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銀花ほころぶ月の夜

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●夜闇に咲く
 その森には、満月の夜にだけ咲く花があった。
 小さな湖の畔に咲くその花は、月光に照らされて淡く銀色に輝く鈴蘭。
 アックス&ウィザーズのとある街を拠点としている冒険者達は、その花が銀鈴蘭という名前を持ち、以前からそこに群生していることを知っていた。
 また、その花の咲く森には、武具の材料となる虫が居る事も知っていた。
 ゆえに、時折鍛錬と収益を兼ねて狩りに出かけては、満月の折には戦う日々の労いに花を楽しむひと時に浸ったものだ。
 ――今まで、なら。

●異形の存在
「アックス&ウィザーズにてのオブリビオン討伐依頼、ご興味のある方はいらっしゃいますか」
 涼やかな声で行き交う猟兵たちへと声をかけたのは、クリスタリアンの女性グリモア猟兵。
 幾らかの関心が向くのを見留め、一度礼をすると、行き先で起きた『事件』について語り始める。
 それはある昼下がりのことだった。いつものように虫を狩りに来ていた冒険者は、今日が満月であることを思い出し、仕事が終われば花を楽しむつもりでいた。
 しかし、それは叶わなかった。
 いつもならばさほど数を見ず、多少骨は折れても程々の成果を上げることができたその森で、異様なほどに、虫が群れていたのだ。
 一体一体が分厚い甲殻に覆われた虫の群れを打倒することは叶わず、冒険者は命からがら逃げ延びるのがやっとであったそう。
「この件に関連した予知が視えておりましたので、詳しくお伺いしましたの」
 その冒険者が遭遇したのは甲鎧虫と呼ばれる虫で、以前からこの辺りの森に生息していたモンスターの一種である。
 普段は一匹をこちらから探して狩る程度で、よほどの下手を打たない限りは冒険者を自称する者であれば対処できていた。
 だが、その虫が突如大量に群れていたのだ。
「どうやら強力なオブリビオンが森に現れ、甲鎧虫を凶暴化させているようですの。放っておけば、森から侵攻してくる可能性も否めませんわ」
 それはどこから現れたか。呪いの金の骨を被った二足歩行の魔物。
 元々はヒトであったようだが、言語を介する程度の知性と金品を奪う程度の目的だけを残して堕ちた成れの果て。
 戦いの折には呪物の効果に加え、獣じみた行動も取るであろうとグリモア猟兵は言った。
「甲鎧虫の個体能力自体が上がっているわけではありませんが、元より並外れた防御力を持つ魔物ですの。数が揃えば厄介ですわ。十分お気をつけくださいまし」
 引き締めた表情で告げて後、ふと、思い出したようにその顔を緩め、微笑んだ。
「そういえば満月の折ですわね。月が昇るまでに事態が収束すれば、森にある湖で、銀鈴蘭が咲くはずですわ」
 この辺りの冒険者たちに倣って、戦いの労いに、花を愛でてくるのも良いだろうと彼女は告げる。
 それから、ゆるり再び礼をした。
「わたくしはソフィア・エーデルシュタイン。お力添え頂ける方は、どうぞわたくしに、声を」
 送り出す準備は万全だと、ソフィア・エーデルシュタイン(煌珠・f14358)は力強く頷いた。


里音
 アックス&ウィザーズでのお仕事です。ソフィアのお披露目も兼ねて。
 集団戦、ボス戦、日常という流れになっております。

 第一章では甲鎧虫との戦闘となります。
 硬くてなかなか倒せない敵がたくさん居る、という状況への対処ができていれば苦戦はしないと思われます。

 第二章はボスとの対峙、第三章は銀鈴蘭を眺めてのんびり。
 いずれも章開始時点で冒頭文章を投稿予定です。プレイングの参考にどうぞ。
 第三章では銀鈴蘭の場所は特定されておりますので、探索行動等は必要ありません。

 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『甲鎧虫』

POW   :    鎧甲殻
対象のユーベルコードに対し【防御姿勢】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
SPD   :    穴掘り
【地中に潜って】から【体当たり】を放ち、【意表を突くこと】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    球体変化
【闘争本能】に覚醒して【球状】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。

イラスト:すずしろめざと

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フィリア・セイアッド
きれいな花の咲く森…素敵ね
きっと冒険者さんたちの心を癒す風景でしょう
そんな場所を守るお手伝いができれば
被害がでないうちになんとなしなくちゃ

「WIZ」を選択
菫のライアをつま弾き仲間を鼓舞する歌を
どうか誰も怪我をしませんように
祈りを込めて
敵の攻撃は基本宙に飛んで避ける
無理な場合や怪我をした仲間が後ろにいれば オーラ防御で対応
球状になっているときは 固そうね
でも いつまでもそのままではないだろうから…
落ち着いて状況を見る
第六感も使い 敵の隙をついて「鈴蘭の嵐」を
できるだけ多くの敵を巻き込むように
怪我をした仲間には「春女神への賛歌」で回復


橘・尊
無粋な事をする…満月の夜にしか咲かない貴重な花を楽しむ時間を返してもらおうか

WIZ

どれだけ数がいるかは分からないから慎重に仲間と周りに注意を促し、フォックスファイアを放つ

万が一俺の焔から逃れられた敵がいたなら第六感で避け、もう一度放つ

俺の焔からは逃れられないよ、悪いけど大人しくやられてな


(アレンジ、共闘大歓迎です)


サオササ・テセル
グリモア猟兵さんの話を聞きながら私は心中でお母さん代わりの主任に謝る。多分あの人が望むのは平穏だけど、私も怖くても進もうと思ったから。だからこれはその1歩目/穴掘りの甲鎧虫を狙う/奇襲を警戒しながら仲間と連携・追撃・装備5の【ロープワーク】での転身や敵を立てや足場に利用して自衛・装備6と2によるL字や十字砲火で状況制圧に勤める。/装備6はは自立浮遊で操作可能なので味方への連携や助ける際の攻撃、後方配置による自衛など状況を選ばず利用していく/万が一のための零距離全武装一斉攻撃も考えるけどそこまで追い詰められるとは思いたくない。皆で乗り越えなきゃ。




 キチキチ、ギチチ……。
 硬い殻を持つ虫が、耳障りな音を立てている。
 ひしめき合うような音は、それだけで異様さを醸し出しており、知らず訪れたならば息を呑んで引き返していたかもしれない。
 だが、そこに居るのはその異様を取り除くために立ち上がった者達だ。
 元は静かな森だったのだろう。思い馳せ、フィリア・セイアッド(白花の翼・f05316)はほんの少しだけ憂いたように瞳を伏せる。
 彼女にとって、森とはごく身近なものであり、この森のように冒険者の憩いの場となるような場所ならばなお、守りたいものであった。
「被害がでないうちになんとなしなくちゃ」
 今回遭遇した冒険者は運良く助かったのだ。その幸運が途切れる前に、異様の元凶を、妥当せねばとフィリアは意気込む。
 橘・尊(浮雲・f13751)もまた、満月の夜にしか咲かない銀鈴蘭を愛でる時間を侵す無粋さに嘆息しつつ、甲鎧虫と対峙した。
「貴重な花を楽しむ時間を返してもらおうか」
 呟く声は、短く。くるりと返した手のひらに狐火を浮かべた尊は、もぞもぞと地面を張っている虫めがけて、炎を放った。
 静かな森に突然放たれた炎に、群れていた虫達は驚きからかパッと散開する。
 自分達を害する存在に気づき、鳴き声ともつかない音を立てて蠢くが、その不快な音を掻き消すように、軽やかな歌声が響き渡った。
(誰も、怪我をしませんように――)
 敵対者の居る戦場に置いて、フィリアの願いはそうそう叶えられるものではない。
 けれど、だからこそ『祈り』、『鼓舞』する。そして、備えるのだ。
 守ること、癒やすこと、そして勿論、戦うことに。
 尊の炎が虫を焼き、悶えるように転がっては草を焦がす。
 だが、焦げた匂いは、草のそれではなくて。鼻腔によぎったその匂いに、サオササ・テセル(サイボーグのブラスターガンナー・f15384)はかすかに瞳を細めた。
(……ごめんなさい)
 その謝罪は、自分の母親代わりである開発主任へ向けてのもの。
 あの人がサオササに望むのは、きっと平穏。だが、サオササは猟兵として戦うことを選んだ。
 怖くても、それが、己にとっての前進となると信じて。
 決意と共に、サオササは内蔵されたワイヤーを伸ばした。ぴん、と張ったワイヤーを足場にしながら、地面に潜った虫を警戒する。
 手には熱線銃、傍らには電磁銃を浮遊させながら、注意深く地面を観察していると、不意に、足元の土がぼこりと盛り上がる。
「――そこ!」
 ワイヤーの反動で地面からの体当たりを躱し、お返しとばかりに二種の銃をお見舞い。
 ギィ、と短い悲鳴をあげて地面でじたばたするばかりとなった虫へ、追い打ちをかけるのは無数に撒かれた炎。
「聞いたとおり数は多いけど……攻撃が通れば、そう難しい相手でもないね」
「そう、ですね」
 くるりと丸まった虫からの突進を躱しながらの尊に、フィリアは同意を返しながらも冷静に観察する。
 尊の狐火は数体の虫を順調に焼き払ったが、それを観察し、相殺すべく防御の姿勢を取り始める個体も少なくはない。また、その姿勢のまま刃物のような触覚を伸ばして攻撃されるのは厄介である。
「油断せず、行きましょう」
「勿論」
 ふわりと軽い調子でも、そこに一切の油断はない。
 もう幾度目かになる炎を浮かべ、尊は攻撃姿勢で防御を行っていない虫を狙いすまして放つ。
 その狙いの精度を上げるべく、突撃してきた敵を中空に浮かんで躱したフィリアは、鈴蘭の花びらを展開させた。
 できるだけ多くの敵を。広がる花は、満月ではなく陽光を浴びて咲く真白。
 硬い殻の隙間にさえ斬り込んでくるような花びらに足を止めて身じろげば、ここぞとばかりにサオササが銃を放つ。
(この調子なら、使わなくても済む……かな)
 追い詰められれば全武装一斉射撃による一掃を狙うことも思案したサオササ。だが、相対しているのは己一人ではない。
 広く牽制の役目も果たしているフィリアに、範囲から火力までをカバーする尊。共に戦いながら、一発一発きちんと狙って銃を放つことを心がければ、敵は、倒れてくれる。
「俺の焔からは逃れられないよ、悪いけど大人しくやられてな」
 焼けた個体が動かなくなるのを見届けて、次へ。
 焦げた匂いを掻き消すように爽やかな風が、鈴蘭をはらんで辺りを包む。
 踏み出した一歩が成果を結ぶのを実感した。
 森の異様は、少しずつ、けれど確実にその数を減らしていた――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

別府・トモエ
「ザ、ベストオブ1セットマッチ、トモエサービストュー……プレイ」
びっくりだね、魔物退治?って言われて来てみたら、やっぱりテニスの試合じゃない
斬新だよね、対戦相手はボールなんて
こっちの【サーブ(先制攻撃)】から試合開始ね
丸まったボール(虫)を叩いてスライスサーブ
別のボールに当たって跳ね返って来たとこを【ラケット(武器)受け】でまた別のボールへ【返球(カウンター)】
【ダッシュ】と【スライディング】 で縦横無尽の【パフォーマンス】を見せたげる
不規則な軌道を【視力】で【見切って】
【誘導弾】で味方への【援護射撃】
ダブルスも得意なんだよ
「ゲームセットね」
え、私が何者かって
「プロテニスプレイヤーだけど?」


緋翠・華乃音
さて……特に何か恨みがある訳でもないが、これも仕事だから仕方無い。


武装"to be alone"の射程範囲内で戦場を広く把握出来る場所(樹の上など可能な限り高所且つ遠距離)に目立たぬよう潜伏。
伏兵として最初は敵を観察しつつ様子見・情報収集をしつつ、敵の攻撃パターンや回避行動等の情報を収集・分析し、見切りを行う。
合わせて常に優れた視力・聴力・直感を生かして戦況を把握しておく。
敵の注意を極力引かぬよう、猟兵達への援護狙撃に徹する。
戦闘に有利になる技能は適宜使用。

通常弾で効果が薄いなら貫徹弾や高速弾、他にも色んな弾頭を試してやろう。
……まあ、ユーベルコードを使えば事足りるだろうが一応、な。




 猟兵達が甲鎧虫と相対するさまを、緋翠・華乃音(Lost prelude.・f03169)は少し高めの樹上から眺めていた。
 しっかりと敵の動きを把握し、確実に仕留めていくための観察。
「さて……特に何か恨みがある訳でもないが、これも仕事だから仕方無い」
 情報は十分だ。
 狙撃銃をセットして、華乃音は戦況に一手、投じた。
 敵を確実に攻撃するための潜伏状態から放たれた銃弾は、地面を張っていた敵が攻撃のために身を起こした瞬間、甲殻に覆われていない体躯を正確に撃ち抜く。
 射程内、なるべく遠距離を選んでの狙撃は、甲鎧虫にその出処を悟らせないまま一匹ずつを確実に屠った。
 だが、甲鎧虫とて黙って駆逐される訳にはいかない。闘争本能を剥き出しに、くるりと球状に丸まって、射線を遡るように動き始めた個体を見留め、華乃音は試しに一発、通常の球を放ってみた。
 キン、と甲高い音。勢いを緩める程度はできるようだが、ダメージには至らない。
「流石にあの状態では効かないか……」
 ならば、と備えた貫通弾へと装填し直そうとして、ふと、気づく。
 新たな猟兵が現れたことに。
「ザ、ベストオブ1セットマッチ、トモエサービストュー……プレイ」
 華乃音の優れた聴覚は、かすかだがその猟兵が告げる声が聞こえる。
 聞こえるが、何言ってるかはちょっと分からなかった。
「びっくりだね、魔物退治? って言われて来てみたら、やっぱりテニスの試合じゃない」
 ひょい、と確かめるように後方を振り返ったのは、別府・トモエ(人間のテニスプレイヤー・f16217)。
 先程からこちらから攻撃を食らっていて、それに対処すべくこの虫は動いているらしい。
 虫、ではあるのだけど。
「斬新だよね、対戦相手はボールなんて」
 球体のそれは、トモエには最早ボールにしか見えていなかった。
 だって(他の猟兵を攻撃したり攻撃を受けたりして)ポンポン跳ねてるし、転がるし、丸いし。
 ボール以外の何物でもないですね?
「こっちからだね」
 完全に試合モードに入ったトモエは、華乃音を狙っていたはずの虫を、ラケットで打った。
 見事なスライスサーブは相手コート(?)に吸い込まれるように収まり、寄り集まっていた他のボール(虫)を弾き飛ばした。
 反動でぽーんと勢いよく跳ね返ったボール(虫)は、イレギュラーなバウンドをしていたが、トモエに捌けない球ではない。
 素早く駆け込み、綺麗なフォームで華麗に返球。
 時にはスライディングを駆使しながらも、確実に飛んでくるボール(虫)を打ち返していく。
 縦横無尽のパフォーマンスは、間違いなく戦闘だった。
 数瞬ばかりぽかんとした華乃音だが、暫しの観察で己がやるべきことは悟れた。
 トモエが打った虫が、虫の群れに叩き込まれた瞬間を狙って、弾かれてひっくり返った個体を撃ち抜く。
 それにより、イレギュラーだったバウンドが綺麗な放物線に戻るのを、トモエはほんの少しだけ口角を上げて見つめた。
「なるほど」
 シングルスから一転、ダブルスになったわけだ。
 トモエは確実に虫と虫をぶつけ合わせ、華乃音はそれをまた確実に打ち抜き、細かく調整していく。
 完全にボールにされている甲鎧虫達だが、叩き込まれる前に慌てて地面に潜ってみたりと対処はしていた。していたが、潜った後に出る先は、華乃音が遠距離からしっかり把握していて不意打ちは成り立たない。
 最初のように狙撃手である華乃音から狙ってみようと突進してみても、丸まったが最期トモエにボールとして叩かれる。
 そうして、最後の一体が残るのみとなった頃。ラスト一球、と、あえて通常弾で華乃音は虫を垂直に弾く。
「ゲームセットね」
 痛烈なスマッシュは、ボール役の甲鎧虫を、文字通り沈めた。
 地面にめり込んだ状態でぎゅるる、と数度回転してそのまま沈黙したのを確かめて、試合……もとい戦闘終了。
 居合わせた猟兵は、聞くだろう。トモエは一体何者かと。
「プロテニスプレイヤーだけど?」
 それ以外の何者でもないと、清々しいほどの回答が待つのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『呪飾獣カツィカ』

POW   :    呪獣の一撃
単純で重い【呪詛を纏った爪 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    呪飾解放
自身に【金山羊の呪詛 】をまとい、高速移動と【呪いの咆哮】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    カツィカ・カタラ
【両掌 】から【呪詛】を放ち、【呪縛】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:なかみね

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナミル・タグイールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 森が、ほんの一時静かになった。
 元の光景に戻っただけなのだが、その魔物にとっては『異常』な状態で。
 忌々しげにあげられたのは、獣によく似た咆哮。
「邪魔立てするか……ならば直接仕留めるまで!」
 低く唸るような声は流暢で。かつて知性があったことを伺わせるが、その思考は野蛮そのもの。
 ヒトから獣に成りかけて、成り損なったかのような異形は、両の手に滲む呪詛と、もっと単純な爪という凶器を振りかざし、猟兵たちへと襲い来る。
 知らしめてやれば良い。森にとっての邪魔者がどちらであるかを。
緋翠・華乃音
……思い掛けず面白い戦闘をさせて貰った。
まあ、それはともかく……次は多少なりとも本気を出さないとな。


基本的な戦術は先程の戦闘と同様。
直感と五感を生かして敵の行動を見切り、狙撃で確実にダメージを重ねていく。
――が、途中で戦法を変更。
狙撃手から暗殺者へと意識の切り替え。
気配と音を消して枝から枝へ――移動の軌跡は稲妻のように素早く、そして鋭く。
決して敵の視線上に姿を晒さないように虚空を縦横無尽。重力の軛を振り切るかの如き変幻自在。
武装"夜蝶牙"と"Gespenst."でヒット&アウェイ。一撃で致命へと導けずとも十重二十重の斬撃を。
そして敵の攻撃はユーベルコードで無条件に回避を行う。


サオササ・テセル
自滅への道ずれの為に突き進むいい迷惑。
理性がある分私の自我を生んだ末路わぬ者共もバカにしそうね。

呪飾解放を止める手段で追い詰め敵を封殺。

付かず離れずの間合いを維持し高速移動もロープワークで対処。
腕や手を射抜けるよう常に自立行動させる装備6と多角方面で照準し狙撃。
同行者の皆への救援も考える。

敵の攻撃の意を感知できるならその思惟を読んで散開を他の皆にも呼びかければ敵は各個撃破に回るだけでジリ貧になるかも。
敵の狙いは自爆に近そうと考える。

万が一に呪詛を食らうような事があっても私の場合はそれすら武器にできる可能性すらある。
【私の中で自我を生んだそれはあなたのような末路わぬ存在の先達】なのだから


フィリア・セイアッド
貴方があの虫たちを放ったの?
虫も花も…森も、人のものではないけれど
貴方が好きにしていいものでもないわ
誰も傷つけさせたりしない
まっすぐに相手を見て

「WIZ」を選択
皆さん、どうか無理はしないで
仲間に声をかけながら ライアを使って歌を歌う
森が元に戻るよう祈りをこめて
仲間の攻撃の援護(歌での援護射撃)
相手の手のひらに注意
オブリビオンの呪いを祓うよう 破魔の力をこめた歌を
敵の攻撃は第六感も使って回避
傷ついた仲間が近くにいれば オーラ防御も使って盾に
この綺麗な森には 月明かりとお花の方が似合うわ
あなたもきっと 過去にはそれを知っていたのに
怪我をした仲間へは「春女神への賛歌」で回復


別府・トモエ
「別府・トモエ……テニスプレイヤーよ。今日はよろしく!」
強そうなプレイヤーが来たね
……なんでラケット持ってないかな
スポーツマンシップに則って
「本気出すよー!」
テニスを極めた全国区プレイヤーにだけ許された【快刀乱麻の極み】の扉を開く
【サーブ先制攻撃】
【ショット誘導弾】
【ストローク武器受け】
【返球カウンター】
全てのプレーが今の私の限界を越える
テニスボールを打つ
戻ってきたボールをまた打つ
良く見て味方への援護射撃
【オーラ】を纏って身を守り
【ダッシュ】で動く
「……咆哮って要は空気の震えでしょ」
ラケットで捉えられないかな、あわよくば打ち返せないかな
「なんで負けたのか?……そりゃ、あんたがまだまだだからよ」


橘・尊
元凶のお出ましか…
アレに暴れられると厄介だな

周りの状況と仲間達の様子を伺いながら、後方よりタイミングを見計らう
第六感を信じ、破魔も念じながら【七星七縛符】を放つ
敵が捕縛から逃れても再度執拗に狙う

少しでも共に戦う仲間達の助けになればいい、と願いながら




 対峙した魔物は、猟兵達より一回りばかり大きく、獰猛な獣に似た雰囲気を滲ませていた。
「元凶のお出ましか」
 観察するような尊の呟きに、金の兜から鋭い眼光が応じる。
 しかし、それに怯むような理由は彼らにはない。真っ直ぐに見据える瞳で睨むように見つめ、フィリアはかすかに寄せた眉にて憤りを示す。
「貴方があの虫たちを放ったの?」
「放った……? いいや、鼓舞しただけだ。狩られるものを奮い立たせ、己の森を取り戻させたまで!」
 まるで己が崇高なことをしているかのような言い分は、しかし愉悦に満ちた表情により、心からの言葉でないことを認識させる。
 案の定、自身の口上の愉快さに堪らなくなったのか、魔物は牙を剥き出しにして笑う。
「所詮、虫は虫でしかなかったがなぁ」
 配下にするにも弱すぎた。わざとらしく落胆するような素振りに、きゅ、と表情を険しくしたフィリアは、竪琴を構え直し、短く息を吐く。
「虫も花も……森も、人のものではないけれど、貴方が好きにしていいものでもないわ」
 この異形が現れなければ、この森でひそりと生きる甲鎧虫と冒険者達は、狩られたり追い返されたりの均衡を維持しながら在り続けただろうに。
 憤る心は鎮めて、代わりに紡ぐのは凛と鋭い歌声。
 攻撃性を持つ音色をBGMに、トモエは、すっ、と魔物の前に立った。
「別府・トモエ……テニスプレイヤーよ。今日はよろしく!」
 テニスの試合には集中できる静けさがつきものだが、美しい音楽になら気分も乗るものだ。
 ……だが、楽しい試合を前にしていると言うのに、相手はラケットを所持していないではないか。
「ま、それだけ大きな手ならラケット代わりになるのか」
 不戦勝でハイ終わり、とならないのならば、これも一つのパフォーマンス。トモエに出来ることは正々堂々スポーツマンシップに則って戦うことだ。
「本気だすよー!」
 ぽーん、と高くあげられたテニスボールを、打つ。
 華麗なフォームからのサーブによる先制攻撃を、なんと魔物は握り潰した。
「あ、ちょっと」
 打ち返してこないのであれば、繰り返しサーブを叩き込むまで。
 虫達の時と同様、完全にテニスの試合モードなトモエを見て、華乃音はいっそ安堵した。
 相手が誰であれそのスタイルは変わらないのか、と、先の戦闘が思いがけず面白いものになったことをちらりと思い起こして。
 それから、己もまた変わらぬスタイルで、狙撃を行った。
 先の戦いを眺めていたのだろう。潜む気配も薄っすら察している様子の魔物は、射線の間に呪詛を帯びた手のひらを掲げ、トモエのテニスボール同様に弾き落とす。
 遠距離からの狙撃。虫との戦闘の最中で、姿の見えぬ増援がいることを認識したサオササは、華乃音の銃よりもずっと射程の短い己の銃を手に、魔物へと肉薄した。
 内蔵されたワイヤーも駆使して、付きすぎず、離れすぎない。そんな距離を保ち、敵の高速移動を封じるべく動く。
 同様のタイミングで、尊は破魔の念を込めた護符を放つ。
「暴れられると厄介だからな」
 あわよくば捕縛を、と放たれた護符は、しかし捉える直前で爪によって切り裂かれる。
 小さく舌打ちするが、何も護符はその一枚限りではない。一度で駄目なら二度、三度。気を取られるほどに繰り返してやるまでだ。
(――こっちに気が向けば、他の猟兵も戦いやすくなる、よな)
 出来ることを確実に。ひたむきに務めれば、結果は自ずと、ついてくる。
「ぬっ……小癪な……!」
 呪詛を帯びた両手に、ぺたりと張り付いた護符が、その手から呪の力を奪う。
 何度めかの正直。魔物のユーベルコードを封じた尊だが、その技は己の寿命を削る諸刃の剣でもあって。
 ちりりとした痛みを感じながらも、尊はおくびにも出さずに不敵に笑ってみせた。
 呪詛の力が抜けたのは、近くに居たトモエとサオササにも見て取れた。しかし敵にはまだ鋭利な爪があり、迂闊に近づけば切り裂かれることは必至で――。
「トモエさん!」
 咄嗟に叫んだのはフィリア。一定距離を維持するサオササとは対象的に、時に果敢に前へも出ていたトモエへ、魔物の凶爪が迫ったのだ。
 だが、トモエとて何も無計画に前線を押し上げたわけではない。
 振りかざされた腕。帯びていた呪詛は払われ、純粋な刃にも似たその腕へ、トン、と振り抜いたラケットを押し当てる。
 通常のトモエならば、その勢いに押し負けていたかもしれない。だが今のトモエは、ユーベルコードの力……否、テニスを極めた全国区プレイヤーにだけ許された力によって、的確に攻撃を受け止めることができていた。
 かすめる程度の傷は負ったが、なんてことはない。トモエはくるりと手首を反転させて、バックハンドでボールごとラケットを魔物の体に叩き込んだ。
 すかさず、サオササが距離を詰め、至近距離から熱線銃を放つ。当たらなければどうということはないという顔をされていたが、これならば、躱せまい。
「ぐあっ、おのれぇ!」
 焼け爛れた風穴を抑え身を引く魔物の呻く声に、サオササはふと瞳を細める。
 この魔物は、かつてはヒトで、呪いに憑かれて堕ちたと聞く。
 召喚された邪神の神性によって自我に芽生えたサオササとは、まるで対照的。
 理性があるように見えて、ただ欲望に忠実に、その体躯をも異形に変えられた魔物の行く末はきっと、ただの獣。
 その結末を、例えばサオササの中の末路わぬものはどう思うだろうか。
(――なんて、意味のないことね)
 憐れむだろうか。嘲るだろうか。いずれにしても、それはサオササの思考とは違うもので。彼女の意志は、この敵を討伐することにあった。
 そんな前線の様子を確かめながら、華乃音は銃を構え、一度下げる。
 狙撃によるダメージは幾らか通っては居るが、いい加減敵もこちらの位置を把握したようだ。防がれる頻度が上がってきた。
 ならば、ただの援護で居続けるのもこれまでだ。
 音もなく、華乃音は枝から枝へと移っていく。気取られるより前に、素早く。
 取り下げた狙撃銃の代わりに、その手に握られたのは二振りの刃。いずれも黒い刀身を持つナイフは、敵を殺すことへと切り替えた華乃音の意識に応じるように、敵の死角で、鮮やかに閃いた。
「ッ――!」
 想定していなかったのだろう。一閃に、魔物は息の詰まったような声を上げる。
 しかし、姿の見えない襲撃者に気を取られている場合ではない。眼前まで迫ろうというトモエとサオササ、新たな護符を構え更に捕縛を試みようとする尊に加え、魔物にとっては耳障りでしかない歌を奏で続けるフィリアの存在も見えて居るのだ。
 魔物とてやられっぱなしではなく、特に前衛に出ている者には幾らかの傷を負わせていた。だが、その度に、フィリアの歌声は攻撃的な鋭さから柔らかに包み込むような音色へと転じた。
「降りしきれ春の陽射しよ 清らに咲ける花のため なお踏み耐える根のために」
 高らかに歌い上げるのは春女神への賛歌。その歌声は微細な傷を容易く癒やす。
 気に入らない。気に食わない。
 憎しみとも怨みともつかない感情は、魔物に憑いた呪いなのだろう。その昂ぶりを示すように、魔物は己に呪詛を纏った。
 そうして、響かせる。負の感情を込めた咆哮を。
 咄嗟に散開を促したサオササだが、その判断すら無駄だと嘲笑うような渾身の声は、猟兵達へと衝撃波となって届く。
 感情を蝕むような、強い強い呪いの声に、フィリアの声は止まり、トモエに膝を付かせる。無論、尊やサオササとて無傷では済まない。
「本当に、厄介だなこれは」
 とは言え魔物にも反動があるようだ。自分と同じように、寿命を削っているのを感覚で気取った尊は、同時に、魔物の寿命がさほど残っていないことも、直感した。
 ほんの一瞬、溺れるような感覚に息をつまらせたフィリアは、ぎゅっと胸元で手を握りしめて、精一杯、息を吐き出す。
「誰も、傷つけさせません……!」
 歌は、再び紡がれる。突いた膝は、折れたわけではない。
「……次は行ける気がする」
 音は空気の震えであり、この咆哮は空気の塊ではないか。
 ならば、打ち返せるのでは? 今のトモエには、その自信があった。
 次があれば真正面から受けてやろうという気概に、サオササはほんの少しだけ目を丸くしてから、瞬き一つで表情を戻し、高速で動き回る敵の動きを阻害すべく、張り巡らせたワイヤーの足場を跳ぶ。
 と、不意に魔物の体ががくんと崩れ、つんのめるようにして倒れたではないか。
 その足が鋭利に切り裂かれているのに気がついた魔物は、忌々しげに繰り返す。
 おのれ、おのれ――!
「羽虫のようにちょこまかと……!」
「羽虫とは随分な言いようだな」
 夜の蝶は優雅に舞うものだ。しかしその口元には、毒牙を持つが。
 囁くような声を残しつつも、華乃音はついにその姿を敵に晒すことはしなかった。
「――これが俺の武器だ」
 華乃音にとって、敵の動きを予測することは難しいことではなくて。だからこそ容易に躱し、一太刀浴びせた。
 動きの止まった魔物へ、猟兵達が一斉に畳み掛ける。
 最期に響いたのは愉悦の声でも怨嗟の咆哮でもなく、短く儚い、断末魔だった。
「なんで負けたのか、不思議そうな顔してるね?」
 動かなくなった魔物を見下ろして、トモエは小さく呟く。
「……そりゃ、あんたがまだまだだからよ」
 沈む夕日に照らされる森を背景に、不敵に笑ったトモエ。
 静かに夜を迎えようとする森には、傷を癒やすべく歌い上げるフィリアの声が、響いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『闇に咲く花』

POW   :    言い伝えを信じ、森中を踏破

SPD   :    周囲の町や村から情報収集

WIZ   :    自分の魔法や、夜の動物たちに協力してもらい情報収集

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 月が、昇る。
 美しい満月が、湖に映し出されて二つの月を天地に描く。
 その瞬間を待ち侘びたように、辺りに佇んでいた鈴蘭の蕾がほろりとほころんだ。
 さわさわと草葉を揺らす風に促され、踊るように揺れながら、銀鈴蘭は今までと変わらず、戦いを終えた者を労う。
 脅威は去った。そのことを街へと告げるのは、お疲れ様でしたと声を掛けてくるグリモア猟兵に任せればいいだろう。
 今は、この幻想的な光景に浸ればただ、それでいい。
橘・尊
やっと森が本来の姿になった気がする

共に戦った仲間達にお疲れ様と声をかけ
草木の匂いに混ざり水の気配を感じたのでそちらへ足を向ける

目に飛び込んできたのは月の光と銀鈴蘭

綺麗だな

噂に違わぬ幻想的な光景に湖のほとりに座り、しばし何も考えず銀鈴蘭を眺め

頑張って良かった

戦いはあまり好きじゃないが、まあ、良しとするか




 風が枝葉を揺らすだけの、静かな時間。
 時折、小動物が草を掻き分けるかさりと可愛らしい音が聞こえるだけで、後は、なにもない。
 そんな空間に佇みながら、尊はやっと森が本来の姿に戻ったような心地になっていた。
 お疲れ様、と。共に戦った仲間たちに掛けた声には、同じ声が返ってくる。冒険者達も、そうやって互いを労い合ったり、一人静かな時間に興じたりしていたのだろう。
 そんな光景も思い浮かべながら、尊はふと感じた水の気配に足を向けた。
 森の奥には湖がある。満月の夜にだけ、そのほとりには銀色に輝く鈴蘭が咲く。聞いていたとおりの光景だ。
「……綺麗だな」
 月は中天、まっすぐ足元の湖面にも風に揺らぐ満月。
 そよりと揺れる銀の花は、さながら湖を切り取る額縁のよう。
 そんな光景に、尊の口から零れたのは素直な感想だ。
 花を踏まぬよう、周囲をゆっくりと歩き、居心地の良さそうな場所に、腰を下ろした。
 風を感じ、指先に触れる鈴蘭を軽く撫で、空と水面の月を交互に見つめて。そうしてから、傍らに佇む銀鈴蘭をじっと見つめた。
 小振りな花弁は、風に揺れる度に、銀の光を振りまくように揺れる。
 尊の耳には聞こえてこないが、花同士で小さな鈴の音を奏で歌っているのかも知れない、なんて。
 幻想的な光景に、ふと、そんな思考をよぎらせてみたりして。
(頑張って良かった)
 安堵にも似た思いに、口元を緩めて微笑んだ。
 戦いはあまり好きではない。避けられるならそれに越したことはない。
 だが、今回は戦うことを選んで、選んだ結果、守ることができた。例えばここに自分が居なくても、他の誰かがこの森をあるべき姿に戻していたかもしれないけれど、己が果たした光景としてこの幻想を見つめることは、なかったのだろう。
 それを思えば、良しである。
「本当に、綺麗だな」
 小さな小さな呟きに、そうでしょうと言うように花が揺れる。
 誇らしげに咲く花は、同時に、貴方の成果を誇ると良いわと囁きかけるように、幻想の光を振りまいていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サオササ・テセル
銀鈴の花やもしかしたら湖で憩っている小動物達を横目に入れながら私は思う。
私を生んだのは母親代わりの主任と主任に私を預けたある領主だった。
私の生まれはその館だったらしい。
館の領主の方はまだ密輸船が出たあの国で生きているだろうか?
そうだと良いなと思いながら内面の自分を生んだそれをのぞき込む。

目覚めた瞬間に全てを泡沫の夢とする末路わぬ神性、
目覚めた時この子の周りには何1つとしてない。

こんな美しい光景が全て泡となって夢となって消えたらどう思うだろう?

分からない。あの日研究所を泡にした自分自身は。
でも、この存在と背中合わせである限り私は忘れない。
美しい人や夢にしちゃいけない人は沢山いるって。




 湖面に浮かぶ月に誘われるように、銀鈴蘭の花はそよりとゆれる。
 満月の夜にだけほのかに輝くその花と時を共にしたいのは、森の動物達も同じなのだろうか。いつの間にか、湖の畔に陣取っていた。
 人を恐れるでもなく、かといって懐くわけでもない。そんな小動物を鈴蘭と共に横目に捉え、サオササはほんの一時、物思いに耽る。
 自分の生い立ち。そこに関わる人々の顔。
 かつて、サオササには母親代わりの主任がいた。そして、彼女にサオササを預けた領主がおり、己の生まれはどうやらその領主の館だったらしい。
 きちんと確かめたことがないから、定かではない。ただ、そう認識しているだけ。
 それでも、思うのだ。
(……まだ、あの国で生きているだろうか?)
 サオササが泡にしてしまった実験施設があった国。
 手引きされ、乗り込んだ密輸船が出港した国。
 その国に纏わる思い出が良いものかと言うと、よくは分からない。
 分からないけれど、確かにそこにいた領主が、まだ生きていてくれればいいと、思う。
 思いながら、そっ、と湖面を覗いた。鏡のように鮮明ではない、深い闇をはらんだような水面は、サオササの内側にいる者を映し出しているかのよう。
 末路わぬ邪神。その神性の欠片に触れたことで、サオササには自我が芽生えた。
 けれど、同時に目覚めた神性によって、己が居た研究施設は泡となった。
 今、サオササは自我を持ってこうして美しい景色を目に映すことができているけれど、自分の中にいるこの存在は、この光景を見ることができない。
 起きてしまえば、全てを泡に還してしまうから。
(こんな美しい光景が全て泡となって夢となって消えたら……)
 どう、思うだろう。
 気がつけば、水面に映る自分は首を傾げていた。良く、分からないのだ。
 悲しむのか、憤るのか、それとも何も思わないのかいっそ愉悦の一つでも覚えるのか。
 分からない。けれど、それだけの力を持った何かと背中合わせに生きていることは、分かっている。
 胸に触れて、瞳を伏せた。確かめるように、ゆっくりと。
(私は、忘れない)
 この世界には、美しい人や夢にしてはいけない人が、沢山いることを。
 そんな人達が、生きていてくれれば嬉しいと思った、この感情を。

大成功 🔵​🔵​🔵​

別府・トモエ
「テニスっぽい光景だね」
空にテニスボール、湖に映ってもう一個テニスボール……素振りでもするか!
無我のオーラで軽く感覚を高めていい感じの風景と空気を楽しみながら無心でラケットを振る
ボールも毛むくじゃらも、いいプレイヤーだったな
命の取り合いとか、慣れないなあ
点の取り合いだって泣きたくなるのに

「……まだまだなのは、私も同じか」
猟兵とか、よく分かんないけど、オブリビオンってプレイヤー集団が、今に生きてないのは分かる
……私は私のテニスを貫けばいい
「けど、迷っちゃう事も、あるよね」
迷ったらラケット振って振って振る
練習だけは、嘘をつかないからね
振り疲れたら大の字になって休もう
「……いつか月も打つよ」
なんてね




 空に浮かぶ月。湖に映る月。
 黄色くてまぁるい満月は、ぽーん、と高く跳ね上がったテニスボールのよう。
「テニスっぽい光景だね」
 トモエにはもう、そうとしか見えていない。ゆえに、ただ突っ立っているだけではいられなかった。
「素振りでもするか!」
 ラケットを握り、集中する。無我の境地に至れば高まる感覚は、周囲の風景をより美しく感じさせる。
 素振りをすれば温まる体に、冷たい夜風はむしろ心地よいくらい。
(ボールも毛むくじゃらも、いいプレイヤーだったな)
 セオリー通りの試合にはならなかったが、イレギュラーな事態も十分楽しめた。
 けれど、彼らと対戦することは、もう二度とない。その命は、自分達が奪ってしまったのだから。
(慣れないなあ)
 命を取り合うというのは、やはり。
 点の取り合いだって、泣きたくなると言うのに。
 無心で振っていたはずのラケットが、少しの気落ちに鈍くなる。気がつけば、思案にくれて手が止まってしまっていた。
 気付き、ふぅ、とトモエは息を吐いた。相変わらず高く跳ねているテニスボールを見上げて、もう一度、今度は肩の力を抜くように息を吐く。
「……まだまだなのは、私も同じか」
 良くはわからないが、自分は猟兵という存在で、それゆえにオブリビオンと呼ばれる集団と対峙することになっているのだ。
 試合をして、勝った負けたで割り切れないのは、相手が、今に生きていない者達で、命を奪うことでしか正せないから。
 そのことを、トモエだって理解してはいる。
 してはいるが、心が迷うことは、度々あるのだ。
 自分のテニスを貫けばいいと思っているのに、まるで、言い聞かせるようで。
 ああ、まだまだだな、と。トモエはラケットを握り直した。
 再び無心でラケットを振る。何が正しくて何が間違っているかなんて、はっきりとは分からないけれど、こうして練習し続けたことは、嘘にはならない。
 素振りの風圧で足元の花がそよりと揺れる。それが、静かな声援のようで。トモエは体力が尽きるまで、ラケットを振り続けた。
 やがて大の字になって草の上に沈み込んだトモエは、それでも決して手放さないラケットを握り、少し重たさを感じる腕を振り上げて、びし、と空に浮かぶ月へと向けた。
「……いつか月も打つよ」
 なんてね。
 そんな日が来るほどに、ひたむきにテニスを愛し続けようと、改めて心に決めるトモエであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィリア・セイアッド
穏やかになった森の様子に ほっと溜息
良かった…
みなさん お疲れさまでした
怪我をしている人はいませんか?

「WIZ」を選択
降りしきる月の光に 風に揺れる銀の花に目を輝かせ
なんて綺麗な花かしら
この花が見られるから 冒険者さんたちも毎日がんばれるのね
この地に暮らす人の憩いの場を 守れてよかった
地面に膝をつき そっと花に触れて笑顔
これからも あなたたちが綺麗に咲けますように
祈りを歌にのせながら 森を散策
森の木々や動物たちは平気かしら
木の幹に触れたり 森の動物たちにあえば話しかける
もう怖いものはいない?
群生地を見つけたら歓声
心を癒す柔らかな光の花 
どの世界にも こんな花が咲けばいいのに




 ゆっくりと日が沈んでいく空を背に佇む森は、穏やかそのものだった。
 月が昇るまで、フィリアは共に戦った仲間を癒やしたり、森の様子を眺めながら過ごす。
 もっとも、仲間達の傷は戦闘中に多くを治癒できていたのだけれど。
 そのまま、フィリアは森の様子を確かめるように散策に歩く。
 自然豊かな森は、噂の銀鈴蘭以外にも幾つかの花を咲かせていたり、ととと、と木の枝を歩く小動物の足音が響いていた。
 小さな影が横切った木の幹にそっと触れ、フィリアはそっと、歌を紡ぐ。
 祈るような歌声に釣られたように姿を見せたリス。樹上へ視線をやり、にこり、フィリアは微笑みかけた。
「もう怖いものはない?」
 守ることのできた、この地の憩いの場所。人々にとってもそうだろうが、暮らしている動物たちにとっても、きっと、同じように大切な場所だろう。
 彼らが安心して花を楽しみ、自然で暮らせるように。再び紡ぎ出した歌には、願いを。
 と、リスが枝を伝い、ひょいと別の木に移る。そうしてから、フィリアをじっと振り返り見つめた。
 待つような視線に、どうしたのかしらと微笑ましげな心地でついていく。
 一定距離を詰めれば、また別の木へ。先へ、先へと促すようにリスは木々を渡る。
 やがて、フィリアは気づく。緑深い森の中、夜闇が作る影に埋もれていた足元に、小さな銀の花が佇んでいることに。
「あら」
 一輪だけ、ひっそりと。
 足元に屈み込み、膝をついてそっと触れる。柔らかで瑞々しい花弁は、ほのかに光る銀の鈴。
「なんて綺麗な花かしら」
 その、花が。ぽつりぽつりと、足元に続いていた。
 視線だけで辿るように見つめ、見上げたフィリアの視界には、少し遠いけれど、確かにきらきらと光る何かが、あって。
 立ち上がって歩み寄れば、中天と湖面に二つの月。その畔を囲うような、星の輪に似た花の群れ。
「まあ……!」
 沢山の銀鈴蘭が風に揺れている幻想的な光景に、フィリアは歓声をあげる。
 柔らかな光の花に、暖かな癒やしが心に広がるのを感じた。
 いつの間にか、先程のリスが足元で銀鈴蘭を揺らしていた。案内をしてくれたのねと優しく微笑みかけて、フィリアはまた、歌う。
 ここにある花達が、これからも綺麗に咲けますように。そして、どの世界にも、心を癒やす綺麗な花が咲きますように。
 優しい祈りをのせた歌は、ゆったりと、森に染みていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋翠・華乃音
満月の日にしか咲かない花……なんて儚いのだろう。
……俺にとっては星の興亡、世の趨勢――そんなものに興味はない。
興味はないが……今はただ、この花を守れた事に安堵しているよ。

今は何も燃やす事のない瑠璃色の蝶(ユーベルコード)と戯れながら鈴蘭を眺める。

【アドリブ等歓迎】




 風に揺れれば飛び退ってしまいそうな、銀の光。
 蛍のように飛び交っていてもおかしくなさそうな煌めきは、同時に儚さを感じさせる。
 華乃音は、湖の畔に腰を下ろして、ただじっと、その花を見つめる。
 満月の夜にしか咲かないこの花は、この月が沈んだ後はどのようにして眠るのやら。そんな空想は、ほんの一瞬華乃音の中によぎって、それから、すぐにふわりと掻き消える。
 とりとめのないことも同様に、ぽつりぽつりと浮かんでは消える。強い興味は、そこにはなかった。
 星の興亡、世界の趨勢。そんな大きな事にも、華乃音はさして興味を示さない。
 ただ自分には力があって、活かせる立場にあって、その結果が、何らかの形でついてくる。それだけだ。
 大義など無くても、世界は回るものだと。華乃音はよく知っていた。
 ふと、華乃音は花の傍に指先を添える。撫でるでもないその指に、瑠璃色の蝶がはらりと止まる。
 月の夜に映える、星空にも似た瑠璃色の羽は、ふわりと羽ばたく度に、その身に帯びた熱で虚空を揺らすけれど、その熱が何かを燃やしてしまうことはない。
 その熱すらも意のままに。ユーベルコードの蝶は、華乃音の指先から離れ、数匹の群れになってふわふわと主の周りや花の傍を飛び回る。
 二つの月に、銀の花。その幻想に加わった瑠璃の蝶と共に景色を眺めながら、華乃音は肩の力を抜いた。
(興味はないが……)
 守ることのできた光景に、小さくこぼす吐息は感嘆などではなかったけれど。
(安堵は、しているよ)
 力を活かしたその結果。美しくあったものをその形のまま取り戻せたその成果に、興味はなくても安堵はあった。
 主のそんな心の呟きに呼応するかのように、瑠璃の蝶はひらり、花の間を縫っていく。
 その光景を眺める静かな時間に暫し浸り、それから、月の傾く前に、華乃音は彼らに背を向けた。
 満月の終わる頃、花の眠りは知らぬまま。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月08日


挿絵イラスト