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泥濘散歩! 「マッドフロアダンジョン」攻略戦

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●アルダワの粘着三銃士、出陣
「壁も床も全てが泥まみれのダンジョン? パワー系多重債務者の俺のためにあるような迷宮だぜ!」
「人の心も迷宮も、ぬかるんでこそ美しい。自慢の愛されテクニックでダンジョンも攻略してみせますわ」
「ドロノナカ、オチツク」

 広大な地下迷宮に全ての災魔(オブリビオン)が封印された世界。
 封印から抜け出る災魔を討つ戦力を育てるために、迷宮の上に『アルダワ魔法学園』が建った。この機関に在籍する者は、みな兵士かつ生徒である。
 そして、歳や見た目は多様なれど、生徒の例に漏れず、彼らはそろって承認欲求の化け物だった。しかし、彼らにもイヤなものはある。
 教師たちが『新しくできた迷宮は汚泥にまみれてヌッタヌタだから近づかないほうがいいぞ』とひとこと言っただけで、みんな年末の過ごし方とかを考えるようになった。

 三人の猛者を除いて。

●泥に咲く花
「恐ろしい予兆が見えてしまった。お前たちの強さはよくわかっているが……今回ばかりは手に負えんかもしれんぞ」
 踏み台で高さを稼いだ眼鏡の幼女、グリモア猟兵のマリアブリレは言った。
「参加の判断は説明のあとにするとよい。だが、勇気と無謀は違うということは覚えておけ」

「『迷宮ができた原因である、フロアボスのオブリビオンを倒すこと』ができれば、目的は達成される」
 ただし、迷宮はオブリビオンの力によって特殊な変化を遂げている。『迷宮内の天井も、壁も、床も、何もかもがドゥルドゥルした大量の泥で覆われており、その量は奥に進むにつれて増していく』らしい。
「絶えず足が取られるのはもちろん、うっかり転んだりしてみろ。装備も、服も、眼鏡すら泥濘に飲み込まれるに違いない。レンズとフレームの間に泥が入ったりしたら……そのまんま乾いてしまったら……ああ、なんて恐ろしい!」

 『すでに迷宮内には三名の生徒が突入している』ようだ。
 『放っておくと、彼らはオブリビオンに遭遇して殺されてしまう』だろう。
 『生徒よりも先に迷宮を攻略してオブリビオンを倒す』必要がある。

「各々、持ち味を生かせ。例えば、『素早く器用な者なら、かすかな足場でも有効に利用できる』だろうし、『異常なほどの筋力があれば、無理矢理進むこと』も夢ではあるまい。『頭脳派ならば、泥の流量と方向から正解ルートを割り出す』なんてこともできるんじゃないか?」
 加えて、ユーベルコードを用いて立ち向かえば、さらに効率的に迷宮攻略ができるだろう。

「これから死地に向かおうとする勇者たちに、後方に控える私がいったい何を言えようか。ただ、いくら泥にまみれ、ぬかるみにはまろうとも、洗えばだいたい取れるし、綺麗になる。良い洗剤を用意しておくから、必ず帰ってくるんだぞ」


ロッカー裏ロッカー
 ロッカー裏ロッカーです。

 アメリカ人がよくやる泥んこプロレスのように、
 明るく・楽しく・わかりやすく行こうと考えています。

 なお、猟兵よりも先に突入している粘着三銃士は、アルダワ魔法学園に名を轟かせる『ぬかるみスペシャリスト』たちです。

 『多重債務の砂水』・『サークルクラッシャーのオディール』・『ブラックタールの泥田坊』、それぞれ得意分野とスタイルは違えど、どろどろしたことに関して一家言あり、泥の扱いにおいては猟兵をも上回ります。

 猟兵の特権であるユーベルコードを駆使して勝機を見いだしてください。
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第1章 冒険 『冒険競争』

POW   :    力技で迷宮を攻略する

SPD   :    速度を活かして迷宮をショートカットする

WIZ   :    競争相手の生徒達の行動を読んで出し抜き先行する

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ナハト・ダァト
■心情
元がタールだからネ。
こういう汚れた場所は得意なものサ。

■作戦
体を滑らかな形状に変化させて、後は泥の流れを読みながら進んでいくヨ

やはリ、ブラックタールとしてはこういう場所が落ち着くナァ

■三銃士への対応
もし先行している姿を見かけたら、足止めになるように少し泥に足を取らせてあげた方がいいかナ

万が一、という事もあるし。
悪く思わないでくレ。

一番乗りでなくていいかラ、確実に生徒達よりメンバーが早く着く事を目指すヨ

もし、協力してくれそうなメンバーが居れば協力しようじゃないカ


アイリス・スノーキャッスル
汚れるのは多少覚悟いたしますが、なかなか攻略し外があるダンジョンです

私は【WIZ】重視で行動致します
からくり人形は私を背負い汚泥を進みながら警戒
オルタナティブ・ダブルには先行と偵察を
私は高い位置から見れますから、泥が流れや勢いの確認、周囲と違う場所を観察、監視塔の様に働きます

「しかし、ブラックタールの子以外はなんだが違うドロドロですよね、無事ならいいんですが」

しかし、正解ルートとありましたから泥がループしていたり、急に穴に流れ落ちてたりするのでしょうか
下に降りる地形なら地下に向かう流れを見つけます
逆に昇るや平行の可能性があるなら探査方向をかえて、初めの逆にいきます


影守・吾聞
※自身も学生だが、粘着三銃士のことはまだ知らない

泥だらけの迷宮に挑みに行くなんて、すごいチャレンジャーだなぁ
……関心してる場合じゃないや
その人たちが災魔に襲われる前に、頑張って追いつかなきゃ!

自慢のSPDを生かして攻略するよ
【某配管工の真似】も使いつつ
足場から足場へ飛び移って
泥に足を取られないよう、気をつけて進むね

万一、泥道以外に予想外のトラップがあっても避けられるよう
『野生の勘』も働かせておくよー



「……ナハト、アイリス。右の坂の上にも分かれ道があるみたいだ」
「わかっタ。流れの速さを調べてみよウ」
「ここからだと奥が見えませんね。『オルタナティブ・ダブル』に偵察させましょう。ナハト様は、その後に」
 影守・吾聞(キマイラのバトルゲーマー・f00374)の合図で三人はルートの精査を始めた。
 アイリス・スノーキャッスル(囁く者・f03970)がユーベルコードで生み出した『もうひとりの自分』を先に進ませ、最大限の安全距離を保った上でナハト・ダァト(聖泥・f01760)が着いていく。
 狼ベースゆえの鋭い感覚力を生かした吾聞の警戒。からくり人形と『オルタナティブ・ダブル』を駆使したアイリスの偵察。その二つに、ブラックタールのナハトによる泥の流れを読む技術が合わさって、三人は着実に泥濘の迷宮を攻略しつつあった。

「やはリ、ブラックタールとしてはこういう場所が落ち着くナァ」
 泥流の中で肉体を平たく、細長く引き延ばしたナハトが気持ちよさそうにつぶやいた。『バウンドボディ』で表面積を増し、弾力を帯びた身体に当たる泥の感触を意識し、その流れの速さを感じ取る。
「ン……さっきの道より今の道のほうが少しだけ、速いようだネ。『奥に進むほどに泥の流れがキツくなっていく』というルールに従うなら、こちらのほうがより正解に近いかナ」
 猟兵ならば、『バウンドボディ』と同じような効果を生み出すユーベルコードを使用できる者はいくらでもいる。だが、ここまで精緻な調査ができる者は彼以外にはいないだろう。本能レベルで泥濘に身を浸すことに抵抗のない、ブラックタールとしての己の強みを十二分に生かした活躍だった。
「粘着三銃士……名前を聞いたことはないけど、こんな泥だらけの迷宮に挑みに行くなんて、すごいチャレンジャーだよね」
 天井から頭に垂れた泥滴を振るって跳ね飛ばしつつ、吾聞が言う。
「私も、多少なら汚れる覚悟をしていましたが……これは、さすがに……」
 衣服についた泥を見て、半ば泥人形と化した『もう一人の自分』を見て、最後に『泥流と一体化したと言っても過言ではないナハト』に視線を移して、アイリスは口ごもった。からくり人形に我が身を背負わせて移動している自分との差に、ほんのわずかな罪悪感が湧く。吾聞もそれを感じ取り、ちょっとだけ耳がへたった。
「ごめんな、ナハト! できるだけ早く終わるように俺、頑張るからさー!」
「いや、うまく進めているのはキミたちのおかげだヨ。私なら心配いらなイ。なにせ、元がタールだからネ。こういう汚れた場所は得意なものサ」
 泥面から顔をひょっこり伸ばしたナハトが、二人にウインクを返した。

「泥流のループに突然の落とし穴。ただの泥濘でないところがまた、やっかいなダンジョンですわね」
 歩を進めるにつれて、いやらしいトラップを織り交ぜるようになってきた泥の迷宮。アイリスは『オルタナティブ・ダブル』による探査を密にしてトラップに対する警戒を強めつつ、足場をたどっていく。
「おかしいな。これがゲームだったらさ、もうひとつ、何かギミックがあったはずなんだけど……」
 足場から足場を軽やかに飛び移りつつ、吾聞は首をかしげた。その頭の中には慣れ親しんだアクションゲームのとあるステージが再生されている。
 オレンジの地面に少しの足場だけがあって、それを飛び移ることで進んでいくステージだ。もし、足場を踏み外してオレンジの部分に触れると、大きくなっていても、マントをまとっていても即死。そんな極限の緊張感の中で、いつしか最も信頼していた『足元のそれ』すら、突然――。
「あ」
 アイリスを乗せたからくり人形がトン、と次の足場に跳んだとき。吾聞の目は、脳は、『今まで出てきていなかったトラップ』を思い出した。
 『野生の勘』に導かれるように、アイリスのもとへと跳びに跳ぶ。視界の先、まだ届かぬ場所でからくり人形がその足場に着地し、ぐらりと体勢を崩したのが見えた。
「『崩れる足場』――!!」
 足場をたどっていては間に合わない。『某配管工の真似』。三回の空中ジャンプでアイリスのそばに跳び、人形ごと抱えてさらに跳んだ。五回、八回、十二回。二人分プラス泥の浸みた人形を合わせた重みは、吾聞の思惑を超えて激しく、『落ちたら一瞬でゲームオーバーな場所』へと絶えず彼らを引き寄せていく。
 十六回目のジャンプ。渾身のそれを終えた瞬間、ゲーマーとしての吾聞の経験と勘が告げる。
「(あの足場までにはどうやっても高さが足りない!)」
 あと一歩あれば届いたものを、と悔しさに目を閉じ、歯を食いしばる吾聞。しかし、その足に触れたのは無慈悲なぬかるみではなく――。
「そぉイ!!」
 感じたのはゴムの弾力。なめらかで暖かな『バウンドモード』のナハトボディだった。組んだ両手を精一杯伸ばし、トスの要領でアイリス、吾聞らを助け上げてくれたらしい。
 崩れることのない、安心できる足場にぶじ到達できた二人が振り向くと、柔らかい恩人は親指を立てた片腕だけを泥面からスッと出して、茶目っ気たっぷりな振る舞いを見せた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

イヴ・イルシオン
『POW』

「別に私は泥の中に潜む任務経験とか無い訳ではないのですがね。しかし進行の妨げにはなるので泥はユーベルコードで排除しておくです」

片目の眼帯を取り【消滅の魔眼】を発動し泥を消していくです
一応【第六感】とか使って泥の中に人が埋まって無いかは感じ取っていくです

それにしても泥の中でも進む者たちですか、そこら辺の生っちょろい奴らよりかは好感が持てるのです


エダ・サルファー
ふむふむ、泥に覆われてて進みづらい迷宮なのか。
服や身体が泥で汚れるのはあんまり気にならないけど、眼鏡が汚れるのは確かに苦手だねぇ。

まあ、パワー寄りを自認する身としては、力業での踏破を目指すわけなのだが。
ちょっとでも進みやすいように、アースジャイアント召喚して先行させよう。ジャイアントの真後ろに立って摺り足気味に動けば、多少は泥除けが出来るでしょ。
それで進めないほどになってきたら、手足で掻き分けるようにして無理矢理進もう。
最終的には気合いで。



「別に私は泥の中に潜む任務経験とか無い訳ではないのですがね。しかし進行の妨げにはなるので泥はユーベルコードで排除しておくです」
 『消滅の魔眼』。イヴ・イルシオン(狂気の殺戮人形・f01033)が外した眼帯の下、深緑の魔眼が目の前の泥流を捉えた。その瞬間、あまねく存在の全てを消滅させうる波動が炸裂。かの一撃によって不自然に空いたスペースには一滴の泥もなく、紫電のような響きが残るだけだった。
 しかし。
 盛った砂をスコップで削り取っても、周りの砂がその穴をすぐさま埋めてしまうように、天井といい、壁といい、床といい、四方八方から新たな泥流が湧き起こり、彼女の空けた隙間を埋めようと迫ってくる。近くに落ちた泥塊から滴が跳ね、イヴの頬についた。
「だったら、何度でも消し飛びやがれなのです」
 泥を殺しきるのが先か、少女が泥に埋もれるのが先か――無限の泥流VS狂気の殺戮人形。それぞれの存亡を賭けたタイマン勝負のゴングが鳴った。

「ふむふむ、泥に覆われてて進みづらい迷宮なのか。服や身体が泥で汚れるのはあんまり気にならないけど、眼鏡が汚れるのは確かに苦ゴボゴボ」
 量を増した泥流の中、眼鏡より上をかろうじて泥面から出して、エダ・サルファー(ドワーフのクレリック・f05398)は砕氷船のように力強く進んでいた。そのパワフルさとは裏腹に、(泥がちょっと入った)彼女の口からは極めて冷静な、自分の置かれた状況を客観視した台詞が生まれている。
 エダは怒っていた。いくら泥のダンジョンだからといって、ちょっと度が過ぎる泥量に。105cm弱という体長がゆえ、泥の波にほとんど飲み込まれてしまった肉体に。そして何より、泥によって今まさにほころびを見せつつある、自分の心の弱さに。
 『もうおうちかえりたい。そして温泉にでも浸かりたい』――冷たくネトネトした泥に包まれた肉体の奥、心の底に位置する内なる自分の正直な声を知覚したその時、エダは目をカッと見開き、バトルアックスをしゃにむに振り回した。その動きをトレースして、彼女の前面で泥よけになっていた『大地の巨人』も得物を振り回す。
 ドワーフならではの穴掘り技術とパワー、そしてエダをエダたらしめる気合いがカチリと噛み合って暴風を巻き起こした。たちまり泥濘は吹き飛び、彼女らの周りがきれいになった。
 しかし。
 それも一瞬のこと。生まれた空白を埋めようと、先の倍に値する量の泥がエダに向かい、その身を舐めんと襲い来る。
 泥の滴が垂れたレンズごしに泥流を睨み、彼女は瞳を熱く燃え上がらせた。

 気合いと力技で泥をねじ伏せ、前に進んだイヴとエダ。
 幾度となく泥に飲まれながらも前進を諦めず、足音をボテボテ鳴らしながらフロアのつなぎ目に到着したイヴとエダは、そこでようやく出会った。
 種族も年齢も違う二者だが、泥にまみれた姿は同じ。
 圧倒的質量をパワーで突破した猟兵二人の間には、言語化できないくらいにかすかだが、ちょっとした友情が生まれていたという。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ナハト・ダァト
[地形の利用][世界知識][情報収集]

をUCと併用して探索続行ダ。

先程助けた彼らモ、きっと先へ進んだだろウ。

私も、追いつかなければネ。



「ドウシテ、ミツケチャッタンダ……」
 緩やかに流れる泥の中で二人は向かい合っていた。
「イリグチチカクノココナラ、オクトチガッテアンゼンナノニ……」
 ブラックタール生徒の声が泥を揺らす。
「ボクハ、フタリトチガッテ、オクニススムツモリハナインダ……」
 泥溜まりは空気に触れる表面こそ冷たいが、内部はとてもぬくもりに満ちている。肌をなでる柔らかで暖かな流れにたゆたいながら、ナハト・ダァト(聖泥・f01760)はじっと生徒の告白を聞いた。
「ドロノナカハオチツク……ザツオンモ、ヒトメカラモ、ドロガスベテカラボクヲマモッテクレル」
 ナハトの身体内部から出る、生まれながらの光が泥中を優しく照らしている。それは彼の息づかい、鼓動に合わせてゆっくりと明滅した。
「ココガ、コノドロノナカガ、ボクノイバショナンダ……ココデシカ、ボクハイキテイラレナインダ……」
「だガ、猟兵がたくさん来タ。だかラ、この迷宮はもう消えてしまうんだヨ」
 その言葉に反発するように睨みつけ、わめきだそうとする生徒の機先を制して、ナハトは聖なる光を強めた。会ったばかりゆえに生徒の事情はわからなかったが、寄る辺なく、居心地の悪い思いをし続けていたのだろうことは理解できた。学院には彼の居場所がないのかもしれない。
「この迷宮はもう消えてしまウ。だかラ」
 だから、『帰る』という言葉だけは避けた。
「行こウ。私と一緒ニ」

 差し出した手を生徒は握った。そのままうつむいている彼を、ナハトは力強く引き上げた。
 泥から上がった瞬間、肌に冷たい風を感じた。頭から肩から泥の滴がしたたり落ち、泥面を揺らし、やがて進む道に泥の筋を作る。
 猟兵の自分が彼と一緒にいられるのはダンジョンの外、せいぜいが学院の入り口まで。自分は少しでも彼の手助けになれただろうか、もっとできることはないのだろうかと、ナハトは考えながら歩いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『フラスコスライム』

POW   :    スライムブレス
【ねばつく液体のブレス】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    スライムバイト
自身の身体部位ひとつを【奇妙な獣】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    フラスコアブソープション
小さな【自分のフラスコ】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【フラスコ空間】で、いつでも外に出られる。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


正解の道を進んだ先、いよいよ泥流は勢いと量を増して侵入者を歓迎してくれる。
 足場は限りなく少なくなり、フロアを満たした泥流は良くて腰上まで掴み、悪くすると底なしの箇所もある。
 さらに、ここから先は『フラスコスライム』の群れと遭遇することも意識しないといけない。
 とはいえ、こんな悪条件であっても、猟兵ならば問題なく実力を発揮できるだろう。

 ――つむじまで泥にまみれる覚悟さえあれば。
エダ・サルファー
多い!想定より泥がだいぶ多い!
もうつま先から頭の天辺まで全部泥に沈んでるっちゅーんじゃー!
そんな所へフラスコスライムの群れ!?
もう、泥もスライムも一緒くたに聖拳突きで掘り進んでやる!
泥はトンネル掘りの要領で、スライムは格闘でぶっ飛ばす!
私の拳で泥ごとぶっ飛ばされたくなかったら道を開けろやー!

……一通りフラスコスライムの出現が収まったら、警戒しながら泥を泳ぐように進むよ。地面に足をつけるのは諦める方向で。
罠がないか、先行してる学生たちがいないかなどを目視で確認しつつ、追加の雑魚や見えない罠に遭遇しないよう祈りつつ、慎重に進むよ。
まあ、最後は力と気合でなんとか乗り切ろう。



「(多い! 想定より泥がだいぶ多い!)(もうつま先から頭の天辺まで全部泥に沈んでるっちゅーんじゃー!)」
 と、嘆きの雄叫びを上げたかのように、エダ・サルファー(ドワーフのクレリック・f05398)の頭上で泥がゴポゴポ波打った。
 持ち前の怪力で泥の海を泳ぎ進むエダの身体の中で、泥にまみれていない箇所はもはやない。息継ぎの際に浮上するたび、ブラックタールもかくやといった立派な泥シルエットが現れる。視界も眼鏡も隙間なく泥に汚されているが、武術のキレと気合いの力でうまいこと前に進んだ。

「(来たか)」
 泥中に伝わる微細な振動を肌で感じ取り、エダは敵の接近を知る。
 前方に『フラスコスライム』の群れ。泥のダンジョンにありながら、己が身を器物で守っている卑怯者たち。
 エダが泥面に浮上した瞬間、フラスコスライムたちは彼女めがけて粘つく液体のブレスを放った。
「くらえ必殺! 聖拳突きぃっ!!」
 すかさず拳で迎え撃った。
 『泥もスライムも一緒に吹き飛ばしてやる』という、確固たる祈りを込めた愚直な一撃。泥面を掻き分けるように打ち込まれた突きが、たちまち泥を波立たせ、巨大な津波となってフラスコスライムらに襲いかかった。
 一斉に放たれて大質量となった粘つくブレスも、泥の大津波の前にあえなく飲み込まれて消えた。フラスコごと押しつぶされ、本身が泥と溶け合いながらやられるオブリビオン。
「私の拳で泥ごとぶっ飛ばされたくなかったら道を開けろやー!」
 泥の飛沫が口に入るのもいとわず、気炎をあげてエダはダンジョンを進んでいく――。

成功 🔵​🔵​🔴​

アイリス・スノーキャッスル
WIZをメインに行動いたします

今回は集団戦との事ですから、敵が一体気絶か倒れたら【冷徹な十指の操屍】を使い手駒を増やして戦います。

今回は致し方ありませんから、人形から降りて人形も使いながら戦って行きたいと思いますが……流石につむじまでは御遠慮したい所存です

念のため私は後ろに下がりますが、操る私が沈んでは話になるませんからね
全体把握と指示そちらを私が、先行は人形兵を、真ん中に人形の布陣でいきます

足場や休憩できる場所ではできる限り休み、体の異常がないか確認しつついきます

これほど長時間泥にいることなどありませんでしたから、慎重に行きましょう



波が落ち着き、迷宮に平穏が戻ったころ。猟兵がもう一人、この道に踏み入った。
「その死は私が背負っていこう、今は束の間の戦場へ」
 アイリス・スノーキャッスル(囁く者・f03970)の呟いた言葉をきっかけに、泥に浮かぶフラスコの破片が震え、集まり、練られて、新たに生まれ変わる。
 『冷徹な十指の操屍』。死んだオブリビオンと泥の混合物でしかなかったそれが、いかなる魔術の作用か瞬く間に人型をなし、職人の技を感じさせるほどに精巧なからくり人形へと変化した。そして、その全てがアイリスの忠実な手駒として、彼女の下知を待って頭を垂れる。
「慎重に行きましょうか。こんな場所に、長く身を置いたことなどありませんし」
 最後尾のアイリスを守るように、彼女の操る人形と『新入り』たちとが陣形を組んだ。泥濘を行くからくりたちの行進は、オブリビオンと遭遇するたびに長く、厚く、より盤石になっていった。
「まだ残っていたのですね」
 泥面より、ひび割れたフラスコスライムが飛び出た。アイリスの生命力。それを糧にして傷を癒やさんと、漏れた身体を獣のあぎとへと変化させて迫った。
 しかし、その牙は彼女の衣服にさえ触れることなく――。
「その死は私が背負っていこう、今は束の間の戦場へ」
 人形に阻まれ、押され、潰され、沈められて、彼女を守る新たな兵士へと姿を変えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

佐藤・和鏡子
普段から泥まみれになっても簡単に洗える服装(スクール水着とセーラー服の上着に看護帽)なのと、小さく軽い体を生かして泥の海を泳ぐような感じで進みます。
『……何処か体を洗えるような水場があればいいのだけど』
ガジェットショータイム(救急箱型ガジェットから色々な物を出して攻撃)に属性攻撃や二回攻撃を乗せて攻撃します。
(弱点を戦闘知識や情報収集で調べてより有効に打撃を与えられるように狙います)



「あらあら。大盛況」
 一つ、二つ、三つ四つ五つ……佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)を取り囲むように、フラスコスライムが姿を現した。
 泥の海に浮かびながら、和鏡子は思案を巡らせる。敵は自分をぐるり囲んで、じわじわ包囲を狭めている。攻撃を避けるための遮蔽物はない。足の下は泥の海。一対一なら負けないが、全部を一度に相手取るのは危険だ。

 ――という思考の最中、フラスコスライムの蓋が爆ぜて中身がほとばしるのが見えた。外気に触れた粘体は見る間にかたちを成し、和鏡子めがけてその身を突進させる。
 瞳無きのっぺりとした頭部、その口内に四重の牙を生やした奇妙な蛇の五月雨が和鏡子に喰らいつかんと迫った。音で、匂いで、気配で、全方位から同じ物をけしかけているとわかる。
「これだけ元気なら、手当ては必要ありませんね」
 和鏡子は底なしの泥に潜った。
 スクール水着の上にセーラー服。常日頃から『汚れてもいい服装』をしている少女に迷いはない。何かと汚れがちで肉体的にもハードな看護を生業としている彼女は後れを取らない。小さい身体に力を込めて、頭から深く深く一直線に和鏡子が潜っていくうちに、ほぼ同時に殺到したはずの蛇頭たちは隊列を乱していた。
 すかさず反転。
 胸に抱いた救急箱型ガジェットを開き、細長い蛇を仕留めるにふさわしい道具――『鉗子』を射出する。
 大小さまざまな特製鉗子がばちんばちんと固く蛇の腹を、首を、その顎を止めていった。
 そして浮上。
 全ての顎門を封殺され、しかし泥中に放り出した『中身』を引っ張り戻すこともできず、無防備な姿をさらしたフラスコスライムの群れ。的と化した奴らをめがけ、泥面より飛び出した和鏡子は再び『鉗子』を射出した。

「……何処か体を洗えるような水場があればいいのだけど」
 特大サイズの鉗子がフラスコスライムらの外殻を挟み砕く音を背に聞きながら、和鏡子は泥の海を泳ぎ進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大豪傑・麗刃
【鬼神軍】のみんなが苦戦していると聞いてスカッとさわやかに来たのだ!
(……『助っ人』?)

泥なんてわたしには全く問題ないのだ!
とはいえ足をとられないように細心の注意を払うのは
(ばたっ どばん)

……
っと。今のは練習なのだ。次が本番と(つるっ ざばん)

……
い、今のは悪い見本なのだ!つつ次こそは(どぼん)

……
そ、そ、そなコトゆーコは麗ちゃんぶつじょ!!

(以上、変態的衝動発動のためのネタ行動?)

とりあえずスライムであってもたぶん斬ればなんとかなるのだ!
右手に刀、左手に脇差(と呼ぶにはちょっと大きい剣)で二刀流で斬りまくる!たまに両手持ち斧振り回す!



「私のどろどろ愛され道も、ここまで……ですわね」
 持ち前の愛されテクニックでオブリビオンを誑かしたりうっちゃらかして歩を進めてきた『サークルクラッシャーのオディール』。しかし、彼女の命運は今まさに尽きようとしていた。
 貢ぎ物のファー付きゆるふわガーリィロッドは折れ、吸い付くようなもち肌手のひらは汚泥にまみれた。キュートな魔術で心揺さぶることも、過激なボディタッチで欲望を掻き立てることも、最早かなわない。
「命乞いはしないわ。私のこの身が欲しいのなら、ひと思いに奪いなさい!」
 両手を広げ、啖呵を切ったオディール。彼女めがけて四方八方からフラスコスライムたちの魔の手が迫る。あわや惨劇が、と思われた瞬間――。

「苦戦していると聞いて、スカッとさわやかに来たのだ!」
 ――男が、現れた。

「むむ。ここらは特にヌルヌルベチョベチョしている。でも、泥なんてわたしには全く問題ないのだ!! とはいえ、足をとられないように細心の注意を払うのは」
(ばたっ どばん)
「……っと。今のは練習なのだ。次が本番と」
(つるっ ざばん)
「……い、今のは悪い見本なのだ! つつ、次こそは」
(どぼん)

「遊んでないでさっさと助けんかーーーいッッッ!!!」
 吼えるオディール。
「そ、そ、そなコトゆーコは、麗ちゃんぶつじょーーー!?」
 雰囲気的にSDサイズっぽくなった大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)が泥を飛び出してコマ、もといフロア内を縦横無尽に跳ね回る。その変態的機動はすでに常人の域を超えており、達人、超人、偉人に外人……ついには変人、奇人に至り、今や完全に人類の埒外にあった。
 そして麗刃は二刀流でフラスコスライムらをズバズバ全て切り倒し、最後には振り下ろした両手斧の柄を足場に起立した。腕を組み、キリッとした顔で残心。顔面の圧が強い。

「……アレは一生かけても攻略できないわね」
 百戦錬磨のサークルクラッシュテクを持ってしても、ヒビ一つ入れられない――そんな強固な集団を形成すると確信させる、麗刃の風格。麗刃の振る舞い。麗刃の顔面。オディールはその細胞の一つ一つから眼前の男に負けを認め、おとなしく迷宮を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神羅・アマミ
妾、お人形のように育てられたから汚れるのは苦手だにゃー。
そして、妾が単なるパワーバカではなく動けるパワーバカであることを証明してやろうぞ!
………ん?

泥が嫌なら可能な限り踏まなければいいのじゃ。
コード『箱馬』により空中を自在に蹴り上げ、その華麗なる動きでスライムどもを翻弄してやろう!
応用として「右足が沈む前に左足を出す」アレで泥の上の早駆けや、着地時はフラスコを狙い蹴り上げることで攻撃と再度の跳躍を狙ったりできないもんかのー。

あれこれ駆けずり回った挙げ句、結局はドロドロになるかもしれんが、要するにオブリをとっちめればいいんじゃろ?
最後は腕力にモノを言わせ泥仕合に持ち込んでやんよ(パワーバカ)!


ニア・スクニロトマ
【Aチーム】
アルダワはあたいの母校だからね。みんながいやがるようなことも進んでやるよ。

【地底怪獣キグサック】の着ぐるみで出発! これでドロで汚れても平気!(たぶん)
そしてあたいはドロの中に隠れつつ、ユーベルコードで巨大キグサック(2メートルを超えるんだ! すごい!)を召喚。
一緒にフラスコスライムと叩かせるのはもちろん、仲間(レイラ/f00758、アマミ/f00889)の足場になる。
さすがにいつものように、とはいかないけど、泥で動きにくくなるのはだいぶ軽減されるはず!
(キグサックはモグラの頭に掘削ドリルをつけたような怪獣です)


レイラ・ツェレンスカヤ
【Aチーム】
うふふ、どろんこね、どろんこなのだわ!
汚れてしまうのも楽しいでしょうけれど、動きづらいのは大変かしら!

レイラはニアの背中に乗って戦うのだわ!
小さな小さなニアとレイラだけれど、ニアの怪獣姿なら、泥に埋まらないかしら!
あら! アマミも乗るのね!
ふたりも乗ってニアは大丈夫かしら

волшебство・громなら近付かずに戦えるのだわ!
さあ槍がなくなるまでにどれだけ倒せるかしら!
血が補給できないのは残念だけれどあのフラスコを割ればきっと無様に飛び散ってくれるのだわ!

フラスコの中に吸い込まれてしまったら大変なのだわ!
レイラは触れないように遠くから攻撃するかしら!



●地底怪獣キグサック、登場
「妾、お人形のように育てられたから汚れるのは苦手だにゃー」
 口を尖らせて不満を垂れる、神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)。ため息をついた彼女の目の前には、泥の湖と表現するのが正しき平面が広がっていた。その部屋は広く、天井は高く、ここが地下であることを忘れさせるほどだった。
「汚れてしまうのも楽しいでしょうけれど、動きづらいのは大変かしら!」
 幸いにして、泥はレイラ・ツェレンスカヤ(スラートキーカンタレラ・f00758)の小柄な体躯でも足が着く程度の深さに過ぎないが、それでも服に身体にまとわりついて自由な動きを阻害するだろう。
「そこでコイツの出番ってわけさ……さあ二人とも遠慮はいらない。あたいに乗っていきな!」
 アマミとレイラが振り向いた先にいたのは、ニア・スクニロトマ(着ぐるみ怪獣スクニロドン・f06973)ではなく――。

 『地 底 怪 獣 キ グ サ ッ ク』 だ っ た !!!

 土中に豊富に含まれる栄養素や各種ミネラル、そして命を育む母のごとき地熱。大地の慈愛を一身に受けて巨大化した地底怪獣キグサック(の着ぐるみ)。モグラのようなちょっぴり愛嬌あるかんばせに立派なドリルを一本立てて、キグサックは雄叫びをあげた。次いで、あごを振って背中を差し出す。
「レイラは背中に乗って戦うのだわ!」
「妾もライドーンなのじゃ!」
 勢いよく飛び乗ったレイラとアマミの重みでキグサックは沈み、二足歩行から四つん這いになった。胸が潰されてぐふと息が漏れたが、それをもニアはシームレスに鳴き声へと変換する。ここにいるのは『着ぐるみ怪獣幼女おばさん』ではなく、あくまでも『地底怪獣キグサック』なのだ。だから、『あたいじゃなくてユーベルコードで出したキグサックのほうに乗ってくれ』なんて野暮は、今のニアにはとても言えなかった。

「これで半分、といったところ……と、ニアは大丈夫かのー?」
「最初はあんなに元気に鳴いていたのに、途中からとっても静かなのだわ!」
 反応を確かめるようにゆっさゆっさと体重をかけるレイラに合わせて、キグサックもといニアから蛙を潰したような音が漏れた。少し重すぎた荷物、そして一息に進むには長すぎた旅程を前に、キグサックはキグサックを維持することができないレベルにまで疲労を溜めていた。何より、ただ進むだけではせっかくのギミックを披露できず、楽しみがない。ニアのモチベーションはすり減る一方だった。

 ついに歩みを止めたニア。
 仲間たちが彼女に声をかけようとした瞬間。
 泥の湖面が一斉にさざめき立った。

 粘つく泥を引いて姿を現したオブリビオンたち。
 害意に満ちた敵の群れが少女らを十重二重に囲む。
 それはフロアを覆い尽くし、フラスコスライムの森を形成した。


●フラスコスライム対地底怪獣(と猟兵たち)
「囲まれ……わ、ドリル、ドリルがあっぶな!!」
 掴んでいたドリルが急に回って手を放したアマミ。それを振り落とす勢いで立ち上がったキグサック。雄叫び。溜まったフラストレーションをぶつけるように生き生きと威嚇する地底怪獣の背中にしがみつきながら、レイラもまた、その目を爛々と輝かせていた。
「『囲まれた』のかしら? いいえ、違うのだわ……これは『招かれた』のじゃないかしら!!」
 もはや泥のフロアではなく『フラスコスライムのフロア』となった泥面を揺らめかせ、猟兵らの前にうぞうぞと集結する敵たち。蓋を弾き飛ばし、あふれ出たその身を奇妙な獣の頭部へと変化させる。
 一つのあぎとが次の首を食み、その首に連なる頭がまた次の首に食らいつき……点であった数多のフラスコスライムが糸となり、糸が紡がれて面となり、ついには人型の、天井に頭頂を擦るレベルの、凶暴で巨大な一体のオブリビオンと化した。
 不格好な長さの腕が水平に振るわれて、猟兵たちに襲いかかる。まだ遠くにあると思われた腕は、構成要素たるフラスコスライムの伸びに合わせてしなり、末端を鞭のようにして高速で迫ってきた。もちろん、その先端には全て牙を生やした口たちがある。
「――――――――!!!!!」
 ひときわ気合いの入った雄叫びとともに、ニアが泥面に伏せた。そして、上体を持ち上げた瞬間、彼女の前に現れたるは、真なるキグサック――ワン・モア・ジャイアント・シングス――当社比二倍の大きさになった若干2メーターの地底怪獣は仁王立ちとなって、巨大オブリビオンの一撃をしっかと受け止めた。
「妾が単なるパワーバカではなく、動けるパワーバカであることを証明してやろうぞ!」
 ニアから飛び降りたアマミが泥面を駆け、キグサックと拮抗しているオブリビオンの腕に飛びかかる。右足が沈む前に左足を出し左足が浸かるより早く右足を進める華麗な歩法によって、泥沼の足元でもしっかり大地を踏み抜いて跳躍。重力を伴った、戦闘用和傘による、鋭くて重い唐竹割りを浴びせた。手首から切り落とされた巨大な腕。
 しかし、それは死んでいない。二つの断面からフラスコスライムが繊維のように身体を伸ばした。牙を生やした頭部をもって攻撃直後のアマミを飲み込み、肉を、生命力を削り取っていく。
「たいへんたいへん! このままじゃ血がたくさん出ちゃうのだわ!!」
 その身を縦横に振るって幻影を操るニアの背から、レイラが紅色の槍群を射出した。鮮血の色をした槍、いちどきに百を超える量が放たれるそれはもはや暴虐の嵐となって、アマミを取り囲むフラスコスライムらを穿って削って消し飛ばした。
 巻き上がった泥の雨。開いて盾にした和傘に泥とスライムの残滓、さらに己が血を滴らせたアマミはゆっくりと口角を上げ、獰猛な笑みを見せた。
「死ね、死ね、死ね、死ねーッッ!!!」
 血と闘争の熱に浮かされた頭のまま、オブリビオンに肉薄し、その足元から喰らいにかかる。得物を、腕を、足を、角さえも駆使して、壁面のごとき物量で迫るフラスコスライムの群れと血を振り乱して喰らい合った。空を蹴って自在に動き、その速度と角度を武器に巨大オブリビオンの足から肉を食み取っていく。
「козинакみたいで美味しそうだけれど、飾りがないのは寂しいのだわ」
 片足を削り取られ、やや姿勢の下がった巨体めがけて、レイラが再び槍の雨を浴びせた。オブリビオンの体表に突き刺さった槍は後続の槍を受けてさらに深く突き立ち、膨大な数の圧力をもって巨大オブリビオンの身を奥に奥にと抉っていく。その猛烈な勢いに押されて身体を揺るがせた次の瞬間、フラスコスライムの集合体は、眼なき顔でレイラとニアをにらみつけた。
 上半身の半ばまでを腕に変えて、『スライムバイト』の濁流が叩きつけられる。鮮血の槍群を正面から押し返した牙持つ頭部たちに、レイラはたちまち弾き飛ばされた。一つの頭部が食らいついたその尻にあやまたず次弾が押し込まれる暴風の中で、少女は突き出した腕を折られ、転がる。
「痛いのだわ! 痛いのだわ! もったいないのだわ!!!」
 肉が裂けて白い骨が見えた傷口を咥え、吹き出る血すらすすり飲んで槍を撃ち出すレイラ。傷の深さに比例してその勢いと量は増していった。
 猟兵と巨大オブリビオンとの殺し合いは、どんどん泥仕合の様相を呈していく。

「――――――――!!!!!」
 最初に崩れたのは、キグサックでありニアだった。
 猟兵たちの中でもひときわ派手に戦っており、特に攻撃が集中したのが仇となった。
 仰向けに転がされて無防備な首を露出したキグサックめがけて、巨大オブリビオンの腕が降りかかる。まずは地底怪獣を、そしてその主を圧殺せんと大群が迫った。

 しかし、一人に集中したぶん、残りの二人への攻撃が緩んだ。
「レイラ!!」
「アマミ!!」
 生まれた間隙を突いて、まずはレイラの放つ槍群が巨大オブリビオンを下から舐めるように襲った。そして、突き立ったレイラの血槍を楔のごとく足場に変えて、オブリビオンの胸あたりまでアマミは駆け上っていく。
 彼女の全身全霊の一撃が敵の中心を撃ち抜いた瞬間、その衝撃はオブリビオンの体内に残留する幾多もの血槍溜まりへと次々に伝播した。
 頭から足まで、内部で爆弾が炸裂したかのように弾け飛ぶ巨大オブリビオン。降り注ぐフラスコスライムの残滓。その雨と泥の狭間に倒れ伏しながらも、猟兵たちは三人で掴んだ勝利に笑みを浮かべた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『迷宮温室の女王』

POW   :    百裂蔓撃
【髪のように見える無数の蔓】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    捕縛液噴射
【腹部の食人植物】から【刺激臭のする液体】を放ち、【空気に触れると凝固する性質】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    女王の花蜜
レベル×5体の、小型の戦闘用【昆虫型モンスター】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠神楽火・夢瑪です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「葉っぱ、花びら、種に蜜……その身を構成する要素全てに高値が付くという、動くお宝。俺が求めていたのはお前だったのさ、『迷宮温室の女王』!」

 債務と責任から逃げる中で培った、泥沼を泳ぐテクニック。その神髄をもってフロアボスの前までたどり着いてしまった『多重債務の砂水』は、今が人生の絶頂と息巻いて相手を指さした。

 ――己こそが獲物であるとも気付かずに。
エダ・サルファー
……なんか時間感覚がおかしくなってるのか、ずいぶん長い間泥を泳いでた気がする。
そのせいか、ずいぶん成長したような気さえする……。
でもそんな長く辛い道中もお前さえ倒せば終わりなんだよ!
ここまでのしんどい思いをまとめてぶつけてやるから覚悟しろよ!!

というわけで真の姿開放!
私の動きに連動して動く巨拳を使い、泥を勢いよく泳いで近接!
そのまま巨拳を使った聖拳突きでぶん殴ってやる!
ここまでどれだけ泥を泳いできたと思ってるんだ!
こんな厄介なダンジョン作りやがって!
絶対許さんからな!

あ、たどり着いちゃってる学生は助けられそうなら助けるよ。
できることなら巨拳で掴んで、戦闘域外の泥に向かって放り投げておこう。



「……ずいぶん長い間泥を泳いでる気がする」
 エダ・サルファー(格闘聖職者・f05398)は泥の海に浮かび立ちつつ、これまでの旅路を反芻していた。
 体感にして数ヶ月。
 実感ならば年号が変わるほど。
 自分は一体、どれだけの時を泥の中で過ごしてきたのか。心にまとわりついた時の重みに頭が揺れた。

 平成から令和。
 バブル崩壊後の激動を経て、たどり着いた新たなる時代の開闢。
 日々の生活に追われて必死に生き抜いていたら、いつしかアラサーと呼ばれていた。冒険者として、中堅の働きを期待されるようになっていた。

 新人扱いされなくなったのはいつからだったっけ。
 さいきん実家帰ってない気がする。
 故郷のみんなはどうしてるだろう。
 迷宮勤務は筋肉痛と怪我ばっかり。でも、猟兵の仕事はやりがいがあります。
 過酷なシフトで身体と心はボロボロ。だけど、お肌は泥でツヤツヤになったよ!

 ――ああ、会いたいなあ。みんなに。

 頬を伝う一筋の流れ。涙が泥面に落ちた振動を受けて、エダは身に覚えのあるようなないような夢から覚醒した。



「ここまでどれだけ泥を泳いできたと思ってるんだ!」
「こんな厄介なダンジョン作りやがって!」
「絶対許さんからな!!!」
 吼える彼女の瞳がしっかと捉えるは『迷宮温室の女王』。この泥の迷宮を作りし諸悪の根源だ。
 温室の女王が放った無数の蔓、髪のように細くしなやかなそれがエダの身体をくびり、打ち、穿とうと猛烈な勢いで迫る。

 対する彼女の答えは“拳”だった。
 握りしめた必殺の聖拳突き。
 確かにドワーフは頑強だ。だが、105cmの矮小な肉体の一撃など、迷宮の主たる女王が繰り出す悪意の奔流に比べれば木の葉のように軽く見える。『迷宮温室の女王』が勝利を確信し、薄く口角を上げたその瞬間――。

 万感の思いを込めた右ストレートが蔓を割き、泥が砕け、風は唸り、天は啼き、大地は震え、星々は煌めいて……要するに、拳圧だけで眼前の大オブリビオンに大打撃を与えて巨体を揺るがせた。

 たじろぐ迷宮の女王。
 そしてエダは距離を詰める。

 彼女は永い永い泥中水泳によって、とてつもない成長を遂げていたのであった。
 事ここに至っては時の長短の真実など関係ない。彼女にとって『長かった』というだけで急成長の根拠には事足りる。考える頭、感じる心があるから猟兵は強いのだ。

「ここまでのしんどい思いをまとめてぶつけてやるから覚悟しろよ!!」
 一歩一歩、近づいていくエダ。
 嘘偽りのない想いで固く握られた本物の拳が肉を直接叩くまで、あと少し――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイラ・ツェレンスカヤ
素敵なお顔をしているのだわ!
レイラ、アナタみたいに醜く歪んだ可愛い顔が好きかしら!

レイラは多重債務の砂水を守るのだわ! 敵の蔦が来たら血槍で片っ端から斬り落とすかしら!
斬って斬って、うふふ!
長さが欲しくなったら、レイラのお腹を刺して血を補充するのだわ!
レイラが怖いかしら!
もっと怖がってくれて良いのだわ、だって血と恐怖を支配するのはレイラなのだもの!

なんで助けてくれたのかって?
だってアナタ、債務のせいでとっても無様で可愛らしくなりそうなんだもの!



「嬢ちゃん……」
 殺される運命にあった憐れな男を救ったのは少女だった。
 腰を抜かした砂水の目線からもなお小さく写る体躯。彼女が血槍を振るうたび、泥がこびりついた銀髪が揺れた。その髪も、肉も、オブリビオンによる圧倒的密度の暴力の前に削り取られていく。

 レイラ・ツェレンスカヤ(スラートキーカンタレラ・f00758)は、砂水の立場を肩代わりして血を流していた。

「素敵なお顔をしていたのだわ! レイラ、アナタみたいに醜く歪んだ可愛いお顔が好きかしら!」
 己が血雨で泥を叩きながら砂水を守る少女。その小さな背中ごしに発された言葉を砂水は自身への叱咤激励、ひいては『これ以上は持たない』という弱音の発露と受け取った。
 自分勝手な咀嚼をした男はかすかな良心と思い切りの良さをテコにして、助太刀するために立ち上がった。立ち上がったことで射線が通った。

 ここぞとばかりに伸びて獲物を仕留めんとする蔦。
 それをレイラは身を挺して止める。
 貫かれた肩口。吹き飛ばされる中で繰り出したひと突き。
 常ならば届きもしなかったろう苦し紛れの一手だが、流血の分だけ長く強くなった血槍は迷宮の女王を穿った。

 一時の引き分けを勝ち取った代償に吹き飛ばされた少女。レイラをかろうじて受け止めた砂水は、当然のように自然と少女を気遣って顔をのぞき込み、まじまじと顔をのぞき込まれた。

「やっぱり無様で可愛らしいのだわ! もっと怖がってくれるともっと張り合いが出るのだけれど!」
 金の瞳を爛々と輝かせて見つめてくるレイラに魅入られたように、砂水もまた、目を反らせぬまま瞬きを止める。

 『この子は回りくどいことなんて一度も言っていない』。

 全てが正直な言葉だったのだと気付いた瞬間、先ほどまで儚げで健気に感じていた小さな身体が、質量はそのまま畏怖の根源へと意味を変えた。

 腕に抱いた少女から逆さまに伸ばされた手指が、男の顎に届き、頬をなぞり、下瞼に着いた。小さな指の小さな爪が、皮膚の奥にある砂水の眼球の感触を愛しむようにゆっくりと動く。けして男の眼鏡に触れないように、爪で慎重に引かれた曲線が薄い切り傷を作った。痛みに勝る恐怖に揺れる砂水の瞳と、その下にできた紅のラインとの案配に満足したレイラはほんの少しだけ目を細める。



  恐怖はね、生きてる限り味わえるからおトクなのだわ。
「Страхов много, а смерть одна.」



 ついに心の閾値を超えた男は少女を投げ出した。

 宙に放り上げられながら、血と恐怖の支配者に覚醒するレイラ。
 新鮮な恐怖を糧に降り立った大魔王は、さらなる恐怖と血を求めてオブリビオンへと躍りかかる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大豪傑・麗刃
ああもう。すっかりびっちょんびっちょんのどろどろなのだ!なんだかわからないけどおまえのせいか!違う気もするけどそういうことにしておくのだ!
わたしは怒ったのだー!!

(スーパー変態人発動)

んで右手に刀2本!左手に脇差(と呼ぶにはちょっと大きすぎるバスタード・ヒーローソード)2本を持ち、思いっきり叩きつけてやるだけなのだ!蔓だか亀だかも、変な液体も全部斬ればいいのだ!変な虫なんかムシすればいいのだ!できなければ斬ればいいのだ!斬りきれなければ……きっと誰かカバーしてくれるだろう!わたしもみんなの死角からくる攻撃カバーとかするのだ!

……
ところで本当にこいつは高値がつくのか??


グロリア・グルッグ
「停滞した過去(案件)を未来(解決)へと導くためにッ! 私は来たッ!」
多分、大豪傑さんがいると思いますので組んだり組まなかったりご自由にどぞ。

戦闘はレギオンを展開して敵の昆虫型モンスターにぶつけます。
武器改造からのハッキングでレギオンの各個体にはやられた時の自爆装置(雷)を搭載しておきますね。
格闘で倒させたり自爆で道連れにしながら昆虫型モンスターを漸減。
私は電脳魔術で戦場の計算を行いながらサイバーホークとイーグルを上空に飛び回らせ、これまた武器改造を施した攻撃をしかけます。
雷属性やマヒ攻撃、または破魔・呪殺といったものから有効そうな攻撃を分析してみせましょう。

アドリブなどご自由に。



「わたしは怒ったのだーーー!!!!!」

 泥を跳ね上げて、大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)が吼えた。
 マッドフロアダンジョンに突入してから経ったのはせいぜい数時間……のはずなのに、まるで半年以上の長きに渡って釘付けにされたような圧倒的『待ちの苦痛』。
これまでの激戦の余波ですっかりびっちょんびっちょんのどろどろになっていた不快感も手伝って、彼は、ついに、覚醒した。『スーパー変態人』へと!

「わたしは怒ったのだーーー!!!!!」

 繰り返す。
 心に溜まった時の淀みを吹き飛ばすために。
 泥濘の如く長く続いた、文字通りの泥仕合に決着をつけるために。

 怒髪天を衝くといった具合にトキントキンに逆立った髪は金髪。
 その全身よりあふれ出る光輝も金色。
 もろもろの事情合わせて戦闘力がn百倍になった麗刃が戦場を駆けた。
 迷宮の女王が放つ無数の蔦の鞭も、恐るべき捕縛液も、従えし昆虫型モンスターも……怒れる男の敵ではなかった。
 ことごとくが右二本、左二本の四刀流の前に切り裂かれたり無視されたりして泥に沈んだ。

 ――『スーパージャスティス』と違って空を飛ぶことはできないが、戦闘力なら遜色なし。そう信じたいだけの凄みがあった。


 だが。
 麗刃の覚醒には一つだけ弱点があった。
 それは、『動きが見破られやすい』こと。
 

 無視してオッケーと思った虫が泥から飛び出した。
 合わせて、泥の底を這わせた奇襲の蔦が全方位から麗刃を襲った。

 このままでは猟兵の敗北……つまり未来への扉は閉ざされてしまう。
 オブリビオンの勢い如何によっては、この事変が未完のまま終わってしまう可能性すらある。

 勝利の予感。
 迷宮の女王が口角を上げた。
 その刹那。

「停滞した過去を未来へと導くためにッ! 私は来たッ!」

 グロリア・グルッグ(電脳ハッカー・f00603)の操る、小型の戦闘用機械群が昆虫らを叩き落とした。さらに、蔦に対しても自爆攻撃を試みて一本残らず燃やし尽くす。

「このオブリビオンは『燃焼』に対する脆弱性を持っています。さらに、身体下部を中心に打撲によるダメージあり。右側肩部から腹部にかけては無数の刺突痕……うまく取り繕ってはいますが、ダメージは確かに蓄積しています!」

 『サイバーイーグル』と『サイバーホーク』。戦場上空に巡回させた二体の端末から得た多角的な情報を解析、統合。グロリアは高速演算によって、取るべき最適解を提示する。

「しぶとい相手ですが、細かく切り崩していけば問題ありません! カバーは私がしますから決めてください!! 大豪傑さん!!!」

「わかったのだーーーーーッッッ!!!!」


 大跳躍からの大上段。
 剣と刀と刀と剣、都合四本の軌跡が重なり――。


 迷宮の女王の身体は、唐竹割りに大きく裂けた。











※※※決着したかのような勢いで恐縮ですが、オブリビオンはかろうじてまだ生きています。※※※

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


※トミーウォーカーからのお知らせ
 ここからはトミーウォーカーの「一本三三七」が代筆します。完成までハイペースで執筆しますので、どうぞご参加をお願いします!
エダ・サルファー
一発殴ったので納得……してないからな!
そもそもちゃんと殴れてないし!
もはやいつからこの泥中にいるんだか定かじゃ無いが、お前をぶっ飛ばさずに終わる気なんぞさらっさら無いからな!
もう他のことは知らん!置いとく!
絶対お前をぶっ飛ばす!!!!!

という訳で引き続き真の姿のまま近接!
次は聖職者式ドロップキックをお見舞いしてくれるわ!!
最初は恨みがあった訳じゃないが、今は割と恨みがあるんじゃい!!
あん?聖職者が言うこととしては不適切?
うるせー!!それくらいこのダンジョンに辟易してんだよこっちは!!
もはや跡形も残すつもりは無いからな!!
一片残さず燃やし尽くして骸の海に追い返してやる!!
私の怒りを思い知れ!!


グロリア・グルッグ
「停滞した過去を未来へと導くためにッ! 私は来たッ! ……あれ? さっき同じことを言ったような……はッ! まさかこれはッ! 気をつけろー! オブリビオン攻撃を受けているッ!!」

時間をすっ飛ばす系の攻撃を受けたっぽい感じに注意喚起しつつ、私はこの長い戦いの中で戦車に目覚めたスタイルで戦います。
二足歩行型戦車エンジェルに騎乗し、ガン積みした戦車ミサイルランチャーからミサイルの一斉発射で爆撃してやりましょう!
ミサイルには電脳魔術によるハッキングをしかけ、超高精度の誘導弾として敵にぶつけてやります。
一斉発射の後は天使の抱擁を使ってミサイルの補充をし、さらなる爆撃で徹底的に蹂躙しますよ!



 麗刃の大上段からの剣戟により真っ二つに引き裂かれた迷宮の女王。
 誰もが、猟兵達の勝利を疑わなかった。
 しかし、真っ二つにされた筈の迷宮の女王の右半身と左半身が、泥濘の中で蠢いていた。
 その断面から体液をまき散らし、泥と交じり合いながらも、生にしがみついていた。

「アアァゥ……」
「ダ……カ……」
 迷宮の女王の右半身と左半身は、失われた半身を探し出そうというのか、泥濘を這いずり腕を伸ばす。

 そして、左半身の伸ばした腕が、拳に触れた。
 歓喜を覚えたようにわなわなと震える左半身は、縋りつくように、その拳へとすり寄ったが……、

「お前が死んでなくて嬉しいぜ。さっきは、ちゃんと殴れなかったからな。さぁ、ぶっ飛ばされろ!」
 その巨大な拳の持ち主、エダ・サルファー(格闘聖職者・f05398)によって、大きく吹き飛ばされた。
 左半身が触れた拳は、エダの真の姿の拳であったのだ。

 吹き飛ばされた左半身が地面に衝突するよりも早く、大人な姿となったエダが泥を蹴って先回りし、更なる拳で殴打する。

「さっきの拳は、泥にまみれた私の怒り。そして、この拳は、泥にまみれ続けた私の恨みだ!」
 この泥の迷宮で過ごした陰鬱な時間の鬱憤を全てぶつけるように、エダの拳が唸りを上げ続け、そして、迷宮の女王の体の体が惜し潰れていく。
 そして、止めとばかりに放たれた聖職者式ドロップキックにより、迷宮の女王の左半身は、一片残さず燃やし尽くされたのだった。

 一方、同じく泥を這いずり蠢いていた右半身の前には、二足歩行戦車に騎乗したグロリア・グルッグ(電脳ハッカー・f00603)が立ち塞がっていた。
「停滞した過去を未来へと導くためにッ! 私は来たッ! ……あれ? さっき同じことを言ったような……はッ! まさかこれはッ! 気をつけろー! オブリビオン攻撃を受けているッ!!」
 そもそも、自分は遂先ほどまで、戦車になど乗っていただろうか?
 目の前の迷宮の女王は既に瀕死であったが、時間系或いは精神系の魔術が使用された痕跡を感じて、グロリアは警戒度をMAXまで引き上げていた。

「戦車ミサイルランチャー・ミカエル、同じくガブリエル、同じくラファエル、オールウェポンフリー。全弾一斉発射!」
 計12門のミサイルランチャーから、多弾頭ミサイルが一斉発射される。
 圧倒的な爆発力に加え、全てのミサイルが電脳誘導されている為、万が一迷宮の女王が時間系、精神系魔術を使用したとしても、防ぐことなど不可能であろう。
 だが、未確認の脅威に対してグロリアは、この程度では止まらない。

「全弾目標に命中を確認、残存敵確認できず。天使の抱擁発動、全ミサイル充填、第二射発射!」
 再び放たれるミサイルランチャー。
 もはや、目標など存在していなかったが、圧倒的な爆発力が、泥濘の迷宮を揺るがした。

「全弾目標付近に着弾、爆発により状況確認困難。天使の抱擁発動、善ミサイル充填、第三射発射!」
 三度放たれる一斉砲撃。
 それは、殲滅であり蹂躙であり、オーバーキルであったろう。

 更に更に、四度目の砲撃を行おうとしたグロリアだったが、
「コラやりすぎだ! 落ち着け、砲撃娘!」
 爆発の余波で泥だらけになったエダに蹴りを入れられて、砲撃を中止した。

 もはや、迷宮の女王の欠片の一片すら、そこには残っておらず、長い長い泥濘の戦いは終結を迎えたのだった。

「長い戦いだった、だが、私達は勝利した」
「再びこのような惨劇が起こらないように祈りましょう」

 グロリアは、真の姿から子供体型に戻ったエダを戦車に乗せつつ、迷宮を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年01月16日


挿絵イラスト