トワイライト・ザナドゥ⑩〜パン祭りのお味はいかが?
「猟兵っていうのも、なかなか歯ごたえがあるもんだ」
その男──CEOタイマイ・ジローが佇むのは、タイハイホールディングスの幹部専用サイバースペース。小麦の香ばしさが充満する室内で、タイマイ・ジローは不敵な笑みを浮かべながらふっくらと丸いものに噛り付く。
爬虫類じみたその大きな顎で噛みしめれば、ザラメを散らしたクッキー生地がザクザクと音を立てて口の中に解けて、フカフカなパン生地の弾力が咀嚼を軽やかに楽しませる。
そう、それは焼きたてのメロンパン──しかもタイマイ・ジロー自らが焼き上げた最高の焼きたて絶品パンだ。
口元についた食べかすを舌でペロリと舐めとり、タイマイ・ジローは次なる獲物──つるりとした表面にアクセントとして散らしたゴマがキラリと輝く小ぶりなパンを手に取った。見た目以上の重量に笑みを浮かべて頬張れば、香ばしさの内側はフワフワ生地にぎっしり詰まったつぶ餡が口いっぱいに広がってゆく。
次に手を伸ばしたケシの実をトッピングしたそれの中身は上品な甘さと滑らかな舌触りのこし餡で、あえて香ばしく焼き上げず白さを際立たせたものは濃厚なカスタードクリーム。小ぶりな見た目からは想像ができない幸せの重みで、我儘な客も大満足な餡パン二種とクリームパンの三味一体は、ひと思いに食べねば勿体ないというものだ。
──とはいえ、グルメプラネットからの来訪者である『グルメモンスター』の手掛ける料理に、満足できない存在などこの世界に居はしない。隠し味である『|神糧《ソーマ》』に、タイマイ・ジロー1%にも満たない料理テク。それらはほんの僅かなモノであっても、この世界では圧倒的な抗えないウマさなのだから。
食事とは生物にとっては生命を維持するだけに留まらない。ウマいものは娯楽であり、ウマさには圧倒的な力がある。
このサイバースペース内部に敷いた世界法則もまた然り──。
「来い、猟兵。俺の辿り着くべき地への道を阻むならば、全力で相手をしてやろう!」
|客人《猟兵》をもてなす事こそ|料理人《タイマイ・ジロー》の務め。タイマイ・ジローはサクサクのクロワッサンとデニッシュへ豪快に噛り付いて頬張ると、活性化する己の細胞に笑みを浮かべながら、カフェスペースの淹れたてのコーヒーで喉を潤す。
歓迎しよう猟兵…最高級の素材の食材と、最高峰の調理(ただし1%未満)を以て──。
「おっと、隠し味を忘れるところだった」
──そしてさらに、|隠し味《骸の海》の|スパイス《罠》を加えて。
●
「皆さん!張り切って頑張りましょう!CEOタイマイ・ジローさんのところに突撃よ!
なんでも、とっても、とーっても美味しいのですって!」
えいえい、おー!と拳を振り上げるのは玻瑠璃子・セーラ。半ばを過ぎたサイバーザナドゥのこの戦争に──いつになく気合が入っているのは、美味しい理由があるからだった。
「タイマイ・ジローさんがCEOをしているタイハイホールディングスさんは、ラーメン屋台から最高級フレンチまで、ありとあらゆる食を扱う飲食系企業さんなのだけれど…。
その幹部専用サイバースペースをひとつ、猟兵さんたちに解放してくださったの!
でも、もちろん快い歓迎じゃないわ。猟兵さんの挑戦を待って、返り討ちにする気でいるの。
だから喜ぶのは変な話なのだけど…そこでは、とっても美味しいパンを、たくさん食べれるのよ!」
焼き上がれば即完売。タイハイ工房ジロー亭──それは、タイハイホールディングス製のありとあらゆるパンが並ぶ大人気のパン屋だ。
「なんでもこのサイバースペースには『食事をとった者はその量と質に応じて全身の細胞が活性化し、戦闘能力が上昇する』という世界法則が敷かれているの。
だからタイマイ・ジローさんはお手製のパンを食べながら猟兵さんたちと戦うつもりなのだけれど、猟兵さんたちもパンを食べれば食べるだけパワーアップできるわ!
美味しいパンをたくさん食べれるなんて素敵ね!でもパンだけじゃなくて、その空間でお食事すればいいだけだから、パン以外を持ち込んでも構わないの。
必要であれば何かご自分で持って行ってね」
ウキウキとした笑顔を見せながら色とりどりのパンに思いを馳せていたセーラは、それからはっと我に返る。
「大変!忘れるところだったわ。美味しいパンは魅力的だけれど…ひとつ注意があるの。
色んなパンはどれも美味しくても…中には骸の海が混入した危険なパンもあるみたい。
骸の海が混入したパンを食べてしまうのはとっても危険だから、何らかの方法でそれだけは避けてね。
どこか懐かしくて、どこか魅力的に見えるでしょう。戦っている時ほど、注意深く避けれるように気を付けてほしいの。
…私たちは過去じゃなくて、今を生きるために戦うのだから」
セーラは猟兵たちへ笑顔を見せてから、指先をくるりとひと回し。輝くグリモアから溢れだす水の泡が導くのは、幹部専用サイバースペースへの道──そしてそこから漂うのは、香ばしい焼きたてパンの香り!
「ううっずるいわ、こんなに美味しそうな香り!
皆さん!躯の海には気をつけながら美味しいパンを食べて、タイマイ・ジローさんをやっつけてね!」
後ノ塵
後ノ塵です。はじめまして、あるいはこんにちは。
一章完結の戦争シナリオとなります。『タイマイ・ジロー』とのボス戦です。
オープニング公開時からプレイングを受け付け、順次執筆させていただきます。
プレイングボーナス:「骸の海」が混入していない料理を見極めて食べる/自前で持ち込んだ料理を食べながら戦う。
皆様のプレイングお待ちしております。奮ってご参加のほど、どうぞよろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『タイマイ・ジロー』
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POW : ライトナイフ&レフトフォーク
指定した敵1体か自身が死亡するまで、負傷を無視して毎秒【鋭い鉤爪の生えた両腕】で攻撃し続け、敵の攻撃を【恐竜の鱗】で弾く。
SPD : 千客万来焼肉ラビュリントス
レベルm半径内を【タイハイホールディングス印のクローン肉】製の迷宮に変える。壁の硬度はレベルに応じ、内部に弱い【クローン特上殺人バッファロー】を50体配置できる。
WIZ : 大変身グルメドラゴン
今日食べた物の【カロリー】合計に比例した攻撃力と、【価格】合計に比例した防御力を持つ、【熱量を操るグルメドラゴン】に変身する。
イラスト:yuga
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
カルパ・メルカ
美味しそー♪ えっ今月で閉店? 世界の損失過ぎる撤回して!
それではイタダキマス
隠し味をシッカリ見極め……違いある? 分かんなくない?
……もう気にせず食べちゃおうぜ!
“蕁”は体内に溜まった有害物質を排出する防衛機能
ハズレ引いても攻撃力に還元される筈! 即死しなければ!
そんな訳で思うまま食べまして
ツノから出るドロドロを良い感じに拭い取りまして
こねこねして良い感じに毒団子を作りまして
それを念動力でドーンと射出!
普段の霧状にして散布する運用と違って濃縮還元で効果は数十倍!
特に計算はしてないけど!
そして痺れた相手を屠龍でバクッと攻撃!
……攻撃!
……ちゃんとジローさん狙って? 目移りするのは分かるけどさ!
「美味しそー♪ えっ今月で閉店? 世界の損失過ぎる撤回して!」
タイマイ・ジローの挑発的なお誘いよりも、小麦の香ばしさに誘われて──このサイバースペースへ訪れたカルパ・メルカは早口で捲し立てる。
「気に入ってもらって悪いが、閉店の上に最後の晩餐だ!」
「勝手に最後にされる筋合いはなーいっ!」
そんなカルパの剣幕など意にも介さず、クロワッサンに齧り付きながら腕を振り上げるのはタイマイ・ジロー。
迫り来る攻撃を軽業で避けながら、カルパは山と陳列されたパンへ両手を伸ばす。
この空間によってパワーアップしているタイマイ・ジローに対抗するべく、しかし『骸の海』の混入を避けるために。手に取った二つのパンを見比べたカルパは──そのまま首を傾げる。
「隠し味をシッカリ見極め……違いある? 分かんなくない?」
積まれるパンは菓子パンから惣菜パンまで選り取りみどり。焼きたてで香ばしく、どれもこれも美味しそう!
ジュルリとよだれが溢れ出そうになってしまえば、カルパの気持ちは一直線。
「……もう気にせず食べちゃおうぜ! それではイタダキマス」
躊躇いなくメロンパンをパクッと一口。ザラメを散らしたザクザクのクッキー生地は、しっかり甘くてフカフカの生地は優しい甘さ。食感と味の二層のバランスに笑顔が溢れたら、お口直しは塩味の効いたベーコンエピ。麦の穂を模した一口サイズをカリッと噛んで千切って、歯応えと共にベーコンの旨味と塩気をご堪能。
甘いのと塩っぱいのを交互に食べたら、カルパの手はもう止まらない!
「美味しー! って……あれっ!?」
タイマイ・ジローの攻撃をすり抜けながら、思うままに次から次へと美味しく食べては、どんどんパワーアップ──していくうちに、いつの間にか食していたのは|骸の海入り《ハズレ》パン。
グルッと回る視界が映すのはグリモアベース、それからアイドルフロンティア、それから──。鼻をくすぐる小麦の香ばしさは変わらないのに、過去の景色がぐるぐる歪んで重なり遡る。
「おっと、|当たり《ハズレ》を引いたらしいな!」
とはいえ、そんな有害物質の汚染の影響もカルパの体には一瞬のこと。蕁は体内に溜まった有害物質を排出する防衛機能──角の溝から骸の海はドロリと溢れ、歪んだ視界はクリア。だがその隙にタイマイ・ジローは迫り寄る。
食べたパンのカロリーを攻撃力に、価格を防御力に──更には世界法則によって細胞を活性化したその姿は、戦闘能力が向上した熱量を操るグルメドラゴン。
獲物を噛み砕こうと大口を開けるドラゴンは、カルパのもう目の前。
「させるかーっ!」
カルパは角の毒液を拭い取り、そこらにあった白パンを核に毒液をこねこねコロコロ!
たらふく食べてそれなりのハズレを引いたカルパの角から溢れた毒液は毒パン……ならぬ、大きな毒団子を作り出す。
「食らえっ! 濃縮還元の毒団子!」
「グッ!?」
そのまま念動力で射出して喉へ押し込めば、その効果はきっと霧状散布のなんと数十倍! 多分!
間一髪でタイマイ・ジローへ麻痺を与えたカルパはすかさず杖を振りかざす。
「さあ、バクッと攻撃!」
屠龍──杖型の拘束具に封じられた捕食器官は大きな顎をあけて、痺れるタイマイ・ジローへその牙を──。
「……攻撃!」
パンの香ばしさに浮気をする捕食器官に、カルパが杖をべしんと叩けばようやくガブリ。
「……ちゃんとジローさん狙って? 目移りするのは分かるけどさ!」
タイハイホールディングスの提供する美味しさには、人ならざる者とて敵わないのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ジゼル・サンドル
今日はパン祭りだな!パン大好きだから嬉しい!
クロワッサンにカレーパン、メロンパンも食べたいな。おおわたしの好きなパン・オ・ショコラもあるのか、どれも美味しそう…!
食べるのに集中できるように、花嵐の旋律で手回しオルガンを色とりどりの花びらに変えて攻撃しよう。これなら手が空く。
骸の海が混入してるやつは…どこか懐かしくて魅力的、だったか?
どれも魅力的ではあるのだが…
【第六感】を駆使しつつ、注意深く観察して避けるとしよう。
大丈夫そうなのをもぐもぐしつつ、あんこが好きなバトモンのチョコリンにもあんぱんをあげて【鎮めの歌】を歌ってもらおう。
…こんなに美味しいパン作れる人を倒すしかないのは寂しいものだな。
「今日はパン祭りだな!」
タイマイ・ジローが待ち受けるサイバースペースへ、バトモン『マルリン』のチョコリンと共に勇み足で訪れるのはジゼル・サンドル。
なにせジゼルはパンが大好き!食べ放題のお祭り状態となれば、戦争中でもつい嬉しい気持ちが溢れてしまうもの。
一目見るだけでもクロワッサンにカレーパンやメロンパンとジゼルの食べたいパンが目に付くが、その中でもひと際輝くのは、艶のある焼き色に細いチョコレート模様を垂らしたその一品。
「おおわたしの好きなパン・オ・ショコラもあるのか、どれも美味しそう…!」
好物も並んでいるとなれば当然、ジゼルの心は浮き立つもの。
心置きなく食べる為にも──もちろん、骸の海の危険を回避する為にも、ここはいったん食べるのに集中したいところ!
ジゼルが視線を向ける先には、豪快にパンを食べながら自らの体をグルメドラゴンへと変化させるタイマイ・ジロー。カロリーを攻撃力に、価格を防御力に──このサイバースペースとの相乗効果でパワーアップに勢い付くグルメドラゴンが相手では、ゆっくりできる時間は限られる。
「旋律と共に舞え、花嵐」
ならばジゼルは素早く手回しオルガンの取っ手をくるり。楽し気な音色を響かせながら、オルガンは色とりどりの花弁に解け嵐の刃となって、タイマイ・ジローを包み込む。
「なんだア? こんな尖ってちゃ、危なくて砂糖漬けにもできやしねえな!」
花嵐にタイマイ・ジローが臆する事はなくとも、熱量に揺れ動く無数の花弁は煩わしい目隠しにもなれば、時間を稼ぎその防御も少しずつ削ってくれるだろう。
「よし、今のうちだ。骸の海が混入してるやつは…どこか懐かしくて魅力的、だったか?」
急ぐ中でもジゼルは事前の注意を思い出し──しかしここに並ぶパンは、どれもこれもが美味しそうで魅力的に違いない!
だが一目で識別はできなくとも、切迫した危機の中でこそジゼルの第六感は冴えわたる。注意深く観察しながらハズレを避けて、あんこ好きなチョコリンにはあんぱんを…そしてジゼルがカブり付くのはサクサクのクロワッサン!
重なる層がサクッと解けてバターがフワッ香るその美味しさに、あっという間に一つ食べてしまっても食欲は次から次へと湧き上がる。
お次に手に取るカレーパンは、焼いて揚げたベタつき知らずの中身はお肉がゴロゴロたっぷり。辛いスパイスのお口直しに手を伸ばしたメロンパンのザラメは砂糖の素晴らしさを教えてくれるし、フカフカの生地の程よい甘みでひと呼吸。
そろそろ膨らみ始めるお腹はあれど、ジゼルが好きなパン・オ・ショコラだって逃せない!
サクッと食感はクロワッサンで堪能した通り。しかしそこに折り込まれた濃厚なチョコレートの味わいは、ジゼルに甘味の幸せを贈ってくれる。
目を細めて幸せそうに頬張って──つかの間の幸せを堪能したら、パンくずを口元に付けたジゼルは真剣な表情でタイマイ・ジローへ向き直る。
「チョコリンもたくさん食べれたようだな。さ、鎮めの歌を歌っておくれ」
──口元どころか胸元のハート模様にもあんこを付けたチョコリンは、満足気にひと鳴きするとすぐさま可愛らしい声を響かせる。
チョコリンもまた世界法則によって活性化し、パワーアップした歌声を花嵐の旋律に乗せてゆく。
その鎮めの歌は鎮静の力…どれほどの力を手に入れようとも、タイマイ・ジローの細胞は急速に力を失い、花嵐の刃がその身に刻まれる。
「…こんなに美味しいパン作れる人を倒すしかないのは寂しいものだな」
ジゼルは切なく言葉を零すも、嵐は止むことはない。
どれほど惜しくとも、それが戦争なのだから。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
うおォン!こいつはまるで人間火力発電所だ!
美味そうなパンだが拙者はまだ食べてませんぞ!今食べているのは適当に連れてきた知らない人でござるよ!誰?誰なのぉ…?
拙者はこの通りとても優しいのでまずはこの知らない人にパンを割って分け与えているのでござる
さあ沢山お食べ…お代わりもあるぞ!相手は食べた分強くなる…勝つためにもペース上げていくぞ!お前の胃袋は宇宙だ!パンパンになるまでお食べ!!ねじ込んでやる!!
まあ中には骸の海入りのパンもあるでござろう特に見分けはつけないので詰め込んでみればやられてしまったか他愛ない…
貴様の仇は取ってやるからな!入ってない割ったパンだけきっちり食べきって殴りこんで行け!
「うおォン!こいつはまるで人間火力発電所だ!」
タイマイ・ジローが待ち受けるサイバースペースへと踏み込むエドゥアルト・ルーデルの目の前で、山と積まれ並ぶパンをがっついているのは本当に知らない人──誰だお前!!《ダレコイツ》
美味しいパンが目の前にあれば、人は食べずにはいられない。いえ、エドゥアルト自身はまだ一口も食してはおりませんが。
「誰?誰なのぉ…?まあ拙者はこの通りとても優しいので、この知らない人にもパンを割って分け与えているのでござる」
そんな事を言ってもエドゥアルト自身が|適当に《ユーベルコードで》連れてきた知らない人ではあるのだが、エドゥアルト自身が連れて来たからには分け与えるのもこの世の情けなのであろう。なにせ、ここには餡パンやらメロンパンやらカレーパンやら焼きそばパンやら、古今東西のあらゆるパンが所狭しと並んでいる。知らない人の好みなんて一ミリも知らなくたって、知らない人の味覚は楽しませてやれるのだ!
「さあ沢山お食べ…お代わりもあるぞ!」
「ウマ…ウマ…」
はたから見れば一見不審(?)にも見えるし知らない人も不審に思っていいんだぞと思えそうだが、罪深きは『タイハイホールディングス』であろう。ここに並ぶパンのあまりの美味さに人はどうしても抗えぬ。エドゥアルトに差し出されるがまま与えられるまま、知らない人は取りつかれたようにパンを貪り食らっていく!
「相手は食べた分強くなる…勝つためにもペース上げていくぞ!お前の胃袋は宇宙だ!パンパンになるまでお食べ!!ねじ込んでやる!!」
それはもはや──何か別の競技であろうか。凄まじい勢いで食べて食べて食べ進め、大食いチャレンジのコーチングのようなエドゥアルトと知らない人の姿はしかし、そう長くは続かない。
「ゲフー!」
エドゥアルトが割って与えたパンの中には当然のように骸の海入り…有害物質が含まれたものが含まれているのだから!
知らない人の視界は唐突にぐるんぐるん。知らない過去の記憶が視界に目まぐるしく描かれて、汚染に苦しみパンを詰め込まれた口から嫌な色の泡を吹く。エドゥアルトは手を合わせて心ばかりの弔いを。知らない人は尊い犠牲になったのだ。
「特に見分けはつけないので詰め込んでみればやられてしまったか他愛ない…この辺のパンが安全でござるな!」
そして知らない人とは五感を共有していたので、エドゥアルトは安全なパンだけ選んで頂けるという寸法だった。果たしてそれは策士か外道か──だがそんなものはどうだっていい!何せ、個人的な大義名分まで整った!
「貴様の仇は取ってやるからな!ウオオー!」
骸の海の入っていない半分パンの山だけをきっちりガッツリ食べ切って、エドゥアルトは勢いよくタイマイ・ジローへ殴り込む。ほんのひと時だけでも共に過ごした知らない人の為にも、エドゥアルトはここで負けるわけにはいかない!
「いやお前のせいだよなあ!?」
「正論パンチは認めねぇ!」
タイマイ・ジロー改めグルメドラゴンの当然の突っ込みと攻撃などエドゥアルトには無問題。食事によって活性化し高ぶる細胞のままに殴って殴って殴りまくる。
食事で摂取したカロリーによって高まったグルメドラゴンの攻撃力、その熱量がエドゥアルトの体を焼こうとも…形見のように残った半かけのパンを食べまくって踏み止まる。
エドゥアルトの拳は止まらない。戦うこともなく散っていった、知らない人の無念を払う為に──!
大成功
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カーバンクル・スカルン
ぶっちゃけ魅力的か否か、匂いで判断しろって無理よね。どれもめちゃくちゃ美味しそうだし。でも分けなきゃいけないのよね。それが戦い、悲しいね。
【ジャッジメントセイバー・レイン】を発動して光の剣をサイバースペース上に降り注がせる。より邪悪な物に突き刺さる性質をしているなら、ジローと骸の海が混入したパンに優先的に飛んでいくはず。逆に飛ばなかったパンは安心安全ということで、いただきまーす。
食べないのに無駄にするな? じゃああんたに食わせてやるよ、はいあーん! パンを食ってパワーアップしてる私の力に、剣にささってから何も食えてないあんたに抗えると思うなー?
「ぶっちゃけ魅力的か否か、匂いで判断しろって無理よね」
幹部専用サイバースペースへと足を踏み入れたカーバンクル・スカルンは、両手を腰に当ててため息を吐いた。
なにせ、目の前で山のように積まれ並ぶパンはどれもこれも──めちゃくちゃ美味しそうなのだから。
しかしてそれでも、見分けて選り分け避けなければならない。それが戦い、そういう戦いだ。パンに罪はないはずなのに、無慈悲に断ずる必要があるなど悲しいものだった。
しかし戦いならば慈悲はない。カーバンクルがひとつパチンと指を鳴らせば、サイバースペースの頭上に浮かぶのは820本もの光輝く裁きの剣。骸の海がパンの|隠し味《スパイス》に含まれる?ならば、それはそれは『邪悪』だろう。
指をクイッと指し折れば、光の剣は邪悪の権化──タイマイ・ジローはもちろん骸の海入りのパンへレッツゴー。
「グオオッ!猟兵、てめえ俺のパンに何をしやがる!」
「何いってんの、こっちは客だよ?変なもん入れてるの分かってたらクレームの一つや二つ、剣の一つ二つも刺すっての」
「食ってから言えよ!」
光の剣を食らいながらも元気に文句を言うタイマイ・ジローへ、カーバンクルは気怠そうに片手をヒラヒラ。タイマイ・ジローに向かった光の剣は恐竜の鱗に弾かれつつも行動を留めてくれるし、パンへ向かった剣はバッチリ骸の海の有無を判定してくれる。
「傷なしパンは安心安全ということで、いただきまーす」
そうしてカーバンクルが齧り付くのは、ザクッとフワッとメロンパンに、フィリングたっぷりの餡パン、クリームパン。美味しそうに見えるパンはやはり食べても美味しいものだし、世界法則によるパワーアップを抜きにしても、ついつい食べすぎてしまいそうなほど。しかも見る限り、甘いのも塩っぱいのも満遍なくあるとなれば、飽きて食べれなくなる事だってないだろう。
そして何より、光の剣で安全を確保しているからこそ選びたい放題だ。カーバンクルは次から次へと手を伸ばしてゆく。
「いやホント美味しいなコレ」
「てめぇ…いい加減、食べもしねえのに無駄にするんじゃねえ!」
「はあー?じゃああんたに食わせてやるよ、はいあーん!」
「グアッ!」
カーバンクルは邪悪パンの刺さった光の剣を握りしめてタイマイ・ジローに怪力スローイング。パンを食して活性化した細胞は、ちょっと全力で投げたくらいでも当然のように威力を嵩増ししてくれる。たとえ恐竜の鱗が強固な防御だったとて、光の剣がざっくりぶっすり。一度串刺しに
片手にパンを食べ続けるカーバンクルと、光の剣に阻まれて食べれぬタイマイ・ジローの差は広がるばかり。おお、なんと残酷な世界法則。
「何も食えてないあんたに抗えると思うなー?
廃棄のパンは責任持って処理しようねー、責任者」
片手でもぐもぐ、片手でざっくりぶっすり!
容赦も慈悲もご用意はないが、残念ながら懲罰騎士による邪悪への懲罰はまだ終わらない。
なにせ、光輝く裁きの剣と骸の海入りの廃棄品のストックは、まだまだ尽きることが無いのだから。
大成功
🔵🔵🔵
ファルコ・アロー
今度はパンですか。
グルメモンスターってのは生まれつき料理上手なんですか?
昔は朝早くからパン修行でもしてたんだとしたらちょっと和むんですけどね。
それはともかくいただこうじゃねーですか!
これだけ美味しいとただの食パンでも感動ですね……!
ボクの好きなクロワッサンは軽くて美味しくてカロリーが高い、この戦場にぴったりのパンです。
カレーパンとか中に何か入ってる系は骸の海を入れやすそうなので慎重に、他のよりしっかり気配感知して食べるです!
しっかり大食いしてエネルギー充填したら後はそれをスラスターに回すのみです!
その爪とボクの体当たり、どっちが強いか勝負ですよ!
その鱗に貫通攻撃パンチを食らわせてやるです!
「今度はパンですか」
小麦の香りで充満するサイバースペースへと訪れたファルコ・アローは、周囲を見渡し息を付いた。既に幾度となくタイマイ・ジローのクローン複製体と戦ってきたものだが──ありとあらゆる食を扱う飲食系企業『タイハイホールディングス』が扱う料理のバリエーションは、何度見ても目を見張るものだ。
「グルメモンスターってのは生まれつき料理上手なんですか?
昔は朝早くからパン修行でもしてたんだとしたらちょっと和むんですけどねッ!」
「サァて、どうだろうなァ!」
挨拶代わりに繰り出すファルコの一発は、既に食事を重ねパワーアップしたタイマイ・ジローに容易く凌がれる。やはりまともに戦うには、この場での食事が不可欠だ。
「なら、遠慮なくいただこうじゃねーですか!」
ファルコは食パンを一切れ掴むと大きな口を開けてガブリ。この場に山のように並び積まれたパンは、ついついその種類に気を取られるものだが味も格別。平凡であるはずの食パンですら感動する美味しさだ。となれば勿論、ひとつの期待が膨らむもの。
ファルコはタイマイ・ジローの攻撃を回避しながらぐるりと見渡し、探し求めていたその姿を両手に掴み取る。
「ボクの好きなクロワッサンは軽くて美味しくてカロリーが高い、この戦場にぴったりのパンです」
綺麗な三日月型は焼き色も艷やかに。ひと思いに頬張れば、たっぷりのバターが香る生地は表面サクサクのフワッフワ。味覚だけではない旨味を心置きなく楽しみながら、ファルコは口元に残った食べかすを乱暴に拭って急反転。近付くタイマイ・ジローを体当たりのカウンターで吹き飛ばす。
「効かねえなァ」
「くっ、どんだけ硬ぇ鱗ですか!」
だが生半可な攻撃ではタイマイ・ジローの体を吹き飛ばせても、強靭な恐竜の鱗を貫くことはできない。ファルコは再びパンの山へと突入する。
向かう先にあるパンはカレーパンに餡パンにチョココロネ…中にフィリングを詰めるパン等は、恐らく骸の海を入れやすいだろう。より一層慎重に選び取り、気配感知で巧みにハズレを選り分けながら、ファルコは片っ端からどんどん大食いしてゆく。
鋭い金属を打ち鳴らす鉤爪が迫ろうとも、攻撃をいなしてとにかく食べる時間を稼ぎ──徐々に、沸き立つ活性化する細胞はファルコの動きを、感覚を機敏に鋭利にさせてゆく。ずっしり重いライ麦パンや、カリッと表面のバゲットは食べ応え抜群で早食いには向かないだろう。一口サイズのプチパンのバリエーションはパッと口に放り込むのも向いているから味変にピッタリ。やっぱり好きなクロワッサンについつい戻りつつ、ファルコは食べて食べて食べまくる!
そのうち気が付けば、活性化しパワーアップしたファルコの片手は常にパンと共にあった。
ならば──いよいよ、ファルコは食べて食べたエネルギーを背部パルスプラズマ・スラスターへと充填する。
「さあ、その爪とボクの体当たり、どっちが強いか勝負ですよ!」
「いい度胸だ!ズタズタに切り裂いてやるよ!」
充填されたエネルギーはとうにMAXを越えていた。だが、迫る鉤爪をファルコはギリギリまで引き付ける──限界まで溜めて突き出す拳に乗せるのは、スラスターのロケット噴射。高速の飛翔に使うその推進力と、装備重量とスピードに比例する激突ダメージを、この一撃のパンチに乗せて!
「貫きやがれですよーっ!」
一撃必殺──ファルコの拳は鋭い鉤爪を砕き、強靭な鱗さえも貫いて、タイマイ・ジローの体に大きな風穴を穿ったのだった。
大成功
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