トリック・オア・ロスト!
●万聖節の夜に
ゴッドゲームオンラインの地方都市・ローラン。王都からやや離れた距離にある此の街は都会すぎず田舎すぎず、比較的中規模の街といったところだ。交通の要所に位置するため物流網は確立されており、生活に必要なものは大体容易に手に入る。また、冒険ギルドに所属する会員も多いため、ここをクエストの拠点とする冒険者も多い。
そんなローランであるが、今は秋のハロウィン祭の真っ最中だ。夜の帳が降り、街は色鮮やかなイルミネーションで彩られている。そして、至る所にかぼちゃを顔の形にくり抜いたお馴染みのオブジェがランタンとして飾られ、美しいオレンジ色の輝きを煌々と放って道行く人を魅了していた。
「トリック・オア・トリートぉ!」
「きゃっきゃっ」
外灯に照らされた石畳の目抜き通りを、NPCの子供たちが元気に歩いて行く。その姿は、魔女や吸血鬼、シーツを被ったお化けといった思い思いの仮装でめかし込んだハロウィン仕様。彼らは連れ立ってあちこちの民家を廻っては、家庭のお菓子を貰っていくのだ。
「平和なモンだな」
「子供って無邪気だよねぇ」
そんな平和な光景を眺めながら、ある冒険者コンビが屋外テーブルで食事を摂っていた。街の中心部ではナイトバザーが開かれており、課金アイテムによる仮装ファッションショーや食べ物の販売などが行われている。GGOの参加者が有志で開いているものだが、この手作り感が好評で毎年恒例の行事となっているのだ。
「……おや?」
「ん、どした?」
大型拳銃を腰に提げた青年が、暗がりの中に不審なオブジェクトを発見した。
「あんな場所に墓なんてあったか?」
バザーのテント群の陰に身を隠すように、闇の中に十字架型の墓石が建っている。
「クエストのオブジェクトかな? でもなんか妙だな……バグの一種かもしれないぞ」
この二人組は、街の共同墓地で開かれている季節クエストに参加している冒険者なのだ。
「ちょっと近づいて、あれを『調べて』みるか。場合によっちゃ破壊してもいいよな? 『墓石』だけに」
「なんて? ……おい、一人でいくなよ。僕も行く」
墓石に興味を示した月穹士を窘めながら、黒聖者の青年が椅子から立ち上がった。
……ジジッ。
まるで二人を手招きするかのように、墓石のグラフィックが微かに揺らいだ様に見えた。
●グリモアベース
「やあ、お疲れ様。皆、ゴッドゲームオンラインにログインしてみないか?」
ある日のグリモアベースにて。集まってきた猟兵たちに、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)がそう呼びかけた。
「今回向かってもらうのは、アロラインという地方にあるローランという街さ。中世のイギリス・アイルランドに似た風景の地方都市だね」
ゴッドゲームオンラインでは、現在秋のハロウィンイベントの真っ最中。誰もが無料で参加でき、クエストで得たハロウィン由来のアイテムを獲得することで換金したり、別のアイテムの素材に加工できたりするのだ。
「最近はバグプロトコルの季節イベント介入も減少傾向だったみたいだけど、どうやら相手は新しい手段を用いてきたみたいだね」
以前までは、バグプロトコルの襲撃まで一定時間の猶予があった。そのため、参加者は敵と遭遇する前にクエストアイテムを獲得し、予め戦闘準備を整えることができた。だが、今回のケースは違う。
「バグプロトコルは先手を打って、季節イベントの会場そのものへの侵入を企てているようだ。ローランで開かれているお祭りの最中、街の風景が高難度のダンジョン『ホーンテッド・キャッスル』の深部と接続されてしまう」
バグ発生領域は時間経過とともに拡大し、いずれローランの街全体をダンジョンに飲み込んでしまうだろう。同時にダンジョンから大量に溢れ出すバグプロトコルによって住民は一網打尽となり、大量の|遺伝子番号焼却《ジーンアカウント・ロスト》を引き起こすというわけだ。
「そうならないように、まずは君達がお祭り会場に先行し、現地のダンジョン化とバグプロトコルの流入に備えて欲しいんだ。具体的には住民NPCや冒険者の避難、それとバグ化エリアと居住区の寸断だな」
ダンジョン化現象は、街のどこにでも発生しうる。何の変哲もない民家の玄関が、いきなりダンジョンと繋がったりすることだってあるのだ。しかも仮装している人がいるので、バグプロトコルのモンスターが紛れ込んでもすぐには気づかれないだろう。なかなか巧妙だ。
「人々の安全を確保できたら、あとは敵と戦うだけだ。ダンジョン化した街の中で襲ってくるバグプロトコルの群れを退けて、最終的にはこの作戦を仕掛けてきたボス敵を撃破してほしい。ボスさえ倒してしまえば、街の風景は元に戻るはずさ」
戦闘時間の経過と共にダンジョン化現象は進行し、いずれは一撃死も避けられない理不尽なデストラップで戦場が満たされることだろう。だが、状況によってはこの罠を利用して敵をハメ倒すことも、不可能ではなさそうだ。
「敵をどういう状況に追い込んで、どんな罠を利用するか……そういった戦術の組み立ても大事になるだろうね。さて、それでは作戦開始だ。街の入り口まで、私が案内しよう」
ガーネットのグリモアによって、猟兵はゴッドゲームオンラインへのログインを開始する。猟兵の身体能力が数値化され、ゲーム内環境への適合作業が始まった。
ハロウィンの夜、闇に紛れて悪意に満ちたバグプロトコルが暗躍している。このクエストを攻略できるのは、埒外の存在である猟兵だけだ。
弥句
こんにちは、弥句です。よろしくお願いします。
今回のシナリオは、バグプロトコル側がお祭りへの介入を始める直前くらいからのスタートになります。
第一章では一般参加者としてお祭りを楽しんでも構いませんが、それと並行して街のバグ発生への対処が必要になるでしょう。警備に勤しんでいるNPC衛兵や、一般冒険者に協力を仰いでも構いません。
尚、ハロウィン祭りは仮装自由、飲食可(お酒含む)でございます。
第二章になると、街は本格的に『ホーンテッド・キャッスル』との融合が始まり、増殖を開始したバグプロトコルとの戦闘が始まります(集団戦)。戦場には落とし穴やギロチンといった即死ダメージトラップがランダムで配置されるため、注意が必要です。
第三章では、今回の侵攻作戦の指揮を執るボス格のバグプロトコルとの決戦が始まります。前述のトラップは健在ですが、これを上手く利用すれば逆に敵を陥れ、移動制限をかけるなどしてハメ倒すことができるかもしれません。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。プレイングはOP公開後からすぐに受付開始いたします。それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
第1章 日常
『季節限定イベント!』
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POW : イベントアイテムを大量に集め、景品と引き換える
SPD : イベント限定のレアモンスターを探す
WIZ : お祭り見物を優雅に楽しむ
イラスト:yakiNAShU
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
ゴッドゲームオンラインへのログインを果たし、猟兵たちは無事ローランの街までやって来た。予知通り、街の中ではハロウィンを盛り上げる様々な催しが開かれており、多くの人で賑わっていた。
「いらっしゃい! お祭り楽しんでる?」
「今夜は寒いだろう、温かいかぼちゃのスープはいかが?」
幻想的なランタンの灯りに照らされたテントの中では、ハロウィンならではのかぼちゃを使った様々な料理が陳列されている。かぼちゃと魔獣肉のグラタン、パンプキンパイ、かぼちゃのポタージュなどなど。
他にも、かぼちゃプリンやかぼちゃのカップケーキといったお菓子も充実。それらの料理はいずれも手ごろな値段で購入して、併設されたテーブル席で食べることができる。ドリンクとのセット注文も可能だ。
街の中心地に位置する噴水広場では、課金アイテムや自作の衣装を用いた仮装ファッションショーが開催中。今夜のメインイベントといえるだろう。猟兵が飛び入り参加してみるのもいいかもしれない。
だが、こうしている間にもバグプロトコルが侵略の魔の手を伸ばしていることを忘れてはならない。時間経過と共にバグ化領域は着実に拡大し、何も知らない住民に深刻な被害を与えてしまう。そうならないうちに、人々の安全を確保しなければ。
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)、ハロウィン祭だ!
……じゃなくて。
ガーネット姉ちゃんに頼まれた避難の準備しなきゃだね(むん)。
出店とタイアップして、ファッションショーに乱入!
アンちゃんの今年の仮装に合わせた、緑の猫又スタイル♪
籠から取り出すのは、タイアップ店の色違いキャンディー……と見せかけて、やぶさか☆マイクだゾ♪
やぶさか☆オンステージで、大きく大きくじゃーんぷ♪
上空からバグ化しそうな地域を確認していくね。
あのあたりのスープスタンドとー。
こっちのグラタンカー。
あ、あそこのクッキー屋さんも危なそうだね♪
戦利品をもぐもぐしながら、現地の冒険者のみなさんと協力、避難路を確認していくよー♪
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
ログインしたらば姿は今年のハロウィン衣装
ふふ、ちょい甘コーデの黒猫にゃん
まつりん、にゃん(にゃんのポーズでかぼちゃキャンディ渡し
噴水広場は人が沢山
ん、かぼちゃスープ美味しい(こく
バクに巻き込まれないように皆を誘導…ん、お肉にパイ、美味(こく
はっ、気が付けば手にクッキーにケーキもある
これはもしやバクの仕業?
誘導を邪魔しようという誘惑?
負けない(全てたいらげて
さ、まつりん
やぶさかツイン☆、ダンシング
くるんと広場に舞い踊り
かぼちゃのバックから取り出すキャンディをぱららっ
トリック・オア・トリート
お菓子が欲しい子ついてきて?
ハーメルンの笛吹きさながらバクから避難誘導してく
●ストリート・ダンサーズ
夜が深まっていくにつれ、ローランのハロウィン祭はますます賑わいを増していく。かぼちゃランタンの灯が街のあちこちを照らし、建物を淡いオレンジ色に染め上げていく。だが、光ある場所には必ず影が生まれるもの。その暗がりに紛れ、バグプロトコルの悪しき計画が今、着々と進みつつあった。
さて、そんなタイミングで新たにログインしてきたプレイヤーがいた。グリモアに導かれてやって来た、木元・杏(ぐれいと・たぬきズ・てぃーちゃー・あん・f16565)と木元・祭莉(銃弾を次から次へと叩き落とすなにかの達人・f16554)の双子の兄妹である。
「アンちゃん、ハロウィン祭だ!」
「……ん、さすがはハロウィン。人がいっぱい」
二人の服装は、いつもと趣向を変えたハロウィンスタイル。杏はピンク基調のちょい甘コーデ。頭には黒猫耳つきのロリータ・カチューシャを着けて、髪には黒ネコを意識したっぽいパーマをふわっとかけている。そして祭莉の衣装もまた、杏とお揃いになるように選んだ緑基調の猫又スタイルであった。
「まつりん、にゃん」
にゃん、と猫のポーズをとりつつ、祭莉にかぼちゃ型キャンディーを手渡す杏。
「かぼちゃ飴だ! カワイイ! ……じゃなくて。避難の準備しないとだね!」
ぱくっとキャンディーをほおばった祭莉であったが、知人のグリモア猟兵から任されていた任務を思い出し、我に返る。
「ん、お仕事頑張ろう!」
こく、と頷いた杏の手を引き、祭莉は多くの人で賑わう噴水広場へと足を向けた。街のシンボルたる大噴水の周囲には、様々な食べ物屋が出店して人々に料理を振る舞っていた。
そして、噴水の両脇に設置されたオブジェから真っ直ぐ伸びるように、立派なレッドカーペットが敷かれている。そのカーペットの上を、思い思いの仮装で着飾った人々が次々に現れては練り歩き、立ち止まってはポーズを決めていた。
「温かいかぼちゃスープはいかが?」
「大きなかぼちゃパイもあるわよ~」
屋台の前を通る度にいい匂いが鼻腔をくすぐり、人々が自慢の食べ物を勧めてくる。気持ちは嬉しいが、食べてばかりだと仕事に集中できない。それは二人とも分かっている……のだが。
「はっ、気が付けば手にクッキーにケーキもある」
かぼちゃスープを皮切りに、気づけば杏は様々な食べ物を堪能していたのだ。
「(こ、これは誘導を邪魔しようというバグの仕業……?)」
ふと杏の脳裏に、疑念がよぎる。恐ろしい罠だ。ふるふると頭を振り、兄に向き直る杏。
「バグの誘惑なんかに負けない! さ、まつりん」
「おーけー! やぶさか☆の出番だー♪」
仮装コンテストの列に並んだ二人は揃ってカーペットを踏みしめ、見物人の前に躍り出た。キャンディーショップとタイアップしての、ファッションショーへの飛び入り参加だ! 籠から取り出した手に握られているのは、色違いキャンディー……ではなく、ライブで愛用しているやぶさか☆マイク。
「ミュージック、スタート?」
「れっつ、だんしん♪」
アイドルユニット『やぶさか2☆』に扮した二人の登場に合わせ、軽快な音楽が始まった。そして足元からひょっこり現れたのは、杏の愛用する人形『うさみみメイド・うさみん☆』だ。
「あっ、あれ見て。アイドルだよ!」
「二人ともカワイイね~。あの人形、どうやって動いてるんだろ?」
双子とうさみん☆の華麗なるパフォーマンスに、集まった人々は大いに沸き立った。そして曲の締めに、杏と祭莉は手をしっかりと繋いで大きくジャンプ! 最後に杏が持参したかぼちゃバッグからかぼちゃ型のキャンディーを振りまくと、見物客からは一際大きな歓声と拍手が上がった。
「お菓子が欲しい子ついてきて?」
うさみみメイドのうさみん☆も加わって、避難作戦の始まりだ。
「あのあたりのスープスタンドとー。こっちのグラタンカー。あ、あそこのクッキー屋さんも危なそうだね♪」
「とりっく・おあ・とりーと」
その様子はさながらハーメルンの笛吹きのように。兄妹は南瓜行列の体で人々を連れて行進し、拡大しつつあるバグ領域から住民を遠ざけていくことに成功したのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ミノア・ラビリンスドラゴン
自サーバー以外にも軽率に登場するドラゴンプロトコル、それがわたくしですわ~!!
去年のハロウィンで作成し、猟兵コレクションで本格実装したバニーガールの衣装でファッションショーに出陣ですわ~!!
ゴッドゲームオンラインが誇る超絶美麗グラフィック!!
まさに美の化身と言っても過言ではありませんわ~!!
広場でセクシーポーズで【誘惑】し、【存在感】をアピール!!
無論、ただ遊んでいるだけではありませんわ~!
わたくしが【注目を集めている】間に、配下の【迷宮メイド】たちが建築能力を発揮!
今は見えませんが、わたくしの号令で建物の上を通ってバグ化エリアから直通で外に出られる隠し通路がポップしますわ~!
●正義の奉仕活動
ローランの住民や、滞在中の冒険者が総出で参加しているハロウィン祭は、夜が更けていくにつれてますます盛り上がりを見せている。今回は猟兵の飛び入り参加もあって、いつもと違う特別感も漂っているようだ。
「ほほほ、ご免あそばせ!」
猟兵が新たに一人、特徴的な高笑いをしながら人波を掻き分け、噴水広場にやってきた。滝のようにボリューミーな長い銀髪。そして頭頂部には、髪と同色の大きな二本角。ミノア・ラビリンスドラゴン(ポンコツ素寒貧ドラゴン令嬢・f41838)はGGOのクエストを管理するAIとして創造された、ドラゴンプロトコルの少女である。
ちなみに、広大な領土を有する貴族の令嬢という設定。……なのだが、管理するダンジョンは年中閑古鳥が鳴いており、迷宮の開発費用や維持費の支払いに常に追われているのだった。
「ローランの皆様こんばんは! わたくしはミノア・ラビリンスドラゴンでございます!! 自サーバー以外にも軽率に登場するドラゴンプロトコル、それがわたくしですわ~!!」
GGOの秩序を乱すバグプロトコルの駆除は、猟兵でもあるミノアの大切な仕事だ。しかしそれと同じくらい、自身の管理する迷宮城の宣伝も大事だ。
そこでミノアは考え、決断した。超絶美麗グラフィックで描画された自身のビジュアルを最大限発揮し、ファッションショーへ参加することにしたのだ!
「わたくしの管理する迷宮城へ、ぜひお越しくださいまし! トリリオンもガッポリ稼げますし、高経験値のモンスター共々、お待ちしておりますわ~!」
「おおっ……!」
ミノアがレッドカーペットに現れた瞬間、俄かに見物客がざわめいた。15歳とは思えぬグラマラスボディをぴったり包むは、彼女の乳白色の肌にも似た色合いのパールホワイトのバニースーツ。
そのうえ、ガーターストッキングにハイヒール、ウサミミヘアバンドに至るまで白一色という純白のコーデであった。『まさに美の化身と言っても過言ではありませんわ~!!』とは本人の弁である。
「管理者のわたくし自らがクエストボスも務めます! クエストクリアの暁には、超豪華なSSRアイテムをプレゼント~!」
ミノアは次々とセクシーポーズを決めて観衆の視線を釘付けにしつつ、熱心に迷宮のPRに勤しんだ。経営者ゆえの涙ぐましい努力(?)である。勿論、ミノアのこのコスプレ営業も作戦の一環だ。彼女がこうして人の目を引いて時間を稼いでいる間に、別働隊が一般人避難の手筈を整えていたのだ。
「えっさ、ほいさ」
「さあ、作業スピードを上げていきましょう! バグプロトコルの侵攻が既に始まってるのよ!」
厳格なメイド長に指揮されて改築作業に勤しんでいるのは、日ごろからミノアの仕事を補佐する配下モンスター『迷宮メイド軍団』だ。彼女達は特技のダンジョン建築スキルを遺憾なく発揮し、街の住人が安全に脱出するための隠し通路を用意していたのだ。
「ミノアお嬢様、準備が整いましてございます」
「ご苦労様ですわ! こほん……実は今から、皆様に大事なお話がございますわ。それは……」
報告にやって来たメイドに労いの言葉をかけると、ミノアは集まった人々にこれから起きる事態を説明した。
「でも大丈夫! 既に皆様の避難の手筈は整っておりますわ~! さあ、こちらへ」
人々はミノアとメイド達に先導されて建物の上を通り、安全圏へ避難可能な隠し通路を通り抜けていく。こうしてミノア達の迅速な行動により、バグ領域が拡大するより早く人々を退避させることができたのである。
「……ふう。あとは敵を蹴散らすだけですわね!!」
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『パワード・ミイラ』
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POW : スピニング・コフィン
【包帯で結んだ棺桶】を【振り回すこと】で加速し攻撃する。装甲で防がれた場合、装甲を破壊し本体に命中するまで攻撃を継続する。
SPD : ファルス・レリック
偽物の【聖遺物】を創造し、戦場上空に浮かべることで、【自身と仲間全員がバフ】による連続攻撃能力と超再生能力を得る。
WIZ : クリムゾン・アイ
【呪いを込めた眼光】をレベルm半径内の対象1体に飛ばす。ダメージを与え、【移動力低下】の状態異常を与え、【命中】した部位の使用をレベル秒間封じる。
イラスト:べにしろ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ナイトメア・ビフォア・クリスマス
時計塔が午前零時の針を指したその時、ローランの街に異変が生じた。これまで以上に大規模なバグの連鎖的発生。多発する画像読み込みエラーや文字化けに伴い、建物の床や地面が大きく裂けた。
整然とした石畳が轟音を立てて割れ、現れたのは灼熱の溶岩池。そして何の変哲もない宿屋や商店、民家といった建物が次々に結合され、頑強な砦の形へと変貌していく。そして最後の区画として時計塔が組み込まれると、遂に街の風景は堅牢な城塞へと変わり果ててしまった。
随所に仕掛けられた、ギロチンや落とし穴床といったトラップの数々。そして、夜空を飛び回り始めた無数の悪霊――。間違いない、これは高難度ダンジョンのひとつに数えられる、『ホーンテッドキャッスル』のマップだ。
「オオオォ…………!」
禍々しい呻き声が周囲に響き渡る。巨大な棺桶を引き摺りながら現れたのは、アンデッド系モンスターの一種『パワード・ミイラ』の群れだ。そのステータスは、とても一般の冒険者が戦って倒せるような数値ではない。
バグプロトコルの尖兵とみて間違いないだろう。ここからは、猟兵たちの出番だ!
ミノア・ラビリンスドラゴン
アンデッド、ハロウィンイベントで配置する定番モンスターですわね!
まずは周囲にトラップカードをセット!(罠使い)
仕掛けられた罠に対して、自動で迎撃する【カウンター】トラップ!
無数の鎖で攻撃を防いだり、魔法破壊の呪文で相殺!
さーて、アンデッドの弱点といえば聖なる光で浄化、或いは炎による火葬!
ドロー! モンスターカード!
【|紅蓮瞳の暗黒龍《クリムゾンアイズ・ダークネスドラゴン》】を召喚!!(ドラゴン使い)
城だけでなく溶岩地帯も出したのは失策でしたわね!
地形効果で火属性の紅蓮眼もパワーアップ!(地形の利用)
棺桶の射程に入る前に、必殺の|暗黒爆炎弾《ダークインフェルノ》!
包帯ごと焼き尽くしますわ~!
●黒の切り札
「ほっほっほ! これで戦闘に専念できますわね!」
メイド軍団の活躍により、ミノア・ラビリンスドラゴン(ポンコツ素寒貧ドラゴン令嬢・f41838)は首尾よく街の住人を退避させることに成功した。あとは、押し寄せるバグプロトコルを悉く駆除するだけだ。
先程のバニースーツから、通常時の戦闘服である『すごくけしからん純白の姫ドレス』に素早く着替え、城塞と化したローランの街並みを駆けていくミノア。するとそこに、
「オ……オォ……ァァァ……!」
地の底から発するような不気味な呻き声を上げ、闇の中から全身包帯だらけのモンスターが続々と湧き出てきた。包帯の隙間から覗く眼だけが、赤く爛々と輝いている。
「アンデッド、ハロウィンイベントで配置する定番モンスターですわね!」
その特徴的な容貌に、ミノアは見覚えがあった。モンスターの名は『パワード・ミイラ』。アンデッド系の怪物の代表格といえるだろう。
「ムゥゥゥゥゥン……!!」
パワード・ミイラ達は包帯を巻き付けてある巨大な棺桶を軽々振り回し、ミノアに向けて勢いよく叩きつけてきた。身体が腐っているとはいえ、相当な腕力である。
「あららっ……!」
横薙ぎに一閃された棺桶をサイドステップや後転で躱し、距離を取る。すぐに大技をぶつけて敵を一掃したいミノアだったが、厄介なことに戦場には無数のトラップが設置されている。その上足元の石畳は大きく割れ、その地割れの下には煮えたぎる灼熱の溶岩が流れている。かといって回避に気を取られていては、うっかり罠にかかる可能性が高い。
「さて、まずは……」
そこでミノアが懐から取り出したのは、ダンジョンに設置する罠のデータを圧縮したトラップカードだった。
「カウンタートラップ設置、ですわ!」
カードを投擲して罠を解放し、素早くフィールドへ配置していく。
飛来するギロチンを長く伸びる鎖で絡め取り、カエルや小人といった戦闘力激減の状態異常を誘発する魔法のフィールドを、|魔法破壊《ディスペルマジック》の効果でキャンセルする。
「こんなこともあろうかと、用意していてよかったですわね! ……さあ、こっからはわたくしのターン、ですわ!」
棺桶をぶん回しながら迫り来るパワード・ミイラを一瞥し、ミノアは思案する。アンデッドは強力な敵ではあるが、知られている弱点も結構多い。
「さーて、アンデッドの弱点といえば聖なる光で浄化、或いは炎による火葬!」
そう、不浄の魔物が聖なる属性や火属性に弱いという点は、GGOにおいても例外ではないのだ。
「ドロー! モンスターカード!」
スタイリッシュな動きで、カードデッキからシュバッと一枚のカードを引き抜くミノア。
「【|紅蓮瞳の暗黒龍《クリムゾンアイズ・ダークネスドラゴン》】を召喚!!」
配下モンスターのデータを封じたカードから解放したのは、黒鱗紅眼の大型ドラゴン・モンスターだ。ミノアの後方から大きく伸び上がった龍は、威圧感満点の雄大な翼を大きく拡げ、雷鳴のごとき咆哮を轟かせた。
「ほほほ! 城だけでなく溶岩地帯も出したのは失策でしたわね! 火の地形効果で、この|紅蓮瞳の暗黒龍《クリムゾンアイズ・ダークネスドラゴン》も攻撃力大幅アップしておりますわ~!!」
火属性のモンスターは、火のフィールドに存在する時に戦闘力を大幅に向上させる。溶岩池のトラップを逆手に取ったミノアの作戦勝ちだ。
「ほ~っほっほ! さあ、最大火力でやっておしまいなさい!!」
「――ゴアアアアアアアアアッ!!!」
ミノアの号令下、暗黒龍が吼えた。次の瞬間全身を纏ったオーラがバチバチと爆ぜ、口腔から必殺のブレス攻撃、|暗黒爆炎弾《ダークインフェルノ》が叩きつけられた。
「…………!!」
チートによって強化されたバグプロトコルとはいえ、猟兵のユーベルコードの前では単なる雑魚モンスターにすぎない。ミノアが所持する強力な手札により、パワード・ミイラの群れは瞬く間に焼き払われ、灰燼に帰すのであった。
大成功
🔵🔵🔵
木元・祭莉
ん、これはハロウィン・アスレチック・フィールドだね!
いくよアンちゃん(f16565)、目指せムサシテッド・キャッスル・ブレイカー!
如意な棒を3フィートに延ばし、テントテテンと探査。
ギロチン刃をナックルで殴り潰して枠を引き抜き。
熔岩落とし穴の上に組み立てたら、布をかぶせて準備おっけー♪
聖遺物を目印に、ミイラさんを探すよ。
わさわさ歩いてるトコで、やぶさか☆2の魅力を見せ付けよう!
(ピシッと 横ピースでキメ☆)
お、アンちゃん、ハイジャンパー!(やんややんや♪)
ミイラさん引き付けて穴に誘導。
本人はぴょいぴょい飛び跳ねながら、穴を飛び越え♪
ミイラさんがドボンしたら、上がってこないように押し返し続けるー♪
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
むむ、灼熱ハロウィン
皆の避難は間に合った?
まつりん、わたし達はキャッスル攻略、れっつごー
まつりんこ如意棒探索と合わせ
わたしはメイドさんズがお手伝い
ん、罠等隠されてそうな箇所を探し、小ささ活かして回避しつつチョークでマーキング
これで罠回避可能
ふ、頭脳戦(どやぁ
偽物の聖遺物、上にあるのでわかりやすい
ミイラ見つけたら聖遺物は用無し
まつりん、やぶさかツイン☆の出番
ぴしっとポーズ(大体目元近くの横ピース)決めたらくいくいっと軽く準備運動のステップ踏んで
まつりん如意棒、借りていい?
棒高跳びするようにダンスの流れからびょーん!とジャンプ
聖遺物を怪力込めたキックで破壊する
●MUSASHI(GGOバージョン)
夜の闇の中で、亡者が蠢く。ローランの街はバグプロトコルの攻撃を受け、アンデッドの魔物が徘徊する危険地帯と化していた。その上、街はバグ化の影響を受けて物々しい城塞へと変貌したのだ。
王城へ続く長い石段を駆け上り、木元・祭莉(WINNER、たまこ。・f16554)と木元・杏(ぐれいと・たぬきズ・てぃーちゃー・あん・f16565)は、バグプロトコルのボスが待ち受けるダンジョン最深部を目指していた。
「ん、これはハロウィン・アスレチック・フィールドだね!」
やがて石段を登り切った二人は、開けた場所に到達した。猟兵として鍛えられた本能か、危険を察知した兄妹は足を留める。順路を寸断するように水路のような深い溝が不規則に掘られ、そこに煮えたぎる灼熱の溶岩が流し込まれていた。
「むむ、灼熱ハロウィン」
大きく跳躍しなければ飛び越えられず、かといって勢い余れば他の溝に落ちてしまう。絶妙な間隔が、実にいやらしい。
「いくよアンちゃん、目指せムサシテッド・キャッスル・ブレイカー!」
祭莉は短く畳んで隠していた『如意な棒』を長く伸ばし、それを使ってトラップの探知作業を始めた。転ばぬ先の杖というやつだ。
「ん、うさみん達、いってらっしゃい」
祭莉を支援すべく、杏は自身のウサメイド人形達を放ち、同行させた。愛らしいウサメイド達はぽてぽてと祭莉に追随しつつ、チョークで罠のありそうな怪しいポイントに印を付けていく。
「ふ、頭脳戦」
その様子を見守りながら腰に手を当て、どやぁと得意顔の杏である。
「あっ、まつりん。危ないっ」
「おっと……!」
祭莉のすぐ前方を、猛スピードで鎖つきギロチンが通過していった。杏、ナイスアシストである。
「よし、閃いたっ!」
何かを閃いた様子の祭莉は、ギロチンの勢いが完全に死んだのを見計らって高く跳躍。拳で握り込んだアンバーナックルで力強い打撃を加えると、一発で破壊してしまった。
「まつりん、何するの?」
「あのねー、これをこう使うんだ!」
ギロチンの枠に使われていた部分をえいっ、と取り外し、それを溶岩池の縁に引っ掛ける。その上から布をかぶせれば、即席のトラップ完成だ。
「これで準備おっけー♪」
「んむ、まつりん頭いい」
このようにその場にある物を利用して戦いに役立てる応用力は、祭莉の強みのひとつだ。
「オォォォォォ……!」
二人がそうして戦いの準備を仕込んでいると、不気味な呻き声が辺りから聞こえてきた。声の主は、全身を包帯に包んだ骸の集団。アンデッド系モンスターの『パワード・ミイラ』である。
「アンちゃん、敵が来たよ! ミイラお化け!」
棺桶を引き摺りながら現れたパワード・ミイラ。その頭上に浮かぶは、かの有名な『聖杯』を模した謎のアイテムだ。不思議な光を放つ聖杯は、モンスター達の頭上から深紅の液体を絶え間なく注ぎ続けている。
「まつりん、やぶさかツイン☆の出番」
「オッケー! やぶさか☆2の魅力を見せ付けよう!」
二人揃ってびしっと顔の横でピースを決め、華麗にかっこよく闘うアイドルユニット『やぶさか☆2』のパフォーマンス開始である。
「フゥゥゥゥン……!!」
包帯で結ばれた棺桶を怪力でビュンビュン振り回し、ミイラ達の猛攻が始まる。聖遺物による強化も受け、その攻撃速度は通常時のそれを大きく上回っている。罠床を踏まないよう気をつけながらダンス・ステップを刻んで攻撃を躱し、二人は反撃の機会を狙た。
「まつりん如意棒、借りていい?」
「んー? いいケド、何に使うの?」
何かアイデアを閃いたのか、杏は兄から如意な棒を受け取ると、しっかり握りしめた。
「とうっ」
勢いよく駆けた杏は、地面に如意棒を思い切り突きたてた。そして全身のバネと助走の勢いを利用して、棒高跳びジャンプ!
「お、アンちゃん、ハイジャンパー!」
陸上の世界大会にも出られそうな位の能力で跳躍した杏に、眼下の祭莉がやんやと喝采。そうして杏は聖杯に狙いを定めると、特撮ヒーローよろしく真っ直ぐ勢いよくジャンプキックを放ったのだ。
目の覚めるような心地よい打撃音と共に、赤い液体を流していた聖遺物が破壊される。これにより、モンスターの力の供給源が断たれることになっただろう。
「オォォォォ…………」
バフ効果を失い急激に弱体化したミイラ軍団は、怨嗟の呻き声を上げながら尚も二人を執拗に狙う。祭莉と杏はゲームキャラのようにぴょいぴょい飛び跳ねながら、先程祭莉が仕掛けた落とし穴トラップへと敵を誘い込んでいく。
「ウォォォォォ……!」
「こっち、こっち!」
そうやってまんまと誘き寄せられたミイラ達は、レミングのようにドボン! ドボン!と立て続けに下へ落ちていく。バグプロトコルとはいえ、所詮はアルゴリズムに沿った行動しか取れなかったようだ。
「まつりん、お手柄~♪」
「おっと。上がって来れないように、突いとかなきゃ!」
「ゴボゴボ……」
超高温に身体を溶かされながらも、尚も這い上がろうとするミイラ達。祭莉は溶岩の熱に汗ばみながらも、如意の棒を使ってミイラを突き続けるのだった(割とえげつない光景である)。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
印旛院・ラビニア(サポート)
・境遇的なものもあり、思考や嗜好は成人男性のものです(自分からは喋らない)
・基本的にはヘタレで気弱、慎重な面がありますが、物事がうまくいったり周りに煽てられるとイキって墓穴を掘ることもあります
・なんだかんだで人がいい
・やり込みゲーマーで現状を学ぶ【学習力】と自分のプレイに【チューニング】できる応用力が武器
・キャバリア・劫禍との関係はUCの秘密設定あたりで察してください
・キャバリア戦などでは劫禍のパーツに利用できそうなものは入手できそうなら回収
UCは活性化した物をどれでも使用し、例え依頼のためでも、公序良俗に反する行動はしません。えっちな展開はコメディ目であれば許容
●パーフェクト・スナッチ
ローランのハロウィン祭りに紛れ込んだバグプロトコルによる住民襲撃計画は、途中まで着実に進行していた。だが、住民と接触する寸でのところで猟兵の介入が始まった。
既に住民の退避は完了している。現在は街の至る所で、猟兵とモンスターの激しい戦闘が繰り広げられている最中だ。
「うわあ、大変なことになってるなぁ」
GGOに新たにログインしてきたウサミミ姿の猟兵、印旛院・ラビニア(エタらない人(仮)・f42058)。訳あって女性キャラの姿をしているのだが、プレイヤーはれっきとした男性だったりする。
バグによって堅牢な城塞に改造された街の中を、ラビニアは俊敏な動きで駆け抜けていく。随所に仕掛けられた罠を慎重に回避しながらマップを進んでいくと、やがてモンスターの群れと接敵した。
「おっと、あれがバグプロトコルか!」
「オォォォォォ……」
陰鬱な呻き声と共に腐った足を引き摺り現れたのは、全身包帯だらけのアンデッド。『パワード・ミイラ』の集団はラビニアを捕捉すると、両手をだらりと前に突き出しながら一斉に襲い掛かってきた。
「よし、迎撃だ」
熟練のGGOプレイヤーであるラビニアは、突然の集団戦にも冷静に対処し応戦を開始する。愛用のアサルトライフル『|USG《汎用体系的小銃》』を構えると、パワードミイラの群れに向かって躊躇なく弾丸を叩き込んだ。
「効いてない!? ……いや、食らった直後から再生してる!」
確かに射撃のダメージは通っている。だが、それを上回る速さで敵のHPが回復しているのだ。超再生力に物を言わせ、敵モンスターは棺桶を振り回してラビニアに殴りかかってくる。その攻撃速度も、通常時より大幅に向上しているようである。
「ん? 何だアレは」
ラビニアは、敵群の頭上に輝く奇妙なオブジェクトに注目した。形状は、有名な聖遺物の『聖杯』に近い。その聖杯から、怪しげな深紅の液体が止めどなくミイラ達に降り注いでいた。
「あれが強化のカラクリってわけだね」
ラビニアは電脳魔術を詠唱すると、虚空に風変わりなカーソルを出現させた。そして矢印状のそれを、「えいっ」と『聖杯』に向けて移動させる。
「お宝はゲットさせてもらうよ~」
次の瞬間。ピコンという決定音と共に、聖杯のシルエットが空中から消失した。ラビニアのユーベルコード【|誘いの矢印《クリック・アンド・スティール》】により、ストレージポーチ内部の電脳空間へと瞬時に盗み取ったのである。
「…………!?」
異変はすぐに訪れた。聖遺物によるバフ効果を失ったミイラ達の動きが、目に見えて鈍化し始めたのだ。
「先にチート使ったのはそっちだからね。お互い様だよ!」
これが好機と見たラビニアは、所持するカードデッキから『戦乙女の行進』シリーズを召喚。光り輝く武具を纏った勇ましい戦乙女達が、戦場に舞い降りる。
「さあ、反撃開始っ!」
ラビニアの号令下、戦乙女達は長剣を閃かせ敵陣に果敢に切り込んでいく。その様子を見届け、ラビニアはUSGに次弾を素早くリロード。後方から援護射撃をして戦乙女達をサポートしていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『悪魔公爵』
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POW : 侵食の触手
【召喚した侵食型のバグ】を見せた対象全員に「【バグを受け入れろ】」と命令する。見せている間、命令を破った対象は【1ターンごとに全ステータス】が半減する。
SPD : 反射の外套
状態異常や行動制限を受けると自動的に【データ解析】が発動し、その効果を反射する。
WIZ : 支配の錫杖
戦場内を【自分の管理】世界に交換する。この世界は「【行動に管理者の許可が必要】の法則」を持ち、違反者は行動成功率が低下する。
イラスト:こげこげ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ヴィル・シファール」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●LIVE A EVIL
ローランに潜入した猟兵達の奮戦により、バグプロトコル軍団の目論見は既に瓦解していた。冒険者、NPCを含め住民の被害はゼロ。あとは『ホーンテッド・キャッスル』最上階で待ち受けるボス敵を撃破するだけだ。
「ぐぬぬ……祭りに乗じてバグを送り込み、住民を一気にロストさせる計画が……!」
豪奢だが、寒々しい空気に満ちた城塞の最奥部。巨大な石段を登り切った場所にある玉座の間。そこには、上質な夜会服とマントを纏った男がいた。頭部には大きく曲がった黒い二本角。背には角と同色の黒翼。どこからどう見ても魔族だ。
男の正体は、モンスター『悪魔公爵』。カンストした筋力と魔力を誇る、このダンジョンのボス的存在である。
「まあいい……猟兵など、私の管理者権限でどうにでもなる! 猟兵を始末した後は、別の街で計画を再開させるまでだ!」
身の毛もよだつ悪意と敵意を以て、世界を管理・汚染しようと企む悪魔公爵。この強敵に立ち向かうことができるのは、猟兵だけだ。悪意に満ちたハロウィンの夜、決戦が今始まる。
ミノア・ラビリンスドラゴン
バグプロトコル風情が管理者権限など増上慢も甚だしいですわ~!
【双剣使い】モードの装いにチェンジ!
双龍剣でズバズバっと……ふむ、普段よりDPSが低いですわね
その錫杖の効果かしら?
では取り出したるは一枚のカード!
裏側表示でセットし……この効果を発動する許可をいただきたく存じますわ~!
あら、できない? 何故?
ご自慢の管理者権限は、たった一枚のカードで引っくり返される程度のものなのかしらぁ~????(挑発)
快く発動許可をいただいたことで……【神天地】の効果発動!!
領地化現象によって管理者権限を奪取!
フィールド効果は上書きで後出しが有利ですわ~!
回復して再行動!
【アクセルコンボ】でズッタズタですわ~!!
●真夜中の城取合戦
平和なハロウィン祭の最中、突如出現した高難度ダンジョン『ホーンテッド・キャッスル』。この危険な罠や魔物で溢れた城塞の最深部で、猟兵とバグプロトコルの決戦が始まろうとしていた。
「お~ほほほ! ご免あそばせ! ……あなたがバグプロトコルの首魁、ですわね!」
城内に満ちた陰鬱な空気を払拭するように、少女の高笑いが響いた。大理石が敷かれた玉座の間に現れたのは、白きドラゴンプロトコルのミノア・ラビリンスドラゴン(ポンコツ素寒貧ドラゴン令嬢・f41838)。
ボス敵との戦闘に備え、今回ミノアは『すごくけしからんドレスアーマー』に着替えていた。ドレスのみならずガントレットやグリーブ、そして腰に帯びた二振りの曲刀に至るまで、ミノアの体色と揃いの神々しき白銀で統一されている。速度系のバフもモリモリ満載だ。
「如何にも。ほう、ドラゴンプロトコルの猟兵か……!」
対峙するモンスターは、ミノアと対照的に闇を凝縮したような黒一色の佇まい。ボス敵『悪魔公爵』は、素人目にも上質な造りの錫杖を携えてゆっくり歩み出た。コツ、と革靴の音が響き渡る。
「うふふ、バグプロトコル風情が管理者権限など増上慢も甚だしいですわ~!」
「ならばどうする、ご令嬢? 力尽くで私を此処から退けるのかね?」
問答無用、と言わんばかりにドラゴンの意匠が施された『双龍剣』を抜き放ち、戦闘姿勢の構えを取るミノア。口角を吊り上げ、悪魔公爵は不敵な笑みを浮かべた。
「愚問ですわね――さあ、覚悟はよろしくて!?」
「ふんっ……!!」
気合いを迸らせ、ミノアは双剣を操って悪魔公爵に斬り掛かる。対する悪魔公爵は、手にした錫杖を高速で振るってそれに対抗。
「やああああっ!」
双剣を振るい、手数で優位に立つミノア。フェイントを織り交ぜた斬撃が無数に閃き、やがて連撃が悪魔公爵を捉えた。
「ふむ、普段よりDPSが低いですわね……その錫杖の効果かしら?」
確かにミノアの攻撃はヒットして、ダメージも通っている。だが、浅い。相手のDEFがかなり高いのもあるが、明らかにクリティカル率が低下している。
「ダンスの腕前は、悪くないと思うがね」
邪悪な笑みを浮かべた悪魔公爵は大きく踏み込みながら、反撃の打突をミノアへと叩き込んだ。
「くっ……」
「この城の主である、私に勝てるとでも?」
刀傷ひとつないマントで口元を覆い、くっくっと嗤う悪魔公爵。その嘲笑がミノアの闘志に火を点けた。
「かくなる上は!」
ミノアは懐から一枚のカードを取り出すと、それを伏せた状態でビシィ!と叩きつけた。
「この効果を発動する許可をいただきたく存じますわ~!」
「……一体何の真似だ? そんなカード遊びに、私が真剣に付き合うと思っているのかね」
白けた様子の悪魔公爵は、手でしっしっと追い払うような仕草でミノアを挑発している。だが、ミノアもまた負けじと上目遣いでこう続けたのだった。
「あら、できない? 何故? ご自慢の管理者権限は、たった一枚の|玩具《カード》で引っくり返される程度のものなのかしらぁ~????」
あからさまな挑発であるが、それが逆に大貴族のプライドを刺激したようだった。ぴたっ、と彼の動きが止まる。マントで口元を隠してはいるが、『この小娘……』とでも言いたげな様子だ。
「……ハァ、おおかた無意味なパワーアップでも企んでいるんだろうが……いいだろう、使いたまえ。このまま朝を迎えるのも退屈だ」
「言質は取りましたわよ、公爵閣下! 上級貴族の殿方に二言はございませんわよね~!?」
ある意味、この心理戦を制した時点でミノアは勝機をもぎ取ったも同然であった。ミノアが切った手札がめくられ、その真価が解き明かされる。
「――フィールド効果『|神天地《オリュンポス》』を発動! 【土地カードの効果】により、【このフィールドは使用者の領地】と化すッ!!!」
「……は、ハァァァァ!?」
目を大きく見開き、アゴが外れる程の大口を開けて絶句する悪魔公爵。無理もない。彼が所有する『支配の錫杖』は、フィールドが彼自身の絶対管理領域であることを示す何よりの証。――その筈だが、
「権限は今、覆された! 只今を以てこのお城は、わたくしのものとなりますわ!!」
「そんな、私の力が……霧散していく!? 有り得ない、こんなことは……」
神天地の効果を受けたミノアの傷が、瞬時に癒えていく。そしてミノアは、即座に再行動する力を得た。ここでゲージを吐き、スキル『アクセルコンボ』を発動させる!
「注意一秒怪我一生、ですわよぉぉ~!!」
大きく跳躍し、ベリーロールの態勢から全身を高速で錐揉み回転させる。そのままの勢いで落下しつつ、悪魔公爵の頭上から五月雨のごとく双剣の斬撃を浴びせ掛けた。
「ぐわああああっ!」
絶叫と共に、夜霧にも似た血煙が噴き上がる。ミノアが全霊を込めて繰り出したコンボは、今度こそ確かに悪魔公爵の身体を切り裂き、その高級な夜会服ごとHPを大きく削り取ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
印旛院・ラビニア(サポート)
・境遇的なものもあり、思考や嗜好は成人男性のものです(恥ずかしいので自分からは喋らない)
・基本的にはヘタレで気弱、強者にビビるし弱者に慎重な面もありますが、物事がうまくいったり周りに煽てられるとイキって墓穴を掘ることもあります
・なんだかんだで人がいい
・やり込みゲーマーで現状を学ぶ【学習力】と自分のプレイに【チューニング】できる応用力が武器
・キャバリア・劫禍との関係はUCの秘密設定あたりで察してください
UCは活性化した物をどれでも使用し、例え依頼のためでも、公序良俗に反する行動はしません。えっちな展開はコメディ目であれば許容
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●オールイン
「さーて、ここがボスのいるフロアーか……」
バグプロトコル化したパワード・ミイラの群れを退けて、印旛院・ラビニア(エタらない人(仮)・f42058)は遂に「ホーンテッド・キャッスル」の最奥部へと到達した。壮麗な装飾が施された玉座の間。そこで、漆黒の夜会服と外套を纏った一人の男が待ち構えていた。
「ここまで辿り着いたことは素直に褒めてやろう、猟兵。だが、残念だったな。お前はここでゲームオーバーだ!」
「げっ、なんだか強そうな奴が……」
バグプロトコルの首魁の正体は『悪魔公爵』。公爵だけに爵位の高い貴族キャラらしく、ダンジョンにおいて絶大な管理者権限を持っているという。
「けど、ビビッて逃げるわけにもいかないか。サッサとあんたを倒して、クエストクリアといこう!」
覚悟を決めたラビニアは、愛用の銃『|USG《汎用体系的小銃》』を構えて引き金を引いた。激しい発砲音と共に銃弾が吐き出される――だが、
「……甘い!!」
放たれた弾丸が悪魔公爵に撃ち込まれるかに見えた刹那、あろうことかそれらは虚空で停止してしまったのだ。
「この城の中は、私の絶対的な管理領域だ! お前の攻撃は効かない。決してな」
「そ、そんな理不尽なー!」
ダンジョンの管理者たる彼の許可なき行動は認められない――それが悪魔公爵のユーベルコードのひとつ『支配の錫杖』の力だ。
「管理者に刃向かったことを悔やむがいい!」
「くっ……!」
悪魔公爵の瞳が、妖しく輝く。すると次の瞬間、停止していた弾丸はそっくりそのまま、ラビニアの元へと反射された。
「ランドガルダッ!」
咄嗟にデッキから一枚のカードを引き抜き、盾をかざした戦乙女・ランドガルダを召喚するラビニア。彼女の身を挺した防御によって、辛うじて被弾は免れた。
「フン、命拾いしたな! だが幾ら抵抗しようと無駄だ」
「(考えろ考えろ! あいつの権限を奪うか、無効化する方法を……)」
もう、策を練る暇は無い。錫杖をレイピアのように構えた悪魔公爵が、ラビニアへと殺到する。加速と共に全身のバネを溜めた打突が放たれる直前、ラビニアは漸く結論を導き出した。
「終わりだ!」
「(……イチかバチかだ!)」
ラビニアが指で弾いた物体が虚空へ投げ出されると、それらはひとりでに飛翔して悪魔公爵へと襲い掛かった。それは、ラビニアの意志に従い自動で闘う、意志を持つ金貨であった。
「コインだと! そんなもので何を……」
「今だっ!!」
存在を許可されず、急速に推力を失ったクリーピングコインが地面に落下する。その瞬間、ラビニアは電脳魔術を駆使して生み出した|矢印《カーソル》を、公爵のもつ錫杖に向けて素早く移動させた。
「その杖が、あんたの能力の源だろう!」
バシュン! という決定音と共に、公爵の手にしっかり握られていた筈の錫杖が忽然と消失する。
「何だと……!!」
手放した金貨と引き替えに、ラビニアは賭けに勝利した。低く腰を落としながら距離を詰め、ラビニアは愛用の竜騎兵サーベルを鞘から抜き払う!
「いただきっ!」
そしてすれ違いざまに、居合い斬りを悪魔公爵にお見舞いする。斬閃が走り、黒の夜会服が大きく真横に切り裂かれた。掴み取った|勝機《チャンス》は決して逃がさない。長年のゲーム経験で培われたラビニアの勝負勘が牙を剥いた瞬間であった。
成功
🔵🔵🔴
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
まつりん、へなっちいのがいる(こそり呟き
もちろんわたし基準。もっと筋肉むきむきが好み
カッコよくない(※杏基準)人はお帰り頂く
公爵の管理する世界、どんとこい
ふむ、公爵がいるなら貴婦人も必要
へな…公爵、わたし貴婦人に変身できる
していい?
うさみん☆は公爵が首振れぬよう、死角から公爵の頭にしがみつこ?
うさみん☆に指示ダメ?
わかった(ホールドしたままのうさみん☆放置)
ん、【どれすあっぷ・CBA】
怪力込め込めのせくしぃ(杏ちゃん比)な貴婦人、爆・誕
ね、まつりん、せくしぃ(うふんのポーズをバグってるまつりんに披露
ね、公爵、notダンディな人殴っていい?
いいね?
よし、公爵殴ろう
木元・祭莉
お、吸血鬼さま?
あ、公爵さまかー、ちぇっ。←
アンちゃん(f16565)、誑かされ…されないよね、流石だ!
バグって虫のことなんでしょ?
なら負けないよ、 さぁおいで!
(コケコケ鳴く侵食型バグ登場)
あれ?
虫って言ったじゃん!?
侵食してきた…(なんとなく逆らわない)
よく見ると、コイツおとなしいよね?(木元家比)
あ、雄じゃん。頑張ってるね、おいらも見習う!
アンちゃんのマッスルポーズだ!
気合い入ってるぅ♪(バグり中)
おいらも師匠(コケ)見習って頑張るゾ♪
やる気MAX!
え、だんでぃ殴っちゃダメなの?
(バグと公爵を見比べ)
ん、じゃあコッチだね!
公爵にやぶさか☆ツインぱんち!
師匠、たまこの婿やらない?
●新しい朝が来た
双子の猟兵、木元・祭莉(WINNER、たまこ。・f16554)と木元・杏(ぐれいと・たぬきズ・てぃーちゃー・あん・f16565)が漸く辿り着いた、城塞の最深部。そこは微かな星明かりを反射する大理石の床が敷き詰められた玉座の間で、薄気味悪い静寂に満たされていた。
「ま、まつりん。ここすごく暗い」
「だいじょぶ! すぐに目が慣れてくるから!」
暗い場所がニガテな妹を宥めながら、祭莉は広い部屋の中を見渡してみる。するとキャンドルの灯りに照らされた白い顔が闇の中に浮かび上がり、夜会服を着た男の姿を捉えることができた。
「お、吸血鬼さま?」
「……今度は何だ?」
若干うんざりしたような声色で双子に声をかけたのは、魔族系のモンスター『悪魔公爵』。高難度ダンジョン『ホーンテッド・キャッスル』のクエストボスを務める強敵だ。
「まつりん、へなっちいのがいる」
「へなっ……! 私はこの『ホーンテッド・キャッスル』の城主、悪魔公爵である!」
庶民の小娘にコケにされてたまるかと、威厳を示しつつ自己紹介する悪魔公爵。カンストレベルの戦闘能力、そして上級貴族らしく、所有ダンジョンにおいて絶大な管理者権限を持つというバグプロトコルだ。
「あ、公爵さまかー、ちぇっ」
吸血鬼といえば有名な人物に『伯爵』がいるのだが、今回の敵は祭莉の目当てではなかったようだ。
「アンちゃん、誑かされ……されないよね?」
「へなっちいはもちろんわたし基準。もっと筋肉むきむきが好み」
「アンちゃん、流石だー!」
どうやら杏の琴線に触れるには、もう少しばかり筋肉と歳を重ねた男の深みが欲しいようだ。
「カッコよくない人はお帰り頂く」
「黙れ! さっきから聞いていれば好き放題言いおって……バグに侵され、私を侮辱した罰を受けるがいい!」
苛立つ悪魔公爵は漆黒のマントをバサリと拡げると、内側から対象を侵食するバグを召喚し始めた。
「バグって虫のことなんでしょ? なら負けないよ、 さぁおいで!」
普段サムライエンパイアの田舎の農村で暮らす祭莉は、虫には慣れっこだ。虫なら大丈夫! と敢えて侵食バグを受け入れる構えである。
「公爵の管理する世界、どんとこい」
兄に倣い、杏もまた公爵のバグを拒絶しようとしない。その姿勢が功を奏したか、出現したのは意外なモノだった。
「コケケッ」
白くモコモコした羽毛に、真っ赤なトサカを持つ大柄なニワトリが一羽、バグ画像の中からばさっと飛び出てきた。
「あれ? 虫って言ったじゃん!?」
「たまこ……? じゃなかった。たまこは村でお留守番中」
その白い姿を目の当たりにして、祭莉が身体を強ばらせる。にわとりといえば、木元村には守り雌鶏にして祭莉の天敵である『たまこ』がいるのだ。
「コッコッ」
放たれたにわとりは双子の回りを歩き回ると、やがて祭莉の肩の上にぴょいと飛び乗った。
「侵食してきた……(受け入れる……ガマンガマン)」
にわとりは暫くきょろきょろと周囲の様子を伺っていたが、やがて祭莉の肩上が落ち着いたのか、静かに羽繕いを始めた。
「ふふ、まつりんその子に気に入られた?」
「よく見ると、コイツおとなしいよね?」
バグとはいえ、木元村の凶暴な守り神と比べると、気性は穏やかそうだ。たまこだったら、祭莉と目が合うなり跳びかかってくるところだ。
「あ、雄じゃん。頑張ってるね、おいらも見習う!」
「コケココ」
同じ雄として、にわとり型バグにシンパシーを感じ始めた祭莉であった。頭を優しく搔いてみると、鶏は気持ちよさそうに目を閉じた。
「ふむ、公爵がいるなら貴婦人も必要」
杏はなにか良いアイデアを閃いたのか、ぽんと手を叩いて悪魔公爵に声をかけた。
「へな……公爵、わたし貴婦人に変身できる。していい?」
「変身だと? そんなもの認めるわけg……」
訝しんだ公爵の台詞は、背後から忍び寄った何者かに妨害された。杏の使役する人形『ウサミミメイド・うさみん☆』が、公爵の頭にがっちりしがみついてホールドしている。
「うさみん☆に指示ダメ?」
「モガモガ……!」
「ん、わかった」
暴れるうさみん☆と悪魔公爵を差し置いて、杏は自身のユーベルコードを発動させる。
「そう、わたしはクールな女」
杏の全身がしゃららら~~んと眩い光に包まれ、服装も体系も理想的な形へと変じていく。それが彼女のユーベルコード『どれすあっぷ・|CBA《くーるびゅーてぃーあん》』の力。
「ね、まつりん、せくしぃ」
「アンちゃんのマッスルポーズだ! 気合い入ってるぅ♪」
杏は髪をかき上げ、大人のセクシーさを表現してみせた――のだが。どうやら祭莉にはボディビルダーのようなマッスルポーズに映ったらしい。……せくしぃとは。
「おいらも師匠(コケ)見習って頑張るゾ♪」
パワーアップした杏に触発され、祭莉もまた自身のユーベルコードを発現させた。祭莉の身体から立ち上った白い炎が玉座の間に満ちた闇を払い、部屋全体を眩く照らし始めた。
「ね、公爵、notダンディな人殴っていい?」
「ぶはっ!……こ、このフィールドの管理者は私なんだ……」
「いいね?」
「――あらゆる敵対行動は、許可しないっ!!」
悪魔公爵は力を振り絞ってうさみん☆を振りほどき、支配の錫杖を掲げて声の限り叫んだ。
「え、だんでぃ殴っちゃダメなの?」
「コケコ……」
二人はどこか懇願するような様子の師匠(仮)と険しい顔つきの公爵を、交互に見比べた。結論? 言うまでもないでしょう。
「よし、公爵殴ろう」
「ん、じゃあコッチだね!」
「ちょっ、少しは人の話を――」
だが、悪魔公爵の台詞が最後まで語られることはなかった。やぶさか☆2の息の合ったコンビネーション・パンチが、悪魔公爵の顔面へと炸裂する。
「グヘッ……」
目の覚めるような快音を響かせながら、悪魔公爵の身体が大きく宙を舞った。そして窓ガラスを突き破って外へ飛び出すと、どす黒い霧へと全身を変えて夜明け前の空へと飛び散っていった。
激闘が遂に幕を下ろし、広間には再び静寂が訪れた。すると戦いを見守っていたニワトリの師匠(仮)が、頭を前後に振りながら窓辺に向かってトットッ……と歩いて行く。
「師匠、どうしたの?」
すると師匠(仮)は体をぶるっと震わせ、祭莉に言い聞かせるように声高らかに鳴いた。
「コケッッコーーーー!!!」
「あっ、まつりん。もうすぐ夜明け!」
杏が窓の外を指させば、東の空がうっすらと白み始めていた。ハロウィンの夜が終わり、また新しい一日が始まるのだ。
「ん、いい鳴き声! 師匠、たまこの婿やらない?」
「コケ?」
すると師匠は小首を傾げ、『何の話?』と言いたげな視線を祭莉に向けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵