【戦後】見たい、会いたい
「シルバーレインの世界のことなのだけど」
君たちにそう切り出した石蕗・つなぎ(土蜘蛛の白燐蟲使い・f35419)によると、とあるメガリスが一般人の手に渡ってしまい、現地では不可思議な現象が起き始めているのだそうだ。
「メガリスは額縁の形で名称は不明。通常の物品に紛れて長く、時の流れに埋もれて失われたんでしょうね」
ちなみにこのメガリスの効果は所有者が望む過去の景色の空間を作り出し、そこに入り込めると言うもの。
「『開発によって失われてしまった思い出の場所』とか、もう現実には存在しない場所へ行けるというのは魅力的なんでしょうね」
ただし、心弱い者が使えば望む景色の空間から戻ってこられなくなる。
「写真みたいに動きはしないけれど、別れた恋人や家族と言った人物も景色の一部として構成出来るようだから――」
つなぎによるとメガリスを手にした一般人も自身の望んだ空間の中から出られなくなってしまっているのだとか。
「ただ、このメガリスにはもう一つ効果があるの。空間を作り出した時、所有者はその空間で守らないといけないルールを一つ、作ることが出来るのよ」
詳細は解らないが所有者である一般人も望む景色を作る時にルールを一つ設けたはずで。
「ただ、ルールを破ったところで大した危険はないわ。強制的に外にはじき出されるだけだから」
ただし、一度弾き出されると暫くの間は件の空間に入れなくなるとのこと。
「説明を続けるわ。メガリスを入手したのは高齢の老人で、空間の中はどこかのキャンプ場ね。何人かの利用客が居て、メガリスの所有者はその中の一人である若い女性の近くに倒れてるわ」
その女性が老人にとって一目会いたい大切な人であったのか。
「メガリス自体もこの空間のどこかにある筈だけど、テントには触らない方が良いわ」
動かない光景の為に中には入れないし、ルールに抵触する恐れもある。
「正直、おじいさんの身体の下にあったとかそう言うのが一番あり得ると思うけれど」
ルールがわからない以上、メガリス探しにもある程度の慎重さが必要という訳だ。
「首尾よくメガリスを回収しておじいさんを助けて外に出れば、多分もうそこは夜になっている筈よ」
あとは夜道を帰るだけだ。老人の体調が気になるなら病院まで送って行ってもいい。
「念のため病院までの地図を渡しておくわ。連れてゆくならこれを使って」
つなぎ曰く、外に出たところから病院まではそう離れていないそうだ。
「放置した結果、件の空間に一般人が迷い込むかもしれないしこのまま放置してはおじいさんが危険だもの」
メガリスの回収、よろしくお願いするわねとつなぎは頭を下げたのだった。
聖山 葵
荷物の整理をしてたら昔の写真が出てきたことがありました。
という訳かどうかはさておき、今回はメガリスを回収してくるお話の模様です。所有者は意識がないようですので、見つければルールに抵触していない場合に限りサクッと回収できるようです。
そして今回のメガリスですが、名称が失われているためこれについては確保した方が決めていただいて構いません。
また、希望すれば獲得したこのメガリスは旅団へ持ち帰ることが出来ます。メガリスを希望の場合、二章のプレイング内に希望する旨をご記載ください。(確保できるのは一章ですが所有が確定するのはラストになるため)
ただし、メガリスは一つ、希望者が複数の場合、ダイスで持ち帰る方を決定させていただきます。
では、ご参加お待ちしておりますね。
第1章 冒険
『隔離された空間』
|
POW : なんであれ、色々と出来そうなことを試してみようか。
SPD : 何かないのか、周囲を探してみる。
WIZ : 定められているルールの把握、または利用できるか考える。
イラスト:みり
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
何とも不思議なメガリスですぅ。
「亡くなった奥様との思い出の場所」等ですかねぇ?
【骰佱】を発動し『FLS』で『FPS』を召喚、メガリスの位置と所有者の方を探しましょう。
現状『ルール』は不明ですが、設定したのが「一般人の男性」なら、『神秘関連のルール』は知識がない以上設定出来ないと思われますので、【骰佱】で『祭器』の性質を「神秘法則」に設定すれば、別項目で触れない限り『ルール』に引っ掛からずに探せるはずですぅ。
所有者さんを発見したら『FQS』と『FJS』を召喚、『FQS』で応急処置しつつ「フロートボード」に設定した『FJS』に乗せて運搬すると共に、彼の体の下も探しましょう。
「何とも不思議なメガリスですぅ」
|グリモア猟兵《つなぎ》からの説明を聞いてそう感想を口にした夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が転送されて現れた場所は正面が薄っすらぼやけていた。そこが件のメガリスの作り出した空間の入り口なのであろう。ぼやけた場所に近寄ればるこるの視界は再び一変し、あちこちにテントが張られたキャンプ場のものへと変わった。
(「亡くなった奥様との思い出の場所」等ですかねぇ?)
意識を取り戻したメガリスの持ち主と接触できていない今のるこるには、この景色の由来を知る術はない。キャンプ場のところどころに居る利用者も写真のように動きを止めているのだから。
「大いなる豊饒の女神、その『祭器』の表裏たる異種の姿を此処に」
ただ祈りを捧げ、|浮遊する16枚の札《FLS》を用いて|浮遊する涙滴型の水晶《FPS》をるこるは召喚し。
「では始めましょうかぁ」
と、るこるはさっそくメガリスと所有者の老人を探し始める。
(現状『ルール』は不明ですが、設定したのが「一般人の男性」なら『神秘関連のルール』は知識がない以上設定出来ないと思われますのでぇ)
『祭器』の性質を「神秘法則」に設定すれば別項目で触れない限り安全だろうというのがるこるの見解であるが、果たしてそれは正しく。制止したキャンプ場の光景の中から放り出されることなくるこるは捜索を続けてゆく。
「それほど広いキャンプ場ではないようですしぃ、見つかるのは時間の問題かもしれませんねぇ」
つなぎの話では所有者の老人は倒れている筈で、キャンプ場を利用している人々は微動だにしないのだ。移動する人物が居ないのだからしらみつぶしに探してゆくだけでも見つかるのは確実で、発見は時間の問題にも思われる。
「見つけたらすぐに対応できるようにもしておきましょうかぁ」
負傷を治療できる|浮遊する十輪の花《FQS》と見つけた老人を運ぶ|凡ゆる乗物に変形可能な球《FJS》を召喚したるこるはそのまま探索を続けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
酒井森・興和
思い出を反芻出来るだけのメガリスなら余り危ない気もしないけど、そこから還ってこられないのはねえ…
僕みたいに現代に居るのが間違いっぽい存在ならともかく、行方不明、とか神隠し、って騒ぎになるだろうし
どんなルールか解らないし当のおじいさん以外には極力触れないでいよう
UCと【気配感知】を活用
【落ち着き、根気強く】おじいさんとメガリスらしい額縁を探す
若い女性の近く、とも言ってたねえ
その人も何か所縁のある人なのかな
細君、娘さん、昔の想い人、姉妹、友人、…
おじいさんならばもう思い出に浸る日の方が多いのだろうか
いや、まあ僕がわりかし、過去に縋ってしまう性質で、皆が過去ばかり恋しいわけでもないか
八坂・詩織
写真の中に入り込んだみたいな感じですかね…元となった写真があるわけではなく、あくまで所有者の思い出の景色に入れるというものなんでしょうけど。
最近カメラ始めて、割とキャンプも好きな身としてはちょっぴり親近感。
私がこの空間におけるルールを作るとしたら…空間を荒らさない、とかそれくらいしか思いつかないんですが。
ひとまず極力周りの物や人物には触らないようにしつつ。この空間でイレギュラーなのは所有者である老人…思い出の景色ということは、年老いたこの人本人は本来この景色の中にはいないはずですから。逆に若い時のこの人はこの景色の中にいるんでしょうか。
【宝探し】の技能も使い、老人の周辺を重点的に探してみます。
「思い出を反芻出来るだけのメガリスなら余り危ない気もしないけど、そこから還ってこられないのはねえ……」
グリモア猟兵が話したメガリス所有者の今を思い出し、酒井森・興和(朱纏・f37018)は嘆息した。
「僕みたいに現代に居るのが間違いっぽい存在ならともかく、行方不明、とか神隠し、って騒ぎになるだろうし」
そもそもメガリスの所有者は一般人。飲まず食わずでメガリスの作り出した空間に囚われたままなら倒れもするしそのまま放置すれば命だって落としかねない。
「どんなルールか解らないし当のおじいさん以外には極力触れないでいよう」
とも決めつつ既にメガリスの作り出した空間へと入って行った仲間の後を追う。
「ここは……この先に問題の空間があるのですね」
転送されて同じ場所に八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)が現れたのはちょうどその直後だった。
「写真の中に入り込んだみたいな感じですかね……元となった写真があるわけではなく、あくまで所有者の思い出の景色に入れるというものなんでしょうけど」
まだ見ぬ侵入後の空間に思いをはせる様がどことなく嬉しそうなのは、最近カメラ始めたことと割とキャンプも好きなことでメガリスの持ち主に詩織がどこか親近感を覚えたからか。
「ここで見ていても仕方ありませんね」
とはいえ、メガリスの持ち主が中で倒れているのだとしたら、のんびりもしていられない。表情を引き締めた詩織もぼやけた場所の先に踏み込めば、視界は一瞬で切り替わる。
「この景色……やはり写真みたいです」
木々は青々と茂っているのにこずえが風に騒めくことはなく、自然豊かな場所にもかかわらず野鳥のさえずりも聞こえてこない。ほとんどの音がないそこは確かに景色を再現しただけの場所のようであった。
(私がこの空間におけるルールを作るとしたら……空間を荒らさない、とかそれくらいしか思いつかないんですが)
ルールに抵触してしまえば弾き出されてメガリスも探せない。詩織が極力周りの物や人物には触らないようにしつつメガリス探しを始めた頃。
「……これだけ探して居ないとすると、向こうの方かな」
興和は根気強くメガリスと所有者の老人を探していた。ユーベルコードも用い、第六感などを大幅に強化している手前、見落としがあったとは思えない興和が捜索範囲を変更したのはおそらく妥当で。
「若い女性の近く、とも言ってたねえ。その人も何か所縁のある人なのかな」
呟きつつ視線はまだ探していない方に点在するキャンプ場利用者の女性たちの方に向いて。
「細君、娘さん、昔の想い人、姉妹、友人……」
可能性をあげながら、興和はふと思う。
(おじいさんならばもう思い出に浸る日の方が多いのだろうか)
探すメガリスの性質を鑑みれば、その延長線上にこの事件が起きたとしてもおかしくはないが。
「いや、まあ僕がわりかし、過去に縋ってしまう性質で、皆が過去ばかり恋しいわけでもないか」
興和は頭を振ると老人の捜索を再開する。もちろんこの間に他の猟兵も老人探しは続けていて。
「……おそらく、違いますね」
他の猟兵同様に老人を探していた詩織は若い男女の組み合わせにも目をやっていた。探しているのは、この空間ではイレギュラーである老人だが、ここはメガリス所有者の思い出の景色の中である筈で。
「逆に若い時のこの人はこの景色の中にいるんでしょうか」
そんな疑問から若い男女のペアも気にかけるようにしたという訳だ。だが、若い男女のペアの側に老人が倒れているということはなく。
「あれは……見つかったようですね」
暫く探し続けた末に詩織が目にしたのは、他の猟兵によってぐったりした老人が何やら乗り物に乗せられる光景。持ち上げられた老人の下には額縁のようなナニカが落ちていて。
「ありそうと言われていた通りでしたね」
何はともあれ、こうして老人の保護とメガリスの回収は完了した。側に居た若い女性との関係に関しても老人が意識を取り戻せば話してくれるかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 日常
『或る夜のひととき』
|
POW : とにかく歩いてみる
SPD : 情報をもとに行動してみる
WIZ : 周囲を眺めてみる
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「真っ暗とまでは言わないけど、これは足元に注意したほうがいいかもねぇ」
メガリスの作り出した空間を出ると、グリモア猟兵の言うとおりに辺りはすっかり夜となっていた。木々の合間から月明かりが差し込み、少し離れた場所には街灯の明かりも見える。老人を病院へ連れてゆくか、このまま帰るか、それは君たち次第だ。メガリスは無事回収されたのだから。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
さて、残るは後始末ですねぇ。
お爺さんを病院へ運ぶ際に、「何故遭遇したか」という部分で疑われても厄介ですぅ。
【豊饒宿霊】を発動し[言いくるめ]を強化、現場周囲の地形を元に「この先に有る施設に向かう途中で、倒れているお爺さんを発見した」という体で運び、|説明し《言いくるめ》て、手続きだけ終えたら帰還しますねぇ。
『メガリスの入手』は、他に希望者がいなければ、ですねぇ。
可能かは不明ですが、「DKWの大金庫の記憶を元に再現、適切な手順を踏まずに金庫を開こうとしたらアウト」という設定で保管庫や、「過去の戦争の地形」等の「険阻な地形」を再現して訓練に、と言った用途が思いつきますので。
酒井森・興和
●SPD
【暗視】を活用して【救助活動】と行こう
お爺さんの体調は気になるので可能なら病院へ運びたい
老齢の人間が長いこと外にぶっ倒れていたのだしねえ
運ぶ道具がなければ僕が負ぶっていこう
意識が戻ったら倒れてたので助けた、って事で
何か夢でも見てましたか?とでも聞いてみる
会話如何で病院でも家族に連絡でも良いかな…
僕はメガリスを手にする気は無いので管理者がいればその方にお任せするし
居なければ銀誓館学園に保管をお願いするかねえ…
その辺に隠すとか壊すとかも怖いからな
アドリブ等OKです
八坂・詩織
メガリスは他に希望者がいらっしゃらなければ持ち帰りたいです。
結局ルールは何だったんでしょうね…
ひとまず老人を病院に連れていきがてら少しお話聞いてみましょうか。額縁を手に入れた経緯とか、あれはどこのキャンプ場なのかとか。もう存在しないにしても昔キャンプ場があったのはたしかでしょうし。それに女性との関係性…(男女ペアの近くに倒れてたわけではないので片思いだったりしたんでしょうか…)
病院に送り届けたらあとは夜道を帰るだけですね。
やっぱり秋の月は空気も澄んで綺麗に見えるなぁ…
ちょっと立ち止まってスマホで月の写真撮ったりしつつ。月明かりがあると夜道を歩くのもちょっと楽しいんですよね。足元には注意ですが。
「結局ルールは何だったんでしょうね……」
メガリス所有者の老人が目を覚まし、聞くことが出来れば八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)の疑問の答えも判明したとは思う。だが現実にはまだ意識を失ったままで。
「さて、残るは後始末ですねぇ」
「お爺さんの体調は気になるので、可能なら病院へ運びたいねぇ。老齢の人間が長いこと外にぶっ倒れていたのだし」
口を開いた夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の言に酒井森・興和(朱纏・f37018)は主張すると。
「ひとまずこの方を病院に連れていきがてら、意識を取り戻したようでしたら少しお話聞いてみましょうか。額縁を手に入れた経緯とか、あれはどこのキャンプ場なのかとか」
「確かに気にはなりますがぁ、お爺さんを病院へ運ぶ際に『何故遭遇したか』という部分で疑われても厄介ですぅ」
詩織の提案にるこるは懸念を示して。
「なら、役割分担をしないかい?」
病院の人を言いくるめ、老人を預けると手続きだけ終えて帰るつもりと言うるこるに興和は言う。
「『この先に有る施設に向かう途中で、倒れているお爺さんを発見した』人をたまたま見かけた僕たちは気になって途中から合流したというようにねぇ」
「それでしたら私たちが細かく聞かれることはなさそうですね」
るこるは詮索されないし、残る二人は話の持って生き方次第で分からなかったことも知られる。
「運ぶ道具がなければ僕が負ぶっていこう。さっきの流れの通りにするとしても、『意識が戻ったら倒れてたので助けた』って事で矛盾はないだろうからねぇ」
「では、お願いしましょうかぁ。道路に出たら目的地の近くまではお運びしますのでぇ」
|凡ゆる乗物に変形可能な球《FJS》を持つるこるだが、人の立ち入らないであろう木々に囲まれた現在地やある程度病院に近づいたところでは乗り物よりも人の手で運んだ方が無難だという判断で老人を興和に託すと、メガリスはそのまま所持し。
「そう言えば|メガリス《こちら》はどういたしましょうかぁ?」
「うーん」
るこるの問いに興和は少し考え。
「僕はメガリスを手にする気は無いので管理者がいればその方にお任せするし、居なければ銀誓館学園に保管をお願いするかねえ……」
その辺に隠すとか壊すとかも怖いからなとも付け加えて残る二人を見返すと。
「私は他に希望者がいなければ、ですねぇ」
「私も他に希望者がいらっしゃらなければ持ち帰りたいです」
二人の口から出てきたのは、共に消極的な持ち帰り希望。こうなると後は話し合いかくじ引き、じゃんけんなどで決めるしかないのではなかろうか。もちろん、そこから先は老人を病院に送り届けた後で合流鳴りなんなりしての話となるのであろうが。
「うっ」
「あ」
結局老人が意識を取り戻したのは病院に到着し、病院側とのやり取りを終えてるこるが立ち去った後のことだった。
「何か夢でも見てましたか?」
「夢? あぁ……そうなのかもなぁ」
尋ねる興和に老人は話した。今はもうとっくに潰れてなくなったキャンプ場で先立った妻にプロポーズする直前の光景を見たのだと。
「まさかあの光景をもう一度見られるなんて思ってもおらんかったよ」
どこか遠くを見る目で老人は指輪のあるテントには誰も入れぬようにとも願ったといい、これが恐らくあの空間に課せられたルールだったのであろう。暫く老人の会話に付き合った興和は老人には子どもがいると言うのでその連絡先を聞き出して一報を入れ。
「片思いの相手ではなくありし頃の奥様だったのですね」
疑問の答えをもらった詩織は病院を出ると空を仰いだ。あとは帰路に就くだけではあるが、思うことでもあるのだろうか。
「やっぱり秋の月は空気も澄んで綺麗に見えるなぁ……」
ちょっと立ち止まってスマホで月の写真撮ったりしつつ向かうのはるこるとの落ちあい先だ。
「月明かりがあると夜道を歩くのもちょっと楽しいんですよね。足元には注意ですが」
時折止まりながら靴音は進む、そして。
「よろしいのですか?」
「静止画のように動かないとなるとそもそも金庫の扉自体が動かないか開けっ放しになってしまいますからねぇ。『過去の戦争の地形』等の『険阻な地形』を再現して訓練場に使おうにも動くものはダメとなると制約がかかってしまいますしぃ。今回はご縁がなかったということで」
「そう言う事でしたら、頂いていきますね」
るこるとの再会、暫く何やらやり取りを交わした後の詩織の手にはあの時老人の下敷きになっていた額縁がしっかり握られていたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵