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守国の志よ、薄暮に沈まん

#バトルモンスターワールド #2章、断章追加しました。

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#バトルモンスターワールド
#2章、断章追加しました。


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 虹色に輝く彩雲。
 暮れる空を鮮やかに彩る美しい空を、何千というけだものの群れが黒く染め、決して憎くはないそ奴らの血で染めることで、文字通りの血路を開き、それは輝かしい航路となり、自他の血潮に塗れて空を汚らわしくけだものたちの血肉をまき散らす。
 栄光という大義名分が、領土を求める形のない欲求とが、兵たちを新たな血路をと駆り立てる。
 鉄の船よりも、鉄の翼よりも、もっと雄々しく、もっと安く、空を飛ぶけだものたちによる空軍部隊は、爆発的な速度で生産され、堕としても墜としても際限なく現れるのだ。
 いったいいつまで、この戦いを続けねばならぬ。
 いったいいつになったら、彼らを辱めなくともいい時代がやって来るのだろうか。
 はじめて、空軍部隊のバトルモンスターに乗って空を飛んだ時の感動は、もう思い出せない。
 甘やかな理想を抱いて軍服に袖を通した男が、いつしか、損害報告でしか語られなくなった彼等に対し、何の感慨も抱かなくなっていた。
 相棒の死を悼み、恨み、奮起し、戦果を挙げて、この戦いの終結には、より多くの戦闘兵器の投入と消耗が必要である事に、何ら迷いを失う頃には、空軍を率いていた男は、英雄と呼ばれるようになっていた。
 あれから、どれほどの時が流れただろう。
 男の記憶は定かではなかったが、己はまだ健在であり、空には相変わらずけだものたちが飛んでいる。
『吾輩が健在であり、あれらが空を舞っているというのであれば、そうか、まだ、作戦中なのだろう。急いで、戦線に復帰せねば……理想の為に、祖国のために』
 悲壮な決意と共に、古く英雄と持て囃された男は、平和な世に宣戦を布告するのであった。
「よーし、カーット! うーん、いい感じなんだけどねぇ、サメちゃんたち、もうちょっと迫力出ない?」
 片田舎ののどかな丘陵で、メガホンを手に取る映画監督の鋭い声が響く。
 どうやらここは映画制作の現場。
 CGやVFXを極力用いず、いささか時代遅れな手法と、バトモン達を利用してパニック映画を撮っているのだという。
 古代の戦闘兵器である空飛ぶサメたちが、キャンパーたちに襲い掛かるという、その手のマニアには垂涎の作になると豪語しているらしく、その熱意はスゴイ。
 この映画撮影のために、わざわざテイマー資格まで取得し、たくさんの飛行サメ型のバトモンを業者から買い入れたという。
「ちょっと温厚に育て過ぎたかなぁ……やっぱ、なんだかんだで情移っちゃうよな。エミール役は、まだ準備できていないのォ?」
 この映画には、一部、史実をパロディにした部分があり、かつての大戦の英雄が蘇り、敵になったり味方になったりするというのだ。
 なので、軍服姿の厳つい役者の登場を待っていたのだが、
「監督、エミール・ハルトマン役、入りますよ!」
「やっとかぁ……あれ、二人もいたっけ? めっちゃ、迫力だな。真に迫ってる。いいねぇ、彼!」
 誰が予測するだろう。そんな現場に、まさか本人がやってくるなど。

「というわけでですね、バトルモンスターワールドにて、映画撮影が行われているそうなんですよ」
 グリモアベースはその一角、矢絣模様の給仕服に、カラスっぽい鳥を連れた疋田菊月は、かのバトモンの世界において、旧大戦の亡霊が蘇る可能性を伝える。
 バトルモンスターワールドに数多く存在する、バトモンという生き物は、かつての最終戦争における生物兵器であり、その在り様は様々だが、今の時代に至っては平和的に利用され、いや、人類と共に歩んでくれているらしい。
 しかしながら、そんな世界にも、人同士が争い合っていた時代の者がオブリビオンとして甦り、平和な世を乱す可能性があるというのだ。
「かつて空軍を率い、空飛ぶバトモンを操って、自らも撃墜王と呼ばれたエミール・ハルトマン大佐は、今でもいくつか資料が残っていて、今度のように映画の題材にもなったりすることもあるとか……もっとも、製作中の映画はちょっとイロモノっぽいですけどね。うふふ」
 居並ぶ猟兵たちに紅茶を提供しながら、ほのぼのと微笑むのだが、事態はどうやらそう優しいものではなさそうだ。
 笑みを僅かに引っ込めると、浅く息をついて、バトモンとかつての英雄たちについて話す。
「オブリビオンと化したとはいえ、彼らはかつての英雄。私とそこにいるカミオさんのように、強い契約にも似た命令権のようなモノがあるのかもしれません。バトモンはもともと戦闘生物ですからね。その類のコードがあるのも不思議じゃないです。
 監督の用意した空飛ぶサメバトモン、トブカは、あっという間にコントロールを奪われ、大佐と共に山奥まで消えてしまったとの話です」
『俺が、おみゃあの命令をホイホイ聞くと思うとるのきゃ。なーめられたもんだでの』
「あ、ややこしくなるので、もうちょっとだけ黙っててくださいねー」
『ほいほい』
 いきなり黒いカラスのような鳥が、ナゴヤ訛りで喋り始める珍事などがあったが、それはひとまず置いておいて。
「いきなりの出来事に、監督さんはビックリされたそうですが、なんと撮影続行! 全然危機意識が無いですね。はぁ、というわけで助けてあげなくてはいけません。
 ノリのいい皆さんであれば、映画撮影に協力する……までもないとは思いますが、それを見返りにエミール大佐の行方を探ることができるかもしれません」
 つまりは、エミール大佐を追いかけて、バトモンを奪還し、彼を討伐せよという話である。
 その道中では、彼の使役するバトモン、トブカを相手取ることもあるだろう。
 なるほど、その光景は確かに、迫力満点となる可能性は大いにある。
「なんだか、変な話になってしまいましたが、放置するのはいずれ世界の危機となってしまいます。どうぞ、力をお貸しくださいませ。
 もしかしたら、ギャランティが出るかもしれませんし! 大ヒットするかもしれませんよ」
『たーわけ。サメ映画なんぞ、サメ好きしか見んだろ。どれだけ需要があると思うとるんだゃ?』
「そんなこと言っちゃダメですよ」
 何やらごたごた言いつつも、取り合えずの説明を終えると、菊月は、猟兵たちを送り出す準備を始めるのだった。




第2章 集団戦 『洗脳トブカ』

POW   :    サメアタック
【体当たり】が命中した対象に対し、高威力高命中の【噛みつき】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    シャーク・バイト
【高速で移動しながら噛みつき】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【匂いと味】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    おんすいシャーク
【口から高温水弾】を放ち、命中した敵を【高温の水】に包み継続ダメージを与える。自身が【空中にいる状態で攻撃】していると威力アップ。

イラスト:榛戸ろもも

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ばさばさと、羽ばたく音が、針葉樹の生い茂る森を回遊する。
 ここは彼らの住処ではないが、重力を無視したかのように空を泳ぐ魚影の編隊は、おおよそそれが空である事を忘れるかのような異様であった。
 その威容、鳥でも魚でもなく、翼の生えた空飛ぶサメバトモン──トブカの野性には見られぬ、規律によって統制された美しい飛行編隊は、規則的であり、だからこそ一部の隙も無いように見える。
 すべてが一つの生命の意思のもとに動いているかのようなそれは、むしろ生物的というよりかは機械のような整然とした機能美を感じさせる。
 在りし日の空軍の在り様。人の踏み入れぬ山奥の針葉樹林帯は、今や要塞と化していた。
 だがしかし、美しいほどに整然と回遊し、哨戒する姿を見た時、バトモンと共に来た者は、或は彼らの姿に痛ましいものを見たかもしれない。
 或は、彼らのその目に、死んだ魚のような仄暗さを見たかもしれない。
 彼らの本来の姿を知る者からすれば、生き生きと空を飛び回る様を知る者からすれば、無機質に道具の一つとして機能するそれらの姿は、許されざる姿のように見えたかもしれない。
『……』
 彼らがその牙を軋ませるのは、虚ろな目を向けるのは、果たして本意だろうか。
 いずれにせよ、洗脳されたトブカたちをどうにか突破しない事には、エミール大佐のもとへたどり着くことはできまい。
結城・有栖
あれが、洗脳されて連れて行かれたトブカ達ですか。

「編隊を組んで飛ぶサメも異様ダネー。
洗脳されてやる気満々みたいだし、やるしか無いヨ」

了解です。では、オオカミさん、此処は任せます。

まずはUCでオオカミさんを召喚。
そのまま、黒い烈風による風の【属性攻撃】で竜巻を起こして、敵を巻き込み、【範囲攻撃】です。
飛んでる相手なら、強風はよく効くでしょう。
竜巻でぐるぐる回して、気絶させていきます。

「…サメと竜巻って既視感があるネ」

こっちに飛んでくる敵は、【野生の勘で見切り】、ウィンドボードを使って【軽業と空中機動】で回避。
更に、【カウンター】で桔梗さんの【影使い】の影の触手を伸ばして【捕縛】します。



 その異様な光景は、まさに、映画のような作為的なものを感じずにはいられなかった。
 そういえば、映画撮影の現場繋がりであり、そして、その為に起用されたバトモン達を取り戻しに来たのだから、目の前の光景もある意味その一部と言っても過言ではない。
 ……いや、いくら何でも暴論が過ぎるんじゃないだろうか。
 仮にそうだとして、こうまで整然と、厳戒態勢を敷いたかのように美しい編隊を幾重にも張り巡らせて哨戒する空飛ぶサメバトモン、トブカ達を操れるほどの使い手がどれほどいるだろうか。
 山奥の針葉樹林帯の中に、まるで要塞でも隠されているかのように思わせるほどの、鉄壁の構えは、やはり、映画のようとしか形容できないものがあったのだ。
「あれが、洗脳されたトブカ達、ですか」
 影たちを飛ばし、この場所を突き止めた結城有栖であったが、さしもの猟兵と言えど、彼らの領空に迂闊に足を踏み入れるのは戸惑うところがあった。
 無警戒に探索に入ったサメ型の幻影は、瞬く間にトブカ達の奇襲を受けて撃墜されてしまった。
『編隊を組んで飛ぶサメも異様ダネー。
 洗脳されてやる気満々みたいだし、やるしか無いヨ』
 ぴりぴりと肌を焼くような危険な気配を感じつつ、ある一定距離以降に踏み込む機会を伺っていたところへ、内なるオウガことオオカミさんが、その背をそっと押す手助けをしてくれる。
 ウィンドボードで空から接近している時点で、あちらもこちらを意識しているのには違いあるまい。
 ただ、彼らは強固な命令権により警戒する距離を保っているだけであり、領空を侵犯しない限り、その牙を剥きだしにすることはまだないだけだ。
 時折こちらに向く、色のない視線だけが、無機質な敵意を向けてきているようで、野生動物とも防犯カメラともどこか違う気味の悪さを感じずにはいられない。
 モンスターパニックものの映画の得体の知れない恐ろしさというのは、こういう空気を言うのだろうか。
「……了解です。オオカミさん、此処は任せます」
『あいヨー』
 ハラハラするような、ぞくぞくするような、胸に迫る恐怖を、もしかしたらオオカミさんも共有しているのかもしれない。
 或は、オウガである彼女は、オウガブラッドである結城有栖の秘められた狂気ともされるその本性では、恐れなど無いのかもしれないが、この高揚にも似た経験を同じように感じているのだとすれば、嬉しい気がする。
 物理的に手を借りる意味でも、【魔獣具現・オオカミさん】により、その心象より形を得た有栖そっくりのオオカミさんは、ひらりと重力など無いかのように空を舞うと、その周囲には黒く染まった烈風が纏う。
『……!!』
 整然と編隊を成していたトブカたちが、一斉に彼女の方を向く。
 領空を侵犯してきた愚かな侵入者を迎撃するべく、一瞬にして攻撃機動へ移る鮮やかさはさながら機械のようであったが、しかし、ここは大自然の大気の中。
『あらヨーっ!』
 まるで海中の魚雷の如く牙を剥いて突撃してくるトブカたちを、渦潮に巻き込むかのように黒い烈風が竜巻を成す。
 巨体をそのままに身を任せることのできる水中ではなく、泳ぐ力を損なえばあっという間に失速してしまう空中において、猛烈な乱気流の効果は抜群だ。
 風だから空の相手に不向きなどということはない。
 複数の編隊をまとめて風の渦にからめとって巻き込む姿は、なんというか、こう、
『……サメと竜巻って、既視感あるネ』
 数あるクソ、もといサメ映画の中でも、サメと竜巻のあれは名作と言わざるを得ない。
 あの作品とディープブルー以外は別に要らないんじゃないか。いや、元祖のあれは別格としてさ。
 などという過激派までいるとかいないとか。
 いやいや、地上にまで平気で出てくるタコと合体するやつとか、画面映えの為に致命的な弱点を敢えて前面に出す頭二つのやつとか、ぎりぎり面白いやつはまだまだいっぱいあるって!
「ハッ!?」
 竜巻に巻き込まれて目を回し失速していくトブカを見下ろし、どこか上の空だった有栖は、気が付けばトブカの編隊の一つに目を付けられていたのに気が付いた。
 いつの間にか領空に踏み込んでいたようだ。
「っ! 迂闊に怪我はさせられません。桔梗さん、網を張りますよ」
「るー」
 正面から迎え撃つかのように、ウィンドボードの上で身体のばねを溜めるような体勢をとると、フードの中からひょっこりとバトモンの桔梗さんが飛び出す。
 空を縦横無尽に飛んでくる空飛ぶサメの突撃を、波乗り板を操って、こちらも空を自由に滑ることで立体的に躱す。
 風の流れを読めるものが仮にいたなら、そこに風の波を、そして反り返る波をロケット発射口に見立てたことで名付けられた妙技、シャトルループを幻視したかもしれない。
 逆さになった有栖と、交差するように突撃してきたトブカとが一瞬、視線が重なる。
 しかしそれまでだ。
 影を使う桔梗さんが迎え撃つように仕掛けていた影の触手が、大きなタモ網の如く誘い込まれたトブカを捕縛して逃さない。
「るー」
「ナイスですよ」
 翼をがっちりと固められたトブカがじたばたしながらゆっくり落ちていくのを見送りながら、どことなく誇らしげな桔梗さんを褒めつつ、有栖もまた次の戦況に視線を飛ばすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【SPD判定】
真剣口調で話すよ

大佐は軍事行動のためにあの子達を利用しようとしているんだよね…
あんな機械兵器みたいな状態から、早く開放してあげないと
そのためにも…まずはあの子達を一時行動不能にしないとね
ライバーン!キミに決めた!

ライバーンと一緒に大佐に洗脳されたトブカと戦うよ

UCは『ライバーンのでんげきブレス★』
【空中機動/空中戦】技能で飛翔状態になったライバーンが【でんげきブレス】や【電撃突進】、【電流噛みつき】で攻撃するよ
敵の攻撃は【第六感/見切り/身かわし】で避けるね



 山肌を覆うような針葉樹の森が広がるその一帯は、まるで山全体における影のようにも見えた。
 さもなくば、山肌を晒さぬよう大自然からその骨肉を削がれぬよう覆った鱗のようでもあったかもしれない。
 それすらも自然の一部だというのに、それはまるで、天然の要塞。
 単なる自然の造形に過ぎぬその一帯が、目を凝らしてよくよく見ても堅固な風に感じたのならば、きっとその周囲を飛び交うたくさんのトブカ達の編隊飛行が、あまりにも規律正しかったからだろう。
 それらの警戒網に引っ掛からぬよう、自らの足で出向いてきたクローネ・マックローネは、先ほどまで映画関係者と楽しげに談笑していた明るい表情も鳴りを潜め、少女の姿を成すブラックタールのちょっぴり地黒な横顔にいささか剣呑なものを帯びる。
「大佐は軍事行動のためにあの子達を利用しようとしているんだよね……。
 あんな機械兵器みたいな状態から、早く開放してあげないと」
 バトモンはもともと戦闘生物という歴史をもっている。
 とはいえ、生まれた経緯からはずいぶんと年代が経ち、生物として解き放たれた彼らは、今の代においてほぼ野性と言ってもいいはずだ。
 にも拘らず、相変わらずかつての英雄たちはその絶対的な命令権を行使して、バトモンを縛り付けることが可能であるらしい。
 生まれたその業から逃れられぬ不幸。いや、悪用するものがすべて悪い。
 クローネの中には、様々な神魔、オブリビオンの魂が通り過ぎ、今の彼女を成している。
 その精神性は今や複雑で、一口には言い切れない。
 力ある存在は、在るだけで世界に影響を及ぼすも、その力の向く方向を決めるのは、とてもシンプルなもので、それそのものに善悪は無いのだ。
 ただし、及ぼされる影響は、時に醜悪にもなり、時に人々の胸打つものになる。
 それ故に、志だけは己の行動に後悔なきよう、自分自身に恥じぬよう貫かねば、きっとどこかでひずみが生まれ、カオスを煮詰めたようなブラックタールの根幹をも、いずれは滅びに招くだろう。
 難解に思う事はない。
 それを悪しきものであるとするならば、クローネは、きっと力を振るう事に躊躇しない。
 今は敵となってしまった、彼らが憎いわけではない。
「……まずは、彼らを一時行動不能にしないとね。
 ライバーン! キミに決めた!」
 上空を見上げると、いくつもの魚影が規則正しく、機械のような正確な軌道で哨戒についている。
 おおよそ生物らしからぬ彼らを取り戻すべく、クローネは自らの相棒にも等しい雷ワイバーンバトモン『ライバーン』を呼び寄せる。
 痺れるような静電気を帯びた風と共に、翼を広げたライバーンが羽ばたくと、気流が巻き起こって、鋭い鳴き声を引きずっていくかのように勢いよく飛翔していく。
『……ッ!!』
 突然の侵入者。領域侵犯する空の影。ライバーンの勇姿は、雄々しい陽光にも似た眩い雷光を放って、その姿をアピールし、すぐさま周囲の警戒飛行中の洗脳トブカ達の視線をあつめる。
 悠然たる翼竜の余裕ある羽ばたきが有機的躍動に溢れるのに対し、トブカ達の飛行を支える翼の躍動は機械的であり、まさしく水中を泳ぐかのように身を捩らせる最低限度の滑空に近い。
 その静けさこそが、獲物を狙って牙を研ぎ澄ませる戦闘機械めいて、得体の知れない危険性を思わせる。
 睨み合いが続嗅に思われたが、しかし、長期戦は数に勝るほうが有利だ。
「ライバーン、でんげきブレスだ!」
 速攻で畳みかけるべく、クローネがライバーンに指示を飛ばす。
 現場での臨機応変はさすがにライバーン本体の方に任せるが、戦況を見るクローネが大まかな戦術を飛ばすことで、その戦闘力は数倍にも引き上げられるのだ。
 【ライバーンのでんげきブレス★】は、牽制でも何でもなく、一撃で複数体を黙らせるために、初手から全力で雷光を帯びたブレスを放つことで、物理的に警告する。
 薙ぎ払うような雷光。それにわずかでも撫でられたトブカ達が、ことごとくその身体を痺れさせ、ひきつったようにして墜落していく。
 しかし、機械のように恐れぬ洗脳トブカは、即時、ブレスの効果範囲を被害を出しながら把握し、人海戦術のようにして掻い潜り、潜り込むようにして、まさに水流をかき分けるサメと同じくその牙を剥いて突進してくる。
「っ、通り抜けてくる。ライバーン、避けるんだ!」
『クオオッ!!』
 檄を飛ばすクローネに反応するようにして、ライバーンが空中で身を捩る。
 魚雷のように突進してくるトブカの身体と、空中で接触こそしないものの、空気が混じり合うかのようにぐるんと体勢を入れ替える様は、生息領域が異なるようには見えない、水中のようでも空中のようでもある不思議な邂逅に見えた。
 だが、見惚れても居られない。
 体制を入れ替えるように見えたのは、素早い攻防でもあった。
 追う行為であり、避ける行為でもあるそれが、円を描くような体勢移動であり、若干体格で勝るライバーンが首を伸ばすほうが早かった。
 尾びれにがっちりと嚙みついたライバーンが、そのままトブカの身体を空中で振り回し、予期せぬ方向に引っ張られたトブカは、慣性を殺され揚力を失って、羽ばたく間もなくその身体に電撃を迸らせて身体を硬直させて失速していった。
 そのわずかで、素早く、獰猛な獣同士のような攻防を経てなお、ライバーンは警戒を怠らず、周囲を威嚇するように、その口の端に雷を迸らせて嘶くのであった。
 その様相には、さしもの戦闘機械のようであったトブカ達も、迂闊には踏み込めない様子であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​