それゆけ! 最弱(!?)ヒーローズ!!
#ヒーローズアース
タグの編集
現在は作者のみ編集可能です。
🔒公式タグは編集できません。
|
●
ぽかー。
すかー。
どさー(×3)。
「ゲコゲコゲコ! まさか私にも勝てるヒーローがいるなんて!!」
「なんて弱いヒーローっスか!」
「楽勝っス!!」
ヤモリ少女たちのゲコゲコとした笑い声が響く。
彼女の前には、ヒーロースーツに身を包んだ三人の人物が倒れているのが見える。
三人はよろめきながらも、歯を食いしばり立ち上がった。
「……俺達はっ、ヒーローだ……!」
「こんなところでは……負けられ、ない!」
「ええ、絶対に……!!」
「うおぉ!! 正義は絶対に挫けたりはしない!! 行くぞ、ヴィラン!!」
三人は最後の力を振り絞り、武器を手に月光ちゃんズへと立ち向かった――。
●
「んだけど、直後に負けちゃうんだよね!」
とっても軽い調子でジューク・グラモフォン(セレナバード・f09770)が悲しい事実を告げた。
あははーっと能天気に笑ってるけど、笑い事ではない。
ここはグリモアベース。
彼の背後には、半月ほど前に見つかったばかりの新世界、ヒーローズアースの光景が広がっている。
その背景を横切るように、ふわふわ~っと胡坐を掻いた姿勢で宙を漂いながら、身振り手振りを交えてジュークは続ける。
「このヒーローチームはね、とっても弱いんだ。もう、ものすごーく弱くて、正直に言えばヒーローズアースの一般人に産毛が生えた程度の力しかないんだって」
それはもう一般人と変わらないのでは?
そう思う猟兵たちの気持ちを察した様子で、ジュークはにっこり笑み浮かべ。
「でもね、ヒーローとして人々を守りたいって気持ちは、他のヒーローにも負けないぐらいあるんだよ」
だから、彼らは例え弱くても『ヒーロー』なんだと。
ヒーローに必要な資質が何なのかという議論は今は置いておくとして、説明は続く。
「で、今説明したとおり、今回のおねがいはね、まず“月光ちゃんズ”っていうオブリビオンと戦う彼等を支援してほしいっていうこと」
現地に到着した時点で、ヒーローチームとオブリビオン集団の戦闘は始まっている。
まずは猟兵たちはそこに飛び込み、ヒーローチームを援護(というより保護)してもらうことになる。
「それから、その後は少し時間を置いて、別の場所にヴィラン……ヒーローズアースの一般的なヴィランが現れる報せが届くんだ」
ヒーローズアースに現存しているヴィランは、オブリビオンではない。猟兵たちが戦うべき相手ではないはずだと、集まった猟兵が首を傾げていると、ジュークはゆっくり首を振る。
次の声は、先ほどより少しだけ低かった。
「そこに、乱入という形でオブリビオンが現れる。皆には、オブリビオンが彼らに危害を加えないよう、そっちの対応をおねがいしたいんだ」
放っておけば、オブリビオンはヒーローチームも、ヴィランも、周囲にいる一般人すら巻き込んで被害を出すだろう。
それを見過ごすわけにはいかない。
決して。
「街や人を守るっていうのは、未来を守るってことでもあるよね。ちょっとだけ、ボクたちと似てるかもしれないね。お話してくるのも、楽しいんじゃないかな?」
グリモア猟兵は元々瞑られたように細い目を、ますます上向きに弧を描くように細めると、
「それじゃあ、みんな用意はいい? みんなが用意できたら、ノるよ」
どこからか、音楽が流れ始める。
激しく熱い音楽の、その盛り上がりがピークに達したところで――、猟兵たちはヒーローズアースの地を踏んだ。
夜一
お世話になっております。夜一です。
ヒーローズアースのコメディ寄りほのぼの依頼です。
ほのぼのと言いつつ、第3章はほぼ純戦闘ですが、お目に留まりましたらどうぞよろしくお願い致します。
●ご注意
・マスターの執筆傾向につきましてはMSページをご覧ください。
・各章冒頭に追加OPを出します。
プレイング受付は追加OP掲載後からです。
また、今回は書けるときに書き進めていく形式をとりたいと思います。
プレイングが流れることもあるかと思いますが、再送は大歓迎です。
・人数上限10人ちょっとぐらいです。
それ以上になると採用できないプレイングが出る場合があります。
●NPCについて
今回の登場NPCは三人一組(+司令官兼マスコット役一名)の合計四人です。
マスコット役は第一章・第三章は音声のみ。本人は必要であれば第二章に登場します。
チーム名:『イッスンスリー』
・マケイヌレッド:ケットシーの男性。名前は犬だけど姿は猫。正義に燃える熱血漢。
・ヌレネズミブルー:テレビウムの男性。クールだけど芯は熱いナイスガイ。
・ネコノテピンク:ドワーフの女性。人一倍のがんばりやさん。紅一点。
・カモネギ司令:フェアリーの男性。厳しくも優しい司令官。涙もろい。
全体的にちっちゃい種族ばかりです。
名前が致命的に悪い? 当方もそう思いますね!
●その他
本シナリオは
第1章 集団戦 (NPCたちを助けよう)
第2章 日常パート(NPCたちを鍛えよう)
第3章 ボス戦 (とりあえず殴ろう)
という構成になっております。
本シナリオでは、NPC(ジューク)の日常パートへの参加はありません。
また、本シナリオは「ヒーローたちとの共闘・交流」が主な趣旨となります。
弱いヒーローたちに活動を考え直させる等、趣旨と異なるプレイングは採用できませんのでご了承ください。
それでは、皆様の個性あふれるプレイングを楽しみにしております。
第1章 集団戦
『月光ちゃんズ』
|
POW : 森の仲間たち、力を貸して欲しいっス!
戦闘力のない【普通のヤモリの群れ 】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【森の仲間たちからの声援(幻聴)】によって武器や防具がパワーアップする。
SPD : スーパーイモリモード、覚醒っス!
対象の攻撃を軽減する【スーパーヤモリモード 】に変身しつつ、【壁への張り付きを利用したパンチやキック】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : うおおお、イモリパワー全開っス!
自身の身体部位ひとつを【ヤモリ 】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
視界に青空と原色多用の派手な看板、立ち並ぶ高層ビルの群れが広がる。
現場はスクランブル交差点。
一般住民たちが遠巻きにヒーローの苦戦する姿を、心配そうに眺めている。
交差点は、赤と黒の衣装に身を包んだ少女のオブリビオンの増殖により、既にその大半が占拠されているような状況だ。
その中心。丁度、斜め方向に掛けられた横断歩道同士が交錯する地点には、イッスンスリーの姿がある。
前門のヤモリ、後門もヤモリ。
マスクで三人の表情は見えないが、苦しげであることには違いない。
「ヒーローも大したことないっスね!!」
三人に最も近い月光ちゃんが右腕をヤモリの頭部へと変形させた。
「お命、頂戴っス!!」
まさに今、その右腕がイッスンスリーへと迫る――!!
【ご連絡:諸事情で初日にプレイングを出して頂いた方の締切にリプレイを間に合わせる事が出来ませんでした。申し訳ありません。
お気持ちに変わりないようでしたら、お手数ですがご再送下さい。】
榎・うさみっち
ちっちゃいヒーロー!なんだか新規感を覚えるな!
まぁ俺はヒーローって柄じゃないけど
弱くても決して諦めないそのガッツ、しびれたぜ!
手助けしてやるからよわよわトリオもヤモリ娘達も
このうさみっち様の華麗な戦いとくと見るがいい!
【あいとせいぎのうさみっちレンジャー】召喚!割り込むように見参!
一列に並んでヒーローっぽいポーズを取り決め台詞!
四方八方からパンチキックチョップなどで攻撃したり
【残像】で更に数が増えたように見せかけ惑わせる
残念、そいつは残像でしたー!
この隙に俺はイッスン達にここから離れるよう誘導
お前達のその力はもっと強大な敵のためにとっておいてくれ
(訳:多分足手まといだから手伝わなくていいぞ!)
栗花落・澪
想いがあれば
どんなに弱くても
小さくても
ヒーローで間違い無いと僕は思うな
だってどんな逆境にも諦めずぶつかっていく姿って
かっこいいじゃない
というわけで援護します
堂々と3対3で戦う気概くらい見せたらどう?
【オーラ防御】でヒーロー達を庇いながら
【高速詠唱】による氷の【属性攻撃、全力魔法】の
即発動型【範囲攻撃】でイモリ達を攻撃
人型だからどうかわからないけど
習性が同じなら低温には弱いだろうという狙い
冬眠したい?
それなら僕が誘ってあげる
敵の攻撃は可能な範囲で【見切り】ながら【空中戦】で回避
【催眠歌唱】の【指定UC+範囲攻撃】で
本当の意味で寝かせつける
歌は僕の本業だからね
攻撃力は乏しいけど
サポートは頑張るよ
メルノ・ネッケル
OK、ご機嫌ミュージックでの送り出し感謝や!
新世界での初陣、派手に飾ったろやないか!
誰かを守ろうとする意志に、力の量は関係あらへん。
それに、うちはここでは新米やし、イッスンスリーは先輩や。
その硬い決意に敬意を表しつつ、【騎乗】したキツネビサイクルで駆けつけ、こう叫んで乱入!
「新米ヒーロー、火器狐参上っ!援護するで、先輩方!」
速攻で仕掛ける、勢いのままに【先制攻撃】!
飛び上がり、地上に二丁銃を向ける。
新しい世界、新しい敵……それでも、【勇気】さえあれば怯まず戦えるっ!
「数の不利を一撃でひっぺがす、それがヒーローの必殺技ってもんやろ?」
……行くでぇ、覚悟せえ月光ちゃんズ!これぞ必殺『狐の嫁入り』!
荒・烏鵠
はいドッカーン!と月光ちゃんを巨大化した装甲猪で轢く!
いっけなーい!殺意殺意!スクランブル交差点故に信号が青だったので突撃してみました文句あンのかアーン??
出会いはいつも突然って言いますよネ。
ヘイヘイそこなイッスンワームにもゴブソウルズ!いつまで地面と熱烈ハグしちゃってンだァ!?オメーが立たなきゃ誰が立つ!オメーら仮にもヒーローなンだろーが!なら道理を無理で捩じ曲げるくらいしろッてンだ!!
ホーレがんばれガンバレ、野生の巨大猪も応援に駆けつけちゃッてンぞ!!装甲付けてるッてェ?鎧の一つや二つ付けてンに決まってンだろ、ヴィランがいンだから!
さーて、こっそりシナトと一緒に風や札で支援すっかナ。
●
「はいドッカーン!」
唐突に、イッスンスリーへと腕を振り被っていた月光ちゃんが巨大な何かに弾き飛ばされグルグルと宙を舞った。
いっけなーい🔪🐗殺意殺意💦
そんなお茶目に隠しきれない殺意でもって月光ちゃんを轢き飛ばしたのは、装甲を纏った巨大な猪だ。
その後方には、駆け抜けた軌跡――犠牲となった哀れな月光ちゃんズが死屍累々と倒れていた。
「な、何事っスか!?」
オブリビオンの間に、猪を中心にざわめきが波紋のように広がる。
「スクランブル交差点故に信号が青だったので突撃してみました文句あンのかアーン??」
中性的な顔立ちの美しい青年が、その見た目からは程遠いガラの悪さで月光ちゃんズにメンチを切った。
ずびし。
その男を指さして月光ちゃんが言い返す。
「文句ありありっス!! 例え青信号でも安全運転を心がけましょうと教わらなかったんスか!?」
青年……荒・烏鵠(古い狐・f14500)は、ハァー? とでも言うように、目を細めて少女型オブリビオンを見下ろした。
「出会いはいつも突然って言いますよネ」
「そんなラブストーリーみたいに!?」
しかもこの恋、別に始まらない。
「っていうか、アンタ猟兵っスね!」
だって、猟兵とオブリビオンだし。いや、そうじゃなくても始まらないけど。
一目見てずきゅんと察した天敵の出現に、俄に月光ちゃんズが戦闘態勢に入る。
「ええい、憎き猟兵ズ! ヒーロー共々、ここがアンタ方の墓場になるっスよ!!」
「んなことさせるかー!」
可愛い高い声が響き、今度はイッスンスリーの前に複数の影が、ザッと横並びに立ちはだかる。
榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)と、彼のユーベルコード≪あいとせいぎのうさみっちレンジャー≫により召喚されたレンジャーメンバー総勢33体だ。さすが33体もいれば、なかなかどぎついカラーリングとキャラ付けの隊員も見えるが、戦力としては問題はない。
『我らうさみっち戦隊! 悪を滅ぼす正義の鉄槌、喰らえー!!』
ふっ。決まったな。とドヤ顔するうさみっち。
声の合わせ方とポーズの統一感のなさは個性ってやつですよ。
うさみっちが、ちらりと後ろのイッスンスリーを振り返る。
(話に聞いてたとおり、本当にちっちゃいヒーローなんだな。なんだか新規感覚えるぜ!)
まぁ俺はヒーローって柄じゃないけど、と心の中で呟きながらも、ぐっとサムズアップして膝をつく三人へと声を掛ける。
「弱くても決して諦めないそのガッツ、しびれたぜ!」
「うん、うさみっちの言うとおり」
フェアリーの言葉に肯首しながら、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)も姿を現す。
「想いがあればどんなに弱くても、小さくても、ヒーローで間違い無いと僕は思うな」
そう言って、
「だってどんな逆境にも諦めずぶつかっていく姿ってかっこいいもんね」
にっこりとイッスンスリーに微笑みかける。しかし、その可憐な笑みはすぐさまキリッと様子を変えて。ヒーローたちの代わりに敵へと注がれた。
「というわけで援護します。君たちも、堂々と3対3で戦う気概くらい見せたらどう?」
「へへん! 悪に正々も堂々もあるもんスか!! それに、ヒーロー世界的には、これが悪の正々堂々っス!!」
何せ、弱めの敵が群なして襲ってくるのはヒーローストーリーの定番中の定番だ。
えっへん。胸を張る月光ちゃんズに、
「なるほど。一理ある」
「うさみっち……敵の言葉に納得しないでよ」
ぴかんと目を輝かせ同意を示すうさみっちを、澪が濃い琥珀色の瞳でじーっと見つめる。
「ナルホド。ンじゃ、悪のセオリーに倣ってサクッと一掃されろやオラァ!!」
「ギャー!! また猪が暴れ始めたっス!!」
暴れ始める猪。炒められるチャーハンの米さながらに代わる代わる宙を舞う月光ちゃんズ。
オブリビオンに人権? ナイと思いマス。そもそも人じゃナイしネ!!
そんな光景を眺め、耳が、尻尾が、宇宙二輪車【キツネビサイクル】の駆動音が、嬉しそうにはしゃぐ。
メルノ・ネッケル(火器狐・f09332)が、ご機嫌な音楽のリズムの余韻を残しながら、ケラケラと笑う。
「何や、もう派手にやってんなぁ。ほんならうちも、新世界での初陣、派手に飾ったらなな!」
言って、ゴーグルを引き下ろし、妖狐の女はアクセルを回した。
二つのタイヤが激しくアスファルトに摩擦を起こし、キツネビサイクルは走り出す。
目標は眼前の集団。
その最も手前の月光ちゃんが近づいても、ビイクルは勢いを落とすことなく。寧ろ益々加速していく。
「はぇ?」
音に気づいた月光ちゃんが振り返る。
「ごめんな、邪魔すんで!!」
「ぷぎゃ!?」
運の悪い月光ちゃん(尤も、この場に運のいい月光ちゃんはいないのだが)をジャンプ台に、ビイクルは太陽を背負い高く、高く、飛びあがる。
「数の不利を一撃でひっぺがす、それがヒーローの必殺技ってもんやろ? 覚悟せえ月光ちゃんズ!」
ハンドルから離した手には、既に二丁の銃が握られている。
黒に赤の熱が走る【R&B】、白銀に輝く【アサルトリボルバー】。
二つの銃口を地面へ向けて、ヒュッと呼吸音をひとつを冥途の土産。メルノを起点に、銃弾と熱光線の雨霰が降り注ぐ!
その紅に怯えはなく。
下界から聞こえるぴゃーだのひーだのと言った悲鳴を悠々と聞きながら女は、集団の中央――弱小ヒーローとか、猪と狐とか、フェアリー戦隊とか、オラトリオの少年がいるスペースへ――下にいた、これまた不運な月光ちゃんをオマケに踏み潰しながら、舞い降りた。
「ぎゃん!!」
「新米ヒーロー、火器狐参上っ! 援護するで、先輩方!」
ゴーグルを引き上げ、メルノがチャーミングにウインクを飛ばす。
イッスンスリーとメルノの戦闘力は、測るまでもない。猟兵である彼女の方が明らかに上である。
しかし、メルノにとって、それはこの場では関係ない。
誰かを守ろうという意思。それを抱いてヒーローたらんとする者同士、極当然に敬意をもって声を掛けた。
「おお……」
その声に込められた真摯な気持ちはマケイヌレッドを筆頭、他の二人にも伝わっていく。
「すまない、同士よ……君たちの応援に、心から感謝する!」
そして、同時にそれは、イッスンスリーにとっても同様だ。
ヒーローとして過ごした時間の長短が、果たしてヒーローの誇るべきところであろうか……答えは否だ。
新米も、先輩も変わりなく。
また、ヒーローを名乗っているかどうかすら、関係ない。
大切なのは、誰かを守るために動く、その心なのだから。
「ヘイヘイそこなイッスンワームにもゴブソウルズ! いつまで地面と熱烈ハグしちゃってンだァ!?」
烏鵠が笑みを浮かべたまま激を飛ばす。
「オメーが立たなきゃ誰が立つ! オメーら仮にもヒーローなンだろーが! なら道理を無理で捩じ曲げるくらいしろッてンだ!! ホーレがんばれガンバレ、野生の巨大猪も応援に駆けつけちゃッてンぞ!!」
「全く、その通りだ……!」
「ええ、私たちがこんな事じゃいけないわね……っ」
言われて、ヒーロートリオは、まだ自分たちが地に膝を付けたままであったことを思い出し、ゆっくりと立ち上がり始める。
三人の脚に、力が戻っていく。
「うむ! 装甲つけた猪が野生かどうかはともかく、俺たちが手助けしてやるから、よわよわトリオもヤモリ娘達も、このうさみっち様の華麗な戦いとくと見るがいい!」
「アン? 装甲? 鎧の一つや二つ付けてンに決まってンだろ、ヴィランがいンだから!」
「そういう問題なの?」
まぁ、いいんだけど。と、澪が呟きながら頬を掻けば、メルノが笑って。
「細かいことはええやん。さ、まだまだここからが本番やで。気ぃ引き締めていこか」
言った瞬間、好き放題やられて激昂の月光ちゃんズが、ピピーっと指笛吹き吹き、大量のヤモリ軍団を招集する。
「ああ、聞こえる……聞こえるっス!! うおお、負けないっスよー!!」
「うわなんかヤバいなあいつら」
幻聴(もしかしたら本当にヤモリたちがヤモリ語で応援しているのかもしれないが、少なくともうさみっちのうさ耳には何も聞こえなかった)で自分を鼓舞しテンションとパワーをアップしている月光ちゃんを見て、うさみっちがボソっと呟いた。
「まぁ、んなことはともかく、支援は頼んだぞー! 澪!」
うさみっちレンジャーを引き連れて、月光ちゃんズへと飛び掛かっていくフェアリーの後姿を見やり、
「えっ、僕? もう、仕方ないなぁ」
軽い吐息も慣れたもの。ふわりと澪のつま先が地面を離れ、空中へと浮かびあがる。
「いいけどね。元々支援するつもりだったから」
地面からの攻撃なら、これで避けやすくなるだろう。
次いで澪が、瞬く間に呪文を唱え終えると、その周囲に冷気が渦巻き始める。
上空から襲い掛かる氷雪の暴風。
「ひぃぃ!! さ、さぶいっス……!!」
ノースリーブにショートパンツルックのヤモリちゃんは、堪らず身を縮めて震え出した。ヤモリじゃなくてもこれは堪える。
「さーむーいー……!! でも、ナイスだ、澪!!」
自称ゆたんぽでも、寒いもんは寒い。そもそもゆたんぽ、吹雪の中に曝すもんじゃねーし!! おふとんの中でぬくぬく使うもんだし!!
等とは言うまいて。澪の氷魔法で悪くなった視界に、うさみっちが作り出した残像を見分けることは猶のこと難しく。
やっとの思いで繰り出したパンチも、その残像すら捉えることはできなくて。
「残念、そっちはハズレでしたー!」
その死角に素早く回り込み、ぽかすかべしばし、容赦なくうさみっちとうさみっちレンジャーたちが手分けして確実に力を殺いでゆき。
「おッ。丁度イイじゃン」
澪の魔法と相性が良かったか。烏鵠も気づかれぬように、シナトと名を呼ぶ【科戸の狐精】と共に破魔の力と風の力を上乗せする。
月光ちゃんズが目に見えて消耗してきたところで、澪は小さく呟いた。
「そろそろ冬眠したいでしょ? それなら僕が誘ってあげる」
吹雪きが収まり、春の雪解けのように、柔らかな歌声が周囲を満たし始める。
澪の歌声が≪誘幻の楽園≫から色取り取りの花を呼び寄せると、その花弁がぱぁっと弾けて風に乗る。
攻撃と思えないような優しい攻撃は、月光ちゃんズが気付かぬうちに、その意識を覚めない眠りへと導いた。
「よし! 今の内だな。イッスンスリー! お前達のその力は、もっと強大な敵のためにとっておいてくれ」
うさみっちが視線で下がれとヒーローたちへ言外に伝える。
多分足手まといだから手伝わなくていいぞ!
その申し出に、しかし、ヒーローたちは――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
八幡・茜
頑張っている人って格好いいわよね! おねーさんそういう人の味方なおねーさんでありたいわ!
ふふふ、何はともあれ、この美人のおねーさんがしっかり味方してあげるわね!
敵を前に舌なめずりなんて、ずいぶん余裕なのね?
駄目よ、きっちりとどめを刺してからじゃないと
油断してそうだから、こっそり後ろから近づいてぎゅっと掴んでお友達になっておきましょう!
みんなお友達になれば平和的に解決よ! さぁ、残りのみんなも、この美人のおねーさんとお友達になりましょう! まとめてなでなでして甘やかしてあげるわ!
お友達が沢山増えたらギャラリーの人たちも誘って一緒にイッスンスリーを応援するわね
がんばれーみんなみてるわよー! って!
ビスマス・テルマール
イッスンスリーの皆さん
此処は一先ず下がって
出来れば相手の能力への対抗の為にも、応援を……お願い出来ますか?
足りない分は意志と『料理』技能で作った
このハワイアンなめろうで
補い守ります
●POW
トリニティ・ナメローズマバアを発動
応援してくれる人は何としても死守する『覚悟』で意志の力を引き立て
能力増強の対抗とし
ヒーローの端くれらしく
真っ正面から
なめろうフォースセイバーに
範囲攻撃と鎧無視攻撃と衝撃波を乗せ
なぎ払いと2回攻撃で斬撃を飛ばし
仕掛けてきた相手には
武器受けとオーラ防御で受け
カウンターと2回攻撃で反撃
不味い攻撃には
残像とオーラ防御を併用した
実体ある残像を身代わりに盾受け
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
千栄院・奏
随分と数が多いね。ま、こんな状況は苦手じゃない。
『スプラッター』参上。ばらばらになりたい者からくるといい。
念動力で操った丸鋸飛刃で『イッスンスリー』とオブリビオンの間に割って入ろう。
良く持ちこたえてくれた、と言うところかな? 思うところはあるかもしれないけど、これでも私もヒーローなんだ。ここは助けられておいて欲しいな『イッスンスリー』。
さて、見た目は少女だけど……だからといって容赦する『スプラッター』じゃない。
最初から全力でいこう。【血濡れの『スプラッター』】で二振りの鎖鋸剣をジェノサイドモードに、パワーアップした防具ごと斬り伏せるよ。
アドリブ・絡み歓迎
夏目・晴夜
ヤモリ系とか少し可愛くはありますが、
このハレルヤが褒められる為にも容赦はしませんよ
正義感に溢れたヒーローたちの方が見た目的にも可愛くて私の好みですしね
我々やヒーローたちに迫ろうとする敵は、
【怪力】を誇る戦闘特化のからくり人形に蹴り飛ばさせたりビンタさせたりして丁重に【なぎ払い】
壁に張り付いたままの敵はガシッと掴んで優しく無理矢理バリッと剥がして地面に落とさせます
流石はニッキーくん、可愛くて優しい上に強いとか最高ですね
折を見て、彼と沢山遊んでくれたお礼にドカンと一発【力溜め】からの「愛の無知」でお返しさせます
お礼はちゃんと形にして返させる。この素晴らしき律儀さが数多くある私の長所のうちの一つです
●
「イッスンスリーの皆さん、此処は一先ず下がって。出来れば相手の能力への対抗の為にも、応援を……お願い出来ますか?」
立ち尽くすイッスンスリーに、ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)が声を掛けた。
「だが……」
ブルーが、拳を握り何かを言いかける。
分かっている。前線で戦っても、彼らの足を引っ張るだけだろう。
それでも、「だが」と言ってしまうのは、弱いなりにも彼等に残るヒーローとしてのプライドだ。
「私達も一緒に――」
「隙ありっス!!」
ピンクが言いかけた瞬間、月光ちゃんズが四方八方からヒーロー目掛けて飛び掛かった。
「!!」
慌てて応戦する姿勢を取るイッスンスリーよりも早く、
「随分と数が多いね」
声が聞こえたかと思えば、鋭い牙のような歯がついた円盤が、月光ちゃんズそれぞれの拳を中空で受け止め防ぐ。
「ま、こんな状況は苦手じゃない」
途端、円盤はより凶悪な姿へと変わり、同時に激しい唸りを上げ駆動する鎖鋸の刃が、先に発した言葉の通り、苦戦する様子も見せず、月光ちゃんズを一度に斬り裂き大量の血花を散らした。
赤の欠片を浴びたその人物は、紅は落ちないものの衣服を軽く払う。
「『スプラッター』参上。ばらばらになりたい者からくるといい」
少女――千栄院・奏(『スプラッター』・f16527)が名乗った。奏は、イッスンスリーに背を向けて立ち、見返りながら、下がり掛けた眼鏡の蔓を摘まんで掛け直す。
カチャという微かな音は、チェーンソー剣の音で掻き消えて。
「私達が来るまで良く持ちこたえてくれた、と言うところかな?」
「君は……」
「思うところはあるかもしれないけど、これでも私もヒーローなんだ」
“思うところ”。
彼女の言葉の意味するところ。
それはこの場に立つ者で、今しがたの彼女の戦いを見たならば、言わずとも理解できるだろう。
三つ編みに、クラシカルな丸眼鏡。ココアカラーの落ち着きある服装も相まって、一見すればすらりとした普通の少女だ。ただし、その両手に持った得物と彼女の周囲に浮かぶ十の円盤状の物を除けば。
両手には桜と梅の花が描かれたチェーンソー。一歩とて近づけば、細切れになることを示す丸鋸型の浮遊刃。
ヒーロー『スプラッター』は碧の視線を前へと戻し、言葉を続ける。
「ここは助けられておいて欲しいな『イッスンスリー』」
イッスンスリーの三人が、ぐっと言葉を呑む。
口を開いたのは、レッドだった。
「だが、俺達だって――」
「いや、ここは彼らに従おう、レッド」
「ブルー!? でも、私達だって……!」
何とか自分達の戦う理由を探すピンクに、ブルーはゆっくりと首を振った。
「そう、俺達もヒーローだ。だからこそ、他のヒーローに自分達の負担を押し付けるなんてことがあっちゃいけないんだ」
「!!」
暫しの間を空けて、レッドが頷いた。
「そうだな。ブルーの言うとおりだ」
そうして、声を務めて明るくしたのなら、後ろへと下がる準備を始める。
「君達に負担を強いてすまない! ヴィランへの対処はお願いする!」
その声に応え、二つの影が前へ出る。
「ええ、安心して任せてください。そうして――」
「貴方がたは、貴方がたにできること。そう、具体的には、この私、ハレルヤを褒め称える準備をしておくのがいいでしょう」
少年、夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は継ぎ接ぎされたブリキの兎頭を持つ頑健な体躯の人形『優しく可愛いニッキーくん』を繰る糸をヒュンと鳴らした。
「さぁ、行きますよ。ニッキーくん」
●
「とう!」
「たぁ!」
「やぁ!」
全方位囲まれた状況では、猟兵たちの縦横無尽の活躍あれど幾らかは擦り抜けてくる月光ちゃんズもいるわけで。
特に、信号機や電線を伝って上から飛び降りて来る多少賢い月光ちゃん達は、後方に下がっていると言ってもイッスンスリーが暫くの間応戦しない訳にはいかない。
三人がかりで一体を何とか打ち破り、イッスンスリーはふーっと息を吐いた。
「あらあら、お疲れかしら?」
ひょこんと顔を覗かせたのは、八幡・茜(銀狐・f04526)だ。
しゃんしゃん、良い音。ふわふわ、良い香。
銀色の耳と尻尾をふよんふよん揺らして、にっこりと微笑む。
「三人とも頑張っているわね! 格好いいわ! おねーさんそういう人は大好きよ!」
「貴女もヒーローなの?」
ピンクに問われ、茜はふふりと笑った。笑いに肩が弾んで、つられて鈴がカラカラと鳴り。
「いいえ、おねーさんはただの美人なおねーさんよ!」
えへんとおねーさんは胸を張る。それから、茶目っ気を含んだウィンクをひとつ。
「でも、ヒーローじゃないけど、おねーさんはあなた達の味方よ!」
しっかり応援してあげるわね、と言えば、妖狐はぴょこぴょこ、無防備に月光ちゃんたちの輪の中へ。イッスンスリーが止める余地もなく入って行く。
「あの人、大丈夫かしら……」
心配そうに見送るピンクの鼻先で、ガチンとヤモリの口が閉じられて、ひゃっと声上げピンクが跳ね上がる。
「大丈夫ですか!?」
ヤモリの頭部と化した腕をオーラと武器で受け流し、その胴部に空かさず二撃、【なめろうフォースセイバー】の柄を撃ち込む。
「ご、ごめんなさい! 助かったわ」
「ピンク、気を抜くな!!」
レッドの注意に、ネコノテピンクが慌てて距離を取ったことを確認すると、ビスマスはしっかりと頷いて、
「ヒーローズアースのため、人々のため、これ以上の横暴は許しません!」
叫び、ユーベルコード≪トリニティ・ナメローズマバア≫を発動する。
『Namerou Hearts tuna! banana! Avocado!』
なめろう料理によって磨き上げられたビスマスの料理の技能と、ヒーローとして人々を守ろうとする強い意志が、ビスマスの力を高めあげる。
同時に、彼女の握っていたフォースセイバーが南国を思わせる明るい黄色に輝いた。
「この世界の人々には、もう指一本触れさせませんよ!!」
決意と共に、気によって形作られた刃を真っすぐに振るえば、大気が波走る。
振るわれた刃に斬られたのは、至近の月光ちゃんたちだけではない。
斬撃の余波が広範囲の月光ちゃんズを一気に薙ぎ倒した。
『何という威力じゃ……!』
「ああ、凄まじいな……」
恐らく噂に聞くカモネギ司令の声が、レッドの腕に付けた通信端末から聞こえる。
斜線を掃討するビーム兵器めいた威力に圧倒されながらも、まだ終わりではない。
同じ徹は踏むまいと、イッスンスリーは改めて気を引き締める。
そんな彼らをチラリと横目で見て、晴夜はふむと頷いた。
目の前には動きの素早い晴夜に攻撃を当てようと、果敢に挑んでくる月光ちゃんたちの姿がある。
(ヤモリ系とか少し可愛くはありますが、正義感に溢れたヒーローたちの方が見た目的にも可愛くて私の好みですね)
それに、褒められるには彼女達の排除は絶対条件だ。
さっさと倒してしまうに限る。
追い縋るように破れかぶれの攻撃を繰り出してくる月光ちゃんの腕をするりとかわし、入れ替わりにニッキーくんがその腕を受け止める。
ニッキーくんは、力任せにその腕を弾くと、月光ちゃんを抱え上げて高いたかーいと放り投げた。
文字通り、千切っては投げ、千切っては投げ。地面に立っていようが、何かに張り付いていようがお構いなし。
豪快にオブリビオンたちをねじ伏せていく。
「流石はニッキーくん、可愛くて優しい上に強いとか最高ですね」
当然のように呟く晴夜を遠めに、彼とニッキーくん同様、十二の刃でオブリビオンを殲滅していた奏はそっと考える。
(……私も人のことを言えたものではないが……)
あの人形も、一般的な感性で見れば、結構悪趣味な部類だろうな、と。
頬に飛んだ返り血を指先で拭いながら。
(……私とあの人形で、怖さが相乗効果になってないといいんだが)
意外に繊細な悩みを抱える少女スプラッターは、ほんの一瞬そんなことを願いながら、再び襲い来る敵へと刃を振るった。
(だからといって、容赦する『スプラッター』じゃないのだけどね)
一方、月光ちゃんズの中へ飛び込んだ茜は、当然の如く、オブリビオンに取り囲まれ、ピンチ(?)に陥っていた。
「飛んで火に入る何とやらってやつっスね! ゲコゲコ、観念するっスよ!」
月光ちゃんがちょっと頑張った悪役スマイルを浮かべて、茜に迫る。
「敵を前に、ずいぶん余裕なのね?」
「そっちこそ、今がどんな状況か分かってないんスか?」
好き放題にやられまくったオブリビオンたちが、せめて一矢報いろうと考えたときに、この今ひとつ緊張感に欠ける妖狐をターゲットに選ぶのは自然な成り行きだっただろう。
とはいえ、人好きな妖狐のおねーさんは、勿体ぶっている月光ちゃんズにちっちっちと立てた人差し指を、メトロノーム宜しく振ると。
「駄目よ、まずはきっちりとどめを刺さないと――」
パッと距離を詰め、彼女たちが自身の体をヤモリの頭に変える前に、その手を握りしめる。
「何を――ゲコ!?」
途端、月光ちゃんの脳内に声が響き始める。こいつ……直接脳内に……!?
『オトモダチニ ナリマショウ……オトモダチニ……ゲッコウ マイ フレンド……』
「う、ううう……ま、まい……ふれんど……」
望まなくとも強制的にお友達になってしまう、いとも恐ろしきこの技で、月光ちゃんは動きを完全に封じ込められて。
「ええ、お友達! さぁ、残りのみんなも、この美人のおねーさんとお友達になりましょう!」
茜は、後ろからそっと近づいては被害者……もとい、お友達を次々に捕獲していく。
「みんなお友達になれば平和的に解決よね!」
ある程度、月光ちゃんズをお友達として捕らえたところで、茜はギャラリーたちへと繫いだ手を大きく振る。
「みんなも一緒に、イッスンスリーを応援しましょう! さぁ、せーの! がんばれーみんなみてるわよー!」
明るい調子で声援を投げかける茜に、徐々に見ていた一般市民たちも、ヒーローたちを応援し始める。
最初は僅かだった声も、気づけば大きな歓声となって。
ぴこぴこ、耳を動かし、晴夜がむっとした表情を茜に向ける。
「茜さん。何故、このハレルヤを褒めないのですか」
むしろ真っ先に褒めるべきでは? そう言いたげな視線に、茜はぱちりと目を瞬かせて。
「あら、ごめんなさいね!」
素直に言えば、
「ハレルヤさんも、ビスマスさんも、奏さんも、強くて恰好いいわよ! がんばって!」
これまた素直に、他の面々も順々に応援していくのだ。
おねーさんは平等なのよ!
それで幾分納得したらしい晴夜も、短く鼻を鳴らし、
「それじゃあ、ニッキーくん、そろそろ彼女たちに遊んでくれたお礼をしましょう」
晴夜の指に宿った狼が躍る。
繋がった糸が主人の意図をニッキーくんに伝えると、従順な人形は最大の一撃に向けて、体内の絡繰りとバネにぐぐっと力を蓄え始める。
タイミングを見計らい、晴夜はくいと指を曲げる。
瞬間、ニッキーくんの溜め込んでいた嵐のような暴力が、問答無用で月光ちゃんズを叩きのめし、打ち払った!!
「お礼はちゃんと形にして返させる――」
「この素晴らしき律儀さが数多くある私の長所のうちの一つです」
宣言し。
満足そうに眼を細め、晴夜はギャラリーを振り返った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
アオイ・ブルームーン
(ユーベルコードを事前に発動し、ヒーローの救出し距離を取ろうとながら)
ノーノーノーノー!、ダメよダメ、まるでダメダメ。話になんないわ。弱々なヒーローなんて……それも正義を名乗るなんて!
志の高さについて? 大したものね、だから他の人が買ってるわ。もう売り切れでしょうし、私は能力について言及する。容赦なくね――っと、そういえば、まだ居たのね。ヤモリちゃん、ゲッコーちゃんズ。ヴィランにしては素敵な名前は気に入ってるけれど…ダメね、名前負け。真の月の光ってやつを教えてやるわ。
再度ユーベルコードを起動。【咄嗟の一撃】を捉えられるかしら?
ユーリ・ヴォルフ
アドリブ共闘大歓迎!
この世界はヒーローの活躍で守られていると聞いている
小さなヒーローたちか…その芽を潰してなるものか
その志を!護りきってみせる!
【メギドフレイム】を
ヒーロー達を守るように円状に放ち防御を固め
ヒーロー達を鼓舞していく
レッドは熱血か。その魂、共感を覚える
だが一人で突出しては、敵の思うつぼだ
場を見極め、連携を大切にするんだ
ブルーはクールなのだな
冷静な判断は頼もしいぞ!
ピンクはその存在が、ヒーロー達の助けになっていそうだ
その調子だ!
司令は厳しくも優しいとは、部下を育てるには最適ではないか
悲しみの涙ではなく、感動の涙で濡らしたいものだ
力を合わせれば、勝利は必ず掴める!行くぞ!
●
猟兵たちの連携により、月光ちゃんズの数は確実に減っていた。
けれど、安心には未だ早い。
長時間に渡る戦いは、猟兵たちはともかく、ちっちゃなヒーローたちへの負担が大きい。体力の減少により、集中力が欠け、攻防ともに心許なさが増す。
三人がかりで月光ちゃんを倒す時間も、目に見えて掛かるようになっていた。
「くっ……! まだまだ!!」
息を切らしながら振ったレッドの拳が、ぽこぺん、と、弱弱しい音を立てた。
「ゲコ? そんなの痛くもかゆくもないっスよ! お返しっス!!」
パワーを強化した月光ちゃんのキックが、レッドに迫る――。
そのとき、
「やれやれ。見ていられないわね」
クールな声が、三人と月光ちゃんの間に割って入った。
声の主――アオイ・ブルームーン(アイよりアオく・f16426)が一瞬の間に飛び込んだかと思うと、声だけを残し、目にも留まらぬ速さで小さな三人を、月光ちゃんから離れた場所へと避難させたのだ。
「あれ!? どこ行ったっスか??」
獲物を失い、きょろきょろと左右を見渡すオブリビオンの眼前に、ヒーローに代わって紅蓮の炎が現れる。
炎は、月光ちゃんズの前に壁となって立ちはだかった。
ユーリ・ヴォルフ(叛逆の炎・f07045)が、周囲に無数の「炎の剣」を携え、姿を現す。
「この世界を守るため、日夜戦っているヒーローたちの芽……潰させてなるものか」
燃える両翼同様に、燃えるように輝く赤の瞳が、月光ちゃんズを映し。
「その志は! 私が護りきってみせる!」
ユーリの意思に呼応するように、炎の剣は自在に宙を踊り、月光ちゃんズを駆逐していく。
ドラゴニアンの青年もまた、炎竜の大剣【レーヴァティン】で、次々に月光ちゃんズを打ち倒す。
青年は、隙を伺い、攻撃の手を休めないまま、イッスンスリーの下へと近づいた。
疲労困憊した三人にも未だ戦う意思が見て取れるが――、その姿はなお小さく弱く見えて。
「レッド」
ユーリが落ち着きのある声で語り掛ける。
「ああ」
マケイヌレッドがその声に、しっかりと応じたのを聞くと、青年は続けて言う。
「熱い魂を持つ君の気持ち、私にもよく分かる……だが一人で突出しては、敵の思うつぼだ。場を見極め、連携を大切にするんだ。焦りそうなときほど、余計に」
その言葉に、レッドははたと先ほどまでの自分の行動を顧みる。
確かに、疲れから動きも戦い方も荒くなっていた――青年の言葉に、深く頷き返す。
「冷静に判断ができるブルーも、仲間に力を与えるピンクの存在も。そして、君たちを育て導く司令も、誰一人として欠けてはならない大事なメンバーだ……君達を待つ司令に色好い報告をするためにも、どんな時でも、力を合わせることを忘れるな」
月光ちゃんの近づいてきた気配を察し、ユーリが見返り様に敵を斬って捨てる。
「そうすれば、勝利は必ず掴める! ――行くぞ!」
「「「おう!!!」」」
ヒーローの前に立ち、交差点に残る月光ちゃんズを掃討していくユーリーの熱とは対照的に――ヒーローたちに危機が及ばないよう補助しつつも、アオイは、冷静にヒーローの戦いぶりを観察し。
ある程度見極めたところで、立てた人差し指をチッチッと左右に振った。
投げた【クレッセントナイフ】が、月光ちゃんを斬り裂いて、吸い込まれるようにその手元へと収まる。
「ノーノーノーノー! ダメよダメ、まるでダメダメ。話になんないわ。弱々なヒーローなんて……それも正義を名乗るなんて!」
「……そう、言われても仕方ないだろう」
彼女の痛烈な言葉に、絞り出すような声でヒーローは肯定する。
いや、助けられ続けたこの場面において、肯定以外の道は残されておらず――、
「アオイ様、それは……!」
助けに入ろうとしたユーリを、アオイは視線とジェスチャーで制し留める。
「だが! どんなに弱くても、俺達はヒーローとして戦い続けたいんだ!!」
レッドの言葉に、アオイは短く嘆息した。
「志の高さは 大したものね。――でも、力が見合わなきゃそれは正義たり得ないわ。ええ、決して、ね」
他の人が買った志の高さはもう売り切れで。
そして、それ以外に彼らが売れるものはない。
小さな身の丈、体力も、攻撃力も、防御力も、特別な能力だって、見たところほとんど持ち合わせていない。
これから先、このままヒーローを続けていけるかと思えば――、容赦をかけないことこそが、彼らのためでもあるだろう。
「ゲコゲコ! 油断大敵っスよ!!」
「――っと、そういえば、まだ居たのね」
アオイが手の中の針の先を、自身へと向けて。自身の柔らかな肌に突き立てたかと思えば、その姿はすでにそこにはない。
「ヤモリちゃん、ゲッコーちゃんズ。ヴィランにしては素敵な名前は気に入ってるけれど……ダメね、名前負け」
昼天の白い月。
高く跳躍したアオイが、地を見下ろす。
「真の月の光ってやつを教えてやるわ」
二丁のサブマシンガン【「ムーンシャイン」】の弾丸が、月の光同様、分け隔てなくスクランブル交差点のオブリビオンに降り注いだ。
薄紫のスカーフを棚引かせ、少女が地面に降りるときには、最早、月光ちゃんズの姿は骸の海へと還っていて――、
「どう? 分かった? “コレ”が正義。貴方たちに一番足りないものよ」
「アオイ様、彼らは猟兵ではない。この世界の一般的なヒーローです。我々のように戦えというのはあまりに酷では……」
ユーリが、幾分心配そうな視線をイッスンスリーに向ける。
三人の小さなヒーローは立ち竦み……けれど、視線はアオイとユーリ、そして他の猟兵たちから外すことなく見つめながら。
「いや……彼女の言うとおりだ……」
「ええ、私達にはどうしたって、力が足りない」
「今のままでは、いつか命を落とすだろう――」
三人それぞれに、頷く。
恐らく、通信端末越しに司令官も。
だが、そこで諦めるのならば、とうの昔にここに立ってはいなかったろう。
マケイヌレッドが、マスクを外し、猟兵たちへと訴えかける。にゃんこフェイスが露わになった。
「まずは礼を言う! 助けてくれてありがとう、同士たちよ! 君達の応援に、そして勇気に感謝する!!」
残る二人もマスクを外し、レッドに次いで頭を下げた。そして、
「そして、迷惑をかけ続ける立場で厚かましいと思うが――だが、もし、もし、良ければ、君達の強さを、俺達に教授してくれないだろうか」
再び、頭を下げる。今度はより深く。
「一朝一夕で、君達のような強さを身に着けられるとは思っていない。 ――しかし、君達の強さは、本当に圧倒されるようだった。正直に言えば、憧れるんだ」
弱くても。弱いからこそ、強きに憧れる気持ちは抑えられない。
レッドだけでなく、ブルーも、ピンクも、疲れの浮かぶ表情の中、目だけはキラキラと光を湛えていて。
「受けてもらえるようなら、俺達の基地に招待しよう。多少のもてなしはできるだろうから」
指導でも、特訓でも、あるいは他愛ない話でも、そこならゆっくり聞くことができるから、と言って、三人はよろしくお願いしますと、三度目のお辞儀をした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 日常
『頑張れ、未来のヒーローたち!』
|
POW : 筋トレや模擬戦など、体力重視の訓練を行う。
SPD : 敏捷性や射撃の腕を磨く訓練。メカニックの操作やメンテナンスなど。
WIZ : 勉学に励み知識を身につける。集中力や精神力を養うなど。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
【2章は追加OP記載後にプレイング受付を開始いたします。
内容としては簡単な基地の説明程度、ヒーローたちにアドバイスや指導、交流を行う内容です。
また、執筆スケジュールの都合上、間が空いて申し訳ありませんが、受付開始は5月3日頃になる可能性が高いです。
(小声)もし参加希望の方で、負担にならないようでしたら受付開始前に一度プレイングを投げていただけると大変助かります。(投げなくても大丈夫です。負担にならなければ、の範囲で。)】
●
最弱(?)ヒーロー『イッスンスリー』に招かれたのは、『ベース』と呼ばれる彼らの基地だった。
基地と言っても、それほど特別なものではない。
とある寂れかけたビルの地下階。階段を降りた先にある、“彼らサイズ”の小さな鉄製の扉を潜って通り抜けた先の部屋……それが彼らの拠点であった。
さすがに室内は天井が高い。猟兵たちの身長でも、身を縮めなくて済みそうだ。
「よく戻った! イッスンスリー!!」
ふよよよーっと飛んで出迎えたのは、長い顎ヒゲを蓄えた老人風貌のフェアリーだ。
トンボのような形の羽根を忙しなく動かし、空中で停止すると、続いて入って来た猟兵たちに目を向けた。
「おぉ、貴殿らがイッスンスリーを救ってくれたという……!」
驚きに見開かれた司令官を見て、イッスンスリーの面々も顔を見合わせて頷き合い、マスクを外してまわれみぎ。
ハチワレ柄の白黒ケットシーと、側面に稲妻のような柄の入った白青のテレビウム、そして少女のような形のドワーフ娘が猟兵たちを見上げる。
「此度の助太刀、誠にかたじけない」
「「「ありがとうございました」」」
一人と三人、声を合せて改めて礼を述べると、中へと腕を伸ばし。
「ささ、大した持て成しは出来ませんが、是非話をお聞かせ下され!」
皆を部屋の中へと招き入れる。
よわよわヒーロー三人は、指導の前にまず持て成しとコーヒーやらサイケデリックなカラーの御茶請けお菓子やらを運んで。
戦いの後のほんの一瞬の息抜きが終わり――さて、今度は鍛錬の時間。
夏目・晴夜
その小柄な体格を活かせばいいと思いますよ
敵からしたら攻撃を当てづらいという事ですし
力は武器で補えますが、小柄な体はどう鍛えても手に入らない才能ですからね
真正面から立ち向かおうとせず素早く背後に回り込んだり、
攻撃を回避した瞬間に生まれる隙を素早くついたりするのが向いているかと
早い話が素早さを鍛えましょう、スピード大事ですSPD
POWは無くても何とかなります
私のPOWがいやに低いから否定しているとかではないですよ
じゃ、私がこのサイケ菓子を適当に全力でドンドコ投げていきますので
一人は当たらない様に避けて、もう一人はその後ろで菓子をキャッチして下さい
それぞれの回避力と反射神経が大幅にアップしますよ多分
●
「その小柄な体格を活かせばいいと思いますよ。敵からしたら攻撃を当てづらいという事ですし」
出されたサイケ菓子を控えめに……けれど、確実に懐疑的な目で眺めながら。
手をきちんと膝の上に置いたまま、晴夜が言った。
「力は武器で補えますが、小柄な体はどう鍛えても手に入らない才能ですからね。真正面から立ち向かおうとせず、その利点を活かした戦い方する方が良いと思いますよ」
例えば、素早く背後に回り込む立ち回りや、攻撃を回避した瞬間に生まれる隙を的確に突いたりといった戦法が向いているだろうと説明する。
働いた後は甘いものが嬉しい。説明しながら砂糖とミルクを少し多めコーヒーに入れると、遠慮なく頂いて。
「なるほど。その視点はなかった」
ヌレネズミブルーが頷く。
「背が低いと軽んじられることも少なくないからな……どうしても、“大きい=長じている”と思ってしまっていたが」
少し素っ気無い態度に思える青年は、そんなことは取るに足らぬと鼻を鳴らした。
「言いたい奴には言わせておけば良いのです」
大は小を兼ねるとは言うが、こと戦闘においてはそればかりが優位とは限らない。
とはいえ、彼らが平均的なヒーローよりも力劣ることには違いなく、だから、その底上げ自体は必須なことは確かだ。
「と言うわけで、素早さを鍛えましょう、スピード大事ですSPD。POWは無くても何とかなります」
猟兵としてデータ化された数値の中で、晴夜が最も低いのがPOWの数値だ。だからといって、それを理由に否定しているわけではないと、その顔幽かに天井に向けた状態で四人を見れば。
「確かに、ハレルヤさんは細身だから、あまり力勝負には向いていなさそうだものな!」
マケイヌレッドが理解した! とでも言いたげな様子で声を張り上げた。
「……ですから」
途端、じとり。不機嫌に尾が揺れる。
「私は別にPOWが低いことについて何ら一切思うところはありません。自ら速さで勝負しているのです」
カチン。ほんの僅か高い音で、カップがソーサーに置かれた。
「そこのところはお間違え無きよう」
「そ、そうか。それはすまなかった……!」
さすがに幾らかの不機嫌さは感じ取ったらしく、レッドが慌てて頭を下げる。
晴夜はふんと短く息を吐き、手近なお菓子へと手を伸ばした。そして言う。
「じゃ、私がこのサイケ菓子を適当に全力でドンドコ投げていきますので、一人は当たらない様に避けて、もう一人はその後ろで菓子をキャッチして下さい」
言いながら、既に一個ぽんと放った。予期していなかった訓練のスタートに、受け止めようとしたカップケーキがわたわたと手の中で弾む。
「ミス一回目ですね」
「待ってくれ、ハレルヤさん。あんまりにも急でーー」
言い募ろうとするイッスンスリーに続けざまに二個、今度は大きなキャンディを放りながら。
「まぁ、このハレルヤにお任せなさい。それぞれの回避力と反射神経が大幅にアップしますよ……多分」
最後の一言はその前よりも声を潜めて。
人狼はにぃっと満面の、少し不穏な笑みを浮かべた。
成功
🔵🔵🔴
荒・烏鵠
へいレディース&ジェントルメン。アンタサンらに足りない物は何か。それはもうわかったハズだな?思い知ったし身に染みただろ?
だったら訓練だ。練習だ。
つッても体作りは一朝一夕じゃどーにもならん。な・の・で、オレがアンタらに教えるのは「見る事」だ。
よく見ろ。常に目を開け。顔面めがけてナイフが飛んできても目ェ閉じンな。相手の体の動きを、目の動きを見切れ。そンで体を追いつかせろ。
今からオレは朝な夕な、アンタらにビー玉を投げる。当たったら呪詛で激痛が走る。飯時でも油断すンなよ。シビレなンかは治してやッからさ。
出来なきゃ現場で死ぬぜ。割れんようキバれよォ、ヒーローエッグズ。
メルノ・ネッケル
【WIZ】
僭越ながら【戦闘知識】に基づいて、感じたことを伝えてみよか。
チームでの戦いで大事なんは、それぞれの得意を活かし欠点を補うこと。
そうして戦いを優位に進めながら相手の弱点を見つけ、そこに自分らの強みを押し付ける。
言うんは簡単やけど……実際やり合ってる時に、そこまで頭回すんは難しい。
ここで、戦場を俯瞰して見れる司令さんの出番。
文字通り司令塔になって、戦闘中に細かく指示を出す体制を整えてみるんはどうかな?
状況判断を司令に任せれば、3人は目の前の敵に集中出来る。
どこでバラけるか、固まるか。外から指示出すだけでもかなり動きやすいと思うで。
名前はイッスンスリーやけど……先輩らは4人で一つ、やろ?
八幡・茜
頑張っている人って素敵よね! 今は弱くても、その心意気があればきっと強くなれると思うもの!
ふふふ、おねーさんはみんなが頑張れるようにサポートしちゃうわね!
きっと厳しい訓練になるでしょうから、疲れたり傷ついたりしているようなら生まれながらの光で回復をしてあげるわね!
ふふふ、大丈夫よ! どれだけ厳しい訓練になっても、この美人なおねーさんが絶対死なせないから!
だから死ぬほど頑張れるわね! なんて喜ばしいことかしら! がんばれー!
って、お茶を飲みながら気楽な感じで応援していきましょう!
ほんと、人ってものは死ぬほど苦労すると結構強くなれるものだから
時間よりも密度よ! だからきっと短時間でも効果あるわよ!
ユーリ・ヴォルフ
アドリブ共闘大歓迎!
現地のヒーローに憧れを抱いてもらえるとは
嬉しいやら照れるやら…ここは期待に応えようではないか!
美味なる菓子を感謝と礼の後
自分を仮想的として見立て、模擬戦を提案
私を本気で倒すつもりで、連携し挑んでほしい
君達の攻撃が私へと届けば、君達の勝利だ!
刃の無い棍を構え
イッスンスリーの皆を相手取る
レッドは直情的に攻撃すると踏まえ『見きり』
『範囲攻撃』で足元目掛けて棍を振り転ばす
ブルーの不意打ちに気を付け
『聞き耳』で死角からの攻撃を予測し後ろ手で突く
ピンクはフェイントを警戒しバックステップからの突き
司令はどう指示するだろうか?
あくまで棍のみで対応
さあ、本気を見せろ!死に物狂いで挑んで来い!
●
「ううん、ハレルヤさんは厳しかったわ……」
「レッドのせいな気がしなくもないが……」
投げつけられる菓子を只管避け、キャッチするという特訓は、当たって痛みがないとはいえ、予想以上にハードだった。
投げる速度や個数、晴夜の身軽なフットワークと技術をフルに活用した訓練に、ヒーローたちは面白いほどに翻弄されていた。結局、ほとんど避けられなかったとも言える。
次はシミュレーションルームでユーリとの模擬訓練だ。イッスンスリーは小走りで急ぎ向かう。
「へい、レディース&ジェントルメン」
向かう途中の通路で、軽い調子の声が欠けられた。
行く先に、ニヤリと笑う赤狐――烏鵠が立ち、手をひらりと振る。振ったのと反対の手には、ガチャガチャと音を立てる何かを握りながら。
離れた場所、そして見上げる視点からだとそれが何か見ることはできないが、聞き覚えがなくはないような音だ。少なくとも金属ではない。
レッドの耳がぴこぴこ興味深そうにその音源へと向けられる。
「アンタサンらに足りない物は何か。先の戦いと今の訓練で、それはもうわかったハズだな? 思い知ったし身に染みただろ?」
「ああ、鍛えていたつもりだったが、まだまだ甘かった……」
だから尚更、訓練。そして練習が必要だ。それもただ何も考えず、一般論的な訓練ではダメだ。
“弱い者”にはそれなりの鍛え方と動き方があることを、烏鵠は知っている。
「……つッても体作りは一朝一夕じゃどーにもならん」
そして、元来の種の特性として小柄である彼らがそれだけを一心に鍛えたとしても、良くて人並み程度だろうということも。
「な・の・で」
だから、烏鵠はここで提案をする。それは、比較的短時間で、かつ普段は意識していない面の伸び代を伸ばす方法だ。
「オレがアンタらに教えるのは“見る事”だ」
自身の輝く金色の目。赤狐のやや赤みがかった金毛とは異なる、明るい金色の眼を指してみせ。
「よく見ろ。常に目を開け。顔面めがけてナイフが飛んできても目ェ閉じンな。相手の体の動きを、目の動きを見切れ。そンで体を追いつかせろ」
「見る……」
「そうだ。ンで、コレの出番だ」
にかり、牙見せ笑い、男はようやく手の中のものをイッスンスリーへと披露した。
「それは……ビー玉か?」
「そうだ。イイか? 今からオレは朝な夕な、アンタらにコレを投げる。当たったら呪詛で激痛が走る。飯時でも油断すンなよ。シビレなンかは治してやッからさ」
さっきの晴夜の訓練に似ているが、此方はまた異なる意図がある。
日頃からきちんと意識を研ぎ澄ますことと、視線を対象から逸らさないこと。狐は、彼らの“意識から変じさせよう”という心算で。
言う青年に、了解を示す肯首返して、三人は見上げる。
「分かった。いつでも避けるよう心がけておこう」
「イイ返事だ。ま、コレが出来なきゃ現場で死ぬぜ。割れんようキバれよォ、ヒーローエッグズ」
ケラケラ笑い、シミュレーションルームへ向かうその背を見送る赤狐が、指先でピンとビー玉弾く。
「いっっっっだ!!!!」
廊下に声が響いた。
●
「さぁ、イッスンスリー。体は十分暖まったかな?」
場所を移し、今は基地の中にある少々広いシミュレーションルーム。
学校の教室ひとつと半分程度の広さで、周囲には実践訓練の邪魔にならないようトレーニングの器具が除けられているその場所に、ヒーローたちと猟兵の一部はやってきていた。トレーニング器具の上には、金と銀、二人の妖狐が腰かけている。
「もう、熱いぐらいだが……でも、まだまだ!! ユーリさん、お願いします!!」
先の戦闘に次いで反射神経の訓練。廊下でも何かあったのだろうか。イッスンスリーの膝が微かに笑っている。
それに気づかぬユーリではない。だが、その状態でも尚特訓に挑む気概に溢れた彼らに、ユーリ自身、応援したいという気持ち、そして彼らの要求に応じたいと言う気持ちを感じていて。
(真っすぐな目をしているな。こうも期待されると嬉しいやら照れるやらだが……ここは期待に応えようではないか!)
地面についていた棍を足で軽く弾き跳ね上げると、くるくると鮮やかな棒捌きを披露し、先をイッスンスリーに向けて構えた。
「私を本気で倒すつもりで、連携し挑んでほしい。君達の攻撃が私へと届けば、君達の勝利だ!」
「っ、もちろん、胸を借りるつもりで全力で行くぞ!」
その所作だけで、彼の腕前は十分に察することができる。
ゲッコウちゃんズとの戦いの時、彼が使っていたのは西洋剣だったが、きっと棍のような長物の心得もあるのだろう。
さて、どう攻めたものかと、小さなヒーローたちはジリジリと間合いを取りながら考えていて。
「みんなー、おねーさんがサポートしてあげるから、安心して頑張ってちょうだいねー!」
トレーニング器具に腰掛けている銀色の方……茜が、ニコニコしながら手を振った。
彼女は引き続きヒーローの応援役で、そして今回は回復役でもある。
「うーん……先輩ら、初動が遅いなぁ」
その隣にいるのはメルノだ。ぱっちりとした赤色が、じっと、真剣な眼差しでイッスンスリーたちの動きを観察している。
そして更に、烏鵠がやってきて、邪魔するぜと隣に掛ける。
三色狐、ずらりと揃い。
「あら、烏鵠さんも来たのね」
「オレの訓練はまだ途中なンでね」
「そうなの? あら?」
チラと彼の手元を見た茜が、その手元の呪の気配を感じ取り、ぴくりと動く。
相手が意図に気づいたことに気づいた赤狐は、ニッと笑うと、早速一発テレビウムに向けてビー玉を発射し。
「ぐわ!!」
意識が完全に逸れていたブルーは、回避の動作どころか呪詛が飛んできていることに気づく素振りもなかった。
残りの二人が一斉に狐たちを振り返る。
「烏鵠さん!? まさか、模擬訓練中も……!?」
「モチロン。朝な夕なッつったろーが。ま、ユーリサンとの特訓の邪魔になるから、最小限にはしておくが」
だからと言って気を抜くンじゃねェぜ。自分で掛けた呪いを解きつつ、烏鵠が野次る。
ますます気の抜けない訓練になった。
ブルーの痺れの回復を待って、改めて三人がユーリと対峙する。
気を向けるべきはユーリだけではない。
その焦りが、先ほどまでは慎重すぎていた三人を一転、今度は雑に駆り立てる結果となって。
「行くぞ!! うおお!!」
「む、マケイヌレッド! 一人で飛び出してはいかん……!」
カモネギ司令が注意を殺がれている隙に、レッドがユーリに突撃する。
合わせて、ヌレネズミブルーは晴夜からの助言を思い出し、ユーリの背後を狙う。
(ふむ。レッドは直線的、ブルーは死角狙い……ピンクは時間差攻撃、だろうか)
予測のとおりだ。
まずは一直線に駆けてくるレッドの対応に当たる。
素早さそこそこ、裏の無い単純攻撃を見切ることは容易い。
まるで闘牛士のように、最小限の動き――もちろん、ブルーの回り込む方向とは逆へと、回り込むように身を引き、かわす。
かわしながら、棍を足元横薙ぎに振えば、勢いづいたレッドは足を取られ、盛大に転んだ。
ブルーが姿勢を低くしたユーリの横から蹴りを狙うも、地を蹴る音と気配で既にそれは把握済みだ。素早く立ち上がり、迎撃態勢を整える。
棍を盾に蹴りを防ぎ、次にそれに合わせて攻撃を仕掛けてくるネコノテピンクへと対応の優先順位を切り替える。棍とともに一歩引けば、ブルーは態勢を崩し、ピンクとユーリの間に割って入る形となる。
「!?」
ピンクが怯んだ隙を逃さずユーリが放った突きの一撃は、ブルーとピンク、二人を纏めて弾き飛ばした。
「な、なんと……!」
司令がぽかんと口を開き、言葉を失う。
レッドが攻め込んでからものの1分と掛からずにいなされた圧倒的な力の差に、ただただ呆然とする他ない。
ヒュゥと烏鵠が口笛を鳴らす。
「どうした? 君達の限界はそんなものだったのか?」
カァン。
ヒーローへと檄を飛ばすように、棍が床へと立てられる。
「ま、……まだ、まだぁ……!!」
よろけながら立ち上がる彼らの瞳は、まだ諦めてはいない。
呼応するように、ユーリの瞳も燃え上がる。
「そうだ、その意気だ。さあ、本気を見せろ! 死に物狂いで挑んで来い!」
●
一時間後。
「あかん。流石に先輩たちも限界やな」
体力の限界を、ギリギリ意志の力だけで踏みとどまり、挑み続けていたようだが、5分前からもう立ち上がることもできなくなったイッスンスリーを見てメルノが呟く。
「という事は、おねーさんの出番ってことね!」
茜は嬉しげにぴょんと飛び降りると、跳ねるような足取りでヒーローたちの傍へと寄っていく。
「みんな、大丈夫? おねーさんが助けに来たわよ!」
ボロボロのヒーローたちの纏う空気とはえらく毛色の異なる空気感の妖狐は至って明るくイッスンスリーの面々へと手を差し伸べた。
彼らには、もうその手に手を伸ばす力もない。
「う、うぅ……茜、さん……?」
今にも意識が途切れ落ちそうな声に、なぜか満足そうに茜が頷く。
「うんうん、頑張っている人って素敵よね! 今は弱くても、その心意気があればきっと強くなれるわ!」
おねーさんが保証してあげる!
そういうと、茜は床に膝をつき、それぞれへと光を降り注ぎ始める。
温かな、夕焼けのような光は、初めはじんわりと体を温め……次第に、ぐんぐんと彼らの疲労と体を癒していった。
「おぉ……急に力が……!」
驚くイッスンスリーに、茜はふぅと息を吐きながら、額を拭う振りをして。
「さ、これでまた頑張れるわね!」
「ええ、本当に。ありがとう、茜さん!!」
それぞれ、口々に御礼を言っていれば。
「お礼なんていいのよ! 安心して。どれだけ厳しい訓練になっても、この美人なおねーさんが絶対死なせないから!」
うん?
何かちょっと不穏な言葉が聞こえたぞ?
「あ、茜さん。死ぬほどのことは多分ないと――」
「だから死ぬほど頑張れるわね!」
お? このおねーさんの応援、何かがちょっとズレている。
単純熱血なよわよわヒーローズもそれを感じ取ったらしい。
「なんて喜ばしいことかしら! この後も、頑張ってちょうだいね!」
そして話を聞いてくれません。
「あ、えっと、はい……」
その勢いに気圧されて、何だか急に死の危険性があるのかも知れないと思えて不安になる面々に、茜がちろりと赤い舌を出した。
「ほんと、人ってものは死ぬほど苦労すると結構強くなれるものだから、時間よりも密度は大事よね! だからきっと短時間でも効果あるわよ!」
ちょっぴりズレてる気はするが、おねーさんの人を応援する気持ちは本物なのだ。
オマケでコンと手で作ったキツネから光を落とし、治療完了。ついでに、みんなに水筒のお茶も渡して回る。
「っと、訓練に戻る前に、ちょっとだけええかな?」
この状況では、また一時間戦っても結果は同じだろう。
メルノも集団の方へと歩いて近づいて行く。
「僭越ながら、今の訓練を見てて思ったんやけど――」
自分自身、頭の中で感じたことと、知識に基づく情報を整理しながら、メルノは説明を始める。
「チームでの戦いで大事なんは、それぞれの得意を活かし欠点を補うことや」
口元を手で隠すようにして考える様は真剣で。
有利な点は可能な限り有効活用し、不利な点は可能な限りカバーし合う。
それが個人ではない、チームの利点だとメルノは言い。
「そうして戦いを優位に進めながら相手の弱点を見つけ、そこに自分らの強みを押し付ける」
「弱点を見つけて、自分たちの強みを……」
上半身を起こし、ブルーがメルノの方を見ると、その後方、遠くに座っている烏鵠が、ちょいちょいと目を指し示すジェスチャーしているのが見えた。
「あ!」
「うん? どないしたん?」
メルノに問われ、ブルーの表示画面に、申し訳なさそうな表情が浮かぶ。
「烏鵠さんに言われていたことを、すっかり忘れていたな……」
“よく見ること”と、そう言われていたのだった。
メルノも頷く。
「そうやな。うちの言うた事も、今ここで言ってうんうん聞くんは簡単やけど……実際やり合ってる時に、そこまで頭回すんは難しい」
特に、戦闘が得意と見えない彼らにとっては余計にそうだろう。
そうでなくても、敵の攻撃に対応するだけでリソースは目一杯使っているはずだ。
そこで、と、メルノはコン。茜に続いて二匹目のキツネを手で作りながら。
「やから、戦場を俯瞰して見れる司令さんに、文字通り司令塔になって、戦闘中に細かく指示を出す体制を整えてみるんはどうかな?」
今見た感じでは、司令官の司令塔としての働きはうまく機能していないように思えた。
「司令さんは、全体を見る事に集中して、フォーメーションとか動き方とかを伝える。そうしたら、3人は目の前の敵に集中出来るやろ?」
バラけるか、固まるか。或いは最初はもっと単純に敵の動きを具に観察し、三人と情報共有するところから始めるのでもいいだろう。
「外から指示出すだけでもかなり動きやすいと思うで。まぁ、それも場数が必要やから、慣れるまでちょっと掛かるとは思うけど」
でも、何事も始まりの一歩はあるものだ。
メルノはとびきりチャーミングに、ぱちりと片目を閉じて笑う。
「名前はイッスンスリーやけど……先輩らは4人で一つ、やろ?」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ビスマス・テルマール
●POW
先日、誇りへの考慮を忘れていた事を詫び
それから筋力トレーニングに付き合うのと、その補助に『料理』して作って来た『ササミのなめろう』を中心とした弁当をイッスンスリーの皆さんに振る舞います
主にササミのなめろうは、切ったササミを日本酒に漬けて電子レンジで火が通るまでチンし
細かく千切ったササミを
味噌と薬味とアルコールが飛んだ漬けるのに使った日本酒(ササミの旨味が出てる)を叩き混ぜ作った物ですが
筋力を付けるのに適していて、味噌自体も、栄養素の効果を高めるので割りと理に叶ってるんですよ。
あっ、今のは鶏の胸肉でも
代用出来るので、良かったら時間があれば挑戦して見てください。
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
●
「ううん……結局ユーリさんには一撃も入れられなかった……」
「そうそう上手くはいかないものね……」
「いや、しかし、最後ははじめに比べると随分動きが良くなっていた。この調子で鍛錬すれば――」
くたくたに疲れて(ただし、疲れ自体は茜のユーベルコードにより癒えてはいるのだが、)戻って来た面々を、
「あ、おかえりなさい! ごめんなさい、キッチン勝手に借りてしまいました」
ビスマスが迎えた。
部屋の中にはほのかにアルコールと何か独特なしょっぱい香りが漂う。
嗅ぎなれない匂いだと、イッスンスリーが首を傾げる。
「ああ、これは味噌と日本酒の――と、その前に」
説明しようとしたビスマスが、改めて四人を向き直り、姿勢と表情を正す。
それから、徐に頭を下げた。
突然のことに、四人はぎょっとする。
「先ほどの戦いでは、皆さんの誇りを考慮せず、下がれなどと言って……無粋でした。ごめんなさい」
「……いや」
レッド、そして残りの三人も、静かに首を振った。
「ビスマスさんの、そして皆さんの判断は正しかった。今の俺達が前に出ても、足を引っ張るだけで役には立てなかっただろう」
続くように、ビスマスも首を振る。
「いえ、それでも、同じヒーローとして、皆さんの志を軽んじてはいけませんでした」
「……ありがとう。その気持ちだけで嬉しいよ」
ケットシーが目を細め、ぐるぐると喉を鳴らしたのを見て、ようやくビスマスも表情を緩める。
同時に、彼のおなかからもぐるぐると音が鳴り、みんな一斉に笑い声をあげた。
「栄養補給は任せてください! とっておきのなめろうを作って来たので!」
「ナメロウ?」
聞きなれない音の響きに、ピンクがぱちぱち目を瞬かせる。
ビスマスは自信ありげに笑み浮かべ、全員に風呂敷で丁寧に包まれたものを渡していく。
「これは……?」
「“ササミのなめろう”をメインにした、お弁当です。さ、どうぞ食べてください!」
勧めるビスマスの言葉に従い、みな、包みを開いてお弁当を開く。
その様子を満足げに見ながら、ビスマスはお弁当の中身について説明を始めた。
「なめろうと言うのは、もともとは魚介類に味噌や薬味を混ぜて粘り気が出るまで細かく叩いた料理の総称ですが、今回はそれを魚の代わりにササミで作った特製版です!」
これがレシピですと手書きのレシピを差し出して見せ、ビスマスが言う。
「ササミのなめろうは筋力を付けるのに適していて、味噌自体も、栄養素の効果を高めるので割りと理に叶ってるんですよ」
「へぇー、何だか食事まで考えてもらって悪いな――すっぱ!!」
「あ、それは梅干しですね。日本の伝統的な保存食で、疲労回復の効果があります。お弁当に入れておくと、殺菌効果もあるので、食中毒の予防にもなるんです」
もちろん、得意な山河焼き等の紹介も忘れていない。
一通り説明を終えると、ビスマスは一息ついて、お茶を啜り。
「ササミのなめろうは、鶏の胸肉でも代用出来るので、良かったら時間があれば挑戦して見てくださいね」
健康的な肉体作りは、健康的な食事からですからねと、少女は断言し。
「食べ終わったら、食後の筋力トレーニングもお付き合いしますよ!」
余分に作ってきたお弁当を取り出して、通りすがりのなめろう猟兵は、にっこり微笑んだ。
成功
🔵🔵🔴
千栄院・奏
私の戦い方は特殊な武器が前提だから参考にはならないよ。それにこんなものは真似るべきじゃない。
戦闘指南は他の猟兵に任せて、カモネギ司令のところに話に行こう。
アドバイスなんて偉そうなことは言えないけど、話を聞くくらいのことはできるよ。
・イッスンスリーについてのスタンス
どれだけ強くなろうとヴィランが自分より弱い保証なんてない、要は自分より強いヴィランと戦う機会が多い、それだけのことさ。
一般人と変わらない戦闘力しかなくても人々を守ることができれば、少なくともその人達にとってはヒーローだと、私はそう思ってるよ。あとはそのために何ができるか、何をするべきか……そういうことを考えるのはお任せするよ、司令?
●
コンコンと、部屋をノックする音が響く。
「どうぞ」
カモネギ司令が返事をすると、扉を開き入って来たのは、奏だった。
「お邪魔するよ。今、時間いいかな?」
「ああ、問題ありませぬ。貴殿は訓練は別行動で御座いますかな?」
食事が終わり、イッスンスリーの三人と、ついて行くと言った猟兵は外へランニングに出かけている。その後、戻ってきたらまた就寝時間までわいわいと模擬訓練の予定だ。
司令官は模擬訓練までは基地で情報整理しているのだった。
奏は眼鏡を押し上げながら、彼の問いに首を振って答える。
「私の戦い方は特殊な武器が前提だから参考にはならないよ。それにこんなものは真似るべきじゃない」
「それは……」
昼間の、彼女の戦い方を思い出す。
確かに血と臓物を花吹雪のように派手に浴び、撒きながら戦っていた姿は、確かに思い出すとぞくりとするが……。
だが、それはそれとしても彼女は自分たちの恩人だ。
それに、見た目の凄惨さはあるものの、彼女自身の強さもまた本物であることは確かで。
司令官が改めて口を開こうとするのを見て、奏は先に口を開く。
「ま、そんなことを話に来たんじゃないさ。と言っても、アドバイスなんて偉そうなことは言えないけど、同じヒーローとして話を聞いたり、多少の心構えは伝えられるかなと思って」
遮られた言葉に、フェアリーの老人は、ううんと喉の奥で唸って頷き、それ以上の言及は止した。
「忝い、“スプラッター”。貴殿の厚意に甘えさせて頂く」
仲間たちが戻ってくるまでの短い間、老人は少女に、彼の司令官としての考えや、ヒーローゆえの悩みについて話し、彼女も彼女なりの考えを述べる。
その全てがすぐさま悩みや実力的な問題を解消するわけではないが、司令官と言う立場上、なかなかチームメンバーに相談できない老人にとっては、誰かに考えを聞いてもらうだけで十分にありがたいことで。
俄かに部屋の外が騒がしくなる。
どうやら皆が戻って来たようだ。司令官が、時計を見てはっとする。
「おっと、ついつい自分だけで話をし過ぎてしまった。申し訳ない」
「いや、言ったとおり私は話を聞きに来ただけだからね。役に立てたかな?」
「うむ。御陰様で自分の考えを整理することができましたぞ」
「それは何よりだ」
言って、ダークヒーローは腰を上げると、それじゃ自分はそろそろと言って扉へと向かう。
戸を開き外に出る前に、一度振り返った。
「……物の見方の話だけれど」
「?」
「どれだけ強くなろうとヴィランが自分より弱い保証なんてない、弱いというのは、要は自分より強いヴィランと戦う機会が多い、それだけのことさ」
少女はヒーローチームの頭脳へと、滔々と言葉を告げて。
「一般人と変わらない戦闘力しかなくても、人々を守ることができれば、少なくともその人達にとってはヒーローだと、私はそう思ってるよ」
そこまで言うと、少女はドアノブに手を掛ける。
背を向けて、振り向かずに。
「あとはそのために何ができるか、何をするべきか……そういうことを考えるのはお任せするよ、司令?」
パタンと扉が閉まり……、
去った少女の背を思い出して、司令官は思う。
――人々を守ることができれば、少なくともその人達にとってはヒーローだと、私はそう思ってるよ――
(うむ、誠……だから“スプラッター”。儂らを助けてくれた貴殿もまさしく、)
大成功
🔵🔵🔵
榎・うさみっち
【澪(f03165)と!】
イッスン達に特訓をしてやるぜ!
弱いお前らの大きな武器、『チーム』であることだ!
俺や澪も一人では戦い向きじゃない
見ての通り俺は超ちっさいし澪もパッと見はタダの美少女だ
そんな時は誰かと協力し不足を補いながら戦ってきた!
例えば俺は小ささと逃げ足の速さを活かして囮になったりな
お前らも何かしらそれぞれ個性があるはずだろ?
すばしっこいとか遠距離攻撃が得意とか冷静だとか
そこを伸ばして戦いではそれぞれの役割をこなす事が大事!
次は実践練習だ!
【指定UC】で大量のせみっち召喚
ミニ澪と共にイッスン達と模擬戦だ!
時には1匹ずつ、時には一斉にけしかける
イッスン達がいい動きをしたら褒めて伸ばす!
栗花落・澪
【うさみっち(f01902)と】
誰がただの美少女だ
うさ耳を両手でうりうり捏ねつつ
まぁでも前戦向きじゃないことは確かだね
僕は魔法主体なのと、その、催眠と……誘惑がね?
意識はしてないんだけど、得意みたいで…
だから僕も囮や援護が多いかな
役割分担
あとは焦らず冷静に
弱点や攻撃の軌道を見極める事が大事
実践
【指定UC】で大量の分身召喚
卵型澪はミニ澪達の盾役
ミニ澪達は【全力魔法】で
氷の足場凍結
光の視界妨害
【催眠歌唱】の足止め等
視界が悪い時は音をよく聞いて
体勢が崩れても足技なら勢いを生かせる
催眠はそれこそ意思の強さが大事
音を遮断しても気配で…っていうのはまだ難しいだろうから
まずは負けない意思を鍛えるとこからね
●
日が明けて翌早朝、再びイッスンスリーたちはシミュレーションルームへと集まっていた。
目の前に立つのは、宙に浮かび仁王立ちしているうさみっちと澪だ。
「朝早くから付き合ってもらってすまない。ありがとう」
礼を述べる四人に、澪は気にしないでと手を振って。
予知では“間を空けて”次のオブリビオンが出現すると言っていた。
(昨晩は何も起きなかったから、起こるとしたらきっと今日……)
事件の前に、彼らに伝えられるべきことは伝えなくてはならない。
それなら、多少の早起きも已む無いだろう。……隣のうさみっちは、まだ少し眠そうに欠伸をしているけれど。
むにゃむにゃと寝惚け眼をひと擦り。
うさみっちは、常の気だるそうな目でイッスンスリーを見る。そして、
「いいか? 昨日も他の奴らから聞いたと思うが、弱いお前らの大きな武器、それは『チーム』であることだ!」
四人がしっかりとうさみっちを見つめ返して、頷く。
心得ているという顔だ。うさみっちも腕を組み、うんうんと頷きながら。
「俺や澪も一人では戦い向きじゃない。見ての通り俺は超ちっさいし澪もパッと見はタダの美少女だ」
「誰がただの美少女だ」
すかさず澪がフェアリーのうさ耳を掴み、両手でうりうりと捏ね始めた。
「まぁでも前戦向きじゃないことは確かだね」
言い方はともかく、言葉の内容には同意して。
「ぴゃーあんまり乱暴にいじるなよぅ……っ。 こほん、そんな時は誰かと協力し不足を補いながら戦ってきた! 例えば俺は小ささと逃げ足の速さを活かして囮になったりな」
「僕は魔法主体なのと、その、催眠と……誘惑がね? 意識はしてないんだけど、得意みたいで……だから僕も囮や援護が多いかな」
「なるほど」
「なるほど」
「なるほど」
「なるほど」
「なるほど」
「なるほどってどういう意味!? っていうか、さりげなく混ざらないで、うさみっち!!」
真顔で納得されるのは、自分で言ったんだけど納得いかない!
澪が抗議するのを、うさみっちがまぁまぁと手で諫め。
「まぁ、澪の誘惑❤は一旦置いとくとしてだ」
「もう置いたままでいいからね」
幾分、むすっとした顔で澪が言うのも聞こえぬ振りして、うさみっちは続ける。
「お前らも何かしらそれぞれ個性があるはずだろ? すばしっこいとか遠距離攻撃が得意とか冷静だとか。そこを伸ばして戦いではそれぞれの役割をこなす事が大事!」
「そうだね。役割分担と、あとは焦らず冷静に。弱点や攻撃の軌道を見極める事が大事だよ」
昨日、他の猟兵からも十分に聞いているだろうけどね、と言いながら。
予習復習も大事なこと。それを一通り済ませたのなら、次にやることはただ一つ。
「よぉし! というわけで、次は実践練習だ! 配置につけ、野郎どもー!」
「望むところだ!!」
威勢のいい返事を聞くや、うさみっちと澪それぞれがユーベルコードを発動する。
「言ったな! いけー!! せみっち!!」
「頼んだよ、僕の分身!」
掛け声に合わせて登場したのは、リアルなセミの造詣を模したうさみっち軍団と、きゃぁきゃぁと可愛らしい声を上げながら飛び出したミニ澪たちだ。
「まずは小手調べと行くぜ!」
言葉のとおり、召喚した多数のセミっちや澪たちの大半は待機させ、少数でイッスンスリーの動きを確かめていく。
まだまだぎこちない動きはあるものの、昨日に比べて格段に統率が取れ、隙も小さくなっているのが見て取れて。
(ほほう、やるじゃねーか)
「だが、まだまだ! もっとレベル上げていくぞ!! 澪!!」
「うん、分かってるよ」
うさみっちの視線に、澪がアイコンタクトを返す。
うさみっちはセミっちの数を増やし、澪はミニ澪たちそれぞれに魔法や歌唱の能力を使うよう指示を飛ばす。
「!! 足元が!!」
氷ついた床に足を取られ、思うように動けなくなったイッスンスリーを見て、うさみっちがまるで我が手柄のように胸を張った。
「どうだ、イッスンスリー! これが澪の《極めて小さい天使の物量アタック(キワメテチイサイツユリンノカワイイアタック)》だ!!」
「うさみっち!! 何で言うの!?」
っていうか、ユーベルコードの名前いつ知ったの!?
「今だわ!!」
澪が視線を逸らした一瞬の隙に、ピンクがレーザー銃を放つ。
「っと、そうはいかないんだ。ごめんね?」
一瞬、視線は逸らしたものの、警戒までは解いていない。卵型のミニ澪が澪本体とレーザーの間に割り込み、主人を庇った。
「くっ。手ごわい……!」
「でも今の動きは良かったぞ!! その調子で隙は逃すな!!」
休憩を挟みながらも、みっちり二時間は特訓していただろうか。
何度目かの休憩に入り、澪が三人へと声を掛ける。
「視界が悪い時は音をよく聞いて。体勢が崩れても足技なら勢いを生かせるから。催眠はそれこそ意思の強さが大事。音を遮断しても気配で……っていうのは、みんなはまだ難しいだろうから。まずは負けない意思を鍛えなくちゃね」
澪が自分の取った攻撃に対する手段を説明しているときだった。
基地内に、けたたましいアラーム音が響き、天井に備え付けられたランプが赤く点滅し回り始めた。
「ヴィランの出現か!!」
イッスンスリーが素早く立ち上がる。
「すまない、訓練はここまでのようだ! すぐに出動しなければ!!」
「うん、そうみたいだね。僕たちもすぐ向かうよ」
一時も早くと駆けだした四人を見送り、うさみっちが澪を見上げる。
「ようやく来たな」
「うん、僕たちも本番に向かわなくちゃね」
ヴィラン退治はヒーローの仕事。
では、猟兵の仕事は――もちろん、オブリビオン退治だ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 ボス戦
『レオバルト』
|
POW : 修羅剣鬼の構え
【大剣を構える】事で【高速戦闘モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : 超遠隔操作術
技能名「【テレキネシス】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ : 光剣一刀両断
自身からレベルm半径内の無機物を【巨大な光の剣】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ミルフィ・リンドブラッド」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
【追加OP及びプレイング受付開始案内は、11日(土)朝8時30分以降予定です。受付まで、もう少々お待ちください。】
●
イッスンスリーの三人と猟兵たちが駆けつけると、意地の悪そうなダミ声が聞こえてきた。
「へへへ。やーいやーい、オレ様の実力思い知ったか!」
続けて、甲高い声とどこか頼りない声がやんややんやと囃し立てる。
「ほーんと、偶にはやるじゃない!」
「さすがでヤンスねぇ〜」
現場は広い公園。その中心に、おかしな建造物……いや、よく見ればそれは、簡易に作られた檻だと分かるだろう。
中には閉じ込められてしまった子どもたち複数名が困り顔で「ここから出してー」と口々に叫んでいる。
その近くにはヴィランと思しき姿が三つ。
恐らくは、バイオモンスター、バーチャルキャラ、ヤドリガミだと思われるのだが……?
「む、何だあいつら」
ヌレネズミブルーが驚きに思わず呟いた。
「何だか……」
ピンクもまた、言葉を選ぶようにちょっと迷いながはも、
「すごくちっちゃいわね」
しかし、最終的に他の言葉は見つからず、正直にそう言った。
彼女の言葉の通り、そのヴィランたちはちんちくりんだった。本来なら、どの種族も人間以上の大きさはあろうはずなのに、具体的にはイッスンスリーと同じぐらい小さかったのだ。
「大きさは関係ない。人々に悪さを働くなら、反省するよう懲らしめるまでだ!」
マケイヌレッドが飛び出して、その通りだと残る二人も続く。猟兵達も様子を見ようかと思ったその時、広場の入口の方で大きな音が鳴った。
何かが落ちてきたらしい。土煙、その方面にいた人々が慌てて逃げていく声。
次第に落ち着いていく土煙の向こうで、ギラリと光を反射するものがある。それは物々しい足音を引き連れて、猟兵たちの前に姿を現した。
「弱さは、“悪”だ」
白銀の長剣。同色の鎧と、端が破れた白いマント。
過去、ヒーローとしてこの地に立ったレオバルドは、今やその頃の面影を見ることは出来ず。
悪を憎んだ英雄は、今はその歪んでしまった価値観で悪を裁き続ける。
「自身の身すら守れない弱者に、生きている価値はない。奴らは、自身の弱さを理由に、他者すら闘争に巻き込む」
ガシャリ。
オブリビオンは、迷うことなく真っ直ぐに歩いてくる。
「裁かねばならない」
その体中に、悪意と殺意を漲らせて。
この場における実力的弱者は三つ。
檻に閉じ込められ、救出を待つ市民たち。
イッスンスリー同等程度の強さと思われるヴィラントリオ。
猟兵たちからの特訓により、多少底上げされたものの、まだその力は一般ヒーローに及ばない彼らーーイッスンスリーの三人。
そして、猟兵たちは、そのうちの一つは、敵を前に退かないことを知っている。
後方から聞こえた音に、レッドが振り返り、並のものではない存在が出現したことを見てとる。
アレは、自分たちでは到底叶わないだろう。
対峙する猟兵たちの様子からも、彼らがそれと戦うためにここにいる事が理解できた。だから、レッドは叫ぶ。猟兵たちに向けて。
「みんな!!」
「あのヴィラン三人組と、市民の保護は俺達に任せてくれ!!」
ドンと胸を叩いてより声を高く張り上げる。
「必ず、彼らを倒して市民を助け出してみせる!! だから、“そちら”は君たちにお願いしたい!!」
今、自分たちにできる最も懸命な行動は、人々を守り、足でまといにならないようにする事。それだけだ。
力がないものは、ないものなりの戦い方がある。
沸き起こる様々な思いを拳にぐっと押し留め、レッドは言った。
「すまない、任せた!!!」
そして、猟兵たちとオブリビオンに背を向け、ヴィランへと向き合う。
一方、背を向ける等という考え自体が存在しない世界の仇敵は、尚も進んでくる。
「退け。猟兵たちよ」
「俺は、“悪”を滅ぼさなければならない」
その瞳に、既に義は無くーー。
荒・烏鵠
@WIZ
そうかい、じゃあアッチのコトは『信頼して任せる』さ。
問題はコッチだ。
ウーエ、出たよWIZに物理攻撃持ってくる奴。こちとらか弱いPOW最弱だってェの、労れよなァ。
ですンで、オレは敵の弱体化に力を注ぎましょーか。
お馬サン、へるぷみー!あのでっかい剣にむかってアタックだ!
剣の腹にウマの全力体当たりだ、軌道くらいはそらせンだろ。ついでに周囲を花で埋める。花は有機物だから剣にゃならねー。時間が経てば立つほどお馬サンが強くなるぜ。
向こうが切れてお馬サンぶった切ったならソレはソレ。その瞬間にアンニャローの胴が肉々しい花瓶になるだけサ。
オレは全力で逃げ回る。足引きも立派な戦いさ。仲間が居ンなら、だが。
ビスマス・テルマール
どう言う事情があったかは存じませんけど
心の無い正義は只の暴力と言う言葉がありますが
今の貴方が正にそうですよ
●POW
事前に『料理』した
なめろうを食べ『フードファイト・ワイルドモード』を発動
戦闘能力と共に上がったであろう反射神経と速度で相手の高速戦闘モードに対抗
味方と連携し
『誘導弾・属性攻撃(餅)』を込めた弾幕をクイックドロウを併用した『一斉射撃』をばら蒔き、動きを制限
常に『情報収集』で癖や動きを観察し『第六感』も交え攻撃を『見切り』
かわし損ねた攻撃は『属性攻撃(餅)を含んだオーラ防御で盾受け』
手持ち武装に『鎧無視攻撃・2回攻撃・属性攻撃(餅)』を加えた『カウンター』を
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
ユーリ・ヴォルフ
アドリブ大歓迎!
弱さは悪か…弱き故に道を踏み外す者もいるだろう
だがイッスン達は実力は未だ発展途上でも
強く熱い、決して揺るがない正義の心がある
その強き正義の心を潰すというのであれば…
断言しよう。貴公こそが、悪であると!
炎の騎士となり、炎霆を構え立ち塞がる
イッスン達の元へは行かせはしない!
対抗すべく【絶影】で竜の闘気を纏い進路妨害
『先制攻撃』からの『吹き飛ばし』
武器は『盾受け』で弾き『串刺し』を繰り出す
流石に一撃が重い
元は素晴らしきヒーローだったのだろう
悪に落ちてしまった今が惜しい
もっと早くにイッスン達に出会えていたら違ったのだろうか
イッスン達はこの世界のヒーロー、希望そのもの
害為す者は許さない!
栗花落・澪
力だけが全てじゃない
心の強さも大事じゃないの?
勿論、生きる為に誰かを頼り
時には逃げる事も勇気だよ
貴方はなにもわかってない
檻の側で【オーラ防御】を張りつつ一般人に
必ず守る
だから、応援してくれる?
もちろん無理はしなくていい
それでも、恐怖を耐え抜いて
貴方達が呼んでくれるなら
それが僕達の力になる
★爪紅を手榴弾に変化させ投擲
爆発ダメージ+爆煙で視界の阻害
足元に【破魔】を宿した★どこにでもある花畑を精製
【高速詠唱+風の属性攻撃+全力魔法】で
破魔の花弁を斬撃の様に飛ばし煙ごと払う遠距離攻撃
敵の攻撃はオーラ防御の【範囲攻撃】で自分より一般人を【庇う】事優先
UCで味方には癒しを
敵には【催眠歌唱】の効果で弱体化
夏目・晴夜
弱さは悪だなんて、笑わせないでください
強きが弱きを守るのは当然の世の摂理でしょうに
『自分は弱者すら守れない程度の強さしかありません』という、情けなくてみっともない負け犬の主張にしか聞こえませんよ
「喰う幸福」で呪詛を伴う衝撃波を大量に放ったり、
高速移動で一気に接敵して妖刀での【串刺し】【傷口をえぐる】等で
ジワジワと蝕むように敵を追い詰めて参ります
自身の主張の為に戦う貴方と、自身や他者の命の為に戦う我々と
一体どちらが正義で何が悪なのでしょうね
無事に終わったなら、今回最も人々に褒められて感謝されるべきは
素早い判断を下し懸命に保護に動いたイッスンスリーさん達ですね
ご褒美にまた訓練して差し上げましょうか
榎・うさみっち
※他猟兵と共闘希望
今のイッスン達なら遠慮なく任せられそうだな!
だからこっちも任せとけー!
【しんそくのうさみっちエスケープ】発動!
敵の視界で素早くうざったく飛び回り気を引く
超強化した技能【見切り】で敵の攻撃の前動作や軌道を見極め
【逃げ足】【ダッシュ】でかわしていく
その際「ぴゃあああ殺さないでー!!」など弱音を吐き
命からがら避けた「フリ」をする
逃げ惑う弱者アピールという【挑発】をすることで
敵は俺を「悪」とみなして標的としてくるだろう!
自分に注意を向けて他猟兵が攻撃をするチャンスを作っていく囮作戦だ!
真正面から正々堂々と立ち向かうだけが戦いじゃないんだぜー!
これが俺流の逃げるが勝ち戦法だ!
千栄院・奏
雑だよね、理屈が。
たぶん本来の君はそういう人間でなく、オブリビオンとなって歪んだせいで雑な理屈を振り回すようになったんだろうけど……反論も面倒なくらい雑だ。
だから私から君へ言うことはない。ただ君を骸の海に還そう。
根源の力を全開放、【破壊者たる『スプラッター』】で迎え撃とう。
理性がなくなって狙いが大雑把になるのは難点だけど、
・敵のUCがスピードを増大させるものであること
・敵は今でも「正義」であり、弱者を「他者を闘争に巻き込む」という理由で「悪」と認識しているので、能動的には第三者を巻き込みにいくことはないであろうこと
から使用に堪えると踏んだ。
仕事熱心なのはいいことだけど、死後くらいは休むといい。
メルノ・ネッケル
OKや、"こちら"は任された!
……だから、"そちら"は任せるで!
……さて、アンタの相手はうちらやで。
守るべきもん前にして、退けと言われて素直に退くならヒーローなんてやっとらん。
『狐の松明』、真の姿と共に発動!
「行くで、非道に堕ちた元英雄。"火器狐"、お相手仕る……!」
高速で動く相手に対して、拳銃で中距離戦は分が悪い。
ここは、敢えて距離を詰める!
懐に飛び込めば、大振りの大剣には僅かな隙が生まれるはずや……そこを突く!
【勇気】を持って突っ込め、うち!
肉薄するまでの攻撃は【見切り】、ギリギリで躱す!
限界まで近づいたら、奴に銃口を押し付け【零距離射撃】!
全弾発射、狐火旋風のおまけ付きや!
八幡・茜
イッスンスリーのみんな! なんだかこの短期間でとてもヒーローらしくなったわね!
ふふふ、これは後でこの美人なおねーさんがなでなでしてあげなくちゃいけないわね!
レオバルトさんになぎなたで接近戦を挑むわね。おねーさんこう見えてなぎなたもちゃんと使えるのよ?
踊る様に鈴を鳴らしながら切り結び、少しでも恐怖を与えられたら手を掴んで神雷を使うとしましょう
相手の攻撃は先読みしてなぎなたで軌道を逸らす感じでいなすけれど、致命傷にならない程度の傷なら気にしないわね!
確かに弱さは悪かもしれないわね!
ふふふ、でも悪でも良いいのよ、おねーさんがまとめていい子いい子してあげるから!
あなたにも、そういう人が居たでしょう?
●
小さなヒーローたちの言葉。
最初に反応したのは赤狐だった。彼は、くっと笑いを零す。
(そうかい、じゃあソッチは『信頼して任せる』さ)
胸中でのみ呟けば、イッスンスリーに背を向けて。
茜もまた、常の自信に満ちた笑みを浮かべながら、後方へと視線を向ける。
「イッスンスリーのみんな! なんだかこの短期間でとてもヒーローらしくなったわね!」
「ああ、今のイッスン達なら遠慮なく任せられそうだな!」
茜の言葉に、うさみっちが力強く頷いた。
小さな手をヒーロー達へとぱたぱた振り、「こっちも任せとけー!」と応じる。
天に向けて突き立てられた親指は、メルノのもの。
「OKや、"こちら"は任された! ……だから、先輩ら、"そちら"は任せるで!」
うさみっちとメルノ。二人の声に、ビシッとポーズを決めるのを眺め、茜は曲げた小指を唇に当てた。
「ふふふ、これは後でこの美人なおねーさんがなでなでしてあげなくちゃいけないわね!」
「そうだな。だがその前に……」
既に終わった後の事を考える茜に、ユーリが前方を見据えたまま、言葉を滑り込ませた。
「おう、元英雄サンとやらを送り返してやらなきゃなァ」
盆にはまだ随分と間があるが。
古狐の目が、すぃと細められた。
●
「……さて、アンタの相手はうちらやで」
「俺は貴様らに用はない」
とは言うが、互い、猟兵とオブリビオン同士。避けて通る道がないことは、言うまでもない。
「悪を庇うならば、それもまた悪。まとめて断罪するだけだ」
ガシャリと鳴った足音は、レオバルドのものだけではない。
マゼンタカラーの足音もまた、負けじと前へと進み出る。
「どう言う事情があったかは存じませんけど……心の無い正義は只の暴力と言う言葉がありますが、今の貴方が正にそうですよ」
厳しい眼差しでビスマスがレオバルドを見据える。
空色の美しい宝石に映る像は歪んだ白銀。
「悪を許容する心など、必要ない」
「力だけが全てじゃない。心の強さも大事じゃないの?」
高い少年の声が、涼やかに通る。
「力の弱さは、心の弱さじゃない。生きる為に誰かを頼り、時には逃げる事も勇気だよ。頼ることも、逃げる事も、それだけでは絶対に悪なんかじゃない」
「詭弁だな。弱さを正当化するための言葉は、俺には通じない」
通じない。
そうだろう。オブリビオンとして過去に呑まれた以上、彼に言葉は通じないのだ。
けれど、悔しい。
辛いこと、苦しいことを支え合って生きること。
誰かに助けられて生き、だから、誰かを助けて生きる。それは、とても温かなことなのに――。
少年は、目を伏せ、首を小さく左右に振った。
「貴方は、なにもわかってない」
「詭弁? 正当化?」
ハ、と、鼻で笑う声が空気を斬る。
「弱さは悪だなんて、笑わせないでください」
ヒュンと、妖刀が宙を斬る。懐刀の如く刀身の短い魔の刀は、主人の手にぴたりと収まりその切っ先を敵へと向ける。
「強きが弱きを守るのは当然の世の摂理でしょうに。『自分は弱者すら守れない程度の強さしかありません』という、情けなくてみっともない負け犬の主張にしか聞こえませんよ」
三回回ってワンと鳴いたら……いや、許せませんね。やっぱり。等と、本心とも冗談ともつかぬ言葉は、刃同様の鋭さで。
「弱さは悪か……弱き故に道を踏み外す者もいるだろう」
それ自体は認めざるを得ない。ユーリが拳を握りしめると、グローブが摩擦する音が漏れた。
「だがイッスン達は実力は未だ発展途上でも、強く熱い、決して揺るがない正義の心がある。その強き正義の心を潰すというのであれば……」
ユーリの翼、燻ぶるように、その羽根の皮膜に留まっていた炎が勢いを増す。
燃える翼は炎と化してドラゴニアンの青年の手元へと収束したかと思えば、三叉の槍へと姿を変えて。
魔槍【炎霆】を手に、炎の騎士の面持ちとなったユーリの瞳もまた、熱された鉄のような輝きを帯びる。
「断言しよう。貴公こそが、悪であると!」
「守るべきもん前にして、退けと言われて素直に退くならヒーローなんてやっとらん」
ポッ、ポッ。
狐火揺れる。青が宙に、踊るように浮かび。
それは、蕾の開くが如く。
一本の尾がぐるりと大きく円を描いたかと思えば、その影より生じた、二尾、三尾――。
合わせて九の、火の尾。
ヒーローネーム『火器狐』……メルノ・ネッケルの真の姿。
ユーベルコード≪狐の松明≫によって強化された青い炎はその数を増やし、メルノの周囲を二重三重にも旋回する。
「行くで、非道に堕ちた元英雄。"火器狐"、お相手仕る……!」
「雑だよね、理屈が」
ハァ、と溜息。眼鏡を押し上げ、その奥の緑は、何の感慨もないように、ただ、ただ、冷ややかに敵へと向けられる。
まるで、単なる作業のように。奏は慣れた手つきで武器の駆動を始める。
「たぶん本来の君はそういう人間でなく、オブリビオンとなって歪んだせいで雑な理屈を振り回すようになったんだろうけど……」
ブォンと、刃が動き始める音は、再びの溜息にも似て。
「反論も面倒なくらい雑だ」
奏が、両手に携えた剣の内、その一方を、静かに持ち上げ、レオバルドへと向けた。
「だから私から君へ言うことはない。ただ君を骸の海に還そう」
●
猟兵たちの言葉を聞いたその上で、歩みを止めることないレオバルドを熱が阻む。
「イッスン達の元へは行かせはしない!」
ユーリの体、指先から、髪の一本に至るまで、隅々へと竜の闘気が行き渡り、包み込む。
これまでのイッスンスリーとの共闘や訓練を通じて生まれた気持ちは、ユーリの彼らを守ろうという固い意志にストレートに上乗せされる。
≪絶影≫による戦闘力増強の効果は幾倍にもなり、地面を蹴った瞬間にユーリの姿は視界から消えたかと錯覚するほどに。
一瞬にして詰めた距離。
衝撃波を伴った槍の一閃は、剣を構えたレオバルドをも大きく後ろへと吹き飛ばした。
地面にレオバルドの重量を示す二本の線が溝となって引かれ、距離は再び開く。
「……」
元英雄は、言葉無く再び剣をしかと構えた。
途端、強行突破と言葉で示すかのように、地を蹴り、驚くべき速さで猟兵たちへと真っ向から距離を詰める。
「あらあら! そんなに焦れないでもいいのよ?」
雨降る音、骨折る音を引き連れて。
狐が前へと踊り出る。
「おねーさん、こう見えてなぎなたもちゃんと使えるのよ?」
戦闘のピリピリとした空気も何処吹く風と言わんばかりに、片目を閉じてみせると、茜はなぎなたを振るいレオバルドの斬撃をいなす。
そのまま、くるりと回転させた柄で敵の頭部めがけた打撃を狙うも、それは身を引きかわされて。
(さすがに素早いわね!)
なぎなたを振るうたびに、袖の鈴が笑うように鳴り響く。
高速戦闘モードとなったレオバルドの攻勢は烈火の如く、鍛え上げられた剣術は打ち据えるようにも、なかなか手強い。
そこに白い弾幕が降り注ぐ。
「茜さん! 支援します!!」
持参していたなめろうを食べ、≪フードファイト・ワイルドモード≫を発動したビスマスによる支援射撃だ。
ただし、弾丸は通常のものではない。
何と、餅の属性を付与した弾丸だ。
敵に着弾すれば、その動きを封じ、地面に落ちてもトリモチのように足を封じる支援弾。
例え当たらなくとも、足元にも注意を払わねばならず、敵の動きは大きく制限されることとなる。
「ありがとう! 助かるわ!!」
茜のなぎなたが、レオバルドの鎧に傷を刻んだ。
一般的な市民から見て変わりなくとも、猟兵から見ればレオバルドの動きが衰えたことは明白だ。
速さに秀でた者から見れば、特に。
晴夜は隙を逃さず、瞬きの間にレオバルドに接近すると、甲冑同士の継ぎ目や茜のつけた傷を狙いすまし、攻撃を重ねる。
背後から。振り下ろされた刃を避け生じた隙から。
確実に敵の力は削いでいるが、何せ箍が外れ狂気に堕ちた『正義の徒』だ。まだ怯むことなく、足を止める様子もない。
妄執に取り付かれた人間ほど性質が悪いものも少ない。
(まったく……これだから頑丈な輩は……)
人狼は、眉間に皺寄せ、不機嫌そうに幽か、唇を尖らせた。
素早い動きを封じようと、テレキネシスで操られた公園内のベンチや樹木が晴夜を圧し潰そうと四方から迫る。
「でーやぁーっ!!」
その時、うさみっちがオブリビオンの眼前に飛び込み、視界を遮った!
予期せぬ妨害にテレキネシスの動きが乱れる。
その隙を見逃す青年ではない。晴夜は素早く距離を置く。
「ふふん、どうだ! これぞ≪しんそくのうさみっちエスケープ≫!!」
レオバルドの目の前で、高速の反復横跳びを行い、やーいやーいと煽っていく。
オブリビオンの反応は薄い。
「何だよ。つまんないヤツだな」
大げさにやれやれと肩を竦めて頭を振る。チャキとレオバルドが剣を握り直す音が聞こえるや否や今度は、
「ぴゃあああウソウソ嘘です殺さないでー!!」
空中で右往左往。大きな声でぴゃーぴゃーと叫びたてて逃げ回る。
テレキネシスで操作された大小様々な物がうさみっちへと向かい放たれるが、あるいは転んで、あるいは寸でのところで物陰に隠れて、幸運をも味方につけて、何とかかわしていく。――もちろん、全て込みでの演技なのだが。
(しめしめ、うまく引っ掛かってくれてるな!)
バカめ! 等と、アンニュイフェイスの裏側でうさみっちが思っているなど、オブリビオンは露とも知るまい。
とはいえ、逃げて飛び回るのは意外としんどい。
(囮作戦、うまく伝わってくれよー!)
あっちこっちそっちと飛び回るうさみっちの動きに、レオバルドが視線を横に逸らす。
瞬間、
(今や!!)
メルノが銃を携え、敵への距離を詰める。
導火線についた火の如く、尾の赤引いて。
(臆すな……臆したら、斬られる!)
一歩でも引けば、半歩でも踏み込む歩幅を狭めれば、
高速の斬撃は容赦なくこの身を断つだろう。
(勇気を持って突っ込め、うち!)
九つの尾は、強い狐の象徴だ。この尾に誓って、心で負けるわけにはいかない。
(――うちは、"火器狐"や!!)
銃弾は真っすぐに突き進むのみ。
瞬間の集中。
深く踏み込まれた間合いは、剣を振るうには近すぎる。
代わりに振るわれた拳を皮膚一枚でかわし、辿り着いたその場所で、火器狐はぴたりと銃口を白銀に当てた。
ガァン!
銃声と金属と弾丸の衝突音が重なる。
分厚い鎧に阻まれようと、間髪入れず、二発三発、突きつけた銃口は決して離さず、リボルバーに込められた銃弾を同じ場所に叩き込む。
一発では貫けなくとも、合計五発の銃弾は鎧を変形させ、穴を穿ち、広げ、そうして六発目にして、
「――っラストぉ!!」
空けた風穴。
オブリビオンの体が大きくよろめく。
「狐火旋風もおまけで付けといたる!」
威力を増した狐火が直撃し、ぶすぶすと焦げた匂いが立ち込めた。
うさみっちが、ピューイと指笛を鳴らした。
「真正面から正々堂々と立ち向かうだけが戦いじゃないんだぜー!」
勝ち誇るように、垂れたうさ耳の先がぴこぴこと弾む。
「これが俺流の逃げるが勝ち戦法だ!」
ドヤ!
自称ゆたんぽの精は、空中でふんぞり返った。
●
「必ず守る。だから、応援してくれる?」
後方。オブリビオンの攻撃に万一にも巻き込まれないように。
一般市民の捉えられている檻との間に立って防御の力を展開しながら、澪は後ろを振り返って市民へと尋ねる。
イッスンスリーは、件の三悪党と交戦中。
てんで足並みの揃わない三人組に対し、状況を分析したカモネギ司令の指示によって、役割分担しつつ、敵の対応しにくい位置へちょこまか動き相手を翻弄しようとしているイッスンスリーは、もう唯の弱々ヒーローではない。
少年は、誰にともなく頷くと、また市民に声を掛ける。
「もちろん無理はしなくていい。それでも、恐怖を耐え抜いて貴方達が呼んでくれるなら……」
澪が一旦言葉を止めた時、「もー! こいつら何なのよー!」と叫ぶヴィランの声が響いた。
「それが彼らの、そして僕達の力になる」
その声があるのなら、ヒーローは負けたりなんかしない。
●
業を煮やした――のだろうか。
足がトリモチに捕らわれる事も厭わずに。
オブリビオン『レオバルド』の動きが変わった。
地面にくっついた足は、地面ごと力づくで引きはがす。
剣にくっつき切れ味が鈍ったのなら、力づくで圧し潰す。
ビスマスの言う、「心無き正義が暴力」であるならば……確かに、彼の姿は嵐の如き暴力の化身と言えただろう。
振るわれた刃を弾き、代わりに突きを見舞わせながらも、ユーリは短く息を吐き、腕に残る力を吐いて逃がす。
(流石に一撃が重い)
衝撃をいなし、弾いたとはいえ、幽かに手には痺れが走る。
(元は素晴らしきヒーローだったのだろうな。悪に落ちてしまった今が惜しい……)
もっと早くにイッスン達に出会えていたら違ったのだろうか。
時間は戻る事がない。
考えても仕方ないとは言え、かの英雄が未だ英雄として健在であれば同じ志高いヒーロー同士、認め合う事が出来たに違いないと言う思いは消えなくて。
「だが」
現実として、今は“そうではない”のだ。
彼はいま、オブリビオンとして……世界の敵として、ヒーローを、この世界を脅かしている。
ユーリの炎が消えることはない。
時間を経て尚、より熱く、緋く燃える刀身は、掠っただけで鎧をも融かす。
「ぐ、ぅ……!!」
「イッスン達はこの世界のヒーロー、希望そのもの。害為す者は許さない!」
「……悪は、希望たり得ないッ!!」
白い光が軌跡を残し、レオバルドの剣が振り下ろされる。
「ユーリさん!!」
咄嗟、澪が自身の髪飾りを外し、飾りの中心にあるおしべを引っ張ると、レオバルド目掛けて投げる。
声に横にユーリが横に引いたと同時、空中で髪飾りだったものは炸裂し、爆煙と土埃で視界が閉ざされる。
剣が斬り裂いたのは髪飾り。爆発で剣は弾かれ、ユーリの身に触れることはなく。
続けて、澪が聖痕に魔力を込めて、足元に花畑を生み出し、花弁を魔力で繰った風に乗せ一斉に放った!
だが、それと同時に、土煙を斬り裂き、巨大な光の剣が、澪へ向かって一直線に飛び出す。
「ウーエ、出たよWIZに物理攻撃持ってくる奴」
ゲェッと、冗談めかした軽口で、烏鵠がべーっと舌を出した。
「こちとらか弱いPOW最弱だってェの、労れよなァ」
言いながら、唱える言葉は祝詞のような。
宙にポンと花咲けば、其処から湧き出づるように伸びた蔓・蔦・枝が形を成す。
しゅるりしゅるりと絡まり合って、それはやがて、緑と茶に彩り溢れる馬となった。
立つ四つ脚から、緑が広がる。
「お馬サン、へるぷみー! あのでっかい剣にむかってアタックだ!」
鳴き声はなくとも、蹄に似た音は立派に馬のそれ。
駆ける地面を緑に染めて、駿馬は飛ぶように駆ける。
公園と言う立地上、周囲に植物は多く、また、澪も足元に花畑を精製しているこの条件下で、緑を司る馬は通常の倍以上の速さで戦闘力が高まっていく。
刃の先が澪に届く間際、光の剣の真横から≪咲き駆≫が勢い落とさずその軸を大きくずらした。
飛ぶ間にその歪みは益々大きくなり、澪の守る檻に傷の一つも付けることなく、剣は見当外れの方向へと突き立つ。
剣との接触で崩れた馬の一部に応じて、レオバルドの体にも歪な花が鎧の隙間を縫うように生えだした。
振り払う代わりに放たれる光の剣を、烏鵠は当たらねーよと避けながら。
攻撃のことを考えているならともかく、逃げることに集中している烏鵠に当たるはずもない。
「当ててくれてもイインだゼ?」
烏鵠はケラケラと声高らかに笑いながら、レオバルトに声を投げる。
尤も、自分に当たる前にお馬サンに庇ってもらうけどナ、と言えば。
「そしたら、その瞬間にテメーの胴が肉々しい花瓶になるだけなンで。そこンとこヨロシク★」
(いい頃合いですね)
オブリビオンのダメージの度合いを見ながら、晴夜が妖刀の背をひと撫ですると、≪喰う幸福≫を発動する。
晴夜の全身を禍々しい暗色がじわじわと侵食するように覆い始める。
途端、その重々しい怨念に反し、晴夜は重力等失ったかのようなスピードを得て。
音より、影より、素早いその動きは高速戦闘モードのレオバルドすらも大きく引き離して比するべくもない。
一歩の間に手も届かぬ程遠くへ、知らぬ間に吐息も聞こえるほど近くへ。
見えど触れられぬ、幻のようなその様は、纏う気配も合わさり悪鬼怨霊にすら見える。
そして、その一挙手一投足から生じる衝撃波が、レオバルドの蓄積された傷を広げ、苛み、じわりじわりと食んでいく。
「自身の主張の為に戦う貴方と、自身や他者の命の為に戦う我々と、一体どちらが正義で何が悪なのでしょうね」
何でも喰らう“悪”食に敵を喰わせながら、狼は仄めかした。
負ける。
悪に負ける。
そんなことはあってはならない。
そんな、ことは――。
「確かに弱さは悪かもしれないわね!」
あっけらかんとした声で、茜が言う。
「ふふふ、でも悪でも良いのよ、おねーさんがまとめていい子いい子してあげるから!」
悪で良いはずがない。
悪が良いはずがない。
目の前の銀狐には、善も悪も、関係がないようだった。
もっと言うのなら、彼女にはそんなもの“興味がない”ようだった。
「あなたにも、そういう人が居たでしょう?」
分からない。そんなものは。
手が伸ばされる。
悪にも敵にも、味方に向けるのと何一つ変わらぬ笑顔を湛えて。
得体の知れない感情、かつてあった筈の覚えていない、それは……。
怯んだ隙に取られた手。払う間もなく、女の背後に巨大な樹木の像が浮かび上がる。
神木から放たれた神の怒りが、死者の胸の中心を貫いた。
●
「ぐ、が……ッ」
オブリビオンが苦痛に呻く。
「グガアアァアァァアアァ!!!!!!!」
同時に起こる絶叫は、いや、咆哮と言う方が相応しかった。
「やれやれ、それが君の言う“正義”とやらの姿かい?」
咆哮に負けぬ轟音は、モーターとチェーンの立てる音。
「私も、人のことは言えないがね」
少女は薄ら笑う。
そうさ、私は『スプラッター』。
君の肉も骨も、矜持さえ、
バラバラの、ギタギタの、滅茶苦茶に斬り刻む者だ。
●
「アアァァァアァア!!!!」
≪破壊者たる『スプラッター』≫を発動し、根源の力すべてを開放した奏は、限界を迎え暴走を始めた敵と変わらぬ様相であった。
互いが互いに、敵と味方の区別なく、目の前に立つ者を全て斬り倒す魔獣となって。
片方が斬る。
片方が抉る。
片方が刺す。
片方が穿つ。
どちらのものともつかない血肉が周囲に飛び散り、目も背けたくなるような有様だ。
味方ですら、迂闊に手を出す事ができない。
永劫切り刻みあうのではないかとも思われる一進一退の攻攻も、けれど、如何に猟兵・オブリビオンといえど肉体には限界がある。
猟兵たちの与えたダメージに、レオバルドの体はとうの昔に限界を超えていた。
一方で、奏に与えられるダメージは、澪の癒しの歌により与えられる傍から回復される。
一対一ではなかった。
一対多。
彼にとっては、これもまた“悪”なのだろうか。
もう、聞けることはない。
「仕事熱心なのはいいことだけど、死後くらいは休むといい」
瞳に光を戻した少女はそう言って、無慈悲に両腕をクロスさせるように振るう。
今は昔の英雄の、胴体だけが地に伏して、骸の海の泡と消えた。
●
「大変な戦いだったが、皆が無事で良かった。それから、本当にありがとう」
縛り上げたヴィラントリオを横に、イッスンスリーが心配そうな視線を猟兵たちに向ける。
全員が全員無傷というわけではないが、それでも一般市民含めて被害はなかった。
市民も、檻に閉じ込められただけで被害も損害もないという。
「初勝利だな!」
これも俺達の特訓の成果だと、うさみっちがうんうん頷きしたり顔すれば、
「いえ、これも皆さんのお陰です」
「ああ、皆の動きに比べれば、このヴィランたちの動きは単純だし、ゆっくりだった。よく見て動けば、何ということなかった」
ピンクとブルーが控えめに。
けれど、その声に多少の喜びが滲んでいるのは隠せなかったが。
「ま、特訓後初戦闘でヴィラン捕獲できたっつーンなら、上々だろ。後は体作り同様続けていくこった」
烏鵠が言えば、力強く三人一緒に頷いた。
「うむ。特訓が実践に生きたのなら、これほど嬉しいことはない!」
ユーリも我が事のように喜んで。
茜は、宣言どおりに、イッスンスリー……特にケットシーのレッドをよしよし撫でている。
レッドは気恥ずかしそうではあるが、許してくれるおねーさんではないのだ。
「先輩らもよぉ頑張ったなぁ。カモネギ司令さんはどないやったん?」
『いやぁ……儂はまだまだ慣れていかねばなりませんなぁ』
「澪さんたちの特訓に比べたら数が少なかったとはいえ、三人相手だったから、司令は少しわたわたしていたんだ」
レッドがにゃーっと笑う。
スピーカーの向こう側、面目ないと照れる声が聞こえて、一同はくすくす笑う。
皆に癒しの力を注いでいた澪が、ふとその手を止めて、
「でも、本当におめでとう。まだまだこれからだけど、応援しているから」
頑張ってね。言って笑えば、律義にありがとうと頭を下げるちっこいの三人組。
「ええ、皆さんのヒーローとしての道のりはまだ始まったばかりですから!」
これからも切磋琢磨ですよ!
置き土産に予備のなめろうとアレンジレシピを手渡して、ビスマスも言う。
「ああ、大変なこともあるとは思うけれど、君達なら大丈夫さ」
『……うむ、スプラッター。貴殿もどうぞ御達者で』
「しかし、」
一通りの労いが終わったところで、灰色の毛並みの狼の声が話を切り替える。
ぱたりぱたりと狼の豊かな毛の尻尾が揺れ。
「このハレルヤの活躍あっての事ではありますが、今回最も人々に褒められて感謝されるべきは素早い判断を下し懸命に保護に動いたイッスンスリーさん達ですね」
「い、いやぁ。当然の働きをしたまでだ。そう言われると照れるな」
青年の言葉に、三人は頭を掻き掻き。嬉し恥ずかし、手に取るように分かって。
「いえいえ、謙遜は美徳ですが過ぎると無作法ですよ。受け取れる誉め言葉は素直に受け取っておいてください」
「そ、そうか? それじゃあ――」
と言ったところで、青年は意地悪くニヤリと目を細めた。
そんなことに気付かぬイッスンスリーの様子を眺めながら、こう続ける。
「という訳で――、ご褒美にまた訓練して差し上げましょうか」
びくり!
同時に固まった三人を見て、青年は益々楽しげに。
「い、いやいや! 晴夜さんも疲れているだろうし!!」
「いえ何、遠慮はいりませんよ。ええ、このハレルヤにお任せなさい」
じーりじーり。
にじり寄る狼に、追い詰められる鼠のように。
ふと、そこで、茜が気付く。
「あら? そう言えば、あの三人組は……」
視線巡らせれば、公園の入り口に、三つの影。
「やーいやーい!! ポンコツヒーローどもめ!! あっかんべーだ!!」
言うが早いか、ぴゃっと飛ぶように逃げていく。
これ幸いと、イッスンスリーも続けて。
「あっ、あ、ああ! ハレルヤさんすまない!! 訓練はまた後で!! こらーまてー!!」
どたどた慌ただしく……逃げるのか追いかけるのか分からぬ調子で走っていく背を見つめて笑い。
「ま、アイツらもいいライバルも出来たみたいだし何はともあれ一件落着、だな」
うさみっちが言って、ふぁっと欠伸を零す。
空は快晴、雲一つない。
英雄たちも愛しただろう、真っ青な空が広がっていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵