ふわデカまんまる、秋色わたがし、つくります
夏の暑さもどこへやら、すっかり涼しくなって過ごしやすくなった秋の季節。
行楽の秋とはよくいうけれど、今宵は浴衣や法被を着て。
沢山の人がわくわく楽しみにしているのは、今日が秋祭りだから。
とはいえ、まだ祭りがはじまるまで、結構時間もあるはずなのだけれど。
火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)はうきうきるんるん、かなり早めに祭り会場へ。
そしてすちゃりと、お祭りの法被を着せて貰えば、しっぽもぶんぶん御機嫌で。
「今日は宜しくお願いします!」
ちゃんと元気に、周囲の人たちにしっかりご挨拶!
そう、この日のさつまは、祭りに参加するのだけれど。
とはいっても、お客さんとしてではなくて。
屋台で物を売る側のお店の人として、お手伝いするのです!
そして、お手伝いするのは勿論――わたがしの屋台!
何故売る側として今回参加するのかといえば。
きっかけはそう、夏休みに参加した屋台体験。
色々な屋台の中から、好きな屋台を選んで体験できるというイベントで。
この屋台体験でさつまは、わたがし屋台でわため作りに挑戦したのだけれど。
最初こそちょっぴり失敗したりしつつも、どんどんめきめき上達して。
体験が終わるころには、教えてくれた先生もお墨付きなくらいの、立派なわたがし職人に……!
というわけで、その時の縁で。
「今度、秋祭りを開催する事となったから、ちょいと手伝いにおいで」
わたがし先生から、そうお声がかかったのです……!
いや、わたあめを作るのも楽しかったし。
折角とても上手に作れるようになったから、ということもあるのだけれど。
さつまが嬉々とお手伝いをすることにしたのは、先生からこう言われたから。
そんな誘い文句は……なんと!
「客足が途絶えた暇な時には、自分好みの超巨大わたがしを作って食べても良いよ」
というわけで、魅力的な好条件を聞けば、おめめもきらっきら!
しっぽも振りたくりつつ、即、よろしくおねがいします!!! と。
それはそれは元気よく、快諾したのである。
というわけで、わたがし屋台の店主の先生や開催者の方々に挨拶が済めば。
お耳もお話がしっかり聞こえるようにピンッ、きりりと表情も真剣に。
「大、中、小、大きさで、お値段、変わる」
こくこく頷き、サイズごとに違う値段をチェック。
「表に載せてない、けど、特大。裏メニュー」
販売する綿菓子の大きさだって、ちゃんとばっちり確認して。
「待たせ過ぎないようにしつつ、要望に出来るだけこたえる……了解、です」
……大、中、小、お値段、ちがう。特大、裏メニュー、って。
何度も復唱もして、準備も万端!
忙しく頑張って準備や確認をしていれば、いつの間にか周囲も賑やかになっていて。
――いざ!! 開催の時間!
というわけで、夏休みの体験で会得したことを存分に発揮しながらも。
「きれいなまんまるわたがし、お待ちどぉさまっ」
最初は、並ばれる程ではないけれど、ちらりほらりとお客さんがやって来て。
「ふわふわおばけわたあめ、作れる、よ!」
「わぁっ、おばけわたあめ! それください!」
「僕は、うんと大きなわたあめがいいな!」
「大きいから、周囲気を付けて、ね」
ふわふわおばけわたあめを瞳をキラキラさせた女の子に、元気な男の子にはご所望通りのビッグサイズを。
凄く暇にはならない程度にのんびりゆったりとした客足だから、ひとりひとりお客さんに合わせたわたがしを作っていって。
「わたがし食べたいけど、おなかいっぱいだから小さ目でできますか?」
「小さめの、円錐形わたがし、こんな感じで良い、かな?」
「どのわたあめがいいか、悩んじゃうなぁ」
「秋色わたがし、おすすめ!」
「わ、綺麗ですごく映える色! SNSに載せたらバズるよこれ!」
作ったわたがしを喜んでくれるお客さんの姿を見れば、しっぽも得意気にゆらゆら。
楽しみつつ、ちゃんと接客もしっかりとこなして。
忙しい時もあったけれど、全て捌き終えれば、急にぱたりと途絶える客足。
そうこうしているうちに、どうやら他で何かの人気イベントが始まったようで。
一旦手がすいたから、休憩時間に。
というわけで!
まってましたとばかりに、わくわくるんるん。
さつまが作り始めるのは、頑張ったご褒美!
くるくるっと手慣れたように作り上げるのは、そう――それはそれは大きな大きな、超巨大秋色わたがし!!
紅葉のように赤黄橙などの秋色で彩られた、お月様みたいに綺麗にまんまるな、そして顔どころが上半身さえ見えないような超ビッグサイズです!
そんな出来上がった傑作のわたがしを手にすれば、にっこにこ!
さらに折角だから、それを更にめいっぱい堪能したくて――ぽふりっ。
狐姿へと変化すれば、きゅヤこヤ御機嫌で。
周囲につけたり落としたりせぬように、そろりとバランスを取りつつ気を付けながら。
しっぽもお耳もゆらゆらぴこぴこ、るんらるんら持ち歩けば……。
「わぁ、あのわたあめ、すごい!」
「さっきSNSで見たのもバズってたけど、それよりもっと大きそう!」
きゅヤ? と、さつまは瞳をぱちり。
だってさっきまで客足が途絶えていたのに、気がつけば沢山のお客さんが……!?
だから休憩時間途中で呼び戻されて、慌てて人間の姿になれば。
注文が殺到する、特大秋色わたがしを量産。
持って歩いたことが何やら良い宣伝になったようで、口コミみたいなものも広まったのか、入れ代わり立ち代わりからの大行列!!
慌ただしくお手伝い再開して、ふわふわくるくる、どんどん頑張って――わたがし、つくります!
それからずっと、客足が途絶えないほどの大盛況で。
甘味好きな硯箱の知り合いも来店して、秋色と桜色の特大わたがしを両手に、大満足でお買い上げ。
だから、大人気で――完売御礼!
「途中から、大変だた、けど、すごく楽しかた、です!」
やりきった! な、ぺっかぺかの笑顔で、しっぽふさふさふりふり。
予定よりも早めの店じまいに。
そして片付けまできっちり終わったら、ちょうどお祭りのフィナーレの花火が上がりはじめて。
花火を眺めながら、まんまるわたがしみたいなお月様が浮かぶ秋空の下――お疲れ様の乾杯を!
成功
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