エレガント・メサイア
メサイア・エルネイジェ
メサイアが実家に帰省した際のちょっとしたノベルをお願いします
アドリブその他諸々歓迎です
●帰省
メサイアはソフィアから母がたまには顔を見せるようにと言っていた事を聞かされました。
「そういえば全然お顔を見せておりませんでしたわねぇ……ヴリちゃん! ちょっくら行ってまいりますわよ〜!」
メサイアはヴリトラ・ゲイルカイゼルで王都にすっ飛んで行きました。
●実家へ
「久々の我が家ですわ〜!」
メサイアは道中の色々なものをぶっちぎって王城に到着しました。
あちこちの基地が大騒ぎになっていることなど知る由もありません。
「お母様〜! とってもお可愛いわたくしが戻りましてよ〜!」
「あら〜! 私の可愛いメサイア! 急に戻ってきてどうしたの?」
マリアは政務を放り出してメサイアを出迎えに来ました。
「たまにはお顔を見せるようにと言われたので参りましたわ〜!」
「そうだったの〜! よく戻ってきたわね〜! 元気にしてた? お酒ばかり呑んでいない? ちゃんと栄養バランスの摂れた食事をしてる?」
マリアはメサイアを抱きかかえて頬擦りしました。
「いつもお元気でお酒がうめぇのですわ〜!」
「元気そうで安心したわ。毎日お腹を空かせていないか心配していたのよ?」
「急いですっ飛んできたのでお腹ぺこちゃんですわ〜!」
「まあ! それは大変! すぐにお茶にしましょうね」
しかしマリアは政務中です。
側近が待ったを掛けました。
けれどマリアは聞きません。
「一旦休憩とします。後の予定はずらしておきなさい」
「わたくしもう辛抱堪りませんわ〜!」
「ああ、かわいそうなメサイア! こんなにお腹を空かせて!」
それから少し後、各方面の基地から超高速で移動する未確認の物体が王都に向かったという緊急の報告が上がってきました。
関係各所が大騒ぎしていた頃、マリアとメサイアは優雅にティータイムを過ごしていました。
オチは特にありません。
●メサイアの出生
マリアとグレイグは三人の子を授かりました。
そしてそろそろ四人目をと考えた時、マリアはふと思いました。
「西アーレス最強の男女の子がアンサーヒューマンになったら、とびきり元気な子として産まれてくるのでは?」
マリアはより強い子が産まれる事を願って、受精卵の遺伝子操作処置を受けました。
その結果、とびきり元気で、とびきり頭が悪いアンサーヒューマンが爆誕しました。
●ラストプリンセス
当時の王室は財政的に苦境だったため、マリアはメサイアを最後の子としました。
未子ということもあり、マリアはメサイアを特段可愛がりました。
そうして蝶よ花よと自己肯定されまくって育った結果、今のメサイアとなりました。
●メサイアにとってのマリア
「お母様は大好きですわ〜!」
たっぷり甘やかされました。
「お母様はソフィアお姉様のように怖くないのですわ」
●普段のメサイア
聖竜騎士団の仕事で駆り出されない間は、黒竜教会で修道女兼司祭のお勤めを果たしているか、桐嶋技研で酒を飲んでいます。
気まぐれに他世界に行って新たな酒を探すこともあります。
●より良きを
求めるのは人の性であろう。
何を、と問うのならば愚問である。
最良を最高を最強を。
何時の時代においても人は求め続ける。それが常に覆さ続ける宿命を帯びるのだとしてもだ。
けれど、それが咎められるだろうか。
人の進化とは常に取捨選択だ。
選択公理の結果によって生み出されるのが運命だというのならば、それはあまりにも非合理が過ぎる。
だから、手を加える。
神ならぬ人の手によって生み出された運命は、一体何を為すのか。
答えはまだ出ない。
当然だ。
その生命が尽きる時に、その答えは出る。
他の誰にも出せることのない答えが――。
●ヴリトラ・ゲイルカイゼル
警報音が響き渡る。
それはキャバリア大の物体が地面スレスレで小国家『エルネイジェ王国』王城へと迫ることを示していた。
「熱源反応有り! 進路、以前王城に固定されています!」
「バーラントか! いや、だがしかし、国境警備隊からは何の連絡も来ていないぞ……?」
「報告! 国境警備隊からです!」
「遅すぎる! で、なんと言っている!」
「黒い……何?」
ノイズ混じりの通信は、クロムキャバリアにおける通信技術の限界を語るようであった。
暴走衛生によって空が封じられ、長距離通信の術を失った人類にとって通信状況は未だ解決できぬ問題の一つであった。
そのため、国境、首都間での通信であってもキャバリア同士の戦闘や大気の状態によっては、このようにノイズが多大に混じるのだ。
そのため、首都……それも王城を警備する近衛部隊はレーダーに映る機影の正体が判然としないまま、この事態に対応しなければならなかった。
無論、緊急事態である。
王城にキャバリア大の物体が迫っているのだ。
「げ、迎撃準備を……!」
「駄目です、間に合いません! 目標……消失!」
「れ、レーダーを振り切る速度、だと……!? いかん! 王城の詰めている部隊に連絡を……!」
近衛部隊は大いに混乱していた。
だが、この状況においても優先されるべきものを違えることはなかった。
仮にこの飛来したキャバリア大の物体であれ存在であれ、その目的は王城に住まう王族であろう。
つまり、『マリア・エルネイジェ』の生命の危機なのだ。
次々と起動するキャバリア『ヴェロキラ・ロイヤルガーダー』。
近衛部隊に配された華美なる装飾の施された主力キャバリアである『ヴェロキラ・ロイヤルガーダー』は、主に式典用キャバリアと揶揄されることもあるが、その武装とチューンアップされた機体性能はゴシップ誌に『無駄遣い』と言われるには、あまりにも高性能だった。
無論、それが飾りではないことは言うまでもないだろう。
緊急事態に即応した彼らの行動は近衛部隊と言うに相応しいものであった。
だが、そんな彼らであっても王城に飛来した黒い物体を見上げ、呆然とするしかなかった。
王城の見張り塔を模したレーダー装置にアンダーフレームのクローアイゼンを突き立て、近衛部隊の困惑を嘲笑うかのように黒い物体――……。
「ヴ、『ヴリトラ』……!? な、何故こんな場所に!?」
赤いアイセンサーが煌き、『ヴェロキラ・ロイヤルガーダー』を見下ろしていた。
『ヴリトラ・ゲイルカイゼル』と呼ばれる高機動戦闘仕様の装備を背に負った黒い暴竜のコクピットハッチが出し抜けに解放され、そこから現れたのは一人の女性だった。
「久々の我が家ですわ~!」
その声に近衛部隊のキャバリアパイロットたちは思わず天を仰いだ――。
●暴竜皇女
「道中なんだか色々引っかかった気がいたしますが、障害物競走だと思えば、ちょれぇもんですわ~!」
メサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)は、『ヴリトラ』のコクピットハッチから、あらよっ、と言わんばかりに飛び降りて王城の窓を玄関口のように開けて入り込んだ。
やり方は押し込み強盗そのものである。
しかしまあ、王城は彼女の実家だ。勝手知ったると言えば聞こえがいいが。
「お母様~!」
その玄関口にした窓の先は、母である『マリア・エルネイジェ』の執務室であった。
「とってもお可愛いわたくしが戻りましてよ~」
「あら~!」
執務室では机に向かって母がむつかしい顔をしていたが、メサイアには関係なかった。
眉間にシワを寄せていたが、自分の顔を見ればマリアがすぐさま晴れやかな顔になるのをメサイアはよく知っていた。
「私の可愛いメサイア! 急に戻ってきてどうしたの?」
彼女はすぐさまに執務机から離れて窓から侵入者よろしく飛び込んできたメサイアを抱きとめ、ぐるぐるとその場で踊るように身を回す。
「たまにはお顔を見せるようにと言われたので参りましたわ~!」
「あら~! いつでもよかったのに、こんなに早く来てくれるなんて~! なんて可愛いのかしら~! 元気にしてた? お酒ばかり呑んでない? ちゃんと栄養バランスの摂れた食事をしている?」
抱きとめたメサイアの肉付きをさり気なくマリアは確認していた。
むっちりとしたメサイアの頬に己の頬を寄せて肌の質感もチェックしているようであった。
これが一瞬の。一連の動作である。
マリアの側近たちは僅かに頭を抱えそうになった。
なにせ、マリアは末娘であるメサイアのことを猫可愛がりしている。それこそ目に入れても痛くはないと言わんばかりに、だ。
「いつもお元気でお酒がうめぇですわ~!」
メサイアはいつも通りである。常にこれである。
「元気そうで安心したわ~! 毎日お腹を空かせていないか心配していたのよ~?」
その言葉にメサイアは気がついた、とばかりに目をパチクリさせた。
「そうですわ~! 急いですっ飛んできたのでお腹ぺこちゃんですわ~!」
すっ飛んでたのは『ヴリトラ』である。
メサイアは乗っていただけである。
腹が空く理屈など何処にもない。
「まあ! それは大変! すぐにお茶にしましょうね! だれか!」
側近たちは思った。
嘘だろ、と。
まだ政務中である。
マリアはこれから諸々の承認や報告書や稟議など政務が山積しているのだ。時間などない。スケジュールに隙間などないのだ。
だが。
「一端休憩とします」
「ですが……」
「後の予定をずらしておきなさい」
しかし、と二の句を告げることはできなかった。
マリアの眼光は現役を退いたとて、『槍聖』と呼ばれた頃と些かも陰りを見せることはなかった。
鋭い眼光に側近たちは言葉を失うのか、それとも肯定を意味する沈黙を守るしかなかった。
「わたくしもう辛抱たまりませんわ~!」
メサイアの腹の虫が騒ぎ出している。
こうなるともう止まらない。
諦めるしかない。今日のスケジュールは恐らく、側近たちの胃痛に影響を及ぼすものとなるであろうが、それよりもメサイアの空腹の方が優先されるのだ。
「ああ、可哀想なメサイア! こんなにお腹を空かせて! さあ、母といっしょにスコーンを食べましょう。紅茶はミルクとお砂糖をたっぷりいれましょうね~」
「ストゼロが良いのですわ~!」
「わかりました。ですが、ちゃんと食事も取らねばなりませんよ。たくさん食べる子は強い子なのですから」
にっこにこである。
マリアはにっこにこしている。
しかし、忘れているかもしれないが王城に飛来した『ヴリトラ』に国境から王城を結ぶ一直線に配された関係各所は、穏やかな母娘の時間とは裏腹に混乱と騒動に包まれていた――。
成功
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