第三基地は先日の捕虜交換事件でクーデター未遂を起こした基地だ。『シュウェリン』本国としてはまだ不安を払拭できていないのだろう。余計な力をつけさせたくないのは当然のことだ。
最後はちょっと笑顔になって理緒はそう告げると、タブレットを操作してゲートを開き、猟兵たちを送り出すのだった。
すい
●
かなりなお久しぶりになってしまいました。のんびり系マスターのすいです。オープニングに来てくださり、ありがとうございます。
はじめましてのかたも、お久しぶりのかたも、よろしくお願いいたします。
今回は、以前に出した『シュウェリン』シナリオの第4弾になります。
リンクは張っておきますが、前回を知らなくてもまったく問題ありませんので、お気に召しましたら気にせず参加していただけますと嬉しいです。
Encounter with the unknown(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=35631)
Convoy raid(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=43594)
Ace of Disappointment (https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=51071)
●
第一章は日常。
猟兵は自分たちが味方であることを伝えて基地内に入り、所属不明機の情報を集める章。
基地司令を説得して基地内に入り、基地内で敵キャバリアとの交戦経験のある人たちに話を聞いて所属不明機の情報を集めたり、基地のクルーに話を聞いて基地の現状を把握したりします。
POW/SPD/WIZは目安というくらいでお考えいただいて構いません。
第二章、第三章は断章にてお伝えいたします。
●プレイングの募集について。
第一章は断章がありません。
プレイングの受け付け、締め切りはタグにてお知らせします。第二章以降の募集と締め切りについてもタグにてお知らせいたします。
それでは皆様の素敵なプレイング、お待ちしていますね!
第1章 日常
『伝説が眠る場所』
|
POW : 故障したままの部品を一つずつ修理してあげる
SPD : 自己診断プログラムを走らせて修理を手伝う
WIZ : マシンの記録から過去の戦いの記憶を探る
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
イクシア・レイブラント
まずは第三基地の管制室へ[情報伝達]。
こちら流れ者の猟兵、鎧装騎兵イクシア。
当基地の被害を確認した、事件解決の手助けのため立ち入り許可を願いたい。
話した通りよ。私は通りすがりの流れ者。
傭兵団としての活動もなければ、どの国家にも帰属していない。
困っていそうな人を見かけたら助けたいし、争いごとは大きくなる前に止めたい。
それだけの理由でも、私のように立ち寄る猟兵は多いと思うよ。
身の上話はこれくらいにして敵機迎撃のため情報を共有しよう。
交戦した場所と、敵のキャバリアの特徴を教えて?
●
戦いの傷痕が残る平原を眼下に見下ろし、イクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)は『シュウェリン』第三基地に向かっていた。
周囲を見渡せば戦場跡を包む霧と見渡す限りの曇り空が、この戦いを象徴しているかのように重い。
地上には潰された戦車や装甲車、破壊されたキャバリアがその残骸を晒していた。
しかしここまで派手に戦いながら、オブリビオンマシンは人的被害を出していないという。
「狙いが見えませんね……」
実際に戦場を見てイクシアは呟いた。
本来オブリビオンマシンは敵を殲滅していくものがほとんどだ。人的被害を出さずに戦力を削る、などという戦い方は腑に落ちない。
誰かが、何かが糸を引いている。第三基地はそれに都合よく利用されているだけだろう。
そしてそれを行っているのはオブリビオンマシンなのだ。狙いはまだ見えないが手をこまねいて見ているわけにはいかない。
イクシアはあらためてその思いを強くすると、第三基地へと急いだ。
●
「レーダーに反応あり、アンノウン近づいてきます!」
緊張をはらんだ声が司令室に響き、その報告はすぐさまランツ中佐へと届けられた。
「例の機体か?」
中佐の問いに、
「機体の大きさ、エネルギー反応など、一致するものはありません。別機体と思われます」
別機体。ただでもやっかいな敵がいるというのにこんなときに――。
オペレーターからの返答に中佐の首筋に汗が流れた。しかしその瞬間。
「アンノウンから通信!」
さらなる報告に中佐が「開け」と短く命令を下すと、司令室に沈黙が降りた。
「こちら流れ者の猟兵、鎧装騎兵イクシア。当基地の被害を確認した、事件解決の手助けのため立ち入り許可を願いたい」
イクシアからの呼びかけからしばらくして、第三基地から返信が入った。
「こちらは第三基地司令官代理のランツ中佐だ。猟兵ということは傭兵なのだろうが、流れ者とはどういうことなのか」
「話した通りよ。私は『流れ者』通りすがりということね」
ランツ中佐の問いにイクシアは明確に答えた。流れ者――つまり傭兵団に所属しているわけでもなければ、どこかの国家に雇われているわけでもない。
それを聞いたランツ中佐はしばし考えると、
「……つまりはフリーの傭兵と解釈して構わないか?」
イクシアにそう尋ねた。
「そうね。その解釈でいいわ」
ランツ中佐に問いに答えて、イクシアは続けた。
「困っていそうな人を見かけたら助けたいし、争いごとは大きくなる前に止めたい」
それだけの理由でも私のように立ち寄る猟兵は多いと思うよ。ほんの少しだけ柔らかな口調で伝える。
「わかった。ならば第三基地としてあなたを雇わせてもらいたい」
しばしの沈黙の後、ランツ中佐はそう言った。外野からは「司令官代理!?」とか「中佐いいんですか!?」などと言う声も聞こえてくるが、ランツ中佐の声音にブレはない。
「了解した」
イクシアの短い返答に合わせて、第三基地からはIFFの周波数が送られてきたのだった。
●
「こちらです」
イクシアがミッドウェルと紹介された中尉に案内されて第三基地の会議室へと足を踏み入れた。
「第三基地、キャバリア隊隊長のタールフェルト大尉です」
中尉に紹介され、タールフェルト大尉はイクシアに向かって綺麗な敬礼をした。
第三基地のキャバリア隊隊長ということは、最前線で『所属不明機』と戦ってきた、ということだろう。情報の精度は申し分なさそうだ。
「猟兵のイクシア・レイブラント、よろしくね。早速だけど……」
敬礼をしようか一瞬迷ったイクシアだったが、そこは省いて状況の確認と情報共有に入ることにした。
大尉の説明に寄れば『所属不明機』は必ずトラバス平原を横切って第三基地にまっすぐ向かってくるとのことだった。
そのため交戦場所はこちらの迎撃部隊が間に合った場所であり、都度誤差はあるが第三基地からトラバス平原の間になっている。
そして『所属不明機』の戦い方は、
「人が操縦しているとは思えないような動きで一撃離脱を繰り返し、確実に『車両とキャバリア』を潰していく」
というものなのだが、そんな戦い方をしながら生身の人間にはまったく興味を示さないという。そのためキャバリアのコックピットから投げ出されても無視され、生き残ったパイロットすら存在しているそうだ。
「最後にその外見上の特徴だが……」
大尉はいちど息を大きく吸うと、
「頭のないキャバリアだ」
そう言って、視線を落としたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ファルコ・アロー
依頼も人的被害も無しとかよく分かんねー仕事ですけど、敵の目的が分かんねーってのがまて気持ち悪ぃですね。
うちにまで来られたら嫌ですし、ちっと小突いておくですかね。
ボクは猟兵である前にこの世界の出身者です、得体の知れねーヤツが暴れてるのを自分ちから離れた場所で止めてーって気持ちを正直に伝えるのも一つの手ですかね。
こんな離れた国にスパイ行為なんざ仕掛けねーってのも分かってはくれるはずです。
傭兵が無償ってのも逆に怪しいでしょーし、代金代わりに協力と煙草とかお菓子とかの補給物資でも要求しとくです。
さぁ、敵はどんなヤツだったんです?
パイロットを殺さず止める芸当に付いて、是非聞かせてもらいてーモンですね!
●
「依頼も人的被害も無しとかよく分かんねー仕事ですけど……」
グリモア猟兵のあやふやな説明を聞いて、ファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)は少し首を傾げた。
第三基地を襲撃している『所属不明機』は戦力を削るような戦いに終始しているという。
いままでの経験から見れば、オブリビオンマシンというのは敵を殲滅する戦い方がほとんどなのに、あえてそんな戦い方をしている。
オブリビオンマシンとして不可解な戦い方、しかもその目的が解らないというのは気持ちが悪い。
「うちにまで来られたら嫌ですし、ちっと小突いておくですかね」
ファルコはそう呟くと第三基地の方角を見据えて歩を進めた。
●
「レーダーに感。高エネルギー反応体1。人型サイズと思われます」
オペレーターの声が司令室に響くと、室内が静けさに支配された。
「例の『所属不明機』ではないんだな?」
ランツ中佐の問いにオペレーターは、
「エネルギーパターン、サイズ反応ともに一致しません。『所属不明機』とは別と思われます」
そう答えると、司令室内は静かに指揮官代理の言葉を待った。
「通信回線開け、コンタクトを取ってみよう」
そう言ってランツ中佐はマイクのスイッチをオンにした。
「こちら第三基地、司令官代理のランツ中佐だ。応答願いたい。貴殿の所属と名前を教えて欲しい」
オープン回線での通信に「不用心ですねー」と思いながらも、ファルコが答えた。
「ボクはファルコ・アロー。所属は……ねーですね。今はフリーで動いてるっす」
「猟兵……ということでいいのか?」
ランツ中佐の再びの問いにファルコは、
「そういうことでおっけーっす」
そう短く答えると、なんなら、と瞳を輝かせて側にあった鉄塊を持ち上げ放り投げて見せた。
「貴殿が猟兵なのは了解した。それで、なぜこの基地に?」
「ボクは猟兵である前にこの世界の出身者なのですよ。得体も目的も知れねーヤツが暴れてるのを、自分ちから離れた場所で止めてー……ことでどーっすか?」
戯けのニュアンスをたっぷり含めてファルコが言う。全てを話したわけではないが、嘘はついていない。それはランツ中佐にも伝わったようだ。
「なるほどな。それにこんな負け確の基地にいまさらスパイでもないだろう」
「あ、でも」
ため息交じりのランツ中佐の言葉を聞いて、ファルコが続けた。
「猟兵……傭兵が無償ってのも怪しいでしょーし、雇ってくれるなら報酬は要求するっすよ」
その言葉に「む……」と考え込んだランツ中佐に、
「現金……はきびしそーですし、お菓子とか補給物資とか、現物払いでいーですよ」
ファルコはちょっと意地悪く微笑んだのだった。
●
後刻第三基地内
「さぁ、敵はどんなヤツだったんです?」
相手のことが詳しく解らない以上、現場で相まみえた者たちに聞くのがいちばん早い。
そう考えたファルコは、第三基地で実際にキャバリアに乗って『所属不明機』と戦った者を会議室に集めてもらい、そう切り出した。
12人のパイロットが座る会議室を見渡しながらファルコが聞くと、大尉の階級章をつけた男がしっかりとファルコを見ながら立ち上がった。
「部隊長をやってるタールフェルト大尉だ。代表して話させてもらう。……まずは参戦してくれたことを感謝する」
この状況下で猟兵が戦力として来てくれることは心強い。大尉は感謝を述べてから『所属不明機』について話し始める。
「『所属不明機』……俺たちは『顔ナシ』と呼んでいるが、見た目はその通り、頭のないキャバリアだ」
両腕が捻れた槍のようになっている細身のクロムキャバリア。その背からはエネルギーのオーバーロードなのか|もや《・・》のようなものが揺蕩い、とんでもない速度で移動しながら近接戦闘を仕掛けてくるのが基本の戦法。
「射撃は? 撃ってこねーんですか?」
「背中の|もや《・・》から熱線のようなものを放つことはあるが、あまり使わないな」
体調の言葉にファルコは、ふむ、と考え込む。
「それなら……」
と、ファルコはいちばん知りたかったことを聞くことにした。
「パイロットを殺さず止める芸当に付いて、是非聞かせてもらいてーですね」
「『顔ナシ』が、どうやって俺たちを、ということなら……」
隊長が苦々しい表情で語ったことは、シンプルだった。
戦車や装甲車はエンジンを正確に貫かれ、砲塔を潰される。
キャバリアは文字通り四肢を砕かれて擱座させられる。
そして、脱出して逃げるやつを決して追わない。車両とキャバリアを壊したところで退いていく。
正式に訓練された軍隊の一部隊を相手に、単機で。
シンプルだからこそできないような芸当を『顔ナシ』はやっているということだった。
大成功
🔵🔵🔵
コニー・バクスター
コニーのおまかせプレです。
日常か戦闘向け。
【日常系】
「種族」か「ジョブ」を活かした行動描写をお願いします。
レプリカント(種族)が活きる場面は、ロボネタで対応です。
ジョブは、量産型キャバリア(BRR)を操るパイロットです。
ジョブが活きる場面は、キャバリアネタや国防軍ネタで対応です。
学園生の為、学園系シナリオは特に参加歓迎です。
【戦闘系】
戦闘の立ち位置は中衛のスカウトです。
主にキャバリアに乗って戦いますが、本人が戦うのも可。
ナイフ、二丁拳銃、狙撃、偵察等が得意技。
メインで戦う人がいたら役割は補助的です。
逆にメインで戦う場合かソロの場合は中衛攻撃に特化です。
UCお任せ。
アドリブ・連携歓迎。
NG無し。
●
いまだ燻っているようにすら思える傷痕を横目に見ながら、コニー・バクスター(ガンスリンガー・ラビット・ガール・f36434)は|ブラック《B》・|ラピッド《R》・|ラビット《R》を走らせていた。
「なんだかいままでと違う感じの相手だね」
地面に空いた大穴、ひしゃげた戦車、潰されたキャバリア。目の前に広がる光景はまごうことなき戦場だったが、これだけの戦闘をしながら人的被害は出ていないという。
破壊された車両もキャバリアも『シュウェリン』製のものばかりで、敵――あえてそう呼ぶ――のものは見当たらない。
つまり敵は一方的にこれだけのことができるということだった。敵がその気なら第三基地はすでに潰滅していてもおかしくないはずだ。
しかし敵は戦力を削るように戦い、第三基地に一定の被害をもたらすと後退していくという。
「目的はなんなのかな?」
コニーはコックピットで呟くと、思考を巡らせながら第三基地へのルートをモニターで確認した。
●
レーダーが、ピィン、という小さな反応音を響かせると、モニターに黄色の光点が表示される。それを見たオペレーターが慌ただしくコンソールを操作し、
「司令官代理、レーダーにエネルギー反応あり。キャバリアサイズです」
冷静な声が駆け抜け、司令室内に緊張が走った。
「やつか?」
「エネルギーパターンは違います。『顔ナシ』……いえ『所属不明機』ではないと思われます」
報告は正確に、ランツ中佐がそう口に出そうとしたとき、
「あー、あー、こちら猟兵のコニー・バクスター。第三基地のみんな、聞こえてるかな?」
かすかなノイズのあとに、明るいコニーの声が響いた。
猟兵。その言葉を聞いて司令室に安堵の空気が流れ、ランツ中佐はオペレーターに回線を開くよう命じた。
「こちら第三基地、司令官代理のランツ中佐だ。コニー殿、周波数XXX.XXでの通信をお願いする」
「了解だよ☆」
コニーは要請に応えると周波数を切り替えて、話しかけた。
「司令官代理、そちらの現状はだいたい把握してる。援軍ってことで基地に入れてくれないかな!」
コニーの声はどこまでも真っ直ぐで陰りも嫌みもない。純粋にこの基地を助けに来たということが感じられた。それになにより、もうすでに他にも猟兵を受け入れている。断る理由はなかった。ただし。
「それは貴殿を雇う、という解釈でいいのか?」
これは確認しておかねばならない、とランツ中佐はコニーに尋ねた。
コニーとしては『オブリビオンマシンから基地を助けに来た』というだけではあったのだが……。
「そうだね☆」
猟兵=凄腕の傭兵と思われている世界だ。それなら無償でない方が信用してもらえそうだと思い、コニーはあえてそう答えた。
そして瞳を輝かせ、10秒のカウントダウン。
|ブラック《B》・|ラピッド《R》・|ラビット《R》のロングレンジライフルから放たれた銃弾が10km先の戦車の残骸を跡形もなく吹き飛ばした。
「腕前はこんな感じ♪ どう?雇ってもらえるかな☆」
それに対して、
「了解したコニー殿。援軍、感謝する」
ランツ中佐は感嘆の息を交えて答えると、基地のゲートを開くように命じた。
●
「ね、その『所属不明機』……『顔ナシ』だっけ? それと戦った人の話を聞きたいんだけど」
第三基地に招き入れられてひと息ついた後、コニーは副官だという中尉の階級章をつけた男――ミッドウェル中尉――にそう伝えた。
すると何回かの連絡を経たのちに、2人のパイロットがコニーの部屋を尋ねてくるということになった。
そして数分後。
3回のノックの後に開かれた扉の向こうに立っていたのは、大尉の階級章をつけた壮年の大柄な男――タールフェルト大尉と名乗った――と、ハーン少尉と紹介された若いパイロットだった。
「それじゃ早速だけど、『顔ナシ』について教えてもらえるかな☆」
どんな機体? 形は? 武器は? 早さは? 火力は?
そんな矢継ぎ早の質問が、前のめりになったコニーから撃ち出されていくと、タールフェルト大尉とハーン少尉はそれを一通り聞き終えてから、思い出すように話し出した。
見た目は文字通り『顔ナシ』なこと。武器は捻れた槍のような両腕と背中の|もや《・・》から放たれる熱線なこと。正確無比な動きでこちらを破壊していったこと。
そしてそんな中2人が口を揃えて言ったことは『感情がまるで感じられなかった』ことだった。
憎悪も嫌悪も恐怖も快楽も高揚もない。ただただ破壊を積み重ねていく。そんな機械のような動きがいちばんの違和感だったということだ。
大成功
🔵🔵🔵
ファルシータ・フィラ
今日の!推しは!!|カタメカクレのグリモア猟兵《理緒様》っっっ!!!
そうカタメカクレとは奇跡!
完全なる|左右対称《シンメトリー》の美に
ひと筋の不完全を配してなおその美を失わぬもの
それこそが|左右非対称《アシンメトリー》の極致すなわちカタメカクレッッッ!!!
これに萌えを感じぬ者がいるでしょうか否いるはず等ありません!
さぁわたくしの愛……ってあれ?
いつの間にクロキャに??
むぅ仕方ありませんお預けですわね
シュウェリンって確かフィラお兄様が人喰いキャバリアと戦った
説得……といってもキャバリアの腕前を見せる程度しか
後は不慣れですがキャバリアの残骸から情報を得てみましょう
ハッキング情報検索情報収集ですわ
●
「今日の! 推しは!! |カタメカクレのグリモア猟兵《理緒様》っっっ!!!」
室内に唐突に響いた雄叫びに、グリモアベース片隅の会議室から現地にみんなを送り出して、ちょっとだけ安堵していたカタメカクレグリモア猟兵がびくっと跳び上がった。
グリモア猟兵が、ぎぎぎ、と音が聞こえそうなほどゆっくりと振り向くとそこには……。
琥珀色の瞳をぐるんぐるんさせ、赤茶の髪を揺らしながら、悶え悦ぶファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)の姿があった。
「そうカタメカクレとは奇跡! 完全なる|左右対称《シンメトリー》の美にひと筋の不完全を配してなおその美を失わぬもの! それこそが|左右非対称《アシンメトリー》の極致すなわちカタメカクレッッッ!!! これに萌えを感じぬ者がいるでしょうか否いるはずなどありません!」
会議室どころかフロア全体に響き渡りそうな超テンション早口で言葉を紡ぎながら、両手で自らの頬を包み込み、脳内麻薬ガンギマリの瞳でいやんいやんと腰をくねらせている。
あ、ちょっと涎垂れた。
うぇへへへ。と怪しい笑いが零れだしたところで、カタメカクレグリモア猟兵はそーっと後ろに回ると
無言でタブレットを操作し、ファルシータの足下にあらためてゲートを開いたのだった。
●
「さぁわたくしの愛……ってあれ?」
いつの間にクロムキャバリアに??
唐突に感じた外の風に、ファルシータが周囲をきょろきょろと見回した。
おかしい。
さっきまで会議室の真ん中で萌えを叫んでいたはずなのに、いまはなぜかクロムキャバリアの平原にいる。
そういえば今回はクロムキャバリアの依頼……いや依頼ではなく、依頼を押し売りしに行く感じだったようだとファルシータは思い出した。
どうやら萌えを叫びながらも話は聞いていたようだ。推しの話は聞き漏らさない。この辺りはさすがである。
「むぅ仕方ありません。お預けですわね」
続きは帰ってからたっぷり。
そう思い気を取り直すと、ファルシータはティタニアを喚び出して第三基地へのルートを設定すると、状況を整理し始めた。
(『シュウェリン』って確かお兄様が人喰いキャバリアと戦ったところでしたわね)
ファルシータはクロムキャバリアにはもちろん来たことがあるが、『シュウェリン』と関わるのははじめてだった。
しかしその名前は聞いたことがあった。以前兄がそこから依頼を受け、戦いの中で小さくないダメージを負ったと聞いている。
いろいろヘタレではあるが腕は確かな兄が、かなり追い込まれたということだ。
そのときのキャバリアはなんとか倒したということだったが、今回もその流れで人喰いキャバリアとあたることになるのだろうか……。
(もうちょっと詳しい話を聞いておけばよかったですの)
しかしいまそれを思ってももう遅い。
それにキャバリアのこともあるが、今はまず第三基地に入れてもらわなければならない。こちらを解決しないとキャバリア――オブリビオンマシンにあたることもできない。
「|グリモア猟兵《推し》は『説得』と言っていましたけれど……」
正直言葉で説得できる自信はなかった、
そうなるとパイロットとしての腕前を見せるのがいちばん早いかもしれない。
会議室での話によれば、第三基地は現状だいぶ追い込まれているはずだ。ならば戦力になるところを見せれば雇ってもらえる可能性も低くはないはずだ。
「でもその前に……ですの」
もう少し情報が欲しい。
そう思ったファルシータは第三基地への最短ルートを外れて戦場跡を巡り始めると、擱座したキャバリアを見つけてキャバリアを降りた。
「こういうことは不慣れなのですけど」
言いながら携帯用ターミナルユニットを取り出すと、リンクケーブルを擱座したキャバリアのデータプラグに差し込んだ。
・Code : MK006 Hornisse
・Affiliation : Third Base
・Unit : Second Unit, Unit 3
「んー……」
欲しいのは機体データではない。
ターミナルのディスプレイに表示されていく情報を飛ばし見しながら、ファルシータが必要な情報を引き出そうとターミナルと格闘する。そして、
・Left leg damaged, Left arm destroyed
・Right arm stopped functioning
・Power reactor damaged
・Entered emergency escape mode : Bolt hatch deployed
いくつかのセキュリティを突破すると、戦闘データ……この機体の|やられ方《・・・・》が表示されていった。
「……性格が悪いですわ」
嬲るような戦い方にファルシータは、眉をひそめた。
しかし単対多でこれができるということは、相手は相当な手練れ……少なくともエース級と考えていいだろう。
「これは売り込み甲斐がありますの」
情報を一通り引き出してファルシータは売り込みに一層の気合いを入れていたのだが、第三基地に着いて最初の通信で、
「猟兵のファルシータ・フィラですの。雇っていただきたいのですわ」
と伝えると、司令官代理から即答でOKをもらってしまい少し拍子抜けしたのだが、基地内に招かれたとき、すでに数人の猟兵がいるのを見て状況を納得したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
風之兎・空
ここがクロムキャバリアかー
全然空気が違うねクリエ(頭の上のタテバッツをつつきながら)
さて、とー
全然現地情勢わからないけど来たからにはがんばらないとー
とりあえず皆で乗り込もうか?
リール、ヴェルト、フォンもおいでー
兵士の皆さんに挨拶しよー?
無事に基地に入れたら
情報収集しよっかー
敵キャバリアと交戦経験のある人とお話しよー?
あ、もふもふいりますかー?
姿形もそうだけど、なんでパイロットが無事なのか気になるよねー
うーん……美味しそうじゃなかった?
鉄だけ食べるとかなのかな?
そんな考察も交えつつお話を聞くよー
あとはシャナウザーを偵察に出そう
といっても基地内をうろうろしてもらうだけだけど
何か見つかるといいなー
●
「ここがクロムキャバリアかー」
緩い風が吹く中を、風之兎・空(B級オールラウンダーガール・f45605)はてくてくと歩いていた、
周囲は見渡す限りの平原。しかしその大地には大きく穴が開き、潰され鉄塊となった車両やキャバリアがあちらこちらに点在している。
空はがらくた――戦車だったもの――の横でふと立ち止まると、なにかを確かめるようにひしゃげた装甲を、こんこん、と叩いた。
「全然空気が違うねクリエ」
空が頭の上で静かに伏せていたタテバッツ――名前はクリエ――をつつきながら言うと、クリエは同意するように小さく鳴くと、巣に帰るように空の髪に潜り込んだ。
●
「さて、とー」
空がマイペースに歩くこと数刻。
激戦の痕もだんだんとなくなっていき、地面も均されて人の香りが強くなってきたその先に、基地のゲートらしいものが見えてきていた。
んーっ、と背伸びをするように目を細めると、そこには数人の警備兵のような人影も見える。
「とりあえずみんなで乗り込もうか?」
空がそう話しかけると、クリエも同意するように声を上げた。
「リール、ヴェルト、フォンもおいでー」
手を広げて呼びかけると、ビィナースのリール、シャナウザーのヴェルト、ゴートニャンのフォンが空を囲むように現れる。
3匹は空の足下に懐くようにくっつくと、見上げるように空を見つめて言葉をまった。
「兵士の皆さんに挨拶しよー?」
空がしゃがんでバトモンたちに話しかけると、3匹のバトモンはそれぞれのリアクションで、おーっ、と気合いを入れた。
しかしただ1匹、頭のクリエだけはもぞもぞと空の髪に潜り込んだのだった。
空がゲートまでの道をそのままのんびりと進んでいくと、それに気づいたゲートの兵士がきょろきょろとこちらを見ながら、なにやら慌てて相談を始めた。
ペット連れの美少女というのは、戦闘の痕が残り、血と硝煙の匂いが漂ってきそうな風景にはおよそ似つかわしくない。
しかしその美少女は、基地の警戒も気にせず、ゆっくりだけれど確実に基地へ向かって歩いてきている。
道に迷ったという感じではない。敵意も感じられない。けれど明らかにこちらを目指しているのだ。
この状況に兵士たちは大いに戸惑い、対処を決めかねているうちに美少女はゲートの前にたどり着いてしまった。
すっ、と手を上げる少女の仕草を見て、兵士たちが反射的に銃を構えようとしたそのとき、
「兵士さんたち、こんにちわー」
柔らかな声音が兵士たちの出鼻を挫いた。ぽかんとした兵士に少女は続けて、
「わたしは猟兵の風之兎・空。この子たちはわたしのバトモンの……」
空はビィナースのリール、シャナウザーのヴェルト、ゴートニャンのフォンを抱き上げながら紹介し、最後に両手でクリエを髪の中から引っ張り出した。
4匹は紹介に合わせてひと声鳴くと、えっへん、とばかりにポーズを取る。
その間、兵士たちは空の『猟兵』という自己紹介を聞いて、慌てて通信を入れていた。
バトモンってなんだ? とも思ったのだが、そこはあえて突っ込まずに状況を説明し指示を仰いだ。
これまでに見てきた猟兵たちとはちょっと雰囲気が違うが、見かけで判断してはいけないだろう。なにせ『猟兵』なのだから。
そして司令部もそう判断したのか、『猟兵』ならば、ということですんなりとゲート通過を許されたのだった。
●
「全然現地情勢わからないけど来たからにはがんばらないとー」
基地に入った空は、敷地内を歩きながら、ぐ、と手を握った。かわいらしさが先に立つが、気合いを入れている……ようにも見える。
「まずは情報収集しよっかー」
情報がまるでない今の状態ではなにを考えていいかも解らない。
空は隣でぱたぱたと尻尾を振っていたヴェルトの頭を撫で、短く言葉をかわすと、ヴェルトは嬉しそうに一声鳴いて、とてててっ、と基地の奥へと走って行った。
「あとはー……敵キャバリアと交戦経験のある人とお話しよー」
残った3匹にそう声をかけて、空が格納庫の方へ歩き出すと、バトモンもそれに続くいて歩き出す。
カルガモ親子のようなほんわか雰囲気を纏いながら歩き回って宿舎をみつけると、空は屋外で訓練しているパイロットたちに声をかけた。
「もふもふいりますかー?」
フォンを両手で持ち上げながら言う空に、驚いたパイロットたちだったが、連絡は入っていたのか、空を見てその手を止めた。
「もふもふは遠慮しておくけど、なにか聞きたいことがあるなら答えるぜ」
それを聞いて空は一番聞きたかった「なんでパイロットが無事なのか」ということを聞いてみた。
美味しそうじゃなかった、とか、鉄だけ食べるのかも、とか、それについて個人的に思っていたことはあったがパイロットたちの答えは予想とは違っていた。
「なんで、か……」
しばし考えてから、敢えて言うなら、そう前置きをすると、
「俺たちより、車両やキャバリアを潰すことが優先って感じがしたな」
だから俺たちは生かされた。
「俺たちが生きていてもいなくても問題にならない。俺たちより車両の方が脅威。そう判断されたんだろう」
パイロットは悔しそうにそう言った。
そんな話を聞いて、空は「うーん?」と首を捻った。
なんでそんな面倒なことをしているのか、やはり目的が読めない。
ちょっと悩んでしまった空に、戻ってきたヴェルトを含む4匹は、慰めるように身体をすり寄せるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
桐嶋・水之江
戦車やキャバリアだけが壊されて、人的被害はゼロ…ミステリーね
襲撃者側には死人を出しちゃいけない理由があるのかしら?
犯人はシュウェリン本国でしたーなんて事はないわよね?
基地に入る方法ねぇ…
いつも通りでいいわね
今日の私は営業マン
キャバリア、売るわよ
どうも初めまして
私は桐嶋技研所長の桐嶋水之江と申します
当研究所ではお客様のニーズに対応するため、多種多様な武器やキャバリアを取り揃えておりまして
現在の第三基地の皆様はキャバリアの不足にお悩みになられていると噂で伺いました
そこで、是非ともお悩みの解決にご協力させて頂ければと思い、お訪ねした次第でございます
こんな具合に営業スマイルで取り入るわ
武器商人なんて珍しくもないでしょうし、営業のために訪ねてきたって理由なら無理もないわよね
何より嘘をひとつも言ってない
商談の中で襲撃犯の特徴を聞いてみましょう
どんな武器を使うのか?
武器の構成は実体兵器中心?エネルギー兵器中心?
機動力はどの程度?
防御力は?
何度も襲撃されてるなら、犯人の特徴についてよく知ってるはずよね
●
「戦車やキャバリアだけが壊されて、人的被害はゼロ…ミステリーね」
戦場跡をぐるりと見渡し、無数に残る残骸を見ながら桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)は呟いた。
敵はこれだけ派手にやっておいて、死人は出していないという。
(襲撃者側には死人を出しちゃいけない理由があるのかしら? それとも……)
いやな憶測がふと頭をよぎった。
これまでいろんな国を、戦場を見てきた。その経験の中には胸糞案件も多数ある。
ただ、|胸糞《それ》だけではグリモア猟兵の予知に引っかからないはずだ。
どこかにオブリビオンの影がある。そしてそれは今回で言えば『所属不明機』だろう。
第三基地を攻撃しているのがオブリビオンマシンだからこそ予知されたはずだ。そしてそれが基地潰しを目的としたものなら……。
クーデターを起こしかけた第三基地を潰すために本国が策を講じた、という可能性もなくはない。
(犯人は『シュウェリン』本国でしたー……なんて事はないわよね?)
我ながら酷い推理だ。と思いながらも水之江はその可能性も心に置きつつ第三基地へと向かったのだった。
●
「どうも初めまして。私は桐嶋技研所長の桐嶋水之江と申します」
第三基地のゲート前。
スーツ……というにはメリハリの利きすぎた服をを着こなして、水之江は名刺を差し出していた。
「は、はぁ」
いきなり目の前に現れた美女に呆気にとられながら、警備兵は反射的に名刺を受け取る。
基地に入るための作戦……いや水之江にとっては作戦と言うほどのものでもなかった。
いつもどおり。
営業マンとして商談をするため、堂々とこの基地に入れてもらえばいいのだ。
そして相手に名刺を受け取らせたなら、第一段階はクリアである。水之江は名刺と自分を見比べている警備兵ににこりと微笑むと、
「当研究所ではお客様のニーズに対応するため、多種多様な武器やキャバリアを取り揃えておりまして、
現在の第三基地の皆様はキャバリアの不足にお悩みになられていると噂で伺いました。
そこで、是非ともお悩みの解決にご協力させて頂ければと思い、お訪ねした次第でございます」
すらすらと一気に営業トークを展開すると、今度は相手の返事を待つように、すっ、と口を閉じる。
圧倒されていた警備兵は、はっと我に返ると、「ちょ、ちょっとお待ちください!」と言い残してその場を離れた。
「武器商人だとは思います」
「とんでもなく美人なんですよ」
離れて聞こえる言葉を隙なく聞きながら水之江は、
(第二段階成功ね。武器商人なんて珍しくもないでしょうし、営業のために訪ねてきたって理由なら無理はないわ」
何より嘘をひとつも言ってない。
これは商売において大事なことだ。こちらの誠意の証にもなるし、後々問題が起きたときの保険にもなる。
全てを正直に話すのは商売人として難しいが、だからといって嘘を吐いてしまうのは商売人失格である。
大事なのは情報の見極めだ。
「解りました」
その言葉とともに警備兵が通信機に向かって律儀に敬礼する。
水之江はそんな様子を見ながら、成功を確信した。
「桐嶋さま、こちらへ。司令官がお会いになるそうです」
予想通りのセリフを聞きながら、水之江は開いたゲートをくぐった。
●
「あらためまして、桐嶋技研所長の桐嶋水之江と申します」
司令官室に案内されると中には3人の男が水之江を待っていた。水之江はにこりと微笑んで、中央のデスクに座っていた司令官らしき人物に頭を下げる。
司令官――ランツ中佐はしばし水之江を見つめると、
「なるほど。たしかに武器商人とは思えない美人だ」
真面目な顔でそう言うと、
「それで、あなたも猟兵なのだろうか?」
真っ直ぐにそう聞いた。水之江はその問いにちょっと驚いたか、それを顔に出してしまうようでは一流の営業とは言えない。しっかり笑顔で受け流すと、
「ええ、その通りです。けれどなぜそう思われたのかしら?」
水之江の問いに、今度はランツ中佐が答えた。
「すでに何人か猟兵の方が来てくれている」
その答えに、水之江は「先を越された?」とわずかに眉を動かしたが、
「しかし、武器の提供……いや営業か? そんなことをしてきたのはあなたが始めてだ」
そう言って頬を崩した。室内が一気に和やかなムードになる。
それはなによりでした。水之江もにこやかにそう答えると、それでは早速、と営業に入っていく。
「我が桐嶋技研では、多種多様な武器やキャバリアを取り揃えておりまして……」
一通りのプレゼンを終えて、水之江がひと息ついた。
ランツ中佐はその間笑顔を見せることはなかったが、話はしっかりときいてくれていた。しかし雰囲気としては商談成功という感じではない。
(なにかマズかったかしら? それとも正規の基地だとやはり国とのしがらみとか多いのかもね)
そんな風に考えながら水之江が言葉を待っていると、それに気づいた中佐が、
「ああ、すまない」
そう言ってから話し始めた。
「いまの状況からして、とても現実的な提案だった。今のままではこの基地は保たないとあらためて思わされたよ」
補給を渋る本国があてにならない以上、基地を潰されないためには水之江の話に乗るしかない。特にキャバリアは絶対数が足りないのだ。
予算やしがらみの問題はもちろんある。独断で班出したことも問題にされるだろう。しかし隊員を生かすためには力を借りるしかない。
ランツ中佐はプレゼンが始まった時点でそう決めていたのだが、そのことは表に出さずに水之江に言った。
「それでこの提案、あなたの参戦も込み、ということでよろしいか?」
中佐の言葉に感心したように目を細めて水之江は頷いた。
もちろん最初からそのつもりではあったが、あえてぼかしていたところを突いてきた。
「それでも構いません。でもそれなら基地内での情報収集の自由はいただきたいですね」
水之江の口調が少し砕けた。ここからは営業ではなく猟兵としての話になる。
「『所属不明機』についての情報収集なら許可しよう」
ランツ中佐はそういいながら、脇に控えていた2人に前に出るよう促した。
「こちらはキャバリア隊隊長のタールフェルト大尉。そしてこちらはパイロットのハーン少尉だ」
2人は水之江に敬礼をすると、あらためて名乗った。
「それでは作戦会議といこう」
ランツ中佐が2人を着席させて司令官室の照明を落とすと、テーブルにブリーフィング用の地図が表示された。
(この親父、食えないわね)
情報収集を許可する、と言っておきながら『所属不明機』との戦闘経験者を2人揃え、この場で作戦会議を始めてしまった。
これでこの場でだいたいの情報は手に入れることができてしまうだろう。
基地内を動かれて困ることはなさそうだが、それでもこちらの動きを牽制することは忘れない。なかなかなタヌキ親父と認めざるを得なかった。
●
そこからは猟兵の話でもあり営業の話でもあった。
「どんな武器を使うの? その構成は?」
ミスの絵の質問に対して質問にタールフェルト大尉が答える。
相手の使う武器は捻れた槍のような近接兵装がメインということで、それはもちろん実体武器だ。
それと背中の|もや《・・》のようなものから放たれる熱線があるという。これはエネルギー兵器になるだろう。
つまり攻撃は実体、エネルギーを共に備えるバランス型ということだ。
「戦い方に特徴はある?」
水之江は続けて聞く。この武器でどう戦うのか、それも作戦を立てるには重要なことだ。
「凄まじいスピードと技術でこちらの攻撃を躱しながら近づいて、車両やキャバリアのみを狙ってきます」
今度はハーン少尉が答えた。
「それと御存知だとは思うのですが、パイロットや兵士を狙うことはありません」
そのことに関しては確実だという。そのソースはハーン少尉。
少尉は『所属不明機』に3度撃破され、そのうち2回コックピットから放り出されたが、敵は目の前で倒れた少尉に目もくれず次のキャバリアを墜としにいったということだ。しかもハーン少尉以外にも無視された兵士は多くいるという。
これは、と水之江は思った。
人命を奪わないというよりは、人に興味がないのではないだろうか。
もしそうなら、車両やキャバリアを出さないという手も考えられるが……。
(あまりにギャンブルね)
さすがにこの提案はできなかった。命を賭けに使うのは御法度だし、なによりこれをやっては武器を売れなくなってしまう。
結局、桐嶋技研からの購入としては、アダタラとジオルードが2機、グレイルを3機ということになり、それに加えて水之江とそのキャバリアが傭兵という形になることでまとまった。
もちろん水之江には、傭兵としてのインセンティブも出ることになっている。
(まぁ納得いくところかしら)
戦いはこれで終わりというわけでもない。今回は『シュウェリン』にパイプを作ることができただけでもいいだろう。
水之江はそう考えると、2枚の契約書にサインをした。
大成功
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第2章 冒険
『上層部を説得せよ!』
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POW : 物理的に力ずくで、解らせる
SPD : 舌戦を繰り広げ、説得する。
WIZ : データや数値を元に、理解させる
👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
第三基地の索敵範囲からわずかに外れた位置。そこに大隊規模の部隊が展開していた。
全ての車両・キャバリアに『シュウェリン』のマークが描かれているが、その部隊は第三基地を目前にして待機している。
「リンデン司令、監視部隊から連絡です」
司令、と呼ばれた男が中佐の階級章のついた制服の襟元を開きながら小さく頷く。すると、連絡に来た兵士はファイルを読み上げ始めた。
「第三基地は数人の傭兵を受け入れたようです。傭兵は容姿や装備の不揃いさから部隊ではありません。おそらくは猟兵かと」
それを聞いたリンデンはため息を吐くと目を閉じた。
「それと武器商人……これも猟兵のようですが、そこから武器の提供も受けている模様」
報告に、ふうーっ、と二度目のため息を吐いてから片手を上げると、連絡に来た兵士を下がらせた。
(ランツ何を考えている……?)
両目に指を当てて押し込みながら、リンデンは軽く頭を振った。
第三基地に再び不穏の動きあり。
リンデンは元々この報告から疑問を持っていた。
クーデター未遂を起こした第三基地に対しては、当然本国からの|あたり《・・・》が強くなっている。現状『所属不明機』に攻撃を受け、追い込まれているにもかかわらず、救援や補給が行われないそのためだ。
そんな状態で再びクーデターを起こそうなどと考えるだろうか。
さらにハーン元大佐――前任の基地司令――のクーデターですら情報が錯綜して真実がうやむやのままなのだ。なのに。
(我々はなんのためにここに来ている……?)
眉間に大きく皺を寄せたリンデンに、その予想を裏付けるような命令が届いた。
『第三基地は猟兵を雇い入れ武装を整えて、再びクーデターを起こそうとしている。戦力が整う前に速やかに第三基地を制圧せよ』
「くっ……」
考えていた中でおよそ最悪の命令だった。しかし正式な命令として発せられた以上従うほかない。ならば――。
リンデンは副官を呼ぶと、
「第三基地への攻撃命令が出た、しかし同胞だ、殲滅するのは忍びない。まずは堂々と包囲し、降伏勧告を行う。
そう言って出撃を命じた。
本国の思惑とは違うであろうことは解っていたが、それでもこのまま矛を交えることはしたくない。
少しでも時間稼ぎを。リンデンはゆっくりと――体面的には堂々と――第三基地へ向けて進軍を開始した。
●
「エネルギー反応多数。第三基地へ向かってきます。IFFグリーン、味方の援軍です!」
オペレーターの声が司令室を駆けぬけると、次の瞬間司令室内に歓声が上がった。
待望の補給。それに反応多数ということは援軍も来てくれたということだ。司令室が安堵の雰囲気に包まれそうなったそのとき。
『こちらは第二遊撃隊隊長リンデン中佐だ。諸君らにクーデターの疑いがかかっている。即時武装解除して降伏されたし』
通信によって告げられた言葉に司令室は静寂に包まれた。
クーデター!? 降伏!? ここまで必死に『所属不明機』と戦ってきた我々に!?
冗談じゃない! 武装解除のうえ降伏などクーデターを認めるようなものじゃないか!
こんな命令には絶対に従わないぞ――!
ランツ中佐のデスクを各部隊の隊長クラスの人材が取り巻き、言葉を荒げていた。
その意見はもっともでありランツ自身もそう思う。しかしそれと同時にこの展開もありうることだと思っていた。
クーデターを理由に第三基地をリセットする。
なんのために? それはもちろん『本国のメンツ』のためだ。
くだらない、と言ってしまえばそれまでだが、捕虜交換式典からはじまった一連の事件の痕跡をできうるかぎり消したいのだろう。
捕虜だった兵士を先導して基地司令が企てたクーデターなど黒歴史でしかない。しかも、不自然な降伏による結末と、動機すら不明のものだということなど、記録にも記憶にも残したくないはずだ。
歴史の上でこの事件を葬るためには『第三基地が制圧されたからクーデターは失敗した』ということにすればいい。
このタイミングででてきた『所属不明機』を最大限利用して描いたのは、おそらくこんなシナリオだろう。
そしてこのままでは思惑通り戦闘に突入してしまう可能性が高い。そうなればほんとうにクーデター軍にされてしまう。
それだけは避けなければならない。
ならばここは――。
ランツ中佐はデスク周りの部下を両手で宥めながら、基地に来てくれた猟兵を呼び出したのだった。
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●MSより
今回は『シュウェリン』軍同士の戦闘を止めるための冒険シナリオになります。
第三基地軍と第二遊撃隊の戦闘を止めてください。説得の仕方は自由です。ただなるべく被害は少なくしていただければ嬉しいです。
イクシア・レイブラント
※第三基地の人間を宥め、説得します。
ランツ中佐、何があったの?
思う所はあるだろうけど
ここは[落ち着き]、冷静に判断しないといけない。
すれ違いは争いを生む。
まず、私たちの第三基地の使命はこの地を守ること。
それは向こうも同じ。反乱の疑いがあるから鎮圧しようとしている。
だけど、こちらに反乱の意志はないのだから、
あちらを援軍ないし指揮権の引継ぎとして歓迎するのはどうかしら。
その上で、反乱の意志がないことを主張し、
行動で忠義を示せば悪いようにはならないはずよ。
もちろん、あちらが不当な拘束を行ったり一方的な処断を下すようであれば、
その時は私も剣を握る。
大丈夫。みんなのことは私が守るよ。
●
司令室の扉を開いて一人の少女が中に足を踏み入れると、室内の空気は騒然としていた。
「ランツ中佐、何があったの?」
司令官席に詰め寄っている男たちを見て、イクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)が問うと、軍服を着た男たちは一斉にイクシアへと振り向いた。
「何が、どころではない! あんたもあの部隊を見ただろう!?」
口を開いた男の言葉にイクシアは眉を寄せる。
「あの部隊って、あれは『シュウェリン』からの援軍よね?」
「冗談じゃない! あの部隊は俺たちがクーデターの準備をしていると言い、この基地を明け渡せと言ってきたんだ!」
吐き捨てるように一人の男が言うと周りの男たちも口々に不満を漏らし、中には激高しそうになっているものまででてきてた。
そんな男たちのイラ立つ視線に晒されても、イクシアは動じず、
「思う所はあるだろうけど……」
ここは落ち着き、冷静に判断しないといけない。わざと言葉を切るようにしてそう話しかけた。
イクシアの落ち着いた声が男たちの気持ちを落ち着け、室内の雰囲気を少しだけやわらげる。
「しかしそうは言っても、こちらとしては納得できるものではない」
「国のため必死に戦っている俺たちをバカにしている」
それでも男たちの怒りは治まりきらない。一戦交えても潔白を証明してやる、と呟いた者までいた。
すれ違いは争いを生む。
イクシアはそんな場面を何度も見てきた。争いはほんの些細なことでも起こってしまうのだ。
まして、命を賭けて戦っている者たちを侮辱するようなことをすれば……。
男たち――おそらくはランツ中佐も――の抱く気持ちを、間違っている、と、イクシアには言えなかった。
「でも考えて。私たちの、第三基地のいちばんの使命はなに? この地と民と国を守ること。そうでしょう?」
その言葉に司令室内の全員が息を飲む。
「それは向こうも同じ」
イクシアは続けた。
「反乱の疑いがあるから鎮圧しようとしている。それは民と国を守りたいから」
そう言われ、室内は水を打ったように静まりかえった。
はっとしたように目を開く者。悔しそうに手を握る者。俯き肩を震わせる者。
反応は様々だが、誰も反論することができなかった。
「どちらも目的は同じ、なら……」
そんな男たちをしっかり見つめてイクシアは言う。
「こちらに反乱の意志はないのだから、あちらを援軍ないし指揮権の引継ぎとして歓迎するのはどうかしら」
その上で、反乱の意志がないことを主張し、行動で忠義を示せば悪いようにはならないはず。
「しかし……」
イクシアの言葉に男たちの中にざわめきが広がった。
反乱の意思はない。それは男たちにとって至極当然のことだ。けれど納得はしきれない。
「もちろん、あちらが不当な拘束を行ったり一方的な処断を下すようであれば、その時は私も剣を握る」
瞬間、イクシアの目がすっと細まり、猟兵の覚悟と気合いに男たちは黙りこむ。
「大丈夫。みんなのことは私が守るよ」
最後にイクシアはそう言って笑顔を見せた、が。
「話は解った。しかし……」
これまで黙って聞いていたランツ中佐が立ち上がって言った。
「すまないがその提案を全て飲むわけにはいかない。外の部隊を基地内に招き入れるということは、クーデターを認めたということになってしまう」
それに基地内に入った瞬間に攻撃される可能性もあるしな。むしろその可能性が高い。
ランツ中佐は心の中で呟いた。
軍人としても友人としてもリンデン中佐のことはよく知っている。おそらくはこの降伏勧告も独断だろう。時間を稼ぎ策を練っているに違いない。
しかし『あの部隊』で命令を受けているのが彼だけとは限らない。だから部隊の基地内への侵入だけは避けなければならなかった。
「イクシア殿の言葉には一理あったし、納得する部分もあった。それになにより、彼らを抑えてくれたことには感謝する」
ランツ中佐はイクシアに礼を述べると、
「みんな悔しいかもしれないが、あちらも『シュウェリン』軍だ。イクシア殿の言われるとおり心を共にする同胞だ。こちらからは絶対に手を出すな。挑発なども禁止だ!」
部下たちにしっかりとそう命じた。
「その上でイクシア殿にお願いしたい。もし戦端が開かれたときは、我々を守って欲しい」
そう言いながら軍帽を脱ぎ、深々と頭を下げたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ファルシータ・フィラ
あらあらまぁまぁ
唐突に慌ただしくなってきましたわね?
さて、どちらを押し留めるべきか……まぁわたくしから見て
『現状』筋の通ってないのは第二遊撃隊のほうでしょうか
『ティターニア』で乗り込むとしましょうか
交渉の使者すら受け入れないではそちらも筋が通らないでしょう?
わたくしが調べた情報がこちら
第三基地は|何者か《アンノウン》から攻撃を受けていますわ
信じられない?
まぁそうおっしゃると思いまして
こちらをどうぞ
ええ、わたくしの眼を通して見たモノを録画したものです
『サイバーアイ・レコーディング』――実は片目、義眼ですの
見たモノをそのまま保存できるのです
ただの変態淑女と思ってもらっていては困りますわね?
ファルコ・アロー
この動揺具合、こーゆー展開にはあんま慣れてなさそうですね。
まぁ身内に武装解除を勧告されるのに慣れてるのなんて、ボクの部隊くらいでしょーけど。
こりゃあ部外者が話したくれーじゃ収まんねーですね。
まぁ相手も問答無用って感じじゃねーですし、ここは所属不明機の襲撃まで膠着させるのも手ですね。
敵が来りゃ有耶無耶になるんですよ、こーゆーのは!
とゆー事で、敵襲の警戒にあたるです。
まぁ警戒ですから当然フル武装ですよねぇ?
威圧や挑発目的で遊撃隊の目の前で武器振り回してるワケねーじゃねーですか。
ボクが敵を落としてボーナス貰うんですから、敵じゃねーならどいつも動くんじゃねーですよ!
これでちったぁ時間を稼げるですかね?
風之兎・空
うーん、とってもたいへんー
どうしよう?フォン? って寝てるしー
わたしも寝たーい(もふもふしながら
ヴェルト、何か見つかったー?
ないかー
うーん、やっぱりもふもふがたりないんじゃないかなー?
それはやめとけってクリエまで……もー
第二遊撃隊へいこーかなー
でもこの喧嘩で誰が一番得するの?
第三基地の司令官さんも第二遊撃隊の隊長さんもおかしいって思ってるんでしょ?
じゃあ、『この戦いで第三基地が潰れて一番得する人だーれだ?』って
話に……あれ?
でも確か車両が脅威って話だったよね?
そんな面倒臭い事、人間がする?
人間じゃないとしたら……オブリビオンマシン?
いろいろおかしいよやっぱり
今戦うのは良くないと思いまーす
●
「あらあらまぁまぁ。唐突に慌ただしくなってきましたわね?」
愛機【ティターニア】を片手で撫でながら第三基地のゲート前でファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)が基地を取り囲む部隊を眺めながら言うと、
「この動揺具合、こーゆー展開にはあんま慣れてなさそうですね」
隣でファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)も第二遊撃隊を眺めながら返した。
フィラのティターニアもファルコも全身しっかりと完全武装しており、戦士そして騎士と呼ぶにふさわしい佇まいだ。
そんな2人のちょっと後ろで、
「うーん、とってもたいへん。どうしよう?フォン? って寝てるしー」
風之兎・空(B級オールラウンダーガール・f45605)が生身でバトモンのフォンを抱えながら「わたしも寝たーい」とゴートニャンのもふもふに顔を埋めていた。
両部隊の間を風が抜けていく。戦場の風だ。
(まぁ身内に武装解除を勧告されるのに慣れてるのなんて、ボクの部隊くらいでしょーけど)
以前の経験を手繰ったのか、ファルコが思い出された記憶に苦笑する。
友軍に武装解除を勧告されるなどめったにない。普通に軍隊生活を送っていれば一生出会うことのない状況だろう。
つまりは『異常な事態』ということだ。だからこそ、
「こーいうのは部外者が話したくれーじゃ収まんねーですね」
話すだけではダメそうなら、それ以外の手段を用いつつ現状を解らせるしかない。
「ですがどちらを押し留めるべきかとなれば……わたくしから見て『現状』筋の通ってないのは第二遊撃隊のほうでしょうか」
そんなファルコの意図を察したのかフィラは答えた。しかし。
「近くねーですか!?」
フィラの距離感にファルコが思わず声を上げた。
なんか近い。そしてちょっと息が荒い気。さっきから瞬きをしていない気もする。
「そんなことありませんわ?それにほら」
触れていないでしょう! とフィラは自慢げに胸を張る。
問題はそこなのか。
ファルコはそんなことを悩みそうになって、ひとつ大きく頭を振ると、
「と、とりあえず、いまはそんな場合じゃねーです!」
吹っ切るように言いながら、若干引き気味のまま第二遊撃隊に向けて歩き出した。
ああん、いけず。
そんな声が聞こえてきそうなくらいフィラが|しな《・・》を作る。
そしてすばやくティターニアへ乗り込むと、ファルコを追いかけるように第二遊撃隊へと向かった。
動き出した2人にぽつんと取り残された空だったが、しかし本人はそんなことは気にもしていないようで。
「ヴェルト、何か見つかったー?」
周囲の調査から戻ってきたマイバトモンの1匹を抱き上げるとその報告に、
「ないかー」
少しだけ残念そうな表情を見せた空を慰めるように、シャナウザーのヴェルトが頬をすり寄せれば「ありがと」と感謝を述べるようにその頭を撫でた。
なんかここだけ空気が違う。戦場の刺すような風が草原のそよ風になったようだ。
空はフォンとヴェルト、2匹を抱きしめて思った。
「うーん、やっぱりもふもふがたりないんじゃないかなー?」
そんなことを言いながら2人を見送っていた空を、タテバッツのクリエ――この子もバトモン――がくちばしで空をつついた。
「それはやめとけってクリエまで……もー」
ちょっと不満げな声を出した空にクリエはちょっと負けそうになるが、そこはぐっと耐えて空をさらに4回つついた。
そんなクリエからのアドバイスに空も、
「んー、それじゃ第二遊撃隊へいこーかなー」
と、とてとてと歩みを進め始めたのだった。
●
「リンデン司令官」
副官に名前を呼ばれたリンデン中佐が顔を上げると天幕の入り口が捲られる。
そしてそこから警備の兵を引き連れるようにして2人の女性が司令部に入ってきた。
「交渉の使者すら受け入れないではそちらも筋が通らないでしょう?」
フィラがリンデン中佐に対し、こう切り出した。
中佐はしばらく考えた後、2人を天幕に残し警備の兵たちを下がらせた。
「交渉ということだが、いったいなにを?」
「それはもちろん、第三基地の降伏勧告に関することですわ」
理性を光らせたフィラの瞳が中佐をしっかりと見据える。リンデンはまだ推しの範囲には入っていないようだ。
「そう言われてもな。わたしは一介の現場指揮官。命令に従っているだけだ」
にべもない。
交渉するなら『シュウェリン』本国としてくれ、とでも言いたげだ。
「あなたに交渉権はないんですの? 指揮官ですわよね」
トップダウンが原則である軍隊というものを知っていながら、フィラはわざとそう聞いた。それはリンデン中佐の声音に納得とはほど遠いものを感じたからだ。
「わたしにあるのは部隊の指揮権だけだ」
ぶっきらぼうに答えるリンデンに、
「ならこの命令が正しいと考えていますの?」
「その判断はわたしがすることではない」
2人の視線が混じり合う。なんだかフィラの視線がちょっと雰囲気の違うものになりつつあるのは、今はツッコまないことにする。
いろいろな緊張感の中、いままでフィラの隣でバトモンを抱きかかえていた空が口を開いた。
「でもこの喧嘩で誰が一番得するの? 第三基地の司令官さんも第二遊撃隊の隊長さんもおかしいって思ってるんでしょ?」
柔らかな声音で図星を突かれ、リンデン中佐がぐっと息を飲む。
「第三基地と第二遊撃隊が潰しあうのは『シュウェリン』に何の得もないですわ」
フィラがずいっと顔を近づけ追い打ちをかけるように言うと、
空が思いついたように声をあげた。
「じゃあ、『この戦いで第三基地が潰れて一番得する人だーれだ?』って話に……あれ?」
空がかくん、と首を倒して、
「でも確か車両が脅威って話だったよね? そんな面倒臭い事、人間がする?」
空が誰に聞くでもなく問う。そして、
「人間じゃないとしたら……オブリビオンマシン?」
思いつき、口に出した言葉にリンデン中佐が反応した。
「オブリビオンマシン?」
聞いたことのない言葉に困惑したリンデン中佐がフィラと空に向けて聞いてきた。
「言うなれば『人類共通の敵』みたいなものですわ。|あなたとわたし《・・・・・・・》の敵ですわ」
顔が近い。あなたとわたし、を強調しているのも気に掛かるが……。
「今も仲間がその警戒に当たっていますの」
そう言って、フィラは視線を天幕の上へと向けた。
●
少し時間は巻き戻って、3人が第二遊撃隊へと向かう途中。
「まぁ相手も問答無用って感じじゃねーですし、ここは所属不明機の襲撃まで膠着させるのも手ですね」
ファルコは2人を見ながらそう言うと、空はきょとんとした顔をしていたが、フィラはしっかりと頷き、ちょっとぐるぐるした瞳でファルコを「さすが我が推し!」と舐めるように見つめ返す。
そんなフィラをあえて無視して、
「敵が来りゃ有耶無耶になるんですよ、こーゆーのは!」
と、ファルコは勢いでフィラの視線を跳ね返した。
これは作戦や説得の方針と言うほどのものでもない。戦場の経験がある者なら肌で味わっている感覚だ。
友軍同士で揉め事が起こっていたときにいちばん効くのは敵の襲来だ。共通の敵の姿が見えれば意識は自然とそちらに向かう。
「とゆー事で、敵襲の警戒にあたるです」
ファルコはそう告げると、遊撃隊に近づきすぎる前に空へと舞い上がり、|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の攻撃範囲に入らないよう注意しながら上空へと姿を消した。
そして今。
完全武装のファルコが第二遊撃隊の本陣に、|空から《・・・》いきなり飛び込んできた。
わざと吹かすように【パルスプラズマ・スラスター】を唸らせ、【ラプターウィング】に風を切らせて甲高い音を響かせる。
クロムキャバリアではほぼ経験しないステルス性の高い急襲を直接司令部に受けて、第二遊撃隊にさらなる動揺が走る。
(まぁ警戒ですから当然フル武装ですよねぇ?)
ファルコはその様子を見下ろしながら、武装のチェックをするように空に【クアドラプルカスタム】の砲口を向けたり、【ナックルアロー】を飛ばしたりしてみせた。
そしてこちらを指さしては何かを叫んでいる兵士たちを見ながら、
「威圧や挑発目的で遊撃隊の目の前で武器振り回してるワケねーじゃねーですか」
わざとらしく地上に向けてそう告げると、さらに。
「ボクが敵を落としてボーナス貰うんですから、敵じゃねーならどいつも動くんじゃねーですよ!」
兵士たちに対してそう言い放った。
その言葉に兵士たちの動きが止まった。
今の第二遊撃隊に対空仕様の兵器はない。つまりはここで下手に動けばなにもできないまま司令部を潰される可能性があるからだ。
「これでちったぁ時間を稼げるですかね?」
あとは司令部に行った2人に任せよう。
交渉がまとまれば良し、まとまらなくてもその間に『所属不明機』が来れば事態は動くはずだ。
外の兵士たちをしっかりと抑えるべくクロムの空を悠々と飛びながらファルコはそう確信していた。
●
「わかった。話を聞こう」
リンデン中佐がため息を吐きながら椅子に座り直した。
第二遊撃隊の上空を悠々と飛行するファルコの姿を見せつけられてしまっては、さすがに突っぱねることはできなかった。
そんなことをしたら強力無比な猟兵の力が自分の部隊に向けられるかもしれないからだ。
「第三基地は|何者か《アンノウン》から攻撃を受けていますわ」
フィラがリンデン中佐に資料を差し出しながら言うと、リンデン中佐が訝しげな表情でフィラの手元をみつめた。
「|何者か《アンノウン》から攻撃?」
そんなこと本国からは何も聞いていない。にわかに信じられないことだった。
「信じられない? まぁそうおっしゃると思いまして、こちらをどうぞ」
フィラがおもむろに自らの片目に手を当てると何かを取りだし、リンデン中佐にそれを握らせ、ついでに中佐の手を包み込むように握りしめる。
それはフィラの片目――もちろん義眼だが――で、【サイバーアイ・レコーディング】という記録装置だ。
「わたくしの眼を通して見たモノを録画したものですの」
わたくし見たモノをそのまま保存できるのです。フィラがそう言いながら記録した映像をリンデンに見せる。
リンデンに瞳の中を見つめられ、フィラは残った片目を潤ませた。
「ダンディなおじさまもいいですの……新たななにかに目覚めてしまいそうですわ」
小さな声で呟きながら、息がだんだん荒くなっていく。
室内にいるバトモンたちがいわれなき圧に震え出した。それに気づいた空が、
「いろいろおかしいよやっぱり。今戦うのは良くないと思いまーす」
しゅばっ、と手を高く上げて宣言すると、空の言葉にはっと我に返ったフィラが深呼吸で息を整え、
「ただの変態淑女と思ってもらっていては困りますわね?」
言いながらも熱い視線をリンデンに送ったそのとき。周囲にサイレンが響き渡った。
大成功
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桐嶋・水之江
難しい判断を迫られたわね
第二遊撃隊からの降伏要求は到底飲めない
でも降伏を拒否すれば戦闘に入ってしまう
困ったわね
じゃあ第三基地の門を開いたらどうかしら?
降伏を受け入れるって意味じゃないわよ?
受け入れるのは第二遊撃隊の内部監査よ
武装解除以前に、第二遊撃隊と交戦できるほどの戦力がそもそも残されていないこと、抵抗の意思がない事を伝えて、実際にクーデターを企てているのか、気が済むまで調べてもらうのよ
その中で第三基地が如何に所属不明機に悩まされているか、本国の支援が滞っていて困窮しているかを訴えましょう
猟兵を雇用したのも、キャバリアを買ったのも、第三基地単独で所属不明機に対処せざるを得なかったから……という理由を付ければ正当になるんじゃない?
さらに第二遊撃隊に所属不明機の対処をお願いしましょう
この基地に残された戦力はもう僅か
猟兵を雇ったとは言え、戦力で数えたらほんの数人
第二遊撃隊の助けがなければこの基地は全滅だーって
全力で被害者ムーヴするのよ
実際に被害者だし、嘘は何一つないでしょう?
●
3人の猟兵が第二遊撃隊へ交渉に向かった時刻、第三基地。
ひとまず落ち着きを取り戻した部屋をあとにしたランツ中佐は、現場の隊員たちが集まっているハンガーにやってきていた。理由はもちろん、暴発しかねない隊員たちを抑えるためだ。
そこに紫の髪をなびかせて桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)がその姿を現すと、ここが基地内だということを一瞬忘れさせるような雰囲気に包まれた。
「ランツ中佐」
澄んだよく通る声が司令官の名を呼ぶと、自然と周りの兵士たちも静かになっていった。
「難しい判断を迫られたわね」
「そうだな」
ランツが短く答えた。
第三基地をしては第二遊撃隊からの降伏要求は到底飲めない。それはクーデターを認めたことになってしまうからだ。
しかし降伏を拒否すれば味方同士の戦闘に入ってしまうだろう。
兵士たちは一戦も辞さない心構えのようだが、いつ『所属不明機』が現れるとも解らない状況下で味方同士が争うなど、愚の骨頂でしかない。
「|第二遊撃隊《あっち》には『所属不明機』のことは知らされていないんだろう」
もちろん|第三基地《こちら》が戦闘を繰り返していることも。
そして……それはおそらく『シュウェイン』上層部の判断で。
最後だけは言葉を飲んだランツ中佐だったが、水之江にはその言葉は伝わったようだ。
「困ったわね」
水之江があらためて言って。
「そうだな」
ランツ中佐が繰り返すと、
「じゃあ第三基地の門を開いたらどうかしら?」
水之江がけろりと言い放った。
兵士たちの間にざわめきが広がる。
「降伏を受け入れるって意味じゃないわよ?」
先ほどまでの炎が再燃しそうな兵士たちを前にしても、水之江はかすかな動揺すら見せない。
「受け入れるのは第二遊撃隊の内部監査よ」
内部監査という言葉に、兵士とランツ中佐にまで別の緊張感が走った。
そんな第三基地の面々を見て、水之江は微笑みながら語りかける。
「第二遊撃隊の何名かを内部監査という形で受け入れ、こちらには武装解除以前に、第二遊撃隊と交戦できるほどの戦力がそもそも残されていないことを確認してもらうのよ」
水之江の提案に、兵士たちの熱が少し冷めた。
たしかに今の第三基地に第二遊撃隊と戦えるだけの戦力はない。それは前線で戦っていた兵士たちがいちばんよくわかっていた。
「その中で第三基地が如何に所属不明機に悩まされているか、本国の支援が滞っていて困窮しているかを訴えましょう」
「何をいまさら!」
「いままで俺たちがどんな思いで戦ってきたと思ってるんだ!?」
その言葉に兵士たちが、また声を上げ始める。しかしランツ中佐がそれを制した。
「たしかに|第二遊撃隊《あちら》は『所属不明機』のことも、第三基地の戦力が残っていないことも知らないはずだ」
兵士たちが驚きに目を見開いた。
第三基地がここまで必死に戦ってきたことを、第二遊撃隊は知らない? そんな馬鹿な。
表情がそう語っていた。
『シュウェリン』本国にはもちろん報告している。補給と援軍の要請だって一度や二度ではない。それなのに……。
「だからこそクーデターなどという命令を信じているのだろう」
司令官が苦々しく絞り出した言葉に周囲の兵士たちも押し黙る。
そんな重苦しい雰囲気を振り払うように、それなら、と水之江が口を開く。
「猟兵を雇用したのも、キャバリアを買ったのも、第三基地単独で所属不明機に対処せざるを得なかったから……という理由が正当になるんじゃない?」
確かにその通りだった。
第三基地の現状を知らない第二遊撃隊にこのことを伝えれば、一定の理解は得られるだろう。
兵士たちは無言だった。水之江の言葉に揺れている様子が手に取るようにわかる。
しかしランツ中佐はしばらく考えた後に、
「向こうがそれを信じれば、だがな」
皮肉交じりにそう告げた。
いや信じる信じない以前に命令として正式に発令されている以上、問答無用の可能性すらある。ランツはそこまで考えてまた黙り込んでしまった。
「なら第二遊撃隊に『所属不明機』の対処をお願いしましょう」
水之江がさらなる案を提示すると、兵士たちの間にどよめきが走った。
「そんなの遊撃隊のやつらがこちらの話を信じなければ成り立たたないんじゃ?」
「そうだ。あいつらは援軍じゃないんだ」
疑問とともに第二遊撃隊への不満がまた再燃する。
そんな兵士たちを笑顔で宥めながら、
「この基地に残された戦力はもう僅か。猟兵を雇ったとは言え、戦力で数えたらほんの数人よ」
水之江が言う。
しかしランツ中佐も兵士たちも知っている。その|ほんの数人《・・・・・》がとんでもない戦力であるということを。
だからこそその意見には賛成できず、声もあがったのだが、
「でも第二遊撃隊はそのことを知らないでしょう? なら第二遊撃隊の助けがなければこの基地は全滅だーって全力で被害者ムーヴするのよ」
敵を欺くにはまず味方から、ってね。
少し用法が違う気がする。しかし水之江の言っている意味は兵士たちに間違いなく伝わった。
たしかに猟兵が凄腕の傭兵だということは知っていても、第二遊撃隊はその戦いぶりを見たことはないはずだ。
しかしそれよりも問題なのはさらりと言った水之江の言葉……その『敵』と『味方』とはいったい誰を指すのか――。
その意味を全員がなんとなく理解はしていた。しかし納得しきることができない。
「実際に被害者だし、嘘は何一つないでしょう?」
その深刻な動揺に気づきながらも水之江が続けた。
「しかし、いったいどうやって?」
心の動揺を抑え込み、なんとか口に出したランツの問いに、
「それはね」
水之江が悪戯っぽい笑顔を浮かべたそのとき。けたたましいサイレンの音がハンガー内に鳴り響いた。
そう今日は前回の『所属不明機』の襲撃から3日目の日だった。
大成功
🔵🔵🔵
『所属不明機』の目標は基本的に車両とキャバリアだ。そうなれば基地内に引っ込んでいる|第三基地《われわれ》より、屋外に布陣している|第二遊撃隊《あちら》を狙うのは当然だろう。
第二遊撃隊の攻撃が悪いわけではない。普通のキャバリアなら分厚い弾幕に阻まれ近づくことすら困難だっただろう。しかし『所属不明機』はその悉くを躱して陣に侵入し、攻撃直後の隙を突いて車両を潰していっていた。
全身を包むようにシールドを展開し、その輝きに包まれた姿はまさに|光の矢《レイ・アロー》。そしてその矢は今まさに戦車を貫こうとしていた『所属不明機』の槍を弾き飛ばした。
しかし『所属不明機』も胴体を撃ち抜かれる致命傷を避けようと強引に身体を捻った。狙いをズラされたファルコは即座に敵の右腕に目標を変えると、関節を抉るように削り取って上空へと急上昇していく。
動きの鈍くなった右腕に狙いを定めたイクシアが大型フォースブレードを振りかぶると、その身に纏っていた煌めきが刃に集まり、サイキックエナジーの刃がさらに大きさを増していく。
掠めるように槍を躱せば、穂先を捌いたフォースブレイドの刃がサイキックの火花を散らし、槍を受け止めたシールドビットが自らを犠牲にしつつイクシアを護る。そして――。
規則的な襲撃。区別なく兵器の無力化を狙う行動プロセス。そこに悪意あるプログラムの気配を感じつつイクシアは『所属不明機』にそう告げると、こちらもまた上空へと一時の離脱を図った。
水之江はカナリア両肩部のメガビームキャノンを素早く拡散モードにセットすると、角度を変えて立て続けに3回引き金を引くと、放たれたビームが細かな拡散粒子の壁となって『所属不明機』に襲いかかった。
ペダルを一段踏み込み、|操縦桿《スティック》を急激に倒す。カナリアが横に滑るように動きながら『所属不明機』の槍を【プラズマガントレット】で受け止めた。カナリア装甲が火花を上げながら槍の穂先を流す。
攻撃を仕掛けた側のカナリアですら、いまだダメージコントロールが済んでいないというのに、『所属不明機』は全身から煙を立ちのぼらせながらももう戦闘態勢に入っている。
近距離で放たれた三連突きを、一段目と二段目をガントレットで弾き、多少スピードの落ちた三段目はカナリアの上体を捻り装甲から火花を散らしながら躱すと、水之江は機体をさらに前に踏み出させた。
察知した『所属不明機』が後方に飛んでその場を離れるが、|水之江の氷柱《ミズノエアイシクル》はそれに合わせて軌道を変えると、着地した機体へと殺到していった。