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人魚姫に恋をして

#アックス&ウィザーズ #群竜大陸 #勇者 #勇者の伝説探索

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●穏やかな春の海
 穏やかな日差しの下で白波が揺れている。瑞々しく煌びやかな水面にひらり、はらりと舞い降りるのは淡紅の桜花弁。
 温かな遠浅の海。船に乗った人々が船上から桜吹雪を降らせている。
 ざぶりと船から身を躍らせて海中に潜れば環を描く珊瑚礁が目に入る。その内側にだけ生息する魚の鱗が極光めいた光を淡く放ち、きらきらと煌めいていた。灰色だった稚魚たちが、一斉に宝石の様な鱗へと変わるこの春の一時、海は優しい生命の光に満ち耀いていた。

●お船でツアーなのです
「とある大商人さんが、春をお祝いしてお船でツアーを開催するのだそうです。遊びにいってみてはいかがでしょうか?」
 アルトワイン・ディネリンド(真昼の月・f00189)がニコニコしながらそう言った。

 グリモアベースの片隅。
 麗らかな日差しが窓から降り注ぎ、室内は明るい。アルトワインは説明をする。
「海は、南の海で、とっても温かいです。深いところには綺麗なお魚さんも泳いでいます。それと、ロマンチックな言い伝えもあるようです」

 アルトワインはスケッチブックをいそいそと取り出し、ページをめくった。クレヨンで描かれているのは海と、剣と、人魚の絵だろうか。絵はあまり上手ではなかった。
「皆さまは、勇者さまのお話をご存知ですか?」

 帝竜ヴァルギリオスとの決戦に参加した冒険者の多くは、沈みゆく群竜大陸と運命を共にしたと伝えられている。この戦いで命を落とした全ての冒険者が、勇者として称えられている為、勇者の数は数千人を超えており、真偽は別として、多くの伝説が残されている。

 アルトワインはスケッチブックを見せながら、まるで紙芝居のように言い伝えを語る。
「群竜大陸が沈む時、沢山の勇者さまも、海に沈んでいきました。
 勇者さまの手にあった剣は海をゆらゆら揺蕩い、流れていきました。
 流れていった先は、人魚姫が住んでいる海域でした。
 人魚姫は剣をひとつ、またひとつと拾い、自分のおうちに持ち帰ったのです」

 そして、とスケッチブックをめくれば、海の中にぽっかりと浮かぶ緑色の島が描いてあった。絵は、あまり上手ではなかった。
「ある時、人魚姫がお出かけしている間に、人魚姫と仲良しだった海賊が遊びに来ました。煌びやかな宝剣の数々。海賊は欲しくなってしまい、盗んでしまいました。そして人魚姫の手の届かない孤島に隠してしまったのです」

「人魚姫は、悲しんだら怒ったりはせず、くすくすと笑ったのだそうです。剣は、海賊さんにプレゼントするつもりだったの、と言って。そんな人魚姫に海賊は恋をしました……」

 アルトワインはスケッチブックを閉じた。
「ツアーは、海上で遊泳のひとときを過ごしたのち、海賊が剣を隠したと言われる孤島にいく予定なのです。
 ですから、皆さまは、海に潜ってお魚さんや海中の景色を見て遊んだり、孤島を探検したりして楽しんできてくださいませ。お帰り頂いた後、楽しいご報告を聞くのを楽しみにしますね」

 アルトワイン自身は不慮の事態に備えて後方でしっかりとサポートする、と胸を張り。
「安心して、遊んできてくださいませね」
 猟兵たちのサポートができるのが嬉しくて堪らない、といった様子でニコニコと微笑むのであった。


remo
 おはようございます。remoです。
 初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。
 このシナリオは、ツアーに参加してゆるゆる、のんびり、遊ぶシナリオです。執筆ペースものんびりめです。春休み的なノリでしょうか。

 リプレイは特に希望がなければソロリプレイとなり、「キャラクター様がのんびりバカンスを満喫しているリプレイ」になります。

 1章は日常フラグメントです。
 船は海上に停止しており、海で遊ぶことができます。魚が綺麗な温かい海です。敵はいません。

 2章は冒険フラグメントです。
 船が孤島に到着し、孤島を探検することができます。
 2章では、勇者の剣や杖といった武具を発見することができます。公式でのアイテム発行はありませんが、ご自身で「シナリオで発見した」という設定のアイテムを作成することは可能です。「見つけた武具」の設定や名前はご自身で考え、プレイングに記載してください。

 3章は集団戦となります。
 のんびりしてたらバッタリ敵と出くわして……みたいな展開になるのではないかと思います。2章で獲得した武具を試しに使ってみるのも、よいかもしれませんね。

 キャラクター様の個性を発揮する機会になれば、幸いでございます。
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第1章 日常 『水の聖域』

POW   :    素潜りして目で探す。

SPD   :    海面に浮かび、群れを待つ。

WIZ   :    魚や海鳥たちと仲良くなる。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●海の上でのんびりと
 恰幅の良い商人が人の良さそうな顔にくしゃっとした笑顔を浮かべた。
「船はしばし此処に留まります。ご自由にお過ごしください」

 宝石の様な鱗の魚たちがいるらしい、と船上の人々は身を乗り出して海面を見る。
 探しにいこうと声を掛け合い、数人が海へと飛び込めば。
 船上で待っているよと見送って飲食しながら友と語り合う者もいた。

 青空と海に囲まれて、風はそよりと温かい。
 海鳥たちも低く飛び。
「餌をあげれば近寄ってくるぞ」
 目をキラキラさせ、鳥と戯れる者もいた。

 そんな平和な、ある日の思い出。
宮落・ライア
のんびりか……のんびりかー。
するかー。

浮き輪と水着持参で浮き輪使ってただただ漂う。

え?いつもと違うって?
まぁ異世界なんだし気にしないしない。
オフだよオフ。たまにはあるさ。こういう時も。


加筆ハプニングあわせなどご自由に。



●春休みのヒーロー
 柔く波打つ海が船を抱いて揺蕩っている。

 宮落・ライア(英雄こそが守り手!(志望)・f05053)はデッキからしばらく海を眺め。
「のんびりか……のんびりかー」
 ぼんやりと呟いた。
 頭上では太陽が燦燦と輝いている。
 春の陽射しに吹く風が潮の香りを運び、水面で乱反射する光の中で風も光り輝いているかのよう。
 人々の談笑する声や波音、海鳥の鳴き声が絶えず耳を擽っている。
 風に髪も心も委ね、ライアは眦を柔らかに緩めた。
「のんびり、するかー」
 決断、即行動。
 いつもと同じ元気っ子スタイルを脱ぎ水着姿になれば、一段と吹き抜ける風が心地よい。浮き輪を手に海へと身を躍らせれば、ざぶりと水が歓迎してくれる。

「それー」
 頭上から悪戯な子供が桜吹雪を降らしてくれる。
 銀の髪を飾るように舞い降りた桜がひとひら、咲き誇り。身を預ける透明な浮き輪にも幾つもの春花が咲けば、花と水に囲まれてゆらゆら、ぷかぷか。
 眩い光が踊る水を掬えば手の平から零れる水がキラキラと透明に光っている。バシャバシャと脚を遊ばせればゆるい水の抵抗が心弾ませ。

 脚を止めれば穏やかな波に浮き輪が遊ばれ。
 桜の花がまたひとつ舞い降りて目の前に光の波紋が広がって。

「キレイだな」
 呟けば、平素の彼女を知る者が珍しそうな顔をする。

「え? いつもと違うって? まぁ異世界なんだし気にしないしない。オフだよオフ。たまにはあるさ。こういう時も」
 おひさまのように笑顔で笑い。
 海風と陽光の中、ライアはのんびりと漂っていた。

「ん?」
 ふわふわと蓋つきのバスケットが漂ってきて浮き輪にぶつかる。手を伸ばして取れば。

「すみませーん、投げてくださーい!」
 頭上から小さな声が聞こえた。
 見ると、先ほど桜吹雪を散らしていた女性が手を振っている。花を入れていたバスケットをうっかり落としたらしい。

「おー。いくぞー!」
 元気に返事をしてバスケットを投げようとし。
「あ」
 ふと思いつき、蓋を開けて底を見る。
 近くに漂っていた桜花をぺたり、中に入れ。蓋を閉めてもう一度。
「受ーけ取ーれー!」
 元気に投げれば、女性は見事にキャッチした。

 蓋を開けて中身を見れば、笑顔の花咲き。
 ぶんぶんと手を振ってくる。
「――ありがとーう!」

(こういうのも、たまにはいいね)
 ライアはニッコリと笑顔を返し。
 ゆったりと脚を伸ばせば、風も太陽も海も、人々も。

 ――春を喜ぶ声がする。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャスパー・ジャンブルジョルト
今日は仕事のことを忘れて、のんびりしようっと。なにせ、最後にゆっくり休んだのは三日も前だしぃ。俺ってば、いくらなんでも働きすぎだよな? なあ、働きすぎだよな?(誰彼構わず同意を求める)
泳いで遊ぶ奴が多いみたいだが、オトナな俺ははしゃいだりせず、優雅に過ごすせ。甲板上のデッキチェアにこうやって深く身を沈めて、フルーツの盛り合わせを食べつつ、空を舞う海鳥たちを眺め……って、鳥が急降下して、フルーツをくわえてった!?
あ? また来た! これはおまえのエサじゃねえぞ! くぬやろ、くぬやろ!(鳥と本気で喧嘩するオトナな男)

他の猟兵の引き立て役や調子に乗って痛い目を見る役など、お好きなように扱ってください。


リヴェンティア・モーヴェマーレ
アドリブ大歓迎もりもりのもりも他の方との絡みも大ジョブです

▼本日のメインの子
藍(救助特化なチンチラ)
他の子が居ても全然大ジョブです

▼【WIZ】
おー!うみぃーでース!
凄いですネ?大きいですネ?
どこまでも続いてマスねー!(万歳)

御魚さんや海鳥さん達にも挨拶をして仲良くなりたい気持ち~♪

仲良くなれたら、その子達を被写体にスケッチでス
アルトワインさんも居れば、彼女の方に駆け寄ってニコニコしながら一緒にお絵かきどうでスか?って誘ってみたいでス
居なければ、帰ってから彼女に見せれれば良いなトカ考えマス

あら…藍ちゃんも描いて欲しいのですカ?
いいですヨ~!
カッコよく描きますネ!

※絵心はそこまである方ではないです



●ミスターJJと純真な乙女
「おー! うみぃーでース! 凄いですネ? 大きいですネ? どこまでも続いてマスねー!」

 壮麗に帆を張る帆船の上に、ひときわ明るい声が響く。ふわふわのチンチラ、藍と一緒に世界を見廻すのはリヴェンティア・モーヴェマーレ(ポン子2・f00299)。
「凄いですネ? 大きいですネ? どこまでも続いてマスねー!」
 にこにこ、おひさまのように笑顔を浮かべ。
 リヴェンティアは両手を上に伸ばし、バンザイ!
 よく見れば頭にちょこんと乗った藍も同じようなポーズをして愛らしい。

「ママー、チンチラがバンザイしてるよー!」
 近くにいた子どもも大喜びで母親にそんな事を言い。周囲の人々が思わず頬を緩めてしまう、愛らしいバンザイツーショット。

「ふう……」
 元気な彼女に微笑ましく視線を送る人々の中、甲板のデッキチェアに深く身を沈めたケットシーは呟いた。傍らには穴あきチーズをカジカジしている茶色い老ネズミのジンクスを伴って。
「今日は仕事のことを忘れて、のんびりしようっと。なにせ、最後にゆっくり休んだのは三日も前だしぃ」
 人々が「ん?」という顔をする。
「俺ってば、いくらなんでも働きすぎだよな? なあ、働きすぎだよな?」
「え、ええ……?」
 誰彼構わず同意を求める自称・『タフでクールでダンディな放浪剣士』ジャスパー・ジャンブルジョルト(JJ・f08532)。
 未だ世慣れぬところがありピュアなリヴェンティアは心配そうな視線を向け、そっと声をかけた。
「働きスギですカ? 休養、大事デス!」
「おお、わかってくれるか」
 麗しの支持者の出現にジャスパーは機嫌よくおヒゲを伸ばし。
「あっ、藍ちゃん!」
 ぴょこりとチンチラの藍がジャスパーの腕に跳び乗った。ジンクスがチラッと視線を向け。藍が挨拶をすると賢い老ネズミは鷹揚に頷いてチーズをひとかけ、プレゼントした。

 そんな2匹に微笑ましく尻尾を揺らし。
「優雅なオトナの流儀を教えてやるぜ」
 ちんちくりんのふわふわ仲間に琥珀の眼をウインクひとつ、ミスターJJはフルーツの盛り合わせを手に取って。
「いいか、ここに宝の山があるだろ」
 秘密を共有するかのように声をひそめ、示すは陽光の下で宝石のように輝く色彩豊かなフルーツたち。ビタミンカラーの山の中、新鮮な苺に手を伸ばし。
「いっただっきまぁーす!」
 パクリと頬張れば口の中に広がる幸せに。
「美味い! 最高に美味い! だが!」
 まだまだこれからだ! と、もう片手に用意した小瓶からさらりと垂らすはブルーベリージャムとクランベリーソース。2種を滴らせた新たな苺を口に入れ。
「うまうま! ふみゃあぁぁぁ~ん!」
 あまりの美味さに一瞬だけ野生に還るジャスパーに藍とリヴェンティアは視線を交差させ。

「ま、真似をシテも、ヨイでしょカ」
 真似をしようと小瓶を拝借。キラキラの春の光に輝くとっておきのデザートを皆でのんびり頂けば。ゆらゆら、視界の果てまで広がる青い海は時折桜を浮かべ、光を煌めかせて美しい。

「はぅー、佳いデスね」
 リヴェンティアが幸せに蕩けるようなため息をつけば。
「ああ、こうやって空を舞う海鳥たちを眺めるのも……」
 ジャスパーがゴロゴロと喉を鳴らし、どや顔で言いかけた、その時。

 サッ!
 鳥が急降下!
「あ!?」
「キャッ」
 一瞬の衝撃。気づけばフルーツが攫われている!

「鳥さんガ、フルーツ食べちゃいマシタ……!」
 びっくりして目を丸くしているリヴェンティア。ジャスパーのフルーツが攫われていた。ぐぬぬ、と耳を伏せるジャスパー。
 2人をチョロイと見たのか味を占めたのか、再び海鳥がフルーツを狙って降りて来る!
「あ? また来た! これはおまえのエサじゃねえぞ! くぬやろ、くぬやろ!」
「な、仲良くシテくだサイ~!?」
 フルーツを庇って毛を逆立て、フーッ! と威嚇するジャスパー。鳥も羽を広げて威嚇する! そして後ろから別の鳥が連携プレイでフルーツを掻っ攫ろうと迫り。藍が必死にディーフェンス! ディーフェンス! とぴょんぴょんしている。ジンクスは藍の隙をカバーするように知的に立ち回り。

「あ、あの人たち何やってるんだ」
 人々が遠巻きに熱い攻防(?)を見ていた。

 やがてリヴェンティアの誠意ある取り成し(という名の餌付け)により場は落ち着いた。ジャスパーも鳥たちも仲良くフルーツを啄み。
「仲良しが、一番デス♪」
 リヴェンティアはそんな風景を真っ白なスケッチブックに描画する。のびのびと筆を滑らせ、やわらかな曲線を描く頬を優しい春風が吹き抜けて。

(楽しい絵、お土産にスルのデス!)
 温かな想いを胸に描く絵は、自然と温かみに溢れた優しい世界を描き、見ていた人々も「なんだか、いいな」とニッコリしてしまう。

「格好良く描いてくれよ!」
 ジャスパーはご機嫌にポーズを決め。
 藍がジャスパーに負けじとクールでダンディなポーズを取る。
「おっ、対抗するか! 負けねえぜ」
 ジャスパーはよりクールでダンディを魅せるため、ポーズを変えて。こっそりとジンクスも渋格好良いポーズで決めていた。

「動かないデ、くだサイ~!?」
 リヴェンティアがあわあわと眉を下げ、けれど楽しくて笑ってしまう。周囲の人々もまた、釣られて笑い声を漏らし。
 青空に笑い声が溢れて太陽も楽しそうな光を放っている。

「カッコよく、描きますネ!」
 この空の下、人々に囲まれて描く絵は、きっと世界で一番あったかい。リヴェンティアは楽しい気持ちを胸に、花のように微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と
藍色の水着の上から濃い色の禊着を着用して
一緒に船上で魚の群れを眺めましょう

ヒトに囁かれるくらい美しい魚の群れなんでしょうね
澄んだ海を眺めていれば横切る魚の群れが見えて
掛けられた声に応えながら眼前に広がる数々の魚影に目を瞬かせ
星々と同じく、美しい海は無条件に心に安らぎを与えてくれますね

ふふ、僕も同じことを考えていました
きみと一緒ならば美しい眺めもさらに至高の眺めになるというものです
そうですね、きみが沈んだら即座に助けに行きますよ
きみは逞しいのでなんだかよく沈みそうですからねと冗談交じりに笑って

きみの御髪と瞳の色が混ざったならば、このような美しい海色になるのでしょう


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

先迄泳いでいた為黒の半袖&膝上程のラッシュガード上下を着用
宵と船の上にて魚の群れを観察しよう

美しい魚の群れが見られると聞くが…と
丁度船に平行する様に泳いでいる群れが見れれば手摺から軽く乗り出し宵へ声を掛けてみよう
様々な色が身に滲むとは…本当に宝石の様だな

海の底に沈み残されたらと想像する度背筋が凍るが…この海は美しく本当に肩に力を入れずに済む…と、宵も同じか
まあ、沈んだらすぐに助けに行く故
…宵も助けに来てくれるのだろう?と笑みを
それに元々温暖な場所は落ち着くのだが…信頼できる者と共に来ている、という事が一番の理由かもしれんな
貴重な羽休めの機会故、思い切り楽しませて貰えれば幸いだ



●春海のエストレーラ
 ゆらゆら、ゆらりと波が揺れ。
 船は穏やかに波間を漂う。

「美しい魚の群れが見られると聞くが……」
「ヒトに囁かれるくらい美しい魚の群れなんでしょうね」
 潮風に吹かれて船上で並んで春海を眺めているのは、2人の男。藍の水着の上により深い色の禊着に身を包む逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)。ひと泳ぎした名残を窺わせる為黒の半袖と膝上のラッシュガード上下に身を包むザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)。

 2人の頭上には青い空が広がり、鼻腔を擽るのは潮と――桜の香。波音と人々が楽し気に笑う声が絶えず耳に入り。
 澄んだ海を眺めていれば船に平行する様に泳いでいる群れが視えた。

「宵、魚が視えるぞ」
 ザッフィーロが手摺から軽く乗り出し宵へ声を掛ければ、隣の宵は眼前に広がる数々の魚影に目を瞬かせ。見入る。
 弾ける白い波の合間にちらりと見える群れ。光り輝く海の宝石めいた魚たち。自然のままに生きる姿は生命力に溢れて春の歓びを全身で表しているかのよう。天から注ぐ春の日差しに水面で踊る光。水が光を乱反射して幻想的な煌きに満ち。
「星々と同じく、美しい海は無条件に心に安らぎを与えてくれますね」
 口元を緩め返す声色にも海から移ったような歓びが仄かに滲む。

 キラキラと耀く光が魅せるのは色彩豊かな春の色。
「様々な色が身に滲むとは……本当に宝石の様だな」
 強面に似合わぬ温かな声色で呟けば、隣の佳人も頷いた。さらり、と春風に靡くのは墨流しの艶髪。星の煌めきを宿す瞳は穏やかに。

 海を眺める姿に思い出すのは、嘗て見た美しい夕暮れだろうか。

 吐息交じりにザッフィーロは言の葉を紡ぐ。胸元では、純銀の十字架がちゃらりと揺れ。
「海の底に沈み残されたらと想像する度背筋が凍るが……この海は美しく本当に肩に力を入れずに済む……」
「ふふ、僕も同じことを考えていました。
 きみと一緒ならば美しい眺めもさらに至高の眺めになるというものです」
 笑む声は柔らかに。
「宵も同じか」
 銀の瞳が仄かに浮かべるのは少し気恥ずかしそうな喜びの色。紡ぐ声は大きな動物が見せる優しさにも似た落ち着いた色。
「まあ、沈んだらすぐに助けに行く故……宵も助けに来てくれるのだろう?」
 笑みを浮かべてみせれば、宵色と星の髪飾りが陽光に煌めいて。
 そうですね、と宵は頷いた。
「きみが沈んだら即座に助けに行きますよ。きみは逞しいのでなんだかよく沈みそうですからね」
 冗談交じりに笑えば、見返す瞳はより一層柔らかに。
「それに元々温暖な場所は落ち着くのだが……信頼できる者と共に来ている、という事が一番の理由かもしれんな」

 気ままな風が吹き抜けて。
 ふわ、と甘やかな香りが漂い、2人はふと視線を巡らせた。
「おや」
 宵が目を瞬かせる。視線の先に、ワゴンを押す給仕の姿があった。
「あれは、ふぉんでゅ、だな」
 ザッフィーロが呟く。

 新鮮な春苺が宝石のように並んでいた。
 食欲を刺激され、ザッフィーロがひとつを手に取る。

(ザッフィーロ君、ひとつで足りるのでしょうか)
 配られた果実酒の杯を手に宵が見守る中、ザッフィーロは苺にチョコレートを浸し。
「以前挑戦した時はちょこれーとに浸し過ぎてしまったが」
 以前は、ウェハースを浸したのだったか。
 あの時も美味かったが、と補足しつつ――綺麗な苺フォンデュに満足そうに頬を緩めたザッフィーロは、それを宵へと差し出した。
「ほら」
 自然に差し出されたそれを受け取れば、瑞々しい苺がやわらかなチョコレートに包まれて宝石のように煌めいて愛らしい。
「――いただきます」
 宵はもぐ、と口に入れ。爽やかな酸味と甘みに頬を緩めた。

 視線の先では、ザッフィーロが周囲にドン引きされるほどの量のフォンデュを作り、頬張っている。そんな姿にちょっと困ったように眉を下げ、宵はおっとりと微笑んだ
「ザッフィーロ君は、本当に甘味がお好きなんですね」
 強面に似合わぬ味の嗜好はどこか可愛らしく、微笑ましい。

 腹ごなしをして再び海を見に戻れば、人々が魚の群れに餌をやっていた。ぱくり、ぱくり。口を開けて餌に喰いつく魚は先ほどまでの只綺麗な様子とは異なり、愛らしい。
 それはまるで。
 思って宵はくすりと吐息を零す。
 小さな魚と大きな男が似ていると思うなど。

 笑みのもととなった大男が甘味を再び補給しにいき。次は両手いっぱいの籠に溢れんばかりのフルーツを入れて戻ってくる。
 陽光にキラキラ輝くフルーツは色鮮やかな宝石めいて美しい。

「貴重な羽休めの機会故、思い切り楽しみたいものだな」
 ザッフィーロがそう言えば、宵もふふ、と笑む吐息を零して。視線を海へと向ければ、船上の喧騒と離れて別世界のように穏やかで麗しい海がある。

「きみの御髪と瞳の色が混ざったならば、このような美しい海色になるのでしょう」
 呟く声には、親しき者へ向けられるがゆえの温かさが籠められて。

 頭上では青空で軽やかに、鳥たちが歌を歌い。

――生命が歓びに満ちる、春。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈴鳴・藜
天気はいいし、海は綺麗だし。言うことねぇな。

いい陽気だから海へ飛び込むのも楽しそうだが
船の上でのんびり過ごすのも悪くねぇだろ。
手摺の近くで海原を眺めつつゆったりとした時間を過ごそうかね。
気持ち良さそうに飛ぶ海鳥を見つけたら餌でもやってみるか。
ほら、いくぞー、なんて声かけて。

他の猟兵との絡みはお任せします。



●春の日差しのメモクール
 穏やかな風が通り過ぎて、片耳の銀が軽やかに揺れ。
 そっと手をやれば、いつも通りのピアスの感触も不思議と春と海の色に染まったようで、特別に感じられ。不思議。

 光と煌きに満ちた、春。
 空の青と海の青の狭間で、揺れている宝石箱のような船。

 鈴鳴・藜(宵暁・f00576)が妹から贈られたピアスからそっと手を放し、笑む。
「天気はいいし、海は綺麗だし。言うことねぇな」

 手すりにつかまり、ゆるりと視線を巡らせれば、青い水面に眩い煌きが躍る一面の海景色。蒼い海の彼方、水平線の向こうから雲が風に流されて近づいてくる。画家が鼻歌交じりに筆を滑らせたような雲は平穏を象徴するような柔らかな白さ――綿あめにも似て、ふわふわと。
 綿雲から浮き出るようにぽつりと鳥影が視えれば、遠目にもわかるご機嫌な風飛行。

「水、気持ちいいね!」
 ふと声がして下を見れば現地の民だろうか、男女が仲睦まじげに遊泳を楽しんでいる。
「お兄ちゃん、あっちで魚の群れが泳いでるって!」
 女の子が兄と呼ばれた男性を引っ張るようにして泳いでいく。

(海へ飛び込むのも楽しそうだなー)
 藜は目を細め。

「お飲み物をどうぞ」
 声を掛けてきた給仕からグラスを受け取る。爽やかな透き通る飲み物は春の香りを漂わせ。口にすれば後味のよい薄い甘みと酸味。
(初めての味だな、なんだろう)
 のんびりと味わい、ふと気まぐれに餌を手に。誘うは天の鳥。

「くるか」
 空の向こうから随分と近づいてきた海鳥に誘うように声掛けすれば、鳥がご機嫌に鳴き声をあげて降りて来る。ばさばさと羽が楽し気に風を叩いて潮風が踊り。
 つぶらな瞳が甘えるように藜を見る。
 やわらかなくちばしをクワとひらき、鳴く声は愛嬌がある。

 陽光の中、風もまた光り輝くよう。
「ほら、いくぞー」
 ふわ、と餌を撒けば鳥たちがどんどんと近寄り、餌を欲しがって躍り。耳元ではピアスが再び軽やかな音をたてて揺れ。
 共に歌うように鳥たちが騒いでいる。
 奪いあうようにして群がる鳥たちへ、仕方ないなと餌を追加すれば大喜びの大興奮。鳥に囲まれ、藜は笑う。

 大きな波に船がぐらり揺れれば、また楽し。

「もう、逃げちゃったじゃない」
 女の子の笑い声がしてふと視線を巡らせれば、先ほどの兄妹が戻っていた。
 思い出すのは、妹のことだろうか。

 そよ、と頬を撫でる風は穏やかに優しく。

 南の春は、あたたかい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

明智・珠稀
【POW】
ロマンチックなお話ですね…!
勇者様とその仲間の方の様々な伝説は私の胸を熱くしますね、ふふ…!

あぁ、心地良い潮風…!
穏やかさに幸福を感じます…!(うっとり)
ぜひ私も海へ潜り、お魚さんと戯れたいです。
ご安心ください、水着は持参しております…!
(【早着替え】にて、派手な青薔薇柄のブーメランパンツ姿に)
さぁ、お魚さんとランデブーです…!

■水中
愛らしかったり美しかったり、不思議だったりする海中の生き物達を
楽しそうに&興味深く観察&戯れながら
(戻ったらスケッチいたしましょう…!お土産話に出来ると良いですね、ふふ!)
魚と共に泳いだり、魚の餌となってみたり(?)楽しく過ごす

※アドリブ&ネタ大歓迎♡



♡青薔薇は股に咲く
「ロマンチックなお話ですね……!
勇者様とその仲間の方の様々な伝説は私の胸を熱くしますね、ふふ……!」
 温かな日差しの中で佇むは妖艶美青年の明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)。甘く目元を和ませれば月めいた金の瞳の彩は不思議に人を惹き付ける。
 雪白の頬を薔薇に染め、蕩けるように笑顔を浮かべれば、妖しい牙がチラリと覗いて。
「あぁ、心地良い潮風……! 穏やかさに幸福を感じます……!」
 うっとりと呟き、いそいそと服に手をかける珠稀。彼の変態属性を知る猟兵たちは「ストリップショーでも始めるのでは!」とぎょっとする。シチュエーション的に脱いだら水着になるだろうと分かりそうなものだが、そこは日頃の行いがゆえ。
 明智・珠稀・妖刀添えはTHE・変態として名高い猟兵なのだ。

「明智・THE・水着バージョンです!」
 高らかに宣言してポーズを取る珠稀。しなやかな肢体が光風と日差しの中で眩しい。局部を申し訳程度に包んでいるのはド派手な青薔薇のブーメランパンツ。角度がえぐい。
 それはさながら裸体に青薔薇が咲き誇るかのよう。
「夏になったら投票をお願いしますね……! こちらは7票投票可能ですよ……!」
 水着コンテストに向けて布石を打ちながら珠稀は観衆にパチリとウインク☆ 最近グリモアを手に入れた珠稀、やろうと思えばその姿でどこへでも飛んでいけるハイパーフリーダムモードだ!

「さぁ、お魚さんとランデブーです……!」
 ひとしきり水着アピールをしたのち、お待たせ魚たち! と海へダイビング☆

 迎え入れてくれたのは柔らかく広がる水の幻想世界。光と煌きに満ち、甘い宝石達がお出迎え。キラキラ、キラリ。目を奪われるのは光の乱舞。魚たちは群れを成し、珊瑚の間を縫うように泳いで美しい世界。

(愛らしい……!)
 珠稀が近寄ればザッと魚たちは逃げていき。
(ああ、逃げられてしまいました……)
 しょんぼりする変態に好奇心旺盛なちび魚ちゃんがスイスイ近寄り、鼻をつつくようにしながらご挨拶!
 そっと指で撫でれば擽ったそうに身を捩る余りに小さくか弱い生命。優しい所作に警戒を解いたのか、他の魚たちも戻ってきて。

(戻ったらスケッチいたしましょう……! お土産話に出来ると良いですね、ふふ!)
 お絵描き意欲を高めつつ珠稀はニコニコと魚たちと不思議なひとときを過ごす。
 光注ぎこむ春の海には、ゆらりと大きなエイの姿も遠くに見え。反対側に視線を巡らせれば、ウミガメものんびり海を抱くように揺蕩って。

(たまには、こんな休暇も好いものですね)
 麗しのダンピールは頬を緩めて、ご満悦。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハーモニア・ミルクティー
とっても素敵なツアーね。
人魚姫と海賊に恋、勇者にバカンス、素敵な響きがたくさんあるもの!
水着もオッケー、水中カメラも持ったわ!
海にざぶんと潜って、魚と戯れる準備はバッチリよ!

海の中って、まるで海の宝箱ね。
ゆっくりと泳ぎながら、景色を見て楽しみましょう。
珊瑚礁も、降り注ぐ光も、熱帯魚も全てが宝石のように輝いて見えるわね。
あら、ウミガメは居ないのかしら?
一度、甲羅の上に乗ってみたかったの!

海中での一時を楽しんだら、海上に浮上して、【動物と話す】を魚に使えるか試して見ましょうか。
せっかく仲良くなれる機会だもの。
わたしにこの海のことや、海の中のお話……あなたたちのお物語を聞かせて欲しいわ!



●水と光の世界で、物語り
 ざぶん!
 水音、ひとつ。
 ちいさな影、ハーモニア・ミルクティー(太陽に向かって・f12114)が元気に海へと潜れば、そこは幻想的な春色の水世界。頭上から降り注ぐは控えめに優しく降り注ぐ春の日差し。
 キラキラ、水の中で乱反射する光。光と戯れるように魚たちは透明な水の中を揺蕩い、躍っている。

(とっても素敵なツアーね!)
 あたたかな海の中、愛らしい水着を纏ったちいさなフェアリーは翅を広げて。水中カメラでぐるり、見廻し撮影して思い出残し。
 カメラを外して双眼で自由に堪能し、両腕をふわり広げれば、美しい世界すべてが感じられ。廻りをくるくる、巡る世界は神秘的な夢世界。

(海の中って、まるで海の宝箱ね)

 アメジストの煌きを宿す瞳がキラキラと輝けば、海の魚たちも惹き寄せられてゆらり泳いでご挨拶!
(わあ、魚がこんなに……!)
 上へと浮上する魚に釣られて上を見れば、光がキラキラと輝き差し込んで幻想的な美しさ。下には宝石のように鮮やかな珊瑚が見えて。色彩躍る春の海は生命の輝きに満ちている。

 やがて浮上して息を吸えば、心地よい潮の香が感じられて、幸せ。波は絶えず体を穏やかに揺らし。ゆらゆら、ゆらり。
 ハーモニアは桜色に頬を染め、宝石めいた瞳でもう一度海中を覗き込む。

(ウミガメは居ないのかしら?)
 きょろきょろと探して見れば、果たしてウミガメは――居た。
 魚の群れの中からのそり、ゆらり姿を現して。
 両手でゆらーり、水を掻き。光差す海を泳いでくる。

 ちいさなハーモニアがそっと鼻先にご挨拶すれば、黒スグリの瞳が優しい色を湛えて甲羅に乗れと促してくれる。
「ありがとう……」
 そおっとしがみつけば、ゆらーりゆらり、ウミガメさんの海中ツアーにご案内! 珊瑚の舞台と光の照明の中、まるで人魚姫のようにミルクティーの髪が水に揺れ。魚たちがまわりと囲んで夢のよう。

 ウミガメさんはハーモニアを気遣って海上へと顔を出す。空気を吸えば海中からは魚たちの歌う声が再び誘うよう。
「わたしにこの海のことや、海の中のお話……あなたたちのお物語を聞かせて欲しいわ!」
 せっかく仲良くなれる機会だもの。
 花のように微笑めば、魚たちもキラキラ輝きながら沢山のお話をしてくれる。

――海の中には、いろんな友達がいるんだよ
 小さな友達、大きな友達
 流れにのってあっちにこっちに流れ流れて
 季節が廻り世代が変わり
 ぼくらがこっそり代わっても、海はいつも変わらないのさ――

 沢山、沢山のお話に抱かれて。

「そとの話もききたいよ」
 魚たちがそう言えば。
「もちろん、もちろんよ!」
 おひさまのように笑顔を浮かべて、ハーモニアは愛らしくぺこり、一礼し。
 沢山、沢山、お話をする。
 海の上のこの世界、巡りて知った他の世界――ほんとうにあった物語。
 ひとつひとつに想いを馳せて。

 穏やかな春海は物語を楽しむように揺れ。
 ちいさなフェアリーの泳ぐ中、優しい世界がどこまでも広がる。

 仰ぎ見るのは大好きな空。
 春波に揺れてみる空は一段と青く、やさしく、――いとおしい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

常盤・禊
勇者…勇者ですか…きっと強い自分の意思を持っていたのでしょう…羨ましい……まぁ良いです。海ですか…初めて来ましたね、これが海ですか…

まぁ誰に望まれるでもない…海面を漂っていましょう…

それにしても今日は良い天気ですね…波も心地好い…



●春陽、淡桜
「勇者……勇者ですか……」
 海面を漂いながら常盤・禊(虚ろな鏡・f16493)が呟いた。
 ちゃぷ、ちゃぷ。波は穏やかに揺れて。

 潮の香りに混ざって桜の薫りが鼻を擽った。
 絹のような白髪に薄紅の桜が舞い降りる。
「きっと強い自分の意思を持っていたのでしょう……羨ましい……まぁ良いです」

 視線を巡らせれば、青空を軽やかに海鳥が飛び。
 風に雲が遊ばれている。波にあわせて禊の視界もゆーら、ゆら。
 見上げる春陽も、揺れている。

「海ですか……初めて来ましたね、これが海ですか……」
 碧の海から弾ける白い波飛沫は塩辛い。足元は地につかず、絶えず体は波に揺られてゆら、ゆらり。
 暖かな海は眠気を誘うような穏やかさ。
 白髪を水に湿らせた禊は平穏に仄かに口元を緩め。
(まぁ誰に望まれるでもない……海面を漂っていましょう……)
 ゆったりと息を吐く。

「ん……?」
 ふと足を擽る感触に気づき、眼をやれば、ちいさな魚が足をつついてご挨拶していた。
 禊は一瞬驚いた様子で目を丸くし。
「くすぐったいです……」
 表情こそ変わらないものの。
 ふわり、と気配が一段とやわらかになる。

 そっと顔をつけて水中を覗けば、魚たちがくるり、くるりと躍っている。大きな魚、小さな魚、入り乱れて。天から注ぐ陽光が水中の彼らに跳ね。水の世界がキラキラ、キラリと幻想めいて煌いている。
(不思議な世界です……)

 息を止めて眺めていれば、やがて息は苦しくなり。
「……ふう」
 水上に顔をあげてひと呼吸。
 新鮮な空気は全身に行き渡るようで、気持ち良い。

「ん……」
 何か絡まったような感触に手を見れば、くたりとしながら海水を滴らせる新鮮な海草。
 どこからか流れてきた海草は、海の息吹を感じさせ。
 見守っている視線の先で集まってきた魚たちがツンツンと海草をつついて遊んでいる。
「ふふ……」
 そっと手を離せば、海草はゆらゆらゆらり、流れていき。
 魚たちも一緒にゆらゆらと泳いでいく。その海面が光を反射して、キラキラ眩い。

 ――生き物たちが光の春を謳歌している。

「それにしても今日は良い天気ですね……波も心地好い……」
 見上げる空は、どこまでも続く青い空。

「あの、すみません」
 ふと声をかけられて視線を向ければ、頬を染めた若い青年が勇気を出した様子で遊泳に誘って。
 一瞬驚いた様子で目を瞬かせ。けれど丁重に断れば、青年は潔く泳ぎ去り。

 再びの静寂と平穏。
 ちゃぷ、ちゃぷと波が揺れ。

(望む人も、いるものですね……)
 禊は陽光に眩しく目を細め、微かに笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイチェル・ケイトリン
とってもかわいいおはなし。

でも、わたしはすっごくきになることがあるの。

しずんだ群竜大陸から剣がながれて人魚のお姫さまにとどいた。

ならそのながれ、海流を逆にたどって群竜大陸をみつけられないかなってね。

昔話であやふやで、海流も季節や時代で変化しちゃってるかもしれないけど。

だから海流について船員さんにきいてみるね。

わたしじゃわかんないとおもうけど、きいたことをまとめてアルトワインさんたちにみてもらえば、てがかりにすこしはなるかもしれないもの。

それをアルトワインさんへのおみやげにしてあげられたら、そうわたしはおもうから。



●春の香とともに、情報を
 レイチェル・ケイトリン(心の力・f09500)が船上できょろきょろと視線を彷徨わせていた。デッキにはたくさんの人が集まり、飲み物や食べ物を手に海を眺めて笑っている。
 桜の花びらの入った籠から花びらを舞わせて楽しそうにしている子どもが視界に入り、レイチェルは花のような容貌を一層優しく和らげた。

「はい、おねえちゃんにも」
 子どもが白い花飾りをレイチェルに差し出した。
「ありがとう」
 ニコリと微笑み手に取れば春の香りがふわ、と漂い。

(あ、船員さん。見つけた)
 船員を見つけて歩み寄る足取りは自然と軽やか。
 陽光を浴びて銀の髪が艶やかに煌めいて、青の瞳が見つめれば。
「お、お嬢さん。おれに何か、御用ですかい」
 可憐な少女を見て貴族や大商人の令嬢と勘違いしたのか、船員がぎこちなく敬語を操り笑顔を浮かべる。

「聞きたいことが、あるの」
 背伸びをするようにして見上げれば、船員はウンウンと頷いた。
 レイチェルは事前に聞いていた人魚姫の言い伝えを話し。
「とってもかわいいおはなし」
 そう感想を付け足せば、船員は自分の娘を見るような微笑ましげな顔をした。
「ああ、うちの娘もその話が好きなんだ」
「そうなの」

 船員は近くを通った給仕から淡い色をした飲み物のグラスを取り、レイチェルへと差し出した。
「どうぞ、お嬢様」
「ありがとう、いただきます」
 礼儀正しく受け取れば、「やはり育ちの良い娘さんだな」と船員は眦を和らげながら背筋をぴんと正す。
「御付きの方はいないんですか? 安全な船といっても、お嬢さんくらいのご年齢の女の子がひとりでいるのはよろしくありませんぜ」
 心配するように言う船員へと、レイチェルは微笑んでみせる。大丈夫、と。

 軽く揺らしたグラスの中の水は桜の香りを漂わせ。そっと口に含めば、爽やかに甘く、後味もよい。
「おいしい」
 言えば、船員は安心したような顔をした。
「お嬢さんの舌に合ってよかったですよ」

 レイチェルはコクリと頷き。そして、本題に入った。
「しずんだ群竜大陸から剣がながれて人魚のお姫さまにとどいた。ならそのながれ、海流を逆にたどって群竜大陸をみつけられないかな? と、思ったの」
 いかにも深窓の令嬢、といった容貌の少女の考えに船員は目を丸くした。少女の3倍近くの人生を生きてきたであろう船員は、慣れ親しんだ言い伝えから海流を逆に辿る、なんて全く考えもしなかったのだ。

「お嬢さんは面白いこと、考えるんですねえ。まあ、確かに群竜大陸が復活したんじゃないかって話も聞きますが……」
 船員は驚きながらも海流に関する情報を語ってくれる。レイチェルはそれらを全てメモに纏め。
(てがかりにすこしはなるかもしれないもの)
グリモアベースへと持ち帰るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
ナハトさん(f01760)と
アドリブ等歓迎

海。どこまでも続く、広大な水の楽園
あなたと訪れる場所は、何時も未知なる美しさに溢れているわ
ナユは、それを知ることができてうれしいの
まるで未完成のパズルを組み立てるようだわ

眼前に現るは、はじめて眺る海の生き物
ナユたちを運ぶ大きな背中を、そっとひと撫で
頬を撫ぜる海風が心地よいわ

海へ落ちかけた姿へと、反射的に手を伸ばす
ナハトさんにも、ニガテなものがあるのね
彼の新たなる側面を知れた気がして

これはナユと、ナハトさんだけのヒミツね
あたたかな海水につま先を遊ばせながら
ふたりだけの誓いを立てましょう
指切りげんまん。嘘ついたら――…
その先は、考えておいてちょうだい


ナハト・ダァト
ナユ君(f00421)と参加
アドリブ歓迎

十ノ悪徳デ首飾りかラ生物ヲ生み出すヨ
武器改造によリ、危険性ハ取り除いておこウ

生み出す生物ハ、
オニイトマキエイ…俗にいウ、マンタと呼ばれる生き物ダ

私とナユ君を乗せテ、悠々と遊泳できル大きさニしておこウ
悪徳でモ。使い方によってハ、こんな事ガ出来るのだヨ

海上クルーズだネ…楽しんでくれているかイ。
…何故、泳ぐのではなク。この方法ヲ選んだのカだっテ?
……私にモ、苦手な事があるだけサ。察しテおくr…ッ!?
最後まで言いかけたところで足を滑らせ海へ落ちそうに

心底慌てた様子で
分かっただろウ?
カナヅチ、というやつダ。

それでモ、君ト海へ行くのが楽しみでネ
この事ハ、内緒で頼むヨ



●光溢れる世界ヲ、君ニ
 海。どこまでも続く、広大な水の楽園。

「海、キレイね」
 蘭・七結(恋一華・f00421)が呟けば。
「うム。綺麗ナ世界ダ」
 ナハト・ダァト(聖泥・f01760)が優しく応え。

 天から降り注ぐ柔らかな日差し。風はそれ自体が光り耀くかのように海と空の間を吹き抜けて。海風と陽光を受ける2人は細かな水飛沫を浴び、春世界を眺めている。
 弾ける歓声は船上を賑々しく彩り。

 鼻腔を擽るのは春を孕んだ潮の香。
 時折混じるのは桜含む涼やかな風。

「桜の花を舞わせるなんて、風流ね」
 呟けばナハトも頷いて。
「春花ハ好いネ」
 花好きの異形が穏やかな空気を纏っている。

(今度、桜のお菓子をご馳走しようかしら)
 眺めるだけではなく様々な楽しみ方のある桜。
 少女が歩む世界は新鮮な驚きと歓びに溢れていた。

 ――実際に目にするト新鮮さを感じるものだネ

 声が脳裏によみがえる。
 あたたかな思い出に、自然と眦は柔らかに緩み。

 現実に意識を向ければ、医神のローブを揺らめかせてナハトが海を眺めている。そおっと伸ばした蝕腕が取るのは風に舞う桜の花弁。
 黒肌に桜が優雅に映えて麗しい。
 慈しむように異形が目を細めた。佳いものだ、と。

(せっかくのバカンスだもの。たくさん、たのしみたいわ)
 紫水晶の瞳が光の海を見つめれば、傍らの異形がローブをはためかせ、そっと声をかける。
「ナユ君。君ハ、泳げるかイ?」
 しゃらり、と揺れるのは金の鎖。中心にあかい花を閉じ込めた、小さな植物標本の首飾り。大切にしてくださっているのね、と嬉しく金色に微笑んで。七結がふわりと首を傾げる。泳いだことはないの、と言えばフードの奥の双眸は優しく微笑んで。叡智の衣が穏やかに一礼する。
「ふム。でハ、エスコートは任せてくレ」
 ナハトの触腕が指揮者めいて宙を舞い、『十ノ悪徳』で生み出すはゆうらり、大きな海の生き物だ。
 平べったいひし形の体を優雅に広げ、細長い尾は繊細に水に揺れ。背には頭から口に沿い並行に白模様が踊っている。
「オニイトマキエイ……俗にいウ、マンタと呼ばれる生き物ダ」
 おとなしく人なつこいマンタが2人の前で待っている。
「はじめて眺るわ……」
 瞳をぱちりとさせて呟く七結へとナハトが腕を差し出してエスコート。
 マンタに乗った2人はゆら、ゆらと海上を往く。

「悪徳でモ。使い方によってハ、こんな事ガ出来るのだヨ」
 楽しそうに言うナハトに釣られて七結も心躍らせて。白雪の頬が薔薇に染まる。
 2人を運ぶ大きな背中をそおっと撫でれば、しっとり、もちもちの皇かな肌が新鮮だ。
 口元に歓びを湛え、七結が楽しそうに笑む。
 頬を撫ぜる春の風は涼やかな香を乗せて、心地よい。

 大きな胸鰭を上下に羽ばたくように、マンタは悠々と進んでいく。時折、風に乗り2人の周囲に彩りを添えるのは船から飛ぶ桜の花弁。煌びやかな魚たちも周囲をゆらり、泳いで日の光を反射して。夢世界。
 瞳を耀かせる七結を見て、ナハトが思い出すのは在りし日の彼女だろうか。

 ――光を余り見たことがないのだと、夜の世界でぽつり呟いた花姿。

「海上クルーズだネ……ナユ君、楽しんでくれているかイ」

 光注ぐ世界、美しい世界を君に。想いと共に差し出された言葉に、少女は頷いた。
「ええ。とても楽しいわ。……ナハトさんは泳いだりはしないのかしら」
 泳げないナユに気を使ってくれているのかしら、と七結が案ずれば、ナハトはふるりと首を振り。
「……何故、泳ぐのではなク。この方法ヲ選んだのカだっテ?」
 ほんの刹那、迷い。
「……私にモ、苦手な事があるだけサ。察しテおくr……ッ!?」
「ナハトさん!」
 つるりと足を滑らせ、海へと落ちそうになるナハトへと七結が反射的に手を伸ばす。手に縋り心底慌てた様子で姿勢を立て直す彼の姿に七結は意外そうに眼を瞬かせる。
 そんな少女へと感謝の視線を向けながら、異形が安堵の息を吐く。
「分かっただろウ? カナヅチ、というやつダ」
 肩を竦めるようなローブ姿は、微笑ましく愛らしい。七結は優しい笑みを浮かべてそっと頷いた。

 ゆらゆら、揺れるマンタの背。
 医神のローブは軽やかに揺れ、真面目な彼は笑み声を零す。
「それでモ、君ト海へ行くのが楽しみでネ。この事ハ、内緒で頼むヨ」
 声がとても、あたたかい。

 それなら、と七結は春花も恥じらう可憐な笑顔を浮かべ。
「これはナユと、ナハトさんだけのヒミツね」
 あたたかな海水につま先を遊ばせて。

 ――ふたりだけの誓いを立てましょう。

「指切りげんまん。嘘ついたら――…」

 その先は、考えておいてちょうだい、と言えば。
 異形は首飾りを煌めかせ、真面目な様子で頷いた。

 耳を楽しませるのは、ちゃぷり、ちゃぷりとリズムを刻むどこまでも穏やかな春波のメロディ。2人を乗せたマンタはゆうらり、ゆうらり、桜の海を往く。
 そろそろと視線を交わし、やがてマンタに掴まるようにして腰から下を海に浸け、軽く泳げば気持ちよい。
 手を離せば沈んでしまう。そんな気持ちもするけれど。
 ならば離さずいればよい、と笑み。

 ぱしゃり、ぱしゃりと飛沫があがれば。
 キラキラ、キラリと光が跳ね。

 ――光溢れる世界ヲ、君ニ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸フレズローゼ(f01174)
アドリブ歓迎

ワンピースタイプの水着を着て空を仰ぐ
いい天気!海上の船でバカンスなんて最高ね、フレズ!
トロピカルなジュースを飲みながら絢爛の海を――……え、泳ぐの……?あたし……泳げないのよ?

小舟の上から泳ぐフレズを見守りながら
暖かな水に足をつける
人魚姫の恋……ねぇ
陸と水中に暮らす者の異種族の恋……
あたしの愛する人も、可愛い人魚だから他人事じゃないわ
きっとこの海をみたら、喜ぶでしょう
あの子の住まう水底へ、行かなきゃ
かの海賊は、どうやって人魚姫と愛をかわしたのかしら

そ、そうよね
まずは泳げるようにならないとなのよね!
フレズ!浮き輪かして頂戴!
あたしだってやってやるわよ!


フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓櫻宵(f02768)と一緒
アドリブ等歓迎

わーい!青い空!青い海!
ばしゃーーん!
元気よく海に飛び込んで、くるりぱしゃり泳いでまわる
さーよ!櫻宵もおいでよー!トロピカルジュースもいいけど、泳ごうよう

泳げないのは知ってるけどね
17メートルは泳げるじゃん
いけるいける!
人魚との恋かー
ロマンチックな童話の世界の物語だと思ってたよ、ボク
櫻宵、他人事じゃないもんね。櫻宵の恋人は、可愛くて綺麗な人魚の王子様だもんね

海賊だもん、櫻宵と違って泳げるイケメンだったんだよきっと
浮き輪?いいよ!
ほら、櫻宵がんばれー!

ほらほら
幸せな顔をみせておくれ
幸せな花を咲かせておくれ
その笑顔を、ボクが余すことなく、描いてあげるから



🌸プリマヴェーラが波風に🍓
 青空で軽やかに、綿あめのような雲が遊ぶ春。

 淡墨桜に陽が注ぐ。ワンピースタイプの水着姿も艶やかな誘名・櫻宵(誘七屠桜・f02768)が船上で空を仰ぎ。
「いい天気! 海上の船でバカンスなんて最高ね、フレズ!」
 手にしたグラスには赤い鮮花が飾られて。海と空の青を透かせて気泡がしゅわりと踊るジュースは気泡生む水底の水色が上に移るにつれ鮮やかな赤紫へと変じてトロピカル。
 絢爛の海を眺めながら味わえば、爽やかな酸味と甘みに眦溶かし。

「わーい! 青い空! 青い海!」
 そんな櫻宵の視線の先、蜂蜜を抱いた苺ミルクの髪が元気に揺れて海へとダイヴ!

 ばしゃーん!

 胸を高鳴らせながら飛び込めば、柔らかな春の波がその身を抱く。光と煌きに満ちた波間に愛らしい顔を覗かせ、くるりぱしゃりと泳いでまわり。苺月の瞳が櫻宵にキラキラと。
「さーよ! 櫻宵もおいでよー!
 トロピカルジュースもいいけど、泳ごうよう!」
 楽しい気持ちはお耳にもあらわれてぴこぴこ、ぴこり。ミルク色の頬もストロベリィに染まって甘やかな容貌が輝くよう。

 淡墨の髪をそよりと風に靡かせて櫻宵は戸惑いに首を傾げ。
「え、泳ぐの……? あたし……泳げないのよ?」
 海は脚がつかないだろう。困ったようにそう言えば。
 フレズローゼは元気に手招き。泳げないのはもとより承知と頷いて。
「17メートルは泳げるじゃん。いけるいける!」

 小舟の上から泳ぐフレズを見守りながら櫻宵はそおっと足を伸ばし。ちゃぷり、水に浸ければ透き通る綺麗な水は、温かい。
 ゆーらゆら、小舟が揺れれば波を全身で感じて夢心地。

「人魚との恋かー。
 ロマンチックな童話の世界の物語だと思ってたよ、ボク」
 近くへと寄ってきたフレズローゼが花の容貌を不思議の色に染め、2人はしばし人魚の世界へ想いを馳せる。
「人魚姫の恋……ねぇ。陸と水中に暮らす者の異種族の恋……」
 桜の双眸が秘めた感情に揺れ。
 2人が連想するのは、リルのこと。互いにそれがわかるから、ふと目を合わせれば優しい色が瞳から溢れ。
「櫻宵、他人事じゃないもんね。櫻宵の恋人は、可愛くて綺麗な人魚の王子様だもんね」
 くすり、フレズローゼが囁けば。光のかけらを片耳のピアスに反射させてきらきらと弾ませて櫻宵が頷いた。
「あたしの愛する人も、可愛い人魚だから他人事じゃないわ。きっとこの海をみたら、喜ぶでしょう」
 ぐるり、2人を取り巻く世界は一面の水の青と空の青。降り注ぐ光はきらきら、きらりと水に反射して。時折水面に姿を見せるのは、宝石のような色纏いし魚たち。

 麗しの唇がそっと息を吐く。
「あの子の住まう水底へ、行かなきゃ。
 かの海賊は、どうやって人魚姫と愛をかわしたのかしら」
 水に半身を浸けた甘色フレズがフフ、と甘く目元を蕩けさせ。笑う。
「海賊だもん、櫻宵と違って泳げるイケメンだったんだよきっと」
 楽しい笑い声をあげながら、フレズローゼは内緒で思う。
 泳ぐことはできないけれど、目の前の怪力オネェは、人魚姫の宝を盗んだりはしない。スパダリ度では、きっと上! と。

 内心知らず櫻宵は決意を胸に拳を握り。そうよね、と声をあげ。
「まずは泳げるようにならないとなのよね! フレズ! 浮き輪かして頂戴! あたしだってやってやるわよ!」
 桜の瞳にやる気が漲り、苺月もウンウンと微笑ましさに笑みを漏らして。
「浮き輪? いいよ! ほら、櫻宵がんばれー!」
 苺の浮き輪を渡せば、麗しの淡墨桜が懸命に浮き輪にしがみつき。
「ああああ足がつかないわ! 吸い込まれそう!」
 じたばた、足が水を掻けばキラキラの水飛沫。桜の翼も水を跳ね背で泳ぐよう。
 ない胸をはり、フレズローゼは教官となる。
「ほらほら! もっと力を抜いてー!」

 水面に広がる波紋は降る桜を浮かべて、春模様。

 ふと、水の中から可憐な人魚の歌声が聴こえるような気がして動きを止め。
 ゆらり、全身が水に浮く。

 ――ああ、波に身を任せるのって、気持ちがいい。
 思うのはそんなことだった。

 眠るように瞳を閉じて耳を澄ませば、やっぱりやっぱり、愛しい人魚の歌声が聞こえるようで。心地よい。
「ほらほら! 休まないー!!」
 耳朶を打ち現実に引き戻すのは、夜明けの国のクォレジーナ。長い睫をもちあげてみれば苺月が元気に見つめ、笑っている。
 スパルタね、と笑ってみせればフレズローゼが少し考え。頷きひとつ。

「手取り足取り、指導してあげよう!」
 浮き輪をグイグイ引っ張りバタ足を誘えば。浮き輪に掴まる手が慌てて力を籠め。
「力を入れ過ぎてパンクさせないようにね!」
 楽し気な声が先導する、海。
 ふと視線の端に光が瞬いて見れば頬の傍を掠めるように華やかな魚がご挨拶!
「!!」
 衝撃に笑顔の花が咲く。

 フレズローゼも微笑んで。

 ――ほらほら
 幸せな顔をみせておくれ
 幸せな花を咲かせておくれ
 その笑顔を、ボクが余すことなく、描いてあげるから――

 すうっと吸い込む風は海色に染まっていて。
 胸満たす光風は歓びに満ち。

 顔をあわせて、2人は笑う。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■バレーナ(f06626)
アドリブ等歓迎

「バレーナ!君と海を游げるなんて夢みたい」
僕ね、海は初めてなんだ
湖より暖かくて万華鏡みたいに綺麗
歌うように笑い好奇心に任せ水と波と魚と戯れ
隣の白皙に微笑んで暖かな水の中游ぐ
僕も游ぐの遅いけどその分ゆったり、バレーナと並んで游げるね
尾鰭で泡の輪っかを作ってみたりして遊ぶ
「あれは、さんご、というらしい。僕の角と似てる」
バレーナも一緒に遊ぼう
手を差し伸べ

歌えば色とりどりの魚が周りに
宝石のように綺麗だけど
白は君と僕だけ
「どの子も綺麗。だけど僕。バレーナの白がいちばん好きだな」

初めての海が楽しい
一緒なのが嬉しい
喜び溢れる人魚の歌を響かせる

僕らはもう独りではないんだ


バレーナ・クレールドリュンヌ
■リル(f10762)

アドリブ〇

暖かで綺麗な海、心まで解放されそうなくらい、素敵な場所ね。
隣で游ぐリルの無邪気にはしゃぐ屈託のない笑顔と、水に躍る半月の尾鰭の描く泡沫に、少女のようなときめきを表情に浮かべて。

わたしも、こうして明るい海を誰かと游ぐのは初めてで、リルが一生懸命、色鮮やかな珊瑚を教えてくれたり、泳ぎが得意じゃないわたしに合わせてくれて、それだけで、こんなに胸が温かになる。

彩られた魚たちの海で真っ白なわたしを好きだと言ってくれる彼の為に、わたしも一緒に歌いましょう、きっとこれを幸せというのだと。
「きっとこの色彩も、貴方なしでは嫉妬してしまう、貴方がいるから、わたしは幸せを感じられる」



●万華鏡の海に人魚が歌えば
 人々が笑う声が水をつたい、ゆらゆらと遠くから聞こえるようだ。

(声が、聞こえた気がする)
 ふと想うのは海中では出会えないはずの人の声か。
 燈る想いはあたたかく。

 視線を向ければ頭上に揺れる光が眩く煌き。
 水が揺れるのにあわせて海上世界の春の日差しは幻想世界に降り注ぐ。

 生命芽吹く、春。
 喜び謳う、春。

 髪を撫でる暖かな水は春の息吹を感じさせ。
 ふわり、真珠めいた泡も頬を擽り心地よい。
 ぐるりと見廻す視界一杯広がるは幻想めいた水世界。春の歓びに全身を染めた珊瑚と絢爛の魚たちの世界を巡ればゆうらり、廻る世界は万華鏡。キラキラ、煌めく小さな光の粒。無数の泡と一緒に舞い踊る。

 ――……♪

 海中に揺蕩う歌声は銀細工の繊細さ。
 月光ヴェールの尾鰭を翻しリル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)が春を寿ぐ。清らかな尾鰭を揺らして共に泳ぐは海色の翠を湛えた瞳のバレーナ・クレールドリュンヌ(甘い揺蕩い・f06626)。
 宝石めいた光の海で視線をあわせ、自然と咲き零れるは春花の如き笑顔。

 沢山、沢山ある世界。
 広い世界の片隅で。
 巡り合えたのは、奇跡だろう。

 2人の人魚が同じ想いを胸に、南の海を舞っている。

「バレーナ! 君と海を游げるなんて夢みたい」
 リルが嬉しさを溢れさせて無邪気に水を抱きしめて屈託のない笑顔を咲かせ。半月の尾鰭が踊れば泡沫が舞い。
「暖かで綺麗な海、心まで解放されそうなくらい、素敵な場所ね」
 人魚乙女のバレーナは少女のときめきを浮かべ。白皙の肌を薔薇に染め、はにかむ声は蜜のよう。

 水を抱くリルの耳でピアスが優しく揺れている。
「僕ね、海は初めてなんだ。湖より暖かくて万華鏡みたいに綺麗」
 歌うように笑って視線を向ければ、宝石箱から飛び出てきたような魚の群れが2人を囲んで誘った。
 白い尾鰭が軌跡を描いて魚たちとダンスを踊れば、天から降り注ぐ春光が一層やわらかに世界を照らしあげ。
 尾鰭で泡の輪っかを作って比べてみれば、ちいさな魚が楽しそうに輪くぐりを魅せてお遊戯会が始まって。

「あれは、さんご、というらしい。僕の角と似てる」
 リルが鮮やかな宝石のような彩を示せば、海の神秘が誘うよう。2人、顔をあわせて近寄れば淡い珊瑚は角に似て。
 戯れに角を並べて比べてみれば、バレーナが愛らしい笑い声をあげ。魚たちも比べるようにゆらゆら、つんつんと角を擽り。
「ふふ、擽ったい」
 2人、笑う声は春の色。

 人魚と魚とお日様と、とっておきの舞踏会を魅せてあげる。
 御伽噺の王子様のように手を差し伸べれば、人魚姫が手を取り鰭を舞わせ。白銀色の髪がふわり、ゆらりと揺れれば光が跳ねて夢のよう。

 泡沫に還ることなき人魚が幻想世界にときめきを謳う。
「わたしも、こうして明るい海を誰かと游ぐのは初めて」
 と。

 覗き込むようにすれば優しい瞳が続きを促し。
 人魚姫は光の中で言の葉を紡ぐ。
「リルが一生懸命、色鮮やかな珊瑚を教えてくれたり、泳ぎが得意じゃないわたしに合わせてくれて」
 胸が溢れ。
「それだけで、こんなに胸が温かになる」
 溢れる気持ちを口にすれば、春花が咲いたようであたたかい。
 広い世界で只2人、人魚の同胞に出会えた奇跡がいとおしい。

 2人の人魚は魚たちに囲まれてゆったりゆったり水に揺蕩う。
「僕も游ぐの遅いけどその分ゆったり、バレーナと並んで游げるね」

 ご機嫌な気持ちは玲瓏たる歌になり。
 色とりどりの魚たちが歌に合わせて躍っている。

 ――だけど、白は君と僕だけ

 人魚の王子様は人魚姫に微笑んで。
「どの子も綺麗。だけど僕。バレーナの白がいちばん好きだな」

 言葉にバレーナは息を呑む。

 ――色を付けない金魚なんて、

 見棄てられた娘は、色がなくてつまらないのだと。そう思っていたから。曙光の緋の色への思いを断ち切れず、けれど、嘆くこともなく、媚びることもなく、そうしていたから。

(彩られた魚たちの海で真っ白なわたしを好きだと言ってくれる彼の為に、わたしも一緒に歌いましょう、きっとこれを幸せというのだと)
 バレーナは微笑み、歌う。甘やかな人魚の歌は2人、寄り添うように旋律を重ね。海を揺蕩い、光に抱かれてゆらゆらと反響する。

「きっとこの色彩も、貴方なしでは嫉妬してしまう、貴方がいるから、わたしは幸せを感じられる」
 人魚姫が睫を伏せれば、優しい歌声はあたたかに広がって。

 リルが視る世界は只美しく。
 
 ――初めての海が楽しい
 一緒なのが嬉しい――

 喜び溢れる人魚の歌は海中に穏やかに広がり、響き渡り。
 天から注ぐ光もまた彼らを慈しむように、春を告げ。

「僕らはもう独りではないんだ」
 人魚が呟く声を世界が歓ぶ。

 喜び謳う、春。
 生命芽吹く、春。

 ふと仰ぎ見る海上の光は厳かで神聖なようでいて、素朴でもある。
 優しい春に抱かれて、人魚は夢見るように鰭を振る。

 海の上では陽が柔らかに、光風が穏やかに、人々を慈しんでいるのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テン・オクトー
ツアーだ〜!オフだ〜!のんびりまったりだ〜!
SPD
ボクは寒い地方の遊牧民の出なので泳ぎは苦手。溺れないようライフジャケット、アームフロート着用。大きめサーフパンツはき、シュノーケルを頭にかけ、プカプカ浮いてまったりするよ。
気持ちいいね〜。
魚の群れに出会えそうなら見てみたい!潜れないから水面に顔つけてみる程度だけど。魚以外にも大きな貝や珊瑚等々見れたらいいな〜。
お祖父ちゃんも見てみる?珍しいものが見れるかも!(可能ならUCで召喚。非武装で一緒にまったりするだけ。ご先祖様は喋らない、もしくは何か話してもボクには聞こえない存在です。いつもアイコンタクト。他、霊である事以外特に設定無し)

アドリブ大歓迎



●お祖父ちゃんとの、春休み
 煌めく陽射しを反射して海がキラキラ光っている。

「ツアーだ~! オフだ~! のんびりまったりだ~!」
 ふわふわの毛を潮風に撫でられてテン・オクトー(ケットシーのシャーマン・f03824)が伸びをする。

 故郷とは異なる南の空気。
 泳ぎは苦手な遊牧民の出。
 海は全く足がつかなくて、ゆらゆら、揺れに身を任せればどこまでも運ばれていきそうな不思議な優しさを全身で感じる。
 溺れるのはちょっぴり、怖いけど。
 ぷかぷか、波間に漂う全身は海で過ごすための全身装備!
 小さなテンの体をふんわり包む空色ライフジャケットは星を散らして。アームフロートは玩具みたいにキラキラで愛らしい。サーフパンツはゆったりと大きめで。シュノーケルも頭に煌めいている。
 見る者が思わず頬を緩める愛らしい姿を海に浮かべて、空を映すまんまるの瞳が明るい色を湛えている。

「気持ちいいね~」
 明るい声を風に乗せ。
 海はとっても、気持ちいい!

 そおっと水に顔をつけてみれば、ゆらゆら揺れる水の流れに清らかな泡がくるくる舞い、小さな光の粒子が踊っている。
 鱗を不思議に輝かせた魚たちは色彩豊かな花のよう。

(あ、あれが珊瑚かな!)
 青色おめめをパチリと瞬かせ、猫のお耳をピコリ、揺らして。
 海の神秘を眺めていれば魚たちがゆらり、尾鰭をくねらせ遊びにきてくれる。
 ひときわ大きな魚がつるりと身を寄せ、何かをぽい、と海に投げ。

「あ! なにこれ!」
 海を沈んでいくソレに手を伸ばせば、引き揚げたソレは手触りの良い白の貝殻。
「わあ……」
 陽光に翳せば真珠のように輝き、綺麗。

「お祖父ちゃんも見てみる? 珍しいものが見れるかも!」
 ふと思いつきに目を輝かせ、ご先祖にゃんこ様の霊を召喚すればテンとそっくりのお祖父ちゃんが現れる。
「お祖父ちゃん!」
 元気に、けれど礼儀も正しく頭をぺこり、挨拶するテンにお祖父ちゃんは優しい気配を纏わせて、おヒゲをゆらゆら、尻尾をそよそよ、テンと一緒に海でくつろぐ。

 海世界を共に覗けば楽しい気持ちも跳ね上がり。
「あっちに、珊瑚があるんだよ~!」
 嬉しくて仕方ない気持ちを全身から滲ませてテンが水世界を指させば、お祖父ちゃんも楽しそうにゆーら、ゆら。

「ほら! 見て、これ貝なんだよ~!」
 真白の貝を見せれば、目を丸くして驚いた表情を見せてくれて。
 そおっと撫でる手は、春風のような優しい手つき。

「海って、気持ちいいね~」
 もう一度言えば、傍らのお祖父ちゃんが頷く気配があり。
 それが嬉しくて、テンは脚をバシャバシャと遊ばせた。

 あたたかな思い出が、また増えた。

 ――お祖父ちゃんとの、春休み。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】(アドリブOK)
「わーい、海だー! 見てみて、おさかな綺麗だよ!」
南の海に大はしゃぎで泳いで遊んで楽しみまくる

【行動】()内は技能
さっそく水着に着替えて船の上から海にダ~イブ!
思いっきり潜ってから海面へ。水がとっても気持ちいいよ。
「わわ、魚が集まってきたよ」
魚肉ソーセージで魚を一杯集めて、色とりどりの魚を観察するんだ。

「ねーねー、フィオ姉ちゃんも泳がないの?」
水着持ってきてるのに泳がないんだって。
せっかくの海なのにもったいないよねー
魚と遊んだらシャチの浮き輪に掴まってリラックスタイムだよ
船上のフィオ姉ちゃんに手をふったりするよ
さすがに人魚のお姫様はいないよね


フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(アドリブ可)
「ちょっと。こっちまで水飛ばさないでよ」
フォルセティが南の海に行きたいというのでやや強引に同行

■気持ち
南の海は解放感たっぷりでいろんな誘惑(?)が多いから、
姉としてちゃんと守らないと!

■行動
日差しが気になるので白のワンピースに日よけの帽子姿
水着は…ちょっと自信ないのでパス
船のデッキからフォルセティをそれとなく見守って過ごす
あまり見ていると不自然なので、海鳥に餌をやってごまかしたり
「たまにはのんびり過ごすのも悪くないかな」
水平線の先を眺めているとそんな気持ちになったり
(フォルセティも喜んでいるみたいだし)
弟の笑顔を見るのが私にとっての一番の幸せね



●姉弟の春休み
 水と光に潤う、春。

「わーい、海だー! 見てみて、おさかな綺麗だよ!」
 フォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)が大はしゃぎ。水着に着替えたフォルセティ、煌く海へと元気にダ~イブ!

 バッシャーン!

 元気な音をたて、白い飛沫を撒き散らし。
「ちょっと。こっちまで水飛ばさないでよ」
 弟が南の海に行きたいというのでやや強引についてきたフィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)は純白のワンピースをふわりと揺らし、涼やかな春風の吹くデッキで弟を見守る。

(南の海は解放感たっぷりでいろんな誘惑(?)が多いから、姉としてちゃんと守らないと!)
 保護者としての決意を胸に。けれどチョッピリ気になるのは頭上の日差し。乙女の柔肌を守るべく日よけの帽子を被り直し。
 帽子の下で艶やかな苺色の髪が風を孕んでサラリと流れ、近くを通った男性がドキリと視線を奪われる。
 お忍び旅行のお姫様、人間に化けたマーメイド。そんな風情の姉は無自覚で。視線は一心不乱に大切な弟に注がれている。

 深く潜ったフォルセティを取り巻くのはゆるく全身を包む水世界。透明な水がとても綺麗で、腕を動かせばゆったりと絡むような感覚が面白い。
 宝石のような珊瑚が視れて、橙の髪がパチリと瞬く。
(フィオ姉ちゃんにも見せたいなー)
 姉のような色を纏った珊瑚にそう思う。

 息を付こうと上に向かえば、キラキラ輝く陽の光が美しい。
 ぷはあっ、海上に顔を出せば、安心したような姉の姿が目に映る。
「フィオ姉ちゃん、水がとっても気持ちいいよ!」
 ぶんぶん手を振れば、姉がお魚の餌を買ってくれた。

 ぷかり、海に浮かべて餌をやれば、
「わわ、魚が集まってきたよ」
 色とりどりの可愛い魚がたくさんたくさん集まって、餌を欲しがり大渋滞! フォルセティはあたふたと、けれど魚たちに嬉しそう。

(なんて可愛い……!)
 フィオリナはそっと弟萌えを内心で爆発させそうになりつつ、あまり見ていると不自然なのでと海鳥に餌をやり。
 ぱさぱさとやわらかな羽音をたて、たくさんの鳥たちがフィオリナのもとへと舞い降りる。

「鳥だー」
 遠くから弟の声。
「ふふ……」
 やわらかに笑い、宝石めいた目を細めれば。
「ねーねー、フィオ姉ちゃんも泳がないの?」
 弟が魚に囲まれて不思議そうにしているが、姉はゆるりと首を振り。
 そんな可憐な姿に、周囲の男性たちが絵画に出て来る姫君を見ているかのようにため息を漏らすのであった。

「たまにはのんびり過ごすのも悪くないかな」
 フィオリナは周囲の視線には気付かずに、水平線の先を眺めて花のような微笑みを浮かべ。
(フォルセティも喜んでいるみたいだし)

 ――弟の笑顔を見るのが私にとっての一番の幸せ。

 そんな姉心を知らず弟は、魚たちとのんびりと。
「フィオ姉ちゃん、水着持ってきてるのに泳がないんだって。せっかくの海なのにもったいないよねー」
 少し残念な気持ちが声に滲む様子は、年相応の子どもっぽさ。
 天才の名高き弟も、普段は愛らしいお子様なのだ。

「こんなに、気持ちいいのになー」
 ぱしゃり、足を遊ばせれば白い飛沫が空に舞い。光を反射してキラキラだ。
「珊瑚、綺麗なのに」
 海の宝石を思い出し、アレを見ないのはもったいない、と眉を下げ。
(お土産とか、船で売ってないかなー?)
 あとで姉と一緒に探してみよう。そう考えて足を伸ばした。
 小さなお魚たちはそんなフォルセティの足をつんつん、つついて。
「くすぐったいよー」
 困ったように足をひっこめ、フォルセティがおひさまのような笑い声をあげ。
「ボク、ごはんじゃないよー」
 フォルセティはシャチの浮き輪に掴まってリラックス。保護者めいた雰囲気で見守るフィオリナへと手を振り、波に揺られてゆーら、ゆら。

(さすがに人魚のお姫様はいないよね)
 思うフォルセティの視界の隅で、人魚の尾鰭がぴょこりと視えた気がして、橙の瞳はワクワク揺れた。

「大変! フォルセティがお腹をすかせた魚に食べられちゃうかも」
 一方の姉は弟の声にそんなことを思って危惧していたが、大丈夫そうな様子にほっと胸をなでおろし。
 けれど、念のために、と新たな魚の餌を買い。
「フォルセティ、新しいのを買ったわよ!」
 ぽーん、と投げて渡せば、弟が餌を撒き。
 取り巻く魚が、また増えた。

「フィオ姉ちゃん、魚が増えすぎて身動きができないよー」
 弟がおひさまのように笑っている。
 ぷかぷか、シャチ(浮き輪)に掴まった弟の周りに夥しい数の魚の群れができていた。
「あそこに網を投げたらいっぱい獲れるわね……」
 姉、思わずそんな呟きを零してしまい。

 そんな姉の周りにも、いつの間にか鳥たちが群れを成し。
「フィオ姉ちゃん! 鳥の女王様みたいだよー」
「フォルセティはお魚の王子様みたいね」
 共に笑い。
 
 魚と鳥と、お日様と。煌めく水に囲まれて。

 ――姉弟の優しい時間が、過ぎていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

叶・都亨
【遊空】
いいぃぃやっほおぉーーーう!
青い空!海!!白い雲!!!
そして水着の女子…最っっっ高だね!

え?仕事?
だーいじょうぶ!
そーゆーのは真面目な人に任せておけばおっけーだ!

ふふふ~オルハちゃんもクロアちゃんも水着姿可愛いんだろうなあ
楽しみだ…ね!ヨハンくん!

君が水着持ってきてないなんて予想済みだよ!
はい、み・ず・ぎ♡
ってああん…つれない

いいや、先に海入ってよーっと
ほんと海ってさいこ……がぼがぼがぼ
待って俺泳いだことない助けて!プリーズ!!

オレ ウミ アマクミテタ…
あ、でも天使が2人いる!俺、復活!!

仕方ないから浮輪使ってぷかぷかするよ
透明度が高いから魚も見えるなあ
ほらオルハちゃん、ここ綺麗だぜー


オルハ・オランシュ
【遊空】

大丈夫大丈夫!
私達が遊んでる間に進展があるかもしれないし、
なんとなかるよ

じゃあ着替えてこようか
行こ、クロア
着替えはするけど……私、羽を濡らすのが好きじゃないから
船の上でのんびりするつもり
クロアはどうする?泳ぎたい?
というか水着似合いすぎだと思うんだよね!可愛いなー
ヨハンも都亨も惚れちゃうかも

ふたりともお待た……えっ
どうしていきなり都亨が溺れてるの!?
ヨハン、助けてあげて!
まさか泳げなかったなんて知らなかったよ
チャレンジャーだね……?

私は船の上でサイダーを堪能
こうしてるとちょっと夏みたいだよね
まだ本当は春だなんて、嘘みたい

ねぇ都亨、海の中はどんな感じ?
魚いっぱいいる?
教えて教えて!


ヨハン・グレイン
【遊空】

一人だけ異様にうるさいのがいますね
風の気持ち良さと景観の美しさには心洗われますが

あまり気を張らず、息抜きと思って楽しめばいいと思いますよ

着替えに行く二人を見送り、
船上で椅子を見付けて座り、読書します
そうですね、楽しみですね、心ここにあらずで都亨さんに返答

水着なんて持ってきてないですし、
人が持ってきたもんを着る訳ないでしょう
一瞥し完全無視

ってあんた何やってんですか
泳げないで海に入ろうとするってある意味すごいですね
仕方ないので引き上げてやりましょう

……無反応でいるのもおかしいでしょうし
水着姿の二人には可愛いですよと
まぁ、本当のことですし

まだ肌寒いですし
風邪を引かないよう気を付けてくださいね


クロア・アフターグロウ
【遊空】
普段あまり依頼や実戦に行かないので
一度くらいは経験しておこうと連れてきていただいた筈、だったのですが

のほほんとした空気に少し呆然

ええと、お仕事は…良かったんでしょうか
勇者の情報集め、でしたよね?

遊んできて、というのは建前と言うか

そっか、この後は大変な冒険だもんね
みんな息抜きが上手なんだな…
わたしばかり野暮なことを言っていて、恥ずかしい

ヨハンさんとかなえくんのやり取りは
仲良しで少し羨ましく

ああ羽が…それは盲点でした

わたしも船の上でのんびりしようかな
と答えつつ最終的にかなえくんが寂しそうなので一緒に泳ぐ

オルハさんこそとてもお可愛らしく
お二人はもっと大人っぽい女性が好みなのでは?



●La duración de la vida
 肌の内が低い熱を湛えているがゆえに皮膚を挟んで外世界の熱は不思議な違和感を腕の内側に感じさせる。
 じわり、外世界の熱に侵食されるようでいて、けれど染まり切ることはない。温度差は少しの気怠さと不思議な高揚めいた鼓動を齎して。

 影落とす鳥の空飛ぶ羽は風をたっぷりと孕み、悠々と青を往く。
 空と船と海の世界を雲と鳥が冒険している。
 柔らかな光差す世界に、人々が揺れていた。
 
「いいぃぃやっほおぉーーーう!」
 夢抱く瞳耀かせ、叶・都亨(空翔・f01391)が歓声をあげれば、世界が一層明るさを増すようだった。光を浴びて星の粒みたいに輝く水滴が宙を舞い、美しい。
「青い空!海!! 白い雲!!! そして水着の女子……最っっっ高だね!」
 森色狼は快活に笑い、ジュースの入ったカラフルグラスを軽く揺らす。ちゃぷり、煌めき揺れるは夜海色に星を浮かべたミステリア。
 隣で桜色のドリンクに挑戦したオルハ・オランシュ(アトリア・f00497)は爽やかな甘みに頬を緩めて。
「クロア、このジュース最高! 飲んでみて」
 お揃いのドリンクをクロア・アフターグロウ(ネクローシス・f08673)に薦め。
「えと……、はい。ありがとう、ございます」
 見る者が思わず心配してしまうほど細い手首をそっと差し出し、クロアはおずおずとグラスを手にする。
 そんな少女らをレンズ越しにちらりと窺い、ヨハン・グレイン(闇揺・f05367)は珈琲を手に濡羽の髪を揺らしていた。
「おいしい」
 ちいさな声。
 ヨハンは唇だけ薄く笑み、そっと安堵の息を吐く。
 オルハが嬉しそうに目を細め、桜の風味を味わっている。
「ひゃっほぉーーーーう!!! クロアちゃん美味しいっ!? よかったねー!!」
 都亨が大声ではしゃいでクロアをたじたじとさせていた。
「一人だけ異様にうるさいのがいますね。風の気持ち良さと景観の美しさには心洗われますが」
 藍の瞳が呆れたように呟いて。オルハは楽しそうに笑っている。

(あ、あれ……?)
 のほほんとした空気にクロアは目を瞬かせた。
 普段あまり依頼や実戦に行かない少女。これは、一度くらい経験しておこうと連れてきて貰った依頼の筈、と戸惑いを覚え。
「え、えと、お仕事は……良かったんでしょうか。勇者の情報集め、でしたよね?」
 遊んできて、というのは建前だと思っていたのだ。楚々とした声がそう問えば、頭上で鳥が楽し気に春の歌を囀り、ふわりと頬を撫でる風が温くて優しい。
「え? 仕事? だーいじょうぶ! そーゆーのは真面目な人に任せておけばおっけーだ!」
 都亨が蒼の瞳を空に負けじと煌めかせ、不思議なジュースをクイと飲む。
「大丈夫大丈夫! 私達が遊んでる間に進展があるかもしれないし、なんとかなるよ」
 オルハも春の草原を思わせる瞳に暖かな笑みを湛え、ふわふわの耳を、ぴょこり。
「あまり気を張らず、息抜きと思って楽しめばいいと思いますよ」
 繊細な白花めいた少女の様子に僅かながら表情を和らげ、ヨハンが言葉を選ぶ。

 見渡す世界の至るところで、人々が笑って限られた時間を楽しんでいる。
(そっか、この後は大変な冒険だもんね。みんな息抜きが上手なんだな……わたしばかり野暮なことを言っていて、恥ずかしい)
 仲間たちへと控えめな頷きを返し、クロアはそっと恥じ入った。

「ん!」
 森色狼はそんな少女をしばし見て、手に持つグラスが空になったのを見計らってサッと手に取り。
「はーい提案! ひと息ついたことだっしぃー、そろそろ水着に着替えてお・い・で・よ☆」
 都亨は他のグラスも回収し、人に言われるより先に自分で言うスタイルで陽気に自画自賛する。
「たはー! 気が利く俺! 最っ高! 照れるぅー!」
「叫ぶな。うるさい。あんたの好きな鳥さんが怯えてますよ」
 ヨハンがため息をつきながら空を示す。視れば、鳥たちが散り散りに飛んでいき、歌い手の去った空がぽっかりと、青。

「ふふふ。2人ともほんと仲がいいんだから」
 オルハはポニーテールをゆらゆら揺らして可憐に笑う。

 ――ヨハンさんとかなえくんのやり取りは仲良しで、少し羨ましい。

 遠い世界のように聞いていたクロアへと緑を帯びた目がふわと笑む。
「じゃあ着替えてこようか。行こ、クロア」
 差し出された手は太陽の下で明るい肌色が耀いて視え。おずおずと手を重ねる自分の手を比べれば、色を何処かへ忘れてしまったように映る。
 触れた感触は優しくて。じわり伝わる温度に、思わず目を伏せる。

 手をつないで歩いていく少女2人は姉妹にも似て微笑ましく。
「いってらっしゃーい!」
 着替えに行く二人を見送り、都亨がヨハンへとウッキウキで声をかける。
「ふふふ~オルハちゃんもクロアちゃんも水着姿可愛いんだろうなあ。楽しみだ……ね! ヨハンくん!」
 椅子に腰かけ、いつの間にか本の頁をめくっていたヨハンは眼鏡の奥の瞳を文字に夢中にさせながら、淡々と。
「そうですね、楽しみですね」
 心ここにあらずの返答に慣れた様子で都亨は言葉を重ねる。
「みんなで! 海で!! 泳ごうねっ!!!」
「水着なんて持ってきてないですし」
 視線は文字を読み取り内容を咀嚼しながらも、ヨハンは会話にも応じる余裕があった。視線はマトモに向けてやらないが。思うヨハンの視界の隅で、『ソレ』がヒラヒラと揺れている。
「君が水着持ってきてないなんて予想済みだよ! はい、み・ず・ぎ♡」
 人が持ってきたもんを着る訳ないでしょう、と一瞥し――水着はド派手で全く趣味からは外れたデザインだ――完全無視。
「ああん……つれない」
 都亨が残念そうに水着を揺らして、うろちょろする。落ち着いて読書をするにはその存在は、聊か……とても――……邪魔であった。


 女子2人は、咲き始めの花のような全身を水着で飾り、のんびりと言葉を交わしていた。
「着替えはするけど……私、羽を濡らすのが好きじゃないから船の上でのんびりするつもり」
 オルハがパタパタと背の羽根を動かしてみせれば、クロアは目を瞬かせて得心した様子で呟いた。
「ああ羽が……それは盲点でした」
 覗き込む緑の瞳は、やはり優しい温度を宿している。
「クロアはどうする? 泳ぎたい?」
 問われ。
 考える。
 水着を纏った体はいつもと少し違うみたいで、布に覆われない肌の部位が頼りないようで、けれど不思議とソワリと浮き立つ心。嫌いではない。
 そう考えて、ああ、言葉を返さなくては、と少し慌てて耳を揺らせば。春色の少女は安心させるように微笑んでくれている。
「わたしも、船の上で……のんびり、しようかと」
 あたたかさに引っ張られるように、言葉を引き出して。
「思います」
 クロアが言えば、オルハはうん、と頷いて。
「行こうか」
 もう一度手を差し出して、明るい世界へと誘ってくれる。

 ぺたり、ぺたり。サンダルを履いた2つの足音がどこか頼りなく、けれどウキウキ、楽しさに繋がるようで。
「というか水着似合いすぎだと思うんだよね! 可愛いなー」
 ポニーテールをご機嫌に揺らしてオルハが目を細めてクロアを褒めれば、どう反応するのがよいのだろうかと人狼の耳が微かに揺れて。
「ありがとう、ございます」
 そっと窺うような目は、量るよう。
「オルハさん、こそ……とてもお可愛らしく」
「くぅーっ」
 可愛い! と、思わず息を吐き、オルハは思わず呟いてしまう。
「ヨハンも都亨も惚れちゃうかも!」
「えと……、お二人は、もっと。大人っぽい女性が好みなのでは?」
 おずおずとオルハが言えば、オルハはほんの少しだけ、背筋を伸ばして背伸びするように。
「そうかな?」
 呟く声もまた、春めいて。

 ――甘酸っぱい。


 男子組は、空の下。
 女子を待っていた都亨は懲りずにヨハンにちょっかいを出していたが、ヨハンはすっかり反応しなくなってしまっていた。
 ヨハンの手には普段殆ど読まない類の物語の一冊があった。それは、伝記というには幻想に寄った空想で。読むにつれ、己と異なる嗜好の持ち主と話した時のことを思い出す。
「いいや、先に海入ってよーっと」
 都亨は読書に専念しているヨハンへとヒラヒラ手を振ると、ひとり青海へと身を滑らせた。
 するり、足先から腰までを浸け、胸まで預ければ水が全身を抱きしめるかのようで心地よく。
「ほんと海ってさいこ……がぼがぼがぼ、待って俺泳いだことない助けて! プリーズ!!」

 バシャバシャと海面で暴れる森色狼に、丁度戻ってきた女子組が唖然とする。
「ふたりともお待た……えっ、どうしていきなり都亨が溺れてるの!? ヨハン、助けてあげて!」
 オルハの声にヨハンが機敏に動き、呆れた様子で溺れた森色を引き上げる。
「あんた何やってんですか」
 泳げないで海に入ろうとするってある意味すごいですね、とため息をつく背後では吃驚した余韻の鼓動を鎮めるよう胸元で手を結ぶクロアがいる。オルハが心配そうにのぞき込み。

「オ¨レ ウ¨ミ ア¨マクミテタァ……あ、でも天使が2人いる! 俺、復活!!」
 都亨は凄まじい勢いでピョコンと起き上がり、復活した。

「え、え……」
「大丈夫そうでよかった」
「はぁー……」
 仲間たちのリアクションに都亨はニッコニコの笑顔。溺れかけたのが嘘のように明るい笑顔に、遠巻きに騒ぎを聞いて心配していた一般の乗客たちも安心して去っていく。

「まさか泳げなかったなんて知らなかったよ。チャレンジャーだね……?」
 オルハが笑い。
 戻ってきた2人にヨハンは視線を向けて、目を伏せる。

(……無反応でいるのもおかしいでしょうし)
 自分を納得させるようにする。毎度のことだ。性分だ。
 ほんの僅かな間を空けてからヨハンは藍染の瞳を少女たちに向け。
「――可愛いですよ」
(まぁ、本当のことですし)

 春風、吹いて。

「天使! 天使!」
「都亨さんは黙っててください」

 ふわり、桜の薫りが鼻を擽り視線をやれば、桜花弁がひとひら海へと飛んでいく。


「みんなで泳ごうと思ったのになー!」
 浮輪に身を任せ、都亨はぷかぷかと波間に漂う。
「透明度が高いから魚も見えるなあ。ほらオルハちゃん、ここ綺麗だぜー」
 船上へ手を振る姿が寂しそうで、クロアはおずおずと海へと浸かり、2人で光溢れる海をゆーら、ゆら。

(1人の俺を気遣って来てくれるクロアちゃん、まじ天使!)
 頭上ではハルカが鳥たちに混ざり戯れている。

「うーん、最高ー!」
 オルハは船の上でサイダーを堪能していた。清涼な音をたてて泡が躍るグラスは日の光に煌めいて見ているだけで涼やかだ。口に含めばしゅわりと優しい刺激が楽しくて、連想するのは太陽の季節だろうか。
「こうしてるとちょっと夏みたいだよね。まだ本当は春だなんて、嘘みたい」
 視線を巡らせれば、仲の良い兄妹のように都亨とクロアが春波に揺れている。
「ねぇ都亨、海の中はどんな感じ? 魚いっぱいいる? 教えて教えて!」
 オルハが声をかければ、2人が揃って視線を向けてくる。
「まだ肌寒いですし、風邪を引かないよう気を付けてくださいね」
 ヨハンが本から顔をあげて言えば、頷きが返ってくる。

「……空が綺麗だな」
 呟く声は、率直な気持ちを滲ませて。

 陽浴びる鳥の天泳ぐ羽は光風に優雅に乗り、揚々と空に遊ぶ。
 人と魚と物語の世界を花と鉱石が遊んでいる。
 暖かな陽注ぐ世界に皆が揺蕩い。

 ――時間はゆったりと、進むから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロー・オーヴェル
自分だけで金を囲わず
こういう事に金を使ってくれるなら金持ちというのも悪くない

いやいや真面目に猟兵やってて良かった


日を浴びる事や魚と触れ合うのは他でもできる
だが海に潜るのは海でしかできない
「潜るぞー!」

泳いでいるのを見るだけなら水槽でいい
だが無限に広がるような世界を進む様子が見られるのは
海に潜った奴だけの特権だ(満足)

しかし人魚姫と仲良しの海賊だと?
どうやって知り合ったんだ……
乗っていた船が難破して気が付いたら人魚姫に介抱されていたとか?
てことはあの船を……いやいや違う

にしても話の人魚姫かわいすぎだろ
だんだん魚の事が目に入らなく……

「ああ~、俺にとっての人魚姫がここにいればいいのに!(切実)」



●人魚姫、募集中
 ぐるりと首を巡らせてみれば、人々は皆楽しそうに笑顔を浮かべている。
(自分だけで金を囲わずこういう事に金を使ってくれるなら金持ちというのも悪くない)
 ロー・オーヴェル(スモーキークォーツ・f04638)は灰の瞳を幽かに緩めて自身を取り巻く海へとしばし、身を委ねた。
 金持ちという存在は彼に嫌悪感を齎すことの多い存在だった――ごく稀にいる例外を除いて。旅の途中で出会った例外を思い出し、今回も、とひとつ思い出に加え、手足を伸ばせば心地よい。
(いやいや真面目に猟兵やってて良かった)
 笑みを浮かべて息を吐く。
 ローを取り巻く世界が春を謳っている。穏やかな平穏。

 風が柔らかく鼻先を吹き抜けて耳元で海の誘う声がする。頭上から降り注ぐ日の光が幸せだ。魚たちは時折海面近くまで顔を出し、目を楽しませてくれている。
「潜るぞー!」
 はしゃぐように言ってザブリと潜れば、期待通りの青の世界。透明な水がキラキラ光を通して、穏やかに揺らめく世界は少しずつの青が重なって深みのある神秘の瑠璃。
 ローの全身を抱く瑠璃世界、ぐるり360度を魚が巡ればルビーの輝きを閃かす小魚の群れの間を縫うように黄と橙の魚が交差して。
 瑠璃に紛れるようにマリンブルーの魚たちがひらひら、ゆらり。
 動きにあわせて漂うは人魚姫の吐息のような清らかな気泡の数々だ。真珠のように水世界に白を添え、天からは絶えず日の光が注ぎ込んでそれら全てを照らしている。

(泳いでいるのを見るだけなら水槽でいい。
 だが無限に広がるような世界を進む様子が見られるのは、海に潜った奴だけの特権だ)
 ローはゆらりと水を掻き、海中に戯れる。人間社会を取り巻く昏いしがらみも何もない、只美しい自然の世界を揺蕩えば心は癒され、童心に還ったかのように純粋な笑みが零れる。

(しかし人魚姫と仲良しの海賊だと?)
 ふと思い出すのは、人魚姫の言い伝えだった。

(どうやって知り合ったんだ……。乗っていた船が難破して気が付いたら人魚姫に介抱されていたとか? てことはあの船を……いやいや違う)
 思わず不穏なことを考えそうになり、ふるりと頭を振れば雑念が追いやられ……。魚たちの織り成す水世界は、ため息が出そうなほど綺麗で。

(にしても話の人魚姫かわいすぎだろ)
 美しい魚たちの舞いよりもそちらへと意識が行ってしまい、足はゆるやかに水を蹴り人魚姫を探しに泳ぎ廻ってしまうほど。

「ああ~、俺にとっての人魚姫がここにいればいいのに!」
 息継ぎのために浮上して思わず呟けば、遠くパシャリと人魚の尾鰭が水音をたてた気がする。

「……今、それっぽいの視えたような」
 思わず波間を凝視してしまうロー。
 ちゃぷり、ちゃぷり、誘うような波音は軽やかに。

 ――きっと疲れているんだ、と気を取り直し、足を伸ばして空を仰げば――体の揺らめきに合わせて春陽もゆらゆら、快晴だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花狩・アシエト
POW
素潜りして魚をみるか!
泳ぎはプールでしかやったことねぇけど、まぁなんとかなるだろ

自由に沈む
(へえ、綺麗なもんだ)
(食うのもったいないな)
首を振って
(こういうところがモテないんだった)

一度上がり、息を吸ってもう一度

(お!でかい魚がいる!こいつも綺麗だなぁ!)
(動物みたいに寄ってきてくれないのは残念だが、まあこういうのもいいか)

(青に翠に赤に虹色、こんだけ色んな魚がいれば毎日素潜りしても楽しいな)
(孤児院のガキたちに見せてやりたいぜ)

(ああ、綺麗だ)
(水中の天国かな…?)
(ようお前ら、水中はきもちいいな)

(なんて語りかけてもわからねぇな)

ぷはー
楽しかったな!

アドリブ歓迎



●世界の片隅で、自由に
 穏やかな春の海。
 花狩・アシエト(アジ・ダハーカ・f16490)が身を沈めれば、脚のつかない水世界はアシエトの存在自体を呑みこむかのように下へ下へと誘う。
 下から昇る水の泡が幾つか頬をかすめ、灰白の髪をすり抜けて、海上目指して駆けていく。

 ――実は、プールでしか泳いだことはない。

(まぁ、なんとかなるだろ)
 27歳児は自由に手足をばたつかせ。優れた身体能力と勘は直ぐにコツを掴み、効率的な泳ぎに辿り着く。有能さ故に、目論見通りだいたいのことはなんとか出来る。只、女性関係を覗いては。

 鋭い眼光が見つめる南海世界は、ゆらり明るい光世界。深く潜れば神秘の青が広がって。
 小さな魚たちが全身で泳いでいる。纏うのは宝石にも似た鮮やかで個性豊かな色彩の鱗――光を反射し、キラキラと輝く姿は夢のようだ。

(へえ、綺麗なもんだ)
 思う。
(食うのもったいないな)
 思い。
 首を振る。
(こういうところがモテないんだった)
 女性には、少しばかりモテない。それが残念なところだ。

 アシエトは水を蹴り、海上へと顔を出して深く息を吸う。
 新鮮な酸素が肺に入れば生命の歓びを全身が感じる――生きている。

 再度潜れば、大きな魚がゆうらり、揺らめいている。
(お! でかい魚がいる! こいつも綺麗だなぁ!)
 それは、まるで自分だけの世界を生きている王様だ。手を振り、招いても全く愛想というものがない。
(動物みたいに寄ってきてくれないのは残念だが、まあこういうのもいいか)
 アシエトは魚を鑑賞し、くるりと自らも海中を廻る。体の動きに合わせて廻る景色は、万華鏡にも似て美しい。

(青に翠に赤に虹色、こんだけ色んな魚がいれば毎日素潜りしても楽しいな)
 ふと思い出すのは、子どもたち。
(孤児院のガキたちに見せてやりたいぜ)
 刃にも似た鋭い容貌をふと優しい色に染め。

(ああ、綺麗だ、水中の天国かな……?)
 海を揺蕩う。世間で話題にされることも多い元ヴィランとしての彼でもヒーローとしての彼でもない。あの孤児院の中、ちっぽけな箱庭で走り回り笑っている子どもたちの兄ちゃん――世界の片隅に生きる小さな存在として。

 色とりどりの魚たちはアシエトが何者なのかも全く知らず、周囲をゆるやかに泳いでいる。
(ようお前ら、水中はきもちいいな)
 目を細め。
(なんて語りかけてもわからねぇな)
 魚たちは、ゆらりゆらりと泳いでいる。アシエトは楽しい気分に全身を染め上げて、衝動のままに水を蹴って海中世界を跳び遊ぶ。

「ぷはー! 楽しかったな!」
 海から引き揚げて船上で濡れた身を拭っていると、ふわふわ春毛の犬が視え。
(わんこも乗っているのか。かわいいな)
 おいでおいでと手招きすれば、跳ねるようにやってくる。飼い主が鋭い容貌のアシエトへとおそるおそる頭を上げ、ふと犬に向ける眦の温かさに気づけば、安心したように微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

寺内・美月
アドリブ・連携等歓迎
「海ですか…、久しぶりに泳いでみますか」
水着に着替えてから、髪が水中で舞わない様に結わえて泳ぐ。船から離れすぎない場所を潜ったり泳いだりする(深く潜るなら小型の酸素ボンベを使う)。
「あれは…シャチ?」
シャチらしき生き物を見つけたら一緒に泳げるか試す。泳げるなら帰船時間までおよぐ。
※万一怪我をしたら〖白鞘レーザー『月光』〗で治療する。



●ひとときの交友
 生命芽吹く、春。
 世界は水と光に潤い、鳥たちが空で歓びの声をあげていた。
 船上では人々が。水中では魚たちが、同じように、彼らにしかわからない声をあげているのだろう。

「海ですか……、久しぶりに泳いでみますか」
 寺内・美月(霊兵の軍を統べし者・f02790)が賑やかな船上で呟いた。さわり、と吹き抜ける風は潮の香り。微かに混じる桜の香が新鮮な季節を感じさせ、艶やかな髪を靡かせて美月はいそいそと水着姿へと変わる。清潔感のある塗装の壁へと軽く身を預けるようにすれば、硬い感触が素肌に伝わり、気持ち良い。

「髪も、纏めないと」
 ふと気づいて結わえれば、うなじにスッと風が通って快い。

 軽い水音をたてて海へと身を滑らせれば、ゆらり、ゆらりと波が揺れ。波に合わせて視界が揺れる。
 美月は船の場所を確認し離れすぎないように気を付けながら、小型の酸素ボンベを装着して自由な海へと潜る。瞳が映し出す世界は光を乱反射して、様々な生命を抱いて穏やかな青を揺らめかせる海世界。生きる喜びを全身であらわすかのような魚たちが群れをなし。

 ふと群れを退かすようにして割り込んで存在感を漂わせているのは、

(あれは……シャチ?)

 艶のある黒と白を光に照らされ、青世界を悠然と泳ぐのは、シャチに見えた。好奇心に瞳を染めて見ていれば、向こうも同様に興味を惹かれた様子で寄ってくる。
 少し離れた場所に数頭の群れが視え。群れの中では、若い個体だろう。シャチの群れは多くの場合、母を中心にした家族となっている。ならば、この1頭はヤンチャな子供か。
 背鰭の一部に小さな傷があるのを見つけて、美月は白鞘の装飾から治療の月光をやさしく放つ。
 清らかな光が傷を癒せば、シャチは歓ぶ気配を全身で見せ、水を跳ねる。
「わわ、ちょっと」
 全身で水飛沫をあげ大きくうねる波の中を咄嗟にシャチの背に掴まれば、シャチは大喜びで海面を跳ねる。力が強い。
 野生の生命の躍動を全身で感じれば、次に感じるのは勢いよく流れる景色と、風。

 周囲を清涼な水飛沫が飛び散り――人々の驚く顔が見える。
 遊ぶ子供に釣られたように離れた場所で家族たちも息の合ったブリーチングを魅せている。

(……楽しい)
 年相応の顔を見せ、美月が少年らしい笑みを零す。

 やがて船の人々がシャチに手を振り、桜の花びらを一層多く振らせれば、桜の波紋浮かぶ水上をシャチがくるくるゆらりと楽しんで。
「そろそろ、船に戻らないといけません」
 そっと美月が呟けば、別れを惜しむように身を摺り寄せ。

「家族が、待っていますよ」
 視線を巡らせれば、シャチを待つように群れが跳んでいる。人間の身にはわからない会話もされているのだろう。そう思いながら、最後に、と頬を寄せれば二度と会うことのないであろう生命が、いとおしい。

「さようなら」

 見送る視線の先、小さなシャチは群れの中。
 遠く、遠くへ跳んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティアナ・スカルデット
素潜りして目で探す。

ティアナが身に纏っているのはビキニアーマー
伝説の勇者の鎧をモチーフにデザインされた水陸両用のビキニアーマー
勇者所縁の場所に行くのに水没した迷宮を通る必要があってオーダーメイドで作ったビキニアーマー

お魚さんたちは宝石みたいで綺麗ですね
魚群に囲まれてゆっくり遊泳

ここは様々な海流が集まる場所でしょうか
もしかしらたら伝説のオールブルーかもしれませんね
海底に何か流れついて沈んでいるかもしれないので探して見る

勇者所縁の道具は様々なところで見つかってますね



●淡恋マーメイドは微睡みの海に頬を染め
 ティアナ・スカルデット(ロンズデーナイト・f11041)は、ライラックの髪を揺らめかせ海中を潜っていた。
 身に纏うのは、以前禿頭の職人に造って貰ったオーダーメイドのビキニアーマー、嘗て女勇者が水没した迷宮へ挑むため、職人と手段を講じた末に生まれたという由緒正しきビキニアーマーだ。

 背が小さく全体的に幼い感じを醸し出すティアナは、しかし幼き日に英雄に救われて以来その英雄に憧れを抱き、英雄の横で戦える存在になりたいと頑張ってきた。
 成果は体にあらわれている。
 腹横筋と腹斜筋を鍛え引き締まったくびれ。健康的な赤茶色の肌が太陽の光を浴びて蠱惑的に煌いている。
 しなやかな手足を伸ばせば、ゆるりと抵抗をつたえる水の感触が肌に楽しい。
 船上で身を晒した時は、幼げに見える容姿に微笑ましく視線を遣った一般乗客の男性の中に豊満な胸元に驚き頬を染め下心ある視線を寄越す者もいたが、水世界の生き物たちは下卑た視線を寄越すこともない。

 きらきら、色鮮やかな鱗を光らせて純真な魚たちが取り巻く世界は幻想の海のよう。
(宝石みたいで、綺麗……)
 目を奪われて揺蕩えば、やわらかな水のうねりが全身を包むよう。
 魚群に囲まれてティアナはマーメイドになったような気分でゆっくり遊泳を楽しんだ。ここは様々な海流が集まる場所だろうか、もしかしたら伝説のオールブルーかもしれない。そんな考えと共に海底を探索すれば、ゆらゆら揺れる海藻と色鮮やかな珊瑚が美しい。
 水にくたくたになって海底にへばりついているのは、どこかの誰かがしたためた恋人への手紙だろうか。ふにゃふにゃの文字は滲んで判読できないが、
(恋文だったら、ロマンチック)
 乙女ティアナはそう思い、頬を緩める。

 ――在りし日の女勇者も、こんな体験をしただろうか?

 やはり考えてしまうのは勇者のことだ。そして、思い出すのは幼かったあの日。差し伸べられた手。その感触を、ティアナは今でも覚えている。
 育てられるうちに、恋をした。
 秘めた心は胸の奥でたえず甘やかに疼いて、心に春燈る世界はいつも美しい。
 その声も、手も。在り様も。大好きなのだ。
 胸をはって隣に立ち、共に戦える存在に、なりたい。
 安心して背を預けてもらえるような存在に。
 危険に共に立ち向かい、危機から守り、そして――……、もし、もしかしたら、

(って、私は何を!)
 甘酸っぱい想像まで考えが巡り、自分で自分に驚いたティアナはぎゅうっと目を瞑り我が身を掻き抱いて恥ずかしさに悶えた。
 耳にドクドクと聴こえるのは、自身の鼓動の音だ。

 浮上して息を吸えば、新鮮な空気が気持ち良い。しばし揺蕩い、思うのはツアーの向かう先、孤島のこと。
 勇者所縁の道具は様々なところで見つかっている。

 見つかるだろうか、と空を仰げば、微睡むような日差しは優しく世界を見守っていた。

 ――微睡みの海に頬を染め、ティアナは咲き始めの春花のように微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ
猟兵として戦いに身を投じる日々ですからね、たまには休暇もいいかもしれませんね。
さて、水着を用意してきましたので剣と鎧は船に置いて、着替えて海に飛び込みます!
故郷のダークセイヴァーでは海水浴を楽しむ余裕などありませんでしたし、このような機会が次にいつあるかわかりませんから目一杯楽しみましょう。
美しい鱗の魚がいるようですし、泳ぎを楽しむついでに探してみましょう。



●澄明世界の暗黒騎士
「たまには休暇もいいかもしれませんね」
 セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)が身に纏う水着は、秘かに以前から用意していたものだ。海へと飛び込めば、清冽な海が歓迎の水飛沫をあげて。

(……気持ちいい!)
 水を抱くように腕を動かせば水流がゆるやかに全身を擽り心地よい。
 夜に君臨する清月が宿るかのような銀の瞳が観る海の光景は穏やかな青世界。
 珊瑚の近くを泳ぎ探せば、魚たちが群れをなし、仲睦まじく泳いでいる。鱗は春陽を歓ぶかのように色鮮やかに輝き、美しい。爛漫たる光に海世界は耀き、息継ぎにと浮上するのが惜しいほど。

「……っ、はあ」
 海の上に顔を出し息を吸えば爽やかな春の風が感じられ。ゆらゆら揺れる波と、天と、頬を撫でる風とが優しくて。全身が春に抱かれているよう。

 夜に君臨する清月が揺蕩うような銀の瞳が思い出すのは、昏夜の世界。蔓延する幽鬼、人を支配する絶望と躍る死の影。
 幽愁が嘘のようにこの澄明世界を吹き抜ける風を濁らせる影は視えないのだ。

 ――世界は、こんなに違っている。

 静かに息を吐き出したセシリアは、水に濡れ乱れた銀髪を丁寧に撫でて直し、自らに寄せられた視線に気づいて船へと向く。
「……?」
 視線が合い、パッと頬を染めた初心な男性が慌てたように目を逸らして逃げていく。
「怖がらせてしまうようなことをしましたでしょうか」
 ぽつりと呟くセシリアの細い首元から肩にかけてなよやかな線が続いている。色白の肌はきめ細やかに春陽に輝き、男性を魅了していたのだが本人は無自覚だ。

 この冷静で落ち着いた雰囲気の女性が、ひとたび暗黒の力を解放すれば闇を纏い死を振り撒く狂戦士と化すなんて誰が想像できるだろうか。
 けれど、誓いのためにと戦う彼女は幾度となく凄惨に戦い、人々の中には恐怖を抱いてしまう者もいた。そして彼女も気付いてしまうのだ。己が救った人の瞳の中に己に対しての恐れが浮かぶことに。
 それが、一度や二度ではないから。今もそうなのだと、彼女は誤解する。

(人目につかない場所に移動しましょう)
 寂し気で儚い、悲しい微笑みを浮かべれば、清絶で高潔な女騎士の憂う様は蠱惑的に異性を魅了するのだが、やはり本人は気付かずにそそくさと移動してしまうのであった。

 再度深い海へと身を躍らせれば、純真な魚たちがセシリアを囲んで踊りを見せてくれる。それはまるで、夢のような光景で。心は浮き立ち、相好を崩さずにはいられない。

 ――水着を用意しておいて、よかった。

 セシリアはお気に入りの水着を来て泳ぐ海を楽しみ、穏やかな休暇を楽しんだ。

 春の陽射しが世界の隅々に跳ね躍り、世界は光で溢れている。
 吹き抜ける風、身を包む水の何と涼やかで心地良い事か。
 小さな生命は春を歓び、躍っている。
 
 全身をくつろがせて海を揺蕩えば、流れる光風はいっそう涼やかに波をたたせて、尚楽しい。
 船上の人々も笑いあい、弾けるような歓声が咲き溢れる――平穏。

「休暇というのは、好いものですね」
 セシリアはふわりと微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐々城・想
湖々森・ことり(f03996)と同行

友達からすら盗んでしまいたくなるような
どんな宝物なのか、見てみたいな
ことりは泳ぎに行かないの?いいけど

水に浮かんでると
陽射しがあったかくて…眠くなってくるかも

泳ぐのは好き
っていうか、水が好きかな
ゆらゆらしてる水に触るのってなんか落ち着くんだよね
誰かに撫でて貰ってるみたいな
…別に撫でて欲しい訳じゃないけど

お?
お魚集まってきたっぽい?
あははっ…つんつんされるとくすぐったい
ホントに宝石みたいだ

こうやって水に浮いて
綺麗なお魚を見て
何時間でもこうして居られる気がする
…って痛っ
ことりっエサオレに当たってる!
…もー

お魚みたいは泳げないけど
オレも一緒にお魚と泳ごっかな


湖々森・ことり
佐々城・想(f04362)と一緒ですっ

人魚さん…優しいのかな?
でもでも、どんな理由があっても盗むのはめっですよ

想がお魚さんと仲良くなるなら
わたしは鳥さんと仲良くなろっかな!
いってらっしゃーい(手ひらひら
でも宝石みたいなお魚さんも見たいから
想の方にもエサを投げてあげるね

海を眺めながら
しゅわしゅわのジュースはフルーツいっぱい
お日様ぽかぽかあったかーい
なんだか贅沢な気分…♪
見て見て
鳥さんすごいの!投げたエサ上手にキャッチしてくれるんだよっ
あっ想にもお魚さん集まってる!
きれい!カッコいい!王子様みたい!

んぅ? 想、何か言ってる?
ちょっと遠くて聞こえないなー
とりあえず手を振り返してみよう!(ぶんぶん



●春休みの学園生
 春休みを迎え、アルダワ魔法学園の転入生2人は海に遊びに来ていた。佐々城・想(君色探し・f04362)と湖々森・ことり(Péché Mignon・f03996)の2人は船の上でデッキチェアに腰かけて、足をぷらぷらさせながら人魚姫の言い伝えについて話している。

「友達からすら盗んでしまいたくなるような、宝物なのか。
 どんな宝物なのか、見てみたいな」
 想が宝物へと想像の翼を羽ばたかせ、ワクワクと目を煌めかせれば。
「人魚さん……優しいのかな?」
 こてん、と首をかしげ、ことりは人魚姫を想像して。
「でもでも、どんな理由があっても盗むのはめっですよ」
 海賊へと口を尖らせた。顔を見合わせれば視線は自然と海の方へと流れていく。

「ことりは泳ぎに行かないの? いいけど」
 水泳好きな想が紫藍の瞳を海に向けて尋ねるが、ことりはふわふわにこにこ、首を振る。
「いってらっしゃーい」
 手をひらひらと振り、見送るお嬢様は天真爛漫だ。

(ひとりで船にいて平気かな?)
 可愛い女の子が1人でいるのは危ないのかもしれない。面倒見の良い想はちらりと案じる色を浮かべるが、ことりにはいつも一緒のユグと紺平がいる。
(平気そうだな)
 自分も、船近くで泳げばいい。そう結論付けて想は波間に身を躍らせた。

 水に浮かんでるとポカポカ陽射しがあったかい。
(眠くなってくるかも)
 想はゆるりと目を閉じる。
「想、寝たら危ないよー?」
 ことりがそんなことを言っている。声に目をあけ、見れば桜桃の髪が青空の下で可憐に揺れ。
「寝ないよ」
 手を振れば、安心したように微笑んだ。

 陽光が柔らかに降り注ぎ、周囲の水がキラキラしている。
(泳ぐのは、好きだ)
 想は軽く足をばたつかせ、水と戯れた。手で水を跳ねれば視界いっぱいに透き通る水の煌めきが充ちる。
(っていうか、水が好きかな)
 全身の力を抜いて揺蕩えば、ゆーらゆら。水と一体化したような感覚が心地よい。

「水、楽しい?」
 ことりがそんなことを言う。
 想はうん、と頷いた。
「ゆらゆらしてる水に触るのってなんか落ち着くんだよね」
「そうなの」
 よくわからないような相槌に、説明しても伝わらないんじゃないかと思いながら想は言葉を探して。
「誰かに撫でて貰ってるみたいな……別に撫でて欲しい訳じゃないけど」
 ことりは船に揺られながらパチリと目を瞬かせた。普段は大人びている年下の男の子が、年下らしく愛らしいことを言った気がして。
「想、あとでわたしも撫でてあげる」
 しゅわしゅわのジュースを運んできた給仕から受け取りながら胸をはれば、海に揺蕩う人狼は微妙な顔をしていた。

 ことりはマイペースにジュースのグラスを陽にかざす。しゅわしゅわの泡が弾けて煌きが散る。グラスの向こう側が色味かかって幻想的。いっぱい盛られたフルーツは真っ赤な苺に初々しいブルーベリー、フレッシュなパインにオレンジが寄り添って、埋もれた隙間から覗いているのは宝石のようなラズベリー。
 パクリとひとくちフルーツをつまみ、ジュースを飲めば甘酸っぱい春の味が、幸せ。
「お日様ぽかぽかあったかーい。なんだか贅沢な気分……♪」
「お嬢様、これを撒くと海鳥が寄ってきますよ」
 給仕が微笑ましげに頬を緩めてサービスしてくれる。ことりは礼を言い、ワクワクと餌をばら撒いた。

(宝石みたいなお魚さんも見てみたい)
「想の方にもエサを投げてあげるね」
 思いつき、海へと餌を投げれば抗議の声があがる。
「……って痛っ! ことりっ、エサオレに当たってる! ……もー」
 艶やかな夜色の黒髪に餌をひっつけ、眉を下げた想はぶくぶくと身を海に沈めた。

「んぅ? 想、何か言ってる? ちょっと遠くて聞こえないなー」
 ことりはキョトンと目を丸くして、
「とりあえず手を振り返してみよう!」
 ぶんぶんと手を振った。

(ちょっと船から離れちゃったかな)
 想が船に近寄れば、ことりは再び餌を降らせて黒髪を餌まみれにした。

「わあ! 鳥さん!」
 ことりの傍には沢山の海鳥が舞い、餌に喜んで羽をバタバタとさせている。頬を桜色に染め、瞳をキラキラ輝かせてことりが餌を投げれば、鳥たちもおおはしゃぎ。

「見て見て鳥さんすごいの! 投げたエサ上手にキャッチしてくれるんだよっ――あっ! 想にもお魚さん集まってる!」
 海へと声をかければ、そちらでも餌は大人気。
「お? お魚集まってきたっぽい?」
 想がビックリしたように海に浮いている。キラキラ、陽光に鱗を輝かせた宝石のような魚たちに囲まれて。
「あははっ……つんつんされるとくすぐったい。ホントに宝石みたいだ」
「きれい! カッコいい! 想、王子様みたい!」
 海にぷかぷか、おひさまのように想が笑えば、船でゆらゆら、花のようにことりも笑う。

(こうやって水に浮いて、綺麗なお魚を見て。何時間でもこうして居られる気がする)
 面映ゆそうに、けれど嬉しげに笑みを弾かせる想は紫藍の瞳を煌めかせ。
「お魚みたいは泳げないけどオレも一緒にお魚と泳ごっかな」

 ざぶり、元気に水に身を潜らせれば、上から降り注ぐ光が眩い照明となり水世界を照らしている。見上げる水面に魚たちが群れて餌を啄み。

(あ、髪に)
 黒髪にひっついていた餌に惹かれて何匹かが髪を啄む。
(ちょ、擽ったい」
 笑い、漏れた吐息が泡沫となる。

「想、溺れてる? 平気?」
 ことりの声が遠く聞こえて、想は慌てて浮上した。
「溺れてないよ」
 言えば、船上のお姫さまは楽しそうにジュースを見せて。

「これ美味しいの、想も飲まない?」
 天真爛漫に誘ってくれるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『勇者の聖剣伝説』

POW   :    体力勝負!地道に聞き込みや現場の張り込みなどで調査

SPD   :    技量勝負!現場の調査や痕跡を調べて手がかりを見つける

WIZ   :    頭脳勝負!伝承を調べたり動機を推理したりして真実を探る

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●春の孤島の自由時間
「当船は間もなく島に到着します。無人の島ですがモンスターもいなくて、とても美しい島ですよ。ご自由にお過ごしください」
 商人がニコニコ笑顔で挨拶をしていた。
「お弁当を用意しましたので、もしご希望の方は散策のお供にどうぞ」

 散策の時間は昼過ぎから夕刻にかけて。
 商人がお勧めする島の名所は5か所あった。

「枝垂れ桜が植わる森。清楚な花々がシャワーのように降り注ぐ中、森の動物たちが穏やかに暮らしています。昼はもちろん、夜になれば一層幻想的な風景が楽しめるのですよ」

「清涼なる川と滝壺。勢いよく流れる水は天然の滑り台です。筏にに乗って下ればスリルある滝下りもお楽しみ頂けます。筏は貸し出しも可能ですよ」

「居住者を失って久しい廃墟の村と古びた館。館の中、地下への階段を下れば音を忘れた壊れたピアノがぽつりと佇んでいるんです。もちろん、幽霊とかは出ませんよ」

「色彩豊かな春の花が咲き乱れる花畑。鮮やかな新緑の葉を纏い、他の花と競うように、あるいは引き立て合うように、赤白黄色とカラフルな花たちが春の息吹に揺れています」

「真っ暗な洞窟。翳す手も視えないほどの闇に包まれ、ひんやりした静謐の中で過ごすことができるでしょう。真っ暗なだけで、罠も、危険もないですよ。もちろん、幽霊も出ませんとも」

 紹介した場所以外を散策するのもよいだろう。そう言って商人は笑った。
「勇者の武具が隠されているって話も聞きますが、私は見たことがないですねえ。でも、見つけたら皆さんのモノにしてよいですよ」
 あまり自分では島を歩いたことはないのだ、海のほうが愉しくて。そう悪戯っぽく微笑むと商人は猫柄の浮き輪を手に海へと戻っていくのであった。

💠2章の過ごし方について
 上記の中からお好きな場所、もしくはご自由に「こんな場所」と書いて遊んでみてください。
 武具は「こんな風にして、こんな場所に隠されていたのを見つけた!」と書いて頂ければその通りに見つかります。
 発見した武具はキャラクター様の所有物となります。公式でのアイテム発行はありませんが、ご自身で「シナリオで発見した」という設定のアイテムを作成することは可能です。「見つけた武具」の設定や名前はご自身で考え、プレイングに記載してください。
 プレイング送信数が多くなり、時間の都合で全ての執筆がむずかしくなった場合は、1章からの継続参加者様を優先させて頂きます。
逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と
枝垂れ桜の森へ向かいましょう

風が吹けば吹雪のように舞い踊る花びらには見惚れるように見上げ
木の下に並んで腰かけて眺めましょう

筆舌に尽くしがたいほど美しい風景ですね……
この景色をきみと見ることができて、本当に良かったと心から思います
眠たげな相手にはふふと笑いつつそのままに

夕方になれば彼を起こして帰ろうと歩みを進めるも
おや、向こうの繁みに何か見えますね
これは……小刀、でしょうか
しかも2つありますね。揃いで、対になるようだ

サムライエンパイアでは小刀は守り刀とも言います
せっかくですから、きみと僕とでそれぞれを持ちましょう
この刀が真に、互いを守ってくれるように


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

枝垂桜が見られると聞いた故、森へ向かう

枝垂桜の元に辿り着いたら宵と木の下に座り降る桜の花弁と様々な花が降る様を宵と共に見上げよう
ああ、新たな体験をするという事は素晴らしい事だが…宵の隣で共にこの景色を見る事が出来る事を俺も本当に嬉しく思う

その後は暖かくて美しい光景と傍に居る信頼できる者の気配に気が緩みついうとうとと居眠りを
…宵、凭れてしまっていたらすまんな

目が覚めたら頭に積もった花を首を振り払いつつ宵と共に帰路へ
暗くなってしまったが…更に幻想的だな
ん?宵、何かあったのか…と、勇者の武具というものか
対の物は危険を知らせ合うと聞いた事があるからな
ああ…きっと、何かの守りになるだろう



●ヤドリガミと主無き小刀
 ――穏やかな春のようであるように。

 遠い日、諦念を滲ませていた己。辛気臭い顔をするな、礼儀正しくしているように、と躾けられた日々も遠く。
 逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)はほんの刹那、思い出の感傷と絶景への感動に瞳を揺らめかせる。
 視界一杯に薄紅が広がり、しなやかな枝一杯に咲き綻ぶ春が零れ桜を降らせている。夢見の視線を落とせば足元にも優美な花筵がやわらかに。
 佳景――宵は星芒仄めく深宵の瞳を笑む。隣に並んで座り、同様に枝垂れ桜を見上げているのはザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)だ。

「筆舌に尽くしがたいほど美しい風景ですね……。この景色をきみと見ることができて、本当に良かったと心から思います」
 宵が淡く眦緩ませ、穏やかに言葉を紡ぐ。
 墨を流したようと喩えられる闇夜の髪は幽玄な花景色の中で清廉に流れて一際美しい。頭上へと視線を奪われたままの宵に視線を移してそう思いながら、ザッフィーロは浅黒い肌に輝く金剛石の瞳を柔らかに緩めた。
「ああ、新たな体験をするという事は素晴らしい事だが……宵の隣で共にこの景色を見る事が出来る事を、俺も本当に嬉しく思う」
 表情筋が普段あまり仕事をしない男は、ふと悪戯を覚えたての子供のような瞳で隣に座る宵へと手を伸ばす。
「――?」
 気配に気づいた様子で視線を向ける相手に見せるのは、髪からそっと奪った桜の花弁。風が吹くのに任せて手放せば、ひらひらくるりと舞い落ちて。
(思うがままに)
 それが出来るのが幸せなのだと『モノ』は知っていた。彼はずっと指の上、移り変わる所有者たちを見てきたから。
 見つめる相手は少し不思議そうにしていたが、くすりと笑って海色にも手を伸ばし。
「ここに居る限り、キリがありませんよ」
 そう言って笑う。
 長身故に慣れない新鮮さに海色の髪が揺れ、桜がまたひとつ舞い降りて、「ほらね」と宵色が笑えば淡い喜びに口元に笑みが広がる。

 ふわり、風が吹けば雪の如く薄紅が一層優しく舞い降りる光景の中、温かな春の空気と傍に居る信頼できる者の気配は気を緩ませる。麗らかな春霞はザッフィーロの眠気を誘い。
 軽く靠れるように眠り込む無防備な大型動物めいた姿。重みは確かな存在感をつたえて。
 ふふ、と密やかに笑いを零し宵はザッフィーロの眠りを妨げぬよう、しばらく同じ姿勢でじっとしていた。視界には絶えず振り続ける粉雪のような薄紅の、桜。視界いっぱいに優雅に垂れる桜の枝は淡く、柔らかく風に揺れ。夢物語より夢のよう。
 
 やがて黄昏の光が薄っすらと時間の経過を報せ。
「そろそろ、帰船の頃合いでしょうか」
 声をかければザッフィーロがピクリと瞼を動かし、意識を覚醒させていく様子は、当人が己の在り方を『モノ』と定めているにも関わらず人間らしさを感じられて微笑ましい。

 ――僕たちは人であって人でなく、物であって物でもない。

 そう思う宵。見守る宵に応える声は暖かな温度を持ち。
「すまんな」
 ひらいた瞳は一瞬、ポカンとして。
「積もっているぞ……」
 頭にはすっかり積もってしまった桜花弁。
「お互いに、ですね」
 笑いながら花を払い、2人並んで帰ろうとすれば、ふと何かに誘われるような感覚を覚える。

 闇に閉ざされる気配を魅せつつも沈み切らない夕暮れの桜がしな垂れる様はぞくりとするほど艶がある。
「暗くなってしまったが……更に幻想的だな」
「夜になると、桜越しに見る星空が綺麗でしょうね――おや」
 宵が目を瞬かせ。
(向こうの茂みに何か見えますね)
 茂みへと寄っていく。
「ん? 宵、何かあったのか……」
 ザッフィーロもその後を忠犬のように追い。柔らかな春草を布団のようにして桜に塗れて静かに存在感を放つ二振りの小刀。
「これは……小刀、でしょうか」
 代々の主人が盗人や収集家だった宵には審美眼が養われていた。

「揃いで、対になるようですね。サムライエンパイアでは小刀は守り刀とも言います」
 宵の言葉にザッフィーロは言い伝えを思い出す。
「勇者の武具というものか」

 ――守るための小刀が護るべきものもなく、只そこに在る。

 薄く黄昏が広がり桜のシャワーは一層優美に降り注ぐ。ふわり、風に髪を揺らしながら宵は小刀を手に取った。
「せっかくですから、きみと僕とでそれぞれを持ちましょう。この刀が真に、互いを守ってくれるように」

「対の物は危険を知らせ合うと聞いた事があるからな。ああ……きっと、何かの守りになるだろう」
 ザッフィーロも同様に小刀を握り。

 木々の隙間から夕陽が差し込み、主見つけた刀が一瞬きらりと輝いたような気がした。
 小さな刀を手にしたザッフィーロは四方を取り巻く桜を仰ぎ、春がめぐるたび必ず芽吹き、散る命を想う。
 そして思い出すのは、己の最後の所有者が死後にふらりと戻ってきて過ごした日々。オブリビオンとして染み出てきた所有者は戻ってきた時と同様にふらりと姿を消し――自身を殺してくれる相手のもとに行き、死んだのだった。
 自分はこの刀にとって『所有者』であるのだ。

 ――この刀は、

「大切にしよう」
 そっと呟く声には、深い感情を籠めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

常盤・禊
アドリブ&絡み歓迎


…観光名所ですか…多いですね、人気スポットですか?…よく解りませんが少しばかり楽しみな気がしますね……気のせいでしょう

どうしましょうか…洞窟か滝辺りが気になりますが…そうですね、誰かに望まれたならば何処でも構いませんがそんな方も居ないでしょうし、一人で洞窟にでも行きますかね…
勇者の武具は残念ですが渡しには使えません…この身は特殊兵装の運用に特化しています故…



●虚ろな声
 周囲には人が沢山いた。
 陽光は眩しく、風は温かい。海はちゃぷりちゃぷりと穏やかに揺れて、光を反射して煌いている。
 船から降りた人々が思い思いに歩いていくのは、生命が歓びを溢れさせている春の世界。

 常盤・禊(虚ろな鏡・f16493)は、そこにいた。
「……観光名所ですか……多いですね、人気スポットですか?」
 ふわり、風が髪を揺らすのがわかる。白い髪だ。それが元からの色だったのか、それとも元の色から変じたのか。禊は、知らない。
 
 気付けば、戦場に立っていたのだ。

 自然ならざる強化された力。それがなんのためなのか、禊は知らない。自分が何者なのか、それもわからない。

 空虚な器に心があった。
 風が吹けば、
「……よく解りませんが少しばかり楽しみな気がしますね……」
 呟き。

 人々の声が、する。
「……気のせいでしょう」
 禊はもう一度、呟いた。表情は変わることなく、感情を持たない人形のようだ。否、人形なのかもしれない。誰かの手が加えられた、この体――、

(どうしましょうか)
 緋色の瞳は少しの戸惑いに揺れた。自由に過ごせ、と言われても。どうしたらよいのだろう。答えをくれる人は、いない。
(洞窟か滝辺りが気になりますが……そうですね、誰かに望まれたならば何処でも構いませんがそんな方も居ないでしょうし、一人で洞窟にでも行きますかね……)
 ぽてり、ぽてり。
 禊は洞窟に向かって歩き出した。

 ひんやりとした洞窟は、只暗い。静寂が共に在った。
「とても、静かですね……」
 呟く声が闇の中で反響し、腕を動かして顔の前で手を振っても、目を瞬かせても、視認することすらできない濃密な闇が広がっていた。

「とても、静かです」
 呟く。
 自分は、存在しているのだろうか、と思う。
 存在とは、なんだろう。禊は考える。
 他人に認識されること。他人の中に、自分がいること。自分で自分をわかること。――それなら、それなら?
「私は、」
 言いかけた時。

『あなたは?』
 小さな女の子の声がした。

 禊はビクリ、と目を見開いた。闇の中、女の子がどうもいるらしい。どこか寂しく、優しいその温度。
『あなたは、わたしの、声が、きこえる?』
「はい……そちらも?」
 問えば、肯定が返ってきた。
『何をしに、きたの』
 女の子の声が問う。その問いかけで禊はこの女の子がツアーの参加者ではなく島の住民なのだろうか、と思った。そして、事情を話せば――、

『勇者の武具、ある』
 女の子が言った。手に冷たい感触が触れ。
『守護の力をもつ、首飾り』
 女の子は「あげる」という。
 禊は闇に向かって首を振る。
「勇者の武具は残念ですが私には使えません……この身は特殊兵装の運用に特化しています故……」
 けれど、もう応える声はなかった。手には首飾りが残されて。

 只、空虚な暗闇だけが在る。

 ふと、禊はその女の子が生身の存在であったのかどうかを疑問に思った。

 ――その声、その言葉。交わした温度を知る者は、自分だけ。

 禊が忘れてしまえば、きっとその存在はどこにも、残らない。禊には、そんな気がするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オルハ・オランシュ
【遊空】
洞窟に行く機会はなかなかないんだよね
まさに探検って感じ、わくわくしちゃうな
都亨先生、おやつのジャムサンドクッキーは全員分用意済みだよ

嘘、ここまで暗いの……!?
ヨハン……都亨、クロア、みんなどこ?
はぐれちゃうと流石に心細いな
そのうち合流できるとは思うんだけど……

良かった、やっと会えた
火が恋しいな
灯りの役目はもちろんだけど
ちょっと身体が冷えてきちゃって
ごめん、ありがとうヨハン
しばらく貸してもらうね

わっ、都亨!?
大丈夫?怪我してない?
……凄い……!
光る鉱石なんて初めて見た!
それに、クロアの癒しの光も綺麗
そうだ。ここでおやつ食べて行かない?
すぐ出るのは勿体ないもの
ゆっくりしていこうよ


叶・都亨
【遊空】
海も良かったけど、やっぱ島の探検が燃えるよなー!

みんな、お菓子は300円までよ!バナナは別!
さあいざ行かん!春の孤島へ!

俺達は洞窟を目指して行くぜ!

いやー、すっごい暗… 怖っ!
しかも寒い!
ってあれ?みんなどこ?
誰かー!どこにいるの?!

あ!明るい光!
うおおおおん ヨハンくん、クロアちゃああん
オルハちゃんも!よかったあ!

疲れた…っと壁に背をついたら
崩れる壁!
転げ落ちる俺!!

いってぇー…ってみんな、来てみて!
すげぇー綺麗な鉱石の部屋だ

クロアちゃんの天使っぷりに涙がほろり
うう、ありがとう
守りたい、この笑顔

よっしゃ!もぐもぐおやつタイムと行こう!
じゃじゃーん、みたらし団子~~~!


ヨハン・グレイン
【遊空】
探検と言いつつ遊ぶ気満々ですよね……
随分と用意のいいことで

放っておくのも不安なのでついて行きますか

想像以上に暗いな
明かりを確保してから進んだ方が……
ってなんで既にはぐれているんだ
菓子の用意をする前にする事があるだろう

指先に炎を灯してはぐれた人を探します
ひょっとして俺しか明かりを灯せないのか……?
と、隣に灯る光に気付き
ああ、クロアさんははぐれていなかったんですね
よかった
一緒に二人を探しましょうか

暫くの後合流

暖がとれる程の火は維持が難しいので、
オルハさんには外套を貸しましょう

転げ落ちる狼にため息が止まらない
ほんと色々やってくれますね

ほう、綺麗な部屋ですね
明るいし、ゆっくりするのも悪くないか


クロア・アフターグロウ
【遊空】
ええっと、じゃあわたしはお茶を持っていきますね

そんなにどんどん進んでしまって大丈夫ですか?
道中はみんなの後ろを控えめに付いて

ぶっきらぼうに見えて
ヨハンさんもみんなの様子を見ててくれてるんだな
なんて思いつつ

あ、わたしも灯せますよ
とヨハンさんと同様に指先に光を灯して
オルハさんとかなえくん、何処に行っちゃったんでしょう

遭難とかにならず良かったです


わ、えっ、かなえくん!?

転がり落ちていった先
光る鉱石の広がる幻想的な風景
まるで星空みたいに煌めいていて
しばらく目を奪われてしまう

あ、と
そうでした
かなえくん大丈夫ですか?

擦りむいたところなどあれば
指先の光を翳して

そうですね
少しゆっくりしていきましょうか



●洞窟の星河
 絵筆を気ままに遊ばせて描いたような白い雲がぽっかりと青空に浮かんでいる。風が穏やかに吹いて足元ではやわらかな黄色の花が揺れていた。まるで誘うかのような花の動きに気分は、高揚。

「海も良かったけど、やっぱ島の探検が燃えるよなー!」
 叶・都亨(空翔・f01391)が両手をぐんと空に伸ばして伸びをして、おひさまに負けない笑顔を咲かせれば。
「洞窟に行く機会はなかなかないんだよね。まさに探検って感じ、わくわくしちゃうな」
 オルハ・オランシュ(アトリア・f00497)も風にポニーテールを遊ばれながら春花めいた笑みを浮かべ。
「みんな、お菓子は300円までよ! バナナは別!」
 都亨がお菓子袋をとっておきの宝のように揺らす。
「探検と言いつつ遊ぶ気満々ですよね……」
 ヨハン・グレイン(闇揺・f05367)が頭痛の予感に頭を押さえてため息をついた。
「都亨先生、おやつのジャムサンドクッキーは全員分用意済みだよ」
 オルハが言えば、より一層、楽しみな気持ちが高まるようで。
「ええっと、……じゃあ、わたしは。お茶を、持っていきますね」
 クロア・アフターグロウ(ネクローシス・f08673)が皆の顔をそおっと窺い、そっとそおっと声を添える。
 空の太陽に照らされて漆黒の髪がオニキスの輝きを放っている。クロアがふと自身の頭に手をやれば、春にあたためられてぽかぽかだ。
「帽子被ろうよ! お揃いの麦わら帽子とか!」
 日射病対策! と明るく勧める声に視線をやれば人数分の帽子まで用意がされていて。

「随分と用意のいいことで」
 呆れたように言うヨハンに誰かさんがおおはしゃぎで帽子を被せようとし。
「俺はいらな……」
「遠慮しなーい!」
「やめろ。構うな」
 やりとりに慣れた様子でクロアとオルハが笑っている。

「さあいざ行かん! 春の孤島へ! 洞窟へ!」
 都亨が自作の旗を手に振り先頭を元気に走り出す。手作りの旗はちょっと不格好で、微笑ましい。
「先生~、道そっちじゃないよ」
 オルハがのんびりと声をかけ。
「え、と」
 クロアはズンズン歩いていくふたりにアタフタとついていく。
「ま、待っ……」
(そんなにどんどん進んでしまって、大丈夫ですか?)
 声を届ける暇もなく。

 そんな様子に頭痛を覚えながらヨハンがため息交じりに最後尾につく。
「放っておくのも不安なのでついて行きますか」
 ヨハンの声に救われたような眼をしてクロアがウンウンと頷いた。

 繊細な少女に優しい笑顔でも向けられればよいのだろうが、とヨハンはレンズ越しにちらりと思う。不愛想にしか返せない。性分だ。肩を竦めれば、そよ風が並んで歩くふたりの黒髪を揺らして背を押すよう。

(ぶっきらぼうに見えてヨハンさんはみんなの様子を見ててくれてるんだな)
 クロアは隣を歩く濡羽の髪に優しい気持ちを抱いて、道を往く。


 洞窟はひんやりとした闇が広がっていた。
 人の気配をすっぽりと呑み込んで静謐に変えてしまうほどの、不思議な暗さ。
 4人はいっしょに洞窟を覗き込み。

「想像以上に暗いな。明かりを確保してから進んだ方が……」
「とっつげ~~き! みんなッ俺に! ついてこい!」
 ヨハンが言う声を全く聞かず、都亨が元気に闇へと突っ込んだ。
「灯り用意しようよー?」
 オルハも言いながら、暗闇の中へ。

 ええー……? と唖然とするヨハン。後を追えば不思議な暗闇の中、まるで自分ひとりが世界から切り離されたような感覚。
「ってなんで既にはぐれているんだ。菓子の用意をする前にする事があるだろう」
 呟く声は、深いため息と共に。


 そっと翳した手が視認できないほどの、闇。
「嘘、ここまで暗いの……!?
 ヨハン……都亨、クロア、みんなどこ?」
 オルハが戸惑いながら目を瞬かせる。
(はぐれちゃうと流石に心細いな。
 そのうち合流できるとは思うんだけど……)
 オルハは目を瞬かせた。暗視能力を備えていても尚見通せぬほどの闇。尋常ではない、と。

 一方、都亨も暗闇の中にいた。
「いやー、すっごい暗…… 怖っ! しかも寒い!」
 いつものように声をあげても、応えてくれる春風のようなオルハの声はない。
「ってあれ?」
 旗をぶんぶん振り回す。誰もいない。
「みんなどこ?」
 いつものように冷たい声を返してくれるヨハンもいない。
「誰かー! どこにいるの?!」
 闇に呑み込まれるように自分の声が虚しく消えていく。

 そんな声が届くことはなかったが。

 離れた場所でヨハンは指先を鳴らして蒼い炎を灯していた。炎の揺らめきに闇が退くように和らいで仄かに照らされる道。
「ひょっとして俺しか明かりを灯せないのか……?」
 呟き。
「あ、わたしも灯せますよ」
 応える声があった。
「――……!」

 声と共に燈るやわらかな光。

 光に浮かび上がるようにしているのは、ヨハンと同様に指先に光を灯したクロアだ。
 それが特別でもなんでもない、当たり前に出来る事として少女は光を灯す――それは、生まれながらの、光。
「ああ、クロアさんははぐれていなかったんですね。よかった」
 ヨハンはそっと安堵の息を吐く。
 この繊細な少女を闇の中でひとりにさせてしまうのは、望ましくない。ひとりにさせずに済んで、よかった、と。
「オルハさんとかなえくん、何処に行っちゃったんでしょう」
 黒の瞳が心配そうに瞬く。声には優しい心が滲んでいる。
「一緒に二人を探しましょうか」
 常は控えめで意思や望みの自発表明が少ないクロアが、迷いなく頷く。
「探しましょう」
 道照らすふたりの光は一層明るく、やわらかに。


「ちょっと、休憩しようかな」
 少女が闇の中ぽつりと言う。反響することもなく、只消える自分の声。目が慣れる様子も、ない。きっと魔法か何か。そう思うけれど、だけど。何ができるだろう。
 オルハはおそるおそる壁を触りながらしゃがみこみ、壁に背を預けた。ひんやりとした感触は、夢じゃない。けれど、自分の手すらも見えないのだ。ふるり、震えてしまうのは冷たい壁と空気のせい――そう思うけれど、きっとそれだけでもない、とも自覚する自分がいた。

「なんとか、なる……」
 呟く自分の声が頼りなく思えて、翠の瞳がふと揺れた。
 思い出してしまいそうになるのは、肉親の振り上げる手。全身から溢れる激情。そして、弟。
「ううん」
 オルハは首を振り――うなじに感じる自分の髪の感触は、いつも通り。それに励まされるように「いつも通り」と、笑顔を作った。笑顔を作れば、元気も沸く。
「探そう!」
 明るい声をあげ、自分を励ますように立ち上がり、歩き出す。

 その世界を閉ざしていた闇は、ほどなくして光により追い払われ。
「――ヨハン! クロア!」
 ぱっと笑顔を咲かせて。
「火が恋しいな」
 呟く声には意図せず感情が籠り、藍の瞳に案じる色が浮かんだのが視えた。
「ちょっと身体が冷えてきちゃって」
 慌ててそう付け足せば、少年が外套を貸してくれる。
「暖がとれる程の火は維持が難しいので」
 そう言って再び燈す火は冷たそうに見えて、揺らめけばやさしい繊細な蒼。
「ごめん、ありがとうヨハン。しばらく貸してもらうね」
 長い袖を持て余し気味に大きな外套に身を包めば、ほっかりと暖かく。ふわり、温かい。ポケットに大切な鍵の感触――落とさないようにしなくちゃ――オルハは少しドキドキしながら礼を言った。

 と、その耳に明るい声が届いた。
「あ! 明るい光!」
 都亨が猛烈な勢いで突進してくる。
「うおおおおん! ヨハンくん、クロアちゃああん!!
 オルハちゃんも! よかったあ!」
 ガバアッとヨハンに抱きつこうとし、ヨハンがするりと良ければ都亨はズザーッと地に転がった。
「つれない!」
 ガバッと起き上がる姿は元気そのものだ。
「え、え、えと……。遭難とかにならず良かったです」
 クロアは若干気圧されながらも、安心したように呟いた。

「いやぁーーー……」
 元気そうにしていても何気にひとりでずっと闇中を走り回っていた都亨は気が抜けた様子でふにゃりと笑い、壁に背をつく。
「疲れた……って、ア!?」
 ひんやりした壁を感じた瞬間にスコンと壁が抜け。
「ええええええぇえぇぇぇ!!?」
 転げ落ちる都亨!!

「わ、えっ、かなえくん!?」
「わっ、都亨!?」
 クロアとオルハが声をあげ。ヨハンはため息が止まらない。
「ほんと色々やってくれますね」

「いってぇー……って」
 3人が心配する(?)中、落ちていった都亨は全身を摩りながらキョロキョロと周囲に視線を巡らせた。
「わああ……」
 言葉の形を成さない声が漏れる。

 少年の視界一杯に幻想風景が広がっていた。
 闇を美しく和らげる神秘的な光。それを放っているのは、どこか冷たく硬質な、石――鉱石だ。鉱石が煌めく光を放ち、一帯を照らしている。それは、星河にも似て。
 手を伸ばせば触れることができる、星。そっと伸ばした指先が触れれば自然のままの感触は冷たくて少し尖った箇所もあり誰かさんを想起させるようだ。
「ふふ」
 笑みが零れる。

「大丈夫? 怪我してない?」
 オルハが声をかけてくれる。それが嬉しくて都亨は元気な声をあげた。
「みんな、来てみて! すげぇー綺麗な鉱石の部屋だ」


 降りてきた皆は都亨同様に目を見開く。まるで星空みたいに煌めいている美しい鉱石。過去も背負っているものも、性格も違っていても、今全員が同じようものを見て同じように美しいと感じている。声をあげれば、共感できる。

「……凄い……! 光る鉱石なんて初めて見た!」
 オルハが明るい声をあげて目を輝かせ。
「ほう、綺麗な部屋ですね」
 ヨハンもレンズ越しの瞳に飾らない感想を乗せて。

 クロアは不思議に目を瞬かせる。
 この光景を仲間とみている自分が不思議で。
 美しいと思う、佳いと思う。自分の感情を識るのは自分だけ。だけど、今。自分だけでは――きっと――ない。そう思うから。

 そっと仲間へと視線を巡らせて。

「あ、と、そうでした。かなえくん大丈夫ですか?」
 クロアは思い出したように都亨の傍に寄る。診れば少年は至る処に細かな擦り傷を負っていた。
「俺! ぜんぜんイタクナーイ!」
 元気に笑ってみせる少年におずおずと指先の光を翳して傷を癒せば赤い筋が消えて健康的な肌になり。
「綺麗。癒しの力は依頼ではとても頼もしいよ」
 オルハが目を細めて微笑めば、ヨハンも頷き。
「……よかった」
 クロアが小さな花のように黒髪を揺らして微笑んだ。

 都亨はそんな天使に涙ぐみ。
「うう、ありがとう。守りたい、この笑顔!」
 そして、ほんの少しだけ思うのだった。
 目の前の少女のこと。自分のこと。憧れの父のように、自分はなれるのだろうか。そんな思いがほんの一瞬だけ過るのを笑顔の隅に追いやって、少年は笑った。

「そうだ。ここでおやつ食べて行かない? すぐ出るのは勿体ないもの。ゆっくりしていこうよ」
 オルハがふとそんな事を言い。
「明るいし、ゆっくりするのも悪くないか」
 ヨハンが同意すれば、クロアもこくりと頷いた。
「そう、ですね。少し。ゆっくり、していきましょうか」

「よっしゃ! もぐもぐおやつタイムと行こう! じゃじゃーん、みたらし団子~~~!」
 都亨は旗を壁に立てかけてその前に陣取り、お菓子袋の中身を魅せていく。
 もっちり甘やかなお団子に、サクラ交じりのホワイトチョコ。アルダワの蜜ぷによりも刺激的なカラフルなサワーグミ! 素朴な色のビスキュイに琥珀色に蕩ける蜂蜜を添えて。
 オルハもにっこりとクッキーを広げる。サンドされているのは彼女が店番するジャム屋の看板商品の苺ジャムの数枚。グラデーションを描くようにオレンジジャムのクッキーを添え、夕方が夜になるようにブルーベリージャムのクッキーを並べれば楽しいお菓子の世界の出来上がり。

「……どうぞ」
 甘い世界からそっと目を逸らしていたヨハンに差し出されるのはクロアが用意したお茶だ。どこか安心するような白い湯気がゆらゆらと揺れて空気に染みるように溶けていく。
「ありがとうございます」
 礼を言えばクロアが嬉しそうな瞳を見せ。

「ほ・ら! ヨハンくん! あーん!」
 森色狼がぐいぐいとヨハンにお菓子を押し付けてくる。
「俺は飲み物だけで……」
「糖分は疲労回復にいいんだ! 俺! モノ知りーー!」
 はしゃぐ都亨をぐいぐい押し返していると女子ふたりが楽しそうにそれを見て笑う。

「はぁー……」
 ため息をつき、ヨハンがお菓子の山へと視線を移し。目を瞬かせた。
「誰か、これ置きました?」
「え?」
「ん?」
「え……」
 彼らが視線を向ける先、お菓子の山の真ん中にキラキラ光る鉱石が、コロリと4つ置かれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リアン・ローリエ
【WIZ】
アドリブ大歓迎です。

色彩豊かな春の花が咲き乱れる花畑を見に行きたいです!。
綺麗な花が沢山……と、感動していたら、
何でしょう、豚さんがこっちに近づいて来て……話しかけて来ました。

えっ、えぇ……貴方が勇者の武具なんですか?。
さすがに喋る豚さんは想定外です……。

●見つけた武具●
種別:バディペット
名前:魔豚ロース(まとん ろーす)
設定:
悠久の時を生きる魔性の豚、いわゆる魔獣であり、使い魔。
人間の言葉を理解し、喋る事が出来る。
一人称は私、
老年の執事のように、恭しく振る舞う礼儀正しい紳士。
ただし戦闘力は皆無。

「豚は様々な神話や伝説に出て来る由緒正しい生き物なのですぞ」
「それ、殆ど猪なんじゃ……」



●春の魔女と魔豚ロースの不思議な出会い
 薄ピンクの花弁を天に向け、チューリップが咲いている。ムスカリはまるでベリーのように美しい瑠璃色を揺らし。星型のハナニラが陽光に煌めいている。
「春ですね……!」
 リアン・ローリエ(春色スパイス・f13278)が花に囲まれて目を輝かせていた。リアンは自身も春の名をもつ存在だ。春の歓びに頬が染まれば、薔薇の色。艶やかな緑の髪がそよ風に揺れて宝石めいた瞳が耀く様は、春花を統べるお姫様といった風情で愛らしい。

 と、そこへ。

「この花畑に客人とは、珍しいですな」
 ぽてぽてと花を掻き分けやってくるのは一頭の豚だ。豚は老練な執事にも似て、穏やかに恭しく言葉を紡ぐ。
「私はまとん、ろーすと申します。それにしても麗しいお嬢様でいらっしゃいますね。どちらからいらしたのでしょうか」
「ふぇっ? まとん、ろーす、さん?」
 リアンは豚に目を瞬かせ。ステッキをそろりと手にするが、向かってくる豚にはどうも敵意がないようだ、と手を放す。
 豚はそんなリアンに微笑ましく目を細ませて、優雅に――豚なりに――頭を下げた。
「魔豚ロース、でございます」
 リアンは豚の執事に不思議そうに首をかしげた。
「魔、豚。魔性の生き物なのでしょうか?」
 そして、ふと名乗っていないことに気づいてリアンは優雅にふわりと挨拶をした。緑の髪が風に煽られふわりと広がれば、豚は一層好ましげに相好を崩してリアンへと傅いた。その所作は、まさしく姫君に傅く執事の如く。

「私は悠久の時を生きる魔獣にして、嘗て勇者様と冒険を共にした使い魔でございます」
 なんと豚はそんなことを言う。
「えっ、えぇ……貴方が勇者の武具なんですか? ぶ、豚さん……」
 リアンが吃驚して目を丸くしていると、豚は誇らしげに頷いた。
「豚は様々な神話や伝説に出て来る由緒正しい生き物なのですぞ」
「さすがに喋る豚さんは想定外です……」 
 リアンが戸惑っていると豚は次々と自分のすばらしさを語り始めた。しかし、その話を聞いていると。
「それ、殆ど猪なんじゃ……」
 リアンはそう呟いてしまう。そんな豚だった。

 春の彩花が風に揺られて咲き誇る中、少女と豚は語り合い。
「さあ、私をお連れくださいませ」
 やがて恭しく執事めいてそう言う豚。見た目は豚だが、立ち居振る舞いは礼儀正しい紳士だ。その紳士な執事は、リアンを己が仕えるべき主だと思い定めたようだった。
「ただし、戦闘ではお役にたてません」
「そ、そうなの」
 リアンはおおいに戸惑った。しかし、悪い豚ではないらしいのは確かなのでと魔豚ロースを連れていくことにしたのであった。

 これは、そんな出会いの一幕――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャスパー・ジャンブルジョルト
弁当を食いながら、館の地下を探索するぜ。
あ? ミスリル製の鉾槍、発見……って、デカいわ!
あ? ドワーフに似合う戦斧、発見! ……って、重いわ!
あ? フェアリー専用の短剣、発見! ……って、ちっちゃいわ!
く、くそー。ケットシー・サイズの武器が見当たらねえ。
まあ、べつにそんなもんはいらねえや。俺には甘いマスクと比類なき知性という武器があるしぃ。
それより、このピアノが気になるぜ。楽器なのに音が出ないなんて可哀想だよな。
俺は修理も調律もできないが、せめて傍でツィターを弾いてやるか。音を忘れた楽器への鎮魂歌ってとこだな。

他の猟兵の引き立て役や調子に乗って痛い目を見る役など、お好きなように扱ってください。


明智・珠稀
あぁ、素敵なランデブーでした…!(うっとり)
そして此方が噂の孤島…!ワクワクいたします、ふふ

■行先
散歩やスケッチ、お弁当をいただきつつ歩けば
いつのまにか『廃墟の村の古びた館』へ
「趣きがあって私好みです、ふふ!」
退廃的な雰囲気に興味津々。

「確か、壊れたピアノがあるはず…」
地下へと進み、ピアノの鍵盤を叩くが
「直す手立てがなく恐縮です。せめて、この部屋を音で満たしましょう…!」
サウンドウェポン『三味線』にて雅な曲を奏で

「…?何か光るものが…」
先程まではなかったように思いつつ
薔薇の装飾が入った一本のレイピアを発見。
「勇者様からの贈り物でしょうか、ぜひ使わせていただきましょう…!」

※アドリブ大歓迎です!



●鎮魂の音が躍れば
「此方が噂の孤島……! ワクワクいたします、ふふ!」
 明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)が目を輝かせていた。島を気ままに散策しスケッチを楽しんだ珠稀は古びた館へと辿り着き。
「趣きがあって私好みです、ふふ!」
 人の手を離れて久しい館の退廃的な雰囲気に興味津々の珠稀は朽ちた庭の枝に気まぐれに手入れしてやってから内部へと足を踏み入れた。
中には、先客がいた。

「おっと、先客が! 伝説の武具はありましたか?」
 珠稀は妖艶に微笑む。館の雰囲気もあり美しいダンピールの容貌が引き立てられ、夢見がちな少女が一目見れば頬を染めずにいられないほど。だが、この時の相手は夢見がちな少女ではなかった。
「おう! 武具はまだ見つかってないが弁当は美味いぞ」
 応えたのは、ジャスパー・ジャンブルジョルト(JJ・f08532)。ここに自称タフでクールでダンディな放浪剣士と残念で変態な美形の不思議コンビ(臨時)が結成されたのだった。

 ジャスパーは商人が持たせてくれたお弁当をもぐもぐしながら手に古びた館の地下を探索していた。
「ジャスパーさんはフードファイターの資質がありそうですね。はい、あ~ん」
 何気に空気を読むスキルの高い珠稀。サッと自分のお弁当から具を差し出し親密度を上げる作戦!
「わかるか! そう、俺には確かにフードファイターの資質があるんだ。だが、俺はフードファイターではない。理由がわかるか? ――趣味と仕事とでキッチリ線引きしてるからさ!」
 猫好きの珠稀はそんなジャスパーのふわふわの毛皮と尻尾にキラキラとした視線を送って頬を染めていた。モフモフしたい! と手がワキワキしている姿は、とても怪しいのだが幸いジャスパーは食べるのに夢中なので気付いていない。セーフ!

「なんだ、弁当の中身違うのか? まさか1人1人中身が違うんじゃないだろうな」
「イロモノ食材が入っているお弁当もあったりするのでしょうか? 気になりますね、ふふ!」
 探索するうちにふと互いの弁当の中身が違うことに気づいた2人。
 珠稀がワクワクとお弁当箱の中から摘まみ上げたのはさつま揚げのサンドイッチ。半分こにすれば、ジャスパーはサンドイッチにむしゃ、と齧り付き、ご機嫌に目を細め。ついでに隠し扉を発見。自分の弁当箱から新たにつくね串を取り出してむしゃむしゃ、パクリ。
 珠稀にも一本差し出せば牙をキラリと輝かせ珠稀が串へと齧りつく。
 ついでとばかりに2人で隠し扉を開いて見れば。

「「あ?」」

 隠し扉の内部にはキラーン! ミスリル製の鉾槍を発見!
「……って、デカいわ!」
「鉾槍は使いませんね」
 ジャスパーは勢いよく扉を閉めた。珠稀はふふ、と笑いながら串を頬張っている。
「次だ、次」
「はい♪」
 仲良く探索を進める2人。
 閉めた扉の向こうでは、ミスリル製の鉾槍がぽつりと残されていた。

「次はこれだな」
 続いてジャスパーが弁当箱から取り出したのは、桜エビのはんぺん揚げ。ふわふわ尻尾を揺らして頬張りながら床に仕掛けられていた仕掛けを作動させ。珠稀が「同じ具がありましたよ!」と自分の弁当箱からはんぺん揚げを取り出して喜んでいた。

「うまうま――あ?」

 ゆらり、天井から降りてきた箱にはなんと立派な戦斧が入っている!
「ドワーフに似合う戦斧、発見! ……って、重いわ!」
 ジャスパーは箱をそのまま天井に突っ返した。箱は寂しそうにするすると元の場所へと上がっていく。
「って戻しちまったけど、もしかして使う?」
 ふと珠稀に念のため確認すれば、珠稀ははんぺん揚げを頬張りながらニコニコと首を振った。

「確か、壊れたピアノがあるはず……」
 珠稀が思い出したように呟き、2人はピアノを探すことにした。
 探しながら今度は汁気を抑えた春野菜のラタトゥユをもぐもぐ、はむはむ。
「ふにゃあ~!」
「ああっ、愛らしい……」
 自然とジャスパーの喉もゴロゴロと鳴り。珠稀はうっとりとそれを見つめて。
「と、ピアノがありましたね! ふふ……!」
 珠稀がピアノを発見した。2人はのんびりと近寄り、ふと気づく。ピアノに隠れるようにして小さな小さな宝箱が!
「フェアリー専用の短剣、発見! ……って、ちっちゃいわ!」
 宝は宝箱に戻された。

「く、くそー。ケットシー・サイズの武器が見当たらねえ。
 まあ、べつにそんなもんはいらねえや。俺には甘いマスクと比類なき知性という武器があるしぃ」
 ジャスパーはミルフィーユを取り出してパクリと齧りつく。パイ生地はサクサクでクリームはもっちりにゃん。とヒゲを張り。
「ジャスパーさんの甘いマスクは最強です……!」
 珠稀はうっとりとその言葉を支持するのであった。

「それより、このピアノが気になるぜ」
 食事を中断したジャスパーが見つめるのは、埃を被ったおんぼろピアノ本体だ。
「楽器なのに音が出ないなんて可哀想だよな」
 琥珀の瞳には優しい光が宿っていた。
 珠稀がそっとピアノの鍵盤を叩いてみるが、スカスカと虚しい音が響くのみ。

「直す手立てがなく恐縮です」
 珠稀が手を引っ込めてしょんぼりと項垂れる。
「俺は修理も調律もできないが、せめて傍でツィターを弾いてやるか」
 ジャスパーがそう言うとツィターを用意し。
「せめて、この部屋を音で満たしましょう……!」
 珠稀も三味線を用意した。

 〈猫の爪研ぎ〉の名を冠する名琴を構えて猫の指が器用に弦をつま弾けば、深みのある音の波が穏やかに広がる。寄り添うのは雅な音を歌う三味線だ。高い旋律がゆったりとした旋律を奏でれば、低い旋律が寄せては返す波のように主旋律を支え、引き立て、追いかけて和音が温かい。

 ――音を忘れた楽器への鎮魂歌ってとこだ。

 ひんやり、薄暗い地下空間。音を忘れたピアノのためのメロディはどこまでも優しく、温かく。聞く者に穏やかな気持ちを与える。ジャスパーと珠稀はどちらからともなく微笑み。
「……? 何か光るものが……」
 珠稀が声をあげた。

 先ほどはなかった薔薇の装飾が入った二本のレイピアが2人の前に仄かな光を纏い、浮かんでいるのだ。
「勇者様からの贈り物でしょうか、ぜひ使わせていただきましょう……!」
 珠稀は嬉しそうに手に取り、ジャスパーは少し驚き戸惑いにヒゲを揺らす。
「これケットシーサイズかよ! そっちは人間サイズ? どうなってるんだ」
 恐る恐る、手に取って感触を確かめれば、確かな現実がそこにある。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花狩・アシエト
おー弁当ありがとな!
あとで食おっと

おっちゃんの言う場所では……まあどこでもいいか
全部気になった時はゆくがまま
ぶらぶらするべ

(花畑へ)
ほおー!すげぇ綺麗だなぁ
ガキンチョたちに見せたら喜びそうだ

崖先に行くと、そこに錆びた槍が一本刺さってる
……槍、か
口煩い相棒がよく使ってる武器が槍だわ
まさかこれが伝説の武器なんて言わないよなーははは

……(価値のあるもので売ったら一攫千金!でも相棒もいい武器が欲しいって言ってたし!)(早口)

も、持って帰ってみるか
相棒が使うかはわからねぇしな
すんません、持ってかせてもらうぜ

アドリブ歓迎



●ダークヒーローと錆びた槍
「おー弁当ありがとな! あとで食おっと」
 商人から弁当を受け取り、花狩・アシエト(アジ・ダハーカ・f16490)は気が向くままにぶらぶらと島を往く。

「おっちゃんの言う場所では……」
 木々がサワサワと音をたて、まるで挨拶をしているようだ。頭上では小鳥も飛んでいる。
「まあ、ぶらぶらするべ」
 陽気に誘われるように甘く目元を和ませるアシエトの前には花畑が広がっている。彩光に負けじと華やかな色を纏わせる春の花。
 あどけなく咲き誇る薄黄色のフリージア、青空が花弁を染めたような瑠璃のネモフィラ、清楚に風に揺れる愛らしいチューリップ。
 風がそよげば個性豊かな色が一斉に揺れて、麗らか。

「ほおー! すげぇ綺麗だなぁ。ガキンチョたちに見せたら喜びそうだ」
 勢いよく息を吸い込めば、胸いっぱいに春の香りが広がった。孤児院の子どもたちを連れてくればさぞ喜ぶことだろう。光景が目に浮かぶようで、想像すれば楽しい気持ちが胸に湧く。軽く花をつつけばフワ、と揺れる様は頼りなく、可憐だ。

 花に囲まれて大きな弁当を広げれば、バゲットに生ハムとチーズ、黄色のオムライスを挟んだサンドイッチ。赤パプリカやオリーブ、ピクルスがトッピングされたポテトのサラダ。搾りレモンが爽やかに存在を主張するイカのフライ。
 デザートにと添えられているのは、蜂蜜とシナモンで味付けされた割っか型のチュロスとソフトタイプのクルミ入りトゥロン。
 甘い香りに囲まれて弁当に舌鼓を打てばそよ風が爽やかに吹き抜け、蜜に誘われ蝶々も寄ってくる。

 食後に崖先をぶらりと歩いていると、ふと錆びた槍が一本刺さってるのが視界に映り。
「……槍、か。まさかこれが伝説の武器なんて言わないよなー? ははは」
 笑う。だが、直感はこれが特別な武器だと告げている気がした。
 口煩い相棒がよく使ってる武器が槍だった。そんな思いも脳裏をよぎる。
「……」
 逡巡すること、しばし。

 そろり、身体は動いた。
「価値のあるもので売ったら一攫千金! でも相棒もいい武器が欲しいって言ってたし!」
 早口で捲し立て、手を伸ばし。

「も、持って帰ってみるか。相棒が使うかはわからねぇしな。すんません、持ってかせてもらうぜ」
 そおっと周囲を見るが、応える者は誰もいない。よし。
 アシエトは槍の柄を握る手に力を籠めた。ぐっと引けば槍はずるりと崖から抜けて鋭い穂先を陽光に煌めかせた。

 じっと見つめる槍は、錆びこそあるものの、実戦に充分に使えそうなオーラを放っていた。口煩い相棒はこの槍を果たして気に入るだろうか。そう考え、灰色髪がぶんぶん振られる。

「いらねえって言ったら売っちまえばいいんだし!」
 自分に言い聞かせるように言いながら、アシエトは槍をぶんぶんと振り回すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハーモニア・ミルクティー
【枝垂れ桜が植わる森】に。
花々が降る森だなんて、ロマンチックで素敵じゃない!
お言葉に甘えて、商人さんからいただいたお弁当を持っていくわ。
【ライオンライド】で仔ライオンちゃんを喚びだして、一緒に探索よ!

仔ライオンちゃんに跨がって散歩しながら、森の動物たちと【動物と話す】でお話しして【情報収集】をしましょうか。
何か、良い手がかりが見つかるかもしれないわ!
武器がありそうな場所を聞いたら、そこを目指してレッツゴーよ!

確かこの辺だったはずよね?
少し調べてみましょうか。
あら?これは弓かしら?
……森の植物が絡みついて、何だか良い感じに装飾されているわね。
せっかくだもの。持って帰りましょう!

※アドリブ歓迎よ!



●花と動物たちと大樹に抱かれし弓
「花々が降る森だなんて、ロマンチックで素敵じゃない!」
 ハーモニア・ミルクティー(太陽に向かって・f12114)は商人から弁当を受け取り、仔ライオンを喚びだしてふわりと跨った。
「一緒に探索よ!」
 明るく声をかけて優しく首元を撫でてやれば仔ライオンも嬉しそうに目を細めてゴロゴロと喉を鳴らす。

 緑と薄紅が織り成す春の森に入れば、1人と1匹に興味深々で動物たちが姿を見せる。
「こんにちは! お邪魔しているわ」
 ハーモニアが森に咲く花のように微笑めば白毛のウサギがひょこり、跳ねてご挨拶。
「フェアリーさんだ! 珍しい」
 ウサギがそう言えば、後ろからリスも寄ってきて。
「フェアリーさん、ここに住むの?」
 気になる様子で首をかしげる。

 ハーモニアはふるふると首を振り。
「武器を探しているの」
 と、微笑んで。
 動物たちが顔を見合わせ、道を案内するよと提案してくれる。

 動物たちに導かれて進む道はどこか儚く憂い気を帯びた薄紅の花がたおやかに垂れた並木道。麗らかな緑の絨毯に淡い薄花桜が舞い降りて、仔ライオンが歩くたび足元に優しい感触を伝えていた。

 やがて動物たちが足を止め、ハーモニアの前には大きな樹がどっしりとした幹を魅せていた。
「この辺なの?」
 言いながらワクワクと樹の周りを廻るハーモニアは、
「あら?これは弓かしら?」
 やがて樹に抱かれるようにして埋もれている弓を発見した。小さな小さな弓は、フェアリーが扱うのにちょうど良い。

「……森の植物が絡みついて、何だか良い感じに装飾されているわね。せっかくだもの。持って帰りましょう!」
 もしかしたら嘗てフェアリーの勇者が弓を手に戦ったのかもしれない。そんな想像をすれば手の内にある弓がキラキラと輝いて特別に思えるのであった。

「そうだ、ご飯も食べましょう」
 動物たちに囲まれ、仔ライオンの背にもたれかかるようにしてハーモニアは商人の弁当を広げた。
 人間用サイズの弁当はひとりで食べるには余りに多量。けれど、廻りには動物たちがいる。
 ふんふんふん、と鼻を寄せ欲しがる様子の動物たち。
「いっしょに食べましょ!」
 ハーモニアは楽しそうに笑い、お弁当の半分以上を食べてもらい。
「とっても美味しい!」
 目を輝かせて舌鼓を打てば、動物たちもご機嫌にはむはむとご飯を食べている。
 春の彩り溢れる風が吹き、弁当の香りも甘やかに広がって、みんなで食べるご飯はとっても美味しい。

 桜降り注ぐ森の中、ハーモニアはのんびりゆっくり。楽しく花見弁当を食べるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リヴェンティア・モーヴェマーレ
▼アドリブ&他の方との絡み
大歓迎!
もり盛りのモリでも大ジョブです

▼本日のメインの子
由希(情報特化なハリネズミ)
他の子が居ても全然大ジョブです

▼【SPD】
とってもお散歩日和な気持ち!
うちの動物の森精鋭部隊(仮名)の子達も心なしかウキウキしてる気がしまス

お花畑を探して皆に華の冠を作ってあげたい気持ち!
皆さんどうデショ!?

などと、一緒に来た動物達とお話ししながら探索デス!

だ、大ジョブですよ
ちゃんと探索もしまス!
しっかり調査デス
そう言えば…空を飛べるお友達が居ないので新しいお友達を探しても良いかもしれません…(言いつつもついてきたのはちょっとナルシストっぽいハムスター)
名前は架羅くんと名付けましょう♪



●お友達が増えマシタ?
「とってもお散歩日和な気持ち!
うちの動物の森精鋭部隊の子達も心なしかウキウキしてる気がしまス♪」
 リヴェンティア・モーヴェマーレ(ポン子2 Ver.4・f00299)がウキウキと小道を歩いていた。言葉を裏付けるかのように足元をうろちょろしているのは、ハムスターの響ときょん、ハリネズミの由希、チンチラの藍。それぞれが身に付けたワンポイントの宝玉を陽にキラキラ輝かせ、気分上々、春爛漫。
「!! 綺麗デス!」
 リヴェンティアが歓びの声をあげる。
 辿り着いたのは綺麗な花畑。個性豊かな優しい春色があたたかに揺れて、夢のよう。

 花の間をみんなで歩いて、ふと思いついて座り込めば花の芳香がふわりと鼻腔を擽り、優しい気持ち。
「皆に華の冠を作ってあげたい気持ち!」
 リヴェンティアは大好きなみんなにニッコニコの笑顔を向けると、ルンルン気分で花を選んで冠を作り始めた。
 細やかに花を編む手元をワクワクと動物たちが見守っている。
 薄ピンクのラナンキュラスにスノーフレークを添えて柔らかな枝も編み込んで。小さな子たちの負担にならないように、小さく軽く編み上げてふわ、と冠を被せれば、どの子もみんな愛らしい!

「皆さんどうデショ!?」
 リヴェンティアがニコニコ問えば、動物たちはふわっふわの毛を風に靡かせぴょんぴょんと喜びを全身でアピールしてくれた。跳ねるのにあわせてお手製の花冠も可憐に揺れて。

(ああ、うちの子たちが可愛いデス……!)

 悶えていると、由希がおずおずと花を差し出し。
「私に?」
 目をパチリと瞬かせれば、ウンウンと頷いて。負けじと他の動物たちも思い思いに花をもち、捧げてくれる。
 可愛い動物たちに花捧げられる姿はまるで御伽噺のお姫様。リヴェンティアは幸せ気分で貰った花を抱きしめた。大切に持ち帰り栞にしよう、と、そんなことを考えながら。

 そういえば、自分たちは調査に来たのだった、……かもしれない。ふと由希が思い出した様子でリヴェンティアをつつき、一行はハッとする。
「だ、大ジョブですよ。ちゃんと探索もしまス! しっかり調査デス」
 ちょっぴり慌てた様子を見せながら。キリリと眉をあげてやる気を出すリヴェンティア。そんな彼女(と動物たち)の足元へ転がるようにあらわれたのは――。

「ンッ?」
 ふわふわモフモフ、愛らしいハムスターだった。

「エエト」
 見守るリヴェンティアの視線の先、動物たちが謎のハムスターを取り囲み「お前は誰だ!」「どこから来たの?」と聞いている。
 ハムスターは動物たちに毛皮を自慢するような仕草をみせて、なんだかよくわからないがそのまま付いてくるようになった。

 伝説の武具なのかどうかはわからないが、ちょっとナルシストっぽいハムスターが加わってリヴェンティア一行はさらに賑やかにパワーアップしたのである。

「名前は架羅くんと名付けましょう♪」
 リヴェンティアがそう言えば、架羅くんはとても嬉しそうにジャンプした。
「早速絵姿を……」
 リヴェンティアはいそいそとスケッチブックを広げ、可愛いうちの子大集合なお花畑を真っ白なページに描き始めた。
 動物たちは「魅力的に描いてね!」とぴょんぴょん飛び跳ねて――、
「う、動かナイデ、くだサイ~?」
 リヴェンティアは楽しそうに笑うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイチェル・ケイトリン
なんとなく気になる方向に歩いていくの。

滝の上、川をさかのぼっていって……きれいな水が湧き出してる小さな泉だね。

なにかある……わたしの心の力で泉の底から拾い上げたのは宝石、きれいなの。

もともとはなにかにはめられてたのかな……わたし、魔法とかはあまりわかんないけど、すごい力と想いをかんじるんだよね。

なにかにつかえそうかな。



●レイチェルと一粒の宝石
 勢いよく流れる水音。水飛沫が時折風に乗り。
「スカート、ちょっと湿っちゃった」
 水に濡れたスカートの裾を軽くつまんで気にしながら、レイチェル・ケイトリン(心の力・f09500)は歩いていた。

(なんとなく、気になる)
 ――まるで、何かに呼ばれているような。

 そんな感覚を覚えたレイチェルは滝に向かって勢いよく流れる川沿いを遡って歩いていた。河にせり出すようにユスラウメが咲いている。歩く足元には菜の花が咲き、黄色と薄ピンクのコントラストが美しい。
 歩くレイチェルは白い花にも似て、遠くから見る者がいればまるで一枚の絵画のような光景に観えたことだろう。

 並行世界では常にどこかで異変が起きている。
 そんな異変の中を人々のためにと献身的に力を尽くし続けているレイチェルは、今も何かに導かれるようにして道を選び。けれど周囲を取り巻く景観に心を和ませていた。
 歩くたびに薫る風、あたたかな世界が全身に春をつたえてくれる。

 やがて辿り着いたのは、清明な水が湧きだしている小さな泉だった。
「泉……」
 レイチェルは青空のような瞳をパチリと瞬き、呟いた。爽やかなそよかが髪を揺らせば春の香りが感じられ。

「なにかある……」
 気付いたレイチェルは、そっと心の力で『ソレ』を拾い上げた。水の底から厳かに掬い出された『ソレ』は陽光を浴びてキラキラと輝き、まるで喜んでいるかのように視える。
 手の平にころりと転がせば、眩く不思議に光り輝く『ソレ』は――見事な宝石だ。
「きれい」
 レイチェルは宝石に頬を緩めて呟いた。余りに幻想的で美麗な輝くにそっと指先で撫でれば、濡れた宝石はつるりと硬い感触で、現実の存在だと判る。
 そして、感じる。
 
 ――秘められた大きな大きな力。そして、想い。

「もともとはなにかにはめられてたのかな……?」
 問いに応える声はない。だが、この見事な宝石が誰の眼にも止まらずずっと泉の底にいたのは、レイチェルにはなんだかとても寂しいことのように思えた。
 撫でる指はより一層、優しくなり。

「なにかにつかえそうかな」
 そっと呟く声は、あたたかい。

 ――いっしょに、いこう。

 そう心に想い、ふわりと微笑めば、美しい宝石が一際眩く耀いたような気がして、レイチェルは一層優しい気持ちになった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティアナ・スカルデット
幽霊は出ないと2か所で言っているのが気になるところですが気にしてもしかたないですよね

素敵なアイテムは困難な道のりの先にあると感じられます
自然に身を委ねて運命の出会いに期待します

険しい山を【クライミング】で登り
浸食谷に流れる川に【ジャンプ】して入水して
激流に身を任せ同化して流されていく
流れ着いた先には草原に渦巻く大竜巻
竜巻の中心に剣を発見
【六花昌金剛】を発動して衝撃に備え身を護り
竜巻に巻き込まれ中に
必死に手を伸ばし剣を掴む
掴むと竜巻が収まる
入手した剣は【アネモストロヴィロス】
性能はまだ未知数
剣を手に入れたのはいいけどここはどこだろう



●アネモストロヴィロスとの出会い
 ティアナ・スカルデット(ロンズデーナイト・f11041)は商人の言葉を少し気にしていた。
(幽霊は出ないって言ってたけど)
 わざわざ否定したのは、出るという噂があるからではないのか、と。
(気にしてもしかたないよね)
 気を取り直してティアナは明るい春の小道を歩き出し――、道を逸れた。

「なんとなくこっちの気がする!」
 何かに惹かれるように進んでいけば、地面がどんどん急な斜面になっていき。ついには両手両足を駆使してクライミングするに至る。
 陽光がきらきらと頭上で輝いている。
 鳥の声が遠くから聞こえ。
 頂上に辿り着けば達成感に笑みが零れる。
「わあ、島が見渡せる……!」
 絶景。桜の森がまるで雲海めいて雅だ。

「次は。うーん、こっち」
 ティアナは緑の瞳を直感に煌めかせて浸食谷に流れる川に大胆に飛び込んだ。

 ザバーン!

 清涼な水飛沫が気持ち良い。頬を紅潮させ、ティアナは息を継ぐ。そのまま激流に身を任せて流されて行けば、流れ着いた先には草原が広がっており。耀かんばかりの緑が一面に広がる中を大きな竜巻が荒れている。

「あの竜巻に呼ばれている気がする……?」
 ふしぎな感覚を追いティアナは竜巻へと近寄っていく。小さなドワーフの体は危険な予感も感じていたが、危険を恐れていては英雄には、なれない。彼女には勇気があった。

 やがてティアナの瞳は竜巻の中心に神秘的に浮かぶ剣の存在を見つけ出した。
 それを見た瞬間、全身が「これを探していたのだ」という想いに雷が落ちたような衝撃を受けた。ティアナは、この剣と出会うために今日ここに来たのだ。

「中心に……!」
 大竜巻は恐ろしい自然の暴力であった。全身が引き裂かれそうなほどの力、抗いがたく巻き上げられそうな勢い。

 けれど。負けない。

 ティアナはキッと前を見た。どんなに風が強くても、双眸を閉じて堪るかと奥歯を噛み。ユーベルコードを発動させた。
 『六花昌金剛』はティアナの全身を美しく輝く六方晶ダイヤモンドに変化させてくれる。身を護る力を得た代わりに自発的に動くことはできないが――、

(私は、諦めない!)

 竜巻の軌道上で固まればわざと巻き込まれた身体が中へと入る。防護の力は働いて風の暴力から守ってくれた。ティアナは必死に手を伸ばし、剣を掴む。

「絶対、」
 ――掴むんだ。

 だって、英雄みたいに、なりたい。から。

 乙女の願いは、届いた。
 手は届いた。
 必死に掴んだ手に確かな感触が伝わって、その瞬間に嘘のように竜巻は消えた。

「銘が……」
 剣の名は、『アネモストロヴィロス』というらしい。詳しい性能は、まだわからない。
 ティアナは嬉しさを全身で溢れさせ、剣を抱きしめた。

 そして、ふと思う。
「剣を手に入れたのはいいけど、ここはどこだろう」
 冒険の果てに辿り着いたのは、春の草原。遠くに山が視え。桜の森が遠く霞のような存在として見える気がする。
「あっちかしら」
 ティアナの帰り路もまた、勘頼みの冒険となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■バレーナ(f06626)
アドリブ〇

人魚だけが行ける秘密の入江
海の洞
「こんなところがあるなんて。深い所の青は、僕の瑠璃。光りさす場所はバレーナの瞳――翠だね」
導かれるまま宝石色の海を游ぎ泡沫を浮かべ微笑む
そう、もっと游ごう
君となら游いでいけるのだから
はやる心を笑みに映し共に色彩を捜す
「バレーナ?」
揺らぐ水の天蓋に見とれていた時
聞こえた声
彼女に続き海から身を乗りだし
「バレーナ!秘密の花園だ」
花咲く砂浜
揺れる花々
目の前の絢爛に顔を見合わせときめく
「人魚の逢瀬の場所
嗚呼、どんな歌が唄われたんだろう」
どんな恋が咲いたのだろう?

花園の真中、碑石
煌めくものを見つけ近づけば
これは指輪?
海賊からの贈り物かな?


バレーナ・クレールドリュンヌ
■リル(f10762)

アドリブ〇

秘密の入り江の洞窟にリルと一緒に探検へ。
入り江の洞窟は水をたたえた海の洞。
淡く光の差すその場所は、エメラルドの碧、サファイアの青、美しい色の宝石色の海。

その秘密の洞窟に案内役のように游ぐ魚たち。
「リル、素敵な場所ね?ねぇ、もっと游いで行ってみましょう?」
なにかもっと色が見つかるような気がして、急かすように洞窟の奥へ。
水の天蓋に不意に揺蕩う赤の花弁、「あら?」とそれに気づいて水面へ。
そして、気づいたのは、洞窟を抜けた先に、秘密の花咲く吹抜けの砂浜の光景。
「すごいわ、人魚達の秘密の逢瀬に誂えたよう……!」
一緒にその景色にときめいて。
碑石に備えられたそれはきっと……



●ふたりだけの秘密の花園
 そこは、人魚だけが行ける秘密の入江、海の洞。
 入り江の洞窟は水をたたえた海の洞。
淡く光の差すその場所は、エメラルドの碧、サファイアの青、美しい色の宝石色の海。
「こんなところがあるなんて。深い所の青は、僕の瑠璃。光りさす場所はバレーナの瞳――翠だね」
 水を震わせ届く声は水の揺らぎにも似て優しく揺蕩う。
 リル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)が銀細工の歌声を響かせれば、誘われるように魚たちが寄ってくる。純白に幾つも生まれては消える泡沫は真珠めいて世界に清らかな輝きを加えて。
「魚たちが挨拶してくれているわ!」
 バレーナ・クレールドリュンヌ(甘い揺蕩い・f06626)が白銀色の髪を躍らせながら魚たちに微笑みかけた。
 魚たちは麗しの人魚たちを歓迎するようにダンスを踊り、水中を案内してくれる。ゆらり、穏やかな水流。淡い光の中で色が優しく揺れて、夢風景。

「リル、素敵な場所ね? ねぇ、もっと游いで行ってみましょう?」
 なにか、もっと色が見つかるような気がする。
 バレーナは少しだけ急かすようにして、洞窟の奥へとリルを誘った。泳ぎに特化しない鰭はゆうらり、追いかけて。
 珊瑚の唇が歓びの弧を描き、泡沫の中で優しい瞳に瑠璃の花咲く。

 ――そう、もっと游ごう。

 君となら游いでいけるのだから――

 差し出された手を握れば、あたたかい。
 儚く淡い月光めいた尾鰭をゆうらり揺らし、人魚が游ぐ。魚たちは楽し気にマーチを歌いついてきて、まるで海の遠足会のよう。リルがはやる心を笑みに映し共に色彩を捜せば、揺らぐ水の天蓋が幻想めいて美しい。

「あら?」
 水の天蓋に不意に赤の花弁が揺蕩うのに気づいて、バレーナは翠玉の瞳を瞬いた。真珠めいた人魚姫はふわりゆらりと水面へと浮上して。
「バレーナ?」
 リルがバレーナを追いかけて海から身を乗り出せば。
「バレーナ! 秘密の花園だ……!」
 洞窟を抜けた先に、秘密の花咲く吹抜けの砂浜の光景が広がっていた。さらさらと滑らかな繊細な砂浜に神秘的な名前のわからない花が咲いている。愛らしく揺れる花々は甘やかに薫り、春。
 思いがけない絢爛にふたりは顔を見合わせ。ときめきが溢れ。頬が春色に染まる。

「すごいわ、人魚達の秘密の逢瀬に誂えたよう……!」
 バレーナが高鳴る鼓動を楽しむようにそっと胸を押さえて呟けば。
「人魚の逢瀬の場所……、嗚呼、どんな歌が唄われたんだろう」
 リルが目をキラキラさせて想像の翼を羽ばたかせる。

 ――どんな恋が咲いたのだろう?

 そんな花園の真ん中に慎ましく佇む碑石を見つけて。ふたり手をつないで、そっと近づけば、煌く宝石に心奪われる。

「これは指輪?」
 リルが呟く声は、確認のように。
 バレーナはドキドキと指輪を見つめて頷いた。
「この指輪は、もしかして」

 風がふわりと頬を撫で。
 花の香りに包まれて、いっしょに指輪を見ている人魚の瞳は驚くほど優しい。きっと、想いは同じだろう。

 ――碑石に備えられたそれはきっと……

 在りし日の恋が風に吹かれて舞うようで、人魚は砂浜にときめきの花を咲かせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓櫻宵(f02768)と一緒
アドリブ等歓迎

櫻宵
桜、桜!櫻宵の翼の桜がたっくさん!
跳ねて踊るように駆け回る
枝垂れ桜は櫻宵の翼だもん
ボク、大好きなんだ

桜の森にある宝物、ときめくね
ボク、野生の勘を働かせて探すよ!
桜吹雪と戯れて、笑って駆けて
じゃあここにあるのも人魚姫の宝物?

櫻宵は愛しの人魚に何をあげたの?
恋のきっかけ
チョコレートかぁ
櫻宵はショコラティエだもんね
つまり、チョコが剣
あまーいね!

優美に微笑む櫻宵に膨れるボク
枝垂れ桜の花言葉、ごまかし
誤魔化さないで教えてよ!
君の恋物語を

あったー!短剣!綺麗
桜の宝石がきらきら!
よーし!抜いてみる
ぎゅと力を込めて抜いてみる
きらきら煌めくのは
恋物語を秘めた、宝物


誘名・櫻宵
🌸フレズローゼ(f01174)
アドリブ歓迎


ぴょんぴょん跳ねるように歩くフレズに、転ばないよう言いながら
童心に帰ったように心が踊るわ

枝垂れ桜の森、だなんて
あたしの翼とお揃いの桜よ
聖剣、なんてときめくわね
あたしには屠桜があるけれど
その勇者の剣は人魚姫と海賊の恋の、きっかけになったものでしょ?

え?あたしとリルの?
……初めてあげたのは
甘いチョコレートだけれど
も、もう!フレズ!お姉さんをからかわないの!

枝垂れ桜
花言葉は優美
優美な桜の元で伝説を捜すなんて
ロマンチックね
笑顔でごまかしフレズを撫でる

あたしの恋物語は秘密
なんて言っている間に桜の根元に刺さった短剣
フレズ!あったわよ
抜いて、勇者になってみない?



🌸春色フレズが桜に舞えば🍓
 春色の景色をピンク色の髪がぴょこりぴょこりと跳ねている。苺ミルクと共に揺れるのはやわらかな兎耳。フレズローゼ・クォレクロニカ(夜明けの国のクォレジーナ・f01174)が両手いっぱいを広げれば桜世界を抱きしめて独占しているようで。嬉しい。
「櫻宵! さーよ! 桜、桜! 櫻宵の翼の桜がたっくさん!」
 優美に垂れる枝一杯の淡紅の中を可憐な少女が跳ねて。優しい桜のシャワーが苺の少女を彩れば楽しそうにステップを踏んだ弾みに薔薇十字のロザリオも踊るが如く揺れている。
「転ばないように気をつけるのよフレズ!」
 そんな薔薇色ロマネスクへと誘名・櫻宵(屠櫻・f02768)が声をかけながら花霞の瞳を優しい色に染めていた。周囲を彩る春花は甘く薫り、春の妖精のような少女がぴょこぴょこ跳ねている光景に心はウキウキ、背の羽根も気持ちをあらわすようにぴょこりと揺れ。

 ――桜色。

 フレズローゼは嬉しくて堪らない。だって、視界いっぱいぐるりと広がる色は大好きな櫻宵の色なのだ。大好きな薄紅がこんなに優しく降り注ぐ。

「あたしの翼とお揃いの桜ね」
 櫻宵がふとそんなことを言うものだから、嬉しさが溢れてしまう。
「そうだよ! 枝垂れ桜は櫻宵の翼だもん。ボク、大好きなんだ」
 自身の腰翼をふわと揺らして苺月の瞳は甘やかに笑みを浮かべる。

 好きをいっぱい、伝えたい――、

 きっと伝わる。リボンを揺らしてそおっと手のひらを天に差し出し。薄紅がひとひら舞い降りて白い手のひらに花が咲けば、櫻宵の角の桜も満開に。
「なんて可愛いのかしら……! いえ、可愛すぎるわ!」
 櫻宵が眉を下げて悲鳴をあげた。
「イケナイ、この子、変な男が無限に寄ってくる気がするわ! 気をつけなさい男は狼だから! いーい? 変なのが来たらあたしのところにまず連れてくるのよ、あたし、斬るわ」
 まるで目の前に変な男が現れたかのように目が据わり。言葉には本気が籠められていた。

 可笑しなスイッチが入った櫻宵を元に戻そうとフレズローゼは桜の森にある宝物に話題を切り替え、
「ときめくね!」
「聖剣、なんてときめくわね」
 効果はあったようで櫻宵は機嫌よく目を細め。
「あたしには屠桜があるけれど、その勇者の剣は人魚姫と海賊の恋の、きっかけになったものでしょ?」
「じゃあここにあるのも人魚姫の宝物?」
 儚い夢のように散っていく桜のシャワーの中、兎耳のクォレジーナは恋のきっかけを探して元気に桜の海を泳いで跳ねる。
 そして、ふと思う。恋のきっかけといえば。
「櫻宵は愛しの人魚に何をあげたの?」
「え? あたしとリルの?」
 薄花桜の瞳がパチリと瞬き、優しい声は教えてくれる。
「……初めてあげたのは、甘いチョコレートだけれど」

 ――あなたの笑顔が咲きますように。そう想いを籠め

「チョコレートかぁ。櫻宵はショコラティエだもんね。
 つまり、チョコが剣! あまーいね!」
 フレズローゼが言ううちに櫻宵の目元は甘く染まり。
「も、もう! フレズ! お姉さんをからかわないの!」
 ふふ、と笑い声をあげれば――ふたりの世界が、こんなに明るい。

「枝垂れ桜はね、花言葉は優美、というのよ」
 櫻宵がやわらかに言の葉を紡ぎ、
「優美な桜の元で伝説を捜すなんてロマンチックね」
 笑顔で誤魔化し愛しい娘を優しく撫でれば、春色フレズはプクっと膨れてご機嫌斜め。
「むうう、ボクしってるから! 枝垂れ桜の花言葉は、ごまかし! 誤魔化さないで教えてよ! キミの恋物語を」
「ヤダーー! あたしの恋物語は秘密よー!」
 キャッキャと笑い声をあげながらふたりが見つけたのは、優美な桜の根元に刺さった短剣だった。

「あったー! 短剣! 綺麗!」
 桜色の宝石がきらきらと輝いて、少女は嬉しくて仕方ない。大好きな色がこんなに綺麗、と。
 そんな少女に微笑ましく櫻宵が促して。
「フレズ! 抜いて、勇者になってみない?」

 コクリ、とフレズローゼは頷いた。
「よーし! 抜いてみる」
 柄を握る手にぎゅうっと力を入れ。元気いっぱいに抜けば短剣が抜けて。
「すごい!」
「抜けたー!!」

 ――きらきら、桜のシャワーの中で煌めくのは大好きな色。

 手に入れたのは、恋物語を秘めた宝物――

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
ナハトさん(f01760)と
アドリブ等歓迎

大いなる海の散歩を堪能し、笑みを絶やさず
商人の勧めを耳にすれば、彼の瞳をじいと見つめて
どの場所も、とても気になるのだけれど
あなたとは…色彩の溢るる花畑へと行きたいわ

心優しい彼のエスコートを受けながら
目指す先は、春が咲き乱れる花の園
花畑を眺むるのは、これで何度目かしら
どの場所にも、各々の美しさが存在するのね
彼の愛する花畑と、幽谷にて出逢った〝虹色〟という極彩を想起して

花冠と祝福を受け取れば、自然と笑みが溢れる
淡くやわらかな色から、鮮明で艶やかな色まで
気がつけば、ナユのココロは色鮮やかに染まってゆく
あなたと共に過ごすことで、ナユは新しい色を知っていくの


ナハト・ダァト
ナユ君(f00421)と参加
アドリブ歓迎

このタイミングばかりハ、自身の表情ニ感謝ダ
…弱点ヲ知られた恥ずかしさカ、動悸が走っているヨ

不思議と嫌な気持ちでない動悸に首を傾げつつ
隣に立つ少女の視線に気付き
君ノ願い事なラ、何でも聞き届けるサ
少々考え事をしてしまってネ
エスコートは確りさせテ貰うヨ

芽吹きを感じさせる彩色と香りを受け止め
…色んな花畑を見たネ
どれモ同じ言葉だガ、それぞれに色んな魅力があっタ
以前の場所でハ、君ニ祝福を貰ったネ

思い返しながら花々を編んで冠を作り
お返しニこれを渡そウ
君の祝福にハ、遠く及ばないかモしれないガ

君との日々ハ
心地よイ穏やかさニ満ちていル
私も君かラ、様々なものを貰っテいるのだヨ



●夜廻りの月は淑華に
 大いなる海の散歩を楽しんだのち、蘭・七結(恋一華・f00421)は船上で余韻を感じながら改めて人魚姫の言い伝えと孤島に想いを馳せていた。
 商人がツアーの参加者に孤島の説明をして去っていく。ひとりまたひとり、人々は船を降りて思い思いに散っていく。

(このタイミングばかりハ、自身の表情ニ感謝ダ。
 ……弱点ヲ知られた恥ずかしさカ、動悸が走っているヨ)
 ナハト・ダァト(聖泥・f01760)はローブを光風に揺らしそっと自身の動悸を自覚していた。不思議と嫌な気持ちでない動悸。内心で首を傾げる。その千里眼は隠された真理を見抜くが、己に関しては真実を見通す事が出来ない。その深淵。

 頭上には爽やかな青空が広がり、ゆったりと太陽が傾いて。
 ぽっかり浮かぶ綿雲は甘い綿あめにも似て、ふわふわふわりと空を舞う。

 傍らの蘭・七結(恋一華・f00421)が淑やかに風に髪を遊ばせながらナハトの瞳をじいと見つめて微笑んだ。
「どの場所も、とても気になるのだけれど。あなたとは……色彩の溢るる花畑へと行きたいわ」
 少女の視線と楚々とした声にナハトは鷹揚に頷いた。
「君ノ願い事なラ、何でも聞き届けるサ」
 少々考え事をしてしまってネ、と言いながら花畑へと優雅にエスコートする腕は陽光に艶やかに煌めき、一段と優しい。
「ナユもさっき考え事を愉しんでいたのよ」
 道すがら語るのは人魚姫の言い伝えについて。海賊との恋物語。
「御伽噺のことを考えるのは愉しいわ……」
 人魚にまつわる話は他にもあるが、有名なのは悲しい恋の物語だった。七結はそういった話の「もしも」を考え、幾つもの結末を辿る愉しみを知っている。
 この島にまつわる話は、どうだろう――想いを巡らせ、幾つかの結末を夢見れば一層風景が楽しめる。
 ナハトはそんな少女の話を穏やかに聞きながら共に物語の可能性に思いを馳せ、そして景色を楽しんだ。

「もし、海賊が恋をするよりも先に人魚姫が海賊に一目ぼれをしていたら――」
 七結は言葉を切り、ふわりと風が運ぶ春の香りに視線を向けた。

 青空の下で春の花々が咲き誇り、揺れている。
 無垢なる白の花弁が緑に包まれて存在を主張する隣で薄紫の花弁を揺らし天に歓びを向けるように咲く花々がある。
 自然に風に運ばれて根付いた花々は個性豊かで、隙間を縫うようにして多種類が咲き乱れる。気品あふれる薄紅の花弁の隣には淡い恋心を謳う儚い花弁が可憐に色を深め、隣では想像力を掻き立てる赤紫と思い出を揺らす紫が仲睦まじく揺れ。気まぐれに黄色の花が顔を覗かせて。
 遠くまで絨毯のように咲き乱れる一面の花模様。世界が春を謳っている。

「花畑を眺むるのは、これで何度目かしら」
 七結が長い睫の下で花の瞳を煌めかせて呟く。彼の愛する花畑と、幽谷にて出逢った〝虹色〟という極彩を想起して柔らかな東風を感じれば、人ひとりひとりが異なるが如く群生も実に個性豊かで。
「どの場所にも、各々の美しさが存在するのね」
 その場ならではの佳さがある。
 そんな澄明な声が好ましく、芽吹きを感じさせる彩色と香りを受け止めてナハトも柔らかな言葉を紡ぐ。
「……色んな花畑を見たネ。どれモ同じ言葉だガ、それぞれに色んな魅力があっタ」
 花を好む異形は花景色に一層優しい気配を醸し出す。春に囲まれて自身も浮き立つように心躍らせ。この素敵さはあの時、あの少女が教えてくれたのだ。

「以前の場所でハ、君ニ祝福を貰ったネ」
 思い返しながら目の前の少女へと視線を向ける。少女は自身も花畑に咲く可憐な花に似てふわりと儚く微笑んで――その姿がとても大切に想えて。色を選ぶ。

 ――麗しのキミに似合う色を

 白すぎない儚い白の花を摘み、嗚呼、無垢の花言葉が似合うネと目を細め。華やかなラナンキュラスの赤に誘惑を感じて、けれどメインに選んだのは思い出と未来を恵む紫と薄紫。淡恋の薄桃をどうしても入れたくて少し混ぜ、甘やかな花冠が手の中に。
「君の祝福にハ、遠く及ばないかモしれないガ」
 以前のお返しに、と差し出す花冠と祝福は光風にふわりと薫り。

 ――ココロが色鮮やかに染まってゆく

「あなたと共に過ごすことで、ナユは新しい色を知っていくの」
 七結は胸に萌す温かさに蕩けるような微笑みを咲かせた。
 花冠の彩られ微笑む淑華の少女は春の妖精のような艶やかさ。優艶な花姿へと少し眩しく目を細め、ナハトは夜廻りの月めいて瞳に優しい光を湛えて微笑みを返した。

 ――君との日々ハ 心地よイ穏やかさニ満ちていル

 雲は流れ、すこしずつ空の色は移ろい茜に染まる。永遠ならざる季節の花が儚い夢のように花弁を朱に照らされれば花畑が夕の顔を見せ。
 まるで人が人と交わることで新たな自分を発見するのに似ているようだ、と。

「私も君かラ、様々なものを貰っテいるのだヨ」
 花がまた揺れる。異形のローブも、ふわと揺れ。寄せては返す波のごとく。寄せれば寄せた以上を寄せ返して共鳴するようなこころがある。
 春燈す声は、あたたかに。言葉の波は優しく続いて穏やかな時間が続いていく。

 ――少女と異形が、色鮮やかな花の中。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テン・オクトー
お弁当わけていただいて気の赴くままにお散歩。勇者様の聖剣伝説もあるみたいだから一応UCのヤモリさん達を放っておくね。

ずんずん奥へ。静かな湖を見つけてお弁当をいただきます。(内容お任せ。生肉生魚以外ならなんでも食べます)うーん!美味しい!ヤモリさんイモリさん達にもおすそ分け。いつもご苦労様。

湖は海とは違った水面でキラキラ綺麗だね。
ん?湖の中に他所とは違うキラキラが見えるような?イモリさん達ちょっと見てきてもらっていい?
イモリさん達が重そうになにやら輪っかみたいなもの(見目形状お任せ)を拾ってきてくれたよ。投擲ぽいかな?お土産に持って帰ろうかな。

アドリブ歓迎
チャクラム的なものが拾えたら嬉しいです



●シャドウな仲間たちと8歳児の小さな冒険
 ぽかぽか、お日様が温かい。こういうのを麗らかというのだとテン・オクトー(ケットシーのシャーマン・f03824)はふわりと尻尾を揺らした。
 首から下げた小さなどんぐりのペンダントを気ままに揺らし、のんびりゆらりと逍遥するテンの手には商人が持たせてくれたお弁当が入った手提げ袋がある。小さな四肢をふんばって顔をもちあげ道のあちこちを覗き込んでいるのはテンが召喚したシャドウなヤモリたちだ。つぶらな瞳は時折テンを見上げて見つけたものを教えてくれて、次はどうしようかと指示を仰ぐ。
 齎される情報は綺麗な花に蜜蜂が忍び込んだこと、悪戯な小鳥が花を啄んで飛んで行ってしまったこと。そんな他愛もない情報だ。

「平和だな~」
 テンはのんびりと歩みを進め、やがて静かな湖に辿り着いた。お弁当を広げればヤモリたちも寄ってきて皆で長閑な休憩タイム。
 ハンバーグが挟まった真白のサンドイッチをぱくりと齧れば視界の隅で菜の花が揺れ、花の向こうで湖の水が澄んだ鏡のように穏やかに揺蕩い。まっ平な水面は空の色を映してやさしい青を湛えている。
 ちょいちょいと服の裾を引くのはヤモリたち。そしてイモリたち。
「はい、お裾分けだよ~」
 そっと分けてあげれば、シャドウヤモリたちは嬉しそうに飛びついた。
「いつもご苦労様」
 ニコリ、微笑めば湖も一層美しく煌いて。箱の片隅でキラキラ輝く光り輝く苺を啄めば、甘酸っぱい。
「うーん! 美味しい!」
 ふわふわ尻尾をぱたぱたさせて、テンはのんびりとランチを楽しんだ。

「ん? 湖の中に他所とは違うキラキラが見えるような?」
 ふと煌きが目についてテンは青い瞳を不思議に瞬かせた。
「イモリさん達、ちょっと見てきてもらっていい?」
 こてん、と首を傾げてお願いすればイモリたちがぬるりと水に潜っていく。見送り、見守り。パクリと齧りつくのはほくほくのかぼちゃだ。

 ちゃぷり、可愛い音がして。
「あ」
 猫のお耳がぴょこりと揺れた。
 青の瞳の見守る先でイモリたちがよいしょよいしょと運んできたのは、優美なラインが濡れて輝く円月輪。

「わ、わ、重そうなのに頑張ってくれてありがとう。チャクラムかな」
 イモリたちにあわてて駆け寄り円月輪を手にすれば、イモリは揃って誇らしげに胸をはる。褒めてほしそうに見上げる瞳に優しく微笑み、順に頭を撫でてあげればつるりとした感触が気持ち良い。

 円月輪を空に掲げてみれば、清らかな水を滴らせ、陽光を反射して輝く繊細な装飾が美しい。
「お土産に持って帰ろうかな」
 テンはニッコリと呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ
廃墟の村、ですか。ここに来る道中の景色も素晴らしいものでしたが、自分でも分からない何か惹かれるものがあったのか…気が付いたらここに来ていました。

廃墟の家を見るとこの家にはどんな人が住んでいて、どんな理由でここを退去することになったのか。そんなことに思いを馳せてしまいます。
あの館は古びてはいますが立派な外観をしている。持ち主は名のある方だったのでしょうか?勝手ながら少しお邪魔させていただきます。

館の一室で一本の長剣が飾られているのを発見しました。『ブレイブレイド』真に勇敢な者のための剣、と刻印されています。
長らく手入れがされていないようですし、忍びないので船に戻ったら手入れして差し上げましょう。



●狂飆の暗黒騎士と剣の出会い
 硝子の嵌っていない窓。

 人の手を離れて久しいのだと訴えかけてくるような朽ちた廃屋が緑に呑み込まれそうになりながら並んでいる。風が通り過ぎる道には砂利が微睡むように散りばめられていて、密やかに裂く花は清楚な色を添えていた。

 セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は傾きつつある日を感じながら嘗ての村へと思いを馳せる。並び残る家々は何れも居住者を失い、朝も夜も人の温度を迎えることなく。その景色を視る者も、セシリアだけなのだ。

(この家にはどんな人が住んでいて、どんな理由でここを退去することになったのか)
 見上げる家はどこか寂し気で、けれど風は優しくやわらかに春薫る。銀の髪を薫風に遊ばせてセシリアは優しい瞳で建物ひとつひとつを鑑賞し、在りし日の村へと思いを馳せた。
 歩むうちに自分ひとりが時の狭間に取り残されたような気分にもなり、銀の瞳は思わず周囲に人影を探してしまう――、
「あの館は古びてはいますが立派な外観をしている。持ち主は名のある方だったのでしょうか?」
 其の眼が映すのは、嘗ての壮麗さの残滓漂わす廃屋。寄れば緑がひときわ自由に伸びて長く細い蔓が壁を抱きしめてまるで慈しんでいるかのよう。足元で揺れたのは潤う花弁の紫色。中央の花柱とそれを取り巻くう花糸が瑞々しい薄翠を帯び。都を追われた貴人が慰められた逸話もつ花が揺れている。

「勝手ながら少しお邪魔させていただきます」

 無人の館へと律義に断りを入れ、セシリアは折り目正しく頭を下げる。
 白磁めいた繊細な指をするりと蔦に這わせれば優しい感触が伝わり、僅かでも力を籠めれば潰れてしまうであろう頼りなさが尊い。無人の村で生命を感じる。
 外れてそのままになっている扉の残骸を乗り越えて壊れかけの宝石箱のような館に入れば天井に所々空いた隙間に青の空が見える。

 その、澄んだ色が。
 美しい。

 遮蔽する人工物の隙間から覗く空に見守られて部屋を覗いていけば、やがて最奥の部屋に辿り着く。空は黄昏の色に移り夕陽に仄昏い部屋は照らされて。

「あ……」
 声が零れた。

 壁際に長剣が一本、飾られている。

 引寄せられるようにして手に取れば。

「『ブレイブレイド』……、真に勇敢な者のための剣」
 セシリアは刻印を読み上げた。それは、神聖な儀式にも似た。厳かに剣を取り、館を後にすれば背後で紫の花が揺れて静かに見送る。

(長らく手入れがされていないようですし、忍びないので船に戻ったら手入れして差し上げましょう)
 セシリアはそんな考えを抱き空を視る。

 ――世界は夕暮れを迎え、もう、日が沈む。

大成功 🔵​🔵​🔵​

寺内・美月
※アドリブ歓迎
ブロズに乗って島内を探索していたところ、木から突き出ていた杖を見つける。
「…黒曜石製ですか。珍しいですが実戦向きでは…む?」
杖からは尋常ではない殺気が溢れ出ている。
「…きちんと検査したほうが良いかもしれませんね」
この杖により美月が地獄を見るのは数日後の話。



●杖との邂逅
 昼下がり。
 微睡みを誘うような春の気が満ちている。

 寺内・美月(霊兵の軍を統べし者・f02790)はブロズに騎乗して島内を探索していた。戦場にてひとたび翻れば味方に勇気を奮起させる砲兵兵団旗のブロズは美月の命により龍馬となり疾風の如く駆け抜けて、背に乗る少年の長い髪が後ろへと流れて揺れる。
 星の如き煌きを帯びた瞳に映るのは海上とは異なり大地の緑と茶色が混じって流れていく島景色。
 途中川を踏み越え、軽やかにブロズが水を跳ねれば清涼な水気が髪を湿らせ、けれど平坦な緑を駆けるうち、すぐに乾いてさらりと風に流れる。
 空虚な村の残骸をゆったりと見て廻り、美麗な花畑に差し掛かれば花を荒らさぬようにと共に歩き、過ぎれば再び騎乗して。林に差し掛かれば遠くに海が視え。乗ってきた船もちらりと小さく見えるようで、少年は軽く目を細めた。

 ぐるりと見て回る島は広く穏やかだ。

 木を一本追い越せば次の木が迫り、迫ったと思えばもう後ろへと流れている。ブロズがぐんと脚を動かすたびに世界が流れて後ろになる。髪を揺らす風は新鮮に澄んだ島の風。

(あれは)
 ふと前方に何かを見つけて美月はブロズに短く声をかけた。
「ブロズ、」
 止まれ、と囁くように言えば龍馬は従順に脚を止める。ひらりと降りて歩を進めれば果たしてそれは見つかった。

 亭々と天を差す樹木にせり立ち存在感を主張する杖がある。
 木漏れ日がキラキラと斑光を散らしている。葉扇はやわらかに首を垂れて傅くようだ。 根が土の上で太い血管のようにうねり脈打つように広がっている。

 用心深く近寄るが、危険は今の所ないように思える。となれば湧きあがるのは知識欲。これはどういった武具なのだろう。そんな思いに掻き立てられ、逸る気持ち。冷静な理性がその衝動を抑える。歩調はゆっくり、慎重に。

 赤茶色の大樹の幹へ手を伸ばし、美月は杖を鑑定した。深みのある色は日差しを反射して煌き、美しい。
「……黒曜石製ですか。珍しいですが実戦向きでは……む?」
 気付く。
 背をぴりりと刺激するのは、殺気。
 それも尋常ではなく、濃密な殺意。その気配。

「……きちんと検査したほうが良いかもしれませんね」
 美月は眉根を寄せ、その杖を持ち帰ることにした。

 枝葉揺らす風に誘われて上を見れば、緑の天蓋が柔らかに揺れ。自然の揺籠の中にいるような心地になる。
 けれど、腕の中では殺気を溢れさせている杖がある。

「……早めに戻った方がよさそうですね」
 美月は柳眉を顰めて呟いた。

 ――この時の少年は、後日自分の身に襲い掛かる災厄を知る由もなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐々城・想
湖々森・ことり(f03996)と同行

花畑に探しに行くことにするよ
さっそくお弁当タイムになっちゃってるけど
まあ、美味しいからいっか
風も気持ちいいし

ことり、
盗むのはダメだって言ってなかった?(悪戯っぽく
あはは
へーきへーき、隠されてるより
ちゃんと使われた方がいいって

とりあえずその辺歩き回ってみる?
小さい物だったら探せなさそうだけど
なんか目印、ない?

丘っていうか背の高い花が群れてるんだ
探すならこういうとこ?
葉っぱで手、切るなよ

?コレって草で編んだ籠?
確かにこれなら花が枯れても隠れるな
…オレが開けるの?
花と草がぐるぐる巻きだけど…弓?
使ったことないけど

そっちは指輪?
オレには大きそうだからことりにあげるよ


湖々森・ことり
佐々城・想(f04362)と一緒です!

お花畑に行こー!
いい香りだし
お弁当美味しいし♪(もぐもぐ
はい、紺はオムレツ、ユグはミートボールね

でも、ずーっとずっと一面の花畑のどこに武器を隠すのかな?(きょろきょろ

えっえーっ
この場合も盗むことになるの?
うー、想のいじわる

わーい、お散歩!
知ってるお花も知らないお花もいっぱい
鼻歌交じりに
あっちの丘の方はどーお?
大丈夫任せて!頑張って探すぞー!

カゴ?ねね、想あけてみて!
お花の弓?綺麗!
弓使いの勇者様がいたんだね!かっこいい!
ん?なんかまだきらきら
これも花環だけど本物のお花じゃないみたい

んーわたしにも大きいけど
紐通してペンダントにしよっかな!
えへへーお揃い、ね!



●花の丘に隠れて
 パステルカラーの花が東風にそよりと揺れている。
 湖々森・ことり(Péché Mignon・f03996)が花に囲まれてニコニコとパンケーキを口に運び。
「いい香りだし♪ お弁当美味しいし♪」
 温かみのある茶色の瞳が本当に嬉しそうだ。佐々城・想(君色探し・f04362)はそう思い。

(探すんじゃなかったのかな?)
 そっと苦笑を浮かべる。
 ことりと想は伝説を追いかけて花畑に来ていた、はずだった。

 黄色と白の花が揺れるのを背景にピンク色の髪がふわり、舞い。
「はい、紺はオムレツ、ユグはミートボールね」
 黒豹のユグと針鼠の紺平にお弁当を分けていることりの姿は平穏の象徴のようで、微笑ましい。
 自分もコロッケをパクリと口に入れ、想は微笑んだ。サクサクの衣を噛めばじゅわりと肉汁が広がって。
「まあ、美味しいからいっか。風も気持ちいいし」

 お弁当を食べながら話すのは人魚姫と海賊の言い伝え。
「でも、ずーっとずっと一面の花畑のどこに武器を隠すのかな?」
 ことりがキョロキョロと花景色に視線を巡らせ、首を傾げれば。まるで本物の小鳥のように愛らしいと思いながら想が悪戯っぽく茶々を入れる。
「ことり、盗むのはダメだって言ってなかった?」
「えっ、えーっ? この場合も盗むことになるの?」
 目を丸くしてことりがオロオロすれば想は相好を崩さずにはいられない。
「あはは! へーきへーき、隠されてるよりちゃんと使われた方がいいって」
 楽しそうに笑う夜色の少年を見て「からかわれたんだ」と察した少女は頬から耳へ薔薇色を咲かせてむくれてみせる。
「うー、想のいじわる」
 ユグが慰めるように身を寄せてくれば、さらりとした黒毛が肌に嬉しい。
「ごめんごめん」
 想も謝ってくれるので、春色のことりは直ぐに機嫌を直して唇を綻ばせた。

「とりあえずその辺歩き回ってみる?」
 小さい物だったら探せなさそうだけど、と懸念を口にしながら想が立ち上がる。

「なんか目印、ないかなあ」 
 ぼんやりとしたお宝像を頼りに花畑を彷徨えば御伽噺の世界へ迷い込んだよう。
「わーい、お散歩! 知ってるお花も知らないお花もいっぱい」
 花の海をことりは春世界のお姫様のように駆けていく。
「ふんふんふん♪」
 鼻歌交じりに目指すは少し小高い花の丘。
「あっちの丘の方はどーお?」
「じゃあ、行ってみようか」
 ふたり視線を合わせ、手を繋いで走ればそれだけで楽しい。

 辿り着いた先で想は目を瞬かせた。
「丘っていうか」
 その一帯は、背の高い花が群れていた。
「探すならこういうとこ?」
 何かを隠すのに向いているかな、そう思い想が呟けば。足元でユグが同意するように身を寄せた。
「お花の迷路に迷い込んだみたい」
 ことりは目を輝かせてワクワクと葉っぱをかきわけて進む。
「ことり、葉っぱで手、切るなよ」
 想はひやひやと声をかけるが、お嬢様は止まらない。
「大丈夫任せて! 頑張って探すぞー!」

 そして、ついに何かを発見したのであった。

 深い花と緑に埋もれるように、隠されるようにしている――、
「カゴ?」
「? コレって草で編んだ籠?」
 ――それは、籠だった。

「確かにこれなら花が枯れても隠れるな」
 想は感心したように呟いた。

「ねね、想あけてみて!」
 ことりはふわふわと髪を揺らし、はやくはやくと急き立てる。
「……オレが開けるの?」
 視線を向ければうずうずした顔が首肯した。

 花と草がぐるぐる巻きの籠を丁寧に優しく想が開けてみると、そこにはひと目で特別な存在だとわかる弓が眠っていた。

「……弓?」
 使ったことないけど、と恐る恐る手に取れば、不思議と手に馴染む感触が。悪くない。
(使えるかなあ)
 想は弓をじっと見つめた。とても綺麗で、特別な弓だ。

「お花の弓? 綺麗! 弓使いの勇者様がいたんだね! かっこいい!」
 ことりが大喜びで手を叩く。だって、弓をもつ想がとってもかっこいいのだ。まるで、勇者様! とおおはしゃぎする視線の先、想も弓を手に満更でもない様子。
「ん? なんかまだきらきら」
 ふと陽光に煌めく籠の中の何かに気づき、ことりはちょこんとしゃがみこんで籠に手をやった。
 中には、繊細で可憐な花輪がある。

「これも花環だけど本物のお花じゃないみたい」
「そっちは指輪?」
 言われて指環だと気づき。少し、指に填めるには大きいと思うのだ。ことりは不思議な指輪を大切に眺めた。
 まるで御伽噺に出て来るような幻想的な装飾が細やかで、妖精の国のお姫様がこんな指環を填めていそう、と思えば胸が高まり心浮き立つ。

「オレには大きそうだからことりにあげるよ」
 想がそんなことりに優しく言えば、ことりは嬉しくて指環を胸元でぎゅうっとする。
「んー、わたしにも大きいけど紐通してペンダントにしよっかな!」
 言えばユグと紺平も「それがいい」と伝えるようにすりすりと身を寄せてキラキラの瞳でことりを見る。

 爽やかな春の香りを含む風が優しく吹き抜けて、ざあっと周囲の花が揺れ。

 花と一緒になってことりがふわふわと髪と揺らす。覗き込むような目はまっすぐに弟のような従弟へ向けられて。
「えへへーお揃い、ね!」
 まっすぐの温度が温かい。けれど、想はちょっぴり首をかしげて。
「弓と指環だけど、お揃いって言うのかな?」
 言えば、お嬢様は口を尖らせた。
「お揃いっていったら、お揃い!」
「じゃあ、お揃い」
 紫藍の瞳がパチリと瞬く間、目の前の女の子はもう笑顔になっている。

「見つかってよかったね♪」
「この弓、使えるかなあ?」

 鮮やかな緑の中に輝くような春が満ちている。春休みの少年と少女が全身をすすいでいくような風に楽し気な声をあげ、風は笑い声を包むように頬を撫でて――幸せ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】
伝承の一説にある言葉を手掛かりに弟と探索

■探索場所
島の反対にある静かなビーチ。満天の星空の夜に探索

■行動
「足元危ないから気を付けてね」
今夜は新月で少し暗いから
文献によると大潮の干潮時にのみ出現する道があるらしい
「あの岩の辺りがそうじゃない。でも何もないわね」
隠された洞窟の奥には綺麗な小箱。
「魔力の増幅装置か何かみたいね」
中身は赤い宝石のペンダントと青い宝石のペンダント
「私達がもらっても大丈夫だと思うわ」
人魚姫への想いを込めた品だったのかも。弟に青い方を手渡す

最後は波の音を聞きながら星空の下でしばし休憩
いつの間にか眠った弟の寝顔を見ながら、大切な時間を静かに過ごす


フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】
フィオ姉ちゃんと夜のビーチを探索だよ
なんでも海賊が最後に隠した宝物が眠っているんだって

【行動】
「もー、すぐ子供扱いする」
うーんと今が干潮で十字星があっちだからこの辺かな
「あれ、ここの岩が動かせそうだよ」
隠された洞窟の奥でペアの装飾品を発見したよ!
「人魚姫に恋をした海賊がこっそり隠していたのかも」
プレゼント用だったのかも。ボク達がもらっていいのかな?
フィオ姉ちゃんが赤い方でボクが青い方だよ。お揃いみたいだー

疲れたからビーチで休憩
「夜の海って吸い込まれそうで、ちょっと不思議な感じだよ」
フィオ姉ちゃんの側、とっても落ち着くんだけど
波の音を聞いていると眠くなっちゃうよね



●大切な『今』を
 満天の星空の夜、フィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)は弟と静かなビーチを歩いていた。
 2人が調べた文献によれば、大潮の干潮時にのみ出現する道があるらしい――、

「足元危ないから気を付けてね」
 今夜は少し暗いから、とフィオリナが弟を気遣えば。
「もー、すぐ子供扱いする」
 弟のフォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)は少しだけ不満げに眉を寄せた。

 湿り気を含んだ海からの風がフォルセティの帽子を揺らせば、帽子に輝く三日月の装飾がきらりと揺れて輝いた。
 泡をたくさん浮かした潮が凪ぎ。月無き夜の暗闇に波は音をたてて海と陸の境界を緩やかに定めていた。
「うーんと。今が干潮で十字星があっちだから、この辺かな」
 フォルセティが明るい色の瞳を星のように瞬かせ、キョロキョロと辺りを見る。
「あの岩の辺りがそうじゃない?」
 情報分析に長けたフィオリナが弟を導く。

 姉と弟は天鵞絨織の空を背に岩のもとへ歩いていく。風にスカートの裾を煽られて軽く押さえるようにしながらフィオリナは目を瞬かせた。
「何もないわね」
 外れだったかしら、と呟く姉に弟の声が届く。
「あれ、ここの岩が動かせそうだよ」
「え? どこ?」
 フォルセティが軽く押すようにしているのはゴツゴツした肌の灰色の岩塊だ。
「フィオ姉ちゃん、手伝ってよー」
 弟が見上げれば姉はコクリと頷いた。

「「せーの」」
 ふたりで一緒に押してみれば、意外とあっさりと岩は転がり。現れたのはポッカリと四角く切り取られたような地下への扉。引けば外側へと扉は開き、内に洞窟が繋がっている。

「わあ! フィオ姉ちゃん、大当たりっぽいよ!」
「やったわ、伝説の洞窟を見つけたわよ!」
 姉弟は顔を見合わせて破顔した。共に奥へと進んでみれば、隠された洞窟の奥には清楚な装飾がされた綺麗な小箱が置かれていた。

「フィオ姉ちゃん、この箱開けてみるよ」
 弟が目を輝かせて手を差し伸べるのを姉は短く制し、念のためにとデータ解析をした。
「罠はないみたいね、開けてもいいわよ」
 姉からの許可が出ると弟は嬉しそうに小箱を開け、歎美の声をあげた。
「宝物だー!」
 中に入っていたのは、赤い宝石のペンダントと青い宝石のペンダントだった。姉弟の照らす灯りにキラキラと神秘的な輝きを魅せるそれらは、ペアの装飾品だ。
「魔力の増幅装置か何かみたいね」
 フィオリナが冷静に分析し、少しだけ胸を高鳴らせて人魚姫と海賊の恋物語へと思いを巡らせる。人魚姫への想いを込めた品だったのかもしれない、と。
「人魚姫に恋をした海賊がこっそり隠していたのかも」
 姉の言葉にフォルセティはワクワクとしながら、けれど少し心配そうに呟いた。
「ボク達がもらっていいのかな?」
 瞳には優しい感情を帯びている。そんな弟へと姉は好ましく目を細め、青い宝石のペンダントをそっと手に取り差し出した。
「私達がもらっても大丈夫だと思うわ」
「やったー!」
 嬉しそうにペンダントを見ている弟に頬を緩めながらフィオリナは赤い宝石のペンダントを首から下げた。
「つけてあげるわ、じっとしていなさい」
 弟へも同様にしてペンダントをつけてビーチへと戻れば、星々見守る空の下、赤と青が一緒になって揺れている。

「お揃いみたいだ」
 弟が呟いて、姉はコクリと頷いた。
「みたい、じゃなくって、お揃いなのよ」
「そっかあ」
 目を細めて笑う声。その声が嬉しそうで、自分とのお揃いを喜ぶ弟への愛しさが姉の胸を一杯にする。

「夜の海って吸い込まれそうで、ちょっと不思議な感じだよ」
 夜の海を見て座っていると、ふとフォルセティが微睡むように呟いた。
 穏やかな波音と隣に座る姉の体温がとても安らぎ、落ち着いて。星空に包まれるようにしてフォルセティはうつらうつらと夢を見る。

 大切な弟の寝顔が愛らしく、フィオリナはあたたかに寝顔を見守った。そして、海賊と人魚が過去の存在であることに思いを巡らせ。

(この子とのこんな時間も、)
 きっといつか、思い出として思い出す日が来るのだろう。
 自分が。
 あるいは、弟が。

 いつの間にか眠った弟の寝顔を見ながら、フィオリナは大切な時間を静かに過ごすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロー・オーヴェル
どこもかしこも魅力的な場所だ
商人の言葉に従ってもいいが捻くれ者の血が騒ぐ

『島を見渡せるような高い崖の上』
あるだろう?

●そして
「弁当うめぇ!(がつがつ)」

景色がいい場所で食う弁当は最高だな
さすが金持ちいい食材ばかり使ってやがる

ここで一泊でもしてみるか
一応宿泊可能な道具は持ってきた

太陽が月に変わる時
青空が夜空に変わる瞬間
帳が降りて星が大地を見守る一時
高い所からだとまた違った感覚で体験できる

人魚姫さんはこういう場所には来れなかっただろうなぁ……
俺が一緒だったら万難を排して連れてきたものを……

そうそうあそこの木の根元あたりで
二人肩を並べて星を見上げて……あれなんか根元に埋まってないか?
これは……短剣?



●星が大地を見守る一時に
「弁当うめぇ!」
 がつがつと弁当をたいらげているのは、ロー・オーヴェル(スモーキークォーツ・f04638)。

 商人の薦める場所はどこもかしこも魅力的な場所だった。だが、ローの捻くれ者の血が騒ぎ、彼はひとり高い崖の上へと落ち着いていた。
 島全体が一望できる崖上に穏やかな東風が吹いている。

 商人は冒険者出身でもあるらしい。世界を巡り、珍しい文化を積極的に知ろうとしている彼は自然と別世界からの訪問者である猟兵たちと接する機会があったようで、別世界のレシピを元に作らせた数々の絶品料理が弁当に入っているのだった。
 ジューシーなハムカツに齧りつけば耳元でちゃらりとピアスが金属音を立て。
「景色がいい場所で食う弁当は最高だな。さすが金持ちいい食材ばかり使ってやがる」
 絶景ポイントが気に入ったローはふと思う。船に還らず、ここで一泊してみるか。船に戻らなくともグリモア猟兵が元の世界へと還してくれるのだ。いそいそとテントを設置して愛用のシガーセットを広げれば幾何学模様の紋章が傾く夕日を反射して控えめに煌く。

 沈む太陽の残滓が憂愁を湛えて淡く茜のヴェールを広げ、夜の帳が広がって黄昏が侵食されていく。

 ――太陽が月に変わる時
 青空が夜空に変わる瞬間
 帳が降りて星が大地を見守る一時――

 空が、近い。
 ローが見下ろす世界は燃えるような夕映えから藍の静謐へと移り変わり、控えめな白月の光が淡く耀く天も大地も美しい。

「人魚姫さんはこういう場所には来れなかっただろうなぁ……」
 呟く。
 海に活きる生命である人魚姫。
 だからこその悲劇が幾つも世には謳われている。
 彼が所有する自由は、所有していない者がいる。彼はそれをよく知っていた。

 ――俺が一緒だったら万難を排して連れてきたものを……

 そんなことを考えて煙草の吸い口を噛むようにすれば、冷えた空気に煙草が美味い。煙が白く儚くのぼる空を追いかけて見上げれば、瞬く星に呑み込まれるように消えていくのだ。あの星々は嘗ての人魚たちを知っているだろうか。人々が知らぬ日々を想いを知っているのだろうか。
 ローはふっと息を吐き。

「そうそうあそこの木の根元あたりで。二人肩を並べて星を見上げて……」
 視線を落として人魚姫との逢瀬を夢見ていれば、ふと目を瞬かせる。
「あれ」
 シーフの勘が何かがあると伝えていた。

「おし、ちょっくら行ってみるか」
 軽やかに身を起こして木の元へ走れば、頭上で星々が見守っていてくれる。誰も知らない冒険の数々、人の営みをいつも星たちは無言で眺めてきたのだろう。

「なんか根元に埋まってないか?」
 辿り着いた木の根元を慎重に掘り起こして見れば、見事な短剣が眠るように横たわっていた。
「これは……短剣?」

 ローはそっと短剣を手に取る。
 伝説の勇者が帝竜と戦いし時、放った刃。そんな気がして高鳴る鼓動。
「この短剣を使って俺が帝竜を……ガラじゃないな」
 俺は勇者にはならなくていい。そう思いながらも、時代に取り残され隠されたお宝の短剣は寂し気にシーフへと訴えてくるような気がした。連れて行ってくれと。

「一緒に来るか」
 そっと呟く声は、星空に吸い込まれるように消えていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『リザードマン』

POW   :    シールドバッシュ
【手にした盾で攻撃を受け流して】から【生まれた隙に、盾による殴り付け攻撃】を放ち、【衝撃でふらつかせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    曲剣一閃
【変幻自在に振るわれる曲刀】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    テイルスイング
【太く逞しい尻尾による薙ぎ払い攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●帝竜を信奉する者たち
 燃えるような夕映えが世界を染めていた。太陽の残滓が照らす茜の空を染められるがままに色を変えるやわらかな雲が流れていく。雲を流しているのは、自由なる世界を旅する気まぐれな、風。

 ふと猟兵は気配に気づき、息を呑む。
 安全なはずの孤島に怪しい影が蠢いていた。二足歩行の亜人種族、爬虫類の特徴色濃きリザードマン。
 それは「帝竜」を信奉する種族の中でも特に人類に敵対的な者たちだ。人類を「鱗無き者たち」と蔑む傾向があり、但し戦士と認めた相手には敬意を払う一面もある。

 猟兵が息を殺して見守る中、リザードマンたちは軍団をなして孤島をぞろぞろと移動しているのだった。
 脳裏をよぎるのは、ひとつの噂。

 ――嘗て勇者の一行に滅ぼされたという『帝竜ヴァルギリオス』が、千の竜が住まうという忌まわしき『群竜大陸』と共に蘇ったという――

 勇者の武具が隠されたという噂のある孤島に蠢く敵影。放置するわけには、いかなかった。この孤島にはツアーに参加している一般の乗客たちもいるのだ。

💠3章につきまして
 3章は遭遇戦、たくさんの雑魚敵を相手に戦闘を楽しむパートです。2章で獲得した武具を使ってみるもよし、使わずに普段からの愛用武具で戦うもよし、自由に戦闘をお楽しみください。
 「キャラクター的に戦闘が苦手、戦うイメージではない」と言う場合、3章はスルーして頂いても大丈夫です。 もし3章に参加しない場合は、「敵に遭遇せずに帰った」という扱いになります。もちろん、2章で獲得したアイテムはそのままお持ち帰り頂けますのでご安心ください。

 時刻は夕刻~夜です。
 シチュエーション的には、2章の状態でのんびり過ごしていたところに敵を発見し、先制が可能な状態です。

 孤島には散策中の一般乗客もいます。もちろん、商人の船も停留しています。「一般人を守る」、というプレイングを書けば「偶然近くにいた一般人を守るヒーロー」的な描写が入ることでしょう。
 また、戦闘後について触れるプレイングがあれば、ご希望の戦闘後描写を入れることもできます。

 プレイング送信数が多くなり、時間の都合で全ての執筆がむずかしくなった場合は、前章からの継続参加者様を優先させて頂きます。
 (追記)
 Q「夕方っぽく追加OPにあるけど、2章で夜の時間を過ごしていたんだけど」
 A「夕方シチュエーションで戦うか夜シチュエーションで戦うかはお任せします!」
花狩・アシエト
おっちゃん!
弁当の礼だ!助けるぜー

……。
この槍、ちょっと錆びてるけど使ってみてもいいかなーとか
ご本人いらっしゃらないから、少し使っちゃっても気づかれないかなーとか

よーし、見よう見まねで限定槍使いだ!

相棒の戦い方見よう見まね
突いたり、棒術みたいにくるくる「二回攻撃」「力溜め」
敵の攻撃避けるときは、「第六感」「武器受け」でガード

うおおお数が多い……!
しょうがねぇ紅椿使うか
詠唱中は被弾覚悟…!

敵の数を減らすのをメインに動く

戦闘後
……うん、俺やっぱ剣でいいわ
相棒こんなんでよく戦えるなーすげぇヤツ

アドリブ歓迎


宮落・ライア
あーらーらー。お休みのつもりだったんだけどなー。
ま、いっか…さぁヒーローのお通りだよ!

ツアーで来る様な島なんだから平和でなきゃいけない。
オブリビオンは殲滅しなきゃ。
という訳で東奔西走隅から隅まで走り回ってリザードマンは
辻斬りじみた見敵必殺サーチアンドデストロイの錆に消えるのだ!
要は【ダッシュ・ジャンプ・自己証明】で走り回って、【見切り・野生の感】で敵を察知し【剣刃一閃・薙ぎ払い】で辻斬り。

多分他の猟兵さんだってお休みみたいな感じで来たんだろうし頑張らないとな!


ジャスパー・ジャンブルジョルト
楽しい船旅や美味い弁当でもてなしてくれた商人のおっさんに一宿一飯ならぬ一舟一飯の恩義を返すとするか。
まずはトカゲ野郎どもを挑発して、こちらに注意を引きつけるぜ。
かかってきな、トカゲ野郎! 自慢のウロコ、一枚残らず剥いでやっからよぉ!
注意を引けたら、あのレイピアで斬りかかる!
見よ、この華麗なる剣さばき! ……って、あれ? 俺の体、勝手に動いてる? 俺が剣さばきを披露してるんじゃなくて、剣が猫さばきを披露してるぅ?

●戦闘後
レイピアに名前を付けてやろう。ピアノの精霊(と決めつけた)にもらったから……『ぴあの』だ!(そのまんま)

他の猟兵の引き立て役や敵の噛ませ犬役など、お好きなように扱ってください。



●ヒーロー、参上
 船上の人々は恐怖に全身を震え上がらせていた。
 どこから現れたのか、島から次々と船に向かってくるリザードマンの軍勢が彼らの眼前に広がっている。夕焼けを背に蠢く軍勢は、まるでこれから起こる虐殺を暗示するかのような鮮血の色に似て。
「どうなってるんだ! この島は安全だって言ったじゃないか!」
 ツアー客が恐慌に陥り、商人が真っ青になっている。
「み、皆さん。おち、おちついて――ください、こんなこともあろうかと、護衛に冒険者たちを雇っていますから」
 雇っていた冒険者たちが船の前に立ち塞がり防衛陣を敷いているのを示すが、押し寄せる軍勢を視れば圧倒的に数が足りないように見えた。武器を構える冒険者も顔色が悪く、分が悪い戦いだと思っていることは明白だった。
 そして。
「きゃああっ」
 悲鳴があがった。
 乗客が島へと注目している隙に海からのそりとリザードマンが船に這い上がってきたのだ。
 リザードマンは瞳に知性の煌きを見せ、真っ直ぐにツアーの主催である商人の首級をあげんと船上を駆け、狙いを定めて曲刀を振り上げた。
「あ、あわわわ」
 尻もちをついて腰を抜かす商人は振り下ろされる曲刀に固く目を瞑り死を覚悟した。しかし。

「グアアアッ!?」

 ――響いたのはリザードマンの悲鳴だった。

 商人が目を開けると、そこには灰白の髪に黒衣を纏った細身の男が立っている。手にはリザードマンを貫く槍がある。
「あ、あんたは」
 どさり、とリザードマンが地に伏せて動かぬ骸となる。人々がざわりと遠巻きに見守る中、男がくるりと黒の瞳を向け。その瞳が意外にもあたたかな色を宿している。
 花狩・アシエト(アジ・ダハーカ・f16490)が口の端を吊り上げ、笑った。
「おっちゃん! 弁当の礼だ! 助けるぜー」
 視線は船に登ってきた数体のリザードマンを補足した。目を眇めるようにして走り、槍を構え。
(この槍、少しぐらい使っちゃっても気づかれないよなー、錆びてるけど敵、倒せたし)
 この男、実は槍を使ったことがないのだが。
(見様見真似でなんとかなる!)
 相棒が槍を使う姿は見慣れたものだ。戦闘センスのあるアシエトならば、ちょっと見れば真似するのは朝飯前だ。
「こんな感じだろ……!」
 型を遊戯めいて真似して突き出せば、リザードマンが対応する間もなく貫かれ、あっさりと絶命。アシエトは何の感慨もなく槍を抜く。元ヴィランのダークヒーローは凄惨な戦いには慣れていた。
 近くの女性を狙っていた別の個体へとくるりと体ごと廻転させ、猛打をくわえる。だが、耳朶に別の方角からの新手を知らせる悲鳴が届きアシエトは内心で焦燥の声をあげる。

(うおおお数が多い……!)

 一人で対応するには厳しい、と思いつつアシエトが眼前の一体を急ぎ斬り捨てた時、快活な声が船上に響いた。

「かかってきな、トカゲ野郎! 自慢のウロコ、一枚残らず剥いでやっからよぉ!」
「おっ?」
 リザードマンに挑発を放ち乗客の前に立つのはふわりと尻尾を夜風に揺らして琥珀の瞳をきらりと耀かせるジャスパー・ジャンブルジョルト(JJ・f08532)だ。
「我が手に出でよ、聖剣! 我が身に宿れ、剣聖!」
 勇ましく片手を天に向ければなんとその手に館で入手した薔薇のレイピアが顕現した。それは、聖なる剣。
「そっちも手に入れたのか」
 アシエトが猟兵仲間へと声をかける。
「頼もしいぜ、そっちは任せた」

 同時に陸地に姿を現して冒険者たちの前に立つのはポニーテールを風に靡かせた宮落・ライア(英雄こそが守り手!(志望)・f05053)だ。
「あーらーらー。お休みのつもりだったんだけどなー」
 声はどことなく嬉しそうである。
「ま、いっか……さぁヒーローのお通りだよ!」
 オブリビオンは殲滅だ。赤い目がキラリ煌きライアが高く掲げるのは身の丈ほどもあろうかという大きな剣。戦うための道具であることがひと目で伝わる無骨な刃は少女が使うにはあまりに大きく。だが少女は軽々とそれを振り下ろし、重量を見る者全てに伝える豪風を巻き起こした。
 一刀。
 一撃。
 悲鳴と共に敵の先頭を走っていた十数体が纏めて血飛沫をあげて地に転がる。すぐ後を続いていた敵が仲間の死を認識する間もなく急に倒れた体に足を取られて倒れ。混乱が生まれた。
「はっはっはー!」
 笑う声はおひさまのように。
 青のリボンは見る人に真昼の青空を思い出させる。
 太陽のような少女は大きな剣を手に。笑う。
「もう、大丈夫!」
 その声により人々は希望を知る。

 船上ではジャスパーの挑発に激昂しながら一斉に飛び掛かるリザードマンの姿。そして館の地下で発見したレイピアを構えるジャスパーの姿。
「誇り高キ戦士の剣ヲ受けテミヨ!」
 1体が変幻自在の曲刀を閃かせ、ジャスパーへと迫る。
 ジャスパーは後ろへ下がろうとし――だが、身体は横へと動いた。
「ん? まあいいか」
 長く重い刀身の切っ先を敵へと向けたまま一撃を避け、カウンターとして。
「見よ、この華麗なる剣さばき!」
 言いながら身体は鋭い突きを放っている。
「……なんか俺の体、勝手に動いてる?」
 疑念が口から零れた。剣の軌跡は淀むことなくケットシーの身体能力をフルに発揮し、まるで熟練の使い手のよう。
「俺が剣さばきを披露してるんじゃなくて、剣が猫さばきを披露してるぅ?」
 円舞曲のように華麗に猫さばきを魅せるジャスパー。その動きはレイピアによるものなのだが、操られたものだろうが自力だろうが人々にとっては関係ない。
「あのケットシーは名のある剣士に違いない」
「伝説の勇者の末裔か……!」
 そんな声が猫耳に届き、ジャスパーはおヒゲをピンとした。
「にゃはははは! 俺はタフでクールでダンディな放浪剣士さ!」
 もふもふ尻尾をご機嫌に揺らし、放浪剣士は敵を次々と地に沈めていった。

「ママ、あのケットシーさんつよいね」
 ツアー客の親子が交わすやりとりがまたひとつ耳に届き、ジャスパーは気分を高揚させ。
「ネズミ色の毛皮がママのポシェットに似てるね」
 言葉にはちょっぴりテンションを下げるのであった。

「ナ、ナンダ! 手練レがイル!」
 陸と船と、3人の猟兵の存在は暗雲蹴散らす清風の如く。
 くるりと舞うが如くリザードマンを物言わぬ死骸へと変える姿は敵にとっては恐怖の対象となる。乗客と商人にとっては伝説の勇者を見ているかのように思えた。

「見事ナ、戦技ヨ……!」
 爬虫類の喉と舌が紡ぎ出すのはぎこちない言の葉――、焦りつつも彼らは強敵を称える色を瞳に浮かべていた。
「お前ラと戦えルことヲ、誇りニ思ウ!」
 吐く言葉は戦士として。

「誇り、ねえ」
 敵に認められるというのは初めてのことではなかった。
 嘗て悪だった男は、薄く笑う。
「ま、ヒーローだからな」
 アシエトは敵の群れへと舞うが如く斬り込み、一振りごとに死の山を築き。
 繰り出した槍が敵の肉を抉り貫き、だがその一瞬を突いて間合いを詰める別の個体の存在に。
「ああ、めんどくせえ」
 曲刀の間合いを嫌い敵をぶらさげたままに後ろへ跳ぶが、背後にも敵が迫り。
「しょうがねぇ」
 アシエトは槍に貫かれたままの敵の体ごと槍を振り回す。風唸らせる轟音。肉薄し今にも曲刀を振り下ろそうとしていた敵が纏めて蹴散らされ。
(これたぶん、槍の戦い方じゃねーよな)
 冷静な頭の片隅でそんなことを考えながら肩を竦めた。
「覚悟しロ!」
 後続のリザードマンが怒号を放ち、後続が駆け寄ってくる。
(被弾覚悟でやるしかねーな)
 アシエトはユーベルコードを発動させるための詠唱を開始した。詠唱の隙にその命を刈り取らんと迫るリザードマンたち。

 と、その瞬間。

「サーチッ」
 ライアが船へと飛び乗り、迫るリザードマンに体当たりするようにして着地した。
「アンド」
 ひまわりのような笑顔。
 大剣を力いっぱいに横に薙ぐ。ぶん、という音は聞き慣れたものだ。体ごと廻転すればその身自体が台風のように。

(手が届く場所。守れるものは、全部守る)
 決意を胸に。
 力は篭る。
 渾身。

「剣刃、一閃!」
 元気に技名を叫べば子供たちが歓ぶヒーローのように敵が薙ぎ倒され、大技の隙に背後を突こうと陸から寄る敵影あれば、
「落ちろ落ちろ」
 今度はアシエトの声と共に鮮やかに椿の花びらが戦場に巻き起こる。詠唱が完成し、『紅椿』が敵を狩る猛吹雪となりて船の周囲に降り注ぎ。
「この『銀色』の放浪剣士に任せろ~い!」
 さりげなく銀色毛並みをアピールしながらジャスパーが駆け、華麗な剣捌きで残党を処理して人々を魅了する。

「すごい……!」
 人々の驚嘆の中、たった3人の猟兵はリザードマンの軍勢を一掃してしまった。常人離れした戦闘力を持つ彼らは誰の眼にも明らかに『特別』な存在なのだった。それはまるで、伝説の勇者のように。

「……うん、俺やっぱ剣でいいわ」
 人々が尊崇の視線を寄せる中、アシエトは槍を拭いながらそんなことを呟いていた。
(相棒こんなんでよく戦えるなーすげぇヤツだ)
 血糊を拭った槍は相変わらず錆びていたが、実用に耐える性能があることがわかり。
(これ見たら相棒なんて言うかな?)
 アシエトは少しだけソワソワと相棒のことを思うのだった。
「ん」
 ふと見れば小さな男の子がアシエトを見ている。
「なんだ」
 鋭い目を向ければ、男の子はビクッとした。
「あー」
 頭をぐしゃぐしゃとして肩を竦める。怖がらせてしまったか、と反省して口の端を吊り上げるようにすれば、男の子はおずおずと。
「ぱぱを、ありがとう」
「ん? ああー」
 なんとこの男の子、商人の息子だというのだ。ようやく立ち上がれるようになった商人は息子ともどもペコペコと頭を下げ、感謝の言葉を重ねるのであった。

 一方、ライアはというと、準備体操のように体をほぐし。
「ツアーで来る様な島なんだから平和でなきゃいけないね」
 元気に陸へと飛び降り、走り出した。
「全部! さーち! あんど! 討伐!」
 全ての敵を退治してくる、と言えば人々は呆然とその背を見送る。
「こっちにもまたくるよ! 敵が出たらね! 呼んだらすぐ駆けつけるからね! ヒーローだからね!」
 叫ぶ声が遠くなる。

「頑張らないとな」
 呟く声は、海にぽっかりと浮かんでいた時よりも断然活き活きとしているのだった。それもそのはず、
「そのために、いるのだから」
 ライアは自らの存在をそう考えているのだった。

 そしてジャスパーはというと、レイピアを労うように目を細め、語りかけていた。
「名前を付けてやろう。ピアノの精霊にもらったから……『ぴあの』だ!」
 名前をつけてもらった『ぴあの』は月明かりの下でキラキラと輝いて見えた。

 船上の人々は身を寄せ合い、今さっき見た戦いについて興奮気味に語り合い。
「一生、語り継ぐよ」
 そう言って笑うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リアン・ローリエ
【SPD】
アドリブ大歓迎です。

あの人達は、リザードマン……初めて見ました。
何とか話し合いで穏便に済ませる事は出来ないでしょうか……。
「それは無理でしょうな」
えっ。
「彼等は人類とは敵対的ですから」

……といった感じで、
リザードマンについて2章で知り合った、
魔豚ロースさんの豊富な「世界知識」で説明を受けて、
戦う覚悟を決めようと思います。

私のUC、「私の周りが何時でも何処でも春認定される大魔法」を使って、
強化された全力魔法効果で巨大なホウセンカを召喚します。
その弾ける種をリザードマン達に向けて発射して、吹っ飛ばしちゃおうと思います(属性攻撃)。
ホウセンカの種は、それはもうスゴイ勢いで弾けるのですよ!。


レイチェル・ケイトリン
敵の出現、そうだよね。

「念動力」で静かに跳びあがって「目立たない」ように「スカイステッパー」を使って、状況をみて「情報収集」で一般人さんたちをさがして船まで避難してもらうね。

その避難も敵にみつからないように「地形の利用」でかくれながら誘導するの。

一般人さんたちの避難が終わったら「拠点防御」で船を守るよ。

敵を「スカイステッパー」でけっとばして「吹き飛ばし」てね。
「かばう」技能もつかえるから。


ここもそういう世界、オブリビオンにいつおそわれてもおかしくない……でも、わたしはこわくない。

「不慮の事態」、こういうことにそなえてくれてるアルトワインさんのバックアップがあるからね。


セシリア・サヴェージ
オブリビオン!それにあれは…船で見かけた男性?どうやら囲まれているようですね。

時は一刻を争う。男性を【かばう】ために突撃します!
この数相手では無傷ではいられないでしょう。ならばUC【血の代償】で受ける傷すら力に変えて戦うまでのこと。
男性を守るために傷を怖れず死力を尽くす!

突撃時に思わず握っていたブレイブブレイドで斬りつけてしまいましたが、手入れが必要なほどの状態だったのに今では輝きすら放っている。
真に勇敢な者のための剣…なるほど、このような状況でこそ真の力を発揮する勇者のための剣だったのですね。

(戦闘後)またあなたを怖がらせてしまいましたね…ですが、命を救うことができて本当によかった。


リヴェンティア・モーヴェマーレ
▼アドリブ&他の方との絡み
大歓迎!
もり盛りのモリOK

▼本日のメインの子
カラくん(ナルシストな普通のハムスター)とらんらん(姉御肌なチンチラ)
他の子が居てもOK

▼【SPD】
あらあらぁ…
のんびりまったり過ごすはずでしたノニそれを邪魔する悪い子達が出て来てしまいましタ…

え…カラくん『俺に任せろ』って言うんですカ?

さっきお友達になったハムスターの架羅君とお話しながら敵を見て、少し心配になっていれば姉御肌の藍が自分に任せろと言わんばかりに、架羅君を背中に乗せて戦闘態勢
さながらスライムナ●ト

(か…可愛いー!)

ハッ…!きゅんきゅんしている場合ではありません!
私も負けじとUCで更に精鋭部隊を召喚して攻撃でス!


テン・オクトー
楽しいピクニック気分で帰ろうと思っていたけれど、遭遇してしまってはそのまま素通りするわけにはいかないね。

わわ!一般の方が危ない!
思わず先程拾った円月輪を投げちゃった。
あ、割といい感じに使えるかも?
お家戻ったらちゃんと磨いてあげよう。

POW
いつもなら(UCの)お祖父ちゃんを喚ぶところだけど今日は折角くつろいだばかり。だからボク独りで頑張るよ。
奇遇だね、ボクもリザードマンさんと同じような盾持ってるんだ。【盾受け、気絶攻撃、衝撃波】等で応戦するよ。
選択UCで盾ではガードできないくらい、地形もろともどっこん!破壊しちゃうよ。

連携アドリブ歓迎です。


ティアナ・スカルデット
【POW】
川に沿って上流を目指す
刻は夕暮れ
沼地に差し掛かった辺りでリザードマンを発見

こんなところにリザードマン
本来はここには存在しないはず
外来種かな
駆除した方がよさそうですね
しかし数が多いですね
運よくまだ相手に見つかってない様子
背が低いので見つからずに済んでいるようだ
【地形の利用】して相手に見つからない様に隠れる

数が多いので【先制攻撃】で【アースジャイアント】

地面に左手を付けて詠唱

『堅き岩より生まれし存在
その結ばれし鎖を断ち切り
今こそその呪縛より解き放たれ
我が意によりて
我が成すままに
我に従い力となれ』

敵を一斉に【なぎ払い】

数を減らした所へ突撃して
アネモストロヴィロスの性能を試してみる


明智・珠稀
美しいレイピアですね…!(うっとり)
このレイピアも、あの勇者伝説の武具だったりしますでしょうか。
だとしたら、とても光栄ですね、ふふ!
僭越ながら…【薔薇奏風】と名付けましょう。
大事にいたしますね、人魚姫さん。ふふ!

■戦闘
…おや。敵、ですね。
ふふ、このレイピアと私の相性はいかがでしょう…!

(あぁ、風のように軽い…!)【2回攻撃】
(鋭い突風のような突きの力強さです)【衝撃波】【吹き飛ばし】
「さぁ、風と音楽の力を浴びてください…!」
UC【青薔薇吐息】を
「いつも以上に青薔薇の花弁が美しさと鋭さを増してます…!」
油断せず、敵を突き倒す

■戦闘後
今度来た時はピアノを直したいものですね、ふふ!

※アドリブ大歓迎♡


常盤・禊
おや?誰かいるようですね…このような所まで来る方がいらっしゃるとは(リザードマンたちを視界に入れ)っと…人間ではありませんでしたか…敵、ということで良いのでしょうか…まぁ、良いでしょう。彼等?はやる気なようですし…戦う力がないものにとってはきっと彼らの討伐を望むでしょうし…やりましょうか

【ヘビーアームド・ウェポナイズ】展開…移動速度も何も…抑、私は移動力などそこまでありませんし…

・基本方針
01で受けて、02で叩き切る。以上

※彼女はかなりの脳筋です



●孤島巡る攻防
 穏やかな平穏に心を安らがせていたレイチェル・ケイトリン(心の力・f09500)は遠くの軍勢を発見して静かに空へと飛びあがる。

(敵の出現、そうだよね)

 目立たないようにと留意しながら空を蹴り移動していけば、軍勢の進路にてくつろいでいる数人の一般客の姿を発見した。
 一般客も敵の軍勢も、まだ互いに互いを視認できていない距離。レイチェルは空に溶けるような繊細な髪を風に舞わせ、ふわりと一般客の前へと降りた。
 その姿は、まるで空から降りてきた天使のように。
「あ、あなたは」
 目を瞬かせる人々へと青の瞳が神秘的に向けられる。鈴の鳴るような声は落ち着いたトーンで言葉を紡ぐ。
「ここに、リザードマンの群れが近づいています。まだ、皆さんにはきづいていません」
「な、なんだって」
 ざわりとする人々にレイチェルはふわりとスカートを風に翻しながら空へと飛んでみせた。
「リザードマンたちに見つからないで船までたどり着ける安全な道を、わたしが先導できます。ついてきてください」

 人々は落ち着いた少女の声と天使のように空に浮かぶ可憐な姿に縋るような眼を寄せて頷いた。
「お……おねがいします、天使様」
「わたしは」
 天使ではない、と言いかけてレイチェルはふと言葉をつぐんだ。不安と戦う人々にとって、超常たる神の御使いの存在はどんなに頼もしいことだろう。
「わたしは、皆さんを必ず、守ります」
 だから、安心して。
 レイチェルは『天使のように』笑顔を浮かべた。夕日を背に微笑む白銀の少女は人々にとって紛れもなく救世主であった。

「迂回していきます。森は、だめです。敵の姿が木に隠れてしまって安全な道を割り出しにくいから。だからわたしたちは、一度反対側へとまわって遠回りして船を目指します」
 レイチェルはそういうと船と逆方向へと人々を導いた。

◆お花畑の攻防・1
「あらあらぁ……」
 リヴェンティア・モーヴェマーレ(ポン子2 Ver.4・f00299)がぽかんと呟く。視線の先にゾロゾロと花畑を移動中のリザードマンたちがいた。
「のんびりまったり過ごすはずでしたノニ」
 邪魔をする悪い子たちの出現にリヴェンティアは困ったように眉を下げ。密やかにため息をつく。
 愛らしい動物たちとお菓子を食べたり絵を描いたりしてのんびりと過ごすのが好きなリヴェンティアは、あまり荒事は好まないのだ。もちろん、戦う能力は有しているがぽかぽかのお日様のもとでお洗濯をしたり誰かのお世話をして喜んでもらうほうが、ずっと楽しくて、嬉しい。楽しそうに遊んでいる「うちの子たち」を見ているほうがずっとずっと、幸せ。

「残念な気持ち」
 ふう、と儚げに睫を伏せれば架羅くんが姫を護衛する騎士のような面持ちで前に出た。薄青の毛がやわらかく風に揺れ、リヴェンティアが先ほどプレゼントした紺色の宝珠が清らかに煌めく。

「え……カラくん『俺に任せろ』って言うんですカ?」
 すっかり意思疎通ができるようになったリヴェンティアが目を瞬かせる。架羅くんはキリッとした表情(?)で頷くと敵に向かっていく様子。

「エエト……、大丈夫、でしょうカ」
 愛らしいハムスター姿からは、戦闘力が窺えない。対する敵は武装したリザードマンの一隊だ。とても危険に思える。

 すると、姐御肌の藍ちゃんがずいっと前に出た。
「あ、藍ちゃん」
 藍ちゃんは自分に任せろと言わんばかりに胸を張り、そして――四つん這いになった。

「!?」

 リヴェンティア(と他の動物たち)が見守る中、なんと藍ちゃんの背中に架羅くんが乗った! そして戦闘態勢をとれば、さながらスライ●ナイト。

(か……可愛いー!)
 リヴェンティアが胸をキュンキュンさせて目を潤ませている間に藍ちゃんライダーな架羅くんは勇ましく敵の群れへと突進していく。

「ナ、ナンダ! ナニカキタ!」
 リザードマンの群れが混乱に陥った。暗闇の中、足元を素早く駆け抜けては鱗に歯を立てる得体の知れない小さな影。正体を知ればなおさら混乱は深まる。
「ハ、ハムスターガ!?」
「チンチラに騎乗したハムスター!?」
 リザードマンもびっくりであった。

 そんなリザードマンたちの反応もリヴェンティアにとっては「どう? 吃驚したデショ! うちの子は凄いのデス(えっへん)」という陶酔に繋がっていたのだが。

「ハッ……! きゅんきゅんしている場合ではありません!」
 ふと冷静さを取り戻したリヴェンティア、ユーベルコードを紡いで更なる精鋭部隊を呼び出した。
 『Wonderful Rush』で召喚されたのは――精鋭のチンチラやハムスターたち。
 しかも、先陣を切った2匹を真似るかのように2匹で1組となりライダースタイル(謎)で敵へと騎馬兵団として押し寄せていくのだ。

「GO! GO! ハムチャンズ!」
 リヴェンティアがチアガールのように応援すれば士気高くライダーハムチャンズが敵に押し寄せ、

「ナ、ナゾノ軍団ガ!!」
「ココは危険ダ!!」
 リザードマンたちはハムチャンズに群がられて這う這うの体で逃げていった。

 逃げていった先には、実は別の猟兵がいるのだが。

◆お花畑の攻防・2
 リアン・ローリエ(春色スパイス・f13278)は花畑に身を潜め、リザードマンの軍勢を見ていた。リヴェンティアのハムチャンズにから逃げ出した残党である。
「あの人達は、リザードマン……初めて見ました。何とか話し合いで穏便に済ませる事は出来ないでしょうか……」
 リザードマンはこの世界を生きる亜人種族だ。何をしに来ているのかはわからないが、盾や曲刀を手にし、服を纏って二足歩行する彼らが知性を備えているのは間違いない。時折仲間同士でなにやら会話もしている様子なのだ。ならば、話をすることができるのではないか。
 リアンはそう考え――、

「それは無理でしょうな」
「えっ」

 異を唱えたのは、魔豚ロースだ。リアンの忠実なる執事は主への敬意を前面に出しつつ、恭しく教えてくれる。
「彼等は人類とは敵対的ですから」
「そうなのですか。教えてくれてありがとうございます」
 リアンは目を瞬かせた。執事はそんな主へと注意を喚起する。
「ご注意ください、我が主よ。かの種族は帝竜を信奉する種族でございます」
「オブリビオン・フォーミュラという噂の、帝竜ですか」
 リアンはリザードマンを見る目を改めた。
「放置しておけば世界の滅亡を招く――あれは、そういった種族なのです」
 執事の声にリアンはそっと頷きを返した。
「それならば、放置するわけにはいきません」
 リアンは若干十二歳の少女でありながら、特別な役割を持つ存在だった。それがゆえに少女は「世界の為」に必要なこと、大切なことを他人に任せるのではなく「自分が為す」決断をすることができる。

「わかりました。私が、対処します」
 純真な瞳。優しい瞳に決意を浮かべ。
 手にするのは精霊が変じたプリムラ・ステッキ。

 春色の少女は春を喚ぶ力を持っている。

「緑が芽吹き、花は咲く、」
 呟く声は小鳥が囀るにも似て。

「陽射し降り注ぐは常春の大結界」
 少女の周りへと優しく祝福の光が満ちる。ふわり、と姿を見せたのは天に向かってやわらかに緑葉を広げ可憐な花弁を煌めかす巨大なホウセンカだ。

「これは、お見事ですな」
 執事が感嘆するのを耳にリアンは優しくホウセンカを撫でた。
「あのリザードマンたちがわかりますか? あの者たちは、春の敵なのです」
 春の主が囁けばホウセンカはぷにっと身を震わせ、勢いよく種を発射した。巨大なホウセンカの種は無警戒だったリザードマンの群れへと飛んでいき、全弾を命中させて一瞬で群れを壊滅させた。

「ううむ。自然の力とは侮れぬものですな」
 執事がうなる。
「あの敵がこのような技で……」
「力を貸してくれてありがとうございます!」 
 リアンはホウセンカへと礼節をもって優雅に礼を言い、微笑む。そして倒れている敵へもほんの少しだけ悼むような瞳を向けるのだった。
 そして、魔豚ロースへと視線を移し。

(この使い魔は、伝説に謳われるような人たちに仕えてきたと言うけれど)
 先ほど情報を提供してくれた事を思い出し、知識は間違いなく豊富なのだろう、と実感する。そして、思う。
「私は、貴方に相応しい主であるようにと気をつけましょう」

 執事は主のそんな在り様が好ましく、敬意の念を深めながら頭を垂れるのであった。

「あ、一般客の方と猟兵の方が」
 リアンが呟く。

 視線の先に、船に向かい並んで歩く人々と、人々を励ましながら先導するレイチェルが見えた。
「合流します!」
 リアンはレイチェルに合流し、そしてすぐにリヴェンティアとも合流を果たすのであった。 
「みんなで船を目指しまショウ、の気持ち!」
「皆さん、安心してくださいね」
 少女猟兵たちが元気よく言えば人々も鼓舞され、表情を明るくする。

◆湖の攻防
 一方、湖でくつろいでいたテン・オクトー(ケットシーのシャーマン・f03824)の耳がピクリと揺れた。足元で矢シャドウヤモリたちが敵襲を知らせてくれている。敵はまだこちらには気付いていない。
「うん、隠れるよ」
 危険を知らせ心配そうにしているヤモリたちに頷いて、テンは近くの茂みへと姿を隠した。そっと見守る視界の中、リザードマンの群れはぐるりと細い小道を歩いていく。

 小道の先には、家族連れの一般ツアー客がいた。
「わわ! 一般の方が危ない!」
 自然と体は動いた。フリスビーを投げるように円月輪を投げれば、輪は音もなく飛んでリザードマンの鱗を切り裂き、肉を断つ。
 悲鳴をあげて1体が倒れ伏し、周囲の数体が目を瞠る。

(思わず投げちゃった)
 テンは投擲の余韻を手に感じながらツアー客の前に立つ。

 薄闇の中現れた小さなケットシーの勇姿と放たれた幼い声にツアー客が戸惑いを露わにする。
「坊や、親御さんはどうしたんだい、はぐれちゃったのかい」
 太ったおじさんがそう言っておろおろと手を差し伸べ。
「一緒に逃げよう。おじさんたちと行こう」

 くるり、と身ごと振り向いて青い瞳が真っ直ぐに注がれた。
 薄昏い中、仄かに光るような煌めきは深い色を湛えている。
「お祖父ちゃんはいるけど」
 今日はくつろいだばかりだから。テンは優しい瞳でそう思った。
「大丈夫」
 ニコリと笑えばやわらかな毛が風にそよぐ。
 その背にリザードマンが迫り。
「い、いかん!」
 泡を喰ったツアー客が石を投げるがリザードマンが盾で受け流し、「あ、あわわ」
 腰を抜かして蹲るツアー客。

「鱗無シの腑抜けガ」
 リザードマンは侮蔑の表情を浮かべ、そのまま盾で殴りかかろうとした。
「させないよ」
 テンは丸っこい盾を構えて割り込んだ。
 金属音と共に火花が散る。
「奇遇だね、ボクもリザードマンさんと同じような盾持ってるんだ」
 驚きに目を瞠るリザードマンへとニコリと笑顔を見せ、テンはフレイルを渾身の力で揮い叩きつける。

 どっこーん!

 轟音と共に敵が吹き飛び、衝撃は地表すら砕いてその一撃の大きさを雄弁に語る爪跡を残す。
 ユーベルコード『グラウンドクラッシャー』の一撃。地形すらも破壊する大技は敵味方の度肝を抜くのであった。

「あ、あんたはいったい」
 パクパクと口を動かしてなんとか言葉を形成するツアー客へとテンは優しく手を差し伸べた。
「あっちに、味方がいるみたい」
 ケットシーの聴覚は他の猟兵が一般ツアー客を誘導する声を捉えていた。
「一緒に合流しよう。みんなで避難すれば、怖くないよ!」

 そっと掴んだ手は紛れもない子供の手であった。
 小さく、ふわりとやわらかく、そして、温かい。
 幼いテンに励まされるようにして歩く一般ツアー客。

「おーい! おーい!」
「あっ、テンさん!」
 また1人猟兵とツアー客が合流し、一行は賑やかになった。

◆沼地の攻防
 夕暮れの川辺を上流に向かい歩いていたティアナ・スカルデット(ロンズデーナイト・f11041)は沼地に差し掛かり、リザードマンの群れを発見した。

(こんなところにリザードマン?)
 素早く茂みに身を隠しながらティアナは目を瞬かせた。
(本来はここには存在しないはず。外来種かな)

 リザードマンたちは武装していた。移動する群れは隊列を取り、軍隊のような統率の取れた動きを見せている。数も多い――ティアナは大地にぺたりと左手をついた。

「――堅き岩より生まれし存在」

 手のひらの下、春の土がドワーフの声に応えて温かく熱を発し始める。ティアナは大地のぬくもりに目を細め、謳う。

「その結ばれし鎖を断ち切り
 今こそその呪縛より解き放たれ
 我が意によりて
 我が成すままに
 我に従い力となれ」

 囁くように大地へと語りかければ、ユーベルコードが発動する。ティアナの声に応えて出現したのは、大地の巨人だ。
 巨人は召喚主への忠誠を示すように一度腰を折り、深く礼をした。そして凛然と立つ主の視線の先、蠢く敵の群れを駆逐せんと勇猛に地を蹴り、走る。手には竜騎士の主が常用する槍に似た土の塊刃があった。
「巨人よ、薙ぎ払え」
 ティアナが命じれば土の槍が揮われた。

「ナッナンダ」
「敵襲! 敵襲!」
 騒然とするリザードマンの群れへとティアナは自身も接近する。手に握るのは先刻発見したばかりの『アネモストロヴィロス』だ。低身長のドワーフが前傾し低く駆ければバスタードソードが戦意に反応して風を生む。
 強く地を駆ける脚は速度を増して疾風の如く群れの中へと斬り込んだ。
 盾を構えるリザードマンへと斬風が寄らば薙ぎ倒され斃れると同時に敵の体がふたつに割れている。周囲の敵が目を剥く。
 響めきの声を嘲笑うように風が唸る。
 少女ティアナは風の主となり竜巻の中央で踊る。くるりと足が軽やかに地を踏み小柄な体がコマのように廻れば豪風唸りて敵を斬る。

 やがて舞いが終わる時、天上の星々が見下ろす地上には肉塊と化した敵の群れと少女に傅く大地の巨人。

「性能をまだ、活かしきれませんね。もっと修行しないと」
 少女は武器を手に夜を歩き出す。そして、猟兵たちを先頭に船を目指す一行に出くわした。

「船を目指すのなら、一緒に行くわ」
 ティアナがそう言い、『アネモストロヴィロス』を手に勇ましく最後尾を護衛する。後ろを歩いていた人々は安心した様子で笑顔を浮かべた。

◆洞窟の攻防
「おや? 誰かいるようですね……このような所まで来る方がいらっしゃるとは」
 常盤・禊(虚ろな鏡・f16493)は接近する複数の気配を察知した。まず耳に届くのは武装のたてる金属音。そして爪のようなものが地面に突く足音。それは不穏に思えた。
 相変わらず周囲は暗いが、女の子が消えたあたりからだろうか。徐々に目が慣れてきていた禊は物陰に隠れてその姿を視認する。

 それは――リザードマンの群れだった。

(っと……人間ではありませんでしたか……敵、ということで良いのでしょうか……)
 宝玉のような美しい瞳を眇めて敵の様子を注視していれば、リザードマンたちはどうも何やら会話をしているようだ。
「島ニ、人間ガイル。見つけシダイ全てコロセ。武具は発見シタラ回収ダ」

 禊は静かに戦闘態勢を取る。リザードマンの群れはまだ彼女には気付いていない。音もなく重武装モードに移行した禊は闇に紛れて静かに走る。彼女は暗殺の心得がある。重武装モードにより機動力は削がれているものの、闇に紛れて命を狩り取るのに問題はなかった。
 作戦はシンプルだ。闇に紛れて、ただ斬るだけ。脳筋寄りではあるが、他に必要な策もない。彼女にはそれだけの実力があるのだ。

 只、斬るだけ。

「シッ」
 裂帛。短い息を吐き機械大剣を揮う。長く留まっていたため周囲の空間は体で把握していた。

 冴える一閃。

「ギャアアアアアアア!?」
 防具諸共に真っ二つになって血飛沫をあげるリザードマン。
「テ、敵カッ」
 慌てて周囲のリザードマンが盾を構え、曲刀を振るうが既にそこに彼女はいない。素早く立ち位置を替えた禊は闇に紛れて背から別のリザードマンを襲う。
「アアアアアッ!!」
 切り裂く傷は深々と。
 鋭い痛みに体が悲鳴をあげるリザードマンが痛みに悶えながら尾で反撃を試みるが、禊は大盾で難なく一撃を受け流し。
「敵ガ!! 此処にイル!」
 怒号と共に一斉にリザードマンたちが闇に向けて攻撃を仕掛け。

 軽く吐息を漏らすように笑み、禊はするりと身を沈めると彼らの脚を叩き斬る。びしゃりと血が飛び散り洞窟の壁を濡らしながらリザードマンたちがばたばたと倒れていく。

「此処は危険ダ! 外ニ出ロ!」
 彼らはつい先刻まで自分たちが狩人であるとおもっていた。
 だがこの場においては自分こそが狩られるものだと、この瞬間に気付き。泡を喰って洞窟から脱出すべく転身し。

 それを見逃す禊ではない。
「貴方たちは、こうやって人を狩るつもりだったのでしょう……」
 闇の中、刃は揮われる。敵ならば逃がさない。

(戦う力がないものにとってはきっと彼らの討伐を望むでしょうし……)
 強化人間の膂力で当然のように揮われる強刃はリザードマンを次々と黄泉路へと追いやるのであった。

「ここ、もう討伐済?」
 ふいにそんな声がした。
「貴方は」
「ん! おー! 味方の人!」
 明るい声に釣られて見れば、ライアが大剣を手に立っていた。島の至るところを走り回って敵を狩ってきたのだと言い笑うライア。
「一緒にやる?」
「……いいですよ」
 こうして脳筋2人は即席コンビとなり、島を巡って敵を討伐しまくったのだった。

◆廃墟の館
 明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)は共に探索したジャスパーと別れたのちも地下でのんびりと過ごしていた。具体的に言うと、スケッチをしていたのだ。
 地下の風景、レイピア、そしてピアノ。
 彼のスケッチブックに冒険の風景がまた1ページ増え。ぱらぱらとページをめくればこれまでに描いたスケッチも健在で、見れば思い出が蘇る。

「それにしても美しいレイピアですね……! このレイピアも、あの勇者伝説の武具だったりしますでしょうか。だとしたら、とても光栄ですね、ふふ!」
 手に入れた薔薇のレイピアへと愛しげに目を細め、珠稀はニコニコと笑う。
「僭越ながら……【薔薇奏風】と名付けましょう。大事にいたしますね、人魚姫さん。ふふ!」
 やわらかな花にも似て麗しく笑みを湛えていた瞳が、ふいに冷える。敵の気配を察知したのだ。

 珠稀は好戦的に口を開けて笑む。白い牙がちらりと鋭く耀き、
「……おや。敵、ですね。ふふ、このレイピアと私の相性はいかがでしょう……!」
 言いながら既に珠稀は一刀の距離までに接近していた。地下を吹き抜ける疾風の如きダンピール。気づいた敵は慄き身構えようとするが、時既に遅し。

(あぁ、風のように軽い……!)
 レイピアの刃は軽々とリザードマンの喉を貫き、断末魔すらも許さない。抜けば血が噴出し。
「ふふ……!」
 血雨を歓びながら珠稀は床の仕掛けを踏み抜き、跳ねる。一瞬後を敵のテイルスイングが通過していった。宙に跳んだ珠稀は天井から降りてきた武具入りの仕掛け箱に飛び乗り、更に跳ぶ。
「ふふ、ふふ……!」

 天井に逆さ蝙蝠が如く足を突き、渾身で蹴れば重力と勢いが恐るべき力となりて身ひとつが雷の槍となったかのように落ちる。レイピアもまた魔力を帯びて風纏い更に速度が増して。

「なんて愉しいのでしょうか!」
「アアアアアッ!!」
 床に繰り出すレイピアが鋭い突風のような突きと衝撃波を生み出し、まるで小隕石が落ちたかのような轟音と風が地下に轟く。床ごと抉りながら立ち上がればクレーターのように地が砕け、吹き飛ばされた敵が壁際で山となっている。

「お、恐るベキ使い手……!」
 後続のリザードマンたちが唸る中、珠稀はひどく嬉しそうにレイピアを濡らす血糊を指に搦めて舌で舐める。
 高揚。
「さぁ、風と音楽の力を浴びてください……!」

 ご機嫌に放つは妖艶なる青薔薇吐息。優艶な青薔薇が地下を乱れ舞い。
「いつも以上に青薔薇の花弁が美しさと鋭さを増してます……!」
 うっとりと微笑みながら、珠稀は油断せずに敵を突き倒していった。

 全ての敵を排除した珠稀は、外からの剣戟の音を耳にした。
「おやおや、どなたでしょうか」
 戦っている者がいるらしい。ならば、助けにいこう。と、珠稀は地下に別れを告げる。とても過ごしやすい静謐だったのに、と少しばかり残念に思い。

 そして、ぽつりと置かれたピアノへと最後に優しい瞳を向けた。
「今度来た時はピアノを直したいものですね、ふふ!」
 また来ます、と囁くように別れを告げ、珠稀はピアノに背を向けた。

◆廃墟の村
 そんな珠稀のいる館(地下)の外。
 廃墟の村を、男が歩いていた。
 船上で一目惚れした女性が歩いて行ったのが視えたのだ。船上ではうまくアプローチできなかったが、散策中に偶然ばったり出くわして「良い天気ですね」なんて挨拶し、あわよくば散策を共にできれば。
 男はそんなことを考えていたのだが、すっかり日も暮れてしまい、女性の姿も見失い。トボトボと船へと帰ろうとしていた、その時。

「わああぁぁ!!」
 突然、武装したリザードマンが廃墟の陰から現れて男を取り囲んだ。
「な、なんだっ……」
 色を失い目を見開く男にリザードマンの尾が揮われ――目を閉じることもできぬままに己が生命の危機に瀕していることを知り恐怖する男。しかし、男が斬られることは、なかった。
 銀色の風が吹き抜けて男を庇ったのだ。
「くっ……」
 咄嗟に割り込み受けた尾の強打に苦痛の声が漏れ、しかし手に持っていたブレイドで敵を斬る。
「あ、あなたは」
 男が驚愕に声を裏返しおろおろと後退る。

 男を庇いリザードマンに鋭い視線を向けているのは、セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)――男が探していた女性だったのだ。
「あ、あ、ああ……」
 男に一瞥もくれずにセシリアはリザードマンと切り結んでいる。多勢に無勢、傷を幾つも負い。けれど眼光鋭く剣は冴え。

 ――守るために。

 女騎士の胸中にあるのはその想い。信念。誓い。圧倒的な敵の数に囲まれながらも只ひとりで男を守り切ると決意したセシリアは暗黒のオーラで全身を覆い、流した血を代償に戦闘力を増幅させ。
「……」
 その背後では暗黒のオーラにぞくりと背筋を凍らせる男がいる。その気配を察しつつも、セシリアは敵へと挑発的な笑みを放つ。

「私は傷など怖れない。お前はどうだ?」
 曲刀へとわざと身を差し出すようにして頬を地に染めて凄絶に笑えばリザードマンは『戦士』へと好戦的な瞳を向けた。

「我らニこれだけ包囲サレ、タダ1人で剣を揮い続ケし戦士に敬意ヲ示ソウ!」
「汝ノ魂は我らが主へと捧ゲテヤロウ!」
 繰り出される曲刀を今度はするりと避け、隙を愛でるが如く、セシリアはブレイブブレイドを繰り出した。下から鋭く突き出したブレイドは輝きを帯びてリザードマンの腹を易々と貫き。
 ごぼり、と血の泡を噴かせて倒れるリザードマンを蹴りあげて後続へとぶつけ、躍りかかってきた横の1体の曲刀の腹へと踵を落として地へ落としてその勢いのままに身ごと回転あせてブレイドを薙げば懐に潜り込もうとしていた数体が纏めて胴と体を断たれて鮮血噴く肉塊となる。

 背後で男が嘔吐している。

 男へと尾を振り上げた1体を察知したセシリアは躊躇いなく尾を両断する。男の眼前にごろりと尾が転がり。
 敵を切断するたびにセシリアは生命力を吸収していた。これも血の代償による力だ。そしてなにより。

(輝いている)
 手にしたブレイブブレイドは戦うにつれ鋭さを増し輝きすら放っている。

(真に勇敢な者のための剣……なるほど、このような状況でこそ真の力を発揮する勇者のための剣だったのですね)
 セシリアは双眸に仄かな歓びを浮かべた。戦うための。敵を滅ぼすための力。人を護るために、またひとつ力を得た。

 けれど、と。
 全ての敵を死骸へと変えて男を見たセシリアは瞳を曇らせた。

 ――また、人を怖がらせてしまった。

 慣れている。だが、慣れない。
 セシリアもまた人である。むしろ、誰よりも人の心を持っている。
 ゆえに彼女は人が自分を怖れる気持ちを解する。解するがゆえに「仕方ない」と思い、「自分に問題があるのだ」と思い。しかし「悲しい」と傷つく心もある。

「またあなたを怖がらせてしまいましたね……ですが、命を救うことができて本当によかった」
 口の周りを汚している男へと白のハンカチをそっと差し出し。
 こうして差し出した手は、過去跳ねのけられて相手に逃げられたこともあった。それを思い出せば胸が痛む。が、セシリアは頭を下げた。
「怖がらせてしまって、すみません」

 返ってくるのは「バケモノ」と己を呼ぶ声か。恐怖の視線か。逃げていく背中だろうか。そう思いながらそっと顔をあげ。
 ハンカチがおそるおそる受け取られた。

 男は、ハンカチを眩しそうに見つめ、汚すのを躊躇い、けれど口の周りを拭った。そして、震える全身を押さえつけるように足を踏ん張って無理やりに笑顔をつくった。
「お、お、お……」
「……お?」

 言葉を待つセシリアに男は汚れた歯を見せ、なんとか笑った。
「お、おつよいん、です! ね!」
 そして、周囲の凄惨な死体の山と血臭に再び吐き気を催した様子で口元を押さえ、けれどもう一度笑顔を浮かべた。
「ありがとう――ございました」

 瞳には紛れもない恐怖の色と、それに劣らず濃く浮かぶ感謝の色が浮かんでいた。
「いえ。……」
 セシリアは少し驚いた様子で目を見開き。そして、

「そこの人たちー!!」
 明るい声がかけられた。
 見ると、船へと向かい一般ツアー客と共に歩いている猟兵たちがいるではないか。
「一緒にー! 行きませんかー!」
 セシリアと男は目を合わせ、頷いた。

「今のは……声を掛けるのがもう少し遅かったら、面白そうだったのですが。ふふ」
 物陰からこっそりと見守っていた珠稀はクスリと笑い、自身も名乗りをあげて猟兵たちの一行に合流するのであった。


 ゆっくりと、確実に船へと近づいてきた一行。
「あちらに、また猟兵の方々がいます」
 レイチェルが情報を提供し、一行は道を逸れた。ライアと禊の姿を発見し、皆が手を振り声をかければ、2人も無事に合流した。
「求めるのであれば、そのように……」
 禊がどこか無機質に言えば、人々は頼もしそうな顔をした。
「本当にありがとうございます」

 やがて一行は船へと辿り着いた。船のまわりには敵の死骸の山ができていた。
「ここにも、敵の手が」
 先に船に来ていた猟兵が戦闘をした結果、船を襲った軍勢は殲滅され船は無事だった。
 
「よお」
「おお、無事だったかー」
 船を守っていたアシエトとジャスパーが手を振る。
「船を守ってくれて、ありがとう」
 レイチェルが言えば味方は当たり前だと笑ってくれた。
「船を、守りましょう」
 レイチェルはそう言って船の周囲を警戒する。護るべき拠点にいつ敵が湧いても対処できるように、と。

(ここもそういう世界、オブリビオンにいつおそわれてもおかしくない……でも、わたしはこわくない)
 猟兵たちは、不慮の事態に慣れているのだ。
 もしも味方の数が足りないようなことがあれば、別の世界から援軍を呼ぶこともできる。レイチェルはそれを知っていた。

 だから。

「大丈夫。必ず、皆さんは護ることができるから」
 言葉には自信が篭る。
「もちろん、これだけの猟兵が揃っているのですからね。帝竜が飛んできても守れますとも……ふふ!」
 珠稀がやわらかに笑う。
「いずれ、帝竜も倒してみせるわ」
 ティアナは勇ましく言う。
「ドラゴンは、つよそうだなあ」
 テンは青い瞳をパチパチと瞬かせてちょっと不安そうにヒゲをそよがせた。
「帝竜が本当に飛んでキタリは、しナイと思うノデ。大丈夫でス!」
 リヴェンティアが優しく励ますように微笑む。
「出現した敵は帝竜を信奉する者たちと聞きます。私たちの戦いが彼らの企みを少しでも阻害出来ていれば良いのですが」
 セシリアが凛然と言い。傍らの男が眩しそうにその横顔に見惚れていた。
「今日のところはもう大丈夫、そうかな」
 テンが首をかしげれば、周囲の大人たちは頷いた。
「敵は、倒しました。乗客の皆さんも船も大丈夫そうです」
 仲間たちは互いの健闘を称え合い、笑い合う。

 そんな彼らの姿は、人々をなによりも安心させるのであった。
「ありがとう! 助かったよ!」
「ありがとうございました!」
 人々の声と共に、静かな夜が更けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

すばらしい勇者の武具が手に入ってなによりでした
こうしてきみと対のものを持つのはなんだか恥ずかしいですが、悪くない心持ちですね
……と、そうしているところへ先客がいらっしゃったようです
この島の安全のためにも、早々にお帰り願うと致しましょうか

【属性攻撃】【2回攻撃】【範囲攻撃】【高速詠唱】【全力魔法】を用い
『天航アストロゲーション』で攻撃を行います
ザッフィーロ君を狙う敵には【破魔】を乗せた隕石で追い払うとしましょう

戦っている間は気づきませんでしたが
すっかり陽も沈んでこれはまたすばらしい夜空が見れましたね……
きみと見る夜空は、最初のころを思い出すようで懐かしく思います


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

本当に見つけられるとは…運が良かった
対の物は共鳴し合うと聞いた事があるからな
…きっと互いの護りになる故、大事にしよう

基本は数が多い故【罪告げの黒霧】にて目の前の敵を攻撃しつつメイスで仕留めて行こう
…数が多い故、かなりの混戦になりそうだが
宵が攻撃を受けかけていたら守刀に引かれる様な感覚を覚えるかもしれん
『第六感』の様な感覚に振り返り間合いを詰めれば宵を『かば』い『盾受け』後其の侭メイスを振るって敵に『カウンター』の攻撃を試みよう
…本当にこの武具は頼りになるな

戦後は宵の言葉につられるように夜空を見上げてみよう
本当に…あの出会いに感謝せねばならんと思いつつ
暫く星見を続けられればと思う



●星河、天に満ち
 ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)と逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)が往くは淡い茜に燃えるような桜の道。 
「本当に見つけられるとは……運が良かった」
 ザッフィーロが精悍な目元に幽かに微笑みを湛え。
「すばらしい勇者の武具が手に入ってなによりでした」
 宵も柔和な表情でそれに応える。

 ふたりの懐には暁護と宵護、一対の守り刀が揃っている。
「対の物は共鳴し合うと聞いた事があるからな……きっと互いの護りになる故、大事にしよう」
 口元に笑みを敷いて海色の髪が揺れれば、釣られるようにはらりと桜が舞い降り。
「こうしてきみと対のものを持つのはなんだか恥ずかしいですが、悪くない心持ちですね」
 宵紫の目が微笑み。そしてふと視線に鋭い色を浮かべた。


 夕の橙を染め変えるように薄藍の闇がゆるりと広がっていく。柔らかに垂れる桜の花々の中を硬質な音を立てながら移動するのはリザードマンの一団だった。
 リーダー格らしき1体が仲間へと指示を出そうと口を開きかけたその時、声が掛けられた。

「いらっしゃいませ」
 見れば淡い燐光に浮かび上がるような人影、ふたつ。

「ナ、ナニモノだ!」
 リザードマンが誰何すれば金剛石の色が瞬いた。
「喋れるのか」
 しかし、と手には聖罰の象徴のようなメイスを握り。ザッフィーロが駆ける。祭服とメイスに気づいたリザードマンは聖職者にぎらりと敵意を向け曲刀を掲げて怒号する。
「竜族ニ歯向カウ鱗無き者ガ!」
 群れへと斬り込む敵を囲い潰さんと隊列を変えるリザードマンたち。
「数が多いな」
 呟き、けれど寄る夜気を纏う風のように突進した聖者は曲刀を振り上げ殺到する敵の群れへと黄金を閃かせる。一撃は重い。盾で受け流すどころではなかった。悲鳴をあげる暇も与えぬ痛撃に構えた盾ごと潰され、凄惨な音と共に1体が身をくの字にして吹き飛び、地に落ちる時にはすでに事切れている。至近にいた敵が目を瞠り数で押し切ろうと同時に飛び掛かる。が、

「早々にお帰り願うと致しましょうか」
 ひどく穏やかな声が場違いに響いた。佳声と同時に昏闇に星が降る。空の果てより招来した邪を祓う星が文字通りの流星として敵のみを狙い鋭く降下する。接敵すれば余りの威力に為すすべなく敵が溶けるほど。
 恐ろしい精度にてザッフィーロを狙っていた敵を悉く沈めながら星術師が艶笑を浮かべて穏やかに解説をする。それはまるで、無知なる者に教え諭すが如く。
「彗星からの使者は空より墜つる時、時には地平に災いをもたらす。それでもその美しさは、人々を魅了するのです」

 凛然とした佇まいは波立たぬ静かな水面のようでいて隠す気のない殺意を透徹に伝える。
「星降る夜を、あなたに」
 夜桜がひとひら、舞い降りる。
 悠然と説明を結ぶ頃には標的は聞く耳もなく骸として横たわる。

「ナントいう威力」
 リザードマンは戦慄した。
「術者を狙――」
 言葉が最後まで音を為すことはなかった。いつの間にか彼らを取り巻く黒い霧が身の内から彼らを蝕んでいた。
 それは、ザッフィーロが接敵と同時に巻いていた罪告げの黒霧。

「罪なき者には効かぬと聞くが」
 黒霧が罪を暴いた者へと黄金が圧倒的な膂力で揮われ断末魔も許さず絶命させていく。

 そして、急激な灼熱のように湧きあがる危機感に息を呑む。導かれるように振り返れば星を纏いし術者へと敵影が忍び寄り太い尾を打ち据えようとしている。
「――宵!」
 飄風が駆け抜ける。
 オーラを全身に纏ったザッフィーロが宵を庇い敵の尾を受け止めれば、敵は尾を揮い暴れようとした。が、その全身が凍り付くような殺気の篭った目が海色の下で輝きカウンターとして揮われたメイスが聖なる怒りとなりて敵を粉砕した。

 その背に迫る残党へと隕石を再び落としながら、風に煽られて乱れる髪の下で宵紫色の瞳があたたかな温度を傍らに向ける。
「ありがとうございます、助かりましたよ」
 髪の乱れを直すようにしながら睥睨する戦場には、もう蠢く敵影はない。

「……ああ」
 ザッフィーロは軽く吐息をつき、懐から小刀を取り出した。それが宵の危機に際して警告を放ってくれたのだと理解したのだ。
「……本当にこの武具は頼りになるな」
 そっと撫でる手は労うように。瞳には感謝の色が浮かんでいた。護るべき者を守ることができた、と。


 戦場の始末をしてふと気づけば、木々の隙間から見える空が夜の彩りへ変わり静謐な夜が辺りを支配している。

 空を仰いだ宵は目を輝かせた。
 静謐な闇の中で空を仰げば、星が視える。

「ザッフィーロ君、星が視えますよ」
 喜びの滲む声をあげて星に誘われるように木々を抜ければ、やがて空一面に星々が煌めく絶麗が遮るものなく無限に広がる。空気が如何に澄み切っているかを教えてくれるように近く視える満天の星は凍てつく銀砂にも似て清冽だ。星術師の瞳が愛する星夜を映してキラキラと輝いた。
 降るような星空の下、宵は頬を緩めて息を吐く。
「これはまたすばらしい夜空が見れましたね……」
 
 背後の森では夜桜が星に照らされて控えめに風に薄紅を舞わせて宴を催している。藍の空は世界を包みこむように頭上に広がり。

「きみと見る夜空は、最初のころを思い出すようで懐かしく思います」
 優艶な術師は行方定めし磁石のように思い出を語る。
 星空を見つめていた宵の瞳がふいにザッフィーロへと向けられた。双眸には広がる星河よりも尚美しい煌きがある。

「ああ、」
(本当に……あの出会いに感謝せねばならん)
 静かな夜風に吹かれながらそっと空を見上げれば、星が。

「美しいな」
 
 ――星とはその時々の人々の心を映す鏡の様な物でもあるのかもしれんな。

 そう、あの時も、そう思ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(連携・アドリブ可)
「下手に使うと制御できなくなるから」
入手アイテムは使用しない

■作戦
フォルセティと連携してリザードマンを確実に仕留めていく

■行動
「かなりの猟兵が上陸しているから戦力に問題なさそうね」
弟の先制攻撃の隙に詠唱に入り、[全力魔法]でリザードマンの
脳天に【バベルの光】を撃ち落とす

倒しきれなかった場合、弟と息をぴったりにあわせた
350本の【ウィザード・ミサイル】を浴びせて殲滅する

■アフター
リザードマンの頭目や指導者らしき者が何か「帝竜ヴァルギリオス」に繋がるモノを所持していないか調べる
「大商人の言葉に嘘がなければ、ここ最近孤島に現れたってことよね」


フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【SPD】(共闘/アドリブ可)
「早速ペンダント使ってみるよ!」
あれ、使い方が良くわからないや(注:今回は未使用)

【行動】()内は技能
一体のリザードマンに狙いを定めるよ
距離を詰められる前に、挨拶代わりの(先制攻撃)で
クラロ・デ・ルーナを放つよ
すぐに後方へ(ダッシュ)で飛び退って曲刀の間合いから外れるんだ
倒しきれなかった場合、フィオ姉ちゃんと息をぴったりにあわせた
350本のウィザード・ミサイルを浴びせて殲滅するからね

「このリザードマン達、どっから沸いてきたんだろうね」
戦闘後に大商人さんに過去見たことがあるか聞いてみるよ
ちなみに言い伝えの海賊さん、その後どうなったんだろうね。



●その結末を描くこころに
 星がきらきら、輝いて。
「――……」

 ぴくり、とフィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)の肩が跳ねた。
 静穏を破る気配。
 フィオリナはそっと傍らの弟を起こす。
「うーん、」
「しーっ、敵がいるわ」
 フォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)は目を擦りながらも敵の気配に意識を覚醒させた。

 姉弟は岩陰に身を隠し、リザードマンの群れを見る。数は多い。静寂を乱すような敵の群れは仲間同士で会話をしている。
「他ノ隊ガ、敵を発見シタヨウダ」
「鱗無キ者たちノ船ガあるトイウ」

 姉弟はそっと顔を見合わせた。
「こいつらだけじゃないんだ」
 フォルセティが困ったように呟くが、
「かなりの猟兵が上陸しているから戦力に問題なさそうね」
 フィオリナは弟を安心させるように言った。
「この場所にいる敵を、私たちが殲滅するわよ」
 姉の瞳には迷いがない。できるでしょう、と信じて疑わない瞳にフォルセティはコクリと頷いた。

「早速ペンダント使ってみるよ!」
 橙の瞳を地上の星のように輝かせ、フォルセティはペンダントをワクワクと手に――眉根を寄せた。
「使い方が良くわからないや」
 いかな天才といえど、出会って数分の魔道具を使いこなすのは困難。フィオリナは弟の手を優しく留めた。
「下手に使うと制御できなくなるから」
 いつも通りに戦いましょう、と言い、姉は銀翼杖をそっと構える。フォルセティは姉が詠唱を開始したのを確認し、自身も聖箒を手に先制の魔法を詠唱する。

(全然、怖くないや)
 何度もこうやって戦ってきたフォルセティの魔法は常と同じ完成度で芸術的な閃光の波を生み出した。クラロ・デ・ルーナの衝撃が無防備な敵の群れを蹂躙する。
 群れは混乱し、数体が怒号を発して2人に向かってきた。

 華奢なフォルセティ目掛けて曲刀が振られるが、それを読んでいたフォルセティは魔法を放つと同時に後方へと跳んでいた。
「子供ノ癖ニ! 戦い慣レていル!」
 敵が目を見開いて呟くのを耳にしたフォルセティは得意げに笑みを浮かべそうになり。

 ――油断しちゃ、だめよ。

 ふと脳裏に姉の声が過る。いつも戦闘時に言われている台詞がこんな時、緩みそうになった心を引き締めてくれるのだ。フォルセティは表情を真剣に引き締めるとさらに後方へと跳んだ。その一瞬後を敵の尾が過ぎていく。

 走り寄る数体がなおもテイルスイングを放とうとした時。すでにフィオリナが詠唱を完成させている。
「――貫け、バベルの光よ」
 高出力の光撃が天から降り注ぐ。それはまるで神の裁きのように敵を貫き一瞬で絶命させた。

「まだ奥に何体かいるわね。掃除するわよ」
「わかったよ、フィオ姉ちゃん」
 少し離れ闇の中蠢き近寄ってくる影を確認した姉弟は息ぴったりに詠唱を始め、同時に術を完成させた。
 ふたりの周囲に夥しい数のウィザード・ミサイルが生成され、射出されれば夜闇が一瞬眩く照らし出され、光が収まった時には動く敵影はもはやない。

「このリザードマン達、どっから沸いてきたんだろうね」
 フォルセティはふと不思議そうに呟いた。
 フィオリナはリザードマンの所有物を調べ、化石のようなものや骨のようなものを数点グリモアベースへと持ち帰ることにした。
「この化石は、とても古い……、竜の牙や、骨のようにも見えるわ」
「魔法の媒体とかに、できるかなあ?」
 フォルセティがのんびりと呟く。
「ドラゴンを召喚したり、してみたいなあ」
 弟ならば本当にそういった魔法も編み出してしまうに違いない、とフィオリナは思い。
「可愛いドラゴンにしてね」
「えー」
 姉の言葉に弟は困ったような顔をした。
「可愛いのかあ」
 姉は会話をしながらも所有物を調べ続け。
「地図とかが見つかればよかったんだけど、ないわね」
 少し残念そうに肩を竦めたのだった。

 そして、ふと思いついたように呟く。
「大商人の言葉に嘘がなければ、ここ最近孤島に現れたってことよね」
 やっぱり、伝説の武具を狙ってきたのかしら、と考えを巡らせながらペンダントに手をやれば相変わらずの美しさを放つ宝玉がそこにある。
「商人さんに聞いてみようかな?」
「そうね、船に戻りましょう」
 姉弟は並んで船へと歩き出すのだった。

「ちなみに言い伝えの海賊さん、その後どうなったんだろうね」
 弟が呟けば、姉が少し考えるようにして。
「フォルセティは、どうなったと思うかしら?」
「うーん。ハッピーエンドだったらいいなって思うよ」
 弟が地上に咲く星の花のような瞳で姉を見上げる。姉はそんな弟を微笑ましく、けれど表情に弟愛が溢れすぎないようにと空を視た。

「私も、そう思うわ」

 ――呟く声は、穏やかに。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
ナハトさん/f01760と

美しい光景を眺むるのならば、あなた達もご一緒に
……と、思ったのだけれど
あなた達は、お花たちを散らす側のようね

……あら。なぜ、謝るのかしら
はしたないかと思うけれど、ナユは昂っているわ
もう一度、あなたと踊ることができてうれしいの
彩に囲まれながら、共に舞いましょうか

無粋なあなたたちには、にがい罰をあげる
お仕置きは、耐え難いくらいがいいでしょう?
〝嘲笑の惨毒〟

毒使いの雨を降らせたのなら
双刀の残華を手に取って、早業で峰打ちを
花たちを散らさぬよう、周囲を警戒しつつ
美しい場所で、あなたと舞い踊る喜びを感じで

わあ。もう一度、エスコートしてくださるのね
優しい彼の、やさしい手を取って


ナハト・ダァト
ナユ君(f00421)と参加
アドリブ歓迎

無粋とハ、君達の事をいうのだろウ
全ク。こんな予定ハ立てていなかったヨ

…すまなイ、ナユ君
最後は荒事ニなってしまったネ

まタ、一緒に踊るかイ
今度ハ私モ、君を真似テ剣を振るってみようカ

武器改造、UC「溶け込む夜」触腕を刀状に変化
属性攻撃、斬撃属性を付与

世界知識、医術
君達の体ならバ、何度も施術していル
構造の把握ハ既に完了しているヨ

三ノ叡智
私だけが見えル時間ダ
その動きハ、既に予見していル

花を散らさぬ様、舞うのも大変ダ
私の心情ニ付き合わせてしまっテ済まないネ、ナユ君

帰りにもう一度、エスコートさせておくレ



●白と黒の円舞曲
 春の歓びを満開に咲かせた花畑にふと混入する異臭。
 蘭・七結(恋一華・f00421)が首を傾げ、花畑の霞む遠景に視えるリザードマンの群れに瞬いた。
「あれは……」
「リザードマンだネ」
 ナハト・ダァト(聖泥・f01760)が低く呟く。
「ナハトさんはあの方々を御存じなの?」
 七結が花冠を揺らして問えば、ナハトはローブの下の双眸を一瞬和らげた。とてもよく似合っている、と。
 そして、残念そうにリザードマンが狂暴な敵対種族である事を告げるのだった。


 先頭に立つ1体が曲刀を振り上げ、合図をする。
 リザードマンの群れは花畑に侵入しようとしていた。
「コノ付近に勇者ノ武具ガアル!」
「邪魔な草は刈レ!」
 太い尾がぶんと揺れ、曲刀が花を断ち切ろうと振り下ろされ――ぴたりと止まった。

「美しい光景を眺むるのならば、あなた達もご一緒に……と、思ったのだけれど。あなた達は、お花たちを散らす側のようね」
 冷ややかな声がする。
 先頭の数体が苦悶に表情を歪めて膝を突く。膝を突いた数体が頭上から降り注ぐ猛毒に神経を冒されながら見上げる先には、月を背に優艶なる容貌を懲罰の意思で凍らせている少女がいた。
 その姿が一枚の絵画のように幻想的で、リザードマンたちは状況を忘れて一瞬、見惚れた。

「無粋なあなたたちには、にがい罰をあげる。お仕置きは、耐え難いくらいがいいでしょう?」
 艶やかな白の少女が放つのは、嘲笑の惨毒。
 お仕置き、と弧を描く珊瑚の口唇につと白指を這わせ、七結は優雅に首を傾げて敵を見下ろした。
「ナユの毒。お味は、いかが」

「――殺セ!」
 自由の利くリザードマンが数体味方を乗り越えて少女へと肉薄する。殺到する悪意には、しかし闇夜に溶け込むような黒く鋭い刃が揮われた。
 漆黒の黒影が音もなく少女の前へと移動し、守るように立っている。月明かりが浮かび上がらせる影の淵、ローブがふわりと風に舞い。
「無粋とハ、君達の事をいうのだろウ。全ク。こんな予定ハ立てていなかったヨ」
 ナハトが花と少女を守るように黒き触腕を広げ、ふと呟いた。
「……すまなイ、ナユ君。最後は荒事ニなってしまったネ」
 平穏な1日を過ごしてもらうつもりだったのだが、とローブ下の双眸を伏せるナハトへと、七結は静かに首を振る。繊細な髪が艶やかに流れる様は、やはり花のように美しい。
 荒事に巻き込んでしまうなんて、とナハトが憂いていると、花がそよぐが如く七結が髪を夜風に舞わせた。
「……あら。なぜ、謝るのかしら。はしたないかと思うけれど、ナユは昂っているわ。もう一度、あなたと踊ることができてうれしいの」

 繊細な手には彼岸と此岸、双刀の残華が月光を反射させて煌く。
「まタ、一緒に踊るかイ。今度ハ私モ、君を真似テ剣を振るってみようカ」
 ナハトが触腕を刀状に変化して構えれば、七結の紫の瞳が嬉しげに細まる。
「彩に囲まれながら、共に舞いましょうか」

 夜に溶け込むナハトの体がリザードマンへと鋭く斬り込む。黒き触腕が闇に染み込むようにして揮われれば黒刃が的確に敵を施術する。「君達の体ならバ、何度も施術していル。構造の把握ハ既に完了しているヨ」
 生体が平衡を為し体を支えるは自然の理により緻密に計算された身体部位の調和の取れた構造あってこそ。其の構造を詳細に把握し、三ノ叡智にて理知なる瞳は動きを予見し対応することもできる。
「意識しタ事もなイだろウ?」
 彼岸の白き軌跡は月のように闇を切り取り、ナハトは影を添わせて 敵の尾を落とす。グラリとバランスを崩して倒れる敵影に白刃が閃いた。鮮やかに血が飛沫かせるかと思えば、丁寧に背で敵を打ち据えて意識を奪うに留め。
 夜風が優しく七結の髪を波打つように揺らして幻想めいた夢景色。
 少女に迫り振り下ろされる曲刀を咎めるようにナハトが黒刃を繰り出し少し力を加えて絡めとるように地に導けば爬虫類の巨躯が抗えず共に地へと伏し。くるりと舞踏するが如く少女が一刃を舞わせれば峰打ちにてやはり意識を奪う。

 ――美しい場所で、あなたと舞い踊る喜びを感じる。

 七結は傍らで闇を舞わせて戦うナハトの存在に花の口唇を綻ばせるのであった。
 花たちを散らさぬよう気を配りながら戦う様子の七結に気付いたナハトが風に息を交えるように言葉を吐く。
「私の心情ニ付き合わせてしまっテ済まないネ、ナユ君」
「?」
 くるり、とスカートの裾を翻して双刀を舞わせていた七結は当然のように呟いた。
「ナユは、ナユがそうしたいと思ったから、しているのよ」
 戦いが落ち着いて七結がふわりと微笑めば、ナハトはそんな彼女の在り様を一層好ましく思い、姫君に傅くが如く丁寧に優雅にと手を差し伸べる。

 夜の花々が見守る星月夜。
 風がふわりと遊ぶように花弁を空へと舞いあげて。
 少女の髪が繊細に揺れれば、誘われるように異形のローブも同じ方向へと揺れるのだ。

「帰りにもう一度、エスコートさせておくレ」
「わあ。もう一度、エスコートしてくださるのね」
 差し出された優しい手へと七結が嬉しそうに手を重ねれば、滑らかな感触と共に今日一日の思い出があたたかに胸に満ち。

「また、何処かに行くとき、ご一緒してくださる?」

 上目がちに思わずそうおねだりをすれば、ナハトは穏やかに頷いた。
「勿論ダ。何処へなりとお供しよウ。遠慮は要らないからネ」
 こんな風に愛らしくおねだりをされれば、なんでも言うことをきいてしまいそうだ、と。仄かに笑い。

 ローブの隙間から見える異形の瞳は夜空に浮かぶ月にも似て清らかでいて、どこまでも優しく温かいのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オルハ・オランシュ
【遊空】
お腹いっぱい!
一時はどうなることかと思ったけど、
合流できてからは楽しかったな

わ、もう夕方?
本当に綺麗な夕焼け……!

……無粋だね、ゆっくり景色を堪能させてもくれないんだ
放っておいたら一般のお客さんに危険が及ぶかも
奇襲をかけて仕留めようよ

纏った風で加速して【範囲攻撃】
……っとと、鍵は落としてないよね
気を付けなきゃ
ヨハンの闇はいつだって心強いし、
本気を出した都亨もやっぱり頼もしいな
【鎧砕き】の一撃で2人に繋げよう

命を狩ったクロアの表情が少し心に引っ掛かりながらも、
今はただ前を向いて
曲剣一閃は【見切り】で回避を狙いつつ
得意の【カウンター】で攻めに転じる


叶・都亨
【遊空】
おやつタイムも終えて、綺麗な鉱石も手に入れたし
洞窟探検楽しかったなー

出てみればすっかり日は暮れ
綺麗な夕焼け空だなー!
一日の終わりって感じだ!

ん?あれは…

リザードマン!ほげぇぇぇなんでこんなところにいるのおぉぉぉ!!
放っておくわけにもいかないし…
戦いたくないけど、クロアちゃんもいるし俺がしっかりして守らないとな!

っしゃ!かかってこいやー!
嘘ですかかってこなくていいです!

アルデバランで【援護射撃】するよ!
前線はオルハちゃんとヨハンくんに任せた
俺は敵に近付かれる前に射抜く!【先制攻撃】はお手の物よ!

へっへー!どんなもんだーい!

うお!クロアちゃん大丈夫か?
うう、しっかりしなくては


クロア・アフターグロウ
【遊空】
そうですね
と皆の感想には控えめに同意を

戦闘では邪魔にならないよう、みなさんの影に隠れて応援を
戦闘の経験なんて無いし、役立たずで足を引っ張るだけ
せめて後方支援として誰かが怪我をしたらその回復を――と思っていたけど

自分でも意外な程に、心は凪いでいた

ヨハンさんとオルハさんが前線で戦い、かなえくんに守られながら
別方向から現れた敵

その曲剣によって切り裂かれるかというところで
逆に背後へと回って首筋に護身用のナイフを突き立てる

相手の命を奪った後も、どこか他人事のような感覚

その呆気なさに
何も感じなかった事に対して、宙ぶらりんな気持ち

声を掛けられると、はっとして
大丈夫ですと答えながら
みんなの応援に戻る


ヨハン・グレイン
【遊空】
沈む陽の色は綺麗だな
夜に塗り替えられる前の僅かな時間、か

その夕色を楽しむ時間も与えられないとは
放っておく訳にはいかない、には面倒ながら同意します

近距離は得意ではないんですけどね
ここは前に出ておくか、と後ろの二人を見遣ってから

蠢闇黒から闇を解き、絡めるように呪詛を
槍を揮うオルハさんの動きに合わせて死角から敵を裂こう
いつもしゃんとしてくれていたらいいんですけどね、この狼は

……少女の様子は目端に映して
命に対する感情が希薄、なのだろうか

頭を振るう
今は敵に意識を向けよう
都亨さん、ちゃんと守ってあげてくださいよ

さて……、
夜が来る。ここは星も綺麗かもしれないな。



●冒険の夜空に
 洞窟の外へと歩きながら、4人は緩く会話を楽しんでいた。
「お腹いっぱい!」
(一時はどうなることかと思ったけど、合流できてからは楽しかったな)
 オルハ・オランシュ(アトリア・f00497)がにこりと微笑み。
「洞窟探検楽しかったなー」
 叶・都亨(空翔・f01391)が泥だらけになった旗をぶんぶんと振り回して歩く。
「そうですね」
 クロア・アフターグロウ(ネクローシス・f08673)が控えめに同意すれば、最後尾のヨハン・グレイン(闇揺・f05367)はレンズの奥の瞳を僅かに柔らげる。

 洞窟の外に出てみれば、すっかり日が暮れていた。地平が茜に染まり天に向け金に輝くに光を帯び、それを侵食するような紫紺の薄闇がじわりと広がっている。色相環の真逆にいる者同士が食い合うような、空。
「わ、もう夕方? 本当に綺麗な夕焼け……!」
 オルハが空に見惚れて足を止め。
「綺麗な夕焼け空だなー! 一日の終わりって感じだ!」
 都亨が補色の空へと旗を掲げた。

(沈む陽の色は綺麗だな)
 ヨハンはそっと歎美の息を吐く。
「夜に塗り替えられる前の僅かな時間、か」

(ん? あれは……)
 ふと彼らは茜薄まる世界を歩む敵影に気付く。武具の音高らかに進行する敵は。
「リザードマン! ほげぇぇぇなんでこんなところにいるのおぉぉぉ、むぐっ」
「ちょっと。見つかるじゃないですか……」
 都亨が素っ頓狂な声をあげるのを呆れた様子でヨハンが口を塞ぎ。

 敵の隊列はゆっくりと近づいてくる。まだ彼らには気付いていない。
「……無粋だね、ゆっくり景色を堪能させてもくれないんだ」
 オルハが警戒しながら思わずそう零せば、
「此方の存在すら気付いていない様子ですがね」
 状況を冷静に分析する口ぶりを見せながら。
(夕色を楽しむ時間も与えられないとは)
 ヨハンも内心で同意するのであった。

「わかった! 俺! 夜間モードで話す!」
 都亨が小声でぶんぶんと旗を振り。
「放っておくわけにもいかないし……戦いたくないけど、」
 森色狼が構えるのは、森の加護の宿る樹から切り出して作った大ぶりの弓。名を、アルデバラン。握ると沸々と心に勇気の灯が燈り、都亨はクロアを見た。
「クロアちゃんもいるし俺がしっかりして守らないとな!」
「えっ……」
 俺が守る! と意気込みを見せればクロアは反応に困る様子を見せ、そっと周囲に視線を巡らせる。

「そうですね。放置するわけにはいかないでしょう」
 ヨハンが仕方なくそう言えば都亨は元気よくウンウンと頷いた。
「やっぱさー、俺たち考えること同じっていうかさー!」
 言葉には冷然とした一瞥が送られていたが。
「放っておいたら一般のお客さんに危険が及ぶかもしれないもんね」
 オルハはウェイカトリアイナを手に風を纏う。

「えっと……」
 クロアは、しばし迷った末におずおずと頭を下げた。

「奇襲をかけて仕留めようよ」
 オルハが提案し、限られた時間で軽く打ち合わせが為される。

(戦闘の経験なんて無いし、役立たずで足を引っ張るだけ)
 クロアは何も言えずに俯いた。
「か、回復……」
(せめて後方支援として誰かが怪我をしたらその回復を)
 そう思い、ぼそぼそと呟けば、オルハがにこりと――安心させるような笑みを――向けた。
「クロアの力があると思うと、安心して前に出れるよ」
「回復があるのとないのとでは取れる戦術も変わってきますからね」
 ヨハンが言葉を重ねるようにして戦闘準備をしていた。

「っしゃ! かかってこいやー! 嘘ですかかってこなくていいです!」
 都亨が威勢よく挑発し、素早く後ろへ下がっていく。
「クロアちゃん! 俺と! 後ろいこっ」
 クロアを引っ張り。
「えっ、あっ……、はい」
 引っ張られるがままにクロアは後方へと連れていかれる。

「――……はあ、」
 ため息が漏れる。
「近距離は得意ではないんですけどね」
 ここは前に出ておくか、と後ろの二人を見遣り、ヨハンがオルハに並ぶ。
「頼りにしているよ」
 傍らで風纏いし少女がそう言えば、ふわりと風が自身にも加護を齎してくれるかのような心地がして少年は瞳を軽く伏せ。意識を戦闘へと集中させていく。


「此処ダ。洞窟ニ、武具ガ在るに違いナイ」
 リーダー格のリザードマンがそう言い、曲刀を掲げて部下に命令を発しようとした。
 刹那、颶風が襲い来る。

「グワアアアアアァッァッ!?」
「アアアッ!?」
 風を纏い加速する少女が特注の三叉槍ウェイカトリアイナにて先制の薙ぎ払いを放ち、衝撃の波が血の花を咲かせ、敵を屠る。
「……っとと、鍵は落としてないよね? 気を付けなきゃ」
 ポケットを確認すれば、鍵は無事だった。
(このポケット、落としやすそうでちょっと心配になるんだけど)
 場違いな心配をしながらオルハは槍を揮い、その動きに合わせてヨハンも死角から敵を穿つ。夜の漆黒より尚暗く闇が忍び寄れば敵の生命が呪詛に喰らわれ。

「鱗無の子供デハないカッ!」
 侮蔑の視線を露わに敵の1体が盾で槍を受け流そうとし。

「だから?」
 藍染まる瞳が闇に揺れ。
 敵の足元の影が蠢く。

 ぞわり、と。

「――ッ!?」
 背筋を凍らせ足を見る敵。悍ましく呪詛を絡めた黒闇が暴走するかのように影の主へと襲い掛かり、同時にオルハの槍が生奪の痛撃を心臓目掛けて繰り出し敵を黄泉路へと追い立てた。

(戦ってる……)
 クロアはそれを見ている。ぬるい風がふわりと吹けば血臭が鼻腔を擽り頬を撫でる。

「オルハちゃん!」
 小さく傍らの少年が声をあげた。後衛の見守る視線の先、尾の凶撃を放とうとしている数体、そして援護しようとしているヨハンの後方にも曲刀を構えて突進する数体。
 都亨が敵に先んじてアルデバランに矢を番え、1秒にも満たずに速射する。確かな技量。クロアは目を見開いて一瞬見入った。魔法みたいだ。気付けば数本が飛んでいき、敵の絶好の攻撃の瞬間に驟雨の如く妨害の矢が降り注ぐ。

「マダ仲間ガイタカッ」
「射手がイルゾ!」
 確信したはずの勝機が零れ、浮足立つリザードマン。咄嗟の回避に費やすほんの一秒足らずの時間は、前衛2人が包囲網を食い破るには十分すぎる時間であった。

 最適の一瞬の最高の妨害に感謝しながらオルハが態勢を整え、勢いを削がれた敵の攻撃の軌道を完全に読み切った動きを魅せ。
「ありがとう、助かったよ!」
 後衛へと声をかけながら鮮やかに敵を討つ。後続の敵はヨハンの闇が絡め取り、矢が援護するように飛べば連携は完成した。

「へっへー! どんなもんだーい!」
 都亨が胸を張り。
「いつもしゃんとしてくれていたらいいんですけどね、この狼は」
 離れていても調子付いているのが伝わり、ヨハンが苦笑する。

(ヨハンの闇はいつだって心強いし、本気を出した都亨もやっぱり頼もしいな)
 敵の防護を悉く破りながらオルハは笑む。
「2人とも、お願い!」
 声に応えて闇と弓が次々と敵を絶命させていく。

 風が止まる。
 いつの間にか空はすっかり夜に染められている。
 星も凍える紅い夜。緑地濡らす液体と死骸の山を見てクロアはぼんやりと佇む。
 眼前では仲間たちが戦いを繰り広げていた。一部始終を見ていた。

 自分でも意外な程に、心は凪いでいた。

「セメテ、1人ダケデモ!」
「ぁ……」
 突如、別方向から現れた敵がぎらつく淀んだ瞳を向けてきた。目が合った。そう思った時、獰猛に牙が剥かれ。牙がゆるりと涎で揺れて月光に煌めいたのを何故か美しいと感じる自分がいた。

 殺意を湛えた敵が曲刀を手に弾丸めいて近寄ってくる。
 駆けて。
 駆けて。
 曲刀が閃く――、

「……」
 旋転。体は動いた。

「ッ」
 ふわり、スカートが揺れ。
 敵が軋むように動きを止める。背後へと廻りクロアが護身用のナイフで首を掻っ切ったのだ。昏冥の中、感触は確かに手に残った。
 視界近くで鮮血が飛沫く。

 クロアの頬をゆるりと温かな血が濡らし。直ぐに温度を失い乾いていく。指で拭いクロアは無感動にそれを視た。熱が、冷める。

 死はまるで寝台で夢見る未来の予知のようでいて、眼前で起きた現実であり。予知と異なり死を齎したのは自らだ。手には感触が残っているが、クロアを濡らした血はもう乾いてしまった。

(あれ。わたし、)
 ふと思う。認識する。
(わたし、特別、何も感じないんだ?)
 そう思う。
 何かを感じるべきだ、それが普通だと思うのに、それがない。それがない自分を感じてしまった。

(どうしてこんなに他人事のようなんだろう)
 自己分析をする心は薄氷を抱くかのようでいて、宙ぶらりんな気持ちだった。只、事実だけがある。

「うお! クロアちゃん大丈夫か?」
 都亨が慌てた様子で声をあげ顔を覗き込むようにしている。瞳は心配の色が濃く浮かび。クロアはそれをまた他人事のように観察し――ハッとした。
「無事!?」
 オルハも心配そうに声をあげる。

「だ、大丈夫です」
 クロアは緩慢に顔をあげ、小さな声で応えた。答える声は持たなかったが、応えれば仲間は安心した様子だ。ならば、それでよかった。

(……大丈夫なのかな?)
 命を狩ったクロアの表情が少し心に引っ掛かりながらも、オルハは花色の瞳に強い意思を湛え、気を引き締める。周囲にはまだ残党がいる。

「侮ッタ事を詫びルゾ、鱗無タチヨ」
「汝らハ、戦士ナリ!」
 敵が我先にと曲刀を手に飛び掛かってくる。
「貴方たちもね」
 オルハは疾風を巻き起こし死を振り撒く。戦士たちの足元では闇が蠢いて援護してくれている。背には頼もしい気配がある。

 ――今はただ前を向いて。

 凛然と戦うオルハと背合わせに死の山を構築しながらヨハンは先ほどの少女の様子に思いを馳せる。

(命に対する感情が希薄、なのだろうか)
 ふと思う。

「いや……」
 ふるり、と頭を振るう。周囲には、まだ敵がいるのだ。背を預けた少女は果敢に敵と戦っているではないか。
(今は敵に意識を向けよう)
「都亨さん、ちゃんと守ってあげてくださいよ」
 ヨハンは冷然と森色へと声をかけ、意識を戦闘へと切り替えた。

「うう、しっかりしなくては」
 都亨は悄然と項垂れ、周囲をより一層警戒しながら弓を撃つ。
「あ、あの……、すみません」
 クロアはぺこりと頭を下げた。そうしないといけない気がした。
「うぇえええっ!? クロアちゃんが謝る必要まったくないよ!!」
 都亨は「なんでそうなった!?」という顔をしながら無意味にその場でぴょんぴょんと跳ねた。
「大丈夫大丈夫! 俺が! 悪かった!」
「援護してください」
 前衛からはそんな声が飛んできていた。


 しばらく戦ったのち、周囲は敵の死骸で埋め尽くされた。凄絶な血海の中、動く敵はもう、いない。魔笛のように風が唸りをあげ。

「かえろっか」
 彼らは微妙な表情で船への道を歩き始めた。

 いつの間にか頭上には空一面に星々が煌めいていた。瞬く光が近く視える。空気が澄み切っている。
 染め上げた夜色を誇るように広がる天鵞絨に銀の砂を散りばめたようにどこか冷たい光が地上の熱を寄せ付けずに耀き、彼らを見下ろしている。

「綺麗な星空」
 オルハがストロベリーブロンドのポニーテールを揺らして空を見上げた。
「やはり」
 ヨハンが呟く。自然豊かな島の様子から夜空も美しいだろうと予想していたのだ。

(たくさん、)
 クロアがぼんやりと星芒を見る。
「あの中のひとつが消えても、」
 そっと囁くような声は空に吸い込まれるようだった。

「うーん」
 都亨は夢抱く瞳をふにゃりと笑みに変え。旗をクロアに持たせた。
「えっ……え?」
 戸惑い旗を持て余すクロアに笑顔を残して森色が前を往く。

「任務ッ! かんっ、りょーーーーうっ!! あっ船が出そう。ヤバイ。置いてかれるぅーーー!?」
「「えっ」」

 見れば商人の船が出発しようとしていた。
「待ってええええええ」
 森色狼が雄叫びをあげ、走る。
 オルハが慌てた様子で後に続き、クロアは旗を手におろおろとついていく。ヨハンが頭痛を堪えるような目をしながら最後尾をついていった。
「置いて行かれても、転移してもらえば帰れますよ……」
 冷静な声はクロアの耳にのみ届いていた。

●結

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月13日


挿絵イラスト