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小さな眼のその先に

#UDCアース

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#UDCアース


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●小さな目
 ぐしゃり、ぐしゃり、いやな音がする。
 ぴちゃ、ぴちゃ、おとうさんは見ちゃだめだって言ってたけれど。
 ばさ、ばさ、ここにいると神様が僕らを食べちゃうんだって。
「こら、学校へ行って来なさい」
 パパの声。僕らがこっそり秘密の家を覗いていたのはバレていたんだ。
 僕らが家に入れるのは明後日。その時は神様が素敵なところに連れて行ってくれるって、パパは僕らの頭を撫でながら教えてくれた。
 今日はここじゃなくてママのいるお家へ帰るんだぞ、パパはそう強く言って僕らを送り出した。
 パパの後ろに見たことのない大きな影と凄く嫌な臭いがあったけれど、僕はいってきますしか言えなかった。

●大きな罪
「……集まってくれて助かる。UDCアースで事件だ。邪神復活の儀式を行おうとしてる馬鹿がいるから、それを止めてきて欲しい」
 グリモア猟兵の茜屋・ひびきは資料を片手に説明を始める。
「ただ、儀式の詳細は分からない。儀式を行おうとしている教団がある町の海の方に潜伏してるってのは分かってるんだが……。
 今は儀式自体がどこで行われるかが分からねぇ状態なんだ。まずはその場所を突き止めて欲しい。そのための手がかりはある」
 そう言ってひびきは数枚の写真を出した。そこには小学生くらいの少年や少女が写っている。
「この子達は邪神教団幹部の子供で……邪神への生贄候補だ」
 ひびきは表情をあまり変えずにそう告げる。しかし、苛立っているのは雰囲気から伝わっていた。
 邪神の使いには子供が好物の者がいる。それに子供を食わせたあと、力を蓄えた使いもまた邪神に食われ生贄となるそうだ。
 おぞましい儀式の詳細に猟兵達も眉を顰める。
「こんな連中を放って置くわけにもいかないだろ。皆の力を貸して欲しい」
 そう言ってひびきは説明を続ける。

「厄介なのが……邪神教団の方は上手く隠れやがって、近隣住民への聞き込み調査だと儀式開始までに場所の特定が間に合わなさそうなんだ。
 だが諦めちゃいけない。近隣住民よりも具体的に儀式の場所を知ってるやつがいる……そう、子供達だ。
 既に何度か現場に訪れているみたいでな。UDCのスタッフが聞き込みをしてみたんだが、『儀式の現場は知っているが、場所は親が教えてはいけないと言っている』という所までは聞き出せた。
 ここから先は猟兵の力が必要だ。子供達から儀式会場を聞き出して欲しい。
 方法としては、とにかく子供に信頼して懐いてもらうのがいいんじゃねぇかな。
 力強さでヒーローっぽくアピールしたり、興味のありそうなもので関心を引いたり……あとは真剣に話を聞いてやるとかな。いくら親のやっていることとはいえ、既に異常なものは見聞きしてそうだから恐怖心はある。それを取り除いてやったりとかな」
 なるべく優しくしてやれよ、と少し苦笑したような感じでひびきは言う。

「それからもう一つ注意して欲しいのが……邪神の使いはおそらくもう呼び出されている。そいつとの戦闘は避けられないだろうな。
 それと……邪神ってのは、半端な形で出てこようとしたりもするらしい。それも気をつけろよ」
 今度は忠告するように、真剣に告げるひびき。
「俺達が介入すれば、少なくとも子供達が犠牲にはならねぇで済むだろう。邪神もほっとく訳にはいかねーし、よろしく頼むぜ」
 最後にひびきがそう言って一礼すると、グリモアベースの準備を完了させる。
 小さな命を救い邪神を止めるべく、猟兵達をそれぞれ用意を始めた。


ささかまかまだ
 こんにちは、ささかまかまだです。
 今回はUDCアースを舞台にした事件です。
 おぞましい儀式を止めるべく皆様に頑張っていただけたらな、と思います。

 このシナリオはまず子供達との交流・説得から始まります。
 それぞれ自分らしい方法で挑んでいただけたら嬉しいです。
 ただ、あまりにも力づくな手段とか可哀想な手段は避けてくれると私は嬉しいです。

 それから戦闘もバッチリ入ります!
 2章と3章では激しい戦いが予想されるでしょう。
 是非そちらも楽しんでいただけたらと思います。

 それでは今回もよろしくお願い致します。
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第1章 冒険 『小さな提供者』

POW   :    強引に聞き出す。あるいは力強さをアピールして子供心を掴み聞き出す

SPD   :    子供の携帯を盗む。手品やかけっこなどで子供心を掴み聞き出す

WIZ   :    説得して聞き出す。あるいは絵本の読み聞かせなどで子供心を掴み聞き出す

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月凪・ハルマ
(生贄か、気分の悪くなる話だな……)

できれば子供達の方から俺に興味を持ってもらえるようにしたいな
ここは【旅人の鞄】の中の予備のガジェットで色々やってみよう

人型に変形させて歩かせてみたり、小型の自動車
(このサイズだとカートかな?)にして子供達を乗せてみたり
子供達からリクエストがあれば、それにもできるだけ応えるよ

上手く交流出来たなら切りの良いところで
「そういえば、此処に来る前に良くない噂を聞いたんだけど」
という感じで本題に入ってみる

流石に君達が生贄候補なんだ、とは言えないけど

「……お父さん、お母さんに教えるなって言われてるのは知ってる。
けど猟兵として、コレを放って置く訳にはいかないんだ……頼むよ」


アリス・レヴェリー
※アマータ、佐藤、石上、シホ、ハウスィと連携希望
「さぁ、動物も思わず耳を傾ける素敵な演奏と歌をお聞かせするわ!」
【獣奏器】を【楽器演奏】しながら【歌唱】してアマータさんの繰り広げる人形劇を目一杯盛り上げるわ
もし獣奏器の演奏によって動物が集まってきたら、子供たちの集中が分散しないように、動物たちにも劇を清聴してもらうわ
劇が終わった後に寄ってきてくれた子には【くまのぬいぐるみ】をもって親近感をアピールして【コミュ力】や【優しさ】で話を聞き出すわ
「ね、仲良くしてくれる?」


佐藤・くおん
※アマータ、アリス、道順、シホ、ハウスィと連携希望
【ジャンプ】【踏みつけ】【空中戦】を複合して大道芸を披露、さぁさぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!人形劇が始まるよ!
人形劇に集まった子たちには【料理】したお菓子やお弁当を配る
ドラゴンランス君に【ドラゴニック・エンド】で元に戻ってもらって小さい子の相手をしてもらおう、結構小さいしマスコットみたいだからね。かわいがってもらえよー


シホ・エーデルワイス
※アマータさん、アリスさん、石上さん、佐藤さん、原さんと連携希望

劇はナレーションと台詞を担当
【動物と話す、優しさ】で集まった動物も惹きつけます

●劇の内容

竜が炎の息を一吹きすると、王国の兵士達はみんな真っ黒になって
嫌な臭いを放ちながら動かなくなってしまいました

慌てふためく王様達に竜は言いました
「姫を差し出せば命は助けてやろう」

心優しきお姫様は王様達が止める間もなく
「いってきます」
とだけ言ってその身を差し出し、浚われてしまいました

竜は浚ったお姫様をお供えして神様を呼ぼうとしました
お姫様が諦めかけたまさにその時!

1人の騎士が駆けつけ竜を退治しました
こうしてお姫様は騎士に連れられて帰る事ができました


アマータ・プリムス
※くおん、アリス、道順、シホ、ハウスィと連携希望

当機が人形劇用の屋台を引きながら同旅団のメンバーと共に現れ大道芸を披露して注目を集めて心を掴み情報を聞き出します。

人形劇の演目は『竜に浚われたお姫様を救う騎士の話』
竜の操演は黒子に扮したハウスィ様。
BGMと歌はアリス様。
ナレーションと台詞はシホ様。
人形遣いの職を生かし姫と騎士は当機が操ります。
「お話を聞く前にまずは楽しんでもらいましょう」
子どもたちを笑顔にするための劇と言うことで結構乗り気。
顔には出さないがテンションが上がっている。

劇の細かい内容はお任せします。


原・ハウスィ
▼アマータ、佐藤、アリス、石上、シホ、との連携希望。プリムスさんの劇に黒子として参加。役は悪役の竜。技能【目立たない】【変装】を駆使して黒子になりきり、竜をリアルに演じるように行動する。ただし、竜の演技中も口調は不思議なままで喋る。「よくぞここまで来たんだ騎士よ。さぁ、姫を返して欲しくば、この私を倒してみせるんだ!」という風に迫真の台詞を言って役を演じる。


キャロライン・ブラック
自らの子を生贄になどと、とても許容出来ることではありませんわ
その思惑、打ち崩して差し上げます

まず、小さなお子さまの気をひくために手品と称して
わたくしのペイントブキ、レインボーロッドで塗料を宙に舞わせますわ

関心を向けて頂けたら、色のリクエストを伺ったり
混ぜ合わせるとどのような色になるか、
といったクイズを出して親交を深めますの

お子さまが満足なさったら、本題に移ります
今までの全ての色を呼び出し、淀んだ黒で塗り潰して、申し上げますの

「貴方達の未来は、先ほどまでの豊かな色彩で彩られています」
「ですが、この様に、それを塗り潰そうとしている方がいらっしゃると伺いましたわ」
「お心当たりは、ございますか?」



悪しき儀式の阻止のため、件の町へ集まってきた猟兵達。
 彼らが行おうとしていた計画は偶然にも似通っていた。
 これを幸いとし、集まった面子で協力しながら事件の解決を目指すこととなった。

 時刻は夕刻、学校が終わった子供達がまばらに町中を歩いている。その中には写真の子供達もいた。
 それを確認した猟兵達は行動を開始する。

 学校の近くの公園に集合した猟兵達はそれぞれ道具を広げ、子供達を引きつけるための用意をしだす。
「それじゃあ……最初は俺が動こう」
 まずは月凪・ハルマ(ヤドリガミの化身忍者・f05346)とキャロライン・ブラック(色彩のコレクター・f01443)が立ち上がる。ハルマが愛用の『旅人の鞄』からいくつかのガジェットを取り出すと、小さな人型に変形させ自分の隣を歩かせ始める。キャロラインもペイントブキである『レインボーロッド』をクルクルと取り回し、色とりどりの塗料を宙に浮かびあげる。
「さあさあ、楽しい人形劇が始まるよ」
「手品のショーも行いますわ」
 二人は公園の入口まで移動すると、近くを通る子供達へ呼びかける。一緒に手を振ったり、楽しい動作で呼びかけたり。
 それを見た子供達は続々と公園に集まってきた。写真の子供達も集まってきているのを確認し、ハルマとキャロラインは安堵する。もしその子達が来ていなかったとしても、他の子供にお願いして呼んできてもらうつもりではあったが……。
「人形劇? どんなのー?」
「手品って何するの?」
 キラキラとした目つきで話しかけてくる子供達。その様子に二人は少し胸が痛む。
 自分達がここに来たのは、子供が生贄になるのを防ぐためだ。しかし、そもそも自分達の子供を生贄にしようという狂った輩がいる……その事実がとても苦しい。
(生贄か、気分の悪くなる話だな……)
(自らの子を生贄になどと、とても許容出来ることではありませんわ)
 そう思いつつも顔には出さないように気をつけつつ。自分が今すべきなのは楽しいショーだ。
「騎士様のお話と、絵の具のショーをやるんだ」
 ハルマは笑顔で子供達へ語りかける。
「一緒に楽しみましょう」
 キャロラインも優しく子供達を誘導していく。
 劇の開始時間が近づいた頃、二人は子供を引き連れ公園へ入っていった。

 そして公園の中央、劇が繰り広げられる場所にて。
「……それでは、これより人形劇を開始いたします」
 【猟兵商業組合】の面々が、いよいよ劇を始めようとしていた。
 最初に子供達へ語りかけたのはアマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)。彼女が屋台を引き、主役である姫と騎士の人形を取り出すと、子供達は一気にそちらへ注目した。
 彼女の横では原・ハウスィ(元は小売店の店主・f01358)が黒子の衣装の用意をしていた。彼の役割は悪役の竜を動かすこと。彼はそのための準備に一生懸命であった。
 その様子を見て、外からやってくる子達へのフォローも忘れない。佐藤・くおん(スマイルジャンキー・f02218)が少し離れた場所で子供達を呼びかける。
「さぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!人形劇が始まるよ!」
 元の姿に戻ったドラゴンランスと共に、飛んだり跳ねたりしながら子供へ呼びかけるくおん。お手製のお菓子も配りながら呼びかければ、簡単に子供達は集まってきた。
「集まってくれてありがとう! 劇の場所はこっちだよ」
 一緒に場所まで案内したら自分は再び呼びかけに。子供の数が増えていけば写真で見た顔も増えていった。

「さぁ、動物も思わず耳を傾ける素敵な演奏と歌をお聞かせするわ!」
 人形劇の音楽を担当するのはアリス・レヴェリー(詩うミレナリィドール・f02153)。獣奏器から楽しげな曲を鳴らせば子供達もそれに聞き入る。
 その音色に近所の猫や小鳥も集まってくるが……。
(ごめんなさい、今は静かに聞いていて欲しいわ)
 子供達の注意が散漫になってしまってはいけない。動物達に静かにするようにお願いしつつ獣奏器を奏でると、その通り静かに聞いてくれるようになった。
「それでは……これは昔々の、遠い国のお話です」
 シホ・エーデルワイス(オラトリオの聖者・f03442)が優しくナレーションを行う。集まってくれた子供だけでなく動物までも惹きつけるようなナレーションだ。
「その国は悪い竜に襲われていました。竜が炎の息を一吹きすると、王国の兵士達はみんな真っ黒になって、嫌な臭いを放ちながら動かなくなってしまいました」
 少しおどろおどろしいそのナレーションに、何人かの子供達が過敏な反応を示す。どの子も写真に写っていた子達だ。
(やっぱり……思う所があるのでしょうか)
 その様子を見たシホは胸が苦しくなるが……今はそれを見せてはいけない。優しい声色のまま物語を紡いでいく。
「慌てふためく王様達に竜は言いました、姫を差し出せば命は助けてやろうと」
 場面に合わせ、ハウスィが竜の人形を動かしていく。出来るだけ恐ろしく、強く見えるように。
「心優しきお姫様は王様達が止める間もなく、いってきますとだけ言ってその身を差し出し、浚われてしまいました」
 その言葉に二人の子供が反応する。それは幼い兄妹だった。
「竜は浚ったお姫様をお供えして神様を呼ぼうとしました。お姫様が諦めかけたまさにその時!」
 劇は続く。反応を示していた子供達はどんどん不安げな表情を浮かべていく。劇の内容が他人事だとは思えないのだろう。猟兵達はその様子に胸が痛むも、しっかりと自分達がすべきことをなそうとしている。
「一人の騎士が駆けつけ、お姫様を助けようとしたのです」
 シホのナレーションに合わせ、アマータが騎士の人形を登場させる。
「悪い竜め、姫を返せ!」
 一見無表情なアマータだが、内心ではワクワクしている。怖がっていた子供達も劇の盛り上がりに合わせて次第に笑顔になっている。それを見れば自分も楽しくなる。その気持ちは演技にも現れていた。
「よくぞここまで来たんだ騎士よ。さぁ、姫を返して欲しくば、この私を倒してみせるんだ!」
 ハウスィも負けじと竜の演技を行う。口調は優しげだが演技は迫真。物語のクライマックスに子供達も興味津々だ。
 アリスが力強い音楽を奏で、アマータとハウスィが激しい戦いを作り上げる。
 いよいよ騎士が竜を打ち倒すと、子供達も大はしゃぎしだす。
「……こうしてお姫様は騎士に連れられて帰る事ができました」
 最後にシホがそう締めると公園中に響き渡るような拍手が鳴り響いた。
 劇の成功に猟兵達は安堵する。だが、ここからも肝心だ。

 劇が終わってからも猟兵達は子供との交流を続ける。
 アリスがくまのぬいぐるみを取り出せば女の子達が寄ってくる。男の子はくおんの小竜に興味津々だ。
 シホとアマータも子供に囲まれており、楽しく雑談している。ハウスィも竜の人形で子供の相手をしたりする。
 【猟兵商業組合】の面々はすっかり子供達と打ち解けていた。
 その時にそれとなく写真の子とそうでない子を離しておくのも忘れない。関係のない子供を巻き込むわけにもいかないからだ。
 そしてハルマとキャロラインも再び子供達へと近づいていく。子供達から儀式の場所を聞き出すために。
「そういえば、此処に来る前に良くない噂を聞いたんだけど……」
 ハルマが写真の子供達にそっと話しかける。
「悪い人が、君たちをどこかへ連れて行こうとしてるって……」
 この話を切り出すのも辛い。悲しい顔をしつつ話を続けるハルマに、幼い兄妹が反論してきた。
「違うよ! パパは神様が素敵なところに連れて行ってくれるって……!」
「お兄ちゃん、言っちゃダメだよ」
 妹の方が焦って口止めするも、兄の方は止まらなかった。
「パパは僕達のために神様にお願いしてるんだよ!」
「……でも、このままでは貴方達の未来が塗り潰されてしまいますの」
 キャロラインが語りかける。彼女はレインボーロッドでカラフルな塗料を舞わせると言葉を続ける。
「貴方達の未来は、先ほどまでの豊かな色彩で彩られています。ですがこのままだと……」
 そう言うと全ての塗料を混ぜ合わせる。鮮やかな色彩は失われ、真っ黒に混ぜ合わされた塗料が宙に浮かぶ。
 兄の方もそれを見て悲しげな顔をした。
 きっと彼も、自分達がどうなるのかという自覚はあるのだろう。
「……お願いですから、話してくださいませんか?」
 その様子を見た【猟兵商業組合】の面々も説得に加わる。
「私達は騎士のようなものです。貴方達を助けに来たのですよ」
 騎士の人形を片手に話しかけるアマータ。
「悪い竜ならやっつけちゃうからね」
 ハウスィも竜の人形を持って説得に加わる。
「……それなら、神様を止めてくれる? 本当は素敵なところ、行きたくないんだ」
「私も……学校楽しいし、お友達とバイバイしたくない」
 説得に応じた兄妹は懇願するような目線を向けてくる。
 その言葉に安堵し、顔を見合わせる猟兵達。今回の目標は無事に達成出来そうだ。

「それで……パパはどこに?」
 くおんが本題に入る。儀式の場所さえ特定出来ればあとは攻め入るだけだ。
「海の近くにある大きなお家だよ。パパがお世話になってる人の物なんだって」
 子供が教えてくれたのは海辺の別荘地にある一軒の建物だ。教団はここを根城にしているらしい。
「ありがとう、それで……この子達はどうしましょう」
 いよいよ敵の本拠地へ向かうにあたり、子供達の処遇をどうするか決めかねるアリス。子供達の両親のうち、片方が危険なだけなら家へ帰せばいいのだが、そうでないならどうしようかと考えあぐねる。
「それなら一度UDC組織の援護をお願いしましょう。もし教団が強硬策に出ようとしても、一般人相手ならどうにかしてくれるでしょうし……」
 シホがそう提案すると、猟兵達は予め教えられていたUDC組織の連絡先へと電話をかける。
 程なくして迎えの者がやってきた。子供達は彼らに任せておけば大丈夫だろう。
 こうして無事に儀式会場を突き止めた猟兵達は、その場所へ向かって移動を開始した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『嘲笑う翼怪』

POW   :    組みつく怪腕
【羽毛に覆われた手足】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    邪神の加護
【邪神の呪い】【喰らった子供の怨念】【夜の闇】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    断末魔模倣
【不気味に笑う口】から【最後に喰らった子供の悲鳴】を放ち、【恐怖と狂気】により対象の動きを一時的に封じる。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


海辺の別荘は不気味はほど静まり返っていた。
 猟兵達が玄関の戸を叩くも反応なない。
 仕方がないので無理やり建物へと入る。
 建物内部に壁はなかった。全体が大きな一つの部屋になるように改装されていたのだ。

 そしてその中では悍ましい儀式の準備が整えられている。
 噎せ返るような血と臓物とよく分からない香の臭い、辺り一面に散らばる肉塊、血で描かれたであろう魔法陣。
 そのまわりには何人もの邪教団員が立っていた。
「嘘だろ……まさか子供達が?」
「もっと早く生贄に捧げておくべきだったんだ!」
「仕方ない、こいつらを生贄にしよう……御使いの召喚には成功しているしな」
 団員たちは早口で何かを相談すると、不気味な呪文を唱えだした。
 すると……巨大な羽根の生えたグロテスクな怪物が猟兵達の前へと躍り出る!
 しかもそれは1体ではない。何体もの怪物が建物の天井に張り付いているのだ。
「さあ御使い様! こいつらを喰らい、邪神を降臨させて下さい!」
 信者がそう叫ぶと、怪物達は黄色い歯を剥き出しにして猟兵へと笑いかける。
 悍ましい怪物――嘲笑う翼怪を退治しないことには儀式を止める事も難しいだろう。
 猟兵達はそれぞれ武器を取り、戦闘を始める。
月凪・ハルマ
まぁ、子供達が狙われるよりまだしも気は楽か
けど生贄どうこうって時点で、今の俺は大分虫の居所が悪い

「……来い、叩き潰してやる」

と言いつつ基本は自身のSPDを活かしての回避重視戦法
必要以上に消耗したくはないので【見切り】【残像】【武器受け】も駆使

相手の攻撃の中でも、特に断末魔模倣には注意したいな
それらしい素振りが見えたら頭部に攻撃を集中させ
多少強引にでも止めに行く

攻撃時は近距離なら魔導蒸気式旋棍、
多少距離が離れる場合は手裏剣で対応

敵が手裏剣の間合いから外れる位に距離を取る様な場合には
【魔導機狙撃術】を使用して、更に【暗殺】技能を乗せた上で
弾丸を撃ち込む

このろくでもない儀式、此処で終わりにしてやるよ


キャロライン・ブラック
異様な姿、通常の生き物とはまるで違いますのね
ですが、この程度で臆したりなどいたしません
わたくしの色で塗り直して差し上げます

さて、それなりに広い空間で、空を飛ぶ相手ですから
わたくしはユーベルコードで動きを封じ
他の方が戦いやすいようにいたします

射出する類の技ですから、距離を取り、戦況を把握しながら行いますの

むやみやたらに攻撃を放つのではなく
相手の攻撃後や回避後の隙を狙いますわ

それと、出来る限り教団員の方々に
流れ弾などがいかないよう心がけますの
敵が教団員の方々に気を遣うかは存じませんもの

どのようなお人であろうと、親は親
あの子たちにとっては唯一の存在なのですから
せめて、過去にしたくはありませんわ


原・ハウスィ
アマータ・シホ・道順・くおんとの連携を希望。
携帯端末を操作しUC【Sales Abandonment Attack】を起動させ、即座に戦闘態勢に入る。
「操られているのか何か知らないけど、変な儀式はここでお終いにさせてもらうよ!」
邪教団員は操られている可能性があると見て、そちらには手を出さず『嘲笑う翼怪』の相手に専念する。
室内での多対多の戦闘になることから、乱戦になる可能性があるので、基本的に【目立たない】【忍び足】【暗殺】技能を活かし、相手の死角から攻撃し、反撃させないように立ち回る。また、単体しか相手にできないので、一体一体を確実に仕留めるように攻撃する。


佐藤・くおん
※アマータ、石上、シホ、原と協力希望
「…厄介だね、まずは数を減らすか」
【ジャンプ】し敵に【捨て身の一撃】を仕掛ける。勢いのままに【踏みつけ】再びジャンプ、アマータの【範囲攻撃】に【空中戦】でグルメツールを使い【なぎ払い】を合わせる。
敵の攻撃か、または味方の攻撃が当たりそうになった時近くの【敵を盾にする】ことで防ぐ。
アマータが鋼糸で敵を拘束した場合、ドラゴンランスを敵に【投擲】し【ドラゴニック・エンド】を起動
狙う敵はなるべくひと塊になってる者を選び、孤立した敵はハウスィが仕留めやすいように誘導
なるべく館を破壊しないように気を遣い、邪教団員は殺さないように気絶させるか味方に任せる


石上・道順
※アマータ殿、くおん殿、シホ殿、原殿と協力希望
邪法に手を染めたとはいえ、子らにとっては親であることに変わりはあるまい。邪神どもに洗脳された可能性もある。破魔により浄化を行えば、正気になるやもしれぬしな。アマータ殿が拘束した教団員は【破魔】を行い浄化し、余波に巻き込まれないよう結界を敷く。

戦いは基本的にシホ殿のそばを離れないようにしつつ、使い魔に原殿が狙われそうな時は霊符による【援護射撃】を行い狙いを定めないように気を払う。こちらに近づく敵が少数ならばシホ殿と協力して倒し、多数ならばユーベルコードを発動し注連縄で敵を絡めとりまとめて前線に送り返し、くおん殿達にまとめて薙ぎ払ってもらうとしよう。


アマータ・プリムス
※シホ様、道順様、くおん様、ハウスィ様と連携を希望。
「迅速かつ早急に対処すると致しましょう」

銀色のトランクから自身専用の人形を取り出し指先の鋼糸と接続する。
「仕事の時間です。起きなさいネロ、一曲踊りますよ」
襤褸布を纏った案山子のような人形はカタカタと歯を鳴らす。 翼怪たちに仲間の行動と【フェイント】を駆使して【だまし討ち】で背後から攻撃。纏まっているようなら【範囲攻撃】で纏めて薙ぎ払います。
もし操者の当機に攻撃が来るか味方に攻撃が来そうになったら鋼糸を使って【敵を盾にする】。

邪教団員は殺さず鋼糸で拘束しておきます。

敵を倒したら 「前奏曲はこれにて終わり。本番はここからですね」


シホ・エーデルワイス
※アマータさん、石上さん、佐藤さん、原さんと連携を希望します

生きる以上少なからず他の命を頂かなければなりませんが…
UDCの邪神は命を粗末にし過ぎだと思います(静かに怒っています)

邪教団員は洗脳されているだけなら
石上さんの破魔で正気に戻せるでしょうか?
邪教団員は殺さずに拘束しておく事を提案します
あの子達の為にも…

猟兵全員と連携を重視
石上さんに背中を預ける

鈴蘭の嵐で翼怪と【時間稼ぎ】も兼ねて
儀式の道具を【クイックドロウ、フェイント、誘導弾】で攻撃
敵の気を逸らし儀式を遅延できるかもしれません

残り1体になったら【銃奏】に切換え

攻撃されたら【オーラ防御、武器受け、見切り】で防御し【カウンター】も仕掛ける



悍ましい怪物、悲惨な儀式、戸惑う教団員達。
 非現実的な光景を見た猟兵達の胸に宿ったのは使命感と怒りであった。

「迅速かつ早急に対処すると致しましょう」
 最初に動いたのはアマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)だ。持参した銀色のトランク型ガジェット『アルジェントム・エクス・アールカ』を開くと、中には一体の人形が。襤褸布を纏った案山子のようその人形は彼女の武器で弟である『ネロ・フラーテル』である。
「仕事の時間です。起きなさいネロ、一曲踊りますよ」
 アマータが指先の鋼糸を引けばネロはカタカタと歯を鳴らし笑うような姿を見せた。戦闘の始まりである。
 ネロは踊るような仕草で翼怪達の元へと飛び出すと、更に不規則な動きで薙ぎ払う。そのフェイントのような仕草についていけない翼怪達は、まともに攻撃を食らって吹き飛ばされた。
 アマータは急いでネロを引き戻し、今度は団員達の方へと糸を飛ばす。攻撃されると思った団員達は慌てて防御の姿勢を取るが、彼女が行ったのは拘束だけだ。
「貴方達の命を取るつもりはありません。少し待っていて下さい」
 困惑する団員達に機械的に告げると、アマータは再びネロを翼怪の方へとけしかけた。今度は薙ぎ払うのではなく、踊るような動きと鋼糸を組み合わせどんどん翼怪達を拘束していくのだ。
 翼怪達はもがきながら拘束を解こうとするが、大きな翼が邪魔になってなかなか解くことが出来ない。そこに更に飛び込む影があった。
「……厄介だね、数を減らすか」
 佐藤・くおん(スマイルジャンキー・f02218)が大きな耳を揺らしながらジャンプしていたのだ。その勢いのまま手にしたドラゴンランスを投擲する。目指すはアマータが拘束していた翼怪達だ。
 ドラゴンランスが一体の翼怪に直撃すると、槍は巨大なドラゴンに変形し翼怪達に炎を放つ。翼怪達は不気味な叫び声を上げながら燃え上がり、一瞬で消し炭になっていく。ユーベルコード『ドラゴニック・エンド』が見事に決まった。
「まだまだ数は多いな、どんどん減らしていかないと」
 くおんがドラゴンランスを回収しながら周りを確認。今の攻撃で翼怪の数は減らせたが、天井の方を見ればまだまだ数は多い。武器をグルメツールに持ち替えると、くおんは再び敵陣へ飛び込んでいく。まとめて相手が出来そうならアマータと連携しあい、孤立している敵は別の仲間の方へと吹き飛ばす。
 作戦通りに連携を運ぶ事が出来ているアマータとくおん。時々顔を見合わせてはお互いの目線をしっかり確認しあう。戦いはまだこれからだ。

 一方、吹き飛ばされた翼怪は口から呪詛を吐き出す。得体の知れない不気味な声を出しながら猟兵達を威嚇する。その呪詛が自分自身も傷つけているが、構わずそれを垂れ流し自らの力に変えていく。
 そしてその呪詛をぶつけるべく、一体の翼怪がアマータとネロの方へと飛び込もうとするが……。
「隙だらけだよ」
 原・ハウスィ(元は小売店の店主・f01358)が翼怪の頸を斬り裂く。彼は乱戦を予測し隠密行動を取っていたのだ。そしてこっそりと翼怪の後ろに立ち、『Sales Abandonment Attack(ウリアゲホウキアタック)』で強化した携帯端末を刃に変えて暗殺を試みたのだ。
 翼怪は自分に起こった事が理解出来ず、ハウスィの方を向こうとしたがそれよりも早く頸を切り落とされた。その断面から赤黒い血が溢れ出たが、今はそれを気にする余裕はない。
「操られているのか何か知らないけど、変な儀式はここでお終いにさせてもらうよ!」
 猟兵達は全員『邪教団員は直接傷つけず、翼怪からも守る』というスタンスを選択していた。全員の意見が一致していたのもあってその作戦はスムーズに行えそうだ。
 ハウスィも勿論狙うのは翼怪だけ。再び自らの気配を消すと、上手く死角へ潜り込めそうな相手を探す。
 単体しか相手にできない分、一体一体を確実に仕留めるのが彼の役割だ。そしてそのために敵を誘導する作戦も事前に組み込んである。連携は順調だ。

 戦闘が行われている室内にて、拘束された教団員達を守りながら皆のサポートをする者もいた。石上・道順(彷徨える禁足地・f08728)とシホ・エーデルワイス(オラトリオの聖者・f03442)である。
 まずは教団員を落ち着かせるために道順が霊符を構え破魔を試みる。
「邪法に手を染めたとはいえ、子らにとっては親であることに変わりはあるまい」
「そうですね、命を取る必要まではないはずです……あの子達の為にも……」
 静かに話す二人だが、胸の内では邪神達に対する怒りも大きい。だが、教団員達も放って置くことは出来ない。まずは彼らの目を覚まさせた上で守りきらなければ。
 しばらくすると教団員達は呆気にとられた表情をし始めた。道順の破魔が通じたのだ。
「こ、ここは……」
「何なんだあの化物は!」
 異形の翼怪を見て慌てだす教団員達を二人は宥めにかかる。
「落ち着いて下さい……貴方達は、私達が守ります」
「ここに結界を張るから、安全が確保されるまでは動かないでくれ」
 道順が再び霊符を構え、教団員達を守る結界を作り出す。彼らは半信半疑ではあったが、まわりの状況を見て猟兵が自分達を傷つけないと判断すると大人しくなった。
「……今度は時間稼ぎですね。生きる以上少なからず他の命を頂かなければなりませんが……UDCの邪神は命を粗末にし過ぎだと思います」
 先程の穏やかな口調とは打って変わって、静かな怒りを示すシホ。彼女が翼怪達の方へと手を向けると、そこからふわりと鈴蘭の花が舞う。『鈴蘭の嵐』による毒の花嵐が吹き荒れると、翼怪にどんどん花びらを付け毒に侵していく。
 鈴蘭の花を出しているのがシホと気付いた翼怪達は、怒りのままに彼女の元へと飛び込んでくる。しかしそれも予測済みだ。
「こちらは私が」
 道順がシホの前に躍り出ると、身体から何本もの注連縄を取り出した。『錬成カミヤドリ』によって生み出された注連縄達は網のような形に組み上げられ、飛んでくる翼怪達を捕縛していく。そして拘束するだけが終わりではない。捕まえた翼怪達をまとめあげると、一気にくおん達の方へと投げ飛ばした。
「頼むぞ」
「任された!」
「では私達も」
 その言葉と共にくおんがグルメツールを振るい、アマータがネロに攻撃を指示する。その攻撃で飛ばされた翼怪達は一網打尽にされた。
「皆、ありがとう……私もまだやれます」
 自身へ向かってきた敵が倒されたのを確認すると、シホは再び鈴蘭の嵐を巻き起こす。嵐は儀式の道具も巻き込み吹き上がっていく。翼怪達はその様にも怒り狂っている。
 だがそれは隙が出来ているということ。怒りのあまり周りを見ずに孤立してしまう個体も出てきている。そのような油断しきった敵はハウスィにとっての格好の標的だ。
「こうやって周りから離れてくれると助かるんだけどね」
 密かに一体の翼怪の元へ現れ、再びエネルギーブレードを振るうハウスィ。振るった刃は見事に翼怪を切り裂き、命を奪う。
 こうして【猟兵商業組合】の面々は的確に敵の数を減らしていく。自分達が相手にしている分は全て討伐出来そうだ。彼らは他の仲間とも連携しながら、確実に成果を出していった。

 一方で、数多くの敵にその場で組んで対応する者もいた。
 月凪・ハルマ(ヤドリガミの化身忍者・f05346)とキャロライン・ブラック(色彩のコレクター・f01443)だ。
 二人も怒りを胸に抱きながら翼怪達に立ち向かっていた。
(まぁ、子供達が狙われるよりまだしも気は楽か)
 翼怪達の方へと向かいながらハルマは思う。ここに子供達が来ることがなくなったのは良かった。しかし……。
(生贄どうこうって時点で、今の俺は大分虫の居所が悪い)
 儀式や邪神、他人に犠牲を強いるオブリビオン。これらはとても不愉快だ。
「……来い、叩き潰してやる」
 ハルマはそう呟くと、敵陣へ全力で突っ込んでいく。なるべく消耗しないよう、それでいて確実に。
 一方でキャロラインは援護射撃のような手段で戦う事を選んでいた。
(異様な姿、通常の生き物とはまるで違いますのね。ですが、この程度で臆したりなどいたしません)
 敵である翼怪は非常にグロテスクだ。だがそれに怯える彼女ではない。自分に出来ることを全力でするだけだ。
「わたくしの色で塗り直して差し上げます」
 そう叫びながら『レインボーロッド』を取り出すキャロライン。それを軽く振るえば、鮮やかな白と青の塗料が舞った。
「青い、透き通るような、氷河の色。冷たく固めてしまえば、ほら、綺麗なままでいられるわ?」
 キャロラインの詠唱と共に塗料は氷河のような輝きを帯びていき、それを浴びた翼怪達を拘束していく。彼女のユーベルコード『わたくしの好きな色、氷河の青(レインボーパレット・グレイシャー)』の力によるものだ。
 しかしそれによって身体を封じることが出来ても、身体の一部が自由なままの翼怪もいた。頭部が無事であった翼怪は、黄ばんだ歯を剥き出しにしながら何かを叫ぼうとする。子供達の悲鳴を模して猟兵達を攻撃しようとしてきたのだ。
「させるか!」
 叫び声があがるよりも一瞬早くハルマが動いた。断末魔模倣を警戒していた彼は自らのガジェットを組み上げて構える。
「――ガジェット変形、スナイプモード」
 組み上がったガジェットを狙撃銃へと変形させると、叫び声をあげようとしていた翼怪を狙撃した。ユーベルコード『魔導機狙撃術(ガジェット・スナイピング)』による攻撃が決まり、翼怪は大きな口を開けたまま絶命した。
「ありがとうございます、他の敵もどんどん止めていきますわ……お願いします!」
 ハルマが敵を狙撃したのを確認したキャロラインは少しだけ安堵すると、彼へ礼を告げる。他の仲間がどんどん敵を攻撃していけば自分もどんどん敵を拘束していける。
「分かった、あと少しだ。頑張ろう!」
 ハルマもその様子に安心し、どんどん敵を攻撃していく。キャロラインの拘束があればハルマも魔導蒸気式旋棍や忍者手裏剣の攻撃を安定して当てることが出来た。
 戦闘の最中、キャロラインは教団員達が他の猟兵に守られているのを確認しこちらにも安堵する。自分も勿論彼らに流れ弾を当てないように意識していた。
「どのようなお人であろうと、親は親。あの子たちにとっては唯一の存在なのですから……せめて、過去にしたくはありませんわ」
 優しく呟くキャロラインにハルマも頷く。
「ああ……あとは敵を倒すだけだ。このろくでもない儀式、此処で終わりにしてやるよ」
 そう言って再び武器を構えるハルマ。翼怪を倒した後もまだ何か起きる予感はしているが、とにかく今は出来る事を。
 二人は再び戦場へ駆け出すと、翼怪の数を減らしていく。

 しばらく激しい戦闘が続き、翼怪の数は片手で数えられる程度になってきた。
 あとはこれさえ倒せば……そう思った猟兵達だが、どうにも敵の様子がおかしい。
 一番傷の少ない者が、他の仲間を喰らい出したのだ。
 猟兵達が次に動くより早く翼怪は共食いを終える。そしてその翼怪は部屋の中央まで行くと、不気味な笑い声をあげて絶命した。
 次の瞬間、部屋が大きく揺れだす。床に描かれた魔法陣が禍々しく輝き出し、何かがそこから出てこようとしている。
「前奏曲はこれにて終わり。本番はここからですね」
 アマータがぽつりと呟く。
 その通り、最後の戦いはこれからだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『鑼犠御・螺愚喇』

POW   :    友、死にたまふことなかれ
【友を想う詩 】を聞いて共感した対象全てを治療する。
SPD   :    怪物失格
自身の【友の帰る場所を守る 】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
WIZ   :    永遠の怪
【皮膚 】から【酸の霧】を放ち、【欠損】により対象の動きを一時的に封じる。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


魔法陣の輝きが強まると、今度は不気味な音が響き渡る。
 ごぽり、ごぽり、地の底から這い出てくるようなその音は何かの出現を予感させる。
 その音が強まりだし、魔法陣から何かが姿を現す。
 泡のような、泥のようなそれは金色に輝く瞳のような器官で猟兵達を見据え、魔法陣から這い出てきた。
 ぬらぬらとした泥のような身体は絶えず捻じれ蠢いている。
 中途半端な儀式で再生された邪神『鑼犠御・螺愚喇』がその姿を現したのだ。

 これを打ち倒せば今回の事件は解決だ。
 最後の戦いの始まりを感じ、猟兵達は武器を手に取る。
佐藤・くおん
※アマータ、アリス、道順、シホ、ハウスィと連携希望
「さぁさぁ、これが最後の戦いだ!」
【黄金の精神】起動、回避盾を行う。【地形の利用】により建物内を【ジャンプ】しつつ接近、【ダッシュ】を織り交ぜて不規則に【残像】を残して敵の注意を引く
足りない場合はコースターを目に【投擲】し強引にこちらを攻撃させる。攻撃を食らっても【激痛耐性】で耐えて逃げ回るのはやめないように
「流石に、知性がないと挑発も鈍い…なら!」
【ドラゴニック・エンド】二連撃!二つのドラゴンランスからドラゴンを起動させ攻撃に参加させる


アマータ・プリムス
※くおん様、アリス様、道順様、シホ様、ハウスィ様と連携希望
「こんなに注目を浴びると緊張してしまいます」

引き続き人形のネロを使い戦闘。
壁となってくれているくおん様の後ろから人形を操り【範囲攻撃】【フェイント】【だまし撃ち】を使い攻撃。詩を詩わせないことを第一に全身を攻撃し弱点をあぶり出す。他の方が行動しやすいように注目を集めます。攻撃の最中に鋼糸を張り巡らせくおん様が動きやすいように足場を構築。

戦闘中【学習力】で相手の行動を記憶して行動を予測します。
「交響曲を巧く奏でましょう」

使えるタイミングがあれば『ミレナリオ・リフレクション』で相手のUCを相殺します。
「演奏の邪魔はさせません」


アリス・レヴェリー
※石上さん、シホさん、アマータさん、佐藤さん、原さんと連携希望。回避盾として戦ってくれている佐藤さんの後ろから、【歌唱】を乗せた【白昼奏でる真鍮の夢】で楽器を変化させた真鍮の花弁を使って援護しつつ、瞳に似た器官に重点的に攻撃を仕掛けるわ。仲間が傷を負った場合、【シンフォニック・キュア】で治療、逆に相手が歌おうとした場合、【歌唱】と【ミレナリオ・リフレクション】で妨害するわ。「ちょっと、意地悪なやり方だけど……!」戦闘中、【学習力】で相手の行動の予測、弱点の解析の補佐をするわ


原・ハウスィ
※くおん・アリス・アマータ・石上・シホとの連携希望
前章と同じくUC【Sales Abandonment Attack】を発動させたまま戦闘に突入すする。
基本的には遊撃を行いつつ、味方猟兵並びに同旅団メンバーが場の整え、解析を行っている間に【目立たない】【忍び歩き】【暗殺】を用いて相手の死角に入るように行動する。
味方から弱点などの情報を受け取り次第、そこへ目掛けて一撃を叩き込むつもりで攻撃する。
「前衛を仲間に任せちゃうのは心苦しいけど、ハウスィに出来ることはこれくらいだからね、しかたないね」


石上・道順
※くおん殿、アリス殿、アマータ殿、シホ殿、ハウスィ殿と連携希望
まずは【拠点防御】、【オーラ防御】を駆使してシホ殿と協力し民間人の避難を優先。避難完了後、戦線復帰前に神降しを行いユーベルコード発動準備。

以降猟兵全員で連携
まずは回復は仲間に任せ、これ以上酸の霧に侵されないように【破魔】、ユーベルコードを用いて戦場を祓い場の浄化を行う。
「この地の悪気を祓い給い、清め給え!」
その後は【情報収集】、【失せ物探し】により邪神の弱点や現界の核を探しながら、【破魔】の霊符による【援護射撃】でサポート。
見つけ次第、味方に伝えながら【荒神・布都御魂】を発動し攻撃する。


シホ・エーデルワイス
※石上さん、アリスさん、アマータさん、佐藤さん、原さんと連携希望

他の方が敵の注意を引きつけている間に
子ども達のご両親を
【救助活動、目立たない、手をつなぐ、鼓舞、忍び足】で
石上さんと協力して屋外へ避難
洗脳されていただけで一安心です

避難完了後
戦線に復帰
これで心置きなく戦えます

猟兵全員と連携

【生まれながらの光と医術、祈り、優しさ、鼓舞】
で皆さんの動きが長く止まらない様治癒

敵の詩を重点に
【情報収集、学習力、歌唱】で構成や弱点を解析し味方へ伝達
あとできればアリスさんとアマータさんの相殺を合唱でサポート

攻撃の機会があれば
【銃奏と鎧無視攻撃、クイックドロウ、スナイパー、誘導弾、援護射撃】
で片足を狙撃
崩します


キャロライン・ブラック
これが邪神、先ほどの敵よりも、さらに生き物とはかけ離れていますわね
ですが、邪神といえど不完全な状態、臆することはございません

わたくしは引き続き距離を取り
戦況を把握しながら援護や攻撃を行いますわ

また、あのような異形では動きの軌道が読み辛いかと存じます
攻撃の際は出来る限り初動を抑え、動きを阻害するように仕掛けますの

邪神が放つ酸の霧は、わたくしの塗料で皮膚を覆うことで軽減を狙います
それに、あの金色の瞳がどれほど役立っているかは存じませんが
全て塗り潰して差し上げれば、動きは鈍るのではなくて?

教団員の方々も目を覚ましたご様子
もはや後顧の憂いはございません
わたくしの全力でお相手いたしますわ


月凪・ハルマ
これまた、随分えげつないのが出てきたな……
こんなのが『神様』だなんて、冗談じゃないぞ

◆真の姿を開放
(髪が白い長髪に、瞳が金色に変化し、全身に風を纏う)

基本は変わらずSPDを活かした回避重視の戦い方
【見切り】【武器受け】【残像】【忍び足】もフル活用

今回はなるべく相手から付かず離れずの距離を保って
相手を引き付ける様に立ち回る

とても理性がある相手には見えないし、
教団員の方に向かうと色々マズそうだし

見た目からは弱点を判断しかねるので
まずは手あたり次第に攻撃を打ち込んでみる

特に攻撃が効いている箇所があれば
【降魔化身法】を使用し、そこを集中的に攻撃する

―出てきたばかりでなんだけど……此処でご退場願おうか!



 半端な儀式で召喚された悍ましい邪神。それを前にしても猟兵達は決して臆さなかった。
「さぁさぁ、これが最後の戦いだ!」
 最初に飛び出したのは佐藤・くおん(スマイルジャンキー・f02218)。彼の役割は邪神に自身を注目させ攻撃を引きつけることだ。そのために建物内を縦横無尽に跳ね回り、残像を引きながら接敵する。沢山の瞳が自分を睨みつけてきたが、仲間がいるから怖くない。
「これまた、随分えげつないのが出てきたな……。こんなのが『神様』だなんて、冗談じゃないぞ」
 くおんと同じく全速力で敵へ向かったのは月凪・ハルマ(ヤドリガミの化身忍者・f05346)。彼が前に進むたびにぼさぼさだった漆黒の髪は美しい白髪に、黒い瞳は輝く金色に染まっていく。真の姿を開放したハルマは、敵との距離を上手く保ちつつ注意を引いていく。
 邪神は鬱陶しげに二人の姿を見つめ、身体を肥大化させていく。自分の下にある儀式の痕跡を守るように身体を広げると、今度は身体の表面にぶくぶくと体液を滲ませていく。邪神の近くに出ていた二人は、その体液の刺激臭に顔をしかめさせた。これに触れるのは危険そうだ……恐らく毒か酸だろう。

 その様子を見た石上・道順(彷徨える禁足地・f08728)とシホ・エーデルワイス(オラトリオの聖者・f03442)はすぐさま自分達の為すべき事をしだす。二人で教団員の元へ急ぐと、すぐさま武器を構える。教団員らは邪神に怯え、身を竦ませていた。このままここにいては危険だと判断した二人はまず避難活動に入ったのだ。
「私が盾になる、シホ殿は民間人を」
 道順が霊符を構え、自分達の前に結界を作り出す。これさえあれば邪神の体液から少しだけ身を守ることが出来そうだ。
「ええ、それでは皆様……私と一緒に外へ出ましょう。皆様が洗脳されていただけで一安心です」
 シホは教団員へと優しく話しかける。必要があれば手を繋ぎ、落ち着きを取り戻せるよう宥める。おかげで教団員達はなんとか歩き出せるようになった。
 二人は彼らの盾となり入り口まで導いていく。これで教団員達が戦闘に巻き込まれる事はなさそうだ。二人はそれを確認すると急いで戦場へと戻った。
「この地の悪気を祓い給い、清め給え!」
 道順はすぐさま『荒神・布都御魂(コウシン・フツノミタマ)』を発動し、なぎなたを振るう。神気の刃は床や壁についた邪神の体液を次々に削り取ったいった。
「これで心置きなく戦えます」
 シホも祈りの姿勢を取り『生まれながらの光』で仲間を照らし出す。彼女の『アセビの聖痕(スティグマ)』から溢れた光は敵の体液を浴びた仲間を癒やし、戦い続ける力を与えた。

 教団員達が避難していった様子を確認したアマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)。思う存分戦えそうだと判断した彼女は本格的に行動を開始した。
「こんなに注目を浴びると緊張してしまいます」
 邪神の目を見返しながら、先程の戦闘と同じく人形『ネロ・フラーテル』を繰り出すアマータ。踊るように動くネロは、先に動いていたくおんとハルマに合わせて攻撃を加えていく。邪神も負けじと体液を吐き出してネロを傷つけようとするも、その動きに翻弄されて体液を上手く当てられないでいた。
「よければこちらもお使い下さい」
 ネロが動いた道筋には鋼糸が張り巡らされている。アマータが上手く誘導し、足場として使えるように張り巡らせていたのだ。
「ありがとう! 使わせてもらう!」
 くおんは一瞬だけアマータの方へ向き感謝を述べた。その後すぐさま鋼糸を蹴飛ばし、邪神を翻弄する動きに変化を加えていく。邪神はそれに焦り、慌てて体液を吐き出そうとするが……。
「隙だらけだよね」
 別方向から現れた原・ハウスィ(元は小売店の店主・f01358)が邪神の身体にエネルギーの刃を突き立てた。彼は先程の戦闘に引き続き『Sales Abandonment Attack(ウリアゲホウキアタック)』で携帯端末をエネルギーブレイドに変形させている。その刃は邪神の体液を蒸発させ、身を焦がしていく。痛みに悶える邪神は明後日の方向へ体液を吐き出してしまった。それを確認したハウスィはすぐに別方向へ移動し、再び武器を構える。本命のチャンスはまだこれからだ。それに備え、ハウスィは次々移動しながら邪神を斬り刻んでいく。

「わたしも頑張るわ」
 アリス・レヴェリー(詩うミレナリィドール・f02153)も前線で戦う者達を支援すべく、シンフォニックデバイスを構える。
「あなたの最期を、わたしが詩うわ」
 彼女がそう囁くと、デバイスは無数の真鍮の花弁へと姿を変えた。彼女の『白昼奏でる真鍮の夢(デイドリーム・ブラスペタル)』による力だ。真鍮の花弁達はふわりと舞い上がると次々に邪神の目に貼り付いていく。剥き出しになっている部位とはいえ、直接攻撃されるのはかなり苦しいようだ。邪神は激しく身体を震わせ抵抗する。
「これが邪神、先ほどの敵よりも、さらに生き物とはかけ離れていますわね。ですが、邪神といえど不完全な状態。臆することはございません」
 キャロライン・ブラック(色彩のコレクター・f01443)もそれに合わせて『レインボーロッド』を振りかざす。
「赤い、赤い、鮮やかな、血の色。とても綺麗で、美味しそうね?」
 詠唱と共に杖の先から呼び出された真っ赤な塗料は、次々と邪神の目を塗りつぶしていく。キャロラインのユーベルコード『わたくしの好きな色、鮮血の赤(レインボーパレット・フレッシュブラッド)』が発動したのだ。
 真鍮の花弁と鮮血を模した塗料による攻撃で、邪神はどんどん目が潰れていく。自らの体液で必死に目を洗い流し、それに抵抗しているが攻撃の分と合わせるとかなり苦しいようだ。その様子を全ての猟兵が観察していた。

 邪神は自分が徐々に追い込まれているのを感じたのか、更に身体を蠢かせる。そして身体から得体の知れない音を発していく。その音は徐々に言葉のような響きとして纏まっていき、自身を癒そうとした。
「演奏の邪魔はさせません」
「ちょっと、意地悪なやり方だけど……!」
「私も加わります……!」
 アマータ、アリス、シホはその瞬間を見逃さなかった。三人が声を合わせ邪神の音を再現する。アマータとアリスによる『ミレナリオ・リフレクション』とシホによる歌唱の支援だ。
 邪神は体中の目を見張らせ、音を止めた。詠唱を止めさせる事が出来たのだ。しかしそれでも抵抗は続ける。今度は体液をそこらじゅうに撒き散らかし、猟兵達の動きを阻害しようとしてきた。
「くっ……これは厄介だな」
 ハルマが素早く身を反らしながら呟く。『魔導蒸気式旋棍』を支えに飛び上がり、邪神と距離を取った。このままでは邪神に近寄れない、どうしたものか……。
「大丈夫ですわ、わたくしにお任せ下さい」
 キャロラインが一歩前に出て、再びレインボーロッドを振るう。放たれた赤い塗料は床や壁についた邪神の体液を塗りつぶしていった。更に仲間のための足場になる位置にも塗料を飛ばしていく。戦場は徐々に猟兵達の有利になるように塗り替えられていったのだ。
「それで……弱点はやはり目、だろうな」
 霊符による破魔を行いながら道順が言う。彼はずっと支援攻撃と敵の観察を行っていたのだ。
「ええ、きっとそうです。先程目を攻撃された時にとても抵抗していましたし」
 シホがそれに頷く。ユーベルコードで消耗している彼女だが、敵の方はしっかり見ていた。
「わたしもそう思うわ。花びら、痛そうだったもの」
 真鍮の花弁を舞わせながらアリスも同意。自分がした攻撃の手応えは実感していた。
「当機も同意見です。皆様で一斉に合わせて……交響曲を巧く奏でましょう」
 アマータも頷き、他の猟兵へ向けて一斉攻撃を提案。皆はそれに頷き、一気に畳み掛ける事にした。

 最後の一斉攻撃に備え、猟兵達は各々戦いながら準備を進める。
 ずっと敵を引きつけていたくおんは、まずグルメツールの一つであるコースターを投げつけ邪神の注意を引く。目ではなく身体を狙い、自分だけが大ダメージを与えないように注意しつつ。邪神はそれに気怠げに反応したが、それで怒りを買う事は出来なかった。しかしその間に皆の準備が整ったのを確認出来る。最大攻撃のチャンスだ。
「流石に、知性がないと挑発も鈍い……なら!」
 くおんは素早く二本のドラゴンランスを構えると、それを全力で投げ飛ばした。それぞれが邪神の別の目に突き刺さり、苦悶の音が響き渡る。ドラゴンランスは更にドラゴンを呼び出し邪神の目へ激しく炎の息を吐きかける。『ドラゴニック・エンド』が決まったのだ。
 その隙にハウスィが邪神の死角へ潜り込み、体液にあまり覆われていない目へ目掛けて全力のエネルギーブレードを叩き込む。
「これが……全力だ!」
 感情を昂ぶらせながら放ったその一撃は、完全にその目を潰し尽くす。
 アマータがそれに合わせてネロを放ち、アリスは真鍮の花弁を飛ばしていく。邪神の目は次々に潰れていった。
 邪神も負けじと更に体液を飛ばすが、道順が結界と神気の刃で皆を守り、シホが自らの輝きで仲間へ付いた体液の穢れを消し去っていく。
「もはや後顧の憂いはございません。わたくしの全力でお相手いたしますわ」
 キャロラインがレンボーロッドをくるりと回せば、鮮血のように赤い塗料が弾けていく。その力で邪神の目は潰れ、味方を助けていく。無事な目はあとひとつだ。
「――出てきたばかりでなんだけど……此処でご退場願おうか!」
 最後にハルマが全力で地面を蹴り大きく飛び上がる。『降魔化身法』で自らに妖怪・悪鬼・幽鬼の力を宿すと、それを全力で振るう。その力は的確に邪神の目を抉り取った。

 全ての目を潰された邪神は大きく身体を震わせていく。新たに体液を滲ませる事もなく、ただただ身体を震わせる。その震えは次第に弱まり、とうとう動かなくなった。大きな身体は徐々に干からび塵となって消えていく。
 たくさんの潰れた目の痕が、最後に猟兵達を見つめていた気がした。

 事態の収束後、事後処理と元教団員達の保護のためにUDCの職員がやって来た。元教団員達と彼らの子供は記憶の処理と心理ケアをして日常へ帰されるようだ。そのかわり、フラッシュバックを防ぐために猟兵達との再接触は禁止される。今後彼らがどうなるか直接確認することは出来ないが、必要があれば自分達に聞いてもらえればと職員は言った。
 こうして不完全ながらも復活した邪神は倒され、影響を受けた人達も助かった。
 猟兵達はその事に安堵し、それぞれの帰路についた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月10日


挿絵イラスト