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妖刀は剣豪に焦がれる

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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 辺りは一面の血の海であった。
 板張りの床に若者達が倒れ、その身に深い刀傷を受けて事切れている。
 静まり返った館の中、たった一人の者の足音が響いていた。
 その男は携えた刀を振り纏わりついた血を落とすと、禍々しき気を纏う刃を眺め笑い声を漏らす。
 狂気の声は次第に大きくなり、廊下に木霊した。

 ざわめくグリモアベースに、一人のケットシーがやってくる。
 彼は羽織を靡かせその場にあった椅子にぴょんと飛び乗ると、目前に集まった猟兵達へ説明を始めた。
「皆の衆、よく集まってくれた。それがしはケットシーの剣豪、久遠寺・篠だ。早速だが、皆の衆にはサムライエンパイア世界に向かってもらい、刀型オブリビオンの居所を突き止めて欲しい」
 そう言うなり、篠は机の上に次々と人の姿絵を並べていく。
「今回予知したオブリビオンは刀型で、自ら動くことはできない。そこで、人に取り憑き精神を支配することで凶行に及ぼうとしているのだが……実は予知で、その取り憑いている人物を突き止めることができなかったのだ」
 篠は耳を僅かに垂らしている。自身の力が及ばなかったことを悔いているようだ。
「凶行の現場となるのは、多くの門下生を擁する剣道場。この道場は門下生を館の中に住まわせており、共同生活を送らせることで精神の成長も促しているという。皆の衆にはこの門下生に混じり、生活を共に送る中でオブリビオン……憑き刀に憑かれている生徒を突き止め事件が起こる前に食い止めて欲しい」
 篠が机の上に並べた姿絵は四枚。どれも門下生らしき若者達だ。皆年の頃は二十歳前後であろう。
「憑き刀所持者の候補はこの四人。それがしが予知で見た背格好と合致する者を上げてある」
 姿絵の下にそれぞれ名前と簡単なプロフィールが付与されている。

 一、幾郎。最近道場入りしたばかりの新人。個室は持っておらず、共同部屋に寝起き。
 二、宇三郎。道場の落ちこぼれ。個室は持っておらず、共同部屋に寝起き。
 三、勘吉。道場で一番の剣術の持ち主。個室を持ち、他門下生の憧れの的。
 四、幸八。門下生で一番の古株。個室を持ち、道場の運営を助けることもある。

「どの若者も、真面目で素晴らしい青年だ……だが、彼らのうち誰かが必ず憑き刀を所持している。恐らくそれがどれほど恐ろしいものかという認識はないのだと思うが、なにか弱みに付け込まれている可能性もある。話を聞いたり、行動を調査、部屋の捜索を行う中で犯人を特定して欲しい」
 篠はそれから小さな腕を組むと尻尾を揺らす。
「恐らく憑き刀は居場所を特定された後は己の身を守るため下級オブリビオンを使役しだすだろう。そいつらを殲滅し、憑き刀の破壊を行うまでが今回の仕事内容だ」
 篠は広げていた資料を全て回収すると、それらをまとめて文にし、表に『依頼状』と認める。
「このまま放っておけば、何の罪もない青年が凶行に及んでしまう。どうかその前に止めてやって欲しい。皆の衆、よろしく頼んだぞ」


三橋成
 皆様こんにちは、三橋成(みはし・せい)です。
 今回は道場の門下生に混じり生活を送りながら犯人(まだ事件はおきていませんが)を見つけ、発見後、剣戟を通して妖刀の破壊を行う依頼となります。
 第三章で憑き刀に憑かれた人物との戦いになりますので、基本的には憑かれた人物は死んでしまう方向性になりますが、プレイングによっては救出することも可能です。

 名前の上がっている4人のうち犯人は決めてありますが、皆様のプレイングでよりドラマティックになりそうなものがありましたら積極的に採用していきたい気持ちでおりますので、自由な発想のプレイングをお待ちしております。

 皆様と共に格好良い物語を紡いで参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『不審な住人』

POW   :    住人の行動を調べる

SPD   :    住人から話を聞く

WIZ   :    住人の部屋や持ち物を調べる

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ティノラ・ヴァルシュト
さて、この地に来て初めてのお仕事をさせてもらうついでに私自身がどれだけ通用するのか試させてもらうわ。
まずはそうね、皆の行動を把握ついでに掃除でもしてようかしら。
道場や周辺を最初に掃除をしながらどの時間帯に誰が来るのか調べるわ。
その次に共同部屋
最後に個室の順でいくわ。


雨糸・咲
若い娘が剣術とは珍しい、と思われるかも知れませんが

私、縫い物やお料理よりこちらの方が性に合っているのです
酷いお転婆だと、父母にも匙を投げられました

にっこり微笑んで誤魔化しておきましょうか

コミュ力、情報収集、第六感を使って調査を

私は剣術初心者ですし、
幾郎さんや宇三郎さんが近付きやすいでしょうか

共同部屋で生活する他の方と見比べて不自然な言動が無いか
よく観察

また、熱心な新人を装い色々と質問したり
評判や噂話の類から、
最近いつもと様子が違ったりしないか、など聞き込みを

勘吉さんや幸八さんの個室に入る機会を得られれば
そちらの捜索も
家捜しの痕跡は残さぬよう
細心の注意を払います

※アドリブ、他の方との絡み歓迎です



 道場からは身の引き締まるような思いのする、気合のこもった声が響いていた。踏み込みの足音、木刀を打ち合わす音は響くが、人の身を打つ音はしない。
 この道場では木刀を用い、寸止めで型を覚える稽古が主流のようである。
 グリモアベースでは男の門下生の話ばかり聞いていたが、それは予知された犯人が男だったからであり、女性の門下生も少ないながら擁していることがわかった。
「私、縫い物やお料理よりこちらの方が性に合っているのです。酷いお転婆だと、父母にも匙を投げられました」
 稽古の合間に、雨糸・咲は周囲の人物とそう気さくに話しながら色白の肌に浮かんだ汗をそっと拭った。
 いくら猟兵であろうと咲は剣術に関しては初心者。慣れぬ稽古はなかなか疲れるものである。
 道場の様子や人間関係を観察していると、道場の中では大きく分けて初心者や剣術の腕の低い共同部屋に暮らす者と、古株であったり腕の立つ個室に暮らす者の二つに分けられていることがわかった。
 その差はかなりはっきりと区別されており、稽古している内容も違えば基本的に言葉を交わすこともないようである。
 そんな中でも、別け隔てなく多くの者と言葉を交わし時にはアドバイスを与えているのは幸八だった。
 勘吉の存在は際立っていたが、咲がおいそれと言葉をかけられるような雰囲気でもなかった。
 咲は同じく新人である幾郎に狙いをつけ、人好きのする笑顔を浮かべ声をかける。
「私剣術はじめたばかりなんですが、この道場の様子はどうですか? 男性の共同部屋の様子とか」
 他愛のない会話から、そうして普段の様子についての探りを入れる。
「僕もこの道場に入ったばかりなんですが、やはり厳しいですね。共同部屋ではほとんど私物のようなものも持てませんし、多くの人の目がありますので生活全てに気を使います」
 幾郎もまた人好きのする笑顔を返し、そう答えた。接してみた印象としては『爽やかな新人』そのものだろう。

 一方その頃、ティノラ・ヴァルシュトは道場の周囲や、そこに繋がっており皆が生活を送っている館の掃除を熱心にしていた。
 手袋をきっちりとつけて掃除をしている彼女は調査を目的としていながら、掃除そのものが好きなのではないかと思われる。
 しかしそうして掃除をしながら観察していて気づくのは、門下生の生活に自由な時間はほとんどない、ということである。
 早朝に起床、朝練があり、朝食、稽古、昼食、稽古、夕方に一時間ほど自由時間があり、外出含めて各々が自由に過ごす。
 そして夕食、入浴時間があり、就寝時間となる。
 しかし、ならば稽古時間になれば皆が道場にいるかといえばそういうこともなく、門下生は各々当番で掃除洗濯炊事などの家事をこなしており、常に道場にも館にも人の気配があった。
「個室に近づくのは難しそうね……共同部屋も、女の私だと」
 ティノラは門下生の動きを把握しながらそう呟く。しかし、その情報収集は確かに次の一手の布石となる。
 彼女は、入浴時間が最も館からも道場からも人が少なくなることに気づいていた。
 もし個室や共同部屋を調べるのならば入浴時間、その本人が入浴に向かい、戻ってくる前に行うべきだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

水心子・静柄
刀のオブリビオンね、同じ刀のヤドリガミとして見過ごせないわね。

さて四人の被疑者の中から憑き刀を所持している人を探し出さないといけないわけだけど、四人とも掘り下げれば弱みに付け込まれる要素はあるのよね。ただ環境的に刀を隠しやすいのは個室持ちの二人…この二人絞ったとしたら怪しいのは幸八かしらね。幸八は運営面を助けているけど道場って剣の腕がないと成り立たないわよね。このまま続けても独り立ち出来ないから不安に思っているんじゃないかしら?とりあえず幸八に接触していくつか質問ね。質問は現状に不満はないか、剣の腕前はどうか、道場の立ち位置はどうか、将来どうしたいか、最近刀を手に入れたかとか。


三条・姿見
SPD
※アドリブ可

道具が自らの意思で行動を起こすとは。
いや、俺も似た身(ヤドリガミ)か。とやかくは言えないな

候補の人物だが、更に2人に絞る。
真剣は道場によって厳重に保管、管理されていると思うのが筋だろう。
共同生活の中で刀を隠し持つこと、簡単ではないはずだ…個室を持つ者を除いては。
勘吉と幸八の周辺を洗いたい

鍛錬で太刀筋を見ておき、それを足掛かりに【コミュ力】で個々に接触を図る。
腕を褒め、日頃の努力を聞こう

最後に声を潜め、カマをかける
「戦災で失われた、ある武器の行方を追っている」
少し、俺の身の上話に寄せてはいるが
作り話をするよりは信憑性も増すだろう

刀である、とは敢えて言うまい
そこで反応を見極めたい


仁上・獅郎
共同部屋は私物は持ちにくく、入浴時間には人が少ない。
事前情報はありがたい限りです。

しかし、妖刀ですか。
寿命を吸い上げ、超常の力を与える物。
最も腕の立つ勘吉さんが所持者であるのが最悪の事態です。

ですが、妖刀に魅入られるのはいつの世も力を欲する者です。
所持する理由がありそうなのは……
道場で落ちこぼれとされる宇三郎さん。
一番の古株ながら、道場最強を譲っている幸八さん。

彼らの入浴中に、僕は幸八さんの個室を調べます。
同時に、発見されにくい影の追跡者には宇三郎さんの共同部屋を。
所持品のみならず、寝具の下、押し入れの中、天井裏、畳の下、床下……
盗人のような真似ですが、これも事件解決のため致し方ないですね。


吉備・狐珀
四人の簡単な略歴は聞いたけれど他の門下生から直接話を聞いてみたい。全ての人が同じ感情をもっているとは考えにくいし、四人の違う側面が聞けるかもしれない。
同じ新入りの幾郎、落ちこぼれと言われる宇三郎、憧れの的の勘吉に、古株の幸八・・・。四人は良くも悪くも話が聞きやすい。
ここは新入りの門下生という立場を利用するとしようか。
早くここに慣れたいと道場の話や住人のことを聞きつつ、彼らの話を聞くとしよう。

※絡み、アドリブ等歓迎です


ティノラ・ヴァルシュト
お邪魔出来ないならその部屋の主が居ない入浴時間を
狙って調べる必要があるみたいね。
私の考えでは共同部屋に秘密を持ち込むにはリスクが
高いと思うわ。
調べるなら最優先で勘吉さん、時間に余裕があるなら
幸八さんの順ね。
調べる最中も常に外の物音や足音には最大限警戒しないとダメね。
調べてる最中も触ったモノの位置は変えずに元に戻さないと
警戒されるわね。
散らかってる場合は・・・掃除は駄目ね。
あぁあ!考えただけでイライラする。そうゆう奴に限って
くだらない物とか危険な物とか隠してたりしやがるからな。

(仲間との協力歓迎)



 昼過ぎの道場では、昼餉後の稽古が行われていた。そんな中、極力目立たぬようにしながらも周囲に溶け込み、多くの門下生と会話をする吉備・狐珀の姿があった。
 彼女は犯人候補である四人には近づくことなく、周囲からの彼らの様々な側面を伺っていた。
候補として挙げられた四人は良くも悪くも目立つ者達だ。新入りの門下生を装う狐珀が、早くこの道場に慣れたいと話を聞きたがれば、その情報を手に入れることはそう難しいことではなかった。
「少し話をお聞きしたいのですが、良いでしょうか?」
 狐珀は丁寧な物腰で、そう問いかけていく。元来彼女はあまり口数が多い方ではない。
 しかしその特性は、人から話を聞き出すには向いている資質でもあった。
「幾郎か、すごい頑張ってるよね、新人の中では一番腕が立つんじゃないかな。早く個室を持ちたいってよく言ってるよ。その願いが叶うのもそう遠くもないと俺は思うよ」
「宇三郎? ああ、あいつ悪いやつじゃないんだけどね、あんまり要領がいい方じゃないから。新人にも抜かされるって焦ってるよ」
「勘吉さんはすごい人ですよね。ちょっと怖くて近づき難いですけど、でもそれもまた格好良いっていうか。一番の実力者なのに努力はいつも怠ってなくて、人一倍努力されてます」
「幸八さんはいい人だよ。自分のことよりいつもこの道場のことを考えてる。あの人がいなかったらこの道場はやっていけないんじゃないかな、君も何かあったら幸八さんに相談するといいよ」
 狐珀が藍色の瞳を瞬きながら、得た情報を仲間へ共有するため脳内で整理している時。道場の一角で歓声が上がった。

 門下生たちの視線の先には、道場一の剣術の持ち主勘吉と、三条・姿見の姿があった。
 姿見は真剣を隠し持てるのは個室を持つ者であろうと見当をつけ、仲間と手分けした結果、勘吉に近づく策を探していたのである。
 彼らはお互いに木刀を持ち、手合わせ形式での稽古をしていた。お互い一切譲らぬ気迫と反応速度。しかし、数回の打ち合いの後、事態が動く。
 姿見が振り抜いた木刀の下を勘吉がくぐり、その木刀の切っ先を姿見の喉元に当てたことで手合わせが終わった。それは実のところ会話をスムーズに始めるために姿見が仕向けた結果ではあったが、不審さはない。
 お互いに礼を交わし、周囲から拍手が送られる。
「素晴らしい腕前だった。日頃どのような努力をしているのだろうか」
 姿見は勘吉を褒めながら話しかける。
「お前もかなりの腕前だ、良い手合わせが出来嬉しく思う。何、常に向上心を忘れぬことよ」
 勘吉は笑みなどは浮かべぬものの、姿見の腕を認めた後だからだろうか、返す言葉は和やかだ。
 それからしばらく二人は剣術について会話を続ける。お互い持論を持つ者同士、話を続けることは難しいことではなかった。
 そうして会話が終わろうか、という時。
「俺は戦災で失われた、ある武器の行方を追っている。何か知らないか」
 姿見はぐっと声を潜め囁くと、勘吉の反応を見る。それは姿見の真の話に寄せたものでありながら、カマかけの一つであった。
 勘吉は目を瞬き、姿見を見返す。
「ある武器、とは……刀か? さて、この道場にある刀はそう高名なものではないと思うが」
 その返答は違和感のあるものではなかった。また、表情にも動揺などは感じられない。
「そうか、おかしなことを聞いて悪かった」
 姿見は目を細めると、そう会話を終わらせるのであった。

 姿見と同様、個室を持つ者に狙いをつけ、そして彼と分担してそのうちの一名に接近することになった者。水心子・静柄はこの道場一番の古株である幸八に声をかけていた。
 彼と会話をすることは簡単だ。何しろ幸八自身が多くの門下生とコミュニケーションを取ろうと心がけていることが伺えるのだから。
「幸八は現状に不満はないかしら」
 しかし、投げかけた質問は初対面にしては些か直球過ぎた。幸八は僅か戸惑いの表情を浮かべながらも静柄のことが気になったようだ。
「君は……ええと、名前を聞いてなかったね。何か現状に不満があるのか?」
「水心子・静柄よ……いずれ独り立ちしたいと思っているのだけど、道場って剣の腕がないと成り立たないことが心配で」
 咄嗟にそうフォローの言葉を続ける。
「なるほど……そうだな、ある程度の腕前は必要だと思うけど、師範一人で気負うこともないんだよ。勘吉みたいに腕の立つ門下生がいれば道場の評判も上がるしね」
「幸八は将来独立する気はないの?」
 静柄の質問に、幸八はその人好きのする顔に優しい笑みを浮かべる。
「俺はこの道場と師範にとても大きな恩があるんだ。許される限り、この道場を支えていきたいと思っている」
「そう……」
 会話に一旦の間が生まれ、幸八がその場を去ろうとしたその時。
「最近刀を手に入れなかったかしら?」
 幸八の背中に静柄が最後の質問を投げかける。
「……門下生個人での真剣の所持は認められていないんだ」
 振り向き、返答した幸八の笑みは、どこか顔に張り付いているように見えた。

 時は夜。三日月が空に浮かんだ頃。
 仲間達からの情報を元に、仁上・獅郎とティノラ・ヴァルシュトは幸八の部屋に忍び込んでいた。
 四人の候補から一名を絞りきれた訳ではない、しかし、全ての情報を総合、刀の話を聞いた時の反応を考えれば、最も怪しい人物であったのだ。
 もちろん他の者を探ることを捨てた訳ではなく、獅郎は召喚した影の追跡者を、力を欲しているであろう宇三郎の共同部屋にも放っていた。
 感覚を共有し探るが、やはり共同部屋はかなり片付いていて、また私物を持ち込めそうなスペースはない。
「……あぁあ! 掃除出来ないのがイライラする」
 あらゆる場所を調べ、動かした物、触れた物の位置を変えず元に戻しながらティノラが小声で吼える。
 だが、幸八の部屋はかなり片付いている部類のようにも思えた。
「十分片付いていると思うけど……盗人のような真似をするのは気が引けますね。これも事件解決のため致し方ないですが」
 その辺りの感覚は人それぞれだろうかと獅郎は肩を竦める。
「この……物の裏にある埃が気に入らないのよ。決まった掃除しかしていないパターンだわ」
 ティノラはもちろん今も手袋を装着している。
 部屋の外の物音や足音に警戒しながらも、彼らの捜索は徹底していた。捜索するのは寝具の下、天井裏、畳の下、床下、そして……押し入れの中、その天袋。
「見つけた」
 その言葉を二人のどちらが放ったかは定かではない。あるいは同時だったかもしれない。
 それだけ、風呂敷に包まれてなお、『物』の存在感は異様であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『浪人』

POW   :    侍の意地
【攻撃をわざと受け、返り血と共に反撃の一撃】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    怨念の返り血
【自身の返り血や血飛沫また意図的に放った血】が命中した対象を燃やす。放たれた【返り血や血飛沫、燃える血による】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ   :    斬られ慣れ
対象のユーベルコードに対し【被弾したら回転し仰け反り倒れるアクション】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:箱ノ山かすむ

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 風呂敷に包まれてなお、禍々しき気を放つ物体。それに猟兵が手を伸ばそうとした、その時であった。
 館の中に侵入し押し寄せたのは、浪人の姿をした、数多のオブリビオンであった。
 彼らは猟兵に斬りかかる。
 入浴時間である今、浴場以外他の場所に門下生の姿は少ない。しかし、それでも浪人は的確に猟兵を狙ってくる。
 彼らの狙いは憑き刀を守ること、それだけなのだ。
 いつしか憑き刀との間に入り込まれ、猟兵達は廊下へ押し出される形となった。
 館の中、浪人を倒さず済む方法はない。
三条・姿見
SPD/押し通る

この敵の数、奥にある刀が本物のようだな。
ならば蹴散らすまで。

戦闘には面頬(火炎耐性)を締めて臨む。
万一の際、炎が喉を灼くまでに少しは時間を稼げるだろう

建物内は木造。敵そのものを仕留めれば、
放たれる炎も消えるのだろうと俺は思うが…
やはり敵の返り血は最小限に抑えたい。
【撃剣】を構え、敵の攻撃を避け遠距離から応戦する。
出血量を極力抑えて敵を仕留める場合、
【暗殺】に適した急所への攻撃が妥当だろう。
【範囲攻撃】で眉間や眼、心臓を狙う。
近寄る敵は抜刀して対処。多少の返り血は恐れず押し切る。

廊下の構造上、直線攻撃が有効か…
捌き切れない残りの敵は【カレイドスコープ】全投射を試みる。


ティノラ・ヴァルシュト
見つからないようにしてるのに邪魔な奴らね!
まぁ自分の力が試せるいい機会なのに間違いはないわね。

相手が斬りかかってくれるんだからあえて受けて思いっきり切り倒してやるわ相手の斬りかかる動きに対してブレイズフレイムを使用ね。
向こうが攻めて来ないなら憑き刀の方に向かっていけば攻めざるを得ないでしょ。

時間を無駄にしたくないし、周りに警戒されても困るし、あと戦闘で散らかるのがもっと気になる!!
貴様ら出来るなら外で戦え!!
いや!周りの門下生に気付かれる可能性が・・・。
室内に引きずり込む、いや!!散らかる可能背が!?
あぁあ!!一秒でも早くぶっ潰す!!



「見つからないようにしてたのに邪魔な奴らね!」
 部屋から廊下へと押し出される形となったティノラ・ヴァルシュトは目の前に集まった敵を睨みつけ、声を抑えながらもそう苛立ちを顕にした。
「でもまぁ、自分の力が試せるいい機会なのに間違いはないわね……」
 だが、一呼吸の後に腰に下げた黒剣を抜き放つと、その心の揺れを感じさせずに真直ぐに構える。彼女の集中具合を表すよう、その赤き瞳が月光に照らされ煌めく。
 そこは館の廊下。しかし廊下は内庭を囲むような作りとなっており、今は廊下の雨戸が全て開け放たれているおかげで半分野外のような状況にあった。
「貴様ら出来るなら外で戦え!!」
 ティノラは浪人の一人に斬りかかりながら吼える。
 その実、部屋の中に現れた浪人の集団にティノラが気にしたのは、戦闘で部屋が散らかることであった。
「いや! 周りの門下生に気付かれる可能性が……」
 彼女がふと逡巡する最中、騒ぎを聞き三条・姿見は控えていた部屋から急遽駆けつけると浪人たちとの戦闘に加わった。
「この敵の数、奥にある刀が本物のようだな」
 彼が手にするのは昼頃その腕前を示した剣術ではなく、投擲武器である撃剣。 
「ならば蹴散らすまで」
 その武器の選択には確たる根拠があり、そしてそれは姿見の思惑通りに機能した。
 浪人から流れる血は、その血が触れた物をすべて燃やす特性があるのである。館の受けるダメージまでも考慮するならば、いかに彼らの血を流さずに倒すのかということが求められていた。
 彼の手から放たれた撃剣は見事な狙いで浪人の眉間、心臓とその急所を射抜いていく。撃剣が刺さったままの傷口から流れる血は少なく、さらに少ない手数でその生命を奪う。
 そして、廊下に倒れ込んだ浪人の眉間から流れた血は燃え上がる様子を見せなかった。
「やはり敵そのものを仕留めれば、放たれる炎も消えるのか」
 敵の様子を眺めた姿見が、そう考察の呟きを漏らした時。
「室内に引きずり込む!!」
 ティノラが意を決したように憑き刀のある部屋へと向かって攻め込む。それは敵を外へと逃さないようにする策略があるものだったが、もう一つ。
 浪人の一人が向いくるティノラに向け刀を振り下ろす。彼女はそれを……躱すことはなかった。
 彼女の斬りつけられた肩から噴き出したのは、血ではなく地獄の炎。紅蓮の炎はそのまま敵を襲い、反撃の隙を見せずに飲み込み燃やし尽くした。
 浪人はティノラの攻撃を受けた一瞬、反撃の気配を見せていた。一瞬の先手が勝敗を決する戦いである。
「廊下の構造上、直線攻撃が有効か……」
 次々と浪人を捌きながら、姿見は宙に数多の撃剣を複製し浮かべると、それを念力で一斉投射する。得物が増えてなお高い精度を保つ投擲は、廊下にあぶれてきた浪人たちの命を奪っていく。
 だが、死体が増えていくというのもティノラにとっては我慢ならないものだろうか。
「あぁあ、散らかった!! 一秒でも早くぶっ潰す!!」
 戦いは激しさを増していく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

水心子・静柄
侍の意地…嫌いじゃないわ、寧ろ好きね、私の居合を試したくなるわ。でもね残念な事に人の命が掛かってるから付き合ってられないわ、ごめんなさいね。

予知では幸八が憑き刀を手にして誰かを殺めた…どのタイミングかわからないけど、幸八は憑き刀を手にする為に現れず!現れなければラッキーね。その事を頭に置いて、居合の構えの状態で敵の30cmの間合いから外しつつ憑き刀を視界の中に収めて戦う。憑き刀への斜線が開いたら迷わず射合を放って浪人達を牽制するわ。そうやって浪人がいる間は幸八も近づけないようにして悲劇を回避出来るように心掛ける。浪人を倒した後ももちろん残心ね。


吉備・狐珀
(この人数は少々分が悪いか…。とはいえ時間がかかれば騒ぎを聞きつけ駆けつけた門下生が、巻き込まれる恐れがある。それは何としても避けたい。
「早々に倒さねばなりませんね…」

(だが、新参の猟兵の私が前にでても足でまといになるだろう…。ならば周囲の様子を伺いつつ後方支援に徹するとしようか。この騒ぎに乗じて幸八が刀を持っていかないとも限らない。)

「私の狐火の冷気で動きを鈍らせることができれば…。あわよくば止められればいいですが…。」



「予知では幸八が憑き刀を手にして誰かを殺めた……どのタイミングかわからないけど、幸八は憑き刀を手にする為に現れるはず!」
 別室にて待機していた水心子・静柄と吉備・狐珀もまた、戦いに参加する。
 静柄は灰色の美しき髪を靡かせながら敵の攻撃を受け流し、周囲に視線を走らせる。猟兵達の眼の前には浪人が立ちふさがり、その視界に憑き刀を収めておくことは難しい。
 しかし、彼女はその憑き刀に幸八を近づけないことを意識し立ち振る舞っていた。憑き刀はそれ自身では移動することが出来ない、であれば、それに人を近づけなければ悲劇は起きない。
「早々に倒さねばなりませんね……」
 静柄の言葉にまた、狐珀も頷く。
 幸八が現れないにしろ、戦闘に時間がかかれば騒ぎを聞きつけた門下生が集まってくることが予想され、そうなれば戦闘に巻き込まれる恐れがある。
「私の狐火の冷気で動きを鈍らせることができれば……あわよくば止められればいいですが……」
 狐珀は手を上げる、その掌をそっと口元に添え、吐息を掌の上に吐き出すように、紡ぐのは呪。
「言の葉のもとに魂等出で候」
 言葉が具現化するよう現れたのは冷気を纏う青い狐火。炎は言の葉の数だけ生み出され、宙へと舞う。深い藍の瞳が瞬き、手を払うと狐火は周囲の浪人たちへと襲いかかっていく。
 狐火を受けた浪人たちはもんどり打って倒れ、その威力は絶大かのように思われた、が。彼らはその動きによって狐火の威力を相殺していた。
 だが、この戦いは、一対一で行っているものではない。
 一つの技を相殺するために大きな行動をすれば、それは大きな隙となる。
「侍の意地……嫌いじゃないわ、寧ろ好きね、私の居合を試したくなるわ」
 静柄が携えるは、ヤドリガミである彼女の本来の姿である脇差。彼女はそれを握り込み身構える。その姿勢はまさに居合前の姿のよう。
 対峙した浪人は静柄が駆け込んでくることを予想し身構える。
「でもね、残念な事に人の命が掛かってるから付き合ってられないわ」
 静柄の握った脇差が鞘から引き抜かれることはなかった。そして、宙に浮いたのは数多の脇差の複製。
 脇差は次々に浪人たちに襲いかかり、距離を取ったまま反撃を許さず打倒していく。
「ごめんなさいね」
 しばらくの後、廊下に立っているのは猟兵達だけであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『憑き刀』

POW   :    主喰いの武具
戦闘中に食べた【自身を装備している者の寿命】の量と質に応じて【纏っている妖気が増大し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    憑依カミヤドリ
【自身を装備している者の理性を侵食する】事で【装備者は凶悪な妖剣士】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    仮初の使い手
【装備者が戦えなくなると代わりに武人の死霊】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。

イラスト:童夢

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠田抜・ユウナです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 浪人たちを打倒した猟兵たちは、部屋の中にあったはずの憑き刀が消えていることに気付いた。
 そして、その原因はすぐに判明する。
 憑き刀を手にした幸八が中庭に立ち、猟兵達の元へと歩んでくるところであったのだ。恐らく、戦闘の最中に浪人の一人がそれの現在の持ち主である幸八へと手渡したのであろう。
「人の部屋を探りまわるとは……とても許される行為じゃないね」
 幸八の声は、昼間猟兵と言葉を交わしていた時と同じでありながら、その気配が全く異なっていた。
 本来黒いはずの幸八の瞳が紫色に怪しく発行し、猟兵達を見据える。
「お仕置きをしなきゃ」
 鞘から抜き放たれた憑き刀。その凶悪な刃の冴えが、月下に照らされた。
ティノラ・ヴァルシュト
お仕置き・・・こっちの台詞だ!
この散らかった状況をさっさと片付けないと気がおかしくなるわ!
それと幸八!理由はどうあれ正気に戻して掃除の一からを教えてやる!

その為にはまずあの刀をぶっ壊さないとね。
本人にはちょっとの負傷は覚悟してもらうわ。えぇちょっとね。

相手に対して自身の実力が足りないのは重々承知してるわ。
だからこそこの命を喰わせて底上げをしなきゃね。
相手は剣の道を歩く者、変則な攻め方してもダメだと思うわ。
斬られる覚悟でブレイズフレイムを放つ。


三条・姿見
POW/幸八を救う

戦わずに済む術はなさそうだな。
目的は憑き刀の破壊。
…使い手を殺すことではない

抜刀して打ち合いに応じる。
幸八は門下生。道場の剣筋が身体に染み付いているだろう。
この道場での稽古は既に、勘吉との試合で実践済みだ。
攻撃を受け流し、時に払って退け、疲労を待つ。
危険な刀だ。その力が、お前の欲していたものか。

言い分は聞こう。だが、決着はつけておくべきだ。
妖気が増大した時が勝負。
【残像】を囮に、攻撃回避を試みる。直後の隙を狙って距離を詰め、刀を振る。
俺の狙いは峰打ちによる【気絶攻撃】。
斬る寸前に【早業】で刃を返し、鈍器代わりに打ちつける。
決まれば僥倖。憑き刀を引き剥がし【剣刃一閃】を放ちたい


吉備・狐珀
幸八が刀を使えばその命は削られる。命は当然無限ではない。
「使い続ければ幸八殿は…」
だが、戦闘は避けられない。何よりこの速さ、悔しいが刀だけを狙うのは難しい。
刀は幸八殿の弱さにつけ込んだ。
道場の経営を任されれば嫌な側面も見てきただろう。
諦め、落胆、失望…。
幸八に信頼し相談出来る相手がいたのか?負の感情を抱え続け刀に魅せられたのでは?
だが、本当に幸八は弱い人間か?門下生達に幸八を悪く言う者はおらずその信頼は簡単に得られるものではない。
彼らを斬れば傷つくのは幸八だ。それに気づけば或いは刀を手放す意志を取り戻すかもしれない。それにかけ、危険を承知で懐に入る。
「刀に操られる程、貴方は弱い人ではない」



「お仕置き……こっちの台詞だ!」
 幸八の言葉に呼応し、ティノラ・ヴァルシュトが吼える。
「この散らかった状況をさっさと片付けないと気がおかしくなるわ!」
 散らかった状況。そう、ティノラが辛抱ならないのは物理的な汚れだけではない。破壊すべき刀を、守るべき者が握って戦いを挑んできているという状況は、かなり『散らかった』状況であると言えた。
「戦わずに済む術はなさそうだな」
 幸八の纏う殺気を感じ、三条・姿見は呟き、自身の刀の柄を握った。
 一瞬の間の後、幸八が踏み込み、姿見目掛けて刀を振り下ろす。姿見は呼応するようにすぐさま抜刀し、刃を受け止めると弾くように受け流し退ける。
 姿見は調査の際にこの道場の剣筋を会得していた。それ故、その動きを見破ることは容易い。だが、刃を受けた時に感じた打ち込みの重さは、この道場随一の腕前である勘吉のそれを凌駕していた。
「使い続ければ幸八殿は……」
 憑き刀が纏う妖気が徐々に濃く、強さが増していくのを感じ吉備・狐珀は呟いた。そう、その憑き刀の気のすべては、刀を握る幸八から来ている。
 憑き刀は幸八の寿命、生命力を喰らい、それを並外れた力として与えている。例え猟兵が直接幸八を斬らなかったとしても、時間が経てば幸八はじきに死ぬ。
「分かっている。目的は憑き刀の破壊……使い手を殺すことではない」
 姿見は頷き、再び踏み込み横薙ぎされた一刀を返す刀で退ける。だが、その刃の切っ先がわずかに姿見の篭手を舐め、その尋常ならざる切れ味により血が舞った。
「危険な刀だ。その力が、お前の欲していたものか」
 打ち合いを繰り返す度、幸八の素早さ、力、そのすべてが増していくのを感じ、問いかけずにはいられない。
 幸八は己の力が増していく様子にだろうか、楽しげに笑った。
「ああ……どうだ、素晴らしいだろう。見える世界が違うとはこのことだな」
 その言葉を遮るよう、狐珀は握った薙刀を差し込み、幸八の腕を狙い振り下ろす。
 幸八の反応速度はすでに刀だけを狙う等の小細工が不可能なほどに増していた。幸八を斬りつける覚悟を持って攻撃を繰り出すが、それは振り返った幸八の刀によって弾かれる。
「その刀は幸八殿の弱さにつけ込んでいるだけだ。道場の経営を任されれば嫌な側面も見てきただろう……しかし」
 狐珀は語りかける。だが、その言葉を遮った幸八の返答は予想外のものであった。
「この道場に嫌な所などないよ。ただ、俺は……この道場のため」
 幸八が踵を返し、その振り返る動きに伴って刀を振るうと背後に迫っていたティノラを斬りつけた。それは不意を突かれたようにも見え、しかし、彼女の傷口からは地獄の炎が溢れ出し幸八に纏い付き燃え上がる。
「斬られる覚悟は出来ている! 理由はどうあれ正気に戻して掃除の一からを教えてやる!」
 ティノラの放った地獄の炎は燃え盛る威力を増していくが、幸八の動きは鈍ることはなかった。
 その姿を見て動きを変えたのは姿見だった。
 彼は攻撃を凌ぎ幸八が疲労するのを待つつもりであったが、炎にまかれてなお動きが鈍らないということは、憑き刀は幸八の生死に一切の重きを置いていないということ。
 彼が疲労した時とは、即ち彼の寿命が尽きて死ぬ時に他ならない。
「道場のためを思うならば何故、そのような危険な力を望む」
 姿見は一気に間合いを詰め、斬りつける直前に刃を返して胴体へ強烈な峰打ちを打ち込む。その一撃は確かに幸八の動きを一時止めたが、刀を取り落とさせるには至らない。
「ッぐ……この力が、この道場をいっそう名高いものにする」
「馬鹿な……」
 狐珀は呟く。
 猟兵が憑き刀を事前に見つけたことでその事件は防がれたが、予知のままであれば幸八は道場の門下生を皆殺しにしていた。それは彼の願いとはかけ離れたもの。
「すべての元凶は、憑き刀か」
 狐珀は幸八の想いに寄り添わずにはいられない。こうして幸八が憑き刀に付け込まれたのは事実。しかし、門下生達に幸八を悪く言う者はいなかった。そのことは、彼らから直接話を聞いた狐珀にはよく分かっていた。
 彼らからの信頼はそう簡単に得られるものではない。
 狐珀は幸八の懐へと踏み込んだ。しかし、そこに攻撃の意思はなく、次の瞬間幸八の振った刀が彼女を袈裟懸けにする。ただその態度で幸八を正気に戻すことを願って。
「刀に操られる程、貴方は弱い人ではない」
「何……」
 吹き出す鮮血。無抵抗の者を斬ったことに狼狽えるように、確かに幸八の動きが止まった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

三条・姿見
・POW/幸八を救う

引き下がる訳にはいくまい
好機があれば追撃。【撃剣】投擲で急所を外し、
肩や足…戦うに必要な部位を【マヒ攻撃】で縛る狙いだ
憑き刀の使用を最小限に留めさせたい
遠距離からの【範囲攻撃】に切り替え仕切り直す

幸八と憑き刀の繋がりを弱めることに集中する
大きな音や衝撃が有効かもしれん
足を狙った【撃剣】に【大爆炎符】起点の符を混ぜ、
地面に撃ち込んでおく。起爆を隙に繋げたい
再度、峰打ちでの【気絶攻撃】を狙う

攻撃は【残像】での回避を徹底
近接武器での防御、受け流しは最後の手段だ

道場の本質は自己研鑽だと、俺は思う。
安易な力で極められるものではないはずだ
死人の出る道場に人は集うか…お前なら分かるだろう


吉備・狐珀
・・・っ。ヤドリガミとはいえ妖刀に斬られると流石に・・・。だが、幸八が狼狽し、動きが止まったということは純粋に力が欲しいだけで人を殺めるつもりではないのだろう。
刀の持つ力が自分の欲しいと思う力と違ったのなら、刀を手放す意思をもつかもしれない。
「貴方の欲しい力はその人を殺める刀か?その刀はこの道場を名高いものにできるのか?」
幸八の望みは違うと信じたい。私は幸八の本来の人柄にかけたい。
「その刀はただ血を欲しているだけ。貴方を利用しているだけだ」
刀を手放せば恐らく死霊を召喚し再び攻撃してくるだろう。相手が幸八でないなら遠慮はいらない。使えないと判断した幸八を狙う可能性もある。
最後まで気は抜かない。


水心子・静柄
道場のために…ね。あなたは道場のために死にたかったのかしら?ならいい迷惑ね。人は何をするにしても生きてないと何も出来ないものよ。あなたはそのままその刀を振り続ければ確実に死ぬんだから、道場の事なんて全く考えてない事になるわ。私達はあなたの事を助けたいと思ってるけど、本人に助かる意志がなければ時間の無駄よね。まぁ道場の事を思ってても何も出来ないなら意味がないから後は勘吉に全て任せると良いわ。

こう煽っても刀に固執するようなら仕方ないわよね。私は全身全霊を持って相手を斬る!それが憑き刀だけか幸八を巻き込む事になるかは幸八次第ね。助けようとして手を抜いてやられるなんて事はしたくないわ。


ティノラ・ヴァルシュト
そんな力でのしあがった道場に何の魅力があるのかわからないわ。
自己満足に他の門下生を巻き込む事が貴方の志しならガッカリよ。
道場はあなた一人の力でできてるの?他の人は飾りかしら?
思い出しなさい!!

当たりにくいけど羅刹旋風で相手が刀で受ければよし。
刃こぼれのひとつでもさせてやるわ。
仲間の攻撃の影から狙わせてもらうわね。

ったく!!
どんどん散らかっていくじゃない!!



 鮮血が舞う。
「……っ。ヤドリガミとはいえ妖刀に斬られると流石に……」
 吉備・狐珀は斬られた右肩からの傷口を庇うように蹌踉めき一歩後ろへと下がる。しかしその激痛の最中にあって尚、彼女の意識は途切れることなくそこにあった。
「引き下がる訳にはいくまい」
 自身が無抵抗の人間を斬ったという衝撃に動きを止めた幸八へ、三条・姿見が好機を逃さぬようすかさず撃剣を投げ込んだ。その切っ先は急所を外し、憑き刀を握る手に深々と刺さる。
 途端に上がるのは幸八の悲鳴。だがそれでも憑き刀を取り落とすことがないのは、最早人の領域を越えている証であった。
「道場のために……ね。あなたは道場のために死にたかったのかしら? ならいい迷惑ね。人は何をするにしても生きてないと何も出来ないものよ」
 幸八の苦痛の声にも表情を変えず水心子・静柄は冷徹に言い放つ。その手は絶えず彼女自身である脇差の柄に触れており、いつでも技を放つことが出来る態勢をとっていた。
「俺は……死なない。こんなにも強い力が……!」
「あなたはそのまま、その刀を振り続ければ確実に死ぬんだから」
 苦悶の中、幸八が放った言葉に、静柄は間髪を入れずに言い返す。
「何だと……?」
「そんな力でのしあがった道場に何の魅力があるのかわからないわ」
 ティノラ・ヴァルシュトもまた言葉を重ねる。
「道場はあなた一人の力でできてるの? 他の人は飾りかしら? 思い出しなさい!!」
 この場に集った者の想いは皆同じ。皆幸八を助けようと言葉をかけていた。
 ティノラは握った黒剣を振るい、幸八へと向かっていく。
 しかしその動きは真に彼を傷つけようとしてのものではない。何度も打ち合い、ただ、少しでも憑き刀に負担をかける。
「貴方の欲しい力はその人を殺める刀か? その刀はこの道場を名高いものにできるのか?」
 ティノラに応戦するため、ただ身体を動かされているような状態の幸八に、狐珀は言葉を畳み掛ける。
「その刀はただ血を欲しているだけ。貴方を利用しているだけだ」
 彼女の藍色の瞳は、ただ真直ぐに幸八を見つめる。静柄と対象的に、彼女は一切の戦闘態勢を取ってはいなかった。彼女はただ、幸八に訴えかける。
 彼の心根と、本来の人柄を信じて。
 その眼差しは、その声は、憑き刀に操られている幸八に、届く。
「私はただ、全身全霊を持って相手を斬るのみ!」
 痺れを切らしたよう、静柄が動く。踏み込み、握り込んだ脇差を引き抜く。それに呼応したのは、姿見。
「爆ぜろ劫火!」
 起爆の術符を結んだ撃剣は幸八の足元に刺さり、爆ぜる。
 目にも留まらぬ瞬速で放たれた静柄の居合。その超威力の一刀は、姿見が爆発によって吹き飛ばした幸八を巻き込むことなく、その手から取り落とされた憑き刀に放たれた。
 中央から真っ二つに折れた憑き刀。その破壊音は金属のそれではなく、辺りにはおぞましい悲鳴が響き渡り、そして消えた。
 吹き飛ばされた幸八の身体を、近くにいたティノラが受け止める。
「っぐ……!」
 弱りきってはいるが、その短く上がった声で彼の命が繋がったことが、その場にいる皆には分かった。
「終わった……勝った、幸八が」
 精神力のみで深い傷を耐えていた狐珀もまた、そう呟き床に倒れ込む。
「ったく、散らかっちゃったわね。すぐに、片付けるわよ」
 腕の中でぼんやりと眼を開いている幸八と狐珀の様子に、ティノラはそう、どこか仕方がないとでも言うように微か笑う。
 彼女は本来、人と接触するのが好きではない。それでも、寿命を削った怪我人を放ってはおけなかった。
「俺は……ただ、道場のためを……」
 弱々しく、幸八が呟く。その瞳が、次第に澄んでいく。
「道場の本質は自己研鑽だと、俺は思う」
 その傍らにしゃがみ込み、姿見は彼の無事を確認しながら言葉をかけた。
「安易な力で極められるものではないはずだ」
 幸八の瞳から涙が溢れる。
 返るのは、噛みしめるような頷き。

 かくして、憑き刀は破壊され、幸八はその生命を繋いだ。
 門下生の誰一人として傷つくことはなく、彼は再び、道場の要として研鑽を積み続けるだろう。
 憑き刀を破壊するだけではなく、彼の命と精神を救ったのは、他でもない。憑き刀の、使用者の理性を侵食する能力を一切使わせなかった猟兵達の快挙であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月02日


挿絵イラスト