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トワイライト・ザナドゥ⑪〜ユー・ハブ・ア・チョイス

#サイバーザナドゥ #トワイライト・ザナドゥ #第三戦線 #調停機『セプテントリオン』 #ティタニウム・マキア

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#第三戦線
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#調停機『セプテントリオン』
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#ティタニウム・マキア


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●選択肢はない
 クソみたいな人生だった。
 貧困層一歩手前ギリギリ程度の家庭に生まれ、物心つく頃には|機械化義体《サイバーザナドゥ》に肉体の半数を換装し、そのために無理をした両親は揃って早逝。それを受けて何となくの義務感めいたもので必死に生きて、紆余曲折を経て|巨大企業群《メガコーポ》の一つ『アオイドス』に就職することは叶ったが、上澄みのカチグミのようにはどうしたってなれずに、底辺の使いっ走りめいた仕事で食いつなぐ日々だった。

 自分の仕事の結果、誰かの人生が壊れたことだってあっただろう――数えきれぬ程。

 元々終わっている世界だと思っていたら、いよいよ本当に終わると聞かされて、最初に浮かんだ感情は『ざまあみろ』だった。倫理や社会規範という概念が欠落した――欠落させねば生きていけないような――腐敗と退廃を極めたこんな世界なら、いっそ終わってしまえばいいと思っていたから、いっそ胸がすく心地だった。

 自分で自分の人生を選ぶなど出来ないから。
 終わりの方から来てくれるのは歓迎だった。

 ああ、全くクソみたいな人生だった。
 せめて死に場所くらいは選ばせてくれとばかりに、オオタキ・シンゴは崩壊が進むオフィス街にある支社ビル――勤務先である電算室に一人残り、安物のチェアを軋ませながらプログラムが走るモニタをぼんやりと眺めていた。手にした支給品の端末を今更私用で私用したって最早誰も何も言わないからニュース動画を平行して表示させると、まさにこの世の終わりと言わんばかりの光景が広がっていた。この世界の在りように相応しいと言うべき、ボロボロになった都市の姿が舐めるように映し出され、次に画面が切り替わると、カートゥーンにでも出てきそうな巨大なロボットらしきものが、市街地のど真ん中に佇んでいた。それがどうやら自分たちを可能な限り大勢巻き込んた自爆をするべく敢えてその場所に居るらしいという報道の声を聞いても、シンゴにはもう何も関係ない。

 ――はず、だった。

「シンゴ=サン!」
「も、モナカ=サン!? 何で……」
 電算室の扉を勢い良く開けてシンゴの名を呼んだのは、新入社員でシンゴの部下のアライ・モナカだった。こんな世の中にしては珍しくひたむきと言える性格をしていた彼女を、一応上司としてまあまあ面倒を見てやりはしたが、あくまでも仕事のうちであり恩着せがましい真似をした覚えはない。見れば、息が荒い。ローファーが片方脱げている。余程慌てて走ってきたのか。なあ、お前本当に何しに来たんだよ。
「何でじゃないですよ、こんな所に居たら死んでしまいます!」
「それが分かってんなら余計に何で来た! お前まで死ぬぞ!?」
「今っ、今から一緒に……出来るだけ遠くに逃げれば、何とかなるかも知れません」
 この女は何を言っているんだ、そう思った。そんなお気楽な話がある訳ないだろうが。馬鹿だ。そもそも助かりたいとも考えていない自分を助けようと、一度は逃げたであろうに引き返してくるなんて。呆れる。呆れた。だが、その言動には正直、心が揺れた。シンゴ自身は変わらずどうでもいいのだが、せめてこの愚かしくも健気な女だけは何とかならないか。こんな木っ端のマケグミ・サラリマンにも、最後に足掻けることはないか?

「……クソッ!」
 シンゴは舌打ちして、首の後ろにある生体LAN端子と、目の前でプログラムを走らせ続けるUNIXとをLANケーブルで接続した。こういう時、カートゥーン作品だったら都合良くあの自爆とやらを止める手立てが見つかったりするだろう。そんな都合の良い展開を期待してしまう程度には、シンゴは何かに縋りたい心地であった。
「ワッザ!?」
 そして、信じられないくらいにあっさりと――『強制停止プログラム』は見つかった。

●拒否権はない
「皆、お集まり頂き感謝する」
 グリモアベースの一角で、ニコ・ベルクシュタイン(虹を継ぐ者・f00324)が一礼した。本体でもあり常に正確な時を刻み続ける懐中時計ではなく、流行りのスマートウォッチに視線を落としていた彼は、一度猟兵たちを見遣ると「あまり時間が無いので、簡潔に用件だけを伝える」と言った。
「サイバーザナドゥで起きている戦争――『トワイライト・ザナドゥ』だが、遂にその全貌が明らかになった。端的に言えば、全てを破壊し尽くしてしまおうという身勝手な話だ」
 魂を融合合体するとかそういう次元の話は、ほとんどの今を生きる人々には関係ない。ただでさえ理不尽を強いられてきた人々が、この上ない理不尽で命を奪われるだけの話だ。猟兵としてそれを看過出来るかと問われれば、答えは否に決まっている。
「電脳関連に強いメガコーポ『アオイドス』の社員である男が、市街地のど真ん中で自爆をしようとしているオブリビオンマシン『セプテントリオン』を食い止められる唯一の手段である『強制停止プログラム』を入手し、それを直接叩き込むために単身駆け出してしまった。その行く手にはアオイドスと癒着した悪徳武装警官たちが立ちはだかるが、皆にはそれをどうか蹴散らして、男の血路を拓いてやって欲しい」
 ニコがぶんと投影したホロビジョンには、くたびれきった背広姿の男性の姿があった。もっさりとした重めの黒い短髪に、目の下の隈は濃い。それなりの体格をしていて、邪魔さえなければ、確かにセプテントリオンの元にたどり着くことは可能かも知れない。

「彼の名はオオタキ・シンゴ。これまで生きてきて初めて、何かに身命を賭しても構わないと決意した男だ。作戦の成否に関わらず、どうか覚えておいて欲しい」

 ニコはそう言うと、虹色の星形のグリモアを輝かせ始めた。転移した先はすぐに戦場と化す――シンゴが襲われるまさにその瞬間に、猟兵たちは割って入ることになるのだ。
「勿論、この作戦は成功するに越したことは無い。どうか、よろしく頼む」
 眼鏡の奥の目を僅かに細め、懐中時計のヤドリガミは改めて一礼をした。


かやぬま
 忍殺で好きなエピソードンは「マスカレイド・オブ・ニンジャ」です。
 かやぬまです、セプテントリオンの自爆を阻止するシナリオをお届けします。
 よろしければ、お力添えを賜れれば幸いです。

●プレイングボーナス
『メガコーポ社員を援護し、強制停止プログラムをセプテントリオンに届かせる』
 悪徳武装警官がとにかく大量に現れて、シンゴの行く手を阻みます。メガコーポの悪徳社員ではありますが末端の一般人に過ぎないシンゴでは到底太刀打ち出来ませんので、猟兵の皆様の力で蹴散らしてシンゴをセプテントリオンの元へと送り届けてあげて下さい。

●戦場情報
 天候:曇り、舞台:サイバーザナドゥ都市部、時間帯:昼、難易度:やや難。
 都市部は半ば崩壊して足場はよろしくないですが、意識して避けねばならないような状況ではありません。

●プレイング受付について
 断章を追加しますので、公開されてすぐの受付ではございません。ご注意下さい。
 受付開始はタグとMSページで告知致しますので、それまでお待ち下さい。
 成功度達成分の青丸が集まったなと判断したところで受付終了のアンナウンスーンを行います。
 可能な限り皆様を描写させていただければと思いますが、力及ばずお返しすることとなる場合もございます。恐れ入りますが、その時はどうぞご容赦下さい。
 また、プレイング送信の前にMSページにもお目通しいただければ幸いです。

 拒否権が無いという調停機と、選択肢がないと思っていた男の物語です。
 どうか、良き結末をたぐり寄せて下さい。よろしくお願い致します。
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第1章 集団戦 『悪徳武装警官』

POW   :    正義の鉄槌を喰らえッ!この蛆虫どもォオッ!!!
【サイバーザナドゥ化した剛腕】で超加速した武器を振るい、近接範囲内の全員を20m吹き飛ばし、しばらく行動不能にする。
SPD   :    公務執行妨害でぇ……死刑ッ!!!
【銃火器による無差別乱射】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    助かりたいならわかるよな…袖・の・下(ワイロ)♪
対象にひとつ要求する。対象が要求を否定しなければ【顔に唾や痰を吐きつけながら金品】、否定したら【胸ぐらを掴み顔面を殴り付けて闘争心】、理解不能なら【殴る蹴るの集団リンチで生命】を奪う。

イラスト:はるまき

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●あなたには選択肢があります
「ハァッ、ハァッ、ハ……」
 オオタキ・シンゴは駆ける。瓦礫が散らばる市街地を駆ける。
 UNIXをハッキングした時に、まるで天啓めいて流れ込んできたプログラムが、一体何の偶然で己のものになったのかは分からない。だが、そんなことを気にしている余裕すらなかった。

 世界を救うとかそういう大仰なことは知ったことか。
 ただ、こんな自分を救おうとしてくれた者に報いたいと思って何が悪い?

 唐突にLANケーブルを引っこ抜き、開け放たれたままの扉から飛び出していったシンゴを、アライ・モナカは呆気に取られたまま見送り――そうして少しして事態を把握すべく咄嗟に電算室の窓に取り付けば、巨大兵器に向かって単身駆けるシンゴの姿を認めた。
 極限状態で遂に気が触れたか、などとは思わない。うだつが上がらない奴だ何だと、どんなに周囲が彼を軽んじ貶めようと、モナカにとっては敬愛する上司だ。まるでやる気のない態度の向こうで時折垣間見える誠実さのようなものとか、そういった信頼の積み重ねがこうして今モナカを突き動かし、またシンゴを動かし返したことを、彼女はまだ知らない。もしかしたらこのまま知ることなく終わるかも知れない。そうだとしても。

(「シンゴ=サン」)

 モナカの目には、シンゴが確かに、何かを選び取ってああしているのだと見えていた。

『いずれにせよ、私に拒否権は無い』
 ちっぽけなモータル一人に何が出来ようかと笑われてもおかしくない程、その『調停機』は禍々しく市街の中央に佇む。
『願わくば、私が滅びを齎す前に、正しき者達が私を討ち果たさんことを』
 搭乗者の意志により駆動する存在たるセプテントリオンには、確かに自我を挟む余地はないのかも知れない。
 だが、本当にそうだろうか?
 何もかもが複雑に絡み合った末の結末次第では、選び取ったことにはならないか?

 セプテントリオンの周囲には、危険分子の存在を察知した悪徳武装警官たちが群れをなしている。頼んでもいない護衛だが、果たして『彼』はここまで辿り着けるのだろうか。

 オブリビオンマシンの巨躯と比すればあまりに矮小な存在であるシンゴを、しかしセプテントリオンの視界は確りと捉えていた。
水鏡・多摘
ふむ、悪事が多いなら公平に神罰を与えるべきじゃろうが…蜘蛛の糸、もまた必要。
少しばかり手伝うとしよう…しかしここではアイサツが大事…?

空中浮遊で浮きつつ神通力と念動力を活用し移動。
祟り縄を伸ばし結界を構築、シンゴを狙う悪徳武装警官共を阻もう。
此方に気付いたら一応はオジギとアイサツ…礼を失してはならぬ。
対応有無拘わらずUC起動、電撃属性のブレスを吹きつけ武装警官共の足に黒き荊を喰い込ませ物理的に動きを阻んでくれよう。
機械化義体も電撃で多少は不具合もでるじゃろう…シンゴは結界でブレスに触れさせぬようにし守る。
そら、止まっておる暇はないじゃろう。
ここは我らに任せよ、と後押しを。

※アドリブ絡み等お任せ



●何を信じるか
(ふむ、悪事が多いなら公平に神罰を与えるべきじゃろうが……)
 グリモアによる転移を受け、まさにイクサのただ中へと突っ込んでいこうとする刹那、水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)は真剣に思考していた。今まさにオオタキ・シンゴが成そうとしている行為がどんなに善性に拠るものだとしても、彼もまたメガコーポの歯車としてではあるが、それなりの悪事に荷担してきたことにはなる。神なる多摘はそんなシンゴの処遇に逡巡するところもあったが、事実こうして真っ先に救いの手を差し伸べるべく天から垂直落下している時点で、結論は出ているとも言えた。
(蜘蛛の糸、もまた必要)
 無慈悲に裁くばかりが神に非ず。竜神がシンゴに襲いかかる悪徳武装警官どもの前へと舞い降り立ちはだかるさまは、まさに救いの一糸に見えたことだろう。
「少しばかり、手伝うとしよう」
「アイエッ……? あ、アンタは」
 機械化義体による換装では説明がつかぬ程の異形は、バーチャルキャラクターの類に見えただろうか。シンゴの誰何に多摘は身を捩り顔を向けると、両手を合わせて長い首を下げてオジギの仕草をした。

「ドーモ、スイキョウ・タツミです」

 |この世界《サイバーザナドゥ》の流儀に則った、古式ゆかしいアイサツだった。

『貴ッ様ァ! 何を企んでおるかは知らんが気に食わんなァ、その態度ッ!』
 |警官《マッポ》をまともに頼ろうとするなど愚の骨頂、それはアオイドスの社員であるシンゴ自身良く知るところであった。現にこうして己の行く手を阻むことは目に見えて分かっていたし、けれどそれに対して何ら抗う術を持ち合わせてもおらず、実際こうして多摘のような得体の知れぬ――などと言っては悪いが、助っ人が現れなかったら一体どうするつもりだったのだろうとぼんやり思う。それ位、無我夢中だったのか。
 シンゴに背を向けた多摘は警官どもにもアイサツを試みて――止めた。多摘の方は礼を失するつもりがなくとも、相手が無粋にも剛腕を振るって襲い掛かる無作法な連中ならば、迎撃を優先せねばなるまい。ふんわり宙に浮いたままの竜神はますます神々しく、それを軽んずる輩を戒める仕置き用の祟り縄を張り巡らせると、四方八方から迫りシンゴ諸共囲んで棒で叩かんとしていた警官どもは見事に牽制された。
『ナンオラー!』
 警官どもの怒号が飛び交う中、果たしてこの縄はシンゴを守りうるものとなるか? 多摘は短く、こう問うた。
「|汝《なれ》、今この状況で神を信じる気にはなれるか」
「エッ!? か、神って……」
 今やその頭蓋に切り札を秘めた男は、一瞬の逡巡の後、こう答えた。

「……いる、今まさに俺の目の前に」
「良かろう!」

 祟り縄は、善悪を問わず神を軽んじる者を罰する。逆を言えば、信心深き者は守る。ならばシンゴは張られた結界の中で、少なくとも今は安全で居られる。確信を得た多摘は大きく息を吸い、全方位に広く撒き散らすようにして息を吐いた。眩い電光が迸るその様はあまりにも神々しく、繰り出されたブレスは紛れもない霊力と敵対者への呪詛を帯び、周囲を一瞬照らしたかと思えばすぐに禍々しい黒き荊と化して、警官どもの足元をあっという間に絡め取ってしまった。
『グワーッ! か、|義肢《からだ》が思うように動かんッ』
『蛆虫どもの分際でッ! 俺たちがこんなままならないことなどあっちゃならねぇッ!』
 |吐息《ブレス》に電撃の属性を付与したのは、警官どもの義肢を機能不全に陥らせる目的もあったが、それはまさに正解だった。ユーベルコード本来の拘束効果も相まって、無数とも言える警官どもの動きは見事に封じられた。

「そら、止まっておる暇はないじゃろう」
「……あ、アッハイ」
「ここは、我らに任せよ。汝はただ目指すもののためだけに、走るがよい」

 シンゴはややつっかかりながら、駆け出した。身動きが取れぬとはいえまだ生きていて怒号を浴びせてくる警官どもは変わらず怖かったが、ここまでかと思った時に都合良くブッダめいた存在が舞い降りて自分を助けてくれるなど――確かに、止まっている暇なんて、ないと思ったから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アマネ・ダツラ
【癒花】
自分の為に体張る女の子に、カッコ悪いトコは見せられへんよなぁ。
ふふ、男の子はそないでこそ、よね?
大丈夫、うちとロザはんで、あなたのコトはしっかり守ったるさかいなぁ。
な、ロザはん?

UCで大きくなったロザはんの背中に、シンゴはんと一緒に乗ってこか。
ロザはんはとっても力持ちやさかい、心配いらへんよぉ。

邪魔する敵はんは、うちのバトモンはん達に退けて貰おうな。
ピカビリはんは【放電】で固まっとる人らを纏めて攻撃、カーミルはんは隠れてこっち来る人に【呪いの眼差し】、からの激痛の呪いで動かれへんようにしたってな。

まあ、大体の敵はんはロザはんが退けてまうやろけど。
な、頼もしいやろ♪


ミアズ・ロザ
【癒花】
…バトモンたる我に男女の機微を求められても困るぞ、テイマー。我が担うは、生命の躍動による歓喜、そしていつしか訪れる生命の終わりという滅びの一つの輪廻だ。…もっとも、その中で生命の番いがもたらす情動の動き、という点ではそれは良きものであると思うが。

だが了解した、アマネ。【生命活性形態】に以降、大きくなった身体にアマネを乗せて片翼で壁のようにし、護るべきシンゴを片翼で包む様に抱えて護る。ミローゼやその他植物の精霊を中心に周囲を警戒させ、立ちはだかる相手からは【生命力吸収】を行い、【回復力】を発揮し強引に突破する。

見下ろされる経験はあまりないか?では、そのまま伏せておくがいい。



●その歩みが止まらぬ限り
 浴びせられる怒声や実際迫り来る暴力を前に、シンゴは目を見開いたまま立ち向かう。決意だとか使命感だとかそういう高尚なものとはおよそ程遠い、それは最早狂人の行動に近い。ただそうしたかったから――全く以て何の勝算もない、愚行も同義と言えた。
 だが、猟兵たちは知っている。今のシンゴを突き動かすものの正体を。
「自分の為に体張る女の子に、カッコ悪いトコは見せられへんよなぁ」
 知っている。今のシンゴの姿を、モナカが遠くから見守っていることを。
「ふふ、男の子はそないでこそ、よね?」
 転移を受けて遙か上空より舞い降りるアマネ・ダツラ(ふんわりはんなりセラピスト・f45410)とミアズ・ロザ(げきじょうバトモン・f45420)。こことは違う世界で『バトモン』と呼ばれる存在として名を馳せるロザは、薔薇で出来た竜を思わせるその異形を巨大化させ、肩の辺りにアマネを乗せながら二人揃って悪徳武装警官どもに囲まれるシンゴを目指す。広げられ風を切る真紅の翼が花弁を散らすさまを美しいと感じるものが、この場に於いては存在しないことは惜しいことだ。薔薇の花弁と共に藍の長髪をなびかせるアマネは、ふんわりとした笑みのままでシンゴを見据える。ようやくその存在に気付いたシンゴがギョッとした様子で振り返るのと、ロザの樹木めいた手が伸びてシンゴをそっと攫ったのは、ほぼ同時だった。
「なっ、あ……!?」
「大丈夫、うちとロザはんで、あなたのコトはしっかり守ったるさかいなぁ」
 純然たるヒトの姿をしているアマネはともかく、ロザの姿はシンゴからすれば『バーチャルキャラクター』として捉える他なく、そんなモノがホイホイと現れ出でては自分を救ってくれるなど、どうしたって困惑するより他になく。だが、アマネの端的かつ明瞭な宣言により、心のどこかで安堵したのもまた事実だった。

「――な、ロザはん?」
「……バトモンたる我に男女の機微を求められても困るぞ、テイマー」

 穏やかで人当たりが良いアマネに対し、ロザはその外見の威厳そのままにおごそかな口調で返した。今や『生命活性形態』と化して臨戦態勢に入った薔薇の竜は、二人の(広義に於ける)人間をその身に乗せたまま瓦礫散らばる地面にずんと舞い降りた。その衝撃だけで複数の警官どもを吹っ飛ばしたが、彼らが相手取るべきはまだまだこんなものではない。
「我が担うは、生命の躍動による歓喜――そしていつしか訪れる生命の終わりという滅びの、一つの輪廻だ」
 いつの世も、そしてどこの世界でも、命あるものの在りようは変わらないのかも知れない。それを俯瞰する立場にあるロザはそう言いつつも、身を縮こめているシンゴを護るように片翼でふわりと包み込んだ。そしてもう片方の翼をこれから戦いに臨む己とアマネの守りを固める障壁代わりとして、生命の情緒なるものとはあまりに無縁な、救いようがないものと成り果てた悪徳武装警官どもを、頭部を揺らして一瞥した。
(……もっとも、その中で生命の番いがもたらす情動の動き、という点では)
 見てみたい、そう思った。こんなクソッタレな世界でなお足掻き生きようと欲するものたちの煌めきを、その行き着く果てを。
「それは、良きものであると思うが」
 故に、戦う。
 かつて人類の命運を賭けた戦に臨んだバトモンと、その力を繰る人造人間が。
「了解した、アマネ」
「ほな、よろしゅうな」
 ロザの蔦で出来た身体にそっと触れたアマネ。その胸は豊満であった。

 巨躯の敵対者を前にしても、警官どもの蛮勇は止まらない。これまで彼らは単純な力と数の暴力で私利私欲を満たしてきたのだから、それが今更変わろうはずがない。突如現れた乙女と巨竜とて、警官どもからすれば略奪の対象でしかない。下卑た薄ら笑いを浮かべながら周囲に群がり、警棒を弄ったり舌なめずりを始めた。
『なぁ姉ちゃんたち、まさか俺たちとまともにやり合おうってんじゃねェよな?』
『今ここで全部脱いでみせろよ、そうしたら命だけは助けてやるぜ』
 何たる無法か! どう考えても信用に足る台詞ではない。相手もそれを分かった上で、揶揄することを目的に言い放っているのだろう。要求を呑んでも拒否しても無視をしても、どのみち己の邪欲を満たすべく、恣に振る舞うのだろうから。
「あ、あの」
 シンゴが、声を振り絞ってアマネとロザの両方に向けて口を開いた。
「どうして、俺なんかを」
 自分が罵倒されたり暴行を受けたりするのはまだ分かるが、二人が暴虐に晒される謂れはないと、そう言外に含んだ問いだった。だがそれには既に答えが出ている。アマネもロザもシンゴの進むべき道を切り拓かんとする動機を携えて、ここに居るのだ。
「戯言に付き合う|暇《いとま》すら惜しい」
「心配いらへんよぉ、うちら――強いかんね」
 つまり、警官どもの要求に関しては全く取り合わなかった。そしてそれは恐らく対処としては最善であり、それを不服とした警官どもが殴る蹴るの暴行を加えようと迫ってきても、むしろ戦うつもりでいた二人からすれば好都合であった。
『無視しやがってッ!』
『面白くねえ、ブッ殺してやる!』
 警官? そう呼称するのも反吐が出る。本来持ち合わせているべき正義の心を完全に失い、私利私欲を満たしメガコーポに媚びを売る為なら殺人さえ厭わない連中だ。アマネはシンゴに「ロザはんはとっても力持ちやさかい」とウインクひとつ、心配無用と言葉をかけてから、視線を警官どもに向けると同時、愛すべきバトモンを二体召喚した。
「ピカビリはん!」
 雷の力を宿すもの同士、最も強いつながりを持つバトモンであるライトリは『ピカビリはん』と名付けられ愛でられており、強烈な放電で群れて迫り来る警官どもを広範囲で一網打尽にしてみせる。しかしそれでも全方位をカバーしきれるものではなく、難を逃れた警官どもが嘲笑うかのように畳みかけようとして――突如、その場に次々と倒れ伏してもがき苦しみ始めた。
「カーミルはんもいい子やねぇ」
 アマネの目が届かないところは、ヤタバードの『カーミルはん』が文字通り見てくれる。その眼差しによりもたらされる【|激痛の呪い《ペインフル・カース》】は、命こそ奪わないものの敵対者の動きをほぼ完封する力を持つ。愛らしくも恐ろしい力を持つもう一体のバトモンは、くりくりのお目々でアマネを支援すべく周囲を凝視し続けていた。
「先程も言ったが、我々は時間が惜しい」
 ロザの端的な言葉に、警官どもが一瞬怯む様子を見せるも、道を開ける気配は見えない。
「故に、このまま突破させて貰う」
 ミローゼという、ロザをデフォルメして愛らしくしたような外見ののばらバトモンが、ロザの周囲を警戒するように現れると同時、巨躯は進撃を開始した。立ちはだかる警官どもからは容赦なく生命力を奪い地に伏せさせると、多少のダメージは脅威的な回復力で打ち消しながら、まさしく無数にうごめく警官どもを蹴散らして徐々に目的地へと進んでいく。

『ザッケンナ……コラ……』
「見下ろされる経験はあまりないか?」

 およそ五メートルに及ぶ巨大な偉容を誇るロザが、アマネとシンゴを伴って進む。
「では、そのまま伏せておくがいい」
『ヒィッ……!?』
 警官どもは、あまりにも遅いとしか言いようがないが、そこでようやく圧倒的な力量の差を理解した。思い上がりを打ち砕かれ、まさしく伏して呻くより他にない。
「ほら見ぃ、大体の敵はんはロザはんが退けてまうやろ?」
 まったりとした笑みを崩さずそう言うアマネも、負けないくらい警官どもを無力化させているのだが、シンゴはただこくこくと頷くばかりだった。
「……行けるか、俺に。あいつの所へ」
 シンゴの視線の先には、徐々に大きさを増すセプテントリオンの姿があった。それを認めたアマネは、目を細めて頷いた。
「この先も、あなたのことを助けてくれる人がおる」
 強制停止プログラムを叩き込むべき究極兵器には、まだ遠くとも。
 腐敗しきった警官どもが、どんなに行く手を阻もうとも。
 猟兵たちは手を差し伸べ続ける――シンゴが前に進もうとする限りは。

「頼もしいやろ? 信じて進んでおくれやす」

 生命の輝きを、頑張るカッコいいところを、どうか見せておくれと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
勇者よ、世界を破滅から守る為、そして、他が為に命を掛けれる彼が死なぬよう守ってほしいのです。

『勇者再来』で、帝都櫻大戰の折に共闘した堕天使『勇者リリリリ』の再現悪魔を召喚、彼女にシンゴ殿を守るよう交渉、そしてシンゴ殿への盾オーラ付与で【オーラ防御】もしていただき、いかなる攻撃でも彼が死なぬよう、セプテントリオンの元に辿り着けるよう【継戦能力】も強化。

……彼の者の道行を阻むモノは、自分が!!壊して均す!!!

問答無用袖の下理解不能でサイキックシールドを纏わせ切断力を強化した騎兵刀で敵を【切断】そして禍集焔業、劫火の【念動力】を放ち敵集団を【焼却なぎ払い】己が存在で敵を引き付ける!!



●道なき道を征く
 大の大人でも萎縮してしまうくらいの怒号が飛び交い、手足が加害の意図で乱暴に振るわれる。メガコーポの意にそぐわぬものは、悪徳武装警官どもに潰されて当然だ。
 怖くはないのか? 怖いに決まってる。
 勝ち目はあるのか? そんなものある訳ない。
(クソ、よってたかって邪魔しやがって)
 それでもシンゴは世界を滅ぼさんとするものを止めるために走り出した。自分にはそのための手段があるだなんていう、あまりにもか細い理由ひとつを抱えてだ。世の中はそんなに甘くないことくらい、嫌というほど知っているだろうに、愚かなことだと笑うだろうか。避けきれずに肩の辺りを殴打され、それだけで大きくよろめきながら、シンゴはぼんやりと空を見上げた。

 何で、カートゥーンなんて流行るんだろうな。
 荒唐無稽な夢物語だからこそ、憧れるのかな。

 だん、と。傾いだ身体を踏み出した足で地面を踏みしめて耐える。だが、次に畳みかけられたら終わりだ。一瞬でも隙を見せたら終わりだ。行く手をさえぎる警官どもを掻い潜って、己は行かなければならないのだ。
「届かせてくれ」
 誰に聞かせるでもなく、男は絞り出すような声を上げた。
「頼む」
 さらに、一歩前へ。
 警官どもの下卑た笑い顔が迫る。

「勇者よ」
 立ち向かう者の背中を押すのは、朱鷺透・小枝子(|亡国の戦塵《ジカクナキアクリョウ》・f29924)だった。天より舞い降り来たるその者は、うずたかく積み重ねてきた戦の記憶へ手を突っ込むように探り出す。今この場に於いてもっとも相応しい|悪魔《ダイモン》は何か? 既に答えは出ているから、小枝子は躊躇なく拳を握りしめた。
「世界を破滅から守る為、そして、他が為に命を賭けれる彼が死なぬよう」
 シンゴがどこまで自覚しているかは分からない。だが、その行動の結果は間違いなくこの世界を救うという点に収束する。守るべきものを守らんとしているのは確かなのだ。

「守って欲しいのです」
 その要請ひとつで、十分だった。シンゴを殴り伏せようとした警官の顔がひしゃげる。小枝子の召喚に応じた異世界の堕天使『勇者リリリリ』を再現した仮想悪魔が、耐久戦に特化した特性を十全に活かして、防御のオーラを纏わせた盾でシンゴをかばいつつ、同時に盾で警官どもを殴り飛ばしたのだ。
『なんッ……!?』
『テメッ、まだ刃向かうのか!』
「……っ」
 モータルのものとは到底思えない底知れぬ力で道を切り拓くシンゴに、悪徳武装警官どもが怒鳴りかかった。かばわれた隙に姿勢を立て直したシンゴのすぐ隣に、ふわりと小枝子が舞い降りる。シンゴの肩にそっと触れると、心身に力が漲るのを感じた。
「何だこれ……バリキか何かか?」
「何者にも屈しない勇者の加護であります、シンゴ殿の道行きに役立ちますよう」
 鈍色の瞳がごく平凡な男を捉え、ほんの僅かだけ笑んだ。そしてその眼差しはすぐ険しいものとなり、行く手を阻む警官どもを見据える。小枝子はこれから鬼神と化し、その『道行き』を自ら作り出すのだ。
『なぁ、ソイツをこっちに渡してくれよ姉ちゃん』
『まだ死にたかねェだろ? 俺たちだって乱暴はしたくねェんだ』
 どの口が、と二人揃って言わずに耐えたのは偉かった。シンゴは与えられた力を無駄にすまいとその時を待ち、小枝子は警官どもの戯言に一切取り合わなかった。

 壊す。
 己が宿すのは、狂気と理性、その両方だ。
 壊す。
 腐敗しきった警官どもを壊し、微かな輝きを宿す男を守る。
 壊す。
 壊せ、壊せ壊せ壊せ、壊せ――!

「……彼の者の道行を阻むモノは! 自分が!! 壊して均すッ!!!」

 小枝子が腕を振るう。サイキックシールドに覆われた腕は鋭刃なる騎兵刀となり、あっという間に広範囲の警官どもを切り裂いていく。
『ギャアッ!?』
『押し潰せ!!』
 物量で押し切ろうという目論見は、しかし文字通り『焼却』された。劫火を繰る念動力は禍集焔業と呼ばれる驚異となって、一人がいっぺんに相手をする数とは思えぬ程の警官どもを塵芥に変えていった。
「シンゴ殿!」
「! あ、ああ……!」
 小枝子がなぎ払い、悪魔の勇者が守りを固める布陣に守られながら、男は再び走り出す。そのまま真っ直ぐに、どうか。セプテントリオンの元へ辿り着けますようにと小枝子は祈る。そのためならば、この身をどれだけすり減らそうとも構うまいと思えるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

…時は来たれり!黒い機神を打ち倒す為に!
…この世界を救う為に…さぁ行くぞ!私は…処刑人だッ!!!

あの青年を機神の元に運べばいいのか…いいだろう…!
精霊馬を召喚し騎乗、戦場を駆けて彼の元に辿り着こう

…あそこに行く必要があるのだろう?ならば乗れ!早く!

青年を前に乗せ機神の元へ悪路走破で駆け抜けよう

群れる敵を騎乗突撃で蹴散らし
曲芸騎乗で体勢を保ち、汎用機関銃を取り出し構え【鉄の雨】を発動
弾幕を張り範囲攻撃と鎧無視攻撃で敵群を撃ち貫こう
制圧射撃で敵を近寄らせぬように発射し続けよう…!

…後は私が引き留める!先に行け!離すなよ!

弾が尽きたら馬から降り地獄の炎纏う鉄塊剣でなぎ払い時間を稼ごう…!



●正義、執行
 ごうごうと風を切る音が仇死原・アンナ(処刑人、炎の花嫁、魔女、屠る騎士、そしてあいどる☆・f09978)の耳を打つ。転移を受けるとほぼ同時に召喚した黒鹿毛色の精霊馬に颯爽とまたがって、緩いウェーブを描く長髪をなびかせながら戦場と化した都市をひた走る。目指すは勿論、シンゴの元だ。
「……時は来たれり! 黒い機神を打ち倒す為に!」
 まるでオブジェクトのように佇む巨大な機兵を止められるのはもはやシンゴのみ。それを知る者たちの思惑がぶつかり合い、それでもシンゴは着実にセプテントリオンの元へと近づいていた。ならばアンナは追い風となって、目的の遂行に全力を尽くすだけだった。
「……この世界を救う為に……さぁ行くぞ!」
 馬の腹辺りを踵で軽く蹴ってさらに速く駆けるよう促しながら、アンナは今まさにシンゴを包囲せんとする悪徳武装警官どもに迫り、高らかに宣言した。

「私は……処刑人だッ!!!」
『ゴアァッ!?』
『ナンオラー!』

 一切の躊躇なく警官どもへと騎乗したまま突撃したため、そこそこの数が文字通り蹴散らされて吹き飛んでいく。そうして若干の減速を経た後、アンナは仰天して目をまあるく見開くシンゴのすぐ傍に立った。
「……あそこに行く必要があるのだろう? ならば乗れ!」
「エッ……馬? 馬なんて俺……」
「早く!」
「アイエエエ!?」
 サイバーザナドゥで生まれ育ったものの果たしてどれ位の存在が、騎乗の経験を持つだろうか。そう考えればシンゴが動揺したのも無理はないが、同時に余計なことを抜かしている場合でもないと理解出来たのか、アンナがずいと差し出した手を反射的に握れば、驚くべき力で馬上に引き上げられて情けない声を上げてしまう。だが、なり振り構ってはいられない。シンゴが今ここにこうして立っていて、前へと進む意志がある限り、猟兵たちはそのための血路を切り拓くことを厭うことはないからだ。
(この青年を機神の元に運べば、私たちの勝ちだ)
 馬の首に半ばしがみつかん勢いのシンゴを落とさぬように注意を払いながら、アンナは手綱をシンゴの手元に持っていった。ハッとして振り返ったシンゴは、鞍の上に曲芸めいて絶妙なバランスで立つアンナの姿を認めた。
「恐れるな、私とこの馬を信じて前だけを見ていろ」
「……わ、分かった……!」
 再び馬が駆けるには、行く手を阻む警官どもが疎ましい。
 ならば排除するまでと、アンナは『電動丸鋸』の異名を持つ汎用機関銃を馬上に立ったまま取り出して(!)迷わず警官どもに銃口を向けた。
『飛び道具たぁ卑怯じゃねェか!』
『ビビってんのかァ!?』
 悪徳武装警官どもの主な攻撃手段は機械化義体そのものか、手にした警棒などの、近接範囲中心のものばかり。どれだけ罵られようが、真っ向から相手をする義理は――ない!
「黒き鉄の雨がその身を切り裂き……赤い血だまりを作るッ!」
 引鉄を引け、さすれば【|鉄の雨《アイゼン・レーゲン》】は発動する!
『アバーッ! アババババーッ!』
 無数の鉛玉を浴びて、強制的に進路が作られる。これまで暴虐の限りを尽くしてきた輩に相応しい最期と言う他なかった。それでもシンゴは流石に直視出来ず、顔を伏せて強く手綱を握る。精霊馬が再び走り出す気配がして、アンナはそれでも確り立っていた。
 重機関銃は弾幕を張り、そんじょそこらの防弾チョッキなどゆうゆう貫通し、警官どもを屠っていく。それは文字通りの『制圧』であり、もはやアンナとシンゴの行く手を阻めるものはこの場に存在しなかった。
「……これまで散々蹂躙してきた側の存在が、逆の立場に置かれる気分はどうだろうな」
 アンナの呟きは、マシンガンの射撃音にかき消されてシンゴに届くことはない。己はあくまでも処刑人であるから、警官そのものが腐敗しきったというのならば、こうして直々に手を下すだけなのだが。

 ――がちん。

 そんな中、機関銃が沈黙した。二人は同時に弾切れを察し、アンナは迷わずに馬上から飛び降りた。役目を終えた機関銃を放り投げ、代わりに『錆色の乙女』の銘持つ鉄塊剣を構える。アンナの肉体から燐光のようにちらつく炎が刀身に移り、ごうと音を立てて地獄の業火めいて周囲を煌々と照らした。
「……後は私が引き留める!」
「そんな、アンタは」
「先に行け! 絶対にその手を離すなよ!」
「……っ」
 精霊馬がシンゴを可能な限り導くだろうと、先を急がせる。悪い、という小さな声が聞こえた気がした。戦闘能力はまるでないが、気概だけはあるらしい。悪くない。
「お望み通り、剣で戦ってやろうぞ」
 後を追わせることを許さず、アンナは炎を纏って立ちはだかった。

「命ある限り相手になろうぞ、私は……」
 炎よ照らせ、今こそ裁きの時である。
「処刑人だッ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
蛞蝓にも角、痩せ腕にも骨、一寸の虫にも五分の魂…
本当にどうにもならないなら諦めもつくけれど、たとえ一縷の望みでも選択肢が手に入ったのなら。やっぱり足掻きたくなるのが人情ってモノよねぇ。

ドーモ、シンゴ=サン。イエローパロットです。…アイサツの作法、これで合ってたかしらぁ?とりあえず味方と思ってもらっていいわよぉ。
悪徳警官どもをブッ散らしてセプテントリオンまで届ける――まあ、難易度はともかくやること自体は単純ねぇ。
シンゴ=サンの直掩に入って●黙殺・砲列を展開、描くのは|ソーン《阻害》に|エオロー《結界》。弾幕結界ならぬ「結界弾幕」で乱射に対処するわぁ。…無差別に撃ちまくってるみたいだし、弾き返せば立派なダメージソースになりそうねぇ。
あとは●鏖殺・狂踊で邪魔な連中を片っ端からなぎ倒してきましょ。そこら中に瓦礫転がってるんだし、結界弾幕も合わせれば跳弾のタネには十二分。シンゴ=サンはそもそもただのモータルなんだからそこまで長々と戦闘に付き合わせられないし、一気に速攻かけるわよぉ。



●凶弾、飛び交え
「はぁっ、はっ、は……」
 突如現れた女傑から提供された謎めいた馬に導かれるようにして、シンゴは目指すべき場所へと着実に近づいていた。街ひとつゆうに消し飛ばしてしまうだろう存在を止められるのは、今や己のみということだけを頼りに駆ける。途中で馬はかき消えてしまったが、ならばとシンゴは己の脚ひとつで駆けた。悪徳武装警官どもも、まさかここまで突破されるとは思っていなかったのか、姿が見当たらない。これなら、目的地まで辿り着けるかも知れない――そう思った時だった。
『アッコラー!』
『タマッタルケンノー!』
 知らず、舌打ちが漏れた。流石にそんな都合の良い話はないかとも思うが、目的地を間近にして妨害を受けるのは率直に言って、癪だ。ここまでは運良く助けが入ったが、能動的にそれを期待するのは何か違うと思い、シンゴはひび割れた地面に転がる瓦礫を拾い上げた。実際問題これでどこまでやれるかは知れているが、かと言ってここで膝を折るという選択肢もなく、ほとんどヤバレカバレの目線を警官どもにくれてやるのと同時、シンゴの眼前に見たこともない神秘的な文字めいたものが浮かんだと思うや、今まさに浴びせかけられようとしていた無差別乱射の嵐を、同じ弾丸の嵐が等しく放たれ相殺していった。
「な……っ」
「|蛞蝓《なめくじ》にも角、痩せ腕にも骨、一寸の虫にも五分の魂……」
 蕩けるように甘い、女の声だった。ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)が並べた言葉は全て、か弱きものでも意地や誇りを持っており、それを侮ってはならないという意味を含んでいる。ティオレンシアは思う。この状況を前にして本当にどうにもならないというのならば諦めもつくだろうが、シンゴは何の因果か打破を可能とする手段を得てしまった。そしてそれを放棄することなくここに立っている。
(「たとえ一縷の望みでも選択肢が手に入ったのなら」)
 フィクサーは愛銃をホルスターから抜いていない――今はまだ。代わりに手にしたのは今やすっかり手放せなくなったシトリンを抱く|鉱物生命体《ゴールドシーン》だ。
(「やっぱり、足掻きたくなるのが人情ってモノよねぇ」)
 ペンの形をしたそれによって生み出された|阻害《ソーン》と|結界《エオロー》のルーンはティオレンシアに付き従うように浮遊し、その文字が秘めた意味通りの効力を発揮していた――つまりは、たった今シンゴを襲わんとした凶悪な無差別乱射を、たった一人であしらったということなのだ。言うなれば『結界弾幕』により鉄壁の防御を披露したティオレンシアは、視線だけを背中に庇ったシンゴに向けて、こうアイサツした。

「ドーモ、シンゴ=サン。イエローパロットです」

 アイサツの作法、これで合ってたかしらぁ? と口の端を上げて笑う女に、しがないサラリマンでしかないシンゴは「ど、ドーモ」と返して首肯するのが精一杯だった。
「とりあえず、味方と思ってもらっていいわよぉ」
 こうして言葉を交わす余裕があるのは、全く考えなしに銃を乱射した警官どもに、ティオレンシアが生み出した結界と同等の効果を持った弾幕が反射を行った結果、弾き返された弾丸が前列の警官どもをあらかた掃射したからだ。手練の猟兵の前では、迂闊な行動はこのようにすぐ致命傷へと繋がる。
「悪徳警官どもをブッ散らしてセプテントリオンまで届ける――まあ、難易度はともかく、やること自体は単純ねぇ」
「あ、あの」
 ここに来て、遂にシンゴは問うた。最初からずっと抱いていた、シンプルな疑問を。
「……何で、俺の手助けをしてくれるんだ……?」
「……そうねぇ」
 リボルバーをしなやかな手に収めながら、ティオレンシアは少しばかりもったいぶるように返す。戦場を見渡せば、無残にも破壊された都市の全てが、憐れむべきものというよりはこの絶望を覆すためのものに見えてくるから不思議だ。跳弾が敵に対して有効であるという確証も得た。戦える。ならば答えよう。

「ビジネス、とだけ言っておこうかしら? 報酬はちゃんと貰ってるから大丈夫よぉ」

 長い三つ編みが揺れた。そして、リボルバーから六発の弾丸全てが立て続けに放たれる。それらは一見無軌道にぶっ放されたように見えて、しかし周囲の瓦礫や建造物などに跳ね返り、着実に群れる警官どもを仕留め始めた。
「さぁて、それじゃあ御立ち合い」
『グワーッ!』
『アバーッ!』
 反撃で再びの乱射を試みる連中には、継続して張り続ける弾幕がお相手をする。懲りもせず己が放った弾丸で斃れていく輩には目もくれず、ティオレンシアは次弾を装填しながら、閉じているかのように見える瞳をいっそう細めた。
「一指し御付き合い願いましょうか――嫌だと言っても、逃がさないけれど、ね?」
 あまりにも凄絶なバトルスタイルにどこまでも反した甘い声。それを含めた全ての光景をどこか遠い世界の出来事かのように捉えながら、それでもシンゴはもうすぐ近くに迫ったセプテントリオンの異様な姿を視界に入れて、現実に引き戻される。
 行かなければ。この謎めいた女性が道を切り拓いてくれたら、行かなければ。
 誰かのためだとか、世界のためだとか、もはやそういう軛からは離れている。
「シンゴ=サンはそもそもただのモータルなんだから、あんまりここには居させられない」
「ああ……分かってる」
「一気に速攻かけるから――タイミングを見て一気に行って頂戴ねぇ」
「……悪い、恩に着る」
 感謝の言葉など、もう二度と発することもないだろうと思っていたのに。
 この世はまだ、このギリギリの崖っぷちでなお、ひとかけらの輝きを抱いているのか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神臣・薙人
葛城さん(f35294)と

生まれて初めて何かに身命を賭したいと思った
なら、その想いを貫かせてあげたい
私達でお護りしましょう
ふふ
そうですね
シンゴさんは立派な英雄です

転送されたらすぐにシンゴさんを背に庇う位置に
貴方の往く道を開くために来ました
この場が静かになるまでお護りさせて下さい

その後
白燐桜花合奏使用
シンゴさんが怪我をしているようなら
回復範囲に入る位置で演奏し治療
その後は葛城さんとシンゴさんが
回復範囲から外れないよう注意して
可能な限り多くの敵を巻き込むよう
前進しつつ位置を適宜調節します
道は葛城さんが開いて下さいますから
それを広げるように花で切り裂いて行きましょう

要求は否定
貴方がたに渡すものなど何もありません
英雄の進軍を邪魔しないで下さい
胸ぐらを掴みに来た所を蟲笛で叩いて怯ませるか
白燐蟲の光量を最大にして目を眩ませます
話す必要が無くなればすぐに演奏を再開
大丈夫ですよ
シンゴさんが目的を果たすまで
私達も止まりませんから

選択肢が無いなんて
そんな事は無いのですよ
ご自分で選んだ道を、迷わず進んで下さい


葛城・時人
ダチの神臣(f35429)と

誰かの為に私欲なく
難事に挑む男の背中ってカッコいいね
「うん、俺たちで英雄を護り抜こうだ」
彼が自分をそう思ってないのは分かってるけど
喜んで盾となり護るべきを護ろう

神臣とだから防御は微塵も心配する必要ないけど
念の為蟲を沸き立たせ
彼をかばう神臣の更に前に立つ
『義により助太刀仕る!』って
感じだけど通じないかもだし普通に
「援護だよ!猟兵だから安心してね!」

なんで、なんて聞かなくて良いよ大丈夫
「君が自分の足で到達するまで!」
決して離れないと叫んで真の姿を開放し
敵を睥睨する

今は寧ろ調停機より群がる此奴等の方が拙い
「邪魔なんかさせるものか!」

ジャッジメント・ヘリオンライトをお見舞いする
錫杖を向けた敵は創世光に消え
手負いは神臣と連携して蹴散らす
倒れ消え逝く隙間を
更に押し開け押し通り前へ!

最後まで凡ての力を以て戦い調停機の攻撃もいなして
彼が成し遂げるまで絶対後退は無い

「選んだ未来の為に征け!」
激励し偉業を見届けよう



●血路の果てに
 走った。
 それはもう、ひたすらに走った。
 これまで自分たちがメガコーポの威光をバックに仕事をしてきたのと同じような理屈で、どこかの誰かが自分を手助けするという酔狂な役割を担っているならば、有難い。
「退けッ!!!」
 自分でも、信じられないくらいの大声が出た。悪徳武装警官どもを恫喝する日が来るだなんて思わなかった。けれども残念ながらその程度で本当に道を開けてくれる連中ではなく、無慈悲に放たれた拳銃の弾丸で左のふくらはぎ辺りを抉られ、シンゴは勢いよく割れた地面に転げた。身体中が痛くて嫌になるが、それでも視線だけは鋭く前を向いた。

 生まれて初めて、何かに身命を賭したいと思った――そんな男の姿を、神臣・薙人(落花幻夢・f35429)は確かに見た。傷つけどなお折れない意志が伝わってくる。
(「なら、その想いを貫かせてあげたい」)
 戦場のはるか上空という、些か乱暴な転移に文句ひとつ言わず、薙人は己を『ダチ』と呼んでくれる葛城・時人(光望護花・f35294)と共に落下しながらそう思った。
「私達で、お護りしましょう」
「うん、俺たちで英雄を護り抜こうだ」
 シンゴは上半身だけでもと必死に起こそうとしている。それを嘲るように警官どもが取り囲み始める。これから彼を助ける自分たちはまるで|英雄《ヒーロー》のように思われるかも知れないが、本当の英雄が誰かなんて、言うまでもないのだ。
(「誰かの為に私欲なく、難事に挑む男の背中ってカッコいいね」)
 時人は真に尊いものを見る目で、あっという間に迫るシンゴの姿を見た。彼自身がそう思っていないことは分かっているが、この身を盾にしてあの高潔さを護れるならば、まったく恐ろしくなどなかった。
 薙人も同じ心持ちだったので、決意を秘めた様子の時人にふふと笑いかける。
「そうですね、シンゴさんは立派な英雄です」
 これは、英雄の物語。報われて終わらなければ、誰も納得すまい。

「ふざけんな……こんな、とこ、でっ……」
『ハハッハァ、無様だな! その程度でぶっ倒れるたぁ情けねぇ!』
 シンゴも肉体のいくつかを機械化義体に換装はしているが(首の付け根にある生体LAN端子が最も活躍しているし、今回肝になるプログラムをダウンロードしたのもこれ経由だ)、撃たれた箇所は生身だった。故に、痛いし行動も制限される。逆に生身の部分を探す方が難しい警官どもからすれば、それが惨めで脆弱に見えたのだろう。
 クソが、笑ってろよ――そう悪態はつけるが、多分己は、このまま蜂の巣にされる。いや、それで済めば良い方だ。最悪、人としてのカタチすら残せず挽き潰される。
 覚悟した。だが、目を瞑ったりはしなかった。最期の最期まで、抗ってやろうと思った。歯の根が合わない。怖いのか? 怖いとも。もう一度だけで良いから、都合良く助けが来ないかなんてことを考えた。

 ――そうして、助けは来た。

「援護だよ! 猟兵だから安心してね!」
 凜とした青年の声が響き渡った。まるで、警官どもの下卑た嗤いを吹き飛ばすように。時人がその身に宿した|翼持つ蛇《ククルカン》を表出させながら矢面に立つ。すぐ後ろには、負傷したシンゴを庇うように位置取りつつ、蟲笛を取り出す薙人が居た。
 これはもうどう考えても『義によって助太刀仕る』という状況なのだが、万が一この世界の流儀に当てはめられず滑ってもコトなので、時人はより直接的な名乗りを上げた。半信半疑といった様子のシンゴの負傷箇所に軽く手をかざしながら、薙人もそっと告げる。
「貴方の往く道を開くために来ました」
 変遷を知る者から見ればだいぶ伸びた美しい髪を揺らす、性別すら定かでない、どこかブッダめいたものすら感じる存在を見て、シンゴはまばたきをひとつ。
「この場が静かになるまで、お護りさせて下さい」
 そして、大人しく頷いた。

 笛の音が響くと、時人が先に繰り出していた蟲たちとまさに合奏を演じるように、【|白燐桜花合奏《ビャクリンオウカガッソウ》】が発動して、薙人の残花のうちおよそ半分がシンゴの痛々しい傷に集まり、じわじわとそれを癒しにかかった。
「! こ、こいつぁ……」
 蟲笛の演奏に集中するため言葉を発することが叶わない薙人は、シンゴに視線を向けて小さく頷く。もう半分の蟲たちは、時人と共に警官どもへと立ち向かう。
『何だこのウザってえ蟲はよォ、オラッ!?』
『小細工してねぇでさっさとその死に損ないをこっちに寄越しな!』
 薙人の実力と、シンゴの執念、その両方が揃った結果、傷の治りは脅威的に速かった。よろめきながらも立ち上がるシンゴの瞳は、まるで諦めてなどいない。

 何故、俺はこんなにも助けられているのか。

 先程も別の助っ人――どうやら猟兵というらしい――に訊ねたが、その時は『仕事だから』とドライな返事が返ってきた。それでも良かった。何でも良かった。だが、どこかで勝手な解釈が湧き上がる。
 人生も、世界も、どうしようもないと思っていた。
 けれども、いざ選択肢を与えられてみれば、どうしようもなくそれを欲してしまう。
 もしかしたら、この世界は終わりきってなどいなくて、最期の最期まで諦めずに足掻いてみれば、希望のほんのひとかけらを見いだし――何なら、掴むことだって出来るんじゃないだろうか。
 他ならぬ自分のために、自分が納得する結末のために、一歩踏み出したなら。
 ああ、だから、こんな風に、お人好しが集まってくるのか。
 知らなかった。そもそもこんな風に何かを選んだことなど、なかったから。

 シンゴが立ち上がるさまを視界の端に捉えて、時人は口角を上げた。良し。理由なんて聞かなくても良いのだ。ただその心のままに、あの忌まわしきセプテントリオンの元まで駆け抜けて欲しい――それだけだった。
 警官の恫喝など、これまでくぐり抜けてきた修羅場を思えば温い、温すぎる。背後の薙人に念の為視線で合図を送ると、時人は割れた地面をしっかり踏みしめて、奥歯を強く噛んだ。ぶわ、と。埒外の力が一気に解放されるのを感じる。外見の劇的な変化はないものの、今日その手に良く馴染むのは愛用の錫杖だった。
「君が! 自分の足で到達するまで!」
 周囲を取り囲む白燐蟲たちが、主の意思に従うように唸る。この世界ではお目にかかれないであろう蒼空を思わせる瞳が、強固な意志を宿して警官どもを睥睨した。
「決して離れない――決してだ!」
「あ……ああ……!」
 傷が癒えていくのと同時に、負傷に起因していた痛みも消えていく。時人が告げた通り、己の脚で歩けるまでに回復したシンゴは、ゆっくりと、しかし着実に一歩一歩前へと進んでいく。そんな二人を回復しつつ、攻撃も同時に繰り出せる位置取りを心掛ける薙人は誰よりも位置関係を重要視していた。それが功を奏して、一度は血だまりを作っていた場所から、目的地への進軍を再開出来るまでに至った。

『シカトぶっこいてんじゃねぇぞコラー!』
 要求を拒否されたも同然の警官どもは激昂し、大挙して三人に襲い掛かってきた。胸ぐらを掴んで顔面を殴れば大抵の相手は言うことを聞くという悪い学習をしているものだから、今回もそうして闘争心を奪ってやろうというらしい。
「邪魔なんてさせるものか!」
 錫杖が一閃するや、その軌道から激烈な創世の光が放たれた。真の姿を解放した時人による【ジャッジメント・ヘリオンライト】は、光の軌道上に存在した全ての敵対者を灰燼に帰す。
「貴方がたに渡すものなど、何もありません」
 ほんのひと時だけ蟲笛から口を離した薙人が、遂にはっきりと拒絶をした。
「英雄の進軍を、邪魔しないで下さい」
 伸ばされた無粋な腕を、蟲笛で強かに打ち据えて怯ませる。不埒な輩はすぐに時人が始末してくれた。「大丈夫ですよ」と穏やかな声音でシンゴを安心させるように言う。
「シンゴさんが目的を果たすまで、私達も止まりませんから」
 そして再び蟲笛を演奏すべく言葉を封じた薙人を見て、シンゴは一度両の太腿を叩いた。
「……分かった、俺は……」
 切り札は己の頭蓋にしかない。
「俺も……絶対に諦めない」
 叩き込むのだ、あのデカブツに。馬鹿な真似をしでかさないように、一撃を。

 英雄の進軍、とは良く言ったもので、シンゴと彼を護る二人の道行きは、見事なものであった。時人が大まかに警官どもを蹴散らし、残党を薙人の白燐蟲や桜花が掃討する。瓦礫には警官どもの血飛沫などがべったりと付着し、その先に拓かれた道は、確かに恐るべき調停機へとつながっていた。目先の脅威はそれよりも鬱陶しく邪魔をしてくる警官どもだと見抜いていたので、時人は躊躇せずそれらを蹴散らすことを選んだ。
 突き進め。折り重なろうとする屍を押し退けて、文字通り血路を拓きながら進め。
 創世の光は、まるでこの世の終わりを越えた先で、新しい世界を照らさんばかり。

「選択肢が無いなんて、そんな事は無いのですよ」
 薙人が、シンゴの背中をそっと押した。
「ご自分で|選んだ《・・・》道を、迷わず進んで下さい」

 餞である。あれだけ湧いて出てきていた警官どもが、遂に絶えようとしていた。油断なく錫杖を一度振って周囲を眩く照らし、時人もまたシンゴの方を見る。気がつけばもうほとんど調停機の足元近くである。最後まで、持てる力の全てを出し切って戦った。猟兵たちに出来ることは――ここまでだった。
 だから、時人もまた餞を贈った。シンゴの背中を、薙人のそれよりもやや強めに打つ。

「|選んだ《・・・》未来の為に征け!」

 数歩、押し出されるように前に進んだシンゴは、少しだけ振り返る。
 そして、片手を高々と挙げた。
 セプテントリオンのコックピットを目指す足取りは、とても力強かった。

 コックピットで強制停止プログラムを打ち込み終えて、セプテントリオンの動作が完全に停止したことを確認したシンゴは、大きく息を吐いた。
「俺が、選んだ、未来」
 カタチのないものなのに、不思議と手応えがある。生まれて初めての感覚だった。
 取り敢えず――生きている。生き延びた。モナカも、そうであって欲しい。
 漠然と生きるだけだったが、これからは、未来の話をしても良いのかも知れない。

「……お疲れさまです」
「薙人も、ありがとな」
 全てを見届けた二人は、お互いを支え合いながら、完全停止した調停機を見ていた。
 世界にとっても偉大なる所業ではあったが、何より、オオタキ・シンゴという一人の男にとっての大いなる一歩だったに違いない。そのことが、我がことのように嬉しかった。

 ――あなたには、常に選択肢があります。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2026年03月06日


挿絵イラスト