6

アンディファインド・シャーク🦈

作者：雅瑠璃

●サメは海を行く
　南の島では早くも海開きが行われ、海水浴客で賑わっていた。
　だが、ひとりの海水浴客がそれに気づいたことから、一気にパニックが広がっていく。
　沖合いの海面上から顔を出す三角の背ビレ。
　見つけた人は当然叫んだ。
「サメだーーーーー！！？？」

●サメは空から降る
「そしてそのあと、竜巻に乗って空を飛ぶサメとか、頭がふたつあるサメとか、頭がみっつあるサメとか、下半身がタコの触手になってるサメとかがわらわらと現れるっていう予知を見たんだよ」
　そう語る美少女グリモア猟兵のメリッサ・ウェルズ（翡翠の吸血姫・f14800）である。
　念のために言うが、メリッサの見たのは予知である。
　決してアサなんとかのサメ映画ではない。
「当たり前だけど、サメ映画と違って、現実のサメは空は飛ばないし、頭はひとつだし、触手もないよね。
　つまりこれは、邪神の仕業だったんだよ！」
　なんだってーーー？！
　そんなお約束が聞こえてきそうな台詞回しだった。
「つまりは、その海水浴場で、邪教団の邪教徒が、従えてる邪神の眷属を使って、海に関する高位の邪神を呼ぼうとしてるんだね」
　というわけでメリッサは解説する。
　まだ召喚儀式は行われていないが、これから眷属による大量のサメ召喚が行われ、それによる混乱に伴う恐怖の感情を糧にして邪神は現れるという。
　とはいえ、予知の状況が変わっても困るので、サメが現れるまで、一般の海水浴客を避難させるわけにもいかない。
「なので、サメが現れたら、サメを退治しつつ、召喚した眷属を探してもらうことになるよ」
　一般人の避難は、現地の組織がやってくれるので、特に意識しなくてもいい。もちろん手伝ってくれれば組織も助かるだろうけど、それよりもサメ退治と眷属探しに集中してほしい。
「教団員自体は、眷属さえ倒せば戦う力もないから、これも組織に巻かせられると思う。
　眷属倒して終わればいいけど、もし不完全でも邪神が現れてしまったら、それも倒してね」
　そんなわけで、説明を終えたメリッサは転移の準備を始めた。
「あ、サメ退治だけど、チェーンソーはいる？」

第1章 冒険 『鮫！　鮫！　鮫！』

POW   :    沖にボートで出てるヤツがいて警報が聞こえてない？　俺がひと泳ぎ行ってくるぜ。 SPD   :    パニックを起こして溺れている人を救助、既に被害が出ているなら応急処置をしないと。 WIZ   :    すぐに水から上がって、落ち着いて避難してください。大丈夫です、サメは陸には来ません。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

●ジョーズ
　南の島での一足早い海水浴を満喫していた人たち。
　平和そのものの光景である。

　転送された猟兵たちも、今はまだビーチを楽しむことができるかもしれない。

　だが、平和は長くは続かない。
　沖合いに現れた三角の背ビレがパニックを巻き起こすのだった。

「サメだーーーーー！！？？」






●オープン・ウォーター
　海水浴場にサメが現れる少し前。
　沖合には１隻のクルーザーが波に揺れていた。
　今回の件に対処するために現地の組織から借りたクルーザーである。
　そのデッキ上には、ビーチチェアに寝そべって読書している神酒坂・恭二郎（スペース剣豪・f09970）の姿があった。彼は予知の時間までの間はバカンスとしゃれこんでいるらしい。
　そしてもう１人、いや２人、水着姿のそっくりな美少女コンビもデッキ上にいる。
　本体である四季乃・瑠璃（"2人で1人"の殺人姫・f09675）と、【オルタナティブ・ダブル】によって生み出された分身体にいる別人格の緋瑪だ。少女たちは、デッキ上で海面を眺めながら仲睦まじく会話に興じていた。
「確かに鮫は怖いけど……出て来る鮫の方向性がＺ級だよね？」
　と、こちらは分身体の緋瑪。
「私は案外面白いと思うよ、ああいう映画……。でも、現実で出て来られると流石に迷惑かな」
　こちらは本体の瑠璃の方。
　２人はグリモア猟兵から聞かされた様々なサメが出てくる映画の話を思い出したのか、会話を弾ませている。
　そんなのんびりクルーズを楽しんでいると、やがてサメを発見した叫び声が聞こえてきた。
「出たか。全く、折角のバカンスにサメ騒動たぁね」
　恭二郎はそういうと、読書する手を止めて、ビーチチェアから降りる。
「ゆっくりしたいが、人死にが出るのはよろしくないな」
「うん、行こうっ」
　クルーザーを操縦しようと向かう恭二郎に、ホルスターから銃を抜いた瑠璃たちが答え、サメの現れたあたりにクルーザーを走らせるのだった。

「あ、あそこ、誰か溺れてる！」
　瑠璃か緋瑪か、叫んだのはどっちだったか。
　ともかく、サメが現れて一斉に避難しだした一般の海水浴客だが、海で泳いでいたものの中には、急に現れたサメへの恐怖でまともに泳げないものもいた。
「よーし。そいつは任せろ！」
　瑠璃が指さす先に溺れている人を見つけた恭二郎は、長い手拭いを手にクルーザーの穂先に立つ。
「おらぁ！」
　布槍術の一種だろうか。手拭いに青いフォースを纏わせて伸ばすと、溺れていた人の腕にそれを絡めて、一本釣りに引っこ抜いた。甲板に引き上げられた一般人には、瑠璃と緋瑪が駆け付けて介抱する。
「大丈夫。命に別条はないみたい」
「そいつはよかった。それよりも本命が来たぞ！」
　狙っていた得物を目の前でかっさらわれたからだろうか、三角の背ビレがクルーザーに迫る。そのまま海面からジャンプして、クルーザーのデッキ上にまで上がってきそうな勢いではあるが……そこにダブルの少女たちからの銃撃が行われる。
　ダンダンダンダンとクルーザーの周りを泳ぐサメめがけて２人で銃撃をしていく。
「拳銃だけじゃ倒しきれないかなー。なら、鮫退治の定番と言えばやっぱり」
「爆殺は基本だよね！」
　そうしてジェノサイド・ボムを大量に取り出す２人。だが。
「いや、爆殺はちょっと待て。まだ避難しきれてない人がいる」
　それは恭二郎がいったん止めた。
「おおっと、それは巻き込んじゃう。また一本釣りしないと」
「よろしくー！」
「ああ、任せ……いや、なんだあれは？」
　再びクルーザーを移動させ救助に向かおうとしたところで、恭二郎は、要救助者に近付く別の影に気が付いた。それはサメのようでサメではなく……触手が生えていた。
「サメに触手……？」
「そういう映画あったね」

　時間は少し戻る。
　明石・真多子（軟体魔忍マダコ・f00079）は海水浴を楽しんでいた最中にサメの出現の報を聞いていた。
「海だー！　サメだー！　えっ？　サメ！？」
　水棲系キマイラの真多子自身は、泳いでもサメから逃げることはできるだろうが、一般客はそうはいかない。
「旧人類達って泳ぐの遅いから食べられちゃう！」
　ということで逃げ遅れている人を助けようと、【軟体忍法鮫蛸変化の術（シャークヘッドモード）】で上半身をサメにして沖合に向かって泳いでいった。
　サメの頭で水を切り、タコ触手の推進力でしゅばばばーっと猛スピードで。
　……ある意味、これはこれで新たなサメ出現の様に見えなくもない。

　そして現在。
　まだ逃げ遅れて溺れている人を見つけた恭二郎と瑠璃＆緋瑪は、クルーザーを急行させて救助しようとする。
　その溺れている人は、タコの触手に絡みつかれて、サメの頭に噛みつかれて、パニックを起こしていた。
「うわ、ほんとに触手サメだよあれー」
「なんてこった。まるで得物を喰らう悪魔みたいだ」
　その凄惨な光景に恭二郎も瑠璃たちも目を覆う。
　ただ、幸いにもそのサメはまだ、甘噛み程度で済ませているようで、タコの触手がキュッと絡みついて締め上げているのがかえって止血になっているのか、噛まれている割には出血は少ない。
「よし、まだ助けられそうだ。ここは俺に任せろ」
　恭二郎は素早く両手をポケットから抜くと、両掌を打ち合わせて【気合い】を入れる。
「喝ッ！！」
　そして気合を、要救助者に絡みついているサメタコに全力でぶつけるのだった。
　直撃してぷかーっと浮かぶサメタコ。よく見るとそれはサメではなく……。
「ねぇ、あれ猟兵なんじゃ……？」
「つーか、知り合いだったわ」
　そう言って思わず頭を抱える恭二郎だった。

「サメと間違えるなんてひどーい！」
「すまんすまん」
　同じ旅団に属していて顔見知りの真多子と恭二だ。溺れていた人と共にクルーザーに引き上げられた途端、真多子が文句を言うのも仕方あるまい。とはいえ、どう見てもサメが一般人を襲っているようにしか見えなかったので、罪はないだろう。多分。
　真多子の名誉のために行っておくなら、一応彼女としては救助活動である。
「それより、もうこのあたりには要救助者はいないみたいよ」
「それじゃあとの鮫退治は任せろー！」
　とにかく今度こそ、瑠璃と緋瑪は、クルーザーを囲むように三角の背ビレを出して近付いてくるサメたちに向けて、ジェノサイド・ボムを大量に投下する。
「鮫は爆殺だー！」
　魔力で無限に作成できる瑠璃たちのジェノサイド・ボムだ。あたりに寄ってきたサメを倒しつくすには十分すぎた。
　もちろんその分クルーザーは激しい波に揺られてしまうが……それくらいで爆殺をやめる瑠璃たちではなかったのだった。
　そうしてしばらくすると、近場のサメは一掃されたようだ。
　だが……さらに沖合から、さらなる大群と、そして竜巻が迫ってきているのが見える。
「やれやれ。こいつは愉快なバカンスになりそうだな」
　恭二郎は、そう言って苦笑するのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

●シャークトパス
　まだサメが現れる前のこと。
　イーリス・ヘプタ（カオスナイト・f17048）は、ビーチを堪能していた。
「ンッンー眼福眼福！　最高だねもうさいっこう」
　ビーチというか、そこにいる水着姿の一般客を堪能していたと言うべきか。女同士なのに……。
「ぶっちゃけサメ程度ザコでしかないし、女の子達のアーンな姿眺めてるとね……溢れちゃう！鼻から！赤いのが流れるあふれでるゥ！！！」
　鼻血を出しそうな勢いであるが、そもそも鼻血より先に欲望が口からあふれ出ている。
　そんな感じで水着美女ウォッチングしていると、沖合いの方からサメ出現の報が入る。ついでにしばらくすると、爆発音まで聞こえてくる。
「おっとなんか沖の方やばそうだぞ。
　ウォッチングにかまけて犠牲者出たとかシャレにならんしれっつごー！」
　デミゴッドの泳力なめんなとばかりに海に入り、比較的近海でサメに絡まれそうになっている水着美女を助けようと、猛然と泳ぎ始めるイーリスだった。

「サメ……殴らなきゃ……何があろうとも……」
　同じ頃、同じ光景を見ていたセリエルフィナ・メルフォワーゼ（天翔ける一輪の君影草・f08589）も、そうやって決意を固めていた。何故かは自身でもわからないのだけど、何かが彼女にそう囁きかけているらしい。
「よーし、イッタルデー！！」
　セリエルフィナは泳ぐのではなく、スカイダンサーらしく、ジャンプして空中ダッシュで、サメに絡まれているイーリスの元へと駆けていった。

　ところで先程から、サメに『絡まれている』と、少々不思議な言い回しをしていたのは何故かというと、そのサメの下半身がタコだからである。
　念のために言うが、頭をサメに変形させたタコ型キマイラ少女とは別だ。本当に下半身がタコになっているサメが、水着美女を襲い、タコの触手で絡み付いていたのである。
　そんなタコの触手と格闘して、イーリスは水着美女を救出する。
「よーしどうにかなったぞい！
　大丈夫ですかいお嬢さ……ん？　なんか胸が妙にスースーす……る……？」
　だがその代償は大きく、イーリスのビキニのブラは、タコの触手に引き剥がされていたのだった。
「あ゛ーーーっ！タコぉ！タコ鮫ぇお前いつの間にあたしのビキニ取った？！」
　しかもタコサメは、戦利品とばかりに、引き剥がしていたビキニブラをパクっと食べてしまうのだった。
「あーーーーーっ？！」

　そんな様子を上空で見ていたセリエルフィナである。
　一応、イーリスがタコの触手に絡まれている間に、彼女の尊い犠牲を無駄にしないよう、救出された水着美女に逃げるよう示唆して後顧の憂いは絶っている。
　が……。
「やっぱりボクも、あの触手に捕まったらやらしいことされるんだろうなあ……」
　まさに今やらしいことされて悶えているイーリスを見ているからか、さすがに近づくのは躊躇われた。
　なのでまずは【オーラナイトダンサー】で呼び出した人型の炎を操作して、触手を抑え付けさせる。
「バックダンサーたち、お願いね！」
　こうして自由に動く触手の数を減らしたところで、一気に間合いをつめ、オーラを纏った拳で正面からサメの頭の方を思いっきりぶん殴った。
「これでもくらえっ！」
　正面から殴られて大きくひしゃげるサメの頭。
　そしてこの衝撃で触手が緩み、ようやく解放されたイーリスが【半神の本領（パワーオブデミゴッド）】による怒りの拳を叩きつけるのだった。
「いい加減にしろォ！！！！」
　かくして少女２人の拳で、タコサメ触手モンスターは倒されたのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●メガ・シャーク
　沖合で、あるいは浅瀬で、猟兵達とサメの対決は始まっている。
　そしてビーチにほど近いこの場所でも新たなサメとの戦いが始まろうとしていた。
　このあたりは、防波堤やテトラポッドのある、いわゆる釣りスポットだ。
　そこに初老の男性が佇んでいた。釣竿をもって。
「お強いですよね、サメどの。
　しかしこう……実況でもしたくなる秘めたる魅力をお持ちで」
　比較的暢気な事を言いながら、カーニンヒェン・ボーゲン（或いは一介のジジイ・f05393）は、釣りの用意をして、沖合から近付いてくる三角の背ビレを見ている。
「したらば、先ほどのタコサメのような不可思議なサメどのが、怪獣映画も顔負けの大活劇を披露してくださるやもしれません」
　カーニンヒェンはそう楽しそうに言いながら、投げ釣りの用意をしていた。
　一方でこのあたりでサメを待ち望んでいるのはもう１人。
「常識を超える素晴らしいサメに出会えると言われれば、サメマニアとしては黙っていられません。ここは一つ、サメ対決としゃれこみましょう」
　エミリィ・ジゼル（かじできないさん・f01678）である。見た目は清楚なメイドさんなのだが、中身は立派なサメマニアのエミリィであった。
　エミリィはさっそく、自ら騎乗するための水陸両用のサメを召喚し、【メイド流サメ騎乗術】を使用する。水陸両用のサメってなんだよと読者は思うかもしれないが、サメ映画界隈においてはその程度は何の不思議もないのだ。
「それじゃ挑みますか！
　どんなモノでもバッチコイですけど、出来るだけ大物がいいですね！」
　そう言ってサメに騎乗したメイドさんは、釣竿をもって太公望しているカーニンヒェンをその場に置き去りにして、向かってくるサメの方へと突入していく。
「ほっほっほ。はてさて、大物が釣れますかな？」
　それを見送り、あくまでもサメを釣ろうとするカーニンヒェンも、ある意味いい度胸ではあった。

「おお、メイドのお嬢さんがサメと接触したようですな。
　ほほう、これはまた大きな。あのサイズはメガロドンですかな？」
　防波堤に腰かけて釣りをしながら、誰に向けてかエミリィと巨大サメ……メガロドン、すなわちメガ・シャークとの戦いの実況をするカーニンヒェンである。
「ほほう、彼女の持つあれはチェーンソーですかな？
　サメ討伐といえば定番ですなぁ」
　遠目でもよく見えているようです。

　さて、そんな実況がされているとは露知らずのエミリィは、豪快なサメ操縦テクニックを駆使して、メガ・シャークと、その周りにいる取り巻きの普通サイズのサメたちを、シャークチェーンソーで切り刻んでいた。
　彼女愛用のシャークチェーンソー、これはサメ型ＵＤＣ……まさに今出てきているようなこいつらの歯から作ったという逸品である。
「別に１匹といわず、まとめてかかってきてもいいですよ。
　すべてバッサバッサと蹴散らしてやりましょう！」
　宣言通り、見事なチェーンソーさばきで、トビウオのように水面から飛び出して彼女に噛みつこうとするサメたちを、チェーンソーで正面から迎え撃ち、次々と頭から尾ビレまで一刀両断に斬り捨てるのだった。
「断言いたしましょう。サメに関する事でわたくしの右に出る者などいない、と」
　全身に返り血を浴びメイド服を赤く染めながらも堂々と、エミリィはサメたちを迎え撃っていく。

　そんな光景を釣りをしながら見ていたカーニンヒェンである。
「おお、ついにメガ・シャークさえも一刀両断ですな。いやはや、彼女のチェーンソーさばきはお見事ですなぁ……っと、こちらもそろそろ喰らい付きましたかな？」
　実況しながら釣竿を握っていたが、どうやら当たりが出た様子。
　リールを巻いてぐいっと釣れた得物を引き寄せると、こちらもまた巨大なサメだった。
「これは大物ですな。さすがにこのサメがビーチに飛び込んでは困ってしまいますな」
　釣りをしながら適度に突っ込みつつ穏やかに過ごせればと思っていた矢先だったが、さすがにこれにはいつもの武器を抜くしかないと判断する。
　釣り針を咥えこんだまま、水面から飛び出してカーニンヒェンに噛みつこうと大きな口を開けて飛び込んできたメガ・シャークに、愛刀『老兎』による【剣刃一閃】が炸裂し、３枚におろされたサメの亡骸が、カーニンヒェンのすぐわきの防波堤に打ち上げられるのだった。
「さて、釣りはそろそろですかな……竜巻も出てきたようですしな」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●シャークネード
　沖合のクルーザーの上で、あるいは浅瀬にて、サメを退治していた猟兵たち。
　だが、最大の脅威がそんな彼らの前に迫ってきていた。
　竜巻、である。
「こういう時のカップルは死ぬと相場が決まってるので重点的に守ってあげなきゃ危ないよね。
　フラグクラッシャーとして私、頑張るよ！」
　ルエリラ・ルエラ（芋煮ハンター・f01185）は、そんなことを言いながら、まだビーチにいる一般客の避難誘導をしていた。
「サメだー！」
　そして、ついに竜巻がビーチに迫ってくる。
　もちろん言うまでもなく、その竜巻の中に大量のサメを巻き上げて。

「すごい量のサメが降ってくる。さすがにこれではエクスカリバーは役に立たない」
　竜巻から降ってくるサメに対し、赤嶺・ふたば（銃と魔法が好きな傭兵魔術師・f15765）はそう呟いた。
　ここに転送される前、グリモア猟兵の提案に対し、チェーンソーは不要ですと答えていた彼女である。彼女自身近接戦闘が得意なわけではないので、チェーンソー……と書いてエクスカリバーと読む対サメ用必殺武器は使いこなせないという判断だ。
　その代わりに広範囲の火力を出そうと、遠隔魔法デバイスによる爆撃魔法で出迎えることにする。
「これでいけるか？
　かなり危険だがやるしかないな」

　ルエリラは、浜辺にいたカップルたちに避難を促しながら、空を飛んでくる、というか空から降ってくるサメに対し【芋煮ビット】を展開する。
「サメは万能だからね。空飛んだりは当たり前！」
　なんだか妙な確信を叫びながら、ルエリラの号令にしたがって謎の空間から現れた芋煮の鍋が、降ってきたサメに襲い掛かる。鍋がごガツンとサメの頭にぶつかったり、中身であるアツアツの芋煮がサメにぶっかかったりして、そして悶絶したサメは次々とビーチに落下していった。
　そこをふたばの魔法、【爆発魔法制圧射撃】が追撃をしてとどめを刺していく。
「火力集中だ……！　これで！！」
　こうして芋煮によって叩き落されたサメたちが、次々と爆発していった。
　だが、それでも、全ての降ってくるサメをそれで迎撃できているわけではない。
　中には、竜巻から解き放たれた勢いのまま、大口を開けて２人に向かってくるサメもいる。
「くっ。数が多くてさばききれないか……」
　ふたばはそう言って、マチェットを抜く。
　ルエリラもまた、武器を抜いた。『純金のゴボウ』を。
　ふたばはマチェットとオーラ防御で何とか身を護るのが精いっぱいだったのだが、ルエリラの純金のゴボウは、スパスパとサメを切り裂いていった。
「すごい切れ味……何なのそのゴボウ？」
「剣にも矢にもなるし食材にもなる万能植物だよ！」
　そう言いながら、飛んでくるサメに対し、純金のゴボウを矢にして撃ち落とすルエリラだった。
　なお、ふたばはその説明では理解できなかった模様。
　ともあれ、ふたばの爆裂魔法と、ルエリラの芋煮やらゴボウやらで、このあたりに降り注ぐサメ台風はどんどん片がついて行く。
「なんとかなった、か？」
「この辺りは大丈夫かなー。
　んー、でも、空飛ぶメカのサメがこのあたりにいないのは残念。ハッキングして乗り物にしたかったのに」
　いろいろツッコミどころの多いルエリラの戦い方や言動に、目が点になるしかないふたばであったとさ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●ＶＳメカ・シャーク
　様々なサメと猟兵達が戦っている中、バルディート・ラーガ（影を這いずる蛇・f06338）はどことも知れぬ宙空を指さして一言呟いた。
「鮫ばっかし持て囃されておりやすが。ヘビ映画も大概すげエかんな」
　はたして何を言っているのか。言った本人もすぐに我に返って、サメへの対処を開始する。
　ところで真面目に、ヘビ映画のジャンルもかなりすごいのである。興味ある人は調べてみてほしい。作者もそのあたりはあまり詳しくはないので。
　閑話休題。
「さぁて、とりあえずビーチに押し寄せる鮫をとっちめりゃヨシ、と」
　未だ竜巻から降ってくるサメを迎撃するためにバルディートはユーベルコード【九つ頭の貪欲者（フレイムヒュドラ）】を使用して九つ頭から火を吐き出す巨大な黒蛇に変化し、サメに襲い掛かった。
　なぜか変身したヒュドラは、出来の悪いＣＧのように表面がテカテカでカクカクしていて、実にＢ級映画っぽい対決シーンになっている。
　九つの首が大きく牙を剥いて、降ってくるサメに噛みついていく。サメもまた空中で歯をむき出しにしてヒュドラの胴体に噛みついていく。
　噛みつかれたヒュドラは報復とばかりに火を吐いてサメを焼いていく。
「……グ……シュウルルル……」
　完全に理性を失ったかのように、暴れまわるヒュドラ（バルディート）である。
　もはやどちらがＵＤＣか分かったものではないが、それでも降り注ぐサメを次々と葬っていっているのだった。
　
　さて、そんな状況を目の当たりにしている他の猟兵はというと。
「拙者の予想ではまず間違いなくメガサイズの鮫が出る、と見ているでござる」
　エドゥアルト・ルーデル（黒ヒゲ・f10354）はそんなことを言っていた。
　すでにサメ竜巻が発生する前に何匹かはメガロドンクラスのメガ・シャークが現れて猟兵とも戦っているのだが、それはまだ沖合から防波堤のあたりで、ビーチにはまだ襲来していない。
　でもそれも時間の問題というか、竜巻に巻き上げられた中にもしっかりとメガ・シャークはいるのだからして。
　なので、エドゥアルドは対抗手段を準備していた。
「そんな小シャークな鮫に対抗する最新兵器を持ってきましたぞ！」
　軍用航空機を召喚するユーベルコード【Aerial warfare（エアリアルウォーフェア）】を使い、さらにそれに武器改造スキルで魔改造を施した結果完成したそれは！
「陸海空を制覇するその名も『メカ・シャーク』ＤＡ！！」

　なお、そんなエドゥアルドと同じことを考えていた猟兵はもう１人いた。
「鮫の大群ね……相手にとって不足はないわ……」
　泉・火華流（人間のガジェッティア・f11305）そう呟くと、とっておきのガジェットを召喚する。
「次元格納庫オープン……装備換装後、カタパルトよりガジェットシャーク様……出撃よっ！！！！」
　火華流の背後の空間に大きな穴が開き、そこから飛来してくるのは、【GadgetSharkTime（ガジェットシャークタイム）】によって召喚された戦闘機。
　シャークペイントを施した戦闘機は、ヒレにあたる翼がチェーンソーとなっている巨大な機械のサメのようにも見える。
「目には目を、歯には歯を。サメにはサメで対抗！
　シャーク様っ……まずはあのでかいのをお願いっ！！！！」
　こうして火華流に召喚されたシャーク様と、エドゥアルドに召喚されたメカ・シャークが、バルディートの変身したヒュドラと戦っているメガ・シャーク群に向けて発進した。

　唸る巨体！
　火を噴くヒュドラ！
　空を飛び噛みつくメガ・シャーク！
　それを体当たりで迎撃して金属の歯で噛みつくメカ・シャーク！
　チェーンソーの翼でサメを切り裂くシャーク様！
　もはやサメ映画の枠を超えて、一大スペクタクルな怪獣映画のような状況になっていた。
　しかももう、ヒュドラも２体のメカ・シャークも、完全に制御不能の暴走状態で暴れまわっている。
「……いかん！　ど付き合い衝撃でメカのＡＩがバグった！
　予算をケチりすぎたか……」
　さすがに暴走しているメカ・シャークを見て青ざめるエドゥアルドだった。

　シャーク様のチェーンソーがひときわ大きなメガ・シャークを真っ二つに切り裂いたと思ったら、メカ・シャークがそのシャーク様に体当たりをして周りのサメごと弾き飛ばしたり、飛んでくる比較的小さなサメをヒュドラが噛み砕いたと思ったら、残り数の少ないメガ・シャークがヒュドラの炎を突き破って噛みついてきたり、ｈ期飛ばされたシャーク様は錐揉み回転から立ち直って再び飛び出すが、その回転のついでに周りのサメを切り裂いていたり……。
　とにかく目くるめく状況が移り変わり、もはや見ているエドゥアルドや火華流にもコントロールができなくなっていった。
「どうするのこれ……？」
「ま、まぁ、巻き込まれないように見ているしか……こういうパターンはそのうちオチも決まっているだろうしな……」

　やがて、竜巻も収まり、降ってくるサメの数もほとんどなくなってきた頃……この間３体の大暴れでサメのほとんどは始末されている……、度重なる暴走で限界のきたメカ・シャークは、ヒュドラとシャーク様を巻き込んで盛大に……。
　ちゅどおおおおおおおおん！！！！
　……自爆したのだった。

「はっ、あっしはいったい……？」
　メカ・シャーク自爆の衝撃で真ん中の頭にいい感じでダメージを受けたヒュドラ……バルディートは、変身が溶けると同時にようやく正気に戻り、ビーチに座り込んでいた。
「ま、まぁ、サメはこれでほぼ全滅させたことだし、結果オーライ、だな」
　火華流の冷たい視線に気付かないふりでそうまとめるエドゥアルドであったとさ。
「そ、それより、あれを見てくだせえ。
　サメじゃないのがいやすぜ。あれがグリモア猟兵の言っていたサメを召喚している眷属じゃないですかね？」
　そして、バルディートの指摘に猟兵達は沖合を見る。
　そこには、まるで人魚のようなナニカがいた……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

第2章 集団戦 『腐屍海の百人姉妹』

POW   :    神歌：永劫の夢に微睡む貴方へ 【深海に眠る大海魔】の霊を召喚する。これは【無数の触手】や【神経系を破壊する怪光線】で攻撃する能力を持つ。 SPD   :    召歌：黒骨のサーペント 自身の身長の2倍の【骸骨海竜】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。 WIZ   :    戦歌：インフェルノウォークライ 【召喚した怪物の群れによる一斉攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●ディープ・ブルー
　海水浴場に押し寄せたサメの群れを軒並み片付けた猟兵達。
　その戦闘のさなか、沖合に人魚のような姿を発見した。

　それは『腐屍海の百人姉妹』と呼ばれるＵＤＣの眷属。
　今回は邪神召喚儀式のために、邪教団に使役されている個体群のようだ。

　彼女たちが【戦歌：インフェルノウォークライ】により、サメの化け物たちを召喚していたのだろう。

　そして、今もなお新たにサメを召喚しようとしているのが見える。

　召喚されるサメの大元である彼女たちを倒さなければ、この海水浴場でのサメパニックはおさまらない。

　さらに現れるサメを蹴散らしつつ、『腐屍海の百人姉妹』を撃破してほしい。




●シャークネード　エクストリームミッション
　沖合のクルーザーの上から状況を見定めている猟兵が２人……いや３人。
　【チェイン・シスターズ】で別人格の緋瑪を実体化させている四季乃・瑠璃（"2人で1人"の殺人姫・f09675）と、神酒坂・恭二郎（スペース剣豪・f09970）である。
　ちなみに前章で誤射して引き上げられたキマイラ少女は、すでにクルーザーを降りて別行動を添っていた。もう間違えないでよと伝言だけ残して。
　ともあれ瑠璃たちは、クルーザー上から、状況を見定めていたのだ。
　その状況とはもちろん、ひとつにはこのサメ災害を召喚した眷属である『腐屍海の百人姉妹』のことだ。
　緋瑪と瑠璃は、沖合にて更にサメを召喚しようとしている『姉妹』を見つけ、囁きあっていた。
「あの子達が原因みたいだね～……教団員、あの子達にＺ級鮫映画で勉強でもさせたのかな」
「案外、骸の海でＺ級鮫映画が流行ってたりして……」
　さすがにそれはないと思いますよ、瑠璃さん。
　そんなことを話していると、『姉妹』のうち１人が、クルーザーの接近に気が付いたらしい。瑠璃たちの方に視線を向け、近付いてきた。
　会話可能な距離にまで近づいたことを受けて、瑠璃たちは『姉妹』に語り掛ける。
「ねぇねぇ、貴女は何の鮫映画が好き～？　わたしはダブルヘッドジョーズが……」
「私はシャークトパスの方かなぁ……」
　……好きなサメ映画の話題を尋ねたりして、暢気に盛り上がる瑠璃と緋瑪だった。
「俺はシャークネードかな」
　２人が『姉妹』へと呼びかけている会話に混ざってきた恭二郎。
「見ろよ、今日一番のシャークネードが来るぞ。……面白い」
　そして恭二郎が指さす先には、新たに発生した竜巻に、『姉妹』が召喚したサメが吸い込まれて行く光景が見えた。
「うわぁ……」
「ちょっと行って来る。後は全力で離れな」
　竜巻を見上げて言葉に詰まった瑠璃たちに軽くそう告げると、恭二郎は錨を担いだままクルーザーから海へと飛び降り、自らサメ竜巻へと飛び込んでいくのだった。

「あ、ちょっと！」
「……いっちゃった。シャークネード止めるなら、私たちに任せてくれればいいのに」
「ねー。シャークネード止めるなら、爆弾だよね？」
　そう言いながら、先ほどと同様に『ジェノサイド・ボム』の準備を始める瑠璃たち。
「映画ならこれで竜巻に爆弾投げつけるところだけど……」
「いまやったらまずいよねー……？」
　さすがに今投げると恭二郎を巻き込みかねない。そう躊躇した２人に向かって、サメ竜巻から外れた１匹のサメが、クルーザーの甲板に乗り上げるように襲ってきた。
　１匹なのに、２つある口で、２人を同時に噛みつこうとしている。
「わ、きたっ？！」
「って、ダブルヘッドシャーク？！」
　２人同時に狙うためにダブルヘッドなのか、『姉妹』が狙ってこれを召喚していたのだとしたら、想像以上に恐ろしい敵なのかもしれない。
　２人はあわててボムを２つの頭に向けて投げつけた。

　さて、一方サメ竜巻に飛び込んだ恭二郎だが、【口寄せ：星白鮫】によって呼び出した自前のサメの背に立つと、まるでサーフィンのように竜巻に乗っていく。
「行くぜ、相棒！」
　そのまま竜巻の回転に身を任せながら上昇。そしてその道中に遭遇したサメは、手にした錨で殴り飛ばして竜巻からはじき出していく。
「おらおらおらぁ！」
　次々と錨に殴られて叩き潰され竜巻から脱落していくサメたちを尻目に、竜巻の頂点に達した恭二郎は、そこから眼下に見える姉妹に向けて一直線に飛び降りていくのだった。
　頭上から迫りくる恭二郎に気付き、上を見上げる『姉妹』の１人だったが。
「ごきげんよう、嬢ちゃん。そしてさよならだ」
　恭二郎は挨拶とともに、錨を全力で彼女に向けて投げつけた。そしてそれが命中したのを確認すると、さらに相棒の星白鮫に彼女を襲わせるのだった。
「～～～～～～？！」
　声にならない悲鳴を上げながら、『姉妹』は星白鮫に噛みつかれて動かなくなる。
「鮫に驕る者は鮫に死ぬってか……なんともＢ級だねぇ」

「あ、今ならいけそうだよ！」
「よーし、それじゃ２人で力を合わせて！」
　そして、ダブルヘッドシャークを爆殺していた瑠璃と緋瑪は、２人分の魔力を切り札の『ジェノサイド・ノヴァ』へとチャージし、そしてそれを未だ鮫を飲み込み広がっていこうとする竜巻へと投げ込んだ。
　その威力はすさまじく、巻き上げられていたサメともども、竜巻を一気に消し飛ばしたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●ロボシャークＶＳネイビーシールズ
　沖合の猟兵達の活躍によりサメ竜巻の脅威が去ったあと、『腐屍海の百人姉妹』たちも少しずつ浜辺に近いあたりへと姿を現すようになった。
　それをビーチ側から出迎える猟兵達。
「なるほど。あれがサメを呼び出しているオブリビオンですか」
　先ほどは自ら召喚したサメに乗って沖で戦っていたエミリィ・ジゼル（かじできないさん・f01678）だが、今はビーチの猟兵と合流していた。
「まったく、わたくしの許可を得ずにサメを使役するなどふてえ輩もいたもんです」
　サメ使いとしてのプライドが、『姉妹』達への怒りとなって燃えているエミリィである。
「お前らか！　鮫を解き放ったのは！　そんな事をすれば鮫に汚染されるぞ！」
　別にエミリィに対していっているわけではないだろうが、エドゥアルト・ルーデル（黒ヒゲ・f10354）は『姉妹』に向かってそんなことを言う。
　……サメに汚染ってなんだろう。深いな。
「でも……メカのサメいなかったね……」
　一方でルエリラ・ルエラ（芋煮ハンター・f01185）はしょんぼりしていた。
　『姉妹』によって数多のサメが召喚されてはいたが、中にはメカシャークがいなかったからだ。
「でもエドもメカ鮫出してたし、きっとゲームのガチャガチャみたいな感じで召喚レア度が高いだけかもしれない」
「いや拙者は召喚したわけではないのだが……」
「倒す間にメカシャーク召喚してこないかな？」
　ツッコミを入れるエドゥアルドだったが、ルエリラは聞いていなかった。
　ともあれ、同じ旅団『芋煮艇』に所属する３人の猟兵は、サメを召喚しながら浜辺に近付いてきた『姉妹』達を迎え撃つのだった。

「とはいえ敵はかなりの数……」
「鮫が多いでござるねぇ……」
　３人に近付きながら、『姉妹』は次々と【戦歌】でサメを召喚し続けている。
　エミリィもエドゥアルドも、その数には遠い目になってしまうのだった。
「対処しきれないほど召喚されても困るね！」
　ルエリラはそういうと【芋煮ビット】を召喚し、『姉妹』に対してどんどん芋煮をぶっかけて回る。少しでも召喚の邪魔をしようというのだろう。
　芋煮をかけられて悶絶する『姉妹』の一部は、歌を途切れさせ召喚がとまる。
　そしてその隙に、エドゥアルドも動き出す。
「一体ずつ相手すんのも面倒でござるし禁じ手のあれを使うか……」
　覚悟を決めた彼は、そういうと【Sturz KampfFlugzeug】を使用して出せるだけの『爆撃機部隊』を召喚した。広範囲に展開した爆撃機は、そのまま泳いで近付いてくるサメに向かって絨毯爆撃を行う。
「爆弾を使って魚を捕ると根こそぎ捕獲出来るんでね。
　だからこれは、大量の爆撃機を使ったエクストリームダイナマイト漁だ！」
　水中のサメに向かって落ちていく爆弾は、水の中に激しい衝撃波をまき散らし、それに当てられたサメはおなかを上にしてぷかぷかと浮かび上がっていく。サメだけではない。巻き込まれた『姉妹』の一部もまた意識を失って浮かんでいた。
「なおダイナマイト漁は色んな国で禁止されているので、良い子の皆は絶対に真似しないでくだされ！
　拙者との約束だ！」
　誰に向かって喋っているのかは謎だが、そう言ってグッとサムズアップするエドゥアルドであった。

「～～～～～～♪」
　絨毯爆撃に巻き込まれなかった『姉妹』達は、衝撃波を避けるために空飛ぶサメを召喚していく。
　だが、今度はエミリィが、それに対抗して動き出した。
「真のサメ使いはわたくしだということを、思い知らせてやりましょう」
　そういう対決だったっけ？と思わないでもないが、エミリィはそういうと【サメを呼ぶメイドの術】を使い、『すべてのサメの父』を召喚する。
「まずはこちらも素直に数を増やします」
　そして召喚されたすべてのサメの父は、更にサメの群れを呼び出して、『姉妹』が召喚したサメに向かい一斉に襲い掛かっていく。
「さぁ、わたくしのサメたち、行きなさい！」
　空を飛んでぶつかり合うサメ対サメ。互角になったサメ同士が正面からぶつかり合い、次々と対消滅……互いに噛みつきあって共に墜落していく。やがてサメの血で海が赤く染まっていくのだった。
　さらにサメを越えて近付いてきたサメに対しては、純金のゴボウで迎え撃つルエリラと共に、【増えるメイドの術】で分裂したエミリィたちも、近付く群れの中に突入してバッサバッサとなぎ払っていく。
「あなたたちのサメはこの程度ですか？」
「メカシャークのロマンがわからない敵には慈悲はないよ」
　ルエリラとエミリィたちの活躍で次々とサメが数を減らしていき、やがて２人は『姉妹』に迫っていく。
「メカシャークが出ないならそれも運命……」
　とても残念そうなルエリラが、『姉妹』に対し、純金のゴボウを矢にして撃ち抜こうとする。
　が。
「……あれ、拙者のメカ・シャークは前回自爆したから残ってないはず……」
　そんな呟きがエドゥアルドの口から洩れた。
「えっ？！」
　思わず純金のゴボウを取り落として空を見上げるルエリラ。
　果たしてそこには、エドゥアルドの召喚していた爆撃機に喰らい付いて、飲み込んだことで自らの身体を機械に変質させた鋼のサメ……ロボ・シャークが爆誕していたのだった！
「出たーーーー！！」
　念願のメカのサメが現れたことで瞳を輝かせるルエリラだが、ロボ・シャークはそんな彼女の喚起など関係ないとばかりに、取り込んだガトリングガンを３人に向けて乱射してくる。
「くっ、まさかこんなサメまで……」
「これ拙者のせいじゃないよねぇ？！」
　エミリィとエドゥアルドは、そんなことを言いつつ、ガトリングの乱射から身をかわして逃げ惑う。
「メイドはサメに乗ってこそ、ですが……っ」
「ダメダメ、アレに乗るのは私だよ！」
　メカのサメに乗ることは譲れないと、エミリィを制したルエリラは、ワイヤーフックを投げつけロボ・シャークに引っ掛けると、とうっと跳躍してその背に取り憑いた。
「よしよし、このままハッキングして……いい子にしててよ？」
　そしてロボ・シャークの背に捕まりながら、ウェストポーチの道具でハッキングを開始する。
「乗っ取るなら早くしてくれ！」
「ちょっと待って……よし、これで！」
　ガトリングガンから逃げ惑うエドゥアルドが急かしてくる中、ついにロボ・シャークのハッキングに成功したルエリラは、念願叶ってついにメカのサメに乗って空を飛ぶことができたのである。
「いーーーやっほーーーー！！」
　そのままロボ・シャークを乗りこなして『姉妹』に体当たりというか轢き逃げを敢行するのだった。

　ちなみにロボ・シャークは、その素体となったサメを召喚した『姉妹』が倒されたことで送還されたのか、戦闘後に消滅したことは付け加えておく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●シャークトパスＶＳプテラクーダ
「……２戦目は海賊船かと予測しておりましたが、予想は外れてしまいましたな」
　そんなことを言いながら、カーニンヒェン・ボーゲン（或いは一介のジジイ・f05393）は、防波堤にて状況の推移を見守っていた。
　やがて、そんな彼のもとに、海を走る三角形の背ビレがタコの触手を伴って高速で接近してくる。
　そう、それは、サメの上半身とタコの下半身を持ったキメラモンスター……ではなく、【軟体忍法鮫蛸変化の術】にてサメの頭に変消したタコ系キマイラ少女の明石・真多子（軟体魔忍マダコ・f00079）であった。
　……先程それで誤射されているのに、特に気にせずまだサメ変化を継続しているあたり筋金入りである。
「おやおや、ビーチに向かっていくサメ軍団のはぐれかと思いましたが、お仲間でしたか」
　ぷはぁと水面から顔を出した真多子に対し、のんびりとそんなことを言うカーニンヒェンである。冷静に状況を見ていたカーニンヒェンは誤射はしない。
　真多子は、そんな彼に手を振った後、ビーチに向かっていくサメ軍団と、それを召喚して指揮している『姉妹』とを見て呟いた。
「なるほど～。あのサメはユーベルコードだったんだね！
　ならサメに紛れて奇襲っていうのはバレちゃうか～」
「ビーチに向かうサメ軍団も脅威になりかねませんが、まずは召喚による混戦を脱する事が先決でしょうな。さて、我らはあのご姉妹らを早々に対処することにいたしましょう」
「そうだね！　あっちはあっちの人に任せて、アタシ達は正々堂々マッコウ勝負！」
　そう言って真多子は一直線に『姉妹』に向かって泳いでいった。
「さて、私も」
　カーニンヒェンもまた、魔導書を手にユーベルコードで悪魔を召喚し始めるのだった。

　一方、真多子のいうあっちの人というのは。
「ゼエ……ゼエ……ち、ちょいお待ちを。いきなり変身でカッ飛ばしたり爆発したりしちまったおかげで、ちとスタミナ切れが……ええ」
　肩で息をしているバルディート・ラーガ（影を這いずる蛇・f06338）の事であった。
「え、まあたサメが来るンで？
　ええいしゃーなし……やりやしょう！」
　ビーチにまだ押し寄せてくるサメの群れに対し、ヤケクソ気味に構えて、【四つ影の蛇使い】で腕をヘビに変化させ迎え撃つのだった。
「サカナだろーがサメだろーがガシガシ噛み付いてって、体力回復がてらにサメの全身を毒浸しにしてやりやしょうぜ！」
　毒を仕込んだダガーを、変化したヘビの牙として、ビーチに押し寄せ飛び出してくるサメに噛みついては、そこから生命力を吸収して回復を図る。この永久機関にも似たコンボで、１人で押し寄せるサメを押しとどめていくバルディートだった。

　やがて『姉妹』達は、戦歌で召喚しているサメ軍団では、猟兵達にはらちが明かないと学習したのか、サメの召喚に紛れて別のものも召喚し始めた。
　すなわち、黒い骨でできた竜……骸骨海竜である。

「現れましたね。
　ですが、的が大きくなっていらっしゃる。
　これを狙わぬ手はありません」
　防波堤で悪魔を召喚しつつ状況を見ていたカーニンヒェンは、落ち着いてそう呟くと、悪魔が放つ風の矢で、骸骨海竜へと遠距離から攻撃を仕掛けていく。
　また、骸骨海竜は、ビーチでサメに噛みついていたヘビことバルディートからも確認できる位置までやってきていた。
「出てきやがりやしたか」
　不敵にそう呟いたバルディートは、噛みつきいい感じに毒の回ってるサメを咥えて掴んだまま、海へと突入していく。骸骨海竜が伸ばしてきた骨の首をそのサメで防御しつつ、大きく顎を開けた骸骨海竜の、その口の中へと毒入りサメを叩きこんでやるのだった。
「くらえ！　ポイズン・シャーク！
　……そんなタイトルも探せばどっかにありそな感じがしやすね」
　残念ながら作者の知る限り、感染するゾンビのサメとか放射能のサメとか履いても、毒のサメというのはなかった気がするけれども……。

　そして、カーニンヒェンの召喚悪魔の援護射撃や、バルディートの毒サメ防御などで、足止めされていた骸骨海竜に、満を持してシャークトパス……ではなく真多子が飛び込んでいく。
「とぉーーーりゃあーーー！！」
　全力の水泳で骸骨海竜とそれに騎乗している『姉妹』に近付くと、水面を蹴って大ジャンプ、タコ足で『姉妹』を蹴り飛ばした。
　吹き飛ぶ『姉妹』！
　咥えさせられた毒サメを吐き出して、主の代わりに真多子に噛みつこうとする骸骨海竜！
　そしてそれを迎撃するサメ頭（に変身している真多子）とタコの脚！
　完全にＢ級映画な対決が始まったのだった。
　真多子は軟体動物の己の特性を生かし、骸骨に絡みついていく。にゅるにゅると狭い隙間に入り、サメ頭で骨に噛みついていく。
「あぐあぐ、カルシウム美味しい」
　さらに、噛みつこうと大口を開けてきた骸骨海竜の、その口の中に飛び込んで、内側から脊髄を噛み砕くのだった。
「どうだ！　狙い通り！
　肉を切らせて骨を断つ作戦だよ！」
　脊髄を噛み砕かれ、バラバラに崩壊していく骸骨海竜を前に、そう言って勝ち誇る真多子であった。

　なお、このあたりのサメや骸骨海竜を召喚していた『姉妹』は、真多子のＢ級映画大決戦が行われている間に、カーニンヒェンの悪魔やバルディートの攻撃で倒されていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●鮫の惑星海戦記
　他の猟兵達が戦っている中、ビーチの片隅では、がこーん、がこーんと金属音が響いていた。
「待っててシャーク様っ！　私が今すぐ治してあげるからねっ！！」
　泉・火華流（人間のガジェッティア・f11305）はそう言いながら、前章の戦闘で破壊されたガジェット、シャーク様を修理していた。

　さて、そんな火華流を余所に、猟兵達は『姉妹』との戦いを繰り広げていた。
　たとえば、セリエルフィナ・メルフォワーゼ（天翔ける一輪の君影草・f08589）の場合は、というと……。
「歌をボクの歌でかき消してやれば、召喚出来なくなるんじゃないかな？
　というわけでここは歌合戦だ、負けないよ！」
　そう言って彼女は、『姉妹』の戦歌に合わせて自らも歌いだす。
　それは【シンフォニック・キュア】の癒しの歌ではあるが、同時に歌声が衝撃波になるくらいの強力な声量で、『姉妹』の戦歌をかき消すほど。
　喉などはオーラで強化しているため、それだけの声量でもつぶれることなく、また肺活量も強化されているのか、歌声が途切れることもなく、『姉妹』の召喚を邪魔し続けていっていた。
　さらにもう１人。
「召喚が使える敵が複数、スキが無いな……」
　そんなことを呟きながら、赤嶺・ふたば（銃と魔法が好きな傭兵魔術師・f15765）は、先ほどサメ竜巻に対応していた時と同様に、遠距離攻撃をしようと準備を始めていた。
　自動射出機能と思念操作機能の付いた遠隔魔法起動デバイスを『姉妹』のもとへと向けて飛ばし、そのデバイスによる探知を間接照準として【爆発魔法制圧射撃】を放っていく。
「近づかなくても、いくら召喚されようとも、自分にはこれがある！」
　セリエルフィナの歌で召喚が妨害されていることもあって、召喚されるサメはわずかなものになっている。そしてそれも、ふたばの爆発魔法で、召喚される傍から次々と爆殺されていくのだった。
「あの歌のおかげで、いくらでも爆発撃てる！
　このまま本体まで爆破してあげるよ！」
　セリエルフィナの歌は、ふたばの体力も癒してくれるため、魔法は途切れることなく、『姉妹』がサメや骸骨海竜を召喚するよりも、早いペースで次々と倒されていった。
　これはふたばの爆発魔法の力もあるが、それだけではない。
　ここではない戦場でも、他の猟兵達によって次々と『姉妹』が狩られていっているためでもある。
　さらに、ふたばの魔法以外にも爆発が広がっていった。
「今はこれが精一杯……頑張ってシャーク様……！」
　火華流の応急修理が完了し、飛び立ったシャーク様が、上空から空爆を始めているのだ。
　その爆発の中で、倒れていく『姉妹』達は、懸命にサメや骸骨海竜を召喚していくが……ふたばの魔法と火華流のシャーク様による爆撃を逃れても、さらにやってきた人型の炎のオーラ……セリエルフィナが解き放った【オーラナイトダンサー】によって切られ焼かれていく。
「これでそろそろフィニッシュ！　バックダンサーと一緒に派手に行くよ！」

　そして、他の戦場でも決着がついて行っている中、このあたりでも次々と『姉妹』が倒れていく。
「どうやらこれで終わりそうだね」
「ボクのスカイライブもこれでおわりかなー？」
「いや、まだ！」
　ふたばやセリエルフィナも戦闘が終わりそうで一安心していたのだが、そこに火華流からの注意が飛んだ。
　まだ息の合った『姉妹』が、最後の力で【神歌】を口ずさんでいた。
　その歌は、深海に眠る大海魔を呼び覚ます歌。
　本来なら触手を持つ大海魔の霊が召喚され攻撃するだけのユーベルコードの歌ではあるが……それとも少し違う。
　これは、彼女たちが狙っていた邪神召喚儀式の最後の一手。
　猟兵達の攻撃により、儀式そのものは正常に行われず、中途半端のまま起動してはいるのだが……それでも、邪神が海の底から現れていく。
　海面が盛り上がり、中から白い巨体がせり上がっていく。
　不完全ながらも儀式が発動したことを確認したか、最後の『姉妹』はそのまま力尽きて海に沈んでいくが、代わりに現れた白い巨体との、最後の戦いが始まろうとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

第3章 ボス戦 『海零』

POW   :    縺薙?譏溘?逕滓擂謌代ｉ縺ｮ繧ゅ?縺ｧ縺ゅｋ縲 単純で重い【巨体や、別次元から召喚した大量の水】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。 SPD   :    陦ｨ螻､縺ｮ蝪ｵ闃･蜈ｱ繧√ 【額や掌】から【強烈なサイキックエナジー】を放ち、【心身の両方への衝撃】により対象の動きを一時的に封じる。 WIZ   :    窶晏卸荳匁峅縺上?∵ｵｷ髮ｶ窶 【念力や別次元から生じさせた津波】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を海に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

●ＭＥＧザ・モンスター
　邪神召喚の儀式を行うため、サメを召喚し続けていた『腐屍海の百人姉妹』は、猟兵達の活躍によりすべて倒れた。
　だが、最後の最後で、不完全ながら儀式を発動させ、中途半端ながらも邪神が顕現する。

　それは、全長３０ｍは軽く超える巨体。
　ジンベエザメが直立し、ヒレが長い腕になったような、そんな姿である。

　もとは古き邪神であるのだが、半端な召喚のためか、知性は感じられず、ただその巨体を持って暴れ始めている。

「縺薙譏溘逕滓擂謌代ｉ縺ｮ繧ゅ縺ｧ縺ゅｋ縲－－－－－－－！！！！」

　ヒトの発音ではない不気味な咆哮をあげて暴れ始める邪神……『海零』。

　これが今回の依頼の最後の戦いとなる。






●メガ・シャークＶＳグレート・タイタン
「あれはＭＥＧ！？　太古の時代に絶滅した巨大なサメか？！」
　白い邪神の異様な巨体を見て、神酒坂・恭二郎（スペース剣豪・f09970）は驚愕の声を上げた。
「ムムッ。むっちりと白い超巨体、なンだか精神の削られそな鳴き声……こりゃアまた奇っ怪なサメでございやすねエ……」
　バルディート・ラーガ（影を這いずる蛇・f06338）もまた、この巨体を見上げて呆然と呟いている。
「ちょっと！　ちょっと待ってください！！
　サメ……え、あれが？」
　と、男２人が白い巨大なサメを見て呆然としている後ろには、２人にも、そしてサメにも言いたいことがめっちゃあるらしいエミリィ・ジゼル（かじできないさん・f01678）がいた。
「いえ、途中で力尽きましたから中途半端なのは分かります。
　粘土みたいな素材感丸出しなのも仕方ないです。
　でもですね。こんな中途半端なサメが世に出れば『また新しいサメのクソ映画か』なんていわれるのは間違いありません！
　これはサメ映画への不当な冒涜です！！」
　さすがはサメマニアのエミリィであった。
　もはや論点が違う。
　……でもサメ映画はやっぱりクソ映画率も高いから、仕方ないんじゃない、かな？
「しゃらーっぷ！　サメマニアとして、それ以上言う事は許しません！
　とにかく、人目に触れる前に、可及的速やかに始末してしまいましょう！」
　地の文にまで口出ししつつ、エミリィは『海零』の巨体へと向かっていった。
「ま、まぁ、コイツをとっちめりゃア大団円のエンドロールってな頃合いですしね……」
「あ、ああ。とにかくやるしかないな」
　バルディートも恭二郎も、エミリィの勢いにたじろぎつつも、それぞれに戦闘を開始するのだった。

「拝ﾝ涕塚8u即0n諱2wD\bh瘴]Vuｾ末－－－－－－！！！」
　この世の言葉で表現できない鳴き声をあげながら、『海零』はその巨体の腕を振るい、海面へと叩きつける。それだけで衝撃波と津波が、３人を襲い、立つことさえ困難になっていく。
「くっ、チャンスが来るまで、今は回避に徹するしかないか……」
　恭二郎の自慢の愛刀でも、さすがにこの巨体を斬るのは無理だ。
　ひとまずスペース風呂敷を広げて海上に浮かべ、即席の足場にして、波に揺られながらも耐えつつ機会を待つ恭二郎だった。
「うぉっとぉ？！」
　巻き起こる波に翻弄され、バルディートは海中へと落ちていった。
　だが、彼にとってはそれもまた計算のうち。地獄の炎でできた両腕は水中では消失してしまうが、腕がない分水の抵抗も減るため、古式ウミヘビ泳法で『海零』の周りを窺いながら泳いで機会を待つバルディートだった。
「チャンスが来るまで、しばし迷彩しておきやすかねェ」

　そして２人の待った機会は、エミリィによってもたらされる。
「かじできないロボ、出撃！」
　そう叫ぶと、ユーベルコード【暴れまわるメイドロボの術】の効果で、エミリィ自身が巨大ロボへと変身していった。
「おのれ！　うどん粉怪獣め！
　サメに罪を着せるとはなんたる悪逆！」
　巨大なメイドロボと化したエミリィは、そんなことを叫びながら、『海零』に向かってマルチミサイルを一斉発射していった。
　……ちなみにエミリィが何を言っているのかというと、やはりエミリィ的には『海零』をサメとは認めがたいらしく、サメではないという事をアピールして広めようとの魂胆である。
　うどん粉怪獣とはいったい……。

　それはともかく、エミリィのマルチミサイルがどんどこどんどこ『海零』に命中してその動きを止め、爆煙で視界が遮られてきている状況を、待ちに待ったチャンスとして、バルディートと恭二郎も動き出す。
　まずはバルディートだ。
　彼は古式ウミヘビ泳法で『海零』の周りを漂っていたが、『海零』がミサイルの雨の中で動きを止め、長い腕も海中に突き刺す格好になったのを見計らって、一気に加速して近付くと、その腕へと噛みついていく。
「フッフッフ……これぞ海の捕食者スタイル、見切れるかねエ！」
　鋭い牙を使っての【神速の一噛み】が『海零』の腕に噛みつき、それを噛みちぎって削っていく。『海零』が血を流し、海が赤く染まっていった。
「ここがチャンスだ。頼むぞスペース絵馬！」
　そしてその間に恭二郎は、自らの手を刃で傷つけ、流れる血に力を込めてスペース絵馬に注いでいた。サメの絵が描かれているスペース絵馬は、スペースシャークとの契約の証。この大海原と、先ほどまでに大量に召喚されていたサメを触媒に、スペース絵馬に込めた血で、暗黒宇宙に潜みし鮫の王を召喚するのだ。
「暗き宇宙の深淵より来たれ、星喰の鮫王！」

「おお、これこそ真の巨大サメですね！
　あんな紛い物のうどん粉怪獣とは違います！」
　巨大ロボになっているため、高い視点から海面下を俯瞰して見れたエミリィは、何か満足げにそう呟くのだった。

　恭二郎の【口寄せ：星喰鮫】による召喚に応えて現れた巨大なサメは、『海零』の巨体にも勝るとも劣らぬほど大きな口を開けて、『海零』とその腕に噛みついていたバルディートを、一口にせんと噛みついていく。
「って、待ってくだせェ？！
　違、あっしは敵のサメじゃないですよう？！」
　巻き込まれそうになって慌てて離れようとするバルディートだが、安心してほしい。そもそも口寄せで召喚された巨大サメは、一瞬噛みついてすぐに消えていったのだから。
　そしてその一瞬に、さらに巨大メイドロボのエミリィが動く。
　片腕の肉を噛みちぎられ、その胴体を巨大サメに噛みつかれた『海零』に、トドメとばかりにロケットパンチを放つ巨大メイドロボ。
「W醯恣ﾘk栴ｼrkｳ叢#ﾁhrC怨傍KdY－－－－－－－！！！」
　この連続攻撃を受けた『海零』は、やはり聞き取れない悲鳴を上げながら、大きくぐらついて、海面へと叩きつけられたのだった。
「見たか、うどん粉怪獣め！　……って、あら？」
「あのサメの巨体が倒れたから……津波が……？！」
「ひええええええ？！」
　海面に叩きつけられた衝撃で巻き起こった大波に、３人はそのまま押し流されていくのだった。

　なお、エミリィがしきりにサメではなくうどん粉怪獣だとアピールはしたものの、それは定着しなかったことは伝えておく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

●ディープブルー・ライジング
「まるで海そのものを相手にしているようです。
　水難の脅威を見せつけられておるような気分ですが……」
　先ほどまでの巨大メイドロボや水中戦の影響で津波が押し寄せる中、カーニンヒェン・ボーゲン（或いは一介のジジイ・f05393）は、そう呟いた。
　実際、水難そのものではある。
「うわー、ビックリした。瑠璃は大丈夫？」
「危うく流されるかと思ったよ……」
　相変わらず分身している四季乃・瑠璃（"2人で1人"の殺人姫・f09675）と緋瑪の２人は、互いに手を取り合って、押し寄せてくる波に流されないようにしていた。
　やがて波が収まると、『海零』は再び立ち上がり、浜辺にいる絵猟兵達のもとへとゆっくりと近づいてくる。メイドロボや猟兵の攻撃を受けてダメージもあるはずだが、今のところはまだ、それほど大きな影響ではないようだ。
「それにしても大物だね～。これは倒し甲斐がありそう」
「でも、今までのＺ級の鮫とは違うね。寧ろ鯨？」
　瑠璃と緋瑪は再び立ち上がった『海零』の巨体を見て、そんなことを呟いていた。
「あれは、邪神……？　サメ？」
　同じようにルエリラ・ルエラ（芋煮ハンター・f01185）も、浜辺にて『海零』の巨体が近づいてくるのを見上げていた。
「まぁ、メカシャークに乗れたからもう思い残すことはないし、さっさとでっかいのを倒しちゃおう」
　もっともルエリラの場合は、先ほど十分楽しんだので、『海零』がサメなのかどうかという事にはもうあまり興味はなさそうだったが。
「どちらにせよ、狩るしかないね！行こう、瑠璃！」
「わかった、緋瑪」
「ん、それなら私は援護に徹しよう。美味しいところは任せるよ」
　いつもの『ジェノサイド・ボム』を抱えて『海零』を迎え撃つべく突っ込んでいく瑠璃と緋瑪に、後方からルエリラは援護を宣言する。
「あの巨体とて、オブリビオンである限り、我々にも反撃のチャンスがありましょうな」
　カーニンヒェンもそういうと、瑠璃緋瑪同様に接近して迎え撃ちに行く。
　『海零』が動くたびに押し寄せる波を、【剣刃一閃】で切り裂きながら。
「真白いお姿が波間に消えてしまえば、狙いにくくなりますからな」
　そういいつつ、己の剣閃で波を切り裂いたことには満足そうなカーニンヒェンだった。

「贏\t%yﾛ伹ｯ$}q罅鎧ｬ俿f媚ﾖーーーーーーー！！！！」
　人の発音にない鳴き声をあげつつ、『海零』はその両腕を大きく振り上げ、そして海面に叩き付けると同時に、水面を走る衝撃波に強力なサイキックエナジーをのせて猟兵への攻撃をしてきた。
「あたらないよ」
　ルエリラは、それを【ルエリラの勘】で避けながら、魔力で編んだ矢をサイキックエナジーを生み出している額や両掌へ向けて放っていく。
「ほらほら、こっち！
　これでサメ映画の時間は終わりだよ！」
　派手に矢を放つことで、自らに注意を引き付けていく。
（「私を狙わせれば、他のみんながフリーになって動きやすくなるからね。だかｒ任せたよ」）
　狙い通り、ルエリラの魔力の矢を鬱陶しく感じたのか、『海零』はルエリラん微向けてやたらめったらと腕を振るい、衝撃波を叩きつけてくるのだった。
「狙い通り！　だけど、避けきれるうちになんとかしてよね！」

「私たちに任せて！」
「何とかしましょう！」
　瑠璃緋瑪のコンビは、『海零』がルエリラに気を取られている隙に、別方向から近づいていく。
　瑠璃の愛用する自動拳銃『UDC-K100カスタム』での銃撃で、さらに『海零』気を惹きつけると、緋瑪は高速で接近するや否や時限式の『ジェノサイド・ボム』を連続で『海零』に向けて投げつけていった。時限式といってもタイマーのセットはごく短い時間で、投げつけ『海零』の周りに落ちるとほぼ同時に次々と爆発していった。
　幸か不幸か、その爆風に隠れて、援護射撃をしている瑠璃と、高速のヒットアンドアウェイで近付いて爆弾を投げる緋瑪の姿を覆い隠し、『海零』からの攻撃を妨げていた。
　そして、その爆風が突然横一文字に切り裂かれる。
　いうまでもなくカーニンヒェンだ。
「釣りを嗜む身と致しまして、未発達な稚魚はリリース対象なのです。
　無論この場合のリリース先は骸の海となりますな」
　言葉ではそんなのんびりしたことを言いつつも、一閃するたびに真美が、爆風が切り裂かれて、次第に『海零』へと刃が届き始めていった。
　身体のサイズが違いすぎるため、その一太刀は『海零』の腕とかを斬りおとすとまではいかないが、少しずつ少しずつ削って『海零』の体力を消耗させていく。
「よーし！　それじゃそろそとトドメいっちゃいますか！」
　カーニンヒェンの剣戟やルエリラの援護射撃を受けた瑠璃と緋瑪は、『海零』に向けて銃を向けた。
「これが私達の全力全壊！　ジェノサイドブレイカー！！」
　瑠璃の銃にふたりがかりの魔力を込め、【ジェノサイドブレイカー】のっ掛け声とともに解き放った。
　特大の収束魔力砲撃が『海零』に直撃し、爆発の勢いで巻き上げられた派手な水飛沫が『海零』の姿を覆い隠していく。
「やったか？
　これでサメ映画の時間は終わりかな」
「今度生まれ変わる時はシャークトパスに……」
「うーん……それはさすがに生まれて貰っても困るんじゃないかな？」
　ルエリラと瑠璃と緋瑪が口々にそう言って笑いあっている。
　が。
「まだのようですぞ」
「えっ？！」
　カーニンヒェンの言う通り、特大の魔力砲を喰らってもまだ、『海零』は健在。
　『海零』の再び振るわれた腕が、大きく波を立て、４人を飲み込んでいくのだった。
「フラグじみたことを言うからーー？！」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●ロストバケーション
「何だこいつ！　やたらと固いでござるな、この新手の鮫は？」
　猟兵達の度重なる攻撃を受けてもなお健在な『海零』を見て、エドゥアルト・ルーデル（黒ヒゲ・f10354）は驚愕していた。
「確かにラスボスは大きいのが定石だけど、まさかこれ程とはね。
　けど、それだけで勝てると思ったら大間違いだよ……！」
　セリエルフィナ・メルフォワーゼ（天翔ける一輪の君影草・f08589）もまた、『海零』のタフさに驚いているものの、当然まだ屈しはしない。
「おおよ！　とりあえずよく判らんが追加のデカイ鮫だ！　殴れ殴れ！」
　エドゥアルトもセリエルフィナに同調するように、気合と闘志を燃やしていた。
「そうだね！
　いかれたモンスターに対抗するにはぶっとんだモンスターをぶつけるしかない！」
　そしてそれ以上に燃え上がっていたのが、明石・真多子（軟体魔忍マダコ・f00079）だ。言っている言葉からは不穏な気配しか感じないが……。
「とにかくこれが最後の決戦！　いくよ！」
　そういうと、セリエルフィナは【スカイステッパー】で空気を蹴り、空中へと跳び上がる。そして、津波や衝撃波の影響のない上空で間合いを取り始めた。
　そんなセリエルフィナに気付いたのか、『海零』はまた動き出し、セリエルフィナには届かないものの、その腕で衝撃波を叩きつけながら、自らの領域である海を広げていく。
「鵁ﾏBｼﾄV6ｧNﾃ*xzRXｯｿｻｳHh~h－－－－－！！！」
　なし崩しに、猟兵達と『海零』の最後の戦いはこうして始まったのだった。

「デカイ鮫にはやはり爆弾を使いたい所、なんとかスキを突きたいでござるね！」
　激しく暴れまわる『海零』を正面に迎え、エドゥアルトは海面に叩きつけられる衝撃波から身をかわし続けていた。
　宙を蹴り空へと跳んでいるセリエルフィナと、真の姿を見せるといって海中へと飛び込んだ真多子と、２人が空と海に姿を隠したため、『海零』の巨体と正面から相対するのはエドゥアルトの役目となっていた。
「スキを突くどころか、いつまで避けきれるかわからんし、何か手があるなら早くしてほしいでござるなぁ！」
　そう言いながらも、海面を叩く『海零』の腕からは逃れ続けているエドゥアルトである。

「こうなったら、アタシの真の姿を見せるしかないね！」
　と、真多子は宣言し、そのまま海へと飛び込んでいった。
　相変わらず【軟体忍法鮫蛸変化の術】にて頭部をサメの頭に変身させている真多子だったが、それだけでは数が足りないと、それならば頭を増やせばいいと！
　そう言い放った真多子は、海中に潜ると同時に術を連続使用、頭だけでなく、両手両足、それどころか、タコの触腕の先をもサメの頭へと変化させていった。
「これが真の姿のナインヘッドシャークだ！
　今、アタシはついに８という呪われたタコの数字の壁を超えたよ！」
　そう勝ち誇りながら、海中から、増やしたサメの頭で、次々と『海零』に襲い掛かっていく。
　さらに空の方では、宙を蹴り、翼をはためかせて空を駆けているセリエルフィナが、『海零』の手の届かない上空から一気に下降すると、『海零』の頭をめがけての蹴りでヒットアンドアウェイの攻撃を続けている。
「てりゃてりゃ！　これでどうだっ！」
　どちらの攻撃も巨体に対してはまだまだ規模が小さいものの、『海零』は鬱陶しそうに手を振りまわし、上を飛び回るセリエルフィナと、下で絡みつくナインヘッドシャーク……真多子を引き剥がそうと、暴れだしていた。
　そして暴れれば暴れるほど、『海零』の周りで海が広がっていく。

「チャンス到来！　ほらほら、そんなに地形を海に変えたら、神がお怒りですぞ！」
　２人に注意が向いて『海零』の意識からエドゥアルトが消えた頃合いを見計らい、エドゥアルトは【神の怒り】を発動させる。『海零』が周りを海へと変えていくことをバグと見做し、そしてバグが発生した事を理由に『海零』の動きが処理堕ちしたかのように鈍っていった。
「よし、今だ、２人とも危ないからどくでござるよ！！」
　そして動きのおかしくなった『海零』に対してさらなる一手。
　エドゥアルトは、まるでサメ映画のクライマックスでサメに向かい爆弾をぶつけるかのように、自ら爆弾を積んだボートに乗り込むとそのまま『海零』へと突撃していく。
「ぐわっはっはっは！　これでもくらええええい！　とぅっ！」
　そのままともに突っ込んでいって自爆か？と思われる寸前、『海零』にぶつかる直前でエドゥアルトは海に飛び込んで脱出し、ボートだけが突っ込んでいって盛大に爆発！炎上！した。
「さすがにこれでどうよ！」
「熙ｭｾｹB噎"ﾄ$*牴$k所@敏p蕗愡"lAﾂﾅ妊－－－－－－？！？！？！」
　さすがに『海零』も体が炎上してもがき苦しんでいる。
　ここまで猟兵達に散々抜けてきたダメージで案外と弱っていたこともあるのだろう。かなり苦しそうだ。だが、それでも、まだその巨体は倒れない。
「それならこれで！　いっけぇ！　隼キーック！！」
　ならばと、さらに上空に逃れていたセリエルフィナが、急加速しての急降下から、オーラを纏って硬化した蹴りを『海零』の頭部へとぶちかます。
　狙い違わず命中したその蹴り……というか踏みつけを喰らい、ぐらりと揺れた『海零』はそのまま倒れていく。海面に大きな水柱を立てて倒れた『海零』を、今度は水中にいたナインヘッドシャーク……真多子が絡みつき、その９つの顎で『海零』のあらゆるところに噛みついていく。
「シャーックックック！　シャー９っ９っ９！」
　あまりにも元の姿とかけ離れた化け物じみた姿に変身しているためか、理性も失い狂戦士のように奇怪な笑い声をあげながら、自らよりもはるかに大きな巨体を食べつくそうと噛みつく真多子。
「抵ﾇｹﾖｧcVﾃｬｬﾝｶｾﾝｱﾚm.xXm@\Fﾆjーー！！！！」
　だが、燃えて砕けてボロボロな身体でも、まだ『海零』はそんなナインヘッドシャークを引き剥がして、まだ起き上がろうとする。
　もうかなりのダメージは与えているが、まだ一手。あと一手が届かない。
　ナインヘッドシャークを剥がし、ぼろぼろの身体で再び海面上に屹立する『海零』を見上げ、もう一手、どこからかさらに強力な力でもあれば！と、猟兵達が思ったその時。

　唐突に。
　颯爽と現れたモノがいた。

「いぇぇぇぇぇぇぇ！」

　突如、空から降ってきた黒い影。
　黒い艶々としたタールのような投げ槍が、奇声をあげながら一直線に『海零』に向かって飛来してくるではないか。
　まるで稲妻のように。
　激しく！
　鋭く！
　『海零』の頭に突き刺さり！！

　そして盛大に自爆した。
　先ほどのエドゥアルトの自爆ボート攻撃よりもさらに激しい爆発だった。

　見よ、猟兵達よ。
　これがうつろぎだ。
　突如現れては、捨て身の一撃（自爆）を盛大にぶちかましては消えていく。
　これが！虚偽・うつろぎ（名状しやすきもの・f01139）だ！！！

　うつろぎの盛大な自爆により、『海零』の巨体は再び倒れていった。
　ここまで積み上げられたダメージがついに限界を超えたのか、その白い体にヒビが入り、末端から砕けつつ、再び盛大な水柱をあげて、海中へと没していく。
「シャーーーーーーーーックックック！！」
　そしてその砕け散っていく身体は、ナインヘッドシャークにさらに噛み砕かれ、喰われていくのだった……。

「どうやら、今度こそ終わったようでござるな……」
「これでようやく海水浴場に平和が……戻るのかな？」
　生き残ったエドゥアルトとセリエルフィナは、浜辺に立ち静かになったお気を眺めている。……まだナインヘッドシャークはいるが、それもじき大人しくなるだろう。
　ともあれこれで、サメの恐怖はすべて去ったのだ。
　ありがとう猟兵。君たちの雄姿は忘れない。

　そしてこの後は静かにエンドロールが流れていくのだった。
　13分くらい。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年04月28日