捨てられし都、其処は呪いの地である――そう、誰かが云った。
世を動かす政が行われ、貴族達が日夜宴を開き、栄華を極めし都。
この地はきっとそうなるだろうと夢見て、やって来た者達が如何程いただろうか。
だが、その都が辿った末路はあっけなく哀れなものであった。
そして何時からか、捨てられ廃れた都はこう囁かれるようになった。
其処は呪いが蔓延る地――呪われた都だと。
それでも、この地に残る者もその後も勿論いたのだけれど。
再び此の地に、災厄が降りかかる。
『……怨怨怨怨……』
啜り泣く声、怨嗟の呪言、そして美しき死垂桜の幻覚。
アヤカシエンパイアの地に現れし魔軍将「安倍晴明」の秘術『|白炎換界陣《びゃくえんかんかいじん》』によって、捨てられし都は造り替えられてしまった。
妖溢れる奇怪な迷宮――「ブレイズゲート」に。
●白炎換界陣、まぼろしの平安に燃ゆ
「私達の世界に現れた、この地の者ではない強力な陰陽師……その者、魔軍将「安倍晴明」の話は、私も聞いております」
冷泉・辰乃丞(青の鎮魂歌・f42891)は猟兵達へと、話を聞きにきてくれた礼を告げた後、此度の事件の詳細を語り始める。
「魔軍将「安倍晴明」がアヤカシエンパイアに現れ、秘術『|白炎換界陣《びゃくえんかんかいじん》』によって、平安結界内部に築かれた都のひとつを妖溢れる奇怪な迷宮「ブレイズゲート」とやらに造り替えてしまいました。このブレイズゲートという迷宮の内部では多数の妖が無限に分裂と成長を繰り返しており、放置すれば迷宮の外にまで溢れ出すのも時間の問題。しかも、この地の人々も巻き込まれている模様です」
故に、ブレイズゲートに乗り込んで。
巻き込まれた人々を救い出して、この危険極まる迷宮を破壊して欲しいというわけだ。
「ブレイズゲートと化したこの地は、過去に都が置かれる計画があった地でしたが。ある時に大火事が起こり、その被害が大きすぎた故に都となる計画が頓挫し、捨てられし都となったようです。その後も時折火事などの災害に見舞われ、周囲からは、呪いの地だと呼ばれているようです」
とはいえ、廃れても都にならんとしていた地。
呪いの地と言われながらも、この地に住んでいる者も勿論多数いるわけだが。
「魔軍将「安倍晴明」の秘術『白炎換界陣』が此度、この地に発動し、多数の住民が巻き込まれて妖から逃げ惑っているとのことです。故に、急ぎこの地へと向かい、迷宮に惑う人々を助け、彼の陰陽師の秘術を打ち破っていただきたいのです」
ブレイズゲート化された廃都は物理法則を無視して広がる危険な迷宮へと変形しており、内部には多数の住民が巻き込まれて妖から逃げ惑っている。なのでまずは、人々を誘導しながら、迷宮の奥を目指すことになる。
「目指すは、廃都に鎮座する大極殿。いえ、大極殿となるはずであった建築物、と言った方が正しいでしょう。廃都内でもっとも立派な建物ですので、どの建物かは一目でわかるかと。向かう道すがらに逃げ惑う人々を見つければ、できるだけこの建物から離れるように誘導しつつ、皆様は大極殿の内部へ向かってください。この奥に、ブレイズゲートの主に据えられている強大な妖が在ります」
けれど勿論、易々とブレイズゲートの主の元へは辿り着けない。
必ず通らねばならぬ建物に足を踏み入れれば、誰かが啜り泣く声が聞こえてくるのだという。それは何故か、己が知る誰か、或いは己自身であったりもするようだ。その幻影を打ち破らなければ、迷宮化した建物の先には進めないという。
そしてこの部屋を突破すれば、大量の妖が蠢く一角に辿り着くという。
「この場所では、妖が無限に分裂して現れる為、キリのない戦いになりかねませんが。しかし幸い、ブレイズゲートに巻き込まれていた「現地の坂東武者や検非違使、陰陽師達」が妖ども相手に奮戦しています。彼らと共に妖の壁に挑み、最奥へ乗り込む一路を切り開いていただきたい」
それから、ブレイズゲートの最奥に位置するのは、美しくも広い庭なのだというが。
「其処には、この時期にも関わらず咲く、美しい桜の木があります。この桜は「死垂桜」――ブレイズゲートの主に据えられた、強大な妖です。ですがこの妖を倒せば、廃都に展開していたブレイズゲートは消滅し、内部に囚われていた人々も解放されます」
今回の依頼は、人々を誘導しつつも廃都に蔓延る妖を滅しながら最奥を目指して。
ブレイズゲートの主を倒し、迷宮を消滅させて欲しいという内容である。
「魔軍将「安倍晴明」――界を渡りし陰陽師に関する今までの報告書には目を通しておりますが。晴明が、このアヤカシエンパイアにとって良からぬことを目論んでいるのだろうことは確か。どうか皆様に、ご助力いただけましたらと」
辰乃丞はそう深々と頭を下げ、猟兵へと今回の案件を託しながら。
青龍のグリモアを躍らせ、皆を導く。
ブレイズゲートと化した、平安の世の呪われし廃都へと。
志稲愛海
志稲愛海です。
よろしくお願いいたします!
※ご連絡※ 受付開始日等はシナリオタグやMSページで連絡します。
各章詳細を記載した断章を受付開始前に各々掲載予定です。
今回の内容は以下です。
第1章:愁嘆の間(冒険)
第2章:火車(集団戦)
第3章:死垂桜(ボス戦)
冒険章はPOW/SPD/WIZは気にせずOKです。
どの章からでも、気になった章のみでも勿論歓迎です。
第1章は、廃都の建物の最奥に向かうべく「愁嘆の間」を抜けてください。
誰かの啜り泣く声が聞こえ、足を踏み入れた者を惑わせ迷わせます。
なので、その幻覚に惑わされずに先へと進んでください。
知っている誰かであったり、過去や未来の自分自身であったり。
今は実在しない人だったり、知らぬ人々であったり等々。
啜り泣く声の主は、人ぞれぞれ違うとのこと。
複数人でご参加の場合は、同じ幻覚を視たり、一時的に離れてそれぞれ幻覚を打ち破った後に合流など、ご指定いただけます。
詳細は、断章をご確認ください。
人々の避難誘導は、この建物に至るまでに声掛けなどをしているでしょうので。
幻覚への対処のみのプレイングだけでも構いませんし。
勿論、逃げ惑う人々に声を掛けていただいても。
第2章と第3章は、妖との戦闘です。
詳細は、各章受付前に掲載する断章に記載いたします。
公序良俗に反する事、他人への迷惑行為、20歳以下の方の飲酒喫煙は厳禁です。
締切等はMS個別ページやTwitterでお知らせします。
●お願い等
同行者がいる場合は【相手の名前(呼称推奨)と、fからはじまるID】又は【グループ名】のご記入をお忘れなくお願いします。
グループ参加の人数制限はありません、お一人様~何人ででもどうぞ!
ですが、ご指定の同行者が参加していない場合は返金となる可能性もあります。
ご参加お待ちしております!
第1章 冒険
『愁嘆の間』
|
POW : 部屋に入って声をかける
SPD : 周囲に聞き取りを行う
WIZ : 部屋自体に干渉してみる
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ブレイズゲートと化した廃都へ足を踏み入れれば、逃げ惑う人々の姿が。
そして鎮座するは、都において政の要になるはずであった、大極殿の成れの果て。
人々を大極殿から離れるよう誘導しながらも、猟兵達は中へと足を踏み入れる。
刹那――聞こえたのは、啜り泣くような声。
最奥へ向かうためには必ず通らねばならぬ、先の部屋から聞こえてくるようだ。
だが足を止めるわけにはいかない、そう歩み進めれば。
「……!」
貴方は視るだろう。
泣いているのは、そう――。
それは妖が視せて惑わせる幻覚。
幻術にかかってしまえば、たちどころに迷い子になってしまうから。
奥へと進むには、この幻覚を振り切るなり、乗り越えるなりするしかないようだ。
<マスターより補足>
第1章は、心情メインのリプレイになるかと思います。
足を踏み入れた『愁嘆の間』では、泣いてる『誰か』の幻覚を視ます。
幻覚は、啜り泣き、泣き喚いていたり号泣などでもOKです。
その幻覚が誰かは、各人違います。
誰が泣いているのを視るか。
また、それに惑わされずどう乗り越えるかのプレイングをお願いします。
自分でも、知り合いの誰かでも、自分や知り合いの幼い頃や未来の姿でも、知らない人やモブの群衆等々でも、誰が泣いているのかご指定ください。
ただし、幻覚で見る人物が猟兵として登録されている方の場合、当シナリオにご参加されていない方の名前は出さず描写ふんわりになりますこと、ご了承ください。
複数人でご参加の場合は、同じ幻覚を視る、でも、それぞれ分かれて視て対処したあとに合流、でも、他できそうなシチュでも、お好みでどうぞ!
乗り越え方も、振り切って前に進む、宥めて泣き止ませる、攻撃して祓う、など。
皆様それぞれの対処法で大丈夫です。
幻覚が誰か、自分やモブ以外でしたらPCと関係性を教えていただけたらです。
ブラミエ・トゥカーズ
日傘係の従僕と共に
これはまた可笑しな光景であるな
人が余等に向かって逃げてくるぞ
幻
飢えと渇きに苦しみ他者の生き血をすする西洋中世時代の人々の群れ
その中で彼らを止めようとする少女
容姿は窶れて貧相であるがブラミエと瓜二つ
ブラミエの姿の元となったブラミエを滅ぼせる天敵になりえた少女
ブラミエ自身は懐かしさを覚えてもそれ以外は何も思わない
街村を滅びる光景に思うところもない
そんな思考できるほど上等な存在ではないのだから
余は先に行かねばならぬし、貴公等に任せようか。
嘗ての様に、何時ものように、な。
魔女狩りの騎士団を呼ぶ
吸血鬼の汚れを町や人ごと
魔女と断じた無実の少女ごと
一切合切浄化の炎で焼き尽くす
真実を知らずに
訪れたのは、アヤカシエンパイアの都になれなかった呪いの地、であるはずなのに。
大極殿となるはずだった建物へと、日傘係の従僕妖怪と共に足を踏み入れた……その時であった。
特に驚いたり慄いたりなどの感情の揺れは見られないが、ブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)は、少しだけ日傘を上げさせながら向けた眼前の光景に紡ぐ。
「これはまた可笑しな光景であるな」
……人が余等に向かって逃げてくるぞ、と。
しかもその者達は、この世界の人間ではないことが一目瞭然。
それは、飢えと渇きに苦しみ他者の生き血をすする、西洋中世時代の人々の群れであった。
そしてその中で――彼らを止めようとする少女の姿が見える。
容姿は窶れて貧相ではあるものの、見覚えがある顔……いや、見覚えがあるなんていうものではない。
少女は、ブラミエと瓜二つであった。
そう――彼女は、ブラミエの姿の元となった、ブラミエを滅ぼせる天敵になりえた少女。
けれど、泣き喚き恐怖に慄いて逃げる人々の光景を見遣っても、己を写したような容姿の彼女を目にしても。
ブラミエ自身は、懐かしさこそ覚えても、それ以外は何も思わない。
街村が滅びゆく光景を前にしても、その心には何の機微もなく、思うところもない。
……そんな思考ができるほど上等な存在ではないのだから、と。
だから、ブラミエは幻覚を前に、こう告げるだけ。
「余は先に行かねばならぬし、貴公等に任せようか」
嘗ての様に、何時ものように、な……と。
恐怖に染まった泣き声を宥めるにしては、容赦もなく躊躇することもなく。
――恐るべき人よ。愛しき無知よ。己の善にて邪を蹂躙する正しき者よ。怨敵共よ、魔女狩りを始めるが良い。汚れた敵は此処にいるぞ。
そう紡ぎ灯し喚ぶのは、魔女狩りの騎士団。
そして歪曲伝承・魔女狩りの灯が諳んじられていくたびに、浄化の炎が燃え盛り、焼き尽くしていく。
吸血鬼の汚れを町や人ごと、魔女と断じた無実の少女ごと……一切合切、灰燼に帰すように。
それから、日傘係の従僕を伴って、ブラミエは再び先へと歩みだす――燃ゆる中に燻り孕む、真実を知らずに。
大成功
🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふえ?誰かの鳴き声が聞こえます。
どこからでしょうか?
とても懐かしく哀愁が漂う鳴き声です。
だけど、どこか気品があって雅な鳴き声。
きっと、どこかの皇族の方が鳴いていらっしゃるのでしょうか?
……あの、アヒルさん、もう満足ですか?
そもそも、泣くの意味が違いますよ。
それに私にはアヒルさんの声が分かるから、鳴き声というより話し声なんですよ。
だったら、こっちのやかましい方の泣き声の方がいいのかって、それはこっちの方が嫌ですね。
誰の泣き声かは分かりませんし、関わったら絶対面倒なことになりそうです。
だったら、雅なアヒルさんの美しい鳴き声に導かれている方がいいだろって……。
ふええ、否定できません。
都になれずに廃れた、呪われし地。
フリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)は、大きな帽子のつばをそっと下げつつ、周囲をきょろり。
町の人々が逃げ惑う中、足を運んだのは、この地で一番立派な大極殿内部。
そしてそろりと、アヒルさんと共に歩いていれば――。
「ふえ? 誰かの鳴き声が聞こえます」
耳に聞こえるのは、何かの鳴き声……?
それから、その声がすると思われる方向にそっと視線を向けつつも、こてりと首を傾げて。
「どこからでしょうか? とても懐かしく哀愁が漂う鳴き声です」
――だけど、どこか気品があって雅な鳴き声、と。
フリルは感じた印象を紡ぎ落とした後、こう続ける。
「きっと、どこかの皇族の方が鳴いていらっしゃるのでしょうか?」
いや、確かに、なきごえが聞こえる……という予知はあったものの。
なきごえは、なきごえでも。
「……あの、アヒルさん、もう満足ですか?」
アヒルさんの鳴き声でした!?
――しかも。
「そもそも、泣くの意味が違いますよ。それに私にはアヒルさんの声が分かるから、鳴き声というより話し声なんですよ」
鳴き声と泣き声、読み方は同じでも、意味が違いますし。
フリルにとっては、アヒルさんの声は鳴き声でも泣き声でもなく、お喋り声なのです。
けれどそう言えば返ってきたアヒルさんの主張に、フリルは思わず首を竦める。
「だったら、こっちのやかましい方の泣き声の方がいいのかって、それはこっちの方が嫌ですね」
先程はアヒルさんが鳴いていたから聞こえなかったけれど、泣き声も実は今聞こえているのですが。
「誰の泣き声かは分かりませんし、関わったら絶対面倒なことになりそうです」
だから、泣いているのが誰かわからないし、誰であろうとも、相手にせず前へ進まんとするフリルに。
アヒルさんがずばっと突き刺すのは正論……?
「だったら、雅なアヒルさんの美しい鳴き声に導かれている方がいいだろって……」
それを聞いたフリルは、不気味な泣き声から足早に遠ざかりながらも、こう続けるのだった。
……ふええ、否定できません、なんて。
大成功
🔵🔵🔵
白矢羽・尭暁
誰が泣いているのか
僕の従者は、泣いたりしないから
そういう相手に心当たりがなくて
――ああ、父上だ
泣いているのは父上だ
幼いころの朧げな記憶
悲しげな顔を見たことはあるが泣いている姿はみたことがない
何を嘆いておられるのだろう……知りたい
傍によって話を――いや、父上はもういらっしゃらない
あれは、幻……
背を向けて通り過ぎる
けれど立ち止まってしまう
振り返ったらだめだとわかるから堪えて
僕は、父上と沢山話したいことがあったんだ…
でも幻の父上と話すことは何も、ない
もしかしたら今も、どこかで泣いていらっしゃるのかもしれないけれど
その涙を、僕が晴らせるだろうか
晴らせるとしても今じゃないとわかるから、僕は――行きます
異世界の陰陽師のよって生み出された白炎換界陣。
その内部は、都になれなかった呪いの地。
途中逃げ惑う人々を誘導しながらも、白矢羽・尭暁(金烏・f42890)が足を踏み入れたのは大極殿。
そして己の従者が予知したように、歩みを進めるたびに耳に聞こえてくる。
(「誰が泣いているのか」)
流れるような白銀が見えれば、いつも傍らにいる従者かとも一瞬思ったのだけれど。
でも尭暁は、ふるりと小さく首を横に振る……僕の従者は、泣いたりしないから、と。
しかし、そういう相手に心当たりがなかったのだけれど。
記憶の中の姿と、目に飛び込んできた姿が、刹那一致する。
そして尭暁はわかったのだ――ああ、父上だ、と。
(「泣いているのは父上だ」)
いや、幼いころの朧げな記憶の中ででも。
悲しげな顔を見たことはあるのだけれど、父が泣いている姿はみたことがない。
それでも、眼前の父は泣いていた。
その姿を見れば、尭暁の心に生じるのは、こんな思い。
――何を嘆いておられるのだろう……知りたい、と。
だから、傍によって話を――なんて、駆け寄ろうかと思ったのだけれど。
己に言い聞かせるように、尭暁は言葉にする。
「――いや、父上はもういらっしゃらない」
あれは、幻……それは明らかだから。
背を向けて通り過ぎる。
けれど途中、つい立ち止まってしまうものの、堪える。
振り返ったらだめだと、わかるから。
(「僕は、父上と沢山話したいことがあったんだ……」)
その思いは、尭暁の心にいつだってあるのだけれど。
「でも幻の父上と話すことは何も、ない」
だが、自分が先日に視た、父であった姿を思い返せば、こうも思うのだ。
(「もしかしたら今も、どこかで泣いていらっしゃるのかもしれないけれど」)
……その涙を、僕が晴らせるだろうか、と。
けれど、自分がその姿を視たということは、きっと意味があって。
でも、晴らせるとしても今じゃないとわかるから。
泣き声を背にして、尭暁は再び歩き出す。
「僕は――行きます」
決して振り返ることなく、今はただ前へと。
大成功
🔵🔵🔵
サン・ダイヤモンド
【森】
はぐれぬようブラッドと手を繋ぐ
視えたのは白い肌と青白い髪の少年
少年は地に這い蹲りながら必死に声を押し殺そうとして、息まで止めて
それでも抑え切れずに泣いていた
「――あれは、ずっとずっと昔の僕。……僕にはわかるの」
あの子は、帝都櫻大戰で対峙した彼(過去の僕)の少年時代の姿
何故泣いているのかまでは分からないけれど――大人の彼がしていた哀しそうな目や、書棚で見付けた手紙を思い出す
誰か、大切な人を亡くしたのかもしれない
少年の言葉に動揺するブラッドの手に手を重ね
「ごめんね」と【柔らかな光の微風】で幻覚をかき消して
「行こう」と彼の手を握り直し、先へ進む
今はまだ君を救うことはできないけれど
いつか、きっと
ブラッド・ブラック
【森】
サンの手を取り進む
聞こえてきたのは少年の胸を掻き毟る様な悲痛な声
年の頃は十五、六といったところだろうか
サンは『昔の僕』だと言っているが――確かに外見は似ているかもしれないが、サンとは別人だ
サンの言葉の意味を計りかねながら歩を進める
少年の側を通る際聞こえたのは呟く様な言葉
『死なせて死なせて死なせて』
思わず足を止め、何があったのかと、少年に手を伸ばそうとして
『殺して…』
泣き腫らした金の瞳で少年は“俺に”そう言った
息を吞む、動悸がする、嫌な汗が滲む
俺は、此の少年を、知っている――?
サンの熱に我に返る
消えゆく幻を見送りながら記憶の中に少年の姿を探したが
鍵がかかった様に何も思い出す事はできなかった
外では人々が逃げ惑い、阿鼻叫喚な状況であっただなんて思えぬほどに。
足を踏み入れた大極殿は、異様なほど静かだ。
サン・ダイヤモンド(黒陽・f01974)は逸れぬように、ブラッド・ブラック(LUKE・f01805)と手を繋いで。
ブラッドはそんなサンの手を取り、正殿になり損ねた建物の最奥へと進む。
そして、異様な静寂をやぶったのは――刹那聞こえてきた、悲痛な声。
ブラッドはそんな、少年の胸を掻き毟る様な声のする方へと視線を向ければ。
薔薇色の瞳に映ったその姿を見て思う。
(「年の頃は十五、六といったところだろうか」)
視えたのは、白い肌と青白く輝く長い髪の少年。
少年は地に這い蹲りながら必死に声を押し殺そうとして、息まで止めて――それでも抑え切れずに、泣いていた。
そしてサンには、『彼』が『誰』であるのかが、わかっていた。
だって、前にも逢ったのだもの。
「――あれは、ずっとずっと昔の僕。……僕にはわかるの」
そう、『君』は『僕』。
あの子は、帝都櫻大戰で対峙した彼――過去の自分の、少年時代の姿だということが。
いや、逢ったのは多分、あの時だけではなくて。出逢う度に手に掛けた『君』。
そう泣いている彼を見つめ紡がれたサンの言葉を聞いて、ブラッドも改めて眼前の少年を見るも。
(「サンは『昔の僕』だと言っているが――」)
でもブラッドは思うのだ。
確かに外見は似ているかもしれないが、サンとは別人だ、と。
そんなブラッドの傍で、サンは思い出す。
何故泣いているのかまでは分からないけれど――でも、大人の彼がしていた哀しそうな目や、書棚で見付けた手紙を。
哀しい目をした君を、誰かを必死に護ろうとしていた君を思えば、泣いている理由がサンには何となく思い浮かぶ。
――誰か、大切な人を亡くしたのかもしれない、って。
そしてブラッドは、サンの言葉の意味を計りかねながらも歩を進めていたのだけれど。
少年の側を通る際に耳に届いたのは、呟く様なこんな言葉。
『死なせて死なせて死なせて――』
それを聞けば、思わず足を止めて。
何があったのかと……少年に、手を伸ばそうとしたのだけれど。
ふいに、獣のような金の隻眼が自分の姿を映して。
泣き腫らしたその金の瞳で、少年は“俺に”言うのだ。
『殺して……』
瞬間、息を吞む、動悸がする、嫌な汗が滲む。
その金の色から視線を逸らせない。
だって、だって俺は――。
(「俺は、此の少年を、知っている――?」)
けれど刹那、ブラッドはハッと我に返る。
自分の手に重ねられたサンの手の感触に、与えられたその熱に。
そしてサンは、少年の言葉に動揺するブラッドと、手と手を重ねたまま。
「ごめんね」
柔らかな光の微風を吹かせ、幻覚をかき消せば。
「行こう」
彼の大きな手を握り直して、先へと進む。
あの時、彼に言ったから……僕は未来へいくよ、って。
それに、この思いも変わらない――そしていつか、僕は過去君を救いたい、と。
だが、サンにはわかっているのだ。
(「今はまだ君を救うことはできないけれど」)
でも……いつか、きっと、って。
そしてブラッドはそんな消えゆく幻を見送り、己の記憶の中に少年の姿を探してみる。
けれどやはり、何も思い出す事はできなかった。
まだその時ではないと……その時が来るかさえも、わからないけれど。
鍵がかかった様に、記憶は固く閉ざされたまま。
そして今のブラッドはただ、前へと歩みを進める。サンが与えてくれる熱に、導かれるままに。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
八坂・詩織
推しの依頼なら気合いも入るというもの、避難を呼びかけつつ大極殿へ足を踏み入れれば。
避難できてない人…じゃないですね、だってこの声は…
泣き声のする方へ行ってみればそれは昔の自分で。
どうして皆行っちゃったの、と嘆くのを見ればああこれはかつての天文部の部員何名かがディアボロスランサーに乗って外宇宙に旅立った時の自分と分かる。
突然の別れであの時は本当に泣いたからなぁ…今だって思い出すと悲しい。
でもね、それは私が皆のことをすごく大事に思ってる証だから。
大人になった今でも皆を思って泣くことはあるけど、同じくらい大事に思える人との出会いだってあるから、ゆっくりでも前に進めばいいの。
そう頭を撫でて宥めて先へ。
このアヤカシエンパイアの世界を守りたい。
言葉にはしないけれど、八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)はよくわかる。
これまで見て来た、いわゆる推しが、強い信念をその胸に抱いていることを。
そして、そんな推しの依頼なら気合いも入るというもの――なんて。
八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)が赴いたのは、魔軍将「安倍晴明」の白炎換界陣が展開した、呪いの地。
その内部は、妖どもに慄き、喚いては逃げ惑う人々。
そんなパニック状態な住民達へと詩織は避難を呼びかけつつも伝える。
これから己が赴く、この地に鎮座する大極殿から離れるようにと。
そしてこのブレイズゲートの主に据えられた存在がいるという大極殿へ足を踏み入れれば、奥へと歩みを進めていくも。
ふと、詩織は誰かの声を耳にする。
――誰かが、泣いている。
でも、詩織にはわかるのだ。
「避難できてない人……じゃないですね、だってこの声は……」
そう紡ぎつつも、泣き声のする方へ行ってみれば――やはり、それは昔の自分で。
涙を流しながらも、過去の詩織は振り絞るような声を落としている。
――どうして皆行っちゃったの、と。そう嘆きながら。
その姿を見れば、詩織にはこれがいつの自分か、わかるのだ。
(「ああこれはかつての天文部の部員何名かがディアボロスランサーに乗って外宇宙に旅立った時の自分」)
それから、またあの時と同じように。
「突然の別れであの時は本当に泣いたからなぁ……今だって思い出すと悲しい」
胸がきゅっとなるような感覚をおぼえながらも、こうも続けるのだった。
「でもね、それは私が皆のことをすごく大事に思ってる証だから」
大人になった今でも、大事な皆のことを思って泣くことはあるけれど。
詩織は、泣いている自分へとそっと手を伸ばして。
「同じくらい大事に思える人との出会いだってあるから、ゆっくりでも前に進めばいいの」
……本当に? なんて見つめてくる自分へと頷いて返してから。
その頭を撫でて宥めたあと――先へ。
あの時泣いていた自分も、少しずつでも前に進んだからこそ。
大事な人たちとも出会えた、今に至るのだから。
大成功
🔵🔵🔵
ミルナ・シャイン
頼典様(f42896)と
何が出てもわたくしがお護りしますわ!とはぐれないように進んでいたけれど。
何か恨めしい泣き声がするような…ちょっと、ホラー展開はやめていただきたいのですけど!?
でもよく聞けば頼典様が謂れのない恨み言を言われてるようで。
は?聞き捨てなりませんわね、弄ばれたとか、頼典様がそんなことするわけないじゃない!
たしかに女好きかもしれませんけど、女性を傷つけたりはしない方ですもの。というかそんな人ならお付き合いしてませんわ!
寝取っただなんて!わたくし恋だって正々堂々正面からアタックしてますわよ!
もう、頭にきましたわ!こんな幻覚、盾の【浄化】をのせた【武器から光線】で払っちゃいますから!
八秦・頼典
ミルナ様(f34969)と
セイメイの手がかりを追って来てみたけど…ここが「愁嘆の間」か
果たして鬼が出るか蛇が出るか…
ミルナ様とはぐれないように進んで行くけど…どこかで聞いた声の泣き声が聞こえてきたか
ボクが…いや、ボク達が見ている幻覚は陰陽師探偵の捜査や口説き文句の挨拶を交わしていた方々と来たか
あの言葉は嘘だったとか、遊びだったとか、裏切られたとか…まぁミルナ様がご立腹になられるのも無理はないね
でも、これだけは言っておこう
ボクは彼女達を蔑ろにした事も弄んだ事も一切無いし、それで被った謂れは恋多き君たるボクが誹りを一身に受ける甲斐性ぐらいはあるとね
『形代招来』で幻覚を祓いミルナ様と共に先へ進もう
アヤカシエンパイアに現れた、異世界の陰陽師。
魔軍将「安倍晴明」のことは以前から勿論、聞き及んでいるが。
(「セイメイの手がかりを追って来てみたけど……ここが「愁嘆の間」か」)
八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)が足を踏み入れたのは、彼の陰陽師の術が施され生じた「愁嘆の間」。
ただならぬ力を感じるが、足を止める選択肢はない。
果たして鬼が出るか蛇が出るか……なんて思いながら歩みを進めていれば。
ミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)は、何が出てもわたくしがお護りしますわ! と、頼典とはぐれないように進んでいたのだけれど。
ふと耳に聞こえた声に、思わずビクッとしてしまう。
「何か恨めしい泣き声がするような……」
何だか、いかにも、と言った泣き声が聞こえ始めて。
「ちょっと、ホラー展開はやめていただきたいのですけど!?」
そしてそう声を上げるミルナの隣で、頼典は聞こえてきた声に思う。
(「……どこかで聞いた声の泣き声が聞こえてきたか」)
あくまで冷静に声のする方へ視線を向ければ、生じた心当たりが何だったかにすぐに辿り着く。
「ボクが……いや、ボク達が見ている幻覚は陰陽師探偵の捜査や口説き文句の挨拶を交わしていた方々と来たか」
ミルナも、恨みがましい声たちが何を言っているのかに気づく。
(「でもよく聞けば頼典様が謂れのない恨み言を言われてるようで……」)
だがそれをよくよく聞いてみれば、湧き上がるのは恐怖ではなく怒り。
「は? 聞き捨てなりませんわね、弄ばれたとか、頼典様がそんなことするわけないじゃない!」
頼典に向けられるのは、あの言葉は嘘だったとか、遊びだったとか、裏切られたとか――そのような女達の声。
けれど、ミルナが怒りを感じるのは、彼のことをよく知っているから。
だから、ずいっと前へと出て、びしっと幻覚の女達へと言い放つ。
「たしかに女好きかもしれませんけど、女性を傷つけたりはしない方ですもの。というかそんな人ならお付き合いしてませんわ!」
そして言葉を向けられている頼典は、恨み言を連ねるモノ達の泣き声を聞きながらも、憤っている彼女へと視線を向けて。
(「……まぁミルナ様がご立腹になられるのも無理はないね」)
それからミルナに並べば、幻覚へと告げる。
――でも、これだけは言っておこう、と。
「ボクは彼女達を蔑ろにした事も弄んだ事も一切無いし、それで被った謂れは恋多き君たるボクが誹りを一身に受ける甲斐性ぐらいはある」
だが、その声が聞こえてなどいないし、頼典も話ができるとは端から思ってはいなかったが。
さらに幻覚は恨みがましく泣きながらも、幻覚は彼の傍らにいる彼女にも怨嗟の声を向けて。
それを聞いたミルナはさらに憤慨する。
「寝取っただなんて! わたくし恋だって正々堂々正面からアタックしてますわよ!」
けれど――もう、頭にきましたわ! と声を上げるミルナよりも早く。
頼典の展開した形代招来が、女達を祓う。
真実と違ってはいるとしても、自分が言われるのはいい。
けれど、己が共に歩むと選んだ女性がそのように言われるのは決して許容できないから。
そしてミルナも、盾の浄化をのせた武器からの光線で容赦なく女どもの幻覚を消滅させれば。
大極殿の奥へと再び歩き出す。ふたりで共に、確りと足並みを揃えて。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
終夜・嵐吾
やば君がひとりでいってしまったから追いかけて欲しいと…言われてきてみたがおらんなー
先に進んでしもたな
おいかけよ
とりあえずまっすぐ…
ん?誰か泣いておるな…
いってみるか
……
……せ、せーちゃん?
え、いやっ、えっ?
絶対ないじゃろ!!
あの箱がそんな女々しいことは絶対ない
わしはよう知っとる
ないったらない
間違いなく幻じゃな
ほんとない、絶対ないからのー
……いや、しかし
幻でもあの箱の泣き顔が見れる?
それは…それは、ちょっと気になるの…
……みるか?
じゃが幻の泣き顔見て面白いかといえばそんなこともない
……ほうっといていくかの
しかしもったいないかのー、でものー
やっぱりやめとこ
なんかへんなことになったらやじゃし!
異様な力が周囲に及んでいるのを感じれば、尻尾もぶわぶわするけれど。
魔軍将「安倍晴明」の成した白炎換界陣により、ブレイズゲート化した地へとやって来たのは、終夜・嵐吾(灰青・f05366)。
グリモアベースをふらり歩いていれば、この案件で転送の任を負い、現場へと赴けない彼から頼まれたのだ。
(「やば君がひとりでいってしまったから追いかけて欲しいと……言われてきてみたがおらんなー」)
とはいえ、頼まれた彼の姿はなく、きょろりと視線を巡らせるも。
「先に進んでしもたな、おいかけよ」
最終目的地はわかっている、だから追いつくべく急ぎ追いかけるだけ。
そして聞いた通り、中央に佇む大極殿へと足を踏み入れて。
最奥に主と据えられた妖がいるという話は聞いているため、きっと同じように進んだに違いない彼の君を負って嵐吾も進んでいたのだけれど。
「とりあえずまっすぐ……ん? 誰か泣いておるな……」
お耳がぴこり、ふと誰かの泣いている声が聞こえてきて。
……いってみるか、と足を向けたのであるが。
刹那、眼前に現れた『彼』に、思わず琥珀色の左瞳をそれはもう大きく見開いてしまう。
いや、見舞い違いじゃなかろうか……と目を向けて。
「…………」
そしてまじまじと、もう一度改めて見つめてみるのだけれど。
「……せ、せーちゃん?」
泣いているのはどうやら、いちばんのとも――のようなのが。
嵐吾はぶんぶんと大きく首を横に振る。
「え、いやっ、えっ? 絶対ないじゃろ!!」
だって、他の誰よりも、泣くという行為があの友に関しては盛大な解釈違いなのだ。
「あの箱がそんな女々しいことは絶対ない。わしはよう知っとる」
ないったらない――よく知っているからこそ、本当にありえないのだ。
だから、間違いなく幻じゃな、って思うし。
「ほんとない、絶対ないからのー」
改めてそうとしか言えないのだけれど――でも、だからこそ。
(「……いや、しかし。幻でもあの箱の泣き顔が見れる?」)
幻覚の友は暗がりの先にいて、彼とはわかるものの、はっきりとその顔は見えない。
だが、そう思えば、尻尾がゆらりそわそわ。
「それは……それは、ちょっと気になるの……」
いちばんの友と一緒にいるようになって、もう何年も経っているのに……泣いている姿なんて、一度も見たことがないから。
「……みるか?」
好奇心がむくりと一瞬湧いてしまう嵐吾だけれど。
でも改めて考えてみれば、首を傾げてしまう。
……じゃが幻の泣き顔見て面白いかといえばそんなこともない、と。
此処は敵の術が及んでいる場所、それもわかっているから。
「……ほうっといていくかの」
そう歩み出そうとすれば、嵐吾に行くなと言わんばかりに、いっそう泣く声が耳に届いて。
「しかしもったいないかのー、でものー」
やはりあの、あの箱が泣いた顔なんて幻覚でもレアすぎるから、一瞬心が揺らいでしまうも。
「やっぱりやめとこ」
――なんかへんなことになったらやじゃし! なんて。
決意が揺らがないうちに、ささっと先に進むことにする。
泣いているのが絶対に友ではないことは、嵐吾が一番、よく知っているから。
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
幻かー
ミサキでも家族でも嘆く姿を見るのは
…、!…いや違う
(聞こえるのは中年の男の声で、苦痛の号泣から徐々に怨嗟まじりの啜り泣きに
見るまでもなく思い出せる
頭領に攫われてきて
逃げないように片脚を落とされ
子供の頃のオレに初殺しの練習台にされた壮年の
見知らぬ男だ…
9つのオレは決定打が下せず結果長いこと男を傷と出血で生殺し苦しめ抜いた
は…
エンパイアに現れたセイメイを外道呼びしてたけど
オレも大概だよなァ
おっさん
あの時の呪いの通りオレは鬼畜に片足突っ込んでるみたい
マシな死に方しないかもだけど
今は目先の目標の為に此処を抜けなきゃ駄目でね
アンタはオレの戒め
死は疾く速やかに
介錯仕る
御免(クナイで喉を貫く
アドリブ可
アヤカシエンパイアに現れた彼の陰陽師が成した、白炎換界陣。
その只中へと赴き、ブレイズゲートの主と据えられた妖が在るという大極殿へと足を踏み入れれば。
(「幻かー。ミサキでも家族でも嘆く姿を見るのは――」)
鹿村・トーゴ(鄙の伏鳥・f14519)は聞いた予知のことを思い返しながらも、歩みを進める。
話を聞いた際に、まず思い浮かんだのは、幼友達であった少女。
それかもしくはと、家族の姿が脳裏に過ったのだけれど。
ふいに聞こえ始めた誰かの泣き声に、トーゴは思わずその足を止める。
「……、! ……いや違う」
だって、泣き声の主は明らかに――その、どちらでもなかったのだ。
そしてそれが誰なのかを、トーゴは見るまでもなく思い出せる。
いや、むしろ、顔だけ見ても誰だかわからないだろうけれど。
トーゴにとってこの泣き声は、忘れるわけがないものであった。
泣いているのは、中年の男。苦痛の号泣から徐々に怨嗟まじりの啜り泣きに変わっていく。
あの時と、同じように。
彼は、トーゴにとって見知らぬ男。名も知らず、どこの誰かもわからぬ男。
頭領に攫われてきて、逃げないようにと片脚を落とされた男はあの時も、自分の目の前に転がって泣いていた。
この中年の男は、そう。
(「子供の頃のオレに初殺しの練習台にされた壮年の、見知らぬ男だ……」)
当時のトーゴの年は9つ。
まだ子供であったトーゴは決定打が下せずに、結果長いことこの男を、傷と出血で生殺し苦しめ抜いたのだ。
そんな光景をまざまざと見せられ、トーゴは自嘲めいて言の葉を零す。
「は……エンパイアに現れたセイメイを外道呼びしてたけど、オレも大概だよなァ」
けれど、今のトーゴはもう、9つの時とは違うから。
啜り泣く彼の前に屈んで、こう紡ぐ。
「おっさん。あの時の呪いの通りオレは鬼畜に片足突っ込んでるみたい」
だから、わかっているのだ――マシな死に方しないかもだけど、と。
でもそれはまだ、今ではないから。
トーゴはクナイを手にして、彼へと続ける。
「今は目先の目標の為に此処を抜けなきゃ駄目でね」
そして……アンタはオレの戒め、と。
「介錯仕る、御免」
トーゴは躊躇なく男の喉を的確に貫く。
今度こそ――与える死は、疾く速やかに。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『火車』
|
POW : 呪言炎波
【呪言と共に口から吐かれた炎波】が命中した対象を燃やす。放たれた【呪いの】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 呪車炎蹂
【炎を纏った車輪を高速回転させること】で敵の間合いに踏み込み、【呪いの炎】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
WIZ : 呪炎旋風
高速で旋回する【車輪の軌跡に沿って炎の竜巻】を召喚する。極めて強大な焼却攻撃だが、常に【呪言】を捧げていないと制御不能に陥る。
イラスト:すずや
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
大極殿の『愁嘆の間』は、誰かの啜り泣きさえも耳に届くほど静かであったのに。
眼前で繰り広げられているのは、大量の妖が蠢き、無限に分裂して現れる光景。
『……怨怨怨怨……』
呪いの炎が燃え盛り、怨嗟の声が響き渡る、まさに地獄のような戦場。
だが、それはキリのない戦いになりかねない様相は呈しているのだけれど。
不幸中の幸いと言うべきか、妖『火車』の群れに対し奮戦しているのは、現地の坂東武者や検非違使、陰陽師達であった。
「! 援軍か!?」
「この奇怪で強固な陣を解くために祓うべき妖は、この先にいる」
「だが、この通り、妖が無限に分裂して……くっ!」
そして猟兵達の姿を見れば、この地の坂東武者や検非違使や陰陽師達は、迫る『火車』を斬り伏せながらもそう紡いで。
こう、告げるのだった。
「かなりの手練れとお見受けした、頼みがある」
「俺達がここは極力抑える、だから君達は妖の壁を突破し、最奥へと乗り込んでくれ……!」
怨念の炎が燃え盛る地獄の只中、駆け付けた猟兵達へと望みをかけて、その思い託す。
怨嗟渦巻く地獄を征くその背を全力で押す覚悟をもって、希望の一路を切り開くために。
八坂・詩織
分かりました、奥の妖はおまかせください。皆さんもどうかご無事で。
私も本気出していきますよ、|起動《イグニッション》!
髪を解き、瞳は青く変化。防具『雪月風花』を纏った雪女の姿に。
雪女ですから、炎とはあまり相性はよくありませんが…
UC「吹雪の竜巻・改」発動。
集団敵ですし、そこまで知能は高くないはず…視聴嗅覚がきかない吹雪の竜巻の中に身を隠してしまえば私の居場所は分からないでしょう。仮に呪いの炎が飛んできても纏った吹雪で炎を【吹き飛ばし】、かき消してしまえばいいことです。
姿を隠したまま吹雪の竜巻を飛ばして遠距離攻撃。
吹雪によるホワイトアウトと全てを巻き上げる竜巻の事故にはご注意ください、なんてね。
大極殿の『愁嘆の間』を抜けた先、そこは妖が無限に分裂を繰り返す戦場。
だが此処を通らなければ、ブレイズゲートの主に据えられた妖の元へは辿り着けないし。
「俺達がここは極力抑える、だから君達は妖の壁を突破し、最奥へと乗り込んでくれ……!」
この地の坂東武者や検非違使や陰陽師達が奮闘し、妖を抑えてくれるというから。
「分かりました、奥の妖はおまかせください。皆さんもどうかご無事で」
八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)は彼らの頼みを勿論請け負い、頷いて返して。
――私も本気出していきますよ、|起動《イグニッション》!
はらりと黒髪を解き、ピンクの花と蝶が舞う真白の美しき着物『雪月風花』をその身に纏えば。
雪女の姿に変化し、青に色を変えた瞳を向ける。
『……怨怨怨怨……』
呪言と炎を吐き、妖へと人を造り替えるべく全てを焼き尽くさんと荒ぶる『火車』の群れへと。
そして呪いの炎燃え盛る戦場を見遣れば。
「雪女ですから、炎とはあまり相性はよくありませんが……」
だからこそ詩織は戦場に刹那巻き起こす。
(「集団敵ですし、そこまで知能は高くないはず……視聴嗅覚がきかない吹雪の竜巻の中に身を隠してしまえば私の居場所は分からないでしょう」)
己の身を覆って視聴嗅覚での感知を不可能にし、敵へと後方から飛ばして凍える攻撃を与える、吹雪の竜巻を。
火車も炎を纏った車輪を高速回転させ、間合いへと迫らんとはしてくるけれど。
詩織の読み通り、放ってくる呪いの炎は自分の位置を特定できずに闇雲に繰り出されたもの。
時折、飛んでくるものもあるが、詩織は慌てることなく対処する。
(「纏った吹雪で炎を吹き飛ばし、かき消してしまえばいいことです」)
逆にお返しと言わんばかりに姿を隠したまま、吹雪の竜巻を飛ばして。
――吹雪によるホワイトアウトと全てを巻き上げる竜巻の事故にはご注意ください、なんてね、と。
敵を的確に捉えては、燃ゆる炎ごと巻き込んで凍らせていく。
地元の坂東武者や検非違使や陰陽師、そして猟兵の仲間と共に。
炎と怨嗟が渦巻く戦場に進むべき道を切り開き、目指す先へと駆けるために強力し合いながら。
大成功
🔵🔵🔵
ブラミエ・トゥカーズ
妖怪であることは隠さない
知られる事、識られる事、報れる事、そうして人の中に潜み、想いを喰らうのが妖怪なのだから
あの貴公等と同じ名を持つ屍を奪う猫怪であれば余では相性が悪かったが、そうでないなら問題はないな。
吸血鬼は火に弱い
どちらにしろ変わらぬではないか。
故に貴公に任せる。
従者妖怪が正体を顕す
妖怪:輪入道
装備:現代化により木の車輪ではなく鋼鉄製で災害現場でも使えるタイヤ
轢き潰す
時代の進歩と共に面白おかしく、そして恐ろしく進化することこそ余等妖怪であるぞ。
人間を棄てた貴公等如きに負ける道理は無いぞ?
人がいなくても存在できる彼らと
人無くしては存在する意味のない吸血鬼《寄生存在》
どちらが上等であろうか
人間にとっては、妖怪であるという事実だけで恐れ慄く者も少なくないだろう。
だが、ブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)は、己が妖怪であることを隠すことはしない。
(「知られる事、識られる事、報れる事、そうして人の中に潜み、想いを喰らうのが妖怪なのだから」)
眼前の『火車』どもも、広義的にはそのような存在だ。
人の恨みという感情を糧に、呪いの炎を巻き散らしている。
けれど、このブレイズゲートに囚われ分裂を繰り返す妖の群れと己は当然ながら、決して同じ在り方ではないし。
力無き民であればまだしも、妖を相手に奮闘する地元の者達はむしろ、共に戦う者であると先を託してくれているから。
ブラミエは倒すべき有象無象を見遣りながらも紡ぐ。
「あの貴公等と同じ名を持つ屍を奪う猫怪であれば余では相性が悪かったが、そうでないなら問題はないな」
とはいえ、行く手に立ちふさがる火車どもも呪炎旋風を発動させて。
『……怨怨怨怨……』
呪言をひたすら吐き出しながら高速で車輪を旋回させ、炎の竜巻を召喚しては強大な焼却攻撃を仕掛けてこんとしていて。
それを見れば、ブラミエはこう続けるのだけれど。
「吸血鬼は火に弱い。どちらにしろ変わらぬではないか」
故に貴公に任せる、と。
――やつした身を解き、この地に示せ、貴公の伝承を。震え恐れよ。怯え伝えよ。カクリ世よりいずる彼のモノこそは。
伝承解放を解放すれば、名告げる事を禁じられたモノを、此の戦場へと喚び出す。
そんな正体を顕わした従者の此度の姿は、輪入道。
だが携える車輪は炎に弱い木ではなく、災害現場でも使えるという、現代化した鋼鉄製のタイヤ。
主にかわって、火車どもが繰り出す炎も諸ともせずに、有象無象を轢き潰していく。
そう、この火車と己の圧倒的な違い。それをブラミエは教えてやる。
「時代の進歩と共に面白おかしく、そして恐ろしく進化することこそ余等妖怪であるぞ」
そして無差別に人を灼き尽くす呪いの炎しか生み出せぬモノどもへと告げる。
……人間を棄てた貴公等如きに負ける道理は無いぞ? と。
それから、従者妖怪に轢き潰されていく妖を見遣る瞳を細めながら、ブラミエは見極める。
(「人がいなくても存在できる彼らと、人無くしては存在する意味のない吸血鬼《寄生存在》」)
地獄の如く炎が燃ゆる戦場を征きながら――どちらが上等であろうか、と。
大成功
🔵🔵🔵
白矢羽・尭暁
【矢狐】
嘆きのあとは呪いか
さてどうしようかなぁ、皆が頑張っているから早く行かねば
おや、嵐吾殿
言われてきてくれたって?ふふ、ありがとう
じゃあ、炎の扱いは君に任せて僕はついていこう!
わ、本当にきれいに炎を操るね
妖狐は皆得意なのかな
ではその動きに負けぬように僕もあわせていこう!
呪いを聞く相手は僕らではないよ
幻の中で延々と紡ぐと良い
きっとやさしいからきいてくださるよ
まぁ、その前に参ってしまうかもしれないけれど
嵐吾殿、今だよ!
ふふ、いつもは助けられているけれど、こうして助ける側になるのも面白いものだね
さぁ、まだ強敵がいるから、先を急ごうか
え、血?
内緒にしといてね、お小言を言われてしまうから
終夜・嵐吾
【矢狐】
あ、いたいた~!やっとおいついたんじゃよ
代わりに行ってきてくれ~と言われてな、
まぁ誰とはいわんでもわかるじゃろけど
おお、なんか派手に燃えておるの
しかし、炎は得手じゃ、まかせておくれ!
わしがきちんと奥までつれていこう
そいそいっと!
炎に炎をぶつけてこちらにはこぬように
このくらいなら火力あげたらもやせそうじゃな
ん~?みんな得意かはわからんな~
やば君も動くならその間は害が及ばぬように
何ぞ動きがにぶなったな…
なるほどいま!ではおもいきり、燃やしてしまおう!
って、血がでておらんかの? 小さい傷ではあるが…
内緒? まぁ軽い傷なら…これ以上はだめじゃよ!
わしも一緒にお小言されてしまうかもしれんからの
足を踏み入れた次の間に渦巻いて燃え盛るのは怨嗟の炎。
『……怨怨怨怨……』
「嘆きのあとは呪いか」
白矢羽・尭暁(金烏・f42890)は常に呪言を巻き散らす妖の群れを見遣りつつ、その歩みを止めることなく進む。
(「さてどうしようかなぁ、皆が頑張っているから早く行かねば」)
「俺達がここは極力抑える、だから君達は妖の壁を突破し、最奥へと乗り込んでくれ……!」
そこには、既に戦いに身を投じている者達の姿があるから。
けれど彼らが抑えてくれるとはいえ、火車の群れは無限に分裂を繰り返している。
このブレイズゲートとやらを消滅させなければ、この連鎖は断ち切れないだろう。
だが、妖が延々と沸いて出るこの場をどう突破するか……と思考していれば。
「あ、いたいた~! やっとおいついたんじゃよ」
背後からの声に振り返れば、尭暁は向けた金の瞳で捉える。
「おや、嵐吾殿」
それは自分のことを追いかけてきてくれたらしい、終夜・嵐吾(灰青・f05366)の姿であった。
「代わりに行ってきてくれ~と言われてな、まぁ誰とはいわんでもわかるじゃろけど」
「言われてきてくれたって? ふふ、ありがとう」
嵐吾の言葉を聞けば思わず笑み零してしまうのは、過保護な彼のことが脳裏にすぐに浮かんできたから。
それから嵐吾は改めて、琥珀の色を呪いの炎燃え盛る行く手へと投げて。
「おお、なんか派手に燃えておるの」
燃ゆる炎を見遣るも、尻尾をゆうらり、尭暁へと続ける。
「しかし、炎は得手じゃ、まかせておくれ! わしがきちんと奥までつれていこう」
「じゃあ、炎の扱いは君に任せて僕はついていこう!」
そしてそう尭暁から返ってくれば――そいそいっと!
こちらにはこぬように……そう呪いの炎にぶつけるのは、慣れたように次々と生み出される狐火たち。
「このくらいなら火力あげたらもやせそうじゃな」
『怨怨……、ッ!』
刹那、狐火を幾つも合わせて放てば、妖を燃やし巻き散らす呪言ごと灰へと化してやって。
呪いの炎とは明らかに違う鮮やかな狐火を金の瞳に映しながら、尭暁は紡ぐ。
「わ、本当にきれいに炎を操るね。妖狐は皆得意なのかな」
「ん~? みんな得意かはわからんな~」
そして妖どもが燃え尽きてできた道を共に駆ける。
「ではその動きに負けぬように僕もあわせていこう!」
そんな尭暁へと目を向けて……やば君も動くならその間は害が及ばぬように、と嵐吾が思った瞬間。
『……怨怨怨怨……』
「呪いを聞く相手は僕らではないよ」
――幻の中で延々と紡ぐと良い。
向けられた炎の竜巻が掠め、傷口から滲んだ赤が、触れた妖どもを滅する数多の幻影となる。
きっと妖達は、大量の神仏の姿を視ているだろうから。
「きっとやさしいからきいてくださるよ」
ただ、それが叶うかどうかは定かではない。
……まぁ、その前に参ってしまうかもしれないけれど、って。
そして尭暁が視せる幻影に火車達が囚われれば。
「何ぞ動きがにぶなったな……」
「嵐吾殿、今だよ!」
「なるほどいま! ではおもいきり、燃やしてしまおう!」
嵐吾はそんな尭暁の声を受け、今が攻め時だと遠慮なく炎を繰り出して。
立ちはだかる敵を容赦なく全て燃やしていく。
そんな呪いの炎を塗り替える鮮烈な炎を見つめながら。
「ふふ、いつもは助けられているけれど、こうして助ける側になるのも面白いものだね」
尭暁は楽し気に笑んだ後、改めて気を引き締めて嵐吾へと告げる。
「さぁ、まだ強敵がいるから、先を急ごうか」
そんな声に、うむ、と頷いて返した嵐吾だけれど。
ふと、狐耳がぴこり。
「って、血がでておらんかの? 小さい傷ではあるが……」
「え、血?」
それは、尭暁にとっては気に留めるほどでもない程度のものであるが。
でもきっと、彼の従者が見たら確実に眉を顰めるに違いないから。
「内緒にしといてね、お小言を言われてしまうから」
これは、ふたりだけの内緒に。
嵐吾にも彼の怪我がなんということもないものだということはわかるのだけれど。
でも、それはそれとして、ふるりと首を横に振って返す。
「内緒? まぁ軽い傷なら……これ以上はだめじゃよ!」
……わしも一緒にお小言されてしまうかもしれんからの、って。
嵐吾にも、尭暁を怪我を見た時の誰かの様子が容易に目に浮かんだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミルナ・シャイン
頼典様(f42896)と
セイメイとやらは本当に良い性格をされてるようですわね、わたくしけっこうおこですわ。散々謂れのない怨み言を聞かされた上に今度は呪いの炎で焼かれるなんて冗談じゃありませんわ!
ええ、護りの騎士たるわたくしが皆様をお護りし、道を切り開いてみせますわ。
さあそこをおどきなさい!力ずくでも下がっていただきますわ!
【武器巨大化】で巨大化させた盾で護りを固め【鉄壁】の防御で炎波を防ぎつつ。頼典様のUCで数を減らしたところでUC「キャッスルクラッシュ」による突撃で突破口をこじ開けて先へ進みましょう。
頼典様の協力もありますから威力も倍増、こんなところで足止めされるわたくし達ではありませんの!
八秦・頼典
ミルナ様(f34969)と
身に覚えある幻覚から恨み言を言われた次は妖が放つ呪いの炎とは、置き土産とは言えセイメイはどんな性格であるかが手に取るよう分かるようだ
この奥に妖の首魁が待ち構えているのは分かるけど…生憎ながらボク達は力戦奮闘する君達を見捨てるほど薄情ではない
目には目、歯には歯、炎には炎
怨念の炎すらも焼き清め、衆生を救済する迦楼羅炎を吐く【倶利伽羅の黒竜】で場を好転させよう
こうしてやれば呪いの炎を掻き消せるし、ミルナ様もやりやすいだろうしね
あとはミルナ様とある程度駆逐してやれば、憂いなくキミ達にここを任せきれる
名を尋ねられたらそうだね…こう言っておこう
通りすがりの|陰陽師《ライデン》とね
嘆きに満ちていた愁嘆の間を抜けた先に広がっていたのは、呪いの炎が燃え盛る地獄。
けれど、ミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)の足が止まることなどなく。
「セイメイとやらは本当に良い性格をされてるようですわね、わたくしけっこうおこですわ」
むしろ眼前の呪いの炎などに負けぬくらい今の彼女の心に燃ゆるのは、怒り。
「散々謂れのない怨み言を聞かされた上に今度は呪いの炎で焼かれるなんて冗談じゃありませんわ!」
「身に覚えある幻覚から恨み言を言われた次は妖が放つ呪いの炎とは、置き土産とは言えセイメイはどんな性格であるかが手に取るよう分かるようだ」
八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)も、異世界の陰陽師だという元凶の性悪さを改めて感じながらも。
「私どもに構わず、先へ……!」
そう身を投げうって分裂を繰り返す妖の群れへと向かわんとする者達へと、頼典ははっきりと告げる。
「この奥に妖の首魁が待ち構えているのは分かるけど……生憎ながらボク達は力戦奮闘する君達を見捨てるほど薄情ではない」
「ええ、護りの騎士たるわたくしが皆様をお護りし、道を切り開いてみせますわ」
それは勿論、ミルナだって彼と同じ気持ちだから。
先に進むだけではなく、誰も犠牲を出さぬように、ふたり意識して動く。
火車の群れもそんなふたりに気づき、炎を纏った車輪を高速回転させ、呪いの炎を連ならせてくるけれど。
――目には目、歯には歯、炎には炎。
「ノウマク、サンマンダバザラダン、カン!」
頼典の詠唱が刹那響けば顕現するは、智剣の化身たる黒龍『倶利伽羅龍王』。
『……怨怨怨怨……、ッ!?』
(「こうしてやれば呪いの炎を掻き消せるし、ミルナ様もやりやすいだろうしね」)
衆生を救済する迦楼羅が炎を吐く炎が、怨念の炎すらも焼き清め、場を好転させれば。
「さあそこをおどきなさい!力ずくでも下がっていただきますわ!」
水の透明感と光を放つ盾を巨大化させ、その手に携えて。
呪言と共に妖の口から吐かれた炎波を、煌めき輝く盾で護り固めた鉄壁の防御で防ぎながら。
頼典の倶利迦羅の黒龍が呪いの炎を掻き消すと同時に、先へ進むための突破口をこじ開けるべく突撃する。
「頼典様の協力もありますから威力も倍増、こんなところで足止めされるわたくし達ではありませんの!」
召喚したオーラの城壁を伴ったキャッスルクラッシュを発動させて。
そして火車どもが浄化され、駆逐されていく戦場を見れば。
「あとは、憂いなくキミ達にここを任せきれる」
頼典は彼らへと告げ、この場を託す。
それから、貴方様のお名前を聞かせていただけませんかと、そう訊ねられれば。
ミルナと共に先へと向かう前に、そうだね……と彼らへと視線を向けて。
こう言っておこうと、こたえて返す――通りすがりの|陰陽師《ライデン》、だと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふええ、泣き声が止んだと思ったら恨みの声が響き渡ってます。
ふえ?アヒルさんは何も言ってないって、アヒルさんじゃなくてあっちの妖さん達です。
どんどん分裂してくるから、どうにか突破すればいいって、こんな炎の壁を突破なんて無理ですよ。
こうなったら、恋?物語で雨を降らせて、その隙に突破しましょう。
あれだけ燃えてる妖さんなら、きっと大雨は苦手な筈です。
それにこの雨で車輪の跡は消えてしまいますから炎の竜巻は大丈夫な筈です。
ふえ?もし大丈夫じゃなかったらって……それは天に祈っておきましょう。
愁嘆の間を抜け、哀愁漂う泣き声も、そして鳴き声も止んだと思えば。
フリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)は進んだ先に響く声に思わず、大きな帽子をぐっと深くかぶってから。
「ふええ、泣き声が止んだと思ったら恨みの声が響き渡ってます」
そろりとおどおど、眼前に燃え盛る火車の呪いの炎を見遣るも。
ふいに聞こえた声に瞳をぱちりと瞬かせて、声の主へと視線を向ける。
「ふえ? アヒルさんは何も言ってないって、アヒルさんじゃなくてあっちの妖さん達です」
それから続いたアヒルさんの言葉に、ふるふると首を横に振って返すけれど。
「どんどん分裂してくるから、どうにか突破すればいいって、こんな炎の壁を突破なんて無理ですよ」
でもそれは、このまま突っ切れば、の話。
「こうなったら、恋?物語で雨を降らせて、その隙に突破しましょう」
ということで、フリルが刹那発動させるのは。
――雨、止みませんね。って、ふえええ、雨、強すぎませんか。
そう、突然の大雨と雨宿りが齎す恋?物語!
「あれだけ燃えてる妖さんなら、きっと大雨は苦手な筈です」
戦場にフリルが降らせるのは、突然の大雨。
そして雨が止むまで一時中断せざるを得ない状況に戦場全体がなれば、車輪の軌跡に沿って繰り出される炎の竜巻だって消えるはず……!
それから、再度聞こえるアヒルさんの声に、もう一度瞳を瞬かせるフリルだけれど。
「ふえ? もし大丈夫じゃなかったらって……」
呪いの炎を繰り出さんとする火車へと容赦なく降り注ぐ豪雨の中、雨宿りしつつも。
アヒルさんへとフリルはこう告げる……それは天に祈っておきましょう、って。
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
おっと…(さっきの幻を頭の隅に仕舞って)
武者殿方に助太刀するよ
まずあの火の車突破して、敵の頭も叩いてこなきゃね
【情報収集】イヤ殆ど気配と目視、【野生の勘】で敵のUC回避
命中しなくても火だるまになるッつーのは避けたいぜ
被弾の恐れはあっても【激痛耐性】で逆に間合いを縮め近接
空嘴の力を練り上げ一体と言わず周囲の数体を巻き込むように姿勢低く旋回しUCを発動
武者や術者に迫る敵が有れば【念動力】で敵を妨害し、こちらへ気を引き【おびき寄せ】
そのままそこへ保定して飛び掛かりUCを真正面からお見舞いしてやろう
倒す敵ならば初見殺し
ってのが教わった信条でね
雑で悪りーな
アドリブ可
静寂に嘆きが響く愁嘆の間の次は、激しく呪いの炎が燃え盛る戦場。
「おっと……」
その場へと足を踏み入れた鹿村・トーゴ(鄙の伏鳥・f14519)は、そう声を落としながらも仕舞い込む。
先程視た幻を、頭の隅へと。
だがある意味、先程とはうって変わった阿鼻叫喚の地獄の方が、気持ちを切り替えるには都合良いし。
「かなりの手練れとお見受けした、妖の壁を突破して最奥へと乗り込んでくれ……!」
すでに火車の群れと交戦し奮戦している、地元の武者や陰陽師達の助太刀にすかさず入って。
「まずあの火の車突破して、敵の頭も叩いてこなきゃね」
情報収集するように敵を見定めんと、トーゴは視線を投げるも。
繰り出された呪言と共に火車の口から炎波が吐かれれば、殆ど気配と目視、そして野生の勘で躱すべく身を翻して。
(「命中しなくても火だるまになるッつーのは避けたいぜ」)
そう思いつつも反面、被弾の恐れがあっても怯むことなどなく。
激痛耐性で受ける攻撃の衝撃にも耐えながら、逆に前へと一気に踏み出して。
敵前へと飛び出し、一気に間合いを縮めれば――練り上げるは、空嘴の力。
そして一体と言わず周囲の数体を巻き込むように姿勢低く旋回すれば、満を持して。
――“視ずの鳥其の嘴は此の指す先に” ……穿て大鉄嘴。
トーゴは火車ごと呪いの炎へとぶつける。強烈な、超圧縮した空気の一撃を。
それに、先へと進むことも勿論なのだけれど。
自分達を奥へと送るべく、分裂を繰り返す敵へと立ち向かう武者達。
そんな彼らに迫る妖を念動力をもって妨害しつつ、己へと気を引いておびき寄せれば。
『……怨怨怨怨……!』
そのままその場へ保定した瞬間、飛び掛かり、お見舞いしてやる。
周囲の地形をも破壊する空嘴の衝撃を、真正面から再び繰り出して。
そして恨みの炎ともども妖を素早く仕留めては祓っていきつつも。
「倒す敵ならば初見殺し、ってのが教わった信条でね」
……雑で悪りーな、なんて。
そんな言の葉だけを、この呪いの炎満ちる地獄へと残して前へと突き進む。
妖を食い止めてくれている彼らのためにも、この延々と燃え続ける呪いの分裂を一刻も早く止めるべく。
大成功
🔵🔵🔵
ブラッド・ブラック
【森】
躊躇いなく差し出された血肉に束の間躊躇して
「サン、俺はお前の様に敏くはないから、気付かない事も多々あるだろう。だが……、
また何か、独りで抱え込んではいないか?
何かあれば俺にも背負わせてくれ もっと俺を頼ってくれ
俺は其の為に在る お前の為に在るんだぞ」
愛しいサンの笑顔を見届け、其の血肉を受ける
己の命よりも大切な愛する者の血肉を喰らう――此れ以上の代償があるものか
サンに手を出そうとするものは全て薙ぎ払い
「――退け、消え失せろ!」
拳に【全ての災いを焼き尽くす白き焔】を宿し
【怪力・重量攻撃・範囲攻撃・衝撃波】で延焼分含め周囲の敵を一掃、道を開く
先程の少年やサンが抱えたものも気掛かりだが、今は先へ
サン・ダイヤモンド
【森】
血肉を捧ぐ為躊躇いなく自身の首筋を切り裂いて、ブラッドの名を呼ぶ
彼の突然の申し出に目を丸くして
僕が抱えていること
あの人(過去の僕)との数々の繋がり、過去への気持ち
無意識に僕一人で向き合うものだと思っていたけれど
彼が一生懸命僕に寄り添おうとしてくれていることが嬉しくて
うん!と笑顔で肯定し
彼の首に手を回し、血肉と共に破魔の加護を贈る
受肉した過去は破壊衝動を持つ
ならこの妖達も元は善良なのだろうか
けれど今確かなことは
僕がブラッドや森を守りたいように
皆何かを守るために戦っているんだ
だから僕は彼らを鼓舞し傷を癒す歌を歌う
皆が大切なものを守れるように
奮い立て 守りたいもののために
今、汝らの勝利を歌う!
激しくも禍々しく燃ゆる呪いの炎の中に響く、無数の怨嗟の声ではなく。
――ブラッド。
ブラッド・ブラック(LUKE・f01805)の耳に響くのは、己の名を呼ぶ声。
いや、サン・ダイヤモンド(黒陽・f01974)がそうするだろうことは、意外なことなどではなく。
むしろサンならばそうするだろうとは、思うのだけれど。
それでも、己の首筋を切り裂いたサンに躊躇いなく血肉を差し出されば、束の間躊躇して。
ブラッドはそれを受け取る前に、彼へと問いを向ける。
「サン、俺はお前の様に敏くはないから、気付かない事も多々あるだろう。だが……、」
――また何か、独りで抱え込んではいないか? と。
そしてサンは、彼の言葉に目を丸くするけれど、そう言われてはじめて考えてみる。
……僕が抱えていること、と。
あの人――過去の自分との数々の繋がり、過去への気持ち、それは。
(「無意識に僕一人で向き合うものだと思っていたけれど」)
でも、続く彼の申し出を耳にすれば、とても嬉しくなる。
「何かあれば俺にも背負わせてくれ もっと俺を頼ってくれ。俺は其の為に在る お前の為に在るんだぞ」
ブラッドが一生懸命、自分に寄り添おうとしてくれていることが。
だから、サンも自分の気持ちをいっぱいに込めた笑顔で彼へと返す――うん! って。
そして己の血肉と共に破魔の加護を改めて贈る。彼の首に、伸ばしたその手を回して。
『……怨怨怨怨……』
それから、呪いの炎を吐き続ける火車達へと目を向ければ、サンはふと思う。
受肉した過去は破壊衝動を持つ。
(「ならこの妖達も元は善良なのだろうか」)
けれど、たとえそうであったとしても、確かなことは瞳に映る今。
地元の坂東武者や検非違使や陰陽師達が、死力を尽くして延々と分裂する妖に挑んでいる姿。
(「僕がブラッドや森を守りたいように、皆何かを守るために戦っているんだ」)
だからサンは、ブラッドと共に先へと進むことを迷わずに選ぶし。
そんな愛しいサンの笑顔を見届ければ、ブラッドも其の血肉を受ける。
(「己の命よりも大切な愛する者の血肉を喰らう――此れ以上の代償があるものか」)
だからサンの気持ちにこたえるべく、そして彼に手を出そうとするものを全て薙ぎ払うために。
――この命に、この愛に、二人の未来に祝福を!
白き焔を宿した拳を叩きつける。
「――退け、消え失せろ!」
代償を受けて最大限に威力を増した、全ての災いを焼き尽くす衝撃を。
その怪力をもって繰り出す重量攻撃による、広範囲にわたる衝撃波を繰り出し、延焼分も含めて周囲の敵を一掃する。
周囲で奮闘する者達に託された思いを受け取り、ふたりで征く道を開くために。
そしてサンも――皆が大切なものを守れるように、って。
(「だから僕は彼らを鼓舞し傷を癒す歌を歌う」)
彼が繰り出す白く燃ゆる光の衝撃を、向ける瞳にも宿らせながら。
――奮い立て 守りたいもののために……今、汝らの勝利を歌う!
様々なものを背負って戦う皆の、そして何よりも大好きなブラッドのために、その声を響かせる。
そしてブラッドは、何よりも愛おしい光とともに開いたその道を征く。
先程の少年やサンが抱えたものも気掛かりだが――そう心に思いながらも……今は先へ、と。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『死垂桜』
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POW : のたうち押し潰す幹
自身の【不気味な顔が浮き上がる幹 】に【怨嗟の声】を宿し、攻撃力と吹き飛ばし力を最大9倍まで強化する(敗北や死の危機に比例する)。
SPD : 生き血を啜り蠢く根
【地中に張り巡らせた生命力を吸い取る根 】が命中した敵の部位ひとつを捕縛し、引き寄せる。
WIZ : 死垂れ落ちる血の桜
術者の血液に触れたあらゆる対象は、血液が除去されるまで、全ての知覚が【美しい桜が舞う光景 】で埋め尽くされる。
イラスト:日向まくら
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠遠藤・修司」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ブレイズゲートの最奥――そこは大極殿にある、美しき桜咲く庭であった。
いや、この季節外れの桜『死垂桜』こそ、このブレイズゲートの主に据えられた妖。
つまり、この妖を倒せば、廃都に展開していたブレイズゲートは消滅。
内部に囚われていた人々も解放されるというわけだ。
だが、この美しき桜は、幻覚を視せては人を誘って。
地中に張り巡らせた根から生命力を吸い取り養分にする。
本体は、枝先から血を滴らせる枯れ果てた巨木であるというが。
人が幻覚に囚われている間に、幹でのたうち押し潰し、根が生き血を啜り蠢き、血の桜が死垂れ落ちる。
美しき桜の風景の中に、再び何かを見るかもしれないし。
幹に浮かぶ誰かの顔が口にする、怨嗟の声を聞くかもしれない。
桜に見惚れている間に、生き血を吸われるかもしれない。
だが、道を切り開いてくれた地元の坂東武者や検非違使や陰陽師達のためにも。
そしてこのグレイズゲートに取り込まれ惑う人々を救うためにも。
このアヤカシエンパイアの陰陽師ではない、異世界の魔将軍の思惑を潰すためにも。
猟兵達は幻覚の桜舞う中、美しくも悪しき桜の妖と今、対峙する。
<マスターより補足>
桜の幻覚の中、何かを再び視たり聞いたり、という心情メインでも。
特にそういったものなどなく、幻の桜咲く戦場での戦闘メインでも。
他、ご自由にプレイングをかけていただければです。
ブラミエ・トゥカーズ
犠牲者の怨嗟の声には何も思わない
元よりそんな機能を持ち合わせない最下等な単純生命体なのだから
火の次は木であるか。
蚊の真似ならまだしも蝉の真似をせよというか。
多少型紙破りであるが余より貴公を滅ぼすのに都合の良い者は多くいる様であるな。
怨嗟を叫ぶ顔に噛みつき吸血する
自身への攻撃は無視
もとより自身はウイルスが人の真似をしているだけ
血液すらウイルスの擬態
吸血した顔から犠牲者であった人間を再現
ブラミエの人格・容姿はかつて犠牲者であった誰かになる
生前とは異なりUDCアースの御伽噺準拠の吸血鬼の能力を得ている
自身が再現体であることも自覚
死んでも他の犠牲者に変化し続ける
変化する人間についてはお任せします
ブレイズゲートの最奥で、満開の花を咲かせる桜の木。
だが、はらりひらりと舞う花びらの光景は美しいはずであるのに。
桜咲くこの場にただひたすら響くのは、木の幹に浮かぶ不気味な顔が発する怨嗟の声。
けれども、ブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)の心は微動だにしない。
聞こえる怨嗟の声になど、何も思わないから。
いや、ブラミエ自身、己という存在をこう認識しているのだ。
(「元よりそんな機能を持ち合わせない最下等な単純生命体なのだから」)
そして満開桜とその幹に浮かぶ顔を見れば、微か首を傾けてみせる。
「火の次は木であるか」
……蚊の真似ならまだしも蝉の真似をせよというか、なんて。
(「多少型紙破りであるが余より貴公を滅ぼすのに都合の良い者は多くいる様であるな」)
そう緑の瞳を細めて見せながらもブラミエは、彼女曰く、蝉の如く幹へとその牙を立てやる。
満開に咲く桜が己をのたうち押し潰さんとしても、全く気に留めることなどなく。
そもそも、もとより自身はウイルスが人の真似をしているだけ。
流れ落つるこの赤き血液すら、ウイルスの擬態なのだ。
そして刹那展開する御伽噺は、化け物どもへと……いい気味だと。
「貴公を滅ぼすのは余ではない。この血に宿る人の決意である」
――愛しき者よ。余が慰めよう。余が称えよう。貴公の怨敵を打倒したまえよ。
綴り啜る、吸血鬼幻想・血潮に宿るは人の遺志。
怨嗟を叫ぶ顔に相変わらず何の感情も抱かぬまま、噛みつき吸血するたびに。
ブラミエの人格や容姿は、かつて犠牲者であった誰かになる。
そして生前とは異なり御伽噺の如き吸血鬼の力を有すると同時に、ブラミエは自覚もしているのだ。
……憤る男性、啜り泣く女性、絶望する若者、恨みがましい老人等、次々と。
怨嗟の声を上げる幹に浮かぶ顔から血を啜るたび、その姿を変じさせながら――自身が再現体であるということも。
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
生き血を啜り血桜を咲かす、か…
幻覚も見せるって話だし…セイメイの手慰みを残してやる義理はねーな
【野生の勘】で地中の根からの、特に捕縛を極力避けたいが…
この辺一帯が桜の縄張りなら多少の被弾は覚悟はいるかねェ
不意な目眩等で
根が触れた、絡まったと察したら
UCの鉤爪で自分の身と敵の根を斬り裂き血液を通しUCで攻撃【毒使い、電撃】を逆走させ根を焼き切る
血は電気がよく通るってよ
電撃の逆走した根をを【追跡】焦げて特に弱った部分を鉤爪で【傷口をえぐり、串刺し、暗殺】
木の胴が過去に殺害してきた標的や(一章の)男に見えても怯まない
…死は一度与えれば十分
何度も殺される程の悪人でもオブリビオンでもないンだよ
アドリブ可
辿り着いた大極殿の最奥に広がっているのは、まるで春の季節の景色。
満開に桜が咲く様は一見風流に見えるけれど、でも、鹿村・トーゴ(鄙の伏鳥・f14519)は眼前の桜の本性を知っている。
「生き血を啜り血桜を咲かす、か……」
美しく咲く姿は人を誘う幻であり、本体は枝先から血を滴らせる枯れ果てた巨木――『死垂桜』。
そして此処に咲いているのは、魔将軍が成した白炎換界陣の主に据えられているから。
(「幻覚も見せるって話だし……セイメイの手慰みを残してやる義理はねーな」)
この世界の陰陽師ではない安倍晴明が発生させたブレイズゲートを消滅させ、人々や此の地を解放すること。
晴明の目論みを潰していくために、自分は此処にいるのだ。
それに、死垂桜の攻撃手段は予知にて聞いているから。
トーゴが野生の勘を駆使しつつも特に警戒するのは、桜の花びらが降り積もる地面。
(「地中の根からの、特に捕縛を極力避けたいが……この辺一帯が桜の縄張りなら多少の被弾は覚悟はいるかねェ」)
死垂桜が降らせる花びらが地表を覆っている様子は、その下で蠢く根を隠すためでもあるかもしれないし、自身の縄張りを誇示するためでもあるかもしれない。
そんな妖の領域に足を踏み入れているのだから、無傷で済むとは思ってはいないけれど。
ふいに積もっていた桜花弁が、ふわりと小さく宙を舞ったかと思えば。
「……!」
咄嗟に反射的に身を躱したものの、不意な眩暈と同時に、地中から飛び出してきた根が腕に触れた感覚と微かな痛み。
そして絡まったと察すれば、引き寄せられた――次の瞬間。
トーゴは躊躇することなく、発動させた千嘴によって黒曜石で覆った鉤爪をもって斬り裂く。
自分の身と敵の根を、羅刹の黒石と剛力で。
そして根を染める赤は、死垂桜が欲するものであると同時に。
「血は電気がよく通るってよ」
刹那注ぎ込んでやるのは、毒と電撃。
それに引き寄せられた分威力も増すから尚のこと好都合、血に塗れた部位がねじ切られ爆破を起こした後。
毒と電撃を逆走させ、その根を焼き切れば、さらに己から離れんとする根を追従して。
暗殺の技巧をもって、焦げて特に弱った部分を鉤爪でえぐり、串刺しにしてやる。
そして木の幹に浮かぶ顔を見たところで、トーゴは怯むことなどない。
だって、よくわかっているから。
過去に殺害してきた標的や、先程幻にも見たあの名も知らぬ男は。
「何度も殺される程の悪人でもオブリビオンでもないンだよ」
……死は一度与えれば十分、と。
確かにこの手で、もう殺した者達なのだから。
大成功
🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふええ、今度は怨嗟の声ですか。
って、アヒルさんじゃないのは分かってますから、わざわざ反応しなくてもいいですよ。
それにしても、アレって強化効果ですよね。
ということはお洗濯の魔法で落としてしまいましょう。
ふえ?季節外れの桜を散らしたら、ゴミが増えるって、アヒルさんはどっちの味方なんですか。
早くブレイズゲートを攻略してしまいましょう。
大極殿の最奥に広がるのは、綺麗な桜が咲く庭の光景。
はらりと花びらが舞うそんな景色は、静かで何とも風流……などではなく。
フリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)はふるふると小さく首を振っては、大きな帽子に舞い落ちた花びらを振るい落としながらも。
「ふええ、今度は怨嗟の声ですか」
美しい風景には全く不似合いな、不気味な桜の幹に浮かぶ顔と聞こえる恨みがましい声に、おどおどしちゃうのだけれど。
ふいにすぐ傍で聞こえた別の声の主に視線を移せば、こう言っておく。
「って、アヒルさんじゃないのは分かってますから、わざわざ反応しなくてもいいですよ」
それから再び鳴いて返すアヒルさんの声を耳にしつつも。
フリルは改めて、死垂桜の幹に浮き上がる顔を見遣りながら、予知で聞いたことを思い返す。
「それにしても、アレって強化効果ですよね」
眼前ののたうち押し潰す幹は、攻撃力と吹き飛ばし力を敗北や死の危機に比例するだけ、倍々で強化するものだということを。
そして、そうであるならば、と。
「ということはお洗濯の魔法で落としてしまいましょう」
フリルがそう発動させるのは、身嗜みを整えるお洗濯の魔法!
じっとしていてくださいね。ぽんぽんぽんっと――なんて、死垂桜にドライクリーニングを施してあげて。
……はい、これで大丈夫です、と。どんな頑固汚れや効果をもはたき落とす連撃を、お洗濯の魔法の仕上げに放てば。
再び聞こえるアヒルさんの声に、ぱちりと瞳を瞬かせるフリル。
「ふえ? 季節外れの桜を散らしたら、ゴミが増えるって、アヒルさんはどっちの味方なんですか」
でもきっと死垂桜を倒せば、この花びらの幻覚だって綺麗さっぱり消えるだろうから。
フリルはアヒルさんへとこう返す――早くブレイズゲートを攻略してしまいましょう、って。
大成功
🔵🔵🔵
ブラッド・ブラック
【森】
サンがいない
目の前にいるのは膝を抱えた子供
先程の少年によく似ている
「また幻覚か」
『おいていかないで……ひとりにしないで……』
子供は今にも泣き出しそうな目と、胸を抉る様な悲痛な声で俺に懇願した
「……済まない、俺は行かなければ」
子供は泣くでもなく俺を責め立てるでもない
酷くショックを受けた顔で、それ以上の言葉は無かった
その子供の絶望が俺の胸を締め付ける
何故、此れ程迄に――…
刹那、炸裂した光と俺を呼ぶ声に我を取り戻す
「済まん、サン!助かった!」
知らぬ間に取り付いていた根を喰い千切り
抵抗は薙ぎ払い
滲む代償は逆に桜の生命力で補い
殺戮捕食態化した貪婪の腕で桜へ渾身の一撃を
瞳の端に消えていく幻覚が映った
サン・ダイヤモンド
【森】
桜だ、一面の美しい桜
「……ブラッド?ブラッドどこ?」
桜に目を奪われた一瞬でブラッドを見失う
桜以外何も見えない――いや、
桜の中に見えたのはあの時(帝都櫻大戰)と同じ姿の彼(過去の僕・大人)
「どいて、ブラッドを探さなきゃ……!」
彼は何も言わず、攻撃もしてこない
ただ静かにある方向へ視線を向けた
これは桜が見せる幻覚――だけど、
「ブラッドー!」
彼の視線に従い【UC(「光」の「超新星爆発」)】
破魔を乗せた激しい衝撃波で幻覚ごと桜を吹き飛ばす
「――ッ、大丈夫!?」
眩い光が消え失せる刹那、最後に見えた幻覚は
絶望する子供の目をそっと塞ぐ彼(大人)の姿
まるで僕達にその子供の目(絶望)を見せまいとするように
――桜だ、一面の美しい桜。
そう目を奪われた、一瞬であった。
サン・ダイヤモンド(黒陽・f01974)は季節外れな春色が舞い振る大極殿の庭で、彼の姿を探す。
「……ブラッド? ブラッドどこ?」
すぐ隣にいたはずの、ブラッド・ブラック(LUKE・f01805)を見失ったから。
そして金の色をくるりと巡らせれば、桜以外何も見えない――いや、薄紅色に染まる中、サンは彼を見つける。
でもそれは、探していた愛しき黒の彩りではなくて。
あの時――今と同じように桜が舞う戦場で見た彼。
「どいて、ブラッドを探さなきゃ……!」
帝都櫻大戰の時と同じ姿の、大人姿をした過去の自分。
けれど彼は何も言わず、攻撃してくる気配もなくて。
そして、ただ静かに視線を向けた――恐らく「彼ら」がいる方向へと。
(「サンがいない」)
ブラッドも傍らにいたはずのサンが見えなくなって、その姿を探すのだけれど。
サンのかわりに、ブラッドの目に映るのは――眼前にいる、膝を抱えた子供。
その子供は先程見た少年によく似ていると、そう思いながらも。
「また幻覚か」
声を零せば、ふいに向けられる。
『おいていかないで……ひとりにしないで……』
自分の姿だけをただひたすらに映す瞳と、耳に届いた懇願の声。
その目は今にも泣き出しそうで、縋るような声は胸を抉る様な悲痛さを響かせる。
けれど、そんな少年の声に応えることはできない。
「……済まない、俺は行かなければ」
そうブラッドは断りを告げて、また彼を置いていく。
泣くでもなく自分を責め立てるでもない。ただ酷くショックを受けた顔で、それ以上の言葉は無い彼を。
そしてやはり幾度も探す記憶の中に彼は見当たらないのに……その子の絶望が胸を締め付けて。
何故、此れ程迄に――……。
自分へとただ向けられるその視線や声に、困惑と後ろめたさのような感情を抱くのだけれど。
「ブラッドー!」
そう声が聞こえると同時に弾けたのは、超新星が爆発するが如き光。
破魔を乗せた激しい衝撃波が幻覚ごと桜を吹き飛ばせば。
「――ッ、大丈夫!?」
「済まん、サン! 助かった!」
刹那、炸裂した光と自分を呼ぶ声に、ブラッドも我を取り戻す。
あれは桜が見せる幻覚。
それを自覚すれば、知らぬ間に取り付いていた根をブラッドは喰い千切って。
抵抗は薙ぎ払い、貪欲なる色に滲む代償は逆に桜の生命力で補いながら、渾身の一撃を叩きつけてやる。
死垂れる桜の妖へと、殺戮捕食態化した貪婪の腕を以て。
そしてサンは眩い光が消え失せる一瞬、最後にこんな幻覚を見る。
絶望する子供の目をそっと塞ぐ、大人の彼の姿を。
まるで自分達に、その子供の目を――彼の絶望を、見せまいとするように。
そしてブラッドもサンと共に見送る。薔薇色の瞳の端に映った、消えゆく幻覚を。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
八坂・詩織
最奥の庭に辿り着けば、季節外れの桜吹雪が視界を覆い尽くして。
綺麗…天文部でも夜桜とか見に行ったなぁ、とつい昔のことを思い出して感傷に浸りそうになるけれど。
でも、これは幻覚。お花見に行ったのは春のことで、今の季節には似つかわしくない。
それに…目の前の幻がどんなに美しくても足を止めるわけにはいかないから。
昔の自分に、ゆっくりでも前に進めって言ったばかりですからね。
桜吹雪も綺麗ですが吹雪なら今の季節に合うのはこちらでしょう?
UC「氷雪地獄」発動。知覚を埋め尽くすのは真っ白な吹雪も同じこと。猛烈な吹雪で血液も桜吹雪の幻覚も【吹き飛ばし】ます。
私冬が似合う雪女ですから。妖の桜は枯れ木にしちゃいましょう。
陰鬱な愁嘆の間、地獄絵図の如き無限に妖が湧く戦場。
そんな場所を潜り抜けて辿り着いた最奥の庭には、はらりひらりと。
視界を覆い尽くすような、季節外れの桜吹雪が。
八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)は、そんな春の彩りを瞳に映しながら。
(「綺麗……天文部でも夜桜とか見に行ったなぁ」)
つい、そう昔のことを思い出して、感傷に浸りそうになるのだけれど。
ふるりと首を横に振れば、確りと現実を見据える……でも、これは幻覚、と。
だって、お花見に行ったのは春のことで、今の季節には似つかわしくないし。
それに……足を止めるわけにはいかないから。
「昔の自分に、ゆっくりでも前に進めって言ったばかりですからね」
目の前の幻がどんなに美しくても、先程の自分にもそう告げたのだから。
だから詩織も、美しき幻の只中で吹雪を巻き起こす。
「桜吹雪も綺麗ですが吹雪なら今の季節に合うのはこちらでしょう?」
――知覚を埋め尽くすのは真っ白な吹雪も同じこと、と。
刹那発生させるのは、吹雪は吹雪でも、凍てつくような氷雪地獄の猛吹雪。
死垂れ落ちる桜の血も、桜吹雪の幻覚も、偽物の春を詩織は全て凍える雪で吹き飛ばす。
「私冬が似合う雪女ですから」
……妖の桜は枯れ木にしちゃいましょう、って。
大成功
🔵🔵🔵
ミルナ・シャイン
頼典様(f42896)と
なるほど、あの桜が要なのですわね。あれを倒せば!と武器を構えたけれど。
何やら幹に怨念の籠った女性達の顔が浮かびあがって…
頼典様に捨てられただのわたくしが寝取っただの…あぁもう、またその話ですの!?
あなたさえいなければ、って言われましても…恋は戦争ですのよ、頼典様がわたくしを選んだのですから仕方なくありません?
わたくしとて光る君に相応しい女でいられるよう努力はしてますもの。
怨み言ばかり言って見苦しいですわよ!
【武器巨大化】で巨大化した斧による【重量攻撃】で【吹き飛び耐性】を得つつUC「大岩斬」の一撃で周辺の地形を破壊。所詮は木ですもの、根を張れなければ枯れるだけでしょう?
八秦・頼典
ミルナ様(f34969)と
桜の根は浅く横に広く張ると聞くけど…なるほど
こうも巨木であれば廃都全域に至るまでくまなく根を張り、それがここの要石となっているか
最初の歓迎と同じ手を使われれば概ねそんな仕掛けだったのかと推測するけど、再び彼女らを騙ってミルナ様を愚弄する幻覚を視せられては…心が震えてしまうね
ボクの女好きな性分が招いた幻覚とは言え、ミルナ様が申される言葉はごもっとも
平安貴族はたゆまぬ努力であらゆる研鑽に励むが、それは恋も同じ
だからミルナ様を見初めた…それだけさ
のたうち押し潰す幹の一撃をひらりと跳び躱せば蹴鞠で鍛えた【飛天業炎脚】で追撃を蹴り払い、ミルナ様の一撃が届く一助を果たしてみせよう
このアヤカシエンパイアの美しい景色は、全てが幻。
八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)は、そのことをよく知っているからこそ。
「桜の根は浅く横に広く張ると聞くけど……なるほど」
すぐに、この地に起こっている現状を理解できるのだ。
「こうも巨木であれば廃都全域に至るまでくまなく根を張り、それがここの要石となっているか」
「なるほど、あの桜が要なのですわね」
ミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)はそれを聞けば、眼前に咲く季節外れの桜へと目を向けて。
――あれを倒せば! そう武器を構えたのだけれど。
その幹を見れば、浮かびあがってきたのは、何やら怨念の籠った女性達の顔。
そしてその女たちは、恨みがましく一斉に口を開き出して。
彼女達の言葉を聞けば、大きく瞳を見開くミルナ。
「頼典様に捨てられただのわたくしが寝取っただの……あぁもう、またその話ですの!?」
そんな最初の歓迎と同じ手を使われれば改めて、概ねそんな仕掛けだったのかと推測する頼典なのだけれど。
思わず微か肩を竦めて苦笑してしまう。
(「再び彼女らを騙ってミルナ様を愚弄する幻覚を視せられては……心が震えてしまうね」)
だが、ただ恨み辛みを口にする女達の怨嗟の声に、ミルナは怯むことも臆することも、微塵もなく。
「あなたさえいなければ、って言われましても……恋は戦争ですのよ、頼典様がわたくしを選んだのですから仕方なくありません? わたくしとて光る君に相応しい女でいられるよう努力はしてますもの」
そして逆に、びしっと言い切る――怨み言ばかり言って見苦しいですわよ! と。
その言葉を聞けば、頼典は隣に並ぶ彼女へ向けた瞳を細め頷く。
「ボクの女好きな性分が招いた幻覚とは言え、ミルナ様が申される言葉はごもっとも。平安貴族はたゆまぬ努力であらゆる研鑽に励むが、それは恋も同じ」
平安貴族として最高位までのぼりつめた彼だからこそ。
「だからミルナ様を見初めた……それだけさ」
同じように努力し励むことができる彼女に心惹かれ、共にと、その手を取ったのだ。
だからいくら怨嗟の声を向けられようと、のたうち押し潰してくる幹の一撃など、ひらりと優雅に跳び躱して。
蹴鞠で鍛えた飛天業炎脚で追撃を蹴り払えば、燃え盛る炎を以て頼典は果たしてみせる。
「所詮は木ですもの、根を張れなければ枯れるだけでしょう?」
彼女の一撃が届く一助を。
そして――お母様直伝の一撃、受けてみなさい! と。
巨大化した斧を振り下ろせば、吹き飛び耐性を得つつも重量攻撃を繰り出し、大岩斬の一撃で周辺の地形をミルナは破壊する。
愛し光る君と共に、悪しくも恨みがましい桜を二度とこの地に咲かせぬように。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
白矢羽・尭暁
【矢狐】
美しい桜……と見えるだけなのだろうね
その見目に僕たちは騙されたりは…
嵐吾殿? 嵐吾殿しっかり!
宴なんてしてないよ…!
し、仕方ない……ごめんね、えいっ!(実力行使)
う、うっかり? そっかうっかりかぁ
あの血に触れるのはまずそうだね
もう問答無用でバッサリあの木を切ってしまおう
嵐吾殿は燃やしちゃっていいと思うよ、派手にやってしまおう
その炎にくべる枝は僕が作るね
僕の知っている人たちに、そのような怨嗟を零すものはいないのだよ
お小言なら言う従者がいるけれどね
嵐吾殿、戻ったら宴をしよう
いや、きっともう準備はあるだろうな
美味しい物も、お酒もね
僕の従者はきっと僕が宴をしようというのを見越しているだろうから
終夜・嵐吾
【矢狐】
おお、見事な桜じゃな
うむ、美しく見えるだけ……
……
しかし宴は宴として楽しまねばいかんのでは!
さっそくあの木のもとへいって酒をたらふくのまね、ごふっ!
あいたた……ん!?
わしいま厳格に惑わされておった? いや、すまん、うっかりうっかり
うっかりしたからあとはしっかりやろうかの!
やはりああいうのはもやし尽くすにかぎるのではなかろうか
うむ、派手に燃やしてしまおうかの!
わ! 血を飛ばしてきおる!
もうだまされんからの、飛ばされるところからも燃やしてしまうんじゃよ
やば君がきったところからわしも燃やして
! 宴!
幻でない本物の宴~
美味しい物にお酒…楽しみじゃね
確かに準備済かもの!
でははよ終わらせてしまお
異界の陰陽師の秘術が成したという、ブレイズゲートの最奥。
廃都に鎮座する大極殿の庭に咲き誇っているのは、季節外れの花。
「おお、見事な桜じゃな」
「美しい桜……と見えるだけなのだろうね」
思わず尻尾を揺らし言った終夜・嵐吾(灰青・f05366)の言葉に、白矢羽・尭暁(金烏・f42890)はそう返しつつも。
一見すると美しくも、面妖なる桜――このブレイズゲートの主として据えられた妖へと、金の瞳を向けたものの。
「うむ、美しく見えるだけ……」
「その見目に僕たちは騙されたりは……」
「…………」
「嵐吾殿?」
じいと眼前の桜を見つめる隣の彼の様子が、何だか少しおかしいことに気づいて。
尭暁が視線を向ければ、もふもふの尻尾がゆうらりゆらり。
「しかし宴は宴として楽しまねばいかんのでは!」
「嵐吾殿しっかり! 宴なんてしてないよ……!」
せーちゃん酒~なんて、此処にはいない友の名まで口にする嵐吾は、がっつり桜の幻覚に惑わされています!?
そしてこうなったらもう何を言ってもだから、こうするのが一番。
「し、仕方ない……ごめんね、えいっ!」
「さっそくあの木のもとへいって酒をたらふくのまね、ごふっ!」
物理で実力行使です!
それから意外と思い切りよくえいっとやられれば、ハッと嵐吾は我に返って。
「あいたた……ん!? わしいま幻覚に惑わされておった? いや、すまん、うっかりうっかり」
「う、うっかり? そっかうっかりかぁ」
ついつい、うっかりです、うっかり!
でも尭暁の物理的実力行使で正気に戻れたし、改めてお耳もぴんっ。
「うっかりしたからあとはしっかりやろうかの!」
「あの血に触れるのはまずそうだね。もう問答無用でバッサリあの木を切ってしまおう」
「やはりああいうのはもやし尽くすにかぎるのではなかろうか」
眼前の桜を見遣る嵐吾に、尭暁も頷いて返して。
「嵐吾殿は燃やしちゃっていいと思うよ、派手にやってしまおう」
「うむ、派手に燃やしてしまおうかの!」
先行した仲間達が与えたダメージが目に見えてわかる桜の妖を祓うべく、ふたり同時に動き出す。
「その炎にくべる枝は僕が作るね」
まずは薪にして、派手に燃やしてもらうために。
己の血を奉じた餓血刀『我血』を手に、尭暁はその刃を躊躇なく振るう。
のたうち押し潰す幹に浮かぶ不気味な顔がいくら怨嗟の声を巻き散らそうが、何も臆することなどなく。
「僕の知っている人たちに、そのような怨嗟を零すものはいないのだよ」
……お小言なら言う従者がいるけれどね、なんて。
ちょっぴり肩を竦めてみせるも、そんな過保護な従者が同行をお願いした嵐吾だって一緒だから。
「散れ――」
お小言を言われないように、心配させないように、尭暁は立ち回ってみせる。
そんな尭暁の刃を前に成すすべもなく、張り巡らせる枝や根を落とされていく死垂れ桜であるが。
「わ! 血を飛ばしてきおる!」
往生際悪く、死垂れ落ちる血の桜で再び嵐吾を惑わさんとするも。
だが、その手に成すのは燃え盛る狐火。
「もうだまされんからの、飛ばされるところからも燃やしてしまうんじゃよ」
尭暁が斬ったところから、嵐吾は桜を派手に燃やしてやる。
酒も好きだけれど、でも燃やすのだって大好きでお手の物なのだから。
そして死垂れ桜が激しく燃え盛る中、尭暁はこう嵐吾へと声を向ける。
「嵐吾殿、戻ったら宴をしよう」
「! 宴! 幻でない本物の宴~」
それから、お耳をぴこり、尻尾をゆらゆらとさせる彼に頷きつつも、確信したように続ける。
「いや、きっともう準備はあるだろうな。美味しい物も、お酒もね」
……僕の従者はきっと僕が宴をしようというのを見越しているだろうから、って。
それに今度は、嵐吾が頷く番。
「美味しい物にお酒……楽しみじゃね。確かに準備済かもの!」
何気にいつもいる友も、自分が好きな酒を持ってきてはしれっと宴に加わってそうだし。
そんな楽しみがあれば、さらに生み出した狐火を滾らせて。
「でははよ終わらせてしまお」
既に燃え尽きる寸前の死垂れ桜に、完全に引導を渡す炎を放つ。
そして桜の妖が燃え尽きて灰になれば、据えられていた主を失ったブレイズゲートが跡形なく消滅して。
安倍晴明が施した白炎換界陣から、この地を解放したのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵