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【SecretTale】襲来、その前に……
●終わりが始まる前に
コントラ・ソールが使えなくなった。……というのは、前回にも起こったことがある。
その時はその地域のソール物質がなくなったため、防衛機構が働いて使えなくなった、というのが真相だった。
だが、今回はとても深刻なものだ。なにせそのコントラ・ソールを使うための物質それ自体がエルグランデという世界からなくなろうとしているのだから。
エルグランデに生きる人々は、コントラ・ソールというとても便利な力を手に入れた代償に、ソール物質がなければ生きられない肉体へと変貌している。
それ故に、ソール物質が世界からなくなれば人体の機能が大幅に低下し、歩くことはおろか意識を保つことも難しくなっていた。
今やエルグランデの世界は大規模な侵略行為によって窮地を迎えている。……というのが司令官エルドレット・アーベントロートの言葉。
「とはいえ、外部の侵略者がソール物質のことをすべて知ってるとも思えないんだよね」
そう呟いたエルドレット。彼曰く、今や|侵略者《インベーダー》・ミメーシスに取り込まれつつあるフェルゼン・ガグ・ヴェレットが何かをやるためにソール物質を使用しているとしか思えないようで、今現在も司令官システム内部でどういった用途に使われるかの計算を続けているそうだ。
とはいえ、司令官システムが現存していてもそれをまとめる人間――司令官補佐や|調査人《エージェント》達、更には街に住む人々の協力がなければ、ただのコンピュータと同じく動けやしない。
そこで、エルドレットはまずソール物質低減症状を受けた人々を救出して回ることに決めた。1人で立ち向かうよりは、たくさんの人数を集めようという考えのようだ。
ソール物質低減症状はエルドレットやスヴェンといった機械身体を持つ司令官システムの人間は受けず、異世界の人間……アルムやジャックはそもそもソール物質を持たないため症状が出てこない。
またソール物質をそもそも作れずにいるクレーエもソール物質低減症状には引っかかっておらず、同じように動くことが出来ているため、彼女の協力を得ることもできる。
「司令官システムの要は、使ってくれる人間達。俺達の存続には人々が必要ってわけよ」
世界にどれだけの人類が住んでいるかなんて、猟兵たちには伝えてないし知り得ることはない。膨大な人数がソール物質低減症状で倒れているかは、未知数もいいところ。
それでもエルドレットは、猟兵達に向けて助けてくれないかと声を上げた。これまでの活躍を見てきた彼は猟兵達の持つ|未知の力《ユーベルコード》に未来を見出しており、その力を借りたいと。
「めちゃくちゃ無茶なお願いだとは思ってるけど……頼む、猟兵さん達の力を貸してくれ!」
そんなエルドレットの願いは、どう、叶うのか――……。
御影イズミ
閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
自作PBW「シークレット・テイル」のシナリオ、第13章。
今回は大窮地に陥ったエルグランデの人々を救うシナリオとなります。
ここでどれだけ人が救われるかで|侵略者《インベーダー》・ミメーシスへの抵抗力が変わります。
シークレットテイルHP:https://www.secret-tale.com/
場所は4箇所に別れます。
「ヴィル・アルミュール」「ヴィル・バル」「ヴィル・キャスク」「大都市以外の街」
プレイングではどの場所に行くかの記載をお願いします。
今作では同じ場所へのプレイングは最初に受け取った方のみを採用し、それ以降はお返しとなります。
今作では大多数の人間が『ソール物質低減症状』を引き起こしており、動けずにいます。
この症状はソール物質が低減することで脳がソール物質の吸収処理を最優先に行い、結果的に人体活動が出来なくなる症状となっています。
ユーベルコードによる治療が可能ですが、時間が経てばまた低減症状を引き起こします。(シナリオクリアには問題なく作用します)
ユーベルコードによるソール物質の作成は可能ですが、詳しい情報を司令官システムから受け取らなければ難しいものとします。
皆様の素敵なプレイング、お待ち致しております。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●Mission-13
シナリオのクリア条件
ソール物質低減症状に陥った人々を救う
症状緩和 フラグメント内容
POW:人々を安全な場所へ運び入れる
SPD:手早く人々の症状を確認していく
WIZ:ユーベルコードによる治療を施す
●ヴィル・アルミュールにて
「マルー! なんかみんな、たいへんそうなのじゃ!」
外の様子がおかしいと気づいて、アビスリンク家メイド(?)のナギサが大声をあげる。
家の外では苦しむ人々がいっぱいで、誰もが動けずにいる。病気か? とナギサが顔を覗き込んでも苦しむ表情しか見せず、声を上げることすら出来ないようだ。
「……ああ、なるほど。そろそろ来るんですね」
同じく様子を見るために、アビスリンク家執事のマルクスが外に出た。
彼は空を見上げて、何かに気づいている様子だ。ミメーシスの襲来があることも予測しているのだろう。
でも、だからといってまさか来る直前になってエルグランデの人間たちがこうなるとは、誰が予測できただろうか。おそらくミメーシス側でも予測はできていないはずだとマルクスは考えている。
「けれど、間違いなくペディ・ミメーシスが送り込まれている。幸い僕はまだ、操れないようだけど」
「マルーと遠いからかの~?」
ゆっくりと街の人の様子を確認し、治療を施すマルクス。コントラ・ソールを用いない、人体の神秘に任せる他ないのがもどかしいところだ。
と、そこへ機械の身体を手に入れたマリアネラがヴィル・アルミュールに到着しているようで、彼女は自分が機械の身体であることを利用して、複数人を自分の肩に担いで安全な場所へと連れて行った。
当然、アビスリンク家とヴェレット家も安全な場所。門扉を開いてマリアネラが家の中に人々を入れることで、ミメーシスが襲来しても彼らの無事は確約できる。
その他にも学校の扉を司令官システム側から強制的に開けたりして安全な場所を用意することで、この後の襲来に備えておくことになった。
「とはいえ、あたしだけじゃぜぇ~~~ったい無理なんだよね!」
「僕も1人ずつが限界ですしねえ」
「のじゃー。妾は無理じゃー」
えっちらおっちら、1人ずつ。
頑張ってヴィル・アルミュールにいる人々を安全な場所へ運び入れていく……。
・同行者
マリアネラ・ヴェレット
マルクス・ウル・トイフェル
ナギサ・トイ・クロイツェル
●ヴィル・バルにて
「うーん……?」
「どうした、クレーエ」
ヴィル・バルではコントラ・ソールがなくても大丈夫な少女クレーエが、父のアードラーと共にヴィル・バルの人々を安全な場所へ移動させていた。幸い街の人々は異変を感じ取る前に屋内避難を済ませていることが多かったため、外に出て探すぐらいになっているが。
しかしクレーエは住人を探している間にも、今回の事件には違和感があるとアードラーに伝えた。
前回ヴィル・バルで起こった、コントラ・ソール停止事件。あのときコントラ・ソールが使えなかった理由が『ソール物質がないから』だったが……それなら、何故その時にも低減症状が起きなかったのか? と。
「ふむ。確かに……状況はほぼ同じだと言うのに、前回とはまるで違うな」
周りを見渡すアードラー。いつもなら何処かで戦いが繰り返され、賑わいを見せるヴィル・バルの都市がこんなにも静まり返っているのは歴代でもありえないレベルだ。
その賑わいは当時のソール停止事件でも止まることはなかった。むしろ慌てて連絡してきたからこそ、セクレト機関に連絡が入って調査に走ることが出来ていた。
それなのに今回はソール物質低減症状が発生しており、誰もが動くことが出来ない。同じコントラ・ソールが使えない、ソール物質が低減している、という状況は同じだというのにだ。
だがクレーエは当時の状況を思い出し、もう1つ別の事例が異なっていることを思い出す。
それは彼女の命を繋ぎ止めるための大事な要素『リンクシステム』が今もなお正常に動いているという状況。
本来であれば彼女はソール物質を体内で作ることが出来ず、|調査人《エージェント》ライアー・シェルシェールからリンクシステムを利用して供給されているため、彼と共に行動しなければならない。
けれど今回に限ってはソール物質そのものが世界から無くなり、彼女はライアーと行動しなくても良くなっている。なのでソール物質の供給がなく彼との繋がりは遠く離れているという理由から、リンクシステムは本来誤作動を起こす……はずだが、今現在|何事もなく作動している《・・・・・・・・・・・》という。
「ん?? 遠く離れたら警告出るし、供給がないなら誤作動が起きるんだろう?」
「うん。実際、前回は供給がなかったから誤作動が起きちゃってて、休憩を挟みながらやってた」
「ふーむ……?」
ソール物質関係については自分が詳しいと豪語するアードラーでも、リンクシステムが正常に作動している理由には見当がついていない。
そもそもシステムを作ったのはフェルゼンだし、調整も彼が行っていた。司令官システムで情報は共有されていると言えど、隠された何かがある可能性は高い。
「コントラ・ソールが使えない以上、猟兵達の協力を仰いで調査するしか無い……か」
「街の人を安全なところに移動させてからね~」
よっこいせ、と。倒れていた住人を背負い、ゆっくりと歩き出したクレーエ。
同じくアードラーも倒れていた住人を俵担ぎして同じ道を歩いていく。
・同行者
クレーエ・サージュ
アードラー・サージュ
●ヴィル・キャスクにて
農業専門都市『ヴィル・キャスク』。ヴィル・アルミュールより北部に位置するこの都市は、ファムの村と協力してエルグランデの食料事情を担っていた。人々の手で作業することが多い一方、機械による効率重視な農業で全世界の食料を供給することが出来ている。
……が、それはソール物質が豊富に存在していたら、の話。ソール物質がなく人々が低減症状によって動けなくなった今、機械だけが動き続けて農業を繰り返している状態だ。
「変な感覚だ。人の手がなくても動くって」
「そう? まあでも、キミの世界ならそうなるのかな」
異世界からやってきたジャックと、一時的な義体を手に入れたアレンハインツの2人による救助活動はサクサクと進んだ。
というのもジャックは右腕の力が強く、数人を軽く持ち上げることが可能なほど。引きの力も常人以上になっているため、1人1人運ぶよりも台車で運んだほうが早くて済んでいる。
これも機械の力があればすぐに終わるのだろうが、あいにくとジャックが機械文明に疎く、逆に壊しかねないという理由から手動の救助に切り替わっていた。
「2人共、次こっちに運び入れてー! 向こうがいっぱいになっちゃったー!」
「ん、りょーかーい」
同行してくれたレティシエルが運び入れ先の変更を告げる。
ヴィル・キャスクの人々の安全は彼のおかげで確実に守られているのだが、工場が多く運び入れる場所が限られているのが難点。故に非力なレティシエルは運び入れられる場所を探して走り、ジャックとアレンハインツの2人で運び入れている状況だった。
とはいえ、レティシエルもレティシエルで何か気になることがあってついてきただけだと言うので、その調査のついで……というのが大きい。その調査が進んでいるかどうかを聞いてみたが、今はまだ一部しかわかっていないという。
「機械って不思議だね? っていうぐらい。ソール物質使わないのかな~って」
「ん……確かに。この世界で重要なモンなら使って動いてそうなんだが」
「こういうときのために使わないようにしている、とはエルドレットさんが言ってました。……いつからそう言われているのかはよくわからないんですけどね」
アレンハインツ曰く、司令官システムが出来る以前から機械類にはソール物質は使われていないそうだ。こうなることを予見していたのか、あらかじめ想定していたのかは定かではないが、機械類についての心配はまずいらないという。
ただし、このまま動かし続けていればいずれは熱暴走を起こしてしまうため、早急にソール物質低減症状を改善しなければならない。そのためにも……。
「ちょっとばっかし、人々を調査するのもありかもしれないね」
レティシエルが少しだけ笑う。
今、このタイミングでしかこの世界の人々を調査出来ないのだと……。
・同行者
ジャック・アルファード
レティシエル・ベル・ウォール
アレンハインツ・ニア・ウォール
●その他の街にて
「嬢ちゃん、次はエレロの街だ!」
「了解でーす!」
ゲートを駆使し、3つの都市以外の街や村を走り回るアルムとエスクロ。2人だけで大丈夫か? と思われるかもしれないが、アルムも相当な怪力なので大丈夫なのである。実際ジャックが「アルムと俺は別れたほうがいい」と進言したので。
現在2人はファムの村の処置を終え、坑道の街エレロへと向かうところ。全員の救助を終えているかどうかは司令官システムが判断を下しているため、もし処置逃しがあればすぐさま戻って処置をする形で動いていた。
「しかしまあ、ベルディは1人で大丈夫なんかね?」
「大丈夫だと思いますよー。……迷子気質ですけど」
「ああ、だからアマベルが一緒になったわけね……」
更にアルムとエスクロとは別働隊という形でベルディとアマベルが動いている。と言ってもベルディはこの世界に来たことはないし、アマベルは記憶喪失で世界のことを知らないためアルムとエスクロが出向いた後の街や村を見て回っているだけの形。
それでも『人を助けたい』という気持ちはアルム同様持ち合わせているため、彼らも本気で走っている。地図が片手にないと大変なことになるのだが、そこは御愛嬌。
「うわっ!?」
エレロの街は人々が絨毯のように地面に横たわる様子があった。それらは全て街に配備された治療用のロボット達による処置なのだが、ソール物質低減症状による治療方法は彼らに搭載されていないために、人々を寝かせるぐらいしか出来ていなかった。
更に問題として場所の用意ができないというのがあった。エレロの街は『坑道街』と呼ばれるほどに坑道入口が多く、立地的に安全な場所と言える場所が存在していない。
なので治療用ロボット達も屋内へ入れるよりは屋外の方が安全と判断したのだろう。アルムとエスクロが到着したときには絨毯のように広がっていたのだ。
「《|創造主《クリエイター》》で簡易拠点作れば、ってなるんだけどなぁ! 使えないんだよなあ!」
「今から木材採取して作りますか? あたし、木をへし折るのは得意ですよ!」
「王女?? 王女様だよねキミ??」
「はい王女です!!」
自分の身分をあっけらかんと叫んだアルム。
こんな王女がいてたまるか! となったエスクロ。
ともあれアルムの提案は却下しつつ、何処か、新たに安全地帯を探さなければならないだろう。
……何処にあるのかは、エスクロは現状探りづらいようだが。
・エレロの街同行者
エスクロ・シェルシェール
アルム・アルファード
・その他同行者
ベルディ・エル・ウォール
アマベル・オル・トライドール
※ベルディとアマベルは『その他の街や村で調べたいことがある時』に登場。
カショウ・ヘイスティングズ
【テンペスト】
▼大都市以外の街へ
うちの若いの(清志郎)からの救援要請だ
無碍にするわけにもいくまいて
スイセイのバイクの荷台に同乗
ちょっとースイセイにーちゃんここ狭いー!
ま、冗談はこのくらいにしておいて
バイクで各所を巡り、救助の間に合っておらん民を回収しておこうか
取り敢えずこの中(指定UC参照)入っておけ?
治療は出来んが平穏な環境づくりには自信があるでな
(※月面に造られた平安京を魔法都市化したものと解釈していただければ)
で、比較的話せそうな者がいれば
当面の救護拠点に出来そうな村や集落についてアテがないか聞いてみようか
何の成果も得られなかったら?
……頑張れスイセイ☆
NG:じゃ、等分かりやすい老人口調
幕部・スイセイ
【テンペスト】
▼大都市以外の街へ
|皇国《ウチ》も大変な時期だってのに引きずり出しやがって
ま、運び屋の依頼として受け取っとくが
報酬弾めよ?
うるせえ文句言うな!
輸送用っつったってバイクなんだから仕方ねえだろ!
いやほんとマジで疲れるコイツ(玩具にされる若者)
ともあれ|相棒《バイク》で稼ぐか
なるべく速く色んな場所に行けた方がいいんだろ?
要救助民の回収はジジイ(※カショウ)に任せるぜ
聞き込みはジジイに任せるが
一応全滅だったら|指定UC《コレ》使うか?
戦闘以外に応用出来るか分からねえけど
それでも駄目なら兎に角バイクで色んなとこ見て回るしかねえか……(肩落とし)
最悪王女さんに拠点の建築任せようぜ(ダメです)
●Case.1 住人の保護
大都市以外にも様々な街や村があるエルグランデ。その分、救助する場所が多くなってしまっているが、エスクロもアルムもゲートを駆使して次々に走り回る。
合流した幕部・スイセイ(走り屋マクベス・f40740)とカショウ・ヘイスティングズ(ターニングムーンチャイルド・f40491)の2人も協力してくれたため、様々な街や村を巡ることが出来ていた。
スイセイが持ち込んでくれた輸送用バイクがあれば、数人ほど乗せて様々な場所へと運び入れる事が出来る。ソール物質低減症状による麻痺症状を考えると、手早い処置と安全確保が必要になるためこの助けは非常にありがたいものだ。
「でも、安全な場所はどうするんだよ? 見た感じ、そっちでも用意できなさそうだけど」
「いつもなら用意できるんだが、今回は事情が事情でね……。何か案とかあるかい?」
「ふむ……となれば、我の出番か。今取り急ぎ運ばねばならない者はいるか?」
「ん、ああ。こっちに」
エレロの街の大地に横たわる人々の場所へと案内してくれたエスクロ。誰もが息苦しさを訴え、動けないことを悔やんでいる様子が見えている。
そんな彼らをどう救助するのかとアルムとエスクロは考えていたが、カショウはすぐに安全な場所を用意。ユーベルコード『メトロポリス・ルナユートピア』によって作り出された小さな月の模型に触れた人々を吸い込み、再現された月の都の中で一時的に休んでもらうことになった。
「すげぇ……。やっぱ、エルドレットの見立て通りだったか……!」
エスクロが震える。猟兵達の力はエルグランデの外故に動くとは言っていたが、まさかここまで有用な力まで存在するとは思ってもいなかったようだ。せいぜい運べても10人ほどが限度だろうと思われていたが、カショウの模型はエレロの街にいた人々全員を吸い込み、月の都へと移転させる。
「あ、でも……中に入ったからと言って、みなさんが起きれるとかじゃないですよね、これ」
「まあ、そうなるな。ただ外敵からの攻撃は一切受け付けないし、治療などは適時行われるため動けないという点以外は問題ないだろう」
カショウ曰く、彼らの命を維持するための物質がないのなら、症状が収まることは難しい。故に救護拠点となりうる場所を探し出し、多少無理をしても良いから彼らの生命維持を行う必要がある。
そう言われては、とエスクロは肩を竦める。この世界の基盤とも言える司令官システムの1人である彼は、真っ先に司令官システムに連絡を入れて急遽拠点となり得る場所を演算で弾き出してもらっていた。
とはいえこうしている間にも救助しなければならない人々は多い。そこでアルムとスイセイの2人でまだ月の都につれて行けていない人々を探すためにバイクであらゆる街や村を走り回り、エスクロとカショウの2人で協力して運び入れ、演算が終わり次第拠点へと向かう形になった。
今やエルグランデには人々が安心していられるような場所がない。それでも僅かな希望を持って、4人で走り人々を救助していく。
●Case.2 銀色の粉
「それにしても……」
スイセイがバイクで走りながら、エルグランデという世界を見て回る。
自然豊かで、でもバイクで走りやすくて、でも現在侵略行為を受けているというなんとも不思議な世界。そんな世界で自分達が出来ることと言ったら救助活動ぐらいなものだが、それ以外に出来ることもあるんじゃねえの、とさえ思うほど。
だけど今はエスクロの言う通りに走って回って安全な場所を探していくしかない。彼の言う司令官システムとやらの演算が終わるまでは、地道にコツコツと稼いでいくしかないのだ。
エレロの街を出てからは、ファムの村やマリネロの街といった比較的大きな街や村を戻り、地図に名前のない集落などもバイクで立ち寄って様子を見ていく。やはりどこもソール物質低減症状による人体麻痺が深刻なようで、救助を待つ声が上がっていた。
彼らを安心させるようにアルムとスイセイで声をかけ、エスクロとカショウによって救助される形になる。が、カショウのユーベルコードは1人ずつ月の模型に触れて貰う必要があったため、その合間にアルムとスイセイがバイクで走り回っていくという形で動くことになった。
「ん……ちょっと止まってください!」
「うおっ、どした!?」
次の場所へ向かおうとしていた矢先に急にアルムが声を上げるものだから、ブレーキを掛けたスイセイ。あまりの衝撃に身体が吹き飛びそうになったが、それを利用するようにアルムは車体の外に飛び出してある場所へと走った。
と言っても、彼女が向かったのは海が見える崖。それ以外のものは特に何も見えないようにも見えたが……青空の下、遠く薄く見える島をアルムはじっと見つめていた。
「おい、どうしたってんだ? なんか見えたのか?」
「…………」
スイセイが声をかけても、じっとその島を見つめたままのアルム。時折空を見上げたり、島から視線をそらしたりしているが……その様子は何をしているのかさっぱりだ。
しかし数分後、アルムはスイセイに振り返ると今度は彼の頭から足先までをじっと観察。まるで何かを探しているかのような素振りに思わずスイセイが後退り。
「なに、なんだってんだよ」
「ご、ごめんなさい。でも、あの……」
謝罪の言葉を述べた後にアルムは島を指さして、スイセイに問いかけた。――『銀色の粉みたいなの見えません?』と。
当然、スイセイには銀色の粉なんて見えていない。彼女の妄想か、はたまた幻覚ではないかと思ったが、どうやら違うようだ。彼女には本当に銀色の粉のようなものが見えているという。
その銀色の粉がアルムが見ていた島――神殿と呼ばれる建物が存在している中央諸島に集まっているそうで、空を粉が覆って漏斗で集めているように見えているのだそうだ。
「なーんかあるな、あの島」
「はい。銀色の粉がなにかもわからないんですけど……でも、何か嫌な予感がするんです」
「嫌な予感、ねえ……そういうのは大事だよなぁ」
アルムのいう嫌な予感が何かはわからない。けれどこのタイミングで銀色の粉が中央諸島に集まっている、なんてのは何かしらが行われている合図として見てもおかしくはない。
ひとまず人々の救助を終えてから、色々と考えたほうがいい。そう告げたスイセイのバイクにアルムは再び乗って救助活動を再開することに。
●Case.3 安全な場所
「結構な人数を収容してるけど、大丈夫なのか?」
「ああ。無限に広がる……わけでもないが、安全な場所となれば問題はない。平穏な環境づくりには自信があるのでな」
テキパキと人々を月の都へ招待しながら、エスクロがカショウにユーベルコードによる収容は大丈夫かと問いかける。
収容人数はエレロの街の人々、マリネロの街の人々、ファムの村の人々に加えて、細々とした集落の人々。相応の人数を既に収容しているが、未だに限界を迎える様子はない。それどころか大体の人間は収容出来たと言ってもいいだろう。
「しかし……」
何処を見渡しても、エルグランデには安全と言い切れる場所がない。少なくともソール物質が多く存在する場所は見える範囲では何処にもなく、セクレト機関本部に住民を避難させるしかエスクロには思いつかない。
だが本部も本部で|調査人《エージェント》達が埋め尽くされているし、エルグランデ中の人々を収容できるような施設ではない。安全面では確かではあるが、実用的な考えではなかった。
「とすると、何処か安全な場所を設ける他にない……か」
それを聞いてカショウも『自分達で作るしかない』という考えに至ったのだが、大多数の人間を収容できるともなれば制作に時間がかかってしまうのではないかと懸念点をあげた。これから作るとして、|侵略者《インベーダー》の侵略までに安全面を確保出来るのか、とも。
それに対して、合流したアマベル・オル・トライドールが1つだけ方法がある、と教えてくれた。ただしこれは前提として『残っていれば』の話になる、と前置きしたうえで。
「僕達の世界……そっちで言う箱庭世界が作られたものなら、テストケースが存在しているんじゃない?」
「どういう意味だ?」
「いや、ほら……何も僕達が今使ってる世界だけで研究を繰り返したわけじゃないよなあ、って思って」
「……ああ、なるほど。そういうことか」
アマベルの提案にカショウが納得する様子を見せた。箱庭世界という成功例が存在しているなら、その裏には葬られた失敗例が存在しているはずだと。
もともとの箱庭世界が作られた理由――エルグランデという世界の危機に直面した時の次なる安全圏を用意するため、という理由から考えれば、ソール物質が豊富に残っている失敗世界も存在しているだろう。
カショウが噛み砕いてエスクロに説明すると、彼は『そういうことか!』と理解した様子。そうと決まればと司令官システムに連絡を取り、すぐさま安全な場所を用意することになった。
スイセイとアルムがエルグランデを走り、状況を伝えてカショウとエスクロが住民達を月の都に一時避難させ、司令官システムと燦斗とエーミールによって用意された安全な場所――廃棄された試作型世界『Ark』へと住民達を運び入れる。
Arkの世界にはソール物質は豊富に存在しているが、人類への配分が一定以上行われないことから多量のコントラ・ソールを使用する職人などには危険だと判断され廃棄された箱庭。失敗だと位置づけられたのも、人類に対する許容量の調整が出来ないことから失敗の判を押されてしまった。
だが今回に至っては、コントラ・ソールの使用さえなければ住民達は問題なく生きられる。生命維持活動用の緊急措置に使う分には申し訳ない世界となっており、食料などを運び入れれば従来と変わることのない生活を行えるようになっていた。
「とはいえ、まだ見つかってない人とかいるかもしんねーな」
「ああ。ということで、頑張れスイセイ☆」
「ジジイも走るんだよ!!」
この後はスイセイとカショウの2人で走り、これまで通った道で残された者がいないかどうかを調査することになった。
どんなに探したとしても人は人。ミスが起こってもおかしくはないため、念入りに探して回って試作型世界『Ark』へと運び入れるのだった。
***************************************
・都市部の外の人々は試作型世界『Ark』へと運び入れられました。
→今後必要であれば、Arkへの運び入れが可能となります。
→この世界は『ソール物質は豊富だが許容量調整が不可の世界』となっております。
→許容量調整が必要な人がいる場合は使用不可となります。
・アルムが何やら中央諸島に銀色の粉が集まっているところを目撃しています。
→他に見える人がいるかも……?
・都市部の外はクリアとなりました。プレイングを送る際はご注意ください。
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大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
響納・リズ
ヴィル・アルミュールにて。
「私もお手伝いさせていただきますわ。人を運ぶのなら、この子に任せてくださいませ」
アーティアに数人乗せて、自分も手伝いながら、どんどん運んでいきましょう。必要とあらば、すぐに生まれながらの光でもって、癒しを施していく。
何か異変を見つけたら、すぐに近づき、調査を行う。
その際、見つけたもの、ことについては、すぐに本部の方へと伝達し、皆に広まるように手配しておく。
「この胸騒ぎ……杞憂で終わればいいのですけれど……フェルゼン様、あなたは今、何をしていらっしゃるのでしょう?」
彼に会いたい気持ちを胸に、多くの人々を救うために立ち向かう。
●Case.4 |模倣者《ミメーシス》
学業専門都市『ヴィル・アルミュール』。この都市はその名の通り学業を専門にするあまり、学業以外のことを廃してしまっている。そのことが今回の事件では最悪な事態を引き起こしており、マルクスとナギサ、そして司令官システムから臨時の機体を手に入れて駆けつけたマリアネラが住人を1人ずつ安全な場所へと運び入れていた。
幸いにも、都市部の住宅は安全な場所と判断が下っている。そのため道に倒れ伏している者は近くに運び入れ、それぞれで治療を施していった。
「私もお手伝いさせていただきますわ。人を運ぶのなら、この子に任せてくださいませ」
「うわーん! リズさんありがとー!」
響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)と共にやってきたグリフォン・アーティアも住人達を運ぶお手伝いをしてくれた。その背中に乗せても人が落ちないように工夫を施し、住宅に入れなくなったら学校へと運び入れ順次治療していく。
リズの持つユーベルコード『生まれながらの光』で治療を施していくが、それも一瞬の治療。ソール物質がないと判断した人々の身体は時間が経てば低減症状に悩まされてしまう。
けれどリズはそれでも根気強く治療を続けた。一瞬だけでもいい、復帰した人々から何かしらの情報を獲得することで答えに辿り着くことができれば、少しでも|あの人《・・・》に手を伸ばすことができればよいのだと。
「なんでも構いません。何か、見聞きしたことなどはありますか?」
1人ずつ、丁寧に。ユーベルコードによる治療を施していくリズ。力を使えば使うほどに彼女には疲労が溜まっていくので、適時自身にも休息を挟みながらの聞き込みを続けた。
すると一部、ヴェレット邸やアビスリンク邸から少し離れた地区の住人から『フェルゼンに似た人物を見た』という証言が得られた。彼が到着した時刻はこの騒動が起きる少し前だったため、既に退去している可能性は高いが……。
「…………」
それでもリズは胸騒ぎが収まらない。|彼《・》が無事だったことはとても喜ばしいことなのに、|彼《・》がここにいたという事実によって何か大きな事が動き出しているような……そんな気がしてならない。
もう少し話を聞いてみるが、それを止めたのがマルクス。情報収集は良いことだが、既にミメーシスの存在がこのエルグランデに差し迫っている以上、住人達にもミメーシスの斥候が潜り込んでいる可能性が高いからと。
「あの、そもそも……ミメーシスの生態とは……?」
「ああ、そうですね。その辺りのお話、今のうちにしておきましょう」
低減症状の緩和対策を試みつつ、マルクスはリズに|侵略者《インベーダー》・ミメーシスについての情報を話すことにした。というのも、マルクス自身もミメーシスという存在から繰り上がったものである以上、接近している母なる存在に操られてしまう可能性が高いため、今の段階で渡せる情報は渡しておこうと決めていたようだ。
ミメーシスとは、星から星を渡るモノ。定住する星を探しては侵略した星を壊して捨てて、また新たな星を探している侵略者。
その生態は不思議なもので『ミテラ・ミメーシス』と『ペディ・ミメーシス』に分かれているが、ミメーシスという個体としては1つしかない。手足を担うのがペディであり、ミメーシスの本体はミテラの方となる。
そしてその姿は『無い』。見ることが出来ないというよりか、その存在は空気にも等しいものであり他者に乗り移ることで身体を得る種族。そのためマルクスは他人の身体を使って生きているミメーシスという形であり、フェルゼンは意識をミメーシスに奪われている状態になっているという。
「ペディ・ミメーシスが星に降りて情報収集を行い、その情報をミテラ・ミメーシスが精査し、侵略する。それがミメーシスという侵略者のあり方なんですが……」
少しだけ、マルクスが言い淀む様子を見せた。というのも、マルクス曰くフェルゼンの状態は少し特殊すぎるという。
自我が生えることはミメーシスという存在の生き方を考えればよくあることなのだが、マルクスは『それにしては力をつけすぎている』と感じ取ったそうだ。
「以前、フェルゼン様がリズ様と戦った時の情報を確認させていただきました。アレは、フェルゼン様のミメーシスは僕の知識を持ってしても|ミメーシスという枠を外れすぎている《・・・・・・・・・・・・・・・・・》」
「それは……どういう?」
「ペディ・ミメーシスは確かに情報収集を行うのが主です。なので本来であれば宿主たる存在の力を『借りる』のですが……フェルゼン様の場合は違う」
マリネロの街で起こったクラーケンの襲撃の折、フェルゼンと戦ったリズ。あの時に彼はコントラ・ソール《|時間操作《クロノスタシス》》を使っていたが、本来であればフェルゼンが持ちうるはずのないコントラ・ソールなので『借りる』ことは出来ない。
であれば、その所持はフェルゼンの中にいるミメーシスのものとなるが……マルクスは『所持とも違う』と言った。
マリネロの街で出会ったフェルゼンが使ったコントラ・ソール《|時間操作《クロノスタシス》》。
それは所持でもなく、借りたのではなく……『模倣した』と考えるのが自然だろうと。
「《|時間操作《クロノスタシス》》が使えるということは、司令官システムから直接模倣している。けれどそれは《|模倣《コピー》》と違って劣化していない」
最悪の事象だ、とマルクスが呟いた。《|模倣《コピー》》と違って劣化しないコントラ・ソールを入手して使用する方法があるという事実、それだけでもセクレト機関側には大打撃となる。
そして、リズはふとあることを思い出した。それはフェルゼンが幼少期にはつけていなかった顔の紅がいつの間にか彼の顔についていた、という情報。
アルバムを見ても若かりし頃のフェルゼンにはついておらず、いつ付けられたのかはわからない顔の紅。それはエルドレットの顔の紅と非常によく似ており……|コントラ・ソール以外も模倣出来ている《・・・・・・・・・・・・・・・・・・》という証拠なのでは? と閃いてしまった。
「……それって、つまり……」
マルクスがマリアネラに視線を向ける。正確には、マリアネラの奥に存在する司令官システム。
――フェルゼンは司令官システムすらも模倣してしまっている可能性がある。
その答えに辿り着くのは、閃いてすぐのことだった。
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・ヴィル・アルミュールの人々は安全な住宅の内部へ運び込まれました。
→現在はマリアネラと司令官システムによって状態緩和の手法を試しております。
・ミメーシスの生態について公開されます。
→定住する星を求めては、侵略した星を破壊して回る侵略者。
→『ミテラ』と『ペディ』の2つが存在しますが、ミメーシスという個体は1つだけ。
→本来であればペディ・ミメーシスが身体に乗り移って情報収集をする。
・フェルゼンの身体を奪っているペディ・ミメーシスについて公開されます。
→フェルゼンが持っていないコントラ・ソールを『模倣』して使用しています。
→また彼は司令官システムそのものすらも『模倣』している可能性があります。
→マルクス曰く、フェルゼンに入り込んだ個体は進化を遂げている可能性があるようです。
・ヴィル・アルミュールはクリアとなりました。プレイングを送る際はご注意ください。
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大成功
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