●白き鬼
角隠しなどで、羅刹の女子の性を隠せるものかと笑った者がいたという。贅を凝らした籠に乗り、贄を求める山奥の妖を真っ二つに切り伏せたとか。
『首と胴が繋がらねば、贄を食らう腹にも届きはしまいよ』
花嫁御寮に大太刀。
白無垢の鶴を模した打掛を血に濡らし、角隠しを払ったその羅刹は笑ったという。
それはとある村に伝わる物語。
村には刀を収めた神社と、古い刀鍛冶の工房が残る。
桜の季節を迎えれば、神事と称して仕合うのだ。
禍々しきを払った花嫁御寮の逸話に乗っ取って、その身に白をひとつ纏い。
祭りの名で魔をーー祓う。
「春へと続く日々の為に、か。は、どうせえげつねぇ羅刹の女がいたってだけの話だろうが」
花嫁御寮だろうが何であろうが。
化け物じみた女がひとりいたってだけの話だろう、と男は山間の道を行く。村を見下ろす土地であった。木々は深く、身を潜めるのはもってこいの場所。季節柄獣が潜むのが常であったが今年は早々に姿を消したらしい。
「そんなものより、祭りの日に披露される刀だ」
妖を両断したという大太刀。
旦那の葬儀で最後に白い着物を纏った羅刹の女は、刀を神社へと奉納したという。
「悪いもんじゃねぇだろ。はは、村の昔話をつけりゃ買い手なんて山のようにつく」
祭りの前に騒がしいのは騒がしいが、その程度。多少腕が立つ奴がもしいたとしても、こっちには数がある、と男はうっそりと笑った。
「殺して、殺して潰して誰もいなくなっちまえば大太刀抱えて移動しちまえば良いだけの話だ。おら、帰ったぞお前ら」
木材置き場へとかけた声に、返る言葉がない。木に背を預けていた姿が見えていたというのにだ。
「寝てんじゃねぇだろうな。今日がお勤めの日だってのにお前ら……!? な、なんだよこいつは……!?」
肩を揺すれば、待ち合わせ場所にいたはずの仲間が崩れ落ちた。
「くそ、どうなってんだよ!? 誰か生き残っているやつはいないのか!?」
言いながら男の足は逃げるように引かれていた。あぁ、そうだ。ここにいる必要なんざない。何が起きたにしたって、俺までが死ぬ必要などないのだから。
「だから俺は……ッ」
「なるほど、逃げるか。だが、遅いのう」
「……っ」
ざん、と腹に熱がきた。刀だと、そう分かったのは自分の腹からそれが生えていたからだ。熱い。痛い。寒い。綯い交ぜになった感情でガチガチと歯が鳴る。
「あぁ、他の者たちもそうして歯を鳴らしておった。良い刀があるとか」
「あぁ。ああ……ッ」
腕に刃がかかる。両の足を縫い付けられる。顎にかかった手が、歯を鳴らすのさえ許さない。
「奴らは最後の最後までよく喋ったが……うぬは囀ることもできぬか」
仲間を見捨てるのであればなぁ、と刀の主が告げる。ひどく呆れたような声に、違う、違うとあげるはずの声は音にさえならない。役立つからと叫ぶように、だからだから俺だけは命は、ともがく腕がーー飛んだ。
「つまらぬ」
「ーー」
腹に沈めていた刃を抜き払い、あんぐりと口を開けたままの男の首をはねる。森に落ちた淡い光の下、姿を見せたのは八本の刀を備えた武将であった。
「さて、花嫁御寮の大太刀か。興味深い」
あるというのであれば打ち合ってみるのも一興。
神域にあるものごと、両断すれば戯れにでもなるかと八刀流の武将ーーオブリビオン・乱世の名将は笑った。
●白き鬼の角隠し
「本来の鬼隠しの意味合いとは少し違うような気もするけれど……そうね、羅刹の方が身につければそんな話も出てくるのかしら」
興味深げに笑みを零したのは淡い桜色の髪をしたダンピールの娘であった。微笑を以って猟兵たちを出迎えたシノア・プサルトゥイーリ(ミルワの詩篇・f10214)は仕事があるのよ、と告げた。
「サムライエンパイアにて、オブリビオンによる襲撃事件が見えました。軍勢を率いて向かう先は、この村ーー花嫁御寮の妖退治の伝承が残る場所」
曰く、贄を求める妖に対し、花嫁を装って向かったとある羅刹の娘が妖を倒したという。
「大太刀を振るう彼女が何処から来たのかは何も残っていないそうよ。ただ、村には花嫁御寮が奉納したという太刀が保存されているの」
村で暮らしていた女は、旦那の葬儀で白い着物姿を見せた後に刀を奉納したという。以後、妖退治の逸話が残る刀は村で行われる祭りの際に1日だけ披露されるのだ。
「春へと続く日々の為、花嫁御寮の逸話にならってひとつ白を纏って奉納試合をしたりするそうよ」
剣は禍々しきを祓う象徴。より良い日々を切り開いていけるとう、と。
だがその祭りの前に、オブリビオンの襲撃が見えたのだ。
「相手は乱世の名将と呼ばれる八刀流のオブリビオンよ。刀を狙っていた盗賊たちを皆殺しにして、こちらに向かってくるわ」
今から向かえば、山を降りた先ーー荒れ寺の付近で出会うだろう。
「あちらも連れがいるの。盗賊の頭以外を最初に食い荒らしていたのが『式』よ」
陰陽師が打った式であったか、何らかの理由で術者の制御を外れたそれは、魑魅魍魎となった。
「集団戦となるわ。数がいる分、気をつけてちょうだい。時刻は……今から向かえば昼頃ね。陽の光で怯むようなものでもなく、ただ荒れ寺の周辺は薄暗いわ」
暴走する式を倒しきれば、ボスであるオブリビオンも姿を見せるだろう。
「容易い相手ではないわ。どうか、気をつけてちょうだい」
それと、とシノアは猟兵たちを見た。
「もしよかったら、全てが無事に終わったら村のお祭りに参加していただけないかしら」
奉納試合。
眺めるのも良いだろうし、参加するのも良いだろう。
命を奪い合うのではない。身につけた相手の白を取れた方が勝ちだという。
「しっかりと勝ち負けがあるのは子供達も参加していたからだそうだけど、最近では担い手も少ないそうなの。せっかくだから、皆で祭りを盛り上げてくださる?」
だがまずは、襲撃にくるオブリビオンの対応だ。
「乱世の名将の撃破を。嘗て花嫁御寮が守った村の為にも」
手のひらに浮かぶ淡い光に、吐息で触れる。揺らめく光に、武運を、とダンピールは告げた。
秋月諒
●各章について
各章、冒頭追加後のプレイング募集となります。
第三章のみの参加も可能です。
第一章:集団戦『暴走する式』
荒れ寺での戦いとなります。
第二章:ボス戦『乱世の名将』
荒れ寺にてボスとの戦いになります。
第三章:『祭りばやしに心の踊る』
村でのお祭りとなります。POW、SPD、WIZについては参考までに。
花嫁御寮にあやかって、白い布を体にひとつ付けての奉納試合もあるそうです。
三章のみ、お誘いがあればシノアがお伺いします。
●盗賊について
村の刀を狙っていたがオブリビオンにより全員死亡。
生き残りはいません。
●花嫁御寮の伝承について
村に伝わる話。贄を求めた妖が出た時、白無垢姿で倒したという昔話。
花嫁御寮の大太刀は、村の神社に大切に保管されている。
基本は純戦かな、と思いつつ。
春を迎える村にて。災いを断つ祭りの時が向かえられるよう。
皆さま、ご武運を。
第1章 集団戦
『暴走する式』
|
POW : 魔弾呪式
【幾つもの呪力弾】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 分裂呪式
レベル×1体の、【一つ目の中】に1と刻印された戦闘用【自身と同じ姿の暴力する式】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 憑依呪式
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【武器や殺傷力のあるもの】と合体した時に最大の効果を発揮する。
イラスト:灰色月夜
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●灰色の骸
真昼の日差しが、ふつり、と切れた。消えたのではなく、切れたのだとそう感じたのは最後の一段を上りきった時に足首までしん、と冷える空気を感じたからであろう。廃寺を眺めるその空間は薄暗い。淀む空気に、覚えのあるものは気がつくだろう。これは血の匂いであると。血の匂いと、古い骨の匂い。腐り落ちた肉の匂いはなくーーだが、ぴしゃりぴしゃりと滴り落ちる血の匂いがする。薄く落ちた匂いは空間の広さからか、それとも廃寺の前にある『もの』たちの所為だろうか。
「……」
それは、例えるのであれば無数の目であった。
人魂にも似た目。
赤黒く充血した瞳。
とうの昔の呪いを帯びたそれは汚染された式。
一体、二体ではない。こちらの姿を確認してか、ふつ、ふつと地面から湧き上がる。無数の目がこちらを向きーーふいに、笑うような声がした。
「成る程、成る程。あの刀の話、眉唾でもなかったか」
廃寺の上、真昼の空を覆い紫がかった雲を背に一人の武将が立っていた。
面頬の奥、表情など知れず。だが、声は興味深げに落ちた。
「我が刀で斬るに値するは、其処にいるか。暫し眺めさせてもらおう」
なに、それも存分に役立つとオブリビオン・乱世の名将は告げた。
「狂うた式よ。其れ等は盗賊程度の骸よりは、良い血肉ぞ」
その声に、呼応するように暴走する式の瞳が、光った。
花邨・八千代
羅刹の女はなァ、おっかねぇぞォ。
敵に回さん方が身のためだと思うね、俺ァ。
まぁそれはそれとして喧嘩は大歓迎だ、まとめてかかってきなァ!
◆戦闘
せっかくだ、南天を大太刀に変えて【ブラッド・ガイスト】。
「恫喝」で敵の注意を引き、一気に距離を詰めて「怪力」で「なぎ払い」をブチ混むぞ。
「2回攻撃」で一匹でも多く巻き込んで片っ端から潰していってやる。
敵の攻撃は「第六感」で感知して躱しつつ、もし攻撃を受けたら怯んだふりをして「だまし討ち」だ。
「傷口をえぐる」で追撃掛けつつ戦場を楽しむぜ。
しっかし角を隠した程度で鬼が隠せる訳でもあるまいしよ。
しかし白無垢姿で大乱闘たァ中々趣味が良い、気に入ったぜ。
キィイイイ、と響く音は金切り声に似ていた。人の零すそれに似て、無数の『瞳』は人にあらず。湧き上がった式たちが、飛び込んだ羅刹の姿を捉えていた。喰らうための口など持たず、だが喰らってきたのだと人魂めいた尾が告げる。乱世の名将の言葉に添えば盗賊の名残か。揺れる尾からずるりと落ちた布切れに花邨・八千代(f00102)は息をついた。
「喰い散らかされたもんだなァ」
赤の瞳を細め、やれ、と息をついて羅刹の女は手を返す。くるり、と捻れば晒す手首は美しくともその手に一筋、赤が滑ればーー南天紋の印籠が姿を変える。
「せっかくだ」
大太刀だ。身の丈ほどある刀を背負い、八千代は笑う。
「羅刹の女はなァ、おっかねぇぞォ。敵に回さん方が身のためだと思うね、俺ァ」
八千代の恫喝に、無数の式たちがこちらを向く。無数の『目』だ。見られている、という感覚はそのまま、無数の敵に狙いを定められていることを示す。ーーだが。
「まぁそれはそれとして喧嘩は大歓迎だ、まとめてかかってきなァ!」
八千代は笑う。手に落とした大太刀を構えたまま、ぶつかるように身を前に飛ばした。一足は大きく、飛び込む勢いを利用したまま殺戮捕食態へと変化した大太刀を勢いよく振るい、落とす。
「キィイイイイ!」
ずぶり、と沈む刃が水袋でも割いたかのような感触を手に返す。
「こいつはまた、けったいなだね」
裂いた。
裂いた筈だ。
だが、刃を抜いた先からずるり、と溶け合うように形を作り直す式に八千代は息を吐きーー笑う。そう、けったいじゃぁあるが、斬って斬れるというのであれば。
「斬る」
にぃ、と笑うように羅刹の女の口元が上がった。引き抜く刃からそのまま、二度目の斬撃を放てば殺傷力の上がった刃が暴走する式を裂く。眼球に刃が突き刺されば、ばしゃん、と弾けたように式が崩れ落ちる。
瞬間、何かがーー来た。
「ーーは」
それが何かを確認する前に、八千代は身を飛ばす。呪力弾だと気がついたのは、境内を滑るようにして避けた先、足元をすり抜ける黒を見たからだ。しかも数が多い。一匹でも多く巻き込むよう、刃を振るっていたからだろう。狙ってくる相手も多いということか。
「ーーっと」
躱しきれずに、衝撃が体に走った。ばたばたと落ちた血が腰を染め、ぐらり、と八千代は身を揺らす。身の丈ほどの剣を地面に突き刺し息を吐けば、ずるずるずる、と式たちが近づいてくる。
「ァアアアああァアア」
歪んだ、その声は女のようであり男のようでもあった。数人混ざり合ったかのようなその声は、新たな贄を求めるよう八千代へと身を伸ばす。
「ーーなぁ」
「! ァアアアアア!?」
だが、先に切り裂いたのは八千代の刃だった。驚いたように式が、ばたばたと身を揺らす。黒が溢れる。
これこそが狙いだったのだ。
だまし討ち。
怯んだふりをして、こちらに近づいてくるのを待っていたのだ。は、と笑い、単純に上げた刃をそのまま、振り抜く。
「ギィァアアア!?」
絶叫は歪んだ獣の声であった。両断した式を飛び越え、続く式へと刃をむける。
「しっかし角を隠した程度で鬼が隠せる訳でもあるまいしよ」
白無垢に角隠し。
花嫁には似合いのそれであろうが、羅刹の女子に角隠しも無理な話か。
「しかし白無垢姿で大乱闘たァ中々趣味が良い、気に入ったぜ」
纏う白を赤く染め、笑い告げたという羅刹の姿を思い浮かべ八千代は笑みを浮かべた。
成功
🔵🔵🔴
クロエ・ウィンタース
名将と呼ばれる人間も堕すればこんなものか。
まぁ良い。民を害するとなれば斬り伏せるまでだ。
>行動選択
SPD
>行動
共闘、アドリブ歓迎。
俺は前衛に。
多少薄暗いが【暗視】があるから大丈夫だろう。
それでも暗くて見通しが悪い場所があるのなら
無理に踏み込まず、明るい場所に誘い込もう。
敵への攻撃は【フェイント】を織り交ぜ【2回攻撃】で攻撃するぞ。
敵の攻撃に対しては【見切り】で見切って【カウンター】だ。
分裂呪式への対応は
UC【無銘・弐】で。本体と召喚された分体ごと斬り伏せよう。
味方を巻き込まないよう注意する。
両角・式夜
はて、刀鍛冶を訪ねたいと思いましたが、なんとも煩わしい事になってますね。
丁度よい、今後の為に村に少しでも恩を売っておこうか。
最近手に入れた炎の魔宝石製の大太刀をなんとか手頃なサイズに加工出来ないかと訪れました戦闘狂です。
他の方と絡みok
アドリブ大歓迎です!
さてはて、やや小物そうですがどれぐらい強いでしょうか?
ふらっと前に出て、向かってきた者を切り伏せてみましょうか。
ある程度の傷は【激痛耐性】で誤魔化して
数も多いですし【なぎ払い】を多様していこうかと
近づいて来ないなら此方からいってやろう!
その先に何とも楽しそうな気配がするのでな!
「名将と呼ばれる人間も堕すればこんなものか」
眉を寄せ、吐き捨てた娘の長い髪が揺れていた。荒れた寺の天井を眺め見れば、こちらを見下ろすままの武将が笑みさえ浮かべずにいるのがクロエ・ウィンタース(刃狼・f15418)にはよく見えた。楽しんでさえいないのか、そも、まだ其処までは至っていないとでも言うのか。戦場を値踏みする程の熱も持たず、ただ、見下ろすだけの乱世の名将がこちらに手を出してくる様子はない。
(「否。こちらを其処までの者と見ていないから、降りもしないか」)
八刀流のオブリビオン。
名将の名を残す武将に、クロエは最後の息を落とす。
「まぁ良い。民を害するとなれば斬り伏せるまでだ」
落とす息で、不要な力を抜き黒鞘をーー抜く。一足、飛び込めば境内を埋め尽くす暴走する式たちがクロエの方を向いた。
「ァアアアアア」
男の声とも、女の声ともつかぬその声音は、眼球しかないあの『式』の何処から溢れているというか。
「俺は左に」
「では私は右に」
応えたのは銀の髪を揺らすドラゴニアンであった。手には大ぶりの刀が構えられていた。刀身は紅く、鋒に重心を持たせた刀を両角・式夜(銀錫赤竜・f01415)は下に構える。
刀鍛冶を訪ねたいと思っていたのだ。だが、なんとも煩わしい話になっている。
(「丁度よい、今後の為に村に少しでも恩を売っておこうか」)
やや小物そうとは思っていたが、見目だけで言えば式夜と変わらぬ背丈だ。左に飛んだクロエを視界に、右に飛べばーー……。
「向かっては来ないか」
なら、と式夜は声をあげた。
「近づいて来ないなら此方からいってやろう! その先に何とも楽しそうな気配がするのでな!」
着地の足を起点に、そのままぐん、と顔を上げーー飛んだ。薙ぎ払うように、近接から都祁愚姉香を勢いよく振り上げる。
「はぁあああ……!」
重い刀は、だが振るうことができればその重さと共に式を切り裂く。ずぷり、と刃が沈んだ瞬間、ぶるり、と式が震えたのが分かった。
「来るか……!」
は、と息を吐く。だが式夜は刃を振り下ろしーー叫んだ。
「呪力弾だ」
声は、共に戦う猟兵たちへと。至近から打ち出された黒が式夜の腕を穿ちーー染める。
「は」
黒へと。痛みより先に熱が走る。ばたばたと落ちた血に、だが息を吐くだけで耐える。激痛には多少、慣れがあるのだ。それにーー。
「こっちだ」
二度目の刃は、暴走する式の背後から来た。
クロエだ。
正面を式夜を取っていた分、背後に回った人狼の娘は式が振り返るその前に、刃を埋めた。
「ギヤァアアアア」
獣の叫び声に似た音が響き渡り、びしゃりと式が崩れる。泥にも血にも似たそれを視界に反射的に距離をとった。
「増えるか」
先に落とした式ではない。クロエの正面にいた一体か。ぴしゃり、ぴしゃりとその身から黒を零し、それは生まれた。
「あぁああああああああああ」
赤黒い瞳の中には数字がひとつ。
暴力する式が絶叫と共に黒い光線を放った。
「ーーっと」
光に、クロエは身を横に飛ばす。着地の足を地面に踏み込んで、真っ直ぐに敵を見た。
「ふたつ」
蒼の双眼にて捉えたのは本体と分裂した式。軸線には他の猟兵がいないのを瞬時に確認して、一度、鞘に納めた刃をーー抜く。
瞬間、無数の剣閃を戦場へと放たれた。
空を切り裂き、舞い落ちた葉を砕き。無差別であるが故に、戦場ごとを切り裂く剣閃が『式』の瞳を引き裂き、膨れた胴を破る。
「ギヤァアアッァア」
絶叫は、暴走する式からだ。暴力する式が滑るようにクロエへと向かうが無数の剣閃がそれを許さない。
「あぁああああ……!」
刃は届いた。引き裂かれた体がびしゃり、と弾け、光線が空に抜ける。水袋をぶちまけたような音が響きーーだが、その向こうからずるり、ずるり、と暴走する式たちがこちらに向かってきていた。
「数だけは多そうだな」
「まぁ良い運動でしょう」
息をついたクロエに式夜が笑う。刀を構えた二人は、再び戦場へとその身を飛ばす。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
宇冠・龍
ふふっ、ずいぶんと逞しい花嫁の方がいらしたのですね
(同じく夫を失ったものとして、見過ごす訳にはいきませんね。首を断った、というのは少々頂けませんが……) ※夫の死因は宿敵に頭を食われたため
相手の目的地がはっきりしている以上、足止めはしっかりしないといけません
「……このような使い方は、あまり好ましくはないのだけれど」
【談天雕竜】にて呼び出すのは、『暴走する式』にて殺された山賊たちと、武器たる発破
食い荒らしたはずのもの達が再び現れれば、それなりの注目を集めるはず
相手は目の式神、発破の閃光にて薄暗いなかでの視力を削ぎ、そのまま百人の亡霊での肉弾戦といきましょう
常に3体1を意識して取り囲むよう指示
ーー何を驚く?
お前の望んだ嫁御であろう?
嘗て、村に伝わる羅刹の娘はそう言ったという。花嫁御寮に大太刀。立ち回りは荒々しくも美しく。妖を屠った後か、元よりか、羅刹の女は夫と共に生きーーその死にて、白の着物を最後に纏い、刀を奉納したという。そこにどれほどの想いがあったかは誰も知らず、伝わらぬままーーだが、刀を狙ってオブリビオンは来た。
「ふふっ、ずいぶんと逞しい花嫁の方がいらしたのですね」
さわさわと、ゆるく結んだ髪が揺れていた。零す吐息に笑みを揺らし、宇冠・龍(f00173)は息を零す。
(「同じく夫を失ったものとして、見過ごす訳にはいきませんね」)
最もーー首を断った、というのは少し、頂けない。チリ、チリと記憶の奥、決して消えることのない光景が頭をよぎる。あの日、失った日。己も傷を受けて、そうしてーー……。
「……」
沈みかけた意識に、ぴしゃりと音がした。水音めいたそれに、龍は息を吸う。元より、戦場で意識を沈めさせるつもりもなく。その水音が暴走した式からこぼれ落ちる音だと気がつく。
音は水音のそれだというのに、滴り落ちるものは粘度を帯びていた。血のようだと、龍は思う。
「あぁあああああああああ」
男とも、女ともーーそのどちらとも言えるような声を響かせながら、式たちがゆらり、視線をこちらに向ける。一体、二体ではない。その数に、龍は息を吸う。
「……このような使い方は、あまり好ましくはないのだけれど」
相手の目的地がはっきりしている以上、此処を抜かせるわけにはいかない。
「悪鬼百鬼と数えれば、七転八倒列を成す」
朗々と龍は告げる。
それは死霊の術。夫や子に再び逢いたいという一心で龍が手に入れた力より派生した術式。
告げるその声に呼応するように、影が生まれた。百にも及ぶ悪霊。ゆらり、ゆらりと立つそれは簡素な服を着た男たちであった。
「……ほう。彼奴らか」
その影を見て、屋根の上からこちらを見下ろしていただけの乱世の名将が声をあげた。滲むのは感嘆か。笑うような声音に、龍は手に発破を落とす。
喚び出したのは、話に聞いていた盗賊たち。村の刀を狙った者たちだ。暴走する式に殺された彼らであればーー気を、引ける。
「ァアアアアッッッァア!」
「アァアアアア……!」
暴走する式の声が、歪んだ。ぐるん、と瞳が周り、式たちの瞳が一斉に龍の喚び出した悪霊たちへと向かう。百にも及ぶ悪霊。それが己たちが食らった筈のものであれば。
「気にもなる、か。ほう、変わった術を扱うものよの」
「……」
感心したように響く乱世の名将に視線だけを一度向けて、龍は手にした発破を戦場へと放った。ガウン、と爆発ともに閃光を放つ。ーーだが。
「ァアアアア」
「ァアアアアア」
ずるり、ずるりと暴走する式たちは向かってくる。どうやら目の式神とはいえ、あれ程汚染されてしまえば、閃光で視力を削ぐのは難しいらしい。
「それでは、囲うように参りましょう」
指先を振るえば、亡霊たちが動き出す。古びた刃がずぷり、と眼球に沈み、だが、切り落とすには足りずに形を戻していく。だが、一体ではないのだ。3体の亡霊で暴走する式一体を取り囲めばーー刃は、通る。
「ギヤァアアア!」
獣の咆哮を響かせながら、引き裂かれて落ちた黒の向こう、式たちが蠢く。びしゃりと落ちた一体を飛び越え、灯篭を引き倒した式がその体を肥大化させる。
「ぁあ、ぁああ」
黒く、艶めいた体に蜘蛛のような足が生える。ガシャンと響いた足音は鋼めいた音がした。
「……成る程、巨大であれば、ですか」
ぐるり、瞳が竜を捉える。射線か。とん、と飛ぶように地面を蹴る。着地のそこ、滑る足を支えるように手をつく。一拍の後に、光がそこを抜けていた。傷は受けられない。この術式はそういうものだ。だが、あちらが巨大化したところで、亡霊たちもいる。
「止めましょう、此処で」
刀も、嘗ての花嫁が守り抜いた、この村も。
成功
🔵🔵🔴
ネフラ・ノーヴァ
芳しい血の匂いに誘われるというもの。白無垢を染める赤、さぞ美しかったろうな。フフッ、太刀そのものより好みの逸話だ、私も戦場に舞散る血で染まろうではないか。さて、肝心の武将と相対す前に式の一掃だな。刺剣で牽制、フェイタルグラップルで強引に引き千切っていこう。手についた血は舌先で舐め取る。控える宴に気が逸るというものだ。
廃寺に古い骨の匂いがしていた。骸ひとつ無いというのに、ぴしゃりぴしゃりと暴走する式たちが何かを零す。地面を染めたものの色を確認するには明かりが足らず、だが、匂いがそれが何であったかを知らせていた。
「芳しい血の匂いに誘われるというもの」
艶やかな笑みを浮かべ、ネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)は吐息を零す。最後の一段を駆け上がったクリスタリアンの羊脂玉種の髪が、少ない日差しを受けてキラ、と光った。
「白無垢を染める赤、さぞ美しかったろうな」
フフッとネフラは笑みを浮かべた。
「太刀そのものより好みの逸話だ、私も戦場に舞散る血で染まろうではないか」
境内へと身を飛ばせば、ぐるり、と式たちの無数の瞳がこちらを向く。廃寺の上、見下ろす武将はこれが減らなければ降りる気はないか。
「ぁあ、ぁああああ」
「肝心の武将と相対す前に式の一掃だな」
と、と踏み込む足。一足は飛ぶように、構えた刺剣を突き出す。つぷり、と水袋でも刺したかのように切っ先が沈んだ。
(「浅いか。だがーー……」)
構わない、とネフラは笑みを刻む。これは牽制。勢いよく引き抜けば、開いた穴を塞ぎ、わずかに零した黒が震えるのが見えた。
「ァアアアアアア!」
瞬間、無数の槍が暴走する式から生えた。落ちた黒から、本体から。打ち出された黒き槍にネフラは踏み込むことで躱す。肩口、浅い一撃が入っていったがーーだが手が、届いた。
「ぁああ!?」
つぷり、と指が沈む。触れたのではない、と気がついた暴走する式がぎゅん、と眼球を向ける。だがーー。
「美しい中身じゃないか、フフッ」
力が通る方が、遥かに早い。
掴み取り、剥ぎ取る一撃が暴走する式を引きちぎった。びしゃん、と黒が弾け、警戒するように式たちが距離を取る。
「フフッ……」
指先についた血を、舌先で舐めとりネフラは笑った。
「控える宴に気が逸るというものだ」
キュイィンン、と甲高い音が響き、戦場に黒が生まれる。幾つもの呪力弾を前にネフラは刺剣を構えーー前に、出た。
成功
🔵🔵🔴
紬雁・紅葉
何でしょう?妙な縁を感じます…
いずれにしても、祓う甲斐のある御話…
推し通ります
天羽々斬を鞘祓い、十握刃を顕現
正面からゆるゆると接敵
射程に入り次第炎+破魔属性衝撃波をUCに乗せ回数に任せ範囲を薙ぎ払う
敵の攻撃は躱せるかを見切り
躱せるなら残像などで躱し
そうでなければオーラ防御や呪詛耐性などで防ぐ
いずれの場合もカウンター破魔炎属性衝撃波UCでカウンターを狙う
窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃
隠しも隠せぬ鬼の性
白き頭衣に包みつつ
白鶴紅鶴引き連れて
飾り籠にて戦場参り
幽か涼し気に笑みを浮かべ
前座はお終いですか?羅刹女は物足りませぬ
※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※
大太刀担いだ花嫁御寮。
羅刹の女は、紅をひき戦場へとまかり出る。
「何でしょう? 妙な縁を感じます……」
艶やかな黒髪を揺らし、さて、と緩く首を傾げたのは紬雁・紅葉(f03588)であった。剣神を奉る御社を頂く鎮守の山森を故郷とする巫女たる娘は、刃を振るう術を有している。
戦巫女故かーー否、淑やかな風貌を裏切るは羅刹の女子らしさか。無数の式たちを前に、逸話に思い出すだけの余裕を持って、紅葉は微笑んだ。
「いずれにしても、祓う甲斐のある御話……」
眼前には無数の式。それがとうに汚染されていることが戦巫女の目にはよく分かる。
「推し通ります」
天羽々斬を鞘祓い、十握刃を顕現すると正面からゆるゆると紅葉は距離を詰めた。じゃり、と足元の玉砂利が音を鳴らす。足を滑らせ、無数の目がこちらに向くのを感じながら、その時を距離を見定めた。
(「ーー今」)
チリ、と首筋に戦場特有の感覚が走る。此処だ、と全身が告げる。
此処が、間合いだ、と。
切っ先を下げる。鈍く、刃が光る。ただ振るうには足らぬ間合い。だが、九曜八剱・大蛇断であれば話は違う。
「山を断ち川を流し雲を割り野を薙ぐ剣……」
空間が震える。巫女たる娘の髪が揺れる。ふ、と落とした息を最後に、真っ直ぐに暴走する式を見据えーー振り上げた。
「以て斬り祓い奉る!!」
ゴウ、と薄闇に炎が生まれた。十握刃の無尽の斬撃は炎を孕み、切り裂いた先から暴走する式を崩していく。
「ギヤァアアアア」
破魔だ。
戦巫女の刃には祓いの力が乗り、だが振るう剣戟は荒々しい。
「あぁあああ」
「ァアアアア!」
絶叫と共に、無数の式が迫る。ひゅん、と打ち出された無数の槍に紅葉は身を逸らした。半身だけ。引いた足を起点に、そのまま振り上げていた刃を落とす。開いた胴を狙うように、幾つもの呪力弾が浮き上がった。
「ァアアアアア!」
「ーー」
ひとつ、ふたつではない。
眼前、迫る一撃を交わし、続き撃ち出された力に紅葉は手を振るう。瞬間、展開されたオーラが呪力弾を散らす。パキ、と軋む音を聞いたのは二撃目だったか。た、と身を先に横に飛ばすがーー肩口に、衝撃が走った。
「ァアアアア……!」
追撃を狙ったか。ぐん、と滑るようにやってきた式に紅葉は息をつき、身を回す。
「ーーあぁ、ですが。動きますね」
刃ひとつ構え、なぎ払うように。
「ギャァアアア……!」
両断した式が、水袋をぶちまけたかのように散る。びしゃりと落ちたそれに眉ひとつ寄せることなく、十握刃についた黒を払うように振るった。
「隠しも隠せぬ鬼の性。白き頭衣に包みつつ」
ゆるり浮かべた笑みは艶やかに美しく。
「白鶴紅鶴引き連れて。飾り籠にて戦場参り」
黒髪を揺らし、紅葉は幽か涼し気に笑みを浮かべた。
「前座はお終いですか? 羅刹女は物足りませぬ」
「成る程、剛の者か」
羅刹の女、と声を落としたのは、屋根より見下ろす乱世の名将であった。面頬の奥、笑う声を落としたオブリビオンは腕を組んだまま「そこに」と告げる。
「まだ式は沸くぞ。前座ゆえな」
数は多いものと決まっておろう。と乱世の名称は笑う。其処なる式は呪いの縮図。
「喰ろうた血肉の分、湧き上がるものよ」
如何か? と笑う声が落ちた。
成功
🔵🔵🔴
斬崎・霞架
【SPD】
妖を両断したという大太刀…ですか。
興味ありますね。一度お目にかかりたいものです。
…その為には、少々掃除が必要なようですが。
より強い者を望まれているようですし、
さっさと倒して大将にご登場願いましょうか。
数が増えると面倒かも知れませんね。
相手の攻撃は避けるか防ぎ、
合体されないよう、手早く、分断しつつ仕留めましょう。
…そう言えば、血肉、などと言っておりましたが。
自分たちがそうなるとは、思っていないのでしょうか。
【戦闘知識】【見切り】【オーラ防御】【呪詛耐性】【早業】【生命力吸収】
味方を巻き込まない間合いを見計らい、【忌み嫌われる厄災】を放ちます。
…前置きはもう良いでしょう。消え果てなさい。
喰らえはしまい? と花嫁御寮は笑ったという。
身の丈ほどの刀を担ぎ、白無垢を赤く染め、二度振るえば腕を断ったとさえ言う。
「妖を両断したという大太刀……ですか。興味ありますね。一度お目にかかりたいものです」
その為には、と斬崎・霞架(ブラックウィドー・f08226)は暴走する式たちに目を向けた。
廃寺に滲み出るかのように式たちは湧き上がる。まだ、随分と数があるということか。村に伝わる大太刀を見るには、先に少々掃除が必要なようだ。
「より強い者を望まれているようですし、さっさと倒して大将にご登場願いましょうか」
ふ、と息を吐き霞架は地面をーー蹴った。ぎゅん、と式たちの瞳がこちらを向く。手を伸ばすかのように無数の黒い槍が突き出された。その切っ先を霞架は避ける。軽く、顔だけを逸らし着地から左に飛べば、眼前、黒の槍が来た。
「アァアアアア……!」
「ーー」
それを、霞架は払う。黒の手甲を嵌めた腕で薙ぎ払えば、びしゃりと水音が響いた。感覚は、水袋を引き裂いたに近いのか。男とも、女とも知れぬ式の叫び声を耳に、とん、と距離を取る。
「……そう言えば、血肉、などと言っておりましたが、自分たちがそうなるとは、思っていないのでしょうか」
屋根の上から見下ろすオブリビオンにとって、これは余興に過ぎないのか。負ける気一つないが故に、今、この状況で見るに留めているのか。
見下ろすオブリビオンの気配は変わらない。ひとつ、息だけを吐いて霞架は前を見た。
「……前置きはもう良いでしょう。消え果てなさい」
半歩、距離を開ける。一撃を避け、身を飛ばし、浅く受けた傷をそのままにこの場所に立った理由はひとつーー軸線の確保だ。
「水は濁り、空気は澱み、草木は枯れ果て、地は腐る」
敵の為ではない。共に戦場にある猟兵たちのため。
空気が震える。仮にも『式』であったものたちが、それに気がつくように目を忙しなく動かす。ーーだが。
「されど此処に我は立つ」
解き放たれる呪いの方がーー早い。
制御せずに放たれた呪いが、暴走する式の群れにぶち当たった。
「ギャァアアアア!?」
「ギギャァアア!」
襲い来る呪いは、波のようであり闇の獣のようであった。
獣の絶叫が響き渡り、幾つもの式が弾け飛ぶ。びしゃりと派手な水音がいくつも響き、空間がひらけた。
「ぁあああ」
「ぁああああああぁああ」
廃寺の頭上、見下ろす男までの直線が出来上がりーーまた、すぐにふつふつと浮き上がる式が埋めていく。だが数が、少ない。最初に霞架が見た時より遥かに。
「……あと少し、掃除が必要なようですね」
式の発生には限界がある。
ならばあと少し、境内の掃除を完璧に終わらせるだけだ。
成功
🔵🔵🔴
ジャハル・アルムリフ
呪いか
瞼を閉じることすら出来ねば
さぞ忌々しかろうな
御仲間だ、疾く解き放ってくれよう
狂った式どもの中へと踏み込み、招く様に声を
そら来い、相手になるぞ
うまく誘き寄せられれば【餓竜顕現】を用い
怪力と範囲攻撃を活かし、集まった敵を黒剣で薙ぎ払う
第六感や見切りを使っても避けきれない呪力弾は
激痛耐性・オーラ防御で耐え、攻める事を優先する
気易く寄るな、鬱陶しい
接近されすぎた場合は殴るか蹴り飛ばすなどして
別の一体へとぶつける事で隙を作る
他猟兵も多少は攻めやすくなろう
役目は終わりだ
弔いにはお誂え向きの場所
何処へなりと還って休むがいい
…しかし、誇るべき角を隠さねばならぬとは
花嫁とは難儀なものだな
「呪いか」
薄闇に声がひとつ、落ちた。黒い瞳を細め、ジャハル・アルムリフ(f00995)は暴走する式たちを見た。一体、引き裂かれれば水をぶちまけたような音が響き、その染みから次の一体が湧き上がる。ふつり、ふつりと、地を揺らすことない侭にそれは生じていた。
「あぁあああ」
「ぁあ、ぁあああああ」
男とも、女とも付かぬ声はそのどちらでもあったのか。とうの昔に呪いを受け、本来の姿を失った式が食らってきたものの声に、ジャハルは静かに告げた。
「瞼を閉じることすら出来ねば、さぞ忌々しかろうな」
赤黒く淀んだ瞳が、右に、左に揺らぐ。一度戦場に湧き上がれば求めるのは血肉か。既に在り方を違えた式は、暴走の言葉に似合いの動きを見せーーひたり、とジャハルを見た。
「ぁあああああ」
「御仲間だ、疾く解き放ってくれよう」
地を、蹴った。踏み込む足裏で玉砂利を掴み、低めた体から一気に加速する。狂った式たちの中へと踏み込み、ぶん、と放たれた黒の槍の上をジャハルは飛ぶ。足場にするように、脚力だけで飛び上がれば暴走する式たちの意識がこちらを向いた。
「そら来い、相手になるぞ」
着地と共に声を上げれば、狂った式たちが滑るようにジャハルへと向かった。一体、二体、三体。数えるのも面倒な程の群れを引き寄せたそこで薄く口を開く。
「映せ」
言の葉は短く。
それは、師の死霊召喚を基盤とし編まれた術。
ジャハルの視線が向かう先、空間が二度、三度と震えーーそれは召喚された。
餓竜。
鋼の鱗と眼球無き瞳を持つ、半人の暴竜。ジャハルの身長の2倍はある暴竜は、同じ黒剣を構えーー振るう。
「ギヤァアアアア……!」
獣の咆哮に似た絶叫が戦場に響き渡った。水袋をぶちまけたような感触だけが手に帰る。滑るように飛び込んできた式に、ジャハルはそのまま下ろした黒剣の切っ先を振り上げた。
「ぁああああ!」
両断されながら、ぶるり、と震えた式が無数の黒を生む。呪力弾だ。眼前、染めるほどの勢いに身を横に飛ばす。回避は、半ば反射に近かった。第六感に従ったまま、飛び退いた先で下げた剣を振るう。するり、滑り込んできた式の眼球に剣が沈んだ。
「ギヤァアアア……!」
両断するように、その力で半人の暴竜と共に剣を振るう。先の声でおびき寄せた敵の殆どは散らせたか。だが一度誘き寄せればーー続きも、来る。
「ァアアアアア」
「気易く寄るな、鬱陶しい」
背に縋るように来た式を足で払う。回し蹴りで飛ばせば、更に向かってきた式へとぶつかった。
「ァアアアア!?」
たぷり、とぶつかり合えば震えるように。戸惑うように動きを止めた式たちの隙を見逃す猟兵ではない。かかる声を一つ見送り、斬り込んでいった猟兵を視界にジャハルは眼前の群れを見据えた。
「役目は終わりだ。弔いにはお誂え向きの場所」
黒剣を手に、踏み込む。その位置は、顕現させた半人の暴竜のもの。だが、動きの基礎は己にあるのだから。敵を見据えるべきは己の瞳。星守の竜人は一撃をーー放った。
「何処へなりと還って休むがいい」
「ギヤァアア……!?」
剣が沈む。ぶつかるそこから暴走する式たちを潰していく。弾け飛ぶ黒さえ散らすように、戦場を浚うように一撃が駆け抜ければ、一拍の後、風が抜けた。
「……しかし、誇るべき角を隠さねばならぬとは。花嫁とは難儀なものだな」
更地一つ、作り上げたジャハルはチリチリ、と痛む腕を、足を無視してそう呟く。
白無垢に角隠し。
由来はどれほどあれど、それひとつで隠しきれるものであったのかどうかは知れぬ侭に。
続く敵の気配に、黒剣を握り直した。
成功
🔵🔵🔴
マリス・ステラ
夜彦(f01521)と共闘
他の猟兵も援護
「主よ、憐みたまえ」
血と古い骨の匂いを感じて『祈り』を捧げると、星辰の片目に光が灯る
傍にいた美丈夫に、
「援護します。あとは存分に」
短く告げると、私は全身から光を放つ
その『存在感』が式を『おびき寄せ』る
光は『オーラ防御』の星の輝きと、星が煌めく『カウンター』
弓で『援護射撃』
響く弦音は『破魔』の力を宿して式の動きを鈍らせる
指先の光が星のように瞬けば加護を与える
重傷者に限定して【不思議な星】
緊急時は複数同時に使用
「あるべき場所に還りなさい」
祈りは愛に満ちて、彼らを骸の海に導きましょう
灰は灰に、塵は塵に
「空に主がいるようです」
視線を雲に向けて宿神の男に囁いた
月舘・夜彦
マリス殿(f03202)と同行
数が多い為、状況に応じて味方と連携
同胞は弓の使い手
彼女の灯る光を合図に前へ
承知致しました、背は預けましょう
私は前にて敵を斬り捨てるのみ
敵の数が多い所へ駆け込み、先制攻撃より抜刀術『陣風』
2回攻撃併せ付近の敵を一掃
敵からの攻撃は残像・見切りより回避し、カウンターでの斬り返し
回避出来ないものは武器で受け流して対応
マリス殿の存在感より引き付けられた敵へはかばうを活用
敵の攻撃を武器で受け止め、カウンター
我が身が動ける内は、隙は無いと思うがいい
……式と言えども、死して向かう先は同じですか
僅かに空を見て、少しずれた笠を直す
次に逝くのは……奴が先、か
「主よ、憐みたまえ」
りん、と涼やかな声が薄暗い戦場に落ちた。
血と古い骨の匂いを感じて、娘が祈りを捧げればふわり、と金の髪が揺れ、露わになった星辰の片目に光が灯った。
「援護します。あとは存分に」
傍にいた美丈夫へとマリス・ステラ(星を宿す者・f03202)は声をかける。藍の瞳と出会えば、静かな声が耳に届いた。
「承知致しました、背は預けましょう。私は前にて敵を斬り捨てるのみ」
その言葉に、声を返す代わりにマリスは息を吸う。指先が、髪が、その全身から光が溢れる。
「ぁああああ?」
「ァアアアア!?」
それは薄闇を引き裂く光。戦場において圧倒的な存在感を見せればーー自ずと、敵の狙いもそちらへと向く。
「ァアアア……!」
滑るように飛び込む一体が、辿り着く前に刃に沈んだ。ずぷり、と水袋でも切ったかのような感覚に月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は目を細めーー刃を、返す。
「ギャァアアア!?」
その身を、引き戻そうとする式を前に深く沈んだ。暴走する式の軸、眼球の奥を見定めるように夜彦は剣を振り上げる。
「全て、斬り捨てるのみ」
無数の斬撃が、暴走する式を切り裂いた。ギャァァア、と獣じみた咆哮が響き、びしゃりと弾けた式の向こう、飛び込む一体に振り抜いた刃を突き出す。
「ぁああああ……!」
「浅いか」
そのまま、ずるり、と身を滑らせようとした式の前、無数の黒が生まれる。ぎゅん、と回った瞳が夜彦を捉えーー放った。
「ーー」
ゴォオオオ、と唸り声と共に打ち出された呪力弾に、身を逸らす。引いた足、躱しきれずに狙ってきた一撃を剣で受ける。散らしきれはしないが、真正面から受けるよりは大分マシだ。
「ぁああああ……!」
だが一撃、届いた瞬間を狙うものがいた。足を止めた夜彦の刺客、滑り込むように式が来る。ーーだが。
「あるべき場所に還りなさい」
響く弦音が、式の動きを鈍らせた。マリスの援護の一撃。信頼していたからこそ夜彦の剣は迷わない。滑るように、背後の一体を切り伏せた。
「ギャァアアア……!」
響くは獣の咆哮か、絶叫か。怨嗟の果てであるとヤドリガミの二人は感じ取る。呪いを受け、とうの昔に淀み沈んだ式は、女とも男とも知れぬ声を零しながら呪力弾を操り、闇の槍を穿つ。
「ァアアアア」
一体、二体。重ねて四体。援護の弓をつま弾けば、光が溢れた。破魔を乗せた清浄な弦音に式たちの動きが鈍る。だが、だからこそ光に誘われるものが現れた。
「ぁあああああああ……!」
滑るように飛び込んだ来た式に、マリスが視線を上げたその時、飛び込む男の姿があった。
「我が身が動ける内は、隙は無いと思うがいい」
一歩、飛ぶようにマリスと式との間に滑り込んだ夜彦が、式の穿つ槍を受け止める。そのまま返す一撃が斬撃を生んだ。
「ギヤァアアア!?」
びしゃりと派手な水音が響く。
だがその絶叫に、崩れ落ちた式にマリスは祈りを捧ぐ。祈りは愛に満ちて、彼らを骸の海に導く。
灰は灰に、塵は塵に。
「空に主がいるようです」
視線を雲に向けて、マリスは夜彦へと囁いた。
「……式と言えども、死して向かう先は同じですか」
僅かに空を見て、少しずれた笠を直す。見据えた先には、乱世の名将。数を減らした式たちに、ほう、と落とされた息には僅かな感嘆が滲む。
「次に逝くのは……奴が先、か」
落とす声に応えてか。さて、と笑う声が薄闇に響き渡る。淀む境内は変わらず、だが湧き上がる敵の数が変わってきている。
あと、少しだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
黒蛇・宵蔭
剛毅な花嫁ですね。
そういう方、嫌いではないですよ。
私のようなものは出会い頭に斬られそうですが。
祭りのために、奮いましょうか。
はぐれた式とは行儀の悪い。調伏されても文句は言えませんよ。
対一であれば鉄錆で応対。
鞭の動きで翻弄できる知能があればいいのですが。
接近されたら符でも貼り付けておきましょう。効きますよ?
他の猟兵と協力するならば、その影を利用させてもらい、死角より仕掛けます。
数が増えるのならば血界裂鎖で対処。
申し訳ありませんが、強化を許すつもりも、逃すつもりもありません。
盗賊を始末してくれたことは感謝しますが、先に血が流れるならば。
申し訳ないですが海へお帰りいただきましょう。
アドリブ歓迎
「ぁあああああ」
薄闇を散らす光が生じていた。火の塵芥は呪力弾を散らした猟兵のものであったか、刃を暴走する式へと沈め、びしゃりと散った黒の向こうへと飛び込む。
村に伝わる花嫁御寮も、そうであったのだろうか。
絢爛豪華な篭に身を潜め、妖の首元へと迫った羅刹の花嫁。
ーー角隠しなどで、羅刹の女子の性を隠せるものか。
身の丈ほどの刃で妖を両断し、白無垢を血に染めて羅刹の女は笑ったという。
「剛毅な花嫁ですね」
村にて聞いた話を思い出し、黒衣を揺らす男は笑みを浮かべていた。物腰穏やかに、白皙ばかりが薄闇にぼう、と浮き上がる。
「そういう方、嫌いではないですよ」
独り言めいた言の葉は笑みを滲ませ、ぴしゃり、ぴしゃりと迫る式の瞳を見ながら黒蛇・宵蔭(f02394)はゆるり、と笑った。
「私のようなものは出会い頭に斬られそうですが」
「ぁあああああ……!」
ギュン、と赤黒い瞳たちが、一斉にこちらを向いた。暴走する式は、既に生者を許さぬか。黒く濡れた玉砂利がーー蠢く。式の零した「もの」か。一度、二度。震えたのを見据えて宵蔭は、とん、と地面を蹴った。
「ーーさて」
一歩、軽く。足を進めた先で体を逸らす。首横を黒の槍が抜けーー下ろしたままの手に、鉄錆を構えた。
「祭りのために、奮いましょうか」
口元、笑みを浮かべ宵蔭は鉄錆を振り上げる。緩く弧を描いた有刺鉄線が、つぷり、と暴走する式に沈む。水袋を引き裂くかのような感触に振り上げた鉄錆をそのまま勢いよくーー下ろす。
「ぁあああああ」
暴走する式が、引き裂けたその場所から『戻ろう』としていたからだ。
「成る程、そう来ましたか」
引き戻す腕を使い、鉄錆で撃ち据えれば中央の眼球が弾けた。びしゃりと、石に水をぶちまけた音が響き、血の匂いが濃くなる。
「ぁあ、ぁあああ……」
ゆらり、ゆらりと揺れる式が湧き上がる。一体、二体と。赤黒い目が増える。
「はぐれた式とは行儀の悪い。調伏されても文句は言えませんよ」
ひとつ、落ちた息は笑みを孕んでいたか。
瞳の奥まで淀み、呪いに沈んだ式は絶叫と共に飛び込んでくる。
「ぁあああああ……!」
滑るような接近は、先に弾けた式の頭上を追加してか。絶叫と共に突き出された槍を鉄錆で弾く。砕け散った先、再構成された無数の黒針が肩口に届いた。
「鞭の動きで翻弄できるほどの知能は無い、ですか」
肩口が赤く染まる。チリ、と痛みより先に熱を体が知覚する。貫いた針がずるりと抜け、滑るように暴走する式の一体が眼前に迫った。
「ァアアアアアア……!」
蛇のように滑り、間合いへと来れば鞭には向かぬ間合い。あちらにそれを理解するだけの知能はあるまい。だが結果的に、この距離に鉄錆は似合わず。ーーだが。
「ギヤァアアア」
至近にて、符が舞った。
指先に挟んだ百鬼符は宵蔭の血にてしたためられた符。肩口を赤く染め、指先にその血が落ちれば振るうは容易い。
「効きますよ?」
「ギャァアアア!?」
暴走する式の眼球が焼けた。今度こそ、完全に爆ぜた式の向こう、無数の瞳が警戒するようにこちらを向く。境内を黒き血で濡らし、湧き上がる式とて永遠ではない。
「申し訳ありませんが、強化を許すつもりも、逃すつもりもありません」
我が血よ、と男は紡ぐ。囁くように、注げるように。ぴしゃり、ぴしゃりと、地を濡らす赤に注げる。
「捉え、縛り、裂け」
それは血で描かれる卦。
瞬間、血で編んだ鎖が戦場を走った。蜘蛛の巣は地を走り、無数の式を捉えその意図に縛り付けた。
「ぎやぁああああ……!?」
薄闇を引き裂き、そして、呪血は結実する。
血の鎖に捉われ、暴走する式が引き裂かれる。水をぶちまけたかのような派手な音が響き、薄闇を黒が染めた。核となる眼球まで砕け散れば、戻れはしないか。跳ね上がった黒が、僅か、雨のように落ちるのを見ながら宵蔭は手から符を消した。
「盗賊を始末してくれたことは感謝しますが、先に血が流れるならば」
残る式を見据え、男は告げた。
「申し訳ないですが海へお帰りいただきましょう」
弾け消えたは無数の式。僅かばかり湧き上がる敵の数は、境内を覆うには足りず。ほう、と見下ろす武将の声が戦場に落ちた。
成功
🔵🔵🔴
御剣・神夜
何とも興味を覚えるお話ですね
共感を感じえません。いえ、私は羅刹ではありませんが
一人の剣士として、その刀、見てみたいものです
魔弾呪式で魔弾を撃たれたら避けるか野太刀で受けるかしながら距離を詰めて自分の距離にして斬り捨てます。間合いに納めたら絶対に逃がしません
分裂呪式で数が増えたら合体されるより前にそれを斬り捨てて強い個体が出来上がるのを防ぎます
憑依呪式で巨大化されたら足を攻撃して頭を下げさせてから頭を攻撃します。起き上がったらまた同じことを倒れるまで繰り返します
「この程度の式で止められるほど私たちは腑抜けではありません。さぁ、名将殿、伝説が真であれ偽りであれ、いざ、尋常に仕合ましょう?」
「ぁあああああ……!」
身の丈程はありそうな野太刀が暴走する式に沈む。水の入った袋を引き裂くような感触が手に返る。この一刀では沈みきれないか。振り下ろした刃を一度ひき、とん、と御剣・神夜(f02570)は間合いを取り直した。
「何とも興味を覚えるお話ですね」
一度、刃を振るう。切っ先に残る黒を払い、神夜は敵を見据えた。暴走する式の数は、大分減ってきている。だが、流石に振り下ろす一刀で倒せはしないか。切り裂いたそこから、引き合うように『戻っていく』式を前に、神夜は息をついた。
嘗ての花嫁御寮は、どのような妖と戦ったのだろうか。身の丈ほどの刃には、神夜も覚えがある。
「共感を感じえません。いえ、私は羅刹ではありませんが、一人の剣士として、その刀、見てみたいものです」
だがその為には、まずは目の前の式からか。暴走する式たちが、滑るように飛び込んでくる。滴り落ちる黒は、先に刃を沈めた相手か。肉を引き裂く感覚は遠く、だが、恐らくは核たるものがあるーーと戦巫女は思う。
(「闇雲に打ったとところで意味もなし。ならばーー……」)
滑り込む式に、神夜もまた身を飛ばす。前に。地を蹴る足が触れるのは最低限に。ぶわり、と跳ね上がった黒が無数の槍へと変じれば体を沈める。剛剣の使い手たる神夜にとって、身の丈ほどある野太刀を構えての移動も苦である筈もなく。
「ここですね」
青の瞳は、迷うことなく間合いを収めた。この距離は神夜にとっての絶対の空間。
「天武古砕流奥義、流走!!」
豪刀・牙龍が神速の抜刀を見せた。ヒュン、と切っ先が空を切り裂き、一拍の後に地面が抉れる。それほどの速さ。それほどの鋭さを持って振るわれた一刀に、暴走する式が両断される。
「ギヤァアアアア!?」
獣の咆哮めいた声をあげ、引き裂かれた式が弾け飛ぶ。核たる瞳を砕かれたのだ。さっきのように引き戻ることはできない。
「あぁあああああ……!」
「ぁあああ!」
男とも女とも知れぬ声が、残る式たちから上がる。ぶわり、と湧き上がった呪力弾に神夜は身を飛ばした。避けきれぬ一撃は野太刀で払う。全て散らし切るには流石に足りずーーだが、刃で払えば、そのまま踏み込み、一撃へと繋げる。攻撃とさえなる防御。
「この程度の式で止められるほど私たちは腑抜けではありません」
引き裂いた式が破裂し、戦場の端へと蹴り飛ばされた式を鞭が打ち据える。加速する戦場に、弾け飛んだ黒さえ消し飛び、最後の一体の懐へと飛び込んだ神夜の刃が沈む。
「ギャァアアア!?」
最後の咆哮が高く響いた。絶叫は獣に似て、境内に淀みを落とす。だが玉砂利を濡らす黒が再び震える様子はない。
(「これで最後」)
だからこそ、見下ろしていた武将へと神夜は声を投げた。
「さぁ、名将殿、伝説が真であれ偽りであれ、いざ、尋常に仕合ましょう?」
「……成る程」
腕を組み、こちらを見下ろすばかりであった乱世の名将は笑う。くつくつと、喉の奥震わせるように。
「あれも暴走の果てに大分喰らった者たちであったが、全て切り伏せたか」
面頬の奥、隠された顔は口の端をあげて笑っているのか。
「我が刀で斬るに値する者がいるようだ」
随分と、と告げる。笑う声が薄闇に響き渡った。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『乱世の名将』
|
POW : 八重垣
全身を【超カウンターモード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 八岐連撃
【一刀目】が命中した対象に対し、高威力高命中の【七連撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 永劫乱世
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【復活させ味方】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
イラスト:タヌギモ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠犬憑・転助」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●鵺の微笑
ひた、ひたと闇が迫る。真昼の空を覆い隠す薄雲は、暴走する式の消滅によってーー揺らぐ。冷えた空気は変わらず、だが青白い煙が立ち砂利を汚していた黒が溶けてゆく。そう、溶けてゆくのだ。どろり、と氷が解ける様に。だが血ほどの重さを以って。
「起き上がる素ぶりも無いか。成る程、打ち合いの邪魔になるのであればと思うておったが、要らぬ世話であったか」
寺の屋根より見下ろしていた乱世の名将が境内に目をやった。
起き上がる、というのはあの式たちのことだろう。
切り払い、焼き、打ち払おうとも染み出す様に出現していた式たちの姿はもう無い。目の良いものがいれが分かるだろう。この『地面』にそれはもう起きぬことが。
呪いが晴れたか、呪詛が千切れたか。
根の奥まで祓うには、それと縁が深いものが必要となるのであろうがーー今、この場において暴走する式たちは完全に消滅した。
「流石、と言わせてもらおうか」
面頬の奥に笑みを作ってか、乱世の名将は笑う。
腕を組んだまま、見下ろしていた武将がとん、と屋根を蹴った。
「ーー!」
着地は、轟音を響かせた。玉砂利が浮き上がり、派手な登場だと息をついた猟兵に知れたこと、と乱世の名将は笑う。
「相応の礼儀よ」
低く、響く声はどこか楽しげに。
だが滲む殺意には代わりなく。
「うぬらを切り伏せ、村のものを切り捨てた先で花嫁御寮の大太刀とやらを追ってみるのも良い」
嘗て村を守ったというのであれば、妖を両断したというのであれば。
神域にて見下ろす羽目となればーーさて、どうなるか。
「祟りでも帯びれば、余興にもなろう」
笑い、乱世の名将は腰の刀に手をかける。薄雲の間から夕暮れの赤が差し込んだ。真昼には不釣り合いな光。夕暮れの赤よりはひどく、血の色に近い色彩に乱世の名将は告げた。
「我が六刀、全て振るうに値するか。見せてもらおう」
両角・式夜
待ちかねたぞ、乱世を知る者よ!
その八刀、如何にして競り合うか楽しみであるな!
相手は名の通り歴戦の猛者
力押しだけでは到底敵わぬ
であれば、こちらの持てる【第六感】と【戦闘知識】を総動員するしかないな!
【八岐連撃】
気を付ける…では足りないな
腕の一本位は覚悟の上で致命傷は避けよう
そこから一太刀捩じ込めるなら重畳
【八重垣】
奴の態勢、呼吸、溜めの長さに注視
待ちの姿勢ならば、その誘いに乗る訳には行かぬな
【永劫乱世】
むしろ好都合だ!
傀儡ごと切り伏せるチャンスではないか!
この刃が届くにしろ届かないにしろ、この一瞬の激情のなんと心地よき事か……
あぁ、歯痒いのは己一人では打ち砕けぬ事であるな
アドリブ、連携歓迎です!
ネフラ・ノーヴァ
真の姿は血赤に輝く瞳。 さて、名将ならば名乗る名もありそうだな。一礼をして剣を交える。奴の刀は8本、こちらは1本だが高速で、折れても再生する。山岐連撃がくるだろうが多少の傷は返り血を浴びればどうとでもなる、踏み込んで打ち合おう。 可能なら刺剣を深々と突き刺して、とどめを刺したいものだな。さぞ見事な血花が散るだろう、フフッ。 また、猟兵で返り血を浴びてる者がいれば、貴公もよく血に濡れているななどと声をかけるかもしれない。
「待ちかねたぞ、乱世を知る者よ! その八刀、如何にして競り合うか楽しみであるな!」
知らず、声は弾んでいた。浮かぶ笑みを隠す気もないままに両角・式夜は告げる。抜き払ったままの都祁愚姉香が鈍い光を放つ。
「ほう、戦場にて競り合いに喜を見出すか。女よ」
乱世の名将の手が、腰の刀にかかる。来る、と思った瞬間、風が来た。それが接近によるものだと気がつく前に体がーー動いた。
ギン、と重い音が戦場に響き渡った。居合からの一撃。振り上げるそれをほぼ、反射で受ける。
「一刀、防ぐか」
「は、こちらとて」
楽しみと、そう思った者だ、と式夜は笑う。
だが正直、腕に痺れが走っている。動けない、という訳ではない。相手が式夜の想定通りの歴戦の猛者であるというだけのこと。
(「力押しだけでは到底敵わぬ」)
事実今の一刀、受けはしたが返せてはいない。だが、受けられぬよりは遥かにマシか、とも思う。式夜の身にある戦場の知識が、剣豪としての勘が考えるより先に体を動かした。相手の刃、弾きあげるには足りない。そも、まだ一刀だ。ならばせめてーー。
「一撃」
手を、下ろす。退くことで刃の上に乱世の名将の刀を滑らせる。ギィィイイ、と響く音。ふ、と面頬の奥で将が笑う。
「力を利用したか。ならば」
「ーー」
刀が正面に構えられた。カウンターか、と式夜は思う。あれは動かないだろう。だがーー動かぬからと言って、容易い訳ではない。
(「隙がない。気をつける……では足りないな」)
ならば、と式夜は踏み込んだ。ふ、と面頬の奥で将が笑う。力を込め、振り上げた刃は鋒を起点に弧を描きーー鎧へと届く。ぎぃいい、と引っ掻くような音を響かせ、だが、次の瞬間衝撃が来た。
「笑止」
「ーーっく」
斬撃だと、そう認識したのは腕の片方が飛んだからだ。両の腕で構えていた刃。切り落とされた己の腕が飛び、体が傾ぐ。血がし吹く。
「だが」
だん、と式夜は地を踏む。己を此の戦場へと縫い付けるように。片腕を落とすように重さを乗せてくる都祁愚姉香を強くーー握る。
「咬み砕く」
「なに……?」
告げる、声と共に雷光が落ちた。白光するほど強い雷を纏った刀を振り下ろした。
「はぁああ……!」
吠声と共に、乱世の名将の刀へと一刀を叩きつける。ガウン、と手に返る衝撃。熱と痛みの中、切り裂いた感覚が片腕に返る。
(「この一瞬の激情のなんと心地よき事か……」)
あぁ、と式夜は思う。熱と痛み、歪む視界をそれでも引き寄せ、破砕した玉砂利が落ちる様を見ながら笑う。
「歯痒いのは己一人では打ち砕けぬ事であるな」
ゴォオオ、と風が鳴いた。
深く、傷の入った鎧の奥から血が滲む。
「成る程、先の言葉改める必要がありそうだな」 女武者よ、と乱世の名将は告げる。
「名を聞こう」
「両角式夜だ。なに、まだ一太刀だ」
は、と笑う式夜に乱世の名将は面頬の奥、低く笑う。
「して、そちらは?」
「……」
将が目を向けた先、真昼の空に呼び込まれた赤き光の中を羊脂玉種を思わせる髪が揺れていた。瞳が、赤く染まる。ぼう、と光るように。それこそが、ネフラ・ノーヴァの真の姿。血赤に輝く瞳。一礼をした彼女に乱世の名将は笑った。
「ふ、うぬは礼を知るものであったか」
軽く、頭を下げる。名を名乗らぬのは、最早自分が乱世の名将とされるだけのものであるからか。
「その腕、見せてもらおう」
「ーーふ」
笑う声と、踏み込みは同時であった。速度であれば真の姿へと変じたネフラであればーー同時か。振り下ろされる一刀を受け止めれば、二刀が来る。斬撃が腕を切り裂いた。衝撃に、僅かに体を浮かす。単純な体格差だ。高速の斬撃を得手とするネフラにとってみれば常と変わらぬ感覚だがそこに連撃がーー来た。
「八岐連撃」
ザン、と衝撃が一つ。刃が引き抜かれる頃には、背にある一刀が抜かれていた。ふ、は、と息を吐く。八連撃に体が浮き、軋む。だが、その身を前に倒した。つま先で地面を掴みーー踏み込む。
「血の花を咲かせるがいい……!」
穿つ、一撃を最初に。鎧の奥に届かせる。連続の攻撃は止まることがない。名将と言えど、超高速連撃を浴び続ければ、その身がーー揺らぐ。
「は……っなるほど、うぬの姿はそれに見合ってか」
血が、し吹く。返り血がネフラの体にかかり、血棘の刺剣に染みる。ざ、と玉砂利の上、足を軽く引くようにして乱世の名将が構えを取り直す。
「見事な血花が散るだろう、フフッ」
この一撃で、倒しきれないのが少しばかり勿体無くはあるが、これしきのことで終わるのも勿体ない話だ。
「貴公もよく血に濡れているな」
「あぁ」
傍の式夜に声をかける。落ちた腕を気にすることなく、刀を構える式夜に笑みに応えるように剛と瞬の刃は前にーー出た。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
紬雁・紅葉
御定めはお済ですか?
ではこちらも真価を以て…!
羅刹紋を顕わに深く笑み
引き続き十握刃を顕現
正面からゆるゆると接敵
間合いに入った時点で破魔+雷属性衝撃波UCを以て薙ぎ払う
UCの強化効果が発動したら範囲攻撃で味方全体に効果適用
敵の攻撃は躱せるかを見切り
躱せるなら残像などで躱し
そうでなければ武器受けオーラ防御などで受ける
いずれもカウンター属性衝撃波を狙う
可能なら武器落としを狙うが機あらば幸運という程度
敵が弱ったら力を溜め渾身の一撃にてとどめ
窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃
戦狂いの八剣に
月に叢雲花に風
百花繚乱咲き誇る
九曜八剱御覧あれ
去り罷りませい!
※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※
「御定めはお済ですか? ではこちらも真価を以て……!」
羅刹紋を顕わに深く笑み、紬雁・紅葉は告げた。
「参ります」
ゆるゆると、正面から間合いを詰める。下げた刃。その動きに警戒するように乱世の名将は刃を構えた。じり、じりと互いに間合いを詰めーー先に、動きを取ったのは乱世の名将だ。だん、と瞬発の加速から、踏み込む足が地面を揺らした。穿つ刃の一撃が紅葉の肩を切る。身は低めた。血はし吹くが傷は浅い。何より此処はーー紅葉の間合いだ。
「戦狂いの八剣に
月に叢雲花に風
百花繚乱咲き誇る
九曜八剱御覧あれ」
「なに……!?」
その声に、空間が歪んだ。戦巫女の声音に、リン、と涼やかな音色が生まれ、乱世の名将が地を蹴る。間合いをとるつもりか。ーーだが。
「八雲立つ、出雲……!」
そこもまだ、紅葉の神域だ。
叢雲が象りし九本の剣が、乱世の名将を穿つ。斬撃に、払う刃が一撃を逸らすがーーだが、剣は九本。全てを払うには足りず、面頬の奥、血を吐く音がした。
「さすがは羅刹の女か。ならば」
こちらも、と乱世の名将が踏み込む。震脚から深い沈み込み。抜刀に使われるは、背の一振りか。
「斬る」
「ーーいいえ」
斬撃に、刃を縦に構えた。ガウン、と重い一撃に衝撃が手に返る。ギチ、ギチと刀身を滑り、火花が散る。ガ、と鈍い音と共に滑れば乱世の名将の刃が僅かに浮いた。
「そこです」
「否」
まだ一振り、と開いた乱世の名将が刀を持つ。二振り。双剣のように構えきり斬撃がーー来た。
「……っく、なるほど、そのような構えですか」
衝撃は肩から下に。血を染める衣に、だが、紅葉は笑う声を聞く。
「二振り、抜くこととなったか」
「えぇ。見させていただきました」
傷が受けた。だが、動けない程ではない。ならばこれは、敵から一つの型を引き出す為に得たものだ。は、と息を吐く。痛みを沈め、意識を集中させる。
「参ります」
目の前の、敵へと。
成功
🔵🔵🔴
黒蛇・宵蔭
私の予想では……祟りといわず、見るなり、花嫁御寮の念に叩き斬られるかと。
相手との距離に注意し立ち回り。
他の猟兵やその場の影などを利用して、死角から仕掛る。
鉄錆による攻撃で鎧を砕き傷を抉り、じわじわと追い詰める。
捕らえがたい相手の追跡は心躍るでしょう?
自分より強い相手を追い詰めていくのが、愉しいのです。
こちらの傷は耐え。むしろ血が流れるならば好都合。
その血で描いた符にて、呪刻大蛇を呼び、報復を。
元より私は武辺とは無縁。
この血で呪いを編むもの。
今更式が復活したところで、何度でも鉄錆にて断つだけです。
一刀両断されそうなもの同士の縁、大太刀は私が代わりに見てきます。
そちらはどうぞ、海へお還りください。
斬崎・霞架
※共闘、アドリブ歓迎
目には目を、歯には歯を。――剣術には剣術を。
それでこそ、斃し甲斐もあると言うものです。
(宵刀『紡』を抜く)
傷を負うのは覚悟の上。致命傷にならないギリギリを【見切り】ましょう。
相手も達人であるならば【殺気】をぶつける事で敢えて反応させる、
と言うのも手ですね。
反応されるのがわかっていれば、【早業】で【カウンター】も入れられるでしょう。
乱舞【渦舞太刀】を手数重視で放ちます。
絶え間なく、隙間なく、一撃一撃、しっかりと殺意を乗せて。
――その六刀、全て抜かせて魅せましょう。
…ああ。ですが精々、お気を付けを。
僕にばかりかまけて居ては、他の方に嫉妬されてしまうかも知れませんよ?
ふふふ…。
血と、剣戟が戦場を染め上げていた。真昼の空に似合わぬ夜の空気は散り、代わりに夕日よりも血の色に似た色彩が帯のように雲間から差し込む。淀む空気が無いのは、式の影響を抜けたからか。だが、ぴしゃり、ぴしゃりと落ちる血が、地面へと染み込む音を斬崎・霞架は聞いていた。
「成る程、こういう形のものですか」
反応する様子はありませんが、と乱世の名将を見やる。せり上がった血を吐き出した将は二刀を抜いていた。左右に二刀ずつ。合わせて四刀。器用に構えるのは元来八刀を扱うからか。
「その上、大太刀にも興味がある、でしたか」
「私の予想では……祟りといわず、見るなり、花嫁御寮の念に叩き斬られるかと」
霞架の言葉に、黒蛇・宵蔭は息をついた。軽く、肩を竦めるようにして告げた男に、ほう、と乱世の名将が顎をあげる。
「叩き斬られる、か。なれば、花嫁御寮の念と斬り合うも一興」
その上で、斬り返せば良い、と笑った次の瞬間、踏み込みが来た。乱世の名将の瞬発加速だ。風が来る。相対したのは霞架だ。
「目には目を、歯には歯を。――剣術には剣術を。それでこそ、斃し甲斐もあると言うものです」
抜刀は即座に。反応は瞬間であるべきだ。
故に霞架は抜く。飛び込み、薙ぐ一撃に刃を向ける。黒の小太刀はそれ故に間合いは短くーーだが、故に、懐へと飛び込める。防御の、その瞬間から。
「……っと」
右からの斬撃、防ぐ代わりに左からの刃が届いた。腹を抉る一撃に、僅かに傾ぐ。
「その刀ごと、貰いうけよう」
追撃に、踏み込む体を乱世の名将が沈めた。振り下ろした腕を引き上げ、返す刃が霞架に届くーー筈だった。
「なに……!?」
先に衝撃を受けたのは乱世の名将の方であった。ひゅん、と空を切り裂く音。打撃にも似た斬撃に、肩口から血がし吹く。引っ掻くようなそれは、霞架の影を利用し、死角から仕掛けた宵蔭の一撃だった。
「うぬか」
「捕らえがたい相手の追跡は心躍るでしょう? 自分より強い相手を追い詰めていくのが、愉しいのです」
さらり、と告げ、僅かに浮かべた微笑は面頬の奥に笑みを誘ったか。強者か、と告げた名将が傾ぐ体を足で支える。弧を描く鉄錆を視界に捉えたか。真紅に色を変えた鞭へと手が、伸びる。
「ふん……!」
「捕まえますか。ですが」
腕を、先に引く。緩く弧を描かせていた鉄錆を一気に引き寄せる。足元、払うように鉄錆を振るった。ぎぃいい、と引っ掻くような音がする。鋼を削る鉄錆の音色と共に、将の足が僅かに赤く染まる。だが、そうーー僅かだ。
「浅いようですね」
「その通りよ」
故に、と乱世の名将は吠えた。開けていた距離を食い殺すように飛ぶ。ゴウ、と風が先に来る。た、と身を引こうとするがーーだが。
「おや」
鉄錆が踏まれていた、と気がついた時には、刃が届いていた。避けるには流石に足らず、衝撃がーー来た。
「ーー」
熱が来る。肩口を貫いた刃が、そのまま勢いに任せて上にーー抜ける。みちり、と肉の外れる音がした。派手に流れた血に、僅かに体が傾ぐ。バランスを取り損ねたように一つ揺らいで見せれば、乱世の名将が笑った。
「あと少し、落とすつもりではあったが。ぬるかったか……!」
言って、振り返りざまの一撃が背後に入った。霞架だ。斬りかかる斬撃は、だが、その身で受けながらも浅く引く。沈む刃を自ら引き抜くように。
「挟撃のつもりであれば、うぬはその殺気、隠すべきだろう」
「ーーあぁ、きっとそうですね」
「?」
それは、何を示す言葉は。分からぬとでも言うように、名将の意識が揺れる。
「わざとだ、と言えば驚かれますか?」
「な……!?」
笑い、霞架は刃を沈める。鎧の奥、名将の胸へと。払うように、ぎん、と刃が抜かれた。た、と全力で後ろにひく。取った間合いはただひとつーー踏み込む為、だ。
「連鎖、旋風、刃よ渦巻け――」
疾走する。足裏で石を掴み、飛ぶように前に出た霞架の刃が名将に届く。一撃、二撃。払いあげた刃が来れば、その下を滑り込み切り上げる。絶え間なく、隙間なく、一撃一撃、しっかりと殺意を乗せて。
「――その八刀、全て抜かせて魅せましょう」
「は、うぬも吠えたな」
だが、と五刀が抜かれる。霞架の斬撃を払うように叩きつけられる。斬る、というより最早打撃だ。だが、その一撃にを致命傷にならぬように躱しながら霞架は笑った。
「……ああ。ですが精々、お気を付けを。僕にばかりかまけて居ては、他の方に嫉妬されてしまうかも知れませんよ?」
「なんだと……?」
まさか、と落ちた声と、大地の揺れは同時であった。は、と乱世の名将が振り返った先。落ちたけの腕を抱えただけ、と。そう思われていた男は笑う。
「元より私は武辺とは無縁。この血で呪いを編むもの」
宵蔭の流す血で描いた符が舞う。陣が、大地に描かれる。狂い果てた式の沈んだ地より湧き上がる。
「踊れ、呪いの顕現。穢れし大蛇」
「な、これは……!?」
乱世の名将の足元より、それは出てきた。喰らいついた、という言葉が正しいのであろう。突如として現れた顎が、名将に食らいついたのだ。
それこそが呪刻大蛇。
食らいつき、砕く大蛇の一撃に、骨が砕ける音がした。今度こそ、名将の足が赤く染まる。ぐら、と揺れた身に、舌を打つ音がした。
「不覚」
「一刀両断されそうなもの同士の縁、大太刀は私が代わりに見てきます」
落ちた血は変わらず。流す赤も変わらぬというのに、浮かべる微笑は変わらずに宵蔭は告げた。
「そちらはどうぞ、海へお還りください」
「は! うぬらに譲ると思うか」
業腹ではあるが、と名将が大地を強く踏む。震脚に、砂利が浮き上がりーーおぉお、と覚えのある声がした。
「式の復活ですか」
霞架が刀を持ち直す。数は、5体ほど。今のところ数は少なそうですが、というのは死霊術士としての目があるからか。
「一度に出てくるのはこの程度のようですね」
「えぇ。さっきいたもの程の力は有していないようです」
宵蔭はそう言って、残る手で鉄錆を持ち直す。
「今更式が復活したところで、何度でも鉄錆にて断つだけです」
「ではそちらは一度お任せして。僕は……」
言って霞架は宵刀『紡』を構え直す。
「あちらとお相手しましょう」
乱世の名将は四刀を構え、待っていた。
その動きは、最初から然程変化はない。だがーー血は流れている。一撃一撃は着実に届いていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
月舘・夜彦
マリス殿(f03202)と同行
状況に応じて味方と連携
彼の相手とは過去に数度刀を交えた事があります
立ち回りは異なるかもしれませんが、扱う技は同じ
活かす事は出来ましょう
操られた死者がマリス殿へ任せ、目の前の武将へ
先程の戦いにて彼女の力は十分な程に頼りになります
だからこそ、私も全力で向かいましょう
残像・見切りより攻撃を躱し、2回攻撃とカウンターにて反撃
躱せないものは武器受けでその場で凌ぐ
複数武器を持っている為、手元を狙って武器落とし
付与された力を併せ、敵の連撃のタイミングから抜刀術『八重辻』
これより我が刃が放つは魔を祓う一閃……御覚悟を
マリス・ステラ
夜彦(f01521)と共闘
【WIZ】他の猟兵とも協力します
「主よ、憐みたまえ」
式の時にそうしたように『祈り』を捧げる
それは斬られた盗賊達と"彼"のために
星辰の片目に光が灯り、全身から光を放つと『存在感』によって、敵を『おびき寄せ』る
薄闇を祓う光は『オーラ防御』の星の輝きと、星が煌めく『カウンター』
「こちらは任せてください」
永劫乱世で死者を傀儡として操ろうとも『破魔』の力宿る弓で撃ち抜きます
弦音も『破魔』の働きをして敵の動きを鈍らせる
弓で『援護射撃』も怠りません
重傷者に限定して【不思議な星】
緊急時は複数同時に使用
「あなたならできるはず」
彼の刀に星の加護を与えて『破魔』の力を宿す
魔を祓いましょう
「ぉおおおお」
「るぉおおおおおお」
赤い、光の差す戦場に式たちが湧き上がっていた。先のもの達より随分と淀みが少なくーーだが、湧き上がった彼らは一様に生者を呪う。
「主よ、憐みたまえ」
その無数の目に。悲嘆にマリス・ステラは祈りを捧ぐ。それは斬られた盗賊達と"彼"のために。祈りに呼応するように、星辰の片目に光が灯る。淡い色彩は、やがてマリスの全身を覆った。ふわり、と揺れる髪。ほう、と落ちた吐息ひとつ、その光に誘われるように式達がやってくるのをマリスは見た。
「こちらは任せてください」
「彼の相手とは過去に数度刀を交えた事があります。立ち回りは異なるかもしれませんが、扱う技は同じ」
活かす事は出来ましょう、と月舘・夜彦は告げ、前にーー出た。式の横を抜ける。追うように向いた瞳に、だがマリスが指先を向ける。光は破魔を宿したか。落ちる一撃に式が目を焼かれれば、行く夜彦を止めることなどできない。
(「先程の戦いにて彼女の力は十分な程に頼りになります」)
だからこそ、と夜彦は言った。その身にひとつ、覚悟を載せるように。
「私も全力で向かいましょう」
「ならばうぬの力、見せてもらおうか」
だん、と地を蹴る。飛ぶように前に来るのは先に間合いを殺す為か。乱世の名将が、身を沈めた。抜刀術か、と夜彦は思う。一刀を、躱すのに足を引く。過去に数度刀を交えた相手だ。その刃の距離を夜彦は知っている。立ち回りは多少違ったとしても扱う刃までは変わらない。
「そこです」
ざ、と引いた足。返す一撃に、す、と乱世の名将が身を引いた。斬撃はこの距離であればーー届く。だが、ギン、と残る二刀が抜かれるのを夜彦は見た。
「八重垣」
「……! カウンターか」
然り、と告げる声と同時に、斬撃が体に届いた。なぎ払う一撃が胸元を割き、血がし吹く。は、と吐き出した血で視界が歪む。膝を折る程のことではない。だが一瞬、動きが止まりそうになる。けれどーー。
「私のためではなく、あなたのためではなく、私たちのために」
光が、見えた。
マリスによる回復だ。熱を呼ぶ痛みが消え去り、流れた血だけが残る。は、と息を吐き、身を横に飛ばす。半ば勘だ。だが、どうやら当たっていたらしい。斬撃がさっきまで夜彦いた場所を抉っていた。
「随分と怪しい光かと思っていたが、成る程、そのような権能を有していたか」
「……」
女、と告げられた声にマリスは弓を構える。破魔を帯びた一撃が武将の肩を射抜く。湧き上がった式達は全て、マリスの矢に射抜かれ消滅していた。
「あなたならできるはず」
マリスは言の葉を添える。淡い光が、夜彦の刀に乗る。
「魔を祓いましょう」
「えぇ」
「ふ。祓うというか。なれば……!」
二度目の踏み込みも乱世の名将から。斬撃はなぎ払う刃から。その軌道を夜彦は夜禱で受けた。ギン、と派手な音が響く。火花散るは夜天に移す銀の月。手に返る衝撃に、だが、引く気はない。
「これより我が刃が放つは魔を祓う一閃……御覚悟を」
「なに……!?」
刀を、弾いた。刀を構える基部。手首の方へと斬り返す。例え、相手の一撃が重くとも、素早くとも、刀の力だけではなく、叩きつける力だけでもない。その全てを使いーー斬り、返した。
「っく、ぁあ……ッ」
斬撃が、深く乱世の名将に沈んだ。肩口から血がし吹き、ぐら、と身を揺らす。傷は深いか。一度、傾いだ体が舌打ちと共に正される。
「成る程、うぬら相手に出し惜しみはもはや無用か」
我が八刀、と乱世の名将は告げる。
「全て振るい、斬り伏せるとしよう」
この戯れを終わらせる為に。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
御剣・神夜
乱世の名将、相手にとって不足なしです
物足りないかもしれませんが、お相手を務めましょう
八重垣でカウンターモードになったら下手にこちらから仕掛けず、相手がカウンターを狙っている間に体勢を立て直す
八岐連撃は一撃目が当たらなければ連撃は来ないので、一撃目をよけるようにする。無理なら野太刀で受けて、太刀の重さと重心を下げて受けきる。一撃目が投げられてくるかもしれないので、どんな手で来ても対応できるよう注意しておく
永劫乱世は気を失わないよう、意識が飛びそうになったら歯を食いしばて耐える
「伝説をなぞる訳ではありませんが、貴方はオブリビオン、我々猟兵がここで倒します!」
剣戟と打撃の音が響く。快音は八刀を抜いた故だろう。湧き上がった式は全て撃ち据えられ、射抜かれ消えた。呪いを帯びた空気が、次弾を打ち込むより早く御剣・神夜はーー出る。
「乱世の名将、相手にとって不足なしです。物足りないかもしれませんが、お相手を務めましょう」
「ほう。うぬも戦巫女か」
面頬の奥、乱世の名将が笑った。ならば、と落ちる声は血の匂いを交じらせるというのに、どこまでも楽しげに響く。
「ならば、全力で向かうべきであろうな」
「ーー!」
消えた、と瞬間的に頭が思う。だが、眼前から消えたのであればこれは乱世の名将による加速だ。ギン、と鋼の音が耳に届く。野太刀を振り上げたのは半ば反射だ。
「っく……」
「ほう、防いだか」
左、死角から一刀が来た。衝撃が手の中に返る。二刀め、太刀の重さと重心を下げて受けきりーーざ、と神夜は足を引いた。逸らす身が三刀めとの距離を取る。切っ先は、神夜の肩口に沈みーーだが、浅い、と剛剣の使い手は思う。
(「見切れなかった。けれど、対応はできている」)
これなら、と息を吸い、乱世の名将が背の一刀を抜くのを見ながら神夜は野太刀を引きーーあげる。
「天武古砕流奥義、流走!!」
一撃、受け止めていた刃を引けば、斬撃が届く。ひやり、と刃の入る感覚に、構わず神夜は刀を振えば地面がーー抉れた。
「ーーっく」
地面が抉れる程の速さで振るわれた刀が、将を水平に切っていた。斬撃に鎧が軋み、ばたばたと血が溢れる。僅かに、身を揺らしたのは神夜の斬撃の重さ故。吐き出した血と共に、乱世の名将は笑った。
「うぬもまた、戦さ場にて滾るものか? 大太刀を前に、随分と骨のあるものと出会う!」
血を流しながら、その事実を純粋に喜ぶように乱世の名将は構えを取り直す。ず、と身を低めた姿に神夜は小さく息を飲んだ。あれは、カウンターだ。まるで隙が無い。
「……」
下手にこちらから仕掛けずに、た、と距離を取り、息を整える。出血はあるが、意識を失う程のものではない。
「伝説をなぞる訳ではありませんが、貴方はオブリビオン、我々猟兵がここで倒します!」
「やれるものであれば、やってみると良い」
神夜の言葉に、乱世の名将は笑い告げた。
うぬらは、我に八刀を抜かせたのだからな、と。
成功
🔵🔵🔴
花邨・八千代
お、真打登場ってやつゥ?
いいねいいねェ、楽しくなってきた。
目玉相手じゃ物足りなくなってきたとこだ。
強い奴は大好きだぜ、中々死なないならもっと好きだぜ!
◆戦闘
南天は大太刀のまま、【羅刹旋風】だ。
景気よく振り回して全力の「怪力」でぶちこむぜ!
「恫喝」で気合いれ、「挑発」して気を引くぞ。
「第六感」で避けつつ「2回攻撃」で「傷口をえぐる」ぜ。
「だまし討ち」は見られてるし効かねーか?
こっちのダメージが溜ってきたら「捨て身の一撃」だ。
最後の最期まで楽しもうぜェ、名将さんよォ。
白無垢姿じゃなくて申し訳ねェけどそこは勘弁してくれ。
さぁ殺したり殺されたりしようぜ、きちんと首を狙ってくれよ!
ジャハル・アルムリフ
強欲なことだ
気の多い主では
背で従う刀どもに愛想を尽かされるぞ
防いで返される刃は厄介だ
ひとつ賭けてみるか
【怨鎖】を用い、直線の攻撃と印象づけておく
繋がれたそれで平衡を崩させ攻撃に繋げる
または刀に絡め、あるいは弾き飛ばすことを狙う
『八重垣』状態となったら
すぐ跳び退きながら、伸ばしておいた鎖を武将の体へ絡め
解除される瞬間に合わせて怪力にて引き
思い通りにカウンターが行えぬよう動きを妨害
損じたなら激痛耐性はじめ、耐えうる術を用いて機を待つ
ここで貴様を斬れたなら
この剣も伝承に残るのだろうかな
俺は角を隠す気などないが
この地に、後に残せぬようと
生命力吸収で武将のそれを喰らってゆく
祟りたければ好きにしろ
両の手に二振りずつ。振り下ろした刃を一瞬浮かせ、背の刀を抜く。斬撃は波のように落ち、猟兵たちを引き裂く。し吹く血は、乱世の名将の鎧を濡らしていた。ーーだが。
「っく、は、はは」
面頬が濡れる。吐き出した血で濡れる。
それでも外すことはないままに、引き裂かれた鎧の奥から肉を晒し地面を踏みしめる。
「うぬら相手、我が八刀の意味もあるか」
「お、真打登場ってやつゥ? いいねいいねェ、楽しくなってきた」
さっきの目玉相手じゃ物足りなくなってきたとこだ、と花邨・八千代は口の端をあげる。
「強い奴は大好きだぜ、中々死なないならもっと好きだぜ!」
「はっ。死なぬさ。うぬらを全て屠り、刀を見るまではな」
将は笑う。ひどく、楽しげに響いたそれは賛辞にさえ似ていた。は、と笑い八千代は式の泥に塗れていた大太刀を振るう。景気良く振り回せば、空が震えた。
「いくぜ」
「来ると良い」
踏み込みは、八千代が先であった。力強い飛び込み、身を前に倒すようにして、着地と同時にだん、と力強く地面を踏んだ。
「いくぜ」
気合いをいれ、怪力でぶちこんだ一撃が刀に防がれた。だが、八千代は将の刀の上を己の刀を滑らせる。火花が散る。
「最後の最期まで楽しもうぜェ、名将さんよォ」
白無垢姿じゃなくて申し訳ねェけどそこは勘弁してくれ。
笑い告げて、挑発するようにぐ、と体重をかけた。鍔迫り合いを、深く押し込むように。
「さぁ殺したり殺されたりしようぜ、きちんと首を狙ってくれよ!」
挑発を乗せた言の葉に、将の構えがーー揺らいだ。
「は! さすがは羅刹の女か!」
ひどく楽しげに、笑い落ちた声が構えを緩ませる。ぐ、と押し込めば、乱世の名将の肩が裂けた。だらり、と落ちるように腕が揺れーーだが、溢れる赤の中、将が動いた。
「楽しませてくれる」
「っく、は……ッはは、そりゃ、な」
来る、と思った瞬間、刃は八千代の腹に埋まっていた。八千代の背の刀。突き刺したまま、次の一刀が首を狙う気配に、八千代は身を引いた。ず、と刀が抜ける。かは、と吐き出した血が痛みよりも熱を強烈に伝えてくる。
「言ったろ。殺したり殺されたりしようぜ、って」
「そうであったな」
倒れるにはまだ早い。視界は歪みきっちゃいない。2回目の攻撃は通っていた。だが、だまし討ちが通じるような相手でもないだろう。
(「二度目の攻撃も、次は通るかどうか……か、はは、だが」)
愉しい、と思う。流す血も、流させる血も。玉砂利を濡らし、火花を散らし。ぶつけあった刃が、鈍い音を立てる。ガン、と弾きあげる剣戟に、わずか歪みがあるのは既に多くの猟兵と斬り合っているからだろう。邪魔をする式の姿など何処にも無く、八刀を操る将は笑う。
「多少の慰めになるかと思うていたが、随分とうぬらも楽しませてくれる」
これで、と乱世の名将は刀についた血を払った。
「噂の花嫁御寮の刀、折らず奪ってこの熱のまま試し切りでもしてみるか」
「強欲なことだ」
笑う将が視線を返す。ほう、と落ちた声にジャハル・アルムリフは真っ直ぐに視線を返した。
「気の多い主では、背で従う刀どもに愛想を尽かされるぞ」
「は。なに、試してみるか?」
ゆらり、と乱世の名将が揺れ、身を前に倒した。消えた風に、腕を振り上げる。剣を縦に構えたのは、習いだ。反射的に構え、一撃を受け止める。背の刀が早々に抜かれたのは、ジャハルの先の言葉に煽られてか。振り下ろされる刀が肩口を裂く。派手にし吹いた血を面頬に受け、刀を一度手放し、瞬発の斬撃が来る。
だがーー。
「鎖せ」
そこに、ジャハルは手を向けた。肩口から滴り落ちる血が、刀に絡みつく。
「なに……!?」
そう、絡みついたのだ。
黒く染まりゆく血で編まれた鎖が、将の刀に絡みついていた。斬撃は揺らぐ。軸線から半身を逸らし、なぎ払うジャハルの剣が乱世の名将の胴を切り裂いていた。
「っく、搦め手か。ならば」
ふ、と将が息を吐きーー構えを、取る。
それは剣士の絶対の領域。
絶対の間合い。己が力における神域。
カウンターを得手とする八重垣の発動だった。
隙の伺えぬ状態に、だが、即座にジャハルは飛び退く。間合いを取ったのはたったひとつーー賭けが、あったからだ。
「ふ、逃げるか?」
「さあな」
これは、とジャハルは告げる。伸ばしておいた鎖を武将の体へと絡める。ほう、と笑う将が刀に、手をかけた。
「これしきのことで、うぬは我を封じていられると? もし、そうであればーー……」
ぬるいな、と告げる声と、抜刀は同時だ。ギン、と刃が煌めきーーだが、ぐん、と強い力が乱世の名将にかかる。
「な……!?」
怪力を見せ、力いっぱいに引けば突然のことに将の体が浮く。カウンターの一撃は、砂利を切り、地面を切り上げる。
「うぬは、その手を……!?」
残していたのか、と将は叫ぶ。だが、態勢を完全に立て直すには足らない。ジャハルが力いっぱい、引いたのだから。傾ぐ体が、起き上がるその前に踏み込む。足裏で砂利を捉え、竜の踏み込みは加速する。
「ここで貴様を斬れたなら、この剣も伝承に残るのだろうかな」
間合いを、殺すように。
剣を沈めた。
「っく、ぁあ」
「俺は角を隠す気などないが」
抜き払う剣が、鎧を散らす。黒く染まりゆく血が、将の腕を捉えている。それでも、引き寄せるように刀を構えた。無理にひきおろす気か。浅い斬撃がジャハルの頬に傷を作る。
「八刀の意義を……!」
「あァ、見せてもらいたいねェ」
応えたのは、八千代であった。血濡れの体を気にすることなく、捨て身の一撃から叩き込まれた斬撃が、花嫁御寮に揃いの大太刀が将の腕を落とす。
「っぐ、ぁあ……ッうぬ、ら、は……ッ」
「祟りたければ好きにしろ」
ざん、とジャハルが腕を振り上げた。下段からの切り上げ。守りに構えた刀の間、滑り込ませた剣は喉笛に届きーー裂く。
「ぁ、ぁあああ……ッく、さすが、は我が八刀、抜くに相応しい相手達であった、か」
血がし吹く。地面が濡れる。むせ返る血の匂いの中、は、と乱世の名将は笑った。
「此度の勝負、うぬらの勝ち、よ……」
ぐらり、と身を揺らし、八刀を構えた武将ーー乱世の名将は崩れ落ちた。
●真昼の空
空に、正しい色がゆっくりと戻ってきていた。赤く染まった空が消え、差し込む日差しも真昼の熱を取り戻す。
「……」
この地に、後に残せぬようとジャハルが振るった刃は、将を完全に沈黙させたようだ。この地に、再び何かが起き上がってくるような気配は無い。
無事に終わったのだと、そう、猟兵たちに告げるように真昼の空に虹がーー渡った。
ーー或いは在りし日の花嫁御寮も、この虹を渡ったのだろうか。
妖の首を落とし、白無垢を赤く染めた羅刹の女は、村に終わりを告げにいったのだという。角隠しを払い、羅刹の角を晒しこれで仕舞いだと告げたという。
羅刹の女が何処から来て、どんな理由で花嫁御寮と相成ったか知れぬまま。だが、豪奢な籠がこの村が「贄」に慣れていたことを示していた。その因果を断ち切った羅刹の女が、どのような結論を得たのか。
家庭を持ち、夫を見送り。
最後の白を纏うた花嫁御寮は、何処ぞに去った。
村に残るのは伝承ばかり。あまりに『生きた』姿を残す伝承は、全てを託した羅刹の女への何かの証であったのか。その武に肖っただけのことであったか。
花嫁御寮に大太刀。
白無垢の鶴を模した打掛を血に濡らした花嫁御寮を奉じた祭がーー始まる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『祭りばやしに心の踊る』
|
POW : 神輿を担いだり、体力を要する遊びに参加しましょう
SPD : 技術や速さで競いあったりして楽しみましょう
WIZ : 謎解きや風流ごとに興じましょう
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●花嫁御寮に角隠し
『それ程の強者であれば、最早貴様も現世では生きれまい』
妖の首はせせら嗤ったという。
最早人の世に生きる場もないだろう、と。
鶴を模した打掛を地に濡らし、角隠しを払った羅刹は血の紅を引きながら笑ったという。
『お前の嫁すよりは、随分とマシな終わりであろうよ』
花嫁御寮に大太刀。
白無垢の鶴は紅を引き、妖を両断した花嫁御陵は角隠しを手に戻ったという。
戻る先が何処であったか、刀を奉納した後、羅刹の女が何処に消えたかは分からぬまま。村に残るのは神事がひとつ。禍々しきを払った花嫁御寮の逸話に乗っ取って。その身に白をひとつ纏いて、魔をーー払う。
●仕合
村へと帰り着いた猟兵たちを出迎えたのは、刀鍛冶の男とシノアであった。曰く、村の大年寄たちが出迎えようとしたが、祝いの品だ、花嫁御寮の逸話の通りだ、逸話の先だと賑わい騒いで腰をやったらしい。
「皆さんにも、ぜひ、祭りを楽しんでいってもらいたくて。まぁ、みんなして大騒ぎした結果ですよ。奉納試合を見に行く程度の元気はあるみたいなんで」
よく冷えた果実水の入った徳利を置いて、青年は笑った。柚子はこの地の名産だという。まずは喉を癒してほしい、と盃を置いていった刀鍛冶は、花嫁御寮の刀の披露を楽しみにしているのだという。
「奉納仕合に出る方は、村の広場の方へ行く良いそうよ」
刀が奉納されている神社の前に、広場があるのだとシノアは言った。
「逸話に則って、一対一での奉納仕合となるわ」
連れがいる者は、共に奉納試合に出るのだと広場の者に伝えれば良いだろう。
一人で向かう者には、他の猟兵たちと組むのも、村の腕自慢たちや噂を聞きつけた武者たちが一人二人と姿を見せている。彼らと仕合うのも良いだろう。
「村の人たちの中にも、気になっている人々がいるそうよ」
稽古をつけてもらうような、そんな心でいるのかもしれない。花嫁御寮の逸話が残るこの地にとって、妖退治を行った猟兵たちは憧れの対象なのだろう。
「勿論、披露される刀を見に行くのも良いでしょうし、奉納試合の見学も良いでしょうね」
無事にひとつ、確かに守りきった世界が今ここにあるのだから。
そう言って、シノアは猟兵たちに微笑んだ。
「さぁ、何をしましょうか」
●奉納試合
さぁ、白の布をひとつ身につけて。体の何処でも良いのです。えぇ、ですがそれを「先に取られた方が」負けとなります。
花嫁御寮は角隠しを自ら外しましたがーーなに、打掛は纏っておいでだったでしょう。
だからこそ、これは白を纏い、白を払う仕合。
魔を払うため、清めのため。
花嫁御寮の逸話に則っり、真白がーー踊る。
-----★第三章冒頭追加致しました(2019/04/18)
ご参加いただきありがとうございます。
秋月諒です。
奉納試合参加の場合、相手の指名をお願いいたします。
特に記載がない場合は、同様の猟兵さん、もしくは村人の中から腕自慢や稽古をつけて欲しい系なメンバーがお相手となります。
最初から村人や旅の方とかも指名可能です。
それでは、魔を払う祭りにて。
皆様をお待ちしております。
-----
御剣・神夜
SPD行動
奉納試合に参加してみます
何処でもいいと言う事なので頭に白布、角隠しをして
取り合えず、持てる技術を総動員して頭の布を取られないよう、落とさないよう動きます
取り合えず、取られないよう、落とさないよう動けば負けることはないかもしれませんが、それでは詰らないので勝負に出るところでは勝負に出ます
それで負けたら自分の腕がそこまでだったと言う事。異論も何もありません
再びまみえる事があったら、負けないですよ。と言っておきます
「世の中は広いですねぇ。私ももっと強くならないと。でないと大きな顔できませんからね」
●一の舞 御剣神夜
曰く、奉納試合を「舞」と言うのは羅刹の試合が、凡そ奉納の形に収まりきれぬことがあるからだという。扱う刃は己が自由に。ただ木刀を扱う者もは先ずいない。刃の鋭さを潰したそれを選ぶものがーーさて、一人二人といるかどうか。
「成る程、真剣ですか。構いませんよ」
白い布をつける場所は、何処でも良いという。
村年寄りの話に、御剣・神夜は受け取った布で角隠しをすれば、わぁあ、と広場が賑わう。
「随分と、楽しそうですが……」
「そりゃぁねぇ。噂の花嫁御寮ってなれば、盛り上がりもしますよ。青い瞳の猟兵さん?」
かかる声は、白布で瞳を隠す羅刹のものであった。目は見えているのか。神夜の瞳の色を当てた羅刹は、に、と笑う。
「拙はしがない薬屋でしてね。噂の妖退治をした猟兵さん方がこちらにいらしていると聞いて、いや、怪我をされては申し訳ないと思いましてね」
「侮られますか?」
ふ、と神夜は笑う。
「拙は羅刹ゆえ。ですが、それ故に、花嫁御寮が如く白を纏う人には興味があるんですよ」
怪我は気にされますな、と羅刹の薬屋は笑う。緩やかに揺れる赤髪が、神夜が頭の上に乗せた布を見る。
「落として見るのも一興」
「そう、容易くは参りませんよ」
ふ、と息を吐く。笑うのはーー薬屋という羅刹も笑みを浮かべていたからだ。強者と出会った故の笑み。天武古砕流免許皆伝者たる神夜には幾分か覚えがある。真剣勝負と道場破りの立ち合いを務めた経験があるのだから。
「では、互いに構えられよ」
はじめ、の一声は、鈴の音と共に響いた。ゆるり、立ち会う先ーー薬屋の構えたのは太刀か。神夜の構えた野太刀よりは随分と細身だが、故に、踏み込みの決断も早くあった。
「はぁああ……!」
加速は、踏み込みの後からか。たん、と足音短く響いた音と共に、薬屋が神夜の前、沈む。返された刃に、神夜は足をひいた。
「ーー」
片足だけ。逸らすようにして、振り上げる一撃を躱す。流れるような動作は、頭の布を落とさぬ為だ。
(「取り合えず、取られないよう、落とさないよう動けば負けることはないかもしれませんが……」)
それでは、詰まらない。
勝負に出るところでは、出るべきだろう。
これは、奉納試合だ。
「それならば」
三度目の打ち込みに、前に、出る。薬屋の一撃は、踏み込みが早いのだ。速度の問題ではないだろう。はやり、だ。だからこそ、そこから崩す。奉納試合に相応しい範疇で、来る刃に己の刃を乗せ、滑らせると瞳を隠す布へと刃をーー届けた。
「これで」
「ーー!」
勝負あった! と声が響く。はらり、と布が落ちた先、新緑の瞳は驚いたように神夜を見た後に、ふ、と相好を崩し、笑った。
「負けた負けた。せめて一太刀、届けばと思っちゃいたが……」
コロコロと口調を変える薬屋の、本来の口調はこれらしい。顔にはひとつ、優男風の姿には不釣り合いな刀傷があった。古傷だと笑った薬屋は頭の布をつけたままであった神夜に問う。
「花嫁御寮、名は?」
「花嫁御寮ではありませんが御剣神夜です」
「拙は震雪という。なに、単純な話だよ」
村の誰もが、妖を退治したという猟兵に興味があった。
男であれ女であれ、猟兵たちの姿に村人たちは憧れに似た視線を向けていたのだ。毎年、決まったように披露されていた刀が、今年ばかりは意味さえ違える。
「拙もまた、その一人であっただけのことさ」
見惚れるほどの太刀筋であったと、薬屋ーー震雪は笑い、一礼と共に村の中に消えた。
「世の中は広いですねぇ。私ももっと強くならないと。でないと大きな顔できませんからね」
頭の布を払う。晴れ渡った青空の下、牙龍が小さく、光っていた。
大成功
🔵🔵🔵
花邨・八千代
あーあー、良い敵だったなぁ
強くて中々死ななくて、面白いやつだった
さぁて、今度はどんなヤツが相手だ?
腹ぁ掻っ捌かれちゃいるが俺はまだまだ遊べるぜ!
◆奉納試合に参加(POW)
白布は肩に結ぶかね
さぁて誰が相手してくれんのやら、誰だって楽しそうだがな
どうせならド派手に景気よくいこうぜ
【羅刹旋風】だ、たっぷり「怪力」を乗せてお見舞いすんぞ
「2回攻撃」で勢いよく「なぎ払い」を仕掛ける
何、本当にぶちのめそうと思っちゃいねェさ
まぁ余所見しようもんならわかんねぇがな
「第六感」で相手の攻撃躱しつつ、「なぎ払い」で跳ね上げた砂で目潰し仕掛けてその間に相手の白布を取りにいくぜ
生憎と怪力だけが戦法じゃねーんだよ、俺ァな
ネフラ・ノーヴァ
柚子の果実水か、頂こう。欲を言えば果実酒といきたい所だが。 さて、奉納試合か、様式に則った作法というのもまた美だ。白布の一点を取り合うというのは普段のサバイバルとは違ったルールで楽しめそうだな。自分の服は白いものだから、左の肩鎧に白布を付けよう。できれば剣を持った猟兵と相対したいな。出血を伴うものではないが、手加減なく剣戟を重ねたいものだ。
●二の舞 花邨八千代 ネフラ・ノーヴァ
わぁああ、と広場が賑わったのは羅刹の女に、戦場を賑わしたクリスタリアンの姿が見えたからだろう。
「さて、奉納試合か、様式に則った作法というのもまた美だ」
ふ、とネフラ・ノーヴァは笑みを零す。艶やかな羊脂玉種の髪が、きら、きらと真昼の光を返していた。息を飲む人がいるのも、羅刹がいるのも不思議はあるまい。
二人にはまだ、どこか戦場の空気が残っている。左の肩鎧に白布をつけーーふと、唇が笑みを描いたのは相対する猟兵を見てのことだろう。
「さぁて、今度はどんなヤツが相手だ? 腹ぁ掻っ捌かれちゃいるが俺はまだまだ遊べるぜ!」
治療は良いのかと言う村の羅刹たちに、まだまだ遊べるのだと言った花邨・八千代はネフラの姿に笑みを零した。
「こいつはいいねェ」
「成る程、手加減なく剣戟を重ねられそうだな」
ふ、と笑う彼女と同じく、白布を肩に結ぶ。ざぁあ、と広場の前を、風が抜けた。はた、はたと揺れる白布に黒髪。羅刹の女は、息を吐き笑いーークリスタリアンの女は不敵な笑みを浮かべる。
奉納試合には不釣り合いだと言う者など一人もいない。羅刹の村で行う奉納試合も、ここ数年参加者こそ減ってはいたがーー元より、刀鍛冶が集い、古くは剛の者もいた村だ。わぁわぁと集まるひとの数は増え、神域の守りが張られた空間にて、二人は見合う。
「では、互いに構えられよ」
はじめ、の一声は鈴の音と共に響いた。たん、と先に踏み込んだのはネフラだ。地を叩く足音が聞こえた、とそう思った瞬間には刃が来る。鋭い突きだ。
「……は、いいねェ」
「浅く済ませたか」
だが、とネフラは息を吐く。払い上げる八千代の手にあるのは大太刀か。薙ぐ一撃に、刀身に滑らせた刺剣が剣戟を刻む。
火花が、散った。
キン、と高く響く音は小気味良く。ぶつかりあうと言うよりは、剣を交わすと言う言葉が似合いか。苛烈にーーだが、仕合う姿はどこまでも美しい。
「どうせならド派手に景気よくいこうぜ」
は、と笑い、八千代は大太刀を振り回した。
「何、本当にぶちのめそうと思っちゃいねェさ。まぁ余所見しようもんならわかんねぇがな」
「なに、そちらも同じこと」
零す、息と共に笑みを浮かべたネフラが身をーー弾いた。鋭い突きが、刃の隙間から来る。肩の布を突き払う気か。一撃が擦り、反射でそらした身と共に刃を向ける。大太刀に比べれば幾分か細身な印象を受ける刺剣はーーだが、その勢いを殺しきる。返す反撃は、流石の速さだ。
「これでどうだ?」
「ーー」
ぐん、と来た四度目のネフラの突きに八千代は足を引く。第六感の示すがまま。逸らした体で、一気に刃を振るった。おお振りの一撃は、ネフラをそのまま狙ったわけではない。地面を抉り、跳ね飛ばすのはーー砂だ。
「!」
「生憎と怪力だけが戦法じゃねーんだよ、俺ァな」
ざん、と刃が走りーーひらり、とネフラの白い布が舞った。
勝負あった! と声が響く。一拍の後、ネフラが腕を引けば、切っ先にかかっていた白布が落ちる。先に一撃、届けたのが八千代であった。
「ふ。良い試合であった。良ければこの後少し如何かな?」
果実水も良かったが、欲をいえば果実酒が欲しかったところなのだ。
振る舞い酒もありますとも、と笑ったのは二人の試合を見た村人であった。興奮した様子で、持ち込まれた酒瓶が、きらきらと輝いていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
宇冠・龍
披露される刀を見に行きます
御寮さんがその後も幸せに暮らせたことを祈り願いながら
人と人ならざるもの、最後は死に別れましたが、花嫁御寮さんにも今生を共にした旦那さんもいた
周囲に慕われたからこそ、こうして今も神事として逸話も残っているのでしょう。一時であったとしても、決してこの現世で不幸ばかりではなかったはず
無粋かもしれませんが
可能なら刀に触れて、【枯木竜吟】を用いてそこに籠った想いを確かめたいです
強者たちが集う場所、もし御寮さんが今もご存命なら、ひょっこりと現れて参加しているのでしょうね
(もしかしたら、参加者の中に、子孫がいたりするのでしょうか……?)
●花嫁御寮
奉納試合で盛り上がる村の広場から少し行った場所では、花嫁御寮の刀が披露されていた。
身の丈ほどもある大太刀。
振るうことができれば、それだけで強者と言われたであろう。如何な理由で打たれた刀であったのか。鍔に僅か、変色があるのは「使われた」からか。鞘を払い、抜き身で披露された花嫁御寮の大太刀には美しい波紋が見て取れた。
「……」
そこに見えた欠けは、斬り合いの果てのことだろう、と宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)は思う。使われた痕のある刀。血の滲みよりも、欠けた刃がそれを伝えていた。
花嫁御寮は、その後をどう過ごしたのだろうか。
幸せに暮らせたことを祈りながら、龍は一度瞳を伏せる。祈るような気持ちがあったのは、ひとつの別れを龍も経験していたからであった。憂いを帯びた双眸は、来し方を思う。
(「人と人ならざるもの、最後は死に別れましたが、花嫁御寮さんにも今生を共にした旦那さんもいた」)
周囲に慕われたからこそ、こうして今も神事として逸話も残っているのでしょう。
花嫁御寮に大太刀。
妖退治の果てに、件の羅刹は夫の葬儀で最後に白の着物を纏ったという。
貞女二夫は見えず。
苛烈と言われた花嫁御寮は、そうして刀を奉納してーーさて、その先は知れずという。
「一時であったとしても、決してこの現世で不幸ばかりではなかったはず」
刀に触れてみたい、という龍に、妖退治をしてくれた猟兵の皆様であれば、と村人たちは快諾した。手入れはしてはいるが、直しはしていないのだと言う彼らは、振るうのであれば気をつけてほしい、ということなのだろう。
「振るうのではなく……」
ただ少し、確かめたいと思ったのだ。
無粋かもしれないが。刀に籠もったーー想いを。
「眠りし記憶に宿りし霊よ、今こそ蘇り我が前に現れいでよ」
囁くように告げて、そっと花嫁御寮の大太刀に触れる。ふわり、と柔らかな風と共に誰かがーー立った。
『……』
そこに居たのは白無垢に身を包んだ羅刹だ。
角隠しは無くーーだが、結い上げた美しい黒髪には、品の良い簪が見える。
「……」
花嫁御寮だ、と龍は思う。だが、逸話にあった彼女ではない。恐らくこの姿はーー……。
「婚礼の」
薄く開いた唇。零した言葉に、ふ、と大太刀の霊は笑う。
「強者たちが集う場所、もし御寮さんが今もご存命なら、ひょっこりと現れて参加しているのでしょうね」
『……』
声は無い。だが、なぁに、と笑うように刀の霊は指を差す。広場の奥、参加者たちの中を。見知った誰かがーーそれこそ、子孫がいるとでも言うのか。だが、詳しくは語らぬまま、大太刀の霊はふ、と笑った。
『あんたたちが、守ってくれてよかった』
この村を。
皆を。
そう言ってーーふわり、と霊は消える。
柔らかな風が最後、龍の頬を撫でていった。
大成功
🔵🔵🔵
月舘・夜彦
マリス殿(f03202)と行動します
彼女とは戦地で出会ったばかり
折角ですから食事をしながらお話をしましょう
私は月舘夜彦、サムライエンパイアにて各地を旅しております
互いに自己紹介をしているのですが、これは何とも
本当に見合いの席の様で可笑しなものですね
食事や酒を頂きながら思い返すは戦の時
背後からでも感じる力強さと見合う弓捌き
凛とした御姿も魔を寄せ付けぬのでしょう
あまり飲まぬ酒と久方振りの共闘に、少し饒舌に
話し込んでいると見つめる瞳に気付いて問う
……困りましたね
褒められるのは慣れておりませぬ故、恥ずかしいやら照れてしまうやら
マリス殿もお美しいですよ
貴女は桜舞う木花開耶姫の如く、春を思わせる御方です
マリス・ステラ
夜彦(f01521)と行動
「巡礼の旅をしているマリス・ステラと申します」
テーブルには料理や酒が並び、向き合うは宿神の美丈夫
挨拶もできないままの戦いが終わってようやく言葉を交わした
しかし、改まっての自己紹介に、
「まるでお見合いのようです」
口元を綻ばせてしまう
夜彦は、まずその立ち居振る舞いが美しい
卓越した実力も素晴らしいが、言動や姿勢など洗練されている
お酒の酌をして、お刺身を口に運び、気が付けば夜彦を見つめていた
「失礼しました。夜彦の美しさに見惚れてしまったようです」
彼の賛辞に微笑んで、
「繁栄を意味する女神にたとえられるとは光栄です」
応えながら、彼の美貌は私を惹きつける
夜彦、あなたは本当に美しい
●花に祭りの
奉納試合が盛り上がりを見せれば、小さな村も活気を見せる。元より、今日は祭りなのだ。小さな出店が並べる料理は、出店のそれと言うよりは村の食堂の出張版といった所だろうか。花見に似合いな手毬の寿司もあれば、鰹の刺身、季節の野菜を使った小鉢も並んでいた。
「巡礼の旅をしているマリス・ステラと申します」
満開の枝垂れ桜を日傘に、薄く唇を開いたのはマリス・ステラに、小さく微笑むのは藍の髪を揺らす美丈夫であった。
「私は月舘夜彦、サムライエンパイアにて各地を旅しております」
薄く口を開きーーだが、ふ、と笑ってしまうのは戦場を共にした後、出会ったばかりのマリスとこうして向き合っているからだろう。
「まるでお見合いのようです」
口元を綻ばせて笑う彼女に、月舘・夜彦も苦笑交じりに頷いた。
「互いに自己紹介をしているのですが、これは何とも、本当に見合いの席の様で可笑しなものですね」
テーブルには彩も鮮やかな料理が並び、地酒は振る舞いの酒と言われて冷酒が並ぶ。硝子細工の盃に、その煌めきに夜彦はふと、戦の時を思い出す。
「背後からでも感じる力強さと見合う弓捌き。凛とした御姿も魔を寄せ付けぬのでしょう」
あまり飲まぬ酒と、久方ぶりの共闘に少しばかり饒舌になる。口元、ふ、と刻む笑みは剣戟の間、穿つ弓を思い出してか。細められた瞳に、どうぞ一献、とマリスが酌をする。
「あぁ、これは失礼。感謝を」
両の手で酌を受けるひとを見ながら、ふとマリスは微笑む。夜彦は、まずその立ち居振る舞いが美しいのだ。卓越した実力も素晴らしいが、言動や姿勢など洗練されている。
「……」
「マリス殿?」
「失礼しました。夜彦の美しさに見惚れてしまったようです」
そう、気がつけば彼を見つめていたのだ。声を返されるときまで気が付かぬ程に。
「……困りましたね。褒められるのは慣れておりませぬ故、恥ずかしいやら照れてしまうやら」
ほんの少し困ったように笑い、だが、ヤドリガミの美丈夫は告げた。
「マリス殿もお美しいですよ。貴女は桜舞う木花開耶姫の如く、春を思わせる御方です」
風が、吹く。花を揺らす風が。
「繁栄を意味する女神にたとえられるとは光栄です」
花散らしにはまだ遠い。花弁の淡い影が夜彦の頬に触れていく。
彼の美貌は私を惹きつける。
(「夜彦、あなたは本当に美しい」)
揺れる髪もそのままに、マリスは静かに微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
祝聖嬢・ティファーナ
紅葉(f03588)とひかり(f00837)と一緒に精霊と聖霊も一緒に『フェアリーランド』から出してあげて、楽しみます☆
ティファーナは元々【風の妖精】なので風を共に動いて、風と共に遊びます♪ 他の精霊とも聖霊とも出してあげて楽しませてあげます☆
紅葉とひかりとも会いながら、精霊と聖霊と一緒に「風遊び」や「讃美歌」を歌唱い楽しみます♪
“祈祷”“歌唱”で精霊と聖霊との【風遊び】を久しぶりに楽しみます☆
紅葉とひかりと精霊と聖霊と神様に感謝をして、お祈りと感謝を歌唱い祝い踊ります☆
草剪・ひかり
POW判定
お色気、即興連携、キャラ崩し描写歓迎
紅葉ちゃん(f03588)から、一仕事終えたってお誘いを貰ったので
ティファちゃん(f02580)と一緒に立ち寄ってみたよ!
私は普段から人前でド突き合うのがお仕事なので
今日はたまには皆の張り切ってる姿を応援させてもらおうかな
まずはお祭りにお邪魔する立場として、少しばかり(多めの)ご祝儀を包んでから
早速、美味しいお弁当やお団子、甘酒なんかを堪能しつつ
紅葉ちゃんが頑張ってる姿を大声で応援したり
ティファちゃんと甘味を分け合ったり
近くの他の猟兵さんや地元の皆さんと積極的に交歓しようね
こういう積み重ねがきっと
私達の「過去」との闘いにプラスになっていく筈だからね
紬雁・紅葉
ひかり(f00837)
ティファ―ナ(f02580)
と同行
二人に試合を見物してもらう
先ず御刀に礼拝
『本来「他社参り」は御法度…ですが"剣神"』
【瑣事】
奉納試合に参加
相手は猟兵以外
白布は鉢巻きにして
UCは使わないが見切りや残像や武器受け等の技能は駆使
礼を示し心技体を尽くし相手する
終わったらひかりさんやティファ―ナと合流
ティファ―ナの風歌を聴きながら伝説に思いを馳せる
歌の合間に今回の顛末などを軽く話す
八つの刀を同時に扱う、戦い慣れた強敵でした…
吾知らず、幽か微笑んでいる
宿敵だったのかも知れません
仇だったのかも知れません
でなければ、終わった後に刀を置いて行きはしないでしょうから
ふと大太刀を見やる
●三の舞 紬雁紅葉 青蓮
刀への礼拝を済ませ、白布を鉢巻にして紬雁・紅葉は奉納試合の場に立っていた。わぁわぁ、と始まる前から盛り上がりを見せるのは、妖退治に出た猟兵であったと話が広まっているからだろう。羅刹の女子ともなれば、花嫁御寮と盛り上がる。
「お相手いただけるとは光栄です」
紅葉の相手として立ったのは、幾分か細身の羅刹の青年であった。立ち姿は悪くは無くーーだが、構えに僅か迷いがある。
(「己の技術に、でしょうか」)
だが、こうして奉納試合の場に出てきたということは一歩は踏み出しているのだろう。
(「それなら……」)
私は、礼を示し心技体を尽くし相手をしましょう。
始め、の声が響く。下段に構えた青年に、己という剣技を見せるように紅葉はゆるり、と前にーー出た。ゆるゆると詰める距離に、だが先に反応したのは羅刹の青年だ。誘われて出てしまった、という形に近い。その分踏み込みに迷いが見えた。
「はぁああ……!」
吠声と共に、ぶつかる刃を紅葉は押す。力をかけて、というよりはかかる力を利用して、だ。
青年の剣技が悪い訳ではない。奉納試合で披露されるのは十分な美しさがある。だが、そこにある迷いを"剣神"を奉る巫女が知ったのであればーー何かひとつを。道を示すほどのことでなくとも、この剣戟の中で何かが見えれば。
「いきましょう」
「ーー……! はい」
火花が散る。頑張れ、と仲間の声が耳に届く。力強い声援を胸に、紅葉は刀を向けた。
「お疲れー、紅葉ちゃん」
勝利おめでとう、と草剪・ひかり(次s元を超えた絶対女王・f00837)は笑みを見せた。普段は試合を見せる側のひかりの応援は、紅葉にもよく届いていたらしい。微笑んで頷いた彼女と一緒にテーブルを囲む頃には、お団子にちょっとした花見料理も綺麗に並んでいた。
「これも、甘いお菓子なの?」
フェアリーランドから出した精霊と聖霊と一緒に、祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)は、可愛らしい器を覗き込んでいた。食べる? と笑うひかりに、ぱち、と瞬く。
「いいの?」
「良いよ」
笑うひかり、ティファーナが嬉しそうに頷けば、柔らかな風が吹く。元々は風の妖精であるティファーナだ。ご機嫌な妖精は精霊と聖霊とともに讃美歌を歌う。
「八つの刀を同時に扱う、戦い慣れた強敵でした……」
ティファーナの歌声を聴きながら、紅葉が語ったのは今回の顛末であった。吾知らず、微かに微笑んでいるのはーー相対した先、あの将が剛の者であったからか。
「宿敵だったのかも知れません。仇だったのかも知れません」
でなければ、終わった後に刀を置いて行きはしないでしょうから、と大太刀を見やる。
果たして逸話の先に何があり、花嫁御寮などんな思いで刀を奉納していったのか。
「紅葉とひかりと精霊と聖霊と神様に感謝をして……」
お祈りと感謝を。歌唱い祝い踊るティファーナが淡い光を描く。その輝きを、紅葉の言葉を聴きながら、ひかりは思った。
こういう時間も、悪くはない、と。
「こういう積み重ねがきっと、私達の「過去」との闘いにプラスになっていく筈だからね」
此処にたどり着くまで、それぞれにあった理由たち。その過去との戦いにーーきっと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黒蛇・宵蔭
私に奉納できるほどの腕があるかどうか、自信はないのですが。
一局如何ですか、シノアさん。
壁の花は退屈でしょう?
身につける白い物……胸に白い布の花などどうでしょう?
得物は真赭。偶には正々堂々と立ち会うのも悪くないかなと。
先んじて仕掛け。素直に退き。相手の出鼻を挫くように。
負けてもいいと思って始めながら、つい傷を辞さず布を腕で覆い庇ったり。
……参りました。
流石に敵いませんでしたね。
けれど久々に剣を振るうのも楽しいと……懐かしく思いました。
お相手、ありがとうございました(優雅に一礼し)
魔を斬った花嫁御寮が幸福な生を終えているとよいですね。
そうであれば、少しだけ。
魔にも立つ瀬があるというものです。
●四の舞 黒蛇宵蔭 シノア・プサルトゥイーリ
剣戟の花が咲く。防戦の音は重く、だが、刎ねあげる刃にこそ笑みを浮かべた羅刹の二人の奉納試合は賑わいを見せていた。
「私に奉納できるほどの腕があるかどうか、自信はないのですが。一局如何ですか、シノアさん」
ぱち、と瞬く赤い瞳に黒蛇・宵蔭は口元、笑みを敷いた。
「壁の花は退屈でしょう?」
「ーーえぇ」
此処がダンスフロアであればそれでも良かったのだけれど。笑うように告げて、シノアは一礼と共に応じた。
「私のような花でよければ」
どうぞお相手くださいな。
「あら、今日は刀を使うのね」
「えぇ。偶には正々堂々と立ち会うのも悪くないかなと」
小さく笑う男の胸元の、白い布の花が咲いていた。奉納試合に纏う白布は、胸に。黒衣に白の花は映える。否、花だけではない。手にした太刀もまた美しい白の拵えだ。
「搦め手で来られたらどうしようかと思っていたのだけれど」
対するシノアも、折角だから、と白布の花を胸元に飾っていた。黒の鞘尻を地面につけていたシノアはそう言って笑う。互いに浮かべられているのは微笑だというのに、向かい合えば隙がある訳ではない。攻め込みはできるだろうが、誘いか否か分からぬ二人の空気に、火花散る奉納試合を見学してきた村の人々が賑わい出す。息を飲まぬのはこの地の性か。
「始め……!」
宮司の声が、高く響いた。
「ーー」
た、と地を先んじて蹴ったのは宵蔭であった。身を弾き、二歩目で一気に加速した男は間合い深くに身を沈ませーー抜く。
「!」
抜き払う刃は、間合いさえ切り裂くものだ。先んじて仕掛けてきたという事実に、シノアの反応が僅かに遅れる。構わず鞘で受ければ、鈍い音と重い感触が手に返る。押し返せはしまい。ならば、とシノアは受けた勢いに従った。身を沿わせ、傾ぐままに鞘を落とす。片手で構えていた刃に手を添えた。
「ーー」
跳ねるような刃が、互いの空気を割いた。返しの一撃に、だが、宵蔭は素直に退く。流れるようにして見切れば、あら、とシノアが息をついていた。
「今の一撃、躱されてしまったわね」
「いえ、危なかったですよ」
飄々と答えて見せた宵蔭の刃は、間合いを崩すそれだ。元より搦め手をも収めた男の剣術故か。対するシノアは、刀を得手とする。多少の体術に覚えはあるがその基礎は「刀」で戦うということに重きを置いたものだ。
「あら、全くそうは見えなかったのだけれど」
出鼻を挫かれ、息をついたシノアが身をーー飛ばす。傾ぐ体で加速し、斬りあげる一撃はーー布には届かないか。続く一撃を真赭で受け止めれば、シノアの構えた刀が刃の上を滑る。
火花が、散った。
負けてもいいと思って始めながらーー腕は、つい、動いてしまった。
「あぁ」
白布の花を庇うように、腕を上げる。刃が腕を擦り、ふ、と知らず笑みを零した男の刃が滴り落ちる血に濡れる。
「ーーでは」
返す一撃は流れるように。防御と攻撃がひとつの流れとしてーー来る。切り込まれた間合いに、シノアが身を逸らす。刃で受けるには向かないのであればーーなら。
「行きましょうか」
地を蹴る。跳躍する。髪の一房が散ったが構わない。目を見て、斬り込むひとの姿が見えたのであれば。きっと。
「……」
跳躍からの突き。穿つ一撃が宵蔭の白い花をーー落とした。
そこまで、と宮司の声が響く。わぁあ、と村人たちが声をあげた。
「……参りました。流石に敵いませんでしたね」
賑わいを耳に、ふ、と宵蔭は笑みを見せた。
「けれど久々に剣を振るうのも楽しいと……懐かしく思いました」
刀を鞘に収める。純白を誇る刃は、鞘に隠れ男は赤の瞳に笑みを乗せた。
「お相手、ありがとうございました」
優雅に一礼すれば、一礼を以ってシノアも応じる。
「ひやひやしたのよ。でも、心踊る仕合いでした。お相手、ありがとう」
それと、とポケットからハンカチを取り出す。手当くらいはさせてちょうだい、というのは庇った腕のことだろう。
「魔を斬った花嫁御寮が幸福な生を終えているとよいですね」
奉納試合はあと少し、続くらしい。花嫁御寮の逸話に縁を持つ試合。魔を払うのは、剣戟か火花か。だが、何処に消えたか知れぬ花嫁御寮は、果たしてどんな終わりを迎えたのか。
「そうであれば、少しだけ。魔にも立つ瀬があるというものです」
「ーー……、そうね。花嫁御寮のようなひとが、どうか、幸せな終わりを迎えられていたら」
まだ少し、日の眩しさを厭わずにいられそうだとシノアは笑った。
大成功
🔵🔵🔵
両角・式夜
【ほしのたね】の皆と
わしはリュカ殿と奉納試合をするぞ!
腕は何とかくっついてるだろうて
白い布は負傷してた方の手に巻いて握りしめておこうか
それが駄目なら首に巻いておこう
これを取られたら首が取られたって事だな。うん。
さてはて、速さでは圧倒的に勝てないが
そう易々とは取らせんからな!
手で握ってればわしの怪力でそう抜き取れんだろうし
首を狙ってくるなら軌道も読み易い
来たところを抑え込めば、布も奪えるだろうか?
リュカ殿の接近戦はまだ知らないからな!いやぁ、楽しみだな!
試合が終わったら、ルーナ殿も一緒に花嫁御寮の刀を見物して屋台で飯でも食べような
ルーナ殿の選ぶ屋台は当たりが多いのだ
※勝敗はお任せします
ルーナ・リェナ
【ほしのたね】のみんなと
リュカと式夜の試合かぁ……
式夜、怪我してるみたいだけど大丈夫かな
相手がリュカだから心配はしないけどやっぱり心配
試合はふたりの邪魔にならないところ
樹があればその枝に、なければソルに乗って観る
決着がついたら深呼吸
見てる間息してなかった感じがするんだよ
そうしてから冷やしておいたはちみつ入り柚子水をバスケットから出してふたりに渡す
式夜、怪我は大丈夫?
落ち着いたら屋台に行きたいな
ふたりとも運動してるからおなかすいてるんじゃない?
この前のたこやきってないかなぁ
あ、式夜食べづらいなら食べさせてあげるね
そのついでにリュカの口元にもたこ焼きを差し出す
リュカ・エンキアンサス
【ほしのたね】のみんなで
ん、わかったわかった
ってことで式夜お姉さんと試合をする
勿論するからには容赦はしない
確実に的確に殺す…あ、殺しちゃだめなんだっけ
布は右足に巻いておく
後はナイフをいつでも抜けるように準備
武器持ち込み不可なら素手で何とか
普通に引っ張って取れたらいいけど
まあ、ナイフで切り落としてもとったことになるだろう
って、ことでひとつ
手早く飛び込んで落とせればいいし、無理ならこっちを狙ってきたときに反撃がわりに取れたらいい
勝敗はお任せ
どっちにしろ終わったらルーナお姉さんからお水を貰う
ん…。ありがとう。気持ちいい
お腹にたまるもの食べたいなあ
よし、色々食べて回ろうか。あ、たこ焼きも貰う。ありがと
「わしはリュカ殿と奉納試合をするぞ! 腕は何とかくっついてるだろうて」
ぐ、と腕を掲げて軽く振る。うん、取れることはないな、と開口一番物騒なことを言った両角・式夜の前、指名を受けたのが青い瞳をした少年だった。
「ん、わかったわかった」
リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)はそう言って、奉納試合の場に上がる。試合をするからには勿論容赦はしない。
「確実に的確に殺す……あ、殺しちゃだめなんだっけ」
「……」
そんな二人の様子を、ルーナ・リェナ(アルコイーリス・f01357)は樹の枝に腰掛け眺めていた。ラズベリーの瞳が心配そうに揺れる。
「リュカと式夜の試合かぁ……。式夜、怪我してるみたいだけど大丈夫かな」
相手がリュカだから心配はしないけどやっぱり心配。
ほう、とルーナは息を零した。柔らかな髪を揺らす村の風は、奉納試合の熱気を運んでくる。賑わいは、新たに猟兵による奉納試合が決まったことへの期待か。
「白い布は、手に巻いたんだね」
「リュカ殿は右足だったか」
武器の持ち込みは構わずーー猟兵同士であれば、持ちうる全てを以っての仕合を見せたという奉納試合に、然程の否やない。向かい合った二人の交わす言葉は、明るく軽いというのに何処か、雰囲気が違う。声音だけを聞けば明るいというのに、言葉が少しばかり物騒であったからかと言えばーーそれだけではない。互いの踏み込む一歩を警戒するように向けられた視線が、ぴん、と張り詰めた空気さえ楽しむように、言葉を交わす。
「では両者位置について。始め……!」
しゃん、と鈴の音と共に、奉納試合がーー始まる。
「ーー」
た、と先に動いたのはリュカであった。素早い飛び込みは、一歩目から足音を消す。足裏、確かに土を蹴った筈の少年は低めた体で一気に式夜の懐へと飛び込んだ。
「ーーほう!」
懐、見えた姿に式夜は身を逸らす。鼻先、既のところを這い上がったナイフに切っ先を下げていた刀をーーひく。
ギン、と派手な音が、広場に響いた。
「そう易々とは取らせんからな!」
式夜の怪力で手を握ってしまえば、そう簡単に白い布は抜き取れない。来たところを抑え込めれば、とそう思ってはいたがーー。
「流石はリュカ殿。早いな!」
「手が痺れたよ、式夜お姉さん」
息をついたリュカに伸ばす手が、空を切る。流石の速さか、捕まえるには足りずーーならば、と式夜は息を吸う。空気が揺らぐ。ドラゴンオーラが体を包めば指先は届かずとも。
「これが、あってな」
じゃらり、とオーラの鎖がリュカに伸びた。小さく息を飲んだ少年の腕についたのは、間合いまで引き寄せる為か。
「リュカ殿」
「ーー……なら」
ぐ、と怪力で引きずられる感覚に、地を蹴る。先に飛び込めば、引く力は意味を失う。迫るリュカに式夜が腕を振り上げる。力任せの一撃。だが、その力がある式夜による薙ぎ払いは強烈な一撃となる。だがーー。
「おお!」
「……」
それを、リュカは避けた。まるで見てきたかのように。身を低め、頭上に刃を滑らせたまま今度こそ深く、式夜の間合いに沈みーー布を巻く腕にナイフを、向けた。
「そこまで……!」
ひらり、と白布が舞う。布を取られたのは式夜であった。だが、ひどく楽しげに笑う彼女に、息をつく少年に、わぁああっと観客たちが喝采を告げた。
「見てる間息してなかった感じがするんだよ」
すぅ、はぁ、と深呼吸をして、ルーナは翅を震わせた。どうぞ、と籐製のバスケットから取り出されたのは冷やしておいたはちみつ入り柚子水だ。
「ん……。ありがとう。気持ちいい」
「あぁ、ありがとう。ルーナ殿」
受け取った二人に、ほ、と息をつきながら、ルーナは式夜を見あげた。
「式夜、怪我は大丈夫?」
「なに、大丈夫だ」
落ちることもなかったしな、とさらりと告げた式夜に、ルーナがふるふると翅を震わせているのも知らぬまま。
「ルーナ殿も一緒に花嫁御寮の刀を見物して屋台で飯でも食べような。ルーナ殿の選ぶ屋台は当たりが多いのだ」
「そう? ふたりとも運動してるからおなかすいてるんじゃない?」
祭りと聞けば、屋台も出ているだろう。季節柄か花見弁当のようなものも出ているらしい。
「お腹にたまるもの食べたいなあ」
うん、とリュカが頷けばーーさぁ、決まりだ。
「この前のたこやきってないかなぁ。あ、式夜食べづらいなら食べさせてあげるね」
たこ焼き。
屋台では定番のそれを探すようにふわり、と飛んだルーナが、右に左にと偵察を始める。なにせ、ルーナの選ぶ屋台はあたりが多いのだから。
「よし、色々食べて回ろうか」
奉納試合も無事に済ませて。あとはみんなで楽しい出店タイム。香ばしい香りのたこ焼きを見つければ、あそこ、とルーナの声が響いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
さぁて…久しく剣なぞ交じ合わせておらんかったからな
如何程成長してみせたか、此処で試験といこうではないか
白布は右腕に結わえ、仕込み杖を抜く
さあ、ジジ――遠慮は要らんぞ?
我が従者の太刀筋は力強く、何より愚直さが微笑ましい
一度打ち合いになれば力負けするのが道理
ならば軌道を見切り、時には第六感を駆使して回避に専念
一太刀の隙を縫い、刃で一閃
…全く、こうも狙い難い場所に布を巻きおって
右角にしなかった事だけは褒めてやるが
搗ち合う遊色
乏しい面持からは想像出来ぬ程輝く眼差し
まるでじゃれ合いの様だと目を細め
然し決して手は抜かぬ
ふふん、大人げなかろうが私にも意地があるでな
…ああ、偶には悪くない
ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と手合わせを
*細い白帯を左角へと
剣の稽古など何年振りだろうな
試験とは…まあ好きにするといい
――参る
体格差を思えば当然か
蝶でも斬ろうとするような心地で
打ち合いを避けて舞う小柄な身へと
嘗てそうしたように追い縋る
鮮やかに尾を引く、輝石の反射が目を惑わせても
透ける髪の一筋とて断たぬよう
ただ青を隠す白だけを狙う
どうした、そろそろ疲れておいでか
膂力も背も、とうに追い越したはずが
手を伸ばすばかりの距離は一向に縮まぬ錯覚
ただ、その双つ星だけは
少しばかり輝きの色を変えた気がするのは
切っ先と擦れ違う刹那にそれを見る
楽しいな、師父よ
今なお追う師の背
後は己で切り拓け――と
かの花嫁御寮が重なって見え
●六の舞 ジャハル・アルムリフ アルバ・アルフライラ
奉納試合も最後の一組となれば、賑わいも増す。真昼の空は変わらず、眩しい程の日差しを広場に落としていた。
あの戦場とはあまりに違う。
煌めきがジャハル・アルムリフの瞳に写っていた。
「さぁて……久しく剣なぞ交じ合わせておらんかったからな」
機嫌よく笑みを浮かべたアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)がジャハルへと視線を向ける。
「如何程成長してみせたか、此処で試験といこうではないか」
白布は右腕に結わえ、アルバは仕込み杖を抜く。流麗な一振りを流れるように抜き払った師父の口元は楽しげにひきあがる。
「さあ、ジジ――遠慮は要らんぞ?」
「剣の稽古など何年振りだろうな」
細い白帯を左角へと結べば、風の鳴る音がした。分かりやすく上機嫌なアルバの刃が真昼に晒され、煌めきに僅か瞳を細めた竜人は吐息ひとつ零すように告げた。
「試験とは……まあ好きにするといい」
それでは互いに、と宮司の声が響く。はじめ、と高らかに告げる声に、しゃん、と鈴の音がーー混ざった。
たん、と身を飛ばしたのはジャハルが先であった。足裏で地を蹴り、飛ぶように向かう従者の手には剣があった。切っ先で空を切り裂き、だが長身で構える刃は決して重さだけを感じさせない。
(「来るか」)
ふ、とアルバは笑いーー切っ先に、切り上げる剣に飛ぶ。後方に。距離を開けるのではない。軌道を見切って間合いを作る。これはアルバの間合いだ。仕込み杖の絶対の空間。切り上げられた剣を、踏み込む勢いから真下へと振り下ろすのは追いかける様に近いのだろうか。
(「我が従者の太刀筋は力強く、何より愚直さが微笑ましい」)
故に一度打ち合いになれば力負けするのが道理。だからこそ、アルバは回避に専念をしていた。そこから一太刀の隙を縫うようにーー斬るのだ。落ちるジャハルの剣を、半身で避けて。引いた足を軸に、くるり、と一度体を回してそのまま懐にーー向かう。
「……全く、こうも狙い難い場所に布を巻きおって」
右角にしなかった事だけは褒めてやるが。
斬りあげる一撃が、ひらり揺れる布をーー通り越す。
「ほう」
避けるのではない。踏み込みで、軌道から逸れたのだ。剣を持ち上げるのは足りずとも、ては届くその距離で息をつきーーアルバは身を横に飛ばす。
蝶でも、斬ろうとするような心地だった。
剣戟の間、打ち合いを避けて舞う小柄な身へとジャハルは嘗てそうしたように追い縋る。鮮やかに尾を引く、輝石の反射が目を惑わせても、透ける髪の一筋とて断たぬよう。
ただ青を隠す白だけを狙う。
剣圧が風を生み、僅か、触れ合った剣と刀が火花を生む。硬音は鳥が歌うかのように、跳ね上げた刃の先へと踏み込み、払う。
アルバの動きは避けるというよりは見切りなのだろう。次の攻撃へと的確に繋げられる。攻撃と防御の連携。対するジャハルは一撃を確かに届かせればーーそれで、試合を決定づけられる。
「どうした、そろそろ疲れておいでか」
「ふふん、大人げなかろうが私にも意地があるでな」
膂力も背も、とうに追い越したはずが、手を伸ばすばかりの距離は一向に縮まぬ錯覚があった。ただ、その双つ星だけは少しばかり輝きの色を変えた気がするのはーー切っ先と擦れ違う刹那に、ジャハルはそれを見る。
「楽しいな、師父よ」
今なお追う師の背。後は己で切り拓け――とかの花嫁御寮が重なって見え……。
「ーー」
飛び込む。避けられるのであればその分、強く。飛び込みくる姿に、ふ、とアルバは吐息を零す用意して小さく、笑う。
搗ち合う遊色。
乏しい面持からは想像出来ぬ程輝く眼差し。
まるでじゃれ合いの様だと目を細め、然し決して手は抜かない。そう、意地があるのだから。それにーー。
「……ああ、偶には悪くない」
剣戟は空を斬り合い。火花の代わりに風を生む。舞い上がった髪をそのままに、瞬発の加速に仕込み杖を振るう。剣より先に、風が来た。舞い上がる髪の向こう、見えた従者の瞳を見ながらアルバはーー出た。
「ーー」
切っ先が左角に巻かれた白に届きーーだが、右腕に風が抜けた。
「それまで……!」
はらりと布を落としたのはアルバだ。だが、右腕に結わえた白布を、完全ではないが切り落とすジャハルの剣は確かに届いていた。
●白き鬼の角隠し
斯くして、刃を持って魔は払われた。鳴り響く鈴の音が、奉納試合のすべての終わりを告げる。
「これにて、魔が近づくこともないでしょう」
披露された大太刀には、花嫁御寮と呼ばれた羅刹が確かにこの地に存在し、戦った証拠が残されていた。
それは因果か由縁か。
贄を求めた妖は両断さえ、角隠しを取り払った花嫁御寮はーーだが、後に家を得たのだろう。家庭というものを。その後に、離別を得ようとも。別れの時に纏う白は、花嫁御寮の誓いであったのかそれともーーそう、ただの約束であったのか。花嫁御寮と呼ばれた羅刹は消え、残ったのはただ一人を愛した白き鬼だったのかもしれない。
角隠しを払い、白無垢を汚して帰り着いた羅刹を出迎えた人との永遠を願ったーー一人の。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵