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刀剣らぶ男子!~じんせいの最期を同志と共に

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●深緑
 文明を拒絶するが如く深き森の奥。人気もなく辺り一面に林立するは竹。高く枝葉伸ばし天を覆う。朽ちかけた御堂に陽は射さず。掲げるものも奉るものも今はなく。ただ地へと還る時を待っている。
 足早に分け入ってくるもの。上品な装いは、周囲に馴染む落ち着きがありながら清廉さを兼ね備えた藍鼠色。顔は面妖な布で隠されている。足取りは軽く。目指す先には廃堂。
「兄上!兄上!」
 よく通る声を張り上げて”兄上”を呼ぶ。ぴたりと閉じられていた板戸がガタガタと音を立てて開かれる。人の気配はなかったというのに。
「騒々しいぞ、四朗」
 中から現れた姿は”四朗”と全く同じ。髪の色も長さも、背丈や体つきまで。顔を覆う面妖な布の文様すら写し絵のよう。
「二助兄上!ほら、これ!」
 ”四朗”は”二助”という兄へ、手にしていた紙を見せる。そこには『刀剣展示会』の文字。簡単な地図と日付、刀剣の名称と思しき漢字の羅列。
「ふむ……」
 それを見ながら何事か思案する”二助”と、それをどこか楽しげに見上げている”四朗”の元へ、三人目がどこからともなく現れる。
「二助兄上、四朗、どうしたんだい?」
「三弘兄」
 全く同じ容姿の人間が三人。三つ子だとしても、奇妙すぎる。よく見れば装飾に多少の違いが見られる程度か。
「うむ、四朗がこのような催し物の知らせを持ち帰ってな」
「このような催し物が……」
 ”三弘”がおぉ、と感嘆の息を吐いた。”二助”が”四朗”へと顔を向ける。
「一成兄上はここへ行っているのだな?」
「うん、ひと回りしてすぐ戻るって」
「では兄上が帰るまで待つとしよう」
 三人は揃って御堂の中へと入っていく。およそ3m四方。四畳半程度の部屋。”一成”を加えた四人で生活するには少々狭いのではないか、という以前にそもそも生活の痕跡が見られない。井戸も。竈も。
 そこへもう一人――”一成”が”帰宅”する。先の三人とほぼ同じ姿。長兄らしく、ほんの少しだが良い物を身につけている。
「ただいま戻った」
「一成兄上、お帰りなさい!」
「――それらしいものを見つけた。皆も確認して欲しい」
 戸口に立ったまま、そう告げる。
「まだ、喜ぶには早い、んだよね」
「ああ、この目で確かめるまではな」
 ”四朗”の興奮した声に”二助”が釘を刺す。だがその声も喜色を含んでいる。三人は壁にかけてある刀を手に取る。”二助”と”三弘”が二振りで”四朗”が一振り。それぞれ腰に差して出掛ける準備が整う。
「では参ろう」
 ほぼ同じ姿形の四人が連れ立ち、夕刻迫る森の外へと足早に姿を消す。竹の葉擦れの音だけが朽ちかけた御堂を包んだ。

●予知
「皆様、ようこそおいでくださいました」
 真白のローブに身を包んだ涅・槃(空に踊る人工の舞姫・f14595)が皆を出迎える。
「早速ですが此度の事件について説明致しますわね」
 今回はサムライエンパイアだ。古今東西の逸品名刀から”最新”の刀剣まで色々と取り揃えた展示会の会場に、オブリビオンが混ざりこむ未来が視えた。
「一般人に危害を加える訳でもなく、本当に展示された刀剣を見物に来ただけのようですわ」
 わいわいと楽しげに見物してどこかへと去っていく。それだけならなんの問題もないだろう。だが肝心なのはここからだ。
「深夜に再び会場へと出向き、展示されていたうちの一振りを強奪します」
 もちろん警備もついているけれど、手にかけた上での強襲だ。
「どうか、犠牲者が出る前に彼らを止めてください」
 深々とお辞儀をする槃の背後に転送先の風景が広がり、転送の準備が整った。


宮松 標
 初めまして、新人マスター(2ヶ月目)の宮松 標と申します。

 今回はサムライエンパイアにてチャンバラする心情系シナリオです。
 第一章は、展示品を鑑賞したりかふぇでお茶したりしながら、人ごみの中からオブリビオンを探してください。
 第二章は、彼らの住処たる放棄された廃寺周りの竹やぶを整備しながら、彼らを待ち受けてください。
 第三章は、チャンバラシーンです。カッコイイチャンバラプレイングをお待ちしております。

 特に意味のないOPの彼らの名前一覧。
 一成(ひとなり)二助(にすけ)三弘(さひろ)四朗(しろう)
 あと五と六をストックしてますので参加人数によって増えます。ネーミングセンスは骸の海に置いてきたようです。それとこの兄弟しゃべりまくらせる予定ですのでチャンバラシーンはウザい感じになるかと思います!

 最後に展示会で展示されているものは某刀剣ゲームを参考にします。時代が合わないようなものでもUDCとかから誰かが持ち込んだとかの力技でなんとかなります。
 初のチャンバラシナリオです。よろしくお願いします。
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第1章 日常 『刀剣展示会へいこう!』

POW   :    刀剣をモチーフとしたカフェメニューを食べる

SPD   :    展示されている刀剣を見学する

WIZ   :    刀剣の歴史について目録を読む

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 広い平野をどこまでも続く桜の道と、山の雪解け水を湛え流れる清流。その河川の神は荒神と恐れられ、川沿いにはいくつもの神社仏閣が建てられた。桜並木も荒神の心を慰めるためにと植えられたものだ。
 暴れ川とも呼ばれるその川から少し離れたところに大きな街道が通る。遥か未来まで衰える事のない栄華を誇る宿場町をいくつも作り上げた道。その中でも江戸からだいぶ離れた一際大きな宿場町。そこで様々な刀剣を展示する催しが開かれている。
 猟兵たちの手には幕府からの天下自在符。これがあれば入場料はもちろん、かふぇも全てのめにゅーが支払い免除、要するにタダになるということ。意気揚々とオブリビオンが現れるという会場へと潜入する。
政木・朱鞠
【SPD】で行動
う~ん…予知を見るとターゲットは妙に牧歌的な兄弟で出端を挫かれちゃって感じ。
でも、計画がエスカレートして行けば大規模な人的被害が出て…未来を喰い潰す混乱の引き金になっちゃうかもしれないし…油断大敵だよね。

一応だけど、表向きの理由として勉強のために刀剣の見学をしておこうかな…。
任務とはいえ無料で見学させて貰うのは申し訳ないので受講料としてお返しするのはOKだよね?

戦で使われた名刀なら来歴とかあるはず…後学のためと言う理由を付けて、刀の由来について細かく集めたいかな…。
人を疑う様で辛いけど…もしかすると、会場に居る刀に詳しい人の中に敵が紛れている可能性も有るかもしれないし…。


天海空・奏楽
予備知識なく会場へ。
刀剣モチーフのカフェメニューって何だろう?
期待しつつ、賞味したり。
あと狙われる刀剣はやっぱり会場の中でも
一番人気のある刀剣なんじゃないかなーと思ったり。
カフェでさりげなくまったりした空気を演出しつつも、
人だかりのできている展示品のあたりは注意して見ているようにする。
いかにもオブリビオンを探してますっていう空気は作らないようにして、会場に溶け込んでおくよ。
そういう意味でも猟兵同士で会話したり情報交換するかもしれない
(アドリブ歓迎ってことです)。
オブリビオンが単独行動しているとは限らないから、
怪しげな挙動をする者がいればすぐに周囲を見渡して人数、
それと容姿はチェックするかな。


神代・凶津
刀に執着するオブリビオンねぇ。
まあ、刀剣の展示会をただで見れるし悪くない依頼だな相棒。

とりあえず展示品をのんびり眺めながらオブリビオンを探すとするか。

にしても色々な刀剣があるな。
まあ、俺らの妖刀もここに並べられた物にも劣らない一品だがなッ!
・・・出所不明だが。

オブリビオンを見つけたら【追い雀】で奴らの動向を追跡するぜ。


【アドリブ歓迎】



 探し物の手掛かりがあるかもしれないと此度の依頼へ飛び込んだ政木・朱鞠。転送前に聞いた敵の姿はあまりにも素朴で穏やかだった。出端を挫かれるほどに。それでもと展示会会場へと出向く。目指す物に近付くためにも。
 だが入場するや否や、朱鞠は少し居心地が悪い思いをしていた。入場無料、飲食物支払い免除。大体の頼みごとは全て受け入れられる。そんな『天下自在符』を全ての猟兵が与えられている。任務で赴いているとはいえ、申し訳なさが先に立つせいだ。
 柱と屋根だけで作られた半屋外の会場。展示物の解説は大きな板に懇切丁寧な書き方で一緒に掲げられている。所々に会場案内図の看板。三間(約5.5m)ほどの間隔で武装した見張りがずらりと目を光らせている。
 どちらかというと物足りない、なのかもしれない。とにかく朱鞠はぶらりと見て歩くことにする。入り口近くから人だかりが続く。なんとか展示物を覗き込んだ。そこに展示されているものは数年前の戦場で亡くなった人たちの遺品。人相書きや所持品なども一緒に並べられている。
「これは……?」
「これは今まで回ってきた土地の地主様から託されたものにございます」
 通りかかったスタッフを一人捕まえて展示品について訊く。こうして遺族を探すのだそうだ。刀剣も本来は運ぶのが仕事で、依頼料が出せない代わりに催し物に使うことを認めてもらったとか。だから少人数でも運営可能な工夫が随所に見られるわけだ。
 礼を告げて思い返す。全て見て回るとしたら一体どれだけかかるか。案内板を確認する。全体の半分近くが遺品展示のようだ。解説板に目を通しながら歩を早めた。探し物がここにあったとしても、辿り着く前に展示会が終わってしまう。そんな彼女の頬を撫ぜる風。午後を回り春の日差しをたっぷりと含んだ風が優しく茶の香を運ぶ。

 希望を胸に、併設茶屋へ向かう天海空・奏楽の姿があった。
「刀剣モチーフのカフェメニューって何だろう?」
 『注文処』と掲げられた看板を頼りに列へ並ぶ。実物に名前と値段の書かれた札がついている。受付で注文と支払いを済ませ、番号札を手に渡し口で交換する。後は空いている好きな席へ着けばいい。人手を出来る限り減らした運営スタイル。
 折角の『天下自在符』なので一番高いメニューを頼む。名を『秘蔵刀』といい、小さめの二段重とデザート。お盆で受け取り、席を探す。展示場が見える場所がいい。ちょうど隅の席が空いているのを見つけた。喜び勇んで座る。
 確かに展示場が見える。入り口付近の人だかりが。知り合いの誰々さんじゃないか、誰それさんのせがれじゃないか。そんな声が聞こえる。あまり気分の良い席とは言えないが、すでに座ってしまったので仕方ない。視線を手元に落とし、蓋を開ける。
「――わあっ」
 春らしい柔らかな色合いが目に優しい。蓋を返そうとして気付く。花と手毬の模様だと思ったら、刀の鍔の模様が混じっていることに。蓋を置き、一段目をそっと退かして二段目を覗く。
「ほぉ……」
 錦糸卵の黄色。人参。絹サヤ。海苔。竹の子。菜の花。華やかなちらし寿司。野菜の飾り切りが鍔だったりどこかの家紋だったり。ものすごく手が込んでいる。
「おっ?」
 中味に見惚れたまま箸に触れて手触りにびっくりする。刀の柄を模した飾り紐で持ち手部分が包まれている。色も二色に塗り分けられていて、まるで刀のよう。箸置きは刀掛台のデザイン。中味もさることながら、器物にも遊び心があふれている。
「いただきます」
 奏楽は職人たちに敬意を込めて手を合わせた。

「刀に執着するオブリビオンねぇ」
 ふぅ、と息を吐くのは神代・凶津だ。いや、相棒である少女の方、桜だ。
「まあ、刀剣の展示会をただで見れるし悪くない依頼だな相棒」
 本体は彼女が手にする鬼の面。一見『彼女』に見えるが、本当は『彼ら』であると、看破できるものがどれだけいることか。
「とりあえず展示品をのんびり眺めながらオブリビオンを探すとするか」
 刀剣ばかりの本来の展示会場。遺品展示で足を止める者が多く、この辺りの人影はまばら。見知らぬ土地でささやかに名を知られていたのだろう。そんな情報が読み取れる解説板。どこそこで有名な剣豪、だとか。人が少ないのも頷ける、ありふれたものばかり。
 順路に沿って進んでいくと、終盤になってようやく名を轟かせた武将や剣豪の品とされる展示物が増える。ひとつひとつの間隔が広くなり、武装した見張りがひとつに一人つくようになる。
「にしても色々な刀剣があるな」
 ひそ、と桜が囁く。
「まあ、俺らの妖刀もここに並べられた物にも劣らない一品だがなッ!」
 胸を張るように得意げな物言い。余程自信があるらしい。
「……出所不明だが」
 桜の指摘に、ぐ、と言葉に詰まる凶津。しばらく静かに見物できるだろう。
 客引きのチラシに『秘蔵の刀を初公開』とあったが、それらしいものが見当たらない。見落とすようなものでもあるまい。入り口近くに戻る通路に差し掛かり、ふと舞台がある広場が目に入る。そこは人が入らぬように警備が敷かれ、揃いの羽織をまとう運営人員たちが何かの設営を始めていた。天狗の面をつけた運営人員が紙の束を持って配り歩いているのを見つける。
「もうすぐ始まりますよ!お帰りの前に一目是非見て行かれてください!」
 そんな言葉とともに押し付けるように渡された一枚の紙。そこには『秘蔵の兄弟刀が今宵お目見え致す』との文言と、逸話が長々と書かれている。
 ――主君の刀の写し身は忠臣へと贈られた。戦場で別れ別れになった彼らは、今も主君を探している。
 簡単にまとめるとこのような内容だ。

 三人は集まり情報を交換しあった。オブリビオンが現れるなら、この秘蔵の刀の展示場だろうと推測するのは難しくない。そして今、始まるのを待っているわけだ。空はいよいよ陽が傾き、色が変わり始めている。篝籠に火が入れられる。
 運営側の人員は皆同じ色の羽織りを纏っている事に気付いたのは誰が先だったか。青みの強い濃い煤色。『紺鼠』。オブリビオンが身につけているという『藍鼠』に近しい色。夜目ではほとんど違いなど判らないだろう。
 訝しんでいる間に天狗の面をつけた男が壇上に立った。
「お集まりの皆様!このように沢山の方においで頂けて恐悦至極にございます!」
 よく通る声。顔を隠していることといい、否が応にも緊張が走る。
「……式、召喚【追い雀】」
 桜が密やかに呟き、視認不可能な雀が喚び出されて舞台へと飛び立つ。もっと間近で観察し、正体を見極めなければならない。雀の五感に集中する桜を朱鞠が支え、奏楽が辺りを警戒する。
「――それでは皆様、ご覧ください!」
 壇上ではその兄弟刀が披露される。その数――六本。観客が少人数ずつ間近で観察する時間が取られる。ぞろぞろと移動を始めた。この中にオブリビオンがいるとしたら、格好のタイミングとなるのでは。その気付きが焦りを呼び起こし、警戒心を最大に押し上げる。
 一方で舞台裏へと入り込んだ雀は、確たる証拠を掴めずにいた。面をつけているのは舞台上にいる一人のみ。しかもこの展示会の主催者で江戸の商家の後継者。身元のはっきりした人間だ。
 三人の順番が来る。間近で見れば、普通の刀が二本、妖気のようなものを纏うのが四本。そのうちの一本が特に妖刀と呼ぶに相応しい禍々しさを漂わせている。まさか、と思ったのは誰だったか。
 すぐさま話し合いを、というところで本日の展示は終了と言われて会場は閉められてしまう。三人は場所を変えざるを得なかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『竹林』

POW   :    竹を切って戦いやすくする

SPD   :    地形の確認、罠を仕掛ける

WIZ   :    襲撃方法を予想して対策する

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 展示会場へ向かった三人を見送り、猟兵たちは竹の森を見回す。辛うじて御堂の周りだけは竹が切られ、修繕しようとした跡が見られる。日が落ちる頃に帰ってくるオブリビオンをここで待ち受けるのが、一番被害が少ないのだが……。そのためにはまず、戦えるように空間を確保しなければならない。
 今、猟兵たちは各々道具や自分の武器を手に、立ち向かう――!
神代・凶津
展示品にくっそ禍々しい刀が一本あったが・・・まあ、考えるのは後でいいか。

とりあえずオブリビオンの奴らの拠点の付近の地形を調べるか。
何があるか分からんし戦うにしても地形把握は重要だしな。

準備万端で奴等をお出迎えといこうぜ相棒ッ!


【使用技能・情報収集】
【アドリブ歓迎】


天海空・奏楽
『秘蔵刀』美味かったなー(きらきら)。
春霞って感じだった!
不幸な刀剣を増やさないためにも、ひと働きするか!
御堂の周辺の竹が斬られているのは、刀を振るいやすくするためかな。
あまり空間を広げすぎると相手に有利になるばかりか。

敵の分断と各個撃破という作戦展開を想定し自分の動きを考える。

・正面から目立たないように御堂の裏手の竹林をある程度切り開く
 2人ぐらいが動き回れる空間を作る
・もちろん逃亡は阻止
 切った竹を広場の周辺に柵のように積み重ね、
 バリケードを作る
・御堂の左脇、片道だけを不自然でないくらいに整備しておく
 わざと姿を見せ、少数を御堂の裏手へ誘い込む作戦

【重力忘却】で上空から出来栄えを確認する


政木・朱鞠
「ふふ…罠を仕掛けるなんて、子供の頃に里の長老達のお説教から逃げる時以来かも…なんか、ワクワクしちゃうね。」

【SPD】で行動
まずは地形の把握だね…出来れば、見通しは良いけど竹同士の間隔がランダムな場所が良いかな…。
すでに生えている竹をバネとして使った括り罠を仕掛けて足元を警戒させて余分な所作で隙を作りたいけど…妖刀君達にどれ程の効果が有るかは不安要素かな…一応、リハーサルでちゃんと罠が発動するかチェックしておかないとね。
未来を喰い潰す許せぬ敵を相手にするのに何故か自分の仕掛けた罠で『相手を困らせたい』って気持ちが混ざって…他の人が見たら変に思われる位に自分でもニヤニヤしているのがわかるかも…。



 転送現場の竹林前まで戻ってきた三人。昼に発った時と何一つ変わらぬ様子を見て、各々思い返す。ここで誰かに見送られたはず。我々をここへ送り込んだ(見た目)少女は向う側から動けない。あの時後ろにいたのは誰だったのか。考え込んでいる暇などない。彼らが帰ってくる前に戦闘準備を整えなければならない。

 天海空・奏楽は遅い昼食となった『秘蔵刀』に思いを馳せていた。
「春霞って感じで美味かったなー」
 その顔は妙にきらきらと輝いていて、満足感を如実に物語っている。御堂の左手から裏手に続く獣道に沿って竹を切り、逃げ道を塞ぐ柵とするため。それと裏手に誘い込み分断を図るため。
「展示品にくっそ禍々しい刀が一本あったが……」
 神代・凶津が唸る。黙々と奏楽を手伝い、落とした枝を運ぶのは相棒の桜だ。
「まあ、考えるのは後でいいか」
 考え事はすぐさま放棄。それよりも今は付近の地形を調べたい。
「何があるか分からんし戦うにしても地形把握は重要だしな」
 
「――お?」
 裏手へと足を踏み入れた奏楽が声を上げる。こちらも僅かに切り拓いた跡があった。伸びた竹が御堂を傷つける事のないよう。それだけではない。御堂のすぐ側。脛丈の竹片でぐるりと囲われ花壇のよう。花や野菜の代わりに並ぶのは、ひと抱えはある石。横並びにそれが”六つ”と、その傍に三尺(約90cm)ほどの竹簡が差してある。それと明らかに人の手で刈り取られて置かれた春の花。
 そこだけは綺麗に掃き清められ、あまつさえ花が供えられているとあれば、そこが彼らにとっても聖域であると解る。そこに眠る人がどんな人物であれ、ここを戦いの場にするのは躊躇われた。もう少し奥に竹の密度が低い場所を見つけ、そちらを代わりとすることにして獣道を広げる作業に戻る。

「ふふ…罠を仕掛けるなんて、子供の頃に里の長老達のお説教から逃げる時以来かも…なんか、ワクワクしちゃうね」
 政木・朱鞠は自分の仕掛けた罠で相手が困る様子を思い浮かべ、口元が自然と綻ぶ。一緒に地形を調べるために同行している凶津と桜の目には、そんな可愛らしい表現よりは『ニヤニヤ』がぴったりに見えた。口には出さないが。
 相手とはもちろん、これから対峙する予定のオブリビオンたちだ。過去からやってきて未来を食い潰す、今を生きとし生けるものの絶対的な敵。予知の現時点では人の世にもあるような些細な犠牲であっても、見逃せば必ず規模は拡大し混乱の渦に引き込んだ上で大量の血が流れる事になるのは明白であった。
 凶津と桜は薄暗くなった足元と周囲をつぶさに観察する。竹の葉が折り重なって出来た腐葉土。根が縦横無尽に張り巡らされている。他に生えるものもなく、視界や足元を遮るのは多少の枝が出ている程度か。
 元は近くの川の氾濫域だったこの辺りは、起伏もほとんどなく緩やかに川の方へと下っているはずだ。今宵は快晴。雨の心配はいらないだろう。ただこれ以上暗くなると灯りがいるかもしれない。しかし安易に灯せば彼らを警戒させてしまう。何か工夫が必要だ。
 そうこうしている間に朱鞠がどんどんと枝を打ち払いながら奥へと進んでいく。何かを探して左右を見渡し、手近な竹に手を触れゆさゆさと揺すって確認している。育ちきった竹しかなく、下生えもない。罠を仕掛けるには些か不向きだが、それを逆手に策を練る。
「……ふふ……」
 罠について思考中に口から何かが漏れている朱鞠を置いて、凶津と桜は戦場となる範囲を見極めていく。

 奏楽が宙を蹴り高みから見下ろせば、思い描いた通りとはいかなくても一応満足出来る形は出来上がった。心許なさは尽きないが、いつ帰ってくるか判らない以上妥協せねばなるまい。
 戦場となる範囲の枝を刈り準備万端という雰囲気を醸し出す凶津と、目を伏せる桜。後ろの方では罠がちゃんと発動するか確認中の朱鞠の楽しげな声が響いている。

 他に出来ることはあるだろうか……?

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

カルロス・エルウラカン
【POWで行動】
微力ながらオブリビオン討伐のため後発ながら参加させて頂きます。
ここで食い止めねばなりませんからね…心してまいりましょう。
竹林を見通しを良くしつつ、ワザと竹は切りっぱなしで放置して足元は不安定になる様にしておきます。
【罠使い】と【地形の利用】の技能で自分の有利なフィールドに出来ればいいのですが…向こうも手練れでしょうからどれほど通じるかは未知数ですね…。

アドリブ共闘OKです



 ――本当に誰もいなかったのか、ここで時間を巻き戻して見てみよう。

「さて、自分たち猟兵の有利なフィールドに出来ればいいのですが……」
 僅かな獣道を頼りに、竹やぶへ一歩踏み込む。若竹や何かの葉で鬱蒼と茂っていて、とても見通す事など出来なかった。ふと後ろを振り向く。春の日射しが視界を鮮やかに染めた。赤と橙を基調とした民族衣装に、川沿いの桜の花びらが風に乗ってひらりと舞う。遠くに展示会へと向かう猟兵の背中。数秒その姿を見送る。
 少し考えて別の入り口となる獣道を探す。あまり踏み荒らしてしまうとオブリビオンを警戒させてしまうだろう。川向こうから見えない場所に獣道を見つけ、そこから中へと入っていく。
 御堂がようやく見える辺りから、まずは若竹や下草を刈って動けるスペースを作ることにする。ある程度刈っては外へ運び、また刈る。刈っては運び、運んでは刈る。その繰り返しだ。しかし、そこはほぼ原生の竹林。様々な動物が住処としていた。
 まず犬。吠えられて服によだれをつけられ引っ張られる。次は猫。唸られて爪を立てられ穴が開く。それからタヌキ。キツネ。アライグマ。時に子連れに遭遇し、相当気の立った母親の迫力に押し負ける事も。トラブルの度にオブリビオンをここで食い止めなければならないのだから、と気力を振り絞り。オブリビオン相手にどれほど通じるかは未知数だと不安を募らせたり。
 陽が傾き、空の色が変わり始める頃。刈れた若竹や下草は当初の予定の三分の一に満たない程度。竹も何本かしか切れていないが、本格的な休憩を取らねば体力も気力も尽きかけていた。
 よろりと竹林の外へ出れば、夕陽が出迎える。他に誰かいたか確認する余裕もなかった。自分が刈ったよりも多い気がする山を横目に、ボロボロの身体を引き摺るようにふらふらと立ち去った。

 ――展覧会へと赴いた三人の猟兵が帰ってくるのは、このしばらく後だった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

政木・朱鞠
合言葉『藪雀』
【SPD】
自分だけで仕掛けた罠だけでは心もとないから、偶然見つけた誰かが前もって整備してくれた場所をちょっと利用させてもらって罠の数を増やしておきたいね。

こちらでは障害物を作って、誘い込んで個々撃破するフィールドにしようかな。
切ってある竹を組んで足元の邪魔になる様に低めの囲いをランダムに配置しておこうかな。


カルロス・エルウラカン
合言葉『藪雀』
【POWで行動】
前回はあまり考えも無く訪れてしまったので状況は散々でしたが…確実にオブリビオンを討伐するため後から来る人の役に立つようにもっと手を加えて置きたいのでもう一度、地形を調べて【罠使い】と【地形の利用】の技能が活かせるように切った竹で低めの柵のようなものを設置して障害物が多いフィールドに改良します。

予備的な準備ですが…前回のクタクタのボロボロになってしまったことを反省してお弁当はちょっと多めに用意して挑みます。



 カルロス・エルウラカンは一度取って返し、英気を養う。想定外の数々に踊らされて散々だった事を反省し、今度は更にお弁当を用意して準備は万端だ。
 下草などを刈りながら、竹と竹の間に渡して固定する。或いは高さを残して刈った茎の間に横たわらせるなどして頑丈さを増すようにした。竹を仕込めば一見踏み倒せそうでその実、強度は数倍に跳ね上がった凶悪な罠となる。
 地形や視界を考慮した障害物。これで相手の動きを封じられるならば良し。先ほどよりも手際よく出来た事に達成感と満足感を得る。この調子でどんどんと罠作りを進めていく。竹の間隔や若竹の量など、障害物作りの方に気を取られ、その軌跡が蛇行している事に気がつくのはいつだろうか。

 一方で政木・朱鞠は自分だけで仕掛けた罠だけでは心もとないと、更に辺りを調べていた。藪に沿って移動する。と、唐突に開けた場所を見つけた。多少の下草を踏み分け入ると、どうやら人の手で刈り広げたらしいことがわかる。一定の幅で奥へと続いているが、途中でカーブしていて見通せない。それでもその先で誰かが作業を行っているらしく、見えずとも音が聞こえる。
 罠を仕掛けるに充分なスペースであると確認し、ありがたくここに利用させてもらうことにする。姿のない作業者に無言で感謝の意を示した。
 竹を割って材料とし、囲いを作る。行動を阻害するような脛丈がいいだろう。

 こうして奇しくも二人して同じような障害物を作っているのは、何の因果か。カルロスは残りの下草をざっと刈り、障害物をカモフラージュする。朱鞠は各個撃破する形へ誘い込めるように、囲いの位置を計算していく。
 こうして猟兵たちのフィールドが完成する。ひとまず彼らが帰ってくるまで、身を隠すことにした。果たして、効果の程は如何だろうか。

「……これは……一体……?」
「こんなに開けていたか……?」
 陽が落ちてからかなり後の夜半になって、提灯を揺らしながら帰ってきた彼らが困惑を口にする。
「一成兄上……二助兄上……」
 ”四朗”が不安そうに声を上げた。まるで妖怪に化かされた町人のように。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 集団戦 『模倣刀『偽村雨』』

POW   :    雹刃突
【呼び起こした寒気】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    怨呪流血斬
自身に【過去の被害者の怨念】をまとい、高速移動と【止血し難くなる呪い】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    氷輪布陣
【氷柱】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を凍らせて】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:ボンプラム

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「人の気配がする」
 三弘が猟兵たちの方へ首を巡らせた。面妖な模様の布で表情を窺い知る事は出来ないが、声に混じるのは強い警戒。
「流れ者か?それとも敵か?」
「敵だな。それもかなりの。我らを排除しようという意思を感じる」
 彼らを取り巻く空気が剣呑なものへと塗り変わっていく。二助と三弘が差していた刀の1本を四朗へと手渡した。四朗は後ろへ下がる。
「何人たりとも我らの邪魔立てはさせぬ!出て来い!」
 一成が吠えた。存在はすでにバレている。キミたちはどうする?
神代・凶津
待ち伏せがばれてんなら仕方ねぇな。敢えて誘いに乗って妖刀を抜きながら堂々と出ていってやるか。

お前さんらの始末を頼まれたんでな、悪く思うな。
・・・あれ?コレ俺らの方が悪役っぽくね?

ま、まあいいか。【雷神霊装・ニノ型】で決めてやるぜ。
「いくぜ、相棒ッ!」
「・・・転身ッ!」

ユーベルコードで上げたスピードで切り込んで上げた反応速度で敵の攻撃を見切りながら切り結んでやる。
敵に囲まれないように位置取りにも注意しねえとな。

さあ、お命頂戴といこうか。
・・・なんだ相棒、ノリが時代劇っぽいって?
いいんだよ、そういう雰囲気なんだからッ!


【使用技能・見切り】
【アドリブ歓迎】


政木・朱鞠
バレているなら隠れていても無駄だしフェアじゃないから姿を見せるよ。
たぶん、オブリビオンの君達なりの遺恨や理由があるとは思うけど…無慈悲かも知れないけど、理由はどうあれ君達の邪魔させて貰うよ。

戦闘【SPD】
避けきれなければ斬撃と呪いを貰うリスクは有るけど、初撃を封じるため『降魔化身法』を使用してちょっと強化状態で迎え撃つよ。
武器は刑場槍をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使いつつ【傷口をえぐる】でダメージを与えたいね。

これは人の受け売りだけど…『本当に良い刀はちゃんと鞘に収まっているモノ』らしいね。
せめて…君達が打ち直された時に鞘に収まった良い刀になる様にここでオヤスミナサイだよ。


カルロス・エルウラカン
【POWで行動】
とりあえず、姿を現さず「使命ゆえに私は容赦せずにあなたを討たねばならぬ…さて、如何なされる?」と芝居がかった【挑発】や【パフォーマンス】で心を乱した後に竹林を切り開いた場所に姿を現します。

戦闘
自分が戦いやすいようフィールドを切り開いたつもりですが足を取られるかどうかは未知数なので過信せずに相手の立ち回りに気を付け、罠などで動きが鈍った隙を見せれば、間髪入れず一閃を心掛けて打撃を与えて行き、大きなダメージが狙える時は『灰燼拳』をを叩き込みます。

行動に至った彼等なりの純粋な思いが有ったのかもしれませんが…私達も終末のトリガーを引かせる訳にはいかないのでここで討たせて頂きます。



「使命ゆえに私は容赦せずにあなた方を討たねばならぬ……さて、如何なされる?」
 カルロス・エルウラカンが奥で挑発をする。それに乗ったのかどうかは判らない。
「兄上、妖怪の相手は私が」
 まだ姿を現していないのに、二助が真っ直ぐカルロスへと向かった。妖怪と言われてカルロスはまんまと姿を見せる。刑場槍を持つ政木・朱鞠と妖刀を抜いた神代・凶津も出て行く。
「ではあの少女は三弘に」
「はいよ」
「四朗は五哉と六樹を頼む」
「うん」
「妖狐は我だ」
 それぞれ相手を決め、対峙する。互いに退けぬ戦いが始まった。

「姿を現したな、妖怪め」
 あからさまな敵意をにじませる。ヒュウゥゥ……と一陣の風が吹き、周囲の温度が下がる。三弘の言葉によって。それに対し無言で戦闘態勢に入るカルロス。言葉は不要と取ったのか、こちらも無言のまますらりと刀を抜いた。一見、無手と刃物ではカルロスの分が悪いように見える。
 三弘が刀を振り被りながら一歩を踏み込んだ。その一歩で間合いを半分まで詰める。そこは強度を高めた下草の障害物だ。が、まるで目に見えない床があるかのように、下草たちはしなりもせず支える。
「!?」
 驚愕しながらもカルロスは間合いを取るべく飛び退った。刀が纏っていた冷気が斬撃となって飛来する。周囲を凍てつかせながら迫るそれを、ギリギリまで引きつけて超高速の拳で迎え打った。直後、大規模な衝撃波が双方を襲う。

「お前さんらの始末を頼まれたんでな、悪く思うな」
 風が凶津の言葉を乗せて二助まで届く。時折乾いた破裂音がする。
「我らが悲願を為すまで待てぬと」
「そういうことだ」
 桜の周囲で稲光がするのは幻か。
「ならばそなたたちを倒すまで!」
「ではお命頂戴といこうか!」
 どちらが悪役なのか判らないやりとり。凶津と桜がUCを発動させた。
「いくぜ、相棒ッ!」
「・・・転身ッ!」
 ――【雷神霊装・ニノ型】がここに顕現する。桜が雷撃を纏う霊装姿へと変貌。
「戦場に眠りし悪鬼どもよ、我に集え、我に寄越せ、汝等が敵を屠る力を!」
 二助も過去の戦場で倒してきた怨念を纏う。どちらも本来の限界を超えた力を得る技。その行使に寿命が削れる、文字通り『命がけの戦い』となった。

「たぶん、君達なりの遺恨や理由があるとは思う」
 朱鞠は槍を構えて静かに語る。対する一成は無言。僅かだが妖気を纏うのを感じる。
「無慈悲かも知れないけど、理由はどうあれ君達の邪魔させて貰うよ」
「……何故だ」
 低く唸るような声。ゆらりとどす黒い空気を纏い始める。
「君達の存在が未来を喰い潰すから」
 朱鞠が魔のものをその身に降臨させた。一成も怨念を纏う。
「ただの妖狐ではないと思ったが……妖の親玉とはな」
 じり、と間合いを計る。地を蹴ったのはどちらが先だったか。常人には見切れぬスピードで刀と穂先がかち合い火花を散らした。一方的に打ち込ませつつ、朱鞠は罠を仕掛けた方へと誘導を試みる。

 まるで水蒸気爆発を起こしたように二人を薙ぎ払った衝撃波が収まり、ボロボロになったカルロスが刈り残した藪を掻き分けて戦場に復帰する。しかし相手の姿が見当たらない。どこに身を隠したのか、と辺りを警戒しながら戦闘態勢を取り直す。
 御堂の前で切り結ぶ二人と、打ち合いながら移動する二人。その喧騒を耳にしながらも動くことなく警戒を続ける。
 どれくらいの間そうしていたか。ふと、上部から何かが滴り落ちる音を捉えた。音の発生源を確かめるべく首を巡らす。恐る恐る近付けば、赤黒い水溜り。振り仰ぐカルロスが目にしたもの、とは。
 まず長い長い蒼い束。そして人の手。そこを伝う黒のライン。ぽたりと指先から離れて地上へと降りて水音を立てる。暗がりの中ではそれ以上見るには灯りがいるだろう。今それがなくて良かったと言うべきか。
 一歩間違えば自分がああなっていたかもしれないと、背筋を震わせた。

「……くっ」
 しばらく切り結んでいたが、徐々に反応速度が落ちてついに膝をつく。薄明かりでも判るほど蒼白な肌と大量の汗を流し荒い息を吐く二助を、凶津と桜は苦い顔で見下ろしていた。自分たちも消耗しているが、それ以上に彼の消耗が早い。
 弟を背に庇い、必死に立ち向かってくる二助の姿を見て凶津が桜にだけ聞こえるように囁いた。
「……あれ?コレ俺らの方が悪役っぽくね?」
「…………」
 そんなセリフをため息ひとつで黙殺する。
「ぉぉぉおおおお!」
 ふらつく身体を気合で賦活し、いよいよその肌は死人のものに変わる。最期の攻防になるのは明らかだ。身体の脇へと引きつけた刀を水平に横たえ、突きの構えを取る。
「ぇぇぇぇええええいッ!」
 凶津と桜は二助の渾身の突きを数ミリで見切り、雷撃を纏った妖刀で袈裟懸けに切り伏せた。どう、と倒れ込んで動かなくなる二助。その手は刀を離す事はなかった。

「これは人の受け売りだけど……」
 打ち合いながら朱鞠が囁く。
「『本当に良い刀はちゃんと鞘に収まっているモノ』らしいね」
「その様な戯言が……なんだと言う」
 罠への誘導は半分成功、半分失敗のようだ。中々の手練れである。
「せめて……君達が打ち直された時、鞘に収まった良い刀になる様に」
 刀を打ち払い、体勢を崩させる。その隙を逃がさず一閃。
「ぐっ……」
 過たずその身体に突き刺さり、背後の竹へと押し付ける。
「ここでオヤスミナサイだよ」
「が……はっ」
 そのまま貫き縫い止めた。一成の吐いた血で槍がさっと紅に染まる。力なく項垂れた面布が風に揺れても動かない事を悟り、ズ……と槍を引き抜いた。ずるりと弛緩した身体が滑り落ちた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​


「……あ……ああ……」
 かすれた声が静寂の竹林に広がる。一人残された四朗だ。三人の兄が目の前でなすすべもなく討ち倒される光景を見て、冷静でいろという方が難しいだろう。遠目にもわかるほど震えている。
 猟兵たちが一歩踏み出そうと葉ずれの音が鳴った。びくりと我に返った様子の四朗が抱えていた二本の刀を差し出すように掲げて叫ぶ。
「五哉!六樹!起きてよ!」
 その声に応えるようにふわりと手を離れて人の形を成す。
「兄上たちがやられたって?」
「そりゃあ、力を持たないのに力を使ったらもたないよねぇ」
 明らかに兄たちを格下と見做す言葉。その二人が纏う空気が先の三人と違う事に気がつくだろう。僅かだが一成が纏っていた妖気。あれよりもだいぶ強い。
「四朗兄上も”お守り”外して全力出さないと」
「そう、兄上たちみたいになっちゃうよ?」
 力関係の見えない兄弟関係。四朗が首元から飾り結びの紐を引っ張り出し、それを解いた瞬間。二人よりも強い妖気が放たれる。展示会に赴いた者なら思い出すだろう。最後の特別展示の兄弟刀。あの時感じた、禍々しい妖気を――!
神代・凶津
やれやれ、あと一歩って所で本命のお出ましって訳か。
いいぜ、こうなりゃとことん付き合ってやるぜッ!
地獄までは付き合ってやれないがなッ!

さっきまでの奴等とはどうやら格が違うようだな。
引き続きユーベルコードで引き上げたスピードで攪乱しつつ敵の攻撃を見切りながら切り結んでやるぜ。
そして切り結びながら奴等の隙を探し、見つけたらユーベルコードで極限まであげた反応速度で破魔の力を込めた斬撃を叩き込んでやるぜッ!

さあ、決着をつけてやろうぜ相棒ッ!



【使用技能・見切り、破魔】
【アドリブ歓迎】



「やれやれ、あと一歩って所で本命のお出ましって訳か」
 神代・凶津と相棒の桜が三体のオブリビオンに向かって歩き始めた。
「いいぜ、こうなりゃとことん付き合ってやるぜッ!」
 再び雷を纏い一瞬で間合いを詰める。四朗が吠えるように怨念を纏い迎え討つ。
「地獄までは付き合ってやれないがなッ!」
 ギィンッ!と派手な音を立て、鋼と鋼がぶつかり合った。上空を渡る風に撫ぜられ揺れる葉擦れの音。その隙間から射す月の光が二人の刃に跳ねる。常人に見切れぬ剣戟を銀閃が彩った。
 後方に跳び間合いを開ける四朗を凶津が追いすがる。横薙ぎの一閃に身を沈めて回避した。逆袈裟にすり上げた刃を袂に絡めて受け流される。四朗が呪詛を放った。跳び退っても凶津には避けきれない。それを桜の纏う清浄な風が祓う。
「っ!」
 四朗が息を呑んだ。一瞬を逃がさず凶津が猛然と前に出る。それを阻もうと眼前に構える冷たい鋼の輝き。極限まで研ぎ澄まされた感覚が、凶津の刀を導く。冴えた剣閃は相手の刃を弾き上げた。
「ぉぉぉぉああああ!」
 刀身の根元近くで断面をさらす愛刀の姿に絶叫する四朗。
「さあ、決着をつけてやろうぜ相棒ッ!」
 凶津がとどめを促す。雷光の太刀風が二人の影を竹林に映し出した。過たず喉元へ吸い込まれるように深々と突き刺さる。勢いのままにもう一歩押し込んだ。素早く引き抜き間合いを取り様子を見る。前のめりに倒れ伏した四朗の身体からざあっと妖気が霧散した。

大成功 🔵​🔵​🔵​


「……な……」
 絶句する六樹。
「四朗兄上まで!?」
 慄く五哉。
「なんなんだよ、こいつら!」
「ば、化け物め!」
 悲鳴のような絶叫を上げ、”外”へ向かい走り出す。
政木・朱鞠
残念だけど…このまま逃がさないよ…君たちに未来を呪いで満たす切っ掛けを生み出させないために化け物となってでも貴方達の咎をここで焼き尽くして幕引きとさせて貰うよ…。

戦闘【SPD】
相手もリミットを解除しているみたいだし『忍法・狐龍変化身』を使って急所を狙った攻撃を心掛けて大きなダメージをめざすよ。
引き続き武器は刑場槍を使い【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使いつつ【傷口をえぐる】でダメージを与えたいね。

もし、仕留めることが出来たら弔いの言葉を送らないとね…。
今度、未来を喰い潰す存在じゃなく生まれ変わったら、うっかりと仲良しの友達にでもなろうね…。


ミツルギ・サヤ
新たな犠牲を生まぬよう。
それが依頼の要であった。
……そうとくれば、このままにもしておれぬようだ。
錬成した十の妖刀を手向けにしようか。
心を千々に乱すは刀剣使いにあってはならぬこと。
その隙と乱れは剣筋を荒いものにする。
おぬしら、狙われても文句は言えんぞ。
足さばきを止めるように、足元を狙って五の妖刀を地面へと突き刺し。
残り五の妖刀で胴を突く。
刀身を直線で飛ばす動きゆえ、突きは見切られているか。
二本を頭上から、三本を左、右、真ん中からと操ってみせよう。
墓所の掃除なら私が引き受ける、安心してあるべき処へ還れ。
剣をかわし、おぬしらの真の目的を聞こうではないか。
散り際に言い残す言葉があれば心に留めておこう。


天海空・奏楽
裏庭にこんなものがあるとは思ってなかったぜ。
訳ありのオブリビオンっぽいけど、見逃すわけにはいかない。
手練れの刀剣使い、いざ尋常に勝負!
なんだけどさ、獣道へ誘いこんでこちらの有利な状況に
持ち込むぜ。なめてなんかられないし、長期戦は不利だからな。
光剣で応戦しながら後退、刀を振り回せないような場所へ移動。
神速回避で相手の剣をかいくぐり、相手の本体? の刀剣に
霊符を張り付けて「破魔ッ!」だ!
白刃どりみたいな感じで攻撃したい。
少しでも正気を取り戻して成仏してくれたらいいな、と思ってる。
この墓に供えられた花…綺麗だよな。
誰が備えたんだろうな。
……あんたは知ってるか?


カルロス・エルウラカン
【POWで行動】
確かに使命の為に躍起になる私達は『化け物』かもしれません…あなた達から見れば理不尽かもしれませんが大きな厄災が起こる前に改めて主を得るために元の刀へ戻って頂きます。

戦闘
正念場ですから、少々力押しになりますが私も全力を持って応えねばなりませんね。
隙を見せるので大ダメージを受けるリスクは大きいですが『ジャスティス・ペイン』で身体能力を底上げして【大連珠】を武器として拳に巻き近接戦闘に移らせて頂きます。

もしも、勝利できたのなら勝ったことを喜ぶ前に妖刀達の魂に思いを向けて、倒した相手に弔いの祈りをしておきたいですね…。

アドリブ共闘OKです



 ふっと目が覚める。あの後うたた寝してしまっていたようだ。天海空・奏楽は立ち上がりながら周囲の様子を探る。既に戦闘が始まっている音が静寂に響いていた。
「裏庭にこんなものがあるとは思ってなかったぜ」
 整然と並ぶ墓標を眺める。
「この墓に供えられた花……綺麗だよな。誰が供えたんだろうな」
 中心が白く縁に向かって色濃くなる青いグラデーションの六枚花弁の、星のような小さな花。
「……あんたは知ってるか?」
 御堂の正面から回り込むような獣道。そこから、衣装前面を袈裟懸けに切られたオブリビオンが現れた。
「……我らが供えたとて、何が可笑しい……」
 そう言い放つと刀を構え禍々しい怨念を纏う。奏楽はその気配に背筋が冷えた。
「我らが悲願、邪魔立てはさせぬ!」
 常人では捉えきれないスピード。光剣と【神速回避】でなんとか身を守る。長期戦は不利と断じ、自分に有利と思う狭い獣道へと誘い込む。なんとか動きを封じて破魔の霊符を――

「残念だけど……このまま逃がさないよ……!」
 二人を追って朱鞠が走り出す。左右を藪に囲まれた細道へ差し掛かった時、二人が唐突に止まった。何事かと朱鞠も足を止める。
「心を千々に乱すは刀剣使いにあってはならぬこと」
 招き入れるように二人が後ずさって場所を空けた。
「その隙と乱れは剣筋を荒いものにする」
 細道の奥から聞こえてきた声の主は。
「おぬしら、狙われても文句は言えんぞ」
 十の妖刀を周囲に展開し引き連れた、冷たく冴えた銀光を思わせる髪の女性。自身も妖刀にして剣士、ミツルギ・サヤ。その言葉には重みがあった。
「君たちに未来を呪いで満たす切っ掛けを生み出させないために、私は例え化け物となってでも貴方達の咎をここで焼き尽くすよ」
 朱鞠も槍を構え、挟撃する形となる。五哉と六樹は覚悟を決めたように刀を抜き、背中合わせにそれぞれと対峙した。サヤを正面に捉える五哉と、朱鞠の方を向く六樹が同時に走り出す。

 ”外”へと走り出した二人を見て後を追うとするカルロスの目の前に、竹罠で串刺しにされて頭上で息絶えたはずの三弘が降り立った。
「……なんと……」
 カルロスは言葉を失った。無意識に後ろへと下がる。
「勝負はまだ着いてないぞ、妖怪……いや、化け物か」
 腹から放射状に赤黒く服を染めた三弘が刀を構えると、再び寒気が忍び寄ってきた。
「……確かに使命の為に躍起になる私達は『化け物』かもしれません」
 【大連珠】を拳に巻き、カルロスも戦闘態勢へと入る。
「あなた達から見れば理不尽かもしれませんが、大きな厄災が起こる前に元の刀へ戻って頂きましょう」
 寒気が渦を巻いて刀に纏わりついていった。
「我らが住処を荒らした罪、その命で償ってもらうとするぞ」
「私達も終末のトリガーを引かせる訳にはいかないので、ここで討たせて頂きます」

「わっ!?」
 これだけ狭ければ刀を振り回すことも出来まいと思っていた。が、繰り出される突きからのコンビネーションの多彩さに内心舌を巻く。誘い込むだけの演技だったはずが本当に押され始めた。
 しかしあっという間に衰えていく。その時僅かに緊張感が緩んだ事を油断と呼ぶのかもしれない。足元を何かに取られ、奏楽は背中から藪へと倒れこんだ。
「ぉぉぉおおおお!」
 気迫と共に振り下ろされる刀を、霊符で挟み込んだ。
「破魔ッ!」
 ――ちょっと悪い気を祓って正気を取り戻してもらいたかったんだ。それと、さっきの花の話をもう少し聞きたかった。それからで、良かったんだ。
 パンッ!
 白羽取りのように受け止めた瞬間、乾いた音と同時に発生した一陣の風によって、その姿は掻き消えてしまう。奏楽の手に刀を遺して。そのままゆっくりと身体を起こし、手の中を確認する。そこで刀は真っ二つに折れていた。

 五哉の足元へ五本の妖刀が突き刺さり行く手を阻む。ふわりと勢いを殺すことなく飛び越えた。正面から一本の妖刀が真っ直ぐに飛来する。軌跡は単純。いとも簡単に払い落とされた刹那。左右から五哉の身体を妖刀が貫く。それだけでなく、頭上から降り注ぐ二本の妖刀。一本は打ち払ったが、もう一本がその身に深々と刀身を埋めた。
「がぁああああ!」
 吠える五哉。サヤの妖刀が刺さった傷口から黒い靄のようなものが溢れ、五哉を飲み込む。常人離れしたスピードでサヤへと迫る。主の元へと戻った十の妖刀が攻撃を捌き、主を守った。
「おぬしらの悲願とはなんだ」
 激しい剣戟の合間にサヤが問う。
「あの日を知らぬそなたに何が解るという!?」
「まずは話してみよ。解るかどうかはそれからであろう」

「抑えし我が狐龍の力……制御拘束術第壱式にて……強制解放!」
 朱鞠は真の姿の一部を解放し、全力をもって仕留めにかかった。
「まだ強くなるってのかよ……くそっ!」
 六樹は朱鞠の力を感じて身震いする。
「我が内に眠りし悪鬼よ、その力を我に与え給え!」
 禍々しい気配を纏い、最速で朱鞠へと肉薄した。
「はぁぁぁぁッ!」
「うぉぉぉぉッ!」
 穂先に肉を裂かれながらもすり抜け、切りかかる。朱鞠はそれをバックステップで回避し急所を狙った。一片の慈悲もなく確実に。本能的に防御を選んだ六樹。両者があ、と思う間もなく、切っ先は鋼を砕きずぶりと肉の中へ食い込み姿を消す。
 次に槍の先端が見えた時には、六樹の姿はどこにもなかった。ただ刀身を半ばで砕かれた刀が一本、地面に落ちて跳ねる。

 カルロスはどんなに打ち込んでも向かって来る相手に攻めあぐねていた。三弘も本体である刀を破壊されないよう、攻撃は全て人の身で受けた。気力が尽きたらそこで終わりだと、二人とも悟っているような空気。
 既に何十回目かも判らなくなった対峙を繰り返す。寒気をかき集めて刀に宿し、切りかかる。カルロスがそれを回避する。刀を横薙ぎに払い、寒気を叩き付ける。それと同時に剣の軌跡へ拳を突き入れるカルロス。拳を回避するよう刀の軌道を変え、結果拳が身体や顔面を捉える。
 互いにダメージを与えつ喰らいつして、とうとうその時がやってきた。それは何度も踏まれた足元の刈り跡が支えきれなくなり、体勢を崩す瞬間。
 カルロスの拳が、三弘の刀を捉えた。いともあっけなく粉々になる刀身。消えゆく三弘が面の下で笑った、気がした。
 戦いが終わり、ふらりとしゃがみ込むカルロス。刀身のほとんどは刈り跡の隙間に落ちて見えなくなったが、拾える分は出来る限り拾い集める。布を一枚取り出し、それらを包んだ。後で御堂へ運ぶため。カルロスは目を閉じ、弔いの祈りを捧げる。彼らの魂に安寧が訪れることを、また違う形で悲願が達成されることを。

「……我らの持ち主はとある方に仕えていた。民の声をよく聴き、皆が安心して暮らせるように心を砕いて下さった、名君であった」
 ぽつりぽつりと五哉が語り始める。
「その様なお方だから忠臣を名乗る者はたくさんいた。その中でも認められた者に、自分の刀の写しを下賜されたのだ。その写し身が今の我ら」
 今は遠いその日を見るように、つと頤を上げる。
「ある日、大量の兵が攻めてきた。事前に何もなく、な」
 そこから声を潜めるようにトーンが下がった。
「敵将は奥方と御子とを人質に、あの方へと迫った。城を開け渡すか首を渡せと。あの方は人質と民の保護を約束して……自ら首を差し出したが、その約束は守られることはなかった」
 握った拳が震える。やり場のない怒りが込み上げる。五哉だけでなく、その場で話を聴く者全ての胸に。
「我らの主もどうにかするために走り回ったが、やがて捕えられ……憚られるほどの残虐非道な仕打ちを受けて、打ち捨てられたんだ。弔われることもなく」
 御堂の方へと視線を向ける。
「見かねた旅の方があの御堂を建て、弔って下さったが……主たちの無念は晴れる事はなかった。どうにか、あの方の仇討ちをと」
「こうして身体を得た我らがその遺志を引き継いだが、二助も三弘も四朗も六樹もいなくなった」
 全員が声の方へ振り返る。
「一成兄上っ!」
「五哉……もう、良かろう?」
 足音を立てて五哉へと歩み寄る。
「……兄上は……それでいいの……?」
「我らが災厄となるのは、我らの主もあの方も喜ばないだろう」
 ざあっと風が吹きぬけ、月影が辺りを照らした。
「そなたたちには随分と手間をかけさせて済まない」
 一成が猟兵たちを見回して頭を下げる。
「墓所の掃除なら私が引き受ける、安心してあるべき処へ還れ」
「今度、未来を喰い潰す存在じゃなく生まれ変わったら、うっかりと仲良しの友達にでもなろうね……」
 サヤと朱鞠の言葉にふっと一成が困ったように笑った。
「それは……頼もしいな」
 五哉もはにかむように口元が緩んでいるのが雰囲気で伝わってくる。
「では」
「うん」
 一成と五哉が刃を重ね、小さな金具で挟み込む。更に手の平を重ねた。
「「またいつか」」
 ぱきん。
 微かな音を響かせて、兄弟刀のヤドリガミたちは月の光へ溶けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月22日


挿絵イラスト