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おれさまたちの可愛いデイジー

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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 集った猟兵を順繰りに睨みつけ、マクシミリアン・ベイカー(怒れるマックス軍曹・f01737)は鼻で笑った。
「ふん! 地獄が好きそうな連中が、ガン首揃えておいでなすったな! 悪くない!」
 腰の後ろで手を組み背筋を伸ばした姿勢を微動だにさせず、マクシミリアンは怒鳴るような口調で説明を始めた。
「今回貴様らが出向くのは、アックス&ウィザードだ! 剣と魔法の世界だがやることは変わらん! クソを見つけて殺せ!」
 クソとはオブリビオンのことらしい。あまりな説明に戸惑う猟兵を見回して、マクシミリアンは眉を寄せた。
「なんだそのママにアダルトブックを見つけられたハイスクールのガキみたいな面は! 誰が説明しないと言った。辛抱が足らんのは股間のピストルだけにしろ!」
 青少年男子の心を抉る言葉に項垂れる猟兵がいたかどうかは、皆さんのご想像にお任せしたい。
 ともかく、マクシミリアンは説明を続けた。
「今回の肥溜めは、山岳地帯の廃坑だ。山腹から山頂まで続く長く広い穴蔵に、山賊が住み着いている。まず奴らをやれ!」
 なお、山賊は人間と大差なく見えるが、オブリビオンだ。アックス&ウィザードではモンスターと認識されているので、加減はいらない。
 山賊は連携して対応してくるが、特別な訓練はしていないため、戦法は野蛮の一言に尽きる。だが、炭鉱という地の利を生かした罠くらいは設置されているかもしれない。油断は禁物だ。
 また、今回の連中は少し、様子がおかしいらしい。
「奴らは女を囲っているようだ。名はデイジー。予知に見た山賊のクソは、どいつもこいつも色ボケした面でデイジーの話ばかりしている。まったく気色悪いクソどもだ!」
 苦々しく吐き捨てつつも、マクシミリアンの姿勢は揺るがなかった。
「デイジーの容姿などについて、予知では確認できなかった。ただ、洞窟を抜けた山頂にいることは、奴らの会話から間違いない。捜索し、要救助者なら命懸けで助けろ。敵の協力者なら捕らえて尋問しろ。オブリビオンなら殺せ!」
 任務としては、非常にシンプルだ。猟兵たちは役割を確認し、各々が頷いた。
 全員に情報が伝わったことを確認し、マクシミリアンは真顔で付け加えた。
「穴蔵には、山賊どもが蓄えた酒や食料があるはずだ。戦利品は貴様らで責任を持って処理しろ! それをもって任務終了とする!」
 つまり、戦闘後には宴会が待っているということだ。
 思わぬ褒美に驚く猟兵を、マクシミリアンはやはり真顔で睨みつけ、美しい敬礼をした。
「命知らずの猟兵どもに、敬礼! 怪我をするなり酔い潰れるなりしたら、俺が回収してやる。俺に感謝しながら、好きなだけ暴れて、ぶっ倒れるまで飲んでこい!」


七篠文

 どうも、七篠です。
 今回はアックス&ウィザードで、山賊退治です。いつもに比べてシリアス度激薄です。

 主な戦場は洞窟ですが、非常に広いので、そうしようと思わない限り、武器が壁に引っかかることはありません。
 どうやら山賊は、デイジーなる存在にベタ惚れで、彼女を喜ばすことに生きがいを感じているようです。
 デイジーは山頂の広い空間にいます。彼女を見つけて対応すれば、メインの仕事は終わりです。

 三章は日常パートです。山頂の広場で大宴会です。
 酒はたらふくあるでしょう。食材も、人々から奪ったものが貯蓄してあります。
 どうせ持ち主は見つからないので、悪くなる前に食べてしまいましょう。
 討伐任務に参加せずとも、宴会へ遊びに来るだけでも歓迎です。山賊団とデイジーを養えるだけの食料があります。

 三章の間は、転送任務のためにマクシミリアンが常駐します。
 指定がなければ登場しませんが、声をかけたり、飲みに誘ったりしてくだされば、反応します。

 七篠はアドリブが多く字数も多いので、シンプルなリプレイがいい方はお知らせくださいね。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしています。素敵な冒険を!
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第1章 集団戦 『山賊』

POW   :    山賊斬り
【装備している刃物】が命中した対象を切断する。
SPD   :    つぶて投げ
レベル分の1秒で【石つぶて】を発射できる。
WIZ   :    下賤の雄叫び
【下卑た叫び】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

純・ハイト
敵を倒して捕まっている人達を助けるために先に敵味方の区別しないといけないと考えて戦神フェアリー(ミリア・レイナ(女))を召喚して
「敵は山賊です、精兵フェアリーの軍勢を召喚して指示しながら山賊を倒してください。後、一部を捕虜にできたら完全拘束をして捕虜し私の前に、連れて来て他に仲間がいないか拷問をしながら聞いてください」
戦神フェアリーにそう言って質問があれば答えて自身は安全な位置から【戦闘知識】で必要な指示しながら状況を見ていく。
敵の士気が高いならユーべルコードの戦神フェアリーの鼓舞を使って味方を鼓舞をしながら必要あればユーべルコードの戦神フェアリーの軍勢も使う。


トリテレイア・ゼロナイン
デイジー…要救助者ならば騎士としてお助けせねばなりません
ですがこの世界、他者を魅了して配下にするハーピィの存在が頭を過ります
その類との交戦も想定しておかねば

機械馬に「騎乗」して廃坑に突入、「武器受け」「盾受け」で攻撃に対処しつつ「怪力」で振るう槍と盾、馬による「踏みつけ」で山賊を排除します。

廃坑内の罠が気にかかります。考えられるのは暗闇と死角を利用した罠や潜伏場所、落とし穴でしょうか
「暗視」で注意しつつ自分が「だまし討ち」するならと思考して予測して対処します。
味方への被害を抑えるためにワザと罠に掛かってみるのも手かもしれません
味方が罠に掛かりそうなら率先して「かばい」ましょう




 山腹の入り口から廃坑に突入した猟兵たちに、山賊は素早く反応した。
「なんだてめコラー!?」
「ぶっ殺すぞボケカスオラーッ!?」
 広大な空間に山賊どもの罵声が反響する。どこからか湧いてきた山賊の数を把握しようとしたが、純・ハイト(数の召喚と大魔法を使うフェアリー・f05649)はすぐに諦めた。
「いちいち数えていられませんね。まずは敵を倒して、捕まっている人を助けなければ」
「えぇ。要救助者であれば、私も騎士として必ずお助けせねばなりません。しかし――」
 巨体をさらに巨大な機械馬「ロシナンテⅡ」に乗せて、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は遥か高みから山賊どもを見下ろす。
 山賊どもは口々に、「デイジーちゃんを守れ!」「デイジーはには指一本触らせねぇ!」「あぁクソ死ぬ前にデイジーたんに会いたい!」と叫んでいる。
 どの山賊も、デイジーの名前を連呼しているのだ。
「……オブリビオンによる魅了の線、忘れてはなりませんね」
「確かに。でもまずは、ここを突破しましょう。戦神フェアリーよ! 我らを助け、敵を滅ぼしてくれ!」
 手を掲げて唱えた純の声に呼応して、眼前に新たな妖精が現れた。身の丈からは信じられない巨大な剣を持った女の妖精は、名をミリア・レイナという。
 純は迫りくる山賊を見つつ、落ち着いて戦神フェアリーに告げた。
「敵は山賊です。精兵フェアリーを召喚し、指示をしながら倒してください。捕虜を取れたら、俺の前に」
「私も共に行きましょう。純様の戦士を守る盾になれるはず」
「頼みます。では各自、進めッ!」
 敵に向けられた純の腕を合図に、戦士たちが猛進する。トリテレイアが巨大な馬で先陣を駆け、戦神フェアリーと彼女が呼んだ配下のフェアリー軍が後に続いた。
 かつては荷物の運搬や簡易宿泊所が立ち並んでいただろう広場が、戦場と化す。敵陣と衝突したトリテレイアは、群がる斧やら剣やら棒きれやらを盾でいなし、槍を振り回して山賊をなぎ倒していく。
「うおぉぉぉ! デイジーちゃんには指一本触れさせんッ!」
「そのデイジーとは、あなた方の協力者ですか?」
「誰がてめぇなんかに教えるかクソアホボケがッ!」
 頭の悪そうな語彙で口汚く罵る山賊を機械馬の一蹴りで黙らせ、トリテレイアは大盾を構えた。
 純のフェアリー軍が、戦神フェアリーを先頭に敵とぶつかる。激しい剣戟と悲鳴に近い「デイジーちゃん!」という声があちこちから湧き上がる。
 フェアリー軍は非常に統率が取れていた。戦神の指示もさることながら、最後方から指揮をする純の力によるところが大きい。
 トリテレイアもまた、その作戦に乗った。フェアリーたちの攻撃に合わせて、大盾と巨体を活かして敵の攻撃から味方をかばう。
 金属の体に斧やら剣やらが当たるたび、微小なダメージはある。しかし、フェアリー軍の火力消耗を抑えられることを思えば、あまりに安い代償だ。
「罠があるかもしれませんね」
 暗視を起動し、周囲に警戒を配る。しかし、それらしいものは見つからなかった。ここは入口にほど近く、山賊どもが頻繁に使うからだろうか。
 代わりに、ひかり
「回り込め!」
 純の声が響く。合わせて、トリテレイアは馬を操り敵の正面に向けて、大盾と槍で牽制する。
 フェアリー軍が敵を包囲する。さらに、純が叫んだ。
「殲滅しろ!」
 囲まれた山賊どもに、フェアリーが殺到する。
 しかし、山賊は諦めない。誰かが汚くしわがれた声で、フェアリーの喊声に負けじと叫ぶ。
「おめぇら、気張りやがれ! デイジーちゃんが攫われてもいいのか!」
「はぁーッ!? こいつらデイジーちゃん攫いに来たのかよ! もう殺す、絶対殺す!」
「デイジーちゃんは俺の嫁だ! てめぇら妖精如きにくれてやるかよぉ!!」
「ふざけんな! デイジーは俺のもんだ!」
「てめぇさっきからデイジーたんを呼び捨てにしてんじゃねぇよ! スッゾテメー!?」
「ア!? ヤッゾ!?」
「オ!?」
 誰と争っているのか分からないが、山賊が力を漲らせ、フェアリーの軍勢を押し返していることは間違いない。
 戦神フェアリーが振るう大剣やトリテレイアの巨大な槍の一突きを受けて吹き飛んでも、死ぬ間際までデイジーの名前を呼び続ける山賊たち。
 その必死さに、トリテレイアは混乱した。
「……私たちが、悪者のようですね」
 明らかに錯覚なのだが、山賊のデイジーへの執着が強すぎる。
 ともかく、敵はオブリビオンだ。いかに愛情に似た感情――そうは思いたくないが――を持っていたとしても、この世界にとっては、害になる。
「なおさら、デイジー様にお会いしなくてはなりませんね」
 機械馬の脚で山賊を踏みつぶし、大盾で殴り飛ばして攻撃を防ぎ、着実に押し込んでいく。
 山賊たちはいかにも野蛮な武器を振り回し、フェアリー軍に少なからぬ打撃を与えている。
 所存賊の集まりとはいえ、奴らはオブリビオンだ。いかな精兵といえど、人間離れした膂力から放たれる一撃を食らえば、ただではすまない。
 しかし、味方の死を直視しても、精兵フェアリーたちの士気は衰えない。さすがは戦神の配下だと、トリテレイアは胸中で唸った。
 山賊は徐々に数を減らしていった。しかし、抵抗が緩むことがない。
「俺たちのパラダイス穢すなオラッ!」
 振るわれた手斧を槍で受け止め、トリテレイアは淡々と言った。
「そのパラダイスとやらは、誰かの財を奪って成り立っていたのでしょう。そのような戯言、騎士として許すわけにはいきません」
「ッセコラー! 俺たちは山賊コラーッ! アーッ!?」
 槍の一突きで倒れる山賊。もはや言葉は無用と、トリテレイアは盾と槍で山賊を追い詰めていく。
 ついに最後の一人となり、暴れる山賊を戦神フェアリーが捕縛した。
 戦闘終了を確認し、捕らえられた山賊に歩み寄って、淳が言った。
「お前には聞きたいことがある」
「……へっ。言わせてみろよ」
 顎髭の山賊が、息も絶え絶えながら笑ってみせた。トリテレイアと純は、その様子に尋問が難しいと感じた。
 どのみち殺すことになる。死を覚悟した相手の口を割ることは、容易いことではない。
 それでも、無駄にはならないはずだ。純は戦神フェアリーに大剣を喉元に突きつけさせながら、尋ねた。
「デイジーさんは、どこにいる?」
「さぁね」
「その人は、人間か?」
「知るかよ」
「……お前たちとの関係は」
「腹減ったな。おい、やるならさっさとやれよ」
 戦神フェアリーの剣が喉に食い込み、血が滲んでも、山賊は答えない。
 何が彼をここまで強固にしているのだろうか。純は腕組みし、いっそ別の山賊を探すべきかとも考えた。
 その前に、トリテレイアが馬から降りて山賊の前に膝をついた。
「私からも一つ」
「答えねぇっつってんだろデカブツ。てめぇ馬鹿か? 耳にクソでも詰まって――」
「彼女の、魅力は?」
「まずなんといっても、豊満な体だな。尻を振って近づいてくる時なんか、ありゃたまんねぇぜ。真っ赤な唇もいいな。クリっとした瞳も悪くねぇ。赤いドレスも似合っててよ、ありゃ完全に俺たちを誘ってやがるぜ。ちっとばかしじゃじゃ馬なんだがな、それもまたそそりやがる。何よりあいつ、俺たちと一人の漏れもなく寝やがった。へへ、信じられるか? まぁよく食う女だからよ、飯は高くつくが、デイジーと寝れるなら安いもんだぜ」
「そうですか。もう結構」
 顎髭の山賊は、トリテレイアの文字通り鉄の拳を顔面にめり込ませて沈黙した。
 立ち上がって機械馬に騎乗するトリテレイアに、純はため息をついた。
「大した情報は、得られませんでしたね」
「連中は人より知性が下がっていますから、仕方ないでしょう。それに、山頂に行けば分かることです」
「えぇ。では、いきましょうか」
 広い広い坑道からは、まだまだ山賊たちがデイジーの名を叫ぶ声が反響している。
 戦いはこれからだ。真実を確かめるためにも、山頂への道を切り開かねばならない。
 トリテレイアを先頭に、純は妖精軍を率いて、廃坑の奥へと進んでいった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルミィ・キングフィッシャー
(この展開だとデイジーってあれだよなあ)

まあいい、ちゃっちゃと片付けちまおう。廃坑ならいくらでも罠仕掛けられるし。…向こうが罠を仕掛けている場合もあるな。気をつけていこう。

基本は隠密をしながら進んで、気付かれた時はUC隠者の指輪で隠れてやり過ごす。都合のいい所でレプリカクラフトを使って転がる岩を適当な大きさで作って複数の盗賊をなぎ倒していく。
後はトラバサミとか用意して、盗賊たちがたむろしている道の前に仕込んだりとか。とりあえず撹乱しておこう。

言葉を交わす機会があったらデイジーとやらの特徴を聞いておこう。
(どうせモンスターだとは思うが)
…女の形したやつならまあ救いもあるかね。(罠に盗賊を投げつつ



「てめぇらなんぞにデイジーちゃんは渡さアーッ!?」
 トラバサミに足を噛まれ、頓狂な声を上げる山賊を横目に、アルミィ・キングフィッシャー(「ネフライト」・f02059)は廃坑を進んだ。
 味方の猟兵に山賊が気を取られている間に、坂道の上を目指す。
「この展開だと……デイジーって、あれだよなぁ」
 小声でぼやきつつ、いい塩梅の坂を陣取り、レプリカクラフトにより手頃な岩を作り出す。
 坂の下で、山賊どもがアルミィに気づいた。十人ほどの男どもが、こちらに剣を向けて叫ぶ。
「アッテメー! 上行ってんじゃねーよ! デイジーちゃんを攫う気か!?」
「誰とも知らない人を、アタシが攫う理由があるのかい?」
「人攫いに理由なんかアッカボケー!」
「……そういや、あんたら山賊だったね」
 アルミィの足元にある岩を恐れもせず、山賊たちはデイジーの名を叫びながら、坂を上ってくる。
 妙な連中だが、慈悲はない。アルミィが蹴った岩は、坂を猛スピードで転がっていく。
「デイジーちゃん、デイジアーッ!」
「てめぇデイジーちゃんに傷つけてみろ身ぐるみはがして野犬に食わアーッ!」
 岩に轢きつぶされていく同胞を顧みずに、山賊たちはアルミィへと一直線に向かってきた。
 岩をすべて避け切った山賊は、三人だけだった。アルミィは反転し、坑道の奥へと進む。
「待てコラー! デイジーちゃんに会いたきゃアポ取れコラー!」
「馬鹿言うんじゃないよ」
 呆れた笑いすら浮かんでくるが、いちいち相手をしていられない。
 山賊たちは足元の小石を拾って、凄まじい速度で投擲してくる。
 一瞬ヒヤッとしたものの、冷静に対処すれば避けられないものではない。アルミィはそのすべてを回避してみせた。
「アーッ!? なんで避けられんだテメー!」
 この投擲で多くの略奪を行なってきたのだろう。とっておきの技を見切られ、山賊が混乱している。
「アタシはアンタらより強い。それだけさ」
「だったら逃げんなテメー!」
「それとこれとは話が違うよ。悔しかったら捕まえてみな!」
 意地悪く舌を出しながら答えて、アルミィは走った。
 適当な道を曲がり、即座に指輪に触れる。瞬間、アルミィの体は不可視となった。追いかけてきた山賊が、悲鳴じみた声を上げる。
「あいつどこいっきゃがった!?」
「テメ見失ってンオラー!」
「アッ!? てめぇで探せボケコラー!」
 目の前にアルミィがいることにも気づかずに、山賊は殴り合いを始めた。
 騒ぎを聞きつけ、山賊どもが集まり始める。アルミィはすぐさまその場を去った。
 指輪の効力が消えて姿を現すと同時に、山積みにされた木箱の影に身を隠す。
「さて、どうするか」
 山賊のケンカ騒ぎと猟兵たちの戦いにより、廃坑は音が飛び交っている。足音の心配はないだろうが、神経過敏になっている山賊に気づかれれば厄介だ。
 坑道を進み、トロッコが山積みにされた小部屋に出た。中からは、鼻歌が聞こえる。水の煮える音と、何やらいい匂いもしてきた。
 慎重に様子を伺う。一人の山賊が、エプロンをつけて調理をしていた。かなり大きな鍋だ。
「ふんふんふふーん。デイジーお嬢、俺の料理気に入ってくれっかな。今日は待ちに待った料理当番、猟兵の相手なんか~してられっかボッケカッス~」
 妙な歌を歌っているが、この男も例に漏れず、デイジーにぞっこんらしい。
 どうせモンスターだとは思うが、アルミィはデイジーとやらの特徴に興味を持った。
 トラバサミを設置し、素早く山賊コックに近づいて、背中を無造作に掴み上げる。
「……女の形をしたやつなら、まぁ救いもあるがね」
「アッ!? なんだテメェコラアーッ!?」
 山賊コックは宙を舞った。その足は見事にトラバサミの上に着地し、勢いよく挟まれる運びとなった。
 悲鳴を上げかけた山賊コックの首にダガーを突きつけ、黙らせる。
「デイジーとやらにもう一回会いたいなら、静かにしな」
「な、なんだてめおらー……」
 弱気な怒声を上げる山賊コックは、足の痛みからか、額に汗を浮かべていた。
 アルミィは油断なく睨みつけながら、端的に問う。
「デイジーとかいう女の特徴を教えな」
「お嬢の……? お前まさか、そっちのケが」
「そんなに死にたい?」
「いや! わかった。可愛い女の子を愛でたい気持ちに性別は関係ねぇ。そうだな、その通りだ」
 何が分かったのか、アルミィには分からなかった。しかし、掘り下げたいのはそこではない。
 黙って睨みつけると、山賊コックは何度も必死に頷いた。
「お、お嬢の特徴だな!? そりゃなんといっても……俺はあの声が好きでよ。甘え声が、まぁ男心をくすぐってな」
「……声」
 歌によって人々を操るオブリビオンには、心当たりがあった。
 一瞬の思考の隙をついて、山賊コックが最後の抵抗に出た。死角で握りしめていた包丁を、アルミィに向かって振るう。
「シネコラー!」
「ッ!」
 咄嗟に回避し、アルミィはダガーを振り抜いた。喉を斬られた山賊コックが、倒れる。
「デ――イジ――お、嬢――」
「今度はちゃんと未来に生まれて、もっといい女を探しな」
 死にゆく山賊コックに告げて、立ち上がる。結局デイジーの正体は掴めなかったが、大した問題ではない。
 猟兵が山頂に辿り着けば、全てが明るみなるのだ。アルミィはその目的のために、陰に潜み、敵を減らすことに専念するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイル・コーウィン
山賊達が集めた酒や食料があるって事は、金品財宝もきっとどこかにあるはず!
早速トレジャーハントと洒落込む事にするわ!

さてトレジャーハントの前に、まずは薄汚い山賊共の相手をしなきゃね。
メインで使用するユーベルコードは「シーブズ・ギャンビット」。
普段から服を脱ぐ必要も無いくらいの軽装だから、速度もそれなりに出るはず。高速のダガー捌きで次々と蹴散らしていくわ。

まあ、どれだけ数がいようと所詮は雑魚敵。
私を捕らえる事なんて不可能よ!(フラグ)




 山賊といえば、略奪である。
 酒や食料の強奪以外にも、時折街道をゆく行商などを襲っていれば、この廃坑に金銀財宝があってもおかしくはない。
 アイル・コーウィン(猫耳トレジャーハンター・f02316)の目的はそれだった。デイジーという女に対して興味はあまりなく、彼女はついて早々、生業のトレジャーハントとしゃれ込んだ。
 味方と敵の間をすり抜け、素早く廃坑の奥に進んだアイルは、トレジャーハンターとしての嗅覚を働かせた。
「こっちから、お宝の匂いがするわ」
 舌なめずりをしつつ、ダガーを構えて駆け抜ける。すぐに、山賊がこちらに気づいた。
「ナンテメー! デイジーちゃんのとこには行かせねオラー!」
「興味、ないわ!」
 非常に軽い装備状態から繰り出される神速の一閃を、山賊如きが見切れるはずもなかった。
 その手応えから、アイルは確信する。この程度なら、どれほど数を揃えようと、一人で対処できる。
「答えなさいッ! あなたたち、お宝を、どこに、隠してるの!」
「宝? 宝っつったらデイジーちゃんに決まってんアーッ!?」
 うんざりするほどデイジーという単語を浴びせられ、アイルはさすがに苛立ち始めていた。
 彼女が欲する宝といえば、この世界においてはやはり金貨である。
「別の世界でも、金ってだけで価値があるしね」
 ダガーを振るいながら、アイルの心はすでに金銀財宝へと飛び立っていた。
 だから、アイルは気づけなかった。山賊どもの、アイルを見る目が変わっていることを。
「……こいつ、よく見りゃいい女だなァッ!」
 振るわれた斧が、背中をかすめる。傷は避けたが、薄いジャケットとその下に着ている胸元だけを覆うシーフの服が、綺麗に両断されてしまった。
「うそっ……」
 服を抑えていなければ、胸元が露になってしまう。
 山賊どもが、アイルに向かって下卑た笑みを浮かべた。いやらしい視線に、後ずさる。
 アイルの心に、羞恥と恐怖が芽生えた。それが、完全な隙となった。
「剥ぎ取れぇッ!」
 酒焼けした声を合図に、複数の腕がアイルに伸びる。服を抑えるのに必死で、それを振り払うこともできない。
 あっという間に上着を剥ぎ取られ、アイルは壁際に追い詰められてしまった。完全に不覚を取った形だ。
「ちょ、待った! あなたたち、デイジーって子に夢中なんでしょ? 私なんかに手出したら、嫌われるわよ。女の嫉妬は、怖いんだから!」
「へっ! デイジーたんがそんな程度の低い女かっての!」
「まぁてめぇはデイジーちゃんに比べりゃ全然だが……悪くねぇ、上玉だ。人買いに売る前に、俺たちで楽しませてもらうぜ」
 万事休す。アイルは覚悟を決めた。豊かな胸元をさらけ出すことを構わずに、ダガーを構える。
 もはや隠すもののなくなったアイルの胸に、山賊が下卑た笑い声をあげた。
「ヒュー! いいねぇ、俺の手じゃ収まんねぇぜ」
「へへ、今夜はこの女で楽しませてもらうかぁッ!」
 現れた山賊の本性に、アイルは背筋に冷たいものを感じた。
 しかし、連中を倒し切ってしまえば問題ない。少々臭うが、敵の服を奪うこともできる。
「野郎ども、早いもん勝ちだ! やっちまえ!」
 襲い来る山賊を、アイルはその全力をもって迎え撃つ。
 羞恥心を押し殺し、上半身に何も纏わないアイルの一撃は、さらにその速度を増していく。体中に伸びる手を斬り、首を裂き、蹴り飛ばす。
 それでも敵はひるまない。群がる手に体中を触られ、不快な感触に歯を噛みしめながら、アイルは男どもの輪から脱した。
 衣服を拾う暇はない。一度どこかに身を隠し、態勢を整えなければ――。
「逃がすかよッ!」
 声とともに、山賊が石つぶてを投げる。高速の投擲だ。何発かは避けたが、うち一発を膝裏に食らい、アイルは派手に転倒した。
「あっ! くっ……」
 立ち上がろうとしても、足に力が入らない。当たりどころが悪かったと見える膝は、震えるばかりで動かない。
 またも、山賊に囲まれた。立ち上がれないアイルに、禿げた山賊が覆いかぶさる。他の山賊が、アイルの手を踏みつけて固定した。
 禿げた山賊の息が、アイルの顔にかかる。
「デイジーちゃんは、忙しくてよ……。なかなか俺たち全員の相手は、厳しくてな。特に俺ぁ、最近会えずに鬱憤が溜まっててよぉ」
 臭い息が、首から下に降りていく。普段は布で覆われた敏感な肌を、いやらしい息が伝っていく感触に、アイルは浮かびかけた涙を押し殺すのに必死だった。
 一瞬の隙だ。チャンスを掴めば、まだいける。膝も、感覚が戻ってきている。
 囲む山賊は五人。不意を突けば、一瞬で葬り去れる人数だ。
 禿げの山賊が、そのゴツゴツした手でアイルの柔らかな体をまさぐっても、必死にこらえた。
 大きな手が、ついにアイルのホットパンツにまで手を伸ばした、その時だった。
 脱がされるホットパンツに釘付けになった山賊が、手を踏む足の力を緩めたのだ。
「今ッ!」
 手を踏みつける足を力任せに押しのけ、ダガーを掴んで、被さる禿げ頭に突き刺す。即死した山賊を蹴り上げて、その反動で立ち上がる。
 もはや全裸に近い状態だが、山賊たちはさすがに慌てて武器を取った。
 しかし、遅い。ダガーを一閃、それだけで、手を踏みつけていた山賊が二人死んだ。
 反転し、支えのない胸の感触にわずかな困惑を抱きながら、斧と鉈を振りかぶる残りの二人の手を斬り跳ねる。
 返す刃で喉を裂き、最後の山賊が倒れた。
「……ふぅ……」
 もう、アイルの痴態を見る者はいない。壁に寄りかかり、廃坑の湿った空気に裸体を惜しげもなく晒して、内側からこみ上げる熱を逃がす。
 油断した。もし反撃に転じられなければ、どうなっていたか。想像もしたくない。
「お宝探しは、もっと慎重にやらなきゃね」
 山賊の衣服を着ようとしてその臭いに顔をしかめ、アイルは衣服をダガーで切り裂いた。
 一枚の長い布にして、胸元だけをうまく隠す。背中を通して胸の前で縛るだけの、支えとしても防具としても、あまりに心もとない代物だが、ないよりはいい。
「自業自得、だもんね。うん、次はうまくやるわ」
 今もなお体に残るおぞましい感触を、頭を振って追い出す。
 いついかなる時も、冷静に、慎重に。トレジャーハンターの鉄則を再確認して、アイルは廃坑を進んでいく。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

露木・鬼燈
山賊ですか。
下品で粗野な姿とはいえ見た目だけはヒトだからね。
こーゆーのダメな人はダメなんだろうね。
僕は平気だけど。
むしろヒト相手には倫理的にダメな戦い方も試せるのでおいしい獲物っぽい!
積極的に狩っていかないとね!
今回の戦場は炭鉱だし秘伝忍法でムカデを呼ぶべきだよね。
ムカデの生息域的には得意な環境っぽい。
センサー等もあるから罠や不意打ちへの対策もおーけーなのです。
戦闘は棒手裏剣と体術を中心にする方がいいかな。
大剣はともかく連結刃を振り回すのは大変だよねー。
まぁ、練習を兼ねて少しは試すけどね。
同行者は…良い子にはお見せできない映像となるのでどうかな?
いなくても仕方ないね。
準備完了、出撃するっぽい!




 山賊に人権はない。奴らはモンスターだからだ。
 とはいえ、その姿は人のそれだ。あまりに下品で粗野な容姿だが、人の言葉を話し、感情もある。
「こーゆーの、ダメな人はダメなんだろうね」
 言いながら、露木・鬼燈(竜喰・f01316)は斬りかかってきた山賊の腕をへし折り、みぞおちに拳を叩き込んでから頭を掴んで地面に押し倒し、その頭部を踏み砕いた。
「ま、僕は平気だけど」
 鬼燈の周囲には、無数の山賊がいる。デイジーのところには行かせないと息巻く賊どもは、血走った目をしていた。
 肌に張り付く殺気の中、鬼燈はぺろりと舌を出し、黒い連結剣の柄を握った。
「いろいろ試せるし、むしろおいしい獲物っぽい!」
 相手が人間であり、周りに味方がいるとなると、どうしても遠慮が入る。本気で戦ったとしても、倫理観が脳裏にちらつくのだ。
 しかし、今は違う。猟兵は散り散りに山頂を目指し、鬼燈は一人だ。そして、敵は人と同じ形をした、人ならざる者。
 そこに挟むべき道徳は、ない。
「積極的に狩っていかないとね!」
 獰猛な笑みを浮かべて、鬼燈は狩猟本能に近い闘争心を震わせる。
 恐れず襲い掛かってくる山賊に、棒手裏剣を二本投擲する。両の眼球に突き刺さり、山賊が悲鳴を上げた。
「アーッ!? デイジーちゃんを見つめるための目が!」
 鬼燈はすかさず連結剣を振るった。のた打ち回る山賊の体に巻きつき、肉を裂きながら引き寄せる。
 刃を体に食い込ませた山賊の顔面に蹴りを入れ、棒手裏剣を脳髄に押し込む。山賊は奇怪な叫びを上げて激しく痙攣、絶命した。
 着地同時にしゃがんで、足払い。棍棒を空振りした山賊が、仰向けに転倒する。連結剣を大剣に変形させて、胴を叩き斬った。
 剣はここでは取り回しが悪い。鬼燈は大剣を地面に突き刺して、徒手空拳に切り替えた。
 死んだ仲間を見ても、山賊たちは止まらない。その威勢だけは褒める価値しれない。
「じゃあ僕も、とっておきを見せてやるです!」
 忍術の構えを取った鬼燈に、山賊が警戒する。しかし、超自然的な現象は起こらなかった。
 一瞬の沈黙の後、山賊が怒声を上げる。
「ナンテメー! ハッタリかオラー!」
 鉈や斧などの、粗悪な刃が振り上げられる。忍術の構えを解かずに、鬼燈は目を輝かせた。
「来いッ!」
 突如、鬼燈の足元から巨大なムカデが現れた。土の中から這い出したそれは、鬼燈の身長の倍近い体躯を持つサイボーグだ。
 足を止める山賊に、ムカデが襲い掛かる。その牙に腹を食い破られて、二人の山賊が転がった。
「秘伝忍法、凶。こいつはなかなか、凶悪っぽい!」
 穴の壁や天井を高速で移動し、あらゆる方向から襲い掛かるサイボーグムカデに、山賊が必死に得物を振るう。
「来い、ムカデ野郎! デイジーちゃんのところには行かせねぇ!」
 完全に籠絡されている山賊たちを見て、鬼燈は以前戦ったハーピーを思い出した。あれもまた、人やオブリビオンを魅了して仲間に引き入れる手合いだ。
 山賊も、そうした力に操られた口だろうか。もしそうだとしたら、気の毒なことではある。
「ま、だからなんだって話だけどね」
 不意に裏拳を振るい、背後で剣を振り上げていた山賊の顔面を打つ。鼻骨を粉砕され、激痛に悶える山賊の剣を奪って両手を切断し、すぐに首を撥ねた。
「んー、今のは二度手間かな。首だけでよかったかも」
 剣を放り、賊の顔面を貫く。同時に身を翻し、鬼燈は飛んでくる石つぶてを回避した。
 接近戦は不利と見たらしい山賊が、石つぶてによる遠距離戦法に切り替えたのだ。
「死にさらせオラーッ!」
 投げられるつぶての狙いは甘い。が、その弾速は直撃すれば脅威と成り得る。
 全身を駆け抜ける緊張感に、鬼燈は笑いが止まらなかった。
「あは! いいねいいね、こうでなくっちゃ面白くないです!」
 つぶてを回避しつつ、サイボーグムカデが跳ね飛ばした山賊を掴んで、盾にする。
 味方の石つぶてを連続で背中に受けて、賊はくぐもった悲鳴を上げながら事切れた。
 盾として機能しなくなるほどボロボロになった山賊を放り、次なる獲物に狙いをつける。直後、鬼燈は背中に凄まじい衝撃を受けた。
「いっ――!」
 息を塊で吐き出し、背中の痛みを殺して振り返る。身を潜めていたと見える山賊が、大きな鎚を振り抜いていた。
 まさか、一撃をもらうとは。鬼燈はその痛みを喜んだ。
「僕の不意を突くなんて、やるですね」
「オッコラ! ナメテンジャネッコラー!」
 勢いづいた山賊が、鎚を振り上げる。しかし、二度目はなかった。
 素早く踏み込み、気を纏わせた手刀を突きだす。山賊の皮鎧を突き破り、心臓を貫いた。
 振り上げた姿勢のまま、山賊の目から光が消える。
「デイジーちゃん、すまねぇ……」
 手が引き抜かれ、山賊が力なく倒れた。血塗れの手を振るいながら、鬼燈は死体から目を外す。
 サイボーグムカデが、鬼燈の体にまとわりつく。その姿は、女性的な顔立ちと絢爛な着物も相まって、化け物を従えた妖術師のようだ。
 得物を構えて襲い掛かるタイミングを計る山賊に、鬼燈はサイボーグムカデの顔を撫でた。
「まだまだおかわりし放題っぽい。残さずいただくですよ!」
 ムカデが這い出し、山賊が雄叫びを上げた。鬼燈もまた、賊の群れに単身、飛び込んでいった。 

成功 🔵​🔵​🔴​

アイル・コーウィン
くっ……まさか山賊達にあんな事されるなんて。
ちゃんと慎重に動かないと今度こそ……いえ、変な想像は止めましょう。

そういえば、お宝はデイジーとか言ってた山賊がいたわね。
それってつまり、お宝はデイジーという奴の側にあるんじゃないかしら?
うん、きっとそうだわ。ならそいつの居場所とかを聞き出さないとね。

洞窟内に「レプリカクラフト」にて精巧な「仕掛け罠」を作成して、山賊を生け捕りにするわ。
罠は逆さまに吊るせる例の奴でいこうかしら。

っと、ここまではいいけど、脅し程度で山賊が素直に情報を喋ったりするかしら?
さっきの事もあるし、変な交換条件とか出されそうだけど……情報の為には多少の覚悟は必要よね、うん……。




 体に残る感触に顔をしかめながら、アイル・コーウィン(猫耳トレジャーハンター・f02316)はさらに奥を目指す。
 敵はデイジーなる女に夢中だと聞いていたので、完全に油断していた。
「くっ……。まさか山賊たちに、あんな事されるなんて」
 自分がそんな目で見られるとは思わなかった。あらゆる可能性を考慮してはいたが、よもやあんな目に合うとは。
 ただでさえ軽装だったのに、革製のシーフ服もなくなってしまった。アイルの上半身を守るのは、胸に巻いた布切れ一枚だ。
 慎重に動かなければ、今度こそ――。
「……変な想像はやめましょう」
 頭を振りながら自分に言い聞かせる。だが、アイルはまだ金銀財宝を諦めたわけではなかった。
「そういえば……お宝はデイジー、とか言ってた山賊がいたわね」
 倒した山賊の言葉を思い出し、アイルは唇に指を当てる。
 もしあの言葉に意味があるとするならば、それはデイジーという人物のそばにお宝があるとも考えられる。あるいは、デイジーが宝の番人という線も。
「うん、きっとそうだわ」
 先ほどの恐怖はどこへやら、気を取り直したアイルは、戦闘の気配がする通路から細い道に入り、奥まった小部屋に飛び込んだ。
 使われていない倉庫のようだった。ここならば、尋問にうってつけだ。アイルは早速精巧な罠を仕掛けた。
 あとは誘い込むだけだ。通路に戻って、適当な山賊に小石を投げつける。
「イッテコラー! ア!? 誰だテメッ!」
 山賊がアイルに気づく。即座に小部屋へ走り、木箱の陰でしゃがみ込む。追いかけてきた山賊が、あたりを見回している。
「アマッコラー! どこ消えやがった!」
 慎重さがまるでない山賊は、斧を振り回しながら突き進み、部屋の中心を踏み抜いた。
「出て来いアーッ!?」
 罠にかかった山賊は、足を取られて天井に吊るされた。さかさまの状態で宙ぶらりんになり、わめきながら斧を振り回す。
「下ろせオラ! 下ろせオラーッ!」
「静かにしなさい。今すぐ殺すわよ」
 努めて冷酷に言って、アイルは山賊の前に躍り出た。天井まで足を持ち上げられた山賊の頭は、ちょうどアイルの目線の高さにあった。
 即座に斧を奪い取り、ダガーを突きつける。
「あなたには聞きたいことがあるの」
「……殺せ。俺は言わねぇ」
「そんなに難しいことじゃないわ。デイジーって、何?」
 単刀直入な質問だが、山賊は口を閉ざしたままだ。
「……デイジーって子が大事なのね。分かった、じゃあ質問を変える。あなたたちが蓄えているお宝は、デイジーのそばにあるの?」
「は?」
 一瞬呆けた顔をしたが、山賊はない知性をフルに回転させた。
 どうやらこの女、本当に宝を探しているらしい。それも、デイジーを番人か何かと勘違いしている節がある。
 逆さまなせいで気づかなかったが、よく見れば可愛い顔をしている。それに、薄い布一枚で覆った胸の豊かさ。腰回りの肉付きもなかなか。なるほど、いい女だ。
 山賊は自分が死ぬだろうことを予感していた。だったら最期くらい、いい思いを独り占めしてもいいはずだ。
「……教えてやらねぇこともないぜ」
「やけに素直ね」
「そうでもねぇさ。タダだなんて誰が言った? これは情報のやり取り、ビジネスだぜ、姉ちゃん」
 下卑た笑みを浮かべる山賊の視線は、アイルの胸元に刺さっている。
「……あなたにそんな権利があるとでも? あなたの命はこっちが握ってるのよ」
「こうなっちまったら、もう死んだも同然だ。生かして帰す気なんてねぇんだろ? だったらそれは交渉材料にならねぇぜ」
 こんな時に、妙な男気を見せる山賊である。こうなってしまうと、拷問にかけたところで情報は吐かないだろう。
「……条件は?」
「へへ。まずはそうだな、その邪魔な布を取りな」
 殺意が沸いた。この場で殺したい衝動に駆られたが、アイルは必死に冷静になった。
 この場で恥ずかしい思いをしたとしても、どのみち殺すのだ。他には誰にも見られていないし、金銀財宝が手に入る対価だと思えば、安いものではないか。
「……わかったわ」
 それが冷静な判断かどうかはともかく、アイルは胸の前で結んでいた布を、ほどいた。
「はっ、いいねェ」
 露わになった胸に舌なめずりする山賊に、アイルは気味悪げに後ずさりする。
「じゃ、次だ。そうだな、まずは手で――」
「待って。たかが情報の等価に、どこまで要求するつもり? これ以上はナシよ」
「……チッ。まぁいい。じゃ、俺の気が済むまで堪能させろ。ほら、隠してんじゃねぇ、手後ろに回して、胸張れ」
 言われるがままに、アイルは腰の後ろで手を組み、胸を張った。山賊はニヤニヤと笑いながら、その姿を舐めるように見ている。
 これでは、どちらが拷問を受けているか分からない。罠を張ったのはアイルの方なのだが。
「い、いつまで見てるの。もういいでしょ、おしまい!」
 羞恥に耐えかねて、アイルはそそくさと胸元を布で覆った。山賊は何やら満足したようだ。
「ふぅ。デイジーほどじゃないが、いい女だったぜ、お前」
「……気持ち悪い。それで、お宝はどこ?」
「ねぇよ」
 一瞬、意味が分からなかった。しかし、山賊は繰り返し言う。
「そんなもん、ねぇよ。俺たちゃデイジーが好きで好きでたまらねぇ奴らが集まっただけだ。飯と酒があればいい。それが俺の持ってる情報だ。へへ、いい商売だったぜ」
「ッ――!!」
 怒りのあまり、アイルはダガーで山賊の股間を切り付け、悲鳴を上げさせてから喉を突き刺した。
 結局、得られたものは何もない。自分の目で確かめるしかなかった。今回は、空回りばかりだ。
「もう、やだぁ。なんで私、こんな目に……」
 山頂で仲間と合流するために、心を整える必要があった。アイルは小部屋を出て、細い通路の端っこでしゃがみ込んだ。
 人気のいない路地の奥から聞こえる啜り泣きに、山賊が恐れて逃げていったことに、アイルが気づくことはなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルト・カントリック
なんか癖の強い人だったな…でも、要点は纏めて話してくれたから良い人、なのかもしれない。

山賊の罠が気掛かりだけど、サイバーアイで一応探しておこうかな?相手が姿さえ見せてくれればうってつけの技がある。

山賊に不意打ち・奇襲など、先制攻撃の希望者が居れば、先手を譲ろう。
山賊の姿が見えたら、ユーベルコード【燃えよ炎の貴婦人】を発動して、陽光に焼かれる痛みでのたうち回ってもうらおうか。

女神ヴァジェトは悪人(オブリビオン)が大嫌いだからね。うってつけさ。

■女神ヴァジェト
●頭部がコブラの女神(エジプト)
●悪人絶対殺すウーマン
ヴァジェトの台詞無しorアドリブOKです。
(アドリブ歓迎です!)


エーカ・ライスフェルト
wiz
オブリビオンなら遠慮は不要ね
地図もない暗い穴だろうから、見つけにくい段差や落とし穴、偽装を施した穴からの不意打ちもあり得るでしょう
「明かりを用意して微速前進というのが正攻法でしょうけど……。大勢の猟兵がいるのだもの、たまには正面突破もいいと思わない?」

・基本戦術
【エレクトロレギオン】で呼び出した機械兵器にケミカルライト(無理なら松明)を1つずつ持たせ20メートルほど先行させる
オブリビオンを倒せという命令は出すけれども、機械兵器に期待するのは地形の確認と囮
落とし穴があったら避け、山賊を見つけたら【属性攻撃】で炎属性の矢を撃ち込むわ
「陰惨な悲劇か笑える喜劇。どちらにせよ今すべきことは同じよ」



「グリモア猟兵さん、なんか癖の強い人だったな……」
 サイバーアイで罠を警戒しつつ、アルト・カントリック(どこまでも竜オタク・f01356)はぼやいた。
 口は悪いが、情報は正確に渡してくれているらしい。悪い人ではないのだろう。
「うん、きっと良い人、かもしれない」
 初対面だったのだから、相手の本性までは計りかねる。仕方がないことだ。
 それにしても、とアルトは同行者に言った。
「だいぶ数が減ったのかな? 敵の姿が見えないね」
「待ち伏せかもしれないわよ。罠もいくつか残っていたし、こういう時は、明かりを灯して微速前進が正攻法でしょうけど……」
 隣を歩くエーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)が、アルトへと目配せし、微笑んだ。
「せっかく大勢の猟兵がいるのだから、たまには正面突破もいいと思わない?」
 その言葉に合わせるかのように、物陰から山賊が現れる。エーカが事前に放っていた機械兵器を追いかける形だ。
 色とりどりのケミカルライトを持つ機械兵器に棍棒やら斧やらを振るいながら、山賊がふと、アルトとエーカに気づく。
「待てコラ鉄クズぶっ壊すぞアレーッ!? なんだてめぇクソアマァ!」
 怒声が響き、山賊がどこからともなくぞろぞろと現れる。こうなれば、もう隠れて進むことは不可能だ。
「正面突破以外、なくなったね」
 呆れたようにアルトが肩をすくめ、エーカはどこか嬉しそうに指を鳴らして、炎の矢を無数召喚した。
「お先に、いいかしら?」
「どうぞ」
「ありがとう」
 エーカの周りに浮かぶ炎の矢が、腕の振りを合図に放たれる。
 薄暗い坑道は、山賊を燃やす炎によって赤く照らし出された。夥しい悲鳴が上がる中、エーカがさらなる炎の矢を召喚する。
 魔法で焼かれる仲間を蹴り飛ばし、山賊が獣の威嚇を思わせる声で叫んだ。
「テメェラー! このままじゃデイジーちゃん、焼いて食われちまうぞォッ!」
「アッ!? デイジーちゃんに手出す気かテメッ!?」
「上等だオラー! かかってこいコラー!」
 口々に吼えて、山賊が突撃を慣行する。炎の矢に焼かれても、その勢いは止まらない。
「なかなか根性があるわね。そんなにデイジーという人が大切?」
「俺の嫁だコラー!」
「アッ? 俺のもんに決まってんだろボケが!」
「テメコラ! ヤッカコラ!」
 互いを罵り合いながらも、山賊はまっすぐエーカとアルトに狙いを定めている。
 ついに距離を詰められ、振るわれる粗悪な得物を避けつつ、エーカはアルトを見ずに言った。
「アルトさん、あなたの手の内は?」
「うん。うってつけのがあるよ」
 不敵に笑って、アルトがバックステップで大きく後退し、両手を合わせて力強く叫んだ。
「女神ヴァジェトよッ!」
 瞬間、アルトの眼前の空間が歪み、固形化し、それは女の形をとった。体こそ人間の女性だが、その頭部は、コブラのそれだ。
 エーカはコブラ頭の女に、確かな神聖を感じた。アルトの言葉通り、女神だ。
 突然現れたコブラ頭に、山賊が目を丸くする。
「ワーッ!? なんだてめッ蛇アマッコラー!?」
「そなたは、悪しき者か」
「アッテメコラー! ちゃんと言葉話せオラー!」
 支離滅裂な言葉遣いは山賊の方なのだが、彼らは知性があまりにも低い。さして難しいわけではないが、それでもヴァジェトの言葉を理解できないのだ。
 振るわれた斧は、ヴァジェトを頭から切り裂いたように見えた。しかし、その姿は揺らめき消えて、すぐにアルトの隣に現れる。
「わらわを呼びし者よ。悪しき者はどれか」
 コブラ頭から蛇の下をチロチロと出す異様な姿に、アルトは敬意をもって頭を下げる。
「はい。あの粗暴な男どもです。罪なき人々から食料を強奪し、冬を超えられずに滅びた村は数知れず。底知れぬ極悪人の集まりでございます。あちらに正義の炎を浴びせていただきたく」
「ア!? 村!? そんな記憶ね――」
 反論しかけた山賊が、突如白目を剥いた。全身を撥ねあがらせ、のた打ち回る。
「アーッ!? 熱い、熱いィッ!」
 見れば、ヴァジェトのコブラ頭部にある二つの瞳が赤く輝いている。
 その瞳に見つめられた山賊は、例外なく灼熱の毒による苦痛に襲われているのだ。
 皮膚の内側から湧き上がる熱の痛みは、外から焼くエーカの炎とはまた違う苦しみを、山賊に与える。
「善き者に仇なす悪しき者よ。わらわの熱をもって、その身に罪を焼き付けよ」
「いいアイディアね、女神さま。私も協力するわ」
 炎の矢が真っ直ぐに飛び、熱の痛みに呻く山賊を、さらに焼き尽くす。
 声にならない悲鳴を上げて死にゆく山賊。その光景はさながら地獄絵図のようだが、ヴァジェトの怒りは収まらない。
「悪しき者よ。滅びよ、滅せよ」
「……アルトさん、女神さまはいつになったら止まるのかしら」
「気がすんだら、かな」
「じゃ、それまで付き合うしかないわね」
 ケミカルライトを持った機械兵が先行し、その後に続く形で、怒れる女神を含めた三人は坑道を奥へと進む。
 カラフルな光に照らされるヴァジェトは、パレードをする遊園地のキャラクターに見えなくもない。
 妙な想像をしてしまい、エーカとアルトはこみ上げる笑いをこらえるので必死だった。下手をしたら、赤い瞳でやられかねない。
 現れる山賊は皆、ヴァジェトの瞳とエーカの炎で、近づく前に焼かれて死んだ。しかし、敵もこのままでは終われない。近づけないのならと、遠距離からの攻撃に出た。
「デイジーちゃんを守れ! 近づけるなッ!」
「テメッボケ! 絶対殺す!」
 死角から突然現れては、山賊が石つぶてを投げる。弾丸の如き速度のそれは、アルトとエーカに回避を余儀なくさせた。
「面倒な真似を!」
 舌打ちをして、アルトが吐き捨てる。石の方向は様々で囲まれてしまっていることが知れた。
 四方から投げられる石つぶてを避けている間は、とても炎の矢を放てない。エーカは歯噛みした。
「このままじゃ、厳しいわね」
 一方、ヴァジェトはその身を揺らがせて、石を通過させている。さすがに神と呼ばれるだけあり、石つぶて程度で傷つくことはなかった。
「愚か者どもめ。わらわを誰と心得る」
「知るかテメー! コブラブス女テメー!」
「……悪しき者には、等しく死を」
 山賊の罵りに気を悪くしたのかは分からないが、ヴァジェトが瞳の輝きを一層強めた。
 深紅の輝きに捉えられた山賊が、一様に悲鳴を上げて転がる。
「アーッ!」
「アーッ! デイジーちゃん、デイジーちゃん助けてーッ!」
 とうとうデイジーとやらに助けを求めるようにすらなり、アルトは石つぶてを避けながら、呆れて眉を寄せた。
「女に助けを求めるなんて、みっともないな」
「アッ!? てめぇだって女だろッコラアーッ!」
 炎の矢が着弾し、アルトに罵声を浴びせていた山賊が燃え上がった。
 石つぶてが少なくなり、エーカが余裕を取り戻したのだ。攻勢に転じて、一気にアドバンテージを掴む。
「おかげで服が汚れたわ。お返しさせてもらうわよ」
 弾幕の如き炎の矢が、敵が隠れた木箱ごと焼き払う。炎から逃れたところで、ヴァジェトの瞳が逃がさなかった。
 一瞬の逆転劇に、アルトはやれやれと手で顔をあおぐ。
「まったく、数だけは本当に多いね。デイジーという人、そんなに魅力的なのかな?」
「あるいは、何かしらの力で魅了されているか、ね」
 炎の矢を全身に浴びて死にゆく山賊を横目に、エーカが答えた。これほどの山賊を同時に魅了する相手に、彼女も強い興味があった。
 とはいえ、尋問できる山賊はいない。生きた山賊がいても、ヴァジェトがその瞳で灼熱の毒を付与し、殺してしまうのだ。
 やがて、山賊の声が消えた。もうこの辺りに敵はいないようだ。
「わらわを呼びし者よ」
 淡々としたヴァジェトの声に、アルトが跪いて頭を下げた。
「はい、女神ヴァジェト」
「契約は果たした。わらわは天上へ帰還する。そなたがまた悪を滅する力を欲さんとするならば、わらわを呼ぶがよい」
「ありがとうございます。女神の加護に感謝を」
 ヴァジェトの姿が揺らめき、消えた。
 戦いながらで気づかなかったが、エーカとアルトはずいぶん上まで登ってきていたようだ。目的の山頂は、そう遠くないだろう。
「さて、いよいよデイジーのご尊顔を拝めるね」
 冗談めかして言うアルトに、エーカは笑った。
「きっと、とても素敵な女性か、とんでもなく醜悪な化け物か、どちらかよ」
「それはどちらも、やり辛いな」
 待ち受ける者の正体は、未だ分からない。要救助者であればよいのだが、さらなる激戦が待ち受けている可能性も十分にある。
 また、対象者がもし、意志に関係なく賊を魅了していたのだとしたら――その力を断つために、最後の手段に出なければならないだろう。
 だが、彼女たちが猟兵としてやることは変わらない。世界のために、戦うのみだ。エーカは肩をすくめた。
「陰惨な悲劇か笑える喜劇。どちらにせよ今すべきことは同じよ」
「そうだね。でも、できれば喜劇がいいな」
 どうせなら、明るい気持ちで仕事を終えたい。その思いは、アルトもエーカも同じだった。
 猟兵たちと爽やかな勝利を称えあい、宴を最大限楽しむために、二人は山頂を目指して進み続ける。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『ワイバーン』

POW   :    ワイバーンダイブ
【急降下からの爪の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【毒を帯びた尾による突き刺し】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    飛竜の知恵
【自分の眼下にいる】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    ワイバーンブラスト
【急降下】から【咆哮と共に衝撃波】を放ち、【爆風】により対象の動きを一時的に封じる。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「デイジーちゃん逃げてぇぇぇぇッ!」
 山頂に飛び出した山賊は、泣き叫びながらデイジーへと駆ける。
 その後を追いかけてきた猟兵は、ついに彼女と面会した。
「デイジーちゃん、すまねぇ。俺たちは弱い男だ、か弱い女一人守ってやれねぇ、すまねぇ」
 みっともなく涙を流す山賊が頬ずりする相手こそが、デイジーなのだ。
 肉感的な足、魅力的なつま先。豊満な腰回りと筋肉質ながらしなやか、かつ肉感的な胸元。身にまとう赤は美しく、凛々しい顔に鋭い牙が覗く。
 山賊を頭で押しのけて、真紅に輝く大いなる翼を広げた、その姿。
 彼女――デイジーはまさしく、ワイバーンであった。
「デイジーちゃん! 今日も綺麗だぜ、デイジーちゃぁぁん!」
 拳を振り上げて叫ぶ山賊に、ワイバーンが吼えて答える。

 猟兵たちは理解した。山賊たちは、このワイバーンを心から慕っていたのだ。そして、それらは魅了の力によるものではない。ワイバーンにそうした力はない。
 一緒に寝るという連中の言葉も、そのままそっくり「添い寝」の意味だったということか。食料の減りが早いというのも、当然のことだ。
 猟兵たちは息を呑む。その事実に、戦慄する。

 山賊団の正体は、ワイバーンのデイジーを愛でる会だったのだ!

 猟兵たちは、無慈悲に得物を構えた。
 なぜ山賊がワイバーンに惚れたのか、なぜワイバーンが山賊に懐いたのか。それは分からないが、分かる必要も特にない。
 さっさとワイバーンを倒して宴会しよう。そうしよう。
 誰かが、感情のない声で呟いた。

 とはいえ、ワイバーンのデイジーは普通に強い。とても強い。めちゃくちゃ強い。
 後の宴を心ゆくまで楽しくためにも、ゆめゆめ油断するなかれ。
エーカ・ライスフェルト
wiz
お話としては喜劇でも、振るわれた力もデイジーの武力も本物
こちらも全力を出さないとね
「これがデイジー?」(薄く唇を開けた間抜け顔、もとい呆然とした表情になっている)

前衛の同行者がいるなら時間を稼いで貰い、【属性攻撃】の力を限界まで【ウィザード・ミサイル】に込めるわ
デイジーは炎属性のように見えるから、込めるのは水属性ね

デイジーが私に向かって急降下してきたら、できる限り引きつけてから【ウィザード・ミサイル】を使う
何本か翼に当たって最大速度が落ちることになればよいのだけど
私の一撃では殺しきれないのは分かっているから、頑張って【見切り】をして致命傷だけは避ける

私単独なら?
冷や汗流しながら全力疾走ね


アルミィ・キングフィッシャー
ああ、うん。
こんなことだろうと思った。
ハーピーだったら魅了されてるとかあの教官殿がこっちに情報回してるはずだしな。

さてそれはともかく大物だね。これは戦い甲斐がある。
まずは相手の行動パターンを見極めようか。
狙いは急降下。基本的にブレスとかは無いから降りてこなきゃダメなはずだ。
レプリカクラフトで地雷を作って「ものを隠して」、自分におびき寄せるように振る舞って踏ませよう。
フックつきロープで手足に引っ掛けられれば儲けものか。とりあえず相手の攻撃を引きつけるように動こう。

相手が地面に落ちたら即座に背中にのって短剣を突き立てよう。上からの攻撃には弱そうだし。

しかしデイジーねえ、えらく可愛らしい名前な事で。


純・ハイト
まさか魅了ができるオブリビオンではなくワイバーンとは予想外だが、殲滅対象が増えただけだと思いながら警戒。

戦神フェアリー(ミリア・レイナ(女))にフェアリーの精兵の指示を任せて射撃武器を使うように言い。
自信は【迷彩】【目立たない】【忍び足】で隠れて【戦闘知識】で隙を見て【武器改造】したフェアリー用スナイパーライフルで【暗殺】【2回攻撃】【鎧無視攻撃】【スナイパー】の狙撃をして【クイックドロー】でリロードする、リロード後は【援護射撃】で援護しながら【クイックドロー】でリロードの繰り返しをする。



「これが、デイジー?」
 薄く口を開けたまま、エーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)は呆然と言った。
 その隣で、アルミィ・キングフィッシャー(「ネフライト」・f02059)もため息をつく。
「あぁ、うん。だと思った」
 眼前で悠々と空を舞うワイバーンことデイジーは、猟兵を見下ろして咆哮を上げている。
 その姿は明らかな脅威なのだが、これまでの経緯が経緯なだけに、緊張感に欠ける。
 とはいえ、対処しないわけにはいかない。アルミィは仲間へと振り返った。
「ともかく、大物だね。これは戦い甲斐がある」
「ワイバーンとは予想外でしたが……まずは下ろさないことには始まりませんね」
 戦神フェアリーを筆頭としたフェアリー軍を率いて、純・ハイト(数の召喚と大魔法を使うフェアリー・f05649)は自身のスナイパーライフルを撫でた。
「仕掛けます。総員、撃ち方始め!!」
 ハイトが手をデイジーに向けると同時に、フェアリー軍が一斉に精霊銃のトリガーを引いた。
 耳を裂くような発砲音が、山頂を埋め尽くす。すさまじい火線がデイジーを襲った。
 空中で美しく舞うデイジーは、その弾丸を受けることなく優雅に舞う。
 天高く飛び上がった飛竜の影は、やがて翼を畳んで一直線に急降下を始めた。
「まずいね、伏せな!」
 アルミィの声を受けて、エーカは守りの姿勢を取る。瞬間、銃声をかき消す咆哮が轟いた。
 デイジーの咆哮とともに放たれた衝撃波が、妖精軍を蹴散らす。精鋭とはいえ猟兵ですらないフェアリーだ。その体躯は軽く吹き飛ばされてしまう。
 一瞬でかき消えた銃撃にご満悦の様子で、デイジーは再び空へと上がっていく。
「厄介ね。これじゃ、私の魔法も届かないわ」
 腰に手を当てて、エーカがぼやく。
「なんとか降りてきてくれないかしら」
「男にチヤホヤされてたんだ。天まで登る心地なんだろうさ」
 冗談めかして答えながら、アルミィはレプリカクラフトで精巧な地雷を作成し、足元に素早く埋めた。
「飛んでる相手よ。やれる?」
 横目で見ていたエーカに問われ、アルミィは口元に軽く笑みを浮かべた。
「さぁね。でも、やってやるさ」
「そう」
 自然に頷いて、エーカが離れる。アルミィの策は分からないが、無策ではないことが分かれば、十分だった。
 見上げれば、デイジーが上空で反転し、攻撃姿勢に移ったところだった。
「よし……来な!」
 一人残されたアルミィが、両手を広げる。
 デイジーが急降下しながら、足の爪を振りかざした。
「こっちだ、こっち!」
 大声で誘いながら、アルミィは飛来する爪を仕掛けた罠へと誘導する。
 振り下ろされた爪は、アルミィを切り裂くことはなかったが、罠を踏むこともまた、なかった。
 あと一歩のところで、デイジーは着地しなかった。まるで見透かしたように羽ばたいて、空中で静止したのだ。
「ちぃッ! いらない知恵をつけてんじゃないよ!」
 悔しげに毒づいたアルミィは、直後に誰も踏んでいないはずの地雷の爆発に吹き飛ばされた。
「んなっ……!」
 デイジーが何らかの力で、こちらの罠を利用したのかと思った。しかし、どうにも違うらしい。受け身をとって見てみると、デイジーは爆風を真下からもろに受けて、痛みと熱に激昂している。
 何が起きているのかを考えるより先に、アルミィの至近距離を弾丸が駆け抜けた。
 弾丸はデイジーの体に突き刺さり、その怒りを煽る。頑強な鱗を無力化するほどの弾丸が、一秒ほどの間隔でデイジーに突き刺さる。
 ハイトだ。彼は最初の攻撃後、誰にも気づかれることなく身を隠し、狙撃に最適な場所に移動していたのだ。
 地雷を狙撃し爆発させたのも彼だった。次弾を素早く装填しつつ、口元に彼らしからぬ狂気にも似た獰猛な笑みを浮かべる。
「逃げんなよ、ワイバーン。まだやれるんだろ?」
 実際、ハイトの銃撃はデイジーの足や腹部から出血を招いているが、分厚い筋肉に阻まれ致命傷には至っていない。どころか、激しい怒りを誘発されて、怒り狂っている。
 見境のない攻撃は、応援していた山賊を無慈悲に蹴り飛ばし、その勢いでエーカに狙いを定めた。
 鋭い爪の一撃をなんとか避けつつ、エーカはその翼に魔法による水の矢を叩き込む。
 頑丈な翼に穴が開くことはなかったが、それでもデイジーは非常に嫌がり、威嚇の咆哮を上げる。
 放たれた衝撃波に吹き飛ばされ、受け身を取りながら、エーカは笑った。
「水は嫌いのようね、お嬢さん?」
 さらに水の矢を召喚し、射出する。ハイトの狙撃も合わさり、デイジーは空に退避せざるを得なくなる。
 飛び立つ直前に、アルミィがフックロープを投げた。ロープがデイジーの足に絡まる。そのまま持ち上げられ、上空に連れていかれる。
 空中でアルミィを振り落とそうと、デイジーが様々な軌道を取る。しかし、エーカの魔法とハイトの狙撃を翼に受け、その速度はかなり低下していた。
 エーカの魔法とハイトの狙撃が交錯する中、アルミィはロープをあえて手放した。落下するアルミィに向けて、デイジーがすかさず反転、巨大な口を開ける。
「好き嫌いしないのは褒めてやる。でもね、アタシを食ったら腹を壊すよ!」
 落ちながら体をひねり、噛みつきを回避。そのまま背中に取り付いて、首と背中の境目に向かって、アルミィは短剣を振りかざした。
「上から攻められたことなんてないだろ。たっぷり味わいなッ!」
 鱗の隙間に、短剣が突き刺さる。あらぬ咆哮からの激痛に、デイジーが混乱し、咆哮を連発した。
 振り落とされたが、地面は近い。アルミィが難なく着地すると同時に、大量の火線がデイジーに集中した。
 フェアリー軍だ。体勢を整え、勇ましく攻撃を再開した。一糸乱れぬ一斉射は、デイジーの鱗こそ貫かなかったが、巨体の猛攻を止めるに十分だった。
 羽ばたくことも叶わず着地し、デイジーが恨めしそうに唸り声を上げる。
 その様子をスコープ越しに眺めながら、ハイトは射撃のタイミングを待ち続けていた。
 黙したまま、来たるべき一瞬に集中する。
 ハイトは、己とフェアリー軍の射撃ではこのワイバーンを倒し切れないことを察していた。デイジーの鱗と筋肉は固く、もっと物理的に巨大なエネルギーが必要だ。
 エーカの魔法とアルミィの短剣も、急所をついたとて、致命傷になるかは怪しい。しかし、彼は軍師でもあった。ここで敵の消耗を誘うことの重要性は、誰よりも理解している。
「フゥー……」
 深く呼吸し、照準を合わせる。タイミングは、一瞬だ。
 デイジーが再び咆哮を上げ、フェアリー軍を蹴散らす。空に飛んでは急降下し、鋭い爪でアルミィを狙う。
 アルミィは反撃しなかった。背中の傷は効果的だったが、敵はワイバーンだ。そもそも火力で敵う相手ではない。
 だが、やれることはある。軽やかに爪を回避しつつ、アルミィは意地悪く言った。
「どうしたんだい、デイジー! あんなに男をたぶらかした割りに、アタシ一人も捕まえられないのかい!」
 怒りに任せて何度も急降下するデイジーの爪は、今も変わらず脅威だ。正直なところ。アルミィにも余裕はない。一撃を受ければ、その毒も相まって、ただでは済まないだろう。
 だが、誘う必要があった。なんとしても、アルミィはデイジーの視線を自分へと注視させたかったのだ。
 死角で巨大な炎の矢――それはもはや槍に近い――を作り、今なお魔力を込めるエーカに、気づかせないために。
 さらに、アルミィとエーカからすらも姿を隠したハイトの狙撃を成功させる必要もある。
「ちょっとばかし、損な役割だけどね。今回は若いのに譲ってやるさ」
 アルミィは乾いた唇を舌で舐め、飛来する爪を転がって避けた。デイジーは地雷を警戒してか、地面に降りようとしない。
 空で反転したデイジーが、エーカに気づく。炎の矢に纏わりつくように水流が巻き付く異様な魔法が、空に向けられている。
「……まだ遠いね」
 十分な威力を持って攻撃を当てたい。それはエーカも同じ考えらしく、目が合うと頷いた。
 姿を隠すハイトもまた、今は機ではないと感じていた。スコープからは目を、引き金からは指を放さず、しかし、焦らない。
 フェアリー軍が一斉射撃をデイジーに集中させる。体力の消耗からか、デイジーは被弾を酷く嫌がっていた。
 フェアリーを吹き飛ばそうと、上空から急降下して、デイジーが咆哮を上げた。成すすべもなく吹き飛ばされるフェアリー軍の中に、動かない者が一人。
 軍勢を率いる戦神フェアリー、ミリア・レイナだ。彼女の銃は、揺らぐことなくデイジーを捉えている。
 いかな戦神フェアリーといえど、一度の銃撃で倒せるとは思っていまい。ならば、連携を取るしかない。
 アルミィは、精巧さの欠けた地雷を作り上げ、咆哮を上げるため息を吸うデイジーの眼前に、投擲した。
「やれッ!」
 無言で答えた戦神フェアリーが、引き金を引く。狙いは、投げられた地雷だ。
 弾丸が地雷を貫通し、一瞬後に爆発した。爆音とともに、規模は小さいながら強烈な熱波が、デイジーの顔面を焼く。
 大きく仰け反ったデイジーは、その反動で尋常ではない咆哮を上げ、戦神フェアリーを吹き飛ばす。
 アルミィは駆け出した。まっすぐ、エーカの方へ。すぐに気づいたデイジーが怒りに吼えて、低空飛行でアルミィを追う。
 繰り出される爪を必死に避けて、少しでもエーカとの距離を詰める。
「そろそろ、いいかな!」
 振り返りざまに、アルミィはフック付きロープを投げた。足に絡みついたロープの違和感に、デイジーがほんの一瞬気を取られる。
 その様子を、ハイトは見逃さなかった。
「いただく!」
 呟いて、デイジーの顔面へと銃弾を放つ。
 フェアリー軍の銃とは比較にならない威力の弾丸が、デイジーの左頭部に着弾する。硬い鱗を破壊しつつも、脳を貫くには至らない。それでも、頭を大きく揺さぶることはできた。
 瞬間的に意識を失ったデイジーが、空中でよろめく。その場所は、もはやエーカの眼前だった。
 水の渦が纏わりつく巨大な炎の矢を掲げ、エーカは不敵に微笑んだ。
「待ちくたびれたわよ、お姫さま」
 振りかぶり、投げ飛ばす。
 魔力的な推進力を得た火炎と水流の矢は、一瞬で最高速に達した。しかし、気が付いたデイジーが体勢を整えるのも早い。
 すかさず咆哮で魔力の矢を迎え撃ち、その勢いを相殺する。衝撃波が壁となり、炎と水の矢がその動きを止めた。
「往生際が、悪いわねッ!」
 矢に追い打ちの魔力を籠めて押し込むが、抵抗が激しい。咆哮は上げ続けられ、その衝撃波はエーカをも襲う。このままでは、押し負ける。
「面倒くさい女は、嫌われるよ!」
 アルミィが短剣を投げた。刃はまっすぐ、デイジーの左目だ。
 突如、短剣が加速した。一直線に飛ぶ短剣の柄に、超高速の弾丸が突き立ったのだ。
「大当たり、ですね。ふぅ――」
 アルミィの意思を汲み完璧と言える狙撃を果たしたハイトは、スコープから目を外し、人知れずゆっくりと息を吐きだした。
 自分に向けられた高速の刃に気づく間もなく、デイジーは左の眼球に刺さった激痛に絶叫した。
「さすがね、二人とも」
 衝撃波が消え、エーカは笑みとともに魔力を強める。勢いを取り戻した二属性を宿す矢が、デイジーの体に突き立った。
 直後、炎が爆ぜた。水流も弾けて無数のつぶてとなり、デイジーの体を焼き、切り裂く。
 爆炎の中から必死に空へと退避したデイジーは、もはや山賊たちが慕った美しい体ではない。残った右目で殺意を籠めて猟兵を睨みつけ、体のいたるところから血を撒き散らしながら上空を旋回している。
 爆風の余波にスカートを靡かせ、エーカは空のデイジーを見上げた。
「あれで懲りないなんて。大したおてんば娘だわ」
「アタシたちが、しっかり躾してやんないとねぇ」
 アルミィが言った。二人は揃って笑い、それぞれ武器を構え、魔法の矢を召喚する。
 体力は相当削ったはずだが、デイジーの羽ばたきは衰えていない。まだまだ厳しい戦いが強いられるだろう。
 ハイトの狙撃が再開される。その銃声を合図に、猟兵たちは再び戦闘に没入していった。 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
なるほど、尋問した山賊の言は全て真実だった…と
…………世界は広いですね
ですが赤いドレスのデイジー嬢を放置するわけにも参りません

※馬から降りる
上空からの攻撃から脚部スラスターでの「スライディング」で急行し仲間を「かばい」援護します

上空への攻撃手段がないとデイジー嬢に思い込ませ、私にダイブを仕掛けてきたら爪を「武器受け」尾を「盾受け」で受け止め、「怪力」で逃がさないように動きを封じます
抵抗も激しいでしょうが仲間を守り攻撃のチャンスを生み出せるはず
ついでに頭部機関砲の「だまし討ち」もデイジー嬢にプレゼントしましょう

赤いドレスの彼女のアプローチ、全力で受け止めてみせましょう
……冗談ですよ?


アイル・コーウィン
最悪だわ……何度も恥ずかしい思いはするし、金銀財宝は無いし、なんかワイバーンはいるし……早くおうちに帰りたい……。

え? デイジー? あのワイバーンが?

……そう、そうよ。そもそもあいつさえいなければ山賊だって集まらなかったし、私がここに来る事も無かった。
私が辱めを受けたのも、ここにお宝が無いのも、全部あいつのせいじゃない!
あのワイバーン、絶対に許さないわ!

まずは錬成カミヤドリで攻撃……って、かすりもしない!?
普通に攻撃しても駄目って訳ね……なら、ここはフェイント攻撃でいくわよ!
もう一度同じ攻撃……と見せかけて「特大錬成カミヤドリ」!
外れた硬貨を合体させ巨大な硬貨を作って、相手にぶつけてやるわ!




 アイル・コーウィン(猫耳トレジャーハンター・f02316)は酷く疲れていた。ぐったりとした様子で廃坑を抜け出し、ようやく浴びた日の光に息をつく。
「最悪だわ……。何度も恥ずかしい思いはするし、金銀財宝はないし……」
 思わず天を仰ぐ。空で吼えながら旋回するワイバーンをちらりと見て、再び項垂れる。
「なんかワイバーンもいるし……あぁ、早くおうちに帰りたい――」
 そこまで呟いて、アイルは再び顔を上げた。
 上空からアイルに向かって急降下を始めた、傷だらけのワイバーンがいる。
「は? ワイバーン?」
 思わず呆けたアイルへと、毒を持つ巨大な爪が降りかかる。
 あまりに予想外な事態に、反応が遅れた。回避が間に合わない。せめてもの防御として眼前で腕を組む。
 あわや直撃と思われた瞬間、アイルの前に巨大な人物が立ちはだかった。儀式用の剣でワイバーンの爪を防いだ、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)だ。
「なるほど。尋問した山賊の言は、全て真実だったと。……世界は広いですね」
「えっ! じゃあ、そのワイバーンが」
 爪を防がれ、怒りに狂って上空に舞い上がるワイバーンを、アイルが指さす。トリテレイアは頷いて、どこか呆れた声で答えた。
「件のデイジー嬢でしょう。囚われの乙女とは、程遠い」
「デイジー? あの、ワイバーンが……」
 呟くアイルは、心の奥底にふつふつと怒りが湧き上がるのを感じた。
 あのワイバーンさえいなければ、廃坑に山賊が集まることはなかったし、アイルがここに来ることもなかったのだ。
「私が辱めを受けたのも、ここにお宝がないのも……ぜんぶあいつのせいじゃない!」
「アイル様、何が……いえ、聞かないでおきます」
 それはトリテレイアなりの優しさだったのかもしれない。
 現に、アイルは慰めなど欲していない。慰められると、泣きたくなるからだ。
 結局目に涙など溜めて、アイルは力強く拳を握った。
「あのワイバーン、絶対に許さないわ! トリテレイアさん、やるわよ!」
「え、えぇ……。確かに、赤いドレスのデイジー嬢を放置するわけには、いきませんね」
 大盾を構え、トリテレイアはデイジーを見上げた。上空にいられると、いかにもやり辛い。 
 守られる形のアイルは、その周囲にいくつものコインを召喚していた。複製された、彼女の本体だ。
「まず私が仕掛けるわ。降りてきたら、お願い」
「承知しました。頼みます」
 スラスターを噴かして、トリテレイアが山頂の中央に移動した。巨体のデイジーにとってみれば、もっとも狙いやすい場所だ。
 デイジーが急降下を始める。鋭い爪がトリテレイアに襲う一瞬を、アイルがついた。
「バラバラにしてやるわ! いっけぇ!」
 放たれたコインが高速回転し、刃となってデイジーを狙う。が、デイジーは即座にその攻撃に気づき、反転して上空に急上昇していった。
 コインが効果範囲の限界に達し、落下する。
「そんな、かすりもしないなんて! むぅぅっ!」
「アイル様、落ち着いて参りましょう。急いては事を仕損じます」
「分かってるけど、悔しいっ!」
 いつも以上に悔しいのはなぜだろうと考えて、思い当たることが多すぎたので、アイルは考えることをやめた。
 トリテレイアも、詳しく聞くことはしなかった。彼女の胸を覆う布が山賊の服に似た粗悪さなので、大体のことは察したのだ。
 聞きはしなかったが、気休め程度に言った。
「アイル様、今回はいわゆる、ノーカンです」
「……こんのぉぉぉぉ!」
 気休めは、むしろアイルの戦意に火をつけたようだ。アイルはがむしゃらにコインを放り投げている。
 デイジーが上空で再び狙いを定めた。まっすぐトリテレイアに向かってくる。その過程で、コインはすべて空を切った。
「……激しいアプローチですね。いいでしょう」
 トリテレイアは大盾を構え、剣を高く掲げる。
「全力で、受け止めてみせましょう」
 直後、凄まじい衝撃が盾を襲う。トリテレイアの巨体が押され、その足が土を抉った。
 盾に加えていた力を抜き、爪の軌道を逸らす。一瞬の隙を見て剣を振るうも、その時にはもう、デイジーは空に退避していた。
 即座に転回して、デイジーがまたもトリテレイアを狙う。非常に硬い相手だが、接近戦しか出来ないならば有利と判断してのことだろう。
 再度襲う爪を剣で受け止め、トリテレイアは淡々と言った。
「赤いドレスのお嬢様に、素敵なプレゼントです」
 頭部の機関砲門が開く。その意味に、デイジーが気づくはずもない。
 ためらいなく放たれた機関砲が、デイジーの顔面に突き刺さる。たまらず咆哮を上げて、デイジーはまたも空に逃げた。
 牽制射撃はすぐに届かなくなってしまったが、接近戦以外の選択肢を見せられたことは大きい。竜に属するワイバーンとはいえ、所詮知性は獣のそれだ。
 トリテレイアを警戒する分、アイルへの警戒心は薄くなる。次に狙うのは、彼女だ。
「こんのー! でっかい図体でちょこまかと! 何がデイジーよ、何が山賊よ! バカぁぁぁっ!」
 それは、魂の叫びであった。高速で迫るデイジーに、アイルのコインはかすりはすれど、勢いをそぐこともできない。
 しかし、彼女は何よりも身軽だった。毒の爪を悠々と回避し、さらなるコインを投擲する。
「バカ! バカ! 私の……私のいろいろ、返しなさいよーっ!」
 物理的に何かを奪われたわけではないが、それでもアイルの心にある消失感は大きかった。何としてもこのワイバーンに一泡吹かせて、気を晴らしたい。
 がむしゃらに投げているように見えるコインだが、デイジーが人間だったなら、彼女の投擲が規則正しく、コインの軌道も無作為に見えて一定の法則があることに気づいたかもしれない。
 そして、トリテレイアはそれに気が付いた。
「やれやれ。怒れる女性陣のお相手というのも、騎士の務めですかね」
 スラスターを全開に出力し、素早くアイルの前に立つ。直後に飛来したデイジーの爪を剣で受け止めていなし、さらにスライディングでデイジーの背後に回った。
 そして、太く美しい赤の尾を、持ち前の怪力で掴み取る。
「捕まえましたよ、デイジー嬢ッ」
 思い切り力を込めて引き、空へ逃げようとするデイジーが悲鳴を上げる。ワイバーンの巨体とトリテレイアの引き合いは、消耗のないトリテレイアに分があった。
 とうとう、アイルは待ちに待った瞬間を手にした。
 これまで投げ飛ばしていたコインが空中でぶつかり合い、合体していく。
「ようやくね、デイジー……。あなたに悪気はないのかもしれないけど、そもそもはあの山賊たちのせいなのかもしれないけれど」
 ついに一枚となった巨大なコインが、掲げられたアイルの手の上で超高速で回転する。
「……いやでもやっぱ、あんたも悪いッ!」
 もはや八つ当たりに近い一撃が、放たれた。
 暴れまくるデイジーに向かって迷いなく放たれた巨大コインが狙うは、トリテレイアが握って離さない、その尻尾だった。
 尾を掴まれて叫ぶワイバーンはいっそ惨めだったが、これが凶悪なオブリビオンであるという事実を、トリテレイアは忘れない。掴んだ尻尾は、決して離さなかった。
 そして、ついに巨大コインが、美しきデイジーの尾を根元から切断した。
 大量の血が舞い、デイジーがこれまでにない絶叫を上げて、地面に倒れる。
「っし! ざまぁみなさい!」
 ガッツポーズなどしているアイルに、トリテレイアは尾を投げ捨てながら呆れた声で言った。
「アイル様、心底嬉しそうですが……個人的な感情が、少々強すぎるかと」
「そ、そんなことないにゃん? 私は猟兵としての務めを果たしてるだけにゃん?」
 手を招き猫のようにして誤魔化すアイルである。トリテレイアはリアクションをやめた。
 ともかく、バランス器官であり大量の血液を有していた尾を斬れたことは、大きい。体力の消耗は凄まじいはずだ。
 痛みにのたうちながらも、こちらを睨む右目から、敵意が伝わってくる。デイジーは、まだやる気だ。
「だてに竜っぽいわけじゃないわね。タフな化け物だわ」
「火力も相当に。放置しておけば、いずれ人々に害をなすでしょう」
 そして、いつか確実に世界の脅威となる。ならば、それを食い止めるのが猟兵の役目だ。
 痛みから立ち直り、デイジーが唸り声を上げる。
 戦いはまだ終わらない。アイルとトリテレイアは、得物の切っ先まで戦意を漲らせ、デイジーを見据えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルト・カントリック
ぽかーん……。
アルトの開いた口が塞がらない。しかし、このまま立っていてはアルトの身に危険が及ぶだろう。まさに、ワイバーンの爪が無防備な猟兵を抉ろうとしたその瞬間……!

その爪は右腕によって止められる。そして、目覚めた“竜殺し”は天に向かって吠える。

「なんだそれハアアアアアア!!!」

アルトの体を操り、引っ掻いたり、殴ったり、勇猛果敢に切り込んでいく。

「デイジー!!?コイツがデイジー!?」

正確にはアルトではなく、右腕に封印されていた“竜殺し”が最早聞き取れない叫びを上げ続けるのだった。
■“竜殺し”
●アルトの真の姿
●一人称バラバラのさっぱり男口調(だ、だな、だろう、なのか?)
●装備武器→葬送の竜爪


露木・鬼燈
うん、知ってた。
ワイバーンとは思わなかったけどね。
色々な意味できっついなー。
よし、気持ちを切り替えていくです。
聞くところによるとワイバーンは亜竜って呼ばれているっぽい。
僕の黒剣も猛っている気がするのです。
この様子だと竜殺しの予行練習になるっぽい?
僕の目標的には全力を尽くさずにはいられない!
今回のお仕事は経験的に得るものが多いのです。
翼を破壊して空を奪い、地に落とす。
これが竜狩りの基本だよね。
急降下のタイミングを見切り、カウンターで翼を切り落とす。
難しいけどやって見せるです!
サイバーアイの補助があれば…イケルイケル!
降魔化身法から真の姿の開放。
大剣形態で構えれば準備完了。
集中して待つっぽい!




 廃坑の山賊を残らず掃討し、アルト・カントリック(どこまでも竜オタク・f01356)と露木・鬼燈(竜喰・f01316)は山頂に辿り着いた。
 待ち受けていたデイジーの姿を、アルトは口を半開きにして見上げていた。
 左目を潰され、尾を失い、全身に受けた細かな傷から出血するワイバーンは、猟兵たちに殺気をむき出しにしている。
「は……?」
「まぁ、うん。知ってた。ワイバーンとは思わなかったけどね」
 うんざりとした様子で呟いて、鬼燈は黒い大剣を肩に担いだ。
「でも、色々な意味できっついなー」
「……」
 呆然としたまま動かないアルトを置いて、鬼燈は迫りくるデイジーに向けて剣を構えた。
 宵闇のような黒の暴風が、鬼燈の足元から湧き上がる。風は鬼燈に纏わりつき、やがてその身を漆黒の鎧で包んだ。
 己が身に悪鬼を宿し、鬼燈は全身に走る痛みを力に変えて、さらなる能力強化を図る。
 鎧の継ぎ目が消え、漆黒の化身となった鬼燈は、急降下から繰り出される毒の爪を、大剣で受け止めた。
「ワイバーン……聞くところによると、亜竜って呼ばれることもあるっぽい」
 小さく細い体から溢れる、想像を絶する力に、デイジーが困惑する。威嚇の叫びをあげて、爪を振りほどいた。
 上空に退避するデイジーを血が流れる瞳で見上げ、鬼燈は笑って大剣の腹を撫でた。
「竜殺しの予行練習には、ちょうどいいっぽい。こいつも、猛っているです」
 鬼燈の武、それはひとえに、竜を殺すためにある。今日この時ほど、経験を積む機会はない。
 一方、根っからの竜オタクであるアルトは、やはり呆然としたまま、デイジーの飛行を目で追っていた。
 当然、棒立ちでいれば恰好の的となる。デイジーは巨大な爪の一撃を無防備なアルト繰り出す。
 鬼燈のカバーは間に合わない。迫りくる爪を見上げたまま、アルトは目を見開いた。
 直後、右腕が動く。その毒爪は、アルトの手によってそのうちの一本を掴み取られ、止められていた。
 右腕に装着した、赤黒い爪が疼く。その奥から滾る衝動に、アルトの意識は抵抗する間もなく奥へと押しやられた。
「……なんだそれはああああああッ!」
 吼えたアルトは、押し込むデイジーの力を凌駕する腕力で、その巨体を弾き飛ばした。
「デイジー? こいつが、デイジー!?」
「アルトさん、どうしたです?」
「……こいつは出来損ないとはいえ、竜に属する。それをなんだ? 女の名前などつけて、浮かれてたっていうのか?」
 鬼燈は、アルトから発せられる声が彼女のものではないことを感じた。
 種族としての多重人格ではなく、鬼燈と同じように体に宿した存在の意思。
 アルトの右腕が震えている。ただならぬ覇気は、そこから感じられた。
「……まぁ誰でもいいんだけど。えっと、なんて呼べばいいです?」
「アルトでいい」
「でも、アルトさんじゃないっぽい。できれば区別したいんだけど」
「……そうだな、竜殺し、と呼ばれたこともある」
 満身創痍のデイジーが、上空で咆哮を上げている。それを見上げながらの名乗りに、鬼燈は思わず、体を折って笑い出した。
 怪訝な顔をするアルトに、ひとしきり笑ってから、鬼燈は大剣を構えなおした。
「いや。竜殺しだと、僕と被るです。まだ未経験だけど、これからなるっぽい」
 これには、アルトの身に宿る竜殺しが絶句した。よもやこの場に、このような状況で、竜殺しが二人もいるとは。
 口元に笑みを浮かべ、アルトは右手の爪を握りしめた。
「なるほど。貴様も竜を殺す者か」
「これからなる予定、だけどね。でも、うん。ワクワクするなぁ。全力を尽くさずにはいられない!」
 旋回し低空飛行に入ったデイジーが、地面すれすれを飛行しながら、その巨大な口を開く。咆哮ではない、噛みつきだ。
 しかし、あまりにも直線的な攻撃だった。迫りくる牙が二人を噛み砕くよりも先に、飛び掛かったアルトの拳が、デイジーの鼻面を捉える。
「竜は――殺ス! ハッハァ、死ネェェェェッ!!」
 そのまま、殴り飛ばす。顔面をひしゃげさせ、デイジーの体が吹き飛ぶ。尋常ならざる破壊力は、まさしく竜殺しに相応しい。
 その様子を見て、鬼燈は疼く体を止められなかった。デイジーが体勢を整えるより早く、距離を詰める。巨大な黒剣を右手に逆手で持って、飛び掛かった。
 空中で羽ばたき姿勢を制御したデイジーが、怒りに任せて咆哮を上げる。しかし、もう衝撃波を生むだけの余力はないようだった。
「その牙、もらったです!」
 霞んだ右手から振るわれる大質量の剣が、デイジーの口を通過する。骨をも軽く噛み砕く牙が、黒剣によって叩き折られた。
 着地と同時に反転、鬼燈はこちらに全力疾走するアルトに向かって、剣を振るう。
 跳躍したアルトが、剣の腹に足を乗せた。そのまま、思い切り振り上げる。
「と、べぇぇぇぇ!」
 鬼燈の腕力を跳躍力に変えたアルトが、真下から迫る。
 デイジーは困惑している。なぜ、人間が飛べるのだ。翼も持たない人間が、なぜ。威嚇の叫びが、そう言っているようだった。
 吼える顎に真下からのアッパーを入れて黙らせ、アルトはその勢いのままデイジーの上空に飛び上がる。
 そして、かかとを振り上げた。
「何がデイジーだ! 堕チロッ!」
 超速のかかと落としが、デイジーの脳天を捉えた。冗談のようなスピードで、デイジーが地面に衝突する。
 もうもうと立ち込める土煙を、鬼燈は油断なく睨む。直後に、土煙を吹き飛ばしながらデイジーが現れた。
 低空から急接近し、デイジーが爪を振るった。鬼燈はあえて受けずに、それを避ける。
 竜の爪とは、いかなるものか。鬼燈の興味はそこに集中していた。受けるつもりはないが、その軌道を研究したい。
「……」
 体を最小限に動かして、爪の攻撃を観察する。速度、威力ともに申し分ない。数で押し寄せるオブリビオンとは比較にならない。
 だが、果たして本当の竜――ドラゴンは、どれほどの強さなのだろう。
「うーん、こんなもんじゃないよね」
 一族の目的たる竜殺しが、こんなにも手応えの薄いものであるはずがない。
 振るわれた爪を、黒の大剣で受け止めた。
「期待外れっぽい!」
 そのまま振り抜き、デイジーの右足に生えた爪を、ことごとく破壊する。
 まさかの事態だったのだろう。デイジーは悲鳴を上げて上空への退避を試みる。
 飛び上がるより早く、その背にアルトが乗った。
「飛ンデミセロ! オ前ノ竜トシテノ格ヲ見テヤルッ!」
 言葉の意味を理解したわけではないだろうが、鬣に取りつくアルトを連れたまま、デイジーはほぼ垂直に急上昇した。
 一瞬で鬼燈たち猟兵が米粒のようになり、やがては見えなくなった。空気は極端に冷え、酸素も薄くなる。
 デイジーが体を捻り、急速に回転を始める。遠心力で振り落とそうというのだ。
 敵のペースに巻き込まれるより早く、アルトは背から飛んだ。
 見た目だけならば、高高度の空に少女が放り出された状態だ。デイジーが嬉々として牙を剥き、アルトを狙う。
 大きく開けられた口が、アルトを捉えた。一口で食われ、アルトの姿が消える。が、デイジーは飲み込めなかった。
 口が、中からこじ開けられる。強靭な顎の力を押しのけ、ギリギリと口が開いていく。
 上あごを持ち上げながら、アルトは冷酷に笑う。
「ダメダ。全然ダメ。貴様ハ竜トシテハ、下ノ下ダナ!」
 一気に力を込めて、顎を外す。突然の痛みに混乱するデイジーを置いて、アルトはその鼻先に立った。
「モウイイゾ。降リロッ!」
 足元にあるワイバーンの顔面を、上から殴りつける。デイジーは地面に向かって一直線に落下していった。
 何度も羽ばたき勢いを殺すデイジーを足場に、アルトが地面に降り立った。
 宿っているものが何者かは知らないが、アルトの体は人間だ。猟兵とはいえ、さすがに危険が過ぎる。鬼燈は呆れて言った。
「その体が死んじゃったらどうするつもりだったです?」
「死ンデナイ。問題ナイ」
「あぁ……そういうタイプですね。僕も似たところあるけど」
 竜殺しとは、己が身を顧みない愚か者の総称なのかもしれない。そんな馬鹿げた考えが脳裏を過ぎり、鬼燈は兜の奥で苦笑した。
 さんざんに痛めつけられ、デイジーに残った武器は、もはや左の爪しかない。それは、決着が近づいていることを意味していた。
 デイジーは、もってあと二撃。しかし、それを待ってやる必要もない。
「そろそろ、空を奪うっぽい」
「了解シタ」
 それぞれ、大剣と爪を構え、上空を睨む。デイジーが空を旋回し、急降下を始めた。
 これまでよりも遥かに速い。彼女もまた、死力を振り絞っているのだろう。
 鬼燈は、その目に仕込んだサイバーアイで速度を計算し、一撃を見舞うに必要なタイミングを図る。
 おそらく、その瞬間は半秒もない。一瞬でもずれれば、体を引き裂かれることとなる。
「タイミングは、僕が」
「任セル」
 アルトの返事を受け、鬼燈は剣を前方に突き出した。
「3……2……1……」
 渾身の爪が迫る。アルトと鬼燈は動かない。
 そして、期は満ちた。デイジーの爪が鬼燈の剣に触れようとした瞬間、
「今ッ!」
「オウッ!」
 二人は同時に跳躍した。突き出された黒剣により間合いを見誤ったデイジーが、二人を目で追いかける。
 狙うは一点。鬼燈とアルトは、それぞれの得物をデイジーの翼の付け根に向けて、振り下ろした。
 激痛に悶絶する絶叫ととともに、山頂に血の臭いが充満する。轟音を上げて地面に倒れたデイジーは、もはやなすすべなく這いまわっていた。
 巨大な翼は、両翼とも地に落ちた。デイジーはもう、飛べない。
 もがいて逃げようとする、翼も尾も失くしたワイバーンは、あまりにも惨めだった。猟兵たちから同情の視線が向けられるのも無理はない。
 しかし、アルトと鬼燈にそうした感情はなかった。このワイバーンは、敵なのだ。
 口から涎を流しながら、なんとか噛み付いて抵抗しようと試みるデイジーの頭を、アルトが踏みつける。
「鬼燈、トドメヲサセ! ヤランナラ俺ガヤルゾ!」
「焦らなくても、すぐやるですよ」
 鬼燈が、大剣を振り上げた。その動きには一辺の迷いもない。
「じゃあね。デイジー」
 黒く鋭い刃が、叩きつけられる。小さな鳴き声が、彼女の最期の声となった。
 転がるデイジーの首を見て、鬼燈は自身が追い求める竜殺しがまだまだ遠いことに、一人ため息をついた。



 猟兵たちが死んだワイバーンを囲み、この処分をどうしようかと迷っていると、騒ぎを聞きつけた冒険者たちがやってきた。
「うお! ワイバーンが……。これ、あんたらでやったのか?」
 誰かが頷くと、冒険者は驚きの声を上げて、猟兵たちを褒め称えた。
 このワイバーンはまだ人的被害を出していないが、それも時間の問題だったろう。よく未然に防いでくれた、とのことだ。
 この死体をどうしたらいいかと尋ねると、冒険者は腕を組んだ。埋めるのも燃やすのも、骨が折れる。
 と、後方でもじもじしていた背の低い弓使いの少女が、手を上げた。
「あの……。提案があるんですけど」
 小さな声だった。猟兵が前に引っ張りだすと恐縮してしまったが、彼女は皆を見回したあと、顔を真っ赤にして俯きつつ、言った。
「た、食べたらいいんじゃないかな……なんて……」
 猟兵と冒険者が、ざわつく。見た目の割りに大胆なことを言う少女だ。
 しかし、少女が付け加えた一言が、決定打となった。
「おじいちゃんから聞いたことがあるんです。その、ワイバーンのお肉、身がしまってて油も上品で、すごく……美味しいって……」
 こうして、山賊たちに愛されたデイジーは、宴会の肴に供されることとなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『荒野の大宴会』

POW   :    たらふく喰ってたらふく飲む

SPD   :    巧みな芸を披露する

WIZ   :    料理を準備する、冒険を歌にする

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 日が落ちかけた山頂に、いくつもの火が灯る。それは篝火であり、焚火であった。
 猟兵たちと、どこからともなく集まった多くの冒険者で、山頂はごった返している。
 勝利の美酒を分け合うことは、この世界の礼儀だ。それに、山賊が蓄えた酒や食料は、一夜で失くせる量ではない。
 
 さらに今夜は、とっておきの御馳走がある。そう、ワイバーンのデイジーだ。
 その調理法を知る者など、いない。肉は焼いて塩かけて食えばうまいのだ! と冒険者は語る。
 料理のアイディアがあるのなら、彼らに代わってデイジーを料理するのもいい。

 歌って踊る冒険者に、猟兵が混じるものも悪くない。一芸があれば披露するのもいいだろう。

 中には、意中のあの子を口説き落とそうと必死な冒険者もいるようだ。勝負の行方を見守るのも、あえて自分が勝負に出るのも、また自由。

 せっかくの大宴会、楽しまなければ損である。はっきり言えば、なんでもありだ。
 今日の一晩は幻の夜。制限時間は夜明けまで。飲んで食べて歌って踊って、心のままに遊び尽くせ!
アルミィ・キングフィッシャー
なんで皆ワイバーン食おうとするんだろうな。
いや、まあいいが。

とりあえず、塩以外も使いな。香草とかあるだろ。
アタシは野営するときとかちゃんと用意してるよ?
そりゃまあ肉は美味いし、いつ食べられるか分からないけどさ。
ああ、うかつに内蔵にナイフいれちゃダメだ。心臓?そこは大丈夫だ。

身は基本筋肉質だから焼くのが鉄板かねえ。焼きすぎると固くなりそうだが。ワインがあったら風味付けに使うか。
後肉質の固い所があったら鍋で適当に煮ておこう。明日の朝には柔らかくなってるだろ。

もう少し食べるものにも気を使えって。腹壊して動けなくなると冒険者やってられないよ?(エール呑みつつ)

余ったものは小さな大倉庫にしまっておくよ。


露木・鬼燈
亜竜でこれたから本物の竜はどれだけなのか。
興味が尽きないっぽい。
まぁ、それはさておき…狩ってしまえばただのお肉なのですね。
そっかー、おいしいのかー。
うん、食べるしかないよね、おいしいのなら!
とゆーことで、秘密之箱庭を発動なのです。
この中なら大型の料理器具もあるのでばっちり料理しちゃうのですよ!
何にしようかなー。
んー、ステーキにハンバーグ、唐揚げ?
いや、ここは竜田揚げの方が相応しい気がするのです。
他の方も、ここ使っていいですよ?
汚れが気になる方は温泉で料理の完成を待てばいいと思うです。
本物の竜…狩ることができた日にはやっぱりお肉になるのかなぁ。
竜肉に相応しい料理とは…これはこれで気になるよね。




 嬉々としてワイバーンの肉を剥ぎ取る冒険者たちを見ながら、アルミィ・キングフィッシャー(「ネフライト」・f02059)は頬を掻いた。
「なんで皆ワイバーン食おうとするんだろうな。いや、いいんだが……」
 オブリビオンを食べるというのは、どうにも複雑だ。しかし、この世界に住む冒険者は、意に介さないらしい。
「いや姉さん! ホントうめぇんすよ、ワイバーン!」
「そっかー。おいしいのかー」
 アルミィの代わりに答えたのは、露木・鬼燈(竜喰・f01316)だった。
 ワイバーンは、思っていたよりは手応えがなかったという感想はあるが、素直に強敵だった。
 亜竜であの力ならば、真の竜はどれほどの強さなのだろうか。興味は尽きない。
 ついでに、その味にも興味がある。剥ぎ取られる肉は確かに美味そうな色合いをしていた。思わず、唾を飲む。
「うん、食べるしかないよね、美味しいなら!」
「味は保証するよ。あぁほら、どんな捌き方してんだ。うかつに内蔵を切ったらダメだ」
 乱雑にデイジーを切り裂いていく冒険者の肩を掴んで下がらせ、アルミィは自身の短剣で手本を示す。
「内臓は基本、取り除く。何食ってるか分かったもんじゃないんだからね。心臓? そこなら大丈夫だ」
 テキパキと指示を出すアルミィは、幼い外見ながら、まるで子供に料理を教える母のようだ。言うと怒られそうなので、鬼燈は黙って見守った。
 みるみる肉を剥ぎ取られ、無残な骨と化しつつあるデイジー。その骨も素材として高値で取引されるらしく、彼女の死体は今、冒険者にとって宝の山なのだ。
「調味料はなにがある?」
 アルミィに聞かれ、冒険者たちは腰の雑嚢を漁る。
「塩があるな」
「俺も塩だ」
「私も、塩なら……」
 次々と出てくる塩の山に、アルミィは頭を抱えた。
「……香草とかは、ないのかい?」
 冒険者たちは揃って首を横に振る。彼らの旅路での食料は基本、干し肉などの保存食だ。
 荷物は極力減らす。香辛料の類などは、使う機会が少ないために持ち歩かないのだろう。
 気持ちは分からなくもない。しかし、それにしても。
「アタシは野営するときとか、ちゃんと用意してるよ? そりゃまぁ、新鮮な肉なんて上等なもんが食べられるかは、分からないけどさ」
「調味料とかがいるっぽい? ならいい方法があるですよ」
 鬼燈が小箱を取り出した。猟兵は時折、こうした小物に不思議な空間を持つことがある。
「それはどこにつながってるんだい?」
「温泉宿です。調理場があるから、どうかなって」
「へぇ、そりゃ助かるね。ありがたく使わせてもらうよ」
 デイジー肉を担いだアルミィが、ためらいなく小箱に触れた。まばゆい光が彼女を包み、その姿が消える。
 戸惑う冒険者に、鬼燈は振り返った。
「ほら、みんなも材料持って。ステーキ、唐揚げ、ハンバーグ。竜だから竜田揚げも、なんて。よーし、作りまくるっぽい!」
 鬼燈に背中を押されて、冒険者たちが次々と小箱に触れていく。
 小箱の中にある温泉宿は、素晴らしく設備が整っていた。調理場も例外ではなく、大人数に料理を振る舞うための大型調理器具が、ところ狭しと並べられていた。調味料もよりどりみどりだ。
「おっ、ワイン。こいつは風味付けに使えるね」
 エールを一杯引っ掛けながら、アルミィが品定めをしていく。
「身は筋肉質だから、焼くのが鉄板かねえ。焼きすぎると固くなりそうだが……」
 呟きながら、あらゆる調理器具を並べて作業を始める。手際の良さから、彼女が料理慣れしていることが伺えた。
 冒険者たちは戸惑いつつも、豊富な調味料に興奮しているようだった。
「すげぇ……まさか、野営の宴会でこんなもん拝めるとはな」
「アンタらねぇ。もう少し食べるものにも気を使えって。腹壊して動けなくなったりしてみな、冒険者なんてやってられないよ」
 苦言を呈しつつも、エールを呷るアルミィはどこか楽しげだ。
 と、そこに鬼燈がやってきた。調理台に並べられた肉に、目を白黒させている。
「切った時はそんなに感じなかったけど、こうして見るとすごい量っぽい。今は何を作ってるです?」
「ワイン蒸しだよ。あとは、単純に切って焼いたのだね。バシルソルトを使ってるから、風味もいいよ」
 見れば、デイジーの焼き肉に冒険者が群がり、焼けるのをじっと待っている。やはり冒険者たちには、上品な料理より安酒に合う焼き肉がいいらしい。
 しかし、バジルのおかげか、確かに香りがいい。鬼燈は焼けた一枚をつまみ、口に放り込んだ。
 何度か噛み締め、目を見開く。
「んっ……まーい! っぽい!」
 ワイバーンの肉がこれほど美味とは。鬼燈は頬を抑えて何度も噛んだ。噛めば噛むほど、味が染み出すのだ。
「うん、いい味だね。デイジーはよっぽどいいものを食ってたらしい」
 アルミィも一口食べて、満足そうに頷いてエールを呷る。
「……! 合う!」
 感心の声に、冒険者たちが俺も私もとデイジーの焼き肉に殺到する。
 だが、つまみ食いで時間が過ぎていてはいけない。皆が一通り食べたあたりで、鬼燈が言った。
「食べてばっかじゃ、怒られそう。そろそろ料理を再開するっぽい!」
 彼もまた、料理の心得があった。備え付けの野菜なども取り出し、山頂の宴会とは思えない料理の下ごしらえを進めていく。
 一方アルミィは、基本に忠実な調理法で、上品ながらどこか野性味のある、冒険者が好みそうな味に仕立てていった。
 冒険者にも料理好きがおり、彼らがアシストに入る形で、料理は次々に完成し、その都度小箱の外に運ばれていった。
 どうやら、外ではウケているらしい。戻ってきた魔法使いが、感想を伝えてくれた。
「皆さん、とても喜んでいますよ。お酒も進んでいるようです」
「そうかい。あんたらも、遠慮しないで食べなよ」
 自然的に組まれた料理班も、できたてのものを食べつつ酒を飲んでいる。
 外のように火を囲むとまではいかないが、これはこれで、裏方の楽しみである。
「んー、これは余るっぽい。作っても作ってもきりがないや」
 サイコロ型に切ったステーキを頬張りながら、鬼燈が残りの肉を見てぼやく。
 干し肉にして冒険者の食料を提供してもいいが、それにしても無くなる気がしない。
「なら、アタシの鞄に入れればいいさ」
 アルミィが自分の鞄を叩く。彼女のそれも、小箱と同じく空間を持つものだった。
 中には、様々な保存環境が整った倉庫がある。肉を長期保存することもできるので、暇を見てどこかの町に寄付してもいいだろう。
「それは助かるっぽい。でも、できるだけ今日のうちに使いたいね」
「そうだね。こりゃ、一晩中忙しくなりそうだ」
 肴がなければ、宴会が終わってしまう。朝日が出るまでひたすら料理をすることになるだろう。
 しかし、その非日常的な台所もまた、宴の一部。それはそれで楽しいものなのだ。
「ようし、鬼燈、気合入れていくよっ!」
「ぽい!」
 二人は揃って腕をまくり、デイジー肉の山を征服にかかるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルト・カントリック
(真の姿は戦闘が終わったので解除済、戦闘中もアルトの意識は一応ありました)

「デイジーはワイバーンでしたよ」と伝える為に、マクシミリアンさんに声をかけるよ。

料理を食べて段々、気分が良くなってきたら頃合いを見て一芸を披露しようかな。

僕はまだ真の姿と力を使いこなせない未熟者だけど、頑張るよ!

“竜殺し”と僕が息を合わせて、ユーベルコード【水晶竜の呪縛障壁】を発動。この時は竜殺しも大人しく、幻想的な水晶の粒や塊に覆われるのを待つ。人々の関心や視線を集めたら、ただひたすら殴って砕く!

幻想的な美しさ・儚さと、爽快感を感じて楽しんで貰えたら嬉しいな。


エーカ・ライスフェルト
wizでpow
まずは一杯頂くわ
蒸留酒を割らずにカップに一杯、できれば琥珀色の奴で乾杯してから「ちびちび」と飲むわ
「チーズとクラッカーに干し葡萄が欲しいわね」

そして料理!
宇宙船育ちとして一度大火力料理をしてみたかったの
「大きな岩を見つけてー、布で拭いてー、貫通性能を下げて熱量を上げた火属性【属性攻撃】を連打!」
「熱で赤くなった岩に肉を載せて後は待つだけよ。熱容量が大きいから一気に焼き上げ……まあどうでもいいわねそんなこと。脂の香りが最高ー」
既にほろ酔いよ

下拵えを忘れているので口に入れる前に岩塩や塩胡椒を砕いて振りかける
軍曹がいたら、私はまず焼くのに専念するわ
「肉焼くの楽しい。心臓もいけるわね」




 日が落ちた山頂は、尽きる気配のない酒と次々に運ばれるワイバーン料理のおかげもあって、冒険者と猟兵たちの賑わいが収まる気配を見せない。
 酒は飲めずとも、様々な料理に舌鼓を打つだけで、気分は高揚していく。あるいは、酔って歌い遊ぶ冒険者たちを見ているおかげだろうか。
 アルト・カントリック(どこまでも竜オタク・f01356)は、酔った冒険者たちに囲まれ、談笑していた。
「いやぁーしかし、ビビったぜ。まさか素手でワイバーンをボコ殴りにする奴がいるとはな。それも女の子だぜ、なぁおい」
 大柄な斧使いが、隣の薬師に絡む。迷惑そうに押しのけながらも、薬師の男は笑った。
「格闘家であっても、その背中に飛び乗って鼻面を殴ろうなんて思わないでしょうね。いやはや、大したものです」
「そ、そうかな? あはは……」
 その身に宿す竜殺しが暴れたおかげであることは、説明しにくい。特にそうする必要もないだろうから、黙っておくことにした。
 アルトの前には、巨大な岩があった。魔法の火で熱されており、その上にデイジーの肉やら冒険者の干し魚やらを置いて焼いていた。
 猟兵たちが異空間で作る料理はもちろん美味なのだが、こうした荒っぽい料理が好きな手合いもいるということだ。
 文字通りその火付け役となっていたのが、エーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)だった。
「まだ火力が足りないかしらねぇ。熱量を上げてみようかしら」
 手を岩にかざし、魔法の火炎が岩を熱する。途端、その岩が真っ赤になるほど熱せられ、近づきすぎていた冒険者たちが慌てて下がった。
「んー、こんなもんかしら」
 普段よりどこかろれつの回っていない下で、エーカは頷いた。片方の手にはカップが握られており、その中身は蒸留酒だ。度数の高い酒が割られずに注がれている。
 ちびちびとではあるが、すでにほろ酔いである。赤くなってきた頬を一撫でし、食材を持っている冒険者に振り返る。
「さ、どんどん焼きましょう。熱容量が大きいから一気に焼き上げ……まぁ、どうでもいいわねそんなこと」
 デイジー肉を掴み取り、岩に乗せる。肉が焼ける音とともに、胃袋をくすぐる香りが広がった。
「脂の香りが最高ー」
 上機嫌に言いながら、肉が焼けるまで香りを肴に酒を飲むエーカである。
 冒険者たちが、熱した岩に次々と食材を載せていく。肉、野菜、魚……さまざまなものが荒っぽく焼かれる匂いは、なかなかたまらないものがある。次々に、赤い岩へと人が集まってきた。
 その中に、見知った影があった。グリモア猟兵のマクシミリアン・ベイカー(怒れるマックス軍曹・f01737)である。
「ドーナツにたかる蟻かと思ったが、貴様らか」
 彼もまた酒のカップを持っているが、顔色は変わっていない。酒には強いようだ。
 食材が焼け、エーカがそれらに岩塩や胡椒を振りかける。ナイフやらフォークを伸ばす冒険者たちを見やりながら、アルトはマクシミリアンに近寄った。
「マクシミリアンさん。デイジーの正体は、アレでした」
 指さすのは、今まさに冒険者が口に運んでいる肉だった。その剣士は、肉を咀嚼しながら天を仰ぎ、旨味に感動して涙すら流している。
「あの肉か。牛か何かか?」
「いえ、ワイバーンです」
「……ほう。クソどもは空飛ぶクソを飼って喜んでたわけか! そして貴様らは、空飛ぶクソを食って喜んでいると、そうだな?」
「ま、まぁ……そうかな……」
 言い方があんまりだが、悪気があって言っているわけではなさそうだ。アルトはそう前向きに解釈した。
 仁王立ちして酒を飲みつつ彼らを見やるマクシミリアンに、頬を赤くしたエーカが楽し気な足取りで歩み寄り、声をかけた。
「あら、軍曹。楽しんでるー?」
「貴様らの酔った面では酒の肴にもならん! が、酒の味は悪くない。貴様はどうだ、エーカ・ライスフェルト」
「楽しいわよ、肉を焼くの。心臓も結構いけたし、あなたも食べたら?」
 小皿に盛ったデイジー肉を差し出され、マクシミリアンはそれを一瞥してから、真顔でフォークに突き刺し口へと運んだ。
 何度か咀嚼してから、酒を口に含んで喉の奥へと流し込み、鼻を鳴らした。
「ふん! クソにしては、上々だ」
「最高の誉め言葉ね。じゃあ私、肉を焼くからー」
「エーカ、僕も手伝うよ」
 駆け寄ろうとしたアルトを、エーカは手を軽く上げて制する。
「冒険者にも焼きたがりはいるから、こっちは大丈夫よー。でも、そうね。何か余興が見たいわ。ねぇ、マックス軍曹」
「好きにしろ! 俺は他の奴の様子を見てくる。……アルト・カントリック。貴様がマゾヒスト出ない限り、やるからには徹底することを勧めておく!」
 それは、彼なりの激励であった。宴の余興で恥ずかしがれば、それは即冷ややかな空気に繋がるのだ。
 マクシミリアンはそれ以上何も言わず、酒を飲みつつ暗がりの中へ去っていった。
 気づけば期待の視線を浴びていたアルトだが、美味しい料理に気分が良くなっていたので、突然の振りにも喜んで乗った。
「よし、じゃあ一つ、宴会芸? ……やってみようか!」
 アルトの中にいる竜殺しに語り掛け、その身に宿す力を解放していく。体中が幻想的な水晶に覆われていき、その変化に冒険者たちが感嘆の声を上げる。
 やがて水晶は、アルトを護る鎧と化す。少女の体を包む水晶の美しさは、篝火に照らされてより際立った。
 皆の注目が集まっている。アルトはそのことになお気を良くした。
「余興か。面白い!」
 表層に現れた竜殺しが、言った。拳を打ち鳴らすと、水晶が砕けて飛び散った。飛散した水晶の粒は、月明かりに照らされた儚げに輝く。
「シャァッ!」
 気合いの叫びを発し、身に纏うクリスタルがいくつもの塊となって宙に舞う。身軽になったアルトと竜殺しは、一つの体で高く跳躍した。
「イクゼェェェッ!」
 巨大な水晶塊を殴り、蹴り、凄まじい連打を加えていく。空を覆う水晶の粒は、天蓋に輝く星に混じって、夜空を一層美しく彩る。
 見とれる冒険者たちのもとに、クリスタルの破片が降ることはなかった。自然に消えていくのだ。 
 落下する水晶の塊を蹴り上げ、再び跳んで追いかけては、殴って砕いていく。爽快感すら覚える光景に、徐々に冒険者から歓声が上がり始めた。
 その光景を見上げ、エーカは蒸留酒を一口、干し葡萄をかじる。
「アルトさん、やるわねぇ。あ、肉焼けたわよー。誰も取らないなら、私食べちゃうわよー」
 宣言するより早く口に運ぶエーカである。もっとも今は、冒険者たちの視線はアルトの余興に釘付けだ。
 全てのクリスタルが粉となり、空中に消えてから、アルトは着地した。一汗流したせいで、夜風が冷たく感じる。
「ふぅ……」
「いいぞー姉ちゃん! さすがはワイバーン殺しの一党の一員だな!」
「よぅ、俺たちと組まねぇか! 分け前は弾むぜ!」
 やんややんやと声が上がり、アルトは恥ずかし気に頬を掻いた。内に引っ込んだ竜殺しが、ワイバーン殺しの称号に納得がいかないと叫んでいるが、無視した。
 誘われるがままに輪の中に座ると、エーカがデイジー肉の焼いたのを差し出してくれた。
「ご褒美。あなた、竜オタクなんでしょ? じゃ、ワイバーンの肉もたくさん食べなさいな」
「いや、僕は食べる方じゃ……」
「ほら口開けて、あーん」
 ほぼ強引にねじ込まれ、アルトはデイジー肉を複雑な思いで味わう。
 見れば、エーカはほろ酔いから本格的な酔いに移行しつつあるようだった。熱せられた岩の近くで強い酒を飲んでいれば、回りも早いというものだ。
 岩を囲む冒険者たちも似たようなものだった。一様に楽しそうで、アルトの余興がその一役を担えたと思えば、悪い気はしない。
「……僕もお酒飲めるようになったら、あんな風に笑えるのかな」
 冒険者と酒を飲み交わしながら和やかに談笑するエーカを見つつ、アルトは肉を頬張り、宴の味を噛みしめた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
さて、私は飲食機能が無いので集まった猟兵や冒険者の方々へ、料理の調理や配膳を担当しておきましょう。
幸い、ワイバーンの焼肉くらいなら私にも出来そうですしね

今回の任務はいろいろありました、愚痴や不満、脱力などをパーティで発散しているかたもいらっしゃるでしょうし、その方の相手をするのもよさそうです

転移の為に待機しておられる少々怖いマクシミリアン様…マックス軍曹にも雑談ついでに料理を持っていきましょう。お酒は駄目ですけれど料理くらいは…ね

今回の山賊達はワイバーンを愛していました。人の愛する対象やその表現方法は千差万別。私は騎士道物語を愛していますが、マックス軍曹はどんなものを愛しておられますか?


アイル・コーウィン
ふぅ、ワイバーンを倒せてスッキリしたわ。
さて、せっかくの宴会だし、嫌な事はさっさと忘れて楽しまないとね!

宴会での行動はもちろん、いっぱい飲んでいっぱい食べるわ!
なんせあてにしてたお宝が無かったんですもの。少しでも元を取らないとよ!

んむっ、このお肉美味いわ!
一体なんの肉……って、デイジーの肉!?
むうぅっ、せっかく忘れてたのに、今日された色々な事を思い出してきちゃった……。
こうなったら、マクシミリアンさんに愚痴の一つでも聞いて貰おうかしら。




 宴は続く。参加している者に、今がどのくらいの時間なのかを気にする者はいない。
 きっと、日が昇ってようやく気付くのだろう。酒に酔い歌って騒ぐ冒険者や猟兵を見ながら、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はそんなことを思った。
 彼には飲食の機能がない。かといって、この賑やかな場から去るのももったいない気がして、トリテレイアは配膳と調理を担当していた。
 肉の味は分からないが、焼き加減ならば調整できる。焚火に直接あぶる形で肉を焼き、それを皆に送り届けていた。
「焼肉くらいなら、私にもできるようですね。これは発見です」
 酒や食事を楽しめない機械の体だが、こうして皆との時間を共有できることを知れたことは、大きな喜びだった。
 焚火で肉を焼いて皿に盛る。次は誰に渡そうかと、冒険者や猟兵の様子を見ていると、見知った顔を見かけた。
 暗がりの岩場に腰かけ、一人でカップを呷っている、マクシミリアン・ベイカー(怒れるマックス軍曹・f01737)だ。巨体を揺らしながら近づき、皿を差し出す。
「マクシミリアン様……マックス軍曹。こちらにおいでだったのですね」
「トリテレイア・ゼロナインか。でかい図体の割りには声が小さいな。夜中に草むらへしけこむ連中の声の方が、まだ聞こえやすい」
「それは、申し訳ありません」
「謝るな。冗談の通じん奴だな」
 あくまで真顔で言うものだから、マクシミリアンの言葉が本当に冗談なのか分かりかねた。トリテレイアは正直、彼を少し怖いと思っている。
 とはいえ、あまり面識のない相手だ。先入観で人の価値を決めることはよくないと、記憶回路の騎士物語にも書かれていた。
「……お酒を飲まれているのですね」
 マクシミリアンの顔色は変わらないが、そのカップに揺れる琥珀色の液体は、冒険者たちが飲んでいるものと同じだ。
 彼はグリモア猟兵なので、酔っ払って倒れでもしたら、トリテレイアたちは帰れなくなってしまう。
 が、マクシミリアンの顔色を見る限り、その心配はなさそうだった。
「悪くない酒だ。オブリビオンのクソが蓄えていたという点は、まったくもって気に食わんがな」
「これも、善良な人々から奪い取ったものなのでしょうか」
「十中八九そうだ。だが、今更酒樽を返したところで娘が二週間帰ってきていない親父のような顔をされるのがオチだ。ここで処理するのが最善と、ブリーフィングで説明したな」
「えぇ。結果的に、冒険者の皆さんにも手伝ってもらっていますが。おかげで、士気も上がっているようです」
 頷くトリテレイアに鼻を鳴らし、マクシミリアンは肉を一切れつまんで口に入れた。
 と、そこに妙なテンションの女の声が上がった。
「あー! トリテレイアさんとマクシミリアンさんじゃない!」
 カップを片手に現れたのは、アイル・コーウィン(猫耳トレジャーハンター・f02316)だった。足取りはしっかりしているが、その口調は酒に酔った者のそれだ。
「アイル・コーウィン。貴様、酒を飲んでいるのか? 職業柄、未成年の飲酒を見逃すことはできんぞ」
 睨むように目を細めるマクシミリアンに、アイルは首を横に振った。
「まさか。これはお茶。ハーブティーよ」
「その割に、ずいぶんと楽し気ですね」
 トリテレイアに問われて、アイルはにっこりとして頷いた。
「ワイバーンを倒せてスッキリしたから! それにせっかくの宴会だし、お宝がなかった分、思いっきり楽しまないと損じゃない。あ、そのお肉美味しそう! 私ももらうわね」
 言うが早いか、アイルはトリテレイアが持つ皿から肉を取り、口に放り込んだ。
「んむっ……。こ、このお肉、おいしいわ! トリテレイアさん、一体何の肉なの?」
「これは、デイジー嬢です」
「えっ」
 咀嚼していた口が止まるアイルに、トリテレイアは再度頷く。付け加えるように、マクシミリアンがカップから口を離して言った。
「貴様らが殺した、空飛ぶクソだ。ワイバーンと言えばわかるか?」
「……え? ええええ!? デイジーの肉!?」
 突然叫ぶアイルに、マクシミリアンが露骨に眉をひそめる。
「いきなり便所でクソをひり出す時のような声を出すな! 俺の鼓膜が破れたらどうする!」
「そ、そんな声出してないじゃない! ていうか、セクハラよセクハラ!」
 顔を真っ赤にして叫び返しながらも、アイルはデイジーの味を消そうとハーブ茶を啜っては、舌を出してぺっぺとやっている。
 トリテレイアは思い出した。戦闘中にも、彼女はデイジーに対してただならぬ感情を抱いていたのだ。
「アイル様、一体なぜそこまで、デイジー嬢を? もちろんオブリビオンですから、敵ではありますが……」
「それは、デイジーというより、その……」
 何やら思い出しているようで、アイルは段々と俯いてしまった。マクシミリアンはまるで気にする様子もなく、酒を飲んでいる。
 まずいことを聞いてしまったかと思ったが、次の瞬間、アイルは跳ねるように顔を上げた。
「二人とも、聞いてくれる!? 私ってば今回、本当に最悪で――」
 そこから、アイルは今回の任務で起きた顛末を話した。
 お宝目当てで廃坑をうろつき、一瞬の隙をつかれた結果、山賊相手に酷い辱めを受けてしまったこと。貞操は守ったが、今でも衝撃は大きい。
 アイルの胸元を覆う布切れも、もとは山賊の衣服だったのだ。その時のことを思い出すだけでも、反吐が出る思いだった。
「それは、なんと言ったらよいか……」
 トリテレイアは、皿を上下させて言葉を探した。しかし、慰めによい言葉が出てこない。一方で、マクシミリアンは鼻を鳴らした。
「その程度で済んでよかったと思うんだな。貴様の貞操がどうなろうと知らんが、クソどもがその気になれば、貴様を殺すこともできたことを、忘れるな」
「うっ……それは、確かに」
 説教をされてしまい、アイルは唇を尖らせた。
 そうは言われても、アイルはトレジャーハンターなのだ。危険の先に宝を夢見る想いは、簡単に止められるはずもない。
「でも、廃坑と言ったらお宝じゃない。それに、ちゃんと仕事はしたわよ。山賊もワイバーンも退治したし。ね、トリテレイアさん」
「え? えー……」
 アイルとマクシミリアンからじっと見つめられ、トリテレイアは所在なさげに巨体を身じろぎさせる。どちらの味方をしても、ろくなことになりそうにない。
 やや考えてから、彼は話題を変えることにした。
「……アイルさんに注目した山賊もいたようですが、多くはデイジー嬢――ワイバーンに心を奪われていました。彼らは、ワイバーンを愛していたように思えます」
「ふん、ウォーマシンジョークか? 笑えんな」
「いえ、心からの感想です。山賊でありながら、常にデイジー嬢を気にかけて戦っていました。オブリビオンでない人間でも、我々でも、なかなかにできることではないかと」
「愛って、人によるのかしらね」
 どことなく感傷的に、アイルが呟いた。トリテレイアはそれに頷いて、
「えぇ。私は、私の記憶データに残された騎士道物語を愛しています。私の生きる指針です」
「いいわね、そういうの……」
 女性らしいロマンスを想像しつつあったアイルは、どうにも今日の体験――薄汚い山賊の顔や手の感触がちらつき、時々苦い顔をしながら頭を振った。
 黙々と酒を飲むマクシミリアンに、トリテレイアは尋ねた。
「マックス軍曹は、どんなものを愛しておられますか?」
「家族だ」
 即答だった。そこに照れはなく、厳然たる事実として述べていることが分かった。
 黙って続きを待つアイルとトリテレイアに、マクシミリアンが視線を向ける。
「死んだママに、一人娘に、三歳の孫。娘婿は気に入らんところが多々あるが、まぁ仕事のできる男だ。認めている。家族が生きるには世界を護る必要がある。だから俺は兵士を続けている」
「……なんだか、意外だわ」
 空になったカップを弄びながら、アイルが呟いた。耳に入っただろうが、マクシミリアンはそれに対して反論するようなことをせず、静かに酒を煽る。
 家族。それは人にとって力の源泉となる存在だ。トリテレイアはその感情を、とても羨ましく思った。
 自然と生まれた沈黙の中で、マクシミリアンはトリテレイアをじっと見ていた。まるで、機械の奥底にある何かを見定めているかのようだった。
 ややあって、彼は言った。
「兵士は、お互いを兄弟と呼ぶ」
「……兄弟」
 おうむ返しに呟いたトリテレイアは、その言葉を噛みしめた。アイルも似たような心地で、明るくなり始めている空を見つめる。
「だとしたら、私たち……大家族ね」
「そうだ。我々はファミリーだ。貴様らも、覚えておくといい」
 酒を飲み干したマクシミリアンが立ち上がり、それ以上は何も言わずに去っていった。
 家族という響きに酔っていたトリテレイアは、気を取り直して明るく言った。
「さて。宴はそろそろお開きですね」
「そうね。帰る準備、しましょうか。皆に声をかけないと」
 酒を飲んでいない二人は、酔った連中をマクシミリアンのところまで引っ張っていく必要があるだろう。
 しかし、その前に。トリテレイアは、手に持つ皿をアイルに突き出した。
「時に、アイル様。デイジー嬢の焼肉、食べきってもらえませんか?」
「それはいや!」

◆ 
 
 朝日が大地を赤く染め、酔い潰れた冒険者たちがいびきをかいて寝ている中、猟兵たちは帰路についた。
 明日の二日酔いを心配する者。酔いつぶれてどうにもならない者。酒は飲まずとも料理を食べて遊び尽くした者。猟兵たちは様々だ。
 そして、帰る世界も様々。家ともなれば、なおのこと。
 それでも、彼らは家族だった。世界を飛び回り、命を懸けて戦う使命が、その絆なのだ。

 熱く輝く太陽が、生きるものたちに朝を告げる。
 激闘の爪痕を癒し、眠る冒険者たちを優しく包み込みながら、世界は新たな一日を、静かに刻み始めた。

fin

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月27日


挿絵イラスト