「わぁお、死屍累々!」
「あらあら、あらあらあら! 噂には聞いてたけど、大変ね!」
清志郎と玉恵の2人がセクレト機関本部に到着した時には、既にこの世界は危機に瀕していた。
人々が地に倒れ、苦しそうに呻く様子はまさに異常事態としか言えない。急いで2人は事情を知る者を探して回る。
このエルグランデという世界はコントラ・ソールと呼ばれる力を使うためにソール物質なるものを必要とする世界。物質は人々の体内にも蓄積され、生命との結びつきが強くなっていた。
しかし現在、そのソール物質が世界全体で減少する異常事態が発生しており人々の生命活動が低下する事態に陥っている。手足のしびれを始め、一歩も動けなくなるほどの状態になっている人々が多数存在しているのだ。
更に厄介なことに、この世界を侵略しようとしている|侵略者《インベーダー》・ミメーシスがこのあと到来するという情報がある。
このままでは人々の安全どころか、そのまま侵略行為を受ける形になるのは間違いないだろう。
「おや、良いタイミングでしたね」
「はわぁ、助かるですの~!」
そこへこの世界では司令官補佐の立ち位置についている金宮燦斗とエミーリア・アーベントロートが2人と合流。清志郎と玉恵に現状の説明を行った後、機関本部内にいる|調査人《エージェント》達を全員安全な場所へと運ぶようにと指示を受けた。
しかし医務室では既にベッドが足りず、それぞれの|調査人《エージェント》が寝泊まりする宿舎にも運ぶのも大変。そこで燦斗が一時的に通路に寝かせるように指示を出し、それに合わせて玉恵と清志郎がせっせと治療を続けた。
「大丈夫? 無理しないようにね」
女性職員を背負い、励ましながら安全な場所へと運んでいた玉恵。運べる人に限りはあるが、それでもそこら辺に放っておくよりはマシだと頑張って運び入れていく。
しかしやはり人数の多さはどうしようもなく、そろそろ足の踏み場がなくなりそうになっていた。どこへ寝かせようにも、人が横たわっていって新しい人を寝かせるスペースなど見当たらない。
「玉ちゃん、こっちこっち! エミーリアさんが新しいエリア解放してくれた!」
そんな中で清志郎はエミーリアと協力しながら、セクレト機関の通路を順次解放していく。また廊下以外でも寝かせられるようにと、使えそうな部屋は全て開放してもらい、その中で休ませる形となった。
とはいえ、コントラ・ソールが使えない現状、室内の空調なども機能が停止してしまっている。そのため窓を開けたり、人々の汗を拭ったりと手動で行うことだらけ。4人では救出するには多大な時間がかかっていた。
「エーリッヒ先生ーーっ! 何が起こってるんですかー!!」
「クレーエさん?!」
そこへやってきた白と黒のツートンカラーな髪を持つ少女――クレーエ・サージュが乱入。
何事もなく動けている彼女の姿に、あれ? と玉恵と清志郎が疑問を持っていると、エミーリアが少しだけ彼女について教えてくれた。
クレーエ・サージュは体質上ソール物質を持てず、コントラ・ソールを持たないエルグランデでは稀有な存在。本来であればリンクシステムと呼ばれるシステムで他者からのソール物質を受け取って生きているのだが、今回に限ってはその体質が功を奏していたようだ。
彼女は異世界から来たアルム・アルファードとジャック・アルファードの手も借りて、宿舎棟にいた|調査人《エージェント》達の生存チェックなどを行っていたようだ。しかし事態がよくわからず、更にはいつもなら繋がる司令官システムとも繋がらなくなったため、補佐である燦斗やエミーリアを探しに来たのだと。
「クレーエさん、でしたっけ。他に運ぶ人は……」
「向こうの研究棟とか、もういっぱい! あたしとアルムさんとジャックさんで頑張って運んでましたけど、そろそろ寝かせる場所がなくって……!」
「オッケー! 玉ちゃん、ここらが終わった向こうを手伝いに行こう!」
「うん、分かった! もう少ししたら向かうね!」
本来であれば燦斗、エミーリア、クレーエ、アルム、ジャックのみで回すことになりそうだった救護班。玉恵と清志郎が来てくれたおかげで事態は好転し、より多くの人々を救うことが出来た。
|侵略者《インベーダー》・ミメーシスの到来まで残り僅か。それでも出来る限りのことはやっていきたいと玉恵と清志郎はせっせと走っては|調査人《エージェント》達を救っていく。
その裏では、ソール物質を利用している者達が|侵略者《インベーダー》・ミメーシスへの対抗策を用意しているとは、誰も知る由もなく……。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴