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甘香る月夜、金木犀と十三夜の月

#アヤカシエンパイア

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#アヤカシエンパイア


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 この星の如く咲く小花の姿も、秋を感じる甘い香も、本来は知らぬもののはずなのに。
 此処は、夢幻を具現化し、自然や新鮮な水すら生み出す「平安結界」の内部。
 故にか、毎年秋の季節になれば、アヤカシエンパイアでは見ることのない、この山中の邸宅にだけ咲く花があるのだという。
 橙色をした星のような小花が甘香を漂わせる、金木犀の花が。
 そして、なんと言っても今宵は十三夜。
 栗名月と呼ばれ、十五夜に次いで美しい月が観られる日。
 そんな月夜を前に、邸宅の主人や貴族達は客人をもてなす準備で大忙し。
 手を貸して欲しいと文を届けた猟兵達を迎え、彼ら彼女らに宴を楽しんで貰うために。

●金木犀と十三夜の月
「此度はお集まりいただき、感謝いたします」
 表情こそ薄くスンとした表情のように見えるが、丁寧に頭を下げて。
 冷泉・辰乃丞(青の鎮魂歌・f42891)は集まってくれた猟兵の皆へと礼を告げた後、今回の案件について語り始める。
「私達の在る世界、アヤカシエンパイアには、一見貴族暮らしに適しそうもない場所に寝殿造の邸宅が存在していることがありますが。これは、強力な陰陽師達によって制御された「対妖要塞」。こうした邸宅は往々にして「特に強力な妖の出現を監視し、即座に対応する為の要衝」となっております」
 そして今回、そうした「危険な山中の邸宅」に住まう有力な貴族の一人から、同じ平安貴族でありグリモア猟兵でもある辰乃丞の元に、一通の文が届いたのだという。
「妖と戦う猟兵の皆様の活躍を知った「対妖要塞」の主人から此度、「近々妖どもとの大きな戦がこの地で起きるであろうという予測」があったため「一騎当千のつわもの揃いである猟兵の手を借りたい」という旨の文がありました。故に、皆様のお力を貸していただければと」
 つまり今回の案件は、近辺で「妖の裂け目」が発生し、強力な妖の率いる大軍勢が邸宅に攻め寄せてくるというので。貴族達と協力し、妖の侵攻を陰陽術の要塞たるこの邸宅でそれを食い止めて欲しい、というわけである。

 けれど、向かってすぐに事が起こるわけではなく。
 屋敷へと赴けば、邸宅の主や貴族達は猟兵達を丁重に迎え入れてくれて。
 「妖の裂け目」が発生するまでの時間、猟兵の皆をもてなしてくれるという。
 それ自体が「平安結界」の維持にも繋がっており、何より貴族達から「現地の妖の情報」が彼らに知り得た限り詳細に語られるだろうから。
 まずは、平安貴族達のもてなしを受けつつ、邸宅でのひと時を自由に過ごして欲しい。
 そして、今回赴く山奥の邸宅であるが。
「皆様の中には馴染み深いという方もいらっしゃるかとは思いますが。今回赴く山中の邸宅には、アヤカシエンパイアでは見かけない甘香る星の如き花――金木犀、と別の世界では呼ばれている花が咲いております。この花が咲き香る期間は短いようですが、丁度今咲いているようですので。星の如き橙の花や甘い香りを楽しみながら、この邸宅の主人が皆様をもてなしてくれるとのこと。この歓待を受け、宴自体を楽しむことが「平安結界」の維持にも繋がりますし、邸宅の貴族と交流をはかる機会にもなるかと」
 この邸宅の主人は「花式部」と名乗る女性の平安貴族であるが、彼女は平安貴族にしては珍しく、料理好きなのだという。
 普段の食事は庖丁人や板元や料理人に任せてはいるものの、隙あらば厨に赴き、調理を楽しんでいるらしく。
 そんな花式部は、妖の案件は勿論のこと、独自に編み出した金木犀や月をあしらった甘味や飲み物などを猟兵達にふるまうことを楽しみにしているようだ。
 なのでまずは、妖が現れるまでは、金木犀が美しい庭のある山中の邸宅で、花式部の作ったものや用意されたものをいただいたり等しつつ、歓待を受けて英気を養いながら。
 妖が裂け目から現れれば、それに対処し、裂け目を塞いで欲しいというわけだ。
「そして発生した「妖の裂け目」から出現した妖を退けていただきましたら、夜には竹灯籠が灯された邸宅の庭で十三夜の月見の宴が開かれるとのこと。十三夜は中秋の名月とあわせて|二夜《ふたよ》の月と言われ、満月よりも少し欠けた月となりますが、十五夜に次ぐ美しさの月と言われており、この日にも月見を楽しむ風習があります。十三夜は栗名月とも呼ばれ、栗や豆の収穫を祝うものでもありますので、月見団子や秋の味覚の料理なども用意されるとのことです。平安結界の維持も兼ねて、皆様にも十三夜の宴にご参加いただけましたらと」

 そこまで説明した後、辰乃丞は改めて深々と再び頭を下げつつも。
「妖退治も皆様のお力添えがあれば、難しいことではないと思います。どうぞ金木犀や十三夜の宴も、楽しんでいただければ幸いです」
 そう告げながら青龍のグリモアを掌に宿し、猟兵の皆を導く。
 金木犀が甘香る、十三夜の日の、アヤカシエンパイアの「対妖要塞」へと。


志稲愛海
 志稲愛海です、よろしくお願いいたします。
 金木犀と十三夜の宴が催される、平安の地へのご案内です!

 ※ご連絡※ 受付開始日等はシナリオタグやMSページで連絡します。
 各章詳細を記載した断章を受付開始前に各々掲載予定です。

 今回の内容は以下です。

 第1章:時の間の休息(日常)
 第2章:悪霊陰陽師(ボス戦)
 第3章:季節の祭り(日常)

 日常章はPOW/SPD/WIZは気にせずOKです。
 どの章からでも、気になった章のみでも歓迎です。
 ありそうなもの、できそうな事は大抵OKです、お好きな様に!

 第1章は、金木犀が咲き香る屋敷でのひとときを楽しめます。
 詳細は断章に記載いたしますが。
 見事に咲いて甘い香り漂わせる金木犀を眺めたり、散策したり。
 料理好きな邸宅の主人が作った、金木犀を使ったりあしらった甘味や料理のふるまいをうけたり。主人と一緒に料理したり、平安貴族達に現代の料理や金木犀について教えてあげたり等々。
 その他できそうなことでしたら、ご自由にお好きに過ごしていただけます。

 第2章は、貴族達と協力して妖を退治してください。
 集団敵は貴族が対応してくれますので、皆様には大将討伐をお願いします。

 第3章は、十三夜の宴です。
 詳細は章受付前の断章にて記載いたしますが。
 十五夜の月に次いで美しいといわれる、十三夜の月を愛でる宴です。
 竹灯籠が灯された庭での月見や散策は勿論。
 十三夜は、栗や豆の収穫を祝う日ともいわれているので、秋の味覚も楽しめます。

 公序良俗に反する事、他人への迷惑行為、未成年の飲酒喫煙は厳禁です。
 締切等はMS個別ページやTwitterでお知らせします。

●お願い等
 同行者がいる場合は【相手の名前(呼称推奨)と、fからはじまるID】又は【グループ名】のご記入をお忘れなくお願いします。

 グループ参加の人数制限はありません、お一人様~何人ででもどうぞ!
 ですが、ご指定の同行者が参加していない場合は返金となる可能性もあります。

 第1章と第3章は、邸宅の主人「花式部」や貴族とも過ごしていただけますし。
 第3章のみ、案内役の辰乃丞や当方のグリモア猟兵も皆おります。
 お声掛けていただいた場合のみ、喜んでご一緒させていただきます。
 これまで面識なくても全く構いません。お相手をお探しの際などお気軽にと!

 ご参加お待ちしております!
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第1章 日常 『時の間の休息』

POW   :    英気を養う

SPD   :    周囲を散策してみる

WIZ   :    書物を開いてみる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 山中の邸宅に足を踏み入れれば、迎えてくれるのは甘やかな花の香りと。 
「此度は、お越しくださって有難うございますわ。どうぞ、まずはごゆるりとお過ごしくださいませ」
 ふわりと淡い笑み咲かせる、屋敷の主人・花式部。
 神殿造の立派な屋敷の中に通されれば、美しく整えられた広い庭に咲き誇る金木犀は、ちょうど今が見事だという。
「妖が出現するのは日が暮れてからですので、それまではご自由にお寛ぎくださいね」
 そう告げつつも、花式部は興味津々な様子で続ける。
「此花は、他所では見かけない珍しい花だと思っていましたけれど、他の世界ではよく見かける秋の花だそうですね。金木犀、という名で呼ばれているとか。よかったら、皆様の知る此花のお話もお聞きしたいわ」

 それから、淑やかな雰囲気は変わらないが、瞳をキラキラとさせて花式部は続ける。
「あ、もしよろしければ、食事も用意しておりますし。私の作ったものも、よかったら召し上がっていただければ嬉しいわ。ふふ、私、料理がとっても好きなのです」
 普段の料理は専属の者に任せているようだが、隙あらば、うろたえる彼らにも微笑んでは、厨へと花式部も足を運んでいるようだ。
 京の都では平安貴族が頻繁に厨に通うことは少し憚れるが、山中の邸宅は彼女が比較的自由に趣味を楽しみやすい環境だろう。
 今回も、いわゆるもてなしのための食事「饗応料理」は、専属の庖丁人や板元や料理人が作ったもので。
 中央に「御物」という高く盛られたご飯が印象的な台盤という折敷風のお膳の上に並ぶのは、「|蒸鮑《むしあわび》」や「|焼蛸《やきたこ》」、天日干しの塩漬け雉肉「|脯鳥《ほしどり》」、現代でいう塩辛の「|醢《ししびしお》」や、猪肉や鹿肉を二杯酢のようなもので和えた「脯宍(ほじし)」、鰹の燻製の「|楚割《すわやり》」、古代日本の乳製品「蘇」などの、平安ならではな豪勢な料理がいただけるし。
 屋敷の主人である花式部本人が猟兵達をもてなすために作ったのは、花を観ながら軽くつまんだりだとか、食事の後でもいただける、甘味の類。
「折角ですので、私は金木犀の花をあしらったり、模したものを作ってみました。お口にあえば嬉しいのだけれど」
 金木犀の花は現代地球などでも食用として使われているが、花式部もこの花を色々と取り入れてみたりしているようだ。
 まずは、米のでん粉を使った団子のような|粉熟《ふくずく》。現代地球でいう汁粉のように、小豆のすり汁と合わせてあるのだが。これに、金木犀の花を散らせた平安の甘味料「甘葛」を加えた『花粉熟』であったり。
 粉を捏ねて揚げた『まがり』も、金木犀を模したようなアレンジされた星花のカタチに。
 甘葛煎で甘みを付けた餅を椿の葉に包んだ椿餅の上にも、ぱらりと甘葛で漬けた橙色の金木犀が星のように鏤められている。
 そして食事や甘味に添える飲み物も、金木犀の香りがするもの。
「辰乃丞殿が、異世界の飲み物を持ってきてくださったの。成人されていれば、桂花陳酒は金木犀の甘いお酒だそうよ。勿論酒ではないものもあるわ、桂花茶は金木犀のお茶で、この金木犀のしろっぷというものは湯で割っていただいたら香り高くて美味しかったわ。このような山中ですもの、お作法などは気になさらず、どうぞお好きな場所でお好きなように、食事も甘味も飲み物も、美味しく召し上がってくださいね」

 そんな平安グルメに、存分に舌鼓を打ってもいいし。
 美しく甘香る金木犀が咲く庭をゆっくり歩いて散策したり、ただ眺めてみたり、のんびり過ごしたりだとか。
 庭に落ちた星のような金木犀の小花を集め、小花と塩を器に入れれば数時間でできる、いわゆるモイストポプリにして、金木犀の匂袋を作ることもできるようだし。
 甘やかな香りが漂う屋敷で英気を養うべくごろごろ昼寝などをしてもいいし、異世界の様々なことに興味津々な花式部や平安貴族達と語らうのもいいだろう。

 妖の裂け目が現れるのは、日暮れの直後だというので。
 日が出ている間は、山中の邸宅で好きに過ごしてもらってかまわない。
 むしろそれが平安結界の維持にもなるのだから――暫し歓待を受けつつ、平安の世の秋を楽しもう。
フリル・インレアン
ふわぁ、さすがアヤカシエンパイアの貴族さんです。
これ絶対趣味ってレベルじゃないですよ。
ふえ?私は作れないのかってアヒルさん、レシピを教わっても無理ですよ。
たまには満漢全席とか食べたかったのにって、アヒルさんはただいろいろな料理をたくさん食べたいだけじゃないんですか?
満漢全席は世界が違いますよ。
でも、アヤカシエンパイアの料理はひとつひとつの見た目も奇麗に盛り付けられていて、それがたくさん用意されているのはすごいですよね。



 人が滅多に訪れることのない山中にあるとは思えないほど、立派な寝殿造の邸宅。
 この邸宅も、強力な陰陽師達によって制御された「対妖要塞」であって。
 妖の襲撃を受けると予知があったため、足を運んだわけであるが。
 それはそれとして、屋敷内に足を踏み入れれば迎えてくれるのは、ふわり甘い香り。
 星のような橙色の金木犀が咲き誇る中、邸宅の主人である花式部に丁寧に案内されて。
 通されたのは、見事に整えられた池のある庭が臨める広々とした対屋。
 そしてフリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)は、思わず声を上げる。
「ふわぁ、さすがアヤカシエンパイアの貴族さんです。これ絶対趣味ってレベルじゃないですよ」
 屋敷の主人である花式部が作ったという、金木犀があしらわれた甘味の数々に。
 現代の汁粉のような|粉熟《ふくずく》の上にとろりとかけられるのは、金木犀の花がちりばめられた甘葛。
 揚げ菓子のまがりも花の形をしていて、椿餅の上にも金木犀の花が。
 それに、平安の世のもてなし料理「饗応料理」は、高く盛られたごはんの周囲に沢山のおかずが並んでいて豪華絢爛。
 そして運ばれてきた豪勢な料理や甘味を感心したように見ていたフリルだけれど。
「ふえ? 私は作れないのかってアヒルさん、レシピを教わっても無理ですよ」
 アヒルさんの声に首を傾けながら、ふるりと首を横に振る。
「たまには満漢全席とか食べたかったのにって、アヒルさんはただいろいろな料理をたくさん食べたいだけじゃないんですか? 満漢全席は世界が違いますよ」
 満漢全席は、中国で最も豪華な宴会料理の一つ。
 数日間にわたって、100種類以上にも及ぶ料理を食べ尽くす壮大な饗宴であるが。
 けれど実際そんなに食べられないし、数日にわたって宴をしようにも妖が裂け目から現れてしまうから。
 満漢全席はそれ相応の世界で、またいつかの楽しみにしながらも。
「でも、アヤカシエンパイアの料理はひとつひとつの見た目も奇麗に盛り付けられていて、それがたくさん用意されているのはすごいですよね」
 フリルはアヒルさんと一緒に、食べ慣れているものとはちょっぴり違った食材や調理法で作られた「饗応料理」や花式部お手製の甘味を、美味しくいただきます!

大成功 🔵​🔵​🔵​

白矢羽・尭暁
ふふ、山中の邸宅とくれば都より煩わしいこともない
僕も目一杯楽しめそうだ
主人に挨拶をしつつ、食事は後でいただこう
僕の世話をしなければとなるだろうし…それは僕の従者の仕事だから彼以外に任せたくないし

だから庭でゆっくりさせてもらおう
甘い香りに誘われるように思うままに
…なんだかちょっと懐かしい気がする、この香り
どこかで…うーん、わかんないや
本当に星のような形をしている…かわいらしい花だな

…父上も、この花を見たことはあったのだろうか
どこへでも妖ありと聞けば行っていたそうだからここにも来たことあるかもしれないなぁ

さて、妖が出る時間までもう少しか…
一人で花を見るのも良いけれど、やはり傍らにいて欲しいものだ



 足を運んだのは、京の都から離れた、いわゆる僻地だと言える場所であるのだけれど。
 手厚く迎えられた後、白矢羽・尭暁(金烏・f42890)は金の瞳を柔く細める……僕も目一杯楽しめそうだ、と。
 何せ尭暁は皇族、都では皇族として在らねばならないという意識がどうしても常に付きまとうが。
「ふふ、山中の邸宅とくれば都より煩わしいこともない」
 様々な思惑が垣間見える華やかな宴よりも、妖退治の方が尭暁にとっては余程気が楽であるし。
 妖が現れるまで時間もあるということだから、平安結界維持のためにも歓待を受けようと思うから。
 主人であり従者に文を送ったという花式部に挨拶をしつつ、食事は後でいただくことにする。
 都よりも断然気は楽とはいえ、やはり自分が皇族であることは屋敷の者達は心得ているだろうから。
(「僕の世話をしなければとなるだろうし……」)
 それに何より、尭暁は思うから。
 ……それは僕の従者の仕事だから彼以外に任せたくないし、と。
 とはいえ、猟兵として転送の任がある彼は、妖の脅威が去るまでは此処には赴けないから。
 ふわり漂う甘い花の香に誘われるかのように。
(「だから庭でゆっくりさせてもらおう」)
 暫し、思うままにふらりと庭を散策してみることにする。
 そして金の瞳にも咲かせるのは、この世界では珍しい橙色の花たち。
「本当に星のような形をしている……かわいらしい花だな」
 少なくとも、己の邸宅がある都では見ない花であるはずなのだけれど。
 尭暁はふと首を傾けて紡ぎ落とす。
「……なんだかちょっと懐かしい気がする、この香り」
 それから、どこかで……と記憶を辿ってみるも。
(「……うーん、わかんないや」)
 何故懐かしく感じるのか、それは思い出せなかったものの。
 脳裏にふと蘇るのは、花を愛でては微笑む、花がとても好きであった父のこと。
 そんな記憶の中の父へと、尭暁はそっと思いを馳せる。
「……父上も、この花を見たことはあったのだろうか」
 どこへでも妖ありと聞けば行っていたと、そう嘗て父の従者であった彼からも話は聞いているから。
 ここにも来たことあるかもしれないなぁ、なんて思えば、より星の如き小花たちが愛しく感じられて。
 甘やかな香りに包まれながら、穏やかなひとときを過ごす尭暁であるが。
 けれど父と同じように、皇族として民を守るために。
「さて、妖が出る時間までもう少しか……」
 妖が現れると言う話ならば、気も引き締めなければとも思うし。
 それに、こうやって一人で花を見るのも良いのだけれど。
 星の如き小花がひらりと舞っては降り積もる中、尭暁は思ってしまうのである――やはり傍らにいて欲しいものだ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ココ・ロロ
ねこのルルさんと

ルルさんのいたお屋敷とは違うところですが
ここもとってもきれいなところで…
ふふ、つかまえられそうですか?
風に舞う星降る花を追いかける友と
あっちへこっちへ
のんびりともに行けば
いつの間にやら小さな背に星が咲いていて
ルルさん、背中にお花が…どうしましたか?
…ココにも?
軽く手で払えば花がはらはらと
えへへ、おんなじですね

お散歩を楽しんだら…甘いの!
ルルさんも食べられるおやつあるでしょうか
なくてもココが持ってきていますよ
ココは花粉熟というのと金木犀のシロップ
ほんのり甘くて落ち着く味ですね
シロップはぽかぽかあまあま
ふふ、おねむですか?
ココのお膝でよければいくらでも
まあるい背を撫で
おやすみなさい



 こもれびのような子と出会ったのも、この世界の、同じ様な山中にある邸宅で。
 その時は、キラキラお星さまが輝く七夕の日であったけれど。
 今回は、秋の彩りに染まった山の景色を臨む、橙色の小花が甘やかに香る屋敷。
「ルルさんのいたお屋敷とは違うところですが、ここもとってもきれいなところで……」
 そんな山中の邸宅にやって来たココ・ロロ(ひだまり・f40324)は、今日はこもれびねこのルルと一緒。
 ルルも懐かしく思うのか、ココとお揃いで尻尾をふりふり、わくわくご機嫌で。
 思わずココは笑み咲かせてしまう。
「ふふ、つかまえられそうですか?」
 てしてしぴょこん、秋空に飛び跳ねては、星を捕まえんとしているようなその姿に。
 そんな、風に舞う星降る花を追いかける友と一緒に、あっちへこっちへ。
 のんびり広い庭をお散歩していれば、ココはふと気づく。
 いつの間にやら、小さなもふもふの背に、小さな星がたくさん咲いていることに。
 でもそれは何も、こもれびの子だけではなくて。
「ルルさん、背中にお花が……どうしましたか?」
 そう言った自分にも、にゃあと鳴くルル。
 そして……ココにも? って気づいて、軽く手で払ってみれば、花がはらはらと舞い踊って。
 ココは尻尾をふりふり、友と一緒に星の花を降らせながらも笑み咲かせる――えへへ、おんなじですね、なんて。
 そしてやはり、お散歩を楽しんだら……甘いの!
 ということで、これも猟兵のお仕事のひとつ、屋敷にもどってもてなしを受けることにして。
「ルルさんも食べられるおやつあるでしょうか」
 ……なくてもココが持ってきていますよ、と用意もしてきたのだけれど。
「猫様には、乳粥をご用意いたしましょうね」
「わ、ねこ用のミルクのおかゆ……でしょうか? ふふ、おいしそう」
 この時代の猫さんのごはんだという、乳粥を用意してくれたから。
 ココも花粉熟と金木犀のシロップを一緒にいただきながら、ほっこり。
「ほんのり甘くて落ち着く味ですね」
 シロップはぽかぽかあまあまで、甘味も素朴で優しい味。
 そして金木犀の花と追いかけっこして、おなかもいっぱいになれば。
「ふふ、おねむですか?」
 ……ココのお膝でよければいくらでも、って。
 ころんと寝転がってうとうとするルルの、まあるい背を撫でてあげて。
 ココも甘い香りに誘われるようにふわり、友と一緒に仲良くあくびをひとつ。
 星のように振る小花をお揃いで纏いながら――おやすみなさい、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミルナ・シャイン
頼典様(f42896)と

金木犀の花咲く庭を散策しつつ。
金木犀ってアヤカシエンパイアではまだ珍しい花ですのね、頼典様も金木犀は初めてかしら。いい香りでしょう?
そうなんですのね、この庭の金木犀も旅をしてきたのかしら。

実は先日、友人に金木犀の香りの練り香水をいただきまして。
秋風の吹きにし日よりいつしかと…の和歌を冠した香水ですの。

君待つと
桂花を散らす
秋風に
えもいわれぬ
花の香ぞする

この香りでわたくしを思い出してもらえましたら。
そうですわ、小花を集めて匂い袋を作りませんか?
お揃いの香りを身につけるのも素敵だと思いますの!
わたくしもますます金木犀の香りが愛おしいものになりそうですわ。初恋に酔ってますもの。


八秦・頼典
ミルナ様(f34969)と

ミルナ様と金木犀が咲き乱れる庭園を散策し…
平安結界で作られる草花は基本的にその地に根ざした記憶そのものだ
京の街にも金木犀がないのはその為でもあるし、多分だけどここの対妖要塞にあるのは異なる種族が異なる世界に居る神隠しと同じ方法で他世界よりやってきた種子が芽吹いたのだろう
だからボクも匂いを嗅ぐのは初めてで…うん、どこか懐かしく落ち着いた香りだ
ミルナ様の着物から珍しい香りがしてたと思えば、そうだったんだね

風わたる
月の桂の
香を嗅げば
恋ひしき人の
袖の香ぞする

それは良いね
確か…金木犀の花言葉は「初恋」や「陶酔」だったかな?
この匂い袋を持ち歩けばミルナ様と常に一緒な気がするよ



 山中の邸宅は、京の都にある屋敷にも見劣りしない豪華な神殿造。
 けれど、この屋敷で今見ることが出来るのは、この世界では珍しい景色。
 まるで星のような淡い橙色の小花がひらりと降り積もり、甘い香がふわりとする庭へと足を向けて。
 ミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)と八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)は、その花と香が咲き乱れ漂う只中、暫し歩いて散策を。
「金木犀ってアヤカシエンパイアではまだ珍しい花ですのね、頼典様も金木犀は初めてかしら。いい香りでしょう?」
 話に聞けば、金木犀はこの平安の世では、咲いているのを滅多に見ないという話。
 そしてミルナの言葉に頷きつつも。
「平安結界で作られる草花は基本的にその地に根ざした記憶そのものだ」
 今ここに此花が咲いていることは不思議ではないと、頼典は思う。
「京の街にも金木犀がないのはその為でもあるし、多分だけどここの対妖要塞にあるのは異なる種族が異なる世界に居る神隠しと同じ方法で他世界よりやってきた種子が芽吹いたのだろう」
 アヤカシエンパイアの景色は、平安結界が見せる幻。
 そしていくつもの他世界が存在し、それらの世界では金木犀は秋の風物詩というほどに定番の花だというから。
 頼典が言うように、何の因果か繋がりか、界を渡ってきて咲いているのだろう。
 ミルナも彼の声に耳を傾けながら、改めて咲き誇る金木犀の花を一緒に見上げてみる。
「そうなんですのね、この庭の金木犀も旅をしてきたのかしら」
 それからふと、頼典は微か首を傾ける。
 この世界では珍しい花がここで咲くことは、不思議ではないのだけれど。
「だからボクも匂いを嗅ぐのは初めてで……うん、どこか懐かしく落ち着いた香りだ」
 京の都では見かけないはずの花の香りに、覚えがある気がするのだ。
 だがその理由は、すぐにミルナの口から紡がれる。
「実は先日、友人に金木犀の香りの練り香水をいただきまして。秋風の吹きにし日よりいつしかと……の和歌を冠した香水ですの」
「ミルナ様の着物から珍しい香りがしてたと思えば、そうだったんだね」
 そう、彼女がこの甘やかな香りを纏っていたのだから。
 そしてミルナは、金木犀咲く庭で一句。
 
 君待つと
 桂花を散らす
 秋風に
 えもいわれぬ
 花の香ぞする

「この香りでわたくしを思い出してもらえましたら」
 その思いを紡いだ言の葉たちに、頼典も流れるように詠んだ返歌を贈る。
 
 風わたる
 月の桂の
 香を嗅げば
 恋ひしき人の
 袖の香ぞする

 それから、ミルナは彼にこんなお誘いを。
「そうですわ、小花を集めて匂い袋を作りませんか? お揃いの香りを身につけるのも素敵だと思いますの!」
「それは良いね。確か……金木犀の花言葉は「初恋」や「陶酔」だったかな?」
 頼典も彼女の提案に、すぐに頷いて返す。
 ……この匂い袋を持ち歩けばミルナ様と常に一緒な気がするよ、って。
 そしてミルナも、星の如き小花をふたりで拾いながらも。
「わたくしもますます金木犀の香りが愛おしいものになりそうですわ」
 甘やかな笑みを綻ばせながら告げる……初恋に酔ってますもの、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

八坂・詩織
私もちょっと、金木犀のお菓子を作りたくて…厨をお借りしてもよろしいでしょうか。よかったら花式部さんも一緒に。
アヤカシエンパイアだとまだ練り切りってお菓子はないですよね。
こうして白玉粉と、砂糖…の代わりに甘葛でもいいかな?
水を足して白玉粉を溶かしたら白あんを加えて、火にかけながら水分が抜けるまでよく練って、適度な固さになったら火から下ろして冷ます。
これが練り切りです。今回はクチナシの実を煮出した色素液で練り切り餡を染めます。
栗名月にちなんで栗の甘露煮を練り切りで包んで、仕上げに金木犀をあしらって完成!
どうでしょう?
(辰乃丞さんにも食べてもらいたいな…)

私も花式部さんの作られた甘味いただきますね。



 山中の邸宅に到着すれば、丁寧な出迎えを受けて。
 甘やかな金木犀の香りがする屋敷内を案内された後、猟兵達をもてなす宴がはじまるのだけれど。
 八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)が向かう場所は、金木犀が咲き誇る美しい庭でも、もてなし料理がずらりならぶ食卓でもなくて。
「私もちょっと、金木犀のお菓子を作りたくて……厨をお借りしてもよろしいでしょうか」
 ……よかったら花式部さんも一緒に、と。
 この山中の邸宅の主人である花式部も誘って、邸宅にある厨へ。
 勿論、料理が好きな花式部はその申し出にとても喜んでいるし。
 平安貴族が厨で料理をすることは普通はないことのようだが、よく花式部も訪れるのか、料理人達も慣れっこのようだ。
 ということで、詩織が作ってみるのは。
「アヤカシエンパイアだとまだ練り切りってお菓子はないですよね」
 この平安の世にはない菓子、練り切り。
「ねりきり、でございますか? どのような甘味なのでしょう?」
 花式部も、はじめて知る異世界の甘味がどんなものか、興味深々。
 だから詩織はひとつひとつの工程をしっかりと説明しつつ、作業を進めていく。
「こうして白玉粉と、砂糖……の代わりに甘葛でもいいかな?」
 この世界にないものも、あるもので工夫して代用してみつつも。
 水を足して白玉粉を溶かしたら、それに白あんを加えて。
 それを火にかけながらも水分が抜けるまでよく練って、適度な固さになったら火から下ろして冷ませば。
「これが練り切りです」
 けれど、まだこれで出来上がりではなくて。
 今回はクチナシの実を煮出した色素液で練り切り餡を染めてみることにしつつ。
 栗の甘露煮を練り切りでくるりと包むのは、今宵の栗名月にちなんでみたから。
 それから最後の仕上げに、ぱらりと金木犀の花をあしらって咲かせれば――完成!
「どうでしょう?」
「まあっ、とても美しい甘味だわ」
「私も花式部さんの作られた甘味いただきますね」
 楽しく調理が終われば、互いに作ったものを味わうことにしつつ。
(「辰乃丞さんにも食べてもらいたいな……」)
 きっと甘い物が好きな彼も、喜ぶこと間違いないだろう。
 だから十三夜が無事に迎えられるように――歓待を受け、甘やかな今の時間を楽しみつつも英気を養うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『悪霊陰陽師』

POW   :    赤鬼剛力薙
【赤鬼型式神の太い腕】の横薙ぎで、近接範囲内の全員を攻撃する。近接攻撃を仕掛けてきた敵には先制攻撃可能。
SPD   :    青鬼乱撃陣
【青鬼型式神の鋭い爪や角】で近接攻撃する。低威力だが、対象が近接範囲から離脱するまで何度でも連続攻撃できる。
WIZ   :    陰陽爆砕撃
【青鬼の鋭い爪や角】で装甲を破り、【赤鬼の怪力】でダウンさせ、【陰陽爆砕符】でとどめを刺す連続攻撃を行う。

イラスト:黒丹

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ふわり甘やかな香り漂う秋のひとときを台無しにする、無粋な輩ども。
 日が沈む頃、|それ《・・》それは発生した。
 秋の空を割く、妖の裂け目が。
 そして裂け目から現れるのは、魑魅魍魎。
 けれど、事前に妖が出現することは把握済だから。
「有象無象の妖は私達が引き受けますので、猟兵の皆様は首領の討伐をお願いいたします」
 屋敷の平安貴族達が周囲の配下を相手取る間に、猟兵達はボスの元へと急ぎ向かう。
 「対妖要塞」と化した邸宅で妖を迎え撃ち、世に決して放たぬように。
 金木犀咲く十三夜の美しい夜を、穏やかに過ごすためにも。
白矢羽・尭暁
このような場所にまで姿を現す妖か
素敵な場所を荒らさないでほしいね、早く倒してしまおう

これはまた、強そうなものを連れている
けれど…僕の陰陽師の方が、悪霊となったあなたより強いな
彼が傍にいないと勝てないということはない。でも一緒にそばで戦ってくれたほうが僕も自由に動けるのだけれど

今日は傷を負わぬように…でも自分のつけた傷ならいいか
僕の血を少しばかり味あわせてあげよう
その青鬼と赤鬼よりも、僕の陰陽師の青龍のほうが強くて美しいな
見せてあげられないのが残念だ

攻撃しているのは、僕ではなくて幻だよ
攻撃を受けないように気を付けなければ
傷があればあとで起こられてしまう
怒った僕の従者のほうが、妖よりも怖いし



 甘やかで穏やかな秋のひとときが、一変。
 空に裂け目が生じ、現れるのは無粋な魑魅魍魎ども。
 けれどふるりと小さく首を横には振るものの、白矢羽・尭暁(金烏・f42890)が慌てる様子は微塵もない。
「このような場所にまで姿を現す妖か」
 悪霊陰陽師をはじめとした妖が現れることは、彼の従者が予知し伝えてくれているのだから。
 ……素敵な場所を荒らさないでほしいね、早く倒してしまおう、と。
 すらりと抜くのは、尊き血を好んで喰らう愛刀。
 そして相手を見遣れば、話に聞いていた通りの陰陽師……死後に大悪霊となったモノの姿。
「これはまた、強そうなものを連れている」
 その力は絶大なものとなる、とはいえ、尭暁が怯むことはない。
 だって、その禍々しき姿を前にしても、こう思うのだから。
「けれど……僕の陰陽師の方が、悪霊となったあなたより強いな」
 勿論、他に仲間も赴いているし、ひとりでも祓える。従者が傍にいないと勝てないということはないのだが。
(「でも一緒にそばで戦ってくれたほうが僕も自由に動けるのだけれど」)
 共に戦えば、自分が動きやすいようにしてくれるのが、彼の仕事でもあるのだ。
 けれど、いないから、できることもある。
 従者が過度に心配するだろうし、今日は傷を負わぬように……と思いつつも。
「僕の血を少しばかり味あわせてあげよう」
 ……でも自分のつけた傷ならいいか、なんて。
 彼が聞いたらきっと眉を顰めるだろうことも、今なら少しだけ。
「その青鬼と赤鬼よりも、僕の陰陽師の青龍のほうが強くて美しいな」
 ……見せてあげられないのが残念だ、と。
『――!』
 紡いだ瞬間、尭暁がかわりに見せるのは、大量の神仏の幻影。
 悪霊陰陽師も、鋭い爪や角をふるう青鬼や、怪力を誇る赤鬼を差し向け、陰陽爆砕符を飛ばしてくるも。
「攻撃しているのは、僕ではなくて幻だよ」
 尊き血が見せる幻影に翻弄され、尭暁を捉えきれない。
 けれど相手は大悪霊、元は陰陽師と聞けば、油断はならないから。
(「攻撃を受けないように気を付けなければ。傷があればあとで怒られてしまう」)
 敵の動きを十分警戒しながらも、己の血に惑う悪霊どもを祓うべく刃を振るう。
 ……怒った僕の従者のほうが、妖よりも怖いし、と。
 だって怪我などしようものなら、過度に心配されると同時に――くどくどとお説教されることが、目に見えているから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、妖さんが来てしまいました。
戦闘準備だって、アヒルさんはなんで饗応料理を食べているんですか?
ふえ?アヒルさんの活躍は166秒後だから、まだのんびりしてていいって、だったら私もまだのんびりしてたいですよ。
ふええ、私は妖さんの攻撃を引き付ける役があるからダメって、アヒルさんばかりズルいですよ。
ふえ?妖さんに近づかれたら大変だから、必死に逃げないとなって、他人事のように言ってないでくださいよ。
食後の運動にピッタリって、アヒルさんもちゃんと戦ってくださいよ。



 満漢全席、とはいわないものの、美味しいものでいっぱいのひとときであったのに。
「ふええ、妖さんが来てしまいました」
 フリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)は、空を割くようにできた裂け目を、大きなつばの帽子を手で押さえつつ見上げるも。
 ふと視線を移すのは、いまだもぐもぐと。
「戦闘準備だって、アヒルさんはなんで饗応料理を食べているんですか?」
 豪華なおもてなし料理を食べている、アヒルさんの姿。
 けれどそんなフリルの声を聞いても、戦う気配をみせないものの。
 食べながらも主張するアヒルさんの声に、フリルは瞳を瞬かせる。
「ふえ? アヒルさんの活躍は166秒後だから、まだのんびりしてていいって」
 そう、アヒル真拳『アヒル座流星群』が展開するのは、アヒルさんが言うように166秒後。
 だからと166秒間、饗応料理を満喫しようとしているその様子に。
 ……だったら私もまだのんびりしてたいですよ、なんて。
 フリルも、そう口にするのだけれど。
「ふええ、私は妖さんの攻撃を引き付ける役があるからダメって、アヒルさんばかりズルいですよ」
 それは却下です!?
 いや、166秒の間にも、裂け目から現れた悪霊陰陽師達が邸宅に迫っているから。
 アヒルさんは粗方饗応料理を平らげた後、翼をばさりと広げて。
 アヒルさんが取らんとする次の行動に、フリルは再び瞳をぱちり。
「ふえ? 妖さんに近づかれたら大変だから、必死に逃げないとなって、他人事のように言ってないでくださいよ」
 そして……食後の運動にピッタリって、アヒルさんもちゃんと戦ってくださいよ、って。
 そうに告げるフリルは、まだ気づいてはいない。
 166秒後に自身も、166体のかジェットのアヒルさんたちの嘴の突きの巻き添えになることを。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八坂・詩織
|起動《イグニッション》!

髪を解き、瞳は青く変化。防具『雪月風花』を纏う。
月を愛でる気はなさそうですね、この後のお月見のためにも早々にご退場願いましょうか。

なるほど、鬼型の式神との連携…赤鬼の方は完全にパワー型ですね。でしたらこれはどうでしょう?
UC「ファンガスプリズン」でファンガスで作った網を展開。太い腕で横薙ぎしてきたところを網で絡め取る。どんなに力自慢でも、運動能力を吸収されては動けないでしょう。
動けない隙に雪女の【氷の吐息】を吹きかけ【凍結攻撃】。
月にはほとんど大気がないので、太陽の光が当たらない夜の面の表面温度は約マイナス170度にもなるんですよ。少しは夜世界の月体験できましたね?



 山中の邸宅の穏やかな空気ががらりと変わったのは、見上げる空が割けたから。
 そして裂け目から出現する妖どもが、風流で美しい秋の景色を地獄絵図に変えようと押し寄せる。
 けれど、妖の襲撃があることは事前に把握済。
 八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)もはらりと髪を解けば。
 ――|起動《イグニッション》!
 その身に纏うは、袖と裾にピンクの花と蝶がひらり舞う、白く美しい『雪月風花』。
 瞳も青く変化し、雪女としての姿を解放し迎え撃つは、悪霊陰陽師。
 この大悪霊達は、元は平安貴族であったという話だが。
「月を愛でる気はなさそうですね、この後のお月見のためにも早々にご退場願いましょうか」
 風流を解する心をなくした無粋な魑魅魍魎は、この場には相応しくないから。
 再び秋の夜を楽しめるように、早急に全て祓うのみ。
 そんな詩織目掛け悪霊陰陽師が放つは、赤き鬼。
 けれど慌てることなどなく、詩織は敵の攻撃手段を見極めて。
「なるほど、鬼型の式神との連携……赤鬼の方は完全にパワー型ですね。でしたらこれはどうでしょう?」
 ――網にかかると動けませんよ。
『……ッ!?』
 赤鬼型式神が横薙ぎしてきた瞬間、その太い腕を絡め取るのはファンガスで作った網。
 そしてこの網は、ただ敵を覆うだけではない。
「どんなに力自慢でも、運動能力を吸収されては動けないでしょう」
 触れた敵から運動能力を吸収する、眼前の赤鬼のような剛腕を誇る相手には非常に効果的で。
 折角の剛力を振るえず動けない隙に、詩織が敵へと見舞うのは、吹きかけたモノを凍結させる氷の吐息。
 冴える秋の夜に浮かぶ月の下、氷像と化した鬼たちや無粋な悪霊にも、その身をもって教えてあげる。
「月にはほとんど大気がないので、太陽の光が当たらない夜の面の表面温度は約マイナス170度にもなるんですよ」
 ……少しは夜世界の月体験できましたね? なんて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八秦・頼典
ミルナ様(f34969)と

そう言えば、他の世界では「庭に金木犀を植えてはいけない」という迷信もあったか
日が落ちればより香りを強く感じるとなると、きっと僅かな裂け目でも向こうにも届いているだろうけど…それが妖を招く導線にもなりえるかもだ
ま、妖を迎え討つ対妖要塞に招いていれば強い香りで邪気や穢れを祓う魔除けの花木として機能しているだろうけどね

猟奇探偵の血が騒いで講釈が長くなってしまったが、無粋な妖達と怨霊にはご退場願おう
前衛はミルナ様に任せ、ボクは後衛から『妖祓の調べ』を奏でよう
雅な【楽器演奏】による【浄化】が金木犀の【魔除け】を増幅させ、青鬼の力を削げれば重畳
阿近と吽近もミルナ様の援護を頼むよ


ミルナ・シャイン
頼典様(f42896)と

さすが陰陽師探偵、博識ですわね!そこまで考察できるなんて。金木犀が魔除けになるなら先ほど作った匂袋もきっとわたくし達の助けになってくれますわね。

見た感じ、あの鬼達は近接特化型のようですわね。頼典様、わたくしの後ろに。わたくしが攻撃を引き受けますわ。護りは騎士の本分ですの!
盾を構えUC「シールドファランクス」発動。
攻撃はできませんが、正面からの攻撃は全て防ぎますから。後ろはおまかせしますね。陰陽師と騎士の連携をお見せしましょう!

頼典様のUCによる浄化で青鬼の力を削ぎ、阿近様と吽近様の援護を受けつつUC効果で盾から光の障壁を伸ばし反撃。護るだけと思ったら大間違いですわよ!



 予知通りに妖の裂け目が発生し、妖の群れが山中の邸宅へと押し寄せる。
 だがこの邸宅は、ただの豪華な屋敷ではなく「対妖要塞」。
 平安貴族達が配下の妖の対処にあたる間、猟兵が悪霊陰陽師を祓うべく迎え撃つ。
 そんな戦場と化している秋空の下、八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)はふわり漂う甘香を感じながらもふと思い出す。
「そう言えば、他の世界では「庭に金木犀を植えてはいけない」という迷信もあったか」
 金木犀は想定した以上に大きく生長することがあり、放置すると手がつけられなくなってしまうこともあるため、安易に庭に植えてはいけないと言われているようだけれど。
「日が落ちればより香りを強く感じるとなると、きっと僅かな裂け目でも向こうにも届いているだろうけど……それが妖を招く導線にもなりえるかもだ」
 橙色の小花は、夜に映える星のような見目と彩りを咲かせていて。
 その甘い花の香、空を割く妖の裂け目まで届いているかもしれないと思うほどに豊潤に香っている。
 けれど同時に、風水的には縁起の良い木でもあり、特に裏鬼門とされる南西に植えると邪気が祓われるともいわれているし。
 この山中の邸宅が存在する意味を思えば、頼典は庭に咲く金木犀にもこう納得がいくのだ。
「ま、妖を迎え討つ対妖要塞に招いていれば強い香りで邪気や穢れを祓う魔除けの花木として機能しているだろうけどね」
「さすが陰陽師探偵、博識ですわね! そこまで考察できるなんて」
 ミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)は彼の話を聞きながら、キラキラと尊敬の眼差しを向けつつ。
 青い瞳を細め、微笑みを咲かせながらも続ける。
「金木犀が魔除けになるなら先ほど作った匂袋もきっとわたくし達の助けになってくれますわね」
 そんなミルナに、頼典も柔く愛しげな視線を返しつつも頷いて。
「猟奇探偵の血が騒いで講釈が長くなってしまったが、無粋な妖達と怨霊にはご退場願おう」
 邸宅の平安貴族と先行する仲間の攻撃で、妖の軍勢も随分と抑えられていて。
「見た感じ、あの鬼達は近接特化型のようですわね」
 ミルナは青鬼型式神の鋭い爪や角による攻撃方法を確りと改めて把握しながら。
「頼典様、わたくしの後ろに。わたくしが攻撃を引き受けますわ」
 ――護りは騎士の本分ですの!
 刹那発動するは、シールドファランクス。ダイヤモンドや水晶で作られた、水の透明感と光を放つシールドを構えれば。
 攻撃こそできないものの、迫る青鬼の正面からの攻撃は全て必ず防ぐ鉄壁の防御。
 けれど、発動中に攻撃できずとも問題はないのだ。
「後ろはおまかせしますね。陰陽師と騎士の連携をお見せしましょう!」
 瞬間、戦場に響く音色は、聴く者の心を震わせる軽やかで迫力のある、まさに「舞い立ち昇る龍の鳴き声」が如しもの。
 前はミルナに任せ、後衛に位置取る頼典が五月雨の龍笛で奏でるは、妖祓の調べ。
 雅な楽器演奏による浄化の音色はきっと、金木犀の魔除けを増幅させるだろうから……青鬼の力を削げれば重畳、と。
「阿近と吽近もミルナ様の援護を頼むよ」
 荒々しく燃え盛る炎の如き毛並みと気性を持つ阿近と、静かなる激流の渦が如き毛並みと気性を持つ吽近。獅子と犬に似た霊獣達を彼女の元へと差し向ければ。
 青鬼型式神が繰り出す鋭い爪や角の攻撃を、ミルナは正面から確りと受け止めつつも。
 悪しき存在の魂や精神を攻撃する頼典の調べを背に刹那、繰り出す。
「護るだけと思ったら大間違いですわよ!」
『……ッ、!!』
 悪霊陰陽師の身を貫くべく伸ばした光の障壁を。
 そして思わぬ反撃に大きく揺らいだ敵の首領を討つべく総戦力でたたみかければ、悪霊陰陽師は勿論のこと。全ての妖を祓うのも、もう時間の問題。
 妖の裂け目など、十三夜の月が美しく輝く空には不似合いもいいところだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『貴族の宴』

POW   :    大いに飲み食いし、主催者のもてなしを褒め称える

SPD   :    他の参加者と共に遊戯や歌に興じる

WIZ   :    花や月を愛で、その美しさを語らう

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 山中の邸宅に迫る妖を全て祓い、妖の裂け目も無事に塞ぎ終えれば。
 まるで何事もなかったかのように、静かな秋の夜の風景が戻ってくる。
 そして、猟兵達に依頼された仕事はあとひとつ。
 平安結界を維持し強固にするための、十三夜の宴に参加すること。

 月見といえば、十五夜の方が馴染みが深いかもしてないが。
 新月から13日分満ちた月は、完璧な美しさをもつ十五夜に対して、何か足りない、その未完成さが美しいとされていて。
 晴れる日が多く、「十三夜に曇り無し」という言葉もあるほどだ。
 また、十三夜の月は、中秋の名月の約1ヵ月後であることから「後の名月」とも呼ばれ、貴族達にも愛されている。
 そんな十三夜の月を愛でる宴が、これから山中の邸宅で催されるという。
 夜の邸宅や庭には数多の竹灯籠が灯され、晴れた夜空に浮かぶ月明かりが仄かに明るく降り注いでいて。
 夜になっても、星のように小花咲く金木犀もふわり、甘い香りを漂わせている。
 そして昼間の宴に引き続き、もてなしのための食事「饗応料理」や屋敷の主人である花式部手製の金木犀の甘味も勿論。
 十三夜は栗名月とも呼ばれ、栗や豆の収穫を祝うものであるため、栗や豆などを使った料理や甘味も振舞われる。
 蒸して粉にした「|平栗子《ひらぐり》」、石焼きにして甘みをつけた「|甘栗子《あまぐり》」、乾燥させて皮をむいた「|搗栗子《かちぐり》」など、平安で食されている手法で栗をいただいてもいいし。
 「烏豆」という現代の黒豆、炒った大豆を粉にしたきな粉を餅にまぶしていただいたり、茹でた枝豆などをつまむのも良いだろう。
 それに、猟兵の皆にも馴染みのあるものをと、辰乃丞が他世界から調達してきた、栗饅頭や栗羊羹、栗大福や豆大福、栗ごはんや豆ごはんなどもいただけるし。
 月見といえば欠かせない、月見団子も用意されている。
 お供えする数はやはり、十三夜にちなんだ13個。白い紙を敷いた三方の上に、山のように積み重ねて、月が見える場所に供えるのであるが。
 勿論、美味しくいただく分もあるから、そのままシンプルにでも、みたらしや餡でいただいてもいいだろう。
 そして飲み物も、成人していてば貴族達がふるまう地酒であったり、辰乃丞が用意した金木犀の甘い酒・桂花陳酒や金木犀リキュールなどの酒がいただけるし。
 未成年であったり酒が苦手な人にも、ノンアルコールの金木犀シロップのお湯割りで、月見酒をいただいている気分が味わえるだろうし、勿論茶なども用意されている。
 池の水面に映る月を眺めたり、杯に月を映した月見酒を酌みながら、観月の宴に興じるのも風流だ。
 そんな十三夜の宴を、美味しく楽しんでもいいし。
 竹灯籠灯る、金木犀咲く秋の夜の庭や見事な寝殿造の邸宅をゆるり散歩するのも良いし。
 昼同様に金木犀の匂い袋を作ってみたりだとか。貴族達が披露する舞いや演奏に耳を傾けたり、逆に演者として舞や演奏を披露しても喜ばれるだろう。

 ということで、平安結界の維持や強化のためにも。
 十三夜の宴に参加して目一杯楽しむことも、猟兵としてやるべき仕事であるから。
 さあ、金木犀が咲き香る十三夜の宴を――平安の世の秋の夜長を、それぞれ好きなように楽しもう。

<マスターより>
 第1章でおこなえたことは、第3章でもしていただけます。
 第1章の断章も参考にしてみてください。
 他にも、持ち込みなどもOK、食べ物や飲み物も平安のものだけでなく、現代に馴染みのあるものもあります。
 OPや断章になくても、できそうなことはご自由にしていただけます。
 平安にないものやないことなどもできそうならしていただいて構いませんし、逆に貴族達の興味をひいて物珍しがられるかもしれません。
 邸宅の主の花式部や貴族達、グリモア猟兵の辰乃丞へのお誘いあればご一緒します。
 基本、静かにまったりと過ごすといった雰囲気かとですが。
 過度に騒がしくとか迷惑行為でなければ、賑やかなことも喜ばれるかと。
 ご自由にお好みで、山中の邸宅での秋の夜をお過ごしいただければです。
風魔・昴
【星月夜】

流石平安の世だなと思う
暫く月を見上げてから持ってきた包みを開けて
「栗名月だから栗金飩を作ってみたの」
蒸した栗を裏漉しして砂糖を混ぜて茶巾絞りした和菓子
皆に勧めて

さて食事も楽しみましょうか
私は桂花陳酒を頂くわ
「うん、甘くて美味しい」
栗ご飯の味も丁度良く
食後に甘栗も頂こうかな


「ふぅ幻想的で美しいわ」
竹灯籠の灯がゆらゆらと
夜空の主役は月だと控えめな星達
大切な仲間と見上げる月は優しくて

十三夜
優しく愛でれば
幼少の
我が身と重なり
微笑む今

成熟前の月
人だと成人前になるのかな
両親の庇護の中
何も気にしないで育った幼少期をふと懐かしく
(そんな幸せをこの世界の人達も過ごせるように頑張らなくっちゃ)
そう誓った


鹿村・トーゴ
【星月夜】参加

相棒の鸚鵡ユキエの額を撫で
万葉の唄にあったねェ
ももしきの大宮人のまかりいで
あそぶ今宵の月の…って

おひつの栗ご飯から握り飯1個ぶん頂いて柿の葉を皿代わりにのんびり食べる
ん、塩味効いてて美味いー
飲み物は金木犀を散らしたお茶
広口の浅めの器に注いで貰ったら
せっかくの十三夜の月を映してから飲もーかな
ちょい苦みはあるけどこーゆーのも風情、って事で
かちぐりはお土産とユキエのおやつに5つ貰う
ゆかりのUCで茶器や酒器が動くのを眺め
スバルは栗を作ったと聞き
それぞれに
ほー、すごいと感心

おや
ユキエはもう眠い?
あ、月影…十三夜って晴れるし雲も無いから明るいよなー
鹿の声が聞こえそうな月夜を楽しんで

アドリブ可


村崎・ゆかり
【星月夜】
妖の討滅を手伝わずに宴に加るのは、陰陽師として気後れするなぁ。誰が責めるわけでもないけど、これは自分の心の問題。

同行する皆と、夜空がよく見える場所を確保。見上げれば降るような星空に輝く十三夜月。
『掛巻も畏き月弓尊は上絃の大虚を主給ふ。月夜見尊は圓滿の中天を照給ふ。月読尊は下絃の虚空を知食す』
暗闇を照らし出す|月光《Kiranah》に、静かに祈りを。

さ、いつまでも神妙にしてたら宴にならないわ。お櫃でもらった栗ご飯と濁り酒で楽しく過ごしましょ。
器物覚醒。瓶子に徳利、お櫃たち、ちゃんとお酌したりお茶碗によそったりするのよ。でも他の人に見られないように。
煎り大豆を肴に甘栗子もいただきましょ。



 山中の邸宅は無事に、静かに十三夜を向かえて。
 見上げる空には、何もその瞬きを遮る光などない満点の星と、そして僅か欠けた月が浮かんで。
 雲一つない秋の夜に始まるのは、月見の宴。
 鹿村・トーゴ(鄙の伏鳥・f14519)は勿論今宵も共に在る、相棒の鸚鵡ユキエの額を撫でながらも、こう口にする。
「万葉の唄にあったねェ。ももしきの大宮人のまかりいであそぶ今宵の月の……って」
 まさに、眺めている今宵の月はさやけし――清らかな光を降らせていて。
 ももしきの大宮人が宮中を退出して遊んでいると詠まれた光景も、自然と浮かぶようなひととき。
 風魔・昴(星辰の力を受け継いで・f06477)も、暫く月を見上げつつ思う――流石平安の世だな、と。
 これは、平安結界が見せる幻かもしれない。
 けれどそれは、たとえ滅んだ後でも、人々が今もなお愛するものであり、風流の心から成されたものに違いないから。
 そして、そんなトーゴや昴と共に、月を見上げながらも。
 ふたりとは少しだけ違った感情が心に宿るのは、村崎・ゆかり(“紫蘭パープリッシュ・オーキッド”/黒鴉遣い・f01658)。
(「妖の討滅を手伝わずに宴に加るのは、陰陽師として気後れするなぁ」)
 いや、こうやって、このような辺鄙な山中にわざわざ赴いてくれて。
 そして宴を共に楽しんでくれるだけでも、平安結界の維持や強化にもなり、屋敷の主や貴族達はとてもありがたく思っている。
 けれど……誰が責めるわけでもないし、責めるどころか感謝されているのだろうけれど。
 これは、ゆかり自身の、自分の心の問題なのだ。
 そして共に赴いた皆と、確保した夜空がよく見える場所で改めて、夜空へと向けた瞳にも今宵の月を浮かべる。
 見上げた先、降るような星空に輝く十三夜月を。
 そしてゆかりは静かに祈りを捧げる。
 『掛巻も畏き月弓尊は上絃の大虚を主給ふ。月夜見尊は圓滿の中天を照給ふ。月読尊は下絃の虚空を知食す』
 暗闇を照らし出す|月光《Kiranah》に。
 それから昴は、トーゴとゆかりと、暫く月を見上げてから。
「栗名月だから栗金飩を作ってみたの」
 持ってきた包みを開けて、皆へと勧める。
 蒸した栗を裏漉しして砂糖を混ぜて茶巾絞りした、十三夜にぴったりの和菓子を。
 トーゴはそんな、彼女が作ったと聞いたそれぞれを眺めては感心して。
「ほー、すごい」
 ユキエも、スゴイ、と相棒の真似っこを。
 そしてそんな同行する皆の声を聞けば、ゆかりも気を取り直して。
(「さ、いつまでも神妙にしてたら宴にならないわ」)
 昴の和菓子と並べるのは、邸宅の貴族達や今回の案内人に用意してもらったもの。
「お櫃でもらった栗ご飯と濁り酒で楽しく過ごしましょ」
 ほくほくの栗ご飯をお櫃で貰って、月見酒と洒落込む。
 昴も、さて食事も楽しみましょうか、と頷きながらも。
 まずその手に取るのは、庭に咲き誇り甘い香漂わせる花――金木犀の酒。
「私は桂花陳酒を頂くわ」
「せっかくの十三夜の月を映してから飲もーかな」
 トーゴの飲み物にも、金木犀の花がひらり。
 橙色の小花を散らしたお茶を広口の浅めの器に注いで貰って、ゆうらり月を浮かべて口にしてみる。
「ちょい苦みはあるけどこーゆーのも風情、って事で」
「うん、甘くて美味しい」
 昴も、漂う香りと同じく甘やかな味わいに、そう瞳を細めて。
 おかわりはどうかと言わんばかりに動くのは、瓶子に徳利……?
「瓶子に徳利、お櫃たち、ちゃんとお酌したりお茶碗によそったりするのよ。でも他の人に見られないように」
 ――急急如律令! 汝ら、我が下知に応じ、手足の如く動くべし! と。
 それはゆかりが展開した、器物覚醒によるもの。
 式神が憑依することで自由に動ける付喪神となった瓶子に徳利、お櫃たちは働き者で。
 言われた通り、他の人の目には触れぬよう、そっと動いている。
 トーゴは、そんなゆかりの術で茶器や酒器が動くのを眺めながらも。
 おひつの栗ご飯を貰えば、作るのは握り飯ひとつ。
 それを、皿代わりにした柿の葉の上に乗せて。
「ん、塩味効いてて美味いー」
 はむりと、のんびり口にする。
 昴もよそった栗ご飯を食べてみれば、味もほくほく丁度良くて。
「食後に甘栗も頂こうかな」
「煎り大豆を肴に甘栗子もいただきましょ」
「お土産とユキエのおやつの分、かちぐりを貰おーかな」
 十三夜の月を、この世界の秋の味覚を、存分に楽しむ。
 そんな、歓待を受けつつ目一杯楽しむことが、平安結界を維持し強化する力となるのだから。 
 そして、静かに満ちる光たちを見つめる昴。
「ふぅ幻想的で美しいわ」
 竹灯籠の灯がゆらゆらと仄かに揺れて、今宵の夜空の主役は月だと控えめな星達の瞬き。
 何より、大切な仲間と見上げる月は淡く美しく、優しくて。
「おや、ユキエはもう眠い?」
 トーゴは秋風に吹かれながらも心地よさそうにうとうとする相棒にそう紡いだ後、気づく。
「あ、月影……十三夜って晴れるし雲も無いから明るいよなー」
 鹿の声が聞こえそうな、平安の世の月夜を存分に楽しみながら。
 ゆかりも、美味な食と不完全だからこそ美しいとされる月を肴に、ふたり過ごすひとときを満喫して。
 昴はふと、口にする。

 十三夜
 優しく愛でれば
 幼少の
 我が身と重なり
 微笑む今
 
「成熟前の月、人だと成人前になるのかな」
 両親の庇護の中、何も気にしないで育った幼少期をふと懐かしく思いながらも。
 貴族達のもてなしを受けつつ、この平安の世の十三夜月に、誓うのだった。
 ――そんな幸せをこの世界の人達も過ごせるように頑張らなくっちゃ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ココ・ロロ
ねこのルルさんと

夜はすこし冷えますね…
ルルさんはだいじょうぶで…えへへ、抱っこですか?
ふふふ、あったか~い
ぎゅっと抱きしめたら
ぽかぽかひだまりのようなぬくもりが腕いっぱい
えへへ、このままお月見しましょうか

お月見といえばおだんごー!
味のないものならルルさんも食べられますね
小さくちぎってあーんとお口へ
ココのはみたらしちょこっとつけて~…おいし~い!
そういえば…どうしておだんご食べるのでしょう?
お月さまに似てるからー?
今日はくりも食べるのですか?なるほど
じゃあ食べないと?
ルルさんにもすこしだけ
ふふ、みんなにはナイショですよ?
ココはくり大福と豆大福どっちもー!
えへへ、もちもちお月様を食べてるみたいです



 空を見上げれば、晴れた夜空にぽっかりお月さま。
 でも日が落ちれば、ひゅるりと吹く秋風も心なしか冷たくて。
 そろそろ冬毛の時期ではあるのだけれど、ココ・ロロ(ひだまり・f40324)はお耳をふるり。
「夜はすこし冷えますね……」
 そして、今日は一緒の猫のルルへと声をかけるのだけれど。
「ルルさんはだいじょうぶで……えへへ、抱っこですか?」
 抱っこしてってお強請りされれば、ひょいと抱えてあげれ。
「ふふふ、あったか~い」
 ぎゅっと抱きしめたら、ぽかぽかぬくぬく――腕いっぱいの、ひだまりのようなぬくもり。
 そしてココは、折角だから、足を運んでみることにする。
「えへへ、このままお月見しましょうか」
 沢山の竹の明かりが仄か燈る、金木犀が咲いた庭へ。
 とても今日の月は、きれいなのだと聞いているから。
 でも、ほんの少しだけ欠けたお月さまも、きれいなのだけれど。
「お月見といえばおだんごー!」
 やっぱりココの目が向いちゃうのは、美味しいもの!
「味のないものならルルさんも食べられますね」
 てしてしと催促するようなルルにも、味のないお団子を小さくちぎって、あーんとお口へ。
 はむはむルルは、お団子を美味しそうに食べているけれど。
 ココは美味しい味がついているものがいいから。
「ココのはみたらしちょこっとつけて~……おいし~い!」
 とろーり、みたらしにして頬張れば、とっても美味です!
「そういえば……どうしておだんご食べるのでしょう? お月さまに似てるからー?」
 そう首を傾けていれば、そんなココの声が聞こえた辰乃丞が教えてくれる。
「月見に団子を供えるのは、満月に見立てて豊作への感謝と来年の豊作を祈るためです。また、満月の力を分けてもらい、健康や幸せを願うという意味合いもあります。今宵は十三夜ですので、秋の収穫を祝い、その実りに感謝するために、栗や豆などを食べます」
「今日はくりも食べるのですか? なるほど」
 ココはふむふむと頷いてから、こう続ける。
「じゃあ食べないと?」
 というわけで、ルルさんにもすこしだけ。
「ふふ、みんなにはナイショですよ?」
 そして持ってきてもらったのは、もちろん。
「ココはくり大福と豆大福どっちもー!」
 ルルさんとふたりだし、どうせなら両方いただきます!
 そんな大福をわくわく、はむりと口にすれば、ココは空に浮かぶ月をふと見上げて、尻尾をゆうらり。
 ……えへへ、もちもちお月様を食べてるみたいです、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミルナ・シャイン
頼典様(f42896)と

お月見デートですわね!
わたくし琴弾きますわ、よろしければ合奏などしません?
しばし練習中の琴をかき鳴らして。

わたくしもようやくお酒飲める歳になりましたし、次は月見酒といきましょうか。初めてのお酒は頼典様と飲むと決めてましたの。
わたくし桂花陳酒が気になりますわ、お付き合いしてもらえます?

綺麗な色…金木犀の甘い香りがしますわ。
初めてのお酒にどきどきしつつ。
甘口で飲みやすくて、好みのお酒かも…
なんだかふわふわした心地ですわ。

秋風に
香る桂花の
香に匂ふ
恋し君にも
酔ふ月夜かも

少し酔っちゃったかも…なんて肩に寄りかかって甘えてみたり。
(こうやって甘えるのが目当てでもあるのですけど!)


八秦・頼典
ミルナ様(f34969)と

無粋な妖を祓い終えた頃にはすっかりと月が高くなって、十三夜に相応しい名月だ
ミルナ様も張り切っているみたいだし、ボクも笛を奏でて合奏してこの場に雅な調べを奏でる余興を致そう

…ああ、そう言えばミルナ様もお酒を嗜まれる御歳となられていたね
では、ボクも桂花陳酒を頂戴して暫く酒宴の席に
口に含めば金木犀の香りが口の中に広がるけど、度数が少し強めだからミルナ様のペースを早めないように歓談メイン…でもやっぱり初めてのお酒は不慣れだったかな?

桂香の
風も身にしむ
夜半なれば
想ひも我も
君にぞ留む

肩によりかかったミルナ様を受け止めながら返歌を詠いつつ、金木犀の匂いにも酔いながら月を見上げよう



 まるで何事もなかったかのように、静けさと平穏が戻って来た夜。
 八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)は少しだけ欠けた月を見上げる。
 完全ではない姿が風流で美しい、今宵愛でるのはそんな月。
「無粋な妖を祓い終えた頃にはすっかりと月が高くなって、十三夜に相応しい名月だ」
 そしてそんな頼典と一緒に、わくわくと十三夜を楽しむのは、ミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)。
「お月見デートですわね!」
 でも、ただ月を愛でるだけではなくて。
 ミルナが提案するのは、こんな過ごし方。
「わたくし琴弾きますわ、よろしければ合奏などしません?」
 しばし練習中の琴をかき鳴らさんと、張り切って。
 頼典はそんなミルナの姿を微笑ましく見つめながら、頷いて返して。
 彼女の琴に合わせ、共に笛を奏で合奏して――月見に音色を添えるべく、雅な調べを奏でる余興を。
 そして十三夜月の下、音を合わせて楽しく数曲奏であった後。
「わたくしもようやくお酒飲める歳になりましたし、次は月見酒といきましょうか」
 ……初めてのお酒は頼典様と飲むと決めてましたの、と。
 ミルナは彼へと、お誘いという名のお願いを。
「わたくし桂花陳酒が気になりますわ、お付き合いしてもらえます?」
「……ああ、そう言えばミルナ様もお酒を嗜まれる御歳となられていたね」
 頼典はそう紡いで返しながらも勿論。
「では、ボクも桂花陳酒を頂戴して暫く酒宴の席に」
 彼女のはじめてを、共に味わうことにする。
 そして杯に注げば、ミルナは見つめる瞳をキラキラと輝かせて。
「綺麗な色……金木犀の甘い香りがしますわ」
 初めてのお酒にどきどきしつつも、頼典とともに、そっとひとくち。
「甘口で飲みやすくて、好みのお酒かも……」
 頼典も、この世界にはない桂花陳酒を味わいつつ、けれどこうも思う。
(「口に含めば金木犀の香りが口の中に広がるけど、度数が少し強めだからミルナ様のペースを早めないように……」)
 酒を飲むことよりも、歓談をメインに……なんて考えていたものの。
「なんだかふわふわした心地ですわ」
 すでに隣のミルナは、ふわほわとほろ酔いのようで。
 ……でもやっぱり初めてのお酒は不慣れだったかな? なんて。
 そんな姿も愛らしく思いつつ、飲みすぎないように気遣っておく。
 そしてミルナが、甘やかな香が漂う月の下で詠むのは、こんな歌。

 秋風に
 香る桂花の
 香に匂ふ
 恋し君にも
 酔ふ月夜かも

 それから、こてりと。
 少し酔っちゃったかも……なんて、頼典の肩に寄りかかって甘えてみたり。
 いや、本当のことを言えば。
(「こうやって甘えるのが目当てでもあるのですけど!」)
 そして頼典は、肩によりかかったミルナを受け止めながらも、返歌を。

 桂香の
 風も身にしむ
 夜半なれば
 想ひも我も
 君にぞ留む

 それから愛しきひとと共に、改めて十三夜の月を見上げてみる。
 ふわりと甘い、金木犀の匂いにも酔い痴れながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

八坂・詩織
辰乃丞さん(f42891)をお誘いしてお月見を。
私は金木犀リキュールいただきますね。月見酒付き合ってもらえますか?
昼間に花式部さんとお菓子作ったのでよかったら。栗の甘露煮を練り切りというお菓子で包んであります。
名付けるなら…中国では月には金木犀のような香りの木があると信じられていたという話に因んで『月の桂』でしょうか。

ひさかたの月の桂の香にあらむ
月夜に香る丹桂の花

月の桂は見えずとも、望遠鏡で月を見てみますか?クレーターがよく見えますよ。

あと是非土星を、今年の土星は環が細く見えててまるで串団子みたいなんですよ!
この望遠鏡だとあまり大きくは見えませんが、環の存在は確認できるかと。串団子見えました?



 無事に山中の邸宅へと襲撃してきた妖を全て祓って。
 今宵の空を割いた無粋な裂け目も塞がれれば。
「此度は、赴いていただき有難うございます、詩織殿」
「辰乃丞さんも、宴の準備ありがとうございます。私は金木犀リキュールいただきますね」
 所望する酒を用意してくれた彼にも、八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)は杯を差し出して告げる。
「月見酒付き合ってもらえますか?」
 そんな誘いの声に、勿論喜んで、と辰乃丞は頷いて。
「昼間に花式部さんとお菓子作ったのでよかったら。栗の甘露煮を練り切りというお菓子で包んであります」
「詩織殿と花式部が、この甘味を作られたのですか? 非常に美味しそうです」
 眼前の彼が、甘いものが好きなことは知っているけれど。
 あまり変わらない表情の中でも、嬉しそうな気配を感じれば、詩織は微笑ましく思うし。
 日中に作った菓子を差し出しながらも続ける。
「名付けるなら……中国では月には金木犀のような香りの木があると信じられていたという話に因んで『月の桂』でしょうか」
「月に金木犀ですか、そのような逸話があるのですね」
 そして共に、甘い香がする酒を口にしながら、月見酒に興じていれば。
 詩織は心に浮かぶまま、歌を詠む。
 
 ひさかたの月の桂の香にあらむ
 月夜に香る丹桂の花

 それから、隣の辰乃丞へと嬉々と語り始める。
「月の桂は見えずとも、望遠鏡で月を見てみますか? クレーターがよく見えますよ」
 いつものようにやはり、天体に関する話を。
 辰乃丞もそういった話に興味を抱く性質なのも知っているから。
「あと是非土星を、今年の土星は環が細く見えててまるで串団子みたいなんですよ!」
「串団子、ですか?」
「この望遠鏡だとあまり大きくは見えませんが、環の存在は確認できるかと」
 望遠鏡を覗く彼へと、詩織は訊ねてみる――串団子見えました? なんて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジークリット・ヴォルフガング
【ケルベロス】

十三夜の月か…名月に恥じない良い月夜だ
しかし、不思議なものだな
私達が元居た時空…しいてはディバイトでの満月の月夜と言えば狂月病に狂う夜で忌まれたものが、こうして月見の場として楽しまれているとはな

無論、己を見失わないよう抗っていたさ
元居た時空で狂月病の原因が判明した以上、狂月病を引き起こす存在が居なければ抗う必要もない
だからこうして幼馴染のお前と月見酒を酌み交わしているというところさ

しかし、だ…あっという間に人気|動画配信者《ケルチューバー》になったお前が配信撮影をやってないとはな
たまには私とてこうしてオフを満喫したいものさ
すべての世界に平安が訪れるのを願って…改めて乾杯といこう


ステラ・フォーサイス
【ケルベロス】

ほんとに綺麗なお月様だよねー
私達が元居た時空だと狂月病は解決したけど、こっちのディバイドでは解決されていないまま…だったっけ?
確かに頭の片隅に狂月病を発症して暴走したウェアライダーのことでおちおち月見もできなかったけどさ…ジークの場合は気合いで抑えてたりしてたんでしょ?
あはは…冗談で言ったつもりが本当に気合いでどうにかしてたんだ
確かに満月の夜にはデウスエクスも活動する割合も多かったし、満月には何かを惹きつけたり焚き付けたりする力があるかもだね

そういう|動画配信者《ケルチューバー》をあたしより先に始めたジークだってカメラを回してないじゃない
じゃ、幼馴染水入らずってことで楽しも?



 どの世界でも、大抵夜空に浮かんでいる月。
 けれど世界によって、月に対する思いは、環境が異なるために違うのは当然だ。
 そしてこのアヤカシエンパイアの地では、月を愛でて宴を開く。
 ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)は、そんな平安の世の月見を楽しんでみようと。
「十三夜の月か……名月に恥じない良い月夜だ」
「ほんとに綺麗なお月様だよねー」
 ステラ・フォーサイス(帰ってきた嵐を呼ぶ風雲ガール・f40844)と共に、今宵の月見の宴に参加してみようと赴いたのだ。
 そして平安の世でいう、風流なひとときを過ごしながらも。
 でもやはり、ジークリットは思うのだ――しかし、不思議なものだな、と。
「私達が元居た時空……しいてはディバイトでの満月の月夜と言えば狂月病に狂う夜で忌まれたものが、こうして月見の場として楽しまれているとはな」
 そんな彼女の言葉に、小さく首を傾けるステラ。
「私達が元居た時空だと狂月病は解決したけど、こっちのディバイドでは解決されていないまま……だったっけ?」
 月が出ている夜は、彼女たちが在る世界では、宴を開いている余裕などなくて。
 こうやってゆったりと月を眺めながら時間を過ごす、という感覚は新鮮で不思議だ。
 そんな自分達の世界のことを思い返しながらも、ステラは改めてジークリットをちらりと見遣って、訊ねてみれば。
「確かに頭の片隅に狂月病を発症して暴走したウェアライダーのことでおちおち月見もできなかったけどさ……ジークの場合は気合いで抑えてたりしてたんでしょ?」
「無論、己を見失わないよう抗っていたさ。元居た時空で狂月病の原因が判明した以上、狂月病を引き起こす存在が居なければ抗う必要もない」
 ……だからこうして幼馴染のお前と月見酒を酌み交わしているというところさ、と。
 そう言葉が返ってくればステラは、幼馴染らしさに笑っちゃう。
「あはは……冗談で言ったつもりが本当に気合いでどうにかしてたんだ」
 それから改めて、十三夜と呼ばれているという、今宵の月を見上げながらも紡ぐ。
「確かに満月の夜にはデウスエクスも活動する割合も多かったし、満月には何かを惹きつけたり焚き付けたりする力があるかもだね」
 そして今度はジークリットがステラへと、視線と声を向ける。
「しかし、だ……あっという間に人気|動画配信者《ケルチューバー》になったお前が配信撮影をやってないとはな」
「そういう|動画配信者《ケルチューバー》をあたしより先に始めたジークだってカメラを回してないじゃない」
 この美しい十三夜の月の共有や、平安の世の宴実況などは、物珍しくてもしかしてバズるかもしれないし。
 許可を取ればこの世界の人からも、興味を持たれることはあっても咎められることはないだろうけれど。
 でも、十三夜の月が浮かぶ、今宵の秋の夜長は。
「たまには私とてこうしてオフを満喫したいものさ」
「じゃ、幼馴染水入らずってことで楽しも?」
 配信は今日はお休みして、ふたりでたまにはこうやって。月見酒に酔い痴れるのも、いいのではないかって、そう思うから。
 ジークリットはステラと共に杯、月見酒を秋の夜空へと掲げる。
 ――すべての世界に平安が訪れるのを願って……改めて乾杯といこう、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蒋・飛燕
【恋話】

武蔵坂学園と銀誓館学園の非公式交流会…ってザイーシャに誘われたアルけど、そんなのあったかなネ?
でも|恋愛話《コイバナ》をするって言われたらもう乗るしかないって来たけど…イケメン密度が高いのは聞いてナイヨー!?

はわわ…見たアル!?
平安貴族の誰かがワタシの事をチラッと見たヨ!
もしかして、気があったりして…うぐぐ、彼氏持ちの冷静で的確な見識でぐうの音も出ないネ
ワタシも女の子なんだから白馬の王子様を夢見ても良いじゃないアルー

すぐ兎じゃなくて猫を被ったザイーシャにつられて花式部さんに挨拶したけど、恋愛話を楽しむって説明したらあっちもノッて来たネ
勿論イイヨ!
平安貴族の恋愛話…どんなのか楽しみネ


ザイーシャ・ヤコヴレフ
【恋話】

ふふ…何時だったらウィルとデートするところなんだけど、今夜は飛燕とナイショの女子会
と言っても、私達の惚気話をやったり…クラスの恋愛事情とかの|恋愛話《コイバナ》がメインだけどね?
武蔵坂学園の子はどんな感じなのか楽しみなんだけど…飛燕ったら平安貴族たちの雰囲気に押されて緊張してるのね

|успокойся《落ち着きなさい》
もし見たとしていても十中八九おのぼりさん全開な庶民が居た程度に物珍しがられたぐらいだし、そもそも飛燕の後ろには主人の花式部さんが居るわよ?
…あ、騒いでたらこっちに来たわ
こんばんは、お招き頂きありがとうございます

ふぅん…アヤカシエンパイアの恋愛話ね
どんなのか楽しみね、飛燕?



 今宵の月の下で、お月見デート……も、ロマンチックでムード満点だろうが。
 「ふふ……何時だったらウィルとデートするところなんだけど」
 ――今夜は飛燕とナイショの女子会、なんて。
 ザイーシャ・ヤコヴレフ(Кролик-убийца殺人バニーのアリス・f21663)は、蒋・飛燕(武蔵境駅前商店街ご当地ヒーロー『緋天娘娘』・f43981)と共に、この月見の宴にやって来たのだけれど。
 女子会といっても……というか、女子会だから、か。
(「私達の惚気話をやったり……クラスの恋愛事情とかの|恋愛話《コイバナ》がメインだけどね?」)
 やはり女子が集まってする話で盛り上がるのは、|恋愛話《コイバナ》!
 今宵のような名月を眺めながらの|恋愛話《コイバナ》なんて、気分も上がっちゃうこと間違いなし。
 そして連れられてきた飛燕はふと、こう首を傾けるのだけれど。
(「武蔵坂学園と銀誓館学園の非公式交流会……ってザイーシャに誘われたアルけど、そんなのあったかなネ?」)
 あったかどうかは定かではないものの……飛燕にとって、思いがけなかったのである。
(「でも|恋愛話《コイバナ》をするって言われたらもう乗るしかないって来たけど……イケメン密度が高いのは聞いてナイヨー!?」)
 もてなしてくれる平安貴族達は、何だかキラキラしているような気がして。
 きっと貴族というくらいだから、品や教養もあるだろう、なんて思えば。
 つい、飛燕は舞い上がって、あわあわ。
 そんな様子をザイーシャは見つめながら、心の内で思う。
(「武蔵坂学園の子はどんな感じなのか楽しみなんだけど……飛燕ったら平安貴族たちの雰囲気に押されて緊張してるのね」)
 いや、そう思っていれば。
 飛燕は瞳を大きく見開いて、ザイーシャへと興奮したように告げる。
「はわわ……見たアル!? 平安貴族の誰かがワタシの事をチラッと見たヨ!」
 それからそわりと、こう続ける……もしかして、気があったりして……なんて。
 訪れた平安の世で、まさかの恋の訪れが……!?
 なんて、ひとりで盛り上がっている飛燕に、ザイーシャは言い放つ。
「|успокойся《落ち着きなさい》」
 それから冷静に、現実を教えてあげる。
「もし見たとしていても十中八九おのぼりさん全開な庶民が居た程度に物珍しがられたぐらいだし、そもそも飛燕の後ろには主人の花式部さんが居るわよ?」
 それから……あ、騒いでたらこっちに来たわ、と気づいて。
「こんばんは、お招き頂きありがとうございます」
「月見の宴は楽しんでいただけているかしら?」
 ザイーシャの挨拶に、この邸宅の主である花式部も微笑んで返して。
(「うぐぐ、彼氏持ちの冷静で的確な見識でぐうの音も出ないネ」)
 飛燕はそうわかってはいるのだけれど、でもむぅっと思いつつも主張する。
「ワタシも女の子なんだから白馬の王子様を夢見ても良いじゃないアルー」
 それから、すぐに兎ならぬ猫を被ったザイーシャにつられて、飛燕も花式部に挨拶して。
 どのようなお話をされていたのかしら、と問われたから。
 恋愛話を楽しむって説明をしたら花式部も、意外にもノッて来て。
「よかったら、暫しご一緒にいいかしら?」
「勿論イイヨ!」
「どんなのか楽しみね、飛燕?」
 ということで、飛燕とザイーシャは、花式部も加えて。
(「平安貴族の恋愛話……どんなのか楽しみネ」)
(「ふぅん……アヤカシエンパイアの恋愛話ね」)
 いざ、十三夜の月の下ー―|恋愛話《コイバナ》を楽しむ女子会を楽しみます!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジゼル・サンドル
そういえばお月見どろぼうという風習があるらしいな。あれ、十五夜の風習だったっけ?今夜は十三夜か。
そろそろと月見団子に近づき…いや、この世界にはお月見どろぼうの風習ないだろうし勝手にお供え物取ったら駄目だよな…

そんなところを清史郎(f00502)先輩に見られてたようで…わわ、清史郎先輩!?
えっと、十五夜の風習らしいのだがお月見どろぼうというのをやってみたくて…和製ハロウィンとも言われるらしいがトリックオアトリートじゃないよな、なんて言うんだろう…お月見ください?

清史郎先輩もよかったらお月見付き合ってもらえないか?
月見団子に平栗子をまぶして食べたり、金木犀の甘味をいただいたりしながら月を見上げて。



 妖の脅威も去り、秋の夜の静けさが戻って来れば。
 開かれるのは、月見の宴。
 そして空から降る月明かりと竹の明かりの光を頼りに、庭をふらりと散策していたジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)であるが。
 ちらりと気になっているのは、お供えしてある月見団子。
「そういえばお月見どろぼうという風習があるらしいな。あれ、十五夜の風習だったっけ? 今夜は十三夜か」
 ふとそう言いながらも空を見上げれば、今宵の月は満月よりもちょっぴり欠けていて。
 このような不完全であるからこそ趣深い、なんて。
 平安の世では好まれて愛でられている月であるとは聞いたのだけれど。
 ジゼルは、そろそろと月見団子に近づき、じいと見つめてみて。
「……いや、この世界にはお月見どろぼうの風習ないだろうし勝手にお供え物取ったら駄目だよな……」
 ぼそりとそう呟きを落とした刹那、ふいに声をかけられる。
「月見団子をそんなに見つめて、どうしたんだ?」
「……わわ、清史郎先輩!?」
 そこには、同じように月見の宴に参加し、庭を散策していた清史郎の姿が。
 月見団子をガン見していたのをどうやら見られてしまったようなのだけれど。
 ジゼルは彼へと、こう説明する。
「えっと、十五夜の風習らしいのだがお月見どろぼうというのをやってみたくて……」
「お月見どろぼうか。子どもたちは「月の使い」としてお供えを盗んで良い、という内容だと聞いたな」
「和製ハロウィンとも言われるらしいがトリックオアトリートじゃないよな、なんて言うんだろう……お月見ください?」
「「お月見ください」であったり、「お月見泥棒です」などでもいいと聞いたことがあるし、気づかれずに盗るのが良いとされている地域もあるようだ」
 そんな話をしていれば、月見団子をいただきたくなったし。
 折角、此処で会ったのも何かの縁だと。
「清史郎先輩もよかったらお月見付き合ってもらえないか?」
 ジゼルが誘いの声を向ければ、ああ勿論だ、と返ってくる雅な微笑み。
 そして、お月見どろぼうはまたの機会にしておくことにして。
 お供え物ではなく振舞われている月見団子を、ふたりでいただくことに。
 それから甘党だという清史郎が、甘い味付けで団子を雅やかに口にするのと一緒に。
 ジゼルは月見団子に平栗子をまぶして食べたり、金木犀の甘味をいただいたりして。
 月を見上げて、はむり――甘みも月も、両方しっかり楽しむつもり。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、ひどい目に遭いました。
あれ?アヒルさん、もう戻ってきているんですね?
饗応料理をもう食べ始めて?
……あれ?私さっきまでアヒルさんに追い掛け回されていましたよね?
あれだけたくさんのアヒルさんから、さっき逃げ切ってきたはずですけど、なんでもうこんなに料理が減っているんですか?
まさかとは思いますけど、アヒルさんさっきの戦いには他のアヒルさんを呼ぶだけで自分は料理をずっと楽しんでませんでしたか?



 再び山中の邸宅に、平穏な時間と静寂が戻ってきたものの。
 今はまるで何事もなかったかのように塞がれた、妖の裂け目があったあたりを改めてそろりと見上げてみて。
「ふええ、ひどい目に遭いました」
 フリル・インレアン(大きな帽子の物語👒 🦆 はまだ終わらない・f19557)は大きな帽子をぎゅっとかぶりなおしながら、思わずそぅ紡ぐのだけれど。
 ふと、目に入ったのは。
「あれ? アヒルさん、もう戻ってきているんですね?」
 いつの間にかしれっと戻ってきている、アヒルさんの姿。
 それから、円らな瞳をぱちりと瞬かせて、アヒルさんの行動に対して続ける。
「饗応料理をもう食べ始めて?」
 でもその時、フリルはハッと気づくのだった。
 これまで、ここで起こったことを。
 そして、こてりと首を傾けつつも、アヒルさんに訊いてみる
「……あれ? 私さっきまでアヒルさんに追い掛け回されていましたよね?」
 あれだけたくさんのアヒルさんから、さっき逃げ切ってきたはずですけど……なんて、フリルは口にしつつも。
 はむはむとアヒルさんが何気に食べているのを見れば、思わず瞳を見開いてしまう。
 だって、あれだけごはんも盛られていて、おかずの品数も沢山あったはずなのに。
「なんでもうこんなに料理が減っているんですか?」
 今戻ってきて食べはじめたにしては、明らかにおかしい量が減っている。
 それから、ギクッと目をそらすアヒルさんに、フリルはこう訊くのだった。
「まさかとは思いますけど、アヒルさん」
 ……さっきの戦いには他のアヒルさんを呼ぶだけで、自分は料理をずっと楽しんでませんでしたか? なんて、核心を。

大成功 🔵​🔵​🔵​

白矢羽・尭暁
れーくん、ちゃんと戦って倒したよ
さて僕はちゃあんと仕事をしたから、次はれーくんに仕事をしてもらおうかな
僕のお世話、して

さっきは花を見るだけにしたんだ
色々気を遣わせてしまうだろうし
それに僕のことを一番わかってるのはれーくんだから
ほらそれだよ。何も言わずに僕の欲しいものを持ってきている
流石僕のよくできた従者だね

ふふ、花式部手製の金木犀のお菓子も気になっていたんだ
上品な甘さだ
こういうのは好きだな
れーくん、一人で食べるのは味気ない
一緒に食べてほしいな

甘味と酒を楽しみながら月を眺めて
穏やかで良い時間だ
このような時間がずっと続けばいい…

戦って妖を倒して平穏を守っていく…
これからも、僕を支えておくれ



 静かでゆったりした夜の時間を、取り戻したのだけれど。
 相変わらず彼は案内した手前か、客人の対応や飲食の提供など、忙しなく動きまわっている。
 けれど、それがひと段落すれば、ちゃんと戻ってくるのだ。
 己の主の、白矢羽・尭暁(金烏・f42890)の元へと。
 そんな辰乃丞に、尭暁は微笑んで。
「れーくん、ちゃんと戦って倒したよ」
「此度は有難うございます、尭暁様。お怪我などはありませんでしょうか」
 また過保護な言葉を向けてくる己の従者へと、こう紡ぐ。
「さて僕はちゃあんと仕事をしたから、次はれーくんに仕事をしてもらおうかな」
 ――僕のお世話、して、って。
 いや、でも尭暁は知っている。
「さっきは花を見るだけにしたんだ、色々気を遣わせてしまうだろうし。それに僕のことを一番わかってるのはれーくんだから」
 言わなくても、過保護なくらいに自分の世話を辰乃丞はしてくれるし。
 それにスンとしているように見えるけれど。
「私は貴方様の優秀な従者ですから」
 何だか誇らしげな顔をしている、と。尭暁にはその機微がわかるし、それに。
「尭暁様、酒とつまみを用意しておりますが、召し上がられますか」
「ほらそれだよ。何も言わずに僕の欲しいものを持ってきている」
 ……流石僕のよくできた従者だね、と褒めてあげる。
 酒もつまみも、きっと自分好みのものを選んでいるに違いないって思うし。
「花式部手製の甘味も、尭暁様が好むお味かと」
「ふふ、花式部手製の金木犀のお菓子も気になっていたんだ」
 酒も甘やかなものではなく、少し辛めの味わいのものを。
 添えられたつまみは尭暁が好むものを。
 菓子は甘すぎない仄かな味わいのものを、ちゃんと選んでくれているから。
 まずは花式部の菓子をひとつ摘まんで口にしてみれば、良い香りと程よい甘さがふわりと広がって。
「上品な甘さだ。こういうのは好きだな」
 それからにこにこと笑みを向けて、尭暁はこう続ける。
「れーくん、一人で食べるのは味気ない。一緒に食べてほしいな」
 甘い物が好きな彼が、自分にしかわからない嬉しそうな機微を見せる瞬間が好きで。
 そして、共に甘味と酒を楽しみながら、共に十三夜の月を眺めて。
「穏やかで良い時間だ。このような時間がずっと続けばいい……」
「こうやって今、月見の宴を楽しめるのは、赴いていただいた尭暁様や皆様のおかげです」
 律儀にそう改めて礼を告げる辰乃丞に、尭暁は紡ぐ。
「ひとりでも戦えるけど。でもやはり、れーくんが一緒にそばで戦ってくれたほうが、僕も自由に動ける」
 ……だから、と。
 完全ではない故に美しいと言われている十三夜の月の下、尭暁は己の従者へと言葉を向ける。
「戦って妖を倒して平穏を守っていく……これからも、僕を支えておくれ」
 そして――はい、いつでも私は尭暁様のお側に、と。
 そうすぐに返ってくる声に、今宵の月のような柔く美しい微笑みを尭暁は浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年11月15日


挿絵イラスト