのように、沼地よりざぶり現れるナマズが1人。
「イカにマグロは失敗したようだけれど、所詮、あいつらは私の手足。私が直々に片を付けてあげましょウ!」
 ナマズの怪人――オンナマズは雷の音響かせて、猟兵達を、アローレを討たんと動き出す。
 アローレの光は未だ収まる気配を見せない。
 下手に動かせば、何が起こるかも分からない以上、彼を守りながら戦う以外に方法はないだろう。
 猟兵達はオンナマズを迎撃すべく、それぞれの行動を開始するのであった。
上野・修介
アドリブ、連携OK
・POW
「やはり来るか」
だがやることは変わらない。

――恐れず、迷わず、侮らず
――呼吸を整え――力を抜き――専心する
――熱はすべて四肢に込め、心は水鏡

先ずは観【視力+情報取集】る。
体格・得物・構え・視線等から呼吸と間合いを量【学習力+戦闘知識】る。

得物は素手格闘【グラップル】
UCで攻撃力を強化。

召喚されるナマズは無視。
狙うはボス、ただ一点。

この身一つで戦う以上は元より【覚悟】完了済み。
恐れず【勇気+激痛耐性】、【ダッシュ】で間合いを詰め、【捨て身の一撃】を叩き込む。
叩き込んだ後はそのまま至近に張り付き、体幹と視線、殺気を【視力】と【第六感】で読み、軌道を【見切】って攻める。


杜鬼・カイト
次はナマズかー
これで最後みたいだし、気合いれていかないとね!

アローレくんに何が起こっているのかわからないけど、彼を守りながら戦う
薙刀で敵を牽制し、アローレくんに近づけさせないようにする

ダメ押しに【赤い糸は結ばれて】を発動し、ナマズ怪人にルールを宣言
「アローレくんに触れるな」
これで迂闊に近づけないはず
「オレとのヤクソク、破ったら許さないよ?」
笑顔で【恫喝】し【恐怖を与える】
敵が怯んだところで一気に攻める。手数重視で【2回攻撃】

敵の攻撃は【見切り】で回避、アローレくんに攻撃が当たりそうな時は【激痛耐性】で耐える

で、鍵の示した場所とアローレくんに起こってることと、一体なんの関係があるんだろう?


月居・蒼汰
あのナマズ、メスなの…?(真面目な顔で)
…全部終わったらちゃんとしたお店で海鮮丼食べたい…
頑張ろう…(気合い)

アローレさんを動かすのが危険な以上
彼を中心に皆で円陣を組んで戦うのが得策だろうか
とは言え臨機応変に、ナマズがアローレさんを狙うようなら
ダッシュで飛び込んででも庇います
攻撃は破魔の力を込めた願い星の憧憬で
デンキナマズは野生の勘で避けるか
オーラ防御で少しでもダメージを減らしたいけど
アローレさんにも及びそうなら全部受け止めます
痛くてもここは頑張らなきゃ

無事に倒せたらまずアローレさんの無事を確認
アローレさんや皆の怪我は生まれながらの光で治療します

…アローレさんの鍵、無事に消えるといいんだけど…


フィーナ・ステラガーデン
またなんかすごいのが出てきたわね!?
私UDCで聞いたことあるわよ!
ナマズもちゃんと料理すれば
鰻みたいになるらしいわ!
つまり本当のメインディッシュはここにいたわけね!
やってやるわ!(やる気満タン)

仲間と共に戦うわ!
そうねえ。今回はボス一匹だし前衛は仲間に任せて私はucにいて詠唱を行うわ!
魔力が貯まる頃合いを見て一気にUC「圧縮セシ焔ノ解放」を放って
消し飛ばしてやるわ!

結局この沼地に何があったのかしら?
一応確認してみようかしらね。
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)



 光り輝くアローレに照らされる沼地。
 だが、輝き照らされるそこに変化らしきものはない。いや、正確に言えば、1つだけあったか。
「やはり来るか」
 上野・修介(元フリーター、今は猟兵・f13887)を始めとした猟兵達の視線の先、照らし出される沼地より現れたナマズ怪人が1人。
 今迄の妨害を思えば、ここ一番たる場所で妨害がない訳がないのだ。
 それ故に、修介は警戒を緩めてはおらず、その登場に対し、心に小波一つとして生まれはしない。
 その姿は連戦を通してなお、未だ健在たるを示していた。
「そうみたいだね。というか、次はナマズかー」
「あのナマズ、メスなの……?」
「またなんかすごいのが出てきたわね!?」
 その静謐さとは裏腹、賑やかさもまた健在。
 杜鬼・カイト(アイビー・f12063)、月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)は怪人の姿を見るにつけ、それぞれの感想を零し合う。
 だが、その賑やかさとは状況を悲観せぬ良さであり、護衛の対象であるアローレに安心感を与えるもの。
 そしてなにより、己のペース崩れぬ様は修介と同様、己が健在なる証拠であった。
「これで最後みたいだし、気合いれてかないとね!」
「そうだね……全部終わったら、ちゃんとしたお店で海鮮丼とかいいかも」
「私、UDCで聞いたことあるわよ! ナマズもちゃんと料理すれば、鰻みたいになるらしいわ!」
 三者三様、気合を入れて。
 ――若干名、気合の入れる矛先が胃袋由来となっていたような気もするが。
「え、あれ見て食欲沸く?」
「要素的には、悪くないと思うけど」
「ナマズ=鰻って言うなら、つまり本当のメインディッシュってことでしょ!」
 気もする。ではなく、割と、かなりのレベルでそうであった。
 カイトは思わず空を仰ぐ。そうかー。そういうこともあるのかー、と。
 ――世界は広いです、お兄様。
「遊ぶのもいいが、そろそろ仕掛けてくるぞ」
「キーッ! 無視するなんて、いい度胸だワ!」
 修介の言葉が契機だった訳ではないだろうが、それと同時にナマズ怪人は奇声をあげて行動を開始する様子が見て取れた。
「大丈夫。わかってるよ」
「ああ、頑張ろう……」
「やってやるわ!」
 そして、アローレを、鍵をめぐる最後の戦い。その開戦の鐘は打ち鳴らされた。

「お前達、やっておしまいなさイ!」
 奇声あげるナマズ怪人が一声。
 それへと呼応するかのように現れたのは、同じような風体の怪人達。
 数はそのまま力となる。
 だが、それに溺れたならば意味などない。
 数を纏めたが故に、最後にそれを利用されたマグロ怪人の轍は踏みはしない。そう言わんばかりにナマズ怪人は召喚したナマズ人を分散させるように行動させるのだ。
 それはつまり、猟兵達の分断であり、処理できない数をぶつけることでのアローレ守る防壁の瓦解が狙い。
「ある程度はなぎ払えるけど、数が多いったらないわね!」
「だが、1人ずつ倒していくしかあるまい」
 フィーナと修介は果敢に敵を打ち倒し、
「近づくんじゃないよ!」
「分散すると危険。皆、円陣を」
 薙刀振るうカイトが護り、蒼汰がアローレの身を庇う盾となる。
 1体1体は大したことのない存在。だが、それは猟兵にとってはであり、アローレにとっては充分すぎる脅威なのだ。
 ひっきりなしと押し寄せるそれの圧力は確かなもの。じわりじわりと円が押しつぶされていく。
「ホホッ! 猟兵と言っても、こんなものなのかしラ!」
 戦闘の推移にご満悦。
 ナマズ怪人は遠からず手の届くであろう未来を想像し、高笑いを零すのだ。
 それが、猟兵達の心に火を点けるとは知りもしないで。
「アローレくんに触れるな」
 響いた声は重く、重く。それは絶対の宣告。
 今はカイトの左手小指に嵌められた緑碧玉の指輪が淡く輝き、その存在感を全てに示す。
「もう1度言う――アローレくんに、触れるな」
 そして、指輪から解き放たれし力。それは瞬く間に伸び、花咲き、一面を白詰草の花畑と変えていく。
 それは1つの領域であった。カイトが宣告したルールを絶対とする、させる領域。
「オレとのヤクソク、破ったら許さないよ?」
 そのルール破りし時の罰則とは――カイトが力放つ隙を突き、壁を抜けたナマズ人がアローレに触れた瞬間、足元の白詰草がそれに絡みつき、飲み込み、土へと還す。
 それは約束守らぬ者への復讐の牙。
「――ほら、今言ったばかり。約束は守らないと」
 ニコリ微笑むカイトの美しき貌。
 それは無邪気さを感じさせるものでもあり、それ故の残酷さを感じさせるものでもあった。
 囲むナマズ人の圧力が、たった1人の笑顔の圧力に押され、弱まりを見せていく。
 誰だって。そう、誰だって、自分が犠牲にはなりたくないのだから。
 だが、手が緩んだを見逃す程に、カイトは甘くなどない。
 守りを一転、攻めへと変えて、戦局を変えんと切り込んでいくのだ。

 攻め手が3人、守り手が1人。
 ナマズ人の攻勢は削げた今、本体を討つには絶好の機会。
 しかし、そこへと至るには、今度は守りに回ったそれが邪魔となる。
「こういう時は、私の出番よね! 少しの間、任せるわよ!」
 それぞれに個性があり、得意分野があり、出来る事が違うからこそ補い合える。
 こと、この面子の中では範囲攻撃の技術は抜きんでたものがある。
 だからこそ、壁に穴を穿つ全力の一撃、それを練り上げる時間を欲したのだ。
「ああ、任せておけ」
「大丈夫、こっちは任せておいて」
「守るのも、心配はいらないから」
 心配など最初から毛頭なかったが、それでも頼もしい言葉の数々にフィーナの口元が力強く弧を描く。
 そして、彼女は瞳を、見える世界を閉じ、己の内へと埋没していく。

「なんということヲ! ならば、直接触れなけれバ!」
 その間にも事態は進む。
 ナマズ怪人は己が内に持ちうる発電器官を総動員。ばちりばちりと空気を爆ぜて、雷撃宿すナマズを矢と放つ。
 その目標は猟兵でなくアローレ。
 雲霞の如くと飛び来るそれは召喚した筈のナマズ人を巻き込み、猟兵ごとと襲い掛かるのだ。
 その内の多くは修介が、カイトが、穿ち、切り払い、仕留めていく。だが、水も漏らさぬ鉄壁を行うには手数が足りない。
 ――俺で止めきれる? いや……。
 フィーナがその動きを止めている以上、最後の防壁たるは蒼汰のみ。
 蒼汰にも範囲を薙ぎ払う術は持ちうるが、それで全てを止めるは難しい。
 ならば――
「お、お主!?」
「っ! ……守るのにも心配はいらないって、言ったからね」
 輝きの中にあるアローレは詳細に外のことを把握出来ていた訳ではないだろう。
 だが、自身が狙われていたことだけは理解できる。
 そのような状況での蒼汰自身が影となるような、その行動。飲み込まれた苦痛の声。
 理解出来ない訳がないのだ。
 だからこそ、その動揺を収めるように、蒼汰は優しき響きをその口元から奏でるのだ。
「こう見えて、俺、案外に丈夫なんだよ」
 纏うオーラが揺らめき、霞む。
 傷つくことは怖いと言うが、しかし、それでもと彼はそこにある。
 その痛みを呑み込む覚悟は、どれほどの強さが秘められていたことだろうか。
 そして、その覚悟を受けた炎の少女が内なる世界より帰還する。

「――待たせたわね!」
 瞼開いたその瞳の紅。仲間が身を挺して時を稼ぎ、守り抜いていた現在を映し出す。
 練り上げた力は十全、十二分。
 溢れ出る魔力が火の粉と変わり、周囲をフィーナの色へと塗り替える。
「な、なんなのヨ、それハ!?」
 それが危険なものであると、理解したのは本能か。
 ナマズ怪人が慌てたように、それを止めんと切り札を切る。
 現れ出でたのは巨大なナマズ怪人。
 身の丈、存在感。全てがどのナマズよりも抜きんでていた。
 だが――
「ふふん! それがどうしたってのよ!」
 最早、この身に砕けぬものは、燃やし尽くせぬものなどない。
 ナマズ人の群れを踏みつぶし、押しのけ、それが迫る。
「アンタ! まだ意識あるんでしょう!? 合わせるわよ!」
「なんとも、スパルタだね」
 はためき、煌く魔力を魔法陣に流し込み、それを解き放たんとするフィーナ。喝と叫ぶは蒼汰に向けて。
 それを受けて、蒼汰もまた痺れ残る身体を押し殺し、その指先を掲げるのだ。
 そして、解き放たれるのは月焦がす紅蓮と願い叶える流れ星。

「やるじゃない!」
「やる時はやるさ」

 それに耐えられるものなど、ここには存在しなかった。
 崩れ落ち、風に溶け消える巨体と数多の影。
 今や壁は消えた。残すはナマズ怪人への花道のみ。
 ならば、そこを駆けるのは――
「―― 一意専心」
 炎残した熱が未だ残る道。じりと修介の肌を焼く。
 だが、勝機見抜いた瞳が、戦場数多と駆け抜けた五感の全てが、この時を逃してはならない、と伝え来る。
 ああ、当然だ。それを逃すなどあろう筈もない。
 ――恐れず、迷わず、侮らず。
 その脚は決して鈍らず、力強く地を蹴立てて身体を前へと進みやる。
 ――呼吸を整え、力を抜き、専心する。
 吸い込んだ空気が熱い。だが、その熱が四肢へと巡り、それは更なる活力となる。
 ――熱はすべて四肢に込め、心は水鏡。
 身体を焼く熱の痛みに揺れる心はない。
 再びに解き放たれ、喰らい付いてくるデンキナマズなど意にも介さない。
 心に決めたはだた1つ。
「――捉えたぞ」
 そのただ1つを目指して駆け抜けた、仲間の築いた美しき道。
 カイトが押し留め、フィーナと蒼汰がこじ開けた、その道の先へと修介は手を伸ばす。
 捻り、踏み込み、勢いを、力を、全て己が拳の一点へ。
 苦し紛れの一撃が、僅かに傾けた己の顔横を風巻いて通り抜けていく。
 拳が、ナマズ怪人の芯を捉え、衝撃がその身を穿ち抜いていった。
 一撃だけ? 否、連撃である。
 ナマズ人達を相手とする中で、ナマズ怪人の動きを見る中で、修介が見抜いた人で言うところの急所。それを全て、余すところなくと呼吸の続く限りに。
「――コォ」
 そして、修介が残心と共に呼気を吐いた時には、そこにナマズ怪人の存在はない。ただ、ナマズ怪人であったものが転がっているだけであった。
 勝利が決したそれを見届けるように、アローレの発する光もまた、収まっていく。

 しばしの沈黙。
 何が起こるか分からないが故に、猟兵達の誰もが未だ警戒を解きはしない。
「鍵の示した場所とアローレくんに起ったことと、一体なんの関係があるんだろう?」
「画面の鍵自体は、無事に消えたみたいだけど」
 注意深く辺りを警戒する中、アローレの画面には既に鍵はない。
 そこにあるのは好々爺然とした、顔の映像のみ。
「すまんのう。儂も、ここに来なければということしか分からんのじゃ」
「この沼地自体に何かがあったのかしら?」
「さて、どうだろうな」
 待てど、何か起こる気配もなし。
 それ故に、ならば沼地を探してみるかと猟兵達が動き出そうとした、その時――

「システム・フラワーズより緊急救援要請」
「全自動物資供給機構『システム・フラワーズ』に、侵入者あり」
「テレビウム・ロックの解除数が多ければ多いほど、開放されるメンテナンスルートは増加する。至急の救援を請う」

 まるで、キマイラフューチャーの世界そのものが救援を求めるかのように、周囲全体から声が聞こえた。
 それは、新たなる波乱の幕開けか。
 猟兵達の胸へと1つの波紋を落としていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月26日


挿絵イラスト