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ハニワがはっくしょーい!

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●綿密だった計画
 エンパイアのとある街では、ここ数日、空前の遺跡発掘ブームが起きていた。
 夜の内に何者かが、街の周辺にある遺跡の位置を記した紙を、住民達の家にそっと忍ばせて回っているのだ。
 一体、何者が?
 そんな疑問は、遺跡から出土した財宝で吹っ飛んだ。
 財宝と言っても多くは珍しいだけで、そこまで高価なものはない。それでも、掘れば金目のものが出てくるとあっては、飛びつかない方が少ない。
 だが、それは全て、とあるオブリビオンの計画であった。
 遺跡にある金目のものと一緒に出土する、土偶を集める為の。
 土偶はあまり金にならない為、街外れの空き家にどんどん溜め込まれていく。
 オブリビオンの計画は着々と進行中であった。
 あんな事が起きるまでは。

 夜明け前。
 そのオブリビオンは、今日も遺跡の位置を知らせて回っていた。
 春の風が強い朝だった。
『むー? なにやら、むずむずするぞ? これは……一体……はっくしょーい!』
 ちゅどーんっ!
『あ』
 ついうっかり、盛大なくしゃみと共にオブリビオンの口から出てしまったビームが、よりにもよって街の顔役であるお武家様の屋敷の近くに直撃!
 ――なんだ、今の音は!
 ――馬が!? 馬が暴れて――うわーっ!
 勃発してしまった暴れ馬騒動を『うわやっべー』って顔で物陰から眺めていたのは。

 ハニワだった。

●で、グリモアベース
「とまあ、そんな予知が来たんだよ。何ともうっかりなオブリビオンだ」
 何て笑ってと言いながらルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)は集まった猟兵達に話を続ける。
「さて、話を整理するよ。
 今回の騒動の原因は、ハニワプリンス。出土したハニワのオブリビオンだよ。
 偶然、勝手に出土してたお一人様。だから土偶埴輪軍団を作ろうって計画してた」
 その計画と言うのが、人々に周りの遺跡の位置を教えて、遺跡の財宝を餌に土偶を出土させ続けるというものだ。
「幸い、まだ土偶も軍団と言うほどの数は集まっていない」
 今の内にハニワプリンスの手勢となる土偶を破壊し、ハニワプリンスも止める。
 これは絶好の機会。
「でもまずは、暴れ馬騒動を何とかして来て欲しい。転移先では、今まさに暴れ馬騒動の真っ最中だし、その騒ぎを鎮めないと、ハニワプリンス探すどころじゃないから」
 困っている現地の人を助けるのも、猟兵の大事なお仕事。
「……それと、今回、一部の人には辛いかもしれない。何しろ、オブリビオンですら、何かむずむずしてくしゃみが出ちゃったくらいだからね」
 私は平気だけど。
 何てしれっと言いながら、ルシルは転送の準備に入った。


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。
 たまに今回みたいに、頭悪い感じのOP書きたくなります。

 何か今年、花粉凄いみたいですね。
 私は花粉症じゃないと思ってたんですけど、今年は偶に目がしょぼしょぼ痒くなります。これって……?

 それはさておき、今回はうっかりくしゃみから始まる騒動を静めつつ、暗躍していた(暗躍なんだよ!)オブリビオン、ハニワプリンスを倒すお仕事です。

 1、2章は冒険です。
 戦闘は3章のボス戦のみ、となります。
 あと、現地も花粉が凄いのかもしれません。
(何となく花粉症ロールしていただいてもいいですし、平然としててもOKです。花粉症ロールしたって、特に成否に影響ないものとしますので)

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 冒険 『暴れ馬の群れ』

POW   :    馬を力尽くで止めよう。どんと来い暴れ馬!

SPD   :    馬の背に飛び乗ろう。動きを操れないか試してみる。

WIZ   :    馬の進路や目的地を推測して罠を張ろう。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

サンディ・ノックス
※連携、アドリブ歓迎

あはは、うっかりさんだなあ
計画が花粉で台無しなんて敵ながらかわいそう、ふふふっ
(※小馬鹿にしているニュアンスがほんのり)

馬はそりゃあびっくりするよね
こちらは可哀想だから早く落ち着かせてあげたい

現場に着いたらすぐ馬の状況を【情報収集】
馬の進路で足場が悪かったり障害物があるなど
減速しそうな場所に目星をつける(=地形の利用)

そのポイントで馬と正面から接触、馬を受け止めるよ
小柄だから簡単にはいかないかもしれないけど【怪力】でなんとか保持して
「よしよし、もう怖くないよ」と
声をかけながら落ち着くまで辛抱強く撫でる


花粉?反応は出ないんだ
無機物っぽいのに反応したハニワのほうが生き物っぽいね


栗花落・澪
なるほどこれが花粉症の威力…
覚えておいたらなんか戦法の参考になるかな(花粉症誘発ユベコ持ち)

って今はそれどころじゃなくて!
お馬さん沈めないとね

自前の翼で空から様子を眺め
お馬さん達の動きや位置を把握
一番被害が集中している方に向かう

【催眠】を乗せた【優しい、歌唱】の【範囲攻撃】で
馬達を落ち着かせていく
どれだけ見境なく暴れていても
耳から直接届く音は防ぎようがないでしょ

よーしよし、もう大丈夫だよ
急におっきい音がしたからびっくりしちゃったんだよね
怖かったねー

ある程度鎮まったら馬を撫で
【指定UC】で更に宥めてやる

怪我人はいませんか?
馬に蹴られたり逃げる時に転んだりした人がいるなら
一緒に癒してあげるね


サギリ・スズノネ
【SPD】を選択

ハニワ!ハニワなのですよ!
サギリ、ハニワって愛嬌があって好きです!
でも、まずはお馬さんを何とかするのですよ!
……って意気込んで来たんですけどー、何か鼻がむずむずするのですよー……へっぷしょい(※くしゃみ)

木や建物、岩などの高い場所によじ登って【錬成カミヤドリ】でサギリの器物である鈴を幾つか増やして操って、お馬さんの注意を引くのです。
背中に飛び乗れるチャンスが出来たら思い切って飛び乗るのですよ!

背中に飛び乗ったら、振り落とされないようにしがみつきます。
これが本当のじゃじゃ馬……!

【動物と話す】要領でお馬さんに、落ち着くように呼び掛けます。
何ゆえそのように荒ぶられるのかーですよー!


竜石堂・はつら
なるほど、ハニワさんがお馬さんに意地悪してるんですね!
皆さんが困っているのならばはつらさんも頑張ってとめたいですっ
それにしてもなんだかお鼻がむずむずします、なんでしょう?

とりあえずお馬さんにぺたぺたと無造作とも見えるぐらい自然体で真正面から近づきたいと思います
お馬さんを傷つけないようにがっしりと掴ませて頂きますっ
こう見えてはつらさん、力には自信がありますからねっ、どーんと来てくださいっ
捕まえたらどーどーってにんじんをもしゃもしゃしてもらったり
なでなでしたりして落ち着いてもらいましょう!

上手く行ったら早く屋内に行きたいですね、へっくしょん!
なにか顔を隠す奴を探しませんと…


真守・有栖
くっしゅん!
私の才色兼狼たるやを噂してるのね。全く、罪作りな狼ですこと!

それにしても随分と間抜けな土偶じゃない?
私の緻狼ぶりを見習って欲しいわ!

まずはへっぽこ土偶がしでかした後始末。
任せなさい!私は狼、向こうは馬よ?
狩る者と狩られる者。弱肉強食の理を身を以て示せば、ちょちょいのちょいよ。ふふん!

(一時間後)

な……なかなかに名馬じゃないの!?
この猛狼たる私と互角に渡り合うなん……ぐぇっ

な……何よ!?その哀れむような眼差しは!
……そう。分かったわ!
麗狼たる私をこれ以上傷つけるのが忍びないと。そういうことね!

馬にも通じるこの美狼たるや。
分かったわ。此処で手打ちよ。
さ?厩まで私を乗せていきな…ふぎゅっ


甚五郎・クヌギ
我輩もなんとなくこの季節はむずがゆい気分になるのだ
しかし暴れ馬を止める為にも、この程度の困難は乗り越えていくぞ!………へっ、へぷちっ

暴れ馬をなだめるにもまずは一旦止めてやらねばならぬな
走ってきた馬の正面で無敵城塞化して壁になろう
声をかけてなだめてやり
近くに用意しておいた飼い葉に馬の目を向けさせるぞ
ほらほら、走ってお前の腹も減ったろう
そこにある藁を食んで落ち着くのだ!

無敵になってる間は動けないので
その間に他の者が馬をなだめるのであればそれも良いだろうな


アドリブ、絡み歓迎


ラムル・クルトア
※アドリブ連携歓迎

なんだか大変な事になっているね
馬も人も怪我をしないように、まずは、馬を落ち着かせないとだね

【SPD】
ユーベルコードでハヤブサを召喚し、空から馬の動きを把握≪情報収集≫
先回りして待伏せしタイミングを≪見切り≫、≪ダッシュ≫、建物や木を利用して三角跳びの要領で跳躍し馬に飛び乗るよ≪地形の利用・ジャンプ・騎乗≫

「大きな音に驚いたんだね。でも、もう大丈夫だから落ち着いて…」
上手く乗れたら優しく話しかけながら宥めよう≪優しさ・動物と話す≫

落ち着いたら飼い主の元へ連れて行くよ
「よし…いい子だ」(馬を撫で)
「さて、君の家はどこかな?」

ところで、くしゃみしてる人が多いけど…風邪かな?(平然)



●くしゃみって移るよね
『馬だー! 馬が暴れてるぞー! 子供は家に戻れ!』
『ありゃあ、お武家様んとこの馬じゃ……』
『なにぃ!? あ、ほんとだ』
『怪我させたら一大事だぁ』
 不安げな街人達を他所に、パカラパカラと蹄の音がエンパイアの街中に響き渡る。
 突然、暴れ回りだした馬達に、街は混乱に陥っていた。
 そこに現れるは、天下自在符を持つ猟兵達!

「街の人たちが困っているのですよ! お馬さんをなんとかするのです!」
 街人達の困り顔に、サギリ・スズノネ(鈴を鳴らして願いましょう。・f14676)が意気込みを新たに握――ろうとした手は、拳にならずに口元へ行った。
「でもー……何か鼻がむずむずするのですよー……へっぷしょい」
 手で覆ったサギリの口から、小さなくしゃみが飛び出す。
「はつらさんも、なんだかお鼻がむずむずします。なんでしょう?」
「我輩もなんとなく、この季節はむずがゆい気分になるのだ」
 竜石堂・はつら(どこかのはつらさん・f01374)と、甚五郎・クヌギ(左ノ功刀・f03975)も『鼻がむずむずする』と言うサギリの言葉を首肯する。
「しかしだ! 暴れ馬を止める為に、むずがゆい程度の困難は乗り越えていくぞ! ……へっ、へぷちっ」
 意気込むクヌギの口から、抑え切れなかったくしゃみが飛び出し、その尻尾が思わずぶわりと膨らむ。
「走り回るお馬さんに皆さんが困っているのならば、はつらさんも頑張ってとめ――へっくしょん!」
 続いたくしゃみに釣られたか、むずむずが耐え切れなかったか。
 はつらの口からも、小さなくしゃみが零れた。
「くっしゅん!」
 3人の後ろで、また別のくしゃみ。
「むぅ……きっとへっぽこハニワが、私の才色兼狼たるやを噂してるのね。全く、罪作りな狼ですこと!」
 紫の瞳に自信の光をみなぎらせ、真守・有栖(月喰の巫女・f15177)がくしゃみなんかなかった様に言い放つ。
「さあ、まずはへっぽこハニワがしでかした後始末ね!」
 言うなり有栖は、真っ先に街へ駆け出して行く。3人も、その後に続いた。
「4人ともくしゃみしてたけど……風邪かな? 大丈夫かな?」
 さらにあとに続くラムル・クルトア(ヤドリガミのウィザード・f10895)は青い瞳を瞬かせながらも、本人は平然と首を傾げていた。
「ああ、いや。あれはきっと花粉のせいだよ」
 返した穏やかな声は、サンディ・ノックス(闇剣のサフィルス・f03274)のもの。
「ま、個人差あるけどね。俺も反応は出ないんだ。無機物っぽいのに、ハニワの方が反応するなんてね」
 平然と肩を竦めたサンディは、丁度行きあった角でラムルと別の方向に街中に消えていった。
「なるほど。あれが花粉症の威力……なんか戦法の参考になるかな」
 白い翼を広げて空に浮かび上がりながら、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は連続で聞こえてたくしゃみに、思わず考え込んでいた。
 ぱたぱたと羽ばたく周りにもきっと花粉は舞っているのだろう。
 だが、花粉を操る業を持つ澪は平然と羽ばたき、遮るものない空に浮かび上がる。

 オブリビオンすら、くしゃみした春のエンパイア。
 春の花粉が飛び交う街で、猟兵達の戦いが始まる。

●弱肉強食
「見つけたわよ!」
 街を駆け回っていた有栖に迫る、暴れ馬が立てる土煙。
『お、おい。巫女様、危ねぇぞ――』
「任せなさい!」
 心配した街人の声に、有栖は自信たっぷりに返す。
(「私は狼、向こうは馬よ? 狩る者と狩られる者よ?」)
 弱肉強食。
 その自然界の理を身を以て示せば、馬など恐るるに足らず。
「ちょちょいのちょい、よ。こんな騒ぎを起こした間抜けなハニワには、私の緻狼ぶりを見習って欲しいわ!」
 ふふん!と馬を待ち受ける有栖。――だがその自信、全て見栄だったりして。
「ぷぎゃんっ」
 有栖があっさりと、馬に跳ね飛ばされた。

●空から
「~~♪」
 街の空で、澪が優しい歌声を上げた。
 良く聞けば、その声は幾つかの旋律を重ねているだけ。音の種類は多くない。
 ある意味単調とも言えるその歌は、催眠に誘導する為のもの。
(「見境なく暴れていても、耳に直接届く音は防ぎようがないでしょ?」)
 馬の耳に念仏とは言うけれど、この澪の歌声は届くだろう。

 馬の動きはバラバラで、被害がどこかに集中していると言う事はない。
 そう言う状況ならば、澪はしばし空に留まり、空から催眠に誘導する歌で広い範囲の馬をゆっくりと落ち着かせて行く事にした。
 その歌声は、馬のみならず、騒然としている街の人達の落ち着きを取り戻すのにも助けになるだろう。
 地上で馬を追う猟兵も、色々とやり易くなる筈だ。

 そして、歌声響く空に翼が増える。
「協力、よろしくね」
 ラムルの召喚したハヤブサが、伸ばした腕に降り立つ。
 ハヤブサはラムルの腕の上で翼を大きく広げ、力強く羽ばたき、飛び立っていった。

●力で勝負
 パカラッパカラッ。
 聞こえてくる蹄の音に、はつらがぺたぺたと足音鳴らして近づいていく。
 その手には何も握られていない。
 はつらの行動を無造作と見るか、自然体と見るか――多くの人は前者であろうが、本質は後者だ。
「さあ、どーんと来てくださいっ」
 突っ込んで来る馬の進行方向に立ち、はつらは両腕を広げて待ち構え――どーんっと突っ込んできた馬の首元に、両手でがっしりと掴まった。
「こう見えてはつらさん、力には自信がありますからねっ」
 馬の首元にしがみ付いたまま、はつらは馬を傷つけないようにその体をよじ登る。髪に結んだ赤い紐が、馬に合わせて揺れている。
「どー、どー。落ち着くですよっ」
 前脚を振り上げて、振り落とそうとする馬の動きにもはつらは耐える。
 そしてついに、鞍もないその背中にはつらは跨った。
「よしよし。ハニワさんに意地悪されて、怖かったんですよねっ」
 はつらが差し出したにんじんも、もしゃもしゃと食べ始める。
 しがみ付き、よじ登るはつらの声と仕草でか。背中に乗られたことでか。
 いずれにせよ、馬は既に落ち着きを取り戻していた。
 これなら、心配ないだろう。
「それでは戻りましょうかっ」
 はつらが鬣を撫でると、馬はそのままくるりと向きを変えた。

●耐えて抑えて
 街を行き交う道の交叉する、その中央にクヌギが立っていた。
 そこに、別々の方向から二頭の暴れ馬が迫って来る。
「馬達よ、この先へは行かせぬのである」
 クヌギに、そこから動く様子はない。
 迫る暴れ馬。蹄が容赦なく振り下ろされ――ガンッと弾かれた。
 愛用の薙刀すら構えていない、クヌギの体に。
 
 ――無敵城塞。
 
 その業によって、今のクヌギはあらゆる攻撃に対してほぼ無敵の身体となっている。
 ましてや、馬の蹄程度でどうにかなるものではない。
「まずは、足止め成功である」
 クヌギの前で、馬達はブルルッと短く嘶き足を止めていた。
「ほらほら、走ってお前の腹も減ったろう。そこに藁もある。食んで落ち着くのだ!」
 視線だけ動かして、クヌギは馬の視線を傍らに置いた藁に向けようと試みる。
 無敵の身体の弱点は、その間、全く動けないこと。
 此処で馬に引き返されては、クヌギはすぐに追えない。
「あ、待つのである!」
 馬の一頭が、くるりと踵を返す。
「おっと、捕まえたよ」
 だが踵を返した馬の前に、いつの間にかサンディが立っていた。
 馬が走り出す前に、その首元に手を回しがっしりと組み付く。
 サンディは、街を見て回り、聞き込みをし、馬の状況の情報を集めた上で、馬の進路で減速しそうな場所を探そうとしていた。
 だが――確実に馬が速度を落とす場所は、見つからなかった。
「ないものを探し続けるより、作った方が早いよね」
 そう考えたサンディの提案に、クヌギは二つ返事で頷いた。
 己が無敵となっている間に、他の者が馬を捕まえるのであればそれでも良いと。
 そうと決まれば、決めた地点に馬を誘導するのは、街の材木などを使って地形を利用すれば、サンディにとって難しい事ではなかった。
 つまり、二頭の馬が向かってきたのは、偶然ではなかったと言う事だ。
「よしよし、もう怖くないよ」
 サンディは走り出そうとする馬を押さえ込みながら、辛抱強く撫でて宥める。
 ザクザクと地を削っていた蹄の動きが、やがて静かになった。
 クヌギの置いた藁をもしゃもしゃと食み続けていたもう一頭の馬が、そこに、話終わった?とでも言いたげな様子で顔を上げた。

●鈴と指輪と
 リンッ、リンッ、リンッ♪
 空から響く歌声のリズムで、小さな鈴が鳴る。
 漂う小さな鈴は、屋根の上に立ったサギリ自身でもあった。
「お馬さん、こっちですよー!」
 増やした鈴を、リンッ、リィンッとサギリが念力でバラバラに動かし鳴らす。
 馬の気を引く為に。
「来るよ――そろそろ見えてくる筈」
 鈴を鳴らすサギリの下で、目を閉じたラムルが呟いた。
 閉じたラムルの瞳には、蒼穹を旋回するハヤブサの視界が映っている。
「あ、サギリにも見えました! 二頭です!」
 その声に、ラムルが青い瞳を開いて――。
「一頭は任せて」
 言うなり駆け出した。
 ハヤブサからの視界、自身の視界。2つの視界で馬の動きを把握し、見切ったタイミングで壁を蹴って、ラムルは馬の背中より高く跳び上がった。
「よし……届く」
 駆け抜けようとする馬の首に手を伸ばし、ラムルはその背中に跨る。
「大きな音に驚いたんだね。でも、もう大丈夫だから……落ち着いて」
 ブルルッと嘶き馬が振る首の根元を撫でながら、ラムルは優しく語り掛けて、馬の気持ちを宥めていく。
 だが、その間にももう一頭が横を駆け抜けていた。
「き、来たです……いきます!」
 サギリは意を決して、迫る馬の背中へと屋根の上から跳び乗った。
「の、乗れた……!」
 飛び乗られて驚いたか。
 暴れる馬の背中に伏せるようにして、サギリは必死でしがみ付く。
「こここ、これがが、本当のじゃじゃ馬……!」
 ともすれば舌をかみそうな馬の背中で、サギリは呼吸を整える。
「何ゆえ、そのように荒ぶられるのかー! ですよー!」
 馬と話すかのようにその耳元に顔を寄せて、サギリは声を上げた。
 リィーン。
 サギリは操る鈴にも長い音を立てさせて、馬を大人しくさせようとする。
「怖かった? もう怖い事はないのですよー」
「そう、大丈夫だから……よし、いい子だ」
 さらにサギリもラムルも、動物と話す技術は持っていた。
 人や他の猟兵と全く同じレベルで会話できるわけではないにせよ、意思の疎通と言う意味では今回の騒動を収めるに足りていた。
「そうですよー! もう戻っても大丈夫です!」
「さて、君の家はどこかな?」

●光
(「うん、あの2人も無事に馬を捕まえたね」)
 澪は空から歌声を響かせながら、状況を確認していた。
 残る馬は、あと僅か。
(「その内の一頭は……任せても大丈夫かな。凄く苦労してるけれど」)
 そう判断して頷くと、澪は別の馬を落ち着かせる為に、ふわりと舞い降りた。
「おっと」
 大分落ち着いたか――そう思って背中に乗ってみると、馬は前脚を上げて澪を振り落とそうとする。
「よーしよし、もう大丈夫だよ」
 その動きにも翼を広げてバランスをとり、澪は馬の首に手を伸ばした。
「急におっきい音がしたから、びっくりしちゃったんだよね……ん?」
 伸ばした手の先に、ぬるりとした感触。
 見れば、瓦礫か何かがぶつかったような、小さな傷が付いている。放っておいても、おそらく問題はないだろうが――。
「怖かったねー、痛かったねー」
 馬を宥めながら、澪はその背中から聖なる光を放った。馬の身体にあった、小さな傷もあっと言う間に消え去る。
 その光を浴びて、馬も次第に落ち着きを取り戻して行く。
「もうこの子は大丈夫です。怪我人はいませんか?」
 すっかり落ち着いた馬を引きながら、澪は街の人々の無事を確かめて回った。

●弱肉強食ぱーとつー
「な……なかなかに名馬じゃないの!?」
 肩を大きく上下させ、有栖が膝を付いたまま馬を見据える。
「この猛狼たる私と互角に渡り合うなん……ぐぇっ」
 その背中が、容赦なく踏まれた。
 有栖がこうして踏まれるのも、一時間ほどかけたこの格闘の中で、何回目だろうか。
 何度も土についた白い肌は、薄汚れてしまっている。
 だが――それだけ粘った甲斐はあった。
「な……何よ!? その哀れむような眼差しは!」
 有栖を見下ろす馬の瞳が、暴れ馬のそれではなくなっている。
「……そう。分かったわ! 麗狼たる私を、これ以上傷つけるのが忍びないと。そういうことね!」
 ――ブルルッ!
 短く嘶いて首を縦に振った馬が、有栖の背中から蹄を除けた。
 まるで頷いたかのような仕草だ。
 有栖はゆっくりと起き上がると、体に付いた土埃を払い、きりっと顔を上げる。
「馬にも通じるこの美狼たるや。分かったわ。此処で手打ちよ」
 そして真っ直ぐに馬を見つめて、ぽんとその肩を叩いた。
 この自信、どこから来るんだろう。
 だが、此処でやめておけばまだ良かったものを、さらに見栄を重ねるのが有栖と言う少女の性質である。
「さ? 厩まで私を乗せていき……ふぎゅっ!? あ、やめて、耳は噛まないで!?」

●そして、次のくしゃみが鳴り響く
「馬も人も怪我が出なくて、良かったよ」
 馬の主である武家を後にしながら、ラムルが安堵の笑みを浮かべる。
 猟兵達の活躍で、馬は一頭も欠ける事無く集められた。
 小さな傷1つ残されてはいない。
 暴れ馬騒動は、なんとか幕を閉じた。
 だが、この原因となったハニワは、今何処――?

「街中に、何か大きな筒のようなものを引き摺った跡がなかった?」
 口を開いたサンディの言葉に、若干1名、紫の瞳を丸くした狼少女を除いては、大なり小なり心当たりがあったようで頷いていた。
「あれ、ハニワが移動した跡じゃないかな?」
「あ、成程。その可能性はありそうですね」
 サンディの言葉に、はつらが手拭いを口元に巻こうとしながら頷く。
「ハニワかもなのですね! サギリ、ハニワって愛嬌があって好きです!」
 念願のハニワプリンスが見つかるかも。
 その期待にサギリが弾んだ声を上げた時だった。
「ぬぁ……また、むずむずきた……ぁぷちっ」
「くっしゅん!」
 クヌギと有栖が小さなくしゃみを上げたのは。

 \はっくしょーい!/
 \ちゅどーんっっ!/

 そして、2人のくしゃみに釣られるようにして、大きなくしゃみと爆発音が立て続けに聞こえてきた。
「なるほど。これが花粉症の威力……」
 もくもくとあがる煙を見やり、澪が神妙な顔で頷く。
「2度もやらかすなんて、うっかりさんだなあ。計画が花粉で台無しなんて、敵ながらかわいそう、ふふふっ」
 かわいそうと言いながら、サンディはどこか鼻で笑ったような笑いを浮かべる。
 何はともあれ、次に目指す先は決まった様だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『飛べ!遮光器土偶』

POW   :    土偶を叩き割る

SPD   :    罠や地形を利用して捕獲を試みる

WIZ   :    アイテムやユーベルコードを上手く活用

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●上がってしまった狼煙
 聞こえたくしゃみと爆音と爆煙。
 それらを頼りに猟兵達は、街を駆け抜ける。
 特に困ることもなく辿り着いたそこは――街外れだった。
 道中に聞けば、その辺りには空き家しかないというが――。

『あああ、待て! 落ち着け! 待つんだ土偶達!』
 ある平屋の前には、なにやら慌てているでっかいハニワがいた。
 近づく猟兵達の耳に、ガタガタと何かが揺れるような音が聞こえてくる。
 そして――。
『だ、駄目だ……抑え切れぬ!』
 でっかいハニワが抑えていた腕を放した瞬間、平屋の扉を内側からぶち破って、大量の何かが飛び出してきた。
『お告げじゃー!』
『プリンスからの狼煙だー!』
『時が来たようだな!』
 なにやら口々に言いながら、飛び出してくる大量の遮光器土偶!
 ――って、何か普通に喋ってるな。
『だから待てって。違うんだ。さっきのはついうっかり……はっ!?』
 なんとか土偶達を宥めようとしていたでっかいハニワ――ハニワプリンスだが、ようやっと猟兵達の存在に気づいて、目を丸くした。
『ここここ、ここは 君子危うきに近寄らずっ! 任せたよ、土偶達!』
『『『仰せのままにー!』』』
 ズザッと猟兵達から距離を取って逃げたいハニワプリンスの指示で、土偶達の視線が猟兵に向けられる。
 その瞳が妖しく輝くと、ビガーッと光が放たれた。
 飛び退いた猟兵達の立っていた所に、焦げ跡が残される。
 この程度の攻撃、猟兵なら当たったところでかすり傷。だが、街の人々はそうは行かないだろう。此処で止めるのが最善だ。
 動き出してしまった遮光器土偶達は、最早ハニワプリンスの手下も同じ。
 周りにあるのは、古びた空き屋ばかり。
 色んな意味で、遠慮は要らないぞ!
栗花落・澪
…なんというか……うん
大変だね(哀れみの眼差し)

遮光器土偶ってさ、口のとこ穴開いてるよね

★Candy popから僕の魔力入り特性飴を
いくつか取り出し
【破魔】の力を加えたうえで
★Staff of Mariaで彼らの多分口目掛けて打ち込む
丁度嵌るかぶつかって近くに落ちるだけでもいい
その飴玉を火種として魔力をリンクさせることで
炎の【全力魔法】で大爆発
飴を持った敵が動き回れば【範囲攻撃】として
被害を大きくする算段

この土偶達ならまだ威力弱そうだよね
【UC】でくしゃみによるビーム乱発だけ注意
または土偶同士向き合わせたりしつつ
集中が乱れたところで【空中戦】で背後に回り
今度は氷の全力魔法でまとめて凍結狙い


竜石堂・はつら
土偶さん達がいっぱい出て来ましたっ
はつらさんもヤドリガミの端くれ、ぱりーんってする事は少々悲しいですが、仕方ありませんね!
思わず涙が出てきてしまいましたが、これはもしかして花粉でしょうか
鼻水もなんだかずびずびですし、せめて景気よくぱりんぱりんといっちゃいましょうっ

そんなわけではつらさんアックスをぶおーんと振り回して、ぱりーんってしていきます
ビームをジャンプで避けて、その落下の勢いでグラウンドクラッシャーを使ったりして
ぱりんぱりんへっくしょん! ですっ!

もうお鼻と眼が大変なので帰りたくなってきました!
はつらさんの玩具袋を被っちゃいたいですっ
もう、はにわさんを早く出して貰いましょう、くちゅん!


榎・うさみっち
俺は花粉症でも何でもないぜ!妖精さんだからな!
でも風邪気味なのかくしゃみと鼻づまりがちょっと辛いな!
…おいなんだその「君も仲間か~」みたいな視線は

この土偶たちを割りまくればいいんだな!
RPGの民家のツボの如く!中からお宝出ないかな!
【かくせいのうさみっちスピリッツ】で
「さむらいっちゆたんぽ。」を増やす
サムライエンパイアの雰囲気に合わせてみました~☆
手にした刀で土偶を斬るべし斬るべし!
一つ切っては民のため!
二つ切っては俺のストレス解消のため!
終えたらキリッと決めポーズ
つまらぬものを斬ってしまった…

おいばかやめろ澪(f03165)、そんな技ここで使ったら味方にも被害がry
ぴゃあああっくしょん!!


サギリ・スズノネ
【WIZ】を選択

土偶!土偶なのですよ!
しゃべる土偶なのですよ、すごいのですよ!
って、何か目からもっとすごいの出たのですよ!

こ、これは危ないのですよ。街の人達に当たったら一大事なのです!
土偶に恨みはないですが、大人しくなって貰うのですよ!

【火ノ神楽】で炎の鈴を幾つも放って、土偶達の動きを邪魔します。
土偶があっちこっちバラバラになったら危ないのです!
炎の鈴を操作して、土偶達をなるべく一か所に纏められないかやってみるですよっ

それにしてもあの土偶、お告げとか何か言っているのですよ。
何か事情がありそうですけどー、壊さずに上手く捕まえられたら、話を聞けないですかね?

※アドリブ、他のPC様との連携歓迎です!


サンディ・ノックス
壊すだけなら簡単だしなあ
流石にハニワプリンスに逃げられそうならやめるけど、土偶とおしゃべりしたいな
(※土偶が話していることには何の疑問も感じない)

確かにプリンスはうっかりさんで可愛いけど
忠誠誓ってる相手を困らせちゃダメだよ?
そういえばキミタチ、お告げとか狼煙とか言ってたね
プリンスの合図を待ちわびてたのかな?
それなら張り切っちゃっても仕方ないか

土偶と話すなんて珍しい体験だったな
満足したしそろそろ壊そうっと
え?街のヒトに被害を出す存在を生かしておくと思ったの?
ビーム?あはは、そんなのこの俺に効くとでも?笑っちゃうね

にこやかな表情のままユーベルコード、解放・夜陰を技名の通り解放
大量の水晶で土偶を粉砕


真守・有栖
はにわの前に土偶退治ね!
武器など不要。この勇狼たる私の一吼えで決着をつけてあげるわ!

いっくわよー……せーの。
わぉぉおお……っ…ふぁ…鼻がむずむずして、くしゃみが出そうで……っ…出ない!

もういっかいよ。わぉお…っく……ぁあっ!?もうっ……出ないんですけど!?

わぅう……次こそは…っ……!


わぉぉおおおお……っくしゅん!!?


はぁ……ようやく、くしゃみが出たわ!

ふふん。気高き咆哮と愛くるしいくしゃみの合わせ技よ!
破壊力を増した一吠えで一撃粉砕だわ……っくしゅん!

ぁ……くしゃみがっ……わぉおっくしゅん!わぉっくしゅん!!わっくしゅん!!?
ふぁ……と、止まらないんだけど?!わおーん……っくしゅん!!!?


ラムル・クルトア
※アドリブ・連携歓迎

ハニワすごいくしゃみだったね…花粉症って大変だ
しゃべる土偶は…なんだか愛嬌があって憎めない感じだけど敵は敵
えっと…歴史的価値とかも考えなくていいんだね?
そっか、それじゃ全力で戦うね

【WIZ】
被害が出る前にここで倒そう
戦況把握を意識して敵の動きを把握<情報収集・戦闘知識>
声をかけ合って、仲間の死角からの攻撃を防いだり、追撃加えたり、討ち漏らしを倒したり、皆と連携して戦うよ
敵の攻撃は、近くの敵を盾にし防いだり、受け流して回避
<敵を盾にする・武器受け・残像・見切り・かばう>

<誘き寄せ>一か所にまとめUCの<範囲攻撃>でまとめ倒せるといいな
その時は仲間を巻き込まないように注意しよう



●あっちもこっちも大変
『ニンゲンだぞ』
『何かちょっと違うのもいるぞ』
『でも敵だ!』
 空中で言いたい放題な土偶達を、猟兵は特に慌てるでもなく見上げていた。
「なんだか愛嬌があって、憎めない感じだね?」
 ラムル・クルトアは青い瞳をゆっくり動かし、空中の土偶を目だけで追っている。
「喋る土偶かぁ。おしゃべりしたいな」
 サンディ・ノックスなど、土偶が喋ると言う事に何の疑問も抱いていなかった。
 まあ、この2人が此処まで落ち着いていられるのは、花粉平気な人たちだから、と言うのもあったかもしれない。
「土偶! 土偶なのですよ! しゃべる土偶なのですよ、すごいのですよ!」
 サギリ・スズノネが興奮した声を上げていた。
 その興奮のお陰か、花粉にやられてたくしゃみはなりを潜めているようだ。
 其れが何時まで保つかは判らないけれど。
 何故なら、相変わらず目と鼻に来ている猟兵達もいるからである。
「はにわの前に土偶退治ね! ふぁ……鼻がむずむずって」
 真守・有栖は、今にもくしゃみが出そうな口元を両手で押さえている。
「土偶さん達がいっぱいですね。ヤドリガミの端くれとしては、彼らをぱりーんってする事は少々悲しいです……っ」
 竜石堂・はつらも、ずびっと小さく鼻を鳴らし続けていた。
 そんな2人に釣られるようにして、土偶が飛び出てきた平屋の向こうから、似たようなずびびっと言う音が聞こえてきた。
 ハニワプリンスだろう。
 隠れているつもりなんだろうけれど、屋根から頭が見えている。
「思わず涙が出てしまうのは、花粉でしょうか? 鼻水がなんだかずびずびですし」
「……なんというか……うん。大変だね……あっちもこっちも」
 目も鼻も大変になっているはつらにちり紙を差し出しながら、栗花落・澪が屋根から見えているハニワの頭に哀れみの眼差しを向ける。
「……花粉症って大変だね」
 ラムルも同じく、はみ出たハニワの頭を見ていた。
 あれ、隠れているつもりなんだろうなぁ。
「待て待て待てーぃ!」
 そこに聞こえてきた新たな声に、澪とはつらが首を傾げる。
「あれ? この声って」
「聞いたことがありますね?」
 2人が声の方に視線を向けると、ぶーんと飛んでくる小さな影がいた。
 榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)である。
「花粉症でも何でもないうさみっち様の登場だぜっくしゅん!」
 現れるなり、盛大なくしゃみがうさみっちの小さな口から飛び出す。
「くしゃみと鼻づまりがちょっと辛いけどな! 風邪気味なのかもな!
 ……なんだその『君も仲間か』みたいな視線は。違うぞ。俺は妖精さんだからな」
 猟兵達からも平屋の向こうのハニワプリンスからも集まった視線に、違うんだーと、羽をばたつかせるうさみっちであった。

●土偶と話そう
『風邪』
『風邪って何だっけ?』
『ニンゲンが調子悪くなるヤツー』
『つまり好機!』
『お告げはこの事だったのか!』
 土偶達の目が、一斉に光を放つ。
「ぴゃぁぁぁぁっ!?」
 ちゅどんっ。
 小さな爆音が響いて、違うんだーしてたうさみっちが、いきなり撃墜された。
「いっくわよー……わぉぉおお……っ……ふぁ……また、鼻がむずむずして……!」
 せーので上げようとした咆哮が、花粉のむずむずのせいで上手く出ないでいた有栖も、割と隙だらけと言えただろう。
 ちゅどんっ。
「わぉ……っく、くしゃみが出そうで……っ……わぎゃんっ!?」
 そんな有栖にも容赦なく、土偶のビームが浴びせられた。
「な、何か目から出たのですよ! しゃべるよりもっとすごいのが出たのです!」
 サギリの瞳が、驚きで大きく見開かれる。
「それに、お告げとか何か、さっきから何度か言っているのですよ。何か事情がありそうですけどー……壊さずに上手く捕まえられたら、話を聞けないですかね?」
 そうは言っても『上手く捕まえる』方法が浮かばず首を傾げたサギリの頭で、簪の鈴が小さくチリンと音を鳴らす。
「なら、とっ捕まえみましょうか?」
 その言葉に反応したのは、サンディだった。
「よっと」
 サンディは軽く跳躍すると、飛び交う土偶の中から2体の手を掴んだ。
『うわー』
『ナニをするー』
 サンディは手を繋いだまま、敵を盾にする要領でぐいっと土偶を引き寄せると、勢いそのままに地面に押し倒す。
「さて。キミタチ、お告げとか狼煙とか言ってたね? あれ、なに?」
『は、話すことはないのだ!』
 黒い笑みを浮かべて押さえつけるサンディに、土偶がしどろもどろ。
 これが生き物だったら、冷や汗の一つもかくのだろうけれど。
「ふぅん? プリンスの合図を待ちわびてたのかな?」
『な、何故わかったのだ!?』
 だが、サンディが続けた言葉が図星だった。
「ああ。お告げと言うのは、ハニワのお告げ、と言うことなのですね!」
 得心がいったサギリが大きく頷くと、再び鈴が小さくチリン。
「ま、それなら張り切っちゃっても仕方ないか」
 サンディも一つ頷いて、笑みの黒さを深める。
「ついでに聞いてもいいかな? 君達に、歴史的価値はないのかな?」
 壊してしまってもいいものか。
 それを気にしていたラムルが、身を屈めて土偶達に尋ねた時だった。
『『『隙ありだー!』』』
 ラムルの目の前を通り過ぎた光が、ちゅどんっ爆音を響かせる。
 他の土偶達が放ったビームは、サンディの掌に押さえつけられていた土偶達を粉々に粉砕していた。
『2体の犠牲で1人倒せるなら――あれ? 平気なの?』
「あはは、あんなのこの俺に効くとでも? 笑っちゃうね」
 ゆらりと立ち上がる姿に呆然と(元々丸い目を)丸くした土偶達に、サンディは手をひらひら振り返す。
「ですが、街の人達に当たったら一大事なのです! あれは危ないのです!」
「まあ、そうだね。土偶と話すなんて珍しい体験も出来て満足したし、壊すね?」
 身構えるサギリの周りに炎の玉が浮かび上がり、サンディの掌に闇が集まり出す。
 戦いは、これからだ。

●土偶壊すべし
「よくもやってくれたな! RPGの民家のツボの如く、割りまくってやる!」
 何かを手にしたうさみっちが、不死鳥の如く再び舞い上がる。
 撃墜されたけど、ほとんどノーダメージだった。
『土偶をツボと一緒にしないで貰おうか!』
「命が宿ったゆたんぽの本気! 喰らえー! さむらいっちゆたんぽ!」
 ツボと同列に扱われてプライドが傷ついた土偶達を迎え撃つは、着物姿で刀を持ったうさみっちゆたんぽ――の複製体。
 その数、ずらっと28体!
「一つ切っては民のため!」
 土偶がスパーンッ!
「二つ切っては俺のストレス解消のため!」
 もひとつ、スパーンッ!
 土偶とゆたんぽのぶつかり合いは、さむらいっちゆたんぽに軍配が上がりそうだ。
 まあ、さむらいっちゆたんぽと言いつつ、分類は刀なゆたんぽだからね。土偶に負ける道理が無いよね。外して使える刀の方が本体では……?
『何だ、こいつ……』
『つ、つよい……』
『下だ。下から迂回ー!』
『上もいけるぞー!』
 一部をさむらいっちの相手に残し、残る土偶達が一斉に上下に別れて飛び出す。
 だが――。
「残念でした! こっちは、はつらさんの間合いですっ!」
 さむらいっちの下に潜り込もうとした土偶達を、鼻をずびっとしながらも、はつらがぶおーんっと振り回した無骨で巨大なはつらさんアックスが迎え撃つ!
『うわー!?』
『駄目だー!?』
 ぱりーんっと景気良く砕かれ吹っ飛ばされる土偶達。
「当然、そう動くと思ったよ」
 上に向かった土偶達を阻むのは、ラムルの声と白と黒の双剣群。
「……力を借りるよ」
 戦闘知識でその動きを読んでいたラムルが放つ、守護の剣。
 光の精霊の加護を受けた白剣ヴァイス。
 闇の精霊の加護を受けた黒剣シュバルツ。
 双剣合わせて四十を超える剣を操るその業は、ラムルの本体である制約の指輪を創造した魔術師が得意としていた魔法の模倣。
 その一つ一つを、斬撃の残像が残る速さで振るえば、其れは正に剣の結界。
 その中に囲まれた土偶に、抜け出す術は無い。
『ビームだ、ビームを撃ちながら行けば――』
 図らずも上と下でほぼ同時に、土偶の目から光が放たれる。
「甘いです!」
 はつらは土偶の放った光を、地を蹴って跳び越えた。
「ふぁっ……へっくしょんっ!」
 そのまま、空中からの攻撃に移ろうとしたはつらだったが、はつらさんアックスを振りかぶるのに思わず息を吸い込んだ所で、くしゃみが出てしまった。
 くしゃみの持つ運動エネルギーは、人の身体からするとかなり大きいという。
「っくしょんっ」
『うわー!?』
『やっぱり駄目だー!?』
 落下の勢いにくしゃみの勢いも加わった、地面を砕くほどに重たいはつらの一撃が、再び土偶達を砕いて吹っ飛ばす。
「全力で行かせて貰うよ」
 上空では、ラムルの操る双剣が土偶の放つ光を悉く防いでいた。
 白剣は、光の精霊の加護を受けたヴァイス。
 黒剣は、闇の精霊の加護を受けたシュバルツ。
「君達に歴史的価値があったとしても――街の被害を許す気はないから」
 光か闇の力を持つ剣だ。
 ラムルにとって、土偶の光など怖れるものではない。
『こ、このニンゲンたち容赦がねえ!?』
「街のヒトに被害を出す存在だよ。生かしておくと思ったの?」
 相手が悪いと悟った土偶達に、サンディがにこやかな笑顔で告げる。
 その掌に浮かぶのは、夜の闇が形になったような漆黒の水晶。
『ヒィッ!?』
「残念、これが見えちゃったんだね? 気付かないほうが幸せだったろうに」
 果たして見えたのか、気配の類を感じたのか。
 怯えた声を発した土偶達を、サンディの解放・夜陰の漆黒の水晶が撃ち抜いていく。
『駄目だこいつら強すぎる』
『ここは逃げて、俺達を掘り出したニンゲンを狙おう』
『あいつら、もっと弱そうだったな』
 数が減ってきた土偶達は、猟兵をスルーして街を目指そうと言うのか。
「そんなことはさせないよ。決して逃がさない――Clarus Virus」
 決して逃がさない――澪が口にしたその言葉は、ヨモギの花言葉のもじったもの。
 告げた意味は、澪の背後に突如として伸びる木々が物語っていた。木々があっと言う間に森と変わり、土偶達の道を塞いでしまう。
『『な、なんだこれー!?』』
 驚く土偶達だが、澪はただ阻む為の森を作ったのではない。
「大分数も減ってきてるし、この土偶達ならまだ威力弱そうだよね」
 森の木々を通った風が、ふわりと虹色に染まっていく。その色の正体は、花粉だ。
 虹色に輝く花粉が、土偶達を包み込んでいく。
 と言う事はだ。
「遮光器って眼鏡のことだろ。眼鏡土偶斬るべし! 斬るべし!」
 さむらいっちで土偶を斬りまくっていたうさみっちが、うっかり花粉の中に巻き込まれる事になるわけだ。
「またつまらぬものを斬ってしまった……ん? これって……おいばかやめろ澪! そんな技、ここで使ったら俺にも被害が!」
「えー? 大丈夫大丈夫。この花粉が効果あるのは、敵だけだよ」
 周りを漂う虹色に気づいたうさみっちの声に、澪は心配ないと笑って返す。
 だが――。
『はくしょんっ』『はくしょんっ』『はくしょんっ』
「ぴゃあああっくしょん!! くしょんっ!!!」
 ハニワに比べれば小さいくしゃみを上げる土偶達の中で、何故かうさみっちも盛大なくしゃみをあげていた。
「あれ……うさみっちさんは攻撃対象にしてない筈なのにな?」
「ゆたんぽだから……? でもヤドリガミのはつらさんは、この花粉は平気ですね?」
 何故だろうと、首を傾げる澪とはつら。
 ユーベルコードは奇跡の力。時に、理屈じゃ計れない事だって起こるさ。

「鈴を鳴らして舞いましょう」
 シャン、リン、シャン。
 鳴り響く鈴の音。
『な、なんなのだこれー』
『むずむず止まらないー』
 突然のくしゃみに困惑する土偶達に迫る、音の無い鈴。
 否――それは鈴の形をした金色の炎。
「恨みはないのですが、大人しくなって貰うのですよ!」
 サギリは鈴の形をした鈴炎をバラバラに操り、土偶達を街から遠ざける方へと押しやりながらその身体を焦がしていく。
「火種があって動きが止まってる今なら、僕の特性飴で――!」
 サギリの炎を見た澪が、小瓶『Candy pop』の蓋をコツンと叩いた。
「遮光器土偶って、その口のとこ穴開いてるよね?」
 魔力の篭った可愛らしい飴玉を幾つか取り出すと、澪は清浄な輝きを放つ杖の上にその乗せた飴玉に、破魔の力を込めていく。
「動きを止めておけばいいんだね」
 何を狙っているのか大まかには気づいたラムルは、白黒の双剣を操り、土偶を突き刺して一箇所に纏めていく。
「せーのっ!」
 そして澪は『Staff of Maria』をフルスイングして、飴を打ち放った。
 狙ったのは土偶の口。
 そこに嵌れば御の字だが、嵌ったのは、僅か。大半は顔に当たって落ちてく。
「でもそれで充分――これでもくらえ!」
 口なり顔なりに届いた瞬間、澪が飴玉に篭った魔力を全力で炎に変えれば、それはとても小さな爆弾と化す。
 さらにサギリの金色の鈴炎と爆炎が混ざり合い、土偶達を飲み込んでいく。
『うわー!?』
『こんなの勝てねー!?』
 炎が収まってもまだ飛んでいる土偶はいたが、その心は折れかかっていた。
『あそこに丸腰のニンゲンがいるぞ!』
『何! 本当だ!』
『増える剣とかちっちゃい侍とかもいない! これなら!』
 心が折れかかった土偶達がロックオンしたのは、有栖であった。
 丸腰?
 確かにそうだ。有栖は刃を抜いていない。
 その必要は無いのだから。
「武器など不要よ。この勇狼たる私の一吼えで決着をつけてあげるわ!」
 向かってくる土偶達に、有栖は不敵な笑みを浮かべる。
「次こそは……わぅう……わぉぉ……ぁあっ! もうっ、いつになったら出るのよ!」
 咆哮を上げようとすると、やっぱり鼻がむずむず。
 そのむずむずに負けず、有栖は大きく息を吸い込んで――。
「わぉぉおおおお……っくしゅん!!?!?」
 土偶達が迫るその直前、やっとくしゃみが咆哮と一緒に出た。
「はぁ……ようやく、くしゃみが出たわ! どう? 気高き咆哮と愛くるしいくしゃみの合わせ技よ!」
 有栖が上げたのは、気高い咆哮、というには可愛らしいものだったが、その衝撃は残りの土偶達を、全て粉々に撃ち砕いていた。
 ィィィィィイイン!
 余韻が耳障りな残響となって消えていく。
「破壊力を増した一吠えで一撃粉砕だわ……っくしゅん!」
 最後の土偶の群れを一網打尽にした有栖のドヤ顔は、すぐにくしゃみに変わった。
「ぁ……あれ? くしゃみがっ……わぉおっくしゅん! わぉっくしゅん!! わっくしゅん!!? ふぁ……と、止まらないんだけど?! わおー……っくしゅん!!?」
 最後に咆哮を上げようと吸い込んだ時に、かなり吸い込んでしまったのだろうか。
 有栖のくしゃみは、中々止まりそうになかった。

 何はともあれ――あとは今回の首謀者、ハニワプリンスとの戦いを残すのみだ。

「もう、はにわさん、早く出てきてくださいな! 
 お鼻と眼が大変なので、帰りたくなって来ました! くちゅんっ!」
 いっそ、玩具袋を被っちゃおうか――頭をよぎった考えを振り払って、はつらが言い放つと、平屋の陰から大きな影、のそりと出て来た。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ハニワプリンス』

POW   :    ハニワビーム
【口からハニワビーム 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    ハニ馬召喚
自身の身長の2倍の【馬形のハニワ 】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    であえい、であえい!
レベル×1体の、【腹部 】に1と刻印された戦闘用【ミニハニワ】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。

イラスト:橡こりす

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠蓮賀・蓮也です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●たった一つの綻び
『ああ、折角人間を利用して集めていた土偶が……』
 ふらふらと出て来たハニワプリンスが、がっくりと項垂れて両手を地に着ける。
 膝があったら、膝を折って項垂れていたかもしれない。
『もー! 何でこうなる! 何でこんなにむずむずと……はっくしょーい!』
 項垂れたまま、ハニワプリンスがくしゃみを響かせる。
『これも人間の罠か何かなんだろう! きっとそうだ!
 もう回りくどいのはやめだ! このハニワプリンス自ら、街に攻め込んでやる!』
 くしゃみのし過ぎで何かがキレてしまったのだろうか。
 それとも、計画の崩壊が続いてやけになったのだろうか。
 いずれにせよ、ハニワプリンスの虚ろな瞳が、猟兵達に向けられる。
『まず、土偶達のお礼はさせて貰うとしよう』
 猟兵達が、逃がす気がない事を悟っているからだろうか。ハニワプリンスの方も、戦る気は高いようだ。
『配下を失い逃げるだけでは、プリンスの名折れだかぁ……らぁっくしょーい!』
 花粉症レベルも、まだまだ高いようだ。
 あ、でも、くしゃみでうっかりビーム出なかった。
 少しは耐性ついた……のだろうか。そうかなぁ?
栗花落・澪
【うさみっち(f01902)と連携】

…人間の罠かと言われたら、元を辿ればある意味間違ってないかもしれないけど
仕掛けた本人達どころか猟兵すらその罠掛かってるからね、ほら
(うさみっちを指差し)

見た目は可愛いしなんか憎めないし
正直色々と抵抗あるけど…
いつまでもくしゃみに悩まされるのも辛いだろうし
楽にしてあげよう(色んな意味で)

氷の【全力魔法】の顔面狙いで
ビーム対策にお口チャック
気を引いてもらってる間に【空中戦】で
頭上を通過し背後を取り

体型的にひっくり返ると隙だらけになりそう
という事で全力の飛び蹴りかましますね

頑丈でなによりだけど
たまにはゆっくりおやすみなさい

【催眠歌唱】を乗せた【指定UC】で攻撃


榎・うさみっち
【澪(f03165)と連携!】

おぉ、ハニワよ
お前がオブリビオンでも何でもないただの喋るハニワだったなら
鼻がむずむず同士語り合って仲良くなれたかもしれない
だが俺とお前は戦う運命なのだッッくしょん!!

いでよ【あいとせいぎのうさみっちレンジャー】!!
ヒーローズアース記念にあみだしてみました~☆(裏話)
うさみキック!パンチ!チョップ!ビーム!
と戦隊ものっぽい技を次々と繰り出す
時には逃げることだって立派な戦術!
【逃げ足】活かして四方八方に散りつつ攻撃を回避
全体的に大げさな動きで敵の気を引くのも目的
澪に攻撃のチャンスを作るのだ

そしてクライマックスは…うさみっちスーパー合体!
29体分のパワーを込めて突撃ー!


真守・有栖
はぁ…っ…ようやく、くしゃみが止まったわ。
わぅう……これもはにわの罠か何かね!
間抜けな顔をして此方を欺くなんて、なかなかの策士じゃないの。褒めてあげるわ!

ふふん。なるほど?
どうやら騎馬戦をお望みのようね?受けて立つわ!

すぅ……っと大きく深呼吸。

わぉぉおおおおおおお……くっしゅん!?

町中に響き渡るくらいの遠吠えとくしゃみで、さっきの暴れ馬……絶狼(仮名)を呼び寄せるわ。
狼をも恐れぬ名馬こそ、私が乗るにふさわしいわね!


……来て、くれるわよね?


絶狼(仮名)に跨がり、狼馬一体!
一心同体となった我らに手綱はいらぬ。薙刀を手に真っ向勝負よ!
遮る者は薙ぎ払い蹴飛ばして、そのまま叩き斬ってあげるわ!……成敗!


サンディ・ノックス
ヒトの欲望を上手く使い戦力集めた知能も
ここで逃げない心意気も
無機物なオブリビオンなのに花粉症になっちゃう途方もない運の悪さで台無し、ほんと可哀想
だから俺、敬意を表して全力で戦ってあげる
こういうのを手向けっていうんでしょ?
…武具と同化できるこの体、ヒトらしさと一生無縁だと思ってたけど
プリンスに希望をもらえたしね
(ハニワ呼びからプリンス呼びに。煽りと取られても仕方ないが、本人は本心を伝えてるつもり)

胸鎧を基に黒基調の全身甲冑姿へ変身
暗夜の剣で正面から斬りかかる
くしゃみの前触れに気付いたらビームの前触れと判断、距離をとる

小刀を投擲して招集・紫を発動
黒い大型犬姿の幻影は遊んで!という勢いで向かっていく


サギリ・スズノネ
ハニワ!ハニワなのですよ!しかもプリンスなのですよ!
サギリ初めて見まし……見まし……へっぷしょい!(※くしゃみ)
……ハニワを見ていたら、鼻がむずむずするの思い出したのですよー……へっぷしょい!

○戦闘
ハニワも土偶も出来上がる過程で焼くものです。
なのでー、もっかい焼き上げてやるですよ!

【火ノ神楽】でハニワプリンスを攻撃します。
敵が複数の時は火の鈴も複数に、1体の時は火の鈴を合体強化して、地面に接している足下を狙うのです。
ちょっとでもハニワプリンスのバランスを崩す事が出来たら、戦いやすくなるかもなのですよっ

敵の攻撃を避けられない時や、街を狙われたら鉄鍋を盾代わりに【盾受け】し【拠点防御】するのです!


竜石堂・はつら
とうとうハニワさんをぱっりーんする時が来ましたねっ!
むずむずへっくしょんですからもう、すぐに帰りますっ!

わわっ、ハニワビームすごい強いです!
でもはつらさん、その弱点わかっちゃいました、はっくしょん!
ハニワさんの口がくしゃみする時とビーム撃つ時で雰囲気が変わりますので
それを読んでくしゃみする時に口になんだか棒をツッコむと…とっても苦しそうですっ
出て来た八大竜王もへっくしょんしてもう大変ですねっ
もう花粉はっくしょんパワーではつらさんアックスでぼっこぼこにしますっ!

とうとうハニワさんもお墓に埋められる時が来たようです、立派にお勤めを果たしてくださいねっ!
はつらさんはもう花粉はこりごりですっ、とほほ。


ラムル・クルトア
※アドリブ・連携大歓迎です

あんな盛大なくしゃみが続けば、集中できないしイライラもするね
花粉症が大変なのはよく分かったよ、でも、人のせいじゃないからさ…八つ当たりはやめようか?
街に被害を出すわけにはいかないし…ここで止めるよ

引続きUCで双剣を操り戦うよ

対ハニワビーム
口から放つなら口元を注意すれば攻撃のタイミングは予測できるかも?
ビームの軌道を読んで躱すよ
≪情報収集、戦闘知識、見切り≫

対ハニ馬
(あの体型でどうやって乗りこなすんだろう?)
と少し不思議に思いつつ、プリンスを集中攻撃して落馬を狙おう
≪フェイント、カウンター、残像≫

対ミニハニワ
増えたら厄介だから優先撃破し増殖を防ぐよ
≪範囲攻撃、2回攻撃≫



●止まらないくしゃみ
「はぁ……はぁっ……ようやく。ようやく、くしゃみが止まったわ!」
 くしゃみで乱れた呼吸を整えて、真守・有栖が小さく息を吐く。
 そして、ハニワプリンス――長いからハニプリでいいか――をキッと見据えた。
「ハニワの罠か何かだったのよね! 間抜けな顔をして此方を欺くなんて、なかなかの策士じゃないの。褒めてあげるわ!」
『な、なにおぅ!?』
 自信たっぷりの有栖にビシッと指差し告げられて、ハニプリびっくり。
『罠を仕掛けた策士はそっち――っくしょーい!』
 言い返そうとして、またくしゃみ。
 よし、ビームは出ていない。
「花粉症が大変なのは、よく分かったよ」
『かふんしょう? この罠は、かふんしょうと言――はっくしょーい!』
 まだくしゃみ自体は収まらないハニプリを、ラムルは大変そうだなぁと見やる。
 ラムル自身は花粉の影響を受けていないが――これだけ盛大なくしゃみが続くのを見せられたら、集中できないしイライラもするだろう。
「罠じゃないよ。人のせいじゃないからさ……八つ当たりはやめようか?」
『もう誰のせいかなんて、どうでもいい!』
 ラムルが穏やかに告げた言葉に、ハニプリは腕をぶんぶん振って言い返す。
『何かもう、引っ込みがつかないんだ!』
「……あ、うん」
 その剣幕に、ラムルは思わず頷いてしまった。
「人間の罠って言うのも、元を辿れば、ある意味間違ってないかもしれないけど。計画通りじゃない証明は出来るよ?」
 栗花落・澪は人の罠を疑うハニプリを否定するでもなく、淡々と告げる。
「だって仕掛けた本人達どころか、僕達すらその罠掛かってるからね? ほら」
 ほら、と澪が指差した先で。
 
 ――っくしょん!!
 くしゃみが1つ。
「うう。まだ鼻がむずむずするぜ……ん? ハニワよ、なんだその目は」
 そこには、すんっと鼻を啜る榎・うさみっちが、浮いていた。

 ――へっぷしょい!
 ――へっくしょん

 さらにくしゃみが今度は2つ。
「サギリ、ハニワのプリンスなんて見たの初めてなのですよ! ですが……ハニワを見てたら、鼻がむずむずするの、思い出したのですよー……っぷしょい!」
「はつらさんも、むずむずへっくしょんです。もう、すぐに帰りたいですっ!」
 サギリ・スズノネと竜石堂・はつらの鼻も、ぐすぐすのままである。
『うむ……うん。どうやら、この俺だけを狙った罠じゃないみたいだな』
 さすがにハニプリも、自分を狙った罠の類でない事は判ったようだ。
『だが、それはそれ。これはこれ。土偶達の分はやり返す!』
 まぁるい土の手をビシッと向けて言い放つハニプリ。
 その前に、サンディ・ノックスが笑みを浮かべて進み出る。
「ヒトの欲望を上手く使って戦力を集める知能も、此処で逃げない心意気も、その途方も無い運の悪さで台無し――ほんと、可哀想」
 告げるサンディの姿が、胸部の鎧から広がった黒に覆われていく。
 黒は手足も、顔も覆っていく。
 見えなくなる直前、浮かべていた笑みは嘲笑ではない。むしろ――。
(「武具と同化できるこの体、ヒトらしさと一生無縁だと思ってたけど……プリンスに希望をもらえたしね」)
 ハニワでも花粉でくしゃみをする。そんな不思議が起こりえるのなら。
「だから俺、敬意を表して全力で戦ってあげるよ。プリンス」
 サンディがハニプリに向けた呼称が、ハニワからプリンスに変わっていた事に、とうのハニプリは気づいていただろうか。
「こういうの、手向けって言うんでしょ?」
 全身黒甲冑の姿となったサンディが、地を蹴って飛び出すなり斬りかかる。
『全力の戦いなら、望むところだ』
 ガキーンッ!
 僅かに朱色が入った『暗夜の剣』の漆黒の刃と、ハニプリの土腕がぶつかり合って甲高い音を響かせた。

●真のハニワビーム
『見せてやろう……』
 ふわりと浮き上がるハニプリから、サンディが距離を取る。
『これが本来のぉ! ハニワビーム!』
 ハニプリの口から溢れる輝き。直後に放たれた光は、くしゃみと共に放たれて来たのと同じものでありながら、全く違う質のものであった。
「ふわわわっ!?」
 避けられない。そう踏んで、サギリが盾代わりに構えて被った鉄鍋を光の波が打つ。
 地面に当たって弾けた光とその衝撃が、猟兵達の間を吹き抜けた。
「わわっ、ハニワビームすごい強いです!」
 はつらさんアックスを支えになんとか耐えながら、はつらがハニプリを見上げる。
 その口の奥には、次に放たれるであろう光が輝きを放っていた。
「口から放たれると判っているなら、口元を見れば――来るよ!」
 だが、ハニプリが立て続けに放った2発目のビームのタイミングは、その口に注目したラムルが完全に予測していた。
『やるではないか! ならばどんどん行くぞっ!』
 そうハニプリは言うが、さすがに3発目は溜めが必要になるようだ。
 その時間が――この戦いの中での、ハニプリの最初のミスだった。
「はつらさん、ビームの弱点わかっちゃいました! はっくしょん!」
 止まらないくしゃみにずびっと鼻を鳴らしつつ、はつらはおっきな丸眼鏡を、すちゃっと装着。
「ハニワさんの口、くしゃみをする時とビーム撃つ時で、雰囲気変わります! 直前に少し大きくなるんです!」
 ハニプリの口は、ずっと丸く開いているが――はつらが上を指差す。
 正にちょうど、ハニプリの口がぐぐっと少し開いていた。
「そこではつらさん、思いつきました! ここに、何か棒の類をツッコめば――!」
「棒の類か。なら、これで」
 何かないかと探すはつらに、サンディが暗夜の剣を槍に変形させて見せる。
「丁度良いですね! それを口に、投げちゃってください!」
 はつらに頷いてサンディが投げた漆黒の槍は、ハニプリの口の中にスポーンッと飛び込んだ。
『げっほげほっ、ぐふげほっ!? はっくしょーい!』
 咽た挙句にくしゃみが釣られて、ハニプリが浮遊が解けて落下する。
 落下中に放たれたビームは、お空の彼方に消えてった。
「っくしゅんっ! 思った通り、とっても苦しそうですっ」
 これにより【はつらさんの極めて主観的な客観的視点】は実証された。
 応えて現れる八大竜王――それをひと言で言うなら『なんだか絡みまくって何かよくわからなくなったうにょうにょ』であった。
『な、なんだそのうにょうにょしたのは! 生き物か!?』
「八大竜王です!」
 その見た目に怯えるハニプリの口に、八大竜王が容赦なく飛び込む。
『『『『『『『『へっくしょん』』』』』』』』
 次の瞬間、八大竜王もくしゃみをしていた。はつらが花粉症だからだろうか。それともハニプリから移ったんだろうか。
 どちらか確かめる術は無いが、これでしばらくは、ハニワビームは封じられた。
 そして、この好機を逃す猟兵達ではない。
「畳み掛けるぜ! いでよ【あいとせいぎのうさみっちレンジャー】!!」
 ポーズを決めたうさみっちから、29色の光が飛び出す。
『熱血レッド!』
『冷静ブルー!』
『食欲イエロー!』
『ニヒルブラック!』
『ミニスカピンク!』
『ロマンスグレー!』
『きらきらゴールド!』
 数が多いので以下略するけど、うさみっちが召喚したのは、全員色違いヒーローコスチューム姿のうさみっち達。
『『『『『我らうさみっち戦隊! 悪を滅ぼす正義の鉄槌、喰らえー!!』』』』』
 まるで色鉛筆セットの様にカラフルな、29体のうさみっち戦隊だ。
『うさみパーンチ!』
『うさみチョップ!』
 お口にうにょうにょ突っ込まれたハニプリに群がって、おりゃおりゃ、べしべしと攻撃を仕掛け続けるうさみっち戦隊。
『くっ、この……!』
 ハニプリが腕を振ると、ぴゃぁぁぁっと逃げ回るうさみっち戦隊。
「おし、その調子だ! 時には逃げる事も立派な戦術!」
『そっちが数で来るなら――であえい、であ――』
 数には数。ハニプリのその判断は、少し遅かった。
「遅いぜ、ハニワ。澪、今だ!」
「させないよ――!」
 うさみっちの合図に応えた澪の声は、ハニプリの斜め後ろから。
 うさみっちレンジャーズの真の狙いは、澪がハニプリの頭上を飛び越えて背後に回っていた、その動きを悟らせない事。
「ひっくり返っちゃえー!」
 空中から落下してきた澪の全力の飛び蹴りが、ハニプリの背中に突き刺さる。
『うぉぉっ!?』
 ぐらり。
 ハニプリの体が、大きく前に傾く。
「なるほど、バランスを崩すのですね――なら。火ノ神楽!」
 澪の狙いに気づいたサギリが、鈴形の金炎を幾つか束ねる。ハニプリの浮いた足元に鈴炎を差し込んで、束ねて膨らましてハニプリを押し上げる。
『のわわわわっ』
「もう1発――!」
「うさみっちレンジャーズ! 澪にあわせて、うさみキックだ!」
 蹴った反動で再び飛び上がっていた澪に合わせて、うさみっちもうさみっち戦隊に指示を出す。大小、合わせて30の飛び蹴りだ。
『うわぁぁぁぁ!?』
 その衝撃に耐え切れず、ハニプリは転倒した。

●騎馬戦?
『む?』
 スカッ。
 倒れたハニプリの腕が、空を切る。
『あれ?』
 スカッ、スカッ。
 むなしく空を切る、ハニプリの腕。

 ┌|∵|┘スカッ
 └|∵|┐スカッ
 ┌|∵|┘スカッ

 こんな感じである。
『届かないだとぉぉぉぉぉぉぉ!?』
 └┌└┌└┌|∵|┘┐┘┐┘┐┘
 必死にぶんぶん腕を振るハニプリだが、伸びない限り届きそうにない。
「えっと……蹴り倒しておいてなんだけど、なんかごめん。ここまで隙だらけになると思わなかった」
 澪の視線は、哀れみを通り越した何かになっていた。
「プリンス……どこまで可哀想なんだ」
「踊ってるみたいで、愛嬌があって可愛いのです!」
 サンディは黒甲冑の奥でため息をつき、サギリは金の瞳を丸くして輝かせる。
『こうなったら、最後の手段! 来い、ハニ馬!』
 ハニプリの後ろの地面がズモモモッと蠢き、盛り上がる。
 現れたのは、ハニプリと同じ――いや、それ以上に大きな馬形のハニワ。
(「騎乗で起きようって言うのかな。あの体型でどうやって乗りこなすんだろう?」)
 思わず見守るラムルの視線の先で、馬ハニワは膝を折って身を低くすると、徐にハニプリの中に頭を突っ込んだ。
「――え?」
 驚くラムルを尻目に、馬ハニワは膝を伸ばして立ち上がる。
 頭にハニプリ被ったままで。
「き、騎乗ってそこか……それ騎乗って言うのかな?」
『これぞ、ハニ馬一体のハニワプリンス騎乗形態――ハニタウロス!』
 思わず呻くラムルに、ドヤ顔(多分)で答えるハニプリ。
 まあ、つまりどうなっているかと言うと、ハニプリの中から馬ハニワの首と体が生えているような感じの状態である。
「し、新種のハニワですよ!!!」
 ハニワ好きなサギリはなんだか興奮してるけれど、これきっとシュールな部類。
 だけど、大きくなってるし、馬ハニワの分の生命力も共有されているから、強化されてるのは間違いない。
「ふふん。なるほど? どうやら騎馬戦をお望みのようね?」
 だが、そんなハニプリの変化に、有栖は不敵な笑みを浮かべていた。
「受けて立つわ!」
 有栖はハニプリを指差して言い放つと、すぅ……と大きく深く息を吸い込み――。

 わぉぉおおおおおおお――……くっしゅん!?

 辺り一体に響いた大きな遠吠えとくしゃみは、街まで届いていただろう。
「来なさい! 絶狼(ぜつろう)!」
 そして、有栖が高らかにその名を告げる。
 ……。
 しぃん。
「え? あ、あれ? ……来て、くれるわよね?」
 さすがにちょっと不安になったか、有栖の紫瞳が揺れたその時。
 街の方からパッカパッカと蹄の音が聞こえてきた。
「良かったー! 来てくれたのね、絶狼!」
 現れた馬に、有栖が飛び乗る。
 それは街で暴れていた馬の中の、有栖が捕まえた(?)一頭だ。
 一時間以上にわたる捕縛劇。その一時間は、この時の為――だったのかなぁ?
 なお、絶狼と言う名前は有栖が勝手に呼んでるだけである。
「そっちがハニ馬一体なら、私は狼馬一体! 狼をも恐れぬ名馬こそ、私が乗るにふさわしいわ!」
『ほう……面白い、かかって来い!』
「行くわよ、絶狼! 一心同体となった我らに手綱はいらぬ。成敗よ!」
 だが絶狼は動かない。
 有栖の意思はある程度は伝わっていたが、その言葉が余すところなく伝わっているかというと――残念ながら、そうでもなかった。
 だが、そこは武家の家の馬。
 誰かが跨り、得物を構えているのなら。そこが戦場だと本能で察する。
 では何故動けないのか。
『ブルルッ……ヒヒンッ』
 怖いのだ。単純に。ハニタウロスが。でかいもんね。
「怖れることはないわ、絶狼! あなたは走るだけで良いの! 敵は全て、この私が叩き斬ってあげるわ!」
 ぺちんと有栖が絶狼の背を叩く。それで、絶狼も腹を括って駆け出した。
 パカラッパカラッと蹄の音が鳴り響く。
「行くわよ――っ!」
『来い、狼娘!』
 ガキィンッ!
 有栖が振り下ろした薙刀と、ハニプリが振り上げた馬ハニワの前脚がぶつかり合う。
 では、それを絶狼視点で見てみましょう。
『目の前をデカイ蹄が通り過ぎていったんだ……』
 パカラッパカラッパカラッパカラッ!
「やっと、本気になったみたいね、絶狼!」
 いやこれ多分、身の危険を感じてやけくそになってる類だと思うんだけど、鞍上の有栖は全く気づいてなさそうだった。
『くっ……ちょこまかと! やり難い!』
 馬埴輪の足と足の間を走り回る有栖達を探し、ジタバタするハニプリ。
 その足の一つに、漆黒の小刀が突き刺さった。
「俺達の事を、忘れるなよ?」
 小刀を投げたサンディが告げると同時に、その足元から漆黒が膨れ上がる。
 【招集・紫】――その漆黒は黒い大型犬の幻影となってハニプリに飛び掛った。
『ぬぉっ?! なんだコイツ……あ、やめ、なめるな。噛むな! 俺は骨じゃない!』
「目印に向かって一目散。可愛い奴だよ」
 攻撃なのか遊んで欲しいのか、判断に迷う勢いの幻影の黒犬の様子に、サンディは微笑ましそうに頷く。
 有栖がハニプリに与えたダメージは微々たるものだったが、その行動は、他の猟兵達にとって良い目晦ましになっていた。
 本人にそんな意図はなかったんだけどね?
「プリンスは固いけど、馬はそうでもなさそうだよ」
「成程。落馬を狙うつもりだったけど……狙うなら馬からだね」
 サンディの言葉に頷いて、ラムルは増殖させた双剣――ヴァイスとシュバルツ、白と黒に分けてそれぞれで円を作るように並べ、刃の輪を作る。
 まるでラムルの本体である指輪の様に。
「街に被害を出すわけにはいかないし……ここで止めるよ」
 ラムルの操る白と黒、光と闇の剣輪が回転し、馬ハニワの脚を切りつけていく。
 その一撃一撃が、連撃であった。
 輪を成す剣の刃、その一つ一つが前の刃の上に正確に傷を重ねていく。
「鈴を鳴らして舞いましょう」
 リィン。
 簪の鈴を鳴らして、サギリが舞えば鈴の炎が踊る。
 コロコロと転がるように宙を漂った炎は、やがて一つに集まっていく。
「ハニワも土偶も出来上がる過程で焼くものです」
 それは馬ハニワだって同じ事。
 全て集まった鈴の金炎は、一つの巨大な炎――炎塊とでも言える程になっていた。
「なのでー、もっかい焼き上げてやるですよ!」
『ま、待て――狼娘も巻き込む気か』
 サギリの炎の巨大さに、ハニプリが慌てた様子でそう言い出す。
「ご心配なくですよ! サギリの炎は、お馬さんを巻き込まないのです!」
 仲間と仲間が巻き込んだ馬への延焼を抑えつつ、サギリは鈴の炎塊を叩き付ける。
『熱い! 体が乾く! であえい、であえい!』
 体を焼く炎に、ハニプリはミニハニワを召喚し、それを自らにぶつけさせた。
 ミニハニワを犠牲に、ハニプリはサギリの炎を消したのだ。
 それでも、その体は所々焦げていたが。
 だが、それ以上に猟兵達にとって問題なのは、ハニプリの口が開いていること。
「あっ。八大竜王は、時間切れですっ!」
 はつらの八大竜王がビームを封じていられる時間の、限界が来ていた。
『ふっふっふっ……これでやっとビームが撃て』
「撃たせないよ! お口チャック!」
『ふごごごごっ!?』
 すかさず澪が放った氷魔法が、ハニプリの口を氷の蓋で閉ざしてしまう。
 尤も、氷魔法ではユーベルコードほどの時間は持たない。
「今の内に――!」
 だが、援護射撃には充分だった。何の援護か?
「おう! うさみっちレンジャー! スーパー合体だぁー!」
 29体のうさみっち戦隊が合体する為の時間だ。
「おぉ、ハニワよ。お前がオブリビオンでも何でもない、ただ喋るハニワだったなら。鼻がむずむず同士、語り合って仲良くなれたかもしれない」
『もごもごもご――』
「だが俺とお前は戦う運命なのだッッくしょん!!」
 うさみっちの言葉にハニプリも何かを言うのだが、言葉にならない。
「うさみっち戦隊! 29体分のパワーを込めて、うさみレインボーアタックだ!」
 くしゃみに負けずに指示が飛ぶ。
 カラフルなうさみっちレンジャー、全ての色が1つとなったことで放てる、七色どころではないカラフルな光を纏ったうさみっちレンジャーの突撃!
『ぐはっ?!』
 突撃と同時に突き抜けた光の衝撃に、馬ハニワの脚が3本、砕け散った。
 ラムルの双剣の輪の斬撃と、サギリの炎で脆くなっていた所に、突撃の衝撃。
 ついに耐え切れなくなった脚が折れたのだ。
「とうとうハニワさんもお墓に埋められる時が来たようです! 立派にお勤めを果たしてくださいねっ! はっくしょん!」
 まだ止まらぬくしゃみと共に、はつらが残った脚に巨大斧を叩きつけて砕き折る。
 全ての脚を失った馬ハニワの体が、ずんっと地面に空しく落ちた。
『こ、これでは……動けない!?』
 そう。全ての脚を失ってしまっては、馬ハニワは動けない。
 そして。
『はっ!? し、しまったー!? こうなっては、馬ハニワから外れられない!』
 また手が届かないのだ。
 ハニプリも動けないぞ!
「見た目は可愛いし、なんか憎めないけど……もう楽にしてあげるよ。いつまでもくしゃみに悩まされるのも辛いだろうし」
 戦場に響く、澪の歌声。
 歌声に誘われるように降り注ぐ花弁は、澪の頭にある花と同じ色。
 誘幻の楽園――エデン・オブ・ネニア。
(「頑丈でなによりだけど。たまにはゆっくりおやすみなさい」)
 無数の花弁の刃が、嵐の如くハニプリを襲う。それを操る澪のネニアは、果たしてハニプリにとっては子守唄か、それとも挽歌か。
『お、おぉ……こ、これまでか……我らの計画が』
 その歌が終わった時、ハニワプリンスが力を失いガラガラと崩れていった。
「……最後まで、運がない奴だったよ」
 全身を覆っていた甲冑を解きながら、サンディが呟く。
「……新種のハニワって、良く考えると変ですね?」
 落ち着きを取り戻したサギリは、戦闘中に口走った事に今更ながら自分でツッコミを入れていた。
「終わりですよね? 早く帰りましょう!」
 もう花粉はこりごりなはつらが、帰ろうと促す。
「そうだね。もう街の平穏を脅かすのはいないし……馬は帰っちゃってるしね」
 ラムルが指差した方向には、土煙を上げて走り去る馬が一頭。
 あれ、馬を制御できてるのかなぁ。
「絶狼ー!? どこに行くの!?」
 なお、その背中で有栖がどんな顔をしていたのかは――誰も見えていないのだから、敢えて記す事もないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月04日


挿絵イラスト