MISSION:敵拠点偵察作戦 Part1
南カメリア大陸にてサクール帝国・ガイスエラ連邦共和国軍に劣勢を強いられつつも抵抗を続けるカメリア合衆国・ヴァンガ共和国軍。そんな中、猟兵のカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は相棒のメルシーこと界導神機『メルクリウス』と共にサクール帝国の最高戦力と言われる大将の一角である『風雷坊』がいる拠点の偵察へと向かっていた。
「(事前情報によれば、風雷坊はたった1人で幾つもの国家を潰したって話だ。ったく、サクール帝国の奴らはどんだけ化け物なんだよ…。オブリビオン・フォーミュラなんかよりよっぽど恐ろしいぜ…)」
光学迷彩を機体にかけて、拠点を偵察する事が出来る指定のポイントへと向かいながら、彼は内心でそう愚痴る。
「ご主人様、そろそろポイントに到着だぞ☆」
「うし、じゃあ奴の姿を拝んでみようか」
メルシーがそう言った時にカシムは丁度ポイントへ到着し、メインカメラをズームさせて拠点の偵察を始める。
「…大将がいるだけあって、警備は厳重そうだな。しかも拠点の守備に就いているキャバリアは殆どアッバースだ。これは拠点の中に入るのは難しそうだ」
メインモニター画面に映る拠点の様子を眺めながら、カシムはそう言う。
「…ん?」
その時、カシムはメインモニター画面に映るある1人の人物に目が留まる。その人物は中年男性でスキンヘッド、サングラスを掛けており、僧が着用する法衣を纏っていて、肩から大きな数珠を掛け、法衣の上には軍の将校が纏うような白い制服を羽織っていた。拠点内に見える他の兵士達と比べたら、かなり目立つ姿だ。
「ご主人様、もしかして今見えているのって…」
「…ああ。まさかアレが大将の風雷坊か? かなり奇抜な奴だな…」
カシム達がそう話しながら眺めていると、風雷坊らしき人物が誰かと話し始める。
「あっ…あの野郎は…!?」
風雷坊らしき人物と話しているのは青色の短髪でアイマスクを付けたどこか緩そうに見える男性の軍人であった。その男の事をカシムは知っていた。
「『氷雪帝』のヒョウガじゃねぇか!? アイツ…こんなところにいやがったのか!」
もう1人の大将の一角である『氷雪帝』ことヒョウガ・イブラヒムは今まで居場所が分からなかったが、カシムは遂に見つけたのだ。
「どうするご主人様? 突撃する?」
「…氷雪帝の野郎に拓也んの事を聞き出したいところだが、大将が2人もいるところに突入するのはちょっとなぁ…」
大将の強さは事前情報でかなり脅威である事をカシムは知っていた。そんな相手が2人もいるところに突っ込むのはあまりにも無謀だ。彼がそう思い悩んでいる時であった。ヒョウガ達のところに更にもう1人が現れる。その人物は2人に比べたら若干若そうな男性であり、軍帽に軍服をキッチリと身に着けていた。
「誰だ、アイツ? 他の2人に比べたら真面目そうに見えるな」
「あの人の情報は合衆国からの事前情報にも無かったね~」
カシム達がそう観察している時だった。その人物が合流して一言二言話した後、3人は一斉にカシム達の方へ視線を向けたのだ。
「…おい、メルシー? 光学迷彩は完璧だよな?」
頭と背中に冷や汗を流しながらカシムはメルシーにそう問う。
「モッチのロンだよ☆」
メルシーがそう答えた瞬間、風雷坊らしき人物が片手で術式を結んだ後、雷となって姿を一瞬で消す。
「…?! どこに消えやがった!?」
カシムはメインモニター画面で周囲を確認するが、風雷坊らしき人物は見当たらない。
「もしも~し? 隠れているネズミさんや~」
その時、カシムが搭乗しているメルシーの頭上の方で声がした。
「ご、ご主人様…だ、誰かメルシーの頭上にいる…」
「う、嘘だろ…。雷や風を利用した探知を使わずに僕らを発見したのか…?」
カシム達は機体の頭上にいるであろう風雷坊らしき人物に恐怖する。
「まぁね~。探知方法は秘密にしておくけど、君達の位置はヒョウガ君達と会う前から分かっていたよ~。ついでに言うと、ヒョウガ君達も気付いていたよ~。あぁ、自己紹介が遅れたね~。ワシがサクール帝国の最高戦力の大将の1人『風雷坊』ことムスタファーだよ~。よろしくね~」
ムスタファーは臆する事も無く、呑気にメルシーの頭上で立ちながらそう言う。
「おいこらぁっ! 何で見つけられるんだよ!? おめーといい悪也ん…アラムっつったか! チートにも程があるだろうがっ!」
あっさりと見つけられてカシムはムスタファーに文句を言う。
「そりゃワシらは鍛えているからね~。キャバリアに頼っているだけじゃ、ワシらには勝てないよ~」
「いや、僕もキャバリアだけに頼っている訳じゃないからな! というか、大将クラスってみんなそうなのかよ?!」
「サクール帝国では弱い奴は上に上がれないからね~。階級が高い奴程、注意した方がいいかもね~」
「…ご忠告どうも。で、僕達は帰りたいんだけど、メルシーの頭上からどいてくれないかな?」
逃してくれるつもりは無さそうだが、一応、カシムはムスタファーにそう言ってみる。
「う~ん、逃してもいいんだけど…そのまま逃すのも面白くないね~」
「そうかい…上等だぼけ…このカシムさんと」
「メルシーが君を倒しておいちゃうぞ☆」
「お~、やる気になったかい?」
カシムの言葉を聞いて、ムスタファーはメルシーの頭上から降りて、カシム達の正面に立つ。
「このカシムさんは…最強で無敵だ! おめー如き相手じゃねぇって事をその身体に刻んでやるぞ!!」
「…で、その見え透いた強気の挑発はいつまでやるつもりだい?」
「…!?」
ムスタファーは全く動じる事無く、カシムの挑発に乗る事無く、右の人差し指を光らせながらカシムに向けて構える。一帯に殺気が満ち溢れ、ムスタファーが何か仕掛けてくるのを見て、カシムの額に冷や汗が流れる。
「ご主人様、これ逃げた方がいいって!!」
流石のメルシーも嫌な予感がしたのか、カシムに向かってそう叫ぶ。
「言われなくても分かってらぁ!」
そう言ってカシムは『ロバーズランペイジ』を発動して、50000km/h以上の超絶速度でムスタファーの前から飛び去って行く。
「う~ん、やっぱり逃げちゃったね~。追う事は出来るけど…まぁ、別に重要機密が漏れた訳じゃないし、今回は見逃してあげようかね~」
ムスタファーはカシム達が逃げた方向を見つめながら、そう言って光らせていた右の人差し指を下げて攻撃を止める。
「逃がして良かったのか? 風雷坊のオジキ」
そこへ右手を冷気を纏わせたヒョウガがやって来る。
「おや、ヒョウガ君。近くで準備していたのかい?」
「念の為な。『豪煉皇』の奴は拠点が奇襲を受けるかもしれないから残ったぜ」
「賢明な判断だね~。彼が出向いたら、ここ一帯が焦土化するからね~」
「あいつは手加減せずに徹底的にやる奴だからなぁ」
冷気を解除し、頭を掻きながらヒョウガはムスタファーとそう話す。
「で、ヒョウガ君。君はさっさと拠点を後にした方がいいよ~。君の事を探している連中がいるっていう情報が入っているからね~」
「分かっているさ。さっさと隠れさせてもらうぜ」
そう話したムスタファー達は周囲を警戒しつつ、拠点へと戻っていくのだった…。
こうしてカシム達は風雷坊から攻撃を受けそうになったものの、何とか逃げ延びて、偵察任務を終えたのであった。因みに拠点にいたヒョウガは姿を消し、再びどこにいるか分からなくなったのであった…。
成功
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