#サイキックハーツ
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――グリモアベースの片隅で。
「……成程ね。……色々と難しいよな、相互理解って言うのはさ」
そう、北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)が目を瞑って嘆息を零していたのを聞きつけたのであろうか。
気が付いた猟兵達が優希斗の周りに集まるのに気が付き、その双眸を開いた時、彼の瞳は夜よりも尚暗い漆黒から蒼穹へとその輝きを変えていた。
「と言う訳で、皆に今回の依頼内容を説明させて貰うね。今回は、|この世界《サイキックハーツ》でもある程度一般的になっているダークネス達の中でも少数派のダークネスに対して、モーションを掛けてきている|虚《オブリビオン》の事件が予知出来たよ」
そう告げる優希斗の言の葉に、何処か何とも言えない響きが綯い交ぜになっていた気がするのは、果たして猟兵達の気のせいであろうか。
「まあ、要するにさ。|今の世界《サイキックハーツ》の在り方に疑問を抱いているダークネス達を口説き落として|復活ダークネス《自ら》の勢力に入れ込もうとしているオブリビオンの存在を予知する事が出来たんだよね」
とは言え、その|復活ダークネス《オブリビオン》を放置しておくわけには行かない。
油断していればこれが広がっていく過程で、|今の世界《サイキックハーツ》で問題なく共存しているダークネス達以上に数多のエスパー達への犠牲が出る可能性が十分あったからだ。
「まあ、それこそそれなりに大きな規模の被害がエスパーに出る可能性が高いって事だ。流石にそれを放置しておくわけには、行かないんだよね」
その、優希斗の微苦笑と共に告げられて言の葉に。
其々の表情を浮かべる猟兵達の様子を見ながら、その首謀者は、と優希斗が続けた。
「|復活ダークネス《オブリビオン》である事だけは真実だ。だからこそその|復活ダークネス《オブリビオン》は、ある程度そう言った煽動や統率等に長けている相手だと見た方が良いだろう。……まあ、過去の亡霊なのも否定しないけれども」
そう微苦笑と共に嘆息を漏らしてから、優希斗が続けた。
「いずれにせよ、其れが嘗ての|世界《サイキックハーツ》で灼滅者達と関係があったダークネスのオブリビオンなのは確かだね。と言う訳で、嘗て灼滅者達が辿った道筋を追って見るのは良いかもしれないね」
――それは、未来に繋がる|過去《・・》の物語だから……。
「――分からなければ、単純に観光の気分で色々な|今の世界《サイキックハーツ》で戦いの在った場所を訪れても良いだろう。只、今回の|復活ダークネス《オブリビオン》は……多分、羅刹の可能性が高いと俺は思っているよ」
そう微苦笑を浮かべて軽く頭を横に振り、その蒼穹の瞳を眇める優希斗には、一体何が見えているのであろう。
――けれども。
「其れが誰なのかの確認は、皆の手でして欲しい。そして……感じて欲しいんだ」
――|嘗ての世界《・・・・》にて。
「生きていたダークネス達が何を思っていたのか等の諸々を含めてね。因みにこの任務を終えた後には、桜舞う場所で桜の花見を予定しているから、色々と自分達の気持ちを整理する余裕も十分生まれると思う」
――だから。
「単純に敵を殺せばそれで終わりじゃないって事は、予め皆にも了承して貰った上で皆には皆なりの最善の行動を尽くして欲しい。如何か皆、宜しく頼むよ」
その、優希斗の言の葉と共に。
――蒼穹の風が吹き荒れて……猟兵達が、グリモアベースから姿を消した。
長野聖夜
――|その過去《オブリビオン》の、その想いは。
いつも大変お世話になっております。
長野聖夜です。
と言う訳で、サイキックハーツシナリオを1本お送り致します。
此方はかなり心情寄りのシナリオになるかと存じ上げます。
基本的にはフラグメント通りの行動を行って頂ければ、問題はおきません。
但し、今回のシナリオにおいては、ダークネスに対して敵対行動を行う事は利敵行為になると判定します。
逆に情報収集でもし、ダークネス達に何かを聞く、と言うプレイングを頂いた場合、私が今まで出して来たサイキックハーツシナリオで固有名の出ているダークネスに話を聞きに行く可能性が高くなります。
尚、私が登場させた、と判定するダークネスとシナリオは下記となります。
1.コン子
登場シナリオ名:その、虚構と現実の狭間の果てに
URL:https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=61012
2.刀魔
登場シナリオ名:その戦いの先を行く者達へ
URL:https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=64034
3.華怜
登場シナリオ名:その戦いの先を行く者達へ
URL:https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=64034
又、第3章のみ、北条・優希斗が同行させて頂ける可能性がございます。
プレイング受付期間及びリプレイ執筆期間はタグ及びMSページにてお知らせいたします。
――それでは、悔い無き選択と邂逅を。
第1章 日常
『いつかの痕跡を|擦《 なぞ 》る』
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POW : 歩いて、触れて、全力で思う
SPD : 見て、話し合い、感じるままに想う
WIZ : 振り返り、調べ、静かに憶う
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
高沢・麦
優希斗くんの話聞いた時
昔のこと辿るなら
ブレイズゲートかなって思ったんだよね
もう一人の栃木ヒーローには日光に行くよう頼んで自分は那須殲術病院を目指す(那須の方が東寄り)
途中の道の駅とか人が集まる場所で
最近変なこと起きてないか聞き込みもする
これを機に昔の記録見返したんだけど
どの思い出もあんまりにも輝いててさー
辿る場所を1ヶ所に絞れないから
とりあえず地元のパトロールってわけ
学園生活楽しかったよなー
怪人に憎しみはなくて
でも戦う運命なのだ!って殴り会うのが楽しくて…
種族ごと滅んでちょっと残念で…
でも最近復活した?からちょっとワクワク
オブリビオン?に対しては戦う相手だって感じたからちゃんと調べないとね!
宮儀・陽坐
日光慈眼城をパトロールしてくるよう言われたのであの辺りを一通り見て回ります
(情報収集すればいーだけ!って頼み方が雑なんだよ麦は…方針とか共有してくれたっていいのに…)
それはそうと日光に来たなら湯波ですね
皮に被せてパリパリ揚げ餃子にするのもいいけど
具と一緒に包んでふんわり感を残す方向で開発を進めたい…(脱線)
日光慈眼城はご当地怪人の印象が強いけど
天海の力を奪って建てられたんでしたっけ?刺青羅刹か…
ペナントがたくさんいて…全員餃子柄に縫い直してやりたい…じゃなくて!
軍艦島勢力や盟主候補…反省する事が沢山あるから
せめて新しい危険は見過ごさないよう
復活ダークネスという存在について学びたい意欲があります
橘・創良
お互いを理解し合うのは確かに難しいかもしれないけれど
その道を探る努力を怠るわけにはいかないよね
世界は変わった…ううん、これからも変わり続けるだろうから
僕たちの世界は僕たちが守らないと
灼滅者たちが辿った道筋か…
たくさんの出来事があったけど
僕は主に予知する方だったから
誰かが向かう先に一緒に行こうかな
そこで起こった出来事を聞いたり
何か手伝えることがあればするよ
学園での日々は楽しかったよ
僕は一緒に戦うことはできなかったけど
復活ダークネスが現れたのにはきっと理由があるんだろうね
僕に戦う力が備わったことにも
猟兵となったダークネスもたくさんいるんだから
ただ否定するだけはしたくない
彼らの想いを知っておきたいね
●
――栃木県日光市のウェスタン村。
(「情報収集すればいーだけ! って頼み方が雑なんだよ、麦は……」)
そこは嘗て、アメリカンコンドルが神通力で天海より奪い取ったと言われているそんなブレイズゲート。
そのブレイズゲートに向かいながら、宮儀・陽坐(いつも心に餃子怪人・f45188)が内心で嘆息を一つ零している。
そんな、陽坐の様子を隣で見て。
「大丈夫かい? 陽坐くん」
そう穏やかな微笑と共に、軽く周囲を見渡しつつ、そう問いかけたのは橘・創良(静謐の泉・f43923)
「ああ、いえ、創良君。せめて今回の情報収集に関して、麦の奴が方針とか共有してくれたらよかったのになーと思いましてね?」
そう此方から東寄りの那須にあるブレイズゲート、那須殲術病院を目指して、後宜しくー、と後事を丸投げして来た高沢・麦(栃木のゆるゆるヒーロー・f45122)に送り出された時の事を思い出し、思わず、と言った様子で頭を抱える陽坐。
そんな陽坐の様子を見て、創良が思わずふふ、と笑った。
「まあ、身内でもそれだけで通じ合うかと言えば、そうとは限らない、と言うのはあるかもね。人と人さえそうだものね」
――況や、ダークネスや|復活ダークネス《オブリビオン》との相互理解であれば猶更かも知れない。
グリモアで|この世界《サイキックハーツ》へと自分達を送り出した学友の言葉を思い出しながら、創良がそう考えながらも、でも、と穏やかに笑った。
「その道を探る努力を怠る訳にはいかないよね」
「そうですね、創良君。只、それはそれとして……」
と少し言葉を濁す様な陽坐のそれに。
「どうかしたのかい?」
と創良が穏やかに訪ねて来るのを聞いて、先ずは、とパチン、と指を鳴らした。
「折角、日光に来たんです。この探索が終わったら、一緒に湯波でも食べに行きませんか? 川に被せてパリパリ揚げ餃子にするのも良いけれど、具と一緒に包んでふんわり感を残した湯波餃子と言うのを最近開発しようとしておりまして……」
――まあ、何よりも。
「日光湯波のボリュームたっぷり感を是非とも味わって頂きたく……!」
と栃木の日光湯波について熱く語り始める陽坐のそれに。
「ふふ……世界は変わったけれども、ご当地ヒーローの皆のご当地に対する熱い想いみたいに変わらないものもあるのは良い事だね」
と穏やかに笑って首肯する創良のそれに、はっ、と陽坐が我に返った表情を浮かべて。
「すみません、つい話が脱線してしまいました」
と慌てた様子で謝意を示す陽坐のそれに。
「ううん、僕は寧ろエクスブレイン……予知をする側だったから、中々こう言う風に話をする機会もなかったし、余程の事が無い限り皆と一緒に行く事は出来なかったからね」
そう楽しそうに頭を横に振る創良のそれに、少し笑ってポリポリと頭を掻く陽坐。
(「麦君にも、陽坐君の事、お願いされていたしね」)
とは口にはださなかったけれども。
気を取り直した表情を浮かべた陽坐が改めて未だ残っている日光慈眼城を見て、1つ息を吐く。
「そう言えば、日光慈眼城はご当地怪人の印象が強いんですけれども、元々此処は天海大僧正の力を奪って建てられたんでしたっけ?」
と、改めて周囲を見回し乍ら呟く陽坐のそれに。
「資料で見た限りでは、確かにそうだね。此処は僕達エクスブレインの予知の効く場所でもなかったからな……こうやって直接見に来るのは感慨深いものがあるね」
呟く創良のそれに、そうですか、と陽坐が返しながら。
「……羅刹の可能性が高いって言うなら、今回の相手って刺青羅刹なのでしょうか?」
そう軽く小首を傾げる陽坐のそれに、少し悩ましげな表情を浮かべて創良が。
「……可能性としては高い様な気がするね」
と呟くのを聞きながら、陽坐が日光慈眼城の中を思い出す。
「ペナントが沢山いたから、又潜って……全員餃子柄に縫い直して……じゃなくて!」
と慌てて頭を横に振る陽坐のそれに創良が微笑を零して。
「そうか。此処にはそんな相手がいたんだね」
と相槌を打って話を聞いてくれるのにそっと安堵を零しながら。
「……軍艦島勢力や、盟主候補……あの頃の戦いを鑑みると、如何しても反省する事が沢山あるんですよね」
あの時は、天海大僧正と武蔵坂学園の協定の関係もあり、それを反故にした結果、今後の他のダークネス勢力との交渉等に悪影響を与える可能性が高いと言った問題もあったため琵琶湖側に戦力が集中し、結果として陽坐も含めた闇堕ちした者が複数おり……その内の6名が軍艦島『盟主』候補として、灼滅者達の前に立ちはだかった。
とは言え学園を好きな自分が、学園の仲間達を守る為に闇堕ちしたのだから、そこには後悔はない。
――けれども。
「あの時みたいな新しい危険を見過ごさない様にする為にも、復活ダークネスと言う存在については学びたいんですよね」
呟く陽坐のそれに、そうだね、と穏やかに創良が笑う。
「僕も学園の日々は楽しかったよ。皆と一緒に戦う事は出来なかったけれども」
――でも、今は。
「僕達みたいなエクスブレインも、そしてダークネス達の中にも」
――|猟兵《イェーガー》と呼ばれる存在になった者は数多い。
「多分、これは僕達が|復活ダークネス《オブリビオン》と言う存在に抗う為の力だろうから……ダークネス達の想いを只、否定するだけはしたくないね」
そう微笑を浮かべてその場を確認し、此処には異常が出ていないと判断した創良のそれに。
「そうですね、創良君。それじゃあ……先ずは戦いの前の腹ごしらえとして、是非とも一緒に日光湯波餃子を食べに行きましょう!」
と力強く陽坐が告げるのに、創良がそうだね、と首肯して。
――元々は天海大僧正のものであったと言う、日光慈眼城を後にしたその頃。
●
「この辺りでは、特別に変わった事は起きていないって感じか~」
そうブレイズゲート那須殲術病院に向かう途中の道の駅の人に少し話を聞いた麦が那須殲術病院に異常が無いのを確認しながら軽く頭を横に振る。
(「優希斗くんの話聞いた時、昔の事辿るなら、ブレイズゲートって思ったんだよね」)
――その中でも、此処は。
(「元々、俺達以外の灼滅者組織……人造灼滅者とダークネスが戦いを繰り広げた場所、なんだよなー」)
先日、共に戦った|人造灼滅者《・・・・・》の知人の事をちらりと脳裏に過らせながら、麦がその戦いの光景に想いを馳せる様にそっとその茶色の瞳を閉ざした。
(「正直、丁度良かったんだよな」)
――|あの頃《・・・》の記録を見返す機会が出来て、その思い出のどれもが。
「宝石の様にキラキラと輝いていて……あの頃と今だと世界が全然変わったって実感できたし……。なんだかんだで、|あの子達《・・・・》の何人かも、栃木の良さを知りたいって言ってくれたしな~」
それは、先日の戦いの記録。
あの時、心に深い瑕疵を負っていた少女達を守り抜き、保護した後に武蔵坂学園に要請して、彼女達に新しい環境を整えて貰う事を約束した結果。
その中で自分が笑って紹介した栃木の山奥で湯治・毎日美肌の湯プラン! や、栃木の山奥でオシャレ陶芸家になる! プランに乗ってくれた子達もいて……そんな、彼女達の様子も。
「パトロールがてら見に行ったら、未だこれからって感じだったけれど、少しは柔らかく笑ってくれる様になっていて良かったよなー」
そう昔の学園生活の楽しさと一緒に、最近の少女達が少しずつでも元気になろうとしている様子を思い出して、麦が穏やかに笑う。
(「今も昔も、そう言う所は変わらないんだよなー。人を守りたいって気持ちはさ」)
|今の世界《・・・・》を生み出したのは、紛れもなく自分達。
ならばその責を負うのも自分達の責任だと思えばこそ、普段はエスパー化に馴染めなかったタイプの一般人に向けてESPの扱い方をアドバイスして回ったりしているとも言える。
――思えば、今はもう種族事滅んでしまったご当地怪人達には。
(「俺には憎しみなんて無かったなー。でも、戦う運命なのだ! って感じで殴り合うのが楽しくて……」)
とは言え、滅んでしまった筈のご当地怪人達は最近復活しているらしいと言う話は聞いている。
その話を聞いて、思わず、ちょっとワクワクしちゃっている自分も確かに此処に居る訳だ。
「だから、オブリビオン? については、ちゃんと調べなきゃって思うんだよなー。……それにしても、羅刹の可能性が高い、かー……」
――そう言えば。
最近、吉祥寺から渋谷経由で宇都宮線で栃木に戻る途中、恐らく、ダークネスであったろう。
偶々見かけたそのダークネス達が電車の中で話をしていた事に少し気になる話は無かったであろうか?
(「具体的な内容はよく覚えていないけれど、今回の件ともしかしたら何か関係があるのかも知れないなー」)
そう内心で結論を付けて。
もう少し詳しい情報を調べ直す為に、麦は那須殲術病院を後にした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フェル・オオヤマ
WIZ
華怜さん
・心境及び行動
華怜さんに「先日は情報提供及び共闘ありがとうございます」と言った旨の礼を伝えます
先の依頼の後に武蔵坂学園で保護した少女達の事について軽く会話をしてから本題に入ります
「そういえば、あの後似たようなケースの勧誘とかあったとかの噂ってあったりするのかな?」
…10年前、この世界では様々な戦いや事件もあったんだよね…。
それで傷ついた人や失われた命もあった。
そして灼滅者のみんなが選択し掴み取った今がある…。
私は異世界から来た人だけど、その今を生きる人々。もちろん今を生きるダークネスも含んでるよ。
その人々の未来を少しでも照らしたいから私は戦うんだよ。
他キャラとの連携・アドリブ歓迎
●
――一方、その頃。
「先日は情報提供及び、共闘ありがとうございました」
渋谷区にあるチェーン喫茶店の1つの奥の2人席で、向き合った1人の女に、フェル・オオヤマ(氷焔操る紅の竜姫士・f40802)がペコリと頭を一つ下げている。
そのフェルの謝辞を聞いて、珈琲を一口飲んだのは。
「別に気にする事無いわよ。あの件は、少し個人的に気になっていただけだし、それに……|今を生きる《・・・・・》為にも、武蔵坂学園に私の新居報告も兼ねての報告だったしね」
そう何事も無かったかの様に言の葉を紡いだのは、穏健派ダークネスの生き残りの1人である、華怜。
華怜の言の葉に、成程、と1つ頷いてから、そう言えば、とフェルが続けた。
「あの時、私達が救ったあの子達だけれど……武蔵坂の方で色々と便宜を図って保護する事になったよ。何人かは実際に灼滅者に紹介された栃木に行ったりもしたみたい。回復していくには未だ時間が掛かるだろうけれども」
そう報告するフェルのそれに。
「ふふ……あの子達が無事に回復できると良いわね」
その話を聞いて、微かに穏やかに華怜が笑った様に見えるのは、フェルの気のせいであろうか。
(「案外武蔵坂学園に保護されるって事で、華怜さんは彼女達に親近感を抱いたのかも知れないでござるなぁ……」)
等と考えながら、フェルがそう言えば、と自分の前の珈琲に軽く口を付け、唇を湿らせてから。
「華怜さんは、あの後、前回の事件に似た様なケースの勧誘とかあったとかの噂って聞いていたりするのかな?」
そう何気ない調子で水を向けると。
華怜が軽くピン、と自分の珈琲カップを何となく弾いてから小さく息を零して。
「私の所に直接耳には入ってきていないけれども。そう言えば、何だか最近、ダークネスの中で新しいカウンセリングが流行っているとか、そんな噂を聞いた事があるわ」
そう応えるのを聞いて。
「……カウンセリング?」
思わず、と言う様に反芻したフェルのそれに、ええ、と小さく華怜が首肯する。
「まあ、穏健派ダークネスって一口で言っても、色々あるもの。個としてもそうだけれど、『種』としてしか話す事が出来ない事もあるしね。例えば私達は子供を作ることが出来ないから、仮にエスパーや灼滅者に恋をして、其れが実ったとしてもそれが必ずしも双方の幸せになる事は限らないから如何したら良い……とかね」
そう何気ない調子ながらも、少し達観した様な嘆息と共に言の葉を零した華怜のそれに。
フェルが一瞬息を飲み、それからそっと嘆息を零す。
(「……10年前、この世界では……」)
――様々な戦いや事件があった。
その戦いの中には、8年前の話ではあるが、ダークネスに生殖能力を与えるための研究をしていた大首領と呼ばれたグローバルジャスティスと言う名のラグナロクとの決戦の話もある。
(「……その野望は、瑠架から人類とダークネスの共存のサイキックハーツを与えられた|灼滅者《この世界の英雄》達によって倒された訳だけれども……」)
――そのサイキックハーツ大戦の前にどれだけ多くの人々が傷つき、そして倒れたのであろう。
同時にそれらのサイキックハーツを否定し、全人類のサイキックハーツを背負った灼滅者達が選択し掴み取った未来が、|今《・》だ。
「……どうしたの?」
ふと、不意に黙り込んだフェルの様子が気になったのであろう。
そう何気ない調子で問いかける華怜のそれに、うん、と静かに首肯したフェルが続ける。
「……私は|もう一つの異世界《ケルベロスブレイド》からやって来たけれども……でも、華怜さん達みたいな今を生きるダークネスも含んだ、今を生きる人々を救いたいし、守りたいと思っている」
――此処は、私の新しい|自宅《・・》でもあるから。
そう内心で呟くフェルのそれに。
「……そう。それならば、そう言った悩みを抱えている|ダークネス《・・・・・》達の心を動かそうとする|復活ダークネス《・・・・・・・》の事は……」
そう小さく言の葉を紡ぐ華怜のそれに。
「……うん。やっぱり何と言うか……実際にぶつかってみないと分からないけれども、何か|違う《・・》気がするんだ。何と言うか……その|復活ダークネス《オブリビオン》がしようとしている事は……」
――|今を生きる人々《・・・・・・・》の未来を閉ざしてしまう様な……。
「そんな気がして、仕方ないんだ」
上手く言葉にするのは難しくて、何となくもどかしい気持ちにはさせられるけれども。
そう告げるフェルのその言の葉に。
「そう。それならば私は、此処から先は頑張ってね、としか言えないわね。私はさっき以上の事は知らないし……それに、ある意味では苦しむ|同族《ダークネス》の心の全てを否定する事は出来ないからね」
そう小さく息を吐いた華怜のそれに。
分かったよ、と小さくフェルは首肯し、喫茶店を後にして、更なる情報収集に向かうのであった。
大成功
🔵🔵🔵
彩瑠・さくらえ
新宿の街を散策
主に新宿橘華中学に至るまでの道を歩くかな
敵を探すというよりも
過去に想いを馳せる感じ
単独でも同行者ありでも状況によって対応するよ
新宿は過去3回もの防衛戦が行われた場所だけど、
僕にとって一番印象深いのは第2次新宿防衛戦かな
ベヘリタスの卵の羽化の事件から追いかけて繋がった
ダークネスとの絆は今も忘れられない
(君との絆は今もちゃんと覚えているよと
どこからともなく舞い込んだ桜の花びらを掴むようにそっと拳を握り)
ベヘリタスとタカトの関係も
彼らが行なっていたという実験も衝撃的だった
あの魂を切り離す実験の行方ってどうだったんだろう
情報収集や分析は得意な人に任せきりだけど
今度幼馴染に聞いてみようかな
●
――一方、その頃。
「……あの頃は、この辺りもよく歩いたものだよね」
そう、誰に共なく呟きつつ、その口元を幽夜桜胡蝶……“夜桜に舞う幽世蝶”を描いた扇子で隠し。
日差しから自分を守る様に、藍染の和傘、『櫻影』を開いてゆっくりと新宿の街を散策しながら、ふと、彩瑠・さくらえ(望月桜・f44030)がそっと微笑む。
その赤色の瞳は、何処か遠くを――嘗て、この地であったとある戦いの事を、思い出しているかの様だ。
普段は誰かと一緒の事が多いが、偶には一人で思索の儘に、散策をするのも悪くないな、とさくらえは思う。
(「|この地《新宿》は、過去3回もの防衛戦が行われた場所だけれども……」)
その中でもさくらえにとって最も印象深いのは、『第2次』新宿防衛戦。
それは、『光の少年タカト』……絆のべヘリタスの実験結果によって生み出された純然たる光『人間』である彼と、純然たる闇『魔神ベヘリタス』に、灼滅者とダークネス『天海大僧正』勢力が同盟を結んで戦った戦争だ。
その時のタカトが明かした自らの正体の話を思い出しながら、さくらえはブレイズゲート、新宿橘華中学へと足を運ぶ。
「此処は……元々、『ベヘリタス』と言う魔神が眠っているって噂の場所だったんだよね」
そして……|あの戦い《・・・・》の直前に。
べヘリタス達が羽化して大量の羽虫が湧き出ていた場所でもある。
――そう……それは、|彼《・》の絆を奪い、そして……。
(「……ベヘリタスの卵の羽化の事件から追いかけた結果、繋がった|あの《・・》アンブレイカブル」)
その名は――輝翠。
彼は元々、ベヘリタスの卵の羽化事件の際、ベヘリタスに追われていた少年のアンブレイカブルだった。
あのダークネスと育む事の出来た絆は、今でも尚、強くさくらえの胸中に焼き付いている。
――それは、確かな|ダークネス《・・・・・》との絆だったから。
(「あの絆が無ければ、君があの時、僕達と再会する事も出来なかったし、一瞬でもその絆を取り戻して、その声を聞く事は出来なかった」)
――だからこそ。
「今でも僕は、君との絆を忘れられない。……君は、どうなんだろう……?」
そう辿り着いた新宿橘華中学の前で誰に共なくそう呟き、そっと幽夜桜胡蝶を閉ざして誰に共なくそれを差し出す様に手を突き出した、時。
――ふわり、と何処からともなく桜の花弁が噴き零れた様な気がした。
まるでそれは――君との絆は、今もちゃんと覚えているよ、とまるで、|彼《・》も囁いてくれた様にも、さくらえには思え。
そんな想いをそっと受け取り、幽夜桜胡蝶をしまってそっと拳を握り。
(「ベヘリタスとタカトの関係も、彼等が行っていたと言う実験も、衝撃的ではあったけれども……」)
あの魂を切り離す実験の行方は、今はどうなっているのであろう?
「つい、情報収集や分析な得意な人に任せきりだったけれども……今度、幼馴染に聞いてみようかな」
そう囁く様に呟いて微笑を零し、さくらえは静かにその場を後にする。
――第2次新宿防衛戦の直前……集結する光の軍勢の中にいた輝翠への絆と、あの時同盟を提案する為に、天海大僧正のメッセンジャーとして現れた、|彼女《・・》の事を、ふと、その脳裏に思い浮かべながら。
大成功
🔵🔵🔵
ユウ・リバーサイド
名古屋の中村区役所から
かつて羅刹達が立て籠もっていた家に
区役所は変わってないな
戦争ではほんとお世話になったっけ
(当時はメディック)
あの家は流石に建て替わってるよね
床をぶち抜いたりとかしたしさ
…依に見捨てられて取り残された羅刹に降伏を呼びかけることになって
『俺』としては複雑だったんだけど
ダークネスもピンキリで
『俺』の|祖父《クソジジィ》がキリの底だったのは確実だけど
…虐待サバイバーの父親を愛してた『俺』としちゃ複雑だったろうな
(『俺』の父は「闇堕ちを促して同族を増やす為」とかで精神的拷問の末
子供のときに精神崩壊を起こして村から捨てられた
運良く道路に出て拾われなければ死んでた
学園調べだと祖父はその後、羅刹同士の内ゲバで亡くなったそうだ
血縁だからこそ『俺』も父も怯えていた
神薙使いの『俺』も
祖父のように他者を認識しない羅刹になるのではと)
だからって『羅刹』と真逆の生き方を求めて
優しくあろうと
自分以外の全ての人を優先したって
結局はそれが大事な人達の絆を裂いたんだから馬鹿だよな
(俺も言う資格はない)
火神・臨音
灼滅者達が辿った道筋、か
俺も今、主が生きた証を辿る為にこの世界を歩いてるからな
事前に武蔵坂の資料室で資料読んだ上で、俺が向かったのは名古屋
七大決戦、そして対六六六人衆との戦【ハンドレッド・コルドロン】の舞台となった地
鞘の返り血に触れて瞑目
ネーム度級のダークネスを灼滅した一方、数え切れぬ悲劇がこの地で起きたと言う資料の記述を思い出して
あの日、主や灼滅者達はどんな思いでこの地に立っていたのかと思い馳せ
そういや優希斗、俺達に話をしてた時少し辛い様子だったな
一体何が、と一瞬思ったがそれは記憶の傷口に触れる行為にもなりうると思索を止め
再び返り血に触れた後、この地で散った人々へ黙祷を
アドリブ、連携可能
●
――一方、その頃。
「……ハンドレッド・コルドロン。……|灼滅者《主》達が辿った道筋の1つ、か」
名古屋にある中村区役所の入り口で、そう誰に共なく呟きながら、自らの本体、火神ノ社ノ御神刀を納めた朱の鞘に付いた血をちらりと見やりながら、ポツリ、とそう呟いたのは火神・臨音(比翼連理の誓いを胸に・f17969)
その胸を刺し貫く様な痛みを感じながら、臨音はそっと頭を横に振る。
「……こうしていると、俺も今、主が生きた証を辿る為に|この世界《・・・・》を歩いていると実感するな」
「……そうだね、火神。俺も、|同一存在《俺》の軌跡をなぞっているんだな、と自然と思えるよ」
その言の葉と、共に。
中村区役所の中から出てきた、ユウ・リバーサイド(Re-Play・f19432)が姿を現して呼びかけるのに、そうか、と臨音が小さく首肯する。
(「……ユウの|同一存在《俺》、か……」)
その言葉に|主《・》の血が一瞬、何かを燻らせた気がするのは、差し込む陽光を鞘が反射したからだろうか。
どうしたものか、と言う風に考えている様子の臨音を見ながら、それにしても、と|俺《・》から流れ込む記憶をなぞり、そっとユウが息を吐いた。
「中村区役所は変わっていなかったよ。戦争では、お世話になったんだよな」
当時、|この世界の俺《勇介》は、メディックだった。
(「……まあ、|俺《・》がメディック――なんて。今じゃ正直、笑えない話、だよな」)
2017年4月のあの件を機に、学園を去り、そして……。
と、|“俺”《・》の記憶を思い起こしてきまり悪げに自らの髪をくしゃくしゃと搔き乱すユウの様子を見つつ、臨音が呟く。
「戦争……ハンドレッド・コルドロンの事だよな、それ……」
そう呟く臨音のその様子を見て。
「変な言い方かもしれないけれど……ある意味で丁度良かったのかもな」
そう聊かわざとらしい微苦笑を浮かべて肩を竦めて見せるユウの様子は、まるで役者として道化師を演じているかの様だったが……。
「……ユウも、【ハンドレッド・コルドロン】の戦いの事の調査で此処に?」
そう臨音がさりげない調子で問いかけるのを聞いて、ユウが正確には、と軽く頭を横に振る。
「|その後《・・・》に見つかった、依に見捨てられて取り残された羅刹達に|“俺”《・》が出会った場所の住所の確認だな」
と、簡単に説明を付け加えるのを聞いて。
「そう言う事なら、同行させて貰ってもいいか、ユウ。……あの事件とその後に起きた事件ってのには、如何しても気になる事があるんでな」
そうそっと嘆息を零す臨音のそれを聞いて。
(「……俺も、|“俺”《・》も……殆ど関わった記憶は無いけれども……確か……」)
あのハンドレッド・コルドロンの直前に起きた七大決戦では――。
「……ああ、構わないよ」
それは、あくまでも|“俺”《・》にとっては、伝聞に過ぎない話ではあるのだけれども。
それでも、臨音が引っかかった事に心当たりがあるのだろう。
そう同意するユウの言の葉に、悪いな、と臨音が自らの鞘の返り血に触れて静かに瞑目した。
●
――名古屋七大決戦。
それは6人の盟主候補と化した、闇堕ち灼滅者達を全員無事に自分達の手に取り戻した結果、白の王の迷宮崩壊後にその姿を晦ましていた軍艦島勢力達が、日本アルプスから愛知県名古屋市方面に向かっていた所を灼滅者達が迎撃した戦いだ。
その軍艦島勢力……強力な七体の……。
「ネームド級のダークネスを灼滅した事件なんだが……その時に|灼滅《・・》された者達を蘇らせるための儀式で数えきれぬ悲劇が生まれたって言う……な」
その、臨音が嘗て武蔵坂学園で読んだ資料を思い出しながら、そう言の葉を紡ぐのを聞いて。
「……確かにあの時、毎ターン数万人の人々が殺されていたんだよな……」
かく言う、この中村区役所地区でもまた、ハンドレッド・コルドロンの儀式は行われていて。
ノーライフキング『楢山御前』の復活の為に毎ターン、1万人の人々が犠牲になっていたと言う、悲劇が生まれている。
――故に。
「……その日、灼滅者達はどんな思いを以て、この地に立っていたんだろう……ってどうしても思っちまうんだよな……」
――それは、自らの|主《・》への想い。
そんな彼の想いを聞きながら、ユウが微かに遠くを見る様に、その黒い瞳を細めた。
(「……あの頃の|“俺”《・》が、どういう気持ちで、この戦場に立っていたのか……か」)
そんな事を思いながら、臨音と共にユウが歩いて行ったそこは……。
「まあ、やっぱり完全に廃墟になっているか……。元々、取り壊しが予定されていた場所だったらしいしな……」
――あの時の|“俺”《・》は、床をぶち抜いたりすらしたらしいのだから、それはある意味では当然かもしれないけれど。
そう複雑な表情を浮かべて嘆息するユウの様子を見て、同じく廃墟と化したそこを見ていた臨音が問いかける。
「そう言えば、ユウ。此処は……?」
その臨音の質問を聞いて。
「……ああ。此処は、|依《・》に見捨てられた羅刹に|“俺”《・》達灼滅者が降伏を呼びかける事になって……結局それに応じなかった羅刹達を灼滅した場所だよ」
――正直、その時の|“俺”《・》は降伏を呼びかけるのは複雑だったのだが。
「……依か。……ハンドレッド・コルドロンでは、名古屋市の西警察署に拠点を置いていたって言う、|元灼滅者《・・・・》……」
――その臨音の呟きに。
そうだな、と短くユウが首肯しながら、元々、と|“俺”《・》の記憶をなぞる様に言の葉を紡ぐ。
「ダークネスって言っても、ピンキリでさ。今を生きている穏健派ダークネスや、依に裏切られて暗殺された天海大僧正は、比較的ピンなんだろうけれども……|“俺”《・》の|祖父《クソジジィ》は、キリの底だったのは確実だろうな」
そのユウの何処か憎々し気にも感じ取れる言葉に違和感を感じて臨音が思わず、という様に問いかける。
「待ってくれ、ユウ。元々ダークネスってのは、確か、種を殖やす事が出来ないんじゃ……?」
その臨音の眉を顰めながらの質問を聞いて。
その通りだよ、とユウがこの世界の|“俺”《・》の記憶の糸を手繰り寄せる様にしながら、話を続けた。
「元々、|“俺”《・》の親父も、『闇堕ちを促して同族を増やす為』とかで、精神的拷問を与えられた末に、子供の時に精神崩壊を起こして村から捨てられてな……」
――その上で。
「そんな羅刹による虐待からのサバイバーであった父親を愛していた|“俺”《・》としては、この件に関しては物凄く複雑だった。何で|あんな事《・・・・》が出来る|奴等《羅刹》と同盟を結んだ誼があるとはいえ、降伏勧告なんて出来るんだよってな……」
――無論、全ての羅刹がそうではないのだという事は、少なくともユウには分かっている。
只……自分のこの世界の|同一存在《・・・・》の心情を省みると、その奥底に根付いているのであろう、根源的な|それ《・・》を拭いきる事は出来そうにない。
「……ユウ……」
そうポツリと小さく息を吐く臨音の様子を見て、悪いな、と軽く謝罪するユウ。
「まあ、その時に運よく道路に出て拾われたから親父は生き残れた訳で、其れが無ければ、今の俺も、|“俺”《・》もいなかっただろう」
「……そうか……」
その何とも言えない繊細な微苦笑の間に垣間見える何とも言えない影を見つつ、そう言えば、と臨音は思う。
(「|彼奴《優希斗》も時々、名古屋の事を話している時に、少し辛そうな様子を見せていたな……」)
一体何が、と一瞬思ったけれども、それは記憶の傷口に触れる行為にもなり得ると思い、結局、そこについては詳しく聞こうとはしなかったが。
「俺にそんな話を聞かせて良かったのか、ユウ」
そう、臨音が気遣う様に告げるそれを聞いて、何だろうな、とユウが微苦笑を浮かべた儘、天を見上げた。
「寧ろ……誰かに聞いて欲しかったのかも知れない。|“俺”《・》とは直接面識が無かったり、詳しい訳ではない奴にな」
そう韜晦するユウの様子を見ながら、臨音が続けた。
「因みに、その祖父と言うか……羅刹はどうなったんだ?」
その臨音の問いかけに。
ああ、とユウが|“俺”《・》の記憶をなぞる様にしながらポツリ、ポツリと言葉を漏らす。
「学園調べだと、祖父はその後、羅刹同士の内ゲバで亡くなったらしい」
――とは言え。
(「そう言う経緯があるからこそ、|“俺”《・》も父も怯えていたんだよな……」)
――何時か、神薙使い――闇堕ちしたら|“祖父”《羅刹》の様に、他者を認識しない|同類《・・》になってしまうのではないかと。
そして――だからこそ。
「その裏返しなのか、『羅刹』と真逆の生き方を求めて、優しくあろうとして、自分以外の全ての人を優先したんだろうが……」
――結局は其れが大事な人達との絆を裂いてしまったのだから……。
「馬鹿だよなぁ、本当に」
――そう笑い飛ばす資格は、俺には決してないけれども。
それでも、|“俺”《・》と言うある意味では|他人《・・》の事だからとこうして臨音の様な誰かに話が出来てしまうのは、俺が俺であると同時に、ある意味では|俺《・》でもあるのだと、そう認めた証なのだろうか。
それとも……?
そうユウが思考する様子を見て。
臨音はその赤い双眸で暫くじっとユウの黒い双眸を見つめていたが……やがて小さく息を吐いた。
「……それでも、ユウ。お前は、俺達の仲間だよ」
それが今、臨音がユウに対して言える事。
他者の在り方を認めて、そして只、仲間として信頼していると、そう伝える事こそが、今、臨音が出来る唯一の事なのだろう。
――そんな臨音の言の葉に。
「ありがとうな、火神」
そう微苦笑を微笑に変えて、静かに首肯するユウの様子を見て。
気にするな、という様に軽く頭を横に振った臨音が無意識に赤の双眸を瞑り……。
――自らの本体を納めた鞘に付いた血に触れて、此処で失われた全ての命へ静かに黙祷を捧げたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榎木・陽桜
【三桜】
かつての慈眼衆の羅刹さんに会いに行きたいです
あたしが当時「残存ダークネス監視」で関わった方じゃなくても
慈眼衆の方ならきっと覚えてると思うから
第2次新宿防衛戦では共闘して、
その時の祝勝会では、みんなでパーリナイ!だったんです
慈眼衆の皆さんのダンスすごくて、依さんも若干引き気味でした(くすくす
お二人も依さんご存知…オブリビオン?
では、別の世界のなんらかのなのですね
あたしが知ってる依さんは…元は武蔵坂学園の学生さんで
闇堕ちしてダークネスになった方、なのです
「自分かダークネスかどっちかじゃなくて、一緒にお話できたらいいのに」
当時依さんに話したことです
今だったら、叶う願いなのかもしれないですよね
榎木・葵桜
【三桜】
慈眼衆…そうなんだー…って、ダンスパーティー?
そいえば先日武蔵坂学園で陽桜さん達のあれこれの記録も読んだよ
なんかダンスしてたね!
依…って、依媛じゃないこの世界の?
そっか、同じ武蔵坂学園の生徒だったら確かにちょっと複雑だけど
私達の知ってるオブリビオンと同じ名前ってことは
なんらか縁が繋がってたりするのかもしれないね?
(複雑そうな表情の姫桜の背をぽんと叩き)
ゴイスなダンスの羅刹さん、会えるんだったら一緒に会って踊るのが一番だよね!
ひとまずダンスフロア行こうよ!
会えても会えなくてもダンスして体動かすと余計なこと考えないしねー?
陽桜さんにそのゴイスなダンス教えてもらって、一緒に踊ろう姫ちゃん!
彩瑠・姫桜
【三桜】
「依」ってこの世界にも居たのね
(複雑そうな表情で眉根を寄せる)
闇堕ち…真の姿になるのとはちょっと違うのね
(父をはじめとした武蔵坂学園の灼滅者の人たちの会話の端々や
かつて葵桜と共に読み込んだ記録を思い出す
「ダークネスになった」という過去形で話すということは
もう会えない人なのかもしれないと思いながら)
…って、ダンス?
ゴイス…すごいダンス??
(その場面も見ていないけれど、陽桜の話し方から、
なんだか見てはいけないもののような)
え、ダンスしに行くの?(笑み引き攣らせ)
私できないけど…っ
(言ってる側から葵桜に手を引っ張られ
これはこちらの意思は関係なく
踊らないといけないノリなのかもしれないと遠い目)
●
――その頃、渋谷では。
「ええと……あの羅刹さんは、今でも元気にパーリナイ! しているのでしょうか?」
そうパチクリと藍色の瞳を瞬かせながら、小首を傾げたのは榎木・陽桜(ねがいうた・f44147)
そんな陽桜の呟きを聞いて。
「えっと……どの羅刹さん……?」
そう怪訝そうに眉根を小首を傾げて陽桜に問いかけたのは、彩瑠・姫桜(冬桜・f04489)である。
その姫桜の問いかけに。
「あっ……そうですよね。姫桜さん達は、知らないですよね……。あたしが言っているあの羅刹さんって言うのは、第2次新宿防衛戦で共闘して、その時の祝勝会で、みんなでパーリナイ! してた時の慈眼衆さんの1人だった方ですよ」
そう告げる、陽桜のその言の葉に。
「ふぇっ!? 慈眼衆って、そんなんだったんだー……って、ダンスパーティー?」
そう思わず、という様にパチクリと瞬きしたのは、陽桜にとっては、|異世界の娘《・・・・・》でもある榎木・葵桜(桜舞・f06218)である。
よく分からないと言う様に、純真に瞬きを繰り返している|異世界の娘《葵桜》の様子を見ながら。
「その時の皆さんのダンスが凄くて、依さんも若干引き気味でしたけれども」
そうくすくすとたおやかに笑う陽桜の笑みを見て、そうなんだーと葵桜が納得の声を上げる一方で。
「……『依』?」
そう思わず、という様に複雑そうな表情で眉根を寄せる姫桜の様子を見て、はい、と陽桜が首肯する。
「ええ、依さんです。元々は、あたし達と同じ武蔵坂学園の学生さんだったのですが……とある戦いで闇堕ちして……」
その陽桜の説明に。
「……ええと、依? 依媛の事じゃないの?」
そう首を捻る様にして、自分の記憶を探る様にしている葵桜と、複雑そうな表情を浮かべた儘の姫桜を見て、あら、と少し驚いた様に口をすぼめて両手でその口元を覆い。
「あたしが知っている依さんは……先程も少し話しましたが、元々、武蔵坂学園の学生さんで……闇堕ちてダークネスになった方、なのですが……依媛、とは名乗っておりませんでしたね」
そう呟く陽桜の言の葉を聞いて、うーん、と思わず腕を組んで何かを思い出そうとする葵桜。
「そう言えば、先日武蔵坂学園で陽桜さん達のあれこれの記録読んだ時、依ってダークネスとダンスしているのがあったけれど……確かに、あれには依媛じゃなくて、依って確かに書いてあったね。……何だか、名前も雰囲気もよく似ているけれど……」
と葵桜がうんうん唸りながらその折の記憶を掘り返す様子を見て。
(「……うん、やっぱり……」)
「お2人が知っている依媛さん……ですか。その方はあたし達の知っている依さんとは……」
「……ええ、確かに違う気がするわね……」
そう小さく姫桜が呟きつつ。
(「……父を初めとした武蔵坂学園の灼滅者さん達の会話の端々とか、あおと一緒に読み込んだ記録にいた依って、私達がサムライエンパイアで何度か相対した依媛に似ているのだけれども……」)
「でも……オブリビオンなのよね、依媛は。今の陽桜さんの話し方からすると、依さんは元々、陽桜さん達の……」
その姫桜の呟きに。
そうですね、と陽桜が頷く事と驚く事を同時にやって見せ。
「……オブリビオン? そう姫桜さんが呼ぶという事は、お2人が知っている依媛と言うのは、|別の世界《・・・・》の何らかなんでしょうね」
――目前の|異世界の娘《葵桜》と同じ様に。
そう内心で呟きつつも応えを返した陽桜の様子を見て、葵桜がそっかーと納得した様な声を上げていた。
「同じ武蔵坂学園の生徒さんが闇堕ちしたダークネスが依さんなんだとしたら、確かに陽桜さん達としては、ちょっと複雑だろうね。でも……私達が良く知っているオブリビオンと殆ど同じ名前って事は、何らかの縁が繋がっていたりするのかもね?」
そう目をパチパチと瞬かせながらの葵桜の呟きに、複雑な表情を浮かべた儘の姫桜の脳裏を|母胎《・・》と化した依媛の記憶が過っていく。
(「思えば――あれも|優希斗さん《・・・・・》の予知だったのよね……。……あの人、本当に何処迄の事を知っているのかしら……?」)
まあ、それ以上に忘れることが出来ないのは、|母《・》と化し、|嬰児《・・》を宿した彼女……依媛の、|母《・》として|子《・》を守る懸命な姿に攻撃を出来なかった自分の不甲斐なさでもあるのだけれども。
そう難しい表情を浮かべて、その当時の事を思い起こしている姫桜の背を。
――ポン。
と叩く音が響いて、姫桜が思わず我に返って振り向けば。
「何かそう言う自分達の知る相手によく似た相手がいて、そこに不思議な縁があるって事もあるんじゃない? 姫ちゃん、気になるなら今度聞いてみたら? それよりは先ずは、陽桜さんの言っていたゴイスーなダンスの羅刹さんに会えそうだったら、一緒に会って踊ってみようよ!」
と朗らかな笑みを浮かべて告げる葵桜のその言の葉に。
「ええ、うん……そうかもね。……ありがとう、あお」
と、取り敢えずその疑問を一先ず胸の抽斗に納める様にした所で。
「……って、ちょっと待って、あお。それに陽桜さん。あの……ダンスって? って言うか、ゴイスー……?」
と、大量のクエスチョンマークを浮かべている姫桜の様子を見て。
「ええ、そうですよ。ゴイスーで、パーリナイ! なダンスです」
と陽桜がくすくす笑いながら告げるのを聞いて。
「……ええと? ゴイスーって……すごい、の事……? すごくて、パーリナイな、ダンス……?」
陽桜の話し方とクスクス笑い、序に依媛によく似た依が若干引き気味。
(「それって……明らかに何か見てはいけないものの様な気が……?」)
と、姫桜が無意識に数歩後退りしようとするのを、その背後に回っていた葵桜が、ニコニコしながらがっしりとその背を掴んで。
「ほらほら、一緒にダンスフロアに行ってみようよ! 会えても会えなくてもダンスして体動かせば余計な事考えないしねー? 陽桜さんにそのゴイスなダンスを教えて貰って、一緒に踊ろうよ、姫ちゃん!」
そのまま、グイグイと陽桜の知る渋谷のとあるダンスホールにグイグイと押され始める姫桜。
(「い、いや、私ダンスとか出来ないっ……!」)
と表情筋を引き攣らせる姫桜の事は脇に置いて。
(「……今なら、出来るのでしょうか」)
「……自分か、ダークネスか、どっちかじゃなくて、一緒にお話しする事が……」
そうポツリと呟く陽桜に導かれ、姫桜と葵桜がそのダンスホールへと向かうのであった。
●
――パーリナイ!
その致命的に何かが間違っている様に見える踊りを踊る黒曜石の角持つ羅刹の姿を見て。
「ふふ……あの時あたしが一緒にいた方ではないですけれども……でも、あのダンスは健在なんですね」
それは寧ろ、ダンスと言うよりも演武とか、殺陣シーンとでも言うべき宇宙的破壊力のあるダンスで踊り狂っている1体の羅刹……多分、慈眼衆の元1人……の様子を見て、陽桜が思わずと言う様に笑う。
周囲のエスパー達も完全にドンびいている様に見えるが……寧ろ……。
「あ……あれが、ゴイスで……パーリナイな……ダンス……?」
と、何処か諦めた様な遠い目をしている姫桜の様子を見て、ニコニコと葵桜が笑っていた。
「わー、何と言うか……凄く前衛的なダンスだねー。って言うか、あれがダンスなんだー」
只、所謂スルメ味、と言うやつなのであろうか。
その羅刹のダンス――と言うか、殺陣――を見ていたエスパー達の極一部は何時の間にかその手にサイリウムを持ってブンブンと振っていたりするのだから、侮れない。
一体あのダンスのどこにそんな魅力があるのだろう、とも正直思えなくはないが……。
「ふふ……それでも、あんな形で受け入れられているダークネスさんもいるんですよね」
そう陽桜がクスクス笑いながら、その羅刹を見ていると、その羅刹と目がはたとあい。
「……一曲、どうだい?」
そう何かナウなヤングっぽいポーズだと思い込んでいるのであろう恰好で壊滅的に似合わない流し目を送って来るのを見て。
「……えーと」
と、陽桜が若干引きつつも、どうしようかと迷っていると。
「いーねー! 一緒に、レッツダンシングしようよ、姫ちゃん!」
と、その場のノリと勢いに合わせる様に葵桜が姫桜の手を引いて、グイグイとその羅刹の元へと駆けつけて、姫桜にその手を握らせていた。
「ああ……やっぱりこうなるのね……」
そんな、自分の状態に、最早達観の表情を浮かべる姫桜。
けれども、姫桜や葵桜の様な若い娘達が羅刹と一緒に|ダンス《殺陣》をする事になったという事実が、違う意味で周囲のエスパー達を沸き上がらせていた。
そんなこんなで。
色んな意味で間違っている気がする、ゴイスでパーリナイなダンス(?)に姫桜が振り回される、という珍事はあったものの。
その元慈眼衆の羅刹から、最近、どうにも色々と傷心を抱えたダークネスの一部の為に。
専門のカウンセラーを名乗る|復活ダークネス《オブリビオン》がいると言う、貴重な情報を得る事が出来たのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
摩津崎・灰闢
勧誘の件、目を付けられたくない穏健派にとっては傍迷惑な話ではありますねえ。
旧世界のように、ダークネスはダークネスらしくなど命取りでしかないでしょうに。
穏健派を巡る動きに興味がありますし、今回も尽力しましょう。
とはいえ羅刹に心当たりは無いので、私に縁がある場所に立ち寄ります。
最初の新宿防衛戦の地、新宿駅。
図に乗っていた私がここで|痛い目を見た《灼滅された》からこそ、今の生き方に繋がっている訳ですが…
そういえば、そんな目に遭わずに生き抜いた方が色々と詳しそうでしたね。
DIYの件で共闘した同族にでも話を伺いたいところです。
こんにちは、お時間を取らせてしまい恐縮です。
…今回の状況を説明しつつ、幾つか質問を。
新たな誘いが来てはいませんか?
或いは、その手の噂でもあれば。
それと、参考までにお聞きしたいのですが…貴方は今の世界に疑問を抱いていますか。
…私ですか?別世界のようだと感じてはいますが、今は特に不都合を感じておりません。
寧ろ恵まれていると思っていますよ。
ご協力、ありがとうございました。
館野・敬輔
他者絡みアドリブ大歓迎
羅刹の可能性が高い、か…
それなら灼滅者の辿った道筋をたどっていれば辿り着けるだろうけど
僕はこの世界の地理や歴史にはあまり明るくないからな…
というわけで、以前共闘した刀魔に話を聞きに行こう
ほぼピンポイントでしか接触していない僕の事を覚えているかどうかは謎だけど
以前共闘した時のお礼を述べつつ
ストレートに「煽動や統率に長けていそうな羅刹を知らないか」と聞いてみよう
何となくなんだけど、今回の首謀者、他種族にも名が知られている|復活ダークネス《オブリビオン》の気がする
それなら刀魔が知っていてもおかしくはない…と思う、多分
それとは別に、僕は刀魔がこの世界で生きていくと決めた理由が気になるんだよね
過去、六六六人衆として生きて来た刀魔が殺戮衝動に抗う…という表現は少し変かもしれないけど
そうまでしてでも、エスパーや灼滅者、(PCとしての)ダークネス種族と共存する道を選んだ理由は聞いてみたい
(※PL注:PCとして状況整理を兼ねた質問となります)
●
――再び、新宿にて。
「……やれやれ。勧誘の件、目を付けられたくない穏健派にとっては傍迷惑な話ですねぇ」
時折剣呑に煌めく己が金の瞳光を抑える様に、眼鏡を掛けて隠した摩津崎・灰闢(済度無相・f43898)そう嘆息を零しながら、大仰に首を横に振っている。
そんな灰闢は今、すっかり様相を変えた新宿駅の歌舞伎町方面入口の片隅に立って、あるダークネスを待っていた。
「旧世界の様に、ダークネスはダークネスらしく等、命取りでしかないでしょうにねぇ。如何して未だ、その様な愚かな旧思想に囚われた儘のダークネスが居る事か。……本当に嘆かわしい事です」
そう、やれやれと言う様に軽く頭を横に振り、何処か演技めいた調子で嘆く灰闢の様子を見て。
「……そう言うものなのか?」
灰闢と同じ待ち人と繋ぎを取った館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)が、思わず小首を傾げて問いかける。
その敬輔のどうにも実感し難い、と言う風に小首を傾げている様子に気が付いて。
「ああ、敬輔さん。ええ、本当に嘆かわしい事なのですよ。嘗て、我々ダークネスが席巻していた時代は既に終焉を迎えております。今はもう、守られるべきエスパー達の時代なのです」
然りと言う様に首肯した灰闢の応えに。
ふーむ、と考えこむ様な表情を敬輔は確かに浮かべていた。
「まあ、羅刹の可能性が高い、とは聞いているし、それなら灼滅者達の辿った道筋を辿れば何時かは辿り着けるって言うのも分かるけれど……でも、この世界の地理や歴史には正直あまり明るくないから、実感が如何にも湧かないんだよな……」
そう心底不思議そうな表情を浮かべている敬輔の様子を見て。
少々興味をそそられたのであろうか。
「もしかして敬輔さん、今更な質問で申し訳ないのですが、あなたは|異世界人《・・・・》なのでしょうか? 気を悪くされたのでしたらすみませんが」
その灰闢の問いかけに。
敬輔が、特に気を悪くした様子も無く静かにその首を縦に振って。
「別に俺は気にしていないよ。灰闢さんの言う通り、僕は、|異世界《ダークセイヴァー》と呼ばれる世界の出身者だ」
そう応えた敬輔のそれに、成程、と丁寧に相槌を打ってから。
「それでも私達、穏健派ダークネスを巡る動きに興味を持って頂けるとは。大変にありがたいお話です。私も穏健派ダークネスの1人として、勿論尽力させて頂きますが、敬輔さんの事も頼みとさせて頂きましょう」
と恭しく一礼する灰闢を見て、敬輔が困惑した表情を浮かべながら。
「そう言えば、少し気になるんだけれど。灰闢さんは、|この世界《サイキックハーツ》の穏健派ダークネスなのは分かるけれども、この新宿と言う場所に思い入れとかあるのかい?」
そう敬輔が何気ない様子で問いかけると。
そうですね、と誤魔化す様に軽く掛けた眼鏡を調整する様に弄りながら、灰闢が笑う。
「実は、当時図に乗っていた私は、此処で|灼滅された《痛い目を見た》事があるのですよ。まあ、|痛い目を見た《・・・・・・》からこそ、今の生き方に繋がっている訳ですが……」
――何故、自分が世界の守護者たる猟兵の悪霊として、この世に再び生を受けたのかは分からないけれども。
そう笑いと嗤いが絶妙に綯い交ぜになった飄々とした笑みを浮かべる灰闢のそれに、ふーん、と軽く敬輔が相槌を打ったところで。
「……久しい、と言うにはまだ早いな、|我が同族《・・・・》よ」
そう堂々とした足取りで姿を現し、会釈を灰闢と敬輔にした刀魔の姿にそうですね、と灰闢が笑い。
「ほぼピンポイントでしか僕は接触していないから覚えているかどうか分からないけれども……あの時の共闘、助かったよ」
そう敬輔が礼を述べるのを聞いた刀魔が。
「……気にするな。それもまた、|今世《・・》を生きる我等の務めだ。……そうであろう、|同族《・・》よ」
そう水を向けられた灰闢がその通りですね、と同意して。
「それにしても、わざわざお時間を取らせてしまい、恐縮ですね、刀魔さん。実は……」
――と、|グリモア猟兵《・・・・・・》から聞いた話を一通り灰闢が説明した上で。
「質問なのですが……最近、あなたの所に新たな誘いが来たりはしていませんか?」
そう続けると。
暫し、灰闢の説明を静かに聞いていた刀魔が腕を組んで考え込む様にしていたが、程なくして頭を横に振った。
「……生憎だが、我の所にその様な誘いは来ていないな。だが、そう言った羅刹の故人については、聞き及んだことはある」
「つまり、煽動や統率に長けていそうな羅刹を刀魔さんは聞いた事があるという事か?」
そう敬輔が問いかけるのを聞いて、ふむ、と小さく刀魔が軽く唸り。
「……敬輔と言ったな。念のため、お前には聞いておこう。其方の我が同族が聞き及んでおらぬ可能性は、十分ある話ではあるからな」
その刀魔の呟きに。
おや、と灰闢が少し意外そうに笑い、敬輔が赤と青のヘテロクロミアを軽く眇めて小首を傾げて。
「何を僕に聞きたいんだ?」
その質問に頷いた刀魔が。
「何故、我がお前が言った様な者について聞き及んだことがあると思った?」
そう問いかけるのに、それは、と敬輔が軽く肩を竦めた。
「何となくだけれど、今回の首謀者は、他種族にも名が知られているオブリビオンの気がしただけだ。それなら貴方が知っていてもおかしくない……と思ったから……かな」
多分、と口に出さぬ様に付け足しつつもそう応えた敬輔の言の葉に。
成程、と小さく刀魔が頷き、粛々と言葉を続ける。
「最近、埼玉県に、ダークネス専門のカウンセラーが入ったと言う噂を聞いている。恐らくお前達が求めているのは、その者であろう。その者の名は、天海大僧正と言う。……既に故人ではあるが、2023年5月頃から、故人の|黄泉がえり《・・・・・》が確認されている以上、嘗ての故人となった天海大僧正が|オブリビオン《・・・・・・》となって姿を現したとしても、決しておかしな話では無いだろう」
そう淡々と恐らく敬輔と灰闢が求めていた応えを答える刀魔のそれに夫々に礼を述べた所で。
「刀魔さん、もう少しだけ話をさせて貰っても良いかな?」
そう、ふと、何かを思いついたのであろう。
問いかける敬輔のそれに便乗する様に私も、と灰闢が笑った。
「参考までにお伺いしたいことがありますので……宜しいでしょうか?」
そこまで請われれば答えぬ道理も無い、と言う様に首肯した上で。
「お前達が我に聞きたい事とはなんだ?」
そう問いかけ返してくれたので、灰闢が眼鏡の奥の金の瞳をちらりと敬輔に走らせると。
「じゃあ、僕から聞かせて貰うよ。……これは、灰闢さんにも同じ質問になるかも知れないしね」
そう応える敬輔のそれに、ほぅ、と興味深げに少し笑みを深める灰闢を横目に捉えながら。
「刀魔さん、貴方は如何してこの世界で生きていくと決めたんだ?」
そう問いかける敬輔のそれに、むっ? と小さく唸る様な声を上げる刀魔。
その怪訝そうな刀魔の促しを聞きながら、敬輔が自分の考えを纏め、纏め、話を続けた。
「いや……と言うのもだ。過去、刀魔さんは六六六人衆として、生きてきたんだよな? 六六六人衆にとって、人々を殺戮するのは本能だと言う話を聞いたことがある」
――つまり、その殺戮衝動に飲まれて何時、誰かを殺しても可笑しくない筈の刀魔が。
「その殺戮衝動に抗う……と言うと変かも知れないけれども……そうまでして、エスパーや灼滅者や、灰闢さんの様な穏健派ダークネス種族と共存する道を選んだのか、少し気になってね」
――|異世界《ダークセイヴァー》でも、|同族殺し《・・・・》と呼ばれるオブリビオンを私怨の為に殺すオブリビオンは確かにいた。
けれどもそれは、|異世界の支配者《ヴァンパイア》達にとっても異端であり、忌み嫌われる存在であった。
――恐らく一般的なダークネスから見た穏健派ダークネス、と言うのは正しく|同族殺し《・・・・》と同じ様な立場になるのではないか?
そうある種|異世界《・・・》出身であるが故の敬輔の当然と言えば当然の疑問に対して、刀魔が微かに懐かしそうに目を眇める。
「嘗て、我等を監視していた灼滅者にも、似た様な質問をされたことがあるが……その理由は明白だ。我等は生者である以上、己が生に執着する。其れは、生き物としては当然の欲求では無いだろうか?」
「……その生への欲求の為に、本能を抑え込む事なんて、本当に出来るのかい?」
そう、敬輔が微かに怪訝な表情を浮かべて問いかけるのを聞いて、ふむ、と刀魔が1つ息を吐き。
「では、お前に聞こう。人には三大欲求と呼ばれるものがあるな?」
その刀魔の問いかけに。
そうですね、と灰闢が相槌を打ちながら。
「食欲、睡眠欲、そして性欲。是が人間の三大欲求だと言う話は私もよく知っております」
「加えて、衣食住が無事に満たされるのであれば、人は生きていく事に不自由を感じないと言う事もある」
その、刀魔の言の葉に。
「それは……そうだな」
そう静かに唸る様に呟く敬輔を見ながら、その上で、と刀魔が続けた。
「食欲、睡眠欲を人は満たされる事がなければ、生命活動を維持する事が出来ずに、|嘗ての人々《・・・・・》であれば死ぬ事になるだろう。だが……性欲に関して迄、本当にそうだと言えるのか? もし、其れも我慢できぬと言うのであれば、|今の時代《・・・・》よりも前の時代であれば、もっと性に纏わる犯罪は多かった筈だ。つまり……」
「……性欲を人は法等の理性で抑える事が出来る。つまり、刀魔さんにとっての殺戮衝動と言うのは、人間にとっての性欲と同じで……ある程度生きていく為には抑える事が出来るから、という事? でも、そこまでして生に執着するのは……」
――いや、寧ろ……。
「……そうして迄生きていきたいと願う方が、命と言う単位では自然だと、そう言う事か」
その敬輔の言の葉に。
「……そう言う事だ、|異世界人《・・・・》よ。納得して貰えたか?」
そう確認の様に問いかける刀魔のそれに、敬輔が一先ず首肯したのを見計らって。
「私も参考までにお聞きしたいのですが……刀魔さん。貴方は、今の世界に疑問を抱いておりますか?」
そう、灰闢がすかさず、と言った様に問いかけた時。
刀魔がその言葉に微かに口を綻ばせ。
「寧ろ、お前の方こそどう思っているのだ、|我が同族《・・・・》よ」
そう問いかけられるのを聞いて、笑った儘に、ふむ、と眼鏡を無意識に掛け直して飄々と肩を竦めて。
「……私ですか? 別世界の様だと感じてはいますが、今は特に不都合を感じてはおりませんね。寧ろ、恵まれていると思っていますよ」
そう告げる灰闢のそれを聞いて。
「そうだな。お前にとっては、尚更そうか。我は|この世界《・・・・》と化してから、既に数年の歳月を過ごして来た。であれば、その価値観の変容も又、受け入れて然るべきかと思うぞ。況してや我等と言う|種《・》がこれ以上増える事が無いという事実を照らし合わせれば尚更だ」
そう笑って応えた刀魔のそれに。
成程……と笑みを浮かべた灰闢が。
「ご協力、ありがとうございました」
そう丁寧に一礼し、敬輔もそれに倣って会釈をするのに、首肯して刀魔が続けた。
「川口駅に向かえ。お前達が求めている天海大僧正は、恐らくそこにいるであろう」
その刀魔の助言に背を押され。
灰闢と敬輔が新宿駅に吸い込まれる様に、その場から姿を消したのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
有城・雄哉
単独希望
アドリブ大歓迎
煽動や統率に長けた羅刹の|復活ダークネス《オブリビオン》なら、心当たりはないとも言えない
そもそも、他種族と積極的に同盟を結ぼうとした羅刹自体、あまりいないはずだから…今回の首謀者はほぼアレだろうな
というわけで、かつて武蔵坂と共闘しようとし、そして闇堕ち学園生に裏切られ灼滅された羅刹の痕跡を辿ってみよう
(PC種族としての)ダークネスに話を聞くのが早いのだろうけど、ここはあえてエスパー達に話を聞いてみよう
ダークネスに声をかけて煽動している|復活ダークネス《オブリビオン》がいれば、エスパー達にも噂話として情報が回っているだろうからね
…もし、本当にアレなら、噂話が蔓延して世間が混乱することまで計算に入ってるかもしれないし
オブリビオンとして復活すれば、例外なく世界の破滅に向け動くとも聞いている
今回の羅刹が過去に共存を考えていたとしても、最終的にはこの世界の秩序を乱し、混沌に陥れようとするだろう
なら、その場で灼滅するのが最善手だ
…必ず、灼滅する
●
――埼玉県川越市。
(「煽動や統率に長けた|復活ダークネス《オブリビオン》と言う事ならば、心当たりは無いとも言えないな」)
其の地に降り立った有城・雄哉(蒼穹の守護者・f43828)が神妙な顔つきでそっと嘆息を一つ付いている。
――そもそも。
「他種族と積極的に同盟を結ぼうとした羅刹自体、あまりいない筈だから……今回の首謀者はほぼアレだろうな」
他種族と積極的に同盟を結ぼうとした羅刹と言えば、朱雀門学園の瑠架に合流していた鞍馬天狗や聖女ガラシャ等もいる事はいるが……。
「……いずれにせよ、そこまで彼等にはカリスマがあるとは思えない。となると……答えはほぼ1つか」
――それは、嘗て武蔵坂と共闘しようとし、そして闇堕ち学園生に裏切られ灼滅された羅刹。
その名を――天海大僧正と言う。
その天海大僧正の痕跡を追う、と言う事で早速此処にやって来て、近隣のエスパーに少しばかり話を聞いた所……。
「ああ、そう言えば最近、喜多院に新しい住職さんが入ったらしいわよ。何でもその住職さん、とてもダークネスに親切な方で、結構相談に乗っているらしいとか」
そうエスパー達から、あっさりと情報を得ることが出来た雄哉は、一瞬拍子抜けしながらも喜多院への道を歩まんとした……その時だった。
『ダークネスのお悩み、相談受けます、最高級のお茶と和菓子でのおもてなしと共に!』
そんな黒いインクで墨引きされた看板が、堂々と喜多院への道案内の為に書かれていたのを目撃したのは。
「……いや……ええっ……?!」
そのあまりにも正々堂々とし過ぎている様なその看板に、雄哉は、思わず素っ頓狂な声を上げていた。
(「ちょ、ちょっと待って、待って、待って! これ、どーいうこと!? 何か明らかに私、此処に居ますよ感満載じゃないか、これは!?」)
「寧ろ、何でこんな正々堂々としているのに、誰も気が付かないんだ!? おかしいだろ、これ!?」
そう、思わず虚空に向かって突っこみを入れる雄哉の様子が奇異に見えていたのであろう。
「おや……大丈夫かい?」
そう如何にも人のよさそうなエスパーのお婆ちゃんが、雄哉に声を掛けてきたのは。
そのお婆ちゃんの呼びかけに。
「ああ、お婆さん。すみません、この看板何時から、此処に出る様になったんです? と言うか、この看板に疑問とか覚えたりしないんですか?!」
と、思わず聊か強気な口調で早口に捲し立てる雄哉の言の葉に。
あらあら、とお婆ちゃんが何を言っているのだ、と言わんばかりの表情を浮かべていた。
「もう、あたし達は9年以上ダークネスとも共存しているんだよ? 武蔵坂学園の尽力のお陰でね。だから、ほら、ダークネスの為にお悩み相談に乗る様な住職さんがいても何もおかしくないわよ。況してや、ダークネスさん達は、ダークネスさん達にしか理解できない悩みとかストレスとかもあるでしょうからね」
そのお婆ちゃんの言の葉に。
|人造灼滅者《・・・・・》となった折に自らが得てしまった代償を思い起こし、雄哉が思わず、という様に複雑な表情を浮かべている。
――ダークネスには生殖能力がなく、これ以上の子孫を殖やせない。
それは『種』としての存続の問題だ。
『灼滅者』も定命の存在からしか生まれない以上、何れかは消えてなくなる『種』とされているが……その子供達として、エスパー……つまるところ、『闇堕ち』する事の無い新しい命を遺す事が出来る事は分かっている。
況してや、|今の世界《・・・・》では……。
(「エスパーの使うESP……サイキックもまた、僕達灼滅者や、ダークネス……まあ、猟兵になった人達からすれば、ユーベルコードか。……それと同等の力を発動させることが出来る様になっている訳だしな……」)
そう言う意味ではエスパーが、『次世代の灼滅者』と言う定義も、極論すれば可能なのだ。
であれば、そう言った類の悩みや、今の世界に不満を持つダークネス達と言うのも、一定数いるのは間違いないだろう。
――それに。
「……いや、待てよ。もし本当にアレなら、噂話が蔓延して、世間が混乱する事迄、計算に入れているかもしれないし……」
そうぶつぶつとシリアスに考え込む表情になって呟く雄哉を怪訝そうに見たお婆ちゃんに大丈夫です、ありがとうございましたと軽く笑顔で会釈を交わし、別れを告げる雄哉。
その目前には、相変わらず黒いインクで墨引きされた看板がある。
そしてその看板の筆跡には、何とはなしに見覚えがある。
何せそれは、あの第2次新宿防衛戦終戦の後に武蔵坂学園全体に回覧された手紙と同じ筆跡だから。
「……いや……でも……」
――もし、アレが|復活ダークネス《オブリビオン》として復活したのであれば、例え、嘗てその存在が、過去に共存を考えていたのだとしても。
「……例外なく世界の破滅に向けて動くとも聞いている以上……最終的にはこの世界の秩序を乱し、混沌に陥れようとする事実は揺らがない」
――だから。
「その場所で灼滅するのが最善手……其れは間違いない筈」
――なのだが。
どうにも色んな意味で心が折れてしまいそうなその案内を読みながら、気を取り直した雄哉が其方に向かって進んでいく。
――その先に待つであろう、|復活ダークネス《オブリビオン》……天海大僧正を灼滅する、その為に。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『天海大僧正』
|
POW : 天海経
近接範囲内の全員を【移動不能】にする【法力を帯びた詠唱】を放ち、命中した敵にダメージと麻痺、味方に隠密効果を与える。
SPD : 五色不動尊
【江戸東京】の龍脈から1〜12体の【不動尊の姿をした土地に眠る『畏れ』】を召喚し、【仏像が持つような法具】で戦わせる。[仏像が持つような法具]の威力は召喚数分の1に減衰する。
WIZ : 本能寺炎上
【炎の法力】を放ち、命中した敵を【燃え盛る炎】に包み継続ダメージを与える。自身が【とった行動が敵の想定に反】していると威力アップ。
イラスト:フジオカ アデリ
👑11
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|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
――いそいそ、いそいそ。
「ふーむ、お悩みを抱えているダークネス達は何時来てくれるのだろうか……」
――喜多院に姿を現す事で、自然、再び住職の座を得ていた天海大僧正が人払いをした後に、いそいそと何かを用意している。
それは、最高級の甘茶にお菓子に、精進料理と言ったもので。
「まあ、何時かはお悩みのダークネス達も噂を聞きつけて集まって来るだろう。その者達にも『無敵』とは何かを説けば、きっと……」
――慈眼衆の新たなる一員として、この世界を、より良い世界にしてくれるに違いない。
とは言え、態々無敵の道を説く為に辿り着いた筈のこの場所から、一般人達を追い払ってまで貸切にした自分に聊かの疑問を覚えないでもない。
――だが。
「それでも我等ダークネスの無敵の世界の語り合いの為にも、悩めるダークネス達の相談役を務める事も、私の役目。ならば、私は待ち続けよう」
――悩めるダークネス達が相談に来るのを。
そう……何時か来るであろう、来るべき新たな世界の為に。
その為にも、|教え《・・》は広めておかねばならぬ。
その、暗殺されるよりも前に自らが見出した道に、邁進し。
無敵の道半ばにして、裏切りに遭い、暗殺された天海大僧正は待っている。
――|彼等《・・》が来るであろう、その時を。
*******************************************************************
*第2章は埼玉県川越市にある喜多院で戦闘となります。
此処には、普通に皆さん集めた情報を追って行ったら辿り着いたと言う判定になります。
又、今回は特に人払い等を行う必要はなく、真っ向から勝負をして頂いて構いません。
会話も可能ですが、最終的には天海大僧正を撃破する必要はございます。
――それでは、良き戦いを。
火神・臨音
天海大僧正、あんたの名は主の記憶介して知っている
(道半ばで裏切られ、倒れ逝った事もな)
とは言え、今の世界でしようとしてる事は見過ごす訳にはいかねぇ
その奸計、この一刃で終わらせる
返り血に触れて主へ祈りを捧げ
初手は火+浄化の力乗せた符を放つ
以降基本は破邪+火属性付与の太刀による袈裟斬りと返す刃での二回攻撃
遠距離時は斬撃による衝撃波と符の掃射+乱れ撃ちで近接攻撃メインの仲間を支援
自身が近接時は斬撃に加え蹴撃織り交ぜ攻撃
声掛けあって効率よく
攻撃は見切りと野生の勘で防ぎ
回避しきれぬ分は激痛+吹き飛び+火炎耐性、オーラ防御で堪えシャウトで回復する
UCは失敗時のリスク考慮し状況終盤迄温存
詠唱時は集中力高めて
この世界に生きる者達の想い乗せて声高らかに
俺にとっての『無敵』の意味か?
それは友や仲間、そして最愛の人を命懸けで護り共に歩む強さ
今の世界は今を生きる奴に任せとけ
あんたは静かに骸の海で見守ってな
状況終了後
可能な限り戦場を現状回復
思う所ある仲間がいれば無理なき範囲で寄り添い話に耳傾ける
アドリブ、連携歓迎
摩津崎・灰闢
この看板、怪しい勧誘に見えるのは先入観のせいですかねえ
まあ、そう思えない程に疲弊した方が狙いなのでしょう
スレカに武装を収納して向かいます
失礼します、こちらで相談を受けていると看板を拝見したのですが…
相談者を演じつつ、無敵を説いて頂けるなら耳を傾ける
…しかし、無敵を極めるなら更に強い存在と組めばよいではないですか。
例えば、猟兵など。
戦闘開始と同時に武装召喚、連携重視で動く
UC発動
不動尊の排除優先
刀で積極的に弱点急所を攻める
敵攻撃は影業で捕縛牽制、
殺気の認識阻害で回避率up
ああ、僧職の前で救済と宣うのは烏滸がましいので控えますね
貴方についたら面白そうではありますが、今の世では些か難しく。
残念です。
ユウ・リバーサイド
くっ、やりにくいな
(“俺”の記憶にこびり付いた感情と
目の前の好々爺との乖離に困惑し)
ほんとに、羅刹ってなんなんだろうな
“俺”はあんたに懐疑的だった
でも…
爺さん…還って来ちまったらダメだろ、こんな形で
もう闇堕ちよりももっと大きな力で
大事なとこが歪んでしまってんだよ
違和感、感じてるんだろ?
だから骸の海に送るよ
基本はダンスと軽技の動きで回避
剣舞と蹴りを組み合わせて攻撃
かわせない分は希望の力を煌めく碧のオーラに変えて纏い防御
畏れを呼ぶならこちらも手札を増やす
鬼にまつわる怪談を本気で謳いあげ声を届かせ
召喚術と幻影使いの能力も用いてUCの希望と癒しと浄化を強化
弱った畏れから一体ずつ急所を見抜いて貫き仕留める
(…陽…桜…!)
その姿に内心で動揺するも演技力を振り絞って隠す
今はそんな場合じゃ
(…気づいてない?
いや、気づきたくない、のか?)
無意識でそうなのだとしたら
…なら“俺”を、あの時のことを、彼女に思い出させるべきじゃない
そのように振る舞える
“俺”達は、君が過去に糾弾したように|役者《嘘吐き》だから
ギュスターヴ・ベルトラン
ある種の善行と言えるのかもしれねえ
ダークネスにはダークネスでしか理解できねえもんがあるのも分かる
そこは否定しねえし、するつもりもねえよ
だがな、今の世界を燃やし尽くす可能性があるってのは、見過ごせねえ
世界を変える救いのために、個人の救いを手段にするのはやめな
【祈り】を捧げ光あれと願う
このUCは己の正義を押し付けるためじゃねえ
ただ、歪んだ形が広がらないようにと願うもの
炎は消せずとも、広がらせねえし通させねえよ
【霊的防護】で炎の法力を抑えつつ、
【祝福】と【神聖攻撃】を乗せたHYMNEを叩き込む
…つーかよ
相手を燃やす行為が|愛《光》であっていい訳、ねえだろ
※連携、アドリブご自由に!
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
オブリビオンである以上撃破一択なんだけど
このシチュエーションでは話をしたい猟兵もいるかもしれないな
その場合は極力口を挟まず、できるだけ聞き役に徹する
会話が終わり次第、総攻撃で撃破しよう
天海大僧正が灼滅済みなのは、武蔵坂学園にも記録されているんだよな?
ならば、目の前の天海大僧正は…ダークネスではなくオブリビオン
オブリビオンになると、なぜか世界を滅ぼしたがるようになるから
必ず、会話のどこかに違和感や矛盾が生じるはず
説く道が『無敵』な理由も気にはなるけど
それ以前に、一般人のお悩み相談に乗らない理由は何だろうね?
攻撃開始と同時に指定UC発動
「ダッシュ、地形の利用」+高速移動で室内を一気に駆け抜け
「武器に魔法を纏う」で聖属性を宿した黒剣の「2回攻撃、怪力」でひたすら斬る
『畏れ』を召喚されたら黒剣から聖属性の「属性攻撃」を「衝撃波」として放ち消滅させよう
貴様の行動は、この世界で生きていくと決めたダークネスたちを破滅に導きかねない行動だ
その時点で…自己矛盾しているんだよ
有城・雄哉
【POW】
アドリブ連携大歓迎
…いや、うん
正直、予想が明後日の方向にぶっ飛ばされた展開になってるけど
それならそれで、この状況を逆手に取らせてもらうか
悩みを持つダークネスのフリをして潜入し、灼滅する
※ただし、他猟兵が天海大僧正と会話している時は乱入を控えます
「肉体変異」でダークネス形態に変身し、喜多院の中へ
腸煮えくり返るような怒りを抑えつつ、天海大僧正に丁寧に一礼
アンブレイカブルとしての闘争本能を発散する場がなくストレスがたまっていると打ち明けよう
…たまに闘争狂になるから、嘘は言ってないよね?
その上で『無敵』の道を解かれたら、如何なる道かを詳しく聞いてみよう
その答えの中に…復活ダークネスとしての本音が混じるはず
油断するか、他猟兵達が攻撃を開始したら攻撃開始
漆黒に変色したバトルオーラを両拳に纏い
天海経を唱えられる前にダッシュで懐に飛び込み「グラップル」+指定UCの連撃を叩き込む
命中率の低下は密着することでカバーだ
…灼滅される前にひとつだけ聞く
貴様は、貴様自身の所業に違和感を覚えなかったのか?
高沢・麦
【とちパト】
いやーまさか電車で聞いた話がヒントになってたなんてねー
そんな顔すんなよごめんて!
川越だってさー芋が名物だよね
食べ歩きしてーけど
さすがに戦闘前にガイアチャージの時間はとれないか
個人的心境は全く遠慮なく攻撃できる
性格良さげに感じるとして
ご当地怪人ってもっと憎めないけど灼滅してきたし
裏切ったの件は政治に失敗したんだなーって
いや、他人事だと思ってんだわ
武蔵坂の互助組織って在り方に賛同してる
必要な人が必要な時にその名前の元に集まる
俺達、ではあるけど、俺自身じゃない
穏健派とかどこまで味方とかは各自好きにすればいい
大概の事は見守るし理解する構え
俺が自分事にするのは一般エスパーに被害がある時
で、それは優希斗くんがはっきり言った
語り合いは好きだよ
どー思ってたか興味あるし
相談役は未来を良くする希望を提示するもの
過去の存在なのにおもしろ!
憎くはない、たぶん好き寄り
好きでも倒す事に慣れてしまった
基本は守備と仲間のサポート
攻撃受け止めてなお余力があれば
かつて安土城にもお見舞いした二条大麦ダイナミック!
宮儀・陽坐
【とちパト】
適当に指示しといてそれ…
日光行かせたの実はわざとなんじゃないかって疑いたくなる
川越は食べ歩き店舗を整備して町おこしはかなり成功してるね
後でちゃんと研究したいな
俺はもともと闇堕ち救出から武蔵坂に入りました
助けてもらえなければきっと今生きてない
普段の生活では暴走しがちで麦には半分怪人と言われます
たとえば俺は餃子を食べれば幸せになると信じていて
ひとにも勧めたり時には強引に押し付けたりもする
今回の天海大僧正の行動はもはや他人事ではない
穏健派ダークネスに似た、灼滅者の中では境界寄りグレーなので
狭間の悩み相談と言うのを聞いてみたい
でも…古い考えにしがみつくようなら少しがっかりするかも
過去の事象の焼き直しがオブリビオンって事なんですね
それは明確にダークネスと違う
麦は他人事みたいに言うね
別にそれでいいけど…
まあ俺も、話は聞いてみたかったけど仲良くしに来た訳ではない
というわけで餃子を食べてもらいましょう
戦いは麦と連携して防御寄り
畏れ召喚の配下などを叩くため攻撃の余力を残しておく
榎木・陽桜
天海大僧正との会話中心
あたしは猟兵としては半人前です
戦いではなく、主にこの場での気持ちの面で
だから…戦いは、葵桜さん達にお任せするのです
もしダメージが生じるようなら指定UCで回復に専念しますね
天海大僧正のおじいちゃん、お久しぶりです
覚えてますか?
またお話しできて嬉しいのですよ
あたしね、あの時思ったんです
おじいちゃん達とならその後も
一緒に手を取り合えるんじゃないかって
でも、叶わなかったですね
あたしは、灼滅者で
猟兵としての知識はまだ勉強中の身の上ですけど
葵桜さん達が言うには、復活ダークネス…オブリビオンになっちゃったら
いずれ世界の脅威になっちゃうのだそうです
だから、あたし達は、あなたを、倒さなくちゃいけない
でも、だからこそ、あえて聞きたいです
今の世界に感じていることを
そして、この世界を生きるあたし達への想いを
ちゃんと受け止めて未来に繋いでいきたいから
他:
猟兵に同位体の存在があることについてはまだ理解できていません
このため学園時代の知人であっても外見が違う場合、当人であることに気づけません
榎木・葵桜
【二桜】
姫ちゃんが、いつも姫ちゃんのお父さん見て感じてる気持ち、
さすがに私も今日はちょっとわかった気がする
親とか、特に自分に近しい人に深く関わる世界って
なんかこう、色々モヤモヤするよね
記録で見るよりこうやって実際に対峙して思うこと、たくさんあるよね
これがサクミラとかカクリヨだったら、
オブリビオンだったとしてもその先に想いを託すことができるけど
この世界は倒したらおしまい、なんだよね
…って、姫ちゃん、大丈夫?
変な感情乗せてない?(覗き込み)
今日はね、そういう感情乗せていいのは、
この世界で関わって生きてる人…陽桜さんとか、姫ちゃんのお父さんとかだけだよ
話を聞いてくれる理解ある相手でも
オブリビオンは、世界の敵だから
私と姫ちゃんは、猟兵として猟兵たる役割に特化する必要がある
だから、頑張ろうね?
>戦闘
仲間との連携、臨機応変対応意識
初手で指定UC使用し田中さん召喚
田中さんには陽桜さんの防御をお願いする
私は積極攻勢
攻撃:"胡蝶楽刀"による[なぎ払い、衝撃波]で対応
防御:[見切り、武器受け、第六感]で対応
彩瑠・姫桜
【二桜】
(親友の「色々モヤモヤする」に苦笑し)
流石のあおも、そういうこと思うのね
(確かに陽桜さんの話は、当時の灼滅者の人達の在り方がそのまま伺える
親友が複雑な気持ちになるのは容易に理解できる)
そうね
救済のある世界なら、敵との対話もどこか救いはあるけれど
この世界にはそういうのはなかったものね
(聞く限りでは、この敵は灼滅者達とは比較的有効な関係を築けていたのだろう
だとすれば、今回もわかりやすい敵対としての戦いにはならないような気がした)
…ご明察の通りよ(変な感情乗せてない?に苦笑し)
そうね、今回に関しては特に
……わかっているわ、ちゃんと
(そう、いつだってわかってはいるのだ
けれど、今回は特に意識しなければならない)
パパや陽桜さん、他の灼滅者の人達が積み重ねてきたこの世界のあり方も想いも
私なりにちゃんと受け止めて、戦いに挑むわ
>戦闘
仲間との連携、臨機応変対応意識
攻撃中心
攻撃:指定UC使用、敵の足止め後はバベルブレイカー使用し[串刺し]
防御:[見切り、武器受け、オーラ防御,、自動防御]にて対応
彩瑠・さくらえ
(振り返れば天海大僧正と対話の機会があった第2次新宿防衛戦後は
戦争の疲労と不摂生のダブルで病院送りになって
幼馴染の大目玉を喰らった上に幼馴染から"珈琲禁止令"出された時だった
今となれば黒歴史
完全に自分のことで手一杯で余裕がなかったなと内心で苦笑しつつ
当時の自分はさておき
今この機会を得られたことは個人的には幸いだ)
天海大僧正
貴方の言う「無敵の世界」について改めて聞かせて
僕は当時、貴方と話をすることは叶わなかったけど
貴方が嘗て目指していた世界には興味がある
あと、これは僕の勝手な想いだけど聞きたい
貴方自身がこの世界に思うことはあるかな
苦言も含めて率直な感想として聞かせて欲しい
復活ダークネスとなってしまった貴方はこの世界にはいられない
貴方の望みに関わらず、僕らは貴方を倒す義務があるから
この世界にはいられない貴方の代わりに僕らがその声と想いを繋いでいきたいんだ
>戦闘
臨機応変対応意識
回復・防御>攻撃
回復:指定UC使用
防御:[見切り、武器受け、受け流し、オーラ防御]
攻撃:必要な時のみ"涅槃"で[投擲]
橘・創良
みんなの情報収集のおかげで黒幕に辿り着くことが出来たんだね
天海大僧正か…
僕は予知には関わっていないけれど
過去の大物が蘇ってきた感じだね
それにしてもダークネスのお悩み相談所か…
確かにそういう需要もあるんだろうし
彼らにとって世界をより良くするための方法なのだと言われると
一概に否定はできないけど
でも、復活ダークネス…オブリビオンは
必ず世界を破滅に導くのだと聞いているし
そのことでエスパーたちが被害に遭うというのなら
やっぱり見過ごすことはできないね
今なら僕も戦える
でも頼もしい仲間がたくさんいることだし
彼らが戦いやすいようにサポートするよ
僕たちが選んだ未来は僕たちの手で守らないと
過去は過去へ還ってもらうよ
●
――川越駅に置かれている、その看板を見て。
「……この看板、怪しい勧誘に見えるのは、先入観のせいですかねぇ?」
そう、掛けた眼鏡を軽く弄りつつ摩津崎・灰闢(済度無相・f43898)が口元に笑みを浮かべつつ、微かに困惑した様に眼鏡の奥の金の瞳を揺らめかせるのに。
「ええと……怪しい勧誘って、こんな感じなの?」
そう思わず、と言う様に問いかけたのは、館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)である。
如何にも今一そう言った怪しい宗教の勧誘等とは比較的無縁(?)に生きてきたであろう敬輔的には実感が沸かないのは当然であろう。
そんな、敬輔の呟きが聞こえていたのであろうか。
「……いや、うん」
そう前方の影が振り返り、此方へと歩み寄って来るその姿を見て。
「雄哉さんか」
そう敬輔が問いかけるのを聞いて、ああ、と色々な意味で遠い目をしながら諦めた様に首肯を1つしたのは、有城・雄哉(蒼穹の守護者・f43828)がそのまま、
「正直、明後日の方向にぶっ飛ばされた展開になっている気がして仕方なくて、仕方なくて……」
深々と全力で溜息を零した時。
「おっ。有城君に、館野くん、あと灰闢くんも来ていたのかー」
そうのんびりとした口調で。
川越駅方面から歩いて来た3人の姿を見て、ああ……と雄哉が遠い目をする。
「高沢先輩に、宮儀さん、それから橘先輩も来ていたのか」
そう力んでいた肩を軽く緩める様にして。
告げる雄哉のそれに、代表して、そだよー、と軽い調子で、高沢・麦(栃木のゆるゆるヒーロー・f45122)が朗らかに笑い。
「いや、そだよーって、そんな、軽過ぎんだろ……俺に適当に指示しておいて……」
そう軽く藍色の瞳を非難がましく細める宮儀・陽坐(いつも心に餃子怪人・f45188)の様子を見て、まあまあ、と橘・創良(静謐の泉・f43923)が穏やかに笑って宥めていた。
「ほら、日光湯波餃子も美味しく頂けたし、最終的に皆の情報収集のお陰で黒幕に無事に辿り着くことが出来たから、僕は良かったよ」
「いや、創良君にそう言われてしまいますと、何も言えなくなるんですけれどね……」
(「というより、麦の奴そこまで計算して、態と実は俺を日光に行かせたんじゃないだろうな……?」)
と創良の仲裁に逆らう事も出来ずに渋々ながらも矛を収めつつ、陽坐が内心でそう麦を疑っていると。
「まあ、つうても天海大僧正のやろうとしている事は、ある種の善行と言えるのかも知れねぇけれどな」
そう……不意に。
陽坐達の後ろから声が掛かったと言う事実に気が付いた陽坐が反射的に振り返ったそこには。
「おや……お久しぶりですかね、ギュスターヴさん」
そう、飄々と現れたギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)に笑いながら会釈を交わす灰闢のそれに、よう、とsolaires――それは、猟兵由来の不安定な能力とその出力を無理矢理制御するサングラス――を軽く掛け直したギュスターヴが気安い様子で会釈を返した。
「ああ、ベルトラン君も来たのかー」
直接の面識はあまりないが、名前位は聞いたことがあったのであろう。
朗らかな笑みを浮かべた儘の麦のそれを聞いて、ギュスターヴもまぁな、と小さく首肯するのを見ながら。
「……善行?」
と微かに眉根を顰める雄哉のそれに、そりゃあ……とギュスターヴが苦笑を零した。
「……神の愛は、本来、誰にでも等しく与えられるものだからな。ダークネスにはダークネスでしか理解できねえもんがあるってのも分かっている以上、それを何とかしてやろうって気持ち自体は立派な善行だし、限定的ではあるが博愛に満ちているとオレは思うぜ」
そうギュスターヴが軽く頭を抱えながら雄哉に説明をするのに、雄哉が何とも言えない表情を浮かべている。
(「……つくづく」)
理性で理解――しているのか、していないのか、したくないのかは定かではないけれども――と感情と言うのは別物なのだと思わざるを得ない。
「確かにそうなんだよね」
そうギュスターヴの説法に同意を示したのは、創良だ。
「ダークネスのお悩み相談所……多分、それ自体には今世には確かにそう言う需要もあるだろうし、彼等にとって世界をより良くするための方法だと言われてしまえば、一概に否定する事も出来ないんだよね」
――となると。
「……やっぱり話したい猟兵もいるって事になるのかな? そうなると、実は僕達よりも先に既に喜多院に向かっている猟兵達もいる可能性がある?」
その創良の言葉を受けて、そう考える様に告げる敬輔のそれに。
「……かも知れませんね。ですが、其れならばそれで丁度いいのではないのでしょうか。元々私は、お客を装って伺うつもりでしたし。他の皆様のお話を伺っている所で折よく相談に入れば、天海大僧正も油断するかも知れません。案外、本音を聞かせて貰う事も、出来るかも知れませんね?」
そう笑って灰闢が続けるそれを聞いて。
「成程。となると、少し時間を掛けて様子を見ながら、俺達も向かった方が良いって事か」
そう敬輔が納得する様に言葉を紡ぐのを聞いて、だな、とギュスターヴが同意する。
「そう言う事でしたら……川越は食べ歩き店舗を整備して町おこしにかなり成功しているんですよね。もしかしたら、今の内に少し食べ歩きと研究の時間を……」
「いやー、俺も食べ歩きしてーけど、流石に時間的に難しいんじゃねーかな。川越だと、芋が名物で良いガイアチャージの時間にはなりそうだけどさー」
そう藍色の瞳をちょっとだけ剣呑な色に輝かせる陽坐の様子に思わず笑みを浮かべつつ麦が軽く突っ込みを入れながら。
「あー……でも、そういや喜多院門前にお菓子屋はある筈だから、そこで少し何か芋菓子を買い込んで食べる位は出来るかもなー」
ふと、其れを思い出した様に呟く麦のそれに、雄哉が何とも言えない表情を浮かべて。
「……何だろう、この緊張感の無さは……」
「まあ、僕達は今を生きる人々を守る為に、オブリビオンとして蘇った天海大僧正……過去の大物を倒しに行く訳だから……張り詰め過ぎずに向かうのも重要なんじゃないかな?」
そう創良が柔和な笑みを浮かべて麦と陽坐のやり取りを聞いて応えるのを聞いて。
「まあ……橘先輩が言うなら……」
と雄哉がガックリと脱力しながらも。
――一先ず喜多院へと足を向ける敬輔達一向なのであった。
●
――一方、その頃。
いそいそと最高級のお茶に甘味に、精進料理の用意をして、悩めるダークネス達が訪れるのを待ちかねていた天海大僧正のその元に。
「……御免ください」
――嘗て。
何処かで聞き覚えのある声を耳にして。
「おお……ついにお客様が来てくれたのか!」
そう何処か心なし嬉しそうに言の葉を紡ぐ天海大僧正のそれに、声を掛けた本人……榎木・陽桜(ねがいうた・f44147)が一礼する。
「天海大僧正のおじいちゃん、お久しぶりです。覚えていますか?」
その陽桜の言の葉に。
天海大僧正がその陽桜の姿を見て、おや、と言う様に微かに懐かしそうに目を眇めた。
「もしや、武蔵坂の灼滅者か。久しいな。息災にしておったか?」
その、天海大僧正の言の葉に。
一瞬、ジワリと藍色の瞳に何かが込み上げて来そうになるのを堪えながら、はい、と陽桜が静かに首肯する。
(「これは……陽桜さんには、辛いな」)
振り返れば、第2次新宿防衛戦後は、戦争の疲労と不摂生のダブルで病院送りになり。
幼馴染の大目玉を喰らった上に、その幼馴染から“珈琲禁止令”を出された時と言う黒歴史を思い起こしながら、彩瑠・さくらえ(望月桜・f44030)がそう静かに頭を振り、そっと想鏡に触れる。
――己が深淵……過去も今も罪も闇も、全て受け止め向き合う事を映し出すその玻璃鏡の様なWOKシールドに。
(「あの時は完全に自分の事で一杯で余裕が無かったから、あの祝勝会には参加できなかったけれども」)
今、こういった機会に恵まれたのは、個人的には幸いだ。
そう内心で、さくらえが呟くその間に。
(「……お母さん……」)
|この世界の母《陽桜》が微かに涙ぐむ様になりながらも、ポツリ、ポツリとどんな話をしようかと悩むその姿を見た、榎木・葵桜(桜舞・f06218)がその胸中に揺蕩うそれに気が付き、隣に佇む彩瑠・姫桜(冬桜・f04489)の方をちらりと見て。
「流石に私も今日はちょっと分かった気がする……親とか、特に自分に近しい人に深く関わる世界で、こう言うのを見ていると色々とモヤモヤするその気持ちが……」
そうポツリと小声で囁きかける葵桜のそれに、姫桜がちらりと流し目をするその間に。
「覚えていてくれたんですね。はい。又お話しできて、嬉しいのですよ」
そう涙を堪えて淡く微笑む陽桜の言の葉に。
「私も再び武蔵坂と会見する機会が得られたこと、嬉しく思うぞ」
と祖父がまるで孫を見るかの様な目で笑って告げる天海大僧正のそれに、陽桜が思わず両肩を震わせている。
――と、此処で。
「……失礼します、此方で相談を受けていると言う看板を拝見したのですが……」
そう、不意に。
スレイヤーカードに武装を収納し、自分に敵意が無い事を示しながら灰闢が現れて、そう尋ねると。
「おお……ダークネスが相談に来てくれたのか。そうか……武蔵坂の灼滅者と上手くやっていられる様で何よりだ」
そう何処か嬉しそうに言葉を紡ぐ天海大僧正のそれに、そうですね、と陽坐が静かに首肯して共にその場に姿を現す。
「……俺も灼滅者ですけれども、元々は闇堕ちから救出されて、武蔵坂に入学した者です。それでも……普段の生活では暴走しがちで、麦……灼滅者の1人ですね……には、半分怪人なんて言われていたりもしますけれど」
そう続けられた陽坐の告白に、雄哉が無意識にギリリ、と唇を噛み締める。
――腸煮えくりかえる様な、ダークネスへの怒りを抑えるのは中々難しい事だけれども。
だが……こうして話をしたいと言う灼滅者達もいるのであれば、流石に今、騙し討ちを掛けるわけにも行かぬ。
と……そこで。
「……本当に、こう言うのは遣り難いよな」
不意に。
ポン、と肩が叩かれて、はっ、となった雄哉が其方を振り向けば、その場にいたのは、ユウ・リバーサイド(Re-Play・f19432)
普段は|役者《・・》を演じている彼の表情に揺れる自分の胸中に揺蕩う昏い炎に酷似したものがあるのに気が付き、雄哉がそれに首肯する。
雄哉がユウに感じた|もの《・・》。
それは、ユウの|この世界の同一存在《“俺”》の記憶にこびり付いた感情。
けれども、目前の好々爺と言う様子を見せる……酷く懐かしくさえ感じる声が震えている様にも思えるが……今は、それよりも。
「……ほんとに、羅刹ってなんなんだろうな」
そうユウが思わず溜息を零す姿を見て。
「羅刹がどうこうって言うよりは……其々の個によって異なる様なそんな感じがするけれどな。……其れは俺達猟兵だって変わらないだろうが」
そうユウと雄哉の背後に現れて双方の肩を叩いたのは、火神・臨音(比翼連理の誓いを胸に・f17969)
自らの本体である大太刀を納めた、返り血の付いた朱色の鞘をそっと見やれば、何時の間にか現れた敬輔がそっと頭を横に振っていた。
「……僕は天海大僧正の予知には関わっていないけれども……それでも武蔵坂の皆が、依を介した彼からの同盟の提案を受け入れた事は知っている。彼は、依からのその進言を如何言う気持ちで受け入れ、その先を見据えていたんだろうね」
ふと、その当時の予兆の一部を思い出しつつさりげなく問いかけたのは、灰闢達と合流した創良だ。
その創良の呟きには。
「あー……実は俺、その当時の事、他人事にしか思えていなかったんだよねー」
そう流石に声を潜めつつも、微苦笑を浮かべて肩を竦めて麦が応えた。
「成程な。その頃の俺は……故あって武蔵坂から離れていたから、詳しい事情を知らねぇんだよな……」
その麦に同意を示す様にそう首肯したのはギュスターヴ。
そんなギュスターヴの話を聞きながら、結局さー、と麦が流石に少し声を潜めつつも話続けた。
「武蔵坂の相互組織って在り方には賛同しているから、必要な人が必要な時にその名前の元に集まるし、その|組織《・・》としての方針を多数決で決めるってのは分かるし、問題ねーと言うか自然な事だとは思うんだけどさー……それは、あくまでも|武蔵坂《・・・》の|俺達《・・》であって、|俺自身《・・・》じゃなかったからねー」
と、麦が創良の質問に応えつつ、雄哉や敬輔達に説明するその間に。
「あたしね、あの時思ったんです」
そう震える声音で陽桜が、天海大僧正に話しかけたのは。
その、陽桜の呼びかけに。
「何を、思ってくれたのかな?」
そう好々爺の様子を見せた儘に問いかける天海大僧正のそれに。
「……もしかしたら、おじいちゃん達となら、その後も、一緒に手を取り合えるんじゃないかって」
そう陽桜が震える声音で呟き、藍色の瞳に溜めたそれを、思わず零してしまいそうになるのをちらりと確認しながら。
「天海大僧正さん。私はいつも悩み、苦しんでいるのです。人と共に在ろうとすればする程、私が抑えねばならぬものがあると言う事実に」
そう嘘と真実を綯い交ぜにした口調で澱みなく心が苦しむ姿を演じながら、告げる灰闢のそれを聞いて。
「確かに、ダークネスが灼滅者と共存していく事は、苦しみの種を生む事にもなるであろうな。だが……その艱難辛苦を乗り越えた先に待つものの先にこそ、我等がより良く生きる事の出来る、無敵の世界が待っているだろう」
そう重々しく言葉を紡ぐ天海大僧正のそれに。
「……『無敵の世界』、か」
そうさくらえが小さく首肯するのに気が付き、深々と天海大僧正が首肯する。
「その無敵の世界って言うのは、どんな世界なのか、改めて聞かせて貰っても良いかな?」
そう問いかけるさくらえのそれに、神妙に同意の首肯をしたのは陽坐だ。
「例えば俺は、餃子を食べれば幸せになると信じていて、人にも勧めたり、時には強引に押し付けたりもしてしまいます。だからこそ……天海大僧正さんの理想と、その為に一般人を此処から退去させた行動も、他人事ではないんです」
その陽坐の言の葉に。
微かに怪訝の表情を、天海大僧正は浮かべていた。
「……? 仮に私達が此処でこの世界の行く末や我等の理想を語った所で、一般人にその情報が伝播する事は無いだろう。そして、武蔵坂の意志として、一般人には危害を加えないで欲しいと言う話も順守させた筈だ。私の無敵の思想故に、私の姿勢が軟弱で不満を持つ者達も無論いたが……その者達に関しては破門を言い渡している」
その天海大僧正の言の葉に。
(「……もしかして、この天海大僧正は……」)
――全人類がサイキックハーツ化した結果、エスパーと化した事を知らず、情報が伝播しない、|嘗ての世界《・・・・・》でも尚、どうやって灼滅者達と共存できるのかを説いている?
そう、微かな警鐘がさくらえの中で鳴り響くのを聞きながら彼は続けた。
「……貴方の言う『無敵の世界』って、どんな世界だい? 改めて聞かせて貰っても良いかな?」
そのさくらえの言の葉に。
「ダークネスや灼滅者の区別なく、強き者と和睦を結び、全てのダークネスと灼滅者達が争わず、我等の周囲に危機が及ぶことがなくなった世界。組織の長として数百年以上の時を生きてきた私としては、その組織の主として、そして私自身としても、守るべきものの為に最善を尽くすのは当然であろう。だが、その様な世界では当然、我等ダークネスにとっては息苦しいものもある。故に此度の様に、灼滅者達と争わなくとも良い教えを広める為に、ダークネス達の為にこの様な場を設けさせて頂いた」
それはつまるところ……。
(「|主《・》が作っていた、穏健派ダークネス達の駆け込み寺によく似ている、な……」)
そう思わず、くしゃり、と表情を歪める臨音の気配を背後に感じ取りながら、陽坐が少しだけ悲しそうに頭を横に振った。
「……少し残念です、ね。もし貴方が……」
――未だ、生きていたのであれば。
陽坐は先に告白した経緯の通り、自身を穏健派ダークネスによく似た、|灰色の灼滅者《・・・・・・》と定義している。
その狭間で悩み、苦しむ者達の心に寄り添い、それでも尚、当時からすれば確実に新しい未来、灼滅者とダークネスが共存する世界を――。
(「求めていたのでしょうけれども……でも、それは|今の俺達《・・・・》にとっては……」)
その陽坐の心に感応する様に。
「でも……叶わなかった……のです……」
そう堪え切れずに嗚咽を漏らした陽桜のそれを聞いて。
「……どうかしたのか?」
そう、天海大僧正が問いかけた時。
「……これは僕の勝手な想いだけれど、1つだけ聞かせて欲しい」
そうさくらえが言の葉を紡ぎ。
「ええ……私も疑問を感じましたので、お尋ねさせて頂きます」
それまでじっと天海大僧正の話に耳を傾けていた灰闢が口の端に笑みを浮かべて眼鏡を掛け直し、問う。
「貴方自身が|この世界《・・・・》に何か思う事はあるかな?」
その、さくらえの問いかけに。
「……?」
と小首を傾げて瞬く天海大僧正の様子を見て、灰闢が続けた。
「いえね、話を伺っていて、思ったのですよ。……無敵を極めるならば、更に強い存在……例えば猟兵等と組めば良いのではないですか、と」
その灰闢の的を射た質問に。
「……猟……兵……?」
そう呆然とした口調で呟く天海大僧正の様子を見ていて、耐え切れずにユウが嘆く。
「……爺さん……駄目だろ……こんな形で、還って来ちまったりしたらよ……」
――もう。
「闇堕ちよりももっと大きな力で、大事なとこが歪んでしまった……そんな姿でよ……!」
そのユウの言の葉に。
天海大僧正が何かに気が付いたのか、表情を微かに強張らせる。
「……そうか。あの時、私は……」
――確かに、|依《・》に暗殺されている。
「……既に死んでいたのに、オブリビオンになって蘇る事に気が付けない……何て事が、本当にあるのかねぇ?」
そう、ギュスターヴが微かに怪訝そうに言の葉を紡いだ時。
「……私を蘇らせる理由は無いが、私を蘇らせる手法を、あの頃の私は、六六六人衆の使者から聞かされていた。その儀式の名は……」
その、天海大僧正の言の葉に。
「……そうか。ハンドレッド・コルドロンか……!」
そう全身に滾る燃える様な怒りと共に、雄哉の全身を駆け巡るのは、深い後悔と罪の記憶。
――その儀式の対象になった者の中には――。
その雄哉の思わず、と言った叫びにそうか、と天海大僧正が寧ろ、納得した、という表情を浮かべていた。
「何かがずれてしまっている様な、その様な感覚はずっと感じていたが……そうか。私は、暗殺された後、再び|この世界《・・・・》にハンドレッド・コルドロン以外の力で蘇った……と、そう言う訳か」
その天海大僧正の呟きに。
「それが、あんたが感じている、違和感の正体だよ、爺さん……!」
そうユウがギリリ……と、|“俺”《・》の言葉を代弁するかの様に言葉を紡ぐのを聞いて。
「……であるのならば、本来、私は此処にいては行けぬ存在、という事か……」
そう何処か悄然とした口調で肩を落としつつも。
――やむを得ぬ、と言う様に戦闘態勢を取る天海大僧正の姿を見て。
「……是だけ俺達の話を聞いてくれても、矢張り俺達の前に立ち塞がるか、オブリビオン『天海大僧正』」
そう敢えて。
|オブリビオン《・・・・・・》と呼びかけながら腰に納めた黒剣を抜剣、その刀身を赤黒く光り輝かせる敬輔のそれに。
「……許しを請うつもりもない、私とて叶う事ならば生き残りたかったのだ。……まあ、この様な状況であれば私を暗殺し、新たなる道を選んだ依も恐らく既に亡き者と化しているのであろう」
――で、あれば。
「これから先を共に歩むことが出来ぬのであれば……1人の羅刹として、汝等の相手を務めさせて貰おう。灼滅者――否」
|猟兵《・・》達よ。
その天海大僧正の、言の葉が。
――会談が終わり、戦いの始まりを告げる合図となった。
●
「……道半ばにして裏切られた、倒れ逝ったダークネス……天海大僧正」
粛々と自らの本体を納める鞘に付着した返り血から流れ込む記憶で、臨音が目前の相手を確認するのを聞いて。
「全く……嫌な話だよな」
そう短く呟いたのは、ギュスターヴだ。
そのギュスターヴの目前に広がっているのは、炎上する炎の如き、炎の法力を漂わせ始めた天海大僧正の姿。
そこには自らの生を賭けて挑む覚悟を持つ、1人の|羅刹のオブリビオン《・・・・・・・・》の姿が在る。
「……その炎の様に、今の世界を燃やし尽くす可能性……その世界を変える救いの為に、故人の救いを手段にするってのはよぉ。……|que la lumière soit 《光あれ》」
そう短く主たる神への祈りと願いを込めて。
祈りを捧げたギュスターヴに導かれる様に戦場が全く間に光と清浄な空気に満ちた世界へと交換されていく。
それと同時に、亡き主へと皆の無事を一瞬瞑目して祈った臨音が、七曜五行ノ力封ジシ護符より、火と浄化属性纏った符が解き放ち。
放たれた其れが、光と清浄な空気に満ちた世界で煌めく雨の様に降り注ぎ、天海に貼り付きその体を少しでも浄化せんと。
「うっわ、やべぇ! クッソ眩しい!?」
自分で使った技ながら、光を遮るものの存在否定故か、己がsolairesで遮ることが出来ない事に気が付き、思わず自らの目を覆う、ギュスターヴ。
「……説く道が『無敵』の理由は……|嘗ての世界《・・・・・》の天海大僧正が望んだ世界だったから、か」
そう敬輔が『無敵』に対する結論を出して、全身に白い靄で覆う様にして高速移動をするのに合わせる様に。
「多分、仮に一般人にそれを伝えたとしても、情報が伝播される事は無いので、その思想が広がらないのでは意味がない、と判断していたからだろうね」
敬輔が抱いていた、今回の件が一般人のお悩み相談にならないし、乗れなかった、その理由への推測を口にした創良が光に満ち満ちた世界の中でパラパラと己が白の絵本のページを開き、そこに描かれた酸性雨についてのページを示す。
瞬間、上空から降り注ぐ光に合わさる様に白銀の酸性雨が降り注ぎ、天海大僧正の纏う、炎の法力の勢いを大きく弱めた――刹那。
「五色不動尊よ、今、此処に」
そう静かに呪印を切った天海がこの時代からは遥か遠き江戸――今は東京――の龍脈の力を辿り、12体の不動尊の姿をした法具を装備した『畏れ』を召喚する。
「って、この力……まるでご当地怪人みてーな力だなー。やっぱ完全に憎めないけれど、でもまあ、ご当地怪人程じゃないかなー」
寧ろ、こういう比較的話が出来る相手と言うのは、何方かと言えば好きな方だ。
けれども、それを倒す事にも既に麦は慣れてしまっている。
(「少なくとも……羽柴さんみたいになるのは、俺にはちょっと難しいかなー」)
ただ、どんなに話をすることが出来る相手であったとしても。
「あんたをこのままにしておけば、エスパー……今の一般人に被害が出る事は分かっている。其れは、優希斗くんがはっきりいってたから!」
その叫びと、共に。
高速で戦場を疾駆しながら大地を自らの赤黒く光り輝く黒剣を撥ね上げて斬撃の波を撃ち出す敬輔を追い抜く様に大地を蹴って飛び出し、ご当地グッズと行きがけに寄ってこれた店で芋どら焼きを頂く事で何十倍以上にも高まらせたガイアパワーを纏った麦が、天海大僧正に肉薄しようとするのに。
やらせぬ、とばかりに召喚された数体の不動尊の『畏れ』がそれを阻む様に錫杖を、或いは数珠を振るって足止めしようとするのに対して。
「くっ……!」
咄嗟に姫桜が麦と不動尊の『畏れ』の間に割り込む様に入ってその数珠と錫杖を受け止め、ギリリ、と唇を噛み締め。
「お願い、白燐蟲!」
かっ! と自らの内に宿る数多の白燐蟲達を召喚、その不動尊の『畏れ』達の動きを一時的に食い止める。
その青い瞳で見つめるのは不動尊の『畏れ』に守られ、炎の法力を自らの身に纏う天海大僧正。
(「……さっきまでの話からすると、明らかにこの敵は……」)
――|パパ《さくらえ》達、武蔵坂学園の|灼滅者《・・・》達と、比較的友好な関係を築けていたのだろう。
――けれども。
「考え事に気を取られ過ぎて、脇を甘くするのは危険ですよ、姫桜さん」
その言の葉と共に。
――天啓……|救済《死》を齎す眩いまでに美しく光輝く銀の閃光が戦場を奔る。
走った銀閃が、姫桜の白燐蟲に足止めされた不動尊の『畏れ』達の首を刎ね、或いは胴と腰を泣き別れにして瞬く間に屠っている。
「……灰闢さん」
その不動尊の『畏れ』達に|救済《死》を齎した灰闢を見ての姫桜の呟きに。
「灰闢さんの言う通りなのは分かるんだよ。でも……今回ばかりは、記録で見るより実際に対峙すればする程、私達には思う事が出て来ちゃうんだ」
そう姫桜の脇を駆け抜けながら、葵桜がリンリン、と胡蝶楽刀に取り付けられた魔除けの鈴を鳴らし。
合わせて左手の桜舞花を胡蝶額刀を振るう舞踊に合わせる様に振るえば、そこに現れたのは槍を持つ古代甲冑で自らの身を覆った古代の戦士、田中さん。
その田中さんに……。
「|あの人《・・・》の事をお願いするよ、田中さん!」
告げた葵桜のそれに応えた田中さんが不動尊の『畏れ』達から守る様に立ちはだかったその背にいるのは。
「……如何しても、戦わなければいけないのでしょうか……?」
事前に話を聞いていたにも関わらず、それでも満足に動くことが出来ず、躊躇する様子を見せている陽桜。
その、陽桜の問いかけに。
「……それは……」
知人の胸中に激しく揺れる葛藤を微細に感じ取っているのであろう。
とうに自らは乗り越えた全ての罪を背負って生きる覚悟を胸に、バサリ、と幽夜桜胡蝶を開き、そこに描き出された“夜桜に舞う幽世蝶”を構えたさくらえが珍しく言い澱む。
――その一方で。
「ユウさん!」
叫んだ敬輔の援護に頷いて。
「爺さんが不動尊の『畏れ』を大量に生み出して手数を増やすならば……俺達もそれに抗ってみせる!」
そう叫んだユウと呼ばれた青年がおどろおどろしい鬼に纏わる怪談を本気で朗々と謳いあげ。
その語る鬼の幻影が纏う、鎮魂と再生の光を持って、灰闢が撃ち漏らした不動尊の『畏れ』に纏わせてその姿を消失させ。
「はっ!」
そのまま勢いを付けて、marcherで大地を蹴りながら、腰に帯びた銀製の飾り気の無い華奢な刺突剣――Esprit blancの銘持つ、皓き虚無――その向こうより射す晧き陽光を碧き光に転身させて剣舞の足取りと共に振るい、鎮魂と再生の光にその身を焼かれていた不動尊の『畏れ』達に止めを刺した。
「……いっそ、此処がサクラミラージュとかだったら、良かったのかも知れないけれどな」
その碧き光刃に斬り捨てられた不動尊の『畏れ』を一瞥しながら、高速移動して斬撃の波を発射、朗々と法力を帯びた詠唱を始めた天海大僧正の動きを牽制しながらの敬輔の呟きに、それに追いついたユウが思わず、と言う様に表情を歪めて首肯を1つ。
「……如何言う事ですか?」
その敬輔とユウの会話が風に乗って耳に届いたのであろう。
未だ、|猟兵《・・》としては半人前故にか、満足に戦えていない陽桜のか細い呟きに、さくらえが重苦しい嘆息を一つ吐いた。
それは、ユウ……否、|この世界の“後輩”の同一存在《・・・・・・・・・・・・・》が敬輔の言葉に同意したその根底にある理由を知るが為だ。
「……陽桜さん。|異世界《サクラミラージュ》では、僕達が倒したオブリビオン……いや、あの世界では影朧って呼ばれているね……は、幻朧桜に取り込まれてその魂を転生するサイクルがあると言われている」
そのさくらえの言の葉に。
(「最も……そうやって|忘れ去られていく《・・・・・・・・》者達の在り方に疑問を抱いて、過去の過ちを忘れぬ様にと言う想いと共に行われていた長い因縁の物語もあったのよね……」)
それは、|パパ《さくらえ》も、詳しく知らない話。
その時の長く激しい転生と天秤に纏わる戦いを思い出して軽く眉根を寄せる姫桜の様子を見ながら、葵桜が軽く頭を横に振った。
「……本当に敬輔さん達の言う通りだよね。是がサクラミラージュとか、カクリヨファンタズムだったのであれば、未だ、オブリビオンだったとしても、その先に想いを託す事が出来るのに……ね」
そうそっと思い溜息を一つ吐いて頭を横に振りながら、胡蝶楽刀を振るい、大気を割って解き放った衝撃の波を天海大僧正に叩きつける葵桜。
そうしながら葵桜の|異世界の母《陽桜》と同じ|藍色の瞳《・・・・》は……自らの隣で迷う様に深く眉根を寄せていた姫桜の方を束の間、覗き込んでいた。
「……って、姫ちゃん、大丈夫? 変な感情乗せていない?」
そう葵桜が問いかけた、その刹那。
創良の銀色の酸性雨と、ギュスターヴの光と清浄な空気に満ちた世界の空気を食い破る様に、天海大僧正が光の竜と化させた法力の炎に顎を開かせ、葵桜と姫桜を包み込まんと……。
「陽坐くん!」
「させませんよ!」
それに気づいた後方から支援を続けていた創良の呼びかけに応じた陽坐が咄嗟に葵桜達の前に立ちはだかり。
「……生憎ですけれど、仲間達の邪魔はさせません! お芋のガイアパワーで、更にカリカリに焼き上げられた、カリカリの湯葉芋餃子の味、とくと味わってください!」
そう叫ぶと同時に、戦場全体に思わず動きを止めてしまう旨味たっぷりの餃子を陽坐が召喚、天海大僧正が呼び出した|顎を開いた《・・・・・》火竜と天海大僧正の口の中に放り込む。
「むごっ!?」
その思わぬ美味しさに身動きと詠唱を止めた天海大僧正に向かって。
「うおおおおおおおっ!」
その詠唱が止まる瞬間を狙っていた雄哉が素早くダッシュし、誰よりも先んじて天海大僧正の懐に潜り込み。
「ああああああっ!」
自らの姿を『肉体変異』を使ってアンブレイカブルのダークネス形態へと変身させつつ、その双腕に纏った蒼穹のオーラを纏った痛恨の100連撃を解き放つ。
1回事に下がる命中率を、死角に飛び込むと同時に、肉体変異を持って急激にアンブレイカブルと言う巨漢に変身する事で完全に不意を打つ事で補い、其の百連の拳を天海大僧正に叩きつけたその頃合いを見計らって。
「雄哉!」
跳躍し天海の上空を舞っていた臨音が己が本体――火神ノ社ノ御神刀に破邪と火属性を纏わせ、袈裟の一閃を解き放った。
紅蓮の炎の包み込まれた袈裟の一撃が、雄哉の拳によろめいていた天海の体を切り裂きそこで血しぶきを上げさせた所で。
――ゴクリ。
と、餃子を飲み込むと同時に呪印を切って増援の不動尊の『畏れ』を召喚に成功した天海に向けて。
「行くぜー! 俺の自信満々のご当地愛、二条大麦……」
その不動尊の『畏れ』達の間を擦り抜ける様にして肉薄した、おすすめ調味料を添えた焼き加減完璧餃子を平らげてガイアパワーを更に補充した麦が肉薄、がっしりと天海をホールドし……。
「――ダイナミック!」
叫びと共に持ち上げ、ボディスラムの要領で思いっきり天海の全身を光と清浄な空気に満ちた世界の中で叩き込んだ。
その一撃で154m後方迄吹き飛ばされた天海の様子を見て。
「オレの願いに応えた我が神の|愛《光》の中で、その火の|愛《光》で、仲間達をやらせるものかよ!」
そう何処か天海大僧正への憐憫を漂わせるギュスターヴのHYMNE――|人《・》が讃歌する生を揮う茨の冠型のリングスラッシャーに神の祝福と神聖なる光を宿して投擲する。
投擲された神の裁きの光纏いし光刃が、天海大僧正を続けて斬り裂き、その中でも尚、不動尊の『畏れ』達が動いて、今、瞬間的に攻撃を終えた雄哉達を襲わんとするが。
「……生憎だけれど、やらせる訳には行かないんだよね……!」
そう呟いたさくらえがばさりと幽夜桜胡蝶を今度こそは完全に振るい、そこに描かれた夜桜の花弁を幽世蝶の鱗粉に乗せて、桜吹雪と化させて吹き荒れさせた。
仲間達の背を後押しする様に吹き荒れた桜吹雪が、最前線にいた雄哉に麦、そして臨音の背を後押しし、雄哉達が更なる追撃を行うその間に。
「……ご明察の通り、よ」
そう重い息を吐いて、陽坐に礼を軽く礼を述べた後、隙が思いっきり出来た雄哉達をフォローする様に|パパ《さくらえ》の桜吹雪に背を押された姫桜が、首肯と共にその手の漆黒のバベルブレイカー……Gottin des Schicksalsからジェット杭を射出し、不動尊の『畏れ』を串刺しにした。
それに追随する様に敬輔が大気を一閃、三日月形の斬撃の波を生み出して、不動尊の『畏れ』達の足を切り裂いて止めた所に、殺気によって自らへの認識を阻害させた灰闢が、不動尊の『畏れ』達の結合点を見出し、|死《救済》を齎す銀閃で数体を屠り、屠り切れなかった数体には、黒刀を思わせる影業を駆使してその動きを妨害する。
「……これが、復活ダークネス……いえ、オブリビオンとの戦い、なんですよね……」
――オブリビオンになってしまえば、いずれ、世界の脅威になってしまう。
その事実を知らされていても尚、天海と雄哉達の戦いを決して見逃さぬ様にと言う様子でその藍色の瞳に焼き付ける様に見つめ続ける陽桜。
そんな陽桜と、その陽桜を庇う様に立つ田中さんを気遣う様に見やりながら、姫桜に続く様に走った葵桜が、リンリン、と鈴を鳴らしながら胡蝶楽刀を一閃し、再召喚された不動尊の『畏れ』達を斬り捨てて。
「そうだよね。そう言う感情を抱えちゃうのは私にも分かるよ」
――でも。
「今日の戦いはね、きっと……そう言う感情を乗せて良いのは……この世界で関わって生きている人……陽桜さんとか、姫ちゃんのお父さんとか、陽坐さん達みたいな人だけだよ」
その葵桜の諭す様な言の葉に。
「……あの様な形で、自らの時を止めて、過去の事象の焼き直しを繰り返す……そんな風になってしまった天海大僧正は……明確に、ダークネスとは違いますけれどね」
そう諦念とも悟りとも感じ取れる嘆息を零したのは、尚、対抗しようとする不動尊の『畏れ』達の口の中に、ガイアパワーによる旨味たっぷりの餃子を召喚し、その動きを食い止めていた陽坐だ。
その陽坐の言の葉に。
「ええ……分かっている。分かっているつもりよ、ちゃんと……」
そう頭では分かっていても、憂いを隠しきる事の出来ない姫桜の回答に。
「姫桜さんはきっと、とても心根が優しいんだよね。だから……僕達の仲間が自分達で選んだ道の先で起きている今の痛みを見るのが辛いんだよね」
――それは慰めの様な、優しさの様な。
嘗て|エクスブレイン《・・・・・・・》として、麦達を戦の渦中に見送る事しか出来なかった創良がそう柔和に微笑み、そっと姫桜や陽坐達の背後で励ます様に呟く。
「……創良さん」
(「……そう言えば、この人は、確か……」)
――サイキックアブソーバーを通して|予知《・・》をする事こそ出来るけれども、それ以上の事は出来ない……|エクスブレイン《・・・・・・・》と呼ばれる者達であったと聞く。
その――ただ。
(「見送る事しか出来なくて、皆が無事に帰って来るのを只、待ち続ける事しか出来ないって……どんな気持ちだったのかしら?」)
そう内心で思わず問う姫桜の様子に気が付きながらも、柔和な笑みは崩さず、その手の白の絵本から、再び白銀の酸性雨を解放する創良。
上空から再び降り注いだ白銀の酸性雨を浴びて、天海大僧正への雄哉達の一撃の手ごたえが、先程よりも遥かに|重く《・・》なった――刹那。
「見せてやるぜ、この世界に生きる者達全ての想いと、可能性の力を!」
集中力を高める様に、脳裏にこの世界に生きるもの達の想い全てを思い浮かべて叫ぶと同時に。
臨音が瑠璃石と、琥珀と、水晶の楔を解き放ち、天海大僧正の全てのユーベルコードを封印せんと解放する。
「やらせはせぬよ!」
そう鋭く返すと同時に素早くバックステップした天海大僧正が、幾度目かの呪印を切って、召喚したのは12体の不動尊の『畏れ』
呼び出されたそれらの不動尊の『畏れ』達が臨音の解き放った楔を受け止め、自らの攻撃力を減殺されながらも錫杖を振るって、臨音と、雄哉を庇った麦を吹き飛ばす様子を見て。
「ユウさん、宜しくお願いします」
呟いた灰闢が解き放った影業に合わせる様に姫桜が白燐蟲を解放し、不動尊の『畏れ』達の動きを止めた所に。
「任された!」
そのまま碧き疾風と化したユウが肉薄し、穢れなき銀の刺突剣を、天海大僧正の鳩尾に突き立てていた。
「ぐっ……!」
創良の白銀の酸性雨にその防御力を著しく減殺されていた天海大僧正がその刺突に思わずその身を傾がせた所に。
「……せめて安らかに眠ってくれよ。歪んだ……時が凍り付いてしまった今のあんたじゃ……|今を生きる《・・・・・》ダークネスを救いたくとも……救えねぇんだからよ」
そう少しだけ哀しげに呟いたギュスターヴが再びHYMNEを神聖なる|光《愛》と共に撃ち出し、天海大僧正の体を深々と斬り裂いた時。
「話を聞いてくれる、理解ある相手でも、オブリビオンは、世界の敵、なんだ。だから、私や姫ちゃんは、|猟兵《・・》として、|猟兵《・・》たる役割に……特化しないと、ね?」
そう複雑な笑みを浮かべた陽桜の|異世界の娘《葵桜》がタン、とさくらえが再び吹き荒れさせた桜吹雪に乗って飛び出して、|ユウ《・・》の隣に立ちながら、胡蝶楽刀を大上段から振り下ろし、天海大僧正の体を逆袈裟に斬り裂き血飛沫を上げさせていた。
――その血飛沫を上げ、見るだけで瀕死だと分かる天海大僧正の姿を見て。
「……天海大僧正の、おじいちゃん」
意を決した様にぎゅっ、とさくら・くるす――満開の桜の枝がそっと抱く、古き石の十字架――を握りしめて。
自分を気遣い、守ってくれていた田中さんを脇に押しやる様にして、陽桜が静かに呼びかけた。
●
「……どうかしたのか?」
無数の殴打と斬痕、火傷……数多の攻撃で傷だらけと化していた天海大僧正。
けれども……その陽桜の|おじいちゃん《・・・・・・》と言う奇妙な懐かしさを感じさせる呼びかけに、攻撃の手を止めて問い返してくる。
その声と共に、こつり、こつり、とゆっくりと歩いて天海大僧正に近づくその気配に。
――今まで、如何して、気付いていなかったのであろう。
それとも……無意識に、|演じ《・・》ていたのであろうか。
――|“俺”《・》ではなく、cinéma monochrome――何色にも染まり、何色をも持たぬ、|役者《・・》としてのユウと言う|形《・》を。
そんな事を考えた刹那、ユウの全身を纏っていた筈の碧き光が星の様な瞬きを示し、同時にその全身は総毛立っていた。
(「……陽……桜……!?」)
そんな凍り付いた表情を浮かべるユウの事等意識に無いかの様に、葵桜の隣を抜けて、何処か毅然とした態度と表情で天海大僧正に近付く陽桜。
その今の激戦の中ではあまりにもそぐわない呼称と、そして|武器を持たず《・・・・・・》に只、天海大僧正に近付く陽桜の姿に、戦場は一瞬、時を止めたかの様に動かなくなっていた。
――この光と清浄なる空気に満ち満ちた、この世界が。
「――神よ……」
そうひっそりと無意識に目を瞑り、静かに聖句を口にしたギュスターヴの祈りに背を押され、陽桜が静かに、瀕死の天海大僧正に問う。
「……あたし達は、あなたを、倒さなくちゃいけません。でも、だからこそ、敢えて聞きたいことがあります」
その、陽桜の言の葉に。
「……何だ?」
既に自分の|死《・》は免れえぬと悟っているのであろう。
只、粛然と正しく死に瀕した僧の様に問いかけてくる天海大僧正に頷き、陽桜が続けた。
「今の世界を、あなたはどう思っておりますか? あたし達が、おじいちゃんの死後、新しく作り出した、|今の世界《・・・・》を生きるあたし達への想いを、どの様に感じていますか」
――|この世界《・・・・》では、オブリビオンが死後に転生する様な、都合の良い事態は起きない。
只、敬輔やユウの言う通り、|還る《・・》だけだ。
――骸の海へ。
未だ理解がちゃんと追いついているとは言い切れないけれども――それでも。
「生きている僕達に貴方の想いを、望みを伝えてくれれば、この世界にいられない|貴方《・・》の想いを。|僕達《・・》が、貴方の代わりにその声と想いを繋いでいく事が出来る筈だから」
「彩瑠先輩、榎木さん……それは……そーっすね」
その陽桜とさくらえの呟きに。
瀕死の天海大僧正が攻撃してくる可能性に備えて油断なく気を配りながらも、そう小さく首肯したのは、麦。
「相談役は未来を良くする希望を提示するものっす。だからこそ、相談役でいられるものっす」
――過去の存在がそれを提示するってだけでも面白いのは間違いないけれども!
と思わずニヤリと笑ってしまった麦の微笑に、感じいるものがあったのであろうか。
「……|今の世界《・・・・》では、どの様な『無敵』が存在しているのだ? ……或いは、もし、私に|嘗て従った《・・・・・》者達がいるのであれば……伝えて欲しい」
――衆生救済を、と。
その天海大僧正の口から零れ落ちた小さな祈りを聞いて。
――わたしは歌う。
陽桜が藍色の双眸から小さな白い雫を零しながら、想いを籠めて歌う。
――わたしは願う。
「……っ!!」
その陽桜の……葵桜のねがいうたの|起源《ルーツ》である、|ねがいうた《・・・・・》に。
ユウが全身を総毛だたせて……無意識に数歩下がっている――否。
――|“俺”《・》が無意識に下がらせている。
「……ユウ……?」
そんなユウに怪訝そうに尋ねたのは、臨音だ。
けれどもその臨音の呼びかけにユウは何も答えず、軽く頭を横に振る。
陽桜の方は、ユウ――|並行世界の“俺”《勇介》の事等、頭にまるで無いかの様に、続けて歌を歌っている。
――あなたへと繋がる『奇跡』があるならば、いつか。
(「……気付いて、いない? いや、気付きたくない、のか?」)
|俺《ユウ》が、|“俺”《・》でない、ユウと言う|役者《嘘吐き》を無意識に演じていたのと同様に。
ユウの戸惑いと動揺を意に介することなく、響く澄んだ歌声を聞いても、尚。
癒える事の無い傷に気が付いた天海大僧正が自らの纏う炎の法力を覚醒させ、戦場全体を燃え盛る炎で包み込まんと詠唱を……。
「……もうこれ以上の抵抗は無駄だ!」
そう叫んだ敬輔が自らの纏った|少女《・・》達の力を借り受けて斬撃の波を解放する。
――ギュスターヴの生み出した光を纏い……聖光の刃と化した波の一撃を。
その一撃が、天海大僧正の体を切り裂くその間に。
――たどり着くその未来に。
「……辿り着く|未来《・・》か……」
そう、悄然と呟いた天海大僧正に向けて解き放たれたのは、100連の青い閃光を纏った拳。
「……この歌を聞いても尚、その傷が癒える事が無い貴様は、もう……」
――ただの、|世界の破壊者《・・・・・・》に過ぎない。
そう雄哉が冷たい瞳で射抜く様に天海大僧正を見つめるその動きすらも、ユウにはまるで、夢の様な出来事にしか見えていない。
「ユウ! しっかりしろ、ユウ!」
その茫然自失の様子で動きを止めたユウに必死に声を張り上げる臨音。
(「これは、確かいつも葵桜が歌っている……」)
そう内心でその歌の意味を図る様に必死になってユウに呼びかけながら考えを張り巡らせる臨音。
「……いや、そう……そうだよな」
――もし無意識で君が、そうしたい、と望むならば、俺は――否、|“俺”達《・・》は。
「思い出させるべきじゃ、ないんだ……」
嘗て、君が|“俺”《・》を糾弾した様に――。
――この歌が、祈りが、届く様に。
|“俺”達《ユウとこの世界の俺》は、|役者《嘘吐き》だから――。
そう内心で静かに誓いをユウが定めるのと、陽桜が歌い終わり、束の間の逢瀬とでも言うべき|劇《・》が|終焉《・・》を迎えた――刹那だった。
「貴方についたら面白そうだとも思いましたが……今の世では些か難しく。|今を生きる者達《・・・・・・・》にも、その遺言は伝えておきましょう」
――僧職の前で救済を宣う事自体も、烏滸がましいですしね。
そう口の端に笑みを浮かべて、|今を生きる《・・・・・》事に馴染んだ|六六六人衆の猟兵《・・・・・・・・》……灰闢が、天海大僧正に向けて、銀刃を一閃。
――其の銀光に、合わせる様に。
「貴様の行動は、この世界で生きていくと決めた、ダークネス達をも、破滅に導きかねない行動だったんだよ。だから――終わりだ」
そう敬輔が締める様に呟くと同時に白き靄――少女達の斬撃の波で、天海大僧正を跡形もなく切り払い、その最期を迎えさせたのであった。
●
――状況終了直後。
「……Amen。取り敢えず、世界を書き換えておいたのは、正解だったな……」
仲間達の間で起きていた|逢瀬《すれちがい》に気付いているのか、いないのか。
自らが交換していた、光と清浄な空気に満ちた世界を元の喜多院の姿へと戻しながら、ギュスターヴがそっと息を吐く。
「……そうだな、ベルトラン先輩」
光に満ちた世界が、普段通りの彩色へと姿を戻していく気配を感じ取った雄哉が、目前で天海大僧正が|灼滅《・・》されたのを確認し、ダークネス形態から通常の姿に戻りつつギュスターヴの言葉に首肯しているその間に。
「ええ。お陰様で、事後処理も遥かに楽になります。心から感謝を申し上げますよ、ギュスターヴさん」
そう、口元に笑窪を刻んで飄々と肩を竦めて告げる灰闢のそれに、お役に立てたなら幸いだ、と少しぶっきらぼうな調子で呟くギュスターヴの言葉を聞いて。
「あまり戦った経験がないからかも知れないけれど……改めて皆の戦いが凄まじいって事を肌で実感させて貰ったよ。きっと、あの天海大僧正は……」
――皆に、過去からのメッセージを託すことが出来たと思うから。
そう穏やかに言の葉を紡ぎながら、白い雫と共に歌い終わった陽桜の方を眼鏡の奥で気づかわしげな色を称えた青い瞳で、創良が見つめていると。
「……そう、だな。こうやって今の世界を生きる奴に、今の世界を任せてくれるんならば、俺達としても安心できるんだけれどな……」
そうそっと息を吐きながら、同じく気遣う様に陽桜と、そして最後は呆然自失していたユウを夫々に心配する様に目を配っている臨音の呟きに。
「ええ……そうね」
そのまま陽桜に寄り添う様に駆け出した葵桜をちらりと目線で見送った姫桜が一先ず同意する。
(「私は、ちゃんと……」)
――|猟兵《・・》としての役割を、果たすことが出来たのだろうか。
そう内心で僅かな蟠りを残しつつも、一先ず状況の終了を確認した姫桜がそっと点頭する様子を見て。
「……もし、天海大僧正が今でも生きていたのでしたら……灰闢さん達の様な穏健派ダークネスの取り纏め役になられたりとかしていたのでしょうか? それとも……」
そう少しだけピン、と背筋を張り、粛然とした表情を浮かべる陽坐の様子を見て。
「さーね。まー、どっちでもいーんじゃね?」
そう軽く首をコキコキ遣りながら、念のために周囲への警戒を怠らずに自分達の所に戻って来た麦が軽薄に告げるのを聞いて。
「……麦は、他人事みたいに言うね……」
そう陽坐がボソリ、と呟くのに、そりゃぁ……と麦が茶色の瞳をだらけた様に細めて。
「語り合いは好きで、他人がどー思ってたのかとかは勿論興味あるけれどもさー。結局それって他人事なんだよ。穏健派とか、何処迄が味方とか……そんな事は其々の好きにすればいい訳でさー。でもまあ、今回は……」
――是を見逃せば、自分達が責を取るべき|一般人《エスパー》達にも確実に被害が出る。
あの、自分達の選択の結果、心に深い瑕疵を負う事になった少女達の様に。
その事実から目を背けず、自分達が負える責任の範疇で……|一般人《エスパー》達を守れれば、其処迄に誰が敵で、誰が味方かと言う範疇を、態々得手勝手に付ける必要も無い。
そう言う性格なのだ、と言われてしまえばそれまでだが……。
「まあ……其れも一つの真理だよね」
|娘《姫桜》の様子が気になったのであろう。
それ迄田中さんと一緒に陽桜の傍についていたさくらえが、葵桜に陽桜を任せて戻ってくると同時に微苦笑を浮かべて相槌を打つのを聞いて。
「そういうものなんすかねぇ……」
そう陽坐が曖昧に首肯する様子を見ながら、まあ、とギュスターヴが微笑を浮かべた。
「全ては神の思し召しって奴だな。これでも一応、新米神父だ。悩みや懺悔なら聞くぜ?」
そう冗談とも本気とも取れる口調で告げるギュスターヴのそれに、陽坐がそんなものなんすね、と軽く相槌を打つその間にも。
「……何処までが敵で、何処までが味方……か」
そう雄哉が自らの両拳を強く握りしめ、じっと見つめているの気が付いたのであろう。
「雄哉。大丈夫か?」
そう心配そうに声を掛けてきた臨音のそれに、大丈夫だ、と反射的に応えようとして。
「……火神さん」
ふと、少しだけ気になった事があるのだろう。
何とはなしに雄哉が問いかけるのに、臨音がどうした? と軽く促す。
「……興味がある訳ではないのだけれど。……『無敵』って、結局、何なんだろうな」
そう誰に呟いても応えられる事の無いであろう問いをポソリ、と呟いた時。
「そうだな……。少なくとも俺にとっては、明白だ」
そう軽く、けれども譲れぬ想いを籠めて、そう告げる臨音のそれに、雄哉が思わず臨音を振り返り、怪訝そうに首を傾げて。
「明白?」
と問いかけるのに、臨音が粛然と応えた。
「そうだ。それは友や雄哉達みたいな仲間、そして最愛の人を命懸けで護り共に歩む強さだ」
――それは、ある意味ではごく当たり前の|人《・》の心理。
その|人《・》の持つ心理にして、真理の1つをヤドリガミの臨音から聞いた雄哉の脳裏に、|妻《愛莉》が過ぎった。
「……それだけで、本当に良いのかな。そんな簡単に言えるほどの強さを、僕は……」
――果たして持っているのだろうか?
そう内心で呟く雄哉の様子を一瞥して。
(「……今回の件も、雄哉さんにとっては複雑だろうな」)
そう内心で思ったさくらえが、さりげなく雄哉を気に掛ける様に見やった後。
「取り敢えず、此処からは撤収しようか。あの天海大僧正に追い出された一般人の住職を呼び戻す様な後処理もしないといけないだろうからね」
そう纏める様に言の葉を紡ぐのに。
「……同感ですね」
そう天海大僧正が消滅した後を見送った灰闢が、スレイヤーカードに武装を納め。
「ああ……そうだな」
敬輔がさくらえに同意して黒剣を鞘に納める音が、戦いの終わりを告げる合図となったのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『桜舞う場所で』
|
POW : 桜のそばでひとときを過ごす
SPD : 桜のそばでひとときを過ごす
WIZ : 桜のそばでひとときを過ごす
イラスト:羽月ことり
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
――ヒュー、ヒュー。
少し生暖かくも、冷たくも感じられる風を、猟兵達は肌に感じた。
その風に乗る様に、数輪が咲き乱れ始めた桜の花木を見ながら、猟兵達は思う。
――此度の戦いは、一先ず終わりを告げたのだ……と。
少し待てば、場所によっては既に満開の桜を見る事も出来るであろう。
或いは……桜の花々の中で風が吹けば、其れが吹雪の如く、咲き乱れ……そこに様々な想いを感じる事も出来るかも知れない。
勿論――喜多院にも桜の花は咲いているし、或いはあてもなく周囲を流離えば。
もしかしたら、思わぬ食べ歩き店舗を訪れて、其れを楽しむ事も出来るかも知れない。
桜の花がどの様な顔を見せるかも……そして、そこで何をどうするのかを感じ、それを楽しむ事が。
――全ては猟兵達が、日常に帰る、その為の報酬となるのだから……。
********
第3章は下記ルールで運営する予定です。
1.桜の花見のシチュエーションに関しては、ある程度ご自由に指定して頂いて構いません。現実の川越市の桜は、3/23時点では、数輪咲く位との事なのでそれに合わせても、或いは満開でも、桜吹雪でも問題ございません。
2.『桜の花見』が今回のテーマなので、場所に関してはご自由にして頂いても構いません。それこそ、川越市に拘る必要はございません。
3.第3章のみ、北条・優希斗も同行が可能です。もしお望みであれば、【優希斗同行】とプレイングの頭にお書き頂ければ構いません。あまり深く考えて頂かなくて大丈夫です
4.PCの実年齢が20歳未満の飲酒や、公序良俗に反する行為に関してのみ禁止です。其れに該当すると判断したプレイングは却下致します。
5.第1章で遭遇したダークネスのNPCは、登場できませんので、その天は予めご了承下さい。
――それでは、良き一時を。
ユウ・リバーサイド
【優希斗同行】
優希斗、ちょっとだけ良いかな?
俺が“勇介”でもあること
少しだけ…陽桜が自力で気づくまで(人差し指を唇に)
偽物が“勇介”の罪を掘り返しちゃダメだろ
(寂しさと安堵と懐かしさと罪の意識と『兄貴分だった情』と
最後に苦笑で誤魔化し)
頼むよ
(ここで別れる)
(信じるとか赦すとかそういう段階じゃない)
“絲”“縁”を呼び出し
抱き寄せて隅に座って桜を見上げ
(“俺”の言葉は決して届かない
それだけの事をした
陽桜達の大事な絆を奪って壊した)
(足掻いても”俺”は羅刹でしか…)
震える自分を励ますように2人が手を重ねる
ごめん、大丈夫だよ
…結局、天海を嫌いにはなれなかったよ
(逃げんなよ、“俺”
本当に殺したい程嫌いなのは
死にたい程怖いのは
羅刹という種族じゃなく“大事な人を傷つける俺自身”
ラゴウが
今も天海が教えてくれただろ)
(取り戻した筈の自分や大事な人を失う方が
希死念慮より怖いって
UDCの俺は知っている)
この手の温もりを
アリラビから連れ戻してくれた義妹や友人達を想う
(だから“俺”も、もう少しだけ気張ってくれ)
●
――その桜の咲くその場所で。
「優希斗、ちょっとだけ良いかな?」
ふと、北条・優希斗が現れたその姿を認めた、ユウ・リバーサイド(Re-Play・f19432)が問いかける。
「ユウさん、どうかしたのかい?」
そんな優希斗が何処か懐かしくも、柔和だけれども、それは決して忘れてはいけない想いを彷彿とさせる微苦笑を浮かべているのに気が付きつつも。
「頼みがあってね」
そう小声で呟くユウのそれに優希斗が静かに先を促す。
「優希斗は知っていたよね。俺が、|“勇介”《この世界の俺》でもある事」
そのユウの確認に。
そうだね、と短く首肯する優希斗にその背を押された様にユウが続けた。
「その……俺が、|“勇介”《・・》でもある事なんだけれど……少しだけ……陽桜が自力で気付くまで……」
その言の葉と共に。
そっと肩目を瞑り、自らの唇に人差し指を当てる姿を見て、優希斗が静かに問いかけた。
「ユウさんは、それで良いのかい?」
その静かな問いに、ユウが一瞬、双眸を瞑り、ポソリ、と人差し指を当てた唇から言の葉を漏らす。
「……|偽物《・・》が、“勇介”の罪を掘り返しちゃダメだろ」
そう紡いだユウの胸に灯るは、|この世界の彼女《・・・・・・・》を見た時にその胸を激しく叩いた、寂しさと、安堵と、懐かしさと、罪の意識と――『兄貴分だった情』
それ以外にも様々な言葉にならない想いが溢れて、今は未だその時ではないと言う結論に至った、ユウのそれに。
「……そうだね。|彼女《・・》がそもそも、その事に関して、如何整理を付けているかも分からないしね」
そう微苦笑と共に首肯した優希斗のそれに、頼むよ、と最後に微苦笑をしてすっ、と喜多寺を後にするユウ。
その優希斗の微苦笑には、責めや、慰めは無いが、只、そのユウ――否、|勇介《・・》の|彼女《・・》に対する様々な情の1つ――“罪の意識”への共感はあった。
そんな彼や、|彼女《・・》と別れて、駅に向かって歩き出しながら……ユウがそっと頭を横に振る。
(「……信じるとか、赦すとか、そう言う段階じゃない」)
そう思ったユウの頬を強風に靡いた桜の花弁が数枚、叩く。
吹き付けた風と花弁が零れてきた方角をふと、見やればそこには立派な桜の木。
吸い寄せられる様に其方へと歩いて、その大樹に寄り添う様に背を預けたユウが。
「……“俺”の言葉は決して届かない。其れだけの事をした。陽桜達の大事な絆を奪って壊した“俺”は……」
それは、正しく懺悔の言葉。
その自虐の念に引き寄せられる様に姿を現したのは、鮮血色の長い髪を持つ女子中学生の姿をした|絲《イト》と、怪談の中で、裏世界に閉じ込められ、右手首を失った8歳の少年|縁《エン》。
不意に現れた少女と少年が、そんなユウに寄り添う様にしているのにも気が付かず、震える儘に彼が呟く。
「どんなにあがいても、|“俺”《・》は羅刹でしか……」
そのユウの震えに気が付いたのであろう。
|絲《イト》と|縁《エン》がそっとユウにその手を重ねる様にしてきたところで、ユウは漸く自分の周りに|七不思議《絲と縁》が姿を現してくれていたのに気が付き、そっと微苦笑を漏らした。
「ごめん、大丈夫だよ、ありがとう」
――けれども。
「……結局、|天海《羅刹》を嫌いにはなれなかったよ」
そうそっと詰めていた息を吐きながら、胸中に揺蕩う様に在る|“俺”《同一世界のユウ》に只、静かに呼びかける。
(「……逃げんなよ、“俺”」)
|“俺”《この世界のユウ》が、本当に殺したい程嫌いで、死にたい程怖いのは……。
「……羅刹と言う|種族《・・》じゃなく、|“大事な人を傷つける俺自身”《・・・・・・・・・・・》だろ。それは、ラゴウが、そして今も、天海が教えてくれただろ」
そう、俺が演じる、|“俺”《・》……今、正にこの光景を見ているのであろう|並行世界のユウ《勇介》へと、静かに告げる。
「少なくとも、|UDCの俺《ユウ》は知っているんだ。取り戻した筈の自分や、大事な人を失う方が、希死念慮よりも怖いって」
それはこの手の温もりを、アリスラビリンスから連れ戻してくれた義妹や友人達への|“想い”《・・》故に。
――だから。
(「|“俺”《・》も、もう少しだけ気張ってくれ」)
そのユウの囁きと共に。
さーっ……と風が吹き、またパラパラと散った桜の花弁が、その想いを届けんとしてくれた。
大成功
🔵🔵🔵
榎木・陽桜
【真陽】
真秀さん、ご一緒ありがとうなのです!
川越の美味しいもの楽しみましょう♪
おさつチップいいですね!
バーガーの映え度はすごいですー
縁結びのプリンも食べませんか?
抹茶プリンに鯛のもなかが刺さってるらしいですよ!
食べたら誰かとご縁繋がるでしょうか
さっき、天海大僧正おじいちゃんと再会したのです
ちょっぴり悲しいご縁でしたけど
言葉と想いはこの先に繋げていくのです
(そういえば戦闘の時
武蔵坂の仲間とは異なる誰かに名を呼ばれたような気がした
縁あればまた繋がるだろうか)
真秀さんは、ご縁繋ぎたい人とかいらっしゃるのです?
(さくらえさんの息子さんの話に恋バナの予感かもと微笑み)
はいです、色々おみやげ買いましょう♪
榛名・真秀
【真陽】
陽桜ちゃんお疲れさま!
美味しいものと桜が楽しめるって聞いて来ちゃった!
川越は何が有名かな?
おさつチップはマストだね
あのちっちゃいハンバーガー可愛い!映える~!
あ、縁結びプリン?
もちろん食べるー!
ってなかなかシュールな見た目だね!
天海さんがオブリビオンに?
懐かしいというか、そんな再会もあるんだね
そうだね、そういう縁も未来に繋げていけるのかも
縁を繋ぎたい人かあ…
学生時代の友達にまた会いたいな
でもね、猟兵になってもうたくさんの縁が繋がった気がするんだ
最近ね葵桜ちゃんの方の世界のさくらえ先輩の息子さんと
たくさんスイーツ食べに行ったりしてるんだ
今日食べたものも写真に撮って…
お土産も買って帰ろ♪
●
――。
「……?」
その桜の花弁と風を受けて。
ポニーテールを風に靡かせた榎木・陽桜(ねがいうた・f44147)が、その藍色の瞳を微かに憂い気に細めた時。
「陽桜ちゃん、お疲れ様!」
その元気一杯の挨拶と、共に。
榛名・真秀(スイーツ好き魔法使い・f43950)が、パッ、と転送される様にヤッホーと手を挙げて来るのに、陽桜が微笑み。
「真秀さん、ご一緒ありがとうなのです!」
そうワクワクした様子で言の葉を紡ぐのに。
「美味しいものと桜が楽しめるって聞いて来ちゃった!」
そう同じく、ワクワク、胸を弾ませながら真秀が顔を見合わせて笑顔になるのに、はい、と陽桜が首肯した。
「ですので、川越の美味しいもの楽しみましょう♪」
そう同じくワクワクで応える陽桜のそれにそうだね! と真秀が笑顔で返事を返した後。
「そう言えば、川越だと何が有名なのかな?」
と、小首を傾げながら、真秀がスマホで検索を開始。
――しながら和気藹々と川越の雑踏へと消えていく2人であった。
●
「取り敢えず、おさつチップはマストだね♪」
店をぶらぶら、ぶらつきながら。
調査して見付けたコップに入ったおさつチップを購入し、早速ポリポリしながらの真秀のそれに。
「いいですね!」
とうんうん、と陽桜も首肯し、真秀が買ったおさつチップをシェア。
2人で笑顔で周囲をある程度見ていると。
「あのちっちゃいハンバーガー可愛い! 映える~!」
と盛られたミニバーガーを見てきゃっきゃっと笑う真秀に陽桜もニッコリ笑顔になって。
「確かに、バーガーの映え度は凄いですね~」
と頷きながら、早速バーガーショップに入って注文したミニバーガーをスマホで撮影。
更に街を歩きながら陽桜が。
「縁結びのプリンも食べませんか?」
そう同じくスマホで検索した陽桜のその言葉に。
「あ、縁結びプリン? もちろん食べるーっ!」
と、既に空になったおさつチップのグラスを片付け早速その縁結びプリンを購入してみたら。
おさつチップがぽん、とプリンに乗せられたシュールなそれを見て、わっ! と思わず声を上げる真秀。
「中々シュールな見た目だね!」
そんな真秀の感想に、因みに、と陽桜が調べた画面を見せる。
「抹茶プリンには鯛のモナカが刺さってるらしいですよ!」
と弾んだ声で告げながら、内心で思う。
(「……食べたら、誰かとご縁が繋がるのでしょうか……?」)
先程、風に乗って、誰かからの声を聞いた様な気がした陽桜が、そう興味深げに首を傾げた。
●
――そうやって一通り食べ歩きをして。
それから、先程陽桜がお勧めしていた抹茶プリンと飲み物を注文し、其れが運ばれて来た所で。
「今回、この土地の喜多院で、さっき、天海大僧正おじいちゃんと再会したのです」
そう、漸く甘いお菓子を一通り食べて、人心地付いたのであろう。
お腹もくちくなって少し落ち着いた所で、先程注文した鯛のモナカが刺さった抹茶プリンを突きながら、そう陽桜がそっと息を吐く。
「えっ? 天海さんがオブリビオンに?」
その陽桜の打ち明けには流石に驚いたのであろう。
そう思わず、という様に問いかける真秀に、はい、と陽桜が小さく首肯した。
目前の縁結びプリンを突くと揺れるその様が、何処か物悲しさを感じられるのは、果たして陽桜の気のせいであろうか。
「とは言え……ちょっぴり悲しいご縁でしたけど……」
と陽桜が天海のおじいちゃんと親しみを込めて呼び、その時に彼が漏らした言葉を思い出しながら告げるのに。
「懐かしいと言うか、そんな再会もあるんだね」
そう感心した様に同意を示す、真秀のそれに、そうですね、と微かに痛みを堪える様にして陽桜が微笑む。
「ですが、だからこそ、言葉と想いはこの先に繋げていくのです」
そう微笑を浮かべる陽桜のそれに真秀が
「そうだね、そう言う縁も未来に繋げていけるのかも知れないね」
そう深々と頷くのを見ていた陽桜の胸中に、残っているのは小さな靄。
(「あの戦闘の時、あたし、真秀さんみたいな、武蔵坂の仲間とは異なる|誰か《・・》に名を呼ばれた様な気がするのですが……是も、縁があれば繋がるのでしょうか?」)
何時か、その縁が繋げられます様に、という願いと共に、抹茶プリンを口に含んで飲み込んでから、陽桜がところで、と話を続けた。
「真秀さんは、ご縁繋ぎたい人とかいらっしゃるのです?」
その藍色の瞳に興味の光を称えた問いに。
「そうだね。わたしが縁を繋ぎたい人かぁ……う~ん……そうだな」
――学生時代の友達にまた会いたいな。
そう小さく願望を口に乗せる真秀のそれに、成程、と陽桜が首肯を1つ。
「あたし達皆、大人になって、夫々の道を進んでいらっしゃいますから、中々昔の縁を繋げる機会と言うのは無いですよね……」
と、しみじみと相槌を打つ陽桜のそれに。
でもね、と真秀が前のめりになる様にして、その茶色の瞳をキラキラと輝かせて。
「猟兵になって、もうたくさんの縁が繋がった気もするんだよね。例えば最近だと、葵桜ちゃんの方の世界のさくらえ先輩の息子さんと沢山スイーツ食べに行ったりしてるんだ!」
と、真秀が呟くのを聞いて。
「あら? あらあらあら……|異世界の娘《葵桜》さんの世界の、さくらえさんの息子さんと、ですか?」
――そこに密かに感じ取ったのは、恋バナの予感。
身を乗り出して、続きを促す陽桜のそれに、うん! と真秀が笑って頷いて。
「今日食べたものも写真に撮って……また、シェアしちゃおうかな?」
とワクワクした様子で呟くその様子に、あらあらと思わずおっとりと陽桜が笑う。
(「もしかして、もしかしなくてもそれって……」)
等と気になる事は気になるが、どうにも未だその人は、真秀には、恋の相手とは見られていないか。
(「それとも……?」)
と、此処で。
「あっ! お土産も買って帰ろ♪」
そう鼻歌交じりに呟く真秀のそれに。
「はいです、色々お土産買いましょう♪」
そのお土産が誰のものになるのか、はたまた真秀のお腹の中か。
それは未だ誰にも分からないけれども……。
それでも、2人は笑顔でお土産を買って、意気揚々と川越市を後にするのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榎木・葵桜
【桜輪】
輪と小江戸川越の食べ歩きするよ!
え、引っ張り出された理由がわからないって?
あれだよ、こっちの世界の思い入れとかはこっちの人達同士でがいいかなって
姫ちゃんは優希斗さん達と話したそうだったし
陽桜さんは友人さんと過ごすみたいだし
私は普通に散策する気満々だけど
一人じゃ寂しいから道連れを!
輪なら付き合ってくれるでしょ?(にこ!
菓子屋横丁もいいけど
グルメ施設のあれこれも美味しそうだよ!
ほら見てこの串刺しのちっこいハンバーガー!
カラフルで可愛いよね!
はい、あーん…って、入らないって?
しょーがないな、私がお手本みせるから食べさせてー(口開けねだり一口でパクり
うん、おいしい!
(むぐむぐした後満足げに笑み
影見・輪
【桜輪】
食べ歩きはわかったけど
僕が引っ張り出されている理由がわからないんだけど
(一人散策が寂しいならそれこそ誰かに同行すればいいのにと思うが
「付き合ってくれるでしょ?」の笑顔に抗えない自分がいるのもまた確か)
(渋面浮かべるも
全く気にせずの葵桜にぐいぐい引っ張られ
ていうかどれだけ買うのさ…って、グルメ施設?
ここまで食べておいて、君さらに食べるの?
(出されたのは
手のひらサイズミニバーガー6個の串刺し+ポテトのセット
いやいや、一口のレベルじゃないって
(食べさせてには串刺しのバーガー1つを差し出し
一口でぱくりとする様はまるで雛鳥のようで
まぁ、おいしいならいいけどね
(満足げな笑みに苦笑しつつも付き合って
●
――さて、一方その頃、小江戸川越の入口では。
「ええと……何で僕が引っ張り出されている理由が分からないんだけれど?」
その顔に人懐っこい笑みを浮かべながらも、そう、思わず怪訝そうに声を上げたのは、影見・輪(玻璃鏡・f13299)
その輪の問いかけを聞いて。
「さ、食べ歩きだよ、食べ歩き! 輪と一緒に食べ歩きだよ!」
と、笑顔でウインクを決めて、輪に告げたのは、小江戸川越に輪を連れてきた張本人たる、榎木・葵桜(桜舞・f06218)
そんな葵桜の様子を見て。ええと、と人懐っこい笑みを困惑に変えて。
「食べ歩きは分かったんだけれどね。でも、何で僕が引っ張り出されているのかなって」
そう輪が問いかけるのに、ええっ? と物凄く意外そうに声を上げて。
「あれだよ、こっちの世界の思い入れとかはこっちの人達同士でが良いかなって。姫ちゃんは優希斗さん達と話したそうだったし、陽桜さんは友人さんと過ごすみたいだしさ! まあ、私は普通に散策する気満々だけど、1人じゃちょっと寂しいじゃん!」
そう一気に捲し立てる様に告げる葵桜のそれに、いやぁ……と、内心で突っ込みを入れる輪。
(「一人散策が寂しいならば、其れこそ誰かに同行すれば良いんじゃないかなぁ……?」)
とは、正直輪は思い、其れが気持ちに出て渋面になるのだが。
「でもでも、輪なら付き合ってくれるでしょ?」
そうニコッ! と笑顔で問いかける葵桜のそれに。
「……まあ、良いけれどね」
抗えずに頷いてしまう自分が居るのも確かなのだと感じる輪を引き連れて、小江戸川越の中に入っていく葵桜であった。
●
「菓子屋横丁も良いけれど、グルメ施設のあれこれも美味しそうだよね!」
そうはりきって問いかけられながら、ぐいぐい葵桜に引っ張られている輪。
「……って、グルメ施設?」
思わず、そう疑問を投げてしまう輪が見ていたのは、菓子屋横丁のお菓子を一通り平らげた所で、グルメ施設に向かう葵桜の表情。
楽しくて楽しくて仕方がないとばかりに笑顔を浮かべている葵桜の様子には、流石に抗いがたい何かがあるのだが……。
「此処まで食べておいて、君、更に食べるの?」
そう思わず、と言った様子で疑念を口に出す輪だったが、当然取り付く島もなく、グルメ施設に入っていき。
「ほら見て、この串刺しのちっこいハンバーガー!」
そうびしっ、と葵桜が輪に向けて突き出して見せたのは――手のひらサイズミニバーガー6この串刺し+ポテトのセット。
「いやいや、一口のレベルじゃないって」
と輪が思わず突っ込みを入れるが。
「はい、あーん……」
とその一口(?)バーガーをあーんで輪の中に入れようとする葵桜の様子を見て。
「いやいや、入らないって、それは」
と輪が冷静に指摘をしてくるので。
「しょーがないな、じゃあ、私がお手本見せるから食べさせてー」
と、口を開けておねだりをする葵桜の姿を見て。
「それじゃあ……はい」
と、輪が串刺しのバーガー1つを差し出すと。
――パクリ!
と、本当に一口で食べてむぐむぐとそれを飲み込もうとする葵桜の姿はまるで雛鳥の様で……。
「うん、おいしい!」
と飲み込んだ後、満足げに笑んで頷く葵桜の様子を見て。
「まぁ、おいしいなら良いけれどね」
と思わず苦笑を零す輪に向けて。
「それじゃあ、今度は輪の番だよ。はい、あーん!」
とお手本を見せ終えた葵桜が差し出したバーガーを。
仕方ないなとばかりに飲み込み、もしゃもしゃと咀嚼をし、飲み込む輪なのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
摩津崎・灰闢
天海があのような方とは想定外でした
私よりも穏健派としての才能がありそうだというのに、骸の海と繋がっていては台無しだ
喜多院を離れる際、蕾が綻び始めた桜を見遣る
流石は桜の名所、風情があります
…そういえば、この季節に私は自由になったのでしたね
直近の出来事を思い返す
他人の命を救う為なら身を賭し、敵であろうが心を砕く
苦しみすら抱え続ける在り方が、私の理解の外である事には違いない
尤も、そういった思考は|奴《元人格》を通して知っているので、理解不能と断ずる程ではありませんが…
今後も気を引き締めて穏健派をやらねばなりませんね
桜から視線を外し、職場に向かう為のタクシーをスマホで呼ぶ
さて、今宵も仕事と参りましょう
●
――喜多院を後にしようとした所で。
「……天海があの様な方とは想定外でした」
そう口の端に微笑を浮かべた摩津崎・灰闢(済度無相・f43898)は驚愕を隠す事も出来ずに息を吐いていた。
(「正直に言えば、私よりも遥かに穏健派としての才能がありそうだったと言うのに……」)
――骸の海と繋がっていては、全てが台無しだ。
そう内心で呟き軽く頭を横に振った灰闢が何気ない調子で金色の瞳を隠す様に付けた黄色のレンズのサングラスを通して見やるのは、蕾が綻び始めた桜の花だ。
「流石は桜の名所、風情がありますね」
ふと、そう呟いてみて、在る事を思い出し、思わず微笑を綻ばせる灰闢。
「……そう言えば、この季節でしたね、私が自由になったのは」
――最初に自由になった、と言うべきであろうか。
それは、|奴《元人格》が、二度目に闇堕ちし、|灰闢《ユウマ》と化した時の事。
(「あれは、既に13年以上前の事、なのですね……まあ、悪霊として私がこの世界に舞い戻る事になると思っていた者が、今、どの位いるのでしょうか、とは思うのですが」)
内心でそう呟いた灰闢が思わず微笑を深めてしまう。
――確かにあの頃なのだ。|灰闢《ユウマ》と言う名の花が綻んだのは。
その過去に想いを馳せたその後には、直近の自分が灼滅者や|異世界の猟兵《・・・・・・》達と共に関わる事になった事件を改めて思い起こす。
それは……。
「……他人の命を救う為なら、身を賭し、敵であろうが心を砕く、皆さんのその姿」
その苦しみすら抱え続ける在り方が、本来は|私《・》の理解の外で在る事には違いないのだけれども。
(「尤も、そう言った思考は|奴《元人格》を通して知っているので、理解不能と断ずる程ではありませんが……」)
ともあれ、|今《・》の灰闢は。
「今後も気を引き締めて穏健派をやらねばなりませんね。|彼《・》の様に私達|ダークネス《・・・・・》を憎み、恨んでいる者はまだまだ|今の世界《・・・・》にもいるでしょうからね。寝首を掻かれて、折角振舞に慣れて、謳歌し始めている|今の世界《・・・・》から退場と言うのも、面白くはありません」
そう口の端に深き笑窪を刻んで。
蕾が綻び始めた桜から視線を外し、慣れた手つきで黒色のスマホで|職場《ホストクラブ》に向かう為のタクシーを呼び出す灰闢。
――さて。
「今宵も|仕事《ホスト》と参りましょう」
そう笑って、誰もいない空間で恭しく一礼し、|可偉斗《カイト》と化した灰闢の前に、1台の黒いタクシーが止まり。
――|夜の世界《・・・・》へと灰闢を誘うのであった。
大成功
🔵🔵🔵
有城・雄哉
ソロ希望
北条先輩同行希望
アドリブ大歓迎
…メンタル的には色々かき回されたな
少し、桜を眺めていきたいところだが…できれば猟兵達がいない場所がいいな
(※というわけで、場所はお任せしますby背後)
近くで適当にコーヒーを買って
桜を眺めながら物思いにふけろう
世界のかたちが変わったとしても、自然の在り方は変わらないものだな
今回の一件で
過去に|留まり続ける《・・・・・・》のが復活ダークネスだとはわかった
今を生きたいと願うダークネスとの|共通の敵《・・・・》だということは…認めるしかなさそうだ
…だが、それでも
この世界のどこかには、牙を隠して生きているダークネスもいるだろう
もし、この世界から復活ダークネスが一掃される日が来ても
彼らはそのまま、牙を隠し続けているだろうか?
…これは誰も答えられない、問だと思う
だから僕は、自分がそこまで強くないとわかっていても
隠しきれない闘争心とダークネスへの復讐心
そして世界を今の在り様に変えてしまった責を胸に
これからもダークネスを狩り続ける
…復活かどうか、関係なくね
●
――一方、その頃。
「……メンタル的には色々掻き回されたな……」
そう、先程タクシーで去っていった猟兵がいたその場所に、有城・雄哉(蒼穹の守護者・f43828)が軽く頭を抱えながら姿を現す。
そっと嘆息してその蕾が咲き始めた桜の花を眺める様に、どさり、とその場に腰を下ろした時。
「お疲れ様、雄哉さん。まあ、自動販売機のやつだけれども、是でも飲むかい?」
そう微笑を称えて、珈琲を差し出して来たその人物の姿を認めて、珈琲を受け取りながら、雄哉が苦笑を零す。
「北条先輩……昔から思っていたけれども、何でまあこうもタイミング良くそういったものを出せるんだ?」
そう問いかけながらも珈琲を受け取った雄哉を見て、まあ、と北条・優希斗が肩を竦めた。
「俺にも色々あるんだよ。雄哉さんには話した事もあるだろう?」
そう微苦笑を称えて問いかけられれば、雄哉が苦笑を零さぬ訳にも行かず。
そのまま隣に座った優希斗と一緒に、頭上の蕾が開き始めた桜の花を何とはなしに眺めながら、雄哉が思わず呟いた。
「世界の|かたち《・・・》が変わったとしても、自然の在り方は変わらないものだな」
その雄哉の呟きに、優希斗がそうだね、と静かに相槌を打ち、左手に持っていた珈琲を一杯。
特別に何も話をしてこないのは、恐らく雄哉の内心をある程度読み取っているからだろう。
――実際。
「……今回の一件で、嫌と言う程思い知らされたよ。過去に|留まり続ける《・・・・・・》のが、復活ダークネスなんだってこと。あの在り方は……正直、|今を生きたい《・・・・・・》と願うダークネスとの|共通の敵《・・・・》だという事は……認めるしかなさそうだって事もね」
そう呟く雄哉のそれに。
「そうだね、雄哉さん。ダークネスとオブリビオンは明確に違う。|在り方《・・・》の違いがね」
そう確認の様に呟く優希斗のそれに、そうか、と雄哉がそっと嘆息を一つ零した。
「……北条先輩は、最初から何となく分かっていたんだな。北条先輩の事情は聞いたことがあるけれども……北条先輩は、ああいう存在と、既に僕達よりも長く対峙を続けているんだものな」
その雄哉の確認に。
「其の辺りは人によると正直、思うよ。今を生きている穏健派ダークネス達の多くと、|復活ダークネス《オブリビオン》の違いは何処にあるのか……なんて事を考えるのはそれこそその人次第、だからね」
そう微苦笑を零して被りを横に振る優希斗のそれに。
「……でも、それでも。この世界の何処かには、牙を隠して生きているダークネスもいるんだろうね」
そう確認の様に呟く雄哉のそれに、優希斗が恐らく、と小さく息を吐いた。
「……そうかも知れないし、そうでないかも知れない。いると断言するには情報が少ないし、いないのであれば、彼等が事件を起こすのであれば、今ならばグリモアで掴むことが出来る情報にもなり得るだろうとは思うしね」
その優希斗の説明に。
雄哉が、自分の、嘗て家族と住んでいた家の鍵の形を模したグリモア、『グリモア・ホームキー』にちらりと目を落とし、そっと嘆息を一つ付く。
(「……そうか。是でそう言った情報を掴むことが出来るのか。グリモアベースとやらが機能している限りは」)
――で、あるのならば。
「もし、この世界から復活ダークネスが一掃される日が来ても、彼等はそのまま、牙を隠し続けているだろうか?」
そう、小さく雄哉が呟くのを聞いて。
優希斗が何かを言うよりも早く、いや、と雄哉が頭を横に振った。
「……多分。これは先輩にも誰にも答えられない、問だと僕は思っている。だから……僕は」
――自分が、そこまで強くないと分かっていても。
「隠しきれない闘争心とダークネスへの復讐心、そして世界を今の在り様に変えてしまった責を胸に、これからもダークネスを狩り続けたい。……復活かどうか、関係なくね」
その雄哉の言の葉に。
「其処は変わらないね、雄哉さんは。でも……そうだな。|灼滅者《・・・》の皆が、|今の世界《・・・・》を、今の在り様に変えてしまった責を胸に、と言うならば……」
――寧ろ。
「穏健派ダークネス達の在り方は知っておいた方が良いかも知れない、とは俺は思うね」
その優希斗の思わぬ一言に。
「……如何言う事?」
意外な事を言われた、と思ったか、思わず問いかけた雄哉のそれに優希斗が軽く頭を横に振り、静かに続けた。
「つまり今の在り様の中でこそ、育まれて来た絆もあるのは忘れちゃいけないって話だね。それは、ダークネスとエスパーの間に生まれている絆、灼滅者がダークネスと家族になったと言う絆の話もある。これらは、|今の世界《・・・・》に至ったからこそ生まれた絆だ。皆は変えてしまったと言うけれども、|変わった世界《・・・・・・》だからこそ、その先に繋がった未来の絆もあり、そのお陰で前に進むことが出来る様になったと幸福を喜ぶ人達もいる。……変えてしまったことに対する責や罪は、元々武蔵坂学園と言う|組織《・・》として願った代償であり、それを背負うべきはその選択を皆にさせた俺達にもある。まあ……要するに1人で全てを背負い込む必要はないと……そう言う話だよ」
そう途中から微苦笑を浮かべた優希斗の説明を聞いて。
「……善処はする様に努力はするよ、北条先輩」
そうそっと首肯する雄哉のClear blue-sky Shieldが、忘れないで、と言う様に淡い蒼穹の光を放っていた。
大成功
🔵🔵🔵
館野・敬輔
他者絡みアドリブ大歓迎
優希斗さん同行OK
指定UCは演出(ネタ)
せっかくだから、川越市内で桜を見られる場所に行きたいな
他に行く人がいたら一緒するよ
(何やら黒剣に宿る魂の少女たちがはしゃいでいる…)
…ってえ?
川越市に菓子屋がたくさん並ぶ横丁があるから、行ってみたい?
君たちさぁ…どこからそんな情報仕入れて来るの?
まあ、だったら横丁で駄菓子を仕入れてから花見にいくか
(そして横丁で買い物かごにガンガン入っていく大量の駄菓子)
…ってだから君達、お金出すのは僕なんだけどな!?
桜の名所で買ってきた駄菓子をつまみながら、先程の戦いを振り返る
今回、交戦した天海大僧正の反応が
|復活ダークネス《オブリビオン》として蘇ったダークネスのひとつの姿かもしれないと改めて感じたからな
一見すると種としての未来を考えていたようだけど、同時に過去を焼き直しているようにも見えて
それは他世界のオブリビオンには見られない行動で、ちょっと驚いたかも
…その行動が、世界を破滅に導こうとしてしまうのは…やはりオブリビオンゆえ、かな
宮儀・陽坐
なんてことだ…!
衝撃を受け立ち尽くす
川越といえば食べ歩きで盛り上がっていると聞いてはいたけどこれほどとは
…天海大僧正は立派な方でした
あんなに手厚く送ってもらえるのも納得ですし
“生きていれば”今なら仲良くできたでしょう
共闘した皆さんの想いを聞けて半分怪人は感動しました
まあでもそれはそれ帰り道にはご当地研究でしょう!!
頭を切り替え食べ歩きを楽しみます
あらゆるメニューがドリンクカップに入っていて持ち歩きやすい!
カレーやうどんまでも一食分の量の常識に囚われずカップサイズで…形を保てないピザもカップで…
座席が無い不利が楽しさに変わっていく
こんな風に新しい挑戦がしたい!
食べ歩きの工夫には串物や紙で包む等があると思いますが箸で食べるメニューには難しく揚げ餃子ならスナックのように扱えますが焼き餃子についてはバーガーで挟むとか餃子ドッグのような餃子風の亜種に変えざるとえないところがあり改良をしていかなければ(うんぬん以下略
持ち歩くカップに桜の花びらが此方を見ろとばかりに降ってくるけど
すみません今忙しいんで
●
――さてはて、更に一方、その頃。
「なんて事だ……!」
そうフルフルと震える宮儀・陽坐(いつも心に餃子怪人・f45188)
その先程の戦いでもだった気がするが、何やら凄まじく衝撃を受けて震えている陽坐の様子を見て。
「ええと……大丈夫かい、陽坐さん」
そう館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)が流石に心配そうな表情を浮かべて問いかけた、その時。
「川越と言えば食べ歩きで盛り上がっていると聞いてはおりましたけど、これ程とは……!」
と、続けて乾坤一擲とでも言わんばかりの叫びを魂の奥底からしていた陽坐のその様子に。
「うん、そうだね、川越は食べ歩きで盛り上がっている……ってえぇ、そっち!?」
と、思わず突っ込み体質になった敬輔が叫ぶのに。
(「うんうん、そうだよ、お兄ちゃん」)
(「特に川越には、菓子屋が沢山並ぶ横丁とかがあるんだよ」)
と、敬輔の黒剣の中の『少女』達が嬉々としてそんな敬輔に呼びかけるのに。
「そうです。そうです! よくご存じですね、敬輔さん! それならば是非とも一緒に食べ歩きを……!」
と、何時の間にか敬輔の体に纏われた白い靄の意志を通して口火を切っていた敬輔のそれに、陽坐が目を輝かせて熱弁するのに、敬輔の纏う白い靄の少女達がキャッキャッとはしゃいでいる。
「……と言うか。陽坐さんのそれはもっとシリアスな悩みかと思ったけれども……」
と、先の戦いでの陽坐の言葉を聞いていたのだろう。
尋ねた敬輔のそれに、少しだけ調子を抑えて。
「……確かに、天海大僧正は立派な方でした」
そう目頭を押さえて呟く陽坐のそれに。
「うん、そうみたいだね」
と、敬輔が相槌を打つのを聞きながら。
「ですからこそ、あんなに手厚く送って貰えるのも納得ですし、もし、今でも“生きていれば”、仲良く出来たとも思います」
それに、と陽坐が更にその藍色の瞳に燃える様な熱――漫画とかだと炎が浮かびそうな光を目に称えて続ける。
「その上で、共闘した皆さんの想いも聞けて、半分怪人は感動したのです。でも!」
――いや、半分怪人だからこそ。
「それはそれとして、帰り道にはご当地研究でしょう!」
と矢張り熱く語る栃木宇都宮ご当地怪人兼、宇都宮餃子怪人として嘗て、『盟主』候補に選ばれた陽坐の熱意を聞いて。
「な……成程。ま、まあ確かにそれはそれ、これはこれだよね……」
と敬輔が無難な返事を返すその先で。
「そうだよ、そうだよ、お兄ちゃん!」
「それはそれ、これはこれだよ、お兄ちゃん!」
と、敬輔の口を借りて『少女』達が異口同音に告げるのを聞いて。
「さあ! では一緒に行きましょう! ありとあらゆるメニューがドリンクカップに入っている川越市の食べ歩きへ!」
と、陽坐が叫ぶのに。
「おーっ!」
と敬輔の口を借りる少女達の叫びを聞いて。
(「と、取り敢えずお財布が大変な事にならない事を祈ろう……」)
と、そっと誰にも聞こえない嘆息を零す、敬輔なのであった。
●
――江戸川越に向かうその途中で。
「やはり、川越の食べ歩きは他の食べ歩きとはまた違う! カレーやうどんまでも一食分の量の常識にとらわれずカップサイズで……」
と宇都宮の餃子店PR動画の幻影を自らに纏わせ、宇都宮餃子や栃木の名産の紹介を続けながら、カップに入ったうどんを啜り、グルメレポートを口にする陽坐。
「……って、このカップに入っている食べ物は何だろう……?」
と敬輔が、陽坐が買って来たカップに入っている、明らかに形を保てていない食べ物を見て小首を傾げると。
「それはピザです!」
と、応える陽坐のそれに、敬輔がええ!? と思わず目を見張る。
そんな一幕等もありながら、無事(?)に江戸川越に辿り着いた敬輔の口から飛び出したのは……。
「さあ、此処からだよ、お兄ちゃん!」
「ピザやうどんも良いけれど、川越名物を味わうには江戸川越が一番だよ!」
と、少女達が口々に陽坐に告げるのを聞いて。
「おおう、そうですね! 確かに、名物のさつまチップや、芋けんぴに割せんべいに、芋饅頭、此方も又目を離せないデザートが沢山ありますね! ではでは、少しばかりお菓子で箸休めをして、それからグルメ施設に突進と洒落こみましょう!」
と激しく同意する陽坐のそれに、敬輔が諦めた様な遠い目になる。
(「ええと……何だろう、この微妙な疎外感……いや、まあ、その後に花見に行けばそれで良いんだろうけれども……」)
最早こうなった『少女』達と陽坐を止める事は不可能だと悟った敬輔がある意味では悲壮な覚悟を定めた時。
陽坐が次々にカップ入りのさつまチップ等を摘まむ一方で、見る見る内に敬輔の両手で怪力を発動しなければ、抱えきれない程の大量の駄菓子が……。
「……って君達、お金出すの、僕なんだけれどね!?」
と、思わず自らの纏う少女達に突っ込みを入れる敬輔に。
「大丈夫、大丈夫だよ、お兄ちゃん」
「多分、優希斗のお兄ちゃんに領収書渡して、お願いすれば武蔵坂学園に経費扱いで申請してくれるよ」
と、少女達が口々に告げるそれを聞いて。
「って、君達なんで、そんな事知っているの!? 経費云々なんて話初耳だけれども!?」
という、敬輔の細やかなしかし至極真っ当な突っこみなんてなんのその。
「もしゃもしゃ……ああ、この素朴なサツマの甘味も良いですね……うどんやピザで膨れた腹に優しく染み渡る……」
と盛り盛りカップ入りの縁結びプリンを頂いて、少しばかり幸せそうな表情を浮かべた陽坐が。
「さて! それでは敬輔さんと少女さん、次はグルメ施設に行きましょう!」
と言う陽坐の気迫に飲み込まれて。
そのまま、あれよあれよと言う間にグルメ施設に向かう敬輔達。
――そして。
「やはり、こんな風な新しい挑戦がしたいです!」
そう叫びながら、宇都宮の餃子店PR動画の幻影を体に纏わせている陽坐のそれに、今度はミニハンバーガーを食べながら敬輔が苦笑を零して。
「ええと……どんな?」
と、合わせるのが一番という様に先を促すのに、それは! と陽坐が熱く語った。
「食べ歩きの工夫には、このミニハンバーガーの様な串物や紙で包む等があると思いますが、箸で食べるメニューには難しいのです。いや、是が揚げ餃子とかならスナックの様にも扱えますが」
そう敬輔に宇都宮餃子のPR動画を見せながら、得々と語る陽坐のそれに、な、成程、と終始圧倒されっぱなしの敬輔が首肯する。
(「いやまあ、確かに陽坐さんがさっき呼び出していた餃子、逸品で体力回復したりできたけれどさぁ……」)
とまあ、実は戦闘中に陽坐が召喚したおすすめ調味料を添えた焼き加減完璧餃子の支援を受けていた敬輔がしみじみと呟く。
「とは言え餃子についてはバーガーで挟むとか、餃子ドッグの様な餃子風の変えざるを得ないところもありますので、矢張り改良をしていかなければ……」
と早口で捲し立てながら、カップに入っていたミニハンバーガーの刺さった串をパクリと放り込む陽坐。
そんな陽坐のカップの中にハラリ、ハラリ、と桜の花弁が舞い落ちて来るが。
「すみません、今、忙しいので」
と降って来た桜の花弁を除ける陽坐に苦笑しながら、敬輔が今、陽坐のカップに風に乗って入り込んだ桜の花弁が舞って来た方角を見やると、其処には立派に咲き誇った桜の花が。
その見事な咲き誇りを見せるその桜の花を見て、ふと、敬輔はそっと頭を横に振った。
(「……今回、交戦したオブリビオンの天海大僧正の反応は……今まで見てきたオブリビオンとは違う……如何にも|この世界《・・・・》の|復活ダークネス《オブリビオン》の独特な特徴という形に見えたな……」)
――それもまた恐らく、|復活ダークネス《オブリビオン》として蘇ったダークネスの1つの姿なのかも知れない。
それは、一見すると、主としての未来を考えている様に見えるけれども――でも。
(「同時に、過去を焼き直している様にも見えた。確か……ジークフリート大老とかもそんな感じだった気がするけれども」)
それは、嘗て敬輔が仲間達と共に戦ったオブリビオン。
けれども彼等の行動は、やはり|他世界《・・・》のオブリビオンには見られない行動で――だからこそ。
「……正直、ちょっと驚いたんだよね。でも……」
――その行動が、世界を破滅に導こうとしてしまうのは。
「……やはりオブリビオン故、なんだろうな」
その敬輔の呟きは。
再び吹いた風と桜の花弁と共に……煙の様に、江戸川越の喧騒の中に紛れて消えた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
橘・創良
【🌾📖】
川越…小江戸って呼ばれるくらい風情があっていいよね
うん、桜が咲くと春が来るんだなって実感するよね
川越はさつまいもスイーツが定番なんだね
お花見にはお団子も
味噌味の黄金だんごや小江戸メンチなども買い込んで
おさつチップを食べながら麦くんと散歩
それにしても過去の敵が蘇ってくるなんてね…
みんなには過去の経験があるから戦いにくかったと思うよ
でもダークネスとオブリビオンは根本的に違うものなんだろうね
麦くんの昔話には口を挟まず耳を傾けて
確かにあの頃の学園は穏やかなものじゃなくて
去っていく仲間の後ろ姿を見送るしかできないことも
そうだねあの頃はいろいろあったから
麦くんや戦ってくれていた灼滅者のみんながひどいなんてことはないよ
でも、そんな葛藤の中戦ってくれていたんだね
僕だっていつも戦場に送り出すだけで申し訳なく思っていたから
それぞれが出来ることを全力でやって
それで良かったのかなって今は思えるよ
そう言ってもらえると僕たちも救われるよ
こちらこそありがとう
もちろんこれからもよろしくね
お酒は人並みかな?
高沢・麦
【🌾📖】
喜多院の帰りに創良くんと川越さんぽ!
あの枝咲き始めてる、あの木もそろそろ
なんて言いつつ芋チップスに芋ドリンク…
気になるもん片っ端から食べ歩き
天海大僧正が状況理解できる奴でマジで助かったー
仲良くしたい態度貫かれたらもっと辛かったじゃん
俺はともかく他の皆がさー
…桜、一緒に見たかった友達たくさんいてさー
同盟とか裏切りとかどの勢力潰すとか言ってた頃さー…
俺は…
友達が学園の不満を表明しながら離れてくのが悲しかったし怖かった
ダークネスに対する意見なんかいくらでも譲るから残ってほしかった
だから俺の軸は一般人に絞ったけど
話せる一理ある敵とか倒すとやっぱちっとは俺ひでえ奴かもって反省する訳で
ま、ひでえ奴だろうが偽善野郎だろうが他人の評価がどーでも今の生き方はブレねーけど…
でもね、創良くんとか優希斗くんとかが一般人を助ける案件って明言してくれると俺がどっか救われる感覚あるんだ
間違ってはいないんだなって
だからさ、いつもありがと!
照れ笑いつつ
なんか柄にもねーなー
創良くんて飲めんの?この後飲みいかね?
●
「あ、創良くん、あっち見て、あの枝咲き始めているよー、あの木もそろそろだろうなー」
蕾が開き始めた桜の木々を見つめた高沢・麦(栃木のゆるゆるヒーロー・f45122)が、そう喜多院を出てお散歩しながら、その茶色の瞳を細めて告げるのを見て。
「そうだね。もう少しで満開になるんだろうね。でも、流石は川越……小江戸って呼ばれる場所だけあって、咲き始めた桜を見ながら歩くだけでも、風情があっていいよね」
と微笑を浮かべて、柔らかい麦に相槌を打つのは、橘・創良(静謐の泉・f43923)
そうして、咲き始めた桜の花を見つめながら。
「うん、やっぱり桜が咲くと春が来るんだなって、実感できるね」
そう柔和な笑みを浮かべて首肯する創良の所に、ほい、とカップに入った芋チップスを手渡す麦。
「麦くん、これは?」
「ああー、これ、芋チップス。それから芋ドリンクもあるから、後で一緒に買いにいこーぜ」
創良の質問に、創良に芋チップスのカップを渡して空いた左手で頬を掻きながら笑う麦。
そんな麦の言の葉に。
「そうか……川越はさつまいもスイーツが定番なんだね」
「うん。そー言う事だよ。後、食べ歩きがしやすい様に、カップに入っているのも特徴―。まあ、是は|彼奴《陽坐》からの受け売りだけどー」
きっと今頃あの弟分は、食べ歩きを満喫しているだろう、と思いながら自分も目に留まった昔ながらの芋ケンピや、さつまいもジェラート等を買い込む一方で。
「あっ、創良くん、そっちはお願いしてもいいかなー?」
と、麦が問いかけるのに。
「うん、僕の方は大丈夫だよ」
と微笑んで頷き、芋チップスを平らげた創良が購入したのは、味噌味の黄金団子。
2人で分けて食べて、続けて小江戸メンチ等も購入している内に、川越の菓子屋横丁方面の方に向かう、新河岸川沿いの桜並木が何となく目に留まり、人に迷惑を掛けない様に、少し足を止めて、その咲き始めの美しさに創良が思わず見惚れていると。
「天海大僧正が状況理解出来る奴でマジで助かったー」
そう、創良が購入した小江戸メンチを口にしながら、朗らかな笑みを浮かべてそっと胸を撫で下ろし。
それから芋ドリンクを飲む麦を見ながら、創良がそれにしても、と軽く頭を横に振る。
「過去の敵が蘇って来ているんだものね……況してや、|皆《・》にとっては、過去の経緯や経験もあるから、戦いにくかったと僕も思うよ」
その創良の相槌に。
「本当だよー。俺は兎も角、他の皆がさー。仲良くしたい態度貫かれ続けたらもっと辛かったのは間違いないし」
――特に、|友達《真秀》と一緒に、遊びに行っているであろう、|彼女《陽桜》の様に、あの頃から、何時かの共存を夢見たり、或いは……。
ふと、その時の感傷が古傷が疼くかの様に胸に過り、俺さー、と麦が息をそっと零す。
「……桜、一緒に見たかった友達沢山いてさー。同盟とか、裏切りとか、どの勢力潰すとか言ってた頃さー……」
その麦の昔話は、口に出してこそ、気持ちの整理が付く事なのだろう。
だから、何も口を挟むことなく味噌味の黄金団子を食べながら、創良は静かに耳を傾け、首肯で話の先を促す。
――時には、無言が一番の有言になる事があるのだから。
そんな創良の無言に促される様に。
少しだけ寂しそうに芋ドリンクを飲んで喉を潤し、麦が続けた。
「俺は……友達が、学園の不満を表明しながら離れてくのが、悲しかったし、怖かったよ」
――ダークネスに対する見解が人によって異なる事、其れは当然であり、偶々多数派が共存を願ったり、力が足りないが故の一時的な同盟を望んだと言う事も理解しているけれども……でも。
「俺の友達にならばさー。俺は、幾らでもダークネスに対する意見なんか譲って良かったから、残って欲しかったんだ……」
そう肩を落として、そっと嘆息を零す麦。
――強風が吹き、咲き始めたばかりの桜の花弁が風に乗って、そんな麦と創良の間を駆けていく。
「……そうだね。確かにあの頃の学園は、穏やかなものじゃなくて、去っていく仲間の後姿を見送るしか出来ない事もあったからね」
そう、穏やかに創良が相槌を打つのに笑みを刻んで。
だからさー、と麦がその時の事を思い出しながら、少しだけ寂しそうに茶色の瞳を細めて続ける。
「創良くんの言う通り、本当に色々な事があったらさー。だから、俺の軸は一般人にだけ絞ったんだけれど。でも、話せる一理ある敵とか倒すと、やっぱちっとは俺、ひでえ奴かもって反省する訳で……」
そう思わず微笑と言うにはほろ苦いものの綯い交ぜになった笑みを浮かべて。
「ま、ひでえ奴だろうが、偽善野郎だろうが、他人の評価がどーでも今の生き方はブレねーけど……」
そう経験と思考の果てに確かに育まれた自らの胸中を語る麦のそれにうん、と柔和な微笑みを浮かべて創良が頷き。
「そうだね、本当にあの頃は色々あったからね」
そう、相槌を打ちつつ、嘗ての武蔵坂学園での思い出を振り返りながら、でもね、と創良が眼鏡を軽く掛け直して言の葉を紡ぐ。
「麦くんや、戦ってくれていた、灼滅者の皆が酷い、なんてことはないよ」
――寧ろ。
「只、送り出す事しか出来なかった僕達では分からない深い葛藤の中で、皆が戦ってくれていたって言うのが、よく分かるから」
――そう。
「……僕だって、いつも皆を戦場に送り出す事しか出来ない事を、申し訳なく思っていたから」
その創良の想いは、数多のエクスブレイン達にとっても共感しうるものであろう。
それが分かるから……|今は皆と戦える《・・・・・・・》創良にはこう言えるのだ。
「それぞれが出来る事を全力でやって、それで良かったのかなって今は思えているよ」
そんな、創良の言の葉に。
へへっ……と嬉しそうに笑って、俺もね、と麦が首肯する。
「創良くんとか、優希斗くんとかが一般人を助ける案件って明言してくれると、俺がどっか救われる感覚があるんだ!」
そう豊作の二条大麦の様な黄金色の笑みを浮かべてそう告げて。
何よりも! と麦が更に続ける。
「だって、一般人を助ける事が出来るって、言われれば、俺が間違ってはいないんだなって、思えるからさ。だからさ、いつもありがと!」
そう告げて自分の笑みが満面であると同時に、何処か照れ笑いとなっているのを感じているのだろう。
麦が照れ隠しの様に、ポリポリと頬を掻き、目を逸らして芋ドリンクを干す姿を見て、此方こそ、と創良が柔和に笑った。
「僕の方からも本当にありがとう、麦さん。これからも宜しくね」
そう告げた創良の自然な人を惹きつける王子様オーラ全開な笑みを見て。
(「……なんか、柄にもねーなー」)
自身の照れ臭さが隠しきれずに、目を逸らしていた麦が気を取り直す様にして笑って創良の方を見直して。
「創良くんて飲めんの? この後飲みいかね? |あの頃《・・・》は俺達、未成年だったしさー」
そう、飲みに誘う麦のそれに。
「お酒は人並みかな? でも、折角のお誘いだし、お付き合いさせて欲しいな、麦くんに」
と笑って頷く創良の言の葉に。
「よっしゃー! じゃあ、一緒に行こうぜ、創良くん!」
そう告げた麦に頷いた創良と共に。
――再び川越町の喧騒に紛れる様に消えていき……その日は、夜更けまで麦と空は飲んで語り明かしたそうだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フェル・オオヤマ
【優希斗同行】
・心境と行動
集合場所に迷って迷って迷子になってたら別の事件に遭遇してそれの対処にあたってたらこんな時間になってしまいました…。
と言った感じに天海大僧正との戦いに参加出来なかった事を謝りつつ
天海大僧正との戦いに参加した方々を労います
…そうなんだよね。
天海大僧正が依に裏切られたのも"あの戦い"があったのも10年前なんだよね…。
とその時自分はこの世界にはいなかったけどかつてあった戦いに思いを馳せながら談話したりしてお花見を楽しみます
・キャラとの連携・アドリブ歓迎
彩瑠・さくらえ
【優希斗さん同行】
*他の猟兵との絡み可
優希斗さん、花見酒しようよ
折角だし付き合ってもらえると幸い
(|まだ訪れていない未来《10年後》では月見酒をしていた彼なら
この世界における彼の中の背負うものを偲びながら一人酒を飲んでそうだな、なんて)
姫桜はお酒飲まない方がいいと思うんだけどねぇ
(娘には苦笑しつつも見知った顔には盃を勧め)
「仏には 桜の花を たてまつれ」っても言うし
(正確な和歌の解釈からは外れるけど)
過去を偲ぶにはいい桜じゃない?(見上げて目を細め)
僕より一足先に猟兵になってたってことは
この世界のことだけじゃなくて色々背負うものもあるんだろうね
人のこと言えた義理じゃないけど、優希斗さんも結構背負っちゃう方だよねぇ
過去の僕らの選択結果に対してのエスパーの件とか、思うところは色々あるけど
でもやっぱり、僕はあの時の選択を後悔はしていないんだ
背負うものは背負うし、責任も放棄しない
これまでもこれからもずっとね
だから君も(そしてこの場にいるだろう自分で色々背負いそうな面々を見渡し)
気負いすぎずにね?
彩瑠・姫桜
【優希斗さん同行】
*他の猟兵との絡み可
どこにっていうのは特に決めてないけど
多分優希斗さんいるところってパパやこの世界出身の人たちも一緒よね
迷惑でなければそこに同行させてもらいたいわ
…お酒は飲めるわ
これでも成人してるんだから
(正直父親との同席は居心地悪いけど仕方ない)
優希斗さんは元々はこの世界と関わりが深いのかしら?
…なんか、この世界の予知してる時いつも以上に険しい表情してる気がしたから
(以前に武蔵坂学園で読んでいた記録はかなり膨大で正直全部追いかけたわけじゃない
でも、その記録の中には、彼がなんやかんやで背負おうとする「罪」に関わるものもあったはずで)
細かいこと解ってない私が言うのは違うとは思うけど
「なんでも一人で背負おうとするな」っていうのは
貴方にも言えることなんだと思うわ
…この世界のことも、他の世界のことも
自分が視て私達に託した予知は、結果の後味が悪くなったとしても
貴方だけの責任じゃない
私も含め関わった人間全てで背負うものなんだから
流石に解ってるとは思うけど
改めて言っておきたかったのよ
●
――話は少し、遡る。
「って……あれ?」
ふと、|知人《雄哉》と別れて、適当に花見場所を見繕っていた北条・優希斗がその姿に目を留めたのは。
そんな優希斗が目に留めたのは、ガックリと両肩を落としてトボトボとまるで幽鬼の様な表情をして歩いて来る……。
「フェルさん?」
その優希斗の問いかけに。
「うう……大変申し訳ございませんでした……」
そうガックリと項垂れる様に頭を下げたフェル・オオヤマ(氷焔操る紅の竜姫士・f40802)のそれに、優希斗も流石に困惑の表情を隠しきれない。
「ええと……な、何があったの?」
と問いかける、優希斗のそれに。
うう……とその銀の瞳からハイライトが消えている状態で。
「集合場所に迷って、迷って、迷子になってたら、別の事件に遭遇して、其れの対処に当たっていたら、こんな時間になってしまいました……」
そう深々と反省と悲しみに満ちた嘆息を零すフェルのそれを聞いて。
ああ……とグリモアベースを出る前に聞いた話を思い出した優希斗が続ける。
「フェルさんも一度共闘した事のある、俺の知己の羅刹からもそんな事があったって話は聞いているよ。お疲れ様……フェルさん」
そう労りの言葉を掛けられて、うう……とフェルがそっと嘆息を零した。
(「た、確かに巻き込まれた事件に協力してくれた羅刹僧さん、共闘した記憶あるな……」)
――と、フェルがふと、その|ダークネス《羅刹僧》の事を思い出していると。
「あっ、此処にいたんだ、優希斗さん」
と……不意に。
そんな優希斗とフェルの会話を少し離れた所で聞いていたのであろう。
その姿を現したのは……。
「さくらえ先輩、いつもお世話になっています」
そう、優希斗が少し懐かしそうに目を細めて会釈をするのに、そう言えば、と彩瑠・さくらえ(望月桜・f44030)が笑った。
「あのグリモアベースって場所では時々顔を合わせているけれど、こう言う風に事後処理とかに追われる事も無く僕達が会うのって、もしかして物凄く久しぶりかな?」
そのさくらえの問いかけに。
ええと……と記憶を辿る様にしながら、優希斗がはた、と気づいた様な表情を浮かべ。
「もしかしたら……それこそ10年ぶり位じゃないですか? 2016年の武蔵坂学園での学園祭の時以来、ですから」
厳密に言えば、今から8年前の優希斗の誕生日の折に、さくらえも又、名古屋での花見に参加していたのだが。
けれども、その時、さくらえは夜桜を見に出かけていたからだ。
――そう。あの頃は、未だ……。
(「う~ん……多分、優希斗さんがいる所って、|さくらえ《パパ》や、|この世界出身の人達《・・・・・・・・・》も一緒よね」)
生まれていない、キョロキョロと優希斗達の姿を求めて歩いている、さくらえの|娘《・》である、彩瑠・姫桜(冬桜・f04489)の|この世界の母《・・・・・》と共に。
そんな、姫桜の様子を見て。
「あっ……優希斗さん」
気が付いた姫桜が優希斗に声を掛けると、優希斗もまた、姫桜の様子に気が付いて。
「姫桜さん、如何したの?」
そう柔らかく問いかけてくるのを聞いて、姫桜が、ええと……と微かにその青い瞳を所在なさげに彷徨わせていると。
「早々、優希斗さん」
そんな|異世界の娘《姫桜》に生暖かい眼差しを向けつつ悪戯っぽくさくらえが笑い。
「どうしましたか、さくらえ先輩?」
そう問いかける優希斗のそれに、良かったらさ、とさくらえが続ける。
「一緒に花見酒しようよ。折角だし、付き合って貰えると幸いだね」
そう笑って呟くさくらえのそれに、優希斗が良いですね、と柔らかい微笑を零す。
――|まだ訪れていない未来《10年後》では、月見酒をしていた優希斗であれば。
(「この世界における彼の中の背負うものを偲びながら、1人酒を飲んでそうだな――なんて」)
そんなある意味で無粋な言葉は、胸の中にしまっておいたけれども。
「そう言う事でしたら、丁度良いお酒がありますよ」
そう笑って呟く優希斗が腰に帯びているそこに書かれている銘柄は……。
「幽世大吟醸:零壱……?」
そう小首を傾げて問いかける姫桜のそれに、優希斗が微笑を零して1つ首肯する。
「ああ、カクリヨファンタズムで昔、山本五郎左衛門親分からの新年祝いとして貰ったものでね。美酒だし、此処の特産にも合う神酒だから、丁度良いかな、と思ってね」
そんな優希斗の言の葉に、へぇ、と姫桜が感心を示し、ああ、とフェルが以前、名古屋で一緒に飲んだ時の事を、思い出した様に首肯して。
「成程。それは、良いお酒だね。僕もこの地方の地酒を持ってきたから、折角だし、優希斗さんのそれとこの地酒で、桜を肴に一献と行こうか。『仏には 桜の花を たてまつれ』って言うしね」
厳密に言えば、それはとある高名な歌人が亡き後に桜の花を墓前に供えて欲しいと言う意味の俳句であり、少し解釈違いではあるのだけれども。
「あっ……それなら、迷惑でなければ私もそこに同行させて貰って良いかしら?」
そう微かに目を逸らす様にして、腰まで届く金髪を弄りながらの姫桜の言の葉に。
「わ、私も良いかな?」
そう、フェルが少しばかり躊躇する様な様子で問いかけるのを聞いて。
「勿論、俺は大丈夫だよ」
そう微笑んで懐からシート等を用意する優希斗のそれに。
「なんだかんだで、準備が良いよね、優希斗さん。過去を偲ぶにはいい桜並木の下で、なんてね?」
そう悪戯っぽく夜桜を見上げて目を細めるさくらえのそれに。
「まあ……俺も、色々ありますからね」
そう微苦笑を零して首肯する優希斗のそれに、くすり、とさくらえが微笑んだ。
●
「そう言えば……姫桜さんって、お酒飲めるの?」
早速敷かれたシートの上に何となく正座になりながら。
ゆったりと竜尾を寛がせる様に伸ばしたフェルが、優希斗から差し出されたお猪口に幽世大吟醸:零一を注いで貰ったのに返杯を返しながら問いかけると。
「……お酒は、飲めるわよ。これでも成人しているんだから」
(「正直、|さくらえ《パパ》との同席は居心地が少し悪いけれども……」)
でもまあ、この際だから仕方ないとばかりにフェルに頷く姫桜のそれに成程、とフェルが首肯するその間に。
(「まあ、正直姫桜はお酒飲まない方が良いと思うんだけどねぇ……」)
と内心で苦笑を零しながら、持参した川越の地酒「鏡山」と黒塗りの杯を取り出し、皆に配る、さくらえ。
さくらえから配られた地酒『鏡山』を注ぎ、優希斗に手渡すと、優希斗がそれを飲んで、うん、と微笑する。
「このピリッとする様な辛味、さっき皆に配った零一の甘味とは異なる風味が効いていて、美味しいね」
そう笑う優希斗のそれに、そうでしょ? と悪戯っぽくさくらえが笑い。
「へっ!?」
と、一方で|パパ《さくらえ》から貰った『鏡山』の辛味にちょっとだけ、驚いた表情を浮かべた姫桜の様子を見て、ほら、と言わんばかりの表情を浮かべるさくらえ。
「あっ、因みに私もお水は持って来ているよ。後はおつまみの芋かりんとか……」
そう言ってフェルが口の中のお口直しの水と、つまみに川越市の名物を用意するそれを見て、ありがと、と姫桜がその水を飲んだ後に、芋かりんをパクリ。
口の中に広がっていたお酒の味がさつまいもの甘味に緩和されて、思わずにっこりとほおを緩める姫桜の姿に、優希斗とさくらえが目尻を和らげる。
――さらさらと流れる風が心地いい。
その風に乗って運ばれて来た桜の花弁が、さくらえが続けて注いでくれた『鏡山』の上にちょん、と乗り、静かに水面に波紋を広げていく様子を見て、優希斗が穏やかに笑っていると。
「……前々から、実は聞きたかったんだけれども」
そう口火を切ったのは、姫桜だ。
先程、飲んだ『鏡山』の影響か、その頬はほんのり赤く染まっている。
「何だい、姫桜さん?」
そう問いかけながら、『鏡山』の入った黒塗りの杯の波紋を肴に、フェルが返杯してくれた零一を一口飲んで、続けて口直しの水を一口飲んでからの優希斗の返しを聞いて。
ちらりと、少しだけ居心地悪そうにさくらえの方を見やりつつ、姫桜が問う。
「優希斗さんは、元々この世界と関りが深いのかしら? だって……何だか、|さくらえ《パパ》達や|この世界の人《・・・・・》の皆と話をしている時も、とても親しそうに見えるし」
――何よりも。
「……なんか、この世界の予知している時、いつも以上に険しい表情している気がしていたから……」
そして……大概、優希斗が予知する事件の多くは、|今の世界《・・・・》の在り方に、そこで|灼滅された《・・・・・》と言う者達から疑義を呈されている事が多い、と姫桜には感じられる。
(「そう……依媛の時とかと同じ様に」)
そう内心で呟く姫桜の問いかけに。
フェルが気づかわしげに優希斗の方を見やり、一方で優希斗は特に気にした様子も無く微苦笑を零した時。
「優希斗さんは、僕より一足先に猟兵になってたんだよね?」
そう問いかけたのは、頭上の桜の花を見上げて、その赤い瞳を細めて『鏡山』を口に含んださくらえだ。
「えっ……?」
と姫桜が怪訝そうな声を思わず上げるのを聞きながら。
「まあ、そうだね。さくらえ先輩の言う通り|猟兵《・・》としての経歴だけで見ると、俺の方が先輩になるね」
そう、既知であり、何でも無い事の様に首肯する優希斗のそれに。
「ええと……ど、如何言う事?」
と、戸惑いを隠せぬ姫桜の様子を見て、俺は、と優希斗が静かに続けた。
「今回の戦いで、姫桜さん達が一緒に戦っていた人の1人と同じで……元々、|この世界《・・・・》では、エクスブレインと呼ばれる存在だったんだよ。……|今の故郷《UDCアース》に生まれ落ちたけれども、|この世界《・・・・》の記憶は、|全能計算域《エクスマトリックス》と言う、俺の脳に刻み込まれている異形の領域の中に納まっているから、全部、|覚えている《・・・・・》けれども」
その優希斗の説明を聞いて。
「……えっ、ちょっと待って。|全能計算域《エクスマトリックス》って……」
ふと、何かに気が付いたかの様に。
思わず、と言った調子で身を乗り出す姫桜のそれに、ああ、そうか、と優希斗が納得した様な表情を浮かべた。
「そうだね。姫桜さんからすれば、ハビタント・フォーミュラが言っていた、|全能計算域・限界突破《エクスマトリックス・オーバーロード》の方が、この件に関しては聞き覚えがあるか。あれももう、3年前の話だけれど」
そう静かに紡いだ優希斗が『鏡山』を飲み、それからさくらえに返杯をするその間に。
「……あの時、私達が見た予兆でのハビタント・フォーミュラのその単語って……優希斗さんには初耳……って訳じゃなかったのね……」
そう思わず、と言う様に頭を抱えて嘆息を零す姫桜の様子にそうだね、と小さく微苦笑を零して、そっと懐かしそうに漆黒の双眸を細めて桜の花を見上げる優希斗。
その瞳が見ているものは、此処であって、此処ではない何処か……遥かなる遠くの世界を見ている様である様に思えて、そう言えば、と間を取り持つ様にフェルが話を切り出す。
「……天海大僧正が依に裏切られたのも。|“あの戦い”《・・・・》があったのも、もう、10年前の話なんだよね……」
そう、以前、名古屋に一緒に行った時に話をして貰った事を思い出して、思わず、という様に口を挟み、それからあの時にも一緒に飲んだ『零一』を一口。
呟いたフェルのそれを聞いて、さくらえが苦笑を零して頷き、一方で姫桜が再び目を見張りながら、その脳裏に思い浮かべたのは、以前に武蔵坂学園で読んだ記録。
(「正直、記録がかなり膨大で、全部追いかけた訳じゃないけれども……でも」)
その中に、|優希斗《・・・》がなんやかんやで背負おうとする|罪《・》に関わるものもあった様な記憶が姫桜の脳裏を掠めていく。
そして――恐らくは。
(「|さくらえ《パパ》は、優希斗さんが|罪《・》として背負い続けようとしているものを知っているのよね……。でも、フェルさんは確か、|もう一つの異世界《ケルベロスブレイド》からの来訪者、じゃなかったかしら?」)
姫桜の中で、状況の整理が中々に追いついていないのに気が付いて、気が付かぬふりをしているのだろう。
それにしても、とさくらえが微苦笑を零して嘆息を一つ零す。
「優希斗さんはもう、|この世界《・・・・》の事だけじゃなくて、色々背負っているものがあるんだねぇ……まあ、僕も人の事言えないけれど、結構背負っちゃう方だよなぁ、とつくづく思うよ」
そんなさくらえのしみじみとした実感と共に呟くそれに、そうだねぇ、とさくらえに釣られる様にフェルが首肯する。
「実は私も、|その頃《・・・》の優希斗さんやさくらえさんがいる|この世界《・・・・》にはいなかったけれども、でも、話としては|この世界《・・・・》の人から聞いたことがあるんだよね……」
そう懐かしそうに目を細めるフェルのその発言に。
優希斗が思わず苦笑を零し、驚いたよ、と肩を竦めた。
「俺は直接フェルさんとその当時、話をしていた訳ではないけれども。思えば、|あの頃《・・・》から皆の一部は、既に|異世界《・・・》に繋がっていたんだよね……」
その優希斗の懐かしそうに告げる衝撃の告白に。
ええ!? と思わず姫桜が目を見開く。
「フェルさんとは、そんな頃から|繋がり《・・・》があったの!? つまり、それって、フェルさんが来たって言う……|もう一つの異世界《ケルベロスブレイド》……の事よね?」
そう思わず、という様に問いかける姫桜のそれに、そうだね、と優希斗が静かに首肯する。
(「……と言うか、そんな所にまで影響が及んでいる優希斗さんの抱えた罪って……一体、何なのよ、それ……」)
と、思わず頭を抱えてしまう姫桜の様子をちらりと横目に見やりつつさくらえがでも、と小さく首肯して。
「確かに過去の僕達が選択した結果としての、エスパーの件とか、天海大僧正の部下だった海とその弟子だった川と湖の件とか……本当に思う所は色々あるんだけれども……」
――それでも。
「でもやっぱり僕は、あの時、あの時にした選択の其々を決して後悔はしていないんだ」
そのさくらえの言の葉に。
「川と湖の件に関しては、さくらえさん達が背負う罪ではないよ。あれは、俺が視た所で、皆に最善の判断をして貰った……只、其れだけの話だからね」
そう穏やかに微苦笑を零して告げる優希斗のその様子に。
やれやれ、と微苦笑を綻ばせて、赤い瞳を細めてさくらえが軽く頭を横に振る。
「そう言う所だと思うよ。僕も背負うものは背負うし責任も放棄するつもりはない。これまでも、これからもずっとね。だから、君も――」
――と、そこまで言って周囲を見渡して見る顔ぶれ――|異世界の娘《姫桜》やフェルの顔を見回し。
更に、まあ、自分が優希斗を見つけるよりも前に、ほぼ確実に会っているであろう、|彼《・》の姿を思い起こして。
いや、と軽く頭を横に振って、そっとさくらえが微苦笑を綻ばす。
「|君達《・・》も、気負い過ぎずにね?」
そのさくらえの言の葉に。
「……本当よ」
そう酒で頬を赤らめた儘に、青い瞳を鋭く細めた姫桜が酒臭の籠った重い溜息を一つ零した。
「細かい事は実は、私にはよく分かっていない気もするけれど……でも、『なんでも一人で背負おうとするな』って言うのは、貴方にも言える事だと思うわ」
|自分達の世界《UDCアース》の京都で一緒に行った川床で言われた事を思い出しながら、姫桜がその言葉をそっくり返す。
もう、あれすらも6年前の事なのだから――本当に遠くに来たものだ、と思えるけれども、でも、今だからこそはっきりと言える。
「……この世界の事も、他の世界の事も。貴方が視て、私達に託した予知は、結果の後味が悪くなったとしても、貴方だけの責任じゃなくて、私も含めて関わった人間全員で背負うものなんだからねっ!」
と、ビシリ、と|パパ《さくらえ》から借り受けた黒塗りの杯を突き付けながら告げる姫桜の様子を見て。
さくらえが微苦笑と興味の両方を持って姫桜を見やり、そうだね、とフェルが確りと首肯する。
そんな姫桜の宣言に。
「流石に分かっているつもりだけれどね」
そう苦笑を浮かべてさくらえに注いで貰った『鏡山』を一口飲んで呟く優希斗のそれに、はぁ、と何となく眉を吊り上げつつ嘆息を零す姫桜。
「本当に、分かっているのよね? でも、改めて言わせて貰ったんだから……忘れないでよっ!」
そう告げる姫桜の姿を見て、そうだね、とフェルが首肯して。
「誰一人欠ける事無く皆で帰って来て欲しい。そう言える優希斗さんだからこそ、共感している仲間もいるんだからね」
と締めくくるフェルのそれを聞いて。
「だから、気負い過ぎずにねって言っているんだよ、僕は」
と、全てが分かっている、という様に深々と首肯して悪戯っぽく見やるさくらえの言の葉に。
「勿論、俺も分かっていますよ。これからも宜しく頼むよ……皆」
そう微笑を浮かべて何か――誰かに献杯する様に、さくらえから借りた杯を桜に向けて上げる優希斗のそれに。
倣う様に、姫桜とフェルとさくらえも杯を掲げた刹那――桜の花が風に靡いてハラリ、ハラリと何処か温かな小さな桜吹雪を周囲に吹雪かせたのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ギュスターヴ・ベルトラン
【祈り】を込めてロザリオを二度、指先で叩く
これが「そこから出ておいで」の合図だと、ノクとキリエには教えてある
ぴょんと飛び出て来た二匹が、少し震えてる
UCの小聖堂は季節が冬で固定だからな…寒かったよな、ごめんな
戦闘で呼ぶつもりだったが、その暇はなかったし…
今夜はそのまま、静かな場所で夜桜見物に行こうか
ノクが桜の間を飛びたがってる
見物客もいるし、ぶつかるだろ
飛ぶなら桜の上にしろ…って、もう行ったか
キリエは花びらを集めてるのか
綺麗なまま落ちてるやつもあるな
帰ったら、それで押し花の栞でも作ってみような
空ではノクがはしゃいで
下ではキリエが花びらを拾っている
…今日はこういう感じで終わって良いか
●
――その夜。
「――Amen」
短く、そう祈りの言の葉を紡ぐと同時に、トントン、とロザリオを、祈りを籠めて二度、指先で叩いている男がいた。
その二度の叩きが、ノクとキリエと言う2匹の猫に、自分のロザリオの中から、出て来て良いよ、と言う合図なのだとその男……ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)は教えてある。
――と。
ぴょん、と飛び出てきた二匹の猫が、少しだけ震えていた。
「あっ……寒かったよな、ごめん……」
と、やや申し訳なさそうにロザリオの中にある冬の小聖堂の中から飛び出して来た二匹に小声で謝罪をするギュスターヴ。
「このユーベルコードの小聖堂、冬で固定だからな……寒かったよな、ごめんな」
因みに、猫達が何処から来たのかがマジ不明なのだが、この中に入った人間っぽい雰囲気は何となくある。
本当は戦闘で呼ぶつもりだったのだが、流石にその余裕が無かったので、今夜はそのまま……。
「静かな場所に、夜桜見物に行こうか。ノク、キリエ」
告げてからギュスターヴが震えていたノクとキリエを一度抱き上げ、温もりを与えてから、その夜桜の下を歩き始めた。
ノクが、桜の間を飛びたがり……キリエが花弁を集める夜桜の下を。
「ノク、他の見物客もいるし、ぶつかるから、飛ぶなら桜の上にしろ……」
と注意をするよりも早く行ってしまったノクだが、果たしてギュスターヴの注意は聞こえたのであろうか。
一方、キリエは……。
「そうか。花弁を集めているんだな」
――ハラリ、ハラリ。
零れ落ちる花弁を拾い集めるキリエの様子に、思わず頬を緩めるギュスターヴ。
序に言うと、キリエが集めている花弁の中には、綺麗な儘に落ちた花弁もある様だ。
それを見て、ギュスターヴが穏やかに笑って。
「帰ったら、それで押し花の栞でも作ってみような」
そう優しく告げると、にゃん、と短く嬉しそうにキリエが鳴き声で返事を返してくれた。
そんな間にも、他の客の迷惑にならない様に、という言葉が聞いたのであろうか。
ノクが、桜の花の上を嬉しそうに飛び回っている景色が桜の花の上で見えている。
(「空ではノクがはしゃいで、下ではキリエが花弁を拾っている」)
「……今日は、こういう感じで終わって良いか」
――それが、『衆生救済』を最期に願った天海大僧正への弔いにもなるであろうから。
そう内心でひっそりと呟き、微笑んで静かに。
――Seigneur, ayez pitié.
と祈りの聖句を呟いたギュスターヴの上に、ひらり、ひらり、と夜桜の花弁が風に吹いて零れ落ちた。
大成功
🔵🔵🔵
松原・なの
優希斗さん同行希望
他猟兵との勝手な絡みアドリブ大歓迎
※ご主人様(サーヴァント主の灼滅者not猟兵)の扱いはご自由に
なの!
ご主人様、桜の季節になったから、近場に花見にいきたいなの!
たまには羽を伸ばすなの…と言いたいけど
ご主人様の前では「ナノ」しかしゃべれないから、多分伝わっていないなの…
仕方ないから、お店で花見するなの~
お店のある三重県桑名市はまだまだちらほら咲いているくらいだけど
ちょっと早めの花見としゃれこむなの♪
ご主人様、桜色のロールケーキを仕込んでいるなの?
だったらなのも手伝うなの
甘さ控えめのクリームに桜の花びらや葉を混ぜ込んで
桜色に焼き上げたスポンジケーキに巻き込んで切り分けるなの
それにしても、今日はテイクアウト目的のお客さんが多いなのね
飲み物やロールケーキなどのスイーツはもちろん
サンドイッチやキッシュなどの軽食系も売れるなの
みんな、お花見楽しんで来るなの~
でも、やっぱり外でお花見したかったなの…
ご主人様、来年はどこかでオープンカフェやりたいなの~
●
――その翌日、三重県桑名市では。
「ナノ」
そう、松原・なの(白き鍵の守護者兼マスコットナノナノ・f43989)がご主人である愛莉に呼びかけるが、愛莉には全く伝わっていない。
(「なの! なの! ご主人様、桜の季節になったから、近場に花見に行きたいなの!」)
そう内心で必死に自分の想いをアピールするなのちゃんであったが、残念ながらなのちゃんは、ご主人様の前ではサーヴァント『ナノナノ』でしかないので、「ナノ」としかしゃべれない。
だって、だって、自分がもしも、喋ってしまったら……。
(「多分、ご主人様になのが猟兵ってバレちゃって……色々と大変な事になる気がするのなの」)
そうなると……只ですら、ご主人様の旦那様の件で心配させているご主人様の心配と悩みの種が増えるだろうから、なのが猟兵として覚醒しているのは秘密なのだ!
……その話を聞いた天の声さんが、いや、それ、違う意味で負のジレンマに陥ってない? ってか、愛莉さん寧ろそれはそれで心配していない? と思わず突っ込みを入れるのを聞き流しながら。
(「そう言う訳で、仕方ないからなのはお店で花見するなの~」)
とまあ、そんな訳でいつも通りお客様の前で愛嬌一杯にナノナノしながら、喫茶店の窓から外の桜を見ているなのちゃん。
(「お店のある三重県桑名市では、まだまだちらほら咲いている位だけれど、それでもちょっと早目の花見としゃれこむなの♪」)
とまあ、窓からお外の未だ咲き始めの桜の木を眺めていると。
――ふわり、ふわりとした良い匂いが。
(「あれ、もしかしてご主人様、桜色のロールケーキを仕込んでいるなの?」)
――なのであれば。
「ナノ」
と、ちょっとのサボ……休憩時間での花見を中断、愛莉のロールケーキ焼きのお手伝いを始めるなのちゃん。
――あれ? 昔から、ナノナノってお手伝いみたいな細かい作業って出来たっけ?
と、一瞬、天の声さんが突っ込みを入れた気がするが、なのちゃんにとってはそんなのは些事に過ぎぬ。
何せ、旧作時代から突っ込み(!?)も出来たスーパーナノナノ、なのちゃんだからね!
とまあ、そんな訳で早速、ご主人様のロールケーキ作りのお手伝いを開始。
先ずは甘さ控えめのクリームに、桜の花弁や葉を混ぜ込んで。
桃色に焼き上げたスポンジケーキに巻き込んで、それを等分に切り分ける。
(「それにしても……」)
――今日はテイクアウト目的のお客さんが多いなのね。
見ていると、ご主人様が丹精込めていれた飲み物やロールケーキなどのスイーツは勿論。
サンドイッチやキッシュなどの軽食系も一杯売れているからだ。
(「皆、お花見楽しんで来るなの~」)
そう、ちょいちょい、と手をひらひらさせて、テイクアウトしていくお客様達をなのちゃんがお見送りしていると。
「すまない、ちょっとお邪魔するよ」
と、不意に聞き馴染んだ声がなのの耳に入って来る。
おや、と思い、なのがその姿を見たら、そこには。
(「あっ……優希斗さんなの!? でも……?」)
優希斗が連れ立ってきたのは、全く見覚えのない高校生位の少女。
初めて見る顔の少女の様子になのが怪訝そうな表情を浮かべるのに気が付いた優希斗が軽くなのに会釈をし。
なののご主人……愛莉が他のお客様の対応に気を取られているのに気が付き、なのに囁く。
(「悪い、なのちゃん。休憩時間に、少しだけ愛莉さんと俺が話せる機会を作って貰って構わないかな? ちょっと……」)
と、後ろで興味津々と言った様子で雰囲気のあるこの店を見ている少女をちらりと見て、囁く優希斗のそれに。
(「了解なの、優希斗さん」)
と、こっそり敬礼したなのちゃんが、頃合いを見計らって、愛莉の方にふよふよと寄っていき。
「ナノ」
と彼女の袖を引っ張ると、愛莉がそれに気が付いて、あら、と優希斗の方を見た。
「優希斗さん、どうかしたの?」
その愛莉の言の葉に。
「急に訪れて済まない、愛莉さん。もう、もしかしたら既に武蔵坂学園の方から連絡が来ているかもしれないけれど……」
と、優希斗が自分の後ろで隠れる様にしている少女を気遣う様にちらりと見てから、愛莉に告げるのに。
ああ、と愛莉が得心が言ったと首肯を1つ。
「ええ、うん、こっちは大丈夫よ。そんなに多くの従業員が必要な訳じゃないけれども……やっぱり1、2人位は、バイトとして働いて貰う分には問題ないし……」
――況してや。
「その子が、お兄ちゃん達が助けたエスパーの1人で、喫茶店に興味を持ってくれているなら、尚更ね」
そう告げる、愛莉の言の葉に。
「そう言って貰えると、助かるよ、愛莉さん。――この子には……」
――少し東日本から離れた場所が必要だったから。
そう少し安堵した様にそっと胸を撫で下ろした優希斗に促されて。
おずおずと優希斗の影から出てきたその少女が。
「よ、宜しくお願いします……!」
そう、ペコリとなののご主人である愛莉に頭を下げるのに。
「ええ、此方こそ宜しくね」
そうにっこり笑って会釈をするご主人様の姿を見て……。
(「何だか新しい事が起きた感じなの~。ご主人様、来年はその子も連れて、どこかでオープンカフェやりたいなの~」)
「ナノ!」
と、少しだけ元気よく鳴き声を上げたなのの声に導かれる様に。
――未だ蕾だった桜の花の1つが、ぱっ、と新たな花を咲かせた。
大成功
🔵🔵🔵
火神・臨音
【優希斗同行】
ペイル(f01836)と共に故郷の出雲へ
主が作った穏健派達が住む保護区を見渡せる場所にある主の墓参りへ
向かう道中で此度の事件について話す
天海大僧正に関しては俺も同じだな
灼滅者達が選びとった世界で変わらず
己の信念を説こうした姿は悲しい物があるよ
優希斗へは同行してくれる事に感謝を
我儘に付き合わて悪いな
その代わりお前にも見せたい景色があるから
目的地は保護区通らねば行けぬ場所
あの場所に住む穏健派達の皆には
二人には敵意無い事伝え落ち着かせる
ペイルが穏健派と交流する様子見て
主が望んでた未来が此処にあるんだと
優希斗と並んで穏やかな眼差しで見守る
辿り着いた墓碑の近くには大きな桜の木
七分咲きの花を暫し仰ぎ見て
鞘の返り血を一撫でし瞑目
手入れされてた墓碑の前に膝着いて手を合わせる
久しぶりの帰還と友を連れて来た事を報告
帰り際もう一度桜を見上げた時
飛び込んで来た光景に思わず目を見開く
蕾だった桜が目の前で咲く様子に思い馳せる
主が二人に【有難う】を伝える代わりに
この花を咲かせてくれたのかもなと
アドリブ可
ペイル・ビビッド
【優希斗同行】
臨音おにーちゃん(f17969)と一緒に
出雲へ向かうよ
移動中に今回の事件のことを聞いた
これまであたしが会ってきた復活ダークネスとは
ちょっと違うタイプの人物だったんだね
オブリビオンの性質もあって
未来の変質と相容れないように
なってしまったのは悲しいけれど…
ここが臨音おにーちゃんの主…
鈴音さんが作った保護区か
出会った人たちは
種族も年齢層もバラバラ
だけどみんな優しくて親切で
鈴音さんは彼らのために尽力してたんだね
臨音おにーちゃんの後をついて行って
墓碑の前に着いた瞬間
さっと空気が変わった
そばにある桜の木とともに
ここから下の様子を見守ってる
一人の女性の後ろ姿を
幻視したような…
えっと、こうして手を合わせて…
鈴音さん、はじめまして
臨音さんの世話になってます
生まれた|場所《世界》は違うけれど
共に未来のため戦っています
どうかあなたが安らかに眠れますように
顔を上げたら
あれ?
見間違いかなともう一度よく見ると
さっき蕾だった花が開いてる!
それも沢山
こんな不思議なことが起きるなんて…
【アドリブ可】
●
――出雲地方。
島根県の中でも出雲大社と言う霊的スポットとしても有名なその地方に、火神・臨音(比翼連理の誓いを胸に・f17969)――嘗ては島根県出雲市の山中にあるとある社の護刀――火神ノ社ノ御神刀を本体とするそこに彼は戻って来ていた。
(「此処に戻って来たのは……」)
「本当に久しぶり、なんだよな」
そう呟く臨音のそれに、此処が……、と感慨深げに呟いたのは、ペイル・ビビッド(淡色弾ける筆先の軌跡・f01836)
「そっか……此処が、臨音おにーちゃんの故郷なんだね……」
そのペイルの呟きに。
「……俺も、此方の方に来たのは初めてだな」
そう、三重県桑名市のとあるカフェに、今回の事件よりも少し前に|この世界《サイキックハーツ》で起きた事件で、猟兵達によって助けられたエスパーの少女達の1人を案内した北条・優希斗がそっと嘆息を一つ零す。
その優希斗の嘆息を聞いて、ああ、と臨音が小さく首を縦に振った。
「それはそれとして、俺の我儘に付き合ってくれてありがとうな、優希斗」
そう謝辞を述べる臨音のそれに、気にするな、と言う様に優希斗が軽く手を振って見せる。
「合流が遅れてしまったのは申し訳なかったが、武蔵坂学園の方からちょっと|西日本《・・・》の方に行って欲しいと頼まれた用事もあったからね」
そう告げる優希斗のそれに、それって、とペイルが。
「あたし達が前回助けた、オブリビオンにされかけていた一般人の高校生の事後ケアの1つだよね? 寧ろ、そう言うちゃんとした伝手があったんだったら、あたしは良かったと思うんだよ」
告げるペイルのそれに、同感だな、と言う様に深々と首肯する臨音の様子を見て、ありがとう、と優希斗が礼を1つ述べるのを聞きながら。
「それにしても、天海大僧正か。……臨音おにーちゃんから聞いた話の限りだけれども、ちょっと今までとは違うタイプの人物だったんだね。……オブリビオンの性質もあって、未来の変容と相容れない様になってしまったのは悲しいけれども……」
そう島根に向かう道中で臨音から聞いた話を思い出しながら、微かにその表情を悲しげに歪めたペイルのそれに、ああ、と憂いを帯びた赤い瞳で臨音がそうそっと嘆息を一つ零した。
「天海大僧正に関しては、俺も、ペイルと同じ気持ちだな。でも……|灼滅者《・・・》達が、選び取った世界で変わることなく、己の信念を説こうとしたその姿には……」
――悲しい物があったよ。
そう言葉にならない想いをそっと風に乗せて唇に乗せた臨音のそれに、そうだね、と静かに首肯する優希斗。
――元々……天海大僧正は。
初めて出会った灼滅者達からの報告によれば、割と友好的な態度を示していた。
故に、その為の切っ掛けとなったのが――。
(「こ……いや、皆にとっては、依、か……」)
そう内心で呟く優希斗が誰に共なく頭を横に振って、感傷を一度振り切ってから。
「そう言えば、臨音さん、此処は……?」
と優希斗が問いかけるのに、ああ、と流石に痛ましい表情を浮かべた臨音が小さく首肯する。
「如何しても、お前達に見せたい光景があってな。それで俺の我儘に付き合って貰った」
そう告げる臨音のその言葉に、恐らく何となく察せる事があったのだろう。
分かった、と静かに優希斗が首肯するのを見やりながら、臨音が先導する様に歩き始めた|その地区《・・・・》に足を踏み入れた時、此処が、とペイルが思わず声を上げていた。
「……臨音おにーちゃんの主……鈴音さんが作ったって言う例の……」
そのペイルの呟きを引き取る様に。
「そうか。穏健派であっても、|人の社会《・・・・》に馴染むことが出来なかったダークネス達を保護していた保護区、か」
そう、そっと嘆息を零した優希斗のそれに、ああ、と小さく臨音が首肯する。
「因みに彼等に敵意が無いのは、俺が保証するぜ。……でも、彼等にとっては、|今の世界《・・・・》で生きていくのは……」
――難しいんだ。
そうそっと臨音が嘆息を零す一方で、優希斗がそうだね、と小さく首肯する。
「|一般人《エスパー》ですら、互いに完全に理解し合うのが難しいんだ。……況や、ダークネスであれば猶更、と言う部分もあるだろう。……仮に彼等に敵意が無かったとしても――」
――灼滅されるのを、本能的に恐れるダークネス達がいるのは、避けられない事。
そう静かに詰めていた息を優希斗が吐いているその間に。
――流石にサイキックハーツとして絶滅した種族のダークネスはいないけれども……でも。
(「ダークネスにも、色々な人達がいるんだね……。種族も、年齢層もバラバラだし……」)
そう、ダークネス……恐らくタタリガミであろう……の少女や、淫魔であろう女生と他愛もない会話に花を咲かせながら、ふと、ペイルはそう思う。
そんなペイルの様子を、微笑ましいものを見る様に臨音と優希斗が見つめているのに気が付いた、ペイルが頬を朱色に染めて慌てて戻ってきて。
「むぅ……どうせなら声を掛けてくれれば良かったのに、臨音おにーちゃんも優希斗さんも」
と、ちょっとだけむくれた様に告げるペイルのそれに、穏やかな笑いが漣の様に広がっていく。
「あの光景が……俺の|主《・》が望んでいた未来の光景だったんだよ」
そう告げる臨音のそれに、そうだね、と静かに懐かしそうに苦笑を浮かべる優希斗とペイルを引き連れて。
――束の間の穏健派ダークネス達との邂逅を終えた臨音達が辿り付いたその場所にあったのは。
「うわぁー! 大きな桜の木!」
その、明らかに空気と共に流れた風に桃色の髪を泳がせつつ。
咄嗟に被っている猫耳付き帽子が飛ばない様に抑えていたペイルが思わず、と言った様子で歓声を上げていた。
その巨大な七分咲の、桜の木の傍にひっそりと佇む様に設置されているその墓碑が。
「……そうか。あれが、鈴音さんの……」
と呟く優希斗のそれに、ああ、と鞘の返り血を一撫でし、そっと瞑目した臨音が首肯する。
「……この桜の木と一緒に、下の様子を見守っているのが……臨音おにーちゃんの主さん……鈴音さん、なんだよね」
そう呟くペイルの目前にちらりと風に乗って見えたのは――。
(「……? 紫髪のポニーテールの……女の人……?」)
その幻影に気が付けたのは、ペイルだけなのかも知れないけれども――でも。
「……只今戻りました、我が主」
そう深々と墓碑に向かって臨音が一礼し、優希斗が微かに切なげな表情を浮かべて漆黒の双眸をそっと細める。
「こういう形で又会う事になるとは、正直思っていなかったけれど……久しぶりだね、鈴音さん」
そう同じく一礼する優希斗をちらりとペイルが横目に見やり、臨音に連れられた墓石の前に移動する3人。
そのまま、手入れされていた――恐らく、此処に住む穏健派ダークネスの誰かであろう――墓碑の前に臨音が膝をついて手を合わせる。
(「えっと、こうして手を合わせて……」)
そんな臨音に続く様にあたふたした様子で同じ様に祈りの仕草を取るペイルと、慣れた様子で静かに頭を垂れて、黙祷する優希斗。
「……本当に久しぶりに戻りました、我が主よ。今日は、その主によって救われた此の命で、得た友人と……嘗て主と共にいた友人を連れて参りました」
告げた臨音の言の葉に促される様に口を開いたのは……。
「え、えっと鈴音さん、はじめまして。臨音おに……臨音さんのお世話になっている、ペイルと言います。その……生まれた|場所《世界》は違うけれども、今は臨音さんや優希斗さんの様な皆と共に、未来の為に一緒に戦っています。どうか……あなたが安らかに眠れます様に」
告げるペイルのそれに、臨音が頭を垂れた儘に静かに首肯して、優希斗も頭を垂れた儘に、言の葉を紡ぐ。
「本当なら俺は、鈴音さんの様になっていた筈なんだけれども……色々あって、|今《・》も戦い続けているよ」
――あの時は、只、見送る事しか出来なかったけれども――でも。
「あの時の君達の選択は|間違い《・・・》じゃなかった。そして、その|選択《・・》の後に起きた|あの事件《・・・・》には、君達が責任を負う必要は一切ないし、誰にも、どうしようもない事だった。……あの時、きちんと伝えることは出来なかったけれども――」
そう小さく言の葉を紡ぐ優希斗のそれの意味を、ペイルや臨音に詳しく語るつもりはないけれども。
かと言って、謝罪を告げるのも少し異なるからこそ――只、ありのままのそれを優希斗が告げた所で。
「……大丈夫です、我が主。俺にはもう……守るべき大切な人もいますし、|この世界《・・・・》とも、俺なりの方法で向かい合っていきます――だから、いと、健やかに」
そう言葉を紡ぎきり。
静かに墓参りを終えて、ついていた膝を上げ、何気ない様子で、その桜の木を見上げた――その時だった。
「……あれ?」
そう思わず、という様にペイルが素っ頓狂な声を上げたのは。
そのペイルの声に引っ張られる様にそっと双眸を開き、垂れていた頭を上げて桜の木を見上げた優希斗が、ほう、と小さく感嘆の息を漏らす。
「――これは……」
――七分咲だった桜の木が――何処からともなく吹いた風を孕んで満開になったその姿。
「! やっぱりそうだよね! 見間違いじゃないよね!? さっき蕾だった華が開いているの!」
そう弾んだ声を上げる、ペイルのそれに。
「……我が主よ……」
そう臨音が同様に感嘆の声を漏らすのを聞いて、そっと優希斗が微笑んだ。
「良かったね、臨音さん。こうやって花が臨音さんが|帰って来た《・・・・・》のを祝福してくれて」
そう優希斗がさりげなく臨音の肩を叩き。
「……沢山の桜の花が、一気に花開くなんて、こんな不思議な事が起きるなんて……」
と、ペイルが両手で口を押える様にして、興奮も露わに口にしたそれを聞いて。
「きっと、主が2人に『ありがとう』を伝える代わりに、この花を咲かせてくれたんだろうな」
そう呟いた臨音の言の葉に、優希斗がそうだね、と微笑を浮かべて静かにそれを後押ししたのを最後にして。
――臨音の主の墓参りは、その終わりの時を告げたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵