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嵐と共の黒竜はやって来る

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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 昏き森にほど近い村、ウッドフィールド。人口500人程度、村としては栄えている規模だ。主に林業で稼いでおり、ウッドフィールドが売りに出す木材は良質なものであることで知られていた。
 そのウッドフィールドに、嵐が近づいていた。自然現象だ、慣れたもので村人もまた嵐をやり過ごすための準備を進めていた。
「あー、間に合うかね?」
「問題ないさ。魔物でも襲いかかってくるなら別だがね」
「やめろって」
 そんな軽口も、村では叩きあっていた――しかし、彼らは知らない。それが、決して笑い話で済まない事を。

 嵐と共に、迫る影があった。曇天を従えるように宙を舞うのは、漆黒の竜だ。黒皇竜ディオバルス――アックス&ウィザーズの各地に恐怖と破壊をもたらすとされる巨竜だ。そのディオバルスが、嵐と共にウッドフィールドへと迫っていた。
 自然災害は、誰もが覚悟していただろう。だが、この恐ろしき巨竜は嵐どころの騒ぎではない。完全なる破壊を、彼らへともたらそうとしていた……。

「そうさせぬために、猟兵の力が必要じゃ」
 ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)は、そう厳しい表情で切り出した。
「もうすぐ嵐がやって来るのじゃがな。それと一緒にドラゴンもやって来るんじゃよ」
 一緒にやってくるのは、偶然だ。ただ、嵐と違い備えてどうにかなる相手ではないのだ。ガングランは、厳しい表情のまま続ける。
「みなにはまず、村の嵐対策を手伝ってほしいんじゃ。黒皇竜ディオバルスと共に、仔竜どもが騒いでおってな。仔竜どもが村を襲う前に、嵐の備えをしておかんと村が潰れてしまうじゃろう」
 まずは嵐対策の手伝い、次は先行する仔竜達を退治。その上で、本命の黒皇竜ディオバルスを迎え撃って欲しい。
「かなり無茶なスケジュールじゃが、おぬしらならやり遂げられると信じておる。頼んだぞ」


波多野志郎
格好いい黒竜との、嵐の中での白熱バトルでしてよ!? どうも、波多野志郎です。
今回はアックス&ウィザーズ世界で、嵐対策の手伝いと竜退治をやっていただきます。

まずは、村の嵐対策を手伝ってください。これを終えないと、嵐が来て被害が出てしまいますからね。

それでは、巨竜との格好いい戦いを存分に楽しんでくださいませ。
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第1章 冒険 『嵐の前に』

POW   :    力仕事で建物を補強する

SPD   :    安全な場所へ物資や人々を移動させる

WIZ   :    祈祷や魔法の力などで嵐の規模を抑える

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

灰炭・炎火
力仕事ならあーしの出番! 任せて任せてー!
……えー、ちっこいからって馬鹿にせんでよねー!

ほらほら、そこ、どいてどいてー! もー、重たいものは全部あーしが運んだげるから!

あ、川が氾濫したら大変よね。
それじゃあ、堤防を作ろっか!
……え、そんな時間どこにあるんだって?
またまたぁ、材料はそこらへんにあるやんね!

【怪力】任せ! 森に向かって、樹はまるまる一本とか、でぇーっかい岩とか、平気な顔してどんどん運んじゃうから!

実際に嵐が来たら、飛んでくる危ないものとかが家を壊さないよう、外で見張っててあげるから、安心してね!

★アドリブ、絡み等歓迎


アベル・スカイウインド
嵐も大変だがドラゴンもやってくるんだ。建物などを守るのも大事ではあるが、村人たちを戦いに巻き込む訳にはいかない。
まずは人命優先で彼らを安全な場所まで避難させるとしよう。

村人たちの用意が済んだら早速避難させよう。
とはいえ、大荷物のやつや小さな子供がいるとどうしても遅れるようだな。
しかたない。荷物や子供を負ぶって【ダッシュ】で避難先まで運ぶとしよう。村と避難先を往復してさながらシャトルランだが、戦闘までに体力が残ってるといいがな…。


セルマ・エンフィールド
行動指針は【SPD】

村としては大きく、町というには小規模。ですが活力のあるいいところですね。
この嵐に備える慌ただしさもまた日常、というわけですか。ではせっかくですし、日常を守る一助にはなりましょう。

あまり大きなものは収納できませんが、物資を【携帯火薬庫】に収納して移動させましょう。
一応人や生き物も運べますが……中には少々触れると危険なものもありますし、できる限り今回は物だけで。

移動させた後の設置などがあればそちらは村の人などにお任せします。私はあくまで手伝いなので。

アドリブ・絡み歓迎


雛菊・璃奈
WIZ

黒皇竜…帝竜は有名だけど、そんな竜がいたんだね…。
相手としては厄介な相手になりそう、かな…?

村の四方を囲う様に呪符と呪力の呪言を刻んだ楔を配置し、【呪詛、高速詠唱】で結界を展開…。
結界内への嵐の影響を抑えると同時に竜が襲来した際に村への被害を少しでも軽減できる様にするよ…。
後は竜が襲来した際に村へ強行突破されたりとか、被害を出さない様に罠代わりに隔離用の結界を配置しておくよ…。

それ等が終わったら、お手伝いに一緒に来たわたしの家族…メイド人形の3人や仔竜の3匹と一緒に、できる限り村の補強を行って行こうかな…。
みんな元オブリビオンだから一般人よりは力持ちだし強いからね…。

※アドリブ等歓迎


シリン・カービン
自然の力には逆らい難いものですが
被害が最小限になるよう
猟師の経験、精霊使いの力を駆使して
嵐対策を手伝います。

嵐の気配に避難してきた猟師の呈で村に入り
協力を申し出ます。
まずは建物の補修、強化。
時間が無いので、精霊たちから情報を集め
優先順位をつけて行きます。
精霊との会話もエルフであれば不思議は無いでしょう。

・風の精霊に風の通り道を尋ね
 強風で被害が出そうな場所を絞る。
・家の精霊に倒れそうな建物や
 壊れそうな箇所を調べてもらい
 修理が間に合わない建物から避難を勧める。
・土の精霊に避難場所に使えそうな
 頑丈な洞窟や岩屋がないか尋ねる。

嵐が凌げれば竜の被害も減らせます。急ぎましょう。

アドリブ・連携可。


ラッセル・ベイ
ディオバルスか
噂に聞く程度だったが、戦う事になるとは……
ふむ、折角だから素材を手に入れたい所だな
竜の皇とまで呼ばれているのだ、さぞかし素晴らしい質だろう

●行動(POW)
ドワーフ故に、木工や石工は得意なのでな
大地魔法で建物の補強をする

私が出来るのは、建物の純粋な強化
嵐で物が吹き飛んで来た程度では問題はない
尤も、竜の攻撃には耐えられんが……
そこは破壊される前に倒してしまえば良いだけの話だ

全力で魔法を使ったので、時間が余ったな
であれば、武具強化に残りの時間を当てよう

【強化魔術Ⅰ】で「炎剣フラム」「氷剣フロス」の二つを強化する
実戦で二本同時に使うのは初めての試みだが……
まぁ、最良の結果を出してみせるさ


アストレア・ゼノ
◆POW
◆アドリブ歓迎です
嵐自体はよくある事のようだし、
村のやり方をよく聞いて必要な作業を手伝おう

補強に必要な木材や土嚢なんかがあれば
UC【フォレスト・チャンピオン】で召喚した
ゴドリック(ゴリラ)と一緒に運んで来ようか
重い荷物でも、2人で運べばあっという間に終わるだろうさ
グウェンは……ほら、邪魔にならない所で遊んでいてくれ
村の人達をおどかしたりするんじゃないぞ?


アテナ・アイリス
嵐や竜の攻撃が来ても、安全な場所へ物資や人々を移動させる。
【鼓舞】【存在感】【コミュ力】を使って、不安を起こさせないようにしながら、避難場所に誘導をする。
村人たちにもお願い(【誘惑】による強制)をして、子供や弱者のフォローをしてもらう。
避難場所についたら、【料理】で作った、バスケットに入っているクッキーやパウンドケーキをみんなで食べ、場を和ませる。

「さあ、みんなこっちに来てね。」
「この人をつれていってもらえないかしら。ねっ。」
「さあ、ちょっと一息つきましょうか。」
「これおいしいでしょ?自信作なんだから。」

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です。



●ウッドフィールド
 昏き森にある村、ウッドフィールド。そこに猟兵達が訪れたのは村人達が嵐への備えを始めた頃だった。
「よろしければ、協力させてもらえませんか?」
「そりゃあ、ありがたいが……いいのかい?」
 シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)の申し出に、村人はそう答えた。それこそ、嵐が近いのだから避難させてあげたいが……手伝いとなると、相応の労働になるのだ。
「自然の力には逆らい難いものですが、被害が最小限になるようできることもありますから――」
 ふと、シリンは村の大通りに面する建物へと視線を向けた。
「あの宿屋は、他よりも高いですからより補強しませんと。特に、北側からの風が致命的です」
「はぁ……」
 宿屋が高いので風を受けやすい、ここまではわかる。だが、何故北側と方向を断言できるのか? 村人が問いかけるその前に、壮年の男性が口を開いた。
「あんた、風の声が聞こえんだねぇ」
「はい。エルフですので」
 壮年の男性が経験を積んだ狩人だと、シリンにはすぐにわかった。太い腕、だというのに細身とも言うべき体躯。その佇まいから、熟練の狩人なのだと知れた。
「この人の言う事はぁ、信じられる。この森の風の動きを知らんと、北側ってぇ言葉は出てこん」
「はあ、あんたがそういうなら信じるけど……」
「優先順位をつけて作業をお手伝いしたいのですが良いですか?」
「もちろんだ、頼む」
 壮年の男は、シリルの言葉に信頼を置くように即答する。時間が惜しかっただけにありがたい――シリルはすぐに、村々を回って補強の優先順位をつけていった。

●嵐の前の――
 森を、強い風が吹き抜けていく。嵐の気配を感じながら、セルマ・エンフィールド(終わらぬ冬・f06556)は周囲を見回した。
「村としては大きく、町というには小規模。ですが活力のあるいいところですね」
 村人の動きには迷いはなく、掛け合う声にも悲嘆はない。力を合わせる、そのことをよく知っているのだ。その事が、セルマにも伝わってきた。
「この嵐に備える慌ただしさもまた日常、というわけですか。ではせっかくですし、日常を守る一助にはなりましょう」
「おおい、ちょっとでかいのを運ぶぞ、どいてくれ!」
  大の男が四人がかりで、 看板を運んでいく。看板にはウッドフィールドと刻まれており、村の前に掲げられるシンボルのようなものだった。
「力仕事ならあーしの出番! 任せて任せてー!」
 それを見て、名乗り出たのは灰炭・炎火(“Ⅱの闘争”・f16481)だ。しかし、フェアリーの小ささを見てしまえば、とても任せようとは思えなかった。
「いやよ、気持ちはありがたいけどよぉ」
「……えー、ちっこいからって馬鹿にせんでよねー!」
 腰に手を当ててそういうと、炎火は看板を手に持った。するとどうだろう、炎火がえいやと持ち上げれば、数人がかりで運んでいたソレが簡単に持ち上げられる!
「マ、マジか!? すごいな、嬢ちゃん!」
「ほらほら、そこ、どいてどいてー! もー、重たいものは全部あーしが運んだげるから!」
 驚かれて気を良くしたのか、炎火は看板を一人で運んでいく。おとぎ話のような光景に、村人達も思わず手を止めて眺めていた。
「あ、川が氾濫したら大変よね。それじゃあ、堤防を作ろっか!」
「いやいや、そいつはさすがに時間が――」
「またまたぁ、材料はそこらへんにあるやんね!」
 炎火は笑い、昏き森の木を引っこ抜いては堤防にする、という力業で堤防を築き上げていく。
「よしよし、私も手伝うぞ」
 そう言ったのは、アストレア・ゼノ(災厄の子・f01276)だ。アストレアは、右手を地面に向けると囁くように告げた。

「始めようか、ゴドリック」

 その呼びかけと同時、アストレアの眼前に現れたのは三メートルを超える武装ゴリラゴドリックだ。フォレスト・チャンピオンによるゴドリックの出現に、村の間に驚きと歓声が飛び交った。
「よいしょっと」
 アストレアの動きに合わせ、ゴドリックが巨木を引っこ抜く。その動きは豪快であり、見る者を楽しませるユーモラスささえあった。
 巨大なゴリラと小さなフェアリーが、競うように木を引き抜いては積み上げていく。さすがに村人も呆れはしたが、むしろ子供達――特に男の子には大変好評であった。

 薪を運んでいた老人が呆然と立ち止まっていると、セルマが語り掛ける。
「こちらはあまり大きなものは入りませんが、それなりに収納できます」
「は?」
 流れる動作で、セルマが小さなポケットに薪を触れさせると収納していく。それに老人は目を丸くした。
「魔法か何かか? すごいな」
「……似たようなものす」
 実際はユーベルコードなのだが、セルマは否定せずに薪を携帯火薬庫(ポケット・アーセナル)に収納していった。そうすれば、少ない回数でより多くの荷物を移動できる――セルマは、老人に問いかけた。
「この薪はどこに置きますか?」
「ああ、みんなが集まる避難所に持っていく予定じゃよ。嵐が来るなら、必要じゃろう」
「わかりました」
 セルマは、あえて自分から動かない。嵐への備えは、村人の仕事。自分はあくまで手伝いだと、弁えているのだ。
 こうして、セルマと炎火、アストレアとゴドリックの三人と一匹の活躍により本来なら半日の――堤防に至っては月単位だろう――力仕事が、瞬く間に片付けられていった。

●守りを固めて
「黒皇竜……帝竜は有名だけど、そんな竜がいたんだね……。相手としては厄介な相手になりそう、かな……?」
「ディオバルス噂に、聞く程度だったが、戦う事になるとは……ふむ、折角だから素材を手に入れたい所だな。竜の皇とまで呼ばれているのだ、さぞかし素晴らしい質だろう」
 初めてその名を聞いた雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218】に、鍛冶師として伝え聞いていたラッセル・ベイ(ドワーフのルーン鍛冶師・f12407)がそう言った。
 二人が回っていたのは、村の周囲だ。
「結界内への嵐の影響を抑えると同時に竜が襲来した際に村への被害を少しでも軽減できるはず……」
 璃奈は呪言を刻んだ楔を配置、呪符によって結界を張っていく。四方に備えられた楔と呪符による結界の起点を、更にラッセルが村を覆う壁を大地魔法で補強していく。
「この村の壁も、悪くはないのだが……」
『不満そうすわね?』
「不満ではない。惜しいと思っただけだ」
 毒精霊「ポイゼ」は、それが不満というのではなくて? と指摘するが、ラッセルとしては不満というのとは少し違うのだ。木製の壁は、村を囲む守りとしては申し分ない――だからこそ、もう一歩ほしい、そう思ってしまっただけの事だ。
 風や嵐、あるいはただの魔物であれば十分だが――今度は、相手が悪い。黒帝竜相手には、役者不足だ。
「建物の補強もしておこう。嵐で物が吹き飛んで来た程度では問題はない。尤も、竜の攻撃には耐えられんが……そこは破壊される前に倒してしまえば良いだけの話だ」
「手伝うよ……みんな」
 璃奈の呼びかけに答えたのは、3人のメイド人形達――ランとリン、レン。そして3匹の仔竜達、ミラとクリュウ、アイだ。
「みんな元オブリビオンだから一般人よりは力持ちだし強いからね……」
「そのようだ」
 これだけの手数があれば、できる事も多い。ラッセルは、ポイゼを振り返ると一つうなずいた。
「手早くすませる。手分けしていこう」
『はいはい、わかってますわ』
 時間は、有効に活用すべきだ。ラッセルと璃奈は、物理的かつ呪術的に強化した壁の中へと戻っていった。

●心の支えに
「あう」
 小さな女の子が、足を縺れさせる。平坦な道ではなく、荒い地面なのだから幼子ではまともに歩けるはずもない――女の子が転ぶより早く、それを支える腕があった。
「大丈夫か?」
「う、うん……」
 女の子が、目を丸くする。自分を支えてくれたのが、自分と同じくらいの猫だと気付いたからだ。
「そうか、怪我がなくてよかった」
「ありがとうございます」
 アベル・スカイウインド(天翔ける稲妻・f12583)は、慌てて礼を言いに来た母親に首を左右に振った。
「仕方がない。赤子もいるのだろう?」
 母親の手に抱かれた赤子を見て、アベルはそう言った。赤子がいては、例え幼子であろうと一緒に抱きかかえるわけにはいかない。それを見て、アベルは女の子に告げた。
「俺の背に乗れ」
「……いいの?」
「問題ない」
 短く答えるアベルに、女の子は目を輝かせてその背に乗った。そして、地面を蹴るとアベルは矢のように駆け出した。
「わ……!」
「喋るな、舌を噛むぞ」
 木々を縫うように駆け抜け、アベルは疾走する。ぎゅうと強く抱き着く女の子から、確かな笑い声も聞こえた。
 本来なら一時間はかかる道のりを、20分まで短縮してアベルはその山小屋へとたどり着いた。
「いらっしゃい、よく頑張ったわね」
 そう出迎えたのは、アテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)だ。すでに山小屋には、村から避難してきた女子供が何人も集まっている。村から遠く、それでいて嵐の風も森にさえぎられる――もっとも安全と思われる場所の一つだ。
「ううん、あたしじゃないの。猫さんがね、連れてきてくれたの!」
「そう、良かったわね」
 目を輝かせて言う女の子の手を握り、優しくアテナは微笑んだ。そのアテナに懐いた様子の女の子に、アベルは来た道を戻ろうとした。
「あまり、無理はしないでね?」
「わかっている」
 森の道の往復は、決して楽ではない――その事をアテナも察していたのだ。アベルはそう答えて、再び森へと駆け出した。
「クッキーやパウンドケーキがあるのよ、食べる」
「うん!」
「ふふ、自信作なんだから」
 山小屋の中へ女の子と一緒に入り、アテナは安堵する。少なくとも、避難しているみんなが恐慌状態になるような事はなさそうだ。特に女子供の多いここの安全が確保されれば、ほかの村人達の落ち着きに繋がるだろう――アテナの状況把握は、500人全体にまで行き届いていた。
「ここは、お任せするわ。私はほかの場所を見て回ってくるから」
「ええ、任せてください!」
 数少ない男手としてここを任された青年が、アテナにそう請け負う。アテナはここが落ち着いた事を告げるため、次の避難場所へと向かった。

●そして、時は迫る
「……様子はどうだ?」
「まだ、来ていないようだ」
「いや、そっちではなくてそれだ」
 壁の外でアストレアは、ラッセルに語り掛ける。アストレアの視線に、ラッセルは自分の手元を見る。ラッセルは余った時間で、強化魔術Ⅰ(エンチャント・ワン)によって「炎剣フラム」「氷剣フロス」の二つを強化していたのだ。
「実戦で二本同時に使うのは初めての試みだが……まぁ、最良の結果を出してみせるさ」
「なら、問題はない」
 アストレアは、うなずく。出来る限りの事がしたい――それは、アストレアにも理解できる事だからだ。
「……ん? どうした?」
 アストレアは、気配を感じて振り返る。そこにいはのは、同じく真剣な表情のシリンだった。

「風の精霊が教えてくれました――仔竜が、こっちに向かっています」

 その言葉に同意するように、渦巻く強い北風がウッドフィールドを吹き抜けていった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『戯れる仔竜』

POW   :    じゃれつく
【爪 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    未熟なブレス
自身に【環境に適応した「属性」 】をまとい、高速移動と【その属性を纏わせた速いブレス】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    可能性の竜
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:marou

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●そして、仔竜は先行する
 嵐が、昏き森へと近づいていた。
 吹く風は強く、ごうごうと恐ろしい音を立てていく。木々はざわめき、時折風の強さに耐え切れず、メキメキと音を立てて木々が倒れていった。
 その中を、進む小さな影がある。仔竜の群れだ。黒皇竜ディオバルスと共にあり、嵐という環境に適応した仔竜達は、まっすぐに森を進んでいく。

 目的などない、強いて言えば戯れるために――仔竜は、ウッドフィールドを遊び場に蹂躙せんと、数が渦巻く森の中を駆けていった……。
灰炭・炎火
遊び相手なら、あーしがしたげる!

……大人しく帰ってくれるなら、乱暴せえへんよ?
って言っても、多分駄目よね。ん、仕方ない!

それじゃあ……死にたくなくなったら、ちゃんと逃げてね。
あとを追いかけたりはせえへんから。

“刻器”ニャメの重斧を持って突撃、片っ端から【ただの暴力】で殴ってくよ。

遠くにいる子は斧についてる鎖鉄球を投げつける! あーしは強い子!

ほらほら、早く親玉呼んできて、そいつ倒せば終わりやけんね!


アベル・スカイウインド
風がかなり強まってきたな。そんな風をものともせず進んでくるとは、子どもとはいえ流石ドラゴンか。
遊ぶなら他所でやってほしいものだが…フッ、ひとつ仕置きしてやるとするか。

仔竜だとしても俺は手は抜かん。UC【竜胤】を使い水竜の加護を得て防御力を高める。攻撃を受ける気はさらさらないが、備えあれば患いなしといったところだな。
【空中戦】なら任せておけ。皆の攻撃が届かない高所にいるようなやつは俺が【ジャンプ】で跳んでいって落としてやろう。

本命が到着する前に片付けねば厄介だな。素早く確実に狩るとしよう。


セルマ・エンフィールド
本命はこの後です。迅速に終わらせましょう。

嵐に適応した個体とのこと。ブレスの属性はおそらく風、備え無しに直撃すれば吹き飛ばされそうですね。

【冬の尖兵】を召喚。XXXを1体とⅤを1体に分け、XXXを攻撃に、Vは私の傍で風に煽られた時の支えに残しておきます。

呼ぶ兵士は吹き飛ばされないよう量より質を重視していますし、敵集団の一部が戦線を抜けて私のところに来ることもあるでしょう。弾丸がブレスで逸らされることも考えられますし、その場合はブレスの狙いを見切り回避、近付いて零距離からのデリンジャーの射撃で仕留めます。


アテナ・アイリス
最前線に立って、仔竜達を倒す。
【武器受け】【盾受け】【オーラ防御】をつかって防御し、仔竜の動きを完全に止めてから、
【2回攻撃】【なぎ払い】【属性攻撃】をつかって、仲間と連携しながら攻撃をする。
ブレスなどの特殊攻撃は、【守護女神の煌めき】をつかって、攻撃を見切ってかわす。
風の力には逆らわず、風に乗るような感じで効果的に利用する。


「風が強くなってきたわね。」
「動きさえ止めてしまえばこっちのものよ。」
「そんな攻撃は効かないわよ」

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です。


ラッセル・ベイ
この竜は以前にも戦った事があったな
今回は嵐……どう倒すか

●戦闘(POW)
「地盾グラウンド」完全解放
大いなる地竜となりて、全てを守り給え
来い【グラウンドドラゴン】

これで幾らかの仔竜の攻撃を引き付けられる
今の内だ、一気に片付けよう

「ミスティック・ルーン」を起動。多少の傷は気にせずに行く
グラウンドが手元から離れた為、フラムを右手、フロスを左手に持つ。即ち、二刀流で片っ端から仔竜を仕留める

ポイゼは「装嵐リンドヴルム」を装備して自由に暴れさせよう
事前に付与した電撃と暗黒ポーションで凄まじい力を得ている
疾風と電撃の力で仔竜の嵐を打ち消し、暗黒で命中を下げ、猛毒で弱らせた所に斧槍による一撃だ

さあ、蹴散らすぞ


雛菊・璃奈
ん…来るのは仔竜…ミラ達3匹で説得とかできないかな…。遊びで来てるだけなら、できれば戦いたくないんだけど…。
…でも、人やわたしの家族を傷つけるなら話は別…仕方ないけど、倒させて貰う…。

お肉とか渡しながら同じ仔竜の3匹で説得を試みつつ、駄目ならば自身や味方に村に張ったのと同じ嵐除けの結界を【呪詛】で施して戦闘…。
敵の攻撃は【見切り】で回避…。
【ダッシュ】で接近し、【呪詛、早業、鎧無視】による凶太刀と神太刀の二刀流で一気に斬り捨て、敵の群れの中央で【妖剣解放】…。
本気を出し、更に高速で斬り捨てていくよ…。

悪いけど、貴方達以上のドラゴンとも何度も戦って来てる…。
今更苦にはしない…。

※アドリブ等歓迎


アストレア・ゼノ
◆POW
◆アドリブ歓迎です
(相棒の仔竜に向かって)
ほら、悪ガキ共がやって来たぞ
仕方ない、私達が雷を落としてやるとするか

爪での攻撃を警戒しつつ、
相棒の竜槍を手に自身に有利な間合いを保って戦おう
もしブレスや自然現象での攻撃を受けても、いくらかは装備で軽減出来る
【火炎耐性】【氷結耐性】、特に重要になりそうなのは【電撃耐性】だろう
その時はいっその事、【覚悟】と【勇気】で飛び込んで
UC【ドラゴニック・エンド】の
【鎧無視攻撃】の一撃で【串刺し】にしてやろう

グウェンが仔竜の姿に戻った瞬間は槍を失うが、
腰の短剣での【咄嗟の一撃】でカバーだ

じゃあな、骸の海で存分に遊べ


シリン・カービン
嵐の中の戦闘とはまた骨ですね。
しかも仔竜達はその環境に適応しているとか。
ならば、環境そのものを変えてみましょうか。

「風の精霊、動きを止めて!」
【エレメンタル・ファンタジア】で『風』の『凪』を発動し、
無風の領域を作り出します。
風雨の影響が無ければ皆も戦いやすくなるでしょう。
嵐を利用する仔竜達の力も減じられるかもしれません。

嵐を利用するとなると仔竜の属性は風か水でしょうか。
相手に合わせ、精霊弾には土か火の精霊を宿らせておきます。

狙撃で仲間の援護をしますが、
仔竜に接近されたら精霊猟刀で攻撃をいなしつつ、
死角に回り込んで零距離射撃。

獣の遊びは狩りの訓練。放っておくわけには行きません。

アドリブ・連携可。



●仔竜達の戯れ
「風が強くなってきたわね」
「ああ、かなり強まってきたな」
 アテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)の言葉に、アベル・スカイウインド(天翔ける稲妻・f12583)も帽子を抑えながら同意した。
 ゴウゴウ、ともはや風は森を軋ませるほど強くなっている。ウッドフィールドの壁も、補強していなければ半壊は免れなかったかもしれない。
「こんな風をものともせず進んでくるとは、子どもとはいえ流石ドラゴンか」
 アベルも感心するしか無い、という呆れ声で言う。その横で、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)がため息をこぼした。
「どうだった?」
「ん……聞いてもらえなかった、みたい……」
 ラッセル・ベイ(ドワーフのルーン鍛冶師・f12407)の問いに、璃奈は素直に答えた。3匹の仔竜達、ミラとクリュウ、アイ達なら説得できないか? そう思ったが、どうやら交渉は決裂したらしい。
 仔竜にとって、聞き入る意味がないからだろう。仔竜であろうと、オブリビオン――その戯れは、破壊が伴うものなのだから。
「来たようだな。あの竜は以前にも戦った事があったな。今回は嵐……どう倒すか」
 ラッセルは視線の先、森の木々の間を元気に駆けてくる仔竜達の姿に思考を巡らせる。嵐という環境に適応した仔竜にとって、この横殴りの強風さえ苦ではなく、むしろ助けになるぐらいだ。
「……大人しく帰ってくれるなら、乱暴せえへんよ? って言っても、多分駄目よね。ん、仕方ない!」
 相手がいくら幼くとも危険な存在なのだ、その事実がわかるからこそ灰炭・炎火(“Ⅱの闘争”・f16481)は言い放つ。
「遊び相手なら、あーしがしたげる!」
『グゥアッ!!』
 仔竜達の、ブレスが猟兵達の元へ殺到する。暴風を圧縮したブレスを、ラッセルが一歩前に出て――応じた。

「大いなる地竜となりて、全てを守り給え。来い【グラウンドドラゴン】」

 地盾グラウンドの完全解放、ラッセルのグラウンドドラゴンが嵐のブレスを受け止めていく! ギシギシギシ、と踏ん張った足場、地面に亀裂が入った。
「備え無しに直撃すれば吹き飛ばされそうですね」
 セルマ・エンフィールド(終わらぬ冬・f06556)は、予想通りのブレスにそう呟く。風圧とは、文字通り風の圧力だ。暴風は空気の動く速度――音の速度を越えられないが、そこに秘められたエネルギーは膨大で凄まじい。
 言わば、仔竜との戦いは小さな嵐の群れとの戦いに等しいのだ。だからこそ、ここで終わらせる――猟兵達は、仔竜達を迎え撃った。

●嵐はここに
 森の中を疾走する仔竜達を見て、アストレア・ゼノ(災厄の子・f01276)は自らの右腕に止まる竜槍グウェンに言った。
「ほら、悪ガキ共がやって来たぞ。仕方ない、私達が雷を落としてやるとするか」
 アストレアの軽口に、グウェンは一鳴き。一振りの槍へと、变化する。

「風の精霊、動きを止めて!」

 シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)のエレメンタル・ファンタジアが、風と凪という自然現象を足して、無風状態を生みだした。長時間は持たない、それでも大きく仔竜達は速度を落とす。
 そこへ、アストレアが竜槍グウェンを投擲した。ヒュガ! と何の邪魔もない戦場を高速で投擲された槍は放たれ、仔竜の一体を貫く! 直後、白い鱗のやんちゃな仔竜としての姿に戻ったグウェンが、その爪を振り下ろし仔竜を叩き潰した。
「遊ぶなら他所でやってほしいものだが……フッ、ひとつ仕置きしてやるとするか」
 言い捨て、アベルが地を蹴る。
「仔竜だとしても俺は手は抜かん」
 竜胤(ドラゴンブラッド)によって水竜の力を宿し、アベルは防御力を上げる。そして、動きの鈍った仔竜へランスオブアベルを振るった。
 出鼻を挫かれたからだろう、仔竜達の動きが乱れる。竜という強大な存在ではあるが、その経験はやはり『仔』竜――自分達が置かれた状況さえ、理解できていない。
「それじゃあ……死にたくなくなったら、ちゃんと逃げてね。あとを追いかけたりはせえへんから」
 真っ直ぐに迫った炎火が、ニャメの重斧を振り上げる。“Ⅱ”の数字が刻まれた三メートル超の赤い宝石製の斧は、鎖鉄球付きの人間でさえ重く巨大すぎる武器だ。しかし、それを軽々と振るうのが炎火というフェアリーだ。もはやサイズ的にどちらが付属物かわからない勢いで、炎火が豪快にニャメの重斧を振り下ろす!
 そこに技なのない、怪力任せのただの暴力(ホノカストライク)の一撃が地面ごと周囲の仔竜を薙ぎ払った。
「ここからは剣の冬、ということで。行きなさい、兵士たち」
 セルマの召喚に応じたのは、冬の尖兵(ウィンター・ソルジャーズ)だ。胸にXXXと書かれた一体とⅤと書かれた一体、計ニ体の氷の剣を装備した氷の兵士達だ。
 吹き飛んだ仔竜を追うように、XXXの氷の兵士は疾走。Ⅴと書かれた兵士は、セルマの傍らへと控えた。
 吹き飛んだ仔竜をシリルは精霊猟銃で狙撃、それに合わせてアテナが駆け込んだ。
「動きさえ止めてしまえばこっちのものよ」
 吹き飛ばされ、逃げ遅れた仔竜をアテナは舞うような動きでアーパスブレードで切り裂いていく。
 その横へと続いたのは、璃奈だ。

「……遊びで来てるだけなら、できれば戦いたくないんだけど……でも、人やわたしの家族を傷つけるなら話は別……仕方ないけど、倒させて貰う……」

 妖刀・九尾乃凶太刀(キュウビノマガタチ)と妖刀・九尾乃神太刀(キュウビノカミタチ)、二本の妖刀を引き抜くと璃奈は加速をつけた横回転で仔竜達を切り裂いていった。
 アテナと璃奈が合わせ剣舞のように剣戟を振るっていると、不意に嵐の風が戻ってくる。帰ってきた風に仔竜が乗った、その時だ。

『させませんわよ?』

 装嵐リンドヴルムの小さな斧槍に疾風属性をまとわせ、毒精霊「ポイゼ」が薙ぎ払った。風と風が激突し、絡み合い、ほつれ合い、荒れ狂う――仔竜達が、再びその体勢を崩す事となった。
 仔竜達にとっては、まさに不幸だろう。過酷な環境に適応したはずだった、この場は自分達の味方であったはずだ。
「獣の遊びは狩りの訓練。放っておくわけには行きません」
 シリンにとって、目の前の仔竜は危険な存在だ。だからこそ、狩る――それは、彼女の中にある狩人の本能であり、間違いなく正しい衝動だった。

●まさに、竜が巣がごとく
 ポツリ、ポツリと降り出した雨は、段々と強くなっていった。
「……悪いけど、貴方達以上のドラゴンとも何度も戦って来てる……。今更苦にはしない……」
 二本の妖剣に宿る力を解放し、璃奈は走る。切り上げと切り下ろし、二本の妖刀の切っ先が雨粒を断つほどの鋭さで、仔竜を切り刻んでいった。
 更に加速しようとする璃奈へ、二体の仔竜が迫る。爪によって切り裂かんと襲いかかろうとした二体は、横合いからの衝撃に文字通り破砕された。
「あーしは強い子! ほらほら、早く親玉呼んできて、そいつ倒せば終わりやけんね!」
 炎火のニャメの重斧、その鎖鉄球の一撃が砕いたのだ。ブンブンと鎖を振り回す小さな炎火の姿には、もはや笑うしかない。

「――ッ!」

 不意の突風と雷撃に、セルマは体勢を崩しかける。しかし、それを即座に∨の兵士が支えた。雷の嵐雨を再現した仔竜へ、XXXは大上段に氷の剣を振り下ろし――間合いを一気に詰めたセルマが、風に踊るスカートの下からデリンジャーを引き抜き、零距離で引き金を引いた。
「本命はこの後です。迅速に終わらせましょう」
「同感だ」
 答え、アベルがランスオブアベルを振るっていく。風の勢いさえ切り払う、しっかりとした槍捌きで仔竜達を切り刻んでいった。
 その間に、仔竜の一体が村へと迫ろうとする。しかし、璃奈が施していた結界がそれを許さない。動きが鈍った仔竜は、即座にアテナに追いつかれた。
『クア!!』
 そこに、雷撃の雨を降らせる仔竜だったが、その一つ一つをアテナは見切っていく。まるで、ではなく落ちる場所を守護女神の煌めきによって予想していたからこそ出来る動きだ。
「そんな攻撃は効かないわよ」
 風に逆らうことなく滑り込んだアテナが、アーパスブレードで仔竜を断ち切った。
「さあ、蹴散らすぞ」
『ええ、遅れないでくださいませ?』
 ラッセルが炎剣フラムと氷剣フロスを手に、ポイゼは装嵐リンドヴルムを携えて仔竜の群れへと挑みかかる。属性が強化された武器の数々は、仔竜の鱗などバターのように切り刻んでいった。

『クアアアアアアア!!』

 幼く、だが鋭い咆哮と共に、暴風が吹き荒れた。仔竜達の可能性の力に、シリンはすかさずエレメンタル・ファンタジアをぶつけた。
 ドォ! と雨粒が爆ぜるように爆発に吹き飛んでいく。その間に、残った最後の仔竜二体が猟兵達へ襲いかかった。
 しかし、時は既に遅い。
「その手を使うのには、遅すぎます」
 精霊猟刀の刃を仔竜の首筋に滑り込ませ、セルマは切り捨てる。そして、最後の一体もまたアストレアが迎え撃った。
「じゃあな、骸の海で存分に遊べ」
 アストレアの短剣が真っ直ぐに突き出され、鋭い突きによって仔竜を貫いた。切っ先は心の臓を貫き、それが止めとなる。
 最後の仔竜が倒れてしばし、雨と雷音が強くなり始めた。空は厚い曇天が覆い、夜とは違う鉛色へと塗り潰していく――だからこそ、ソレはよく見えた。
「いや、アレか! 大したものだな!」
 空に浮かぶソレに気付いたアストレアが、そう笑った。曇天よりもなお黒く、漆黒のシルエットが上空に見えたからだ。

「あれが、黒皇竜ディオバルス……!」

 ボフッ、と雲を突き抜け、ついに黒皇竜ディオバルスがその姿を現した……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『黒皇竜ディオバルス』

POW   :    黒皇竜の一撃
単純で重い【自身の爪や尻尾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    インフェルノ
【口から放つ「地獄の炎」】が命中した対象を燃やす。放たれた【紅蓮の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ   :    カタストロフィ・ノヴァ
【極大規模の球形の大爆発】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。

イラスト:ハギワラ キョウヘイ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はノエル・スカーレットです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●黒皇竜ディオバルス
 ズン……! とディオバルスが大地に降り立ち、昏き森を揺るがした。樹齢数十年の木々でさえ、その巨体を隠しきれない。それほどの巨竜なのだ。

『オオ、オオオ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 嵐の音さえかき消して、ディオバルスは咆哮する。ズン……ズン……、と一歩、また一歩ディオバルスは前進。真っ直ぐに、ウッドフィールドの方角めがけて進行を始めた。

 この強大なる竜を止める事が出来るのか? 嵐の中の決戦が、始まろうとしていた……。
ラッセル・ベイ
……今までに戦ってきた中でも最大級か?
だがそれよりも、あの禍々しい鱗や鮮やかな角よ
間違いなく一級品の素材……さあ奪おう

●戦闘(WIZ)
グラウンドは使用不可。防御手段を整えねばな
「リフレクション・ルーン」起動。魔法反射障壁を展開
奴の攻撃が魔法であれば御の字
そうでなくとも障壁のオーラで爆発は軽減可能だ

あの巨体だ、相当な体力がある事は目に見えて分かる
ならば、必殺の一撃を叩き込んでやろう。……やれるな、ポイゼ?

最前線でフラムとフロスを振るい、物理と魔法で黒皇竜を引き付ける。その間にポイゼが死角から奴に近付き、【デス・ヴェノム】で仕留める
爆炎も爆風もリンドヴルムが吸収するので効きはせん

遠慮は要らん、やれ


灰炭・炎火
あっはっは! でっかいでっかい! すごいでっかい! ゲームみたい!
どうしよ、楽しくなってきちゃった。
ついでに、試してみたくなっちゃった。
ね、あんなにでっかいドラゴンとあーし。
どっちが、強いのか、気になるやんね!

さあ。
我が瞳に刻まれし数字はⅡ!
我が望みは闘争!
我を選びし刻器は“無限”を冠せしニャメの重斧!
……灰炭炎火、いくよっ!
――――刻器神撃!

一旦距離をおいて、最高速度で飛行。
正面からぶつかって、ニャメの重斧を叩きつけるよ!
さあ、力比べしよう! この斧の一撃は…………キミよりも、“重たい”よ!


アテナ・アイリス
『セレーネの白弓』で後方からの【援護射撃】を行う。風を読んで風の力も利用して正確に当てる。
まず、黒皇竜を飛べなくするために、羽を重点的に攻撃をして、羽をずたずたにする。
飛べなくなったのを確認してから、剣に持ち替えて、後ろに回り尻尾の先を切り落としこちらに注意を向けて、味方が攻撃できる隙を作るようにする。
味方が重傷を負った場合は、【ユグドラシルの葉露】を使って傷を癒す。

「この程度の風なら逆に利用できるわ。」
「まずは、飛ばれると厄介だからね。」
「いまよ!」
「世界樹よ、力を貸して!」

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です。


雛菊・璃奈
黒皇竜ディオバルス…。ここにはわたしの家族もいる…どれだけ強力でも関係無い…ここで止める…!


敵の攻撃は【見切り、第六感】で回避。回避できない攻撃は魔剣アンサラー【呪詛、カウンター、武器受け、オーラ防御】で反射…。

主に竜殺しの力を持つバルムンクによる【呪詛と衝撃波】を纏った【力溜め、鎧砕き、鎧無視、早業】の剛剣による一撃を繰り返して敵を切り裂いていくよ…。

最後は【呪詛】で更に力を高めたわたしの切り札…終焉の力を纏う【ultimate】による究極の一撃で仕留めるよ…!


黒皇竜…全てを滅ぼす終焉の魔剣で滅びると良い…!

最後は連れて来たみんなと黒皇竜の素材の回収や被害の確認し一息つくよ…

※アドリブ等歓迎


セルマ・エンフィールド
はた迷惑な生き物……いえ、ここまでいくと災害ですね。
ですが、自然災害とは違い、倒すことができる。

さて、火や熱には氷に冷気、と。古典的ですが、やってみましょう。
出し惜しみができる相手ではなさそうですし、他の猟兵と連携をしながら絶対零度を纏う【凍風一陣】でディオバルスを狙います。
代償は激痛耐性で耐え、動けないことがないように。

敵の放つ地獄の炎が燃え広がってもこちらの利になることはありません。私はある程度であれば火炎耐性で耐えられますが、他の猟兵もいますし、凍風一陣で火の勢いを弱めつつディオバルスを狙える位置取りをしていきたいところです。

悪意があるのかないのか……いずれにせよ、倒すだけです。


アベル・スカイウインド
ついに来たか。聞きしに勝る大物だな…フッ、狩りがいがあるというものだ。

UC【竜撃】を使うために味方の後方で力を溜め、一気に距離を詰めて頭上から奇襲をかける。
地上にいる猟兵たちに気を取られてはこの一撃は避けられんぞ。【目立たない】
その後はUC【竜翔】を利用して滞空しながら【空中戦】を仕掛けてやつをしつこく攻撃する。
地上からと空中からの攻撃でやつを攻めたてるぞ!


アストレア・ゼノ
◆SPD
◆アドリブ歓迎です


UC【竜言語・騎竜召喚】で呼びだした騎竜に【騎乗】し、
相棒の竜槍を武器に、【覚悟】と【勇気】を以って
ディオバルスに【空中戦】を挑む

相手の動きを【見切り】、【火炎耐性】と【激痛耐性】で攻撃を耐え、
騎竜の突撃の勢いを活かした【鎧無視攻撃】の【捨て身の一撃】で、
翼の付け根に深々と槍を【串刺し】にしてやったら

そのまま【怪力】【クライミング】【グラップル】で
翼の根本に組み付きへし折って、
奴を地面に引き摺り下ろしてやろうじゃないか


シリン・カービン
あれがディオバルス…
この嵐の主、と言うわけですね。
その威容に息を飲みます。

ディオバルスの固い鱗を貫くのは難しいでしょう。
狙い目は、目や口、仲間が与えた傷口、翼の付け根。
炎を吐いたり爪や尻尾を振るおうとするタイミングで狙撃し、
出鼻を挫いて攻撃を逸らします。

加えてディオバルスの体についた緑色の結晶体、
恐らくあれは魔力の結晶体。
破壊できれば力を削げるかもしれません。

【エレメンタル・ファンタジア】で
『光』の『蜃気楼』を発生。
私達の幻影を上空に浮かばせます。
注意が地上の私達から逸れた隙がチャンス。
緑色の結晶体を狙って鋼の精霊弾を連射します。

大爆発は使わせません。その前に必ず仕留めます。

アドリブ・連携可。


天御鏡・百々
あれが黒皇竜か
皇の名にふさわしき威容だな
しかし、人々を護るため、臆してはいられぬ
我らが力で討ち果たして見せようぞ

カタストロフィ・ノヴァなるユーベルコードは脅威だな
何度も使わせては危険だ
少なくとも2度目以降には
『幻鏡相殺』を使用して無効化してくれようぞ

それ以外の状況では
神通力(武器)による障壁(オーラ防御43)で敵の攻撃を受けつつ
真朱神楽(武器:薙刀)によるなぎ払い21にて攻撃するぞ
なるべく敵の死角に入るように動き回り
着実にダメージを積み重ねていくとしようか

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、連携歓迎



●嵐の黒竜
「ついに来たか」
地面に降り立つ黒皇竜ディオバルスの姿に、吹き荒れる突風の中アベル・スカイウインド(天翔ける稲妻・f12583)が呟く。
 稲光を宿す曇天の下、ディオバルスはゆっくりと進軍を開始した。

『オオ、オオオ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 ディオバルスの咆哮が、雨粒を吹き飛ばす――それは、一瞬後に盛大な瀑布となって森へ降り注いだ。
「あれがディオバルス……この嵐の主、と言うわけですね」
 シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)が雨をハンター・マントを被り、受け止める。シリンが息を飲む横で、天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)も感心したように言う。
「あれが黒皇竜か。皇の名にふさわしき威容だな」
 大地を揺らして歩み寄ってくる巨竜に、百々は怯む事なく続けた。
「しかし、人々を護るため、臆してはいられぬ。我らが力で討ち果たして見せようぞ」
「黒皇竜ディオバルス……。ここにはわたしの家族もいる…どれだけ強力でも関係無い……ここで止める……!」
 雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)が、決意を込めて告げる。その圧力は凄まじいが、退こうとする者はいなかった。オブリビオンと、過去と戦う――それが猟兵だからだ。
「……今までに戦ってきた中でも最大級か?」
『ですわねぇ』
 ラッセル・ベイ(ドワーフのルーン鍛冶師・f12407)の問いかけに、ポイゼは呆れたように答える。次にどんな言葉が来るか、予想できたからだ。
「だがそれよりも、あの禍々しい鱗や鮮やかな角よ。間違いなく一級品の素材……さあ奪おう」
『そうですわよね、そうなりますわよね』
 ラッセルが炎剣フラムと氷剣フロスを構えた、その時だ。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 ゴォッ! と視界が紅蓮に染まる。ディオバルスのインフェルノが、昏き森ごと猟兵達へと放たれた。

●燃え上がる森
 それは、まさに地獄のような光景だった。
「はた迷惑な生き物……いえ、ここまでいくと災害ですね」
 凍風一陣(イテカゼイチジン)の銃弾により地獄の炎を逸した、セルマ・エンフィールド(終わらぬ冬・f06556)がそう評する。災害――その評価は正しい。自然の力に、どうして抗おうと思うだろうか? ただ受け入れ、諦めるしか無い……そのはずだった。
「ですが、自然災害とは違い、倒すことができる」
 ――そう、終わらせられるのだ。ならば、臆する必要はない!

「あっはっは! でっかいでっかい! すごいでっかい! ゲームみたい!」

 炎を突き破り、三メートル超の赤い宝石製の斧が天へと向かって上昇する。いや、正しくはその斧を担いだ灰炭・炎火(“Ⅱの闘争”・f16481)が、飛び上がったのだ。
「どうしよ、楽しくなってきちゃった。ついでに、試してみたくなっちゃった。ね、あんなにでっかいドラゴンとあーし。どっちが、強いのか、気になるやんね!」
 ディオバルスと視線の高さを合わせ、炎火が目を輝かせて笑う。グっと斧を掴む手に力がこもる、全身に痺れにも似た感覚が駆け抜けていった――武者震いだ。

「さあ。我が瞳に刻まれし数字はⅡ! 我が望みは闘争! 我を選びし刻器は“無限”を冠せしニャメの重斧! ……灰炭炎火、いくよっ! ――――刻器神撃!」

 ぐっと助走をつけて、炎火が飛んだ。まさに弾丸、ニャメの重斧を手に真正面からディオバルスへ、渾身の一撃を叩き込んだ。
「さあ、力比べしよう! この斧の一撃は…………キミよりも、“重たい”よ!」
 ガゴォ!! と轟音を鳴り響かせ、ニャメの重斧がディオバルスを打つ! その衝撃に、ディオバルスの巨体がのけぞった。質量差を考えれば奇跡、いや冗談のような光景だった。
「この程度の風なら逆に利用できるわ」
 その間隙を狙って、アテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)はセレーネの白弓を射放つ。月光の矢は、風を受けて『しなる』――荒れ狂う風の動きさえ計算に入れて、アテナの放った矢はディオバルスの翼、その根本に突き刺さった。
「まずは、飛ばれると厄介だからね」
 一矢、ニ矢、三矢。続けざまに射られたセレーネの白弓、迫る月光の矢をディオバルスは長い尾で受け払う。そこへ、アストレア・ゼノ(災厄の子・f01276)が駆け込んだ。
「<運び手よ、来たれ>」
 竜言語・騎竜召喚により、幻影のドラゴンがアストレアの横へ召喚される。アストレアは手綱を手に取ると跳躍、ドラゴンの背へと乗った。
 そして、強風の中を飛翔する。雨粒が体全体を打つ、痛みさえ伴うそれを物ともせず、アストレアは竜槍グウェンを手に突貫した。
『ガ、アアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
「そんなもの当たるか!」
 迎撃戦と振り下ろされる巨竜の爪を掻い潜り、アストレアは竜槍グウェンを振り払う。そして、そこに合わせるように璃奈が魔剣バルムンクを振るった。
 ドォ! と放たれた呪詛の宿った衝撃波が、ディオバルスを切り裂く!
「……今」
「任せよ」
 璃奈の竜殺しの衝撃波に隠れるように、死角へと回り込んだ百々が朱色に塗られた薙刀を振るった。真朱神楽の名のごとく、舞うような二連撃がディオバルスを捉える。

『オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオゥ!!』

 ヒュオン! とディオバルスの眼前に巨大な赤い光弾が生み出される。カタストロフィ・ノヴァ――極大規模の大爆発を球形にしたその一撃を、ディオバルスは迷わずに放った。

「――させません!」
「起動せよ、リフレクション・ルーン!」


 シリンがエレメンタル・ファンタジアで氷の津波を巻き起こし、強力なルーンが刻まれた黄金のメダルをラッセルが指で弾いた瞬間、大爆発が巻き起こった。曇天を削り、木々を薙ぎ払い、轟音が周囲を支配する――その余韻が収まった時、そこに残されたのはディオバルスを中心としたクレーターだった。
 ただし、歪なクレーターだ。何故なら、ラッセルのリフレクション・ルーンによる障壁が大爆発を受け止め、その背後へ通さなかったからだ。
「正気ですか……!」
 ゾっとセルマの背筋に、冷たいものが走った。狙撃ポイントを捜して森を駆けていたからこそ、気づいたのだ。今の一撃で、まだ距離があったはずのウッドフィールドの壁にヒビが入ったのを。
「聞きしに勝る大物だな……フッ、狩りがいがあるというものだ」
 アベルは帽子を押さえ、身を低く構える。アベルはギシリと体中の骨が軋みを上げる程の力を蓄える――まさに、引き絞った矢だ。
「あんな一撃を何度も撃たせられない、短期決戦で行くぞ」
 アベルの言葉に、異を唱える者はいなかった。何よりも、猟兵ではなく戦場が持たない。猟兵達は、渾身を持ってディオバルスへと迫った。

●嵐の激闘
 落雷が、地上を打つ。しかし、それに勝る激突音が昏き森には響いていた。

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
「だりゃああああああああああああああああああああ!!」

 遠目にはディオバルスが尾を振るい、その尾が途中で妙な軌道を描いているようにしか見えないだろう。だが、近くで見ればその種は単純だ。ディオバルスの尾を、正面から炎火がニャメの重斧を振るって受け止めているのだ。
 一撃、二撃、三撃、炎火は退かない止まらない。体中が悲鳴を上げる、それ以上の歓喜が体の奥からこみ上げる! ならばこそ、炎火は狂気とも言えるその所業を繰り返した。
 その稼いだ時間を無駄にしない――ついに溜めに溜めた力を開放し、アベルが跳躍した。風を貫く矢のように、曇天に届くほどの高さまでアベルは到達する。

「天を仰げ!」

 竜撃(ドラゴンダイブ)――アベルの跳躍から放たれたランスオブアベルの一撃が、ディオバルスの眉間へと突き刺さった。
『が、あああ、ああああああああああああああああああああ!!』
 ディオバルスが牽制の炎を吐き、思わず後退する。それを追うようにアベルと幻影のドラゴンを操るアストレアが迫った。
 その刹那、アテナの月光の矢がディオバルスの右翼を射抜く!

「いまです!」
「おう!」

 アストレアが答え、左翼の根本へ。竜槍グウェンを翼の根本へ突き刺すと、むんずと翼を掴んだ。
「落ちろぉ!!」
 アストレアが手綱を操ると、ドラゴンが地上へ一直線。力づくで、ディオバルスを地面へと叩きつける!
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』
 地面に叩きつけられたまま、ディオバルスはカタストロフィ・ノヴァを生み出す――位置がどこであろうと、この広範囲攻撃には意味がない、そのはずだった。

「幻なれど鏡は鏡、映りしは鏡像なれど同じ力、相殺できぬ道理はあるまい」

 それに即座に反応したのは、百々だ。幻鏡相殺(ゲンキョウソウサイ)、召喚した幻鏡に映したディオバルスがカタストロフィ・ノヴァを放ち、対消滅を巻き起こした。
 熱風が、暴風と雨を吹き飛ばす! その中を、セルマとシリンが狙撃位置へ――。

「悪意があるのかないのか……いずれにせよ、倒すだけです」
「これ以上は、させません」

 セルマの凍風一陣(イテカゼイチジン)が体の内側からディオバルスを凍らせ、シリンの精霊猟銃による鋼の精霊弾の連射が、巨竜の緑色の結晶体を穿ち、破壊していく!
『ガ、アアアアアアアアア、アアアアアアアアアアアアアアアアア!』
 ディオバルスが、地響きを立てて立ち上がろうとする。内側から凍り、水晶体を砕かれ地獄の炎が溢れる――その様に、ラッセルは言った。
「あの巨体だ、相当な体力がある事は目に見えて分かるならば、必殺の一撃を叩き込んでやろう。……やれるな、ポイゼ?」
『無茶もいいところですけど……いいですわ、やってあげます』
 そのポイゼの返事を聞いて、ラッセルは走る。フラムとフロスを突き刺し、立ち上がろうとするディオバルスを強引に抑え込んだ。

「遠慮は要らん、やれ」

 そこにポイゼと、全てを無に還し終わりを齎す「終焉」属性の魔剣・妖刀の力を一つに集束せし究極の一刀を手に、璃奈が迫った。
『フフ、さようなら』
「黒皇竜……全てを滅ぼす終焉の魔剣で滅びると良い……!」
 ポイゼのデス・ヴェノムの特攻が、璃奈のultimate one cars blade(アルティメイト・ワン・カース・ブレイド)の一閃が、ディオバルスを捉えた。
 その凄まじい連撃が、ついにディオバルスを終わらせる。ズズン……、と地響きを立てて崩れ落ちたディオバルスが、立ち上がる事は二度となかった……。

「……これぐらい……?」
「ああ、十分だ」
 璃奈の問いに、ラッセルはやり遂げた表情で答えた。ディオバルスを解体し、考えうる全ての素材を手に入れたからだ。その爪一つとっても、ドワーフのラッセルぐらいある――まさに、鍛冶屋にとって宝の山だった。
「この肉も、後でみんなで食べましょう」
 シリンはハンターとして、そう笑みをこぼす。嵐は、もうしばらく続くだろうが問題ない。永遠に続く雨がないように、この嵐もいつか終わるのだ。そうすれば、村のみんなも戻ってこれる――ウッドフィールドの村人達は、恩人である猟兵達のために感謝の宴を、一昼夜にかけて開いてくれるのだが……それは、また別の物語である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月28日


挿絵イラスト