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シャングリラ☆クライシス㉒〜何度でも何度でも

#アイドル☆フロンティア #シャングリラ☆クライシス #第三戦線 #霊神『グラン・グリモア』

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#霊神『グラン・グリモア』


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●アイドル☆フロンティア:永遠祭壇――霊神グラン・グリモアの居所
『m'aider』
 イティハーサが死んでしまった。グリモワールの声も聞こえない。
 このままでは、ひとは未来を識る術もなく、歴史を紡ぐこともできなくなってしまう。

『m'aider』
 嫌だ。わたしは、愛したものたちが指針を失い、歪んでゆく様を見たくない。
 変わらないで。どうかみんな変わらないで。
 昔のままでいて。わたしが好きだったあなた達のままでいて。

『m'aider』
「世界」が壊れた時のために、わたしは全ての「過去」を仕舞ってある。
「永遠祭壇」の外にあるもの全て、わたしの「過去」と取り替えてあげる。
 時が過ぎる事、変わりゆく事、老いてゆく事に、価値などなかったでしょう?
 世界の時間を全て止めて……完全と永遠と安寧を、取り戻しましょう。

●霊神『グラン・グリモア』に諦めぬ心を突き付けろ!
「……これは、未来を諦めてしまっている感じすらするな」
 グリモアベースの片隅で、グリモア猟兵館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は何げない呟きを零す。
 その呟きに何か惹かれるものを感じたか、次々と猟兵達が集まって来た。
「アイドル☆フロンティアに、とうとう霊神『グラン・グリモア』が姿を現したよ。……どこか聞いたことのあるフレーズを口にしながらね」
 いつもの黒剣ではなく、少し古びた感じの黒剣を手にしながら、敬輔は集まった猟兵達にグリモアからの予知を話し始める。
「皆にはこれから、究極のアイドルステージ『永遠祭壇』に向かい、『グラン・グリモア』と戦ってほしいんだ」
 ――霊神『グラン・グリモア』は、骸の海においてさえも厄災とされる存在。
 全ての過去を蒐集して復元する事を目的としているが、それが「オブリビオンの誕生」と同義であることは言うまでもないだろう。
「つまり、彼女こそが、アイドル☆フロンティアの人々の心に骸の海を植え付け、時に狂気に走らせていた元凶なということになるんだ」
 ゆえに、この場で戦い倒したとしても、いずれ過去から自分自身を蒐集・復元してしまうが――。
「――『グリモアエフェクト』を発動させることができれば、グラン・グリモアの自己復元を断ち切り、完全に滅ぼすことは可能だよ」
 これは、決して覆されないことのない、グリモアの絶対的な予知だと敬輔は断言する。
「だから、皆にはグラン・グリモアを討ち、アイドル☆フロンティアの人々の心を骸の海に食われないように救ってほしいんだけど、頼めるかな?」
 いつになく深々と頭を下げながら、そう告げる敬輔に、猟兵達は其々の想いを胸に頷いた。

「さて、この戦場のグラン・グリモアは、戦場全体を『骸の海』で覆い尽くし、足を踏み入れた猟兵全員の行動成功率を【10分の1】まで低下させてくる」
 それは、たとえ歴戦の猟兵であっても、ほとんどの場合行動が失敗すると告げていると同義。
 いくら武器を振るえど、魔術を放てど、遠距離から射抜こうとしても……悉く外れてしまうだろう。
「だけど、たとえ何度失敗しようとも頑張ってグラン・グリモアに正面から立ち向かい続けることができれば、グラン・グリモアがそのひたむきさに心を打たれてしまい、自分自身もこの行動率低下に飲み込まれてしまう瞬間が訪れるかもしれない」
 何度でも何度でも、諦めない心を突き付け続ける――それこそがこの戦場で戦い抜くための鍵となろう。

「さっきも言ったけど、グラン・グリモアは『永遠祭壇』に現れた際、あるフレーズを口にしている」
 古びた黒剣を見せながら、敬輔は『あるフレーズ』を口にする。

 ――m'aider。

「おそらく、猟兵たちの中にはこのフレーズに聞き覚えがある人もいると思う。まさかここで聞くとは思わなかったけど……ね」
 敬輔いわく、今手にしている古びた黒剣は、ある禁軍猟書家を前にこのフレーズを叫んだ際に現れた『はじまりの猟兵』の武器だという。
「なぜグラン・グリモアがこのフレーズを口にしたのかはわからない。ひょっとしたら『誰か』に助けを求めているのかもしれない」
 事実、グラン・グリモアが口にした『イティハーサ』は2024年9月のサクラミラージュ戦争『帝都櫻大戰』で、『グリモワール』は2025年5月のケルベロスディバイド戦争『ケルベロス・ウォー』で討たれている。
 しかも両者とも『グリモアエフェクト』が発動し、完全に撃破されているため、決して蘇ることはない。
「だけど、だからといって僕たちが見逃すわけにもいかない。グラン・グリモアは世界を自らが保管する『過去』と取り替えようとしているからね」
 ――それは、猟兵達にとっても、積み重ねてきた過去を否定されると同義だから。
「過去を否定させないためにも、ここで確実に討つべき。だから……頼んだよ」
 そう、猟兵達に告げながら。
 敬輔は丸盾のグリモアを展開し、猟兵達を『永遠祭壇』へと送り込んだ。


北瀬沙希
 北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
 よろしくお願い致します。

 シャングリラ☆クライシス、第三戦線開戦と同時に『霊神』が姿を現しました。
 皆様には、この『霊神』と戦っていただきます。

 なお、本シナリオは有力敵戦につき、やや厳しく判定致します。
 それ相応の準備を整えた上での挑戦をお待ちしております。

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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「シャングリラ☆クライシス」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

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 状況は全てオープニングの通り。
 今回は冒頭の追記はありません。

●本シナリオにおける「プレイングボーナス」
【何度失敗しても何度ねじ伏せられても、諦めないでいっしょうけんめいがんばる!】

 オープニングにも明記した通り、本シナリオでは猟兵全員の行動成功率が『10分の1』に低下しています。プレイングボーナスを活用しない限り、大成功はまず出ないと考えていただいて支障ございませんし、判定ルール上苦戦となる可能性の方が高いです。
 しかし、諦めない心を突き付けることで、グラン・グリモア自身もこの行動成功率の低下に巻き込むこともできるかもしれません。

●【重要】プレイングの採用について
 受付期間は【オープニング公開直後~システム的に締め切るまで随時受付】。
 諸事情で9月中の完結を目指し運営しますので、プレイングの採用は必要最小限とし、挑戦者多数の場合は問題ないプレイングでも採用を見送り返金する場合がございます。予めご了承の上での参加をお願いします。
 ※本業事情で再送のお願いをさせていただくかもしれません。その場合はマスターページとタグで告知しますので、お心変わりが無ければ再送をお願いします。

 その他、シナリオ運営上の諸連絡は、マスターページを参照いただけますと幸いです。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『霊神『グラン・グリモア』』

POW   :    グラングリモア・メモワール
【指先】で触れた対象と同じ戦闘能力を持ち、対象にだけ見える【記憶の化身】を召喚し、1分間対象を襲わせる。
SPD   :    グラングリモア・ホワイトタイド
レベルm半径内に【骸の海】を放ち、全ての味方を癒し、それ以外の全員にダメージ。
WIZ   :    グラングリモア・スティルアライブ
【骸の海に沈んだ「過去」】から、対象の【過去を失いたくない】という願いを叶える【オブリビオン】を創造する。[オブリビオン]をうまく使わないと願いは叶わない。

イラスト:稲咲

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フィーナ・シェフィールド
アドリブ歓迎!

イティハーサ…忘れられない名前。
蘇らないと知っているけど、またその名前を聞くなんて。
あの戦いで幻朧帝と戦った一人として、今を生きる人として、世界を守り続けるため。
諦めない想い、歌に乗せて届けましょう。

インストルメントを演奏しながら歌い始めます。
「響き合う奇跡の中で―♪」
この思いが伝わらないなら、いつまでだって歌い続ける!
「限りない、愛しさを―♪」
翼を羽ばたかせて舞うように飛びながら、破魔の力を込めて歌い続けます。

召喚されたオブリビオンも破魔の歌声で味方につけて、グラン・グリモアに聴かせます。

その存在が浄化するまで、何度でも聞かせてあげる。
こんなサービス、めったにしないんだからね!




 フィーナ・シェフィールド(天上の演奏家・f22932)は、霊神『グラン・グリモア』が口にした名前の片方に聞き覚えがあった。
 ――イティハーサ。
 それは|櫻花幻朧界《サクラミラージュ》に封印されていた幻朧帝の名であり、昨年の今頃猟兵達に討ち果たされた。
『グリモアエフェクト』も発動したゆえ、二度と蘇ることはないはずだが……。
「――また、その名前を聞くなんて」
 正直、アイドル☆フロンティアでその名を聞かされたことに、驚きは隠せない。
 だが、|あの戦い《帝都櫻大戰》で幻朧帝と戦った一人として、そして今を生きる人として――。
「――世界を守り続けるため。諦めない想い、歌に乗せて届けましょう」
 それがわたしの役目、と宣言するフィーナに、グラン・グリモアは感情なき紅の眼で見つめながら呟いた。
「未来を識る術を失った価値のない世界を、守るとでもいうのでしょうか?」

 フィーナの全身に、戦場全体を揺蕩う骸の海が纏わりつく。
 執拗に纏わりつき、フィーナの手と喉を封じようとするそれを振り払うように、フィーナは翼を羽ばたかせ飛びながらインストルメントを演奏し始めた。
(「演奏する手が重い……上手く演奏できるでしょうか」)
 だが、それでも可能な限り正確に、懸命に演奏しながら、フィーナは喉を震わせ歌い始める。
「響き合う奇跡の中で―♪」
「奇跡なんて、因果を歪ませる存在は起きませんよ」
 骸の海の中から、グラン・グリモアの声が響く。
 おそらく、歌声そのものは届いているはずだが……想いは届いていない。
(「この思いが伝わらないなら、いつまでだって歌い続ける!」)
「限りない、愛しさを―♪」
 決して諦めない想いを破魔の力に載せながら、フィーナは力いっぱい歌い続ける。
 グラン・グリモアも、骸の海に沈んだ過去から、己が容姿に近いオブリビオンを創造し、フィーナに嗾けた。
「――落としなさい」
 若干冷ややかな響きを伴う声に同調するかのように、創造されたオブリビオンはフィーナを追いかけるよう飛翔し、腕を振り上げる。
 その腕の先には、鋭い爪が伸びていた。
 フィーナも咄嗟に回避しようと身体を捻るが、思った以上に身体が重い。
 ――ザクッ!!
 オブリビオンの爪が、フィーナの背中を深々と斬り裂いた。
 歌に合わせ舞うよう羽ばたいていれば、いつもなら軽やかに回避できるはずだが、
(「纏わりつくような骸の海に、妨害されているようです……」)
 その後も、フィーナは飛翔し追跡してくるオブリビオンに何度も何度も斬られるが、それでもフィーナは懸命に翼を羽ばたかせ、澄み切った歌声を戦場中に、特にグラン・グリモアに届けるよう歌い続けた。
「その存在が浄化するまで、何度でも聞かせてあげる!」
 やがて、創造されたオブリビオンがフィーナへの攻撃をやめ、地上にゆっくりと降りてゆく。
 その姿は、破魔の歌に聞き惚れ、フィーナの観客になったかのよう。
「――あなたも、未来を願うのですか」
 己が意を裏切ったオブリビオンに、若干軽蔑の視線を向けるグラン・グリモアに、フィーナは笑顔で語りかける。
「こんなサービス、めったにしないんだからね!」
「なぜ、諦めないのでしょうか」
 グラン・グリモアはの反応は、相変わらず停滞を臨むそれ。
 だが、その一方で、グラン・グリモアはフィーナのひたむきな歌声で僅かに心が揺らいだのを隠すためか、軽く眉を顰めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

何もしなければ周囲からの圧で変化を余儀なくされるわよ?現状維持とは周囲の変化に合わせた維持する方向への変化、変わり続けることこそが不変。今に留まりたくば全力で走り続けよ。

ま、相手が格上である以上は苦戦なんて当然。このレベルの相手なら理不尽なギミックもいつもどおり。実力差と成功率の低下で回避しきれない。|でもグランちゃんからのダメージとか我々の業界ではご褒美です《欲望解放、継戦能力、限界突破》❤
ここまでボロボロにされた私に、勝利の確信を抱かかずにいられて?
フラグが立てば確率は無意味、|えっちなのうみそおいしいです《不思議な呪文で逆転の一手を放ちましょう》




 猟兵に諦めない姿勢を歌声で見せつけられた霊神『グラン・グリモア』は、そのひたむきな姿勢に心を動かされたのか、僅かに眉を顰めている。
 その姿を見たアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔少女・f05202)は、優雅に近づきながら優雅に告げた。
「何もしなければ周囲からの圧で変化を余儀なくされるわよ? 現状維持とは周囲の変化に合わせた維持する方向への変化、変わり続けることこそが不変」
 ――ゆえに。
「今に留まりたくば、全力で走り続けよ」
「わたしは、未来への|導《しるべ》を失った人類が歪む姿を見たくありません」
 ――だから、この世界の過去を全て、自らの保管する『過去』と取り換えるのです。
 アリスに反論しながら、グラン・グリモアは己が容姿とよく似たオブリビオンを創造する。
「――行きなさい」
 創造されたオブリビオンは、爪を鋭く伸ばしながらアリスに急接近し、斬りつける。
 確実にアリスを抹殺するために放たれたその一撃は、骸の海の影響であらゆる行動にデバフがかかっているアリスの腕を深々と斬り裂いた。
(「それに、このレベルの相手なら、理不尽なギミックもいつも通り」)
 最初から実力差は歴然。
 そこに戦場全体を覆う骸の海が齎す行動成功率低下が重なれば――。
「――ま、回避しきれないわね」
 もとより、相手は格上である以上、苦戦なんて当然。
 それでも、かたちだけでも回避しようとはするが、その都度創造されたオブリビオンの爪に肌や服を引き裂かれ、硬質な羽根で徹底的に打ちのめされ、あっという間にボロボロにされた。
「でも、グランちゃんからのダメージとか、我々の業界ではご褒美です❤」
 まだ諦めないわよ、と暗に告げるアリスに、グラン・グリモアはただ冷静に告げる。
「その『ご褒美』すら、いずれ失われます……歪んだ未来の前では」
「ここまでボロボロにされた私に、勝利の確信を抱かずにいられて?」
 アリスの笑顔の問いかけに、しかしグラン・グリモアは首を振った。
「――いいえ、改めて確信しました」

 ――壊れ行くこの世界は、わたしの『過去』と取り換えるべきだ、と。

 全身ボロボロにされてもなお倒れないアリスの行動は、全くグラン・グリモアに響いていない。
 もし、アリスがひたすら攻め続けることで諦めない心を見せつければ、グラン・グリモアの心に楔を打ち込み、行動率低下のデバフすら期待できたかもしれないが、アリスが期待したのは、あえて己が欲望の儘耐え抜きグラン・グリモアが勝利を確信する……言い換えれば『慢心する』その一瞬だ。
 だが、グラン・グリモアは未来を識る術を失った人類に希望を持てない霊神だが、一方で骸の海においても厄災とされている存在。
 ゆえに、世界を取り換えるためなら――負けフラグを立てる事は決してない。
 もし、一生懸命耐え抜き、頑張ったのであれば、少しだけでも負けフラグは立ててくれたかもしれないが……。
(「フラグが立てば確率は無意味となるはずだけど、簡単には立ててくれないわね」)
 そうなれば、不思議な呪文からの逆転の一手を放てるのに、と内心苦笑いしながら。
 アリスは創造されたオブリビオンの攻撃から何とか逃れ、戦場から離脱した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ルシア・ナドソコル
【心情】
グラン・グリモア、恐ろしい相手ですが、止まるわけには行きませんね
僕はもっと昔から、こうした理不尽に対して抗い続けてきたんです

【パフォーマンス】
物静かな雰囲気の曲をオカリナで「楽器演奏」しながら登場
「幻影使い」をスポットライトのように用いて、自分に集中させる

「軽業」で攻撃を回避し、記憶の化身に襲われても、曲を終えるまでオカリナは放さない
追い詰められても「負けん気」で耐える

「グラン・グリモア、ご存じないでしょうが、僕はあなたにとって最悪の敵のつもりです」

会場の注目が集まったところでUC発動
力尽きるまで、全力で攻撃を続けましょう

「僕の旅の行く先は、僕だけが決める!」




 霊神『グラン・グリモア』は、猟兵達の過去に「価値などない」と断じた上で、己が保管している過去と取り換えようとしている。
 ――その恐ろしい権能を行使されたら、僕はどうなるのだろう?
 そんなことを考えながら、ルシア・ナドソコル(自由と冒険を求めて・f39038)はオカリナに口をつけ、物静かな雰囲気の曲を奏で始める。
 戦場全体を覆っている骸の海の影響か、思うように指が動かない。
 それでもルシアは、幻影をスポットライトのように用い、グラン・グリモアではなく自分を照らすよう集中させながら、どこかにいるであろう観客に向け演奏し続ける。
(「グラン・グリモア、恐ろしい相手です」)
 ――だが、止まるわけにはいかない。
「なぜ、あなたたちは過去にこだわるのでしょう?」
 ごくごく自然な問いかけに、ルシアはいったん演奏を止めて答えた。
「僕はもっと昔から、こうした理不尽に対して抗い続けてきたんです」

 ――僕の旅の行く先は、僕だけが決められるので。

 再び演奏を始めたルシアの目の前に、突然グラン・グリモアが現れる。
 ルシアも一歩後退しようとするが、それより早くグラン・グリモアの指がルシアの腕に触れた。
 直後、ルシアの目の前に、己が記憶の化身としか思えぬ存在が現れる。
 それは何処か影のような、見た目も顔つきも曖昧な存在だが――。
(「――バルキリーだった僕に重傷を負わせた相手か? いや、でも……」)
 どこか違うかもしれない、と己に言い聞かせながら、ルシアは記憶の化身の攻撃を軽い身のこなしで避けようとするが、骸の海が纏わりついてそれを許さない。
 ――ザクッ!!
 ルシアの腕に、鋭い痛みが走る。
 それを皮切りに、記憶の化身は刃物を振り回し、ルシアの腕に集中して斬りつけ始めた。
(「グラン・グリモアはオカリナの演奏を止めようとしているのか?」)
 ルシアも化身の攻撃を避けようと、演奏を続けながらも徐々に後退するが、記憶の化身は容赦なく追い詰め、腕を斬り続ける。
 退路を断たれた上、腕から走る鋭い痛みで集中が削がれ、演奏が止まりそうになるが――。
(「――この曲を演奏し切るまで、諦めるものか!」)
 何度も腕から走る痛みに必死に耐えながら、ルシアは懸命にオカリナを奏で、最後まで演奏し切った。

 ルシアの演奏に心惹かれたか、何処にいるとも知れない観客のサイリウムが星空の如く煌めいている。
 それを眺めながらどこか茫然としているグラン・グリモアに、ルシアはいつになく落ち着いた声で告げた。
「グラン・グリモア。ご存じないでしょうが、僕はあなたにとって最悪の敵のつもりです」
 その宣告は、1度重傷を負い過去を奪われかけても、なお蘇生し過去を積み重ねてきた者としての信念だろうか。
 あるいは――|終焉を破壊する者《エンドブレイカー》としての矜持だろうか。
 その言の葉の真意は、ルシアにしかわからない。
 だが、諦めず1曲演奏し切った事実がグラン・グリモアの心を動かしたか、身体は先程より軽くなっている気がする。
「僕の旅の行く先は、僕だけが決める――『輝け、紅炎刃』!」
 ルシアは不死鳥の炎を纏い、空中高く舞い上がる。
「――っ!!」
 そのルシアの姿に心を打たれたか、グラン・グリモアは目を見開き硬直する。
 ルシアは急降下し、不死鳥の炎で過去と未来への諦念を焼き尽くすべく、記憶の化身もまとめて攻撃し続けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

空桐・清導
POW
アドリブ連携歓迎

「とんでもない大物が出てきたな!
霊神!大きく出たもんだぜ!けど、やることは変わらない!
オレはオレの出来ることをする!応援頼むぜ、みんな!」
UCを発動してアイドルモードへと超変身
「なるほど!確かに動きにくいな!」
動くのも攻撃するのもまるで上手くいかない
更にはグラン・グリモアや記憶の化身の攻撃は間断なく行われる
攻撃を防ぐのも上手くいかない
必然増える被弾に負傷
それでも笑顔は絶やさない
なぜなら自分はヒーローでアイドルだから!
希望の象徴は雄々しく笑うのだ!
「一歩ずつ、少しずつ!自分を信じて進むのみ!
ゆるいぞ霊神!力でオレは挫けない!」
骸の海の影響が抜けたら[限界突破]した拳で殴る!




 永遠祭壇に現れた霊神『グラン・グリモア』を見て、空桐・清導(ブレイザイン・f28542)の背筋をひとすじの冷汗がつたいおちる。
「とんでもない大物が出て来たな! 霊神! 大きく出たもんだぜ!」
 戦場全体を覆う骸の海越しに、霊神と名乗るグラン・グリモアを見据えながら、清導は精一杯の声を張り上げる。
 ――過去に価値がないと断じ、保管している過去と取り換えようとしている霊神。
 失われた過去の集積体たる骸の海においてさえも厄災とされる存在が、今、清導の目の前にいる。
「あなたも、時が過ぎる事、変わりゆく事、老いてゆく事に、価値などなかった――そう思わないのですか?」
 グラン・グリモアは静かに、しかしさも当然と言わんばかりに問いかけて来る。
 だが、清導の答は――否、一択だ。
「けど、やることは変わらない!! オレはオレの出来ることをする!『待たせたな、みんな! 超熱血ヒーローアイドル! ブレイザインの登場だぜ!』」
 清導はマントを翻しながら、超熱血ヒーローアイドルモードに変身する。
 翻したマントが光り輝き始めるのを見て、何処にいるとも知れない観客たちに向けて笑顔で呼びかけた。
「応援頼むぜ、みんな!!」
 清導の呼びかけに、何処にいるとも知れない観客のサイリウムが、星空の如く煌めきながら大きく揺れる。
 直後、グラン・グリモアの指先が、清導の腕にそっと触れた。
 清導の目の前に、まるで彼自身の記憶を写し取ったかのような、雷を纏った化身が現れる。
(「去年、竜神親分『碎輝』と共闘した時の記憶を読み取って来たか!」)
 考える間もなく、碎輝に良く似た記憶の化身は、グラン・グリモアの願いをかなえるべく拳を振るって来る。
 清導もマントで視界を遮り、拳や腕で攻撃を受け流そうとするが、液体のような骸の海に包まれていてはその動きは酷く緩やかになってしまう。
(「攻撃はおろか、動くのもまるで上手くいかないな!!」)
 避けようとすれば拳を腹に受け、拳で受け止めようとすれば両腕ごと粉砕しかねない勢いで拳を叩き込まれる。
 清導と同じ戦闘能力を持つ化身ゆえ、雷の槍を持っていないのだけが救いだが、それでも必然的に被弾数は増え、全身から訴えかけてくる痛みが清導の意識を苛んでいた。
 だが、それでも清導は笑顔を絶やさない。
 なぜなら――。
「――オレはヒーローで、アイドルだからさ!」
 希望の象徴は雄々しく笑うのさ、と口にする代わりに、清導はマントを翻しながらにかっと笑う。
 ――それが、グラン・グリモアの目には、諦めずひた向きに頑張る姿に映ったのだろうか。
「なぜ、そこまでして――」
「一歩ずつ、少しずつ! 自分を信じて進むのみ! それがオレの信念だからだ!!」
 己の拳で化身の拳をかろうじて受け流しながら、清導はグラン・グリモアに言の葉を叩きつける。
 グラン・グリモアの瞳が微かに揺れ、記憶の化身の動きが目に見えて緩やかになった。
(「よし、グラン・グリモアも骸の海の影響を受け始めている!!」)
 やがて時間制限が来たのか、碎輝に似た記憶の化身が消滅する。
 いまだ、と清導は力いっぱい足を踏み込み、グラン・グリモアに向け駆け出した。
「ゆるいぞ霊神! 力でオレは挫けない!」
 駆ける勢いを保ちながら、清導は力いっぱい拳を突き出す。
 全力の拳は、己が限界を超えたかのような勢いで、グラン・グリモアの腹に大きくめり込んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミュー・ティフィア
うん、諦めたりなんかしません。望む未来を掴み取るためなら!

スピリトーゾで空中戦!
オーラ防御と結界術も纏って指先で触れられないように飛び回ります!
触れられちゃったらその時はその時!記憶の化身を掻い潜って戦いましょう!例え撃墜されてもすぐに飛び立ち復帰します!

望む未来へ繋ぐ絆を成功するまで何度だって発動します!
一度でも発動出来ればこれまで一緒に戦ってくれた観客達の数だけ力が増すんだから、諦める理由なんてないです!
そしてもちろん空中でライブパフォーマンスを!

あ、ごめんなさい!もう一回!必ず成功させるから、応援してくださいね!

いつかは必ず当たると信じて全力光属性歌魔法を何度も何度も放ちましょう!




「時が過ぎる事、変わりゆく事、老いてゆく事に、価値などないでしょう?」
 未来を諦め、過去に留まろうとしている霊神『グラン・グリモア』に対し、ミュー・ティフィア(絆の歌姫・f07712)は毅然と言い返す。
「うん、諦めたりなんかしません」
「なぜ、あなたたちは――諦めないのですか?」
「望む未来を掴み取るためなら!」
 グラン・グリモアがそれ以上口を開く前に、ミューは光翼・スピリトーゾを展開し、空へ向けて飛び上がる。
 飛び上がってすぐ、身体の異常に気付いた。
(「身体が妙に重いです……液体の中を飛んでいる感じがします」)
 戦場全体を覆う液体のような骸の海がミューに纏わりつき、その動きを妨げているのか、どうしても飛び方がぎこちなくなる。
 そんなミューを追う様に、グラン・グリモアも背の翼を羽ばたかせ、追いかけて来た。
(「指先で触れられないよう飛び回れば、記憶の化身も現れないはずです!」)
 念のため白く輝くオーラを纏い、結界を展開しながら、ミューはグラン・グリモアを振り切るように、かつパフォーマンスとして魅せるために空中を飛び回る。
 だが、グラン・グリモアもまた、空を滑るようにミューに接近し、そっと指で触れた。
 ミューの目の前に、記憶の化身が顕現する。
 現れた記憶の化身は――頭に何らかのタワーを載せ、全身に生やした触手に光線銃を持つ|悪魔《ダイモン》の姿をしていた。
(「よりによって、サクラミラージュの古代種族、エンシェント・レヰス『|悪魔《ダイモン》』の『ビームスプリッター』ですか!?」)
 さすがに体高はミューとほぼ同程度にはなっていたが、嬉しそうにうねらせている全身の触手はミューの記憶にある通り。
 触れられちゃったらその時はその時、とは思っていたが、これは流石に予想外。
(「紳士な方でしたから変なことはしてこないはずですが、グラン・グリモアの願いを叶えるためなら私の邪魔をしてきそうですね!」)
 ――ミィーッ!!
 その予想を裏付けるように、記憶の化身は妙な擬音とともに、ごくごく細い無数の光線を撃ちだした。
 ミューも光線をかわそうとするが、豪雨のように降り注ぐ極細の光線はスピリトーゾごとミューを貫く。
 光線を浴びたスピリトーゾが浮力を失い、墜落するが、ミューもすぐにスピリトーゾに魔力を籠め再度飛び上がった。
「あ、ごめんなさい! もう一回!」
 その後も何度も何度も光線に貫かれ、その都度墜落するが、諦めずすぐに飛び上がり、ライブパフォーマンスを続けながら全力で光の歌を歌い続ける。
『私達は諦めない。運命だろうと絶望だろうと、打ち砕いて希望を謳ってみせます!』
 そのひたむき、かつ前向きな姿勢が、何処ぞにいるとも知れない観客に伝わったのか、徐々にサイリウムの光が増え始めていた。
(「一度でも発動出来ればいいのです。諦める理由なんてないですよ!」)
「必ず成功させるから、応援してくださいね!」
 何度光線に遮られても、何度墜落しても、ミューは諦めずライブパフォーマンスを続ける。
 その姿に心打たれた観客たちが、未来に希望を抱き、絆を紡いだのか、サイリウムの光が加速度的に増えていった。
 サイリウムの光が星空のように周囲を覆い尽くすに連れ、ミューの力が高まっていく。
 そして、グラン・グリモアの動きも――どこか液体の中で動いているかのように鈍い。
「な、なぜ――」
「私達の望む未来のためなら、決して諦めません!!」
 ミューのひた向きさに心を打たれたグラン・グリモアの前で、ミューは歌に光の魔力を乗せ、グラン・グリモアにぶつけるように放つ。
 観客の絆の力が乗り、激しく光り輝く奔流と化した歌が、グラン・グリモアを呑み込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

栗花落・澪
落下防止のため自分の足で動くよ
長期戦必須なこの戦場じゃ
僕の心臓が先に限界迎えそうだけど(実は心臓弱い)
それでも笑顔は絶やさない

過去なんて何度も乗り越えてきた
その度に重ねた、今を、未来を守る決意
簡単には折られないよ

未来を信じる想いを乗せた歌唱と
合間に紡ぐ光魔法の連射
それぞれに破魔の力を乗せる
失敗しても、当たらなくても
成功するまで何度でも挑戦可能な連撃重視
攻撃は極力回避するけど
回避失敗して傷を負っても激痛耐性で耐える

例えここで死んだって
諦める理由にはならない
命がけのパフォーマンスで
貴方を倒して(助けて)あげる

隙が見えた瞬間指定UC
戦場を満たす破魔で浄化攻撃しながら
更に破魔の光魔法の連射で追撃するね




 光り輝く未来への望みの奔流に飲み込まれる、霊神『グラン・グリモア』の姿を、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は空中からではなく、地上から眺めていた。
「僕、色々な世界がグリモアベースに繋がり、猟兵として世界を転戦するようになってから、過去とは何度も向き合ってきたんだよね」
 予期せぬ状況で過去を突きつけられ、辛かったこともある。
 諦念や絶望を感じたことも、一度や二度ではない。
 だが、その度……過去なんて何度も乗り越え、その度に今を、未来を守る決意を固めてきた。
 ――だから。
「簡単には折られないよ」

 何度でも立ち上がるひたむきな姿勢を見せれば、グラン・グリモアの心を揺らがせることができるという。
 だが、そのためにはどうしても長期戦を覚悟せねばならない。
(「長期戦必須なこの戦場じゃ、僕の心臓が先に限界迎えそう」)
 心臓が弱い澪にとって、長期戦は命取りにすらなりかねない。
 ――だが、それでも。
(「笑顔だけは絶やさずいこう」)
 心中をグラン・グリモアに悟られないよう笑顔を浮かべる澪に、グラン・グリモアは問う。
「時が過ぎる事、変わりゆく事、老いてゆく事に、価値などないでしょう?」
 返事の代わりに、澪は息を整え歌い出した。
 歌に込めるのは、未来を信じる想い。
 そして、合間に紡ぎ出すのは、未来への道標となる光魔法。
 ――もちろん、グラン・グリモアに簡単に届くとは思っていない。
 事実、戦場全体を覆う液体のような骸の海が、光魔法の狙いをずらし、歌を阻害しているように見えた。
 だが、例え魔法が失敗しようが、歌が心に響いている様子が無かろうが。
(「成功するまで、何度も何度も挑戦するつもりだから」)
「――いいえ、そう何度もさせません」
 これまでの猟兵達の戦術で何かを悟ったか、グラン・グリモアの指がそっと澪に触れる。
 直後、澪の目の前に、深い闇のみで象られたような記憶の化身が現れた。
 ――それは、澪の様々な記憶から闇だけを取り出したような、悪意の象徴。
 同じ戦闘能力を持つ化身の喉から紡ぎ出されるのは――未来への絶望を織り交ぜた歌だ。
「……っ」
 気を抜くと、絶望に心が侵蝕されそうになる。
 その間隙を突くように化身が放った闇魔法が澪の全身を斬り裂き、激痛を与えた。
 闇に侵蝕される激痛と同時に、絶望に蝕まれた精神が心臓の痛みとなって澪を苦しめる。
 斬り裂かれる痛みは激痛耐性で耐えれても、心臓の痛みまでは――堪えきれない。
 ――でも。
「例えここで死んだって、諦める理由にはならない」
 ――だから、諦める気はないよ。
 化身の歌と闇魔法に対抗するように、何度でも何度でも歌と魔法を紡ぎながら。
 澪は笑顔を欠かさず、きっぱりと宣言した。

「命がけのパフォーマンスで、貴方を|倒して《助けて》あげる」

 その言の葉に心を打たれたのか、グラン・グリモアが澪を追う足と翼を止め、どこか縋るような目つきで澪を見つめる。
 刹那、戦場全体を包む骸の海が、グラン・グリモアに纏わりつき行動を阻害し始めた。
 隙を見せた、と考えるより早く、澪の口から|希望《未来》を与える言の葉が紡ぎ出される。
『貴方の闇に、希望の輝きを』
 澪の言の葉が戦場に溶け込むと、グラン・グリモアの周囲にこの世のものとは思えぬ美しい花が舞い始め、戦場全体が天上世界と同じ環境に変化した。
「これ、は……っ!?」
 己が居場所の存在意義を書き換えられ、言葉を詰まらせるグラン・グリモアの上空から、悪を浄化し魔を砕く光が降り注ぎ始める。
 決して眩しくもなく、むしろどこか柔らかい光は、グラン・グリモアの全身を優しく包み込んだ。
 思わず上空を見上げるグラン・グリモアの瞳が――大きく揺らぐ。
「これが、未来を諦めない、かが――」
 輝きの光なのでしょうか、と口にするより早く。

 ――霊神『グラン・グリモア』の姿は、永遠祭壇から消滅していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年10月02日


挿絵イラスト