RYOUHEI~忍殺の猟兵~
異形。そう形容するに相応しい少女が猟兵達の前に現れる。騒めく程度に住んでいるのは猟兵達故というべきか。
「聞け。」
少女―――ティア・ドラグノン、グリモア猟兵による一言は、高い声色ながら腹に響くような声が周囲を静まり返す。
「我が安眠を妨害した予知を告げる。貴様らはそれを二度と現れぬ形で終止符を打て、それが役目だ。」
猟兵達へ、恐ろしいほどの上から目線と共に殺伐としたことを告げるティア。
「サムライエンパイヤなる世界、下らぬ野心と遠回りな策略を企てる者共がいる。
貴様らをそこへ送る――――決して逃がすな。目立たず暗躍し、騒がれる前に片を付けろ。
あるいはその有り余る力を駆使して、標的を一身に受ければ早く終わるやもしれん……時期を見誤るなよ」
真っ当、もといほかの者がつくったらしき資料が配られる。
とある屋敷にて悪代官の密会がありその悪事を暴くために警備網を突破してくれ、というわかりやすい要約が書かれていた。
サムライエンパイアにおける、オブリビオンの基本的な動きの一つと言えるだろう。今回も延長線上の一つにしかすぎない。
「そしてもう一つ、魔に墜ちようとしている者が視えた。」
残る資料には二つ目の事件が記されている。
夜の神社にて修行をする師弟、その師が魔に墜ちた天狗であることを知らず、弟子もまたその闇に飲まれようとしている。
「……言葉かあるいは拳の一つでも振るえば目も覚めるだろう。所詮は小事、気を付けろ。」
そこで初めて、ティアは視線を猟兵達へと向ける。真剣な瞳は、未来を見据えるかのように鋭い。
「物事とは点と点を繋げた線のようにつながっている。
解いていけばいずれ大きな壁が迫るだろう。オブリビオンにとって貴様らが壁であると同様にな。」
全く関係のないような二つの依頼、それがどこに繋がっているかは未知数だ。だが、これらを解決しただけで終わると思うほど楽観視する者は減っただろう。
「何かを成し遂げたいのならば、壁を踏み越えて見せろ、猟兵達よ。」
高圧的で刺々しい物言いだが、門出を見送る言葉にも聞こえるだろう。
汚い忍者
お久しぶりです。
とあるゲームにドはまりしていた汚い忍者です。
なんのゲームかは永遠の秘密です。しかしおかげで名前に相応しい依頼ができあがりました、卑怯とは言うまいな?
サムライエンパイアにおける、スタンダードな依頼となります。
一章では身を隠し、悪事を働く悪代官の元へ天誅!をしにいきましょう。
道中群衆オブリビオン的な雑魚が防衛などに手を貸しているかも知れません、基本は隠密ですけどヤッちゃう分には仕方ないですね。
正面から潜り込み、注意を引き大太刀周りをして周囲を手助けするなども有効です。タイミングが大事ですが。
二章以降は詳細を省きますが、説得及び一定の条件を満たすと三章において有利な状況へと運べると思います。
心は忍びでいきましょう。
三章では大詰めのボス戦となります。
ボスはかなりの強さとして書かせていただく予定です。
アクションゲームならば、シビアな操作要求をされたり覚えゲーをさせられる程です。
大成功でも変わらず、ある程度の苦戦する描写などが入る可能性が高いのでお気をつけください。
三章を筆頭にソロでの参加を想定はしていますが、複数での描写も普通にやっていこうと思いますし参加も大丈夫です。
あとなぜか当然のように支給品に瓢箪とかがあります。特に使う必要とかはないんですけどね。何故かは誰もわかりません。
変わらずの出落ち依頼ですが、楽しく書いていこうと思います。お米は大事。
第1章 冒険
『忍び、忍べば、忍ぶとき』
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POW : 曲者だ! であえであえ!
SPD : 闇に紛れて駆け抜ける
WIZ : 警備網の穴をつく
👑11
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御剣・刀也
POW行動
こそこそするのは性に合わん
最善策って訳じゃないが、正面から行かせてもらおうか
正面から入って行って気を引くために暴れまわる
相手はオブリビオンなので峰打ちとか手加減とかそういうの気にしないで斬り捨てる
「雑魚が何匹集まろうが所詮雑魚。俺の相手には物足りないな」
挑発しながら大立ち回りをして敵が十分集まったら逃げるふりをして一番前に出てきたオブリビオンを斬ってまたそこから斬り倒していく
「こんな狭い場所じゃ逃げきれなくなるのは分かってる。ま、お前らに俺の首をやれるとも思わないがな」
●魔に魅入られし悪党
提灯がほのかに照らす、薄暗い屋敷の奥。
「おぬしも悪よのぉ。」
「いえいえ、悪代官様ほどでは…」
あくどい笑みを浮かべる男たち。
「いやはや、しかし善き時代になりましたな。」
「フッ、確かに。苦労するのは憎きお上と愚かな民のみ。おぶりびおん様は我らの恵みよ。」
媚を売るように、周囲にいる護衛のオブリビオン達へ聞こえるように大きな声で称賛を口にする。
オブリビオン達に反応はない。利害関係は一致しているが、まるで能面のように無感情な武士たちを見て決して良い感情を抱くことはない。
「………さて、お上が嗅ぎつける前にお暇しましょうかね。」
そこでふと、外から僅かな騒音が耳を通る。能面の武士たちがいち早く反応する様に、言いようのない不安感が沸き上がる。
「何か聞こえましたかね?」
「風音かあるいはねずみでも潜り込んだか。愚かな、魔に満ちたこの屋敷へ来るとはな。」
恐ろしさは一転して安堵にも変わる。それが化物狩りの狼とも知らずに―――。
● 快刀乱麻を断つ
「―――ナンダ。」
屋敷の門に立つ武士、その生気の抜けた目が不審な人物を捉えた。
刀を携え、なんの迷いのない足取りで近づく謎の男。
その門番にとってそれが何者であろうと、近づくものは全て叩き切れとの命令を受けていた。普通の人ならば躊躇いか疑問を覚える場面で尚、ただ忠実にそれを遂行しようとする。この門番もまた、オブリビオンと呼ばれる恐ろしき武者であった。
一刀両断。
振るった刃が、武士のオブリビオンを鎧ごと叩き潰すように引き裂く。振り抜いた刀と共に大きく息を吐く男―――御剣・刀也。
「こそこそするのは他のやつらに任せた。俺は俺なりのやり方で大立ち回りしてやろう。」
返す刃がもう一体の門番を横へ二等分し、血が舞い散る。
それを皮切りに見張りが騒ぎ、次々と敵が迫ってくる。一体一体は大した敵ではない、真の強者と比べればヌルイほどだ。だが如何せん数が多い、紛れている一般の見張りまで来られると少し厄介か。
視線の先、一般人の手元が震えている。所詮は屋敷に雇われた者。ならば。
「てめぇら……。」
震脚。猟兵の常人ならざる身体能力が成し得る技。怯む群れの中、一体のオブリビオンの懐へ潜り、刀を滑らせる。
【剣刃一閃】
ユーベルコードと呼ばれる異様の業が、ただの斬撃を極みの一撃へと押し上げる。まるで紙切れのように斬れる様は見る者を恐怖させるのに十分であった。
「死を恐れない奴からかかってこい。それで俺と対等だ。」
凄みながら刀を構えれば、恐れを知らぬオブリビオン達だけが群れてくる。
それでいい、数合わせの一般人を斬るわけにはいかない。
「ここからは手加減無用だ。雑魚らしく群れて俺を退屈させるな。」
指をたてながら挑発するように強い言葉を放つ。オブリビオン達の足並みが早く、群れるように迫りくるのを見て刀也は踵を返して狭い路地へと入っていく。そこからは圧倒するだけの戦い。所詮は名もなき一兵、死闘を繰り広げ続けた刀也の敵ではなかった。
「さて、これだけ騒げば動きやすくもなるだろ。しくじってくれるなよ?」
この作戦の欠点は、残るは他の猟兵頼みという点だ。博打ではあるが他に良い策も思いつかなかった。吉と出るか否か、血しぶき舞う戦場で占うかのように命が散っていく。
成功
🔵🔵🔴
露木・鬼燈
なるほどなー。
つまり忍殺を極めまくれってことだね!
普段は忍ばないニンジャ。
でも、そーゆーことならがんばるっぽい!
基本は目線より上、屋根とかを移動するです。
鉤縄とかを使うとカッコいいけど、僕は別の方法をとるです。
今回は戦闘メインじゃないから省エネでいくです。
化身鎧装<黑鐵>を部分展開。
重力制御器官だけを生成し、装甲と呪炎はカット。
体術・軽功術・重力制御を組み合わせるです。
スタイリッシュ忍者アクションっぽい!
木々の枝葉や建物の壁や天井も移動するのです。
邪魔な敵は落下忍殺で排除。
音もなく降り立ち、口を塞ぎ…
超重力の渦で脳だけを破壊して仕留めるのです。
死体は天井や床下、隙間なんかに手早く隠すのです。
● SHADOWS DIE TWICE
「どっちかっていうと僕、侍の方が近いんだけどねー。」
屋敷の全貌が眺める木の上で、しゃがみながら一人呟く青年―――見目だけならば少年にすら見える猟兵が一人。
名を露木・鬼燈。
彼は表情をころころと変化させながらも、腰に備えた瓢箪を一口飲んで一息つく。
「でも、忍の技だって出来なくはないからね、普段は忍ばないけど今日の僕は一味違うってわけ!」
くるり、空中で一回転、屋敷を屋根伝いにドンドンと進んでいく。とはいえまだ目的地は見えていない。屋根裏に滑り込み、盗み聞くように会話を聞こうと試みる。
「……(いや、全然聞こえないっぽい…!)」
天井まで届く声で重要な話をするわけがなかった、というか外が騒がしい!!
「道を開くってのもありかな!」
偶然見つかる期待と、何より数を減らしておけば役には立つだろうという前向きな思考により、任務はスニーキング忍殺ミッションへと変化した。
「武装展開!今回は省エネでいくです。」
ユーベルコード、【化身鎧装<黑鐵>】――の部分開放。
鈍い音と共に、左腕へと装着されたのは禍々しい外殻、重力操る力、呪術とすら呼べる禍々しさと力に溢れた装具を纏った。
そんな中、本人はただただ楽し気に愉快に、屋敷内を駆け抜けていく。
「あの大立ち回りしてる人も強そうだけど、さすがに全部は大変だし、数減らしておかないとね!」
くるんと、通路の天井にぶら下がっていた体制から装具の姿勢制御を用いて落下。
上空から聞こえた声に反応したオブリビオンの武者は、上を見上げたと思った瞬間には、視界が黒に染まり二度と起き上がらなくなる。
「血も出さない完璧な処理、完璧です!」
ささっと脳が破壊された死体を隠し、忍び、隠れて次々と処理していく。忍びとしてもまた一流の腕前を見せながら屋敷中の武士が続々と数を減らしていった―――。
「それにしても思ったより一杯いるっぽい?さくっと終わると思ったのに意外だったや。」
――本番はもう少し後かな?
不穏な流れを感じ、後に備えて力を温存しようと息をつく。既に館内には忍び込んだ猟兵が沢山いるのだから。
成功
🔵🔵🔴
ヴィクティム・ウィンターミュート
●□
ハッハー!いいねぇ、この手のビズは俺の出番さ。隠密潜入工作なら、この超一流ランナーArseneの妙技って奴を、見せて…おっと、視られちゃ三流だな。誰にも見させない。気づかせない。それが俺のやり方さ。
ユーベルコードで忍びパワーを上げて潜入開始。移動は常に【忍び足】で、相手の視界に入らないように進む。必要に応じて屋根からの侵入も考慮する。
道中倒す必要がある敵は【暗殺】
複数人いる場合、一人を殺ってから…プログラムを使ってそいつの血で煙を作り、目くらまし。
その間にまた一人、血煙、暗殺、血煙を繰り返して処理するぜ
これが未来の忍びの戦い方さ。
俺のシノビ・エグゼキューション、冥土の土産にするといいぜ?
● 死神の鎌は既に首へ
「まさしくって依頼じゃないか。潜入ミッションだってのに、テンション上がっちまうな。」
普段以上に隠密思考の装備を身に纏い、気分はジャパニーズシノビだ。
マスクも当然つけてある、こういうのは形からってな?
「さて、無駄口はここまでだ。こっからは誰にも視認すらさせやしない、俺の本領を見せてやるよ。」
【Extend Code『Ferryman』】
暗殺を本領とした形態、忍という言葉に適任の状態に自身を昇華させる。
その姿が闇に溶ける。足運び一つから気配を感じさせない移動。既に慌ただしい門など容易に超えられる。
「潜入成功……おっと。」
適当に入った部屋にオブリビオンを確認した瞬間、刀身の伸びたナイフがその体を貫き絶命させる。念入りにナイフには身を蝕む毒(ウィルス)付きだ。
「武士型のオブリビオン……なるほど、こうなってるのか。」
何かを納得するように一人頷く。おっと、もう一つ、被験体。
「場所は外しちまったか?こんだけ広いと仕方ないか。」
既に片手では足らない数を暗殺し終えて尚、目標地点が見つかる気配はない。
「このオブリビオン達、どうにも操られてるみたいに自我がないんだよな。情報も聞きだせないとは。」
屋敷内の一般人は既に逃げまどっている。どうしたものかと一人優雅に廊下を歩く。
「んっ。」
部屋の内部、オブリビオンの気配が複数。まだ部屋に籠っている違和感を見逃せず障子に張り付く。
声はなし、ならば問題なし。
障子が吹き飛ぶ。
抜け殻のようだったオブリビオン達が一斉に刀を抜き、そちらを見る―――中庭が覗く何もない空間。
「気づいた時には闇の中、シャグってのは最後までバレないからこそ意味がある。」
ナイフが部屋の端にいたオブリビオンの後ろ首に突き刺さる、深く差し込まれたナイフから侵入する毒(ウィルス)が浸食し、全身へ行き渡りその構造(プログラム)を書き換える。
オブリビオンの体が破裂したかのように血が噴出する、血は細かくまるで霧のように周囲へと巻かれる。
血煙。オブリビオンは何かを認識することもなく、視界が埋め尽くされる。
「これが遥か未来の忍びだ。俺のシノビ・エグゼキューション、冥土の土産にするといいぜ?」
誰にも知られずの犯行だからこそ、被害者には語ってもいいだろう。
おっと、水分もろもろをはじくコートだ、当然ゴーグルもしてあるぜ、見えなくちゃ意味ないしな。
「フェリーマンは、立つ鳥跡を濁さず仕事を終えるってもんだ。」
血の煙が一つ、二つ、敵の数だけ破裂する血の袋がすべて弾けて静かになる。
仕事を終え部屋を見回す、何のための伏兵だったのか。
「はーん、なるほどね。」
艶やかに輝く金の菓子。何ともわかりやすい隠し物である。
「まっ、仕事の前報酬ってな。……っていやいや、懐に仕舞っちゃ下衆の二の舞だ。」
つい緩む心に苦笑を浮かべ、グリモアへの報告も兼ねて渡すことを決めながら、忍は再度闇へと消えゆく。
大成功
🔵🔵🔵
ルーナ・セリオン
敵地潜入、いい響きだね!
ガジェットである脚部アーマーによる機動力を活かしてササッと忍び込んで背後から蹴りでグサリ、
所謂ステルス&エクスキューションを狙っていこうと思うよ。
でもワタシは手練れではないからね、普通に進めばどうしても発見は免れないだろうし多対一の戦闘は正直怖い。
ということでいざって時にはユーベルコードによる兵器の召喚に頼ろうと思う。
敵がこれに気を取られてくれればその隙にスルーするなり忍び寄ってグサリ、ガジェッティアとしてのスキルなのだし卑怯とは言わないね?
もし見つかっちゃったらその時は『時間稼ぎ』するからワタシを囮にするなり助けてくれると嬉しいな。
※連携でもなんでも歓迎です!
アララギ・イチイ
正面から潜り込んで敵の注意を引き付けるわ、暴れるのは得意なのよぉ
堂々と屋敷の門に迫り門番に挨拶よぉ
挨拶ついでに「こちら山吹色の菓子で御座います(ネタ行動)」と純金の小判をセットした菓子箱を差し出すわぁ(もちろん即攻撃されるだろうから、【早業・ダッシュ】で緊急回避を用意
反撃されたら大暴れ開始ぃ
【禁忌薬・龍化薬】を自分に投与、巨大な龍に変身して、防御性能と質量を活かして正面門を突き破り、周囲の建築物を破壊などして大暴れよぉ
一般人対策として【恐怖を与える】【殺気】を放ち牽制、【情報収集】で相手の様子を確認した後、オブリビアンを狙い攻撃を加えるわぁ
味方の進入が完了したら、龍の身体を放棄して一時離脱よぉ
● 暴れ竜
混乱を極める門、見張りの一人が叫ぶ。
「ありゃ人間じゃねぇ!悪魔の化身だ!!」
自身の味方であるオブリビオンの存在を棚にあげながら、入り口にて大立ち回りを繰り広げる猟兵に怯えて逃げ出す常人。そこへのっそりとマイペースな歩幅で袴姿の女性が一人。
「もし、お侍さん。」
「えぁ、あぁ!?」
「こちら山吹色の菓子で御座います。」
「は、はぁ。」
「……。」
「………。」
「では御機嫌よう。」
不思議そうな顔をして唖然とする一般兵士と、あれ?って感じの女性、何か噛み合わないまま門の奥へと。
「一般人相手じゃダメじゃなぁい。失敗したわぁ……あら、もう始まっていたのねぇ。」
騒音や戦火の中でも気にせず、マイペースにため息を吐く。
いまいち上手くいかなかったのを不満げな彼女の名はアララギ・イチイ。特徴的なドラゴニアンの容姿に、着物に白衣という非常に独創性の高い格好をしている。
彼女は周囲を見渡し、門へ向かって駆けだしているオブリビオンの武士の前へ遮るように動き、念のため用意しておいた二度目のYAMABUKIをサッと取り出す。
「これを。」
迫る剣撃。イチイはシュッと横にズレて紙一重で回避する。
「こr」
再び迫る斬撃。すっと攻撃を見切りながら、一般人の可能性も考慮せずに斬りかかるとは何たることか。
「ウォオオオオ!」
ガシッと雄叫びをあげる武士の顔を掴みあげて、一度下に叩きつける。踏む。
「お言葉が通じないと冗談も通じなくて困るわねぇ。」
ひとりごこちながら何処からか取り出した注射薬を自分の腕に投与していく。当然、ただのビタミン剤などではなく。
【禁忌薬・龍化薬】
此のユーベルコードはドラゴニアンだからこそ適合できると言えるほどの劇薬、細胞全てが変貌を遂げるかのような感覚と共に肥大化していく体、自身という存在を核に巨大な肉襦袢のように生み出された巨大な龍。
プチンと足に踏んでいた武士がつぶれる音が響く。
『ただの一般人に興味はないわぁ。オブリビオンだけ残りなさい。』
龍の眼光には恐怖を増大させる力。常人に耐えられるはずもなく。
既に怖気で震えていた一般兵士たちが、ついに悲鳴をあげながら武器を投げ捨て蜘蛛の子のように散っていく。
「さて、あとはお掃除だけ。精々時間を稼ぐとしましょうかぁ。」
迫りくるオブリビオン達を蹴散らしながら龍が吠える。
潜入任務とはいったい。
● 僥倖の活路
「敵地潜入は格好よくていいけど、ワタシの出来る範囲で頑張らないとね。」
ルーナ・セリオンは力量を把握した上で、参加者として出来る範囲のことをしようと頑張っていた。その健気さだけで既にもう成功といってもいいやもしれない。
とかく、ルーナはUCによって召喚したガジェットを脚部につけることによって、屋敷内を自由に素早く走ることを可能とした。
だが、これには大きな欠点が一つあった!
ギュルルルルル―――!
ガジェットの音がうるさい!速度を取った故の隠密性のなさが牙を剥く!
「……。いや絶対目立つよこれ、ワタシとしたことが…!」
悲しみを背負ったルーナに希望の光、もとい予想外の現象が降り注ぐ。
がおー!
―――これほどほんわかな声量ではなかったものの、耳をつんざく様に吠える声と暴れる音が響き渡る。
「何かはわからないけど、これはチャンスだよね?」
混乱している敵を狙って、速度を活かしてステルス(これはもうステルスなのか、ワタシにはわからないけれど!)によって敵を背後から蹴りつけることを可能とした。
ガジェットによる鋭くなった脚部の一撃は、武士の鎧を貫くほどの衝撃を与える。
そして、ルーナはそこで止まることを知らず、まるで鎌鼬のごとく―ー酷く言えば辻切りのように次々と敵を襲っていく。
バレようとお構いなしに、その圧倒的速度で斬っては走り蹴っては走りで屋敷内を駆けまわっていく。これもあの龍の存在感故だが。
「むしろあれを倒さなくていいのだろうか、でもワタシが頼まれたのは武士を排除する方だし……。」
悪代官の証拠集めを完全に忘れていた。
決して間違ってはいない行動ではあるが、突然の状況に混乱しながらもやるべきことをやろうと健気に努力しているのだ。
「きっとあれは味方のなんかこう凄い力だよね!……きっとそう!」
こうしてルーナの活躍によって、傷つき混乱した武士たちは暴龍の渦に飲み込まれて倒潰する門や建物と共に消滅していった。
―――――蛇足だが、依頼後(イチイは)めちゃくちゃ怒られた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
月隠・望月
●×
表で騒ぎを起こしている人がいる、ね。助かる
わたしは屋敷の奥へ向かい、オブリビオンを【暗殺】する
《式鬼・鴉》を召喚。鴉に上空から屋敷の中を偵察させて、見張りの居ない場所から屋敷に侵入、しよう
オブリビオンに遭遇したら、斬り捨てる。仲間を呼ばれないよう、可及的速やかに、ね(【先制攻撃】【2回攻撃】【早業】)
代官殿にはオブリビオンの危険性をわかってもらうべき、と考える。放置すれば、同じことをする
オブリビオンは聞こえの良いことを言った、だろう。だが、奴らは世界を滅ぼす、存在。例外なく、倒さなければ、ならない
それを伝え、よう
もし実感がわかない、ようなら……世界が滅びればあなたも滅びる、と言えばいいかな
神威・くるる
これってあれやろ?
黄金色のお菓子をいただきながら生娘の帯をくるくるしてあーれーてやつやろ?
ふふ、楽しそう
うちも帯くるくるやりたーい
いつもは雑に羽織るだけの大羽織をきっちり帯で締めて
不安そうなふりをして見張りのひとに
「こちらの大旦那様に『ご奉公』するように言われて来たんですけど……」
なぁんて目に涙を浮かべつつ【言いくるめ】
上手いこと寝室に通されたらめっけもん
かわいそうな貢ぎ物の少女のふりして
【誘惑】して骨抜きに
【催眠術】で裏で取引してはるオブリビオンの情報を聞き出して
ついでにちょいと【吸血】つまみ食い
え?ややなぁ
こないな輩にこの肌指一本触れさせるつもりはあれへんえ?……ふふ
忍足・鈴女
やっぱり一人づつ…【目立たない】ように【暗殺】するのが
乙ってもんやねえ…
まあ雇われの一般人は大人しく【気絶攻撃】で眠ってもらうとして
おぶりびおん相手なら【忍び足】で近づいて…
糸で吊ったり
針でぶすっとしたり
素手でコキャっとしたり
これぞ仕事人って奴でござるな…(素が出る)
さてと…それでは本命の悪代官と越後屋?を…
……
そういえばどんな悪巧みしてるから
倒さないとあかんのやろ…
まだ実行前やろし…
せや、部下さんが頼んだ芸者さんってことで
【誘惑】して直接聞いてみよか
見事な【楽器演奏】による
ゆーべるこーどに心洗われて改心するに違いない
まあ、あかんかったら素直に…
気絶させて引き渡そか…
●△□
● 夜風の鳥
黒い羽がひらりと舞い落ちる。暗闇にそれが落ちることに気づくものはいない。
"鴉"が屋敷の上空を飛び回る。下は騒がしく、中々止まぬ騒音に屋敷内部の武士たちも移動を始めた。
「騒ぎを起こしている人がいる……好都合、ね。」
その呟きは闇に隠れるように溶けていく。鴉の視線が人手の薄くなった所を発見すると同時に、人影が降り立つ。それ―――月隠・望月は音もなく駆け出していく。
手元に戻ったUC《式鬼・鴉》を労う様に撫でて戻しながら呟く。
「(音は最小限、なるべく素早く迅速に…―――!)」
曲がり角、迫る甲冑の音。息をひそめるように壁に張り付く望月。
「(御免…。)」
刹那、オブリビオンと判断し其れが望月を視認した瞬間には、その大柄な武士の背後に張り付き口元を押さえ首を一閃。
「油断はしない、よ。」
並の相手ならば絶命の一撃だが、オブリビオンの生命力を侮ることはしない。脱力した武士の背中へ刀を押し当てる。血肉を斬ろうと刃こぼれしない頑丈な刀が、甲冑の薄い部分ごと命を絶つ。
「―――次。」
望月は次々と遭遇するオブリビオンを斬り捨てながら奥へ奥へと進んでいく。まるで夜空を飛ぶ鴉のように誰に気づかれることもなく。
● 夜の蝶
時は猟兵による門での騒動が起き始めた直後。
「何者だ貴様ら。」
突如敷地内に不審な女人達が現れる。見張りの男は警戒しながらその人物達への接触を図ろうとする。すると女人達は先手を打つように口を開く。
「こちらの大旦那様に『ご奉公』するように言われて来たんですけれど……。」
「三味線弾きをしております。妹は体を、うちは心に安らぎを与えに。」
お淑やかを体で表すような少女、そして三味線を手に姉を名乗る二人の美女が屋敷へと入っていく。
「――様、楽師と夜伽の者が参られました。」
「なに、そのような予定はないぞ。今は何か騒ぎが――――。」
悪代官、そう称されていた男は、意外と細身で。あるいは見目の印象だけであれば誠実潔白さすら感じる容姿だ。聳える丁髷(ちょんまげ)も猛々しい。
そんな男は、入ってきた女人達を見て言葉が詰まる。鼻の下が伸びた見張りに連れてこられたのは可憐な花々。
「夜伽に参りました。本日は可愛がっていただければ……。」
「妹のここ一番、姉として助けに来ました。」
着物を着崩しながらはだけた衣装で三味線を手に、微笑む美女。
そして大羽織を身に纏い、其の美貌、仕草一つを取っても目が釘付けになるほどの美少女だ
「……。よし、下がってよいぞ。」
ゴクリ。
艶麗な雰囲気に反して、健気な言葉と僅かに浮かぶ涙の跡。そんなものを見てしまえば男としての性(さが)が理性の反抗を許そうとはしない。丁髷にもツヤが乗る。
「落ちついておくれやす。」
ぽろん、と三味線の音が響く。
「そう急いてはあかんよ?どっしり構えはるほうが格好がええやろ?」
三味線が奏でる音楽、聞きなれた雅の音が悪代官の心に安らぎをもたらす。
「あ、あぁ、そうであるな。」
「夜の共には語らいも必要どすえ?それまではうちが優しく奏ではります。」
其方は共にせぬのか?と落胆の言葉をグッと抑える。傍にいた悪事の友が何やらそわそわしているが。
「……おぶりびおん様がいらっしゃる、少しばかりは構わぬだろう。」
「オブリビオン様ですか…?」
まるで鈴の音色の如く聞き惚れてしまう声に、滑るように口が開く。
「あぁ……この痩せ墜ちた領土で私がこれほどの地位と恵みを成就できたのは、全ておぶりびおん様のお助けあってのこと。」
今も護衛を担っているオブリビオン達へ恐怖と、それ以上の信頼を視線に乗せて見つめる。
「……領地が痩せ細っては未来があらへんやろ?」
三味線の弾きを弱め、身を寄せながら疑問を口にする。聡明な美女の無知に何ともいえぬ興奮を覚えながら得意げに語り出す。
「構わん。それこそが狙いよ。土地をやせ細らせ、窮した民共は御上への怒りに満ちる。
そうして溜まり溜まった怒りをコントロールし、混乱に乗じておぶりびおん様がこの国を手中に収めることこそが狙い。
我らもお主達へ良い想いをさせてやろう、もちろん今から。」
我慢しきれないとばかりに丁髷が逆立ち、男が手を伸ばした瞬間、すっと大羽織の女人が立ち上がる。
「それはええこと聞けたわぁ。」
「んん…?」
姉の方が喋ったのか、否、声は確かに眼前から聞こえたものだ。
お淑やかな女人――――否、名を神威・くるると云う少女は表情や仕草を大きく変化させる。
「あんたはん、口がかるぅてあかんたれやなぁ……そんなんじゃ出世できへんよ。使い捨てされるのがオチや。利用されるだけされて、それでも縋りつく様に信じてまうんやろなぁ。」
憐憫の表情。もはや先ほどまでの面影はなく、帯を緩めながら見下すように男を見る。
「おかわいいこと…。」
極まった混乱に悪代官は言葉をなくし、ただ美しき顔を阿呆のように眺めるだけ。
「くるる様も人が悪いでござるな。猫を随分と被りはって…ふふ。」
姉―――否、姉妹関係などは真っ赤な嘘、忍足・鈴女という名の猟兵は愉快さを隠しきれずに笑みをうこぼす。
「いややわぁ。鈴女はんが考えたんやろ?姉妹だなんて面白いことを考えはるわぁ。」
くすくすと、悪戯が成功した無邪気な子供のように笑い合う二人。
「な、そ、そなた達は何者――――」
次の瞬間、部屋にいたオブリビオンの護衛達が次々とくぐもった悲鳴と共に倒れ出した。
● 宵闇はいずれ薄明を迎える
「終わり、ね。 こういう時は確か、そう、お縄につけ。」
倒れた武士の代わりに、望月が天井より降り立ち入れ替わるように現れる。
「く、曲者――――」
「もうとっくに潜り込んではるよ?」
打ち合わせしていたかのように、誰よりも早く動いた鈴女が腕を振るう。
まるで人形劇における人形の入れ替わりのように、武士が天井高くへと吊り上げられる。
「糸、使うんやねぇ?器用やわぁ。」
「教えてあげてもいいでござるよ?」
「しーひんよ、指切りそうでいやや。」
緊張感のないやりとり中、瞬く間に望月と鈴女によって殲滅が完了する。
ただ、望月にとっては、苦労して屋敷奥まで潜入して見えたのが、お代官の傍で際どい格好をしている女性が二人である。
「……なに、してる?」
「こない早く来るなんて、優秀な子もいたもんやねぇ。あ、誤解はややよ?潜入して、情報を聞きだしてたんどす。」
「なるほど。」
納得までの速度も速い、素直だ。いい子いい子とくるるが頭を撫でようかと思ったその時。
「は、憚ったのだな…!何者だ貴様ら…!!」
悪代官はようやく状況に追いつき、わなわなと震えながら叫ぶ。
「わたしたちは猟兵。オブリビオンの悪事を止めるために来た。
オブリビオンは聞こえの良いことを言った、だろう。だが、奴らは世界を滅ぼす、存在。例外なく、倒さなければ、ならない。」
「せ、世界…?」
「ほんに信じきっとるねぇ。国を獲ったら次は世界、あんたごと滅びるがオチやよ?」
「お、おぶりびおん様は……!」
倒れている魂の抜けた武士達を見る。悪代官のその眼に猜疑心の曇りが見え始めた。もう一押し、という段階で第三者が動く。
「ひ、ひぃぃ!私は関係ありませぬぅ!!」
巻き込まれる形になった、恐らくは貢物でもしにきたであろう一般人が恐怖に耐えかねて逃げ出そうとする。
「いけない。」
今外にでては殺気に溢れたオブリビオン、何より暴れている猟兵達に巻き込まれるやもしれない。望月が咄嗟に止めようとした瞬間。
ぼこり、と男の踏む畳の真下から何かが這い出てきた――――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミルフィ・リンドブラッド
【朧月】
領地をまかされている代官が自分のことを優先したらそこで暮らしている人たちが、わりをくうです。まったく…これはフィーとみぃが悪代官を懲らしめてやる必要があるです。
【身体強化・吸血鬼】で掘削能力(攻撃力)を強化。
『天竜砕き』をスコップ代りにして屋敷の下まで穴を掘り進めるです。
地面を警戒するやつなんていねぇです。楽々侵入できるはずだぞ、です。
屋敷の中に侵入したらみぃの術で透明にしてもらって代官を探すです
悪代官を見つけたら後ろから愛槌で頭から天誅してやるです
…そういえば悪代官は山吹色のお菓子が好きってどこかで聞いたです。
山吹色の菓子ってうめぇです?どうせならそのお菓子をつまみ食いしてぇです
神月・瑞姫
【朧月】
きゅー、潜入任務なの
フィーおねーちゃんと地面の下からこんにちはなの
おねーちゃんが【身体強化・吸血鬼】で穴を掘ってくれたの
洞窟探検みたいで楽しかったの♪
明かりはみぃが狐火【フォックスファイア】で用意したの
(坑道を掘って地下から屋敷に侵入
んと…ここからはお屋敷の中だよね?
見つからないように…
【無明新月の法】
フィーおねーちゃんと2人で透け透けになって
あくだいかーんさんを探すの
音は消せないから【忍び足】で…慎重に…
そういえば、あくだいかーんさんってどんな悪いこと
考えてるのかな
てんちゅーする前にこっそり聞いてみたいかも
透け透けなら
ばれない…よね?
(好奇心発動、危なくなったらフィーが助けに
● 土竜、天を衝く
時は少し遡る。
とある美しき少女――名をミルフィ・リンドブラッド。ミルフィの所有する武器、天竜砕きという大槌がある。竜の素材を用いた、名に恥じぬ至高の一品である。
「思ったより掘りやすくておもしれぇ、です。」
それは今、ザックザック、とスコップ代わりに地面を削る役目を担っていた。ヤドリガミが見たら失神しそうな場面だ。
「やっぱりパワーは偉大。みぃ、ちゃんと着いてきてやがる、です?」
「うん、大丈夫だよフィーおねーちゃん。」
その後ろで、ふぁいとーなの!と応援している幼き少女、神月・瑞姫は穴がふさがらないように補強したり見えるように狐火の明かりを灯すことで貢献をしている。
二人のチームプレイだが、何故穴を掘っているか――――そう、これは天才的発想によるもの。
「地面からいけば楽々侵入だぞ、フィの作戦は完璧すぎた、です。」
後の歴史に土竜の術として語られそうな奇才の発想であった。
「さすがなの、フィーおねーちゃん!」
もっと褒めやがれ、です。と二人できゃっきゃっしながら地中進行は進んでいく。
だが、ここで一つ大きな問題がでてきた。
「………(掘るの楽しすぎてやりすぎたかもしれねぇです。)」
汗がぽたり、掘り作業の疲れかあるいは焦りか。思い返せば想像より掘りすぎてる気がする。地中からでは地上の様子もわからない。
「広いお屋敷なの。みぃは探索みたいで楽しいけど、フィーおねーちゃんは大丈夫?」
「そ、そろそろちょーど良い場所だぞ、です!」
若さ故の意地が、引き返す選択を与えることはない。意を決してミルフィは頭上を掘り進んでいく。
と、そこで頭上から声が聞こえてくる。どうやら屋敷内部になんとか来れたことに安堵しながら、聞き耳を立てる。
『本日は可愛がっていただければ……。』
「みぃ、聞くな、です。」
「きゃー、なにも見えないのー。」
好奇心から前のめりになる瑞姫の、何故か目を塞ぐミルフィ。わたわたする瑞姫。混乱の極みだった。
だが、話を聞いていると何やら頭上の様子がおかしくなっていく――――どうやら他の猟兵の策略によって情報を聞きだされているようだ
このままでは依頼が終わってしまう、穴を掘っただけで!!
「急ぐぞ、です!」
天竜砕き(スコップ)を勢いよく頭上につきたてる。薄い土の壁は脆く、容易く大槌が突き破る。
この大槌、当然ながらハンマーの形をしているが、その頂上にはわかりやすく言えば猫の耳、恐らくは蝙蝠を模した二つの起伏がある。それは普段突きを行わない槌としては飾りに近い―――だが、この瞬間においてそれはあまりに有効に働いた。
鈍い感触、畳ごと突き破った槌が何かを貫いた。
Critical Hit!!
SHINOBI EXECUTION!!
「ぐぉあーーー!!?」
彼女、そして悲しきこの武器の名誉の為に記載しておくが、決して武器が穢れる事態ではないことを記しておく。被害者は恐ろしく痛かっただろう、ピクピクと悶絶している。
「………悪代官、天誅、です!……やっちまった、です?」
「ぷはぁ、えっと……あくだいかーんさんは捕まえなきゃダメ…だよ?」
再び焦りそうになる二人へ、その場に先んじていた猟兵が口を開く。
「見たところ気絶してるだけやねぇ。あと、それはただの一般人やよ?惜しかったけどえらいえらい。」
状況はつかめないが、どうやら功を制したようだ。
では、当の悪代官はどこだと視界を動かすと、掛け軸にピタリと張り付く男が一人。
「往生際が悪いでござるなぁ。どうでござる、望月殿。」
「隠し通路、ね。随分と用意周到。」
追い込んでいた状況のようだったが、済んでのところで逃げられてしまったようだ。望月と呼ばれた、忍と言われると納得しそうな出て立ちの少女が掛け軸を調べるが反応はない、一度きりの脱出経路のようだ。
追いかけようとする状況下で、甲冑の歩行音が大量に響く。
「……あなた達、が追って。わたしはここの人達、守らないといけない。」
冷静かつ即座に判断された内容、二人の少女は咄嗟に頷く。
「あら、うちかて守られるだけの女とちゃうよ?……でも、守ってくれはるんなら、甘えよか。」
上機嫌に笑う雅な少女。
「色気がありやがる、です。」
「ど、どきどきするの…。」
―――とかく、猟兵達はそれぞれの役割を全うするために動き出す。
「【無明新月の法】なの。すけすけになるから、これで見つからず追えるよ。」
瑞姫の術で透明になった二人は、廊下に出て掛け軸側の道へと進んでいく。道中恐ろしき形相の武士達が通り過ぎるが、気づかれることはない。
「あ、あんなやつら真っ向勝負なら負けねぇ、です。」
不思議な緊張感の中、僅かな震えを吹き飛ばすようにミルフィが強がる。
「フィーおねーちゃんが強いのはわかってるの、でも今は急いで追わなきゃいけないの。」
「そうだぞ、です。フィーとみぃが悪代官を懲らしめてやる必要があるです。」
この領地の人達を助けるべく、奮い立たせるように、二人は手を強く繋ぎながら勇敢に進んでいく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
望月・魘
複雑な依頼だね、でも任せておきなっ!俺がなんとかしてやるよっ!
ひっそりと屋根伝いに侵入を図り外から上にいるはずの悪代官の元へと向かうぜ
道中に雑魚敵がいたら後ろからひっそりと近づいていって致命をとるつもり……夜に潜む魔物には慈悲なんかねーな!!
基本的には暗殺を狙うけど、よし戦闘に入ってしまったら薄明捌きで相手の態勢を崩してから致命打を狙う……俺は確実に始末したいんだよっ!
【本当はビビリな女の子ですが、猟兵の立場をやりきるために強気な性格を演技している子です。
頭の帽子から色々な武器をまるでマジシャンのように取り出して戦う子です】
夷洞・みさき
正門の方は派手にやっているようだね。
お陰で潜り込むのは楽になったかな。
暴れるのは控えていこうか。
【WIZ】
というわけで同胞達、昔を思い出して隠れ鬼と行こうか。
僕はお仕事だけど、皆は楽しんでくれたらいいよ。
【UC六の同胞】を屋敷に散開。
【恐怖】をばらまきつつ、
屋敷中を走り回らせ護衛の移動。
死角から気配を与えて視界ずらし。
その他悪戯めいた行為で、警備網に穴を作る。
そうやって作った穴をみさきが抜けてゆく。
オブリビオンじゃないなら殺しはしないけど、
正直話してくれないと、手足の三、四本は無くなると思ってね。
大丈夫、それくらいで人は死なないから。
尋問は【恐怖】【傷口をえぐる】【医術】【踏みつけ】を駆使。
● 魔よりも深く、沈殿せし呪詛
"ソレ"は、一体の武者型オブリビオンの居る部屋に突如生み出された。
部屋の隅、光の届かぬ暗き影。影が動く、ぎょろりと目があるかのように、その眼は目というには余りにバラバラに動き、ぶるぶると震えながら音が軋み出る。
『ぉhfGァkGrkぃkfぁが』
それは言葉にならない言葉、当然だ。ソレにまだ口はない、漏れ出る呪詛の音でしかない。
「……ォオ…。」
音が聞こえ、ようやくオブリビオンは気づく、気づいてしまう。
このオブリビオンに感情はない、まるで抜け落ちた人形のような存在だ。だが、感情すら超えた生物として原点にある【怖気】がソレを恐れる。
武士は【怖気】に支配され、動くこともできずに呪詛で命がこと切れる
生を奪うことで、怨霊に変化が生じる。
―――怨霊が影から滲みでる、肉片だったそれらは形を取り戻しつつある。その光景だけで既に精神の弱い者なら気を失う光景だ。
ソレは本能的な恐怖こそ鎮まれど、生を羨む本質は変わらず、肉体によって暴力を可能とした。生気すら失う動くこともなくなった元武者だったものを握りつぶしてから部屋を出て駆けだす。
そんな光景が屋敷の中に、"6か所"。
【六の同胞】とも名付けられたそのユーベルコードは一人の猟兵によって起こされていた。
「同胞たち、あまり暴れすぎないようにね? 隠れ鬼といこうじゃないか。」
その女性の名は夷洞・みさき。暴れ出そうとする同胞たちを制御しながら、屋敷内を優雅に歩いていく。
彼女の周囲には、屋敷で奪われていくオブリビオン達の魂が黄泉へと導かれるように彼女の周囲へと漂っていた。
「着いてきちゃ駄目だよ、深海にしか行けないからね。」
あまり迷いたくもないが、如何せん目標地点の場所がわからない。既に戦火の広がった館で情報をとるのは難しい。
「直接聞いてみようかな。」
戦場へ向かうのか追い立てられたのか、都合よく通りかかったオブリビオンの一匹を掴み、柱へと動けないように八寸釘を丁寧に張り付けていく。
一般人が予定だったけど、こうなっては仕方ないかな。『おはなし』できるかな?
「―――――んー、駄目だ。壊れちゃったか、ただの人なら加減もできたんだけど。」
達磨のように丸くなったオブリビオンだった何かを置き息を吐く。処分する予定なれど、無駄足となると流石に嘆息を隠せない。
その間も、屋敷中には恐怖がばら撒き続ける。
● 舞い散る白き羽
「複雑な依頼だね、でも任せておきなっ!俺がなんとかしてやるよっ!」
望月・魘―――人狼の少女がそう宣言したのはほんの少し前か。
「お、俺に任せ……いや、うん。もうやることないかも…。」
戦場は凄いことになっていた。竜は出るわ、建物が倒壊するわ、そこら中にオブリビオンの死体が転がっているわ、魘の役割もうないのでは?という現実に膝を折りそうな勢いだ。
「せめて残党狩りでも……ぴゃぁ!?」
なんか変なのが居た!!
一瞬目が合ったと思ったら消えていたが、グロ画像のような何かが走り回っているのを見て全身の毛が泡立つ、もう帰りたい。
現実逃避に勤しんでいると、視界の奥、オブリビオンが追われるかのように跳び出てくるのが見えた。
「…き、来たな…!」」
チャンス到来、オブリビオンは必死に走っている。周囲に気を遣う余裕はなさそうだ。姿を隠し、そばを通った瞬間。
デンッ!ギュィィンッ!!
謎の効果音の直後、細剣が武士の背後から喉ごと貫く。致命の一撃の成功に深く息を吐きながら、剣を抜く。
「はふぅ……これで。」
一安心と思った刹那、ドタバタと同じ部屋からオブリビオンが出てくる。不味い、完全に姿をさらしている状態でバッタリと出会ってしまった。こうなると逃げていたオブリビオンも話は変わり、刀を構えて斬りかかってくる。
「……ッ!!」
刀の斬撃に対し、剣を合わせて盾にするのでなく、斬撃を刹那の見切りで合わせる。
ガキィンッ―――武具がかち合い弾ける音が響く。押し込むように合わせた斬撃は、武器を振りかぶった敵を強引に押し返すことでその体制を崩す。
「【薄明捌き】」
首元を掴み、引き寄せながら剣を押し込む。細い鋭い剣は相手の抵抗を一点特化で貫き、降りかかる血しぶきは引き抜きながら回転することで回避する。
死地へ一歩踏み込み剣撃は、実力以上の力を発揮すると共に大きく精神を消耗する。だが、安堵の一息を許さぬように。
「まだ…来るのかよっ!!」
厭らしく時間差で現れるオブリビオン、眼前の部屋にどれだけ詰まっていたのか。もはや集中は続かない、迫りかかる敵に対して魘はシルクハットへ手を伸ばす。
――――白き羽が舞散る。
斬りかかったオブリビオンが、タヌキに化かされたかのような驚きを発する。振り抜いた斬撃の跡には鳩のような白い羽だけが残る。
「トリックスターの帽子は、ひらりと掴めぬ霧と化すんだ!」
敵の背中に瞬時に現れた魘の剣がオブリビオンを斬り裂く。しかし、浅い。隙を突けたが致命とはなり得ぬ一撃。
「(一息つく時間をくれよーっ!)
距離を離すか、このまま攻め切るか迷う間に敵は振り向き攻めてくるだろう。
瞬間、相手の態勢がグラリと崩れる。理由は不明、だが獣の本能が咄嗟に跳びかかり剣を突きさす。ピクリと痙攣後、動きを止める。
「……はぁはぁ、なにかわからないけど俺の勝ちだ…!」
何が起きたのか、気になった魘はオブリビオンを見る―――とその足元に。
『フフフ……』
先ほど見たなんか変なのが居た。足元を掴んでいる、そう認識する前に踵を返す。集中力の限界が、恐怖の限界でもあった。
「………。ぴゃー!!」
脱兎の如く去っていく姿を、変なの――――もとい、同胞が見送る。
「怖がらせてしまったかな…?」
近くの暗がりから現れた、みさきが少し困った顔で苦笑する。
―――切り替え、オブリビオンの溜まっていた部屋へ入る。なるほど、溜まり場の理由はすぐに理解した。
「不幸中の幸いかな。あるいは彼女がモッている幸運、とか。」
過去の悪事の証拠になり得るものを抱え、みさきは再び闇へと消えていく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ミニョン・エルシェ
SPD
混乱に乗じ、障害物を「踏みつけ」にし、特製鉤縄で「ロープワーク」を行って、屋根から屋敷に侵入しましょう。
基本的に目的地までは隠密行動ですが、
接敵した場合は敵や障害物を「踏みつけ」で踏み台にした「空中戦」を展開。
簪宗信で「鎧無視攻撃」で斬り付けつつ、
敵が大きな隙を見せないなら「因果捻転・鳳仙花」で爆破して、無理やり隙を作ります。
「あなた、悪さし過ぎです。死んで貰っては困りますが、痛い目は見て貰いますね。」
悪代官は「殺気」で圧しつつ、死なない程度にぽかっと捕縛しますね。
「目的の為なら、遠回しでも確実な根回しを行っておく。…我々の動きすら、歯車に含まれているとしたら。…まるで蜘蛛、ですね。」
● すべては蜘蛛の糸の上
屋敷による事件を、始まりから最後まで見ていた者がいた。
ミニョン・エルシェ。少年にも見えるがれっきとした少女だ。
「猟兵の数は十分そうですね。」
門の騒ぎが起きた頃、彼女はまず真っ先に門へと勢いよく駆け抜けながら、怯むオブリビオンの一体へと迫った。
「ここのは彼に任せましょう。」
武士の兜を足蹴にしながら踏みつけて、空高くジャンプする。小柄の体を活かして、特製鉤縄を屋根へと引っ掛けて一気に跳び込む。着地は音なく、気分はまるで忍者のようだ。
「……数が随分と多いですね。猟兵のみなさんも多いから問題もないけど、それにしても……。今はとりあえず数を減らしましょうか。」
バレない位置のオブリビオンに天井伝いに近づくと、同時に懐の短い刀、馬手差の『簪宗信』を取り出す。空中から落下しながら、鎧という抵抗を感じさせない切れ味で刃が差し込まれる。
「単体としてはまるで相手にならない、でも一般人相手対策ならこれほどの数はいらないはず……。」
何故。
「…っ!!」
それは知っているからこその閃き。
武士のオブリビオン達が全て共通して兜をかぶっていた、それを取り外す。土色の青い顔、生気の抜けた操り人形としての体。……ここまではいい。
その眼は輝き、異様な赤目であった。青白い肌と相まって、その歪さが際立つ。
「これは……。」
死に伴い、目の輝きは光を失う。オブリビオンだから?否、まるでそれを隠すような兜や設置されたオブリビオンの数。これだけ不自然な謎に、意味がないわけがない。
「悪代官に関しては、他の方に任せましょう。」
今から猟兵達へ伝えるにはあまりにも遅い、ならば知っているからこその行動に徹しよう。冷静に慌てず、大きな深呼吸の後、動き出す。
館の一室、オブリビオンがひしめくように居る場所を発見する。
数は多いが、動きを見せぬそれら、本来なら無視して進むような場面だ。
「私の予想が正しければ……。」
真っ当な隠密では倒しきれないこれらを放置しておくわけにはいかない。
いくばくかの時間を経て、屋根裏から着地する。当然、オブリビオン達はそれに反応する―――瞬間。
「【因果捻転・鳳仙花】」
爆音が響く。爆竹のような音と衝撃は、オブリビオン達の目から漏れるようにはじけた。
準備しておいたユーベルコードによる秘術、内部から爆発させる性能を少し弄り、対象の目へと制限することで動きと視界を止める。
「確実に、討たせて貰いますよ。」
大きく長い、鐵貫という名の馬上槍が薙ぎ払われる。力を籠める溜めに、大きく振り回す隙を支払うことで破格の威力を持つそれが振り払われ、部屋内を血しぶきへと染め上げた。
一山の死体が築かれ、討ち漏らしがないことを確認すると再び屋根へと昇っていく。そこから見える景色は壮観と悲惨を混ぜ合わせたものだった。
「私以外の死霊術士までいるんですね。……ドラゴンに至ってはもう触れたくもないですね。」
もはや半壊すら通り越している屋敷を尻目に、事件の終着を感じる。すぐに次の事件へ向かわねばならないが、どうしたものかと悩んでいると。
「ハァハァ…!」
屋根の上から丁度見えた位置に、藪から屋敷の外へと抜けだそうとしている人物を見つける。
「……あなたが例の悪代官さんですね。」
直後、その進行上へと姿を現し、確信と共に武器を構える。
「き、貴様も猟兵とやらか。……我が命運もここまでか。」
口惜し気に睨む男に、エルシェは無表情でとある言葉を綴る。
「――――。」
風の音がエルシェの声を遮る。その言葉は男の耳にだけ届き、その表情を驚愕に変える。
「な、なぜそれを……。」
その反応で疑問は確信に変わる。
「あなたは洗脳を受けています。まだ間に合います、いろいろと壊れてしまったからこそ、一からやり直せるはずです。」
「……あ、あのお方は……。」
「この地は、私達をおびき寄せる罠として使われています。これだけ暴れても、現れないことが何よりの証拠じゃありませんか?」
その言葉を聞き、男は崩れるように膝をつく。もう既にわかっていた事だが、それでも膝を折らずにここまできたのだ。
「それでも私は……。」
「根強いですね…。まずは精神のケアから始めましょう、痛い目だけは見てもらいますけどね。」
言葉で投げかける限界を感じ、そのまま項垂れる頭部を強く打ち、気絶させる。捕縛して送るはめになり時間をさらに拘束されてしまう。
「ここまで計画の内……というのはさすがにないだろうけど。
目的の為なら、遠回しでも確実な根回しを行っておく。……我々の動きすら、歯車に含まれているとしたら。」
まるで、そう。蜘蛛の糸の上に居るかのような感覚に、寒気を感じてしまう。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『天狗の業、いかなるものぞ』
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POW : 魔道に堕ちかけている弟子の心を、ちょっと荒療治をしてでも改めさせねば。
SPD : 弟子はその師匠が妖怪変化の類と知らないのだろう、説得できるかもしれん。
WIZ : 過去に現れた天狗であれば記録が残っているはず、調べれば役に立つだろう。
👑11
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● 傀儡はただ己を刃と化す
その青年、名を伸一郎と云ふ。
武芸の家系に生まれたが才を発揮できず、通いの道場では見限られ腫物のように扱われていた。
ある日、青年が道場にこない日が出来た。他の者にとって僅かに気にかかるが、即座に忘れてしまう程度の事。それが幾日か続いたある日、道場にて青年へ勝てる者は居なくなった。
「天狗だ。」
「天狗に指導を受けておった、やつは魔に唆されておる!」
とある寂れた神社、そこへ通う青年を見た者は震えるように叫んだ。
もう青年は道場へと現れない、家にも帰らず、その社へと入り浸っている。
「……伸一郎、客人が来たようだ。」
「私に、ですか。また無能共が来たのならば、すぐに追い返し」
天狗―――の仮面をかぶった何かが首を振る。
「否、此度はそのようなヌルイ相手ではない。」
言葉とは裏腹に、笑みを浮かべる仮面の男。嗚呼その禍々しい気配こそ、魔のモノと囁かれた要因だろう。
「精々しっかりと気を引き、"視る"のだ。奴らの一挙手一投足をな。」
「……あなたは。」
師の考えの一つもわからぬ伸一郎だが、恩義があった。例えそこに何が潜んでいようとも返すべきものだ。
「いえ、なんでもありませぬ。」
赤く輝く瞳を伏せ、伸一郎は一人神社の中で佇んでいる。
御剣・刀也
天狗に師事する青年ね
源義経みたいな話だが、ここじゃあオブリビオンなんだよな
そんな生兵法が役に立たないって教えてやるか
伸一郎が居たら勝負を申し込む
が、あえて全力は出さず、明らかに手を抜いていると言う事を悟らせる
「妖の力を借りて偽りの力を手に入れたところで、俺には勝てんよ。剣術に注ぎ込んだ時間がお前とは違う」
獅子吼で相手の刀を折れたら折って見せて
「武術に一番大事なのがなんだかわかるか?それは継続だ。例え才がないと笑われようが、努力を怠ればその通りになっちまう。不断の努力を貫く諦めない心を持った奴が、最後には勝つんだ。俺も壁にぶつかって悩んだ。それでも好きだから努力を続けた。だから今の俺がある」
露木・鬼燈
がんばった忍殺の意味は…
いや、まぁ、いいけどね。
切り替えて次のミッションなのです。
ふむ、武者たちは異様な赤目だったのか。
全然気づかなかったのです。
思い返してみれば動きとかもほとんど一緒だったような?
そしてターゲットの青年も赤目ね。
才なき者が短期間で驚くほど強くなる。
考えるに、これって浸食とか同化の類だよね。
たぶん対象が受け入れる必要がある、みたいな制約があるっぽい。
呪術の使い手的には拒絶されると術が破れるっぽい。
そうなると返りの風でかなりダメージ入るんじゃないかな?
つまり殴り倒すだけじゃダメっぽい。
ここは言葉で揺るがせるのが一番っぽい!
武者たちの様子を語り、青年の類似点を指摘するです。
望月・魘
なんてこったい……俺とした事がちょこっとバックステップしたばっかりにこんな不気味な社に迷い込むとはね……こわ……
す、すみませーん!誰かいねぇかぁーっ!!
という事で怖いから抜き足差し足忍び足でいくぜ……もし無事に話せるならちょこっと会話してみるし、
襲い掛かってくるならその攻撃を弾きつつ説得してみるぜ、こんな陰気の篭ってるとこに居るお前の気が知れないってな!
こういう怖い所に居るとマジやべーんだよ、この辺には怨霊が出るからな……ほんとほんと!ついさっき俺が見たから間違いねぇよ……!
アララギ・イチイ
暴れるのは楽しかったわぁ(反省の色なし
さて、次は依頼は……闇落ちしそうな奴に人をぶん殴ればいいのねぇ
でも、普通にぶん殴るだけじゃ面白くないからぁ
【香名・勇壮活発】を発動、香りを周囲に漂わせておくわぁ
香りの効果が発揮するかは不明だけどねぇ
後は、素手で勝負を挑んでみましょうかぁ
相手の攻撃を【見切り】つつ、【フェイント】を交えて回避よぉ
攻撃は【怪力】を活かした【吹き飛し】する様な一撃、もしくは【捨て身の一撃】による【カウンター】を叩き込むわぁ
念の為、煙管で自分の痛覚神経に【マヒ攻撃】する毒を【毒使い】の技能で生み出して痛覚を和らげておくわぁ
相手の気が済む、もしくは立ち上がれなくなるまで殴りあうわよぉ
ヴィクティム・ウィンターミュート
●□
よー、伸一郎。随分と強くなったみてーじゃねーか
同情の門下生を軒並みぶっ倒して、並び立つ者もいないくらいに、上り詰めたってか?それはそれは、めでたいことで
ただ…
──お前、どうやって強くなったんだ?
説得なんてガラじゃねーけど
戻ってこれるかはアイツ次第、端役らしく地味にやるさ
とはいえ、優しい言葉なんて使わないがな?ついでにUCで思考も盗聴してやるぜ
強くなること。いいじゃねえか
他人より優れたい?大いに結構
でもなぁ、ズルをして得た力で勝てたとしても、気持ちいいのは最初だけさ
どこまで行こうが、お前の力で勝ててねーんだからよ
お前さん、薄々だが…本当は天狗がよろしくない奴だって、気づいてんじゃねーのか?
ミニョン・エルシェ
SPD
あの代官の反応で確信が持てました。
ならば、その名は伸一郎さんの説得にも使えるでしょう。
…彼が「視る」事を命じられている以上、手の内は明かしたくありませんし、ね。
木菟招来・如影で、周囲も探っておきましょう。
説得には「コミュ力」を。万一の防御は「第六感」と「野生の勘」で行います。
彼の天狗は亡者の類。今の貴方は、我が身の滅びも省みないかもしれません。
それでも、教養でも、絵筆でも。武家の面目を保つ手段が他にある事を、是非考えて欲しいのです。
…苦しみ抜いて、疑問を抱きながらも恩義に報う為。
あらざる道、蜘蛛の糸にすら縋ろうとした貴方だからこそ、教え導けることもある筈なのです。
※アドリブ大歓迎、です。
ミルフィ・リンドブラッド
【朧月】
悪代官を天誅できなかった、です。一般人を天誅しちまったです。
悔しいです。天竜砕きも悲しんでいるに違いねぇ、です。
この気持ち伸一郎にぶつけてやるです。(物理)
・説得(物理)
誠一郎、お前の師匠はお前を利用して何かをしようとしている怪物だぞ、です。恩があるから従っているというのは理解できるです。
でも、お前はその手に入れた力を人を傷つけるために使いやがるです?
もしかしたら、ここで暮らしているお前の家族も傷つくかもしれねぇです。
それでもお前はアイツに従う、です?
といって顔に右ストレートをプレゼントしてやる、です(UC無しの怪力を込めたフィー渾身のパンチ)
ふぅ…(無表情を崩してやりきった笑顔)
神月・瑞姫
●□
【朧月】
おねーちゃーん!?
気持ちは分かるけど
あの人も一般人なの
んーぅ
んーぅ…むつかしいの
【無明新月の法】で
視られるのは大丈夫になりそだけど…
ってきゅううう!?
おねーちゃんほんとにやっちゃったの
だ…大丈夫?
(【生まれながらの光】で殴られた伸一郎を治療
尻尾を枕に無自覚【誘惑】
えっと
はじめまして
みぃなの
その…むつかしい事は、みぃ分からないけど
褒めてもらいたかったんだよね
おにーちゃん
でも、あの天狗さんはたぶん褒めてくれないの
だって…おにーちゃんを見下してるのは同じだもん
利用されてるだけだよ…
それでも恩がって言うかもだけど…
…家族には恩…ないの?
最近、帰ってないんだよね
…きっと心配してるよ
帰ろ?ね?
忍足・鈴女
WIZ
天狗じゃ!天狗の仕業じゃ!!とな…?
この辺りに天狗の伝承がないか図書館ロールで【情報収集】
有力な情報が得られれば良いでござるが…
まあ期待はせずにおくでござるか…
後は道場での聞き込み
伸一郎はんの流派とか
どんな修行してたかとか
修行後の強さとか…
まあ役に立つ情報があれば
直に接触する人にユーベルコードで伝達やな
精々しっかりと気を引き、"視る"のだ…
鈴女もしっかりと見てるでござるよー
(天狗さんもユーベルコードで監視)
仕草、癖、余すところなく…
きっと最後に戦うべきはこやつでござるしな
天狗の面を被ったカラテマンは
実は親子とかいう可能性を疑わざるをえない
実は流派って極限流やったり(マテヤ)
夷洞・みさき
【WIZ】
さてと、代官屋敷で手に入れたこれに、天狗とやらの情報はあるかな。
そういえば、天狗の指導ってどんな物だったんだろう。
覚えていたら教えてくれないかな。
人を鍛える天狗。
過去にも似た様な出来事で、その顛末はどうなったんだろう。
それがどのような物あれ、伸一郎に伝える。
邪道でも進むのであれば、骸の海に落ちたのちは只の咎人であることを告げる。
まだ、現世の人であるならば、骸の海に魅入られない方が良いんだよ。
なるほど、見せ餌だったのかな。あの代官屋敷の全ての存在が。
ただ僕等を”視る”ための。
念の為、僕の主力は術と絡めた【UC六の同胞】としておこう。
実際に主力ではあるしね。
実は速度系物理
アレンジ歓迎
● 言葉は波のように伝わりゆく
屋敷での騒動を終え、猟兵達は次なる目的へと向かう。
それほど離れた位置ではないこの寂れた神社、そこへ真っ先にたどり着いた猟兵が居た。
否、偶然迷い込んだ少女と言ってもいい。
「お、俺としたことがちょこっとバックステップしたらこんな所に来ちゃうんだもんなー、っかぁー! ………誰かいませんかー!?」
魘は屋敷で起きた恐怖体験から全力逃走した結果、偶然にもこの場所へとたどり着く。なんという奇跡。挙動不審になりながらも、抜き足差し足忍び足で慎重に進む。
「何者だ。」
「ぴぃ!?」
完全にバレていた。声のする方を見れば、部屋の真ん中で佇む一人の青年の姿があった。
「おぬしが…?」
「居るなら居るって言えよな!」
どう見てもただの迷子の少女である、偉そうだが気丈さが足に出ている。
予想外の来客に、あっけにとられた伸一郎は、緊張感の抜ける息を吐く。
「……ただの迷い子ならばよい。早々に去れ。」
「ひ、人を迷子扱いするんじぇねーよ!お前こそ怨霊じゃねぇよな!こういう陰気の籠ってるとこに居るとまじで出てくるぞ!」」
無駄に広い空間に、灯りも少なく人がいなければ即座に出ていきたい場所だった。
「ふっ……怨霊ならば、既に憑いてるやもしれんな。」
魘はドン引いた。えぇ、なにいってんのこの人、怨霊肯定派かよ。
正直お近づきになりたくないと思ったが、それでも外を一人で歩くよりはマシだと判断する。
「つーかそんな所に1人でいるぐらいなら道案内でもしてくんない?」
「……待ち人がいるのだ。あまり善くない者をな。」
なんだこいつ暗いし怖いなぁと思いながら魘が戸惑っていると、多くの足音が外から聞こえてくる。
「へぇ、あれが伸一郎っぽい?……あ、目が赤い…。」
足音を感じさせずに先頭を歩いていた鬼燈が口を開く。中にいた猟兵ではなく、もう一人の男をターゲットと見据えて。
「お、おぉ!来たのかお前ら!あれ、ってことはここが次の目的だったのか……まじかよ俺すごいな。」
魘の一人芝居は華麗にスルーされ、幾人かの猟兵達が神社へと辿り着いた。
「例の天狗の姿は見えないねー。」
「……其方らが私の客人か。何用だ。」
警戒心を隠さない伸一郎の言葉を聞いた鬼燈がのほほんとした表情で言葉を返す。
「大勢で押しかけてごめんね?悪い事しにきたとかじゃなくて、簡単にいうと説得しにきたっぽい。」
ゆったりとした口調に、ペースを崩されながらも伸一郎が声を張る。
「説得……だと。村の者に丸め込まれたか?どれだけ言われようと……」
「あぁ、いいよいいよ。細かいことは他の人に任せるから。」
そういって鬼燈の代わりに別の男が前に出る。
「よぉ。」
「誰だ……。」
気さくに、まるで知人のような気軽さでヴィクティムが伸一郎に声をかける。当然相手からは怪訝な表情で見られるが。
「なぁにただの端役だ。噂を聞いて流すNPCみたいもんだ。」
ヴィクティムの言葉は半分も意味が届いていない。だが、不思議と言葉に耳を傾けてしまう。演技でありながら自然な立ち振る舞い、主役の間を絶妙に埋めるベテランの脇役のように魅入る。
「目立たぬ落ちこぼれの武家の子が、道場の門下生どころか師範すらぶっ倒し、並び立つ者もいない程の急成長。
井戸端じゃお前の話で持ち切りだろうよ。めでたい、めでたい……。」
パチパチと拍手をしながら近づく、敵意は感じない絶妙な詰め寄り、気づけば眼前に薄ら笑いの男の顔。
「で、お前どうやって強くなったんだ?」
心臓が握られるかのような一言。表面だけをさわっている中、唐突に確信へと手を伸ばされた事で冷や汗が流れる。
「師の尽力の賜物だ。」
「自分の努力は勘定に入れないのか?」
「…私の才を見出してもらったのだ。」
「修行内容は?才能開花の秘訣ぐらいあるだろ?」
「……心構えを教えられ、時には稽古を」
「その師匠とやらが、本当にただの優しさで手貸してくれてると思ってんのか?」」
沈黙。まくしたてる言葉の数々に、伸一郎は睨み返すことしかできない。だが、その瞳は折れていない。それがなんだ、と言わんばかりに。
「へぇ……気づいた上で、か。少し見直したが、尚質が悪いな。覚悟はできてんのかよ?」
「我が家のため、弱き子息は許されぬのだ…!」
魔に溺れるでなく、大切なものの為に選んだ答え。道は曲がったが、その心は真っすぐな芯があった。思考を掠め取っても尚、言葉と心に揺らぎはない。
「その愚直さ、嫌いじゃあない。でもよ、固いのは財布と身持ちだけにしときな。」
だが、その実直さが常に良い方向へ進むとは限らない。
「どう足掻いてもお前がやってんのはズルだ。お前の力で勝てなきゃ、仮初はいずれどこかで崩壊するぜ?」
「たとえ何と言われようと、私の心は揺るがぬ。才なき者は縋るしかないのだ。」
牢固たる意志は、誤りを認識できずに走り続けてしまう。
「……折るにはまず、身体の方からだな。」
「私の迷いを断ち切りたくば、正面から打ち破ってみせよ。」
さて、苦手な分野だな……とヴィクティムが考えていると背後から足音が響く。
「話し合いはもういいか?」
携えていた刀を取り出し、刀也が前に出る。
「おっと、あんたは門のところで大暴れしてた……よし、任せた。」
好都合と言わんばかりの笑みと共にそそくさと下がるヴィクティム、他の猟兵も自然と離れて場を任せている。
同じ男として、刀を握る者として、その場において最も相応しき者だからだ。
「才がない、と言ったな。」
その威圧感に、伸一郎の喉が鳴る。
「来い。剣とは何か教えてやる。」
刀也へと伸一郎が振り下ろした剣は、剛の剣。
それは幾度も刀也の構えた刃へと叩きつけられる。
嗚呼、だがそれはただ重く、ただ鋭いだけの斬撃だ。
地道に積み上げてきた下地を、完成図で塗りつぶしたかのような反吐のでる歪つな刃。
「剣ってのはそうじゃないんだ。」
対峙する伸一郎もまた、刃を交えて刀也の剣を感じた。
手抜きというべきか、子を相手取るような温い感触にも関わらず、ぴくりとも動かない刀にその表面より更に深みに触れる。
―――それは山、塵の一粒も零すことなく膨大な月日を賭して積み上げた努力の結晶。
「ぐ、ぅ
……!?」
呻く伸一郎とは対照的に、刀也は言葉を語ることなく、ただ刀に全てを乗せて語る。
才がない、環境に恵まれない。
、、、、、、、
『それがどうした。』
努力を止め、道を違う理由など何一つ存在しない。
「……努力はした…!」
不器用だったのだろう。上等な師が居れば変わったのやも知れない。
「それでも尚、不断の努力を貫く諦めない心を持ったやつだけが届く場所がある。」
一合、二合、三四伍、ただのつばぜり合い一つで汗が噴きでる、同門の者達とは比べ物にならない高く、重い。
「これが剣の道だ。」
僅か数分。もう語ることはないと、刀也は刃を仕舞う。教えることは教え、語り終えた。
伸一郎は礼の言葉を述べようとしてグッと堪えた。だが、心は認めていた。己が恥を、違えたものを。
「……。」
打ちのめされ、足元のふらついた先。
生け花のまわりでお香を焚いていた女性が伸一郎に気づき、拳を構える。
アララギ・イチイ、散々屋敷で暴れてすっきりとした様子だったが、何かが疼いたのだろう。
「あら、私と相手してくれるのかしらぁ?いいわよぉ。」
「そ、其方もか
……!?」
付き人だと思っていた女性の威圧感が急激に増す、冷や汗をかきながらも伸一郎は己の常識に則って言葉を綴る。
「なにも、武具を持たぬのか…?」
「えぇ、気にせずどうぞ。」
一瞬の躊躇い、だがイチイが手を構えた瞬間、跳ねるかのように刀を構える。
「ていやぁ!!」」
イチイは振るわれる刀の、刀身をじっくり眺めながら一重で避ける。
「変な模様描いてるわねぇ?呪われてるんじゃないのぉ?」
「こ、これは師より頂戴せし刀なり!」
やっぱり呪われてるじゃない、と思いながら摺り足で軸をズラすと、刀が袖の横を通る。地を向く刀を踏みしめタタラを踏む伸一郎の襟をつかむ。
「ていやー」
気の抜けた掛け声を返すと、風が荒ぶ。伸一郎、宙を飛ぶ。
「気が済むまで相手してあげるわよぉ。」
部屋の端まで投げ飛ばされた伸一郎が、俄かに信じがたいという目をしながらも、何とか立ち上がり向かっていく。
「お気に召したかしらぁ?」
「……。」
素手の女性に、子供のようにあしらわれてぼろ雑巾になる伸一郎。
それでも尚、膝をつくまでに相当の時間を要したその意固地な心がついに折れて膝をつく。。イチイは満足げに花の相手へと戻る。
虚ろな表情の伸一郎に、目の前にいた二人の少女が声をかける。
「おきにめしたか、です。いい加減認めやがる、です。」
「恩があるから従うのは理解できる、です。でもお前が従ってるのは世界の敵、家族まで危険にさらしてる自覚がないなら大馬鹿野郎、です。」
ミルフィが指をびしっと指さしながら言い放つ。
「このような幼子にまで諭されるのか……。」
「年齢なんて関係ねぇです。悪いことをしたら怒られる、当たり前のこともわかってねぇやつ、です。」
そんな当然の正論に、返す言葉もなく項垂れる。固く生真面目だった精神がどんどん凹まされていく、反発するように顔をあげる伸一郎、気づけばミルフィの姿が眼前に。
「だが……。」
「だがもだがしもねぇ、です。ちょっと歯を食いしばれ、です。」
それは無表情からの全力の拳だった。
猟兵達ですらまじかよという顔をしている。
「おねーちゃーーん!?」
きりもみ三回転を決めながら伸一郎は倒れる。乙女のような起き上がり方をしてエェ…と手で頬を抑えている。
反してミルフィはやりきった顔だった、終始無表情だったのに物凄い笑顔が眩しい。もう伸一郎のことは見てなかった。
「……フィーおねーちゃんがごめんなさいなの。」
駆け寄って癒しの術を使う瑞姫、光が伸一郎を包み込み、その尻尾もまた労わるように覆う。
「えっと、はじめまして。みぃなの。」
「……神秘の術か。其方たちは本当に我が師のように規格外で……敵対している存在なのだな。」
「え、えっと、むつかしい話はわからないけど、みぃ達のこと知ってるの?」
今更ではあるが、猟兵という存在を知らせずに乗り込んできた立場だ。伸一郎の理解の速さに助けられたといってもいい。
「僅かではあるが、師が言っていた。私は……師と其方たちの戦いの為に教えられたのだな。」
すっきりとした顔で
「わかっていても、それでも恩を感じちゃうの?きっと褒めてもらえないよ。」
「あぁ。それでも、だ。」
「家族には恩…ないの?」
沈黙。
「……その様なわけがない。厳しいが才のない私に尽力してくれた父、自棄になった私を辛抱強く支えてくれた母……恩がないわけがない。」
懐かしむように視線が遠くを見る。人一倍の愛情を感じて瑞姫の表情が緩む。
「なら、きっと心配してるよ。帰ろ?」
「あぁ…。すべてを見届けたらな。其方達と師、私はどちらを信じればいいかわからなくなった。」
瑞姫の優しさに触れて、伸一郎は憑き物が晴れた表情へと変わる。目の赤い光が徐々に弱まっていくのが見て取れた。
「だがそれでも、師が悪である存在とは思えぬ。胸に秘めた野望はあれど、私にとっては……。」
戦意を失い、だが未だ心には師の姿が残っていた。
「僕からもいいかな?」
立ち上がった伸一郎に、這いよる……否、ただ近づいただけだが、彼女、みさきにはその言葉がよく似合った。
「それは…?」
伸一郎はミサキの手にある紙に気づく、話の流れ的に差し出されたそれを見せたいのはすぐに察することができた。
「そこの彼女のおかげで見つけたものなんだけどね。」
「……。えぇ、俺!?」
しばらく展開を眺めていた魘が素っ頓狂な声をあげる。そうだよ、とみさきが笑みを浮かべるが心当たりのない魘はハテナを浮かべるばかり。
「その文字、名前、覚えはないかい?」
みさきの渡した書物をもった伸一郎、その手が徐々に震えていく。
「あれ、なんなんだよ?巻物だよな。」
「今でいう契約書、みたいなものかな。勅令の方かもね。」
耳打ちを終えると、伸一郎が大きく息を吐いて書物を返す。
「確かに…。我が師の名と恐らく同筆です、送られた相手は…。」
「つい先ほど半壊―――ううん、僕たちが向かった屋敷の代官さんかな。とても悪だくみしている、ね。」
それだけで伝わったのだろう。
「……なにか腹に抱えているものがあるのは感じていました。だが、人であれば至極当然、私の前では決して悪い方ではなかった。」
悲痛な顔で、それでも何とか飲み込むように襲い掛かる現実と立ち向かっていく。
「あれ。」
「む、遅かったでござるか?」
説得が終わった頃、遅れて神社に現れたのはエルシェと鈴女。一人は悪代官をグリモアベースへと送り、もう一人は情報収集へと手を広げていた。
「重役出勤か?仕事は手早く済ませておいたぜ。」
ヴィクティムがどうだとばかりに言う、周囲からはジト目で見られた。
「伸一郎はんのこと探らせてもろたけど、あんまり役たたへんかったねぇ。」
「でも、素早く説得が終わったようで何よりです。」
「少し打ちひしがれてるけどね。」
みさきの視線の先、伸一郎は項垂れ視線だけを向けている。
「詳細は知りませんが、いろいろあったようですね。
それでも私達の話を受け入れられた貴方なら、武芸以外の道も見えてくるはずです。」
エルシェの真摯な言葉と瞳に、伸一郎も浅くだが頷く。
「あなたの進もうとした道はもとよりあらざる道、蜘蛛の糸に過ぎませんから。」
伸一郎から視線を離し、エルシェは周囲の猟兵へと声をかける。
「それと皆さん、聞いてください。今回の敵、彼の師を偽る者のしょうt」
その瞬間、壁が爆ぜた。
刃。それはエルシェの背後の壁を突き破って現れた。仮面の男、そう認識した瞬間には無慈悲に無残に貫かれる事となる。
その運命は捻じ曲げられた、間に立つように一人が割り込む。鈴女だ、この中で唯一、この場にいない者への注意を払っていた。
そうしてかろうじて反応できたにも関わらず、刃の勢いを止めることはかなわず。女人故の非力ではない。猟兵としての怪力をもってしても勢いは僅かに弱まるのみ。刃はミシェルの元へと牙を剥いた。
「ほう……。貴様。」
完璧なタイミングだった。周囲は緩和した空気に慣れ、対象は周囲へと気が向いていた。
この場で串刺しにしまず一人、その混乱に乗じて戦力を削る。
、、、、、、、、
「儂を知っていたな?」
その目論見は潰えた。
刃は、エルシェの持つ手差の刃が受けていた。起動は僅かに逸れ、頬から一筋の血が流れる。
「……【蜘蛛
】…!」」
「うちを無視するとはいい度胸どすな…! ―――ござぁ!?」
天狗の仮面をかぶった男は迫る鈴女の手を掴み、エルシェへと放り投げる。咄嗟に受け止めるエルシェへ、追撃を考え止める。背後からの殺気にゆっくりと振り返る。
「この人数相手に跳び込んでくるとは、正気か。オブリビオン様よぉ。」
ヴィクティムが苦虫を潰したかのように睨む。考えの固さに自身で嫌気がさす。
この眼前にいる相手にとって、この程度は当然だろう。奇襲をしていることを差し引いても尚、だ。
「威勢のいい青二才だ。想定外な結果ではあるが、儂にとっては誤差よ。」
囲まれていることを感じさせない。まるで追い込む側は逆かと言わんばかりの威風堂々さ。
「それに比べて、我が弟子の不甲斐なさよ。」
「……師匠。」
天狗の強い視線を受け、伸一郎がすくみ上る。
「目を背けるな。」
刀也が腰の刀に手を伸ばしながら、言葉だけを投げかける。
「これでもお前はあいつに従うのか、です。」
ミルフィの引きずる大槌、天竜砕きが相応しき相手を見つけて吠え昂っているかのように、地面を削る。
「……師匠、私は……!」
「愚か者、貴様は下がっていろ…!」
「下がりませぬ!!」
伸一郎の強い反抗の意志が、視線が天狗面の男へと還る。
それに異変は見えなかった。たじろぐこともなく伸一郎の方を向いていた。そのとき、伸一郎が突如倒れ、近くにいた瑞姫がそれを支える。咄嗟の出来事だった。
男がその仮面の裏にどんな顔をしていたかまでは定かではない、だが場面は更に急転する。
――――グサッ。
「…ぐぅっ
……!?」
天狗面の胸から刃が飛び出る。それは出血を伴った負傷だ。誰が。背後から剣を突き立てたのは、少年のような青年。
「―――呪術返し、やせ我慢してたっぽいね。」
露木・鬼燈は少しの会話の後、存在感を隠し、伸一郎の様子を観察し続けた。関係性のありそうな屋敷で見た武者達との類似点を考え続けた。
オブリビオンとて生命がある。まるで命なき人形と化していた奴らには違和感があった。
対して人であり、師を妄信的に信じ続けた伸一郎――――そして赤い瞳。
それぞれ点と点は繋がり線となる、洗脳、それを超えた浸食。それは呪いの術であると鬼燈はあたりをつけた。そして強力な力には制約が存在する。
「悪いけど、戦場での僕は優しくないよ。」
制約が破られたからには代償が存在する。どれほどの強者だろうと、一瞬だろうと動きが止まらないはずがない。直観は確信へと変わった。
「―――――くははは!!!見事だ、童!!!」
天狗面の男は、強引に刃を抜きとり、振り払う。心臓に穴が空いたとは思えぬ力だ。
「……案外平気っぽい?確実に入ったのに…。」
警戒心からか距離を開ける鬼燈。男は出血しながらも大きく称える。
「早々にこれを飲むはめになるとは……おっと、これを被っていては飲めん。」
衝撃が三つ。
天狗の仮面を脱ぎ捨て、その素顔が露わになる。初老…といえるほどの高齢、だがそれを感じさせない風貌があった。
次におもむろに男が飲みだしたのは、瓢箪。見覚えのあるソレは猟兵達も持つものと酷似している。
「―――かぁっ!……何を驚いておる。貴様らも持っているであろう。
秘伝の妙薬、余程儂が邪魔だったのだろう、そんなものまで持たせるとはな。」
最後の三つ目、瓢箪の中身を飲んだ男の傷が見る見るうちに癒えていく。
「あら、そういう効能があったのね。生け花にかけなくてよかったかしら。」
イチイのマイペースな言葉に返す者はいない。猟兵とオブリビオン、対峙の瞬間が迫っていた。
「最低でもそこの儂を知る者だけで済ませようとしたが、ここまでくれば話は別よ。猟兵よ、貴様らはここで殺す。そやつ共々な。」
迷いなく、男は告げる。
眠りについた伸一郎は、どこか満足げな表情で気を失っていた。
大成功
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第3章 ボス戦
『松永弾正・久秀』
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POW : 蜘蛛よ牙を研げ、魔王を狩るために
【医聖直伝の健康法】【天下人を支えた頭脳】【無双と謳われた武芸】【天守造営始祖の誇り】【天魔鬼神を焼く業炎】【三好家再興の誓い】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 蜘蛛は奔る、愛と憎悪に身を焼いて
全身を【爆炎を纏う蜘蛛のオーラ】で覆い、自身の【三好家への忠義と愛、そして信長への憎悪】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ : 焔の蜘蛛、骨を喰め
【触れずとも、次元を超え骨を砕く魔刀の一撃】が命中した対象を爆破し、更に互いを【逃れられぬ、燃え上がる蜘蛛の糸】で繋ぐ。
イラスト:尾張屋らんこ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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● 黄泉還りし悪鬼武将
「儂の名は松永弾正・久秀、かつて第六天の魔王すら欺き裏切った男よ!!!」
オブリビオン―――松永弾正・久秀は、震脚と共にその刀を振るう。
爆音、その剣圧は爆弾を落としたかのような衝撃波と共に、神社の壁を吹き飛ばす。
「さぁ、かかってくるがいい猟兵。貴様らを殺すため、幾度もの策略を成した。」
神社だったそれの周囲は、見る限りの崖。この場所を底とした断崖絶壁、岩壁に囲まれた中で松永弾正は叫ぶ。
多くの人数で囲んでいるにも関わらず、まるでこの絶壁に追い詰められたかのような錯覚に陥る。
「儂の蜘蛛の糸、解けるものならば解いて見せよ。」
何もかもを見通すようなその瞳の視界は、この場すべての猟兵を捉えていた。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
シナリオ攻略に伴い、以下の情報が開示されます。
『宿敵主』『天狗の男を警戒した者』により敵の『奇襲』を防いだ
『呪術返しの指摘』により敵の『神水の瓢箪』を消費させた
『神水の瓢箪』の情報を手に入れた為。
『所有するPCは、あらゆる失敗が一度だけ無効になる』
以下の条件を満たしたPCは第三章の戦闘にて有利な判定が為されます
『一章にて、大成功あるいはオブリビオンに行動を見られていない(暗殺等をしている)』
『二章にて、伸一郎に武力行使を行っていない(見られていない)』
『参加した章の中で、いずれも満たしている場合。』
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
御剣・刀也
ふん。面白い
元より欺くだの切り札を取っておくだのそういったのは性に合わん
何時でも俺の全力で、真向から斬り捨てるのみだ
戦闘力を強化しようとしたら、その動作が終了するまでの間に近づいて斬りかかる
全身をオーラで覆おうとしたら飛び立たれる前に攻撃して飛翔を遅らせようとする
魔刀の一撃で蜘蛛の糸でつながれたら、怪我など気にせずその蜘蛛の糸を掴んでこっちに引っ張ってそのまま串刺しにしようとする
「元々頭脳労働は俺の性には合わないんでな。俺は俺らしく、武でお前の知略をぶち破ってやるよ!」
アララギ・イチイ
骨を無くせば大丈夫かしらぁ?
【禁忌薬・黒色薬】を投与、身体を骨格が無い、液体ボディに変化させるわぁ
これで敵の攻撃は完全無効、なんてことはないわよねぇ
無為無臭の毒ガス(味方無効)を【毒使い・範囲攻撃】で散布しながら、液体化して流体として壁を【ダッシュ】で常時移動、【迷彩】で視認性の低下を狙い、【フェイント】も混ぜて、ランダム回避運動するわぁ
攻撃は浮遊砲台システム1を【念動力】で【投擲】し【操縦】、大型チェーンソーで敵を【串刺し・なぎ払い】する様に動かすわぁ
蜘蛛糸に捕まったら、即座に【捨て身の一撃】で【早業】の突進、【傷口をえぐる】様にその喉元に牙を突き立て、爪で攻撃する、超近接戦闘に戦法変更よぉ
● 武将という名の兜
彼の者、松永弾正・久秀は現代の煙草、タバコを片手に持ち、もう片方の手を刀に添えながら猟兵達を睨む。
圧倒的威圧感。背丈は人のそれであるにも関わらず、まるで巨人かと思わせる圧力があった。
「六天魔王を討つために編み出した妙技、見せてやろう。」
気迫が形を持ったかのように力が溢れていくのが見える。
「させんよ。」
真っ先に、やはり誰よりも早く反応した刀也が刀を手に、瞬時に近寄ると同時に斬り払う。むざむざ敵の強化を待つ理由もなし。
「かかっ!そう急くでない、若造よ。」
受け止め、流す。あしらうように脱力の剣が制する。
「随分と儂の弟子に叩き込んでいたが、横やりは感心せんぞ。」
「……真っ当な剣を歩ませない悪道、見過ごせなかったのでな。」
否定はせんよ、と呟き。
「だが、勝てぬ剣に意味はなし
……!!」
脱力からの剛の剣。言葉を減らし、刀也は刃を迎え撃つ。松永弾正の剣は斬撃に、突きに、時に打撃を混ぜ込んで間髪なく叩き込んでくる。
「口だけではなく、達人か!だが、俺とて剣では負けんぞ!!」
「ふん――――貴様の剣筋は、存分に見飽きたわ。」
見切り、刀を手で弾く。刀也の目が見開く。驚愕を踏みしめ、間髪入れずに斬りかかる。
「かの屋敷のみならず、其処の童と視界を共有しておいた。貴様らの太刀筋、戦法を見る為にな。貴様は視せすぎた。」
縦の斬撃には軸をズラし、薙ぎ払いには刀で弾き、突きには指で峰を掴む。反撃の肘打ちが頭部にめり込む。
――――それは何戦、何十戦、幾たびも斬り合った末に読める境地だった。
「見事な腕よ。その若さで剣の極致に踏み入れておるとは。だが、あまりに実直。」
「ぐっ……俺の武は、まだ見せきっていない…!」」
睨む刀也に、飄々としていた松永弾正が吠える。
「愚か者!!剣において、太刀筋を見られる事は剣士の死だ!」
若き目を摘むように刀を突き付ける。
「それならぁ、見せたことない姿見せればいいかしらぁ?」
窮地において、変わらぬ声色とペースで話す女性―――イチイが割り込む。
「……儂は、女だとて手は抜かぬぞ。
一閃、袈裟切りがイチイを斬り裂く。
「……うふふ。」
「ほう。骨を抜いたか…? 変わった妙技よ。」
ぐにゃりとイチイの体が異常なほどに曲がる―――異様な姿でその剣の衝撃を受け止める。
「女は手数が肝心…とか誰かが言ってた気がしたわぁ。」
聞いた覚えすらあやふやな適当な発言をしながらも、口から紫色の煙を吐く。
「―――!」
松永弾正は咄嗟に口を塞ぎ、背後へ跳ぶ。だが、毒はその皮膚表面からすら進行していくく。
「さっきの瓢箪飲んでおいた方がいいんじゃなぁい?」
振り向くことなく、刀也に助言を残し前へ進む。眼前には、剣圧で毒煙を吹き飛ばしながら迫る武将。
対して、イチイはその液状ともいえる体を用いて、崖壁へと張り付かせ、壁を地に見立てて駆けだす。
「もはや魔のモノよなぁ!」
「怨霊に言われたくないわよぉ。」
イチイは念力で小型砲台を動かし、自身もまたチェーンソーを手に斬りかかる。そこに技術はなく、だが奇術があった。
「かははっ、よき発想なり!!柔軟さの化身よ。」
チェーンソーの側面を刀で抑え、砲台をかわしながら笑う。その皮膚が紫色に染まり、防戦一方に―――見えた。
「だが、甘いぞ小娘。」
炎が松永弾正を覆う。毒は熱で消え去り―――武将は完全に変貌した。
その動きが変わる。技を捨てた力の猛攻、変幻自在に動くイチイを完全に捉え、人を辞めた動きで翻弄する。身体能力によるごり押し。
「あ、あらぁ。」
化け物に対する対処は常に一つ。それ以上の化物と化せばいい、常人ならざる思考を異端の発想で超えてくる。
チェーンソーはどうあがいても防戦に向かず、その重さに振り回され追い込まれていく。
「これぞ無双の剣技よ。奇術程度で儂を――――」
「俺を忘れるんじゃねぇ。」
振り下ろされし、剛の剣。咄嗟に受け止めた松永弾正の足場が割れる。
「ぬぅ…この膂力は…。」
それが技の応酬でなく、力の押し付け合いならば、刀也という男の本領が発揮される。
「化け物狩りなら得意でな。」
力と力、猟兵とオブリビオンでありながら鍔迫り合いは拮抗する。刀也は一撃一撃に、持てる力の振り絞って放つ。
「足並みそろえるのは苦手だけど、袋叩きなら任せていいわよぉ。」
松永弾正が技で対抗しようとした瞬間、イチイが意識の外から潜り込んで唐突にぶつけてくる。奇妙な連携ができていた。
「かぁぁっ――――!!」
それでも尚。
「こいつ……まだ型が変わるのか…!」
「厄介…ねぇ。」
戦闘狂とも呼べる二人の攻撃をかわし、弾き、いなし、斬り払う。数瞬前の猛攻からは想像できない、防りの技術を発揮する。
「魔に墜ちた身よ、貴様らとは土台が違う。」
常に二つの花火を散らしながら、刀也とイチイの視線が絡む。対照的な二人だからこそ、思考が重なる。強者というのは厄介なものだ。
捨て身にならねば届かない。
「……覚悟の目だな、来るか猟兵よ。」
理解していようと、どれだけ視られていようと、構わない。器用な生き方等していないのだから。
イチイがチェーンソーを投げつける、当然弾かれ――――次の瞬間には、口を開き飛びつく姿が眼前に移る。首元は避けたが、腕に噛みつかれ動きが止まる。
「剣を、わかっていないのはお前の方だ。」
真の剣とは、極めし一刀ならば、例え太刀筋が視えようと
あらゆるものを断絶させる。
―――【雲耀の太刀】
「……かかっ!極限の状態となりて踏み入ったか。」
松永弾正の足元から炎が巻き上がる、剣とは程遠い術。その炎の中を"糸"が張り巡らされる。糸は刀也の腕を止め、イチイを引きはがし。吹き出す爆炎が両者を吹き飛ばす。
「僅かばかり遅かったのう。次があれば、剣を―――そして其れ以外のものも極めるがよい。儂はそうして強くなった。」
額と腕の傷から血を流しながら、松永弾正は空いた手から引く糸を回収する。男は武士から、手段を択ばぬ【蜘蛛】へと変貌していく。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
露木・鬼燈
あっ、これ何回か忍殺を極める必要があるっぽい!
類稀な強者…とどめ忍殺もいるっぽい?
最後まで油断できないやつだね。
まぁ、それだけに戦いは楽しめそうなのです。
空中の敵への対処、それは飛び道具で撃ち落とすこと。
攻撃の前後は達人であろうと僅かな隙がある。
そこを狙って棒手裏剣を当てる。
そして撃墜したところで追撃を加えるっぽい!
魔刀の一撃は練り上げた気に呪詛を混ぜた一刀で相殺するです。
あとは攻撃を弾き、突きを見切り、体制を崩す。
そして背後に回り…血霧腕を打ち込んで忍殺!
蜘蛛よりも百足の方が強いことを教えてやるです。
暴喰之呪法に生命力を注いで強化。
百足型の呪詛で体内から喰らい尽くすっぽい!
● 悪鬼羅刹、狩る。
「一回でダメなら一度で二回殺せばいいっぽい?」
鬼燈は極端だが悪くない自論だなと、自身で感心しながら様子を伺う―――が。
「……さすがに二度は駄目っぽい。」
目を細め、集中して隙を伺うも、跳び込んだ先は胴体とおさらばコースしか視えない。つまり隙がないということだ。警戒されているということか、さすがの難敵も先の一撃は効いたようで少し満足。
「これはこれで楽しめるってことで。」
こうなったら仕方ない。真正面からいくしかあるまい。今戦っている仲間達も長くは持たなそうだし。
「先の童か―――否、忍と呼ぶが相応しいか?」
「あぁいいよいいよ、僕はそういう固いの嫌いなんだよね。」
気軽な口調とは裏腹に、手は剣に、姿勢は既に臨戦態勢を取っている。僅かな間合いの変化を摺り足で調整して見計らう。
「かははっ、今時の忍は随分と軽いのう。まるで羽のようだ。」
豪気に笑いながら松永弾正は刀を肩に構える。
「えー、羽の方がほら、軽くて捉えずらいでしょ――」
言葉が終わるまでの瞬間には、既に対峙する二人の姿は其処になく。崖際で剣と刀がぶつかり合い、激しく火花を散らしていた。
「その若さで、恐るべき身のこなしよのう。」
常人の見える速度を越える。会話の間にも剣撃の音が鳴り響く。
「あなたでいう所の未来のからくりを使ってるのですよ。あと僕、見た目より歳は取ってるよ。」
回転しながらの袈裟切り、十文字斬り、すべてを走りながら、放つ瞬間のみ足を踏みしめた重い一撃。嵐が如く剣の舞いで襲いかかる。
「ならば童扱いはやめよう。覚悟はできておるな?」
先の猛撃さえ届かない、圧倒的な裁く技能を突破する為、脳を回す。だが答えを導く前に、【蜘蛛】が仕掛ける。
「我が奥義を見せてやろう。」
足蹴り、防いで尚その脚力に後ずさりする。松永弾正はその隙に刀を深く構える。―――地響きが聞こえた気がした。
「遠慮するのは……駄目っぽい?」
刀が届くはずのない距離、にも関わらず死を直観的に感じ取る。剣を構え術を練る。
「破ぁぁっっ!!!」
其れはもはや剣技ではなかった。
松永弾正の刀が、紅に染まった刹那、気迫と共にすべての力を解放した一撃が放たれる。
―――衝撃。爆音。
「……。随分と呪術に詳しかったが、合点がいったわ。貴様もまた使い手か。」
地盤を裂き、空間を裂き、鬼燈の背後にある崖にすら巨大な斬跡を残すほどの一刀。歪んだ空間が戻る衝撃はすさまじく、壁の斬撃跡は爆破したかのように傷跡を残す。
「それはちょっと……ズルいです。」
呪われし魔剣に、呪詛を込めた。彼の魔刀を無事に受け止めたにも関わらず、手が痺れる。剣は耐えれど、体は負荷に耐えることができない。
「魔に墜ちることで完成した業よ。去ねい。」
岩盤を背にする鬼燈へトドメを刺すべく、刀の剣先が豪速で迫る。
手が痺れるのならば―――足を使え!!
避けようとする本能をねじ伏せ、前に――――。迫る突きを見切り、足で刀ごと腕を叩き伏せる。
「掴ん…だっ!!」
その表情にいつもの弛緩した様子はなく、羅刹が如く形相で全神経を集中させていた。体制を崩した松永弾正の背後に―――背面ならば対処のしようがない。
「【血霧腕】っ!」
背後に忍び込み、必殺の一撃が貫く。撃ち込まれた腕は呪詛を巡らせ、生命力を消費して強化した呪詛は百足の形となりて張り巡らせる。
ヒャクアシ
「貴様は百足か。」
「あなたは蜘蛛と呼ばれてたよね。百足の方が強いことを教えてやるです。」
松永弾正が笑みを浮かべる。何故。気づく、自身の腕は僅かにだが、その体を貫きはしていなかった。糸が腕に巻きつき、食い止めていたのだ。
「猛き蜘蛛は百足すら食べるのだ、覚えておくがよい。」
灼熱。近くにいる鬼燈にまで届くほどの高熱が、体内に入り込んだ呪詛を焼いていく。人の身ならば耐えきれぬ熱量。
「絶死の猛毒であれば、下剋上もあったやもしれんな。」
危険を感じて退こうとしたが、腕に巻きつく糸を斬る猶予しかなかった。わざと背後に周らされたと理解した瞬間には振り払われた刀を胴体に受ける。
「……切断は適わんだか。」
胴体から流れる出血、足元にはその身で主人を守った機械百足の姿――――が、びたんびたんと身をよじりながら鬼燈の元へ戻っていく。
「保険が効いたっぽい……。」
それでも受けた衝撃は強く、腹部には一閃の傷が残る。出血を抑えるために、瓢箪を飲まねばならない。
「おっと、させぬぞ。」
好機をむざむざ逃すほど甘くはない―――――が、それを読み、罠を設置するように投擲された鋼製の棒手裏剣が、松永弾正の眼前に迫る。
「………ふむ、隙を突かれたのはお互いか。」
刀で手裏剣を弾く。僅かな硬直が、鬼燈を死地から脱却させた。
「こっちとしては、不利っぽい。」
神水を飲み干し、傷が癒えていく。だが、僅かな時間の攻防で積み重なった疲労を拭うことはできない。
「かかっ、先刻の傷、借りを返したまでよ。忍よ、妙技の数々見事であった。暗殺をし、儂の眼を逃れ……猟兵共は予想を超えてきおる。」
背中の傷を自身の炎で焼き始める。痛みや異臭すら楽し気に笑い飛ばし。後退する鬼燈へ追撃することはしなかった。
「故に、儂もまた本気を出そう。」
炎は体を伝い、刀へと集結し、真の意味での魔刀へと変貌していく。
「元気なおじいちゃんなのです……。」
十分時間を稼ぎ、その技を周囲に見せた。上があるのは予想外だったが。一人では一旦ここまでが限界のようだ。
「あとは任せるしかないっぽい?」
命尽きるまで楽しみたかったが、まだここは死地ではない。
成功
🔵🔵🔴
月隠・望月
第六天魔王と渡りあった者がオブリビオンになった、のか
対峙しているだけで感じる圧力も納得、だね
とはいえ、相手が強くともやることは、変わらない。オブリビオンは、全力で倒すのみ。
わたしは【反術相殺】で敵のユーベルコードを打ち消すなどして、仲間の猟兵を支援、しよう
奴のユーベルコード、は、長く効果が続くものが多い、と見た。無効化する術があったほうがよい、だろう。一度目は打ち消せず、とも、敵のユーベルコードをよく観察(【見切り】【第六感】)し、次に備えよう
敵の攻撃を無効化できなかった場合に備え、陰陽呪符を放って障壁を展開(【オーラ防御】)して、おこう。完全には防げず、とも、回避するための時間稼ぎには、なる
望月・魘
おお、雰囲気あるねぇ!
こういう敵だったらいいんだよ!!この依頼、怨霊とかなんかそれを肯定する陰キャなやつとかばっかだったし……まじハァーっ!(クソデカため息)
いや第六天の魔王を欺いたとかなんとか言ってっけど、ヤバそうだなぁ……実際剣振っただけで爆発起きたし……
まぁ俺がなんとか囮になっから他のやつら俺が死ぬ前にお前らなんとかしてくれよな!!
というわけで俺も本気出すぜ!
妖怪・悪鬼・幽鬼……この空間だとどれも満ち足りてそうだし【降魔化身法】を使ってそいつらを糧に強化!
さらに【薄明捌き】で相手の態勢を崩すのを狙うぜ!
● 雲に隠れし月光
「俺が囮になる!!」
望月・魘は刀を構え、消耗した仲間達をかばうように松永弾正の前に立ちふさがる。
―――咄嗟に跳び出しちまったけど、戦えるのかこいつに。まぁでも幽霊とかよりはマシだよなぁ。
「儂に近寄ると火傷するぞ小童。」
その燃える刀の一撃を受け……切れない。炎の斬撃は武具による受け止めを許さない。只の一太刀すら防ぐ事は適わない、魔の刀と化していた
「あっづぅ…!」
―――嘘嘘、無理、幽霊とかいう問題じゃないこいつ、炎の塊だ!もっと早めに戦っておくべきだった!
「あぁもう、出し惜しみしてられねぇ!!ユーベルコード!」
【降魔化身法】、魑魅魍魎、悪鬼妖魔、地に空に人に宿りし怨念や力を吸い込んでいく術。この空間には満ち足りた魔があった。松永弾正からも何かが抜け出て吸い込まれた。
――――お前からも吸えるの!?
「降魔の術か。儂に憑く数多の怨念を吸いよったか、面白い。」
違った。だが、濃密な戦いの記憶が脳を、体を巡っていく。
「ふっ、これでもう負けない!」
気づいたら吹き飛ばされていた。……無残にやられた悪鬼妖魔共の記憶など役に立たないのかもしれない。というか、こっちが強化しても相手も強化してちゃ意味がないだろ!
「足りんのう。実力も覚悟も。」
ため息混じりに魘を見る目はもう下がっていろと言わんばかりに見下していた。
「……お、俺がただ無意味にやれているだけかと思ったのかよ。」
「僅かばかりの時間稼ぎなど何の意味が……」
震えそうな足を保つには自分の力だけでは足りなかった。―――だから頼った、そして間に合った。
「ぬっ…!」
松永弾正の膝が一瞬落ちかける、すぐに持ち直したがその異変に気が付く。
「―――【反術相殺】。」
呪符を手に、一目でわかる禍々しいオーラ。月隠・望月による相殺の力、松永弾正の己を鼓舞し強化していた心気が霧散していく。
「呪術の使い手か、まだ居よったとはな。」
目標が切り替わる、だがそれを阻止する小さな影。
「おい、俺を無視して行こうだなんて良い度胸じゃねぇか。」
「……僅かばかり埋まった差、それで儂に追いついた気か。」
殺気。先ほどまでの一撃より、確実に死を与える気迫で放たれた一刀。
ギィィッッ!!
「どうしたよ爺さん、大口叩いた癖に、いっちょ前に驚きやがった。」
【薄明捌き】
ユーベルコードの同時使用。強化の代償でまわる毒、体への負担―――そんな事を考えてる場合ではない。
炎を纏った刀への対処方法は、"炎ごと刀を完璧なタイミングで防ぐ"、言うが易しの典型だろう。当然魘に余裕などはなかった。
「……ふんっ!」
「(やばい、来るぞ、防げ…ッ!)」
切り上げを斜めに弾き、横薙ぎを峰で受け流し、突きを蹴り飛ばしてズラす。研ぎ澄まされた感覚が一寸の狂いもなく弾き続ける。
「ほう……では、これはどうだ。」
空いて手からは糸が伸びる。ただの糸ではない、粘着性のある糸が投網のように広がり絡めとろうとしてくる。
「(―――糸までくるのか!?)」
冷静にだ、集中しろ。
「(早く切れ、くる、くるぞ!体制を立て直せ!)」
縦糸には粘着性がない、どこかで聞いた知識を走馬灯のように振り返りながらも、糸を真っ二つに切断する。
「休む暇(いとま)は与えぬぞ。」
振り下ろされた上段の一撃、僅かに間に合わず弾き損ねる。
「(熱い…!
燃えるように熱く、酸素が行き届かない。確実に、炎を散らすように弾かなければ意味がない。防御に専念してるにもかかわらず反撃の隙すら見えてこない。
「(それでもだ!)」
―――弾き、弾け、いける、やれる!回転率をあげろ!
防戦一方だった戦いに、反撃の一手が潜り込む。ギィン、と軽く防がれるが、そこから僅かに流れが変わっていく。
「……むっ、小童めが生意気に。」
十に一の反撃が、五の一に、四の一に、三の一に。
「あまり調子に乗るでないぞ。」
松永弾正の雰囲気が変わる。その背に黒い炎のオーラが立ち込める。
一撃、受け止めた剣ごと吹き飛ばされる。速度の変わった一撃に、対処しきれずズレた。
「かはっ……!」
「やらせない。」
魘と松永弾正の間に陰陽呪符の障壁が這い出る。僅かな時間、月隠が時間を稼ぐ。
「助かる…! 頼むぜ、神水とやら!」
瓢箪を口に含む。毒が、脱力が、神水を飲むごとに、無理をしてボロボロになっている体を治していく。治し続ける。
稼いだ時間は一瞬、障壁を斬り破り、【蜘蛛】が迫る。
「――――おぉぉぉぉっ!!」
再び対峙する。先ほど防げなかった一撃を、両手に握った剣が弾き返す。
、、、、、
即座の斬り返しの一撃すら精巧に防ぐ。魘の腕がきしみ、骨が歪みながら、即座に接着される。
・
「私は負けない!!この剣は、闇夜を斬り裂き、死地を照らす、月光の刃だ!!!」
神水の癒しが続く限り、限界を超えた動きで弾き、弾き、弾き続ける。
「ぬ…ぅ…!?」
ついに、ついに、松永弾正の姿勢が崩れる。切り上げられた刀を握り、たたらを踏む。
――――今だ!!!
貫かんとした刺突。彼奴の体に突き刺さる直前、割り込まれた腕が刀身を掴み阻まれる。全身を乗せた一撃を片手で止める、圧倒的身体能力の差。
「急いたな。甘いぞ、猟兵。」
「甘く、ない!」
、、、
グサリ―――。
刃が肉にめり込む音が響く。両手の埋まった松永弾正の、背中へ突き刺さる刀、名もなきそれが名将を穿つ。
「かは…っ!!」
「魘殿が切り開いた道、決して無駄にはならない。」
より深く、息の根を完全に止めようと体重を乗せる―――がそれ以上が進まない。
「……非礼、詫びよう。だが。」
武将の鎧が脱げる、その前身は老体と思えぬ筋骨隆々さ、そして何より、びっしりと這うように巻かれた蜘蛛の糸。刃の進行を食い止めていた糸が鎧と共に剥がされる。
「儂の命はまだ尽きん!この命討てるものなら討ってみせよ!!!」
爆発、爆風。土煙が舞う中、松永弾正の背には爆炎纏いし蜘蛛のオーラが纏われていた。
「化け物、ね…。」
倒れた魘へ、月隠は自身の瓢箪を飲ませる。
「愚かな真似を………退け。封印術に障壁、もはや力は残っておるまい。」
迫る武将、振るわれる刃、刀は地を削る。
外した―――否、耄碌しようと剣筋を違えることはない。
「力なき術師かと思えば、存外やるではないか。」
月隠は振るわれる刀を紙一重で避け続ける。視認することすら困難な斬撃を避ける、それは才であり、戦いを観測し続けたことによる見切りでもあった。
だが、
「もはや儂の身は人智を超えた。二度は言わん、退けぇい!!」
飛翔、翼なき身でありながら炎を纏い男は宙を制する。疲弊した体で、飛翔する燕を捉えることはできない。吹き飛び気絶した少女の体が二人重なる。
「せめて共に眠っておれ。いまだ狩るべきものがいるのでな。」
激戦を交えた猛者達を見降ろし、視線を外す。戦いは次の舞台へと移っていく――――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
忍足・鈴女
旗色が悪うなったら
逃げの一手って可能性もあるやろなあ
逃がさんように
欺き裏切ったて…
二回も裏切って
一回目は許してもらっただけやん
二回目も温情あったけど
茶器惜しさに信貴山で
平蜘蛛ボンバーしとったら
世話ないなあと
【挑発】【おびき寄せ】
ふっふっふ…うちが今まで
戦闘らしい戦闘をせずに己の手の内を隠していたのも
二章の参加が遅れたのも
この時の為なんでござるよ(どやあああ
半径30mちょいの弦結界
入ったら鎧ごと賽の目になるまで出しまへんえ
(対象は敵・ユーベルコード使用)
敵の近接攻撃は危なそうやし
弦での【盾受け】
【グラップル】によるいなし
【ロープワーク】で相手の体勢を崩したりして
【野生の感】【第六感】で全力回避
夷洞・みさき
現世の人を手勢にして、目指すのは海に失われた想いを今一度、ていう所かな。
【SPD】
潜入の時は望月くん、だったかな。彼女のお陰で僕を覚えている敵はいないはずだけど…。
同胞を表に出して戦うのは相性が悪そうだし、
飛ばれると僕もやりにくいね。
だから、こっちに来た時にカウンターを狙おう。
噛み付けるのは何も僕の口だけじゃないからね。
【UC】にて手、膝、腹、尾に同胞六人。
計七対の魚眼の視界にてとびかかる敵を補足する。
攻撃は【激痛耐性】で耐え、UCによる生命力吸収で相殺(リゲイン)する。
所謂、我慢比べだね。
踊り喰うのはどちらになるかな。
余裕のある振りで騙せると良いけど。
君の主君や仇敵もいる海に還ると良いよ。
● 黄泉に還れぬ者達
翼なく飛翔する松永弾正、背の化け蜘蛛のオーラが燦々と輝く。
「おっと、逃がさんよ?」
その蜘蛛を捉えるように斬撃。松永弾正のものとは違う固い糸。刀がそれを受け止めるか、切断に至らない。
「ほう……弦の糸か。あれも良きものだ、柔軟かつ強くしなる。」
「せやろ?」
張り巡らせた糸の上に、鈴女が立ちながら三味線を靡かせる。
「だが、脆い。」
まとわりつく弦の糸を、一刀の元に斬り伏せる。
――――否、切れない。
「……ぬっ。」
「んふふ、糸かて使い手の技術も大事なんどすえ。」
鈴女は糸を使う技術に、まるで手持ちの武器のような技術を流用して巧みに操る。
「偉い大袈裟な啖呵きってはったけど……欺き裏切ったって、温情受けときながら、茶器惜しさに平蜘蛛ボンバーしとったら世話ないなあ。」
口元を隠しながら、見え見えの挑発。
「ふん。異なりし世界の儂か。……まぁよい、安い挑発だが、乗ってやろう。」
弦糸を弾き、空中から急降下で鈴女の元へ迫る。
「ほな、頼んだでござるよ?」
松永弾正が地に近づいた瞬間、その周囲を覆うように糸の結界が生み出される。【蜘蛛】が糸に捉えられた。
「うん。僕がやれる範囲で、だけどね。」
糸の結界の中、光ならばとおるはずの空間がまるで薄暗い檻のようだった。その檻の主、みさきが闇より這い出る。
「……貴様、死神の類か?儂を黄泉へと連れ戻す気か。」
「生憎、僕が送れるのは海の奥底だけだよ。」
すべては海に、極楽も地獄もなく、失われしものの終着。ある意味、お互いの言葉は同じだが、当人たちの解釈は異なった。
「……この空間そのものが、儂の命を蝕むか。素早く片付けてやろう。」
迫る刃。
「【如人変成・深海龍魚】」
みさきの腕が変化する、魚―――本来思い浮かぶソレとは大きく違うのは、その異質な姿。光なき目、悍ましく開く口、深海魚【ワニトカゲギス】の頭部が生まれて刃を受け止める。
それが6か所。抱き着く様に近づき、それらが蜘蛛を食む。狭い空間に避ける道はない。
「猟兵とは不思議なものよ。汝のような異形すら許容するのだからな。」
「世界に仇名すか否か、結局はそういうことじゃないかな。」
刃を受け止めていた魚頭が斬り裂かれる。腕も半ばまで斬られるが、みさきの表情は崩れない。
「魚人よ、痛みも感じぬか。ならば鱠にしてやろう。」
一瞬で六つの魚頭が斬り裂かれる。―――次の瞬間には、新たに生まれた頭が噛みついている。
「この子たちにもう死はないんだ。少し……君に似ているかもね。」
噛みつき方にも工夫をこなす、刀を振りづらくするために腕を中心に、じわりじわりとその体を蝕む。
「君の主君も仇敵も海に還った。長居はよくないよ。」
余裕な表情で、斬られながらも蝕み返す。手ごたえを感じさせない。
「だからこそ、だ。あのお方が蘇ったとき、やつが蘇ったとき、儂が天下を取っているに越したことはない。」
話は通じない。価値観が正常ではない二人であろうと相容れぬことはないだろう。
「あぁでも。君も抗う子でもあるのか。」
相容れぬが、あまり変わらないのかもしれない。それでも敵対するのが世の無常さだ。もう少し"語り合う"としよう。
「……意外と長いでござるな。」
鈴女は暇を持て余すように三味線を弾く。彼女の希望で二人にさせたが、一人で何とかできる相手とも思えない。そんな風に思っていると。
「おわっ!?」
糸が真っ二つに斬り裂かれる。切り口からは炎が漏れ、解放されて入れ替わる空気が燃えていく。倒れたみさきは焦げて倒れながらも呼吸はしている。何故トドメを刺さなかったのかはわからないが、思うところがあったのだろう。
「えぇ……それ両立できるのズルあらへん?」
それを気にする余裕もない。化け蜘蛛のオーラに炎刀、過剰戦力の塊が眼前に現れているのだから。
「相応の代償をかけておる。その数でかかっているのだ、卑怯とは言うまい。」
迫る松永弾正に縄のような糸が道を遮る。重ねた糸にロープワークと呼ばれる【蜘蛛】にとっては未来の技術。通した刀が食い込み止まる。足が止まった瞬間、二度目の糸の結界が松永弾正を襲う。今度は包囲ではなく切り刻むのを目的とした。閉じ込めている間、入念に準備をした代物だ。
「同じ糸を使う者として語りたいこともあったが、時間がないのでな。早々に決めさせてもらおう。」
刀を深く構える。その刀身は紅に輝く。
一閃、光をも奪う漆黒の刃。
強靭な糸をも断ち切る魔刀の一撃。斬撃に触れた糸が、ダイナマイトのようにはじけ飛ぶ。
「ほんまにボンバーしとう……。」
洒落にならない斬撃だ。対処できる方法がないわけではない…が、一人でこれの相手は正直したくはない。
「抵抗せぬのならば、苦しませずに逝かせてやろう。」
刀が迫る。
「あはは、嫌やわぁ。うちは一人で戦う気あらへんよ?」
刃が届く前に、影が落ちた。何か、巨大な何かが松永弾正を月の影から隠したのだ。ソレから猛烈な勢いで"死"が迫る。
「―――!?」
咄嗟に空へと飛翔し、交わす。そして空を見た――――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ミルフィ・リンドブラッド
【朧月】
どれだけの策略を用意しようとフィーには関係ねぇ、です。
そのことごとくを凌駕してお前を骸の海にかえしてやるです(ビシッ)
・戦闘
フィーの真の姿で相手をしてやる、です。
(ミルフィに宿る竜の血を呼び覚まし、白銀の鱗に覆われたドラゴンへと姿を変える。)
…いくぞ、です。
【黒風鎧装】で漆黒の旋風を纏い。
翼で大気を打ち、一陣が風がごとく突撃。(みぃと挟撃)
敵に接近したら竜の巨体と重さを利用した爪や、
戦場に散った血を利用して『血の弾丸』の術式で攻撃。
攻撃している内に相手の攻撃の癖や隙を観察しておく。
隙を見せたら漆黒の旋風を口元に収束させブレスのように相手に放つ。
「…そういえば天竜砕き使ってねぇ、です」
神月・瑞姫
【朧月】
!
おにーちゃんは殺させない
流れる刻を司り、現世を守る…
それが猟兵…
それが神月の巫女たる、みぃの務めだから!
いくね
おねーちゃん
神さま
みぃに【勇気】を!
(狐面を被り真の姿を現す
戦巫女の真骨頂たる神降ろし【巫覡載霊の舞】
肉体はその力を振るうに相応しい齢に
溢れる神気が形作る尾は九
いざ参る
六天の魔王に滅ぼされし武士よ
(竜と化したフィーと共に突撃、挟撃
【鎧無視攻撃】の神気纏う衝撃波の乱舞乱舞
あらゆる攻撃を軽減する神霊体
纏う神気【オーラ防御】で爆破に耐え
纏わり付く炎の糸さえ利用する終の一撃
炎天劫火…紅観月!
(【フォックスファイア】狐火を操る力で炎を薙刀の一点に集中
炎【属性攻撃】の斬撃として撃ち放つ
● 白銀の月よ、蒼く燃えろ
己へと攻撃を加えた何かは、一目見上げるだけで正体がわかった。
宙を蹴る松永弾正に影が落ちる。太陽を遮って尚、燦々に輝く巨大な生き物。それは白銀の竜だった。逞しい四足、巨大な翼、長く太い尻尾。そして知性の宿る瞳。
「ほう、蜥蜴の妖か。」
松永弾正は見上げ、感心するように笑う。
「蜥蜴じゃねぇ、竜だぞ、です。」
巨大な竜の身からは想像できないかわいらしい声が、地響きのような唸り声と共に発せられる。
真の姿と化したミルフィ・リンドブラッドは、空の王者として浮かび上がる蜘蛛を叩き落しにきた。
「怪異に墜ち、怪異を狩るか。それもまた一興。竜狩りと洒落込もうではないか!!」
「たかが蜘蛛が喚くな、です。どれだけの策略を用意しようと、その悉く凌駕して骸の海に返してやるです。」
その巨大な爪を突き立て、宣言する。
「……いくぞ、です。」
【黒風鎧装】、真の姿を条件とする、漆黒の旋風を纏うユーベルコード。その巨体が攻撃性の風を纏い突撃する、それだけで圧倒的脅威だ。
松永弾正は大気が震えるほどの突進に対して、成す術もなく受け止め吹き飛ばされる。
「足元で足掻いていろ、です。」
満足げに微笑み、旋回。再び捉えようとして、見失う。その腕(足)に受ける衝撃、通り過ぎた何かに白銀の鱗に傷がつけられた。
「このような岸壁に囲まれた場所、小回りは効くまい?」
圧倒的な飛翔速度。戦場との相性も相まって、巨体の優位を十全に行かせない。
「てめぇ、まるで蚊じゃねぇか、です。大人しく潰れるです。」
竜の腕、足を振り回す、当たれば大打撃、ついにその腕が蜘蛛を捉える。
「甘い。」
その腕に、投網のように粘着性の蜘蛛糸がかかる。動きは鈍り、指を閉じきることができない。強靭かつ分厚い竜の爪故に蜘蛛糸を易々と切断することができない。
「ねばねばしやがる、です!」
「卑怯とは言うまいな。」
二度三度と、その体を斬りつける。だが、その皮膚に傷をつけることもまた叶わず。
「……硬いな。鋼すら断ち切る儂の刃が通らんとは。」
炎も斬撃も有効打になり得ない。共に千日手となりかけたその時。
「ぬっ!?」
ギィンッ。四度目の斬撃を翼めがけて放とうとした瞬間、刀が弾かれる。視界の先に捉えたのは薙刀を持つ、神秘的な美しさの戦巫女。
「何者だ。」
その姿に見覚えはない。瑞姫という少女が真の姿を解放したものだと、瞬時にはわからないほどの変貌だった。
「お主に名乗る名はなし。六天の魔王に滅ぼされし武士よ。我が黄泉へと送り返してやろう。」
「狐の妖――否、神獣か」
纏う神気は魔のものではない。本能的な敵対者。その九尾の尾からは膨大な力を感じ取る。
竜の背に降り立つ。一合交えただけで理解する。ただ速いだけの攻撃に意味はないと。竜の背にて対峙する、蜘蛛の武士と神宿りし巫女。
「竜狩りに神殺しか……ふっ、黄泉還りに箔が着くわっっ!!!」
怨嗟の炎篭りし刀。
神気にて振るわれし狐火の薙刀。
灼熱を帯びた紅の刃が放たれれば、蒼き炎纏いし薙刀の一撃が返す。刃が重なるたびに衝撃波が飛び交い、
「愛し子は願った、流れる刻を司り現世を守りたいと。お主という世界の異物、見逃すわけにはいかんのじゃ。」
薙刀を全身全霊で振り下ろす。細身からは信じられいほどの膂力で放たれ、刀が受け止める。僅かずつ押し込んでいく、膝が折れかけた時、片手で振るい続けた松永弾正が、ついに柄を両手で握りしめて対抗する。
そうなれば、今度は刀が押し返し、均衡が破れる。
「ふぃーの背中で乱痴気騒ぎするな、です!衝撃で背中いてぇ、です!」
押し負けそうになる瞬間、背に乗せていた竜が術を展開する。猟兵達と松永弾正の激闘によって戦場へ飛び散った血痕、地面に染み込んでいたそれらが空に浮かび上がる。
松永弾正へ向けて『血の弾丸』が炸裂する。
「ちぃぃ!」
鍔迫り合いを抜けて、弾丸を弾き、その場を離れて瑞姫の薙刀から逃れる。
「離れやがったです。チャンス、です。」
「合わせるのじゃ、フィーよ。」
薙刀より放たれる蒼炎の衝撃波が、漆黒の風を収束させたブレスが、松永弾正へと襲い掛かる。炎刀がすべてを切断していくが、防戦一方となる。
「このまま押し込んでやる、です。」
ミルフィは血の銃弾も合わせ、怒涛の遠距離攻撃を放つ。釘付けの状態で瑞姫が竜の背から飛び出す。
【浮月】―――空中を蹴りながら、接近し薙刀を振るう。
「炎天劫火…紅観月!」
蒼い狐火の全てを薙刀の先端に乗せ、一点集中の斬撃が敵を穿つ。月を描くような美しき炎の軌跡が蜘蛛を飲み込む。爆炎が煙と共に視界を遮った。
「ふぅ……やってやった、です。」
「フィーよ、油断するでない!」
煙が晴れる。松永弾正にその身は血に塗れ、一部は焦げ付いているが気迫に衰えなし。煙が晴れたその場で、刀を上段に構えていた。
「なにを……。」
「――――【破魔月刃】!!」
相殺の破魔を薙刀に乗せ、振りかぶる。全身の神気を防御壁のように展開しながら、ミルフィの前に立った。
「奥義・骨喰み。」
音を、光を、時空をも斬り裂く魔刀の一撃は音も光もなく、表現するならば"黒の斬撃"が飛ぶ。瑞姫は、相殺術で威力を弱め、薙刀で受け止める。炎に焼かれ、弾き飛ばされながらも見事に防ぐことができた。
「 返 し 断 層 」
音が鳴った。閃光が奔った。歪んだ時空が元に戻る――――衝撃。両手で握ることで初めて、この技は完成する。二撃必殺、
「あぁぁぁっ!!」
「フィー!!」
竜の鱗を貫き、鮮血が舞う。裂けるだけで済んだのは竜の身故だが、傷は決して浅くはない。爆破した傷跡はあまりに無残。瑞姫はミルフィの元へ駆け出そうとする直前に気づく、松永弾正の姿がない。向かってきているのか、否。
「(――――ダメ、神さま!)」
松永弾正はあろうことか、地に伏せ避難させていた伸一郎の元へと駆け出していた。
浮月で迫る、が間に合わない。
「ふっ、なにを勘違いしておるか。」
松永弾正は、伸一郎を通り過ぎ、その先にある刀へと手を伸ばした。
「返してもらうぞ、伸一郎。」
「……次は二刀か、随分と芸達者だのう。」
両手に握る二振りの刀。構える姿は付け焼刃ではないことを感じられる。
「かつて剣聖として名を馳せた者は、扱う武器を選ばなかったそうだ。貴様を斬るには一刀では足りないようでな。」
「……背の蜘蛛、随分と小さくなっておるな。随分と無理をしているのじゃろう?」
「空飛ぶ蜥蜴を落とせば、不要の代物よ。」
「あれほどの数の術の、そう長くはもつまい。」
松永弾正に、自由に空を飛ぶ余力はもうない。その予測は正解であった。だが、蜘蛛は笑う。
「貴様を斬り、手負いの猟兵どもを斬るには十分であろう!!」
二刀連撃。手負いとは思えない、否、手負いだからこその剣技。荒れ狂うような暴風となって斬撃を叩き込む。瑞姫はそれを薙刀で防ぎ続ける。
「……くっ。」
長くはないと指摘した彼女もまた、その力を発揮する猶予が残り少ない。二刀となり型の変わった剣技を読むのは至難だった。
――――目が覚める。僅かな時間、気を失っていたようだ。痛む体で瓢箪を取り出して口に含む。
「ぷはっ……みぃのやつ…戦ってやがる、ですか。」
傷は癒える、だが真の姿を発揮するには体力が足らない。なにより、巨体で割り込むには分が悪い。何もできないのか、唇を噛むほどの悔しさに包まれかけた時、気づいた。
「天竜砕き……。」
自身が落下した位置が偶然にも『もう使わないから置いておこう』と放っておいた愛槌の傍だった。地面に突きたてられた大槌が何かを言っている気がした。
「まだ……やれる、ですか。」
天竜砕きは何も応えない。答えはいらない、強く握りしめた手に馴染んだ重さを感じた。
「どうした、儂を討つのではなかったのか!我が誇り、我が悲願、この程度で止められるものと思うたかぁ!!」
「ごちゃごちゃうるせぇ、です
!!!!!」
怒りが爆発した一撃。唐突に飛び込んで大槌、咄嗟に受け止めて尚、蜘蛛は吹き飛ばされる。
「てめぇの野望も想いもフィーにはなんもかんも関係ねぇ、です!」
振りかぶる大槌、不意打ちではない一撃ならばと、一の刀だけで受け止め流し。
「力任せの一撃など!!」
空いた隙を二の刀で突き刺す。
「もうフィーはやらせんぞ。」
形成は三度逆転を起こす。薙刀と槌のコンビネーションは、それぞれが一刀を担うことで封殺していた。だが、それで尚互角か、否。
「……(もう保てぬ…。)」
膠着という状況は不利でもあった。焦る瑞姫に僅かな隙が生まれる。その隙を逃すわけもなく。意識の外から滑り込むように刀が迫る。
「あぶねぇ、です!」
大槌が間に入る。だが止められない、片方の刀がそれを止める。止めるはずだった。
パキンッ‐‐――折れた。松永弾正の持つ刀の一つ、伸一郎が持っていた刀が砕け散るように刃を失う。
「ちぃ……あの未熟者…!」
「やった、です―――あぴぃ!」
刀は正しく振るえば折れない。この激闘続きで尚、松永弾正の刀が折れないことが証明していた。伸一郎が痛めてしまった亀裂が広がった結果だ。
松永弾正は咄嗟に瑞姫への攻撃をやめ、蹴りでミルフィを吹き飛ばす。限界を超えて動いていた体がそのまま地面に伏す。
「……おにーちゃんは未熟だったかも知れないの。」
瑞姫の声色が変わる、戻りつつある。
「でもがんばってたの。それは、みんなとぼろぼろになるまで、いどみ続けてきた証なの!」
「真の武士は刀を折らぬわ…ばかものめ。」
一瞬だけ伸一郎の方へ視線を向け、そのまま刃を振り下ろす。力の戻った瑞姫が止められるものではなかった。
―――あぁ、それでよいのじゃ、瑞姫よ。
・
否、尊き感情の爆発こそが、瑞姫に纏う神気を底上げる。薙刀の一閃が蜘蛛の刀を凌駕した。
ゴォォンッ!!
「……。猟兵とは実に恐ろしきものよ。かような若さで、これほどの力を持つものが溢れておる。」
同じく限界を迎えた瑞姫は倒れる。その遥か前方、二つに裂けた地面の終わりに松永弾正が膝をついていた。
化け蜘蛛の力は弱まり、炎は勢いを失い始めていた。それでも尚、今だ自身の負けを疑わずに腰をあげる。
――――立ち塞がるは残り二人。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
●□
ヒュウ、ニューロンが痺れやがる
端役なんか足元にも及ばないような強者、なんだろうな
あーあ、嫌だ嫌だ
これに勝てって?冗談きついぜ
勝つのは主役の仕事だ
俺は道を作らせてもらうぜ
ユーベルコードで、奴の一撃を潰す
1回目で潰せれば御の字
だが、それに全てを賭けるなんて無謀はしない
一発なら片腕犠牲にしてでも受けて、致命傷から逃れる
蜘蛛の糸?あぁ、繋げよ
お前は俺を逃さない、俺もお前を逃さない
打ってこい、二発目
予備動作を【見切り】、【早業】でユーベルコード準備
タイミング合わせて、弾くような【カウンター】だ!
もう、覚えた
いくらでも使えよ
それとも別の奴に打つかい?
いいぜ、悉く弾いてやる
使うほど、お前の首は締まるのさ
● 下剋上
「あんたよぉ。」
男の呼びかけに松永弾正が振り返る。視線だけで射殺せるかのような殺気。それに晒された男は飄々と受け止める。男の名をヴィクティム、手に構えるのは一つの短刀のみ。
「『太刀筋を見切られたら剣士の死』みたいな事いってたな。」
度重なる激戦、だがどれほど消耗していようと、追い込まれているからこその気迫が肌に伝わってくる。
「達人同士の戦いならばそのようなこともあろう。」
「―――なら、俺があんたの剣を終わらせてやるよ。」
手に持ったカプセルの錠剤を一つ飲み込む。視界が、脳が、クリアな世界に突入する。
「はっはぁ!相手は達人、向かうは端役、いったい何秒持つかなぁ!?」
強化用ドラッグをキメた事でハイになりながら、立ち向かう。翻弄する策もなく、足をすくう罠もなし。
「だが、ただ無双される雑魚でもないぜ。」
だが無策ではない。迫る刃を左手のナイフが弾く、紛うことなき完璧なタイミング。返しの刃も叩き落し、僅かな隙間に拳を置く――右のサイバーアームが松永弾正の腹を打つ。
「ぐぅ
……!?」
「こんだけ揃っちまえば、猿でも出来るよなぁ!?。」
ヴィクティムは決して剣の達人でもない。ならば何故か。
傍目から見ればただのグラサン型のバイザー、ここに秘策が隠されていた。迫る刃、豪速かつ灼熱の斬撃。
「右。」
左手は添えるだけ、僅かな力だけでその一撃を裁き、カウンターが突き刺さる。何故だ、松永弾正の視線には答えない。そもそも視界が合うこともない。
ヴィクティムの視界には、剣筋の予測線が膨大に張り巡らされている。目まぐるしく変わっていく線が一本の太刀に集結する。それを避けて拳を入れる。
「左。下。突き、頂きだ。」
―――卑怯とは言わねぇよな?コンテニュー不可のウルトラハードのアクションなんだ。
「鬼畜ゲーは得意分野だがな…!」
呟きが相手に届く前に、拳が入る。相手もまた速度をあげ、精密さを上げ、威力を上げ、だがそれすらも防ぐ。
―――弾く、弾く、弾く弾く弾く弾弾弾ッッ!!!
無数の火花が散っていく。絶え間なく聞こえる金属音に混じる打撃は鈍い。ミスどころか僅かなズレすら許されない、常人には不可能な技。だが、それを出来るのがこの男だ。受け止めるナイフは、弾くごとに精度をあげて受け止め、流し、遂には
「まだ足りねぇ。」
遅れそうになる反応、切れそうな集中。すべてをねじ伏せる為、口の中に含んでおいたドラッグをまた一つ噛み砕くことで取り戻す。
―――いま面白い所なんだ。
松永弾正の僅かな隙間、一瞬の空白にメスが入る。拳ではない、弾いた短刀がそのまま敵を斬り付けた。小さな一撃、だが刹那の瞬間だけ達人の剣技を凌駕し始める。
「……達人と呼ぶには程遠いはず、貴様何者だ。」
松永弾正が初めてというほど、困惑の表情を向ける。
「名も無き脇役だぜ、爺さん。」
今だって相応の無理をしている、体がきしむ、どれだけ装備で補強しようと生身の存在だ。
―――魘、だっけか。真似させてもらうぜ。
反撃の瞬間、回し蹴りを叩き込みながら後退。腰の瓢箪を手に取って飲む。傷の修復ではなく、内部の損傷を癒すためだ。他の猟兵がしていたことを真似させてもらう。その上で、ヴィクティムは更に業を積み重ねる。
「だが、現実ってのは往々にして、ジャイアントキリングが発生するもんだ」
ドラッグも追加だ。本来危険な領域だが、神水が和らげてくれる事を信じた。不確定な賭けをしたくはないが、代償なしに御せる相手ではない。
あらゆるダメージが癒され、同時にキメた薬の効果が最大限に発揮される。
「ハッハァー!どうした爺さん、随分とろくなっちまったなぁ……背中が煤けて見えるぜ!」
達人を凌駕した剣技―――否、人類の叡智が【蜘蛛】を追い詰めていく。もう既に、攻める側は逆転していた。
「力を得て驕るか若造。……ならば、我が奥義にて叩き切ってやろう!」
全方位から糸が迫る。ありったけを絞るような強引な束縛、ヴィクティムはそれを瞬時に斬り裂く。死角はない。
「充分だ。」
僅かな時間でそれは完成した。背に宿る化け蜘蛛のオーラが刀へ宿る。炎が伸び、刀身が紅に染まる。全身全霊、魔刀の一手。もはや止めることは叶わず。
「はぁぁぁぁぁ
!!!」」
―――来たな。
何度見せた。一度、二度、三度、これで四度目か。随分と自信のある技じゃねぇか。
代償は払う、だが……あんたも置いてけ。
ヴィクティムは片手を広げながら、真横へ跳ぶ―――当然避けた先に斬撃が迫るだろう。そうさせない為に動き続けた。自身の戦闘が始まった瞬間からヴィクティムは策を練り続けた。あの技が、あの技だけが目に見える脅威だったからだ。
「あんたの策略は見事だったぜ。だが、その分野だけは負けてやれねぇ。」
ブレインハックにより思考誘導、左手でのみ弾き続けた視線誘導、脅威の全てを己の左腕にのみ向けさせた。
「だが俺は見せてない、あんたは見せすぎた!」
襲い掛かる凄まじい衝撃、骨は逝った、切断されたか確認にする猶予はない。あの技はもう一段ある、確認した。そして解析結果はもうでている。
"あの奥義の切り返しは、同じ場所にしか撃てない"。
「終いだ!!!」
二撃目までの数刻、軸をズラし回避に成功する。分かっていれば、既にズレていれば、視えずとも躱せる。爆発する不可避の斬撃、大技の隙を埋めた絶技を突破する。
―――ボンッ
聞きたくのない嫌な音が聞こえた。見ずとも音だけでわかる……体に装着された身体強化のブースター、フィジカルエンハンサーがイカれた音が聞こえた。神水は体を癒せど、装備までは救えない。
クソ。
やっぱり俺は端役だな。
、、、、、、、
あぁ、だが、爪痕は残しておいたぜ。
腕に突き刺さるナイフ。狙いは胸部だった。結びつけらた強固な蜘蛛の糸が止め、腕が割り込む。ほんの僅かな時間が、勝敗を分ける。
「ぜぇぇいッ!!!」
吹き飛び、岩盤に叩きつけられる。だが、ヴィクティムの目は松永弾正を捉えてはいなかった。
視線は、自分の託した未来―――この物語の主役へと。
大成功
🔵🔵🔵
ミニョン・エルシェ
始まりは別世界の、貴方の信貴山と多聞山の遺構に触れたから。
資料と城址から見えてくる、貴方の本当の姿に、憧れたから。
「此処に!私の城を普請しますっ!」
「地形利用」で岸壁上に「我城普請・相横矢」による陣地構築、
そして鉄砲隊による「援護射撃」を行います。
私は「空中戦」、「カウンター」、鐵貫と簪宗信による「二回攻撃」、仲間に「見せて」貰った情報を用います。
知略、膂力、年輪。全てに於いて、敵わないから。総力を以て挑みます。
魔刀の一撃は相手の動きを見、
「野生の勘」、「第六感」で回避を試み。
腕を砕かれようと、意思と口があらば刀は咥えられます。
「殺気」「捨て身の一撃」で、討ちます。
憧れは、間違いじゃなかった。
● 憧憬に決着を
被っていた装置を取り外す。顔を覗かせたのはエルシェの姿だった。
ヴィクティムという少年から渡されたバイザー型の装置は、対象の動きの見極めを補佐するものだった。高い集中力、高揚感、そして装置により効果を得て見続け、多くのものを得た。
「最後の一人か。手負いの獣共々、冥土へと送ってやろう。」
ゆっくりと迫る【蜘蛛】。
エルシェはバイザーを外して丁寧に置く。きっと戦いの中でも有益なモノなのだろう。
―――でも、ここからは私の身一つで挑みたい
「感謝します。」
彼女が最後の一人だ、ここが分水嶺なのだろう。小さな肩に重圧がかかる。
だけれど……きっと私が焦がれてしまったせいなのだろう。こうやって対峙することを心から望んでしまったから。ならば、それに報いなければならない。
「糸も炎も無し。己が腕と刀の一本……丁度よい枷よ。」
蜘蛛の足は何本もがれたか。だが、松永弾正・久秀、彼の気迫に衰えはない。甲冑を失い肌を晒し、血濡れた肉体、損傷した部位――――"それがどうした"と言わんばかりに笑みを浮かべる。
「……あぁ。」
憧れだった。歴史を紐解くことで見えていく憧れの人物像に肉がつき、魂が宿り、全てを越えて眼前に君臨している。
この世界における彼は、想像を遥かに超える強者だった。その腕、生き様、憧れに間違いはなかった。
「我が名はミニョン・エルシェ!!!」
構えるは馬上槍。其の体躯で扱うにはあまりに大きく、長く、重い。手のそれが今は、軽い!
「……松永弾正・久秀!!来い、猟兵!!!」
時代劇のような展開だと今じゃない自分ならばそう苦笑するだろうか。だが今は、心地よさと共に重圧が綺麗に消し飛んでいく。
「「いざ尋常に
!!!」」
叫びと同時に飛び込みながら槍を突き払う。二連の一槍、刀は瞬時に捌き更に返しの刃を置く。
「…それは!!」
"読んでいる"。槍を振って弾く、言うが易し、だが沁みついた癖やパターン、あまりに鋭く最効率の返しだからこその結果だ。
同じように一合、二合と刃を交わす、一瞬の攻防で見えてくるものもある。
「儂のことを知っておったな。どうしてだ。」
刃を交えながら零れた疑問。その間にも、武具は風を切り続ける。
「……始まりは、異なる世界の貴方の信貴山と多聞山の遺構に触れたから。」
「儂の城か。」
エルシェはそれらがこちらの世界にあることも確認している。
「素晴らしい城址でした。革新的な発想、この世界でのあなたは【蜘蛛】と呼ばれていることも知りました……茶釜から取られたのでしょうかね。」
言葉に返事はない。聞きたいことは聞けたといわんばかりの、剣に重みが増すのみ。ただ、戦鬼の笑みを浮かべる。
完成されし松永弾正・久秀の剣が叩き込まれる。一呼吸に三の刃が迫る。それはただ防ぐしかない。三撃に一度反撃を行える、隙間に滑り込ませるように放つ。三回に一度、それが実力差だった。
「……(あぁ、凄い…!)」
凄腕の猟兵達を退けて尚、無双の剣技に衰えなどはなかった。理不尽はなく、ただ研鑽された技のみが残り、研ぎ澄まされていく。
「視続けて…正解だった…!」
三撃に一度、だが迫る攻撃の全てを弾き、防ぎ、見切っていた。反撃が腕をかする。確実に押していた。この戦場で積み上げてきたものが達人を超える。
「―――剣士の儂は死んだか。よかろう!!ならば【蜘蛛】としての最後を見よ!!」
使えぬと言った糸が不意を突いて放たれる。その大柄の体で隠されていた軌跡が、突如エルシェの眼前に迫った。
糸がエルシェの部位へと的確に張り付き、周囲の壁へと繋がれた糸によって動きを束縛する。致命的な隙、刹那の後に斬り伏せられるだろう。
「あぁ……貴方なら。」
、、、、、、、、、、、
――――そういう嘘もつくだろう。
斬撃が放たれるより早く、無数の気配が松永弾正・久秀を囲む、否、囲んでいた。
「伏兵、貴方がよく使った戦術――――此処に、私の城壁を築く!!」
ユーベルコード【我城普請・相横矢】
伏兵たちは鉄砲を構え、無数の弾丸がエルシェだけを避けて降り注ぐ。
「ふ、ふははは!! 真似よるか、彼奴の鉄砲部隊を丁寧に火縄まで持たせおって!」
銃撃が糸を穿ち、松永弾正・久秀の体を削っていく。刀で防ぐにはあまりに膨大。不意打ちに、詰みの一手を重ねたのだ。
「ぜぁぁああああ!!!」
千切れかけた糸が真紅に染まる。炎の縄は竜のようにうねり円を描く。炎の城壁は視界を、弾丸を防ぎ、一瞬にして状況を仕切り直す。
炎の円が囲む。ただ、二人。決戦の地へと変貌する。
「……この隙に逃げられますよ。」
城壁は全てを振り絞ったかのように絶えず炎上し続ける。命の灯火が如く、業火で在り続ける
「構わん。猟兵、貴様さえ倒せればよい。」
未来を捨て、過去を捨て、只々"今"を見た。
「儂の中、昂る武将の魂が叫ぶのだ!! 我が好敵手を、討てと!!」
真に秘策も奇策もなくなった、全てを乗せた剣技が迫る。疲労も損傷も超えた、生涯最高の一振り。
放たれるのは上段からの振り下ろし。剣速は回避を許さず、受け止めれば武具ごと切断されるだろう。
エルシェが出した答えは―――――
「(犠牲なしで、勝てる相手では……ない。)」
手差、簪宗信を構えた。刃が重なる。止められない、手が沈み、刀の刃は武具をすり抜け、その鎧ごと小さな体を斬り裂く。
「…………見事也。」
直後、斬り裂かれた身のその手の槍が松永弾正・久秀を貫いた。―――互いに致命傷を受け、口から血を吐く。
「その身を犠牲に……儂を討つか。」
覚悟は、その身を穿たれながらも、二刀による反撃を可能とした。捨て身による決死のカウンターは如何な達人として叶わず。
「死しても超えたかった……強い意志があれば、必ず……動ける、と。」
馬上槍と、手差がその手から零れ墜ちる。力の秘められた武具は決して切断されず、だが所有者に足らない力が代償として返る。
「……あなたと共に逝くのなら光栄です。共に黄泉にて茶を……かわしましょう。」
「茶か……あぁ、しばらく……飲んでおらんかったな。」
体に大穴の空いた松永弾正・久秀、その腹部に大きな裂傷を受けたエルシェ。共に倒れる。
.....
.........
世界に光が戻る。
開いた眼が映すのは、瓢箪を手にエルシェを抱える女人の姿が。
「目を覚ましたでござるな。血を随分と失ってはったから、心配したでござるよ。」
鈴女は安堵の表情、エルシェの半身を起き上がらせる。
「…私は。」
生きて…いたのだろうか。口元が湿っている……瓢箪、そういえば残っていたな。と朦朧としていた意識が覚醒していく。
「よかったわぁ。目覚めなかったらショック療法使う所だったもの。」
イチイがカラカラと静かに笑いながら恐ろしいことを言っている。目覚めてよかった。
「大丈夫。海の底まで連れていってあげるから、寂しくないよ。」
ミサキから更に恐ろしい言葉が重ねられる。人をなんだと思っているのだろうか。
「ほ、本当に死ぬかと思うほど、いえ、死を覚悟するほどの相手でしたから…。」
「達人であるにも関わらず、手を尽くす手合いだったな。真似はしないが、後学にはなった。」
必死に変えた話題に、刀也からまともな意見が返ってきて安堵する。
「それでお前が死んじゃ意味ねぇ、です。」
「あぅぅ……おねーちゃん死んじゃうかと思ったの。」
ミルフィと瑞姫、どちらも悲しそうな表情で心配していた気持ちが伝わってくる。
「支援の準備してたのになぁ、まぁ無駄に済んでよかったっぽい?」
鬼燈は疲労を隠しながら飄々と語る。
「お、俺だってまだやれたぜ!ほんとほんと!あと五千時間ぐらい戦えたなっ!」
魘に、それは死んじゃう……とは言わなかった。彼女らは皆、それぞれが必死になっていたのだから。言いたい言葉は沢山あるだろう。
「……本当にすごい人だったんです。実物は……文献よりもずっと、ずっと。」
「感じたさ、俺たちはその時代の奴らよりも間近にな。」
ヴィクティムが装置を回収しながら、不敵な笑みを浮かべる。賭けは成功だったな、と呟く声が聞こえた。
「すっきりとした顔をしている、ね。」
月隠の視線に、真っすぐな瞳を返す。
「……はい。最後の歴史はこの身に残りましたから。」
刻まれた傷はいずれ小さく治るだろう。だが、消えてなくなることはない。もう会うことも言葉もかわすこともない。だが、それでいいのだ。憧れの人から認められたのだから。
少女はまた一つ大人になった。過去の憧憬を越えて、未来へ歴史を刻む為に。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年04月28日
宿敵
『松永弾正・久秀』
を撃破!
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