殲禍炎剣聖餐戦争⑮〜|屍鬼《四季》による絶望とは
●クロムキャバリア:???
これは、ある理由でテロ組織に身を投じている人々の、表に出ぬ想い。
――私は、交通事故で瀕死の重傷を負った。
――ぼくは、助かる見込みのない病に侵された。
――俺は、日常の検査のために青十字に赴いた。
――そこで私は、死ねない身体にされた。
――そこでぼくは、『起き上がり』にされた。
――そこで俺は、生体キャバリアに改造された。
――絶望した私を、総帥は優しく迎え入れてくれた。
――絶望したぼくに、総帥は「これで死ぬことはないわよ」と声をかけてくれた。
――絶望した俺に、総帥は「その力は世界を変える力よ」とおっしゃってくれた。
――だから私は、総帥のために力を尽くすの。
――だからぼくは、総帥のためにがんばるんだ。
――だから俺は、総帥のためなら何でもやってやるぜ。
かくしてそれぞれの理由で『起き上がり』にされ、ヒトとしての生を奪われた人々は、総帥による洗脳を受け、テロ組織に派遣される。
そしてある日、テロ組織の拠点に集められた『起き上がり』の人々に、総帥からのビデオメッセージが届いた。
『ロスト共和国内に落ちた『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の残骸』を奪取して来て頂戴』
「「「御意」」」
ビデオメッセージを見た『起き上がり』たちは、総帥の姿を見て瞳を輝かせながら、その身を『エヴォルグ量産機』へと変貌させる。
そして、彼らは命令通り――ロスト共和国に向け進軍を開始した。
●『屍鬼帝国』による絶望は、希望に変えられるか?
「|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》が破壊され、その残骸がクロムキャバリア全土に降り注いだことで、各地の小国家が動き出しているが……もうひとつ、やべぇ国家が動き出した」
グリモアベースに集まった猟兵達を前に、グリモア猟兵森宮・陽太(未来を見据える元暗殺者・f23693)は、苦々しい表情を浮かべながら告げる。
「動き出した小国家……いや、組織と言うべきか? とにかくその国家の名は『屍鬼帝国』という」
――それはかつて【人類皆不老不死】を掲げ、人体を生体キャバリアに改変するという事件を起こした組織。
この『屍鬼帝国』に操られた複数のテロ組織が、屍鬼帝国のために、殲禍炎剣の残骸のひとつを狙って動き出したという。
「で、狙われたのがロスト共和国の辺境ってわけだ……総帥とやら、ぜってーわかって仕掛けて来てやがる」
しかも出撃して来るテロリスト達は、帝国総帥による洗脳を受け、我が身を顧みない自殺的な特攻を仕掛けてくるという。
――起き上がりは、致命的な傷を負ってもすぐ蘇生する。
ゆえにテロリストたちも、使い捨ての駒のように、躊躇なく投入してくるというわけだ。
「ただ、突発的な事態へ対応するためか、洗脳は不完全のようだ。だから生体キャバリアと化した『起き上がり』たちの抗う意志を奮い立たせれば、洗脳が解けて進軍を諦めてくれるかもしれねぇぞ」
陽太いわく、抗う意志を奮い立たせるための手掛かりは、あると言えばあるらしい。
「奴らはヒトを捨てさせられ、起き上がりとなった。二度とヒトに戻れない諦念から洗脳を受け入れ――テロリストとなった」
一方、ロスト共和国全土では、ある事件の後――起き上がりが少しずつヒトに戻りつつある。
「そうなった過程は滅茶苦茶複雑だから説明を省くけどよ、とにかくロスト共和国内に留まるよう説得すれば、テロリストたちも起き上がりからヒトに戻れると希望を持てるかもしれねえ」
もちろん、絶望を洗脳で封じられたまま撃破するのもひとつの解決法ではあるが、救いの道を示唆するのもひとつだ、と陽太は猟兵達に告げた。
「あくまでも俺個人の私見だが、屍鬼帝国に|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の残骸が渡れば、再起してくるかもしれねえ」
だからこそ、何としてでも阻止してくれ、と頭を下げながら。
陽太は二槍と獅子のグリモアを輝かせ、猟兵達をロスト共和国の辺境へと転送した。
北瀬沙希
北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
よろしくお願い致します。
クロムキャバリア戦争「殲禍炎剣聖餐戦争」は、第二戦線に突入しました!
各国が|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の残骸を狙い動き出す中、「屍鬼帝国」も動き出しましたが、もちろん渡すわけにはいきません。何とかして阻止をお願いします!!
なお、本シナリオでは屍鬼帝国関係者との接触は一切できません。ご了承願います。
※過去の屍鬼帝国(厳密にはロスト共和国)関連のシナリオは未読で大丈夫です。
=============================
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「殲禍炎剣聖餐戦争」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
=============================
状況は全てオープニングの通り。
今回は冒頭の追記はありません。
●本シナリオにおける「プレイングボーナス」
【洗脳された者達の、抗う意志を奮い立たせる】
戦闘で撃破しても撤退してくれますが、抗う意志を奮い立たせれば洗脳が解け、戦闘なしで撤退してくれます。
抗う意志を奮い立たせるための手掛かりは、OP内のグリモア猟兵の言にありますので、狙う方は参考に。
※なお、撃破してもパイロット(?)が死亡する事は、基本ないものと考えてもらって大丈夫です。
●【重要】プレイングの採用について
受付期間は【9月15日(火)8:31~タグで受付締切を告知するまで】。
早期完結を重視して運営しますので、プレイングの採用は必要最小限とし、挑戦者多数の場合は問題ないプレイングでも採用を見送り返金する場合がございます。予めご了承の上での参加をお願いします。
なお、本シナリオはサポート、全体リクエストのお力を借りて進行する場合もございます。
また、進捗次第で、オフ会でのリアルタイム執筆を行う可能性もあります。その際は会場で呼びかけさせていただきますので、ご協力いただけますと幸いです。
その他、シナリオ運営上の諸連絡は、マスターページを参照いただけますと幸いです。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『エヴォルグ量産機』
|
POW : ヴォイドレーザー
【口内から無作為に分岐するレーザー】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : リボルティックスピア
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【自身から分離した触腕】で包囲攻撃する。
WIZ : EATエンジン
自身の【エネルギー補給機能を起動。自身】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[エネルギー補給機能を起動。自身]から何度でも発動できる。
イラスト:えな
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エレスラ・キャストール
|昼《生》を歩めず、|夜《死》にも至れず。それは確かに、絶望に値すること。
けれど、黎明に至る道は確かにあるのだと。伝えてあげないと、ね。
起き上がりの集団のもとへ向かい、月ノ謡を【楽器演奏】、『闇夜に輝く瞬の華』を歌おう。
花弁の光で怯ませた処に、説得を試みるよ。
そのような身に至った事、痛ましく思う。
けれど、元の身体へ戻る道はあるという。人として生き、人としての死へ至れる道。手掛かりは、この国にこそある。
ぼくを信じて。共に来て欲しい。
話し終えたら再度、瞬の華を歌う。今度は彼らを味方と見做し、苦境へ抗う意志を奮い起こす助けとしよう。
後は、受け入れた者達を然るべき場所へ【道案内】できればと。
●
――クロムキャバリア:ロスト共和国。
主要都市や聖湖エリュシオンから遠くの辺境にあたる地域に落下した|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の残骸を求めて、かつてロスト共和国の中枢に食い込んでいた組織『屍鬼帝国』の影響下にあるテロリストが共和国内に侵入する。
彼らは皆、何らかの理由で死を奪われ、しかしヒトとしての在り方をも奪われた『起き上がり』。
生も死も奪われた彼らは、屍鬼帝国の総帥とやらに洗脳され――その意のままに操られているという。
そんな彼らのことを想いながら、エレスラ・キャストール(NightWisper・f45638)
「|昼《生》を歩めず、|夜《死》にも至れず。それは確かに、絶望に値すること」
ふと、エレスラが空を見上げると、雲一つない空から雨が降り注いでいる。
(「晴れているのに、雨が降っている」)
雨はエレスラに触れた瞬間、ほんの僅かに細胞を活性化させ、生を与えていた。
――それは、ある事件を契機にロスト共和国全土に降り注ぐようになった、光の雨。
おそらくこれが、『起き上がり』たちから徐々に不死を奪い、ヒトへと戻しているのだろう。
浴びた者をすぐ戻すのではなく、長い時をかけて少しずつ戻し、癒す雨を浴びながら、エレスラは月をモチーフにしたギター『月ノ謡』を手に取った。
「――黎明に至る道は確かにあるのだと。伝えてあげないと、ね」
『起き上がり』が変じた生体キャバリア『エヴォルグ量産型』の群れは、真っ直ぐ殲禍炎剣の残骸を目指している。
ヒトならざる者へと変化させられた彼らを前に、エレスラは月ノ謡をかき鳴らしながら歌い始めた。
『光なき地にも花は咲く。例え刹那の命でも、誇り高く輝き放つ――』
月そのものが謡っているかのように澄んだ音色が響き――淡く光る花弁が周囲に散布される。
花弁の光は、エレノラの姿を覆い隠しつつ、『起き上がり』たちの視界を奪った。
敵はおろか、残骸すら見失った彼らに、エレスラは語りかける。
「ぼくはあなたたちの事情は知らないけど、そのような身に至った事、痛ましく思う」
「私達だって、望んでこんな身体になったんじゃない!!」
「俺らを総帥は受け入れてくれた。だから総帥の為に――!!」
――総帥を盲信する彼らの根底にある感情は、絶望。
彼らの叫びに含まれる絶望を受け止めながら、エレノラは月ノ謡をかき鳴らし、語り掛ける。
「けれど、元の身体へ戻る道はあるという」
「――――!?」
「人として生き、人としての死へ至れる道。手掛かりは、この国にこそある」
エレノラは月ノ謡を演奏する手を止め、空を指差す。
空から絶えず降り注ぐ光の雨は、エレスラにも『起き上がり』達にも等しく降り注いでいる。
「ぼくを信じて。共に来て欲しい」
真摯に語りかけながら、エレスラは再び月ノ謡をかき鳴らし、歌い始める。
――光を失った彼らの心に、再び光が灯るように。
――昼と夜のあわいを彷徨う者が、再び昼を歩めるように。
(「後は、受け入れた者達を、然るべき場所へ道案内できれば」)
――ロスト共和国に縁を持つ者に繋いでもらえれば、彼らも受け入れてもらえるだろうか。
そう、考えながら、エレスラは彼らが苦境に抗い、ヒトに戻れるよう願い、歌い続ける――。
大成功
🔵🔵🔵
水久毬・しずる
【魂玄】/他連携◎
ふむ、これはなかなかに難問だ
しかしミタマくんの試練にはこれ以上なく向いている
ひと時の道を示す者として、少し骨を折るとしようか
さてイクタチくん
私を持って飛び駆けてくれるかな?
私の〔玄亀〕は機動力がからっきしだからね
だからミタマくんのお手伝いに注力する
その為の準備に、キミの助けがいるんだ
…無茶をするねミタマくん
いいよ、それだけの覚悟があるのなら
“念糸”とは何か、一端を伝えよう
方針:“繋げる”べき相手を見出す
【手をつなぐ】ミタマくんに〔念糸〕を繋ぎ【瞬間思考力・情報伝達】で以降の情報を共有
イクタチ君の手に掴まりながら【指定UC・道案内・情報収集】し、彼らの状況と行動指針を把握
ああ、覗きすぎないように加減が大変だ
充分情報を得たら戦場の中心付近に玄亀を現出
ミタマくんと降り立ち【結界術・拠点防御】
さて、後は任せたよ
誰の縁を辿ればいいか、もう分かったはずだ
大丈夫、キミの消耗は〔極天心核〕が補おう
触媒は人それぞれなれど、念糸とは結局、己と他を繋ぐものの一つ
それ即ち縁に似て、ってね
ミタマ・フライデイ
【魂玄】/他連携◎/『』内は〔イクタチ〕の台詞
この身の紋傷と共に、私は自分の力を自覚した…と思います
その力の一端を扱えるよう、しづるさんに教えを請うたのですが
その数ヶ月の総決算が…
『ミタマ、|占い師《あの女》が自分を持って飛び回れと言うんだが』
――イクタチ、私も彼女と一緒に
『は?』
守ってくれるでしょう?
【手をつなぐ】彼女から情報が…彼らの想いが流れ込む
イクタチ、くれぐれも彼らを傷つけないで!
彼らは統一されている
彼らは絶望していた
彼らは現状に身を委ねている
彼らは――変えられないと諦めている
玄亀に降り立ち、彼女の言葉に頷く
方針:縁を繋ぐ
この身に刻んだ縁に想いを馳せ、眼前の相手に〔念糸〕を放つ
〔神脈経路の紋傷〕の機構を励起
全員が持つ“総帥”の縁を元に念糸を分岐、枝を伸ばす
【指定UC・声を届かせる・コミュ力・狂気耐性・情報伝達・優しさ】〔慈愛世界の紋傷〕で私の精神世界に彼らの心を呼び込む
大丈夫です、あなた達はまだ間に合う
その為に奮闘している人々がいます
何よりこうして言葉が伝わる
あなた達は
人間です
●
――クロムキャバリア:ロスト共和国。
主要都市や聖湖エリュシオンから遠くの辺境にあたる地域に落下した|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の残骸を求めて、『屍鬼帝国』の影響下にあるテロリストが次々と国境を越えて来る。
ヒトとしての生を奪われ、『起き上がり』となった彼らは、その身を生体キャバリア『エヴォルグ量産機』に変貌させ、屍鬼帝国の総帥の意のままにロスト共和国に災禍を齎そうとしていた。
――死をも厭わぬ不死の軍団は、不気味に、だが確実に残骸に近づきつつある。
そんな彼らを見ながら、水久毬・しずる(命脈は此方の北星より ~|霊脈使い《レイライン》~・f44934)は顎に手を当て、ふむ、と頷いた。
「これはなかなかに難問だ。しかしミタマくんの試練にはこれ以上なく向いている」
「この身の紋傷と共に、私は自分の力を自覚した……と思います」
その言の葉に応えるように、ミタマ・フライデイ(闇中に輝いて -|神魔侵食体《セイレーン》-・f30540)は、己が身に刻まれた蔦の如き紋様をなぞる。
「その力の一端を扱えるよう、しずるさんに教えを請うたのですが、その数ヶ月の総決算が……」
――今、なのかもしれません。
そう、呟くきながらミタマが空を見上げると、空から青い雨が降り注いでいるのが見えた。
「雨……いえ、これは光ですね」
「そのようだな」
しずるが掌で雨を受けると、雨に打たれた箇所がほんの僅かに活性化したような気がする。
(「だからグリモア猟兵は、起き上がりたちに共和国内に留まるよう説得しろと言ったのか」)
しずるやミタマが雨を浴びても、目立った影響は何もない。
おそらく、この雨は――起き上がりの細胞をヒトに戻す雨なのだろう。
そう、見当をつけたしずるは、さて、とミタマ……ではなく、ミタマの側に控えるオブリビオンマシン『イクタチ【御神楽級戦刀機】』に呼びかける。
「イクタチくん、私を持って飛び駆けてくれるかな?」
『は?』
「私の〔玄亀〕は機動力がからっきしだからね。だからミタマくんのお手伝いに注力する」
『ミタマ、|占い師《あの女》が自分を持って飛び回れと言うんだが』
どこか不満げな声をあげるイクタチに、しかしミタマは即答。
「――イクタチ、私も彼女と一緒に」
『は、はぁ!?』
ふたり揃って何考えてんだ、と言わんばかりのイクタチの声に、ミタマは通る声で畳みかける。
「守ってくれるでしょう?」
『仕方ないな……落ちないよう捕まっていろよ!?』
ミタマの押しに観念したか、イクタチはふたりを右掌に乗せ、五指で包み込みながら持ち上げる。
「……無茶をするねミタマくん。いいよ、それだけの覚悟があるのなら“念糸”とは何か、一端を伝えよう」
その、ミタマの覚悟を見て取ったか、しずるは懐から念糸【イト】を取り出した。
●
しずるとミタマを掌に載せたまま、イクタチは地面スレスレを飛翔し、移動する。
やがて、しずるとミタマの目に、押し寄せる『起き上がり』の集団が見えてきた。
しずるとミタマは手をつなぎ、手首同士を念糸で繋ぐ。
「さて、と……『ふくく、やっぱり『視える』と楽しいなァっ!――…コホン。や、気にしないでね』」
イクタチの指に捕まりながら、しずるはユーベルコードを発動する。
しずるの足に刻まれている刺繍紋『|禁箍紋《きんこもん》【|玄天俔子《げんてんけんし》】が淡く輝き、色なき紋へと変化した。
一時的に紋の封印を解き、抑えられていた瑞気を少しずつ体内から放出しながら、しずるは近づきつつある『起き上がり』の位置や行動、そして心情をも感知する。
「……!!」
しずるが感知した情報は、念糸を通しミタマにも流れ込む。
その、膨大な情報と想いの量に、ミタマは思わずのけ反りそうになるが、片腕でイクタチの指にしがみつき耐えた。
しずるも、額に僅かに脂汗を浮かべつつ、涼しい顔でミタマを諭す。
「覗きすぎないように加減が大変だがね。――これが“念糸”だ」
「はい、どうやら彼らは統一されている……ようです」
――彼らは絶望していた。
――彼らは現状に身を委ねている。
――そして彼らは――変えられないと諦めている。
性別も体格も境遇も異なる人々が、『絶望』という感情で統一されている。
総帥とやらはこの感情に付け込み――洗脳を施したのだろう。
『何とも不気味な集団だな。これが元人間……っておい!!』
イクタチが唸ったその時、生体キャバリアの姿を取った『起き上がり』たちが、不気味な程黒々とした口を開けながらイクタチに群がり始めた。
『ミタマ、こいつら、自分を喰うつもりだぞ!?』
「イクタチ! それでも彼らを傷つけないで!!」
『無茶言うぜ!』
イクタチは左腕と足で『起き上がり』たちを必死に振り払い、時間を稼ぐ。
その間も、しずるとミタマは念糸から想いを手繰りよせ、情報を集めていた。
やがて、禁箍紋が元の色を取り戻し、情報の波が途切れる。
「さて……ミタマくん、情報はこれで充分と思うかね?」
「おそらく……いえ、充分過ぎるかと」
「行こうか――玄亀!」
しずるは群れの中心に、亀の神獣を象り、要塞の如き鉄壁の防御力を持つ|竜騎《キャバリア》『|玄亀《クロキ》【|北天瑞獣型■造竜騎《麒麟キャバリア》】』を現出させる。
その名の通り、巨大な亀のような見た目のキャバリアは、イクタチに殺到する『起き上がり』たちの一部を押し潰しながら地面に降り立った。
しずるとミタマもイクタチから飛び降り、玄亀の背に着地する。
『起き上がり』たちが玄亀を捕食せんと殺到し始めるが、直ぐにしずるが結界を展開し、遮った。
「さて、後は任せたよ。誰の縁を辿ればいいか、もう分かったはずだ」
「はい」
結界で生体キャバリアを遮るしずるに促され、ミタマはじっと『起き上がり』たちを見つめる。
辿りし縁は――全員が確実に持っている“屍鬼帝国の総帥”の縁。
「『起き上がり』となった過程も、彼らが持つ絶望も、皆少しずつ違います」
――だが、それでも。
「総帥とやらの洗脳を受けている以上、彼らは皆――1度は総帥と会っているはずです!!」
掴んだ縁を辿るように、ミタマは念糸を伸ばす。
ミタマが伸ばし、枝分かれさせた念糸は――総帥との縁を持つ『起き上がり』たちに絡みついた。
――よこせ、よこせ、よこせぇ……!!
――お前たちを喰って、さらに残骸も手に入れる……!!
――総帥の為なら、何でもしてやる……!!
念糸が絡みついた瞬間、生体キャバリア自体が持つ衝動と、植え付けられた総帥への従属の意が、ミタマに直接、そして一気に流れ込む。
「くっ……!!」
先程とは異なり、直接強い衝動と情動を叩き込まれ、ミタマの精神を荒波のように揺さぶった。
同じ想いは、ミタマと念糸でつながっているしずるにも流れ込んでいる。
「触媒は人それぞれなれど、念糸とは結局、己と他を繋ぐものの一つ――それ即ち縁に似て、ってね」
(「さて、このもつれた糸を解くのは至難そうに思えるが……」)
「大丈夫、キミの消耗は、極天心核が補おう」
「は、はい……!!」
ミタマの胸に刻まれた、慈愛世界の紋傷【ハート】が優しく輝く。
その光は、ミタマと念糸でつながる『起き上がり』達の心を、ミタマの精神世界へと誘った。
直後、ミタマの表情が虚ろになり、生体キャバリアの動きが一斉に止まる。
「さて、あとはミタマ次第か」
『今のうちにこいつらをどけておいてやるか』
しずるがミタマの様子を伺っている間、イクタチが動きを止めた生体キャバリアを玄亀から静かに引き離していく。
イクタチに対応を任せたしずるは結界を解除し、ミタマを見守っていた。
●
イクタチが生体キャバリアを引き離している頃、ミタマは己が精神世界で強い想いに翻弄されていた。
――もう、私は人間じゃない。
――こんな姿に……なりたくなかった!
――死に逃げることもできない。真っ当な人としても生きていけない。
――死ねない身体で、どうやって生きていけば……!!
精神世界に誘われた『起き上がり』達の心は、次々と荒波となりミタマを揺さぶる。
だが、ミタマは彼らの想いを受け止めながら、想いの核を掴んでいた。
(「今の彼らは、理性と衝動、絶望の間で揺れ動いています」)
理性なき傀儡というわけではないが、理性以上に強い絶望が――彼らを傀儡と為している。
そして、その絶望の核は――『起き上がり』にされた、という事実だ。
その絶望を少しでも癒すべく、ミタマは優しく語りかける。
「大丈夫です、あなた達はまだ間に合う。その為に奮闘している人々がいます」
「…………!?」
「本当、なのか……!?」
その言の葉に、『起き上がり』たちが総じて息を呑む。
「本当です。そして――」
ミタマはよく通る声で、はっきりと呼びかけた。
「――何よりこうして、言葉が伝わりますから」
――あなた達は、人間です。
『起き上がり』たちを人間と断ずるミタマの言の葉が、精神世界に響く。
その言の葉は、ゆっくりと『起き上がり』たちの心に沁み入り――総帥が仕込んだ絶望の楔を砕いていた。
楔を砕かれた『起き上がり』たちは、ゆっくりとあるべき身体へと戻っていく。
ミタマもそれを見届けた後――己が身体へと戻っていった。
●
しずるの目の前で、生体キャバリアが少しずつ身じろぎしながら人間の姿に戻ってゆく。
その中には、衣装を全く身に着けていない、一糸まとわぬ姿に戻る者もいた。
「おっと」
イクタチが手を差し出し、衣服を身に着けていない者の姿をしずるとミタマから隠す。
「これはどういうことか?」
しずるが首を捻っていると、イクタチの手の後ろから声が上がった。
「あれ、俺達……ひょっとして」
「もど、った……!?」
「え!?」
一糸まとわぬ者達の声に、ミタマや『起き上がり』たちが驚く。
(「精神世界に誘われている間、青い雨を浴び続けたから、『起き上がり』にされてさほど時間が経ってない者は人間に戻れたのだろうな」)
しずるがそんなことを考えていると、突如グリモアの転送ゲートが現れ、人数分のバスローブが投げ込まれる。
『おーい、とりあえず人間に戻った連中にこれ着せておいてくれ』
「そうだろうな。有難く借りるよ」
投げ込まれたバスローブを一糸まとわぬ者たちに渡しつつ、しずるとミタマは『起き上がり』たちに問いかけた。
「あの者たちを見ればわかるだろう――この国に留まり続け、雨を浴び続ければ、完全にヒトに戻れよう」
「総帥とやらの縁は、洗脳が解けたことで切れたはずですが……どうしますか?」
そう、問いかけるふたりに、『起き上がり』たちは迷わず答える。
「あれを見せられたら、俺達もその可能性に賭けるしかないだろ。この国で保護してほしい」
「でも、この国はわたしたちを受け入れて……くれるの?」
『起き上がり』の間から漏れる不安に、しずるは自信をもって答える。
「そこはなんとかしよう」
(「まあ、確証はないが、後でグリモア猟兵に相談すれば何とかなるだろう」)
「ありがとう……これで俺たちも戻れる、のか」
「そのようですね」
安堵の息をつく『起き上がり』たちに、ミタマがにこりと微笑む。
希望を取り戻した『起き上がり』の頭上からは、いつまでも癒しの青い雨が降り注いでいた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
パラス・アテナ
痛ましいね
アンタ達には何の非もないのに人生を狂わされて
この世界はそんな話が多すぎる
その連鎖はここで絶つよ
指定UC発動
説得を試みるよ
アンタ達
思い出してごらん
アンタ達が不死になったのはいつだい?
どのタイミングだったか
隣の奴と擦り合わせてごらん
青十字社と関りを持った時じゃなかったかい?
これが偶然なものかい
アンタ達は青十字社によって不死の身体にされて
いいように洗脳されて手駒にされたんだよ
洗脳された不死の軍勢なんて
戦争屋にとっちゃこんなに都合のいい連中はいないからね
殲禍炎剣の残骸が奴の手に渡ったら
加速度的に被害が広がるよ
アンタ達は自分で守るべきなんだ
自分自身の尊厳ってやつをね
このままなら永遠に奴らの思う壺だ
ロスト共和国に保護を求めな
アタシの名を出せば悪いようにはしないさ
そこに行けば希望はある
信じてみちゃくれないかい?
説得しながらも内心自嘲の笑みを浮かべ
アタシも昔は部下を使い潰すような真似をしてきたねぇ
どの口が言うんだか
部下達にとっちゃ何の慰めにもなりゃしないが
せめてアンタ達は尊厳を取り戻しておくれ
●
――クロムキャバリア:ロスト共和国。
|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の残骸を求め押し寄せる、『屍鬼帝国』の総帥に洗脳された生体キャバリアの群れを見て、パラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)は仏頂面のまま呟いた。
「痛ましいね。アンタ達には何の非もないのに人生を狂わされて」
そう、呟いたパラスに、『起き上がり』の一部が人間に戻った、との一報が入る。
どうやら、別の戦場で長時間青い雨を浴びていた『起き上がり』たちのうち、不死を得てからあまり日が経って無かった者が不死の軛から解き放たれたのだろう。
だが、押し寄せるテロリストが皆、そのような状況ではないことは――残る生体キャバリアの数が物語っている。
「この世界はそんな話が多すぎる。その連鎖はここで絶つよ」
殲禍炎剣の残骸を渡さぬために、そして屍鬼帝国に力を与えぬために。
パラスはゆっくり息を吸い込むと、未だ戦意を失っていない『起き上がり』たちに説得を試みた。
「あんた、『起き上がり』じゃないな? 邪魔をするならどいてもらおうか」
生体キャバリアと化した『起き上がり』たちからの警告を、パラスは意図的にスルーし、ユーベルコードを乗せながら呼びかける。
「アンタ達、思い出してごらん。アンタ達が不死になったのはいつだい?」
「え?」
その言の葉に、生体キャバリア達が一斉に顔を見合わせた。
上手く刺さった、と判断し、パラスは説得と言う名の呼びかけを続ける。
「どのタイミングだったか、隣の奴と擦り合わせてごらん」
「そう言われても……」
迷う生体キャバリア達に、パラスはひとつの推測を投げかける。
「これはアタシの勝手な想像だがね――青十字社と関りを持った時じゃなかったかい?」
もちろん、パラスは想像ではなく、確固たる情報を握った上で口にしているのだが、あえてその事実は口にしない。
パラスに促され、『起き上がり』たちは隣同士で話し始める。
「俺は事故に遭って青十字社に運び込まれたんだが、次に起きた時には、もう……」
「あたしは遠く離れた国の出だけど、青十字社の方に『健康体を手に入れたくないですか?』と言われて……起きたらこうなっていて」
「うん、そういえば、青十字の病院に入ってからの記憶が……」
『起き上がり』たちが話す言の葉には――共通のキーワードが入っている。
「全員青十字社に関わっているね――果たしてこれが偶然なものかい?」
その呼びかけに対する、『起き上がり』達の答えは――沈黙。
そうだろうね、と断定しながら、パラスはさらに畳みかける。
「アンタ達は青十字社によって不死の身体にされて、いいように洗脳されて手駒にされたんだよ」
「!?」
「洗脳された不死の軍勢なんて、戦争屋にとっちゃこんなに都合のいい連中はいないからね」
パラスの説得に対し、『起き上がり』たちは返す言葉を持てない。
――『起き上がり』にされ抱いた絶望は、実は意図的に抱かされたもの。
それに、気づかされてしまったから。
「つ、つまり……」
「殲禍炎剣の残骸が奴の手に渡ったら、加速度的に被害が広がるよ」
――それに。
「アンタ達は自分で守るべきなんだ。自分自身の尊厳ってやつをね」
――このままなら、永遠に奴らの思う壺だ。
そう、呼びかけながら、パラスはじっと生体キャバリア達を見つめる。
キャバリアに変貌した彼らの顔からは、感情ひとつ読み取れない。
だが、パラスの説得は――確かに『起き上がり』たちの心を揺さぶっていた。
やがて、生体キャバリアのひとりが、口を開く。
「……わかった。総帥を信じられる材料がなくなった以上、俺らはあんたに投降する」
その、言の葉を合図にしたかのように、生体キャバリアに変貌していた人々は、次々と元のヒトの姿に戻っていった。
●
「これから俺たちはどうしたらいい?」
元の姿に戻った『起き上がり』たちが、パラスに問う。
「ロスト共和国に保護を求めな」
「で、でもどうやって……」
「アタシらをここに派遣した者が繋ぎを取ってくれる。そこでアタシの名を出せば悪いようにはしないさ」
(「とはいえ、陽太はテロリストと勘違いされそうだからねえ……美雪のほうが大統領に顔が利くか」)
それは後で話をすればいいか、と考えるパラスに、『起き上がり』たちは不安げに問いかけた。
「あんたを信じていいのか?」
「ああ。そこに行けば希望はある。信じてみちゃくれないかい?」
(「アタシも昔は部下を使い潰すような真似をしてきたねぇ……全く、どの口が言うんだか」)
心の裡だけで自嘲の笑みを浮かべながら、パラスは仏頂面を崩さぬまま独り言。
「……せめてアンタ達は尊厳を取り戻しておくれ」
(「アタシの部下達にとっちゃ、何の慰めにもなりゃしないが」)
「何のことだ?」
「独り言だよ」
耳ざとく聞きつけた『起き上がり』の言をかわしながら、パラスはスマホを手に取り、何処かに連絡し始めた。
その後、投降した『起き上がり』たちは、グリモア猟兵やパラスの口利きで、ロスト共和国でひとまず保護されることになる。
『起き上がり』たちの洗脳を解き、ヒトに戻る道筋をつけた猟兵達は、安堵の息をつきながらグリモアベースに帰還した。
大成功
🔵🔵🔵