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襲撃はカーチェイスの後で

#ヒーローズアース

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#ヒーローズアース


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 ヒーローが斃れた。
 今までにも幾度か耳にした言葉だ。記憶している限り、それは根も葉もない噂に過ぎなかったり、ヴィランを誘き寄せて一網打尽にする為の罠であったりした。今回もそうだろう、というのが世間の認識であり、私の認識でもある。
 それはそうだろう。無敵とまでは言わずとも、これまで並みの障害を悉く跳ね除けてきたからこそ彼らはヒーローなのだ。ただの案山子がその名で呼ばれる筈もない。それが闇討ちされたなどと、どうして信じられようか。
 だが、確かに。どんな些細な諍いも目敏く見付け、風のように現れるあの男が、今日は空を舞っていない。いつもならば疾うに私を追い回しているだろう、あの派手やかな影が。
 もしかすると、本当に。
 助手席には、はち切れんばかりに膨らんだ鞄。心臓が、早鐘のように鳴っている。


「ヒーローズアースってご存知です?」
 そう言って、カルパ・メルカは地図を広げた。
 ご存知なくとも想像の付きそうな名前であるが一応、軽く説明をさせて頂く。
 近頃新たに発見された、超常の力を持つヒーロー達が活躍する世界だ。
 そのUDCアースとよく似た別の地球において今、過去のヒーローやヴィランが往時を上回る力を得て蘇っているのだという。
「ええまあ、お察しの通り、早速あれです。お仕事の話です」
 蘇った存在とは、即ちオブリビオンであり、グリモアベースでこうして人を集める理由とは、つまりそういう事だ。
 残念ですが観光の話はまたの機会に、とグリモア猟兵は言葉を続ける。
「とある街で、ヒーローが闇討ちに遭う事件が起きていまして」
 既知の世界でそうであったように、オブリビオンによる事件は余人の手に負えないケースが多く見られるが、今回もそれに当たる。
 結論だけを言うならば、かの地のヒーローは敗北を喫した。それも一度ではない。立て続けに、複数名。
 無論彼らもただやられるばかりではないだろうが、ヒーローの世界とは言え、雨後の筍の如くヒーローが湧いて出る訳ではない。
 他所からの応援を待つにせよ、彼らが再び立ち上がるにせよ、後進を育てるにせよ、街には少なからず時間が必要で、残念ながらその間敵は待ってくれないのが現実である。

「そういう訳でして、皆様にはヒーローをやって頂きたく」
 別段、ヒーローコスチュームに身を包めだとか、そういう話ではない。
 やるべき事は大まかに二つ。
 ヒーローの不在を知って、件の街で一時的に犯罪が増加している。ヒーローに代わり、それらのヴィラン事件を一つ二つ解決して貰いたい、というのがまず一つ目。
「とりあえず直近で一件、銀行強盗の発生を予知しましたので。まずはそれを捕まえて‥‥あ、殺さず、でお願いします」
 予測した移動経路を地図に書き込みながら、念を押す。
 ヴィランの多くは悪人ではあるがオブリビオンではない。今後ヒーローへと転ずる可能性もある為、生かして捕らえるように、とのお達しだ。
 そうでなくとも、法に則って罪を裁くというのは必要な事である。
「で。二つ目が、かの闇討ちの実行犯の撃退です」
 こちらに関しては、動きを確認できていないのが現状である。が、ヒーローに代わり犯罪への対処を続けていれば、それまでと同様に猟兵達を襲うべく、遠からず姿を見せるだろう。
 通常のヴィラン事件と違いオブリビオンが相手となる為、遠慮の必要はない。存分に猟兵の力を見せつけてほしい。
「今も変わらずヒーローが健在だと示して、好き好んでそれを襲う相手もいなくなれば、ぼちぼち犯罪騒ぎも落ち着くと思いますから。良い感じによろしくお願いします」


井深ロド
 お世話になっております、井深と申します。
 新たな世界へお付き合い下さい。
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第1章 冒険 『銀行強盗犯を追え』

POW   :    車を力技で止める。

SPD   :    車なんてスロリィ!俺の脚の方が早いぜ!

WIZ   :    魔法で食い止める!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シズホ・トヒソズマ
※他猟兵とのアドリブ、連携OK

【SPD】

まさか新世界がヒーロー達の世界とは!
まさにヒーローたる私にうってつけの場所!
早速悪を懲らしめに行きましょう!

市民の中からコミュ力発揮し着用者を見つけて出動
ヒーローに憧れてる人とかいいですね

UCでユングフラウをバイクに変形し、操縦・騎乗技術で乗りこなし強盗の車を追跡します
障害物や妨害はダッシュやスライディングで回避
近づいたら攻撃をリキッドメタルで防ぎながら、運転手を狙い催眠術を催眠補助ユニットのギャラクシーシンフォニーを使いつつかけます
『良かったですね、無事追っ手から逃げ切りました。さあ、車を止めてアジトで祝杯しましょう』
スピードが緩んできたら捕縛


ビードット・ワイワイ
連携アドリブ歓迎
例え数多のヒーローが倒れようと正義信ずる者いれば
その者すなわちヒーローなり。ヒーロー無くとも
正義潰えたわけあらず。つまりは今は我らがヒーローなり

UCにて蒸気加速装置を作成。これにて【ダッシュ】
車に追い付こう。我の体は疲れを知らず。我の脚は無限軌道
車なんぞで逃れはできぬ

足に自信が無き者は我に乗りて機会を伺うが良い
我が脚は人が乗りし程度では揺らがず

さあさヴィランよどう逃げり?我の巨体は【恐怖を与える】
かような機械は見たことありけり?追い付いたならば
車体を持ち上げ動きを止めよう
記憶に刻め。我が偉業、我が威容。これすなわち悪を砕く
新たな力。汝も暫し頭を冷やすが良い



 根源的破滅招来者曰く、正義信ずる者いれば、その者すなわちヒーローなり。
 ならば、この娘も正しくヒーローに違いない。
 憧れのヒーローを安全な場所から応援するのと、ヒーローと共に戦場へ飛び込むのとでは、天地ほどには差があるのだ。いかにヒーローの存在が認知された世界とは言え、空飛ぶマスクの依頼を即時に受け入れるのは容易な事ではあるまい。
「乗るかね?」
「いえ、からくり人形がありますから!」
 物珍しそうに眺める野次馬を尻目に、話の纏まったらしい彼女らへとウォーマシンが問うと、ヒーローマスクと一体となった娘は元気に返した。
 要らぬ世話だったか。居合わせた猟兵は流石にヒーロー玄人であるらしく、心意気のみならず、準備においても抜かりないようだ。
 であれば後は。
「早速悪を懲らしめに行きましょう!」
 シズホ・トヒソズマが高らかに告げると、続くようにビードット・ワイワイの履帯が回転を始める。
 さあ、ヒーローの出陣だ。

 窓から身を乗り出して、拳銃を一射、二射、三射。
 ユーベルコードで強化された弾丸は、しかし紫の追走者に届く事なく、今回も路面を徒に抉るだけで終わった。
「糞が、何なんだよあいつはッ!」
 どういう事だよ糞。ヒーローはいない筈じゃなかったのかよ糞。何でよりによって俺の所に食い付くんだよ糞。あんな前衛芸術みたいなバイクに跨って悉く避けられるってのはどういう技術だよ糞。
「あああ兄貴ィ!」
 首を引っ込め、何度目かの再装填。
 ああ、何だよ糞。こっちは忙しいんだよ糞。黙って運転できねぇのか糞。
 急かされるままに視線を上げると、眼前には得体の知れぬ、漆黒の。
「糞が!」
 別れて逃げてんのに何でいつもより追手が増えてんだよ畜生。

 黒塗りのバンが蛇行して、脇道へと滑り込んだ。
「さあさ、次はどう逃げり?」
 呟きに応じるものはなく、元よりそれを求めてのものでもなかったが、しかしこの古代兵器は既に答えを知っていた。
 正面へと回り込んだ瞬間の彼らの顔。過たず恐れを刻んだ確信があり、更に、仮面の協力者の存在が効いている。
 恐慌が判断を誤らせ、土地勘の優位も失えば、疲れを知らぬ我が身から逃れられる道理もなく。
 その瞬間は直に訪れた。
 傍らを並走する戦闘人形が弾丸の雨を器用に潜り抜け、車両へと幅を寄せると同時、ガクリと不自然な振動。そして。

 存在感ありますよね、とマスクドMは内心ごちながら、攻撃を引き受けてくれた同僚を見遣った。
 最後の瞬間、逃走車をゼンマイの切れた玩具のようだと感じたが、車体を軽々と持ち上げる彼にとっては正しく玩具に等しいのだろう。
 全く、頼り甲斐のある仲間と連携できるのは有難い事だ。感謝と共に、スマートフォン上を走らせていた指を放すと、ようやく一息。
 彼らを引き渡すまではまだ一段落したとも言い難い状況だが、まあ今のところ順調に推移しているのは間違いない。
 警察を待ちながら、何とはなしに異世界の空を見上げると、一条の飛行機雲が描かれていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メルティア・サーゲイト
 んじゃ、早速新しいUCを試してみるかな! まずはMODE PANZERで爆撃機形態だ。爆撃はしないから爆装は要らないかな。そこから新技のMODE VANGUARD! ハードポイントに四基の追加ブースター装備! 車なんかじゃあ相手にならないぜ! 強盗犯の行く先に先回りして人型形態に戻って車の目の前にスーパーヒーロー着地! んで車を正面から受け止める。
「はいお疲れさん。あー、逃げようとか考えるなよ? 殺さなきゃいいってんなら」
 ガトリングカノンの銃口を向けて
「足の二本や三本は吹っ飛ばしてもいいって事だろ?」



 例えば、欲しかった服を買った時。異国の料理や、流行りの音楽、話題の漫画、まあ何でも良い。関心の向かう先は様々であるが、新しもの好きでなくとも、新しい体験をすれば誰しも少なからず心が躍るものだ。
 そう思えば、メルティア・サーゲイトの機嫌にも想像が付くというものだろう。
 新たなユーベルコードを引っ提げて、新たな世界の先陣を切る。なるほど、『MODE VANGUARD』とはよく言ったもの。
 車なんかじゃあ相手にならない。当然だ。装甲車どころか、戦車を引っ張り出してもこの宇宙爆撃機には全く敵うまい。ましてやただの乗用車では。
 増設された四基の推進器が唸りを上げて、鈍色のゴーレムが空を往く。

 視界が揺れた。
 座席と補助拘束装置とに挟まれた身体が平静を取り戻すまで数秒掛かり、置かれた状況を理解するまでに更に数秒‥‥いや、正確に言うならば、今もまだ理解できていない。
 何だ、これは。
 空から降ってきた衝撃。ボンネットに突き刺さった金属の塊。赤い光が私を見ている。
 これは、アームドヒーローとかいう奴か?
「はい、お疲れさん。あー、逃げようとか考えるなよ?」
 ああそうか、逃げなければ。
 その為に仲間と、私は車を走らせて、銀行に、合流を。
「──」
 次いで紡がれた言葉が何だったのかは、よく覚えていない。
 ただ、戦争映画でも見た事がないような、おおよそ対人用とは思えない巨大な砲口が私に向いていて。
 あれが脅しであれ、本気であれ、私の命運がそこで尽きた事だけは間違いなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アベル・スカイウインド
フッ、ヒーローの真似事をするのも面白いか。ヴィランどもに一泡吹かせてやろう。

予めUC【竜翔】でビルの上に登って【視力】を活かしてまずは街中を観察しよう。
強盗して車で逃げるやつを発見したらUC【竜撃】でひとっ跳びして、車のボンネットあたりを攻撃して停止させる。

「お前たちのような奴でも殺すなと言われてるんでな、大人しく出てこい」

まあヴィランと言うからには抵抗してくるだろうな。その場合は槍の石突きで殴って気絶させるか。
全く余計な手間をかけさせてくれるものだ。


ロウガ・イスルギ
アドリブ・連携歓迎

目立つのは柄じゃない、地味に行くとするか
【不空羂索】にてフック付きワイヤー「グレイプニル」を
レベル数複製
念力で飛ばし車を追跡、可能ならば車を停止させる。
(一応周囲には気配り、出来る限り)
風の如く、槍の如く、蛇の如く
車体に絡みつきフックで路面にブレーキ
エンジンルームに突き刺さりエンジン停止させる、燃料注意
タイヤに絡みつかせロックさせる

はいそこ、「地味」とはなんだったのかとか言わないように

ヴィランがパニクってる隙にグレイプニルにて拘束しよう
「命と貞操は保証してやる。それ以外はお預かりだ、暫くな」



 春のまだ冷たい風にあおられて、二対の獣耳がぴくりと震える。
 風に乗って届いた言の葉を耳聡く捉えて、小柄な猫、もとい猫妖精が目を細めた。
 やや過激な語句が含まれていたようにも思うが、まあ口にするだけなら只だろうか。あるいは職業ヒーローであれば醜聞に気を遣うべきなのかもしれないが、真似事の臨時手伝いなら殊更に咎められる事もなかろう。
 ともあれ、他班は概ね穏便の範疇で仕事を終えたようだ。残すは、この区画を掃除するだけである。
 高層建築の屋上から眼下を見渡すと、目当ての車が吸い寄せられるように、計算してこの場に陣取ったのだからそうでなければ困るのだが、連なって近付いてくるのが見て取れた。いや、直前で一台が横道に逸れる。
 こちらが感付かれた気配はない。仲間の脱落を察して、その二ヶ所から距離を取る動き。
「では、俺が西を」
 大柄な猫、もとい白虎の獣人が隣から顔を出し、短く告げる。戦闘を本職とするだけあって、この辺りの判断は素早く、手続きに無駄がない。
 その足元で蠢くワイヤロープの群体に少しばかり興味をそそられたが、今はヴィランどもに灸を据えるのが先決か。
「承知した」
 それぞれの獲物を見定めて、音もなく獣が宙を舞う。

 屋根を、壁を、ビルの谷間をロウガ・イスルギが奔る。
 鋼索を手繰り、飛ばす、スタントマン顔負けのワイヤアクション。無用に目立つ事は好ましくなかったが、多少は仕方あるまい。いや、同輩の暴れぶりからすればこのくらいなら十二分に地味で通せる気もするが、その判断はひとまず置いておこう。
 何にせよ、渋滞を避けて目標を捉え続けるには、やはり上を取るのが手っ取り早い。彼我だけでなく、周辺の地形も把握し易くなり、例えばほら、こんな事も。
 念じると同時、逃亡者の動きが目に見えて鈍った。
 運転席の視点からでは何が起きたか皆目分からないだろう。先行させた不空羂索の第一陣が、影の如く路面を這い、潜んでいた事も。追撃の第二陣が、矢の如く空を切り裂いて、今まさに迫っている事も。
 情報の多寡で勝敗が決まると言っては過言だろうが、脳のキャパシティが許す限り握っておいて損はない。正しく使いこなせば、周囲の被害をゼロに抑えながら、制御を失った車両を無傷で停止させる事すら可能となる。
 移動用に手元に残していたグレイプニルで、ドアから躍り出た強盗犯を縛り上げれば、これにて完封、試合終了。
「命と貞操は保証してやる。それ以外はお預かりだ、暫くな」
 はて、貞操を保証しないヒーローとは、ヒーローと呼んで良いものか。そんな益体もない思考を過らせた彼の耳へと、遠雷の音が響いた。

 地に落ちた稲妻の正体は、誰あろうアベル・スカイウインド。
 竜狩りの騎士にしてみれば一般車の速度など止まったも同然で、竜の加護を得た愛槍にしてみればアルミの板など紙切れに等しい。
 動力を失った車体は、フィクションのように爆発炎上する事もなく、ふらふらと力なく静かに足を止め。中からは、同じくふらふらと力ない足取りで件のヴィランが歩み出た。
 投降の仕草に思わず拍子抜けするが、手間が減る分には構わないだろう。予定していた全員の拘束を確認、一件落着。

 そう、一件落着。今日はまだ、二件目がある。
 近くのビル壁へ、既にだいぶ見飽きた感のある暴走車両が突き刺さった。
 またかよ、と誰かが呟いて、追いカーチェイスの幕が開く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『暴走自動車超特急』

POW   :    クルマになんか負けない!力ずくで止めてやる

SPD   :    ハッキングだったらこっちが上!逆に操ってやる

WIZ   :    クルマなんて所詮機械!弱点調べて止めてやる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 あぁん?
 俺らじゃねぇよ。他人様を蹴落としたところで手前の懐が潤うわきゃねぇだろう。ちょっと考えりゃ分かんだろうが、その首に載せてんのは南瓜か何かかって痛ぇ痛ぇ痛ぇ止めろ畜生。
 ああ糞、とにかくだ。俺らはこの件にゃ関係ねぇ。一文の得にもならねぇモンに手を割けるほど大所帯じゃねぇし、ンな便利な裏技があるならもっと早くデコイに使うね。

 ‥‥だ、そうで。

 ああ、そうか。だろうな。ご苦労。
 犯人捜しは一旦忘れろ。
 全域に通達。市民の財産ではあるが、仕方あるまい。乗員のないものは潰して構わん。
 人命が最優先だ。それ以外は手段を問わん。ハッキングされた自動運転車両を余さず無力化せよ。
ビードット・ワイワイ
さて、これは如何なる術か。人無き車が走りけり
暴走させて意味があり?ただの破壊を望みけり?
それで叶う願いなら、他に術があろうに思い

ハッキングなぞ使わずともUCを活用せり
作りし銃器にて【スナイパー】、狙いて射貫くはエンジン部分
車であればそれで止まろう。止まらぬならばしょうがない
【二回攻撃】重ねてタイヤを撃ち抜きけり

ただの機械の分際で暴走するとは笑止
操る人がおりて動きし機械なら大人しく操られるままでおればよい


メルティア・サーゲイト
 またあスピード勝負か? じゃあ、もう一つの新技も使うか。
「MODE BOMBER、高速爆撃機形態だぜ!」
 さっきのは外付けブースターで無理矢理加速してるが、こっちは最初から高速飛行を前提にした形態だ、爆装も出来る。まー、その分色々と犠牲にはなるんだが。
「見せてやるよ、精密爆撃って奴をなァ」
 一応、後部のレドームで無人なのは確認。乗ってる奴は他に任せる。機体下部に一本だけ腕のように動かせる機構と、そこにレールガンを装備。飛びながらエンジンを狙撃してスマートに決めるぜ!
「あ、いっけねぇ」
 ま、外したら小型ミサイルで強引に黙らせるがなァ!



 さて、これは如何なる術か。
 突進するSUVを掴み上げて、ビードット・ワイワイは思索した。無人である。
 ただの機械に自然と生命が宿るとは考え辛い。何らかの手段で外部から制御されていると見るべきか。破壊こそが目的であるならば、これよりも適した手段が幾らもありそうなものだが。暴走させる事それ自体に意味があるのか、あるいは、意味を持たぬ文字通りの暴走なのか。
 ともあれ、やるべき事は明白だ。見れば同じ結論に至ったのだろう高速爆撃機が、背部バインダーより生成された翼を広げ、再び空へと舞い上がって行く。
 足回りを潰した一台目を路肩に寄せると、ウォーマシンは再度考えを巡らせた。推論を重ねても事件の裏に潜むものを読み取る事は叶いそうになかったが、しかし表に見える部分の理解を深めるには有用だ。
 例えば、動き。
 何者かがこの操作を行っていると仮定して、どうやらそれは完全にランダムではなく、状況判断に一定の規則性がある。
 いや、仮に全く無軌道な挙動であったとて支障はあるまい。この国は自動車先進国に数えられるが、古代帝国の技術水準から見れば所詮、ただの車に違いない。空を飛ぶ事も、地に潜る事も能わず、舗装道路を走るのみ。
「笑止」
 無辜の市民にしてみれば恐るべき脅威に違いないが、歴戦の猟兵の反応を振り切れるレベルにはなく。その証拠に、この威圧的な戦闘兵器が腕を向けた次の瞬間、視線の先にあった二台目が回転して街灯にめり込んだ。

 同僚が巨躯に見合わぬ軽快さで走り回り、奇怪なガジェットで的確に心臓部を撃ち貫く様をカメラの片隅に認識しながら、高空を鋼の翼が旋回する。
 最初こそ撃ち損じがあったようだが、着実に攻撃の精度を高めているようだ。これは負けてはいられないと、メルティア・サーゲイトは一本腕を動かした。
 仲間に対抗心を燃やす必要は全くと言って良い程度にはないのだが、困った事に競うべき相手が他にいないのだ。すわスピード勝負か、と気合を入れて飛び立ったものの、自動車のスピード自慢と航空機のスピード自慢とでは残念ながら勝負にならない事が程なく証明された。言わずもがな、電磁投射砲の弾速などとは比ぶべくもない。
 吊るされた二本のレールにエネルギーが流れ、更には挟み込まれた導体へと通う。捕捉、発射、着弾。土手っ腹に風穴を開けられて、鉄屑と化した眼下のセダンを見届けて、次。次。次。
「‥‥いっけねぇ」
 油断が過ぎたか。アスファルトに刻まれた破壊の跡を前に、慌てて踵を返そうとするワンボックスへと小型誘導弾を追加でプレゼント。
 考えなしの乱射と異なり、精密射撃の繰り返しでは幸福感よりストレスの方が溜まり易いようだが、とは言え下らないミスで被害を広げるのは本意ではない。気を引き締め直し、次の獲物へと狙いを定める。有人のそれへの対処を他所に丸投げした上で尚、まだまだ仕事が山と残されている事を、後部のレーダードームが知らせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アベル・スカイウインド
お次は暴走自動車だと?ヒーローってのは休む暇もないのか。

UC【竜閃】で俺のスピードを強化して【ダッシュ】で車を【追跡】する。元々スピードには自信があるが、それが強化されたんだ。どんなに車が速かろうが一瞬で追いつくだろう。
車の持ち主には悪いが、追いついたら槍で叩き壊して止める。気の毒にな…持ち主が自動車保険に入っていることを願う。



「ヒーローってのは休む暇もないのか」
 やれやれ、忙しい事だ。
 無論四六時中こうではなく、ヴィランが積極的に活動する理由があったからこそ今のこの繁忙期なのではあるが、現場で働く身としてはそんなものは何の慰めにもなりはしない。内心で嘆息しつつ、アベル・スカイウインドは暴走車両のサイドガラスを覗き込んだ。
 おや、人がいる。
 運転手だろう。この世の終わりが来たかのような顔で、実際当人にはそうなのだろうが、ハンドルにしがみ付く様が見て取れる。さて、どうしたものか、と考えている内に目が合った。
「‥‥自動車保険には入っているか?」
 とりあえず訊ねてみるも、想像通りと言うか何と言うか、返事はない。目を見開いて口をパクパクさせている。
 まあ、そうだろう。時速三桁kmで疾駆する棺桶に並走する化け猫を前にすれば、言葉を失うのも尤もだ。あちらの視点からでは知る由もない。この猫が名の通りに風の如き動きを身上とする事も、雷竜の力を解き放った彼が正しく雷霆と化す事も、今の彼がヒーローである事も。
 しかしそれを悠長に説明している暇はない。無駄に時間を過ごしては体力を消耗するばかりであるし、と言うかケットシーの身長で目線を合わせるのがそもそも辛い。自己判断で救助に入ろう。
 愛槍で勢い良く、犯罪者へのそれよりは幾分か優しく殴り付けると、目論見通りに車は減速、停止した。
 目を回す男がどうやら無事である事を確認。あとは保険に入っていれば大丈夫だろう。入っていなければ‥‥まあ、早めに助かったというだけでも恵まれているのではなかろうか。多分。
 まだまだこの街には、彼と同様の不幸に見舞われた者がいるのだ。猫の耳がピンと立って、竜騎士は再び地を翔ける稲妻となった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リューゴ・シュクロフト
「この俺に…騎兵である俺に対して、足で逃げようなんてよぉ…面白ぇじゃねえか!」

騎乗しているバイクをフルスロットルで駆け抜け、車両を見つけ次第、【残像1 】が発動する程の加速で並走する。

そして、【トリニティ・エンハンス】を発動し、ルーンソードに【炎の魔力】を宿す。

「機械ってのは、熱に弱いよなぁ…情報端末でも、武器でも、車でもな…困ったもんだよなぁ?」

市街地のカーブ、障害物、通りがかった人間。
その全てを己の操縦技術のみで躱しながら、炎を宿したルーンソードを車のエンジン部分に近づける。

「こっからが勝負だ!俺が操縦でヘマしてクラッシュするか、その車が熱でオーバーヒートするか!さあ、楽しもうぜ!」


ロウガ・イスルギ
アドリブ・連携歓迎

「止まらない車の方が動かない車より厄介だな、ま、仕事と行くか」

OK、ハッキングしようじゃないか。「切り刻む」の意味の方でな!
【不空羂索】使用、複製したグレイプニルを念力で操り
暴走車へ絡みつかせる
無人車ならば絡みついたワイヤーを高速で回転、ジグソーの如く
車体や駆動部分をバラす
有人なら……一応運転者、いたら同乗者にも負傷させないよう
電装系を狙って破壊し車を停止させる

「弁償はしてやれないが……請求先は見つけてやる、待っていろ」

ヒーローってのは楽じゃない、が、まあ悪くはない
目立つのは柄じゃない……が嫌いじゃない
この街が戦場ならば、傭兵が負けるわけにはいかない。
ヒーローならば尚の事。



「止まらない車の方が動かない車より厄介だな」
 なるほど、後者も迷惑には違いないが、衝突事故だので周囲を巻き込む危険はあるまい。そういう意味では今回の仕事はより厄介な案件であり、しかし前者の解決がより難しいかと問われれば、どうやら人それぞれであるらしい。見れば、そこの彼にとってもそうであるようだ。
「この俺から、足で逃げようなんてよぉ‥‥」
 その声色に含まれたのは意気であり、余裕であり。駆動音に次の句が掻き消されたが、少なくとも後ろ向きなものでない事は感じ取られた。
「ま、仕事と行くか」
 若い騎兵に触発されるまでもなく、やる事は決まっている。銀の風に続いて、白の風が混沌の坩堝へと踏み込んで行く。

 いざ身を投じてみれば、街は思った程には混乱していなかった。市警の仕事が早かった事に加えて、良くも悪くも市民がヴィラン慣れしているらしい。早々に安全圏へと退避して、見慣れぬヒーローを記録に残さんとカメラを向ける者すらあるようで。
 進路上を横切る人影を目にする事はついぞなく、障害物らしい障害物と言えば、転倒して中身を撒き散らしたゴミ箱くらいのもの。こうなればリューゴ・シュクロフトの道を阻むものは皆無と言って良い。銀の翼が残像を残し、市民の期待する写真を一枚駄目にして、ついに獲物を射程に捉えた。
「機械ってのは、熱に弱いよなぁ?」
 科学の徒が掲げた剣に刻まれたものは、意外にも神秘の文字。ごう、と炎の魔力が逆巻いて、まだ肌寒い空気が真夏のそれへと姿を変えた。
「情報端末でも、武器でも」
 無論、車でも。
 赤熱の刃を心臓へと圧し当てられて、鉄の馬車が悲鳴を上げた。
 自動運転機能を搭載したこれは自動車の歴史上でも最先端のものと呼んで差し支えなかったが、車は車だ。風雨ならまだしも、炎の中を走り抜けるとなれば局地用の車両でも無事には済むまい。ましてや大衆車が、内臓を直に焙られるとあれば。
「俺が先にヘマしてクラッシュするか、そっちが先にオーバーヒートするか! 勝負と行こうか!」
 熱く荒い言葉に反して、その操縦は存外冷静で。チキンレースの行先は、もはや決まっているように思えた。

 まず置き去りにされたものはマフラー。次いでブレーキランプが弾け飛び、スペアタイヤが転がり落ちた。
 鉄騎の斬らない剣技とは対照的に展開する、鮮やかな解体ショー。ハッキングしようじゃないか、とはロウガ・イスルギの言である。かの虎は語学と冗句にも堪能だ。
 兇器の正体は、彼の愛用するグレイプニル。時に丁寧に、時に力任せに、高速回転するワイヤーがあらゆる部位を削いで落とす。無人である事を確認したからこその攻勢ではあるが、こんな恐ろしいもので縛られていたと知れば、先の強盗犯も泡を食うに違いあるまい。
 破壊の風が吹き荒れて、後に訪れたのは静寂。
「請求先は見つけてやる」
 かつて車だったものを見下ろして、我ながら派手にやったものだと感心しながら呟いた。弁償は兎も角、それくらいのアフターケアは請け負っても良いだろう。ヒーローってのは中々楽じゃないが、そういう仕事も嫌いではない。
「‥‥後でな」
 静寂の質が、変わる。待ち望んだ平穏は一瞬。張り詰めた気配が、嵐の到着を告げていた。
 全く、楽じゃない。しかしこの街が戦場ならば、傭兵が負けるわけにはいかない。
 ヒーローならば尚の事。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『アシュラレディ』

POW   :    阿修羅旋風
予め【六本の腕に持った刃物を振り回す】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    ブレイドストーム
自身が装備する【愛用の刃物たち】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    シックス・ディフェンス
対象のユーベルコードに対し【六本の刃物による連続斬撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:otomo

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 散歩でもするように、それはふらりと現れた。まだ散乱する残骸を、何でもないかのように踏み越えて。
「おや、おやおや」
 猟兵へと向ける視線は、好奇。形容するならば、新しい玩具を見付けた子供のそれ。
「おやおやおやおや」
 アシュラの名に違わぬその姿。六臂にそれぞれ携えた刀身は、明らかに護身用で済ませられるものではなく。
「今回は、活きが良いのがいるじゃあないか」
 前回は期待外れだったと、言外に匂わせるその台詞。そうだ、彼女が。
「ちょっとばかり遊んでおくれよ」
 握手でも求めるように、気軽な調子で殺し合いを望む、こいつが。こいつこそが、ヒーローの敵だ。
メルティア・サーゲイト
「おう、おうおう!」
 空中で飛行パーツをパージ、人型形態に戻りスーパーヒーロー着地だ!
「ドーモ、トリガーハッピーです。遊ぼうぜ、お前マトな!」
 どう見ても近接戦闘型だよなァ。ま、遠距離から狙い撃ちでもいいが派手にやろうぜ。
 両手にガトリングショットガンをバインダーから引き抜いて装備。銃弾の嵐を吹き付けるぜ!
「一発の銃弾は切り払えても、十発の銃弾はどうだ? 百発は? 何だったら千発くれてやるぜ!」
 この類には面制圧力のショットガンだ。どんな達人だろうが吹き付ける嵐を全て防ぎ切るのは無理ってモンだろう? あらかじめ振り回す隙なんざ与えるかよ、ガトリングの連射力ナメんな。


アベル・スカイウインド
フッ、いいだろう。だが俺は遊びでも手は抜かんぞ。そのつもりでかかってくるんだな。

やつの攻撃を避けて懐に潜り込む!
UC【竜慧】で飛んでくる刃物を回避しながら【ダッシュ】で接近し6本腕の攻撃に合わせて【カウンター】の攻撃を叩き込む。
可能ならば致命傷となる急所を狙いたいところだが、無理せず後続のために厄介そうな腕の無力化を狙うのも手か…状況次第だな。



「いいだろう。だが」
 響く衝突の音。飛び散る火花。
 ぶつかったものは、闇色の刀と空色の槍。鬼人の技と騎士の技。修羅の女が口角を上げて、妖精の男が目を細めた。
「俺は遊びでも手は抜かんぞ」
「そうこなくっちゃあ!」
 三対の刃を振り抜いたのがアシュラレディであり、その衝撃に乗って距離を取ったのがアベル・スカイウインド。
 出会い頭の事故はどうやら互角。あちらさんがそのつもりになったのかどうかは分からぬが、このまま至近で斬り結んでも埒が明かぬであろう事はどうやら分かった。手数の差が効いている。一度仕切り直しだ。
 男が地を蹴ると、そうはさせじと女が笑う。
 細身のもの、幅広のもの。真っ直ぐなもの、曲がったもの。切断するもの、殴打するもの、刺突するもの。六つの刃が無数の刃となり、風を斬って嘶いた。
 一撃が道路を穿ち、続く一撃が交通標識を圧し折り、更なる一撃がファストフード店の看板を階下に叩き落とす。剣の嵐が引き起こす破壊の跡。それはその悉くが必殺の威力を秘する事を雄弁に物語り。
「遅すぎるな」
 しかしそれだけの暴威を以てしても、アベルの影には届かない。
 身を翻して唐竹割りを、宙返りで横一文字を、あらゆる剣戟を潜り抜ける竜の歩法。
 言葉ほどに剣速は遅くはなく、妖精の体躯も見失うほどに小さくはない。説明の付かぬ達人の技芸に、オブリビオンは喜びの色と共に念力を強め。
 血飛沫が散った。

「やるねぇ」
 斬られたものは怪人の腕。並みならぬ技量を持つ強敵ではあるが、遠隔攻撃の制御に注力した隙を逃す猫の眼ではない。
 欲を言えば急所を突きたかった所だが、まあ及第点だろう。自分一人で全てをこなす必要はないと、全身の毛が伝えている。
「おう、おうおう!」
 竜騎士だけが気付いた微かな空気の震えは、一秒もせぬ内に突風へと変じて街道を襲った。
 爆音が轟き、刃の群れが落とす影が倍になり、その主が降り注ぐ。最初に主翼。次いで門外漢には見分けのつかぬ幾つかの部品が路面にばら撒かれ。
「ドーモ、トリガーハッピーです」
 最後に降り立った衝撃、膝に悪そうな姿勢で降着した機兵が告げる。二陣、メルティア・サーゲイト。

「遊ぼうぜ、お前マトな!」
 猫妖精が信号機に尻尾を引っ掛け、器用に跳躍、射線から逃れたのを見届けて。言うが早いか、速射砲が火を噴いた。
 万能生成機から現れたものは、多銃身式の火砲。本来ならば戦車の類に向けて運用されるべきものだ。対人用の銃弾一発が齎す被害を思えば、これが引き起こす災禍は察するに余りあろう。
 しかしながら、常識から戦力を推し量れないのがこの界隈。簡単にミンチが出来上がる筈もない。
 阿修羅の剣が旋風を巻き起こし、閃く。迫り来る数十数百の軌跡を、その一射一射が散弾である事すら見極めて、悉くを斬り落とす人外の技。ショットシェルの放射範囲は素人が思う程に広くはないが、刀剣で防げる程に狭いかと問われれば、答えは否だ。眼前のマトも尋常のものではない。
「ヒャアーッハー!」
 それでも、トリガーハッピーは止まらない。
 連射力ナメんな、とは彼女の弁だ。回転式機銃と言えば、近代のそれの発射速度は概ね毎分千発を越え、多いものでは六千発にも達する。たった六本の腕で延々と捌き続けられる道理はない。まして五本では。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メルティア・サーゲイト
 散弾を切り払うかよ。予測してなかった訳じゃないが
「楽しくなっちまうぜェ」
 そのままANNIHILATORを継続だ。弾かれる確率は上がるよなあァ、当然。押されているかのように少しづつ後退してやれば、距離を詰めて斬りかかって来るよな……私の狙った場所にな。
「慣れってのは一番突きやすい隙なんだぜ」
 一発だけ単体弾を装填。当然これも切り払われる。避けようとは考えないよな。だがこれはただの銃弾じゃない、染料の詰まったマーキング弾だ。斬られりゃ中身は斬った奴にぶっかかる。
「三方向からの同時射撃を捌けるかぁッ!」
 ここでパージした時に転がしておいた五六連小型ミサイルユニットを遠隔起動だぜ!



 兵数、環境、練度。戦の趨勢を決めるものは多々あるが、その中の一つに射程がある。
 刀より槍、槍より弓。一方的に殴り続ける限り敗北はなく、誰もが殴られない為に心血を注ぐ。
「ちょこまかと逃げてんなよ」
 車両を踏み付け、電子看板を蹴り飛ばして、アシュラレディは街灯の上に降り立った。
 彼女が地上に降りないのには理由がある。無論、何とかと煙は高所を好む、という類のものではない。
「ハ。ヴィランやる方が向いてんじゃないのかい、アンタ」
 相対する機械巨人が、言動は兎も角として、真っ当にヒーローを行っているという事実。つまり、撃たざるべき状況にあれば、攻撃の手を緩めるという事。そして、先刻の暴走車騒ぎを恐れて一階からは人が散ったが、上階には掃いて捨てる程に残っているという事。
 こうなればもはや修羅の間合いだ。かの絡繰人形は見掛け通り鈍重。後退は叶わず、至近へと詰め寄った魔人は苦し紛れに放たれた迎撃の一発を悠々と切り払い。
 狙い通り。そう鉄巨人は笑った。

 機械頭脳が読みを外した理由は一つ。火力があり過ぎたから。
 当然だ。更地にする気でもなければ、市街地で軽々に使うべき兵装ではない。
「油断ってのは怖いよなァ」
 とは言え、結果的には計画通り。ペイント弾を斬って染料を浴びた顔面は、ゴーグル越しでは完全な目潰しとはいかないが、予定していた一撃に加えて二撃目を入れられる程度には十全の隙を生み。
「ガ…ッ!?」
 マトが宙を舞った。
 質量は力だ。ユーベルコードの飛び交う埒外の戦場では忘れられがちな法則ではあるが、身の丈程もある鉄塊で蹴られれば大概のものは飛ぶ。そして、そう、その位置だ。ケチの付かない位置。
 道程は異なったが、ストレスを溜めた分だけ発散する楽しみも増すというもの。
「群がって、食い尽くせッ!」
 飛行ユニットの残骸から応じる羽音の重奏。
 砲火が空を裂き、五十六の虫群が集る。真昼の空に、大輪の花が咲いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

源・ヨーコ
ヒーロー……ってのはガラじゃないんすけど、辻斬りを見過ごす訳にはいかないっすね。
存分にやらせてもらうっすよ!

〇POW
6本腕に対しては、[2回攻撃]を駆使して手数でカバーするっす。
基本的に狙うのはアシュラレディの腕。長物にはリーチも速度も敵わないっすから、攻撃に対しては内側へ踏み込んでブロック。その際にアシュラレディの腕を肘でガードしてカウンターを狙うっす。
密着する程近づけたなら、拳を直接身体に押し当ててのブレイズフレイムっす。普通に炎を飛ばしても6本腕で切り裂かれそうっすけど、密着からならどうっすかね?



 まず風切り音が、続いて誰かの悲鳴が耳を打った。
 一つ目は、眼前のヒーロー狩りが振るう兇器。二つ目は、それを見咎めた市民のものだろうか。どうやら、傍から見るに己は危ない橋を渡っているようだと、源・ヨーコは自覚した。
 なるほど確かに。六本の腕でこれ見よがしに刃を振るうヴィランに対して、彼女の武器は空手だ。素人目でなくとも、悲鳴の一つも上がろうというもの。
 実際、つい先刻頭上を掠めた一閃も、直前まで首のあった場所を通り過ぎていた。ここに至るまでの攻防により、かの修羅にも相応のダメージが蓄積しているらしい事は見て取れたが、本調子から遠ざかろうとも化物には違いない。一つ対応を誤ればどうなるか、想像したくない目に遭うだろう事は容易に想像が付く。
 脅威の程を改めて認識した上で、ヨーコは一歩を踏み込んだ。
 ヒーローってガラじゃあない、そう自認しているが、それでも辻斬りを見過ごす選択肢は彼女にはない。ついでに言うなら、他の誰かだけでなく、我が身を斬られるなどという選択肢も勿論ない。
「存分にやらせてもらうっすよ!」
 ならばどうするか。答えは明白だ。

 剣嵐が吹き荒れる。金属のぶつかり合う快音が重なって響いた。期待した結果、ではない。
 致命の一撃、否、同時に見舞った三撃は、刀の腹を殴り付けられてその悉くが空を切った。文字通りの手数の差を、二倍三倍の働きで補う、単純だが恐るべき技。
 オブリビオンは考える。小娘の姿からは予想もしなかった手腕に驚きはしたが、まさかそんな神懸りがそう何度も続くまい。更に一歩を迷いなく進む対手へと、続けて二撃。予測通り、絶技の快音は再び鳴らず。
 ──だが、しかし。瞠目したものはヒーローではなく、衝突したものは得物ではなかった。
 感触は下膊。至近に潜り込んだ少女の肘が押し止めている。これはもはや、紙一重で死を躱す必要のない距離であり、即ち。
「密着からなら」
 長物でなく拳の距離。そう理解するより先に殴打の衝撃が襲い。
「どうっすかね?」
 言葉の意味を理解するより先に、紅炎が爆ぜた。アシュラレディの中心で、地獄の蓋が開く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクシア・アークライト
・【千里眼】を用いて、視界の通らない場所から敵を確認。

あいつは、事件の対処に現れたヒーローを闇討ちしているオブリビオンよね。
ってことは、車をハッキングして暴走させた奴は別にいるわけね。
悪いけどさっさと終わらせて、そっちの犯人を捜しに行かせてもらうわ。

・誰かを人質に取られたり、逃亡されたりしないように、念動力を全開にして敵の動きを封じ込め、又は鈍らせる。
・【精神感応】を用いて、仲間に敵の動きを鈍らせていることを伝え、その間に倒してもらう。

見えないところからの攻撃は卑怯だったかしらね。
ま、自分より弱いヒーローを闇討ちしているような人には、お似合いのやられ方じゃない?



 閃光が奔る。常人の眼には捉えられぬ一瞬の出来事を、遅れて散った火花が教えていた。剣戟の交錯、その数二回。
 そう、二回。六臂の怪人が暴れたにしては、少しばかり物足りない数字だと言って良く。当人にしてみれば、少しばかりどころの話ではない。
 ち、と。女は不満を吐き出した。まさか一人も仕留められないとは、全く誤算である。だが、歯応えのある遊びではあったか。後の楽しみが増えた、ここはそう前向きに考えておくとしよう。
 潮時だ。鮮やかな髪をなびかせて、摩天楼の谷間をオブリビオンが跳んだ。
「な‥‥に?」
 跳んだ、筈であった。

 アシュラレディ。見た目の通り多数の刀剣を同時に扱う、近距離格闘のスペシャリストであり、見た限りでは斬り合いを楽しむ戦闘狂。
「なるほど、大体分かったわ」
 大体。
 例えば、他のヴィランを焚き付けて直近の騒動を引き起こしたのか、あるいは偶然居合わせただけなのかは定かでないが、少なくとも自動車をハッキングしたヴィランが別にいる事。
「悪いけど」
 例えば、あいつは自身の楽しみを優先するばかりに、退き際を見誤った事。
 例えば、あいつは今も、超感覚により視られていると認識できていない事。
「さっさと終わらせるわ」
 いつまでも奴だけにかかずらっている暇はない。言葉と共に、アレクシア・アークライトの念動力が牙を剥いた。より正確に表現するなら、既に牙を剥いていた口が、言葉と共に閉じた、と形容すべきだろうか。それ程に襲撃は速く、静かで。不可視の力場によりアスファルトへと縫い付けられた魔人は、指一つ動かす事も叶わない。
 細い身体のどこにそれだけの力が秘められているのか、驚くべき圧倒。否、当然の結果だった。万全の状態で、視界外からの完璧な奇襲。その上、自らが止めを刺す必要もないとなれば、失敗する方が難しい。
「‥‥卑怯だったかしらね?」
 現場の仲間への念話を終えて、つまらない辞世の句を千里眼から読み取ると、少女は小さく呟いた。それとも、悪党には似合いの末路だろうか。
 どちらにせよ、卑怯だとして手を抜く程にアレクシアは甘くはなかった。無論、残る獲物を逃す程にも。
 ビルの陰を抜け出して、猟犬は次の仕事へ向かう。


 最近のニュース。
 一つ、あの日の顛末。一連のヴィラン騒ぎは、その日の内に余さず解決したらしい。こんな筈ではなかったとか何とかと、天才ハッカーとやらが早口に捲し立てていた。
 一つ、あの日の噂。即ち、ヒーローが斃れた、とのそれは事実であったらしい。治療の為にどこぞへ入院しただか何だかと、後にテレビで流れたのだと新入りが口にしていた。
 ‥‥ああ、最近の、と言ったが、嘘だ。結構経った。それが未だに更新されていないだけであり、更に言えば私が塀の外に出るまで最新であり続けた。
 この世に悪の栄えた例なし、と言うには聊か治安の悪いところがあるが。正義は死せず、街は今日も概ね平和だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月15日


挿絵イラスト