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第二次サイキックハーツ大戦⑯~衣帯不解に描くは地獄

#サイキックハーツ #第二次サイキックハーツ大戦 #第三戦線 #狩野響羅

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●まあ覚えてる筈がない
 ――狩野響羅。
 地獄絵を専門としていた、江戸時代の『地獄絵師』。
 武蔵坂学園の記録によると、かつて群馬の赤城山中にあった羅刹の里に『狩野響羅による畢生の大作のひとつ』があったらしいのだが――。
「……地獄絵図? ……あった……か……?」
 かつて羅刹だった頃はその里にいた上泉・摩利矢は、まるで覚えていなかった。
「まあ、あったとしても、描いた人の名前なんて私が覚えてる筈がないよ」
 そこは自信満々に言わないで頂きたい。

 閑話休題。

「まあ、その狩野響羅とか言う、昔の地獄専門の絵師がオブリビオンになって現れた」
 摩利矢はとある友人に手伝って貰って纏めたメモを手に、話を始めた。
「戦闘能力は無いけど、変な能力を持ってる。恐るべき情念の深さゆえに筆を折るまで死ぬことができない、と言う呪いじみた能力と、こいつが地獄の絵を描いてると周りに羅刹が出てくる、と言う能力だね」
 狩野響羅は地獄絵を描いてる限り死なないし、死なない限り描き続ける。
 そして地獄絵を描き続ける限り、その周囲に羅刹の群れが無限に湧き続ける。
 1体1体は強くはないが、疲れて筆が止まるということもない為、敵が無限に湧き続けると言う事になる。
「筆を狙っても無駄だよ」
 狙って壊せるものでもなく、仮に壊せてもすぐに新しい筆が現れる。試みるだけ時間と労力の無駄だ。
 狩野響羅の筆を止める止める唯一の手段。

 それは、狩野響羅に自ら筆を折らせる事。

「その為にはまず、羅刹の群れを蹴散らさないと」
 響羅は既に絵を描き始めているので、羅刹の数を減らさなければ説得どころではない。
「その上、描き始めると周りが見えなくなるタイプらしい」
 周りに羅刹が何体現れようが、何体倒されようが、狩野響羅の知った事ではない。
 休憩など考えもせず、水すら飲まず。最後の鬼『渦眼』を現世に誕生させるため、一心不乱に『渦眼羅刹鬼絵図』を描き続ける。
 芸術家と言う人種は作業に没頭すると止まらなくなると言うタイプは多い――なんて言われるが、これは度を越している。
 それでも何とか響羅の気を引いて、彼が筆を折るような言葉を投げかけなければならない。
「どう説得すれば良いかなんて、私じゃ思いつかないけど……そう言うの得意な人、頑張って欲しい」
 説明は終わり、と摩利矢はメモを閉じ、小さく頭を下げた。


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 ご無沙汰しております。

 狩野響羅。
 そう言えば出てましたね、名前は。
 お懐かしゅうございます。嘘です。正直、調べ直さないと覚えてなかったです。
 でもこれは出さねば、とひょっこり戻ってまいりました。
 こんな落ち武者ヘアーだったのか。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、特殊なシナリオとなります。
 ⑯狩野響羅、のシナリオになります。

 プレイングボーナスは、
 『狩野響羅が筆を折るような説得を行う/湧き出し続ける羅刹を倒し続ける』
 です。
 条件2つですが、orと言うよりandと捉えて貰った方が良いかと。
 羅刹を倒し続けるだけだとエンドレスゲームで、説得に挑戦して筆を折らせないと終わりませんので。
 説得必須です。

 なお戦争シナリオではありますが、現在週末に出勤日が集中しており、執筆時間確保の為、明日5/21(木)8:31以降の受付とさせていただきます。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 ボス戦 『地獄絵師『狩野響羅』』

POW   :    大焦熱地獄
戦場全体に【熱と炎に満ちた地獄】を発生させる。レベル分後まで、敵は【熱と炎】の攻撃を、味方は【地獄エネルギー】の回復を受け続ける。
SPD   :    等活地獄
【地獄絵図に描かれた地獄】から、戦場全体に「敵味方を識別する【地獄の鬼】」を放ち、ダメージと【鬼の料理】の状態異常を与える。
WIZ   :    八寒地獄
戦場全体に【凍てつく冷気】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【氷鬼の守り】による攻撃力と防御力の強化を与える。

イラスト:雲間陽子

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ベルト・ラムバルド
アドリブ上等!

絵描きの筆を折らせないと駄目なのか…
ちょっと心が痛むが…すまんな!騎士道の権化ベルト・ラムバルドが行くぞ!

キャバリア操縦し参上!とりあえずキャバリア大剣でばっさばっさと空前絶後のバッサリ感で羅刹を切り払って行くぞ!

さて説得…寒い!こいつこんなに寒いのにまだ絵ぇ描いてる!手かじかんでるし息も白い!でもちょー上手い!芸術家すげ~!

こうなりゃあ…彼奴等の力を借りるしかあるまい!
UCで…GGOから猫達を召喚!
奴の絵の真上に寝転がったり、絵具踏みつけた手足で絵の上を闊歩したり、筆を猫パンチで攻撃したり!

…だがまず何よりも猫を可愛がらないか?
ふははー!可愛いぞー!暖かいぞー!モフモフだぞー!



●一番槍、ニャンコ
「騎士道の権化ベルト・ラムバルド、参る!」
 羅刹ひしめく戦場に、ベルト・ラムバルド(自称、光明の暗黒騎士・f36452)の駆るキャバリア『パロメデス』が舞い降りた。
「邪魔だぁ!」
 暗黒騎士の様なデザインの『パロメデス』に群がる氷鬼の羅刹達をキャバリアサイズの剣で軽々と薙ぎ払い、脚に取りつこうとするのを振り落とし、踏み潰しながら突き進んでいく。
「絵描きの筆を折らせないと駄目とはな……ちょっと心が痛むが……」
 そうも言っていられない。
 まずは説得だと、キャバリアのハッチを開けて――。
「……寒い!」
 思わぬ寒さに、思わず声を上げた。
 外は響羅が描いた地獄が広がっている。日本の地獄観の、八寒地獄に由来する寒々しい景色はキャバリアのモニターから見えていたが、実際に肌で感じて見ると思わぬ寒さであった。
「あいつこんなに寒いのにまだ絵ぇ描いてる! 手かじかんでるだろうし息も白い! でもちょー上手い! 芸術家すげ~!」
 それでも筆が止まらない響羅の姿に、ベルトの口から思わず感嘆の息が零れる。
「って、感心してどうする! こうなりゃあ……彼奴等の力を借りるしかあるまい!」
 その筆の持つ力を肌で感じたベルトは、気を引き締めて――ある存在を呼ぶことにした。
「絵描きよ! まず何よりも、猫を可愛がらないか?」
 ベルトが呼び掛けると、空中に次々と猫が現れた。

 ――|可愛い猫科《カワイイネコチャン》。

 ゴッドゲームオンラインの世界から、猫を召喚するユーベルコードである。
 今のベルトが呼べる猫の数、総勢170匹。
「ふ……何かと思えば、猫だと? そんなもので俺を止められるものか。大体、猫は寒さに弱いと決まって――なにぃっ!」
 たかが猫――と鼻で笑いかけた響羅だが、その顔はすぐに驚愕に上書きされた。
 ベルトの呼んだ猫達が、未だに羅刹が生まれる八寒地獄の絵の上を闊歩し始めたからだ。
 繰り返しになるが、ベルトの呼んだ猫は『ゴッドゲームオンラインの猫達』、つまりゲーム世界の猫達である。

 寒いワールドでも猫をモフりたい!!!

 そんな要望によって、雪の街だろうが普通に活動する猫が現れる様になったそうな。丸くなる猫が見たければ炬燵やストーブ持ってこいって話である。
「ふははー! どうだ可愛いだろー! モフモフだぞー!」
 地獄の絵の上を駆けまわって肉球マークを付けて回り、それでも止まらない筆に向かってじゃれつく猫達に、勝ち誇るベルト。
「くっ……この! ええい! 描き直しだ!!!」
 たまらず響羅は、空間に描いていた絵を破り捨てる様に一気に消し去った。
 筆を折らせる事は出来なかったが、絵を振り出しに戻すことに成功したのである。

成功 🔵​🔵​🔴​

月影・木乃葉
羅刹の里、丁度その頃はまだ学園にいなかった時期ですね…
では絵師と此方の耐久勝負と参りましょう

耐久勝負であるなら此方も数を
UCにて数を召喚し対応させていただきます

自身も​​|五行符《属性攻撃》と三鈷利剣​​|に畏れを纏い《武器に呪詛を纏う》にて対峙を

勝手に人の生を苦しみや救いが無いなど勝手に語らないでもらいたいものですね
武蔵坂学園、ボクも途中からの入学ですが…色々無理を覆してきました
そしてそんな学園のような世界が両手で数えられないほど
それら全部見通せてましたか?

絵師と言う割には固定概念に囚われ過ぎでは?
永遠の絶望というのがこのような生ぬるい地獄だと言うのであればその地獄を灼滅してみせましょう


木元・明莉
狩野響羅…、百八地獄絵図の作者か(資料見つつ
まぁ上泉が知らないなら俺らが覚えてないの仕方ない、よな?
…説得って殴ればいいのかな

一歩踏み入れば此処が異様な空間なのは理解出来る
数多現れる鬼達、どう料理しようか

……
てか、料理?鬼の?
いやまあ、甘いもん以外なら何とか…

UC【天還銀嵐】
鬼と響羅に稲妻落としつつ自ダメも回復させて
稲妻で天ぷらとか揚げれるかな…

なぁ、アンタは何もかも苦しみで救いがない、死ねないと言うけど
人間案外、幸せ感じたり満足すれば死ねるもんよ?
アンタ、絵師だろ
絵師としての本当の地獄は絵が描けなくなった時
今、十分幸せじゃんよ
プロの矜持で、その絵、描ききってよ
俺はその「最後の絵」が見たい


椎那・紗里亜
ほどけ髪を振り乱し。
衣服は破れ肌も露わ。
傷だらけの体を引きずり、
しかし目の輝きは強く。

この戦い、持久戦と言うよりは、
「どこまで命を削ってみせるか、ですね」
覚悟を見せるしかありません。

羅刹の攻撃は最小限の動きで躱し、浸透勁で一撃必倒。
明鏡止水の心持で心身をコントロールし、体力の消耗を最小限に。
ただひたすら前へ。

響羅の下へたどり着いた姿は、亡者のごとく。
しかしその意思は微塵も揺るがず。

死ねないための精神的な苦痛は当初から指摘されていました。
絶望は否定しません。ですが希望も否定することは出来ない。
ESP法は人々を守り支えるために生まれました。
生きることは抗うこと。私たちは諦めずにもがき続けるのです。



●かつての灼滅者達
「羅刹の里、ですか。その頃ボクはまだ学園にいなかった時期ですね……」
 月影・木乃葉(人育ちの仁狼・f43890)は昔を思い出しながら、支線を横に向ける。
 かつて地獄絵図から顕現せし鬼が現れた事件。
 それはまだ木乃葉が武蔵坂学園に所属する前に起きた事だが――横で電子化された資料を見ている男は違う。
「狩野響羅……、百八地獄絵図の作者か」
 木元・明莉は、長く前線で戦い抜いた灼滅者であり、地獄絵図から現れた鬼に関わる事件の1つに関わってもいる。
「覚えてますか?」
「生憎と」
 しかし明莉は木乃葉に問われ、苦笑交じりに肩を竦めた。
「まぁ上泉が知らないなら俺らが覚えてないの仕方ない、よな?」
「……そうですね。あれを覚えている方が少数派でしょう」
 それに頷いたのは、椎那・紗里亜(言の葉の森・f43982)である。
 実際、仕方ないと言える。
 嘗ての灼滅者でさえ、響羅の名を直接目にしたものは恐らくいない。予兆の中で見た会話に名前があった、と言う程度。
 そんなもの、覚えている方が少ないだろう。

 それに――覚えていようがいまいが、今やるべき事は変わりない。

 まずは犇めき合う羅刹――鬼の群れを乗り越える。
「来タナ、人間ドモ」
「ココハ地獄、鬼ノ領域ダゾ」
「……喋るんですか」
 こちらに気づいた鬼達が発した言葉に、紗里亜は内心で驚嘆していた。
 自発的に喋る程度には意思と呼べるものがある鬼の群れを、たった1人の絵師が生み出している。
「こりゃまた、随分と異様だな」
 その執念とも言うべき異様さを理解して、明莉も目を細める。
「さて、こいつらどう料理しようかね」
 攻めあぐねる様に言いながらも明莉が飄々と近づいていくと、鬼達が一斉に動いた。
「俺達ヲ料理スルダト!?」
「ケケケ、ナラバコチラノ料理ヲ食ッテカラニシテ貰オウカ!」
 鬼達が向けて来たもの。
 それは武器ではなく――お椀だ。
 中身は、鬼の料理。
「料理? 鬼の?」
「戦闘中にそう言うの出してくるのは、ご当地怪人の領分では?」
「サア食エ」
「鬼ノオニギリ茶漬ケダ」
 驚く明莉と紗里亜に構わず、鬼達はお椀をぐいぐいと突き出して来る。
「しかもダジャレかい」
「え、食べるんですか?」
 流れでついお椀を受け取ってしまう明莉に、木乃葉が目を丸くした。
「まあ、甘いもん以外なら何とか……?」
「やめましょう?」
 お椀を離さない明莉の手を、木乃葉が止めた。だってお椀の中、もう見るからに毒々しい。紫色しかない。
 これをワンチャンいけるのでは、と思ってしまうのは明莉の経験の豊富さ故か。
「所詮、絵に描いた餅でしょう」
「ま、それもそうだな」
 紗里亜の言葉に頷いて、明莉がお椀を放り投げる。
 次の瞬間、空から雨が降り出した。

 ――天還銀嵐。

 それは敵には万雷を、味方には銀の恵みを導く|銀の雨《シルバーレイン》。
「数で攻めて来るなら此方も数を重ねましょう」
 銀の恵みを浴びながら、木乃葉の身体から、白い炎が吹き上がっていく。

 ――幻狼白炎襲。

 白い炎を纏った真の姿になった木乃葉の周囲に、150体を越える化身スサノオが現れた。
 スサノオ達はその牙で、鬼達に食らいついていく。
「ナンダコイツラ」
「実体ガ無イ――?」
「煮テモ焼イテモ食エナイカ!」
「行きます!」
 化身スサノオと鬼の群れがぶつかる中に、紗里亜が飛び込んでいく。
「ウオッ!?」
「ボギャァッ!」
 そして、鬼達が吹っ飛んだ。

 ――沈水通背掌。

 体内で練り上げたサイキックエナジーによる発勁を、敵に触れた所から打ち込む技。
 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もある。
 数多の戦いを経て紗里亜が辿り着いた八卦掌の境地の体現。
 それを後押しするように、銀の雨が強くなった。
「ウギョゴ!!」
「グゴゴッ」
 万色の稲妻が鬼の群れに降り注ぎ、その輝きの中に鬼達が消えていく。
「稲妻で天ぷらとか揚げれ……ないよな、やっぱり。衣着けてないし」
「稲妻は油の代わりにはなれないですから」
 真顔でのたまう明莉に返しながら、紗里亜は次々と鬼を吹き飛ばしていく。
「もう少しです。さあ、勝負と参りましょう」
 木乃葉も自身も畏れを纏わせた三鈷利剣を振るいながら、五行符を飛ばし、3人は羅刹の群れを割り突き進んでいく。

 そうしてついに、3人は響羅の前に辿り着いた。
 嘗ては髷を結っていたのだろうか。
 ほどけた髪を構わず振り乱し、衣服がズレて肌が露わになるのも気にせず筆を振るう。
 まるで亡者の様な様相だが、目の輝きだけは強い。
 その様子に紗里亜は思わず息を呑んでいた。
「まさに鬼気迫る、と言った様子ですね。どこまで彼の命を削れるか……」
 覚悟を見せるしかない。
 そう感じたが故に、紗里亜は言葉を選ぶべく思索に入る。
「あなた、絵師と言う割には、固定観念に囚われ過ぎではないですか?」
 まずは木乃葉が口火を切った。
「……」
「永遠の絶望というのがこのような生ぬるい地獄だと言うのであれば、ボクたちでその地獄を灼滅してみせましょう」
「灼滅……その言葉を使うと言う事は、貴様らは灼滅者か」
 構わず筆を取り続けていた響羅は、木乃葉の言葉に視線だけこちらに向けてきた。
「苦しみを克服したつもりで、より深く長い苦しみの生を世界に選ばせた者達が、私に説教か」
「死ねないための精神的な苦痛――それを私達が考えなかったとでも?」
 憎悪にも近い感情を見せた響羅に、紗里亜が返す。
「そんな事、当初から指摘されていました。死ねない絶望は否定しません。ですが希望も否定することは出来ない」
 続ける言葉は、この世界での法学者としての立場から。
「そんな世界で人々を守り支えるために、ESP法が生まれたのです」
「いーえすぴーほう? ……法、か。つまり法度の類か。法度で何が変わる!」
 この世界での法学者としての紗里亜の言葉を、響羅は真向から否定してきた。
 この反応はESP法を理解していないというのもあるが、生きた時代の差が大きいだろう。
 響羅が生きていた江戸時代と現代とでは、法に対する認識はあまりにも違う。
「どんな法度を敷いても、この世に救いの道などあるものか」
「勝手に人の生を苦しみしか、救いが無いなど勝手に語らないでもらいたいものですね」
 法に対する信頼が無い故に筆を止めない響羅に、木乃葉は続ける。
「武蔵坂学園、ボクも途中からの入学ですが……色々無理を覆してきました。そしてそんな学園のような世界が両手で数えられないほどあるんです。それら全部見通せてましたか?」
「他の世界を見る必要なぞない。どんな世界であれ、人の世に救いなどないのだ!」
「そうかねぇ?」
 語気を強める響羅に、今度は明莉が口を開いた。
「なぁ、アンタは何もかも苦しみで救いがない、死ねない事は呪いと言うけど――人間案外、幸せ感じたり満足すれば死ねるもんよ?」
「幸せだと、そんなもの――」
「アンタ、絵師だろ?」
 響羅の声を遮って、明莉は続ける。
「絵師としての本当の地獄は絵が描けなくなった時、だろ? 今、十分幸せじゃんよ」
「……なんだと? 私が、幸せ……?」
 その言葉は予想外の方向だったのだろう。
 響羅の筆が、一瞬止まった。
「絵師の矜持で、その絵、描ききってよ」
「…………は?」
 今度は、響羅の目が丸くなった。
「描け……だと? 正気かお前。私の最後の作品が完成すれば、どうなるかわかっているのか。最後の鬼『渦眼』が――」
「それでも――俺はその『最後の絵』が見たい」
「……」
 遮って言い切った明莉に、今度こそ響羅は言葉を失い、筆が止まった。
「灼滅してみせますよ。どんな鬼でも、地獄でも」
「貴方よりは正気ですよ。生きることは抗うこと。私たちは諦めずにもがき続けるのです」
「……なんだ……なんなのだ、お前達は」
 木乃葉と紗里亜が続けて示した覚悟に、響羅は返す言葉を見付けられないまま、筆を握る手に力が篭っていく。

 ――爪が掌に食い込み、掌中で握る筆がミシリと音を立てる程に。

 それがどんな情念による行為なのか、響羅自身にも説明がつかなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菱川・彌三八
俺等ァ画工だぜ
語るなら筆だろ

さぁて何を描こうか
先ずは大入道で押し潰しちやれ
牛鬼ってェのも良いやな
地獄ってンなら観音様でも描いてやろうか
兎角大きく描いて、生まれ続ける悪鬼羅刹を力で押し流す

すれから平生から描く絵図
勇壮な唐獅子、絢爛な鳳凰
囀る千鳥に呪いの菊花、荒れ狂う大波
思わず手を止めちまいたくなる様な絵を描き続ける
自由に生まれ出て、動き、辺りを照らせ

お前ェ、鬼以外に描くものはねェのかい
折角生きていられンなら、何だって描いてやりゃあエエさ
俺ァ足りねえ、未だ未だ描く
元来花鳥画が主だが、遊女や武者もそら、お手のものよ

気が落ちてる時に良い物が仕上がるってェのはある
然し、酔っているだけじゃ誰にも届かねェよ


エドゥアルト・ルーデル
わかった、早く描け

今日も元気に|無法《ハジケ》ていくでござるよ!
迫りくる羅刹をちぎっては投げバックブリーカーしながら耳元でやりたい放題叫んでいくぜ!

貴様のような絶望的なハゲ程度が出したもんなんて今まで猟兵は全て粉砕して来たでござる…なので描きなさい
そうだ勘違いハゲが!お前の描くうずめ様氏は物足りないんだよもっとドSっぽくないといけないんだ!羅刹の巫女の扱い見たかよ味方に変なルール科しまくってるんでござるよこれはドS美少女じゃないとできねぇ所業だよこんな陰気な訳ないだろ!後お前の絵柄古臭くてダサいんじゃもっと美少女に描かんかい!そしてもっとロリに描け!

メンタル攻撃でござる
芸術家には批評が一番効く



●画工と狂人と
「描けと言うなら描いてやる! 退け!」
 向けられた言葉を振り払うように、今まで以上に狂った勢いで響羅が筆を振るう。
 それにより、先行した3人が鬼の群れに押しやられるほどの地獄絵図。
「ほォう。こいつァまっこと見事な地獄絵図だ」
 目の前で地獄が描かれ広がりゆく光景に、菱川・彌三八(彌栄・f12195)は怖れるどころかニヤリと笑みを浮かべた。
 これが絵によるものだからこそ。
 絵師としての血が騒ぐというものだ。
「さぁて何を描こうか。先ずは大入道、牛鬼ってェのも良いやな」
 筆を取り、次々と現れる鬼に対抗して、思いつく限りの妖怪を描いていく。
「地獄ってンなら観音様でも描いてやろうか」
 さらには、大局的な存在。
 幾つかの筆を使い分け、大きく観世音菩薩を空中に描いていく。
「来たれ」
 そして告げれば、彌三八が描いた絵が動き出す。

 ――大画招喚。

 大入道が、牛鬼が、観音が。
「何ダコリャァ!」
「牛鬼ニ観音ダト!?」
 驚く鬼の群れを蹴散らし押し潰し、蹴散らし、光で押し戻して道を作る。彌三八が響羅の元に辿り着く道を。
「よォ。中々大した筆遣いじゃねェか」
「……」
 ちらりと見ただけで筆を止めない響羅に、彌三八もまた、再び筆を振るう。
「筆で語ろうってか。良いぜ、画工らしいじゃねェか!」
 響羅が地獄を描き鬼を喚び続ける一方で、彌三八は平生から描く絵図を次々と描いていく。
 勇壮な唐獅子が吠え猛り、絢爛な鳳凰が羽ばたく。囀る千鳥が呪いの菊花を呼び、荒れ狂う大波が鬼の群れを押し戻す。
 描いたものを動かす画工が二人。
 暫し、筆のみで語り合う。
 けれどそれでは千日手。
「お前ェ、鬼以外に描くものはねェのかい」
「――無い。これは私の最後の鬼であるが故」
 彌三八に言い切るまでにあった僅かな間は、少し前までならなかっただろう事に、響羅自身気づいていただろうか。

「わかった、早く描け」

 そこに新たに響いたのは、エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)の声であった。
 なんかこう、いつの間にか此処にいた。
「……なに? またか」
 またしても、止めるどころか描けと言われた響羅が訝しむ視線を向ける。
「貴様のような絶望的なハゲ程度が出したもんなんて、今まで猟兵は全て粉砕して来たでござる……なので描きなさい」
 悠然と告げるエドゥアルトに、しかし背後から鬼の群れが迫っている。
「おい、後――」
「そいっ!」
 彌三八の短い警告すら言い終わる前に、鬼が飛んだ。
「ふんっ! そいやっ!」
 迫り来る鬼の群れをスルスルッと掻い潜っては、エドゥアルトは逆に鬼の手足を取って次々と投げていく。
 既に今のエドゥアルトはユーベルコードによって、【やりたい放題過ぎるはじけた人】に変身しているのだ。
「今日も元気に|無法し《ハジケ》ていくでござるよ!」
「ゴフッ」
「アギャァッ」
 エドゥアルトは上がった身体の柔軟性を活かしてバックドロップで鬼を投げたかと思えば、鬼を抱え上げてバックブリーカーを決めて背骨を粉砕する。まさに無法のハジケっぷりである。
 やり方は違えど大体いつもハジケてる気がしないでもないが。
「くっ……なぜだ。この無法者め、何か言ってやらねば気が済まぬ!」
「さっさと描け、この勘違いハゲが!」
 無法の荒業による【ツッコまなきゃ】精神に侵されつつある響羅に、エドゥアルトが鬼をスープレックスでぶん投げながら叫んだ。
「お前の描くうずめ様氏は物足りないんだよ! もっとドSっぽくないといけないんだ!」
「!? ど、えす……?」
「羅刹の巫女の扱い見たかよ味方に変なルール科しまくってるんでござるよこれはドS美少女じゃないとできねぇ所業だよこんな陰気な訳ないだろ!」
 戸惑う響羅に、エドゥアルトは別の鬼になんか良く分からない関節技からの投げ技に移行しながら、一息で言い切った。
 やめたげてよぉ。
「後お前の絵柄古臭くてダサいんじゃ!」
「お……お前の絵柄の好みなど知ったことかー!」
 エドゥアルトの怒涛の批評に、響羅がたまらずツッコみの声を上げた。
 芸術家には批評が一番効く――そう踏んでメンタルを攻めたエドゥアルトの思い通りか。
「カッカッカッ!」
 その怒りを、彌三八が笑い飛ばす。
「そう邪見にするもんじゃァねェよ。リクエストってやつだ。絵師冥利に尽きるってもんじゃねェか」
「なんだと? 己の絵を馬鹿にされて――」
「俺ァ描くぜ」
 怒りが収まらない響羅を遮って、彌三八は続ける。
「俺ァ元来花鳥画が主だが、遊女や武者もそら、お手のものよ。それでも足りねエから、未だ未だ描くぜ。折角生きていられンなら、何だって描いてやりゃあエエさ」
 一芸を極めるも、多芸を極めるも、どちらが正解と言う事も本来は無い筈だ。
「気が落ちてる時に良い物が仕上がるってェのはある。然し、酔っているだけじゃ誰にも届かねェよ」
「……」
 けれど彌三八の言葉に、響羅は何も言い返せなくなった。
 敢えて言うなら、この世に救いなどないと絶望を受け入れた者と、数多の知らぬ文化を楽しみ受け入れた者との心の持ち様の差と言うべきか。
「そうだ! もっと美少女に描かんかい! そしてもっとロリに描け!」
 空気を読んで読まないエドゥアルトの言葉にも言い返せず、またしても響羅はただ筆を握り締めるしか出来ずにいた。

 その掌中で、再び筆がミシリと音を立てたのにも気づかずに。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
【月風】

いやぁ
面白いくらい湧いてるな
けど
こんなのよくある事だ
瑠碧もいるし
負けらんねぇ

変身し衝撃波撒き散らし
手近な敵にダッシュで間合い詰めグラップル
足払いでなぎ払い
更に近くの敵に吹き飛ばし
纏めて倒す

とりまもっと近くで話を聞かせよう
拳でな
UCで湧いている羅刹を一掃
道を作り限界突破しさらにスピード上げて接敵
拳で殴る
ようやくこっち見たな

そりゃ
生きてりゃ苦しい事もあるだろうよ
俺だってそうだった
それでも生きなきゃならねぇ
そう俺が決めたから

それに苦しい事だけじゃねぇ
生きてるから愛しい人に会えた

希望も絶望もあんたが決め付ける事じゃねぇ
だからあんたが何を出そうが俺には効かねぇ
辞めるまで言い続けるし
殴り続けるぜ


泉宮・瑠碧
【月風】

そうですね…沢山…
それだけ描き続けていると…

私は杖を手に円環命域
理玖を補助しつつ
主は理玖の死角の相手を狙って
氷の槍を放って羅刹の数を減らしていきます

話が届くようになれば

狩野響羅…それは、本当に絶望ですか?
聞いていると…
自分が諦めて自棄になり
全てを巻き込もむだけのような…

…人は、救いを求めるとすれば
世にではなく、個々の生きる意味…
近しい人や何気ない事や、思い出ではないでしょうか

描く事が好きなら、貴方の生きる意味は描く事なのでは
同時に
描いている間、夢中になっていますが…
その間、絶望は感じてはいますか?

…筆を離して絶望に襲われても
希望と絶望は、表裏一体です
絶望を与える限り、希望も消えません



●月風が運び、告げるは希望の言の葉
「いやぁ……まだ面白いくらい湧いてるな」
「そうですね……鬼が沢山……」
 戦場に降り立った陽向・理玖(夏疾風・f22773)と泉宮・瑠碧(月白・f04280)の視線の先では、まだ鬼が増え続けていた。既に数人の猟兵達が蹴散らし、響羅に言葉をかけた後だというのに。
 その言葉で心と筆に罅が入っても、それでもかの絵師は未だ筆を止めていないのだ。或いは――止められないか。
「まだこれだけ描き続けていると……確かに恐るべき情念、ですね」
「大丈夫。こんなの、良くある事だ」
「そう……ですね」
 数え切れないほどの敵を前にして、良くある事と笑って龍珠をバックルに嵌める理玖に、瑠碧も微笑みを返す。
「瑠碧もいるし、負けらんねぇ」
 全身を覆う装甲を纏った理玖が地を蹴って飛び出す。
 その背中を見送りながら、瑠碧は水の精霊が形を変えた杖を手に取った。
「今も、過去も、等しく安らぎを……命の祝福よ、どうか此処へ」
 水を通じて喚び、招くは生命の精霊。
 森深くに棲むという精霊の生命を司る力が、瑠碧を通して世界へ広がっていく。

 ――|円環命域《ライフ・レクイエム》

 生命の領域が、炎と氷が入り混じって描かれた地獄を上書きしていくのを感じながら、理玖は鬼の群れに突っ込んでいった。
「マタ来タカ」
「邪魔ハサセ――」
「遅いぜ」
 氷の力を持つ鬼が動き出すより早く、手近な鬼の脚を払って浮かせた所に拳を叩き込む。
 ショートレンジからの、一見、重さを感じさせない拳打。
 しかし――ドンッと空気を震わせるほどの衝撃波が打点を中心に爆ぜ、鬼を吹き飛ばした。

 ――疾風怒濤。

 攻撃に衝撃波を纏わせるユーベルコードに、戦いの中で磨き上げた理玖の格闘技術が合わされば。拳を振るう度に鬼が吹っ飛ばされ、その度に後ろの鬼も巻き込まれていく。
 瑠碧が氷の槍を放ち援護する必要もなかった。
 程なく彼の周りの鬼は一掃され、響羅までの道が拓ける。
「新手か……だがもう邪魔はさせん」
 鬼を一掃し近づいてくる理玖を一瞥するも、響羅は筆を止めない。
「見もしないなら、無視できないようにしてやるよ!」
 そんな響羅の痩せた頬に、理玖は容赦なく拳をお見舞いした。
 鬼を軽々と吹き飛ばした拳だ。
 響羅の体躯では、耐えら得る筈がない。
 しかし――響羅はたたらを踏んだだけで、倒れなかった。
「っ……粗暴なっ」
「悪いな。でも、ようやくこっちを見たな?」
(「なんだ、今の手応え」)
 殴った手応えが抜けていく奇妙な感覚に驚く内心を隠して、理玖は笑う。
 絶筆するまで死ぬこともできない情念と言うのは、こう言う事か。
「無駄な事だ。お前達に私は止められぬ。この世に救いの道など無いのだ。ああ、そうだ。ある筈がないのだ」
「狩野、響羅……!」
 そこに、追いついてきた瑠碧が声をかけた。
「……それは、本当に絶望ですか?」
「何が言いたい?」
 瑠碧の言葉に、響羅が眉根を寄せる。
「貴方の感じているものは、本当に絶望ですか――と訊いているのです」
 手を止めない響羅の目を見ながら、瑠碧は続ける。
「聞いていると……自分が諦めて自棄になり、全てを巻き込もうとしているだけのような……」
「諦めた? 私が何を諦めていると言うのだ! 今もこうして絵を――」
「救われる事を、です」
 自分の言葉を否定しようとした響羅が言い終わるのを待たずに、瑠碧は告げた。
「……」
「貴方は……死の克服は救いではないと思っている、のでしょう? だから、人が死を克服した世界に、救いを……見出せなくなった」
 返す言葉が浮かばなかったか、開いた口が塞がらない瑠碧は続ける。
「……ですが、人は、救いを求めるとすれば、世にではなく、個々の生きる意味……近しい人や何気ない事や、思い出に、ではないでしょうか」
 近しい人、と告げながら、瑠碧の足は理玖に一歩寄っていた。
「生きる意味? 思い出? そんなもので、永遠の生の苦しみが和らぐものか!」
「さっきから聞いてりゃ、苦しみがあったら悪いのかよ」
 否定を重ねようとした響羅に、が返す。
「そりゃ、生きてりゃ苦しい事もあるだろうよ。俺だってそうだった。それでも生きなきゃならねぇ――そう俺が自分で決めたからだ」
 世界は優しいだけではない。そんな事は理玖も良く知っている。
 それでも、そんな世界でも、優しい人達の世界を守るために生きると決めたのは自分だ。
「それに苦しい事だけじゃねぇ。生きてるから愛しい人に会えた」
 瑠碧の肩を抱いて、理玖は告げる。
 姉と師。喪失の痛みを知る2人は様々な経験を共にし、共に生きる事を選んだ。会えたから、選べた。
「……それは……それは強者の理論だ」
 決意を込めた理玖の言葉に、響羅は絞り出すように返す。
「誰も彼もが、お前達の様に強い意志を持っていられると思うな。私はただの絵師だ。お前達の様になど生きられぬ」
「……あるじゃないですか。その、ただの絵師、と言うのが」
 どこか自嘲するように吐き捨てた響羅に、瑠碧が穏やかに告げる。
「世界に救いがないと思っても、絵師である事は……捨てられないのでしょう? それほどに描く事が好きなら、貴方の生きる意味は描く事なのでは」
「……」
 その言葉を、響羅は否定できなかった。
 口だけで違うと言う事すら出来なかった。別の猟兵に自分の絵を批評されて怒った様に、響羅は未だどうしようもなく絵師なのだ。
 絵師である事を否定するのは、おそらく筆を折るに等しい。だから否定できない。
「それに……随分と夢中で描いていましたが、その間、絶望は感じていましたか?」
「……っ!」
 ハッとしたように目を見開いた響羅の表情が、瑠碧の問いに対する何よりの答え。
 絶望を与える為に描いていた者が、絶望を忘れていた。
「……筆を離して絶望に襲われても、希望と絶望は、表裏一体です。絶望を与える限り、希望も消えません」
「希望も絶望もあんたが決め付ける事じゃねぇ」
 瑠碧と理玖に返す言葉を見付けられずにいる響羅の手の中で、筆がミシミシッと音を立てた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天行寺・空
連・アド可
確かに通常攻撃無効だと寿命以外では死なぬが…
奴は知らないのか?
サイキックで人は死ぬ事に
湧き出し続ける|同族《羅刹》にUC+精神攻撃
奴等を眠らせ狩野の所へ
冷気は結界術で軽減
おい地獄絵師
貴様が生み出す渦眼は永遠の絶望を与えるらしいが
それは『死』でエスパー達を救済する行為だ
エスパーもサイキックでの死は免れえぬ
つまり貴様のやろうとする事は
自身が理解されなかった孤独の苦しみからエスパーを救おうとする
ある種の優しさだ
だが今世のエスパー達は孤独ではない
皆がエスパーである以上その苦しみを理解して
手を取ってそれを克服しようとする希望がある
故に安心してその筆を折るが良い
…南無阿弥陀仏(念仏+除霊+浄化)


空目・キサラ
【藍空】

ある一群の芸術家達は、幻滅した世界の中で生きている
と、書いてある本を読んだことがあるよ
彼もそうなんだろう。だから描くんだ
そうすると安心するし、同時に幸福な時間だからね
難しいと思うならそれでいいさ

物理は藍々君に任せた
【最果心中】で羅刹に炎を蒔きつつ、絵師に話しかける
まー、聞いてなくても勝手に話すけど
この世界の人たちは寿命以外の死を克服したらしいね
君が思うように、そのうち寿命すら克服するって予想は…合ってるんじゃないかな
如何せん、人は欲深いからね

しかしだ、絶望だって与えられ続けたら…慣れるものだよ
変化がないから
逆に、変化が見えればそれを蜘蛛の糸(希望)として見出したりするから人って怖いよねぇ
僕らは結局、罪を作らざるを得ない存在なんだ

人生は地獄よりも地獄的である
…とは何処ぞの文豪が書いたことだけど
絶望には慣れたり、対処したり出来る
でも生きるってことは
苦しみが来るのが何時、どの様に、何が原因か一定じゃない
生きてることの方が、絶望するより厄介で恐ろしいよ
これ以上の責苦が他にあると思うかい?


黎・飛藍
【藍空】

芸術云々キサラは言ってるが、そんなもんなのかね
とりあえず、俺はそういう難しい事はわからん

やっぱり物理的な戦闘を任せられた
羅刹なら角があるんだったか
まあ判別要素があるなら目安になる
つい間違えてキサラ達を斬らないように【死ねば死に損、生くれば生き得】で、只管羅刹を斬る

なんかキサラがまどろっこしい話をしてるのを聞きながら
俺は俺が思った事を言う

寿命すら克服したとして、結局は俺らやオブリビオンみたいな奴らが世界にひょっこり出てくる
で、明らかに普通じゃない殺し方を持ってくる
実際今走り回ってるだろ。白の王云々やらよくわからんオッサン達がさ
そういう奴らが湧いてるんだ。究極的な死の克服なんて出来てない
死ぬことができない最悪の呪いなんて、虚構じゃないのか?
お前は虚構を描いて、その中で全てに絶望を与えると悦に浸ってるだけにしか見えない

お前が人を絶望のどん底に落とそうが落とさまいが
他の誰かが殺そうとするし、他の誰かそれを救おうとする
考えを理解されない云々以前に、お前は誰かを理解しようとした事はあるのかよ



いる角を持つ男が猟兵とは気づかず、飛藍はうっかり刃を振り上げ――。
「待て待て! 俺はそこらの鬼とは違うぞ!」
「ん?」
 鬼とは違うその●重ねた言葉の帰結
「ほうほう。どうやら、もう一押しと言った所かな?」
 かけられた言葉に返す言葉を失い立ち尽くす響羅の姿に、空目・キサラ(時雨夜想・f22432)はふっと小さな笑みを浮かべた。
 その手に握り締めている筆にかなりの罅が入っているのを、目ざとく気づいている。
 そしてそれが、響羅自身の手によるものであり、彼の葛藤の現れであることも。
「っ! 新手か! 私とした事が!」
 キサラに気づいた響羅は壊れかけの筆を、それでも握り直して動かし始める。
「ああ、描くのかい? 描きたいなら描くがいいさ。そうすると安心するし、幸福な時間なのだろうからね」
「……いいのか? あいつの筆を折るんだろ?」
 止めるどころか描けばいいと告げたキサラに、黎・飛藍(視界はまだらに世界を映す・f16744)が面倒くさそうに訊いた。
「また出て来るぞ、角のある奴らが」
「仕方ないよ」
 折角ここまで斬って来たのに、と零す飛藍にキサラは肩を竦めて返す。
「ある一群の芸術家達は、幻滅した世界の中で生きている――と、書いてある本を読んだことがある。彼もそうなんだろう。だから描くんだ」
「そんなもんなのかね。俺はそういう難しい事はわからん」
「藍々君が難しいと思うならそれでいいさ」
 芸術を難しいと面倒そうな飛藍に、キサラは分かっていたように返した。
 元より、彼が芸術畑の人間でないのは分かり切っていた事だ。
「とは言え、湧いてくる鬼はそれでいい、とは言えないね。――よろしく、藍々君」
「やっぱりこうなった」
 ここまでも鬼を斬って来た飛藍は、またかと溜息交じりに和傘に仕込んだ刀――時雨を抜いた。
「まあいい。角のある奴を斬ればいいんだろう?」
 顔以外の判別要素があるなら苦労はしないと、迷わず刃を振るい出した。
「角あるな」
「フギャッ」
「お前も角あるな」
「ゴフッ」
 鬼の角を目印に、飛藍は霊力を込めた刃を淡々と振り回し、次々と鬼を斬り裂いては消滅させていく。

 ――死ねば死に損、生くれば生き得。

 取り憑いている者を斬る業は、地獄絵図から生まれた鬼には効果覿面。
 そうして只管に鬼を切り捨てていく内に――飛藍の周りに、桜の花びらが舞っていた。天行寺・空(ダークネス「羅刹」の神薙使い・f43969)の放つ桜の花吹雪である。

 ――桜の癒やし。

 描く地獄に伴い絵から生まれるとは言え、同族に近い鬼。天はそれらを屠るのではなく、眠らせる業を選んでいた。
 片や鬼を斬り続け、片や眠らせてきた2人の道が交わるのは、目指すゴールが同じである以上、畢竟である。
「よし、角あるな」
「待て待て待て! 俺は違うぞ」
 刃を振り上げられ慌てる天の声に、飛藍の動きがピタリと止まった。
「違うのか?」
「藍々君、確かに君の目の前にいる人は違うよ。角はあるけどねぇ」
「そうか。……よく見れば、服装も違うな。すまない」
「う、うむ。わかってくれればよい」
 天に小さく頭を下げて、飛藍はまた別の鬼に斬りかかっていく。
「驚かせてしまったね。藍々君は色々あって、他者の顔をうまく出来なくてね」
「そうか。……難儀なものだな」
 キサラが告げた飛藍の事情に、天は多くを聞かずにただ頷く。
「だからこれ使ってんだ。これならうっかりキサラや味方斬っても、斬れないからな」
 背を向けて鬼を斬りながら、飛藍が告げる。肉体を傷つけずに斬る業を選んでいたのは、彼なりの配慮であった。
「うっかりが無いに越したことはないのだけどねぇ」
 その背中に声をかけながら、キサラは手にしていた本を適当に開いた。
 パラパラとひとりでに頁が捲れ、青白い炎がぼろぼろと零れ落ちていく。

 ――最果心中。

「さて、響羅君。話をしようか」
 青白い炎を零し続ける本を手に、キサラは響羅に視線を向けて声を上げた。
「……」
「無視かい? まー、聞いてなくても勝手に話すけど」
 こちらの声が聞こえてないわけではないのは、他の猟兵とのやり取りでも明らかだ。
「この世界の人たちは寿命以外の死を克服したらしいね。
 ならば話続けるまで。
「君が思うように、そのうち寿命すら克服するって予想は……合ってるんじゃないかな?」
 一方的でも話し続けると言うのは、探偵にとっては得意分野である。
「如何せん、人は欲深いからね。それは君もよおく知っているだろ?」
「……」
 沈黙の中に響羅の息遣いが変わったのに気づいて、キサラは更に喋り続ける。
「情念もまた欲さ。自分を情念深い絵師だと言っておいて、欲深くない――なんて言わせないよ」
「だったらどうだというのだ」
 ついに、響羅が口を開いた。
「私が欲深い? そうかもしれんな。そうだろうが、そうでなかろうが、私が描くべきものは変わらない」
「渦眼――永遠に絶望を与える鬼かい?」
 響羅が次に口にしようとしたであろう名を、キサラが先回りして告げた。
「そうだ。散々邪魔されて遅れているが――次第に完成が見えているぞ!」
「地獄絵師よ」
 完成が近づいているとほくそ笑む響羅に、天が口を開く。
「貴様が生み出す渦眼は永遠の絶望を与えるらしいが、それは『死』でエスパー――この世界の人間達を救済する行為だ。死を克服した人間でも、サイキックでの死は免れえぬのだぞ?」
 通常攻撃無効を得た人間でもサイキックでは死ぬのだと、天は響羅に説く。
「つまり貴様のやろうとする事は、自身が理解されなかった孤独の苦しみからエスパーを救おうとするある種の優しさ――」
「甘いな、羅刹よ」
 優しただと告げる天の言葉を、響羅は甘いと否定する。
「最後の鬼『渦眼』が、ただ人を殺して回る鬼だとでも思ったか。『渦眼』は死と言う救済ですら与えぬぞ」
「そうだね。渦眼とやらがどんな絶望を与えるのか、僕らは知らない」
 誇ったような響羅の言葉に、キサラが頷いた。
 『渦眼』がどんな存在なのかを、正確に知る者は恐らくこの場にいないのだ。
「けどね? どんな絶望だって与えられ続けたら……慣れるものだよ」
「何を言うかと思えば。絶望に慣れられることなどありは――」
 更にキサラが続けた言葉を、響羅は一笑に付そうとした。
「慣れるさ」
 しかしキサラは響羅を遮って、言い切った。
「人生は地獄よりも地獄的である……とは何処ぞの文豪が書いたことだけど。絶望には慣れたり、対処したり出来る。何故なら、変化がないから」
 どんな絶望であれ、それが単一の存在によるものなら――確かに変化はないだろう。
「逆に些細な変化でも目に入れば、蜘蛛の糸程度の細いものでもそれを希望として見出したりするんだよ。人って怖いよねぇ」
「蜘蛛の糸? なんの話だ」
「ん? あぁ、君はこの話知らないか? 時代じゃないか」
 響羅の表情が訝し気になっていった理由を察して、キサラは1人で頷いた。
「僕らは結局、罪を作らざるを得ない存在なんだ……って話さ」
「……。……」
「おや、沈黙かい? 返す言葉が見つからなくなったかな?」
「そりゃ、あれだけまどろっこしい話をしてればな」
 舌戦の末にキサラに返す言葉を響羅が失った所で、飛藍が口を挟んできた。
 2人の周りに、動く鬼はいなくなっていた。
「やれやれ。藍々君はどっちの味方だい?」
「この世界の人間が寿命すら克服したとして、結局は俺らやオブリビオンみたいな奴らが世界にひょっこり出てくる。で、明らかに普通じゃない殺し方を持ってくる」
 何処か不満気なキサラの声を無視して、飛藍は思った事を告げていく。
「今だって走り回ってるだろ。白の王云々やらよくわからんオッサン達がさ。そういう奴らが湧いてるんだ。究極的な死の克服なんて出来っこない」
「絶望を与えるのが、私の描く『渦眼』ではないというだけの事。それもまた、この世に救いの道が無い事に変わりなかろう!」
 淡々と続ける飛藍に、響羅は声を張り上げた。
 まるで自分に聞かせるかのように。
 自分の考えは間違っていないのだと。
「だったら死ぬ事ができない最悪の呪いなんて、虚構じゃないのか?」
 だが響羅がどれだけ声を荒げても、飛藍にその表情の変化は見えていない。
 だから、思ったままを口にし続ける。
「虚構!? 私の考えが虚構だと! 巫山戯るなッ!」
「巫山戯てねえよ。お前は虚構を描いて、その中で全てに絶望を与えると悦に浸ってるだけにしか見えないんだよ」
「違う、違う違う! そんな筈があるものか!」
 淡々と続ける飛藍に、ついに響羅は唯々否定の言葉を並べるばかりになっていく。
「……ダークネス共ですら理解していなかった私の考えを理解できる者など、誰もいないか」
「考えを理解されない云々以前に、お前は誰かを理解しようとした事はあるのかよ」
「っ!?」
 ついに、完全に返す言葉を失った。
「おお……まさか藍々君の言葉が、これほどに効くとはね。やるじゃないか」
 もはや論理的な反論にはならなくなった響羅の様子に――キサラが笑みを浮かべる。
「響羅君、苦しいかい? でもそれが、生きてるってことだとは思わないかい?」
 ここぞとばかりに、キサラは畳みかける。
 響羅の握った手の内で、筆がミシミシと音を立てていく。
「生きるってことは苦しみを伴うのは君も重々判ってるだろうさ。でもその苦しみは来るのが不定期なんだ。何時?どの様に?何が原因で?なにひとつ一定じゃない。生きてることの方が、絶望するより厄介で恐ろしいよ。これ以上の責苦が他にあると思うかい?」
 キサラの言葉に、答えは返ってこなかった。

 最初はただの妨害だと思った。
 次は最後の絵を見たいと言われ、描き上げてなお止めると言う覚悟を見せつけられた。
 心を抉る批評を浴びせられ、今の絵では誰にも届かないと告げられた。
 絶望を与えてる存在を描き切っても、希望は消えないとも告げられた。
 それらの言葉は響羅の中で迷いの種となる。
 それでも今までなら、また筆を掲げていた。
「……」
 そして今――絶望よりも生きる方が厄介だと告げられた響羅は。
「それでも、渦眼羅刹鬼絵図を完成させ、お前達に永遠の絶望を与える渦眼を生み出す事を諦める理由にはならない!」
 口ではそう言いながらも、その腕は、もう上がらなかった。
「お前が人を絶望のどん底に落とそうが落とさまいが、他の誰かが殺そうとするし、他の誰かがそれを救おうとする。世界ってそんなもんだろ」
 告げる飛藍の目の前で――響羅の手からパキンっと音がして、砕けた筆が落ちた。
「……これで、もうこの世界の者は苦しみの生を永遠に続けることになるぞ。精々、後悔するがいい」
「案ずるな」
 それは悔し紛れか。響羅が遺そうとした言葉に、天が首を振る。
「今世のエスパー達は孤独ではない。皆がエスパーである以上その苦しみを理解して、手を取ってそれを克服しようとする希望がある。故に安心して、逝くが良い。……南無阿弥陀仏」
「……羅刹の念仏など……要らぬ」
 忌々し気なその言葉を最後に、響羅の膝が崩れ落ち――倒れ、消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2026年05月27日


挿絵イラスト