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何者だ、名を名乗れ!

#ヒーローズアース

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#ヒーローズアース


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●怪盗ソルシェイド、白昼の犯行予告! 迎え撃つは少女探偵ルナブライト!
「……だってさ」
 猟兵たちに紙面を示し、京奈院・伏籠が肩をすくめる。センセーショナルな見出しが躍るのは、どうやらヒーローズアースで流通する新聞紙のようだ。
 記事によると、怪盗ソルシェイドを称するヴィランからとある博物館に予告状が送り付けられ、警備のために探偵ヒーロー・ルナブライトが招集された、とのことだ。
 この二人、今までも何度か対決を繰り広げたことのある、いわばライバル同士であり今回の事件も一般市民から注目されているのだという。
 だが、グリモア猟兵がこの記事をピックアップしたということは……。

「そう、この事件にはオブリビオンが関わってくる」
 伏籠が予知した事件の流れはこうだ。
 白昼堂々、怪盗は見事犯行を成功させる。彼はひとつの宝石を盗み出し現場を脱出。
 しかし、ヒーローもさるもの。ヴィランの逃走経路を看破し、彼の追跡を開始する。
 ビル街のバックストリートで交錯する追跡劇。
 ついにヒーローがヴィランに追いつこうとする、まさにその瞬間。

「オブリビオンが現れる。みんなにはこのタイミングで事件に介入してもらいたい」
 まず出現するのはジャスティストルーパーと呼ばれる機械兵の集団だ。
 ルナブライト単独では多勢に無勢、抵抗敵わず彼女は殺害されてしまうだろう。
 彼女と協力してジャスティストルーパーたちを撃破するのが最初の目標となる。

「ヒーローだけあってルナブライトもそこそこの腕前みたいだね。さすがに猟兵には及ばないみたいだけど、足手まといになるってことはないはずだよ」
 無事にジャスティストルーパーを撃破すれば、ルナブライトはソルシェイドの追跡を再開するだろう。
 詳細は不明だが、伏籠のグリモアは『追跡は成功する』と未来を描いている。
 だが同時に、その未来にはオブリビオンの影もまた映し出されているのだ。

「次のオブリビオンが出現するのも、彼女がヴィランに接触するタイミングだ」
 出現するオブリビオンは単独、しかし強大な力を持った個体と予知されている。
 このオブリビオンを撃破するのが最終目的となる。……のだが。

「どうもこのオブリビオン、妙な性質があるみたいなんだよね」
 その性質とは、ズバリ『ヒーローっぽい相手を優先して狙う』こと。
 何を以て『ヒーローっぽい』とするかは人それぞれなのだが、兎にも角にもそういう行動指針を持ってオブリビオンは動いているらしい。

「というわけで、ヤツが現れたら『名乗り』を上げて欲しいんだ」

 名乗り。ヒーロー的な、いわゆる前口上。
 これが上手く決まればオブリビオンは猟兵たちに狙いを定めるはずだ。
 猟兵たちがオブリビオンを引き受けられれば、周囲の被害を抑えられるうえに、ルナブライトもソルシェイドの確保に専念できるだろう。

「よりヒーローらしく。より注目を集めるように。……改めて考えると難しいかも?」
 顎に手を当てて小首を傾げる伏籠。
 ここはひとつ格好いいのを考えておいてね。そう声を掛けて彼は猟兵たちを送り出すのであった。


灰色梟
 はじめまして、こんにちは。灰色梟です。
 今回は第1章・第3章で戦闘、第2章で名乗りをキメる物語になります。
 名乗り以外にも、全編通してヒーローらしいアクションを行うと最終戦でスムーズに戦える形になります。

 なお、登場する怪盗ヴィランについては、探偵ヒーローが対応してくれます。
 彼らについて猟兵側で対処する必要はありませんが、協力したりちょっかいを出してみたりすることももちろん可能です。

 それでは、みなさんのプレイングをお待ちしています。ヒーローらしく、格好良くいきましょう。

●『探偵』ルナブライト
 ティーンエイジャーの少女。看破・追跡に長けた能力を持つ。
 武器は当たった相手を拘束するワイヤーガン。

●『怪盗』ソルシェイド
 年齢不詳の男。隠密・逃走に長けた能力を持つ。
 武器は持たない主義。
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第1章 集団戦 『ジャスティストルーパー』

POW   :    フォールン・ジャスティス
全身を【機械部分から放出されるエネルギー】で覆い、自身の【戦闘を通じて収集した敵のデータ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    イミテーション・ラッシュ
【ジャスティス・ワンが得意とした拳の連打】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    マシン・ヴェンジャンス
全身を【機械装甲】で覆い、自身が敵から受けた【物理的な損傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:もりさわともひろ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「待ちなさーい!」
 大通りの喧騒からビルひとつ隔てた裏通り。人影もまばらな日中の街を二つの影が走り抜けていく。
 影のひとつは鹿撃ち帽を被った少女。栗色の髪を弾ませて前を行く男に追いすがっている。

「待てと言われて待つ泥棒はいないぜ、お嬢ちゃん?」
 少女を揶揄うように飄々と応える男。フードを目深にかぶったその素顔は窺い知れないが、声の調子からはこちらも若年であるように感じられる。
 探偵・ルナブライトと怪盗・ソルシェイド。ヒーローとヴィランは絶賛追いかけっこの真っ最中であった。

「こ、子ども扱いしないでください!」
 頬を赤く染め、探偵が路地を駆ける。彼我の距離は縮むようで、なかなか縮まない。
 だが、一進一退の追跡劇は、想定外の存在によって均衡を崩されることとなる。

「……ヒーロー……!」
 ゆらり、と。不意に曲がり角から現れた人影。異形の右腕を持つ怪人が、呻くように怨嗟の声を上げる。
 ひとりではない。かつての英雄を模した機械兵が、そこかしこの物陰から裏通りに姿を現し始めた。

「な、なにごとですか!?」
「……ご同輩、って感じじゃなさそうか」
 異様な雰囲気に思わず足を止める二人。
 いつの間にか、ヒーローを取り囲むようにオブリビオンが立ちはだかっていた。
 彼らの矛先は揃ってルナブライトに向けられている。
 身構えるルナブライト。このままでは多勢に無勢だが……。
アーサー・ツヴァイク
※協力アドリブ大歓迎
まだ変身はしないでおくぜ

子供を狙う怪人…断じて許さん!

ということで大型バイク:ライドランに【騎乗】して戦場に乱入。ヒーローと言えばバイクアクションだ!
乱入の時に2,3体ぶっ飛ばす予定だが、まあ量産怪人はバイクにぶっ飛ばされるのがお約束だ。我慢しろよ!

おっと、ヒーローズアースじゃ空中戦の方がヒーローっぽいか? 向こうも空飛べるらしいし、今日は合わせてやるか。…マッハ3でな!
向こうが空中戦に移行しだしたら【フルスピード・スカイドライブ】を発動してこっちも空を飛んでバトル続行だ!

…何、怪人じゃないって? …元がヒーローだろうがヴィランだろうが、オブリビオンになったら怪人だ、うん


メルノ・ネッケル
捕物の邪魔とは野暮な連中や、とっととお帰り願うで!

敵の数は多い、一気にカタをつけたい所やけど……相手は飛翔能力持ち、一斉に飛び回られたら面倒や。

……ここは、先に仕掛けて少しでも数を減らす。
虚を突く為にも【先制攻撃】といこか!

キツネビサイクル、敵陣の真ん中に突っ込む軌道でアクセル全開!

さあて、こっからが【騎乗】テクの見せ所。ドリフトかけながら敵陣に突っ込んで、バイクを足場にジャンプ!

「銃弾熱線バイク便、受け取り拒否はNGや!」
『狐の嫁入り』、奴らの上から叩き込む!!

後はサングラスを上げ直しながら、
「ルナブライト、加勢に来たで!大捕物の邪魔はさせへん、奴らの対処は任しとき!」と宣言させてもらおか!


田抜・ユウナ
「野暮なマネはしっこなしよ」
屋上から声をかけて飛び降り、左右の壁の雨樋やら窓枠、その他僅かな突起を足場代わりに蹴りながら路地裏に着地。
懐から護符を何枚も取り出して、敵群の中を駆け抜けながらお札を張り付けていき、頃合いを見計らって印を結び、
「禁!」
命を喰らう妖刀を封じるための護符よ、原理は違えど生命力吸収の異能には良く効くとみた。

「こいつらは私たちに任せて、あんたたちはデートを続けてちょうだい」
封印術で足止めしつつ、揶揄っぽく笑ってヒーローを先へ向かわせる

※協力、アドリブ等 歓迎



 最初に気づいたのはソルシェイドだった。
 思いがけない怪人たちの登場にこの場を離れるべきか、逡巡とともに周囲を見渡した彼の視界に映った光景。
 季節は初春、街路には時折冷たい風さえ吹き抜けている。だというのに、裏通りに伸びる道路の彼方が夏場の陽炎が如く揺らめいているのだ。
 ……熱風を纏い、何かが近づいてきている。

「おいおい、今日は千客万来だな」
 怪盗がフードの下で冷や汗を流す。
 次いで響き渡る、轟々と炎が燃えるような爆音。
 赤く軌跡を描いて戦場に近づく二つの機影。
 それはあまりにも速く、ゆえに、オブリビオンたちが音に気付いて視線を向けるのも遅きに失した。

「そこまでだ、オブリビオン!」
 歪む空気を振り切り疾駆する大型バイク。
 赤いマフラーをたなびかせ、アーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)が気炎を上げる。
 彼が操るバイクは速度を落とすことなく、オブリビオンの包囲網の一角に突撃した。
 竜頭を模した鉄のボディがジャスティストルーパーのひとりに突き刺さり、勢いのままに弾き飛ばす。

「ゴガッァ!」
「これもお約束だ、我慢しろよ!」
 唸るエンジン。白煙とともにタイヤを滑らせ、鋭角のアクセルターンを繰り出すアーサー。遠心力を伴って振り回される車体が周囲のオブリビオンを豪快に薙ぎ払った。
 大重量の暴力により幾人ものオブリビオンが吹き飛ばされ、包囲に綻びが生じる。

「さあて、ここはうちのテクの見せ所や!」
 その綻びを見逃さず、もうひとつの赤い機影が敵集団の只中に飛び込んだ。
 メルノ・ネッケル(火器狐・f09332)の呪法二輪・キツネビサイクルがアクセル全開でジャスティストルーパーの群れを切り裂く。
 彼女はサングラスの奥の赤い瞳を光らせ、狐火を動力とするバイクを自在に操って魅せる。

「貴様らは……、猟兵か!」
「えっ? えっ?」
 目を白黒させるルナブライトを器用に避けつつ、オブリビオンを翻弄する二台のバイク。
 怪人の怒声もなんのその。速度と重量を活かして二人は敵の戦力を削り取っていく。

「くっ、だが、空中までは手が届くまい!」
 ジャスティストルーパーに蓄積された戦闘経験。それが地上戦を不利と判断したのか、複数のオブリビオンが大地を蹴る。
 機械の肉体からエネルギーを発し、空中に飛び立たんとする怪人たち。
 ……しかし、それさえも猟兵たちにとっては想定内の行動であった。

「そうはさせへん!」
 地上に残ったオブリビオンを、ひとつ、ふたつ、とドリフトしながら巻き込み、その反動を利用して、メルノがバイクを足場に天高く身を躍らせた。
 飛び上がろうとする怪人たちさえ追い越し、彼らの頭上で彼女は銃を構える。

「捕物の邪魔とは野暮な連中や、とっととお帰り願うで!」
「そうそう、野暮なマネはしっこなしよ」
 同時に、通り沿いの建物の屋上からゆらりと姿を現す猟兵が一人。
 結んだ黒髪を風に流し、田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)が勢いよくフェンスを飛び越え、屋上から飛び降りる。
 彼女は懐から護符を取り出して両手に構え、雨樋に足を掛けてメルノと高度を合わせる。
 熾火を宿した二人の視線が絡む、一瞬のアイコンタクト。
 次の瞬間、示し合わせたかのように二人が動き出した。

「まずはそっちからよろしくね」
「まかしとき! 銃弾熱線バイク便、受け取り拒否はNGや!」
 足場からジャンプして高度を上げるユウナ。
 そのシルエットを背に、メルノが二丁拳銃のトリガーを引き絞った。
 熱線銃とリボルバー、それぞれから放たれた破壊の力がまさしくスコールの如く戦場に降り注ぐ。
 頭上から撃ち込まれる攻撃は、今まさに飛び上がろうとするオブリビオンに対する迎撃となった。

「ガガッ、おのれぇ!」
 滅多矢鱈に撃ち据えられたジャスティストルーパーたちがバランスを崩しながらも空中で吠える。
「装甲展開! この程度の損傷、貴様の生命力で……!」
 彼らの起動音声とともに、ダメージを受けた肉体を新たな装甲が覆っていく。
 復讐のユーベルコードを纏い、生命力を奪うべくメルノに掴みかかろうとするオブリビオン。
 空中射撃の反動による硬直。メルノもすぐには回避行動に移れない。
 ……が、しかし。

「私のこと、忘れてない?」
 太陽の光を背に、ユウナがするりとメルノの腕を取り位置を入れ替えた。
 彼女はそのままひらりと身を翻し、腕を伸ばすジャスティストルーパーの肩を足場に着地すると、手持ちの護符をペタリとオブリビオンの背中に張り付ける。

(原理は違えど生命力吸収の異能。妖刀封じの護符は良く効くとみた)
 ユウナの眼下、高度を上げようとするオブリビオンはまだ多数存在する。
 目を細めて狙いを絞るユウナ。足元のジャスティストルーパーが振るった剛腕をジャンプで躱し、次のターゲットへと飛び移る。
 跳んで、避けて、護符を貼って。
 さながらアスレチックのように次々と怪人に護符を仕込んでいく彼女。だんだんと地上に近い個体へと飛び移っていき、ついには地上へと足を着ける。
 だが、今まで貼り付けてきた護符はユウナの『抜けぬ妖刀』を抑える呪具でもある。多くを消費すれば、その分彼女の身体を妖力が蝕んでいく。
 事実、地上に降り立ったユウナの顔には隠し切れない疲労が浮かんでいた。しかし、彼女はそれを深呼吸ひとつで抑え込み、封縛の印を手元に結び……。

「禁!」
 鈴のように、凛とした声が響いた。
「な、ぐぅ、き、貴様、何を……!」
 見上げれば護符を貼られた怪人が、空中でもがくように苦しむ様が見て取れた。飛行のユーベルコードをも封じられ墜落していく個体さえもいる。
 額に浮かぶ汗を拭うユウナ。その背後でメルノが綺麗に着地を決める。
 ――ナイスワーク。赤目の二人は拳をこつんとぶつけ合った。

「被害は甚大か。だが、まだまだ……!」
 舞台は再び空中。射撃や護符を回避した、あるいは致命傷を受けなかった怪人たちが地上を睨みつけていた。
(態勢さえ立て直してしまえば、我らには高速の飛翔能力がある。先ほどのような射撃や接触攻撃を回避することなど容易い。なにより、こちらにはまだまだ数の利がある)
 ……そんな怪人の思惑は、再び鳴り響いた轟音により打ち崩されることとなる。

「子供を狙う怪人……、断じて許さん!」
 バイクに跨り、アーサーが天を睨む。
 どこからか「子供扱いしないでください!」という声が聞こえてくる気がしたが、それはそれ。
 握りこんだアクセルを全開に。唸るエンジンが燃え盛り蒸気を噴き上げる。
 速度は緩めず、目指すは上空。選択するコードは。

【Select…FLYING ACTION!!】

「行くぜ、ライドラン! どこまでも飛んで行くぜえええ!」
 ウィリーからのジャンプ。建造物の側面にタイヤを接地させ、そのまま壁を『駆け上がる』
 全力を出したバイクから昇る蒸気と共に、やがてはその蒸気さえ身に纏い……。
 アーサーは、空に飛び出した!

「馬鹿な! そのバイクの予測スペックで飛翔などと!」
「飛べるほうがヒーローっぽいだろ?」
 驚愕するオブリビオンに不敵に笑って見せるアーサー。ライドランの竜頭が太陽の光に鈍く輝く。

「覚悟しろ、怪人!」
「ぐっ、我らを怪人と呼ぶか……!」
 手始めとばかりに近場のジャスティストルーパーに襲い掛かるアーサー。
 オブリビオンの飛翔速度も決して遅くない。それでいてなお、直進速度であれば、ライドオンが上回る。
 そのうえ、怪人たちにはメルノとユウナによるダメージが残っている。縦横無尽に駆け回る大型バイクは、次々と怪人を叩き落としていった。

「……元がヒーローだろうがヴィランだろうが、オブリビオンになったら怪人だ」



「あ、ありがとうございます! ……ですが、あなたたちは?」
 まさに嵐の如く。瞬く間にオブリビオンを蹴散らし始めた猟兵たちにルナブライトが目を丸くしながら問いかける。
 彼女も隙をついて拘束銃を怪人に撃ち込んでいるが、撃破ペースは猟兵たちが圧倒的に上回っている。
 探偵のサガか、彼女も最低限の警戒を残しているが……。

「ルナブライト、加勢に来たで!大捕物の邪魔はさせへん、奴らの対処は任しとき!」
 メルノがサングラスを上げて快活に応える。
 そういうこと。とユウナも封印術の手は緩めずに微笑みかけた。 

「こいつらは私たちに任せて、あんたたちはデートを続けてちょうだい」
「デデデ、デートとかそういうわけじゃ! ……あれ?」
 思わず顔を上気させたルナブライトが視線を向けてみれば、そこに見えるのは小さくなりつつあるソルシェイドの影。
 怪盗はいつの間にやら戦場から離脱を始めていたようだ。

「その調子なら大丈夫そうだろ。それじゃあな、お嬢ちゃん!」
「ま、待ちなさ……くっ!」
 遠ざかる影。咄嗟に追おうとするルナブライトだが、その前方に再びオブリビオンが立ちはだかる。

 どうやら、追跡を再開するにはまだまだ障害が残っているようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ショコ・ライラ
とーう
颯爽と(※気の抜ける声で)登場
飛び込みざまに《Jazzy Draw》で敵を攻撃
ルナブライトさんを助ける

ふふふ、大丈夫?私達は猟兵さ
そして私は、この世界のヒーローでもある
…だから、このジャスティス・ワンを真似した機械兵は個人的にも不快でね…

義によって、あと個人的な気分によって助太刀いたーす


敵の攻撃を【フェイント】交えて【見切り】
【残像】を伴った回避後、即座に【カウンター】で《Jazzy Draw》

優雅なまでに素早く
お前の攻撃など効かないぞとばかりに
後の先スタイルで戦う

ルナブライトさん、ソルシェイド
ヒーローなら、怪盗なら…
美学、というものを理解してくれるっしょ?
ふふふ

(アドリブ・絡み大歓迎)


白鳥・深菜
「――宿すは<氷>の<落雷>、放つは機を凍らす一閃の衝撃!」

そんな感じで、まずは挨拶代わりの
『機械を凍らせ(フリーズす)るほどの高電圧』を
災厄を宿した細剣をオブリビオンにプレゼント。

狙った通りに有効そうなら【なぎ払い】や【範囲攻撃】で複数狙いを、
通りが悪そうなら【気絶攻撃】の【カウンター】で単体を確実に狙っていくわ。

そして、隣のヒーローやヴィランには、まずは軽く一言。

「私?
まあ、別の世界から生真面目にオブリビオンを狩りに来た、猟兵って奴よ。
正義の味方ってわけでもないけど、オブリビオンが相手なら任せておきなさい」


千栄院・奏
さて困った。ヒーローなつもりはあるけど、ヒーローらしいつもりはないからね。

ま、今は目の前のことに集中しようか。ひとまずは私らしくやらせてもらうよ。

ヒーロー『スプラッター』参上、ばらばらになりたい者から来るといい。

本来であれば【指揮者たる『スプラッター』】で呼び出した複製型丸鋸飛刃を彼女たちの周囲に飛び回らせて守りたいところだけど……彼女もヒーロー、守られるだけじゃないだろうし、『ソルシェイド』が逃走できなくなってしまう、それはちょっと野暮かな。

というわけで、複製型丸鋸飛刃160、本体が10、それに両手の鎖鋸剣、すべてを攻撃に回させてもらうよ。生命力吸収なんてする前に切り刻んでしまおう。



 いったいどこに潜んでいたのか。
 未だにぞろぞろと現れ続けるジャスティストルーパーたち。彼らの作る『怪人の壁』がルナブライトの行く手を阻む。

「まだこんなに……! どうして邪魔をするんですか!?」
 少女の手に握られたワイヤーガン。ヴィラン相手にも十分通用する武器ではあるが、やはり基本は単体への捕縛用。多人数を相手にするのには心許ない。
 焦りの表情を浮かべて問うた彼女に、意外にも怪人は答えを返す。

「邪魔? そうではない。我らの目的は、最初から貴様。すなわちヒーローにある」
「我らの創造主はヒーローに敗れた」
「そのヒーローを模して生まれたのが我々」
「ゆえにヒーローを超越し、抹殺したときこそ、我らの存在意義が確立するのだ!」
 同じ声、同じ表情で別々の怪人が言葉を紡いでいく、異様な光景。
 それでも少女は怯まない。彼らの言葉を耳にして、その頭脳に閃きが走る。

「ヒーローを模して? まさか、その顔は、ヒーロー名鑑で見た……!」
「貴様もまたヒーロー! 我らの手により抹殺する!」
 オブリビオンの姿かたちが記憶の糸に触れ、目を見開くルナブライト。
 一瞬だけ足が止まった彼女に咆哮するジャスティストルーパーが飛び掛かる。

「くっ! しまった!」
 不意の攻撃。ワイヤーガンで対処できたのは一体のみ。
 残りの怪人が、かつてのヒーローが得手とした豪腕を振りかざし、彼女に殴りかかる、まさにその寸前。

「とーう」

 どこか気の抜ける声とともにショコ・ライラ(そこにちょこんとショコライラ・f17060)が横合いから怪人の集団に躍りかかった。
 胸元の開いたヒーロー・コスチュームのガンベルトから引き抜くのは一丁のリボルバー。
 外套を翻し、飛び込みざまに射線を調整。引き金を引いて放たれたのは、華奢な銃身に似つかない、ビームキャノンの一撃だ。高出力の光線がオブリビオンの集団に風穴を空ける。

 ショコの強襲。それと同時にルナブライトの眼前へ丸鋸型の飛刃が飛翔する。近づくものを切り裂く回転鋸が、ルナブライトに手を伸ばす怪人の腕を切り裂いた。
 危険な複製型丸鋸飛刃を操るのは千栄院・奏(『スプラッター』・f16527)である。

「さて困った。ヒーローなつもりはあるけど、ヒーローらしいつもりはないからね」
 君たちの目にはどう映っているかな? と、オブリビオン相手にも冷静に問いかけつつ、奏は眼鏡を整える。
 落ち着いた佇まいに反して、両の手のチェーンソー剣はいつでも力を発揮できるように唸りを上げている。

 そしてもうひとり。ショコと奏の作った動揺を逃さず、白鳥・深菜(知る人ぞ知るエレファン芸人・f04881)が魔術を練る。
 敵は機械化したヴィラン。ならば、今選ぶべき魔術はなにか。数多の選択肢の中から、彼女は『属性』と『現象』を脳裏に掬いあげる。
 そうして構成した魔術を、右手に引き抜いた細剣に注ぎ込む。準備完了。鳴動する魔力に、背中の白翼が僅かに震える。

「――宿すは<氷>の<落雷>、放つは機を凍らす一閃の衝撃!」
 轟く雷鳴。それは、ある種の概念攻撃。電撃を以て機械を凍結、すなわちフリーズさせるという、魔術だからこそなしえる理外の合成属性。
 振り抜かれた剣閃が、仲間たちが押しとどめていた怪人たちをさらに押し返す。

「ぐぐぅ……! おのれ、またしても猟兵か!」
 たたらを踏んでジャスティストルーパーたちが呻いた。
 敵の攻勢を一時退け、三人の猟兵も一旦ルナブライトの周囲に身を寄せる。

「ふふふ、大丈夫?」
「またしても危ないところを……。ありがとうございます! ええと、あなたたちも猟兵さんですか?」
 ぽややんと声を掛けるショコにルナブライトが小さく頭を下げる。しっかりとオブリビオンからは視線を外さないのは流石と言ったところか。
 そんなルナブライトと実は同年代のショコ。「そう、私たちも猟兵さ」と首肯しつつ彼女は言葉を続ける。

「そして私は、この世界のヒーローでもある。……だから、このジャスティス・ワンを真似した機械兵は個人的にも不快でね」
「ジャスティス・ワン……、やっぱり、彼らはかの英雄を模しているんですね」
 ぼんやりとしていたショコの声が、僅かに影を帯びる。ルナブライトもまた、自身の推測が当たってしまったことに眉を顰める。
 ジャスティストルーパー。かつての英雄・ジャスティスワンを象った機械兵。理論上、彼と同等の能力を有するのだというが……。
 彼女たちの眼前で群れを成すその姿は、たとえ見た目が同じであろうとも、決してヒーローとはいえないものであった。
 その様相に、ショコは小さく溜め息をつき、ことさらにのんびりと声を上げた。

「そーいうわけで、義によって、あと個人的な気分によって助太刀いたーす」
「あ、あはは……、お願いしますね」
 気負ったところを見せないショコの言い方に、ルナブライトも毒気を抜かれる。
 気の抜けた声とは一転、リボルバーを隙なく怪人に向って突き付けるショコに、隣の奏が肩をすくめた。

「……君、もう少しピリっとすればもっとヒーローらしいんじゃないか?」
 ま、私もヒーローらしいとは言えないかもしれないが。と、軽く笑みを浮かべる奏。
 彼女の指揮のもと、すでに無数の鋸刃が周囲の空間に浮遊している。その獰猛な刃を制御しつつ、ヒーローらしさとは何か、彼女は想いを馳せる。
 大学生兼ヒーロー。真っ当に活動しているはずなのに、武器がチェーンソーであるがためにダークヒーローっぽい絵面になってしまう日々。学友たちの視線といった、学生ならではの悩みだって、本当はある。
 ……だが、今は目の前のことに集中しよう。ひとまずは、なによりも私らしく。

「ヒーロー『スプラッター』参上、ばらばらになりたい者から来るといい」

「わ、わ、二人ともヒーローなんですね! ということは、ひょっとしてあなたも?」
 ヒーローという自身との共通点。それを知り、親近感を覚えるルナブライト。
 もしかしたら、と彼女はふと浮かんだ疑問をそのまま深菜にもぶつけてみた。
 その素直な言動に、深菜も敵からは目を離さず、軽く答えて見せる。

「私? まあ、別の世界から生真面目にオブリビオンを狩りに来た、ってところね」
 別の世界。事も無げに放たれた言葉だが、それはルナブライトには衝撃的ともいえる言葉だった。
 ヒーローズアースでは猟兵の存在は正しく理解されている。だが、それでも猟兵でないヒーローや一般人からすれば、やはり、別の世界というのは『遠い』場所のことなのだ。
 少し戸惑うような素振りを見せるルナブライト。彼女を視界の隅に入れつつ、深菜はこう言い放った。

「正義の味方ってわけでもないけど、オブリビオンが相手なら任せておきなさい」



「さて、あの怪盗を見逃すわけにもいかないのだろう?」
 遠ざかりつつある影を見据える奏。10本の念動丸鋸をベースに複製した160本の複製型丸鋸飛刃。彼女はその全てを前方に集め、意識を集中する。
 敵の壁を突破するなら、攻撃に全振りだ。

「なら、私が先陣を切ろうじゃないか」
 言うが早いか、ショコがビームキャノンを構えたままに敵陣へと飛び込んだ。たなびくマントが躍るように跳ねる。

「愚かな! 猪武者め!」
 待ち構えるのはジャスティストルーパーの群れ。放たれるのは、ジャスティスワンが得意にしたという連続パンチ。
 それはまさしく模倣の技であった。速く、鋭く。そして、模倣であるがゆえに、止まることも、止めることさえできない拳。

「ふふふ、それじゃあダメだよ」
 ショコはその拳をひらりひらりと躱していく。パターン化された連打を、ときにフェイントを交え、ときに残像を残しつつ、丁寧に捌き続ける。
 回避を続ければ、当然体勢も崩れる。だが、どんな姿勢になっても、ショコは確実にカウンターの一射を放つ。それは、まるでダンスを踊るかのような光景であった。

「飛び交うは肉を引き裂く鋸刃、さぁ、追いかけようか」
 ショコの後を追うように、奏が操る丸鋸がジャスティストルーパーたちに殺到する。
 怪人が装甲を展開する暇さえない。圧倒的な数の凶刃が文字通り道を切り開いて(あるいは切り刻んで)いく。スプラッタな光景になりつつあるのはご愛敬。

「私からもプレゼントよ。まとめて薙ぎ払わせてもらうわ」
 細剣を掲げ、深菜が続く。先の交戦で電撃が有効と見るや、彼女はその効果を最大限に生かした戦闘スタイルを取ってみせた。
 彼女の掌で細剣が閃くたび、帯を描いた雷撃が複数の怪人を巻き込んでいく。
 フリーズどころではない。蓄積したダメージに高電圧の負荷がかかり、巻き込まれたオブリビオンが次々と煙を上げていく。文句なしの戦闘不能だ。

「そんな、我らは、ジャスティスワンの……!」
 悲痛な声を上げる怪人たちを、三人の攻撃が突き崩す。
 そこにルナブライトの援護も加われば、彼女たちを阻むことができようもなく……。

「……やった! 包囲を抜けました!」
 歓喜の声をあげるルナブライト。
 猟兵たちは、見事敵の包囲網を突破することに成功したのだ。
 息を整える彼女たちの背後には、無数の倒れ伏した怪人たちが残るのみであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『名乗り文句を決めろ!』

POW   :    勢い良くインパクトのある名乗り

SPD   :    冷徹でクールな雰囲気を漂わせる名乗り

WIZ   :    賢さと思慮深さを見せつける名乗り

👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「よし、この距離ならまだ……! 行きましょう、皆さん!」
 ソルシェイドの影を追い、ルナブライトが駆け出す。
 裏通りを右へ左へ。少しずつ近づく彼との距離。
 そして、ついに……。

「そこまでです! もう逃がしませんよ!」
 裏通りから大通りへと接続される交差点。そこに辿り着いたとき、ルナブライトの銃口がソルシェイドを射程に捉えた。
 日中の大通り。往来を行き交う通行人が何事かと彼女たちに注目する。
 ソルシェイドは気負った様子もなく、両手を挙げてルナブライトに振り返る。

「よくもまぁ頑張るね、お嬢ちゃん。……ところで」
 ふ、と視線を上に向ける怪盗。同時に大通りに巨大な影が差した。
 ヒーローや猟兵だけでなく、一般人でも感じられるような恐るべきプレッシャーが頭上から放たれる。
 その中にあって、怪盗は気圧されることもなく軽口を叩く。

「こいつもお友達かい?」

 ズン、と。大地を響かせ、巨人が道路の中央に降ってきた。
 鋼の筋肉を持ち、常人の倍以上の体躯を誇るヴィラン・オブリビオン。
 ソレは周囲を睥睨すると、手始めに目についたルナブライトへと手を伸ばし……。
ショコ・ライラ
おっとぉ、させるかい

左手でポーチを開け、中のチョコを口に放り込みつつ
右手のリボルバー(型ビームキャノン)でオブリビオンの伸びた手を【スナイパー】で射撃
ルナブライトさんを【かばう】よ

ん、私?

じゃあちょいと【気合い】を入れて
背筋伸ばしてビッと立ってみようかな

こう見えても14歳、ショコラティエール志望のチョコ大好きヒーロー…

(一拍置き)


“いつも心にチョコレート、そこにちょこんとショコライラ。
‪──‬私のチョコが甘いうちは、君の好きにはさせないぜ?”


ビシッ、とリボルバーを構えて【パフォーマンス】

プレッシャーに負けかけてるルナブライトさんや周りの一般人に、
もう大丈夫と思ってもらえるよう【鼓舞】するように


田抜・ユウナ
*アドリブなど歓迎

《地形の利用》その他の技能を活用。
フック付きワイヤーを高所に引っかけ、某クモ男なヒーローよろしく振り子移動で巨人に襲われそうな人を奴の鼻先から掠め取っていく。

探偵や怪盗と目があったら「ついさっきぶりね、お二人さん」と、

誰何されたら、助けた人を下ろしてあげてから、
「問われて名乗るもおこがましいけれど……」と、肩にかかった髪を背中に払って振り返る。
「――”千里眼”田抜・ユウナ」
瞳を光らせてクールに決める……つもりだけど、
「狸じゃなくて田抜!ぜんぜん違うでしょ、アクセントの位置とか!」
だぁから、狸って 言 う な!


メルノ・ネッケル
「おっと、そうは問屋が卸さへんで!」

『フォックスファイア』、ルナブライトに手を伸ばす瞬間を【見切り】、狐火を飛ばして払う!

「来て早々女のコに手ぇ出すとは、ちょっち礼儀がなっとらんのとちゃう?」
「悪いがその娘は忙しいんや、遊んでくんならうちらにしぃや!」

奴の意識をこっちに向ける……うちらと戦りたくなるよう【誘惑】や。

「生まれも育ちも島国なれど、何の因果か銃客商売。流れ流れて英雄の世、不埒な悪を今日も撃つ……ってな。」

『フォックスファイア』の残りの狐火を身体の周りに浮かべる!

「うちか?うちは狐、"火器狐"や。アンタを撃つ奴の名前くらいは覚えとき!」

銃を構え、敵へ向ける。来ぃや、骸の海へ還したる!


アーサー・ツヴァイク
※アドリブ絡み大歓迎
【POW】判定

とりあえずUCパンチで巨人を【吹き飛ばし】てから、変身してやるぜ!

《以下変身プロセス、省略可》
変身ベルト【サンドライバー】を手に取り、腹部に装着。
で、スマホのアプリで変身承認コードを起動したら、スワイプするようにサンドライバーに読み取らせる。これで変身待機モードに移行だ
そして片手を天高く振り上げ、手の甲の聖痕を太陽にかざすことで、俺の手の中の【サンストーン】が反応し、聖痕が光り輝く!
そして胸の位置に手を振り下ろして…「変身!」
両手甲の聖痕とベルトのバックルが同じ高さになるように手を振り下ろすことで、聖痕に込められたパワーが爆発し、ドーンブレイカーへと変身する!


白鳥・深菜
(高いビル等の上から飛び降りながら現場に現れる)

待ちなさい。いかにもパワー型悪役って顔の。
オブリビオン(あなた)の相手は猟兵(わたしたち)でしょう?
悪いけど、好き好んで狩りに来たわ。

私?そうね、言うなれば……

普くを希えば――災厄すら従える混沌の魔術師であり。
百鬼夜行に連なれば――好きに現れ隙を討つ遊撃の嵐であり。
ネットにおいては――知る人ぞ知る動画芸人であり。
真の姿を望めば――生命を従える白焔の大翼であり。

されどオブリビオンの前においては――唯の真摯な狩猟者でしかない。

「【ワイルドハント】遊撃担当、白鳥深菜。
数多の姿と得物は総てを狩る意思に他ならない。
さあ、相応しい狩り方で仕留めてあげるわ」


千栄院・奏
ヴィランに二振りの鎖鋸剣を振り下ろしながら髪と服をはためかせつつ上から降って来よう。

着地した状態から立ち上がるのと同時に【指揮者たる『スプラッター』】で複製型丸鋸飛刃を展開、自分たちとオブリビオンを「ルナブライト」「ソルシェイド」の二人と分断するように展開するよ。

鎖鋸剣【桜花】をオブリビオンに突き付け、
ヒーロー『スプラッター』、参上したよ。ばらばらになりたいなら来るといい。
そうやって自分のヒーローとしての名前を告げよう。それだけ伝えれば十分だよ。



「おっとぉ、させるかい」
「そうは問屋が卸さへんで!」

 巨大な腕が少女探偵を掴まんとする、その刹那。降り注いだビームキャノンの光線が過たずオブリビオンの指先を灼き貫いた。
 この程度、オブリビオンにとって大した痛痒ではない。それでも反射的に腕を引いた巨人と少女の間を揺らめく狐火がすぐさま遮る。

「ムゥ、いったいどこから……」
 ルナブライトに向けた腕を一旦収め、襲撃者の姿を探して巨人が道路を見渡す。しかし、その目が捉えるのは一般人の姿ばかり。市民らも市民らとて、何事かと辺りを見渡しているようだが……。

「見ろ! あそこだ!」
 ここはヒーローズアース。こんなときにどこを探すべきか住民たちも心得たもの。
 立ち並ぶビルの屋上に向けて誰かが指をさせば、オブリビオンも、探偵と怪盗も、観衆さえもが揃って天を見上げる。
 そこには太陽の逆光を背負い、六つのシルエットが並んでいた。

「あなたの相手はわたしたちでしょう? 悪いけど、好き好んで狩りに来たわ」
 六人の中でもひときわ目立つ影、背中に翼を持つ人物が進み出る。
 天上から響く声は凛として地上に届き、人々の視線を集める。彼女はいったい……。

「何者だ、名を名乗れ!」
 大気が震えるほどの大音声。怪人の誰何が摩天楼に響く。
 その怒声を受け、翼の少女はさらに一歩踏み出した。

「私? そうね、言うなれば……」
 そして、トン、と気負いもなく少女は屋上から飛び降りた。
 頭から真っ逆さまに地上に落ちていく少女。その影がビルの窓ガラスを通るたび、彼女の様々な側面を映し出す。

 普くを希えば――災厄すら従える混沌の魔術師であり。
 百鬼夜行に連なれば――好きに現れ隙を討つ遊撃の嵐であり。
 ネットにおいては――知る人ぞ知る動画芸人であり。
 真の姿を望めば――生命を従える白焔の大翼であり。

「されどオブリビオンの前においては――唯の真摯な狩猟者でしかない」
 墜落する。
 その寸前、影は反転し、翼を広げて僅かに浮かび直す。
 あくまでも優雅に白鳥・深菜(知る人ぞ知るエレファン芸人・f04881)は大地に降り立った。

「【ワイルドハント】遊撃担当、白鳥深菜。数多の姿と得物は総てを狩る意思に他ならない」
 頭部の角に背の白翼。ちろちろと腰に見え隠れするのは蛇だろうか。世界を越えてやってきたキマイラの少女にどよめく観衆。
 しかし、深菜自身は周囲のざわめきもどこ吹く風。怪人に指を突き付けて宣言する。

「さあ、相応しい狩り方で仕留めてあげるわ」



「俺様のことをオブリビオンと呼ぶってこたぁ、テメェ、猟兵だな」
 掌を顎に当て品定めをするように深菜を眺める巨人。
 猟兵。その言葉に観衆がまたしてもざわつく。中には両者の写真を撮ろうとする剛の者さえいるようだ。
 そんな一般市民の様子を見てつまらなそうに鼻を鳴らすオブリビオン。

「テメェもなかなかにソソるが……、俺様がブッ潰してぇのはヒーローってやつでな」
 彼はそう言って首を回し、ルナブライトに再び顔を向けた。
 探偵は咄嗟に銃を両手に構えるが、彼我の実力差を肌に感じてその身を竦ませてしまう。

「まずはコイツで遊ばせてもらうぜ?」
「クッ!」
 鬼火を挟み、にんまりと獰猛な笑みを浮かべる怪人。
 真っ向勝負に勝ち目はない。ルナブライトの額に汗が流れる。
 ……だが、だからこそ。その暴挙を見逃せない猟兵がいる。

「来て早々女のコに手ぇ出すとは、ちょっち礼儀がなっとらんのとちゃう?」
「あぁん?」
 ビルから飛び降りる影が二つ。その片方が怪人の意識を引き付ける。
 獣の如き身軽さで道路に着地したメルノ・ネッケル(火器狐・f09332)は、チョイチョイと手招きしてオブリビオンを挑発する。
 注意を惹けたのは一瞬。しかし、それで十分。

「ついさっきぶりね、ルナブライト」
 飛び降りたもうひとつの影。田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)が高所を支点にしたフック付きワイヤーに掴まって空を滑る。
 振り子の要領で地面すれすれを飛ぶ彼女が、ルナブライトを横合いから掻っ攫った。

「りょ、猟兵さん!?」
「アイツはまかせて。ね?」
 そのままメルノの傍らに降り立つ二人。ユウナはルナブライトの肩を押してソルシェイドのほうへと送り出す。
 逡巡する探偵。しかし、ここで残っても彼女が猟兵たちの役に立てるかはわからない。それが今の実力の限界。彼女の頭脳の冷静な部分がその結論に至る。
 ならば、まずは探偵としての務めを果たそう。ルナブライトはぺこりと頭を下げ、怪盗に向って駆け出した。

「おいおい、ヒーロー! どこ行こうってんだ!」
「悪いがその娘は忙しいんや、遊んでくんならうちらにしぃや!」
 オブリビオンはこの展開が気に食わない。重い足音を響かせて彼女を追おうとする。
 無論、それを見逃す二人ではない。怪人の前にメルノとユウナが立ちはだかった。

「猟兵! テメェらなんだってんだ!?」
 苛立たし気に声を荒げるオブリビオン。
 知りたいか、ならば名乗ろう。メルノはニィっと粋な笑みを浮かべ、ユウナは肩に掛かった髪を払い、朗々と謳い上げる。

「問われて名乗るもおこがましいが」
「生まれも育ちも島国なれど、何の因果か銃客商売」
「刃秘してのアヤカシ退治。悪行あらば境も越えて」
「流れ流れて英雄の世、不埒な悪を今日も撃つ……ってな」

「――"千里眼"田抜・ユウナ」
「うちは狐、"火器狐"や。アンタを撃つ奴の名前くらいは覚えとき!」
 赤い瞳が、再び煌めく。
 さながら歌舞伎か狂言か。二人の口上に市民さえもが感嘆の息を呑む。
 ……が。

「狸と狐? チッ、まぁコンビものとしては悪かァねえが……」
「狸じゃなくて田抜! ぜんぜん違うでしょ、アクセントの位置とか!」
 聞き違いというか、勘違いというか。オブリビオンの言い回しに耳聡く反応したユウナが先ほどまでのクールな雰囲気を投げ捨て強い語気で訂正する。

「何言ってやがる。だから、狸と狐だろ?」
「だぁから、狸って言、う、な!」
 一般市民さえも「え、違うの?」という表情をしているのは言わぬが花か。
 あちゃぁ、とメルノも頬を掻く。日本語って、難しい。

「なんか、ゴメンな?」
「うぅ……、メルノのせいってわけじゃないけど……!」
 どうにも締まらない二人。
 とはいえ、ある意味、敵の注目を集めることには十分成功しているのであった。



「さて、そろそろ私たちも行こうか」
 寒風吹きすさぶビルの屋上。はためく髪を軽く押さえて、千栄院・奏(『スプラッター』・f16527)が傍らの猟兵に声を掛ける。
 彼女の隣ではショコ・ライラ(そこにちょこんとショコライラ・f17060)が、ポーチから取り出したチョコを口内で転がしつつ眼下の光景を眺めていた。
 ショコの掌中ではリボルバーの銃口がオブリビオンに狙いを定め続けている。少しでもおかしな動きがあればと構えていたが、どうやら怪人が暴れだす気配はまだないようだ。

「あなたもどう?」
「……そうだね、ありがたくもらっておこう」
 照準を外し、大きく伸びをしたショコがポーチからチョコを取り出して奏に薦める。
 奏は受け取った一粒のチョコを大事にポケットにしまい微笑んでみせる。お互い、余計な気負いはない様子だ。

「じゃあちょいと気合いを入れてやってみようかな」
 さぁ、ここからはヒーローの時間。
「先に行くね」と躊躇いもなくフェンスを乗り越えたショコを追い、奏も空に飛び込んだ。

 自由落下に身を任せれば、空の旅はほんの一瞬。
 先行してひとり大地に降り立った新たな猟兵の姿が衆目を集める。
 片膝を着く姿勢で着地の衝撃を殺したショコは、常よりも背筋をピンと伸ばして真っ直ぐに立ち上がった。

「次から次へと出てきやがるな。テメェも猟兵か!」
「ん、私?」
 乱暴に言い放つオブリビオンに、ふふ、と小首を傾げて応えるショコ。
 彼女は指先を唇に当て、悪戯っぽく名乗り始めた。

「こう見えても14歳、ショコラティエール志望のチョコ大好きヒーロー……」
 周囲からは「14歳!?」やら「ショコラティエール?」やらと観衆のざわつきが聞こえてくる。
 ここは敢えて、一旦言葉を切ろう。大事な言葉はみんなに聞こえるタイミングで。
 観衆の声が僅かに収まるその一瞬。狙いはばっちり、彼女は自身の名を告げる。 

「いつも心にチョコレート、そこにちょこんとショコライラ」
 チョコには魔法がかかってる。はためくマントを翻し、甘く囁く決め台詞。

「――私のチョコが甘いうちは、君の好きにはさせないぜ?」

 言葉と共にリボルバーの銃口が怪人に突き付けられる。
 不敵な笑みにウィンクひとつ。何故か一部の観衆が胸を抑えてうずくまった。

 そして、その余韻を切り裂くように、空からもうひとりの猟兵が降りてくる。
 道路に映る影はひとつではない。
 隊列を組み、まるでひとつの生物であるかの如く連携する無数の刃。
 複製型丸鋸飛刃を引き連れて、奏が空を滑り落ちる。
 銀糸の髪が風にはためきながら、陽光を散らす。翡翠の瞳が敵を見据え、刃の群れが怪人と観衆たちを分断した。

「ヒーロー『スプラッター』、参上したよ」
 軽やかに着地した奏が眼鏡の蔓を持って名乗りを上げる。
 シンプルな名乗りだが、それこそがまさに彼女の在り方を示す一端。
 だから、これで十分。
 奏はリボルバーを構えるショコの横に並び立って、両手の鎖鋸剣のうち【桜花】を怪人に向かって突き付けた。
 敵対者を前に、桜花だけでなくそこかしこのチェーンソーたちが唸りをあげる。

「ばらばらになりたいなら来るといい」



【Select…BURN ACTION!】

 そして、最後のひとりがやってくる。
 落ちてきた赤い影は、右掌を大地に、左腕を水平に伸ばして片膝を着き着地した。
 赤毛の男、アーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)の青い瞳がオブリビオンを射抜く。

「テメェで最後か。いい加減、俺様も焦れてきてんだ。オラ、掛かって来いよ!」
「……いいぜ、まずは挨拶代わりだ!」
 怪人の挑発。分厚い胸筋をこれ見よがしに平手で叩いて、アーサーの攻撃を誘う。
 上等、とばかりに大地を蹴ったアーサーは拳を振りかぶり熱く叫ぶ。

「この手に宿る太陽の力……、受けてみやがれ!」
「ムゥッ!」
 拳の聖痕に力を集めた、超高熱の拳打。並みの量産怪人であれば一撃で消し飛ばすその攻撃が確かに怪人の胸に打ちこまれた。
 ……だが。

「ちぃと熱かったが、なんだ、その程度か?」
 怪人は健在。
 打撃の痕を軽く撫で、アーサーを嘲笑うかのように鼻を鳴らす。
 ユーベルコードを防がれたアーサー。しかし、彼の顔に浮かぶのもまた勝気な笑みだった。

「言っただろ? 挨拶代わりだって。……いくぜ、こっからが本番だ!」
 気迫と共に右手に掴んだのは、ベルトのバックル。
 聖痕のマークがあしらわれたそれを腹部に構えれば、バックルから帯が飛び出してアーサーの腰に瞬時に巻き付く。
 変身ベルト【サンドライバー】……、装着完了。

 次いで彼が手に収めるのは専用のスマートフォン。
 これも慣れ親しんだ彼の相棒。画面も見ずに素早く変身承認コードを選択。流れるようにサンドライバーにスワイプすれば、承認を受けてベルトが活性化する。
 変身待機モード……、移行完了。

「太陽の力、見せてやる!」
 言葉と共にアーサーが腕を突き上げる。天高く伸ばされた片腕。手に埋め込まれた【サンストーン】が陽光とベルトの鳴動に激しく反応する。
 燃えるような、眩い力の脈動。太陽の力を凝縮され、腕の聖痕が光輝く。
 ここに、すべての準備が整った!

「変身!」
 叫び、振り下ろされる拳。
 両手甲の聖痕がベルトのバックルに並んだとき、凝縮された力が解放された。
 聖痕を起点にパワーが爆発し、腕を伝い、ベルトに増幅され、全身を駆け巡る。
 太陽フレアの如き熱風がアーサーを包む。蒸気が視界を阻み、彼の姿を一度隠し……。

「俺は闇をぶち破る光の戦士……、ドーンブレイカー!」

 蒸気が晴れたとき、そこにいたのは赤い仮面のヒーローだった。
 燃える意匠のマスクに、たなびく深紅のマフラー。部分鎧のような赤白の装甲が戦士の身を護る。
 そしてなにより、両手とベルトの聖痕が、戦士がアーサーその人であると如実に示していた。

「覚悟しな、オブリビオン! 光よりも速く……、ぶちのめしてやるぜ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ビッグパワー』

POW   :    ビッグパワーナックル
単純で重い【渾身の力を籠めた拳】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    バリアブルマッスル
自身の肉体を【異常なまでに柔軟な筋肉】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    バイオレントフォース
全身を【筋肉を鋼の如く硬化させ、強化するオーラ】で覆い、自身が敵から受けた【負傷と、傷つけられたプライド】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:かげよし

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 名乗りを上げ、大見得を切った猟兵たち。
 沸き立つ市民の輪の中で、彼らはオブリビオンと対峙する。

「悪くないぜ、猟兵……、いや、ヒーローども!」
 怪人・ビッグパワーが獰猛な笑みを浮かべて吠えたけた。筋骨隆々とした巨躯が湯気を帯びて一層隆起する。
 アスファルトを踏む砕き歩みだした怪人は、丸太のような腕で猟兵たちを指差した。

「俺様のパワーがヒーローを凌駕するってこと、証明してやるぜ!」
メルノ・ネッケル
さあて、ルナブライトは離脱したな?
無事に確保できるんを祈っとるで、気張りぃや!

ほんじゃ、こっちもパーティーの時間や。
派手にやろうやないか!

伸縮性に富んだ体に鉛玉は効果が薄い……リボルバーは牽制程度に、貫通力のあるR&Bの熱線が本命になるな。

まずは仕込みや、カウントスタート!
1秒1秒数えながら、間合いを保って射撃戦や。

伸縮しての打撃を【見切り】、紙一重なら【零距離射撃】で反撃。今はぶっちゃけ時間稼ぎ、当てられないことが大事やね。

……さあて、9秒きっかり。
長射程の一撃を近中距離で叩き込む、減衰なんかは無縁やで!
打撃を【見切り】、後ろに跳んで回避!その勢いのままに、『九秒の狐』……ぶち抜け、熱線!


千栄院・奏
パワー、体格がこうまで違うと万全の状態じゃ一撃の重さでは適いそうにないね。鎖鋸剣で受けるのも難しそうだし、最初は他の猟兵と連携して回避、丸鋸飛刃での牽制に努めよう。

身体が重いとそれだけ動くのには体力を使う。1人で複数人を相手にしていればなおさらだ。
体力が落ちてきたところで拳の一撃を【血濡れの『スプラッター』】でリミッター解除した【桜花】【梅花】の二振りで受け止め、そのまま硬化した筋肉ごと切り裂いて見せよう。
攻撃が通ればその機は逃さない。懐に入り『スプラッター』の連撃、見せてあげよう。

これだけの見物人に多い中、私の戦闘を見せるのは心苦しいけど……ま、これが私だよ、間が悪かったと思ってくれ。



 怪人・ビッグパワー。薬物投与により異常発達した筋力を誇示するため、執拗にヒーローを狙うヴィラン・オブリビオンである。
 猟兵たちのアピールにより、彼の狙いは猟兵たちに定まっている。そのおかげでルナブライトはソルシェイドの捕縛に集中できているし、遠巻きに見守る一般市民たちが巻き込まれる心配も今のところはなさそうだ。
 とはいえ……。

(パワー、体格がこうまで違うと一撃の重さでは敵いそうにないね)
 丸鋸飛刃を待機させつつ、千栄院・奏(『スプラッター』・f16527)が冷静に彼我の戦力を分析する。
 分厚く隆起したビッグパワーの筋肉。見るからに頑丈そうなそれは、生半可な攻撃では刃を通しそうにもない。
 まずは体力を削りたいところだが、さて、どうしたものか。思案を巡らせる奏。そんな彼女の一歩前にもうひとりの猟兵が歩み出る。

「ほんじゃ、そろそろパーティーの時間やな」
 二丁拳銃を携えたメルノ・ネッケル(火器狐・f09332)が軽口を叩く。
 彼女は片手のリバルバーをビッグパワーに突き付け――彼の視線がリボルバーに向くのを確認したうえで――熱線銃を持つ方の手を腰に当て、後ろに向って小さくハンドサインを描いた。
 ポーズを決めるのを装って出された『数字の九』のサイン。それはしっかりと奏の視界に映り、彼女に行動の指針を決断させた。
 奏は軽く頷き、一歩前に出てメルノの横に並ぶ。

「では、一曲お相手させてもらうとしよう」
「よっしゃ、派手にやろうやないか!」
 カウントスタート。二人は弾かれたように左右に分かれて地を蹴る。間髪入れず、メルノのリボルバーが弾丸を放ち、奏の操る丸鋸飛刃がビッグパワーに牙を剥く。
 彼女たちの攻撃が、道路に仁王立ちするビッグパワーに突き刺さる……、が。

「弱い弱い! そんなものは効かんなぁ!」
 やはり、ダメージになっていない。鋼の筋肉に阻まれ、鉛玉がアスファルトに転がる。丸鋸の刃もゴムのような筋肉に食い込み勢いを殺されてしまう。
 嘲笑するビッグパワーは足を畳み、下半身に力を篭めて猟兵を睨む。左右に分かれた二人の猟兵。彼が狙うのは……。

「まずはテメェだ! ミンチにしてやるぜ!」
 狙われたのはメルノ。怪人の下半身でバネが爆ぜ、大砲のように彼女との距離を詰める。彼女のリボルバーが放つ弾丸は、ビッグパワーの顔の前に掲げられた腕にすべて吸い込まれてしまう。
 ともすれば瞬間移動じみた突進。メルノの眼前でビッグパワーはアスファルトに両足を突き刺して強引にブレーキングしつつ、自慢の豪腕を振りかぶる。

「オラァ!」
「くっ!」
 道路に叩きつけられる拳。それを躱せたのは、元よりメルノが牽制射撃と回避に徹していたからだ。
 それでも見切りはギリギリ。砕かれたアスファルトの破片が彼女の身体を強かに打ち付ける。鈍い痛みに顔をしかめつつ、なんとか後方へバックステップしつつリボルバーを連射する。
 しかし。

「まずっ……!」
 メルノの瞳に映るのは、再び下半身に力を溜めるビッグパワーの姿。なけなしの射撃もまるで受け付けた様子がない。
 カウントは、まだ6秒。この距離で突っ込まれれば致命傷は避けられない。

「私がいる。やらせはしないとも」
 その凶行を止めるべく、ビッグパワーの背に丸鋸飛刃が飛来した。無防備な背中に次々と刃が突き刺さる、が、その全てが筋肉に絡めとられてしまう。
 鋸状刃の持ち味は、回転による『削って切る』ことにある。回転運動を止められてしまっては十分な威力を発揮できない。
 それでも、僅かな時間は稼げた。その僅かな時間でメルノはなんとか危険な距離を脱する。と、同時にビッグパワーが顔だけで振り返り奏を睨んだ。

「ちまちまとウザッてぇな!」
 奏とビッグパワー、両者の距離は十分に離れている。怪人の身体も視線以外はメルノに向いたままだ。先ほどのように一息に突進することはできないはず。
 だが、ビッグパワーはそんなことは意に介さないとばかりに腕を振りかぶる。上半身を捩じり、バックブローの要領でパンチが放たれる。

「なっ!」
 その瞬間、ビッグパワーの腕が『伸びた』。比喩でもなく、異常な柔軟性を以て、バックブローが奏の胸元まで伸びてくる。
 咄嗟に鎖鋸剣の防御が間に合ったのは、直前に敵の殺意を感じ取れたからか。しかし、鎖鋸剣を間に挟んでも衝撃を殺しきるには至らない。振り抜かれたバックブローに弾き飛ばされ、奏が道路に転がる。

「ミンチになるのは、テメェからだったな」
 そして、鞭のようにしなる巨大な腕が彼女の直上に持ち上がった。このまま自重に任せて振り下ろされれば、怪人の言葉通りの結末が待っているだろう。
 ……だというのに、道路に転がっていた奏は平然とした表情で、ただ自身が立ち上がることにだけ集中していた。頭上の腕には目もくれない。

 なにせ、もうカウントは終わっているのだから。

「さあて、9秒きっかり!」
 ビッグパワーが腕を振り上げたタイミングで、メルノは敵の懐に飛び込んだ。
 直前のバックステップの勢いを反動に、地面を滑るように低姿勢で走りつつ構えるのは、熱線銃・R&B。
 狙いは、伸び切ったビッグパワーの左腕。振り上げられたそれを狙うのであれば、射線も減衰も考慮する必要はない!

「『九秒の狐』……ぶち抜け、熱線!」
 ユーベルコードを叫び、トリガーを引く。放たれた灼熱の熱線が肩口からビッグパワーの腕を焼き尽くした。

「グガァ! て、テメェ!」
 今までとは違う、確かなダメージ。呻き声をあげたビッグパワーの顔が痛みと怒りに歪む。すぐさま無事な右腕で自身の周囲を薙ぎ払うが、そのときにはすでにメルノは再びステップを踏んで距離を取っている。
 空を切る右腕。メルノに向いた怪人の意識。生まれた隙を、奏が活かす。

「鎖鋸剣【桜花】【梅花】リミッター解除」
 掲げられていた怪人の左腕が焼け焦げ、地面に落ちる。その真下で立ち上がった奏が両手の鎖鋸剣を構えて待ち受けていた。
 リミッターを外されジェノサイドモードに移行した二振りの鎖鋸剣が、先刻以上の回転速度と駆動音で獲物に襲い掛かった。

「ギィギャァ! 俺様の、腕がァ!」
 焦げた肉に食い込み、巻き込み、削って切り裂く。挟み込むように振るわれた鎖鋸剣がビッグパワーの筋肉をズタズタに引き裂く。
 当然、怪人は伸縮していた左腕を引き戻し、鋼の硬度を取り戻そうとする、が。

「この機は逃さない。『スプラッター』の連撃、見せてあげよう」
 独り言ち、縮んでいく腕に合わせて奏も疾走する。無論、連撃の手は休めずにだ。
 奏が元居た場所から、怪人の身体の位置に到達するまで、鎖鋸剣は鮮血を撒き散らし、肉片を弾き飛ばし続ける。
 まさに、その名の通り。あまりの凄惨さに見守る一般市民からも悲鳴があがる。

「……ま、これが私だよ、間が悪かったと思ってくれ」
 鮮血の絨毯を走り抜け、怪人の右腕の射程寸前でピタリと停止した奏は悪びれもせず肩を竦めた。これでも心苦しくは思っているのだが、そう簡単に戦い方を変えるわけにもいかないのだ。

「ほんま派手なことになったなぁ」
 同じく怪人の射程外で息を整えていたメルノが奏の肩に手を置いた。
 犠牲になったものは『スプラッター』の世間の評判。得られたものは、ビッグパワーの左腕への大ダメージ。
 成果としては上々、と言ってよいものか。コテン、と首を傾げるメルノに、いつものことと軽く嘆息する奏。

「許さねぇ。許さねぇぞ、テメェら……!」
 そして、二人に怨嗟の声を吐くビッグパワー。片腕へのダメージは大きいが、それ以外に目立った損傷は未だない。
 戦いはまだ始まったばかりだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

白鳥・深菜
さて、私は妨害役でも努めようかしら。
パワータイプってある意味一番厄介なのよね。
力任せが通用しないから。

今回は狙いが高度だから、
出来れば他の接近戦を仕掛ける猟兵と意識的に連携したいところね……


まずは『海を割く蒼竜の眼』に魔力を込める。
機械のみならず、例え生物であっても。
氷はその身を【マヒ攻撃】し、雷は肉の【鎧無視攻撃】を成す――
一瞬の静寂を呼ぶ埒外の災厄「蒼の落雷」を組み上げていく。

そして魔術の発射準備が完了したら、オブリビオンの頭上に飛び込み、
【空中戦】から落とす――!

「――希うは<氷>の<落雷>、望むは有無を言わさず下る蒼の御雷!
ヒーローのお出ましよ、freeze(動くなっ)!」


田抜・ユウナ
狸じゃねーってんでしょうが!

先の名乗りを忘れてもらっては困ると【千里眼開放】
瞳をグリモアと同化させて未来を視る

《戦闘知識》《早業》主軸
緩急自在の歩法で幻惑しながら寄り身
敵の猛攻をかわしきり、懐に潜り込む
狙うは呼吸の間隙、筋肉が緩む一瞬を見切って掌底
「ーー田抜流当て身、壱ノ型。“徹し”」
浸透性の衝撃波を体内にぶちこんでやる。

※その他、アドリブや協力など大歓迎



 血の滴る左腕を庇いつつ、周囲を睨みつけるビッグパワー。負傷があるとはいえ、強固な肉体と圧倒的な打撃力は未だ健在。やはり無策に攻め込むのには危険な相手だ。
 では、どうするべきか。白鳥・深菜(知る人ぞ知るエレファン芸人・f04881)は自身の持つ三種の魔導書に意識を伸ばす。

「極端なパワータイプね。力任せが通用しないなら……」
 まずは戦力を削ぐべきか。そう戦略を組み立て、彼女が指を伸ばしたのは銃型の魔導書、『海を割く蒼竜の眼』だった。
 青の魔術を司る魔導書を手に、構築する術式のイメージを脳裏に浮かばせる深菜。さて、このまま魔術を組み上げるための時間が稼げればいいのだが。

「あんた、私の名前は憶えてるでしょうね?」
 深菜の胸中を知ってか知らずか、前に進み出たのは田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)だ。両手を腰に当てて、ビッグパワーをジロリと睨む。
 言うまでもなく、彼女が気にしているのは自身の『名前の意味』を間違って覚えられていないかである。
 口を尖らせるユウナの問いに、ビッグパワーは意外にも律義に答えを返す。

「馬鹿にしやがって。狸の娘だろ?」
「狸じゃねーってんでしょうが!」
 やっぱり駄目だった。眉を吊り上げ頬を膨らますユウナ。対するビッグパワーも噛み合わない問答にイラつくように眦を上げる。
 ……わかっていないなら、わからせてやろう。決意を固め、ユウナは荒げそうになる吐息を落ち着かせて瞑目する。
 瞼の裏は真っ暗闇。されど、彼女には『視える』ものがある。

「我、時ノ果テヲ覗ク者。……『千里眼』の由縁、篤と味わいなさい!」
 開眼。その瞳は、もはや只人のそれではなかった。
 グリモアと同化したユウナの瞳が、未来の可能性をその視界に映し出す。
 現在と未来、視神経を圧迫する情報の奔流を掻き分けて、彼女は大地を蹴る。

「正面からだぁ!? 舐めてンのか!」
 愚直ともとれる突進。ビッグパワーとてそれを座視するほど甘くない。突き刺すように右のストレートで迎撃する。
 大質量の右腕が空気を抉って真っ直ぐにユウナの顔に迫る。思考も追いつかない一瞬の接近。しかし、それは『事前に』視えている。

「よっと」
「チィ! ちょこまかと!」
 クリーンヒットのまさに寸前、身を翻してユウナは拳を回避した。瞳に映る可能性を次々に選別し、彼女は怪人に纏わりつくかのように回避を続ける。
 左足のローキック、軽く跳躍して飛び越えよう。右腕の振り下ろし、横に二歩分動けばいい。左腕で薙ぎ払い、少し屈めば頭上を掠めていくだけ。
 緩急をつけた歩法と未来予知を組み合わせ、ビッグパワーの猛攻を翻弄するユウナ。

「敵の意識はユウナさんに。この好機、活かしてみせるわ」
 その舞踏に合わせるべく、深菜が後方で魔術を組む。
 青の魔導書が呼ぶのは、蒼氷にして青雷。
 イメージするのは、暴風の如き巨躯を凍てつかせ、鋼の如き肉体を貫く、理外の現象。
 この一撃は、何者であろうと逃れる術はない!

「――希うは<氷>の<落雷>、望むは有無を言わさず下る蒼の御雷!」
 言霊を紡ぎ、空に駆ける。目指すはビッグパワーの頭上。
 意識の死角。だが、怪人の至近にいるユウナにはその攻撃が『視えて』いる。銃型の魔導書を構える深菜の眼下で、猟兵の影がビッグパワーから大きく飛び退いた。
 完璧なタイミング。

「ヒーローのお出ましよ、freeze!」
 天より落ちるは青の雷。怪人の虚を突き、その閃光が頭上から叩きつけられる。
 災厄魔術。氷の属性を伴った稲妻が、ビッグパワーの芯を凍気で貫いた。熱量を奪われ、関節が軋み、体表には霜すら張り付く。

「ギ、ガ……、なん、だ……!」
 鈍る動き。筋組織の連動が失われれば、分厚い筋肉も重りでしかない。
 白い息が肺から漏れ出し、筋肉の緊張が緩む。その僅かな弛緩をユウナが狙う。
 一足飛びに懐に入り込み、掌底を胸部に当てて放つのは。

「――田抜流当て身、壱ノ型。"徹し"」
「ッ! カッ……!」
 浸透勁。その攻撃は、体表をすり抜け内臓で炸裂する。掌底を打ち付けた正面ではなく、衝撃が突き抜けた背部の霜が弾け飛んだ。
 体の奥からの鈍痛。横隔膜が麻痺し、呼吸すら覚束ない。ビッグパワーの筋肉が酸欠に喘ぎその動き止める。

「せいやぁ!」
 気迫と共にユウナが打ちつけた掌底を押し放てば、ビッグパワーの足は彼の体重を支え切ることができず、怪人は地面に尻餅をついてしまう。
 残心の型を取るユウナ。その隣に深菜が舞い降りる。両者ともビッグパワーから視線は外さず、追撃、あるいは反撃に備えている。
 見下ろす二人の猟兵。見上げる一人のオブリビオン。

「ッ! お、俺様を! 下に見るなァ!」
 その状況を認識し、激昂するビッグパワー。凍り付いた肺を無理くりに動かし、強引に酸素を取り込む。走る激痛すらも気に留めず、薄氷の張る身体を起こして怪人が立ち上がった。
 プライドを傷つけられたのか、目は血走り、呼気も荒い。
 だが、猟兵の攻撃は彼の身体の芯に深く爪痕を残している。呼気の激しさは、決して怒りによるものだけではないだろう。

 決着は、近い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アーサー・ツヴァイク
※協力アドリブ大歓迎

プライドは人一倍ってところか。誇り高いってのは良い事だと思うぜ、でもそれだけじゃあヒーローには敵わない。
何故なら、俺たちは自分の想いだけで戦ってるわけじゃない。この世界で生きている皆の想いも背負って戦っているんだ!
お前が自分の力でどれだけ大きくなろうとも…俺は、俺たちは、その上をいってやるぜ!
これが皆の想いを光の力に変える…【ブライトネス・オーバーパワー】だ!

さあ、さっきは挨拶代わりのパンチだったが…今度は本気で行くぜ!
お前のビッグパワーナックルと、俺の【プロミネンス・インパクト】…どっちが強いか、勝負だぜ!!


ショコ・ライラ
さて、世界の平和のために
そろそろご退場願いましょう

《エコー……》
私の中に響く波紋を、心を澄ませて感じる
その度に、五感が研ぎ澄まされ……

‪──‬うん、よし
今の私に見切れないものはない

大振りの攻撃、伸び縮みする身体、
どれも【見切り】、【カウンター】の【クイックドロウ】を叩き込む
私のカウンター技能と張り詰めた見切りの技術で手玉に取ってやろう

無駄無駄、当たらないよ

プライドが傷つけられたかい?いいさ、かかってこいよ

……さあ響け、私のエコー……
【勇気】をもってギリギリまで攻撃を引き付け

【残像】を伴って回避
【零距離射撃】の一撃を叩き込む

ふっふふーん?
(ポーチからチョコを取り出して一口)
まだまだ甘い甘い。



「さて、世界の平和のためにそろそろご退場願いましょう」
 怒りに目を剥くビッグパワーにリボルバー型のビームキャノンの銃口を向け、ショコ・ライラ(そこにちょこんとショコライラ・f17060)が涼やかに宣告する。
 満身創痍のオブリビオン。勝負の趨勢は明らかになりつつある。
 だが、だからこそ、ビッグパワーは更に猛り狂うのだ。

「まだだ! 俺様のパワーは、テメェらなんかに負けやしねぇ!」
「プライドが傷つけられたかい? いいさ、かかってこいよ」
 口角を泡を飛ばすビッグパワーに対して、いつも通り淡々と言葉を返すショコ。リボルバーをくるりと手元で回し、引き金に指を掛ける。その淡白ささえ、ビッグパワーの癇に障る。
 一触即発。だが、ひとりの猟兵が両者の間に割り入り、逸るショコを手で制した。

「俺は誇り高いってのは良い事だと思うぜ」
 仮面のヒーロー・ドーンブレイカーに変身したアーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)は静かに、しかし力強く言葉を紡ぐ。
 ヒーローとは、想いと共に戦う者。だからこそ、ここでアイツに言わなきゃいけないことがある。
 彼の言葉に籠る『熱』を感じ、ショコもちょっぴり不満げながら銃を下ろした。

「でもそれだけじゃあヒーローには敵わない」
「……違う! 俺様は人間を超えた! ヒーローにだってこんな筋肉を持ってるヤツはいねぇンだ!」
 オブリビオンは結局のところ過去の存在だ。彼らと言い合いをするなんて、もしかしたら無駄なことなのかもしれない。
 けれど、アーサーには示すべき信念がある。ただ力を誇示するためだけに戦う目の前の男に、それを叩きつけてやらねばならない。

「俺たちは自分の想いだけで戦ってるわけじゃない。この世界で生きている皆の想いも背負って戦っているんだ!」
 アーサーの口調が燃え上がるように熱くなる。彼の戦いは、彼のためだけのものではない。ハートから溢れる言葉の熱は、周囲の市民にも伝播していく。
 その言葉を認めることができず、ビッグパワーは殊更に自身の力を見せつけるようにアスファルトを叩き、市民の群れを睨みつける。

「他人がなんだってンだ! 弱ぇヤツは黙って俺様に怯えてりゃあいいんだよ!」
 暴れ狂う恐るべき怪人。だがしかし、彼に睨まれ、恐れを抱きつつも、人々は確かに『希望』を見た。
 誰かが呟く、「ドーンブレイカー」と彼の名を。それを聞いた別の誰かも、彼の名を呼ぶ。さざ波のように聞こえたその言葉は、やがて津波となって摩天楼に響いた。

「「頼んだぞ、ドーンブレイカー!」」

「お前が自分の力でどれだけ大きくなろうとも……、俺は、俺たちは、その上をいってやるぜ!」
 彼らの祈りをその背に受けて、ドーンブレイカーはユーベルコードを起動する。
 今ここに、光の力を!

【Select…ULTRA ACTION!!】

 人々の想いを光に変えて、眩く輝いたドーンブレイカーの体躯が一回り大きくなる。
 対峙するビッグパワーと比べても遜色のない威容。想いの輝き【ブライトネス・オーバーパワー】を纏ったヒーローが拳を固く握りしめる。

「さあ、さっきは挨拶代わりのパンチだったが……、今度は本気で行くぜ!」
「ッ! 上等だ! 俺様がナンバーワンだって、テメェで証明してやる!」
 互いに構えたのは右の拳。小細工なしの真っ向勝負。
 示し合わせたかのように同時に駆けだす両者。瞬く間に詰まる距離。
 そして。

「オォッ!」
「ウラァ!」

 ぶつかり合う、拳と拳。耳を塞がんばかりの爆音。衝撃が空気を伝い、ビル街の窓ガラスをびりびりと揺らす。
 その中心点に立つ二つの巨大な人影。やがて、その片方がよろよろと後ずさった。

「馬鹿な……、俺様の、パンチが……」
 ふらふらとよろめいたのはビッグパワーだった。その右腕はひしゃげ、あらぬ方向に捻じ曲がっている。
 否、それだけではない。右腕から叩き込まれた太陽の力が、すでに彼の全身をくまなく打ち据えている。もはや数刻もせず、彼の存在は崩壊するだろう。
 対面で息を荒げ片膝を着いたドーンブレイカーは、その手応えを確かに感じていた。

「俺たちは、ひとりじゃない。それがこの結果だ……!」
 ドーンブレイカーも無傷とはいえない。一瞬にすべてを賭けたあの攻撃は、彼の体力も根こそぎ奪い去っていた。正直、立ち上がるのも億劫だ。
 しかし。

「も、っと! もっと、パワーがあれば……!」
 怪人の箍が、外れた。もはやヒーローに拘ることもない。崩れゆく身体を引き摺り、ビッグパワーはひたすらに生命力を求める。
 その矛先は、自然、周囲の市民に向いた。

「まずい!」
 消耗したドーンブレイカーはすぐには動けない。
 狙われた市民が悲鳴をあげて身を竦ませている。彼らを守ることができるのは……。

「私もヒーロー。あとはまかせといて」
 軽やかに、もうひとりのヒーローがビッグパワーの足を熱線で射抜いた。
 ショコ・ライラ。チョコレートの少女が怪人に躍りかかる。

《エコー……》

 熱い応酬も、彼女の心は溶かせない。澄んだ心で自身の内に響く音を感じ取れば、周囲の世界がクリアに描き替わっていく。
 ビッグパワーは、もはや狂乱に囚われている。その一挙手一投足は反射に近く、何のパターンも見いだせない。
 だが彼女の目には、常人では気づきえない、怪人の動作の前兆が確かに映っていた。

「――うん、よし」
 今の私に見切れないものはない、と。市民を守るため、ショコは果敢にもビッグパワーに接近戦を挑んだ。
 飛び込むのは本能で振るわれる暴力の台風。その兆しを見分け、聞き分け、嗅ぎ分けて、彼女は嵐を掻い潜る。

「グルァアッ!」
「無駄無駄、当たらないよ」
 劈く叫びも心を揺らさず。ひとつパンチを躱せばその腕に引き金を引き、ひとつキックを透かせばその足に熱線を放つ。
 まるで独楽のように。くるりくるりと暴れ回っていた怪人が、徐々にバランスを崩す。
 あと、もう一息。

「……さあ響け、私のエコー……」
 彼女の五感がビッグパワーの最期を感じ取った。
 命を燃やす、正真正銘、最後のパンチ。唸る豪腕が、ショコの顔面に落ちてくる。

「嗚呼……」
 轟音。しかし、その一撃が貫いたのは、マントを翻したショコの残像だけだった。
 ビッグパワーのパンチとすり抜けるように交差した彼女が、怪人の心臓にリボルバーの銃口を押し当てる。
 憑き物が落ちたかのように怪人から漏れる吐息。それを耳に感じ取りつつ、彼女は得物のトリガーを引いた。
 零距離からの、急所への射撃。胸を貫く熱線がオブリビオンに終焉をもたらした。

「俺様に、もっと、パワーがあれ、ば……」
 狂乱を抜け出し、それでも、ビッグパワーは最後まで力を求めていた。
 崩れ落ちる怪人の巨躯。
 それを成した少女は、常と変わらぬ軽妙さでリボルバーをガンベルトに収めた。

「ふっふふーん?」
 ポーチを開いて、チョコをひとつ。口に入れれば、いつもと同じ、甘い味。
 そうして、軽い様子で市民たちに手を振るショコ。
 彼らを安心させるためにも、ここはひとつ、決め台詞を。

「まだまだ甘い甘い」

 人差し指を振る少女の姿に、歓声が爆発した。
 黄色い声でヒーローたちの活躍を称える観衆たち。その声を浴びつつ、ショコは変身の解けたアーサーに手を差し伸べた。
 彼女の手を掴み、立ち上がったアーサーは頭を掻く。

「助かったぜ。……おいしいところを持っていかれたな」
「チョコだけに?」

 悪戯っぽく笑みを浮かべるショコ。一瞬きょとんとしたアーサーも、やがては快活に笑ってみせるのだった。



 一方そのころ。
 ルナブライトの追跡劇も終幕を迎えていた。
 彼女の手に残っているのは、盗まれていた宝石。
 宝物を取り戻した探偵。しかし、怪盗の姿はここにない。

「お嬢ちゃんに免じて、それはお返しするよ」
 姿を消したソルシェイドの声だけがルナブライトの耳に届く。
 またしても、捕縛は叶わず。と、歯噛みする少女。

「……猟兵か。この街も騒がしくなってきてる。お嬢ちゃんも気を付けな」
 遠ざかり、消えていく怪盗の気配。その声色は、どうしてか探偵の身を真剣に案じているようだった。
 見えない姿に想いを馳せて、空を見上げるルナブライト。

「ソルシェイド、あなたはいったい……?」
 その問いに答えるものは、まだいない。



 後日、発行されたヒーローズアースの新聞。
 『大活躍!? 少女探偵と親愛なる来訪者たち!』と銘打たれた記事が紙面に躍っている。
 そこには、今回の事件で活躍した猟兵たちとルナブライトの姿が大きく写し出されていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年04月27日


挿絵イラスト