殲禍炎剣聖餐戦争㊴〜聖なる水は再び進化の火種となるか
●クロムキャバリア:ロスト共和国――ある大河の三角州
聖湖エリュシオンから流れる大河が形成する三角州に、突如轟音と共に火の玉が落下する。
落下した火の玉は聖湖から流れる水で冷やされ――やがて紅にカラーリングされた残骸へと変化した。
数分後、三角州の上空に、ロスト共和国のエンブレムをつけたキャバリア『ジェネラル・キャバリア』が現れる。
「轟音の原因は……これか?」
パイロットはゆっくりと三角州に降り立ち、紅の残骸に触れぬよう注意を払いながら確認する。
一頻り観察した後、パイロットは通信回線を開き、どこかに連絡し始めた。
「|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の残骸らしき紅の塊を発見。いかがしましょう?」
『テロリストに強奪されるわけにはいかないだろう。回収し、持ち帰れ』
「わかりました。回収し、持ち帰ります」
通信相手からの指示を受けたパイロットは、『ジェネラル・キャバリア』のRXハルバードを構え、引力を発生させ始める。
上層部が『殲禍炎剣の残骸から新技術を獲得し、社会不安の解消を狙おうとしている』ことなど知る由もなく、パイロットは回収作業を始めようとしていた。
●グリモアベース
「あ~……まだ聖湖エリュシオンのど真ん中に落ちなかっただけましだが……これはこれで面倒なことになったな」
グリモアベースの片隅で、ぶつくさ呟いているグリモア猟兵藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)の周囲に集まって来た猟兵たちに、美雪はコホンと咳払いひとつしてから説明を始める。
「クロムキャバリア上空を飛翔し、人類から空を奪っていた暴走衛星『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》』が破壊されたのは知っているな?」
世界に破壊を齎そうとし、逆に猟兵たちに破壊された殲禍炎剣の残骸は、クロムキャバリア全土に降り注いだ。
世界破壊の目的が、クロムキャバリアの人類の『七番目の猟兵』への進化である以上、殲禍炎剣も自身が破壊され、その残骸が利用されることも予測して事を起こしているが――。
「――その予測はどうやら当たっていたようだ。殲禍炎剣が破壊され、残骸が全世界に降り注いだ結果、野心を持つ各地の小国家が、残骸を確保すべく動き出したよ」
もし残骸を手に入れたら、小国家は解析したオーバーテクノロジーをプラントに組み込み、オブリビオンマシンの量産体制に入るだろう。
「まあ、そんなことされちゃたまったもんじゃない。というわけで、皆には殲禍炎剣の残骸を確保しようとする小国家の動きを阻止してくれ」
頭を下げる美雪に、猟兵達は其々の想いを胸に頷いた。
「今回、私のグリモアが在処を予知したのは、『ロスト共和国』という小国家だ」
水プラントによる大規模な人造湖、聖湖エリュシオンを中心とする「ロスト共和国」。
その聖湖から流れる大河の三角州にも、殲禍炎剣の残骸のひとつが落下している。
ちなみに、なぜ聖湖のど真ん中に落ちなかっただけましなのかというと。
「ど真ん中に落ちた場合、ぶっちゃけると水プラントが破壊される、あるいは残骸の影響でプラント自体が割とシャレにならない進化を遂げる可能性がある」
そうなれば、ロスト共和国は日々の生活すら困窮するような状況になってしまう……かもしれない。
「せっかく市民たちを生体キャバリアの軛から解き放ったのに、また進化させられたらたまったもんじゃないだろ……」
チョットマテ何さらりと危険な事を言ってるんだと詰め寄る猟兵達に、美雪も大きくため息ひとつ。
「これが本当の話なのだよ……いろいろあって徐々に人間に戻りつつはあるのだが、まだ数年はかかるはずだからな」
だからこそ、殲禍炎剣の残骸をロスト共和国に渡すわけにはいかないな、と呟きながら、美雪は猟兵達に説明を続ける。
「ロスト共和国側は有能なパイロットをひとり、回収のために破壊したようだ。表向きは国内で暗躍するテロリストによる強奪を阻止するための派遣となっていて、それも概ね正しいのだが、どうやら上層部の一部に新技術獲得によって社会不安の解消を狙っている輩がいるようなのだよ」
――と、いうわけで。
「皆にはパイロットに殲禍炎剣の残骸を回収させず、追い払ってくれ。戦闘で追い払ってもいいが、残骸の危険性を訴えて聞き入れてもらえれば、穏便に撤退してくれるかもしれない」
何方を選ぶかは現場の判断に任せるよ、と告げる美雪に、猟兵達は軽く頷き返していた。
ちなみに交渉が決裂した場合は、キャバリアの破壊もやむなしとのことです。
「あ、念のため言っておくぞ。今回はギャグ・カオス・トンチキは一切なしだ。大真面目に頼む」
私の依頼って、最近そんなのばっかりだったからなぁ……と大きくため息をつきながら。
美雪はグリモア・ムジカから無数の音符を展開し、猟兵達を現地へといざなった。
北瀬沙希
北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
よろしくお願い致します。
クロムキャバリア戦争「殲禍炎剣聖餐戦争」は、第二戦線に突入しました!
各国が|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の残骸を狙い動き出す中、「ロスト共和国」も動き出しましたが、もちろん渡すわけにはいきません。何とかして阻止をお願いします!!
なお、本シナリオの舞台となる小国家「ロスト共和国」は、三ノ木咲紀マスター考案の小国家です。
ただし、本シナリオではロスト共和国に関係する著名なNPCとは一切接触できず、また登場もしません。何卒ご了承願います。
※過去のロスト共和国シナリオには、目を通さなくても大丈夫です。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「殲禍炎剣聖餐戦争」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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状況は全てオープニングの通り。
今回は冒頭の追記はありません。
●本シナリオにおける「プレイングボーナス」
【殲禍炎剣」の残骸の危険性を訴える】
攻撃して追い返しても問題はないのですが、もし猟兵が訴えた危険性にパイロットが納得すれば、パイロットはその時点で撤退します。
説得内容によっては、戦闘せず撤退させることも十分可能ですので、是非挑戦してみてください。
……なお、機体の破壊も一応不問とします。後でグリモア猟兵の胃が(色々な意味で)死にそうですが。
●【重要】プレイングの採用について
受付期間は【9月13日(日)8:31~タグで受付締切を告知するまで】。
早期完結を重視して運営しますので、プレイングの採用は必要最小限とし、挑戦者多数の場合は問題ないプレイングでも採用を見送り返金する場合がございます。予めご了承の上での参加をお願いします。
なお、リプレイ執筆は「殲禍炎剣聖餐戦争①〜プラント破壊は進化を齎すか」完結後から開始しますので、執筆に着手する前にプレイングが流れる可能性があります。その場合はお手数ですが再送いただけますと幸いです。
その他、シナリオ運営上の諸連絡は、マスターページを参照いただけますと幸いです。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『ジェネラル・キャバリア』
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POW : キャッスルウォール
自身の身長の2倍の【後方からの攻撃を無効にするオーラの背後霊】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD : ジェネラルホース
【|機械馬《サイキックキャバリア》】を召喚する。騎乗すると【人馬一体】状態となり、【灼熱】属性とレベル×5km/hの移動力を得る。
WIZ : トラクションニール
【棘から電磁パルスを発振】【RXハルバード】による近接攻撃の軌跡上に【引力】を発生させ、レベルm半径内に存在する任意の全対象を引き寄せる。
イラスト:イプシロン
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「廿鸚・久枝」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
メル・メドレイサ(サポート)
時計ウサギのマジックナイト×パーラーメイド、15歳の女です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、演技時は「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
戦闘スタイルは多種の属性を扱う魔法使い
武器に魔法をかけ戦うこともできます
依頼にちなんだ品を給仕することを好み、味方には有効なもの、敵には嫌がらせ用のものを渡します
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
音駆螺・鬱詐偽(サポート)
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
・・・って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ。
うう、これも番組の為なのね。
自身の命綱である番組の為、多少の苦難や困難は仕方なく行います。
むしろ持ち前の不運によりおいしい場面を呼び込んでくれるかと思います。
ただし、ネガティブとはいえアイドルですのでマイナスイメージとなる仕事はすべて却下でお願いします。
ユーベルコードや技能はご自由に使わせてください。
どうぞ、当番組のネガティブアイドルをお役立てください。
プロデューサーより
諏訪野・啓太郎(サポート)
『唯のろくでなしの旅烏ですよ。』
スペースノイドのスターライダー×電脳魔術士、34歳の男です。
普段の口調は「男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」、負傷した仲間には「元気に(俺、~くん、~さん、だね、だよ、~かい?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
――クロムキャバリア、ロスト共和国。
聖湖エリュシオンから澄んだ水が流れる大河が形成した三角州には、紅のキャバリアの残骸が散乱していた。
残骸と化してなお、鮮やかな紅に輝くそれは――クロムキャバリア上空を飛翔し、人類を阻み続けてきた暴走衛星『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》』の残骸。
「わかりました。回収し、持ち帰ります」
パイロットが三角州に降下したその時、諏訪野・啓太郎(さすらいのライダー・f20403)が宇宙バイクにまたがり乱入した。
「それを持ち帰らせるわけにはいかないぜ」
啓太郎は宇宙バイクを駆りながら、あえてキャバリアの正面に回り込む。
キャバリアの背に全長10mのオーラの霊が宿るが、啓太郎は構わずスーパークラッシャーを腕にはめ、キャバリアに向けて連射し、牽制した。
「なっ……貴様ら、どこの国の者だ!?」
「どの国にも属してはおりませんの」
続いて乱入したメル・メドレイサ(蕩けるウサメイド・f25476)が、パイロットの問いに律儀に答えながらアンブレイカブルグラスを握り締め、ユーベルコード【ヴァルギリオス・エンハンス・プラスワン】を発動する。
『偉大なる帝竜の力と、彼の者すら扱い能わざる力を我に……! まあ、属性ゴテ盛しただけですけど❤』
その言の葉通り、帝竜の力を象徴する炎水土氷雷光闇毒風の9属性を肉体と武器の双方にゴテゴテに盛り、攻撃力を底上げする。
メルの魔力に反応し、キャバリアの背に宿るオーラの背後霊の気配が濃くなった気がしたが、メルも啓太郎に倣い、正面から斬りかかった。
「あのオーラの背後霊、後方からの攻撃は無効化してくるが、正面からの攻撃は何も手出ししないからな……」
「真正面から近寄らせなければいいからな」
パイロットもその弱点は理解しているのか、啓太郎の指摘に律儀に応えつつ、メルに向け巨大化したRXハルバードを突き出す。
だがメルも、アンブレイカブルグラスの刃をRXハルバードの穂に合わせ、かろうじて受け流した。
「あらあら、おイタがすぎません?」
受け流した勢いのまま、メルはキャバリアの足に斬りつける。
9属性のルーンの魔力が籠ったアンブレイカブルグラスの繊細な刃は、キャバリアの脚部を深々と斬り裂いていた。
「世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん、ただいま参上」
一方、音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)は、メルや啓太郎、そしてキャバリアから少し離れた地点で、撮影スタッフを伴いながら番組の撮影を行っていた。
「……って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ」
「この国の上層部は、殲禍炎剣の残骸から新技術を確保しようとしているのでしょう? 世界を混沌に導きかねない行為に手を染める時点で、十分悪ではないですか」
「かなり詭弁に聞こえるのは何故かしら……まあ、これも番組の為だから」
スタッフに言いくるめられたような気もするが、鬱詐偽はひとまずスルーして、ユーベルコード【リアライズ・バロック】を発動した。
鬱詐偽自身が抱いたロスト共和国への猜疑心が、171体のバロックレギオンを呼び寄せる。
「懲らしめる、と言うより、足止めの方が良いかしら……?」
その、鬱詐偽自身の意思に沿うように、バロックレギオンたちはキャバリアに纏わりつき、徹底的に動きを妨害した。
キャバリアも両肩の棘から電磁パルスを発信し、鬱詐偽を引き寄せようとするが、引き寄せられるのはバロックレギオンばかりで、鬱詐偽は一向に近寄ろうとしない。
「おおっと、あのキャバリア、鬱詐偽さんに手出しできないー!!」
「いや、バロックレギオンが先に引っ掛かってるだけだろ? ――ま、助かるが!!」
カメラを向けるスタッフに突っ込みながら、啓太郎は再度宇宙バイクを駆り、腕に嵌めたスーパークラッシャーの銃口をキャバリアに向ける。
『これでとどめだ、決めるぜ!』
ユーベルコード【スーパーフィニッシュ】を発動しながら、啓太郎はスーパークラッシャーをはじめとする全武装をオープンし、キャバリアに攻撃。
至近距離からサイキックエナジーの弾丸や実弾を叩き込まれたキャバリアは、その勢いに思わず後ずさっていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
パラス・アテナ
ちょっと待ちな
今アンタに殲禍炎剣の残骸を回収させる訳にいかないんだ
それをお寄越し
とはいえ初対面の人間に上からの指示を反故にしろなんて
聞けるもんじゃないのも承知してるよ
アタシの話を聞いておくれ
そう警戒しなさんな
アンタは命令で動いているだけだろう
アンタ自身が「回収をやめたい」と願ったところで
やめられるモンでもないのは承知の上さ
今に大統領から回収中止命令が届くはずさ
なに簡単なことだよ
ここに来るまでに大統領と話をしたのさ
必要であれば大統領とのアポ取りに指定UCを使うよ
大統領はアタシ自身の言葉で説得
大統領には殲禍炎剣の残骸の危険性
『七番目の猟兵』のこと
この戦争で知り得る情報を伝えるよ
その上で殲禍炎剣の残骸を猟兵に託すよう交渉
アンタ達が抱える社会不安を解消したい
そう思うのは大事な事さね
理解もできる
だけど訳の分からない強い力に頼ったらどうなるか
身をもって知っているはずだろう?
その代わりアタシ達で手伝えることがあるなら力を貸すよ
これは取引だ
殲禍炎剣の残骸の代わりに猟兵の助力を得る
悪くない話だと思うけどね
リオン・リエーブル
パラスさん(f10709)と
パイロットに声掛け
ちょっと待って
その残骸を調査させてもらえるかな?
大丈夫、上には話を通すし
成果の手柄はきみのものにしていいからさ
これは世界の一大事なんだ
指定UCで調査権を確保
おにーさんは錬金術師だけど
この世界の技術を使って調査
得られたデータと自分の知見を
パイロットと上官に伝えよう
この残骸の危険性は
理解してくれたかな?
でもきみ達だって命令違反はできないよね
だから…
パラスさんと合流
大統領令が出たことをパイロットに伝えるよ
お帰りパラスさん
大統領と話ができたみたいだね
どんな話をしたのさ?
パラスさんの話を興味深く聞いたら
残骸の調査を続けようか
パラスさんは周囲の警戒をお願いね
●
――クロムキャバリア、ロスト共和国。
聖湖エリュシオンから澄んだ水が流れる大河が形成した三角州に散乱している、暴走衛星『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》』の残骸を回収すべく赴いた、ロスト共和国のエンブレムをつけた『ジェネラル・キャバリア』は、駆け付けた猟兵達の妨害にあい、回収作業に取り掛かれずにいた。
『何故、我々の活動を妨害する!?』
パイロットの声音に苛立ちが含まれ始めたその時、リオン・リエーブル(おとぼけ錬金術師・f21392)がグリモアの転送で駆けつける。
「はーい、ちょっと待って。後は任せてね」
リオンは妨害に徹していた猟兵達を下がらせ、生身のままキャバリアに近づいた。
『何者だ、貴様!!』
「お願いがあるんだけど、その残骸をおにーさんに調査させてもらえるかな?」
『どういうことだ!?』
「大丈夫、上には話を通すし、成果の手柄はきみのものにしていいからさ」
『私には貴様を信用できる材料がない。その要求には応じられない』
にこやかに交渉しようとするリオンだが、キャバリアのパイロットは応じない。
「これはね、世界の一大事なんだ――『僕のお願い、聞いてくれるよね♪』」
リオンはユーベルコードの魔力を籠めながら、じっとキャバリアの瞳を見つめる。
その視線に毒気を抜かれたか、パイロットは大きくため息をつきながら答えた。
『……私は上官にお伺いを立てる。その間は自由に調べるがいい』
その言の葉を最後に、キャバリアの外部スピーカーが沈黙する。
「じゃ、勝手に調べるね♪」
パイロットが上官にお伺いを立てていると判断し、リオンは殲禍炎剣の残骸を調べ始めた。
●
リオンはあえて錬金術ではなく、この世界の技術でざっと調べてみる。
だが、残骸はこの世界では見られない技術の結晶のようで、短時間ではそれくらいしかわからなかった。
(「文字通り、オーバーテクノロジーの塊だねえ。これは解析だけで時間がかかりそう」)
ふと、リオンの頭に、こんな仮定が過る。
――もし、ロスト共和国がこれを持ち帰り、解析し、プラントに組み込んだら?
現状、猟兵達が存在を把握しているロスト共和国のプラントは、聖湖エリュシオンの水プラントのみ。
ロスト共和国にとっては命綱とも言えるプラントに、殲禍炎剣の残骸を組みこんだらどうなるだろう?
(「殲禍炎剣の説明が真実なら……水プラントはオブリビオンマシン生産プラントとして改造され、水プラントの機能は失われるのかな?」)
そうなれば、水資源を失ったロスト共和国が困窮に陥るのは、想像に難くない。
もちろん、そうならない可能性もあるのだが……試してみないとわからないだろう。
そんなことをリオンが考えていると、再びキャバリアの外部スピーカーから声が響く。
『……調査はそこまでだ。貴様の調査結果を教えてもらおう』
ユーベルコードの効果が切れたか、はたまた上官から新たな命令が下ったか。
パイロットが固い口調でキャバリアの外部スピーカー越しに告げてきたのを見て、リオンは肩をすくめて答える。
「そういう約束だったからね。といっても短時間で調べられることなんて知れているけど」
『それでもいい。話してもらおう』
「わかったよ」
リオンはかくかくしかじかと調査結果を話す。
『成程。上官の命令は変わらず――持ち帰り、だ』
「だろうね~」
(「新技術がほしいのは、大統領じゃなくて上官さんかな?」)
『貴様らを排除してでも持ち帰れ、との命だ。――死にたくなければお引き取りいただこう』
パイロットはこれ以上交渉せぬ、との意を示すためか、RXハルバードの穂先をリオンに突き付ける。
リオンがそれでも、と口を開こうとしたその時、パラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)が現地に現れた。
●
「ちょっと待ちな。今、アンタに殲禍炎剣の残骸を回収させる訳にいかないんだ。それをお寄越し」
パラスもキャバリアを目にするや否や、すぐに提案を持ちかけるが、パイロットの反応は変わらない。
『それは聞けない相談だ。上からは回収を命じられている』
「もちろん、初対面の人間に上からの指示を反故にしろなんて、聞けるもんじゃないのも承知してるよ」
『理解しているなら、下がってもらおう』
パイロットはRXハルバードの穂先をパラスの喉元に突き付けるが、パラスは全く動じない。
「――まずはアタシの話を聞いておくれ」
『突然妨害する貴様らの話など、信頼できるか』
「そう警戒しなさんな。アンタは命令で動いているだけだろう。アンタ自身が『回収をやめたい』と願ったところで、やめられるモンでもないのは承知の上さ」
だから……とその続きを口にしようとしたとき、外部スピーカーに何らかの電子音が割り込む。
『……緊急回線からの通信? 少し待て』
パイロットがその意味に気づいたか、RXハルバードを引いてキャバリアの外部スピーカーを切った。
「さて、相手は誰だろうね」
「緊急回線、って言ってたから……ひょっとして?」
しばらくして、再度外部スピーカーのスイッチが入れられ、パイロットが大きく息をつく。
『……上から撤退命令が出た。さらにその残骸を貴殿らに渡せ、とも命じられた』
「その『上』とは、大統領、かね?」
『……なぜそう思う?』
パイロットの疑問に、パラスは表情ひとつ変えずに答える。
「簡単さ。ここに来る前に、大統領と話をしてきたのさ」
『……!?』
キャバリアの中でパイロットが息を呑む音が、スピーカーを通してはっきりと届いた。
(「あれ? パラスさんって、大統領と会って大丈夫だっけ?」)
そう言いたげなリオンの視線を黙殺しながら、パラスはリオンとパイロットに説明し始めた。
――殲禍炎剣の残骸が持つ危険性。
――『七番目の猟兵』。
――この戦争で知り得る情報。
パラスはそれらの情報を大統領に提供し、殲禍炎剣の残骸を猟兵達に引き渡せば、猟兵の助力を提供すると持ち掛けた。
大統領はその場では即答を避けたが、パイロットに撤退命令を出したということは――交渉は成立したと考えていいだろう。
『話はわかった。命令通り私は撤退する。そこの残骸は自由にするがいい』
「感謝するよ」
『貴殿の正体は詮索しない。私は撤退命令に従うだけだ――では』
パイロットはそう告げると、殲禍炎剣の残骸を残し、去っていった。
●
キャバリアの姿が見えなくなった後、リオンが口を開く。
「大統領と話ができたみたいだね」
「すったもんだはあったがね」
「ねえねえ、どんな話をしたのさ?」
好奇心全開で問うリオンに、パラスは軽く頭痛を覚えながら答えた。
「アタシたちが持っている情報を提供して、その上でこう言ったのさ」
――訳の分からない強い力に頼ったら、どうなるか。
――アンタらは身をもって知っているはずだろう?
社会不安を解消したいとの願いに共感を示した上で、正体不明の力に頼る危険性を説いたパラスの言は、『起き上がり』と『エリュシオン』を巡る動乱を経験してきた大統領に深く突き刺さったのだろう。
パイロットへの撤退命令が出るまでに時間がかかったのは、大統領が直々に派遣命令を出した上官を探し出し、説得していたからだろうか。
「じゃ、もう少し残骸を調べてから、持って帰ろうか。パラスさんは周囲の警戒をお願いね」
「……勝手におし」
己の知識欲を満たしたいだけだろうよ、と突っ込みたくなるのをぐっとこらえながら、パラスは愛用の銃を手に周囲を警戒する。
そんなパラスをよそに、リオンは嬉々として殲禍炎剣の残骸を手に取り、調べ始めていた。
大成功
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