●
「皆さんは何か、勇者の伝説を聞いたことがあるかしら?」
グリモアベースへ集った猟兵たちにポノ・エトランゼ(エルフのアーチャー・f00385)が話しかける。
――帝竜ヴァルギリオスと共に蘇ったという、未だ所在の掴めない「群竜大陸」。帝竜がもしオブリビオン・フォーミュラだとするなら、大陸の発見は必須だ。
「発見のための、何らかの予知を得るために、出来ること――それって勇者の伝説を追っていけば良いかしら、と思ってね。
それらしい地域を見つけてきたの」
山岳地のなか草原が点在する地域だ。牛や山羊などの酪農が中心となっており、緑あり、植生の少ないむき出しの岩山が混在する地は、運搬に大蜥蜴が活躍している。
とある時期には大蜥蜴レースなるものが開催されるらしい。
「まあ酪農特化ではあるけれど、細かい所へ視点を向ければ職業も様々よね。
交易盛んな道沿いに町があるのだけれど、そこに伝わる香水に「勇者の余薫」と呼ばれるものがあるの。
これって、きっと勇者伝説の一つだと思うのよ」
勇者の余薫の調査をし、勇者の意思を見つけてほしいのだ、とポノは言う。
「晴れの日の今日は、町の外の草原で豊穣の祭が開催されているわ。
たくさんのチーズが振る舞われていて、牛や羊の肉はもちろん、窯焼きのパンとかね、美味しい物を食べてから調査してはどうかしら?
腹が減っては戦はできぬ、って言うでしょう?」
なるほど、と頷いた猟兵が問う。
「時に、調査のための、とっかかりとかはあるのだろうか」
猟兵の言葉に、そうねぇ、ポノはメモに目を落とした。
「えぇと……勇者の余薫は、この町で作られたものではなく、余所の集落から伝わってきたものらしいの。
恐らくは遠方に足を運ぶことになるでしょうね。
その時は町の人に大蜥蜴を貸し出してもらった方が良いかも」
なお、レース祭りの際は、たくさんの集落代表が集ってのレースとなり、規模も大きなものなので、普段から大蜥蜴はたくさん飼育されている。
貸出業もあるだろう。
「遠方に……パンとチーズ、ハムのサンドイッチとかのお弁当を作ってもらうのもありかしら?」
「いいわねー」
と、猟兵の言葉に頷くポノ。ちょっとしたピクニック気分にもなるだろう。
「戦いが起こりそうな時は、大蜥蜴さんを安全な場所で待機させてあげてね」
それじゃ、よろしくね。と、そう言ってポノは猟兵たちを送り出す。
●
アックス&ウィザーズに到着した猟兵たちを包む、あたたかな気候、どこか爽やかな香り広がる草原。
周囲を見回せば遠くに山があり、傍には看板。――どうやら扇状に造られた町のようだ。
その中心付近の祭り会場や、市では芳しいパンやチーズが匂い立っていた。
猟兵は異なる区画へ足をのばしてみる。物売りの露店や路地に入ってみれば、花の香り、ハーブの香りと様々な香りが巡っていた。
再び異なる区画。扇状の広がりを辿っていけば大蜥蜴の飼育場があり、更に歩けば商隊が混在する宿場がある。
山岳を抜ける風は時折強く、その場から様々な香りをさらっていく――。
風の行く先を、ふと、猟兵たちは見つめるのであった。
ねこあじ
ねこあじです。
勇者の伝説を探すシナリオです。
プレイング締め切りなどが決まりましたらマスターページの連絡上部に記載します。
お手数おかけしますが、よろしくお願いします。
以下、ゆるっと方針。
・第一章 町の外の草原でチーズが振舞われる祭りをやっています――というのをベースに。
美味しく食べながら同じように食べている人から何らかの話を聞いたり、町に行って香水関係のことを調べたり、気になるなら大蜥蜴を見に行ったりしてみましょう。
一応複数のルートから辿れるようにゆるふわ設定してますので、すべてを網羅する必要もないと思います。何か上記以外の調査を思いつけば、採用可能・不可能は出ますが、挑戦してみてください。
・第二章 旅します。
・第三章 依頼TOPの敵と戦います。
それではプレイングお待ちしております。
第1章 日常
『豊穣の宴』
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POW : そのまま焼いて食べる
SPD : パンなどに乗せて食べる
WIZ : 新しい食べ方を見出す
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
スフィア・レディアード
POW判定の行動を取る
アドリブや他猟兵との絡み歓迎
勇者の伝説かぁ、さぞかし皆が憧れる存在だったんだろうね。
とりあえず、今日はピクニック感覚でチーズを堪能しておこうね。
私はチーズをそのまま焼いて食べてみるよ。
「わぁ、やっぱり素材からして違うのかな、すっごく美味しいチーズだよ!」
これならいくらでも食べられそうだね。
「店員さん、もっとチーズを沢山買っていっても良いかな?」
勿論、情報収集も忘れず行うね。
一緒に食べている人から情報を伺うよ。
礼儀正しく尋ねるね。
「あのー、勇者の伝説に関して何かご存知だったりしますか?」
「私達、勇者の伝説について調べているのですけど」
聞いたことは『学習力』で覚えておくね。
アズール・ネペンテス
【選択:SPD】
チーズ祭か。なら依り代の故郷の名産品の小麦(巷で評判な)で作ったパンを提供し知名度を上げておこうじゃないか。
単にパンにチーズをのせて食べるってのもいいがそこはやっぱりよりアレンジしたのも一つの情報として売りたいから【料理】を使ってさらにワンランクあげるのもやってあげよう。
…あれ?今回何の目的できたんだっけ?なんかすごく肝心なことを忘れてる気がする
(アドリブ歓迎
スピレイル・ナトゥア
どうやら最近のアックス&ウィザーズでは、勇者探しが猟兵の主な仕事になっているようですね
帝竜さんを葬った凄い方々だったようですが、私たち猟兵と同じなにかだったりするんでしょうか?
まあ、猟兵と同じようななにかだったとしても、私は勇者にはなれそうもありませんが
チーズは、私たちの住んでいる集落でもよく作られていた保存食です
香水探しがどんな過酷な旅になるかはわかりませんが、パンなどと一緒に買っていつでも即席のピザを作れるようにしておこうと思います
それにしても、香水に名前がついているなんて、そんなに体臭が特徴的な勇者さんだったんでしょうか?
筋肉質な戦士にありがちな汗臭い臭いだったりしないといいんですが……
●
時折吹く風は高原の香り。陽射しは暖かく、過ごしやすい気温。少し冷たさの感じる風は、チーズ祭りに訪れる人の熱気を緩和してくれる。
豊穣祭を取りまとめる者に話をつけ、たくさんのパンを搬入するのはアズール・ネペンテス(お宝ハンター・f13453)だ。
「お。なんか区長から話が来たんだが、あんたがネペンテスさんか。今日はよろしく」
「よろしく! 世話になるぜ」
隣り合わせとなったチーズ屋台の店主・ノットとアズールがガシッと力強い握手を交わす。
チーズとパンをお近づきの印にと交換し、それぞれ食してみる。
「おお、うま。単にパンにチーズをのせて食べるってのもいいが、ここから更にアレンジしてみるのもいいな」
と、アズール。
「うむ、うまい。やはりパンにはチーズ――いやこの食感ならこっちの方が良いか……ほら嬢ちゃん、こっちのチーズをのっけてみな」
と、ノット。依り代であるヒヨリの姿から、嬢ちゃん認定をいただいたアズールだが、いつものことでもあるので頷き応じた。
うまい。削られたチーズがふわふわとパンにのっかていて、加熱の過程によっては様々に楽しめそうだ。
そんな挨拶とやり取りを前哨に、チーズ屋台と隣り合わせで調理も兼ねる提供処を構えたアズールは呼び込みを始めた。
「わぁ、やっぱり素材からして違うのかな、すっごく美味しいチーズだよ!」
これならいくらでも食べられそうだね、とノットの売るチーズを焼いてもらったスフィア・レディアード(魔封騎士・f15947)がはふりと頬張る。熱々で濃厚なチーズをじっくりと味わった。
「牛、山羊と、種類によって熟成によって味は違ってくるからな。色々と食べ比べてみるといい」
「わあ、楽しみ。ノットさん、もっと買っていっても良いかな?」
「はいよ。おすすめを包んでいこうか」
樹皮に包まれたチーズ、葉に包まれたチーズをそれぞれ取り出し、芳香別に包んでいくノット。
目を輝かせてスフィアは見つめ、加わるハーブ入りチーズ一つ一つにも興味を示す。
「アズールさんは、パン屋さんを営んでいるのでしょうか?」
様々な形のパン。その一つである平べったいそれを眺め、スピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)が問う。
「そんな感じだな」
と、アズールは、『今日もどこかでパンを焼いて売り歩く』――依り代の故郷の名産品である、小麦で作ったパンを提供していく。
旅の途中に必要となるであろう食材を購入していく最中のスピレイルは、アズールのパンと隣のチーズ屋台を交互に眺め、両方を購入した。
ここで選んだチーズはハードタイプのもの。
窯焼きパンの香る市場は、貯蔵庫から出された様々なチーズが陳列している。
「チーズは、私たちの住んでいる集落でもよく作られていた保存食です」
故郷の光景を思い出したのか、スピレイルが淡く微笑む。
「気候や、乳を出す動物の健康状態、熟成と、地方によって色々らしいな。いつか食い歩きしてみたいところだ」
棚におさめられた円盤のチーズの一つを試食用に出しながら、ノットが応じる。
「旅に出るんだろう? なら、これも持って行きな」
と、やや強引に渡されたチーズを手に、スピレイルは目を瞬かせた。アズールへと視線を移せば、サムズアップされたのでありがたく受け取り、ノットへ礼を述べる。
その間、アズールは料理中であった。よりアレンジを加えたもの――バゲットに切り込みを入れ、ニンニク、バジルとチーズを挟んで焼いたやつを提供していく。
――そして、ふと気付くのだ。
「……あれ? 今回何の目的できたんだっけ? なんかすごく肝心なことを忘れてる気がする」
「私達、勇者の伝説を調べにきたんだよ」
違う屋台からラクレットを購入してきたスフィアが教えれば、「あ、そうだった」とアズール。
そんな彼へスピレイルも、
「最近のアックス&ウィザーズでは、勇者探しが猟兵の主な仕事になっているようですよ。
帝竜さんを葬った凄い方々だったようですが、私たち猟兵と同じなにかだったりするんでしょうか?」
――まあ、猟兵と同じようななにかだったとしても、私は勇者にはなれそうもありませんが……と、簡単な説明ののちスピレイルは呟いた。
帝竜ヴァルギリオスとの決戦に参加した冒険者の多くは、沈みゆく群竜大陸と運命を共にしたと伝えられている。
この戦いで命を落とした全ての冒険者が、勇者として称えられているため、勇者の数は数千人を超えており、真偽は別として、多くの伝説が残されているようだ。
スピレイルの説明に、なるほどなあ、と頷くアズール。
「アズールさんは忙しそうだし、情報収集は私達にまかせてくれて大丈夫だよ」
頑張ってね、とラクレットを片手に手を振るスフィアと、スピレイルは簡易休憩所へと向かって行った。
会話の邪魔にならない音色を奏でる小さな楽団の側を通り過ぎ、程よく日陰を提供するパーゴラ内へ入る。
そこは買ったチーズ料理を卓に置き、喋る人たちがたくさんいる。
家族連れの住人、腹ごしらえに来た行商人、冒険者と風体は様々だ。
卓で一緒になった住人――女性たちから特産のチーズの話を聞き、応じるスフィア。
各村に伝わる独特の製法から、違う物品の情報と話はどんどん新しいものへと変わっていく。
話は尽きないものと思われたが、時折訪れる次の話題を探す間を見つけ、スフィアは礼儀正しく尋ねることにした。
「あのー、勇者の伝説に関して何かご存知だったりしますか?」
「おや、勇者の伝説かい?」
「――ここらへんだと魔女さんの話かねぇ」
それだ。ぴょこんとやや姿勢を正すスフィア。
「私達、勇者の伝説について調べているんです」
住人曰く、その昔、山の向こうの集落に腕の良い治癒師がいたようだ。薬草を扱う彼女は魔女と呼ばれ、ハーブ園を作り様々な症状に対応してみせ、その評判を聞いて遠くから訪ねてくる者もいたとか。
「旅立ってその後、見た者はいないんだろう?」
「その集落も、詳細の場所は分からないんだとか……まあ伝説だからねぇ」
「香水に、名がついているのだと聞きました」
するっと差し入れるようにスピレイルが問う。
「おや、知らない人も多いのに――やっぱ女の子はそうでなくっちゃね」
と微笑んで言う女性に、目を瞬かせたスピレイル。
女性は続ける。
「たまにしか精製できない希少な物だから、商人は勇者の余薫なんて名で売っているのだけどね、アタシたちは親しみを込めて、彼女の名でヘンティルって呼んでいるのさ」
ヘンティル・レガロ――それが、この辺り一帯での香水の名。
「まあ、お高いから、アタシたちが買うのは似たやつなんだけどね」
「もっともつける時なんて限られるんだけどさ」
ウインクする女性に、スピレイルとスフィアは頷き返す。
想像していた香りと違うようで、スピレイルは胸の内で安堵する。
スフィアはヘンティルという魔女の話を、確りと胸に刻むのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と共に
そういったものを難題と呼ぶわけだが
…まあ良い
師の好みは百も承知
水牛から作られた柔らかく新鮮なチーズ
加えて、少し固く癖のあるものの二種
師父、何に合わせる?
待つ店先に勇者の伝説の手掛かりでもありはしないかと
気になる意匠を見つければ訊ねてみるか
草原の隅で師に請うは、ひとかけ宙に燃える炎
先のチーズをナイフで刺し
しばし炙ったのちに師の待つ皿へと
風味の異なる二種が湯気をあげて融け合う
単純、だからこそ豊かな
くれぐれも火傷されぬよう
極上の午餐とやらが台無し故な
無事口に運ばれるのを見届けてから自分も手を
――うむ、外で食べるのも悪くないな
頬を撫でてゆく、草の香の混じる風が心地好い
アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
チーズもこれ程の種類があると壮観よな
…極上の旅には極上の午餐が必要不可欠だ
よし今決めたぞ、ジジ
最高のチーズを私に献上してみせよ
集う宝物に笑み零し、思索を練る
足取りは香り立つ窯焼きパンへ
…申し訳ない、そちらを二つ頂けますか?
具材探しの最中、鼻孔擽る花の香
良い香りと云えば――そうさな
序でに『勇者の余薫』に関する情報も集めてみるか
薄切り生ハムと野菜をこんがり焼いたパンに乗せる
よし、此処で主役の出番だ
請われる侭【愚者の灯火】を召喚
蕩け、滑り落つチーズを挟めば渾身の一品の完成
ふふん、美味い物は熱い内に…だ
お前も有難く食うが良い
…む、随分と美味そうな物を食っているな
私の分はないのか?
窯焼きのパンの香り、濃厚なチーズの香り。
人々の楽し気なざわめきのなか、一際目立つのは仕入れの商人と売り手の交渉の声だろうか。
活気豊かな場へ視線を巡らせるアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)。
「チーズもこれ程の種類があると壮観よな」
そして、ふと気付いたように呟く。
「……極上の旅には極上の午餐が必要不可欠だ。よし今決めたぞ、ジジ」
言いながら今度は首を巡らせ、ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)を軽く見上げた。
「最高のチーズを私に献上してみせよ」
「そういったものを難題と呼ぶわけだが……」
まあ良い、とジャハルは頷いた。
(「師の好みは百も承知」)
二人で豊穣祭の会場を歩くわけだが、その速度はゆっくりと、ジャハルは品を定める視線をあちこちへと飛ばす。
とある店では、陽の昇らぬうちから拵えたという新鮮さが売りのチーズ。
量の少ない水牛乳から作られた、柔らかく新鮮なチーズは希少なものだ。適した保存期間の短さは到底外からやってくる商人の手に負えるものではなく、この場に直接やってきた者しか味わえないチーズ。
加えて、少し固く癖のあるチーズ。合計二種を選んだジャハル。
丁寧に包まれたそれを手にするジャハル――宝を抱くように慎重に扱う様子と、その宝に笑み零すアルバ。
「師父、何に合わせる?」
言葉に、そうさな……と呟き思索するアルバは、とある店へゆるりと歩み出す。
香り立つ窯焼きのパンの屋台。
「……申し訳ない、そちらを二つ頂けますか?」
「はーい、少々お待ちくださいませ」
芳醇な香りを放つこんがり焼きたてのパンを包んでもらい、受け取る。
二人は音色を奏でる楽団の側を通り過ぎ、場を抜けようと人の行き来の少ない町の塀に沿って歩いた。
途中、野菜やハムを売る店などを見つけ寄っていく。やはりここでも選ぶのはジャハルだ。
新鮮で青々しい、またはみずみずしい柔らかな野菜たちと、ハムは原木に刃を入れ薄切りにしてもらった。
遠く見える風車、その傍らに立つサイロ。
喧騒を抜けた店並びに、草原をそよぐ風が香りを一筋運んできた。強い、花の香だ。
「――序でに『勇者の余薫』に関する情報も集めてみるか」
アルバが尋ねてみたところ、勇者の余薫は、製法が余所の集落から伝わってきたものであり、今は細々と製造されているもののようだ。
細々と、の理由としては、原料の確保が難しいのか抽出が難しいものなのか――。
考え歩くアルバの隣で、ふと、ジャハルは気になる物を見つけた。ハーブを主とした雑貨屋の意匠である。所々に抽象的な女性の横顔の絵。
「……これは?」
ハーブを縛る紐――結び目にある札は値段と共にやはり女性の絵。
雑貨屋の女性が慣れた様子で応じる。
「ああ、それはヘンティル様だよ。その昔、ハーブに精通した魔女の力にあやかるためにね、そういったものを付けているのさ」
姿絵は確実なものではなく、伝承にとどまる程度だと察することができる。
情報を手にし、町をあとにした二人は、草原へと向かっていった。
薄切り生ハムと野菜を、こんがり焼いたパンに乗せて。
「師父」
と、ジャハルが請うように呼べば、よし、とアルバ。
「此処で主役の出番だ」
胸を張り、愚者の灯火を召喚する。
ゆらゆらと舞う魔法の炎は、自然の風の影響を受けていない。
ジャハルは先程手に入れたチーズをナイフで刺し、炙る。固そうなチーズはじわっと、そしてじゅわりとその身を変化させ、ほどけていく。
頃合いを迎え、アルバの皿へ――パンの上を彩る野菜と生ハムの上に、蕩け滑り落ちるかのように――風味の異なる二種が湯気をあげて融け合う。
挟んで渾身の一品の完成だ。
「くれぐれも火傷されぬよう。極上の午餐とやらが台無し故な」
「ふふん、美味い物は熱い内に……だ。お前も有難く食うが良い」
ジャハルの言葉もなんのその。アルバもまた言葉を返して。
生ハム野菜チーズサンドは大変に美味であった。
塩気をベースに脂の甘味が包みこむ生ハムとシャキリとした新鮮な野菜、そしてコクのあるチーズ。
満足そうに食す師の姿――無事口に運ばれたのを見届けたジャハルは自身も手にする。
「……、うむ、外で食べるのも悪くないな」
頬張った口内に広がる豊かな旨味。そして熱。
少し冷たさを含む風が彼の頬を撫でてゆく。草の香混じる風は、心地の好いもので――、
「……む、随分と美味そうな物を食っているな。私の分はないのか?」
「――」
――そんなひと心地も、僅かな間でしかなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アルノルト・ブルーメ
酪農が生活の中心の集落なら、チーズも絶品だろうね
大蜥蜴も気になるんだけれど、ね……
豊穣の祭が行われている場所を巡る
酒も入って上機嫌な人がいるようなら
その人物に「勇者の余薫」について聞いてみよう
中々の品だと聞いてるんだけれど
逸話や名前の由来などを知っている人を探しているんだけれど
知らないかい?
あぁ、後
大蜥蜴の貸し出しをしてくれる人についても聞いておこう
御しやすい大蜥蜴の見分け方なんかも
判れば教えてくれると良いんだけれど……
警戒はされないだろうけれど
そんな素振りがあったら行商人を装って
Severiを振る振る舞う
折角だからチーズも肉と一緒にご馳走になるよ
勿論、ね?
遠出する事も考えて酒は止めておこうか
三寸釘・スズロク
何かのんびりできそーでイイな~と思ってたらフラッと着いてきちまってた。
ちゃんとお仕事もしますよって。
香水ねぇ、俺はチーズとパンの焼ける匂いの方が好きだけど。
おばちゃんサンドイッチひとつ。チーズ多めで、ライ麦の黒パンがいいなー。
あと美味しい葡萄酒売ってるトコない?
肴用にラクレットの皿も持ち寄りつつ
行商っぽいヒト、呑んでるおにーさん達あたりから話を聞いてみるか。
これウマすぎない?…じゃなかった、勇者の余薫だっけ。知ってる?
この辺で香料生産が有名な町の話とか。
所謂竜涎香的な、勇者が持ち帰った戦利品から作られたーってな逸話があったりすんのかね?
ソレをつけるとモテる、なーんて話があるなら興味あるケドな。
四宮・かごめ
……。
……ちーず。
ちーず。ちーず。
ちーーーーーーず。
なんとなく口に出してみる。
特に意味は無いでござる。
【SPD】
草原でチーズ祭りに参加。
ほう牛乳を発酵。蘇とはまた違うのでござるか。
強い匂いなのに、皆美味しそうに食べているでござる。
食べ馴れると癖になる。なるほど。納豆や銀杏みたいなものでござるな。
パンは知ってるでござる。米みたいなもの。
出来れば一緒に口に入れたい。
これは歩きながら食べられる?……むむ、郷に入ってはとは申せ。
少し悩んでから、弁当を作ってもらって、あとでそれで試す事にして
今は食事の席を立たず、同席した人達から話を聞くのでござる。にんにん。
まあるいまるいお月様――ではなく、陳列する円盤のチーズを見上げる四宮・かごめ(たけのこ忍者・f12455)。
「……。……ちーず」
ピッと指を立て確認するように言う。ちなみに無表情。しかし今の声色は無邪気に十四歳相応だ。
「ちーず。ちーず。ちーーーーーーず」
目前の店主は困惑していた。指差し確認をするかごめ。ふらふら指先を動かし、今度は樽を差して――瞬間、くるっと回された。
三寸釘・スズロク(ギミック・f03285)がかごめの頭部を指先でぐるっと回したのだ。
チーズ屋の店主と向き合うかごめ。目を瞬かせた。
「はいはい、チーズね、チーズ。
おばちゃんサンドイッチふたつ」
指を二本立ててスズロク。
「チーズ多めで、ライ麦の黒パンがいいなー。あと美味しい葡萄酒売ってるトコない?」
「はい、毎度あり。お嬢ちゃんのためにチーズもおまけしとこう」
木皿にドン! とサンドイッチ。バン! とチーズ。
「葡萄酒はアタシの旦那のとこが一番美味いさね」
と、真向いの屋台を紹介された。ちゃっかり。
「おお、ありがと! おばちゃん商売上手だね」
スズロクが応じる。
「酪農が生活の中心の集落なら、チーズも絶品だろうね」
一連の流れに笑み浮かべるアルノルト・ブルーメ(暁闇の華・f05229)がかごめに言えば、木皿を持った少女は素直に頷きを返した。
アルノルトがそのまま芳醇な香り放つ葡萄酒の樽を見れば、スズロクの頼んだ大きな杯に注がれるところで。
アルノルトさんも飲みます? と問われたアルノルトは首を振った。
「遠出する事も考えて酒は止めておこう」
「……、……、まあいっか」
アルノルトの言葉に、一瞬考えた様子のスズロクだが話を聞く際の小道具にも使える――いやちゃんと飲むけど、とまたまた思い直し呟いた。
なんとなく三人で賑やかな卓に向かい、アルノルトが持っていた木皿を置けば二人の目がそこに集まった。
チーズと、肉。原木から削いだばかりの生ハムと、なんか分厚い肉。
「…………。――少し、分けてあげようか」
視線の動かないスズロクとかごめに対し、しばし待ってみたのちにアルノルトが告げれば、
「あざす!」
「それがしのはーぶちーずというものと交換するでござる」
「あ、俺も何か――……やれるものが無ぇっすわ」
「……いや、気持ちだけいただくよ」
と、アルノルトは応えるのだった。
しばらくチーズを眺め、指先でつくかごめ。つるりとしていた。
ちーずとは一体? と呟いたかごめに、衝撃を受ける周囲――住人たち。
「お、お嬢ちゃん……チーズを知らねぇのか……」
不憫な子を見るような目で親切に、住人のおじちゃんたちが教えてくれる。
「ほう、牛乳を発酵。蘇とはまた違うのでござるか」
(「強い匂いなのに、皆美味しそうに食べているでござる」)
「まあ食べてみなって、うまいよ!? 食べ慣れれば癖になるからよ」
「食べなれると癖になる……なるほど……納豆や銀杏みたいなものでござるな。パンは知ってるでござる。米みたいなもの」
パンも知識だけだった。なんか涙ぐむおじちゃんたち。
「誰かぁぁ絶品チーズ粥いっちょぉぉぉぉ!!」
「お嬢ちゃん、これ、やわらかミルクキャンディ! あとで食べなさい!」
「かたじけない」
チーズを挟めたサンドを食べ、かごめは思う。
(「これは歩きながら食べられる? ……むむ、郷に入っては――とは申せ」)
飲み物はスズロクが一緒に頼んでくれた葡萄ジュースを飲んだ。香り立って甘く、さっぱりとしていた。
――という騒ぎ。
酒が入ったにしては賑やかさが増していて、ラクレットを取りに席を立ったスズロクとアルノルトが戻ってきた時はまさに何があった状態であった。
よし、違う卓に行こう、とスズロクは行商人らしき集まりへとスッと入っていった。隣の賑やかさに意識が奪われていたから、難無く入りこめた。
そしてラクレットに手をつける。茹でた芋に、チーズの溶けたところをナイフで削いでのせたもの。
シンプルだが、その味は絶品だった。
芋に味付けなんかいらない。塩気含み濃厚チーズで充分だ。
「うわっ、これウマすぎない?」
思わず隣の男へ声を掛けてしまうほどに。そして相手は酔っぱらいであった。
「美味い、うまい。もう何もかもが、この町のものはうまい!!」
上機嫌に応じた男と杯を交わし、色々おすそ分け。
「……お? ところであんたらは――」
と二人を交互にみる男。
「ああ、そちらと同じく行商を営んでいて」
アルノルトが応じれば、同業者か、と男。
「扱っているのは、主にこの醸造酒なんだけれど」
と、Severiを振舞うアルノルト。甘く芳醇な香りが特徴のそれは、すっきりとしていて呑みやすい。
故に場は一気に打ちとけ、最中ハッとスズロクは我に返った。
「……じゃなかった、勇者の余薫だっけ。その情報があれば聞きたいんだけど、知ってる?」
「中々の品だと聞いてるんだけれど、仕入れることができればと思ってね」
アルノルトも乗じて問えば、
「ああ、勇者の余薫なぁ。希少なやつ」
「それすらも本物ではなくて、出回っているのは次手のやつだな」
おや、とスズロクは思考を巡らせた。そして次いで問う。
「希少か……それって香料の確保が難しいとか何か?」
「らしいぞ。何でも一番使う花を育てるのが難しいんだとか」
成程、と頷くスズロク。アルノルトはSeveriを足し、
「逸話や名前の由来などを知っている人を探しているんだけれど、知らないかい?」
「あー、名付けは商人だな。ああ、でもまてよ余薫は確か――」
『先人の残した恩恵』
それはここら一帯に残された逸話による。
貰った弁当を持つかごめが卓に寄ってきたのを視認しながら、二人は話を促した。
香水として……否、薬効の高い治癒水として作ったのはヘンティルという魔女。香りを纏うだけで様々な症状を治療したのだとか。
彼女の住んでいた集落は今となってはどこにあるのかは分からない――ここではないのは、確かだ、と行商人たちは口々に言う。
彼らの持つ情報はこんなところだ。
「ソレをつけるとモテる、なーんて話があるなら、俄然興味わくケドな」
スズロクが言えば、確かに! と笑いが起きる。
アルノルトは、ああ、と何かに気付いたような声。
「後、大蜥蜴の貸し出しをしてくれると聞いたのだけれど、詳しい人はいるだろうか?」
「ここら地方では大蜥蜴が主だからな。兄さんたちは、使っていないのか」
まあ見た顔じゃないし余所から来たのだろうと思った行商人たちは、それぞれに頷く。
貸出場へ後で案内してやるよ、と快く言われ、アルノルトは礼を述べた。
扱っている大蜥蜴は草食で、基本的に大人しい個体ばかりらしい。御すコツを、やはり口々に教えていく行商人たち。酔っている複数の声を聞き分けるのも大変だ。
荷物の運搬はさることながら、鞍を付けて騎乗もできる――猟兵たちが扱うのなら、騎乗であろう。
あと最低限欲しいのは、魔女の住んでいた集落の情報――ここは、仲間の猟兵たちが動いていて、複数の情報を合わせれば割り出せることだろう。
ひとときの休憩。
行商人が使う、この山岳地方の簡易的な地図を見せてもらいながら、三人は賑やかな食卓を囲むのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴ(f00669)と一緒】
勇者の余薫…香水か
パッとイメージできるのは龍涎香や麝香
動物系のほかにハーブなどの可能性もあるかしら
製法は他の場所から伝わったとして、現在はこの町で作られているのかしら?
原料について聞いてみたいネ
材料の一部を他所から仕入れているのかもしれない
ソヨゴは食いしん坊?
僕もピザには目がないけど
チーズは美味しいから持ち帰ってピザを焼いてくれるならキロ単位でお願いするネ
(ゆっくりといつまでも食べ続けつつ)
香水について何か知っていそうなのは
年配の女性の方かな?
当たりをつけて【コミュ力】を使いつつ聞いてみようか
城島・冬青
【アヤネさん(f00432)と一緒に行動】
お祭りに参加しながら情報収集です
にしてもこのチーズ美味しいですね、アヤネさん!
パンにつけたらいくらでもいけちゃいます(もぐもぐもぐ)
このチーズ、お土産にして後でピザ作りたいですね
キロ単位?!そういえばアヤネさんはめっちゃ食べるんだったな…と思い出します
私は直ぐお腹が空くだけで食べる量は…アヤネさんに比べたら普通ですね、はい
は!いけない
食べてばかりではなく調査しないと
旅人や市場の商人さんに勇者の余薫について
聞いてみます
他所から来た人なら何か知ってるかもしれませんよ
こんにちわー!つかぬ事お聞きしますがー
【コミュ力】と【情報収集】の技能をフルに使っていきます
「このチーズ美味しいですね、アヤネさん!」
切り分けられたチーズを食べる城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)は満面の笑みをアヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)へと向けた。
そして気になる物がたくさんあるのだろう、視線は再びあちこちと巡りなかなか定まらない。
「こっちのチーズは、あ、やわらかい!」
「今朝がた出来上がったばかりの熟成させていないチーズだよ」
チーズ屋の店主が笑顔で教えてくれた。日持ちはせず、食べ歩きならではの品らしい。
「パンにつけたらいくらでもいけちゃいます」
もぐもぐもぐと、ずーっともぐもぐしている冬青。柔らかそうな頬は常にチーズやパンがつまっていて、子リスのようだ。
「ソヨゴは食いしん坊? ああ、こっちはどうかな」
アヤネは微笑み、次なるチーズを見つけて差し出してみる。
「――このチーズ、お土産にして後でピザ作りたいですね」
おっと、しっかりと味のチェックもしていたようだ。新たなチーズを口にした冬青が言った。
「食べながら調理のことを考えているなんて」
凄いネとアヤネ。チーズをチーズとして食べていたアヤネはゆっくりと噛み、成程、ピザに合うかもしれないなと同意する。
「僕もピザには目がないけど、この美味しいチーズを持ち帰ってピザを焼いてくれるのなら、キロ単位でお願いするネ」
「キロ単位?! ――むぐっ」
冬青、もぐもぐしていたため喉に詰まらせる。
ちょっと慌てたアヤネが葡萄ジュースを持ってきて、それを飲んでようやく一息ついた。濃厚ながらも口当たりはさっぱりとしていて、ベタベタしていない純粋な葡萄ジュースだ。
(「そういえばアヤネさんはめっちゃ食べるんだったな」)
と思い出して、
「私は直ぐお腹が空くだけで食べる量は……アヤネさんに比べたら普通ですね、はい」
「僕も食べる量は普通だけどネ」
二人の「普通の量」は、わりと差がある――互いに自覚があって、敢えて口にすれば言葉遊びだ。
一旦ごちそうさまをする冬青、アヤネは紙袋を持ち食べやすいチーズをたくさん抱えている。ゆっくりといつまでも食べ続けていた。
チーズとパンの香り。
心地よい風が吹いて、適宜会場の熱を冷ましてくれる。長閑だ。
ピザを作るのなら、何を具材にしてみようか、と冬青は違う店に並ぶ果実や野菜、木の実を見始めて、
「……は! いけない。食べてばかりではなく調査しないと」
「そうだネ。しばらく考えてみたのだけど――勇者の余薫……パッとイメージできるのは龍涎香や麝香、動物系のほかに、ハーブなどの可能性もあるかしら」
「アヤネさん、食べながら、食べ物じゃないことを考えていたんですか!?」
食べながら考えることも、わりと差のある二人だがバランスはとれている。
こくこくと頷くアヤネ。
「製法は他の場所から伝わったとして、現在はこの町で作られているのかしら?
原料について聞いてみたいネ。
材料の一部を他所から仕入れているのかもしれない」
「な、なるほどぉ」
きょろきょろと周囲を見回す冬青。
香水について何か知っていそうなのは年配の女性――ということで、旅の者向けな雑貨を売る女店主へと声を掛けた。
店内は変わった香りがしていて、石鹸などの生活雑貨が置かれていた。冒険者や行商人が私物を買っていく。
「こんにちわー! つかぬことをお聞きしたいのですが――勇者の余薫について何か知っている方っていますか?」
現れた少女二人に、彼らは慣れた様子で応じてくれた。どこかの商隊の娘だろう、と判断したのだろう。
得られた情報は、複数の花とハーブをブレンドした香水であること。
しかし、希少な物でなかなか出回らないが、買い付けの予約は応じているとのこと。
コミュ力と情報収集の技は、ぽんぽんと店主やその客の話を弾ませていく。
「この町で作られているのかな?」
「ああ、香料の確保ができれば、ハーブ園を営む牧場が作っているのさ」
「確保……何か希少な香料があるんですか?」
アヤネと冬青、それぞれの質問に雑貨屋の店主は「うーん」と悩ましげな様子を見せた。
「あたしはそこまでレシピに詳しくはないんだけどね――ああ、ちょっと、ヤルンさん」
店主がとある旅人を呼び寄せた。
「たまに、あのヤルンさんが花を採取してくるのだけど、それが、常に主役に据えたい香料なのさ」
そう説明を受けた時、ヤルンが二人の元へ到着する。
「――何か?」
無口そうで強面のおじさんがアヤネと冬青の二人を見た。
「ヤルンさん、相手は若い娘さんなんだから、ちょっとは愛想よくしたらどうなのさ」
「まあまあ。尋ねたいのは、勇者の余薫に使う花のことなのだけど」
アヤネが苦笑してみせたのち、問う。
「――ああ、あの花か。たまに、咲いているのを見つけるんだ。
根ごと採取して、頼まれている牧場に持って行くんだが、育てるのが難しい、らしい」
(「根付かないのかしら……」)
土壌が合わないのか、たまに咲いているということは、どこかに咲いている花の種が何かで運ばれてくるのか――考えるアヤネ。
冬青は、ヤルンに花の絵を描いてもらい、特徴を聞いている。
「この花に、名前はあるんですか?」
今の時期に咲く香りの強い花は、レガロといった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
泉宮・瑠碧
勇者の伝説は気になるものが多いな…
香水というと馴染みは薄いが
ポプリは常備しているし
植物の香りも多いから、興味はあるな
…香料になると多量に必要だから、そこは少し複雑だが
僕は町で露店に行ってみよう
やはり見てはみたいし
勇者の余薫の情報収集もだな
露店の品々を眺めていき
ハーブや花なら見ていても香りが蘇るな
心中で元になった植物達に、ごめんね、ありがとうをそっと呟き
…だが、やはり香りには癒される…落ち着く
置いてあるのなら、勇者の余薫の香りも感じてみたい
植物の分なら少しは分からないだろうか
名前からすると勇者が使っていた香水なのか
それとも調香の覚えがあったのか…
伝わってきたという事は、勇者はどこから来たのだろう
豊穣祭からやや離れた区画。
住人も、今日はチーズを食べに行っているのか、やや閑散とした露店が並ぶ通り。
それでも旅立ちの場が先にあるのか、行商人や旅人の行き来はある。
そこを歩くのは、泉宮・瑠碧(月白・f04280)だ。
種を売る雑貨屋、鉢植えの花は旅する者のためだろうか。梱包しやすいように予め処理されている。
ハーブやドライフラワーを見れば、香りが蘇ってくる。
生気に満ちた鮮やかな香りを知っていることに思い至れば、彼女は心の中で元になった植物たちへ、
(「――ごめんね、ありがとう」)
そっと感謝を告げた。
程よく柔らかな香りへと変化した彼ら。
(「……やはり香りには癒される……落ち着く」)
香水への馴染みは薄いがポプリは常備している。そっとおさめているポプリへ指先をあてた。
瑠碧は、今回の勇者の伝説へと思いを馳せた。
勇者の余薫とは一体どういったものなのだろう。
(「香水は、植物の香りも多いから、興味はあるな……香料になると多量に必要だから、そこは少し複雑だが」)
そう、抽出ともなれば素材もそれなりの量に。
瑠碧は、情報収集のため、露店の女店主へと話しかけた。
魔除けのハーブ、生活のためのハーブ、煎じた薬草と多種多様な露店の店主は、さすがというべきか、その道に精通していた。
その昔、ここら一帯でハーブ薬学の研究をしていた、今は勇者と呼ばれるヘンティルという魔女が勇者の余薫――これは商人がつけた通り名であり、本当の名はヘンティル・レガロである――を製造したこと。
その製法は、香料の不足により、現在は変じていること。
本来は香水というよりは、香りで病気などを緩和する療法のために作られていたこと。
「主となる花は、どこかで育てられているのだろうか?」
できれば、勇者の余薫の香りを感じてみたいと思っていた瑠碧が尋ねれば、店主はハーブ園を営む牧場を教えてくれた。
作物は主にこの地方にいる薬師などに卸されるのだが、勇者の余薫はその牧場で作られているらしい。
場所は、少々町を出ることになるが、そう遠くはない。住人が見学程度に歩いて行ける距離だったので、瑠碧は訪れてみることにした。
爽やかな草原の匂いを感じ、暖かな陽射しを受け、長閑な風景のなかを歩く。
そうして、訪れてみた牧場の者は笑顔で瑠碧を迎えてくれた。調香師を兼ねている働き手を紹介され、大きな建物とは別の、小さな小屋へと案内される。
「ヘンティル・レガロですか。あれのレシピは長い年月の中、色々とレシピが改められているのです」
「花が稀少なのだとか――許可がいただけるのなら、花や調香のレシピを見せてもらえるだろうか」
「ええ、構いません。製法は秘匿というわけではないのです――ただ、本当に難しいだけで」
そうしてレシピの記された木板を見せてもらい、遡っていく。
そして、ふと気付くのだ。
「この、シエンプレという植物は、どういったものだろう。
今は使われていないようだが」
「ああ。シエンプレですか。低木の、今の時期に丸い綿のような黄色の花が咲くのですが、香りは薄く、抽出をしても意味がないもので、今は香料として扱っていません」
「――そうなのか」
頷き、再び目を落としたのち、しばらくして「どうもありがとう」と瑠碧は木板を返却した。
再び案内され、ハーブ園を歩く。広大な土地に、ほんの少し――それこそ、食事処の四人卓くらいの広さの花壇に、レガロの花は咲いていた。
「見つけたら採取してきてくれと、野生のものをたまに旅人から買い取っているのですが、なかなか根付かないのですよ。……難しい植物です」
白い花で、香りは強め。
瑠碧は屈み「こんにちは。はじめまして」とレガロに向かって呟いた。
しばらくを過ごし、瑠碧は牧場の者たちに丁寧に礼を述べてその場をあとにした。
その手には写させてもらった原初のレシピ。
紐解けば、それは薬としての配合であった。
成功
🔵🔵🔴
シリン・カービン
猟師と言う職業柄、色々な獣を見たことはありますが
「これに乗っていくんですね…」
大蜥蜴に騎乗するのは初めてのこと。
怖くはありません。
が、習性を知らないのはいざと言う時に不安ですね…
飼育場の人に話しかけて、大蜥蜴の騎乗法や
習性について教えて貰います。
戦闘時にパニックでも起こしたら、
私たちは勿論、彼らも危険にさらすことになりかねません。
試しに乗せてもらうと、段々コツが掴めてきました。
様々な地形に対応しやすい蜥蜴の走行スタイルは
なるほど、悪路が多い地方に向いているわけです。
ふふ、レースに出てみるのも悪くないかもしれませんね。
そう言えば。
大蜥蜴と余薫って何か関係があるのでしょうか…?
アドリブ・連携歓迎。
「キュ」
「キュウ、キュウ」
「キャキャ、ギャ」
個性だろうか、よくよく聞いてみれば、大蜥蜴の鳴き声は微妙に違っている。きょろっと動く有鱗目は鋭くはない。
猟師という職業柄、色々な獣を見てきたシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は、改めて大蜥蜴を見上げた。
「これに乗っていくんですね……」
「キュ」
シリンの声に応じかのようなタイミングで、目前の大蜥蜴が鳴いた。
怖くはないが、習性を知っておきたい、とシリンは大蜥蜴の貸出処へとやってきたのだ。
案内人が飼育場へと案内してくれた。餌が良いのか、匂いは気になるほどではなく、むしろ清涼的なものを感じ取った。
「草食で人懐っこいやつらばかりだよ」
「普段は遠方への運搬にも使われるそうですが、魔物と行き会うこともあるかと思います」
その時はどうしているのでしょうか? と質問してみれば、
「魔物が出てきた時は、一瞬びくりと動くが手綱を引いてやれば、やや落ち着く。
御者や荷車と共に後退し、この間に護衛の冒険者が、敵を倒しにかかる戦法だな。
若いやつは主に近場の運搬で、遠方へは旅慣れたやつを出すことが多い」
「大蜥蜴にも、経験は必要ということですね」
納得だという風にシリンは頷いた。
戦闘時にパニックでも起こしたら、猟兵たちは勿論、彼らも危険にさらすことになりかねないとシリンは案じていたのだ。やや安堵する。
「魔物が近いのが『分かる』と大蜥蜴は、やや躊躇する。慣れれば、気付けるはずだよ」
蜥蜴の聴覚は発達しており、鳥などの警戒の声を拾う。
旅の相棒とすれば、大蜥蜴はなかなかに頼れるやつだ。
「試しに乗ってみるかい? ――たしか、騎乗だったよな」
「はい」
「コイツの名前はトーガ。トーガ、鞍をつけるぞ」
鞍をつけた大蜥蜴――馬より低く、初心者にも乗りやすい高さだ。
しばらく大蜥蜴のトーガに運動場を歩いてもらう。
「なるほど、悪路が多い地方に向いているわけです」
段々とコツを掴みだしたシリンは、トーガの上で頷いた。運動場といえども、平坦なだけではない。岩場があり、たしたしと、確りとした足捌きでトーガがのぼっていく。
駆ければそれなりに揺れるだろうが、なるべく騎乗者に配慮している、熟練の大蜥蜴の動きだ。
「ふふ、レースに出てみるのも悪くないかもしれませんね」
「キュ」
いずれ開催される、複数の集落をあげての大蜥蜴レースも面白そうだと思うシリン。
前進ののちは、後退。鼠径部が、なるべく水平に動くような動き。
二周ほどしたところで、トーガは案内人への元へと向かって行く。
「乗り心地はどうだった?」
「快適でした」
「餌はその辺の草でも大丈夫だが、今の時期だと好物はシエンプレの花でな、見つけたら食わせてやってくれ」
「シエンプレの花?」
「ああ、黄色の花だ。なあに、大蜥蜴に慣れてみればすぐにわかる。
流れてきた花粉を感じ取ってぺろぺろと舌を出すんだ」
それは蜥蜴の嗅覚だ。わかりました、とシリンは頷き応えた。
シエンプレという単語を聞いたトーガがペロッと舌を出す。
また後で、と貸出処をあとにして、シリンは仲間である猟兵たちの元へと戻っていった。
彼らが仕入れた情報の中に、「シエンプレの花」が出てきて、シリンはこれが大蜥蜴の好物らしいということを告げれば、思案の表情となる面々。
豊穣祭に出かけ、やや閑散とした町中の休憩所。
そこで、シリンたちは地図を広げ、相談を始めた。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『地を駆ける鱗』
|
POW : やんちゃな性格の大蜥蜴を乗りこなす。
SPD : 慎重な性格の大蜥蜴と戦略を練る。
WIZ : 優しい性格の大蜥蜴と仲良くなる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
『群竜大陸』の所在を掴むため、勇者の伝説を調べ、その足取りを辿っていくことにしている猟兵たちは、地図を囲み、話し合う。
帝竜ヴァルギリオスとの決戦に参加した冒険者の多くは、沈みゆく群竜大陸と運命を共にしたと伝えられている。
この戦いで命を落とした全ての冒険者が、勇者として称えられているため、勇者の数は数千人を超えており、真偽は別として、多くの伝説が残されていた。
猟兵たちは手に入れた情報を出しあい、まとめていく。
この地に伝わる勇者はヘンティルという魔女。ヘンティルは還らずの勇者だ。
ハーブに精通した魔女であり、『ヘンティル・レガロ』という香水を作った者。
香水というよりは、治癒薬としての処方であり、それは様々な病気の症状を緩和するもの。
しかしながら、この製法は長い年月で変わってしまっていた。
メインの香料である『レガロの花』が、育て難い植物であるからだ。
稀少であれど、今ある勇者の余薫は、手に入れた写しのレシピを見れば分かる。
代替品として数多の植物が入る現在のものと、シンプルな原初のもの。
配合が違う上に、今は使われていない『シエンプレの花』も記載されていた。
『シエンプレの花』は草食である大蜥蜴の好物らしい。花粉の刺激を彼らは嗅ぎつける。
ヘンティルが住んでいた集落を見つければ、何か他にも分かることはあるだろうか――。
旅人がたまに採取できるレガロの花の位置、大蜥蜴を使う行商人がシエンプレの花を見つける位置――もっとも、これは、大蜥蜴が見つけているようなものだ――を、地図へと記載していく猟兵たち。
途絶えたとされる集落は、恐らく廃墟ですらないだろうが。
アックス&ウィザーズで余薫を――勇者たちの残した恩恵を辿る猟兵たち。
この草原と山岳のある地にやってきた彼らは、所在知れぬ集落を見つけるための旅支度を終え、旅間の相棒となる大蜥蜴を見た。
騎乗の定員数は二人乗りまでだが、大蜥蜴の消耗を考えれば、一人で騎乗した方が良いだろう。
次に地図へと目を落とす。
記載した印から、想定すれば、恐らくは一夜を自然の中で過ごすことになるだろう。
大体の方角は絞りこめた。
あとは、自身らの持つ情報と、大蜥蜴の習性を合わせ見つけていこう。
チーズの美味しい町をあとに、大蜥蜴に騎乗した猟兵たちは大自然の中へと駆けていく。
アルノルト・ブルーメ
さて、大蜥蜴に騎乗しての旅なんて
そうそう体験できるものじゃないからね
そこはしっかり楽しんで行こうか
情報を持ち寄って作成した地図の写しと現地を確認しながらの旅程
蜥蜴達の状態や所作にも注意しながら進む
あぁ、無論、蜥蜴達だけでなく
同行者に疲れた様子の者がいる場合も皆に声を掛けて小休止を
岩場も多いけれど、中々にいい風景が広がってるよ
蜥蜴達がシエンプレの花を見つけたら
蜥蜴達にはご褒美として長めに休ませて周囲を探索
これでも一応、探索者だからね?
事前に聞いた周囲を警戒する素振りがある場合は停止させ
蜥蜴から降り、彼らに害がないように警戒対象を排除
この時は咎力封じを使用
補足
蜥蜴の名前は任意で
アドリブ・絡み歓迎
アズール・ネペンテス
【選択:SPD】
さて、どうするか考えものではあるんだが…本題は既に終えた後だからいわゆるこっから先は本当に余暇(猟兵としてはこっちのが本題だが。)なわけだが
まぁゆっくり探そうじゃないか。ゆっくり景色見ながら風のゆくまま気の向くままに移動してれば見つかるだろうし…っていうか真面目に探しててもきついこともあるし気分を変えながらやるのが一番って事だ。
移動の最中で売れそうなものがあったらいろいろしまっておこう。もしかしたらなんかの役に立つかもしれないし役に立たんでも後で換金できるし
(アドリブ歓迎
シリン・カービン
「トーガ、宜しくね」
私が乗る熟練の大蜥蜴は、乗り手に情報を伝える
大事さをよく分かっています。
「キュ」
「……ん」
トーガの知らせに足を止めれば、遠くを過ぎる魔物達。
大蜥蜴との信頼は旅の安全を高めてくれます。
夜営地を決めたら夕食の獲物を狩ってきます。
手早く捌いてチーズと合わせてみましょう。
夕食を摂りながら皆と今後の打ち合わせ。
集落はレガロとシエンプレの採取地の近くでしょう。
大蜥蜴達の嗅覚が頼みですね。
花を見つけたら、植物の精霊たちの様子から
何かわからないか調べてみましょうか。
希少な花が主成分の治癒薬を作り出すなど、
一体どれほどの努力を重ねたのか…
ヘンティル・レガロ、貴女に敬意を。
アドリブ・連携可。
四宮・かごめ
……(むしゃむしゃ)
この世界、来る度に故郷に帰りたく無くなるのよな。
帝竜との戦いで命を落としたとされるエルフの勇者達の
血の為せる業か、どうか。
(むしゃむしゃ)
【POW】
大蜥蜴を貸し出して貰い
一人で騎乗するでござる。
遠方へ向かわせられるのは熟練とか。
絶対うちの蝦蟇より賢い。にんにん。
選ぶのは悪戯好きそうな一匹。
一番気が合いそうな気がするでござる。
集落は兎も角、花の場所は知っているとか。
情報によると白のレガロは貴重らしいので、
こっちを蜥蜴に食べられるのは避けたい。
黄色のシエンプレの方に先に向かわせ、軽く食わせてやれば
悪戯でレガロの方を食べてしまう確率は減るかもしれない。
使用スキル:動物と話す・視力
騎乗用装具を身に着けた大蜥蜴たち。荷物は落ちない様しっかりと括りつけ。
「トーガ、宜しくね」
先程試乗した大蜥蜴、トーガを撫でたのちにシリンが挨拶をすれば大蜥蜴は特有の鳴き声で応じた。
急ぐ旅ではない。
「遠方へ向かわせられるのは、熟練とか」
そう声を向けるかごめの目前には、きょとっと頭を動かす大蜥蜴。帯に書かれた名前はポルポル。
「絶対うちの蝦蟇より賢い。にんにん」
よろしく頼む、と撫でてみるかごめ。
緑の色合いを持つポルポルは、同色であるかごめの忍装束にお仲間認識したのか、挨拶とばかりに頭突きを繰り出してきた。
ごすっ。
「……」
ポルポルの下顎を押し上げるようにして退かすかごめ。
ぐぐっと力を乗せてくるポルポル。どうやら遊ばれ……かごめと遊んでいるようだ。
大蜥蜴に挨拶をしたり、撫でてみたりと、それぞれにスキンシップをとる猟兵たち。大蜥蜴に対する恐れはなく、興味津々といった皆の様子にアルノルトは笑みを漏らす。
「大蜥蜴に騎乗しての旅なんて、そうそう体験できるものじゃないからね。そこはしっかり楽しんで行こうか」
「そうそう、余暇のつもりで気楽にな」
名産品の小麦で作ったパンの披露という、ある意味本懐を遂げたアズールは悠々とした声色で猟兵たちへと言った。
地図はそれぞれが持つように、と写しを作成したアルノルト。
付かず離れずの旅程となるだろうが、夜営は互いが目の届く範囲で行った方がいいだろうと想定の地を書き込み、ざっくりとした班分けののち出発する。
蜥蜴の走りに柔軟な対応で動く鞍が騎乗した者への負荷を軽減するので、乗り心地は快適であった。
アックス&ウィザーズ世界の自然豊かな雄大な風景。
架け橋のようになっている大地を駆けた時には、眼下には連なり飛ぶ鳥たち。すぐに上昇し広大な空へと翼を広げるのを眺め、見送る猟兵たち。
「巣があるんだろうか」
ふと気になったのか、大蜥蜴のメイカの手綱を繰り降っていくアズール。鞍に備わる取っ手を掴み、体勢を整える。大地の架け橋の下は当然崖が続いており、大きな横穴。外敵から身を守る手段なのだろう。
しばし進めば巣がいくつもあった。
乾燥して使われていない白い――何で出来ているのか分からない巣。そういえば高級食材で巣があったなぁと、アズールはいくつか採取していくことにした。
「もしかしたらなんかの役に立つかもしれないし、役に立たんでも後で換金できるし」
透き通る白さは何かの素材になりそうだ。
崖をのぼった再び駆けるメイカ。後続にいたかごめと合流し、「よう」と軽く挨拶するアズールだった。
「この辺りで一度休憩をしようか。岩場も多いけれど、中々にいい風景が広がってるよ」
そう言ったアルノルトは、同行の猟兵へ声を掛け、大蜥蜴のコロロを止めさせた。
「キューィィ」
鬼灯を鳴らすような声を上げ、コロロはたしたしと草地を歩み、すぐそばにある低木の葉を食みだす。一時の相棒が食事を始めたところで、アルノルトは視界を進行方向へと移した。
川を挟んだ向こう――しばらくは、なだらかな傾斜が続きそうだ。
ポルポルの横に座り、燻製チーズをむしゃむしゃするかごめ。低木に顔を突っ込んでいるポルポルと、マイペースに食べるかごめ。
(「この世界、来る度に故郷に帰りたく無くなるのよな」)
咀嚼しながら、考える。
(「帝竜との戦いで命を落としたとされるエルフの勇者達の血の為せる業か、どうか」)
沈んだはずの群竜大陸。
運命を共にしたと伝えられる冒険者――勇者たち。
その大陸が蘇ったというのなら、猟兵によっては心がざわつくことだろう。
投じた命、意志。
精霊に通じた勇者なら、精霊が何かを感じ取っているかもしれない。
それと同じくエルフという種族が『視る』世界を、かごめは感じ取っているのだろう。
香草を採取しながらシリンは、トーガにもそれを分け与える。
小休止を挟みながら、進む猟兵たち。
一羽の鳥がピューイと鳴き大空をゆくのを目にした時、
「キュ」
「……ん」
先頭のトーガもまた鳴き、騎乗するシリンが手綱を繰って足を止めれば地平線の先には、過っていく魔物の姿。
やや後退し、身を屈める大蜥蜴たち。べたっと首から上も地面につけられ、倣うように猟兵たちも身を屈めた。
ややあってコロロがくりっと頭を傾ける動作をして、もたげる。
良い子だ、と伝えるようにコロロを撫でるアルノルト。
「どうやら、何事も無くやり過ごせそうだね」
アルノルトの声に頷くシリン。
エルフのシリンとかごめの優れた視力で魔物の動向を見届け、しばらくののちに前進を促した。
定めた夜営地は小規模な林を背に、川を前にした場所。
暗くなる前に辿り着き、野営の準備をしていると続々と仲間の猟兵たちも到着する。
テントを張る者、調理のためのかまどを作る者、薪の調達――こちらは時間の経過とともに後続へとなったアズールの調達分も追加された――シリンは夕食の獲物を狩ってきた。
野兎を川辺で手早く捌き、続けて皮も処理して最終的に木板へと打ち付ける段取り。
香草で焼くもの、チーズを合わせたもの、と調理していくシリン。
横にはずらっと石で組んだ簡易かまどが並んでいた。
オニオングラタンスープや香草スープ、ピザが調理途中で、良い匂いが漂う。
ああでもない、こうでもない、と支度する会話はわいわいとしていてアルノルトの口元は自然と綻んだ。
コロロたちの鞍を外し、完全に休む態勢となった大蜥蜴。
世話をした後でアズールたちと共に周囲の見回りへ行けば、匂いに寄せられた魔物がじわじわと距離を縮めてきたところだった。
咎力封じをアルノルトが放ち対処する間、アズールの手で魔物避けの香木が設置されていく。
「まー、こんなもんだな」
拾い集めていた香木を無限収納し、アズールが言った。
「一応、蜥蜴たちを中心に、円陣を組むように休もうか」
最低限の安全確保。後は各々猟兵が対処するだろう。
猟兵たちが腰を落ち着けたのは、料理が出来上がってからのこと。
夕食を摂りながら今後のことを打ち合わせる。
「蜥蜴たちは、シエンプレの花は見つけるのが得意なのでござったな」
かごめの言葉にシリンは頷く。
「集落は、恐らくレガロとシエンプレの採取地の近くでしょう。大蜥蜴達の嗅覚が頼みですね」
「そうだね。採取されたのは、話によれば谷間の多い場所だ」
そして行商人が使う道ならぬ道より大きく外れていて、その辺の地図を行商人は作っていない。
情報をまとめた際にアルノルトが書き足したものだ。
「ここまでは順調だったけれど、現在は未踏の地ともいえるだろうね」
来た道や方角を見失わないように探索していかなければならない。
「……っていうか真面目に探しててもきついこともあるし、気分を変えながらやるのが一番だ」
な、とメイカに声を掛けたアズールは、背を預け食事を再開した。
朝を迎えて出立。
昨日とは違って進む先は岩場が多い。延々と続く勾配。
平坦な地よりは進みやすいのだろう。さくさく歩む大蜥蜴の背で、自身の姿勢の扱いにやや苦戦する猟兵たち。
谷間ではがけ崩れで出来たであろう岩場をのぼっていく。
人の身で進もうとするのなら、とてもつもない労力だ。長い長い谷を越えれば次なる町なり道なりにつくのであろうが――旅人もよくこんな場所を通るな、と思うほどである。
休憩を挟み、進んでいけば、黄色の花をつけたわむ低木があった。
周囲には採取されたような跡。それは木の傍ばかりだ。
「キュキュキュ」
大蜥蜴たちが鳴く――。
ポルポルを寄せ、食べさせるかごめ。
「とはいえ、ここではないのでござろう?」
「――少し周囲を探索してみようか」
そういったアルノルトが馬首ならぬ蜥蜴首を返し、探索を始めた。
横道に入る谷間、雪崩れたかのような岩場は、崖上へと続きそうだ。
風を調べる猟兵たちとともに進めば、コロロは何かを感じ取ったのか「キュキュ」と鳴いて舌を忙しなく出し入れした。
上り道半分はとうに越え、空気はやや薄い。
視覚情報としては狭かった空が広くなっていく――その時、真向いから風が吹いて清涼な香りを猟兵たちへと届けた。
谷底には届かない風。
急勾配な岩場を上がり切った時、広がる景色は連なる黄色。
そして彩り豊かな花畑だ。赤、桃、青、そして、白。
「これがレガロの花」
トーガから降りたシリンは軽く屈み、白い花を注視した。
風に煽られ揺れる白い花は、猟兵が見たもの、描かれたものと同じ形。
「それがし、シエンプレを食べさせてくるでござる」
かごめが手綱を繰り、ポルポルを進める――のだが、ポルポルは駆けた。ごちそう、ごちそう、とポルポルは言っているようだ。
「キュ」
「ククク」
それぞれ鳴き声を上げ、美味しそうに黄色の花をぱくつく大蜥蜴たち。
彼らが食事をする間、猟兵たちは探索を始めた。
シリンは精霊たちの様子を見る。
わいわいと賑やかだ。土、光、風とそれぞれが喜んでいる。――特に、土の精霊は喜んでいた。
きっと土壌が良いのだろう。
(「希少な花が主成分の治癒薬を作り出すなど、一体どれほどの努力を重ねたのか……」)
「ヘンティル・レガロ、貴女に敬意を」
花畑に佇むシリンの呟きを風がさらっていく。
同時に闇の精霊の、さわさわとした囁き声のようなもの。不穏な気配をシリンは感じ取った。
探索者として――周囲を見回していたアルノルトは、とある法則に気付く。
辿るように歩んだのちに屈みこみ、根を張る植物をかきわければ、ある程度形の揃った石が連なっている――。
「花壇……いや、ハーブ園だったようだね」
今や枠を越え、好き好きに咲く花と――ハーブ。それらに添うように生えるシエンプレの木々。
「ここが魔女の園だとして。……ってことは集落が近くにあるな」
「向こうまで行ってみるでござる。にんにん」
アズールの声に、しゅばばっとかごめは飛ぶように駆けていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
スフィア・レディアード
他猟兵さんとの絡みやアドリブも歓迎
POW判定の行動を取る
やんちゃな性格の大蜥蜴に乗ってみるよ。
とりあえず、やんちゃな力に負けない様に
こちらもパワーで蜥蜴を乗りこなす様にするね。
「ほら、おとなしくして。これから一緒に旅をするんだから宜しくね!」
蜥蜴には、何か餌を与えながら慣れさせていくよ。
途中で一夜を自然の中で過ごす際は
寝るまでは焚火を起こして暖を取って、体力を温存しておくね。
寝るときは、周囲に危険なものが無いかを確認したうえで
野宿をするね。
あとは、地図に記された場所を
『世界知識』で、最も安全に進めるルートを選んで
大蜥蜴で駆けていくよ。
スピレイル・ナトゥア
動物に乗るのはいつもはお姉様の専売特許ですが、私でも乗りこなせるというところを見せてあげましょう(【動物使い】の高いお姉様には、勝てるわけはありませんが)
食べ物に気を取られたことを後悔はしているわけではありませんが、私もちゃんと大蜥蜴さんのことを調べておくべきでした
怪我や病気にさせてしまったりしたら、町のひとから怒られてしまうかもしれません……!
とりあえず、一緒にチーズ食べませんか?
美味しいものを提供して、大蜥蜴さんさんの機嫌を取ろうと思います
自然のなかで過ごすのは慣れていますし、時間はいくらでもあります
急ぐ旅でもありませんし、私たちはのんびりと目的地に向かうとしましょう……急ぐ旅でしたっけ?
三寸釘・スズロク
酔ってないよ全然。
大蜥蜴に乗って旅とか、冒険オブ冒険っつー感じじゃん…!
おまえすげー可愛いなートカゲちゃん。よろしくねー?
(尚普段使わない筋肉を使ったため出発数時間後に背中が痛くなる模様
いー天気だなあ
花探しは主に彼らの嗅覚に頼らせて貰うとして…ヒマだし
皆が手に入れてくれた2つの花の情報をインプットして【次元Ωから覗く瞳】
地形情報や、花粉が乗って吹く風、季節風やら
分析して花の分布を予測してみる
アレっ俺ら置いてかれてない?
慎重つかのんびりしすぎたわ。皆待ってェ
野営、現代っ子の俺はサバイバル知識も経験もないんで
得意なヒトにお任せしたいナー?
あっハイお手伝いとか交代で火の番とかはちゃんとやりますんで!
泉宮・瑠碧
原初の配合は治療薬だったのだろうが
勇者の故郷の想い出でもあったのだろうか
薬が残るなら
故郷も伝わり続ける事になるだろうから
大蜥蜴には、よろしくと撫で
動物と話すでこの道行きを頼む
君の好物の花を感じたり
疲れたりしても教えてくれると嬉しい
君達に無理のない様に進みたいからな
集落は今はもう平原同様かもしれないが…
花が見付かる点が多い箇所を目指して探そう
レガロとシエンプレの白と黄色、綺麗だろうな
野営の際は
作って貰ったサンドイッチと湯を沸かしてスープにしよう
道中も動物が居れば花の事を聞きながら
水場があれば大蜥蜴にも訊いて水分補給
シエンプレの花があれば花に謝罪と感謝をして大蜥蜴へ
…やはり薬効などもあるのだろうか
「キュキュキュ」
騎乗用装具を装着した大蜥蜴のイーシュは、挨拶代わりにスフィアへ頭突きをしようとしたり、尻尾をばたばたとさせたり、なかなかじっとしていない。
「ほら、おとなしくして。これから一緒に旅をするんだから宜しくね! イーシュ!」
大蜥蜴の動きの負荷を騎乗者へ与えないよう作られた鞍は、連結部を利用して滑らかに動く。
乗るスフィアを試すかのような動きはくねくねとしていて、負けじとスフィアも姿勢を正した。
「食べ物に気を取られたことを後悔はしているわけではありませんが、私もちゃんと大蜥蜴さんのことを調べておくべきでした」
ちょっぴりしょんぼりした声色のスピレイル。揃えた旅の支度を大蜥蜴に括りつけていく。
トン、と、相棒となるエリーに頭突きをされ、励まされたのだと感じたスピレイルは微笑みを向けた。
「怪我には気を付けていきましょうね」
撫でれば、鱗の感触。
大蜥蜴のフィランは目前に来た男をじいいっと見つめ、ふん、と嗅ぐ動作。舌がペロっと出し入れされる。
「酔ってないよ全然」
両手を軽く上げスズロクはアピールする。
「おまえすげー可愛いなートカゲちゃん。よろしくねー?」
どす。
挨拶にしてはやや激しい頭突き。痛い。
「おまえすげー可愛いなーフィランちゃん、よろしくねー?」
スズロクは、まったく同じ挙動でやり直した。
「よろしく、ククリ。
君の好物の花を感じたり、疲れを感じたりした時も、僕たちに教えてくれると嬉しい」
トサカから頭、首元へと撫でながら瑠碧は挨拶をする。
「君達に無理のない様に進みたいからな」
「キュ」
大人びた瞳のククリへ話しかける瑠碧は地図を広げ、道程の打ち合わせをしていた。地平へ向かって方角を指し示せば、尻尾がばたりと動かされた。
地図は猟兵の手によってそれぞれに渡るよう写されている。
行商人が使う街道、花の採取がなされた場所、そして想定される夜営地。
ざっくりと班分けがされ道程は自身のペースで進むも、夜営は仲間の目が届く範囲で行った方がいいという判断。
斥候を兼ねた班が先に出発するのを見送りつつ、こちらも、と騎乗していく猟兵たち。
「急ぐ旅でもありませんし、私たちはのんびりと目的地に向かうとしましょう」
と、スピレイルはエリーに話しかける。
草地を掻き分け、駆ける大蜥蜴。草原の光景には牛や山羊、牧羊犬。
粉を挽く風車とサイロが遠くに立つ。
ぐるりと遠く囲うは山岳。
空の青に染められたようにも見える山向こうから、時折鳥が飛んでくる。
「いー天気だなあ」
しばらくは行商人が通る道なき道を行く。
やや暇を持て余したスズロクは、フィランに少し速度を緩めてもらい、耳の上のモノレンズグラスを下ろして電脳世界を展開した。
二つの花の情報をインプットしていく。
「地形と風向きの情報は、今はこんなもんか。あとで都度更新していくとして……」
電脳世界から離れ、緑豊かな大地を見回すスズロクに対し、フィランが鳴く。
「ククク……」
「アレっ俺ら置いてかれてない? 慎重つか、のんびりしすぎたわ。皆待ってェ」
「キュッ!!」
緩やかな坂を駆け上がり、大蜥蜴たちはどんどこ進んでいった。
(原初の配合は治療薬だったのだろうが、勇者の故郷の想い出でもあったのだろうか」)
伝わってきた配合。
伝えたのは弟子であったかもしれない、血縁者であったかもしれない。
(「薬が残るなら、故郷も伝わり続ける事になるだろうから」)
巡る時のなか、残された余薫――恩恵。
レガロの花は根付かないが、恩恵は形を変えて人の心に根付いたのだろうか。
ほとんどが口伝と写し、目に見えぬ想いの欠片へ触れようと瑠碧は心の中で手を伸ばす。
架け橋のようになっている大地を駆ければ、崖下からひょこりと大蜥蜴。
先行していた猟兵だ。大地の架け橋の下は当然崖であり、時折大きな鳥が行き交う。
そうか、垂直な場所も行くことが可能なんだ、と姿勢を正すスフィア。
「キュ」
イーシュが鳴いた。
それができるのは熟練の中でもさらに熟練の大蜥蜴だ。
眼下に広がる雄大な景色を目におさめながら、猟兵たちは進もうとするのだが、
「ちょ、ちょっと、休憩したいナー?」
何だか姿勢が傾いているスズロクの提案に、猟兵たちは共に休憩をとることにした。そろそろ頃合だろう。
フィランから降りたスズロクは、地面に手をついた。
普段使わない筋肉を使ったため、背中が痛くなったらしい。
あと鞍の連結部が結構動くため、乗りこなすにはややコツがいる。
「よければ、治療しようか?」
「湿布作って貼るねー」
見かねた瑠碧が優緑治癒を行い、世界知識を得たスフィアが薬草と布で応急処置的な湿布を作ってくれた。
「ありがとー……この御恩はいつか必ずや……!」
大蜥蜴たちは休憩の間に、もしゃもしゃと草を食べていた。
「エリーさんも他の大蜥蜴の皆さんも、とりあえず一緒にチーズ食べませんか?」
別の組み合わせの猟兵たちに手を振り見送ったのちに、スピレイルが言う。
スピレイルとスフィアがおやつに燻製チーズを与えてみれば、大蜥蜴はもしゃもしゃと食べた。
チーズと水分補給をしていると、回復してきたスズロクもチーズを食む。
「明日は急勾配な岩場続きらしいですから、大変な一日になります。今のうちに慣れましょう」
「ハイ」
「動物に乗るのはいつもはお姉様の専売特許ですが、私でも乗りこなせていますので」
現代っ子スズロクは、旅慣れているスピレイルにコツを教えてもらうのだった。
想定していた夜営地に辿り着き、大蜥蜴の鞍を外して、世話を引き受ける仲間に礼を述べ野営の準備を始める猟兵たち。
スフィアは持ち寄った薪を見て、
「休憩中に集めてはいたんだけど、もうちょっと薪はいるよね」
「薪拾いなら、ばっちり手伝えるから任せて!」
再びの現代っ子スズロク。サバイバル知識もなければ経験もないので、野兎を捌きに行った猟兵を見送り、かまどを作る猟兵を応援し、そして薪拾いへ。これならできる。
スフィアとともに薪集めがてら、他の猟兵と一緒に周囲の見回りへ。
石で組んだかまどで調理される良い匂いを嗅ぎ取ったのか、案の定魔物が近付きつつあり、撃退は仲間に任せ、採取物の一つである魔物避けの香木を設置していくスフィアたち。
一方。
石を組んだ簡易かまどで湯を沸かして香草スープを作る、瑠碧。
右隣では新鮮な肉が焼かれ、そのまた隣ではオニオングラタンスープ。
左を見ればスピレイルが平らなパンに、チーズやあらかじめ刻んでおいた野菜や木の実をのせて即席ピザを作っている。
そして、町で作って貰ったサンドイッチ。
思いの外、豪華になった夕食を猟兵たちは共に摂る。食べながらの話題は、今後のこと――明日のことだ。
花を見つければ、近くに集落があるだろうとの推測。
レガロの花が採取されたのは、話によれば谷間の多い場所。
そこは行商人が主に使う道ならぬ道より大きく外れていて、その辺りの地図を行商人は作っていない。
情報をまとめた際に猟兵が書き足したものだ。現在は未踏の地ともいえる場所。
来た道や方角を見失わないように探索していかなければならない。
「水場などはあるのだろうか」
と、瑠碧がククリに尋ねれば、ククリはあると応じた。
この中で、その谷間付近を通ったことがあるのは二頭のみで、シエンプレの場所も知っているようだ。
草地の生えた場が中間にあるも、辿り着くまで『かなり』険しい岩場を越えていかねばならない――。
熟練の大蜥蜴の教えを伝えれば、スズロクが「そっかぁ」と遠い目をした。
その夜、スフィアが起こした焚火で寝るまでは暖を取り、体力の温存につとめた猟兵たちは、夜襲があっても各々が即応できるよう大蜥蜴を中心に円陣を組むようにして休むのだった。
朝を迎えて出立。
昨日とは違って進む先は岩場が多い。
ククリともう一頭の大蜥蜴を先頭に、延々と続く勾配を攻略していく。
平坦な地よりは進みやすいのだろう。さくさく歩む大蜥蜴の背で、自身の姿勢の扱いにやや苦戦する猟兵たち。
時には、谷間のがけ崩れで出来たであろう岩場をのぼっていく。
人の身で進もうとするのなら、とてもつもない労力だ。長い長い谷を越えれば次なる町なり道なりにつくのであろうが――旅人もよくこんな場所を通るな、と思うほどである。
しかしながらオアシスともいえる渓谷ではその絶景に感嘆した。
休憩を挟み、渓谷横切るように進んでいけば、続く谷間の草地。
黄色の花をつけたわむ低木があった。
「採取された跡が残っているな」
身を屈め、じっと地面を見つめる瑠碧。
草地の中でぽかりとむき出しの土。最近のものだろう。
採取されたような跡は、木の傍ばかりだ。不思議とハーブと呼ばれる物も混ざり育っている。
岩壁にも所々に植物――猟兵たちは伝うように空を見上げた。
広大だった青空は、今や限られている。大地の亀裂を沿うように太陽は行き来しているらしく、強い植物たちが育っていた。
情報の更新を行うスズロク。次元Ωから覗く瞳――地形情報や、花粉が乗って吹く風、季節風と情報を整理し一つの横道を見つけた。
上で吹く風は谷底まで届かない。
しかし昨日からインプットしてきた情報を重ねれば自ずと風向きは見えた。
たまに舞い降る花粉や、種。
何より、その横道に入る谷間、雪崩れたかのような岩場は、崖上へと続いているようだ。
ふと、第六感が働いたのかスピレイルが一つの石を拾い上げた。
「これだけ、違うようですが」
周囲を見て呟けば、スフィアが手元を覗きこむ。
「上の地層のものかな」
遥か高い崖上を見上げる二人。
急勾配過ぎる岩場を上っていく大蜥蜴と猟兵たち。
上り道半分はとうに越え、空気はやや薄い。
視覚情報としては狭かった空が広くなっていく――その時、真向いから風が吹いて清涼な香りを猟兵たちへと届けた。
谷底には届かない風。
急勾配な岩場を上がり切った時、広がる景色は連なる黄色。
そして彩り豊かな花畑だ。赤、桃、青、そして、白。
「綺麗ですね」
スピレイルの感嘆の声。
「花畑――いや、ハーブも多くあるようだ」
ククリから降り、連なる黄色――シエンプレへと歩く瑠碧が見回しながら呟く。
シエンプレの花へ送る瑠碧の謝罪と感謝が終わるのを待ち、ククリは花を食んだ。
「キュッキュッ」
「嬉しそうに食べるんだね」
イーシュを撫でながら微笑むスフィアが言った。
大蜥蜴たちが食事をする間、花畑を調べていく猟兵たち。
分かったのは、ここがハーブ園だったということ。仲間が見つけた石の囲いを越えて、好き好きに植物が育っている。
そしてここで暮らす動物もいた。小さな動物へ瑠碧が、沢山咲いているレガロの花のことを尋ねる。
どうしてここは、根付いているのだろう。
答えは簡単なものだった。
『しろはきいろとともにあるの』
『いっしょにいきてくの』
「あー、つまり土壌がそれで整えられるってことかな」
精霊のことを仲間から伝え聞き、演算をかけたスズロクが結論を出す。
レガロが根付く土を、シエンプレの木または花粉が整えているのだろう。
「治療薬としては、相乗効果も発揮されるのだろうか?」
「恐らくは」
花畑が風下で、吹き抜ける高台の風通しは良い――低木が強すぎる風を遮る。
明らかに整地されていた場の元ハーブ園。
そんななかで、闇の精霊や小動物たちの怯えを感じ取る猟兵たち。
集落は近くだ。花畑の向こうは恐らく急勾配な坂か崖。
不穏な気配を感じ取った猟兵たちは、歩み進んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と
…師父こそ落ちぬように、と釘刺して
元気の良さそうな蜥蜴には
そら暴れるな、御仲間だぞと尾の先を見せ
好む所を撫でてやる
なんだ、お前は不満か
地図が示す方角へと向かいながら
大蜥蜴の口元や鳴き声に気を払う
――なあ師父、魔女の集落ならば
やはり自然豊かな地なのだろうな
起伏の激しい所があれば降りて大蜥蜴を手伝ってやり
綺麗な水場があれば師にも渡して休憩を
眠るなら見張りを
もし遊びたがるなら…まあ多少は相手を務めよう
大蜥蜴に反応があれば
その風上へ向かってみよう
緑に映ゆ黄を探して
…大蜥蜴、お前たちの大好物の花
見つけたら俺にも少し分けて貰ってよいか
それほど美味ならば、師の茶にするにも良いやもしれん
アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
呉呉も落ちるなよ、と喉鳴らし
大人しい大蜥蜴へ歩み寄り
警戒されぬよう視線を合わせる
…大丈夫、怖くない
そう頭を撫ぜて…ああ、良い子だ
任務とは云え焦りは禁物
こまめに休憩を挟み、目的である花を探す
極力なだらかな大地を進みたいが地図片手にルート選び
魔女の集落か
…私ならば、その条件に加えて人目に付かぬ場所にするが
ジジの言葉に顔を上げつつ
蜥蜴達の食用となる草があれば足を止めるのも手か
…よしジジ、我々も少し休んでいこう
大いなる自然の中、草を食む相棒を時折眺め
書物へ視線を落とす
戯れが怪我に発展しなければ良いが
此奴の好む花とはどの様な物であろうな?
薬になるならば、ジジの為に是非手に入れたいが
騎乗用装具を身に着けた大蜥蜴たち。荷物は落ちない様しっかりと括りつけるジャハルの背後を通り過ぎるアルバ。
「くれぐれも落ちるなよ」
「……師父こそ落ちぬように」
返された言葉に喉を鳴らし、大人しい性格である大蜥蜴ノアへと歩み寄った。
「……キュ」
「……大丈夫、怖くない」
そう言ってアルバが青の瞳を合わせ、撫でようと手を翳せば、ノアはその頭を押し付けてきた。
隆起する鱗を掌に感じつつ、彼はノアを撫ぜた。
「――ああ、良い子だ」
そのまま手を滑らせ、帯の具合をみてやる。
鞍は連結部が滑らかに動く稼働型。大蜥蜴特有の動きは、騎乗者に負荷がかかる。それを軽減するためのものだろう。
ジャハルが相手にする大蜥蜴は元気が有り余っているようだ。
「ククククッ」
早く出発しようという風に、体を動かす。
「そら暴れるな、御仲間だぞ」
手綱を握り、蜥蜴の頭を自身へと向けさせるジャハルはドラゴニアンの尾の先を見せた。
「クク?」
すかさず頭部を下方へと向けた大蜥蜴のコピスは、ジャハルの尾を食もうとしたようだ。サッと逆方向へと尾を振るジャハル。
ここが良いと彼が感じる部分――コピスの頭頂部を撫でてやるのだが、避けられた。
「なんだ、お前は不満か」
「キュ」
地図は猟兵の手によってそれぞれに渡るよう写されている。
行商人が使う道、花の採取がなされた場所、そして想定される夜営地。
ざっくりと班分けがされ道程は自身のペースで進むも、野営は仲間の目が届く範囲で行った方がいいという判断だ。
斥候を兼ねた班が先発するのを見送り、ジャハルとアルバも緩やかに出発する。
ルートとしては行商人が使う道、外していくのなら、なだらかな丘陵地帯――二人がとったのは後者。
草地を掻き分け、駆ける大蜥蜴。草原は、今は休閑地だろうか、牛や山羊が食む牧草が生え揃う前だ。
サイロと粉を挽く風車が遠くに立ち、緩やかに羽根車が回っている。
ぐるりと遠く囲うは山岳。
空の青に染められたようにも見える山向こうから、時折鳥が飛んでくる。
「今日のところは、穏やかな旅路となりそうだな」
草地を掻き分け大蜥蜴が駆けて行く、その背でアルバは呟いた。
「――なあ師父」
と、隣のジャハルがやや声を張り、アルバを呼んだ。
「魔女の集落ならば、やはり自然豊かな地なのだろうな」
「魔女の集落か。……私ならば、その条件に加えて人目に付かぬ場所にするが」
応じながらアルバは山岳へと目を向けた。
花の採取がなされた場は谷間にある草地。
――やはり、場を実際目にしてみないと分からない。
大地が大きな架け橋となった場に差し掛かれば、眼下には雄大な景色。そして地平まで伸びる一筋の川。
架け橋を潜り抜けた鳥たちが、広がる青の中、翼を広げ隊を組んでいくのが視認できた。
通り過ぎ、進んでいけば先程見た川と合流する水場へと出た。周囲には柔らかなみずみずしい植物。水は、透き通っていて綺麗だ。
興味を示したノアの動きを感じ取り、アルバはジャハルへと声掛けた。
「……よしジジ、我々も少し休んでいこう」
「クククッ」
ジャハルよりも早くコピスが返事をして歩みを止める。
二人が降りると、ノアとコピスは嬉しそうな動きで茂る草を食む。
ジャハルは水を汲み、それを師に渡した。
水分と行動食の補給ののち、大蜥蜴たちを見やれば、ゆっくりと口を動かしている。
アルバは書物を取り出し、ページを捲って視線を落とした。
ジャハルはノアとコピスの食べる様子を観察し、そのあと、自ら採取しその手で与えていった。
見ていると花のついた草を好んで食べているようだった。
アルバがたまに視線を上げて様子を見れば、ジャハルの尾を追うコピス。そしてうとうとと眠るノアと。
何とも長閑な光景に口元を綻ばせ、再び書物へと視線を戻した。
想定していた夜営地に辿り着き、大蜥蜴の鞍を外して、ノアとコピスの世話をする。
その夜は魔物の襲撃があれば即応できるよう、大蜥蜴たちを中心に、円陣を組むようにして、それぞれの場所で体を休ませる猟兵たち。
朝を迎えて出立。
昨日とは違って進む先は岩場が多い。
その岩場へ来たことがある大蜥蜴を先頭に、延々と続く勾配を攻略していく。
平坦な地よりは進みやすいのだろう。さくさく歩む大蜥蜴の背で、自身の姿勢の扱いにやや苦戦する猟兵たちだが、翼竜の扱いに慣れているアルバや、ジャハルも柔軟な対応をみせた。
時には、谷間のがけ崩れで出来たであろう岩場をのぼっていく。
人の身で進もうとするのなら、とてもつもない労力だ。長い長い谷を越えれば次なる町なり道なりにつくのであろうが――旅人もよくこんな場所を通るな、と思うほどである。
オアシスともいえる渓谷ではその絶景に感嘆した。
休憩を挟み、渓谷横切るように進んでいけば、続く谷間の草地。
黄色の花をつけ、たわむ低木があった。
真っ先にコピスが寄っていこうとするなか、やや強く手綱を引くジャハル。
シエンプレの花は綿のように丸く、一つを採取し与えてやれば、味わうように噛むコピス。ジャハルはもう一つ、ノアに与えた。
仲間が調査すれば、レガロと思われる花の採取跡。
そしてジャハルは風上へと目を向けた――すなわち、崖上だ。
広大だった青空は、今や限られている。大地の亀裂を沿うように太陽は行き来しているらしく、強い植物たちが育っている。
仲間と共に探索してみれば、一つの横道。そこの雪崩れたかのような岩場は、崖上へと続いているようだ。
「……人目に付かぬ場所、か」
然り、と一人頷くアルバ。
一部の大蜥蜴の反応に、急勾配過ぎる岩場を上っていく猟兵たち。
上り道半分を越えてしばらくすれば、空気はやや薄く。
視覚情報としては狭かった空が広くなっていく――その時、真向いから風が吹いて清涼な香りを猟兵たちへと届けた。
谷底には届かない風。
急勾配な岩場を上がり切った時、広がる景色は連なる黄色。
そして彩り豊かな花畑だ。赤、桃、青、そして、白。
ふわりと香るのは、甘やかな花だけではなく、嗅ぎ慣れたものも。
「ハーブ園だな」
今は好き好きに生育している植物たちを見て、アルバが言った。
連なるような並木で咲き誇るシエンプレの黄。
大蜥蜴たちはたくさんの花を見て、嬉しそうに食み始めている。
「俺にも少し分けて貰ってよいか」
と、ジャハル。
「それほど美味ならば、師の茶にするにも良いやもしれん」
大蜥蜴たちに混ざって採取していく。
やや離れた位置に、アルバを乗せたノアは歩み、食べ始めた。
ゆっくりと食べるノアは、よく食いっぱぐれているらしい。そんな性格を短い期間ながら把握することができたアルバは、その大蜥蜴から降りて撫でてやった。
(「薬になるならば、ジジの為に是非手に入れたいが」)
と思い、仲間の情報収集へと手を貸した。
分かったのは、シエンプレは、補助的役割を為すものだ。相乗して薬効を高めてくれる。
たんぽぽの綿のような黄色。
それをアルバもまた採取していった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
城島・冬青
【アヤネさん(f00432)と一緒に行動】
Wiz選択
大きな蜥蜴に乗るとか剣と魔法の冒険世界ならではですね
私は…えーと、この子でいいかな?道中どうぞよろしくね(怖がらせないよう優しく頭を撫で)
UDCアースでは蜥蜴に乗って移動とかまず出来ないからアヤネさんのテンションが凄いなぁ
では蜥蜴に跨り出発
ハイヨー、シルバー!
…ごめんなさい
ちょっと言ってみたかっただけなんです
レガロの花の位置に向かい
シエンプレの花の匂いを探して貰います
みんなとはぐれないよう蜥蜴を乗りこなしてついて行かないと!
日が暮れたらテントを張って野営しましょうね
市場で購入したパンや食材がありますし
オニオングラタンスープでも作りましょうか
アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴ(f00669)と一緒】
大蜥蜴、かわいい!
多頭数のレース見たいネ!
え、今は無理?残念ー
一頭借りるよ
乗り方は教えてもらって覚える
ヘンティルが住んでいた集落を探そう
地図上のレガロの花の位置に向かう
そこでシエンプレの花の匂いを大蜥蜴に探してもらおう
レガロの花が育てづらいものであるならば、集落はその近くにあったはず
そして集落にはシエンプレの花、もしくは匂いが残っているかもしれない
それを辿る
ソヨゴの野営セットが本格的だ
僕は何も用意していないので
全部おまかせ
こんな自然の中で一夜を過ごすというのは生まれて初めて
温かい食事がおいしい
テントの中に寝転んで見上げる天井も新鮮だ
さて、集落は見つかるだろうか?
「大きな蜥蜴に乗るとか、剣と魔法の冒険世界ならではですね」
「キュ、キュッ」
鬼灯を鳴らしたような声で鳴く大蜥蜴。
「私の相手は……えーと、この子かな? 道中どうぞよろしくね」
「キュ」
冬青が頭を撫でてやれば、ぱちりと下から上へと瞼を一瞬閉じる大蜥蜴。
「大蜥蜴、かわいい! 多頭数のレース見たいネ!」
こうやって並んでいるのも壮観で、アヤネのテンションがぐんぐんと上がっていく。
「ははは、レースはもうしばらくしてからだなぁ」
「え、今は無理なんだ? 残念ー」
貸出処で、乗り方を説明する男が苦笑し言えば、アヤネは少し肩を落とした。
騎乗用装具を身に着けた大蜥蜴たち。
冬青が鞍に跨ってみれば、
「わ、動く!」
鞍は連結部が滑らかに動く稼働型。大蜥蜴特有の動きは、騎乗者に負荷がかかる。それを軽減するためのものだろう。
手綱を持ち、冬青はキリッとして声を張った。
「ハイヨー、シルバー!」
「……キュ?」
大蜥蜴は、背にいる冬青へと頭を巡らせた。
「……ごめんなさい。ちょっと言ってみたかっただけなんです」
「いや、まあ半分は合っているような……こいつの名前はシルヴィアだ」
「あ、そうなんですね。よろしくね、シルヴィア」
「キュ」
アヤネもまた相棒となる大蜥蜴へと跨り、手綱を持った。
「しばらくよろしくネ、ミュカ」
「クククッ」
声を掛ければ応じるように――実際理解しているのだろう、鳴くミュカ。
斥候を兼ねた先発班を見送り、後に続くように大蜥蜴で駆けて行く猟兵たち。
「それじゃあ、ヘンティルが住んでいた集落を探しに行こう」
アヤネがにっこりと笑み、言った。
「みんなとはぐれないよう、蜥蜴を乗りこなしてついて行かないと!」
がんばりますっ、と冬青。
シルヴィアとミュカがゆっくりと歩んだのち、徐々に速度を上げて駆け始めていく。
蜥蜴特有の走りの揺れを鞍で阻むようにして姿勢を正す。
地図は猟兵の手によってそれぞれに渡るよう写されていた。
行商人が使う街道、花の採取がなされた場所、そして想定される夜営地。
ざっくりと班分けがされて決められた幾つかの道程。野営は仲間の目が届く範囲で行った方がいいという判断。
本日は夜営地に辿り着くのを念頭に、そして大蜥蜴に慣れるために、自身のペースで進めていく。
「明日は過酷な岩場だとか聞きました」
「ミュカたちにしてみれば、歩みは平坦な草原より岩場の方が楽そうだよネ」
そんな会話をして、小休止を挟み、アックス&ウィザーズの雄大な地を駆けて行く。
草原、丘陵地、どのルートでも通ることになる、架け橋のようになっている大地。
差し掛かれば、眼下には連なり飛ぶ鳥たち。橋の下を潜り抜け、すぐに上昇し広大な空へと翼を広げていく。
架け橋の下は当然崖だ。
何気に目を向けた冬青は、ひゅおっと吹きあがってくる風に髪を煽られつつも目撃してしまった。
「……? ……ひえっ」
一人の猟兵が大蜥蜴で崖下り。
ほぼ垂直――明日行く過酷な岩場が垂直でないことを内心祈る。
夜営地へと辿り着けば、先発班がちょうど大蜥蜴の世話をしていたところだった。
「ソヨゴ、シルヴィアの世話は僕が引き受けるよ」
アヤネが二体の手綱を引き、川へと向かって行く。
それを見送り、冬青は周囲を見回した。
定めた夜営地は小規模な林を背に、川を前にした場所。
「この辺りかな?」
テントを張って、支度を整えていく冬青。
「後は~」
とととっと石を組み始めた仲間の元へ駆け、同じく彼女も石を組み始めた。簡易かまどだ。
火をおこして、調理をはじめた。
隣を見れば、捌かれたばかりの新鮮な肉が焼かれている。良い匂いだ。
その向こう隣では湯を沸かして香草スープを作る。こちらも健康に良さそうで、芳しい。
冬青と丁度逆側の端では、野菜や木の実をのせて即席ピザを作られている。
そして、町で作って貰ったサンドイッチが持ち寄られ。
思いの外、豪華になった夕食を猟兵たちは摂る。食べながらの話題は、明日のこと。
「レガロの花が育てづらいものであるならば、集落はその近くにあったはず。
そして集落にはシエンプレの花、もしくは匂いが残っているかもしれないネ」
アヤネの推測。
シエンプレの花を見つけるのは、大蜥蜴頼りとなるかもしれない。
そう言ってアヤネは手元のスープを味わった。
オニオングラタンスープに体はほこほこと、あたたかくなる。
焚火と食事で体力の温存につとめ、アヤネと冬青は自身のテントへと引き上げていった。大蜥蜴たちはもう寝ているようだ。
彼らを中心に、円陣を組むように、猟兵たちが体を休める配置――魔物の襲撃があった場合、即応できるように。
焚火を離れると夜半の冷たい空気が二人を包むのだが、かえってそれが心地よく感じる。
アヤネは満天の星空を見て、深呼吸をした。
「こんな自然の中で一夜を過ごすというのは、生まれて初めて」
「なかなか経験できることじゃないですよね」
冬青もにっこりとした笑みを浮かべて言う。
二人並んでテントの中で寝転んで。
見上げる天井も新鮮だ、とアヤネはこのひとときを静かに味わう――。
翌朝。
昨日とは違って進む先は岩場が多い。
その岩場へ来たことがある大蜥蜴を先頭に、延々と続く勾配を攻略していく。
平坦な地よりは進みやすいのだろう。滑らかに動く大蜥蜴の背で、自身の姿勢の扱いにやや苦戦する猟兵たち。
時には、谷間のがけ崩れで出来たであろう岩場をのぼっていく。
人の身で進もうとするのなら、とてもつもない労力だ。長い長い谷を越えれば次なる町なり道なりにつくのであろうが――旅人もよくこんな場所を通るな、と思うほどである。
オアシスともいえる渓谷に到着し、長めの休憩。
「すごいネ! 絶景だ」
「わあ、水が綺麗ですよ」
流れる水にぱしゃっと手を浸す二人。大蜥蜴たちも心なしか楽しそうに、水遊びを嗜む。
再出発。渓谷横切るように進んでいけば、続く谷間の草地。
そのなかで黄色の花をつけて、たわむ低木があった。
「これがシエンプレの花かしら? ――ああ、そうみたいだネ」
首を傾げたアヤネと同時に、歩みを進めるミュカ。
食べていい? と頭を巡らせて伺うような動作に、アヤネは「いいよ」と応じた。
間近でみれば、たんぽぽの綿のような花。
仲間たちが調査すれば、レガロの花と思われる採取跡があったが、当然、目的地はここではない。
「うーん……ちょっと辺りを散策してみようか」
と、大蜥蜴たちが他のシエンプレの花に気付くかどうか、手分けして探索を行ってみる。
谷間といえどいくつかの横道。
虚空へ視線を向ければ、広大だった青空は、今や限られている。大地の亀裂を沿うように太陽は行き来しているらしく、強い植物たちが育っていた。
そのうちに一つの横道。そこの雪崩れたかのような岩場は、崖上へと続いているようだ。
「……?」
近付いてみれば、何かを感じ取ったのか、ミュカが舌をペロッと出し入れした。
風を調べる猟兵たちが行ってみようと言い、アヤネと冬青は大蜥蜴たちの歩みを進めた。
するすると上っていく大蜥蜴。
急勾配な岩場に、時折蜥蜴の首に抱き着くような姿勢を取る二人。
油断すれば仰け反ってしまう。
上り道半分を越えてしばらくすれば、空気はやや薄いことに気付く。
視覚情報としては狭かった空が広くなっていく――その時、真向いから風が吹いて清涼な香りを猟兵たちへと届けた。
谷底には届かない風。
急勾配な岩場を上がり切った時、広がる景色は連なる黄色。
そして彩り豊かな花畑だ。赤、桃、青、そして、白。
「花畑……! あっ、シエンプレの花もたくさん咲いてますね!」
「キュキュ」
「ククク」
落ち着きなく声をあげるミュカとシルヴィア。
降りた二人は、黄の花を食みだす大蜥蜴たちをしばし見つめたあと、ひとつひとつ、花を調べていった。
「これが、レガロの花だネ――こんなにたくさん、咲いている。どうしてだろう」
白い花をちょんと突き、アヤネが呟く。
「……ここが、集落の跡なんでしょうか? ――ううん、違いますよね」
冬青が周囲を見回しながら歩く。仲間たちがそれぞれ探索や調査をはじめていた。
分かったのは、ここは元ハーブ園であるということ。
今は生育旺盛な植物たちが垣根を越えて好き好きな場所に。
そして、集落は――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『レッサーデーモン』
|
POW : 悪魔の三叉槍
【手にした三叉槍】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 金縛りの呪言
【手で複雑な印を結んで】から【呪いの言葉】を放ち、【相手を金縛り状態にさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 呪いの鎖
【投げつけた三叉槍】が命中した対象を爆破し、更に互いを【呪われた漆黒の鎖】で繋ぐ。
イラスト:純志
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
元々はハーブ園であった花畑を見つけた猟兵たち。
大蜥蜴たちがシエンプレの花を食む間、この場所のことを、分かる範囲で調べてみることにした。
精霊のこと、動物たちの話、それらから導き出されたものは、レガロの花が咲くための土を、シエンプレの木が整えているのだろう、ということ。
黄は白のために。
花畑が風下で、吹き抜ける高台の風通しは良い。低木が強すぎる風を遮る。
明らかに整地されていた場の元ハーブ園。
闇の精霊や小動物たちの怯えを感じ取ったことも、伝えられる。
集落は近くだ。崖上の大地の端を辿り歩く猟兵たち。
虚ろな響き渡る風の音――否、これは。
そして、見つけた。
傾斜地を段状にした――恐らくは集落跡。
しかし、今や生い茂っていると予想されたその場所は、草木がなぎ倒され、一部は枯れていた。
むき出しとなった地面、生き残っている草木を荒らすモンスターの群れ――オブリビオン。
オオオオオと連なる虚ろな風音のようなものは、モンスター、レッサーデーモンから放たれていた。
呪言を受けた草木が、突如として干上がっていく。
伝説の場所に何故か巣食う彼らの攻撃は、崖下から行われていた。いずれ崖上に到達し、花畑をも荒らしにかかるだろう。
スフィア・レディアード
POW判定の行動を行う。
レッサーデーモンか、恐ろしそうな相手だけど
ここまで来て怯む訳にはいかないよ。
霊素融合憑依で、周囲の霊を纏って戦うね。
攻撃は、主に妖刀を使って、吹き飛ばし効果を出しながら戦うね。
崖下にまた落とすような感じで吹き飛ばすよ。
敵の攻撃に対しては、盾受けで防御して
直撃を受けない様に注意するね。
上手く防御できたら、カウンターで反撃を試みるよ。
一緒に同行する猟兵がいたら
互いに声を掛け合う等して、連携して戦うね。
敵に背後を捕らえられない様に、常に周囲に気を配りながら戦うよ。
また、他のメンバーが敵に背後を捕られそうなら、声掛け等で注意しておくね。
アルノルト・ブルーメ
ここを無粋に荒らされるのは困るね
大蜥蜴達は……大丈夫そうかな?
良く働いてくれた、あの子達に被害が及ぶ前に片付けよう
血統覚醒を使用
跳躍して集落跡に居る敵の元へ降下しながら
Viperで範囲攻撃の先制攻撃でなぎ払い
手首を返して二回攻撃
敵の三叉槍はViperを引っ掛けて射線を外す
攻撃を受けた場合は出血を利用してVictoriaを起動
LienhardとVictoriaで三叉槍の攻撃を受け流しつつ応戦
一か所に留まる事の無いようにして
攻撃の直撃は可能な限り回避
但し、既に呪言で枯れた場所を選んで戦場とするよう意識して立ち回り
これ以上被害を出したくはないからね
さて、敵は片付けたけれど……どうやって戻ろうね?
三寸釘・スズロク
魔女サンは益ある花々を、未来に細く永く残るようにしてくれたのかね。
んで花達も、世話するヒトが誰も居なくなっても逞しく生き続けてるわけか。
そんな大事なもんを簡単に枯らして貰っちゃ困る。
無粋な連中にはご退場願いましょうかね。
フィランちゃん達は安全なトコでちょいと待っといてくれよ。
つって、俺が安全に崖下に降りられそうな場所あるんかな。
蜥蜴達から離れた位置なら上から撃つのもアリ?
手当て貰ったお蔭で背中の調子も良いんで頑張りますけども!
遠距離から、なるべく多く巻き込めるように狙って
【氷海に棲む蛇の牙】で足止めしていくぜ。
砕くのはお仲間にお任せして良い?
咄嗟のときは『Fanatic』も撃てる準備もしとく。
「魔女サンは益ある花々を、未来に細く永く残るようにしてくれたのかね。
んで花達も、世話するヒトが誰も居なくなっても、逞しく生き続けてるわけか」
そんな大事なもんを簡単に枯らして貰っちゃ困る、とスズロクは呟く。
段上の傾斜地。
各段差は二、三メートルといったところか。面積にして四反。戦闘域が充分に確保できるのを電脳ゴーグル越しに視認する。
計六段。外郭を歩いた時に算出した情報としては、あの先は正真正銘、崖である。
彼に同意を示し、頷くのはアルノルトだ。
「ここを無粋に荒らされるのは困るね――そして、あの子達に被害が及ぶ前に片付けよう」
言葉後半にて背後へ視線を移す。大蜥蜴たちは後方にいて、彼らが安全なことを確認したのち、まだ無事な草木越しに暴れ回るオブリビオンたちを注視した。
「レッサーデーモンか。恐ろしそうな相手だけど、ここまで来て怯む訳にはいかないよ」
そうスフィアが言った。
探せば下へ続く道もあるのだろうが、そう悠長にも構えていられない。
「辺りに漂う霊素よ」
ゆら、とスフィアの周囲が仄かに赤く陰った。
「我が声に応え、その神秘の力を与え給え!」
告げたスフィアは、妖しく輝く赤い憑依霊を纏う。
一段、二段と飛降りていく猟兵たち――。
緑の双眸を真紅へと変じさせたアルノルトは跳躍し、降下に至る前にViperを振るってレッサーデーモンの一集団をなぎ払った。
ひゅ、と鋭く弧を描く先端の戻りは速い。初手は上段から、手首を返しての次手が敵胴を斬り上げるが如く放たれた。
『グオオ!?』
レッサーデーモンが何事かと僅かに後退する先には既に呪言で枯れた場所。
「これ以上被害を出したくはないからね」
アルノルトが呟く。
彼の一段上では、
「ちっとばかし、立ち往生しといて貰うぜ」
トランクケースの金属屑から組まれたガジェット。
スズロクが冷凍弾を撃てば、着弾と同時に凍気が拡散され敵を凍結させていく。
次なる弾を放てば相乗され、発生した空間の密度はまるで氷海のよう。
そのなかで、アルノルトのViperが自在に泳ぎ敵を穿つ。
「スズロクさん、こっちもお願いするね!」
「はいよー」
スフィアの声に氷海に棲む蛇の牙が次なる標的を捉えた。
瞬発力を駆使し切りこむスフィアはされど背後を取られぬよう立ち回る。
妖刀の振りは赤の軌跡を描き、その一刀は疾風の如き勢いでレッサーデーモンを斬り飛ばした。
『オオオオッ!!』
敵の三叉槍の突きを紅月の小盾で防いだスフィアは、霊素障壁による連なるエネルギーの盾を生成し、敵の次なる攻撃を弾く。
間断なく音が上がった刹那。
敵胴が空いた瞬間を狙い、妖刀で斬り上げれば、凍結の進んだ敵が倒れる――やや凝固した血がどろりと出た。
敵が駆け、壁面となる岩肌を蹴り跳躍する。
「気を付けてっ」
スフィアの注意を促す声。
スズロクの眼前を過行くレッサーデーモン。
次いで三叉槍が投げつけられたが、Viperが真下から射線へと入り阻害した――駆った蛇頭が引き返すと同時弾かれた長柄の滞空の最中、出現した9x19弾がレッサーデーモンを撃ち抜いた。
刹那的にモノレンズグラスが映した『Fanatic』の自動照準、その向こうで仲間の追撃がかかり敵は落ちて行く。
アルノルトへ新たな三叉槍が襲いかかる――彼が腕を振れば血液を媒介にVictoriaが起動し、三叉の穂先をいなした。
『グ!?』
Lienhardが横一文字を描き、敵腹を狩る。
アルノルトが止まるのは敵攻撃を受け流し、攻めの一手に踏みこむ時のみ。
通り過ぐ様の一閃は、敵の血肉を振りきった。
「こっち側はまかせてね!」
輝く赤を身に纏うスフィアが風のようにやってきて、一刀ののち敵を吹き飛ばす。
遠距離攻撃を行う猟兵のために、彼我の距離を適宜作り上げていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アズール・ネペンテス
花畑に山羊…ならまだよかったんだがなぁ
まぁ猟兵が倒すのが仕事だから相手するけど…直接攻撃するの躊躇うなこりゃ
【罠使い】で罠を一旦設置して【挑発】で誘導させて動きを止めることを前提にしつつ【挑発】で得た敵意と周囲の戦闘意思も糧にしてUCで強化してちまちま殴るしかないかなこりゃ
しかしまぁ何というかこいつも間の悪い時に空気を読んでたな。オブリビオンながら感心するわー
(アドリブ歓迎
スピレイル・ナトゥア
ヘンティルさんの住んでいた集落にも勇者の手がかりがあったかもしれないのに、荒らされてしまっています……
せめて、花畑が荒らされる前に辿り着けたことを運が良かったと喜ぶべきなのでしょうか?
あの筋肉質な腕で掴まれたらひとたまりもなさそうです
しかし、あの足の形だと崖を登るのは苦手なのではないでしょうか
さて、崖上から崖下の敵を攻撃するときの常套手段は古来から落石と決まっています
今回もその常に倣って石を上から落として攻撃するとしましょう
私が落とすのはただの石じゃなくって、土の精霊を宿したゴーレムさんたちです
当たると痛いですよ!
精霊印の突撃銃を使った【援護射撃】でゴーレムさんたちや猟兵のみなさんを援護します
(「ヘンティルさんの住んでいた集落にも勇者の手がかりがあったかもしれないのに――」)
レッサーデーモンが草木をなぎ倒し、地面が露わになるのを見てスピレイルは、きゅっと拳をつくる。
「……せめて、花畑が荒らされる前に辿り着けたことを、運が良かったと喜ぶべきなのでしょうか?」
「そうだな――花畑に山羊……ならまだよかったんだがなぁ」
アズールが呟く。
頭部は山羊のよう、脚は獣のそれ。
「まぁ猟兵が倒すのが仕事だから相手するけど……」
と、眼下の敵を見据え、
(「直接攻撃するのは躊躇うなこりゃ」)
そう判断した彼は、草木が繁る下段へと飛び降り、身を潜めるようにして駆けた。
段状の集落跡は一段が約四反分。段差は二、三メートル。猟兵たちが駆けて行く音がアズールの耳に届く。
草木まばらな二段目。
駆けたアズールは一つめの罠を設置。しばしの距離をとったのち再び罠を仕掛けていく。
その頃には仲間の猟兵たちが初手切りこみを終えたところで、レッサーデーモンの意識は完全に猟兵へと向いた。
『オオオオオオオ!!』
雄叫び、自陣を鼓舞するレッサーデーモン。
「……ッ」
ダガーを投擲するアズール――しかし敵もまた三叉槍を繰り、高らかな金属音が鳴る。弾かれた。
新たなダガーを抜いたアズールの姿に、武器はそれしかないと判断したのだろう、レッサーデーモンが跳躍するように駆けて黒翼をはためかせた。推進が上がり、一気に距離をつめてくる。
「おっと――っと!」
大きく飛び退いたアズールがスイッチを押せば、ドン! と地面が爆発して刹那的に土壁が発生する。
身を屈め、溢れ出るオーラを纏ったアズールがダガーを敵に向かって薙ぐ。
「うぐ、やっぱ硬いなぁ」
スリングを滑らせヘヴィボウガンの照準を目前の敵に当て、放った。
ふっ飛ばされた敵が下段に落ちていくのを目に、新たなレッサーデーモンが横手から三叉槍を投げつけてくる。
その時、数多の落石が発生し、レッサーデーモンにぶち当たって更に轢く。
『グオ!?』
「さて、崖上から崖下の敵を攻撃するときの常套手段は、古来から落石と決まっています」
落石に押し流されていく一部のレッサーデーモンたち。
『オオオオ!』
あっけなくそれはただの『石』となった。
ある程度敵を押し流した落石『たち』が意志を持ったように、動き始めた。そこはまるで急流なのだと言わんばかりの方向転換に伴い、石たちが跳ねる。
「おお?」
「いま落としたのはただの石じゃなくって、土の精霊を宿したゴーレムさんたちです。当たると痛いですよ!」
そう言ったスピレイルもまた精霊印の突撃銃を構え、猟兵たちを援護していく。
計六段の段上の戦闘域。その先は正真正銘の崖だ。
「スピレイル、こっちもいいか!?」
声を張ったアズールが最初に仕掛けた罠を起動させれば、一部の段差が崩れるように土礫が発生した。
『彼ら』へとスピレイルは語りかける。
「土の精霊さん。お願いしたいことがあるんだけど……」
――彼女の意に添い、大きな土団子となった土精霊たちはローリングしてレッサーデーモンをはねた。
ごろんごろんと下っていき、二体のレッサーデーモンを崖下へと落とす――役目を終えた土団子が空中で散開し、落ちて行った敵を強く穿つ土雨と化すのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
四宮・かごめ
むっ、何やら敵の気配。
何と禍々しい。このままでは花畑が。
とりあえず、後ろに下がっているでござる。どうどう。
山岳戦でそれがしに勝てるとでも。むふー。
集落跡の【地形を利用】して此処を【拠点防御】する。
傾斜地を登り切らせないよう【時間稼ぎ】を行う。
崖上から苦無を【投擲】して【援護射撃】
最も傷の深そうなものを狙い撃ち。
追い付かれたら上段から腰鉈を振り降ろす。
相手出来ない数に接近されたら
【クライミング】と【逃げ足】で一段上に退避。がさがさ。
任務を果たせば、影は去るのみ。
では、これにて!(しゅたっ
「何と禍々しい。このままでは花畑が」
懸念を含む声をあげるかごめ。
「とりあえず、後ろに下がっているでござる」
と大蜥蜴たちに声を掛けた。ポルポルの手綱を手にして怯える大蜥蜴たちを、どうどう、と落ち着かせる。
一か所に身を寄せ合い留まる大蜥蜴たちをなだめたあと、彼女もまた、戦場となる集落跡へ駆けた。
仲間の情報によれば、段状の集落跡は一段が約四反分。段差の高さは二人分。計六段。以降は正真正銘の崖らしい。
しかしかごめは臆さない。
「山岳戦でそれがしに勝てるとでも。むふー」
戦端を開く前衛猟兵たちを援護する後方狙撃の猟兵。
布陣は程よい。
かごめは更に集落跡の地形――段状の傾斜地を利用し拠点防御とした。
そうすれば見えてくる的確な、自陣配置。
戦場を俯瞰し牽制狙撃を行う仲間との逆位置から、かごめは攻める。
段差である崖を獣の脚で蹴り、跳躍した敵を猟兵の衝撃波が襲う。突風に煽られたレッサーデーモンを狙い、かごめが苦無を投擲した。
戦線が前方へと更新され、かごめもまた高く跳躍する。
そこで視認したのは手で印を結び、呪いの言葉を放とうとする敵。
かごめは咄嗟に腕を振るった。
「一投、二投、三投でござる」
滞空の最中、扇状に苦無を放ち、猟兵の次手への援護。
ちょこまかと素早く動き回るかごめは、傷の深そうな敵を即座に捉えつつ苦無を投擲していく。
その時、横手から敵の三叉槍が横一文字に薙がれ、円を描き突き出された。
「むっ」
跳躍し、近場の崖を蹴り上がったかごめは、身を捻り着地の体勢を整えるとともに腰鉈を振り抜く。
その回転速度は、常人であるなら反動に振り回されるであろうが、かごめはエルフの忍び。
身体の即応能力は高く、遠心にのせた上段からの一撃が敵を斬り倒した。
大成功
🔵🔵🔵
城島・冬青
【アヤネさん(f00432)と一緒に行動】
このまま戦うことなく冒険が終わるかと思いましたけどまぁやっぱりそんなことありませんよね
あ!アヤネさん、武器を新調したんですね
ライフルですか
よく似合ってますよ、かっこいいです
作戦も了解です
アヤネさんがUCで拘束した個体を【廃園の鬼】で薙ぎ払っていきます
一体一体確実に減らしていきましょう!
敵は複数いるので囲まれないよう拘束する個体以外は【衝撃波】で一旦吹っ飛ばして一気に群がられないようにします
相手の三又槍での攻撃は【残像】で惑わせ【ダッシュ】で避けるか
回避が無理な場合は【武器受け】で凌ぎます
敵を倒したら辺りを探索しないとですね
まだまだ冒険は続く!なんてね
アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴ(f00669)と一緒】
元集落に巣食う魔物?
偶然というよりも何かの意図を感じるネ
こいつらを排除すれば何か手がかりが見つかるかもしれない
ソヨゴ、切り替えていこう
新調した大型ライフルは重量10kg
ケースから取り出して、素早く組み立てる
試し打ちには丁度いい相手だ
ソヨゴに作戦を伝え
UCで拘束してから攻撃する
そのまま動くな
本来は超長距離射撃向きの武器だけど
止まっていれば当たるよ
弾頭にUDC細胞を使用した炸裂弾
当たった瞬間に爆発して内部から敵を破壊する
反動を利用して向きを変える
よし、次
戦闘後にできれば
集落跡を探索したいネ
「偶然というよりも何かの意図を感じるネ」
眼下に広がる荒れゆく光景を前に、アヤネが呟く。
段状となった六段。その半分以上は既に荒野のような有様だ。
「ひどいですね」
冬青が呟く。
勇者の伝説の在り処――それは花畑であったこと、勇者の遺したもの、その余薫を消失させようとするもの――オブリビオン。
「ソヨゴ、切り替えていこう」
そう言ったアヤネはケースから部品を取り出し手早く組立てていく。
「あ! アヤネさん、武器を新調したんですね」
結合させた、対UDCライフル「Silver Bullet」は重量10kg。
大型ライフルを見た冬青がその重量感に、わあ、と声を上げた。
「よく似合ってますよ、かっこいいです」
先台、銃床を叩いたアヤネは照準越しに眼下のレッサーデーモンへと目を向ける。
「試し撃ちには丁度いい相手だ」
アヤネが作戦を伝え、頷いた冬青が花髑髏の刀身を露わにさせ駆けた。
「UDC形式名称【ウロボロス】術式起動。かの者の自由を奪え」
駆ける冬青よりも、速く伸びるアヤネの影。
複数の蛇に似た異界の触手がレッサーデーモンを捕らえ、跳躍した冬青がその周囲にいる数体の敵めがけて花髑髏を振るえば、衝撃波が発生し敵を襲う。
着地と同時に相対する敵駆け足二、三歩分の彼我の距離をつめ、横一文字を描く斬撃を放った。
『……ッ!』
拘束された敵がもがき、三叉槍を繰り出せば高らかな剣戟音。
下段から刀を振るった冬青が一瞬の鍔迫り合いののち、敵武器を弾く。
二合を捌く金属音。
それが遥か空へ届く前にかき消すは耳を劈く重量級の銃音だった。
初速が高く、発射時の弾が銃を押す力が強い大型ライフル。
銃口が大きく跳ね上がるが、アヤネはその反動すら利用し銃口を、違う敵へと向ける。
一拍。
『グ、オオオ!!』
ドッ! と初発被弾したレッサーデーモンの胴が弾け、瓦解する。
着弾と同時に爆発する炸裂弾は弾頭にUDC細胞を使用したものだ。
膝が折れ、我が身が崩れゆく変異を――侵食されていく様をレッサーデーモンは目の当たりにした。
身の内から破壊される――その事実に気付く前に、敵は既にこと切れている。
攻撃回数の跳ね上がった三叉槍の連続突きが冬青に向けられるも、ことごとくの空振り。
『!?』
残像が掻き消え、彼女は敵背後をとった。
斬撃を放てば漆黒の吸血武器となった花髑髏が、敵血を啜り、命を刈り取る。
「よし、次」
二体目を倒し、異界の触手を新たに放つアヤネ。
冬青は声を張り、鼓舞する。
「一体一体、確実に減らしていきましょう!」
戦場で合う視線は一瞬。
二人には、それで十分だった。戦場でありながら信頼というフィールドが構築されている。
繋がりは強く、力を合わせて順調に敵を排除していった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シリン・カービン
オブリビオンがなぜ草木を荒らすのか。
決まっている。
ヘンティル・レガロが帝竜には邪魔だからだ。
トーガ達を崖から離れさせたら戦闘開始。
狙撃に有利な崖上から戦場を俯瞰し
仲間の援護+敵の牽制を行います。
・敵の足を狙い崖下に落とす。
崖上に迫る敵は特に優先。
・呪言で動きを止めている敵の急所を狙う。
・鎖を繋いだ敵の牽制。
所在を悟られないように
一連射したら【スプライト・ハイド】で
姿を隠して移動します。
レガロの秘密は町の人に伝えます。
本来の勇者の余薫が広く作られるようになれば
その存在を消すことは出来ないでしょう。
町に帰ったら大蜥蜴達ともお別れ。
「トーガ、またね」
首に腕を回し感謝を伝えます。
アドリブ・連携可。
泉宮・瑠碧
彼らにとって枯らす程の事なのだろうか…
どちらにせよ
故意に自然を荒らすのならば、守らせて貰う
大丈夫とは思うが
戦闘中はククリ達に崖の方へ来ない様に伝えてから
僕は破魔を宿した援護射撃とシンフォニック・キュア
なるべく草木が傷付かない様に
出来る限り攻撃を削いだり撃ち落とす
特に呪言の動きがあれば腕を狙い
広範囲なら破魔の矢を分散して範囲攻撃
回復は周囲の負傷次第で使用
風の精霊の力を開放し
この景色の美しさが無残に枯らされていく悲しみと悔しさに
守らねば、という想いを唄う
終えれば
枯れた草木は次の生へ繋がる様に、デーモン達へも祈り
集落跡を見て行こう
他に荒らされてなければ良いが
別れの際はククリに頬を寄せて
ありがとう、と
「彼らにとって枯らす程の事なのだろうか……」
憂いを、透き通る空のような瞳にたたえ瑠碧が呟く。
「オブリビオンがなぜ草木を荒らすのか――決まっています。
ヘンティル・レガロが帝竜には邪魔だから」
精霊猟銃を手にシリンが言う。緑の瞳は敵を射抜くように。
仲間のもたらした情報によれば、段状の集落跡は一段面積が約四反分。段差は二人分の高さ。計六段。以降は正真正銘の崖だ。
二人が大蜥蜴たちを見れば、彼らは遠く、戦闘の気配を感じたのか身を寄せ合うように集まっている。
「……どちらにせよ、故意に自然を荒らすのならば、守らせて貰う」
瑠碧の声は新たに。
草木の繁る一段目へと飛び降りた二人――シリンは次の段端で止まり、瑠碧は再び飛び降りる。
二段目は数体のレッサーデーモン。草木はまばらだ。
手で複雑な印を結び始めた敵腕を狙い、瑠碧が精霊弓で破魔の矢を射放つ。
戦場を俯瞰できる段上でシリンは、二段目端――段差を蹴り跳躍する敵へ照準をあてた。
着地する降下の最中で撃ち落とす。
その際風が巻き起こり、敵陣を牽制していった。
猟兵と敵の攻防が続けば、戦線が繰り上がる。
いたずら妖精と手を繋いだシリンは、姿を隠して新たな狙撃場へと駆けた。
攻撃回数の上がった敵がその脚を駆使し、仲間との彼我の距離をつめる。
放たれた三叉槍は、敵の呪われた漆黒の鎖が刹那的な縛りの陣を見せた。
そうはさせないと、次々と牽制に敵陣を狙撃するシリン。
彼女の風精霊――そして、瑠碧が解放する風の精霊の力。
癒しの力をのせ、瑠碧は唄う。
この、景色の美しさが無残に枯らされていく悲しみと悔しさに――。
守らねば――と、想いを唄に。
その言の葉は、この場にいた猟兵たちの想いでもあった。
草木や小動物、余薫として留まる花畑の想いでもあっただろう。
●
ここまでやってきた時間に比べれば、ほんの少し。
長くはない戦い。
レッサーデーモンたちを完全に討伐したのち、祈りを捧げる瑠碧。
枯れた草木は次の生へと繋がるように、そして、レッサーデーモンたちもまたその対象であった。
躯の海へと還った、過去。真の意味での終焉は、漠然と。
猟兵たちは、集落跡を見て回る――。
大昔に作られたであろう、崖に伝う足場の一ルートは渓谷の一つへと繋がった。
他には天の恵む水を集めるのであろう場所、集落の名残はほんの僅かだ。
花畑で得た情報を手に、猟兵たちは場をあとにする。
●
ククリに頬を寄せ、ありがとう、と別れを告げる瑠碧。
シリンも、
「トーガ、またね」
と、首に腕を回し感謝を伝えた。
しばしの相棒を、町の貸出処へと帰し。
旅を共にした大蜥蜴たちと、猟兵たちが別れを告げる。
尽きない名残。
「キュ」
「ククク……」
大蜥蜴たちもまた、去っていく猟兵たちを――時折振り向き手を振る彼らの姿を見送った。
「レガロの秘密は町の人に伝えましょう」
シリンの言葉に、頷く猟兵たち。
「本来の勇者の余薫が広く作られるようになれば、その存在を消すことは出来ないでしょう」
ヘンティル・レガロ。
僅かに残されていたものであったが、香りが、真の姿を取り戻せば或いは。
魔女と呼ばれた勇者ヘンティルの姿が、本当の意味で、世界で色を持つ。
彼女の余薫。
そして、帝竜ヴァルギリオスとの戦い、沈みゆく群竜大陸と運命を共にしたとされる、勇者たちの余薫。
世界を駆ける風が新たな未来を手に入れる時は、すぐそこに――。
大成功
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