第二次サイキックハーツ大戦⑫〜慈愛なる夢の果てより
●慈愛の姫
『ようこそ、私の中へ。現実世界では絶対に実現不可能な幸福に満ちた、この場所へ』
あのころと変わらぬ、コルネリウスの声が響く。
最早ソウルボードそのものとなってしまった彼女の、その表情は読み取れない。
けれど屹度、彼女は微笑んでいるのだろう。
何故なら、今度こそ長く抱き続けてきたその夢が叶うときが来たのだから。
『――さぁ、今度こそ……全ての命に幸福を』
●幸福の意味
「……もう、あのころのあの人はいないんだね」
武蔵坂学園の校舎屋上。
何処を見るでもなく視線を逸らしたまま、|白き蝶《エト・ケテラ》が誰へともなく零した。
ハートのシャドウを統べる慈愛の姫。直接逢ったことはなかったけれど、その存在と、彼女の思想は|知っていた《・・・・・》。
次の言葉を継ごうとして、娘が口を噤む。珍しく言葉を選んでいるのか、暫し逡巡した後、視線をゆっくりと猟兵たちへ向ける。
「とりあえず、|慈愛のコルネリウス《あの人》の中……|精神世界《ソウルボード》に入って、中から壊してくればいいよ」
――壊す。
簡単に聞こえるその意味が、実はそうではないことは明白だ。
対するは、ソウルボード本体。唯の物理攻撃は悉く意味をなさない。
「そうだね……物理攻撃以外のユーベルコードで、どうにかソウルボード空間を壊すか……“言葉”で、あの人自身にダメージを与えてみなよ」
あんたたち、そういうの得意でしょ? ――そう微かに口端を上げると、娘は軽やかに地を蹴った。蝶のように柔らかにフェンスに腰掛けると、珍しくその金の双眸に感情を乗せる。
真剣な、揺るぎない眼差しを。
「でも、“言葉”じゃかなり難しいってこと……確り覚えといて」
当時も、幾度となくコルネリウスとの対話の機会はあった。
それによって回避できた争いもある。受け入れてくれた言葉も、確かにあった。
それでも、慈愛の姫はその最期まで、灼滅者たちの言葉をすべて受け入れはしなかった。
その事実こそが、娘の言葉の意味を裏付けている。
「わたしも、今回ばかりはあんたたちの力になってやりたいけどね。……無理。だって、あの人の考えてること、今でも分からないもの」
知ってはいる。けれど、理解はできない。
“慈愛”という言葉に惑わされてはいけない。
“全ての命に幸福を”という言葉を文字通り受け取るだけでは、その真意には辿り着けないどころか、アプローチとしては方向性を違えてしまう。
「だから……それならなんかいい感じに攻略できそうなユーベルコードがあれば、そっちの方が楽なんじゃない?」
まぁ好きなようにやってみなよ、と続けると、白い蝶は再び空を仰いだ。
その横顔に、僅かな憂いが滲む。
ねぇ、あんたもそろそろ気づきなよ。
人がなにを想って――なにを大事にしてるかを、さ。
西宮チヒロ
こんにちは、西宮です。
対『慈愛のコルネリウス』のシナリオをお届けにまいりました。
⚠注意
挑戦される際は、当マスコメも良くお読みいただけますようお願いいたします。
💟導入
・慈愛に至る対話
http://tw4.jp/adventure/replay/?scenario_id=18141
・慈愛なる夢の果てに
http://tw4.jp/adventure/replay/?scenario_id=20217
TW4では上記2本、コルネリウスのシナリオを担当させていただきました。
その経験を活かしつつ本シナリオをお届けしてまいります。
💟全体補足
・1章のみで完結。
・ソウルボードの中は、PC様各個人にとっての『現実世界では絶対に実現不可能な幸福』空間になっています。
※場所や時間帯、その他シチュエーションはプレイングにて自由にご指定下さい。
・公序良俗に反する行為、未成年の飲酒喫煙、その他問題行為は描写しません。
・今回は【ソロ挑戦】のみ受付いたします。
・プレイング受付期間はタグをご参照ください。期間外に送られてきたプレイングは採用見送りといたしますのでご注意下さい。
💟プレイングボーナス
・幸福なソウルボード空間を破壊する
・物理攻撃以外の手段でコルネリウスにダメージを与える
💟攻略方法
OPにある2パターンの攻略法のどちらかを選んでください。
A)物理攻撃以外のUCでソウルボード空間の破壊を狙う
→敵の反応はPOW/SPD/WIZの選択肢に沿ったものとなります
B)“言葉”でコルネリウスへの(精神的な)ダメージを狙う
→POW/SPD/WIZはスルーして構いません(戦闘ではないので)
💟採用基準
短期運営&少人数採用を想定しておりますため、挑戦者数によっては全員採用できない場合もございます。
その際は、より「大成功」判定となる方を優先に採用いたしますので、予めご了承ください。
※攻略方法Bは【コルネリウスの真意を正しく把握した上で】そのカウンターになるような言葉が有効です。相応に難しいと思われますので、挑まれる方はお覚悟ください。
※明らかに「苦戦」となるプレイングは、申し訳ございませんが採用を見送らせていただきます。
皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『ソウルボード・コルネリウス』
|
POW : 幸福なるソウルボード
【ボディプレス】を放ち、命中した敵を【ソウルボード(自身の肉体)】に包み継続ダメージを与える。自身が【幸福の価値について話を】していると威力アップ。
SPD : コルネリウス・ザ・ハート
レベル×1体の【ダークネス「シャドウ」の軍勢】を召喚する。[ダークネス「シャドウ」の軍勢]は【夢】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
WIZ : ハート・バイブレーション
【ハート】を放ちダメージを与える。命中すると【幸福を求める心】を獲得し、自身が触れた対象の治癒or洗脳に使用できる。
イラスト:みやこなぎ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●すべては、すべての存在が幸福であるために
――彼女は云う。
『苦難の末に勝利を得ることが幸福なのですね。ならば、その道程を用意しましょう。挫折も、敗北も、涙も、再起も――私は、あなたの幸福に必要なものを否定しません』
――彼女は云う。
『人の心には揺らぎが必要なのですね。では、迷いも、疑念も、選択も……あなたが“自分で感じたと実感している”その感覚も共に与えましょう。その末に、あなたの幸福があると云うのなら』
――彼女は云う。
『赦されることを望めないのですね。ならば、赦されないまま、罪を抱えたまま、なお幸福でいられる場を用意しましょう。幸福は、罪なき者だけのものではありません』
――彼女は云う。
『作られたものでは意味がないのですね。では、作られたものだと感じない幸福を。夢であることが苦痛ならば、夢だと知らずに幸福でいれば良いのです。何も案ずることはありません』
――彼女は云う。
『現実世界とソウルボードに、なんの違いがあるのでしょう。どちらもあなたが感じ、考え、選び、幸福を得る場所に変わりありません。ならば、より多くの幸福が叶う場所を選ぶほうが最善ではありませんか?』
――彼女は云う。
『現実で得た絆が尊いのなら、その絆を夢の中でも失わせません。あなたが大切にしたものを、なにひとつ奪わない幸福を用意しましょう』
――彼女は云う。
『未来が必要なのですね。ならば、未来を。新たな命も、新たな出逢いも、新たな物語も、私の中で育めば良いのです』
――彼女は云う。
『人の心を理解していない、とあなた達は云います。けれど、理解できないことと、幸福を与えられないことは同じではありません』
彼女は云う。
彼女は云う。
彼女は云う――。
北条・優希斗
A
…コルネリウスが自身の強さが足りないと結論付けた結果
今の姿になったのであれば
先ずは|猟兵《皆》1人1人が
貴女と対等の力があると伝えなければ話すら聞いて貰えなさそうだな
そう言えば以前貴女は
皆にデスギガスの弱点を教えてくれたな
理由と真意はさておき
当時その事件を予知した身として
俺から直接礼は言わせて貰うよ
だからこそ
そんな姿になって迄
皆が幸福になる夢を守る為の力に固執するそんな姿を見るのは残念だ
彼女のソウルボードに触れ先制攻撃+UC
自分達の意志を示しつつ
コルネリウス・ザ・ハートを召喚
シャドウ達にコルネリウスを属性攻撃・夢で攻撃
敵の攻撃は見切りで回避
…是で皆の話を少しでも
聞く気になって欲しいものだね
――ソウルボード。
あのころは入ることのできなかったその地に立った北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は、静かに辺りを見渡した。
エクスブレインとして仲間たちを見送るばかりだった自分が今、こうして彼らと同じ場所に居る。それは猟兵となってから幾度となく経験してきたことでもあったが、この戦争で訪れる機会を得たソウルボードの景色はまだ、見慣れない。
眼前に広がる光景は、優希斗の良く知るものだった。
武蔵坂学園にある教室のひとつ。放課後なのだろう。校庭からの部活動に励む学生たちの声や音が淡く響き、壁一面に並ぶ硝子窓からは、少しばかり傾き始めた陽が差し込んでいる。
「……聞こえているんだろう? コルネリウス」
優希斗はそう云いながら、貌を上げて視線を巡らせた。此処が彼女の内部だというのなら、この声もまた聞こえているはずだ。
『はい、聞こえています』
「俺は北条・優希斗という。一度、直接貴女にお礼を云いたかったんだ」
『私に? ……以前、お逢いしましたか?』
予知で聞いたものと変わらぬ、穏やかな声音が周囲に響く。
骸の海から蘇った、嘗てのコルネリウス本人とは異なる存在。その記憶はどこまでがありのままに引き継がれているのだろうか。
「いや、俺はエクスブレインだったからな。直接逢ったことはない。……ただ、貴女は以前、皆にデスギガスの弱点を教えてくれただろう? 理由と真意はさておき、当時その事件を予知した身として感謝を伝えたかったんだ」
ありがとう、と添えた優希斗の言葉を、コルネリウスも素直に受け取った。
つまりは、今の彼女も当時を覚えている。
――だからこそ。
「そんな姿になってまで……『皆が幸福になる夢』を守るための力に固執するのを見るのは、残念だ」
心からの吐露は、コルネリウスに向けたものか。それとも独りごちか。
優希斗は俯き掛けていた貌を再び上げると、教室の後ろに飾られていた花瓶の、その花びらへと――ソウルボードの一部へと触れた。
『一体、なにを……』
「貴女が自身の強さが足りないと結論付けた結果、今の姿になったのであれば……先ずは|猟兵《皆》1人1人が貴女と対等の力があると伝えなければ、話すら聞いて貰えなさそうだと思ってな」
云い終えた瞬間、数えきれぬほどのシャドウの大群が現れた。群れるように飛翔しながら、周囲の景色へと攻撃を仕掛け始める。コルネリウスの生み出す“夢”を異なる“夢”が切り裂き、穿つ。そのたびに歪み、剥がれ落ちてゆく風景をその双眸に映しながら、反撃せんと優希斗へと襲い来る慈愛の軍勢は一拍早く見切って躱してゆく。
『……当時は、私の力が足りなかったから|此処《ソウルボード》が安全だと……なににも脅かされない場所だと、皆さんに信じてもらえなかった。だからこそ私は、無敵となりました。ですが……』
「嗚呼、俺たちも今までなにもしてこなかったわけじゃない。成長してきた。|この力《これ》が、その証明だ。――これで、皆の話を少しでも聞く気になってくれたか?」
今展開しているのは、まさにあのころは誰も為し得なかった技。
鳴り止まぬ戦闘音のなか、凛とした青年の声が真っ直ぐに問いかければ、僅かにコルネリウスの攻撃が弱まった。それが、慈愛の姫の答えだった。
『……分かりました。あなた方のお話も、お聞きしましょう』
――対話すべく集った、あのときのように。
大成功
🔵🔵🔵
クーナ・セラフィン
うーん…話聞く限りこれってやっぱり…似てる、かなあ。
…多分同族嫌悪、だからこそ私もやらなきゃダメだと思うから。
全ての命に幸福を、か。
何とも難しそうだけど一つ話をしよう。
昔聖女…妖精猫だけど、がいました。
何故そう呼ばれてたのか、それは他人の悩みから願いを見抜き導くから。
いい方に人生変えられた人もいたけど…その子は自由意志が希薄であらゆる執着もなかったんだ。
故に自我を含めずに鏡のように他人の本当の願いを映して読めた。
同時に自己肯定感も薄く、なんとなく他人を否定せず受け入れそれらしく導く…でもそれは無執着や無関心から来てたって話。
…コルネリウス。
慈愛名乗って全ての幸福って言ってるけど、その根本は他人への無関心…というより他人に無関心でいてほしいというのが本質なんじゃないかな?
無関心であることに気付かれたくなく、それでいて全ての繋がりを断つ気概もないから自分は他人の幸福に尽くしてる無害な存在だってアピール。
人の姿を取ってたのもその一環だったんじゃないかな、と容赦なく言うね。
※アドリブ絡み等お任せ
(これってやっぱり……似てる、かなあ)
この依頼の話を聞いたときから、ずっと考えていた。
今もなお、脳裏に残るあの姿。
人々から聖女と呼ばれ――結果、命を落とすこととなってしまった、ひとりの妖精猫が、記憶のなかでクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)へと微笑み掛ける。
周囲は、今のクーナに馴染みのある風景だった。よく訪れる場所のそば。昔の――あの、彼女から代わりを託されたときとは違う居場所。それが此処に再現されているということは、コルネリウスもまた、クーナを、その存在を認識している。
「ひとつ、話をしよう」
手近な場所へと腰掛けると、そう静かに口火を切った。
どこか訥々と語るのは、とある場所に纏わる昔話。
「昔、聖女がいました。何故そう呼ばれてたのか――それは、他人の悩みから願いを見抜き導くから」
『……あなたは、そのひとが私に似ていると、そう云いたいのですね』
不意に響いた声は、けれど驚かすようなものではなく、どこか落ち着くような声音であった。クーナは僅かに瞠目するも、そのまま続ける。
「いい方に人生変えられた人もいたけど……その子は自由意志が希薄で、あらゆる執着もなかったんだ。故に、自我を含めずに鏡のように他人の本当の願いを映して読めた」
『……鏡、という言葉は、近いのかもしれません』
――己の欲や意志が感じられず、だからこそ執着もない。
これまでのコルネリウスの言動を知り、真っ先にクーナが感じたその解釈は正しかった。だからこそ裡に淀むこれは、恐らく同族嫌悪。それなら尚のこと、向き合わねばならない。
「同時に、その子は自己肯定感も薄く、なんとなく他人を否定せず受け入れそれらしく導く……でもそれは、無執着や無関心から来てた。……そういう話。――ねえ、コルネリウス」
『……はい』
「慈愛名乗って、“全ての幸福”って言ってるけど、その根本は他人への無関心……というより『他人に無関心でいてほしい』というのが本質なんじゃないかな?」
『あなたには、私がそう見えるのですね』
「そう」
虚空を――コルネリウスの居るであろう空を見上げて、クーナは静かに頷いた。
対峙するは、希に見る難題。どうにも読み取りづらい彼女の裡を、暴かんとする。
「つまり、無関心であることに気づかれたくなく、それでいて全ての繋がりを断つ気概もないから、“自分は他人の幸福に尽くしてる無害な存在だ”ってアピール。人の姿を取ってたのも、その一環だったんじゃないかな」
『私は、多くの夢を見てきました。人が何を失い、何を望み、何を得れば幸福であると感じるのか。それらを、幾度も、幾度も』
けれど、と彼女は継ぐ。
『無関心ではありません。無関心であれば、痛む魂を拾いはしません。苦しむ者に夢を与えようとはしません』
静かな声音が、幸福なソウルボードに滲んでいく。
『逆に、誰からも無関心でいてほしい、といったような考えは一切ありません。私がどのように見られるか、そして見られていないかは、“幸福の完成”には関係ありませんから』
――幸福の完成。
その言葉に違和感を覚えたクーナは、形の良い耳を僅かに動かした。
「……キミは、“幸福”を“完成”させたいの?」
確かに、彼女は“使命”と表現していた。成し遂げなければならぬものだと、そう云っていた。
慈愛という言葉には似つかわしくない、どこか強制力すら感じる言葉。
言外に孕んだその疑念までも伝わったのか、慈愛の姫が頷いたような気がした。
『はい。ですから、その実現においては、私が人の姿か否かは関係性のないことです』
そして、ほんの僅か間を置いてから、明瞭な声が響く。
『私が気にしているのは、あなた方が私をどう思うかではなく――“全ての命が幸福であるかどうか、唯それだけです』
成功
🔵🔵🔴
アンカー・バールフリット
A)
それじゃ私はプランBで
単体最強種族のシャドウ、しかも四大シャドウの一角のオブリビオンとあっては生半可な作戦では太刀打ちできないだろう
こちらも今やこの世界の友人となったダークネスの力をもって対抗させてもらう
|両肩に可愛い黒い子猫と赤紫のカエルを乗せた闇の貴公子《ソロモンの悪魔『バアルのような者』》と化して応戦しよう
麗しのコルネリウス嬢から大胆なアプローチを賜り大変恐縮だが、当方にはその慈愛を承れないやむを得ない事情があってね
全速力で回避しながら豊作を運んでくる|バアルの雷《激しい雷雨》をご覧にいれよう
捕捉されたら持久しつつ応戦し味方の援護を期待
この悪夢が覚めれば明日は快晴で良い朝が来るさ
レイ・アステネス
A)
アドリブ可
あの時はミゼンが
世話になったな
今回は私が引導を渡そう
コルネリウスの精神世界に
興味があるから調査してみたいが
ここが本物なのか偽物なのか
分からないのが問題だな
持ち込むUCは
A:ジャッジメントレイ
B:シャドウペルソナ
C:Hairein
D:Ephialtes
E:闇堕ち
持込不可ならBを使用
・攻撃
初回はB+D
E以外のUCを一通り試して
効果が高いものを使用
枳棘を使った呪詛や精神攻撃も試す
敵にダメージを与えられない場合はB+E
・防御
冬青に任せるが
ハートに触れないように
回避やUCで相殺を狙う
洗脳は鉄壁で対応
確かに見た目は重要だと思う
今の君は頼もしいが
優しい印象はない
状況で使い分けたら良さそうだが
ソウルボードの内側に、ありふれた駅前があった。
曇天を映して鈍く光る駅前ロータリー。水溜まりの残るアスファルト。少し古びたタイル張りの歩道。懐かしい、武蔵坂学園のある街の風景だ。
――決定的に違うのは、此処が現実世界ではなく、コルネリウスの裡でもある巨大なソウルボードの一部であるということだけ。
「単体最強種族のシャドウ……しかも四大シャドウの一角のオブリビオンとあっては、生半可な作戦では太刀打ちできないだろうね」
眼に映るものすべてが、まさしく幸福の怪物そのもの。だが、アンカー・バールフリット(Blauer Zauberer・f43884)の声色は、街角で手品でも披露する魔法技術者のように軽やかだ。
「そうだな。とは云え、コルネリウスの精神世界で色々と“試せる”この機会を逃すのも惜しい」
隣へと向けていた視線を、レイ・アステネス(虚実・f43921)は手許へと戻した。
此処が本物なのか否かは分からない。それが些か問題ではあるが、この世界への興味を前にすればそれも些細なことだ。
レイの指に嵌められた土比良乃岐が、鈍く脈打った。忽ち現れた分身精神体――男と同じ見目の影が、レイの動きを完璧になぞる。クラブのスートから解き放たれた2本の闇の鎖は、雨に濡れた路面を滑るように走るも、捉える対象を探しあぐねるかのように力なく地面に落ちた。
「なるほど。流石に、ソウルボードそのものを足止めするのは無理か」
云っているそばから風景がレイを包み込まんと歪み始めるも、纏った帯が自らの意志でそれを撥ねのけた。それを横目に、アンカーが笑う。
「――私も行こうか。今やこの世界の友人となったダークネスの力をもって、こちらも対抗させてもらうよ」
言葉と共に、アンカーの躰が深淵を帯びた。駅ビルの壁に伸びた影が、紳士の輪郭を喰らい、悪魔の威容を描き出す。
瞬く間に現れたのは、闇の貴公子――ソロモンの悪魔『バアルのような者』。その両肩には、愛らしい黒い子猫と赤紫のカエルの姿が在った。張り詰めた緊張感を一瞬だけ柔くするも、アンカーが高らかに告げる。
「ご覧にいれよう、バアルの雷を!」
その朗々とした声に応えるように、掲げられたウィザードロッドの示す先、鈍色の空に巨大な黒雲が生まれた。雷光が瞬き、雷鳴が駅舎のガラスを震わせる。
そうして雨が降る。バアルの雷を孕んだ、激しい雷雨が。
けたたましい響きとともに、眩い閃光が景色を無数に切り裂いた。避雷針などお構いなしに、今やコルネリウスの躰となった世界そのものを穿ち、焼き尽くしてゆく。
だが、慈愛の姫の静かなる声が大気を奮わせた。
『抗う必要はありません。今度こそ、私はあなたたちに永遠の幸福をお約束します』
駅前ロータリーそのものが、盛り上がった。アスファルトが膨れ上がり、タイルが脈打ち、アーケードの屋根が巨大な肋骨のように歪む。
幸福なるソウルボード。そのコルネリウスの躰そのものがアンカーを包み込まんと迫り来る。
「麗しのコルネリウス嬢から大胆なアプローチを賜り、大変恐縮だが……当方にはその慈愛を承れない、やむを得ない事情があってね!」
雷雨の中を疾駆する。スーツ姿の魔法使いが、悪魔の影を纏って駆け抜ける。靴底が水溜まりを蹴り、跳ねた雨水が雷光を浴びて金色を散らす。
だが、敵は街そのものだ。逃げる足許も、背にする壁も、頭上のアーケードも、すべてが慈愛の姫の四肢であり、躰であった。轟音とともに、盛り上がったソウルボードが男を捕らえた。巨大な圧が駅前の一角をまるごと押し潰すさんと降りかかり、忽ちその裡へと飲み込む。
『苦痛よりも、幸福を。孤独よりも、繋がりを。拒絶よりも、受容を。そう望む心を否定する必要が、どこにあるのでしょう』
骨までも軋むなか、コルネリウスの穏やかな声が妙に鮮明に耳奥に届く。そのまますべてを委ねたくなりそうな、抱擁であり暴力。
「……っ、実に魅力的な営業文句だ。だがね」
慈愛の夢に包まれたまま、男は笑みを刻んだ。
声に僅かな苦痛を帯びるも、心までは折れてはいない。闇の貴公子が、押し潰されながらも尚、轟雷を呼ぶ。
「悪夢のセールストークには、朝陽という返品保証が付き物でね」
一際大きな雷が爆ぜると同時、異なる光条も戦場を迸った。世界を灼く光がロータリーと商店街の境界を白く塗り替えたかと思えば、気づけばアンカーの拘束は解かれていた。全身の痛みも、呼吸も、和らいでいる。
「ありがとう、助かったよ」
「礼には及ばない。こちらも色々試しているところだ。もう少し行けるか?」
冷めた声音ながら強欲とも云えるほどの探求ぶりに、アンカーの唇から笑みが漏れた。
「ほかには何を試したいんだい?」
「枳棘での呪詛も、精神攻撃も通るようだ。となれば、あとひとつだな」
『……もう、私を試す必要はないのです。こうして私は、無敵になったのですから』
世界が震え、コルネリウスの声がふたりの会話に介入した。止め処なく肌へと打ちつける雨粒を気にも留めぬまま、レイは唇を開いた。
「確かに見た目は重要だと思うし、確かに今の君は頼もしく見える。……が、優しい印象はない。状況で使い分けたら良さそうだが」
『……それが“全き存在の幸福”に必要だと、あなたはそう云うのですね』
途端、世界が僅かに動きを止めた。無論、それを見逃すふたりではない。
「|あのとき《・・・・》はミゼンが世話になったな。――今回は私が引導を渡そう」
「この悪夢が覚めれば、明日は快晴で良い朝が来るさ。――だから、今は少々、荒天に付き合ってもらおうか」
ケラヴノスとバアル。
神に纏わる名を持つ稲妻たちが、鼓膜を劈くほどの雷鳴を伴って幸福なる世界を震撼させた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
栗花落・澪
物心つく前に死んだ両親との幸せな時間
一緒に買い物に行って、似合いそうな服を選んでもらったり
父さんとこっそり母さんへのプレゼントを買ったり
本当は全部…生きた本物とやりたかった
沢山話したかったし、沢山遊びたかった
どんなものが好きなのか、2人のこと知りたかったし…知ってほしかった
でも…ごめんなさい
2人に託された本当の願いは、ここにあるから
お守りも、ネックレスも破魔の力を纏って淡く光って
そっと後押しをしてくれるから
大事なのは、僕じゃない…相手の気持ちだよ
だからごめんなさい
僕は…ちゃんと現実を生きなきゃ
2人がそう願ってくれたから
ダークネス相手には広範囲の破魔の光で
ソウルボートごと浄化と破壊を狙ってみます
気づけば其処は、あのころ行きつけの店だった。もう遠い昔のことなのに、記憶のなかに残っていただけの映像が今、鮮やかな彩を伴って眼前に広がっている。
「――澪、こっちはどう?」
優しく名を紡がれ、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は反射的に振り向いた。その声も、穏やかに微笑む貌も、本当はなにひとつ知らぬはずなのに、ずっと昔から知っていたように懐かしさが込み上げる。
その手には、明るい色のカーディガン。似合うかな? と問えば、あたたかなぬくもりとともに、澪へとそれが手渡された。
「似合うわよ。澪にはこういう優しい色が合うもの」
少し照れながら袖を通してみれば、ふわりと柔らかな布地に包まれた。サイズも丁度合っている。すぐ隣には、それを当然のように知っている母と、少し離れた場所で見守るように腕を組む父の姿。
「いいんじゃないか。うん、よく似合ってる」
「本当?」
「ああ。澪は何を着ても可愛いが、それは特にいい」
「もう……」
湧き上がる歓びに、頬が熱くなる。眉尻を下げながら、それでも澪は鏡を幾度も見た。琥珀色の髪と眸。柔らかな色の服を着た、小柄な自分。
鏡越しには、そんな姿を微笑みながら見つめる両親が映っている。
あまりにも自然で、あまりにも欲しかった日常。
そのあと、母が別の店を見ているあいだに、父がそっと身を屈めて囁いた。
「澪、少しだけ付き合ってくれるか」
「どうしたの?」
「母さんへのプレゼントを選びたい。内緒でな。澪なら好きそうなもの、知ってるだろう?」
真剣な眼差しで、父は人差し指を唇に当てる。そのどこか子供めいた仕草に、澪は思わず笑ってしまう。
「僕も……本当は、まだ分からないよ」
口にした途端、裡が少し痛んだ。急に、意識が覚め始める。
――分からない。
母がどんなものを好きなのか。父がなにを見て笑うのか。
知りたかった。知ってほしかった。好きな食べ物も、好きな花も、苦手なものも。
たくさん語り、たくさん遊びたかった。こんな風に買い物に出かけ、なんでもないことで笑って、時々喧嘩もして、それから仲直りをして。そんなありふれた時間を重ねたかった。――生きている、本物のふたりと。
『……どうして、目覚めようとするのですか』
コルネリウスの声とともに、世界が微かに揺らいだ。ごめんなさい、と。詰まりそうになる声を、澪はどうにか絞り出す。
「……ふたりに託された本当の願いは、ここにあるから」
そう云いながら、指先で子供用のネックレスと桃色兎のお守りへと触れた。魔を打ち破る淡く優しい光が、指間から零れる。
両親が何を願ってくれたのか、それはもう、本当の言葉で聞くことはできない。
けれど、それでも分かることはある。
「大事なのは、僕じゃない……相手の気持ちだよ」
それは、コルネリウスへ向けた言葉でもあった。
幸福を与えること。優しさで包むこと。歓びで満たすこと――それ自体が間違いなのではない。
けれど、相手が本当に願ったものを知らぬまま空想の夢に浸るのは、どうしても本当の幸福とは思えなかった。
「だから、ごめんなさい」
澪は立ち上がる。
腰掛けていた椅子が、ちいさな音を立てる。周囲の賑わいが遠ざかり、店の壁が、床が、天井が、柔らかな肉のように脈打ち始めた。
幸福の日常の輪郭が、俄に崩れていく。
「僕は……ちゃんと現実を生きなきゃ。ふたりが、そう願ってくれたから」
真っ直ぐに見据えた双眸に、ひかりが宿る。母からの温もりと、誰かが刻んだ愛の言葉が、背を押すように澪の全身へ巡っていく。
――どうか、この夢にも光を。
澪の裡から眩い幾つもの光条が溢れ、忽ち周囲を柔らかな白で染め上げた。ソウルボードの床を、壁を、天井を、そこに潜むダークネスの気配ごと浄化してゆく。
買い物袋が光にほどけ、カーディガンの色が花びらのように舞い上がる。
幸せな日常を模した世界が、静かに、けれど確かに崩れていった。
大成功
🔵🔵🔵
ギュスターヴ・ベルトラン
向日葵とラベンダー咲く南仏の夏の空気
家の扉を開けば、父がおかえりと笑う
確かに『現実世界では絶対に実現不可能な幸福』だ
…欲しかったよ、こういうの
現実で父から向けられたのは、憎悪と暴力だけだった
だから母は、オレを連れて逃げた
【祈り】を込めてUC発動
…人を愛してないと言ったお前には、殊更効くだろう
幸福を望む心は否定しねえ
だが、それを他人を縛る為に使うならそれは光に背く
――コリントの信徒への手紙一、十三章三節
『たとえ全財産を貧しい人々のために使い尽くそうとも、愛がなければ無に等しい』
お前の行為そのものは否定しないが、愛が伴わなければ空虚だ
…お前から人が離れていくのは、その空虚に人は浸れねえからだよ
記憶に残っているままに、南仏の夏は眩しくも穏やかだった。
石造りの家の壁を飾る蔦。白い陽射しを浴びながら向日葵が風に揺れ、優しいラベンダーの花の香が流れてゆく。遠くから響く虫の声。乾いた土と、熱を帯びた石畳。窓越しに見える、昼食どきの一家団欒。
そんな風景を横目に、自然と足を向けた先には見慣れた扉があった。片手を伸ばし、ドアノブに触れる。
「ああ、おかえり」
見たこともないほどの穏やかな眼差しを向けられ、ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)は思わず言葉を失った。
暴力の影も、憎悪の欠片もありはしない。ただ息子の帰りを待っていた父親が、当たり前のように笑っている。
「……そう……そう、だな」
自分は今、どんな貌をしているのだろう。
それすら分からぬまま、男は俯きながら掌で半顔を覆った。
――確かにこれは、“現実世界では絶対に実現不可能な幸福”だ。
『あなたは、それを欲していたのでしょう。失われたものを取り戻すことも、憎まれることのなかった過去を得ることも、ここでなら叶う。ならば、なぜ拒む必要があるのですか』
「……ああ。欲しかったよ、こういうの」
絞り出すかのような、低い呟きが漏れた。
胸の奥が歪な音を立てながら軋む。笑いたいのか、泣きたいのか、自分でも分からない。
今思い返しても、酷い父親だった。だから母も、ギュスターヴを連れて逃げた。そうするほかなかった。
「はは……そうか。こんな気持ちになるんだな」
云って、綯い交ぜになったすべてを吐き出すように、深く息を吐いた。サングラスの縁をゆっくりとなぞりながら、その奥の眸を窄める。
「そうとも。オレだって、幸福を望む心は否定しねえ。――だがな」
裡に灯る祈りが、心の奥に生まれ始めていた澱みを払ってゆく。足許から清らかな大気が湧き出し、瞬く間に景色そのものが祝福のひかりで満ち始める。
「それを他人を縛るために使うなら……それは、“光に背く”」
コリントの信徒への手紙一、十三章三節。
――たとえ全財産を貧しい人々のために使い尽くそうとも、愛がなければ無に等しい――。
『それは、あなたの解釈です。私はただ、望むままの世界を与えているのです。帰る場所を、愛される記憶を、叶わなかった幸福を。それを拒むことこそ、苦しみへの執着ではありませんか』
「ハッ、笑わせるな。お前のやってることは、お前の求める“全き幸福”とやらのために、すべての存在を縛りつけてるだけだろうが」
幸福の夢が、抗う術もなく白きひかりに染めあげられる。
父の微笑みも、あたたかな家も、南仏の夏も。どれほど切望した願いだとしても、それが誰かを閉じ込める檻である限り、眩き祈りがすべてを否定する。
「……人を愛してないと言ったお前には、殊更効くだろう」
ギュスターヴの皮肉めいた笑みすらも掻き消すように、白きひかりが増してゆく。父の姿を、懐かしい家を、夏の陽も花々も、なにもかもを包み込む。
『……どうして、あなたも“幸福”を拒むのですか』
「お前の行為そのものは否定しない。誰かに幸福を見せたい。苦しみから遠ざけたい。それだけなら、分からねえでもねえ」
『なら』
「だが、愛が伴わなければ空虚だ。……お前から人が離れていくのは、その空虚に人は浸れねえからだよ」
仮初めの幸福へと背を向け、ギュスターヴは歩き出す。
微かに残るラベンダーの芳香を振り払うように――ただ、真っ直ぐに。
大成功
🔵🔵🔵
有城・雄哉
A)
【SPD】
アドリブ大歓迎
…俺にとってコルネリウスの慈愛は
「実現不可能なことを捻じ曲げてでも実現しようとする」一方的な押し付けに見える
だからこそ…否定するんだ
俺にとっての絶対実現不可能な幸福空間は
『両親と双子の兄との、4人家族での仲睦まじい団らん』だ
両親と兄はダークネスに殺された
3人が生き返らない限り…絶対実現しない
夢の中の3人が如何に甘言を弄しようが振り払い
床に手をつけ指定UC発動
これでコルネリウスのUCが使用可能になるので
即座に【コルネリウス・ザ・ハート】発動、限度いっぱいまでシャドウ軍を召喚
狙いはひとつ、夢属性の戦闘能力でコルネリウスへのダイレクトアタックだ!
このまま内側から砕け散れ!
彩瑠・さくらえ
B
コルネリウス
君が作り出す幸福は
対象の情報を覗き見て
推察できるものしか提供できないんじゃないのかな
対象の過去と現在
そこから導かれる未来
対象すら知り得ない対象の情報を覗き見て
データとして分解しマッチングさせる
そこからから作り出す世界は
確かに対象に幸福だと認識させることはできる
時に対象の想像を上回る形でね
でも対象の情報は
君の中に入った時点で保持しているものだ
君の中に居続けるなら対象が新たな情報を得る機会はないから
最初はよくても組み合わせていくうちに狂っていく
同一種族の共食いや掛け合わせが禁じられているのは
その行き着く先に狂うことが事実としてあるからだ
幸福だってそう
君という閉じた輪の中
君の知り得る情報の掛け合わせの果てに生まれるものは
幸福という名の狂気であり呪いの檻だと僕は思う
それもまた幸福だと君は言うかもしれない
でも君の言う幸福を拒否する対象がいるなら
君の望むすべての命を幸福にしたいという君の望みは叶わない
そして僕はそんな君の幸福を拒否する
たとえ理不尽な現実でも
向き合い生きていくと決めたから
都嘴・梓
へーえ?
俺ァ慈愛の何たら…えーっと、ころねろりす?こる…ころ…コロネのこの知らないからさ?
夢だソウルボードだ言われても、分からんし
てか俺、あんま夢見ないし…
俺、勝ち取りたい派だし、何でもオッケーは萎え—…
待って
何でも?
じゃあさ、
俺のこと、殺してくれない?リアルで
え?
何?
…は?
いやソウルボードでもいいでしょって…
やだよ
ばかなの?だから言ってんじゃん“現実”で死にたい、って
いや理由て
ちっ、融通の効かない奴だな
てかああ言えばこう言う状態なのお前じゃん
つかソウルボードってのがどこの世界にもあると思うなよ
バケモノなら領分守れよ俺みたいに
え?領分って何って…やだよ俺長い話今したくないし
はあ…
萎えたわ
(煙草に漣のくれたジッポで火をつけて、吐いた煙で呼び出す友へ“今帰る”と囁き
俺、随分前に漣と約束したんだ
“何があっても、俺は漣の隣に帰る”
漣の隣に帰るために醒めるよ、此処から
俺の大事な大事な|お嫁さん《漣》を待たせっぱなしにするのもどうかと思うし
まぁ心配されるのも良いんだけどね
さァて、始めようかUC
「……このあたりのソウルボードがゆらぎ始めている……コルネリウスも、相応に追い詰められているようだね」
「んじゃあ、一気に畳みかけちゃう?」
空間を仰ぎ見る有城・雄哉(蒼穹の守護者・f43828)へと、都嘴・梓(|嘯笑罪《ぎしょうざい》・f42753)が飄々と口端を上げた。
『あなたたちは、まだ拒むのですね。幸福を、安寧を、痛みから解き放たれることを。……それでも、私は諦めません。全ての命が幸福である世界は、まだ完成していないのですから』
「そー云ったってさ、俺ァ慈愛のなんたら……えーっと、ころねろりす? こる……ころ……コロネのこと知らないからさ?」
「……っ、ふふ。ご、ごめん。思わず……。そうだよね、馴染みのない相手だろうし」
そう眉尻を下げる彩瑠・さくらえ(望月桜・f44030)に、梓もひとつ笑みを深めると、
「そ。だから夢だソウルボードだ言われても、分からんし……てか俺、あんま夢見ないし……俺、勝ち取りたい派だし、何でもオッケーは逆に萎えるっていうかー」
拒絶を言外に孕みながら、どこか冷めたような視線を宙へと遣る。
3人の周囲は、どこか欧州を思わせる長閑な場所だった。道端を彩る色とりどりの花が風に揺れ、草原のなかを緩やかにカーブしながら伸びる陽だまりいろの煉瓦路は、遙か先の何処かへと続いている。
「|此処《・・》が、君にとっての馴染みの場だったりするのかい?」
「へーえ? そうなの?」
「ああ……確かに、そんな記述が報告書にあったね」
“現実世界では絶対に実現不可能な幸福”を望まなかったからだろうか。嘗て8人の灼滅者たちが彼女と対話すべく訪れたときと同じ風景が広がっているということは、今も、コルネリウスはこちらの話に耳を傾けている――少なくとも、応答する気はあるということだろうか。
『馴染み、というわけではありません。ここは、まだ誰の望みにも染まっていない場所。夢が形を取る前の、最初の空間です。あなたたちが望みを口にするなら、すぐにでも叶えましょう。失ったものも、届かなかったものも、現実では決して得られない幸福も。ここでなら、全て与えられます』
「……俺にとっては、それは慈愛なんかじゃない。“実現不可能なことを捻じ曲げてでも実現しようとする”、一方的な押しつけにしか見えない」
だからこそ、否定する――その揺らがぬ意志は、敢えて言葉にせずとも明白だった。
「そう。そこが気になってたんだ」
「って云うと?」
「彼女はダークネスだけど、悪意を持っているとは云えない。でも、“人を愛してはいない”。なのに、人を幸福にしたい……いや、“|全ての存在が幸福である世界を完成させたい《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》”……そうだよね?」
『はい。私は、全ての命が幸福である世界を望んでいます。誰も苦しまず、誰も失わず、誰も悲しまない世界を』
「そうか……『幸福にしたい』と『幸福な世界を作りたい』だと、また意味合いが違ってくるわけか」
「なる。対象が『人』か『世界』か、ってことね」
コルネリウスが見ているものは、あくまでも“世界”。
唯ひとりも不幸な者が存在しない――全き幸福が満たされた世界の実現。
「え、でもやァだ。それだとなんか俺らまるでパズルのピースみたいじゃん」
露骨に嫌そうな貌をする梓に、雄哉も真面目な顔で首肯する。
「まさにそれだ。ひとりひとりを幸福にしていき、最後のひとりまで幸福にできたら完成するパズル……だから“人を愛していない”のに“人の幸福を満たしたがる”のか」
「そう……僕たちはコルネリウスが人の姿をしているから惑わされがちだけど、例えばその姿が人の形じゃなく、機械や……せめてディスプレイに映った彼女の姿だったら、また違った見方になったんじゃないかな」
仲間たちへと視線を巡らせたさくらえに、短く梓が瞠目する。
「あー……つまりロボットとかプログラムとか、そういう?」
「うん、そうだね。……今風に云うなら――“幸福判定AI”ってとこかな」
――“人を幸せにしたい聖母”ではなく、“幸福判定を全部TRUEにしたいAI”。
コルネリウスのなかでは、全ての存在に対して幸福判定が行われる。幸福ならば『TRUE』、不幸ならば『FALSE』といったように。
そうして彼女は、FALSEを見つけると必ずTRUEにしようとする。結果として幸福になっていれば良いから、その過程に対する縛りは緩い。
苦労して勝利を掴みたいのなら、その体験を作る――TRUE。
己が罪を忘れたくないのなら、罪を抱えたまま安らげるように――TRUE。
夢だと自認しているから嫌なのであれば、夢だと知らぬよう認識を操作する――TRUE。
自分で選び取ることこそに意義があると云うなら、自ら選んだと納得できる体験をもたらす――TRUE。
彼女の幸福判定がTRUEになれば、それで救済は成立する。そこに、悪意は欠片もありはしない。
そして、彼女の自身の感情もまた、存在しない。心を持たぬ人工知能があたかも人の心を理解しているように振る舞えるのと、どこか似ている。
「……だからか……これまでどんなに灼滅者たちが異を唱えても、全く話が噛み合わなかったのは……」
「――と思うんだけど、どうかな?」
『本人が幸福だと認識しているのなら、それは幸福ではないのですか。苦しみが消え、悲しみが癒え、望んだものが満たされている。ならば、そこになんの問題があるというのです』
「うわァ……希に見る酷さ……」
「ただね、コルネリウス。君が作り出す幸福は、対象の情報を覗き見て推察できるものしか、提供できないんじゃないのかな」
云いながら、さくらえは頬に指を添えた。とんとん、と軽く動かしながら思案する。
「対象の過去と現在、そこから導かれる未来……対象すら知り得ない対象の情報を覗き見て、データとして分解しマッチングさせる。そこから作り出す世界は、確かに対象に幸福だと認識させることはできる。……時に、対象の想像を上回る形でね」
彼女がどれほどの刻を過ごしてきているかは、計り知れない。
それでも、これまでの長きにわたり、膨大な量の夢を見てきたはずだ。彼女の汎用性の高さ――対象がどんな条件を出そうとも、全てを満たす提案ができるのは、彼女のなかに蓄積されたデータベースがあるからに他ならない。
「でも、対象の情報は君のなかに入った時点で保持しているものだ。君のなかに居続けるなら、対象が外――つまり現実世界から新たな情報を得る機会はないから、最初はよくても組み合わせていくうちに狂っていく」
同一種族における共食いや掛け合わせと、同じようなものだ。
それらが禁じられているのは、行き着く先にあるのが自然とも正常とも云えぬ混沌だという“事実”があるから。
「幸福だってそう。君という閉じた輪のなか、君の知り得る情報の掛け合わせの果てに生まれるものは、幸福という名の狂気であり呪いの檻だと僕は思う」
『……それでも、幸福であることに変わりはありません。外から新たな情報を得られずとも、足りないものは補えばいい。歪みが生じるなら、整えればいい。幸福であるという結果が保たれるなら、それは救済として成立するはずです』
だが、その声は先程までのような毅然さは薄れていた。
草原を渡る風が、不意に途切れる。煉瓦路の先が陽炎のように揺らぎ、咲き乱れていた花々の彩が一瞬だけ不自然に反転した。青空に白い亀裂が走り、長閑な風景が継ぎ接ぎされた画像のように僅かに位置をずらしていく。
慈愛の姫がプログラムというのならば、これもまた彼女にとっては同様というより、バグのようなものなのだろうか。
いずれにせよ、今が機だと悟った梓は、挑発的な笑みを湛えながら声を張る。
「へぇ。――じゃあさ、俺のこと、殺してくれない? |現実世界《リアル》で。なんでもできるんでしょ?」
『……|ソウルボード《ここ》ででは、いけませんか。あなたが死を望むのなら、その終わりも、痛みも、解放も、全て望む形で与えましょう』
「……は? やだよ。ばかなの? やーだね。言ってんじゃん。“現実”で死にたい、ってさ」
『何故ですか。あなたが望んだのは、死ではなかったのですか。現実であるか、ソウルボードであるかに、幸福の成立を妨げるほどの違いがあるのですか』
「ちっ……ったく、融通の効かない奴だな。ああ言えばこう言う状態なのお前のほうじゃん。つか、ソウルボードってのがどこの世界にもあると思うなよ。バケモノなら領分守れよ俺みたいに」
――さァさァ、叶えてみろよ“現実”で!
怒濤の勢いで捲し立てる梓を前に、雄哉がさくらえへと視線を投げると、小さな頷きが返ってきた。「そういうことか」、と雄哉が洩らす。
そも、ソウルボードを住処とするシャドウにとっては、ソウルボードも現実世界も同列のもの。寧ろ、あらゆる夢を叶えられるソウルボードは現実世界の上位互換とすら、コルネリウスは思っている節がある。
加えて、彼女はその思考故、自らの活動は正しいと信じて疑わない。だからこそ、思想を軸とした意見の応酬では永遠に平行線を辿ることとなってしまう。
「つまり、『善し悪し』じゃなく、『好き嫌い』で語れば、まだ別の展開は望めるということか……」
「みたいだね。コルネリウスは、僕らの望み……つまり好みも含めて、それ自体は否定しない。否定できない。何故なら、それが相手の幸福に直結しうることだから」
「更に、そこに“現実世界で”という条件を追加すれば、コルネリウスにとってはより幸福にする難易度が上がるだろうしね」
何故、現実世界が良いのか――姫からそう問われたら、答えは簡単だ。
一言、こう云えばいい。
――ソウルボードが嫌だから。
「……つまり、これまでは言葉を重ねれば重ねるほど、コルネリウスが僕たちを説き伏せる材料を与えていたんだね」
「まぁ、あくまでも仮説だけどね。でも、そう考えると辻褄が合う。あとは、例えば“現実で生きろって誰かに云われた”とか……“現実で”が条件に含まれた理由とかも行けるかも」
「そこまで推察できれば、あとは――」
「うん」
静かに口角を上げた雄哉に、さくらえも力強く頷く。頃合いだ、と視線で合図を送ると、梓も肩を竦めて溜息を吐いた。
「なーんだなんにもできねぇんじゃん。はあ……萎えたわ」
自然と伸びた懐から煙草と銀のオイルライターを取り出すと、慣れた手つきで火をつける。唇から細く燻らせた紫煙から生まれた猫星霊へと、微かな言付けを託した。
――今、帰る。
「んじゃ、そろそろ出よっか? おふたりさん。俺も、大事な大事な|お嫁さん《漣》を待たせっぱなしにするのもどうかと思うし」
まぁ心配されるのも良いんだけどね、なんて戯ける梓へ、さくらえと雄哉も真っ直ぐな眼差しで首肯した。
穏やかな草原が、地平線から剥がれ始めていた。
陽だまりいろの煉瓦路は一枚ずつ罅割れ、風に揺れていた花々は花弁の形を保てぬまま、淡い光の粒となって風景に溶けてゆく。空は青を失い、遠くに見えていた丘も、橋も、まるで誰かが描きかけの絵を水で濡らしたかのように滲んでいた。
『待ってください。まだ、あなたたちは幸福になっていません。望みを告げてください。現実でなければならない理由があるのなら、その理由ごと満たす夢を作ります。だから、まだ――』
「……君の言う“幸福”を拒否する対象がいるなら、『全ての命を幸福にしたい』という君の望みは叶わない――そうだよね?」
『……それ、は……。けれど、拒否もまた、苦しみによって生じた誤認であるなら……』
「そして僕は――そんな君の幸福を“拒否”する」
たとえどれほどまでに理不尽な現実だとしても。
逃げずに向き合い、生きていくのだと決めたから。
「俺も、随分前に漣と約束したんだ。“何があっても、俺は漣の隣に帰る”ってね」
愛おしい姿が、脳裏に浮かぶ。抱きしめられたときのぬくもりが、胸に宿る。
「――だから、そのために醒めるよ、此処から」
さくらえに続き、背を向けながら三角陣を作らんと位置取った梓が、景色の一部へと手を伸ばした。しなやかな指先を強く抉り取るように動かし、空間ごと刮げ落ちた塊を、歯で引き千切りながら咀嚼する。
「さァて、始めようか」
「――ああ」
身を屈めた雄哉が大地に両の掌を付けると、忽ちシャドウの軍勢が湧き出した。梓のそれと合わせると、ゆうに数百の巨大な影の群れが、一気に周囲を浸食し始める。
「狙いはひとつ……! コルネリウスへのダイレクトアタックだ!」
雄哉の声に呼応するかのように、その勢いを増すシャドウたち。
視界を埋めんばかりのその影たちを断つかのように、コルネリウスの声がソウルボードに響く。
『どうしても抗うというのですね。ならば、あなたにも夢を。あなたが失い、二度と取り戻せないものを――あなたが本当に望んでいた場所を』
瞬間、影の奔流の向こう側で、雄哉の視界が塗り替わった。
そこは、なんの変哲もない家の食卓だった。あたたかな湯気の立つ料理が並び、父が穏やかに新聞を畳み、母が笑いながら皿を置く。隣には、同じ顔をした双子の兄がいて、雄哉へとカトラリーを渡しながら、昔と変わらぬ調子で先に食事を取りはじめている。
懐かしい声。懐かしい気配。懐かしい家族の団欒。
ダークネスに奪われたはずの3人が、そこには当たり前のように生きていた。
――雄哉。
――もう戦わなくていいんだ。
――ここにいればいい。
甘く、優しく、絶対に現実ではあり得ぬ言葉が降り注ぐ。けれど、雄哉は唇を引き結び、その全てを振り払った。
どれほど欲しかったとしても。どれほど胸を裂かれるとしても。彼らはもう、還らない。だからこそ、青年は現実で生きていくと決めたのだ。
「僕は、その慈愛を否定する! ――このまま内側から砕け散れ!」
雄哉の掌から放たれた影が、ソウルボードの裡を貫いた。
梓の影が空間を喰らい、さくらえの分身精神体が楔を打ち込む。草原が砕け、煉瓦路が崩れ、空に浮かぶ亀裂の向こうから深い闇が流れ込む。
『どうして……。私は、ただ……全ての命を、幸福に……』
遠ざかる声に、答える者はいない。
仮初めの楽園は、彼らを包み込むことも、縛り続けることもできず、淡い光となって四散する。
――どうか、遠い、遠い未来。
――ソウルボードに残る慈愛の心と皆さんの力が合わさり、全てが幸福になりますように。
そうして、慈愛の姫は、再び闇へと消えてゆく。
あのときの言葉を裡に抱いたまま――終ぞ叶わぬ、夢の果てへと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵