宵闇の組織~新たな敵の発見を
#ヒーローズアース
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「ヒーローズアースで新しい事件が起こりそうな雰囲気なのよ」
エリス・シルフィード(金色の巫女・f10648)がグリモアベースの片隅で溜息を一つ。
「タクミ君っていう男の子のヒーローがいるみたいなの。その子は今、怪盗ジョーカーっていうヴィランと戦いを繰り広げているのよね」
怪盗ジョーカーは街の宝石店やらなんやらを襲撃し、宝石や珍しい物を奪っていく。
それに対抗している少年ヒーローがタクミと言うらしい。
「このタクミ君がね、怪盗ジョーカーを追っている最中に、どうやらオブリビオンの襲撃を受けて殺されてしまうみたいなのよ」
オブリビオンが怪盗ジョーカーに協力する理由は不明。
何らかの取引があったのだろうが、もしかしたら怪盗ジョーカーの様な存在を支援するオブリビオンの組織があるのかも知れない。
「まあ、いずれにせよタクミ君をオブリビオンに殺させるわけにはいかないわよね。だから今回、皆にはタクミ君を救うべくこのオブリビオンによるタクミ君への襲撃を妨害、このオブリビオン達を撃破して、怪盗ジョーカーに協力しているオブリビオンを炙りだして欲しいの」
タクミを救うべく最初にオブリビオンの撃破に協力したら、その後はタクミと交流する束の間の休息を得ることが出来る。
その束の間の休息の直後に、怪盗ジョーカーが自ら結託しているオブリビオンと現われるという流れの様だ。
「と言うわけで、皆には最初のオブリビオンの襲撃を退けて貰った後も、タクミくんと一緒に行動して貰って、そして黒幕である怪盗ジョーカーが連れてくるオブリビオンを叩きのめして欲しいのよ」
ポロン、と春風のライラを一弾きするエリス。
同時に奇妙な浮遊感が猟兵達を包み込む。
「皆、この事件の解決、頼んだわよ♪」
エリスの天使の様な笑みに背を押され、猟兵達は事件現場へとテレポートした。
●
「ハハハハハハッ! お前達如きにこの怪盗ジョーカーを捕らえることが出来るものか!」
テレポートした先で聞いたのは高らかな笑い声。
笑い声の方を見てみれば、そこにはトランプのジョーカーを思わせる仮面を被った青年が一人。
恐らく、彼が怪盗ジョーカーだろう。
「待て、ジョーカー! 逃がすものか!」
二度目の声変わりをするかどうかと言った感じの鋭い声音。
ジョーカーの後を周囲を飛び回りながら追うのは赤いマフラーを身につけた少年ヒーロー。
恐らく、彼がタクミだろう。
「フフフフフッ! いつもいつも目障りなんだよ、ヒーロー君! だが今日は引導を渡してあげよう!」
叫びと共に、バサリ、と黒いマントを翻すジョーカー。
彼がマントを翻すと共に、不意に息苦しくなりそうな、重い空気が周囲を覆う。
「……! これは……!」
危険を感じ取り剣を引き抜き身構えるタクミ。
そのタクミを取り囲む様にゾロゾロと姿を現したのは、神話にあるミノタウロスを思い起こさせる弓に矢を番えた無数のオブリビオンの群れ。
彼等は一斉に矢を解き放とうとしている。
このまま放置しておけば、タクミの命は風前の灯火だろう。
――このままオブリビオンを野放しにして、タクミを殺させるわけにはいかない。
その意志と共に、猟兵達は敢然とオブリビオンに立ち向かった。
長野聖夜
――そは、新たなる敵となるか否か。
いつも大変お世話になっております。
長野聖夜です。
と言うわけでヒーローズアース第二弾です。
オブリビオンに殺害されそうになっているタクミ君を救出してあげて下さい。
第1章の状況補足。
時間は夜。
宝石店が怪盗ジョーカーに襲われ、タクミ君がそれを追っているところにオブリビオンが襲撃してきています。
タクミ君も戦う術は持っているので介入さえすれば積極的に守る必要はありませんが、共闘するのであればその旨書いて頂けますと幸いです。
尚、タクミ君の武器はヒーローソードです。取得ユーベルコードはスーパー・ジャスティスになります。
執筆期間について:第1章 4月13日(土)午後~4月14日(日)の予定です。
この2日間が執筆期間に入る様、プレイングを提出して頂けますと幸いです。
第2章 4月16日(火)~4月18日(木)。
第3章 4月20日(土)。
もし訂正等がありましたらマスターページにて告知致しますので其方もご参照下さいますよう、お願い申し上げます。
――それでは、良き救出劇を。
第1章 集団戦
『暗黒面『雷矢のラビラント』』
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POW : 暗黒に堕ちる雷雨
レベル×5本の【闇と雷】属性の【心の闇を増幅させ暗黒面を解き放つ矢】を放つ。
SPD : 神と金を屠る者
自身の装備武器に【【神】と【機械】に対して非常に強い特攻】を搭載し、破壊力を増加する。
WIZ : 迷宮を冠する一面
自身からレベルm半径内の無機物を【触れると感電する雷の通路】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:うぶき
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
日月・獏ノ進
ヒーローの居る世界…。
まあ少年一人に頑張らせないでやれよとは思いますが。
さて、飛んでいるんですよねタクミ君は。
つまり敵さんは地上への注意は基本お留守な訳で。
出来る限り近づいてから【日月専用突撃銃】や【魁隠】で
集団の端っこに居るのを攻撃。
気づいて弓を構える前に行ける限り敵集団の中心点に目指し、猛進。
そして辺りをぐるりと囲まれて【暗黒に堕ちる雷雨】を
射かけられる寸前で【遠隔の計】で適当な奴の弓の向きを急に変えたり、
【見切り】や【武器受け】で対角線の敵への誤爆を狙う。
それで誤爆すれば暗黒面が解放されて内輪もめが始まるかもですから
それはそれで面白いかも。
「あ、お礼とかは良いですよ。本当に、本当ですよ」
ウィリアム・バークリー
防御ならぼくの出番ですね。
Active Ice Wallで、タクミくんとオブリビオンの間に氷の盾を無数浮かべ、射線を遮ります。
タクミくん、大丈夫ですかー? こちら猟兵、援軍です!
ぼくらも手伝いますよ。
「高速詠唱」で氷の「属性攻撃」「範囲攻撃」「全力魔法」「衝撃波」の大規模魔法を敵群に叩き付けます。
Active Ice Wallは猟兵側にも展開し、こちらの攻撃を妨げずに敵の矢から逃れる盾として活用します。
範囲攻撃で敵の数が減ってきたら、Icicle Edgeで「串刺し」攻撃に移ります。単体に数本の氷の槍を突き刺して、確実に絶命させていきます。
逃がさないよう「空中戦」で後を追いルーンスラッシュ!
白峰・慎矢
雫(f05281)と一緒に戦うよ
確かに、危険な状況だね。この世界には初めて来たけど、感傷に浸ってる場合じゃなさそうだ…!
雫が前に出るみたいだから、俺は援護に回ろうかな。【錬成カミヤドリ】で弓を複製して、半分は雫に向かう矢を撃ち落とすのに使おう。矢の数が多いみたいだから、致命傷になりそうなものを「見切り」して狙う感じかな。
同時に、もう半分の弓で敵の数を減らそう。俺は弓のヤドリガミだし、「戦闘知識」もあるから弓の撃ち合いならこっちに分があると思うよ。「念動力」で狙いをアシストしてみよう。さあ、弓の勝負と行こうじゃないか。君達の腕はどんなものか、見せてくれよ!
白峰・雫
慎矢(f05296)と一緒に戦うよ
ヒーローのピンチ、これは助けないとね
突っ込むのは怖いけど
慎矢が矢を撃ち落としてくれるだろうからボクも頑張らないとね
野生の勘と残像を使って矢を躱しながらダッシュで近づいて
2回攻撃となぎ払いを使って【白狐流薙刀術】で攻撃回数を重視して攻撃するよ
近づいた後も矢に当たらない為に常に敵との位置関係に気を付けて戦うよ
ガーネット・グレイローズ
本当に、この世界には色々なヒーローがいるな。さて、あの小さな英雄を助けにいくか!
タクミとの共闘を希望。
「我らは猟兵。この世界とは異なる場所から来た、世界の秩序を守る者」
「怪盗ジョーカー! 盗んだ品物を返すんだ! 」
妖刀を抜き、妖気を解き放つ【妖剣解放】
戦場を高速で駆け抜け、妖刀とクランケヴァッフェの二刀流で
敵を斬って回るぞ。〈2回攻撃〉に〈フェイント〉を交えて素早く斬りつけ、攻撃がヒットしたら傷口から〈呪詛〉を叩き込んで追加ダメージを与えよう。
タクミへの攻撃は【念動武闘法】を発動させ、タクミの周りに鋼糸のフィールドを張って敵を近づけさせないようにして防御。
宙夢・拓未
俺と同じ名前のヒーローだって?
これは、必ず救わないとな
『ゴッドスピードライド』発動
宇宙バイクに【騎乗】し、敵を蹴散らしながら突入
「タクミ! 助けに来たぜ!」
ヘルメットを脱ぎ、笑ってみせる
タクミと背中合わせになり、敵を見据える
「そっちの連中は頼んだぜ」
【高速詠唱】【全力魔法】でバイクを光に包む
【属性攻撃】【範囲攻撃】、広範囲の敵を次々に轢いていく
「暗黒を払う太陽の光! 受けてみろ!」
敵の攻撃は絶対に当たらないよう、【操縦】で回避
バイクにも命中しないよう注意する
何しろ機械特攻だ、俺やバイクに当たるとマズい
ただし、タクミに攻撃が向かったら
【勇気】を出し【かばう】
【激痛耐性】で耐える
連携・アドリブ歓迎
ラッセル・ベイ
怪盗と言う割には雑な仕事だな……
これは強盗と言うのだぞ
●戦闘(POW)
まずは電撃耐性ポーションを飲み、雷攻撃への抵抗を得る
闇攻撃に対しては必要ない、「魔鎧ダークネス」には通用せん
「地盾グラウンド」を構えて敵に近寄る
バッシュで体勢を崩してから「聖杖セイント」で叩き伏せる
私の戦術は堅実が基本、隙があれば神聖魔法で浄化してくれよう
属性的に言っても相性は最高に近い。負ける事など決して有り得ん
む、その矢……何か妙な力があるな?
だがそれは良くない。私のダークネスに射るのは危険だぞ
……射ってしまったか
ダークネスには意思がある。心もな
何故に闇を強化する真似をしたのだ?
最早、お主達を全て喰らうまで止まらんぞ
荒谷・つかさ
コソ泥の用心棒にしちゃ過激すぎるわね。
助太刀するわ、ヒーロー。
射手が多すぎる……これは、接近にも難儀するわね。
仕方ない、切り札を使わせてもらうか。
【秘法・鬼神転身】を発動。
手近なやつから順番に仕掛けるわ。
放たれる矢を見切って、残像の出る速度で躱しながら一気に接近。
「グラップル」「怪力」技能を活かして掴みかかって攻撃するわ。
狙いは、可能なら即死狙いで首の骨を折りに。
厳しそうなら手足を一、二本折ってから改めて首を狙う。
仕留め次第、即座に次の獲物を殺りにいくわね。
※鬼神化時の外見
角が追加で二本生え、肌が真紅に染まり、体躯が2m程度まで大きくなり筋骨隆々な姿になる
要約すると三本角の赤鬼(巫女服着用)
雨咲・ケイ
【文月探偵倶楽部】で参戦。
ボストンテリアの着ぐるみを着て、
風呂敷をマント代わりにします。
こういう時の台詞は「義によって助太刀いたす」
でしたでしょうか?
とにかくタクミさんを死なせるわけにはいきません。
私もお手伝いしましょう。
主に味方の援護と敵陣の攪乱を狙っていきましょう。
ブラックスターでサイキックエナジーを撃ち出して攻撃。
【スナイパー】による【目潰し】で敵を攪乱していきます。
苦戦している味方には【ジャッジメント・クルセイド】
による【2回攻撃】で援護していきましょう。
敵の数が多いようなので【地形の利用】で建物を活用して
囲まれないよう注意して戦います。
アドリブ歓迎です。
アスター・ファラデー
【文月探偵倶楽部】
ヒーローに容赦の無い、ヴィランもいたもの、ですね……
タクミさんを助けるため、皆で、頑張りましょう……
歓びの贈り物で、タクミさんや皆さんを回復させます
「怪我は、していないですか……?大丈夫、ですよ。私達がいます、ので……」
タクミさんと【手をつなぐ】ことで、安心してもらいます
彼に勇気を出してもらったら、一緒に戦います
メイスに【属性攻撃】を纏わせて攻撃を強化、ラビラントを殴り付けます
「私のメイスは、小さいですが……それでも、痛いです、よ」
アドリブ歓迎
木元・祭莉
【文月探偵倶楽部】で、とやー!
おいら、着ぐるみイエロー!(黄色のマフラーなびかせ)
とりあえず、母ちゃんのヒマワリ借りてきたー!
闇の中でも視認性?いいんだよ♪
『庇う』組が動いたら、高いトコから声掛けるね。(パフォーマンス)
待て待てーい。
多勢に無勢とは卑怯であるぞー?
我等着ぐるみ探偵団が助太刀いたすー♪
(変な口調で びしっと)
雷雨を華麗に回避しながら、兄ちゃん姉ちゃんのフォロー。
後方から、全力の応援歌♪
「狭い世間に 悪の栄えた 例し無し~♪」
「ヒーローは 幾度倒れても 起き上がる それがじゃすてぃす~♪」
「熱き心よ 着ぐるみよ~♪ 人の想いを力に 戦え~♪」
姫桜姉ちゃん、着ぐるみ、いいよ?(勧誘)
文月・統哉
【文月探偵倶楽部】の仲間と
クロネコ・レッドの着ぐるみ着用
『オーラ防御』で『盾受け』しタクミを『庇う』形で介入
手早く状況説明し共闘を申し込む
あいつ等はオブリビオン、未来を壊す存在だ
怪盗ジョーカーの悪に加担して君を殺そうとしている
俺達はそれを阻止する為に来たんだ
共闘させて欲しい
UC『着ぐるみ探偵の推理』で牽制
マスコットはお任せ
人は誰しも闇を抱えてる
でもいくら増幅させたって
それを上回る光が希望があれば塗り潰される事はない
例えばタクミは【意志の力】で強くなれるんだろう?
ならば正義を貫くその意志を俺達が支えるよ
共に戦う仲間として
未来を護るその為に
着ぐるみパンチに着ぐるみキック
タクミと仲間と連携して戦うぜ
彩瑠・姫桜
【文月探偵倶楽部】の皆と連携
タクミくんを助けて一緒に戦うわね
私は前衛
統哉さんと一緒に敵の攻撃からタクミくんを【かばう】わ
矢の攻撃は【武器受け】で対応
敵の動きを観察し【第六感】も駆使して【情報収集】
一体ずつ確実に倒しながら数を減らしたいわね
矢を放った瞬間など隙が生じるタイミング見て
【咎力封じ】で敵の動きを封じて【串刺し】にしていくわ
タクミくん、一人で立ち向かうのもいいけど
助けを借りるのも悪い事じゃないわよ?
安心して、悪いようにはしないから
背中を預けられる仲間が居るって
それだけで頑張れるものだしね(照
…き、着ぐるみもマフラーも素敵だとは思ってるのよ?
(戦闘の場では着る勇気なかっただけ、ともごもご)
アルファ・オメガ
【文月探偵倶楽部】の皆と一緒に
がう、多勢に無勢とは卑怯な!
義によって助太刀いたす!
とかどこかで聞いたセリフを言ってみよう
一回やってみたかったんだよね
(にゅっと猫の手でさむずあっぷ)
せっかくだから交代しながら攻撃とか連携取って戦況を一気に制圧したいね
タクミを助けるために
ボクはまず牽制仕掛けるよー
「いっくよー!れっど・ふぁいあー!」
ラビラントの群れにれっど・ふぁいあでどーん!
統哉たちがタクミと合流したら
ラビラントが作り出す雷の通路に対して感電対策だー!
「てーい!木ノ間欠泉!」
エレメンタル・ファンタジアで地面から木を噴水みたいに噴き出させてアース線の代わりにするよ
これで皆、突っ込めるはず!
パティ・チャン
【文月探偵倶楽部】
そこまでです!
(と、追加戦士よろしく、可能なら逆光となる方向から、参戦)
……ちょっと別の世界でのヒーロー物の作品、見過ぎたかしら?
タクミさんの盾……になろうにも、体躯がこれですから、それは無理なので
兎に角注意を我々の方向に向けさせられるよう振る舞います
ラビラントが作り出す雷の通路に対して感電対策を。
「凍ってしまいなさい!」
いつもより派手な、エフェクトを出しつつ、他に感電対策とっている仲間と連携します。
これで攻め込める道が出来るはずです!
●
――美しい満月の夜。
「ヒーローの居る世界……。まあ、少年一人に頑張らせないでやれよとは思うのですが」
「そうかも知れませんが……この辺りにヒーローがいるとしたら、タクミしかおりませんのでしたら、仕方ないのではありませんの?」
日月・獏ノ進が誰に共無くそう呟いているのに答えたのは、ラッセル・ベイの仮契約した毒精霊、ポイゼ。
そうだな、と自らの立派な髭を扱きながらラッセル本人はしかし……と嘆じる様に呟きゴクリ、とダブルセブンスポーションが一つ、雷撃耐性ポーションを一飲み。
「ジョーカーというヴィランのやり方は怪盗という割には雑な仕事だな……これは、強盗だ」
「気が大きくなっているのかも知れないわよ。コソ泥の用心棒にしちゃ過激すぎるもの」
ラッセルの呟きにそう答えたのは、荒谷・つかさ。
(「しかし、射手が多すぎるわね……」)
「しかし本当に、この世界には色々なヒーローがいるな」
「全くだぜ。しかも、俺と同じ名前のヒーローだものな」
ガーネット・グレイローズの言葉に答えたのは、愛機Crimson-Blasに跨がり、戦闘準備を整えた宙夢・拓未。
その声音には、同じ名であるが故であろう親近感が滲んでいた。
「それはそうと姫桜さん、今回は他の皆さんと来ているんですね」
「えっ、ええ。そうよ」
ウィリアム・バークリーの呼びかけに何だか照れた様に目を逸らしつつ答えたのは彩瑠・姫桜。
「いぇ~い! おいら、着ぐるみイエロー!」
姫桜の後ろからぱっ、と現われにっこりと太陽の様な笑顔を浮かべて、ピコピコと狼耳を動かす少年。
その名を、木元・祭莉。
天真爛漫なその笑顔でクルクル回る、ちょっとぶかぶかなヒマワリ着ぐるみが、正しく太陽の下で伸び伸び育ったそんな感じだ。
「俺達に会うのは初めてだよな。宜しく頼むぜ!」
そう答えて笑顔を浮かべたのは、キリッとした目と、赤いスカーフがポイントの着ぐるみを着用した少年、文月・統哉。
更にひょこひょこ、と言った様子で2匹(人?)のケット・シーと、ボストンテリアの着ぐるみを着用し、風呂敷をマント代わりにした少年が一人。
「がう、アルファ・オメガだ。宜しく頼むね」
「アスター・ファラデー、です。宜しく、お願いします……」
「雨咲・ケイです」
笠を被ったオメガと、黒ヴェールを被ったアスター、そして着ぐるみを纏ったケイ。
それは、着ぐるみとモフモフを愛する心は人一倍、な【文月探偵倶楽部】のメンバー達。
「宜しく頼むね、皆!」
「俺達も一緒に戦うからな。それにしても、タクミさんは危険な状況だね……!」
素早く挨拶を交わしてきたのは、白峰・雫と白峰・慎矢。
「さてあの小さな英雄を助けに行くぞ、皆!」
ガーネットの呼びかけにテレポートしてきた猟兵達が一斉に目線を躱し合い、今、正に空中のタクミを射落とさん事を欲するラビラントに突進した。
●
(「突っ込むのは怖いけど……!」)
空中を飛び回り戦闘態勢を取るタクミを助けるべく、ブルリ、と軽く身震いを一つした雫が愛刀・狐月を構えて深呼吸を一つし、決意を込めて静かに呟く。
「ヒーローのピンチ、これは助けないとね」
「後ろは任せてね、雫」
自らの背を押す様に優しく声を掛けてくれたのは、長年自らの住む神社に祀られていた弓のヤドリガミである慎矢。
「頼んだよ、慎矢」
「皆さん、足場作りと防御は任せて下さい。……Active Ice Wall!」
ウィリアムがルーンソード『スプラッシュ』の先端で蒼と桜色の纏った魔法陣を10程高速詠唱で作成。
そのうちの3/4から無数の氷塊打ち出してタクミのところへと向かうべく足場を作成。
更に残りの1/4の氷塊を砕いて氷の礫を作成、そのまま今、正に矢をタクミに向けて射ろうとしているラビラントに放つ。
「空中のタクミ君に気を取られている、ということはそれだけ地上への攻撃はお留守って訳ですよね」
数多の戦場をその武器の力を以て駆け抜けてきた獏ノ進が飄々と告げながら日月専用突撃銃の引金を引き、更に……。
「さあ、弓の勝負と行こうじゃないか。君達の腕はどんなものか、見せてくれよ!」
慎矢が21の弓を呼び出し、内10の弓を念動力で操り地面と水平に展開。
そうしながら左手を振り下ろすと、10の弓から一斉に矢がヒョウ、と鋭い音を立てて放たれた。
銃弾と、氷の礫と、無数の矢。
絡み合った3つの力により、あるラビラントはその体を撃ち抜かれ、あるラビラントは氷の礫を叩きつけられて消滅し、またある者は矢にその身を射抜かれ息絶える。
「えっ……?!」
「何……!?」
覚悟を決め、空中で剣を構えていたタクミと、彼の周囲にラビラント達の無数の群れを展開していた怪盗ジョーカーが地上で起きたそれに同時に声を上げる。
「我らは猟兵。この世界とは異なる場所から来た、世界の秩序を守る者!」
告げながら、天に妖刀・朱月を掲げるガーネット。
同時にその刀身がまるで、彼女の緋色の長髪と同じ色の輝きを放つ。
「ガーネット、行くぜ!」
拓未が叫び彼の愛機Crimson-Blastを飛行形態へと変形させた。
自らと愛機を同調させ、自身の移動速度と戦闘力を強化しながらの拓未の呼び掛けに軽く頷き、ヒラリ、とCrimson-Blastの背に立ち、妖刀・朱月と純白の太刀、試作クランケヴァッフェ:6960「躯丸」を構えるガーネット。
「タクミ! 助けに来たぜ!」
アクセルを全開まで踏み抜いた拓未の叫びと共に、ウィリアムの呼び出した氷塊の間を駆け抜け、一条の赤き光となった拓未とガーネットが宙を舞い、タクミを包囲していた一角を切り開いていく。
「怪盗ジョーカー! 盗んだ品物を返すんだ! 」
拓未に途中までの距離を縮めて貰ったガーネットが、トン、と軽くCrimson-Blastを蹴って宙を舞う。
緋色と純白の剣閃を閃かせて次々にラビラントを切り捨てながら、怪盗ジョーカーへと肉薄するガーネット。
「返す筈がないだろう! 全軍、突撃!」
ヒラリ、とマントを翻して指示を下す怪盗ジョーカー。
同時に、彼の後方に控えていたラビラント達が一斉に無数の漆黒の雷雨を思わせる矢を解き放つ。
心の闇を増幅させる闇と雷属性を持つそれらの矢が、タクミと拓未、ガーネットに迫ったその時……。
「がう、いっくよー! れっど・ふぁいあー!」
どこか幼い声が戦場に轟いた。
同時にすさまじい熱量を帯びた光線銃が、無数の雷雨を思わせる矢を撃ち落とす。
「がう、多勢に無勢とは卑怯な!」
肩に担いだ、ケットシー用大口径熱線銃を使った反動でコロコロと氷塊の上をちょっとだけ転がりながら叫ぶはアルファ。
それでも尚、全ての矢が撃ち落とせたわけではない。
それらの矢がタクミに殺到しようとした、その時。
「皆のヒーローを守るのは、俺達猟兵の役目ってね! クロネコ・レッド、見参!」
「慄け咎人、今宵はお前が串刺しよ!」
夜空の中を一際彩る赤いマフラーを風に靡かせながらクロネコ着ぐるみ姿の統哉が赤いオーラを展開、自らを盾としてタクミに向かう矢を弾き、更に姫桜が風車の如くschwarzとWeißを回転させて矢を撃ち落とす。
「待て待てーい! 多勢に無勢とは卑怯であるぞー?」
そのさらに上空から、ウィリアムの展開した氷塊の上からビシッ、とラビラント達に指を突きつける祭莉。
僅かに呆気にとられた表情になるタクミだが祭莉は気にせず堂々と名乗りを上げた。
「我等着ぐるみ探偵団が……」
「義によって助太刀いたす!」
「いたす~♪」
ビシッ、とラビラント達に指を突きつけたまま宣言する祭莉の様子にパチクリ、と瞬きをするタクミだったが、起き上がったアルファは気にせずにゅっ、と猫の手でさむずあっぷ。
「がう、一回やってみたかったんだよね」
「き、君達、此処は危険だ! だから……!」
「危険なのはそっちだぜ、タクミ!」
目前にいる者達が猟兵である事を悟り驚愕の表情を浮かべながら、やや甲高い声音で呼び掛けるタクミにそう呼びかけたのは、拓未。
「義によって助太刀いたす、でしたか? 私達はタクミさん、あなたを死なせないために此処に来たのです」
ケイが諭す様に告げながら、ブラックスターで強化した自らのサイキックエナジーを撃ち出し、目前のラビラント達の目を射抜いて目潰しを行いラビラント達の一部の動きを鈍らせている。
その間にアスターがタクミへと呼び掛けた。
優しく、諭す様に。
「怪我は、していないですか……? 大丈夫、ですよ。私たちがいます、ので……」
そのままそっとタクミの手を握るアスター。
手の張りから伝わってきたタクミの緊張が少しずつ解れていくのをアスターは感じた。
『猟、兵……猟兵……!』
目前に現れた宿敵を確認したラビラント達が怨嗟の声を上げながら、ぎろりと此方を睨みつけ、再び矢を一斉掃射。
だがその時、下方から慎矢の放った無数の矢がそれらの矢を撃ち落とした。
下方からの襲撃を受け、微かに動揺するラビラント達の群れに向かって、残像を生み出し自分が何処にいるのかを視認させぬ様にしながら、雫が駆ける。
『薙ぎ払わせて貰うね』
呟きながら、雫が狐月を何回も、何回も振るう。
一閃、二閃、三閃、四閃、五閃、六閃……etc。
斬撃の一撃の重さよりも手数を重視した雫の白閃が、宵闇の中で美しい軌跡と共に弧を描き、ラビラント達に手傷を負わせ、更に……。
「今だ!」
ガーネットが高速でラビラント達に肉薄、雫の与えた傷に妖刀・朱月を突き刺しその傷口を抉り、更に試作クランケヴァッフェ:6960「躯丸」を横薙ぎに振るってラビラント達を撃破する。
「……こいつらがもしかして噂の……!」
「ああ。オブリビオン。皆の未来を壊す存在だ」
タクミの言葉に静かに頷き彼の答えを肯定する統哉。
「あいつ等は怪盗ジョーカーの悪に加担して君を殺そうとしている」
「だから、俺達が来た!」
ヘルメットを脱ぎ、改めて笑みを浮かべながらそう答えたのは拓未。
【文月探偵倶楽部】と雫と慎矢、更に拓未とガーネット。
彼等はタクミと共に戦い、彼を守ることを望んだ者達、最前線に立ってなおも切り崩し切れていない包囲網を敷くラビラント達と相まみえることを望んだ者達だ。
「君達は……」
逃げて、と剣を構えなおしながら言の葉を紡ごうとするタクミ。
けれどその様子を見て取った姫桜が、接近してきていたラビラントに向けて高速ロープを解き放ち、その身を縛り上げた上で串刺しにしながら軽く頭を振った。
「タクミくん、一人で立ち向かうのもいいけど。助けを借りるのも悪いことじゃないわよ?」
――いつも自分がそうだった。
多くの仲間達に助けられながら、姫桜は今、此処にいる。
だから……。
「安心して、悪い様にはしないから」
「……わかったよ」
頷くタクミの肩をポン、と叩く拓未。
それからちらりと四面楚歌な状況を作り上げたラビラント達を見ながら、笑顔を浮かべた。
「そっちの連中は、頼んだぜ」
『神殺しの力の一端をお見せしよう』
自らの実態武装の一つ、スラッシュストリングを解き放ち、タクミの周りに不可視の結界を作り上げながらガーネットも又頷いた。
「行くよ、タクミ、皆」
「おっまかせあれ~♪」
ガーネットに祭莉が頷き返し、拓未達によって作り上げられた円陣形の中央で歌いだす。
――かくて、上空での戦いは、始まりを告げるのだった。
●
――一方その頃、地上では。
「Active Ice Wall1! ……伏兵とは厄介ですね」
氷塊による結界を呼び出し、ラビラント達が自らの装備に宿した【神】と【機械】に対して非常に強い特攻を搭載した矢を連射してくるのを防ぎながらウィリアムがぽつり、と呟く。
獏ノ進と慎矢と共にウィリアムの放った初手で彼らはある程度肉薄できた。
けれど、その瞬間此方を足止めするべく敵の増援が我先にとやってきたのだ。
拓未達を送り出すため、つかさもまた敢えてこの場に残った。
――それには、戦力的な意味もある。
「……接近には難儀するわね、これ」
ウィリアムのActive Ice Wallの影に隠れながらポツリ、と呟くつかさ。
(「切り札を使わせてもらうか」)
既にその決意は固まっていたが、つかさはまだそれを使用しない。
切り札は投入するタイミングを計って切るべきものだ。
今すぐに切っても効果は半減してしまうだろう。
「そう言うことでしたら、私達が力をお貸し致しますわよ、つかさ」
「うむ、そうだな」
ポイゼの言葉に同意する様にラッセルが一つ頷く。
雷撃耐性ポーションの力が全身に漲っているのを、ラッセルは確かに感じていた。
「それじゃあ、手を貸してもらうわ」
「そういう事でしたら、僕の方も芸を一つお見せしましょうか。ええと、ラッセルさんとそれから……」
「ポイゼですわ」
獏ノ進の呼び掛けに、ポイゼが答える。
「ポイゼさん、すみませんが最前線はお任せしますよ。もう少し至近に近づけば、僕も芸を一つお見せできますので」
「俺は、上空からの奇襲がないかどうか、見張りつつ雫達の援護をしているよ。これなら何があっても対応できるだろうし」
「僕は今の所、Active Ice Wallの制御で手一杯です。つかささん、ラッセルさん、獏ノ進さん、其方はお任せします」
そう告げたウィリアムの周囲には、十重二十重にわたる魔法陣達が浮かび上がっていた。
「覚悟は決まったみたいですね。それじゃあ、行きましょうか」
獏ノ進がさらりと告げるのに、ラッセル達が頷きを一つ。
――かくて、地上での激闘の幕が開かれる。
●
「ふむ。どうした、臆したか、お前達?」
――ズシン、ズシン。
悠然とした足取りで地盾グラウンドを構えたまま、確実に歩みを進めるラッセル。
その周囲にはウィリアムの氷塊が展開され、ラッセルとポイゼの後に続くつかさと獏ノ進を守っている。
ラビラント達が恐れをなしたか無数の矢を解き放つが、しかし、ラッセルはびくともしない。
先ほど飲んだ雷撃耐性ポーションが地盾グラウンドの地属性とも相まって雷属性そのものを遮断して。
そして……闇属性による心の闇を増幅させる力は……。
「私の自信作、魔鎧ダークネスには通用せぬぞ」
魔鎧ダークネスが司どるは、『暗黒』
同じ『闇』であるために、効果覿面どころか、ダークネスの力が増幅されていくだけだ。
ラビラント達との距離が近づいてきたところで神聖魔法による浄化を行うラッセル。
そしてある……。
「つかさ、獏ノ進。準備の方は宜しいですわね?」
「ええ。勿論よ」
「僕の方も大丈夫ですよ」
ポイゼの問いに、涼しい表情でつかさが。
そして飄々とした調子を崩さぬまま、獏ノ進が頷いた。
――と、同時に。
『我が身に宿る鬼神の因子よ……今こそ目覚めの時也!』
つかさが三本角の巫女服を着用した赤鬼姿になる。
それは角が追加で二本生え、肌を真紅に染め上げた、体躯2mほどの筋骨隆々な鬼の姿。
全ての射撃攻撃を見切って右に、左に走りその攻撃を避けながら、一陣の赤き風となってラビラント達の群れに一気に襲い掛かるつかさ。
瞬く間に距離を詰めたつかさが手近な相手の首を圧し折り、或いは絡め技でその首を絞めて確実に敵を屠る間に、獏ノ進が魁隠を振るって包囲網を切り崩し、更に日月専用突撃銃で次々に敵を撃ち抜いている。
そうして群れの中央に辿り着いた獏ノ進が少しだけ悪戯っぽく微笑んだ。
『念力じゃなくて、オーラです、念力とは違うんですよ』
誤魔化す様に、からかう様に。
自身に向けて射かけられる暗黒に堕ちる雷雨をあっさりと見切り、同士討ちを誘う獏ノ進。
申し合わせた様に互いに互いを射抜き合ったラビラント達が、相互を憎悪する心を呼び起こし勝手に殴り合い、そして互いに互いを貫き始めた。
オブリビオン同士の内輪揉め、という中々見られない光景を見て、愉快そうに笑う獏ノ進。
ちっ、ちっ、ちっ、と怒りと憎悪に飲まれて襲い掛かってきたラビラント達の猛牛の如き突進を躱しながら右人差し指を立て、振り子の様に揺らした。
「あ、お礼とかは良いですよ。本当に、本当ですよ」
「……まさか内輪揉めが起きるとはね」
獏ノ進の行動によりラビラント達が取った思わぬ行動を見たつかさが疲れた様に溜息を一つつきながら、次の獲物、次の獲物、と次々に敵を屠っていく。
いつもは驚かす側だが、表面にこそ出ないものの、驚かされる側になるのは少々つかさにとっては想定外だった。
――そして、残る残存勢力。
つかさと獏ノ進によって、内側から崩壊の始まっている地上のラビラント部隊。
けれどもその中でも尚、つかさ達を送り出した後、自らも地盾グラウンドで殴打を行い、更に聖杖セイントで残存勢力を叩き囮となっていたラッセルへと射かけてくる者達がいる。
そんな彼等の攻撃を受けながら、ふと、ラッセルが問いかけた。
「お主達の射る矢には何か妙な力がある様だな? だが、それを私のダークネスに射かけ続けたのは、迂闊だったな」
ラッセルがそう告げると同時に。
暗黒属性を纏ったダークネスが、まるでブラックスライムの様な姿に変貌し、彼らに食らいつく。
「ダークネスには意思がある。心……そう、闇の心がな」
故に……。
「最早、お主たちを全て喰らうまで止まらんぞ」
淡々と重厚な声音でラビラント達に突き付けられた現実に応じる様に、ブラックスライム状になった魔鎧ダークネスがラビラント達の中で暴れ回り、その身を喰らって滅ぼしていく。
――こうして、地上に伏兵として残っていたラビラント部隊は、一体残らず消え去るのだった。
●
(「これで大分楽になりますね」)
つかさ達により地上のラビラント部隊が全滅したのを確認しながら、ウィリアムがふぅ、と一つ息をつく。
それから地上に盾として召喚していた氷塊達に向けて、ルーンソード『スプラッシュ』の切っ先を向けて、詠唱を開始。
ウィリアムの詠唱に応じる様に氷塊達が、氷の槍の如き姿と化して、氷塊のままに突き立っていた大地から抜けていく。
「なるほど。ここで一気に畳みかけるんだね」
慎矢の呟きに、ウィリアムがはい、と頷きを一つ返した後、ルーンソード『スプラッシュ』の切っ先を天空に向けて突き付けた。
「……Go! Icicle Edge!」
「続くよ、俺も」
ウィリアムの命に応じた氷の槍達が上空の戦いに向けて射出され。
慎矢の召喚に応じた21の弓からも又、無数の矢が解き放たれて天へと上る。
――この時、これらの氷の矢と慎矢の放った白き矢の群れの中に、美しい羽音と共に、蒼白く光る光が上空に向かって飛び出していることに、ウィリアム達が気が付くことはなかった。
●
――上空。
「狭い世間に 悪の栄えた 例し無し~♪」
ウィリアムの用意してくれた氷塊の上で踊る様にステップを刻みながらピクピク、と狼耳を動かし溌溂と歌い続ける祭莉。
矢による驟雨では倒しきれないと判断したか、四方から迫ってくるラビラント達は、触れると感電する雷の通路へと無機物を作り替えようとする。
だが……。
「てーい! 木ノ間欠泉!」
アルファがウィリアムの用意した氷塊に木属性を加えて噴水みたいに噴出させ、アース線の代わりになるものを作り上げ、感電対策を行う。
更に……。
「そこまでです!」
逆光状態になる反対方向から不意に透き通る声が響き渡った。
その声の主は……。
「パティだな!」
ケイの指先から放たれた光線……ジャッジメント・クルセイドによる支援を受けながら、クロネコパンチでラビラントを叩きのめした統哉の呼び掛けに、パティ・チャンがレイピアを模る光剣フォースセイバーを突きつけながら、はい! と答え0た。
「遅くなりました! けれどももう大丈夫です! 私達が来たからには、もう負けないません! 凍ってしまいなさい!」
パティが叫ぶと同時にフォースセイバーを横薙ぎに振るう。
振るわれた剣戟から凍気が放たれ、空中にある水分を凍てつかせ、氷を生み出す。
「がう、今だね!」
そこにアルファがパティの作り出した氷に木属性を追加して空中に浮かぶ大地へと変貌させ、未だ作られようとしていた感電する通路を踏み躙っていた。
「今、ですね……」
「助かるぜ、アルファ、パティ!」
タクミの隣に立ち、メイスを振るっていたアスターとタクミに背を預けていた拓未が礼を述べながら、Crimson-Blastをフルスロットル。
同時に滑らかに詠唱を行い、自らのバイクを光で包み込んだ。
「暗黒を払う太陽の光! 受けてみろ!」
拓未の言葉と共に下方から氷の槍と白い刃が、次々にラビラント達を貫いていく。
その白い矢を見て一つ頷いたのは、雫。
(「ありがとう、慎矢!」)
真紅の光と化した拓未の突撃が先ほどから連続して雫が振るい続けた狐月の斬撃を受けたラビラント達を次々に轢き潰す。
更に、ウィリアムの放ったであろう氷の槍に貫かれたラビラント達を高速移動しながらガーネットが二刀を振るい、その首を斬り捨て屠っていく。
「タクミ!」
「ああ、分かっている!」
ガーネットの呼び掛けに応じたタクミが頷きかけ自らの剣を袈裟に、逆袈裟に振るい、ガーネットと場所を入れ替わりながら、次々に敵を屠った。
その隣ではアスターが懸命にメイスを振るいタクミの死角を埋めるべく活躍している。
姫桜と統哉。
拓未と雫。
アルファとパティ。
そして……アスターとタクミとガーネット。
四方から襲い掛かってくるラビラント達からタクミを守るべく集まった彼らの中央で、状況に応じてケイが援護を担い、祭莉が応援歌を歌い続ける。
【文月探偵倶楽部】を中心とした猟兵達は、八面六臂の活躍で、ラビラント達を圧倒していた。
「ヒーローは 幾度倒れても 起き上がる それがじゃすてぃす~♪」
着ぐるみイエロー、祭莉の歌が響き渡る。
それは、ヒーローであるタクミを守りたいという想いで一つになり、共感を得たガーネット達の傷を癒した。
(「こういう時、つくづく思うわ。仲間って本当に良いものよね、って」)
祭莉の溌溂とした歌声をその背に受け、自らの体に負った傷を癒されながら、猿轡をはめ込んだラビラントを一息に串刺しにして止めを刺す姫桜。
隣で戦う姫桜の勇ましい姿に統哉が一つ頷きながら、着ぐるみキックを放って一体に止めを刺した後、最奥部から暗黒に堕ちる雷雨を五月雨の様に撃ち出してくるラビラント達へと指を突きつけた。
『どんな難問だって突破口はきっとある!』
そう告げながら放たれる暗黒に堕ちる雷雨を受け止め、自らの中に潜む心の闇……それはもう一人の自分、自らの影と呼ぶべきもの……が膨らみそうになるのを感じたが……。
「まだ、です……」
後ろで統哉に起きようとしている変化を察したアスターが『エオロー』のルーンを背中越しに投げつけて、統哉の心に守護と安寧を齎す。
アスターのその隙を見逃さず、ラビラントが射かけようとするが、その時にはガーネットの張ったスラッシュストリングによる結界に守られ、自身も黄金のオーラを纏い、飛翔を続けるタクミが矢を剣で斬り捨てアスターを守り、ガーネットがすかさず妖刀・朱月が纏う赤き輝きを衝撃波として解き放ち、そのラビラントを切り裂いていた。
「熱き心よ 着ぐるみよ~♪ 人の想いを力に 戦え~♪」
祭莉の歌が周囲に響き渡る。
響き渡ったその歌が、タクミとガーネットの傷を癒し、それらの全てを受け入れた統哉が実証を再開する。
「人は誰しも闇を抱えてる」
――でも、いくら増幅させたって
「それを上回る光が、希望があれば塗り潰される事はないんだ」
……例えばタクミは、【意志の力】で強くなれる。
アスターのルーンは、今、正に自分の中の闇の心の一つ……絶望を打ち消した。
希望を、人の想いが力になることを歌った祭莉の歌は、統哉達に活力を与えてくれた。
――それは決して自分達【文月探偵倶楽部】に限った話ではなく。
地上では、姫桜に紹介されたウィリアムやラッセルや、つかさや、獏ノ進や。
雫の援護をするべく地上から矢を射ってくれた慎矢もまた、其々の『正義』を成すべく、心の闇と向き合い、そしてそれに対抗している。
――ならば。
「俺達が、共に戦う仲間として、未来を護るその為に戦う事。それによって……お前達の心の闇を増幅させ暗黒面を解き放つ矢を、俺達は克服できるんだ!」
そう告げ統哉が指を突きつけると同時に。
何処からともなく鹿撃ち帽がカッコいい、ふわもこ探偵着ぐるみが出現してラビラント達の暗黒に堕ちる雷雨の動きを止めた。
それはこの場に残っている全てのラビラント達に適用され、ラビラント達を何処か焦った表情にさせる。
「後180秒で片づけるぞ、皆!」
「分かったわ! 終わらせるわよ!」
戸惑い動きを止めたラビラント達の隙を見逃さず、二槍で纏めてラビラント達を串刺しにする姫桜。
地上からの無数の氷の槍と白い矢が戸惑い、混乱するラビラント達を次々と射抜いていく。
(「雫……今だよ!」)
今は地上から援護をしているけれども、その心は通っている慎矢の声を感じ取り、無数の斬撃を繰り出し、ラビラント達に重傷を負わせる雫。
「がう、もういっぱつ、いくよ~!」
アルファが再びれっど・ふぁいあを構えてその引金を引いた。
今度は転がることなく踏みとどまり、光線銃が容赦なくラビラント達を撃ち抜いたのを見て。
「一気に決めるぜ!」
拓未が叫びと共に、Crimson-Blastのスロットルを一気に踏み抜き、深紅の光となってラビラント達を轢き潰していく。
「タクミ!」
「一緒に、行きましょう、タクミさん」
「分かったよ、拓未さん、アスターさん!」
拓未に呼び掛けられたタクミが、ルーンを纏わせて威力を強化したメイスを存分に振るって敵を叩きのめすアスターと、フォースソードで敵を貫くパティと共に、戦場を駆ける。
タクミの背後には、緋色の線と純白の線を引いた二刀を打ち振るう寿命が削れる感触を存分に味わいながら、ラビラントを切り捨てるガーネットの姿が。
……そして、120秒後。
「これで、終わりにしましょう」
ケイが呟きながら、ウィリアムが召喚したIcicle Edgeに貫かれ、瀕死になっていた最後のラビラントに指先を向け、天からの光を撃ち出してその身を射抜き……この戦いに終止符を打ったのだった。
●
――地上に戻ってきて。
「ふぅ……何とか、終わったわね」
姫桜が思わず、といった様子で溜息を一つつく。
応援歌を歌い続けた祭莉がニコニコ笑顔でVサイン。
「おいら達の大勝利! だね♪」
ちょっとぶかぶかのヒマワリ着ぐるみでクルクル踊りながら笑顔の祭莉。
それから祭莉はくい、と愉快そうに首を傾げた。
「姫桜姉ちゃん、着ぐるみ、いいよ?」
祭莉の勧誘に姫桜が顔を赤らめ、何やら恥ずかしそうに目を逸らす。
「……き、着ぐるみもマフラーも、素敵だとは思っているのよ?」
(「戦闘の場では着る勇気無かっただけ」)
もごもごと呟いている姫桜に、ボストンテリア着ぐるみで風呂敷をマント代わりにしていたケイが微笑していた。
ウィリアムもまた相変わらずですね、と微笑を零し、やれやれ、という様につかさが軽く額に手を当てている。
「あなたが、ヒーローなのね」
「あっ……うん」
つかさの問いかけにタクミが軽く頷きかけた。
ヒーローマントとスーツがなければ、何処にでもいそうな少年に見えるが、共闘した拓未やガーネットは知っている。
彼が、ヒーローと呼ばれるだけの勇気と力を持っていることを。
「黒幕に逃げられたのは、ちょっと残念だったけどね」
「まあ、彼を救うのが目的だったわけですし。良いんじゃないでしょうか?」
ガーネットの溜息に応じたのは獏ノ進。
「何はともあれ助けられて良かったよ。ね、慎矢」
「そうだね、雫」
雫と慎矢がともにそう頷き合いそして互いの無事と健闘に顔を綻ばせていた。
「ですが、予知ではまだすべてが終わったわけではないのでしたわよね?」
「ああ。その通りだ、ポイゼ」
ポイゼの言葉にラッセルが答え、それに対して統哉も又頷いた。
「でも、今は取り敢えず休息が必要だな」
「がう、そうだね」
「今は、少し、休みましょう……」
アルファとアスターが呟いたのに頷き返した統哉が空を見上げる。
――何時の間にか、空に日が差し始めていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 日常
『ヒーローズアースの休日』
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POW : ジムでトレーニングだ
SPD : のんびり散策するのもいいかな?
WIZ : ショッピングに行こう☆
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
*業務連絡:次回リプレイ執筆開始予定日は、4月16日(火)~4月18日(木)です。この3日間がプレイング期間に入る様にプレイングを提出して頂けますと幸甚です。何卒、よろしくお願いいたします*
――最初の戦いが終わり、皆でひと眠りしたところで。
「よし、それじゃあ、今日も行こうかな」
タクミが一人ポツリと呟いている。
どうしたのか、と猟兵が問いかけると、タクミはこれから、と小さく呟いた。
「今日は学校が休みだからね。久しぶりに街に行こうと思っているんだ。皆はこれからどうするんだい?」
タクミは特に何もなければ、一人この故郷の街を散策し、見回りを行うつもりの様だ。
或いは誘えば、トレーニングやショッピングに付き合ってくれるかもしれない。
怪盗ジョーカーが出てこない限りは、それほど治安が乱れているわけではないそれなりに裕福なこの街で。
どんな風に過ごすのか。
それは、猟兵達次第である。
ラッセル・ベイ
暇ができたか……が、買う物は特になさそうだ
ポイゼもないだろう?……化粧用品を買いたい?
ああうん、財布やるから好きに買って来い
……さて
●行動(POW)
タクミ君のヒーローソードを強化するか
私の本業が鍛冶師だと言えば貸してくれるだろう
成程、これは優れた武器だ
これ自体は量産品だが、よく使い込まれている
ふふ、腕が鳴るな
【強化魔術Ⅰ】と武器改造で強化を施そう
オレイカルコス合金が少し余っていたな
これを混ぜればかなりの切れ味になる筈だ
では、早速ここの武具加工施設に向かおう
……やり過ぎたか
切れ味向上に加えて『破壊不可能』の効果を得た
これはもはや、魔剣の類……やり過ぎたな
引くなポイゼよ、鍛冶師の性だ
●
「……何? ……化粧用品を買いたいのか、ポイゼは?」
「そうですわ、ラッセル。折角、ヒーロー達の世界に来たんですもの。ヒーローの世界独自の化粧用品などもあると思いますわ。私、それを買いたいのですわ」
ラッセル・ペイの問いかけに、パタパタと手の扇子を仰ぎながらパチリとウインクを一つ。
「私も毒精霊ですが、同時に一人の女でもありますわ。自分に合うお化粧や、口紅などを探したいものですわよ」
淀みなく告げるポイゼにああ、うん、と生返事をするラッセル。
既にその手には昨日寝る前にタクミから預かったヒーローソードが握られている。
「財布やるから好きに買って来い」
ひょい、と放り投げる様にあっさりと財布をポイゼに渡すラッセル。
「成程、これは……」
既にタクミから預かったヒーローソードに夢中になっているラッセルにしょうがない方ですわね、と言った様に呆れ半分、誇らしさ半分の笑みを浮かべた後、軽く鼻歌を口遊ながら、ポイゼはラッセルの傍を後にしたのだった。
●
「さて……」
ポイゼが居なくなった後、軽く髭を扱き改めてタクミのヒーローソードを検分するラッセル。
(「優れた武器だな……」)
これ自体は量産品のバスタードソード。
だが、微かに赤くくすんでいるものの、刃の端々まで手入れは行き届いていた。
くすみ自体も錆ではなく、タクミのヒーローとしての力を何度も受け止めたが故の代償であろう。
「よく使い込まれているな」
長きにわたって使われ続けてきたのであろう事がドワーフの中でも優れた鍛冶師としての腕を持つラッセルにはよく分かった。
自然、口元に笑みが零れる。
「ふふ、腕が鳴るな」
(「さて、どんな強化を施そうか……。ふむ、やはり此処は……」)
どんな強化・改造を施せばより洗練されたタクミの特性に合わせた剣となるのか。
その為の工程を考えながら、ラッセルは宿の主人に武具加工施設の道を聞く。
教えられた道を歩くラッセルの足は、自然弾んでいるのだった。
●
――武具加工施設。
目的地に辿り着いたラッセルは周囲を見てフム、と頷きを一つ。
一見すれば、そこはただの鍛冶場だ。
だが、台に描かれた魔化を行うための魔法陣等を見る限り、なるほど、ユーベルコードの様な特殊な力を使いこなすための設備が揃っている。
「中々良い工房だな」
独りごちながら魔法陣の描かれた台の上にタクミのヒーローソードを置くラッセル。
そこに懐に残していたオレイカルコス合金……日本名だとオリハルコン……伝説とされている希少な金属……を落とし込みながら、口の中でモゴモゴと術を唱える。
――それは、ラッセルの独自魔術。
『始めるか』
瞬間、台の魔法陣が光り輝き、ラッセルの左手から放たれた光と共鳴。
タクミのヒーローソードにオレイカルコス合金が混ざり、ルーン文字が刻み込まれていく。
「よし」
準備を整えた所でヒーローソードを炉に入れて溶かし、そのまま右手で工房に備え付けられていた鎚を手に取り振るうラッセル。
――キーン!
澄み渡る様な澄んだ音と共に、炎によって融解したヒーローソードの刃とオレイカルコス合金が絡み合い、そして新たな刃としての形を成していく。
――熱し、叩き、冷やし、そして又熱し……。
そうしてヒーローソードの刃にオレイカルコス合金を馴染ませること、暫し。
漸く完成させた刃は……。
「……やり過ぎたか」
刃に無意識に刻み込んだルーン文字を見て、誰にとも無くラッセルは嘆じた。
曇り一つ無き白銀色の刃を得たヒーローソードに刻み込まれたルーン文字。
それは……切れ味向上と、『破壊不可能』の意味を持つ。
「これは最早、魔剣の類……だな」
そう独りごちた時。
「……ラッセル。何をしておりますの?」
ふっ、と背後で毒精霊の声。
振り向けば、そこにはポイゼの姿。
ラッセルに振り向かれるや否や、スススッ……と2,3歩後ろに後ずさる辺り、明らかにドン引きしている。
「……引くなポイゼよ、鍛冶師の性だ」
「……鍛冶師の性、ですか」
呆れた表情のままに天井を仰ぎ、力なき微笑を零すポイゼ。
「タクミが見たら、どの様な顔をするのでしょうかね……」
そして、それをフォローするのは自分なのだろうなと悟り、何処か達観した目をするポイゼに、ラッセルはフム、と軽く髭を扱くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ウィリアム・バークリー
ん、いい街ですね。食べ物も美味しそうだ。
ぼくは、カフェでティータイムと洒落込みますよ。
無理に隠れ家的なお店は探さず、大通りに出店してるような有名店で。
そういうお店なら、大当たりは少なくても、外れはまずありませんから。
ここにしましょう。オープンカフェで春風を浴びながらお茶をするとします。
ダージリンはありますか? それとホットサンドイッチ。
お金は、UDCアースのもので大丈夫かな?
オーダーしたものが届いたら、少しずつ口を付けながら魔法陣を一つずつ即興展開。
顕現時に引っかかる部分を、印章の配置や外周円の幅等から検討して、指先で弄って。
これからの季節、氷の精霊一本じゃ厳しいかなぁ?
魔法陣の組替も視野に。
●
「ん、いい街ですね。食べ物も美味しそうだ」
タクミが手配してくれた宿を後にしゆっくりと街を散策しながら、うん、と一つ頷いたウィリアム・バークリー。
ゆったりと周囲を歩く雑踏を感じながら周りを見る内に、一件のオープンカフェを見つける。
ちらりと時計を見やれば、午前11時位。
「ティータイムを始めるには、丁度良い頃合いですね」
ポツリと呟き、オープンカフェに入るウィリアム。
人の流れる様子や街並を眺められる場所を選び、日光を浴びつつメニューを開く。
――そよそよと暖かい春風が、そっと頬を撫でていった。
「ダージリンはありますか? それからホットサンドイッチ」
注文すると、それに一礼してその場を立ち去る店員。
程なくして運び込まれてきたダージリンは若葉の様に若々しい香りを発している。
「ファーストフラッシュ、ですね」
春風に運ばれてくるその香りは成程、体内を内側から満たしてくれる様なそんな感じがして。
一口それを口にすれば、瑞々しい風味が広がっていった。
ホットサンドイッチを一つ摘まめば、パリッとした焼き加減のパンと挟み込まれた具材が口にしたダージリンと絡み合い、スッキリとした旨味となって口内を満たす。
ホットサンドイッチとダージリンに舌鼓を打ちながら、ウィリアムは人差し指をクルクルとその場で回し、青と桜色の混ざり合った小さな魔法陣を一つ展開。
魔法陣に呼び出された氷の精霊達がざわめくが春故だろうか。
何となく氷の精霊達の元気が以前よりも少なく思えた。
「う~ん、これからの季節、氷の精霊一本じゃ厳しいかなぁ?」
考え込む様に呟きながら、ホットサンドイッチを一つつまみ、組み上げていく中で違和感を感じる部分を確認していく。
それは、魔法陣顕在時の印章の配置だったり。
魔法陣を描く時の外周円の幅等だったりした。
軽くダージリンに口を付け、口の中を優しく洗いながら、氷の精霊達の具合を確認する意味も含めて修正を続けていくウィリアム。
時には魔法陣の構造……展開時の指の動き等の組み替えを行い、試行錯誤を繰り返し実際に顕現し、その効果を及ぼす魔法陣と自分の中のイメージの間の修正を行っていく。
(「氷の精霊一本だけじゃなくて、それ以外も組み合わせるのだとしたら……やっぱり風の精霊との相性が良い感じだなぁ」)
或いはそれは、風の精霊を器用に操る知人等がいるせいかも知れないが。
そうやって少しずつ、少しずつウィリアムは自らの魔法陣の組み替えを行ったりしながら……ダージリンを飲み、ホットサンドイッチを味わって有意義な一時を過ごすのであった。
――その結果がどうなるのか? それは、今後のウィリアム次第である。
尚、貨幣はUDCアースの物でも通じたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
白峰・慎矢
雫(f05281)と一緒に行動しよう
俺は雫と一緒に買い物でもしようかな。
まずは俺に付き合ってもらっていいかい、雫?せっかくこの世界に来たからさ、料理に役立つものを探してみたいんだ。何か良い物は…ぴーらー?なるほど、これで人参の皮が楽に剝けるのか!ふらいぱん?ふむ、これで炒飯とか、炒め物が作れるのか!
…ここにあるもの、全部買えないかな?
買い物が終わったら、今度は雫に付き合うよ。食事か…良いね、俺も気になってたんだ。俺も雫に付いて行って、店を探すのを手伝おう。雫、辛い物も良いけど程々にね。
買い物しながら、一応街に異変がないか警戒しよう。後は、万が一の時のためにも、ある程度地理を把握しとこうかな。
白峰・雫
慎矢(f05296)と一緒だよ
慎矢と一緒に買い物に行くよ
この世界は初めてだから何かいいものがあるといいね
真剣な顔して説明読んでるし邪魔しないようにしないとね
さすがに全部は無理だから必要な物だけ買ってまた来ようよ
買い物が終わったら何か美味しいものがないか探そうかな
美味しそうなものがあるといいな。できれば辛い物が見つかるといいんだけど
気になるお店を見つけたら食べに行くよ
●
――10時頃。
「まずは俺に付き合ってもらっていいかい、雫?」
「勿論だよ、慎矢」
小首を傾げて問いかけた白峰・慎矢に微笑み、そう答えたのは白峰・雫。
「ありがとう、雫」
「そう言えば、慎矢は何を探しているの?」
頷き返す慎矢にさりげなく水を向ける雫に、折角この世界に来たからさ、と慎矢が軽く微笑を浮かべる。
「料理に役立つものを探してみたいんだ」
慎矢の言葉にふふ、と雫が微笑を零す。
「この世界は初めてだから、何かいいものがあるといいね」
「ああ。良い子だな、雫は」
そんな雫の微笑みに心和んだか、ポンポン、と微笑みを少し悪戯っぽい物に変えた慎矢が雫の頭を撫でると。
雫の微笑がふにゃりと崩れ、尻尾が左右にフワフワと揺れた。
そんな仲睦まじさを見せながら、街の量販店の調理器具コーナーを覗く慎矢と雫。
「何か良い物は……」
真剣に一点、一点調理器具を眺め、店に展示されている説明書を読み込む慎矢を柔らかい表情で見つめる雫。
(「真剣な顔して説明読んでるし、邪魔しないようにしないとね」)
一方で真剣な表情のままに、調理器具一つ、一つを見つめて唸る慎矢。
例えば……。
「ぴーらー? なるほど、これで人参の皮が楽に剝けるのか!」
……周囲の人が何を驚いているんだろう、と言う表情をするが、しかし慎矢は気にも留めず、その間にも慎矢の呟きは続く。
「ふらいぱん? ふむ、これで炒飯とか、炒め物が作れるのか!」
調理器具コーナーの商品を一通り眺め、その度に感嘆の声を上げていた慎矢だったが、程なくして考え込む様に腕を組み、やがてうん、と頷いた。
「……ここにあるもの、全部買えないかな?」
どうやら、この世界では一般的な調理器具達は、今後の慎矢の料理生活を著しく変化させる程大きな衝撃を与える物だったらしい。
雫がそんな慎矢の様子に柔らかい表情を見せたまま……ちょっとだけ困った笑みを浮かべて首を傾げた。
「さすがに全部は無理かな?」
「むぅ、そうか……それはちょっと残念だな……」
本当に残念そうに溜息をつく慎矢に何となく罪悪感を覚えつつ、雫がだったらさ、と言の葉を紡ぐ。
「今回は必要な物だけ買って、また来ようよ」
「うん……そうだね、そうしよう。買い物に付き合ってくれて有り難う、雫」
買う物を一通り決めてそれを購入しながら、慎矢が雫の頭を撫でる。
雫は、自らの尻尾を嬉しそうに左右に振るのであった。
●
――買い物が終わった時、時間は丁度お昼頃になっていた。
「雫は何かやりたいこととかあるかな?」
慎矢の問いかけに小首を傾げた後、軽く頷く雫。
「うん、そうだね。……何か美味しいものがないか探したいかな」
「食事か……良いね」
俺も気になってたんだと笑いながら返す慎矢に嬉しそうに笑う雫。
「それじゃあ、慎矢も一緒に来てくれる?」
「ああ、俺も雫に付いて行って、店を探すのを手伝うよ」
「うん、ありがとう慎矢」
そう言って微笑み足取りも軽やかに店を探す雫の後を追う慎矢。
周囲をキョロキョロと見回しながら、雫が呟く。
「……美味しそうなものがあるといいな。できれば辛い物が見つかるといいんだけど」
雫の言葉に、苦笑を零して宥める様に雫の頭を撫でる慎矢。
「辛い物も良いけど、程々にね」
「大丈夫だよ、少し位」
尻尾を振る雫に苦笑を零しながら、2人は一軒の美味しそうな店を見つけ、そこに入り昼食を取る。
――激辛料理を売りとするその店の料理に雫は舌鼓を打ち、慎矢は程々にね、と改めて釘を刺した。
それは……慎矢と雫の、一時の休息。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
日月・獏ノ進
そういえばこの世界は初めてでしたっけ…まだ行ってない世界もそれなりにありますがそれはそれ。折角来たんですし見て回りますか。
という訳で、この街のお金持ちの多そうなエリアや美術館や画廊を巡ってみますか。別に下見してそうなジョーカーを探している訳じゃないですよ。たまたまです。それなりに美術に興味ありますし。
まあ万が一、本人と出会ったり仮定を誰かと話すとしたら…こんなことする理由でも聞いて放置しますか。ここの人間でもないですし、何なら昔はそっち側でしたし。ただ、悪党からお金やらなにやらを奪った方がより痛快ですよとだけ。正義じゃない悪の転ばし方ってのは面白いんですよ、本当に。たまに人に感謝されますしね。
●
(「そういえば、この世界は初めてでしたっけ……」)
街の中でも立地条件が良く、休むには最適な、閑静な空気を纏ったその空間。
少し歩いたところには美術館などもあるその場所は、日月・獏ノ進が探していた、この街における富裕層の住む高級住宅街である。
(「まだ行ってない世界もそれなりにありますがそれはそれ。折角来たんですし見て回りますか」)
意外に静かな場所もあるのですねと感心しながら獏ノ進がその高級街を歩く。
富裕層だけあって、それに見合ったゆったりとした衣服や高級品をそつなく着こなす者もいれば、他の街の人々と然程変わらぬ衣装で自然とこの場に溶け込んでいる者達もいる。
広く静かな公園では家族連れが行き交い、子供達のはしゃぎ声が耳に届いた。
(「豊かな所に住む人々は、やはり皆さんのんびりしていますね」)
犯罪都市生まれの自分とは大違いだ、と微かに思いつつ、美術館を訪れる獏ノ進。
別に怪盗ジョーカーを探しているわけではないのだが、美術品には個人的に若干興味がある。
美術館の美術品達を眺めていた獏ノ進。
その美術館の奥の方で、厳重に箱に守られている宝石が目に留まった。
周囲には監視カメラが存在し、更に警備員がよく通りがかっている。
「此方の宝石の警備は、どうしてこれ程までに厳重なのですか?」
好奇心を刺激され、獏ノ進が近くを歩いていた警備員に話しかけた。
急に問いかけられた警備員は微かに警戒する様な表情を見せたが、獏ノ進が猟兵であると伝えると、微笑を浮かべて答えてくれた。
「此方は、『女神の涙』と呼ばれる逸品なのです。これを怪盗ジョーカーが狙っているのではないかという噂が最近広まっておりまして……」
「『女神の涙』、ですか」
何でもこれは、神々の時代に神によって創造された宝石で、とても強い魔力が秘められているとか何とか。
恐らく伝説か何かであろうが、一目見て、確かに宝石店を狙う様な怪盗であれば狙いそうな逸品であることは認められた。
「いざとなればヒーローが守ってくれるのですが……それでも警備態勢は常に十全としておく必要がありますので……」
「そうだったんですね。面白い話を聞かせて頂き、ありがとうございました」
愉快そうに微笑みながら獏ノ進がそう答えると警備員はとんでもない! と上擦った声をあげ獏ノ進に敬礼を一つ。
その敬礼に見送られ、獏ノ進がその場を後にして少し歩いたところで。
――ドン。
「おっと、申し訳ない」
白いシルクハットとタキシードに身を包んだ身なりの良い男とぶつかった。
年の頃は、20代後半であろうか。
柔和で人好きのしそうな笑みを称えてもおかしくないその男に、獏ノ進が一礼。
――微かに、既視感の様な物を覚えながら。
「いえ、お気になさらず。……そう言えばあなた、何処かで僕とお会いした事ありませんか?」
獏ノ進が問いかけると、男は怪訝そうに首を傾げ、記憶を探る様に天井を見上げていたが……。
「いいえ、恐らく初めてかと思います」
「そうですか。失礼しました」
告げて男の脇を通り抜ける獏ノ進。
そこで、ふっ、と何かに思い当たった様にそう言えば、と小さく呟いた。
「怪盗ジョーカーと言う方の事をご存知ですか?」
「はい? あの宝石店から宝石を強奪することで有名な、ですか?」
軽く首を傾げる男にはい、と獏ノ進が笑顔のままに頷き返す。
「いえね、もし、僕がその怪盗ジョーカーという方にお会いしたら、聞いてみたい事があるんですよ。どうして、宝石店を襲うみたいな強盗行為を行っているのかを、ですね……」
「はぁ……そうですか」
獏ノ進の言葉に呆けた様に首を傾げる男。
獏ノ進は相手がどう思っているかどうかも気にせず、笑顔のままに続けた。
「僕は猟兵であって、此処の人間ではないどころか、昔はそっち側でしたのでね。何となく気持ちは分かるんです」
そこまで告げてから、ただ……と微笑を零す獏ノ進。
「罪のない人からよりですね、悪党からお金やらなにやらを奪った方がより痛快でしてね。正義じゃない悪の転ばし方ってのは面白いんですよ、本当に。たまに人に感謝されますしね」
「面白いお話ですな」
周囲に迷惑にならない程度に笑い声を上げる男。
「怪盗ジョーカーはきっと、皆さんから見れば悪人なのでしょうなぁ。ですがきっと怪盗ジョーカーにとっては、自分の行いが正義なんじゃないでしょうかねぇ。……っと、詮無いことを申し上げました」
そう言ってシルクハットを外し一礼し、その場を立ち去る男。
獏ノ進は、そんな男に笑みを浮かべて会釈を返した後、それ以上何をするでもなく、その場を後にするのだった。
大成功
🔵🔵🔵
宙夢・拓未
SPD
散策しながらタクミと会話する
「平和な街って、いいものだよな」
「この平和を護っているのは、タクミ達ヒーローだ。それってすごいことだと思うぜ」
「俺達猟兵も、それを手伝う。だから、これからも頑張ってくれ」
にっと笑ってサムズアップ
「しかし、学校と戦いの両立って大変だよなぁ。俺も大学の単位が、なかなかのピンチだぜ」
ははは、と笑う
「ところで、タクミは、自分の名前の由来をご両親に聞いたことはあるか?」
「俺の『拓未』は、『未来を拓く、強い意志を持って育って欲しい』からだそうだ」
「タクミ、お前さんの名前にも、きっと素敵な願いがこめられてると思うぜ。これからも誇りを持って名乗るといい」
連携・アドリブ歓迎
ガーネット・グレイローズ
折角のオフだ、羽を伸ばすとしようか。
朝から早めに宿を出発し、この世界で入手した愛車BD.13でドライブに出かけよう。ハイウェイを走り抜けて市街を飛び出し、田園が広がる郊外へ。のどかな風景を横目にハンドルを切り、アクセルを踏んで運転を存分に楽しもう。ドライブの休憩がてら、ぶらりと立ち寄った町のカフェでコーヒーを一杯。世間話をする老人たちの視線にはお構い無しに、煙草をふかす。
TVやラジオで、昨日の事件のニュースはやってないかな?
夕刻には街に戻り、劇場でオペラを鑑賞した後に食事へ。街のパブで、ビールと料理を満喫。
※他猟兵、タクミとの絡みも歓迎。
●
――時は、明け方まで遡る。
「さて、折角のオフだ。羽を伸ばすとしようか」
朝日にあたり、軽く伸びをしながらガーネット・グレイローズが誰に共無く呟き、何気なく周囲を見回し、2つの人影を見つけた。
「タクミに、拓未!」
「あっ……ガーネットさんですか」
ガーネットの声に反応したのは、当たり障りのない私服に身を包み、眼鏡を掛けた一人の少年。
表情にはまだ幼さの残る彼が、昨晩怪盗ジョーカーと戦うべく活躍していたとは、果たして誰が思うであろうか。
「あれ……敬語?」
「はい。ガーネットさん、年上でしょうし。拓未さんも」
「……昨日まではタメ語だったのに敬語で話しかけられると少し戸惑うよな、ガーネット」
ガーネットに丁寧に説明するタクミの様子に、照れくさそうに頭を掻きながら呟いたのは、小脇にヘルメットを抱えた宙夢・拓未。
「うん、何か不思議な感じだ。でも、どうして急に?」
「あれはヒーローとしての僕ですから。普段はこういう感じなんですよ」
ガーネットの問いかけにそう答えるタクミ。
その様子に何となく察する物があり、それ以上のことは問わず、ガーネットがそう言えば、と話題を変える。
「タクミ達はこれから何処かに行くのか?」
「ああ、俺達は街を散策に行くつもりだったんだが」
ヘルメットを抱えた拓未の言葉に、ガーネットが昨晩の戦いで一時的に同乗させて貰った拓未の愛機Crimson-Blastの事を思い出す。
「もしかしてあれに乗って?」
「はい。偶にはこういうのに乗って街を回ってみないかと拓未さんに誘われまして」
タクミの返事にふ~ん、と答えるガーネット。
「ガーネットはこれから何処に行くつもりだったんだ?」
「私? この世界で手に入れたBD.13でドライブに出かけようかと思って」
ガーネットがそう言って指差した方角にあったのは、1台のガーネットの髪の色と同じ赤い2ドアクーペ。
流線型の美しいボディを持った優美なそれは、成程、手に入れたのならば試運転の一つもしたくなると思わせるだけの魅力に満ち溢れていた。
「そうだ。拓未達も良かったら一緒にドライブに行かないか? 見回りも大事だが、休むことも仕事だろ」
「ドライブか。良さそうだな。タクミ、お前はどうする?」
拓未の問いかけに、微かに悩む表情を見せるタクミだったが、程なくしてそうですね、と一つ首を縦に振った。
「折角ですし、拓未さんとガーネットさんと一緒にドライブに行きましょうか。あっ、ただ、ちょっと用事があるので、午後には戻ってきたいのですが」
「勿論、構わないよ。それじゃあ、一緒に行こうか」
ガーネットの言葉に、拓未とタクミは同時に首肯するのだった。
●
2台の真紅の車体が道路を突っ切っている。
早めに出てきたお陰であろう、ハイウェイは空いていた。
「風が気持ちいいなぁ、タクミ!」
「はい、気持ちいいです、拓未さん!」
拓未のCrimson-Blastの後部座席に乗り、風となったタクミがはしゃいでいる。
愛車BD.13の天井を開き、同じく風を肌に感じていたガーネットが気持ちよさそうな笑顔を浮かべていた。
「やっぱり、ドライブは良いよね! それでこっちで合っているのか、タクミ!」
「はい! ガーネットさんが仰っている様な場所でしたら、この道を真っ直ぐ1時間位で着きますよ!」
風でガーネットの緋色の長髪が靡くのに何となく照れくささを感じたか、微かに頬を上気させたタクミの答えにガーネットが頷き、アクセルを踏み込む。
拓未もまた同様にアクセルを踏み込み、Crimson-Blastを加速させながら後部座席のタクミに問いかけた。
「平和な街って、いいものだよな」
「はい! とても良いものですね」
拓未の言葉に微笑み頷くタクミ。
彼の言葉には、誇らしさが滲んでいる。
それに満足して微笑みながら、拓未が話を続けた。
「この平和を護っているのは、タクミ達ヒーローだ。それって凄い事だと思うぜ」
しみじみとした口調で呟く拓未に微笑みながら、いえ、と軽く頷き返すタクミ。
「僕の力だけではありませんよ。この街にいる一人、一人が強いんです。だからこそ……ヒーローとしての『タクミ』が生まれたんです」
「ハハハ、この街にいる一人、一人の力が、か。そうかも知れないな」
訥々と語られたタクミの言葉に、拓未が少しだけおや、と思いつつ頷き返した。
そんな拓未達のやり取りを聞きながら、ガーネットは今朝、朝食を摂りながら軽く目を通した新聞を思い出す。
この街でのみ発行されているその新聞には、やはりタクミと怪盗ジョーカーの昨日の戦いが堂々と一面に取り上げられていた。
けれども、あのオブリビオン達については触れられていない。
あくまでもタクミと怪盗ジョーカーの戦いのみが報道されている。
更にタクミは怪盗ジョーカーの悪事を成敗する謎の正義のヒーローとしてのみ描かれており、彼こそ神の使いだと言う旨の主張もあった。
彼こそが、自分達が望んだ結果、颯爽と現われた正義のヒーローなのだと。
「はい。だからこそ、僕は僕が一人じゃないと実感できます。一人じゃないからこそ……守りたい者があるから戦えるんだ、と」
呟くタクミの言葉には、人々の希望を背負った少年の気負いが感じられて。
それを少しでも和らげられれば、と拓未は一瞬後部座席を振り返り、にっ、とタクミに笑いかけた。
「俺達猟兵も、それを手伝う。だから、これからも頑張ってくれ」
一瞬だけ、Crimson-Blastのハンドルから手を浮かし、親指を立てる拓未にタクミは風を感じながら、はい! と良く通る声で答え返すのであった。
●
「う~ん、のどかで良い光景だねぇ」
10時頃。
タクミの誘導に従い、のどかな田園風景が広がるその場所に辿り着いたガーネット達は、それを横目に気軽なドライブを堪能した後、カフェに機体を駐車し一息入れていた。
「タバコ……良いか?」
3人で一つの喫煙席を確保し、一応断りを入れるガーネット。
「僕は構いませんよ」
「俺も大丈夫だぜ」
「それじゃあ、吸わせて貰うか」
タクミと拓未の言葉に頷き胸元からタバコを取り出し、ライターで火を点ける。
ふぅ、と一息入れるガーネットに微笑しながら、頼んだブラックコーヒーを一口飲む拓未。
旨い苦みが口の中に広がるのを感じながら、しかしなぁ、としみじみとした口調で続ける。
「学校と戦いの両立って大変だよなぁ。俺も大学の単位が、なかなかのピンチだぜ」
「あれ? 拓未さんは大学に通っていらっしゃるんですか?」
タクミの問いにまぁな、と苦笑を零す拓未。
「そう言うタクミだって学生だろ? 今何年生だ?」
「僕は、高校1年生ですね」
少しだけ甲高さを感じさせる声音で呟くタクミに成程、二度目の声変わりなのか、と拓未は思いつつ、あることに気がつきそれを口に出していた。
「って事は、出席日数が足りないとやばいんじゃないのか?」
「ははっ、まあ、その辺りは何とか上手くやっていますが……よく授業中に居眠りしてしまうことはありますね」
「で、先生に怒られる、と」
その先に続くオチを言い当てる拓未に苦笑を零して頷き返すタクミ。
そんな彼の様子を見ながら、ふぅ、とタバコを一つ吹かし、学生と言うのもそれなりに大変なものなのだな、とガーネットはふと思う。
「私にはそう言う経験が無いから、そう言う話はよく分からないが。まあ、お前達がその学校の事で苦労しているというのは分かった。だったら、無理に行かなくても良いのではないか?」
「いやいや、そういう訳にもいかないんだよ、ガーネット。まあ……風習ってやつだな」
そう言って、ははは、と何処か乾いた笑い声を上げる拓未にそうか、と軽く答えてタバコを吹かすガーネット。
タクミも拓未に釣られる様にして乾いた笑い声を上げ、それから手元のコーヒーを啜る。
因みにタクミのコーヒーには、大量の砂糖とミルクが放り込まれていた。
そうして暫しの時を過ごしている間に。
ところで、と拓未がタクミに問いかける。
「タクミは、自分の名前の由来をご両親に聞いたことはあるか?」
「僕の名前の由来、ですか……?」
拓未の問いかけに怪訝そうに首を傾げるタクミにああ、そうだ、と頷き返す拓未。
「俺の『拓未』は、『未来を拓く、強い意志を持って育って欲しい』からだそうだ」
――それは、拓未にとって大切な記憶。
オブリビオンによって生体改造を施され、生物学的に死亡するよりも前、普通の一人の人間として過ごしていた頃に両親と話をして聞いた、大切な思い出の一つ。
「僕の名前は……漢字ですとこう書きます。意味については、まだ聞いたことはありませんが」
そう言ってタクミが近くの紙を取り、その上に胸元から取り出したペンですらすらと漢字を書く。
そこには、『拓海』と書かれていた。
タクミの名に自分と同じ『拓』の文字が使われているのを見て穏やかに笑う拓未。
「タクミ」
「はい」
微かに改まった調子で問いかける拓未に、真剣な表情で頷き返すタクミ。
「お前さんの名前にも、きっと素敵な願いがこめられてると思うぜ。これからは誇りを持って名乗るといい」
「……はい。ありがとうございます、拓未さん」
励ます様に、元気づける様に、ポン、と軽くタクミの背を叩く拓未に微笑みタクミが頷き返すその様子を、ガーネットがふぅ、とタバコをふかし、灰を灰皿に落としながら見つめていた。
(「いつか、私もこんな風に」)
あの年寄り連中に認められるだけでなく、彼等を見返す事が出来るのだろうか。
(「いや……必ずやって見せる」)
誓いを新たにしながらガーネットはタバコを吹かし、灰を灰皿に又一つ落とすのだった。
●
――夕暮れ時。
あのカフェで一服をした後拓未達と分かれ、一頻り愛機BD.13でドライブを満喫したガーネットが戻ってくる。
それから開かれていたオペラを堪能し、丁度20時……宵の口頃になった所で、一件のパブへと足を運んだ。
通常ならば休日の今日だからこそ、行われている仕事と言うのもあり、それらの仕事上がりの一杯を楽しむ大人達が、ワイワイと愉快そうに酒を楽しむ姿を横目にしながら、カウンター席に着くガーネット。
緋色の長髪を垂らし、ブラウスとゴシックスーツの女性が一人でパブに入ってきたとなれば、それなりに興味を引かれる者もいるだろう。
或いは、仕事終わりの一杯なのかな、等と思う者もいるかも知れない。
「ご注文は?」
「ビール」
店員の呼びかけにビールと、それからおつまみを注文。
程なくしてキンキンに冷えたジョッキになみなみと注がれたビールとつまみが出される。
溢れんばかりにきめ細かな泡がガーネットを刺激し早速グイ、とビールを呷った。
よく冷えたビールが喉から胃に向かって駆け抜けていくその感触が心地よくて、思わずプハァ、と息を一つ。
「生き返る~っ!」
注文したつまみをお口直しに含み、再びグビリ、とビールを呷るガーネット。
至福の一時とは、正にこう言う時の事を言うのだろう。
――と、そんな時。
「良い飲みっぷりでいらっしゃいますなぁ」
偶々、であろう隣に腰掛けていた白いタキシードとシルクハット姿の男がガーネットを見ながら愉快そうに微笑んでいる。
白いタキシードとシルクハット姿の青年と、ブラウスとゴシックスーツの緋色の髪の美女が隣席。
BARでワイン等を嗜んでいれば、ドラマ等でもよく見られる絵になる光景だろうが、パブでは少々奇妙な取り合わせの2人だった。
「アンタも食事?」
「ええ、仕事の前に腹拵えでも、と思いましてね」
そう告げて、ガーネットと同じくビールとおつまみを注文する男。
「もし宜しければ、もう一杯如何ですか? 折角ですので私が奢らせて頂きますよ」
「アンタが?」
「はい。あのオペラを見て頂いた御礼です」
怪訝そうなガーネットに優しく微笑み、頷く男。
よくよく見てみれば、成程先程のオペラの主演男優に面影がよく似ている。
「もしかしてさっきのオペラの主役の?」
「ええ。と言ってもあの子はまだ夜の部が残っているので、まだ劇場にいますがね」
男の呟きに、フム、と一つ頷くガーネット。
「それじゃあ、彼は……」
「はい、私の双子の弟です。兄としては、やはり興味深そうに弟のオペラを見ていた方に御礼の一つもしたくなるものですよ」
そう告げた男の言葉にそれじゃあ、とビールが入り少し気が大きくなっていたガーネットが甘えてビールをもう一杯注文。
2人分のビールのジョッキが来たところで、乾杯、とどちらから共無くジョッキをぶつける。
それから2人でビールを飲み、一通りの食事を堪能している内に時間は過ぎ……気がつけば、21時を回っていた。
「おっと、長居をしてしまいましたね、それではそろそろ失礼致します」
「そう言えば、アンタはこれから仕事だって言っていたわね」
ガーネットの問いかけに紳士的な笑みを浮かべた男がはいと頷き席を立つ。
そして……パブを出ようとしたところで、そう言えば、と思い出した様に呟いた。
「今晩、24時。ある美術館で面白いものが見られるかも知れませんよ」
「面白いもの?」
怪訝そうに尋ねるガーネットに、ええ、と穏やかに頷く男。
――そこに、微かに宿る悪意に気がつき思わずガーネットは目を細めた。
「今宵は中々良い酒を楽しませて頂きました。それでは、ご機嫌よう」
そう告げて紳士的に一礼する男の背を、ガーネットは何も言わずに見送った。
(「24時、か……」)
そう、思いながら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雨咲・ケイ
【文月探偵倶楽部】で参加。
この世界に来るのは初めてですし、
見学がてらショッピングに行きましょう。
せっかくですからウチの義妹へのお土産を買います。
義妹ですから血の繋がりはないのですが、
どういうわけかセンスが私にそっくりで……、
なんて話はどうでもいいですね。
タクミさんのおススメの土産物を買いましょう。
カフェで人心地ついたら、怪盗ジョーカーに関する情報や
タクミさんとの因縁について聞いてみます。
既にお分かりかと思いますが、私達は協力するつもりです。
その為に来たのですから。
アドリブ歓迎です。
荒谷・つかさ
タクミくんとスマホの連絡先を交換してから、私も街を見て回るわ。
「一応、念のためにね。昨日みたいな奴らが出てきたら迷わず連絡なさい。すぐ駆け付けるから」
特に行く当ても無いけれど、折角だし色々見てみようかしら。
ぱっと見はUDCアースに似ているけれど……なんとなく、違うわね。
雰囲気がUDCアースはくすんだ感じがするけれど、こちらは鮮やかというか。
そんなこんなで、ふらりとブティックに立ち寄ってみたり。
色々物色してみるけど、知識不足もあって店員さんに勧められるがまま着せ替え人形状態になり。
ついつい、纏めて買ってしまうのでした。
「……中々、商売上手な店員さんだったわ」
※アレンジアドリブ他者絡み大歓迎
アスター・ファラデー
【文月探偵倶楽部】の仲間と
【WIZ】
タクミさんが、無事に助かって、よかったです……
怪盗ジョーカー、取り逃がしたのは、残念でしたが、また動き出す時も、あるでしょう。
今は平和な日常を、過ごす時間です……
仲間と一緒にショッピング
「ヒーローズアース、見慣れないものが、沢山あって、楽しいです……」
新しい世界の、初めて見る品物に興味津々
高い所の棚にあるものは、統哉さんやタクミさんに抱え上げてもらう
「占いグッズ、置いてある店、どこかにない、でしょうか……?」
ヒーロー世界の占い、気になります……占い師として……
アドリブ歓迎
パティ・チャン
【WIZ】
【文月探偵倶楽部】で参加
学校?ということは、タクミさんは、私よりも若い?
と、すると。普段のヒーロー活動以外の、タクミさんを見てみたいところ
ショッピング?それなら、本屋さんへいけると有難いのですが
(無理強いは出来ませんが)
この世界での英雄譚を知りたいですし
(……また、積ん読になるかもですが、今後この世界での事件とか背景とかを知れれば、よりよい解決も出来るかも?)
案内をお願いできるかしら?
(誘惑、世界知識、情報収集をフル稼働)
木元・祭莉
【文月探偵倶楽部】でー!
せっかくキレイな街に来たし。
アンちゃん(妹)とコダちゃん(幼馴染)のおみやげ買ったげたい♪
ヒーローのいる世界だったら、お揃いのスカーフとか売ってないかな?
ね、タクミ兄ちゃん、いいお店知らない? あ、兄ちゃんでよかった?
みんなが買おうとしてるものにも興味津々!
女の子の好きそうなものありそう?
カワイイものあったら教えてねー♪
カフェにも付いていく!
おいらの母ちゃん、パティシエなんだー♪(着ぐるみ屋台だけど)
おススメのお菓子あったら試すねー。
飲み物は、ホットミルク!
タクミ兄ちゃんは、どうしてヒーローになろうと思ったの?
ジョーカーって、どんな奴?
クロマクぽい奴、別にいそうかなあ?
彩瑠・姫桜
【文月探偵倶楽部】の皆とタクミくんも誘ってショッピングへ
家族のお土産も欲しいし
親友の誕生日も近いんでプレゼントも見ておきたいのよね
雑貨や小物もいいしアクセサリも捨てがたいのだけど
タクミくんのオススメのお店があれば教えてもらえると嬉しいわ
カフェに行くなら私も行きたいわ
皆でお茶しておしゃべりってまさに学生って感じで
久々ですごく楽しいわ
カフェではコーヒーとオススメのお菓子を
このコーヒーはパパが好きそうね…別にパパを喜ばせたいわけじゃないけど
関連で販売してるものがあるならお土産にしてもいいかもね
祭莉さんのお母さん、パティシエさんなのね
お菓子食べてみたいわ
可能ならタクミくんのご家族の話も聞いてみたいわね
文月・統哉
【文月探偵倶楽部】
タクミを誘って買物へ
皆は何を買うんだろ
黒猫のぬいぐるみとかあるかな?
タクミに案内を頼めるなら
お礼にお茶とケーキをご馳走したい
ゆっくり話が出来たらいいなって(笑顔
タクミは何年生かな
ヒーローになってどれぐらいだろ
やっぱりこの町が好きなんだろうな
何となくそう思う
俺もね、故郷の町が大好きだから
ジョーカーとはどんな因縁があるんだろう
前にも殺されかけた事はあったのかな
それともオブリビオンの影響?
改心の糸口があれば探したい
タクミからも質問あれば答えるよ
猟兵として世界を巡る話とか
俺も学生だし魔法学校の話とか
互いを知って友達になれたら嬉しい
勿論、敵襲に備えた警戒も忘れずにな
※絡みアドリブ大歓迎
●
――お昼過ぎ。
「すみません、遅くなりました」
「他の猟兵達に誘われていたんだろ? 大丈夫だぜ」
ペコリ、と申し訳なさそうに一礼するタクミに笑顔でそう答えるのはクロネコ着ぐるみの文月・統哉。
「つかささん、ありがとう。一緒に来てくれて」
「別に良いわよ。特に何か用事があるわけでも無かったから。でも、まさかこんな形で役に立つとは思わなかったけれど」
彩瑠・姫桜の一礼に、涼しい顔で手を振るのは荒谷・つかさ
(「一応、念のためにね。昨日みたいな奴らが出てきたら迷わず連絡なさい。すぐ駆け付けるから」)
朝稽古の最中、他の猟兵達に連れられて出かけようとしていたタクミとそう言って交換しておいたスマホの番号がこんな形で役に立つとは、本当に予想外であった。
(「それにしても……」)
タクミが空くのが昼過ぎからだと分かってから、【文月探偵倶楽部】の面々は、ショッピングの算段をしていたのだが、まさかそれが午前中一杯掛かるとは。
「それで、先ず最初に本屋に行ければ良いと思っているの。無理強いをするつもりは無いけれど……」
タクミにそう告げたのは、パティ・チャン。
(「学校? ということは、タクミさんは、私よりも若い?」)
と、すると。普段のヒーロー活動以外の、タクミさんを見てみたいところ。
そんな好奇心が疼いたことも手伝って、それなら本屋であれば、学生ならよく知っているのでは無いかと思ったのだ。
「私も行ってみたいですね」
そう告げてパティの援護を行ったのは、雨咲・ケイである。
「おいらはせっかくキレイな街に来たし。アンちゃんとコダちゃんのおみやげ買ったげたいなぁ~♪」
「私も……そうね。家族とそれから誕生日の近い親友もいるから、何かプレゼントをと思っている所なのよ。タクミさん、何処か良いお店知らないかしら?」
木元・祭莉の呟きに同意する様に頷く姫桜。
「どうでしょうか、タクミさん……?」
か細い声でそう問いかけたのは、アスター・ファラデー。
アスター達の言葉を聞き、束の間考え込む様に腕を組んでいたタクミだったが、程なくしてそれなら、と頷き返す。
「先ずはパティさんが望む本屋さんに行きましょう。それからショッピングモールですね。此処のショッピングモールでしたら色々揃っていますから、もしかしたら皆さんの気に入る物が見つかるかも知れません」
「因みに俺は、タクミのおすすめのカフェとか知りたいな!」
微かに含む様な笑みを浮かべた統哉の声掛けに微苦笑を零すタクミ。
「そう言うことでしたら、其方にも案内しますよ」
「そうですね。私も休憩という事でしたら一度行ってみたいですね」
タクミの言葉に相槌を打つケイに微笑むタクミ。
「そうしたら、先ずは本屋、それからショッピングモールに行った後、僕のよく知っているカフェに行きましょうか。つかささんは、どうしますか?」
「折角だし、付き合うわよ」
(「その方が何かあった時に対処もしやすいものね」)
胸中で独りごちるつかさにタクミが頷いたのを確認し、【文月探偵倶楽部】の仲間達とつかさは、街へと繰り出すのであった。
●
――本屋。
その本屋は不思議な作りをしていた。
大きさとしては中規模位の本屋だが、部屋が2つに分かれていて、其々の部屋に新刊と古本が置かれていたのだ。
「此処が、割とお勧めの本屋ですね。新刊と古本……中には古書もありますが……そのどちらも見たり実際に買ったり出来るので、この街の本好きには御用達の場所なんです」
「そう言う本屋もあるのですね」
(「これは結構意外だな」)
本屋の作りを見ながら、ケイはふと思う。
パティは既に興味津々で本と本の間を飛び回り、繁々と色々な顔をした本を眺めていた。
「う~ん、おいらにはよく分かんないな~」
「まあ、本にも色々あるものね」
祭莉がクルクルと目を回しながらそう呟くのに苦笑を零す姫桜。
パティはそんな姫桜達の様子を気にするでも無く、暫し本の間を飛び回っていたが……程なくしてタクミの方へと振り向いた。
「そう言えば、タクミ君。この世界での英雄譚を知る上で、お勧めの本とかあるかしら?」
(「……また、積ん読になるかもですが、今後この世界での事件とか背景とかを知れれば、よりよい解決も出来るかも?」)
徒然無くそんな事を思いながら問いかけるパティにタクミが束の間古本エリアと新刊エリアを行き来していたが……程なくして、一冊の本を手に取りそれをパティへと見せた。
本のタイトルは『The Legend of Justice One』
「これは……?」
「世界大戦期の偉大なる英雄ジャスティス・ワンに纏わる伝説の描かれた本ですね。後は……」
呟きながらタクミが次に手に取った本は、『神話・女神の涙』と書かれている。
「何でも、神の時代に生まれた女神の涙と言う宝石があるそうなのですが……それに関しての伝承や神話、伝説等が集められている資料になります」
「……うん、そうね。じゃあ、この2冊を買ってみようかしら」
幸いどちらとも十分手に届く値段であった為、その2冊を購入。
「ありがとう、タクミ君。良い買い物が出来たわ」
「いえ、お役に立てたようで何よりです。それじゃあ次は、ショッピングモールに行きましょうか」
「分かりました……」
タクミに呼ばれ、それまでじっと一つの本を見ていたアスターが統哉に抱えられて一冊の本を手に取りそそくさと購入し、タクミ達に合流する。
彼女の購入した本のタイトルは、『最強! 占星術!』だった。
●
タクミに案内されたショッピングモールは、かなりの賑わいを見せていた。
「うっわ~、人が沢山だ~! まるでお祭りみたいだね、タクミ兄ちゃん!」
行き交う人々の様子を見て目をキラキラさせる祭莉。
と、ある事に気がつき、そう言えばと呟いた。
「兄ちゃんでよかった?」
「大丈夫だよ、祭莉君」
そう言って柔らかく祭莉に微笑むタクミ。
その様子はまるで弟を見る兄の眼差しの様で、自分が妹を見る時に、こんな目で見ているのかしら、と言う感情を姫桜に呼び起こさせた。
(「まるで普通の兄弟みたいだな」)
祭莉とタクミの様子を見ながらケイが内心で独りごちる間に姫桜が問う。
「そう言えば、タクミさんは兄弟とかいるのかしら?」
「えっ? ええ、弟と妹が一人ずつ」
「あっ、そうなんですね。実は私にも妹が一人いるんですよ」
義妹ですが、と微笑を零しつつタクミから返ってきた答えに鋭い反応を示したのはケイ。
「血の繋がりはないのですが、どういうわけかセンスが私にそっくりで……」
「ハハッ……そうなんですね」
気がつけば妹自慢を始めていたケイに微笑を零して相槌を打ち続きを促すタクミ。
ついつい義妹のことで熱が入ってしまい、暫し義妹と自分のセンスについて蕩々と語るが……程なくして、ハッ、と我に返った。
「すみません、つい熱く語ってしまいました。……こんな話どうでも良いですよね?」
それから気恥ずかしそうに少し頬を赤らめつつコホン、と咳払いを一つするケイ。
「まあ、その義妹にお土産を買っていきたいわけですが。タクミさんのお勧めは何かありますか? 出来ればこの世界特有の物で」
「う~ん、この世界特有の物となりますと……やっぱり、あれかな?」
そう呟きタクミがケイ達を連れていったのは、カード屋。
そのレジの隣には、トレーディングカードゲームの束が置かれていた。
第3弾新発売! と書かれた恐らく数枚のカードが入っている袋を見てどんなものか何となく察しつつ、ケイが問いかける。
「これは……」
「Crash! ヴィラン&ヒーローズコレクションと言うカードゲームですね。学生の間で流行っているトレーディングカードゲームですよ 。一応、裏面は全て黒で統一されていますから……。単純だけど、奥が深いカードゲームです」
「なるほど……それはよいお土産になりそうですね。これは対戦カードゲームですよね?」
ケイの問いかけにはい、と頷くタクミ。
「ですので、お土産にするなら妹さんと二人で出来るように、このスターターパックを2セット買っていくと良いですよ」
「それでは、此方を頂きましょうか」
頷き、2種類のスターターパックを購入するケイ。
と、その時……。
「あっ……、これが占い用のタロット、なんですね……」
店の中を回っていたアスターがあるタロットの束を見つけて、ポツリと呟く。
そこには、ビッグコスモアルカナと書かれたタロットのセットが置かれていた。
「ああ、それは占星術に使われるこの街では有名なタロットだね。もし占いに興味があるなら、1セット買ってみても良いと思うよ」
「それじゃあ……買ってみます……」
呟きながらタクミに抱え上げて貰い、それを手に取るアスター。
占いと義妹へのお土産に選ばれたカード達は、日の目を浴びたが故か、心無し店の明かりに照らし出されて嬉しそうに輝いている様に見えた。
●
「タクミ君、何か他にお勧めのお店とか無いかしら?」
「おいらも、こういう所も良いけど、お揃いのスカーフとか買ってみたいな!」
ケイとアスターの買い物が一先ず終わったところで姫桜がさりげなく水を向ける。
それに便乗して問いかける祭莉に、タクミが少しだけおや、と言う表情になった。
「そう言えば姫桜さんは親友の誕生日が近いんでしたね。それから祭莉君は、幼なじみと妹さんがいるんでしたっけ」
「ええ。別にこういう店で買える物でも良いのだけれど……折角だし、地元民しか知らない様なそんな店があれば聞いてみたいな、とちょっと思って」
何故か恥ずかしそうに顔を俯け、微かに頬を上気させている姫桜を見ながらタクミがう~ん、と何かを思い出すかの様に軽く首を傾げた。
「そう言えば、この近くにブティックがあったわね」
ショッピングモールに来る途中、偶々目に留まったブティックを思い出し、ポツリと呟くつかさ。
タクミが記憶を探る様な表情をしていたが程なくしてポン、と手を叩いた。
「ああ、あの店ですか。あそこは確か、ペンダントとかそう言った小物が結構置いてあったかな……? 女の子とか喜びそうなやつですね」
「あら。それは良さそうね。案内して貰えるかしら?」
「おいらは折角だしお揃いのスカーフとか欲しいな~!」
「多分、アクセサリ以外にもスカーフみたいな物は置いてあったと思うよ」
そう呟き、つかさが見かけたブティックに向かう途中……。
「ちょっとちょっと、そこの学生さん達」
別のブティックの店先から顔を覗かせていた小太りなおばさんが、ちょいちょいとつかさ達を手招きした。
「学生さん達って、私達の事かしら?」
「そうみたい、ですね……」
パティの呟きに、アスターが頷く間にも、人の良さそうな小太りなおばさんがくいくいっ、と手招きをする。
「良い服あるよ。例えば着ぐるみとか、ペア物の赤いスカーフとか」
「何だって!?」
「えっ、あるの?!」
小太りなおばさんの言葉に統哉と祭莉が目を輝かせた。
「そこの巫女服のお嬢さんも! 試着も出来るから是非、見て行ってよ!」
「巫女服って……私の事よね」
「まあ、この中で巫女服なのはつかささんだけですし……」
おばさんの呼びかけにつかさが少しだけ困った様に呟くのにタクミが苦笑で頷き返す。
「私はともかく。パティさんやアスターさんに合う服はあるのでしょうか……?」
「ちょっと見てみたい、です……」
ケイが軽く首を傾げるのに、アスターが興味津々、店頭に置いてあった衣服をマジマジと見つめながら呟いた。
他の世界ではちょっと見られない奇抜な意匠の施された衣服に興味津々の様だ。
「そう言えばこの店……」
「知っているのか、タクミ?!」
タクミの呟きに、既に入る気満々の統哉が目を輝かせながら問いかけた。
「結構色々良い服が揃っていますよ。僕はあまり興味が無かったのですが、そう言えば妹の着ぐるみパジャマはあそこで買ってたかな……?」
「着ぐるみパジャマも和服も洋服も今流行のコスプレ用ヒーローコスチュームもあるよ! さあさあ見ていった、見ていった!」
押しの強い小太りのおばさんに背を押される様にして、ブティックに入る統哉達。
「あっ! お揃いの赤いスカーフ! 良いねぇ、これ! あっ、皆は何に興味があるの?!」
一目見て祭莉が気に入ったのは、正義のヒーローのコスプレにも使われる赤いスカーフ。
因みに単独でも置かれており、一対の赤いスカーフは学生が少し背伸びをすれば買える位の価格で売られており、カップル等がお揃いで使うのに手頃な品質の物の様だ。
「おいら、これにする~♪ 皆は何か買う~? あっ、そうだ、姫桜姉ちゃん!」
「何?」
祭莉の呼びかけに美しい桜の刺繍が施された帯を見ていた姫桜が其方へと注意を向けた。
「この着ぐるみとか、姫桜姉ちゃんに合うんじゃ無い? どう、着てみない?」
祭莉が指差したのは、愛らしい猫の着ぐるみ。
触るだけでモフッ、としそうなその着ぐるみを思わずモフりたい衝動にかられつつ、姫桜が慌てて首を横に振る。
「ええと、それは……」
「おや? これでしたら、パティさんも着れそうなサイズですね」
ケイが一つの着ぐるみを指差しパティがあら、と思わず唸り。
「こっちなら……私も着ることが出来そうです……」
飾られている数々の衣装に目移りしていたアスターも又、一体の着ぐるみに目を留めて、ポツリと呟いた。
「そう言えば、つかささんは?」
話を逸らす様にキョロキョロと周囲を見回し、つかさの姿を探す姫桜。
そんな彼女が目に留めたのは……。
「お客さん! 巫女服も良いけど、こっちの着物も似合っているよ!」
小太りのおばさんにあれよあれよという間に着替えさせられ、あまりにも咄嗟のことで反応できぬまま、されるがままになっているつかさの姿。
思わずクスリ、と口元を綻ばせる姫桜。
(「つかささんでも、ああいう事があるのね」)
「つかさになら、こっちの着ぐるみも似合いそうだぜ!」
何故かそれに統哉が便乗し、つかさを着ぐるみの世界へと誘い込もうとしている。
「ああ、そうだねぇ。お客さんならこういうのも似合うかも知れないねぇ……。後はこのヒーロースーツを着ればヒーローアイドルとして活躍できるかも知れないよ?」
小太りのおばさんも同意する様に頷き手慣れた手つきでつかさを着せ替える。
勿論、統哉達には見えぬ様にだ。
そんなこんなで着せ替え人形宜しく服をとっかえひっかえさせられたつかさは、店主に勧められるままに幾つかの衣服を購入する羽目になり。
祭莉達も其々に適当な衣服を買い、ありがとうございました~! と一礼する小太りのおばさんに見送られ、その場を後にする。
因みに姫桜の持つ袋の中には、親友向けにであろうか、桜の刺繍の入った美しい帯がプレゼント包装付きで入っていた。
「……中々、商売上手な店員さんだったわ」
両手一杯に大量の衣服を買い込んだつかさが、ふぅ、とげっそりと疲れた表情で溜息を一つ。
何というか、明らかに戦いとは別種の疲れを感じる。
「でも、こういう物も取り揃えられていたのね。ちょっと予想外だったけれど、良い買い物が出来たわ」
つかさに微苦笑を零しつつ、自分の袋の中の帯を再点検する姫桜。
「オイラも、このお揃いのスカーフ、買えて良かったよ!」
「色んな種類の服があって、びっくりしました……」
鼻歌交じりに呟く祭莉に同意するアスター。
尚、アスターの買い物袋の中にも、この世界で考案されたヒーロー用の衣服の技術を取り込んだケープが入っていた。
「でも、正直私のサイズに合う物があるとは思わなかったわ……」
「まるで、私達が来ることが分かっていたかの様でしたね」
流されるままに購入したそれを確認しながら呟くパティに頷きかけるケイ。
「まあ、僕達の世界では、猟兵の皆さんのことは知れ渡っていますから」
「ああ、そうか。だから俺達猟兵が来ることも想定されているのか」
「他の街は知りませんが、この街は少なくともそうですね」
統哉の得心を得たと言った表情で告げられたそれに頷くタクミ。
因みにタクミは、着ぐるみパジャマを2種類購入している。
曰く弟と妹用、との事だ。
「家族思いだよね、タクミ兄ちゃん☆」
「ええ、そうね。私も家族のことは大事だから、良い事だと思うわ」
祭莉と姫桜の言葉に照れくさそうに頬を掻くタクミ。
「それはそうと最初に話をしていたブティックにも寄っていきますか? あちらには縫いぐるみとか、ペンダントとかダブルクロスとか、そんな小物があると思いますが」
「黒猫の縫いぐるみ、あるかな?」
統哉の問いかけに、行ってみないと分かりませんね、と答えるタクミ。
「折角だし、行ってみようかしら。この帯も良いけど、他にも何か良い物が無いか見てみたいし」
「……まあ此処まで来たら付き合うわよ。わざわざ戦力分散する理由も無いものね」
姫桜の呟きにつかさが仕方ないとばかりに溜息を一つ。
(「買い物って……中々疲れるものなのね」)
下手したら鍛錬よりも肉体的にはさておき、精神的な疲労は大きいかも知れない。
何となくつかさはそう思う。
「じゃあ、改めてそのブティックに行ってから、カフェに向かいましょうか。お休みには丁度良い時分でしょうしね」
「まだ新しい物が、見れるのですね……。楽しみです……」
タクミの言葉に、アスターが嬉しそうな声音でか細くそう呟いた。
●
――カフェ。
「うん、中々良い物が買えて良かったわ」
最初に向かっていたブティックで改めて小物やアクセサリーを検分し、それからタクミに案内されたカフェの中で。
姫桜が頬を紅潮させながら、包装された箱を愛おしそうに撫でている。
そこに入っているのは、帯と一緒にプレゼントできればと思って買った物。
メダリオンとしての力の籠められたそれは、親友がもし身に付けてくれれば似合うだけで無く、その力にもなってくれるだろうと密かに思った。
「黒猫の縫いぐるみ置いてあって良かったな~♪」
ニコニコと黒猫の縫いぐるみを抱きしめ喜ぶ統哉。
「統哉さんのトレードマークですものね」
「その通り!」
ケイの言葉に頷く統哉。
そんな統哉達を尻目に、タクミはコーヒーを初めとするドリンクを注文していた。
「何でもあるのね」
頼んだ小さなカップに注がれた紅茶を口にしながらパティがしみじみと呟いている。
「このカップのデザインも、他の世界では、あまり見られない物ですね……」
同じく紅茶を注文し、それを口にしながらアスターが少し変わった形のカップを興味津々で見つめていた。
(「占いグッズ、置いてある店も、ありましたし……」)
カード占い以外にも他にも色々な占いがある様だが、一つでも分かったのならば、それでも十分この街を見て回った甲斐があったものです、と小さな椅子に座ったまま、アスターは改めて思う。
因みにパティは更に小さいので机の上に小さな椅子を用意して貰いそれに乗っていた。
「このコーヒー……パパが好きそうね……」
コーヒーと一緒に購入した焼き菓子を頬張ったところで、ふと、姫桜が思った事を口に出す。
「あっ、姫桜姉ちゃんの父ちゃん、こういうのが好きなんだ~!」
「べっ、別にパパを喜ばせたいわけじゃないわよ! たっ、ただ関連で販売している物があったらお土産にしても良いかもね……何て少しも思ってないんだからね!」
祭莉の言葉に思わず頬を赤らめて答える姫桜にタクミが微笑を零している。
「因みにこの店の珈琲の味を味わえるインスタントコーヒーでしたら、店頭で売っていますよ」
「……そ、そう」
全てを見透かした微笑を浮かべるタクミを凝視できなくて、プイッ、と目を逸らす姫桜。
ああ、こりゃお土産に買っていくな、と姫桜本人以外の全員が確信したに違いない。
「まあ、悪くない味ね」
同じく珈琲を啜りながら一つ頷きバリバリと焼き菓子を頬張るつかさ。
(「でも、お菓子は少し物足りないかしら」)
もう少し追加で何か頼もうか、等とつかさが思っている間に。
「実は、おいらの母ちゃん、パティシエなんだー♪」
着ぐるみ屋台だけど、と内心で呟きつつ言葉を紡ぐ祭莉にへぇ、と姫桜と腹の虫との戦いに葛藤していたつかさが相槌を一つ。
「祭莉さんのお母さん、パティシエさんなのね」
「どんなお菓子が得意なのかしら?」
「んっ? まあ鯛焼きとか……勿論、クッキーみたいな焼き菓子も得意だよ! 後は、パフェとかだね♪」
ホットミルクを飲みながら、タクミが勧めてくれた焼き菓子を頬張る祭莉。
祭莉の言葉に、それなら、と姫桜が頷いた。
「今度、祭莉のお母さんのお菓子、食べてみたいわね」
「分かった! そうしたら今度おいら、母ちゃんに頼んでみるね~♪」
「うん、このマフィン、中々美味しいわ」
結局腹の虫の良いなりになり、チョコチップ入りマフィンを注文し、やってきそれを食べながらつかさが一人頷いている。
そんなこんなで人心地着いたところで、さて、と統哉が改めて切り出した。
「タクミ、改めて話を聞きたいんだけれど、良いかな?」
「私達はタクミさん、貴方に協力をしに来たのです。ですのでもし知っていることがありましたら教えて頂ければ、と思います」
統哉とケイの問いかけに、タクミがそうですね、と神妙な顔になって頷きを一つ。
「僕に答えられることでしたら何でも答えますよ……って、あれ?」
答えながら、不意に怪訝そうに店の入口の方を見つめるタクミ。
タクミが向いた方を、パティとアスターが一緒に見やる。
すると、店内に入ってきた白いシルクハットとタキシード姿の20代後半くらいの身なりの良さそうな男の姿が目に入った。
「おや、こんな所でお会いするとは。元気にやっているようですね、タクミ君」
「ユウキ先生……」
現われた男が奇遇だ、と言った表情で隣の席に腰掛けるのを見ながらタクミが一礼を一つ。
「ユウキ先生?」
「おや……お友達とご一緒でしたか。授業でいつも寝ていますし、部活にも入らず、友達を作っている様にも見えない貴方でしたから少し心配していたのですが……どうやら私の杞憂だったようですね」
「あ……アハハ……」
口元に悪戯っぽい微笑を閃かせて呟くユウキ先生の言葉に乾いた笑い声を上げるタクミ。
「あの……タクミさん、この方は……?」
ケイがタクミに問いかけると、男がケイに向けて丁寧に一礼した。
「初めまして。私、ユウキと申します。タクミ君の担任です。世界史を専門としております」
「ユウキせんせ~かぁ……。宜しく! オイラは祭莉だよ!」
祭莉がハキハキと自己紹介をすると、ユウキ先生は微笑ましいものを見る目で祭莉を見つめ、それから、アスターやパティ達へと視線を動かす。
けれども特に彼女達の事を気に留めるでも無くそのままカフェラテを頼んでいた。
そんなユウキを見て、パティは微かに胸の中に靄の様な物を感じるが、特に危害を加えてくる様子も無いので、再び紅茶に口を付けた。
「改めて教えて欲しい。タクミは今何年生なんだ?」
「僕は高校一年生ですね」
ユウキ先生には取り敢えず会釈だけし、それからタクミへと視線を戻して問いかける統哉。
タクミも少しユウキ先生が気になる様ではあったが、一先ず統哉からの質問への答えを返す。
ユウキ先生は、カフェラテに舌鼓を打っていた。
(「でも……ちょっと違和感があるわね」)
マフィンを腹の中に詰め込みながら、つかさが微かにそんな事を思う。
その間に、ケイがタクミへと質問をしている。
「怪盗ジョーカーに関して何か知っていることはありますか?」
ケイの言葉に軽く頭を振るタクミ。
「それが……あまり。多分、この街の何処かに住んでいるとは思うのですが……」
ぽそぽそと囁き声になるタクミ。
その目は、チラチラとユウキ先生の方へと向けられている。
と……ユウキ先生はそんなタクミの視線に気がついたか、さて、とカフェラテを飲み干し席を立ち、それからちらりと統哉達を見やった。
「皆さん、タクミ君は家族思いの優しい子です。これからも良い友達でいて上げて下さいね」
「ああ、勿論だ!」
そう言って一礼しその場を後にするユウキ先生の姿を統哉は見送る。
一方でつかさは微かにそんなユウキ先生に対して、違和感を覚えていた。
(「あの身のこなし……ただ者じゃ無さそうね」)
そこでタクミも又、と、そうでした、と思い出した様に呟いている。
心なし何処か安堵した様子だ。
「彼は、カードを使った遠距離戦を得意としていますね」
「そうですか。それではタクミさんと彼との因縁は?」
ケイの問いかけに、それは、と軽く頭を振るタクミ。
「何度も戦って、盗まれた品物を取り返すことは出来ますが、残念ながら確保出来たことはありませんね。最も、昨日の晩は……守り切れませんでしたが」
そう言って悔しげに顔を俯けるタクミの肩にちょん、と肉球を置くアスター。
「あれは、仕方ありませんでした……オブリビオンが、いたのですから……」
「ご家族は、確か弟さんと妹さんがいると言っていたわね。ご両親は?」
姫桜の問いかけに、タクミが軽く頷きを一つ。
「健在です。ですので5人家族になります」
統哉がしみじみと珈琲を一口啜り、腕組みをして問いかける。
その様子は、さながら着ぐるみ名探偵クロネコレッドの様だ。
「前にも、殺されかけた事はあったのか?」
「それは……」
少し記憶を探る様にしていたタクミだったが、程なくして軽く頭を振る。
「いえ、無かった……と言うよりは、僕が撃退し続けていたので、殺されそうになったかどうか、と言うのは分からないです」
(「じゃあ、今回の件が……」)
特別、と言うことか。
それはやはり、オブリビオンの影響なのだろうか?
もしそうであれば改心の糸口が見つかれば、とも思うが……タクミの情報だけでは難しそうだ。
「タクミ兄ちゃんは、どうしてヒーローになろうと思ったの?」
統哉に続けて聞いたのは祭莉。
祭莉の問いに、それは、と口元に笑みを綻ばせタクミが答える。
「この街を守りたい、と思ったからだよ」
「ジョーカーって、タクミ兄ちゃん的にはどんな奴だと思う?」
祭莉の質問にパチパチと軽く目を瞬き、そうだな、と呟くタクミ。
「神出鬼没な愉快犯。そして年齢不詳の謎の相手、という感じかな」
「クロマクぽい奴、別にいそうかなあ?」
誰に共無く告げられた祭莉のそれに、タクミが難しそうな表情になった。
「どう……なんだろうね。ただ、怪盗ジョーカーは一人じゃ無いかも知れない、とは思う」
「一人じゃ無い?」
思わずオウム返しに聞く統哉にええ、とタクミは頷いた。
「僕は既に何度も彼と戦っているのですが。彼は何となく青年っぽく見えたり、男に見えたり、時には子供に見えたりするんです。だから……一人じゃ無いかも知れない、と。あのトランプのジョーカーみたいな仮面をいつも彼は被っていますし」
「……怪盗ジョーカーの本体は、もしかしたら仮面の可能性もある、と言うことですか。そうなると仮面の持ち主を特定しないといけませんし……流石に絞りきるのは難しいですね」
ケイがそう呟き小さく息をつきながら、ブラックコーヒーを啜る。
「う~ん……」
ケイの呟きにパティの心に何かが引っかかる。
が、それが何なのかははっきりせず、モヤモヤのまま消えていった。
一頻り話が終わったところで。
ふぅ、と統哉が息を一つついた。
「タクミは、やっぱりこの町が好きなんだな。何となくそう思う」
「それは……此処は僕の故郷ですから」
そう言って微笑むタクミにそうだな、と頷き返す統哉。
「俺もね、故郷の町が大好きだから、それはよく分かるんだ」
――静謐。
穏やかな静謐が、その場を満たしていく。
そうして決して心地悪くない空気に身を浸していた統哉がそう言えば、と呟いた。
「タクミから何か俺達に聞きたいことはあるかな? 例えば猟兵として世界を巡る話とか」
「えっ?」
統哉の呟きに怪訝そうな表情を浮かべるタクミ。
そんな彼に俺もさ、と統哉が微笑んだ。
「魔法学校の学生だからな。お互いのことをもっとよく知ってあのユウキ先生のいう友達になれたら嬉しいな、と思ってね」
「何かあれば、お話ししますよ……。色々、教えて頂きましたから……」
そう言って微笑を称えるアスターに微笑み、タクミがとりとめも無い質問をし、それに統哉達が答えて話の花を咲かせていく。
――それは、戦いの前の、束の間の休息。
●
(「……いない、か」)
姫桜達が話し込む間に、つかさは休憩も兼ねて少しカフェの外に出て、ユウキ先生をそれとなく探す。
だが、既にその姿は見当たらない。
仕方ないか、と踵を返してカフェに戻ろうとしたとき、カサリ、と胸元で紙が服と擦れる音を聞いた。
(「何時の間に……」)
そんな事を思いながら、つかさが懐のカードを取り出し、それを読む。
そこに書かれていたのは。
――今晩24時。ある美術館で面白いショーが行われます。もし宜しければ、ご参加の程を。怪盗ジョーカー。
「……予告状って所かしら」
目を通したつかさが息を一つつき、改めて踵を返してカフェの仲間達の所に戻る。
カフェの扉を開いた時、カラン、コロンと乾いた音が辺り一帯に響き渡った。
――まるで、新たな戦いの始まりを告げる鐘の音の様に。
大成功
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第3章 ボス戦
『『克銘ノ三・刃雷』アルマ・ニッテカン』
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POW : 翔鎌『ブライトウェル』:裂鎌『フロリダ・スター』
レベル分の1秒で【指から飛ぶ雷刃】か【高威力の斬撃を放つ己】を発射できる。
SPD : 迅鎌『ブルークロップ』
【腕刃】での【乱れ斬りや超出力での一刀両断】による素早い一撃を放つ。また、【雷の道を作り、動作速度を格段に引き上げる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 荒鎌『アーリーブルー』
自身の身体部位ひとつを【分裂も可能な、遠近自在の雷電爪】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
イラスト:すねいる
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「フロッシュ・フェローチェス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
*業務連絡:次回執筆予定は、4月20日(土)~4月21日(日)となります。この2日間がプレイング期間となる様、プレイングをお送り頂けますと幸甚です。何卒、宜しくお願い申し上げます。*
●
――某月某日24時。
「では……予定通りに」
「ああ、頼むぜ、怪盗ジョーカー」
トランプのジョーカーを思わせる仮面を被り、黒いマントに身を包んだ男の丁寧な一礼に、そいつは一つ頷きかける。
すっ、と姿を消す怪盗ジョーカーを見送りながら、かの存在は内心で思う。
(「さて、これで女神の涙を手に入れられれば……組織ももっと強くなる」)
強くなればそれだけ多くの猟兵達の血が得られる。
過去という名の絶望に未来を満たし、そして自分達の望む世界を作り上げられる。
(「だが……」)
「計算外は、お前達だ……猟兵」
予定では、先日の夜には怪盗ジョーカーを邪魔するヒーロータクミを抹殺し、何の障害もなく、女神の涙を手に入れることが出来る様になる筈だった。
だが、その作戦は失敗した。
結果として、女神の涙を容易く奪うことは叶わなくなったのだ。
「お前達の事は、俺が必ず叩き斬る……。覚悟しろ、猟兵共」
そう呟き、オブリビオンは美術館から少し離れた高層ビルでその時を待つ。
猟兵達との戦いの時を。
そして……怪盗ジョーカーと合流する時を。
●
(「今度は、この美術館、か……!」)
その情報を得ていたヒーロータクミは、美術館を包み込む闇を駆け抜ける。
(「全く……手を焼かせてくれるものだよ……!」)
怪盗ジョーカーは美術館を疾駆する。
そして、目的の品までの警備を軽々と突破して、それを手に入れようとする。
だが、そこに現われたのは……。
「そこまでだ! 怪盗ジョーカー!」
「来たか、ヒーロー!」
白銀の刀身を持ったバスタードソードを構えたタクミに仮面の向こうで微笑みかける怪盗ジョーカー。
既に周囲で警備をしていた筈の警備員達は眠りに落ち、更に監視カメラは破壊されている。
ヒーロータクミと怪盗ジョーカー。
今、2人しかいないこの場所で……ヒーローと怪盗ジョーカーの戦いが、静かに始まった。
*タクミと怪盗ジョーカーについて
オブリビオンを撃破する事で、タクミと怪盗ジョーカーの戦いの様子を見に行くことが可能です。
但し、この2人の戦闘には直接介入できず、猟兵とオブリビオン、勝利した方のみが加勢に行くと言う形式となっています。
この2人の戦いの様子が気になる場合は、直接見る事は出来ませんが、それっぽいプレイングを送って頂ければシナリオ中で2人の戦いが描写される予定です。
何卒、宜しくお願い申し上げます。
ウィリアム・バークリー
風の精霊を纏い、「空中戦」で高層ビルの側面から戦場となる屋上へ向かいます。
その間にスチームエンジン装着、トリニティ・エンハンス発動!
お待たせしました!
今回の敵の特性は速度。そのためのビル屋上ですね。
でも、これならどうです? Active Ice Wall!
ほら、突っ走ると氷の盾にぶつかって自滅ですよ。
もっとも、これで無力化できるとは思ってません。
自分に攻撃がきたら、「全力魔法」を重ねた「オーラ防御」と「武器受け」で弾き、ルーンスラッシュで反撃します。
時には意図的に屋上の外まで離脱し、迫る敵を墜落させようと試みたり。
最後は氷と風の「属性攻撃」「全力魔法」「高速詠唱」「衝撃波」「範囲攻撃」で締め。
宙夢・拓未
タクミ……無事だといいが
……今はオブリビオンを倒す!
バイクに【騎乗】して、戦場の高層ビルへ向かう
相手はまた雷使いか……機械の身には辛いな
なんとか無効化できるといいんだが
【高速詠唱】【全力魔法】で、なるべく高い位置に氷の避雷針を作る
雷の道を崩したり、雷刃や雷電爪の狙いを逸らせれば上々
成否に関わらず、さらに【高速詠唱】【全力魔法】【属性攻撃】
『車輪魔術』を発動、水の矢で敵を射抜く
敵の体が水で濡れれば、雷の操作に狂いが生じるかもしれない
体内の魔力を食う【捨て身の一撃】だが、ためらわない
【2回攻撃】で水の矢を連射だ
無事敵を倒し、タクミと合流できたら
『電気仕掛けの願い』で負傷を治療
よく頑張ったな、タクミ
ラッセル・ベイ
お主が黒幕だな……特に言う事は無いな
手早く倒してもう一つの戦いを見物しに行こうか
●戦闘(POW)
電撃耐性ポーションを……先程消費したのだったな
であれば、グラウンドに大地ポーションを付与して属性力の向上
「ストレングス・ルーン」と「グラウンド・ルーン」も起動し、近接戦闘能力を極限まで高める
今の私ならば、お主の攻撃は通用せんぞ……と、挑発
武器すら抜かず余裕の構えを取り、攻撃を誘おう
挑発に乗れば渾身のカウンターバッシュで奴を吹き飛ばす
怪力によるそれの威力は凄まじい物だが、本命はそこではない
さあポイゼ、【デス・ヴェノム】の吐息を吹きかけてやれ
もう一つの戦いの方は、横槍がなければ絶対に負けんだろう
絶対にな
荒谷・つかさ
あのカード、単なる予告状と受け取ることもできるけれど……
態々猟兵である私達に渡した理由がわからない。
本当は止めて欲しい?
それともオブリビオンの横槍を良く思ってない?
……何にせよ、先ずは目の前の敵を倒してからね。
雷を扱う素早い敵、か。
私とはあまり相性が良くないわね。
あんまり飛び回られても厄介……ここは、囮役を引き受けるわ。
当初は風迅刀の属性攻撃による風の刃の射出を主力に戦闘
視線が合ったならチャンスを逃さずに【双縛熱視線】を発動
互いに視線を逸らせなくなるこの呪い
決まれば私以外への攻撃や回避、果ては移動にも難儀するはず
私はあまり動かずに防戦に徹し、文字通り彼女を釘付けにするわ。
トドメは任せたわよ。
文月・統哉
【文月探偵倶楽部】
ガジェットショータイムで大鎌を召喚
切り結びつつ謎を解く
猟兵の存在を広く認知した街の人々
怪盗とヒーローにのみ焦点を当てた新聞記事
そして分断された戦場
なるほどね
怪盗ジョーカー的には猟兵が来る事も織り込み済みだったという訳だ
オブリビオンに手を組めと言われたら
ヴィランの彼が断れる筈もない
でも彼はタクミを殺したくなかった
恐らく彼の、彼らの目的は
タクミという若いヒーローを育てる事
この町の希望となるよう導く事
俺にはそう思えて仕方ないんだ
心当たりはないかい、アルマ・ニッテカン?(黒猫の影で質問
仲間と連携し攻撃
任されたんだ、アルマは必ず撃破する
そしてタクミの、彼らの戦いを見守ろう
※アドリブ歓迎
ガーネット・グレイローズ
※他猟兵との共闘希望
面白いものが見られると言ったのは、こういうことね。あの野郎……。
ん? あたしは別に酔ってなんかないわよ! 絶好調よ!!
相手はスピードが持ち味のようね!!
クロスグレイブによる<援護射撃>で味方をサポート。また、腕にはめた
ブラックバングルから<衝撃波>を撃ち出して牽制していく。
防御面では<第六感>を頼りに超スピードに対処。回避は難しそうなので
マントに仕込んだ偽翼ブレイドウイングと躯丸で相手の近接攻撃を
<武器受け>で捌きつつ、<カウンター><空中戦>を駆使した
【サマーソルトブレイク】で飛び込んでくる敵を蹴り落とす!
さっさとケリを付けて、タクミを助けにいくわよ!!(キャラ崩壊上等)
木元・祭莉
【文月探偵倶楽部】で!
タクミ兄ちゃんは、美術館かなあ?
おいらたちの方は、オブリビオン、きっちり押さえないとだね!
アルマちゃんは、スピードタイプ?
兄ちゃんや姉ちゃんと連携しながら、敵の戦闘力を削っていくね。
「グラップル」メイン、動き回る敵を「追跡」し、攻撃は「野生の勘」で躱しながら「カウンター」「武器落とし」「鎧砕き」で雷電爪ほかの変性武具を次々と折っていく。
くるりくるりと舞い踊り(パフォーマンス)ながら、仲間を回復して。
『つどう花 咲きほこり 想いは 風に乗って』
花弁は散っても、花は散らない。
……オブリビオンも、いつかわかってくれるかなあ?
タクミ兄ちゃん、女神の涙は、ヒーローが守るものだよね!
彩瑠・姫桜
【文月探偵倶楽部】
ヒーローvsヴィランの戦いに第三者の介入は無粋だと思うのよ
先日対峙したヴィランとは違って
今回のヴィラン、怪盗ジョーカーにはちゃんと相対するヒーローとしてタクミくんが居るしね
私達は見守りに徹するべきだし
邪魔するヤツにはご退場願おうかしら
そんなわけでオブリビオン、アルマ・ニッテカン
貴女の相手は私達よ
貴女の咎ごと私が串刺しにしてあげる、覚悟なさい!
前に出て積極攻勢
敵の攻撃は可能な限り【武器受け】して
攻撃の癖や隙について【情報収集】するわ
高速な動きが得意なようだから腕や足を狙って攻撃し速度落とす事も試みるわね
うまく接近できたら【双竜演舞・串刺しの技】で【串刺し】にし【傷口をえぐる】わ
雨咲・ケイ
【文月探偵倶楽部】で参戦。
この世界の行く末を決めるのは、
今を生きるヒーローとヴィランであるべきなのでしょう……。
少なくともあなた方、オブリビオンではありません。
敵の分裂しての攻撃には【2回攻撃】で応戦し、
【オーラ防御】でガードしながら間合いを詰めていきます。
そして味方と連携しながら牽制を行い、
敵の動きが止まった所で【サイキックブラスト】を
撃ちこみます。
二人の邪魔はさせませんッ!
撃破後はタクミさんの元へ向かいますが、
介入はしません。
黙ってこの戦いの結末を見届けましょう。
……やはり、あの怪盗ジョーカーからは
邪悪な意志は感じられませんね。
アドリブ歓迎です。
日月・獏ノ進
各猟兵の前に現れた推定怪盗…兄弟とか複数で一人を演じているか、気絶してる人をゾンビとかに変えて操るUCの亜種なのか。正体はそんな所でしょう。なら事前に歌手や先生の近辺を調べればボロでそうですね。言いましたが悪人の足転ばすのは好きなんですよ。
さて、子供を相手に大人が寄ってたかるのは本当に嫌いです。
なのでさっさと片付けますよ。
翔鎌は指が向く前に【日月専用突撃銃】での牽制射撃で封じ、裂鎌は【勇気】を持ってこっちも全力で突っ込み、相手の間合いを斬撃のし辛い密着狙いで外し、そこからの【接撃の計】を叩きこむ。少年が身を張ってんのに策士が怪我恐れるのはアレですし。翔鎌は牽制しきれないなら人の手を借りますか。
●
「ふ~む、悪人の足を転ばすのは好きなのですが……これは少し予想外でしたねぇ」
他の猟兵達の前にも現われたという推定怪盗の足を掬う為に、情報の裏取りを行っていた日月・獏ノ進が困った様に微笑んでいる。
オペラ歌手やユウキ先生の周囲を回り、彼等の情報を収集して出てきた意外な結論に、パチパチと瞬きを繰り返しながら。
「どの情報にも矛盾が生じないのですからねぇ」
自分が昼間に擦れ違った推定怪盗の事を思い出しながら、飄々とした笑みを浮かべて思索に耽る獏ノ進。
夕暮れ時に文月・統哉達がユウキ先生として出会った彼も、そして20時過ぎにガーネット・グレイローズが出会った彼も、時系列的には矛盾しておらず、又周囲の人々の証言も推定怪盗のことを『ユウキ』という一人の人物として認識していた。
この流れは事実の様だ。
(「こうなってくると、怪盗ジョーカーは全て同一人物という事になるのですよねぇ。しかし、その目的は何なのでしょうかねぇ?」)
そもそも彼は矛盾を孕んでいる。
オブリビオンに協力して貰いつつ、自分達に情報を態々伝えていると言う矛盾を。
(「怪盗ジョーカーにとっては、自分の行いが正義なんじゃないでしょうかねぇ、でしたっけね彼が言ったのは」)
では、彼にとっての正義とは何なのか。
まさかねぇ、と思いつつ獏ノ進は一つ呟く。
「24時にあの美術館で何か起こることは間違いないわけですから。流石にそれを見過ごすわけには行かないですよねぇ……」
自分が仕入れた情報の本当の意味を考えつつ獏ノ進は戦場へと向かった。
●
(「面白いものが見られると言ったのは、こういうことね。あの野郎……!」)
飲酒運転は御法度なので、ビルの屋上に現われた莫大な殺気に気がつき全力疾走を行ったガーネットが、ぐっ、と拳を握りしめる。
と……その時。
「ガーネット!」
「拓未! アンタ、あたしを後ろに乗せなさい!」
愛機、Crimson-Blastのハンドルを握り全力疾走を行っていた宙夢・拓未の声を聞いたガーネットが怒声を上げる。
「ってお前、酔っているのか?」
「ん? あたしは別に酔ってなんかないわよ! 絶好調よ!! 取り敢えずさっさと後ろに乗せて! あの野郎……!」
「分かった、取り敢えず後ろに乗れ! しっかり掴まっているんだぞ!」
目が据わっているガーネットに拓未が頷き、自分の腰にガーネットが両腕でしっかりと掴まっているのを確認してから、Crimson-Blastに取り付けられているボタンを一つ押す。
同時に飛行形態と化したCrimson-Blastが背からジェット噴射を行って高層ビルの側面を飛び、屋上へと向かう。
――それは、正しく一条の真紅の光。
(「タクミ……無事だといいが」)
心配ではあるが、敵意の源が現われた以上、今は成すべき事を成さねばならない。
即ち……オブリビオンの撃破。
「拓未さん! ガーネットさん!」
若葉色の魔法陣を描き上げ、自らに風の精霊達の力を付与して空中を舞うウィリアム・バークリーが、拓未達の隣をフワフワと浮遊。
「ウィリアムか!」
「はい。オブリビオンの気配を感じまして……!」
ウィリアムが頷き返しつつ自らのルーンソード『スプラッシュ』の鍔にスチームエンジンを取り付け蒸気機関を起動させて破壊力を上げ、更に周囲を漂う風の精霊達に呼びかけて自らの魔力を爆発的に高めた所でガーネット達と共に屋上へと到着。
そしてその場にいた悪意の根源……しなやかな線を描いた流線的なボディに、全身を覆うウェットスーツの様な物に身を包んだ、両腕と両足に刃のある前髪が蒼く、後ろ髪が微かに赤く風に靡く女を見つける。
「来たか……猟兵共」
そのまま半身になって刺す様な敵意を示してくる彼女にCrimson-Blastから飛び降りたガーネットが空中で弧を描きながら、鋭い蹴りの一撃を放つ。
夜空に煌めく真紅の月を思わせるその蹴りの一撃を半身になっていた女は咄嗟に右手の刃で受け止めるが、その時には、ガーネットは素早くその刃を蹴って後方へと下がっていた。
「ちっ……話を聞く気も何もなしか……!」
「うるさいっ! アンタの話なんて聞きたくなんか無いわ! 皆、さっさとコイツを片付けて、タクミを助けに行くわよ!」
いきなりの強襲に舌打ちを打つ女の事など気に留めず、くいっ、とガーネットは敵に向けて中指を突き上げるのだった。
●
――カンカンカンカンカン……。
「この先にオブリビオンがいるのですね、つかさ」
「ええ、多分ね」
ラッセル・ベイの仮契約した毒精霊ポイゼの問いかけに静かに頷くは荒谷・つかさ。
「タクミ兄ちゃんは美術館かなあ?」
「ええ、そうだと思うわ」
ピョン、ピョン、と2段飛ばしで階段を駆け上がっていく木元・祭莉の問いかけに、彩瑠・姫桜が頷いた。
「皆さんは確か、タクミと共にいたのでしたわね。どうして此方へと? 勿論、とがめ立てするつもりはございませんが」
「ヒーローvsヴィランの戦いに第三者の介入は無粋だと思うからよ。彼女……千歳さんの時とは違って、今回は、タクミと言うヴィランと対峙するヒーローが存在するのだもの」
「なるほど。そう言う考え方もございますわね」
「ほう、そんな事件もあったんですね」
素朴なポイゼからの問いかけにしれっ、と答える姫桜に納得したとポイゼが頷き、獏ノ進が相槌を一つ。
その間にラッセルは地盾グラウンドにセブンスポーションが一つ、大地ポーションを振りまき、防御性能を高めていた。
(「雷撃耐性ポーションを切らしたまま、戦いに挑むことになるとは少々迂闊だったか」)
ほぼ一日工房に引きこもり、ついつい剣の強化に熱中し、切らしたポーションの調合を忘れていた自らの迂闊さを微かにラッセルは思う。
まあ、後悔している訳ではないのだが。
「それにしても、態々私達にこの事を教えてくるとは……怪盗ジョーカーはどういうつもりなのでしょうかね?」
「そうだな……少なくとも、何らかの意図はあるんだろうとは思うが」
雨咲・ケイの問いかけに、統哉が考え込む様な表情になりながら相槌を打つ。
「……犯行予告のつもりかも知れないけれど……私達猟兵に態々伝える必要性は無いのよね、実際」
「そうなんですよね。悪人の足を転ばせたいのですが、そうしようとするとどうしてもその行動の説明が付けられない」
予告状とも取れるカードを受け取ったつかさが怪訝そうに眉を顰めるのに獏ノ進が溜息を一つ。
「本当は、止めて欲しいのかしら?」
つかさの呟きに獏ノ進が頭を振って否定する。
「それは無いでしょう。そもそも、怪盗ジョーカーは自身の行いを正義だと思っているというお話でしたし。と言う事は、女神の涙を盗もうとするこの計画自体は最初から練っていたんでしょうね」
獏ノ進の否定は、つかさにとっても同感だった。
と言うのも、怪盗ジョーカーは撃退こそされているものの、実際に騒ぎを起こしているのは事実だからだ。
だとしたら……。
「オブリビオンの横槍を快く思ってないと言う事なのかしら?」
「まあ、どちらにせよ、子供を寄ってたかって襲う大人は私は嫌いですがね」
つかさの結論を聞いた獏ノ進がそう答えたその時。
――轟。
ビリビリと振動と共に屋上から戦闘の音が伝わってきた。
どうやら、高層ビルの屋上での戦いは、既に始まっている様だ。
「悩んでいても仕方ありません。今はとにかく、オブリビオンの所に向かいましょう」
「ええ、そうね」
ケイの呼びかけにつかさが頷き、階段を一気に駆け上がる。
「……タクミは大丈夫なのでしょうか」
階段を駆け上がるラッセルの後ろから問いかけるポイゼ。
「多分、あいつならきっと……」
ポイゼの心配を感じ取ったか呟き返す統哉の言葉を引き取る様に、ラッセルがフム、と軽く髭を扱きながら、人々を落ち着かせる様な重低音で答えた。
「もう一つの戦いの方は、横槍がなければ絶対に負けんだろう」
――ラッセルの脳裏を過ぎるは、別れ際に返したルーン文字を刻んだ白銀の刀身。
「……絶対にな」
「ええ……そうね」
そのラッセルの確信を感じ取ったか姫桜が同意する様に首肯した。
●
――美術館。
「ハハハハハッ! どうしたのかね、ヒーロー君! 君の力はその程度か?!」
バサリ、と漆黒のマントを翻す怪盗ジョーカー。
その名に恥じぬトランプのジョーカーの刻まれたカードが大量に懐から飛び出し、踊る様にタクミに襲いかかる。
「……なんのっ!」
鋭い叫びと共に美術館の床を、タン、と蹴りながら緋色の光を纏った曇り無き白銀のヒーローソードを振るう。
ルーン文字の輝きと共に鋭く放たれたその一閃が衝撃波となって空間を断ち、鎌鼬を生み出して、トランプの群れを切り崩した。
「そこだ!」
叫びながら自らに黄金のオーラを纏わせ怪盗ジョーカーに肉薄するタクミ。
バサリとマントを翻してその攻撃を受け流しながら、怪盗ジョーカーは仮面の向こうで鱶の笑みを浮かべた。
「ハハハハハッ! それでこそだよヒーロー君! さぁ、もっと私を楽しませてくれ!」
笑いながら腰に収めていた二刀の短剣を抜き放ち鋭い一閃を放つ怪盗ジョーカー。
タクミは右に、左に、と捌いてその攻撃を躱しながら、タン、と地面を蹴って後退して間合いを取り、地面に白銀の刃を擦過させる。
同時に放たれた衝撃波が怪盗ジョーカーを斬り裂かんと襲いかかり、怪盗ジョーカーは無数のトランプで自らを覆う壁を作り上げてその攻撃を受け止めた。
「さぁ、まだ戦いは始まったばかりだ! 行くよ、ヒーロー君!」
「怪盗ジョーカー……ヒーロータクミ、参る!」
両手を挙げて掛かってこいとばかりに挑発した怪盗ジョーカーのそれに乗る様にタクミは頷き、再び怪盗ジョーカーへと斬りかかった。
●
「その機動力でしたら……これでどうですか?! Active Ice Wall!」
ルーンソード『スプラッシュ』の切っ先を敵に向け、青と桜と若葉色の混ざり合った魔法陣を複数描き出しながら、ウィリアムが無数の氷塊を解き放つ。
放たれたそれを意志力で制御して、敵の周囲に氷塊の壁を展開、彼女の動きを制限することを試みた。
「その程度で俺の動きを妨げられると思うな猟兵!」
自らの手を雷電爪へと変形させ、そのままブーメランの如く投げつける敵。
瞬間、雷電爪が無数の雷を纏った刃へと分裂し、一気に拓未達へと襲いかかってくる。
雷撃を纏ったその攻撃を、愛機Crimson-Blastを操って辛うじて避けながら、目を鋭く細める拓未。
(「相手はまた雷使いか……機械の身には辛いな。なんとか無効化できるといいんだが」)
「オラオラオラ! そんな爪、一つ残らず撃ち落としてやるよ!」
バク転を決めながら後退したガーネットが素早く巨大な十字架を模した形状の携行型ビーム砲塔デバイスであるクロスグレイブを構えて、ガチリと引金を引く。
銃口から巨大な熱線がまるで聖歌を奏でるかの様に飛び出し、それらの刃の幾つかを吹き飛ばした。
が……その間にも敵は蒼い一条の線となって戦場を駆け抜けながら詠唱を行う。
「雷よ! 雷よ! 我が命にて我が行き道を作り出せ!」
詠唱と共に呼び出される無数の雷の道。
ウィリアムの用意した氷塊を避ける道標の様に生み出された雷道を彼女は駆け抜け、己が動作速度を格段に引き上げながら、ウィリアムの首筋目掛けて刃を放つ。
「させないぜ!」
叫びながら、拓未がCrimson-Blastをフルスロットルさせて、ウィリアムの横合いを駆け抜け彼の服を引っ摑んだ。
ウィリアムの鼻筋を雷の刃が掠めるのに鳥肌が立つのを感じながら、拓未は素早く詠唱を行う。
「俺達に力を貸してくれ! 雷を阻む氷塊達よ!」
「……Move!」
拓未の意図を理解したウィリアムが術式を組み替えた魔法陣を展開し命じると共に、地に突き立っていた氷塊の一つが浮遊して、屋上にある一番高い場所へと移動。
拓未の指先から放たれた光が氷塊を撃ち抜くと共に、見る見る内に氷塊が一本の鋭い針の様な姿になる。
――それは、氷の避雷針。
(「これで少しは、雷撃が向こうに逸れてくれれば良いが……」)
内心でそれを願う拓未へと、敵が指から雷刃を解き放つ。
解き放たれたそれは避雷針に向かって飛んでいき、避雷針を削り取るが、雷光を纏った一条の蒼い光となった彼女からの体当たりを避けきることは出来ない。
「ちっ!」
咄嗟にギアをバックにして車体をバックさせ、その攻撃を辛うじて躱す拓未。
「これなら、どうですか?! 断ち切れ、『スプラッシュ』!」
Crimson-Blastの後部座席で立ち上がったウィリアムが自らのルーンソード『スプラッシュ』に氷と風の精霊の魔力を乗せて袈裟に振るう。
蒸気機関と風の精霊によって強化されていたルーンソード『スプラッシュ』による斬撃は、敵の右肩をパックリと切り裂くが……。
「お前達だけで俺を止めることなど出来るものか!」
敵が叫びながらウィリアムが斬り裂き、宙に舞った血飛沫を雷電爪へと変化させ、五月雨の如く上空より降り注がせた。
「この野郎! やってくれるじゃないか!」
ガーネットがそれらの攻撃をクロスグレイブから撃ち出したレーザーで撃ち落とすが、如何せん流れが悪い。
――と、その時。
「今の私ならば、お主の攻撃は通用せんぞ……」
低い重音が響き渡り、ガーネットを庇う様に小柄だががっしりとした体格の影が割り込んでくる。
その手に掲げられていた巨大な地盾グラウンドは、数多の雷を一つ残らず受け止め、ガーネットへの被害を最小限に抑えていた。
「ラッセルじゃないか!」
「申し訳ございません、ガーネット。少し遅くなってしまいましたわ」
ガーネットの呼びかけに応じたのは、ラッセルの背を守る様にするポイゼ。
更に拓未とウィリアムと雷電爪の間には……。
「仲間には指一本触れさせない! クロネコ・レッド、見参!」
「慄け咎人、今宵はお前が串刺しよ!」
ガジェットショータイムで巨大な大鎌を召喚、それで雷電爪を一掃しながら統哉が、schwarzとWeißを風車の様に回転させながら雷電爪を叩き落とした姫桜が拓未とウィリアムの前に立っている。
「統哉!」
「姫桜さん!」
「悪い、少し遅くなったな!」
「此処からは、私達も加勢するわよ!」
拓未とウィリアムの呼びかけに反射的に返事を返す統哉と姫桜。
同時に、夜空の中で煌めく太陽を思わせるヒマワリが、クルリ、クルリと回転し、さわさわと風を呼び起こした。
『つどう花 咲きほこり 想いは 風に乗って』
呼び起こされた風に乗せられたのは、オブリビオンを倒し、タクミの所に向かいたい、と言う祭莉の思い。
その思いが拓未達の共感を呼び起こし、ガーネット達3人で戦い続けていた時に負った傷を癒していく。
「お待たせ! 着ぐるみイエロー、登場だよ♪」
「これ以上、貴女の好きにはさせませんよ、アルマ」
祭莉がバタバタヒマワリの葉を振る間に、ケイがブラックスターからサイキックエナジーを解き放つ。
解き放たれたその攻撃に敵……アルマは一時攻撃を中断、さっ、と後退し体勢を立て直した、その時。
「背中ががら空きですねぇ」
日月専用突撃銃の引金を引いた獏ノ進がアルマの背に銃弾を叩き込み、更に……。
「遅いわ」
――斬。
放たれた強烈な真空の刃がその背に刻みこまれる強い衝撃をアルマは受けた。
キン、と鋭い音と共に不可視状態であった風迅刀を可視化させ、鋭い真空の刃を解き放ったつかさが涼しい表情のままにアルマの背後に佇み、鋭く目を細めている。
「ちっ……猟兵の増援か……!」
鋭く舌打ちを一つしながら自らの作り出した雷の道を渡り、電光石火の如き速さで周囲を駆けようとするアルマ。
だが……。
「おっと、速いとこ終わらせたいんですよ、逃がしません」
「そう好き放題出来ると思ったら、大間違いですよ」
獏ノ進がアルマに密着してその動きを阻害する間に、ウィリアムが左手で呪印を切り、周囲に展開していたActive Ice Wallに一斉に指示を出す。
ウィリアムの命で氷塊達が雷の道を塞ぐべく、或いはアルマを逃げ道の無い閉所へと追い込むべく動き出した。
「ちっ……!」
追い込まれかけている自分の状態に気がつき、獏ノ進をその手に取り付けられた鎌で斬り裂き離脱しようとするが、既にその時には、つかさが獏ノ進とアルマの間に割り込み風迅刀でその一撃を受け止めている。
やむを得ぬとばかりにウィリアムの呼び出した氷塊に向けて、遠近自在の雷電爪を解き放ち、氷塊を破壊してつかさと獏ノ進を振り切り、回復の要でもある祭莉達との白兵戦へと移行するべく突進してくるアルマ。
だが……。
(「その動き、少しでも狂わせてやる……!」)
統哉達の介入により、余裕が僅かに出来た拓未が内心で呟きながら詠唱を開始。
拓未の詠唱に応じる様に、Crimson-Blastの前輪に刻み込まれたルーン文字が回転しながら青白く光り輝いた。
『これが、俺の魔法だ!』
――バチ、バチ。
全力を叩き込むその魔法が拓未自身の体に過負荷を与え、全身を駆け巡る電撃が荒れ狂い嘔吐しそうになる。
けれども拓未はそれに屈しない。
その勢いのままに、ルーン文字に記載された『水』属性の矢を連射し、ウィリアムの氷塊に手を焼くアルマを貫いた。
「ちっ……くそっ……!」
自身に撃ち込まれた水により、それまで思うがままに操っていた雷電爪と雷に狂いが生じ、出鱈目な雷を周囲に撒散らすアルマ。
「その様な雷は、私には一切通用せぬぞ」
ランダムに何もかもを撃ち抜かんと暴れ回る雷電爪を、ラッセルが地盾グラウンドを持って余すこと無く受け止めながら、ストレングスルーンとグラウンドルーンを同時に起動。
地盾グラウンドの中央に刻まれたグラウンドルーンが、雷を絶つ『大地』の力を隆起させて雷を無効にした所で、ラッセルが自らに刻んだストレングスルーンによる怪力を持ってシールドバッシュでカウンター。
強烈な盾による殴打に吹き飛ばされ、ウィリアムの呼び出した氷塊に叩き付けられ、血反吐を地面に吐き散らして喘ぐアルマの目前につかさが一瞬で回り込み、そのままその視線をアルマと見つめ合わせた。
――それは、つかさがずっと狙っていた機会。
「終わりよ」
小さく呟きながら、鷹の様に鋭い視線でアルマを射貫くつかさ。
ドン、という鈍い音と共に、体内の一部が爆発し、苦しげに喘ぐアルマ。
だがそれは、つかさにとっては、タイマンの合図。
(「……但し」)
「いや~、つかささん良い仕事しますね。これじゃあ、策士の僕よりも余程策士じゃないですか」
「一気にぶちのめさせて貰うわよ!」
つかさの内なる声に応じる様に、獏ノ進がつかさの影から飛び出して肉薄、己が手の中に隠した小刀『魁隠』で内側からアルマの肉を抉り取り、ガーネットがブラックバングルを光り輝かせ、ドン、と大地にブラックバングルを填めた手を叩き付ける。
振動が凄まじい衝撃波となってアルマを喰らわんと襲いかかり、その全身を打ちのめした。
「場外から茶々は、有りよ」
「こっ……この……!」
指先から雷を打ち出すアルマだったが、拓未によって撃ち込まれた水の矢と、先程用意した避雷針によりそれらは明後日の方向に飛び去っていく。
ならば、と力尽くでつかさを殴り飛ばすアルマだったが、
「統哉兄ちゃん! 姫桜姉ちゃん!」
その隙を見逃さず、クルクルと空中で蜻蛉返りを打った祭莉がアンバーナックルでアルマを殴打。
獏ノ進の強大な刃の一撃、ガーネットの衝撃波にふらふらと頼りなげによろめいていたアルマの体に痣が出来、そこに統哉が鎌を袈裟に振るってアルマを薙ぎ払い、姫桜が二槍を存分に打ち振るう。
白と黒の竜のオーラを纏った二槍が、つかさのユーベルコードによってつかさから目を離せず、殆ど機動力を奪われた状態にあったアルマに迫っていった。
『あなたの咎ごと、私の槍で串刺しにしてあげる! 覚悟なさい!』
schwarzとWeißによる容赦の無い一撃がグサリと、鈍い音と共にアルマに突き刺さり、彼女を氷塊に串刺しに。
「……二人の邪魔はさせませんッ!」
脳裏に怪盗ジョーカーとタクミの事を思い浮かべながら、ケイが自らの両掌に籠めた高圧電流を解き放つ。
雷の竜の如き姿を持ったそれが、拓未の水の矢に射貫かれ、全身を水浸しにしていたアルマの全身を駆け抜け、凄まじい電流となってアルマの全身を感電させた。
「がっ……ガァァァァァ!」
苦しげに喘ぎながらも、出鱈目に自らの手足にある四本の刃を振るうアルマ。
振るわれた刃の一本をつかさは風迅刀で受け流すが、もう一本による攻撃は捌ききれず、急所を外しつつもその体に突き刺さる。
だがつかさはそれを引き抜く様子を見せず、逆に刃が突き刺さった部分に怪力を籠めて、アルマがその刃を引き抜けぬ様に固定した。
「……今がチャンスよ、皆」
「子供が頑張っているのに策士が傷つくことを恐れていても仕方ありませんからねぇ。皆さん、任せましたよ」
魁隠をアルマの身に突き立てたまま、グリグリと捻り込む様に回転させて空気を入れて傷口を更に広げながらの獏ノ進の呟き。
彼へと放たれた刃は、ラッセルが地盾グラウンドで受け止めている。
「フム、分かった。行くぞ、ポイゼ」
『任されましたわ。……フフ、さようなら!』
ラッセルの指示に応じる様に毒精霊ポイゼが見る者をぞっとさせる様な笑みを浮かべて、霧状へと変形していく。
それは、ポイゼ必殺の猛毒形態。
ポイゼ自身の安全性は失われ、本来であれば毒の精霊である彼女の獰猛さが浮き彫りになり、必殺の猛毒でアルマを包み込む。
下手をすれば、つかさ達至近にいる仲間の猟兵達をも巻き込みかねないその毒を、自らの意志で制御したポイゼによる必殺の猛毒がアルマの全身から抵抗する力を奪い去っていく。
「う……うぁぁぁぁぁ……俺が……俺が……!」
毒に力を奪われながらも、尚腐食しつつある腕刃による乱れ斬りで、つかさ達を切り刻もうとするアルマ。
だが、その時には……。
「お~っと、そうはさせないぞ♪」
ヒットアンドアウェイの要領で距離を取っていた祭莉がその身を加速させてその腕刃をへし折っていた。
「こ……この……!」
それでも、と逆手の腕刃を超高速で振るおうとするアルマ。
だがそれは……。
「やらせないぜ!」
「やらせませんよ」
統哉の大鎌で腕刃を切り刻まれ、ケイにサイキックブラストを撃ち込まれ、全身を感電させられ妨害される。
荒い息をつくアルマの様子。
ウィリアムやつかさによってその身を拘束され、獏ノ進にその身を斬り裂かれ、姫桜に串刺しにされ、ラッセルの精霊ポイゼに毒でその身を腐敗させられたアルマを見ながら、ふと、統哉の脳裏にある考えが閃いた。
(「猟兵の存在を広く認知した街の人々」)
「よっしゃぁ! さっさと倒れろぉ!」
ガーネットが叫びながら、上空から二度目の弧を描いた強烈なムーンサルトキックを放つ。
三日月模様を描いたその一撃は、容赦なくアルマの鼻柱を折り、アルマが身動きできなくなるほどの負傷を蓄積させた。
(「……ガーネットが読んだ怪盗とヒーローにのみ焦点を当てた新聞記事」)
そして……分断された戦場。
考えてみれば、おかしな話だ。
これではまるで……怪盗ジョーカーはオブリビオンを撃破する為にオブリビオンの宿敵である猟兵達が来ることが分かっていたかの様では無いか。
(「と、なると……」)
「……なるほどね。怪盗ジョーカー的には猟兵が来る事も織り込み済みだったという訳か」
「その為に、態々オブリビオンの存在を僕達に教えたと統哉さんは言う訳ですか?」
「ああ、そうだ。そもそも、オブリビオンに手を組めと言われたら、ヴィランの彼が断れる筈もないからな」
獏ノ進の問いかけに、統哉が頷き返す。
そこまでの呟きを聞き取った獏ノ進がまさかねぇと眉を顰めて笑顔で統哉を見た。
「悪人である怪盗さんが実は善人だったとか、そんな事を言うつもりはありませんよね」
「流石にそこまでは俺も言わない。ただ、何となく思うんだが……彼は、タクミを殺したくなかったんじゃないのかと思うんだよ」
統哉の言葉に獏ノ進が眉を吊り上げる。
一方で、つかさとケイ、祭莉に姫桜は色々と納得した、と言う表情になった。
「まあ、有り得ない話では無いとは思いますが……」
「恐らく彼の、と言うか彼等の、と言った方が正解かも知れないが」
獏ノ進の呟きに、統哉がこう切り返す。
「彼等の目的は、タクミという若いヒーローを育て、この街の希望となるよう導く事
にある様に思えるんだ」
「……そう言えば、タクミ達と一緒にいた統哉達が会った時、怪盗ジョーカーらしき奴は、ユウキって名乗っていたんだったな」
話を貰ったときの事を思い出しながら、拓未がそう問いかける。
酔っ払ったままの筈のガーネットの脳裏に微かにある考えが閃いた。
「ちょっと待って。その時、統哉達はユウキの漢字については聞いたの?」
「……いや、聞いていないな」
「聞くべきだったのかも知れません。まあ、そもそも現われるとは思っていなかったので全く備えをしていなかったのですから仕方ありませんが」
ガーネットの問いかけに統哉が首を横に振り、ケイが微かに頭を抱える。
考察を進めていく統哉達を攻撃しようとアルマが動こうとするが、ラッセルのシールドバッシュとポイゼの猛毒、姫桜が串刺しにした二槍で傷口を抉ってくる為、身動きが取れない。
更にウィリアムが周囲に氷塊を氷の槍にして展開、その両腕と両足に突き立てアルマのことを完全にその場に縫い止めている。
「くっ……くはっ……!」
最早瀕死の重傷を負っているアルマへと、統哉が黒猫の幻影を解き放ちながら問いかけた。
「心当たりはないかい、アルマ・ニッテカン?」
「……無い!」
アルマが叫んだ丁度その時。
その全身を黒猫の幻影が内側から引き裂いた。
――それは、致命傷となる止めの一撃。
「くっ……そっ……女神の……女神の涙さえあれば……俺は……俺達は……もっと……強……く……」
――それが、アルマが告げた最期の言葉となった。
消えていったアルマの姿を見ながら自分達の傷を癒すべく祭莉がそっと歌を口ずさむ。
――つどう花
――咲きほこり
――想いは
――風に乗って
……と。
「皆さん、お陰様で助かりました。ありがとうございます」
ウィリアムが代表して援軍に来た姫桜達へと礼を述べた。
「気にすること無いわよ。そもそも、貴方達が先に来ていなければ……アルマに追われてヒーローとヴィランの戦いに介入される可能性もあったのだもの」
照れくさそうに目を逸らしつつ姫桜がそう呟くのに、ウィリアムがそうかも知れませんね、と微笑みを浮かべる。
「よ~し、撃破完了! 皆、さっさとタクミを助けにいくわよ!!」
「……完全にできあがっているわね、ガーネットさん」
そのままの勢いで高層ビルから飛び降り、美術館へと急ごうとするガーネットを拓未がCrimson-Blastに乗せて連れて行くのを見ながら、つかさが疲れた様に溜息を一つついた。
●
「又、此処に来ることになるとは思っていませんでしたよ」
獏ノ進が誰に共無くぼやきながら、宵闇に彩られた美術館に足を向ける。
昼に見た時とは違う夜の顔を見せる美術館は、月に照らし出されているのも有り、何処か幻想的な美しさに彩られていた。
「急ぐよ~、統哉兄ちゃん、ケイ兄ちゃん、姫桜姉ちゃん!」
「そうね。戦いに加勢できなくても、せめて結末くらいは見届けないとね」
祭莉の呼びかけに姫桜が頷き返しながら、美術館へと潜り込む。
獏ノ進に連れて行かれたその最奥部では、2つの光がぶつかり合い、爆ぜる音が時折響いていた。
「……やはり、あの怪盗ジョーカーからは、邪悪な意志は感じられませんね」
現場に辿り着き、戦う怪盗ジョーカーとタクミの戦いを見つめながら、ケイが息を一つ吐く。
「タクミ兄ちゃん、女神の涙は、ヒーローが守るものだよね!」
祭莉のタクミへの呼びかけが呼び水となったのか。
ジョーカーが、此方の気配に気がついた。
「フム……勝者はお前達か、猟兵達」
「お前、あの時はよくも……! 何が面白いことだよ、この野郎!」
今にもとっ捕まえてやらんとばかりに暴れるガーネットだが、怪盗ジョーカーはヒラリと身を翻してそれを躱して上空へ。
同時にバサリとマントを展開。
「今回はヒーロー君、君達の勝利だ! 又会おう、諸君!」
笑いながら爆弾の様な何かを周囲に展開し、何処からともなく取り出したスイッチをポチり。
同時に放たれた無数の爆弾の様なそれから大量の白いガスが美術館内を満たしていく。
「催涙弾ですか。いやはや、流石にこれは足下を掬われてしまいましたねぇ」
涙とくしゃみを繰り返しながら獏ノ進がぼやくが、直ぐにゴホゴホと咳き込み、その場に蹲る。
これはつかさ達他の猟兵も例外では無かった。
そう……体が機械化している拓未にさえも、怪盗ジョーカーの催涙弾は効果を発揮していたのだ。
肉体的な攻撃であればさておき、こう言った攻撃に対しては免疫の低いつかさ達猟兵達の傍を通り過ぎ悠々と立ち去っていく怪盗ジョーカー。
――尚、女神の涙は、何故か奪われることは無かった。
●
――暫くして。
催涙弾による攻撃が落ち着いたところで、拓未が駆け寄る。
目に涙を滲ませ、疲労と負傷を受けながらも、白銀のヒーローソードを杖にして立ち続けているタクミの元へと。
「よく頑張ったな、タクミ」
「拓未さん……」
労りを告げながら、拓未が指先から生命賦活電流を発射して拓海の疲労と傷を癒していく。
「くう……まさか私が催涙弾にやられるとは思いませんでしたわ……」
「先程、無理をした代償だろう。今回は仕方ないぞ、ポイゼ」
悔しげに呻くポイゼに労りの言葉を掛けながら、ラッセルがタクミが支えとしていたヒーローソードを見る。
自らが打ち、鍛え抜いたその刃はやはり一切欠けること無く、タクミと共にあった。
その事に満足げに一つ頷くラッセル。
「くっそ~! あんな手を隠していたなんて、あの野郎……!」
悔しげに拳を握りしめ、ブルブルと震えるガーネット。
ガーネットの目は据わったまま、ギロリと拓未へと焦点を当てている。
「アンタ! 今日はトコトンあたしの酒に付き合うのよ!」
「……俺?!」
ガーネットの気圧されんばかりの勢いに、疲労で一つ息をついていた拓未が驚愕の表情になった。
「フム、酒か。それならば私も付き合おうか」
「そうですわね、ラッセル」
ラッセルの頷きに、ポイゼも同意する様に頷いている。
「まあ、僕もずっと前に成人しているわけですが……この容姿で飲むのは流石に不味そうですしねぇ」
飄々とした笑みを崩さぬままに呟く獏ノ進。
「取り敢えず、これで戦いは終わったのよね?」
「ああ、そうだな」
「一先ず当面の危機は去り、怪盗ジョーカーから女神の涙も守り抜けた……大成功と行ったところでしょうね」
姫桜の問いかけに統哉が頷き、ケイも又同意の表情を見せた。
「結局、怪盗ジョーカーの本当の目的は分からないまま、か」
「まあそうですね。ですが、勝利は出来たのです。今はそれで良いのでは無いでしょうか?」
つかさの呟きに答えるウィリアムに、そうね、とつかさが頷き返した。
「……怪盗ジョーカーだったら、おいらの歌と、花弁は散っても、花は散らない事、分かってくれたのかなぁ?」
そう告げる祭莉の言葉に明確に答えられる者はこの場にはいない。
――けれども。
猟兵達は、タクミとこの街をオブリビオンの脅威から守ることが出来たのだ。
その後、タクミと怪盗ジョーカーがどの様な戦いを行っていくのか……。
それは、又別の物語。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年04月20日
宿敵
『『克銘ノ三・刃雷』アルマ・ニッテカン』
を撃破!
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