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シャングリラ☆クライシス⑧〜選ばれなかった者の声を聞け

#アイドル☆フロンティア #シャングリラ☆クライシス #第一戦線

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 ――アイドルナイツ☆アリーナ。
 そのキラキラした名前とは裏腹にその在り様はまるで闘技場の如き無骨。
 されどこれも立派なアイドルステージ。真に戦いへの覚悟を決めた者だけが招かれるという、伝説のステージなのだ。
 そして今、このアリーナに、大量のオブリビオン化してしまった人々が現れた。彼女らは、己がなぜアイドルになれないのか……その苦痛を背負い、全世界アイドルステージ化と心より溢れだした骸の海によりアイドルではなくオブリビオンと化してしまった人々が、次から次へと現れるのだった!
 あ、もちろん観客席やサイリウムもいます。


「劣等感、って辛いわよね」
 マリア・ルートはそう語りだした。
「どうして自分は選ばれない、どうして自分は輝けない……そういう奴らこそ心の闇に支配されてしまうものよ。ま、アイドルフロンティアではそれが骸の海に近いのかしら。
 そういう奴こそ、できるはずなのにやろうとしない、あるいはやり方を知らないんでしょうけどね……と、これは話が逸れるわね」
 少し敵を増やしてしまいかねない発言を慌てて咳払いで止めるマリア。
「あんたらに向かってもらうアイドルステージではそういう劣等感溢れたオブリビオン達がわんさかいる。それこそ、凄まじい数よ。なんなら供給が止まらないわ。十中八九、長期戦になるわね」
 長期戦を耐えきるにはスタミナとかも大事だが、アイドルフロンティアではそれだけでは耐えられない。
「観客席、意識してる? 長くやってるとね、同じような展開がずっと続くと観客も飽きが来るものよ」
 飽きられてしまえば、応援によるブーストもそこまで効果は得られないだろう。必然、こちらの劣勢になってしまう。
「変化に富んだパフォーマンスをするもよし、ほんとに最初から全力全開で決めに行くもよし……その辺はあんたらに任せるわ」
 ただ、長期戦の可能性が高いのだけは気をつけて、とグリモアを展開しながら語った。
「さ、行ってらっしゃい。……あ、あと」
 何か、とばかりに猟兵が振り向くと。
「……その、双方どういう感じの恰好やアイドルパフォーマンスとかだったかとか、教えてくれると幸いだわ」
 少し赤面したマリアが口元隠しながらそう語った。彼女だって女の子である。劣等感抱いてないと言えば嘘になる。


「どうして……」
「なんでなれないのよ!」
「なんであの子みたいに……なれない……!」
「私達だって……戦いたいのに!」
 わらわらと集う劣等感まみれの少女達。
 ……本来アイドルフロンティアではアイドルになりたいと願えば宇宙からの流れ星がアイドルにしてくれる。だが、彼女たちはきっとその願いが弱かったか迷いがあったか、或いは疚しい思いがあったか、選ばれなかった。ずっとずっと、劣等感を感じていた。
 そんな虚しい存在達が――この場には集っていた。


結衣謙太郎
 アイドルステージ、オープン!
 結衣☆戦争モードです。
 なれる者がいればなれない者もいる。そういう話。
 以下詳細。

●メイン目標
 『グラトニー・アイドル』を撃破しまくる。

●章構成
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「シャングリラ☆クライシス」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 ロケーションはアイドルステージ『アイドルナイツ☆アリーナ』。
 無骨な闘技場風のイメージです。遮蔽物はほぼありません。周囲には観客席があってサイリウムの形をした人々の無意識が召喚されてます。

 このシナリオはとにかく長期戦となります。
 長期戦に耐える方法ももちろんですが、周囲の観客をずっと楽しませてこその|アイドル《猟兵》です。
 長いステージを飽きさせないように演出してください。期待していますよ?

 特別プレイングボーナス:長期戦を耐え切る手段を講じる/変化に富んだパフォーマンスで観客席を飽きさせない。

●備考
 プレイングはオープニング公開後から受け付け開始します。
 ただし全採用できない可能性がある点、ご了承ください。
 オーバーロードは納期の都合により後回しになる可能性もあります。
 また、『戦線』があるので時期によっては完結優先で待てない場合がございます。

 劣等感を持つ者に手を差し伸べてこそのアイドルだ。それがどのような形であれ。
 以上、プレイングお待ちしております。
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第1章 集団戦 『グラトニー・アイドル』

POW   :    トランス・オールドファッション
今日食べた物の【エネルギーを急速消費し、生じた空腹感の 】合計に比例した攻撃力と、【消費したエネルギーの】合計に比例した防御力を持つ、【ゴシック調のアイドル衣装】に変身する。
SPD   :    ダウンフォール・クラッカー
【異次元の大食いぶり 】を披露する事で【暗雲を背負う神を模したアイドル衣装】に変身し、戦場内の敵全てを攻撃する【雷撃】を降らせる能力を得る。
WIZ   :    アーティ・トリート
戦場を【料理対決会場 】と同じ環境にし、自身の攻撃に「敵から受けたダメージ」を加算する【デザート一品】を付与する。

イラスト:ロミナ毅流

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ユウ・リバーサイド
アドリブ、絡み歓迎

いいよ
限界突破したって皆の想い、受け止める!

幻影で黒き蝶の群れを召喚しその中から登場
♪ここは何処なのだろう
♪目覚めれば悲しみに満ちた場所
静かに歌い、踊り出す

楽曲の連なりで一つの世界観を
物語を作る
続きの展開を期待する感情を引き出す
序曲はバラード
続いてR&B、ロック、ポップスなどの多様な曲を歌い
「不自由な世界で劣等感に苦しみつつも
小さな希望を見出し重ねる」展開を
小芝居や幻影を混ぜて魅せる
歌と笑顔の魔法
時にファンサも交えて希望を鼓舞

希望の力を王子様の能力で蒼き輝きのオーラに変え防御
歌に合わせたダンスと軽技で
回避と同時に魅せ
根性で立ち続ける

心眼で急所を見抜き
剣舞で貫いていく




 オブリビオン達がひしめくアリーナ、それをじっと見つめるサイリウム達――それらの視線が、ふと一点に集中した。
 幻影の黒い蝶が1体、また1体と現れ、そして集っていく。やがてその中から一つの歌声が響いた。

 ――ここは何処なのだろう――
 ――目覚めれば悲しみに満ちた場所――

 静かに黒い蝶の幻影の中から現れたユウ・リバーサイド(Re-Play・f19432)の歌声がアリーナに響きだした。静かに、歌い、踊る。その姿に観客の視線はどういう物語か、続きはどうなるとかと釘付けになっていく。バラード調の曲から始まった流れはまるでミュージカルを見ているかのようなそれであり、グラトニー・アイドル達もまた目を引かれてしまう。
 どうして自分はああなれなかった、どうして自分は……目の前で多様な曲を歌うユウの在り方に、ある種の羨望とそれ故の怒りを感じていた。
 やがて、グラトニー・アイドルの1人がユウに向かい飛び出せば、それを皮切りにしたか他のグラトニー・アイドルも次々と跳んでいく。ユウはそれを笑顔と幻影を交えてかわすと、そろそろ次段階――というか彼女たちのケアもしないとか、とばかりに次の演目へ。

 ……それは幻影も交えた一つの小芝居。
 アイドルとして活躍する自分、なれずに劣等感を感じる少女(幻影)。加えて世界は不自由に溢れ、アイドルがいないとやっていけないような状況。そう――まさに今全世界アイドルステージ化が起きたアイドルフロンティアのように。
 だけど、そんな中でも、『希望』というのはきっとあるのだ。
 ――自分にしかできないことはある。
 ――自分だから手伝えることがある。
 ――自分だからサポートできることがある。

 ――自分だから、|持たせられる希望がある《アイドルになれる》、と!

 笑顔で幻影に拳を合わせれば幻影がアイドルのように変わっていく。『ミラクル☆ぐーたっち!』……自身と【ぐーたっち】した対象を【ミラクルモード】に変身させ、指定した3種の技能「【アイドルダンス・アイドル力・希望の力】」のレベルをLVx10にする、というものだ。|その役は血と肉に成り、戯曲は真実へと至る《ベスト・バイプレイヤー》――ユウの持つコード、別のコードを引き出すコードにより出てきたこのコードが齎した小芝居に、グラトニー・アイドル達の反応は様々。ウットリする者もいれば、自分を省みる者もいて、そして――やけくそになって突撃する者もいる。
 ああ、こればかりは、とユウも攻撃を|蒼い輝き《希望》のオーラで防ぎ、幻影と共に剣舞で貫いていく。的確に踊り、歌い続けながら軽やかに攻撃していく様は観客もステージから目が放せなくなるようなものだった。特にどれだけうっかりやられても尚も根性で立ち上がる姿には――根性がなくて何が|アイドル《バイプレイヤー》だ、と。
 限界を超えても尚皆の想いを受け止めたい……その想いが齎す劇は終わりを知らない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

儀水・芽亜
私も子供の頃には劣等感を感じたことはあります。超人的な行動力の父母に、愛し合う兄姉に。
ですが、私は私。誰かと比べてもどうにもなりません。

それでは始めます。武器は竪琴一つで十分ですよ。
「音響攻撃」「全力魔法」感動の「属性攻撃」「範囲攻撃」「楽器演奏」「歌唱」「精神攻撃」でパッション『マタイ受難曲』。さあ、私の歌声にひれ伏しなさい。

長期戦でしたね。「継戦能力」で歌い続けるのは当然として、観衆を飽きさせない工夫。
「ダンス」「アイドルダンス」の「パフォーマンス」をして、「ブームの仕掛け人」で観衆にも一緒に歌ってもらいましょう。
不意打ちで観客に呼びかけるのもいいですね。

この程度の逆境、問題になりません。




「では、私も始めましょう」
 ユウに続くように現れた儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)。彼女の手にあるのは竪琴のみ、されどフリッカースペードたる彼女にはそれだけで十分。
「さあ、私の歌声にひれ伏しなさい」
 鳴らし始めたのはパッションに溢れた――マタイ受難曲。マタイ受難曲? え、また変わった選曲を……
「来たれ娘たちよ、ともに嘆け。見よ――誰を? 花婿を、彼を見よ――どのような? ――子羊のような!」
 あーあー、すっかりパッション溢れさせながらノリノリで盛り上がってる。わからない方向けに軽く説明すると、マタイ受難曲とは新約聖書『マタイによる福音書』の26、27章のキリストの受難を題材にした受難曲……ソロ歌手と合唱、オーケストラによって演劇抜きで歌われる、オラトリオ劇の一種で……もうここまでだけでも結構説明がややこしい気がしてきた。つまりは、ドラマチックで劇的な展開のある音楽です。パッション確かにあるし荘厳でもある!

 グラトニー・アイドル達をしっかり見据えながら、自分を思い返す芽亜。
(――私も子供の頃には劣等感を感じたことはあります。超人的な行動力の父母に、愛し合う兄姉に。ですが、私は私。誰かと比べてもどうにもなりません)
 世界を渡り歩く写真家の母に、また違った意味で行動力のある父。その2人だけでなく、双子の兄姉も互いにラブラブで家では蚊帳の外気味だった……そんな過去を持つ芽亜。劣等感を感じるのも当然である。尤もそういう彼女も彼氏が――夫が全てと思うようになってもいるのだが……閑話休題。
 溢れだすパッションについていけないグラトニー・アイドル達が畏怖を感じたり|ダメージ《衝撃》を受けたりする。これこそ己が歌声を魔術の域まで高めたと言われるフリッカースペードの真骨頂、だけど歌声だけでは飽きが来るだろう、と適度にダンスを交えたうえで、彼女が見つめたのは――観客席。
「皆さん? さあ、ご一緒に歌いましょう!」
 なんと観客を巻き込んでいくスタイル。だがアイドルフロンティアの観客は基本的にサイリウムの形をしており、当然歌う事なんかできない。巻き込みスタイルは確かに斬新で飽きさせないが、歌が響くことはない――

 ――と、思っていた。
 観客席から、合わせた様な、ぎこちないけど優しい歌声が聞こえてくるまでは。
 ……観客がサイリウムの形をしているのは『基本的に』の話だ。かつてアイドルに助けられ、アイドルの事を覚えており、『ファン』となった存在は――サイリウムの姿ではなく、本人の姿で観客席に召喚される。そうなれば、一緒に歌うことだって可能だ。芽亜自身もシャングリラ☆クライシスで活動した経験がある、ならば――芽亜を覚えているファンがいても、おかしくはない話だろう!

 ふっ、とほくそ笑む芽亜。それは自分にも応援してくれる存在がいる安堵感と、負けられないという決意、そして。
「この程度の逆境、問題になりません」
 まだまだ現れるグラトニー・アイドル達を見ても尚も問題なしと言える自信へと繋がっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神臣・薙人
選ばれない
その気持ちは、分かるような気がします
猟兵に覚醒してなお私は友人に護られている
…傲慢な悩みですね
こんな気持ちは私だけで十分です

初手で血風紅桜使用
桜花に乗って戦います
攻撃は桜だけではなく
白燐蟲を呼び出し広範囲に広がるように指示

料理対決に持ち込まれると不利ですから
上空から桜を打ち込んで攻撃するようにします
負傷した際はすぐに桜花で治療

飛翔中は角度や回り込み方に注意
白燐蟲の光り方もランダムに
同じパターンが続かないよう
攻撃を放つ時の仕草にも気を遣います

貴方が他の方のようにになれないのは
ある意味では当たり前なのです
貴方は貴方にしかなれないのですから
…私もそう
他者を羨むよりも
貴方自身を見詰めて下さい




「選ばれない……その気持ちは、分かるような気がします」
 神臣・薙人(落花幻夢・f35429)が憂いを込めた表情をしながら無数の桜花を召喚し、花弁を川の流れに乗ったサーフボードにするかのように乗る。
(猟兵に覚醒してなお私は友人に護られている……傲慢な悩みですね)
 昔の記憶がうまく思い出せず、覚えてるのは大切な人の事だけ。もうそういう大切な人を、心を寄せた人を忘れたくないと伸ばし始めた髪を軽く撫でながら、一つ目を瞑る。
「――こんな気持ちは私だけで十分です」
 言葉と共に己の呼び出した白燐蟲達が広がり始める。それらがグラトニー・アイドル達の邪魔をしながらも桜が打ち込みやすい位置へと彼女らを誘導していけば桜の花弁の流れがグラトニー・アイドル達を貫いていき浄化していく。グラトニー・アイドルのコードの力で料理対決へと持ち込まれてしまうと恐らく不利になる……そう考えた薙人は先手必勝に出る考えを持った。後詰めが次々と出てくる長期戦になるとは言われていたが、それらだって出てきて早々に、相手がコードを放つ前に倒してしまえば問題はない。些か強行軍染みたアクションはその激しさと危うさ故にか観客の目をも釘付けにして放さないが、もちろん自身へのフィードバックも相当なもの。だが花弁に備わった負傷回復の力が薙人を回復することで延々と強行軍するのを可能にしていた。
 ――それでも、同じような展開が続いては観客にも飽きが出てしまうもの。自分への応援の度合いが、自分の強化具合が変化していくのをその身で感じながら、応援パワーが弱くなってきたところでパターンを変え仕草を変え、独自のやり方を次々と魅せていく。花弁サーフボードの使い方だけでも角度や回り込み方だけで無数の方法やトリックがあるし、白燐蟲の光り方も合わせれば演出の仕方なんて無数にあるものだ。後は観客の盛り上がりを見ながらやっていけばいい。結果は後からついてくる。
「貴方が他の方のようにになれないのはある意味では当たり前なのです。貴方は貴方にしかなれないのですから」
 グラトニー・アイドル達へ呟く薙人はそっと胸に手を当てる。
「……私もそう」
 薙人はあくまで薙人にしかなれない。色々と考えたところで結局は『神臣・薙人』が漏れてしまう。考えてしまってもしょうがない。
 ――だから。
「他者を羨むよりも、貴方自身を見詰めて下さい」
 花弁と共に叩きつけるその言葉は、グラトニー・アイドル達の心に響いたか、果たして。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
気持ちは…わかる
幸いダンスなら体力温存出来るけど
僕もアイドルを仕事には出来ない
心臓が弱いから

他人と比べちゃ駄目だよ
アイドルを目指した理由
好きの気持ち
大事なのはそこだと思うな
何より…貴方達には貴方達にしかない良さがあるから

前向きで明るい歌唱には催眠術を乗せて
翼で浮遊したり、跳ねるような動きを多めに取り入れた身軽なダンスを
回避の動きに取り入れる
伸縮自在な杖を剣舞のように扱って牽制しながら
合間に高速詠唱で水魔法の属性攻撃
夏らしく魚の姿にした水達で攻撃、濡らしたところを
多重詠唱で氷魔法の範囲攻撃で凍結、足止め狙い
更に指定UCで破魔の光と花弁を降らせ
浄化攻撃と共に水や氷を光で煌めかせる演出




「気持ちは……わかる」
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)はやや辛そうにそう語る。正直なところ、澪もやろうと思えばアイドルはやれるのだ。だけど、アイドルを『仕事にする』のはできないのだ。
(だって……心臓が弱いから)
 それはある意味澪が感じている『劣等感』。他の皆や目の前のグラトニー・アイドルと違い、なんで自分はこんなに心臓が弱く、制限が課せられているんだろう……そういう気持ちがないわけではない。
(だけど――他人と比べちゃ駄目だよ)
 それは他の猟兵達も暗に、あるいは明確に指摘をしていたこと。
 翼をはためかせながら優しい歌声と踊りで魅了しにいく澪。浮遊したり跳ねるような動きをする澪に対し襲い掛かるグラトニー・アイドル達を剣舞のような杖術でいなしていく。自分の言葉を、想いを伝えるために。
「他人と比べちゃ駄目……アイドルを目指した理由、好きの気持ち――大事なのはそこだと思うな」
 魔術詠唱、水を涼しげな魚のような形にすればグラトニー・アイドル達へと放っていく。きゃっ、というような可愛らしい叫びと共に次々とグラトニー・アイドル達が濡れていく中で続けて澪が氷の魔術を放てば水の影響もあってかすっかり体が凍り付いて動けなくなってしまう――まるで観客たちのように。そして、澪の話を、歌を聞けとでも言うかのように。
「みんなだって、なりたいと思ってた時、あるでしょ? なりたいと――思っているんでしょ?」
『そ……それは……』
 ――あるに決まっている。だからこそ自分達は劣等感を抱き、このようなカタチとなったのだから。
「誰かと比較して自分が劣ってるとか優れているとか……そんなのを考えても、きっとどうしようもないよ」
 ――何より。
「貴方達には貴方達にしかない良さがあるから」

 目の前の澪はまるでアイドルというより天使のように見えた。いや、実際|天使《オラトリオ》だった。
「貴方の闇に、希望の輝きを」
 破魔の光や花弁が無骨な闘技場のようなステージとグラトニー・アイドルのコードで一部料理対決会場っぽくなったアイドルステージを照らしていく。
 光に水や氷が煌めき、観客も、グラトニー・アイドル達も、心が浄化されていく。悪の心をまるで全て取っ払ってしまうかのように。
 嗚呼、この光だ――自分達が求めていた、憧れている光はきっとこういうものなのだ――そうした輝きに、オブリビオン達は浄化されて消えていった。

「僕の想いが、みんなを救えてたらいいんだけど」
 ゆっくりと、地面に足をつけながら澪は呟く。
 アイドルステージは未だ消えない。されど、供給が止まったのを見て、澪は一つ、笑顔を観客席に、そして――消えていったグラトニー・アイドル達へ向ける。
 その姿はまさしく――|暖かい光《アイドル》だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年09月10日


挿絵イラスト