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君は奏でる、僕は踊る

#ダークセイヴァー #疫病楽団

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#疫病楽団


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●花師の少女
 今年も花の昨季節がやってきた。私は小さな籠を片手に花畑へ向かう。
 病で伏せるおばあさまに、お花を見せてあげるのよ。
 この花畑はおばあさまのお若い頃に、偶然手に入れた花の種を植えたのが始まり。
 ほんの少しの花が咲くのが嬉しくて、何十年も掛けて少しずつその数を増やしてきたのよ。
 私のおかあさまもそうやって花を育ててきたの。村の人にとっても、この少なくてちっぽけな花畑はとても大切なもの。
 やつれた土地にも花は咲く。そんな希望が、貧しくとも精一杯生きていられる毎日には必要なのだと、村長様は言っていたわ。
 だから、私とすれ違うきこりのおじさまも微笑んで見送ってくれるの。
 針仕事が得意なおねえさま、狩りが上手なおにいさま。お料理上手なおばさま達。
 みんなみんな、この村で自分ができる一番をお役目として振る舞ってくれる。
 私はお花を育てるのが得意なの。おかあさまに一杯教えてもらったのだもの。
 だから、この花畑は私のお仕事場。大事な大事な、私の日常。


 ――けれど少女の生命は絶たれ、希望の花畑は踏み荒らされ、村は嘆く間もなく滅んでしまう。
 そんな予知を、彼は見た。
「嘆かわしいことだね。このままではひっそりと平穏に過ごしている村が、消えてしまうんだ」
 エンティ・シェア(欠片・f00526)は大仰な所作で悲劇を告げる。そうして、そうならないための協力を願い出た。
 村の驚異となるのは不可思議な音楽を奏でるオブリビオンの楽団。その正体は何らかの理由でこの地に縛られてしまった亡霊だと言う。
 漂うように宙を移動し、壁を擦り抜け襲いかかる。
 幸せな感情を散らすことでのみ、彼らは満たされるのだという。
「未練にも様々あるだろうがね、どうやらこの敵はそういった感情に釣られやすい性質だと知れたよ。そして今、この村で一番幸せな感情を抱いているのは、花師と呼ばれる家系の娘さんだ」
 大事に育てていた花が咲いた。役目を果たしたこの瞬間が、幼い少女にとっては何より幸福なのだろう。
「だが、こう言ってしまっては何だがね、彼女がそこにいる限り、オブリビオンは村の方へは向かわない。これは、利用すべき点だ。なにせバリケードなんかが通じない敵だからね、襲ってくる方向を絞り込めるのは、迎え撃つに当たり都合がいい」
 敵の気配を捉えるまで、少女を村へ帰してはならない。そう告げるエンティは、少女を囮に使えと言っている。
 とは言え、ただ囮にするだけでは花畑で戦闘が始まってしまうことは必至。それも頂けないとエンティは言う。
「理想は、花畑に至らぬ場所で迎え撃つこと。あるいは、花畑を守るようにして応戦すること、かな。娘さんに亡霊を見せて怯えさせるのも可愛そうだからね。戦闘前には帰してあげられると良い。そのために、少女より強力な幸福が必要となってくる」
 つまりね、と。エンティは微笑んで続ける。
「満喫したまえよ。夜と闇に支配された世界に、精一杯生きる小さな花を」
 オブリビオンが羨んで集ってくる程に、彼らの日常を楽しむといい。
 花師の娘さんと遊んであげてもいいね。村に返さずに済むから一石二鳥だと笑う。
「信頼しているとも。少女を護り、希望を護り、敵だけを散らす。そんな活躍を、君達はきっとしてくれるだろうとね」
 そうだろう? 小首を傾げたグリモア猟兵は、変わらぬ笑顔で送り出す準備をしながら、思い出したように振り返る。
「大事なことを忘れるところだった。疫病楽団は戦闘の最中にその形態を変貌させるという。より強力な敵になる可能性があるのだが、済まないね、その詳細は今はわからないんだ」
 いずれにせよ、全ての敵を掻き集め、取りこぼさなければ万事解決だと締めくくり、ダークセイヴァーへの道を開くのであった。


里音
 ダークセイヴァーでのお仕事です。
 日常、集団戦、集団戦という流れのシナリオになります。
 第一章ではお花畑でのんびり過ごしてください。
 少女がおりますが、村の人達に優しく見守られ育ってきた娘さんなので、知らない人を極端に怖がることもしません。

 第一章でしっかり満喫できれば、第二章開始前に少女を村へ帰してもオブリビオンが村へ向かうことはないものとします。
 その辺りも含めた、第二章、第三章開始時点での状況を冒頭文章で投稿予定です。
 プレイングの参考にどうぞ。

 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『花咲く季節』

POW   :    花の側まで近づく、花を愛でる

SPD   :    花の香りを楽しむ、花を愛でる

WIZ   :    花の造形や生態を思う、花を愛でる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

満月・双葉
【WIZ】コミュ力を用いて少女と話してみましょう。
どんな風に世話をするのでしょうか。
この花の特徴は、どんなところが好きですか。
話してくれたら、なるほど、なるほど、と相槌を打ち、話が途切れないように気をつけつつ聞き役に。
母上は優しい人でしたか?と話が途切れそうなら家族との話しなどに膨らませつつ。
思い出話などすれば幸福感はますでしょう。

綺麗な花ですね。心を込めて育てたからでもあるでしょう。
お疲れ様です。これからも、美しい花を愛し育ててください。

ぇぇ、結果の為なら過程は厭いません。
ママからそう教わりましたから。


彩花・涼
花……か。ダークセイヴァーではそうそう見られない光景だな。
少女共々、花畑はこの世界にとって大事な希望だ
オブリビオンに踏み荒らされる等、絶対阻止するぞ

それにしても、親子三世代で此処まで育て上げるとは……血の滲むような努力が伺える。
少女に許可をもらい、花びらを散らしてしまわないようそっと近づいて花の香を楽しむとしよう
今後もこの花畑が広がる事を楽しみにしている

そのためには、奴らを食い止めねばならないがな。


キャロライン・ブラック
この土地で花畑を作ることがどれほど難しいか
ええ、少しは理解しているつもりです
だからというわけはないけれど、守ってみせますわ

なんて、意気込むよりも、まずはこの美しい花々を愛でましょうか
花師のお嬢さまも、きっとその方が喜ぶでしょう
それに、花の髪飾りを愛用する程度にはわたくし、花を愛していますもの

ごきげんよう、お嬢さま、少しお邪魔してますわ
貴女が育てていらしたの?
よろしければお話を聞かせてくださらない?

などと、花師のお嬢さまにお話もお聞きいたします
どのような名のお花なのか
どのように育てていらっしゃったのか
お聞きしたいことはたくさんございますわ

では、囮などということは今は忘れ、楽しんで参りましょう


カーニンヒェン・ボーゲン
Grüß Gott!(こんにちは)
素敵な花畑ですね。
立ち寄らせていただく許可を得るべく、お嬢さんに声をかけます。
ボーゲンといいます。旅をしている…まあ、ただのジジイですな。
貴女が、花師どのですか?と。

この地で観る花は格別に思うものがありますね。
それほど切迫した情勢の内…失わせたくはない。

お嬢さんはお仕事の話はお嫌でしょうか。
草花の種類や、普段の様子などをお聞きしたいです。
どなたかと遊ばれるのであれば、ジジイめは花を愛でながら休憩しておりますかな。
旅荷物と称してハーブティを入れた水筒を持参します。
駆けるのに疲れたならば、皆さまもいかがでしょうか。
穏やかな陽気と、つかの間の平穏を焼きつけましょう。


フィリア・セイアッド
粉の世界にも こんなに綺麗な花畑があっただなんて
苦しい中でも 幸せを見つけて精一杯生きる人は強いと思う
この村の人も 女の子も
とても素敵ね
壊させたりなんて しない

【WIZ】を選択
女の子に会えば笑顔で挨拶
素敵なお花ね
見せてもらってもいいかしら?
怖がられないよう自己紹介
優しく話しかけ、仲良くなれたら
咲いている花の種類や 育てる際の工夫を聞いて
すごいのね 私も花が好きなの
新しい蕾を見つけると わくわくするわよね
花の手入れを手伝いながらおしゃべり
仕事が終わったらお茶会をしない?と
用意したお茶やお菓子を並べ誘ってみる
望まれればライアを弾き 春の歌を歌う
花や森 小鳥が歌う春の喜びの歌を


リグ・アシュリーズ
この地で咲く花がどんなに貴重かを、私は知ってる。
それを見た時の、えもいわれぬ幸福感も。

花を踏まないよう気をつけながら、世話してる子に声をかけるよ。
「綺麗だね。この花、あなたが育てたの?」
静かに相槌をうって聞き入り、しゃがんで花にそっと触れる。
どんな色の花なのかしら。

「私の暮らしてた辺りでも、赤い小さな花が咲いてたんだ」
こんなに群生してたわけじゃないけどね?
そういって思い出話を少しだけ。
蜜を吸って遊んだこと、枯れ花でポプリを作ったこと。

農村で暮らす子に暇なんてない。
きっと忙しい合間に水を汲み、寒空の下でも続けてきたんだと思う。
(言わなくても、伝わる。一生懸命育てたんだね。あとは私たちに任せて)




 夜と闇に支配されたダークセイヴァーにおいて、花を育てるというのは並大抵のことではない。
 農作物だってまともに育たない場合もある中で、花に土の養分を渡してしまうことを惜しむ者だって居るだろう。
 始めはきっと、そうだった。毎日生きるだけで必死なのに、手慰みなんてとんでもないと、言った者は、居たのだろう。
 それでも、咲かせた。
 そうして、今では村の希望となっている。
 あまりにささやかで、しかし壮大な思いが詰まった光景を、猟兵達は噛みしめるようにして見つめていた。
(花……か。ダークセイヴァーではそうそう見られない光景だな)
 可愛らしい桃色の花畑を前に、彩花・涼(黒蝶・f01922)は決意にも似た思いに満たされる。
 花畑も勿論だが、それを育てる少女も、この世界の希望だ。オブリビオンに踏み散らされることなどあってはならない。
 その決意は、涼に限ったものでもない。しかし猟兵達は、そんな強い感情を表に出すこと無く、ただただ笑顔で、少女に微笑みかけるのだ。
「Grüß Gott!」
 被った帽子を軽く持ち上げ会釈をするカーニンヒェン・ボーゲン(或いは一介のジジイ・f05393)の言葉に、少女はきょとんとしたように長身の男を見上げた。
 失礼、と小さく笑って、カーニンヒェンは少女と目線を合わせる。
「このジジイめがよく馴染んでいる言葉で、こんにちわ、という意味にございます」
「そうなの? どうも、こんにちわ」
 なるほどと納得したように頷いて、少女は人懐っこい笑顔で挨拶を返してくれる。
「ボーゲンといいます。旅をしている……まあ、ただのジジイですな。貴方が、花師どのですか?」
「まぁ、そうよ、そう。そう呼ばれているわ」
「でしたらお話が早い。素敵な花畑に、ぜひとも立ち寄らせて頂きたく思いましてな」
「ええ、ええ、どうぞ見ていって。えっと、そちらのおねえさま達も……かしら?」
 驚いたり、顔をほころばせたり、くるくると表情を変えながら、少女はきょろきょろと猟兵達へと視線を巡らせる。
 おじさまがお一人に、おねえさまが五人。見かけないお顔だわ、とそれぞれの顔を見ているが、警戒する様子などもなかった。
「ごきげんよう、お嬢さま、少しお邪魔してますわ」
「素敵なお花ね。見せてもらってもいいかしら?」
 優雅に礼をするキャロライン・ブラック(色彩のコレクター・f01443)と、自己紹介を交えて微笑むフィリア・セイアッド(白花の翼・f05316)が、それぞれに少女に声を掛ければ、少女はその所作の上品さを真似るように、ぺこりと丁寧にお辞儀をする。
 花を踏まないように歩み寄ってくるリグ・アシュリーズ(人狼の黒騎士・f10093)もまた、綺麗だね、と朗らかに笑う。
 優しいおねえさま達だ、と。少女はまた、嬉しそうに微笑んだ。
「この花、あなたが育てたの?」
「そう、そうなの。おかあさまにね、育て方を教えてもらったのよ」
「母上に」
「ええ、おかあさまは、村でのお仕事が一杯あるから、今は私がお勤めしているのよ」
 誇らしげに語る少女の言葉に、満月・双葉(星のカケラ・f01681)はなるほどと相槌を打ちながら、そっと花へと視線を向ける。
「この花の特徴は、どんなところが好きですか」
 双葉の何気ない問いかけに、少女はぱっと瞳を輝かせ、あのね、と語り始めた。
「花びらは小さいけれど、とっても綺麗で可愛いピンク色でしょう? それにね、ほんの少しだけどいい香りがするのよ」
「香りが? それは素敵だな。確かめてみても?」
「ええ!」
 なるほど、と繰り返し相槌を打つ双葉への回答に、涼は惹かれた興味をそのまま言葉にして尋ねる。そうして、花を散らさぬようにと気をつけながら、そっとしゃがみ込み、鼻を近づけた。
 少女が言うように、ほんの少しだ。それでも、優しい甘さを持った香りに気がついて。
「あぁ……本当だ。良い香りがする」
 静かな感動に、少女はまた、嬉しそうに笑った。
 そうやって猟兵達が順に少女へと声を掛けているのを、カーニンヒェンは見守るようにして見つめていた。
 聞きたいことは他の者が聞いてくれている。その会話に耳を傾けながら愛でる花は、一層美しく映えて見えたものだ。
(この地で観る花は格別に思うものがありますね。それほど切迫した情勢の内……失わせたくはない)
 同様に、キャロラインもまた改めて小さな花畑を見渡す。
 桃色が目立つのは子供用のビニールプールくらいの範囲。しかし、点々と、ではあるが、それよりも広い範囲にも花は咲いている。
 ここまで至るのに、どれだけの時間がかかったことだろう。
「親子三世代で此処まで育て上げるとは……血の滲むような努力が伺える」
「ええ、この土地で花畑を作ることがどれほど難しいか。ええ、少しは理解しているつもりです」
 ぽつり、こぼれた涼の言葉に同意を示したキャロラインには、だから、と意気込む気持ちもある。
 しかしそれ以上に、純粋に花が好きだった。花の髪飾りを愛用する程度には。
 この花も、髪に飾るのに向いた色をしている。加工などせずとも、窓辺に一輪あるだけでも、部屋が華やかになるだろうことは、容易に想像できた。
「このお花、どのような名前なのかしら」
「えっと、本当の名前は、知らないの。でも、村ではめぐみと呼ばれているわ」
「それは……思いのこもった、素敵な名前ですわね」
 めぐみ、と。胸中で繰り返して、フィリアは手元の花を慈しむように撫でる。
(苦しい中でも 幸せを見つけて精一杯生きる人は強いと思う)
 この花は、この村にとっての恵みなのだろう。日々の糧になるわけでもなくたって、心を潤してくれるもの。
 そうやって幸せを見つけられる村人や少女を、フィリアは、素敵だと思う。
(壊させたりなんて、しない)
 決意は、今は胸の内。話が途切れないように花について色々と尋ねている双葉に混ざり、育て方に工夫しているところなどを聞いてみる。
 肥料を自分で作っていることだとか、水撒きの時間だとか、雨風の強い日の対処だとか、それはきっと、他の村人が食べ物を育てる畑でやっていることを参考にしながらの手探りだったのだろう。
 おばあさまは何度も失敗したと言っていたわ、と告げる口調は悲しげだが、けれどすぐにぱっと表情を明るくして、成功したこともたくさんあったのよ、と語る。
 きっと、単純に説明できること以外にも、毎日毎日、色んな工夫をしていることだろうと、リグは思う。
 食べ物を確保しなければならないのだから、当然そちらの手伝いだってしていることだろう。時期によっては多忙だろうに、それでもその暇を縫って丹念に世話をしてきたからこその、成果。
 眩しそうに見つめて、リグは少女に声を掛けた。
「私の暮らしてた辺りでも、赤い小さな花が咲いてたんだ」
 こんなに群生してたわけじゃないけどね? と言うリグの言葉に、少女は興味深げに耳を傾ける。
 その表情の微笑ましさにくすりと笑って、思い出話を少しだけ。
 蜜を吸って遊んだこと、枯れ花でポプリを作ったこと……すると、少女はきらきらとした瞳でリグを見つめた。
「ポプリ。ポプリって、知っているわ。いい香りがするのよね」
「そうだね。この花も、素敵な香りがするから、材料には良いと思う」
 素敵なことを教えてもらった、とはしゃぐ少女に、双葉は彼女の幸福感が増しているのを感じる。
「お疲れ様です。これからも、美しい花を愛し育ててください」
「ええ、勿論!」
 労いに、少女は晴れやかな顔で笑った。
 ――囮、だと。グリモア猟兵は言った。自分達猟兵と話すことで少女が幸せになれば、敵はこちらに引き寄せられるだろう。
 そんな少女に微笑ましげな視線を向けている猟兵達の胸中にも、幸福感は、きっとある。
 良い、ことだ。
(ぇぇ、結果の為なら過程は厭いません。ママからそう教わりましたから)
 そうやって一通りの会話を終えた頃には、少女もいつもの日課を終わらせていた。
 世話を手伝ってくれたことに礼を述べる少女に、フィリアは首を振って微笑む。
「私も花が好きだもの。新しい蕾を見つけるとわくわくするわよね」
「ええ、とっても!」
「そうだわ、折角だから一緒にお茶会でもしない?」
 綺麗な花を眺めながら楽しむお茶会は素敵だろう、と少女を誘えば、聞きつけたカーニンヒェンも持参の水筒を揺らしながら歩み寄ってくる。
「お勤めを終えられてお疲れでしょう、少し休んでいかれてはどうですかな」
 フィリアがお菓子を広げ、カーニンヒェンがハーブの良い香りがするお茶を促せば、少女は戸惑ったようにそれらを見比べて。
 それから、気恥ずかしげにはにかんだ。
「お茶会なんて、初めてよ」
 少女を交えた、束の間の平穏。
 和やかな時間を過ごしながら、涼は遠く、耳を澄ませる。
 場違いで歪な音色は、まだ聞こえてこない。
 同じように耳を澄ませながら、リグは楽しげに笑う少女を一度振り返り。
(あとは私たちに任せて)
 敵への警戒を滲ませ始める仲間と共に、その時を、待つのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『その地に縛り付けられた亡霊』

POW   :    頭に鳴り響く止まない悲鳴
対象の攻撃を軽減する【霞のような身体が、呪いそのもの】に変身しつつ、【壁や床から突如現れ、取り憑くこと】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    呪われた言葉と過去
【呪詛のような呟き声を聞き入ってしまった】【対象に、亡霊自らが体験した凄惨な過去を】【幻覚にて体験させる精神攻撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    繰り返される怨嗟
自身が戦闘で瀕死になると【姿が消え、再び同じ亡霊】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:善知鳥アスカ

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 少女はひと時の茶会を楽しんで後、そろそろ戻らなくてはならないと腰を上げた。
 それと、ほとんど同時だっただろう。遠くから奇妙な音楽が聞こえてきたのは。
 幸いだったのは、猟兵達の耳には届いたその音色に、少女がまだ気がついていなかったこと。
 見送れば、それきり。少女は優しい旅人達と交わした言葉ややり取りを胸に、軽い足取りで駆けていった。
 残ったのは、猟兵と、彼女が大切にしていた花畑。
 そうして、奇妙な音色が徐々に近づいてくる。

 ――ふわり、ふわり。

 少し調子外れな音楽と共に現れたのは、黒い亡霊。
 音楽の合間に、亡霊達の言葉にならない声が、ああ、ああ、と嘆くように響く。
 その声を聞いていると、彼らが体験した凄惨な出来事の断片が脳内に注ぎ込まれるよう。
 亡霊の多くは真っ直ぐこちらへ向かってくるが、一部には地面から上半身だけを覗かせるような状態で近寄ってくる者もいる。あれが完全に地面に潜れば、発見するのは難しいかも知れない。
 だが、どのような敵が相手であろうと、ここを通す訳にはいかない。
 護ると決めたものが、あるのだから。
エレニア・ファンタージェン
経緯は伺いました
通りすがりの探偵助手としてお手伝いをすべきでしょう
…通りすがりよ。本当よ?

この亡者達は随分と世を恨んでいるのね
でも、この理不尽な世ではよくある話
生ある者の希望を奪って良い理由にはならなくてよ

UCで此方も怨嗟に満ちた幽鬼をぶつけましょう
存分に喰らいなさい
エリィがその呪詛を上乗せしましょう

「確かにその怨嗟は、解らなくもない…幾度も見て来たわ」
別途UCで催眠術と言いくるめを強化して同士討ちを誘えると良いのだけれども
出来なければそれはそれ
敵が強化されたら第六感とオーラ防御で防戦しつつフェイントからだまし討ちを狙う
拷問具で傷口を抉るのも忘れずに
「生きることも能わなかった死者が生意気よ」


彩花・涼
何が来ようとこの花畑を荒そうとするなら容赦しない
すべて此処で食い止めるぞ

近づいてくるのを待つ必要はない
黒鳥で【スナイパー】【クイックドロウ】で素早く銃弾を撃ち、近づいてくる前にまず削る
仲間の猟兵が前に出るならそのまま援護する、前に出るものがいなければ
黒華・改と黒爪に持ち替え前に出るぞ

接近したら黒華・改で【生命力吸収】で敵の体力を削りにいく
UCを使用されたら防御に徹し、敵が現れたところで黒爪で【武器受け】し【カウンター】でUCを使用
攻撃を軽減するというなら、更に攻撃力の高い攻撃をするまで

花や味方が攻撃を受けそうなら【かばう】で守りにいく
傷つけさせはしない


キャロライン・ブラック
貴方達がそうなってしまったことに、同情はございます
ですが、どんな過去であろうと、未来を奪って良い理由にはなりませんわ

まずは、迎え撃てるのであれば事前に準備をいたしましょう
鮮血の赤を周囲に撒き、わたくし自身を強化いたします

それに、壁や地面はすり抜けるようですけれど
ユーベルコードの塗料はいかがかしらね?

戦闘が始まりましたら、後方からの援護射撃を主に行いましょう
他の方々とも連携いたして、敵の初動を抑えるように立ち回りますわ

鮮血とは、言わば生命の証
死者である貴方達には辛いでしょう?

ですが大丈夫、直ぐに終わらせて差し上げます
止まぬ悲鳴も、繰り返す怨嗟も、悲しみは全て


フィリア・セイアッド
少女を危険な目に合わさず 家に帰せた事に安堵のため息
まだ気を抜いては駄目よね
小さな小さな 幸せを運ぶ花畑
あの可愛い女の子の …ううん、違う
村の人たちの「めぐみ」を守らなければ
優しい桃色の花弁をそっと撫でて 瞳を伏せる
どうか この地を守れますようにと祈りを

「WIZ」を選択
花も音楽も 私には「幸せ」をくれるものよ
誰かを傷つけたり苦しませたりするものじゃない
花畑を後ろに庇うように立ち 翼を広げる
菫のライアを抱え 破魔の力を乗せた歌を
亡霊たちを縛る何かから解放したい
何度も現れる敵に注意 
第六感も使い 攻撃は宙に舞って回避
後ろの花畑に攻撃が行きそうならオーラ防御で盾に
仲間の怪我は春女神への賛歌で回復を




 導く音色は調子外れでも明るくて、ふわふわ進む彼らはまるで踊るよう、だけれど。
 音色に混ざって、怨みを抱えた声がする。
 それはきっと、妬みでもあるのだろう。
「経緯は伺いました」
 エレニア・ファンタージェン(幻想パヴァーヌ・f11289)は既に帰った少女の住む村を振り返り、花畑を見渡してから、すっ、とそれらと敵の間に割り込んだ。
「通りすがりの探偵助手としてお手伝いをすべきでしょう」
 本当にただの通りすがりだという主張は、敵にとってはどうでも良くて、味方にとっても言及すべきことではなくて。
 フィリアは、新たな仲間の存在に安堵すると同時に、その人が傷つくことをほんの少しだけ、憂いた。
 けれど、足元の桃色の花弁に触れれば、その憂いは祈りに塗り替えられる。
 無事に村へと返してあげることができた、あの可愛い女の子の……いや、村の人の「めぐみ」を守れますように。
 少女が語った色々を思い起こしては幸せな心地をよぎらせるフィリアの、その感情に。釣られたように亡者がふらりと寄ってくる。
 だが、花畑に立ち入らせる義理など無い。
 すかさず黒い銃身を持つライフルを構えた涼は、空虚な体躯に銃弾を撃ち込んでいく。
「この花畑を荒そうとするなら容赦しない」
 立ち去れなどと易しいことは言わない。ここで食い止め、全てを骸の海に還すのだ。
 だって、そう。彼らは既に、死した者。
「貴方達がそうなってしまったことに、同情はございます」
 何かがあって、この亡者は未練を残してしまった。眼前に映る敵の数と同じだけ、事情があるのだろう。
 その一つ一つを慮れば、どれほど心を痛めることだろうと、キャロラインは軽く瞳を細めたが、真っ直ぐに亡者を見つめるその瞳に、躊躇はない。
「ですが、どんな過去であろうと、未来を奪って良い理由にはなりませんわ」
 言い放つキャロラインの周囲には、赤い塗料が撒かれていた。それはユーベルコードによる鮮血を模した色。
 赤い、赤い、鮮やかな、血の色。
 とても綺麗で、美味しそうね?
 足元に赤を携えたキャロラインは、杖の先端についた虹色の宝石をくるりと回す。高められた戦闘力で更に放たれる鮮血色は、既に血も肉も失った亡者を赤く染めた。
 亡者達は、苦しむような声を上げながらも、それ以上に重く強烈な怨嗟の声を紡ぎ出す。
 ただ死んだわけではない。必要もなく、意味もなく、理由すらもないままに残虐に殺されたのだと訴える声は、エレニアの耳にも届く。
 けれど、心には、響かなかった。
「この亡者達は随分と世を恨んでいるのね。でも、この理不尽な世ではよくある話」
 同情はできよう。共感もできよう。しようと思えば。
 しかしどれだけ心を傾けようと試みたところで、躊躇も容赦もできないのだ。
「生ある者の希望を奪って良い理由にはならなくてよ」
 あるべき場所に還るがいい。さもなくば――誰かに囚われても、知らないよ。
 ふぅわりと、エレニアの傍らに浮かぶのは、敵対者とは別の、それでもよく似た雰囲気を醸し出す‌、禍々しく黒い影。
 それはエレニアの拾い物。戦場に散った幾つもの無念の集合体。足掻いても足掻いても叶わなかった嘆きを寄り集めた幽鬼の姿は、淀み、そのもので。
 怨嗟には、怨嗟を。
「エリィがその呪詛を上乗せしましょう」
 せめてあの日の夢の続きを。戦の誉れをむさぼりたまえ。
 幽鬼の放つ咆哮は、強い未練を持つ亡者達のトラウマを抉り出す。
 もう感じることもなくなったはず絶望を、恐怖を、呼び起こされて、亡者の一部が狂ったように叫びだした。
「大丈夫、直ぐに終わらせて差し上げます」
 ぱしゃ、と、キャロラインの杖が鮮血色を塗りつける。
 いわば生命の証とも言えようその色が持つ攻撃力に、亡者はたまりかねたように崩れ落ちる。
 だが、それでこの怨嗟は終わりではないのだと言わんばかりに、瀕死の亡者から同じ形の亡者が現れる。
 より強力な力を持ったそれへ、飛び散ったその色溜まりを踏みしめて、黒鳥から黒華、黒爪へ――銃から刃と盾へと武器を持ち替えた涼が新手へと肉薄した。
 近づいてきた涼へと掴みかかる勢いで迫ってきた亡者を黒爪の銃身で受け止めながら、涼は呪詛を注ぎ込む亡者の声に、その声が見せようとする幻覚に、かすかに眉を寄せる。しかしそれは、刃を振るう手を止める理由には、ならなかった。
「この一撃で終わりにする」
 剣に黒蝶を纏わせて、至近距離から放つ斬撃は、幻覚ごと亡者を両断する。
 霧散する亡者の影から見える、次へ。涼は果敢に飛び込みかけ、けれど視界の端で悠々と花畑に踏み入ろうとする亡者を見つけ、即座に踵を返した。
 守ると決めた。だから、己が盾となることも厭わない。
「その花を、傷つけさせはしない」
 立ちはだかる涼へと、鋭利ですらない爪を持つ亡者の腕が振り下ろされる。キャロラインが描くそれと酷似していながら異なる色が飛び散るのを見止め、フィリアはその傷を癒やすべく、ライアで奏でる音色を変えた。
「降りしきれ春の陽射しよ 清らに咲ける花のため なお踏み耐える根のために」
 春女神への賛歌は、オブリビオンの楽団が奏でる音色よりもずっと高らかに響き渡り、猟兵達へと癒やしを齎す。
 けれどその幸福を体現するかのような音色は、亡者の羨望や嫉妬を釣る。
 とぷりと地面に潜り込んだ亡者が、キャロラインの塗料を避けるようにしてフィリアの足元へと近寄り、飛びかかってきた。
「きゃっ……」
 躱し難い突然の攻撃に、フィリアは傷を負う。しかし、彼女がそれで怯むわけでもないし、彼らを憎むわけでもなくて。
 すぅ、と大きく吸い込んだフィリアが再び歌い上げるのは、破魔の祈りを込めた歌。
 倒すべき敵と認識していても、それでもフィリアは、彼らを救いたかった。自分の歌う音色で、少しでも、少しでも、彼らの無念が、未練が、晴れればいい。
 フィリアの願いは果たして届いたのか。それを知ることはできないけれど、例えば自己満足だとしても、そうすると決めた心で、歌い続けた。
 拒絶するように身を捩り、亡者はその歌声を振り払おうとする。
 怨み以外の何物も受け付けようとしない彼らの耳には、エレニアの強化された催眠の言葉も届かないようだ。
「確かにその怨嗟は、解らなくもない……幾度も見て来たわ」
 誰かの言葉に心委ねることができれば、束の間くらいは忘れられたかもしれないのに。それすらも、拒むのか。
「生きることも能わなかった死者が生意気よ」
 冷めきった瞳をしたエレニアの眼前で、また一体、亡者の姿が霧散する。
 亡者の群れが、少しずつ、欠けていく。
 それでもまだ、怨みの声は、途切れない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

カーニンヒェン・ボーゲン
姿を見失う前に、地面から引きずり出したいところですな。
UC:アザゼルの名を呼び、上空高くへ配置。地上に影が落ちぬ高度から矢を射るように指示。

花畑から距離をとる為にも、此方から距離を詰めます。
身を隠そうとしている個体から順に、周囲と連携して早々に倒しきってしまいたい。
逃がさぬことが最優先です。
援護射撃を行うか、囮となり破魔と盾受けとで注意を引くかは状況に合わせます。
この世界で齎された彼らの苦痛は、想像に余りある。
死して尚、縛られたままの彼らは、生と死のどちらを望んでいるのでしょうか。
悪魔・アザゼル…その風矢を以て、因果ごと全てを断ち切りなさい。
まっさらな眠りの中に、望む安息が訪れる事を願います。


リグ・アシュリーズ
なるほど。地面に潜ったまま抜けられる危険はあるけど、
要はこっちに惹きつけちゃえばいいのよね?
大丈夫。今の私たちならできる。
あの子とお花に幸せパワー、もらったからね!

花畑よりも手前で迎撃、黒剣をぶんぶん旋回させて肩に担ぐ。
さあ、どっからでもかかって来なさい!

黒剣の斬撃に、生命力吸収の力を織り交ぜて戦う。
私の剣は集団戦に向かないけど、一体ずつ力を乗せて仕留めてくよ。
骨を砕くように……骨、あるのかしら?

もし数に押されて敵が村へ抜けそうなら、
味方を巻き込まない位置で人狼咆哮を解禁。
大きく息を吸い、どんな呪詛もかき消す大音量で浴びせかける。
(まだまだ次もあるんでしょ?最初から全力で来なさいっての!)


満月・双葉
他の猟兵への援護射撃を行い、有利に戦況が運ぶように計らいます。

敵の攻撃は視力、暗視、聞き耳、野生の勘、第六感など感覚を研ぎ澄まさせ、見切ります。
見切れないものは盾受け、武器受け、オラトリオベールのオーラ防御で防ぎます。

攻撃方法はユーベルコードを中心に、武器の投擲と銃による射撃をスナイパーで精度を上げて行います。
近距離に入り込まれたら零距離射撃と武器で殴りつける気絶攻撃で対応します。
瀕死の個体はユーベルコード使われる前に倒した方が良さそうですね。




 ふわりと浮遊する霊達は、猟兵達を素通りして村へ行こうというつもりはないようだ。
 それもそうだろう。花師の少女と交わしたやり取りを思い起こして、リグは不敵な笑みを浮かべる。
「あの子とお花に幸せパワー、もらったからね!」
 奴らが妬むほどの幸せならば、ここにある。主張するように、花畑を背にしたリグは愛用の黒剣を振り回し、挑発するように肩に担いだ。
「さあ、どっからでもかかって来なさい!」
 ――無論、待つだけでいるわけではないけれど。
「アザゼル、哀しき霊よ」
 一番近い敵へと踏み込み重量のある斬撃を見舞うリグの傍ら、同じように前に出たカーニンヒェンは、上空に配置した自らの召喚霊、アザゼルが放つ風の向きを確かめる。
 地面に潜り込もうとする敵へと牽制するように放たれる風の矢を追うように、同一個体へと刀を振るえば、目論見を妨げられた亡者は防ぐことも叶わずに斬撃に倒れた。
 攻撃対象を選別するのは、アザゼルの風だけにあらず。優雅な香りと共に周囲に舞う花弁が、亡者の一体を覆う。
 オーラで構成されたその花は、虹色の薔薇。
「一緒に踊らない?」
 柔らかな白色の瞳に乗せた誘い文句。双葉の紡ぐその言葉に、薔薇の花弁は亡者の周囲をくるりと回り、同時に、まるで彼らの手を取ったかのように、回らせた。
 振り払おうとするさまさえ、まるで踊るよう。その舞踏が終わるより早く、リグは接敵し、無骨な剣で打ち据える。
(私の剣は集団戦には向かないけど……)
 とどめを刺すのには、向いている。敵陣へ突っ込むことで得る細かい傷は、生命力を吸収しながら賄って、最上段から、骨まで砕く勢いで叩き斬ったところで、ふと、リグは首を傾げた。
(……骨、あるのかしら?)
 思わず過った考えだが、どちらでもいいか、と気持ちを切り替えるのは、一瞬のこと。
「足元、気をつけて」
 鋭く飛んだ忠告に飛び退けば、潜り込んでいた個体が地面から飛び出してくる。
 なるべくならば潜る前に倒していければと注意を払うカーニンヒェンではあるが、流石に数が多い。
 不意打ちに気をつけながら、確実に数を減らしていくのが最良だろうと判じ、再び潜られる前にと、その身に刃を突き立てた。
 数の多さに辟易するのはリグも同じ。
 他の猟兵達も応戦している以上、突破される心配までは無いのが幸いか。ちらりと周囲を一度確かめて、ふぅ、と短く呼吸を整えた。
(あまり使う気になれないのよね)
 いざとなれば、呪詛だろうがなんだろうが掻き消す程の咆哮を放つ備えはあるが、それは切り札。使わずに済むならそれに越したことはないと、目の前の敵を切り伏せた。
(まだまだ次もあるんでしょ? 最初から全力で来なさいっての!)
 文句を込めたようなリグの一撃で瀕死となるならば、双葉が追い打ちをかけて確実に仕留めていく。より強力な個体が再召喚されるのを避けるために。
(数は、順調に減らせていますか)
 時折後方にいる双葉の元までたどり着く敵もいるが、五感に第六感、盾も駆使していなしては反撃に転じていく。
 薔薇の花弁に銃や武器(ということにしてあるもの)の投擲と、あらゆる遠距離攻撃を使いこなして体力を削れば、リグやカーニンヒェンが仕留めていくし、逆もまた然り。
 徹頭徹尾花畑への侵入を阻止する猟兵達の動きによって、亡者の群れは徐々にその戦線を花畑から遠ざけていた。
 そうやって、幸福な気配から遠ざけられることに憤りを覚えてか。あるいは、猟兵自身が主張する幸福な感情そのものを妬んでか。
 悲痛な声を上げて躍りかかってくる亡者の爪を刀で受け止めながら、カーニンヒェンは呪詛から滲む彼らの凄惨な体験を思い、眉を顰めた。
(死して尚、縛られたままの彼らは、生と死のどちらを望んでいるのでしょうか)
 生きたかったのか。
 殺してほしいのか。
(いまの彼らにとっては、どちらも等しく苦痛なのでしょうな)
 アザゼル、と。短く呼んだその声に、風を纏うオブリビオンは応える。
「その風矢を以て、因果ごと全てを断ち切りなさい」
 まっさらな眠りの中に、望む安息が訪れる事を。
 爪と刀の鍔迫り合いを押し切って、仰け反った亡者の胸部に、鋭い矢が吸い込まれる。
 そうして、また一体、亡者が倒れ霧散した時だった。
 流れていた音色が、変調する。
「ようやくですか」
 グリモア猟兵が語った変貌の兆しに、双葉が警戒を強めて小さく呟いた。
 それと同時に、ふわりふわりと漂っていた亡者達が一斉に叫びだす。
 共鳴する不協和音に、思わず耳を塞いだ瞬間。そこにいた亡者達は、全て、姿を変えた――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 集団戦 『女騎士の躯』

POW   :    おぞましき呪い
【凄まじき苦痛を伴う呪いを流し込まれ狂戦士】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    死して尚衰えぬ技の冴え
【錆びて穢れた騎士剣による渾身の斬撃】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    不撓不屈の闘志の顕現
自身に【死して尚潰えぬ闘志が可視化したオーラ】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。

イラスト:すねいる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 亡者の群れだったオブリビオンの楽団は、一瞬の後に数多の女騎士へと変貌した。
 ただし、彼女らもまた亡者である。かつてはどんな敵と相対し、どんな活躍をしたのか、今となっては知ることはできない。
 わかるのは、彼女たちにとって相対するものは今もなお、敵であるということ。
「許さない、許さない、ヴァンパイア共……!」
 そして、彼女達にも、怨嗟が満ちているということ。
 死して骸となったと言え、その力は未だ衰えては居ない。
 闘志を込めて放つ鋭い斬撃は衝撃波を帯びるほどで、錆びてしまった剣だとて、渾身の一刀は敵を両断することだろう。
 また、死してなお戦う身となったことで、ある種の呪いに蝕まれているのだろうか。
 ひとたびその呪いに飲まれれば、動くものを屠り続ける狂戦士と化してしまう。
 だが、相手がどのような存在であれ、猟兵達がやるべきことは明確である。
 殲滅。ただそれだけが、我らの勝利条件だ。
キャロライン・ブラック
わたくしはダンピールで、ヴァンパイアではないのですけれど……
その庇護を受けていた身としては、怨嗟を受けるに値するのでしょうか

なんて……今更ですこと
姿が変わろうと、わたくしの為すことは変わりません
引き続き、鮮血の赤で攻め続けましょう

ただ、今度は後方からでなく、前に出て、正面からお相手しましょう
既に塗料は周囲に撒かれて、わたくしの力も強化されてますもの
ヴァンパイアに近しいわたくしが囮になるのも良いでしょう?

もちろん、他の方々との連携を崩さぬよう
前に出すぎることはいたしません
落ち着いて、粛々と対処して参りますわ


リグ・アシュリーズ
疫病楽団の早着替えは過去に目にしたことあるけど、
あなたたちそんな姿だったのね。
黒剣を構えなおし、地を蹴る。
騎士に私怨は似合わないでしょう。その恨み、後は引き受けたっ。

敵陣中央に飛び込み、大きく薙ぐように複数の敵を斬りつける。
注意を惹く分、生命力吸収で消耗対策も。
大勢に囲まれたら黒風鎧装で身体強化、
襲ってきたタイミングで一気にしゃがみ敵同士を衝突させ、
そのまま剣を突き上げ喉元へカウンター。

あなたの仇敵は私たちが倒す。
花畑を、この世界を踏み荒らすあいつらはどのみち敵。
私は恨みじゃ戦わないけど、ついでにこの剣に乗せてったげる。

あなたたちは十分勇ましく戦ったの!
これでもう、未練たらしいのなしだからね!


フィリア・セイアッド
「疫病楽団」…何度か戦ってきたけれど 一体何者なのかしら
病も災いも 広げるわけにはいかない
脳裏によぎるのは あの小さな少女の笑顔と可愛い花畑
どうかこの呪われた歌がこれ以上続きませんように
小さく祈りをこめて

「WIZ」を選択
真の姿を解放 二対の翼を広げた天使の姿に
菫のライアを使い 破魔と仲間への鼓舞の力をこめた歌を
花畑や村への道は防ぐ位置取り
「鈴蘭の嵐」で攻撃を
ここで生きているのは 精一杯生きている優しい人たちよ
ヴァンパイアはいないわ
あなた達が戦う必要はないの
届かないと知りつつ 声をかける
自分への攻撃は第六感やオーラ防御で対応
傷ついた仲間は「春女神への賛歌」で回復
誰も倒れることのないように




 ヴァンパイアが憎い。ただその思いだけでいまこの時に縋り付いている女騎士達を前に、キャロラインは瞳を細める。
(わたくしはダンピールで、ヴァンパイアではないのですけれど……)
 その庇護を受けていたことは事実である。彼女達にまだ理性があったなら、もしかしたら糾弾されていたかもしれない。
 ――それを理性的な言動と言うかどうかは、甚だ疑問ではあるが。
「なんて……今更ですこと」
 小さな呟きは、ただの独り言。共に立つリグにもフィリアにも、聞こえてはいないよう。
 対峙した疫病楽団という存在の不可思議さは、何度か目の当たりにしていた。しかしその正体へ思案を飛ばしても、今はまだ解明できるものではないのだろうとすぐさま現実に引き戻る。
「あなたたちそんな姿だったのね」
 剣を持つ者同士の対峙。黒剣を構え直したリグの佇まいは、傍目には女騎士達と同等の立場に見えようものだが、そんなリグに対しても、女騎士達は同じ言葉を繰り返す。
 もう、その目に映る者は全てがヴァンパイアであるかのように、見えているのだろう。
 それに気づいた所で、何も変わらない。地を蹴り、肉薄する。
「騎士に私怨は似合わないでしょう。その恨み、後は引き受けたっ」
 飛び込む先は敵陣中央。大きく剣を薙いで複数の敵へダメージを交えた牽制を放てば、女騎士達は重い剣戟にかすかによろめく素振りを見せながらも、己の武器をしっかりと構えて反撃してくる。
 取り囲んで、確実に。殺意に満ちた瞳をぐるりと見渡しながら、リグはその身に漆黒の旋風を纏い身を守る力を強める。
 そうして一人ひとりの太刀筋を見極め、一斉に切りかかってきたタイミングでしゃがみ込めば、振り抜かれた女騎士達の剣の多くは、仲間であるはずの者を斬りつけた。
「流石に無傷ってわけにも行かないか」
 全員が馬鹿正直に真横に剣を振るうわけもなく。錆びついた切っ先の幾つかはリグの体に傷をつける。だが、想定内だ。しゃがみこんだ反動で一気に跳ね上げた剣で敵を斬れば、生命力を補える。
 喉元を切り裂く一撃に、骸でありながら流れる血を持つ女騎士の体から黒く濁った血が吹き出す。
 と、それに上塗りするように、鮮やかな色が飛散した。
 ふわりと軽い所作で女騎士の正面に立ったキャロラインは、先程は後方から放っていた鮮血色の塗料を直接塗りつける。
「わたくしはこの色を美味しそうだと思う者ですわ。……あなた達の仇敵に、近いもの」
 囁くような声は、虚ろな表情の女騎士の耳に響いて、血の涙を流す瞳をキャロラインへと向けさせた。
 どうぞ狙ってご覧なさいと言うような微笑みは、女騎士達の瞳にはどう映ったことだろう。
 仇敵、憎きヴァンパイア。
 それが浮かべる笑みなんて――。
「ああぁあ――!」
 それを屠るために剣を取ったのだ。そう言わんばかりの強烈な闘志がオーラとなって女騎士を包む。刹那、地を蹴った女騎士は恐ろしい速度でキャロラインとの距離を詰め、衝撃波を伴う斬撃をその身に目掛けて放った。
「ッ……!」
 真正面からの被弾は避けたが、浅からぬ傷がキャロラインの表情を歪めさせる。
 しかし、耳に心地よく響く歌声が聞こえるや、すっと痛みが引いていく。
 二対の翼を広げ、天使としての真の姿を開放したフィリアは、その羽根を羽ばたかせて斬撃が放つ衝撃波の余波を受け止める。
 守ると決めた物を背に高らかに歌い上げるフィリアの歌声が、前線に立つ者の傷を癒やしていた。
 仲間達の傷が十分癒えたのを確かめると、フィリアはすぐさまライアが奏でる音色を変えて、彼らを鼓舞する歌を紡ぎ上げる。
 脳裏に過るのは、あの小さな少女の笑顔と可愛い花畑。背にしたそれらは十分心に焼き付いているのだから、今は、振り返らずに。
(病も災いも 広げるわけにはいかない。どうかこの呪われた歌がこれ以上続きませんように)
 小さな祈りを、強く響く声に換え歌い上げたフィリアは、一度その歌を止めて、骸の騎士達に語りかける。
「ここで生きているのは、精一杯生きている優しい人たちよ。ヴァンパイアはいないわ」
 この声は、きっと届いていないのだろう。
 仮に届いていたとしても、彼女達にとっては最早なんの意味もなさないただの音。
「あなた達が戦う必要はないの」
 だから、ここで眠って。
 それでもフィリアは紡ぐ。告げる。その言葉は、説得ではなく、宣言だ。
 その憎しみを浄化するつもりで戦う。これ以上、罪なき命を殺めてしまう前に、せめて救いのあることを。
 願いに答えるように、白い鈴蘭の花びらがフィリアの周囲を舞う。しかしてそれは鋭利な刃となり、女騎士達へと襲いかかる。
 目のくらむような白に視界を覆われ、その身を切り裂く鋭利な感覚に思わず足を引いた女騎士だが、騎士としての意地が、引いた足を踏み出させる。
 そうして、鈴蘭を蹴散らすようにして駆け、渾身の一撃を放つべく、錆びた剣を大きく振り上げ――。
 キィン――! 音を立てて、その手から剣が弾き飛ばされる。
 それを拾う間も、いっそそれに気付く間も与えずに、リグは剣を弾いた黒剣を再び薙いだ。
「あなたの仇敵は私たちが倒す」
 崩れ落ちる騎士へと、リグは手向けるような言葉をかけた。
 いま自分達が守っている花畑を、それ以上の世界を、ヴァンパイアは壁で踏み荒らす。ならばどのみち、リグ達猟兵の的であることには変わりない。
「私は恨みじゃ戦わないけど、ついでにこの剣に乗せてったげる」
 そう、ついでだ。討伐する理由が、一つ増えるだけ。
 自らの手で屠ることのできなかった無念は晴れることはないのだろうけど、想いを預かることは、きっと、無意味ではない。
「あなたたちは十分勇ましく戦ったの! これでもう、未練たらしいのなしだからね!」
 真っ直ぐに告げる、その声こそが勇ましいと感じながら、キャロラインは幾つも散った鮮血色の上を転々、跳ねるように移動する。
 囮などせずとも、前に出ればそれだけで群がってくる女騎士達を一人ひとり丁寧に相手取り、キャロラインはもう一度だけ思案する。
 例えば己が彼女達の怨嗟を受けるに値するのだとして。
 それは随分、今更なこと。
 猟兵として立つ以上、キャロラインの為すことは何も、何も、変わらない。
 せめて命の証に包まれて、どうぞ安らかな、眠りを。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

カーニンヒェン・ボーゲン
見えずとも形のある憎しみや怨磋の念も恐ろしいですが、
未だ形の分からぬ脅威の恐ろしさを痛感いたしますね。

UC:剣刃一閃にてお相手いたします。
騎士どのらの動きは『追跡』で把握し、『2回攻撃』で素早く対処を。
『破魔』の効果が、騎士どのらの苦痛を和らげるよう祈るばかりです。
何より、暴走状態の彼女らを引き留めることができるかどうか…。
私も老いた身ですからな。
できうる限り『残像・盾受け』で凌ぐことにいたしますが、
負けるわけにはいかんのです。
我らの背後にあるのは希望であり未来なのですから。
苦難を乗り越えていく意思のある者たち。
貴女方もかつてそうであったのでは?
身を蝕む呪いは、ここで断ち切らせていただきます。


彩花・涼
ヴァンパイアへの怒りは共感出来るがな……
だからと言って、怒りに任せて少女の花畑を壊すのは騎士だったものとして道理に反するのではないだろうか
狂ってしまったその騎士道、此処で眠ってもらおう

黒爪で牽制して動きを阻害しながら、黒華・改で【2回攻撃】【生命力吸収】で攻撃し体力を削るぞ
敵の攻撃は黒爪で【武器受け】し、空いた身体に【カウンター】で斬り捨てる
敵がUCを使った場合、花畑に行きそうなら間に入り【かばう】で阻害
ここで攻められると守りきれるかわからんからな、真の姿になりUC使用して確実に仕留める
此処は争いとは無縁の場所だ、消えるがいい




 仲間の数が減らされようとも、女騎士達は止まらない。
 最後の一人になろうとも、仇敵を討つべしとする志ゆえか。だとすれば立派ですらあると、涼は薄ら、思う。
「ヴァンパイアへの怒りは共感出来るがな……」
 この世界に暮らす者ならばなおのこと、その怒りは大きく深いのだろう。
 だからと言って、その怒りに任せて少女の花畑を壊すのだというのなら。それは騎士だったものとしての道理に反するのではないか。
「狂ってしまったその騎士道、此処で眠ってもらおう」
 猟兵達を討った所で、彼女達に救いはない。
 それどころか、その足でこの先の村を蹂躙し、ささやかな平穏を享受する村人達を殺し尽くすことになるのだろう。
 そんなことは、させられない。
 ええ、と同意に頷き、カーニンヒェンは襲いかかってくる騎士の刃を躱す。
 彼女達を突き動かしているのは、見えずとも形のある憎しみや怨嗟。
 それは勿論恐ろしい程の『情』ではあるが、今の彼女達は己のそれとは異なる、形の分からぬ『疫病楽団』という脅威に操られているようなもの。
 僅かな平穏をも、その狂った音楽で以て掻き消そうというのか。
 できうる限り、女騎士達の攻撃パターンを把握しながら、カーニンヒェンは素早い二度の剣閃を見舞う。
 刃による痛みか、それとも彼が刃に乗せた破魔の効果か、ぐぅ、と苦悶の声を上げる女騎士に、老紳士はかすかに瞳を細める。
(せめて騎士どのらの苦痛を和らげることができればと思いますが……)
 真に彼女らを救済するためには、屠るしか、無い。
「――ええ、分かって、おりますとも」
「体力を削りながら、確実に仕留める」
 上段から叩き込まれる重い一撃は、黒爪の銃身では受けきれない。いなし、肩口に浅い傷をもらう程度に止めた涼は、極限まで詰めた距離を更に踏み込み、騎士として鍛えられた体躯に深々と黒剣を突き立てた。
 吸収された生命力は、ほんの少し涼の身を癒やし、次へと向かう足がかりとなる。
 倒しきれずとも、涼の体が女騎士から離れると同時、カーニンヒェンの斬撃が傷に傾いだ女騎士の体を両断し、その膝を折らせる。
 相手は騎士で、かつては一小隊でも組んでいたかもしれない。その能力は死してなお衰えること無く発揮されているが、彼女達は整然とは異なり、連携という概念が欠落していた。
 数で負けていようとも、その隙を確実に突いていく連携を重ねることで、一体、また一体と着実に数を減らして行く猟兵達。
 じわじわと、攻撃を受けていることも、事実ではあったけれど。
 ふと、己の息が上がっている事を自覚して、カーニンヒェンは口元に自嘲を浮かべかけ――引き結ぶ。
「負けるわけにはいかんのです」
 引きかけた足を押し留め、逆に踏み込むことで、狂ったように動くものを攻撃し続けていた女騎士と真っ向から向き合う。
 流れるような動きで構え、繰り出された一閃を、超強化された女騎士は耐え、ようとして、叶わない。
 理性を失い、矜持を失い、それでも目の前の敵対者に対する殺意だけは最期の間際まで失わないまま崩れていく女騎士を一度見下ろし、カーニンヒェンは再び顔を上げた。
 負けるわけにはいかない。もう一度、胸中で繰り返す。
「我らの背後にあるのは希望であり未来なのですから」
 振り返らずとも、焼き付けた光景は容易に思い起こせる。小さな小さな花畑を大切に愛でる、幸福な少女の姿も。
「苦難を乗り越えていく意思のある者たち。……貴女方もかつてそうであったのでは?」
 問いかけに答えはない。女騎士達の紡ぎ出す言葉は、ヴァンパイアへの憎しみ、それだけ。
 しかし何かを語るその声は、届いているのだろうか。拒絶を示すように髪を振り乱して首を振り、女騎士は闘志をオーラとして纏う。
 それを伴った斬撃が繰り出されようとするのを見留め、涼は反射的に、その身を斬撃の軌跡に割り込ませていた。
 黒爪の銃身でわずかに逸した斬撃は、それが同時に放った衝撃波も逸らす。
 花畑のすぐ間際の草を散らし、花を揺らす程度の風圧に留めた代償に、涼は甚大なダメージを、受けたけれど。
 かろうじて、膝を折るほどではない。しかし、追撃があれば――。
 させまいと、カーニンヒェンが錆びた剣を握る腕ごと斬り落とす。なおも消えぬ闘志を削ぐように、繰り返し、剣を薙ぐ。
「身を蝕む呪いは、ここで断ち切らせていただきます」
 そんな彼と女騎士が対峙する位置から、ふらりと後退した涼は、一度だけ花畑を振り返り、その無事を確かめてから、再び女騎士達を見た。
「――安心しろ、しっかり黄泉の国に還してやる」
 唱えるような声に応じ、漆黒の蝶が群れとなり涼を覆う。
 群れの中心で真の姿を開放した涼は、血溜まりが残る前に足元を蹴って、女騎士へと肉薄した。
「此処は争いとは無縁の場所だ、消えるがいい」
 剣の軌跡付き従うように、黒蝶はひらりと舞う。鋭さを増した一閃が敵を屠る度、まるでその魂を掬い上げようとするかのように、一羽だけ残った黒蝶が屍を撫でていく。
 攻める兆しを与えぬまま、あるべき場所へと還し続け。
 やがて涼の姿が元に戻る頃には、調子外れの音楽も、怨嗟の声も、何も聞こえなくなっていた。


「――あれ?」
 音楽が、止んだ。
 それとも初めからそんなものは、なかっただろうか。
 小首を傾げた少女に、寝台に横たわる老婆がどうしたのと尋ねる。
 うぅん、なんでもないの。首を振って、少女は老婆の傍らに一輪挿しを置く。
 薄桃色の花が、風もないのにゆらりと揺れた。
 村人に気付かれること無く彼らの希望を守り抜いた猟兵達を労うように。
 一部始終を見ていた花畑の歓声に、共鳴したかのように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月26日


挿絵イラスト