季節は春。桜は満開で、花びらが風に乗って舞い散っている。
肌寒さもすでに消え、穏やかで過ごしやすい気候になっている。
そんな春模様のバトルモンスターワールドの世界を、柳・依月(ただのオカルト好きの大学生・f43523)は歩き回っていた。
少し胸がはだけた着物を纏っており、袖は短めの涼し気なファッションだ。
徐々に暖かくなってきたこの時期にはぴったりな装いと言えるだろう。
動きやすそうなところも嬉しいところだ。
「さて、バトモンたちはどこにいるのだろうか」
依月が下駄の音をからんころんと鳴らしながら地面を踏みしめて進んでいく。
依月がバトルモンスターワールドにやって来た理由は、自分と一緒にこの世界を冒険してくれるバトモンを探すためだった。
すると、桜の木の下に1体のバトモンが姿を現した。
それは、刀+おばけバトモンのコテッツだった。手にしているのは身の丈以上の大きさの妖刀だ。
白い瞳孔をぎょろつかせると、依月と目が合った。
(なんとなくだけれど、親近感を感じるな)
コテッツは呪われた妖刀を操る、お化けのような姿をしたバトモンだ。
そんな姿を見て、なんとなく依月は興味を抱いたようだった。
依月の正体は怪異であることもあり、呪いや呪術といったものに縁が深かった。
依月は決めた。
せっかくだ。このバトモンを捕まえて、自身の新しいパートナーにしよう、と。
バトモンを捕獲するためには、まずは弱らせる、あるいは自身に心を開いてもらう必要があった。
依月としてはバトモンを傷つけることは本意ではなかったこともあり、なんとか自身に心を開いてもらえないか作戦を考えることにした。
「仲間だと思ってもらえないだろうか」
そう言うと、自身の姿をコテッツに変えると、野生のコテッツの方へと近づいていく。
野生のコテッツはじぃっと依月のことを見つめると、妖刀を依月に手渡してきた。
(この刀を授けようとしているってことかな)
依月は手を伸ばして、野生のコテッツが差し出してきた刀に触れた。
すると、脳内に様々なイメージと声が流れ込んでくる。
それは、妖刀の囁きだった。
力を欲せ、求めよ、さすれば我が妖刀の力を与えよう。
(これは、妖刀の声……? それとも、コテッツ自身の声……?)
血に濡れた刀のイメージ、さまざまな殺し方。脳内に流れ込んできては、消えていきを繰り返す。
しかし、妖刀を持つものの姿は見えず、どこか孤独な印象も感じさせられた。
その声は、イメージは、まるで何かを求めているかのような声にも聞こえた。
この力に取りつかれてしまえと言わんばかりに流れ込んでくる声に、思わず依月の姿は元に戻ってしまいそうになる。
しかし、依月はなんとか食いしばってこらえる。
そうして、目を大きく見開いた。
「大丈夫、この程度の呪いなら、俺は乗り越えられる……!」
すると、呪いの声はぴたりと止んだ。
依月は呪いを受け止めることができたようだ。
野生のコテッツは少し驚いたかのように、依月のことをじっと見つめる。
呪いを受け止めることができるとは思っていなかった様子だ。
そうして、心を開いたのか依月の周りを飛び回り始めた。
自身の呪いを受け止めてくれた依月のことを認めたようだ。
依月は自身の姿を元に戻すと、野生のコテッツに微笑みかけ、手をそっと伸ばした。
コテッツは嬉しそうに目を細めると、依月の隣に飛んでいった。
「一緒に来てくれるのかい?」
依月がそう言うと、コテッツは嬉しそうに頷くのであった。
依月とコテッツは桜の木の下を進んでいく。
2人の門出を祝福するかのように、桃色の花びらが紙吹雪のように降り注いでいた。
これからやらなければいけないことはたくさんあった。
バトモンとより親しくなるためにも、名前を付けてあげなければならない。
バトモンのことを知って、強くしていかなければならない。
やることを挙げていけば、キリがない。
歩きながら、依月は考える。
「かといって、俺は名前をつけるのもあまり得意じゃないんだよなぁ」
コテッツは物欲しげな様子でじっと依月を見つめる。
「妖刀の名前をもじるとか? うーん……少し考えさせて」
コテッツは妖刀を両手で持ち上げて喜んでみせた。名前を考えてくれるのが嬉しいのだろう。
微笑ましい様子を浮かべているコテッツを見て、依月もつられて微笑みを浮かべるのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴