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お願いあなた、ここから出して

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 すみれ色の瞳がきれいな、横顔の美しいあなた。
 花を愛でるその細い腕で、病気の父親の看病をしている強いきみ。
 ふたり穏やかに日々を過ごすことだけが、彼女と私の望みだった。
「ドレス姿も綺麗だね、ミシェル」
「ありがとう。でも、サラサが傍にいないことだけが辛いわ」
 今日、ミシェルは娶られる。真っ白なドレスに身を包んだ彼女は美しく、迎えの馬車に乗り込んだその姿は、天井の世界を描いた絵画のようだった。
 けれど、私は彼女の幸せな結婚をどうしても願えなかった。
「必ず迎えに行くから」
「お願い、危ないことはやめて。ねえサラサ、約束したでしょう? 私の父の看病をしてくれるって」
「お父さんだって、ミシェルを助けるためなら許してくれるはずだよ」
 瞳を伏せて、ミシェルはそれきり馬車が出発するまで何も言わなかった。

●きみのためなら
「急ぎの事件なんだ、手の空いている人は力を貸してくれると嬉しいのだよ」
 マカ・ブランシェ(真白き地を往け・f02899)は慌ただしく予知の内容を記した紙を広げると、猟兵に声をかける。
「ダークセイヴァーのとある村で、ミシェルという少女がオブリビオンの元へ生贄として差し出された。これ以上の被害を出さないように、猟兵諸君には黒幕であるオブリビオンを倒してほしいのだが、今回はもうひとつやることがあるのだ」
 マカは赤いペンでふたりの少女の名前に線を引いた。
「ミシェル……今回オブリビオンに連れ攫われた少女だ。村にはオブリビオンの要求する18歳以上の少女は少なくてね、村への貢献度の低い家に生まれた彼女を選んだということらしい」
 ここは、人を人として見ることのできない環境なのだ。マカは赤い唇を歪めて、そう付け足す。
「そして【サラサ】、彼女はミシェルと親しい村人で、もうひとりの救出対象だよ」
 彼女も攫われたのか? と訊く猟兵に、マカは首を横に振る。
「家に伝わる剣を掴んで、兄の服を借りた彼女はミシェルの救出に向かったのだ。男装はオブリビオンに狙われないように、ってことかもしれないけど……効果は薄いだろうね。館を守る門番のオブリビオンにとっては、侵入者がどんな服装をしていても関係はないのだからね。幸か不幸か、館へ向かうサラサへの対応に門番の一部が向かったおかげで、私たちは黒幕を殺すチャンスを得られた、ということなのだよ」
 館は周辺を森で囲まれているが、馬車が通れるくらいの道が村から続いており森自体も陽の光が差し込む程度の密度であるため抜けるのは難しくない。だが、それ故に門番の目を掻い潜ることは困難だ。武器を手にしているとはいえ、サラサに戦う力はない。館へ潜入する前に何らかの対策を取らないと彼女は門番に殺されてしまうだろう。
「サラサが接触する前に門番をすべて倒す、サラサと合流して城まで一緒に向かう……手段は任せるのだよ。村に帰れと説得しても帰りたがらないだろうし、いっそ無視して館に乗り込んでもいい。少数より多数が優先されるのは世の常なのだ」
 不意に猟兵達へ背を向け準備に取り掛かったマカが、背中越しにこぼす。
 それでも、できるならふたりとも助けてあげてくれないか、と。


Mai
 ダークセイヴァーのとある小さな村での事件です。
 オープニングにあります通り、サラサを無視して進むことも可能ですが、ほぼ間違いなく死にます。
 彼女の生死によって、ボスの戦力及び3章(日常パート)の雰囲気が変わります。
 章が変わるごとに短い状況説明のリプレイを挟みますので、それが出てからのプレイングをお勧めいたします。
(3章にはマカもおります。話し相手などが必要な時は気軽にお声がけください)
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第1章 集団戦 『闘奴牢看守』

POW   :    ボディで悶絶させてからボッコボコにしてやるぜ!
【鉄製棍棒どてっ腹フルスイング 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【鉄製棍棒による滅多打ち】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    チェーンデスマッチたこのやろう!
【フックと爆弾付きの鎖 】が命中した対象を爆破し、更に互いを【鎖についてるフックを肉に食い込ませること】で繋ぐ。
WIZ   :    嗜虐衝動暴走
【えげつない嗜虐衝動 】に覚醒して【『暴走(バイオレンス)』の化身】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。

イラスト:すねいる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 馬車から降ろされ後ろ手に縛られても、花嫁は泣かなかった。帰りたい、離せ、お願いだから命だけは。これまで館に連れてこられた少女達は皆、口々にそう言った。けれど今日の生贄はどこか違う……館の門番をしている筋骨隆々の拷問官達は、ミシェルを見下ろしてその顔をまじまじと見つめる。瞳に強い信念を湛えた彼女は、顎を乱暴に掴まれても沈黙を貫いた。その態度に反抗を読み取った門番達は、主へ引き渡す前に彼女を泣かせてやろうと下卑た笑みを浮かべ、腕を振り上げる。殴られる――反射的に身構えたミシェルの目の前で、腕を振り上げた門番が衝撃波で吹き飛び、壁に叩きつけられた。
「他人のものに手を出すとどうなるか、何度も教えたでしょう?」
 血まみれで壁にめり込んだ門番の前に、黒衣を纏ったヴァンパイアが立っていた。紫の髪を揺らしながら鞭を手の中で遊ばせているその女主人へ、門番達は一斉に跪く。
「馬鹿共、手に入らない獲物にうつつを抜かしているから侵入者に気付かないのよ。さっさと片付けてきなさい」
 苛立たしげに門番を数名外へ叩き出した女は、黙ったままのミシェルの全身を舐めるように見回し、彼女の白い髪を一房すくい上げた。
「……お前、気に入ったわ」
 頭を垂れたまま傍に待機していた門番の肩をブーツで蹴り飛ばすと、女はミシェルの首を掴む。なおも悲鳴ひとつあげない彼女に加虐心を煽られたヴァンパイアは、歪に顔を歪めて心底嬉しそうに笑った。
「その可愛い唇、私が直々にこじ開けてあげるわ……」
 門番にミシェルを連れて来るように命じると、女は館の奥へと踵を返す。門番の肩に担がれ身動きを封じられながらも、ミシェルは真っ直ぐに館の入口を凝視し続けていた。


 額に浮かぶ汗を拭うこともせず、馬車の跡を辿って館を目指す。今まで手にしたことのなかった剣は重く、使い方もよくは分からない。兄の服はだぶついていて動きやすいとはお世辞にも言えなかったが、かすかに香る兄の匂いはサラサを勇気づけた。これを着ていれば、まるで兄のように強く機敏に動けるような気さえしてくる。
「……誰か来る」
 緩く曲がった馬車道の向こうから、あるいは森の向こうから。こちらへ向かってくる複数の気配を察知したサラサは、剣を抜いて構えた。
ニーヴ・ブラッディタロン
こういう場合、至極シンプルかつ的確な回答がある。
サクッとブッ殺しちまえばいいのさ。


まぁ先ずはサラサちゃんとこっそり合流。
マントすっぽりかぶって姿勢を低くしとけば大分みつかりにくい筈。その状態で尾行だ。

で、いざサラサちゃんが看守に見つかってしまったらだ。
「あのーすいませーんムキムキのおにいさーん」って感じに、こう、『迷子になったちっちゃい小娘』っぽい雰囲気で声かける。でコッチに気が向いた所で……「死んどけ」っつってマントをバサッと脱ぎ捨て、ユーベルコード。目なり腱なり狙って手早く戦闘力を削ぐ。
マント脱ぐ時、敵の顔かなんかの方へやることで目つぶしも兼ねる。
後は黒剣でバッサリ。素早く且つ的確に処理。


四王天・燦
嫌いじゃねーぜこういう甘酸っぱい情愛

サラサを追う。
道を塞いで「通りたければアタシを倒して行きな」と手合わせ。
武器落としで剣を奪い『想いに殉じようとしているだけ』『サラサもミシェルもどっちが欠けても駄目』とお説教。
代わりに戦ってやると売り込むぜ。
報酬は前金でお兄ちゃんの剣、後金は出世払いで

そゆわけで館に入る。
「綺麗じゃない奴に価値観見い出せねーんだわ」
有無も言わずに門番を殺す

スイングは残像を囮に、爆弾は「釣り針がでかすぎるぜ」と見切りで回避。
符術『力場の生成』で背後まで跳び鋼糸・デストラップを首に巻く。
隙あらば盗み攻撃で爆弾を奪い、暴走するや爆殺してやる。
「えげつないってのは、こういうことさ」


胡・翠蘭
嗚呼…なんと勇敢な方なのでしょう
微力ながら、わたくしめもお力添えさせていただきますわね、サラサ様
【POW】
門番の方…あらあら…そんなに力んで
もう少し、肩の力を抜かれては?

予め防具改造、激痛耐性を活性
第六感、野生の勘で初撃を見切り回避に専念し、あとは隙を見つけて毒と麻痺を付与したガジェットと拷問具で攻撃を

ふふ、あまり暴力的で野蛮な行いは好みではありませんの――ですから、ええ
心地よい微睡みへ堕ちてしまいましょう?
UCで未知の…蕩けるような夢を魅せて差し上げましょう

…さぁ、サラサ様
囚われのお姫様を救い出しましょうか

…領主の見せてきた悪夢も、今宵が最期…終幕の時ですわ

※アドリブ等お任せします


ステラ・アルゲン
生贄にされた友を救いに行くその想い、守らなければなりませんね
それに剣を取り男装をするなんて、他人事じゃない気がしますから
もちろん連れされた彼女も含めて助けに行きましょう

今回は頼むぞ、ソル。お前の力を見せてやれ!
魔力を受けて赤く輝き出す【太陽剣】を構え、サラサ殿を門番から守ります
炎【属性攻撃】の【全力魔法】の【赤星の剣】にて広範囲に敵を焼き、斬り払います
味方に当たらないように、当たりそうならすぐに消す
敵の攻撃を受けそうなら【オーラ防御】を纏わせた太陽剣にて【武器受け】で受け流し
サラサ殿が危なくなったら躊躇なく【かばう】

騎士として願い叶える剣としてあなたの友を助けたいという願いに応えましょう


叢雲・源次
※アドリブ、絡み歓迎
【POW】サラサと合流して城へ向かう

(初めて踏みしめるダークセイヴァーの地)
何処と無く懐かしい感じがするのは、俺の心臓に宿った『地獄』が関係しているのだろうか。
それにしても…暗い…『陰鬱』という言葉が相応しい良い程に。
……まぁ、いい。今は任務を遂行する。

サラサ、と言ったか。
友の為に決して敵わぬ相手に立ち向かう勇気は賞賛する。しかし、力無き勇気の行使は『蛮勇』と言う。
(闘奴牢看守と相対しつつ、刀の柄に手を添える)
必要なのは身の程と自身を取り巻く状況を知る事だ。
(力を貸すので一緒にミシェルを救おう。の意)
【電磁抜刀】
使用スキル【見切り】【早業】【先制攻撃】【二回攻撃】


ラザロ・マリーノ
友達を助けるために、オブリビオンが待ち構える城にたった一人で乗り込もうってのか。
いいねぇ!勇者ってのはそうじゃなくっちゃあな!
とはいえ流石に敵の数が多すぎるからな。露払いは俺に任せてもらおうか。

UC「竜の再興」を発動して、ディノニクスを召喚。
城の正門前に堂々と姿を現して、大声で敵を【おびき寄せ】るぜ。

俺は、【フェイント】をかけながらの【ダッシュ】で攻撃を回避しつつ、
【属性攻撃】で電撃を纏わせたハルバードを【怪力】で振り回して【なぎ払い】。

ディノニクスは常に複数で連携して攻撃させる。

派手に戦って、歩哨や遊兵を引きつければ、サラサが無事に城までたどり着く可能性も上がるだろ。

※アドリブ・連携歓迎



 重い空気が周囲を包む曇天の中、木々を揺らして一人の猟兵が森の中を館めがけて駆け抜けていく。
「友達を助けるために、オブリビオンが待ち構える城にたった一人で乗り込もうってのか。いいねぇ! 勇者ってのはそうじゃなくっちゃあな!」
 格闘用に設計された装備で全身を固めたラザロ・マリーノ(竜派ドラゴニアンのバーバリアン・f10809)は、滾る気持ちを吐き出すように豪快に笑った。他の猟兵達がサラサを守ろうと彼女と合流しに向かったことを知ったラザロは、彼らの負担を軽くしより安全に城へたどり着けるようにと陽動を請け負ったのだ。
「やっぱり戦いは数だよな!」
 肩に乗っていた全長30センチほどの小型のドラゴンへ声をかけながら、戦闘用の恐竜を複数体呼び出す。その名の通り怖ろしい鉤爪を持つ彼らはラザロの指示通りに隊列を組み、各々雄たけびをあげながら森の中を走り抜けた。周囲に地響きを轟かせながら木々を器用に避けてラザロと並走する恐竜達の視線が、門番達の姿を捉える。
 連れていたドラゴンが姿を変えた竜騎士の槍斧を握り、ラザロは大声で敵を挑発して注意を引きつけた。
「よっしゃ、派手に暴れるぜ! 弱ぇ奴は今のうちに逃げるんだな!!」
「たったひとりでノコノコ来るたぁ、マゾより馬鹿な大馬鹿マゾ野郎だな!」
 狙い通り挑発に乗り、いきり立つ門番達が一斉にラザロの方へ向かって走ってくる。ひとまずは計画通り――ラザロは電撃の力を練り上げながら、敵が射程範囲内に踏み込むのを待った。


 館の方から聞こえた複数の獰猛な獣の声に、サラサは身を硬くした。先ほどから森の中に様々な気配を感じるのは、極度の緊張のせいで過敏になっているからだろうか……剣にかけた手を下ろした少女は、大きく息を吐いて再び館の方へと歩きだす。

「嫌いじゃねーぜ、こういう甘酸っぱい情愛」
 サラサに声をかけるタイミングを計りながら森の中を静かに進む四王天・燦(月夜の翼・f04448)は、八重歯を口元からのぞかせてやれやれと肩をすくめた。不器用な人間を見ているともっと上手く生きられないのかと心配になる。だからこそ、今、ミシェルもサラサも死なせるわけにはいかないのだ。これから先、生きてさえいれば器用さが身につくかもしれないのだから。
 燦の隣を歩く叢雲・源次(炎獄機関・f14403) は、追跡中のサラサから目を離さないように気をつけながら周囲の空気を味わっていた。初めて踏みしめるダークセイヴァーの地になぜか懐かしさを感じるのは、己の心臓に宿った『地獄』が関係しているのだろうか。フォーマルなスーツの下にある自らの『地獄』にそっと手をあてて、そんなことを考える。
「それにしても……暗い……。『陰鬱』という言葉が相応しい良い程に」
「そーだな。この重暗い感じ、日光のせいだけじゃねー気がすんぜ」
 まあいい、今は任務に集中しよう。源次は燦の言葉に頷いて、サラサに意識を集中させる。

 森の中、燦と源次とは別のルートを進み、フードを被ったニーヴ・ブラッディタロン(スロータープリンセス・f16145)も仲間達とともにサラサの後を追っていた。門番なんてサクッとブッ殺しちまえばいいのさ、と極めてシンプルな答えを胸に秘めた彼女は、いつでも遭遇した敵を殺せるようにとマントの下にダガーを抜き身で忍ばせている。
「嗚呼……なんと勇敢な方なのでしょう」
 胡・翠蘭(鏡花水月・f00676)は馬車道を黙々と歩くサラサの背筋がぴんと伸びているのを見て、思わず口元を緩ませた。この様子だと彼女の視線は館の方を真っ直ぐに向いたままで、周囲の森を警戒しこそすれ咄嗟に対応する余裕はないだろう。未経験の戦場へと単身乗り込むサラサの愚直さに思いを馳せ、翠蘭は興味深い光景が見られそうだと密かに胸を高鳴らせていた。
「生贄にされた友を救いに行くその想い、守らなければなりませんね」
 翠蘭の隣を歩くステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)は、剣を提げて単身乗り込もうとしているサラサの出で立ちに共感を抱きながら、いざという時は騎士として彼女を庇おうと周囲への警戒も欠かさない。木々の向こうを透かし見るように神経を尖らせながら、サラサの気持ちごと彼女を守るにはどうすればいいだろうか、とステラが思案していると先行していたニーヴが振り返り門番達の存在を知らせた。
「想定より少し多いですわね」
 赤い衣で口元を隠した翠蘭も門番達の姿を認め、防具へ力を注ぎ激痛にも耐えられるようにと性能を強化する。ならば隠れて見守るのは終わりですね、とステラは密かに太陽の力を宿した黒い大剣を抜いた。

「……誰!」
 前方へ突然現れた人の気配に驚き、サラサは剣を払う。でたらめな剣筋は燦の短剣によって容易に弾かれ、反動でサラサの手から剣が零れ落ちた。慌てて剣を拾おうと身をかがめたサラサの前に、燦と源次が立ちふさがる。
「通りたければアタシを倒して行きな」
「どいて、私は急いでるんだ!」
「死に急いでる、だろ?」
 鞘に収めたままの刀を切迫した表情のサラサの目の前に突き立てて、燦は極力冷徹な顔を作った。前方では向かってくる敵を仲間達が倒している最中なのだ、サラサの足止めをして戦場から少しでも引き離しておこうと考えた燦は、彼女の頭を冷やす効果も狙い強めの言葉を浴びせる。
「ミシェルを連れてかれて、辛ぇんだろ。だから想いに殉じたいんだ。でもそれは自己満足ってやつだぜ」
「でも、私はミシェルが傍にいないとダメなんだ……!」
「そゆこと。だから、死ぬのはやめとけよ」
 代わりにアタシが戦ってやる。八重歯を見せてにっと笑った燦に、サラサが目を見開く。突然現れたふたりの人物は行く手を阻む存在でもなければ敵でもなく、むしろ助けに来てくれた人なのだと理解した。ありがとう、と滲む声で見上げるサラサに目線を合わせて、燦は地面に落ちている剣を拾う。
「報酬は前金でお兄ちゃんの剣、後金は出世払いってことで」
 困る、とあたふたするサラサに燦はカラカラと笑った。張りつめていた彼女の周りの空気が和らいでいく。
「和んでいるところすまないが、報酬交渉の続きはあいつらを倒してからにしてもらえるか」
 燦と背中あわせになるようにして立っていた源次が、森の中を突っ切り仲間達の防衛ラインを迂回してきた門番達の接近を告げた。
「友の為に決して敵わぬ相手に立ち向かう勇気は賞賛する。しかし、力無き勇気の行使は『蛮勇』と言う」
 刀の柄に手を添え、いつでも抜き放てるように構えながら源次は続ける。門番は源次の目前に迫り、今にも鉄製の棍棒を振り下ろさんとしていた。
「必要なのは身の程と自身を取り巻く状況を知る事だ」
「……お願いします。私に力を貸して!」
 共にミシェルを救おう、という意志が共有できたことに、源次は大きく頷くと目にもとまらぬ速さで抜刀する。
「……その間合い……戴くぞ」
 源次の言葉を最後まで聞くことなく、門番は胸から真っ二つに切断され倒れた。

「あのーすいませーんムキムキのおにいさーん」
 それまでの殺気を孕んだ空気をマントの下に全て隠し、森からふらりと歩み出たニーヴは迷子になったちっちゃい小娘っぽく困り果てた表情を作り門番達へ声をかける。侵入者に素早く反応し戦闘態勢に入ったものの、戦闘力など持っていないといった様子のニーヴに「これは主への土産になるのでは?」と門番達が下心を抱いた隙を見計らい。
「死んどけ」
 羽織っていたマントを門番達の顔めがけて脱ぎ捨て視界を奪うと、手近なひとりに狙いを定めて足の間をすり抜けるようにしてダガーで素早く腱を切る。油断していたところに大ダメージを受け転倒し状況を把握できていない門番の胸を、流れるように呪われた黒い剣で刺し貫いてとどめを刺す。
「門番の方……あらあら……そんなに力んで……。もう少し、肩の力を抜かれては?」
 突然目の前で仲間を殺され動揺しながらもいきり立つ門番達の姿に、翠蘭が控えめに笑った。緊迫し、血の流れる戦場にそぐわない程に優美なその笑みは、美しい花の間から這い出てきた蛇を思わせる妖しさを帯びている。
「ふふ、あまり暴力的で野蛮な行いは好みではありませんの――ですから、ええ」
 心地よい微睡みへ堕ちてしまいましょう? 翠蘭の問いかける声は蕩けるような夢を孕み門番達の耳朶を食む。ぬるり、と屈強なその肉体を婬靡な触手が捕らえ、絶え間ない快楽を際限なく注ぎ始めた。彼らにとって主からの鞭による責めは褒美でもあり、それに耐えられる者こそこの館では強者であった。痛みには耐性がある。だが、純粋な快楽に抗う術を持つ者は少なかった。捕らわれたままの門番達は恍惚とした沼に沈みながら触手にぎりぎりと締め上げられ、やがて快楽がピークに達したタイミングで毒や麻痺の魔力が込められた魔導蒸気機械や拷問具によってぶつりとその命を刈り取られていく。
「今回は頼むぞ、ソル。お前の力を見せてやれ!」
 翠蘭のユーベルコードから逃れた門番達の前には、ステラが立ちふさがった。振り下ろされた門番の棍棒を受け流しながらありったけの魔力を注ぎ込み、太陽が如く赤く輝く大剣に炎を纏わせる。
「赤く燃えろ、我が星よ」
 門番達のすべてを射程に捉えて、全力で斬り払った。背後にいるサラサや周辺の仲間達を巻き込まないように炎を制御しながら、敵の息の根が止まるまで焼き続ける。やがて燃え尽きた門番達は、灰のようになり地に溶けるように消えていった。
「……さぁ、サラサ様。囚われのお姫様を救い出しましょうか」
「騎士として、願い叶える剣として、あなたの友を助けたいという願いに応えましょう」
 翠蘭とステラ。ふたり同時に差しだされた手に、サラサは「ありがとう」と頭を下げる。


 棍棒を振り上げ飛びかかってくる門番達を、電撃の力を纏った竜騎士の槍斧でラザロは薙ぎ払う。辛くも致命傷を避けた門番が、ニタリと勝ちを確信した笑みを浮かべた。こいつの間合いはこの程度か、と体勢を立て直し棍棒のフルスイングによる反撃に転じようと身をよじった門番の肩を、恐竜の鋭い爪ががしりと掴みそのまま引きちぎった。
「いいぞ、お前達! 隊を崩さないようにして確実に仕留めろ!」
 ラザロの指示に応えるように、恐竜達の雄叫びと門番達の怒号が響き渡る。
「サンキュー、こっちで引き付けてくれたおかげで助かったぜ」
 サラサを連れた仲間達より先に館へ到着した燦は、ラザロに声をかけると躊躇いなく館の中へと踏み込んだ。館の奥へと続く廊下を守っていた看守が彼女の侵入に気付き、フックと爆弾付きの鎖を振り回しながら駆け寄ってくる。
「綺麗じゃない奴に価値観見い出せねーんだわ」
 ここまでの道のりでうんざりするほど見た屈強な肉体の敵に燦はため息をつき、投げた符を符術で空中に固定するとそれを足場にして一息に高く飛びあがることで、捕らえようと投擲されたフックのついた鎖を回避した。
「釣り針がでかすぎるぜ」
 そのまま看守の背後へ跳び下りると、鋼の糸をその首に巻く。素早く掏摸の要領でフックのついた鎖の先から爆弾をちょろまかすと、看守の服の中へ捻じ込んだ。
「えげつないってのは、こういうことさ」
 先ほどの跳躍の際に天井近くに鋼糸を引っ掛けていた燦は、ぐっと強く体重をかけて鋼糸を引くことで看守を天井近くまで引き上げる。遅れて館へ踏み込んだ仲間達の見ている前で、看守は派手に爆発した。

 館の中はしんと静まり返っている。どうやら門番や見張りとして配置されていた看守達は全て倒せたようだ。すべての配下をサラサの処理へと回させたらしいことから、主は手元に護衛を置いておく気質ではないのかもしれないと猟兵達は考えた。
「……領主の見せてきた悪夢も、今宵が最期……終幕の時ですわね」
 鏡のように磨き上げられた廊下を領主の部屋へと向かいながら、翠蘭がそう呟いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『人間の上に立つヴァンパイア』

POW   :    虐げ搾取する女帝の鞭
【鞭】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    頂点に立つ者の暴力
自身に【責め苦を与えてきた人々の苦しみ】をまとい、高速移動と【虐げ搾取する女帝の鞭の効果を持った衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    インモラルテンタクルズ
【痛みや苦しみや恐怖】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【無数の蠢き絡みつく触手のかたまり】から、高命中力の【思考力を奪い下僕として洗脳する効果のガス】を飛ばす。

イラスト:霧島一樹

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はキア・レイスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 館の最上階にある領主の部屋の奥、黒と赤を基調に作り替えられた寝室にて。
 厚い深紅のカーテンを開き、門番が猟兵達に蹴散らされていく一部始終を見ていたヴァンパイアは、冷めた表情のまま赤い天蓋のついたベッドの上へと戻るとミシェルの体を抱いた。ヴァンパイアの足の間に捕らえられたミシェルの体にはいくつもの鞭で打たれた傷ができ、純白のドレスはところどころ血が赤く滲んでいる。
「お前、喋れない訳ではないでしょうに。一言、私に愛を乞えば痛い思いなどしなくて済むのに……」
 まるで糸の切れた人形のようにだらりと手足を放り出して静かに涙を零す少女に、ヴァンパイアは何度目かの誘いの言葉をかけた。甘く囁くような声で慈愛を装っているものの、冷たい瞳を見ればそれが嘘だと誰だってわかる。何度も何度も鞭で打たれ、避けた皮膚から血を啜られて抗う体力は尽きた。けれど心だけは死ぬまで守り抜く――ミシェルの貫く沈黙は唯一にして鉄壁の防具であり、人々の苦しみを花の蜜を吸うように愉しんできたヴァンパイアにとっては最も面白くない状況でもあった。
 いつしか館の入り口付近で戦闘をしていた音は聞こえなくなり、代わりに複数の足音が領主の部屋へと近づいてくる。
「……いいわ。侵入者どもを片付けてから、ゆっくりひらいてあげるから」
 お前は私のものだ。囁きを耳朶に擦りこんでから花嫁を放りだして、ヴァンパイアは黒いマントを翻しベッドから立ち上がった。

 ヴァンパイアが寝室から出ていくと、飲み込んでいた嗚咽が不安と共にミシェルの口から零れ出る。
「侵入者、だって。そうよね……だって、約束したものね……」
 出発前に、危ないことはしないでとサラサを止めた。けれど彼女の性格は自分が一番よくわかっている。どんなに困難なことでも絶対に諦めないところに、お互い強く惹かれたのだ。そして相手のためならばどんな無茶でも押し通してしまう、向こう見ずなところにも。
 手の甲で涙を拭う。迎えに来た彼女に、泣いていたことがバレて笑われないように。
 履いていた靴を脱ぎドレスの裾を引き裂く。誰かは分からないけれど、サラサと一緒に来てくれているのだろう人達の生みだすチャンスを、絶対に逃さないように。


「私は、足手まといだろうか」
 領主の部屋へ向かう途中、サラサが猟兵達へ問いかける。戦う力のない人間が戦場にいることは、邪魔になるだけではなく最悪人質として猟兵達の行動を縛る可能性がある、と彼女は懸念しているようだった。
「出来れば領主の部屋には入れたくないんだが……外で待ってるのは嫌か?」
「お前が死んだらミシェルが悲しむぜ?」
 猟兵達の答えに、サラサは剣を抱いて俯く。逸る気持ちと戦いながら、わかった、と猟兵達の言葉を何とか飲み込んだ。
「ミシェルは大人しく待ってるような人じゃない。きっと戦闘中の混乱に乗じて領主の元から逃げ出すはず。だから、戦っている間に彼女がどこからか飛び出してきたら、私の代わりに受け止めてあげてほしい」
 お願いします、とサラサは猟兵達へ頭を下げた。
ステラ・アルゲン
さてとお前が今回の黒幕か
サラサ殿の為にも、ミシェル殿を返してもらおう

真の姿を開放
我が主の【白銀の鎧】を記憶より現界し身に纏う
【太陽剣】のソルと本体の【流星剣】を手に敵を斬りに行く

炎【属性攻撃】を纏わせたソルと星の【オーラ防御】纏わせ強化した我が剣の二刀流による【2回攻撃】をする
敵の攻撃は極力当たらないように【ダッシュ】で回避

もし当たってもお前の命令には屈しない
【激痛耐性】と【勇気】を持ってルールを無視する

ミシェル殿が出てきたら受け止められるようにしておく
場合によっては【かばう】

ここぞという時を【見切り】、【流星一閃】を食らわせる
我が剣にてお前の願いごと、斬り捨ててくれる!

(アドリブ連携OK)


ラザロ・マリーノ
似たもの同士か。ますます気に入ったぜ。
だが、命知らず過ぎて戦いにゃ向かねえな。故郷で仲良く暮らしてるのがお似合いだ。

真の姿を開放(体格が一回り大きくなり、牙・角・翼が生えて、よりドラゴンに近い外見に)。
更に、UC「影の傭兵」で自分の影を実体化させる。

二手に分かれて、出来るだけ鞭の射程に入らないように周り込んで、どこからミシェルが出てきてもいいように【聞き耳】を立てておく。
素人が足音を消せるとは思えねえからな。

ミシェルが出て来たら俺も影も【ダッシュ】で接近、タワーシールドで【かばう】【盾受け】【オーラ防御】だ。
ミシェルを守るのを優先するが、隙があれば【槍投げ】で援護するぜ。

※アドリブ・連携歓迎


胡・翠蘭
…ええ、勿論ですわサラサ様
貴女と、ミシェル様を救い村に無事帰させることがわたくしたちの目的ですもの
…ですから。
…人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られて――と言うでしょう?
恋でなくても、想いを踏みにじる様な悪趣味なオブリビオンには、骸の海の底に沈むのがお似合いですわ
【WIZ】
激痛耐性、呪詛耐性を活性して防具改造をしておりますが…
…痛みも、苦しみも、恐怖も…慣れているものを与えられても、さほど心は揺り動かないモノですわ
特に、UDCを身体に宿し、飼い続けているようなモノには…ふふ。
攻撃の類は第六感と野生の勘で見切り、防いで…
わたくしのUCで、心ゆくまで快楽に狂わせて差し上げましょう

※アドリブ等お任せ


四王天・燦
女の子を好む…アタシと同類か。
戦闘でもないのに鞭は駄目だけど

「どちらが欠けても駄目なんだから自分を大事にしろ!」
ミシェルは庇って外に出してしまおう

見切りで鞭や触手を凌ぐ。
頂点に立つ者の暴力に対し妖魔解放。
ハーピーの魂を宿しダッシュも交えた高速移動で応戦

高速移動に伴う残像で幻惑。
鞭をアークウィンドで武器受け、そのまま武器落としを狙う。
金切り声で衝撃波を浴びせ怯んだ所で馬乗りだ。
「迎えてあげる。案外楽しいよ」
アタシであってアタシでない声で囁くや、強引に口付けを交わし、生命力吸収で精気も魂も吸い尽くしてあげる。
『ここから出して』と言われても「この身が朽ちるまでだーめ」と捕らえた魂は骸の海に還さない


叢雲・源次
・POW

「出来れば迎えに行くまではその場でおとなしく待っていて貰いたいものだが…ミシェルという女は待っているだけの女ではないのだな………是非も無い。受け止められるかどうかはとかく、サラサ、お前の下へ連れて帰ろう。」
そう約束し、館の内部へと進む

敵は女だ。今日は何かと女に縁のある日だ。願い、願われ、そしてそれを蹂躙しようとするヴァンパイア。

「ならば、貴様は俺の敵だ。ここが貴様の『地獄』と知れ。」
右目から余剰エネルギーが炎のように溢れ、周囲に蒼い炎が揺らめく
構え、踏み込む【見切り】【早業】

「……電磁抜刀。」
神速の居合い斬り。隙を生じさせず返す刀でもう一撃を狙う【二回攻撃】

※アドリブ・連携歓迎


ニーヴ・ブラッディタロン
「女の子好きな女王様」ね……
気持ちはわかる、すごくわかる。カワイ子ちゃんみてると愛でたくなるし、なんなら手元に置いておきたくなる。
だが解せんのは愛で方だ。
キサマから血の香りがする……少女特有の爽やかな血の香りだ。大方ミシェルとかいう娘をいたぶってチビチビ吸ってたんだろう。

しょうもない奴だ……なってない、最低の愛で方をするキサマのような奴は、生かしておく訳にはいかない。

鮮血凶刃を右手に、鮮血彗星を左手にそれぞれ呼び出す。
そして真紅の瞳に覚醒し、戦闘準備完了。
さぁ、始めようか!

鮮血彗星を振り回し、避けるだろうからそのまま追い込んでいって避けきれなくなったところを潰す!
そして凶刃でバッサリだ!



「出来れば迎えに行くまではその場でおとなしく待っていて貰いたいものだが……ミシェルという女は待っているだけの女ではないのだな……」
 源次はここに至るまでにサラサから語られたミシェルの人物像を思い返し、顎に手を当てて唸る。なんだか自分のことを言われているようで、サラサは少し頬を赤くして申し訳なさそうに頷いた。
「是非も無い。受け止められるかどうかはとかく、サラサ、お前の下へ連れて帰ろう」
「命のやり取りをする場で負担をかけてしまって……何と言えばいいか……」
「……気にすることはありませんわ、サラサ様。貴女と、ミシェル様を救い村に無事帰させることがわたくしたちの目的ですもの」
 翠蘭は俯くサラサの肩に手をそっと添えて安心させるようににこりと笑むと、領主の部屋の外で待っているようにと念を押して仲間達と戦場へと踏み出した。
「似たもの同士か。ますます気に入ったぜ。だが、命知らず過ぎて戦いにゃ向かねえな。故郷で仲良く暮らしてるのがお似合いだ」
 ラザロはこれまでのサラサの言動や、彼女の語ったミシェル像を照らし合わせて、くくっと笑う。まるで小動物が自分の巣や家族を守るように、彼女達の必死さは命懸けでありながらもどこか愛らしく見えた。そのまま戦う術など身に付けずに穏やかに生きていければいいのだが、とラザロは言外に含める。
「女の子を好む……アタシと同類か」
「『女の子好きな女王様』ね……気持ちはわかる、すごくわかる。カワイ子ちゃんみてると愛でたくなるし、なんなら手元に置いておきたくなるし」
 燦とニーヴはお互いの呟きに顔を見合わせて、うんうんと共感して頷き合った。
「だが解せんのは愛で方だ」
「だよな。戦闘でもないのに鞭は駄目だぜ」
 打倒ヴァンパイア、と闘志を高め合うふたりを一瞥し、源次は縁の巡りに思いを馳せる。
(今日は何かと女に縁のある日だ)
 サラサとミシェルを連れ帰ると約束した彼は、彼女達の絆の強さが自らへもたらす熱を確かめようと心臓の形をした地獄に手を当てる。「どちらが欠けても駄目なんだから自分を大事にしろ!」と燦が言っていたように、願い、願われ、互いに傍にいたいとふたつの魂は互いに手を伸ばしていた。ちりりと焦がすような痛みを孕みながら体内を駆け上る地獄が、右目の奥に宿る。その溢れんばかりの熱量に溺れまいと、源次は立ち止まって静かに瞳を閉じた。

 猟兵達が領主の部屋へ踏み入り最奥へ目をやると、執務机に腰かけた黒衣のヴァンパイアが鞭を手の中で弄んでいた。大きな窓から差し込む夕陽を背に受けた彼女の表情はよくは見えなかったが、室内の空気の張りつめようからおそらくこちらを睨んでいるのだろうと猟兵達は判断する。
「無粋な人間共。他人の敷地を荒らすなと親から教わらなかったのかしら?」
「生憎と、ヴァンパイアにとって都合のよい教育は受けていませんので」
 黒幕の言葉に冷たく返し、ステラは亡き主がかつて纏っていた白銀の鎧を記憶より呼び起こしその身に纏う。天からあらゆるものを授けられた屈指の騎士であるような、かつての主の姿をなぞるように真の姿を解放すると、本体である流星から生まれた魔剣と、太陽の力を宿した黒い大剣を構えた。
「貴様は俺の敵だ。ここが貴様の『地獄』と知れ」
 源次が閉じていた瞳を開くと、右の目からエネルギーの奔流が溢れる。蒼く燃える炎のように見えるそれは、源次の体では収まりきらない程の熱量を持っているのか、彼の周囲の空気にも飛び火し揺らめいていた。蒼い炎をオーラのように纏った源次は、いつでも剣が抜けるようにと足を僅かに踏みだし居合いの姿勢をとる。
 牙や角、翼を解放しよりドラゴンに近い見た目となった真の姿のラザロは、自らの影に向かって手をかざした。
「お前にも働いてもらうぜ!」
 ラザロの足から魔力が注ぎ込まれ、ドクンと黒い影が一度波打ち。ズズ……と床から見えざる手によって吊りあげられるように立ち上がり実体化したラザロの影は、「いいけど後で金払えよな!」と本体であるラザロへ軽口を返し隣に並んだ。
「まったく……言葉の通じない粗野な人間は見ているだけで腹が立つわね。出ていけと言っているのよ」
 戦闘態勢をとった猟兵達に大きく顔を歪ませて吐き捨てると、ヴァンパイアは黒いマントを翻し跳躍する。

『ミシェルは大人しく待ってるような人じゃない。きっと戦闘中の混乱に乗じて領主の元から逃げ出すはず。だから、戦っている間に彼女がどこからか飛び出してきたら、私の代わりに受け止めてあげてほしい』

 猟兵達はヴァンパイアへの注意を外すことなく、わずかな物音にも反応できるようにと耳を傾けていた。領主の部屋にはいくつかの扉があり、いつどの扉からミシェルが飛び出してくるかわからない。彼女を守ろうと意識を傾けている猟兵達は、各々手近な扉を背で庇うようにしながらじわじわとヴァンパイアとの距離を詰めていた。
「我が剣にてお前の願いごと、斬り捨ててくれる!」
 はじめに動いたのはステラだった。黒い剣に炎を、もう一振の流星の剣には煌めく星のオーラを纏わせて強化していた騎士は、臆することなくヴァンパイアを叩き斬るべく床を蹴る。
「邪魔よ! 跪きなさい!!」
 目前に飛び出してきた白銀の騎士に激高したヴァンパイアは、重心を落として鞭で炎の剣を受けると、ステラの懐へ滑り込むようにして女帝の鞭を振り上げた。後方へとっさに跳びそれを避けたステラと入れ替わるように、瞳を真紅に染めたニーヴが飛び出す。
「キサマから血の香りがする……少女特有の爽やかな血の香りだ」
 ヴァンパイアに肉薄したニーヴは、すんと鼻を鳴らして低いトーンで囁いた。虚空から剣と棘鉄球を呼び出すと、野蛮にして比類無き強大さを誇る吸血鬼から受け継いだ“血”の望むままに、両手に握ったふたつの武器でヴァンパイアを切り刻もうと衝動に駆られるままに両腕を振り上げた。不意打ちに等しい連撃に晒され、ヴァンパイアは避けることも出来ず、鞭でニーヴの刃を受け流そうとする。だが、同族の血に覚醒した彼女の速さは凄まじく、傷を受けた体をマントで包み床を転がって逃げることでなんとか致命傷を免れる。
「しょうもない奴だ……なってない、最低の愛で方をするキサマのような奴は、生かしておく訳にはいかない」
 床に片膝をついて体勢を立て直したヴァンパイアを見下ろすニーヴの目は、冷酷な赤に染まっていた。その視線から侮辱と軽蔑の色を読み取ったヴァンパイアは、怒りの表情を露わにして床を蹴って再び跳び上がった。跳躍の最中、何ごとか呟きその身に黒い霧のような靄を纏う。
(……人の、苦しみが聞こえる)
 ラザロと彼の影は、鞭の射程を警戒して距離を置きながら扉とヴァンパイアの間に立ち、人の足音を聞き漏らさないようにと聞き耳を立てていた。その耳が拾ったのは、ヴァンパイアの周囲に現れた靄が内包する、責め苦を受けた人々の苦しみの声だった。
ヴァンパイアの薄い唇が歪に笑みを形どる。
「ああ……滾るわ……」
 恍惚とした呟きの主から、誰も目を離さないように意識していたはずだった。だが、全員の視線が集中するそこに、ヴァンパイアの姿はない。
「魂の奥底に宿りし魔の者よ。オブリビオンの呪縛より解かれ、この身を依り代に顕現せよ……!」
 燦はかつて精気を喰らったハーピーの魂を自らの奥底から引き出し、オーラとしてその身に宿す。寿命という未来を代償に降ろしたオブリビオンの娘の頭を撫でるように、そっと左目を瞼の上から撫でた。
「……お前!」
「ざあんねん、高速移動が出来るのはアンタだけじゃないんだよ」
 燦はハーピーの機動力を自らの脚力に上乗せして生みだした瞬発力で、ヴァンパイアの懐へ踏み込む。猟兵達から間合いを取り、相手をルールで支配する衝撃波を部屋中に放とうとしていたヴァンパイアは、燦の姿を目で捉えることはできても、体と思考が追いつかなかった。燦の振るった短剣が巻き起こしたつむじ風が、女帝の鞭を絡め取り弾き飛ばす。愛用の武器を拾おうと咄嗟にヴァンパイアが飛び出した先で待ち構えていたのは、源次だった。
(刀も抜かず、ただ機会を伺っているだけの人間ごとき、私の敵ではない……!)
 抱えた地獄の熱量がいくら膨大でも、それを溢れさせている程度の器なのだ――ヴァンパイアは一抹の疑念を握りつぶす。
 その時だった。
「……電磁抜刀」
 じっと身じろぎひとつせずに構えていた源次が、その刀を抜く。
「……な、」
 誰もが、抜いた、と思った瞬間――ヴァンパイアの右肩から血飛沫があがった。斬られた自覚なく開いた大きな傷口を押さえる隙も与えず、源次は返す刀でヴァンパイアを再び斬りつける。
「な……なによ、なによ、なんなのよこれは……!!」
 床に大量の血をこぼしながら、ヴァンパイアが吼えた。

(そろそろ……ですわね……)
 部屋の隅で術式を練り上げていた翠蘭は、源次の居合がヴァンパイアを捉えた様子に、袖で口元を隠して小さく笑んだ。目の前の女帝が余裕を崩し、ボロを出して事態を大きく動かすだろうと予測していた翠蘭は、身体に宿し飼い続けてきたUDCが蠢くのを感じ、その身をよじってため息をつく。UDCによって与えられる痛みや苦しみ、恐怖にはもう慣れきってしまい、心はそれほど揺り動かなくなった。先ほどから女帝が猟兵達へ向かって振りかざしていた鞭にも、目新しさを感じられず興味はそそられない。救出対象がこの場に現れる予定がなければ、部屋に踏み込んで早々に解き放てたものを……翠蘭が目を細めながら二度目のため息をつきかけた時、ヴァンパイアが再びその身に黒い靄を纏った。
「実力は認めてあげる……けれどその程度で、私に勝てると思わないことね」

 ヴァンパイアにはもう一枚、切り札が残っていた。
 インモラルテンタクルズ……痛みや苦しみや恐怖の感情を与えた相手を洗脳して思考力を奪うガスを放出する、触手のかたまり。
 目の前の人間達は戦う力を持ち、己の信念を貫き、目的を達成しようというエネルギーに満ちている。
(ならば、その目的を奪えばいい)
 せっかく見つけた楽しみをこんなことで手放すのは不本意でならないが、侵入者共の心を折り、恐怖を与えることが出来るならば安い損失だ。
 ヴァンパイアは人々の苦しみを身に纏い、目にもとまらぬ速さで寝室へ続く扉を開き滑り込む。
「来なさい、ミシェル。お前の美しい姿を見たいという人が来ているわ」
 力なく横たわっていたはずの花嫁は、ベッドの端に腰かけていて。はい、と答えて立ち上がるとヴァンパイアの脇をすり抜けて扉の外へ走り出した。

「来るぞ!」
 ミシェルの声と裸の足が床を蹴る音を拾ったラザロが、仲間達へ合図する。ヴァンパイアが滑り込んだ扉の前で自身の影と共にタワーシールドを構えて逃げ道を作っていた彼は、扉を蹴破り駆け出してきた花嫁姿の少女と、彼女を追うヴァンパイアの間に割って入った。
「止まりなさい、ミシェル!!!」
「止まるのはお前の方だぜ!」
 非常に重く頑強な盾で押し潰さんとばかりに突進してくるラザロの影を飛び越えて、ミシェルの方へ飛びかかろうとするヴァンパイアは、ラザロが投げた竜騎士の槍斧によって床にマントを縫い付けられその動きを封じられる。
「きゃ……」
 足がもつれ床に転んだ少女を、ステラが抱きあげた。オレンジ色の夕日が差し込む戦場にて、光を受けて輝く白銀の鎧を身に纏うステラはまるで全身が燃えているように見える。敵を前にして前線を離れるのはステラにとって難しい決断ではあったが、腕の中で傷を負い息を荒げている少女は、部屋の外で彼女を待つ少女の願いであることがその判断を後押しした。少女をなるべく揺らさないように急ぎ部屋の外へ出ると、ステラはサラサの姿を探す。不安げに少し離れた場所で剣を抱いていたサラサは、ミシェルの姿を認めるや否や抱えていたものを放り出し駆けつけた。
「もう少し、待っていてもらえますか」
 皆で村へ帰るために。安堵するふたりから離れ、ステラは再び戦場へと戻る。

「あの娘さえ、あの娘さえ私の手にあれば……貴様らなどにやられるはずがない……!」
「まだ分からないのかい? 人の血を大量に必要とする時点で、お前にはもう後がないんだよ」
 自発的に捧げられている訳でもないのに、と深紅の瞳のニーヴが、棘のついた鉄球を叩きつけてヴァンパイアの防御を崩そうとしていた。鮮血神より授かった武器と己の腕に自信があるのか、ニーヴの表情は強さをたたえ輝いている。
「騎士としては……一方的に攻撃をするのは信条に反しますが」
 ミシェルを外へ運び終わり、合流したステラが再び炎を纏った黒剣を構える。最後のあがきだろう、ヴァンパイアの放った衝撃波がステラへ不戦のルールを課すが、構えた剣が下ろされることはなかった。
「それだけのことをしたのです、お前は」
 命令に屈しないことで受けるダメージを引き受けたステラの表情は、白銀の兜に覆われて伺い知ることは出来ない。ただ剣の表面で燃え盛る炎が、その心中を表しているように見えた。
 ニーヴが何度目かに叩きつけた鉄球が、ついにヴァンパイアの防御を崩す。
「さぁ、やろうか!」
「願いさえ斬り捨てる、我が剣を受けてみよ!」
 ニーヴの振りかざした大剣と、ステラが放つ夜空を駆ける流れ星のような美しく迷いのない斬撃が、ヴァンパイアに致命傷を与えた。
「……人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られて――と言うでしょう? 恋でなくても、想いを踏みにじる様な悪趣味なオブリビオンには、骸の海の底に沈むのがお似合いですわ」
 もはや息も絶え絶えといった様子のヴァンパイアに、翠蘭は鈴を転がすような声で冷たく言い放つと、体内のUDCを解放する。
「そちらの触手、出していただいても構いませんのよ。ああでも……あなたに支配する快楽は齎せませんわね。わたくし達、恐怖心など抱いておりませんから」
 ぬちぬちと床の上を這う無数の触手がヴァンパイアを捉える。翠蘭が日々あらゆる形の快楽を注いで育ててきた触手は、その膨らんだ身の内に溜めこんだ快楽を含ませた粘液を、ヴァンパイアの体へと擦りつけ侵していった。
「や、やめなさい……いや……」
 コントロールできない感情の波に呑まれ、もはや抗う体力もない女帝の声が潤み震える。こうなってしまえば可愛いものね、と翠蘭はさらに触手へと快楽を注ぎながらほくそ笑んだ。
「迎えてあげる。案外楽しいよ」
 いつの間にか別のオブリビオンの魂を宿した燦が、触手に埋もれるヴァンパイアの耳元で囁く。魔を帯びた人ならざるその声に首を振って拒否を示すヴァンパイアの唇に噛みつくと、精気と魂を吸い上げた。骸の海から染み出した過去が現在に受肉したうちのひとつである目の前のオブリビオンの魂は、骸の海に落ちたはじめの魂のコピーに近いかもしれず。そして、共に現実を過ごすためには寿命を捧げなければ叶わないとしても。燦は半ば本能的にヴァンパイアの精気を求めた。
「『ここから出して』? この身が朽ちるまでだーめ」
 それはこの館で命を刈りとられた皆が言いたかったことだよ、と。燦は足元で灰となって消えて行くヴァンパイアを見下ろして、左目を瞑ったまま呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『冬の感謝祭』

POW   :    お祭りの調理は力仕事。パンをこねたり、お餅をつくったり、大鍋でスープを作ったり。

SPD   :    飾りつけは時間と勝負。お祭りの賑わいを、限られた準備期間のなかで、どこまで届けられるかな?

WIZ   :    飾り作りは工夫が必要。外は寒くて暗い町、どんな飾りをつくったら華やかに見えるか?

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達がふたりの少女を連れて戻ったと聞き、村中が騒然となった。選ばれし花嫁だなんだと言いくるめて送り出した少女が、傷と血にまみれて弱り切った姿で戻ってきただけではなく、彼女を救ったのが花嫁候補に挙がっていた別の少女と、彼女の要請に応じたという猟兵達だったという、奇跡がいくつも重なった結果だったからだ。
 もう村を苦しめる領主はいないと知った村人達は、喜び、ささやかな祝いの席が用意されることになった。
「ありがとう、旅人の方々」
 持病により痩せたミシェルの父が、猟兵達に頭を下げる。お礼に渡せるようなものが何もないという彼は、是非この後の祭に参加していって欲しいと微笑んだ。
「サラサのことも救って下さって、何と言っていいか……。彼女は私の亡き親友の娘でね。こうして元気な姿で戻ってきてくれて、私も嬉しいんだ」
 ミシェルの手当てをするサラサを見つめ、父は目を細める。

「皆さん、本当になんとお礼を言えばいいのか……」
 手当てを受け元気を取り戻しつつあるミシェルが、サラサと共に猟兵達の元を訪れた。
「よければ、これを。この村の土でしか育たない花なんですよ」
 色とりどりの小ぶりな花で作った花束を猟兵達へ差し出すミシェル。本調子でないのかふらりとバランスを崩した彼女を、サラサがさりげなく支えた。
「私はミシェルを寝かせて来る。皆さんは村長の家での料理作りに挑戦したり、広場の飾りつけに混ざったり、特に何もせずにゆっくり休んで過ごしてくれていいから」
 君はこの後どうするの、と猟兵の一人に訊かれ。サラサはもごもごと言葉を濁した後、
「ミシェルの部屋で……新しい約束を、するんだ……」
 耳まで赤くして、皆には内緒だからね、とサラサははにかんだ。
ステラ・アルゲン
サラサ殿とミシェル殿を無事に救えて良かった
二人の将来が明るいものであると私は願っていますよ
貰った花束を手にそう言って

さて、祭りですか
力が必要なら料理を作るのを手伝いに行きましょう。力仕事は得意ですから
あと私は料理ができないのですが最近覚えたいと思いましたし
基本は他の人の手伝いをしつつ、料理の作り方を見て勉強しておく
教えられれば飲み込みは早い方なので少しは料理を手伝えるでしょう

私が料理を覚えようと思ったのは料理を作ってあげたい相手ができたからでしょう
あ、あまりこの話は深く聞かないでください
ちょっと気恥ずかしいので……


四王天・燦
SPD

変哲ないダガーをサラサにやる。
「お姫様を守るために使えるようになりな。剣は駄目だ、振り回されてた」
剣は有事に備え兄に返しておこうぜ

「報酬は幸せのお裾分けと、新しい約束の報告だけで結構さ」
吸血鬼の財産が鞄からはみ出ているのはご愛嬌。
精気も吸ったし充分な収穫だ

祭りは、ミシェルを差し出した村と思うと心中複雑。仕方ないのは分かるけど。
この先気兼ねなく笑える村になるよう願うぜ

とはいえ顔には出さず酒の席に参加。
「デスヨネー」
未成年なので摘み出されますよねー

「これがお前が奪ってきたものだ。アタシが骸の海に堕ちる日まで時間はたっぷりあるし、それまでに分かるといいな」
喧騒を眺め心の奥底へと言葉を投げるんだ


胡・翠蘭
ふふ…サラサ様とミシェル様、お二人のみならず村の方々も…
皆様の晴れやかなお顔、それが見られただけでわたくしにとっては十分な報酬ですわ
あとは…そうですわね、美しいお二人の、末永くのお幸せを願っておりますわね?

お祭りの準備…何もしない、というのも、もったいないですわね
折角ですから、この村にある…生活に不要な物資を再利用した飾りの制作などのお手伝いなどをさせて頂きましょう
…今まで生け贄と、花嫁と捧げられ儚く散った女性たちの弔いもかねて…愛らしく咲いた花をモチーフに、花飾りなどをお作り致しましょうか
弔いと共に…これから新たに咲いてゆく皆様の幸福も――お祈りさせて頂きましょう

※アドリブなどお任せします


ラザロ・マリーノ
【POW】
普段は花より団子なんだが、たまには花も悪くねえな。

とはいえ、祭りに団子は必要だろ!

UC「影の傭兵」を発動。
二人がかりで【聞き耳】【追跡】【忍び足】【迷彩】【地形の利用】【槍投げ】で狩りをするぜ。
とはいえ、そう時間もかけられねえから、期待はできねえかな?

近くに水場があれば、獲りすぎないよう威力を弱めた【衝撃波】で石打漁ってのもいいな。
ついでに、移動中は【世界知識】【視力】で食べられる野草を探しておくぜ。

俺も【料理】はできるが、折角だからこの村の味を食ってみてえ。
この村で一番料理が上手な奴を呼んできてくれねえか?
下ごしらえくらいはこっちでやるからよ。

※アドリブ・連携歓迎



「サラサ殿とミシェル殿を無事に救えて良かった。二人の将来が明るいものであると、私は願っていますよ」
 ステラはミシェルから花束を受け取り、微笑む。後で料理を手伝うと約束していた村人に呼ばれ、それじゃあ後で、とふたりに一度別れを告げた。
「ふふ……サラサ様とミシェル様、お二人のみならず村の方々も……」
 ステラを囲んで浮足立っている村娘達を遠巻きに見ながら、翠蘭も日の光を浴びる猫のように目を細める。
「わたくしも、美しいお二人の、末永くのお幸せを願っておりますわね?」
 花束で口元を隠して、にこにことしている翠蘭に見送られて、ミシェルとサラサは家へと戻っていった。
「普段は花より団子なんだが、たまには花も悪くねえな」
 贈られた花束に鼻先を埋めてその香りを楽しんでいたラザロが、不意に立ち上がる。どうかしたのかと見上げる翠蘭に、ちょっと出て来ると告げてラザロは村の外へ出た。

「やっぱ、祭りに団子は必要だろ!」
 ユーベルコードで自らの影を実体化すると、影と共に聞き耳を立てる。獣の気配を察知したラザロは、影に回り込むように指示を出した。気配を消して獣道の流れを読み、獲物にじわりじわりと接近すると一息に仕留める。
「鹿か……お前、担げ」
「はっ?! 重てえもん押し付けてんじゃねえぞ!」
 ラザロに一発殴られた影は、不服な雰囲気を発しながらも仕留めた鹿を担ぎ上げた。なおもぶつくさ言っている影を無視して周囲の音に集中すれば、水の音が聞こえて来る。探るように歩みを進めながら、無害の野草もついでにいくらか毟って影に持たせ、ラザロは湖に辿りついた。
「そう時間もかけられねえから、期待はできねえかな?」
 弱めに衝撃波を放てば気絶した魚がいくらか浮かんでくるだろう、ラザロは拳を握りしめると、湖面に向かって衝撃波を放つ。

 大きな鞄の口を手で押さえながら、燦はミシェルの家で茶を飲んでいた。室内をぐるりと見まわしながら少女ふたりが現れるのを待っている燦を、ミシェルの父は穏やかに微笑んで見守っている。おかわりはどうだい、と持ち上げられたティーポットを燦が断った時、ミシェルの部屋からサラサがそっと抜け出してきた。
「おじさん、お茶ありがとな」
 ぴこん、と狐の耳を立てて。燦はサラサを伴って家の外に出る。
「あっ、そうか……報酬の話だよね」
 兄の剣を取りに自分の家へ戻ろうとするサラサを呼び止め、燦は鞄の中から一振りのダガーを取り出した。何の変哲もないそれはシンプルゆえに扱いやすく出来ており、まだ使われたことがないのか、刃は日の光を受けてきらきらと輝いている。
「お姫様を守るために使えるようになりな。剣は駄目だ、振り回されてた」
「……すごい、なんで分かったの。お互いに相手を守れるように、ふたりで鍛錬しようって……約束、してきたの」
 これからもふたりで並んで生きるのだという彼女達の約束は、ささやかではあるがこの世界では何よりも強い誓いの言葉でもあった。燦は「アタシもそうだからね」と頷くと、サラサに剣は兄へ返すようにと告げる。
「報酬は幸せのお裾分けと、今の報告だけで結構さ」
「優しいんだね」
「べ、別のところから報酬は貰ったってだけだし……そうでもないぜ」
 ダガーを握る感触を確かめながら言うサラサに、燦はぱんぱんに膨れた鞄を背に隠して曖昧に笑った。
(だって、本当に優しいなら……素直に祭りを楽しめるはずだろ?)
 村人達の手のひらを返すような、沈痛さから一転した賑やかなお祭りムードに燦の心は晴れない。仕方ないのは分かるけど、と顔には出さない彼女の、灰色の尻尾が悩みに揺れていた。

「さて、祭りですか」
「そうなんですよ騎士様。パンを捏ねるのは大変なんです!」
 何から手伝おうかと腕まくりをするステラに、料理を担当している村人のひとりが熱心に訴える。確かに大変そうですね……と彼女が持っていた小麦の袋を引き受けて、ステラは唸った。
「実は、私は料理ができないのですが……」
「大丈夫です! 私達が全身全霊をかけてお教えします!!」
「それなら覚えられそうですね。力仕事は得意ですし」
 気合十分といった様子のステラに、村娘達の目は釘付けだ。きらきらとした、憧れや感謝……その他様々な感情のこもった視線を一身に浴びていると、はじめは見よう見まねでパン生地をこねていたステラも、流石に緊張してくる。
「じ、実は最近、料理を覚えたいと思ったのですが、これには理由がありまして」
「お仕事に関わることですか?!」
「あ、いえ……私が料理を覚えようと思ったのは……料理を作ってあげたい相手ができたから、でしょう……ね」
 うっかり口にした後で、まるでたくさんの魚が棲む湖にパンの欠片を落としたようだ、とステラは思った。緊張かその他の理由からか耳を赤くしたステラは、村娘達からの怒涛の質問を受けたりかわしたりしながら、彼女達の料理を手伝うのだった。

「……ふふ、華やかですわね」
 翠蘭はそんな様子を少し離れた場所から見ながら、花飾りを作っていた。周囲の家々を回って集めた材料で作られたそれらは、とても家の隅で埃をかぶっていた物資が材料とは思えないほどに、繊細で可憐なもので。どれひとつとして同じ造形のものがないその花飾りは、花嫁として捧げられて散っていった女性達ひとりひとりへの弔いの祈りが込められていた。
「器用だな……」
「何もしない、というのも、もったいないですからね」
 ラザロは翠蘭の作品をまじまじと見つめ、感心している。そんな彼の手に抱えられている大きな肉と数匹の魚や野草などを指して、翠蘭は探しものはいいのですか、と声をかけた。
「そうだった! 俺も料理はできるんだが、折角だからこの村の味を食ってみたくてよ。この村で一番料理が上手な奴を探してるんだ」
「それなら、彼女達に託すのがよいでしょうね」
 ラザロは翠蘭に礼を言うと下ごしらえを済ませた食材を持ち込むべく、絶賛大盛り上がり中の厨房へと向かった。

 いつもの夕食時を少し過ぎた頃。
 焚火と松明で照らされた広場には花などの飾りが施され、村人達と猟兵達が協力して作った料理が並んで湯気を立てている。長老を中心とした酒飲みの席から摘み出された燦は、やっぱりだめか、と舌を出してテーブルを離れた。村人達から距離を取り、適当な石垣の上に腰を下ろす。同じく村人達から少し離れたところで、何事かを祈っている翠蘭の姿が目に入った。「皆様の晴れやかなお顔、それが見られただけでわたくしにとっては十分な報酬ですわ」と控えめに笑った彼女のことだ、おそらく新たに咲いてゆくだろう村人達の幸福を祈っているのだろう――燦はそう解釈するとともに、この先気兼ねなく笑える村になるように、と自らも目を閉じ祈る。
(これがお前が奪ってきたものだ。アタシが骸の海に堕ちる日まで時間はたっぷりあるし、それまでに分かるといいな)
 心の奥底に捕らえたヴァンパイアの魂の写しに、そう語りかけながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月11日


挿絵イラスト