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滅びゆく村を救え

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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「ふざけるなっ!奴らまた生贄をよこせだと!?」
 さびれた小さな集落の古びた家。一人の青年が声を荒らげた。
「つい半年前にハンスの所から出したばかりじゃないか!」
「今年は作物の出来が悪く貢ぎ物が少なかった。その償いであると騎士様は仰せだ。」
 年老いた村長は噛んで含めるように青年に告げる。
「元はといえば、その騎士様の主が遊びで畑に火を放ったせいだろ。それに次に生まれる子供って事は。」
 青年は傍らの妻に目を向けた。大きくなった腹部に宿る自身の子供を思うように。
「分かっている。ワシとてお前の子が……孫の姿が見たい。だが次がお前の家だからこそ断れぬのだ。
 今まで人の子供を捧げさせておいて、自分の孫を捧げられないとは言えぬ。」
 村長の言葉に青年は拳をテーブルにたたきつけた。
 彼がにらみつけた先は、差し向かいに座るやせこけた父の顔。その肩越しに壁に立てかけた大きな鋤が見えた。
 ――農具といえども武器にはなる。あの騎士に恨みを持つ連中は多い。彼らに声をかけ集めれば――。
 青年が拳をきつく握りしめた時、そっと妻が彼の手をとった。首を横に振り、血の気の引いた顔にひきつりながらも笑みを浮かべる。
「大丈夫、私は大丈夫だから。」
 青年が顔をゆがめて妻を抱きとめるのを背にして、村長は家を出た。
 誰であれ泣き顔という奴は見られたくはないものだ。それが己の息子であれば特に。
「神様……どうかお救い下さい」
 孫の死を宣告された哀れな男は、壁にもたれるように座り込み、しばらく慟哭を続けた。

「ダークセイヴァー世界でオブリビオンを打倒するチャンスがくる。」
 ディスターブ・オフィディアン(多重人格者の探索者)は集まった猟兵たちにそう声をかけた。
「場所は辺境の小さな村。ヴァンパイアに支配され遊戯の駒か家畜のように生かされている集落だが……。
 ヴァンパイアの配下が時々訪れては、人々をなぶり者にしているようだ。」
 ローブの下から面白くもなさそうにディスターブが告げる。
「故に、配下が訪れるのを待ち伏せ、策にかけ、打ち倒す。オブリビオンといえど滅びぬものではない。問題は――情報と支援。」
 ダークセイヴァー世界はすでにオブリビオンに支配されている。
 支配階級であるヴァンパイアに抵抗する今回の作戦に、村人は容易に協力すまい。失敗すれば彼らに明日はないのだから。
「だが情報源としては最上だ。連中、定期的に生贄や貢ぎ物を捧げているようだからな。
 ヴァンパイアの配下がいつ来るか、手勢の数も相手の正体も知っていよう。その情報こそ値千金。」
 もちろん彼らの手を借りず、村に残った破壊痕や足跡などから敵の情報を探ることもできる。だが――。
「村人も望んで支配されているわけではない。
 お前達が信頼に足る相手だと感じれば、あるいは十分な勝ち目があることを示せば、協力を得ることも可能だろう。」
 ディスターブは一度言葉を切り、集まった猟兵たちの顔を見回した。

「知らしめてやるがいい。お前達、猟兵の存在を。異世界から希望が訪れたことを。」


雲鶴
 初めまして!今回マスターを務めさせていただく雲鶴と申します。

 さて今回のシナリオについて。
 最終的な目標はヴァンパイアの配下の打倒となります。そしてそれを果たすためのいくつかのステップ――情報収集や雑魚モンスターとの戦闘等を進める形となります。
 過去作とはシナリオ形式が変わっておりますのでご注意ください。

 情報収集部分では、ヴァンパイアの配下が、いつどこから、どの程度の手勢を連れて来るか、それを調べることが目標となります。
 ・戦闘力を見せて勝機があることをアピールする。
 ・とにかく村や周辺を歩き、調べて回る。
 ・対話によって村人からの信頼を得る。
  ……などの行動が有効です。

 最後になりましたが、この第六猟兵の物語を一緒に彩れることを楽しみにしております。
 皆様の熱いプレイングをお待ちしています。
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第1章 冒険 『支配された村』

POW   :    強さを見せて村人を信頼させる

SPD   :    村周辺の探索を行う、村人達と密かに接触する

WIZ   :    会話や行動で信頼を得る、村人たちから情報を引き出す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

マーリン・ダンプティ
か弱い女性や子供たちを怯えさせるなんて紳士として許せないね。
僕はね、彼らには笑顔でいて欲しいんだ。
だから、ミラクルなおじさんは小さなミラクル(という名の手品)を村人たちに見せるよ。
ジャグリング、掌から沢山の旗、腹話術、あと懐から沢山のキャンディを出してみせよう。
「さぁおじさんの懐から沢山のキャンディが出てくるよ。
これはプレゼントだ。甘いものを口に入れて元気になってくれるとミラクルおじさんは嬉しいな。」
落ち着いたら、君たちはおじさんに話を聞かせてね。
そうしたら「ヴァンパイアの配下を倒す」という大きなミラクルを君たちに見せることができるかもしれないからね!



「さぁみんなおいで。おじさんの小さなミラクルを見せてあげよう」
 焼け跡で遊んでいるところへ声をかけられ、子供たちは不思議そうに礼装の男を見上げた。
「おじさん、だぁれ?」
「私かい? ミラクルおじさんさ」
 マーリン・ダンプティ(ミラクルおじさん・f00508)は、シルクハットの下のピンポン玉の被り物を揺らして答える。
 安心させるように両手を広げて見せ、手のひらから色とりどりの旗を取り出していくうちに、マーリンを見る子供たちの目が輝き始めた。
 元来子供とは娯楽に貪欲なものである、ましてや遊ぶものとてないダークセイヴァー世界。マーリンのミラクルに引き寄せられること、キマイラが怪人に魅了されるが如し。

 たちまち集まってきた子供たちへジャグリングや腹話術を披露していると、やがて一人の女の子が歌い始めた。
「やっ♪ やっ♪ 奴がやぁってくる~♪ 黒い鎧の臆病騎ー士♪」
「あー!いけないんだ!外の人が来ているときはその歌うたっちゃだめって、あんちゃんたちに言われてたろ。」
「っ~~!おじさんアイツらと違うもんっ!あんちゃんたちをいじめないし……おじさん、いい人だもん!」
 怒鳴り声に驚いた女の子が涙目で抗議するのへ、マーリンが割って入る。
「こらこら喧嘩をしちゃいけない。さぁおじさんの懐から沢山のキャンディが出てくるよ。
 これはプレゼントだ。甘いものを口に入れて泣き止んでくれるとミラクルおじさんは嬉しいな。おじさんはね、みんなには笑顔でいて欲しいんだ。」
 なおも涙目の女の子の頭をマーリンは優しく撫でてやった。
「大丈夫、怒られた時はおじさんが一緒に謝ってあげよう。
 それに君が歌っていたその歌、おじさんも一緒に歌いたいなぁ。最後まで聞かせてもらえるかい?」
 こくりと少女は頷きおずおずと歌いだした。
「村のみんなに襲われて♪ 部下を残して逃げてった♪ 黒い鎧の卑怯者♪」
「森の近道駆け抜けて♪ 領主の屋敷にまっしぐら♪ 立派な鎧の腰巾着♪」
 我慢できなくなったのか、他の子供たちが一人また一人と少女に合わせて歌いだした。
「手下を見捨てて逃げ出して♪ 吸血鬼と戻って大イバリ♪ 黒い鎧の臆病騎~士♪」
『お見事お見事』という声を半ば黒焦げた木の梢から響かせ、マーリンは拍手をする。
「他にも臆病騎士の歌があったら教えてほしいなぁ。そうしたらもっと大きなミラクルを君たちに見せることができるかもしれないからね。」
 ――そう、この村を苦しめるヴァンパイアの配下、臆病騎士を倒すという、大きなミラクルをね!

成功 🔵​🔵​🔴​

月見・朔耶
【村人との交渉】
村人と話をしてみて、相手の本音を聞き出してみる。
その本音の部分から説得のベースにして、村人との信頼関係を作るきっかけにする。
その際、村人の視線や顔色などから彼らの本心も見る。

【調査】
集落の内部を歩いて調べて、敵の侵入を容易に許しそうな死角や侵入可能な経路を探してみて回る。
同時に敵が逃げやすそうな経路も探してみておく。



「うーん、森の近道。どこにあるのかなぁ」
 そう独り言ちながら、集落を歩き回り地形の把握に努めているのは月見・朔耶(天狼の黒魔女・f01099)。中性的な顔を傾げ自分が書いた地図を見る。
 集落の場所は平野と森のちょうど境目に当たる。外へ通じる道は3つ。その内2本は東の平野側へ続いており、1本は農道として畑に繋がっていた。
 もう一本は近頃往来がなくひどく荒れ果ててた道、その先は――最近滅ぼされたのだろうか、破壊痕も生々しい滅びた集落があった。
 そして北西の森へと向かう道が1本。森側の道には荷車の轍や腐汁にまみれた肉片などがあった。おそらくは貢ぎ物の運搬の後だろう。その先に吸血鬼の館があり、騎士がそこを通ってくることは予測がつく。
 しかし歩いてみれば、森に沿いカーブを描く大回りの道。
「逃げやすそうな経路、って感じはしないんだよね」
 通りがかった村人にも話しかけてみたが、関わり合いになるのを避けてかそそくさと逃げ去ってしまうばかり。
「さて、困ったねぇ」
 さすがにため息を吐いたところへ、一人の酔漢が千鳥足で歩いているのが見えた。
 物は試し、と朔耶はその男へ声をかける。
「ねえおじさん、少しいいかい? この村に来るっていう騎士と森側の道について聞きたいんだけど。」
「あぁん?」
 酒精で赤い顔に胡乱な表情を浮かべ、男は目の前の人形じみた少女の顔を見つめた。
「あの変な男の仲間か? 何か嗅ぎまわってるみてぇだが……。止せよ、お前らの巻き添えで殺されるんじゃかなわねぇ」
「――本当に?」
 体温を感じさせることのない静かな問いかけ。朔耶には疑問だった。
 なぜ男は、このさびれた村で、昼間から酒を飲むことができるのか。
 なぜ自身の過ちを抉られる様な表情をしたのか。
 なぜ男は、ひどく泣きはらした目をしているのか。
 何かがあったのではないか、村人たちが男の放蕩を許さざるを得ないほど、悲劇的な何かが。
「貴方は本当に――黒騎士を許しておけるの?」

 言うや否や、朔耶の小柄な体が浮いた。男は彼女の胸ぐらをつかんで喚く。
「お前に何がわかる! ようやくこの村から隣村に嫁に出してやれたんだ。だのにあの村の連中、生贄を断って戦った挙句、皆殺しにされちまいやがった!
 俺がその計画を知ってさえいれば。もっと強く反対してやりさえすればっ! 妹は、死なずに済んだんだ。
 なあ、お前に分かるのか? せめてもの嫁入り衣装を着せてやった妹が、頭だけになって帰ってきた俺の気持ちが。
 分かるか? 真っ先に逃げるってのは臆病者だからでも弱いわけでもねえ。
 あの騎士は知ってやがるのさ! そうやってて村一つ滅ぼさせることが、あの吸血鬼に取り入る一番の方法だってことをなっ!」
 叫び終え睨んだ先で、全てを見透かすような朔耶の赤い瞳に出くわして、男は思わず鼻白んだ。その隙をついて朔耶は男の手から脱出する。
 散らばった荷物の埃を払い男の元を立ち去ろうとする彼女の背中に、男が声をかけた。

「村長の家から北東に向かって200歩。2本並んだ樫の木の間。 そこが奴の近道の目印だ。」
 朔耶が振り向いて礼を言うと、目の据わった赤ら顔で酔漢は酒臭い息を吐いた。
「みんな滅んじまえばいいのさ。あの騎士も血吸い領主も、この村もだ」
 その言葉に朔耶はゆっくりと頭を振り言い聞かせるように答えた。
「大丈夫、そうはさせないさ。もちろん騎士もその手勢も滅びてもらうけれど。この村は存続させて見せるよ」
そう言って飄々と立ち去る少女。彼女の背を見る男の顔には救われたような表情が浮かんでいた ――ほんの少しではあったが確かに。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

レナ・ヴァレンタイン
まず敵の情報収集
悪目立ちしないような格好に着替えて周辺観察
敵を村に引き込んで殺すなら、罠は逆利用できる


あとは、携行食品も多めに
3日分もあれば買収にはいいか?
これは村人との情報交換の「通貨」に使える
腹をすかせてる子を持つ親なら情に訴えやすいか

「「復讐」だ。それが虐げられたあなた達がもつ絶対の権利だ。
傷つくのも、苦しむのも、私がやる
だから、この僅かながらの食糧と引き換えに、敵のことを教えてくれ
どんな小さなことでもいい。知っていることは総て教えてほしい」

敵の特徴、人数、どの道を通るか
それさえ分かれば罠にかけて皆殺しにする
他にも動いてる猟兵がいるはずだ。そっちとも接触しよう



住むものの絶えたあばら家でレナ・ヴァレンタインは客を待ちながら、先の猟兵から聞いた情報をまとめていた。
「反逆に気づけばすぐさま領主の館へ取って返し、吸血鬼を連れてくる、か。」
 敵を村に引き込んで殺すなら、罠が利用できる。黒騎士の逃亡を阻止することもできるだろう。しかしそうすれば黒騎士と正体不明の手勢、両方を同時に相手取ることになる。
――いっそ一度は逃がしてしまって、森の道で足止めの罠を仕掛けるか。相手の方から戦力を分断してくれるなら、邪魔をすることはない。
 敵の特徴、人数、どの道を通るか。それさえ分かれば罠にかけて皆殺しにするのは難しいことではない。そして黒騎士に限ればそれらの情報はすでに分かっている。
 ささやかなノックの音に扉を開けば、人目をはばかるように顔を隠した女性が子供の手を引いて立っていた。
「さっきの話は本当ですか? こちらで、黒騎士たちの情報と引き換えに食べ物が頂けるというのは。」
「無論だ。楽にしたまえ、――私の家ではないがな。」
 そう言ってレナは嫣然と笑みを浮かべた。彼女の待ちかねた客がやってきたのだ。

「騎士の手勢の戦い方ですか?祖父から聞いた話では手に持った篝火をまき散らしたり。それと篝火がついている間は後ろから殴り掛かっても全部よけられていたと。
 いえ不思議と篝火が消えてからはそういうことはなくなったそうです。それと――反撃で倒れた他の村人が奴らと同じように篝火をもって急に襲ってきた、と。」
「ふむ。それは確かなのか?」
 レナの問いに女性は首を振った。
「何分、この村の反逆は祖父の幼い頃が最後でしたから。」
「なるほど、いや構わない。参考になった。」
 言ってレナは荷物袋から、通貨代わりに買い込んだ携行食――わずかばかりの乾パンと缶入りのスープを差し出した。
 ひとしきり感謝の言葉を述べた後で、女性は付け加えた
「それと、皆さま村人から不信の目で見られていますよ。」
 思わず苦笑したレナの前で女性は乾パンの一つを手に取り、子供に与えるより先に自分の口に入れた。
 念入りにかみ砕き、舌で丹念に口内をかき混ぜ少しずつ嚥下していく。
 そうして少しの世間話をしてから、ようやく子供へ残りの乾パンとスープを渡した。
「毒見のつもりか? 用心深いことだ」
「だって不思議ですもの。吸血鬼を裏切り情報を流せば、この子を飢えさせないための食べ物がもらえるだなんて。
 それに、まさかこんなご馳走だなんて思いもしませんでした。」
 名残惜しそうに彼女は指先についた乾パンの粉粒をなめとった。それですらこの世界の人々にとっては『ご馳走』なのだ。
 息子の方はといえば、歓声を上げて乾パンとスープを食べていたが、腹がくちくなったら眠ってしまったらしい。
 すうすうと寝息を立てている我が子を起こさないように抱き上げて、彼女は立ち上がった。もう一度礼を言いレナへと向き直り口を開く。
「1つだけ。貴女はどうしてここまでしてくれるのですか?」
「「復讐」だ。」
 レナの声には確かな怒りが滲んでいた。彼女には過去の記憶がない。己が応報すべきものはわからない。それでも何かに駆り立てられるまま人々の恨みを晴らす『復讐屋』となった。
「それは虐げられたあなた達がもつ絶対の権利だ。傷つくのも、苦しむのも、私がやる。」
「そう。ねぇ復讐屋さん。
 騎士の手勢は7人。その正体はみな死人、かつて黒騎士に殺された村人たち。ーー例えばそのうちの一人は、この子の父親。
 貴方への報酬はこれで足りるかしら。あの人をもう眠らせてあげたい。あの人の体が腐って、それでもまだ動いているのを、もう見たくはないの。」
 泣き崩れる未亡人へと、レナは決意を込めて言い放つ。

――その「復讐」請け負った。

成功 🔵​🔵​🔴​

カチュア・バグースノウ
生贄なんて胸くそ悪いわね
微力だけど力を貸すわ
あたしには何ができる?

力を見せつける…か。馬鹿力だけはあるけど、それで村人を安心させられる?
とりあえず大岩を持ち上げてみたり、大木を探して切り倒してみるわ
できるだけ派手に、大振りに。できた後は、自信満々に村人たちに親指をたててガッツポーズ
あとは村人たちへの言葉ね
「大丈夫よ。あたしらが絶対生贄なんて止めさせるから」
あとはできれば情報収集。安心したような人から話を聞く
「ヴァンパイアはいつ頃訪れることが多い?」



「生贄なんて胸くそ悪いわね。何とか力を貸して助けてあげたいけど……あたしには何ができる?」
 カチュア・バグースノウ(エルフの竜騎士・f00628)が自問しながら歩き回っているうち。村のはずれで彼女は10人余りの農民に囲まれた。
 そのうち一人の青年が代表するようにカチュアの前に歩み出た。
「なあ、あんたたち。この村から出て行ってくれないか?」
「そうはいかないわよ。あなたたちだってわかっているんでしょう? 今のままじゃこの村は滅びる、って。」
 突きつけられた鋤や農具をものともせず、カチュアは反駁する。
「あたしらはあなたたちを助けたいのよ」
「ああ。それは分かってる。あんたたちがいい奴だってことはな。――今まで黒騎士に反逆して死んでいった奴らも、みんないい奴だった。
 だから逃げてくれ、勝てない戦いを挑まなくっていい。それでも、もし、助けてくれるっていうのなら――。」
 口淀んだ青年を促すようにカチュアは青年に視線を向けた。
「誰か一人でもいい。村の子供をあんたたちと一緒に連れて行ってくれ。このままここにいるよりは、あんたたちと一緒に行った方がずっとましなはずだ。」
「お断り、よ。」
 カチュアはすげなく却下すると、つかつかと近くの大岩へ歩んでいく。ようやくカチュアは自分にできることを見つけた。
――力を見せつける。馬鹿力だけはあるから、それで村人を安心させてあげる。
「勝ち目はあるわよ。信用できないならいま見せてあげるから。」
 カチュアが手をかけたのは、彼女自身の身長よりも高い古びた岩。それを漬物石でも持ち上げるように両手で抱えて持ち上げて見せた。
 さて彼女はエルフであり、種族の例にたがわず、野花の如く可憐な外見をしている。その彼女が大人5人でも運べぬ大岩を持ち上げ、あまつさえ。
「あ、結構軽いわねこれ。」
 右手を放し左手一本で頭上に掲げて見せる。そして放した右手では親指を立ててのガッツポーズ。その姿はさすがに青年たちの度肝を抜いた。
「大丈夫よ。あたしらが絶対生贄なんて止めさせるから」
「わ、分かった。分かったからっ。その岩をおろしてくれ!」
 言われてカチュアは岩をひょいと放り投げると。ドラゴニックエンドによって空中で粉みじんに消し飛ばした。
 そうして腰を抜かしていた青年の元へと歩み寄る。
「ヴァンパイアの手下、黒騎士はいつ頃訪れることが多い?」
「あ、ああ。あいつが来るのは決まって新月近く、それも雨や風のない夜だ。」
 安心というよりは、放心したままの青年は暫く問われるがままに答えていたが。やがて慌てた様子で自身の父……村長の家へと駆けこんでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シオドリック・ディー
オブリビオンの脅威に不安になっている方、特に村長の息子さんのお嫁さんかな。彼女の手をとりぎゅっと握り声をかけます。笑顔で、なるべく安心させるよう。
オレたちが来たからには、もうヴァンパイアの好きにはさせません。たくさんの犠牲の上で成り立ってきた生活とは、これでおさらばです。大丈夫。オレたちを信じてください。
そう元気づけるように。優しく。
あとは彼女か、そばにいるだろう旦那さんに敵の居所とおおよその人数を訪ねます。村長さんの方がイケニエ貢物のまとめしていそうだから、そっちでもいいかな。いいとこ情報集まれば、ゴーだ。



村長の家の内ではシオドリック・ディー(チョコミルクミント・f03565)が、妊婦の手を取り笑顔で語り掛けていた。
「オレたちが来たからには、もうヴァンパイアの好きにはさせません。たくさんの犠牲の上で成り立ってきた生活とは、これでおさらばです。」
 その言葉だけならばただの戯言と受け止められたかもしれない。幼い子供が語る夢語り。
 けれど其れだけで片付けられぬものがいくつもあった。例えば、彼女の手を取る金属と石で出来た手。
 それが紛い物でない証拠には、硬質な触感と金属の冷たさが確かに伝わってくる。そんな存在を彼女は夢物語でしか聞いたことがなかった。
「大丈夫。オレたちを信じてください。」
 そうしてまた元気に笑う――まるで絶望など知らないように。
 ダークセイヴァー世界に生きる者ならば誰もが一度は味わうはずだ。暴力と鮮血に彩られた吸血鬼達、ヴァンパイアが巻き起こす絶望を彼は知らない。
 話に聞く彼らの仲間たちもきっと、それを持ち合わせてはいないだろう。
 そうして彼女は、この村で一番初めにシオドリック達の正体に気が付いた。
「あなたは。あなたたちはどこから来たのですか。まるで、……まるで異世界から来た旅人のよう。」
「お、大正解。オレたち猟兵は、みんな他の世界からこの世界を救うためにやってきたんです。。」
 その言葉に弾かれるように、彼女の夫が己の父親――村長へと視線を向けた。

 村長は一度頷くとシオドリックの傍へと歩み寄り、ひざまずいて彼の笑顔を見つめる。
「ワシの孫にも絶望など教えず、あなたのように笑えるようにしてやりたいものです。
 ――皆様方、この村を救ってくださるか? ワシ等はいかなる協力も惜しみますまい。」
 この集落全員の命を彼ら猟兵の行動に預けるという、決定的な言葉。それにシオドリックは弾けるような笑顔で答えた。
「もっちろん!ま、ここはオレたちにおまかせおまかせです!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

白寂・魅蓮
どこの世界でも、人を怯えさせる存在がいるものだね…村の事は知ったことじゃないが、こういう存在がいるってのはイラつくものだ。
少しばかりなら協力してあげなくもないけど…まずは信頼と情報収取、だね。
まずは自分が流れの芸者だという事をアピールして、村の余興として舞踊を踊ることを提案しよう。曲に合わせて軽やかに美しく踊ってみせよう。
踊り終えて村人たちの気持ちに余裕が出来たら、この村の事や現状を聞き出してみよう。出来れば女性か子供がいい。
「そういえば踊っている時、あまり顔色が良くないように見えまして。もし良ければ、僕に話していただけませんか?」


レナ・ヴァレンタイン
北西の森、それを迂回するカーブが本線
しかし黒騎士の緊急時の近道は別にある
村長の家から北東に向かって200歩。2本並んだ樫の木の間
それは分かった
私の狙いは七体の亡霊。そいつらをまず全滅させる
しかるのち黒騎士を潰す、そして領主を殺す

だからこの近道に仕掛ける罠は黒騎士の足止め
……レプリカクラフトで作れるだけの罠を
足止めだけでいい。落とし穴でもできればいいが、最悪トラバサミ、脚を引っかけるためのワイヤー、その他もろもろ
七体の死人を土に還すまでの間足止めできる量

地形を調べ、少しでも歩きやすいと見れば獣道であろうと罠を仕掛ける
本命を討つために、黒騎士には精々地面に転げまわってもらおうか



「197、198、199、……200。ここか。」
 村の北西のやせこけた森でレナ・ヴァレンタイン (ブラッドワンダラー・f00996)は、2本並んだ樫の木を見つけだした。
 地形を調べるため茂みをかき分けて奥へと歩むうち、レナは森の青臭さの中に肉の腐る匂いをかぎ分けていた。
 黒騎士が死人たちに整備させていたのだろう。すぐに茂みをかき分ける回数が減り、踏みしめる地面から凹凸が消えて平坦になり、歩みを邪魔するような木々の枝が根元から焼かれている事に気付く。
 そしてその道はまっすぐ北へと続いていた。この先に黒騎士が、そしてその主ヴァンパイアがいるのだ。
――七体の亡霊。そいつらをまず全滅させる。しかるのち黒騎士を潰す、そして領主を殺す。
 しばし彼女は道の先をにらみつけていたが、やがてレプリカクラフトでいくつもの罠を作り出していく。
「本命を討つために、黒騎士には精々地面に転げまわってもらおうか。」
 持ち出したのはトラバサミにワイヤーに他各種、黒騎士を足止めするための罠を仕掛ける彼女の元へ、幾人かの村人が鎌や山刀等を携えて歩んできた。
「何か用か。私は今、依頼人の「復讐」を果たす準備で忙しい」
 視線も向けぬ問いかけに、先頭を歩んでいた青年が苦笑する。
「あんたがここで一人で作業してるって聞いてな。俺たちにも何か手伝えることはないかい?」
 金髪の美貌に虚をつかれたような表情を浮かべて、彼女は村人たちの顔を見上げた。
 沈黙の裡に彼らがいる場合といない場合の作業効率を考え――彼らを受け入れることにした。
「落とし穴を作りたい、シャベルはあるか。」
「ああ。持ってきてるぜ。どこを掘ればいい?」
「すこし待て、他の罠との組み合わせを考える。おい、私が作った罠にはさわるなよ。死ぬぞ。」
 てきぱきと指示を出し、自らも泥だらけになりながら、夜が更けるまで黒騎士を討つ罠を仕掛けていくレナ。
 共に作業をしながら、彼女を見る村人の目にもはや不信の色は存在しなかった。

 そうして村の男達が黒騎士を迎え撃つ準備をしている間、女や子供たちは村の集会所に集まっていた。
 そこには不安も、決死の覚悟も存在せず、ただ集会所の中央で舞う人狼の少年――白寂・魅蓮(黒蓮・f00605)への、賞嘆だけがあった。

――どこの世界でも、人を怯えさせる存在がいるものだね……。少しばかりなら協力してあげなくもない。
 そう言って彼は村の余興として舞踊を踊ることを提案していた。

 夜空の下、家々の灯は絶え、明かりといえばひどく細くなった月と満天の星、そして集会所の真ん中に据え付けられた篝火だけ。
 篝火のはぜる音と自らが打ち鳴らす鈴の音に載せ、魅蓮は軽やかに舞い踊る。
 異界の楽器、異界の舞、そして異界の少年。揺らぐ炎が照らし出す銀の尻尾とアメジストの如き瞳。それは彼のステップと共に妖しく閃き、宙返りの際には溌溂と跳ね回る。魅蓮の舞踊にはこの世界に絶えて久しい、生命の躍動があった。
 そうして踊りながらも広場の全員に気を使い、泣き止まぬ赤子がいれば、鈴や自らの尻尾を目の前で振ってあやしてやる。
 また少しでも顔色の悪い女性がいれば、目の前でにっこりと甘い笑顔を向けてやり、彼女の心をとろかして見せた。

 篝火の火が消えて、男たちが村に戻る頃、魅蓮の舞を見ていた子供たちは輝く目で彼の姿を語る。やがて誰もが反逆への一切の不安を忘れて眠りの床に就いたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『篝火を持つ亡者』

POW   :    篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


夜が来た。新月の晩、決戦の時。過去を葬り、未来を定める、夜が来た。
 星すら見えぬ寒空の下、7人の死人を従えて、1人の騎士が村を訪れる。
 篝火に照らされた鎧には一切の傷がなく、金をふんだんに使った禍々しくも精緻な装飾が施されていた。
 ダークセイヴァー世界の存在は2種類に分けられる。
 支配する者とされる者、傷つかぬ者と殺される者、奪う者と奪われる者。
 黒騎士の鎧はその事実を端的に示していた。――彼がどちらに属するかも含めて。

 村の入り口、粗末な柵の前でひざまずき村長が黒騎士を出迎える。
「ようこそおいで下さいました。エックハルト卿」
「楽しそうだな。村長よ。己の孫の命を捧げて生き永らえるのが、それほど嬉しいか?」
 歯をかみしめた村長をしり目に黒騎士――エックハルトは続ける。
「はしゃぐのはいいが、長としての役目は果たせよ。村人に目を配らねばならんな、こんな夜中に弓矢を番えている連中がいるぞ!」
 黒騎士が叫ぶと同時、飛来した矢が騎士の頭部に迫り――二本の指で掴まれ、へし折られた。
 一人の猟兵が村長を抱えて逃げ去るのと同時、梢の影、塀の裏、思い思いの場所に潜んでいた猟兵たちが、黒騎士を打倒せんと動き始める

「そうか、お前達、我らに反逆するか。――素晴らしい、それでこそ人間だ!
 無謀にも反逆し、無残に打ち砕かれ、無様に命乞いをする。人間とは、そうでなくてはな!」
 黒騎士は愛馬にまたがり跳躍。銃声の如き蹄の音が、家々の壁を足場に村を駆けぬける。
 やがて村長の家の屋根の上に降り立ち、黒騎士は新月を背に振り返ると、死人たちへと号令をかけた。
「遊んでやれ! お前たちが残した家族とな! 我らに仕える栄誉を与えてやるがいい」
 
 その言葉を受けて初めて、死人たちが動き始める。腐り果てた脳髄に未だ残る家族の記憶をもとに。
 命じられたまま、彼らを死人に変えるために。7人の死人が掲げる篝火が、灯の絶えた村の合間へ散らばっていく
白寂・魅蓮
さて…いよいよ戦いだね。
なるべく速攻をかけて攻めたいところだけど、向こうは味方を増やしてしまう可能性がある。
適度に距離を取って防衛と行こう。
「リザレクト・オブリビオン」で死霊騎士と死霊蛇竜を召喚する舞を踊って、出来る限り戦死者や気絶者を出さないようにするんだ。
ある程度味方の安全を確保したり敵を追い込めたら、一気に進軍していこう。

「死した亡者にはこの舞の美しさが伝わるかはわからないけど…」
「せめて眠るなら、その一瞬まで見惚れておくれよ」



「さて……いよいよ戦いだね」
 黒騎士が抜け道へと駆けていくのを見送り、白寂・魅蓮(黒蓮・f00605)は動き始めた。近場の家に駆け上り、屋根の上からあたりを見渡す。
 今、集落に見える篝火は7つ。しかし亡者は他の人間を仲間とする能力がある。守りを固めなければすぐに亡者の数は膨れ上がるだろう。
 篝火を目指して屋根から屋根へと駆け抜け飛び移りながら、魅蓮は己のなすべきことを考える。
――出来る限り戦死者や気絶者を出さないように。適度に距離を取って防衛と行こう。

 やがて夜道を歩む一体の亡者の前に、立ち塞がるように魅蓮は降り立った。亡者の虚ろな顔を一瞥し静かに舞い始める。
――死した亡者にはこの舞の美しさが伝わるかはわからないけど……。
 静かに鈴が響く度、魅蓮が腕を振るう度、彼の傍の闇が濃くなっていく。そこへ亡者が篝火より炎の矢を解き放つ。
 チリンと鈴の音が鳴った。闇が凝縮し二つの影となって、魅蓮の眼前に迫った炎を打ち払う。
 リザレクト・オブリビオン。魅蓮の舞によって蘇った騎士と蛇竜が炎の中から姿を現した。
「――――ッ!?」
 たじろぐ亡者。二度三度と炎を放つが、全て蛇竜によって打ち払われ、わずかな火の粉で魅蓮の銀毛を照らすのみ。
 そして死霊の騎士が一瞬の踏み込みで間合いを詰め、脇構えから逆袈裟に剣を振り上げ、一刀のもとに亡者を両断した。
 宙に浮いた半身が地に落ちる寸前、亡者の瞳に写ったのは――死霊を従える魅蓮の舞。
「せめて眠るなら、その一瞬まで見惚れておくれよ」
 一人の亡者が大地へと崩れ落ちる。死者を慰撫し鎮める鈴の音が、静かに集落の空に響いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シオドリック・ディー
「うう、この死体たちって、あの村の人のご家族さん、ですよね」「戦いづらい……」
顔をしかめ、屋根に逃げた黒騎士に対して叫びます。
「命をこんなもてあそぶなんて、ずいぶんといい趣味してますねー!?」ふーんだ!あいつ絶対倒してやります!
死人相手だし炎とかがいいのかな。死人と距離をとり、技能【高速詠唱】【属性攻撃】付与で速攻ユーベルコード仕掛けます。数体で固まってたら【範囲攻撃】でまとめて攻撃します。でもなるべく一体ずつ集中攻撃で倒します。



「命をこんなもてあそぶなんて、ずいぶんといい趣味してますねーっ!?」
 遠ざかっていく黒騎士へ叫ぶのはシオドリック・ディー(チョコミルクミント・f03565)。その言葉に黒騎士は哄笑で応えた。
「いずこよりの旅人か? 覚えておくがいい、この地では人間は玩具に過ぎぬ。――そもそも貴様らは我らが遊ぶために生かされているのだ!」
 言い残し闇に紛れていく背中に向けて、シオドリックはいーっ、と歯をむき出しにして威嚇する。
「ふーんだ! あいつ絶対倒してやります!」

 だが、まずは村を襲う亡者を仕留めなくてはならない。篝火を頼りに亡者を探す少年の耳に、乱暴に戸を叩く音と叫び声が聞こえてきた。
 見れば一体の亡者が粗末な家の戸口に立ち、腐った右腕を扉にたたきつけ中に押し入ろうとしている。家の中から響く子供たちの悲鳴。
 慌てて駆け出すシオドリックの前で、亡者は戸口から離れすぐ脇の窓を殴りつける。割れる硝子、悲鳴が途絶え嗚咽に変わる、窓枠越しに差し伸べられた亡者の腕が、家の中に腐臭をまき散らし――。
「とっつげきーっ!」
 横合いからシオドリックのはなった炎の矢によって焼き尽くされた。
 右腕を焼かれ亡者が跳び退る。亡者と家との間に割りこんだシオドリックは、背中に子供達の泣き声を聞いて安堵したように息を吐く。
 そして顔をしかめながらも目の前の亡者に対峙する。
――うう、この死体って、村の人のご家族さん、ですよね。
「戦いづらい……」
 わずかに逡巡するシオドリックをめがけ、返礼とばかりに亡者が火を放つ。かわせば燃え移った炎が家ごと中の子供を焼き尽くすだろう。
 シオドリックが選んだのは、真っ向からの迎撃。属性攻撃で強化された炎の矢の高速詠唱。
 放たれた炎の奔流は篝火をたやすく飲みこみ、勢いのまま亡者の肉体を消し炭に変えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

マーリン・ダンプティ
事前に村人たちには部屋で休むよう言っておかないと。
敵とはいえ、寝食を共にした村人を殺すなんて見たくないだろうしね。

さぁ、おじさんは罠に掛かっているだろう7人の亡者を【咎力封じ】で拘束してしまおうか。
攻撃はオトギリくん、君にまかせよう。

「死してなお苦しむ村人たちを安らかに眠らせてあげなさい。
それが君の仕事だからね。」
「いやしかし、こうして息子と共に戦い、息子の晴れ舞台を見れるなんて、
おじさんとっても嬉しいよ。」


オトギリ・ダンプティ
心情:本当は、俺はあの黒騎士をすぐにでも殺したい。
でも、違う。俺たちは殺す為に存在してるんじゃない。
困っている人を救う、それが俺達の使命だってことを。
「哀れな亡者に救済を。どうか、安らかに眠れ。」


行動:村人たちには外は危険だから家の中に待機するよう強く言っておこう。
…そういや、俺挨拶してなかった気がする。同じ猟兵だ。だから、そう警戒はしないでくれや。

戦場では、後衛を希望。
拘束された亡者たちや、攻撃を受けている亡者たちを
【リザレクト・オブリビオン】で召喚した騎士と蛇竜に向かわせ、仲間を援護するぜ。



「外は危ないからな。家の中で待っててくれ。……そういや俺、挨拶してなかったか? アイツと同じ猟兵だ。だから、そう警戒はしないでくれや。」
 不機嫌そうに村人に避難を促すのはオトギリ・ダンプティ(夢見る弟切草・f01320)。傍らのマーリン・ダンプティ(ミラクルおじさん・f00508)を示して、家の外に出ないよう村人に強く言い含めていく。
 扉を閉ざされ錠が落ちる音を背にオトギリはマーリンに声をかける。
「なんだよじいさん。何かいいことでもあったのか」
「なぁに、あの黒騎士を倒しに行ってしまわないかハラハラしていたんだけど、心配のし過ぎだと分かったからね」
 ピンポン玉の被り物で器用に笑顔を作りマーリンが応える。
「ああ、本当はすぐにでもあの黒騎士を殺してやりたいさ。でも、違う。俺たちは殺す為に存在してるんじゃない。――って今度はなんで泣いてるんだよ!?」
「うう、立派になって。こうして息子と共に戦い、息子の晴れ舞台を見れるなんて、おじさんとっても嬉しいよ」
「いちいち大げさなんだよ、じいさん」
 照れ隠しのように呻き、走り出すオトギリ。マーリンもあわてて彼の後を追う。

「――さっき君は、大げさだといったけれどね。この世界ではそうじゃない。そうじゃないんだよ。この世界で子供が育つのがどれほど難しいか、まして親がその姿を見る機会は……まずないと言っていいだろう」
「ああ、わかってるさじいさん。オブリビオンに苦しめられて困っている人を救う、それが俺達の使命だ。そうだろ?」
 彼らの駆けつけた先で2つの篝火が揺れた。三叉路の真ん中で1体の亡者がトラバサミに足を取られ身動きが取れなくなっており、もう1体の亡者がその周囲を所在なさげにうろついている。
「攻撃は任せるよ、オトギリくん」
 言うや否や、マーリンはかざした右手に拘束具を握り、亡者に向けて投げ放つ。後方から迫りながらも、影に触れたそれを亡者は振り向くことなく回避する――が。
「おっとおじさんのミラクルはまだ終わらないよ」
 パチリと指を鳴らせば、放たれた拘束ロープが手品のように空中で軌跡を変える。再び亡者へ迫ると蛇のように二体の亡者に巻き付き、縛り上げた。
 マーリンがオトギリを促すように声をかける。
「さあ死してなお苦しむ村人たちを安らかに眠らせてあげなさい。それが君の仕事だからね」
「言われるまでもねぇさ。墓守が起きた亡者を放っとくもんかよ」
 オトギリは己の仕事場を思い出す。――黒い葬列、閉じた棺桶、冷たい墓石と尽きせぬ花束。死者が眠り、生者は彼らのために祈る。
 それがオトギリの仕事場であり彼が守るべき墓所の風景であった。しかし、この世界ではまるであべこべだ。
 そうして彼は二体のオブリビオン――死霊騎士と蛇竜を呼び出し亡者たちへ向かわせる。罠と拘束具によって捕らわれた亡者に逃れるすべはない。
 騎士の突きも蛇竜の尻尾の一撃も、可能な限り亡者の体を傷つけぬように。

「哀れな亡者に救済を。どうか、安らかに眠れ。」
 ただ亡者たちを安寧に導くための一撃だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レナ・ヴァレンタイン
自分から戦力分断とはお優しいことだ
だが丁度いい。その傲慢は利用させてもらう

村中に散らばれると厄介だが、篝火を目印にすれば発見は容易い
放火されて死体を増やされると厄介だ
篝火を照準代わりに、片っ端からマスケット銃で撃ちぬいて牽制
近寄ってきたら拳銃のクイックドロウで全弾叩き込む

他の猟兵もいることだ、多くても4~5回同じことを続ければ終わるだろう
敵の炎に対してはミレナリオ・リフレクションで防御
無人の家屋ならそれに隠れてリロード時間を稼ぐ

ああ、今回の依頼主のターゲットは貴様らだ亡者ども
眠れ。死後の安寧は、二度と侵されない

遺品があれば回収してやろう。余裕があればな



「自分から戦力分断とはお優しいことだ。」
 黒騎士が2本の樫の間、茂みの奥の抜け道へ入っていく。その姿を暗視ゴーグル越しに見やり、レナ・ヴァレンタイン(ブラッドワンダラー・f00996)が吐きすてる。
 村人に知られている道だというのに、黒騎士は罠の警戒もせずに飛び込んだ。油断しているのだろう、村人が罠を仕掛けたとしても自分を傷つけることはできないと。
――だが丁度いい。その傲慢は利用させてもらう。
 別の道を通れば厄介だったが、黒騎士が入った道には彼女が仕掛けた罠がある。たやすくは抜けられないだろう。

「では「復讐」を果たすとしよう。ああ、今回の依頼主のターゲットは貴様らだ亡者ども」
 そしてレナは視線を村の内部へ向ける。宵闇に包まれた村に、篝火は残り3つ。
 無人の家に屋根に陣取ったレナからはその位置が容易に把握できた。
 レナは愛用のマスケット銃『黒衣のウィリアム』を両手で構え、手近な篝火に狙いを定めた。牽制混じりに発砲。篝火が隠れるように経路を変えたのを確認し、また別の篝火に銃口を向ける。
 無論彼女とて、亡者達が被害者だという事は知っている。たとえ彼らが人を襲ったとしても、あの黒騎士に命じられただけだと。
――だが、それがどうした。
 已むに已まれぬ事情があった。だから、どんな理不尽も飲み込み許せというのか。
「お断り、だ」
 暗視ゴーグルの中、亡者の篝火が大きくなる。その炎が村長の家に向けて放たれる寸前、『ウィリアム』から放たれた水銀の銃弾が亡者の頭を撃ち抜いていた。
 
 残る篝火は1つ、……最初に狙撃した篝火が見えない。見回すレナの足の下、衝撃音とともに家がきしんだ。
 銃声から彼女の場所を探したのだろう、1体の亡者が彼女の陣取る家の扉に体当たりを仕掛け押し入り……いや、家そのものを崩そうとしている。
 猟兵と言えど崩落に巻き込まれれば無事では済まない、迷わずレナは屋根の上から飛び降りた。金の髪が夜空にたなびく。
 その姿を亡者の虚ろな瞳が捉え、掲げた篝火から火を放つ。迫る炎に彼女は右手を差し伸べた。
「その技は、さっき見たぞ」
 ミレナリィ・リフレクション――向かいくる炎へ向けて正確に同じ熱量の炎を解き放ち、吹き飛ばす。
 そして着地と同時のクイックドロウ。もう一つの愛銃『メイブ』が放った銃弾で亡者の頭が爆ぜた。

「眠れ。死後の安寧は、二度と侵されない」
 崩れ落ちる亡者に背を向け、彼女は最後の篝火へと歩み始める。
 残る亡者は1体。

成功 🔵​🔵​🔴​

月夜・玲
ふーん、なかなか悪趣味じゃん
まあ、良いけどねその悪趣味毎打ち砕くから
とりあえず、最後の1体おいしく頂こうかな

●戦闘
【SPD】で戦闘
『第六感』や『空中戦闘』の技能を活用して篝火の影に触れないように戦闘
地形を利用してジャンプ等で踏まないように気を付けて接近する
接近出来たら『プログラムド・ジェノサイド』を発動
一気に制圧しよう

気の毒だけど、過ぎた過去は覆らないからね
だからきっちり、終わりにしてあげる
せめて、傀儡としての人生からの解放を…てね



最後に残った篝火に向けて走りながら月夜・玲(スペースノイドのUDCメカニック・f01605)は、北西の森に鋭い眼光を向けた。
「ふーん、なかなか悪趣味じゃん。まあ、良いけどね――その悪趣味毎打ち砕くから」
 森の奥に消えた黒騎士に宣告し、最後の亡者へと眼差しを向ける。
 周辺は焼け焦げた広場。以前、戯れで焼かれた場所なのだろう。火の手はない、今はまだ。
 近づく玲に気付いたのだろう。亡者が篝火を隠すように腕をおろす、そうして亡者から玲へと影が伸びる。
「おっと、そう簡単には踏まないわよ」
 地面を踏み鳴らし跳躍、空に舞った玲にすかさず亡者が炎を放つ。近場の木の幹へ横に着地し、玲はこれを迎え撃つ。
 抜刀一閃、彼女手製のガジェッティアI.S.Tで放たれた炎を切り捨て、三角飛びの要領で亡者へ向けて再度の跳躍。
 高速の刺突、その軌跡を避けるように亡者が跳び退る。I.S.Tの切っ先が亡者の服を貫き、襤褸切れが宙を舞った。

 だが――ここからが彼女の本命。
「気の毒だけど、過ぎた過去は覆らないからね。だからきっちり、終わりにしてあげる」
 そして玲は跳び退った亡者を追うように縮地。プログラムド・ジェノサイド、彼女の脳内で高速の攻撃軌道が再生される。
 亡者の脇をすれ違いざまに薙ぎ払い、亡者の背後で反転、余勢を駆って袈裟懸けに切り下げる。
――そして、さらなる高速の連続攻撃で亡者の全身を切り刻み、止めに放った刺突は音を置き去りにし、彼女の足音よりも早く亡者の胸を貫いた。

「せめて、傀儡としての人生からの解放を……てね」
 I.S.Tを引き抜いた彼女の背後で、先ほど切り落とした襤褸切れが地に落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『異端の騎士』

POW   :    ブラッドサッカー
【自らが他者に流させた血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【殺戮喰血態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    ブラックキャバリア
自身の身長の2倍の【漆黒の軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    フォーリングローゼス
自身の装備武器を無数の【血の色をした薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


全ての亡者を打ち倒した後、村では彼らの葬儀の準備と死体の検分が進められていた。そして残された家族との対面が。
「こんなことなら――『妹さんをボクに下さい』って言った時、一発殴ってやればよかったなぁ」
 二人組だった亡者へ酒精の抜けた男が語り掛ける。
「でもまあ、許してやるよ。罠にかかったこいつを守ろうとしてたって話だしな」
 そう言って男は義弟の手と妹の手を握らせてやる。
「こいつは抜けてたからな。今度こそ……守ってやってくれ」

 一つ一つ亡者たちの手の指を改めていた女性がその隣で息をのむ。
 白骨化した亡者が嵌めていた指輪は、彼女が嵌めていたものと同じ物――そこには彼女の夫のイニシャルが刻まれていた。
「ああ、あなた。あなた! おかえり、おかえりなさい!」
 亡骸を抱いて叫ぶ彼女の頬を一筋の涙が伝い、遺骨に落ちた。

「おかしい……。なんだ、これは」
 同じころ、森の抜け道を慎重に進みながら、黒騎士が疑問の声を上げていた。
 意気揚々と茂みを抜け、此度の褒美に何を願おうかと上の空で進むうち、彼の愛馬の足をトラバサミが挟んだ。
 それだけならどうという事はない。村人がウサギ狩りに使う程度の罠など何の痛痒もなかった。元々、この道が村人に知られている以上、罠がないほうが不気味なくらいだ。
 問題はその後、彼の軍馬の足を折り取るほどのトラバサミ、そしてそれを囮としたワイヤートラップ。無数の杭の仕組まれた落とし穴。そんな道を馬に乗ったまま進むこともできず、行き先の地面を探りながらゆっくりと足を進める羽目になっていた。
「これだけの物資をため込むとは、あの村の連中には優しくしすぎたか。だが質のいい血を取るためには、あまり飢えさせるわけにもいかん。――むっ!?」
 黒騎士の足元でワイヤーが外れ、仕掛けられた鳴子がけたたましい音を夜の道に響かせた。彼の超人じみた五感は、その音を頼りに向かってくる猟兵たちの気配をとらえた。
「追っ手を呼び寄せる、警報の罠。――場所さえわかれば、仕留められるとでもいうつもりか」
 怒りに震え、黒騎士は剣を抜き放つ。
「調子に乗るなよ、人間風情が! 来い、貴様らはこのエックハルトが、直々に八つ裂きにしてくれるわ!」
 放たれた怒号が、追いすがる猟兵たちの鼓膜を震わせた。
月夜・玲
全く、良い趣味をしているよ君は
あの村の流した涙の分だけ、その仕返しをしてあげるよ
…なーんてらしくない事を言う程度には怒ってるから、本気で死合おうか

●戦闘
【SPD】重視
ユーベルコード【I.S.T.起動】発動
《RE》Incarnationを抜刀
それ以外の武器やガジェットをパージして更に加速
技能『2回攻撃』『第六感』等を頼りに高速戦闘を仕掛けるよ
生命力を共有しているなら当てやすい方を狙えば良いよね
漆黒の軍馬に対してヒットアンドアウェイで攻撃してダメージを稼ごう
攻撃に対しては回避か武器で受け流す

エッグバルト…いやなんだったっけ名前?
まあいいや、名前を覚えるつもりはないよ
だって君は、ここで滅ぼすんだから


レナ・ヴァレンタイン
※他者との絡み大歓迎

罠の配置は覚えている
森の木々、そこをすり抜ける安全なルートも把握している
他の猟兵と息を合わせて行動。私が真っ先に突っ込んで隙を作りにいく

いくら堅牢な鎧に包まれていても、鉄の塊(バイク)の全力突進を受けきれるか?
回転数を上げ、エンジン音を聞かせてやる
私はお前を逃がさない
可能な限り一直線に突撃、可能ならそのまま衝突してその悪趣味な鎧を叩き砕く
回避された場合はすれ違いざまにクイックドロウで「解放者メイヴ」の弾丸を見舞い、同時にアンカーワイヤーを放ち、咎力封じ!

「お前相手のとっておきだ。残さず食い尽くしてもらおうか!」



黒騎士の怒号に応えるように、森の奥から高らかなエンジン音が響き渡る。
大型の宇宙バイクを操って森の狭間を駆け抜けるのはレナ・ヴァレンタイン(ブラッドワンダラー・f00996)。後部座席の同乗者――月夜・玲(頂の探究者・f01605)に声をかけた。
「奴の近くで罠を避けるために減速する。そこで飛び降りろ」
「レナさんはどうするの?」
 耳元で渦巻く風に掻き消されまいと、叫ぶ玲。
「私か。私はこのまま突っ込む、その隙をつけ――出来るだろう?」
「おっけー。でも減速はいらないよ。最高速からの方がやりやすいからね」
「上等だ、舌をかむなよ!」
 アクセル操作と共にエンジン音が金切り声へと変わり、宇宙バイクは一直線にエックハルトへと加速。眩いヘッドライトが闇に慣れた彼の視界を焼く。

「おのれ面妖な! 来い――ブラック・キャバリア!」
 エックハルトが呼び出したのは先ほどと同じ漆黒の軍馬、その場を逃れんと騎乗しようとするも、レナの左手の拳銃『解放者メイブ』から放たれる銃弾が、騎乗の隙を許さない。
 無論、彼女もそうして牽制している間、バイクの制御などできはしない。減速も回避もしないまま、もはや正面衝突を避ける術はなく、そしてそれこそが彼女の望むところであった。
「お前相手のとっておきだ。残さず食い尽くしてもらおうか!」
 大型宇宙バイクによるラムアタック――『ハンティング・ホラー』のフロントカウルがエックハルトの鎧を圧し砕く。

「ぐっ、うおおおおおっ!?」
 たまらず苦痛の叫びをあげ、後方へ吹き飛ばされる黒騎士エックハルト。『ハンティング・ホラー』も横転し座席からレナの体が投げだされる。そして玲は宙を舞ったバイクを足場にエックハルトへと跳躍。
「あの村の流した涙の分だけ、その仕返しをしてあげるよ。さあ、本気で死合おうか!」
 玲が抜き放ったガジェットI.S.T.に光が宿った。その刀身に刻まれた精緻な文様が脈動するように光を放つ。怪しげな光を目の当たりにし、おののく様に漆黒の軍馬が嘶きを上げた。
 もしも黒騎士にUDCアースの知識があれば気づいたかもしれない、その刀身が宿す光はUDC達が放つそれと近しい事に。『Imitation sacred treasure』――模造神器の名を冠するその刃がUDCの力の再現したものだという事に。

「I.S.T.起動……今こそその力を此処に! 《RE》Incarnation!」
 残る武器を全てパージし、ただ一振りの刃と化して玲が黒騎士へ襲い掛かる。先ほど亡者との戦いで見せた音速の連続攻撃――ではない。
 袈裟懸け斬りから手首を返しての薙ぎ払い、それを黒騎士が剣を立てて受け止めると、鍔迫り合いと見せかけて力をそらす。たたらを踏んだエックハルトの隣をすり抜け、突進してきた軍馬を串刺しにするようにカウンターの片手突き。
 刃を突き立てられ暴れる軍馬をおいて玲は後方に跳躍。一瞬後、エックハルトの唐竹割が彼女がいた空間へ降り立った。エックハルトが追撃しようと振り向いた目の前を、レナが放ったアンカーワイヤーが牽制する。脳にプログラミングされた行動ではなく、玲自身の力でその高速戦闘に対応していた。
 鎧を砕かれ、肩で息をする黒騎士。
「お疲れみたいだね、エッグバルト……いや、なんだっけ名前」
「貴様、このエックハルトを愚弄するか!」
「ふーん、まあいいや、名前を覚えるつもりはないよ。だって君は、ここで滅ぼすんだから」
 玲の眼光が、刃の冷たさを伴ってエックハルトの姿を射抜いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シオドリック・ディー
利用されてるとはいえ、ご家族がいるなか傷つけてしまうのはとても申し訳なかったです。
そして死体をどうこうするなんて、オレとしてはキャパシティ外というかそれ以上に無理無理すぎる案件です!悪趣味!
ぜーんぶ終わって、もう一度彼らをお墓に埋葬するなら、お手伝いしたいです。

黒騎士の姿をみつけ次第ユーベルコード発動。技能【武器改造】と魔法でガジェットの装備した槍を強化。【2回攻撃】で手数増やして隙なく黒騎士を穴だらけにしてやります。
「八つ裂きにされるのはそっちですよ!」
オレの方に敵のフォーリングローゼスがきたら【カウンター】で魔法使って花びら散らして避けます。



先行した二人の後に続いたのはシオドリック・ディー(チョコミルクミント・f03565)。森の中を駆けながらも先ほどの亡者との戦いを思い出し申し訳なさを覚えていた。
――利用されてるとはいえ、ご家族がいるなか傷つけてしまうのはなぁ。ぜーんぶ終わって、もう一度彼らをお墓に埋葬するなら、お手伝いしないと。
 実際の所、操られ使役されていたところを解放したのであり、理屈としてはむしろ感謝されてしかるべきであるのだが。それでも、割り切れない感情というのは残る物だ。例えば目の前の黒騎士エックハルトへの嫌悪感のように。
「女子供が……っ! この私を討ち取れると思うなよ。 咲き誇れ、血の薔薇よ、フォーリングローゼス!」
 黒騎士の掲げた剣から幾つもの白薔薇が咲き、花弁が瞬く間に真紅に染まった。その花びらが風に散り渦巻く刃となって、その場の猟兵たちに襲い掛かる。
「あーもう無理無理! キャパシティ外! 悪趣味!」
 襲い来る花びらをシオドリックは炎の矢で吹き散らし、すぐさま1体のガジェットを召喚。現れたのは発条で動くゼンマイ仕掛けの騎士。
「さあ、八つ裂きにされるのはそっちですよ!」
 さながらタクトを揮う指揮者のように。シオドリックが手にしたステッキをエックハルトへ突き付ければ、ガジェットの槍騎士が呼応して、エックハルトへ疾走。
「ええい次から次へと!」
 わずかに残った花びらを槍騎士へと向けて放つエックハルト。装甲に食い込む花びらをものともせず槍騎士はエックハルトに肉薄し――キリキリと発条の戻る音と共に刺突を放つ。
 一撃目、エックハルトは手甲の丸みを利用し、これを逸らした。金属同士の衝突で火花が散る。その残像も消えぬ間に槍が引かれ、二撃目。エックハルトは後方へ跳躍、背に枯れた木が当たる。
 下がった分だけ槍騎士が前進し三撃目、エックハルトはあえて槍騎士へ踏み込み反撃を試みる。
 裂帛の気合と共に放たれた右手の突きは、槍騎士の胴体で共鳴し大きな衝撃音を響かせるが、槍騎士の動きは変わらない。四撃目、放たれた突きがエックハルトの肩に突き刺さる。そしてそのまま五撃目、六、七と数多の突きがエックハルトを襲う。
「がああああっ!」
 悲鳴か、あるいは咆哮か、槍騎士を引き倒し殺し間から逃れたエックハルトの鎧には無数の槍傷が刻まれていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

富波・壱子
少しずつ、ですが確実に削れてきているようですね。
このまま一気に押し切らせてもらいます。
まずはその手に持った武器を奪いましょう。

他の方達の戦闘音を頼りに標的を追跡し、手に持った銃の射程内まで、なるべく見つからないように近づいてから標的目掛けて発砲します。
命中してもしなくても構いません。標的が鎧を着込んでいる以上、当たっても大きなダメージは与えられないでしょう。
標的がこちらに気づいて振り向くタイミングに合わせてユーベルコードを発動。それまで自分がいた方向の反対側へと瞬間移動して標的に肉薄します。
標的がわたしの姿を見失ってる間に武器を持つ手首へ向けて零距離射撃を行い、武器の奪取を試みます。


レナ・ヴァレンタイン
※他者との絡み大歓迎

――追撃の手は緩めん。切り札を一枚、いかせてもらう

『黒衣のウィリアム』単発式、連射不能だが大口径。銃剣付き
『解放者メイヴ』六発装填式、小口径だが連射可能。

以上二丁をユーベルコードで増やし、念力操作
18丁のマスケット、18丁のリボルバー。
近接戦の布石、あるいは白兵の打ち合いがひと段落したその合間
その瞬間を狙って全弾ねじ込む。傷をえぐり、鎧をさらに打ち壊す狙い
射撃後のマスケットはそのまま射出
銃剣での刺突に使う
奴の鎧とその愛馬にとっては軽いだろうが、それも数を重ねれば多少は効くだろうよ

108発の拳銃弾、18発のマスケット弾
両者合わせて号砲126発!
全弾持っていくがいい!!


月夜・玲
さて、続けていこうか
何度だって攻撃して削ってあげるよ
君の存在を私が否定してあげるよ

●戦闘
仲間との連携を重視
【SPD】で戦闘
一旦距離をおいて戦場を俯瞰して敵の動きを見るよ
状況把握後【高速演算】を使用
技能『第六感』も同時に利用して敵の行動予測
敵の射程圏内から離れるよ
50mも離れれば充分かな?足りないならもう少し離れよっか

その後敵が最も嫌がるタイミングに衝撃波で攻撃
攻撃の時は技能『2回攻撃』も駆使しながら嫌がらせ的
又、仲間の攻撃を上手く援護出来るような時も衝撃波で攻めていくよ

さあさあ、遠距離からチマチマ削られるのはどう?
もう此処で君は終わりになるんだ
私たちの力でね!



槍騎士が倒れ月夜・玲(頂の探究者・f01605)が間合いを取るその合間、動いたのはレナ・ヴァレンタイン(ブラッドワンダラー・f00996)。
「追撃の手は緩めん。切り札を一枚、いかせてもらう」
 態勢を整えきらぬエックハルトへ自身の愛銃――銃剣を装着した漆黒のマスケット銃『黒衣のウィリアム』と短銃身のリボルバー銃『解放者メイブ』の銃口を突き付ける。
 そしてそれらと全く同じ銃身が森の奥の暗い影から浮かび上がった。だが――見よ、銃把はあれど持つ手はなく、銃床はあれど受け手はない。レナの念動力によって複製され、空中に浮きあがったその数、総計34丁。
 不可視の幽鬼が隊列を組み黒騎士へ銃を向けるが如き光景、その中に2丁拳銃を構えた灰髪の少女の姿が瞬き、消えた。そして38丁の銃から一斉に撃鉄を起こす音が鳴る。
「さあ戦争を始めよう。全弾持っていくがいい!!」
 轟音と共に、100を超す銃弾がエックハルトに降り注ぐ!
 だがエックハルトはいまだ致命傷を負っていない。大口径のマスケット銃の弾だけに的を絞り、あるいは剣を揮い、片腕を犠牲にしながらも生きあがく。
 
 立ち上る黒煙と、硝煙の焼ける匂い。その中に拳銃を構えエックハルトへ近づく灰髪の少女――富波・壱子(夢見る未如孵・f01342)の姿があった。
「少しずつ、ですが確実に削れてきているようですね。このまま一気に押し切らせてもらいます」
 銃撃音に紛れ、自らも牽制射撃を行いながらエックハルトへ零距離射撃を行おうと駆け寄っていく。そこへエックハルトが一歩踏み込み、袈裟切りに剣を振り下ろした。
「さ、せ、るかああっ!」
 壱子が片足を踏み出し、回避不可能なタイミング。エックハルトは兜の下でほくそ笑む。その刃はわずかに壱子の髪を両断し――空を切った。あとに残るのはわずかに宙を舞う灰色の髪。
 一瞬にしてかき消えた壱子は、たじろぐエックハルトの背後に現れていた。ギリギリまで伏せた瞬間移動による騙し討ち。そして鎧の裂け目を狙って零距離から放たれた銃弾がエックハルトの肉体に食い込んだ。

「貴様らぁっ、まとめて地獄へ叩き落してやる!」
 エックハルトが振りかざした剣に再び白い薔薇が咲く。辺り一面を襲う花びらの嵐、瞬間移動による回避も困難だ。
 だが花弁が真紅に染まる前、一輪の白薔薇が地に落ちた。一瞬遅れ、斬撃音。その斬撃を放ったのは間合いを図っていた玲。
「その技は私の所までは届かないだろうけど。他のみんなは巻き込むからね。さて、続けていこうか。何度だって攻撃して削ってあげるよ」
 はるか道の先、刃どころか銃撃ですら届かぬ距離から再び玲は斬撃による衝撃波を放つ。それらは違わずエックハルトの剣に咲いた白薔薇を一つ、また一つと散らせて行った。
 彼女の手で光るI.S.T.の演算能力と彼女自身の第六感、それらがその神業めいた斬撃を可能にしていた。
「もう此処で君は終わりになるんだ。私たちの力でね!」

 歯ぎしりと共に軍馬へ騎乗しようとするエックハルトに『黒衣のウィリアム』の銃剣が殺到し刺突を放つ。
 飛び降りた先へ衝撃波が着弾し、黒騎士の鎧に巨大な斬撃痕を刻む。
「その手に持った武器を奪いましょう」
 そして瞬間移動した壱子の銃撃が、最後に残った白薔薇を撃ち抜き、エックハルトの剣が風に散った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レナ・ヴァレンタイン
さて、懺悔があるなら聞くだけ聞こう、と言いたいが
――手負いの獣は油断も容赦もなく疾く狩るべしと、そう教わっているのでな

バイクは、ははぁ流石だ。高いだけのことはある
カウルがイカれてるだけで動作自体は問題ないか
ならば、これで終わりにする

ユーベルコード、起動
ハンティング・ホラー、超過駆動開始
何処へなりとも逃げるがいい。私はお前を逃がさない

拳銃、マスケット、各々の弾丸でまず牽制
動きを止めるための一撃だ。致命傷を負わせずともいい
それでも逃げようとするなら銃剣を投げつけてでも足を止めさせる
騎乗、操縦どちらのスキルも総動員してバイクの挙動全力制御
私のひねり出せる最大火力だ。受け取れ

『――復讐、完了』



「終わり、終わりだと! それは――貴様らの方だっ!」
 軍馬は倒れ、剣は散った。そして鎧からは装飾が失われ、無数の傷が刻まれている。だがそれでもなお黒騎士は吼えた。
 咆哮と共にその鎧を赤い輝きが包み、禍々しく獣めいた姿へと変形させていく。
 殺戮喰血態、その姿はエックハルトが、かつて人々に流させた血の証。
 鋼鉄の半獣人と化したエックハルトは、当たるを幸いとばかりに鉤爪を振り回し、当たりの木々をなぎ倒す。

 そこへ再びエンジン音が響いた。
「ははぁ流石だ。高いだけのことはある。カウルがイカれてるだけで動作自体は問題ないか」
 冗談めかした口調でバイクのアクセルを吹かすレナ・ヴァレンタイン(ブラッドワンダラー・f00996)。
「さて、懺悔があるなら聞くだけ聞こう、と言いたいが――手負いの獣は油断も容赦もなく疾く狩るべしと、そう教わっているのでな!」
 そしてアクセルをフルスロットル。エンジン音を上げ跳ね回る車体を運転技術で抑え込み、レナはハンティング・ホラーを疾走させる。
 燃費という言葉をあざ笑う超過駆動の加速度に、ハンドルから引き剥がされそうになりながら、口元に不敵な笑みを浮かべてレナは進行方向をエックハルトへ向ける。
「何処へなりとも逃げるがいい。私はお前を逃がさない」
「いいや、逃げまどうのはお前だ。お前たち人間こそが、逃げ回る側なのだ!」
 そしてその突進をエックハルトは真正面から受け止めた。――それは彼のオブリビオンとしての最後の矜持であったかもしれない。
 衝突の衝撃に後退し、鎧を歪ませ口元から血を吐きながらも、エックハルトはハンティング・ホラーの車体に鉤爪を突き刺し持ち上げようとする。
 牽制しようとレナは『黒衣のウィリアム』と『解放者メイブ』から銃弾を放つが、エックハルトは止まらない。
 ハンティング・ホラーの車体がきしんだ、浮いた車輪が空転し加速度が消える。変形したエックハルトの兜の口元が笑みの如く歪む。
「はっ、懺悔だと? 家畜を殺して、何が悪い!」
 その言葉と共にエックハルトの手元で何かがひび割れる音がした。エックハルトの鎧が限界を迎えた音。人々の血を糧として強化された鎧がその力を失い、元のひび割れた鎧に還っていく。
「何もかも、さ」
 そう言ってレナはサイドステップに全体重を乗せて足踏み、その衝撃がエックハルトの鉤爪から車体を解放させ、タイヤを地面に押し付ける。再び襲い掛かるハンティング・ホラーは、もはやエックハルトに押し留められはしなかった。
「おのれ、おのれ人間ども。この下等生物如きがぁっ!」
 ハンティング・ホラーの車体が今度こそエックハルトの肉体を轢き潰した。

「――復讐、完了」
 息を吐き、ハンディング・ホラーの座席に座り込んだレナの金髪を、朝の日差しが煌めかせた。
 長い夜が明けたのだ。

◆……◆……◆

 数日後、猟兵たちが守った集落では、赤子の泣き声とそれをあやす村長の声、そして子供たちののどかな歌声が響いていた。
「部下のみんなを倒されて♪ 森の近道駆けこんだ♪ 黒い鎧の臆病者♪」
「馬より早く追っかけて♪ 不思議な力でやっつけた♪ 強くて優しい♪
 強くて優しい……、ええーっと、あの人達、なんて言ったっけ?」
「あ、私覚えてるよ、あの人達はね――」

――第六猟兵って言うんだってさ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2018年12月30日


挿絵イラスト