シャングリラ☆クライシス⑫~心なんて、
●裂いた、咲いた
バジッ……電流が弾けた。
それは時に、虫の死ぬ音である。
冬場、車のドアに触れると、ちりっと指先を痺れさせる静電気。火傷痕は残らないけれど、あれも電流だ。
雷が落ちて、人が死ぬ。
雨を伴わなくとも、命を殺すことができる。それでいて人の暮らしを助けることもある。
例えば、転びそうなとき、咄嗟に手をついたりして受身を取る。その所作は脊髄反射と呼ばれるけれど、そう反応して、体の各所に動き方を届けるのも、電気信号ではなかっただろうか。
生かしも殺しもするのだ。
故に、恐ろしい。
電流。
成長電流とは、文字通り、使うほどに成長する電流であり、あらゆる逆境を越えてゆくからこそ強くなる、少年漫画の主人公にでもありそうな能力だ。
我々の知る成長電流の持ち主、カクリヨファンタズムの竜神親分『碎輝』はまさしく漫画の主人公のような性格である。逆境でこそ強くなる不撓不屈の竜。敵対する相手が悪であればあるほど、打ち勝つために成長速度が上がる。そんな性質まで、主人公のようだ。
その『力』のみが今、光の道にて顕現している。
侵略神『ヴァラケウス』なるものの力として。
●泣いた、哭いた
「超先制精神攻撃だって」
グリモアベースにて。自身の著書である文庫本をぱらぱらとしながら、嶺・シイナは呟いた。淡白で温度を感じられない平常な彼女の声色である。
シイナが示したのはシャングリラ☆クライシスが繰り広げられる第二戦線のアイドル☆フロンティアの戦場。プラネット・ドラゴンロード『碎輝』の外殻を纏った侵略神『ヴァラケウス』との戦いである。
アイドル☆フロンティアの人々の心に骸の海を流し込んでいた元凶である。
シイナは本を閉じ、その縁をわけもなくなぞり始める。
「人の心を壊して、絶望を生んで。骸の海を流し込んで、生きた人間からオブリビオンを生む。アイドル☆フロンティアが観測されたとき、誰かが示唆した可能性……『骸の海を溢れさせてしまう一般人をオブリビオンになる前の状態で殺害したら、オブリビオンは生まれなくなる』なんて話があったけど、検証するやつがいなくてよかった」
胸糞が悪くなるところだ。
シイナの指先が、文庫本の四角をなぞり終える。
「ヴァラケウスを倒せば、もうあの世界の人たちはオブリビオンを生むこともなく、ただただ一般人として過ごせるようになるのかな。……それはまだ、わからないけれど。
僕は今回、けっこう、苛立っているんだ。義憤に駈られてるとか、そんなきれいな類の感情ではない」
ヴァラケウスの人となり、あるかもしれない背後事情に関して、一切知りもせず、省みもせず、シイナは己の情念のみを述べる。
己が情念に従わずして、文豪は一体、何に従うのか。
「碎輝といっても外殻だけ、能力だけなのはわかっている。だが、あのまっすぐすぎて遠くて焦がれてしまうような御仁の力を、それとは真逆と言える輩が我が物顔で振るう状況が、癪に障る。
しかも、人の心を壊すという悪辣さだ」
シイナは無表情のままで、声は平坦なままだ。だが、その主張に共感した猟兵は多いのではないだろうか。
文庫本を手慰みにしていた手を止め、シイナは集う猟兵たちにまっすぐ眼差しを注いだ。
「残念ながら、『超先制』とつくだけあって、彼奴の精神攻撃は食らってしまうけれど、あなたたちはきっと、乗り越えられる。僕はそう信じている……なんて、無責任だな」
信じてはいる。ただ、どうしてもそう言うしかない、言葉に確固たる形がないことに、この文豪はむず痒さを覚えるのだ。
情念を獣として召喚するほどの業ゆえに。
「だが、ヴァラケウスの速さは碎輝の姿を借り受けた故の仮初のもの。速いくらいなんだ。精神攻撃そのものが、心の傷を抉る力が高まったわけじゃないだろ。たったそれだけの攻撃で、狼狽えるようなあなたたちか?」
無愛想で、ぶっきらぼうで。だが、それは粗雑ながらに鼓舞であった。見送るしかできない己を赦すための乱雑さであった。
『あなたたちを信じている』と云う言葉の代替であった。
「どんな方法で傷口を抉られようと、抉り返してやるくらいの心算で。対峙するのはヴァラケウスであって、碎輝じゃないからな。卑怯汚い正々堂々、思う存分やってくれ。
抉られた傷についても、煮るなり焼くなり好きにして、吃驚とでも云うような表情を奴がしたなら、その横面を殴り飛ばしてやればいい」
銀河の果てでも骸の海でも、景気よく吹っ飛ばせ。
そこまで告げると、シイナは文庫本を開いた。彼女のグリモアが行き先へのゲートに繋がるページでぴたりと止まる。
咲いた痛みが散る夜の始まり。
●狭間
抜けた先であなたを襲い来るのは何か。
つらい過去だろうか。
避けたい未来だろうか。
漠然と嫌悪するもの? 恐怖? 畏怖?
掌から砂粒が零れる感覚。幼少の折は好んですらいたのに、いつの間にかそれを喪失の感覚と重ねて、すっと心が冷えるようになった。
そんな心という木を金やすりで磨り減らすような感覚。僅かだろうと、あなたに痛手をもたらそうとするそれ。
如何にしてやり過ごし、あなたは侵略神に立ち向かうのか。
神を名乗るモノだろうと、この心まで、侵させやしないと示せ。
九JACK
とりあえず、少なそう、完結数が心許なさそうなところを出そうと思ってシナリオフレームをチェックして「私これやる!!」みたいな感じでやってます。
九JACKです。おかしい、得意分野だと思って書き始めたら、なんかものすごい体感速度で書き終わってる……時空歪んでません?
というのはさておき。精神攻撃の文字を見たら踊り出すタイプのくじゃくです(自己紹介)
ぶっちゃけ「どんな精神攻撃を受けるか」は運営から示されているプレイングボーナスではありません。当方が喜ぶだけです。ですので、無理してプレイングに盛り込む必要はございません。
プレイングに盛り込んだら判定が有利になるボーナスはこちら。
プレイングボーナス:超電竜侵食撃に対抗する。
つまり、超速の精神攻撃に「どのように」対処するか、です。
一章完結、断章なし、公開直後より受付開始、短期募集、早期完結、でっす!!
マスターページはちょこちょこ書き換えているので、都度ご確認いただけたら幸いです。
第1章 ボス戦
『侵略神『ヴァラケウス』』
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POW : ヴァラケウス・ブレイク
自身の【竜炎の放射】でレベル×100km/hで飛翔し、射程無限・直線上の全てを切断貫通する【漆黒の衝撃】を放つ。
SPD : 侵略機動・蹂躙突撃
【全身】から【漆黒の破壊オーラ】を噴出しながら、レベル×5km/hで直進突撃する。2回まで方向転換可能。
WIZ : 侵略機動・精神侵食
【漆黒のドラゴン界を纏う姿】に変身する。隠密力・速度・【竜炎】の攻撃力が上昇し、自身を目撃した全員に【絶望】の感情を与える。
イラスト:hina
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と
ヴァラケウスのやり口には
俺もムカついているんだ
「あぁ、ぶっ飛ばしに行くか」
超先制とは聞いてたが
此処まで瞬間的にとはな
「さて、何が来るか」
言葉を交わしていた相棒も見当たらず
まず感じるのは血の香り
香りの先には今も広がる血だまりと
その中に倒れ伏す時人の姿
多分、先に聞いていた避けたい未来だろう
だけど、それを見て思うんだ
「俺の相棒が俺より先に倒れるわけがないからな」
言葉と同時に、振り払うように一閃
同じように振り払ったのか
同時に目が合う相棒が居る
「当たり前だろ」
後はムカついていた感情と共に
そしてそれ以上に、信じる相棒と共に
全力の爆水掌でぶん殴る
「効かなくとも、ムカつくもんでな」
葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と
「俺も怒ってるよ」
志操使役ですらなく
力のみ使うなんて不愉快の極みだ
「絶対ブッ飛ばそう」
返事も無く相棒が突然消えて
無明の闇に苦鳴が響く
音を頼りに走ると
そこには
斬り裂かれた相棒の姿、が
「!?」
抱き起した体も流れ落ちる血も温かいが
体からは全ての力が抜けている
死体だと、わかっ、て、俺、は
「いや!」
攻撃は精神に
これがそれだ!
絶対的確信で否を突き付けると
陸井とお互い見つめ合っていた
「うん、んなはずあるかって思った」
隠した動悸の分も
思い知らせないと気が済まないな
白燐剣光大神楽詠唱!
「こんなに早く脱するって思わなかっただろ」
陸井の攻撃も激烈の極みだね
狼狽顔に全力で喰らわせてやるよ!
●思い同じく
志操使役ですらない。ただ殻を纏っただけ。
そんなヴァラケウスのやり口に、葛城・時人(光望護花・f35294)と凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)は腹を立てていた。
「絶対にぶっ飛ばそう」
「あぁ、ぶっ飛ばしに行くか」
思いは同じ。故に、この任務に集った。
同じ戦場に足を踏み入れる。
紅蓮の炎が視界をよぎった気がした。ビジジ、と電光を纏っていたように陸井には見えた。となれば、【ヴァラケウス・ブレイク】が来ると見て、漆黒の斬撃を回避。速いとは聞いていたが、この程度、なんでもない。
「お出ましのようだな、時人——」
相棒に声をかけようとした陸井だったが、ふと、覚えのある臭いが鼻をついた。
いくら速かったとはいえ、まさか、と陸井は目を見開く。
血溜まりの中に、相棒が倒れていた。
死人が応えてくれるはずはないのだ。
『あぁ、ぶっ飛ばしに行くか』
いつだって隣に立ち、頼もしく答えてくれるはずの相棒の声がないことに、時人は疑問を抱いた。
「陸井?」
駆け抜けているアイドル・ロードは「光の道」であるわけだが、陸井が忽然と消えたこともあり、時人には暗く感じられた。
だが、声は聞こえた。……苦悶の声。
声のした方へ向かう。焦燥に急かされた心音が耳障りだ。
辿り着くと、そこには切り裂かれた陸井の姿。どくどくと流れていく、失われていく血液……失われている命。
抱き起こして、その喪失を確信する。
ああ、この陸井は、死体、そん、な……
「そんなわけあるかよっ!!」
一閃。
同刻、慟哭にはなり得ない叫びを二人は放った。
「俺の相棒が俺より先に倒れるわけがないからな」
陸井は時人を信じている。だからこそ、何一つ抵抗できずに死んでいる姿をあり得ないと断じられた。
それは時人も同じだ。一方的に切り裂かれて死ぬなんて、陸井に限ってないだろう。
訪れてほしくない未来。何よりも信頼できて、背中を預けることさえできる相棒の危機に気づくことすらできず、間に合わず、ただ失う。
それは確かに、二人が恐れているものだ。精神攻撃、虚実だと知っても、あの血の鮮やかさを見た瞬間、生気を失った相棒の姿に、凍える心地がした。
起こり得ない。だから、そんな精神攻撃で、陸井も時人も立ち止まることはない。
姿を現すヴァラケウス。【侵略機動・精神侵食】で漆黒を纏っているが、見た者に絶望を与えるにしては、あんぐりと口を開いた間抜け面だ。
「こんなに早く脱するって思わなかっただろ。顔に全部出てるぞ」
【白燐剣光大神楽】。|白燐蟲《ククルカン》が変化した剣を振るいつつ、時人はヴァラケウスに肉薄。目を眩ませつつ、少し残る胸の動悸の分を返すように、ヴァラケウスに一撃。
信じていても——信じている相手だからこそ、その死を見せられるのは、生きた心地がしないのだ。
そんな時人と同時、別方向からヴァラケウスに踏み込む陸井。逃げ場を奪う位置を取り、【水遁「爆水掌」】を叩き込む。
息の合った強烈な挟撃に、ヴァラケウスの顔は歪み、ひしゃげるような音を立てた。
「なぜ……お前たちの最も望まぬモノを見せたはず」
「望まない以上にあり得ないんだよ。だから効かない。それはそれとして、ムカついたもんでな」
陸井の睥睨。
幻影などでは打ち砕けない信頼関係。
幻影など容易く打ち砕く二人の絆。
速いくらいで、手管も、使用者の精神性もお粗末ならば、相手にならないのだ。
これが二人の強さである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シモーヌ・イルネージュ
あぁ、またあの悪夢の再来だな。
アタシの部隊が全滅したときのだ。
そして、左目に一発、胸に一発、弾を喰らうんだ。
知ってる。相手は全身装甲スーツの傭兵部隊だった。
あのとき、もう少しうまく立ち回ったら防げたんじゃないか。恐怖に動けなくならなかったら、と何度も後悔もしたけど。
本当にみじめで情けない限りだ。
傷がうずくな。
でも、後悔した分、泣いた分だけ成長もしてるんだ。
それを見せてやるよ!
【気合】と【根性】【瞬間強化】で体よ、動け!
サイバーアイの動体【視力】で弾の動きを見切って。
黒槍『新月極光』で今できる最大の力を叩き込もう!
やることが悪趣味なんだよ。
●あの日、立ち止まらずにいたなら
絶望はどんな姿形をしていただろうか。
悪夢の内容。記憶にこびりついたそれを象る幻影は、笑えもしないくらいに覚えのある光景を映し出した。
シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)の中に刻まれ続けている過去。あれが夢だったらどれほどよかったことか。
全身装甲スーツの傭兵部隊。その姿形には、今でも体が硬直する。
シモーヌの部隊が全滅したときの話。
銃口が向けられる。それが狙うのはまず、左目。
乾いた銃声。命中。涙の代わりに滴る赤。貫通すれば、それで死ねたかもしれない。けれど、死んでいようと、冷徹な傭兵たちは徹底的に二発目を放つ。今度は胸。吸い込まれるように銃弾は次々シモーヌの仲間を撃ち抜いていった。
立ち竦んでしまった。動けなくなった。唐突にもたらされた殺戮。それでも、もっと頭を回せばうまく立ち回って、避けられたのではないか。止まってしまわなければ、仲間を救えただろう。全滅なんて、しなかったはずだ、と。
全部終わったことだ。終わってしまったことだ。これは過去だ。どうしたって取り戻せない。だからこそ、後悔は「後に悔いる」という字を宛がう。
目の奥が痛むような心地がした。顔が歪んだだろう。他の傷も疼いた。
ああ、嫌だ。嫌なことを見せられた。
どれほど見飽きても、悪夢はあまりに鮮明なままで、胃もたれがしそう。
みじめで情けない限りだ。どんなに振り切ったつもりでいても、こんな風に見せつけられたなら、後悔が鎌首をもたげてしまう。
忘れられない。
でも。
「やることが悪趣味なんだよ」
心が折れた日の光景に引きずられず、シモーヌは根性で精神を立て直す。呼吸を一つ、自分の頬を軽く叩き、気合いを入れる。瞬間強化で黒槍『新月極光』を握り直して、足のバネを生かし、あの日立ち向かえなかった傭兵へ猛進する。
サイバーアイの視力で銃弾の軌道を見極め、槍を叩きつけ、吹き飛ばす。
その向こう、せせら笑いを浮かべていたヴァラケウスには【|鮮血旋風《ヴァンルージュ》】を。
後悔はどのくらいしたかわからない。そのためにどれほど泣いたかは考えるのもいやになるほどだ。
けれど、その分、前に進んでいる。
侵略神は絶望を与えるために佇む。
けれど、悔いた数だけ、泣いた分だけ、アタシは強くなった。強くなろうと決めたんだ。
絶望だけで前に進まなきゃ、何も意味はない。弱いままのアタシでいるなんて、ゴメンだ。
——旋風がヴァラケウスの足を掬った。
大成功
🔵🔵🔵
百鬼・智夢
【対の華】
私の絶望は、過去に起こしてしまった現実
小学校から中学校まで続いたいじめ
私の心が限界を迎える前に…
私のお友達(霊)が、皆殺してしまいました
きっと私の心が、彼らを暴走させてしまったから
これは私の罪で…一生背負わなければならない事
でも、背負うだけが正ではないと
私はもう知っています
こんな私でも、大切に思ってくれてる人達がいる
だから、決めたんです
過去は全て受け止めて
そのうえでちゃんと…前を向くって
リアムを媒介に呼び出した善霊さんに私と澪君に霊的防護をお願いして
更に破魔を宿した祓い札を攻防両方を兼ねて周囲に散りばめ
澪君のUCで足止めしてもらった隙に流聖の煌めき発動
破魔で絶望を祓いながら攻撃します
栗花落・澪
【対の華】
精神攻撃は、戦いの常套手段だよね…
避けたい未来
恋人が、仲間が、世界中の大切な人達が、自然が
次々に消される未来
僕と関わった人間は不幸になる
それは奴隷自体から染みついた思考
だけど
それを現実にしないために戦うんでしょう?
それに…僕は、一人じゃないから
百鬼さんもいる
左手の薬指には指輪もあるし
両親の形見のお守りやネックレスだって
いつだって、見守ってくれてるから
僕と百鬼さんを甘く見た罰だよ
翼で空中戦しつつ
攻撃が直線状なら聞き耳や気配感知を駆使して
目視よりも早い反射で回避し
裁きの陽光発動
破魔の光で戦場全体の絶望の浄化を狙いつつ
足止めも兼ねた連続攻撃
一つでも当たる限り逃がさない
手加減は出来ないからね
●光は常に前へ
暗く淀む思い。重い想い。
誰も気づかないように閉じ込めていた。表に出さなければ、言わなければ、何も起こらなくて済むと百鬼・智夢(慈愛の巫女・f20354)は押し殺し続けた。
けれど、ヒトよりも智夢の心のそばにいたのは、霊たちだった。霊たちは死んでしまったが故に剥き出しの魂で、心を感じ取ることが得意だ。
——死んじゃえばいいのに。
同級生からひどいいじめを受けていた智夢にとって、霊が見えること、感じられることは救いであった。きっとそれはいじめの原因でもあったけれど。
霊はかわいいおともだちが傷つくのを見ていられなかった。黒い心が真っ黒になって、もう白く戻れなくなってしまう前に、助けてあげようと思ったのだ。それは或いは善なる心と言えた。友達を助けようという思いは正しい。いじめは間違いなく悪なのだから、尚更。
だから、殺した。殺してあげたんだ。
智夢を苦しめるものなんて、智夢にだっていらないよね?
そう囁かれたような気がした。
それは、罪の記憶であった。
僕と関わった人間はみんな、不幸になる。
——栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の中に根づいた意識。なかなか拭われることなく、心の箱の中にこびりついている。
だから、未だ来ぬその時が必ず待っているとでも言わんばかりに現れた大切なすべての喪われる光景に、きゅっと胸が痛んだ。
火が放たれていた。緑が燃やされていく。枯れるよりなんだか残酷だ。瑞々しい色を直前まで保って、花が、木が、葉が、絶えていく……。
それを止めるために仲間たちは奔走して、炎に呑まれて消えていく。人為的な悪意により、炎以外にも張り巡らされたナニカに絡まれ、締めつけられ、刺され、貫かれて。澪が助けようといくら手を伸ばしても届かない。
しまいに、炎に晒されそうになった澪を庇って、恋人が、——
……突き飛ばされて、倒れた痛みなんて、感じなかった。
ただ心ばかりが痛い。
「それを現実にしないために戦うんでしょう?」
澪は決然と翼を羽ばたかせ、飛翔。
それに追随するように透明な霊たちが澪を守る。智夢がテディベア・リアムを介して操る善霊たちである。
智夢の目に宿る光も、澪と同じ強さを宿していた。
澪を襲った悪夢は避けたい未来。まだ訪れていない。だからそうならないように努力するのだ。抗うのだ。
けれど、智夢が見たのは過去。もう起こってしまって、取り戻せない。取り返しのつかない過ちだ。
同級生に智夢が直接手を下したわけではない。それでも、霊たちが勝手にやったことだと無責任に投げ捨てていいことではないと智夢は感じる。
背負い込むことだけが正しいわけではない。理解している。それでも、この罪は背負うと決めた。
背負って、前に進んでいく。
そのために、破魔の札を散らし、善霊たちの力を借りて、澪の補助をする。
智夢も澪も、ひとりではない。
自分が大切に思う相手が、同じように自分のことを大切に思ってくれている。だから、こんな自分でも、もっと生きていようと思う。自分の世界が「絶望」一つきりで終わらないのは、みんながいるから。互いがいるから。
【ヴァラケウス・ブレイク】をかわしつつ、澪は【裁きの陽光】を放つ。あらゆる光が、ヴァラケウスを灼かんと降り注ぐ。破魔の光が絶望を塗り潰していく。光の槍はどんなに速かろうと雨のように絶え間なく注ぎ、ヴァラケウスを逃がさない。光の縄も追い縋るように伸びる。
「ぐっ」
「悪しき心に、裁きの光を……」
澪の【裁きの|陽光《ひかり》】に気をとられているうち、本命の裁きがヴァラケウスに降りかかる。
【|流聖の煌めき《エトワール・フィラント》】。
どんな漆黒も絶望も討ち祓う流星の煌めき。
借り物の電光より、輝いて見えた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カンナハ・アスモダイ
※アドリブ連携等歓迎
精神攻撃の内容:避けたい未来。お父様の死。
……幻影と解っていても
ただ、それが悲しかった
笑顔にする
そう誓った筈だったのに
叶わぬ未来となることが怖かった
……ならば、せめて歌を捧げましょう
生死の境界を越え、三千世界に轟く歌を!
お父様を笑顔にする歌、紡いでみせる!
|契約者《ファン》の皆、力を貸して頂戴!
<歌魔法>を紡ぎ、透き通るような声で<歌唱><パフォーマンス>を披露
<アイドル力>を高め、究極変身!
プリンセスハート、メ~クアップ!
侵略神の力を紡ぐ
さっきはよくもやってくれたわね!
乙女魔法!ドラゴニック★乙女ブレイク!
アンタの思い描く絶望なんて、全部まとめてぶった切ってやるんだから!
ギュスターヴ・ベルトラン
侵略者へ、主の代理として最後の審判を告げに来た
あと個人的に竜神親分の技を真似る不埒者もツブす
【祝福】を受けたカソックに【霊的防護】【狂気耐性】【邪心耐性】の備えあり
だが何より、この身は常に【祈り】と共にあると【矜持を示す】
祈りは心の核、それを踏み躙られることこそが恐ろしい
だって心が砕ける瞬間は人の目に映らねえからな
…人の心に希望を届けるアイドルが輝く世界に、アンタの居場所はねえよ
降って来る絶望と攻撃に一瞬躊躇うも、振り切りUC発動
オレを攻撃しようとも、一度鳴り響いた天使の喇叭は止まらない
ていうか鳴らしたオレにも止められねえ!
神を名乗るなら、終末の喇叭に抗ってみせろよ
※連携アドリブご自由に!
●|何度でも《Re:Pray》
厳格なひとだった。冷酷無比を絵に描いたようなひとで、その教育にカンナハ・アスモダイ(悪魔法少女★あすも☆デウス・f29830)は苦しめられもした。
けれど、父はカンナハに家系魔術の奥義書を託してくれた。
カンナハのことを認めてくれたのかはわからない。それでも、カンナハは父の存在を心の支えに、乙女魔法を磨き、悪魔法少女★あすも☆デウスとして、アイドルとして、戦い続けるのだ。
あの仏頂面を笑顔にしてみせる。
それが叶ったなら、カンナハは文句なしのパーフェクトアイドルとして、輝ける。
まだ叶っていない。叶えていない。
広がった幻影。それは幻影だとわかっているのに、カンナハは思わず口元を押さえたし、その手は震えていた。
父が死んでいた。
表情に苦悶はない。だが、常日頃より厳つい雰囲気であり続けたゆえか、父の顔には取れない皺が多く刻まれていた。それが「父」が生きていた証をまざまざと見せつけているようで、指先がしんと冷えた。
幻影だ。まやかしだ。
けれど、悲しかった。怖かった。
だってまだ、この人を笑顔にしていない。
その夢が叶っていない。
しかも、この幻影は父の死因を映すのではなく、ただ棺に詰められた綺麗な死人を差し出してくる。どうして死んじゃったの? という疑問より先に、ただそこに佇む「死」の存在感に圧倒されてしまう。
父も自分も悪魔で、長生きの種族である。が、不死ではない。いずれ寿命が来て、死ぬこともあるのだろう。それは穏やかで平和的な、通常そうあるべき死の有り様だ。
そういう、魔法やユーベルコードや強さではどうにもならない要因に「間に合わなかった」ら。
どうすればいいのだろう。
「侵略者へ、主の代理として最後の審判を告げに来た」
光の道に立ち入り、高らかにそう宣告するはギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)。主に仕える者である。
「最後の審判だと? 侵略神たる我にか?」
「そうだ。あと個人的に竜神親分の技を真似る不埒者もツブす」
私情も滲むが、ギュスターヴがヴァラケウスの前に立つのは主の代理人としてでもあるし、猟兵としてでもある。
「ほざけ」
ヴァラケウスが嗤う。漆黒のドラゴン界を纏う姿となり、めらりと竜炎を迸らせる。その強大さと威圧感は「絶望」を振り撒く者として相応しい。
ジジ、と電流が走れば、ギュスターヴにも襲い来る絶望の心象。
——祈りが届かないこと。
主より祝福を賜るにも、その祝福を生かし、加護や邪なる者共への抵抗力、狂気に陥らぬための精神的防護を得るにも、祈りがなくてはならない。
祈りは心の核であり、主を信ずることを示す最大の手段である。仕える者として、自らが祈ること、祈りを捧げ続けることそのものが心の支えであり、己の矜持であった。
心が打ち砕かれるときには、音などなく、誰の目にも留まらない。映らない。
誰に気づかれることもなく、静かに壊れ、朽ちることのいかに恐ろしいことか。
その恐怖がギュスターヴの内に駆ける。祝福を受けたカソックを身につけていても、「我は赦しはせぬからな」と嗤うように。
曲がりなりにも「神」と名のつく侵略者ゆえ、しようのないことかもしれない。だが、祝福の数々が無効とされたわけではない。
その証拠に、恐怖が体を硬直させたのは、瞬き三つ分ほどの間。どんなに瞬きがゆっくりだとしても、60秒にも満たない。
それでも、絶望を——最も恐れていることの冷たさをまざまざと感じさせられて、ギュスターヴも逡巡した。
だが、躊躇はほんの一瞬。ギュスターヴは【|黙示録の喇叭吹き《トロンペット・ドゥ・ラポカリプス》】を発動させる。
審判の時は来た。終末の喇叭が鳴らされる。一度始めてしまえば止まらない。止められない。
「神を名乗るなら、終末の喇叭に抗ってみせろよ!」
吠えながら、ギュスターヴは祈る。
全ての結実は祈りの下に。主の恩恵も、我が矜持も、全ては祈りにより織り成されるもの。
祈りを途絶えさせることなかれ。
祈ればいいのである。
「ならば、私は歌を捧げましょう」
カンナハは毅然と立ち上がる。
死者を想うこともまた祈り。祈りは声に出さなくとも、出しても良い。
讃美歌があるように、歌も祈りの形である。
そして何より、カンナハはアイドルだ。
「生死の境界を越え、三千世界に轟く歌を!
紡いでみせるわ! お父様が笑顔になる|歌《まほう》を!!」
祈りが天に届くというなら、歌だって届く。死の国にだって届くだろう。普通じゃできないとしても、カンナハはアイドル。歌を、声を届かせるために、アイドルとしての自分を磨き続けてきた。
澄み渡るような透明な声により紡がれる歌魔法。パフォーマンスにより高まるカンナハのアイドル力。光の道の彼方からもサイリウムの揺らめきが、カンナハのパワーとして変換されていく。
無敵で究極の悪魔法少女の力が、今!
「究極変身! プリンセス・ハート、メ~クアップ!!」
悪魔法少女★あすも☆デウス、インフィニティフォーム!!
常より大きく広げられた翼をばさり。その力は相対するヴァラケウスの力を写しとり、ヴァラケウスに返す。
「なっ」
「さっきはよくもやってくれたわね! 乙女魔法! ドラゴニック★乙女ブレイク!」
あすも☆デウス∞は「悪魔」法少女だ。黒が元々よく似合う。どんな姿を写したとして、それを着こなしてこそのアイドル。
そして炎はカンナハの家系魔術でもある。父に厳しく指導された身。炎を操るくらい造作もない。何なら、本人以上に使いこなして、パーフェクト以上を叩き出す。それがインフィニティということ!
審判を下す喇叭に動くこともままならないヴァラケウスが、インフィニティフォームとなったあすも☆デウスに勝機を見出だすことはできず、抵抗もできぬまま、侵略神は斃された。
「ここは人の心に希望を届けるアイドルが輝く世界だ。アンタの居場所はねえよ」
「何度立ち返ってきたとしても、アンタの思い描く絶望なんて、全部まとめてぶった切ってやるんだから!」
絶望が押し寄せても、祈ることをやめない。そういう者たちに、勝利はもたらされる。
大成功
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