4
温泉の町ロレース4~大樹をのぼろう!~

#アックス&ウィザーズ

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アックス&ウィザーズ


0




●この樹何の樹?
「おお、大きく育ったなぁ」
 さすが冒険者殿が植えるべきとおっしゃった種だ、と頷きながら育った樹を見上げる温泉町ロレースの町長さん。
 その見上げ方はほぼ真上を見るような角度である……。
 それもそのはず、温泉湖の近くに植えられた果物の樹の高さは100mを超えている。
 樹木の太さも巨大なビル程にもなり、世界樹と言われても納得できる大きさだ。
 天高く伸びた樹の上には森のように緑の葉がドーム状に生い茂り、小さな村位ならすっぽり乗せれるほどの広さがあると予想出来る。
 伸びに伸びた巨木を前に、町長はため息を吐くことしか出来なかったのだ。

「町長、こんなに大きな果実初めてですよ」
「おお、こりゃ立派な果実だ」
 町長の意識を現実に引き戻したのは町の若い衆の一人だ、彼は成人男性程の大きさがある真っ赤な林檎が樹から【転げ落ちてきた】と告げるのである。
 良く見てみれば、巨大樹木はまるで内側に大木な一本の樹と、外側に小さな樹があり、二本の樹が絡み合って出来上がったような不思議な形状をしていたのだ。
 特に外側を螺旋を描く様に絡みつく樹は、まるで天にまで伸びる螺旋の回廊に見えるだろう。
 そんな螺旋回廊染みた樹を道として、傷がついた巨大果実が転がってきているのである。

「豊作じゃな……って、おおい! 登るのは危険じゃぞ!」
「へへっ! 大丈夫ですって! きっと樹の上には果物が一杯です――ふぐっ!?」
 良い笑顔でサムズアップして絡みつく樹を道にして昇ろうと走り出した……その時、鋭い風切り音が響き渡ったのだ。
 放たれたのは矢……直撃では無く、太腿に掠るように放たれたそのボルトは麻痺毒によって町民を無力化するのであった。
 バタリと痙攣しながら倒れる町民、命に別状はないがその場から動けなくなってしまったのである。
 慌てて倒れた者を助けに走る中、不意に少女の声が聞こえてきたのだ。

「侵入者達よ! この大樹は我が領域である! 立ち去りなさい!!」
 可愛らしくも強い意志が込められた声……折角の大樹に何者かが住み着き、自分の領域にしたと告げる。
 放っておけば折角の大樹と実りが台無しである……そこで町長は再び冒険者達に頼る事を決めたのであった。

●調査に向かおう温泉の町。
「と、いうわけでお前さんらに依頼なのじゃ! 今回は大きく育った果物の樹の調査と危険の排除なのじゃな!」
 ところ変わってグリモアベース、キミ達猟兵の前で大きく身振り手振りを加えて今回の事件の説明を行う存在が居た。
 わたわたと慌てながら話す人物がプリマステラ・リコールド、へっぽこグリモア猟兵である。
 そんなプリマステラがキミ達に語る調査の注意点は以下の通り。
 ・足場や道となる【からみつく螺旋回廊】が存在するので徒歩でも登る事は出来る。
 ・果物は自然落下もしくは、上記の足場を転がってくるので注意。
 ・果物の大きさは直径2m程の大きさである。
 ・中心となる巨木には大きな洞が存在しており、隠れる事が可能である。
 ・大樹の頂上付近は入り組んでおり迷宮のようになっている、オブリビオンはこの迷宮に隠れている。

「オブリビオンは暗器等を使用する暗殺者のような存在じゃ、根城にしておるのは頂上部の自然迷宮なのじゃ」
 姿は未だに分からないが、声から女性型のオブリビオンであると伝えられる。
 このオブリビオンが巨大果実樹を占拠しているので、これを撃破すれば任務完了だ!

「そういえば、ロレースの町長が大きな果物の使い方で相談があるらしいのじゃ! 加工して特産に出来無いか……と、ゆー事らしいのじゃぞ!」
 この巨大林檎の使い道を相談してきていると報告するプリマステラ。
 林檎の味はやや酸味が強く、果汁が多めであまり日持ちがしないようだ。
 また、大きさの関係上果実のまま輸出に向いていない。
 勿論、その大きさゆえの希少さもある事はあるだろうがネックになるのはロレースの立地。
 開拓の最先端であるロレースは新鮮な状態で果実を他の町に届ける事は難しいのだ。
 つまり林檎を加工して【らしい】特産品を作成出来れば良いらしい。
 町長はこの依頼が終わるまでに、考えてくれれば嬉しいと述べている。
 余裕があれば町長の相談に応えてみるのも良いかもしれない。


伊吹ノ樹
 大きな樹が生えましたよ猟兵さん!
 と、いうわけでお久しぶりですなへっぽこMSの伊吹ノ樹です。

 今回の依頼は温泉の町ロレースに生えた巨大な樹木に住み着いたオブリビオンを退治するシナリオとなります。
 イメージ的には超高層ビル位の大きさの樹、その周囲を螺旋状に樹の道が出来ています。
 第一章は樹の道を昇るフラグメントです、ただし巨大林檎が転がってくるので注意です!
 勿論飛行も可能ですが、頭上に注意ですよ!
 第二章は巨大樹木の頂上でオブリビオンを探す事になります。
 枝が絡まり合ったり、洞が繋がっていたりな自然の迷宮を皆さんらしい方法で突破して頂きたいのです!
 第三章はボス戦です!
 巨大樹を自分の領域にしてしまったテリトリー・メイドを撃破しましょう!
 暗殺者めいたメイドさんとの闘いになりますよ!
 今回の町長のお願いは【巨大林檎】を使った特産品の相談です。
 シナリオ終了までにアイデアがありましたら、教えて頂けるとロレースの新しい特産品になるはずです!
 それでは巨大な果実樹を駆け上がりましょう! なシナリオをよろしくお願いします。
47




第1章 冒険 『急勾配の坂の上から』

POW   :    力技・肉体で解決を図る

SPD   :    速さ・技量で解決を図る

WIZ   :    魔法・賢さで解決を図る

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●大きな林檎に要注意。
 転送を終え、キミ達は問題の大果実樹の前にやってきた。
 見上げる程に大きな樹木は雄大で荘厳である。
 更に大きな果実も採れるとなれば、町の人間にとっての恩恵は計り知れない。
 樹上にオブリビオンが居ない時に限っては……。

「侵入者が来たか……この大樹は私の領域! 侵入者には用意はしないぞ!」
 頭上から響く女性の声、このオブリビオンの元までたどり着き撃破するのがキミ達猟兵の受けた依頼だ。
 樹上までは道になる螺旋状の樹木があるので徒歩でも問題ない、勿論飛べるものは飛んでもらっても問題ないのだ。
 最も、姿を隠したオブリビオンの妨害を考慮せねばならない。
 現在判明している妨害は【矢による射撃】【大きな果実を転がす】の二種類。
 道となる螺旋樹木の幅は成人男性が三人並んで進める程もある。
 また、中央大樹に所々に洞が開いており身を隠すことも出来る。
 勿論転がってくる巨大果実や落下してくる果実は相応の力があれば破壊可能だ、
 回避方法はキミ達しだい、まずは樹上に向かって進むのだ!
二天堂・たま
UC:タイラント召喚で呼びだした相棒に騎乗して登るとしよう。
矢とか果実は相棒達と野生の勘などを頼りに察知する。
ワタシや相棒達なら大した脅威にはなるまい。
UC:スカイステッパーで空中に逃れることもできるしな。空中での身のこなしには覚えがあるのだ。

にしてもあの1粒の種がここまでデカくなるのは予想外だったな。
しかもあの大きなリンゴ…。
うむ、必要なのは酒樽だな。醸造所の開拓だ。
果汁の糖分を、リンゴの皮についた天然酵母が発酵させることでシードルというお酒ができるのだ。
ワタシとUCで呼んだ相棒達が指導しよう。
アルコール度数が低い場合も心配いらん。醸造すれば上等な酒…通称ブランデーが作れるからな。


エルーゼ・フーシェン
果汁が多いなら、ジュースとかどうかな?
たしかUDCアースにはお酒もあったはず。

「上まで登ればいいのね」
話によれば、矢も射ってくるみたいだから気をつけないと。
私は【空中戦】で飛行して上を目指すわ。
【野生の勘】と【第六感】で矢を予測して『ゲンドゥル』に風の光刃で防ぐわ。
すぐに移動されるかもしれないけど、【衝撃波】を放ってみる。
少なからずこちらにも対抗手段があると分かるはずだから。
矢だけじゃないはずだから、警戒しないと。
【ダンス】で舞うように回避すれば、こちらに注意を向けられるかも。

※アドリブ、他の猟兵との絡みOK


大河・回
まさかこんな大樹になるとは……不思議な物だ。しかし、徒歩で登るのか……辛いな。いや、しがみついて木登りをするよりマシか。

面倒だが徒歩で登っていくとしよう
果実に警戒し音などの兆候を捉えるよう注意しておく
矢による射撃は電磁バリアで防御する
果実を転がす攻撃は兆候を捉えたら洞に入って回避する
洞がない場合は戦闘員を数をあまり出さずに召喚し止められないか試みよう
無理そうなら戦闘員を踏み台にしてジャンプし回避だ

※アドリブ、絡み歓迎


トリガー・シックス
特産品か。アップルパイとジャムを提案しておく。

「骨が折れるな」
巨大林檎が転がってきたり、落ちてくる以外にも罠が張られている可能性があるな。
【ダッシュ】で移動しつつ【第六感】と【聞き耳】で落下や転がってくる音を察知して洞に回避。
場合によっては『陰狼』と『昂龍』で切り捨てる。
「暗殺者か。少し面倒だな」
この地形を生かした不意打ちも考えておかねばならない。
林檎や弓以外にも警戒しつつ前進する。

※アドリブ、他の猟兵との絡みOK


ティエル・ティエリエル
「リンゴ、リンゴか~。何がいいかなー」
巨大林檎の使い道を考えながら登っていくよ!

でも、もちろんオブリビオンの攻撃には注意してるよ!
【矢による射撃】で狙われないように幹に張り付くようにして飛んでいくね!
もしそれでも狙われたら【第六感】で察知して【スカイステッパー】で緊急回避だよ☆

途中にある大きな洞も興味を持って中を覗いていったりするね♪
あと、もし誰かが転がってきた林檎を受け止めたら、少し切り取って味見してみようかな~♪

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


御手洗・花子
わしも開拓村の案件を抱えておるし、先駆者の案件も学んでおくべきじゃの…

ふむ、障害は矢と果実じゃな…

・果実対策
巨大とはいえ、転がしておるだけじゃ…影の追跡者に先行させ、早めに転がってくるのを発見さえすれば、後は遠距離からの衝撃波で横ベクトルに力を加えれば、勝手に道を外れて無害化するじゃろう。

・矢対策
これは厄介じゃな、射手を探すためにも射られた方向に追跡者を向かわせるとしよう、射手の位置さえ判れば、脅威度もだいぶ落ちるじゃろう。
そして、他の猟兵にもその位置を知らせるのじゃ、他の者ならば反撃する術もあるじゃろう。

・巨大林檎
これだけ大きいと、食用以外にもハロウィンのカボチャの様な事も出来そうじゃな。


レイチェル・ケイトリン
力技で解決!

まあ、わたしの力って「念動力」をつかった「サイコキネシス」なんだけどね。

全体の様子を「情報収集」で把握して、矢とかおっきなリンゴとかをうけとめながらすすむよ。

おっきなリンゴはころがらないよう割っとくの。
あとからくる猟兵さんがそれで矢とかをふせげるように「地形の利用」もかんがえてね。


おっきなリンゴをつかった特産品……お料理の工夫もいいけど、ここの立地をよくしていくね。

わたしの「念動力」の「サイコキネシス」つかって「情報収集」と「地形の利用」で道を工事して馬車をとおりやすくするの。
それでやりやすくはなるよね。

砂糖を買いやすくできれば、リンゴを保存しやすいジャムにできたりする、とかもね。


ミリア・プレスティール
矢の麻痺毒は刺さらなければ問題ないので、巨大果実に注意しつつ【地形の利用】を活用して進みます。転がってきた果実は相棒ミトンの【怪力】で受け止められると思いますが、運が悪ければ真上から落ちてきた果実に気付かずに押し潰されてしまうかも…
その時はひらひらと空を飛んで上を目指しましょう。非常に恥ずかしい姿ですがミリアには我慢してもらいましょう。

※アドリブ・他者との絡みOK


キョウ・ヴァゼラード
勝手に住み着いて攻撃してくるとは…無法者ここに極まれりだな。
縁ある町であるがそうでなくとも放ってはおけん、いざ参ろうぞ!

●登る
【高速詠唱】で【聖剣解放】を行い、腹心の騎士『盾のアイギス』と共に行動。
アイギスを【戦闘知識】で指揮し矢の射撃を【盾受け】させ、私は巨大林檎が転がって来たら【怪力】を発揮して聖剣を【二回攻撃】の連続斬りで振るい【薙ぎ払う】事で役割分担しよう。
「ちょっとした攻城戦のようなものだ、恐るるに足りん」
『閣下には矢の一本も当てさせはしない!』

●アドリブ歓迎

●林檎加工
ジュースにして瓶詰めしてはどうだろうか?
持ちを考えるならばシードルにするのめ良い。


清川・シャル
ひゃっほう!りんごー!
りんご大好き…なんですけど、大きすぎません?
…ロマン!

破壊するのは惜しいですけど、
ぐーちゃんΩ(零距離射撃、破壊工作、吹き飛ばし、早業、衝撃波、クイックドロウ)
でぶっ飛ばしながら進みましょう

何やら攻撃が来るそうで?
物騒ですね。
amanecerで戦意喪失を狙った催眠術と、超音波による聴覚攻撃でも仕掛けてみましょう

第六感、見切り、カウンターで対応します
そーちゃん、修羅桜、桜花乱舞、優美高妙・斬で全身武器で何かしら対応できるでしょうか
横穴あるみたいなので、逃げ足、地形の利用を試みます
視力で目視出来る攻撃なら、オーラ防御か氷の盾を展開します

りんごは!みんなの!ものです!


ルイーグ・ソイル
うおー…あの種、すんごいおっきく育ったんすね…ほへー…見上げていると首が痛くなりそうっす…!
そんでもって木の実もでっかいっすね!?一個でめっちゃお腹いっぱいになれそうじゃないっすか…!へへへ、味わうのが楽しみっす!
オレとしてはこのでっかいのを、種のところをくりぬいて…砂糖とバターでまるっと焼いて食べたいっす。想像しただけでじゅるり…っすね!
折角の美味しいもの、勿体無いっすから、攻撃を避けつつダッシュで登るっすよ!ウオオオオオオオ!!!!
(連携アドリブ歓迎です!



●林檎の価値は。
 温泉が湧き出る町ロレース、その代表者である男……町長の屋敷に一部の猟兵達が集まっていた。
 にこにこと笑顔でキミ達を迎え入れたると人数分の薬湯茶を用意する、相談に乗ってもらうために。
 何処か甘い香りと薬草の匂いが混じったお茶を前に、キミ達は巨大林檎の活用方法を話し始めるのだ。

「果汁が多いなら、ジュースとかどうかな?」
 果汁の多さを活かす方法を提案するのはエルーゼ・フーシェン、美しい銀髪と白狐の耳、尻尾。 蒼井翼を持つキマイラの女戦士である。
 大きな林檎を絞れば、それだけで多くのジュースを生み出す事は必然、僅かな手間で大量に作り出せリスクも少ない。

「うむ、瓶詰にすればある程度の保存性は持てるだろう。 それにシードルも視野に入る」
 エルーゼの言葉に追随するように頷く黒髪の美丈夫、ヴァゼラード伯爵家当主にして騎士団長キョウ・ヴァゼラードだ。
 キョウはジュースだけではなく、発酵させる事で発泡果実酒であるシードルに出来ると告げるのだ。

「そうなると酒樽と醸造所も必要であるな。 蒸留しブランデーも醸造出来る故に」
 発酵については部下とワタシが指導しようではないか。
 そう紳士然とした言葉で話すのはもふもふふわふわの毛を持つケットシー、二天堂・たまである。
 料理が得意なたまとぴよぴよと鳴く相棒によってロレースの町に新たな施設が生まれようとしていた!

「甘味が少ない林檎のようだ……アップルパイやジャム等に利用するのも良いだろう」
 巨大林檎の酸味がやや強い事に着目した黒づくめでクールな傭兵、トリガー・シックスは砂糖を足す事で保存性と味を増強する料理を提案する。
 特にジャムの保存性は推して知るべし、巨大な林檎であればそれだけ砂糖を使い事になるが十分な見返りは生まれるだろう。

「オレとしてはこのでっかいのを、種のところをくりぬいて……砂糖とバターでまるっと焼いて食べたいっす」
 想像しただけでじゅるり……っすね!
 そう人懐っこさを感じる良い笑顔で美味しそうに語るのがルイーグ・ソイル。
 オレンジ色の瞳が思い描いた甘い焼き林檎につられ、とろんと潤んでいる程だ。
 その言葉は町長を含め、他の猟兵達にも伝わり食欲を刺激するだろう。
 それにこれだけ大きな林檎を焼き林檎にすれば、それは見栄えのする出来になるに違いない!

「そうなるとお砂糖が一杯いるよね? それならわたしが力を貸せるよ」
 白い美しい手をぽんと合わせる少女が一人。
 銀髪を揺らし、引き込まれるような青い瞳で話し合いに参加する皆を見つめる少女こそレイチェル・ケイトリン。
 人形が念動力を持ってヤドリガミとなった存在である。
 レイチェルは十八番の念動力を使い、道を整備する事を提案するのだ。
 町長にとっても渡りに船、この提案を受け入れるのである。

「これだけ大きいと、食用以外にもハロウィンのカボチャの様な事も出来そうじゃな。」
 更に違う視点から町の活性を提案する少女……に見える女性が一人。
 艶やかな黒髪に幼い顔立ち、しかし立ち居振る舞いは実に大人びた御手洗・花子である。
 花子は折角の大きさの林檎を用いた祭を提案する、所謂ジャック・オ・ランタンのように掘りぬいたり、表面を飾り彫りする事で芸術性を前面に押し出しても良いと告げる。

「なるほど、皆さんのお話を聞く限り。 これは一大事業になりそうですな」
 まさに林檎祭ですな、と大きな笑い声をあげながら嬉しそうな表情で頷く町長さん。
 キミたちの提案はロレースに新たな風を吹き込む事になりそうだ!

●林檎を手にした猟兵達。
「う~ん……美味しいけど、さっぱりしすぎ……なのかな?」
「ふむ、子供には受けにくいのかもしれないな」
 保管されていた幾つかの巨大林檎を絞り、新鮮なリンゴジュースの試飲をするのはエルーゼとキョウ。
 前情報通り酸味が自己主張するジュースに二人は意見を出し合った。
 後味はさっぱりと、大人であれば朝食時に飲むと目が覚めそうだと二人の意見はあっている。
 問題はジュースとしてみると、爽やかすぎるのではないか? という問題なのだ。

「砂糖だけではなく、蜂蜜はどうだろうか?」
「うん、これは飲みやすかな?」
 二人は話し合った結果、林檎ジュースとして売り出す場合砂糖の加えて隠し味として蜂蜜を少し加える事で林檎の風味を活かしつつ甘さを追加できる比率を発見したのである!
 勿論砂糖と蜂蜜の分価格は高くなるが、この甘味は特に子供に人気になるだろう! 更に砂糖などを追加しない大人の朝食向け林檎ジュースも販売すれば良し!
 温泉町に新たな名物が出来上がる事は間違いない!

「ふむ、良い出来では無いだろうか」
「良いっす! 最高に良い匂いっすよ!」
 こちらは調理班のトリガーとルイーグの二人だ。
 即席で大型のオーブンを仮設した二人は巨大林檎を使って試しに焼いてみたのだ。
 溢れる果汁と焼いた林檎の良い香りが鼻腔をくすぐる、ダイナミックな料理に町の人々も興味津々。
 特に子供たちは最前列で二人が作り上げた料理を見守っていたのである。

「では試食と行くか」
「了解っす!」
 こうして二人が作り上げた料理は振舞われた、甘い甘い林檎料理は特に子供たちに大人気である!
 巨大焼き林檎に群がると笑顔を浮かべて楽しそうに食べている、そうこれだけ大きな林檎なのだ見ているだけで楽しめるエンターテイメント性を秘めているのだ。
 そんな子供が笑顔を浮かべる中で主婦の皆さんが喜んだのが林檎のジャムだ。
 ジャムなので甘い事は甘いが、巨大林檎特有の酸味がくどさを中和しているせいであろう。
 後味がさっぱりとしており、ブレッドにぴったりだと満場一致の意見を述べる。
 また、後味の爽やかさは肉料理にあうかもしれないと好意的に迎え入れてくれたのであった、新たな特産品誕生の瞬間である。

「ふむ、そこだな」
「ぴよー!!」
「わ、わかりましたわ!」
 こちらは醸造の仕方のレクチャーをしているタマと相棒のタイラント。
 町人の中から鋭い舌と鼻を持つ女性を見つけ出し、本人の希望もありシードル及びアップル・ブランデーの作り方を教えているのだ。

「大事なのは酒樽、そして温度である」
「ぴよぴー!」
「なるほど……さすが先生ですわ!」
 酒樽の重要さをレクチャー、ブランデーの香りは樽で決まると言って良いだろう。
 樽の保管方法、樽の選別、様々な要因によって香り、味、色合いが変化する事を告げる。
 たまの言葉に何度も真剣な顔つきで頷く現地女性、スポンジが水を吸うようにたまの知識を受け入れていく。
 その様子にたまは林檎酒が名物になる事を確信するのであった。
 さぁ、後は樹上に居座ったオブリビオンを撃退すれば完璧だ!

●林檎祭への道。
「えい! 次は……こっちであっていますか?」
「はい、これだけでかなりの短縮になります」
 温泉町ロレースから続く道、隣の町へと続く荒れた道。
 荒野を移動するんのは難しく大変だ、その旅程を知っている商人はなかなか開拓町には近寄れない。
 最近のロレースには温泉があるので行きかう人々は増えている、それでも平原等と比べると移動に負担がかかるのだ。
 そう、これまでは……レイチェルが思い描く大きな手、巨大な念動力によって道は平らに作り替えられていく!

「あ……大きな岩が埋まっているので取り出します! 気を付けてください」
「え、は、はい!!」
 レイチェルの言葉に付きそいの行商人は慌てて返事すると距離を取る、それから程なくしてレイチェルは静かに集中すると見えない大きな手で目の前に埋まった壁にも見える岩の全てを探っていく。
 そして大きさの全てを感じ取った異物を、ゆっくりと念動力で持ち上げる……それはレイチェルの宣言通り大きな岩……一瞬山と見間違う程の大きな岩だ。
 あまりにも大きな壁が無くなった事実に行商人は大きく口を開き言葉を失う。
 迂回するしか無いと思われた岩の排除に、ロレースと隣町を繋ぐ新たな道の快適性は数段上がった事になる。
 これで流通も良くなるであろう!

「うむ、彫り甲斐があるのう!」
 自分の背の丈を超える巨大林檎を前に、花子はふんすと可愛らしい外見に似合った意気揚々。
 提案した巨大林檎を使った特産品、その中でリンゴを使ったランタンを作る事にしたのである。
 手伝いに町の子供たちも名乗りを上げ、大きな林檎を相手に芸術と娯楽を合わせた戦いが始まった!

「これをこうして……こうじゃ! うむ! 完成じゃ!」
「やったー!!」
 花子の仕上げと共に大きな林檎は大きなジャック・オ・ランタンへと生まれ変わる。
 その出来は子供たちと作り上げたからであろう、お世辞にも芸術作品とは言い難い。
 しかしその林檎ランタンは優しい笑みと灯りを浮かべ、町の子供たちを見守っているのだ。
 恐怖ではなく優しさを持った林檎ランタンの出来に花子は頷くと、この大きなランタンや様々な物が彫られた林檎が並ぶさまを思い浮かべる。
 それはきっと盛り上がるお祭りになるに違いない、自然と笑みが溢れ決意を新たに町からも望める大樹をみやる。
 先に巨大樹に挑んだ先発隊に追いつき、居座ったオブリビオンを撃破すると!

●目指せ樹上!
「では、行くとするのだな!」
「全力ダッシュで行くっすよ!」
「ぴよ!」
 相棒であるタイラントに騎乗したたまが胸を張って巨大樹に絡みつく螺旋の樹を駆ける、ルイーグも人狼ならではの脚力を活かして走るのだ!
 タタタタ! と軽快に走る二人の耳にゴロゴロと何かが転がってくる音が聞こえてきた。
 たまとルイーグはお互いに視線を交わらせ、頷くと更に加速する!
 勿論転がってきたのは巨大な林檎、巻き込まれば下まで連れて行かれる事間違いなしの障害物。
 そんな果実を前にして二人は思い切り大地を踏み切った!

「飛ぶのだ相棒!」
「ぴよっ!」
「とりゃああああ!!」
 二人は転がる林檎を真正面から飛び越える!
 かなり大きな林檎であるが、たまとタイラントた達は空中を何度も蹴り上げ飛翔!
 楽々と飛び越えたのだ、大してルイーグは転がる林檎を足場として蹴り飛ばしながら飛び越えた。
 そんな二人の着地際を狙いクロスボウの矢が放たれる!
 しかし、二人はまるで分っていたかのように飛来する矢をルイーグは掴み、たまは相棒のタイラントが啄み完全に止めるのだった。

「楽勝っすね!」
「ぴよ!」
「野生の勘と先発部隊のおかげであるな」
 ルイーグとたま達は再び樹道を駆け上がる、樹上に向かい順調に。

「後は上まで登ればいいのね」
「骨が折れるな」
 こちらはエルーゼとトリガーの二人組、樹道を駆けるトリガーと彼に寄り添うように翼を羽搏かせ飛翔するのがエルーゼだ。
 エルーゼはゲンドゥルと呼ばれる二本一組の柄を手に、トリガーは漆黒の太刀、陰狼と黄金の太刀、昂龍の二刀を手に風の如く樹道を走る。

「む、来たな」
「――っ! 撃ってきたよ!」
 トリガーは尖らせた神経と第六感により迫りくる巨大果実を察知する、その事を相棒であるエルーゼに告げた瞬間、空を翔けるエルーゼはこちらに向かって飛来する麻痺矢を察知したのである。
 転がる巨大林檎とクロスボウによる狙撃のコンボだ、しかし二人に対しては効果は無いに等しい。
 一閃――エルーゼはゲンドゥルに風の魔力を纏わせると柄を合わせ一本の双刃とし、幾重もの疾風を生み出す放たれた矢を破壊する。
 双閃――トリガーは黒と金の太刀を振るい、転がる巨大果実を微塵に刻み砕く、勿論果汁で身を汚すような無様な剣術では無い。

「うん、もう逃げられてるわね」
「暗殺者か、少し面倒だな」
 エルーゼが矢を放ったであろう場所に向かって風の刃を撃ち込む、しかし既にオブリビオンの姿はそこに無くはらはらと大きな葉が散るだけであった。
 トリガーはエルーゼの言葉に静かに頷き、再び巨大樹を駆け上がる。
 迫る果実と暗器の群れを切り裂き、避け、洞で待つ。
 二人は無傷で樹上へと迫る、洞で先発隊が発見したあるモノについて簡単に話をしながら。

「それではわしたちも向かうかのう!」
「はい、頑張りましょうね」
 とことこと花子とレイチェルの二人はペース配分を気にしながら長い樹道を登り始める、足場は悪くないがやはり集中しながらだとリスクを減らすべきだと判断したのだ。
 その甲斐あって樹上よりの暗殺者の動きをいち早く察知し、その全てを事前に知る事が出来る。
 つまり、不意打ちを完全に防いだと同義なのだ。

「連続で林檎が転がってきます、念動力で防ぎます」
「うむ! ではわしは追跡者を放とうかのう」
 感知範囲を広げていたレイチェルが転がりながら迫る巨大林檎を察知、すぐさま花子に伝えると念動力をまとめ上げ刃に作り替える。
 それに合わせ花子も意識を集中、転がり込んでくる林檎の様子を探るために影の追跡者を放つのだ。
 完全に不意打ちを防いだ二人は真正面から迫る二個の巨大林檎を安全に処理していく。

「転がしておるだけじゃ、つまり方向を変えれば……ほれ、この通りじゃ!」
「念の刃で真っ二つです!」
 転がる巨大林檎を前に、花子は衝撃波を進行方向に放つ。
 その衝撃によって林檎はぽんと飛び上がり、そのまま勢いに乗り樹道を曲がり切れずに自然落下していくのだ。
 一つ目の果実は無力化した、しかしその背後にはもう一つの林檎が……だが、それも分かっていれば何の問題にもならないと何度も告げよう!
 本来は不意を打つはずであった林檎は、レイチェルが作り出した先ッ矩ソードにより真っ二つに切り裂かれる。
 まさしく一刀両断の技の冴えで障害である果実を乗り越えたのだ。

「――っ! 防ぎます!」
「む、あっちからかのう……追跡者よ!」
 二人が無事に林檎を防ぎ、歩み始めた直後……おそらく気の緩みを狙っての狙撃であろう。
 その矢を念動力の壁で防ぐレイチェル、すぐさま影の追跡者を射撃されたポイントに潜ませる。
 こうして二人は後ろから来る猟兵達のために、オブリビオンの狙撃ポイントを潰していくのだ。
 二人はお互いにうなずき合うと、再び歩を進める……安全に、確実に樹上に辿り着く様に。

「来るぞアイギス!」
「閣下には矢の一本も当てさせはしない!」
 双大楯の女騎士と共に巨大樹を駆け上がるのは黒髪の騎士にして伯爵、キョウ。
 その手に聖剣を構え、迫る巨大林檎を迎え撃つのだ。
 そんなキョウに迫る矢を巨大な盾で防ぐのが腹心の騎士アイギス、二人は迫る障害を確実に防いでいく。

「ちょっとした攻城戦のようなものだ、恐るるに足りん」
「ふぅ……はい、閣下!」
 二人は現在ある洞で一息ついている、先に巨大樹に出発したチームによりこの洞が敵の死角になっていると記されていたからである。
 猟兵であり騎士団長であるキョウはこの配置から敵の死角になるポイントを割り出し、重装備であるアイギスを休ませながら侵攻ルートを脳内に叩き込んでいた。
 転がる林檎も無限ではない、相手が望む場所、望む地形に合わせて転がしてくる……で、あれば暗殺者の思考は読み取れるのだ。

「では行くぞアイギス、私に合わせるのだ」
「イエス、マイロード!」
 荒かった息が収まり、気力も補充したアイギスを確認したキョウは再び樹道を駆けだした。
 敵の狙いは分かる、であればそれを読み切り指示するだけで……勝利だ!
 この後、キョウはクロスボウが襲い来るであろうポイントを先読みしアイギスに防がせ、迫る巨大果実も自らの聖剣にて打ち破り無事に樹上へとたどり着くのであった。

●巨大な樹で新しく見つけたモノ。
 時は少し巻き戻り、町の人達に林檎の活用方法を教える猟兵と分かれた先発隊こと巨大樹調査組に視点を移す。
 メンバーは四人、小さな体に元気が一杯! 蜂蜜が大好きな可愛らしい妖精の国のお姫様、ティエル・ティエリエル。
 悪の組織「デスペア」の女性幹部の一人、情報戦を得意とする悪の怪人! という設定のバーチャルキャラクター、大河・回。
 漆黒の髪に藍の瞳が美しい少女だが実は流体の如き軟体に改造された強化人間である、ミリア・プレスティール。
 さらさら金髪に綺麗な碧眼の少女! ミニスカ和服が似合う林檎が大好きな最近JCデビューした羅刹、清川・シャルの四名である。

「リンゴ、リンゴか~。 何がいいかなー」
 ティエルはふわふわと妖精らしく飛びながら、大きな林檎の使い道を考える。
 好奇心旺盛なティエルであるが、勿論オブリビオンの妨害には敏感に反応出来るように神経を研ぎ澄ましているのだ。

「絡みつく樹の道か……徒歩は辛いが、しがみついて木登りするよりマシか」
 ふぅ、と小さく溜息をつきながら一歩一歩確実に樹道を登るのは回、時折樹皮などを採取しながら情報を集めて歩く。
 特に迷惑なオブリビオンが射撃をしにくい死角となる位置を確認するとそこに印を刻んでいくのも忘れない。

「高さがありますから……え、林檎に注意? わかりました」
 同じく徒歩で樹道を歩くミリアは黒髪をかき上げると天を仰ぐ、まだまだ続く道のりにくらりとしそうになるも、両手に嵌めたミトンさんにハンドジェスチャーで注意を促される。
 その後もごもごとジェスチャーを続けるミトンさんと話ながら、転がる林檎は頑張って止めよう! と心に決めるのであった。

「りんごは良いものですよねー私大好きなんです……けど……ちょっと大きすぎません?」
 現在先頭を歩くシャルは勿体ないですけど……と思いながらも転がってきた林檎に愛用のグレランであるぐーちゃんΩで素早く迎撃!
 荒野の用心棒も真っ青の早撃ちでリンゴを破壊するのだ。

「ふむ、ここは少し傾斜が外部に向かっているのか」
「おおーそれじゃ注意を書いておくね☆」
 歩きながら樹道の様子を確認していた回はふと林檎が外に飛び出していきやすいカーブを発見する、後からやってくる仲間のために有利な地形に目星を付ける。
 特に転がる林檎が曲がりにくい場所は的確に発見、その前後の巨大樹の幹にティエルは鋭利なレイピアの先でマークを刻むのだ。
 そうすれば登る際にも、下る際にも注意するようになり事故が起きにくくなる。
 林檎に至っては外へコースアウトさせやすくなるのだから、かなり重要な印となるであろう。

「わわわ!? また飛んできました!?」
「んもー! しつこいですね! えいやっ!」
 勿論オブリビオンも指をくわえてみているだけでは無い、威嚇射撃は早々に諦め、命を取るための狙撃を何度も射かけてくるのだ。
 最も猟兵が四人も揃えば隙を見つける事は難しく、今回の場合はミリアが発見し素早くシャルがぐーちゃんΩで撃ち落とす。
 一人で歩けばこう簡単に迎撃は出来無いが、四人も揃えば城塞に近い防御力を誇っているのだ!

「あっちだよね? ん、んー……らぁ――――」
 狙撃してきた方角に向かい、シャルは“amanecer”と呼ばれる球体型のスピーカーとウーハー群を召喚。
 戦意を奪う催眠音波で姿を隠すオブリビオンへと聴覚攻撃を行ったのだ。
 音が広がった瞬間、ガサガサ! と何かが移動する気配を感じる……直撃はしなかったがどうやら焦って逃げ出す程の効果はあったようである。
 これでしばらくは安全に樹道を登る事が出来るはずだ。

「よし、では先に進もうか」
「おー☆」
「お、おー……!」
「おーです! でも、ホントにりんごが勿体ないよねー」
 回の言葉にティエルとミリア、シャルがそれぞれらしい言葉で応えて樹道を登り始める。
 以降は矢による狙撃の頻度も少なくなり、転がってくる林檎にのみ注意をすればよくなった四人の行程は順調に進むことになる。
 途中で樹道が細くなった部分や、張り付けばそのまま林檎を避けれそうな場所等、自分達にとって有利不利な地形を全て記しながら登っていく。
 そんな四人についにオブリビオンが反撃を繰り出したのだ!

「これは……連続だと!?」
「ええ!? あ、本当だ! 3個来てる!」
「えええ!? ど、どうしましょう!?」
「うわぁ……流石に3個連続はぐーちゃんで出来るけど、安全に破壊は難しいかも」
 今までと違う轟音に近い巨大林檎の転がる音に四人はすぐさま反応、空を飛ぶティエルが少し先行し転がる林檎の数を確認し報告する。
 ミリアは慌てながらもミトンさんに諭され、万が一は自慢の怪力で止めようと決意する、シャルはぐーちゃんΩで林檎を吹き飛ばすことを考えるも、火力過多による樹道の崩壊の可能性に思い当たり取りやめる。
 その合間にも猛スピードで転がり落ちる林檎三連星、対応策は……存在した。

「戦闘員達よ! 全力疾走開始だ!」
「みんな! もう少し先に洞があるよ!!」
 ティエルが避難可能な洞を発見、場所的に林檎を回避できるかギリギリ……しかし四人は全力で樹道を駆け上がりだす!
 その間に回は多数の戦闘員を前方に召喚、スタミナ無視の全力疾走で転がる林檎三兄弟に突撃させるのだ。
 回から見ても退避が間に合うかは微妙なライン……で、あるならば林檎の速度を遅くしてやれば良いだけだ!
 そしてあわよくば林檎を一つでも外へ落とす……!
 戦闘員達は高らかに叫ぶとスクラムを組んで全力で疾走――陸上選手もかくやという速度で転がる林檎に突撃するのだ!

「ああ!? 戦闘員さんが!?」
「ダメだったか! だが、一定の成果はあった! よくやったぞ!」
 いいぃぃぃぃぃ……戦闘員達のどや声ボイスが奈落に響きながら落ちていく、心配する様に叫んでくれたミリアにサムズアップし消えていく姿は郷愁を誘うものがあった。
 だが彼らはやり遂げたのだ! 転がる林檎を一つ道連れにしたのだから……更に衝突の衝撃で残りに二個も勢いを失いつつある洞への避難も二人は確実に間に合いそうだ。
 そう判断したミリアは両手のミトンさんと話し合い、林檎に相対するために先頭に踊り出た!

「ここは私が止めます! 皆さんは洞の中に!!」
 高らかに宣言し、力強く両手を前に突き出す!
 両足をしっかりと樹道に設置、やや前傾姿勢にふんばり、力を受け止める姿勢を作るのだ!
 迫る林檎に恐怖を感じる、しかし悪戯好きだが相棒のミトンさんが力を貸してくれる……ミリアは迫る果実を藍の瞳で見据え、真正面から受けとめるのだ!
 ――ドン!! 重く身体の芯に響く重低音が林檎とミリアから奏でられる。
 結果……ピタリと二つの林檎をミリアは受け止めたのだ!
 その間に回とティエルは洞に身体を滑り込ませる、後はシャルが洞に入れば被害は最小限……いや、本当に最小限だろうか?
 ミリアは一つ目の林檎は外に投げ飛ばせるが、二個目の林檎が体勢を崩したミリアを押し潰すだろう。
 そうなればミリアはそのまま林檎に巻き込まれて一番下まで転がり落ちてしまう……そんな結末は面白くないではないか!

「――修羅桜」
 キン! と甲高い音が一寸響く……刹那、ミリアが受け止めた二個の林檎はシャルの操る刃に斬られ、散る桜花と共に舞うように綺麗に切り分けられたのだ。
 舌たる果汁、爽やかな香りが辺りを包む。
 こうして最大の危機は去ったのである!

「あ、ありがとうございます」
「うんうん、気にしないですよ~」
 カチリと修羅桜を鞘に納め、桜色の鞘を差し直すシャル。
 桜刺繍の和服の袖がひらりと舞い、艶やかな雰囲気をシャルに纏わせるのだ。
 そんなシャルに頭を下げるミリア、シャルはその様子をにこりと微笑むと小さな手を振って応えるのだ。
 シャルの繊細な剣技もミリアが林檎をキチンと受け止めたから発揮されたモノ。
 二人のコンビネーションが林檎の罠を破ったのだ。

「それでは少し休憩していこうじゃないか、お誂え向きに林檎もカットしてもらえたしね」
 全員の様子を見ていた回は洞の中に静かに腰を下ろす、次いでシャルとミリア、ティエルもシャルのカットした林檎を一口大に切り直し少しだけ身を休めるのであった。
 爽やかな香りを楽しみ、新鮮な果汁でのどを潤す。
 しかし四人とも美味とは思いつつも酸味の強さだけが気になるのであった。
 料理に使えば更に美味しくなるだろう……とは全員共通の結論である。

「? ん~……ちょっと冒険☆」
 ゆっくりと休憩中な四人であったがティエルが不意に甘い香りを感じ取る。
 それは林檎よりも蜜に近い香り……蜂蜜好きで冒険好きなフェアリーはその香りの正体を確かめるために洞の奥へと繰り出すのだ!
 危ないぞー、と心配する声に大丈夫♪ と答えながら洞の中をふわふわ進んだ……結果、そこで不思議な物を見つけたのだ。
 それは一言でいえば樹液……しかし【圧倒的な甘い香りを放つ樹液】なのだ。
 ティエルはトロリとする蜜を好奇心から一舐めする……その瞬間、妖精姫の口内に上品な蜜の甘味が広がったのだ。
 蜂蜜とは違う、爽やかで上品な甘み……そう【メープルシロップ】のリンゴVer……言わば【アップルシロップ】の発見である。

「み、みんなー!!」
「ど、どうした……ってこれは樹液か? ふむ……これなら作れるな」
 偉大な発見に喜ぶティエルはすぐさま仲間を呼び、甘味の恵みを楽しもうとする。
 トロリとした樹液を見た回はすぐさあピンと何かを閃く、そしてどこからか取り出した薬剤調合セットを応用し、樹液を煮詰め更にトロトロの濃密シロップを作り出す。
 それをカットした林檎に絡めて食べればあら不思議、酸味と上品な甘みが交わり、より一層林檎の風味を際立たせたのである!

「う~ん♪ やっぱり林檎は美味しいね☆」
「はい、とっても美味しかったです♪」
「よーし! それじゃオブリビオンを追い詰めます!」
 りんごは! みんなの! ものです!
 シャルの強い想いを込めた言葉を合図に四人は再び樹道を登る、後に続く猟兵達が楽に昇れるようにしながら。
 林檎とシロップで元気になった四人の進軍を林檎や狙撃では止める事など出来ない!
 さぁ、オブリビオンの居る樹上まであと少しだ!

●報告:特産品候補である【甘い樹液】を発見しました。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『大樹の迷路を突破せよ!』

POW   :    俺が道だ!壁を破壊して進攻する。

SPD   :    トライ&エラー。速さを活かして総当たり作戦。

WIZ   :    己の直感を信じろ!勘の告げる方へ。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●樹上の迷宮。
 樹の道を上り、巨大樹木の葉が生い茂る樹上に到達したキミ達。
 そこは緑の葉と大小の枝が絡まりあう、まるで遺跡のような空間であった。
 枝の道は思いの外しっかりとしており、移動に不自由は存在しない。
 勿論洞もあり、落とし穴や抜け穴に使えるだろう、オブリビオンも利用する可能性がある。
 そんな自然の迷宮で隠密が得意なオブリビオンを探しだし、撃破せねばならない。
 ここで注意する必要がある物を紹介しよう。
 陽に照らされない葉の中に無数に張り巡らされた【クモの巣】だろう、かなり大きな巣であり引っ掛かれば身動き取りにくくなる。
 もう一つ気を付けるとすれば樹道の枝から滲み出る粘液である【樹道粘液】だ、バスケットボール程の大きさのスライムじみた粘液玉は、触れればトリモチのようにくっつく性質がある。
 迂闊に触れればネトネトになって身動きが取れなくなるだろう。

 これら二つに加え壁となり調査の邪魔をする枝や葉、勿論オブリビオンも陰に潜みキミ達を襲うだろう。
 様々な罠もあるが逆に【地形を利用】すればオブリビオンを追い詰める事が可能だろう。
 そして【知識】があれば【新しい特産品候補】が見つかる可能性もある。
 勿論第一は安全にオブリビオンを見つけ出す事だ、【村なら成立する程の広さがある】樹上での調査が始まる!

 なお、一度ロレースの町に戻る事も許可されている、必要な物等があれば降りてみても十分に作戦に参加できることを告げておく。
トリガー・シックス
「想定していたより暗いな」
【暗視】による視界確保と【野生の勘】で奇襲を予測する。
聞いてはいたが、天然の罠がそこら中にあるな。
【地形の利用】でうまく活用させてもらおう。
(この手のフィールドなら、隠れながら狙撃も可能か)
【迷彩】と【目立たない】で周囲に溶け込み、敵に奇襲や狙撃で応戦。
【衝撃波】による【吹き飛ばし】でクモの巣や樹液などに吹き飛ばせれば勝機はあるだろう。
なんにせよ、相手も隠密戦闘のプロならば、読み合いになるだろうから油断は出来んな。

※アドリブ、他の猟兵との絡みOK


エルーゼ・フーシェン
「暗いわね」
【暗視】で視界はなんとかなるけど、奇襲とかは【野生の勘】で何とかするしかないわね。
【地形の利用】でうまく捕まえられればいいけど、やってみましょう。
『ゲンドゥル』を抜いて襲われた時に備えておこう。
飛び道具主体かもしれないけど、上手く接近戦に持ち込めればあとは何とかなるかも。
(トリガーの姿が見えない……何か考えがあるのね)
ここはトリガーに賭けてみよう!
『最後の願望』でリヴェン呼び出しておいて、サイキック能力使うのも手よね。
※アドリブ、他の猟兵との絡みOK



●樹上の戦い
「想定していたより暗いな」
「暗いわね」
 鬱蒼と生い茂る緑の葉は太陽の光を遮り、樹上での視界を非常に確保しにくい状況にしていた。
 そんな大樹の上で二人の猟兵が周囲に気を配っている。
 一人は青い翼を持ち、銀の髪を風に靡かせるキマイラの女戦士エルーゼ・フーシェン。
 もう一人は黒ずくめの傭兵、様々な武器を操る男であるトリガー・シックス。
 二人は足元に広がる木々の調子を確認しながら静かにオブリビオンの気配を探るのだ。

(この手のフィールドなら、隠れながら狙撃も可能か)
 風が揺らす木の葉の音、小動物や鳥の鳴き声……自然溢れる環境が微かな気配を隠している。
 歴戦の傭兵であるトリガーはそれをすぐさま察し、ある思考に辿り着く。
 そして極めて自然に僅かな衣擦れの音ですら世界から消える程に存在感を薄めていくのだ。
 狙いは一つ……カウンタースナイプ。

(トリガーの姿が見えない……何か考えがあるのね)
 エルーゼは気配を消した相方の行動からすぐさま何らかの作戦を察する、ならばその作戦に合わせて自分は動くだけだ。
 ほう、と小さく息を吐き呼吸を整え武器を取り出す。
 それは近接用の武装である“ゲンドゥル”だ、魔力を刃として形成する武器を巧みに使い、障害物である木の葉などを切り裂いて進んでいくのだ。
 大きな音を出さず、しかしまったくの無音ではなく絶妙な手腕で武器を振るう。
 【音を出さないように警戒しながら進んでいると見せる】ように。

「リヴェン……力を貸して」
 自らの行く手を阻む枝を伐採し、慎重に進むエルーゼはぼそりと祈るようにある人物の名前を紡ぐ。
 その名が静かな樹上に響いた瞬間、エルーゼは何か温かいものに包まれたような感覚を得るのだ。
 その感覚の正体はエルーゼを守護すべく現れたもう一人のエルーゼ……いや、エルーゼに瓜二つの女性の霊。
 守護霊リヴェン、トリガーの恋人であった存在であり温かい感覚とはリヴェンの慈愛の心である。
 そんな守護霊と共にエルーゼは進む、相手の狙い通りになるように。

(そろそろポイントのはずだが……)
 トリガーは世界に溶け込みながら静かに息を殺してただ待つ、手には多目的兵装であるイケロスMA。
 その瞬間を逃さぬように、最大限の集中と緊張を維持するのだ。
 まさしく相手との忍耐対決、うかつな動きをした方が……先に隙を見せた方が喉元を食いちぎられる刹那の見切りである。
 木の葉のさざめき、僅かな木の軋む音……そしてエルーゼの障害物を払う音。
 音らしい音が無い世界にて、一瞬の気配のざわめきを感じ取る!
 ――ヒュン! 刹那クロスボウが放たれた音が世界を支配するのだ。

「――っ! そこね!」
 エルーゼに向けて飛来する矢は完璧なタイミング、完璧な角度で突き刺さるはずであった。
 だが双刃の舞姫には届かない!
 僅かな殺気を察知した守護霊がわずかながら感情を発露させた……その結果エルーゼを護る為に身体を包んでいた温かな力場に強張りが生まれたのである。
 エルーゼはその強張りから反射的に狙撃された方向を察知、もはや野生動物の本能的な動きでゲンドゥルを十字に振るったのだ。
 それと同時に乾いた発砲音が響き渡る!

「……っ!!」
「さっすがトリガー! 私も行くわよ!」
「油断するなよ」
 エルーゼでもトリガーでもリヴェンでもない息遣い……それは自然を領域とするオブリビオンのものである。
 そして乾いた音の正体はトリガーの放った狙撃の一撃――カウンタースナイプが成功した瞬間であった。
 すぐさま二人は追撃に移る、狙いは頭上に展開する蜘蛛の巣だ。
 エルーゼは魔力刃を形成し肉薄、トリガーは銃弾を用いオブリビオンを足止めするのだ。
 双刃が踊り巨大な蜘蛛の巣は落下、ネバつく糸にてオブリビオンを捕獲……するはずであった。
 だが流石に樹上を領域とするオブリビオン、間一髪で逃亡する事に成功する。
 しかしその代償は大きかった。

「深追いはするなよ」
「分かってるって! でも、これでここは私達のモノって感じよね?」
 そう、オブリビオンは自分の得意とする狩猟場を追いやられたのである。
 こうして逃げ場を、隠れる場所を奪う事で確実に追い詰めていくのだ。
 樹上領域を奪ったトリガーとエルーゼの二人は守護霊であるリヴェンに心配されながら少しだけ身体を休める。
 オブリビオンを追い詰めるまで後少し……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミリア・プレスティール
『ミトン』に浮遊して先行してもらい安全な道を探します。樹液がある道は迂回して、蜘蛛の巣は樹液のついていない枝で絡めとってもらいます。
『ミトン』は3mまで大きくなれるので大きな枝(もはや丸太?)でも大丈夫でしょう。それをオブリビオンに【投擲】して当たれば、蜘蛛の巣がくっついて動きを止められるはず。
敵と道案内は『ミトン』に任せてミリアは特産品を探しましょう。

さっきの甘い樹液をパンケーキにかけたらおいしそうですね。

※アドリブ、他の方との絡みOK


二天堂・たま
真の姿(ひよこの着ぐるみ)を開放

ここまで登ってきたはいいが、これほど見事な迷宮になっているとは思わなんだ。
途中にメープルシロップならぬアップルシロップが見つかるとは…生命力あふれる大樹だな。
リンゴの実も大きいなら花と蜜も多いんじゃないか?時間をかけて養蜂できれば、リンゴの蜂蜜も特産品になるハズだ。

さて、罠使いであるワタシにとってこの空間の危険は察知しやすい。
野生の勘やジャンプで危険を回避し、オブリビオンの影を見つけたらUC:親指チックの相棒に追跡させよう。
不定期に相棒と居場所を交代して徐々に距離を詰めるのだ。
2人以上いるとしても、追うのは1人。でないと見失いかねないからな。


レイチェル・ケイトリン
「念動力」と「スカイステッパー」をつかってかけまわって、「情報収集」して「地形の利用」ができるようにするね。

もちろん、「目立たない」ように注意して。

全体のことがしりたいけど、特に気にするのはクモの巣と粘液玉の場所。
わたしは念動力をつかってさわらずにうごかせる……だから、「罠使い」とかも活用して敵を追い詰めていくよ。


この樹をいろいろさがせば【新しい特産品候補】ももっとあるんだろうけど、わたしはいまある特産品候補が気になるの。

「クモの糸」ってとっても丈夫だし、樹から出る粘液……「樹脂」って天然のプラスチックだよね。
工夫すればいろんなものを作れそうだから。

ただ、樹をいためないようにしないとね。


御手洗・花子
引き続き影の追跡者にオブリビオンを追わせ、位置を把握する。
『地形の利用』、『情報収集』にて【樹道粘液】や【クモの巣】、そして洞の位置を把握する。

『エージェント秘密道具セット』から爆弾を取り出し、これと【樹道粘液】や【クモの巣】を利用し、オブリビオンが逃げ込みそうな洞に『罠使い』で罠を仕込み、『迷彩』で隠す。(罠洞に入り込んだら、爆弾を混ぜた樹道粘液が落ちてくる罠とか、蜘蛛の糸が切れたら反応して爆発する罠とか)

オブリビオンを見つけたら、爆弾や『衝撃波』で罠に逃げ込むように追い立てる。

「しかし、粘着く粘液か…ゴムの樹液みたいなもんかのぉ?、念のため持ち帰ってみるのじゃ」



●薄暗い木々の中で。
 爽やかな緑の匂いをはらんだ風が頬を撫でる、さわさわと木の葉の揺れ合う音が心を落ち着かせる。
 やや薄暗い事とオブリビオンを探す危険な任務で無ければ一休みしたくなるシチュエーションの中、四人の猟兵は足場となる枝を歩き、障害物をかき分けていた。

「あ、あの悪戯はしないでね……?」
 先頭を行くのは意思を持つ巨大な手袋に浮遊して貰い、危険を払いのけて貰っている少女。
 鴉の濡れ羽色の髪を手櫛で整え、藍色の瞳で周囲を伺うミリア・プレスティールだ。
 相棒でもある手袋ミトンには大き目の枝……いや、丸太に近い物を持ってもらう事で効率よく障害を取り除いている。
 特に枝にて蜘蛛の巣を使い、まるで綿あめを作るかのように絡めとっていく。

「うむ、順調であるな……それにしても生命力あふれる大樹だな。 あんなに甘いシロップまで生み出すとは」
「あ、美味しかったですよね。 きっとパンケーキによく合いますよ」
 ミリアの後に続くのが紳士のような自信に満ち溢れる尊大な言い回しの似合うケットシー。
 キラリと宝石のような緑の瞳が先程味わった甘味を思い出し輝くにゃんここそ、二天堂・たま。
 今回は本当の力の一端をみせる為、ひよこの着ぐるみを着用しての参戦である。
 料理を嗜むたまは大樹から染み出るシロップの味を確かめた事で、大きく成長した木、そして大自然の力について称賛に近い感想を述べる。
 その言葉にミリアは反応し、シロップをパンケーキにかければ美味しいのではないかと感想を述べるのだ。
 ミリアの言葉にたまはすぐさま思考を回転させる、料理人でもあるたまの舌の記憶を呼び起こしふわふわのパンケーキの触感、バターの香り、シロップの甘さを組み立てていく。
 結果、導き出された結論は……。

「うむ、確かに合うだろうな。 個人的にはたっぷりと浸かる位でも問題ないと思うぞ」
「わぁ! それはすごく美味しそうです!」
 シロップとパンケーキ談義を楽しむミリアとたま、二人はまるでピクニックにでも来ているような自然さ振舞っていた。
 そんな二人であるが勿論警戒は怠らない、現に足元に忍び寄るねばつく樹液を華麗に避けるのだ。
 ミリアとたまが避けた樹道粘液であるが、それに興味を示す二人の少女がいた。

「樹から出る粘液……「樹脂」って天然のプラスチックだよね」
 天然樹脂の存在に可能性を感じている少女。
 薄暗い葉の森の中でも美しく輝く銀の髪を揺らし、人を魅了する碧眼の少女人形。
 念動力を得たヤドリガミであるレイチェル・ケイトリン。

「ふむ、樹脂としての性質だけでは無いじゃろう」
 黒髪に黒目、和風美少女然とした古めかしい口調の少女……いや、女性は言葉を紡ぐ。
 凛と鈴の澄んだ声の持ち主こそある存在と融合した人間、御手洗・花子である。
 そして花子の中に存在するあるモノが樹液について視た結果――それは。
 そのまま放っておけば樹脂となるが、長谷川さんが語った特製……“固まる際に水を加えある温度で一定に温める事で弾力性を獲得し性質が変化する”と言うのだ。
 そうなればゴムとしての性質とプラスチックとしての性質を使い分ける事が可能な素材となる。
 主な使い道は工芸品や衣服類だろうか、使い方を確立できればこれほど便利な素材は無いだろう。
 温泉町にとっての新たな特産品となりえる物を発見したレイチェルと花子は樹道粘液を持ち帰るのであった。

「そういえば……蜘蛛の糸は非常に強度が強いよね」
 障害物であるはずの蜘蛛の糸をふと見つめていたレイチェルが何気なく呟いた一言、それに反応した仲間と蜘蛛の糸について簡単に話す事になる。
 蜘蛛の糸は非常に強度が高い素材である、粘つきを失くすことが出来れば鎧やローブ等の冒険に必要な防具に役立つかもしれない。
 普段使いの素材としては耐久性向上が有効なロープ等であろう、強度が高ければ高い程に有効活用できるからだ。
 大樹の与えてくれた恩恵に感謝しつつ、町の人々に様々な報告が出来ることを喜んだ。
 しかしその恩恵を安全に得るためには自然に隠れるオブリビオンを追い詰めなければならない。

「ん、それじゃあ偵察に行きますね」
 トン、と見えない足場を踏み樹上を歩くレイチェル、念動力を使う事で行動可能領域を大幅に広げる事でオブリビオンの行方を調べることにしたのだ。
 念動力の壁と足場を巧みに使い、木の葉を揺らさぬように宙を歩く……わずかな揺らぎを感じ取るように。

「ではこちらも準備するのだな」
「そうじゃな、罠にかけてやるのじゃ」
 たまと花子は周囲を確認し、潜みやすく逃げ込みやすい場所を把握しておく。
 これは自分達がオブリビオンから隠れる為のものではない……隠れさせるための確認なのだ。
 地形の確認を終えたたまと花子はそれぞれに動き出す、たまは小さなひよこを召喚し、周囲に一定距離を開けて二人で周囲の探索に出向く、レイチェルが空をたまが地を……二人の探索によってオブリビオンをあぶりだすために。
 そして花子がする事は一つ、焙り出されだされたオブリビオンの隠れ場所を作り出してやること。
 逃げやすく、隠れやすい場所に導く……居る場所が分かる暗殺者等怖くは無いのだから。
 花子が着目したのは一つの洞、身をひそめるのにちょうど良い深さであり周囲を生い茂った葉で覆われた姿を消しやすい洞である。
 追跡者がこう思うのだ、隠遁者も勿論把握しているであろう絶好のステルスポイント。
 花子は持ち込んだエージェント秘密道具セットから簡易爆弾を取り出し、樹道粘液と混ぜ合わせる事で洞の横側に貼り付ける。
 粘液が接着剤としてだけでなく、樹上にありえる物として抜群のカモフラージュになっているのだ。
 その後も花子はオブリビオンが隠れやすそうな場所を発見しては“わかりやすく罠を設置”する。
 そう、ここに罠があるのだと分かってもらうために。

「さて、これで準備は万端じゃの。 探索組は順調じゃろうか」
 ふぅ、と美しい黒髪を軽く拭うようにして一息を付く花子。
 彼女に出来る事は終わった、後は隠れているオブリビオンを追い立てる探索組の成果を待つだけである。

「あ、そこにも蜘蛛の巣が……はい、お願いします」
 探索組の一人ミリアは相棒のミトンと蜘蛛の巣の回収に勤しんでいる。
 大きな枝の先端には蜘蛛の巣が玉のように絡まり、これに触れればたちまち絡めとられてしまう自然の捕縛棒とかしていた。
 そんな捕縛兵器を作り上げながら周囲を見渡していたミリアであるが、不意に小さな音を耳にする。
 すわオブリビオンか! と身構えるも敵意は感じない……良く聞いてみれば何かの鳴き声では無いか? とミリアは判断したのだ。
 ゆっくりと葉と枝の壁をかき分け、乗り越え辿り着いた先で見たモノ……それは黄金色に輝く卵を大量に温める鳥の姿であった。
 この鳥は標高の高い自然豊かな場所にしか巣をつくらない鳥であり、主な食べ物は果実と温厚な性質の鳥である。
 鷲等に匹敵する大型猛禽に見えるが温厚な鳥の名は【甘味鳥】と呼ばれ、特に【黄金色の殻を持つ卵】は非常に希少な食材となっている。
 この卵で作り上げられた料理はどれも濃厚なうま味を宿し、特に【スイーツ関連に使われると本領を発揮】する卵なのだ。

「これは……もしかして大発見かもしれないです?」
 オブリビオンを探していて、新たな特産品候補を発見したミリアは少し離れた場所で聞こえた戦闘音を察知する。
 そして場所を記憶し一度、所定の場所へとに急ぐのであった。

「妖しいね……」
「うむ、ここだろうな」
 探索に出かけたレイチェルとたまは罠を仕掛けた地点からそれぞれ時計回り・反時計回りに探索を行っていた。
 そんな二人が顔を合わせた地、こちらを伺うように伸びた太い枝に鬱蒼と茂る葉……そしてなによりも幾つもの洞が繋がる迷路のような場所。
 漫然としか感じないが、確かにこの辺りに気配を感じ取る……しかも“観察”する気配だ。
 つまり……二人はついにアタリを引いたのだ。

「それじゃ設置してくるね」
「うむ、では追い立てるとしよう」
 二人は視線を交わし小さく頷くと遂にオブリビオンを追い立てる作戦が動き出す!
 たまは小さな相棒である親指チックと分かれ、周囲の気配を伺いながら突き進む。
 足場の不安定さ等も考慮しながら、思考の隅に展開された地図を参照し、オブリビオンを探し出すように。
 自分から逃げるのか、それともコチラを狩ろうと動くのか……オブリビオンの性質を考慮しながら罠使いらしく罠に嵌める様にひよこの着ぐるみを纏ったケットシーは枝の上を歩くのだ。
 一方レイチェルは念動力を使い、周囲の空間事固めるかのように蜘蛛の巣と樹道粘液の玉を宙に浮かび上がらせる。
 そして道を作り出していくのだ、本命に辿り着けるように細く、険しいギリギリの道を。
 相手は地形を知り尽くしている、ならばその地形を替える事でこちらに有利に働かせるのである。
 もっとも、完全に封殺する形に置くことは難しい……しかし、明らかに罠とみえる安全な道と熟練者であれば突破できる罠の道……であればオブリビオンは後者を選択するだろう。
 そう、未知を選ばせる事はすでに罠となるのである。
 レイチェルはたまの追い立てを確認しながら、素早く蜘蛛の巣と粘液玉を設置した結果……完璧に道を作り出したのだ。

「見つけたぞ!」
 一方たまは自分を狙う気配からオブリビオンの気配を探り、詳しくは分からないがある程度の方向を掴む。
 そうすれば揺さぶり動かすだけ、気配を感じる方向にわざと大げさに揺さぶりの言葉を投げかけるのだ。
 勿論オブリビオンもこちらの言葉に馬鹿正直には反応しない……が、それも折込ずみである。
 弓や暗器で狙い撃つ、場所を変える……どちらにしても心理が動き、わずかな揺らぎが生まれる……ならば相棒の力を借りれば済む問題なのだ。
 わざと問いかけた意味はオブリビオンの意識を一瞬でもたまに集める為、意識の間隙を見つける為……見つける存在はたまが召喚した小さなひよこ。
 五感を共有する小さなスニークミッションの達人はオブリビオンの攻める気配を感じとる!

「ぴよ」
「そこなのだな!」
 刹那、チックとたまの場所が入れ替わる!
 これがたまが召喚したひよこの力の一端、場所の交換である!
 オブリビオンの視界からすれば、ひよこの着ぐるみを身に着けたケットシーが、更に小さなひよこに変化したのだから。
 一瞬の意識の間……照準を合わせる行為……それらは隠密状態の狙撃手にとっては致命的な魔であった。
 背後に迫ったひよこ猫の姿を見たオブリビオンは顔を隠し、すぐさま離脱を図る。
 それは当然の行動である、相手の能力が未知数の状態で真正面から戦う程このオブリビオンは間抜けでは無い。
 最も、その思考が読まれているとは思わなかっただろうが。

「逃がしません!」
「――ッ!」
 たまに追われ外套を深く被った存在が飛び出してくる、それを阻むのはレイチェルだ。
 念動力を用い、分かりやすく蜘蛛の巣を進行上に投下したのである。
 勿論これは簡単に躱される、それが狙いなのだから……。
 蜘蛛の巣を回避した先、そこには粘液玉が設置され触れた瞬間に絡みつき動きを封じる罠。
 刹那の判断で右足ブーツを脱ぎ、罠を回避するオブリビオン。
 それを確認したレイチェルは再び蜘蛛の巣を投下していく、勿論たまとひよこも別方向から迫る事でオブリビオンのルート選択を絞らせるのだ。
 そして二人の用意したルート……つまり花子とミリアの待つ場所へと。

「き、来ました! ミトン!」
 作戦通り、発見の合図からやや離れた場所……ミトンによって葉をかき分け移動しやすくなった道に外套を纏った存在が飛び出してきたのだ。
 それを発見したミリアは相棒であるミトンに告げる……今まで集めて生きたソレを投げつける時だと!
 ミトンはすぐさまやり投げの要領で大きな枝を投げつける!
 蜘蛛の巣がたっぷりと絡まった丸太のような枝を。
 オブリビオンは突然飛来する大枝を間一髪で回避する、しかしその一撃によって姿を隠す外套を奪われてしまう。
 姿を見た存在であるミリアを始末しなければならない……しかし、現在は追われる身で僅かな時間も失えない。
 そこでオブリビオンがとった手段は一撃だけ威嚇射撃をし、その隙に隠れ体勢を整える――である。

「きゃっ!? ひゃぁぁ!?」
 もっとも逃げ出しやすい方向へと風のように駆けるオブリビオンはすれ違いざまに矢を放つ。
 その矢に気づいたミリアは慌てて回避、その隙をついてオブリビオンは悠々と追手から逃げ切る……はずであった。
 そう、そこが最終的におびき出されるポイントだと知らずに……。
 これにはミリアがギリギリで回避した振りも功を奏す、わざとギリギリに回避する事でオブリビオンに違和感を抱かせなかったのだ。
 もっとも、ギリギリ回避の演出のため悪戯好きのミトンが用意したのは粘液玉……回避した先に用意された粘液に尻餅をついた形になったミリアは全身をべとべとな粘液まみれにしてしまうのであった。

「うぅ……こ、このべとべとはやりすぎだと思います!」
 ミリアの悲しい叫びが聞こえた気がするが視点をオブリビオンに戻そう。
 三人の猟兵の誘導によって追いやられたオブリビオンはすぐさま隠密に適した洞へと身を隠す、そして替えの装備を取り出しブーツと外套を新調。
 後は遣り過ごしつつ、油断した所を射抜いていく……少し焦ったが追手が諦めた瞬間がもっとも油断を晒すとオブリビオンは熟知しているのだ。
 呼吸を整え、思考を落ち着かせる……そこでようやく違和感に気づく……。
 なぜ、ここだけ、罠が無いのか……周囲の洞や隠れ場には罠が存在した。
 相手はココに気づかなかった? そんな都合の良い話があるのか……?
 不意に走る悪寒、同時に鈴を転がすような声が響き渡る。

「これで終いじゃ!」
 それは少女のような小さい身体に大人の心、UDCと身を重ねた花子の声。
 その声と同時に方向を調整した爆発がオブリビオンの居る洞で巻き起こる!
 低く唸るような振動と鼓膜を揺るがす爆音、そして飛び散る粘液。
 確実に捉えた一撃であった……オブリビオンがその暗器を犠牲にしなければ。
 悪寒を感じてから刹那、オブリビオンはまだ隠し持っておきたかった暗器、鉄扇を用い粘液爆弾を回避したのである。
 結果、這う這うの体ではあるが猟兵達から逃れる事が出来た……しかしその代償は大きい。
 自分が自由に動くことのできる領域と暗器を失ってしまったのだから。

「むぅ……残念じゃ、逃してもうたか」
「む、それは想定の範囲内であるな」
「はい、これでこの周辺は確保できましたから」
「うぅ……べとべと取れませんです……」
 こうして四人はオブリビオンの隠れ場所である領域を支配する。
 全ての領域を追われ、身をひそめれなくなったオブリビオンと戦うときが最終決戦であろう。
 四人はわずかながらも降ってわいた安全な時間に身体と精神を休ませるのであった。
 なお、ミリアのべとべと除去にはそれなりに時間がかかった事を記しておこう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

清川・シャル
まずは先程と同じように、Amanecerで戦意喪失を狙った催眠術と、超音波による聴覚攻撃を

「櫻鬼」でホバリングしながら飛行移動を試みます
地形の利用をしながら世界知識、情報収集を
何かあれば第六感と野生の勘が働くはずです

蜘蛛の巣はぐーちゃんΩで吹きとばせいかな…
ねばねばって、大きな葉っぱを被せたら何とかなりません?
色々創意工夫しましょ!

あまりに吹き飛ばし過ぎるのも良くないかな
適度に修羅櫻で斬ったりして剪定というか、空間整えたり?

敵攻撃には見切りカウンターで対応です


ルイーグ・ソイル
相手が見えにくい場所でのバトルは、こっちが不利っすね…!まずは先手を任せてもらうっす!皆はオレから距離を取っててくださいね!

>ユーベルコード【人狼咆哮】を使用、【激しい咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃して、ある程度敵の戦力を落とす作戦に出る

ネバネバトラップには効果が無いっす、進軍は慎重に…武器で【クモの巣】を払いのけながら、【樹道粘液】にはくっつかないように…逆に利用して奴らを捕まえられたらラッキーっすね!
(連携・アドリブ大歓迎です!



●狼鬼合唱。
 陽を遮る緑の屋根、風が吹く度に揺れる木の葉がさわさわと癒しのメロディーを奏でる。
 高層ビルの屋上のような巨大樹の上で二人の猟兵は、シンと静まる世界に耳を澄ましていた。
 一人は木の葉の影の中でも輝く金色の髪、ちょこんと飛び出た鬼の角、空のような碧眼。
 可愛らしい和と桜をモチーフにした衣装の羅刹の少女、清川・シャル。
 もう一人は灰色の髪を短く切り、柑橘系果実を思わせるオレンジ色の瞳で周囲を探る。
 空に近い大樹の上だけに、気温が下がっているからだろう、何処か寒そうに身体を抱き締める仕草で狼耳をピクリと震わせるのが寒がりな人狼の青年、ルイーグ・ソイルである。

「それじゃオレは西側から始めるっす!」
「はーい! 私は東からですね!」
 二人はこの視界の悪い空間でいかにオブリビオンを追いたてるかを相談した結果……ある方法に辿り着いたのである。
 その方法とは、音を使ったもの。
 木の葉や枝等が複雑怪奇に絡み合い、迷宮のように育った樹上。
 しかし見えない波である音は物に当たって効果減衰すれど、身を隠すオブリビオンにはたまらない。
 暗殺者として身を潜め、耳と感覚を研ぎ澄ます者にとって、衝撃波や催眠効果を孕む音波は効果覿面なのだから。

「いくっすよ! 先手必勝っす!」
 ルイーグは所定の位置に辿り着くと天を見上げ大きく口を開き、肺いっぱいに空気を吸い込み……解き放った!
 轟と暴風雨のように放たれた音は細い枝をメキリと折り、木の葉を吹き飛ばし、太い枝にさえミシミシと重い衝撃を与えるのだ。
 まさしく無差別の見えざる暴力、寒がり人狼の生み出した破壊のエネルギーは球状に広がり周囲の動植物を揺さぶる……。
 そんな咆哮が静寂に溶けていき……再び葉の擦れる音色が響きだしたところでルイーグははぁ、と大きく一息つくのだ。

「ん~外れっすか、次にいくっすね!」
 首をコキリと鳴らし、周囲の様子を探るルイーグ。
 舞い散る葉以外に動きは無し、敵意の発露も感じ取れない……で、あるならば樹には悪い事をしたが
 この周囲に潜んでいない事は確定した。
 それならば予定通りに動くだけだ、いつか潜む事すら難しいと思い知らせる為に。
 こうしてルイーグは進んでいく、邪魔をする木々を払いながら慎重に。

「到着ですね! こほん、それじゃ用意をして……できました!」
 一方こちらはごそごそと何かの用意を終わらせたシャル、ルイーグの咆哮と違い羅刹である彼女が音を使う……どのような方法か、それは……。
 先程、この巨大樹を駆け上がる際に使用した物。
 “Amanecer”と呼ばれる召喚型のインカム&スピーカー&アンプである!
 カチリと召喚したスピーカー等を使える様にセットしたシャルは喉の調子を確かめると、ゆっくりと息を吸い込み……ゆっくりと空に向かって響かせる!
 澄んだソプラノボイスが葉緑を踊らせ、世界に浸透する。
 その声を聴いた動物たちはうっとりとした表情のまま動きを止め、そのまま横になり始めるのだ。
 それは催眠音波を含んだ声、聞くものの精神を蝕む魔性の声。

「~~~~~~~~~~♪」
 ソプラノは更に高く、人間の可聴域を超えて超振動へと変化。
 ピシシ……!! と細い枝に罅をわたらせ、脆くなった葉を細かく砕いていく。
 そんなシャルの声はしばらくの間続き……終わった瞬間に微細に砕けた破片が風に乗ってふわりと舞った。
 ふぅ、と小さく息を吐き呼吸を整えるとゆっくりと目を閉じて周囲の気配を探る。
 結果はシロ、シャルの声の届く範囲には潜んでいなかったのだ。
 それを確認したシャルは再び軽快なステップを踏んで枝を蹴り、宙へと踊るように舞い上がる。
 空間を利用した移動を重ね、次第に二人の猟兵は近づくのだ。
 それはオブリビオンを徐々に追い詰めているという事実であり、接敵が近い証である。

「――――――――――!!」
「~~~~~~~~~~~♪」
 そしてついに二人の声が重なり響く、衝撃を伴う咆哮と超振動を伴う歌。
 振動が大樹を揺さぶり、音と言う防御困難な攻撃が樹上に広がった……瞬間、ついに矢がシャルに向かって放たれたのだ!
 風切り音を纏い飛翔する矢、歌うシャルは無防備に受ける……わけは無い!
 目を閉じ、歌を響かせたまま修羅櫻と呼ばれる二本の刀を交差、×字を描く軌道で放たれた矢を打ち払うのだ。
 遂にオブリビオンと接敵したシャルはすぐさま歌を止め、迎撃態勢に。
 ルイーグは合掌が停止した事に気づくと、慌てて合流を目指す。

「発見です! 覚悟ー!」
 シャルは矢を放つオブリビオンの気配を感じ取るとタンタン! と軽快に空中を蹴り一気に迫るのだ。
 その機動力は可愛らしい足元、ピンク色の鼻緒が視線を集める厚底高下駄である櫻鬼による魔力を用いたジェット機動。
 複雑怪奇に絡み合う枝を蹴り、隠密に長けたオブリビオンへと肉薄せんとする。

「追いついたっす! 挟み撃ちっすよ!」
「――ッ!? 貴方達が静かに、しないから……っ!!」
 ルイーグも持ち前の人狼の機動力を用い、低姿勢でオブリビオンへと迫る。
 オブリビオンも姿を隠したまま必死に応戦、掠るだけで効力のある矢を弾幕のように放ちながらまるで瞬間移動のように移動を繰り返す。
 しかし猟兵二人に挟まれると簡単には離脱できない、その間にもシャルは様々な武器を用い障害物を吹き飛ばしながらオブリビオンを攻め立てるのだ。
 邪魔な蜘蛛の巣はぐーちゃんΩの爆風を使い、足元にあるネバつく樹液には足場となる物をぶつけ粘着力を奪う。
 ルイーグは逆に障害物を利用する立ち回りで襲い掛かる、特にオブリビオンが着地した枝を蹴り破り、足元にある樹道粘液へと落とした時は捕獲完了かと思われた。
 しかしオブリビオンもさすがのもの、二人の猛攻を何度も防ぐ。
 その防御方法は【周囲にある折れた枝や散った葉、粘液や蜘蛛の巣、そして打ち出した矢等の無機物を棘が映えた蔦に変化】させたのである。
 突然蔦に襲われるのだから二人にしたら堪ったものではない、入り組んだ地形もありオブリビオンはギリギリの所で逃亡するのであった。

「あちゃぁ……逃げられちゃった?」
「そうっすね、残念っす!」
 シャルとルイーグは遠ざかる気配に逃亡を許した事を歯噛みする。
 しかし自分達二人だけがあのオブリビオンを追っているわけではい……他の猟兵も追っているのだ。
 後は追い詰めれば雪辱戦が可能になるという事であり。
 【一度見た技に対するアドバンテージは非常に大きい】無機物から現れる蔦や花弁による奇襲を知っているのだから。
 決戦で大きなアドバンテージを得た二人はひと時の休息を得る。
 こうしてルイーグとシャルの二人はオブリビオンから領域を奪取、更に追い詰める事に成功するのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ティエル・ティエリエル
「わー、すごーい!ひろーい!」
樹上の広さにテンションアップ!
オブリビオンを退治した後ならここに隠れ家的なものを作れないかなって画策するよ!

【樹道粘液】に近づいてクンクンと匂いを嗅いでみたり、レイピアで突っついてみたりする余♪
ベタベタしてるのにピンと閃いて【フェアリーランド】を使って壺の中に一杯溜め込んでいくね!
溜め込んだ【樹道粘液】をオブリビオンが飛び込んで隠れそうな洞(【第六感】で決めちゃうよ☆)に移して、【地形の利用】で即席の罠にしちゃえ~♪

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


キョウ・ヴァゼラード
上はこんなに広いのか…収穫や加工をここで行えば効率的な生産拠点にもなりそうだが…
いやいや、余念がありすぎるな、今はまだ戦場だ。

●敵を追い詰める
クモの巣や粘液などの自然の罠と地形を駆使して敵の逃げ道を誘導し、追い込んでいく。
「戦略家の腕の見せ所だな」
『身の守りはお任せください、閣下』
地形を見ながら【戦術知識】で敵を追い込む道筋と策を考え、必要な部分をわざと残しながらクモの巣を聖剣で【薙ぎ払い】道を作る。
「隠密、逃走、敵が選ぶ道筋の選択肢を先に限定してしまえば捕捉は難しくない」
思考中、作業中の妨害はアイギスの【盾受け】で防がせ、私は道と敵を追い詰める策の構築に勤しもう。

●アドリブ歓迎


大河・回
樹木にこんな空間ができるとは……植物というのも侮れないものだな。もしくは、アックス&ウィザーズ特有なのかもしれないが。

枝や葉がうっとうしいな
サーベルドッグを召喚し枝や葉を切り払わせつつ先行させよう
犬の怪人だから鼻が利くし索敵も可能だ
クモの巣や樹液に引っ掛かっても一度消して再召喚すれば問題ない
無論、私自身も注意を払って進むぞ
オブリビオンの攻撃は自動展開されるバリアで防ぎ攻撃の来た方向へ進んでいく
オブリビオン捜索を優先するが特産品になりそうな物があったらサーベルドッグに周囲を見張らせて調査をしよう

※アドリブ、絡み歓迎



●大きな樹の上は新しい開拓地?
「わー、すごーい! ひろーい!」
 巨大な樹の上、鬱蒼と葉が茂り枝が自由に伸び放題な空間に小さな妖精のプリンセスはノリのノったテンションである。
 巨大林檎がなっている木々、洞が幾つも存在し迷路のような木々、まさしく天空の森といった様相に好奇心旺盛な姿を見せるのがティエル・ティエリエル。
 キラキラと青い瞳を輝かせて周囲を小さな翅を羽搏かせ見て回っているのだ。

「ここ隠れ家とか秘密基地とか作れそうだよね☆」
「うむ、ここまで広ければ効率的な生産拠点になるであろうな」
 ふむ、と頷き周囲の様子を伺う黒髪の男。
 興味深げに足場になる枝や絡み合う枝、屋根のように広がる葉……上手くこの環境を使えば果実や木材を採れる村になりそうだと伯爵ならではの勘が告げている。
 そんな彼が伯爵位を持ち自ら騎士団長を務める、キョウ・ヴァゼラードだ。
 ティエルとキョウは樹上広場で生活が出来るか、生活用水をどうするか、ツリーハウスがやっぱり似合うのでは無いか? いやいや、洞を利用した住居も秘密基地感があって素晴らしい! と意見を交換し合っている。

「あの、閣下……まずは追い詰める方法を確立しないと」
「ふぅ、まぁ気持ちはわからんではないけどね。 ここまで大きく育つとは誰も思わなかったから」
 キョウを閣下と呼ぶのは彼の部下である女騎士、アイギス。
 そして小さく溜息をつきながら周囲の様子を探る白髪の美少女こそ、悪の組織“デスペア”の幹部にして自身も怪人……であるという設定を背負ったバーチャルキャラクターの大河・回だ。
 自然豊かな場所の特徴である自然の匂いを孕む風に白髪と一房の黒髪を揺らした回は、確かにこの樹上に人が住み始めれば様々な利点もあると計算していた。
 なによりもこの樹の高さが良い、これだけ高ければ魔獣・山賊・軍隊等の侵入が非常に難しくなる。
 後は生活するための水源さえ確保できれば、ロレースの人々の安全な避難場所になるかもしれない。

「しかしここまで広大で複雑な地形だと難航しそうだよ」
「だよねー! なんとか見つけて捕まえないと☆」
「まずは場所を整えてみる必要があるかもしれんな」
 回、ティエル、キョウの三人は周囲に豊か過ぎる自然を見渡し作戦を練り始めた。
 相手は自然を友とするオブリビオン、自然の中で戦う事は不利になる……で、あるならば自分達に有利な場を作り出せば良いのだ。
 相手が逃げ隠れる場所を確保しつつ……だ。

「戦略家の腕の見せ所だな」
「身の守りはお任せください、閣下」
 アイギスに護衛をさせキョウは邪魔になる枝を斬り飛ばす、手に持った聖剣には魔力が宿りまるで抵抗を感じぬ程の切れ味を発揮するのだ。
 無駄な部分を排除し、視界を確保するこうする事でオブリビオンの嫌う場所を作っていくのだ。
 勿論それを嫌う存在の妨害はあるわけで……。

「――閣下!!」
「任せたぞアイギス!」
 飛来する矢を両の手で構える双盾で防ぐアイギス、彼女を信頼する故に自ら防ぐような真似はしない。
 一刻も早くオブリビオンの隠れる場所を少なくし、追い立てて行くことが先決なのだから。
 大きな盾にてキョウに向けて放たれた矢を受け止める、その影に隠れた矢も油断なく。
 まさに暗殺者、狙撃者らしい陰湿な攻撃……それを完全に防いだアイギスを背を任しキョウは己の脳内に浮かび上がる地図通りに道を作り上げるのだ。

「閣下、離れたようです」
「ふむ……やはり性質としては暗殺者だな。 では隠密、逃走、敵が選ぶ道筋の選択肢を先に限定してしまえば捕捉は難しくないという事だ」
 敵の気配、殺気……それらが霞の如く消えた事を確認したキョウとアイギス。
 二人は小さく息を吐き、一瞬だけ緊張をほぐすのだ。
 そして敵の性質が予想通りだと確認した二人は頷き合うと作戦を成功させるべく邪魔な枝などを伐採していくのであった。

「行け、サーベルドッグ」
「あおーん!!」
 一方回は忠実な部下であり、右腕がサーベルとなった犬の怪人であるサーベルドッグを召喚する。
 呼び出されたサーベルドッグはスンスンと鼻を鳴らし、周囲の匂いを覚えるように嗅ぎ始めた。
 その光景から視線を外し、回は周囲をもう一度見渡す。
 濃い緑に囲まれた空間はこんな時で無ければリラックスできる最高の場所であろう、少々虫が生息するがかなりの高地なので地上の森よりは格段に少ない。
 比喩でなく自然溢れるという言葉に相応しい空間、潜むには打って付けのフィールド、まさしく今回のオブリビオンに適した地形である。
 ならば、作り替えようでは無いか。
 回の命令に従い、鼻を鳴らしながらサーベルドッグが刃を走らせる。
 鋭利なサーベルは分厚く絡み合った枝を両断し、風に揺れる葉も綺麗に切り裂かれ見渡しの良い道が生まれたのだ。

「――っ! 妨害に動いたか……だが遅いな」
「わぉん!!」
 勿論オブリビオンの妨害は想定済みだ、電磁バリアを展開しクロスボウの矢を防御すると無駄と分かりつつもアローガンを撃ち返す。
 隠密に長けたオブリビオンを捉える事は出来なかったが、気配は再び遠ざかり消えていく……別のメンバーの妨害に動いたのであろう。
 カランと落ちたオブリビオンの矢をしっかりと観察すると、バッグへと丁寧に収納し怪人に邪魔な枝を排除する様に命令する回。
 それから何度も妨害を受けるが、その度に電磁バリアを展開し防ぎながら作業を続けるのであった。
 勝利を呼び込む道を作り上げるために。

「うん? これは……?」
「わおん?」
 さて、そんな作業の最中に回は面白い物を見つけた。
 それは通常以上に大きく育った昆虫が作り上げたであろう【繭】である。
 果物のメロン程もある繭なのだが、どこか甘い香りがするのだ。
 更にこの繭糸は林檎の果肉のように優しいをしていた、なかなか見る事の出来ない色合いの繭にほうとため息を漏らしてしまいそうになる回はふと考える。
 もしこの繭を量産する事が出来れば、民たちの生活が潤うのではないかと。
 ほんの少しの興味から回は繭を回収することに、後程調べて分かった事であるがこの大樹の影響で大きくなった蚕が原因であり、特産品になりえる物だと町長は喜ぶのであった。

「う~ん、ココもいいかも~? あ、でもあっちの方が見晴らしいいかも♪」
 キョウと回が道を作っている間、妖精姫ティエルはふわふわと飛翔しながら周囲の巨大な枝を見て回っていた。
 大きな洞が開いたモノ、洞同士が繋がり行き来できるモノ、なんと二階建てのように中でつながったモノ。
 様々な樹洞を調べていたのだ、勿論大事な作戦の為でもあるが半分は秘密基地を作る気分でもある。
 特にティエルが気に入ったのは、大きく太い枝が横方向……つまり葉のドームから外に向かって伸びた枝である。
 洞を潜ればトンネルのようになったソコはまさに秘密基地、秘密の通路そのものなのだ!
 ここに机を、ここにベッドを、あ! ここは窓になるかも♪ 見て回るだけで楽しくなってくる洞巡り。
 そんなティエルは自分が見つけたお気に入りの洞が、まさに隠れるも良し、逃げるも良しのオブリビオンが好きそうな洞だとピン! と来るのであった。

「ピンときちゃったかも! ボクの秘密基地にしたかったけど……まずはお仕事だね☆」
 みつけた洞の中、特に通り道になる部分にある物をいっぱいに設置するティエル。
 お気に入りの小さな壺からたっぷりと出てくるある物とは、樹道から滲み出たべとべとの樹液……樹道粘液である。
 ティエルは作戦が決まった後、周囲を探検しながら見つけた樹道粘液の粘度をレイピアでつついたりしながら確かめると見つけ次第壺の中に入れていったのだ。
 この小さな壺こそ妖精に伝わる能力、フェアリーランド。
 物や人を収納できる不思議な壺なのだ!
 これにより普通の手段では持つことのできない粘液を大量に集めたティエルは、オブリビオンが隠れる場所に予め設置しなおす事で罠に引っ掛ける作戦なのだ!

「うわ~べとべと! さわったら大変な事になっちゃうかも!」
 壺を逆さにしながら集めたべとべと樹液を洞の中に塗っていく、一通り塗り終えた妖精姫は鼻歌混じりで他の洞も見て回るのだ。
 本命の洞がべとべとになってしまったが、もしかしたらもっと良い物件があるかもしれない。
 それこそアップルシロップが毎日手に入る住処があるかもしれないのだから!
 こうして三人のオブリビオンに対抗する作戦の準備は終わり……ついに結構の時が来た!

「いいなサーベルドッグ、この匂いを辿るのだ!」
「あおーーん!!」
 回はある液体を染み込ませた布切れをサーベルドッグに嗅がせる、するとその匂いを覚えた怪人は一度咆えるとすぐさま駆け出すのだ!
 その後を回とキョウ、ティエルとそれぞれが武器を構えて追いかける……気配も姿も匂いもしない……そんな緑の空間を。
 しかしサーベルドッグは迷うことなく一目散だ!
 その追跡を支える大きな要員は回が先ほど嗅がせていた布切れ……その液体である。
 回は自分やキョウの妨害に動いたオブリビオンが放つ矢を集め、鏃に塗布された無臭の麻痺毒を抽出。
 薬物調合セットを使い、濃縮させる事で匂いを強化させた物を創り出したのである。
 オブリビオンしか使わない毒物、その匂いをたどれば……。

「見つかった!? くっ!!」
「追い立てろ! アイギス続け!」
「イエス! マイロード!」
 当然見つかるものである。
 オブリビオンは自分が追われる側になる事など考えてはいなかった、深く攻めなければ絶対に見つからないと判断していたのだ。
 その考えは正しかった……だが、オブリビオンが愛用する麻痺毒を利用する存在が居なければの場合においてのみ……である。
 アイギスはキョウ達三人の前を走り、大楯を構えてオブリビオンの射撃を防いでいく。
 あれほど気を張っていた時と異なり、すでに場所のわかるクロスボウを防ぐこと等キョウの部下であるアイギスにとっては造作もない事なのだ。
 こうして前面防御を手に入れた三人は逃げるオブリビオンをサーベルドッグの先導の元に追い詰めていく!

「西に行ったよ!」
「了解だ、発射!」
 ティエルも微かな木の葉の揺れる音、そして逃亡者を探る第六感を頼りに目的を補佐。
 そのナビゲートを受けて回は構えたアローガンから矢を放つ!
 目的は直撃……ではなく、目的地に追い込むためのルートを選択させる一手。
 やけになって暴発されるよりも確実に動きを封じてから叩く作戦なのだ!
 回の放った矢は狙い通りオブリビオンの進路を妨害、自分達が作った罠へと向かわせる。
 森の中での動きに精通したオブリビオンを追い立てる事が出来るのは道のおかげだ。
 自分達は移動しやすく、隠れたがるオブリビオンは移動したがらない道……まさに作戦通りに物事が動いていく瞬間であった。

「やった! ボクの罠がある洞に入ったよ!」
「うむ、成功だな」
「サーベルドッグ、待機だ」
 こうして三人に追い立てられたオブリビオンはティエルが大量に粘液を塗りたくった洞へと見事に隠れてしまう。
 そして声にならない悲鳴が聞こえ……完全に物音がしなくなったのだ。
 注意しながら投降勧告をし、洞を覗く……するとそこにはいくつかの瓶の入った小袋だけが残されていたのである。
 なんと大事な装備品をパージする事で、なんとか行動可能になったオブリビオンは這う這うの体で三人の追跡から逃れたのだ。
 その事を残念に思うかもしれない、しかし三人は多大な戦果を獲得していたのだ。
 それは袋に入れられた小瓶……つまり毒だ。
 このオブリビオンは戦う際に【毒を選択する行動がし難くなった】のである。
 勿論オブリビオンの手持ちにいくつか毒は残っているだろう、しかし麻痺毒を初め複数の毒を失ったのである。
 オブリビオンと戦う際に非常に有利になる事は間違いないだろう。
 三人は顔を見合わせ、頷き合うと一度身体を休める事にする。
 こうしてオブリビオンの領域を獲得した猟兵達は、厄介な隠遁者を確実に追い詰めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルナ・ステラ
この前植えた種がすごい大きくなったんですね!
遅れましたけど、箒で飛んでいけば追いつけそうかな。

大きな林檎かぁ...
甘い樹液と合わせて日持ちもするコンポートとかどうでしょうか?

頂上に到着です!
それにしても、ここを占拠してるのって何ででしょうか?

――矢が!
何とか避けれ...クモの巣に引っかかちゃいました?!
ボールのようなものが迫ってきてます!?

あぅ...ネトネトで気持ち悪いです...

(また矢がきたらピンチです!)
星霊さん助けて!
あなたは水瓶座の星霊さん?
樹液とかを洗い流してくれるのかな?

反撃可能なら、【地形を利用】して矢がとんできた方にべオークのカードで枝を急成長させオブリビオンを追い詰めます!



●大きな木の上は、ねばねば時々水流?
「ふわぁ……すっごく大きいです……え、まだまだ上があるのですか?」
 箒に跨りふわふわと、高層ビル程の大きさに成長した果実樹へと空を飛んで挑む少女が居た。
 星と月をモチーフにした魔法衣を纏い、白い美しい髪を風になびかせる魔女っ子こそルナ・ステラ。
 近くを飛ぶ小鳥になつかれ、箒の先端に止まった小鳥と楽しそうに話す優しい魔法少女である。

「到着です!」
 ふわりと音も無く太い枝の上に足を降ろすルナ、昇るまでに少し乱れた髪を整え、全面に広がる圧巻の深い緑色のドームを注意深く見渡し周囲の様子を伺った。
 さわさわと木の葉の擦れる音、風が運ぶ自然の香り、小鳥の鳴き声……雄大さと癒しを与える音に心が軽くなる。
 しかし静寂と癒しに混じって微かに戦闘の気配も存在するのだ、おそらく先に上った猟兵達が姿を隠すオブリビオンを追跡しているのだろう。
 なんとか間に合った、そう安心の溜息をつき再び愛用の箒に跨り、追跡に加わるべく森のように育った樹上を飛翔する!

「って、ひゃぁ!? あ、危なかったです……あれって蜘蛛の巣、ですよね……」
 戦闘の気配に集中し、応援に駆け付けようとしていたルナは可愛らしい悲鳴を上げる事になる。
 その悲鳴の招待は突如目の前に出現した巨大な蜘蛛の巣、捕まれば箒ごとべとべとに絡みつかれてしまうだろう事は火を見るより明らかである。
 そんな物騒な障害物を前に、ギリギリ急降下により回避したルナ。
 進む速度を落としながら、安全重視で戦闘の気配へと進むのであった。

「大きな蜘蛛の巣に妙な粘液……気を付けないと……って、やぁっ!? 」
 どんな敵がこの樹を占拠しているのか、ルナは蜘蛛の巣を避けながら進んでいると目の前から急に矢が飛来する!
 まさしく奇襲、言葉通りの一撃に反応したルナは自分で自分をほめても良いと思ったほどだ。
 しかし、不幸にも回避した先には件の蜘蛛の巣が張られており……。

「きゃぁ!? あぅ……とれな、ひゃう!?」
 星と月の魔女っ子は大の字にべったりと蜘蛛の巣に磔になってしまったのだ、両腕をバタバタと動かしもがき抜け出そうとするツナ。
 しかし動けば動くほど、もがけばもがくほどに蜘蛛の巣はルナに絡まり……ついには支えきれずに落下してしまう。
 更に蜘蛛の巣に絡まったルナは不幸にも樹道粘液に落下してしまうのだ。
 べと……ねちょぉ……と身体にまとわりつく粘液と蜘蛛の巣、動こうにも動くことが出来ず尻餅をついたポーズになってしまったのだ。

「あぅ……ネトネトで気持ち悪いです……」
 涙目になったルナだが現状はかなり危険だ、先程の矢はオブリビオンの物だろう。
 このままでは抵抗も出来ずに攻撃される可能性が高い、なんとか脱出しなければ……そう思い行動するも粘液と蜘蛛の巣は身体に張り付いたまま、粘りに負けてしまい動けない。
 こちらを攻撃する気配が徐々に近づいてくるのが分かる、このままでは、このままでは……。
 防御か反撃か……自分に出来る方法を模索していたルナ。

(また矢がきたらピンチです!)
 とオブリビオンの攻撃を防ごうと魔力を込め。星の霊を呼び出す!
 ルナの願いによって顕現したのは水瓶座の星霊、大きく神聖な水瓶を持った星霊は優しい笑みを浮かべると召喚主に寄り添うのだ。
 頼りになる星霊にその水で洗い流してほしいとお願いすると、こくりと頷きその力を発揮する。
 水瓶からは無限の清らかな水が生み出され、粘液と蜘蛛の巣でべとべとになったルナを洗い流すのである。
 清らかな水はあれほど強力であった粘りを綺麗さっぱりに洗い流す……ルナは全身をびしょぬれになってしまうものの、無事に粘液捕縛から脱出する事に成功するのだ!

「うぅ……全身べちょべちょです……で、でもこれで反撃開始です!」
 ルナは飛来する矢を余裕を持って回避すると、濡れ鼠のままであるが新たな魔力を解放。
 迫りくるオブリビオンに向かって解き放つのだ!
 回りにはルナの味方をしてくれる自然ばかり、ベオークのカードを使い迫りくるオブリビオンへと大樹の枝を急成長させ反撃する。
 急な反撃によりオブリビオンは急反転、ルナは慌ててオブリビオンを追いかけたのだ。

●報告:特産品候補を発見しました。
【甘味鳥の黄金卵】
【大きな繭】
【蜘蛛の糸(強靭な糸)】
【樹道粘液(ゴム)(プラスチック)】

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『テリトリー・メイド』

POW   :    守護の花よ、牙を剥け
自身からレベルm半径内の無機物を【毒を帯びた棘持つ蔦と花弁】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD   :    かすり傷でも十分なのよ
【クロスボウから放った矢】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体を蝕む呪詛に等しい毒の散弾】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    すり抜けるわ
【緑の外套を脱ぎ去る】事で【高速戦闘モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:透人

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠椎宮・司です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●窮メイド、猟兵を嚙む?
 猟兵達に追い立てられ、自分の領域を失ってしまったオブリビオン。
 彼女は外套を纏った姿で立ち止まり猟兵達へと意識を向ける。 
 何故ならば彼女の今立っている場所は【巨大樹の中心にして、唯一日の光が十全に届く広場のような場所】なのだから。

「追い詰められましたか……我が領域もすでになし、では最後の手段。 貴方達を正々堂々と打ち破りましょう」
 足場は密度の高い枝が集まり作られている、踏み外す事や破壊する事は難しいだろう。
 村の広場程もある大きさがあるので、全員で戦っても問題は無い。
 後はこのオブリビオンを倒せば任務終了である。
 さぁ猟兵達よ! オブリビオンを撃破し町に平和を齎すのだ!

 ※今戦闘に対する注意点。
 POW●守護の花よ、牙を剥け
 SPD●かすり傷でも十分なのよ
 に対し、猟兵達は有利に立ち回る事が可能です。
 また、防御用暗器である鉄扇を紛失させているので、猟兵の行う攻撃的な行動にボーナスがあります。
 追い立てながら樹上迷宮を突破した際に、かなりのアドバンテージを得た結果なのです。
 この情報は共有されていると見ますので、プレイングに活かして頂けると幸いです。
 また、今回は特産品の発見はありません。
 ですので、プレイングには戦闘or今までに発見した特産品の利用方法等を書いて頂けると嬉しいです。

●現在までに発見された特産品候補。
【甘い樹液】
【蜘蛛の糸(強靭な糸)】
【樹道粘液(ゴム)(プラスチック)】
【甘味鳥の黄金卵】
【大きな繭】
御手洗・花子
序盤は『情報収集』と『コミュ力』で味方の動きを把握しながら、『衝撃波』や折り紙に『マヒ攻撃』『呪詛』を込めた『援護射撃』によってサポートに徹する。

執拗に近距離戦を避け、遠距離から援護を続ける事、そして今までの交戦でも罠や『衝撃波』頼っていた所を見せてきた事で、近接戦は苦手と言う印象を与える『罠使い』から、速度で負けて近接に追い込まれたと言う『だまし討ち』により不用意な攻めを誘引する。

『覚悟』『激痛耐性』『見切り』『毒耐性』によって被弾してでも確実にカウンターの【黒死蝶】を相手に叩き込む。


二天堂・たま
真の姿(ひよこの着ぐるみ)を開放

フェイントや逃げ足を駆使して攻撃を避けつつ
周囲にボビンケースの糸で足を引っ掛ける罠を張る。
ワタシ達が唯一対策出来ていない【高速戦闘モード】を封じるためだ。

基本的に相手の長所を封じることに重きを置くが、チャンスがあればUC:ケットシーインパクトを使おう。ずいぶん威力も貯まってるようだし。

★特産品
【甘味鳥の黄金卵】の殻と【樹道粘液(プラスチック)】で黄金色の器を作って
【甘味鳥の黄金卵】のプリンとリンゴの飾り切りを載せ
【甘い樹液】を煮詰めたカラメルソースを掛ける
【大きな繭】を織って作った布でラッピング。
UC:神仙の料理術で珠玉の甘味を完成させよう。名前?考えてないな。



●黒死蝶と糸結界
「まずは数を減らさせて頂きます!」
 緑の外套を纏ったテリトリー・メイドは懐から愛用であろうクロスボウを取り出し、早撃ちの要領で矢を放つ。
 そのままメイドは刹那の早業で矢を番え、二発目を撃ちだす。
 一撃目は東洋の古風な衣服を纏う黒髪の少女、御手洗・花子へ。
 二撃目はひよこの着ぐるみを纏ったケットシー、二天堂・たまへ。
 風切り音を纏い飛来する鋭い一矢、猟兵でなければ避ける事すら出来ない射撃である。
 しかも鏃には様々な種類の毒牙塗布されているのだ、下手に防御すればオブリビオンの毒に侵され無力化されてしまうだろう。
 しかし、現状は違う。

「む! 散開するのだ!」
「ちょこざいなのじゃ!」
 たまと花子は飛来する矢を刹那の見切りを見せる、ひよこの着ぐるみのまま短く、オブリビオンの左側に回り込むようにステップを踏む。
 花子は袖をひらりと舞わせながら踊るようにくるりと回避、二人とメイドの矢を華麗に躱すのだ。
 これで二本、毒を塗り無力化を図った矢は失われた。

「――チッ! 厄介な侵入者方ですこと!」
 オブリビオンは煩わしげに舌を打つと再びクロスボウに矢を番える、しかしすでに二人の猟兵は動き出している。
 無自覚ではあるがメイドには焦燥感があった、それは愛用している毒の大多数を失った事。
 数が少ない故に消耗を避けるため、必中でなければならないと考えてしまったのだ。
 結果、照準を普段よりも長く取る、それが乱れとなって現れたのである……本人すらも気づかないうちに。
 元来暗殺者タイプであるメイドにとって真っ向勝負は望んだものでは無かった、ただでさえ嫌う状況で普段よりもテンポが遅い行動……猟兵達に通じる訳もなく、ただ矢を無駄にしただけであった。

「それではお先に失礼するのだぞ!」
「どんどんいくのじゃ!」
 焦燥にかられるメイドを尻目に、花子はたまの動きを観察、それに合わせるように遠距離から支援。
 たまは小さな体を活かし、敵の攻撃を回避しながら纏わりつく様に白兵戦を仕掛けている。
 小さな黒髪の猟兵から放たれる衝撃波は、決してたまには当たらずにメイドの機動力を封じるような“置き方”で包囲するように展開される。
 メイドも回避に専念しているからか直撃はしないものの、一度……わずかでも油断をすればそのままたまの風のような攻撃に身を晒されてしまう。
 それが理解している故に、どちらか一方の撃破を優先したのだ。
 狙いは近くで的確に攻撃を仕掛けてくるケットシー……ではない、遠距離で支援に徹する花子である。
 今までの戦いで花子が遠距離攻撃を得意としている事はオブリビオンも知っている、この開けた場所でもそうだ。
 あくまで遠距離での支援に徹している……つまり白兵は得意ではない……と。
 メイドはそう推論し、すぐさま邪魔な支援手を潰そうと動くのだ。

「――っ!? 危ないのだな!」
 まずはたまと距離を取るために、メイドは袖に隠された暗器“仕込み矢”を近距離で毒を孕む棘を纏った蔦に変化させたのだ。
 メイドの意思により急速に成長、鞭のようにしなりたまに襲い掛かる……が、たまは袖口に光る物を見た瞬間にケットシーらしい俊敏で柔軟な脚力を発揮。 
 前もって無機物を変化させると知っていたたまは不意打ちにもかかわらず、ぴょんと飛び上がり蔦の鞭を余裕を見せて躱したのだ。
 しかしメイドは止まらない、鞭を振り上げるように構えると低姿勢のまま後衛である花子に飛び掛かったのだ。
 暗器である矢を発射するのではなく、鞭に変化させたのは近距離で一撃を与えるこの為。
 やや強引な攻めであるが、これで猟兵を一人潰した! メイドはそう確信し鞭を振るう。
 しかし……。

「ようやく引っかかってくれたのじゃ!」
「こ、これは……!?」
 花子が自信に満ちた声で告げ、両手を前に構えた瞬間、ギシ……と何かを強く縛る音と共にオブリビオンであるメイドの動きを完全に止めたのである。
 その正体は糸……目に見えぬ程に細く、それでいて強靭な鋼の糸、衝撃波を放っていた花子の前に不可視の壁が存在して居たのだ。

「作戦成功なのだ」
 メイドの背後からはたまの声、そのひよこの着ぐるみの手には幾つものボビンケース。
 そして注意深く観察してみればメイドの周囲にも……そう、たまは白兵戦を挑みながらボビンケースを様々な場所に設置し巻き上げ、糸による結界を作り上げていたのだ。
 それを知らずに結界に囚われたメイドは我が身を締め上げる糸を支配しようと無防備に魔力を練り上げる。
 こんな糸など自分の支配下に置き、新たな武器として利用してやろう――と。
 目の前には遠距離支援しか出来ないか弱い猟兵、故に生まれた慢心……そこを突かない二人ではない。

「死を告げる蝶は汝に舞い降りた」
 花子の口から紡がれる言霊、同時に可憐な少女の右腕が黒き不穏な蝶が舞い降りる。
 周囲の温度が下がる……黒き蝶により齎された“死”は明確な形となって花子の右腕を覆い、浸食。
 更に温度が下がる……概念ではなく形に、死を取り込んだ神と融合した人間はその右手を死へと変化させたのだ。
 ふわりと青々とした一枚の葉が花子の右手に舞い堕ちる……と、同時に再び温度が下がった。
 ひらりとまった青葉は右手に近づいた瞬間、塵となって消え去る。
 死に近づきすぎた結果、青かった葉は瞬時に枯れ、そのまま風に吹かれ崩れ去ったのだ。

「そ、それは……っ!?」
「決めるのじゃ! 黒死蝶!」
 近接攻撃が出来ないと誰が言ったのだろうか? 無防備なメイドは死を顕現した右手での一撃を浴びてしまう。
 身体がくの字に曲がり、自身を構成する生命が朽ちていくのを感じるオブリビオン。
 そんなメイドが花子の黒死蝶により吹き飛んだ先にはひよこの着ぐるみの猫が居たのだ。

「作戦通りだな! それでは受けよ、我が奥義!」
 ニクキュウ・マジック、そう紡がれた言葉と同時に苦悶の表情にて吹き飛んでくるメイドに向かい右手を突き出すたま。
 そのかわいらしい手にはぷにぷにの肉球が日の光を浴びて自己主張している。
 そんな魅惑的な肉球に勢いそのままのオブリビオンが触れた瞬間――浄化の衝撃が走ったのだ。
 悪意や殺意を浄化する一撃と死を齎す黒の一撃。
 その衝撃に挟まれたメイドは大樹の床を抉りながら吹き飛んでいく。

「まだ生きているようじゃな」
「浄化しきれなんだな」
 ボロボロながらも立ち上がるオブリビオンを姿を確認した二人は静かに戦闘の構えを取る。
 花子は代償として右手をしばらく使えないが、その隙はたまが埋める。
 二人は隙無く厄介な暗殺メイドと対峙し続けるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミリア・プレスティール
仲間の猟兵達に攻撃は任せてミリアはUCで傷を癒していきます。
オブリビオンが近づいてきたら小さくなって隠しておいた『ミトン』が不意をついて捕まえます。

※アドリブ、他の方との絡みOK


レイチェル・ケイトリン
念動力と吹き飛ばしの技能で刹那の想いをつかって敵と敵の攻撃をふっとばしてたたかうね。

ほかの猟兵さんへの攻撃もふっとばしてふせぐね。
かばう技能もつかえるから。

広がる毒蔦の攻撃は注意して、ふっとばしてふせぐよ。

毒矢は毒がもうすくなそうだけど、それもふっとばしてふせぐね。

敵がはやくなったら、蜘蛛の巣をうごかしてフェイントの技能をつかって本命の樹道粘液をぶつけて身軽さをうばって、おいつめるよ。


特産品の利用……花子さんが見つけてくれたゴムでタイヤをつくるね。
ベアリング、サスペンションもつくって、馬車をよくするの。

それで定期便をはしらせるね。

そして別の方向のもうひとつの町までの道も整備して流れをつくるね。



●素早いメイドを止めるには。
「し、支援します!」
 猟兵とオブリビオンとの激しい戦いを前に、一人の少女が清らかな歌声を紡ぎあげる。
 その歌声の持ち主は引っ込み思案な黒髪の少女、ある実験を受けた強化人間であるミリア・プレスティールだ。
 ミリアの歌声……《シンフォニック・キュア》は聞いた者の傷と癒し、新たな活力を猟兵達に与える。
 そよ風のように軽やかに、優しい日の光のように暖かに。
 まさしく春風を思わせる歌声はオブリビオンと戦う猟兵達の助けとなるだろう。
 だが、そんな支援をメイドが簡単には見逃すわけがない。

「その邪魔な歌を止めなさい!」
 傷を負ったオブリビオンはクロスボウを素早く構え、ミリアの喉に対し早撃ちの如く短矢を放つ!
 その一撃は風を切り裂き、歌声を悲鳴へと変える魔の一撃。
 例え毒が無かろうと、命を絶てずとも、鋭い鏃で喉を貫かれれば歌は終わる。
 それだけでオブリビオンの狙いは成就されるのだ。
 その矢が届けばの話であるが。

「させないよ」
 鈴の転がるような声が響く、それと同時にミリアへと届く寸前に矢が“急停止”したのである……まるで見えない何かに捕まれたようにピタリと。
 歌い続けるミリアを護るようにゆっくりと姿を見せる白髪の少女、肌も白磁のようでどこか芸術品のような雰囲気を纏う存在。
 念動力を得たドールのヤドリガミ、レイチェル・ケイトリンである。
 メイドの放った凶弾を防いだのは彼女の念動力、まさに見えない手で単矢をつかみ取ったのだ。

「心のなかで時間よ、とまれ」
 更にレイチェルは体感時間を操作、自らが感じる時の流れと世界の時の流れを隔ててしまうかの如き差を生み出した。
 結果、メイドが続けて放った単矢もいとも容易く念の手でつかみ止めてしまうレイチェル。
 メイドにとっては悪夢でしかない守り手が現れてしまった。
 その間にもミリアの清廉な歌声は大樹に響き、猟兵達の体力を癒していく。
 俯き舌を打ち、オブリビオンは奥の手を切る。
 緑の外套にて外気を打ち払うように脱ぎ捨て、命を削ってでも猟兵達を射抜くために。

「全力で行かせて頂きます!」
 その言葉が紡がれた瞬間、まさにメイドは風となった。
 姿を消し、ブレさせ、残像を生みながらミリアの歌声を消すために駆けるオブリビオン。
 矢よりも早く動き、空間的にクロスボウを放つ。
 まさに全周囲から迫る矢にレイチェルも対応できない……はずであった。

「絶対に、させません!」
 人形のヤドリガミは更に力を解放、指でつまむのではなく全ての短矢を叩き落すべく衝撃波を壁のように放ったのだ。
 目には見えぬ力のぶつかり合い、体感時間を走査したレイチェルのみにできる加速世界での攻防。
 一本、二本、四本、八本……放たれる矢は放たれる衝撃により爆散し細かい破片となって宙に舞う。
 その破片が衝撃波の余波を受けて吹き飛び、高速で動き回るメイドの巻き起こす風に乗り、戦場では細かな塵が舞い始めた。
 それは視界を奪う魔性の塵……無理矢理に隙を創り出す塵だ。

「――っ!?」
 体感時間を操作し、ギリギリまで感知能力を研ぎ澄ませているレイチェルは僅かな空気の揺らぎを感じ取る。
 それは空間に舞う塵が不自然に“人が通ったように動いた”……つまり、塵を目くらましにメイドが射撃から白兵戦に切り替えた証。
 そう判断したレイチェルはすぐさまミリアを守るべく衝撃波を放つ……しかし、ほんのわずか遅かった。
 懐から取り出されたのは短くも鋭い刃を備えた短刀が命を奪う為に迫るのだ。

「ミ、ミトンさん!!」
 ミリアが叫ぶ、分かっていた……支援するために歌えば狙われる事も。
 素早い動きで迫り、肉薄し確実に奪いに来ると。
 仲間が守ってくれた身体を使い、素早さに長けるオブリビオンを捕えるタイミングはここだと!
 予め相棒である手袋であるミトン、大きさを変化させる能力を持つミトンさんに小さくしなってもらい懐に隠れてもらっていたのだ。
 そして肉薄するオブリビオンを自分事掴んでもらう為に!

「何を!? や、めっ!?」
「んぎゅ!? も、もっと……限界まで!」
 ミリアとメイドを挟み込み、限界まで押し潰すまでに掴もうとする巨大なミトン。
 勿論強度はオブリビオンであるメイドの方が高い、しかしミリアにはある秘密が……勝策があった!
 それは改造人間であるミリアの秘密……ダイラタント流体のような柔軟性を手に入れた身体だからこそできる荒業!
 自分の身体が押し潰れても、柔らかい身体のおかげで致命傷にはならないのだ。
 最も押し潰される圧迫感はしっかりと感じてしまうのだが。
 ギリギリギリ、と締め押し潰そうとする音が響き渡る、メイドも必死に抵抗するがミリアの捨て身の拘束に身動きが取れない状況……そこにレイチェルが動く!

「ミトンを開いて下さい!!」
 そう叫びながらレイチェルが頭上に念動力で纏めた蜘蛛の巣を広げる、その粘着力は折り紙付きの一品だ。
 それを確認したのだろうか、ミトンは力強く挟み込んでいた二人を解放。
 その開くタイミングに合わせ、レイチェルが完璧にメイドのにみ蜘蛛の巣を浴びせるのだ。

「くっ!? こんな無様を晒すとは……っ!」
 持ち前の俊敏さを活かし、全身が蜘蛛の巣に絡む事は防いだオブリビオン。
 しかしベタつく蜘蛛の糸はメイドの機動力を殺し、今までのような速度では動けなくなっていた。
 自らの現状を確認したメイドはレイチェルとミリアに殺気の籠った視線を向ける。
 そんなメイドを尻目にレイチェルは押し潰されカートゥーンのようになってしまったミリアを念動力で元に戻そうとしていたのだ。

「無茶をしすぎです」
「うぅ……すみません、このような身体なので、無傷ではあるのですが……」
 強化人間である長所を利用したミリアの行動に呆れつつも、その行動は確かな効果を生んだ。
 敵対するオブリビオンの機動力を奪ったのだから。
 ぽんと軽い音を立てて元に戻ったミリア、そして小さく息を付き、呼吸を整えるレイチェル。
 そんな二人は睨みつけてくるオブリビオンに視線で返し怯ませるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ティエル・ティエリエル
「お日様がいっぱい当たって気持ちいい場所だね♪こんなにいい場所はさっさと返してもらわなきゃね♪」
テリトリー・メイドとのおいかけっこもこれでお終い!ここから追い出して巨大樹を取り戻すよ!

背中の翅で飛び上がり、相手の頭上に陣取って仲間と連携して攻撃していくよ。
【空中戦】で空から【フェイント】を掛けながら攻撃するフリをして仲間の攻撃のための隙を作るね♪
もしオブリビオンが残った毒を使おうとしたらそうはさせないと【妖精の一刺し】で突撃して邪魔してやるんだから☆

特産品は【甘い樹液】にリンゴを漬けて【リンゴのシロップ漬け】を作ったらどうかな?

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


清川・シャル
甘い樹液と卵でスイーツ
糸と繭を組み合わせれば織物出来そう?

真の姿は鬼神シャルちゃんです
さぁトドメといきますか
にっこり無邪気に笑い

櫻鬼のジェットでブーストかけてダッシュ
一気に間合いをつめ
蔦攻撃には氷の盾を展開して盾受け
念の為に毒耐性と激痛耐性
桜雅乱舞(グラップル、怪力、衝撃、力溜め)で殴り、そのまま氷の氷柱を突き刺し
Soul VANISH(鎧砕き、殺気、串刺し、咄嗟の一撃、属性攻撃、恐怖を与える)で追撃

攻撃の衝撃を使って軽く間合いを取ったら
修羅櫻(なぎ払い、2回攻撃、残像、呪詛、早業)でUC

地形の利用と第六感を使います
攻撃には見切りカウンターで対応

戻ったら美味しいリンゴ食べたいですね



●舞うは妖鬼、散るは血桜。
「まだ、終わりではありませんので」
 蜘蛛の糸により敏捷を殺されたメイドは袖口から短いながらも鋭い針を取り出し、腕の動きのみで天高くも投擲する。
 それは空中でバラけ、まるで雨のように戦場に降り注ぐのだ。
 日の光を浴び、キラリと輝く針雨を猟兵達は何事もなく躱し範囲から逃れる――二人を除いて。

「キラキラした針の雨だね! でもボクには通じないよ!」
 一人は太陽のようなオレンジの髪を靡かせ、小さな体に大きな勇気。
 若草色の衣装が映える冒険者、専用の細剣で風を切り裂きながら飛翔する。
 妖精の羽を羽搏かせ、華麗に針を躱しながら進むのはフェアリーのお姫様ティエル・ティエリエル。
 おてんば姫様が針の雨の中、華麗に踊る。

「時間稼ぎが見え見えですよー!」
 ピンク鼻緒の厚底高下駄をタンと鳴らし、金色の髪をふわりと舞わせて一足飛び。
 可愛らしい着物の袖が風になびき、両手に持つのは桜色のメリケンサック!
 青い瞳でメイドを睨み駆けるのはゆるふわ元気な羅刹っ娘、清川・シャル。
 降り注ぐ針を踊るように迎撃しながらオブリビオンに迫るのだ

「――厄介な!」
 未だに蜘蛛の巣の拘束は続くメイドは苦虫を嚙み潰したような顔でティエルとシャルを睨みつける。
 まさに広範囲に威嚇攻撃を加え、蜘蛛の巣から脱する予定であったのだ。
 それを看破され、肉薄されれば不利になるのは必定……メイドは再び周囲の無機物を操ろうと魔力を練り上げた。
 周囲にばらまかれた針はその布石、最後の最後まで取っておきたかった毒茨の結界を創り出すための切り札。
 それを早々に切らなければならない屈辱にメイドは再び顔を顰めるのであった。
 もっとも、発動すれば果敢に前に出た妖精と羅刹は始末できるだろう……そう考えるメイドの心中は必ずしも屈辱だけでは無かった。

「踏み込み過ぎです!」
 針を避け、針を砕き迫るティエルとシャル。
 二人が迫りオブリビオンまであと少し……つまり不意を突ける距離に踏み込んだ瞬間にメイドは力を解き放った!
 降り注ぐ暗器の雨は魔力を受け、発芽――毒々しい色合いの茨へと急速に変化するのだ。
 変化した茨は成長を初め、降り注ぐ針の勢いを使うようにシャルとティエルへと迫る。
 今までの直線的な針の動きとは違う不規則な動き、成長し続ける毒の茨が複雑に絡み合う事で回避を不可能とするのだ。
 まさに不可避の切り札、羅刹と妖精はこれで無力化……のはずであった。

「その攻撃は知ってるですよ!」
「うー……分かってたけど結構寒いね……」
 メイドの笑顔が凍り付く……その引き金となったのはシャルの声。
 急成長を始めた茨が動きを急停止、重力に引かれそのまま落下し“甲高い音と共に砕け散った”のだ。
 それは静寂の世界、音すらも凍る絶対零度の世界。
 シャルは無機物を茨に変化させる技を知っていたのだ、故に対策は完璧に。
 桜雅乱舞――殴れば桜舞う桜色のメリケンサックには秘密があった、使用者に氷の力を与える石が埋め込まれている。
 シャルはその力を解放、シャルの周囲の温度が急激に下がり音が澄み渡り始めた。
 それと同時に青白い波動がドーム状に広がり、伸び迫る毒茨を凍り付かせていく。
 あれほど毒々しかった植物にあっという間に霜が付き、繊維を破断、メイドの魔力に支配された毒茨はあっけなく凍り付いてしまった。
 勿論ティエルも知っていた、攻略法も知っていたが先程の発言からも分かる通り、あまりの寒暖差に驚いたのである。
 そんなティエルは身体を抱きしめる様に可愛らしく震えながら、暖を求めてシャルの肩に一時退避していたのだ。

「馬鹿な……」
 全ての針を茨と化し、その茨を持って猟兵を絡めとり毒を注ぐ。
 必勝の茨の結界があっけなく敗れ去ったメイドは愕然とした表情で立ち止まってしまう……二人の猟兵が目の前に居るにもかかわらず。
 先に動いたのはシャル、可愛らしい厚底高下駄“櫻鬼”の力の一端を解放、一足にて肉薄。
 その速度の秘密は魔力をジェット噴射して解き放つ高速直線軌道、稲妻の如くオブリビオンへ迫ったのだ。
 そしてジェット噴射にて氷の破片が舞い上がる、その破片を刹那の判断で殴りながらの接近は攻防一体の移動であった。

「いただきです!」
「きゃ!? こ、のぉ――?!」
 高速機動するシャルに殴られた氷はその衝撃を受けて鋭い無数の破片へと変化、そのままジェット噴射の生み出した風に乗ってメイドへと突き刺さったのだ。
 まさに氷の散弾、無防備なメイドは全身に裂傷を負う結果となった。
 更にシャルの連撃は止まらない、痛みによって我に返ったメイドを前にピンクメリケンサックの乱打を浴びせる。
 脇腹へとフック気味に一撃、首筋に打ち下ろすように右を、真直ぐに拳を打つストレート。
 撃ちだす乱撃に咲き誇る無数の桜、敵を打てば桜吹雪を生み出す桜雅乱舞の名にふさわしい攻撃だ。
 その打撃はメイドの身体に突き刺さった氷を押し込み、更に傷を付けていく。
 嵐のような打撃にオブリビオンも急所だけは防ぎ、致命的なダメージを避けているのは流石であろう。
 しかし、最初に見せた隙が既に致命的すぎたのだ……全身を小さな無数の氷柱に襲われ、そこを乱打されればさしものオブリビオンにも動きに精細を欠く。
 それは左胸を狙うシャルの打撃を庇う動きに現れた……絡みついた蜘蛛の糸と疲労によりギリギリで間に合うはずであったメイドの防御が遅れ、左胸をシャルの拳が打ち抜いたのである。
 その衝撃により一瞬……まさに一瞬だけ動きを止める。
 羅刹を前に見せてはならぬ隙にシャルはすぐさま食らいつく!
 掬いあげる様にメイドの鳩尾に触れるシャルの手……刹那、爆音と衝撃が走り抜けた!
 “Soul VANISH”着物の袖に仕込まれた小型のパイルバンカーが撃ち込まれたのだ。
 その衝撃に吹き飛ぶオブリビオンとシャル、爆風の後に二人は間合いを取った状態で現れる。
 片やにっこりと笑顔を浮かべ、片や苦悶の表情で膝をつく。
 もはや勝負はついたと誰もが思ったであろう……しかしそれでもオブリビオンは動きを止めない。

「が、は……まだまだぁ!!」
 メイドは隠し持ったクロスボウから奇襲の矢を放つ、一発逆転の毒を込めた瞬速の矢を。
 しかしその矢はシャルに届くことは無い……途中で甲高い音を立てて地に落ちたのだから。
 その正体は寒さから解放された妖精の姫、高速で急降下し細剣で矢を打ち払ったティエルであった。

「う~ん、やっぱり温かい方が動きやすいよね☆」
 包み込むように照りつける太陽を浴び、陽気に伸びをする可愛らしいフェアリー。
 オレンジの髪と若草色のスカートがふわりと舞い、童話から現れたかのような姿を見せている。
 しかし彼女こそ奇襲の一矢を完全に防いだのだ、それを知りつつもメイドは続けてクロスボウに暗器である投げ杭を放ち羅刹を狙う。
 放たれた毒矢、更に陰に隠れて短く鋭い杭が無音でシャルの首に向けて飛翔する。
 その風切り音に確実に反応するのがひらりと空中に舞っていたティリエルだ。
 自慢の妖精の羽を羽搏かせ、風鳴りのレイピアを手に急加速! 疾風のように迫る矢を切り落とすのだ。
 渦巻く風、逆巻く旋風、王家に伝わるレイピアはティエルが振るうたびに風を孕み、周囲には優しい音色を奏でる。
 ティエルが舞えば風が吹き、風を受けてレイピアが優しい音色を奏でる、まるで演舞のような戦いが続く。
 何本も何本も傷ついた身体で矢を放つメイド、その度に音が鳴り撃ち落とされる。
 上下左右に打ち分けようとも、どれだけフェイントを重ねようとも、ティリエルが戦場で舞い踊る限り矢は届かないのだ。

「な、んで……くっ!」
「ボクがいる限り絶対にその矢は当てさせないよ☆」
 必至の反撃も通らない、ティエルの舞は衰える事無く、華麗な音色と共に剣閃にて複雑な軌跡を描く。
 困惑するオブリビオンに対し、もう一人の猟兵……羅刹の少女は修羅櫻と呼ばれる二本一対の刀を手に目をつむる。
 風の結界に囚われたメイドに対し、シャルは研ぎ澄まされた感覚だけで一歩、踏み込んだ。
 刹那――凛、とナニカの音。

「血の桜よ。 咲き誇れ」
 シャルの身体がぶれるのと同時に二本の刃閃が空を斬る、これぞ百花繚乱・桜舞。
 振るえば振るう程に鮮血の桜が舞い散り、命を奪う拘束連続斬撃。
 その姿はまさに鬼神が如く。

「いっくぞーーー!! これがボクの全力全開だよ☆」
 天高く太陽から急降下、流星の如くオブリビオンへと突撃するティエル。
 シャルとの連携にて放たれた一閃は悪しき存在の身体を貫き抉る!
 妖精の一刺しは天からの一撃なのだ。

「~~~~~~~~~~~~~~~~っ!?!?」
 声にならぬ絶叫が響き渡る、悪しきメイドは全身から血を吹き出しながら吹き飛ばされる。
 命があるのが不思議な状態であるが、魔力の大半を用い防御と再生に回してようやくだったのだ。
 吹き飛び、怒りの眼差しでシャルとティエルを射抜くオブリビオン。
 そんな視線を浴びても二人の表情は変わる事は無い。

「お日様がいっぱい当たって気持ちいい場所だね♪ こんなにいい場所はさっさと返してもらわなきゃね♪」
「戻ったら美味しいリンゴ食べたいですね」
 レイピアと日本刀を軽やかに振り血を払う、羅刹と妖精は残心したまま未来を語る。
 二人に隙は存在しない、オブリビオンは歯噛みしながら残った武器を確かめるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大河・回
ふう、ようやく追い詰めたぞ。さあ、決着をつけるとしようか。

引き続きサーベルドッグを召喚を召喚して前衛として戦わせる
敵が高速戦闘モードに入ったら敵の攻撃をくらってもいいから足止めをさせる
私自身は後方から援護射撃を行う
敵の足が止まった所を見計らって麻痺弾を撃ち込んで敵の機動力を落とすことを狙おう

特産品か
繭はやはりシンプルに絹として利用するのがいいかな
この樹にどれだけこれを作る昆虫がいるのか分からないが大きさ的に考えても結構量がとれそうだしね

※アドリブ、絡み歓迎


キョウ・ヴァゼラード
追い詰めたぞ、オブリビオン!
貴様の身勝手もこれまでだ!

●戦術
【高速詠唱】で【聖剣解放】を行い、腹心の騎士『盾のアイギス』と共に行動。
「既に奴は攻撃手段の半分以上を喪失している、攻め立てろ!」
『イエス、マイロード!』
アイギスを【戦闘知識】で指揮し私への攻撃を【盾受け】させながら突撃させてアイギスの盾で敵を【シールドバッシュ】させ体勢を崩し、すかさず私は【怪力】を発揮して聖剣を【二回攻撃】の連続斬りで振るい、敵を【薙ぎ払う】のだ。
「ここは貴様のいるべき場所ではない、去れ!」

●特産品活用
甘い樹液を甘味にして黄金卵をミルクセーキにしてはどうだろう?
美味しい飲み物は観光資源になるはずだ。

●アドリブ歓迎


ルイーグ・ソイル
むむ、あんまり強そうに見えないオブリビオンっすね…そんな時こそ油断慢心ダメゼッタイ!
ここまで来るにも色々バタバタしたっすから、前準備してから皆には全力でバトってもらうっす!

>ユーベルコード:シンフォニック・キュアを使い、【歌声】を聞いて共感した対象全てを治療する。

万全の状態で、殴りかかっていくっすよ!
(連携アドリブ歓迎です!

★特産品…この、何か形に作れそうな【樹道粘液(ゴム)(プラスチック)】がおもしろいっすね!巨大リンゴを型にして、お土産も入る器を作ったらどうっすか?
部屋にでっかいリンゴが置いてあったらテンションあがるっす!



●死を覚悟する者との闘い。
「ふう、ようやく追い詰めたぞ。 さあ、決着をつけるとしようか」
「ああ、貴様の身勝手もこれまでだ! オブリビオン!」
「油断慢心ダメゼッタイ! でいくっす!」
 以前よりも殺意を込めて睨みつけるオブリビオンに対し、三人の猟兵は戦闘態勢で視線と殺意を受けるとそれぞれがゆっくりと包囲するように動き出す。
 手負いのオブリビオンに対するのは三人の中では紅一点、悪の組織“デスペア”の幹部の一人といった設定を持つバーチャルキャラクター。
 情報戦を担当する白髪美人、スタイルの良い身体を自ら抱きしめる様なポーズでオブリビオンとの決着に挑むのが大河・回。
 ルーンが刀身に刻まれし聖剣グランネージュ、家伝の秘剣を利き手に持ちオブリビオンに剣先を突き付ける黒髪の美丈夫。
 ヴァゼラード伯爵家当主にして聖霊騎士団の団長を務める魔法剣士、部下である女性騎士アイギスに背中を任せて手負いのオブリビオンと対峙するのがキョウ・ヴァゼラード。
 三人目はピクリと灰色の狼耳を殺気に反応させた人狼。
 ゆるく穏やかな印象を与える風貌の青年はオレンジ色の瞳でオブリビオンから視線を外さずにじっくりと構える。
 太陽の光の温かさを背に感じながら、油断と慢心を一切消した人狼こそ、ルイーグ・ソイル。

「――――油断は無し、ですか……やりにくいですね」
 殺意の籠った視線はそのままに、クールな思考で猟兵と対峙する傷だらけのメイド。
 外見だけを見れば血だらけの少女にしか見えない存在、そんな彼女が不意に放ったクロスボウが開戦の合図となった。

「アイギス! 既に奴は攻撃手段の半分以上を喪失している、攻め立てろ!」
「サーベルドッグ! 自慢のサーベルでズタズタにするのだ!」
 キョウと回がオブリビオンの殺意が膨れ上がった瞬間、それぞれが部下の名を叫ぶ。
 イエス、マイロード! アオーーン!!
 大楯を両手に構える双盾の騎士アイギスが、右腕がサーベルと化した犬の怪人であるサーベルドッグが、主人の声に応えオブリビオンへと一直線に駆けだすのだ
 アイギスは放たれた矢を盾にて真正面から受け、サーベルドッグは低い姿勢で疾駆するとそのままメイドの右腕を狙って刃を振るう。
 真っ先に肉薄、オブリビオンに取りついたサーベルドッグに対しメイドは短刀で応戦。
 暗殺者らしく急所を一突き、犬の怪人を一撃で絶命させる予定であった……。
 しかし矢を受けた後のアイギスがすぐさま庇い、大楯にて短刀を受け止める。
 その陰からサーベルドッグが刃を突き出し、隙を狙う攻撃で執拗に追い詰めるのだ。
 即席だが攻守揃った二人のコンビネーションはオブリビオンでも簡単に打ち崩せない物なのだ。

「ちっ! ただの人間と怪人の癖に、面倒な」
 アイギスとサーベルドッグに至近距離を取られ、十全な動きの出来ないメイド。
 彼女は生半可な攻撃では二人を排せないと奥の手の一つである茨の召喚を試みる、そのためにクロスボウと同時に隠し針を弾かれるように撃ちだし、アイギスとサーベルドッグを全周囲から絡めとりその毒で殺すために。
 しかし……。

「何度も通じる手ではないよね?」
 ヒュッ! と無音に近い風を切る音色、それが耳に届いた瞬間にはオブリビオンの暗器を持った手は矢に貫かれていたのだ。
 そして放たれる少女の言葉、矢を放ったのは悪の秘密結社の幹部である回だ。
 回の手には機械仕掛けの小型クロスボウ、アローガン。
 威力よりも速度と命中、小回りを重視した形態での精密射撃で大技を狙うオブリビオンの行動を妨害したのだ。
 予め情報を知っている回だからこそ出来る狙撃によって無機物を毒茨へと変貌させる能力は簡単に使えなくなってしまう。
 メイドが再び茨娼館の為に動けば、回はすぐさま察知し妨害に動くだろう。
 切り札の一つを簡単に封じられたメイドは、迫るサーベルドッグの刃を避けながら苦虫を嚙み潰したような表情を見せるのだ。

「しかも、麻痺毒ですか……本当に、厄介な相手です」
「自分がしている事だ、されても仕方あるまい?」
 負け犬の遠吠えは聞くつもりも無いがね、と言いたげな表情で腕の動きが鈍ったメイドに言い放つ回。
 圧倒的なアドバンテージを獲得した状況でも油断も慢心もせずに追い詰めていく。
 前衛であるアイギスとサーベルドッグの疲労も少ない状況なのだ、大技は全て妨害するつもりで神経を研ぎ澄ます回。
 だがメイドオブリビオンもただでは終わらない、大技に頼らずに的確に前衛となる盾二人……アイギスとサーベルドッグを追い詰めていくべく加速する。
 急激な攻撃速度の上昇はオブリビオンの寿命も縮めるが、追い詰められているメイドにとって問題にはならない。
 まずは敵対する存在の処分……それだけを最優先にオブリビオンは風を纏うかのように流麗に、そして苛烈に刃と矢を振るうのだ。

「くっ! 早い……」
「アオーン!!」
 アイギスとサーベルドッグも必死にオブリビオンに食らいつく、されど本気を出したメイドの速度に十全に対応できずにいた。
 体力と気力がジリジリと失われていく戦況……勿論後衛からの援護もあるが肉薄する二人には精神的な重圧も存在するのだ。
 いつか崩れてしまうのではないか……そう気弱になりそうだったアイギスとサーベルドッグに活力が届く。

「皆には全力でバトってもらうっす! その為に歌うっすよ!」
 響いてくるのは人狼の青年、ルイーグの歌声。
 寒がり人狼の歌は暖かく、聞くものの心を癒す歌、体力だけでなく精神的な疲労も全てを癒すまさに太陽のような歌。
 日の光が降り注ぐ大樹に響き渡るシンフォニック・キュア、ルイーグの能力の発動と共に傾きかけた天秤が再び動き始める。
 大楯を構えるアイギスは果断に斜線を塞ぎ、何度も短剣やクロスボウを防ぐ、その動きは戦闘開始時よりも良くなっている。
 サーベルドッグも連携向上の成果だけでなく、目に見えて俊敏性が増している。
 最初は隙を伺いながら切りつけるだけであったが、今では隙を作り出すために足元を狙ったり、アイギスの負担を減らすために麻痺したオブリビオンの腕へと集中的に刃を走らせている。
 二人のコンビネーションの復活にすぐさまメイドは毒矢を持って活力の源であるルイーグを狙う。
 しかしアイギスが、サーベルドッグが、それを許さない。

「――ッ!! こ、の……弱者の癖に!」
 活力を取り戻した者たちを蹴散らすため、更に攻撃速度を上昇させるテリトリーメイド。
 隠し持った毒も惜しみなく、暗器も全て持ち出し、なんとしても命を奪い逃亡する為の隙を作ろうと。
 しかし彼女の思惑は成就する事は無い。

「本当の意味で追い詰めたぞ、オブリビオン」
 轟と逆巻く風を纏い、聖剣の魔力を解放させた騎士が一人刹那の隙に肉薄していたのだ。
 キョウは輝くグランネージュを大上段に構え、大きな一振りをオブリビオンに与える。
 それは囮の一撃、されど喰らえば致命傷となる一撃だ。
 分かっていても全ての暗器を使い防御するメイド、しかしキョウは続けて聖剣を振るうのだ。
 隙は……存在しない、キョウの攻撃の隙をアイギスとサーベルドッグが確実に埋めているのだ。
 それだけではない、回の援護射撃にルイーグの癒しも加わりメイドの取る手段全ての未来が封殺されてしまっている。
 完璧な布陣での完璧な戦闘行動により、暗殺者技能を持つメイドは攻撃する事すら出来ないようになってしまうのだ。

「こ、んな……馬鹿な……」
「ここは貴様のいるべき場所ではない、去れ!」
 回の矢が右足に直撃しバランスを崩す、そこにアイギスが大楯でシールドバッシュを決め更にサーベルドッグが自慢の右腕のサーベルにて袈裟に切る。
 ぐらりと身体を傾けたオブリビオンに対し、白光を纏い光る聖剣を心の蔵へと向けて突き刺した。
 キョウの言葉が紡がれると同時に解放される魔力、世界が白に染まり空をも切り裂く光刃が振るわれる。
 聖剣解放――これがグランネージュの芯の力なのだ。

「やったっすか!」
「いや、全てを犠牲に防いだようだよ」
「毒も暗器も全てを犠牲にしてか……だが問題は無い」
 白き閃光の跡には何も存在して居なかった、オブリビオンの姿すらも。
 しかし戦っていた三人の表情は晴れやかでは無い、オブリビオンは持てる力の全てを使い生き延びたのだ。
 そしてこれ幸いにと逃走を図った、それは彼女にとっては屈辱であったが消滅するよりも良い。
 苦渋の決断を刹那に済ませ、逃亡だけに絞ったメイドをほめるべきであろう。
 並みのオブリビオンではそのまま消滅していたのだから。
 しかしルイーグ、回、キョウの三人に焦る兆しは一切無い。
 すでに想定済みであったからだ、勿論ここで決着をつける事が出来るのが最良ではあるが、常に最悪の事態は想定しておくべきだと情報担当の幹部と騎士団団長がいれば当然のように考えつく。
 最も、この逃亡は最悪では無いのだが……。
 ふぅ、とため息をついたのは誰だったか……静寂と小鳥の鳴き声によって戦闘の終わりを感じ取った三人は少しの間身体を休める事にする、自然あふれる場所でゆっくりと。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

エルーゼ・フーシェン
毒は使えないからその点は大丈夫だけど、油断はできないわね。
『ゲンドゥル』を抜いて『トリニティ・エンハンス』で風刃を形成して備えるわ。
相手の攻撃を誘ったりしてこちらに引きつけて、【ダッシュ】や【残像】と【見切り】で回避しながら隙を突いて攻撃するわ。
【ダンス】と連続【二回攻撃】を融合した剣舞で攻める。
矢を撃ってきたら【衝撃波】で弾き飛ばすわ。

うーん、繭なら衣装とかかな?いいものができそうだけど。

※アドリブ、他の猟兵との絡みOK


トリガー・シックス
誰にも伝えず単独で隠密行動を取る。
【地形の利用】と【迷彩】で隠れながら離れた位置から『イケロスMA』に消音に特化させた狙撃銃パーツを組み合わせ、【スナイパー】による【援護射撃】を行う。
『インターセプター』の光学迷彩で姿を消し、身を潜めて素早く移動し、悟られない様にする。

甘味鳥の黄金卵を使ったお菓子にカステラとレシピを残しておく

※アドリブ、他の猟兵との絡みOK


ルナ・ステラ
特産品をどう使うのがよいのでしょうか?
温泉の街なので、お風呂上がりに食べられる冷たい、樹液と林檎を合わせたコンポートや林檎アイスとか?卵もあるなら、パイやケーキも作れますかね?
糸や繭を使って、服や浴衣なども作れるでしょうか?
どんな特産品ができるか楽しみですね♩

さて、オブリビオンですが、足場の枝を成長させて追い詰めましょうか?
わたし自身が追い詰められなくても、動きの妨害にはなるので他の猟兵さんたちの助けにはなるでしょうか?

追い詰めた後は星の魔法でやっつけたいと思います。なるべく攻撃される隙をつくらないように【高速詠唱】でいきましょうか...

全身べちょべちょです...風邪を引く前に倒せるかな?



●追う者と追われる者。
「はぁ……はぁ……こ、こんなバカな事が、絶対に、生きて戻ってくる……ここは、我が領域……なのだから」
 見るも無残な姿に恨みが顕現したかのような暗いオーラを身に纏い、オブリビオンが隠れながら森を行く。
 弱者と見くびっていた存在に完封され、消滅の危機に際していたのだから。
 しかし暗器や魔力を失ったが命はある、死ななければそれで良い、自らの領域を使えば隠れる事等容易。
 故に、万全を期して奴らを狩る。
 見せしめに町人を一人一人殺していくのも良いだろう、そうすれば精神的に優位に立てると自身の内から暗き感情がふつふつと湧き上がってくる。
 あぁ……この溢れる殺意と恨み、黒い感情に支配されたオブリビオンは一息正して復讐を誓う。

「――ッ!?」
 ゆっくりと息をひそめ樹の洞から抜け出るメイド、自らの領域と称しただけにその足取りはスムーズであった。
 影となり、音も無く歩く……追跡者へと意識を向けながらも、あらゆる異常を見逃さない。
 そんなメイドは自らに近づく存在に気づいてしまったのだ。
 そして視線が交差した事も……。

「見つけました! オブリビオン発見です!」
「みたいね、追いついたわよ!」
 上空を飛ぶ青い翼を持つ美女、そして箒に跨る可愛らしい魔女っ子。
 二人は僅かな魔力と木々の揺らぎからオブリビオンを見つけるとすぐさま接近するのだ。
 青い翼を持つキマイラの美女は両手にゲンドゥルと呼ばれる連結可能な二本一組の柄を持ち、魔力の刃を形成する。
 彼女こそキマイラの女戦士、エルーゼ・フーシェン。
 箒に跨った魔女っ子は可愛らしい星と月を連想させる衣装を身に纏い、ふわりと大樹に降り立った。
 ファイアボルトの銘を持つ魔法の箒を杖のように掲げる人間の少女、ルナ・ステラだ。
 二人はエルーゼを前衛に、ルナを後衛として傷だらけのメイドと相対する。
 その様子から油断や慢心を起こしてしまいそうだがエルーゼとルナの二人には存在しない。
 窮鼠猫を嚙む、手負いのオブリビオンの危険さを知っているからだ。

「合わせます! 全力でお願いします!」
「任せて! さぁ、ばっさりと舞うわよ!」
 無言……されどその目は死んではいない、暗く澱んだ光を抱えている。
 そんなテリトリーメイドを前に二人は見に回らずに、一気呵成に攻め立てるのだ。
 まずルナは魔力を解放、メイドの足元の木々を成長させ逃亡を防ぐのだ。
 それに合わせるようにエルーゼは一度大きく翼を羽搏かせると、滑空する様にメイドに迫る。
 地と空からの襲撃に力を振り絞り毒茨の鞭を作り出すオブリビオン、そのまま絡みつこうとする枝を小さく跳躍し躱す。
 更に迫るキマイラの持つ双刃を絡めとるために茨の鞭を振るうのだ。

「見え見えなのよ!」
 迫る毒茨、蛇のようにしなるソレに対しエルーゼは冷静に処理を断行する。
 まずは魔力刃に込めた風の魔力を解放、周囲の風を急激に収束させ見えない刃を作り出す。
 その刃はもともとのゲンドゥルに形成した魔力刃から延長されるように伸び、一度横に振るえば風を孕んだ斬撃を生み出す。
 まさに断ち風、リーチと柔軟さで上を言っていたはずの茨の鞭はエルーゼの風の刃に巻き込まれ細切れになってしまったのだ。

「ちっ、本当に、面倒です……ねっ!」
 オブリビオンは迫るエルーゼに対し、今まで見せていた俊敏な動きでの回避行動を起こせないでいた。
 それでも策は尽きない、斬り飛ばされた茨に力を注ぎ、急速に成長させることでエルーゼを貫く槍としたのだ。
 エルーゼの風の刃の切れ味が良かっただけに、成長する茨槍は数十にも上る、それが一斉にエルーゼを貫こうとしたのだ……回避など出来る訳が無い。

「絶対に、させません!」
 しかしそこにもう一人の猟兵、ルナが居なければの話だ。
 ルナもまた魔力を解放し、大樹に語り掛ける事で堅固な枝を操ったのである。
 茨と同速度で成長し、絡みつく様にしてメイドの茨を抑え込むルナ。
 毒茨もうねりながらエルーゼを目掛け成長する……しかし、枝はその上を行く。
 壁となり、連なり、絡み押さえつけ……ルナの護る意思に応え、毒茨の槍の全てを止めるのだ。

「そんなっ!?」
「ありがと! さ、これで終わりよ!」
 自分を狙う存在が封じられた事でエルーゼは更に勢いづく、風を利用し更に加速――一気にオブリビオンに肉薄し左右の刃を別生き物のように操るのだ。
 下から斜めに、足元を払うように、腕を狙って、勢いよく突き、左右から同時に斬りかかる。
 まさに嵐のような斬撃にメイドは最初は食い下がるものの、すぐさま防御の身に専念するのだ。

「わたしもいきます! お星さんたちわたしに力を! 悪しきものに降り注げ! シューティングスター☆」
 エルーゼの斬撃の嵐に合わせるように後衛のルナは詠唱を始める、唱えるは流星を呼び出す魔法。
 防御を固め動けないでいるメイドは対応する事も出来ず、ルナの詠唱は完了する。
 呼び出されたのは無数の流星、失敗すれば金盥の雨が降るが今回は成功したのである。

「いっけー!!」
「吹き飛びなさい!!」
 シューティグスターに合わせてエルーゼはメイドの懐に潜り込み、勢いよく蹴り上げる!
 鳩尾に深々と美脚が突き刺さり、運動エネルギーを解放!
 更に風の魔力も追撃で解放する事で初速にて音を置き去りする速度でオブリビオンを上空に吹き飛ばしたのだ。
 その位置にはルナの召喚した流星が降り注ぎ、連鎖的に魔力的な爆発を繰り返す!
 爆発の瞬間、メイドはついに最後にして最大のチャンスを活かすべく持つべき魔力を解き放つ!
 その作戦とは最後まで残しておいた毒全て解放、更に自らの毒茨と化し巨大な果実樹を朽ちさせようとしたのだ。
 そうして自重を支えきれなくなった果実樹が崩落し、そこに巻き込む形で猟兵達を打ち破る……まさに自爆である。
 最後の最後に復讐の機会がやって来た……自らが滅ぼうとも成し遂げられる願望に再び瞳に暗い炎が宿る……。
 あぁ、笑って死ぬのも良い物だ……そう、胸中に浮かぶオブリビオンの感情は乾いた銃声によって霧散する。

「な、あ……なんで……バレ、て……わた……の、りょう……いき……が……」
「……」
 その銃弾は全くの知覚の外から到来する死神の鎌であった。
 放ったのは影に潜み無音にて待つ……決定的な隙が出来るまで待った狙撃手。
 剣と狼の紋章の入った漆黒のコートを身に纏い、長距離狙撃に適した形状に変化させた“イケロスMA”を構える歴戦の傭兵。
 寡黙なその男の名はトリガー・シックス、肉体、精神ともに改造強化を受けてしまった死の代行者。
 巨大な樹に寄りかかるようにして狙撃の衝撃を逃したトリガーはゆっくりと身を起こす、そうして遠目から成果を確認。
 空中で魔力を解放しようとしていたオブリビオンの額を打ち抜き、消滅させた事を確認し“インターセプター”の電子・光学迷彩を解除するのだ。

「……任務完了だ」
 オブリビオンを一目見た時から引っかかっていた、追い詰めれば追い詰める程に規模の大きな事件を引き起こすだろうと。
 最初に麻痺毒で一般人を追い払ったのも慈悲に見せかけたものだろうとトリガーは推測した、自らの存在を隠しつつも主張する、弱者に対する生殺与奪を全て握っているという全能感……それを持っているのだと。
 そして自分を追い込んだ物が現れた時、どう暴発するかも。
 表層は冷静で丁寧な従者然としていたが、やはり最後に何か企んでいたのだろう。
 膨れ上がる魔力と毒の気配にすぐさまトリガーは反応、的確にスナイピングを決めたのだ。

「終わりましたね!」
「え、ええ……無事終わったわね」
 トリガーから遠く離れた戦場でルナとエルーゼがお互いに抱き合い喜んでいる。
 その様子を確認すると黒い外套を羽織り直し、トリガーは影へと消えていくのだ。
 かくして大樹に居座った脅威は排除された、ロレースに戻り報告すれば任務も終わりだ。
 大樹はそれを祝福するかのように新たな実を宿らせる、大地の祝福があらんことを……と聖句を紡ぐように。



●エピローグ~特産品はこうして生まれる~
 オブリビオンを撃退した猟兵達、転移し帰還する前に少しだけ残る者たちが居た。
 巨大な果実樹を踏破する最中に様々な物を見つけた猟兵達はロレースの発展に悩む町長、ひいては町の皆に自分達の知識やアイデアを教える事で、ロレースに相応しい物を作り出すために!

●おおきなリンゴの使い方
「完成っす!」
 ルイーグは満面の笑顔を浮かべ、ドヤ顔で歓喜の声をあげる。
 灰色の髪をふわりと揺らした彼の前にあるの大きな大きな林檎である。
 しかしただの林檎ではない、猟兵達が巨大樹で見つけたネバネバ樹液……それを特殊加工する事で樹脂にしたものだ。
 それを巨大林檎でとった型を使い、林檎そっくりに固めたのである。
 そして林檎色に着色、中身は空っぽになっている関係で見た目のわりに軽く、それなりの強度を持っている林檎の入れ物が完成したのだ!

「色々とお土産なんかの物を入れれるっすよ! 家にあるときっとテンションあがるっす!」
「おおー! これは一目でリンゴと分かりますな、そして中に色々詰めれる……我が町の物であると一目でわかりますな!」
 ルイーグの隣にいた町長も高速で頷きながら出来上がった林檎の巨大容器を見て喜んでいる。
 なお一番この巨大林檎を気に入ったのは子供たちだ、大きな林檎の中に入ったりとテンションあげあげなのである!
 良い物を作ったとルイーグ渾身の一作はこれから林檎と温泉の町のお土産を入れる物として有名になるだろう。

●甘味の魔力
 一方こちらは町の女性陣が囲むように集まった食事処、町一番の大きなキッチンのあるお店だ。
 そこで披露されるのはとても貴重でとても美味しい魔性の味……特産品となりえる甘味の発表会。

「うむ、まずはワタシからだな」
 ぴょんと背丈の低さをカバーする椅子にのり、視線の集まるテーブルに置かれたモノ。
 黄金色の卵の殻を模した樹脂の器はシルクの布で飾られており、王宮のコースに登場しそうである。
 そんな高級感たっぷりの器に顕現するのは、極上の柔らかさを持つ黄金卵によりつくられたゴールデンプリン。
 濃い黄色に絡めるアップルシロップで作られたソースが視覚的に官能を与え、そこに巨大林檎を使用した飾り切りが優美にトッピングされている。
 その香りは濃厚にして爽やかな林檎の香り、鼻腔を擽る甘い香りだ。
 作り上げたのはケットシーのシェフ、たま。
 彼自慢の一品に仲間と女性陣は歓声をあげるのだ。

「美味しそうだねー☆ それじゃボクのはこれだよ♪」
 ふわりと羽を静かに羽搏かせ一回転、小さな妖精の姫、ティエルがテーブルにコトンと置いたのは濃厚なシロップに漬けられた林檎だ。
 アップルシロップにさっぱりと香りのよい林檎の果実をカットしたものを漬けたシンプルなもの、しかし瓶の蓋を開けた瞬間……人々は林檎の果樹園へと転移した幻想を抱いてしまう。
 それ程に甘い、甘い、あま~い林檎の香りが場を支配したのだ。
 しかも瓶詰なので保存性もそれなりに保たれる、このシロップ漬けを他の料理に合わせても抜群に合うだろう。
 くどくない、けれども濃厚なまさに林檎が特産品の町に相応しい一品をティエルは作り出したのだ。

「とってもアップルな感じです! ふふふ、それじゃ私のスイーツをどうぞ!」
 林檎が大好きな羅刹の少女、シャルは大きなお皿に二つのスイーツを乗せてテーブルに。
 一つは濃い黄金色のクッキーだ、黄金卵を使用して作られたクッキーはしっとり風味。
 焼きたてのクッキーはシロップを使っているのがはっきりと分かるだろう、香ばしい焼き林檎の香りがするのだから。
 勿論ハードタイプのクッキーもあり、食感の違いから派閥が生まれそうな魔性のクッキー。
 もう一つはパウンドケーキだ、こちらも黄金卵とアップルシロップを使用している。
 しっとり、しかしベタつかないパウンドケーキにはナッツ類が生地に混ぜられている。
 その風味と食感は老若男女問わず魅了してしまうだろう。
 クッキーもパウンドケーキも摘まみやすく食べやすい、日常的なおやつにもなる一品達だ。

「皆さんどれも美味しそうですね、では私からはこちらを」
 このお店のオーナーシェフがお皿に乗せて出したのは二種類のお菓子。
 黄金卵を使っているのがはっきりと分かるその二つのスイーツ。
 一つはふわふわしっとりとした生地が自慢の焼き菓子、カステラだ。
 焦げた茶色の部分かたふわりと卵と水あめの甘い香りが漂ってくる。
 もう一品は小さな一口大のお菓子……マカロンである。
 黄金卵の卵白を用い作られた一品はその独特で可愛らしい見た目から女性達の視線を釘付けにする。
 挟まれたのはアップルシロップを用いて作られたクリーム、ふわふわマカロンに甘い林檎の香りは相性抜群であると見ただけで分かるだろう。
 また固く焼き上げたクッキーにも似たマカロンも用意されている、こちらはサクリとした軽い食感が魅力的だ。
 そしてこれらカステラとマカロンを考えたのはシェフではない。

「ある冒険者さんからレシピを頂いたのです」
 そう語るシェフに知っている人はトリガーを思い出すだろう。
 自分が作るわけでは無いが、きちんと町の人に特産品となるレシピを渡していたのだ。
 そして発表会は試食会に、それぞれが作り上げたスイーツに舌鼓を打ち、ロレースの新しい名物の誕生を祝い合ったのだ。

●滑らかな生地の行方は
「やっぱり手触り良いですね~」
「ふむ、これだけ感触が心地よいと何にでも使えそうだね」
 シャルと回は樹上で見つけた繭、そして蜘蛛の糸から織物を作り上げた。
 その手触りはまさにシルク、肌を引っかかることなく優しく擽るような感触は高級品と言って良いだろう。
 特に独特の光沢をもった見た目は貴族階級の人間が好みそうだと分かる。
 そんな織物を贅沢に使えるのも大きな繭を発見した猟兵達のおかげなのだ。

「どう? 似合うかしら?」
「少し恥ずかしいですけど、どうですか?」
 こちらは織物を使った衣服を着たエルーゼとルナ。
 エルーゼは生地を贅沢に使ったナイトガウンに似たものを着ている。
 シルク独特の光沢とエルーゼの体形が相まって非常にセクシーな印象を与えるだろう。
 ルナはシャルに手伝って貰い浴衣を作成、着付けもしてもらい魔女っ子はシルク浴衣のモデルとなっている。
 こちらも絹独特の光沢と浴衣のデザインがオリエンタルな雰囲気を演出、見る物を引き付ける出来だ。

「似合ってますよ! 私も和服を……あ、でもドレスにしても?」
「うむ、どれも技術が必要になるが良い特産品になるね、それにしてもシルクの手触り……下着にしても良さそうだな」
 エルーゼとルナを見たシャルと回はそれぞれに感想を返し、さらなる絹や糸の活用方法を模索する。
 そして二人も絹織物を使い色々な衣服を作り上げ着飾っていく、特にドレスと下着は絹の質感が際立つと好評であった。
 わいわいと様々な意見を出し合う事でデザインは豊富に生まれてくる。
 これからロレースではお風呂上りに絹の浴衣やガウンが使われるのかもしれない。

●お風呂上りにはこれ!
「大人気ですね閣下!」
「うむ、やはり風呂上りには冷たい飲み物が喜ばれるな」
「わたしのアイスクリームも好評ですよ!」
 お風呂上りに合わせた特産品としてキョウとルナが考案したのがミルクセーキと林檎のアイスクリームだ。
 キョウは甘い樹液……アップルシロップと黄金卵を合わせミルクセーキを考案、お風呂上りに好まれるよう冷やし、甘すぎないように調整した一品だ。
 氷の魔術で冷やされたミルクセーキは飲んだ瞬間に舌の上に林檎の優しい香りと甘味、その後に濃厚な卵とミルクの甘味が広がってくる。
 ミルクセーキの飲み心地も好評なようで、老若男女係わらず温泉に入った後に腰に手を当て飲む姿が目立つ。
 ルナの考案したお風呂上り用デザートはアップルシロップと林檎の果肉を贅沢に使ったアップルアイスである。
 火照った身体を心地よく冷やしてくれるデザートは特に子供と女性に人気のようだ、
 キンキンに冷えたアイスをスプーンで掬い、口に入れる……さらりと舌の上で溶け、林檎の香りと甘味が冷たさと一緒にふわりと広がる。
 レストランのデザートとしても通用するアイスクリームであるが、お風呂上りに食べる事で更に美味しく感じるのだ。
 やはり熱を冷ます心地よさが人気の秘訣らしい、他にもパイやケーキもあるが一番人気なのが林檎アイスである。
 これを温泉の後に食べるためだけに、温泉に入る人も居る位なのだから。

「これで温泉も更に賑わうだろう」
「ふふ、わたしもお風呂上りに食べるつもりですよ♪」
 キョウとルナはお風呂上りに笑顔を浮かべる皆の反応を見て温かな気持ちを湧き上がらせるのであった。
 まさに温泉の町にあった完璧な一品にこれからのロレースの発展を確信するのであった。

●千里の道も一歩から
「いや~すごいよコレは!!」
「ふふ、ありがとうございますおじさん」
 豪快に笑うひげを蓄えた人間の商人さん、彼と笑顔で話すのは人形のように可憐な容姿をしているレイチェルだ。
 彼女は巨大樹で発見された粘つく樹液を特殊加工し、天然ゴムを作り出す。
 そのゴムを使って作った物こそ、この世界における移動手段の一つ馬車を強化するためのタイヤだ。
 ゴムタイヤはそのクッション性と適度な硬度が馬車の速度の上昇と安定化に成功したのだ。
 更に馬車の乗り心地や強度、車輪の回転の安定と向上、様々な改造を施す。
 特にベアリングとサスペンションは馬車の利用者を増大させるであろう発明である。
 これによりロレースで作られた馬車は圧倒的な性能を誇るようになる、これによって定期便も走りやすくなり、温泉や猟兵が作り上げた特産品を求めてお客さんが増えることになった。

「ふぅ、それじゃ続き頑張らないと」
 馬車の改造で終わらないのがレイチェルだ、自慢の念動力を使いみちの舗装を開始したのである。
 更に別の町に続く道が整備された結果、今までの半分の行程でロレースに辿り着けるようになったのだ。
 道が整備された結果、行商人たちも立ち寄る事が増え、新しい特産品が商機を生み出す事に。
 人と物が更にスムーズに流れるようになり、ロレースは更に人の集まる町となったのだ。
 開拓村であった過去はどこにやら、温泉と果実樹によって賑わう立派な町になったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月22日


挿絵イラスト